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ロケット・衛星打上げ(その2)(イーロン・マスクの火星移住船、日本の宇宙産業が「将来有望」だが伸びない理由) [科学技術]

昨日に続いて、ロケット・衛星打上げ(その2)(イーロン・マスクの火星移住船、日本の宇宙産業が「将来有望」だが伸びない理由) を取上げよう。

先ずは、昨年10月12日付け日経ビジネスオンライン「姿を現したイーロン・マスクの火星移住船 大ボラか? いや、本気も本気、意外に手堅い構想だ。」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・打ち上げ時重量、1万500トン、第1段には42基もの「ラプター」エンジンを装備、100人を火星まで運ぶ――イーロン・マスクの火星移民船構想は、事前の予想を遙かに超えたスケールの大きなものだった。
・9月27日、メキシコのグアダラハラで開催された国際学会「IAC2016」で、スペースX社のイーロン・マスクCEOは、事前に予告した通り、火星移民のための宇宙輸送システム「インタープラネタリー・トランスポート・システム」構想を発表した。
・彼は本気か、それとも誇大妄想的構想で、単に「ファルコン9」ロケット爆発事故による打ち上げ中断の危機にあるスペースXのイメージを回復させるつもりでホラを吹いているのか――。 構想を子細にみていくと、イーロン・マスクとスペースXが本気も本気、大マジであることがわかる。
・同構想は、使用する推進剤の種類というロケットの基本にまで立ち戻ってゼロから検討されている。しかも大胆な全体構想を支えているのは、意外なほど手堅い技術だ。スペースXが現在保有する技術か、その延長線上で開発中の技術しか使用していない。構想には初期的なものながら、コスト見積もりも附属しており、同社が技術だけではなく、ビジネス面からも検討を煮詰めていることがうかがえる。
・ちなみに、スペースXの新構想は、驚くほど楽観的なスケジュールと共に公表されるのが常だ。インタープラネタリー・トランスポート・システムにも、「2022年に最初の火星への飛行を行う」という予定表が附属している。  実際問題として、東京オリンピックの2年後に火星に旅立つスケジュールを遵守するのは無理だろう。が、イーロン・マスクが今後、「2022年運用開始」を前提にスペースXという会社をドライブしていくことは間違いない。
▽軌道上で推進剤補給を行い、火星を目指す
・スペースXの構想を理解するには、同社のプロモ映像を見るのが一番手っ取り早い。 インタープラネタリー・トランスポート・システムは、巨大な2段式のロケットで、第2段がそのまま100人が搭乗可能な有人宇宙船となっている。この第2段は、翼こそないものの、胴体が空気の中で浮く力(揚力)を発生するリフティング・ボディという形状になっており、火星の大気中を滑空できる。推進剤は、液化メタンと液体酸素を使用。共に冷却して密度を上げた状態でタンクに充填する。
・打ち上げは2段階で行われる。 まず、有人宇宙船を打ち上げる。打ち上げに使った第1段は、現行の「ファルコン9」と同じく、射点に戻って逆噴射で着陸・回収される。すると射点には、宇宙船とほぼ同型だが無人のタンカーが待っている。タンカーは推進剤である液体酸素とメタンを搭載している。第1段にタンカーを載せて再度打ち上げ、地球周回軌道で有人宇宙船とタンカーはランデブー、ドッキング。推進剤の補給を受けた有人宇宙船は、火星へと向かう。
・火星に到着すると、有人宇宙船は火星大気で減速して、最終的にロケットエンジンの逆噴射で着陸する。  帰還には火星で製造した推進剤を使用する。事前に推進剤を製造するプラントを火星表面に送り込み、火星大気の二酸化炭素と土中の水から、メタンと液体酸素を製造しておくのだ。推進剤にメタンと液体酸素を選んだ理由は、火星にある資源から製造できるからだったのだ。機体はすべて回収、再利用され、低コストの地球・火星定期便を可能にする。
▽100人乗りの有人宇宙船
・構想も大きいが、宇宙船もすごい。 100人乗りの有人火星宇宙船を打ち上げるシステム――インタープラネタリー・トランスポート・システムは桁外れに巨大だ。直径は12m、全高122mで打ち上げ時重量は1万500トン。地球を回る高度数百kmの地球低軌道に550トンものペイロードを打ち上げる能力を持つ。アポロ計画で人間を月に送り込むのに使われた「サターンV」ロケットの約4倍の能力だ。第2段の有人宇宙船は最大直径が17m、全長49.5m。第2段だけでも、日本のH-IIAや欧州のアリアンVなどの既存の衛星打ち上げ用ロケットをはるかに超える規模を持つ。
・第1段は、新規開発で300トンfの推力を発生する「ラプター」エンジンを42基も装備、第2段となる有人宇宙船は、大気圏内で使用するノズルの小さなラプターを3基、真空の宇宙で使用する大型ノズルを装着したラプターを6基の合計9基を備える。
・第1段、第2段とも、軽くて丈夫な炭素繊維強化炭素複合材料で作られる。スペースXは今年8月に東レと炭素繊維の長期供給の契約を結ぶことで基本合意した。「大量の炭素繊維を何に使うのか。既存のファルコン9を炭素複合材料で作り直すのだろうか」と話題になったが、どうやらインタープラネタリー・トランスポート・システムのためだったらしい。
・第1段は1000回、タンカーは100回、有人宇宙船は12回の再利用を前提として、火星への輸送コストは1トンあたり14万ドル(約1400万円)と算定している。
▽既存技術と開発中技術を使った意外に手堅い構成
・そもそも、本当にこのようなものが作れるのかと疑問が出るところだが、インタープラネタリー・トランスポート・システムはよく練られた構想だ。100人乗りの有人火星宇宙船を、月面に2名の宇宙飛行士を送り込んだサターンVのたった4倍の規模で実現しているのだから、非常に効率が高い。
・また、使用している技術を見ていくと、スペースX手持ちの技術と開発中の技術がうまく組み合わされている。計画のキーとなる主エンジンのラプターは、すでに燃焼試験を開始している。 ラプターを42基も束ねるのも一見非現実的に思えるが、すでに同社は「マーリン」エンジン9基を束ねた「ファルコン9」ロケットを運用しており、来年には27基を束ねた「ファルコン・ヘビー」ロケットの初打ち上げを控えている。42基を束ねるのは、ファルコン・ヘビーの延長線上の技術ということになる。
・また、巨大な機体構造を炭素複合材料で作るのは、ボーイング787などの旅客機で確立している技術だ。低温の推進剤を漏れなく充填するタンクの開発には、いくらかの時間が必要だろうが、すでにスペースXは、タンクの試作に手を付けている。
・第1段の回収は、ファルコン9で何度も行っている。これだけ巨大な機体の回収は大きなチャレンジだが、すでに緒には就いているわけだ。推進剤を冷却して高密度化する技術もファルコン9に適用済みだ。また第2段のリフティング・ボディ形態は、NASAが1960年代から何機もの試験機を運用して技術開発を行っており、米国にはかなりの技術的な蓄積がある。
▽課題は技術より資金調達か
・「確かに巨大な技術的挑戦だが、完成させる見通しはある」というところまで、インタープラネタリー・トランスポート・システムの検討は進んでいる。 むしろ課題は、これだけ巨大な宇宙輸送システムの開発費用をどこから捻出するかだろう。民間からは、回収が見込めない投資を得る事はできない。資金が問題であることはマスクCEOも認めており、プレゼンテーションでは資金獲得の方法として「Steal Underpants(パンツを盗む)」と、ギャグを入れていた。過激な内容で知られるテレビアニメ「サウスパーク」に登場する下着泥棒の妖精が、「フェイズ1、パンツを集める。フェイズ2……(無言)。フェイズ3、利益だ」と言うシーンからの引用である。
・その他の資金源として「衛星を打ち上げる」「貨物を国際宇宙ステーション(ISS)に運ぶ」「キックスターター(ネットからのファンディング)」「利益」と列挙した。スペースXの収益をすべて突っ込み、同時になりふり構わず資金を集める覚悟を表明したといっていいだろう。)(続く)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/217467/100700032/

次に、上記記事の続きとして、昨年10月13日付け日経ビジネスオンライン「イーロン・マスクの「超先読み×本気全開」経営 「木星に行く気でやれば、火星には行ける」」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・9月27日に米スペースXのイーロン・マスクCEOが発表した有人火星船「インタープラネタリー・トランスポート・システム」は、米国の宇宙政策に大きな影響を与える可能性がある。 現在、米国は有人宇宙活動を「地球周回軌道は民間に開放、それ以遠の深宇宙有人探査は国が行う」という切り分けを行っている。インタープラネタリー・トランスポート・システムは、この切り分けを踏み越えるからだ。
・一番最初に影響を受けるのは、米航空宇宙局(NASA)が開発している有人深宇宙探査船「オリオン」と、オリオン打ち上げ用ロケット「SLS」だろう。来年1月には、米大統領の交代がある。新大統領は就任1年後を目処に新たな新宇宙政策を打ち出すのが通例だ。2018年の米新宇宙政策に、スペースXの火星移民構想は大きな影響を与えることになるだろう。 さらにその先には、「そもそも国家が行う有人宇宙活動の意義はどこにあるのか」というより根源的な議論が起きる可能性もある。
▽急展開が得意なスペースX、予算に縛られるNASA
・スペースXの新規計画ではいつものことながら、インタープラネタリー・トランスポート・システムの開発スケジュールは極めて急速、かつ楽観的なものだ。  火星への打ち上げ機会は、地球と火星の位置関係からほぼ2年周期で巡ってくるが、2022年の打ち上げ機会には、最初の火星への飛行を行うとしている。だが、6年でこれだけ巨大な宇宙輸送システムを完成させることができるとは考えにくい。
・米国政府が青天井の予算を注ぎ込んだアポロ計画でも、サターンVロケットの開発には8年かかっている。おそらく、インタープラネタリー・トランスポート・システムの開発には10年以上かかり、実際の運用開始は最短でも2030年以降になると見ておくべきだろう。 もちろん、資金面の困難に直面して計画が消える可能性もある。
・前回掲載したコスト試算を見る限り、スペースXはシステムの製造コストをかなり安く見積もっている。これまでの有人宇宙システム開発の実績からすると、安すぎといわねばならない。それでも、スペースXは新しい技術を駆使してゼロから設計を始めることで、低コストを武器にして商業打ち上げ市場に参入した実績もある。「無理だろう」と思えても、「できない」とは言い切れない線を突いてくるのが、この会社の憎いところなのだ。
・米大統領選直前というタイミングで、民間宇宙ベンチャーからこのような構想が発表されたことで、NASAが開発中の有人宇宙船「オリオン」と打ち上げ用ロケット「SLS」は、新大統領の下で大きな影響を受ける可能性が出て来た。 現在米国は基本的に、2010年2月にオバマ大統領が発表した宇宙政策に沿って動いている。最初に述べた「地球を巡る有人宇宙活動を民間に開放し、NASAは月やそれ以遠の有人宇宙探査の技術開発に専念する」というものだ。
・当初は、完全に技術開発のみを行い、有人宇宙船やロケットの開発は行わない予定だったが、米議会で優位に立つ共和党が民主党のオバマ政権に対して「米国は国家としての有人飛行能力を放棄すべきではない」と巻き返し、NASAはオリオンとSLSを開発することになった。オバマ大統領の前のブッシュ大統領が打ち出した有人月探査構想では、月探査用としてオリオン有人宇宙船とと「アレス」ロケットを開発することになっていた。これらが若干名前を変えて復活したわけである。
▽行き先が決まらないまま、開発が遅れるオリオン
・このような経緯があったために、米宇宙政策におけるオリオンとSLSの位置付けは不明確だ。オバマによる宇宙政策は、有人探査を実施する目標を「月以遠、火星軌道まで」と抽象的にしか記述していない。有人探査を行う対象が地球に近づく小惑星なのか、火星なのか、それとも火星の衛星のフォボスとダイモスなのか、なにも決まっていない。オリオンとSLSは、行き先が決まらないまま開発されている。
・しかもオリオンとSLSの開発は、遅れつつある。オリオンは2014年12月に最初の無人飛行を実施し、大気圏再突入能力の試験を行った。次の打ち上げは当初2017年中を予定していたが、現在は2018年9月にSLS初号機で無人のオリオンを打ち上げ、月を巡って帰還することになっている。最初の有人打ち上げは2021年に有人で月周回軌道に入り、帰還することになっていたが、現状では2023年まで遅れる可能性があるとしている。
・オリオン、そしてSLSの開発はゆっくりと進んでおり、かつ完成しても打ち上げは数年に1回しかない。またSLSは、スペースシャトルの主エンジンや固体ロケットブースターなどの、手持ちの要素技術を活用する設計で、コストダウンしようにもハナから限界がある。NASAはその理由を予算的な制限によるものとしている。「予算を青天井で投入できた、アポロ計画のようにはスピーディに物事を進めることはできませんよ」というわけである。
▽政策の線引きを踏み越えるスペースX
・インタープラネタリー・トランスポート・システム構想は、明らかにオバマ宇宙政策の「地球周回軌道は民間、それ以遠は国」という棲み分けを踏み越えるものだ。 現状では、それは構想で終わる可能性もある。むしろ、あまりの壮大さに構想倒れに終わると見る人のほうが多いのではないだろうか。
・おそらく、当面は「スペースX社の言っていることは、あくまで構想である」というような理由で、NASA、さらには政策への影響を否定する動きが出る程度だろう。オリオンの開発は、欧州宇宙機関(ESA)も参加する国際協力計画である。国と国との約束を、簡単に変更することはできない。
・が、NASAのオリオン/SLSが、来年1月に就任する新大統領の政策決定プロセスの中でインタープラネタリー・トランスポート・システムと比較されたら――少なくとも、新大統領の宇宙政策における、有人宇宙探査の位置付けは激変を免れない。
▽ゼロベースだけに、効率の差はあきらか
・シャトルの技術的遺産を引きずったSLSと比べると、インタープラネタリー・トランスポート・システムは過去を絶ち切り、ゼロから技術的な最適化を狙って設計されている。当初から強く低コスト化を意識しており、開発された技術の応用範囲も広そうだ。 しかも提唱したのは、新規設計のロケットを開発し、商業打ち上げ市場への参入に成功した実績を持つスペースXだ。現時点で構想でしかないにしても、それなりの影響を米宇宙政策に与えると考えるのが妥当だ。
・例えばインタープラネタリー・トランスポート・システムはロケットの逆噴射で着陸する設計なので、搭載推進剤の量によっては、月にも着陸できる可能性がある。火星への飛行を行う前に、月にこれまでとは桁の違う人数――例えば10人とか――を月面に送り込むことができるかも知れない。すくなくともそのような有人月着陸は国際政治面でのデモンストレーションとしては大きな意味を持つ。
・今後、具体的にスペースXが開発に向けて動き出すならば、「そもそも国家が行う有人宇宙活動の意義はどこにあるのか」=「なぜ、国がやらねばならないのか?」という根源的な議論を巻き起こすことになるだろう。  1961年4月の、ユーリ・ガガーリンによる最初の有人宇宙飛行以来、国家による有人宇宙飛行は、その国の技術水準や、未知のフロンティアに挑む姿勢を示す指標として機能してきた。同時に「そもそも税金を使ってまでして、人が宇宙に行く意味はあるのか。予算の無駄づかいではないか」という疑問もまた根強い。
・自動車の開発を、国家が主導した時代があった。現在は民間の自動車産業がビジネスとして自動車を開発・製造・販売している。「スペースXができるなら、国が威信をかけて有人宇宙船を開発する必要なない」という議論が当然出てくると思わねばならない。その議論は、将来的なISSの運用にも関係するだろうし、ISSに参加する日本にも影響が及ぶと思っておく必要がある。
▽木星や土星への有人飛行も視野に
・イーロン・マスクCEOはIAC2016のプレゼンテーションを「BEYOND MARS(火星を超えて)」と題する4枚のイラストで締めくくった。木星と土星に到着し、生命存在の期待がかかっている木星の衛星エウロパと、土星の衛星エンセラダスに着陸するインタープラネタリー・トランスポート・システムの姿だ。
・発表の10日前の9月17日、彼はTwitterで「マーズ・コロニアル・トランスポーターは、もっと遠くまで行けることが分かった。新しい名前を考えないと」と発言した。火星移民を目的に最適なシステムを設計してみると、木星や土星まで行けるものになったというのである。それゆえ今回の構想は、インタープラネタリー(惑星間)と命名されていたのだった。
・夢と野心に溢れたメッセージだが、同時にこの姿勢こそが、イーロン・マスクとスペースXの「勝ちパターン」の象徴、と言える。 スペースXは「ファルコン9」ロケットで商業打ち上げ市場参入に成功し、NASAからの補助金でISSへの物資輸送船「ドラゴン」を開発し、輸送の契約を取ることに成功した。たが、それは同社の目的ではなく、その先にある「クルー・ドラゴン」有人宇宙船による有人宇宙飛行の民営化が狙いだった。
・そして、クルー・ドラゴンは、単に地球周回軌道との往復だけではなく、改装により火星に向かう「レッド・ドラゴン」宇宙船を仕立てることも可能な設計になっていた。火星へ100人もの人を送り込む「インタープラネタリー・トランスポート・システム」は、実は木星や土星にも行ける能力を持っていた。
▽遙か先を見越して、目先の課題をぶち破る
・そこにあるのは、常識の枠を越えた「超先読み」の目標設定と、それを本気で実現しようとする姿勢だ。遥か先を見越した技術開発、マーケティングによって、目先の競争や技術の壁をぶち破っていくのである。 インタープラネタリー・トランスポート・システムは、確かに誇大妄想と断じたくなるほどの巨大で大がかりな宇宙輸送システムだ。しかも、これは単なる輸送システムであって、具体的な火星植民の手法についてはまだ何も発表されていない。
・しかしながら同時にインタープラネタリー・トランスポート・システムが、スペースXのいつもの勝ちパターンに沿っていることを軽く見てはいけないだろう。イーロン・マスクとスペースXは次の大きな目標を設定し、「そこまでやり抜く」という前提で動いている。「木星・土星に行くつもりで進めば、途中の火星までは行ける」のだ。
・追記:10月4日、SLSの開発に参加するボーイング社の、デニス・ミュレンバーグCEOは、シカゴで開催されたテクノロジー関連の会議「ファッツ・ネクスト」で、「2030年代に火星に最初に降りる宇宙飛行士は、ボーイングのロケットに搭乗するだろう」と述べた。スペースXのインタープラネタリー・トランスポート・システムを念頭に置いて、ボーイングとしては、それがそう簡単には完成しないだろうと考えているわけだ。と、同時にこのような発言をしたことそのものが、スペースXの構想をボーイン グが無視できないでいることを示しているのではなかろうか。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/217467/101100033/

第三に、2月1日付け日経ビジネスオンライン「日本の宇宙産業、「将来有望」だが伸びない理由 肝心の雇用、ピークの1990年代から2割減」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・ロケットや人工衛星などをはじめとする宇宙産業。先日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)のミニロケットの打ち上げが失敗したとはいえ、IHI系が手掛けた「イプシロン」2号機の成功や米国のスペースXといった国内外のベンチャー企業の興隆もあり、近年は成長産業としての期待が膨らみつつある。それは正しいが、日本の現状を点検してみると、楽観は禁物だ。
・「あまり広くは知られていないが、宇宙産業の雇用はやや持ち直しているとはいえ、停滞が続いてきた。大学などで宇宙関連をせっかく研究しても就職先として受け皿が乏しい」。JAXA幹部は顔を曇らせる。宇宙産業で主要な企業はロケットを手掛ける三菱重工業、IHI、人工衛星を手掛ける三菱電機、NECの通称「ビッグ4」。これらの企業を頂点とするピラミッド構造のもと、中小サプライヤーが存在している。
▽官需依存で予算頭打ち、企業は人員抑制
・日本航空宇宙工業会によると、宇宙関連事業の従業員数は直近の数字が拾える2014年で約8000人。ピークの1990年代初頭には1万人を超えていた。同じデータでは売上高に極端な変動はなく、3000億円前後で推移しているため、一人当たりの生産性は高まっているとも読める。だがこの数字からはお世辞にもヒトとカネが流れ込む魅力的な成長産業とは言い難い。これまで日本企業の場合、コストを重視する海外などの販路を開拓できておらず、国内の官需に頼った収益構造が特徴で、売上高はほぼ各省庁の宇宙関係の予算とイコールになる。厳しい財政状況を背景に予算が頭打ちとなっており、そうした閉塞感漂う事情を見越して企業側も人員を抑制してきた。
・「振り返ってみれば、1990年に結ばれた日米衛星調達合意が日本の衛星産業発展に大きな打撃を与えた」と指摘するのは三菱電機の蒲地安則執行役員だ。貿易不均衡是正を目指す米国政府の圧力で、日本政府は通信・放送衛星など実用衛星について公開調達すると同意させられた。その結果、競争力の高い米国などの衛星メーカーが大挙して日本に参入。成長途上にあった日本勢は実用衛星から駆逐され、民間のスカパーJSATやBS放送などが現在運用中の実用衛星のほぼすべてを米国メーカー製が占める。官需依存の一因だ。
・一般的に役所関連の仕事は大きな利益や成長が見込めるものではないが、リスクが限定的でそれなりに安定している。このため、宇宙産業の企業側も必ずしも現状がよいとは思っていない一方で、それなりに業界内の秩序が出来上がっており、状況を変えるべく積極的に動く動機が乏しい。米国などの宇宙ベンチャー活発化を引き合いに、もっと商用ビジネスを強化しないのか他の宇宙産業大手の首脳に尋ねたところ、「まずはJAXAの仕事をしっかりやる」と建前とも本音ともつかない答えが返ってきた。
▽防衛産業と宇宙産業の類似性
・記者は既視感を覚えた。防衛産業との類似性だ。顧客が防衛省に限られプレーヤーが固定的な市場だ。入札制度の関係上、利益率は厳格にコントロールされるものの、ピラミッドの上位、大手になればなるほど事業としては比較的安定している。戦車や潜水艦など各種の防衛装備品の性能は高いとされるが、販路が国内限定で数がさばけず、どうしてもコストが割高になる。
・政府は友好国との関係強化のほか、防衛産業の基盤維持や効率化なども視野に入れ、2014年に防衛装備移転3原則を閣議決定。海外への輸出を条件付きで認めるようになった。ただ、防衛産業の多くは右にならえのスタンスで基本的にはまだ様子見だ。急いで海外開拓に乗り出さなければ直ちに立ち行かなくなるほどの危機感を抱いていないからだろう。日本の安全保障という需要がなくなることもない。
▽宇宙産業が雇用を生むには戦略的な後押しが必要
・ただ、宇宙産業にも明るい兆しはある。米国ほどではないがベンチャー企業の登場、精密機器が得意なキヤノンなど異業種からの新規参入だ。ベンチャーでいえば、今後増加が見込まれる超小型衛星の打ち上げをにらんだロケット開発のインターステラテクノロジズや、50基の超小型衛星による地球観測で収集したデータの活用を図るアクセルスペースなどだ。定点的な地球観測が実現すれば、インフラや農作物などの管理や資源探査、マーケティングなどに必要な膨大なデータを収集できる。また既存大手でも三菱重工がアラブ首長国連邦(UAE)から火星探査機の打ち上げを2016年に受注するなど、海外開拓の本格化に向けた機運が徐々に高まりつつある。
・トランプ米大統領の論理ではないが、産業の存在意義は究極的にはその国に安定した雇用を生み出すかどうか。宇宙が将来有望な領域であることは数十年前から言われてきたものの、放っておいて自然に伸びるほど甘くないのはこれまでの経緯で明らかだ。宇宙産業が一定の雇用を生み出し、ベンチャーや海外開拓などの動きを成長軌道に乗せるには、各種の優遇策や政府のトップセールス、事業の予見可能性を高めるための法整備など幅広く戦略的な後押しが今こそ欠かせない。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/221102/013100402/?P=1

昨日は日本の立ち遅れた現状を伝えたが、対照的にイーロン・マスクの火星移住船計画は、夢と現実的可能性が上手くミックスされたものになっている。 『軌道上で推進剤補給を行い、火星を目指す』、 『帰還には火星で製造した推進剤を使用する。事前に推進剤を製造するプラントを火星表面に送り込み、火星大気の二酸化炭素と土中の水から、メタンと液体酸素を製造しておくのだ』、というのは、多くの困難が待ち受けているとはいえ、方法論としては、持って行く燃料を少なく出来る極めて合理的なものだ。しかも、『既存技術と開発中技術を使った意外に手堅い構成』、ということであれば、単なる「夢物語」ではなさそうだ。最近はインターネットを使ったクラウドファンディングによる資金調達も徐々に出てきたが、やはり本件の場合は、『課題は技術より資金調達か』、ということであれば、通常のクラウドファンディングなどでの調達額とは、ケタ違いに多額の資金が必要ということなのだろう。ただ、技術面でも火星の水を如何に取り出すかなど課題も多いと思われる。
火星移住船計画は、米国の有人宇宙活動の切り分け(『「地球周回軌道は民間に開放、それ以遠の深宇宙有人探査は国が行う」』)、を踏み越えるようだが、トランプがどう判断するかは分らないが、民間でこうしたことが出来るというのであれば、恐らく大歓迎だろう。イーロン・マスクが、『遙か先を見越して、目先の課題をぶち破る』、という方法論で動いているとのことだが、こんな大きな構想力を持った人物がいるアメリカは、悔しいことではあるが、やはり「ファースト」になるにふさわしい国のようだ。
第三の記事にある 『日本政府は通信・放送衛星など実用衛星について公開調達すると同意させられた。その結果、競争力の高い米国などの衛星メーカーが大挙して日本に参入。成長途上にあった日本勢は実用衛星から駆逐され、民間のスカパーJSATやBS放送などが現在運用中の実用衛星のほぼすべてを米国メーカー製が占める』、というのは困ったことではあるが、何でも自国で作らないと気が済まないというのは、グローバル化した世界では経済合理的でない。やはり「比較優位原則」で、自国の強みに特化してゆくべきなのだろう。
タグ:帰還には火星で製造した推進剤を使用 インタープラネタリー・トランスポート・システムは、この切り分けを踏み越える NASA ゼロベースだけに、効率の差はあきらか そもそも国家が行う有人宇宙活動の意義はどこにあるのか」=「なぜ、国がやらねばならないのか?」 ISSに参加する日本にも影響が及ぶと思っておく必要 300トンfの推力を発生する「ラプター」エンジンを42基も装備 事前に推進剤を製造するプラントを火星表面に送り込み、火星大気の二酸化炭素と土中の水から、メタンと液体酸素を製造しておく 機体はすべて回収、再利用 オリオン打ち上げ用ロケット「SLS」 有人深宇宙探査船「オリオン」 急展開が得意なスペースX、予算に縛られるNASA 米国は有人宇宙活動を「地球周回軌道は民間に開放、それ以遠の深宇宙有人探査は国が行う」という切り分けを行っている イーロン・マスクの「超先読み×本気全開」経営 「木星に行く気でやれば、火星には行ける」 課題は技術より資金調達か 炭素複合材料 既存技術と開発中技術を使った意外に手堅い構成 射点には、宇宙船とほぼ同型だが無人のタンカーが待っている。タンカーは推進剤である液体酸素とメタンを搭載 第1段は、現行の「ファルコン9」と同じく、射点に戻って逆噴射で着陸・回収 軌道上で推進剤補給を行い、火星を目指す ビジネス面からも検討を煮詰めている 大胆な全体構想を支えているのは、意外なほど手堅い技術 使用する推進剤の種類というロケットの基本にまで立ち戻ってゼロから検討されている 火星移民船構想 イーロン・マスク 100人を火星まで運ぶ 姿を現したイーロン・マスクの火星移住船 大ボラか? いや、本気も本気、意外に手堅い構想だ 日経ビジネスオンライン (その2)(イーロン・マスクの火星移住船、日本の宇宙産業が「将来有望」だが伸びない理由) ロケット・衛星打上げ 100人乗りの有人宇宙船 インタープラネタリー・トランスポート・システム 防衛産業と宇宙産業の類似性 その結果、競争力の高い米国などの衛星メーカーが大挙して日本に参入。成長途上にあった日本勢は実用衛星から駆逐され、民間のスカパーJSATやBS放送などが現在運用中の実用衛星のほぼすべてを米国メーカー製が占める 貿易不均衡是正を目指す米国政府の圧力で、日本政府は通信・放送衛星など実用衛星について公開調達すると同意させられた 官需依存で予算頭打ち、企業は人員抑制 日本の宇宙産業、「将来有望」だが伸びない理由 肝心の雇用、ピークの1990年代から2割減 遙か先を見越して、目先の課題をぶち破る 木星や土星への有人飛行も視野に 推進剤は、液化メタンと液体酸素 スペースX社
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