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ビジット・ジャパン(インバウンド)戦略(その2)爆買いの変化? [社会]

ビジット・ジャパン(インバウンド)戦略については、昨年12月8日に取上げたが、今日は (その2)爆買いの変化? である。

先ずは、昨年12月4日付けダイヤモンド・オンライン「不動産爆買いと不正資金流入…日本を侵食し始めた中国マネーの怖さ」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・近年、アジアの国・エリアから、日本への不動産投資が増加の一途をたどっている。中でも中国大陸からの投資が目立つ。オフィスビル、ホテル以外にも、我々の生活に身近な住宅への投資もある。
・物件によっては、外国人が占める割合が高いところもある。豊洲の某タワーマンションでは、区分所有者のうち2割が中国人だとも言われている。 都内の不動産業者は「都心の不動産に対する中国人の関心が非常に高まっている」と明かす。
・こうした背景には、中国からの脱出を試みるヒトやカネの動きがある。中国では、不動産価格上昇の限界がいよいよ見え始めた。中国経済も黄金期が過ぎ去り、不動産の右肩上がりもピークアウトする今、富裕層の資金は世界の不動産市場に向かい移動を始めた。
・移民ブームも盛り上がる。中国では、移民国家であるアメリカ、カナダやオーストラリアに移住を希望する人々が後を絶たない。まずは子どもを留学させ、その後「子どものため」と称して不動産を購入、そして自らそこに移り住むというステップは、国外脱出のお決まりのパターンである。
▽中国からの不透明な資金移転に警戒感を強める国際社会
・移民国家のアメリカ、カナダやオーストラリアなどには、ここ数年、中国からの移民とともに莫大な資金が流れ込み、現地で深刻な問題を生んでいる。
・ゴルフ場、ホテル、オフィスビルなどに中国マネーが投下されるカナダでは、これを「重大なリスク」と受け止めている。金融取引を分析する組織The Financial Transactions and Reports Analysis Centre of Canada(FINTRAC)は「海外の資本と個人によるカナダ不動産の購入は重大なリスクである」と断じる。
・オーストラリアでも同様の警戒がある。中国人による不動産購入がここ数年で急増し、既存住宅の購入における海外資本の割合は1割に達したという。海外資本における中国マネーの比重は大きい。移民国家の宿命ともいえるが、中国人の「不動産の爆買い」に地元経済は震え上がっている。
・一方、これらの国々では、近年に見る中国人の資産逃避を「中国での腐敗撲滅キャンペーンの反動」と分析しており、流出しているのは「不正な所得」であると警戒している。
・アメリカでは、国際的な麻薬犯罪を取り締まる組織 Bureau for International Narcotics and Law Enforcement Affairs(BINLEA)が出した2015年の報告書で「中国は不正な資金移転の出所であり、国境を越えたマネーロンダリングを促している」と指摘した。 同じくアメリカの、不正金融の研究組織であるGlobal Financial Integrity(GFI)も「中国は不正な資金を流出させる世界一の国、2003~2012年の間に1兆ドルにのぼる不正な資金が流出した」と見積もる。
・カナダでは「金融業や不動産業などに従事する特定事業者は、1万ドル以上の現金取引や疑わしい取引きがあった場合、当局に届け出を行う」という義務がある。だが、その資金の出所がどこかなのか、その資金が不正所得なのか否かを確認することは困難だ。
・また、中国では「個人による年間5万ドル以上の資金の国外持ち出しは違法」としているが、現実には法の網目をかいくぐる多様な手口で、多額の資金移転を可能にしており、その有効な対処ができないことにも手を焼いている。 カナダやオーストラリアで進む中国からの資金移転に、当局は「このままでは“マネーロンダリング天国”というレッテルが貼られてしまう」と危機感を募らせている。
▽日本への不動産投資が問題化するのはこれから?
・日本では、中国人による本格的な不動産投資は緒に就いたばかりだ。そのため、現段階では取引の現場に上述のような危機感はない。
・日本では2007年に「犯罪収益移転防止法」の成立とともに、銀行や保険会社、不動産業などの特定業者が、顧客に「犯罪収益の隠匿」の疑いを持った場合、速やかに行政庁に届け出ることが義務づけられた。しかし、不動産業の取引現場はほとんど徹底されていない。不動産業者からの「疑わしい取引き」の届出についていえば、その受理件数は、2013年にたった1件、2014年も1件にとどまっている。
・不動産会社からすれば「客商売という性格上、疑ってかかることはできない」というのが本音だ。都内のある仲介会社は「本人確認と過去に犯罪歴がないかどうかのデータベース検索をかけるのがせいぜい」だという。ましてや、中国からの不正な資金が流れ込んでいるかどうかなど、「裏のとりようがない」(同)。
・一方で、中国人による日本の不動産への投資は、今後長期化するだろうという見方がある。不動産調査で知られる(株)東京カンテイ市場調査部の井出武氏は、「中国の投資家は中国での投資だけに満足しなくなった。将来的に資産を守るためにはどうポートフォリオを組むかという思考があり、当然、そこに日本を組み込むことを視野に入れている」と指摘する。
・こうした状況が進展すれば、「中国での動きはこれまで以上に、日本に影響を及ぼすようになる」とも警戒する。 ましてや、日本政府が人知れず進める“移民政策”に伴い、永住権を目当てに日本移住を希望する中国人は確実に増える傾向にある。中国経済の連動を深める日本は、今後中国で起こる変動に対し、ますます無縁ではいられなくなる。
▽不動産の爆売買による市況混乱と不正資金の流入に警戒を
・中国では2000年代からの十数年にわたり、不動産への狂ったような投資が行われてきた。中国語で不動産投資を俗に「炒房」(ChaoFang)というが、日本語でならさしずめ「不動産の爆買い」ということになる。
・もともと価格の低かった市場に投機マネーが入り込み、瞬く間にその価格を異常なほどに吊り上げた。相対的に価格が安いとされる日本の不動産市場が、中国の“爆買いと爆売り”で市況を狂わせるシナリオも否定できない。儲かると思う分野に集中し、その市場の健全さを保てなくするのが中国マネーの怖さである。
・さらにそこに加わるリスクが「不正資金」の流入である。今年3月、カナダで中国食糧備蓄管理総公司(シノグレイン)の元倉庫主任だった喬建軍とその妻が、米検察により起訴された。喬は同社勤務時代に7億元を横領し、「移民詐欺」「資金移転」「マネーロンダリング」の3つの罪に問われた。彼らは二人の息子を留学させ、不動産にも手を出していた。
・「海外逃亡」と「マネロン」、そして現地での「不動産購入」は、重大犯罪が問われる“富裕層”が歩む典型例でもある。中国人の不動産買いには、こうした犯罪要素が絡むケースもある。余裕を失った日本経済、とりわけ不動産業界にとっては千載一遇のチャンスだろうが、迂闊に「千客万来」などとは言えないのが実情だ。
http://diamond.jp/articles/-/82693

次に、2月10日付けJBpress「サービスが裏目に?日本に来てがっかりする中国人 最近の中国人が求めている「リアルな日本」とは」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・景気減速による訪日中国人の減少の可能性が言われた今年の春節ですが、蓋を開けてみれば、街は相変わらず観光バスとお買い物客であふれる結果となっています。 こうした景色にホッとしている皆さんも多いことと思いますが、最近の訪日中国人には“ある変化”が起こっているのです。
・日本政府観光局(JNTO)の発表によると、2015年の訪日中国人数は約500万人(499万3800人)で過去最高を記録しました。株価の低迷や経済の減速等が言われているにもかかわらず、2016年も訪日中国人数は増加すると予想されています。
・中国でも連休前の日本旅行フィーバーに関するニュースは、すっかり風物詩となっており、今年も多くの中国メディが春節時期の中国人の日本旅行について報道していました。 「日本メディア:春節時期、日本旅行申請者激増、領事館が大混雑」(日媒:春节赴日旅游申请量剧增 使领馆被挤爆(图)) 「中国メディア:日本、春節に向けて中国人観光客対応の準備完了、一部の買い物中の罠に注意」(华媒:日本准备春节迎客 中国人警惕“购物陷阱”) 「2016年春節、海外旅行先はタイ、日本が最も人気」(2016年春节中国游客出境游泰国日本最受青睐)
▽中国人向けのサービスが定着
・このように盛り上がる春節の日本旅行ですが、最近は、以前のように国慶節や春節の連休期間だけでなく、1年を通じてたくさんの中国の人たちが日本を訪れるようになりました。 日本側でもこうした中国人観光客への対応が劇的に進み、以前に比べて旅行環境は格段によくなっています。中国語の看板、中国語のPOP、中国語ができる店員、ATM、銀聯(ぎんれん)カード決済、Wechatやアリペイでの決済等、こうしたサービスや対応に関するニュースをみない日はないくらいです。
・現在の日本の大都市ならば、日本語が分からない中国の人が1人で旅行に来ても買い物をして、観光地をまわり、日本の美味しいものを食べるくらいなら、全く困らないことでしょう。 以前の記事(こちら)でも紹介しましたが、銀聯カードを使おうとしたところ、家電量販店の店員さんが総動員で対応にあたっていた時代のことを思うと、日本は本当に訪日中国人に優しい国になったと思います。
▽せっかく日本に来ているのに?
・私はもうかれこれ15年ほど中国と日本を行き来していますが、中国の人たちにとって、日本がとても行きやすい国になったことは間違いありません。とはいえ、ここまで対応が進むと逆にある懸念が生まれてきます。これは5年ぶりに日本へ旅行した筆者の友人の言葉です。 「5年前に日本に行った時と景色がまったく変わっていてびっくりした。街には中国人が溢れているし、驚くのは中国語の看板、POPが増えていること、店員さんが皆、中国語を話せること。確かに5年前とは比べ物にならないくらい便利になったけど、ちょっと日本に来ているという実感が持てないよね」
・この感想はとても示唆的です。中国語の看板にPOP、中国語が話せる店員、中国語のサイト、それは便利で素晴らしいことです。ただ、これが行き過ぎると、せっかく日本に来ているのに興醒めしてしまう、というリスクが生まれるようになってきているのです。
・従来、団体旅行で短時間の間に大量の買い物をすることが主な目的であった時代には、全てが中国語であることは効率よく買い物をする上でとても重要なことでした。 団体ツアーに参加する人たちにとって、日本への旅の目的は「買い物」そのものでしたから、極端なことを言えば理想は「安心して購入することができる日本商品が山ほど並んでいて品質・価格・サービスは日本レベル、POPの表示や店員さんの話す言葉は中国語」というものでした。つまり、日本のモノを安く安心して買うことができる本国のような環境を求めていたのです。
・しかし時代は変わりました。以前のように観光バスで免税店に乗りつけて大量に買い物をして去っていくといった典型的な「爆買い」は少なくなり、逆に少人数の気心の知れた仲間で日本を訪れる個人旅行が増えてくると、日本に求めるものも以前とは違ってきています。
▽日本でしかできないことを味わいたい
・一言で言えば、個人旅行者は「日本を楽しみに来ている」ということです。もちろん買い物もしますが、主な目的は「日本でしかできない体験をすること」なのです。老舗旅館に泊まる、温泉に入る、里山をみる、雪をみる、そば打ちをする、着物を着る、そして“日本を楽しむ”ということには、異国・日本の日常を体験することも含まれます。
・日本人に道を尋ねる、電車、バス、タクシーに乗る、コンビニコーヒーを購入する、自分でお好み焼きを焼く、宝くじの列に並ぶ、秋葉原でフィギュアを物色する、そんなリアルな日常体験を求めて日本を訪れる中国の人たちが増えているのです。
・上に書いたものは、実際に先ほど登場した筆者の友人が日本で体験した内容です。今回、彼の日本旅行の予算は総額100万円ですが、買い物にかけたお金10万円ほど。飛行機のチケット代15万円を除いた75万円は主に「日本でしかできない体験」に使われました。
・また、この友人と一緒に日本を旅行した女性は次のように話していました。 「医薬品はともかく、化粧品や生活用品、家電にしても、最近はネットを使えば中国にいながら日本製品を購入することができる。昔みたいに中国で買うとべらぼうに高いということも減ってきているし、注文したら翌日には届くECを使ったほうが楽。
・友人に『日本で○○買ってきて』と頼まれるのも面倒だから、周りには『今回の日本旅行では買い物は一切しない!』と宣言してきたの。今回の日本旅行、最大の目的は、和服を着て京都の伝統的な屋敷に囲まれた小さな道を歩いて、その写真を撮ることよ!」
・個人旅行で日本を訪れる中国の人たちには、このような考え方の人が少なくないのです。 そんな個人旅行客が日本にやってきて、中国語の看板、中国語のPOP、店員はみな中国人という環境を目にしてしまうと・・・自分が想像していた日本がそこにはなく、興ざめしてしまうというのも理解できることだと思います。
・これは日本人でも同じことが言えるのではないでしょうか。初めて訪れた外国で日本語のメニューがあったり、日本語ができる人がいるととても安心できて助かります。けれども、少し慣れてくると、目につく看板やPOP、聞こえてくる言葉が日本語だらけだと、外国に来ているという異国情緒が無くなってしまい、旅の楽しさも半減してしまうでしょう。
▽変わるのは「お金の使い方」
・もちろん、日本で進んでいるさまざまな中国人観光客への対応や取り組みが悪いということではありません。中国の人たちが便利だと思えるようなサービスやインフラを整えることは非常に大切です。
・しかし、今後は「爆買い対応型」サービス、インフラ整備だけではなく、日本そのものを楽しみに来る中国の人たちが「日本に来てよかった、日本は素晴らしい国だ、日本を心底楽しんだ!」と思えるようなサービス、インフラも整えていく必要があるのです。
・「爆買い」はいつか消え去りますが、それは訪日中国人がお金を使わなくなることを意味していません。お金を使わなくなるのではなくて、お金の使い方が変わるのです。 そして、これからも中国インバウンドという領域で戦っていこうと考える企業ならば、「訪日中国人の変わるお金の使い方」に今のうちから対応する準備をしていくことが何よりも大切です。
・そうでなければ、多くの中国人が買い物をしなくなった時点で、日本は中国人にとって魅力的な国ではなくなってしまいます。ある日突然インバウンド市場が消失するというリスクがゼロではないということを知っておく必要があるのです。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46028

「日本では、中国人による本格的な不動産投資は緒に就いたばかり」らしいが、少し前には中国人による水源地の山林の購入が問題視された。「日本政府が人知れず進める“移民政策”に伴い、永住権を目当てに日本移住を希望する中国人は確実に増える傾向にある」については、「人知れず進める“移民政策”」が具体的に何を指しているのか不明だが、移民には殊の外厳格な日本では、少なくとも公式には永住権と日本での保有資産を結びつける運用はしていないと思う。ただ、中国人による不動産投資の話自体は他の情報源からも確かなようだ。
マネーロンダリング絡みの「疑わしい取引」の申告を、売らんかなの不動産業者に任せているのでは心もとないが、日本はもともとマネーロンダリング関連の規制には、欧米が要求するので、付き合っているという消極的姿勢なので、やむを得ないと考える他ない。
JBpressの指摘は、確かにその通りだが、既に新聞報道でも購入対象が「モノ」から、体験やサービスなどの「コト」に移りつつある変化に、企業も対応し始めているらしい。ただ、中国人客が余りに多くなり過ぎると、日本人の足が遠のくといった面もあるので、企業の対応にもバランスが必要だろう。
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