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英国EU離脱問題(その15)(ブレグジット実現に道筋つけた英保守党「歴史的勝利」の理由、英総選挙 どっちつかずより「とっとと離脱」を選んだイギリスは大丈夫か、英国のEU離脱が確実となった今 「日米英同盟」結成に動くべき理由) [世界情勢]

英国EU離脱問題については、4月13日に取上げた。総選挙を経た今日は、(その15)(ブレグジット実現に道筋つけた英保守党「歴史的勝利」の理由、英総選挙 どっちつかずより「とっとと離脱」を選んだイギリスは大丈夫か、英国のEU離脱が確実となった今 「日米英同盟」結成に動くべき理由)である。

先ずは、みずほ総合研究所欧米調査部 上席主任エコノミストの吉田健一郎氏が12月14日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「ブレグジット実現に道筋つけた英保守党「歴史的勝利」の理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/223490
・『過半数超え87年以来の大勝 コービン労働党首は辞意  12月12日に投開票が行われた英国の総選挙は、ボリス・ジョンソン首相が率いる与党・保守党が大勝した。 保守党の獲得議席は過半議席を上回る364議席となる見通しで、マーガレット・サッチャー首相が3選を果たした1987年総選挙以来の議席数を獲得した。 他方、野党第一党の労働党は1935年総選挙以来の大敗を喫し、203議席の獲得にとどまった。 保守党が過半数を大幅に超える議席を得たことで、英下院での離脱協定の批准や関連の実装法案などが早ければ年内か、来年1月に可決される見通しで、「2月1日のブレグジット実現」の道筋がついた。 支持率調査では選挙戦終盤に労働党が追い上げていたこともあり、直前の予想では保守党が過半議席を獲れないのではないかとの見通しがささやかれていただけに、今回の結果は驚きをもって受け止められた。 特に労働党の大敗は事前予測を大きく上回る結果で、例えば、英調査会社YouGovは、労働の獲得議席数を中央値で231議席、レンジでみても206~256議席と予測していた。 選挙結果を受けて、労働党のジェレミー・コービン党首は辞任の意向を表明した』、私自身は「離脱」には反対なので、総選挙結果には失望した。
・『メッセージが明確だった保守党 “混迷疲れ”の有権者の支持得る  何が保守党と労働党の命運を分けたのか。明暗を分けた3つのポイントがある。 第一は、ブレグジット政策の成否である。 今回の選挙の主要争点であるブレグジットについて、保守党のメッセージは明確で、一方の労働党のメッセージは曖昧だった。 保守党のジョンソン首相は、「ブレグジットを実現させる(Get Brexit Done)」というシンプルかつ分かりやすいスローガンを繰り返し、16年の国民投票以降の長きにわたるブレグジット交渉と英下院の迷走に疲れた有権者の支持を得た。 これに対し労働党は、選挙で勝った場合には3カ月以内に、より穏健な離脱を再交渉し、6カ月後にその結果とEU残留とを国民投票にかけることを公約としていた。 しかし、コービン党首は国民投票となった場合に労働党が党として残留と離脱のどちらの側に立つかという基本的な問いに明確に答えることすらできなかった。 このため、伝統的な労働党の地盤で離脱支持者が多い中西部で保守党に票が流れただけでなく、残留を支持する有権者の票も固めきれなかった。 第二は、マニフェストの内容である。 保守党の歳出拡大策が、労働党よりも多くの有権者の支持を得た可能性がある。 保守党は拡張的な財政政策を打ち出し、国民保健サービス(NHS)改革や、治安といった世論の関心が高い分野に積極的に資金を投入し、国民保険料減額など国民受けの良い政策を公約とした。 他方で労働党は左派的なアジェンダを追求し、鉄道、公共、郵便事業などの再国有化、法人税の19%から26%への引き上げ、富裕者への所得増税と中低所得者への増税凍結など、サッチャー政権以降、採られてきた経済政策と逆方向の再分配政策を提唱した。 しかし、こうした政策の恩恵を得る中西部、労働者階級の有権者はブレグジット政策への反対から保守党に流れ、時代に逆行する政策は都市部の有権者や若者には届かなかった。 第三は、党首の人気である。 2019年9月にIpsos MORIが行った世論調査によれば、コービン党首は野党の党首として、77年の調査開始以来最も人気がない党首と見なされている(不支持率は76%)。ブレグジット政策の取り扱いについても回答者の77%が「悪い」と答えた。 17年の前回選挙では労働党が勝利したが、今回の選挙では保守党が勝利したストーク・オン・トレント北の選挙区から立候補した労働党のスミース議員は、英スカイTVとのインタビューの中で「コービン氏の個人的な動きが、今回の私の選挙区での(敗北という)結果をもたらした」と厳しく非難している』、どうみても「労働党」のオウンゴールだ。不利と分かっている総選挙に何故賛成したのかも疑問だが、「16年の国民投票以降の長きにわたるブレグジット交渉と英下院の迷走に疲れた有権者」を前にしては、党派的理由で総選挙に反対する選択肢はなかったのかも知れない。
・『SNPがスコットランドで議席増、自民党は不振で党首も落選  総選挙で、保守、労働党以外のそのほかの党では、明確に離脱取りやめを打ち出した自由民主党の獲得議席は、12議席の見通しで、スウィンソン党首も議席を失った。 650の選挙区に分かれて、各選挙区で最多票を得た候補1名が当選する小選挙区制は、支持基盤が広い大政党に有利といわれる。 このため、有権者は自由民主党を支持していたとしても、自らの票が死票とならないよう、当選しそうな大政党に投票する傾向がある(戦略的投票といわれる)。この結果、支持率調査と比べても自由民主党の獲得議席数は伸びなかった。 スコットランドの地域政党であるスコットランド民族党(SNP)は、スコットランドでの議席数を増やした。 SNPは、スコットランドの英国からの独立を問う住民投票を2020年内に実施することを公約として掲げており、その前哨戦としての位置づけがあった。) そのため、保守党が2017年の前回選挙よりさらにスコットランドでの議席数を伸ばしたことで、SNPは住民投票実施の要求を強める可能性がある。 ただし、英国では住民投票の実施には中央政府での立法が必要である。保守党は住民投票の実施に反対しており、公約実現の見通しは立っていない。 その他、ナイジェル・ファラージ党首が率いる新党ブレグジット党は、議席を獲得できなかった。そもそも、メイ前政権の下で穏健化するブレグジットに不満を抱く有権者の受け皿として登場した同党は、ジョンソン政権の誕生とともに支持率は低下に転じた』、「ブレグジット党は」ブレグジットを掲げる「ジョンソン政権」を前にしては、存在意義を失ったのだろう。
・『来年2月1日に「実現」 3月からEUとFTA交渉  保守党の勝利により、ブレグジットは実現が確定したといえる。 今後は、英下院で離脱協定が批准された後、離脱協定実施法案など幾つかの関連法が可決され、2月1日に英国はEUを離脱することとなる。 EU条約第50条第3項、およびEU決定(EU) 2019/1810によれば、英・EU両者が批准プロセスを終えた月の翌月初日あるいは20年2月1日のどちらか早いほうが離脱日となる。 保守党が下院で過半議席を握り、かつ所属議員の造反はほぼ起こらないと予想され、そう考えると、下院採決は円滑に進む見通しだ。 20年2月1日から同年12月31日まで、英国は離脱に向けた移行期間に入る。 移行期間中は英国にEU法が適用されることから、離脱したという事実以外、経済活動に与える影響はほとんどないだろう。 在英のEU市民や在EUの英国民についてもその地位は保証される。財、サービス、資本の移動についても従来同様に自由である。 移行期間に英国とEUは自由貿易協定(FTA)の締結に向けた交渉を行う。 英国側の首席交渉官はリズ・トラス国際貿易相であり、EU側は新任のフィル・ホーガン欧州委員(通商担当)になる。なお、ホーガン委員はアイルランド出身で、前農業・農村開発担当の欧州委員である。 EU側では、まず首脳会合において交渉の基本方針を定め、EUとして英国との通商交渉を開始する権限を欧州委員会に付託するための交渉指令を、EU閣僚理事会において承認する必要がある。 ホーガン委員は、アイルランド紙とのインタビューの中で「(3月17日のアイルランドの祭日である)聖パトリック・デイ」までには交渉開始が可能と述べている』、「移行期間」での「英国とEUは自由貿易協定(FTA)の締結に向けた交渉」は簡単ではなさそうだ。
・『FTAは1年ではまとまらず 移行期間は延長される見込み  ただ、FTA交渉の難しさを考えると、英国とEUの間のFTA交渉は、移行期間中にはまとまらず、移行期間は延長される公算が大きい。 ホーガン欧州委員(通商担当)は、前述のインタビューの中で、「(長年EUの一員であった)英国との交渉はゼロから始まるわけではなく、通常3~4年かかる他国との交渉よりもより早期に締結が可能」との見通しを述べている。 だが、3月に交渉を始めても、わずか8カ月強で発効までこぎつけられるという見通しは楽観的過ぎるだろう。 FTA交渉が2020年12月末までの移行期間中に終わらない場合、英国とEUの間で関税や通関手続きが突然、発生し、いわゆる「合意なき離脱」と同じような状況に陥ってしまう。 こうした状況を避けるべく、離脱協定第132条では移行期間の1年または2年の延期が認められている。ただし延期の決定は、7月1日までにされなければならないため、交渉開始からほとんど時間はない』、「延期の決定は、7月1日までにされなければならない」、のであれば、当初の交渉は「延期」を睨んだものとなり、本腰が入らないのではという気もする。
・『EUとの「公平な競争関係維持」に向けた規制の調和が争点に  FTA交渉の焦点は、英・EUが公平な競争環境(Level Playing Field、LPF)の維持に向けた包括的な枠組みを作れるかという点だろう。 EUは、離脱した英国が一方的に自由化を進め、EU企業の競争力がそがれることを懸念している。 LPFの維持に向けた製品基準や労働基準、国家補助など競争政策、徴税の仕組み、社会保障・労働に関する基準、環境保護に関する規制などの枠組みなどが、争点としては考えられる。 例えば、英国が特定の産業に有利になるような補助金政策をとったり、過度に低い法人税を課したりして、競争上の不利をEU企業にもたらすことは、LPFを阻害する可能性があるとEU側はみなしている。 さらに、LPFが守られているかどうかの監視や、紛争処理、判決の執行、制裁の付加などの役割をどのような機関がどのような形で担うのか、といった点も協議される。 英国はEUのルールに縛られずに独自の自由な規制環境の中で第三国との通商関係を構築したいと考えており、EUとの交渉は難航する可能性がある。 こうした中で、財の取引は広範な自由化が進む公算が大きい。これまでEUが結んできたカナダとの包括的経済貿易協定(CETA)や日本との経済連携協定(EPA)の実績を考えると、英・EU間のFTAにおいても全量に近い関税撤廃が予想される。 しかし、関税が撤廃されるといっても、原産地規則(ROO)に関する取り決めなど、優遇関税を適用する上でのルール作りについては、交渉の余地が大きい。 他方で、サービス取引については、単一市場にいる現状と比してクロスボーダーでのサービス提供は難しくなるだろう。 英国にとって重要な金融サービスについては、1カ国で営業免許を取得すれば残りのEU27カ国に対して自由にクロスボーダーで金融サービスを提供することができる「パスポート」は使えなくなる。 在英金融機関は、EU内に新たな拠点を作るなど既に対応済みであり、大きな混乱は生じないとみられるが、英国とEUが将来関係に関する政治宣言の中で20年6月末までに行うことで合意した、同等性評価の結果が注目される』、「同等性評価」を厳しく運用すれば、英国は手足を縛られることになるので、どこで着地させるかは、確かに注目点だ。
・『ジョンソン首相は第三国とも幅広いFTA目指す  筆者は11月に英国へ出張し、離脱推進派のエコノミストと議論を行ったが、その時に感じたのは、離脱を支持するエコノミストの自由貿易推進への強い意志である。 保守党の政治家を含む離脱推進派は、ブレグジットを国内外で自由化を進めるための手段と見なしている。 従って、第三国とのFTAをいかに早く、広く、深く進めていけるかは重要である。FTAの優先順位としてはEUが筆頭に来るだろうが、その後、米国、オセアニア諸国、日本などが続くとみられる。 第三国とのFTAについて、離脱派エコノミストのグループであるEconomists for Free Tradeは、第三国とのFTAの効果だけで英GDPを中期的に4.0%押し上げると推計している。 英国内市場の開放による競争促進や価格低下がGDPの中期的な増加をもたらすと考えているためだ。 一般的にFTAのメリットとしては、自由化による輸出先市場の開放が挙げられることが多いが、ここでは国外市場開放のメリットではなく、国内市場開放のメリットを狙っている。 中期的にみて、離脱派のエコノミストが考えるように「自由で開放的なビジネスの場」として英経済が拡大していくという保証はない。むしろ現在のエコノミストのコンセンサスはその逆で、英国は中期的に競争力を失うというものだ。 しかし、少なくとも保守党の政治家たちは、市場開放による新自由主義的な政策を拡張財政とセットにしながら追求している』、「Economists for Free Tradeは、第三国とのFTAの効果だけで英GDPを中期的に4.0%押し上げると推計」、EU離脱に伴うマイナス効果は入ってない可能性がある。「現在のエコノミストのコンセンサスはその逆で、英国は中期的に競争力を失うというものだ」、この方がありそうなシナリオだ。

次に、在英ジャーナリストの小林恭子氏が12月14日付けNewsweek日本版に掲載した「英総選挙、どっちつかずより「とっとと離脱」を選んだイギリスは大丈夫か」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/kobayashi/2019/12/post-6_1.php
・『<イギリス人は3年前の国民投票でEU離脱を選択してしまったことを後悔していると思ったが、フタを開ければ、強硬離脱派のジョンソンが歴史的大勝を収め、再度の国民投票を提示した労働党は大敗した。一体何が起こったのか> イギリスで12日、下院(定数650)総選挙が行われ、ボリス・ジョンソン氏が率いる保守党が単独過半数を超える365議席を獲得して、圧勝した。ここまでの議席数は、1987年のマーガレット・サッチャー首相以来。今年7月末の首相就任時には「イギリスを壊す男」とも言われたジョンソン氏はなぜ勝てたのか。 一方、社会主義的政策で若者層を中心に人気を得ていた労働党のジェレミー・コービン党首。世論調査では保守党との差を当初の20ポイントから10ポイントにまで縮め、追い上げていたものの、59議席を失うという驚きの結果になった。 保守党と労働党、こうも大きく明暗を分けたのはなぜだろう』、小林氏はどのように見ているのだろう。
・『「ブレグジットを片付けてしまおう」  単独過半数が確定した後、ジョンソン首相は保守党員の前に立ち、演説を始めた。「初めて保守党に投票した方は、今回、私たちに票を貸してくれただけかもしれません」「これは自分がロンドン市長に選ばれた時も、こう言ったのですが」と前置きをして、右腕をブルブルと振るわせた。「投票用紙の保守党の欄にチェックを入れた時、手が震えたかもしれません」。少し笑いが起きる。しかし、雰囲気はあくまでも真面目だ。「あなたは次回、労働党に投票するのかもしれません。でも、あなたが私たちを信頼してくれたことに感謝します。私は、私たち保守党はあなたの信頼を決して無駄にしません」。拍手が沸いた。 伝統的に労働党に投票する多くの有権者が今回保守党に投票したこと。これこそ、ジョンソン氏率いる保守党の成功の印だった。 選挙期間中は、「コービン政権を成立させてはならない」と何度も繰り返してきた。実際に、コービン排除に成功したのである。 「さあ、これからブレグジットを片付けてしまいましょう」。「ブレグジットを実行する(Let's get Brexit done)」というフレーズは、選挙運動中に何度も繰り返してきた。 しかし、ここで終わってしまっては、保守党最大のジョーク男と言われるジョンソン氏らしくない。そこで、「その前に......朝食を片付けてしまいましょう!」。聴衆がどっと沸いた。 名門イートン校からオックスフォード大学に進み、ジャーナリストから下院議員、ロンドン市長、そしてまた下院議員、さらに外相にまでなったジョンソン氏をイギリスでは「ボリス」以外で呼ぶ人はほとんどいない(今は「首相」という呼び方が多いかもしれないが)。 テレビのクイズ番組内でのユーモアあふれる応答によって国民的人気者になり、「いつも笑わせてくれる政治家」として知られるようになったが、政治信条は風見鶏的で、離脱を推進する政治家となったのも、その方が首相になれる確率が高かったからに過ぎない。事実の誇張や女性蔑視、人種差別的とも捉えうる危ない表現がひょこっと顔を出す人物である。) それでも、ジョンソン氏は保守党を大勝に導いた。 その鍵は、ブレグジットだった。キャンペーン中、「ブレグジットを実行する」、「もうオーブンに入っている(だから、すぐ実行できるぞ)」と繰り返したジョンソン氏。耳にタコができるようなフレーズの繰り返しだった。 しかし、これこそが今の英国の有権者の多くが望んでいることだった。 離脱の是非を問う国民投票から3年半が経過し、それでもいつ離脱するのかが定かではない英国は、「ブレグジットを実行する」と繰り返す、ジョンソン氏のような人物を必要としていた。そして、有権者は保守党に票を投じることでそれを証明して見せた』、「ジョンソン氏」はなかなかの役者のようだ。「「ブレグジットを実行する(Let's get Brexit done)」というフレーズは」、ブレグジット騒ぎにうんざりしていた国民に受けたのだろう。
・『嫌われた、ジェッザ  今から4年前の2015年、緊縮財政が継いた英国で、労働党の党首選が行われた。 この時、まさかと思う人物が選ばれてしまった。他の党首候補者よりも20歳は年齢が高く、万年平議員のジェレミー・コービン氏だ。反戦・反核運動で知られ、筋金入りの左派である。愛称は「ジェッザ」。 社会福祉の削減が次第に負の影響を及ぼしはじめ、嫌気がさしていた国民感情を察知した労働党内の左派層がコービン氏を後押し。党首選が進む中で、コービン氏の社会民主主義的政策が若者層に魅力的に映った。 しかし、「既成体制を脅かす」存在とみなされたコービン氏は党内の中道派や右派系マスコミに頻繁に批判された。何度も「コービン下ろし」の動きがあり、これをかいくぐりながら、今日まで党首の地位を維持してきた。 ところが、今回の総選挙では、59議席を失い、獲得議席数は203。1935年以来の低い議席数である。しかも、今回は、伝統的に労働党の拠点だったイングランド地方北部の複数の選挙区での負けが目立った。 どんなコービン下ろしにも頑として動じなかったコービン氏は、自分の選挙区であるロンドン・イズリントンで、「非常にがっかりする結果となりました」と述べた。 「それでも、選挙中の私たちの公約は人々に希望を与えるものだったと思います」と胸を張った。 ただし、「次の選挙では、私は党首として闘いません」と宣言した。いつ辞任するかは党幹部との協議によるという。 労働党大敗の理由も明らかだった。やっぱり、ブレグジットだったのである』、肝心の「ブレグジット」に明確な姿勢を示せず、大敗した「コービン党首」の引責は当然だろうが、労働党は今後どのように立て直していくのだろう。
・『「再度の国民投票」で、支持者を減らす  2016年のEU加盟の是非を問う国民投票の際に、労働党は議員内では残留派が大部分だったが、自分の選挙区は離脱を選択したケースが多々あった。 そこで2017年の総選挙では、労働党はブレグジットの実現を公約としたが、今回は「再度の国民投票」を選択肢に入れた。コービン党首自身は「ブレグジットについて、自分は中立です」と宣言していた。 もし政権が取れたら、EUと再度交渉をして新たな離脱協定案を作る。それを国民が受け入れるのか、あるいは残留を希望するかを聞き、その結果を受け入れるというスタンスであるという。 しかし、「離脱中止」、あるいは「再度の国民投票」は、現在のイギリスではタブーだ。 もちろん、今でも残留を願う人はいるし、離脱による経済への負の影響が多大であることもよく紹介されている。 しかし、最初の国民投票から3年半経ち、何度も「離脱予定日」が延長され、下院での議論が行き詰まっている様子を目撃してきた国民からすると、残留派の国民でさえ、「とにかく、早く何かしてくれ」という思いが強い。 もし労働党の言うように「もう一度、EUと交渉し、新たな離脱案を作り、再度国民投票をして......」となった場合、数カ月、いや1年はかかるかもしれない。 国民は「いつ果てるとも分からない状態」に、心底飽き飽きしている。 ブレグジットの実行を願う、これまでは労働党支持の有権者は、今回、保守党を選んだのである』、「残留派の国民でさえ、「とにかく、早く何かしてくれ」という思いが強い」、「国民は「いつ果てるとも分からない状態」に、心底飽き飽きしている」、というのが保守党大勝の背景なのだろう。
・『「協力できない」と言われ  労働党の大敗には、コービン党首自身への嫌気感もかなり影響している。 公約には電気、水道、鉄道などの公営化を含む、サッチャー政権以前の時代に後戻りするような政策が含まれており、反コービン派が言うところの「共産主義的」匂いがあった。 離脱中止というラジカルな選択肢を公約にした自由民主党のジョー・スウィンソン党首は、自分自身が落選するという顛末を経験したが、彼女が毛嫌いしていたのがコービン党首。「一旦は、ブレグジットを実行すると言っていた。ああいう人とは協力できない」と何度か明言した。 コービン氏は保守系の力が強いメディアも敵に回した。労働党内のユダヤ人差別の撤廃に同氏が積極的ではないという記事が継続して掲載されてきた。 筆者からすると、ジャム作りが趣味というコービン氏は人柄が良さそうに見える。時には妄言を発し、首相職を狙うためには自説を曲げることも厭わないジョンソン氏よりは、人間的に正直に見える。 しかし、ジョンソン氏は今後、5年間はイギリスの首相であり続け、コービン氏は来年上半期には、政治の表舞台から去ってゆく。 理不尽かもしれないが、今のイギリスには「とにかく、ブレグジット」という強い風が吹いているのである』、やはり「人柄の良さ」は、政治家としては評価されないようだ。
・『なぜ、ブレグジットなのか  ところで、そもそもなぜブレグジットなのか。経済的に不利益を被るかもしれないのに、なぜ?と筆者はよく聞かれる。 一義的にいうと、「誰かに自分のことを決められるのは、嫌だ」という国民感情がある。 EU加盟国では、国内の法律の上にEUの法律が存在する構造だ。法律を決めるのは欧州議会議員と欧州委員会の官僚で、前者は英国民も票を投じることができるものの、自分が住む地域の欧州議会議員の名前を知っている人はほとんどいないほど、遠い存在だ。欧州委員会は官僚主義の権化として英国民は認識している。 離脱推進者が主張していたのは、「これまでEUに支払ってきたお金を国の医療サービスや教育に回せる」、そして、「英連邦を含む、世界中と自由貿易ができる」こと。 IMFやイングランド銀行、その他の多くの経済や金融の専門組織やシンクタンクは、ブレグジットによって負の影響が出る、特に貧困層が大きな悪影響を受けると警告してきた。 「なぜ、それでもブレグジットをしたいのか」と聞かれるならば、当初の国民投票から年月が経つうちに、「5年、10年後になって、最初の痛みが薄らいだ時に、大きな飛躍ができるのではないか」という見方を出す専門家もいるようになり、決して荒唐無稽の話ではなくなったという背景がある。 イングランド北部を中心に、ブレグジットへの志向が出てきた理由として、「再現(注:際限?)のないEU市民の流入を止めたい」という思いもあった。 例えば、こういうことだ。 2004年以降、東欧諸国を中心とした10カ国が一気にEUに加盟したことで、学校、職場、病院でみるみる間に人が増えた。筆者も実際に、病院のアポが取りにくくなり、ポーランドやハンガリー、リトアニアなどからきた人をよく見かけるようになった。 時の政府がEUからの移民流入に一定の歯止めをかけるべきだったのに、と筆者は思う。しかし、それはEUの人、もの、サービス、資本の自由な往来を阻害するものとして、当時は受け止められ、「無制限での受け入れは良いこと」と思われていたのである。 「自分で自分のことを決めたい」。この思いがますます強くなっていることを感じるこの頃だ』、国民投票時には僅差で、その後、離脱派の主張のいいかげんさも明らかになったのに、「「5年、10年後になって、最初の痛みが薄らいだ時に、大きな飛躍ができるのではないか」という見方を出す専門家もいるようになり、決して荒唐無稽の話ではなくなった」、政治の流れというのはそんなものなのかも知れない。

第三に、立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏が12月16日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「英国のEU離脱が確実となった今、「日米英同盟」結成に動くべき理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/223445
・『12月12日に行われた英国の総選挙で与党保守党が圧勝した。これで英国がEU離脱の早期実現に向けて動くことは確実となった。この情勢を受けて日本がすべきことは「日米英同盟」の結成に向けて働き掛けていくことだ。その理由を解説する』、強い違和感を感じたので、あえて紹介した次第だ。
・『英国の総選挙は与党保守党の圧勝 EU離脱に大きく前進した  12月12日、英国で総選挙の投開票が行われた。与党保守党が、2017年の前回選挙から49議席増やす364議席を獲得した。下院(定数650)の過半数(325)をはるかに超える大勝利となり、10月にボリス・ジョンソン英首相が欧州連合(EU)とまとめた「離脱協定案」の議会通過に大きく前進した。 一方、労働党は前回の選挙から60議席減らす202議席にとどまった。元々労働党の基盤であったイングランド北部や中部の工業地帯が保守党に切り崩されてしまう大敗となった。また、一貫して「EU残留」を訴えてきた中道政党・自由民主党は、トニー・ブレア元首相やジョン・メイジャー元首相らが「超党派」で支援していたが、2議席減の11議席の獲得という結果に終わった。これに対して、「EU残留・英国からの独立」を主張するスコットランド民族党(SNP)は、13議席増の48議席と躍進した。今回は、英国総選挙を総括し、今後について考察してみたい。) ▽英国民は「合意ある離脱」が最適解と判断したのだろう(この連載では、16年の「EUからの離脱を問う国民投票」の後、どんなに英国政治が混乱して見えても、「英国は必ずEU離脱について『最適な解』を見つける」と一貫して主張し続けてきた(本連載第224回)。今回の総選挙で、英国民はジョンソン首相がまとめた「合意ある離脱」が最適であるという判断を下したのではないだろうか。 筆者が、英国は最適な解を見つけると信じて疑わなかったのは、他の政治体制にはなく、自由民主主義体制だけが持つ機能があるからだ。それは、政治家も国民も「失敗」から「学習」することができ、大きな体制変革なくして、「失敗をやり直す」ことができること(第198回)。そして、それは権力を持つ側の言動が、全て国民にオープンである自由民主主義体制だからこそ可能なことである。 英国のEU離脱に関する今日までのプロセスを振り返ってみよう。特筆すべきことは、いいことも悪いことも全て隠されることなく、英国民のみならず、世界中の誰でも自由に見て、自由に批判することができるオープンな状況で行われてきたということだ。 3年前の国民投票から、本当にいろいろなことがあった。英国の政治家と国民は、EU離脱そのものの困難さ、そしてEU離脱のための合意形成の難しさを痛感した。「合理なき離脱」で起こる深刻な事態も認識した(第224回・P5)。 その結果、英国民が下した判断が今回の総選挙の結果だ。多くの英国民は紆余曲折の末、ジョンソン首相が取りまとめた離脱協定案を、「まだマシなもの」として受け入れることにした。そして、これ以上EU離脱を巡って何も決められない混乱した状況が続き、他の政策課題が後回しにされ続けることを回避した。これは、EU離脱に関する全ての情報が国民にオープンだったからこそ下せた判断だと考える。) よく、「国家の大事なことはエリートが決めればいい。選挙に委ねるのは間違い」という主張がある。だが、かつての共産主義や全体主義の国など、エリートが全てを決める「計画経済」の国はほとんど失敗した(第114回)。エリートは自らの誤りになかなか気付けないものだ。 また、エリートは自らの誤りを隠そうとし、情報を都合よく操作しようとする。しかし、操作しようとすればするほど、ますますつじつまが合わなくなる。国民がエリートの誤りに気付いたときは手の施しようがなくなっていて、国民はエリートと共に滅びるしかないのだ。その端的な事例が、「大本営発表」を続けて国民をだまし、国民が気づいたときには無条件降伏に追い込まれていた、かつての「大日本帝国」だろう。 共産主義・全体主義の国は、うまくいっているときは意思決定が早く、優れた政治体制のように見えなくもない。だが、いったん危機に陥ると脆いものだ。一方、自由民主主義がその真価を発揮するのは、危機的状況においてである。 危機的状況であっても、国民に隠し事なく、どんな都合の悪い情報でもオープンにすることで、国民は危機回避に動くことができる。また、政府に誤りがあれば、選挙という手段で政治体制が崩壊する前にそれを正すことができる。 そういう状況は意思決定に長い時間がかかるし、不格好に見えるものである。だが、最後には国家そのものを崩壊させるようなことにはならず、ベストではないにせよ、「まだマシ」な決定を下すことができるものだ。 ちなみに、第2次世界大戦の緒戦、英国はナチスドイツに対して劣勢に追い込まれた。しかし、英公共放送BBCは、日本の「大本営発表」とは真逆の姿勢をとった。悪い情報も包み隠さず放送したのだ。悪い情報を国民が知ることこそ、明日の勝利につながるという信念に基づいた行動だった(第108回)。 ウィンストン・チャーチル元英首相の有名な言葉、「民主主義は最悪の政治体制といえる。これまで試みられてきた、民主主義以外の全ての政治体制を除けばだが」は、今でも生きている。英国はブレグジット(英国のEU離脱)という難題に対して、奇跡的に「最適な解」を見つけた。このことは、どんな国でも陥る可能性がある「国難」に対してどう対処すべきか、議会制民主主義国の本家本元がお手本を示したといえるのではないだろうか』、「国家の大事なことはエリートが決めればいい。選挙に委ねるのは間違い」は確かに間違いだが、国民に任せると「衆愚政治」に陥り易いのも事実だ。「危機的状況であっても、国民に隠し事なく、どんな都合の悪い情報でもオープンにすることで、国民は危機回避に動くことができる。また、政府に誤りがあれば、選挙という手段で政治体制が崩壊する前にそれを正すことができる」、「議会制民主主義国の本家本元がお手本を示したといえるのではないだろうか」、どう考えても英国政治を美化し過ぎだ。現実には、ジョンソン首相のポピュリスト的手法や騙し合いなど、ドロドロしたものがある筈だ。
・『英国がEUの早期離脱に動くのは確実 問題は離脱後の英国経済の行方だ  さて、気になるのは、選挙後の展開である。いうまでもなく、保守党が議会で安定多数を確保したことで、ジョンソン首相はEUからの早期離脱を実行に移すことになる。 問題は、離脱後の英国経済がどうなるかだ。英国は離脱後にEUと自由貿易協定(FTA)を締結する方針である。ただ、貿易量はEU残留時に比べて2~3割落ち込み、国内総生産(GDP)も3~8%ほど下回るという見通しがある。だが、筆者は短期的な経済の動向にはあまり関心はない。 確かにEU離脱による経済の混乱は起こるだろう。しかし、ジョンソン首相はこれまでの首相たちのような緊縮財政とは真逆の、大胆な財政出動を行ってそれを補うだろう。英国の財政は他の欧州諸国と比べればまだマシな状況であり、短期的な財政出動に耐える体力は持っている。 その上、英国に拠点を置く企業は既にEU離脱後の経済の落ち込みに対する準備を完了している。従って、おそらく試算された通りに経済が落ち込むことはないのではないか。これも、EU離脱を巡る情報がオープンだった賜物である。ジョンソン首相が就任したとき、英国の企業は「合意なき離脱」を覚悟し、それに対処する準備を始めることができていたからだ。 そして、EU離脱直後の混乱期が過ぎていくと、この連載で何度も主張してきた、「英国の優位性」が効いてくることになる。それは、英国が「英連邦」という巨大な「生存圏」を持っていることだ。 英連邦には、「資源大国(南アフリカ、ナイジェリア、カナダ、オーストラリアなど)」「高度人材大国(インド)」「高度経済成長している新興国(東南アジア)」などが含まれる。英連邦を再構築しつつ、離脱後の最初の5年間を乗り切れば、その後は「巨大な生存権」を築ける可能性があるのだ(第134回)。 それに対して、EUは「ドイツの独り勝ち」状態であり、ギリシャやイタリアなど経済的に問題を抱えている国が少なくない。それらの国では、ドイツへの不満もあり、極右政党が台頭している「EU離脱予備軍」国もある。また、英国のようにエネルギー自給ができず、ロシアの天然ガスに依存しており、エネルギー安全保障上も脆弱である(第149回)。 もし英国がEUに残留すれば、経済的に困難を抱える国々の面倒を見るように押し付けられる可能性が高かった。早いうちにEUから抜けたほうがまだマシというのが、筆者の見解だ。 また、英国がEUから離脱すれば、英ロンドンの国際金融市場「シティ」から資金が引き揚げられてシティに代わる金融市場が欧州に生まれる、シティの地位は劇的に低下するという意見がある。だが、これは間違いである。 シティがEUの規制から自由になれば、世界中の資金はより規制が少なく、世界中に点在する英国領やエリザベス女王直轄領のタックスヘイブンが背後にあるシティに集まりやすくなるからだ。 そもそも、シティには長年蓄積された国際金融市場としてのノウハウがある。これをドイツの製造業が中心であるEUが簡単に身に付けられるものではない。シティに取って代われるはずがないのだ。日本に例えるならば、「車の生産拠点である豊田市に、東京の金融市場を持ってきてもうまくできるはずがない」と言えば、分かりやすいだろうか。 そして、さらに考えるべきことがあるとすれば、今回の総選挙で議席を伸ばしたSNPである。ニコラ・スタージョン党首は、EU離脱になれば、再びスコットランド独立の住民投票の実現を目指すと宣言している(第90回)。 しかし、スコットランドの独立気運は縮小していくと考える。繰り返すが、EUは今後、加盟国の中で経済的に問題がある国によって、内部的に不安定になる可能性がある。そうなると、EUにしがみつくよりも英国の一部であるほうが有利だという考え方が次第に広がっていくだろう』、「「英連邦」という巨大な「生存圏」を持っている」、いまや「英連邦」は名目的なもので、経済的結びつきは弱い。まして、「生存圏」なる時代がかった概念を持ち出した筆者のセンスも疑わざるを得ない。
・『英国のEU離脱に対して日本がすべきは「日米英同盟」の結成  英国が「EU離脱」へ動き出すことに対して、日本は「日米英同盟」の結成に向けて早期に働き掛けていくべきだろう(第217回)。 既に、英国はテリーザ・メイ政権時から、EU離脱後の「米国抜きの11カ国による環太平洋包括連携協定」(いわゆる「TPP11」)への加盟を希望してきた(第192回)。ジョンソン首相もその方針を踏襲するだろう。TPP11のうち、6カ国(カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、マレーシア、シンガポール、ブルネイ)が英連邦加盟国であり、英国のTPP11への参加は自然な流れだ。 TPP11への英国の加盟は、英連邦の再構築に加えて、実質的な「日英自由貿易協定」の締結を意味する。そして、日本の参議院選挙が終わったことで、日米の貿易交渉も本格化する。最終的に世界第1位(米国)、第3位(日本)、第5位(英国)の経済大国に、TPP加盟10カ国と他の英連邦諸国(インド、南アフリカ、ナイジェリアなど)が加わる「超巨大自由貿易圏」が誕生することになる。 また、ジョンソン首相は就任時にドナルド・トランプ米大統領と電話会談し、EU離脱後の英国と米国が早期に「野心的な自由貿易協定」の交渉を開始することで一致している。トランプ大統領は、「米英の貿易は、英国がEUの一員であることで妨げられてきた。離脱後、両国間の取引は3倍から4倍、5倍増えるかもしれない」との見方を示した。 その後、お互いにいろいろなことを言い合ってはいるが、基本的にはジョンソン首相とトランプ大統領は「ケミストリー」が合う。目が離せないような丁々発止のやり取りとなり、交渉が進んでいくはずだ。 英国の「TPP11」加盟と「米英FTA」締結は、日本にとっても大きなメリットとなるだろう。筆者は、「安倍外交」にレガシー(遺産)があるとすれば、それは例えば、日露関係の深化による北方領土問題の進展などではないと思う。むしろ、「TPP11」をまとめ上げたことこそが、真のレガシーである。 今後の国際社会は「ブロック化」が進み、「生存圏」を築ける国家・地域が生き残る力を持つことになる。しかし、国内に資源がなく、輸出主導型の経済システムで生きてきた日本は、「生存権」を持つ国が経済と資源を「ブロック化」してしまったら、一つの小さな島国に落ちてしまう(第145回)』、「今後の国際社会は「ブロック化」が進み、「生存圏」を築ける国家・地域が生き残る力を持つことになる」、グローバル化が曲がり角にあることは事実だが、かといって対極の「ブロック化」が進むとの筆者の判断には首を傾げざるを得ない。
・『安倍政権は、世界の「ブロック化」で日本が抱えるリスクの恐ろしさを実は非常によく理解しており、米国の離脱にもかかわらず、TPP11をまとめ上げた(第192回)。これは、自由貿易を守りたい国々にとって非常に魅力的であり、安倍首相の「八方美人的」な人当たりの良さも加わり、日本に「自由貿易圏のアンカー役」といっても過言ではない地位を与えつつあるように思う。そして、その基盤の上に米国と英国が加わるのだ。それは日本が、中国やロシア、EUを上回る巨大な「生存圏」を形成することを意味する。 そして、日本にとっては経済面だけでなく、安全保障面でも大きなメリットをもたらすことになるだろう。「EU離脱」後、英国が英連邦という「生存圏」を強化するために、安全保障面で中東・インド洋から東南アジアへのプレゼンスを強めようとするのは明らかだ。 海軍力をランク付けすると、1位米国、4位日本、5位英国という説がある。日米同盟が日米英安全保障同盟に発展すれば、圧倒的な世界最大の海軍が誕生することになる。このことは、中国の海洋進出に対する強い牽制となるのは間違いない(第187回)。 日米英の経済・安全保障における同盟関係の強化は、できるだけ急がなければならない。まず、来年の米大統領選挙でトランプ大統領が勝てるかどうか分からない。米民主党の大統領が誕生すれば、ジョンソン首相との関係がどうなるか分からないし、民主党は歴史的に「親・中国」で、日本との関係がいいとは言えない。 また、安倍首相の任期も残り2年を切っている。自民党総裁に「4選」という話がないわけではないが、基本的に首相自身にその気はないようだ。後継とされる自民党の石破茂元幹事長や岸田文雄政調会長に、日米英同盟という大胆な発想を進める力量はないように思う。 結局、「ドナルド・シンゾー・ボリス」というある意味「規格外」の人間が集まったときでないと、こういうことはできない。やるなら、今しかないのだ。 最後に強調しておきたいのだが、これは軍事的・経済的に急拡大している中国と闘うためにやるのではないということだ。日本は、中国とは親密な関係を築かねばならないというのはいうまでもない。実際、米中貿易戦争中のトランプ大統領はともかくとして、ジョンソン首相は中国とも非常に親しい関係にある。 日米英同盟は、日本が中国と対等に付き合い続けるために必要なものだということだ。急激に力を付けている相手と対等に付き合うには、こちらも力を持たなければならない。 日本では、英国のEU離脱による日本企業のリスクという短期的な話ばかりが議論されてきた。しかし、短期的な話よりも重要なのは、中長期的にEU離脱で何が起こるのかを見極めて、日本がどう動くかを考えることである』、「日米英同盟」については、アメリカ・ファーストを唱えるトランプ大統領が果たして関心を示すかは疑問だ。筆者の「妄想」に過ぎないのではなかろうか。
タグ:英国EU離脱問題 16年の国民投票以降の長きにわたるブレグジット交渉と英下院の迷走に疲れた有権者 英国がEUの早期離脱に動くのは確実 問題は離脱後の英国経済の行方だ 英国が「英連邦」という巨大な「生存圏」を持っている スコットランドの独立気運は縮小していく 「日米英同盟」の結成に向けて早期に働き掛けていくべき 今後の国際社会は「ブロック化」が進み、「生存圏」を築ける国家・地域が生き残る力を持つことになる 日米英同盟は、日本が中国と対等に付き合い続けるために必要なもの コービン党首自身への嫌気感 (その15)(ブレグジット実現に道筋つけた英保守党「歴史的勝利」の理由、英総選挙 どっちつかずより「とっとと離脱」を選んだイギリスは大丈夫か、英国のEU離脱が確実となった今 「日米英同盟」結成に動くべき理由) EUとの「公平な競争関係維持」に向けた規制の調和が争点に SNPがスコットランドで議席増、自民党は不振で党首も落選 「英国のEU離脱が確実となった今、「日米英同盟」結成に動くべき理由」 「ブレグジット実現に道筋つけた英保守党「歴史的勝利」の理由」 ダイヤモンド・オンライン 過半数超え87年以来の大勝 コービン労働党首は辞意 メッセージが明確だった保守党 “混迷疲れ”の有権者の支持得る 2015年、緊縮財政が継いた英国で、労働党の党首選が行われた。 この時、まさかと思う人物が選ばれてしまった。他の党首候補者よりも20歳は年齢が高く、万年平議員のジェレミー・コービン氏だ 来年2月1日に「実現」 3月からEUとFTA交渉 移行期間中は英国にEU法が適用される FTAは1年ではまとまらず 移行期間は延長される見込み ジョンソン首相は第三国とも幅広いFTA目指す 小林恭子 Newsweek日本版 「英総選挙、どっちつかずより「とっとと離脱」を選んだイギリスは大丈夫か」 「ブレグジットを片付けてしまおう」 「さあ、これからブレグジットを片付けてしまいましょう」。「ブレグジットを実行する(Let's get Brexit done)」というフレーズ 離脱の是非を問う国民投票から3年半が経過し、それでもいつ離脱するのかが定かではない英国は、「ブレグジットを実行する」と繰り返す、ジョンソン氏のような人物を必要としていた 嫌われた、ジェッザ 「再度の国民投票」で、支持者を減らす なぜ、ブレグジットなのか 「共産主義的」匂い 「誰かに自分のことを決められるのは、嫌だ」という国民感情がある 「5年、10年後になって、最初の痛みが薄らいだ時に、大きな飛躍ができるのではないか」という見方を出す専門家もいるようになり、決して荒唐無稽の話ではなくなった 上久保誠人 英国の総選挙は与党保守党の圧勝 EU離脱に大きく前進した 「国家の大事なことはエリートが決めればいい。選挙に委ねるのは間違い」という主張 端的な事例が、「大本営発表」を続けて国民をだまし、国民が気づいたときには無条件降伏に追い込まれていた、かつての「大日本帝国」 危機的状況であっても、国民に隠し事なく、どんな都合の悪い情報でもオープンにすることで、国民は危機回避に動くことができる。また、政府に誤りがあれば、選挙という手段で政治体制が崩壊する前にそれを正すことができる 吉田健一郎
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