中国情勢(軍事・外交)(その14)(「中国の資金援助は助かる」と日本人研究者…破格の待遇で世界の人材を集める「千人計画」の恐ろしい目的 日米欧による"科学技術の競争"とは狙いがまったく違う、バルト三国すべてが「中国離れ」を決断…欧州で進めていた「一帯一路」が行き詰まりを見せ始めたワケ 次の標的はハンガリーとギリシャだが…、中国・習近平がもくろむ「世界分断計画」の現実味 日本がやるべきことは?) [世界情勢]
中国情勢(軍事・外交)については、6月6日に取上げた。今日は、(その14)(「中国の資金援助は助かる」と日本人研究者…破格の待遇で世界の人材を集める「千人計画」の恐ろしい目的 日米欧による"科学技術の競争"とは狙いがまったく違う、バルト三国すべてが「中国離れ」を決断…欧州で進めていた「一帯一路」が行き詰まりを見せ始めたワケ 次の標的はハンガリーとギリシャだが…、中国・習近平がもくろむ「世界分断計画」の現実味 日本がやるべきことは?)である。
先ずは、6月21日付けPRESIDENT Onlineが掲載した前国家安全保障局長の北村 滋氏による「「中国の資金援助は助かる」と日本人研究者…破格の待遇で世界の人材を集める「千人計画」の恐ろしい目的 日米欧による"科学技術の競争"とは狙いがまったく違う」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/57786
・『中国は2008年から外国の優秀な研究者を集める「千人計画」を進めている。目的は一体何なのか。元国家安全保障局長の北村滋さんは「破格の待遇で研究者を呼んでいる。中国が行っているのは単なる技術競争ではない」という――。 ※本稿は、北村滋、大藪剛史(聞き手・構成)『経済安全保障 異形の大国、中国を直視せよ』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。Qは聞き手の質問、Aは北村氏の回答』、興味深そうだ。
・『中国の論文数は2016年に世界トップになった Q:中国の科学発展の歴史について聞きたい。 A:中国は1950年代から、核兵器と弾道ミサイル、人工衛星の開発を並行して行う「両弾一星」のスローガンを掲げて、軍主導の宇宙開発に乗り出した。有人宇宙活動や月探査など、現在の宇宙事業も、軍が密接に関与しながら進められている。 文化大革命(66~76年)では知識人が迫害され、科学技術の発展が遅れた。だが、最高実力者の鄧小平氏が70年代後半から「国家の根幹は科学技術力にある」として立て直しを図った。90年代に海外から中国人留学生を呼び戻す「海亀政策」を進め、先端技術を取り込んだ。94年には、国外で活躍する優秀な人材を中国に呼び戻す政策の一環として「百人計画」が始まった。 中国製のスーパーコンピューターが2010年、計算速度で世界一を達成し、13年には無人探査機「嫦娥じょうが3号」が月面探査に成功した。科学の発展は、論文数にも表れている。日本の文部科学省の集計では、1981年に1800本だった中国の論文数は、2015年までに160倍増となった。全米科学財団(NSF)の報告書によると、16年に中国が初めて米国を抜いて世界トップに立ったようだ』、「論文数」で「16年に中国が初めて米国を抜いて世界トップに立った」、大したものだ。
・『外国から優秀な人材を集める「千人計画」 中国版GPSと呼ばれるグローバル衛星測位システム「北斗」が既に運用されている。人工衛星は、艦艇や航空機の位置把握、ミサイル誘導などの軍事目的にも役立つ。 21年3月の全国人民代表大会(全人代)で採択された新5カ年計画には、「科学技術の自立自強を国の発展の戦略的な支えとする」との文言が盛り込まれた。最先端の民間技術を積極的に軍事に転用する国家戦略「軍民融合」の下、今後も、世界トップレベルの研究者の招請や企業買収などを通じ、最先端技術を吸収していくだろう。 軍民融合の一環として、中国は「千人計画」を進めている。百人計画が成功したのを受けて、外国から優秀な人材を集める中国政府の人材招致プロジェクトだ。国家レベルでは08年から実施されている。採用される日本人研究者も増えている。 Q:外国人研究者は破格の待遇で集められているようだ。読売新聞の取材では、研究経費として500万元(約8600万円)が補助され、100万元(約1700万円)の一時金が与えられる例もあったようだ。 A:招聘に応じた日本人研究者には、「日本の大学だと研究費が年数十万円ということもある。日本の研究者は少ない研究費を奪い合っている。中国からの資金補助はとても助かる」と話す人もいる』、「世界トップレベルの研究者の招請」する「千人計画」では、「研究経費として500万元(約8600万円)が補助され、100万元(約1700万円)の一時金が与えられる例もあった」、と破格の待遇で搔き集めているようだ。
・『補助金、広い研究室にマンション、運転手付きの車まで… 補助金だけではない。広い研究室やマンションも与えられる。家賃はほとんど中国政府が払ってくれる、家政婦付きのマンションを与える、運転手付きの車が使えるとか、そんな話もある。退職した後の仕事を探していた大学教授や研究者が、こういった好条件につられて中国に渡航するケースが多い。 米司法省は、20年1月28日、「千人計画」への参加を巡って米政府に虚偽の説明をした米ハーバード大化学・化学生物学科長の教授を起訴した。ナノテクノロジーの世界的な権威だ。この教授は、12~17年頃に千人計画に参加し、月5万ドル(約550万円)の給料や15万8000ドル(約1740万円)の生活費を受け取った。この教授は国防総省などから研究費を受け取っていたため、外国から資金提供を受けた際に米政府へ報告する義務があったが、「千人計画」への参加を隠していたということだ。 中国が米国の最新技術や知的財産を狙い、この教授に接近したのだろう。 Q:中国政府は外国人の研究者らをどうやって招いているのか。 A:日本に留学していた中国人の元教え子や、日本で共同研究を行った中国人の研究者が誘うケースがあるようだ。元々の知り合いのつてを利用しているのだろう』、「補助金だけではない。広い研究室やマンションも与えられる。家賃はほとんど中国政府が払ってくれる、家政婦付きのマンションを与える、運転手付きの車が使えるとか、そんな話もある」、これは魅力的だ。「米司法省は・・・「千人計画」への参加を巡って米政府に虚偽の説明をした米ハーバード大化学・化学生物学科長の教授を起訴した。ナノテクノロジーの世界的な権威だ。この教授は、12~17年頃に千人計画に参加し、月5万ドル(約550万円)の給料や15万8000ドル(約1740万円)の生活費を受け取った。この教授は国防総省などから研究費を受け取っていたため、外国から資金提供を受けた際に米政府へ報告する義務があったが、「千人計画」への参加を隠していたということだ」、これでは「起訴」されて当然だ。
・『兵器開発とつながりが深い大学に所属する研究者も Q:「千人計画」に応じて中国に渡った研究者らは、どういったところで研究をするのか。 A:中国軍の兵器開発とつながりが深い「国防7校」(国防七子)に所属していた研究者もいる。 国防7校は、軍と軍事産業へ理工科人材供給を目的に設置された以下の7つの大学だ。 ・ハルビン工業大(宇宙工学や通信、電子、新素材、生産自動化) ・北京航空航天大(航空・宇宙工学、電子、素材、コンピューター、AI) ・北京理工大(素材、ソフトウェア、光エレクトロニクス) ・西北工業大(航空、宇宙、海洋・船舶工学) ・ハルビン工程大(船舶工業、海軍装備、深海工程と原子力) ・南京航空航天大(航空・宇宙工学) ・南京理工大(化学工業、AI、交通自動化、素材、通信、電子)』、「国防7校」とは権威がありそうだ。
・『本国と全く同じ研究施設を再現する「シャドーラボ」 Q:「千人計画」によって、これまでどのような技術が中国に奪われたのか。 A:米軍の最新鋭ステルス戦闘機F-35のエンジンに関するデータを中国に流出させた事例も報告されている。日本のある研究機構で働いていた中国人が、「風洞ふうどう設備」の技術を中国に持ち帰ったことも確認されている。 風洞設備は、飛行機や宇宙へ向かうロケットなどが空気中を飛ぶ際の空気抵抗や、機体周辺の空気の流れを調べるためのものだ。大きな筒のような洞ほらの中に、航空機の模型を置き、人工的に空気を流す設備だ。 この研究者は1990年代半ば、この研究機関で研究し、2000年に中国に帰っている。今は北京の中国科学院力学研究所に所属している。ここに日本のものと酷似した風洞設備が完成していることが確認されている。この研究所は極超音速ミサイルを研究している。つまり、開発中のミサイルの空気抵抗を減らしたり、宇宙から弾道弾が大気圏に再突入する際の熱防護素材を作ったりする研究に利用されているということだ。 本国にあるのと全く同じ研究施設を再現する、こういった例を「シャドーラボ」(影の研究室)という』、「中国科学院力学研究所に」、「日本のものと酷似した風洞設備が完成」、こうした「シャドーラボ」により「極超音速ミサイル研究」は、それがなかった場合に比べ、はかどったことだろう。
・『ノーベル賞級の研究をする人を集める「万人計画」 Q:「千人計画」に応じた人たちにはノルマはあるのか。 A:論文執筆のノルマを課しているようだ。『ネイチャー』や『サイエンス』など世界的に名だたる科学誌への掲載を求めていた。さきほど、中国の論文数が増えていると説明したが、こういった圧力も反映されているのだろう。 中国は、00年から17年までに、6万6690人を留学させて、彼等は米国で博士号を授与されている。米国の大学で博士号を取得する学生のおよそ1割強が中国人留学生だ。シリコンバレーや研究機関で、中核的役割を果たしている。07年に5万人以下だった海外人材の帰国者数は、17年に48万人に急増している。高度な技術を母国に持ち帰っているということだ。 中国には「万人計画」もある。ノーベル賞級の研究を行う研究者を集めるものだ』、「07年に5万人以下だった海外人材の帰国者数は、17年に48万人に急増している。高度な技術を母国に持ち帰っているということだ」、「千人計画」、「万人計画」といいスケールが大きい。。
・『日米欧と中国では「目指す未来」がまったく違う Q:日本は米国や欧州各国とも、科学技術の競争をしている。中国との競争はそれとは違うのか。 A:全く違う。日米欧など西側先進諸国と中国は、国際秩序に関する考えで大きな隔たりがある。西側先進諸国が目指す秩序は「自由で開かれた、法の支配に基づく世界」だ。それぞれの国が平等で、法の支配、自由を尊重するというものだ。 中国が目指す秩序は何か。習主席は頻繁に「新型国際関係」という言葉を使うが、西側主導の秩序への挑戦にほかならない。「自由、人権、民主主義」といった日米欧の価値観に真っ向から挑戦している。中国共産党による一党支配が自由や平等、法の支配とはほど遠いものであることは、中国が新疆ウイグル自治区や香港で行っていることを見れば明らかだ。対外関係でも、他国と対等なつながりを持とうとしているようには見えない。 習主席の言う「中華民族の偉大な復興」「中国の夢」に基づき、中国を頂点としたピラミッド型の国家連合を目指しているというのが本質だ。「一帯一路」構想の一環でアジアやアフリカの途上国に、インフラ整備のための桁違いの投資を行っているが、単なる経済協力ではない。それは、しばしば当該国の財政を圧迫し、「援助」自体がエコノミック・ステートクラフト化している。最終的に目指しているのは、中国の資金を背景とした影響力の行使だ。 中国は、単なる技術競争をしているだけではない。習主席の視線の先には、我々西側先進諸国が想像するのと全く異なる人類の未来が広がっている』、「西側先進諸国が目指す秩序は「自由で開かれた、法の支配に基づく世界」だ。それぞれの国が平等で、法の支配、自由を尊重するというものだ。 中国が目指す秩序は何か。習主席は頻繁に「新型国際関係」という言葉を使うが、西側主導の秩序への挑戦にほかならない。「自由、人権、民主主義」といった日米欧の価値観に真っ向から挑戦」、「「中華民族の偉大な復興」「中国の夢」に基づき、中国を頂点としたピラミッド型の国家連合を目指しているというのが本質だ。「一帯一路」構想の一環でアジアやアフリカの途上国に、インフラ整備のための桁違いの投資を行っているが、単なる経済協力ではない。それは、しばしば当該国の財政を圧迫し、「援助」自体がエコノミック・ステートクラフト化している。最終的に目指しているのは、中国の資金を背景とした影響力の行使だ」、恐ろしいことだ。
・『日本にとっての軍事的な脅威は増していく Q:中国の国家体制は盤石なのか。 A:短期的に習主席の基盤が固まっていることは間違いないと思う。 ただ、習主席は、政権全体の動揺を懸念していると思われる。中国共産党とは異なる価値を信じる組織に対する恐れは、日本人が考える以上に大きい。チベット、台湾、ウイグル、民主派、法輪功の5つを彼らは「五毒」と称し、いずれも中国共産党の体制に服さないものとして徹底的に弾圧していることが、その表れだろう。中国の歴史を見ると平和的、民主的な政権移行はなく、王朝が代わることにより政権が代わるというのが歴史が示すところだ。中国共産党は王朝ではないが、民主的政権交代を容認しない中国共産党による一党支配であり、そうした中国自身の歴史が常に念頭にあると思う。 習近平政権は、「中華民族の偉大な復興」「中国の夢」を実現するために、富強、強軍の政策を継続することは間違いない。日本にとって軍事的な脅威は増していくことを覚悟しなければならない』、「習近平政権は、「中華民族の偉大な復興」「中国の夢」を実現するために、富強、強軍の政策を継続することは間違いない。日本にとって軍事的な脅威は増していくことを覚悟しなければならない」、「日本」としては、ノウハウや情報、人材の流出に気を付けるのがせいぜいだろう。
次に、8月26日付けPRESIDENT Onlineが掲載した三菱UFJリサーチ&コンサルティング 調査部 副主任研究員の土田 陽介氏による「バルト三国すべてが「中国離れ」を決断…欧州で進めていた「一帯一路」が行き詰まりを見せ始めたワケ 次の標的はハンガリーとギリシャだが…」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/60947
・『リトアニアと中国の外交関係が極めて悪化 8月11日、エストニアとラトビアが中国との経済的な協力枠組みである「中国―中東欧国家合作」(通称「16+1」)から離脱すると発表した。 中国北京市で2022年7月26、27両日、省部級の主要指導幹部対象の「習近平総書記の重要演説の精神を学び、中国共産党第20回全国代表大会を迎える」特別研修班が開かれ、習近平中国共産党中央委員会総書記・国家主席・中央軍事委員会主席が開講式で重要演説を行った 昨年、リトアニアがこの2カ国に先行してこの枠組みから離脱を表明しており、今回のエストニアとラトビアの決断によって、いわゆるバルト三国の全てが「中国離れ」を進めることになった。 とはいえ、バルト三国のこの決断は時間の問題だった。 2021年2月、新型コロナの流行を受けて2年ぶりに北京で開催された「17+1サミット」(当時はまだリトアニアが参加していたため「17+1」だった。)にもバルト三国は首脳の参加を見送り、高官を派遣するにとどめた。当時から、中国に対して徐々に距離を取っていたわけだ。 その後、周知のとおり、リトアニアと中国の外交関係が極めて悪化した。台湾をめぐる問題に端を発したものだが、これにロシアのウクライナ侵攻に伴う地政学的な緊張の高まりも複雑に絡む事態になったと考えられる。 共通してロシアへの対抗意識が強いバルト三国が、中国への対応でも連帯を強めたという側面も大きいのではないだろうか。 それにバルト三国は、これまで「16+1」の枠組みを通じて中国から満足な投融資を得ていなかった。将来的にも、欧州連合(EU)が中国に対する圧力を強めている状況の下では、中国からの投融資が増えるとは考えにくい。 貿易面でも中国に対する依存度はそれほど高くないため、バルト三国は中国との枠組みから離脱できたといえよう』、「バルト三国」は、「中国から満足な投融資を得ていなかった」、「貿易面でも中国に対する依存度はそれほど高くない」、などから、「中国との枠組みから離脱できた」なるほど。
・『中東欧に「選択と集中」をかける中国 しかしながら、中国にとってバルト三国の決断が衝撃だったかというと、むしろ想定内だったはずだ。中国は中国で、2021年2月の北京サミット前後から、経済協力の対象を絞ってきた。 具体的にその対象とは、2019年に当時の「17+1」に参加したギリシャを筆頭に、ハンガリーとクロアチア、そしてEU未加盟の西バルカン諸国となる。 2019年9月に就任したミツォキタス首相の下、ギリシャと中国の関係は良好なものとなっている。そうした中で、2021年10月には中国の国有海運最大手、中国遠洋海運集団(コスコ・グループ)がピレウス港に対する出資額を引き上げたほか、習近平政権が抱える「一帯一路」構想につき、両国の協力関係を深化させる旨で合意に達した。 こちらも関係が良好なハンガリーに対しては、中国企業による大型投資が相次いでいる。6月にはパソコン大手の聯想集団(レノボ・グループ)がハンガリーに建てた工場が稼働、8月には電気自動車(EV)用電池大手、寧徳時代新能源科技(CATL)が73億ユーロ(約1兆円)を投じ、ハンガリーにバッテリー工場を建設すると発表した。 中国はハンガリーの首都ブタペストと隣国セルビアの首都ベオグラードを結ぶ鉄道の更新プロジェクトも支援している。また建設大手、中国交通建設の子会社である中国路橋工程(CRBC)は、クロアチア南部の沿岸部に巨大な斜張橋(ペリェシャツ橋)を建設したが、これは5億2600万ユーロ(約730億円、うちEUが7割弱を資金支援)規模の巨大プロジェクトだ。 2025年のEU加盟が視野に入るセルビアとは、先述のハンガリーとの間の鉄道網の改修以外にも、中国は協力関係の深化を模索している。 つまり中国は、ギリシャを起点として、西バルカン諸国やクロアチアを経由し、ハンガリーに至る一帯に「選択と集中」をかけて、中国は経済協力関係の深化を試みていると整理できる』、「中国は、ギリシャを起点として、西バルカン諸国やクロアチアを経由し、ハンガリーに至る一帯に「選択と集中」をかけて、中国は経済協力関係の深化を試みていると整理できる」、「さしずめ「バルト三国」は「選択」対象から漏れたようだ。
・『有効な対抗手段を持っていないEU 加えて中国は、上記の国々に対して新型コロナウイルスのワクチン(シノバック社やシノファーム社製)を提供した実績がある。 中国製のワクチンは重症化しにくいとされるオミクロン株の流行や欧米製のワクチンに比べた場合の有効性の低さなどから需要が減退したが、友好関係の深化という意味では一定の役割を果たしたといえよう。) EUは立法機関である欧州議会を中心に、対中姿勢を硬化させている。 一方で、中国は引き続きヨーロッパの市場へのアクセスを重視している。その足場として、バルカン半島からハンガリーを一体的にとらえているように考えられる。これらの国々がロシアとも比較的友好的であることも、中国にとっては都合がいいといえるのではないか。 インフラ投資といったハード面のみならず、公衆衛生でのサポートという一種のソフトパワーも行使した中国に対して、EUは有効な対抗手段をまだ用意できていない。EU版一帯一路ともいえる「グローバル・ゲートウェイ」構想下での支援対象からEU加盟済みの中東欧諸国は外れているし、EU未加盟の国々への支援の展望も描きにくい。 EUによる開発支援は、当然だがEUの経済観が色濃く反映される。新興国ではインフラの建設には経済性よりも政治性が重視される傾向が強いが、EUは支援に当たり経済性の高さを強く要求する。さらに「グローバル・ゲートウェイ」構想では、EUが重視する「デジタル化」と「脱炭素化」にかなう領域でのサポートを念頭に置いている。 とはいえ、新興国でそうした諸条件をクリアできるプロジェクトなど、まずない。欧米諸国が「債務の罠」につながると警告を繰り返したところで、新興国にとって話が早い中国からの投融資は魅力的である。結局のところEUは、有効な手立てをとることができないまま、バルカンからハンガリーにかけて中国の進出を許し続けている』、「欧米諸国が「債務の罠」につながると警告を繰り返したところで、新興国にとって話が早い中国からの投融資は魅力的である。結局のところEUは、有効な手立てをとることができないまま、バルカンからハンガリーにかけて中国の進出を許し続けている」、やむを得ないだろう。
・『岐路に立つ中国の「一帯一路」 そもそも「16+1」は、習近平政権の「一帯一路」構想の延長線上にあったものだ。 中国がもともと「一帯一路」構想に確たるビジョンを持っていたわけでもないが、バルト三国が離反したことや、コロナ禍で中国が中東欧の「選択と集中」を進めていたことは、この「一帯一路」構想そのものが岐路に立っていることの証左といえよう。 時を同じくして生じたスリランカの国家破綻も、中国の「一帯一路」構想が岐路に立っていることをよく示している。スリランカは7月5日、国家が破産したと宣言した。スリランカのハンバントタ港は、その建設から運営までが中国の手によって行われており、スリランカが陥った「債務の罠」を象徴する存在としてよく知られている。 もともとは長期にわたって政権を担っていたラージャパクサ一族によるバラマキ政策が、スリランカが国家破綻に陥った直接的な原因だ。それにハンバントタ港に関しては、中国の貸し手責任と同様にスリランカの借り手責任も問われるべきである。 さらにいえば、ハンバントタ港は中国にとって本当に資産性があるのか、議論の余地があろう』、「岐路に立つ中国の「一帯一路」」、当然だ。
・『「債務の罠」は中国にとっての「不良債権の罠」 スリランカから海を隔たればインドがある。そのインドと中国は是々非々で協力し、反目もする特有の緊張関係にある。8月中旬に中国軍の調査船がハンバントタ港に入港したが、当然ながらインドの強い反発を招いた。 両国が軍事的な緊張を回避したいという思惑を持つ中で、中国にとってハンバントタ港の使い勝手は必ずしもよくない。 それに、国家破綻に陥ったスリランカでは社会が不安定化している。ハンバントタ港やその周辺の治安維持のコストも急増せざるを得ないはずだが、そのコストを負担するのはもちろん中国になる。 またスリランカは、債権者に対して債務再編を要請すると考えられる。中国が簡単に応じるわけもないが、出方を間違えれば新興国の支持も失う。 ハンバントタ港でさえこの状況である。中国が「一帯一路」構想の下で投融資を行った海外のプロジェクトの多くは、中国にとって使い勝手が良くない資産が多いはずだ。 つまり、新興国にとっての「債務の罠」は中国にとっての「不良債権の罠」と裏返しである。中東欧やスリランカの事例は、そうした「不良債権の罠」の序章かもしれない』、「スリランカは、債権者に対して債務再編を要請すると考えられる」、これを邪険に扱えば、「中国にとっての」「不良債権の罠」問題が深刻化する。「中国」には微妙な綱渡りが求められそうだ。
第三に、8月31日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した評論家・翻訳家の白川 司氏による「中国・習近平がもくろむ「世界分断計画」の現実味、日本がやるべきことは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/308567
・『習近平氏とプーチン氏 裏目に出た「永遠の友情」 8月16日、中国の李克強首相が広東省深センを視察したときに発した言葉が物議を醸している。李氏は「中国の開放はまだ引き続き進めなければならない。黄河と長江は逆流しない」と述べて、鄧小平氏(故人)の改革開放路線の保持を訴えて、対米強硬と内製化に傾く習近平国家主席を批判したのではないかと憶測を呼んでいるのである。政権内で習主席に対する風当たりが強まっていることがうかがえる。 習主席は対米強硬を強化するとともに、ロシアとの連携強化に乗り出している。中ロが現在のような連携関係となるきっかけとなったのが、2021年2月4日の北京オリンピック開会式の後に行われた両者の会談だった。ウイグル問題で多くの国家首脳が参加を見合わせる中、堂々と出席してくれたプーチン大統領に、習主席は「ロシアに対する無限の友情」を約束した。 ロシアがウクライナに軍事侵攻したのは、その後のことだった。 2014年ソチオリンピックでも、両者は首脳会談を行っており、第2次世界大戦70年でナチスや日本軍と対抗した「戦勝国」の立場からの連携を確認しているものの、それ以上の連携には進まなかった。 当時、ロシアはウクライナのNATO加盟の動きに軍事圧力をもって対抗して、各国から非難を浴びていた。ロシアが軍事侵攻に及ぶと予期した専門家は少なく、中国もその可能性を小さく見積もっていたと伝えられている。たとえ軍事侵攻が起こったとしても、ごく短期で終わるという見方が大勢を占めていた。 だが、2月24日以降のウクライナ軍事侵攻で、ロシア軍は首都キーウ攻略作戦で苦戦を強いられて、撤退に追い込まれてしまった。ロシアは国際的な非難を受け、ウクライナ軍には武器援助が集まり、ウクライナ軍の奮闘ぶりが各国に伝えられた。 これは中国、特に習主席としては大誤算だった。中国はこれまでロシアとは一定の距離を取り、2014年のロシアのクリミア併合の際も、中国はあくまで中立を保っていた。だが、ウイグル問題で中国が非難されて、「ハレの舞台」である北京オリンピックに対して西側からの政治的ボイコットを受けたことで、習氏はロシアへの「無限の友情」を確約したのである。このことがプーチン大統領にウクライナ軍事侵攻を決心させる一つの要因となったことは間違いないだろう。 メディアでウクライナ軍の快進撃が報じられ続ける一方で、ロシア軍による民間人への被害や虐待行為などが伝えられるようになると、その批判が中国にも向くようになった。西側は経済制裁でロシアを締め上げる策に出たが、中国がそれを和らげるバッファーになっていたことが明らかだったからである。 これまでロシアに対しては慎重姿勢だった中国が、積極支援に入った途端に国際的なロシア孤立政策に巻き込まれることになったことからも、習主席が外交センスに恵まれていないことは明らかだろう。しかも、異例の3期目には入れるかどうかの重要な時期であったことで、習主席は自分の首を絞めることとなった。 また、この状況は異例の3選を企んでいた習主席にとっては打撃になった。不動産投資規制などの規制策が裏目に出ていた上に、ゼロコロナ政策で人民の不満が爆発寸前になっていたために、反習勢力が3選を阻止するための材料に使い始めたからである。そのため、経済再建派の李克強首相が権力闘争で勢いを盛り返し始めた』、「北京オリンピック開会式の後に行われた両者の会談だった。ウイグル問題で多くの国家首脳が参加を見合わせる中、堂々と出席してくれたプーチン大統領に、習主席は「ロシアに対する無限の友情」を約束した。 ロシアがウクライナに軍事侵攻したのは、その後のことだった」、よほど「ロシア」の参加が嬉しかったのだろう。「不動産投資規制などの規制策が裏目に出ていた上に、ゼロコロナ政策で人民の不満が爆発寸前になっていたために、反習勢力が3選を阻止するための材料に使い始めたからである。そのため、経済再建派の李克強首相が権力闘争で勢いを盛り返し始めた」、面白い展開になってきた。
・『内政も外交も失敗 それでも盤石な権力基盤 習近平指導部がこれまで取ってきた政策は「ほとんどが失敗」と言ってもいいほど惨憺たるものだった。 たとえば、習主席が先導してきた国家的プロジェクトである「中国製造2025」と「一帯一路」は、いずれもここにきて行き詰まりを見せている。 中国製造2025においては、先端半導体の内製化に失敗して半導体自給率は目標を大きく下回り、一帯一路も現地で雇用を生まず収益性も考慮されていなかったことから、各地で反中感情を高めた。 先述したゼロコロナ政策や不動産投資規制は中国経済に直接ダメージを与えており、IT企業への規制も虎の子の自国IT企業を痛めつけるだけであり、習主席の肝いりだったスマートシティー「雄安新区」もうまくいってないと伝えられている。やることなすことが裏目に出ていると言ってもいいだろう。 本来であれば異例の3期目など狙える状態ではないはずだが、それでも次に向けた習主席の権力基盤は着々と固まり、反習派への巻き返しが始まっている。習主席の権力基盤が思いのほか頑強で、失政にもかかわらず取って代わるほどの人材がいないからだろう。 さらに、6月の全人代(中国全国人民代表大会)の常務委員会では、趙克志公安相の後任として、習主席側近の王小洪が起用されることとなった。王氏は習主席が福建省役員だったころからの部下だった。公安はもともと反習派の牙城といわれていた組織だったが、そのトップを習派にすげ替えることに成功したわけである。 ところが、その習主席に大きなダメージを与えかねない事件がアメリカから訪れる。8月のペロシ米下院議長の台湾訪問である。ペロシ氏の訪台は4月に計画されていたが、本人が新型コロナに感染して延期されていたものだ。 4月時点での訪台は中国側から大きな反発は見られなかった。だが、8月は習主席が異例の3期目をかけて権力闘争を繰り広げている真っただ中にあり、習近平指導部としてどうしてもペロシ氏訪台は避けたかった。直前のバイデン大統領との電話会談でも習主席は「火遊びをする者は火で焼け死ぬ」ということわざを使って恫喝すらいとわなかったが、ペロシ氏は訪台して蔡英文総統と会談し、習主席は顔に泥を塗られることとなった。 ペロシ氏が台湾をたつと、人民解放軍が台湾海峡の中間線を越えて軍事示威行動を続けた。さらに、日本の排他的経済水域(EEZ)にも5発のミサイルを撃ち込んでいる。これは「中国の軍事計画が一つ先に進んだ」という面があるが、同時に日米が中国による台湾有事に備えることを強いた点で、中国にとっては外交上の失策ともいえる。 アメリカ側はその後も超党派で下院議員を送って、台湾を守るというメッセージを送り続け、米中関係は悪化を極めている。これは3期を目指す習主席にとってはマイナスなる。習近平指導部は内政に加えて、外交も失敗したのである』、「本来であれば異例の3期目など狙える状態ではないはずだが、それでも次に向けた習主席の権力基盤は着々と固まり、反習派への巻き返しが始まっている」、「アメリカ側はその後も超党派で下院議員を送って、台湾を守るというメッセージを送り続け、米中関係は悪化を極めている。これは3期を目指す習主席にとってはマイナスなる。習近平指導部は内政に加えて、外交も失敗したのである」、さんざんなのに地位を守れているのは不思議だ。
・『ウクライナ戦争の長期化で高まる欧米への不満 失策続きの習近平指導部だったが、ウクライナ戦争が長引くごとに、情勢は徐々に中国に有利に働き始めた。エネルギーと小麦などの食料が高騰することで、途上国などのグローバルサウス(南北問題の南側)が、ウクライナ支援とロシア経済制裁を強める欧米に対して、不満を持ち始めたのである。そのため、ウクライナ支援を続ける西側とグローバルサウスの分裂が始まってしまったのだ。 習主席は4月に「世界安全保障構想(GSI)」という新たな戦略的枠組みを発表して、グローバルサウスの取り込みに入ったのである。まだ始まったばかりではあるが、ウクライナ戦争の余波でハイパーインフレや食料不足に苦しむ途上国や新興国から賛同を得る可能性が高まっている。 さらに、9月にカザフスタンのサマルカンドで開催される上海協力機構サミットでは、中国が習・プーチン会談を実施しようとしていることをアメリカ経済紙の『ウォール・ストリート・ジャーナル』がすっぱ抜いている。 上海協力機構(本部は北京)は中国・ロシア・カザフスタン・キルギス・タジキスタン・ウズベキスタン・インド・パキスタンの計8カ国で構成される国際組織であるが、中国が近隣国をまとめるための枠組みだと言っていいだろう。 ここでの最大の懸念はインドだ。インドはもともと反米親ロの傾向があるのだが、それを日米側に引き入れたのが安倍晋三元首相だった。安倍首相は中国との領土問題でインド国内で反中感情が強まっていた時期にモディ首相の信頼を勝ち取り、トランプ大統領を説得して日米豪印の4カ国による「クアッド(4カ国戦略対話)」を成立させた。 インドの反対で軍事同盟化することはできなかったものの、海側から日米が、陸側からインドが中国を牽制することで、中国を封じることを中心とした戦略的枠組みとして中国封じ込め政策は大きく前進した。 だが、ウクライナ戦争でインドはウクライナ側に付かず、ロシアに配慮した中立に近い姿勢を見せた。インドは武器とエネルギーをロシアに依存しており、西側がいくら要請してもロシア封じ込めには参加するわけにはいかないのである。インドのみならず、ロシアのエネルギーが西側より安く買えるのであれば、中ロ側に付きたいと考える国は多いはずだ。 そのインドをはじめ、イスラエル、トルコ、ブラジルなど一筋縄ではいかない国々の首脳の信頼を勝ち取ってきたのが、安倍元首相だったのだが、それらの国の気持ちは、ウクライナ戦争の長期化によって西側から離れつつある。 ウクライナ戦争が長引くごとに南北の分裂が深まり、南側のリーダーとして中国の存在感が高まっているのである。習主席の3期目が決まり南北分裂が進めば、冷戦期ほどのはっきりした対立にはならないものの、両者がそれぞれの陣営で共存し合う「ソフト冷戦」に突入する可能性が否定できない。 また、ロシアを封じ込めると中東やアフリカなどでロシアの影響下にある国々は、今度はアメリカではなく、多くが中国の支援を受けようとするはずである。つまり、ロシアの影響力を制限しようとすれば、中国の影響力が拡大するのである。これは西側にとって得策ではない。 日本としても、台湾防衛を第一に考えるなら、現在の状態は望ましいものではない。また、中国のこのような動きはまだ始まったばかりであり、巻き返しはじゅうぶん可能だ。 中国包囲網は先進国のみでは完成しない。少なくともロシアを含む新興国や途上国を中国側に付かせてしまっては、中国の覇権拡大を止めることは困難である。ウクライナ戦争を一日でも早く停戦に持ち込んで、再び日米中心でインドをはじめとするグローバルサウスを引き入れる必要がある。 先述したようにインドはもともと反米・親ロの傾向が強い。ロシアと敵対したままであると、せっかく日米側に引き入れたインドが、今度は中ロ側にシフトする可能性すらある。中ロが連携することは日本にとってデメリットがあまりにも大きい。ウクライナ戦争を一日も早く終わらせ、ロシア包囲網を解いてこれ以上の中ロ接近を阻止することは、日本の安全保障にとっても重要である。 それらの仲介者の役割に最適なのが日本だ。だが、外交で大仕事ができる安倍元首相は帰らぬ人だ。世界がいま「ポスト安倍」を必要としているのである』、「ウクライナ戦争が長引くごとに南北の分裂が深まり、南側のリーダーとして中国の存在感が高まっているのである」、「ロシアを封じ込めると中東やアフリカなどでロシアの影響下にある国々は、今度はアメリカではなく、多くが中国の支援を受けようとするはずである。つまり、ロシアの影響力を制限しようとすれば、中国の影響力が拡大するのである。これは西側にとって得策ではない」、「中国包囲網は先進国のみでは完成しない。少なくともロシアを含む新興国や途上国を中国側に付かせてしまっては、中国の覇権拡大を止めることは困難である。ウクライナ戦争を一日でも早く停戦に持ち込んで、再び日米中心でインドをはじめとするグローバルサウスを引き入れる必要がある。 先述したようにインドはもともと反米・親ロの傾向が強い。ロシアと敵対したままであると、せっかく日米側に引き入れたインドが、今度は中ロ側にシフトする可能性すらある。中ロが連携することは日本にとってデメリットがあまりにも大きい。ウクライナ戦争を一日も早く終わらせ、ロシア包囲網を解いてこれ以上の中ロ接近を阻止することは、日本の安全保障にとっても重要である。 それらの仲介者の役割に最適なのが日本だ。だが、外交で大仕事ができる安倍元首相は帰らぬ人だ。世界がいま「ポスト安倍」を必要としているのである」、岸田首相は外相経験も長く、「ポスト安倍」にうってつけである。ただ、ハッタリも必要になる外交交渉能力には疑問なしとしないが、大筋では筆者の主張に同意できる。
先ずは、6月21日付けPRESIDENT Onlineが掲載した前国家安全保障局長の北村 滋氏による「「中国の資金援助は助かる」と日本人研究者…破格の待遇で世界の人材を集める「千人計画」の恐ろしい目的 日米欧による"科学技術の競争"とは狙いがまったく違う」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/57786
・『中国は2008年から外国の優秀な研究者を集める「千人計画」を進めている。目的は一体何なのか。元国家安全保障局長の北村滋さんは「破格の待遇で研究者を呼んでいる。中国が行っているのは単なる技術競争ではない」という――。 ※本稿は、北村滋、大藪剛史(聞き手・構成)『経済安全保障 異形の大国、中国を直視せよ』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。Qは聞き手の質問、Aは北村氏の回答』、興味深そうだ。
・『中国の論文数は2016年に世界トップになった Q:中国の科学発展の歴史について聞きたい。 A:中国は1950年代から、核兵器と弾道ミサイル、人工衛星の開発を並行して行う「両弾一星」のスローガンを掲げて、軍主導の宇宙開発に乗り出した。有人宇宙活動や月探査など、現在の宇宙事業も、軍が密接に関与しながら進められている。 文化大革命(66~76年)では知識人が迫害され、科学技術の発展が遅れた。だが、最高実力者の鄧小平氏が70年代後半から「国家の根幹は科学技術力にある」として立て直しを図った。90年代に海外から中国人留学生を呼び戻す「海亀政策」を進め、先端技術を取り込んだ。94年には、国外で活躍する優秀な人材を中国に呼び戻す政策の一環として「百人計画」が始まった。 中国製のスーパーコンピューターが2010年、計算速度で世界一を達成し、13年には無人探査機「嫦娥じょうが3号」が月面探査に成功した。科学の発展は、論文数にも表れている。日本の文部科学省の集計では、1981年に1800本だった中国の論文数は、2015年までに160倍増となった。全米科学財団(NSF)の報告書によると、16年に中国が初めて米国を抜いて世界トップに立ったようだ』、「論文数」で「16年に中国が初めて米国を抜いて世界トップに立った」、大したものだ。
・『外国から優秀な人材を集める「千人計画」 中国版GPSと呼ばれるグローバル衛星測位システム「北斗」が既に運用されている。人工衛星は、艦艇や航空機の位置把握、ミサイル誘導などの軍事目的にも役立つ。 21年3月の全国人民代表大会(全人代)で採択された新5カ年計画には、「科学技術の自立自強を国の発展の戦略的な支えとする」との文言が盛り込まれた。最先端の民間技術を積極的に軍事に転用する国家戦略「軍民融合」の下、今後も、世界トップレベルの研究者の招請や企業買収などを通じ、最先端技術を吸収していくだろう。 軍民融合の一環として、中国は「千人計画」を進めている。百人計画が成功したのを受けて、外国から優秀な人材を集める中国政府の人材招致プロジェクトだ。国家レベルでは08年から実施されている。採用される日本人研究者も増えている。 Q:外国人研究者は破格の待遇で集められているようだ。読売新聞の取材では、研究経費として500万元(約8600万円)が補助され、100万元(約1700万円)の一時金が与えられる例もあったようだ。 A:招聘に応じた日本人研究者には、「日本の大学だと研究費が年数十万円ということもある。日本の研究者は少ない研究費を奪い合っている。中国からの資金補助はとても助かる」と話す人もいる』、「世界トップレベルの研究者の招請」する「千人計画」では、「研究経費として500万元(約8600万円)が補助され、100万元(約1700万円)の一時金が与えられる例もあった」、と破格の待遇で搔き集めているようだ。
・『補助金、広い研究室にマンション、運転手付きの車まで… 補助金だけではない。広い研究室やマンションも与えられる。家賃はほとんど中国政府が払ってくれる、家政婦付きのマンションを与える、運転手付きの車が使えるとか、そんな話もある。退職した後の仕事を探していた大学教授や研究者が、こういった好条件につられて中国に渡航するケースが多い。 米司法省は、20年1月28日、「千人計画」への参加を巡って米政府に虚偽の説明をした米ハーバード大化学・化学生物学科長の教授を起訴した。ナノテクノロジーの世界的な権威だ。この教授は、12~17年頃に千人計画に参加し、月5万ドル(約550万円)の給料や15万8000ドル(約1740万円)の生活費を受け取った。この教授は国防総省などから研究費を受け取っていたため、外国から資金提供を受けた際に米政府へ報告する義務があったが、「千人計画」への参加を隠していたということだ。 中国が米国の最新技術や知的財産を狙い、この教授に接近したのだろう。 Q:中国政府は外国人の研究者らをどうやって招いているのか。 A:日本に留学していた中国人の元教え子や、日本で共同研究を行った中国人の研究者が誘うケースがあるようだ。元々の知り合いのつてを利用しているのだろう』、「補助金だけではない。広い研究室やマンションも与えられる。家賃はほとんど中国政府が払ってくれる、家政婦付きのマンションを与える、運転手付きの車が使えるとか、そんな話もある」、これは魅力的だ。「米司法省は・・・「千人計画」への参加を巡って米政府に虚偽の説明をした米ハーバード大化学・化学生物学科長の教授を起訴した。ナノテクノロジーの世界的な権威だ。この教授は、12~17年頃に千人計画に参加し、月5万ドル(約550万円)の給料や15万8000ドル(約1740万円)の生活費を受け取った。この教授は国防総省などから研究費を受け取っていたため、外国から資金提供を受けた際に米政府へ報告する義務があったが、「千人計画」への参加を隠していたということだ」、これでは「起訴」されて当然だ。
・『兵器開発とつながりが深い大学に所属する研究者も Q:「千人計画」に応じて中国に渡った研究者らは、どういったところで研究をするのか。 A:中国軍の兵器開発とつながりが深い「国防7校」(国防七子)に所属していた研究者もいる。 国防7校は、軍と軍事産業へ理工科人材供給を目的に設置された以下の7つの大学だ。 ・ハルビン工業大(宇宙工学や通信、電子、新素材、生産自動化) ・北京航空航天大(航空・宇宙工学、電子、素材、コンピューター、AI) ・北京理工大(素材、ソフトウェア、光エレクトロニクス) ・西北工業大(航空、宇宙、海洋・船舶工学) ・ハルビン工程大(船舶工業、海軍装備、深海工程と原子力) ・南京航空航天大(航空・宇宙工学) ・南京理工大(化学工業、AI、交通自動化、素材、通信、電子)』、「国防7校」とは権威がありそうだ。
・『本国と全く同じ研究施設を再現する「シャドーラボ」 Q:「千人計画」によって、これまでどのような技術が中国に奪われたのか。 A:米軍の最新鋭ステルス戦闘機F-35のエンジンに関するデータを中国に流出させた事例も報告されている。日本のある研究機構で働いていた中国人が、「風洞ふうどう設備」の技術を中国に持ち帰ったことも確認されている。 風洞設備は、飛行機や宇宙へ向かうロケットなどが空気中を飛ぶ際の空気抵抗や、機体周辺の空気の流れを調べるためのものだ。大きな筒のような洞ほらの中に、航空機の模型を置き、人工的に空気を流す設備だ。 この研究者は1990年代半ば、この研究機関で研究し、2000年に中国に帰っている。今は北京の中国科学院力学研究所に所属している。ここに日本のものと酷似した風洞設備が完成していることが確認されている。この研究所は極超音速ミサイルを研究している。つまり、開発中のミサイルの空気抵抗を減らしたり、宇宙から弾道弾が大気圏に再突入する際の熱防護素材を作ったりする研究に利用されているということだ。 本国にあるのと全く同じ研究施設を再現する、こういった例を「シャドーラボ」(影の研究室)という』、「中国科学院力学研究所に」、「日本のものと酷似した風洞設備が完成」、こうした「シャドーラボ」により「極超音速ミサイル研究」は、それがなかった場合に比べ、はかどったことだろう。
・『ノーベル賞級の研究をする人を集める「万人計画」 Q:「千人計画」に応じた人たちにはノルマはあるのか。 A:論文執筆のノルマを課しているようだ。『ネイチャー』や『サイエンス』など世界的に名だたる科学誌への掲載を求めていた。さきほど、中国の論文数が増えていると説明したが、こういった圧力も反映されているのだろう。 中国は、00年から17年までに、6万6690人を留学させて、彼等は米国で博士号を授与されている。米国の大学で博士号を取得する学生のおよそ1割強が中国人留学生だ。シリコンバレーや研究機関で、中核的役割を果たしている。07年に5万人以下だった海外人材の帰国者数は、17年に48万人に急増している。高度な技術を母国に持ち帰っているということだ。 中国には「万人計画」もある。ノーベル賞級の研究を行う研究者を集めるものだ』、「07年に5万人以下だった海外人材の帰国者数は、17年に48万人に急増している。高度な技術を母国に持ち帰っているということだ」、「千人計画」、「万人計画」といいスケールが大きい。。
・『日米欧と中国では「目指す未来」がまったく違う Q:日本は米国や欧州各国とも、科学技術の競争をしている。中国との競争はそれとは違うのか。 A:全く違う。日米欧など西側先進諸国と中国は、国際秩序に関する考えで大きな隔たりがある。西側先進諸国が目指す秩序は「自由で開かれた、法の支配に基づく世界」だ。それぞれの国が平等で、法の支配、自由を尊重するというものだ。 中国が目指す秩序は何か。習主席は頻繁に「新型国際関係」という言葉を使うが、西側主導の秩序への挑戦にほかならない。「自由、人権、民主主義」といった日米欧の価値観に真っ向から挑戦している。中国共産党による一党支配が自由や平等、法の支配とはほど遠いものであることは、中国が新疆ウイグル自治区や香港で行っていることを見れば明らかだ。対外関係でも、他国と対等なつながりを持とうとしているようには見えない。 習主席の言う「中華民族の偉大な復興」「中国の夢」に基づき、中国を頂点としたピラミッド型の国家連合を目指しているというのが本質だ。「一帯一路」構想の一環でアジアやアフリカの途上国に、インフラ整備のための桁違いの投資を行っているが、単なる経済協力ではない。それは、しばしば当該国の財政を圧迫し、「援助」自体がエコノミック・ステートクラフト化している。最終的に目指しているのは、中国の資金を背景とした影響力の行使だ。 中国は、単なる技術競争をしているだけではない。習主席の視線の先には、我々西側先進諸国が想像するのと全く異なる人類の未来が広がっている』、「西側先進諸国が目指す秩序は「自由で開かれた、法の支配に基づく世界」だ。それぞれの国が平等で、法の支配、自由を尊重するというものだ。 中国が目指す秩序は何か。習主席は頻繁に「新型国際関係」という言葉を使うが、西側主導の秩序への挑戦にほかならない。「自由、人権、民主主義」といった日米欧の価値観に真っ向から挑戦」、「「中華民族の偉大な復興」「中国の夢」に基づき、中国を頂点としたピラミッド型の国家連合を目指しているというのが本質だ。「一帯一路」構想の一環でアジアやアフリカの途上国に、インフラ整備のための桁違いの投資を行っているが、単なる経済協力ではない。それは、しばしば当該国の財政を圧迫し、「援助」自体がエコノミック・ステートクラフト化している。最終的に目指しているのは、中国の資金を背景とした影響力の行使だ」、恐ろしいことだ。
・『日本にとっての軍事的な脅威は増していく Q:中国の国家体制は盤石なのか。 A:短期的に習主席の基盤が固まっていることは間違いないと思う。 ただ、習主席は、政権全体の動揺を懸念していると思われる。中国共産党とは異なる価値を信じる組織に対する恐れは、日本人が考える以上に大きい。チベット、台湾、ウイグル、民主派、法輪功の5つを彼らは「五毒」と称し、いずれも中国共産党の体制に服さないものとして徹底的に弾圧していることが、その表れだろう。中国の歴史を見ると平和的、民主的な政権移行はなく、王朝が代わることにより政権が代わるというのが歴史が示すところだ。中国共産党は王朝ではないが、民主的政権交代を容認しない中国共産党による一党支配であり、そうした中国自身の歴史が常に念頭にあると思う。 習近平政権は、「中華民族の偉大な復興」「中国の夢」を実現するために、富強、強軍の政策を継続することは間違いない。日本にとって軍事的な脅威は増していくことを覚悟しなければならない』、「習近平政権は、「中華民族の偉大な復興」「中国の夢」を実現するために、富強、強軍の政策を継続することは間違いない。日本にとって軍事的な脅威は増していくことを覚悟しなければならない」、「日本」としては、ノウハウや情報、人材の流出に気を付けるのがせいぜいだろう。
次に、8月26日付けPRESIDENT Onlineが掲載した三菱UFJリサーチ&コンサルティング 調査部 副主任研究員の土田 陽介氏による「バルト三国すべてが「中国離れ」を決断…欧州で進めていた「一帯一路」が行き詰まりを見せ始めたワケ 次の標的はハンガリーとギリシャだが…」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/60947
・『リトアニアと中国の外交関係が極めて悪化 8月11日、エストニアとラトビアが中国との経済的な協力枠組みである「中国―中東欧国家合作」(通称「16+1」)から離脱すると発表した。 中国北京市で2022年7月26、27両日、省部級の主要指導幹部対象の「習近平総書記の重要演説の精神を学び、中国共産党第20回全国代表大会を迎える」特別研修班が開かれ、習近平中国共産党中央委員会総書記・国家主席・中央軍事委員会主席が開講式で重要演説を行った 昨年、リトアニアがこの2カ国に先行してこの枠組みから離脱を表明しており、今回のエストニアとラトビアの決断によって、いわゆるバルト三国の全てが「中国離れ」を進めることになった。 とはいえ、バルト三国のこの決断は時間の問題だった。 2021年2月、新型コロナの流行を受けて2年ぶりに北京で開催された「17+1サミット」(当時はまだリトアニアが参加していたため「17+1」だった。)にもバルト三国は首脳の参加を見送り、高官を派遣するにとどめた。当時から、中国に対して徐々に距離を取っていたわけだ。 その後、周知のとおり、リトアニアと中国の外交関係が極めて悪化した。台湾をめぐる問題に端を発したものだが、これにロシアのウクライナ侵攻に伴う地政学的な緊張の高まりも複雑に絡む事態になったと考えられる。 共通してロシアへの対抗意識が強いバルト三国が、中国への対応でも連帯を強めたという側面も大きいのではないだろうか。 それにバルト三国は、これまで「16+1」の枠組みを通じて中国から満足な投融資を得ていなかった。将来的にも、欧州連合(EU)が中国に対する圧力を強めている状況の下では、中国からの投融資が増えるとは考えにくい。 貿易面でも中国に対する依存度はそれほど高くないため、バルト三国は中国との枠組みから離脱できたといえよう』、「バルト三国」は、「中国から満足な投融資を得ていなかった」、「貿易面でも中国に対する依存度はそれほど高くない」、などから、「中国との枠組みから離脱できた」なるほど。
・『中東欧に「選択と集中」をかける中国 しかしながら、中国にとってバルト三国の決断が衝撃だったかというと、むしろ想定内だったはずだ。中国は中国で、2021年2月の北京サミット前後から、経済協力の対象を絞ってきた。 具体的にその対象とは、2019年に当時の「17+1」に参加したギリシャを筆頭に、ハンガリーとクロアチア、そしてEU未加盟の西バルカン諸国となる。 2019年9月に就任したミツォキタス首相の下、ギリシャと中国の関係は良好なものとなっている。そうした中で、2021年10月には中国の国有海運最大手、中国遠洋海運集団(コスコ・グループ)がピレウス港に対する出資額を引き上げたほか、習近平政権が抱える「一帯一路」構想につき、両国の協力関係を深化させる旨で合意に達した。 こちらも関係が良好なハンガリーに対しては、中国企業による大型投資が相次いでいる。6月にはパソコン大手の聯想集団(レノボ・グループ)がハンガリーに建てた工場が稼働、8月には電気自動車(EV)用電池大手、寧徳時代新能源科技(CATL)が73億ユーロ(約1兆円)を投じ、ハンガリーにバッテリー工場を建設すると発表した。 中国はハンガリーの首都ブタペストと隣国セルビアの首都ベオグラードを結ぶ鉄道の更新プロジェクトも支援している。また建設大手、中国交通建設の子会社である中国路橋工程(CRBC)は、クロアチア南部の沿岸部に巨大な斜張橋(ペリェシャツ橋)を建設したが、これは5億2600万ユーロ(約730億円、うちEUが7割弱を資金支援)規模の巨大プロジェクトだ。 2025年のEU加盟が視野に入るセルビアとは、先述のハンガリーとの間の鉄道網の改修以外にも、中国は協力関係の深化を模索している。 つまり中国は、ギリシャを起点として、西バルカン諸国やクロアチアを経由し、ハンガリーに至る一帯に「選択と集中」をかけて、中国は経済協力関係の深化を試みていると整理できる』、「中国は、ギリシャを起点として、西バルカン諸国やクロアチアを経由し、ハンガリーに至る一帯に「選択と集中」をかけて、中国は経済協力関係の深化を試みていると整理できる」、「さしずめ「バルト三国」は「選択」対象から漏れたようだ。
・『有効な対抗手段を持っていないEU 加えて中国は、上記の国々に対して新型コロナウイルスのワクチン(シノバック社やシノファーム社製)を提供した実績がある。 中国製のワクチンは重症化しにくいとされるオミクロン株の流行や欧米製のワクチンに比べた場合の有効性の低さなどから需要が減退したが、友好関係の深化という意味では一定の役割を果たしたといえよう。) EUは立法機関である欧州議会を中心に、対中姿勢を硬化させている。 一方で、中国は引き続きヨーロッパの市場へのアクセスを重視している。その足場として、バルカン半島からハンガリーを一体的にとらえているように考えられる。これらの国々がロシアとも比較的友好的であることも、中国にとっては都合がいいといえるのではないか。 インフラ投資といったハード面のみならず、公衆衛生でのサポートという一種のソフトパワーも行使した中国に対して、EUは有効な対抗手段をまだ用意できていない。EU版一帯一路ともいえる「グローバル・ゲートウェイ」構想下での支援対象からEU加盟済みの中東欧諸国は外れているし、EU未加盟の国々への支援の展望も描きにくい。 EUによる開発支援は、当然だがEUの経済観が色濃く反映される。新興国ではインフラの建設には経済性よりも政治性が重視される傾向が強いが、EUは支援に当たり経済性の高さを強く要求する。さらに「グローバル・ゲートウェイ」構想では、EUが重視する「デジタル化」と「脱炭素化」にかなう領域でのサポートを念頭に置いている。 とはいえ、新興国でそうした諸条件をクリアできるプロジェクトなど、まずない。欧米諸国が「債務の罠」につながると警告を繰り返したところで、新興国にとって話が早い中国からの投融資は魅力的である。結局のところEUは、有効な手立てをとることができないまま、バルカンからハンガリーにかけて中国の進出を許し続けている』、「欧米諸国が「債務の罠」につながると警告を繰り返したところで、新興国にとって話が早い中国からの投融資は魅力的である。結局のところEUは、有効な手立てをとることができないまま、バルカンからハンガリーにかけて中国の進出を許し続けている」、やむを得ないだろう。
・『岐路に立つ中国の「一帯一路」 そもそも「16+1」は、習近平政権の「一帯一路」構想の延長線上にあったものだ。 中国がもともと「一帯一路」構想に確たるビジョンを持っていたわけでもないが、バルト三国が離反したことや、コロナ禍で中国が中東欧の「選択と集中」を進めていたことは、この「一帯一路」構想そのものが岐路に立っていることの証左といえよう。 時を同じくして生じたスリランカの国家破綻も、中国の「一帯一路」構想が岐路に立っていることをよく示している。スリランカは7月5日、国家が破産したと宣言した。スリランカのハンバントタ港は、その建設から運営までが中国の手によって行われており、スリランカが陥った「債務の罠」を象徴する存在としてよく知られている。 もともとは長期にわたって政権を担っていたラージャパクサ一族によるバラマキ政策が、スリランカが国家破綻に陥った直接的な原因だ。それにハンバントタ港に関しては、中国の貸し手責任と同様にスリランカの借り手責任も問われるべきである。 さらにいえば、ハンバントタ港は中国にとって本当に資産性があるのか、議論の余地があろう』、「岐路に立つ中国の「一帯一路」」、当然だ。
・『「債務の罠」は中国にとっての「不良債権の罠」 スリランカから海を隔たればインドがある。そのインドと中国は是々非々で協力し、反目もする特有の緊張関係にある。8月中旬に中国軍の調査船がハンバントタ港に入港したが、当然ながらインドの強い反発を招いた。 両国が軍事的な緊張を回避したいという思惑を持つ中で、中国にとってハンバントタ港の使い勝手は必ずしもよくない。 それに、国家破綻に陥ったスリランカでは社会が不安定化している。ハンバントタ港やその周辺の治安維持のコストも急増せざるを得ないはずだが、そのコストを負担するのはもちろん中国になる。 またスリランカは、債権者に対して債務再編を要請すると考えられる。中国が簡単に応じるわけもないが、出方を間違えれば新興国の支持も失う。 ハンバントタ港でさえこの状況である。中国が「一帯一路」構想の下で投融資を行った海外のプロジェクトの多くは、中国にとって使い勝手が良くない資産が多いはずだ。 つまり、新興国にとっての「債務の罠」は中国にとっての「不良債権の罠」と裏返しである。中東欧やスリランカの事例は、そうした「不良債権の罠」の序章かもしれない』、「スリランカは、債権者に対して債務再編を要請すると考えられる」、これを邪険に扱えば、「中国にとっての」「不良債権の罠」問題が深刻化する。「中国」には微妙な綱渡りが求められそうだ。
第三に、8月31日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した評論家・翻訳家の白川 司氏による「中国・習近平がもくろむ「世界分断計画」の現実味、日本がやるべきことは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/308567
・『習近平氏とプーチン氏 裏目に出た「永遠の友情」 8月16日、中国の李克強首相が広東省深センを視察したときに発した言葉が物議を醸している。李氏は「中国の開放はまだ引き続き進めなければならない。黄河と長江は逆流しない」と述べて、鄧小平氏(故人)の改革開放路線の保持を訴えて、対米強硬と内製化に傾く習近平国家主席を批判したのではないかと憶測を呼んでいるのである。政権内で習主席に対する風当たりが強まっていることがうかがえる。 習主席は対米強硬を強化するとともに、ロシアとの連携強化に乗り出している。中ロが現在のような連携関係となるきっかけとなったのが、2021年2月4日の北京オリンピック開会式の後に行われた両者の会談だった。ウイグル問題で多くの国家首脳が参加を見合わせる中、堂々と出席してくれたプーチン大統領に、習主席は「ロシアに対する無限の友情」を約束した。 ロシアがウクライナに軍事侵攻したのは、その後のことだった。 2014年ソチオリンピックでも、両者は首脳会談を行っており、第2次世界大戦70年でナチスや日本軍と対抗した「戦勝国」の立場からの連携を確認しているものの、それ以上の連携には進まなかった。 当時、ロシアはウクライナのNATO加盟の動きに軍事圧力をもって対抗して、各国から非難を浴びていた。ロシアが軍事侵攻に及ぶと予期した専門家は少なく、中国もその可能性を小さく見積もっていたと伝えられている。たとえ軍事侵攻が起こったとしても、ごく短期で終わるという見方が大勢を占めていた。 だが、2月24日以降のウクライナ軍事侵攻で、ロシア軍は首都キーウ攻略作戦で苦戦を強いられて、撤退に追い込まれてしまった。ロシアは国際的な非難を受け、ウクライナ軍には武器援助が集まり、ウクライナ軍の奮闘ぶりが各国に伝えられた。 これは中国、特に習主席としては大誤算だった。中国はこれまでロシアとは一定の距離を取り、2014年のロシアのクリミア併合の際も、中国はあくまで中立を保っていた。だが、ウイグル問題で中国が非難されて、「ハレの舞台」である北京オリンピックに対して西側からの政治的ボイコットを受けたことで、習氏はロシアへの「無限の友情」を確約したのである。このことがプーチン大統領にウクライナ軍事侵攻を決心させる一つの要因となったことは間違いないだろう。 メディアでウクライナ軍の快進撃が報じられ続ける一方で、ロシア軍による民間人への被害や虐待行為などが伝えられるようになると、その批判が中国にも向くようになった。西側は経済制裁でロシアを締め上げる策に出たが、中国がそれを和らげるバッファーになっていたことが明らかだったからである。 これまでロシアに対しては慎重姿勢だった中国が、積極支援に入った途端に国際的なロシア孤立政策に巻き込まれることになったことからも、習主席が外交センスに恵まれていないことは明らかだろう。しかも、異例の3期目には入れるかどうかの重要な時期であったことで、習主席は自分の首を絞めることとなった。 また、この状況は異例の3選を企んでいた習主席にとっては打撃になった。不動産投資規制などの規制策が裏目に出ていた上に、ゼロコロナ政策で人民の不満が爆発寸前になっていたために、反習勢力が3選を阻止するための材料に使い始めたからである。そのため、経済再建派の李克強首相が権力闘争で勢いを盛り返し始めた』、「北京オリンピック開会式の後に行われた両者の会談だった。ウイグル問題で多くの国家首脳が参加を見合わせる中、堂々と出席してくれたプーチン大統領に、習主席は「ロシアに対する無限の友情」を約束した。 ロシアがウクライナに軍事侵攻したのは、その後のことだった」、よほど「ロシア」の参加が嬉しかったのだろう。「不動産投資規制などの規制策が裏目に出ていた上に、ゼロコロナ政策で人民の不満が爆発寸前になっていたために、反習勢力が3選を阻止するための材料に使い始めたからである。そのため、経済再建派の李克強首相が権力闘争で勢いを盛り返し始めた」、面白い展開になってきた。
・『内政も外交も失敗 それでも盤石な権力基盤 習近平指導部がこれまで取ってきた政策は「ほとんどが失敗」と言ってもいいほど惨憺たるものだった。 たとえば、習主席が先導してきた国家的プロジェクトである「中国製造2025」と「一帯一路」は、いずれもここにきて行き詰まりを見せている。 中国製造2025においては、先端半導体の内製化に失敗して半導体自給率は目標を大きく下回り、一帯一路も現地で雇用を生まず収益性も考慮されていなかったことから、各地で反中感情を高めた。 先述したゼロコロナ政策や不動産投資規制は中国経済に直接ダメージを与えており、IT企業への規制も虎の子の自国IT企業を痛めつけるだけであり、習主席の肝いりだったスマートシティー「雄安新区」もうまくいってないと伝えられている。やることなすことが裏目に出ていると言ってもいいだろう。 本来であれば異例の3期目など狙える状態ではないはずだが、それでも次に向けた習主席の権力基盤は着々と固まり、反習派への巻き返しが始まっている。習主席の権力基盤が思いのほか頑強で、失政にもかかわらず取って代わるほどの人材がいないからだろう。 さらに、6月の全人代(中国全国人民代表大会)の常務委員会では、趙克志公安相の後任として、習主席側近の王小洪が起用されることとなった。王氏は習主席が福建省役員だったころからの部下だった。公安はもともと反習派の牙城といわれていた組織だったが、そのトップを習派にすげ替えることに成功したわけである。 ところが、その習主席に大きなダメージを与えかねない事件がアメリカから訪れる。8月のペロシ米下院議長の台湾訪問である。ペロシ氏の訪台は4月に計画されていたが、本人が新型コロナに感染して延期されていたものだ。 4月時点での訪台は中国側から大きな反発は見られなかった。だが、8月は習主席が異例の3期目をかけて権力闘争を繰り広げている真っただ中にあり、習近平指導部としてどうしてもペロシ氏訪台は避けたかった。直前のバイデン大統領との電話会談でも習主席は「火遊びをする者は火で焼け死ぬ」ということわざを使って恫喝すらいとわなかったが、ペロシ氏は訪台して蔡英文総統と会談し、習主席は顔に泥を塗られることとなった。 ペロシ氏が台湾をたつと、人民解放軍が台湾海峡の中間線を越えて軍事示威行動を続けた。さらに、日本の排他的経済水域(EEZ)にも5発のミサイルを撃ち込んでいる。これは「中国の軍事計画が一つ先に進んだ」という面があるが、同時に日米が中国による台湾有事に備えることを強いた点で、中国にとっては外交上の失策ともいえる。 アメリカ側はその後も超党派で下院議員を送って、台湾を守るというメッセージを送り続け、米中関係は悪化を極めている。これは3期を目指す習主席にとってはマイナスなる。習近平指導部は内政に加えて、外交も失敗したのである』、「本来であれば異例の3期目など狙える状態ではないはずだが、それでも次に向けた習主席の権力基盤は着々と固まり、反習派への巻き返しが始まっている」、「アメリカ側はその後も超党派で下院議員を送って、台湾を守るというメッセージを送り続け、米中関係は悪化を極めている。これは3期を目指す習主席にとってはマイナスなる。習近平指導部は内政に加えて、外交も失敗したのである」、さんざんなのに地位を守れているのは不思議だ。
・『ウクライナ戦争の長期化で高まる欧米への不満 失策続きの習近平指導部だったが、ウクライナ戦争が長引くごとに、情勢は徐々に中国に有利に働き始めた。エネルギーと小麦などの食料が高騰することで、途上国などのグローバルサウス(南北問題の南側)が、ウクライナ支援とロシア経済制裁を強める欧米に対して、不満を持ち始めたのである。そのため、ウクライナ支援を続ける西側とグローバルサウスの分裂が始まってしまったのだ。 習主席は4月に「世界安全保障構想(GSI)」という新たな戦略的枠組みを発表して、グローバルサウスの取り込みに入ったのである。まだ始まったばかりではあるが、ウクライナ戦争の余波でハイパーインフレや食料不足に苦しむ途上国や新興国から賛同を得る可能性が高まっている。 さらに、9月にカザフスタンのサマルカンドで開催される上海協力機構サミットでは、中国が習・プーチン会談を実施しようとしていることをアメリカ経済紙の『ウォール・ストリート・ジャーナル』がすっぱ抜いている。 上海協力機構(本部は北京)は中国・ロシア・カザフスタン・キルギス・タジキスタン・ウズベキスタン・インド・パキスタンの計8カ国で構成される国際組織であるが、中国が近隣国をまとめるための枠組みだと言っていいだろう。 ここでの最大の懸念はインドだ。インドはもともと反米親ロの傾向があるのだが、それを日米側に引き入れたのが安倍晋三元首相だった。安倍首相は中国との領土問題でインド国内で反中感情が強まっていた時期にモディ首相の信頼を勝ち取り、トランプ大統領を説得して日米豪印の4カ国による「クアッド(4カ国戦略対話)」を成立させた。 インドの反対で軍事同盟化することはできなかったものの、海側から日米が、陸側からインドが中国を牽制することで、中国を封じることを中心とした戦略的枠組みとして中国封じ込め政策は大きく前進した。 だが、ウクライナ戦争でインドはウクライナ側に付かず、ロシアに配慮した中立に近い姿勢を見せた。インドは武器とエネルギーをロシアに依存しており、西側がいくら要請してもロシア封じ込めには参加するわけにはいかないのである。インドのみならず、ロシアのエネルギーが西側より安く買えるのであれば、中ロ側に付きたいと考える国は多いはずだ。 そのインドをはじめ、イスラエル、トルコ、ブラジルなど一筋縄ではいかない国々の首脳の信頼を勝ち取ってきたのが、安倍元首相だったのだが、それらの国の気持ちは、ウクライナ戦争の長期化によって西側から離れつつある。 ウクライナ戦争が長引くごとに南北の分裂が深まり、南側のリーダーとして中国の存在感が高まっているのである。習主席の3期目が決まり南北分裂が進めば、冷戦期ほどのはっきりした対立にはならないものの、両者がそれぞれの陣営で共存し合う「ソフト冷戦」に突入する可能性が否定できない。 また、ロシアを封じ込めると中東やアフリカなどでロシアの影響下にある国々は、今度はアメリカではなく、多くが中国の支援を受けようとするはずである。つまり、ロシアの影響力を制限しようとすれば、中国の影響力が拡大するのである。これは西側にとって得策ではない。 日本としても、台湾防衛を第一に考えるなら、現在の状態は望ましいものではない。また、中国のこのような動きはまだ始まったばかりであり、巻き返しはじゅうぶん可能だ。 中国包囲網は先進国のみでは完成しない。少なくともロシアを含む新興国や途上国を中国側に付かせてしまっては、中国の覇権拡大を止めることは困難である。ウクライナ戦争を一日でも早く停戦に持ち込んで、再び日米中心でインドをはじめとするグローバルサウスを引き入れる必要がある。 先述したようにインドはもともと反米・親ロの傾向が強い。ロシアと敵対したままであると、せっかく日米側に引き入れたインドが、今度は中ロ側にシフトする可能性すらある。中ロが連携することは日本にとってデメリットがあまりにも大きい。ウクライナ戦争を一日も早く終わらせ、ロシア包囲網を解いてこれ以上の中ロ接近を阻止することは、日本の安全保障にとっても重要である。 それらの仲介者の役割に最適なのが日本だ。だが、外交で大仕事ができる安倍元首相は帰らぬ人だ。世界がいま「ポスト安倍」を必要としているのである』、「ウクライナ戦争が長引くごとに南北の分裂が深まり、南側のリーダーとして中国の存在感が高まっているのである」、「ロシアを封じ込めると中東やアフリカなどでロシアの影響下にある国々は、今度はアメリカではなく、多くが中国の支援を受けようとするはずである。つまり、ロシアの影響力を制限しようとすれば、中国の影響力が拡大するのである。これは西側にとって得策ではない」、「中国包囲網は先進国のみでは完成しない。少なくともロシアを含む新興国や途上国を中国側に付かせてしまっては、中国の覇権拡大を止めることは困難である。ウクライナ戦争を一日でも早く停戦に持ち込んで、再び日米中心でインドをはじめとするグローバルサウスを引き入れる必要がある。 先述したようにインドはもともと反米・親ロの傾向が強い。ロシアと敵対したままであると、せっかく日米側に引き入れたインドが、今度は中ロ側にシフトする可能性すらある。中ロが連携することは日本にとってデメリットがあまりにも大きい。ウクライナ戦争を一日も早く終わらせ、ロシア包囲網を解いてこれ以上の中ロ接近を阻止することは、日本の安全保障にとっても重要である。 それらの仲介者の役割に最適なのが日本だ。だが、外交で大仕事ができる安倍元首相は帰らぬ人だ。世界がいま「ポスト安倍」を必要としているのである」、岸田首相は外相経験も長く、「ポスト安倍」にうってつけである。ただ、ハッタリも必要になる外交交渉能力には疑問なしとしないが、大筋では筆者の主張に同意できる。
タグ:『経済安全保障 異形の大国、中国を直視せよ』(中央公論新社) 北村 滋氏による「「中国の資金援助は助かる」と日本人研究者…破格の待遇で世界の人材を集める「千人計画」の恐ろしい目的 日米欧による"科学技術の競争"とは狙いがまったく違う」 PRESIDENT ONLINE (その14)(「中国の資金援助は助かる」と日本人研究者…破格の待遇で世界の人材を集める「千人計画」の恐ろしい目的 日米欧による"科学技術の競争"とは狙いがまったく違う、バルト三国すべてが「中国離れ」を決断…欧州で進めていた「一帯一路」が行き詰まりを見せ始めたワケ 次の標的はハンガリーとギリシャだが…、中国・習近平がもくろむ「世界分断計画」の現実味 日本がやるべきことは?) 中国情勢(軍事・外交) 先述したようにインドはもともと反米・親ロの傾向が強い。ロシアと敵対したままであると、せっかく日米側に引き入れたインドが、今度は中ロ側にシフトする可能性すらある。中ロが連携することは日本にとってデメリットがあまりにも大きい。ウクライナ戦争を一日も早く終わらせ、ロシア包囲網を解いてこれ以上の中ロ接近を阻止することは、日本の安全保障にとっても重要である。 それらの仲介者の役割に最適なのが日本だ。だが、外交で大仕事ができる安倍元首相は帰らぬ人だ。世界がいま「ポスト安倍」を必要としているのである」、岸田首相は外相経 「ウクライナ戦争が長引くごとに南北の分裂が深まり、南側のリーダーとして中国の存在感が高まっているのである」、「ロシアを封じ込めると中東やアフリカなどでロシアの影響下にある国々は、今度はアメリカではなく、多くが中国の支援を受けようとするはずである。つまり、ロシアの影響力を制限しようとすれば、中国の影響力が拡大するのである。これは西側にとって得策ではない」、「中国包囲網は先進国のみでは完成しない。少なくともロシアを含む新興国や途上国を中国側に付かせてしまっては、中国の覇権拡大を止めることは困難である。ウクライ 「本来であれば異例の3期目など狙える状態ではないはずだが、それでも次に向けた習主席の権力基盤は着々と固まり、反習派への巻き返しが始まっている」、「アメリカ側はその後も超党派で下院議員を送って、台湾を守るというメッセージを送り続け、米中関係は悪化を極めている。これは3期を目指す習主席にとってはマイナスなる。習近平指導部は内政に加えて、外交も失敗したのである」、さんざんなのに地位を守れているのは不思議だ。 「北京オリンピック開会式の後に行われた両者の会談だった。ウイグル問題で多くの国家首脳が参加を見合わせる中、堂々と出席してくれたプーチン大統領に、習主席は「ロシアに対する無限の友情」を約束した。 ロシアがウクライナに軍事侵攻したのは、その後のことだった」、よほど「ロシア」の参加が嬉しかったのだろう。「不動産投資規制などの規制策が裏目に出ていた上に、ゼロコロナ政策で人民の不満が爆発寸前になっていたために、反習勢力が3選を阻止するための材料に使い始めたからである。そのため、経済再建派の李克強首相が権力闘争で勢い 白川 司氏による「中国・習近平がもくろむ「世界分断計画」の現実味、日本がやるべきことは?」 ダイヤモンド・オンライン 「スリランカは、債権者に対して債務再編を要請すると考えられる」、これを邪険に扱えば、「中国にとっての」「不良債権の罠」問題が深刻化する。「中国」には微妙な綱渡りが求められそうだ。 「岐路に立つ中国の「一帯一路」」、当然だ。 「欧米諸国が「債務の罠」につながると警告を繰り返したところで、新興国にとって話が早い中国からの投融資は魅力的である。結局のところEUは、有効な手立てをとることができないまま、バルカンからハンガリーにかけて中国の進出を許し続けている」、やむを得ないだろう。 「中国は、ギリシャを起点として、西バルカン諸国やクロアチアを経由し、ハンガリーに至る一帯に「選択と集中」をかけて、中国は経済協力関係の深化を試みていると整理できる」、「さしずめ「バルト三国」は「選択」対象から漏れたようだ。 「バルト三国」は、「中国から満足な投融資を得ていなかった」、「貿易面でも中国に対する依存度はそれほど高くない」、などから、「中国との枠組みから離脱できた」なるほど。 土田 陽介氏による「バルト三国すべてが「中国離れ」を決断…欧州で進めていた「一帯一路」が行き詰まりを見せ始めたワケ 次の標的はハンガリーとギリシャだが…」 「習近平政権は、「中華民族の偉大な復興」「中国の夢」を実現するために、富強、強軍の政策を継続することは間違いない。日本にとって軍事的な脅威は増していくことを覚悟しなければならない」、「日本」としては、ノウハウや情報、人材の流出に気を付けるのがせいぜいだろう。 「西側先進諸国が目指す秩序は「自由で開かれた、法の支配に基づく世界」だ。それぞれの国が平等で、法の支配、自由を尊重するというものだ。 中国が目指す秩序は何か。習主席は頻繁に「新型国際関係」という言葉を使うが、西側主導の秩序への挑戦にほかならない。「自由、人権、民主主義」といった日米欧の価値観に真っ向から挑戦」、「「中華民族の偉大な復興」「中国の夢」に基づき、中国を頂点としたピラミッド型の国家連合を目指しているというのが本質だ。「一帯一路」構想の一環でアジアやアフリカの途上国に、インフラ整備のための桁違いの 「07年に5万人以下だった海外人材の帰国者数は、17年に48万人に急増している。高度な技術を母国に持ち帰っているということだ」、「千人計画」、「万人計画」といいスケールが大きい。。 「中国科学院力学研究所に」、「日本のものと酷似した風洞設備が完成」、こうした「シャドーラボ」により「極超音速ミサイル研究」は、それがなかった場合に比べ、はかどったことだろう。 「補助金だけではない。広い研究室やマンションも与えられる。家賃はほとんど中国政府が払ってくれる、家政婦付きのマンションを与える、運転手付きの車が使えるとか、そんな話もある」、これは魅力的だ。「米司法省は・・・「千人計画」への参加を巡って米政府に虚偽の説明をした米ハーバード大化学・化学生物学科長の教授を起訴した。ナノテクノロジーの世界的な権威だ。この教授は、12~17年頃に千人計画に参加し、月5万ドル(約550万円)の給料や15万8000ドル(約1740万円)の生活費を受け取った。この教授は国防総省などから 「世界トップレベルの研究者の招請」する「千人計画」では、「研究経費として500万元(約8600万円)が補助され、100万元(約1700万円)の一時金が与えられる例もあった」、と破格の待遇で搔き集めているようだ。 「論文数」で「16年に中国が初めて米国を抜いて世界トップに立った」、大したものだ。
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