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地方創生政策(その2)プレミアム商品券

地方創生政策については、6月25日に取上げたが、今日は(その2)プレミアム商品券 である。

先ず経緯などを見るために、やや古いが、1月15日付けJ-CASTニュース「政府、地方創生へ新交付金4200億円 大手紙「ばらまき」を懸念する論評」のポイントを紹介しよう(▽は小見出し)。
・政府は2015年1月9日の臨時閣議で、年末に決めた経済対策(総額3.5兆円)に基づく2014年度補正予算案(予算規模3.1兆円)を決めた。2014年4月の消費税増税で低迷した景気を下支えする狙いがあり、自治体向けの交付金新設など地方の消費や生活を支援する施策が柱だ
・ 昨年末に、将来の人口展望を示す「長期ビジョン」と、それをもとにした地方の人口減少に歯止めをかける「まち・ひと・しごと創生総合戦略」(2020年までの5か年計画)も決定しており、経済対策は、実質的に「総合戦略」の第1弾といえる。ただ、対策の中には経済効果に疑問符がつくものもあり、「ばらまき」との批判も出ている
・(途中省略)なんといっても目玉は地方向けの新たな交付金(総額4200億円)だ。 新交付金は、「地域消費喚起・生活支援型」(2500億円)と、「地方創生先行型」(1700億円)からなる。各自治体が地域の実情に合った施策を選べる仕組みで、政府は、前者については1万円で1万1000円分の買い物ができるプレミアム付き商品券の発行や地方での就業、創業支援など、後者については、子供の多い家庭への子育て支援や低所得者向けの冬場の灯油代補助などを想定している
・ただ、交付金は「景気回復の実感がない」との地方の声に応える狙いがあり、「2015年4月の統一地方選をにらんで新年度予算案を待たずに、前倒しで経済対策に盛り込んだ」(大手紙経済部デスク)とみられ、経済対策としての効果を疑問視する声も根強い
▽「ふるさと創生」や「地域振興券」の総括なし
・過去には竹下登内閣が1980年代末に「ふるさと創生事業」として全国の市区町村に1億円ずつ交付したが、純金のオブジェになるなど「無駄な支出に使われて終わった」との批判が強い
・小渕恵三内閣は1990年代末、15歳以下の子供がいる家族と65歳以上の高齢者らに対し、1人2万円分の商品券である「地域振興券」を配布したが、当時の政府試算でも、新たな消費を生み出す効果は使用額の約32%にとどまった。今回の対策で、こうした効果についての議論はなかった
・内閣府は今回の経済対策で国内総生産(GDP)を0.7%分押し上げると試算するが、原油安のプラス効果なども含め、エコノミストの間では「すでに10~12月期はプラス成長に転じた」との見方が多い。消費税再増税を延期して財政状況が厳しさを増す中、「住宅エコポイント」(最大45万円分)制度の復活や、運送業者などを対象にした高速道路料金の最大5割の割引(2015年3月末まで)の延長などを含め、「ここまでの対策が必要なのか」(経済官庁幹部)との声もくすぶる
・このため、大手紙の論調も概して厳しい。毎日社説は「必要性も効果も疑問だ」と題して「メニューには場当たり的な事業が並び、アベノミクスが目指す成長戦略にどれだけ役立つのか疑問が募る」とバッサリ。日経社説も「バラマキの懸念はないか」と題して「原油安の利点はいわず、円安の負の側面だけを強調してメニューを上積みするのは理解に苦しむ」「気がかりなのは、災害対策の名目で従来型の公共事業が紛れ込みそうなことだ」などと具体的な懸念材料を列挙し、「不要不急の事業にまでバラマキをしようとしているとの懸念を払拭できない」と批判している(12月28日朝刊)
・安倍内閣に理解がある読売社説も、「地方バラマキの思惑はないか」と題して「景気の下支えを名目にバラマキ策が紛れ込む懸念は拭えない」(12月29日朝刊)と疑問を呈し、社説に相当する「主張」欄で取り上げた産経も「再加速の足がかりとせよ」と肯定的な見出しをつけつつ、「即効性を期待してメニューを並べたことは分かるが、その多くは効果が一時的で限定的なものであることには留意が必要だ」(12月28日朝刊)と、くぎを刺している
http://www.j-cast.com/2015/01/15224725.html?p=all

次に、いつもユーモア溢れるシニア記者氏による8月6日付け日経ビジネスオンライン「地方創生に異議あり!シニア記者、高級官僚と楽天幹部に物申す」のポイントを紹介しよう。
・あまりの暑さゆえ、朦朧とする頭でどうでもいいことを考えながら、楽天が開催する「ネットショップ支援施策に係る自治体向け勉強会」の会場であるグランドプリンスホテル新高輪を目指すシニア記者である
・勉強会の主催者は「私たちと一緒に地域の活性化に取り組む自治体様を大募集!」という楽天と、佐賀県、岐阜県、島根県、長崎県、宮城県。パネルディスカッションには「地方創生」の仕掛け人である内閣官房まち・ひと・しごと創生本部の村上敬亮参事官と、楽天の高橋理人常務執行役員が登場するという
・「地方創生」と聞いて嫌な予感がするのは年寄りの証拠である。忘れもしない、シニア記者が星雲の志を抱いて日本経済新聞に入社した1988年。時の竹下内閣は「ふるさと創生」の看板を掲げ、地方交付税の形で全国の市町村(不交付団体を除く)に、「使い道は自由」で1億円をばら撒いたのだ
・案の定、その大半が箱モノやモニュメントに使われた。列挙してみよう。 
「イカのモニュメント」(北海道函館市)
「純金製のこけし」(青森県黒石市)
「日本一の自由の女神」(青森県おいらせ町)
「村営キャバレー」(秋田県美郷町)
「日本一の獅子頭」(茨城県石岡市)
「日本一長い滑り台」(山梨県北都留郡丹波山村)
「世界一大きいこま犬」(岐阜県瑞浪市)
「金塊レンタル」(兵庫県淡路市)
「純金製カツオ像」(高知県高岡郡中土佐町)
 いやはや何とも
・1億円をそこそこ賢く使ったのは「一村一品運動」の足しにした大分県くらいのもので、ばら撒き総額1兆円のほとんどは、バブルに浮かれた「痛い記憶」を形にとどめる以外、何の役にも立っておらん。いっそのこと国が「全国、痛いモニュメント巡り」でも主催して、全制覇した国民に勲章をさしあげたら、どうだろう。5つも巡れば国への不信感満点になること請け合いじゃ
・しかし歴史は繰り返す。今度は「痛いモニュメント」を作らせないよう、新型交付金という形でカネを渡し、地方自治体が選んだ地元産品を割安で買える商品券や旅行券を配るようにした。現ナマを裸でばら撒くよりはいくらかましだが、結局は「お年玉」である。子供のころにもらったお年玉を有効に活用したご記憶がおありだろうか
・ジジババっ子で両親の兄弟が多かったシニア記者は、ご幼少のみぎり、毎年かなりの額のお年玉をせしめたものだが、何に使ったかさっぱり覚えておりません。使いもしない玩具を買ったり、駄菓子を腹いっぱい食ったりしたのがせいぜいだろう。労せず手にしたカネの使い道など、そんなものである
・という、不信感満点のまなざしで、勉強会に乗り込んだシニア記者である。村上参事官と高橋常務がステージに上がり、客席の自治体関係者が真剣にメモを取っている。 村上参事官「旅行券は売り出してすぐ完売という自治体が多い。商品券は販促をかけたところが売れている。かけていないところは苦戦してますね」
・そもそも、地方自治体の方々に「販促」という概念はあるだろうか。そういうことがしたいなら、役人になどならず、企業でマーケティングでもやっておるのではないですか
・高橋常務「楽天市場はもともと、インターネットの力で地方の商店を活性化しようという発想から始まっています。例えば楽天市場を始める前、月商53万円だった『しいたけ販売』のお店が、『白いんげん』を大ヒットさせ、今や年商20億円。従業員も68人になり、地元の雇用にも貢献しています」
・それは分かります。楽天市場の地方経済への貢献度は、シニア記者も高く評価しております。インターネットの力、民の力は素晴らしい。だからこそ、お上にすり寄らず「民のことは民」でやり切るのが、ネット商人の意地というものではありませんか
・ええい、じれったい。二人の話を聞いているうちに、矢も楯もたまらなくなったシニア記者は、勉強会終了後、控室への突撃を敢行した。止めてくれるな広報さん、ここで突っ込まねばシニア記者の名が廃る。無理くりに控室に乱入したシニア記者は、すかさず村上参事官に質問を投げつけた
・Q:地方創生とふるさと創生の違いはなんでしょう。私には同じバラマキにしか見えません
・(村上参事官):「あ、今回の新型交付金はね、脱補助金のための補助金なんです。過去の政策とは全く違います」
・Q:脱補助金のための補助金?意味が分かりません
・(村上参事官):「簡単に言うと、このお金で自立してください、ということです」
・Q:手切れ金みたいなもんですか
・(村上参事官):「まあこれで全部の補助金がなくせるとは思ってませんが、そんな感じですね」
・Q:商品券や旅行券で地方がどうやって自立するんですか
・(村上参事官):「例えば鳥取県が発売した旅行券は発売4分で売り切れました。鳥取県出身の石破茂大臣(地方創生担当)も買いに行かれたけど『売り切れだった』とぼやいてました。後日、旅行券の使い方をトレースしたら、いままで日帰りしていた人たちが旅行券を使って一泊していました。これをきっかけに『一泊するとのんびりできるね』という人が増えれば、新しい消費が生まれるわけです。旅行券はそのための呼び水です」
・Q:うーん、なるほど。しかし商品券はどうですか。安く買ってお終い、じゃないですか
・(村上参事官):「商品券を使って、とりあえず一回は買ってくれるわけですよね。そのお客さんをしっかり捕まえて、顧客リストを作る。そのお客さんたちに商品が継続的に届くように物流と決済を整える。自治体には『ここで販路を固めろ』とハッパをかけているんです」
・Q:売りっぱなしにするなと
・(村上参事官):「そうです。きっかけは作るから、あとは自分たちで頑張ってください、ということです。地産池消もいいけど、自治体が生き残るには域外の地元ファンを作って”外貨”を稼がなくてはならない。これは1社1店舗では無理なので、自治体が頑張って地域ブランドを作り上げてもらいたい」
・Q:で、楽天はそのご相伴にあずかろうと
・(楽天):「いやいや、逆ですよ。楽天市場の中には全国に熱烈なファンを持つ『スーパー店舗』がたくさんあります。しかし自治体の偉い人たちと話しても、ご自分の地域のスーパー店舗をほとんどご存じない。楽天が自治体とスーパー店舗を引き合わせることで、地域ブランドの構築にお役に立てるんじゃないかと考えています」 「例えば、佐賀県にアロマランプで成功した21歳の若い店長がいるんですが、知事に紹介したらいたく気に入られて。あっちこっちに彼を連れ回して『お手本にしろ』と言っています。彼のような人が有名になれば、ほかの若い人たちも地元に戻るし、活気がでますよね」
・Q:まあ、個別に見ればそういう成功例もあるでしょう。しかしやはり税金を使って需要喚起というのはいただけない。リーマンショックの時のエコポイントは制度が終わった途端に消費が止まり、電機メーカーや家電量販店を苦しめたではないですか
・(村上参事官):「あ、言ってませんでしたか。私、経産省からの出向で、エコポイントの設計もやったんです」
・Q(ギクッ)いや、それは。でもあの後、テレビが極端に売れなくなって、シャープもソニーも塗炭の苦しみを
・(村上参事官):「リーマンショックの時は市場が麻痺してしまったから、カンフル剤としてああいう施策が必要でした。まあ、ちょっと期間が長すぎたかな、という反省はあります」
・Q:今回も商品券や旅行券で一時的に潤って、終わった途端にがっくり、となりませんかね
・(村上参事官):「いままでの地方は、もらったお金を正しく使うことばかり考えて、そのお金で『稼ごう』というところまで気が回らなかった。今回はそこを徹底的に考えてもらいます。しっかり販促して販路を固めて、稼ぐ力をつけてもらいます」
・Q:うーむ、さすがは高級官僚。ああ言えばこう言う。どうやら今回は、うまく丸め込まれたようである。だが村上さん、シニア記者はしつこく「地方再生」をウォッチしていきますぞ。「イカのモニュメント」や「純金製のコケシ」を見つけたら、次こそただでは済ませませんからな。(すっかり負け惜しみじゃないか)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/280248/080500006/?P=1

第三には、7月7日付け東洋経済オンライン「地方はどうすれば「横並び」から脱出できるか 「プレミアム商品券」では地方は生き返らない」のポイントを紹介しよう(▽は小見出し)。
▽「B級グルメ」や「ゆるキャラ」を真似して勝てるのか
・モノがひと通り整備され、さらには縮小社会を迎えて成熟化のプロセスにある今、全国で同じことをやってしまうと、逆効果になることも少なくありません。例えば、隣り合う自治体が似たような「B級グルメ」や「ゆるキャラ」に取り組んだり、同じような体育館や市民ホールを整備するケースが目立っています。結果として、互いに潰し合いをすることになってしまっています
・今、地域活性化事業に求められているのは、全国どこでもできるような「汎用性」ではなく、ここでしかできないという「希少性」です。残念ながら、国や自治体のこうした「横並び構造」は未だ堅牢です。最近で言えば、今まさに全国各地で売りだされているプレミアム商品券が「典型的な例」です
・時事通信などのメディアも詳しく報じている通り、今回も、政府が交付金を配る際、プレミアム商品券というメニューを提示した途端に、1709市区町村と30都道府県からプレミアム商品券を実施するという計画が出されました。今年4月現在の市町村数は1718ですから、ほぼ100%といっていい自治体で展開されるわけです
・プレミアム商品券に類似する、旅行商品の割引事業もまた、東京都を除く46道府県で取り組まれます
・プレミアム商品券の是非の議論はさて置き、国から方針が出された途端、「他の自治体に出し抜かれるな!!」というような話になり、全国で同じことを実施することになったわけです
(後半は省略)
http://toyokeizai.net/articles/-/75965

シニア記者氏が、官僚にうまく丸め込まれたのは残念であるが、村上参事官の最後の回答は、地方自治体への「ないものねだり」といった感が強く、真の答えにはなっていない。
いずれにしても、プレミアム商品券はまたもや壮大な無駄遣いに終わりそうな愚策である。しかも、ほぼ100%の自治体が横並びでやっているとは。
「ふるさと創生」での無駄な使用例は、笑ってしまうが、自治体のレベルの低さを物語っているといえよう。「村営キャバレー」はその後どうなったのだろう。
また、税金で補填されるプレミアム分を狙って、申込みが殺到し、長蛇の列ができて熱中症で救急搬送される人が出たり、抽選にしたところでは不公平と問題視する声も出たようだ。秋田市のように使用可能店舗リストに「熟女」「美魔女」をウリにするキャバクラが入っており、話題になったらしい。
さらに、7月には八王子市から販売を委託された多摩信用金庫で、プレミアム商品券を内部や顧客に割当てるというの不適切配布が発覚するという「おまけ」までついた。
こんな愚策が、地方創生政策として大手を振って登場するなど、世も末である。こんなバカ騒ぎは、今年限りにしてもらいたいものだ。
タグ:プレミアム商品券 地方創生政策 プレミアム付き商品券の発行 「地方創生先行型」(1700億円) 地域消費喚起・生活支援型」(2500億円) 地方向けの新たな交付金(総額4200億円) 政府、地方創生へ新交付金4200億円 大手紙「ばらまき」を懸念する論評 J-CASTニュース 竹下登内閣 ふるさと創生事業 全国の市区町村に1億円ずつ交付 小渕恵三内閣 1人2万円分の商品券である「地域振興券」を配布 大手紙の論調も概して厳しい 日経ビジネスオンライン 地方創生に異議あり!シニア記者、高級官僚と楽天幹部に物申す ネットショップ支援施策に係る自治体向け勉強会 イカのモニュメント 純金製のこけし 日本一の自由の女神 村営キャバレー バブルに浮かれた「痛い記憶」 結局は「お年玉」 しっかり販促して販路を固めて、稼ぐ力をつけてもらいます さすがは高級官僚。ああ言えばこう言う 東洋経済オンライン 地方はどうすれば「横並び」から脱出できるか 「プレミアム商品券」では地方は生き返らない 成熟化のプロセス 全国で同じことをやってしまうと、逆効果になることも少なくありません B級グルメ ゆるキャラ 同じような体育館や市民ホールを整備 互いに潰し合い 横並び構造 ほぼ100%といっていい自治体で展開 全国で同じことを実施 壮大な無駄遣い 申込みが殺到 不公平と問題視する声 販売を委託 多摩信用金庫 不適切配布
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