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中国経済(その16)(中国で「住宅ローン支払い拒否宣言」続出の理由 救済が待たれる事情とは、中国で「不動産バブル崩壊・失業」が深刻化 習近平政権は正念場に、中国の高度経済成長 予想より早く終わる可能性 成長を押し下げる中長期的構造要因と日本企業の対応策) [世界経済]

中国経済については、7月10日に取上げた。今日は、(その16)(中国で「住宅ローン支払い拒否宣言」続出の理由 救済が待たれる事情とは、中国で「不動産バブル崩壊・失業」が深刻化 習近平政権は正念場に、中国の高度経済成長 予想より早く終わる可能性 成長を押し下げる中長期的構造要因と日本企業の対応策)である。

先ずは、7月29日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したフリーランスライターのふるまいよしこ氏による「中国で「住宅ローン支払い拒否宣言」続出の理由、救済が待たれる事情とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/307181
・『中国各地で、建設途中のマンションで工事が止まったまま放置されるという事態が起きている。全国に300以上あるという未完成マンションの中でも多いのが、経営危機に陥った恒大グループが関わっている開発案件だという。できる見込みがないマンションでもローンは払わねばならず、補償もされないため、中には「不払い宣言」をする人も……中国の不動産界隈で何が起こっているのか』、「中国の不動産」事情に疎い我々にとっては興味深そうだ。
・『中国で300以上のマンションが、未完成のまま放置されている  中国で「爛尾楼」(らんびろう)騒ぎが拡大中だ。 「爛尾」とは「尾っぽ部分がずさん」という意味で、「爛尾楼」は「尻切れトンボ状態になった不動産」を指す。つまり、建設途中に開発業者の資金がショートしてしまい、未完成のまま放置されているマンションのことだ。そんな爛尾楼が、中国各地ですでに300以上あることが分かっている。 近年、中国政府も過熱が続く不動産ブームを抑制すべく、2軒目、3軒目購入には頭金を引き上げたり、銀行ローンに規制をかけたりしてきた。だが、それでもやすやすとそのハードルを超えたり、さらには住宅購入のためにわざわざ離婚手続きまでとって(元)家族が別々に不動産を購入したりするなど、文字通りの「上には政策、下には対策」※が展開されてきた。 ※「上有政策、下有対策」。中国のことわざで、政府がいかに政策を施行しても、庶民は何らかの対策を編み出して政策を骨抜きにする、という意味。 しかし同じタイミングでコロナ対策による都市封鎖や行動規制が繰り返されて、消費意欲が激減してしまった。慌てた政府は今年に入って積極的に不動産開発用地の競売を進めているが、当の不動産開発業者がここにきて青息吐息になっていることが報告されている』、「不動産開発業者がここにきて青息吐息になっている」、これではテコ入れは難しそうだ。
・『恒大グループの債務危機がきっかけに  香港の不動産王が中国市場から撤退するなどの動きから業界内では静かに「バブル崩壊」が長年語られ続けていたが、目に見える形で事態が人々の前に現れたのは、昨年一挙に噴き出した、不動産開発の大手「恒大グループ」の債務危機がきっかけだった。 恒大といえば、創設者でグループ会長の許家印氏は中国の富豪トップランキングの常連。ほんの数年前までは、国内の人気サッカークラブを所有し、一時はそのクラブとヨーロッパの名門サッカークラブ「レアル・マドリード」が提携するなど、本業以外にも派手なパフォーマンスで注目されていた。ところが昨年春からささやかれていた「恒大不安」が9月になって事実上のデフォルトへと発展、あっという間に大騒ぎになった。 現在「爛尾楼」物件としてリストアップされているマンションのうち、4分の1、あるいは3分の1が恒大グループの開発マンションという報道もある。こうした報道が引き起こした連鎖反応もさることながら、その他にもともと「あまり良いうわさのなかった開発業者」がコロナ対策期間中に資金崩れを起こしたのだ。 経済メディア「財新網」によると、分かっているだけで「爛尾楼」の総面積は2.31億平方メートル、今年上半期における全国住宅不動産市場の3.85%を占めている。さらにそんな「爛尾楼」関連のローン規模は0.9兆元(約18兆円)と、全国の金融機関ローン残高の1.7%に当たるとされる』、「「爛尾楼」の総面積は2.31億平方メートル、今年上半期における全国住宅不動産市場の3.85%を占めている」、比重が予想以上に大きいのには驚かされた。
・『被害者たちが「ローン不払い」宣言  爛尾楼の被害者たちはこれまでも、開発業者、銀行、地方政府に陳情を繰り返してきた。しかし何の進展もなく、逆に拘束されてしまうことも日常茶飯事だった。だが、とうとう不満を爆発させた江西省のマンション購入者たちがこの6月末に、「ローン不払い」声明を銀行や政府の不動産政策担当局に送りつけたことが報道されるや、またたくまに他の地区の爛尾楼被害者たちにも広がり、各地で「ローン不払い」宣言が行われた。 すると、それまで「爛尾楼」騒ぎに対して知らん顔をしてきた金融業界もにわかに慌て始め、それと同時に政府当局が対策に乗り出し始めたことで、やっと事態が注目を集めるようになったのだ』、腰の重い「金融業界」や「政府当局」を動かすには、「「ローン不払い」宣言」のようなショック療法も必要だったようだ。
・『原因は、中国ではおなじみの「住宅プレ販売」制度  爛尾楼騒ぎの根本的な原因は、中国ではすっかりおなじみの不動産販売手法になっている「住宅プレ販売制度」にある。開発業者は美麗なモデルルームと完成図で客を引き寄せ、まだ建設予定地は基礎工事も済んでいない状況から、熱心に販売を開始する。 一般的に、こうしたプレ販売でマンションを購入すると、現物購入(=完成後購入)よりも選択肢が広く、また希望の間取りや内装も簡単に実現でき、さらには10~20%安になるとうたわれているために、マイホーム、あるいは投機のための住宅購入を考える人たちは、さっさと頭金を払ってローンを組む。あとはローンを払いながら、1~2年後のマンションの完成を待つだけである。 開発業者はプレ販売に力を入れ、建物を建設する前にその売却金を先に手に入れることができる。手に入れた資金を元に次の建設予定地を買い付け、そこに建設するマンションの図面とモデルルームで再びプレ販売をし……という自転車操業が繰り返されてきた。 しかし、コロナがこの自転車のチェーンを叩き切った。社会的な不安や失業の懸念、収入の減少などから消費者の不動産購買欲が減退、大型消費を控え始めたことでプレ販売が進まず、予想された資金が開発業者に入らなくなり、そして資金がショートし、デフォルトを起こす。その結果、建設が止まった。 建設が止まっても、購入者は金融機関と交わした契約通り、でき上がるはずのマンションを夢見てローンを支払い続けなければならない。コロナの地区封鎖や強制隔離の影響で工事が遅れ、引き渡し時期がずれ込む程度ならまだ良いほうで、どう見ても現地の建設作業が止まっている場合、購入者たちは当然不安にかられる。開発業者に問い合わせてもらちが明かない、あるいはすでに開発業者と連絡が取れなくなっている……これが大規模な爛尾楼騒ぎへと発展した。 中にはもう、元の開発業者との対応を諦め、一方で自分の購入した物件・権利をどこか他の業者が買い取ったり、工事を続けたりしてくれないか探し求めるケースもあるという。もっと悲惨なのは、自分が購入した階や建物まで建設が進まないまま中断してしまったケースだ。毎月生活を切り詰めて契約通りにローンを支払い続けているのに、自分が買ったはずのマイホームは中空に浮いたまま……』、「プレ販売でマンションを購入すると、現物購入(=完成後購入)よりも選択肢が広く、また希望の間取りや内装も簡単に実現でき、さらには10~20%安になるとうたわれているために、マイホーム、あるいは投機のための住宅購入を考える人たちは、さっさと頭金を払ってローンを組む。あとはローンを払いながら、1~2年後のマンションの完成を待つだけである。 開発業者はプレ販売に力を入れ、建物を建設する前にその売却金を先に手に入れることができる」、「コロナがこの自転車のチェーンを叩き切った。社会的な不安や失業の懸念、収入の減少などから消費者の不動産購買欲が減退、大型消費を控え始めたことでプレ販売が進まず、予想された資金が開発業者に入らなくなり、そして資金がショートし、デフォルトを起こす。その結果、建設が止まった」、「建設が止まっても、購入者は金融機関と交わした契約通り、でき上がるはずのマンションを夢見てローンを支払い続けなければならない」、購入者保護の仕組みが殆どないリスキーな手法だ。
・『プレ販売制度は、都合のいい部分だけ香港から輸入された手法  こうしたプレ販売制度は本来、香港から導入されたシステムだったといわれる。だが、多くの報道が指摘するように、参考にされた香港の制度は「半分だけ」で、香港がかつての経験から培ったバックアップ体制の残り半分は中国には導入されなかった。 例えば、香港ではプレ販売で得た顧客側の支払いを、開発業者が直接、懐に入れることはできない。銀行と開発業者の間で信託基金が作られ、そこにプールされるのである。 もし業者が建設中に資金不足となれば、それをもとに銀行から融資を受けることができる。業者が不動産代金全額を手に入れられるのは、物件が完成し、正式な引き渡し完了が証明されたあと。開発業者は不動産建設の前にそれにふさわしい資金をもっていることが証明されなければ、香港政府が建設許可を出さない仕組みにもなっている。) また香港では開発業者は土地を手に入れた時点で、政府にその地代を全額一括で支払わなければならない。このため、中国のように土地の所在地である地方政府と使用権を得た開発業者が、「開発」を挟んで持ちつ持たれつの曖昧な関係を取ることはできない。 こうした爛尾楼防止策はすべて、中国への導入時には無視された。プレ販売した購入代金はそのままするりと開発業者の口座に入り、銀行は別途購入者と結んだローン契約に従って粛々とローンを回収するスタイルが一般化された。そのため、銀行側にも業者に対する責任感が非常に薄かった』、「こうした爛尾楼防止策はすべて、中国への導入時には無視された。プレ販売した購入代金はそのままするりと開発業者の口座に入り、銀行は別途購入者と結んだローン契約に従って粛々とローンを回収するスタイルが一般化された。そのため、銀行側にも業者に対する責任感が非常に薄かった」、香港の仕組みのうち、「ローン契約」者保護につながる部分が無視されて導入したとは、初めから欠陥のある制度だったようだ。
・『「ローン不払い」宣言には大きな危険が伴う  今回の「ローン不払い」運動は、そんな不良開発業者とローン提携を結んだことへの責任は銀行にあると突きつけたものだ。 だが、この「ローン不払い」を実行すると、購買者も大きな枷(かせ)を負う。というのも、今やデータによる「信用クレジット」が大きく生活に影響する中国で、「ローン踏み倒し」は間違いなくネガティブ評価になるからだ。そうなれば銀行業務以外にも、高速鉄道や飛行機のチケットすら買えなくなる恐れもある。 なぜそんな危険を冒してまで「ローンを踏み倒す」と宣言するのか? そこには、「生活を切り詰めて切り詰めて、やっと家を買ったと思ったら、それが爛尾楼だった。このままローン支払いで未来もない切り詰め生活を送り続けるのと、個人クレジットに黒がつくのとどっちが大変だと思う?」というギリギリの追い詰められた思いがあった』、「個人クレジットに黒が」ついてでも、「「ローン不払い」を実行」する覚悟でやっているようだ。
・『プレ販売に代わり、現物販売の導入が始まった  実は政府もこの爛尾楼問題にはとっくに気がついていたようだ。 というのも、すでに昨年あたりから各地方政府が、住宅用地競売参加条件に不動産開発業者に「現物販売」を義務付け始めていたことが、その後の報道から明らかになってきたからだ。 プレ販売に代わり最も早く「現物販売」が導入されたのは、中国最南端にある島まるごと新しく開発が進む海南省で、2020年3月から「新たに土地を取得して建設される商品不動産は現物販売制度とする」ことが不動産開発政策に明記されている。もちろん、現物とは水道、電気、ガス、通信設備がすべて揃った状態のことを指す。 だが、昨年4月に同様の義務付けを行った浙江省では、その数カ月後に不動産用地10地区の競売がすべて流札となったと大きく報道された。それでも、今後この方法は進められるはずで、北京市や杭州市などの住宅需要の高い大都市でも導入される予定だという。 そんなところに7月下旬、中国国務院(内閣に相当)が3000億元(約6兆円)を投じて政府肝いりの不動産基金を設立することを決めたと、ロイターがすっぱ抜いた。 記事によると、政府と中央銀行、そして中国建設銀行などの主要国有銀行がそれぞれ資金を出し合う形で約3000億元を集め、爛尾楼を買い取って完成させてから政府の賃貸住宅にするという。明らかに危機に瀕している主要不動産開発業者と銀行の共倒れ回避策だ。 しかし、この報道を読んで不安になった。そこにはマイホームの夢を見て、頭金を手渡し、ローンを支払い続けている人たちへの救済については触れられていない。またもや個人は見捨てられてしまうのか? 爛尾楼事件の今後が気がかりである』、「不動産基金」の行方、「爛尾楼事件」での「個人債務者」の動向を注視していきたい。

次に、8月2日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁 昭夫氏による「中国で「不動産バブル崩壊・失業」が深刻化、習近平政権は正念場に」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/307365
・『中国で不動産バブルの後始末が深刻化している。大手デベロッパーは資産売却を加速しているが、資産価格の下落スピードはそれを上回る。習近平政権は銀行に不動産業界向けの融資を増やすよう規制を緩めているが、相場底打ちの兆しが見えない。1~6月期の不動産開発投資は前年同期比5.4%減り、分譲住宅の売上高は同28.9%も減少した。懸念されるのが失業の増加だ。6月、中国の若年層(16~24歳)の調査失業率は19.30%に上昇、調査開始以来最高だった』、確かに「不動産バブルの後始末」は「深刻」なようだ。
・『深刻化する不動産バブル崩壊の後始末 企業業績が悪化、失業率は上昇する  中国経済が、かなり厳しい状況を迎えている。主因は不動産バブル崩壊だ。共産党政権の厳格な融資規制は、人々のリスク許容度を急低下させた。債務問題は悪化している。 加えて、ゼロコロナ政策は建設活動を停滞させている。他方、成長期待の高いIT先端企業の規制強化が先行き懸念をさらに高める。それらの結果として、若年層を中心に失業者が急増。ローンの返済を拒む住宅購入者も急増している。 地方政府の財政悪化も鮮明だ。債務返済の延期を銀行に求める地方政府まで、出現しはじめた。 中国の不動産バブルの後始末は拡大するだろう。今後、大手不動産デベロッパーの資金繰りはさらに行き詰まる可能性が高い。ゼロコロナ政策も続き、個人消費は減少基調で推移する。 他方、世界のインフレも深刻だ。中国企業のコストプッシュ圧力は一段と強まり、企業業績は悪化するだろう。生き残りをかけて多くの企業が雇用を削減せざるを得なくなり、若年層を中心に失業率は追加的に上昇するだろう。失業問題は、共産党政権にとって無視できない問題だ』、秋の共産党大会を控えて指導部もヒヤヒヤだろう。
・『長きにわたる不動産バブル膨張「三つのレッドライン」導入後の誤算  中国で不動産バブルの後始末が深刻化している。長い期間にわたって、中国では不動産バブルが膨張した。根底には、共産党の経済政策があった。 共産党指導部は地方政府に経済成長目標を課す。達成のために地方の共産党幹部は土地の利用権を中国恒大集団(エバーグランデ)などのデベロッパーに売却する。それは地方政府の主要財源となった。デベロッパーはマンションを建設する。建設活動の増加が、雇用を生み出し、建材の需要も増える。インフラ投資も加速する。 そうして地方政府はGDP成長率目標を達成し、幹部は出世を遂げた。中国全体で「党の指示に従えば豊かになれる」という価値観が形成され、「不動産価格は上昇し続ける」という神話が出来上がった。さらに、リーマンショック後は世界的なカネ余りが価格上昇を支えた。上がるから買う、買うから上がる、という根拠なき熱狂が不動産バブルを膨張させた。 しかし、いつまでも価格が上昇し続けることはない。2020年8月、共産党政権は「三つのレッドライン」を導入。金融機関は不動産デベロッパー向けの融資を減らし、デベロッパーは資産売却による資金捻出に追い込まれた。そうすることで共産党政権は経済全体での債務残高を削減し、資産価格の過熱を解消しようとした。 問題は、三つのレッドラインが想定以上の負の影響を経済に与えたことだ。急速な融資規制は神話を打ち壊し、不動産バブルは崩壊した。それ以降、売るから下がる、下がるから売るという負の連鎖が止まらない。  エバーグランデなどは資産売却を加速しているが、資産価格の下落スピードはそれを上回る。習近平政権は銀行に不動産業界向けの融資を増やすよう規制を緩めているが、相場底打ちの兆しが見えない。1~6月期の不動産開発投資は前年同期比5.4%減り、分譲住宅の売上高は同28.9%も減少した。不良債権問題が深刻化し始めている』、「習近平政権は銀行に不動産業界向けの融資を増やすよう規制を緩めているが、相場底打ちの兆しが見えない」、一旦、下落を始めたのを政策的にテコ入れしようとしても、上手くはいかないものだ。
・『企業・個人・地方政府に拡大する不良債権問題  不良債権問題を三つに分けて考えてみる。まず、企業に関して。エバーグランデなど大手のデフォルト(債務不履行)が相次いでいる。銀行セクターでは、ずさんなリスク管理の実態が浮上した。 河南省では41万人の銀行預金が凍結された。貸し倒れ、担保資産の価値急落によって、銀行の資金繰りが急激に悪化している。同省では3000人が参加して、預金の支払いを求めるデモが起きた。取り付け騒ぎだ。それを阻止しようとした当局との衝突も発生した。 中国の金融システムの現況は、わが国の1990年代中頃を想起させる。連鎖倒産が起き、不良債権は雪だるま式に増え、金融システムの不安定感が高まる一連の流れだ。 次に、個人(家計)について。住宅ローンの返済拒否が増加している。例えば江西省では、不動産デベロッパーが経営体力を失ったせいで、1年以上建設が止まったままのマンションがある。ゼロコロナ政策も拍車をかけて、建設現場に作業員が集まることすら難しい。一部の購入者は、10月までに工事が再開されない場合、翌月から返済を停止すると表明した。購入した住宅がいつ完成するのか、不安視する人が増えるのは当然だ。支払い拒否は、他の地域でも急増している。 最後に、地方政府の返済能力が低下している問題だ。一例として、貴州省政府は債務返済の先送りを金融機関に求め始めた。鉄道などインフラ事業の収益性は低く、土地利用権の売却収入も減っている。結果、同省政府は債務返済負担に耐えられなくなったようだ。 インフラ投資積み増しのために債権発行などを増やす地方政府が増えている。債権者に返済期間の延長、さらには一部債務減免(ヘアカット)を求める地方政府が急増する可能性が高まっている。 かくして、「灰色のサイ」と呼ばれる中国の債務問題は深刻化している』、「深刻」さは日本のバブル期の「債務問題」をはるかに上回るようだ。
・『失業問題の深刻化 貧富の格差拡大も避けられない  懸念されるのが失業の増加だ。6月、中国の若年層(16~24歳)の調査失業率は19.30%に上昇、調査開始以来最高だった。建国以来で見ても、新卒学生を取り巻く雇用環境は最悪だろう。中国人留学生の中には、帰国せず日本での就職を目指す者が多い。 今後、中国では銀行の貸しはがしや貸し渋りが増える。不動産をはじめ民間企業の資金繰りは切迫する。ウクライナ危機をきっかけに、世界全体でインフレも深刻だ。中国では生き残りをかけてリストラに踏み切る企業が増え、若年層を中心に失業率は上昇するだろう。となると、共産党政権に不満を持つ人が増える展開が予想される。 その展開を回避するために、習政権は高速鉄道などの公共事業を積み増すだろう。しかし、経済全体で資本効率性は低下基調にある。高速鉄道計画では、ほとんどの路線が赤字だ。追加のインフラ投資は、地方政府の借り入れ増を必要とする。結果として、経済対策は不良債権の温床になる。 強引なゼロコロナ政策の継続で、個人の消費や投資は減少せざるを得ない。他方、成長期待の高いIT先端企業の締め付けも強まる。8月からは改正版の独占禁止法が施行される。連鎖反応のように、中国全体で企業の業績は悪化するだろう。 逆に言えば、一時的な失業増を伴う構造改革の実行は容易ではない。今のところ、共産党政権は公的資金を注入し、エバーグランデなどを救済する姿勢も示していない。 中国では、追い込まれる企業・個人・地方政府が増える。その結果、資金流出が加速し、人民元の先安観は強まり、ドル建てをはじめ債務のデフォルトリスクは高まるはずだ。資産売却などリストラを強行せざるを得ない企業は、追加的に増えるだろう。 失業問題が深刻化することで、貧富の格差拡大も避けられない。中国は不動産バブル膨張によって、過剰な債務・雇用・生産能力が出現した。今後は、その整理が不可避だ』、何やら本当に深刻な調整局面が不可避のようだが、なるべく軽く済んでほしいものだ。

第三に、8月17日付けJBPressが掲載したキヤノングローバル戦略研究所 研究主幹の瀬口 清之氏による「中国の高度経済成長、予想より早く終わる可能性 成長を押し下げる中長期的構造要因と日本企業の対応策」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/71411
・『1.高度成長時代の終焉を迎えている可能性  1989年6月の天安門事件の後、一時的に国家による経済統制が強化され、中国経済の市場経済化、自由競争導入の動きに急ブレーキがかかった。 そのため、1989~90年の中国経済は厳しい景気停滞に陥った。 先行きの不透明感が強まっていた状況下、1992年1~2月に鄧小平氏が南巡講話を行い、市場経済化推進の大方針を示した。 その後、朱鎔基総理のリーダーシップの下、市場メカニズムを積極的に導入していく経済政策運営により、従来の計画経済に基づく非効率な経済体制を改革し、様々な構造問題を克服していった。 それ以来約30年間、中国経済は多くの困難に直面しながらも市場経済化の推進をバネに高度成長を力強く持続した。 2009年後半に中国のGDP(国内総生産)の規模は日本に追いつき、2021年には日本の3.5倍に達した。 2010年の実質成長率は10.6%。2桁成長はこの年が最後となった。2010年代の中国経済は1978年以降の40年以上にわたる高度成長時代の終盤局面である。 そして今、いよいよ高度成長時代の終焉を迎えようとしている。 実質GDP成長率の40年間余りの推移(図表1参照)を見れば、現在の中国経済が置かれている局面がよく分かる。 2010年代は1桁台後半で推移する安定的な成長率下降局面だった。 1978年の改革開放政策開始後、年間成長率が5%を下回ったのは天安門事件の1989年(4.2%)と翌年の90年(3.9%)しかなく、2020年(2.2%)はそれ以来初めての5%割れである。 そして今年も5%に届かず、4%程度の成長率となる見通しである。 広い意味で高度成長と言えるのは実質成長率が平均的に5%を上回る期間と考えれば、中国経済は2020年を境にすでに高度成長時代に終わりを告げた可能性がある。 もちろん、今後、中国の成長率が再び数年間5%以上を保つ可能性があることは否定できないが、その可能性は低いと考えられる。 ただし、この話は数字の問題であり、筆者が中国国内の経済専門家、企業経営者などとの意見交換を通じて得ていた印象では、多くの有識者の認識は、昨年までは高度成長の延長線上にあったと感じていたように思われる。 大半の経営者もこれまでの高度成長が続くことを前提に経済活動を行っていたように見える。 しかし、今年に入りその前提が崩れ始めたように感じられる。 まだ高度成長時代の終焉が確定したわけではないが、中国経済の局面が変化したと感じさせるいくつかの要因が生じている。以下ではその点について整理してみたい。 (図表1:実質GDP成長率(単位・前年比%)の推移はリンク先参照)』、興味深そうだ。
・『2.足許の成長率を低下させた短期的要因  高度成長期と安定成長期の一つの大きな違いは期待成長率の差である。 人々が常に5~10%の経済成長を実現できると信じていれば、それに合わせて生産、投資、雇用などの計画を立てる。 しかし、成長率が5%に達しないという期待が広く共有されれば、生産計画は縮小し、投資規模も抑制され、賃金上昇率も低下し、購買意欲も低下する。 こうして経済は安定成長期に入る。 2020年以降の成長率の低下の原因が、短期的な特殊要因であれば、その要因が解消するとともに、再び5%台の成長に戻る可能性が高い。 そうした観点から足許の経済下押し要因を見ると、短期的な特殊要因であると考えられるものが2つある。 1つ目は、ゼロコロナ政策の有効性低下と経済への悪影響のリスクの高まりである。 2020年の第1四半期にも武漢を中心に厳しいロックダウンが実施され、経済が急落したが、その直後から厳格なゼロコロナ政策の徹底により、中国経済は急回復した。この時、人々は武漢のロックダウンが終われば、中国経済は再び元に戻ると信じていた。 2022年入り、感染力が強く無症状患者の比率が高いオミクロン株の感染拡大により、ゼロコロナ政策の有効性が低下した。 それでも中央政府はゼロコロナ政策を堅持したため、上海市は長期のロックダウンを余儀なくされ、その影響で中国経済全体が深刻な停滞に陥った。 2つ目は、若年層の失業率の増大である。 全体の失業率は2022年4月に6.1%に上昇したが、6月には5.5%に低下した。しかし、16~24歳の若年層の失業率は6月に19.3%に達した。 これは、第1に今年の大学卒業者数が1076万人と昨年に比べて一気に167万人も増加したこと。 第2に大卒者に人気があるIT、教育、不動産など比較的賃金が高い産業が、昨年の政府の締め付け強化などの要因から業績が悪化し、リストラが続いていること。 第3に、経済の先行きに対する不透明感の強まりから、企業の採用姿勢が慎重化していることなどが影響した。 以上2つの経済下押し要因は、いずれも短期的な特殊要因であるため、コロナに対する有効な対策の導入や大卒者の雇用機会の確保が実現すれば、下押し圧力が弱まる可能性が高い。 ただし、これらが短期的要因であるにもかかわらず、こうした問題が再び繰り返されるのではないかという不安を抱く人々が増えているという話を聞くことが多い。 これは中国国民が高度成長時代には当然のように共有していた経済のレジリアンスに対する自信がやや後退していることを反映していると解釈することもできる』、「16~24歳の若年層の失業率は6月に19.3%に達した」のは、今年の大学卒業者数が1076万人と昨年に比べて一気に167万人も増加したこと」による部分もあるとはいえ、やはり深刻だ。
・『3.中国の成長率を押し下げる中長期要因  中国経済の局面が変化したと感じさせる要因の中には、短期的な特殊要因とは言えないものが含まれており、しかもそれぞれが相互に関係し合っている。具体的には以下のとおりである。 第1に少子高齢化の加速。 2022年1月、国家統計局は、2021年末の人口が14億1260万人で、前年同期比48万人増にとどまったと発表した(図表2参照)。 これを受けて、従来人口のピークは2028年と予想されていたが、2022年がピークとなる可能性が指摘されている。 経済活動への影響が大きい生産年齢人口(中国の定義では15歳以上60歳未満)は2011年の9億4072万人をピークに緩やかに減少し始めており、2020年代後半に減少が加速する見通しであることは従来から指摘されていた。 第2に都市化のスローダウン。 北京、上海、広州、深圳などの1級都市やそれに準ずる2級都市への人口集中は今後も続くが、3~4級都市の多くは人口流入による人口の増加が期待できなくなっている。 第3に大規模インフラ建設投資の減少。 特に中央政府が不良債権増大リスク抑制のために公共事業の審査基準を厳しくしていることが、この傾向を加速している。 第4に不動産市場停滞の長期化。 これは中央政府の不動産投機抑制策の強化が直接的要因である。 それに加えて、人口減少予想や都市化のスローダウン予想などが将来の不動産需要下押し要因として意識されていることも影響している。 不動産市場の停滞長期化は、財政面では、地方財政の財源難と中央政府の負担増大をもたらす。 金融面では、地方の中小金融機関の不良債権問題を引き起こし、破綻金融機関救済のための各種金融・財政負担が増大する。 (図表2:総人口(単位・万人)の推移はリンク先参照) 第5に米中対立の長期化。 中国マクロ経済への直接的な影響はそれほど大きくないが、経済人に与える心理的影響は無視できない。 第6に期待成長率の下方屈折。 上述の要因が合わさって将来の経済に対する期待を弱気化させ、それが企業経営者の投資姿勢の慎重化と消費者の購買意欲の低下を招く。 第7に以上の要因を背景に成長率が低下すれば、経営効率の低い国有企業の業績が悪化し、中央・地方政府による赤字補填が拡大し、財政負担の増大を招く。 これらの中長期的要因は従来2025年前後から表面化すると予想されていた。 しかし、新たな統計データの発表や政府の政策運営の影響などから表面化の時期が3年ほど早まったように感じられる』、ということは、「表面化」は2022年から始まったようだ。
・『4.中国経済の下支え要因  以上のマイナス要因しかなければ中国経済の成長率は今後急速な低下を余儀なくされるはずである。 しかし、次のような下支え要因も存在するため、成長率の低下はいくぶん緩やかなものに留まると考えられる。 第1に外資企業の対中投資拡大の持続。 中国国民の急速な所得水準の上昇とともに高付加価値製品の需要が拡大し、中国国内市場の魅力はますます増大しつつある。 加えて、内需の伸び鈍化を懸念する中国政府が、優良外資企業に対する誘致姿勢を一段と積極化し、手厚いサポートを提供することも外資企業の投資拡大にとって追い風となる。 このため、グローバル市場で高い競争力を持つ日米欧主要企業の大部分は中国市場での積極姿勢を変えない方針。 第2に中国企業の国際競争力の増大。 大学卒業者数の急速な増加により高学歴人材が大幅に増加しつつある。 こうした豊富な高学歴人材の支えを背景に、EV、リチウム電池、太陽光パネル、半導体、PC、スマートフォンなどの分野における中国企業の競争力が着実に向上してきている。 今後も中国企業が優位性を持つ産業分野の拡大が続くことが予想される。 第3にアジア域内の発展途上国との経済交流の増加。 中国はこれまで一帯一路政策を強力に推進し、周辺の発展途上国、特にアジア域内の連携を強化してきた。 今後、中長期にわたり、ASEAN(東南アジア諸国連合)およびインドの長期的な経済発展が続く見通しであることから、それらの国々と中国経済との相互連携は一段と深まり、水平分業などの協力関係がさらに拡大していくことが予想される。 第4に大規模な不良債権問題の回避。 中国は日本の不動産バブルの経験を深く研究し、リスク回避のための政策を積み重ねてきた。 その成果は1~2級都市の不動産市場における投機抑制策の成功といった形で表れている。 こうした状況から見て、日本の1990年代のようなバブル経済崩壊に伴う国家経済全体の長期停滞は回避できる可能性が高いと見られている。 以上の要因から見て、2020年代に中国の経済成長率の低下が続く局面においても、日本および世界の企業にとって中国市場の魅力が急速に低下する可能性は低いと考えられる。 日本企業としては、経済成長率低下を強調するメディア報道などに振り回されず、中国市場の分野別の市場ニーズの変化を冷静かつ詳細に把握し、的確なマーケティングと迅速な経営判断により中国市場での競争に勝ち残る努力が不可欠である。 中国市場での競争相手は、一段と技術力を高めてきている中国企業とグローバル市場で高い競争力を保持する欧米・韓国台湾の一流企業である。 その厳しい競争の中で生き残るためには、高い専門能力を備えた高学歴人材の育成と、グローバル市場での競争に大胆にチャレンジする人材を生み出すリーダーシップ教育が今後の日本企業の生き残りのカギとなる』、「日本の1990年代のようなバブル経済崩壊に伴う国家経済全体の長期停滞は回避できる可能性が高いと見られている」、というのは甘過ぎるようで、もっと厳しくみるべきだろう。「厳しい競争の中で生き残るためには、高い専門能力を備えた高学歴人材の育成と、グローバル市場での競争に大胆にチャレンジする人材を生み出すリーダーシップ教育が今後の日本企業の生き残りのカギとなる」、同感である。
タグ:「日本の1990年代のようなバブル経済崩壊に伴う国家経済全体の長期停滞は回避できる可能性が高いと見られている」、というのは甘過ぎるようで、もっと厳しくみるべきだろう。「厳しい競争の中で生き残るためには、高い専門能力を備えた高学歴人材の育成と、グローバル市場での競争に大胆にチャレンジする人材を生み出すリーダーシップ教育が今後の日本企業の生き残りのカギとなる」、同感である。 2.足許の成長率を低下させた短期的要因 1.高度成長時代の終焉を迎えている可能性 瀬口 清之氏による「中国の高度経済成長、予想より早く終わる可能性 成長を押し下げる中長期的構造要因と日本企業の対応策」 JBPRESS 「こうした爛尾楼防止策はすべて、中国への導入時には無視された。プレ販売した購入代金はそのままするりと開発業者の口座に入り、銀行は別途購入者と結んだローン契約に従って粛々とローンを回収するスタイルが一般化された。そのため、銀行側にも業者に対する責任感が非常に薄かった」、香港の仕組みのうち、「ローン契約」者保護につながる部分が無視されて導入したとは、初めから欠陥のある制度だったようだ。 「建設が止まっても、購入者は金融機関と交わした契約通り、でき上がるはずのマンションを夢見てローンを支払い続けなければならない」、購入者保護の仕組みが殆どないリスキーな手法だ。 「プレ販売でマンションを購入すると、現物購入(=完成後購入)よりも選択肢が広く、また希望の間取りや内装も簡単に実現でき、さらには10~20%安になるとうたわれているために、マイホーム、あるいは投機のための住宅購入を考える人たちは、さっさと頭金を払ってローンを組む。あとはローンを払いながら、1~2年後のマンションの完成を待つだけである。 開発業者はプレ販売に力を入れ、建物を建設する前にその売却金を先に手に入れることができる」、「コロナがこの自転車のチェーンを叩き切った。社会的な不安や失業の懸念、収入の減少な 確かに「不動産バブルの後始末」は「深刻」なようだ。 真壁 昭夫氏による「中国で「不動産バブル崩壊・失業」が深刻化、習近平政権は正念場に」 「不動産基金」の行方、「爛尾楼事件」での「個人債務者」の動向を注視していきたい。 「個人クレジットに黒が」ついてでも、「「ローン不払い」を実行」する覚悟でやっているようだ。 何やら本当に深刻な調整局面が不可避のようだが、なるべく軽く済んでほしいものだ。 腰の重い「金融業界」や「政府当局」を動かすには、「「ローン不払い」宣言」のようなショック療法も必要だったようだ。 「「爛尾楼」の総面積は2.31億平方メートル、今年上半期における全国住宅不動産市場の3.85%を占めている」、比重が予想以上に大きいのには驚かされた。 「不動産開発業者がここにきて青息吐息になっている」、これではテコ入れは難しそうだ。 「中国の不動産」事情に疎い我々にとっては興味深そうだ。 ふるまいよしこ氏による「中国で「住宅ローン支払い拒否宣言」続出の理由、救済が待たれる事情とは」 ダイヤモンド・オンライン 「深刻」さは日本のバブル期の「債務問題」をはるかに上回るようだ。 「習近平政権は銀行に不動産業界向けの融資を増やすよう規制を緩めているが、相場底打ちの兆しが見えない」、一旦、下落を始めたのを政策的にテコ入れしようとしても、上手くはいかないものだ。 秋の共産党大会を控えて指導部もヒヤヒヤだろう。 中国経済 ということは、「表面化」は2022年から始まったようだ。 「16~24歳の若年層の失業率は6月に19.3%に達した」のは、今年の大学卒業者数が1076万人と昨年に比べて一気に167万人も増加したこと」による部分もあるとはいえ、やはり深刻だ。 3.中国の成長率を押し下げる中長期要因 4.中国経済の下支え要因 (その16)(中国で「住宅ローン支払い拒否宣言」続出の理由 救済が待たれる事情とは、中国で「不動産バブル崩壊・失業」が深刻化 習近平政権は正念場に、中国の高度経済成長 予想より早く終わる可能性 成長を押し下げる中長期的構造要因と日本企業の対応策)
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