フィリピン(ドゥテルテ訪中の意味、ドゥテルテの実像、中国が破る!?ドゥテルテ氏との“約束”) [世界情勢]
今日は、フィリピン(ドゥテルテ訪中の意味、ドゥテルテの実像、中国が破る!?ドゥテルテ氏との“約束”) を取上げよう。
先ずは、中国に詳しいジャーナリストの福島 香織氏が10月26日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「ドゥテルテ訪中は中国の外交的勝利なのか 「大盤振る舞い」の損得勘定は…」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・暴言と麻薬犯罪の容赦ない掃討ぶりで、日本でも注目されているフィリピンのドゥテルテ大統領は25日から日本を訪問。この訪日による日本とフィリピンの外交成果については、この原稿を書いている時点ではわからないのだが、その前に行われたドゥテルテの訪中については、すこし整理してまとめておく必要があるだろう。ドゥテルテ訪中によって、南シナ海情勢は何か変わるのか変わらないのか。
▽「日本より先に」「六中全会前に」
・ドゥテルテは10月18日から4日の日程で北京を訪問、国家主席の習近平はじめ、李克強(首相)、張徳江(全人代常務委員=国会議長に相当)、張高麗(国家副首相)らと会談。CCTVの単独インタビューを受けて、南シナ海の共同開発に意欲的な姿勢を見せたうえに、中国フィリピン経済貿易フォーラムで講演し、演説の最後に「我々は軍事、経済上を含めて米国との関係から離脱すると謹んで宣言する」などとのたまわったものだから、米国国務省が慌てて、真意を説明せよと要請する事態も起きた。フィリピン側は「米国依存から離脱するという意味で、関係を断絶するということではない」と弁解するも、フィリピン金融市場ではペソや株価が一気に下落し、国際社会も動揺している。
・このドゥテルテ訪中が決定したのは、日本訪問の日取りが25日に決まって以降。これは中国が執拗に、日本よりも先に訪中をしてほしいと促した結果である。中国としては日本に訪問して鼻薬をかがされる前に、チャイナマネーでフィリピンをからめとりたいという意向もあるが、それ以上に、六中全会前に、フィリピン外交および南シナ海問題で、政敵に見える形の勝ち星を挙げたい、という意図が見えた。
・24日から始まる六中全会とは党中央委員会第六回全体会議、すなわち共産党にとって年に一度の最重要政治会議であり、ここで来年の党大会に向けた人事その他の布石が行われる。習近平としては、ここで68歳の定年制の枠を外すなど、長期独裁体制への方向性を打ち出したいところなのだろうが、党内のアンチ習近平勢力は意外に根強く、中国に圧倒的不利なハーグ裁定を許した習近平外交の脇の甘さなどを攻撃している。
・ハーグ裁定が発表されて以降、習近平から強いプレッシャーを受けた外相・王毅の怒涛の対ASEAN外交の結果、その後のASEAN関連の国際会議で、裁定を理由に中国を表立って非難する声は、公式の声明、コミュニケに盛り込まれることはなかった。中国としてはスカボロー礁実効支配という目標遂行に利する、一方の当事国のフィリピンの“裁定棚上げ”あるいは、米国などの介入を完全に遮断する“共同開発”の言質をとれば、それ以前の失点を上回る外交勝利を収めたことになる。共同声明にそれが含まれるか否か、おそらくは今回のドゥテルテ大統領訪中のハイライトであった。
▽135億ドルの大盤振る舞い
・さて結果からいうと、中国は期待したほどの成果は得られなかった、ようである。 共同声明の南シナ海関連の部分を抜き出して、見てみよう。 「双方は南シナ海の問題について見解を交換した。双方は争議問題は中比関係のすべてではないことを改めて確認。双方は適切な方法によって南シナ海争議を処理することが重要であるということで意見を交換した。双方は平和と安定を維持、促進し、南シナ海の航行の自由と飛行の自由の重要性について改めて確認し、国連憲章と1982年の国連海洋法条約が公認する国際法の原則に従い、武力や武力に相当する脅威を訴えることなく、直接に関係する主権国同士での友好的交渉、協議によって、領土および管轄権の争議を平和的に解決することを改めて確認した」 「双方は2002年の『南シナ海行動宣言』と2016年7月25日のラオス・ビエンチャンで採択された中国‐ASEAN外相会議での宣言を振り返った。双方は宣言が有効的に実施され、協議の上に南シナ海行動規範の早期成立のために共同の努力を願うことを全面的に確認した」 「双方は継続して協議し、互いの信頼を醸成し、南シナ海において自制を保った行動をとり、争いを複雑化させずに、平和と安定への影響を拡大化することを確認した。これに鑑み、その他メカニズムで補いながら、またその他メカニズムの基礎を損なわないように、新たな協議メカニズムを打ち立てることが有益であり、双方は南シナ海について各自直面する問題およびその他関心事について、定期的に協議が持てるだろう。双方はその他協力を展開できる領域を探ることで同意した」
・声明文を読めば、南シナ海問題について、当事者同士が話し合って解決というかねてからの発言以上に踏み込めなかったことがわかるだろう。南シナ海の共同開発についても「その他協力を展開できる領域を探る」という無難な表現で終わった。ハーグ裁定やスカボロー礁の問題に関する具体的な文言も入らなかった。一方、中国側のフィリピンに対する援助は13項目あり、海上警察協力のほか、およそ135億ドルに相当する経済協力という大盤振る舞いをした。フィリピンバナナをはじめフィリピンの果物輸入禁止やフィリピン旅行禁止の制裁を解いたことは、フィリピン経済への大きな贈り物となった。
・こういった状況から、中国党内一部からは、フィリピンに対する“贈り物”に見合った成果を上げられなかったという批判がでている。中国経済が悪化の一途をたどっている中、外国にここまで経済支援をする必要があるのかという世論もネット上などで盛り上がっている。
・声明文には盛り込まれていなかったが、帰国後のドゥテルテの発言から、スカボロー礁周辺で中国漁民の漁を認める方向ですでに話し合いが進められているようでもあり、同時に年内完成を目指していたはずのスカボロー礁の軍事拠点化計画は9月下旬の段階で延期が伝えられている。とすると、中国側の譲歩の方が大きすぎるという意見も、もっともだということになる。 では、習近平が老獪なドゥテルテに翻弄されて、対比外交をミスったということになるのだろうか。
▽「母方の祖父は中国人」
・中国側の真意については、一般に言われているのは、米比離反をまず成功させ、中国サイドに引き込んでから、スカボロー礁の実効支配を確実にすればよいので、ドゥテルテに対米離反を決心させるためにスカボロー礁基地建設延期という譲歩を提示した、という戦略である。中国にとって最大の目標がドゥテルテの米依存離脱宣言であるとしたら、それは成功である。
・中比経済貿易フォーラムの講演でドゥテルテは、次のように言い放っている。 「中国と我々の関係が良くなり、米国は多少焦っている。米国はプーチンを恐れているが、それは彼に自信があるからだ。欧州情勢は微妙で、ギリシャは救いようがなく米国人はアフガンで過ちを犯し、現在医療システムを支える資金の保証もない。… ASEANにおいてカンボジアは中国の真の友人であり、盟友であろう。ラオスもだ、ベトナムもだ。インドネシアは中立だが、フィリピンは非常に中国に傾倒している。…
・米国にはフィリピン人の生活境遇を真に改善する力はない。日本にだってできない。日本は我々に援助してくれるだろうが、それは中国にもできる。日本も鉄道を作ってくれるだろうし、韓国もそうだろうが、しかし、我々はより中国に傾倒していて中国から融資を受けたいのだ。なぜなら、あるとき中国が我々に長期の融資をしてくれて、その後、我々との友誼のために、その融資の返済を帳消しにしてくれたことがあるからだ。日本や韓国では、こんな風にいかない。中国からの資金は充足しているが、私がさらに中国が好きなのは、さらに、あなた方の真心なのだ。…
・中国はこれまで人を侵したことがなく、人を侮蔑したことがない。これが私にとっては重要だ。私の母方の祖父は中国人である。だから中国人の特性をよく知っている。友人として、中国はいつも喜んで人を助け、我々の間の友誼の源流は非常に遠くから流れているのだ。私の個人の経験からも、このことは深く理解している。…
・政治、文化が絶えず揺れ動く時代、米国はすでに負けている。私はロシアに行ってプーチンに会い、フィリピンは中ロのパートナーになると告げるつもりだ。… 我々は軍事、経済上を含めて米国との関係から離脱すると謹んで宣言する。もちろん、もしあなた方が経済上、米国との間に問題があるようであれば、我々があなた方を援助する。あなた方が我々を援助するように」
・リップサービスにしては行き過ぎた中国へのラブコールと米国批判に、講演会ではやんやの拍手が起きた。大統領にここまで言わせたという点で、中国としては、とりあえず、身銭を切った価値があった、という解釈もある。いくら後で、米国との関係を断絶するわけがない、などと言いつくろったところで、フィリピンが米国から中国・ロシアに同盟関係を乗り換えたいと公式に言っているのと同じである。かつて米外交誌・フォーリンアフェアーズ(9月27日 ウェブサイト)の記事で「ドゥテルテの登場がアジア太平洋秩序を変えることになるかもしれない」と強い懸念が示されていたが、その懸念を今更ながらに痛感する。
▽フィリピンを信用しすぎるな
・上海社会科学院国際問題研究所の研究員・李開盛は英フィナンシャルタイムス(中国語版)に対するコメントで、今回の対比ばらまき外交は、「帳尻があっている」と評価している。根拠は、会談中に、フィリピン側に仲裁裁判のテーマを持ち出させず、両者の話し合いで南シナ海の問題を解決すると重ねて言質をとったこと。そして、米国のアジアリバランス戦略に重大な打撃を与えたことを挙げている。 「ドゥテルテはハーグ裁定の棚上げをしただけでなく、米軍との合同パトロールにも参加しないと宣言し、二度と米軍との合同演習も行わないとも宣言した。これは米国の南シナ海戦略を根底からひっくり返す。フィリピンは来年、ASEANの議長国になり、フィリピンと中国の協力関係が与える影響はさらに効果を発揮し、おそらく米国の中国に対するけん制に対し、ASEANがさらに嫌がるようになってくる」
・ただこういう見方に関しては、反対意見もあり、人民大学国際関係学院の時殷弘教授がニューヨークタイムスの取材に次のようなコメントを寄せている。 「中国がドゥテルテを信用することはそれほど簡単ではない」 「フィリピンにワシントンとの親密な関係を放棄させ、カンボジアやラオスのように完全に中国サイドに引き込むことは非現実的だ」
・国際社会をより俯瞰している中国学者の間では、フィリピンを信用しすぎるなという慎重論の方が強く、むしろ一刻も早くスカボロー礁の埋め立てを完成させることの方が重要という意見も多い。 冷静にみてみれば、ドゥテルテがどのような言葉を誰に言ったところで、フィリピン一国には軍事的にも経済的にも中国の「核心利益」であるスカボロー礁軍事拠点化を阻止する実力はない。中国の南シナ海陣取り戦略を阻止できるのは、最終的には米国の軍事力、経済力を背景としたASEAN、国際社会としての抵抗力であり、中国がドゥテルテを信頼しなくても、今回の訪中でのそのビッグマウスが米国や国際社会のフィリピンに対する信頼を揺るがしたという意味では、中国としては外交的な一勝と言えるかもしれない。
▽米国こそが危機的状況を招いた
・もっとも、南シナ海の事態をここまで悪化させた張本人は何といっても米国オバマ政権であることは間違いない。 海軍司令官・呉勝利はファイアリークロス島など南沙三島の埋め立てがあまりにも順調にいったことについて、かつてこう発言している。 「思いがけなかったことは、習近平主席が我々をこんなに支持してくれていること、そして、我々の埋め立て工事・建設能力がこんなにも強力であったこと、そして米国人の反応がこんなに鈍かったこと」
・ドゥテルテの言動やフィリピンの突然の外交政策転換を批判するより、米国こそがこの危機的状況を招いたということを認識してほしいというのが、南シナ海情勢が自国の安全保障問題に切実に絡んでくる日本人としては本音である。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/218009/102500069/?P=1
次に、ジャーナリストの末永 恵氏が10月27日付けJBPressに寄稿した「華人系は嘘っぱち、ドゥテルテに騙されるな! 田中角栄元首相に重なる面が多いフィリピンの新大統領」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・「暴言」「失言」「放言」――。その毒舌でフィリピンの名を世界的に知らしめた「フィリピンのドナルド・トランプ」こと、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領が国賓として日本を初訪問中だ。 親日家と言われるが、素顔のドゥテルテ氏はあまり知られていない。
・南沙諸島問題を棚上げし、警戒する日本を横目に、中国から巨額の経済援助を引き出し、米国との決別をも表明。今年限りの米比合同軍事演習中止も発表している中、その親中度が高まる一方だが、日本訪問後にはロシア訪問も予定。 その手法はあたかも、小国ながらも大国を手玉にとり、自国の利益を優位に得るベトナムの外交戦術を手本にしているかのようだ。 親日家、それとも親中派か。「裸のドゥテルテ」を暴いてみたい。
▽庶民派は演技、実はインテリ
・ドゥテルテ氏は、現在71歳。フィリピン航空の客室乗務員だったドイツ系(祖父がドイツ人)のエリザベス・ジムマーマンさん(68歳)と約30年間の結婚生活後、3人の子供に恵まれたが2000年に離婚。 現在、正妻はいないが、かつてミス・ダバオ医科大学に選ばれ、米国で看護士をしていたハニレット・アヴァンセナさん(46歳)というパートナーと暮らしており、2人の間には12歳の女の子がいる。
・ドゥテルテ氏は庶民派を“演出”しているが、もともと「父が元州知事で弁護士」「母は教師」というインテリ出身。しかし、最近になって、両親からというよりか、「自分の人間的(価値観)形成や政治への考え方は、子供の頃、カトリック教会の司祭に、とてもショッキングな性的虐待を受けたことが大きく影響している」とカミングアウトしている。
・そして、10年ほどダバオ地検検事を歴任した後、父の後を継ぐ形で政界入り。7期当選で22年間、ダバオ市長に君臨。その間、下院議員選挙に立候補し当選、中央政界での経験もある。地方、国政と行ったり来たりする内情はこうだ。 実はフィリピンでは、「3期9年以上」連続し市長職に就任できないという法律があり、自分の身内に4期目に席を渡す一方、当人は下院議員など他の公職に立候補。3年後に3年腰かけて元職に返り咲く“常套手段”がまかり通っている。 これこそがフィリピンの「地方独裁腐敗政治の温床」「政治屋一族による私物化」にもなっているが、全く改められる気配はない。ドゥテルテ氏もうまくこの手法を使い、実娘に市長の座を渡すことで、一時期、副市長も務めてきた。
・暴言、放言から海外からは単細胞に見えるが、なかなかのしたたか者である。今回の大統領選でも、エリート層であることをあえて表舞台に出さず、「犯罪者は死ね。皆殺しだ」と暴力的過激発言を繰り返すことで、アキノ政権で不満を爆発させた庶民の支持を吸い上げた。 一方、貧困層だけでなく、犯罪撲滅で治安回復や海外からの投資を目論む知的ビジネス階級からも、自分の生い立ちやイメージ作りを巧みに演出することで、満遍なく票をかき集め、下馬評を覆し、あっさり大統領に当選した。
・最たるものが、彼のその「生い立ち」作りだ。民主党の蓮舫代表ではないが、この出生秘密は、今回、日本訪問前に初訪問した中国でも最大の武器として大いに“その役目”を発揮した。 これまで、ドゥテルテ氏は母方の祖父が華人で、本人も「中国人はフィリピン社会に昔から根を張ってきた。私はフィリピン国籍だが、中国の血筋を誇りに思う」と語り、日本でも“親中”である背景とされてきた。
・しかし、フィリピンには華人系政治家が多く、南シナ海領土問題で国際仲裁裁判所に中国を訴えたべ二グノ・アキノ3世前大統領も、実は華人系だ。 一方、中国ではすでにドゥテルテ氏が、「本当に華人系か」「中国人なら公式な場で中国語を話せ」などネットでバッシングを受けている。果たして本当に華人の血が流れているのか――。答えはどうやら、「NO」のようだ。)
▽「華人の血が入っている」は真っ赤な嘘
・最近、筆者は彼の息子の親友である人物と接触する機会に恵まれた。 「あれは嘘だよ。息子が言っている。華人の血は入っていない」。当然、日本で一部報道されているような「中国語が堪能」も嘘っぱちのようだ。ドゥテルテ氏が嘘をついているのは、筆者の知人のフィリピンの有力紙ベテラン記者からも聞いていたので「やはりね」と納得だ。
・そう言えば、大統領選挙中に初めて「華人の血が混ざっている」という情報が流れたが、その出所は当然、ドゥテルテ氏本人。前述の人物が、「おじさんはいつも冗談ばかりで、知らない間に真実のように語られることはこれに限らず多いんだ」とニンマリ笑う。
・フィリピンの華人は、人口約1億人のうちの約120万人と少数派。しかし、戦後、西側とともに反共体制を敷いたフィリピンでは同じく反共だった台湾からの商業移民がフィリピン経済の土台を築き、今でも「コファンコ財閥」などが、国内ビール最大手の「サン・ミゲル」(キリンビールが約50%の株式保有)やフィリピン航空など国内の基幹産業を牛耳っている。
・当然、こうした華人の経済力を味方にしたいドゥテルテ氏の思惑があったが、大統領が華人系とし自ら「嘘」を拡散させた最大の理由は、どうもフィリピンで今、渦中の「麻薬撲滅戦争」と関連するようだ。 ドゥテルテ氏は7月、マラカニアン宮殿で記者会見を開き、フィリピン国内の違法薬物密売を取り仕切る「麻薬王」3人の名前を公表、いずれも中国系フィリピン人で、実業家でもあるピーター・リムとは面会も行った。 そこでいきなり「殺してやる」と自ら脅した経緯がある。華人系は経済だけでなく、フィリピンを蝕む麻薬にも深く関係しているからだ。
・ドゥテルテ氏の大学時代の恩師は フィリピン共産党(CPP)の最高指導者ジョマ・シソン氏と言われ、ドゥテルテ氏が危険だが大胆な発想で国を動かし、麻薬犯罪から救い出そうとしているのは確かだ。 今でも麻薬戦争で逮捕、殺害が繰り返されているのも、麻薬密売人やそのボスの多くが華人系だからだ。ダバオ市長時代から「殺すか、殺されるかだ」と宣戦布告する一方、自身はいつも暗殺される危険に晒されてきた。 そのため大統領に就任後、「自分には華人系の血が混ざっている」と公言することで、命の安全を確保し、さらには「嘘」でガチガチの中共をさらに「嘘」で騙し打つ・・・。
・暴言、放言の裏で、そんなしたかかな戦略的戦いを展開する本当は頭の切れる人物のようだ。 日本の政治家ではなかなか太刀打ちできそうにない。そういった意味では、日本の歴代首相の中で絶大な人気だった田中角栄元総理とカリスマ性も含め重なるところが多いようにみえる。 そう言えば、田中角栄氏、また米国のドナルド・トランプ氏にも強力な秘密兵器の「実娘」がいるが、ドゥテルテ氏の場合は「じゃじゃ馬娘」がいる。
▽父親譲りの現ダバオ市長、そのやんちゃぶり
・父親に負けず劣らずのやんちゃぶりで、フィリピンでは有名な現ダバオ市長、サラ・ドゥテルテ氏だ(38歳)。 別れた妻のジムマーマンさんとの子供で、「彼の秘蔵っ子で最も優秀」(ジムマーマンさん)と言うだけあり、ドゥテルテ氏が溺愛している。 父親と同じ弁護士という経歴を持つ。2010年、前述のように法律で3期以上務められない父親に代わって2010年の改選で最年少、女性初のダバオ市長に就任した。
・選挙戦では、対立候補で前下院議長という政界の大物が立候補したが、絶対君主的な強力な政治権力を持つドゥテルテ氏一族が圧勝、副市長には兄のパオロが当選した。 何の実績もなかった彼女が当選したのは紛れもなく、ドゥテルテ氏の七光りだ。このサラ市長が一躍、全国区で名を馳せることになったのが、裁判所の執行官に食らわせた「顔面4発パンチ」だった。https://www.youtube.com/watch?v=bni7gT9_2Q4
・ダバオ市内の不法占拠地域の立ち退きを巡り、住民側と立ち退きを執行する裁判所の執行官側とで投石騒ぎが発生。ここにサラ市長が乗り込み、「立ち退きを2時間待ってくれ」と要請したものの聞き入れられなかったことに激怒し、執行官を手招き、呼び込んだところで胸ぐらをヒョイと掴み、顔面に「バン!」「バン!」「バン!」「バン!」4発のパンチを浴びせたのだ。 この一部始終が全国放送のニュースで何回も流された。批判がある一方、フィリピンでは日常茶飯事のことで擁護する声も多かった。フィリピンらしい。
・日本では考えられないほど「役所イジメは庶民の味方」とする考えが横行するフィリピンでは、停職するわけではなく、一方のサラも全く悪ぶれた様子もなく、父親譲りの強烈パンチでフィリピン全土に名を馳せることとなった。
・ドゥテルテ氏がかつて市長を務めたフィリピン南部のミンダナオ島ダバオ市は、「世界一広い面積」を持つ市として知られ、人口(約150万人)はセブに次ぎ、同島で最大だ。 極めて親日的で知られる。なぜなら、ダバオの経済発展の裏には20世紀初め、兵庫県から移住してきた太田恭三郎が始めた「マニラ麻」と「ココナッツ農園」があるからだ。 マニラ麻は船舶用ロープとして重宝された。第1次世界大戦の特需景気で販売が急拡大。ダバオは「マニラ麻の大産地」に急成長し、当時、約3万人の邦人が居住。当時としては、東南アジア有数の日本人の入植地と知られていた。 今では、日本資本によるバナナ大農園が広がり、フィリピン有数のバナナ名産地となっている。日本に輸出されるバナナのほとんどがダバオ産だ。
▽日本人に対する敬意は本物
・日系人会には約6000人の会員が所属。2011年の東日本大震災では早々に、無償での日本からの避難民受け入れを表明。2013年10月には、ドゥテルテ大統領(当時市長)が日本人慰霊碑建立に自費で援助し、建立式典スピーチを買って出た。
・父親から日本人の勤勉さや技術力の高さを聞かされ、ドゥテルテ氏は地元の日本人に対しても敬意と信頼を置いてきたという。 彼が日本の歴代首相の中でダントツ人気だった田中角栄元首相を見本としているか分からないが、「麻薬や汚職を撲滅できるのは俺だけ。ほかのみんなは、言うだけだった」とかつてフィリピンの大統領が誰もなし得なかった麻薬撲滅戦争に命をかけている姿は、日本の復興・成長を引っ張った角栄氏と重なるところも少なくない。
・例えば、「資源調達を米国から断たれたことが第2次世界大戦の要因」と公言する一方、米国との摩擦を恐れ誰も挑戦しなかった「独自の資源エネルギー獲得」へ動いた角栄氏の鋭い嗅覚と先見性が挙げられる。 角栄氏は当時、米国が供給体制を寡占していた濃縮ウランと石油獲得に奔走。同盟国・米国との事前調整を行わず、フランスと直接交渉。濃縮ウラン年間輸入契約を締結させた。
・「米国は自国の利益のみ考えている。米国との決裂は問題ない」と中国訪問時に中国側から経済、安全保障などで譲歩を引き出すため、ドゥテルテ氏は得意の「嘘」で固めた演出を行ったが、中国は嘘と分かっていながら微笑み、巨額の経済援助を約束した。
・スペイン、米国の支配を受けたため、フィリピン人は「ラテン的で近寄りやすい一方、自国の要求や権利を過度に要求する米国的価値観を“共有”する」と言われる。手のひらで物事をコロコロ転がすのがお好きな国民性でもある。
・「嘘で固めた親中」だけでなく「嘘で固めた親日」かどうか。経済支援だけちゃっかりもらって、「アッカンべー」とされないように、日本の外交にはフィリピンの新リーダーに警戒心を持ちつつも、柔らかく時に強硬に臨む角栄氏のようなしたたかさが必要だろう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48227
第三に、11月5日付けZAKZAK「【大前研一のニュース時評】中国が破る!?ドゥテルテ氏との“約束” ニンジンぶら下げるも…」を紹介しよう。
・フィリピンのドゥテルテ大統領は先月26日に安倍晋三首相と会談し、中国が領有権を主張する南シナ海問題について、国連海洋条約などにもとづいて平和的解決に向けて協力することで一致した。安倍首相は中国側に、中国の主権主張を退けた国際仲裁裁判所の判決を受け入れるよう求めている。
・ドゥテルテ大統領は「われわれは常に日本の側に立つつもりだ」と語る一方で、「いずれ語らなければならない問題だが、いまそれを語るべきときではない。私が各国に行っているのは、貿易と商業のため」と、若干歯切れが悪かった。
・日本は今回、フィリピンに対して213億円の円借款を決定。大型巡視船2隻や反政府勢力を海上で取り締まる小型高速艇を供与するほか、ミンダナオ島の農業を支援する。 ドゥテルテ大統領が日本を大好きなことは間違いない。日本に対しては、米国や欧州に持つような敵意はない。ただ、彼は日本に先立って訪問した中国で習近平国家主席と会談したときにも経済協力を優先し、南シナ海問題は棚上げにした。
・これは中国にとっては相当うれしい話だ。実際にその直後、私が以前から予言していたとおり、中国が実効支配する南シナ海の漁業資源が豊富なスカボロー礁でフィリピン漁民の操業が可能になった。遠巻きに眺める中国側は相当ドゥテルテ大統領に配慮しているわけだ。
・経済援助を引き出すため、日本や中国に対してはまろやかな対応をとり、自身が始めた強硬な麻薬犯罪取り締まりを非難する米オバマ政権に対しては暴言を吐く。ドゥテルテ大統領の性格はだいぶわかってきた。 中国とは、鉄道などのインフラ開発や製鉄所建設、港湾整備、麻薬中毒者の更生事業などに関し、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)による融資を約束させた。中国と領土問題の話し合いをしている間に、取れるものは全部取ろうということなのだろう。
・ただし、中国は日本のODA(政府開発援助)とは違い、2兆円を超える高額な援助というニンジンをぶら下げ、このまま様子を見ながら引っ張って、結局は約束したことを履行しない可能性もある。 また、スカボロー礁についても、中国外務省は「フィリピン漁民がずっと漁ができる」とは言ってない。「どうぞ、漁をしてください。でも、ウチのテリトリーですよ」ということで、何か気に入らないことがあればいつでも取り締まりを再開する可能性も高い。
・だが、この点もドゥテルテ大統領にはわかっていて、日本とは少し違う目で見ているのではないかという気はする。 ドゥテルテ大統領は帰国後、「日本から帰る飛行機の機内で、神から『口汚い言葉をやめろ』とお告げがあった」として暴言をやめると宣言した。だが、記者から「欧米への暴言もやめるのか」と聞かれると、「状況による」とはぐらかした。やっぱり、よくわからない人だ。
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20161105/dms1611051530007-n1.htm
「フィリピンのトランプ」といわれるだけあって、外野席から見る限りは、破天荒で面白い。第一の記事で、『ドゥテルテ訪中が決定したのは、日本訪問の日取りが25日に決まって以降。これは中国が執拗に、日本よりも先に訪中をしてほしいと促した結果である』、『中国党内一部からは、フィリピンに対する“贈り物”に見合った成果を上げられなかったという批判がでている』、との指摘は中国側の思い入れの強さを反映したものだろう。ただ、『カンボジアは中国の真の友人であり、盟友であろう。ラオスもだ、ベトナムもだ』、とあるが、ベトナムはかつて中国と戦争したこともあり、「盟友」とするのはドゥテルテの筆のすべり過ぎだろう。
第二の記事で、ドゥテルテ氏が、『7期当選で22年間、ダバオ市長に君臨』、というのには驚いた。ダバオ市では、おそらく絶対君主のような存在だったのだろう。『「華人の血が入っている」は真っ赤な嘘』、『大統領に就任後、「自分には華人系の血が混ざっている」と公言することで、命の安全を確保し、さらには「嘘」でガチガチの中共をさらに「嘘」で騙し打つ・・』、さすがにしたたかだ。安部首相などは「赤子」のようなものだろう。
第三の記事で、『暴言をやめると宣言した』が、すぐに禁を破って米国への暴言を再開したようだ。レイムダックとはいえオバマ大統領も、大変な爆弾を抱えたものだ。
先ずは、中国に詳しいジャーナリストの福島 香織氏が10月26日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「ドゥテルテ訪中は中国の外交的勝利なのか 「大盤振る舞い」の損得勘定は…」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・暴言と麻薬犯罪の容赦ない掃討ぶりで、日本でも注目されているフィリピンのドゥテルテ大統領は25日から日本を訪問。この訪日による日本とフィリピンの外交成果については、この原稿を書いている時点ではわからないのだが、その前に行われたドゥテルテの訪中については、すこし整理してまとめておく必要があるだろう。ドゥテルテ訪中によって、南シナ海情勢は何か変わるのか変わらないのか。
▽「日本より先に」「六中全会前に」
・ドゥテルテは10月18日から4日の日程で北京を訪問、国家主席の習近平はじめ、李克強(首相)、張徳江(全人代常務委員=国会議長に相当)、張高麗(国家副首相)らと会談。CCTVの単独インタビューを受けて、南シナ海の共同開発に意欲的な姿勢を見せたうえに、中国フィリピン経済貿易フォーラムで講演し、演説の最後に「我々は軍事、経済上を含めて米国との関係から離脱すると謹んで宣言する」などとのたまわったものだから、米国国務省が慌てて、真意を説明せよと要請する事態も起きた。フィリピン側は「米国依存から離脱するという意味で、関係を断絶するということではない」と弁解するも、フィリピン金融市場ではペソや株価が一気に下落し、国際社会も動揺している。
・このドゥテルテ訪中が決定したのは、日本訪問の日取りが25日に決まって以降。これは中国が執拗に、日本よりも先に訪中をしてほしいと促した結果である。中国としては日本に訪問して鼻薬をかがされる前に、チャイナマネーでフィリピンをからめとりたいという意向もあるが、それ以上に、六中全会前に、フィリピン外交および南シナ海問題で、政敵に見える形の勝ち星を挙げたい、という意図が見えた。
・24日から始まる六中全会とは党中央委員会第六回全体会議、すなわち共産党にとって年に一度の最重要政治会議であり、ここで来年の党大会に向けた人事その他の布石が行われる。習近平としては、ここで68歳の定年制の枠を外すなど、長期独裁体制への方向性を打ち出したいところなのだろうが、党内のアンチ習近平勢力は意外に根強く、中国に圧倒的不利なハーグ裁定を許した習近平外交の脇の甘さなどを攻撃している。
・ハーグ裁定が発表されて以降、習近平から強いプレッシャーを受けた外相・王毅の怒涛の対ASEAN外交の結果、その後のASEAN関連の国際会議で、裁定を理由に中国を表立って非難する声は、公式の声明、コミュニケに盛り込まれることはなかった。中国としてはスカボロー礁実効支配という目標遂行に利する、一方の当事国のフィリピンの“裁定棚上げ”あるいは、米国などの介入を完全に遮断する“共同開発”の言質をとれば、それ以前の失点を上回る外交勝利を収めたことになる。共同声明にそれが含まれるか否か、おそらくは今回のドゥテルテ大統領訪中のハイライトであった。
▽135億ドルの大盤振る舞い
・さて結果からいうと、中国は期待したほどの成果は得られなかった、ようである。 共同声明の南シナ海関連の部分を抜き出して、見てみよう。 「双方は南シナ海の問題について見解を交換した。双方は争議問題は中比関係のすべてではないことを改めて確認。双方は適切な方法によって南シナ海争議を処理することが重要であるということで意見を交換した。双方は平和と安定を維持、促進し、南シナ海の航行の自由と飛行の自由の重要性について改めて確認し、国連憲章と1982年の国連海洋法条約が公認する国際法の原則に従い、武力や武力に相当する脅威を訴えることなく、直接に関係する主権国同士での友好的交渉、協議によって、領土および管轄権の争議を平和的に解決することを改めて確認した」 「双方は2002年の『南シナ海行動宣言』と2016年7月25日のラオス・ビエンチャンで採択された中国‐ASEAN外相会議での宣言を振り返った。双方は宣言が有効的に実施され、協議の上に南シナ海行動規範の早期成立のために共同の努力を願うことを全面的に確認した」 「双方は継続して協議し、互いの信頼を醸成し、南シナ海において自制を保った行動をとり、争いを複雑化させずに、平和と安定への影響を拡大化することを確認した。これに鑑み、その他メカニズムで補いながら、またその他メカニズムの基礎を損なわないように、新たな協議メカニズムを打ち立てることが有益であり、双方は南シナ海について各自直面する問題およびその他関心事について、定期的に協議が持てるだろう。双方はその他協力を展開できる領域を探ることで同意した」
・声明文を読めば、南シナ海問題について、当事者同士が話し合って解決というかねてからの発言以上に踏み込めなかったことがわかるだろう。南シナ海の共同開発についても「その他協力を展開できる領域を探る」という無難な表現で終わった。ハーグ裁定やスカボロー礁の問題に関する具体的な文言も入らなかった。一方、中国側のフィリピンに対する援助は13項目あり、海上警察協力のほか、およそ135億ドルに相当する経済協力という大盤振る舞いをした。フィリピンバナナをはじめフィリピンの果物輸入禁止やフィリピン旅行禁止の制裁を解いたことは、フィリピン経済への大きな贈り物となった。
・こういった状況から、中国党内一部からは、フィリピンに対する“贈り物”に見合った成果を上げられなかったという批判がでている。中国経済が悪化の一途をたどっている中、外国にここまで経済支援をする必要があるのかという世論もネット上などで盛り上がっている。
・声明文には盛り込まれていなかったが、帰国後のドゥテルテの発言から、スカボロー礁周辺で中国漁民の漁を認める方向ですでに話し合いが進められているようでもあり、同時に年内完成を目指していたはずのスカボロー礁の軍事拠点化計画は9月下旬の段階で延期が伝えられている。とすると、中国側の譲歩の方が大きすぎるという意見も、もっともだということになる。 では、習近平が老獪なドゥテルテに翻弄されて、対比外交をミスったということになるのだろうか。
▽「母方の祖父は中国人」
・中国側の真意については、一般に言われているのは、米比離反をまず成功させ、中国サイドに引き込んでから、スカボロー礁の実効支配を確実にすればよいので、ドゥテルテに対米離反を決心させるためにスカボロー礁基地建設延期という譲歩を提示した、という戦略である。中国にとって最大の目標がドゥテルテの米依存離脱宣言であるとしたら、それは成功である。
・中比経済貿易フォーラムの講演でドゥテルテは、次のように言い放っている。 「中国と我々の関係が良くなり、米国は多少焦っている。米国はプーチンを恐れているが、それは彼に自信があるからだ。欧州情勢は微妙で、ギリシャは救いようがなく米国人はアフガンで過ちを犯し、現在医療システムを支える資金の保証もない。… ASEANにおいてカンボジアは中国の真の友人であり、盟友であろう。ラオスもだ、ベトナムもだ。インドネシアは中立だが、フィリピンは非常に中国に傾倒している。…
・米国にはフィリピン人の生活境遇を真に改善する力はない。日本にだってできない。日本は我々に援助してくれるだろうが、それは中国にもできる。日本も鉄道を作ってくれるだろうし、韓国もそうだろうが、しかし、我々はより中国に傾倒していて中国から融資を受けたいのだ。なぜなら、あるとき中国が我々に長期の融資をしてくれて、その後、我々との友誼のために、その融資の返済を帳消しにしてくれたことがあるからだ。日本や韓国では、こんな風にいかない。中国からの資金は充足しているが、私がさらに中国が好きなのは、さらに、あなた方の真心なのだ。…
・中国はこれまで人を侵したことがなく、人を侮蔑したことがない。これが私にとっては重要だ。私の母方の祖父は中国人である。だから中国人の特性をよく知っている。友人として、中国はいつも喜んで人を助け、我々の間の友誼の源流は非常に遠くから流れているのだ。私の個人の経験からも、このことは深く理解している。…
・政治、文化が絶えず揺れ動く時代、米国はすでに負けている。私はロシアに行ってプーチンに会い、フィリピンは中ロのパートナーになると告げるつもりだ。… 我々は軍事、経済上を含めて米国との関係から離脱すると謹んで宣言する。もちろん、もしあなた方が経済上、米国との間に問題があるようであれば、我々があなた方を援助する。あなた方が我々を援助するように」
・リップサービスにしては行き過ぎた中国へのラブコールと米国批判に、講演会ではやんやの拍手が起きた。大統領にここまで言わせたという点で、中国としては、とりあえず、身銭を切った価値があった、という解釈もある。いくら後で、米国との関係を断絶するわけがない、などと言いつくろったところで、フィリピンが米国から中国・ロシアに同盟関係を乗り換えたいと公式に言っているのと同じである。かつて米外交誌・フォーリンアフェアーズ(9月27日 ウェブサイト)の記事で「ドゥテルテの登場がアジア太平洋秩序を変えることになるかもしれない」と強い懸念が示されていたが、その懸念を今更ながらに痛感する。
▽フィリピンを信用しすぎるな
・上海社会科学院国際問題研究所の研究員・李開盛は英フィナンシャルタイムス(中国語版)に対するコメントで、今回の対比ばらまき外交は、「帳尻があっている」と評価している。根拠は、会談中に、フィリピン側に仲裁裁判のテーマを持ち出させず、両者の話し合いで南シナ海の問題を解決すると重ねて言質をとったこと。そして、米国のアジアリバランス戦略に重大な打撃を与えたことを挙げている。 「ドゥテルテはハーグ裁定の棚上げをしただけでなく、米軍との合同パトロールにも参加しないと宣言し、二度と米軍との合同演習も行わないとも宣言した。これは米国の南シナ海戦略を根底からひっくり返す。フィリピンは来年、ASEANの議長国になり、フィリピンと中国の協力関係が与える影響はさらに効果を発揮し、おそらく米国の中国に対するけん制に対し、ASEANがさらに嫌がるようになってくる」
・ただこういう見方に関しては、反対意見もあり、人民大学国際関係学院の時殷弘教授がニューヨークタイムスの取材に次のようなコメントを寄せている。 「中国がドゥテルテを信用することはそれほど簡単ではない」 「フィリピンにワシントンとの親密な関係を放棄させ、カンボジアやラオスのように完全に中国サイドに引き込むことは非現実的だ」
・国際社会をより俯瞰している中国学者の間では、フィリピンを信用しすぎるなという慎重論の方が強く、むしろ一刻も早くスカボロー礁の埋め立てを完成させることの方が重要という意見も多い。 冷静にみてみれば、ドゥテルテがどのような言葉を誰に言ったところで、フィリピン一国には軍事的にも経済的にも中国の「核心利益」であるスカボロー礁軍事拠点化を阻止する実力はない。中国の南シナ海陣取り戦略を阻止できるのは、最終的には米国の軍事力、経済力を背景としたASEAN、国際社会としての抵抗力であり、中国がドゥテルテを信頼しなくても、今回の訪中でのそのビッグマウスが米国や国際社会のフィリピンに対する信頼を揺るがしたという意味では、中国としては外交的な一勝と言えるかもしれない。
▽米国こそが危機的状況を招いた
・もっとも、南シナ海の事態をここまで悪化させた張本人は何といっても米国オバマ政権であることは間違いない。 海軍司令官・呉勝利はファイアリークロス島など南沙三島の埋め立てがあまりにも順調にいったことについて、かつてこう発言している。 「思いがけなかったことは、習近平主席が我々をこんなに支持してくれていること、そして、我々の埋め立て工事・建設能力がこんなにも強力であったこと、そして米国人の反応がこんなに鈍かったこと」
・ドゥテルテの言動やフィリピンの突然の外交政策転換を批判するより、米国こそがこの危機的状況を招いたということを認識してほしいというのが、南シナ海情勢が自国の安全保障問題に切実に絡んでくる日本人としては本音である。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/218009/102500069/?P=1
次に、ジャーナリストの末永 恵氏が10月27日付けJBPressに寄稿した「華人系は嘘っぱち、ドゥテルテに騙されるな! 田中角栄元首相に重なる面が多いフィリピンの新大統領」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・「暴言」「失言」「放言」――。その毒舌でフィリピンの名を世界的に知らしめた「フィリピンのドナルド・トランプ」こと、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領が国賓として日本を初訪問中だ。 親日家と言われるが、素顔のドゥテルテ氏はあまり知られていない。
・南沙諸島問題を棚上げし、警戒する日本を横目に、中国から巨額の経済援助を引き出し、米国との決別をも表明。今年限りの米比合同軍事演習中止も発表している中、その親中度が高まる一方だが、日本訪問後にはロシア訪問も予定。 その手法はあたかも、小国ながらも大国を手玉にとり、自国の利益を優位に得るベトナムの外交戦術を手本にしているかのようだ。 親日家、それとも親中派か。「裸のドゥテルテ」を暴いてみたい。
▽庶民派は演技、実はインテリ
・ドゥテルテ氏は、現在71歳。フィリピン航空の客室乗務員だったドイツ系(祖父がドイツ人)のエリザベス・ジムマーマンさん(68歳)と約30年間の結婚生活後、3人の子供に恵まれたが2000年に離婚。 現在、正妻はいないが、かつてミス・ダバオ医科大学に選ばれ、米国で看護士をしていたハニレット・アヴァンセナさん(46歳)というパートナーと暮らしており、2人の間には12歳の女の子がいる。
・ドゥテルテ氏は庶民派を“演出”しているが、もともと「父が元州知事で弁護士」「母は教師」というインテリ出身。しかし、最近になって、両親からというよりか、「自分の人間的(価値観)形成や政治への考え方は、子供の頃、カトリック教会の司祭に、とてもショッキングな性的虐待を受けたことが大きく影響している」とカミングアウトしている。
・そして、10年ほどダバオ地検検事を歴任した後、父の後を継ぐ形で政界入り。7期当選で22年間、ダバオ市長に君臨。その間、下院議員選挙に立候補し当選、中央政界での経験もある。地方、国政と行ったり来たりする内情はこうだ。 実はフィリピンでは、「3期9年以上」連続し市長職に就任できないという法律があり、自分の身内に4期目に席を渡す一方、当人は下院議員など他の公職に立候補。3年後に3年腰かけて元職に返り咲く“常套手段”がまかり通っている。 これこそがフィリピンの「地方独裁腐敗政治の温床」「政治屋一族による私物化」にもなっているが、全く改められる気配はない。ドゥテルテ氏もうまくこの手法を使い、実娘に市長の座を渡すことで、一時期、副市長も務めてきた。
・暴言、放言から海外からは単細胞に見えるが、なかなかのしたたか者である。今回の大統領選でも、エリート層であることをあえて表舞台に出さず、「犯罪者は死ね。皆殺しだ」と暴力的過激発言を繰り返すことで、アキノ政権で不満を爆発させた庶民の支持を吸い上げた。 一方、貧困層だけでなく、犯罪撲滅で治安回復や海外からの投資を目論む知的ビジネス階級からも、自分の生い立ちやイメージ作りを巧みに演出することで、満遍なく票をかき集め、下馬評を覆し、あっさり大統領に当選した。
・最たるものが、彼のその「生い立ち」作りだ。民主党の蓮舫代表ではないが、この出生秘密は、今回、日本訪問前に初訪問した中国でも最大の武器として大いに“その役目”を発揮した。 これまで、ドゥテルテ氏は母方の祖父が華人で、本人も「中国人はフィリピン社会に昔から根を張ってきた。私はフィリピン国籍だが、中国の血筋を誇りに思う」と語り、日本でも“親中”である背景とされてきた。
・しかし、フィリピンには華人系政治家が多く、南シナ海領土問題で国際仲裁裁判所に中国を訴えたべ二グノ・アキノ3世前大統領も、実は華人系だ。 一方、中国ではすでにドゥテルテ氏が、「本当に華人系か」「中国人なら公式な場で中国語を話せ」などネットでバッシングを受けている。果たして本当に華人の血が流れているのか――。答えはどうやら、「NO」のようだ。)
▽「華人の血が入っている」は真っ赤な嘘
・最近、筆者は彼の息子の親友である人物と接触する機会に恵まれた。 「あれは嘘だよ。息子が言っている。華人の血は入っていない」。当然、日本で一部報道されているような「中国語が堪能」も嘘っぱちのようだ。ドゥテルテ氏が嘘をついているのは、筆者の知人のフィリピンの有力紙ベテラン記者からも聞いていたので「やはりね」と納得だ。
・そう言えば、大統領選挙中に初めて「華人の血が混ざっている」という情報が流れたが、その出所は当然、ドゥテルテ氏本人。前述の人物が、「おじさんはいつも冗談ばかりで、知らない間に真実のように語られることはこれに限らず多いんだ」とニンマリ笑う。
・フィリピンの華人は、人口約1億人のうちの約120万人と少数派。しかし、戦後、西側とともに反共体制を敷いたフィリピンでは同じく反共だった台湾からの商業移民がフィリピン経済の土台を築き、今でも「コファンコ財閥」などが、国内ビール最大手の「サン・ミゲル」(キリンビールが約50%の株式保有)やフィリピン航空など国内の基幹産業を牛耳っている。
・当然、こうした華人の経済力を味方にしたいドゥテルテ氏の思惑があったが、大統領が華人系とし自ら「嘘」を拡散させた最大の理由は、どうもフィリピンで今、渦中の「麻薬撲滅戦争」と関連するようだ。 ドゥテルテ氏は7月、マラカニアン宮殿で記者会見を開き、フィリピン国内の違法薬物密売を取り仕切る「麻薬王」3人の名前を公表、いずれも中国系フィリピン人で、実業家でもあるピーター・リムとは面会も行った。 そこでいきなり「殺してやる」と自ら脅した経緯がある。華人系は経済だけでなく、フィリピンを蝕む麻薬にも深く関係しているからだ。
・ドゥテルテ氏の大学時代の恩師は フィリピン共産党(CPP)の最高指導者ジョマ・シソン氏と言われ、ドゥテルテ氏が危険だが大胆な発想で国を動かし、麻薬犯罪から救い出そうとしているのは確かだ。 今でも麻薬戦争で逮捕、殺害が繰り返されているのも、麻薬密売人やそのボスの多くが華人系だからだ。ダバオ市長時代から「殺すか、殺されるかだ」と宣戦布告する一方、自身はいつも暗殺される危険に晒されてきた。 そのため大統領に就任後、「自分には華人系の血が混ざっている」と公言することで、命の安全を確保し、さらには「嘘」でガチガチの中共をさらに「嘘」で騙し打つ・・・。
・暴言、放言の裏で、そんなしたかかな戦略的戦いを展開する本当は頭の切れる人物のようだ。 日本の政治家ではなかなか太刀打ちできそうにない。そういった意味では、日本の歴代首相の中で絶大な人気だった田中角栄元総理とカリスマ性も含め重なるところが多いようにみえる。 そう言えば、田中角栄氏、また米国のドナルド・トランプ氏にも強力な秘密兵器の「実娘」がいるが、ドゥテルテ氏の場合は「じゃじゃ馬娘」がいる。
▽父親譲りの現ダバオ市長、そのやんちゃぶり
・父親に負けず劣らずのやんちゃぶりで、フィリピンでは有名な現ダバオ市長、サラ・ドゥテルテ氏だ(38歳)。 別れた妻のジムマーマンさんとの子供で、「彼の秘蔵っ子で最も優秀」(ジムマーマンさん)と言うだけあり、ドゥテルテ氏が溺愛している。 父親と同じ弁護士という経歴を持つ。2010年、前述のように法律で3期以上務められない父親に代わって2010年の改選で最年少、女性初のダバオ市長に就任した。
・選挙戦では、対立候補で前下院議長という政界の大物が立候補したが、絶対君主的な強力な政治権力を持つドゥテルテ氏一族が圧勝、副市長には兄のパオロが当選した。 何の実績もなかった彼女が当選したのは紛れもなく、ドゥテルテ氏の七光りだ。このサラ市長が一躍、全国区で名を馳せることになったのが、裁判所の執行官に食らわせた「顔面4発パンチ」だった。https://www.youtube.com/watch?v=bni7gT9_2Q4
・ダバオ市内の不法占拠地域の立ち退きを巡り、住民側と立ち退きを執行する裁判所の執行官側とで投石騒ぎが発生。ここにサラ市長が乗り込み、「立ち退きを2時間待ってくれ」と要請したものの聞き入れられなかったことに激怒し、執行官を手招き、呼び込んだところで胸ぐらをヒョイと掴み、顔面に「バン!」「バン!」「バン!」「バン!」4発のパンチを浴びせたのだ。 この一部始終が全国放送のニュースで何回も流された。批判がある一方、フィリピンでは日常茶飯事のことで擁護する声も多かった。フィリピンらしい。
・日本では考えられないほど「役所イジメは庶民の味方」とする考えが横行するフィリピンでは、停職するわけではなく、一方のサラも全く悪ぶれた様子もなく、父親譲りの強烈パンチでフィリピン全土に名を馳せることとなった。
・ドゥテルテ氏がかつて市長を務めたフィリピン南部のミンダナオ島ダバオ市は、「世界一広い面積」を持つ市として知られ、人口(約150万人)はセブに次ぎ、同島で最大だ。 極めて親日的で知られる。なぜなら、ダバオの経済発展の裏には20世紀初め、兵庫県から移住してきた太田恭三郎が始めた「マニラ麻」と「ココナッツ農園」があるからだ。 マニラ麻は船舶用ロープとして重宝された。第1次世界大戦の特需景気で販売が急拡大。ダバオは「マニラ麻の大産地」に急成長し、当時、約3万人の邦人が居住。当時としては、東南アジア有数の日本人の入植地と知られていた。 今では、日本資本によるバナナ大農園が広がり、フィリピン有数のバナナ名産地となっている。日本に輸出されるバナナのほとんどがダバオ産だ。
▽日本人に対する敬意は本物
・日系人会には約6000人の会員が所属。2011年の東日本大震災では早々に、無償での日本からの避難民受け入れを表明。2013年10月には、ドゥテルテ大統領(当時市長)が日本人慰霊碑建立に自費で援助し、建立式典スピーチを買って出た。
・父親から日本人の勤勉さや技術力の高さを聞かされ、ドゥテルテ氏は地元の日本人に対しても敬意と信頼を置いてきたという。 彼が日本の歴代首相の中でダントツ人気だった田中角栄元首相を見本としているか分からないが、「麻薬や汚職を撲滅できるのは俺だけ。ほかのみんなは、言うだけだった」とかつてフィリピンの大統領が誰もなし得なかった麻薬撲滅戦争に命をかけている姿は、日本の復興・成長を引っ張った角栄氏と重なるところも少なくない。
・例えば、「資源調達を米国から断たれたことが第2次世界大戦の要因」と公言する一方、米国との摩擦を恐れ誰も挑戦しなかった「独自の資源エネルギー獲得」へ動いた角栄氏の鋭い嗅覚と先見性が挙げられる。 角栄氏は当時、米国が供給体制を寡占していた濃縮ウランと石油獲得に奔走。同盟国・米国との事前調整を行わず、フランスと直接交渉。濃縮ウラン年間輸入契約を締結させた。
・「米国は自国の利益のみ考えている。米国との決裂は問題ない」と中国訪問時に中国側から経済、安全保障などで譲歩を引き出すため、ドゥテルテ氏は得意の「嘘」で固めた演出を行ったが、中国は嘘と分かっていながら微笑み、巨額の経済援助を約束した。
・スペイン、米国の支配を受けたため、フィリピン人は「ラテン的で近寄りやすい一方、自国の要求や権利を過度に要求する米国的価値観を“共有”する」と言われる。手のひらで物事をコロコロ転がすのがお好きな国民性でもある。
・「嘘で固めた親中」だけでなく「嘘で固めた親日」かどうか。経済支援だけちゃっかりもらって、「アッカンべー」とされないように、日本の外交にはフィリピンの新リーダーに警戒心を持ちつつも、柔らかく時に強硬に臨む角栄氏のようなしたたかさが必要だろう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48227
第三に、11月5日付けZAKZAK「【大前研一のニュース時評】中国が破る!?ドゥテルテ氏との“約束” ニンジンぶら下げるも…」を紹介しよう。
・フィリピンのドゥテルテ大統領は先月26日に安倍晋三首相と会談し、中国が領有権を主張する南シナ海問題について、国連海洋条約などにもとづいて平和的解決に向けて協力することで一致した。安倍首相は中国側に、中国の主権主張を退けた国際仲裁裁判所の判決を受け入れるよう求めている。
・ドゥテルテ大統領は「われわれは常に日本の側に立つつもりだ」と語る一方で、「いずれ語らなければならない問題だが、いまそれを語るべきときではない。私が各国に行っているのは、貿易と商業のため」と、若干歯切れが悪かった。
・日本は今回、フィリピンに対して213億円の円借款を決定。大型巡視船2隻や反政府勢力を海上で取り締まる小型高速艇を供与するほか、ミンダナオ島の農業を支援する。 ドゥテルテ大統領が日本を大好きなことは間違いない。日本に対しては、米国や欧州に持つような敵意はない。ただ、彼は日本に先立って訪問した中国で習近平国家主席と会談したときにも経済協力を優先し、南シナ海問題は棚上げにした。
・これは中国にとっては相当うれしい話だ。実際にその直後、私が以前から予言していたとおり、中国が実効支配する南シナ海の漁業資源が豊富なスカボロー礁でフィリピン漁民の操業が可能になった。遠巻きに眺める中国側は相当ドゥテルテ大統領に配慮しているわけだ。
・経済援助を引き出すため、日本や中国に対してはまろやかな対応をとり、自身が始めた強硬な麻薬犯罪取り締まりを非難する米オバマ政権に対しては暴言を吐く。ドゥテルテ大統領の性格はだいぶわかってきた。 中国とは、鉄道などのインフラ開発や製鉄所建設、港湾整備、麻薬中毒者の更生事業などに関し、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)による融資を約束させた。中国と領土問題の話し合いをしている間に、取れるものは全部取ろうということなのだろう。
・ただし、中国は日本のODA(政府開発援助)とは違い、2兆円を超える高額な援助というニンジンをぶら下げ、このまま様子を見ながら引っ張って、結局は約束したことを履行しない可能性もある。 また、スカボロー礁についても、中国外務省は「フィリピン漁民がずっと漁ができる」とは言ってない。「どうぞ、漁をしてください。でも、ウチのテリトリーですよ」ということで、何か気に入らないことがあればいつでも取り締まりを再開する可能性も高い。
・だが、この点もドゥテルテ大統領にはわかっていて、日本とは少し違う目で見ているのではないかという気はする。 ドゥテルテ大統領は帰国後、「日本から帰る飛行機の機内で、神から『口汚い言葉をやめろ』とお告げがあった」として暴言をやめると宣言した。だが、記者から「欧米への暴言もやめるのか」と聞かれると、「状況による」とはぐらかした。やっぱり、よくわからない人だ。
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20161105/dms1611051530007-n1.htm
「フィリピンのトランプ」といわれるだけあって、外野席から見る限りは、破天荒で面白い。第一の記事で、『ドゥテルテ訪中が決定したのは、日本訪問の日取りが25日に決まって以降。これは中国が執拗に、日本よりも先に訪中をしてほしいと促した結果である』、『中国党内一部からは、フィリピンに対する“贈り物”に見合った成果を上げられなかったという批判がでている』、との指摘は中国側の思い入れの強さを反映したものだろう。ただ、『カンボジアは中国の真の友人であり、盟友であろう。ラオスもだ、ベトナムもだ』、とあるが、ベトナムはかつて中国と戦争したこともあり、「盟友」とするのはドゥテルテの筆のすべり過ぎだろう。
第二の記事で、ドゥテルテ氏が、『7期当選で22年間、ダバオ市長に君臨』、というのには驚いた。ダバオ市では、おそらく絶対君主のような存在だったのだろう。『「華人の血が入っている」は真っ赤な嘘』、『大統領に就任後、「自分には華人系の血が混ざっている」と公言することで、命の安全を確保し、さらには「嘘」でガチガチの中共をさらに「嘘」で騙し打つ・・』、さすがにしたたかだ。安部首相などは「赤子」のようなものだろう。
第三の記事で、『暴言をやめると宣言した』が、すぐに禁を破って米国への暴言を再開したようだ。レイムダックとはいえオバマ大統領も、大変な爆弾を抱えたものだ。
タグ:ダバオ市 135億ドルの大盤振る舞い 太田恭三郎が始めた「マニラ麻」と「ココナッツ農園」があるからだ 役所イジメは庶民の味方」とする考えが横行 、六中全会前に、フィリピン外交および南シナ海問題で、政敵に見える形の勝ち星を挙げたい、という意図 父親譲りの現ダバオ市長、そのやんちゃぶり 型巡視船2隻や反政府勢力を海上で取り締まる小型高速艇を供与するほか、ミンダナオ島の農業を支援 大統領に就任後、「自分には華人系の血が混ざっている」と公言することで、命の安全を確保し、さらには「嘘」でガチガチの中共をさらに「嘘」で騙し打つ・・・ ドゥテルテ訪中が決定したのは、日本訪問の日取りが25日に決まって以降。これは中国が執拗に、日本よりも先に訪中をしてほしいと促した結果 213億円の円借款を決定 華人系は経済だけでなく、フィリピンを蝕む麻薬にも深く関係 米国国務省が慌てて、真意を説明せよと要請する事態も 大前研一のニュース時評】中国が破る!?ドゥテルテ氏との“約束” ニンジンぶら下げるも…」 国内の基幹産業を牛耳っている 我々は軍事、経済上を含めて米国との関係から離脱すると謹んで宣言する ZAKZAK ・フィリピンの華人は、人口約1億人のうちの約120万人と少数派 中国フィリピン経済貿易フォーラムで講演 ラテン的で近寄りやすい一方、自国の要求や権利を過度に要求する米国的価値観を“共有”する 「華人の血が入っている」は真っ赤な嘘 訪中 日本人に対する敬意は本物 えたべ二グノ・アキノ3世前大統領も、実は華人系 ドゥテルテ大統領 当時、約3万人の邦人が居住。当時としては、東南アジア有数の日本人の入植地と知られていた アキノ政権で不満を爆発させた庶民の支持を吸い上げた 麻薬犯罪の容赦ない掃討 暴力的過激発言 ドゥテルテ訪中は中国の外交的勝利なのか 「大盤振る舞い」の損得勘定は… マニラ麻の大産地 犯罪者は死ね。皆殺しだ 日経ビジネスオンライン 実娘に市長の座を渡す 福島 香織 その間、下院議員選挙に立候補し当選、中央政界での経験もある (ドゥテルテ訪中の意味、ドゥテルテの実像、中国が破る!?ドゥテルテ氏との“約束”) 7期当選で22年間、ダバオ市長に君臨 フィリピン ダバオ地検検事 「父が元州知事で弁護士」「母は教師」 庶民派は演技、実はインテリ 暴言をやめると宣言 小国ながらも大国を手玉にとり、自国の利益を優位に得るベトナムの外交戦術を手本にしているかのようだ 今年限りの米比合同軍事演習中止も発表 華人系は嘘っぱち、ドゥテルテに騙されるな! 田中角栄元首相に重なる面が多いフィリピンの新大統領 JBPRESS 末永 恵 米国こそが危機的状況を招いた 国際社会をより俯瞰している中国学者の間では、フィリピンを信用しすぎるなという慎重論の方が強く、むしろ一刻も早くスカボロー礁の埋め立てを完成させることの方が重要という意見も多い 私はロシアに行ってプーチンに会い、フィリピンは中ロのパートナーになると告げるつもりだ 母方の祖父は中国人 南シナ海問題は棚上げにした スカボロー礁の軍事拠点化計画は9月下旬の段階で延期が伝えられている スカボロー礁周辺で中国漁民の漁を認める方向ですでに話し合いが進められているようでもあり 中国党内一部からは、フィリピンに対する“贈り物”に見合った成果を上げられなかったという批判がでている
2016-11-06 19:38
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