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企業不祥事(その3)空売り投資家「グラウカスVS伊藤忠 2 [企業経営]

企業不祥事については、7月30日に取上げたが、今日は、(その3)空売り投資家「グラウカスVS伊藤忠 2 である。

先ずは、闇株新聞が8月2日に掲載した「またまた厄介な海外投資ファンドの上陸」を紹介しよう。
・本日(8月1日)発信したメルマガ「闇株新聞 プレミアム」でも詳しく取り上げた内容ですが、論点はかなり変えてあります。 空売り専門ファンドなのかリサーチ会社なのか紛らわしい社名ですが、日本に進出したばかりのグラウカス・リサーチ・グループ(以下「グラウカス」)が、伊藤忠を栄えある「空売り推奨の第1号」に選びました。
・グラウカス(Glaucus)とは、強烈な毒のある生物でも食べてしまう海洋生物にちなんだ名前ですが、2011年創業のカリフォルニアを本拠地とする投資ファンドです。粉飾決算など不正を抱えていそうな企業を探し出し、自己資金で空売りポジションを積み上げてから、その企業を徹底的に叩くレポートを配信して市場の感心を高めつつ「不正発覚」を待つ投資スタイルです。
・推奨は当然に売り推奨(空売り推奨)だけで、しかも業績悪化などによる売り推奨ではなく、あくまでも「不正発覚」による株価の大幅下落を待つスタイルのようです。 レポートは誰でも無料で読めるためリサーチ会社とは言えません。今まで米国や東南アジアで22社の投資実績(空売り実績)があり、そのうち5社の経営者が証券詐欺などで告発されているそうです。
・さてグラウカスが7月27日に配信したレポートでは、伊藤忠が2015年3月期決算でコロンビアの炭鉱の持ち分出資を一般投資に区分変更して1531億円の減損を免れたことを最も問題視しています。 そして伊藤忠の2015年3月期の純利益が3006億円であったため、その50%以上の純利益が「不正計上」だった可能性があるとして、伊藤忠の目標株価をレポート発信直前の株価(7月26日の1262円)から50%減の631円として「強い売り推奨」としています。
・それ以外にも2015年に6000億円出資したCITICの持ち分利益を計上していることや、出資先である中国食品大手・頂新からの600億円の特別利益なども問題視しています。 正直な印象は、比較的どこにでもある決算処理の考え方の違いでとくに大騒ぎするほどのものではなく、ましてや将来的にも「不正決算」と認識される可能性があるとも思えません。
・まあグラウカスのビジネスモデルとしては、何が何でも「不正」に結び付ける必要があるのでしょうが、2015年3月期の最終利益が実際に半分だった可能性があるとしても目標株価が現在の半分というのも単純すぎます。 しかし日本の株式市場は何でも「舶来もの」は尊重する傾向が強いため、伊藤忠の株価はレポート発表前日(7月26日)の1262円から、発表当日(7月27日)には一時1135円と前日比10%も下落し、本日(8月1日)終値も1170円と発表前日比7.2%安となっています。
・また伊藤忠もレポート発表当日に反論IRを出していますが、監査法人(トーマツ)から適正意見を得ているとか、持ち分投資の一般投資への区分変更は問題がないなどと繰り返すだけで、最も重要な投資対象の資産性・健全性には全く言及できていません。 ここはグラウカスの栄えある「空売り推奨の第1号」となった伊藤忠としては、所詮は会計上の考え方の問題なので正々堂々と反論しておく必要があります。そうでないと第2、第3の伊藤忠がすぐに出てきて、いつの間にかグラウカスが「正義の味方」のように称賛されるようになり、空売りで大儲けされてしまうことになります。
・それではグラウカスの、最初に自己資金で空売りポジションを積み上げてから、その企業を徹底的に叩くレポートを配信する手法は問題がないのでしょうか? これは99%クロです。明らかな風説の流布に該当します。 仮に本誌(闇株新聞)がある銘柄(例えばオリンパス)を空売りしておき、すぐに本誌にその銘柄の悪いニュース(例えば巨額損失隠しの詳細)を掲載すれば、すぐに証券取引等監視委員会がやってきて本誌(闇株新聞)が刑事事件の対象とされてしまいます。
・グラウカスのビジネスモデルは、レポートが正確であるかどうかを別問題とすれば、これと全く同じことですが、「舶来もの」を尊重するのは当局も同じなので、ますます増長させてしまうことになりかねません。 いろいろな意味で大変に注目しているグラウカスVS伊藤忠の対決です。
http://yamikabu.blog136.fc2.com/blog-entry-1792.html

次に、闇株新聞が8月4日付けで掲載した「またまた厄介な海外ファンドの上陸 その2」を紹介しよう。
・8月2日付けで「同題記事」を書きましたが、まだまだ書き尽くせていません。またコメントもいただいていますので反映させながら続編を書くことにします。
・「東芝とか日興(コーディアル)のように、不正を働いた企業の経営者が裁かれない現状ではグラウカスは必要悪ではないか?」とのコメントをいただいていますので、これについてです。 調査レポートに限らず報道機関から経済犯罪が発覚することは日本ではありません。調査レポートは証券会社の営業推進のために作成されるもので、企業にとって都合の悪いことや不正の可能性などを取り上げることはほとんどなく、また日本の経済事件とは事件化寸前に当局からの情報提供(リーク)があって初めて記事になるため、報道機関が独自調査で不正を追及することもありません。
・唯一の例外がオリンパス事件ですが、これはウッドフォードが解任された直後にFT(Financial Times)に持ち込んだネタだけで書かれた「大変に不正確」な記事が、外国の新聞社だったというだけの理由で、またいろいろな方面の思惑が重なりオリンパス事件の「すべて」と認識されて現在に至る稀有なケースです。 この辺は(大変に遅れていますが)執筆中のオリンパス事件・新刊本で、新事実も山盛りにして背景を明らかにしています。
・じゃあグラウカスが外国の調査会社なので(正確には投資会社ですが)、そのレポートをきっかけに当局が動き、不正が暴かれることもあるのではないか?となりますが、確かに怪しげなものも含めて日本製のレポートよりは当局は重要視するはずです。やはり外国製(舶来もの)は正しいとの認識が当局にもあるようだからです。
・それでは事件発覚前の東芝について、グラウカスがレポートしていたら今ごろは刑事事件化していたのか?というと、そんなことはありません。今までさんざん書いてきたように事件化するかどうかは「全く次元の違うところで決まっている」はずだからです。 ただグラウカスも、伊藤忠のレポートの冒頭に「東芝は不正経理を認めさせられ、株価が70%下落した」と紹介しているので、必ずしも刑事事件化することが最終目的ではなく、有価証券報告書の訂正に追い込まれるとか課徴金を課せられて株価が下落すればよいと考えているはずです。
・しかし実際には、その会社が認めず何も起こらなくても、とにかく市場を疑心暗鬼にして株価さえ下落させれば自己資金で空売りしたポジションが利益となるため、目的達成と考えている可能性もあります。 そうなると明確な風説の流布となります。日本で(例えば本誌が)同じことをやれば(本誌は絶対に推測では書きませんが)すぐに本誌が刑事事件の対象にされてしまいます。
・しかしグラウカスを含む海外の会社が同じことをやっても(目の前でやっていますが)、全く問題視されないはずです。中国人グループが実態の怪しい会社を堂々と東証に上場させていても、外国ファンドが増資前に堂々と空売りしても、世界中が規制しているHFT(超高速取引業者)が堂々と跋扈していても、全く問題視されていないからです。
・8月2日の記事の最後に、グラウカスVS伊藤忠の成り行きに大変注目していると書いたのですが、そもそもグラウカスの伊藤忠に関するレポートは経理処理の考え方の違いを主張しているものでしかないため、そこは伊藤忠が正々堂々と反論するか、全く無視してしまえばよかったはずです。
・しかし伊藤忠も監査法人の承認を得ているなど「通り一遍」の反論IRを出しただけで、全く中途半端で「やっぱり疚しい(やましい)のかなあ?」と市場で感じられているような気がします。本日(8月3日)の終値は1141円で、レポート発表前日(26日)の1262円から9.6%も下落しています。
・ここでグラウカスのレポートで株価が下落したという「実績」ができてしてしまうと、刑事事件や有価証券報告書訂正や課徴金などとは「全く」関係がなくても、その次はグラウカスがレポートすると必ず株価が下がるとのイメージができてしまい、その次はレポートの質などお構いなしにグラウカスの存在感が実態よりはるかに大きくなり、その結果グラウカスがますます空売りで収益を上げる結果になってしまいます。
・日本の株式市場では、サードポイントをアクティビストなどと褒めたたえて追随して(サードポイントの)収益に貢献していましたが、やっていることは昨年また周辺が強制捜査を受けた村上ファンドと全く同じです。  グラウカスについても褒めたたえて追随して(グラウカスの)評判と収益に貢献してはならないと「強く」感じますが、これは企業の不正を放置してよいという意味とは「全く」違います。
・グラウカスが日本の株式市場の浄化に貢献するために上陸したわけではなく、そこのところを混同してはなりません。 まだまだ書き足りないので続きを書くことになりそうです。でも明日は、昨日書いたGPIFの続編です。
http://yamikabu.blog136.fc2.com/blog-entry-1794.html

第三に、8月3日付け日経ビジネスオンライン「伊藤忠CFO、「不正会計」指摘に怒りの大反論 空売りファンド「法的措置などありえない」」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・8月2日、東京証券取引所の兜クラブ。2016年度第1四半期の決算発表をした伊藤忠商事の鉢村剛CFO(最高財務責任者)は、米国の空売りファンド、グラウカス・リサーチ・グループが「不正会計」と指摘していた問題について、大反論を展開した。
・問題のレポートをグラウカスが公表したのは7月27日。英語版で42ページ、日本語版では44ページにも及ぶもので、冒頭では東芝の不正会計問題を引合いに出し、「弊社の見解では、伊藤忠商事は財務報告の訂正と不正会計の存在を認めることを命じられる次の日本企業となる可能性が高い」とセンセーショナルに指摘した。伊藤忠の株価は同日、前日比で一時10%も下落する事態となった。
・これに対し伊藤忠は、「当社の会計処理に関する一部報道について」と題するA4で1枚の文書を、7月27日に2通、8月1日に1通開示。グラウカスに対して、法的措置も辞さない構えを見せていた。日本取引所グループの清田瞭グループCEO(最高経営責任者)は7月28日、「(伊藤忠株を売り出した後にリポートを出したのなら)倫理的に若干、疑問がある」(日本経済新聞より)とコメントしていた。
・グラウカスは2011年に空売りファンドとして設立。これまでに22件の投資で特定の企業をやり玉に挙げ、粉飾決算や不適切な資金の流用などを指摘するレポートを発表してきた。そのうち5件では、経営者が証券詐欺罪で起訴されて1社は上場廃止になり、それ以外の企業についても株価は適正な水準に調整されたとしている。伊藤忠は、同社の日本市場参入の最初の“標的”となった。
▽米ファンド「伊藤忠の対応はアベノミクスの政策に反する」
・グラウカスのレポートに対する伊藤忠の反応や、日本証券取引所グループの清田CEOのコメントについて、グラウカスでリサーチ・ディレクターを務めるソーレン・アンダール氏は8月2日早朝、日経ビジネスとの電話インタビューで次のように話した。 「コーポレート・ガバナンスや透明性にコミットしているアベノミクスは、日本企業にこれまでより高い基準で会計、透明性、ガバナンスに取り組むことを求めている。しかし、そうした政策が有効に機能するには、市場は空売りファンドも含めた幅広い投資家を必要としている」 「これまで、米国や中国、香港などで投資活動をしてきたが、(伊藤忠が匂わせているような)法的手段に出られたことなどない。法的手段に訴える前に、まずは投資家に対して説明責任を果たすべきだろう」 「伊藤忠はこれまでのところ、我々が指摘した3つのポイントについて、意味のある詳細な説明をしていない。それは、アベノミクスが進めるコーポレート・ガバナンスの政策に反している。伊藤忠は著名な上場企業であるにもかかわらず、このような対応は説明責任と透明性の著しい欠如を示している。(伊藤忠は第1四半期の業績を公表するが、)我々がレポートで指摘したポイントについて、意味のある反応をするべきだ」 グラウカスのアンダール氏は、安倍晋三政権が進めてきたコーポレート・ガバナンス強化の流れを巧みに引き合いに出しながら、自らのレポートの正当性を強調した。
・一方、伊藤忠の決算会見では、鉢村CFOが第1四半期の業績説明に続いて同レポートへの反論を展開。時折、怒りを露わにしながら、グラウカスの主張を真っ向から否定した。
▽「空売りファンドと同じ土俵には乗らない」
・伊藤忠の鉢村CFOは次のように主張する。 グラウカスのレポートには、自分たちは空売りファンドで、伊藤忠の株価が下がることで相当の利益を得ることができると明確に書かれている。しかも、ディスクレーマー(免責事項)として、これは自分たちの特殊な見解であって、本件の内容については責任を負えないと明記。レポート内容に責任を持たない特殊なファンドが、伊藤忠に悪影響を及ぼすであろうという内容を発表しつつ、その内容については免責事項があるので、(投資家は)自分たちで判断してくれ、と言う」 「レポートが指摘する事象について、グラウカスは1つ1つ意図をもってピックアップし、本来とは全く違う結論に導いている。ようするに、伊藤忠は不正会計をしているから、他社のように罰則を食らう可能性がある。なおかつ株価は今の価値の半分になるであろうと指摘している」 「当初、レポートを読み終わった時、細かく免責事項を見ていなかったので、これは我々に対する名誉棄損にもなるし、事実に反することを言うのであれば、株式操作になるのではないかと思った。しかし、免責事項を読むと、責任を取らないと書いてある」 
・「こういうファンドに対して、監査の適正意見を取っている我々が、どのような対応を取るべきか悩んだ。適正監査を受けた内容を決算発表の段階で細かく説明しているので、今さら何をどう説明するのか。同じ土俵で説明することが、必ずしもいいことではないと考えた」 「騒げば騒ぐほど、株価は下がる。それは、彼らが日本の株式市場に入ってくる中で、彼らのネームバリューを上げることにもなる。そういうことに我々がのるべきなのか、疑問があった」 「我々が心配するのは、一般株主や中長期に我々の価値が上がることを信じている株主が、狼狽してマーケットが混乱すること。それは本意ではないので、若干のポイントを申し上げておきたいと思う」 
・反論①:資産の公正価値評価をし、監査法人から適正意見を得ている  【グラウカスの指摘①】  伊藤忠は、コロンビアの炭鉱に対する出資持分の価値が著しく下落していたにもかかわらず、不適切な区分変更(注:持分法投資から一般投資へ)によって、1531億円相当の減損損失の認識を意図的に回避し、2015年3月期の当期純利益を過大報告した 
・「まず、3点のうちの1つ目。コロンビアの石炭事業についてですが、彼らは(米ドラモンドとの合弁会社が)持分法適用会社のまま過去に減損処理をしておくべきだったという理屈で、いろんな数字をピックアップしている。伊藤忠は2011年6月に投資をした段階から、100%子会社の伊藤忠コールアメリカという会社を経由して、合弁会社に20%出資している。毎年度末に伊藤忠コールアメリカは持っている資産について公正価値評価をしており、その中に合弁会社の資産も含まれている。その都度、減損する必要かあるかどうかをテストしてきた」
・「連結決算の監査法人はトーマツだが、伊藤忠コールアメリカはアーンスト・アンド・ヤング(EY)。なおかつ、資産評価は同じ監査法人では好ましくないので、KPMGに依頼している。KPMGが資産評価し、EYが連結への利益の取り込みを認め、最終的に我々がその評価を正しいとして、トーマツの数字を使って決算をしている。持分法だった時でも減損の必要性はないという意見に基づき、持分法利益の取り込みをしてきている」
▽資産評価のやり方の不備や事実誤認も
・「また、一般投資化の是非については、少し分かりにくかったのかもしれないが、次の通り。資源開発の投資をする時に最も大事なのは、(パートナーの資源会社から)キャッシュコール(資金拠出の要請)があったら、それに応えることだ。ドラモンドとの合弁会社への投資自体が正しかったとは思っていない。価格が高い時に投資をして、(価格が下がっても)いずれ回復すると考えていた。しかし、これ以上、エクスポージャー(マーケットの変動にさらされる資産の割合)を増やすことはリスクだと考えて、キャッシュコールがあった時に応えなかった。その結果、ドラモンドが必要な資金を支払い、伊藤忠の権利は希薄化した」 「20%の持ち分は伊藤忠が持ち続けたが、資金は80%を保有するドラモンドが出した。その結果、合弁会社の表面上の出資比率は80対20で変わらないが、実質的にドラモンドは80%強の権利を持つようになって、我々の持ち分は20%以下になった。その結果、我々が権利を失ったというのは明白だと言うことで、一般投資化をした」  「1500億円を超える資産の減損とも書いているが、資産評価の手法には様々なものがある。彼らが使っている売上高マルチプルという指標は、売上総利益率がだいたい業界で一定のような場合には使用されることもあるが、資源事業では表面上の売上高では利益は決まらなくて、採掘条件によってオペレーションコストがものすごく違ってくる。キャッシュコールがどうなるかもわからない、将来の価格動向もよく分からないという中で、資産評価にはディスカウント・キャッシュ・フローという指標を使うのが一般的。そのため、売上高マルチプルだけで見ているのは適切ではない」
・「事実の誤認もある。レポートで引用している、合弁会社や伊藤忠コールアメリカの幹部の肩書や住所などでミスも見受けられる。こうしたことを踏まえれば、彼らのコロンビアの石炭事業についての指摘は、ちょっとな、と首をかしげる」
・反論②CITICへの投資、連結が条件  【グラウカスの指摘②】 伊藤忠がCITIC(中国最大の国営企業・中信集団)を持分法適用関連会社とし、その利益を連結会計に取り込むことは認められるべきではないと考えている。CITICは中国政府によって運営され、議決権の過半を保有されている。つまり、伊藤忠がCITICの戦略、運営、方針決定に何らかの重要な影響を及ぼせる可能性はきわめて低い。CITICを連結会計から除外することは、伊藤忠の純利益見通しが20%減少することを意味する。
・「CITICについての彼らの議論は、極論だ。国営企業と一緒に仕事をするにあたって、持分投資が一切認められないのかと言う議論に等しい。単なる提携以上に踏み込んだパートナーとして仕事をしている。中国政府が国営企業の民営化・国際化を図るにあたって、彼らが78%弱持っていたものを民間に移していこうという流れの中で、日本の金融機関を含めた海外投資家を募る動きをとったのが2014年頃。その頃に、我々も1%の株式をCP(伊藤忠が提携しているタイの財閥チャロン・ポカパン)と一緒に投資している」 「我々としては、より深い関係となって影響力を行使していくためには何ができるのかを議論していた中で、伊藤忠が中国の民営化に貢献できなら、10%くらい持ってはどうかと言う話がCITIC側からもあった。しかし、重大な影響力を行使するためには、CPと一緒になって最低20%の株式、つまり、CPと一緒に議決権を行使できるだけの持ち分を持つ必要があると考えた。CITICへの投資は、20%にこだわって交渉した結果だ」 「20%という株式を持つと、強制的に持分法の対象になる。持分法を適用しないなら、そうしない相当な理由がなければ認められない。我々は大きなビジネスをしようと将来をかけてやっているわけで、連結ができなくて6000億円もの投資をすることなどありえない」 「しかもCITICは非上場の中国政府が管轄している特殊な会社ではなく、香港で上場している会社だ。どういう理屈で彼らが指摘しているのか、理解できない」
・反論③利益を出すために持分法を外したとの指摘はひどすぎる 【グラウカスの指摘③】 中国食品・流通大手の頂新に対する非支配株主持分の区分変更に伴い認識された600億円の特別利益について、この利益が発生したタイミングと投資先の収益性低下に照らして、強い疑念を抱いている。2015年3月期の期末わずか4週間前になって、伊藤忠が奇跡的に600億円の特別利益を発見したことは、期初計画を600億円未達となることが見込まれた時期であったことを考え合わせると弊社には信じがたいことに思われる。
・「これがちょっと一番ひどいと思うが、600億円の利益を埋めるために、数週間の間に持分法を外して益出しをしたという指摘は、極めてよろしくない。というのは、伊藤忠の経営方針は、アジア・中国を中心として生活消費関係を伸ばしていくこと。その中で、我々が中国でビジネスを広げていくために最初にいいパートナーだと考えたのが頂新だった」 「頂新とは2009年に包括的な提携をしようということで、株式を持った。その中で、我々の取引先であるカゴメやカルビーなどを紹介しながら、中国でビジネスを展開していった。ただ、残念ながら、頂新のビジネスに我々がトレードで関与できなかったり、彼らのビジネスが想定していたほど大きく進捗しなかったりして、この先どうやって中国を攻めていくかが、我々の大きな経営課題となった」 「その中で、2014年7月にCPグループとの業務提携を発表した。この提携は食品分野が中心で、頂新と競合する。この問題を解消しない限り、CPとの提携を進めることができない。つまり、頂新を持分法から外さない限り、CPともCITICともビジネスを大きく伸ばしていくことができない。そのため、社内ではずいぶん早い段階から、頂新を連結から外すことを前提に議論を進めてきた」 「頂新に出資した時もそうだが、上場企業を傘下に持つ頂新だから、その価値も常にKPMGに正しく評価をしてもらっている。頂新との関係解消は、CP・CITICとの提携の話の流れの中で出てきているので、数週間やそこらでできる話ではない」
・「長々と申し上げたが、これくらいやらないと分かっていただけないので。これをいちいち、皆様方に説明するのかと。既に我々は決算公表もしているし、監査法人からも適正意見をもらっている。アナリストも、すべて知っていた内容だ」 
・「ただ、グラウカスは、『違う見方ができる』と言っている。そう言っている以上、議論することはできないでしょう。同じ事実でも、違う組み合わせ方で違う結論を導き出すことができる。しかも、その結論については、責任を取らないと言っているんですから。責任を取らない結論をベースに、我々の株価が下がることにポジションを張って、このレポートを出している。それで株価が下がったことで、彼らは利益が出ている」
・「こういう対象に対して、どういう対応をすべきなのか。日本にとっても初めてのケースだ。対応を間違えば、日本のマーケットへの影響は極めて大きい。我々が事実に反すると思う指摘もあるし、日本取引所グループのCEOもおっしゃっていただいていますが、そもそも、ポジションを持ってからレポートを出すという倫理観はどうなっているのか。こうした点を考えて、対応を考えていかなければならない」
・「法的対応も選択肢の1つだが、皆様の意見を参考にして決めていきたい。少なくとも、私どもには一点の曇りもない。こういう対応を許していいのかと言うのは、私どものだけの問題なのか、証券市場全体の問題なのか、日本全体の問題なのかという問題意識を、僕は持っている」
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/080200404/?P=1

第四に、8月8日付け東洋経済オンライン「伊藤忠商事vs.空売りファンド、緊迫する攻防 浮かび上がった商社決算の不透明とは?」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・企業の不正会計を調査し、「空(カラ)売り」を仕掛けたうえでリポートを公開する米空売りファンド、グラウカス・リサーチ・グループが日本に初上陸。伊藤忠商事を標的にし、揺さぶっている。 同グループは7月27日、東芝の不適切会計と比較する強い論調で、「伊藤忠が過年度決算で利益の水増しを行っている」とする調査リポートを公表。目標株価を、前日終値の半値である631円に据え、「強い売り」を推奨した。当日の株価は一時約10%下落し、1135円と年初来安値を更新した。
・リポートで訴える不正会計のポイントは大きく3点だ。一つ目は2015年3月期、コロンビア石炭事業で1531億円相当(同社試算)の減損認識をせず、持ち分法適用から除外して損失を切り離した、という指摘である。 二つ目は、2016年3月期に伊藤忠がタイ財閥のCPグループと共同で1.2兆円を投じたCITICは中国の国営企業であり、伊藤忠には経営に対する重要な影響力がなく連結決算に取り込むべきではないという見解。そして三つ目は、2015年3月期末に600億円の再評価益を計上した、台湾の頂新ホールディングス(HD)で会計処理のタイミングに対する疑問だ。
▽日本取引所は「倫理的に疑問も」と牽制
・これらの指摘について伊藤忠は「過去に投資家に説明をしてきたとおりで当社の見解とまったく異なる」(鉢村剛CFO)と全面的に反論。双方で見方が対立する。
・グラウカスの社名の由来はアオミノウミウシ。猛毒を持つカツオノエボシ(クラゲの一種)を食べることになぞらえ、2011年の設立以来、22社に対し実績を積み上げてきた。今回、日本人の調査員を新たに雇って、日本市場に進出したというわけである。 最大の特徴は、「弊社は空売りポジションを保有しており、株価が下落すれば、相当の利益が実現する立場にあります」と、明記したうえで調査リポートを公開すること。日本では異例だが、海外ではこうした空売りを専門とする調査会社が株式市場を荒らすことは、珍しくない。
・その存在が日本市場でどこまで許容されるかは、日本の規制当局の対応にもかかってくるだろう。日本取引所グループの清田瞭CEOは7月28日の記者会見でグラウカスの手法に向けて、「倫理的に疑問を感じることがある。自主規制法人などで調べることはできる」と牽制した。ちなみに金融商品取引法は「風説の流布」を禁じている。
・が、空売りを仕掛けるグラウカスも、したたかだ。リサーチ部門のディレクターを務めるソーレン・アンダール氏は本誌の取材に、「弊社のリポートには公開情報にのみ基づいて行われた包括的な分析を記載している」と、あくまでも“見解”を提示した、と強調している。
・これに対して伊藤忠は、グラウカスが追加で7月28日に求めた第三者委員会の設立に関し、8月2日の決算会見で「その必要はない」と否定。3項目それぞれに反論、「われわれの対応には一点の曇りもない」と過年度の会計処理が適切だったと強調した。同時に、「同じ土俵で話をすると、グラウカスのネームバリューを上げることにつながる」(鉢村CFO)と、どこまで説明に踏み込むべきか苦慮する姿勢ものぞかせる。
・日本独特の業態である総合商社は、ショートセラー(空売り屋)にとっては、格好の標的なのかもしれない  実は商社が標的になったのはこれが初めてでない。2015年12月、国内の調査会社ウェルインベストメンツリサーチが、丸紅に対し「巨額の減損リスク」と題したリポートを公表。特定案件の減損処理を「意図的に遅延させた疑いがある」と指摘した。発起人である弁護士の荒井裕樹氏は「(自分たちは)対象銘柄について特定のポジションを直接保有してはいない。リポートを購入した顧客が持っている可能性は当然ある」と語る。
▽連結の適用範囲は”微妙な”解釈
・今回のケースでは、連結の適用範囲など個別案件の微妙な解釈を指摘しており、複数の会計専門家は「伊藤忠の事業に精通した者が一つひとつの案件にヒアリングしないとコメントは難しい」と見通す。総合商社は300社から多くて1200社以上の連結対象企業を抱え、収益がキャッシュの流れと一致しない“バーチャル”な会計処理を多く行っている。
・伊藤忠が指摘された投資区分の変更は、他商社にとってもひとごとではない。「15~20%出資する企業への持ち分法適用の是非は社内でよく議論になる。各社、多かれ少なかれ会計のマジックはあり、まっとうな処理と説明するのは容易でない」(商社関係者)。 また、総合商社が少数出資する資源権益の減損判定も、前提となる将来の商品市況の長期見通し次第で大きく変わる。英ウッドマッケンジーなど複数の調査会社の予測をベースにするが、強気か弱気か、どの見通しを組み立てるかには微妙な裁量がある。明らかな説明の矛盾がないかぎり、監査法人もその幅を容認するのが実態だ。
・あるクレジットアナリストは伊藤忠の決算説明会で「『減損を前倒しで処理するからどんどん指摘してほしい』と、機関投資家に“リップサービス”するなど、とらえ方によっては誤解されるすきもあった」と指摘する。  解釈の余地が広がる、総合商社の複雑で不透明な決算構造。これこそが空売りファンドにつけ入られた最大の問題点なのかもしれない。
http://toyokeizai.net/articles/-/130580

闇株新聞が指摘するように、『明らかな風説の流布に該当』、するが、『「グラウカスを含む海外の会社が同じことをやっても(目の前でやっていますが)、全く問題視されないはずです。中国人グループが実態の怪しい会社を堂々と東証に上場させていても、外国ファンドが増資前に堂々と空売りしても、世界中が規制しているHFT(超高速取引業者)が堂々と跋扈していても、全く問題視されていないからです』、という外国人の弱い当局の体質は本当に困った話だ。
伊藤忠CFOの反論は、それぞれなるほどと納得させる内容だ。グラウカスへの対応は、「同じ土俵には乗らない」ようにする必要はあるにしても、もっと公式な形での反論があってもいいのではなかろうか。さもないと、闇株新聞が指摘するように第二、第三の犠牲が出てくる恐れもあろう。
東洋経済オンラインが指摘するように、総合商社の決算は、裁量の余地が大きく、空売りファンドにとっては、「突っ込みどころ満載」なのかも知れない。国内の調査会社ウェルインベストメンツリサーチにやり玉に挙げられた丸紅の株価は、攻撃前の700円台が、攻撃後は500円台、その後600円台に戻したが、再び500円割れと低迷している。一方、伊藤忠の株価は1260円から、1150円程度まで下落したが、現在は1200円超への戻している。当面、当局の動きも含め目が離せないようだ。
タグ:企業不祥事 (その3)空売り投資家「グラウカスVS伊藤忠 2 闇株新聞 またまた厄介な海外投資ファンドの上陸 グラウカス・リサーチ・グループ 伊藤忠 空売り推奨の第1号 自己資金で空売りポジションを積み上げてから、その企業を徹底的に叩くレポートを配信して市場の感心を高めつつ「不正発覚」を待つ投資スタイル あくまでも「不正発覚」による株価の大幅下落を待つスタイル コロンビアの炭鉱の持ち分出資を一般投資に区分変更して1531億円の減損を免れたことを最も問題視 純利益が3006億円であったため、その50%以上の純利益が「不正計上」だった可能性があるとし 株価(7月26日の1262円)から50%減の631円と CITICの持ち分利益を計上 頂新からの600億円の特別利益なども問題視 比較的どこにでもある決算処理の考え方の違いでとくに大騒ぎするほどのものではなく、ましてや将来的にも「不正決算」と認識される可能性があるとも思えません 日本の株式市場は何でも「舶来もの」は尊重する傾向が強いため 正々堂々と反論しておく必要があります。そうでないと第2、第3の伊藤忠がすぐに出てきて、いつの間にかグラウカスが「正義の味方」のように称賛されるようになり、空売りで大儲けされてしまうことになります 自己資金で空売りポジションを積み上げてから、その企業を徹底的に叩くレポートを配信する手法 明らかな風説の流布に該当 、「舶来もの」を尊重するのは当局も同じなので、ますます増長させてしまうことになりかねません またまた厄介な海外ファンドの上陸 その2 実際には、その会社が認めず何も起こらなくても、とにかく市場を疑心暗鬼にして株価さえ下落させれば自己資金で空売りしたポジションが利益となるため、目的達成と考えている可能性もあります 海外の会社が同じことをやっても(目の前でやっていますが)、全く問題視されないはずです。中国人グループが実態の怪しい会社を堂々と東証に上場させていても、外国ファンドが増資前に堂々と空売りしても、世界中が規制しているHFT(超高速取引業者)が堂々と跋扈していても、全く問題視されていないからです 日経ビジネスオンライン 不正会計」指摘に怒りの大反論 空売りファンド「法的措置などありえない」 伊藤忠商事 鉢村剛CFO 大反論を展開 空売りファンドと同じ土俵には乗らない 騒げば騒ぐほど、株価は下がる。それは、彼らが日本の株式市場に入ってくる中で、彼らのネームバリューを上げることにもなる。そういうことに我々がのるべきなのか、疑問があった 資産の公正価値評価をし、監査法人から適正意見 コロンビアの石炭事業 我々の持ち分は20%以下になった。その結果、我々が権利を失ったというのは明白だと言うことで、一般投資化 CITICへの投資、連結が条件 利益を出すために持分法を外したとの指摘はひどすぎる ポジションを持ってからレポートを出すという倫理観はどうなっているのか 東洋経済オンライン 伊藤忠商事vs.空売りファンド、緊迫する攻防 浮かび上がった商社決算の不透明とは?」 日本取引所は「倫理的に疑問も」と牽制 、「弊社は空売りポジションを保有しており、株価が下落すれば、相当の利益が実現する立場にあります」と、明記したうえで調査リポートを公開 あくまでも“見解”を提示した、と強調 国内の調査会社ウェルインベストメンツリサーチ 丸紅に対し「巨額の減損リスク」と題したリポートを公表 総合商社は300社から多くて1200社以上の連結対象企業 収益がキャッシュの流れと一致しない“バーチャル”な会計処理を多く行っている 強気か弱気か、どの見通しを組み立てるかには微妙な裁量
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