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スマホの暗号化解除問題 [世界情勢]

今日は、スマホの暗号化解除問題 を取上げよう。

先ずは、3月3日付けダイヤモンド・オンライン「「アップル」対「FBI」の問題はプライバシー問題の最終決戦か」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・アップルとFBIの対立が、今後の国防対ユーザーのプライバシーのあり方を決定するような大きな問題にふくれあがっている。 周知の通り、両者の対立は昨年12月、親ISISと見られる容疑者夫婦によって14人が銃殺されたカリフォルニア州サン・バーナディーノでの事件に端を発している。容疑者が警察によって射殺された後に残ったiPhoneのロック解除ができず、FBIがアップルに支援を求めた一件だ。
▽スノーデン事件で高まった国家権力に対するプライバシーの懸念
・アップルは、FBIを支援することは、ユーザー全員のセキュリティーを危険にさらすと拒否し、連邦裁判所からのロック解除命令にも従わない姿勢で、「最高裁判所まで闘う」と決意は硬い。 この対立は、言って見れば2013年に起こったエドワード・スノーデンによる暴露の自然の帰結と言える。NSA(国家安全保障局)が過剰な情報収集を行っていたことが明らかになって以降、アップルやグーグルなどのテクノロジー各社は暗号化を強化してきたのだ。
・スノーデン問題後、テクノロジー企業がNSAが情報にアクセスできる「裏口」を許してきたことが批判された。そのためもあって、テクノロジー企業は、暗号化を強化すると同時に、ユーザーに向かって対政府姿勢をアピールしなければならなくなっているのだ。
・問題のiPhoneは、パスワードの入力に10回失敗すると中のデータが消去されるしくみになっている。そのしくみがなければ、FBIはコンピュータを利用してランダムなパスワードを入力し続け、いずれ正しいパスワードに行き着くのだが、このしくみがある限りそうはいかない。 実は、アップルはiOSの改訂によって、それを解除することが可能なのだが、同社はそうするとFBIがそのキーを他のユーザーのデータを入手するために用いると主張する。それだけでなく、ハッカーからの侵入に対しても脆弱になり、独裁国家や言論の自由を許さない国家などがこれを悪用するとしている。
・これは、サン・バーナディーノ事件を超えて、大きなプライバシー、セキュリティー、そして人権問題として位置づけられているのである。こうしたことを主張するアップルのティム・クックCEOは、ユーザーを代表する正義の味方として突然出現してきたことに世間は驚いているが、これはアップルでなかったとしても、いずれ起こったできごととも言える。
・一方のFBIは、容疑者のiPhoneの中に犯行にいたる経緯を探る重要な情報が埋もれていると主張する。アップルはもう「裏口」を与えないと言い張るが、これは裏口ではなく「表門」で、しかもそんな広大な問題ではなく、「限定された」対象に対する議論だと反論している。
・アップルはユーザーを擁護するテクノロジー企業としての立場をアピールしているが、対するFBIはこの一件を好都合な前例に仕立てて、iPhoneに関する他のケースでも同様のアクセスを獲得しようとしていると言われる。
・アップル賛成派は、FBIが信用のならない存在であると仕立て上げ、またFBI賛成派は、「なぜそこまで拒むのか」と解せない。だが、この一件には政府による情報収集への不信感、複雑なテクノロジー、プライバシー、言論の自由、国防問題などが絡んでおり、これまでにない複雑な様相を呈している。一般人が正確に理解するのは決して簡単ではない。
▽いずれはメーカーも自社製品のセキュリティ解除ができない状態に
・今後、裁判で議論が闘わされることで、絡まった要点が整理されていくだろう。また、クックCEOはテクノロジーやプライバシーの専門家からなる委員会を組織して、この問題の解決策を探るべきだとも提案している。
・そうした中、ニューヨークでは米時間3月1日に、麻薬取引事件に関連して、同じようにiPhoneへのアクセスを支援するよう司法省から命令を受けたケースで、連邦地方裁判所の判事がアップルの異議を認めている。 この事件では、司法省が「全令状法」という1789年制定の法律を根拠とした捜査令状によって、捜査当局はアップルに支援を強制できるとしていた。同法は、サン・バーナディーノ事件でも根拠に使われているものだ。判事は、「21世紀のプライバシーとテクノロジーに関する重要な問題は古い法律の再解釈によってではなく、現代の立法府が定めるべき」とした。
・テクノロジーが生み出した現代の複雑な問題の解決については、今後の議会の動きが待たれるところだ。  そこに期待をかけたい一方、テクノロジー企業は現在さらに暗号化を進め、自分たちすら解読の方法を持たないという方向へ技術を強化している。つまり、政府から圧力をかけられても、支援する手だてもないということだ。すでに新型のiPhoneにはそうした技術が統合されている。政府とテクノロジーの関係は、すでに未知の領域に入っているのだ。
http://diamond.jp/articles/-/87274

次に、3月24日付けGigazine「iPhoneの暗号化をAppleの協力なしで解除する7つの方法」を紹介しよう(本文中のリンクは省略)。
・サンバーナーディーノ銃乱射事件でFBIがAppleに容疑者のiPhoneをアンロックするよう要請している件で、日本の企業サン電子の子会社であるイスラエルのCellebrite(セレブライト)社がiPhoneのアンロックに協力していることから、FBIが予定されていた法廷を延期したことが判明しました。
・ AppleのiPhoneは暗号化技術によって保護されており、パスコードの入力に何度も失敗すると端末がロックされるパスコード・プロテクションがかけられています。そのためパスワード解析方法の1つであるブルートフォースアタック(総当たり攻撃)が使えないことから、FBIは裁判所命令を通じてAppleに暗号化を解除するソフトウェアの作成を要請していました。
・Appleは「世界中のAppleユーザーのセキュリティを脅かす」として裁判所命令に反対していましたが、イスラエルのモバイルデータバックアップ企業であるCellebriteが独自にiPhoneをアンロックできる技術を持っているとしてFBIの捜査に協力しており、CellebriteがiPhoneをアンロックできればAppleの支援がなくとも、容疑者のiPhoneから情報を得られるようになるわけです。FBIはすでにAppleとの法廷審問の延期を申請していることから、一部ではすでにCellebriteがiPhoneのアンロック技術を確立しているとも言われています。
(後半は省略)
http://gigazine.net/news/20160324-fbi-unlock-iphone/

第三に、4月3日付けNewsweek日本版「iPhoneロック解除方法、FBIの情報秘匿は正当化されるか ホワイトハウスのサイバーセキュリティ―担当者は秘密保持は時に正当化されると指摘」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・米連邦捜査局(FBI)は、カリフォルニア州で昨年起きた銃乱射事件の容疑者が使用していたアップルのスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」をどのようにロック解除したかについて、米政府規定に反して情報を留保することが認められるかもしれない。
・規定では、連邦機関が情報技術(IT)セキュリティーに不備を発見した際は、企業がデータ保護の不具合を修正できるよう、詳細を公表することが求められている。ただこの規定は法執行機関には例外を認めており、またいつどのように適用されるべきかは明確に定められていない。
・アップルは、ロック解除方法を共有してほしいと表明している。しかしFBIは、これまで複数の容疑者の暗号化された電話に残されたデータにアクセスできず苛立ちを感じてきたこともあり、カリフォルニア州サンバーナディーノの事件のサイード・ファルーク容疑者の電話のロック解除に成功した方法については公表を控えたいかもしれない。
・審判的な役割を務める可能性が高いのは、連邦機関が発見したコンピューターのセキュリティーの不具合について協議し、公表の是非を決定するホワイトハウス内のグループだ。 専門家によると、このグループが審査を行う対象は明確に規定されていない。また審査が実施されても、FBIがロック解除に利用したアイフォーンの脆弱性の公表を求められることはないと専門家の多くはみている。ロック解除が契約先の技術を用いて行われた場合は、審査の対象外となることもあり得るとの見方もある。
・米司法省の高官は会見で、ファルーク容疑者の端末の解除に使用された方法が他の端末でも有効かどうか、また今回の解除方法が他の法執行機関と共有されるかどうかについては回答を控えた。
▽「極めて重要な情報」の保護
・政府が審査プロセスを見直したのは約2年前。国土安全保障省と情報機関以外に、どの機関が審査に通常関与しているかは明らかにされていない。国家安全保障会議(NSC)から関与の有無についてコメントは得られてない。 同グループで議長を務める、ホワイトハウスのサイバーセキュリティ―担当者、マイケル・ダニエル氏は2014年4月にブログで、秘密保持は時に正当化されると指摘。「脆弱性を明らかにすることは、テロリスト攻撃の阻止につながる極めて重要な情報を収集する機会を失うことになりかねない」と説明した。
・国土安全保障省に勤務した経験を持つ、コンサルティング会社「レッド・ブランチ・コンサルティング」の創業者ポール・ローゼンツバイク氏は、アップルの脆弱性が同グループで審査対象にされなければ「衝撃を受ける」と述べた。ただ、FBIがファルーク容疑者の端末を保管しているとみられ、セキュリティー被害拡大の脅威はほとんどないことから、脆弱性の公表を余儀なくされる可能性は低いとの見方を示した。
・過去に米国家安全保障局(NSA)で法務を担当した弁護士のスチュワート・ベイカー氏は、ロック解除技術がFBIに協力した第三者が所有しているものとされれば、審査プロセスは複雑化する可能性があると述べた。 FBIに協力した企業については、モバイルデータの犯罪捜査(フォレンジック調査)を手掛けるイスラエル企業のセレブライトだと一部専門家は指摘している。同社はコメントを控えている。
・FBIが脆弱性の公表を免れても、アップルはロック解除方法の共有を引き続き要求することは可能かもしれない。 司法省は、薬物捜査に関連してアップルにアイフォーンのロック解除を命じるようニューヨークの裁判所に訴えている。関係筋によると、政府がこの要求を取り下げなければ、アップルはこの訴えを利用してロック解除に用いた技術をFBIに明らかにさせることができるかもしれないという。
・一方、政府の審査がFBIに技術公表を求める結果になると考える専門家もいる。ジョージア工科大学の法学教授、ピーター・スワイア氏は、政府の規定は「幅広く利用されている商業ソフトウエアの防衛技術の重要性を強調」しており、アップルに脆弱性を伝える「揺るぎない」理由が存在するとの見解を示した。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/04/iphone-13.php

ダイヤモンド記事にあるように、『NSAが過剰な情報収集を行っていたことが明らかになって以降、アップルやグーグルなどのテクノロジー各社は暗号化を強化してきたのだ』、らしい。さらに、『テクノロジー企業は現在さらに暗号化を進め、自分たちすら解読の方法を持たないという方向へ技術を強化している。つまり、政府から圧力をかけられても、支援する手だてもないということだ。すでに新型のiPhoneにはそうした技術が統合されている』、ということであれば、ユーザーもパスワードなどを忘れると復旧できないことになるようだ。
その後の情報を盛り込んだGigazineによれば、イスラエルの企業である『Cellebriteが独自にiPhoneをアンロックできる技術を持っているとしてFBIの捜査に協力しており、・・・Appleの支援がなくとも、容疑者のiPhoneから情報を得られるようになる・・・FBIはすでにAppleとの法廷審問の延期を申請』、とは何とも「拍子抜け」した形で決着したようだ。
Newsweek日本版によれば、『アップルは、ロック解除方法を共有してほしいと表明している。しかしFBIは、これまで複数の容疑者の暗号化された電話に残されたデータにアクセスできず苛立ちを感じてきたこともあり、カリフォルニア州サンバーナディーノの事件のサイード・ファルーク容疑者の電話のロック解除に成功した方法については公表を控えたいかもしれない』、には驚かされた。アップルはFBIの依頼を拒否しておきながら、FBIがCellebriteの協力で解読に成功すると、今度はその方法を教えてほしいと要請したらしい。随分、ムシのいい話という印象も受けるが、セキュリティ強化という国家目標からは、当然なのだろう。『規定では、連邦機関が情報技術(IT)セキュリティーに不備を発見した際は、企業がデータ保護の不具合を修正できるよう、詳細を公表することが求められている。ただこの規定は法執行機関には例外を認めており、またいつどのように適用されるべきかは明確に定められていない』ので、アップルの要請は無視される可能性もある。
ただ、日本では、プライバシー保護と公益の関係はどうなっているのだろうか。分かり次第、取上げるつもりである。
タグ:CellebriteがiPhoneをアンロックできればAppleの支援がなくとも、容疑者のiPhoneから情報を得られるようになるわけです FBIはすでにAppleとの法廷審問の延期を申 iPhoneロック解除方法、FBIの情報秘匿は正当化されるか ホワイトハウスのサイバーセキュリティ―担当者は秘密保持は時に正当化されると指摘 米政府規定 Newsweek日本版 規定では、連邦機関が情報技術(IT)セキュリティーに不備を発見した際は、企業がデータ保護の不具合を修正できるよう、詳細を公表することが求められている。ただこの規定は法執行機関には例外を認めており、またいつどのように適用されるべきかは明確に定められていない ・アップルは、ロック解除方法を共有してほしいと表明 しかしFBIは、これまで複数の容疑者の暗号化された電話に残されたデータにアクセスできず苛立ちを感じてきたこともあり、カリフォルニア州サンバーナディーノの事件のサイード・ファルーク容疑者の電話のロック解除に成功した方法については公表を控えたいかもしれない スマホの暗号化解除問題 アップル 「「アップル」対「FBI」の問題はプライバシー問題の最終決戦か FBI スノーデン事件で高まった国家権力に対するプライバシーの懸念 国防対ユーザーのプライバシーのあり方を決定するような大きな問題にふくれあがっている 14人が銃殺されたカリフォルニア州サン・バーナディーノでの事件 親ISISと見られる容疑者夫婦 iPhoneのロック解除ができず、FBIがアップルに支援を求めた一件 テクノロジー企業は、暗号化を強化すると同時に、ユーザーに向かって対政府姿勢をアピールしなければならなくなっているのだ ・アップルは、FBIを支援することは、ユーザー全員のセキュリティーを危険にさらすと拒否し、連邦裁判所からのロック解除命令にも従わない姿勢 テクノロジー企業がNSAが情報にアクセスできる「裏口」を許してきたことが批判 エドワード・スノーデンによる暴露 アップルやグーグルなどのテクノロジー各社は暗号化を強化 ・アップル賛成派は、FBIが信用のならない存在であると仕立て上げ FBIがそのキーを他のユーザーのデータを入手するために用いると主張 ハッカーからの侵入に対しても脆弱になり、独裁国家や言論の自由を許さない国家などがこれを悪用 ティム・クックCEOは、ユーザーを代表する正義の味方として突然出現 21世紀のプライバシーとテクノロジーに関する重要な問題は古い法律の再解釈によってではなく、現代の立法府が定めるべき FBI賛成派は、「なぜそこまで拒むのか」と解せない 連邦地方裁判所の判事がアップルの異議を認めている ニューヨーク イスラエルのCellebrite 政府から圧力をかけられても、支援する手だてもないということだ GIGAZINE テクノロジー企業は現在さらに暗号化を進め、自分たちすら解読の方法を持たないという方向へ技術を強化 サン電子の子会社 iPhoneの暗号化をAppleの協力なしで解除する7つの方法 すでに新型のiPhoneにはそうした技術が統合 iPhoneのアンロックに協力 ダイヤモンド・オンライン
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