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ドイツ(その1)(トルコの国民投票結果がドイツにもたらした「二重のショック」、ドイツ軍部を侵食する「極右思想」の暗い影、メルケル4選ほぼ確定!) [世界情勢]

今日は、ドイツ(その1)(トルコの国民投票結果がドイツにもたらした「二重のショック」、ドイツ軍部を侵食する「極右思想」の暗い影、メルケル4選ほぼ確定!) を取上げよう。昨日までのフランスと同様に、これまでは「欧州」としてきたものを分けた形である。

先ずは、在独の作家の川口 マーン 惠美氏が4月21日付け現代ビジネスに寄稿した「トルコの国民投票結果がドイツにもたらした「二重のショック」 敵の味方は実は「ドイツ人」だった?」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽EUを戸惑わせる投票結果
・4月16日、トルコで国民投票があり、トルコの大統領権限の強化が過半数で承認された。エルドアン大統領が精魂傾けていた懸案だ。
・ドイツでは、エルドアン大統領は「独裁者」ということで、蛇蝎のごとく憎まれている。最近は、ドイツ−トルコ政府間の関係もよくない。ところが今回の投票では、さしあたってエルドアン大統領の権限強化が決定したわけで、以来、ドイツメディアは上を下への大騒ぎになっている。
・国民投票の翌日、ドイツの国営放送第1テレビのメインニュースでは、「皆さん、今晩は」のあと、やおら、「トルコの憲法改正をめぐる国民投票でのエルドアン大統領のギリギリの勝利のあと、国際選挙監視団は、それについて批判的な意見を発しました」と報道した。国営放送第2テレビも同様で、まさに批判一色だ。
・ドイツ内相も不正の徹底追及を求めており、トランプ米大統領とプーチン露大統領が、エルドアン大統領に祝辞を送ったのとはえらい違い。ちなみに私は、不正があったなら、これほどギリギリの結果にはならなかったのではないかと思っている。
・19日、野党が提出していた投票結果の無効化は却下された。 とはいえ、エルドアン氏が行おうとしている憲法改正が危ういものであることは間違いない。現在のトルコは議院内閣制だが、憲法改正後は大統領に権力が集中し、立法にも司法にも介入できるようになる。つまり、三権分立が骨抜きになる可能性大。そんなトルコとEU加盟交渉を進めているEUは、今、かなり戸惑っている。
・一方、今回のトルコの国民投票は、ドイツに違った意味でも大きなショックをたらした。 エルドアン大統領の支持者は、トルコの田舎に多い。つまり今回の改憲案も、伝統を重んじる田舎の「イエス」票で力強く支えられた。イスタンブール、アンカラ、イズミールの3大都市は進歩的であるため、反エルドアン色が強く、軒並み「ノー」票が上回った。 ところが、4番目に大きいトルコ人の票田では、エルドアンの明確な勝利となった。それはどこか? 実は、ドイツなのである。
▽在独トルコ移民たちの言い分
・ドイツには、トルコ系の人が300万人住んでおり、うち145万人がトルコでの参政権を持っている。今回投票したのはその約半分の70万人だったというが、そのうちの63%がエルドアン大統領に「イエス」票を投じた。  トルコでの「イエス」票は51.4%だったから、ドイツでのエルドアン支持率は、トルコ本国以上ということになる。
・それがわかった途端、ドイツでは、この明確な「イエス」についての議論が爆発した。 ドイツ人は、自分たちがトルコ移民に民主主義の洗礼を施したと思っている。なのに、その彼らが独裁者エルドアンを支持したのだ。ドイツ人にしてみれば、これほど不愉快な事はない。
・しかも「イエス」票を投じたのは、下層階級で失業している人たちばかりでなく、ドイツに何十年も住み、あるいは、ドイツで生まれ、ドイツの教育を受け、ドイツ社会で確固たる地位を獲得しているエリートたちも同様なのだ。おまけに、彼らの多くはドイツ国籍も持っている。つまり、ドイツの選挙でも投票できるのである。
・二重国籍の取得が容易になったのは、SPD(ドイツ社民党)と緑の党の連立政権下だった。左派党も二重国籍を支持している。しかし、今回の現象を目の当たりにして、もともと二重国籍に反対だったCDU(キリスト教民主同盟)やCSU(キリスト教社会同盟)からは、当然のことながら疑問の声が上がり始めた。
・一方、左派党はそれに対し、「CDUは自らの移民政策の失敗を二重国籍のせいにしようとしている」と反論。 緑の党の代表ジェム・オズデミア氏は「在独トルコ人は、自分たちが法治国家の利点を得ながら、トルコの同胞に独裁を押し付けているのは残念」としながらも、「ドイツ人は何十年も間違いを犯し、在独トルコ人の心を傷つけてきた。移民政策はさらに改善されなければならない」と反省。 彼の言いたいのは、ドイツ人は移民にもっと寄り添うべきで、移民のドイツ国籍取得の手続きはさらに簡易化しなければならないということだ。
・また、SPDの議員で、移民問題を扱う連邦の特使を務めているアイダン・オーズス氏(女性)は、「ドイツでトルコの政治についての非難が渦巻いていた中、在独トルコ人の目に、エルドアン大統領が力強い存在に映った」と分析。 オズデミア氏もオーズス氏も、トルコ系2世の政治家だ。
▽ドイツでエルドアンが支持される理由
・興味深いのは、在独トルコ人会の代表、ソフロー氏のコメント。 「在独トルコ人のエルドアン支持は、彼らのドイツに対しての抗議の表明である」(彼自身は、「ノー」派)。 何に対する抗議か? 在独トルコ系が差別され、疎外され続けてきたことへの抗議だという。もし、これが真実なら、ドイツの50年余にわたる移民政策は、完全に失敗したというしかない。ドイツ人は頭を抱えている。
・おそらく多くのトルコ系移民は、必ずしも、エルドアン大統領のしていることが正しいとは思っていない。ただ、ドイツ人がトルコの政治を批判し、エルドアンを独裁者と弾劾するのを見れば、当然、自分たちが攻撃されているように感じる。人間は皆、外国に住むと愛国者になるものだ。
・だから、たとえエルドアン政権に疑問を感じていたとしても、ドイツ人のトルコ批判に加わることは感情的に難しい。そうするうちに、ドイツ人に対して、「お前たちに何の関係がある?」という反感が生まれたとしても無理はない。 そんなモヤモヤしたところに、エルドアン大統領が登場し、勢いよくドイツを攻撃し、移民の心のモヤモヤを発散させてくれた。 トルコ人としてのアイデンティティはリフレッシュされ、長年の鬱憤も晴れた。そのうえ、彼らがドイツでは見出すことのできなかった心地よい「故郷」まで感じることができたに違いない。こうなると、エルドアン支持は自然な流れだ。
・トルコ人はドイツに溶け込む意思が希薄だとよく非難されるが、ドイツにいるトルコ系の人からは、「私たちが溶け込まないのではなく、ドイツ人が溶け込まさないのだ」という話をよくきく。 確かに、国籍もドイツで、自分ではすっかりドイツ人のつもりなのに、容貌のせいで、ドイツ人からトルコ人扱いされる人は少なくない。ドイツでは、トルコ人に対する差別感情はまだまだ根強い。トルコ人としてのアイデンティティもなく、おまけにドイツ人からも阻害されたら、当然、憂鬱な気分になるはずだ。
▽今後の展開は日本の参考にもなる
・現在ドイツ、およびEUでは、これまで何十年も行ってきたトルコのEU加盟交渉を中止するべきだという声が高くなっている。その大きな理由として挙げられているのが、トルコでの死刑復活の可能性だ。 EUは、加盟の条件として、過去にトルコに様々な条件を出してきたが、その中の一つが死刑廃止。EUにとっては、死刑の有無がいわばEU加盟のレッドラインでもある(アムネスティ・インターナショナルによれば、死刑執行の一番多いのは、ダントツが中国。その次は、数は大きく減るが、イラン、イラク、サウジアラビア、そしてアメリカ合衆国)。
・だから、トルコはすでに死刑を廃止しているのだが、エルドアン大統領はその復活を目指しており、いずれ国民投票に問うという。 いずれにしても、トルコにはもうEUに加盟する意思はないようだ。EU側が何十年も交渉だけして、結局はトルコを加盟させるつもりがなかったことは、いまや誰の目にも明らかなので、当然のリアクションと言えるだろう。
・ただ、ドイツ政府はこの点についてはEUと歩調を合わせておらず、トルコの加盟交渉の存続を望んでいる。現実問題として、トルコとドイツが共有している利害があまりにも複合的で、トルコと事を構えるわけにはいかないからだ。
・私はこれまで、日本は厄介な隣国に囲まれて苦労が多いと思っていたが、気がつくと、ドイツも昨今、敵意を持つ隣国に悩まされ始めた。現在、その最先鋒がトルコだ。 ドイツと日本は、軍事力を行使せず話し合いや技術・経済援助で他国との問題の解決を図ろうとするところがよく似ている。だからこそ、今後、ドイツがトルコにどう対応していくかは、まことに興味深い。 日本はそれをよく観察し、自らの隣国との問題解決に積極的に役立てるべきではないか。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51541

次に、同じ川口 マーン 惠美氏が5月12日付け同誌に寄稿した「いま、ドイツ軍部を侵食する「極右思想」の暗い影 前大統領暗殺未遂事件で明らかに」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽謎のシリア難民「ベンジャミン」
・今年の1月末、オーストリアのウィーン空港の身障者用トイレに、拳銃が隠されているのが見つかった(詳しい隠し場所は発表されていない)。そこで警察は、誰かがこの拳銃を取りに来るに違いないと見て、罠を仕掛けた。 2月3日、トイレに現れたのは、ドイツ軍の将校、フランコ・A(28歳)だった。隠し場所を開けた途端、Aはあっという間に大勢の警官に取り囲まれた。 
・Aは取り調べに対して、「ウィーンで酔っ払って、草むらで用を足そうとしたら、偶然、拳銃を見つけた。それをジャケットに入れたまま、翌日空港まで来てしまったため、慌ててトイレに隠した」と説明したという。小学生でも信じないだろう。 オーストリア警察がドイツ当局にAの指紋照合を求めたところ、すぐに一致する指紋が見つかった。ところが奇妙なことに、それは将校フランコ・Aではなく、一人のシリア難民のものだった。
・フランコ・Aの件は、そのあとドイツ警察に引き継がれ、俗に言う「泳がせる」作戦が取られた。以後、Aの行動は厳重に見張られ、電話は盗聴された。その結果まもなく、Aが極右思想の持ち主で、重大テロを計画している疑いが強まってきた。 4月26日、ついにAが逮捕された。その翌日、事件はようやく公になったが、報道内容は驚くべきものだった。
・Aは北フランスにあるドイツ軍とフランス軍の合同旅団、狙撃大隊291の所属だったが、そのAが2015年12月、ダーヴィッド・ベンジャミンという偽名で難民申請をしたという。 その架空の人物は1988年生まれで、ダマスカス出身の果物商の息子。キリスト教徒のため、「イスラム国」から迫害され、ドイツに逃げてきた。ただ、「ベンジャミン」はアラビア語ができず、申請はフランス語でなされた。
・その結果、ベンジャミンはシリア難民として認められ、おまけに月400ユーロの手当と宿舎の部屋まで貰った。一方、将校Aはその後も何食わぬ顔で軍に勤務し続け、1年が過ぎても、誰も彼の二重生活を疑うことはなかった。
▽新たに浮上した問題点
・2015年は、ドイツが難民で溢れかえった年だ。メルケル首相が「難民ようこそ政策」を打ち出し、ドイツ国民がそれに賛同したため、この1年間で89万人の難民が入ったと言われている。このころ、難民受け入れ機関は極端に混乱し、それが長いあいだ続いた。
・奇妙な話がある。2016年の夏、ヨーロッパ旅行をしようとやってきたある中国人が、旅の初めにドイツのハイデルベルクでお財布をすられた。そこで警察に行ったところ、難民と勘違いされてしまった。すぐにパスポートを没収され、ぎゅうぎゅう詰めのバスに詰め込まれ、着いた先は難民施設。 どうもおかしいと思ったが、言葉が通じず、ようやく勘違いが判明したのが数日後。しかし、今度はパスポートが行方不明で、結局、3週間の予定の旅行の16日間を難民施設で過ごすはめになった。気の毒な話だが、受け入れ側の混乱していた様子はよくわかる。
・おそらくフランコ・Aも、こういうどさくさに紛れて、申請をしたのだろう。 フランコ・Aと共に捕まったのが、学生、マティアス・Fだ。5月5日の報道によれば、Fの部屋で1000発もの弾丸が見つかった。しかも、そのうちの90%が軍所有のものだという。フランコ・Aは、狙撃訓練に使う弾丸の管理をしていたらしく、それをごまかして、友人の家に貯めていたと見られている。
・9日には、やはりフランコ・Aと同じく狙撃大隊291所属の陸軍中尉、マクシミリアン・Tも逮捕された。 彼らがテロの標的にしていたのが、2月に任期を終えて退任したガウク大統領や、マース法相など、リベラルな政策を進めていた政治家だという。そして、テロが終われば、その罪を「難民ベンジャミン」に押し付け、国内に反難民の空気を作ろうとしていたらしい。現在、政府もメディアも大騒ぎになっている。
・ただ、問題視されているのはテロ計画だけではない。軍の内部に極右思想が横行し、テロ分子まで隠れていたということが一番の問題なのである。 そこで慌てて兵舎を検査したら、鉤十字やら、ナチ国防軍のイラスト、それどころか鉄兜まで出てきた。実はドイツ軍の中には、昔から常にナチのシンパが大勢おり、それがずっと黙認されてきたともいう。 鉄兜がナチ心酔の証拠か、ただの戦争コレクションかはわからないが、国防大臣は責任を問われ、今、かなり追い詰められている。
▽軍隊とリベラリズムの壁
・戦後のドイツでは、ナチは絶対悪であり、学者がナチの研究をすることさえ難しい。ヒトラーの功罪のうち、「罪」を暴く分には問題ないが、ちょっとでも「功」を挙げた途端、学者生命が危うくなる。ヒトラーのしたことは「悪いことばかりではなかった」と言っただけで、罪に問われるのがドイツなのだ。 特にメルケル首相の政治は、ここ数年、完璧にリベラルの方向に舵を切っている。ネオナチやら極右などは、絶対にあってはならない。
・ただ、どうも腑に落ちないのは、軍とリベラリズムの相性だ。 ドイツ連合軍の兵士たちは、入隊の時に宣誓をする。「私はドイツ連邦共和国に忠実に仕え、ドイツ国民の権利と自由を勇敢に守ることを誓います。神かけて誓って」というのが宣誓の文句。最後の「神かけて誓って」は、徴兵の兵隊の宣誓文にはなかったが、現在のドイツは徴兵制を取っていない。つまり今の兵隊は、全員が神の名にかけて、ドイツの忠僕として、ドイツを防衛することを誓っているのだ。
・なのに実際には、今のドイツでは「ドイツのために」という言葉はすでにタブーだ。そんなことを口にすると、悪しき国家主義者の嫌疑がかかる。そもそも「戦う」ことも、あまり良くない。 兵隊は、洪水の土嚢運びで頑張れば感謝されるが、アフガニスタンに銃を抱えて行くと、非難がましい目で見られる。どうしても軍事行動をするなら、ドイツのためではなく、EU、あるいは、世界平和のために戦わなければならない! しかし、EUは実体がないし、世界平和はドイツ兵の手にあまる。
・一方で、ドイツ国防省は今、国防費の増額と、軍備拡張の真っ最中だ。メディアも、ロシアやトルコの脅威を煽る。中東だって極端にきな臭い。 これらの矛盾が、すべてドイツ兵に降り注ぎ、叩き込まれた愛国心は屈折する。これでは、兵舎でこっそりナチ・グッズを集めたくなる気も、わからないではない。
・問題は、軍内部の極右化が一部の異端者だけの話であったか、あるいは、浸透しているのかだが、その点については、かなり報道が規制されているように感じる。
▽責任を取るのは誰か
・事件の波紋は、国防省だけではなく、内務省にも広がっている。 シリア難民に化けて、「イスラム国」のテロリスト、あるいは、北アフリカ諸国や旧ユーゴスラビアからの犯罪者や経済難民が入国してしまったことはすでに知られているが、アラビア語を解せないドイツ人までが入れたとなると、審査のずさんさを証明したようなものだ。 内務省は、ただちに疑わしいデータ2000件を調べ直すと発表した。
・ちなみに、去年、ベルリンのクリスマス市の群衆にトラックが突っ込んだテロがあったが、あの時、チュニジア人の犯人がトラックの中に落としていったという身分証明書が、事件から数日経って見つかった。あれも、変な話だった。
・いずれにしても、ドイツでは2015年、どのような人間が、何人、どこから入国したかが把握できていない。  この責任を取るのは、国防大臣でも内務大臣でもなく、「来た難民は全員入れろ」と、担当省庁や自治体に無理難題を押し付けたメルケル首相ではないだろうか。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51715

第三に、同じ川口 マーン 惠美氏が5月19日付け同誌に寄稿した「メルケル4選ほぼ確定!敵の自滅で「選挙戦の目玉」さえなくなった ドイツの政治地図は千変万化」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・ドイツの政治地図は千変万化。去年、土俵際まで追い詰められたかのように見えたメルケル首相(CDU・キリスト教民主同盟)が、今、不死鳥のごとく蘇り、再び、ドイツどころか、EUの中心に君臨しそうな勢いだ。CDUは現在、極めて磐石。国母メルケルは、押しても引いても揺らがない。
・一方、SPD(社民党)は、急上昇したかと思いきや、突然、再び急降下。9月の総選挙まであと4ヵ月あまりというのに、もうどうにもならない落ちぶれ方となっている。
▽SPDにいったい何が起こったのか
・かつてのSPDは、名首相ヴィリー・ブラントやヘルムート・シュミットを生んだ誉れ高き国民政党だった。ところがここ数年はメルケル首相の陰でうだつが上がらず、支持率は20%近くまで落ち込んでいた。 2年前の5月には、「次期の総選挙でメルケル首相と戦っても勝ち目がないので、対抗馬を立てるのはやめてはどうか」と言い出して、ひんしゅくを買ったSPD議員もいたほどだ。
・そこで困ったSPDは、党首の入れ替えを宣言した。不人気だったガブリエル氏に党首の座を降りてもらい、EU議会の議長を務めていたマーティン・シュルツ氏を担ぎ出した。気分一新、新党首で9月の総選挙に臨もうとしたわけだ。 この決定により、SPDの人気は急上昇し始めた。死に体だったSPDの支持率はメキメキ上がり、すでに2月6日の世論調査でCDUを越えた。新規入党者も殺到し、それどころか、「メルケルとシュルツ、どちらを首相にしたいか?」という問いでは、シュルツ氏がメルケル氏を凌いだのである。巷ではこれを「シュルツ効果」と呼んだ。
・シュルツ氏がSPDの臨時党大会で正式に党首に選ばれたのが3月19日。上昇気流で自信を取り戻しつつあったSPD議員は、シュルツ氏にすべてをかけたらしく、シュルツ氏の得票率は前代未聞の100%。まるで独裁政権下の投票だ。感極まったシュルツ氏は目に涙、SPDの議員たちも、全員が自己陶酔に陥った。
・ところが信じられないことに、この後、あっという間に息切れが起こった。 3月26日に行われたザールランド州の州議会選挙で、SPDはCDUに敗北。この頃、シュルツ効果という風船は早くもしぼみ始めていたのだ。 それでも、シュルツ氏とSPD幹部は現実を見ず、この敗北はザールランド州の問題であるとして片付けた。ただ実際には、シュルツ氏はその後、「運はボールに似ている。再び落ちるために上がる」というドイツの諺を地でいくことになる。
・1ヵ月前には「世論調査はシュルツ効果を証明!」と煽ったニュースの見出しが、「シュルツ効果の空気漏れ」に変わり、そのうち「シュルツ効果とは何だったのか?」に変わった。 そして、5月7日。フランスの大統領決勝戦の陰に隠れるように、ドイツ北部のシュレスヴィヒ−ホルシュタイン州の州議会選挙が行われた。シュルツ氏の応援にもかかわらず、ここでもSPDが大幅に票を減らし、CDUの勝利で終わった。
▽メルケルの高笑いが止まらない
・しかし最大の地滑りは、その1週間後、5月14日に起こった。ドイツで最大の人口を誇るノートライン−ヴェストファレン州の州議会選挙で、またもやSPDがCDUに敗北したのだ。 ノートライン−ヴェストファレン州は、かつてのドイツ産業の心臓部であったルール炭田工業地帯を抱える州で、SPDの大地盤だ。さらにシュルツ氏の出身州でもある。
・だからこのショックは大きかった。立て続けの3度の敗北。しかも、通常、ノートライン−ヴェストファレン州の選挙結果が、その後の総選挙の成り行きのバロメーターになると言われている。 その重要な州で記録的な敗北を喫したのだから、シュルツ効果はもう跡形もなくなった。それどころか、ベクトル方向が変わって、「シュルツ効果」が党の足を引っ張っている可能性さえある。テレビの画面では、敗北の会見をするシュルツ党首の後ろに、お通夜のような表情のSPD幹部が並んだ。その翌日、ウィキペディアの「シュルツ効果」というページは削除された。
・しかし、シュルツ氏のこの急上昇と急降下はいったい何だろう。今年の初め、栄えあるEU議会の議長であった彼が、ドイツの国政に移り、SPD党首に担ぎ出され、党員の前で「私はドイツの首相になりたい!」と豪語して万雷の拍手を浴びてから、まだ2ヵ月も経っていない。あたかもジェットコースターに乗ったような気分だろう。
・一方、笑いが止まらないのはCDUのメルケル首相だ。 シュルツ効果がバブっていたころ、ほかのCDUの政治家があたふたと対策に頭を悩ませていたあいだも、彼女は眉ひとつ動かさず、「私は何も心配はしていません」と言っていた。確かにいつもと同じく、メルケル首相は何も心配しなくても、敵は勝手に自滅していく。
・いずれにしても、シュルツ次期首相という夢は潰えた。 シュルツ氏の今後に関しては、「貧富の格差をなくした平等な社会」を売り物にしたわりには、長いEU政治家時代に、かなり強引な我田引水で膨大な財産を蓄えたというような話がたくさん噴出しており、再び人気が上昇することはなさそうだ。こんな人物を、全会一致で党首にしてしまったSPD党員は、今、後悔の真っ最中だと思う。
・つまり、これから総選挙までの4ヵ月、もうドンデン返しは起こりそうにない。よほどのことがない限り、CDUの勝利は確実。そして、メルケル首相がさらに4年間、ドイツを、そしておそらくEUをも支配することになるだろう。 CDUは、「このように勝利が確実すぎる状況では、何を目玉に選挙戦を戦えばわからない」という贅沢な悩みを抱えることになった。
▽EU王国の今後
・さて、5月14日、正式にフランス大統領に就任したマクロン氏は、翌15日、最初の表敬訪問としてベルリンを選んだ。 マクロン大統領は、選挙戦の間から、「ドイツとの協力」と「EUの増強」を唱えていたが、迅速なメルケル詣でである。
・マクロン大統領の実力は、6月の議会総選挙の結果を見ないと何とも言えないが、彼の目標をひとことでいうなら、「フランス経済の救済をドイツのお金でやること」だ。 一方、メルケル首相は彼女なりに、フランス新大統領の使い道を模索している。EU増強は良いにしても、ドイツのお金がEUの赤字国のためにだだ漏れになることは認められない。
・この日、デンマークラジオのオンライン版ニュースは、今後4~5年のEU政策を詳細に予想した。もちろん「メルケル女王」と「マクロン王」の下で。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51786

第一の記事にある 『ドイツでのエルドアン支持率は、トルコ本国以上』、というのはドイツ人にとっては確かに大きなショックだったろう。 ただ、『たとえエルドアン政権に疑問を感じていたとしても、ドイツ人のトルコ批判に加わることは感情的に難しい。そうするうちに、ドイツ人に対して、「お前たちに何の関係がある?」という反感が生まれたとしても無理はない。 そんなモヤモヤしたところに、エルドアン大統領が登場し、勢いよくドイツを攻撃し、移民の心のモヤモヤを発散させてくれた。 トルコ人としてのアイデンティティはリフレッシュされ、長年の鬱憤も晴れた。そのうえ、彼らがドイツでは見出すことのできなかった心地よい「故郷」まで感じることができたに違いない。こうなると、エルドアン支持は自然な流れだ』、との指摘はなるほどである。帰属意識が混乱する二重国籍は、日本では認めない方がよさそうだ。
第二の記事にある ドイツ軍将校が難民問題での大混乱に乗じて偽名で難民申請して二重生活を送っていたというのには、心底驚いた。また、普段はキッチリした仕事をするドイツ人といえども、あれだけの大混乱のなかでは、こうしたことが起こり得るというのを改めて実感した。 『問題視されているのはテロ計画だけではない。軍の内部に極右思想が横行し、テロ分子まで隠れていたということが一番の問題なのである。 そこで慌てて兵舎を検査したら、鉤十字やら、ナチ国防軍のイラスト、それどころか鉄兜まで出てきた。実はドイツ軍の中には、昔から常にナチのシンパが大勢おり、それがずっと黙認されてきたともいう』、というのはさもありなんだ。
第三の記事で、SPDのシュルツ効果による支持率の急上昇と2か月も経たないうちの急低下、というのにも驚かされた。ドイツの政治風土はもっと安定していると勝手に思い込んでいた自らの誤りを認識させられた。ただ、歴史的に考えると、ナチスの政権奪取の過程では、とんでもなく不安定なこともあったので、現在の局面だけで判断することの危険性を再認識させられた。 メルケル首相については、『シュルツ効果がバブっていたころ、ほかのCDUの政治家があたふたと対策に頭を悩ませていたあいだも、彼女は眉ひとつ動かさず、「私は何も心配はしていません」と言っていた』、とは、やはり大したものだ。マクロン大統領の目標は、『「フランス経済の救済をドイツのお金でやること」』、のようだが、どの程度で妥協するのか見物だ。
タグ:いま、ドイツ軍部を侵食する「極右思想」の暗い影 前大統領暗殺未遂事件で明らかに ドイツ人は、自分たちがトルコ移民に民主主義の洗礼を施したと思っている。なのに、その彼らが独裁者エルドアンを支持したのだ。ドイツ人にしてみれば、これほど不愉快な事はない ドイツでのエルドアン支持率は、トルコ本国以上 モヤモヤしたところに、エルドアン大統領が登場し、勢いよくドイツを攻撃し、移民の心のモヤモヤを発散させてくれた。 トルコ人としてのアイデンティティはリフレッシュされ、長年の鬱憤も晴れた。そのうえ、彼らがドイツでは見出すことのできなかった心地よい「故郷」まで感じることができたに違いない。こうなると、エルドアン支持は自然な流れだ 多くのトルコ系移民は、必ずしも、エルドアン大統領のしていることが正しいとは思っていない。ただ、ドイツ人がトルコの政治を批判し、エルドアンを独裁者と弾劾するのを見れば、当然、自分たちが攻撃されているように感じる。人間は皆、外国に住むと愛国者になるものだ ドイツにいるトルコ系の人からは、「私たちが溶け込まないのではなく、ドイツ人が溶け込まさないのだ」という話をよくきく エルドアン大統領 トルコの国民投票結果がドイツにもたらした「二重のショック」 敵の味方は実は「ドイツ人」だった? EUを戸惑わせる投票結果 ドイツ ドイツも昨今、敵意を持つ隣国に悩まされ始めた。現在、その最先鋒がトルコ 在独トルコ人のエルドアン支持は、彼らのドイツに対しての抗議の表明 取得が容易になったのは、SPD(ドイツ社民党)と緑の党の連立政権下 ドイツの50年余にわたる移民政策は、完全に失敗したというしかない。ドイツ人は頭を抱えている 独裁者 ドイツがトルコにどう対応していくかは、まことに興味深い。 日本はそれをよく観察し、自らの隣国との問題解決に積極的に役立てるべきではないか 4番目に大きいトルコ人の票田 憲法改正後 三権分立が骨抜きになる可能性大 トルコの大統領権限の強化が過半数で承認 二重国籍 ドイツで生まれ、ドイツの教育を受け、ドイツ社会で確固たる地位を獲得しているエリートたちも同様なのだ。おまけに、彼らの多くはドイツ国籍も持っている。つまり、ドイツの選挙でも投票できるのである 偽名で難民申請をしたという 現代ビジネス (その1)(トルコの国民投票結果がドイツにもたらした「二重のショック」、ドイツ軍部を侵食する「極右思想」の暗い影、メルケル4選ほぼ確定!) 川口 マーン 惠美 シリア難民として認められ、おまけに月400ユーロの手当と宿舎の部屋まで貰った 将校Aはその後も何食わぬ顔で軍に勤務し続け、1年が過ぎても、誰も彼の二重生活を疑うことはなかった 陸軍中尉、マクシミリアン・Tも逮捕 テロの標的にしていたのが、2月に任期を終えて退任したガウク大統領や、マース法相など、リベラルな政策を進めていた政治家 テロが終われば、その罪を「難民ベンジャミン」に押し付け、国内に反難民の空気を作ろうとしていたらしい 軍の内部に極右思想が横行し、テロ分子まで隠れていたということが一番の問題 兵舎を検査したら、鉤十字やら、ナチ国防軍のイラスト、それどころか鉄兜まで出てきた 実はドイツ軍の中には、昔から常にナチのシンパが大勢おり、それがずっと黙認されてきたともいう。 軍とリベラリズムの相性 今のドイツでは「ドイツのために」という言葉はすでにタブーだ。そんなことを口にすると、悪しき国家主義者の嫌疑 そもそも「戦う」ことも、あまり良くない どうしても軍事行動をするなら、ドイツのためではなく、EU、あるいは、世界平和のために戦わなければならない! 国防省は今、国防費の増額と、軍備拡張の真っ最中 問題は、軍内部の極右化が一部の異端者だけの話であったか、あるいは、浸透しているのかだが、その点については、かなり報道が規制されているように感じる メルケル4選ほぼ確定!敵の自滅で「選挙戦の目玉」さえなくなった ドイツの政治地図は千変万化 SPD(社民党)は、急上昇したかと思いきや、突然、再び急降下 SPD EU議会の議長を務めていたマーティン・シュルツ氏を担ぎ出した SPDの人気は急上昇し始めた あっという間に息切れ メルケルの高笑いが止まらない メルケル首相だ。 シュルツ効果がバブっていたころ、ほかのCDUの政治家があたふたと対策に頭を悩ませていたあいだも、彼女は眉ひとつ動かさず、「私は何も心配はしていません」と言っていた EU王国の今後 彼の目標をひとことでいうなら、「フランス経済の救済をドイツのお金でやること」だ メルケル首相は彼女なりに、フランス新大統領の使い道を模索している。EU増強は良いにしても、ドイツのお金がEUの赤字国のためにだだ漏れになることは認められない
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