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クールジャパン戦略(その4)(「クールジャパン/クリエイティブ産業」×「地方創生」の驚くべき〝惨状〟、「日本式介護」のアジア輸出は成功するか?)  [経済政策]

昨日に続いて、クールジャパン戦略(その4)(「クールジャパン」×「地方創生」の驚くべき〝惨状〟、「日本式介護」のアジア輸出は成功するか?) を取上げよう。

先ずは、一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事の木下斉氏が昨年11月21日付けWEDGE Infinityに寄稿した「「クールジャパン」×「地方創生」の驚くべき〝惨状〟 無線LANにTPP対策まで、地方で広がる「何でもあり」」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・予算が出ると思って猫も杓子も使うマジックワードが、地域活性化分野ではその時代時代に存在する。製造、流通、販売まで農業を一貫する「六次産業化」、都市を小さく集約する「コンパクトシティ」など列挙すればキリがない。 近年は「クールジャパン」と「地方創生」もまさにこのマジックワードの部類に入るが、この合わせ技で予算を獲得する事例が出てきている。
▽「忍者」で地方創生!?煙に巻かれた成果
・世界が知るクールジャパンといえば「忍者」という話になり、2015年度における地方創生関連交付金で合計約1億7200万円の予算がついた。さらに、この予算活用のために忍者にゆかりのある三重県・神奈川県・長野県・滋賀県・佐賀県、さらに伊賀市・甲賀市・上田市・嬉野市・小田原市などが発起人となり、日本忍者協議会まで設立された。
・とはいえ、内容としては忍者を用いたイベント開催や忍者PR動画を入札して外注するという極めて古典的な手法となっている。結局は、代理店などへの外注頼みの「忍者」事業なのである。このような外注頼みの方法では、地域に一切のノウハウが残らず、失敗しても外注先にその責任を押し付けられるため、事業の改善が期待できないという問題点がある。
・また、外注した事業成果として参加する自治体が期待しているのが、観光客の増加だ。それ自体は良いのだが、事業の成果を測る地方創生予算の重要業績評価指標として指定している数値に問題がある。各自治体がばらばらに外国人旅行宿泊数、県内の延べ宿泊者数といったようなマクロ統計を目標設定しており、それでは忍者事業の効果を測ることは全くできない。
・円安で外国人観光客が増加したり、はたまた全く税金に関係なくやっている地域のイベント、誘客キャンペーンによって増加する観光客数も全てこの成果に含まれてしまう目標設定になっている。本来であれば、新たに企画した忍者ツアーの参加者数や売り上げなどを目標設定すべきだろう。
・さらに甲賀市に至っては、地方創生先行型予算で約2350万円の予算を獲得し、市・観光協会のホームページ閲覧数の10%アップという目標を設定。結果として9・3%増加して、成果があったとしているのだが、実数をみて驚愕する。 「(H26)50万775件のアクセスが(H27)54万7220件に増加」とあるのだ。わずか年4万件の閲覧数を獲得するために2350万円もの国費を投じたのである。しかも、前述の観光客数同様に本当にこの予算の成果としてアクセスが増加したかという因果関係は、誰も確認できない。 このように、目標設定自体が大変いい加減なもので、結局は予算を使って、海外への動画配信やイベントなどを行うだけで終わり、という実態がそこらじゅうにある。
・従来から地域活性化は予算を獲得するための名目としてマジックワードを活用してきた。そして、成果が出ても出なくても責任を求められない目標を掲げ、結局はバブル崩壊の煽りだの、リーマンショックの影響だのといったその時々のマクロ要因に責任を押しつけ、個別事業の責任はないといったような極めて適当な総括をして終わりにしてきた。そのようないい加減な事業運用の成れの果ての姿が現在の地方である。
・そして、今回も同様の事業方式が繰り返されているのである。クールジャパンネタの「忍者」を使えば、地方創生予算も引き出しやすい。 実は、この複数都道府県市町村合同の「忍者マーケティング事業」の1億7200万円だけでなく、地方創生加速化交付金だけでも「忍者列車事業」に約8188万円、「伊賀流クールジャパン~忍者(NINJA)に会える・学ぶ・なれるまち~」事業に約3716万円、「甲賀流忍者観光加速化事業」に約2578万円もの国費が投じられている。
・もし、本当に忍者に高い市場価値があるのであれば、投資家や金融機関による投資・融資が可能なはずだが、なぜか税金ばかりが投入される。それは、実際にはそこまでの市場価値がなく、民間としては身銭を切ってまで付き合いきれない現実を示している。次の大阪の事例はその典型例だ。
▽応募ゼロで廃止、付き合いきれない民間
・大阪では、既に事業困難であると判断されて終わってしまった、クールジャパンフロント事業なるものがあった。12年に「日本のおもちゃ・マンガ・アニメ展」を開催したものの、当初計画6000人のはずが、2120人しか動員できず、約1300万円の大赤字を記録。さらに、14年に同事業を推進する民間企業の公募を行ったところ、応募企業が1社も現れず、15年には正式に府議会で同事業の廃止が決定。累積で4700万円もの税金が投じられた上での幕引きだった。
・そもそも、民間企業公募の際のヒアリングでは「『クールジャパン』というテーマでビジネスを行うことが難しい」という回答が数多く寄せられていたという。 税金を使えば結局は損得無視で実行できるが、民間企業からすれば「儲からない適当なクールジャパン事業」なんかに付き合うようなことはあり得ないということなのである。ある意味、民間のほうが至極真っ当な結論を導き出したと言える。なぜ未だに全国各地でクールジャパンを切り口にした地方創生事業が展開されるのか、というのもこのような事例から分かる。
・儲からないクールジャパン事業の実像が垣間見られる。 この手のマジックワードとなると、もともと進んでいた事業の予算獲得のために流用されることがある。東日本大震災の後に、あらゆる予算が「震災復興」という名をつければ通るということで、沖縄の道路整備まで含まれていて問題になったこともあった。
▽無線LANやTPP対策までも!?なんでもありのクールジャパン
・クールジャパン政策は、最近では「ローカルクールジャパン」なる言葉が誕生。この名目になると、地域でもともとあった様々な事業がある意味なんでも「ローカルクールジャパン」と銘打って予算申請することが可能になっている実情がある。
・その典型の一つが、15年ローカル版クールジャパン政策で総務省が打ち出した「無線LAN」を整備するという事業である。「観光や防災の拠点における来訪者や住民の情報収集等の利便性を高めるため、公衆無線LAN環境の整備を実施する地方公共団体等への支援を行う」とある。が、このどこにいわゆるクールジャパンの要素があるのだろうか。頭を抱える。
・さらに、経済産業省のローカルクールジャパンでは「TPP対策JAPANブランド等プロデュース支援事業」を行っている。TPP対策までもがローカルクールジャパンとセットになっており、1億5000万円の予算が投入されている。 ローカルクールジャパンは、世界から人気のあるコンテンツを打ち出すどころか、地方にあるものを無理やり海外に押し出していくことに補助金をつける業務になりつつある。
・本来、世界から「クールだ」と思われるものであれば、市場原理で民間企業が投資してビジネスとして攻め込んでいく。それをしないのは、そもそも儲からない可能性が高いからである。クールジャパンで投資されている事案のどれだけが利益を生み出しているのだろうか。これまで見てきた「クールジャパン」事業は、予算拠出の根拠も矛盾に溢れ、事業性は陳腐である。
▽必要な本質的見直し、「何でもあり」はもうやめよう
・一方で、本来の日本が持つ地域の歴史や文化を活かした民間主導の取り組みとして注目を集めている宿「里山十帖」がある。越後湯沢からローカル線に乗り換え、10分ほど電車に揺られ、車でさらに山間へ移動してたどり着ける宿だ。 木造建築をリノベーションした母屋、自然を感じさせる露天風呂、そして食事として出てくるものは、江戸時代に栄えた地元の醸造技術や地野菜などを活用した決して贅沢ではないが、たしかにこの地域の歴史、文化を感じるもの。宿に揃う家具やアメニティなどはすべて、この宿の経営者であり『自遊人』という雑誌の経営者でもある岩佐十良氏が、日本各地から集めたこだわりの品々である。客単価4万~5万円にも関わらず、稼働率は90%を超え、私が今年4月に訪ねたときも台湾など海外から多数のお客様が訪れ、満室で賑わっていた。
・しかし、岩佐氏によると、この事業は、当初は破綻すると銀行から言い渡される中、様々な協力に支えられての船出だったという。先のような補助金依存で、成果もまともに示さない事業と比較するのも恥ずかしくなるような挑戦である。 こういった事例こそ、本当に日本が各地域に潜むコンテンツ力を活かした適正で挑戦的なビジネスとしてのクールジャパンなのではないだろうか。
・どこの地域もクールジャパンといえば忍者だアニメだといい、挙げ句の果てには無線LANやTPP対策までもがその範囲に入るような、なんでもかんでも「クールジャパン」の昨今。今一度、本質的な見直しが必要なのではないだろうか。 地方における儲からない自称クールジャパン事業に税金を突っ込んでも、クールにはならない。むしろ地方経済がさらに冷え込むだけだろう。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8247

次に、福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)の浅川澄一氏が2月1日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「日本式介護」のアジア輸出は成功するか?」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽官民挙げての介護事業海外展開プラン 日本の介護事業を優れた「日本式」と命名して海外に売り込む(
・介護事業者のアジア進出を政府が全面的に後押ししようとしている。現地で施設を作り、日本ならではの「日本式介護」を売り物にするという。進出国でその介護サービスへの評価が高まれば、日本に就労や研修で人材が送り込まれ、介護現場の人手不足の解消につながる。
・相手国には日本からの優れた介護技術が根付き、日本でのキャリア形成の道が拓け、そして日本では深刻な状況に陥っている介護人材の安定的な確保となるわけだ。そんな「ウイン-ウイン」構想が急ピッチで進行中だ。
・司令塔となる官民挙げての横断組織が2月中にも旗揚げする。政府や介護事業の業界団体、日本医師会のほか大手商社などが参加する「アジア健康構想協議会」である。オールジャパン体制というからかなりの大事だ。昨年来、自民党の国際保健医療戦略特命委員会(武見敬三委員長)が練り上げてきた介護事業の海外展開プランに沿った組織作りだ。
・なぜ、アジアへの進出なのか。答えは簡単、アジア諸国でも早晩、高齢化が進んで介護問題が起きてくる。富裕層を中心に大きな介護市場が浮上する。先輩国の日本が手本を示しながらリーダーシップを発揮できると踏んだ。国連や世界保健機構(WHO)が定める「高齢社会」へと各国は一斉に入りこむ。高齢化率7%を「高齢化社会」とし、14%になると「高齢社会」と定義される。
・中国は2000年に高齢化社会となり、2026年に高齢社会に突入する。韓国とシンガポールも同様の年に高齢化社会を迎え、それぞれ2018年と2019年に高齢社会に。インドやインドネシアが高齢社会に入るのは2050年と遅れるが、タイなど他のアジア諸国は2020年代には仲間入りする。欧米諸国では、高齢化社会から高齢社会への移行までに60年以上かけてきた国が多数だが、アジア諸国ではわずかに二十数年である。日本も24年だった。
・つまり、高齢化のスピードが速い。欧米的発想では追い付かない。高齢社会から次の段階、高齢化率21%の「超高齢社会」への進行も同様だ。台湾や韓国で介護保険制度に踏み切ったことでも明らかだろう。こうした背景を踏まえて、「今こそアジアへ」となったようだ。
・自民党案が政府の政策へと一気に進んだのは昨年9月。総理を本部長として全閣僚が参加する「日本経済再生本部」の下に、「未来投資会議」が開かれるようになった。未来投資会議は、安倍政権が掲げる成長戦略、GDP600兆円の大目標を達成するためにさまざまの具体的な新政策を検討する場である。昨年11月20日に開かれた第2回会議で安倍首相が「介護にパラダイムシフトを起こす」と大見得を切った。首相が強調したのは、「自立支援介護」への転換。「できないことを手助けするのではなく、できるように導く」介護である。 キーワードは「自立支援介護」の徹底にある。アジアに輸出する「日本式介護」というのは、この自立支援介護のことである。
▽自立支援介護とは?
・では、「自立支援介護」とは何か、慎重に吟味されねばならない。格好の手掛かりになるのは、未来投資会議の構造改革徹底推進会合に昨年10月20に提出された内閣官房健康・医療戦略室の資料である。「『アジア健康構想』について、自立支援介護等の海外展開と期待」と題されたものだ。厚労省ではなく、内閣官房それに経産省が旗振り役ということを押さえておきたい。
・そこでは、「自立支援介護とは」と題して、要介護高齢者が次第に重度化していく図が描かれ、要介護5になった75歳以上の後期高齢者が「リハビリと自立支援介護」を受ければ自立になる、と矢印で示されている(図1)。 次の頁では事例として、特養に入居した要介護5の86歳の女性が、8ヵ月後に要介護3へとなった経緯がカラー写真付きで表示。同じように自立支援介護の効果があった事例も3人の顔写真と共に紹介される。
・そして、全国10の特養でこのように介護度が改善したとして、その入居者の割合を数字を列挙する。東京の「杜の風・上原」は48%、岩手の「白梅の森」は37%……、というように(図2)。その数字は最高60%から最低30%まで並ぶ。
・最後の頁に「自立支援介護の理論構成」として、「基本ケアは水分、栄養、排便、運動をパッケージとして管理」とある。図も示しており「1500mlの水分摂取、1500Kcalの栄養摂取、生理的規則的な排便、歩行中心の運動」と極めて具体的である。
・この具体的な基本ケアの内容は、11月20日の未来投資会議でヒヤリングに呼ばれた「杜の風・上原」の斎藤貴也施設長の資料にも同じ言葉が並んでいた。4つの基本ケアの左側に、「介護が必要になる原因」として、「脱水、低栄養、排便困難、寝たきり・運動不足」と書かれ、その対策として「1500mlの水分摂取」などがあるわけだ。
・「杜の風・上原」は、先述の「アジア健康構想」の資料に出てきた全国10カ所の特養の一つでもある。11月20日のヒヤリングには、斉藤施設長のほかに竹内孝仁・国際医療福祉大大学院教授が招かれ高橋泰・国際医療福祉大大学院教授と翁百合・日本総合研究所副理事長の連名資料も提出された。
・翌日の日本経済新聞は「介護、回復・自立に軸足」「首相表明・改善なら報酬上げ・未来投資会議」という見出しを掲げ、読売新聞も「介護報酬に『効果』繁栄」「首相指示・症状改善なら加算」と報じた。首相が「介護が要らない状態までの回復を目指す」「介護はこれから自立支援に軸足を置く」という発言をしており、自立支援介護による報酬加算の道筋を首相が初めて是認。両社の見出しはこの発言を受けたものだ。
・「自立支援」という言葉は介護保険法の第一条に盛り込まれている。「自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため…介護保険制度を設け…」とある。そのため、今では介護保険サービスの目的は、要介護者の自立支援と一般的には理解されている。
・だが、重要なのは介護保険のサービスの目標と高齢者の生き方、満足のいく生活とは必ずしも重ならないということだろう。介護現場でどんなに自立支援に努力しても、加齢に伴う心身の衰えは避けられない。終末期を控えた90歳代の高齢者に、自立を促すのは酷だろう。
・そもそも介護保険制度を発足させるため1990年代に厚労省内で稼働していた検討会は「高齢者介護・自立支援システム研究会」であった。「寝たきり老人をゼロ」にするのが当時の目標であり、その考え方として「自立」が喧伝された。それから20年近く経つ。「自立支援介護」と呼ばれて、中身が大変わりしてしまったようだ。
▽自立支援介護による政策への異論の内容
・未来投資会議の反響は大きかった。その中で、この日の会合の提案に対して全国の特養の業界団体、全国老人施設協会(老施協)が反対を唱え、12月5日に塩崎厚労相に面会し意見書を提出した。 「杜の風・上原」をはじめ特養の改善事例を生んだ自立支援介護。その自立支援介護による政策への異論が、なんと同じ特養の全国組織から発せられた。
・反対論の内容は、まず介護報酬への加算案にあった。というのも、高橋泰さんと翁百合さんが提出した共同資料に「自立支援の標準的な取り組みを行わない事業所に対するディスインセンティブとなる仕組みも検討すべき」とあったからだ。つまり、自立支援介護を怠れば罰則としての減算もすべしというのだ。 これに対し、老施協は「特養の新規入居者は要介護3以上に限られ、その中重度者の要介護度が重くなるのは自然の摂理である」と反論した。要介護度が重くなったのは、必ずしも自立支援介護をさぼったからではないという主張である。その通りだろう。重度者が多いと報酬減算が増え、経営基盤を揺るがしかねない。
・加えて、老施協は「一部識者から提案されたいわゆる『自立支援介護』は、数ある観点から要介護度改善を唯一の評価尺度に置き、水分・食事・運動・排泄による基本ケアを万能的に捉えることで、自立支援の精神を一個の仕組み(加算等)に固定化しようとするもの」と、基本ケアの考え方にも疑問を呈する。
・もし、提案通りに実行されると、(1)要介護度改善の見込みが難しい高齢者の受け入れが滞る、(2)栄養摂取やリハビリを無理強いしかねない、(3)在宅復帰への脅迫になる――、とも指摘する。さらに「ADLはQOL向上を実現するための手段であり、それ自体が自立ではない」「QOLの向上を伴わないADLの回復の目的化が促進されかねない」「自立支援介護とは自己実現介護であるはず」と、かなりの直球を投じ批判した。真正面からの批判であるが、筋が通っている。
・とはいえ、実はこの批判自体に首をかしげるような一面もある。 老施協は12年前から会員向けの介護研修として「科学的介護実習講座・介護力向上講習会」を開いている。全国から特養の職員を集め、これまでに約5600人が受講した。そのテキストに自立支援介護論として先述の4種類の基本ケアがそのまま取り入れられている。講習会のリーダーである専任講師は、未来投資会議で自立支援介護を主張した竹内孝仁さん。竹内さんは老施協の理事でもある。
・ということは、厚労省への反論意見書との「整合性がはっきりしない」という声が出てくるのも当然だろう。今後の老施協の姿勢、とりわけ講習会のあり方が注目される。だが、4種類の基本ケアが俄に脚光を浴びてきたことは確かだ。アジア諸国への輸出戦略のキーワードになっているのは間違いない。
▽介護事業を成長戦略に
・このアジア戦略だが、介護の担当であるはずの厚労省は主役を担っていない。内閣官房と経産省がリード役となっている。日本の介護事業をとても優れた「日本式」と命名して、海外に売り込む。社会保障の「金食い虫」と見なされ、負のイメージが強い介護事業を、一転、成長戦略の輝ける星にイメージ転換させようという試みではある。全体としては介護事業業界にとって明るい前向きな考え方とみていいだろう。
・あらゆる商品、サービスがグローバル展開し、世界の各地で購入者、利用者の輪が広がっていくのは歴史の大きな流れである。施設や在宅サービスだけでなく、担い手の職員も国境が消えていく。外国人労働者を介護分野でも積極的に受け入れる時代を迎えた。国際展開そのものに異論はない。
・だが、海外で受け入れられるのは、特定の自立支援介護だけであろうか。介護保険の20年近い蓄積の中で、もっとほかにも成果はあったはずだろう。 認知症ケアの「センター方式」は世界に誇れる手法だろう。英国発祥の「パーソンセンタードケア」や米国発の「バリデーション」に匹敵する輝かしい認知症ケアである。介護保険の発足とともに普及した認知症の人たちの住まい、グループホームも大いに評価されていい。暮らしを再現するその運営法が、本家の北欧をしのぐと言われる事業所も数多い。
・介護保険サービスの「小規模多機能型居宅介護」は、日本独特の草の根介護の「宅老所」を制度化したもので、今や在宅サービスの中核と位置づけられている。この小規模型に集合住宅のサービス付き高齢者向け住宅を組み合わせた「拠点型サ高住」も評価したい。
・こうした個別のケア方式の根底にあるのは、「最期まで」を意識した考え方である。看取りや終末期までをきちんととらえている。日本には、人生を十分に生き切ったうえで死を迎えることへの称賛の言葉がある。「大往生」である。心身の動作だけに捕らわれるのではなく、心の満足度を考えたい。
http://diamond.jp/articles/-/116198

第一の記事にある 『この複数都道府県市町村合同の「忍者マーケティング事業」の1億7200万円だけでなく、地方創生加速化交付金だけでも「忍者列車事業」に約8188万円、「伊賀流クールジャパン~忍者(NINJA)に会える・学ぶ・なれるまち~」事業に約3716万円、「甲賀流忍者観光加速化事業」に約2578万円もの国費が投じられている』、とは驚くべき壮大な無駄遣いだ。 『本当に忍者に高い市場価値があるのであれば、投資家や金融機関による投資・融資が可能なはずだが、なぜか税金ばかりが投入される。それは、実際にはそこまでの市場価値がなく、民間としては身銭を切ってまで付き合いきれない現実を示している』、 『地方における儲からない自称クールジャパン事業に税金を突っ込んでも、クールにはならない。むしろ地方経済がさらに冷え込むだけだろう』、などの指摘はその通りで、電通など広告代理店だけを儲けさせるだけだろう。
第二の記事では、「自立支援介護」の海外展開プランを取上げているが、本来の厚労省は表に出ず、経産省がお門違いの「でしゃばり」をした例だ。ただ、記事で説明されている問題点は、細かな点ばかりで、肝心の日本式のやり方が、他のアジア諸国に受入れられるかという重大な問題点、が触れられてないのは残念だ。高齢化が急速に進むのは事実だが、食生活、生活習慣の違いなどはネックにならないのだろうか。なお、文中のADLとは日常生活動作、QOLは生活の質、の意味である。
・クールジャパンは、ここに取上げたもの以外も含む広範なもので、経産省が本年1月に公表した「クールジャパン政策について」の6-8頁に、クールジャパン機構の投資一覧があるので、のぞいて見られては如何?
http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/creative/20170105CJSeisakunitsuiteJanuary.pdf
タグ:クールジャパン機構の投資一覧 クールジャパン政策について 経産省 自立支援介護 アジア諸国でも早晩、高齢化が進んで介護問題が起きてくる 官民挙げての介護事業海外展開プラン 「日本式介護」のアジア輸出は成功するか? ダイヤモンド・オンライン 浅川澄一 地方における儲からない自称クールジャパン事業に税金を突っ込んでも、クールにはならない。むしろ地方経済がさらに冷え込むだけだろう 必要な本質的見直し、「何でもあり」はもうやめよう 無線LANやTPP対策までも!?なんでもありのクールジャパン 応募企業が1社も現れず 大阪では、既に事業困難であると判断されて終わってしまった、クールジャパンフロント事業 この複数都道府県市町村合同の「忍者マーケティング事業」の1億7200万円だけでなく、地方創生加速化交付金だけでも「忍者列車事業」に約8188万円、「伊賀流クールジャパン~忍者(NINJA)に会える・学ぶ・なれるまち~」事業に約3716万円、「甲賀流忍者観光加速化事業」に約2578万円もの国費が投じられている 「忍者」で地方創生!?煙に巻かれた成果 「クールジャパン」と「地方創生」もまさにこのマジックワードの部類に入る 予算が出ると思って猫も杓子も使うマジックワード 「クールジャパン」×「地方創生」の驚くべき〝惨状〟 無線LANにTPP対策まで、地方で広がる「何でもあり WEDGE Infinity 木下斉 (その4)(「クールジャパン/クリエイティブ産業」×「地方創生」の驚くべき〝惨状〟、「日本式介護」のアジア輸出は成功するか?) クールジャパン戦略
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