SSブログ

老人ホーム虐待(連続死)問題(その3)ブラック企業2社を買収した損保ジャパン [社会]

昨日に続いて、老人ホーム虐待(連続死)問題(その3)ブラック企業2社を買収した損保ジャパン を取上げよう。

先ずは、昨年12月22日付け東洋経済オンライン「SOMPO、メッセージ買収で介護首位級に 大手損保の傘下入りで健全化はできるか」を紹介しよう (▽は小見出し)。
・損保メガ3社の一角、損保ジャパン日本興亜(SOMPO)ホールディングスが18日、介護事業大手のメッセージを買収すると発表した。損保ジャパンは現在、メッセージに3.5%出資しているが、TOB(株式公開買い付け)を実施し、連結子会社化を目指す。
・メッセージは「アミーユ」などのブランドで有料老人ホームを展開し、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)が主力。SOMPOは今12月21日から2016年1月25日にかけて、12月17日のメッセージの株価終値2354円に6.2%分上乗せした1株2500円で創業家から発行済み株式の34.69%を買い付ける。さらに第2弾として、創業家以外の株主を対象として、来年1月29日から、48.7%上乗せとなる1株3500円でTOB(公開買い付け)を実施する。
・全株が集まった場合、取得金額は609億円となるが、100%の買収は行わずにTOB後もジャスダックへの上場は維持する方針。6月以降の株主総会において、社名を「SOMPOケアメッセージ」と変更し、代表取締役1名を含む取締役3名を派遣する予定だ。
▽介護業界で首位級に躍り出るSOMPO
・SOMPOはこの12月1日に、居酒屋のワタミから「ワタミの介護」の株式を210億円で取得し、「SOMPOケアネクスト」と社名を改めて再スタートさせたばかり。前期2014年度の売り上げを基準とすると、ワタミの介護(354億円)、メッセージ(789億円)の2社合算で1143億円となり、介護業界で首位のニチイ学館(1443億円)に次ぐ2位に浮上する。なおSOMPOは12年9月には、九州地盤のシダー(107億円)も投資事業有限責任組合を通じて関連会社としており、グループとしては一挙にトップに匹敵する規模を得ることになる。
・リハビリなど通所介護に強いシダーに、首都圏中心に中価格帯で施設介護を展開するSOMPOケアネクスト、さらに低・中価格帯で施設、在宅介護を持つメッセージが加わり、フルラインで介護サービスを提供できる態勢が整う。
・高齢化の急速な進展を背景として、介護マーケットに対する成長期待は大きい。厚生労働省によると、介護保険給付費は、団塊の世代が後期高齢者となる2025年には、2015年度の2倍の約20兆円に拡大すると見込まれている。
・異業種からの参入も目立つ。最近でもイオン傘下のイオンリテールが通所型介護の設置を始め、またローソンがケア(介護)拠点併設型店の拡充方針を示している。保険業界では、東京海上グループが1996年から事業参入しているほか、MS&ADグループ、明治安田生命、ソニー生命を中核とするソニーフィナンシャルホールディングスなどが有料老人ホームなどを手掛けている。
・SOMPOは参入こそ保険会社の中では後発だが、2015年3月にはメッセージと資本・業務提携を取り交すなど、取り組みを強めていた。「安心・安全・健康」に資する最高品質のサービス提供を経営理念に掲げるSOMPOは、警備のALSOKと提携し、リフォームのフレッシュハウスを子会社化するなど、ここ数年、精力的に多角化を進めていた。中でも介護は「安心・安全・健康」に関しては"ど真ん中"といえる事業であり、買収を機に今後は「損害保険事業」「生命保険事業」と並ぶコア事業と位置づけ、力を注いでいく。
・メッセージは子会社が運営する有料老人ホームで入居者の転落死が発覚。また施設での虐待行為といった問題も続き、11月には厚生労働省から介護保険法に基づき業務管理体制を適正に整備するよう勧告を受けている。18日に行われたアナリスト向け電話会議において、SOMPOの西澤敬二副社長は「非常に重たい課題であり、内部統制、リスク管理の仕組みを徹底的に高めて、まずはお客様に安心して頂けるような品質を最優先で作りたい」と述べた。 
・介護業界では約8割の事業者が資本金1000万円未満の中小事業者であり、有料老人ホーム上位10社の総居室数を合算しても、全体の3割に満たないという。
▽内部統制構築の課題に加え、人材不足などの問題も
・SOMPOなど企業規模・資本力に優れた異業種大手企業による業界再編が進むことに対し、みずほ銀行産業調査部ライフケアチームの高杉周子氏は、「」と評価する。介護業界の競合大手からも「異業種大手が入ってくれることで安心感が高まる。消費者目線での改革が進むのでは」と期待する向きもある。
・膨張する需要を背景に今後の成長が確実視される介護マーケット。だが、供給業者が利益を確保するうえでは、足元は逆風のただ中にある。介護職員は他業界に比較して給料が低いという見方が根強く、人材不足が構造的な問題となっている。加えて2015年4月に行われた3年に1度の介護報酬改定は9年ぶりのマイ経営管理体制の強化や透明性の向上など、業界の健全な成長が促進される好機ナス改定となった。
・東京商工リサーチによると、2015年1~9月の介護事業者の倒産件数は2014年を上回って過去最高を記録。11月には業界トップのニチイ学館が今期2016年3月期の業績予想を赤字へと下方修正した。同社の連結経常赤字は、2001年3月期以来、何と15年ぶりのことだ。
・SOMPOは同社が持つ経営管理、コンプライアンス、リスク管理のノウハウを導入してサービスの品質向上に努める。たとえばセンサー、スマートロック、GPS、スマホなどICT(情報通信技術)、デジタル技術も活用し、転倒など事故の早期発見、虐待・盗難事故予防、介護記録の効率化や職員と医師、看護師などの情報共有、介護ロボット導入による負担軽減などを進めていく。また十分な人材を計画的に採用・育成する体制を構築し、職員の処遇改善を図っていくという。
・政府が介護報酬をコントロールする環境下、ICT利用や間接部門の業務一元化によって業務効率化を図るほか、介護サービスに自費サービス(配食・生活支援)を組み合わせ、収益を確保できるビジネスモデルの構築を図る。健康・介護の相談業務やメンタルヘルスケアのサービスを行う子会社を活用するなど、多角化したグループ事業を総動員して収益を底上げする構えだ。
・ただこうした施策に対しては、業界関係者などから「ICTの活用などは他社でも例があり、これだけでは差別化は難しい」「直接の業務経験がないSOMPOに現時点では教育などのノウハウがどれだけあるか疑問」といった見方もある。
▽リスクを管理し収益をあげられるか
・SOMPOはすでに3月時点でメッセージと資本提携していたこともあり、損保、生保会社では今回の買収を「既定路線」と受け止めている。ただ、先行していた各社が地域や価格帯、サービスなどを絞ってリスクを限定した参入にとどまっていただけに、「介護保険の提供といったリスクに対するファイナンスが保険の本業」「メッセージのような問題が再発すれば、信用やブランドに傷がつく」「新たな経営リスクを抱えてリスク管理が難しくなる」といった声が聞かれる。
・SOMPOケアネクストは、親会社ワタミのイメージ悪化にも直撃されて、入居率が大きく低下した。またメッセージも入居率は少しずつ落ちてきているという。安心・安全・健康に資する最高品質のサービスを提供し、真のサービス産業へと進化する。その理念実現のために「お客さま評価日本一」を最重要戦略と掲げるSOMPOにとって、今回の買収が持つ意味は極めて重い。
http://toyokeizai.net/articles/-/97826

次に、1月21日付け現代ビジネス「「ブラック」と呼ばれた2社を傘下に収めた損保ジャパンは、介護業界の闇を断ち切れるか?」を紹介しよう (▽は小見出し)。
▽損保ジャパンが介護業界で躍進
・介護離職ゼロ」の実現に向けて、政府は特別養護老人ホームの増設などで、50万人分の介護サービスの「受け皿」を増やす方針を明らかにしている。 そのために必要なのは、老人ホームなどの「ハコ」よりむしろ介護に関わる人材。安倍首相は施政方針演説で、「25万人の介護人材の育成」を掲げることを決めた。
・介護の重要性が高まるなか、損保ジャパン日本興亜ホールディングスが、1月25日までの買い付け期間で介護大手「メッセージ」のTOBを実施、傘下に収める。損保ジャパンは、昨年12月にも、居酒屋大手・ワタミの子会社「ワタミの介護」を買収しており、これで介護業界第2位に躍進する。
・国内市場の縮小を背景に、損害保険業界では大型再編が続いており、今は大手3社で保険料収入全体の94%を占める寡占状態にあり、うち約27%を占める損保ジャパンは、業界第3位に位置する。しんがりからの脱却を介護にかけるわけだが、業界が置かれた状況を考えれば、難題が山積みされている。
・損保ジャパンは、「SOMPOホールディングスの介護事業戦略について」というニュースリリースのなかで、「介護」を「損保」「生保」に並ぶコア事業に位置づけ、「保険に加えて介護サービスをご提供することにより、一人でも多くのお客さまに老後も『安心・安全・健康』な生活をお送り頂けるよう取り組んでまいります」と、している。
・介護という肌が触れ合うサービスを提供していることが、リスクの先取りである損保や生保を誘引。現在の介護市場10兆円が、団塊の世代が後期高齢者となる2025年には20兆円を超えると言われているだけに、それを見据えたビジネスモデルである。
▽解消されない「介護の闇」
・ただ、「きつい、汚い、給料が安い」という3K職場の介護業界に、「将来性あるマーケット」という観点からだけで進出したのでは、親会社のブラック企業批判の“火の粉”を浴びた「ワタミの介護」、3人連続転落死事故をきっかけに、虐待の数々が表面化、バッシングを受けて創業者が意欲を失った「メッセージ」の二の舞である。
・はたして「介護の闇」を解消する手立てを持っているのか。日本企業のなかでも平均年収約1100万円(42歳)を超える高い給与を誇る損保ジャパンが、約350万円(38歳)と低賃金に甘んじているメッセージを支配する構図となり、発生する社内2極化にどう対応するのか。
・メッセージの創業者は、岡山大学医学部を卒業後、外科医院を経営していたものの、老人保健施設の立ち上げを機に、介護事業にのめりこんでいった橋本俊明氏である。事業は、00年の介護保険制度の施行とともに大きくなり、「低所得老人の行き場の提供」を掲げて人気を集め、15年3月の時点で、全国300施設を展開、パートを含めて約1万8000人の従業員を抱え、営業収入約790億円の業界大手となった。
・しかし高邁な理念は、限られた介護報酬のなか、介護士など働く人の給与を安くしなければ、年金生活者をケアできないという現実の前で崩れ、恒久的な人材不足に陥り、重労働が招く離職率の高さは、メッセージが展開する有料老人ホーム「アミーユ」の評判を落としてきた。
・昨年発覚した「Sアミーユ川崎幸町」の連続転落死は、全国のアミーユで発生する虐待、暴行などの発覚に繋がり、厚生労働省は昨年11月、業務改善勧告を出した。メッセージへの「ダメ出し」だが、連続死はともかく、虐待に至る環境があることは、現実として受け止めておくべきだろう。
・以下は、拾い集めたメッセージ介護職員の“生の声”である。  「認知症の方は、基本的にわがままで自制のハードルが低い。自分が気に入らなければ、ナースコールの連打で我々を苦しめる」  「お客さまの個々の要望に応えたいが、とてもそんな余裕はない。入浴、排泄、食事の介護だけで時間が飛ぶように過ぎる。構ってもらえないと、悪意を持ってナースコールを押したり、無理な注文を出されたり、時に暴力を振るわれる」  「会社は川崎の事故後、研修を行って職員に行動を改めさせるように指導しているが、虐待が論外なのは当然。介護士をそう追い込む環境の改善が必要」  「激務なのに給料は安い。無資格者の初任給は夜勤5回、日曜祝日手当込みで月給20万円。賞与は2ヶ月で年収は300万円以下。キャリアアップしないと年収はほとんど変わらず、結婚など将来設計ができない」
▽劣悪な状況をどう改善するのか
・こうしたブラック企業状態が、事故や虐待の多発に繋がる。3K状態の改善なくして介護業界の地位向上と人気職種化はない。
・また、メッセージ職員の待遇への不満を受け入れる組織はなく、唯一、東京・練馬の「アミーユ光が丘」に東京北部ユニオン・アミーユ支部が設置されているが、署名をもとにした要求に、会社側は応えていない。 「川崎事故の前から、介護職員の増員、休憩室など勤務施設の充実、介護職員処遇改善加算金を含む給与のアップなどを申し入れていますが、なにひとつといっていいほど改善されていません」(アミーユ支部幹部)
・処遇改善加算金とは、介護職の給与の安さを憂慮した国が、月に2万7000円の給与の積み上げを予算化したもの。アミーユ支部は介護職員への一律支給を求めているが、会社は10段階のキャリア制度を敷き、キャリアアップに応じた支給に限定しているので、全介護職には行き届かず、不満が募っている。
・政府が政策に掲げて育成を打ち出した介護職員が、介護予算との絡みで劣悪な状況に置かれている現状を、損保ジャパンはどう改善するのか。
・同社広報部は、次のように答えた。 「介護職員の人材不足という業界全体が抱える課題に関しては、業務効率化によるコスト削減や生産性向上に取り組むとともに、介護報酬以外でも収益を確保できるビジネスモデルの構築を目指すことで、職員の処遇改善に努めていきたいと考えております」
・本格参入前だとはいえ、これでは「効率化やコスト削減が難しい職場だから収益確保のために人員と給与がカットされ、劣悪な労働環境のなか、精神的肉体的に追い詰められて虐待に走る介護職員もいる」という現実の前では無力だろう。「収益確保のビジネスモデル」というのも具体像が浮かばない。
・とはいえ、損保ジャパンの参入は、業界外の大企業が初めて介護事業に進出したという意味で、業界に大きな刺激を与えるだろう。また、レピュテーションリスクを恐れる金融大手としても、ブラック企業批判を避けるための方策を取っていくだろうし、新しいビジネスモデルの確立も期待したい。そうでなければ、大介護時代を目前に、日本有数の保険会社が参入した意味がない。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47470

SOMPOが一般株主から買付けるプレミアムはなんと48.7%。しばらく様子を見ていれば、メッセージの株価はもっと下がったと思われるが、介護を損保、生保に並ぶ「コア事業」に位置づけるほど「入れ挙げている」なかでは、多少の高値買いなどどうでもいいと考えたのかも知れない。ただ、介護では最大手のニチイ学館ですら15年ぶりに赤字転落するほど、厳しい業界でもある。
SOMPOのようなコンプライアンスも重視する大企業が、介護事業をクリーン化してゆけるとすれば、その意義は大きい。しかし、「メッセージのような問題が再発すれば、SOMPOの信用やブランドに傷がつく」リスクは極めて重大である。
メッセージ介護職員の“生の声”を読むと、今後、SOMPOが立て直してゆくのは、なまやさしいことではなさそうだ。
ただ、SOMPOの株価の変動を東京海上HDと比較してみると、3ヶ月では前者がやや安目だが、1年間ではほぼ同じと、株価はこうしたリスクをまだ織り込んでないようだ。
タグ:SOMPO、メッセージ買収で介護首位級に 大手損保の傘下入りで健全化はできるか 東洋経済オンライン (その3)ブラック企業2社を買収した損保ジャパン 虐待(連続死)問題 老人ホーム 損保ジャパン日本興亜 SOMPO メッセージ 買収 TOB(株式公開買い付け) 連結子会社化 アミーユ 有料老人ホーム サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) 創業家から 6.2%分上乗せ 創業家以外の株主を対象 48.7%上乗せ SOMPOケアメッセージ ワタミの介護 210億円で取得 SOMPOケアネクスト 九州地盤のシダー グループとしては一挙にトップに匹敵する規模 フルラインで介護サービスを提供 介護マーケットに対する成長期待は大 異業種からの参入も目立つ 介護 「損害保険事業」「生命保険事業」と並ぶコア事業と位置づけ 内部統制構築の課題 人材不足などの問題 業界の健全な成長が促進される好機 ニチイ学館 2016年3月期の業績予想を赤字へと下方修正 ICTの活用などは他社でも例があり、これだけでは差別化は難しい 直接の業務経験がないSOMPOに現時点では教育などのノウハウがどれだけあるか疑問 メッセージのような問題が再発すれば、信用やブランドに傷がつく 」「新たな経営リスクを抱えてリスク管理が難しくなる 入居率が大きく低下 メッセージも入居率は少しずつ落ちてきているという 現代ビジネス 「ブラック」と呼ばれた2社を傘下に収めた損保ジャパンは、介護業界の闇を断ち切れるか? 解消されない「介護の闇」 発生する社内2極化にどう対応するのか 連続死はともかく、虐待に至る環境があることは、現実として受け止めておくべきだろう メッセージ介護職員の“生の声” ブラック企業状態が、事故や虐待の多発に繋がる 3K状態の改善なくして介護業界の地位向上と人気職種化はない 不満を受け入れる組織はなく レピュテーションリスクを恐れる金融大手
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0