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インフラ輸出(インドネシア高速鉄道問題)(その3)日本企業は「笛吹けど踊らず」 [外交]

インフラ輸出(インドネシア高速鉄道問題)については、前回は10月25日に取上げたが、今日は(その3)日本企業は「笛吹けど踊らず」 である。

11月30日付けZAKZAK「【経済インサイド】インドネシア高速鉄道受注 なぜ日本は中国の逆転を許したのか?」を紹介しよう (▽は小見出し)。
・インドネシアの高速鉄道受注は、日中の激しい競争の末に中国に軍配が上がった。安全運行をはじめとした日本の高い技術力よりも、中国の低コストをインドネシアが選んだ形となったが、日本政府と民間企業が必ずしも一枚岩ではなかったこともあげられる
・受注に前のめりの政府に対し、民間は採算性などを疑問視し「笛吹けど踊らず」の状況だったのだ。今後は大本命のインドのほか、タイやマレーシア、イランなどの高速鉄道商戦も本格化していく見通しだ。日本は、インドネシアの教訓を生かせるかどうかが、今後の受注の鍵を握りそうだ
▽民間不在の議論
・「はっ」。中国とのインドネシアの高速鉄道をめぐる競争が激化していた今年夏、政府は民間企業との会談の場を数回設けた。だがなかなか本題に入らない。後半になり政府関係者はようやく「本件よろしくお願いします」。真意を図りかねた民間企業は「はい」と返答もできず、冒頭の言葉で対応するしかなかった。
・「(採算性などに懸念を抱く)民間と、政府の温度差が浮き彫りになった瞬間だった」と参加した民間企業の関係者はこぼす。
・今年3月にジョコ大統領が来日し新幹線に試乗するなど、インドネシアの高速鉄道計画は日本の受注が有力と当初見られていたが、結果として後から攻勢をかけた中国に受注をさらわれる結果になった。
・高速鉄道は国家対国家の利害がからむだけに、受注の行方だけに焦点があたりがちだが、インフラを受注する企業目線でいえば、開業後に需要予想通りに利用者が増え、運賃で資金を回収できるかどうかにかかっている。
・今回対象となった首都ジャカルタからバンドン間は、ジャカルタ市内から車で約2時間強の距離。同国第2の都市スラバヤまでの延伸を含めても高速鉄道建設の採算については疑問の声があった。事業性も明確でない上に土地買収の手法も未解決のままだった。民間企業がインドネシア案件を冷静に見ていたのは、こうした点が大きい。
・さらにJICAが事業化調査で技術協力を行っているときも、すでにインドネシア政府からは「財政負担しない」、「政府保証はしない」との方針が打ち出され、当初から暗礁に乗り上げていた。加えてジョコ大統領は「運営リスクも取らない」と表明した上に、水面下で3年で建設するよう日本にも求めるなど難易度はどんどん上がっていた。
・日本政府の対応も急遽、国際協力銀行(JBIC)の資金活用が急浮上するなど二転三転し、官民で議論を尽くしたとは言い難い状況だった。
・交渉相手が迷走したことも響いた。当初はパナソニックの現地合弁会社の社長も務めた知日派で知られる貿易大臣ゴーベル氏が来日して交渉にあたったが、8月の内閣改造人事で失脚し、政府部内に親中派が台頭したことも日本に不利に働いた。
▽懲りないインドネシア
・一方で、中国の技術不足で最後は日本技術にお鉢が回ってくるとの楽観論も根強い。前例は発電所計画だ。インドネシア政府は2006年に第1次クラッシュプログラムと呼ばれる石炭火力などの電源開発計画を策定し、石炭火力のほとんどを、低価格を武器に中国勢が受注し、日本勢はさんさんたる結果だった。
・だが、ふたを開けると、プロジェクトのほとんどが遅延や稼働できないお寒い状況で今の電力不足を招いている。インドネシア政府も変節し、現在は日本の技術は引っ張りだこ。大手商社など日本勢が相次ぎ大型発電所受注を決め、独り勝ちの様相だ。同様の事態が高速鉄道でも起きる可能性はある。
▽本命はインド、タイやイランも
・官民一体で受注を狙う高速鉄道の本命は、他ならぬインドだ。インド政府とは折半出資で2年以上かけて事業化調査を実施。需要予測や採算性など報告書も今夏に作成済みだ。10月には、山本順三国土交通副大臣をはじめ国交省幹部やJR東日本など企業幹部らが参加し、現地でセミナーを開催し、新幹線PRの追い込みをかけた。
・続いて、国際協力機構(JICA)はタイについても、バンコクからチェンマイの高速鉄道事業の準備調査の委託先の選定を開始する。今年12月から16年12月下旬にかけて需要予測やルートの検討、事業費の算定に着手する計画で、中国優先が伝えられる中で巻き返しを図る。
・インドやタイ、シンガポール・マレーシアに続き、最近は経済制裁解除が近いイランも「同じ地震国の安全技術には期待が大きい」(ナザルアハリ駐日イラン大使)と日本の高速鉄道技術に秋波が送られている。
・こうした中で、政府部内からも「全方位ではなく、優先順位をつけ、個別のライバルを分析した戦略が必要だ」との現実論も上がっている。
・鉄道運行には、優れた運行技術を持つJR東日本など民間の技術協力が欠かせない。インドネシアの教訓を生かし、官民一体の戦略をどう見直すかが日本に問われている。
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20151130/frn1511301536006-n1.htm

インドについては、12月13日付け日経新聞によれば、安部首相がインドのニューデリーでモディ首相と会談し、インド西部の高速鉄道には日本の新幹線方式の採用が決まった。総事業費約9800億ルピー(約1.8兆円)のうち、最大で1.46兆円の円借款を供与、さらに、原発を輸出できるようにする原子力協定の締結で原則合意とのことである。これについては、後日、取上げるとして、インドネシア高速鉄道問題に戻ろう。
インドネシア高速鉄道問題では、日本政府に比べ、日本企業側の姿勢はやはり慎重だったようだ。事業運営にまで責任を持たされる以上、当然の対応といえよう。あとで巻き返した石炭火力発電所プロジェクトの例もあるのであれば、今回は受注した中国の「お手並み拝見」と割り切るべきだろう。
この記事は「鉄道運行には、優れた運行技術を持つJR東日本など民間の技術協力が欠かせない」など、やや日本の技術を買いかぶり過ぎている面もある。私は日本の運行技術を現地に適用させていくには、極めて高いハードルがあるし、運行時間の正確性自体、現地ではそれほど求められていないと思う。前回、ぐっちーさんも指摘していた通りだ。これは、インドなどでも同様で、今後の高速鉄道輸出戦略を考えていくに当たっては、冷静な判断が必要だろう。
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