日韓関係(その15)(帰国に追い込まれた在韓日本公使“妄言"の真相 韓国メディアのどうしようもない反日体質と対韓外交の難しさ、韓国の次期大統領有力候補3人の対日政策と対北朝鮮政策、韓国に残され韓国経済に貢献した日本資産の行方 「日本から補償はもう必要ない」韓国研究者の大胆な研究成果) [外交]
日韓関係については、7月25日に取上げた。今日は、(その15)(帰国に追い込まれた在韓日本公使“妄言"の真相 韓国メディアのどうしようもない反日体質と対韓外交の難しさ、韓国の次期大統領有力候補3人の対日政策と対北朝鮮政策、韓国に残され韓国経済に貢献した日本資産の行方 「日本から補償はもう必要ない」韓国研究者の大胆な研究成果)である。
先ずは、8月15日付け東洋経済オンラインが掲載した産経新聞ソウル駐在客員論説委員・神田外語大学客員教授の黒田 勝弘氏による「帰国に追い込まれた在韓日本公使“妄言"の真相 韓国メディアのどうしようもない反日体質と対韓外交の難しさ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/448082
・『韓国メディアの“オフレコ破り”によって解任、帰国に追い込まれた在韓日本大使館・相馬弘尚公使の事件は、韓国メディアのどうしようもない反日体質と、日本の対韓外交の難しさを改めて印象付けている。 外交官の異動には通常、発令後1カ月近くの時間的余裕が保障されているが、相馬・前公使は発令からわずか10日後の2021年8月11日、追われるように帰国となった。 帰国に際し本人は「2次被害を避けるため」と電話口で苦笑していたが、内心、忸怩たるところがあっただろう。再起を期待したい』、新聞だけでは経緯がよく分からないので、興味深い。
・『「オフレコ」が通じない韓国メディア 相馬公使は韓国をよく知るいわゆる“コリア・スクール”のエリート外交官である。これまで韓国語を駆使して対韓情報発信に果敢に取り組んできた。歴代の日本大使館幹部のなかでは韓国メディアと最も積極的に接触してきた外交官だった。今回はそれが逆にアダとなった形で、韓国メディアの罠にはめられてしまった。今、この事件をめぐって在韓日本人たちの間の共通の懸念は「これで日本大使館の外交官たちが萎縮しなければいいが……」である。 事件のポイントは2点ある。1つは「妄言」として外交問題になり、解任の理由となった「文在寅大統領に対する性的な不適切発言」の問題であり、もう1つはその発言の場になった韓国の特定メデイアとのオフレコ(非公開)懇談の問題である。 事件としては前者が大騒ぎになり印象的だが、実態的には「これじゃ韓国は信頼できない!」という意味で、日韓関係的には後者のほうがより重要である。 問題になった韓国メディア「JTBC」との昼食懇談は2021年7月15日、メデイア側の要請で行われた。場所はメディア側が準備した大使館近くの洋食レストラン。相馬公使と面識のある先輩記者が、後輩の大統領官邸担当の女性記者を紹介する形だった。懇談の中身は主に日韓関係の現状についてで、時期的には文大統領の東京五輪開会式出席のための訪日問題が取りざたされているときだった。 伝えられている話を総合すると、相馬公使は懇談の際、韓国の対日外交を「独りよがり」「自己満足的」として不満を述べるにあたって「文大統領はマスターベーションをしている」という比喩を使った。この表現について相馬公使はその場で撤回し、JTBCの報道でも「(相馬公使は)“失礼した”と謝った」となっている。 報道は翌7月16日夕刻の番組だったが、その間、相馬公使には女性記者から問題の発言について確認の電話があった。そこで相馬公使は、懇談が非公開のオフレコだったことや、問題の表現についてはその場で撤回し謝ったことを指摘したうえで、かつ「韓国外交について語ったもので決して文大統領を名指ししたものではない」と釈明したという。 それにもかかわらずJTBCは報道に踏み切った。そのことについてJTBCは報道の際、まずキャスターが「公開懇談会の場ではなかったけれども、発言の内容が常識的ではないと判断し報道を決定しました」と説明した後、担当記者自ら「(相馬公使は)文大統領の歩みを評価する際、口に出せないような表現を使いました。駐在国の首脳に対する性的表現を相手国言論人の前で使うのは常識的でありません」と伝えている』、「“コリア・スクール”のエリート外交官・・・これまで韓国語を駆使して対韓情報発信に果敢に取り組んできた。歴代の日本大使館幹部のなかでは韓国メディアと最も積極的に接触してきた外交官」、完全に韓国側の罠にハメられたようだ。
・『信義、信頼、マナーなどお構いなし オフレコの約束を破り、しかもその場で撤回・謝罪をうけながらもそれを無視し、暴露(報道)してしまったのだ。明らかに背信行為である。 JTBCはケーブル系有力テレビチャンネルの1つで、先年、朴槿恵大統領追い落としの暴露報道で名を挙げた。筆者も日ごろ、対韓歴史認識などをめぐって「妄言製造機・極右クロダ記者また妄言!」などと顔写真付きで報道してもらっているが、先ごろ“戦犯企業ミツビシ”叩きの企画番組もやっており反日報道にはことのほか熱心である。 今回も「単独(特ダネ)」と銘打っており、メディアとしての約束、信義、信頼、マナーなどお構いなしに一発当て込んでの暴露報道だった。対外的背信行為である暴露報道にJTBC内部でも当然、議論があったに違いない。マナー違反がわかっている担当の女性記者は、報道することに消極的だっただろう。だから報道は翌日にずれ込んでいる。しかしこのところ視聴率低下に悩むJTBC上層部は、「これはいける!」というビジネス判断で暴露に踏み切った――。 以上は筆者の想像だが、同じメディア界の人間としてこれはほぼ間違いだろう。 韓国メディアは日本叩きの反日ネタには何でも飛びつく。オフレコ破りだろうが背信行為だろうが関係ない。JTBCの報道をきっかけに全メディアが「相馬妄言」に飛びつき、日本政府に謝罪要求、相馬を処罰しろ、大統領の日本訪問反対などといつもの反日キャンペーンとなった。 韓国外交省は日本大使を呼びつけて抗議し、次期大統領選に向けて忙しい政界も「日本公使妄言糾弾」に熱を上げるなど、外交的大問題に仕立て上げてしまった。その結果、五輪訪日計画をめぐる事前の対日交渉がうまくいかず、訪日が難しくなっていた文大統領にとっては、「訪日中止」の責任を日本のせいにするいい口実となった。伝えられている話を総合すると、相馬公使は懇談の際、韓国の対日外交を「独りよがり」「自己満足的」として不満を述べるにあたって「文大統領はマスターベーションをしている」という比喩を使った。この表現について相馬公使はその場で撤回し、JTBCの報道でも「(相馬公使は)“失礼した”と謝った」となっている。 報道は翌7月16日夕刻の番組だったが、その間、相馬公使には女性記者から問題の発言について確認の電話があった。そこで相馬公使は、懇談が非公開のオフレコだったことや、問題の表現についてはその場で撤回し謝ったことを指摘したうえで、かつ「韓国外交について語ったもので決して文大統領を名指ししたものではない」と釈明したという。 それにもかかわらずJTBCは報道に踏み切った。そのことについてJTBCは報道の際、まずキャスターが「公開懇談会の場ではなかったけれども、発言の内容が常識的ではないと判断し報道を決定しました」と説明した後、担当記者自ら「(相馬公使は)文大統領の歩みを評価する際、口に出せないような表現を使いました。駐在国の首脳に対する性的表現を相手国言論人の前で使うのは常識的でありません」と伝えている』、「JTBCはケーブル系有力テレビチャンネルの1つで、先年、朴槿恵大統領追い落としの暴露報道で名を挙げた・・・反日報道にはことのほか熱心」、こんなところのインタビューには殊の外、慎重に対応すべきだが、韓国のことは知り尽くしていると自信過剰になっていたところを突かれるとは、お粗末だ。
・『信義、信頼、マナーなどお構いなし オフレコの約束を破り、しかもその場で撤回・謝罪をうけながらもそれを無視し、暴露(報道)してしまったのだ。明らかに背信行為である。 JTBCはケーブル系有力テレビチャンネルの1つで、先年、朴槿恵大統領追い落としの暴露報道で名を挙げた。筆者も日ごろ、対韓歴史認識などをめぐって「妄言製造機・極右クロダ記者また妄言!」などと顔写真付きで報道してもらっているが、先ごろ“戦犯企業ミツビシ”叩きの企画番組もやっており反日報道にはことのほか熱心である。 今回も「単独(特ダネ)」と銘打っており、メディアとしての約束、信義、信頼、マナーなどお構いなしに一発当て込んでの暴露報道だった。対外的背信行為である暴露報道にJTBC内部でも当然、議論があったに違いない。マナー違反がわかっている担当の女性記者は、報道することに消極的だっただろう。だから報道は翌日にずれ込んでいる。しかしこのところ視聴率低下に悩むJTBC上層部は、「これはいける!」というビジネス判断で暴露に踏み切った――。 以上は筆者の想像だが、同じメディア界の人間としてこれはほぼ間違いだろう。 韓国メディアは日本叩きの反日ネタには何でも飛びつく。オフレコ破りだろうが背信行為だろうが関係ない。JTBCの報道をきっかけに全メディアが「相馬妄言」に飛びつき、日本政府に謝罪要求、相馬を処罰しろ、大統領の日本訪問反対などといつもの反日キャンペーンとなった。 韓国外交省は日本大使を呼びつけて抗議し、次期大統領選に向けて忙しい政界も「日本公使妄言糾弾」に熱を上げるなど、外交的大問題に仕立て上げてしまった。その結果、五輪訪日計画をめぐる事前の対日交渉がうまくいかず、訪日が難しくなっていた文大統領にとっては、「訪日中止」の責任を日本のせいにするいい口実となった。 今回、相馬公使にとっての不幸を一言でいえば「相手が悪かった」である。JTBCのメディアとしての傾向、体質についてはすでに触れた。 これとは別に、懇談の相手が女性記者だったことが事件につながったと思う。韓国社会は近年、男女差別や性的問題に極めて敏感である。公的人物や有名人のセクハラ問題が、非難や告発事件として毎日のようにメディアを賑わせている。メディアはそのことに鵜の目鷹の目、虎視眈々である』、「オフレコ破り」は日本でもよくある話で、それがあり得るとの前提で、取材を受けねばならない筈だ。
・『男女差別や性的問題に極めて敏感な韓国社会 したがって、今の韓国では「女性記者の前でマスターベーションという言葉」は、そこだけを抜き出していえば十分問題になりうる。今回、仮に担当の女性記者はその場でことさら羞恥心を感じず問題視しなかったとしても、帰社した後、周囲にそのことを語れば周りは間違いなく「セクハラじゃないか!」と騒ぐ。とくに相手が日本外交官だったということを聞けば。 日本大使館は報道があった後、7月17日の午前2時(!)過ぎに「相馬妄言事件」について大使名義の公式コメントを発表し「懇談中の発言とはいえ外交官として極めて不適切で大変遺憾であり、厳重に注意した」と頭を下げた。日本国内でも加藤勝信官房長官が記者会見で同様の見解を発表しているが、日本政府としては「コトが大統領がらみ」と「韓国世論への刺激」を考え、外交問題化を避けようと早期鎮火のため素早く頭を下げたというわけだ。 外交的にはこの措置はやむをえなかっただろう。これまでの経験からも、韓国社会はメディア主導(世論)で反日妄言キャンペーンが始まるとブレーキが利かなくなるからだ。しかも問題が「性的な不適切発言」とあっては勝ち目はない。 韓国における近年の日本外交官受難史をひもとけば、発言をめぐっては高野紀元大使(2003~2005年)の「竹島発言」問題が印象深い。日本の島根県が「竹島の日」を制定したことに反発、韓国で反日ムードが高まっていたときだった。 ソウル外信記者クラブの昼食会見で竹島問題を質問された際、「歴史的にも国際法的にも日本の固有の領土」という日本政府の公式見解を述べたところ、これが韓国メディアによって「日本大使がソウルのど真ん中で妄言!」と報じられ、日本大使館に連日、反日デモが押し掛ける騒ぎになった。日本の国を代表する日本大使が、公式の場で問われて日本の国家としての公式見解を語ることが「妄言」として排撃、非難される。 当時、この事件でおじけついた日本大使館は竹島問題での想定問答を作成し、できるだけ具体的には触れず「従来の立場に変わりはない」程度にとどめるようにしたと記憶する。ことなかれ主義で萎縮してしまったのだ。 今回、「マスターベーション」はまずかったとして、だからといって日本外交官が韓国相手の対外情報発信において萎縮したりいじけては元も子もない。「虎穴に入らずんば虎子を得ず」である。相馬公使は日韓情報戦争で韓国メディアのテロに遭い、"戦死"したようなものである。駐韓日本外交官たちは、途中下車を余儀なくされた相馬公使の“弔い合戦”の気概が求められる』、「女性記者の前でマスターベーションという言葉」は韓国でなく、日本でも問題になる。問題があるマスコミを前に、軽率だった。筆者は「相馬公使」を必死にかばっている。確かに同情できる点もあるとはいえ、「韓国外交省は日本大使を呼びつけて抗議し・・・外交的大問題に仕立て上げてしまった」、深刻な外交問題を引き起こしてしまった以上、「相馬公使」の責任も重大で、更迭は当然だと思う。
次に、9月10日付けNewsweek日本版が掲載したニッセイ基礎研究所 准主任研究員の金 明中氏による「韓国の次期大統領有力候補3人の対日政策と対北朝鮮政策」を紹介しよう。
・『<反日・親北の李在明氏、知日・親北の李洛淵氏、対日協力と対北強硬姿勢の尹錫悦氏> 来年3月に行われる韓国大統領選をめぐり、進歩(革新)系与党「共に民主党」と保守系最大野党「国民の力」が候補者を絞り出す予備選挙を始める等、11月上旬の候補選出に向けた争いが本格的に始まった。与野党の候補者の中でも最も注目されているのが与党「共に民主党」の李洛淵(イ・ナギョン、以下、李洛淵氏)前代表と、同じ与党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン、以下、李在明氏)京畿道知事、そして、野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソクヨル、以下、尹錫悦氏)前検察総長の3人である。 大統領選挙の雰囲気が熱くなると、特に対日政策と対北朝鮮政策が注目される。その理由は対日政策と対北朝鮮政策が選挙結果を大きく左右する要因になるからである。 例えば、朴正熙政権(大統領任期:1963年12月17日 - 1979年10月26日)、全斗煥政権(同 1980年8月27日 - 1988年2月24日)、盧泰愚政権(1988年2月25日 - 1993年2月25日)時代には北朝鮮に対する反共主義が「万能薬」のように使われた』、「対北朝鮮政策」が注目されるのは当然だが、「対日政策」も注目されるのは困ったことだ。
・『大統領選の行方を左右 しかしながら、金泳三(同1993年2月25日 - 1998年2月25日)政権時代の1995年10月の村山富市総理発言(「日韓合併条約は当時の国際関係等歴史的観点から法的に有効に締結したものだと認識している」)や江藤隆美総務庁長官発言(「日本は植民地時代に韓国に良いこともやった」)、1996年2月の池田行彦外務大臣の竹島(韓国名・独島)領有権主張(韓国政府が発表した竹島での接岸施設建設計画発表に対し「竹島は日本固有の領土」であると抗議、建設中止を求めた)以降、韓国国内で反日感情が高まると、金泳三政権は世論を意識して反日姿勢を強化する等、日韓関係は政権の維持や獲得において重要な手段として使われることになった。 さらに、初めて国民の選挙により政権交代が実現された金大中政権(同 1998年2月25日 - 2003年2月25日)以降は、北朝鮮に対する反共主義は弱まり、日本に対する反日主義が選挙により影響を及ぼすことになった。金大中政権、盧武鉉政権(同 2003年2月25日 - 2008年2月25日)が「太陽政策」など親北路線を強化したからだ。但し、北朝鮮に対する反共主義は過去に比べて影響力は弱まったものの、南北が分断されており、徴兵制度が残っている韓国においては相変わらず重要な選挙手段の一つとして使われている。 では、上述した3人の大統領候補者の対日・対北朝鮮政策はどうだろうか。まず、与党・共に民主党の李在明氏から見てみよう。人口約1300万人の京畿道知事である李在明氏は、マスコミにより過去のスキャンダルや失言が報じられている中でも、与党の次期大統領選挙候補レースで不動のトップを維持している。9月4日には韓国の中部、大田・忠南で与党「共に民主党」の候補を決める予備選が始まり、李在明氏は得票率54.8%で勝利し、順調な滑り出しを見せた。2位の李洛淵氏(27.4%)を大きく上回る数値だ。ちなみに、「共に民主党」は9月4日から10月10日まで全国11か所で順次、党員と、事前登録した国民による投票を行い、最終候補者を決定する』、「金大中政権・・・以降は、北朝鮮に対する反共主義は弱まり、日本に対する反日主義が選挙により影響を及ぼすことになった」、ますます困った成り行きだ。
・『「問題は日本国民ではなく保守右翼」 李在明氏の対日政策は、過去に対日強硬派とも言われるほど強い発言が目立っており、今後もこの姿勢はある程度維持されると考えられる。彼は2018年3月1日の3.1節行事で「侵略国家がその責任で分断・占領されるのが歴史の法則であるが、代わりに朝鮮半島が分割・占領された」と述べながら分断の悲しさを強調した。そして、今年の7月2日に行われたオンライン記者会見では「私を反日的だと評価する人がいるが、私は日本を嫌ったり、日本国民に対して反感は持っていない。(中略)問題は日本の保守右翼政治集団である。(中略)日韓関係は同伴者的関係で、お互いに認めて行くことが正しい。その過程が屈辱的になってはならない。(中略)容赦は被害者がするものである。加害者がするのは容赦ではない。問題をすべて明らかにし、必要なものはお互いに受け入れて認めるべきである。そうすることで新しい未来、合理的関係が開かれると思う」と主張した。 対北朝鮮政策は、基本的に文政権の親北政策を維持しながら、場合によっては文政権とは差別化した政策を展開する可能性がある。上述の7月2日の記者関係では、今後の南北関係に対する質問に対して「侵略国家である日本が分断されなければならないのに、日本に侵略された被害国家である我々がなぜ分断されなければならないのか」と南北に分かれている現実を嘆きながら、「米中葛藤が朝鮮半島に及ぼす影響はとても大きいが、どちらかに巻き込まれず自主的立場から南北関係を解決すべきであり、そこから危機を乗り越えるのみならず、新しい機会を作ることができると思う」と答えるなど南北関係改善に期待感を表明した。 一方、8月22日に発表した「大転換時代に統一外交構想」では韓国と北朝鮮の絶対多数は朝鮮戦争以前の単一国家を経験していない世代であることを強調しながら、「今後は単一民族に基づいた必然的統一論理では国民の同意を得ることができない。(中略)統一外交政策も理念と体制を乗り越えて韓国と北朝鮮両方の成長と発展に役に立つ実用的方向への転換が必要だ」と強調した。一方、北朝鮮が間違った行動をした場合には明確に韓国政府の立場を伝える。そして北朝鮮の呼応がない状態で南北協力事業を一方的に進めないと主張する等、文政権とは差別化した対北朝鮮政策を実施する可能性を示唆した。 次は、与党「共に民主党」の李洛淵氏の対日政策と対北朝鮮政策を見てみよう。李洛淵氏の対日政策は、李在明氏より、そして現在の文政権より親日になる可能性が高い。李洛淵氏は、東亜日報(韓国の大手紙)の東京特派員を務めた経験もあり、韓国の政治圏内では「最高の知日派」として知られている。しかし支持率においてはライバルとなる李在明氏に抜かれている』、「最高の知日派」の「李洛淵氏」が「支持率においてはライバルとなる李在明氏に抜かれている」のは残念だ。
・『竹島の削除を要求 支持率を意識したのか、東京オリンピックの参加をめぐって世論が分かれていた今年の5月には自分のフェイスブックに、東京オリンピック・パラリンピックの公式ホームページに掲載されている日本の地図に、竹島(韓国名・独島)が表示されていることについて、「直ちに削除することを要求する」と書いた。また、東京オリンピック・パラリンピックのボイコットを含めて可能なすべての手段を使い、断固対応すると主張した。知日で親日派と言われている彼がここまで極端的な行動をしたことに対して、専門家らは日本に対する強硬な姿勢で支持基盤を拡大した李在明氏や文大統領を意識した可能性が高いと解釈している。 対北朝鮮政策について李洛淵氏は、文政権の政策を継承する立場を明らかにした。2020年10月21日に外国のマスコミ向けに開かれた記者会見で、「現政権の対北朝鮮政策について、部分的に補完することはあり得るが、大枠では継承することが正しいと信じる」と述べた。 最後に、尹錫悦氏は対日政策と対北朝鮮政策についてまだ明確に言及していないが、日本に対しては「対日協力路線」を、そして北朝鮮に対しては文政権の対北朝鮮政策を大きく修正した「強硬路線」を取る可能性が高い。尹錫悦氏は今年の8月に政策ブレーンとなる政策諮問団42人を公開しており、42人には昨年末まで文政権で北朝鮮の核問題を総括した李度勲(イ・ドフン)前外交部朝鮮半島平和交渉本部長らが含まれている。対日政策と対北朝鮮政策共に文政権の失敗を強調しながら、次々と具体的な代替案を発表すると予想される。) 最近、野党「国民の力」の洪準杓(ホン・ジュンピョ)議員の支持率上昇が目立っているが、大きな変数がない限り、上述の3人のうち、一人が韓国の第20代大統領になる可能性が高いと考えられる。今後3人がどのような対日政策と対北朝鮮政策を発表するのか今後の3人の動きに注目したい。 (■韓国第20代大統領有力候補3人の対日政策と対北朝鮮政策等」の表はリンク先参照)』、「尹錫悦氏は・・・日本に対しては「対日協力路線」を、そして北朝鮮に対しては文政権の対北朝鮮政策を大きく修正した「強硬路線」を取る可能性が高い」、「今後の3人の動きに注目したい」、さてどうなるのだろう。
第三に、10月15日付け東洋経済オンラインが掲載した産経新聞ソウル駐在客員論説委員・神田外語大学客員教授の黒田 勝弘氏による「韓国に残され韓国経済に貢献した日本資産の行方 「日本から補償はもう必要ない」韓国研究者の大胆な研究成果」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/461861
・『慰安婦や徴用工問題など、日韓関係をこじらせる問題は韓国でどのように研究されているのか。韓国では史実よりも感情的に連呼されている。では、韓国で日本の植民地時代とその後の事実を究明する研究はないのか。韓国在住40年、日本を代表する朝鮮半島ジャーナリストが発掘し、日本で翻訳出版された『帰属財産研究―韓国に埋もれた「日本資産」の真実』(李大根著、金光英実訳・黒田勝弘監訳、文藝春秋)から、そのポイントと現実的意義を紹介する。 最悪といわれる日韓関係がここまで悪化しているのは、慰安婦問題や徴用工問題など歴史にかかわる韓国側の執拗な要求、対日非難が背景にある。日本側は過去についてはすでに1965年の国交正常化の際「清算され解決済み」と主張しているのに対し、韓国側は「いや個人補償の権利はある」といって韓国内の日本企業の資産を差し押さえし、売却を強行しようとしている』、「韓国側の「いや個人補償の権利はある」」との主張は、本当に腹が立つ。
・『日本が朝鮮半島に残した資産は数千億ドル 実は歴史的に日本は敗戦後、朝鮮半島からの撤収に際して膨大な資産を彼の地に残しているのだ。これによって韓国経済は発展した。その実態を多くの資料を駆使し、実証的に分析・研究した本が、韓国で2015年に出版された李大根氏の著書『帰属財産研究』だ。 本書は、戦前の朝鮮半島における日本資産の形成過程と戦後のその行方を追求したものだが、われわれには「戦後の行方」のほうが興味深い。1945年の終戦当時、朝鮮半島には約100万人の日本人がおり、うち7割が民間人だった。すべての日本人が着の身着のまま、両手に下げ背負える荷物とわずかな現金だけを持って強制退去させられた。 財産は公私を問わず、企業・個人財産も含めすべて没収された。接収された日本人企業は約2400社。日本資産の総額は当時の金額で52億ドル、約700億円相当といわれる。現在の価値でいえば数千億ドルになるとの非公式試算もある。これらの日本資産は進駐米軍経由ですべて韓国に譲渡され、解放・独立後の韓国経済を支えた。 ところで、韓国との過去補償問題の背景にはいわゆる請求権問題がある。日本が撤収した後、アメリカ軍政を経て韓国は独立した。1950年代に入り国交正常化交渉が始まり、相手側に残した資産に対する「請求権」が問題になった。韓国側は日本の支配による人的・物的被害を日本に請求し、日本側は逆に韓国に残した資産を根拠に「むしろ日本側がもらうべきだ」などと主張して大もめした。 最後は日本側が経済協力資金5億ドルを提供し、請求権つまり補償問題は「完全かつ最終的に解決された」とされ、国交正常化が実現した。韓国内では「植民地支配の補償としては少なすぎる」と反発が強かったが、国交正常化と経済開発を急ぎたい当時の朴正熙政権は戒厳令などによって反対論を抑え、交渉妥結を決断したという経緯がある。 5億ドルは、正確に言えば相互の請求権による相殺金額では必ずしもない。請求権(補償)を言い出すと交渉がまとまらないため、お互い請求権を放棄するような形で「経済協力資金」として政治的・外交的に処理されたのだ。これで韓国側は補償問題の「完全かつ最終的な解決」に同意したが、その裏には膨大な日本資産が韓国に残されていたという事実があるのだ。その後、韓国政府はすでに2回、政府の責任で個人補償も実施している。したがって慰安婦問題や徴用工問題で個人補償が必要なら韓国政府が対応すれば済む話だが、そこを改めて日本を引き込むという外交問題にしているため、問題がこじれている』、「韓国政府はすでに2回、政府の責任で個人補償も実施」、「徴用工」問題も「韓国政府」の責任でやらないのは整合的でない。
・『「敵の財産」を生かし経済成長を遂げた韓国 朝鮮半島に残された日本資産は、まず戦勝国のアメリカ軍によって接収された。「帰属財産」というのはアメリカ軍が名付けた英語の「VESTEDPROPERTY」の訳である。歴史的にはこれが正式名称になる。 しかし韓国では「敵産」と称してきた。「敵の財産」という意味だ。対日戦勝国ではないにもかかわらず、戦勝国つまり連合国の一員になった気分でそう名付けたのだ。評価の分かれる言葉とも言えるが、そう表現することで日本資産を自分のものにする根拠にしたのである。 だから、日本資産は当初は「アメリカに帰属」し韓国のものではなかった。それが1948年、李承晩政権樹立で韓国政府が発足したのを機に韓国に移管、譲渡された。うち電気や鉄道、通信、金融機関など公的資産の多くは国公有化され、企業や商店など民間の資産の多くは民間に払い下げられた。 本書ではその経緯と実情が詳細に紹介されており、結果的にそうした「帰属財産」が韓国の経済発展の基礎になったというのだ。著者によると「歴史的事実を無視、軽視してきた韓国の既成の歴史認識に対する研究者としての疑問」が研究、執筆の動機だという。 現在の韓国企業の多くは「帰属財産」という名の日本資産を受け継ぐかたちで発展した。しかし表向き、韓国の経済界では日本人がよく皮肉る“日本隠し”が広範囲に行われているため「帰属財産」の痕跡を探ることは難しくなっている。時の経過でその事実を知る人も少ない。 一方で、例えば現在の韓国の財閥規模3位にある「SKグループ」はその痕跡がわかる珍しい企業だ。日本統治時代の日本の繊維会社「鮮京織物」を入手し、その名残である「鮮京(ソンキョン)」の頭文字を今も使っている。戦後は「鮮京合繊」として石油化学に手を広げ、やがて移動通信、半導体など先端系まで含む大企業グループになった。 また、学術書である本書にはこうした具体的な企業名が登場するわけでは必ずしもないが、少し調べるとわかるものもある。ビールや焼酎でお馴染みの大手飲料メーカー「ハイト眞露グループ」は自社の来歴として、日本統治時代の大日本麦酒(サッポロ・アサヒ)系の「朝鮮麦酒」を「帰属財産」として受け継いだと明記している。ライバルの「OBビール」もキリンがルーツである。 さらに、ソウル都心にある一流ホテル「朝鮮ホテル」は日本時代の総督府鉄道局経営の「朝鮮ホテル」がルーツで、当初はアメリカ軍が軍政司令部として接収。軍政終了で韓国側に譲渡され民間のホテルになったという経緯がある。また、同じ都心に位置するサムスン・グループの流通部門のシンボル「新世界百貨店」は日本時代の三越百貨店だ。ロッテ・ホテル向かいにあるソウル市庁舎別館は近年までアメリカ政府の文化センターだったが、元は三井物産京城支店でこれも「帰属財産」である。基幹産業の韓国電力はもちろん「帰属財産」が土台になっている。 紹介すればきりがない。とはいえ、「帰属財産」あるいは「敵産」を活用し、企業および経済をここまで発展させてきた韓国の努力は大いに評価されるべきだろう。日本人にとっては「もって瞑すべし」かもしれない。 ところで以上のようなことを現在、日韓の外交的懸案になっている徴用工補償問題に関連させればどうなるか。補償を要求され韓国で資産を差し押さえられている日本製鉄(旧・新日鉄)は、朝鮮半島にあった工場(多くは北朝鮮)などの資産を残している。しかも日韓国交正常化後、韓国で建設された浦項製鉄所(現在のPOSCO)には韓国政府が日本から受け取った経済協力資金(韓国的には請求権資金)が投入され、日本製鉄などが全面的に技術協力した。それなのに、ここに来て資産を差し押さえるというのだから、日本製鉄にとってはまったく腑に落ちない話だろう』、「現在の韓国企業の多くは「帰属財産」という名の日本資産を受け継ぐかたちで発展した。しかし表向き、韓国の経済界では日本人がよく皮肉る“日本隠し”が広範囲に行われているため「帰属財産」の痕跡を探ることは難しくなっている」、「日本資産の総額は当時の金額で52億ドル、約700億円相当といわれる。現在の価値でいえば数千億ドルになるとの非公式試算もある」、ここで例示されたものだけでも相当な額になる筈だ。「浦項製鉄所・・・・日本製鉄などが全面的に技術協力した。それなのに、ここに来て資産を差し押さえるというのだから、日本製鉄にとってはまったく腑に落ちない話だろう」、確かに踏んだり蹴ったりだ、
・『感情的に流される日本研究 「帰属財産」という名の日本資産について、戦後の日本は1952年の対日講和条約で国際的にその請求権を放棄したことになっている。したがって、日本では個人補償の要求の声はない。ところが韓国は1965年の日本との国交正常化条約で「完全かつ最終的に解決した」と約束したのに、「個人請求権は存在する」として改めて日本に補償要求をしているという構図になる。この理屈だと、韓国からの引き揚げ日本人も残してきた個人資産について個人補償を韓国に要求できるということになる。これは国際的約束を守るかどうかの違いである。 以上は李大根教授の著書に対する筆者(黒田)なりの読み方である。しかし経済史学者による学術書としての本書の核心は、日本の統治・支配が朝鮮半島にもたらした経済的効果を正当に評価していることであり、「侵略と収奪」一辺倒で教育されている韓国の公式歴史観に対する正面からの挑戦である。 その意味では、先に日本でもベストセラ―になった李栄薫編著『反日種族主義』(日本語版、文藝春秋刊)とも一脈通じるところがある。それどころか、著者は経歴的には李栄薫氏の先輩格にある。 ただ、こうした主張は「植民地近代化論」といわれ、「日本の歴史的罪」ばかりを主張する韓国の学術界やメディアに対して1980年代から「学問的良心」として奮闘を続けているが、いまだ大勢を変えるには至っていない。「帰属財産」をテーマにした今回の実証研]、究は、韓国に根強い観念的で一方的な反日歴史認識に改めて一石を投じるものだ』、「韓国」にも「日本の統治・支配が朝鮮半島にもたらした経済的効果を正当に評価していることであり、「侵略と収奪」一辺倒で教育されている韓国の公式歴史観に対する正面からの挑戦である」、こういう「学問的良心」として奮闘を続けている学者がいるとは嬉しいことだ。ただ、日本側から研究に援助などすると「韓国」内での立場を悪くしてしまうので、日本側としては静かに見守るしか出来ないのは、実に歯がゆい。
先ずは、8月15日付け東洋経済オンラインが掲載した産経新聞ソウル駐在客員論説委員・神田外語大学客員教授の黒田 勝弘氏による「帰国に追い込まれた在韓日本公使“妄言"の真相 韓国メディアのどうしようもない反日体質と対韓外交の難しさ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/448082
・『韓国メディアの“オフレコ破り”によって解任、帰国に追い込まれた在韓日本大使館・相馬弘尚公使の事件は、韓国メディアのどうしようもない反日体質と、日本の対韓外交の難しさを改めて印象付けている。 外交官の異動には通常、発令後1カ月近くの時間的余裕が保障されているが、相馬・前公使は発令からわずか10日後の2021年8月11日、追われるように帰国となった。 帰国に際し本人は「2次被害を避けるため」と電話口で苦笑していたが、内心、忸怩たるところがあっただろう。再起を期待したい』、新聞だけでは経緯がよく分からないので、興味深い。
・『「オフレコ」が通じない韓国メディア 相馬公使は韓国をよく知るいわゆる“コリア・スクール”のエリート外交官である。これまで韓国語を駆使して対韓情報発信に果敢に取り組んできた。歴代の日本大使館幹部のなかでは韓国メディアと最も積極的に接触してきた外交官だった。今回はそれが逆にアダとなった形で、韓国メディアの罠にはめられてしまった。今、この事件をめぐって在韓日本人たちの間の共通の懸念は「これで日本大使館の外交官たちが萎縮しなければいいが……」である。 事件のポイントは2点ある。1つは「妄言」として外交問題になり、解任の理由となった「文在寅大統領に対する性的な不適切発言」の問題であり、もう1つはその発言の場になった韓国の特定メデイアとのオフレコ(非公開)懇談の問題である。 事件としては前者が大騒ぎになり印象的だが、実態的には「これじゃ韓国は信頼できない!」という意味で、日韓関係的には後者のほうがより重要である。 問題になった韓国メディア「JTBC」との昼食懇談は2021年7月15日、メデイア側の要請で行われた。場所はメディア側が準備した大使館近くの洋食レストラン。相馬公使と面識のある先輩記者が、後輩の大統領官邸担当の女性記者を紹介する形だった。懇談の中身は主に日韓関係の現状についてで、時期的には文大統領の東京五輪開会式出席のための訪日問題が取りざたされているときだった。 伝えられている話を総合すると、相馬公使は懇談の際、韓国の対日外交を「独りよがり」「自己満足的」として不満を述べるにあたって「文大統領はマスターベーションをしている」という比喩を使った。この表現について相馬公使はその場で撤回し、JTBCの報道でも「(相馬公使は)“失礼した”と謝った」となっている。 報道は翌7月16日夕刻の番組だったが、その間、相馬公使には女性記者から問題の発言について確認の電話があった。そこで相馬公使は、懇談が非公開のオフレコだったことや、問題の表現についてはその場で撤回し謝ったことを指摘したうえで、かつ「韓国外交について語ったもので決して文大統領を名指ししたものではない」と釈明したという。 それにもかかわらずJTBCは報道に踏み切った。そのことについてJTBCは報道の際、まずキャスターが「公開懇談会の場ではなかったけれども、発言の内容が常識的ではないと判断し報道を決定しました」と説明した後、担当記者自ら「(相馬公使は)文大統領の歩みを評価する際、口に出せないような表現を使いました。駐在国の首脳に対する性的表現を相手国言論人の前で使うのは常識的でありません」と伝えている』、「“コリア・スクール”のエリート外交官・・・これまで韓国語を駆使して対韓情報発信に果敢に取り組んできた。歴代の日本大使館幹部のなかでは韓国メディアと最も積極的に接触してきた外交官」、完全に韓国側の罠にハメられたようだ。
・『信義、信頼、マナーなどお構いなし オフレコの約束を破り、しかもその場で撤回・謝罪をうけながらもそれを無視し、暴露(報道)してしまったのだ。明らかに背信行為である。 JTBCはケーブル系有力テレビチャンネルの1つで、先年、朴槿恵大統領追い落としの暴露報道で名を挙げた。筆者も日ごろ、対韓歴史認識などをめぐって「妄言製造機・極右クロダ記者また妄言!」などと顔写真付きで報道してもらっているが、先ごろ“戦犯企業ミツビシ”叩きの企画番組もやっており反日報道にはことのほか熱心である。 今回も「単独(特ダネ)」と銘打っており、メディアとしての約束、信義、信頼、マナーなどお構いなしに一発当て込んでの暴露報道だった。対外的背信行為である暴露報道にJTBC内部でも当然、議論があったに違いない。マナー違反がわかっている担当の女性記者は、報道することに消極的だっただろう。だから報道は翌日にずれ込んでいる。しかしこのところ視聴率低下に悩むJTBC上層部は、「これはいける!」というビジネス判断で暴露に踏み切った――。 以上は筆者の想像だが、同じメディア界の人間としてこれはほぼ間違いだろう。 韓国メディアは日本叩きの反日ネタには何でも飛びつく。オフレコ破りだろうが背信行為だろうが関係ない。JTBCの報道をきっかけに全メディアが「相馬妄言」に飛びつき、日本政府に謝罪要求、相馬を処罰しろ、大統領の日本訪問反対などといつもの反日キャンペーンとなった。 韓国外交省は日本大使を呼びつけて抗議し、次期大統領選に向けて忙しい政界も「日本公使妄言糾弾」に熱を上げるなど、外交的大問題に仕立て上げてしまった。その結果、五輪訪日計画をめぐる事前の対日交渉がうまくいかず、訪日が難しくなっていた文大統領にとっては、「訪日中止」の責任を日本のせいにするいい口実となった。伝えられている話を総合すると、相馬公使は懇談の際、韓国の対日外交を「独りよがり」「自己満足的」として不満を述べるにあたって「文大統領はマスターベーションをしている」という比喩を使った。この表現について相馬公使はその場で撤回し、JTBCの報道でも「(相馬公使は)“失礼した”と謝った」となっている。 報道は翌7月16日夕刻の番組だったが、その間、相馬公使には女性記者から問題の発言について確認の電話があった。そこで相馬公使は、懇談が非公開のオフレコだったことや、問題の表現についてはその場で撤回し謝ったことを指摘したうえで、かつ「韓国外交について語ったもので決して文大統領を名指ししたものではない」と釈明したという。 それにもかかわらずJTBCは報道に踏み切った。そのことについてJTBCは報道の際、まずキャスターが「公開懇談会の場ではなかったけれども、発言の内容が常識的ではないと判断し報道を決定しました」と説明した後、担当記者自ら「(相馬公使は)文大統領の歩みを評価する際、口に出せないような表現を使いました。駐在国の首脳に対する性的表現を相手国言論人の前で使うのは常識的でありません」と伝えている』、「JTBCはケーブル系有力テレビチャンネルの1つで、先年、朴槿恵大統領追い落としの暴露報道で名を挙げた・・・反日報道にはことのほか熱心」、こんなところのインタビューには殊の外、慎重に対応すべきだが、韓国のことは知り尽くしていると自信過剰になっていたところを突かれるとは、お粗末だ。
・『信義、信頼、マナーなどお構いなし オフレコの約束を破り、しかもその場で撤回・謝罪をうけながらもそれを無視し、暴露(報道)してしまったのだ。明らかに背信行為である。 JTBCはケーブル系有力テレビチャンネルの1つで、先年、朴槿恵大統領追い落としの暴露報道で名を挙げた。筆者も日ごろ、対韓歴史認識などをめぐって「妄言製造機・極右クロダ記者また妄言!」などと顔写真付きで報道してもらっているが、先ごろ“戦犯企業ミツビシ”叩きの企画番組もやっており反日報道にはことのほか熱心である。 今回も「単独(特ダネ)」と銘打っており、メディアとしての約束、信義、信頼、マナーなどお構いなしに一発当て込んでの暴露報道だった。対外的背信行為である暴露報道にJTBC内部でも当然、議論があったに違いない。マナー違反がわかっている担当の女性記者は、報道することに消極的だっただろう。だから報道は翌日にずれ込んでいる。しかしこのところ視聴率低下に悩むJTBC上層部は、「これはいける!」というビジネス判断で暴露に踏み切った――。 以上は筆者の想像だが、同じメディア界の人間としてこれはほぼ間違いだろう。 韓国メディアは日本叩きの反日ネタには何でも飛びつく。オフレコ破りだろうが背信行為だろうが関係ない。JTBCの報道をきっかけに全メディアが「相馬妄言」に飛びつき、日本政府に謝罪要求、相馬を処罰しろ、大統領の日本訪問反対などといつもの反日キャンペーンとなった。 韓国外交省は日本大使を呼びつけて抗議し、次期大統領選に向けて忙しい政界も「日本公使妄言糾弾」に熱を上げるなど、外交的大問題に仕立て上げてしまった。その結果、五輪訪日計画をめぐる事前の対日交渉がうまくいかず、訪日が難しくなっていた文大統領にとっては、「訪日中止」の責任を日本のせいにするいい口実となった。 今回、相馬公使にとっての不幸を一言でいえば「相手が悪かった」である。JTBCのメディアとしての傾向、体質についてはすでに触れた。 これとは別に、懇談の相手が女性記者だったことが事件につながったと思う。韓国社会は近年、男女差別や性的問題に極めて敏感である。公的人物や有名人のセクハラ問題が、非難や告発事件として毎日のようにメディアを賑わせている。メディアはそのことに鵜の目鷹の目、虎視眈々である』、「オフレコ破り」は日本でもよくある話で、それがあり得るとの前提で、取材を受けねばならない筈だ。
・『男女差別や性的問題に極めて敏感な韓国社会 したがって、今の韓国では「女性記者の前でマスターベーションという言葉」は、そこだけを抜き出していえば十分問題になりうる。今回、仮に担当の女性記者はその場でことさら羞恥心を感じず問題視しなかったとしても、帰社した後、周囲にそのことを語れば周りは間違いなく「セクハラじゃないか!」と騒ぐ。とくに相手が日本外交官だったということを聞けば。 日本大使館は報道があった後、7月17日の午前2時(!)過ぎに「相馬妄言事件」について大使名義の公式コメントを発表し「懇談中の発言とはいえ外交官として極めて不適切で大変遺憾であり、厳重に注意した」と頭を下げた。日本国内でも加藤勝信官房長官が記者会見で同様の見解を発表しているが、日本政府としては「コトが大統領がらみ」と「韓国世論への刺激」を考え、外交問題化を避けようと早期鎮火のため素早く頭を下げたというわけだ。 外交的にはこの措置はやむをえなかっただろう。これまでの経験からも、韓国社会はメディア主導(世論)で反日妄言キャンペーンが始まるとブレーキが利かなくなるからだ。しかも問題が「性的な不適切発言」とあっては勝ち目はない。 韓国における近年の日本外交官受難史をひもとけば、発言をめぐっては高野紀元大使(2003~2005年)の「竹島発言」問題が印象深い。日本の島根県が「竹島の日」を制定したことに反発、韓国で反日ムードが高まっていたときだった。 ソウル外信記者クラブの昼食会見で竹島問題を質問された際、「歴史的にも国際法的にも日本の固有の領土」という日本政府の公式見解を述べたところ、これが韓国メディアによって「日本大使がソウルのど真ん中で妄言!」と報じられ、日本大使館に連日、反日デモが押し掛ける騒ぎになった。日本の国を代表する日本大使が、公式の場で問われて日本の国家としての公式見解を語ることが「妄言」として排撃、非難される。 当時、この事件でおじけついた日本大使館は竹島問題での想定問答を作成し、できるだけ具体的には触れず「従来の立場に変わりはない」程度にとどめるようにしたと記憶する。ことなかれ主義で萎縮してしまったのだ。 今回、「マスターベーション」はまずかったとして、だからといって日本外交官が韓国相手の対外情報発信において萎縮したりいじけては元も子もない。「虎穴に入らずんば虎子を得ず」である。相馬公使は日韓情報戦争で韓国メディアのテロに遭い、"戦死"したようなものである。駐韓日本外交官たちは、途中下車を余儀なくされた相馬公使の“弔い合戦”の気概が求められる』、「女性記者の前でマスターベーションという言葉」は韓国でなく、日本でも問題になる。問題があるマスコミを前に、軽率だった。筆者は「相馬公使」を必死にかばっている。確かに同情できる点もあるとはいえ、「韓国外交省は日本大使を呼びつけて抗議し・・・外交的大問題に仕立て上げてしまった」、深刻な外交問題を引き起こしてしまった以上、「相馬公使」の責任も重大で、更迭は当然だと思う。
次に、9月10日付けNewsweek日本版が掲載したニッセイ基礎研究所 准主任研究員の金 明中氏による「韓国の次期大統領有力候補3人の対日政策と対北朝鮮政策」を紹介しよう。
・『<反日・親北の李在明氏、知日・親北の李洛淵氏、対日協力と対北強硬姿勢の尹錫悦氏> 来年3月に行われる韓国大統領選をめぐり、進歩(革新)系与党「共に民主党」と保守系最大野党「国民の力」が候補者を絞り出す予備選挙を始める等、11月上旬の候補選出に向けた争いが本格的に始まった。与野党の候補者の中でも最も注目されているのが与党「共に民主党」の李洛淵(イ・ナギョン、以下、李洛淵氏)前代表と、同じ与党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン、以下、李在明氏)京畿道知事、そして、野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソクヨル、以下、尹錫悦氏)前検察総長の3人である。 大統領選挙の雰囲気が熱くなると、特に対日政策と対北朝鮮政策が注目される。その理由は対日政策と対北朝鮮政策が選挙結果を大きく左右する要因になるからである。 例えば、朴正熙政権(大統領任期:1963年12月17日 - 1979年10月26日)、全斗煥政権(同 1980年8月27日 - 1988年2月24日)、盧泰愚政権(1988年2月25日 - 1993年2月25日)時代には北朝鮮に対する反共主義が「万能薬」のように使われた』、「対北朝鮮政策」が注目されるのは当然だが、「対日政策」も注目されるのは困ったことだ。
・『大統領選の行方を左右 しかしながら、金泳三(同1993年2月25日 - 1998年2月25日)政権時代の1995年10月の村山富市総理発言(「日韓合併条約は当時の国際関係等歴史的観点から法的に有効に締結したものだと認識している」)や江藤隆美総務庁長官発言(「日本は植民地時代に韓国に良いこともやった」)、1996年2月の池田行彦外務大臣の竹島(韓国名・独島)領有権主張(韓国政府が発表した竹島での接岸施設建設計画発表に対し「竹島は日本固有の領土」であると抗議、建設中止を求めた)以降、韓国国内で反日感情が高まると、金泳三政権は世論を意識して反日姿勢を強化する等、日韓関係は政権の維持や獲得において重要な手段として使われることになった。 さらに、初めて国民の選挙により政権交代が実現された金大中政権(同 1998年2月25日 - 2003年2月25日)以降は、北朝鮮に対する反共主義は弱まり、日本に対する反日主義が選挙により影響を及ぼすことになった。金大中政権、盧武鉉政権(同 2003年2月25日 - 2008年2月25日)が「太陽政策」など親北路線を強化したからだ。但し、北朝鮮に対する反共主義は過去に比べて影響力は弱まったものの、南北が分断されており、徴兵制度が残っている韓国においては相変わらず重要な選挙手段の一つとして使われている。 では、上述した3人の大統領候補者の対日・対北朝鮮政策はどうだろうか。まず、与党・共に民主党の李在明氏から見てみよう。人口約1300万人の京畿道知事である李在明氏は、マスコミにより過去のスキャンダルや失言が報じられている中でも、与党の次期大統領選挙候補レースで不動のトップを維持している。9月4日には韓国の中部、大田・忠南で与党「共に民主党」の候補を決める予備選が始まり、李在明氏は得票率54.8%で勝利し、順調な滑り出しを見せた。2位の李洛淵氏(27.4%)を大きく上回る数値だ。ちなみに、「共に民主党」は9月4日から10月10日まで全国11か所で順次、党員と、事前登録した国民による投票を行い、最終候補者を決定する』、「金大中政権・・・以降は、北朝鮮に対する反共主義は弱まり、日本に対する反日主義が選挙により影響を及ぼすことになった」、ますます困った成り行きだ。
・『「問題は日本国民ではなく保守右翼」 李在明氏の対日政策は、過去に対日強硬派とも言われるほど強い発言が目立っており、今後もこの姿勢はある程度維持されると考えられる。彼は2018年3月1日の3.1節行事で「侵略国家がその責任で分断・占領されるのが歴史の法則であるが、代わりに朝鮮半島が分割・占領された」と述べながら分断の悲しさを強調した。そして、今年の7月2日に行われたオンライン記者会見では「私を反日的だと評価する人がいるが、私は日本を嫌ったり、日本国民に対して反感は持っていない。(中略)問題は日本の保守右翼政治集団である。(中略)日韓関係は同伴者的関係で、お互いに認めて行くことが正しい。その過程が屈辱的になってはならない。(中略)容赦は被害者がするものである。加害者がするのは容赦ではない。問題をすべて明らかにし、必要なものはお互いに受け入れて認めるべきである。そうすることで新しい未来、合理的関係が開かれると思う」と主張した。 対北朝鮮政策は、基本的に文政権の親北政策を維持しながら、場合によっては文政権とは差別化した政策を展開する可能性がある。上述の7月2日の記者関係では、今後の南北関係に対する質問に対して「侵略国家である日本が分断されなければならないのに、日本に侵略された被害国家である我々がなぜ分断されなければならないのか」と南北に分かれている現実を嘆きながら、「米中葛藤が朝鮮半島に及ぼす影響はとても大きいが、どちらかに巻き込まれず自主的立場から南北関係を解決すべきであり、そこから危機を乗り越えるのみならず、新しい機会を作ることができると思う」と答えるなど南北関係改善に期待感を表明した。 一方、8月22日に発表した「大転換時代に統一外交構想」では韓国と北朝鮮の絶対多数は朝鮮戦争以前の単一国家を経験していない世代であることを強調しながら、「今後は単一民族に基づいた必然的統一論理では国民の同意を得ることができない。(中略)統一外交政策も理念と体制を乗り越えて韓国と北朝鮮両方の成長と発展に役に立つ実用的方向への転換が必要だ」と強調した。一方、北朝鮮が間違った行動をした場合には明確に韓国政府の立場を伝える。そして北朝鮮の呼応がない状態で南北協力事業を一方的に進めないと主張する等、文政権とは差別化した対北朝鮮政策を実施する可能性を示唆した。 次は、与党「共に民主党」の李洛淵氏の対日政策と対北朝鮮政策を見てみよう。李洛淵氏の対日政策は、李在明氏より、そして現在の文政権より親日になる可能性が高い。李洛淵氏は、東亜日報(韓国の大手紙)の東京特派員を務めた経験もあり、韓国の政治圏内では「最高の知日派」として知られている。しかし支持率においてはライバルとなる李在明氏に抜かれている』、「最高の知日派」の「李洛淵氏」が「支持率においてはライバルとなる李在明氏に抜かれている」のは残念だ。
・『竹島の削除を要求 支持率を意識したのか、東京オリンピックの参加をめぐって世論が分かれていた今年の5月には自分のフェイスブックに、東京オリンピック・パラリンピックの公式ホームページに掲載されている日本の地図に、竹島(韓国名・独島)が表示されていることについて、「直ちに削除することを要求する」と書いた。また、東京オリンピック・パラリンピックのボイコットを含めて可能なすべての手段を使い、断固対応すると主張した。知日で親日派と言われている彼がここまで極端的な行動をしたことに対して、専門家らは日本に対する強硬な姿勢で支持基盤を拡大した李在明氏や文大統領を意識した可能性が高いと解釈している。 対北朝鮮政策について李洛淵氏は、文政権の政策を継承する立場を明らかにした。2020年10月21日に外国のマスコミ向けに開かれた記者会見で、「現政権の対北朝鮮政策について、部分的に補完することはあり得るが、大枠では継承することが正しいと信じる」と述べた。 最後に、尹錫悦氏は対日政策と対北朝鮮政策についてまだ明確に言及していないが、日本に対しては「対日協力路線」を、そして北朝鮮に対しては文政権の対北朝鮮政策を大きく修正した「強硬路線」を取る可能性が高い。尹錫悦氏は今年の8月に政策ブレーンとなる政策諮問団42人を公開しており、42人には昨年末まで文政権で北朝鮮の核問題を総括した李度勲(イ・ドフン)前外交部朝鮮半島平和交渉本部長らが含まれている。対日政策と対北朝鮮政策共に文政権の失敗を強調しながら、次々と具体的な代替案を発表すると予想される。) 最近、野党「国民の力」の洪準杓(ホン・ジュンピョ)議員の支持率上昇が目立っているが、大きな変数がない限り、上述の3人のうち、一人が韓国の第20代大統領になる可能性が高いと考えられる。今後3人がどのような対日政策と対北朝鮮政策を発表するのか今後の3人の動きに注目したい。 (■韓国第20代大統領有力候補3人の対日政策と対北朝鮮政策等」の表はリンク先参照)』、「尹錫悦氏は・・・日本に対しては「対日協力路線」を、そして北朝鮮に対しては文政権の対北朝鮮政策を大きく修正した「強硬路線」を取る可能性が高い」、「今後の3人の動きに注目したい」、さてどうなるのだろう。
第三に、10月15日付け東洋経済オンラインが掲載した産経新聞ソウル駐在客員論説委員・神田外語大学客員教授の黒田 勝弘氏による「韓国に残され韓国経済に貢献した日本資産の行方 「日本から補償はもう必要ない」韓国研究者の大胆な研究成果」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/461861
・『慰安婦や徴用工問題など、日韓関係をこじらせる問題は韓国でどのように研究されているのか。韓国では史実よりも感情的に連呼されている。では、韓国で日本の植民地時代とその後の事実を究明する研究はないのか。韓国在住40年、日本を代表する朝鮮半島ジャーナリストが発掘し、日本で翻訳出版された『帰属財産研究―韓国に埋もれた「日本資産」の真実』(李大根著、金光英実訳・黒田勝弘監訳、文藝春秋)から、そのポイントと現実的意義を紹介する。 最悪といわれる日韓関係がここまで悪化しているのは、慰安婦問題や徴用工問題など歴史にかかわる韓国側の執拗な要求、対日非難が背景にある。日本側は過去についてはすでに1965年の国交正常化の際「清算され解決済み」と主張しているのに対し、韓国側は「いや個人補償の権利はある」といって韓国内の日本企業の資産を差し押さえし、売却を強行しようとしている』、「韓国側の「いや個人補償の権利はある」」との主張は、本当に腹が立つ。
・『日本が朝鮮半島に残した資産は数千億ドル 実は歴史的に日本は敗戦後、朝鮮半島からの撤収に際して膨大な資産を彼の地に残しているのだ。これによって韓国経済は発展した。その実態を多くの資料を駆使し、実証的に分析・研究した本が、韓国で2015年に出版された李大根氏の著書『帰属財産研究』だ。 本書は、戦前の朝鮮半島における日本資産の形成過程と戦後のその行方を追求したものだが、われわれには「戦後の行方」のほうが興味深い。1945年の終戦当時、朝鮮半島には約100万人の日本人がおり、うち7割が民間人だった。すべての日本人が着の身着のまま、両手に下げ背負える荷物とわずかな現金だけを持って強制退去させられた。 財産は公私を問わず、企業・個人財産も含めすべて没収された。接収された日本人企業は約2400社。日本資産の総額は当時の金額で52億ドル、約700億円相当といわれる。現在の価値でいえば数千億ドルになるとの非公式試算もある。これらの日本資産は進駐米軍経由ですべて韓国に譲渡され、解放・独立後の韓国経済を支えた。 ところで、韓国との過去補償問題の背景にはいわゆる請求権問題がある。日本が撤収した後、アメリカ軍政を経て韓国は独立した。1950年代に入り国交正常化交渉が始まり、相手側に残した資産に対する「請求権」が問題になった。韓国側は日本の支配による人的・物的被害を日本に請求し、日本側は逆に韓国に残した資産を根拠に「むしろ日本側がもらうべきだ」などと主張して大もめした。 最後は日本側が経済協力資金5億ドルを提供し、請求権つまり補償問題は「完全かつ最終的に解決された」とされ、国交正常化が実現した。韓国内では「植民地支配の補償としては少なすぎる」と反発が強かったが、国交正常化と経済開発を急ぎたい当時の朴正熙政権は戒厳令などによって反対論を抑え、交渉妥結を決断したという経緯がある。 5億ドルは、正確に言えば相互の請求権による相殺金額では必ずしもない。請求権(補償)を言い出すと交渉がまとまらないため、お互い請求権を放棄するような形で「経済協力資金」として政治的・外交的に処理されたのだ。これで韓国側は補償問題の「完全かつ最終的な解決」に同意したが、その裏には膨大な日本資産が韓国に残されていたという事実があるのだ。その後、韓国政府はすでに2回、政府の責任で個人補償も実施している。したがって慰安婦問題や徴用工問題で個人補償が必要なら韓国政府が対応すれば済む話だが、そこを改めて日本を引き込むという外交問題にしているため、問題がこじれている』、「韓国政府はすでに2回、政府の責任で個人補償も実施」、「徴用工」問題も「韓国政府」の責任でやらないのは整合的でない。
・『「敵の財産」を生かし経済成長を遂げた韓国 朝鮮半島に残された日本資産は、まず戦勝国のアメリカ軍によって接収された。「帰属財産」というのはアメリカ軍が名付けた英語の「VESTEDPROPERTY」の訳である。歴史的にはこれが正式名称になる。 しかし韓国では「敵産」と称してきた。「敵の財産」という意味だ。対日戦勝国ではないにもかかわらず、戦勝国つまり連合国の一員になった気分でそう名付けたのだ。評価の分かれる言葉とも言えるが、そう表現することで日本資産を自分のものにする根拠にしたのである。 だから、日本資産は当初は「アメリカに帰属」し韓国のものではなかった。それが1948年、李承晩政権樹立で韓国政府が発足したのを機に韓国に移管、譲渡された。うち電気や鉄道、通信、金融機関など公的資産の多くは国公有化され、企業や商店など民間の資産の多くは民間に払い下げられた。 本書ではその経緯と実情が詳細に紹介されており、結果的にそうした「帰属財産」が韓国の経済発展の基礎になったというのだ。著者によると「歴史的事実を無視、軽視してきた韓国の既成の歴史認識に対する研究者としての疑問」が研究、執筆の動機だという。 現在の韓国企業の多くは「帰属財産」という名の日本資産を受け継ぐかたちで発展した。しかし表向き、韓国の経済界では日本人がよく皮肉る“日本隠し”が広範囲に行われているため「帰属財産」の痕跡を探ることは難しくなっている。時の経過でその事実を知る人も少ない。 一方で、例えば現在の韓国の財閥規模3位にある「SKグループ」はその痕跡がわかる珍しい企業だ。日本統治時代の日本の繊維会社「鮮京織物」を入手し、その名残である「鮮京(ソンキョン)」の頭文字を今も使っている。戦後は「鮮京合繊」として石油化学に手を広げ、やがて移動通信、半導体など先端系まで含む大企業グループになった。 また、学術書である本書にはこうした具体的な企業名が登場するわけでは必ずしもないが、少し調べるとわかるものもある。ビールや焼酎でお馴染みの大手飲料メーカー「ハイト眞露グループ」は自社の来歴として、日本統治時代の大日本麦酒(サッポロ・アサヒ)系の「朝鮮麦酒」を「帰属財産」として受け継いだと明記している。ライバルの「OBビール」もキリンがルーツである。 さらに、ソウル都心にある一流ホテル「朝鮮ホテル」は日本時代の総督府鉄道局経営の「朝鮮ホテル」がルーツで、当初はアメリカ軍が軍政司令部として接収。軍政終了で韓国側に譲渡され民間のホテルになったという経緯がある。また、同じ都心に位置するサムスン・グループの流通部門のシンボル「新世界百貨店」は日本時代の三越百貨店だ。ロッテ・ホテル向かいにあるソウル市庁舎別館は近年までアメリカ政府の文化センターだったが、元は三井物産京城支店でこれも「帰属財産」である。基幹産業の韓国電力はもちろん「帰属財産」が土台になっている。 紹介すればきりがない。とはいえ、「帰属財産」あるいは「敵産」を活用し、企業および経済をここまで発展させてきた韓国の努力は大いに評価されるべきだろう。日本人にとっては「もって瞑すべし」かもしれない。 ところで以上のようなことを現在、日韓の外交的懸案になっている徴用工補償問題に関連させればどうなるか。補償を要求され韓国で資産を差し押さえられている日本製鉄(旧・新日鉄)は、朝鮮半島にあった工場(多くは北朝鮮)などの資産を残している。しかも日韓国交正常化後、韓国で建設された浦項製鉄所(現在のPOSCO)には韓国政府が日本から受け取った経済協力資金(韓国的には請求権資金)が投入され、日本製鉄などが全面的に技術協力した。それなのに、ここに来て資産を差し押さえるというのだから、日本製鉄にとってはまったく腑に落ちない話だろう』、「現在の韓国企業の多くは「帰属財産」という名の日本資産を受け継ぐかたちで発展した。しかし表向き、韓国の経済界では日本人がよく皮肉る“日本隠し”が広範囲に行われているため「帰属財産」の痕跡を探ることは難しくなっている」、「日本資産の総額は当時の金額で52億ドル、約700億円相当といわれる。現在の価値でいえば数千億ドルになるとの非公式試算もある」、ここで例示されたものだけでも相当な額になる筈だ。「浦項製鉄所・・・・日本製鉄などが全面的に技術協力した。それなのに、ここに来て資産を差し押さえるというのだから、日本製鉄にとってはまったく腑に落ちない話だろう」、確かに踏んだり蹴ったりだ、
・『感情的に流される日本研究 「帰属財産」という名の日本資産について、戦後の日本は1952年の対日講和条約で国際的にその請求権を放棄したことになっている。したがって、日本では個人補償の要求の声はない。ところが韓国は1965年の日本との国交正常化条約で「完全かつ最終的に解決した」と約束したのに、「個人請求権は存在する」として改めて日本に補償要求をしているという構図になる。この理屈だと、韓国からの引き揚げ日本人も残してきた個人資産について個人補償を韓国に要求できるということになる。これは国際的約束を守るかどうかの違いである。 以上は李大根教授の著書に対する筆者(黒田)なりの読み方である。しかし経済史学者による学術書としての本書の核心は、日本の統治・支配が朝鮮半島にもたらした経済的効果を正当に評価していることであり、「侵略と収奪」一辺倒で教育されている韓国の公式歴史観に対する正面からの挑戦である。 その意味では、先に日本でもベストセラ―になった李栄薫編著『反日種族主義』(日本語版、文藝春秋刊)とも一脈通じるところがある。それどころか、著者は経歴的には李栄薫氏の先輩格にある。 ただ、こうした主張は「植民地近代化論」といわれ、「日本の歴史的罪」ばかりを主張する韓国の学術界やメディアに対して1980年代から「学問的良心」として奮闘を続けているが、いまだ大勢を変えるには至っていない。「帰属財産」をテーマにした今回の実証研]、究は、韓国に根強い観念的で一方的な反日歴史認識に改めて一石を投じるものだ』、「韓国」にも「日本の統治・支配が朝鮮半島にもたらした経済的効果を正当に評価していることであり、「侵略と収奪」一辺倒で教育されている韓国の公式歴史観に対する正面からの挑戦である」、こういう「学問的良心」として奮闘を続けている学者がいるとは嬉しいことだ。ただ、日本側から研究に援助などすると「韓国」内での立場を悪くしてしまうので、日本側としては静かに見守るしか出来ないのは、実に歯がゆい。
タグ:「韓国に残され韓国経済に貢献した日本資産の行方 「日本から補償はもう必要ない」韓国研究者の大胆な研究成果」 「韓国の次期大統領有力候補3人の対日政策と対北朝鮮政策」 「対北朝鮮政策」が注目されるのは当然だが、「対日政策」も注目されるのは困ったことだ。 「最高の知日派」の「李洛淵氏」が「支持率においてはライバルとなる李在明氏に抜かれている」のは残念だ。 「金大中政権・・・以降は、北朝鮮に対する反共主義は弱まり、日本に対する反日主義が選挙により影響を及ぼすことになった」、ますます困った成り行きだ。 「尹錫悦氏は・・・日本に対しては「対日協力路線」を、そして北朝鮮に対しては文政権の対北朝鮮政策を大きく修正した「強硬路線」を取る可能性が高い」、「今後の3人の動きに注目したい」、さてどうなるのだろう。 金 明中 Newsweek日本版 「現在の韓国企業の多くは「帰属財産」という名の日本資産を受け継ぐかたちで発展した。しかし表向き、韓国の経済界では日本人がよく皮肉る“日本隠し”が広範囲に行われているため「帰属財産」の痕跡を探ることは難しくなっている」、「日本資産の総額は当時の金額で52億ドル、約700億円相当といわれる。現在の価値でいえば数千億ドルになるとの非公式試算もある」、ここで例示されたものだけでも相当な額になる筈だ。「浦項製鉄所・・・・日本製鉄などが全面的に技術協力した。それなのに、ここに来て資産を差し押さえるというのだから、日本 「韓国」にも「日本の統治・支配が朝鮮半島にもたらした経済的効果を正当に評価していることであり、「侵略と収奪」一辺倒で教育されている韓国の公式歴史観に対する正面からの挑戦である」、こういう「学問的良心」として奮闘を続けている学者がいるとは嬉しいことだ。ただ、日本側から研究に援助などすると「韓国」内での立場を悪くしてしまうので、日本側としては静かに見守るしか出来ないのは、実に歯がゆい。 「韓国側の「いや個人補償の権利はある」」との主張は、本当に腹が立つ。 「韓国政府はすでに2回、政府の責任で個人補償も実施」、「徴用工」問題も「韓国政府」の責任でやらないのは整合的でない。 日韓関係 (その15)(帰国に追い込まれた在韓日本公使“妄言"の真相 韓国メディアのどうしようもない反日体質と対韓外交の難しさ、韓国の次期大統領有力候補3人の対日政策と対北朝鮮政策、韓国に残され韓国経済に貢献した日本資産の行方 「日本から補償はもう必要ない」韓国研究者の大胆な研究成果) 東洋経済オンライン 黒田 勝弘 「帰国に追い込まれた在韓日本公使“妄言"の真相 韓国メディアのどうしようもない反日体質と対韓外交の難しさ」 新聞だけでは経緯がよく分からないので、興味深い。 「“コリア・スクール”のエリート外交官・・・これまで韓国語を駆使して対韓情報発信に果敢に取り組んできた。歴代の日本大使館幹部のなかでは韓国メディアと最も積極的に接触してきた外交官」、完全に韓国側の罠にハメられたようだ。 「JTBCはケーブル系有力テレビチャンネルの1つで、先年、朴槿恵大統領追い落としの暴露報道で名を挙げた・・・反日報道にはことのほか熱心」、こんなところのインタビューには殊の外、慎重に対応すべきだが、韓国のことは知り尽くしていると自信過剰になっていたところを突かれるとは、お粗末だ。 「オフレコ破り」は日本でもよくある話で、それがあり得るとの前提で、取材を受けねばならない筈だ。 「女性記者の前でマスターベーションという言葉」は韓国でなく、日本でも問題になる。問題があるマスコミを前に、軽率だった。筆者は「相馬公使」を必死にかばっている。確かに同情できる点もあるとはいえ、「韓国外交省は日本大使を呼びつけて抗議し・・・外交的大問題に仕立て上げてしまった」、深刻な外交問題を引き起こしてしまった以上、「相馬公使」の責任も重大で、更迭は当然だと思う。