大学(その11)(日大新理事長・林真理子氏内定も…「78歳」「元総長」の学長選出に落胆の声、講義1回の対価が7500円 あまりにひどい大学非常勤講師の待遇 講義1回の対価が7500円 あまりにひどい大学非常勤講師の待遇、東工大 東京医科歯科大の統合協議で 「第二東大」目指した盟友・一橋 東京外大はどこへ向かうか キーワードは「大学ファンド」「国際卓越研究大学」) [社会]
大学については、5月2日に取上げた。今日は、(その11)(日大新理事長・林真理子氏内定も…「78歳」「元総長」の学長選出に落胆の声、講義1回の対価が7500円 あまりにひどい大学非常勤講師の待遇 講義1回の対価が7500円 あまりにひどい大学非常勤講師の待遇、東工大 東京医科歯科大の統合協議で 「第二東大」目指した盟友・一橋 東京外大はどこへ向かうか キーワードは「大学ファンド」「国際卓越研究大学」)である。
先ずは、6月2日付け日刊ゲンダイ「日大新理事長・林真理子氏内定も…「78歳」「元総長」の学長選出に落胆の声」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/306109
・『日大の新理事長候補に作家の林真理子氏(68)が内定した。田中英寿前理事長(75)による脱税事件を含めた一連の不祥事を受けて、7月から新体制を発足する。 現理事長で学長の加藤直人氏(70)は今年4月、今後の対応方針を説明する会見で、「身内意識が強いという指摘を真摯に受け止め、次の体制には多様性のある運営を目指してほしい」と述べていた。その際、次期理事長を外部の人材から選出する方針を示していた。 林氏は田中前理事長とは無関係な人選ではあるが、同大芸術学部出身のOG。とはいえSNSでは、〈火中の栗を拾った林氏には健闘して頂きたい〉と期待の声も広がった。 一方で、学長候補に元総長の酒井健夫氏(78)が選ばれたことが判明し、批判が相次ぐ。 〈先祖がえりでなく、若手大学人にバトンタッチしないのかと絶望感〉〈田中理事長が逮捕されても変わらないどころか、旧体制復帰?〉などといった具合だ。 「酒井氏は日大農獣医学部(現・生物資源科学部)卒。日大教授を経て、2008年9月から11年8月まで日大総長(当時の学長にあたる役職)を務めてきました。高齢であることも含め、新しい風を入れたとは言えない。また、田中前理事長が理事長を就任してきたのは08年から21年。酒井氏は距離を置いていたとしても、田中氏が学校法人を私物化していた時代に“被っていた”という事実に疑念を抱く関係者もいます。もっとも、日大側は林氏を起用し、〈女性〉や〈知名度〉を生かした改革をしたつもりでしょうが、経営にどこまで踏み込めるかは未知数。学長候補を聞いて複雑な学生や保護者は多いでしょう」(大学ジャーナリスト) もう一人の学長候補者には、東大教育学部出身で文理学部教授の広田照幸氏(62)だった。結局身内で固めたが、ブランドイメージはどうなるか』、「学長」には「酒井健夫氏」が6月3日付けで選任された。「林真理子氏」は7月1日付けで「理事長」に就任。酒井氏は2度目で、「田中氏が学校法人を私物化していた時代に“被っていた”」、のはやはり気になるところだ。手垢のついてない林理事長の活躍に期待したい
ところだが、マンモス組織を束ねていくのはかなりの困難が予想される。
次に、6月8日付けNewsweek日本版が掲載した教育社会学者の舞田敏彦氏による「講義1回の対価が7500円、あまりにひどい大学非常勤講師の待遇」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/06/17500-1.php
・『<大学講師の講義給の「1コマ」は1カ月4回分のことで、そこには事前の準備や試験の採点など付随業務も含まれている> 上智大学で、非常勤講師への賃金不払いが取り沙汰されている。学科コース全体で使うオンライン教材の作成など講義時間外の賃金の支払いを請求したところ、大学側は「講義給に含まれている」として支払いを拒んだという。 大学講師への給与は、講義への対価として支払われるが、事前の準備、質問対応、試験の採点等、もろもろの付随業務も含むと理解されるのが普通だ。教材作成への対価を別に払ってほしい、という訴えは珍しい。コロナ禍でオンライン用教材の作成等、負担が大きくなっていることから、この部分もきちんと評価するべきだと、ということなのだろう。 講義の対価がそれなりの額なら不満は起きないだろうが、ここに書くのがはばかられるほど安い。相場は「1コマ3万円」だ。誤解する人が多いが、これは1回90分の講義の額ではない。1カ月分(4回の講義)の対価だ。1回の講義は7500円、上記の付随業務も含めると時間給はかなり低くなる。最近はオンライン教材の作成等の負担も増えているので、コンビニバイト並みになっているかもしれない』、「1カ月で6時間教えて、「7500円」とは最低賃金に近い。
・『なり手はいくらでもいる 首都圏大学非常勤講師組合の機関誌『控室』(1997年1月19日)に、「バカにするな!-1コマの意味を理解していて本当に良かった-」という記事が出ている。その筆者は、とある児童文学者の方だ。1コマ2万7000円の講義を3コマ頼まれたのだが、提示された額を1回90分の講義の額と勘違いし、「2.7万円×3コマ×4回=32.4万円」の月収を想定していたが、振り込まれたのはその4分の1。通帳を見て飛び上がり、事務に電話をして1コマの意味を教えてもらったという。 その後、母校から「1コマ2万円で講義しないか」と話が来るが、よほど頭に来たのだろう。「バカにするな!」という強い文言ではねつけている。民間人を非常勤に呼ぶ大学が増えているが、トラブルもさぞ多く起きているかと思う。 こういう待遇でも、大学の非常勤講師のなり手はいくらでもいる。1990年代以降の大学院重点化政策により、行き場のないオーバードクター(博士学位を取得して定職に就いていない人)があふれかえっているためだ。声を掛ければ、給与も聞かずに飛びついてくる。<図1>のグラフは大学教員数の変化だが、増分が大きいのは本務先のない兼務教員(非常勤講師)だ。この多くが、定職のないオーバードクターと考えていい。 上智大学でのトラブルで、仮に大学が非を認めて支払いに応じた場合、どういう事態になるか(今件では、中央労働基準監督署が上智大学に対して賃金支払いの是正勧告を行なっている)。同じ訴えを起こす講師が続出し、全国の大学は大変なことになるだろう。非常勤講師への依存度が高い大学は、経営が一気に火の車になる。 防衛の策として、契約書に「講義、教材作成、学生への個別対応、試験採点、その他付随業務全部を含めて1カ月3万円」と書くのだろうが、これなどは民法が禁じる「公序良俗に反する契約」に当たると考えていいのではないか。 社会をよくする「知」を創造する大学で、このようなことがまかり通って良いはずがない。今回の騒動を機に、非常勤講師の待遇を真剣に見直すべきだ』、「定職のないオーバードクター」の存在が「待遇」改善のブレーキ役になっているようだ。「上智大学で、非常勤講師への賃金不払い」問題に関しては、大学側の主張に理があると思っていたが、「中央労働基準監督署が上智大学に対して賃金支払いの是正勧告を行なっている」、ということであれば、「同じ訴えを起こす講師が続出し、全国の大学は大変なことになるだろう」。今後の成り行きが注目される。
第三に、8月29日付けPRESIDENT Onlineが転載したAERAdot「東工大、東京医科歯科大の統合協議で、「第二東大」目指した盟友・一橋、東京外大はどこへ向かうか キーワードは「大学ファンド」「国際卓越研究大学」」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/60963
・『利害が一致した。思惑が合致した――。東京工業大と東京医科歯科大が、統合へ向けた協議を始めることがわかった。なぜ、2校が統合するのか。キーワードとなるのは、「大学ファンド」「国際卓越研究大学」である。 政府は大学の国際競争力をつけるため、10兆円規模の大学ファンド(基金)を創設し、その運用益をもとに数大学に年数百億円ずつ配る(2024年度からの予定)。その対象となる「国際卓越研究大学」を公募する。 東京工業大、東京医科歯科大が統合すれば、研究力が強化され、「大学ファンド」による資金獲得が得られやすい。2大学の統合協議は、資金獲得という利害、思惑がピタリと合ったから、と見ていい』、「資金獲得という利害、思惑がピタリと合った」、これは「統合」には強力なインセンティブになる。
・『一橋、東京外大、東京芸大を加えた「5大学連合」構想 ところで、東京工業大、東京医科歯科大の統合話は、今回が初めてではない。 2000年代前半、行政改革が進むなか、中央省庁の統合再編が行われた。文部省と科学技術庁が統合して文部科学省が誕生したのも、このときだ。そして、行政改革の流れは国立大学にも及び、大学の統合話が持ち上がってくる。 その最たる動きが、前述の東京工業大、東京医科歯科大に一橋大、東京外国語大、東京芸術大を加えた「5大学連合」構想だった。人文社会、自然科学がほぼそろっており、東京大に匹敵する規模となる。 2000年、こんな記事が出ている。とても興味深いので長くなるが引用する。 <一橋大の石弘光学長、東京外国語大の中嶋嶺雄学長、東京工業大の内藤喜之学長の三人は昨年四月、ドイツへ一緒に出張した。本場のビールを飲み、すっかり意気投合した。帰国後、再会して、「われわれは一緒がいいですね」と胸の内を確かめ合った>(「AERA」2000年3月6日号)このときの「一緒」案は、単位互換などの教育連携の域を超えた「統合」を意識したようにも思える。3大学が「一緒」を求めたのは、これまで東京大、京都大など旧制の帝国大学を起源とする大学に、煮え湯を飲まされた思いを抱いていたからだ。予算規模で東京外国語大は東京大の30分の1程度、東京工業大全体は東京大工学部の半分、といわれていたからだ』、「3大学」の「一緒」構想を思い出した。3人の学長が「ドイツへ一緒に出張」したのが契機とは初めて知った。
・『「鬼に金棒だ」「艶が出ていいですね」 そんな状況を打開すべく、「一緒」話はさらに盛り上がっていく。記事の引用を続けよう。 <六月、ビールを酌み交わしながら、内藤氏が切り出した。「もう一、二校、増やしませんか」異論はない。早速、別の二人の学長に声をかけた。 一人は東京医科歯科大の鈴木章夫学長だ。石氏も、「医学の知識をもって弁護士になるなら、鬼に金棒だ」と歓迎する。鈴木氏も喜ぶ。「これからの大病院、大学病院の院長に経営の知識は欠かせない」 もう一人、東京芸術大の澄川喜一学長を迎え入れた。 「文化の香りがします」「艶が出ていいですね」と学長たちは、はしゃいだ」>(「AERA」2000年3月6日号) このころ、メディアで5大学連合=第二東大の誕生か、と報じられている。東京大にはない芸術学部という「艶」があり、第二東大は本家の東京大をしのぐのでは、と5大学関係者のあいだでは期待する向きもあった。 しかし、この構想は頓挫してしまう。「艶」の東京芸術大が「オンリーワンになる学生をつくる」という理由で、5大学連合から抜けてしまう。その後、4大学連合構想は、「一緒」=統合という形では着地できなかった。学内で支持を得られない、新しい学長に「一緒」案が引き継がれなかった、という背景があったとされる。 なお、4大学連合構想に入らなかった、お茶の水女子大、東京農工大、電気通信大、東京学芸大の都内国立大学関係者は異口同音に、「取り残された感じで、心中穏やかではなかった」と振り返っている。 4大学連合は統合に至らなかったが、このうち東京医科歯科大、東京工業大、一橋大、東京外国語大の4大学で教育連携が行われるようになった。総合生命科学、海外協力、生活空間研究などのコースが設置され、4大学のどの学生も他の3大学の授業を受け単位を取得できる。それは、今日まで続いている。 それゆえ、今回の東京医科歯科大、東京工業大の統合協議について、一橋大のある教員は落胆していた』、「5大学連合」から「東京芸術大が「オンリーワンになる学生をつくる」という理由で」抜けたのはやむを得ないだろう。「4大学連合」では「教育連携」が行われているようだ。
・『「仲間はずれにされたのか」「つらくなりそう」 「うちは文系学部中心なので、自然科学系分野で『国際卓越研究大学』になれない。だから、仲間はずれにされたのか。ぬけがけにも思えた」東京外国語大のある教員はこう話す。 「うちは一橋大との統合かな。でも、文系同士なのでお金を稼げない。大学ファンドはむずかしそう。これから、つらくなりそうです。東京農工大、電気通信大などを巻き込んで大学統合するしかないのでは」 東京外国語大、東京農工大、電気通信大、一橋大は西東京(多摩地域)にある。東京学芸大も近い距離なので、いわば西東京5大学統合への期待であろう。 繰り返すが、東京工業大、東京医科歯科大の統合構想は資金獲得という側面がかなり強い。これは地方都市の大学に影響を与えるかもしれない』、「東京外国語大、東京農工大、電気通信大、一橋大は西東京(多摩地域)にある。東京学芸大も近い距離なので、いわば西東京5大学統合」、も地域制を活かした「統合」候補になり得るだろう。
・『過去に議論された地方大学の統合 地方大学の統合についても、過去に議論された前例がある。 前述の2000年代前半の行政改革において「第二東大」構想が起こったとき、文科省内では大学の具体的な名前をあげての統合シミュレーションが語られていた。 たとえば次のような統合である(大学名はいずれも当時、のちに高知医科大が統合により高知大医学部となったケースなどがある)。 ◆北東北3大学 弘前大、岩手大、秋田大 ◆北陸地区国立大学連合 富山大、富山医科薬科大、高岡短期大、金沢大、北陸先端科学技術大学院大、福井大、福井医科大 ◆四国国立大学協議会 徳島大、鳴門教育大、香川大、香川医科大、愛媛大、高知大、高知医科大 (文科省ウェブサイトでいまでも閲覧可) 大学統合に関する議論は以前からあった。戦後、旧制の大学、高等学校、専門学校などが統合再編し、新制大学(現在の大学)をつくった当初から議論にのぼっている。 かなり古い話を紹介しよう。75年前である。 北陸地方では、1947年、石川県内に「北陸総合大学設立準備委員会」をつくり、石川、富山、福井の3県で北陸総合大学構想が浮上した。 四国においては、四国4県で「四国総合大学」構想があった。大学史にこう記されている。) <香川県はこの案を四国における地理的条件から至当であると賛意を示し、徳島県も徳島医学専門学校の大学昇格運動と連動して総合大学設置を協力すると表明して、4県一体となって文部当局に要望することを決議された>(『香川大学五十年史』) このとき、現在の高知大(旧制高知高等学校)と愛媛大(旧制松山高等学校)のあいだで文学部と理学部をどこに置くかで、もめにもめた。 同じころ、九州でも熊本、大分、宮崎、鹿児島4県の「南九州総合大学」案が持ち上がっている。 <南九州に総合大学をつくる点では各県とも意見が一致した訳だが、それが決ってから中心をどこにするかは今後の問題であり、熊本を中心にするためには県民が余程の熱意を示さねばなるまい>(『熊本大学三十年史』) このとき大学本部の所在地を熊本にするか、鹿児島にするかで対立している。 こうした統合話はどうなったか。北陸、四国、南九州いずれも県を超えたブロック、地域単位の総合大学は生まれなかった。国が国立大学を都道府県に1大学設置する政策を徹底させたからである。 だが、この原則は、2000年代前半の行政改革による統合再編案で破られようとしていた。 そして、現在の話、「大学ファンド」である。どの大学も運営資金はのどから手が出るほど欲しい。そのために歴史、伝統をかなぐり捨てるような動きが出てくる。とくに地方では生き残りをかけて、「大学ファンド」のため近隣の大学が結束し、統合する話が進むかもしれない。 大学が統合した際、たいてい主導権争いが起こる。学長はどこから出すのか、学部の振り分けをどうするか、本部機能をどこに置くのか、細かな学則をどこに合わせるのか。 東京医科歯科大、東京工業大の統合協議はどのように進むのか。1法人2大学で名称は変わらない、あるいは、1法人1大学として、「東京医科歯科工業大学」になるのか。 2大学は統合への協議が明らかになったあと、同じ文章を発表した。 <両法人の統合は今後100年において日本の科学技術と社会、さらには地球環境等の課題解決に向けて極めて有効な選択肢であると考えておりますが、その最終決定は今後の両法人における協議に委ねられており、現時点では何も決定したことはありません。今後、本法人内でもより多くの構成員の意見を聞きながら集中的に協議を進めて参ります>(両大学のウェブサイト) 一字一句変わらず、とてもお役所的なもの言いなのが、残念である。2大学の特徴が何も見えない。両大学が何をしたいのか、抱負というか、野望を見せてほしかった』、「北陸、四国、南九州いずれも県を超えたブロック、地域単位の総合大学は生まれなかった。国が国立大学を都道府県に1大学設置する政策を徹底させたからである」、「どの大学も運営資金はのどから手が出るほど欲しい。そのために歴史、伝統をかなぐり捨てるような動きが出てくる。とくに地方では生き残りをかけて、「大学ファンド」のため近隣の大学が結束し、統合する話が進むかもしれない」、「大学が統合した際、たいてい主導権争いが起こる。学長はどこから出すのか、学部の振り分けをどうするか、本部機能をどこに置くのか、細かな学則をどこに合わせるのか」、「東京医科歯科大、東京工業大の統合協議」の場合は、分野が違うので、「主導権争いが起こる」余地が少なく、やりやすそうだ。
先ずは、6月2日付け日刊ゲンダイ「日大新理事長・林真理子氏内定も…「78歳」「元総長」の学長選出に落胆の声」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/306109
・『日大の新理事長候補に作家の林真理子氏(68)が内定した。田中英寿前理事長(75)による脱税事件を含めた一連の不祥事を受けて、7月から新体制を発足する。 現理事長で学長の加藤直人氏(70)は今年4月、今後の対応方針を説明する会見で、「身内意識が強いという指摘を真摯に受け止め、次の体制には多様性のある運営を目指してほしい」と述べていた。その際、次期理事長を外部の人材から選出する方針を示していた。 林氏は田中前理事長とは無関係な人選ではあるが、同大芸術学部出身のOG。とはいえSNSでは、〈火中の栗を拾った林氏には健闘して頂きたい〉と期待の声も広がった。 一方で、学長候補に元総長の酒井健夫氏(78)が選ばれたことが判明し、批判が相次ぐ。 〈先祖がえりでなく、若手大学人にバトンタッチしないのかと絶望感〉〈田中理事長が逮捕されても変わらないどころか、旧体制復帰?〉などといった具合だ。 「酒井氏は日大農獣医学部(現・生物資源科学部)卒。日大教授を経て、2008年9月から11年8月まで日大総長(当時の学長にあたる役職)を務めてきました。高齢であることも含め、新しい風を入れたとは言えない。また、田中前理事長が理事長を就任してきたのは08年から21年。酒井氏は距離を置いていたとしても、田中氏が学校法人を私物化していた時代に“被っていた”という事実に疑念を抱く関係者もいます。もっとも、日大側は林氏を起用し、〈女性〉や〈知名度〉を生かした改革をしたつもりでしょうが、経営にどこまで踏み込めるかは未知数。学長候補を聞いて複雑な学生や保護者は多いでしょう」(大学ジャーナリスト) もう一人の学長候補者には、東大教育学部出身で文理学部教授の広田照幸氏(62)だった。結局身内で固めたが、ブランドイメージはどうなるか』、「学長」には「酒井健夫氏」が6月3日付けで選任された。「林真理子氏」は7月1日付けで「理事長」に就任。酒井氏は2度目で、「田中氏が学校法人を私物化していた時代に“被っていた”」、のはやはり気になるところだ。手垢のついてない林理事長の活躍に期待したい
ところだが、マンモス組織を束ねていくのはかなりの困難が予想される。
次に、6月8日付けNewsweek日本版が掲載した教育社会学者の舞田敏彦氏による「講義1回の対価が7500円、あまりにひどい大学非常勤講師の待遇」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/06/17500-1.php
・『<大学講師の講義給の「1コマ」は1カ月4回分のことで、そこには事前の準備や試験の採点など付随業務も含まれている> 上智大学で、非常勤講師への賃金不払いが取り沙汰されている。学科コース全体で使うオンライン教材の作成など講義時間外の賃金の支払いを請求したところ、大学側は「講義給に含まれている」として支払いを拒んだという。 大学講師への給与は、講義への対価として支払われるが、事前の準備、質問対応、試験の採点等、もろもろの付随業務も含むと理解されるのが普通だ。教材作成への対価を別に払ってほしい、という訴えは珍しい。コロナ禍でオンライン用教材の作成等、負担が大きくなっていることから、この部分もきちんと評価するべきだと、ということなのだろう。 講義の対価がそれなりの額なら不満は起きないだろうが、ここに書くのがはばかられるほど安い。相場は「1コマ3万円」だ。誤解する人が多いが、これは1回90分の講義の額ではない。1カ月分(4回の講義)の対価だ。1回の講義は7500円、上記の付随業務も含めると時間給はかなり低くなる。最近はオンライン教材の作成等の負担も増えているので、コンビニバイト並みになっているかもしれない』、「1カ月で6時間教えて、「7500円」とは最低賃金に近い。
・『なり手はいくらでもいる 首都圏大学非常勤講師組合の機関誌『控室』(1997年1月19日)に、「バカにするな!-1コマの意味を理解していて本当に良かった-」という記事が出ている。その筆者は、とある児童文学者の方だ。1コマ2万7000円の講義を3コマ頼まれたのだが、提示された額を1回90分の講義の額と勘違いし、「2.7万円×3コマ×4回=32.4万円」の月収を想定していたが、振り込まれたのはその4分の1。通帳を見て飛び上がり、事務に電話をして1コマの意味を教えてもらったという。 その後、母校から「1コマ2万円で講義しないか」と話が来るが、よほど頭に来たのだろう。「バカにするな!」という強い文言ではねつけている。民間人を非常勤に呼ぶ大学が増えているが、トラブルもさぞ多く起きているかと思う。 こういう待遇でも、大学の非常勤講師のなり手はいくらでもいる。1990年代以降の大学院重点化政策により、行き場のないオーバードクター(博士学位を取得して定職に就いていない人)があふれかえっているためだ。声を掛ければ、給与も聞かずに飛びついてくる。<図1>のグラフは大学教員数の変化だが、増分が大きいのは本務先のない兼務教員(非常勤講師)だ。この多くが、定職のないオーバードクターと考えていい。 上智大学でのトラブルで、仮に大学が非を認めて支払いに応じた場合、どういう事態になるか(今件では、中央労働基準監督署が上智大学に対して賃金支払いの是正勧告を行なっている)。同じ訴えを起こす講師が続出し、全国の大学は大変なことになるだろう。非常勤講師への依存度が高い大学は、経営が一気に火の車になる。 防衛の策として、契約書に「講義、教材作成、学生への個別対応、試験採点、その他付随業務全部を含めて1カ月3万円」と書くのだろうが、これなどは民法が禁じる「公序良俗に反する契約」に当たると考えていいのではないか。 社会をよくする「知」を創造する大学で、このようなことがまかり通って良いはずがない。今回の騒動を機に、非常勤講師の待遇を真剣に見直すべきだ』、「定職のないオーバードクター」の存在が「待遇」改善のブレーキ役になっているようだ。「上智大学で、非常勤講師への賃金不払い」問題に関しては、大学側の主張に理があると思っていたが、「中央労働基準監督署が上智大学に対して賃金支払いの是正勧告を行なっている」、ということであれば、「同じ訴えを起こす講師が続出し、全国の大学は大変なことになるだろう」。今後の成り行きが注目される。
第三に、8月29日付けPRESIDENT Onlineが転載したAERAdot「東工大、東京医科歯科大の統合協議で、「第二東大」目指した盟友・一橋、東京外大はどこへ向かうか キーワードは「大学ファンド」「国際卓越研究大学」」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/60963
・『利害が一致した。思惑が合致した――。東京工業大と東京医科歯科大が、統合へ向けた協議を始めることがわかった。なぜ、2校が統合するのか。キーワードとなるのは、「大学ファンド」「国際卓越研究大学」である。 政府は大学の国際競争力をつけるため、10兆円規模の大学ファンド(基金)を創設し、その運用益をもとに数大学に年数百億円ずつ配る(2024年度からの予定)。その対象となる「国際卓越研究大学」を公募する。 東京工業大、東京医科歯科大が統合すれば、研究力が強化され、「大学ファンド」による資金獲得が得られやすい。2大学の統合協議は、資金獲得という利害、思惑がピタリと合ったから、と見ていい』、「資金獲得という利害、思惑がピタリと合った」、これは「統合」には強力なインセンティブになる。
・『一橋、東京外大、東京芸大を加えた「5大学連合」構想 ところで、東京工業大、東京医科歯科大の統合話は、今回が初めてではない。 2000年代前半、行政改革が進むなか、中央省庁の統合再編が行われた。文部省と科学技術庁が統合して文部科学省が誕生したのも、このときだ。そして、行政改革の流れは国立大学にも及び、大学の統合話が持ち上がってくる。 その最たる動きが、前述の東京工業大、東京医科歯科大に一橋大、東京外国語大、東京芸術大を加えた「5大学連合」構想だった。人文社会、自然科学がほぼそろっており、東京大に匹敵する規模となる。 2000年、こんな記事が出ている。とても興味深いので長くなるが引用する。 <一橋大の石弘光学長、東京外国語大の中嶋嶺雄学長、東京工業大の内藤喜之学長の三人は昨年四月、ドイツへ一緒に出張した。本場のビールを飲み、すっかり意気投合した。帰国後、再会して、「われわれは一緒がいいですね」と胸の内を確かめ合った>(「AERA」2000年3月6日号)このときの「一緒」案は、単位互換などの教育連携の域を超えた「統合」を意識したようにも思える。3大学が「一緒」を求めたのは、これまで東京大、京都大など旧制の帝国大学を起源とする大学に、煮え湯を飲まされた思いを抱いていたからだ。予算規模で東京外国語大は東京大の30分の1程度、東京工業大全体は東京大工学部の半分、といわれていたからだ』、「3大学」の「一緒」構想を思い出した。3人の学長が「ドイツへ一緒に出張」したのが契機とは初めて知った。
・『「鬼に金棒だ」「艶が出ていいですね」 そんな状況を打開すべく、「一緒」話はさらに盛り上がっていく。記事の引用を続けよう。 <六月、ビールを酌み交わしながら、内藤氏が切り出した。「もう一、二校、増やしませんか」異論はない。早速、別の二人の学長に声をかけた。 一人は東京医科歯科大の鈴木章夫学長だ。石氏も、「医学の知識をもって弁護士になるなら、鬼に金棒だ」と歓迎する。鈴木氏も喜ぶ。「これからの大病院、大学病院の院長に経営の知識は欠かせない」 もう一人、東京芸術大の澄川喜一学長を迎え入れた。 「文化の香りがします」「艶が出ていいですね」と学長たちは、はしゃいだ」>(「AERA」2000年3月6日号) このころ、メディアで5大学連合=第二東大の誕生か、と報じられている。東京大にはない芸術学部という「艶」があり、第二東大は本家の東京大をしのぐのでは、と5大学関係者のあいだでは期待する向きもあった。 しかし、この構想は頓挫してしまう。「艶」の東京芸術大が「オンリーワンになる学生をつくる」という理由で、5大学連合から抜けてしまう。その後、4大学連合構想は、「一緒」=統合という形では着地できなかった。学内で支持を得られない、新しい学長に「一緒」案が引き継がれなかった、という背景があったとされる。 なお、4大学連合構想に入らなかった、お茶の水女子大、東京農工大、電気通信大、東京学芸大の都内国立大学関係者は異口同音に、「取り残された感じで、心中穏やかではなかった」と振り返っている。 4大学連合は統合に至らなかったが、このうち東京医科歯科大、東京工業大、一橋大、東京外国語大の4大学で教育連携が行われるようになった。総合生命科学、海外協力、生活空間研究などのコースが設置され、4大学のどの学生も他の3大学の授業を受け単位を取得できる。それは、今日まで続いている。 それゆえ、今回の東京医科歯科大、東京工業大の統合協議について、一橋大のある教員は落胆していた』、「5大学連合」から「東京芸術大が「オンリーワンになる学生をつくる」という理由で」抜けたのはやむを得ないだろう。「4大学連合」では「教育連携」が行われているようだ。
・『「仲間はずれにされたのか」「つらくなりそう」 「うちは文系学部中心なので、自然科学系分野で『国際卓越研究大学』になれない。だから、仲間はずれにされたのか。ぬけがけにも思えた」東京外国語大のある教員はこう話す。 「うちは一橋大との統合かな。でも、文系同士なのでお金を稼げない。大学ファンドはむずかしそう。これから、つらくなりそうです。東京農工大、電気通信大などを巻き込んで大学統合するしかないのでは」 東京外国語大、東京農工大、電気通信大、一橋大は西東京(多摩地域)にある。東京学芸大も近い距離なので、いわば西東京5大学統合への期待であろう。 繰り返すが、東京工業大、東京医科歯科大の統合構想は資金獲得という側面がかなり強い。これは地方都市の大学に影響を与えるかもしれない』、「東京外国語大、東京農工大、電気通信大、一橋大は西東京(多摩地域)にある。東京学芸大も近い距離なので、いわば西東京5大学統合」、も地域制を活かした「統合」候補になり得るだろう。
・『過去に議論された地方大学の統合 地方大学の統合についても、過去に議論された前例がある。 前述の2000年代前半の行政改革において「第二東大」構想が起こったとき、文科省内では大学の具体的な名前をあげての統合シミュレーションが語られていた。 たとえば次のような統合である(大学名はいずれも当時、のちに高知医科大が統合により高知大医学部となったケースなどがある)。 ◆北東北3大学 弘前大、岩手大、秋田大 ◆北陸地区国立大学連合 富山大、富山医科薬科大、高岡短期大、金沢大、北陸先端科学技術大学院大、福井大、福井医科大 ◆四国国立大学協議会 徳島大、鳴門教育大、香川大、香川医科大、愛媛大、高知大、高知医科大 (文科省ウェブサイトでいまでも閲覧可) 大学統合に関する議論は以前からあった。戦後、旧制の大学、高等学校、専門学校などが統合再編し、新制大学(現在の大学)をつくった当初から議論にのぼっている。 かなり古い話を紹介しよう。75年前である。 北陸地方では、1947年、石川県内に「北陸総合大学設立準備委員会」をつくり、石川、富山、福井の3県で北陸総合大学構想が浮上した。 四国においては、四国4県で「四国総合大学」構想があった。大学史にこう記されている。) <香川県はこの案を四国における地理的条件から至当であると賛意を示し、徳島県も徳島医学専門学校の大学昇格運動と連動して総合大学設置を協力すると表明して、4県一体となって文部当局に要望することを決議された>(『香川大学五十年史』) このとき、現在の高知大(旧制高知高等学校)と愛媛大(旧制松山高等学校)のあいだで文学部と理学部をどこに置くかで、もめにもめた。 同じころ、九州でも熊本、大分、宮崎、鹿児島4県の「南九州総合大学」案が持ち上がっている。 <南九州に総合大学をつくる点では各県とも意見が一致した訳だが、それが決ってから中心をどこにするかは今後の問題であり、熊本を中心にするためには県民が余程の熱意を示さねばなるまい>(『熊本大学三十年史』) このとき大学本部の所在地を熊本にするか、鹿児島にするかで対立している。 こうした統合話はどうなったか。北陸、四国、南九州いずれも県を超えたブロック、地域単位の総合大学は生まれなかった。国が国立大学を都道府県に1大学設置する政策を徹底させたからである。 だが、この原則は、2000年代前半の行政改革による統合再編案で破られようとしていた。 そして、現在の話、「大学ファンド」である。どの大学も運営資金はのどから手が出るほど欲しい。そのために歴史、伝統をかなぐり捨てるような動きが出てくる。とくに地方では生き残りをかけて、「大学ファンド」のため近隣の大学が結束し、統合する話が進むかもしれない。 大学が統合した際、たいてい主導権争いが起こる。学長はどこから出すのか、学部の振り分けをどうするか、本部機能をどこに置くのか、細かな学則をどこに合わせるのか。 東京医科歯科大、東京工業大の統合協議はどのように進むのか。1法人2大学で名称は変わらない、あるいは、1法人1大学として、「東京医科歯科工業大学」になるのか。 2大学は統合への協議が明らかになったあと、同じ文章を発表した。 <両法人の統合は今後100年において日本の科学技術と社会、さらには地球環境等の課題解決に向けて極めて有効な選択肢であると考えておりますが、その最終決定は今後の両法人における協議に委ねられており、現時点では何も決定したことはありません。今後、本法人内でもより多くの構成員の意見を聞きながら集中的に協議を進めて参ります>(両大学のウェブサイト) 一字一句変わらず、とてもお役所的なもの言いなのが、残念である。2大学の特徴が何も見えない。両大学が何をしたいのか、抱負というか、野望を見せてほしかった』、「北陸、四国、南九州いずれも県を超えたブロック、地域単位の総合大学は生まれなかった。国が国立大学を都道府県に1大学設置する政策を徹底させたからである」、「どの大学も運営資金はのどから手が出るほど欲しい。そのために歴史、伝統をかなぐり捨てるような動きが出てくる。とくに地方では生き残りをかけて、「大学ファンド」のため近隣の大学が結束し、統合する話が進むかもしれない」、「大学が統合した際、たいてい主導権争いが起こる。学長はどこから出すのか、学部の振り分けをどうするか、本部機能をどこに置くのか、細かな学則をどこに合わせるのか」、「東京医科歯科大、東京工業大の統合協議」の場合は、分野が違うので、「主導権争いが起こる」余地が少なく、やりやすそうだ。
タグ:「学長」には「酒井健夫氏」が6月3日付けで選任された。「林真理子氏」は7月1日付けで「理事長」に就任。酒井氏は2度目で、「田中氏が学校法人を私物化していた時代に“被っていた”」、のはやはり気になるところだ。手垢のついてない林理事長の活躍に期待したい ところだが、マンモス組織を束ねていくのはかなりの困難が予想される。 「資金獲得という利害、思惑がピタリと合った」、これは「統合」には強力なインセンティブになる。 日刊ゲンダイ「日大新理事長・林真理子氏内定も…「78歳」「元総長」の学長選出に落胆の声」 AERAdot「東工大、東京医科歯科大の統合協議で、「第二東大」目指した盟友・一橋、東京外大はどこへ向かうか キーワードは「大学ファンド」「国際卓越研究大学」」 「5大学連合」から「東京芸術大が「オンリーワンになる学生をつくる」という理由で」抜けたのはやむを得ないだろう。「4大学連合」では「教育連携」が行われているようだ。 PRESIDENT ONLINE 「定職のないオーバードクター」の存在が「待遇」改善のブレーキ役になっているようだ。「上智大学で、非常勤講師への賃金不払い」問題に関しては、大学側の主張に理があると思っていたが、「中央労働基準監督署が上智大学に対して賃金支払いの是正勧告を行なっている」、ということであれば、「同じ訴えを起こす講師が続出し、全国の大学は大変なことになるだろう」。今後の成り行きが注目される。 「1カ月で6時間教えて、「7500円」とは最低賃金に近い。 (その11)(日大新理事長・林真理子氏内定も…「78歳」「元総長」の学長選出に落胆の声、講義1回の対価が7500円 あまりにひどい大学非常勤講師の待遇 講義1回の対価が7500円 あまりにひどい大学非常勤講師の待遇、東工大 東京医科歯科大の統合協議で 「第二東大」目指した盟友・一橋 東京外大はどこへ向かうか キーワードは「大学ファンド」「国際卓越研究大学」) 大学 「東京外国語大、東京農工大、電気通信大、一橋大は西東京(多摩地域)にある。東京学芸大も近い距離なので、いわば西東京5大学統合」、も地域制を活かした「統合」候補になり得るだろう。 舞田敏彦氏による「講義1回の対価が7500円、あまりにひどい大学非常勤講師の待遇」 Newsweek日本版 「北陸、四国、南九州いずれも県を超えたブロック、地域単位の総合大学は生まれなかった。国が国立大学を都道府県に1大学設置する政策を徹底させたからである」、「どの大学も運営資金はのどから手が出るほど欲しい。そのために歴史、伝統をかなぐり捨てるような動きが出てくる。とくに地方では生き残りをかけて、「大学ファンド」のため近隣の大学が結束し、統合する話が進むかもしれない」、 「3大学」の「一緒」構想を思い出した。3人の学長が「ドイツへ一緒に出張」したのが契機とは初めて知った。 「大学が統合した際、たいてい主導権争いが起こる。学長はどこから出すのか、学部の振り分けをどうするか、本部機能をどこに置くのか、細かな学則をどこに合わせるのか」、「東京医科歯科大、東京工業大の統合協議」の場合は、分野が違うので、「主導権争いが起こる」余地が少なそうだ。
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