シャープ再建問題（その6）シャープ買収 経産省VS鴻海 全舞台裏。闇株新聞の「偶発債務」への見方

シャープ再建問題については、前回2月26日に取上げた。今日は、（その6）シャープ買収　経産省VS鴻海　全舞台裏。闇株新聞の「偶発債務」への見方　である。

先ず、文芸春秋2016年4月号の「シャープ買収　経産省VS鴻海　全舞台裏」を紹介しよう（▽は小見出し）。
▽官邸の代理人との極秘会合
・安倍の元秘書官だった経産省経済産業政策局長の柳瀬が、1月26日にソフトバンクの孫社長が常時借り切っているホテル「コンラッド」の一室で、ゴウと極秘会合。ゴウはその直前に経産省を訪問、商務情報政策局長とも意見交換し、7000億円出資は本気と伝えた。柳瀬が提案した機構との共同支援案は拒否。
▽迷走を続けたシャープ
・4年前も救済に最初に名乗り挙げたのは鴻海。機構はジャパンディスプレイ設立に動いており、シャープにも声をかけたが、断られた。鴻海が提携契約、9.7%、670億円出資で合意したが、株価下落でドタキャン。
▽救済に奔走した経産官僚
・新工場をリースバックする方式が、12年12月31日の日経新聞に「公的資金で製造業を支援、工場・設備買取り」と報じられ、経産省内では、次官も含めモラルハザード招きかねないと反対が強まった。12年末から13年にかけクアルコムやサムスン電子から200億円超の出資を取付けるが、鴻海の穴は埋められず。機構への出資要請が明らかになったのは15年4月。
・金融界のなかに機構のプランに反発する動き。三菱UFJ（MUFG）は3500億円の金融支援も、「国策ならば従うしかない」だったが、みずほの佐藤社長は機構案に真っ向から異を唱えた。優良顧客である鴻海が再建策を練っていることを察知。1月末に流れが大きく変わったのはみずほの佐藤社長の存在も大。佐藤はゴウとの会談を拒んできた高橋社長に会談をのませた
▽テリー・ゴウの激昂
・偶発債務リストを最後に出してきたことに激昂。高橋社長は26日にゴウに面会するため、シンセンに駆けつけ、5時間待たされ、ようやく交渉期限の1週間延期で合意。ゴウは偶発債務問題を材料に厳しい条件を突きつけてくる可能性が高い。正念場はこれから始まるのかも。

次に、闇株新聞が3月22日付けで伝えた「シャープの「偶発債務」とは？」を紹介しよう。
・本来は2月29日に予定されていた鴻海によるシャープ救済の正式調印がいまだに迷走しています。　本日（3月21日）になって、2月25日にIRされていた鴻海によるシャープの第三者割当増資4890億円を1000億円程度減額し、また鴻海がみずほ銀行と三菱東京UFJ銀行が合計2000億円保有する優先株のうち1000億円を（たぶん額面で）買い取る条件を見直す方向で調整中であると時事通信が伝えています。
・鴻海も引き受ける第三者割当増資の議決権（66％）を減らすはずがないため、1株＝118円と発表されている払い込み価格を94円程度に引き下げなければなりません。しかし先週末（3月18日）のシャープ終値は138円で、移動平均もそれほど安くないため、このままだと有利発行となって株主総会の決議が要ります。
・まあシャープの株価が100円程度まで下落すれば解決ですが、そうなれば新たな信用不安になってしまうため簡単な問題ではありません。
・もう1つの優先株の買い取りも、産業革新機構が2000億円全額の償却（つまりドブに捨てる）に加えて新たに1500億円の債務の株式化（これもそのうちドブに捨てる）を求めていたため、みずほ銀行と三菱東京UFJ銀行が「債務免除は要請しない」との郭会長の発言とともに鴻海案を支持したのが根本的背景であり、大幅に見直されると厄介な問題になります。
・そもそもこういう迷走状態になってしまった原因は、シャープが2月25日の臨時取締役会で鴻海から4890億円の第三者割当増資などを受け入れ傘下に入ると機関決定したのですが、その前日の24日になって「偶発債務」が3500億円ほどあることを「そっと」鴻海に通知していたからです。
・当たり前の話ですが、24日に通知を受けとった鴻海は同日中に詳しい内容の確認を求めたのですが、シャープはお構いなしに25日の臨時取締役会で第三社割当増資などを機関決定しIRしてしまいました。　　つまり先に既成事実化してしまえば、鴻海もどうしてもシャープを傘下に入れたいはずなので、多少の（決して多少ではありませんが）問題があっても何とかなるはずとタカをくくっていたのかもしれませんが、いずれにしても釈然としません。
・またこの3500億円もの「偶発債務」にしても、その一部が米国の太陽光ビジネスで提起される可能性がある訴訟費用等と最初の段階で伝わってきたものの、そこから1カ月近くたっても一向にその全貌がわかりません。
・シャープが先月発表した第3四半期決算短信では営業利益が290億円の赤字、経常利益が528億円の赤字、最終純利益が1083億円の大赤字となったものの、いまだに2016年3月期の通期営業利益予想を100億円の黒字に据え置いたままで（期初は800億円の黒字という冗談のような予想でした）、経常利益と最終純利益は予想すらありません。
・また3月末には（10日後です！）5100億円ほどの銀行借り入れの返済期日が到来するはずですが、全く危機感が伝わってきません。
・最大の疑問はその「偶発債務」の存在を、何で（シャープの）機関決定のわずか1日前になってから鴻海に伝えたのか？ですが、それ以外にもメインバンクのみずほ銀行や三菱東京UFJ銀行は知っていたのか？とか、本来はあるべき有価証券報告書の注記もないため監査法人（あずさ）は知っていたのか？とか、最近まで傘下に入れようとしていた産業革新機構は知っていたのか？とか、そもそもシャープの現経営陣が状況を正確に把握していたのか？など、疑問はいくつも出てきます。
・直感的には、シャープはここまで巨額赤字を垂れ流しながら同時に「粉飾に近い」決算も続けていたような気がします。つまり「偶発債務」としているものの実際には「隠れ債務」「不正会計」がかなり紛れ込んでいる可能性があります。
・あとからあとから追加損失と追加不正会計が飛び出しくる東芝を見ていても、シャープの病巣が表に出ている程度とは思えません。
・鴻海がいつまで主導権を握る契約になっているかが気になりますが、期限を切って（3月末とか）一旦は白紙に戻して、シャープ主導ではない第三者委員会を設置して徹底的に調べるべきと考えます。
・鴻海による救済合意のどさくさに紛れて出てきただけで（だからそのタイミングしかなかった）、今まで全く表に出ていなかった3500億円の「偶発債務」とは、それだけで証券市場に責任ある説明をしなければならないものであるはずで、かなりの確率で会社ぐるみの不正が隠れていると感じるからです。
http://yamikabu.blog136.fc2.com/blog-entry-1682.html

新工場をリースバックする方式が、省内の根回しが固まらないうちに日経新聞のスッパ抜きにより流産したのは、確かに「アレ？」と思った記憶がある。それにしても、迷走もここまで来ると、、シャープ経営陣に「いいかげんにしろ！」と言いたくなる。偶発債務はそれまで鴻海が要求していたのに、よりにもよって調印前日に出してくるとは、よほど「神経が図太い」のか、「やけっぱち」になっているのか、どちらだろうか？
本日付けの日経新聞は、「シャープ支援、鴻海1000億円減額で調整 主要行、融資返済期限延長へ」と伝えた。今月末の返済期限は延長されたとはいえ、鴻海との合意が来期にズレ込むようであれば、今期の決算はどう乗り切るつもりなのだろうか？
偶発債務については、）シャープ側からは「念のため入れたのが殆ど」といったニュアンスの説明があったようだが、撤退した太陽光パネルの材料の高値購入契約に伴う訴訟の噂など、闇株新聞が指摘するように、「実際には「隠れ債務」「不正会計」がかなり紛れ込んでいる可能性」があるからこそ、鴻海も値切ってきたと見るべきだろう。いずれにしても、あと1週間で出てくる答に大いに注目したい。

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