パンデミック(医学的視点)(その22)(ラムダにミューも 新型コロナの変異株 知っておきたい10のこと、なぜ「ワクチン接種で死亡」の原因究明が進まないのか 法医学者に聞く、イスラエルの調査で判明「ブースタ接種」の難題 感染予防の底上げ効果は高齢者で数週間) [パンデミック]
パンデミック(医学的視点)については、8月24日に取上げた。今日は、(その22)(ラムダにミューも 新型コロナの変異株 知っておきたい10のこと、なぜ「ワクチン接種で死亡」の原因究明が進まないのか 法医学者に聞く、イスラエルの調査で判明「ブースタ接種」の難題 感染予防の底上げ効果は高齢者で数週間)である。
先ずは、9月10日付け日経ビジネスオンライン「ラムダにミューも 新型コロナの変異株、知っておきたい10のこと」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00210/090900021/
・『日本でも猛威を振るう新型コロナウイルスの変異株。「デルタ株」の感染が急拡大しており、「ミュー株」などの新たな変異株も国内での感染が確認された。そもそも変異株とはどのようなもので、それぞれどんな特徴があるのか。世界で次々と発見されている新型コロナウイルスの変異株について、知っておきたい10項目を整理した。 1:新型コロナウイルスの変異株とは何? 2:変異が起きる仕組みは? 3:現在確認されている主な変異株の種類は? 4:なぜ株の名前はギリシャ文字で表記される? 5:変異株にはどんな特徴がある? 6:報道で目にする「N501Y」や「L452R」はどういう意味? 7:変異株にはワクチンが効きにくい? 8:日本国内で感染が確認されている変異株は? 9:変異株の感染予防のための対策は? 10:今後、変異株はどうなっていきそう?
(各項目を詳しくみると)1:新型コロナウイルスの変異株とは何? 生物やウイルスの遺伝情報が変化することを「変異」と呼ぶ。一般的にウイルスは増殖や感染を繰り返す中で、その遺伝情報は少しずつ変化していく。幾つかの遺伝情報の変異により、従来のウイルスとは異なる性質を持つようになったものを変異株といい、世界保健機関(WHO)はそのリスクの評価に基づいて、注目すべき変異株(VOI)と懸念される変異株(VOC)とを定義し、「アルファ株」「ベータ株」などの命名を行っている。 日本でも国立感染症研究所が、主に感染性や重篤度が増す・ワクチン効果を弱めるなど性質が変化した可能性のある株をVOC、主に感染性や重篤度・ワクチン効果などに影響を与える可能性が示唆される株をVOIとして分類している)。 2:変異が起きる仕組みは? ウイルスは自己増殖できないため、生物の細胞のなかで複製が行われる。例えば、新型コロナウイルスがヒトの細胞内に侵入すると、RNAの情報からウイルスを形成するためのたんぱく質がつくられる。それと同時にRNA自体も大量に複製されるが、その時にコピーミスが起こることで少しずつ変異する。ウイルスの性質に関わる遺伝情報のコピーミスが起こると、性質も変化する)。 3:現在確認されている主な変異株の種類は? VOI(注目すべき変異株)とVOC(懸念される変異株)に該当する変異株に対して、WHOはギリシャ文字による命名を行っている。現在はアルファ(α)~ミュー(μ)までの変異株に分類されている。 VOC、VOIに当てはまる変異株は以下の通り。 VOC(懸念される変異株) アルファ株(2020年9月に英国で発見) ベータ株(2020年5月に南アフリカで発見) ガンマ株(2020年11月にブラジルで発見) デルタ株(2020年10月にインドで発見) VOI(注目すべき変異株) イータ株(2020年12月に複数の国で発見) イオタ株(2020年11月に米国で発見) カッパ株(2020年10月にインドで発見) ラムダ株(2020年12月にペルーで発見) ミュー株(2021年1月にコロンビアで発見) 4:なぜ株の名前はギリシャ文字で表記される? WHOは2021年5月末に新型コロナの変異株をギリシャ文字で表記すると発表した。その理由は、人々がしばしば変異株を発見された場所の名前で呼び、それが差別などにつながる懸念があるからだという。ギリシャ文字はアルファ(α)からオメガ(ω)まで全24種類あり、現在は12番目のミュー(μ)まで使われている。 新型コロナウイルス自体は現在「SARS-CoV-2」、新型コロナウイルス感染症という疾患は「COVID-19」と称されているが、これも地名などは使われていない。流行当初は日本でも疾患に対して武漢肺炎などの表現が使われていた。また、ドナルド・トランプ米大統領(当時)はTwitterでウイルスを「the Chinese Virus」などと表記していた。テドロス・アダノムWHO事務局長は「(COVID-19などの)名前を付けることで、不正確な名前や汚名を着せるような名前の使用を防ぐことが重要だ」と発言している』、インドも「インド株」でイメージダウンになると主張していたのも記憶に新しいところだ。
・『5:変異株にはどんな特徴がある? VOIは、主に感染性や重篤度・ワクチン効果などに影響を与える可能性が示唆される株である。VOCは、主に感染性や重篤度が増す・ワクチン効果を弱めるなど性質が変化した可能性のある株で、VOIのうち感染性や重篤度、ワクチン効果などと関連していることが実証されるとVOCとされる。 6:報道で目にする「N501Y」や「L452R」はどのような意味? N501Yはアルファ株、ベータ株、ガンマ株に共通する変異であり、ウイルスが細胞にくっつく際に必要な「スパイク」と呼ばれる突起のたんぱく質を構成するアミノ酸の変異を示す。スパイクたんぱく質のうち、501番目にあるアミノ酸がN(アスパラギン)からY(チロシン)に変わっているという意味だ。L452Rも同様で、スパイクたんぱく質を構成しているアミノ酸のうち、452番目がL(ロイシン)からR(アルギニン)に変異したということだ。これらの変異により、従来のウイルスとは性質が変化したと考えられている。 7:変異株にはワクチンが効きにくい? アルファ株については発症や感染に関してワクチンの効果は変わらないとされている。一方で、ベータ株とデルタ株については、重症化に対するワクチンの効果は変わらないものの、発症に対する効果は弱まる可能性があるとの指摘がある。ガンマ株に対するワクチンの効果の変化は明らかになっていない。 8:日本国内で感染が確認されている変異株は? VOC、VOIに分類される変異株は全て日本で検出されている。東京都健康安全研究センターが行ったスクリーニング検査によると、都内で発生した変異株の割合は、アルファ株やベータ株の「N501Y」の変異を持つウイルスが5月時点で6~7割程度だったが、8月23日~29日の期間では1.7%に減少している。代わりに猛威を振るっているのがL452Rという変異を持つデルタ株で、同期間では82.8%を占めている。 8月末には、N501Sの変異を持つ新たなデルタ株が国内で確認されたと東京医科歯科大学が発表した。この変異はアルファ型などのN501Y変異と類似したものと見られている』、「VOC、VOIに分類される変異株は全て日本で検出されている」のであれば、日本の水際対策の実効性も大したことなさそうだ。
・『9:変異株の感染予防のためにできる対策は? 新型コロナウイルス感染症対策分科会は6月に「変異株が出現した今、求められる行動様式に関する提言」を出している。そこでは、フィルター性能の高い不織布マスクの着用や換気への留意などが示されている。感染力が強く、重症になりやすい変異株が目立つ中で、高性能なマスクを使うことに加えて、3密を避け、外出を控えるといった、基本的な対策を一層徹底することが求められている。 10:今後、変異株はどうなっていきそう? ウイルスの変異は複製時に一定の確率で起こるため、今後も変異株は現れ続けるとの意見が専門家の間では多い。海外では感染力の強い変異株を念頭に、ワクチンの追加接種(ブースター接種)を進める動きがある。追加接種により変異株の感染をどの程度防げるかは今後の研究が待たれる』、「ブースター接種」については、3番目の記事で紹介する。
次に、9月21日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した医療ジャーナリストの木原洋美氏による「なぜ「ワクチン接種で死亡」の原因究明が進まないのか、法医学者に聞く」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/282431
・『新型コロナウイルスワクチンの接種が進む一方で、重篤な副反応や健康被害については慎重な調査が必要となる。中でも接種後の死亡については、その死因究明が詳細に正しく行われることが重要だ。しかしながら、ワクチン接種後の死亡例については、そのほとんどがワクチン接種によるものなのかきちんと判定されていないままだという。ワクチンの安全な接種にも重要な、死因究明の課題とは何か。法医学者で国際医療福祉大学医学部講師の本村あゆみ氏に話を聞いた』、「ほとんどがワクチン接種によるものなのかきちんと判定されていないまま」、私も疑問に思っていたので、興味深い。
・『ワクチン接種後の死亡 ほぼ100%「因果関係」不明 9月13日政府が公表した集計によると、日本における新型コロナワクチン接種率は1回目が63%、2回目は50.9%に達している。河野太郎規制改革担当相は今月4日、ワクチン接種について、「希望する全国民に対して11月上旬に完了する」との見通しを示しているが、ワクチンに関しては接種率を上げる以前に注力してほしい課題がある。 それは、接種後の死亡と報告された事例の死因究明だ。例えばファイザー製のワクチンについては、2021年2月17日から8月8日までに報告された991の死亡事例中、「ワクチンと死亡との因果関係が否定できないもの」は0件、「ワクチンと死亡との因果関係が認められないもの」5件、「情報不足等によりワクチンと死亡との因果関係が評価できないもの」986件で、大部分の死因はワクチン接種によるものかどうかちゃんとした判定はされていない(厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会が8月25日に公表した調査より)。 国や専門家は、「健康被害のリスクを踏まえてもメリットが圧倒的に上回る」とワクチン接種を推奨し、「健康被害が予防接種によるものであると厚生労働大臣が認定したときは、予防接種法に基づく救済(医療費・障害年金等の給付)が受けられます」と安心を強調してきたが、最悪の健康被害である死亡例については、ほとんど解明されていないのが現状だ。救済は予防接種との因果関係が認定されなければ受けられないことを考えると、8月20日までにワクチン接種後1093人(米ファイザー社製ワクチン1077例、米モデルナ社製ワクチン16例)もの人が亡くなっているのに、救済された人は1人もいないことになる。 死因究明は、亡くなる人を減らすためにも欠かせない。その人の体内で何が起きて死に至ったのか、またそれがワクチン接種によるものなのかどうかが分かれば、重篤な事態が生じないよう先手を打つこともできるからだ。 そういう意味では、死因究明は生きている人のための医学でもある。 そこで今回は、「法医学は、亡くなられた方の死因を究明した結果を、生きている人や社会に還元していく医学です」と語る法医学者で国際医療福祉大学医学部講師の本村あゆみ氏に話を聞いた(Qは聞き手の質問、Aは本村氏の回答)』、「救済は予防接種との因果関係が認定されなければ受けられないことを考えると、8月20日までにワクチン接種後1093人・・・もの人が亡くなっているのに、救済された人は1人もいないことになる」、いくら忙しいにしても、酷い職務放棄だ。
・『「心不全」「心肺停止」は 状態であって死因ではない Q:厚生科学審議会が公表している死因を一つ一つ見ていくと、「心不全」「心肺停止」といった、死因とするには疑問符が付くものが何度も登場してきます。専門家は、このような死因を「死因」と呼ぶのでしょうか? A:厚生科学審議会の調査で死因を判断しているのは各医療機関の報告医なので、診療時の血液検査や画像検査などを踏まえて、死因を推定しているものと思われます。いわゆる通常の臨床医の死因判断です。なので、傷病名ではない「心肺停止」という文言での報告が散見されるのだと思います。 これらの報告を踏まえて、専門家がワクチン接種との関連性の有無を判断されているようですが、やはり元になる死因について解剖を含めた詳細な調査はなされていないことがほとんどで、これでは判断しようがないと言わざるを得ません。 Q:中には、「情報不足で判断できない」というものもかなり多くあります。行政はワクチン接種後に亡くなった人の死因究明に積極的ではないように感じるのですが、先生はどう思いますか? A:ワクチン関連にかかわらず、行政においては死因究明の必要性が理解されていないのではないでしょうか。CTその他検査で、医者が見れば死因は分かるものと思っているのかもしれません。 Q:では、死因究明はそんな単純なものではない? A:即時型のアナフィラキシーショックはまだしも、接種後に起きる可能性が指摘されている心筋炎や血栓症は、もし病院で十分な検査を受ける間もなく亡くなってしまった場合には、外表の所見のみで診断することは不可能です。 そもそも、個別の死因のみをもって接種と死亡の因果関係を問うことは困難です。正確な情報の集積、統計を行い、平時や非接種者との比較によって、接種後の影響を判定する必要があります。しかしながら現状では、土台となるべき死因診断が正確でない可能性があり、また情報そのものが少なすぎて、「因果関係が不明」とせざるを得ないのがほとんどという状況になっています。 例えば厚生科学審議会の資料だと、接種後の「心肺停止」が多いということになるのですが、そもそも死亡とは心肺停止の状態。その事例を検討しているわけですから、心肺停止が多いのは当たり前ですよね。検討するには、その原因を探らないといけません。 急性心不全が死因などとされているものも、中には心筋炎が含まれるかもしれない。せっかく一部の事例では病理解剖まで行って、詳細な検討の結果として例えば凝固因子欠乏※を指摘されていても、他にも同様の病態を示す事例が確認されなければ、この方だけの特異な症状ということになり、一般的なワクチンによる副反応には計上されないままでしょう。※血液が凝固するために必要なタンパク質が著しく減少することで血が止まりにくい症状 これでは接種の安全性は十分に担保されませんし、副反応で亡くなってしまった方も因果関係不明とされたままでは、遺族にも十分な補償が行き届かないということになります。 Q:パンデミック下だから仕方ない」という意見もあります。 A:いいえ。平時から、解剖を含めた死因調査は重要ですが、このようなパンデミック下での緊急事態の時こそ、より正確な情報収集が重要であることは明らかですし、接種後の死因調査として特別に予算や施設、情報管理システムなどの整備をするといった対応が必要です』、「厚生科学審議会の資料だと、接種後の「心肺停止」が多い」、これでは接種と死亡の関係を見られないので、本来は詳細な死因を記入させるべくだ。「より正確な情報収集が重要であることは明らかですし、接種後の死因調査として特別に予算や施設、情報管理システムなどの整備をするといった対応が必要です」、同感である。
・『日本の法医解剖率は1.6%程度 十分な死因究明が行われない理由 Q:ワクチン接種と死亡例の因果関係、死因をきちんと調べるには、どのようなことが必要なのでしょうか? A:やはり解剖を含めた詳細な死因調査が議論の基礎として必要です。死因が分からない、あるいは誤解されたままでは、情報が少ないとして因果関係不明と結論付けられてしまうのも仕方ありません。 コロナではありませんが、千葉県では交通事故死亡事例について、県内の医療機関が集まってPTD(preventable trauma death:避けられた外傷死)ではなかったかどうか、専門家による調査・検討を行っています。救急隊や医療機関からの情報を基に、病院の選定は妥当であったか、診療内容は適切であったかなどを検討するのですが、やはり情報が十分でないと判断が難しくなります。 また、ごく一部では解剖検査が行われ、その結果とも照合して検討するのですが、既往症や生活状況など初療時には分からなかった情報が警察を通じて得られていますし、中には損傷の見落としによって、当初判断された死因が正確でないことが判明するケースもあり、評価の土台としての解剖結果の重要性を実感しています。 Q:コロナに限らず、日本では法医解剖率の低さが以前から問題になっています。現状として、警察取り扱い死体における法医解剖率は11.5%(2019年)、全死亡中では1.6%程度と、日本では十分な死因究明が行われていません。 そうですね。現在の日本では解剖を含めた死因調査自体が十全に行われているとはいえません。法律を制定するなどして解剖を増やす努力は行政、司法、法医学各方面で続けられているところではありますが、予算も限られており、解剖率は諸外国にいまだ到底及びません。 特に、新型コロナウイルスやワクチンに関連した死亡のように犯罪による死亡が疑われない場合、ほとんどの自治体では、警察が取り扱う死体の死因調査として行われる司法解剖や死因身元調査法解剖の対象としてそぐわないことが考えられます。東京23区や大阪市など監察医制度のある地域では行政解剖を行うことができますが……。 例えば千葉県では準行政解剖として知事の権限で行う承諾解剖の制度がありますが、これは年間10件程度の予算しかないため、運用には高いハードルがあります。さらに、通常の解剖に比べて抗原検査やPCR検査、詳細な組織検査など追加の特殊な検査が多く必要となりますので、費用もかさんでしまいます。 いかなる死亡であっても、死因を正しく判断することは死者、遺族の権利であり、その情報に基づいて健康に関する施策を享受することは国民の権利です。国はそのことをよくご理解いただき、このような新しい感染症の脅威、これに対する予防、治療の安全性、有効性をきちんと評価するためにも、改めて予算を組んで既存の行政解剖や承諾解剖を充実させる必要があります』、「通常の解剖に比べて抗原検査やPCR検査、詳細な組織検査など追加の特殊な検査が多く必要となりますので、費用もかさんでしまいます」、しかし、「いかなる死亡であっても、死因を正しく判断することは死者、遺族の権利であり、その情報に基づいて健康に関する施策を享受することは国民の権利です」、「国は」、「新しい感染症の脅威、これに対する予防、治療の安全性、有効性をきちんと評価するためにも、改めて予算を組んで既存の行政解剖や承諾解剖を充実させる必要があります」、その通りだ。無論、対象を全件でなく、サンプルにすることで費用圧縮を図るのは当然だろう。
・『情報連携や費用に課題 解剖を増やすことはできるのか Q:解剖を増やすのは難しいことなのでしょうか? クリアすべき課題はいくつかあります。一つはお金の問題。人員や物品の確保、諸検査に必要な経費など、国で予算を検討していただく必要があります。特に接種後の死亡についてはさまざまな要因が考えられ、アナフィラキシー、血栓症、心筋炎など、解剖でも肉眼的に直ちに診断するのは難しい病態が多く想定されます。検査も多岐にわたると考えられ、通常の解剖経費では賄いきれません。 またシステムの問題もあります。解剖の体制が整備されたとしても、情報が個々の施設や各都道府県などで保管されたままでは意味がありません。ワクチン接種後の死亡例については厚生労働省に報告を行い、審議会での検討の俎上に乗せなくてはならないということを広く周知する必要があります。 そもそも前提として、ワクチン接種後の死亡なのかどうかが解剖時に分からないことも問題です。接種が始まった頃、(本村氏も解剖する際に)接種と死亡の関連も考えなければと思い、解剖に搬入されたご遺体について警察官に「この方、ワクチンの接種は終わっていますか?」と聞きましたが、はっきりした返答はほとんど返ってきませんでした。 「(ご遺体発見時)部屋に接種券はなかった」程度の把握しかされておらず、行政と警察との連携、公益的な情報の共有についても整備が必要だと考えられます。 Q:海外では、ワクチン接種後の予期せぬ死について、どのような検証がなされているのでしょうか? A:アメリカではVAERS(Vaccine Adverse Event Reporting System)、イギリスではMDRA(Medicines & Healthcare products Regulatory Agency)へのYellow Cardなど、各国で接種後の有害事象について報告するシステムがあり(日本でも厚生労働省に報告するところは同じ)、報告された事例について、臨床症状や検査結果、死亡例では死因を含めた検討が行われています。調べた限りでは、コロナ禍において特別に解剖を増やして行うという報告は見られませんでしたが、死因の検討としてもちろん解剖結果は反映されています。 また、日本の監察医業務を含むメディカルエグザミナーの連合体であるNational Association of Medical Examiners(NAME)のサイトには、新型コロナウイルスワクチン接種後死亡を取り扱う際のガイドラインが出ており、「なるべく解剖してアナフィラキシーなど確認すべし」とされています。 ちなみに日本の監察医務院(東京都)、監察医事務所(大阪府)、監察医務室(兵庫県)からは特にこのような案内はありません。法医学会からも特に提言などはありません(感染者の解剖について案内あり)。会員として申し訳ない気持ちです。 そもそも日本は解剖率が低いので、どうしても死因の裏付けという点で根拠が乏しいのが問題になるかと思います。 海外のワクチン摂取後死亡の解剖例に関する論文報告では、血栓症や心筋炎が死因となった事例が提示されています。いずれも副反応による可能性は示唆されるものの、現時点での確定は難しいようですが、これらの事例の集積、統計により今後副反応としての死因に計上されてくる可能性はあるかもしれません。ですから、やはり詳細な死因を調査し、エビデンスとして残しておくことは非常に重要なのです。 2019年6月6日に死因究明等推進基本法が成立し、翌年4月1日より施行されてはいるが、「死因究明ならびに法医をめぐる状況は、肌感覚としては全く変わりないです」と本村氏。潜在しているであろうワクチン接種関連死を掘り起こし、新たな犠牲者の防止に生かすことは、結果として、ワクチン接種率向上につながる。コロナ禍を機に、日本は死因究明後進国からの脱却をはかるべきなのではないだろうか。 (筆者略歴はリンク先参照)』、「行政と警察との連携、公益的な情報の共有についても整備が必要」、「コロナ禍を機に、日本は死因究明後進国からの脱却をはかるべき」、同感である。
第三に、9月23日付け東洋経済オンラインが転載したThe New York Times「イスラエルの調査で判明「ブースタ接種」の難題 感染予防の底上げ効果は高齢者で数週間」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/457343
・『新型コロナワクチンの追加接種(ブースター接種)の是非をめぐる意見対立が激しくなる中、イスラエルの研究者は9月15日、60歳以上に関してはファイザー製ワクチンの3回目接種で感染と重症化の両方を少なくとも12日間防ぐことができるという調査結果を発表した。 世界には未接種者がたくさんいるため、健康な成人にブースター接種を行うことについては厳しい異論が出ている。ジョー・バイデン政権も広く一般にブースター接種を行う計画だったが、医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」で発表された今回の研究で、ブースター接種をめぐる意見対立はさらに深まった』、「3回目接種で感染と重症化の両方を少なくとも12日間防ぐことができる」、効果が小さいことに驚かされた。
・『高齢者でさえ必要ないかもしれない これまでに累積されたデータを見る限り、ブースター接種が必要なのは高齢者だけで、高齢者ですらブースター接種は必要ないかもしれない、と複数の独立した科学者は語った。 専門家によると、これまでに発表されたすべての研究において、ワクチンは重症化と入院の予防に関しては、今も圧倒的大多数の人々に対して高い有効性を維持している。ただ感染の予防については、とくに感染力の強いデルタ株にさらされた場合には、すべての年齢層で効果が下がってきているように見えるという。 今回、イスラエルのデータで明らかになったのは、ブースター接種を行えば高齢者の予防効果を数週間引き上げられる可能性がある、ということだ。専門家によれば、想定内の結果であり、ブースター接種の長期的なメリットが示されたわけではない。 シアトルにあるワシントン大学の免疫学者マリオン・ペッパー氏は「免疫反応はブースター接種で高まるだろうが、その後、再び低下することが予想される」と話す。「しかし、3〜4カ月(の効果底上げ)というのは、私たちが目指しているものなのだろうか」。 バイデン大統領のパンデミック対策で首席医療顧問を務めるアンソニー・ファウチ氏をはじめとする連邦保健当局の高官は、ワクチン接種の効果が時間の経過とともに低下することを示唆するイスラエルのデータなどを根拠に、ブースター接種計画を正当化してきた。 そのためアメリカ国民には、正式に認可される前から、ブースター接種を受けようと先を争う動きが一部で見られる。しかしブースター接種計画に対しては、政府の科学者からも懐疑的な見方や怒りが向けられるようになっている』、「ブースター接種計画に対しては、政府の科学者からも懐疑的な見方や怒りが向けられるように」、どういうことなのだろう。
・『「予防可能な死」を防ぐことが先決 アメリカ食品医薬品局(FDA)でワクチン部門を率いていた2人の科学者がこの秋に退任すると発表した理由の1つは、連邦政府の研究者によるエビデンス(科学的証拠)の精査を待たずしてブースター接種を推し進めようとする政権への不満だという。 13日には、退任するFDA高官を含む国際的な科学者グループが、ブースター接種の推進を強く非難した。同グループは医学誌「ランセット」で論文を発表し、数十の研究を分析した結果、ワクチンは数十億人の未接種者を守るのに使ったほうが世界のためになると結論づけた。 「今回のパンデミックにおける私たちの第1目標は、まず予防可能な死をすべて回避し、終わらせることにあった」と、世界保健機関(WHO)のチーフサイエンティストで、ランセットの論文の共著者でもあるスミヤ・スワミナサン氏は述べた。「私たちはそのための非常に効果的な手段を手にしているのだから、世界中で(予防可能な)死を防ぐのに使うべきだ」。 ウイルスがデルタ株よりもさらに危険な形態に変異し、免疫を完全に回避する変異株が出現するのを防ぐため、ブースター接種よりも未接種者を減らすほうが課題としては緊急性が高いと専門家らは言う。 ブースター接種の効果に関するイスラエルの今回の研究は、60歳以上の住民110万人以上の健康記録に基づくもので、ブースター接種から少なくとも12日後の感染率は2回しか接種していない人に対し11分の1、重症化率は20分の1近くにまで下がっていたことが確認された。 ただ、研究者は結果が暫定的なものであることを認めている。エルサレム・ヘブライ大学のミハ・マンデル教授(統計学・データサイエンス)は「長期的にどうなるかは、現時点ではわからない」と語った。 ブースター接種が科学的に難しい問題となっているのは、1つには「感染予防」と「重症化や死亡の予防」という目標の間に極めて大きな違いがあるためだ。 体内の最前線で感染を防ぐのが抗体だが、科学者によると、長期にわたる感染予防効果をワクチンで確実に得られる可能性は低い。というのは、ワクチンが人体を刺激することで産生される抗体は時間の経過による減少が避けられないからだ。 ただしワクチンによって作られた細胞性免疫は、重症化や死亡を防ぐのに極めて強力な武器となる。細胞性免疫に書き込まれた「免疫記憶」は、効果が表れるまでに数日を要するものの、しっかりとした効果が何カ月にもわたって維持される』、「(FDA)でワクチン部門を率いていた2人の科学者がこの秋に退任すると発表した理由の1つは、連邦政府の研究者によるエビデンス・・・の精査を待たずしてブースター接種を推し進めようとする政権への不満」、対立は予想以上に深刻なようだ。「ウイルスがデルタ株よりもさらに危険な形態に変異し、免疫を完全に回避する変異株が出現するのを防ぐため、ブースター接種よりも未接種者を減らすほうが課題としては緊急性が高い」、「長期にわたる感染予防効果をワクチンで確実に得られる可能性は低い」、その通りなのかも知れない。
・『終わりなきワクチン接種から抜け出せなくなる この点にこそブースター接種の問題がある、と一部の科学者は指摘する。入院や死亡を防ぐ道具なら、すでに手元にある。しかし感染予防を目指すとなれば、その国はブースター接種の終わりなきサイクルから抜け出せなくなる。 「本当に感染予防を目標にするなら、半年ごとのブースター接種が必要になるだろうが、非現実的だし達成も不可能だ」と、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の感染症専門家ピーター・チンホン氏は話す。 自身がこれまでに病院で実際に目にしたワクチン接種済みの患者たちは、免疫機能が弱っている人か、持病のある70歳以上の高齢者ばかりだった、とチンホン氏は付け加えた。 ブースター接種が必要な理由として、ファウチ氏をはじめとする保健当局者は、あらゆる年齢層で接種者が重症化するケースが増えているというイスラエルのデータを引き合いに出していた。ただ、すべての年齢層をひとまとめにすると、統計上、重症化率が膨らんで見えることがある。 実際、イスラエルの統計を年齢別に分解してみると、重症化の予防に対するワクチンの有効性の低下がはっきりと見られたのは60歳以上だけだった、とニューヨークのベルビュー・ホスピタル・センターの感染症専門家で、バイデン政権の顧問だったこともあるセリーヌ・ガウンダー氏は指摘する。 「高齢者ではワクチンによる免疫反応が比較的弱くなることは、以前から知られていた」とガウンダー氏は言う。「高齢者に追加のワクチン接種を勧めることは物議を醸すような問題にはならない」。 アメリカのこれまでの研究も、ワクチンの重症化予防効果が弱まるのは高齢者だけだと示唆する結果になっている。アメリカ疾病対策センター(CDC)が9月上旬に公開した3つの研究によれば、75歳以上を除くと、ワクチンによる入院予防効果はデルタ株が登場した後でさえ、ほとんど変化しなかった。 科学者の中には、高齢者で感染予防効果が弱まるということは、ブースター接種の必要性を裏付ける強い論拠になる、と主張する向きもある。 ニューヨークにあるロックフェラー大学の免疫学者ミシェル・ヌーセンツワイグ氏は自らもブースター接種を受けたいと話す一方で(同氏は66歳だ)、感染の連鎖を防ぐため広く一般にもブースター接種を行うことを支持していると語った。 若い層の免疫はまだ弱まっているわけではないが、追加接種で感染防止効果を上げれば、周囲のワクチン未接種者に感染させるのを抑えられる、という理屈だ。「それが結果的にほかの人の入院を防ぐことにつながり、ひいてはアメリカの今後にもプラスになる」と言う』、なるほど。
・『追加接種を繰り返すと免疫が疲労する 一方で別の専門家たちは、ブースター接種を正当化できるほど明白な2次感染の抑制効果を示すデータは存在しないとして、上述のような前提には疑問を呈している。 若い人々を対象にブースター接種を行う場合、当局は3回目の接種で得られる限定的なメリットと、血栓や心臓障害といった副反応のリスクとの間でバランスを取らなければならない、と専門家らは言う。さらに前出のペッパー氏によれば、体内の防御機構に繰り返し刺激を与えると「免疫疲労」と呼ばれる現象を引き起こすおそれもある。 「何度も免疫反応を増加させようとすることには、明らかに何らかのリスクが存在する」とペッパー氏は話す。「仮に6カ月ごとに追加接種するサイクルに入り込めば、私たちにマイナスに作用する可能性がある」』、「体内の防御機構に繰り返し刺激を与えると「免疫疲労」と呼ばれる現象を引き起こすおそれもある。「何度も免疫反応を増加させようとすることには、明らかに何らかのリスクが存在する」、そうであれば、「ブースター接種」はするべきではないようだ。日本も年末あたりから、「ブースター接種」に踏み切るとの見方もあるが、慎重に考えた方がよさそうだ。
先ずは、9月10日付け日経ビジネスオンライン「ラムダにミューも 新型コロナの変異株、知っておきたい10のこと」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00210/090900021/
・『日本でも猛威を振るう新型コロナウイルスの変異株。「デルタ株」の感染が急拡大しており、「ミュー株」などの新たな変異株も国内での感染が確認された。そもそも変異株とはどのようなもので、それぞれどんな特徴があるのか。世界で次々と発見されている新型コロナウイルスの変異株について、知っておきたい10項目を整理した。 1:新型コロナウイルスの変異株とは何? 2:変異が起きる仕組みは? 3:現在確認されている主な変異株の種類は? 4:なぜ株の名前はギリシャ文字で表記される? 5:変異株にはどんな特徴がある? 6:報道で目にする「N501Y」や「L452R」はどういう意味? 7:変異株にはワクチンが効きにくい? 8:日本国内で感染が確認されている変異株は? 9:変異株の感染予防のための対策は? 10:今後、変異株はどうなっていきそう?
(各項目を詳しくみると)1:新型コロナウイルスの変異株とは何? 生物やウイルスの遺伝情報が変化することを「変異」と呼ぶ。一般的にウイルスは増殖や感染を繰り返す中で、その遺伝情報は少しずつ変化していく。幾つかの遺伝情報の変異により、従来のウイルスとは異なる性質を持つようになったものを変異株といい、世界保健機関(WHO)はそのリスクの評価に基づいて、注目すべき変異株(VOI)と懸念される変異株(VOC)とを定義し、「アルファ株」「ベータ株」などの命名を行っている。 日本でも国立感染症研究所が、主に感染性や重篤度が増す・ワクチン効果を弱めるなど性質が変化した可能性のある株をVOC、主に感染性や重篤度・ワクチン効果などに影響を与える可能性が示唆される株をVOIとして分類している)。 2:変異が起きる仕組みは? ウイルスは自己増殖できないため、生物の細胞のなかで複製が行われる。例えば、新型コロナウイルスがヒトの細胞内に侵入すると、RNAの情報からウイルスを形成するためのたんぱく質がつくられる。それと同時にRNA自体も大量に複製されるが、その時にコピーミスが起こることで少しずつ変異する。ウイルスの性質に関わる遺伝情報のコピーミスが起こると、性質も変化する)。 3:現在確認されている主な変異株の種類は? VOI(注目すべき変異株)とVOC(懸念される変異株)に該当する変異株に対して、WHOはギリシャ文字による命名を行っている。現在はアルファ(α)~ミュー(μ)までの変異株に分類されている。 VOC、VOIに当てはまる変異株は以下の通り。 VOC(懸念される変異株) アルファ株(2020年9月に英国で発見) ベータ株(2020年5月に南アフリカで発見) ガンマ株(2020年11月にブラジルで発見) デルタ株(2020年10月にインドで発見) VOI(注目すべき変異株) イータ株(2020年12月に複数の国で発見) イオタ株(2020年11月に米国で発見) カッパ株(2020年10月にインドで発見) ラムダ株(2020年12月にペルーで発見) ミュー株(2021年1月にコロンビアで発見) 4:なぜ株の名前はギリシャ文字で表記される? WHOは2021年5月末に新型コロナの変異株をギリシャ文字で表記すると発表した。その理由は、人々がしばしば変異株を発見された場所の名前で呼び、それが差別などにつながる懸念があるからだという。ギリシャ文字はアルファ(α)からオメガ(ω)まで全24種類あり、現在は12番目のミュー(μ)まで使われている。 新型コロナウイルス自体は現在「SARS-CoV-2」、新型コロナウイルス感染症という疾患は「COVID-19」と称されているが、これも地名などは使われていない。流行当初は日本でも疾患に対して武漢肺炎などの表現が使われていた。また、ドナルド・トランプ米大統領(当時)はTwitterでウイルスを「the Chinese Virus」などと表記していた。テドロス・アダノムWHO事務局長は「(COVID-19などの)名前を付けることで、不正確な名前や汚名を着せるような名前の使用を防ぐことが重要だ」と発言している』、インドも「インド株」でイメージダウンになると主張していたのも記憶に新しいところだ。
・『5:変異株にはどんな特徴がある? VOIは、主に感染性や重篤度・ワクチン効果などに影響を与える可能性が示唆される株である。VOCは、主に感染性や重篤度が増す・ワクチン効果を弱めるなど性質が変化した可能性のある株で、VOIのうち感染性や重篤度、ワクチン効果などと関連していることが実証されるとVOCとされる。 6:報道で目にする「N501Y」や「L452R」はどのような意味? N501Yはアルファ株、ベータ株、ガンマ株に共通する変異であり、ウイルスが細胞にくっつく際に必要な「スパイク」と呼ばれる突起のたんぱく質を構成するアミノ酸の変異を示す。スパイクたんぱく質のうち、501番目にあるアミノ酸がN(アスパラギン)からY(チロシン)に変わっているという意味だ。L452Rも同様で、スパイクたんぱく質を構成しているアミノ酸のうち、452番目がL(ロイシン)からR(アルギニン)に変異したということだ。これらの変異により、従来のウイルスとは性質が変化したと考えられている。 7:変異株にはワクチンが効きにくい? アルファ株については発症や感染に関してワクチンの効果は変わらないとされている。一方で、ベータ株とデルタ株については、重症化に対するワクチンの効果は変わらないものの、発症に対する効果は弱まる可能性があるとの指摘がある。ガンマ株に対するワクチンの効果の変化は明らかになっていない。 8:日本国内で感染が確認されている変異株は? VOC、VOIに分類される変異株は全て日本で検出されている。東京都健康安全研究センターが行ったスクリーニング検査によると、都内で発生した変異株の割合は、アルファ株やベータ株の「N501Y」の変異を持つウイルスが5月時点で6~7割程度だったが、8月23日~29日の期間では1.7%に減少している。代わりに猛威を振るっているのがL452Rという変異を持つデルタ株で、同期間では82.8%を占めている。 8月末には、N501Sの変異を持つ新たなデルタ株が国内で確認されたと東京医科歯科大学が発表した。この変異はアルファ型などのN501Y変異と類似したものと見られている』、「VOC、VOIに分類される変異株は全て日本で検出されている」のであれば、日本の水際対策の実効性も大したことなさそうだ。
・『9:変異株の感染予防のためにできる対策は? 新型コロナウイルス感染症対策分科会は6月に「変異株が出現した今、求められる行動様式に関する提言」を出している。そこでは、フィルター性能の高い不織布マスクの着用や換気への留意などが示されている。感染力が強く、重症になりやすい変異株が目立つ中で、高性能なマスクを使うことに加えて、3密を避け、外出を控えるといった、基本的な対策を一層徹底することが求められている。 10:今後、変異株はどうなっていきそう? ウイルスの変異は複製時に一定の確率で起こるため、今後も変異株は現れ続けるとの意見が専門家の間では多い。海外では感染力の強い変異株を念頭に、ワクチンの追加接種(ブースター接種)を進める動きがある。追加接種により変異株の感染をどの程度防げるかは今後の研究が待たれる』、「ブースター接種」については、3番目の記事で紹介する。
次に、9月21日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した医療ジャーナリストの木原洋美氏による「なぜ「ワクチン接種で死亡」の原因究明が進まないのか、法医学者に聞く」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/282431
・『新型コロナウイルスワクチンの接種が進む一方で、重篤な副反応や健康被害については慎重な調査が必要となる。中でも接種後の死亡については、その死因究明が詳細に正しく行われることが重要だ。しかしながら、ワクチン接種後の死亡例については、そのほとんどがワクチン接種によるものなのかきちんと判定されていないままだという。ワクチンの安全な接種にも重要な、死因究明の課題とは何か。法医学者で国際医療福祉大学医学部講師の本村あゆみ氏に話を聞いた』、「ほとんどがワクチン接種によるものなのかきちんと判定されていないまま」、私も疑問に思っていたので、興味深い。
・『ワクチン接種後の死亡 ほぼ100%「因果関係」不明 9月13日政府が公表した集計によると、日本における新型コロナワクチン接種率は1回目が63%、2回目は50.9%に達している。河野太郎規制改革担当相は今月4日、ワクチン接種について、「希望する全国民に対して11月上旬に完了する」との見通しを示しているが、ワクチンに関しては接種率を上げる以前に注力してほしい課題がある。 それは、接種後の死亡と報告された事例の死因究明だ。例えばファイザー製のワクチンについては、2021年2月17日から8月8日までに報告された991の死亡事例中、「ワクチンと死亡との因果関係が否定できないもの」は0件、「ワクチンと死亡との因果関係が認められないもの」5件、「情報不足等によりワクチンと死亡との因果関係が評価できないもの」986件で、大部分の死因はワクチン接種によるものかどうかちゃんとした判定はされていない(厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会が8月25日に公表した調査より)。 国や専門家は、「健康被害のリスクを踏まえてもメリットが圧倒的に上回る」とワクチン接種を推奨し、「健康被害が予防接種によるものであると厚生労働大臣が認定したときは、予防接種法に基づく救済(医療費・障害年金等の給付)が受けられます」と安心を強調してきたが、最悪の健康被害である死亡例については、ほとんど解明されていないのが現状だ。救済は予防接種との因果関係が認定されなければ受けられないことを考えると、8月20日までにワクチン接種後1093人(米ファイザー社製ワクチン1077例、米モデルナ社製ワクチン16例)もの人が亡くなっているのに、救済された人は1人もいないことになる。 死因究明は、亡くなる人を減らすためにも欠かせない。その人の体内で何が起きて死に至ったのか、またそれがワクチン接種によるものなのかどうかが分かれば、重篤な事態が生じないよう先手を打つこともできるからだ。 そういう意味では、死因究明は生きている人のための医学でもある。 そこで今回は、「法医学は、亡くなられた方の死因を究明した結果を、生きている人や社会に還元していく医学です」と語る法医学者で国際医療福祉大学医学部講師の本村あゆみ氏に話を聞いた(Qは聞き手の質問、Aは本村氏の回答)』、「救済は予防接種との因果関係が認定されなければ受けられないことを考えると、8月20日までにワクチン接種後1093人・・・もの人が亡くなっているのに、救済された人は1人もいないことになる」、いくら忙しいにしても、酷い職務放棄だ。
・『「心不全」「心肺停止」は 状態であって死因ではない Q:厚生科学審議会が公表している死因を一つ一つ見ていくと、「心不全」「心肺停止」といった、死因とするには疑問符が付くものが何度も登場してきます。専門家は、このような死因を「死因」と呼ぶのでしょうか? A:厚生科学審議会の調査で死因を判断しているのは各医療機関の報告医なので、診療時の血液検査や画像検査などを踏まえて、死因を推定しているものと思われます。いわゆる通常の臨床医の死因判断です。なので、傷病名ではない「心肺停止」という文言での報告が散見されるのだと思います。 これらの報告を踏まえて、専門家がワクチン接種との関連性の有無を判断されているようですが、やはり元になる死因について解剖を含めた詳細な調査はなされていないことがほとんどで、これでは判断しようがないと言わざるを得ません。 Q:中には、「情報不足で判断できない」というものもかなり多くあります。行政はワクチン接種後に亡くなった人の死因究明に積極的ではないように感じるのですが、先生はどう思いますか? A:ワクチン関連にかかわらず、行政においては死因究明の必要性が理解されていないのではないでしょうか。CTその他検査で、医者が見れば死因は分かるものと思っているのかもしれません。 Q:では、死因究明はそんな単純なものではない? A:即時型のアナフィラキシーショックはまだしも、接種後に起きる可能性が指摘されている心筋炎や血栓症は、もし病院で十分な検査を受ける間もなく亡くなってしまった場合には、外表の所見のみで診断することは不可能です。 そもそも、個別の死因のみをもって接種と死亡の因果関係を問うことは困難です。正確な情報の集積、統計を行い、平時や非接種者との比較によって、接種後の影響を判定する必要があります。しかしながら現状では、土台となるべき死因診断が正確でない可能性があり、また情報そのものが少なすぎて、「因果関係が不明」とせざるを得ないのがほとんどという状況になっています。 例えば厚生科学審議会の資料だと、接種後の「心肺停止」が多いということになるのですが、そもそも死亡とは心肺停止の状態。その事例を検討しているわけですから、心肺停止が多いのは当たり前ですよね。検討するには、その原因を探らないといけません。 急性心不全が死因などとされているものも、中には心筋炎が含まれるかもしれない。せっかく一部の事例では病理解剖まで行って、詳細な検討の結果として例えば凝固因子欠乏※を指摘されていても、他にも同様の病態を示す事例が確認されなければ、この方だけの特異な症状ということになり、一般的なワクチンによる副反応には計上されないままでしょう。※血液が凝固するために必要なタンパク質が著しく減少することで血が止まりにくい症状 これでは接種の安全性は十分に担保されませんし、副反応で亡くなってしまった方も因果関係不明とされたままでは、遺族にも十分な補償が行き届かないということになります。 Q:パンデミック下だから仕方ない」という意見もあります。 A:いいえ。平時から、解剖を含めた死因調査は重要ですが、このようなパンデミック下での緊急事態の時こそ、より正確な情報収集が重要であることは明らかですし、接種後の死因調査として特別に予算や施設、情報管理システムなどの整備をするといった対応が必要です』、「厚生科学審議会の資料だと、接種後の「心肺停止」が多い」、これでは接種と死亡の関係を見られないので、本来は詳細な死因を記入させるべくだ。「より正確な情報収集が重要であることは明らかですし、接種後の死因調査として特別に予算や施設、情報管理システムなどの整備をするといった対応が必要です」、同感である。
・『日本の法医解剖率は1.6%程度 十分な死因究明が行われない理由 Q:ワクチン接種と死亡例の因果関係、死因をきちんと調べるには、どのようなことが必要なのでしょうか? A:やはり解剖を含めた詳細な死因調査が議論の基礎として必要です。死因が分からない、あるいは誤解されたままでは、情報が少ないとして因果関係不明と結論付けられてしまうのも仕方ありません。 コロナではありませんが、千葉県では交通事故死亡事例について、県内の医療機関が集まってPTD(preventable trauma death:避けられた外傷死)ではなかったかどうか、専門家による調査・検討を行っています。救急隊や医療機関からの情報を基に、病院の選定は妥当であったか、診療内容は適切であったかなどを検討するのですが、やはり情報が十分でないと判断が難しくなります。 また、ごく一部では解剖検査が行われ、その結果とも照合して検討するのですが、既往症や生活状況など初療時には分からなかった情報が警察を通じて得られていますし、中には損傷の見落としによって、当初判断された死因が正確でないことが判明するケースもあり、評価の土台としての解剖結果の重要性を実感しています。 Q:コロナに限らず、日本では法医解剖率の低さが以前から問題になっています。現状として、警察取り扱い死体における法医解剖率は11.5%(2019年)、全死亡中では1.6%程度と、日本では十分な死因究明が行われていません。 そうですね。現在の日本では解剖を含めた死因調査自体が十全に行われているとはいえません。法律を制定するなどして解剖を増やす努力は行政、司法、法医学各方面で続けられているところではありますが、予算も限られており、解剖率は諸外国にいまだ到底及びません。 特に、新型コロナウイルスやワクチンに関連した死亡のように犯罪による死亡が疑われない場合、ほとんどの自治体では、警察が取り扱う死体の死因調査として行われる司法解剖や死因身元調査法解剖の対象としてそぐわないことが考えられます。東京23区や大阪市など監察医制度のある地域では行政解剖を行うことができますが……。 例えば千葉県では準行政解剖として知事の権限で行う承諾解剖の制度がありますが、これは年間10件程度の予算しかないため、運用には高いハードルがあります。さらに、通常の解剖に比べて抗原検査やPCR検査、詳細な組織検査など追加の特殊な検査が多く必要となりますので、費用もかさんでしまいます。 いかなる死亡であっても、死因を正しく判断することは死者、遺族の権利であり、その情報に基づいて健康に関する施策を享受することは国民の権利です。国はそのことをよくご理解いただき、このような新しい感染症の脅威、これに対する予防、治療の安全性、有効性をきちんと評価するためにも、改めて予算を組んで既存の行政解剖や承諾解剖を充実させる必要があります』、「通常の解剖に比べて抗原検査やPCR検査、詳細な組織検査など追加の特殊な検査が多く必要となりますので、費用もかさんでしまいます」、しかし、「いかなる死亡であっても、死因を正しく判断することは死者、遺族の権利であり、その情報に基づいて健康に関する施策を享受することは国民の権利です」、「国は」、「新しい感染症の脅威、これに対する予防、治療の安全性、有効性をきちんと評価するためにも、改めて予算を組んで既存の行政解剖や承諾解剖を充実させる必要があります」、その通りだ。無論、対象を全件でなく、サンプルにすることで費用圧縮を図るのは当然だろう。
・『情報連携や費用に課題 解剖を増やすことはできるのか Q:解剖を増やすのは難しいことなのでしょうか? クリアすべき課題はいくつかあります。一つはお金の問題。人員や物品の確保、諸検査に必要な経費など、国で予算を検討していただく必要があります。特に接種後の死亡についてはさまざまな要因が考えられ、アナフィラキシー、血栓症、心筋炎など、解剖でも肉眼的に直ちに診断するのは難しい病態が多く想定されます。検査も多岐にわたると考えられ、通常の解剖経費では賄いきれません。 またシステムの問題もあります。解剖の体制が整備されたとしても、情報が個々の施設や各都道府県などで保管されたままでは意味がありません。ワクチン接種後の死亡例については厚生労働省に報告を行い、審議会での検討の俎上に乗せなくてはならないということを広く周知する必要があります。 そもそも前提として、ワクチン接種後の死亡なのかどうかが解剖時に分からないことも問題です。接種が始まった頃、(本村氏も解剖する際に)接種と死亡の関連も考えなければと思い、解剖に搬入されたご遺体について警察官に「この方、ワクチンの接種は終わっていますか?」と聞きましたが、はっきりした返答はほとんど返ってきませんでした。 「(ご遺体発見時)部屋に接種券はなかった」程度の把握しかされておらず、行政と警察との連携、公益的な情報の共有についても整備が必要だと考えられます。 Q:海外では、ワクチン接種後の予期せぬ死について、どのような検証がなされているのでしょうか? A:アメリカではVAERS(Vaccine Adverse Event Reporting System)、イギリスではMDRA(Medicines & Healthcare products Regulatory Agency)へのYellow Cardなど、各国で接種後の有害事象について報告するシステムがあり(日本でも厚生労働省に報告するところは同じ)、報告された事例について、臨床症状や検査結果、死亡例では死因を含めた検討が行われています。調べた限りでは、コロナ禍において特別に解剖を増やして行うという報告は見られませんでしたが、死因の検討としてもちろん解剖結果は反映されています。 また、日本の監察医業務を含むメディカルエグザミナーの連合体であるNational Association of Medical Examiners(NAME)のサイトには、新型コロナウイルスワクチン接種後死亡を取り扱う際のガイドラインが出ており、「なるべく解剖してアナフィラキシーなど確認すべし」とされています。 ちなみに日本の監察医務院(東京都)、監察医事務所(大阪府)、監察医務室(兵庫県)からは特にこのような案内はありません。法医学会からも特に提言などはありません(感染者の解剖について案内あり)。会員として申し訳ない気持ちです。 そもそも日本は解剖率が低いので、どうしても死因の裏付けという点で根拠が乏しいのが問題になるかと思います。 海外のワクチン摂取後死亡の解剖例に関する論文報告では、血栓症や心筋炎が死因となった事例が提示されています。いずれも副反応による可能性は示唆されるものの、現時点での確定は難しいようですが、これらの事例の集積、統計により今後副反応としての死因に計上されてくる可能性はあるかもしれません。ですから、やはり詳細な死因を調査し、エビデンスとして残しておくことは非常に重要なのです。 2019年6月6日に死因究明等推進基本法が成立し、翌年4月1日より施行されてはいるが、「死因究明ならびに法医をめぐる状況は、肌感覚としては全く変わりないです」と本村氏。潜在しているであろうワクチン接種関連死を掘り起こし、新たな犠牲者の防止に生かすことは、結果として、ワクチン接種率向上につながる。コロナ禍を機に、日本は死因究明後進国からの脱却をはかるべきなのではないだろうか。 (筆者略歴はリンク先参照)』、「行政と警察との連携、公益的な情報の共有についても整備が必要」、「コロナ禍を機に、日本は死因究明後進国からの脱却をはかるべき」、同感である。
第三に、9月23日付け東洋経済オンラインが転載したThe New York Times「イスラエルの調査で判明「ブースタ接種」の難題 感染予防の底上げ効果は高齢者で数週間」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/457343
・『新型コロナワクチンの追加接種(ブースター接種)の是非をめぐる意見対立が激しくなる中、イスラエルの研究者は9月15日、60歳以上に関してはファイザー製ワクチンの3回目接種で感染と重症化の両方を少なくとも12日間防ぐことができるという調査結果を発表した。 世界には未接種者がたくさんいるため、健康な成人にブースター接種を行うことについては厳しい異論が出ている。ジョー・バイデン政権も広く一般にブースター接種を行う計画だったが、医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」で発表された今回の研究で、ブースター接種をめぐる意見対立はさらに深まった』、「3回目接種で感染と重症化の両方を少なくとも12日間防ぐことができる」、効果が小さいことに驚かされた。
・『高齢者でさえ必要ないかもしれない これまでに累積されたデータを見る限り、ブースター接種が必要なのは高齢者だけで、高齢者ですらブースター接種は必要ないかもしれない、と複数の独立した科学者は語った。 専門家によると、これまでに発表されたすべての研究において、ワクチンは重症化と入院の予防に関しては、今も圧倒的大多数の人々に対して高い有効性を維持している。ただ感染の予防については、とくに感染力の強いデルタ株にさらされた場合には、すべての年齢層で効果が下がってきているように見えるという。 今回、イスラエルのデータで明らかになったのは、ブースター接種を行えば高齢者の予防効果を数週間引き上げられる可能性がある、ということだ。専門家によれば、想定内の結果であり、ブースター接種の長期的なメリットが示されたわけではない。 シアトルにあるワシントン大学の免疫学者マリオン・ペッパー氏は「免疫反応はブースター接種で高まるだろうが、その後、再び低下することが予想される」と話す。「しかし、3〜4カ月(の効果底上げ)というのは、私たちが目指しているものなのだろうか」。 バイデン大統領のパンデミック対策で首席医療顧問を務めるアンソニー・ファウチ氏をはじめとする連邦保健当局の高官は、ワクチン接種の効果が時間の経過とともに低下することを示唆するイスラエルのデータなどを根拠に、ブースター接種計画を正当化してきた。 そのためアメリカ国民には、正式に認可される前から、ブースター接種を受けようと先を争う動きが一部で見られる。しかしブースター接種計画に対しては、政府の科学者からも懐疑的な見方や怒りが向けられるようになっている』、「ブースター接種計画に対しては、政府の科学者からも懐疑的な見方や怒りが向けられるように」、どういうことなのだろう。
・『「予防可能な死」を防ぐことが先決 アメリカ食品医薬品局(FDA)でワクチン部門を率いていた2人の科学者がこの秋に退任すると発表した理由の1つは、連邦政府の研究者によるエビデンス(科学的証拠)の精査を待たずしてブースター接種を推し進めようとする政権への不満だという。 13日には、退任するFDA高官を含む国際的な科学者グループが、ブースター接種の推進を強く非難した。同グループは医学誌「ランセット」で論文を発表し、数十の研究を分析した結果、ワクチンは数十億人の未接種者を守るのに使ったほうが世界のためになると結論づけた。 「今回のパンデミックにおける私たちの第1目標は、まず予防可能な死をすべて回避し、終わらせることにあった」と、世界保健機関(WHO)のチーフサイエンティストで、ランセットの論文の共著者でもあるスミヤ・スワミナサン氏は述べた。「私たちはそのための非常に効果的な手段を手にしているのだから、世界中で(予防可能な)死を防ぐのに使うべきだ」。 ウイルスがデルタ株よりもさらに危険な形態に変異し、免疫を完全に回避する変異株が出現するのを防ぐため、ブースター接種よりも未接種者を減らすほうが課題としては緊急性が高いと専門家らは言う。 ブースター接種の効果に関するイスラエルの今回の研究は、60歳以上の住民110万人以上の健康記録に基づくもので、ブースター接種から少なくとも12日後の感染率は2回しか接種していない人に対し11分の1、重症化率は20分の1近くにまで下がっていたことが確認された。 ただ、研究者は結果が暫定的なものであることを認めている。エルサレム・ヘブライ大学のミハ・マンデル教授(統計学・データサイエンス)は「長期的にどうなるかは、現時点ではわからない」と語った。 ブースター接種が科学的に難しい問題となっているのは、1つには「感染予防」と「重症化や死亡の予防」という目標の間に極めて大きな違いがあるためだ。 体内の最前線で感染を防ぐのが抗体だが、科学者によると、長期にわたる感染予防効果をワクチンで確実に得られる可能性は低い。というのは、ワクチンが人体を刺激することで産生される抗体は時間の経過による減少が避けられないからだ。 ただしワクチンによって作られた細胞性免疫は、重症化や死亡を防ぐのに極めて強力な武器となる。細胞性免疫に書き込まれた「免疫記憶」は、効果が表れるまでに数日を要するものの、しっかりとした効果が何カ月にもわたって維持される』、「(FDA)でワクチン部門を率いていた2人の科学者がこの秋に退任すると発表した理由の1つは、連邦政府の研究者によるエビデンス・・・の精査を待たずしてブースター接種を推し進めようとする政権への不満」、対立は予想以上に深刻なようだ。「ウイルスがデルタ株よりもさらに危険な形態に変異し、免疫を完全に回避する変異株が出現するのを防ぐため、ブースター接種よりも未接種者を減らすほうが課題としては緊急性が高い」、「長期にわたる感染予防効果をワクチンで確実に得られる可能性は低い」、その通りなのかも知れない。
・『終わりなきワクチン接種から抜け出せなくなる この点にこそブースター接種の問題がある、と一部の科学者は指摘する。入院や死亡を防ぐ道具なら、すでに手元にある。しかし感染予防を目指すとなれば、その国はブースター接種の終わりなきサイクルから抜け出せなくなる。 「本当に感染予防を目標にするなら、半年ごとのブースター接種が必要になるだろうが、非現実的だし達成も不可能だ」と、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の感染症専門家ピーター・チンホン氏は話す。 自身がこれまでに病院で実際に目にしたワクチン接種済みの患者たちは、免疫機能が弱っている人か、持病のある70歳以上の高齢者ばかりだった、とチンホン氏は付け加えた。 ブースター接種が必要な理由として、ファウチ氏をはじめとする保健当局者は、あらゆる年齢層で接種者が重症化するケースが増えているというイスラエルのデータを引き合いに出していた。ただ、すべての年齢層をひとまとめにすると、統計上、重症化率が膨らんで見えることがある。 実際、イスラエルの統計を年齢別に分解してみると、重症化の予防に対するワクチンの有効性の低下がはっきりと見られたのは60歳以上だけだった、とニューヨークのベルビュー・ホスピタル・センターの感染症専門家で、バイデン政権の顧問だったこともあるセリーヌ・ガウンダー氏は指摘する。 「高齢者ではワクチンによる免疫反応が比較的弱くなることは、以前から知られていた」とガウンダー氏は言う。「高齢者に追加のワクチン接種を勧めることは物議を醸すような問題にはならない」。 アメリカのこれまでの研究も、ワクチンの重症化予防効果が弱まるのは高齢者だけだと示唆する結果になっている。アメリカ疾病対策センター(CDC)が9月上旬に公開した3つの研究によれば、75歳以上を除くと、ワクチンによる入院予防効果はデルタ株が登場した後でさえ、ほとんど変化しなかった。 科学者の中には、高齢者で感染予防効果が弱まるということは、ブースター接種の必要性を裏付ける強い論拠になる、と主張する向きもある。 ニューヨークにあるロックフェラー大学の免疫学者ミシェル・ヌーセンツワイグ氏は自らもブースター接種を受けたいと話す一方で(同氏は66歳だ)、感染の連鎖を防ぐため広く一般にもブースター接種を行うことを支持していると語った。 若い層の免疫はまだ弱まっているわけではないが、追加接種で感染防止効果を上げれば、周囲のワクチン未接種者に感染させるのを抑えられる、という理屈だ。「それが結果的にほかの人の入院を防ぐことにつながり、ひいてはアメリカの今後にもプラスになる」と言う』、なるほど。
・『追加接種を繰り返すと免疫が疲労する 一方で別の専門家たちは、ブースター接種を正当化できるほど明白な2次感染の抑制効果を示すデータは存在しないとして、上述のような前提には疑問を呈している。 若い人々を対象にブースター接種を行う場合、当局は3回目の接種で得られる限定的なメリットと、血栓や心臓障害といった副反応のリスクとの間でバランスを取らなければならない、と専門家らは言う。さらに前出のペッパー氏によれば、体内の防御機構に繰り返し刺激を与えると「免疫疲労」と呼ばれる現象を引き起こすおそれもある。 「何度も免疫反応を増加させようとすることには、明らかに何らかのリスクが存在する」とペッパー氏は話す。「仮に6カ月ごとに追加接種するサイクルに入り込めば、私たちにマイナスに作用する可能性がある」』、「体内の防御機構に繰り返し刺激を与えると「免疫疲労」と呼ばれる現象を引き起こすおそれもある。「何度も免疫反応を増加させようとすることには、明らかに何らかのリスクが存在する」、そうであれば、「ブースター接種」はするべきではないようだ。日本も年末あたりから、「ブースター接種」に踏み切るとの見方もあるが、慎重に考えた方がよさそうだ。
タグ:パンデミック (医学的視点) (その22)(ラムダにミューも 新型コロナの変異株 知っておきたい10のこと、なぜ「ワクチン接種で死亡」の原因究明が進まないのか 法医学者に聞く、イスラエルの調査で判明「ブースタ接種」の難題 感染予防の底上げ効果は高齢者で数週間) 日経ビジネスオンライン: 「ラムダにミューも 新型コロナの変異株、知っておきたい10のこと」 インドも「インド株」でイメージダウンになると主張していたのも記憶に新しいところだ。 「VOC、VOIに分類される変異株は全て日本で検出されている」のであれば、日本の水際対策の実効性も大したことなさそうだ。 「ブースター接種」については、3番目の記事で紹介する。 ダイヤモンド・オンライン 木原洋美 「なぜ「ワクチン接種で死亡」の原因究明が進まないのか、法医学者に聞く」 「ほとんどがワクチン接種によるものなのかきちんと判定されていないまま」、私も疑問に思っていたので、興味深い。 「救済は予防接種との因果関係が認定されなければ受けられないことを考えると、8月20日までにワクチン接種後1093人・・・もの人が亡くなっているのに、救済された人は1人もいないことになる」、いくら忙しいにしても、酷い職務放棄だ。 「厚生科学審議会の資料だと、接種後の「心肺停止」が多い」、これでは接種と死亡の関係を見られないので、本来は詳細な死因を記入させるべくだ。「より正確な情報収集が重要であることは明らかですし、接種後の死因調査として特別に予算や施設、情報管理システムなどの整備をするといった対応が必要です」、同感である。 「通常の解剖に比べて抗原検査やPCR検査、詳細な組織検査など追加の特殊な検査が多く必要となりますので、費用もかさんでしまいます」、しかし、「いかなる死亡であっても、死因を正しく判断することは死者、遺族の権利であり、その情報に基づいて健康に関する施策を享受することは国民の権利です」、「国は」、「新しい感染症の脅威、これに対する予防、治療の安全性、有効性をきちんと評価するためにも、改めて予算を組んで既存の行政解剖や承諾解剖を充実させる必要があります」、その通りだ。無論、対象を全件でなく、サンプルにすることで費 「行政と警察との連携、公益的な情報の共有についても整備が必要」、「コロナ禍を機に、日本は死因究明後進国からの脱却をはかるべき」、同感である。 東洋経済オンライン The New York Times 「イスラエルの調査で判明「ブースタ接種」の難題 感染予防の底上げ効果は高齢者で数週間」 「3回目接種で感染と重症化の両方を少なくとも12日間防ぐことができる」、効果が小さいことに驚かされた。 「ブースター接種計画に対しては、政府の科学者からも懐疑的な見方や怒りが向けられるように」、どういうことなのだろう。 「(FDA)でワクチン部門を率いていた2人の科学者がこの秋に退任すると発表した理由の1つは、連邦政府の研究者によるエビデンス・・・の精査を待たずしてブースター接種を推し進めようとする政権への不満」、対立は予想以上に深刻なようだ。 「ウイルスがデルタ株よりもさらに危険な形態に変異し、免疫を完全に回避する変異株が出現するのを防ぐため、ブースター接種よりも未接種者を減らすほうが課題としては緊急性が高い」、「長期にわたる感染予防効果をワクチンで確実に得られる可能性は低い」、その通りなのかも知れない。 「体内の防御機構に繰り返し刺激を与えると「免疫疲労」と呼ばれる現象を引き起こすおそれもある。「何度も免疫反応を増加させようとすることには、明らかに何らかのリスクが存在する」、そうであれば、「ブースター接種」はするべきではないようだ。日本も年末あたりから、「ブースター接種」に踏み切るとの見方もあるが、慎重に考えた方がよさそうだ。
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