GAFA(その7)(GAFAの株価が低調 「成長の限界を迎えた」といえるこれだけの理由、アップル 成長鈍化の逆風下でM2チップに透ける「深謀遠慮」とは、GAFA神話終焉のワケは「ネット広告の限界」だけじゃない!Twitter Netflixも同じ) [イノベーション]
GAFAについては、2月11日に取上げた。今日は、(その7)(GAFAの株価が低調 「成長の限界を迎えた」といえるこれだけの理由、アップル 成長鈍化の逆風下でM2チップに透ける「深謀遠慮」とは、GAFA神話終焉のワケは「ネット広告の限界」だけじゃない!Twitter Netflixも同じ)である。
先ずは、5月10日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「GAFAの株価が低調、「成長の限界を迎えた」といえるこれだけの理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/302879
・『「GAFA」の株価が下落基調にある。これまで注目されてきたビジネスモデルに、行き詰まりの兆しが見え始めているからだ。その軌跡を基本から振り返ると共に、現在のリスク要因を分析し、今後の展開を予測する』、さしもの「GAFA」にも「行き詰まりの兆し」とは興味深そうだ。
・『GAFAの成長期待が鈍化 ビジネスモデルに行き詰まりの兆し このところ、「GAFA」(グーグル、アップル、旧フェイスブック・現メタ、アマゾン)の株価が下落基調にある。2022年1~3月期決算が出そろった後も、各社の株価は上昇していない。 最大のポイントは、各社の成長期待が鈍化していることだ。これまで注目されてきたITプラットフォーマーとしてのビジネスモデルに、行き詰まりの兆しが見え始めている。加えて、米国内の人手不足や、「ディ・グローバリズム」(グローバル化に逆行する動き)に伴うコストアップ要因がGAFA各社を直撃している。 今後の展開として、GAFAの成長期待は一段と低下することも想定される。それが現実味を帯びると、各社の株価は下落する可能性が高い。ウクライナ危機や中国のゼロコロナ政策をきっかけに、グローバル化の加速を前提としたアップルの事業運営の効率性は、低下する恐れが強くなっている。主要先進国における個人データ保護規制の強化なども、メタやグーグル、アマゾンの成長期待を低下させるだろう。 米国の連邦準備制度理事会(FRB)は、“インフレ退治”のため周囲の予想を上回るペースで金融引き締めを進めている。それはGAFAの事業運営には逆風となり、株価の下落懸念を高める要因だ』、要因には、「各社の成長期待が鈍化」、「米国内の人手不足」、「ディ・グローバリズム」「に伴うコストアップ要因」、「主要先進国における個人データ保護規制の強化」、さらには「FRB」の「金融引き締め」など構造的な性格が強いようだ。
・『これまでのビジネスモデルが神通力を失うGAFA 過去1年間のGAFAの株価の推移を確認すると、大まかな傾向として21年12月前半まで各社の株価は高値圏で推移した。しかし、その後は株価が上昇していない。それが意味することは、各社が高い成長を維持するのが難しくなっているということだ。 まず、アップルの成長期待の鈍化を考えてみよう。1990年代以降の米国経済において、アップルはグローバル化を追い風に高成長を実現した企業の象徴である。97年、同社は経営破綻寸前にまで追い込まれていたが、その状況を救ったのが創業者の一人だった故スティーブ・ジョブズだ。ジョブズは高付加価値なソフトウエアの創出に集中し、iPodやiPhoneなどのデバイスや、iTunesなどのサービスの設計と開発に注力した。 それと同時にアップルは世界各国から優れた部材や部品を集め、完成品のユニット組み立て型生産を、台湾の鴻海精密工業の中国子会社であるフォックスコンに委託した。こうした国際分業によって、製造ラインを自社保有する負担から解放され、高付加価値なソフトウエア創出に集中し、高い収益性を実現したのだ。同社がリーマンショック後の世界経済のデジタル化を加速し、米国および世界経済の成長に与えた影響は計り知れない。 しかし、近年、こうしたビジネスモデルに行き詰まりが見えている。まず、中国の生産年齢人口が減少し、労働コストが上昇したことは大きい。加えて、米中対立によって世界のサプライチェーンが混乱。さらに、新型コロナウイルスの感染再拡大やウクライナ危機など複合的な要因が重なり、供給制約は深刻化し続けている。 そうした環境の変化によって、国際分業体制の強化で高成長を実現してきたアップルが、需要を取りこぼし始めているのだ』、「アップル」の「国際分業体制」の「ビジネスモデルに行き詰まり」は確かに深刻だ。
・『SNSへの規制強化、労働組合の結成 逆風強まるITプラットフォーマー 動画や検索、SNSサービスの提供で広告収入を得てきたグーグルやメタ、ネット通販やクラウドコンピューティングなどのサービスを提供してきたアマゾンの成長期待も鈍化している。 グーグルとメタは、ユーザーである個人の検索や動画視聴、知人関係(ネットワーク)、モノやサービスの購入履歴といった膨大なデータ(ビッグデータ)を優先的に手に入れて、それを販売したり、新しいビジネスに用いたりすることによって急速に収益を増やした。 しかし、ロシアがフェイスブックを用いて2016年の米大統領選挙に介入した疑惑が浮上したことなどにより、SNSへの規制が強化されている。メタは人海戦術でフェイクニュースの摘発を強化しなければならなくなり、コストが増加した。また、公正さへの懸念から一時、フェイスブックのユーザーが減少した。 メタの22年1~3月期決算は、売上高の伸び率が上場来で最低となり、同社への懸念は高まっている。同様のことが、検索サービスの強化によって広告収入を増やしてきたグーグルにも当てはまる部分が多い。 アマゾンは世界に「物流革命」を起こした。同社は、積極的な設備投資によって世界各国で効率的な配送網を整備し、自力でラストワンマイルを構築した。さらに消費者一人ひとりの好みを突くアルゴリズムを開発して消費意欲をかき立て、クラウドサービスも提供することによって有力ITプラットフォーマーとしての地位を確立した。 しかし、物流施設での過酷な労働環境への反発から労働組合が結成されるなど、成長力には翳りが出始めている。加えて、米国をはじめ世界的な人手不足を背景に、物流センターでの人員やドライバーの確保が難しくなっているようだ。 倉庫の建設やEV新興メーカーへの投資も業績の重荷になっている。原油などエネルギー資源価格の高騰は燃料費の増加につながり、収益を圧迫している。このようにGAFA各社はこれまでの高い成長スピードを維持することが難しくなっている』、悪材料がよくもここまで出揃ったものだ。
・『中長期的なGAFA株の下落懸念 業績拡大ペースは鈍化 GAFA各社は正念場を迎えている。今後の展開として、GAFAの業績拡大ペースは鈍化し、株価が下落する可能性は高まっている。各社ともグローバル化の加速を前提にビジネスモデルを構築してきたからだ。 しかし、ウクライナ危機によって世界経済はグローバル化からブロック化に向かい始めた。世界経済の先行き見通しは悪化したため、広告主の企業はコスト削減を優先しなければならず、SNSや動画サイトでの広告出稿は減少するだろう。また、データ保護やフェイクニュースなどの取り締まりのためのコストも増える。 世界的な供給制約の長期化によって半導体の不足が長引き、スマホなどITデバイスの生産が計画を下回る可能性も高まっている。中国では経済成長の低下傾向が鮮明だ。IT機器やサービスの需要の低下に加えて、生産年齢人口の減少によって労働コストも上昇するだろう。いずれもGAFAの事業運営の効率性向上を阻害する要因だ。 加えて、米国をはじめ世界的に物価が急騰している。FRBは金融政策の正常化を急がなければならない。世界的に金利は上昇するだろう。金利上昇によって、企業が永続的に生み出すと考えられるフリー・キャッシュ・フローの「割引現在価値」(将来得られる価値を現在受け取るとしたらどの程度の価値になるかを計算したもの)は小さくなる。GAFAのように成長期待が高い企業ほど、そのインパクトは大きくなり株価の下落懸念は高まりやすい。 FRBが追加利上げやバランスシート縮小を急ぐ姿勢を一段と強める場合、米国の金利は急速に上昇し、GAFAなどIT先端企業の株価の低下傾向が一段と鮮明化する恐れがある。また、米金利の上昇によって新興国からは資金が流出し、世界経済全体で成長率は低下する展開も想定される。それはGAFAの収益減少要因になるだろう。 言い換えれば、GAFA各社がこれまでの発想にとらわれることなく新しいモノやサービスを生み出し、需要を創出することが出来るか否か、その実力が問われている』、「金利上昇によって」、「フリー・キャッシュ・フローの「割引現在価値」・・・は小さくなる。GAFAのように成長期待が高い企業ほど、そのインパクトは大きくなり株価の下落懸念は高まりやすい」、「米国の金利は急速に上昇し、GAFAなどIT先端企業の株価の低下傾向が一段と鮮明化する恐れがある」、「GAFA各社がこれまでの発想にとらわれることなく新しいモノやサービスを生み出し、需要を創出することが出来るか否か、その実力が問われている」、三番目は残念ながら期待薄だ。
次に、6月28日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「アップル、成長鈍化の逆風下でM2チップに透ける「深謀遠慮」とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/305516
・『アップルのビジネスモデルの優位性が揺らいでいる。同社の業績への懸念が高まり、米国にあるアップルの小売店舗では労働組合が結成された。アプリストアに関しても、多くの国がアップルにストアを抱え込むのではなく、外部に開放するよう求めている。各国の規制当局がアップルのシェアをそぎ落とし、データの保護や自国企業に有利に働く環境整備を強化している。一方、アップルがメタバースに対応した「眼鏡型のデバイス」を発表するとの観測が高まる中で、クックCEOは新型の「M2チップ」を発表した。アップルが描く、ウェブ3.0の大激変期を生き抜く新しいビジネスモデルとは』、興味深そうだ。
・『アップルが新型の「M2チップ」を発表 変革期におけるその狙いとは 世界のネット業界が大激変期を迎えている。主要国の規制強化に加えて、アップルなどが主導してきた「ウェブ2.0」から、次の「ウェブ3.0」へ様変わりしつつある。その変革で、私たちとデジタル空間の距離感は一気に縮まり、新しいサービスやデバイスの需要が増える。 他方、スマートフォンなどの需要が飽和し、中国のゼロコロナ政策による供給制約やウクライナ危機による資源価格高騰が深刻化したことで、アップルのビジネスモデルの優位性が揺らいでいる。同社の業績への懸念が高まり、米国にあるアップルの小売店舗では労働組合が結成された。 そうした状況下、アップルは新しいビジネスモデルの確立を急いでいる。それを示唆するのが、チップ開発の加速だ。メタバースに対応した「眼鏡型のデバイス」を発表するとの観測が高まる中で、クックCEOは新型の「M2チップ」を発表した。その狙いは、より高性能なチップ開発を加速し、より多くの人が能動的に活動できる、新しいネット空間を整備することだろう。 アップルは人々がより積極的に新しい取り組みを進めてモノやサービスを取引するバーチャルな市場を整備し、その運営を多種多様な企業と連携して進めようとするだろう。このことが半導体部材メーカーおよび製造装置メーカーの事業運営や、米中対立に与えるインパクトは大きい』、「「M2チップ」を発表した。その狙いは、より高性能なチップ開発を加速し、より多くの人が能動的に活動できる、新しいネット空間を整備することだろう。 アップルは人々がより積極的に新しい取り組みを進めてモノやサービスを取引するバーチャルな市場を整備し、その運営を多種多様な企業と連携して進めようとするだろう」、ずいぶん意欲的なようだ。
・『アップルの成長鈍化が懸念される理由 労働組合が発足した背景 2000年代に入りアップルはiPodやiPhone、iPadなど次々と新しいデバイスを生み出して高い成長を実現した。それを可能にしたビジネスモデルが、グローバル化を追い風に設計・開発と生産を分離したことだ。 人件費が高い米国で、アップルはソフトウエアの設計と開発に集中。直感的に操作可能なデバイスを生み出し、ネット上で音楽配信やアプリストアなどを運営した。 また、世界から最も優秀な部材やユニットを低価格で調達し、中国にある富士康科技集団(フォックスコン、台湾の鴻海精密工業の子会社)の工場にユニット組み立て型生産を委託。こうして生産設備を抱える負担から解放され、米国など高価格で販売できる市場に製品を迅速に供給した。 そうした結果、収益が急拡大して資本の効率性が高まり、従業員の給料も増加した。しかし今、同社で労組が結成されたことは、ビジネスモデルの優位性が揺らぎ、高い成長の維持(≒給料の増加)が難しくなるとの懸念を示す。 複数の要因によってアップルの成長は鈍化しているが、主な要因として、従来体制での国際分業が難しくなっていることが挙げられる。 中国ではゼロコロナ政策が徹底され、iPhoneの生産が停滞した。IT業界担当の株式アナリストの間では、「iPhone14シリーズの発表が遅れる」との観測も出た。アップルは中国からインドなどに生産拠点を急速にシフトし始めた。 加えて、ウクライナ危機によって世界の資源価格が高騰している。グローバル化を追い風にソフトウエアの設計・開発のスピードを高め、新しい(アップデート型の)デバイスを供給して先端分野の需要を効率的に獲得してきたアップルに対する逆風が強くなっている。 そうした影響から、米国の店舗従業員は需要の鈍化を機敏に感じ取り、物価が高騰する環境下、自分たちの生活を守るために労組の発足に踏み切ったのだろう』、「同社で労組が結成されたことは、ビジネスモデルの優位性が揺らぎ、高い成長の維持(≒給料の増加)が難しくなるとの懸念を示す」、その通りだろう。
・『アップルの寡占化が分散され競争が激化するネット業界 アップルは世界のネット業界の激変にも直面している。端的に言えば、寡占化されたネット業界が分散化され、競争が激化する。 例えば、アプリストア(アプリ市場)の運営に関して、多くの国がアップルにストアを抱え込むのではなく、外部に開放するよう求めている。アプリ購入時の決済サービスに関しても、他の企業の参入を認めるよう規制が強化されている。 また、欧州委員会は24年秋までにデバイスの充電端子をUSBタイプCに統一するよう通告した。ナイフでケーキを切り分けるかのように、各国の規制当局がアップルのシェアをそぎ落とし、データの保護や自国企業に有利に働く環境整備を強化している。 そうした状況下、アップルは新チップM2を発表した。根底には、アップルの「深謀遠慮」があるだろう。これまでネット業界は一部の大手企業がサービスを提供し、収益とビッグデータを手に入れる(しかも「無料」で)構造だった(ウェブ2.0)。 それが今、ブロックチェーンを用いたウェブ3.0にシフトしている。これに伴い、偽造された非代替性トークン(NFT)の取引など、正規ではないデジタル資産の取引が増えるだろう。それは経済活動の効率性と透明性にマイナス影響を与える。また、米中対立や台湾海峡の緊迫化などを背景に、世界全体でサイバー攻撃のリスクが高まる。 そうした環境変化に対応しつつ成長を目指すために、アップルは他社との連携を強化して新しいネット上の秩序の構築に取り組むだろう。例えば、国際的なNFT取引の市場を整備し取引をモニターする、個々人や組織が必要に応じてネット空間で専門的なスキルを持つ人を募りプロジェクトを進める、などだ。 そうした取り組みを増やことが、個々人により高い満足感を提供する下支えになるだろう。そうした新しい仕組みを可能にするために、常時安心して接続できるネット空間の創造は不可欠だ。ウェブ3.0を支えるデバイスやサービスの先駆者利益を獲得するために、アップルはチップの設計と開発により集中し、新しいエコシステムの整備に取り組むはずだ』、「アップルは他社との連携を強化して新しいネット上の秩序の構築に取り組むだろう。例えば、国際的なNFT取引の市場を整備し取引をモニターする、個々人や組織が必要に応じてネット空間で専門的なスキルを持つ人を募りプロジェクトを進める、などだ」、なるほど。
・『急拡大する新しい半導体関連需要本邦企業と日本政府の取るべき策とは ウェブ3.0によって、新しい半導体部材や製造装置の需要が急速に高まる。メタバースに加えて、自動車の電動化やIoT機器の導入、脱炭素、ビッグデータ利用の増加などによっても、これまであまり半導体が用いられてこなかった機器に対しても、多種多様なチップが搭載されるようになる。 ファウンドリーと半導体の製造装置分野では、先端分野での取り組みが加速している。アップルが設計・開発したチップの受託生産を行う台湾積体電路製造(TSMC)は、オランダの半導体製造装置メーカーであるASMLから次世代の露光装置を調達し、顧客の技術革新に必要な回路形成を実現すると表明した。ASMLは米コネチカット州での追加投資を発表。「ナノからピコへ」というように半導体製造の革新は加速することはあれ、止まることは考えられない。 また、アップルは米中対立の先鋭化など、脱グローバル化への対応も強化しなければならない。6月15日、アップルをはじめとする米IT先端企業のトップが連名で、「中国対抗法案」を早期に成立させ半導体生産体制強化を財政面から支援するよう、ペロシ下院議長やシューマー上院院内総務らに書簡を送った。 そうした環境下、世界のサプライチェーンの再編も勢いづくだろう。半導体の性能向上と、その実現に欠かせない部材や製造装置の創出が、各国の安全保障や経済運営により大きなインパクトを与えるようになる。 1990年代以降、わが国はデジタル化に取り残された。ウェブ3.0の時代が幕を開ける中、本邦企業はしっかりとしたビジネスモデルを確立しなければならない。各企業は先端分野におけるモノづくりの力を徹底して磨く必要がある。 加えて、日本政府が半導体の部材や製造装置、さらにはマイコンやパワー半導体など本邦企業が国際競争力を維持している分野に、支援を迅速かつ他国に見劣りしない規模感で実施することも不可欠だろう』、「1990年代以降、わが国はデジタル化に取り残された。ウェブ3.0の時代が幕を開ける中、本邦企業はしっかりとしたビジネスモデルを確立しなければならない。各企業は先端分野におけるモノづくりの力を徹底して磨く必要がある。 加えて、日本政府が半導体の部材や製造装置、さらにはマイコンやパワー半導体など本邦企業が国際競争力を維持している分野に、支援を迅速かつ他国に見劣りしない規模感で実施することも不可欠だろう」、同感である。
第三に、7月29日付け東洋経済オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「GAFA神話終焉のワケは「ネット広告の限界」だけじゃない!Twitter、Netflixも同じ」を紹介しよう。
・『米国IT企業の株価急落 バブルの崩壊か コロナ禍で業績を伸ばしてきたアメリカのIT企業が、ここのところ軒並み株価を落とし始めています。GAFA神話の終焉(しゅうえん)、そしてネット広告の成長の「限界」が訪れているかにも見えますが、実際のところどうなのか。情報を整理し考察してみたいと思います。 直近のIT企業株下落の最初のきっかけは先週、写真共有アプリのスナップチャットを提供するSNAPの決算発表でした。発表された数字が「すでに引き下げられていた業績見通しさえ下回った」ということから、SNAPの株価は40%安と大幅に値を下げました。 続いて、7月22日にツイッターが第2四半期の決算を発表しました。こちらは広告収入が増えたとはいえ、わずか2%増と市場予想を下回り、純利益が赤字に転落しました。 そして、7月26日にアルファベット(Googleの親会社)が4~6月期決算を発表。純利益14%減と、市場予想を下回りました。アルファベットによれば、インフレとそれに伴う景気後退予測で企業が広告費を見直す傾向が強まっていると言います。 アルファベットの株価についてはすでに先週から下落が始まっていたこともあり、決算発表の後は夜間取引で逆に、株価が5%ほど上昇しました。投資家心理として「思っていたよりもマイルドな結果だった」ことが安堵を与えた様子です。 さらに、7月27日にメタ(旧フェイスブック)は、第2四半期の純利益が前年同期比で36%減少したと発表しました。これも市場予測を下回り、メタの株価は夜間取引で4%下落しました。 SNSのアクティブユーザーはフェイスブック、インスタグラム、WhatsAppなど合計で増加しているものの、広告の平均価格が前年比で14%下がっているといいます』、なるほど。
・『米ハイテク株成長の限界を象徴する二つの事件とは 時間軸を半年ぐらいさかのぼってみると、アメリカのハイテク株の成長の限界として二つの象徴的な事件がありました。 一つは、今年の2月3日に起きました。フェイスブックで1日当たりの利用者数が減少したことを報告したメタ社の株価が、1日で約26%減少する「メタ・ショック」が起きたことです。 もう一つは、動画配信大手のネットフリックスです。こちらも4月20日に会員数が過去10年で初めて減少に転じたことを公表して、株価が1日で35%下落しました。 これらの現象を眺めると、確かにアメリカのハイテク大手各社は、コロナ禍の巣ごもり需要を背景にわが世の春を謳歌(おうか)していました。そこから転じて、今年の春から夏にかけて成長の限界を迎え、アフターコロナと景気後退で一斉に勢いを落とし始めているように見えます。 この「アフターコロナと景気後退」は、アメリカIT大手の株価下落をもたらす要素ではあるのですが、ここで見落としてはいけない、もうひとつ重要な要素が存在します』、何なのだろう、
・『米IT大手を襲うのは成長の限界だけではない それは、「お互いがお互いの収益源に対して手を出し始めたこと」です。それまでIT大手にとってブルーオーシャンだった自分の得意領域が、血で血を洗うレッドオーシャンに変質し始めているのです。 要素を整理してみましょう。SNAPの凋落(ちょうらく)やツイッター、フェイスブックのスローダウンの背景にあると言われるのが、中国資本のTikTokです。 各社の決算発表のコメントには、TikTokとの競争激化が収益減少要因として必ず登場します。若い世代のユーザーを中心に、新しいサービスに顧客を奪われているのです。 グーグルの親会社であるアルファベットは、減益の要因について「企業が広告費を見直す傾向が強まっている」と公式発表していました。実は、グーグル事業よりも動画配信ビジネスのYouTubeでの悪影響が響いたようです。 そしてYouTubeへの広告出稿が鈍化した背景には、ツイッターなど競合するSNSにおける動画投稿市場が広がったことが影響だとされています。SNSがYouTubeの収益を奪っているのです。 そのアルファベットですが、広告収入は減少した一方で、クラウドサービスの収入が市場予想よりも高かったことで売り上げは市場予測を上回りました。 ここも面白い点です。実は、マイクロソフトはアルファベットと同じ日に決算を発表して、売り上げ・利益ともに市場予測を上回っていました。しかし、そんなマイクロソフトが唯一市場の期待に応えられなかったのが、クラウドサービス分野です。クラウドサービスにおけるアジュールの成長が、予想よりも低かったのです。つまり、マイクロソフトの成長余地をアルファベットが奪った形です。 今度は、ネットフリックスに目を移してみましょう。実は、利用者減少の最大要因は、ウクライナ侵攻によるロシア・ウクライナでの利用者減少でも、アフターコロナによる巣ごもり需要の消失でもなく、ダイレクトな競合サービスである「ディズニー+」の躍進にあるようです。 「ディズニー+」は、古くからあるディズニーのコンテンツに加えて、買収によって権利を得たマーベルやスターウォーズといった強力なコンテンツを武器に拡大を始めています。 同じく強力なコンテンツに強みを持つネットフリックスにとっては、同じ戦い方で同じ市場を取り合う初めての強敵の出現ということになるわけです。成長の限界というよりも、顧客が奪われ始めているのです。 さらに、ネットフリックスは戦い方を変えるために安価な広告付きプランの導入を来年度にも始めようと考えています。これはもともと1000円を切る価格のサービスだったところから値上げを繰り返した末に、インフレ経済に突入し加入者の減少を迎えてしまったことへの対抗策です。確かに、広告事業への参入は有効性が高いと思われます。 一方で、このニュースの大きなポイントはネットフリックスが組んだ「相手」だと、私は思います。実は、その広告付きプランの開発で、ネットフリックスが組んだ相手はマイクロソフトだったのです。 要するに、ネットフリックスはグーグルと組むことができなかった。それは新しいネットフリックスの広告付きモデルが、グーグル陣営のYouTubeとダイレクトに競合して収益を奪うことを危惧しているからでしょう』、「その広告付きプランの開発で、ネットフリックスが組んだ相手はマイクロソフトだったのです。 要するに、ネットフリックスはグーグルと組むことができなかった。それは新しいネットフリックスの広告付きモデルが、グーグル陣営のYouTubeとダイレクトに競合して収益を奪うことを危惧しているからでしょう」、組む相手は「競合」状況に左右されるようだ。
・『米IT大手の株価下落 「レッドオーシャン化」が一要因 こうして要素を並べてみると、成長の限界とは別のもう一つの収益減少要因が見えてきます。 アメリカのIT大手各社のビジネスについて、お互いの収益を奪い合うレッドオーシャン化が始まったのです。さらに言えば、IT各社はまだこれから始まるメタバースに関しても一斉に侵攻を始めています。 冒頭でお伝えしたメタの大幅減益に関しても、メタバース関連への投資がかさんでいることが一つの要因です。序盤戦ですでに、メタバース事業は各社ともレッドオーシャンです。 もちろんレッドオーシャン化のきっかけはこれまでの事業の柱の成長の鈍化によって、各社とも自分と近しいビジネスの隣接領域へと手を伸ばそうと考えたからです。ですから、成長の限界が競争激化のきっかけを起こしていることも事実です。 とはいえ、これから起きる未来を考えると、成長の限界とレッドオーシャン化ではそこから導かれる未来が違ってきます。 後者が引き起こす未来、それは業界の再編です。つまりGAFAと呼ばれる4社の寡占構造が崩れ、業界地図が大きく変わる可能性が見えてきた。 それが、今起きているアメリカIT株の下落の一番大きな不安要因なのではないでしょうか?』、「GAFAと呼ばれる4社の寡占構造が崩れ、業界地図が大きく変わる可能性が見えてきた。 それが、今起きているアメリカIT株の下落の一番大きな不安要因なのではないでしょうか?」、面白い見方だ。
先ずは、5月10日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「GAFAの株価が低調、「成長の限界を迎えた」といえるこれだけの理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/302879
・『「GAFA」の株価が下落基調にある。これまで注目されてきたビジネスモデルに、行き詰まりの兆しが見え始めているからだ。その軌跡を基本から振り返ると共に、現在のリスク要因を分析し、今後の展開を予測する』、さしもの「GAFA」にも「行き詰まりの兆し」とは興味深そうだ。
・『GAFAの成長期待が鈍化 ビジネスモデルに行き詰まりの兆し このところ、「GAFA」(グーグル、アップル、旧フェイスブック・現メタ、アマゾン)の株価が下落基調にある。2022年1~3月期決算が出そろった後も、各社の株価は上昇していない。 最大のポイントは、各社の成長期待が鈍化していることだ。これまで注目されてきたITプラットフォーマーとしてのビジネスモデルに、行き詰まりの兆しが見え始めている。加えて、米国内の人手不足や、「ディ・グローバリズム」(グローバル化に逆行する動き)に伴うコストアップ要因がGAFA各社を直撃している。 今後の展開として、GAFAの成長期待は一段と低下することも想定される。それが現実味を帯びると、各社の株価は下落する可能性が高い。ウクライナ危機や中国のゼロコロナ政策をきっかけに、グローバル化の加速を前提としたアップルの事業運営の効率性は、低下する恐れが強くなっている。主要先進国における個人データ保護規制の強化なども、メタやグーグル、アマゾンの成長期待を低下させるだろう。 米国の連邦準備制度理事会(FRB)は、“インフレ退治”のため周囲の予想を上回るペースで金融引き締めを進めている。それはGAFAの事業運営には逆風となり、株価の下落懸念を高める要因だ』、要因には、「各社の成長期待が鈍化」、「米国内の人手不足」、「ディ・グローバリズム」「に伴うコストアップ要因」、「主要先進国における個人データ保護規制の強化」、さらには「FRB」の「金融引き締め」など構造的な性格が強いようだ。
・『これまでのビジネスモデルが神通力を失うGAFA 過去1年間のGAFAの株価の推移を確認すると、大まかな傾向として21年12月前半まで各社の株価は高値圏で推移した。しかし、その後は株価が上昇していない。それが意味することは、各社が高い成長を維持するのが難しくなっているということだ。 まず、アップルの成長期待の鈍化を考えてみよう。1990年代以降の米国経済において、アップルはグローバル化を追い風に高成長を実現した企業の象徴である。97年、同社は経営破綻寸前にまで追い込まれていたが、その状況を救ったのが創業者の一人だった故スティーブ・ジョブズだ。ジョブズは高付加価値なソフトウエアの創出に集中し、iPodやiPhoneなどのデバイスや、iTunesなどのサービスの設計と開発に注力した。 それと同時にアップルは世界各国から優れた部材や部品を集め、完成品のユニット組み立て型生産を、台湾の鴻海精密工業の中国子会社であるフォックスコンに委託した。こうした国際分業によって、製造ラインを自社保有する負担から解放され、高付加価値なソフトウエア創出に集中し、高い収益性を実現したのだ。同社がリーマンショック後の世界経済のデジタル化を加速し、米国および世界経済の成長に与えた影響は計り知れない。 しかし、近年、こうしたビジネスモデルに行き詰まりが見えている。まず、中国の生産年齢人口が減少し、労働コストが上昇したことは大きい。加えて、米中対立によって世界のサプライチェーンが混乱。さらに、新型コロナウイルスの感染再拡大やウクライナ危機など複合的な要因が重なり、供給制約は深刻化し続けている。 そうした環境の変化によって、国際分業体制の強化で高成長を実現してきたアップルが、需要を取りこぼし始めているのだ』、「アップル」の「国際分業体制」の「ビジネスモデルに行き詰まり」は確かに深刻だ。
・『SNSへの規制強化、労働組合の結成 逆風強まるITプラットフォーマー 動画や検索、SNSサービスの提供で広告収入を得てきたグーグルやメタ、ネット通販やクラウドコンピューティングなどのサービスを提供してきたアマゾンの成長期待も鈍化している。 グーグルとメタは、ユーザーである個人の検索や動画視聴、知人関係(ネットワーク)、モノやサービスの購入履歴といった膨大なデータ(ビッグデータ)を優先的に手に入れて、それを販売したり、新しいビジネスに用いたりすることによって急速に収益を増やした。 しかし、ロシアがフェイスブックを用いて2016年の米大統領選挙に介入した疑惑が浮上したことなどにより、SNSへの規制が強化されている。メタは人海戦術でフェイクニュースの摘発を強化しなければならなくなり、コストが増加した。また、公正さへの懸念から一時、フェイスブックのユーザーが減少した。 メタの22年1~3月期決算は、売上高の伸び率が上場来で最低となり、同社への懸念は高まっている。同様のことが、検索サービスの強化によって広告収入を増やしてきたグーグルにも当てはまる部分が多い。 アマゾンは世界に「物流革命」を起こした。同社は、積極的な設備投資によって世界各国で効率的な配送網を整備し、自力でラストワンマイルを構築した。さらに消費者一人ひとりの好みを突くアルゴリズムを開発して消費意欲をかき立て、クラウドサービスも提供することによって有力ITプラットフォーマーとしての地位を確立した。 しかし、物流施設での過酷な労働環境への反発から労働組合が結成されるなど、成長力には翳りが出始めている。加えて、米国をはじめ世界的な人手不足を背景に、物流センターでの人員やドライバーの確保が難しくなっているようだ。 倉庫の建設やEV新興メーカーへの投資も業績の重荷になっている。原油などエネルギー資源価格の高騰は燃料費の増加につながり、収益を圧迫している。このようにGAFA各社はこれまでの高い成長スピードを維持することが難しくなっている』、悪材料がよくもここまで出揃ったものだ。
・『中長期的なGAFA株の下落懸念 業績拡大ペースは鈍化 GAFA各社は正念場を迎えている。今後の展開として、GAFAの業績拡大ペースは鈍化し、株価が下落する可能性は高まっている。各社ともグローバル化の加速を前提にビジネスモデルを構築してきたからだ。 しかし、ウクライナ危機によって世界経済はグローバル化からブロック化に向かい始めた。世界経済の先行き見通しは悪化したため、広告主の企業はコスト削減を優先しなければならず、SNSや動画サイトでの広告出稿は減少するだろう。また、データ保護やフェイクニュースなどの取り締まりのためのコストも増える。 世界的な供給制約の長期化によって半導体の不足が長引き、スマホなどITデバイスの生産が計画を下回る可能性も高まっている。中国では経済成長の低下傾向が鮮明だ。IT機器やサービスの需要の低下に加えて、生産年齢人口の減少によって労働コストも上昇するだろう。いずれもGAFAの事業運営の効率性向上を阻害する要因だ。 加えて、米国をはじめ世界的に物価が急騰している。FRBは金融政策の正常化を急がなければならない。世界的に金利は上昇するだろう。金利上昇によって、企業が永続的に生み出すと考えられるフリー・キャッシュ・フローの「割引現在価値」(将来得られる価値を現在受け取るとしたらどの程度の価値になるかを計算したもの)は小さくなる。GAFAのように成長期待が高い企業ほど、そのインパクトは大きくなり株価の下落懸念は高まりやすい。 FRBが追加利上げやバランスシート縮小を急ぐ姿勢を一段と強める場合、米国の金利は急速に上昇し、GAFAなどIT先端企業の株価の低下傾向が一段と鮮明化する恐れがある。また、米金利の上昇によって新興国からは資金が流出し、世界経済全体で成長率は低下する展開も想定される。それはGAFAの収益減少要因になるだろう。 言い換えれば、GAFA各社がこれまでの発想にとらわれることなく新しいモノやサービスを生み出し、需要を創出することが出来るか否か、その実力が問われている』、「金利上昇によって」、「フリー・キャッシュ・フローの「割引現在価値」・・・は小さくなる。GAFAのように成長期待が高い企業ほど、そのインパクトは大きくなり株価の下落懸念は高まりやすい」、「米国の金利は急速に上昇し、GAFAなどIT先端企業の株価の低下傾向が一段と鮮明化する恐れがある」、「GAFA各社がこれまでの発想にとらわれることなく新しいモノやサービスを生み出し、需要を創出することが出来るか否か、その実力が問われている」、三番目は残念ながら期待薄だ。
次に、6月28日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「アップル、成長鈍化の逆風下でM2チップに透ける「深謀遠慮」とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/305516
・『アップルのビジネスモデルの優位性が揺らいでいる。同社の業績への懸念が高まり、米国にあるアップルの小売店舗では労働組合が結成された。アプリストアに関しても、多くの国がアップルにストアを抱え込むのではなく、外部に開放するよう求めている。各国の規制当局がアップルのシェアをそぎ落とし、データの保護や自国企業に有利に働く環境整備を強化している。一方、アップルがメタバースに対応した「眼鏡型のデバイス」を発表するとの観測が高まる中で、クックCEOは新型の「M2チップ」を発表した。アップルが描く、ウェブ3.0の大激変期を生き抜く新しいビジネスモデルとは』、興味深そうだ。
・『アップルが新型の「M2チップ」を発表 変革期におけるその狙いとは 世界のネット業界が大激変期を迎えている。主要国の規制強化に加えて、アップルなどが主導してきた「ウェブ2.0」から、次の「ウェブ3.0」へ様変わりしつつある。その変革で、私たちとデジタル空間の距離感は一気に縮まり、新しいサービスやデバイスの需要が増える。 他方、スマートフォンなどの需要が飽和し、中国のゼロコロナ政策による供給制約やウクライナ危機による資源価格高騰が深刻化したことで、アップルのビジネスモデルの優位性が揺らいでいる。同社の業績への懸念が高まり、米国にあるアップルの小売店舗では労働組合が結成された。 そうした状況下、アップルは新しいビジネスモデルの確立を急いでいる。それを示唆するのが、チップ開発の加速だ。メタバースに対応した「眼鏡型のデバイス」を発表するとの観測が高まる中で、クックCEOは新型の「M2チップ」を発表した。その狙いは、より高性能なチップ開発を加速し、より多くの人が能動的に活動できる、新しいネット空間を整備することだろう。 アップルは人々がより積極的に新しい取り組みを進めてモノやサービスを取引するバーチャルな市場を整備し、その運営を多種多様な企業と連携して進めようとするだろう。このことが半導体部材メーカーおよび製造装置メーカーの事業運営や、米中対立に与えるインパクトは大きい』、「「M2チップ」を発表した。その狙いは、より高性能なチップ開発を加速し、より多くの人が能動的に活動できる、新しいネット空間を整備することだろう。 アップルは人々がより積極的に新しい取り組みを進めてモノやサービスを取引するバーチャルな市場を整備し、その運営を多種多様な企業と連携して進めようとするだろう」、ずいぶん意欲的なようだ。
・『アップルの成長鈍化が懸念される理由 労働組合が発足した背景 2000年代に入りアップルはiPodやiPhone、iPadなど次々と新しいデバイスを生み出して高い成長を実現した。それを可能にしたビジネスモデルが、グローバル化を追い風に設計・開発と生産を分離したことだ。 人件費が高い米国で、アップルはソフトウエアの設計と開発に集中。直感的に操作可能なデバイスを生み出し、ネット上で音楽配信やアプリストアなどを運営した。 また、世界から最も優秀な部材やユニットを低価格で調達し、中国にある富士康科技集団(フォックスコン、台湾の鴻海精密工業の子会社)の工場にユニット組み立て型生産を委託。こうして生産設備を抱える負担から解放され、米国など高価格で販売できる市場に製品を迅速に供給した。 そうした結果、収益が急拡大して資本の効率性が高まり、従業員の給料も増加した。しかし今、同社で労組が結成されたことは、ビジネスモデルの優位性が揺らぎ、高い成長の維持(≒給料の増加)が難しくなるとの懸念を示す。 複数の要因によってアップルの成長は鈍化しているが、主な要因として、従来体制での国際分業が難しくなっていることが挙げられる。 中国ではゼロコロナ政策が徹底され、iPhoneの生産が停滞した。IT業界担当の株式アナリストの間では、「iPhone14シリーズの発表が遅れる」との観測も出た。アップルは中国からインドなどに生産拠点を急速にシフトし始めた。 加えて、ウクライナ危機によって世界の資源価格が高騰している。グローバル化を追い風にソフトウエアの設計・開発のスピードを高め、新しい(アップデート型の)デバイスを供給して先端分野の需要を効率的に獲得してきたアップルに対する逆風が強くなっている。 そうした影響から、米国の店舗従業員は需要の鈍化を機敏に感じ取り、物価が高騰する環境下、自分たちの生活を守るために労組の発足に踏み切ったのだろう』、「同社で労組が結成されたことは、ビジネスモデルの優位性が揺らぎ、高い成長の維持(≒給料の増加)が難しくなるとの懸念を示す」、その通りだろう。
・『アップルの寡占化が分散され競争が激化するネット業界 アップルは世界のネット業界の激変にも直面している。端的に言えば、寡占化されたネット業界が分散化され、競争が激化する。 例えば、アプリストア(アプリ市場)の運営に関して、多くの国がアップルにストアを抱え込むのではなく、外部に開放するよう求めている。アプリ購入時の決済サービスに関しても、他の企業の参入を認めるよう規制が強化されている。 また、欧州委員会は24年秋までにデバイスの充電端子をUSBタイプCに統一するよう通告した。ナイフでケーキを切り分けるかのように、各国の規制当局がアップルのシェアをそぎ落とし、データの保護や自国企業に有利に働く環境整備を強化している。 そうした状況下、アップルは新チップM2を発表した。根底には、アップルの「深謀遠慮」があるだろう。これまでネット業界は一部の大手企業がサービスを提供し、収益とビッグデータを手に入れる(しかも「無料」で)構造だった(ウェブ2.0)。 それが今、ブロックチェーンを用いたウェブ3.0にシフトしている。これに伴い、偽造された非代替性トークン(NFT)の取引など、正規ではないデジタル資産の取引が増えるだろう。それは経済活動の効率性と透明性にマイナス影響を与える。また、米中対立や台湾海峡の緊迫化などを背景に、世界全体でサイバー攻撃のリスクが高まる。 そうした環境変化に対応しつつ成長を目指すために、アップルは他社との連携を強化して新しいネット上の秩序の構築に取り組むだろう。例えば、国際的なNFT取引の市場を整備し取引をモニターする、個々人や組織が必要に応じてネット空間で専門的なスキルを持つ人を募りプロジェクトを進める、などだ。 そうした取り組みを増やことが、個々人により高い満足感を提供する下支えになるだろう。そうした新しい仕組みを可能にするために、常時安心して接続できるネット空間の創造は不可欠だ。ウェブ3.0を支えるデバイスやサービスの先駆者利益を獲得するために、アップルはチップの設計と開発により集中し、新しいエコシステムの整備に取り組むはずだ』、「アップルは他社との連携を強化して新しいネット上の秩序の構築に取り組むだろう。例えば、国際的なNFT取引の市場を整備し取引をモニターする、個々人や組織が必要に応じてネット空間で専門的なスキルを持つ人を募りプロジェクトを進める、などだ」、なるほど。
・『急拡大する新しい半導体関連需要本邦企業と日本政府の取るべき策とは ウェブ3.0によって、新しい半導体部材や製造装置の需要が急速に高まる。メタバースに加えて、自動車の電動化やIoT機器の導入、脱炭素、ビッグデータ利用の増加などによっても、これまであまり半導体が用いられてこなかった機器に対しても、多種多様なチップが搭載されるようになる。 ファウンドリーと半導体の製造装置分野では、先端分野での取り組みが加速している。アップルが設計・開発したチップの受託生産を行う台湾積体電路製造(TSMC)は、オランダの半導体製造装置メーカーであるASMLから次世代の露光装置を調達し、顧客の技術革新に必要な回路形成を実現すると表明した。ASMLは米コネチカット州での追加投資を発表。「ナノからピコへ」というように半導体製造の革新は加速することはあれ、止まることは考えられない。 また、アップルは米中対立の先鋭化など、脱グローバル化への対応も強化しなければならない。6月15日、アップルをはじめとする米IT先端企業のトップが連名で、「中国対抗法案」を早期に成立させ半導体生産体制強化を財政面から支援するよう、ペロシ下院議長やシューマー上院院内総務らに書簡を送った。 そうした環境下、世界のサプライチェーンの再編も勢いづくだろう。半導体の性能向上と、その実現に欠かせない部材や製造装置の創出が、各国の安全保障や経済運営により大きなインパクトを与えるようになる。 1990年代以降、わが国はデジタル化に取り残された。ウェブ3.0の時代が幕を開ける中、本邦企業はしっかりとしたビジネスモデルを確立しなければならない。各企業は先端分野におけるモノづくりの力を徹底して磨く必要がある。 加えて、日本政府が半導体の部材や製造装置、さらにはマイコンやパワー半導体など本邦企業が国際競争力を維持している分野に、支援を迅速かつ他国に見劣りしない規模感で実施することも不可欠だろう』、「1990年代以降、わが国はデジタル化に取り残された。ウェブ3.0の時代が幕を開ける中、本邦企業はしっかりとしたビジネスモデルを確立しなければならない。各企業は先端分野におけるモノづくりの力を徹底して磨く必要がある。 加えて、日本政府が半導体の部材や製造装置、さらにはマイコンやパワー半導体など本邦企業が国際競争力を維持している分野に、支援を迅速かつ他国に見劣りしない規模感で実施することも不可欠だろう」、同感である。
第三に、7月29日付け東洋経済オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「GAFA神話終焉のワケは「ネット広告の限界」だけじゃない!Twitter、Netflixも同じ」を紹介しよう。
・『米国IT企業の株価急落 バブルの崩壊か コロナ禍で業績を伸ばしてきたアメリカのIT企業が、ここのところ軒並み株価を落とし始めています。GAFA神話の終焉(しゅうえん)、そしてネット広告の成長の「限界」が訪れているかにも見えますが、実際のところどうなのか。情報を整理し考察してみたいと思います。 直近のIT企業株下落の最初のきっかけは先週、写真共有アプリのスナップチャットを提供するSNAPの決算発表でした。発表された数字が「すでに引き下げられていた業績見通しさえ下回った」ということから、SNAPの株価は40%安と大幅に値を下げました。 続いて、7月22日にツイッターが第2四半期の決算を発表しました。こちらは広告収入が増えたとはいえ、わずか2%増と市場予想を下回り、純利益が赤字に転落しました。 そして、7月26日にアルファベット(Googleの親会社)が4~6月期決算を発表。純利益14%減と、市場予想を下回りました。アルファベットによれば、インフレとそれに伴う景気後退予測で企業が広告費を見直す傾向が強まっていると言います。 アルファベットの株価についてはすでに先週から下落が始まっていたこともあり、決算発表の後は夜間取引で逆に、株価が5%ほど上昇しました。投資家心理として「思っていたよりもマイルドな結果だった」ことが安堵を与えた様子です。 さらに、7月27日にメタ(旧フェイスブック)は、第2四半期の純利益が前年同期比で36%減少したと発表しました。これも市場予測を下回り、メタの株価は夜間取引で4%下落しました。 SNSのアクティブユーザーはフェイスブック、インスタグラム、WhatsAppなど合計で増加しているものの、広告の平均価格が前年比で14%下がっているといいます』、なるほど。
・『米ハイテク株成長の限界を象徴する二つの事件とは 時間軸を半年ぐらいさかのぼってみると、アメリカのハイテク株の成長の限界として二つの象徴的な事件がありました。 一つは、今年の2月3日に起きました。フェイスブックで1日当たりの利用者数が減少したことを報告したメタ社の株価が、1日で約26%減少する「メタ・ショック」が起きたことです。 もう一つは、動画配信大手のネットフリックスです。こちらも4月20日に会員数が過去10年で初めて減少に転じたことを公表して、株価が1日で35%下落しました。 これらの現象を眺めると、確かにアメリカのハイテク大手各社は、コロナ禍の巣ごもり需要を背景にわが世の春を謳歌(おうか)していました。そこから転じて、今年の春から夏にかけて成長の限界を迎え、アフターコロナと景気後退で一斉に勢いを落とし始めているように見えます。 この「アフターコロナと景気後退」は、アメリカIT大手の株価下落をもたらす要素ではあるのですが、ここで見落としてはいけない、もうひとつ重要な要素が存在します』、何なのだろう、
・『米IT大手を襲うのは成長の限界だけではない それは、「お互いがお互いの収益源に対して手を出し始めたこと」です。それまでIT大手にとってブルーオーシャンだった自分の得意領域が、血で血を洗うレッドオーシャンに変質し始めているのです。 要素を整理してみましょう。SNAPの凋落(ちょうらく)やツイッター、フェイスブックのスローダウンの背景にあると言われるのが、中国資本のTikTokです。 各社の決算発表のコメントには、TikTokとの競争激化が収益減少要因として必ず登場します。若い世代のユーザーを中心に、新しいサービスに顧客を奪われているのです。 グーグルの親会社であるアルファベットは、減益の要因について「企業が広告費を見直す傾向が強まっている」と公式発表していました。実は、グーグル事業よりも動画配信ビジネスのYouTubeでの悪影響が響いたようです。 そしてYouTubeへの広告出稿が鈍化した背景には、ツイッターなど競合するSNSにおける動画投稿市場が広がったことが影響だとされています。SNSがYouTubeの収益を奪っているのです。 そのアルファベットですが、広告収入は減少した一方で、クラウドサービスの収入が市場予想よりも高かったことで売り上げは市場予測を上回りました。 ここも面白い点です。実は、マイクロソフトはアルファベットと同じ日に決算を発表して、売り上げ・利益ともに市場予測を上回っていました。しかし、そんなマイクロソフトが唯一市場の期待に応えられなかったのが、クラウドサービス分野です。クラウドサービスにおけるアジュールの成長が、予想よりも低かったのです。つまり、マイクロソフトの成長余地をアルファベットが奪った形です。 今度は、ネットフリックスに目を移してみましょう。実は、利用者減少の最大要因は、ウクライナ侵攻によるロシア・ウクライナでの利用者減少でも、アフターコロナによる巣ごもり需要の消失でもなく、ダイレクトな競合サービスである「ディズニー+」の躍進にあるようです。 「ディズニー+」は、古くからあるディズニーのコンテンツに加えて、買収によって権利を得たマーベルやスターウォーズといった強力なコンテンツを武器に拡大を始めています。 同じく強力なコンテンツに強みを持つネットフリックスにとっては、同じ戦い方で同じ市場を取り合う初めての強敵の出現ということになるわけです。成長の限界というよりも、顧客が奪われ始めているのです。 さらに、ネットフリックスは戦い方を変えるために安価な広告付きプランの導入を来年度にも始めようと考えています。これはもともと1000円を切る価格のサービスだったところから値上げを繰り返した末に、インフレ経済に突入し加入者の減少を迎えてしまったことへの対抗策です。確かに、広告事業への参入は有効性が高いと思われます。 一方で、このニュースの大きなポイントはネットフリックスが組んだ「相手」だと、私は思います。実は、その広告付きプランの開発で、ネットフリックスが組んだ相手はマイクロソフトだったのです。 要するに、ネットフリックスはグーグルと組むことができなかった。それは新しいネットフリックスの広告付きモデルが、グーグル陣営のYouTubeとダイレクトに競合して収益を奪うことを危惧しているからでしょう』、「その広告付きプランの開発で、ネットフリックスが組んだ相手はマイクロソフトだったのです。 要するに、ネットフリックスはグーグルと組むことができなかった。それは新しいネットフリックスの広告付きモデルが、グーグル陣営のYouTubeとダイレクトに競合して収益を奪うことを危惧しているからでしょう」、組む相手は「競合」状況に左右されるようだ。
・『米IT大手の株価下落 「レッドオーシャン化」が一要因 こうして要素を並べてみると、成長の限界とは別のもう一つの収益減少要因が見えてきます。 アメリカのIT大手各社のビジネスについて、お互いの収益を奪い合うレッドオーシャン化が始まったのです。さらに言えば、IT各社はまだこれから始まるメタバースに関しても一斉に侵攻を始めています。 冒頭でお伝えしたメタの大幅減益に関しても、メタバース関連への投資がかさんでいることが一つの要因です。序盤戦ですでに、メタバース事業は各社ともレッドオーシャンです。 もちろんレッドオーシャン化のきっかけはこれまでの事業の柱の成長の鈍化によって、各社とも自分と近しいビジネスの隣接領域へと手を伸ばそうと考えたからです。ですから、成長の限界が競争激化のきっかけを起こしていることも事実です。 とはいえ、これから起きる未来を考えると、成長の限界とレッドオーシャン化ではそこから導かれる未来が違ってきます。 後者が引き起こす未来、それは業界の再編です。つまりGAFAと呼ばれる4社の寡占構造が崩れ、業界地図が大きく変わる可能性が見えてきた。 それが、今起きているアメリカIT株の下落の一番大きな不安要因なのではないでしょうか?』、「GAFAと呼ばれる4社の寡占構造が崩れ、業界地図が大きく変わる可能性が見えてきた。 それが、今起きているアメリカIT株の下落の一番大きな不安要因なのではないでしょうか?」、面白い見方だ。
タグ:真壁昭夫氏による「GAFAの株価が低調、「成長の限界を迎えた」といえるこれだけの理由」 ダイヤモンド・オンライン (その7)(GAFAの株価が低調 「成長の限界を迎えた」といえるこれだけの理由、アップル 成長鈍化の逆風下でM2チップに透ける「深謀遠慮」とは、GAFA神話終焉のワケは「ネット広告の限界」だけじゃない!Twitter Netflixも同じ) GAFA 要因には、「各社の成長期待が鈍化」、「米国内の人手不足」、「ディ・グローバリズム」「に伴うコストアップ要因」、「主要先進国における個人データ保護規制の強化」、さらには「FRB」の「金融引き締め」など構造的な性格が強いようだ。 さしもの「GAFA」にも「行き詰まりの兆し」とは興味深そうだ。 「金利上昇によって」、「フリー・キャッシュ・フローの「割引現在価値」・・・は小さくなる。GAFAのように成長期待が高い企業ほど、そのインパクトは大きくなり株価の下落懸念は高まりやすい」、「米国の金利は急速に上昇し、GAFAなどIT先端企業の株価の低下傾向が一段と鮮明化する恐れがある」、「GAFA各社がこれまでの発想にとらわれることなく新しいモノやサービスを生み出し、需要を創出することが出来るか否か、その実力が問われている」、これは残念ながら期待薄だ。 悪材料がよくもここまで出揃ったものだ。 「アップル」の「国際分業体制」の「ビジネスモデルに行き詰まり」は確かに深刻だ。 三番目は残念ながら期待薄だ。 真壁昭夫氏による「アップル、成長鈍化の逆風下でM2チップに透ける「深謀遠慮」とは」 「「M2チップ」を発表した。その狙いは、より高性能なチップ開発を加速し、より多くの人が能動的に活動できる、新しいネット空間を整備することだろう。 アップルは人々がより積極的に新しい取り組みを進めてモノやサービスを取引するバーチャルな市場を整備し、その運営を多種多様な企業と連携して進めようとするだろう」、ずいぶん意欲的なようだ。 「同社で労組が結成されたことは、ビジネスモデルの優位性が揺らぎ、高い成長の維持(≒給料の増加)が難しくなるとの懸念を示す」、その通りだろう。 「アップルは他社との連携を強化して新しいネット上の秩序の構築に取り組むだろう。例えば、国際的なNFT取引の市場を整備し取引をモニターする、個々人や組織が必要に応じてネット空間で専門的なスキルを持つ人を募りプロジェクトを進める、などだ」、なるほど。 「1990年代以降、わが国はデジタル化に取り残された。ウェブ3.0の時代が幕を開ける中、本邦企業はしっかりとしたビジネスモデルを確立しなければならない。各企業は先端分野におけるモノづくりの力を徹底して磨く必要がある。 加えて、日本政府が半導体の部材や製造装置、さらにはマイコンやパワー半導体など本邦企業が国際競争力を維持している分野に、支援を迅速かつ他国に見劣りしない規模感で実施することも不可欠だろう」、同感である。 東洋経済オンライン 鈴木貴博氏による「GAFA神話終焉のワケは「ネット広告の限界」だけじゃない!Twitter、Netflixも同じ」 何なのだろう、 「その広告付きプランの開発で、ネットフリックスが組んだ相手はマイクロソフトだったのです。 要するに、ネットフリックスはグーグルと組むことができなかった。それは新しいネットフリックスの広告付きモデルが、グーグル陣営のYouTubeとダイレクトに競合して収益を奪うことを危惧しているからでしょう」、組む相手は「競合」状況に左右されるようだ。 「GAFAと呼ばれる4社の寡占構造が崩れ、業界地図が大きく変わる可能性が見えてきた。 それが、今起きているアメリカIT株の下落の一番大きな不安要因なのではないでしょうか?」、面白い見方だ。
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