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健康(その16)(「やせるとボケるし死にやすくなる」医師が中高年にダイエットを勧めない理由 最大で4.15倍もボケやすくなる、「365日外食」実験を行った女医が伝えたい 食べているのに栄養不足の盲点、世界的にも短い日本人の睡眠 生産性の低さの原因に) [生活]

健康については、7月28日に取上げた。今日は、(その16)(「やせるとボケるし死にやすくなる」医師が中高年にダイエットを勧めない理由 最大で4.15倍もボケやすくなる、「365日外食」実験を行った女医が伝えたい 食べているのに栄養不足の盲点、世界的にも短い日本人の睡眠 生産性の低さの原因に)である。

先ずは、7月30日付けPRESIDENT Onlineが掲載した医学博士の永田 利彦氏による「やせるとボケるし死にやすくなる」医師が中高年にダイエットを勧めない理由 最大で4.15倍もボケやすくなる」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/48275
・『ハーバード大学の研究によると、やせている人は太めの人よりも死亡率や認知症リスクが高い。精神科医の永田利彦さんは「中高年になったら生活習慣病に注意するのはもちろんだが、やせることにも注意するべきだ」という――。 ※本稿は、永田利彦『ダイエットをしたら太ります。』(光文社新書)の一部を再編集したものです』、メタボが目の敵にされているが、「やせることにも注意するべきだ」、どういうことなのだろう。
・『「体脂肪量が多い人ほど死亡率も高い」は予想通りだが…  やせている人の方が、太めの人よりも死亡率が高いことがわかっています。いったいなぜでしょうか。 本来、やせていれば体脂肪量も少ないはずで、体脂肪量と相関する生活習慣病などは、発症しにくいはずです。要するに、やせている人の方が太めの人よりも、心血管疾患などは発症しにくく、死亡率は低いはずなのです。 そこで、ハーバード大学(米国)公衆衛生学部のドンフン・リー博士たちは、体格予測式に基づいて除脂肪体重と体脂肪量を算出。死亡率との関連を見るコホート研究を実施しました。40歳以上の男性約3万8000人を、1987年から2012年までの間、平均21.4年追跡調査したのです。 除脂肪体重とは、全体重から脂肪組織の重量を引いた体重です。この中には筋肉、骨、内臓などが含まれますが、一般的には筋肉量と考えます。また、基本的には全体重が多いほど、除脂肪体重も体脂肪量も多くなります。 結果は、以下のようなものでした。まず、体脂肪量が多い人ほど死亡率も高く、体脂肪量が少ない方から5分の1の人に比べて、多い方から5分の1の人の死亡率は、1.35倍でした。また、体脂肪量が21キロまでは、死亡率はほぼ横ばいでしたが、体脂肪量がそれ以上になると、急速に上昇していました。体脂肪量が多いと死亡率も高いわけで、これは予想通りの結果と言っていいでしょう。 では、除脂肪体重と死亡率の関連は、どうだったでしょうか? 体脂肪量だけが死亡率と関連しているなら、除脂肪体重が少なくても多くても、死亡率は一定のはずです』、どうだったのだろう。
・『やせすぎると病気になりやすく、死亡率も上がる  ところが、除脂肪体重と死亡率の関連は、U字型だったのです。つまり、除脂肪体重が少なすぎても多すぎても、死亡率が高かったのです。ということは、やせている人の死亡率が高いのは体脂肪量の影響ではなく、除脂肪体重が少ないこと、すなわちやせていることそのものの影響であると考えられます。 疾患別の死亡率を見ると、心血管疾患とがんでは、除脂肪体重と死亡率の関係はU字型で、除脂肪体重が少なすぎても多すぎても死亡率が高いというものでした。体脂肪量が少なければ心血管疾患などは発症しにくいはずなのに、やせていて除脂肪体重も少ないと、本来は低いはずの心血管疾患による死亡率も高くなっていたのです。 その理由はよくわかりませんが、がんに関しては、やせていると免疫力が低いことが、がんの発症に関連していると考えられます。免疫力が高ければ、私たちの体内で日々生じているがん細胞を、免疫細胞が退治してくれます。ところが、やせていて栄養状態が悪く、免疫力が低いと、がん細胞が増え続け、やがて発症してしまうのです。 さらに、呼吸器疾患による死亡率も、除脂肪体重が少ない人ほど高く、除脂肪体重が多い人は低いという結果でした。やはり、やせていると栄養状態が悪く免疫力が低いため、肺炎などの感染症にかかるリスクが高いからだと考えられます。 これらのことからは、体脂肪量が多いと死亡率が高いものの、脂肪を落とそうとして除脂肪体重まで落としてしまうと、かえって健康を損ねてしまうことがわかります。やせすぎると病気になりやすく、死亡率も上がるのです』、「脂肪を落とそうとして除脂肪体重まで落としてしまうと、かえって健康を損ねてしまうことがわかります。やせすぎると病気になりやすく、死亡率も上がるのです」、「やせていて栄養状態が悪く、免疫力が低い」、なるほど。
・『低体重だと認知症リスクも上がる  低体重による影響は、死亡率が上がるだけではありません。驚くことに、低体重だと認知症になりやすいというデータもあるのです。 山梨大学大学院准教授の横道洋司博士たちの、65歳以上の男女を2010年から平均5.8年追跡調査したコホート研究です。それによれば、適正体重(BMI18.5~25未満)の人を1とした場合の認知症発症率は、BMI25~30未満(日本の判定基準で肥満1度、WHOの判定基準で前肥満状態)の場合、男性で0.73倍、女性で0.82倍。適正体重の人よりも低い数値でした。ところが、BMI18.5未満(低体重)の人では、男性が1.04倍、女性が1.72倍と、適正体重の人よりも高かったのです。 女性の1.72倍が目立ちますが、男性はやせていてもいいというわけではありません。低体重の男性で脂質異常症(高脂血症)のある人は、適正体重で脂質異常症のない人に比べて、認知症発症率はなんと4.15倍。女性では、低体重で高血圧だと、適正体重で高血圧のない人に比べて、認知症発症率が3.79倍でした。脂質異常症や高血圧などの生活習慣病は、中高年になれば誰でも何かしらあると言ってもいい状態ですが、そこに低体重が加わると、一気に認知症発症率が高まるのです。 中高年になったら生活習慣病に注意するのはもちろんですが、それだけでなく、やせることにも注意するべきなのです』、「脂質異常症や高血圧などの生活習慣病は、中高年になれば誰でも何かしらあると言ってもいい状態ですが、そこに低体重が加わると、一気に認知症発症率が高まる」、恐ろしいことだ。適正体重の維持がやはり重要なようだ。
・『暴力や自殺による死亡率にも関連性が…  しかも、低体重だと病気以外の死因につながる可能性も高くなる、という驚きのデータもあります。病気以外の死因とは、暴力による死亡、自殺、交通事故などで、そのうち交通事故はBMIと関連がありませんでしたが、暴力と自殺による死亡率は、BMIが低い人ほど高くなる傾向があったのです(図表1)。(【図表1】暴力、自殺による死亡率出所=『ダイエットをしたら太ります』はリンク先参照) これは、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院(英国)のクリシュナン・バスカラン博士たちが、英国国民保険サービス(国営医療サービス事業:NHS)のデータを用いて、16歳以上の男女を1998年1月から2016年3月までの間、追跡調査したコホート研究です。調査対象者は約363万人に及びます。非常に大規模であることと、調査対象の年齢の中央値が36.9歳であり、BMIと死亡率の関連を調べたほかの研究よりも若いことが特徴です。 研究では、暴力や自殺の原因を把握していませんから、亡くなった人にどのような経済的、職業・学業的、家族的、心理・精神医学的な問題があったのかは、わかりません。ただ、研究開始時点で精神障害(うつ病、躁うつ病、統合失調症)の人は除外したと記されていますから、これらが原因ではないと言っていいでしょう。 実は、自殺と低体重の関連については、以前から指摘されていました。 たとえば、マックマスター大学(カナダ)のステファン・ペレラ博士は、それまでの自殺関連の研究の中から体重、特にBMIとの関連を検討した研究を集め、複数の研究結果を統合して解析する「メタアナリシス」という手法を用いて、BMIと自殺にどれほど関連があるかを調べています』、「暴力と自殺による死亡率は、BMIが低い人ほど高くなる傾向があった」、なんとなく感覚的には理解できる。
・『個人の資質が低体重と自殺の双方に関連している可能性も  ペレラ博士がこの研究を行った2016年時点では、まだバスカラン博士たちの研究結果が出ていませんでした。すなわち、ある時点から未来に向かって調査を進める“前向き”コホート研究がなく、ある時点から過去に遡って調査を進める“後ろ向き”コホート研究しかありませんでした。 それが何を意味するかというと、これから発生する事象を観察する前向きコホート研究に比べて、過去のデータを利用する後ろ向きコホート研究は、データの不均質性などがあり、情報の信頼性に劣るという問題があるのです。つまり、研究の科学的価値が低いわけです。 そのせいかどうか、ペレラ博士の研究では、「BMIが増加するほど自殺既遂は減る。肥満だと自殺既遂のリスクは29パーセント減少し、低体重だと21パーセント増加する。BMIと自殺未遂や自殺念慮(死にたい気持ち)の関係は、研究ごとに結果が異なり、一定の結論は出ない」という結果でした。 これをどのように解釈するか難しいところですが、ペレラ博士たちは神経質さといった気質が、低体重と自殺既遂に関連している可能性を指摘しています。私の臨床経験からは、神経質さだけでなく、競争心の激しさなど、種々の原因が低体重と自殺の両方につながっている気がします。そのような個人の資質(気質)が、低体重と自殺の双方を生じさせてしまう可能性がある、ということです。しかし、これに関する研究はまだ少なく、結論に達するには、BMIと自殺や暴力による死との関連を含む前向きコホート研究が、いくつか出てくるのを待たなければなりません』、「ペレラ博士たちは神経質さといった気質が、低体重と自殺既遂に関連している可能性を指摘」、実感にも合うようだ。今後の研究を待ちたい。

次に、9月15日付けダイヤモンド・オンライン「「365日外食」実験を行った女医が伝えたい、食べているのに栄養不足の盲点」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/281765
・『日々の食事が体をつくる。それは、誰もが知っていること。では、365日外食を続けたらどうなるのか――。それを自分の体で実験してみた医師がいる。うえやま腎クリニック(鹿児島市)院長の上山菜穗医師だ。「食の大切さを実感していたからこそ、自分の体で体験してみようと思った」と話す上山医師は、外食生活を続ける中で数々の不調に見舞われ、最終的には“実験”を中止せざる得ない状況に陥ったという。果たして「365日外食生活」実験はどんな結末を迎えたのか、そして現代人が陥りやすい食生活の盲点とは――』、興味深そうだ。
・『365日外食生活を続けたらどうなった?  365日外食生活をしてみよう。そう思い立って“実験”を始めたのは、上山医師が30代半ばの頃だ。 「日々の診療のなかで、慢性疾患は食事の影響が大きいことを実感していました。外食ばかりの生活をしていたらきっと体に悪影響があるだろう。では、どのくらい悪影響があるのか、自分の体で体験してみようと思ったのです」 最初のうちは、同僚・友人らとイタリアンやカジュアルなフレンチレストランなどに行き、楽しく“実験”ができていた。ところが、次第に大変になっていた。なぜなら、少しずつ不調に見舞われるようになったからだ。 最初の不調は、腸にきた。「もともとおなかが弱いタイプでしたが、ますますおなかの調子が崩れがちになりました」と上山医師。 そのうちに食が細くなり、「BMI(ボディマス指数:体重kg÷身長m÷身長m)」は15と、不健康に痩せていった。そうすると筋肉や骨密度も落ち、エネルギー維持が難しくなり、簡単にエネルギーになるものを欲するようになったという。具体的には、チョコレートやコーヒーだ。 「カフェインや糖質をとって、血糖値を維持しようとしていたのだと思います」 確かにカフェインや糖質をとると、一時的に血糖値は上がる。ただその反動で急に下がるため、「血糖値の変動が精神的なバランスを崩し、仕事中には頑張れるけれども、休日はぐったりして動けなくなるなど、テンションが上がったり下がったりを繰り返していました」。当時の様子を上山医師は「すぐに充電がなくなるスマホのようだった」と言う。 さらに外食生活を続けると、次第に肌の調子も悪くなり、髪や爪の元気もなくなり、あちこちわかりやすいところに不調が出るようになった。そして極め付きが、帯状疱疹(たいじょうほうしん)だ。 「ちょうど1年たつ頃に、生まれて初めて帯状疱疹を発症しました。免疫力が低下したときに出るものなので、疲れ切っていたのでしょう。その時点で自分なりに納得できたので、約1年かけた365日外食生活の実験を終了することにしました。私は意図的に外食生活をつづけたので不調を自覚しやすかったのですが、多くの人はじわじわと悪影響を受けるため自覚しづらく、その積み重ねが慢性疾患につながるのだなと改めて実感しました」』、「外食ばかりの生活をしていたらきっと体に悪影響があるだろう。では、どのくらい悪影響があるのか、自分の体で体験してみようと思った」、自ら実験台になるとは大したものだ。「最初の不調は、腸にきた・・・そのうちに食が細くなり・・・ちょうど1年たつ頃に、生まれて初めて帯状疱疹を発症・・・自分なりに納得できたので、約1年かけた365日外食生活の実験を終了」、「1年」「外食生活」が続いたのに驚かされた、
・『食べすぎるタイプの人も実は栄養不足に陥っている  なぜ、こんなにも不調に見舞われたのか。外食生活と言っても、上山医師の場合、ファストフードばかりだったわけでも、暴飲暴食を重ねたわけでもない。その答えを、上山医師は「栄養不足でした」と振り返る。 「体を維持するには、タンパク質、脂質、炭水化物と十分なビタミン、ミネラルが必要です。それらが足りなくなってエネルギーを維持することが難しくなったので、簡易なエネルギー源に頼るようになり知らず知らずのうちにチョコレートやカフェインをよくとるようになっていました。でも、それがかえって腸内環境を悪くし、ますます栄養が消化・吸収されにくくなり、さらに甘いものが欲しくなるという悪循環に……。体をつくる原料が不足していたのですから、細胞から弱くなっていっていたのだと思います」 上山医師の場合は、外食生活で食が細くなったわけだが、一方で、外食が続くと食べすぎてしまう人もいるだろう。その場合はどうだろうか。 「まず、筋肉と体脂肪のバランスの悪い、太めの人は余計なものを出せない人なんです。脂肪分は、いわば“ゴミ箱”のようなもの。とり過ぎた炭水化物や添加物は、脂肪というゴミ箱にたまっていきます。 そして、食べすぎてしまう人は、一般的に糖質と余計な脂肪分が多いだけで、その他の栄養素に関してはやっぱり不足している可能性が高い。栄養が足りているかというと、そうではないと思います。“ゴミ箱”を掃除するにはミネラルやビタミン類が必要ですが、ほとんどの人が足りていません」』、「食べすぎてしまう人は、一般的に糖質と余計な脂肪分が多いだけで、その他の栄養素に関してはやっぱり不足している可能性が高い。栄養が足りているかというと、そうではないと思います」、意外な感じを受けるが、その通りなのだろう。
・『外食・総菜・お弁当は自炊と比べて同じ体積でも得られる栄養成分が少ない  外食続きでは、なぜ必要な栄養が不足しやすいのか。その説明の前に、ここで「外食」の定義をおさえておきたい。上山医師の考える「外食」は、飲食店での食事だけではない。コンビニやスーパー、デパートなどで買う総菜や弁当も外食だ。また、「カット野菜を買ってきてドレッシングをかけて食べる、パスタをゆでて市販のソースをかけて食べるのも、外食です」と、上山医師。 つまり、自分で食材を切って調理した食事以外は、外食だ。これらの「外食」に共通する問題は何かと言えば、「同じ体積、同じカロリーでも得られる栄養成分の量が少ない可能性が高いこと」と、上山医師は指摘する。 それはなぜか。 「たとえば、野菜を丸ごと買ったとしても、日がたつごとに少しずつ栄養成分は失われます。カットされていれば、そのスピードは速くなります。さらに、チェーン店で使っている食材は、すぐに使いやすいように加工されているものが多く、その分、栄養成分は減って、添加物が多い可能性が高いのです」 ただし、「外食をしてはいけない」というわけではない。ライフスタイル上、外食に頼らざるを得ない人は多いだろう。上山医師は「欠点を知った上で補ってほしい」とアドバイスする。そこで、まず「考えてほしい」と強調するのが「なぜ食べるのか」だ』、「外食」に共通する問題は何かと言えば、「同じ体積、同じカロリーでも得られる栄養成分の量が少ない可能性が高いこと」、「それはなぜか」、「たとえば、野菜を丸ごと買ったとしても、日がたつごとに少しずつ栄養成分は失われます。カットされていれば、そのスピードは速くなります。さらに、チェーン店で使っている食材は、すぐに使いやすいように加工されているものが多く、その分、栄養成分は減って、添加物が多い可能性が高いのです」、なるほど。
・『日々のエネルギーを作り細胞をリニューアルする食事の「5カ条」  「ただ『おなかがすいた』『おいしいから』と、あまり考えずに食べている人が多いと思いますが、私たちが食べる意味は『エネルギーを作るため』、そして『細胞をリニューアルするため』です。ところが、そのことを考えずに脳や舌で判断して食事を選ぶと、脳も舌もすぐにだまされるので、砂糖中毒、カフェイン中毒などになってしまいます」 では、日々快適に過ごせるようエネルギーを作り、細胞をリニューアルするにはどんな食事をとったらいいのだろうか。最後にアドバイスをもらった。 (1)和食中心の食事に 「日本人の私たちにとってDNAに合う食事とはやっぱり和食です。おしょうゆやみそといった良い発酵食品を活用した食事が日本人には合っています」 (2)良質なタンパク質と脂質をとり、筋肉と骨を維持する運動をする(「糖質は即効性のあるエネルギーですが、長持ちするエネルギーはタンパク質と脂質です。これらをしっかりとりつつ、運動で筋肉や骨を維持しなければ、エネルギーは長持ちしません」 (3)毎日同じメニューはNG 朝は「パンと卵」など、メニューが決まっている人は少なくないだろう。しかし、「微量な栄養素も含めてすべての必要な栄養素を毎日コツコツとることがいちばん。同じメニューでは確実に栄養が偏ります。バランスよく栄養が含まれていることをうたっている商品でも同じ。そもそも分かっている栄養素は一部で、まだまだ分かっていない栄養素があり、そうした微量な栄養素が実は大事だったりします。だから、これさえ食べていればOKという食品、メニューはありません」。 (4)まずは1週間分の食事を記録して、見直しやすいところから変える 「1週間の食事を記録すれば、傾向が分かります。ただ、急にすべては変えられないので、変えやすいところから見直しましょう。たとえば、間食によくお菓子をとっている人は、素焼きのナッツ類やミートボールに変える、甘い飲み物を飲む人はだしスープに変えるなど、まずは間食から見直すことをおすすめします」 (5)サプリメントを活用する 「どんなに食事に気をつけても、微量な栄養素を満遍なく毎日とることはほぼ不可能です。特に忙しいビジネスパーソンは、サプリメントで補充するスタイルがいちばん合っています。ただし、サプリメントも選び方が肝心。一つには良質なサプリメントを選ぶこと、もう一つは自分に合ったサプリメントを選ぶこと。ビタミンCなど、誰もが不足しがちな栄養素もある一方で、不足している栄養素には個人差がありますから、まずは血液検査で栄養状態を調べて、自分の“取扱説明書”を作りましょう」(ライター 橋口佐紀子、監修/うえやま腎クリニック〈鹿児島県鹿児島市〉上山菜穗 院長) (上山菜穗 プロフィール リンク先参照)』、私も「朝は「パンと卵」など、メニューが決まっている」が、今さら変えるのも面倒なので、継続するつもりだ。

第三に、9月29日付け日経ビジネスオンラインが掲載した経済産業研究所による「世界的にも短い日本人の睡眠、生産性の低さの原因に」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00351/091300002/
・『近年、不眠症などの「病気の状態」を治癒するだけでなく、人々の生活の質を改善する睡眠のあり方を模索すべきだとする「スリープヘルス」という概念が注目されるようになってきた。経済産業研究所のプロジェクトで睡眠改善施策の効果検証に取り組んだ、黒田祥子・早稲田大学教育・総合科学学術院教授と大湾秀雄・早稲田大学政治経済学術院教授の寄稿を掲載する。 現代社会において、睡眠に何らかの問題を抱えている人はかなりの割合に上る。例えば、「国民生活基礎調査」(2019年、厚生労働省)によれば、日本人成人の約3割が「睡眠によって休養がとれていない」と述べており、米国の調査でも44%の人が「睡眠の問題をほぼ毎日感じている」と答えていた(Sleep foundation、2008)。他国でも同様の傾向が認められ、睡眠未充足と呼ばれる状態は世界的な問題となっている。 睡眠が十分でないことによって生産性が低下するとすれば、経済的に大きな損失となり得る。しかし、多くの睡眠未充足者は、ぐっすりと眠れなくても仕方がないと捉え、慢性的にその状態を受け入れているのではないだろうか。こうした中、近年「スリープヘルス」(Buysee、2014)という概念が注目されるようになってきた。 スリープヘルスは、不眠症などの「病気の状態」でなければよしとされた睡眠に対する従来の発想を転換し、人々の厚生やパフォーマンスにポジティブな影響を与える睡眠の在り方を模索していくべきとする考えである』、「スリープヘルスは、不眠症などの「病気の状態」でなければよしとされた睡眠に対する従来の発想を転換し、人々の厚生やパフォーマンスにポジティブな影響を与える睡眠の在り方を模索していくべきとする考えである」、なるほど。
・『睡眠と仕事の生産性との関係は?  果たして「睡眠で十分な休息がとれていないことによる生産性の低下はどの程度で、睡眠の量や質が改善すれば生産性は向上するのだろうか。これまでにも、睡眠不足や睡眠障害が、自動車事故や労働災害などの日中のパフォーマンスに深刻な影響を及ぼすことは、多くの睡眠研究が明らかにしてきた。 しかし、一般労働者を対象に、睡眠が仕事のパフォーマンスに直接どの程度影響するのかを分析したものはあまりない。また多くの研究は、眠ることができたから健康や生産性が改善したのか、あるいは別の要因が睡眠や健康、生産性を悪化させているのか、因果関係を明らかにしていない。 そこで、筆者らと早稲田大学経済学研究科の川太悠史氏は、大手製造業に勤務する約200人の従業員を対象にランダム化比較試験(randomized controlled trial;以下、RCT)を実施し、睡眠と生産性改善の効果を検証した。 RCTとは、被験者をランダムに2つのグループに分け、一方のグループ(介入群)には何らかの介入を施し、もう一方のグループ(対照群)には何もしないことで、実際の介入効果を検証する実験方法である(図1)。 (図1:RCTの流れ) ちなみに、最近は従業員への健康投資に積極的な企業も増えてきているが、投資対効果を検証している企業はまだ少ない。投資を無駄にしないためには、RCTの枠組みを利用した効果検証は非常に重要である。研究成果の詳細は経済産業研究所のHPに掲載されており、以下ではその一部を紹介することとしたい』、実務的にも役立ちそうな研究だ。
・『情報技術で睡眠改善をサポート  昨今では、「スリープテック」という言葉も使われ、スマートウォッチに代表されるようなセンシングデバイスを用いた健康管理は急速に認知度が上がっている。筆者らの睡眠改善プログラムは、こうした情報技術を利用し睡眠改善のサポートを試みた実験である。 プログラムでは、介入群に非接触型のセンシングデバイスを支給し、3カ月間夜間に計測した睡眠データを毎朝本人に通知することで睡眠を可視化するとともに、スマートフォンのアプリを通じて週ごとに睡眠改善に向けた行動変容を促すアドバイスを提示した。 図2は、3カ月後の睡眠改善効果の結果を示したものである。図の縦軸はスリープヘルスの尺度で、数値が大きくなるほど睡眠が改善していることを示している。スリープヘルスの尺度は、心身の病気やパフォーマンスに影響を与えると考えられている6つの睡眠に関する項目(睡眠時間、睡眠の満足度や質、日中の覚醒、睡眠の効率性、睡眠のタイミング、睡眠の規則性)に関し、介入前後の被験者の回答を用いて作成した。 同図を見ると、オレンジで示した介入群のスリープヘルスがプログラム後に改善していることが認められる。さらに、詳細に検証した結果、計測期間における業務量の増加や在宅勤務日数の増加など寝つきの悪化や中途覚醒を引き起こす要因を制御した上でも、プログラム実施後の介入群に睡眠改善の効果が認められた。 (図2:睡眠改善プログラム前後のスリープヘルス尺度) 備考:図中に示したp値は、プログラム前とプログラム後のそれぞれの時点における2群の有意差検定の結果を示し、介入前は両群に統計的な有意差はなかったものの、介入後には介入群の睡眠改善が統計的に1%水準で有意性が認められることを示している。 次に、睡眠改善が生産性に及ぼす影響を、米タフツ大学のチームが開発したWork Limitations Questionnaire(WLQ)と呼ばれるプレゼンティーイズム指標などを使用して検証したところ、介入群のプレゼンティーイズムが統計的に有意に改善していることが確認された。プレゼンティーイズムとは、従業員が出勤している(present)しているものの、何らかの健康問題によって本来の生産性を発揮できていない状態のことを指す。 計測された効果は、介入群平均で1~2%程度の生産性改善に相当するとみている。これらの結果は、仕事や私生活の様々な変化や出来事で睡眠が悪化することは誰しもに起こりうるものの、情報技術の利活用により睡眠改善を促すことで実際に睡眠の未充足は改善され、生産性の回復が見込めることを示唆する。) ただし筆者らの研究では、睡眠改善の効果や生産性への影響は、プログラムの取り組み姿勢、根気の有無の違いや年齢によってその度合いが異なってくることもわかった。例えば、40代以上より、20代や30代の方が効果が出やすい。 企業が従業員の健康に積極的に介入する際には、どの層をターゲットとするかをあらかじめ想定し、改善が困難な層には追加的なナッジ(望ましい行動を促すようなしかけ)を組み込む必要があることを示す結果となった。 日本人は世界的にみて睡眠時間が短い人が多く、フルタイム労働者の睡眠時間は過去30年間で趨勢的に減少傾向にある。また、加齢とともに睡眠に問題を抱える人が増加する傾向があることも知られており、高齢化が最も進行している日本において睡眠が生産性に及ぼす影響は大きいと考えられる』、「日本人は世界的にみて睡眠時間が短い人が多く、フルタイム労働者の睡眠時間は過去30年間で趨勢的に減少傾向にある。また、加齢とともに睡眠に問題を抱える人が増加する傾向がある」、なるほど。
・『在宅勤務で懸念される、睡眠の未充足  グローバル化や情報技術革新によるスマートフォンの普及などで、私たちは24時間情報があふれた生活をしており、睡眠への影響は計り知れない。また、新型コロナウイルスによる世界的なパンデミックによって急速に広まった在宅勤務の影響も無視できない。在宅勤務の普及で生活と仕事の境界が曖昧になることにより、睡眠の規則性が崩れ、睡眠の未充足を感じる人が増加していく可能性もある。 しかし、極度の不眠であれば医師にかかることができるが、日常生活に支障がなければ多少の生産性の低下で診察を受ける人は多くないだろう。慢性的に悪い睡眠状態が続いているとそれが定常状態のように感じ、生産性の低下に本人も気づきにくい。 また、本人は睡眠不足を自覚していても、成果がすぐに見えない職種で平静を装っていれば、生産性の低下やその理由を、企業は把握できないだろう。企業は、スリープヘルスの重要性が個人では認識されにくいことを理解した上で、従業員を対象とした睡眠改善施策や、情報技術を利用したナッジの活用など、積極的な健康経営を検討してもよいのではないだろうか。(最後の両氏の略歴はリンク先参照)』、「企業は・・・従業員を対象とした睡眠改善施策や、情報技術を利用したナッジの活用など、積極的な健康経営を検討してもよいのではないだろうか」、ただ、それが生産性改善にどの程度つながるかが分かる方が説得力があるだろう。
タグ:(その16)(「やせるとボケるし死にやすくなる」医師が中高年にダイエットを勧めない理由 最大で4.15倍もボケやすくなる、「365日外食」実験を行った女医が伝えたい 食べているのに栄養不足の盲点、世界的にも短い日本人の睡眠 生産性の低さの原因に) 健康 PRESIDENT ONLINE 永田 利彦 「やせるとボケるし死にやすくなる」医師が中高年にダイエットを勧めない理由 最大で4.15倍もボケやすくなる」 メタボが目の敵にされているが、「やせることにも注意するべきだ」、どういうことなのだろう。 「脂肪を落とそうとして除脂肪体重まで落としてしまうと、かえって健康を損ねてしまうことがわかります。やせすぎると病気になりやすく、死亡率も上がるのです」、「やせていて栄養状態が悪く、免疫力が低い」、なるほど。 「脂質異常症や高血圧などの生活習慣病は、中高年になれば誰でも何かしらあると言ってもいい状態ですが、そこに低体重が加わると、一気に認知症発症率が高まる」、恐ろしいことだ。適正体重の維持がやはり重要なようだ。 「暴力と自殺による死亡率は、BMIが低い人ほど高くなる傾向があった」、なんとなく感覚的には理解できる。 「ペレラ博士たちは神経質さといった気質が、低体重と自殺既遂に関連している可能性を指摘」、実感にも合うようだ。今後の研究を待ちたい。 ダイヤモンド・オンライン 「「365日外食」実験を行った女医が伝えたい、食べているのに栄養不足の盲点」 「外食ばかりの生活をしていたらきっと体に悪影響があるだろう。では、どのくらい悪影響があるのか、自分の体で体験してみようと思った」、自ら実験台になるとは大したものだ。「最初の不調は、腸にきた・・・そのうちに食が細くなり・・・ちょうど1年たつ頃に、生まれて初めて帯状疱疹を発症・・・自分なりに納得できたので、約1年かけた365日外食生活の実験を終了」、「1年」「外食生活」が続いたのに驚かされた、 「食べすぎてしまう人は、一般的に糖質と余計な脂肪分が多いだけで、その他の栄養素に関してはやっぱり不足している可能性が高い。栄養が足りているかというと、そうではないと思います」、意外な感じを受けるが、その通りなのだろう。 「外食」に共通する問題は何かと言えば、「同じ体積、同じカロリーでも得られる栄養成分の量が少ない可能性が高いこと」、「それはなぜか」、「たとえば、野菜を丸ごと買ったとしても、日がたつごとに少しずつ栄養成分は失われます。カットされていれば、そのスピードは速くなります。さらに、チェーン店で使っている食材は、すぐに使いやすいように加工されているものが多く、その分、栄養成分は減って、添加物が多い可能性が高いのです」、なるほど。 日々のエネルギーを作り細胞をリニューアルする食事の「5カ条」 私も「朝は「パンと卵」など、メニューが決まっている」が、今さら変えるのも面倒なので、継続するつもりだ。 日経ビジネスオンライン 経済産業研究所 「世界的にも短い日本人の睡眠、生産性の低さの原因に」 「スリープヘルスは、不眠症などの「病気の状態」でなければよしとされた睡眠に対する従来の発想を転換し、人々の厚生やパフォーマンスにポジティブな影響を与える睡眠の在り方を模索していくべきとする考えである」、なるほど。 実務的にも役立ちそうな研究だ。 「日本人は世界的にみて睡眠時間が短い人が多く、フルタイム労働者の睡眠時間は過去30年間で趨勢的に減少傾向にある。また、加齢とともに睡眠に問題を抱える人が増加する傾向がある」、なるほど。 「企業は・・・従業員を対象とした睡眠改善施策や、情報技術を利用したナッジの活用など、積極的な健康経営を検討してもよいのではないだろうか」、ただ、それが生産性改善にどの程度つながるかが分かる方が説得力があるだろう。
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東京オリンピック(五輪)(その21)(太平洋戦争の開戦に突き進んだ当時と変わらない日本「失敗の本質」、五輪経済効果「ここまでアテが外れた」残念な総括 「おもしろうてやがて悲しき五輪かな」、五輪「無観客」の大赤字 東京都は負担の“ルビコン川”を渡っていた) [国内政治]

東京オリンピック(五輪)については、7月27日に取上げたままだった。今日は、(その21)(太平洋戦争の開戦に突き進んだ当時と変わらない日本「失敗の本質」、五輪経済効果「ここまでアテが外れた」残念な総括 「おもしろうてやがて悲しき五輪かな」、五輪「無観客」の大赤字 東京都は負担の“ルビコン川”を渡っていた)である。

先ずは、8月5日付けNewsweek日本版が掲載した経済評論家の加谷珪一氏による「太平洋戦争の開戦に突き進んだ当時と変わらない日本「失敗の本質」」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/kaya/2021/08/post-152_1.php
・『<五輪開幕前、迷走に迷走を重ねた日本。その根本にある「病理」は太平洋戦争を避けられなかった当時から変わっていない> 東京五輪は、国民から100%の支持が得られないという状況下での開催となった。コロナ危機という要因があったとはいえ、ほとんどの国民が支持するはずのイベントがここまでネガティブになってしまったのは、政府の意思決定が迷走に迷走を重ねたことが大きい。 順調に物事が進んでいるときには大きな問題は発生しないが、非常時になると全く機能しなくなるという日本社会の特質を改めて露呈する形となったが、一部からは太平洋戦争との類似性を指摘する声が出ている。80年前と今を比較するのはナンセンスという意見もあるが、事態の推移を考えるとこの類似性を否定するのは難しそうだ。 今回の五輪は当初から問題が山積していた。2015年7月、新国立競技場の建設費が当初予定を大幅に上回ることが判明したが、政府がうやむやに処理しようとしたことから批判が殺到。同年9月には公式エンブレムの盗作疑惑が発覚し、当初は盗作はないと強気の対応を見せたものの、選考過程の不透明性が指摘されるなど外堀が埋められ、使用中止が決断された。 18年には日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長が仏捜査当局から贈賄容疑で捜査され、19年には記者からの質問を一切受け付けず、何の説明もないまま退任。21年2月には森喜朗大会組織委会長が女性蔑視発言をきっかけに辞任し、後任指名された川淵三郎氏にも密室人事批判が殺到。結局、川淵氏も役職を辞退してしまった』、問題がよくぞ次々に出てくるものと、呆れ果てた。
・『佐々木氏、小山田氏、小林氏......   開会式の演出では能楽師の野村萬斎氏を総合統括とするチームが解散を表明。その後、統括に起用されたクリエーティブディレクターの佐々木宏氏は、女性タレントを蔑視する演出プランがきっかけで辞任し、今度は楽曲担当で参加していた小山田圭吾氏が、障害者への虐待を自慢する発言が問題視され、やはり辞任に追い込まれた。 最後は、過去のホロコースト揶揄発言によって開会式ショーディレクターの小林賢太郎氏が解任されるというありさまである。 次から次へと目を覆いたくなる事態が発生したわけだが、これは個別問題へのずさんな対応の積み重ねが大きく影響している。最初に発生した問題に対して責任の所在をはっきりさせ、適切に処理していれば、次の問題処理の難易度は下がる。だが、最初の問題をうやむやにすれば次の問題処理はさらに難しくなる。 太平洋戦争の直接的なきっかけは、アメリカのコーデル・ハル国務長官が突き付けた文書(いわゆるハルノート)だが、これは事実上の最後通牒であり、その時点で日本側に選択肢はなかった。 日米開戦の発端となったのは、1931年の満州事変と翌年のリットン調査団への対応だし、さらにさかのぼれば、南満州鉄道の日米共同経営をめぐって1905年に締結された桂・ハリマン協定の破棄が遠因であるとの見方もある。 日々の小さな交渉や対策の積み重ねとして事態は推移するので、単体として判断することには意味がない。日本政府が満州事変という軍部の違憲行為(統帥権干犯)を適切に処理していれば、先の大戦は避けられた可能性が高く、同 じように国立競技場の問題が発覚した段階で組織のガバナンスを改革していれば、ここまでの事態には至らなかっただろう。 太平洋戦争の直接的なきっかけは、アメリカのコーデル・ハル国務長官が突き付けた文書(いわゆるハルノート)だが、これは事実上の最後通牒であり、その時点で日本側に選択肢はなかった。 日米開戦の発端となったのは、1931年の満州事変と翌年のリットン調査団への対応だし、さらにさかのぼれば、南満州鉄道の日米共同経営をめぐって1905年に締結された桂・ハリマン協定の破棄が遠因であるとの見方もある。 日々の小さな交渉や対策の積み重ねとして事態は推移するので、単体として判断することには意味がない。日本政府が満州事変という軍部の違憲行為(統帥権干犯)を適切に処理していれば、先の大戦は避けられた可能性が高く、同じように国立競技場の問題が発覚した段階で組織のガバナンスを改革していれば、ここまでの事態には至らなかっただろう。 日本社会が抱える病理は戦後76年たった今でも変わっていない。日本社会が抱える病理は戦後76年たった今でも変わっていない』、「最初に発生した問題に対して責任の所在をはっきりさせ、適切に処理していれば、次の問題処理の難易度は下がる。だが、最初の問題をうやむやにすれば次の問題処理はさらに難しくなる」、「日本政府が満州事変という軍部の違憲行為(統帥権干犯)を適切に処理していれば、先の大戦は避けられた可能性が高く、同じように国立競技場の問題が発覚した段階で組織のガバナンスを改革していれば、ここまでの事態には至らなかっただろう」、確かに太平洋戦争突入当時との類似点はある。「日本社会が抱える病理は戦後76年たった今でも変わっていない」、恐ろしいことだ。

次に、8月20日付け東洋経済オンラインが掲載した経済評論家・百年コンサルティング代表の鈴木 貴博氏による「五輪経済効果「ここまでアテが外れた」残念な総括 「おもしろうてやがて悲しき五輪かな」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/449300
・『「おもしろうてやがて悲しき五輪かな」 この夏を俳句で詠むとこんな感じでしょうか。もちろんこの句はパロディーで、基になるのは松尾芭蕉が長良川の鵜飼いを見て詠んだ句「おもしろうてやがて悲しき鵜舟かな」です。 鵜飼いの一夜が明けてみて、昨晩はあれだけ楽しかった心が、切なく悲しい心に変わっていくさまを芭蕉が詠んだのだといいます。それと同じで東京五輪の開催期間はあれほど興奮し感動し日本を明るくしてくれたものが、閉会してコロナが拡大して開催の赤字も拡大してみると、何やら日本人の心にも切なく悲しいものが込み上げてくるという点では、冒頭の句は今の私たちの気持ちを表していると言っていいでしょう。 東京2020組織委員会が昨年12月に発表していた組織委員会予算(バージョン5)では東京五輪開催に関わる広義の予算(組織委員会負担分以外を含んだもの)は総額で1兆6440億円まで膨らんでいました』、今後は「東京五輪開催に関わる」費用負担が問題になる。
・『税金補填分は1兆円を超えそう  組織委で負担できない赤字分は東京都と国で協議して分担を決めるのですが、その合計額がこの時点で9230億円とされていました。そこに今回、無観客開催が決まったことでチケット収入の赤字(チケット代900億円プラス払い戻し経費)が加わるので、パラリンピックも含めすべてが終わってみれば税金補填分は1兆円を超えそうです。 これを都民で割ることになれば1人10万円、国民全員で割ることになれば1人1万円の負担です。いずれにしても最終的な請求書は政治家からわたしたちに回ってくるわけで「やがて悲しき」気持ちはじわじわと私たちの心に染み込んでいくことになるでしょう。 では「おもしろうてやがて悲しき」イベントは開催してもよかったのでしょうか?経済面で検証してみましょう。 オリンピック開催前にシンクタンク各社が東京五輪開催の経済効果を試算し公表しています。おおむね各社とも東京五輪の経済効果は30兆円を超えると発表しています。その中からみずほフィナンシャルグループ(みずほ総研、みずほ銀行産業調査部の共同調査)が2017年2月に発表した「経済効果30.3兆円」という試算を基に、今回の開催の最終的な経済効果を振り返ってみます。 最初に重要な点を指摘しておきますと、東京五輪開催の直接効果はわずか1.8兆円にすぎないということです。開会式から閉会式までの期間は17日間。この短い期間に世界全体がオリンピックで盛り上がったわけです。そのうちIOCが世界のメディアから得た莫大な放映権収入も日本経済には関係ないわけで、日本の中で行われた五輪の新規経済需要だけ積み上げると1.8兆円だということです。 シンクタンクの試算と組織委の予算は厳密に対応している数字ではないのですが、結果的にそこから1兆円の赤字が出るわけなので、イベントの赤字としては巨額です。ですがそのマイナスはほかの経済効果で埋めることができるかもしれないわけです。 ではその「ほかの経済効果」とは何でしょう。いちばん大きいのが五輪開催に伴う事前のインフラ投資です。実際に東京への招致決定以降、首都高の老朽化対策や、首都圏の鉄道の整備予算が下りて交通インフラ整備事業が前倒しで進みました。都内では民間でも1000億円規模の大型再開発計画が30件以上も起工し、各所に新たな街並みが出現しました。 また重要な点としては既存インフラのバリアフリー化も進みました。都心のJRでもホームへのエレベーターがなかった駅にエレベーターが新設されたり、ホームドアが設置されたりと公共交通機関のダイバーシティー対応も加速しました』、「東京五輪の経済効果は30兆円を超える」、と「五輪の新規経済需要だけ積み上げると1.8兆円」との差は、「ほかの経済効果」で「いちばん大きいのが五輪開催に伴う事前のインフラ投資」、なるほど。
・『赤字1兆円を上回る経済効果はすでに発現  これらの建設投資についてすべてを合計すると12.9兆円の新規需要が生まれ、121万人の雇用が誘発されると試算されていたのですが、これらの大半はすでに実現しています。言い換えれば東京五輪がなければ日本のGDPは累積でそれだけ低かったことになるわけで、もうこの段階で開催の赤字1兆円を大きく上回る経済的なプラスは手に入ったことになるわけです。 また五輪開催で消費が上向く点は日本経済全体の効果としては無視できないはずです。 政治家は「東京五輪と新型コロナ第5波の拡大は関係ない」と言っていますが、数字を見れば五輪開催とコロナ拡大の時期は一致します。開催前の7月1日に1.02だった新型コロナの実効再生産数(1人の感染者が何人にうつすかの数値)はオリンピック開催後に急増し、開会式の7月23日には1.34、そして8月1日にピークの1.79を記録します。その後閉会式に向けて下降し閉会後の8月中旬時点では1.1台にまで下がっています。(実効再生産数は東洋経済オンライン「新型コロナウイルス国内感染の状況」より) 政府がいくら関係ないと強弁しても、政府がオリンピックというお祭りを主催していれば国民はどうしても外に出て騒ぎ始めるわけです。するとコロナの新規陽性者数は爆発的に増加しますが、結果として消費も増加したことになるはずです。 2021年1~3月期のわが国のGDPは年率で3.9%のマイナス(第2次速報値)だったのですが、8月16日に発表された速報値では4~6月のGDPは年率1.3%のプラスと回復の様相を示しています。この後、11月になれば7~9月の経済成長率が発表されることになりますが、オリンピックが誘発した消費需要だけを考えれば7月後半から8月前半にかけてはそれ以上に経済が成長していたはずです。 このオリンピックの消費誘発効果をプラスの要素と考える一方で、デルタ株のまん延によって緊急事態宣言が日本中に拡大し、お盆の帰省の自粛など政府が逆に経済にブレーキをかけなければならない方向で動いていることは大きなマイナス要素です。東京五輪が国民の外出を増やし、それによって第5波の拡大が加速したという仮定に基づいてお話しすれば、短期的な消費増よりもその後の消費減によるGDPの押し下げ効果のほうが大きいかもしれません。 実際、4~6月期の実質GDP成長率1.3%というのは先進国の中では極めて低い数字でした。ワクチン接種が進んでいるアメリカが6.5%、ドイツが6.1%、コロナでの打撃が大きかったイギリスに至っては20.7%と、社会がアフターコロナへの移行を始めている国々と比べれば、日本の数字は見劣りします。 これらの情報を総合すれば「五輪開催で消費が上向く」という皮算用はトータルでは逆の結果になるのではないでしょうか。五輪で消費が上向き始めたけれどもそのことで逆にコロナが増加し経済に水を差す結果になった。ほかの先進国と比較すれば五輪を開催せずにコロナ対策だけに集中していたほうが、2021年の日本経済はよくなっていたかもしれません。この点は残念な結果になりそうです』、「五輪で消費が上向き始めたけれどもそのことで逆にコロナが増加し経済に水を差す結果になった」、なるほど。
・『期待されていたインバウンドの盛り上がりは?  さて、みずほFGが試算した30.3兆円の五輪の経済効果ですが、実はまだ実現していない大きな項目で、しかも今回の開催方式の結果おそらくこれから先も実現しない可能性の高まったものがあります。それがインバウンド(訪日外国人旅行)での拡大効果です。 みずほFGは東京五輪が生み出す観光需要増大効果を12.7兆円、それに伴う雇用誘発効果を180万人と試算しており、東京五輪の経済効果としては最大級の要素として挙げていました。 根拠としては過去の開催国、オーストリア(2000年)、ギリシャ(2004年)、中国(2008年)、イギリス(2012年)ともに開催決定前のインバウンドのトレンドラインを大きく上回る形で外国人観光客が増加しているという事実があるのです(2017年公表のレポートのため2016年開催のブラジルについては分析されていません)。 ご承知のとおり2013年から2019年にかけて日本はインバウンド消費で沸き、2019年には3188万人の外国人が日本を訪れました。みずほFGのレポートではオリンピック開催で2020年には3600万人を超えることが予測されていたのですが、新型コロナで逆に2020年は411万人まで訪日外国人数は落ち込んでしまっています。 過去の開催国のインバウンドが増加したのは五輪で世界中から観戦客が訪れてよい体験をして、その口コミで開催年以降もリピーターや口コミによる観光客増効果が長く続くというメカニズムでした。一方で今回の東京五輪は、海外からの観光客をシャットアウトして無観客開催の決断をせざるをえませんでした。 その結果、オリンピックの訪日需要が失われただけではなく、2022年以降、たとえアフターコロナでインバウンドが回復したとしても、少なくとも五輪効果の口コミによる観光客増大効果は得られないことになります。つまり12.9兆円と試算されたインバウンド増大効果は取らぬ狸の皮算用で終わったと考えるべきでしょう。 さて、マクロでの収支も検証してみましょう。みずほFGのレポートによれば東京五輪招致以前の日本のGDP平均成長率は1.1%でした。これが五輪による押し上げ効果で2016年以降は平均で1.4%に増えることが予測されていました。その増分の累計が30兆円近くになることでGDPを見れば五輪の経済効果が実際に確認できるとされていました。 ところが実際には2016年以降の経済成長率を見ると順番に、年率の実質経済成長率は0.8%、1.7%、0.6%、0.0%、▲4.6%という結果でそれまでの平均1.1%よりも見劣りします。押し上げが想定された1.4%を超えた年は2017年だけ。残念ながら東京五輪の経済押し上げ効果はマクロ経済全体でみれば確認できません。建設ラッシュはGDPを押し上げた一方で、消費増税とコロナでトータルの景気は水を差された結果です。 結果をまとめてみれば、東京五輪招致の経済効果は開催前のインフラ整備分までは実際に日本経済を潤してくれました。2020年はコロナで1年お休み。2021年の開催では1兆円の赤字が発生し、2021年以降に期待されたインバウンド増大効果は幻に終わったというのが総括です』、「海外からの観光客をシャットアウトして無観客開催の決断をせざるをえませんでした。 その結果、オリンピックの訪日需要が失われただけではなく、2022年以降、たとえアフターコロナでインバウンドが回復したとしても、少なくとも五輪効果の口コミによる観光客増大効果は得られないことになります。つまり12.9兆円と試算されたインバウンド増大効果は取らぬ狸の皮算用で終わったと考えるべきでしょう」、残念だけどやむを得ない。
・『2020年度税収は過去最高だった  最後に1兆円の赤字補填を財務省は認めるでしょうか? そして財務省は新型コロナで大幅な税収減を想定していたのですが、今年7月5日に発表があったとおり、2020年度の一般会計税収は60.8兆円で予想よりも5.7兆円も多くなりました。1兆円の補填など気にする必要がない税収環境とはいえます。 こうしてまとめてみることでこの夏、野球、柔道、スケボー、ソフトボール、競泳など金メダルラッシュに沸いたあの日々を思い浮かべる私の気持ちに読者の皆さんも共感していただけるのではないでしょうか。やはり今回の東京五輪は、 「おもしろうてやがて悲しき五輪かな」 だったのでした』、「2020年度の一般会計税収は60.8兆円で予想よりも5.7兆円も多くなりました」、こんなにも税収が良かったとは初めて知った。五輪予算の不足分を埋めるのに一部を使うべきだろう

第三に、8月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元東京都選挙管理委員会事務局長の澤 章氏による「五輪「無観客」の大赤字、東京都は負担の“ルビコン川”を渡っていた」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/278706
・『日本人選手のメダルラッシュで東京オリンピックは盛況だったが、新型コロナウイルスの感染者は都内、そして全国で過去最高を記録し、医療崩壊の危機が近づいている。そして都民には、ほぼ無観客となったことによる大赤字の負担が待っている。これをめぐって都と政府が争うことになるが、都がすでに“ルビコン川”を渡っていることは、あまり知られていない』、「都がすでに“ルビコン川”を渡っている」、とはどういうことだろう。
・『「ステイホーム」の半面、万単位の入国者 都民も国民も引き裂かれたむなしい17日間  新型コロナウイルスのパンデミックが止まらず、医療崩壊が現実のものとなりかねない中、東京オリンピックが8日閉会した。万人単位の選手や関係者の接触が避けられないスポーツイベントの開催決行と、一般市民の「ステイホーム」という相矛盾するメッセージに引き裂かれた都民、そして国民の耳に、為政者たちの言葉がむなしく響いた17日間だった。 パラリンピックは8月24日に予定通り開催するかという問題は残されているが、とにかく五輪閉幕を一区切りとして、メダルラッシュに沸いた国民感情は、あっという間に冷めていくだろう。そして、祭りの後に残ったのが膨大な負の遺産であることを改めて認識し、多くの都民がぼうぜんとすることになる』、「膨大な負の遺産」については、殆ど知らされてないようだ。
・『国と東京都の醜い「赤字」の押し付け合い 武藤事務総長が小池知事に放ったジャブ  五輪組織委員会の収入は、国際オリンピック委員会(IOC)負担金とスポンサー収入、そしてチケット売り上げの3本柱からなる。そのチケット売り上げ約900億円が、ほとんどの会場で無観客になったことにより、限りなくゼロに近い金額となった。 だからといって、IOCやスポンサーが賄ってくれるはずもない。組織委の最終収支は、誰がどう考えても大赤字になることが避けられない。 では、この900億円を誰が負担するのか。そもそも組織委員会は、五輪パラリンピックのために期間限定で設置された組織だ。大会が終わればさっさと解散する。早ければ、秋にも残務処理部門を残して撤収してしまうだろう。 組織委自らが赤字を補填するすべは全くない。残された頼みの綱は、国か東京都しかないのだ。 組織委の武藤敏郎事務総長は、国と財政負担について話し合うのは大会後だとしているが、国と東京都の暗闘はすでに始まっている。 その武藤氏は7月11日、NHK「日曜討論」に出演し「小池(百合子)知事は、東京都では完全無観客にすると決定された」と述べ、「そうなると、近郊3県(神奈川、千葉、埼玉)も同じ判断にならざるを得ないというのが3知事の判断」と付け加えて、小池知事の意向が1都3県無観客開催の流れを作ったと主張した。 小池知事が「過労」による入院から復帰直後の7月2日の記者会見で「感染状況をよく注視しながら、どのような形がいいのか、無観客も軸として考えていく必要がある」と言及したことを、武藤氏は念頭に置いたのだろう。無観客による赤字負担をめぐって、さっそくジャブを繰り出していたのだ。 武藤氏は言わずと知れた元財務事務次官で、その中でもとりわけ大物で鳴らした人物だ。実質的に政府の利益を代表している。 チケット収入がなくなったのは無観客にしたためであり、それを強く主張した側に損失補填の責任があると遠回しに言っているのだ。裏返せば、「当然、東京都が穴埋めをするんですよね」と小池知事を牽制しているのである』、さすが「武藤氏」の立ち回り方は巧妙だ。
・『無言の小池知事に代わってオリパラ局長が回答 コロナ対応をうたった「役人言葉」を翻訳すれば?  一方で、東京都側のアナウンスはどうか。7月8日に1都3県の会場の無観客が決定した後、メディアの取材に応じた小池知事は、無言。組織委の大幅減収について語ったのは、都の役人である中村倫治オリンピック・パラリンピック準備局長だった。その発言は以下である。 「コロナの対応という側面もある。関係者と十分に協議したい」 一見、いかにも如才ない役人が言いそうな模範解答のようにも聞こえるが、この「役人言葉」の中にこそ、今後を占うカギが隠されている。都庁OBである筆者が翻訳を試みよう。それが以下だ。 「この1年、コロナ対策で組織委もいろいろと出費がかさんだことでしょう。大変だったと思いますよ。でも、東京都が直接、赤字を穴埋めするというのは、さすがに都民感情もありますし、やりづらい。しかし、コロナ対策という名目であれば、少しは理解も得やすくなるでしょう。いずれにしても、今後、国とバチバチやらなければなりませんが、とにかく、東京都が何らかの形で組織委に助け船を出すことになるでしょうね、あんまり大きな声では言えませんけど……」』、「小池知事」は「無言」だったとはいえ、「中村倫治」氏の言明は「小池知事」の了解を得ている筈だ。
・『組織委は有観客前提でもすでに赤字! 抜け道「収支調整額」で都がこっそり負担  実は、東京都による赤字補填の下地は、すでに出来上がっているのをご存じだろうか。昨年末に発表された組織委の予算には「収支調整額」という見慣れない項目がある。そしてこの項目に150億円という巨費が計上されている。これは一体何か。 発表資料の注意書きには「組織委の経費削減努力や増収努力によっても賄いきれない費用について、東京都が負担するもの」と説明されている。何のことはない、最初から赤字補填の抜け道が用意されていたのである。 ということは、有観客を前提としていた昨年末の段階で組織委の収支はすでに赤字に転落していて、東京都から税金が投入されることが決まっていた。その後無観客開催が決まったが、都はすでに負担増につながる“ルビコン川”を渡っていたのだ。 こんな説明を聞いた覚えのある都民が一体何人いるのだろうか。「そんなの、聞いてないよ!」としか言いようがないではないか。 収支調整額なる裏技に、先のオリパラ局長の発言を重ねてみれば、東京都のスタンスはさらに明確になる。 「東京都はすでに150億円の税金投入を組織委に約束しています。これ以上、追加で赤字の穴埋めをするとなれば、どうにも都民に対して説明が付かない。コロナ対策にかかった経費を東京都が補填させていただきますのでどうか勘弁してください」と、頭を下げるしか方法がないのである。 大変残念だが、都民はさらなる多額の血税が組織委に投入されることを覚悟しなければならない。都民以外の国民にとっては、ただでさえ東京一極集中が批判される中、都が招致した五輪の赤字を、なぜ都民以外が負担しないといけないのかと問われれば、まともな答えが見つからないからだ。 日本人選手のメダルラッシュというつかの間の盛り上がりと引き換えに、都民がこれほど大きな代償を支払うとは、なんと皮肉なことか』、「有観客を前提としていた昨年末の段階で組織委の収支はすでに赤字に転落していて、東京都から税金が投入されることが決まっていた・・・都はすでに負担増につながる“ルビコン川”を渡っていたのだ」、こんな不透明な処理で都民を欺くとは「小池知事」は悪どい。
・『視界に解散・総選挙、責任感はまるでなし トンズラを決め込むであろう小池知事  こうした厳しい東京都の状況をよそに、当の小池知事が見据えているのは「国政復帰」の4文字であることは、おおよそ間違いない。菅義偉政権の支持率が30%台と危機的な水準に落ち込む中、「なんとしても大会を成功」させ、コロナ拡大をワクチンの普及で抑え込んだ先に小池知事の目に入って来るのは、秋の解散・総選挙である。 しかし、五輪開催都市のトップとして責任を全うするとは、事後処理まで確実にやり遂げ、都民に納得のいく説明を行うことではないか。 五輪の大赤字を都民に押し付け、コロナ対策を途中で投げ出したまま、後のことは次の知事さんヨロシクとばかりにトンズラを決め込もうとするとは、一体何ごとか。いつものことだが、小池知事の言動から、政治家として本来有しているべき覚悟や責任を感じることは、みじんもない』、自民党の新総裁に決戦投票で岸田氏が当選、「小池知事」が潜り込む余地は当面なくなった。「事後処理まで確実にやり遂げ、都民に納得のいく説明を行うことで」、「五輪開催都市のトップとして責任を全う」する義務がある。いずれにしろ、都民からみれば、予想以上の負担を押し付けられて、これまできちんと説明してこなかった「小池知事」への怒りが渦巻くことになるだろう。
タグ:「都がすでに“ルビコン川”を渡っている」、とはどういうことだろう。 自民党の新総裁に決戦投票で岸田氏が当選、「小池知事」が潜り込む余地は当面なくなった。「事後処理まで確実にやり遂げ、都民に納得のいく説明を行うことで」、「五輪開催都市のトップとして責任を全う」する義務がある。いずれにしろ、都民からみれば、予想以上の負担を押し付けられて、これまできちんと説明してこなかった「小池知事」への怒りが渦巻くことになるだろう。 「有観客を前提としていた昨年末の段階で組織委の収支はすでに赤字に転落していて、東京都から税金が投入されることが決まっていた・・・都はすでに負担増につながる“ルビコン川”を渡っていたのだ」、こんな不透明な処理で都民を欺くとは「小池知事」は悪どい。 「小池知事」は「無言」だったとはいえ、「中村倫治」氏の言明は「小池知事」の了解を得ている筈だ。 さすが「武藤氏」の立ち回り方は巧妙だ。 「膨大な負の遺産」については、殆ど知らされてないようだ。 「五輪「無観客」の大赤字、東京都は負担の“ルビコン川”を渡っていた」 澤 章 ダイヤモンド・オンライン 「2020年度の一般会計税収は60.8兆円で予想よりも5.7兆円も多くなりました」、こんなにも税収が良かったとは初めて知った。五輪予算の不足分を埋めるのに一部を使うべきだろう 「海外からの観光客をシャットアウトして無観客開催の決断をせざるをえませんでした。 その結果、オリンピックの訪日需要が失われただけではなく、2022年以降、たとえアフターコロナでインバウンドが回復したとしても、少なくとも五輪効果の口コミによる観光客増大効果は得られないことになります。つまり12.9兆円と試算されたインバウンド増大効果は取らぬ狸の皮算用で終わったと考えるべきでしょう」、残念だけどやむを得ない。 「五輪で消費が上向き始めたけれどもそのことで逆にコロナが増加し経済に水を差す結果になった」、なるほど。 「東京五輪の経済効果は30兆円を超える」、と「五輪の新規経済需要だけ積み上げると1.8兆円」との差は、「ほかの経済効果」で「いちばん大きいのが五輪開催に伴う事前のインフラ投資」、なるほど。 今後は「東京五輪開催に関わる」費用負担が問題になる。 「五輪経済効果「ここまでアテが外れた」残念な総括 「おもしろうてやがて悲しき五輪かな」」 鈴木 貴博 東洋経済オンライン 「最初に発生した問題に対して責任の所在をはっきりさせ、適切に処理していれば、次の問題処理の難易度は下がる。だが、最初の問題をうやむやにすれば次の問題処理はさらに難しくなる」、「日本政府が満州事変という軍部の違憲行為(統帥権干犯)を適切に処理していれば、先の大戦は避けられた可能性が高く、同じように国立競技場の問題が発覚した段階で組織のガバナンスを改革していれば、ここまでの事態には至らなかっただろう」、確かに太平洋戦争突入当時との類似点はある。「日本社会が抱える病理は戦後76年たった今でも変わっていない」、恐 問題がよくぞ次々に出てくるものと、呆れ果てた。 「太平洋戦争の開戦に突き進んだ当時と変わらない日本「失敗の本質」」 加谷珪一 Newsweek日本版 (その21)(太平洋戦争の開戦に突き進んだ当時と変わらない日本「失敗の本質」、五輪経済効果「ここまでアテが外れた」残念な総括 「おもしろうてやがて悲しき五輪かな」、五輪「無観客」の大赤字 東京都は負担の“ルビコン川”を渡っていた) (五輪) 東京オリンピック
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暗号資産(仮想通貨)(その19)(仮想通貨マイニング“最後の砦”が崩壊した日 独占ルポ!中国「ビットコイン採掘場」閉鎖の激震、ゴールドラッシュを禁じられた人々の行き先 中国「ビットコイン野郎ども」のしぶとい生き方、情報BOX:中国が仮想通貨全面禁止 背景と行方を探る) [金融]

暗号資産(仮想通貨)については、5月22日に取上げた。中国がマイニングだけでなく、取引を前面禁止したことを受けた今日は、(その19)(仮想通貨マイニング“最後の砦”が崩壊した日 独占ルポ!中国「ビットコイン採掘場」閉鎖の激震、ゴールドラッシュを禁じられた人々の行き先 中国「ビットコイン野郎ども」のしぶとい生き方、情報BOX:中国が仮想通貨全面禁止 背景と行方を探る)である。

先ずは、8月4日付け東洋経済Plus「仮想通貨マイニング“最後の砦”が崩壊した日 独占ルポ!中国「ビットコイン採掘場」閉鎖の激震」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/27726
・『突然の政府禁止令により、幻のように消えてしまった中国秘境の「ビットコイン採掘場」。その現場に潜入取材を試みた。 中国の奥地にある秘境では、日夜ビットコインのマイニング(ブロックチェーンに取引記録を残すための膨大な量の計算作業、「採掘」とも言われる)が行われてきた。が、これを全面的に禁止する政府方針により、一夜にしてビットコインの採掘場がすべて閉鎖されてしまった。 当日の夜、現地ではいったい何が起きていたのか。東洋経済が提携する中国の調査報道メディア「財新」の独占潜入レポートを前編、後編でお届けする。 葉朗(イエ・ラン)は時折、腕時計を見つめていた。2021年6月19日の夜9時になると彼は眉をひそめ、手はわずかに震えていた。そしてWeChatの業務連絡用チャット内で次のように指示を出した。「シャットダウンしよう」 葉朗はぶつぶつと独り言を言っていた。「終わった。全部終わった」。声を詰まらせており、明らかに悔しさをにじませていた。 その前日の6月18日、四川省の国家発展改革委員会とエネルギー局は仮想通貨のマイニングプロジェクトを停止する旨の文書を発表した。この文書は、各市と州の電力会社が6月20日までに26のビットコイン採掘プロジェクトの審査、整理、業務停止を行うよう要求している。 葉朗が所長を務める四川省のアバ・チベット族チャン族自治州黒水県のビットコイン採掘場は、26あるプロジェクトで最初に名前が挙げられていた。 6月19日、恐れと不安を感じていた葉朗は電力会社から送られた文書を受け取った。その文書は同日夜10時までに採掘機(マイニング専用マシン)の負荷圧力をゼロにするよう要求しており、さらに夜12時には電力会社が電源の供給を停止するとしていた。そこで葉朗は電源のシャットダウン時刻を夜9時に設定した。 この最後の一夜は葉朗のビットコイン採掘場にのみ訪れたわけではない。数カ月前からすでに内モンゴル自治区や新疆ウイグル自治区、青海省、雲南省でビットコイン採掘場の整理と閉鎖が立て続けに行われていた。 そして今、中国のビットコインマイニングの“最後の砦”である四川省でも採掘場が崩壊した。ある業界関係者はこれを「中国のビットコインマイニングの“時代の終焉”だ」と総括している』、「数カ月前からすでに内モンゴル自治区や新疆ウイグル自治区、青海省、雲南省でビットコイン採掘場の整理と閉鎖が立て続けに行われていた」、かなり時間をかけて閉鎖させたようだ。
・『葉朗のゴールドラッシュの旅  ビットコインはマイニングの計算能力に応じて発行される仮想通貨の一種だ。新たなビットコインを発掘するためのマイニングマシンは24時間止まることなく膨大な量の計算処理を実行し、ブロックチェーンの記帳を行う権利を獲得する。誰かが記帳をして生成されたビットコインはその人のものとなる。 中国は全世界のビットコインマイニング計算能力の65%を占め、第2位のアメリカの7%を大きく引き離している。さらに驚くべきは、中国のビットコイン採掘場は一般的に水力発電が行われている辺鄙な山や川の近くに建設されていることだ。原始的な土地とブロックチェーンという現代文明が融合し、不思議で怪奇な光景を作り出している。 ビットコイン採掘の核となるのはマイニングマシンの計算能力だ。そしてその計算能力には膨大な量の電力が必要なため、安価な電力が何よりも重要になる。四川省西部の横断山脈の高く険しい山の間に位置するアバ・チベット族チャン族自治州、カンゼ・チベット族自治州、涼山イ族自治州は、土地の高低差がもたらす豊富な水力発電によって、ビットコイン採掘のゴールドラッシュを求める人々にとって聖地となった。 40歳の葉朗は自身を「開拓者」と呼び、ビットコイン採掘場への思い入れは並々ならぬものがある。もともと葉朗は安徽省安慶市のある街で14年間、インターネットカフェを営んでいた。4軒のネットカフェから毎年30万元(約500万円)の収入を得ており、悠々自適な暮らしを送っていた。 2017年、葉朗はある不思議な現象を目の当たりにする。彼が購入したビデオカードの値段が高騰し、数カ月使用したビデオカードが高値で買い取られたのだ。「古いビデオカードも新品として売ることができ、さらに高く売れた」。葉朗が不思議に思い理由を尋ねてみると、なんとそのビデオカードを使ってETH(仮想通貨の一種であるイーサリアム)のマイニングができるというのだ。 2018年、葉朗は地元の3つのネットカフェを畳み、残る1軒の運営を妻に引き継いだ。その後、不動産を担保に入れ、親戚から借金をして300万元(約5000万円)を携えてビットコインマイニングの聖地である四川省へ向かった。 そこで葉朗は友人が建設した小型のビットコイン採掘場を視察した。2000台のマイニングマシンとファンが同時にブンブンと回転している様子を初めて目にして驚き、興奮を覚えた。安価な電力を手に入れた者こそが、ビットコイン採掘場を建設できるのだ、と。 その後、葉朗は黒水県の電力資源が豊富であると聞きつけた。当初、現地に人脈がなかった彼は友人を引き連れて、黒水県の政府部門や国営の電力会社を駆けずり回った。毎日のように午前1時に成都を車で出発し、早朝に黒水県に到着する。そして一番乗りで政府機関や(国営電力会社の)国家電網の発電所の門前に待機し、コミュニケーションを取って関係を築いたのだ。 2019年4月、葉朗はついに黒水県晴朗郷の発電所との交渉を成立させた。4月にビットコイン採掘場の建設を開始すると、1カ月後に完成した。しかし、本来は5月末に電力供給を開始する取り決めをしていたが、マイニングマシンを納入した後も遅々として電力は供給されなかった。 葉朗は辛抱強く半年以上待ったが、運用保守スタッフは次々と採掘場を去り、最後に残ったのは彼と1人のスタッフだけだった。これは葉朗にとっては最もつらい時期だった。毎日マイニングマシンを見守る以外はすることがなく、1日に煙草を3箱、吐き気を感じるまで吸い続けた。 2019年11月、幸運なことに友人が葉朗に現地で豊富な人脈を持つ劉偉民(リウ・ウェイミン)を紹介してくれた。当時、劉偉民は黒水県の国営発電所と協力しビットコイン採掘場を建設する準備をしており、葉朗はその所長を任されることとなった』、「中国は全世界のビットコインマイニング計算能力の65%を占め、第2位のアメリカの7%を大きく引き離している」、圧倒的なトップだったようだ。「さらに驚くべきは、中国のビットコイン採掘場は一般的に水力発電が行われている辺鄙な山や川の近くに建設されている」、電力代が安い地域を選べば当然だ。
・『中国マイニング界のボス  葉朗と同い年の劉偉民は業界でも認められているビットコインマイニングのボスだ。劉偉民によれば、世界では毎日平均して約900枚のビットコインがマイニングされているが、彼のビットコイン採掘場でマイニングされたビットコインはピーク時に1日70~80枚にのぼったという。四川でのビットコインマイニングに使われる電力の8分の1が劉偉民のビットコイン採掘場で消費されていたという。 2019年11月、葉朗はスタッフを率いて毛爾盖河(黒水県の大きな河川)に隣接する果樹園に敷地面積3.6万平方メートル、のべ床面積1万平方メートルの大型ビットコイン採掘場を建設した。このビットコイン採掘場には主に劉偉民が投資し、葉朗も約10%の資金を投じた。彼はさらに自ら100台のマイニングマシンを購入し、ビットコイン採掘場に設置した。 ビットコイン採掘場に電力が供給された初日、マイニングマシンの始動テストをしているとコンデンサーの1つが爆発した。葉朗は当時近くに立っており、爆発してから一瞬で巨大な火の玉が天井に上るのを目にした。彼は首を振り、すべてが終わったと思ったが、後ほど修理と検査を行うと問題はなかった。 冷や汗をかきながらビットコイン採掘場を開業すると、今度はコロナ禍がやってきた。葉朗は数万台のマイニングマシンの稼働の管理をしつつ、現地政府と連携してビットコイン採掘場の50名以上のスタッフの感染対策も行わなければならず、春節(中国の旧正月)は採掘場で過ごすことになった。 しかしビットコイン採掘場が稼働して以降は毎日口座に入金がされていたため、葉朗は懸命に働いた。2020年末までに、葉朗はマイニングマシンの売買とビットコインの投機によってある程度の金を稼ぎ、債務を返済し、生まれ育った安慶市で家を購入した。 2020年10月、四川は渇水期に入り、電気料金は豊水期の6倍近くまで一気に値上がりしたため、マイニングマシンは新疆に移転された。これは渡り鳥のように安い水力発電を求めて移動するマイニング業界の特性だ。 葉朗は黒水県にとどまってビットコイン採掘場の拡張工事を担当することとなった。2021年4月末までに工事が終了し、採掘場の広さも2倍となった。再び豊水期がやってくると新疆で使われていたマシンが次々に黒水県のビットコイン採掘場に搬入された。 この時期が葉朗のビットコイン採掘場のピークだった。鉄骨を使って建てられた6つの簡易施設には8万台のマイニングマシンが設置され、昼夜を問わず稼働した。マイニングマシンの蛍光灯は青緑色にピカピカと点滅し、冷却ファンのゴーゴーという巨大な騒音は、採掘場の外で激しく流れる川の音をかき消していた。 ※後編『中国「ビットコイン野郎ども」のしぶとい生き方』に続く』、「四川は渇水期に入り、電気料金は豊水期の6倍近くまで一気に値上がり」、そんなに変動が大きいとは初めて知った。「渡り鳥のように安い水力発電を求めて移動するマイニング業界の特性だ」、料金の差が大きいので、「移動」してもペイするのだろう、

次に、この続き、8月4日付け東洋経済Plus「ゴールドラッシュを禁じられた人々の行き先 中国「ビットコイン野郎ども」のしぶとい生き方」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/27727/?utm_campaign=EDtkprem_2107&utm_source=edTKO&utm_medium=article&utm_content=444612&login=Y&_ga=2.81924758.1251392280.1632727852-706020061.1632727851#tkol-cont
・『突然の政府禁止令により、幻のように消えてしまった中国秘境の「ビットコイン採掘場」。その現場に潜入取材を試みた。 豊富な水力発電資源によってビットコイン採掘の聖地となった四川省奥地の採掘場。だが、過熱するマイニングブームはある国家戦略と大きく矛盾することとなる。 世界最大規模の採掘労働者とマイニングマシンはいったいどこへ向かうのか。東洋経済が提携する中国の調査報道メディア「財新」の独占潜入レポート後編をお届けする。 ビットコイン相場は上り調子にあり、多額の資金がマイニング業界に投入された。そのため、マイニングマシンの量もどんどんと増え、電力需要も次第に大きくなった。 ケンブリッジ大学の推計によれば、2021年5月10日までに全世界でマイニングのために消費された年間電力量は約149.37テラワット時であり、マレーシアやウクライナ、スウェーデンなどの国の電力消費量を上回っている。 驚くほどの電力消費量に対して、中国の中央政府が提唱する「カーボンニュートラル」の国家戦略(編集注:中国は2060年までに二酸化炭素の排出量を実質ゼロにすると宣言)は明らかに相反するものとなった。2021年3月1日、内モンゴル自治区の発展改革委員会は、仮想通貨マイニングプロジェクトを全面的に停止し、4月末までにすべての事業を終了すると言及したのだ。その後、青海や新疆、雲南なども同様の方針を発表した。 相次いでビットコイン採掘事業の停止が叫ばれている最中、業界でも認められているビットコインマイニングのボス、劉偉民は「何とかこの災難を乗り切ることができるだろう」と考えていた。 内モンゴルや新疆などの土地でマイニングに使われている電力は主に石炭火力発電に頼っており、消費エネルギーが多く環境汚染も深刻だ。 一方、劉偉民が拠点を置く四川のマイニングは主に棄水を利用した水力発電(編集注:発電能力はあるものの送電網や系統連系の問題から利用できない水力発電)に頼っている。これは一種の再生可能エネルギーと言える。さらに1日当たり数百万キロワットの電力を消費するビットコイン採掘場は現地の税収増と経済発展にもつながる、地方政府にとってもうってつけの上顧客だ。 劉偉民が本格的に不安を感じたのは5月21日だ。国務院の金融安定発展委員会がビットコインのマイニングと取引行為を取り締まることを明確に提案したのだ。これは国家レベルの禁止命令であった。数日後、四川省はビットコインマイニングの停止を命じ、劉偉民のビットコイン採掘場も操業を停止させられた。 この期間中、劉偉民はある政府組織の会議に出席した。会議における四川省の地方政府の態度ははっきりせず、マイニングが地域経済にもたらすプラスの効果を認めつつも、ビットコイン採掘プロジェクトを徐々にやめさせる計画を立てていた。それでもやはり、すぐさま停止を命じるというわけではなかった。 6月初旬、劉偉民のビットコイン採掘場は一度生産を再開し、関連する政府部門からの干渉も受けなかった。劉偉民は「山場は超えて、少なくとも豊水期までは撤退を免れた」と考えていた。 しかし最終的に、6月18日に四川省発展改革委員会と四川省エネルギー局が仮想通貨マイニングプロジェクトの禁止を命じた。中国のビットコインマイニングの“最後の砦”が打ち崩されたのだ』、「四川のマイニングは主に棄水を利用した水力発電」だが、「内モンゴルや新疆などの土地でマイニングに使われている電力は主に石炭火力発電に頼っており、消費エネルギーが多く環境汚染も深刻だ」、「マイニング」は「「カーボンニュートラル」の国家戦略・・・は明らかに相反するもの」なのが今回の禁止につながったようだ。
・『マイニングマシンの最後の咆哮  6月19日、中国ビットコインマイニングの最後の一夜を取材するため、財新記者は成都から高速道路を通って山々が険しい四川西部に向かった。落石や土砂崩れの発生率が高い危険な地域を10時間近く運転した後、夜8時ごろに葉朗が所長を務めるビットコイン採掘場に到着した。 2階建ての建屋の中には数万台のマイニングマシンが整然と、そしてびっしりと並べられ、最後の雄叫びを上げていた。ビットコイン採掘場に入るとすぐに、迫りくる熱波と騒音に頭がふらついた。2000台の大出力のファンが回り続けてはいるものの、室内温度は40度を超え、騒音も100デシベルを超えていた。そばにいる人と会話するのにも声を張り上げなければならなかった。 夜9時、葉朗はマイニングマシンの運用保守スタッフに順番にマシンの電源を切るように命じた。すると青緑色のディスプレイの灯りは徐々に消え、騒音も次第に小さくなっていった。10時になろうとする頃には、採掘場内の数万台のマイニングマシンはすべて稼働を停止した。ビットコイン採掘場全体に静寂が訪れ、残ったのは生活用のライトが放つかすかな光だけだった。 葉朗は初めて山奥に広がる満点の星空や採掘場前を流れる水の音、鮮明に聞こえる近くの農家の犬の鳴き声に気が付いた。突如として訪れた静けさに、彼は慣れないようだった。「私はやはりマシンの轟々となる音が好きだ。あれはお金を刷る音。私たちの業界では"機械一鳴、黄金萬両"という言葉がある」と葉朗は言う。 夜11時、“採掘労働者”たち、すなわちマシンの運用保守スタッフたちが揃って数キロ先の街にあるレストランで夕食をとることにした。最後の夜を記念するためだ。2020年にオープンした街の6つのレストランは、深夜にもかかわらず客でいっぱいになった。 普段は寡黙な採掘労働者たちも、この最後の夜には感情的になりながらビールを飲み、不透明な未来について語り合った。ある1990年代生まれの労働者はジョッキのビールを一気に飲み干すと顔を赤くし、「1つの時代が終わった。オレは失業した」と大声で言い放った。 6月25日、最後まで採掘場に残った葉朗は施錠をし、成都に戻った。「このビットコイン採掘場は更地にされるだろう。跡形も残さず、元から何も存在しなかったかのように」』、「街の6つのレストラン」も閉鎖されることだろう。
・『中国の「採掘労働者」たちはどこへ?  中国のビットコインマイニングの時代が終わった。では、残った膨大な数のマイニングマシンと大勢の採掘労働者たちはどこへ行くのか。 劉偉民は「不幸中の幸い」という気持ちを抱えていた。彼は資金の半分を医療、不動産、ゲーム、レジャーなどの分野に分散投資していた。しかし劉偉民はビットコイン業界から退こうとは思っていなかった。マイニングマシンを海外に持ち出すというアイデアがあったからだ。 6月22日、劉偉民が取材を受けている際にも、彼のオフィスには有力な鉱山主(マイニングオーナー)たちが一堂に会し、マイニングマシンの海外持ち出しについて激しく討論していた。また、彼のスマホには同業者からの問い合わせが絶えず届いていた。 「ロシアに資源がありますが、行きますか?」「アンゴラはどうでしょうか?」 劉偉民は「マイニングマシンを海外に持ち出すのには重要なポイントが2つある。1つ目は安くて安定した電気料金、2つ目は安全性だ」と話す。彼は2回目の新型コロナのワクチン接種を終えてから、チームを率いて海外視察に行こうと計画している。 劉偉民の会社には180人強のスタッフが在籍し、その内100人以上がマイニング事業に直接従事している。彼は海外でマイニングスタッフとして働くことに意欲的なスタッフを選別して、海外へ派遣しようと考えている。「これは新しい冒険の旅だ」と、劉偉民は言う。 葉朗は成都で情報を待っている。彼は劉偉民がビットコイン採掘場を新設するために海外に人を派遣するのであれば、すぐに飛び乗るつもりだ。「この業界に居続けさえすれば、きっとチャンスはある」。 本文:蕭輝 写真:丁剛 ※『財新周刊』7月12日発売号より抄訳、葉朗と劉偉民は仮名』、次の場所は「ロシア」、「アンゴラ」、どこなのだろう。「中国人」の逞しさは大したものだ。

第三に、9月27日付けYahooニュースが転載したロイター「情報BOX:中国が仮想通貨全面禁止、背景と行方を探る」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/407f247ec23aafbd885cf0fcec1b6f56e024a1f1
・『中国当局がついに暗号資産(仮想通貨)に関連する全ての取引と採掘(マイニング)を禁止すると発表した。これによりビットコインをはじめとする主要仮想通貨の価格は軒並み下落し、株式市場で仮想通貨やブロックチェーン技術の関連銘柄にも売り圧力がかかっている』、興味深そうだ。
・『◎最新状況 中国人民銀行(中央銀行)や銀行、証券監督当局、国家外為管理局など計10省庁は、「違法」な仮想通貨活動の一掃に向けて協力していくと表明した。 これまで仮想通貨に関する規制は徐々に厳しくなってきたが、とうとうあらゆる活動が非合法化された。そればかりか、この禁止ルールを実行面でさらに徹底する方針も打ち出された。 人民銀は、仮想通貨取引の促進を違法行為とみなした上で、中国国内からの海外プラットフォームを利用した取引など、違法行為に関与した人物・団体は誰でも厳罰に処すと宣言した。国家発展改革委員会は、マイニング事業を段階的に消滅させるため、全国的な取り締まりを開始するとしている』、「違法行為に関与した人物・団体は誰でも厳罰に処すと宣言」、厳しい措置だ。
・『◎規制強化の道のり 中国では仮想通貨は法定通貨として認められていない。銀行システムも、仮想通貨を受け入れず、関連サービスを提供していない。 2013年には政府がビットコインを仮想コモディティーと認定。当時、個々人がオンライン取引に参加することは可能だった。ただ、同年の終盤になって人民銀などの規制当局は、銀行と決済サービス企業がビットコイン関連サービスを提供するのを禁じた。 17年9月になると、当局は投資家保護と金融リスク抑制を理由に、イニシャル・コイン・オファリング(ICO、仮想通貨の新規発行による資金調達)を禁止。この規制によって仮想通貨取引プラットフォームが仮想通貨と法定通貨を交換することも不可能になり、大半のプラットフォームは閉鎖して海外に拠点を移した。 同規制では、金融機関と決済サービス会社がICOと仮想通貨について、口座開設や登録、トレーディング、決済、清算などのサービスを展開することもできなくなった。 人民銀行によると、18年7月までには、88の仮想通貨取引プラットフォームと85のICOプラットフォームが市場から撤退した』、ずいぶん段階的に規制を強化してきたようだ。
・『◎厳格化され続ける理由  過去1年間にビットコインなど主要仮想通貨の価格が高騰すると、中国では仮想通貨取引が再び活発化。投資家は既存の規制の抜け道を探り続けた。折しも政府が独自の中央銀行デジタル通貨(CBDC)を開発し、主要国で初めての導入を目指していた局面だった。 今年初めには、金融機関と決済サービス企業に対する仮想通貨関連サービス規制をさらに強化している。業界向けのある指令は、投機的なビットコイン売買が再燃し、「人民が保有する資産の安全性」が損なわれるとともに、通常の経済・金融秩序に混乱をもたらしていると指摘した。 中国の多くの投資家は足元で、海外に拠点を移した中国系取引所が所有するプラットフォーム(Huobi、OKExなど)を利用していた。仮想通貨の国内店頭市場もまた活況を呈し、一時動きが止まっていたソーシャルメディアのチャットルームも復活した。 バイナンスやMXCなど中国を重視した取引所では、中国の個人投資家がほんの数分でオンライン口座を開設することが可能。店頭市場で個人同士が、人民元と仮想通貨の交換を行うのも手助けしている。 これらの取引は銀行もしくはアリペイ、微信支付(ウィーチャットペイ)といった決済サービス企業を通じて行われる。ただ、銀行や決済企業は、違法な仮想通貨関連取引を見つけ出すために、顧客の身元調査を実施するとともに、主要サイトや口座を対象とする監視システムを構築すると約束している』、なるほど。
・『◎取り締まり強化の影響  24日に仮想通貨は値下がりしたものの、5月に中国国務院がビットコインのマイニングを取り締まる方針を示した時ほど下落幅は大きくならなかった。 今後は当局がどこまで違法取引を発見し、プラットフォームを処罰できるかどうか、また、人々がどの程度ルールを守るかが試されることになる。 一部の専門家は、過去の経緯を踏まえると、強い意思を持つ投資家は、引き続き取引できる方法を見つけ出す公算が大きいと話す。 ウォーリック・ビジネススクールのガネシュ・ビスワナス・ナトラージ准教授は「中国の個人投資家は、もはや違法となったオンライン取引プラットフォームを利用できないかもしれない。しかし、仮想通貨ファンドは、海外に移動して運用できるのではないか」と述べた』、9月25日付けの日経新聞は「中国、仮想通貨を全面禁止 人民銀「海外取引も違法」」と伝えたので、「仮想通貨ファンドは、海外に移動して運用できるのではないか」、というのは希望的観測に過ぎるのではなかろうか。
タグ:暗号資産 (仮想通貨) (その19)(仮想通貨マイニング“最後の砦”が崩壊した日 独占ルポ!中国「ビットコイン採掘場」閉鎖の激震、ゴールドラッシュを禁じられた人々の行き先 中国「ビットコイン野郎ども」のしぶとい生き方、情報BOX:中国が仮想通貨全面禁止 背景と行方を探る) 東洋経済Plus 「仮想通貨マイニング“最後の砦”が崩壊した日 独占ルポ!中国「ビットコイン採掘場」閉鎖の激震」 「数カ月前からすでに内モンゴル自治区や新疆ウイグル自治区、青海省、雲南省でビットコイン採掘場の整理と閉鎖が立て続けに行われていた」、かなり時間をかけて閉鎖させたようだ。 「中国は全世界のビットコインマイニング計算能力の65%を占め、第2位のアメリカの7%を大きく引き離している」、圧倒的なトップだったようだ。「さらに驚くべきは、中国のビットコイン採掘場は一般的に水力発電が行われている辺鄙な山や川の近くに建設されている」、電力代が安い地域を選べば当然だ。 「四川は渇水期に入り、電気料金は豊水期の6倍近くまで一気に値上がり」、そんなに変動が大きいとは初めて知った。「渡り鳥のように安い水力発電を求めて移動するマイニング業界の特性だ」、料金の差が大きいので、「移動」してもペイするのだろう、 「ゴールドラッシュを禁じられた人々の行き先 中国「ビットコイン野郎ども」のしぶとい生き方」 「四川のマイニングは主に棄水を利用した水力発電」だが、「内モンゴルや新疆などの土地でマイニングに使われている電力は主に石炭火力発電に頼っており、消費エネルギーが多く環境汚染も深刻だ」、「マイニング」は「「カーボンニュートラル」の国家戦略・・・は明らかに相反するもの」なのが今回の禁止につながったようだ。 「街の6つのレストラン」も閉鎖されることだろう。 次の場所は「ロシア」、「アンゴラ」、どこなのだろう。「中国人」の逞しさは大したものだ。 yahooニュース ロイター 「情報BOX:中国が仮想通貨全面禁止、背景と行方を探る」 「違法行為に関与した人物・団体は誰でも厳罰に処すと宣言」、厳しい措置だ。 ずいぶん段階的に規制を強化してきたようだ。 、9月25日付けの日経新聞は「中国、仮想通貨を全面禁止 人民銀「海外取引も違法」」と伝えたので、「仮想通貨ファンドは、海外に移動して運用できるのではないか」、というのは希望的観測に過ぎるのではなかろうか。
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中国経済(その11)(恒大危機3題:みずほ証券ストラテジスト大橋英敏氏に聞く 中国恒大集団にどれだけの「政府介入」があるのか、不動産ガリバーが陥った「理財商品」の闇 中国「恒大集団デフォルト危機」驚異の全内幕、会社側は依然として「危機を乗り切る」と主張 中国「恒大集団危機」取引先8000社に走る激震) [世界情勢]

中国経済については、9月1日に取上げたばかりだが、今日は、(その11)(恒大危機3題:みずほ証券ストラテジスト大橋英敏氏に聞く 中国恒大集団にどれだけの「政府介入」があるのか、不動産ガリバーが陥った「理財商品」の闇 中国「恒大集団デフォルト危機」驚異の全内幕、会社側は依然として「危機を乗り切る」と主張 中国「恒大集団危機」取引先8000社に走る激震)である。

先ずは、9月22日付け東洋経済Plus「みずほ証券ストラテジスト大橋英敏氏に聞く 中国恒大集団にどれだけの「政府介入」があるのか」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/28269
・『中国恒大集団の債務のデフォルト懸念が高まり、株価などに動揺が広がっている。 「中国恒大集団はリーマンショックの再来を招くか」で、みずほ証券チーフクレジットストラテジストの大橋英敏氏は、中国国内で問題が処理されるというのがメインシナリオであり、国際金融市場はリーマンショック級の危機に陥ることはないが、株価下落などの一時的な混乱はありうると指摘した。 今回は、大橋氏に具体的に中国恒大集団で想定される処理方法、中国政府の経済政策について聞いた(Qは聞き手の質問、Aは大橋氏の回答)』、株式市場には下記のように影響が僅かながらも出ている。
・『政府や中央銀行による対応が始まっている  Q:中国恒⼤集団をめぐる信⽤不安からニューヨーク市場で株価下落が続き、9月21日の東京市場も日経平均株価で前営業日比660円下げました。ただ、まだ下げは限定的とも見えます。 A:米ドル建て社債の利払いが9月23日なので注目されている。中国政府は一部金融機関に債務返済期限の延長を求めるなど関与を始めており、社債権者と中国恒大集団との交渉も始まっているとみられ、債務のデフォルトは秩序だった形ですでに始まっている。また、中国人民銀行(中国の中央銀行)は季節的な流動性低下の時期でもあり、緊急の短期資金供給を行っている。 先日も述べたとおり(中国恒大集団はリーマンショックの再来を招くか)、中国政府は中国恒大集団の無秩序なデフォルトや保有資産の投げ売りによる金融システム不安の誘発、それを増幅させうる不動産市場の急落はさまざまな手段を使って回避するとみている。 社債は長年B格クラスのハイイールド債で、銀行や保険会社などの金融システム上重要な投資家が大量に保有している可能性は極めて低い。保有者は再建後の値上がりを狙って買うディストレス・バイヤーやハイイールド社債インデックスなどをトラックする投資信託とみており、デフォルトによる換金売りも限定的とみている』、「債務のデフォルトは秩序だった形ですでに始まっている」、「中国政府は中国恒大集団の無秩序なデフォルトや保有資産の投げ売りによる金融システム不安の誘発、それを増幅させうる不動産市場の急落はさまざまな手段を使って回避するとみている」、そこまでコントロールできるのであれば、問題は少なそうだが・・・。
・『Q:中国恒大集団の基本的な財務内容は以下の通りですが、総負債はもっと大きいとの報道もあ「りますね。 【中国恒大集団の財務状況】有利子負債残高(2021年6月末) 5718億人民元(約9.8兆円) 純有利子負債(2021年6月末) 4101億人民元(約7.0兆円) 銀行借り入れが多く、社債発行残高は192億3600万米ドル、1.01億香港ドル、合計で約2.1兆円 格付け 長期間シングルB(ジャンク級)だったが、現状ではトリプルC(デフォルトを織り込み済み) 負債総額は30兆円を超すとの報道があるが、これはいわゆる総負債で有利子負債との差は円換算で24兆円あるが、そのうち16兆円強が買掛金、4兆円弱が契約上の負債となっている。 買掛金は建設中の物件(住宅など)の施工業者への支払いが含まれ、契約上の負債には顧客がすでに支払った物件などへの前払い金などが含まれるとみられる。なお、理財商品(注)はこれらには含まれないとみている』、「格付け」は既に「トリプルC(デフォルトを織り込み済み)となっているようだ。
(注)理財商品:小口で短期の投資信託のような集団投資スキームの商品(Wikipedia)。
・『秩序ある債務デフォルトの取り組み  Q:政府が目指す処理とは具体的にどのようなものでしょうか。 A:まず、中国恒大集団を政府管理下に置き、業務の停止や経営陣の交代などを行い、次に、完成していない住宅への前払いなどをした個人の救済を優先しつつ、中国恒大集団が保有する資産を相応の時間をかけて流動化することで、不動産市況への影響を最小限にする、という形をとるだろう。不動産などの資産処理については、中央政府・地方政府系の不動産開発会社が関与すると想定される。 Q:金融システムには波及させない、と。 (筆者の略歴はリンク先参照) 中国恒大集団は「Principal Bankers」(主取引銀行)として 20 行を開示しているが、その大半が中国政府もしくは地方政府が主要株主の金融機関だ。 民間銀行も実質的に政府による管理下に置かれているので、仮に多額の損失が発生して資本不足の懸念が生じれば、中央もしくは地方政府による公的資金注入が行われる。先般も述べたとおり、その他民間金融機関についても「大きすぎて潰せない」(too big to fail)に該当し、破綻による経済システム(不動産価格など)への影響が甚大なものと判断すれば、公的資金を投入するだろう。 したがって、リーマンショック級の危機にはなる可能性は低く、短期的な相場下落は押し目買いの好機になるとみている』、「リーマンショック級の危機にはなる可能性は低く」ようであれば、一安心だ。
・『中国の不動産市場全般への懸念  Q:リーマンショック級の危機はないとしても、グローバル金融市場の短期的な動揺は想定されうるとのこと。具体的なリスクチェックはどうなりますか。 A:3つの要因があると思う。 第1に中国恒⼤集団のみの問題で⽚付かないことへの懸念だ。 不動産はどの国でも価値・価格および関係者の数の双方から、最大の資産クラスだ。また、株などの有価証券とは異なり相対取引が主なので、実態が把握しづらい。しかも、重要なのは不動産取引と金融取引(貸借取引)が一体であることだ。 このため、金融機関の貸出金に占める不動産関連の与信はほかのセクターに比べてどうしても、多くなりがちだ。なので、不動産価格に対する懸念は、金融システム不安に直結する。 ただ、現状では8月までで住宅価格の上昇率は鈍化しているが、急落していない。一方で、不動産の場合、実態把握に時間、おそらく数年程度がかかることも理解しておきたい』、「不動産価格に対する懸念は、金融システム不安に直結する」、ので、現在は「急落していない」とはいえ、要注意だ。
・『数値基準の独り歩き  中国政府が昨年8月に導入した「3つのレッドライン」という「数値基準」がもたらす波及効果が懸念される。 3つのレッドライン ①資産負債比率(Liability to Asset)を70%以下とする、②ネットの資本負債比率(Net DER)は1倍以下、③現預金短期有利子負債比率(Cash Coverage of ST Debt)を1倍以上とする、という3つの指標。これらいずれも満たせていない企業の1つが中国恒大集団だった。 かつて銀行にバーゼルⅠという自己資本比率規制が導入されたころ、日本でも銀行の自己資本比率のランキングが流行し、その結果、数値が独り歩きして、金融機関の一部はレピュテーションリスクに悩まされた。 中国政府が「3つのレッドライン」を導入したのは、不動産開発業者に対する規制強化というよりは、住宅を含む不動産が一種の「社会インフラ」として重要であり、乱開発による不動産価格の上昇を防ぐことは重要な課題であること、不動産開発業者がすでに「大きすぎて潰せない」という領域に入りつつあったため、財務健全性指標を導入することで不動産開発業者の信用力を安定化させること、が目的だった。 しかし、バーゼルⅠの例と同様に、「数値基準」により市場は否応なく企業を選別する。今回の中国恒大集団の資金繰り急悪化もそうしたものだ。「3つのレッドライン」を満たしていない大手不動産開発業者はほかにも数社は存在すると報道されている。市場が「魔女狩り」を行えば、不良債権が発生し、さらに担保資産価値の下落を通じて潜在的な不良債権が増加するという懸念が高まり、金融システム全体への不安が生じる可能性は否定できない。 ただ、私はこのような状態も中国政府は想定しており、危機的な局面になれば、不動産取引の一時的な停止、過剰在庫の政府系不動産開発業者による買い取り、資本不足に陥った金融機関の資本増強策の実施、短期金融市場への潤沢な流動性供給、などを矢継ぎ早に導入すると見ている』、「中国政府は」「危機的な局面になれば、」様々な対策を「矢継ぎ早に導入する」、強権的な政府の強味だ。
・『2015年のように先進国の金融市場の否定的反応も  Q:市場がそれらをどう受け止めるかどうかも重要ですね。 2つめがその問題だ。中国政府の「拙速」な対応に市場がネガティブに反応するリスクもある。 例えば、2015 年 8 月に突然実施された中国元の対米ドルレートの切り下げをきっかけとした、中国株式市場の暴落だ。その際に中国政府が矢継ぎ早に投入した株価維持策(空売り禁止などの措置)を先進国の金融市場は好感しなかった。自由取引を阻害する行為であるとの反発があり、また、中国経済に対する悲観的な見方を高めてしまったためだ。ただし、当時も、中国政府による株価維持策はその後奏功して、2018 年前半まで株価は持続的に回復したことも指摘しておきたい。 第3には先般も述べたグローバル⾦融市場の「鈍感」と「過剰反応」だ。 中国国内の変化というのはわかりにくいので、グローバル金融市場およびグローバルクレジット市場は、大半の局面では鈍感だが、いったん心配し始めると過度に悲観的になる傾向がある。 2021 年以降は中国のクレジット・インパルス(総債務残高対 GDP 比の前年差)がマイナスに転じており、中国政府は与信引き締めによる景気減速を政策として実施している可能性が高く、これが明らかになってくると市場が過度に悲観的になるかもしれない』、「中国国内の変化というのはわかりにくいので、グローバル金融市場およびグローバルクレジット市場は、大半の局面では鈍感だが、いったん心配し始めると過度に悲観的になる傾向がある」、要注意の市場のクセだ。
・『習近平は社会主義への回帰を志向  Q:中国政府の中長期的な政策姿勢をどうみていますか。 A:「3つのレッドライン」導入の狙いは前述の通りだが、Ant Group の上場延期や実質的な企業解体、オンライン教育事業の NPO(非営利組織)化、IT・ネット関連企業への規制強化など、規制強化は矢継ぎ早だ。これらは必ずしもアメリカを意識しただけの動きではないようにみえる。 私は相次ぐ規制強化の背景には、第1に習近平主席による毛沢東思想への回帰、つまり社会主義社会への回帰、第2に経済成長率のいっそうの減速への備え、および、第3に2022年秋の中国共産党大会での 3 期目の続投に向けた国民や共産党員へのアピール、の3つがあるとみている。  これらは、「共同富裕」のスローガンの下で一元化されているのではないか。すなわち、資本主義国がみてきた過去数十年の中国経済と、今後の中国経済は体制・仕組みが大きく変化する可能性があることを頭の片隅に置いておきたい。 例えば、日米欧などの資本主義国の側は、10 億人以上の人口と広大な国土を有する現在の中国共産党が、今後も安定的に体制を維持するためには、何よりも経済成長が重要と「理解(期待)」している。だがこの見方は今後変更を迫られるのではないか。依然として確信ではなく不透明性も高いが、このような視点から中国という国を観察することも重要だと考えている』、「資本主義国がみてきた過去数十年の中国経済と、今後の中国経済は体制・仕組みが大きく変化する可能性があることを頭の片隅に置いておきたい」、その通りなのかも知れない。

次に、9月23日付け東洋経済Plusが転載した財新編集部「不動産ガリバーが陥った「理財商品」の闇 中国「恒大集団デフォルト危機」驚異の全内幕」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/28272
・『中国の大手不動産企業「恒大集団」の動向を世界中が注視している。背景にはいったい何があったのか。 中国の不動産大手、恒大集団(エバーグランデ)の巨額債務問題が世界の金融市場を揺るがせている。恒大集団の2020年のグループ売上高は5072億元(約8.6兆円)と民間の不動産企業の中で最大手級だ。 高いレバレッジをかけた大規模住宅開発で飛躍的に成長を遂げ、買収したプロサッカークラブの運営やEV(電気自動車)、ミネラルウォーター事業などに多角化。一方、その負債総額は33兆円に膨張し、資産運用商品の償還遅延事件をきっかけに経営危機が顕在化した。 目先は社債などの償還ラッシュを乗り切れるかが世界から注目されている恒大集団だが、問題の根源には同社の極めて特異な資金調達構造があった。中国の調査報道メディア「財新」の特集はその暗部に切り込んでいる。特集記事を前編、後編でお届けする。 深圳市南山区にある高さ202メートルの巨大ビル。この場所が現在、世界の金融市場を揺るがす暴風の中心となっている。 1~2カ月前から、この場所には「債権回収を求める」と書かれた横断幕を掲げる施工業者やサプライヤー、さらには給料を受け取っていないという農民工(出稼ぎ労働者)たちがひっきりなしに現れるようになった。 彼らが債権を回収しようとしている相手は、フォーチュンの「グローバル500ランキング」で122位にランクインした中国の大手不動産企業――恒大集団だ。恒大集団は1996年に広州で創立され、2016年に本社を深圳に移している。 本社ビル前の債権回収騒動は、2021年9月8日以降に急増した。この日、恒大集団傘下の恒大金融財富管理(以下、「恒大財富」)が、自社で販売していた理財商品(資産運用商品)の償還を延期すると発表し、数十万人の投資家たちが一瞬にして大混乱の渦に巻き込まれることとなったのだ』、「理財商品(資産運用商品)の償還を延期」、「投資家」が「大混乱の渦に巻き込まれる」のはやむを得ない。
・『投資家が恒大集団の本社に集結  9月10日、恒大集団の創業者である許家印前会長は「満期を過ぎたすべての理財商品について、できるだけ早く全額の支払いを行う」と公言した。それでも、投資家が権利保護を叫ぶ声を止めることはできなかった。中国全土から投資家たちが深圳に足を運び、恒大集団の本社オフィスに集結したのだ。 財新の調査によると、9月12日と13日の2日間だけで、深圳のほかに広州、西安、済南、成都、南昌など多くの都市で、投資家たちが恒大集団支社の幹部を追い回す事案が発生している。中でも南昌支社の幹部は、300人以上の投資家たちによってホテルに48時間も閉じ込められた』、「恒大集団」の「投資家」への説明が不十分だからだろう。
・『未償還の理財商品は少なくとも6800億円  複数の情報源から得た情報によると、恒大財富の未償還の理財商品は控えめに見積もっても400億元(約6800億円)にのぼる。恒大財富の杜亮社長は投資家に対して、「理財商品が一気に償還されれば、恒大集団の受けるプレッシャーは非常に大きくなる」と話した。 投資家の人数は不明だが、その多くが恒大集団の関係者である。恒大集団の20万人の社員は、日常業務の一環として恒大財富で一定額の理財商品を購入している。また社員たちは恒大集団の取引先と不動産オーナーたちにもこの理財商品を購入するように勧めていたほか、親戚や友人たちにも販売してきた。 次から次へと発生する債権回収騒動は、恒大集団の経営危機の一端にすぎない。恒大財富が理財商品の償還延期を発表する1カ月前、恒大集団の各地の子会社は一部の事業プロジェクトの権利を恒大財富に担保として差し入れ資金を調達。その金額は200億元(約3400億円)を超えていた。 その目的は「保交楼(住宅の引き渡しを保障すること)」だ。恒大集団はこれまで多額の工事費用の支払いを延滞していたため、多くの建設プロジェクトが停止を余儀なくされていた。8月の恒大集団の売上高は前年同月比で26%減少しており、800以上あるプロジェクトの内、500以上が停止状態にある。 現在、恒大集団の引き渡しが済んでいない住宅は、少なくとも数十万戸あり、引き渡しを完了するには最低でも数千億元(数兆円)の資金が必要となる。9月1日、グループの中核事業会社である中国恒大の8人の副総裁が住宅引き渡しの専門チームを率いて、「軍令状」(任務を果たせなかった場合は処罰を受け入れるという誓書)に署名をした。 それからわずか1週間後、恒大財富が償還の一時停止を発表したため、恒大集団はすぐさま住宅の引き渡し保障が先か、理財商品の償還保障が先か、という板挟みの窮地に立たされることとなったのだ』、「恒大集団の20万人の社員は、日常業務の一環として恒大財富で一定額の理財商品を購入している。また社員たちは恒大集団の取引先と不動産オーナーたちにもこの理財商品を購入するように勧めていたほか、親戚や友人たちにも販売してきた」、「社員」たちは自分の利害だけでなく、「取引先と不動産オーナーたち」や「親戚や友人たち」にも売った責任を感じているようだ。
・『「超收宝」の本当の使い道  「給料の大部分を恒大の理財商品に投じているんだ」 この危機の嵐の中、真っ先に自らの権利保護に動いたのは恒大集団の社員たちで、中でも幹部たちの動きが目立った。彼らの多くは恒大集団に10年以上勤めており、その個人資産は会社の理財商品と深いつながりを持っている。 不動産企業の経営が順風満帆であった時期においては、社員によるこうした投資はwin-winなものであり、不動産企業が様々なルートから資金調達をする1つのモデルにもなった。そして恒大集団はこのモデルを極限まで活用したのだ。 恒大集団の資金管理運営センターの元社員によれば、不動産企業が融資を希望するとき、金融機関は毎回多くの条件を提示するという。そして、(その条件の1つとして)恒大集団の幹部個人からも投資を募り、不動産プロジェクトと紐づけることで、リスク管理措置の1つとしていたのだ。 「こういったときは必ず、恒大集団は下部組織に資金調達任務を命じる。幹部が自ら出資するか、下部組織の社員たちが手分けして資金を出し合う。各部門に目標が存在するんだ」(資金管理運営センターの元社員) 中でも幹部向けの資金調達用の理財商品は「超收宝」と呼ばれている。2017年5月、恒大集団の社内では「超收宝」の第6期が発行され、その半年後に第7期が発行されていた。 しかしごく少数の従業員だけが「超收宝」の本当の使い道を知っていた。2017年5月と11月、恒大集団はプロジェクト資金として中信銀行深圳支店から融資を受けた。その際、銀行側が恒大集団の上層部に資金を投じることを要求したため、すぐさま「超收宝」の第6期を発行したのだ。その年利は25%と超高利回り、最低投資額は300万元(約5100万円)、さらに2年以内に元金と利息を返還することを約束していた。 財新は、中信銀行が起草した「第6期超收宝計画(草案)」を入手した。この計画書によれば、中信銀行は恒大集団との協議を経て、恒大集団と共同で400億元(約6800億円)規模のM&Aファンドを設立予定であり、その運営に財政的支援を提供するとしている。 これは銀行による恒大集団へのオフバランスシート(簿外取引)方式の融資と言える。2019年に(収賄容疑で)調査を受けた元頭取の孫德順、2018年末に調査を受けた元副行長兼深圳支店責任者の陳許英が率いていた時期の中信銀行は、恒大集団を支援して数千億元(数兆円)のエクスポージャーを持っていた。 一方、2020年の中間決算報告書によると、中信信託を含む中信銀行の恒大集団への貸付金は200億元(約3400億円)を超えていない。これはオフバランス(帳簿外)の貸付金が早くからオンバランス(帳簿内)の金額を超えていたことを示している』、「中信信託を含む中信銀行」が「恒大集団」に「オフバランスシート(簿外取引)方式の融資」したり、「資金調達用の理財商品」を発行させていたとは、銀行もグルのようだ。
・『惜しげもなく超收宝に投資する社員も  恒大集団の副部長クラスの関係者は、「(最低投資額の)300万元(約5100万円)というのは少ない額ではない。私が150万元(約2550万円)を出資し、部下たちに残りを出資させることでクラウドファンディングのように集める。そして最終的に私の名義で購入するのだ」と語る。 こうした委託保有契約は恒大集団内部では珍しいものではないという。社員によっては惜しげもなく銀行から金を借りてきては「超收宝」に投資した者もいた。それは25%という利回りが銀行ローンの金利をはるかに上回っているからだ。 しかし2019年5月と11月、2期分の「超收宝」が満期を迎えた際、恒大集団は購入した従業員に対し「超收宝」の償還日を1年間延期することに同意するよう要求し、2020年にはさらに1年間の再延期を実施した。 ある投資家は「過去3〜4年間、四半期ごとに配当が支払われたが、年利は約4~5%程度だった。約束されていた年利25%の高配当は、当初の説明では元金返済時に現金化するとのことだった」と語る。 資金難が深刻化した後、恒大集団は現職幹部の「超收宝」の元金返済を優先した。ある投資家が財新に提示した証拠によれば、2021年8月末~9月初旬までの間、恒大集団は様々な請負事業者の口座を通じて現職の社員に「超收宝」の元金17億元(約290億円)分を前倒しで償還している。 しかし、約300人の離職済みの社員の2億元(約34億円)分の元金は支払われていない。元社員たちはこれに憤慨し、自らの権利を守ろうとしている。 理財商品の販売対象には、不動産プロジェクトに関わる施工業者も含まれていた。恒大集団のエンジニアリング部門を10年以上管理している社員によれば、プロジェクトの費用を施工業者に支払うときは毎回、施工業者に対して理財商品を購入するよう求めるのだという。 「例えば100万~200万元(約1700万~3400万円)の費用を決済する場合は、10万~20万元(約170万~340万円)分の理財商品を購入するよう求める」。この要求は強制的なものではないが、施工業者は恒大集団と良好な関係を維持するために、ほとんどが従ったという。また、物件のオーナーたちも恒大財富の理財商品を購入していたとのことだ。 だが、恒大財富は9月9日に償還延期の具体的な方策を発表した。今回の危機において、最も対応が難しいのは個人の債権だ。銀行など金融機関の債権に関しては政府が指示を下せば延期することができる。しかし、個人債権となると膨大な数の投資家が関わってくる。恒大財富の償還延期計画は、投資家たちの強烈な不満を引き起こし、それが恒大集団の危機的状況が急速に悪化する引き金となってしまった。 本文:王婧、陳博、於寧、朱亮韜、王娟娟、周文敏 『財新周刊』9月20日号より抄訳』、「資金難が深刻化した後、恒大集団は現職幹部の「超收宝」の元金返済を優先した。ある投資家が財新に提示した証拠によれば、2021年8月末~9月初旬までの間、恒大集団は様々な請負事業者の口座を通じて現職の社員に「超收宝」の元金17億元(約290億円)分を前倒しで償還している」、債権者に平等に返済するのでなく、関係者に優先して返済するとは飛んでもない不法行為だ。

第三に、この続き、9月23日付け東洋経済Plusが転載した財新編集部「会社側は依然として「危機を乗り切る」と主張 中国「恒大集団危機」取引先8000社に走る激震」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/28273
・『中国の大手不動産企業「恒大集団」の動向を世界中が注視している。背景にはいったい何があったのか。 中国の不動産大手、恒大集団(エバーグランデ)の巨額債務問題が世界の金融市場を揺るがせている。恒大集団の2020年のグループ売上高は5072億元(約8.6兆円)と民間の不動産企業の中で最大手級だ。 高いレバレッジをかけた大規模住宅開発で飛躍的に成長を遂げ、買収したプロサッカークラブの運営やEV(電気自動車)、ミネラルウォーター事業などに多角化。一方、その負債総額は33兆円に膨張し、資産運用商品の償還遅延事件をきっかけに経営危機が顕在化した。 目先は社債などの償還ラッシュを乗り切れるかが世界から注目されている恒大集団だが、問題の根源には同社の極めて特異な資金調達構造があった。中国の調査報道メディア「財新」の特集はその暗部に切り込んでいる。特集記事の後編をお届けする。 中国の不動産ガリバー、恒大集団傘下の恒大金融財富管理(以下、「恒大財富」)は9月8日に、自社で販売していた理財商品(資産運用商品)の償還を延期すると発表し、数十万人の投資家たちが一瞬にして大混乱の渦に巻き込まれた。 恒大財富は8~9月に、100億元(約1700億円)を超える資金を各地の請負業者に輸血した。これは請負業者がすでに事業停止状態に陥っているためだ』、「100億元(約1700億円)を超える資金を各地の請負業者に輸血」、「輸血」とは資金を提供した意味のようだが、本来、払うべき債務を履行してないのに、どういうことなのだろうか。
・『請負業者はすでに事業停止状態に  例えば2021年8月6日、江蘇省太倉の建設現場に突如、事業停止を命じる公告が出された。この建設工事を取りまとめるゼネコンの江蘇南通三建集団はすでに大部分の作業を完了させ、5億元(約85億円)の資金を立て替えたが、恒大集団の支払い済み金額は2.9億元(約50億円)にも達していない。さらにそのうち、現金で支払われたのはわずか8%だという。 残りの金額はすべて商業引受為替手形(以下、「商業手形」)によって決済されており、満期になっても償還されていない商業手形の規模は1.2億元(約20億円)に達する。恒大集団が工事費用の支払いを滞らせたことで、事業停止を引き起こしたのだ。 恒大集団が2020年8月に広東省政府に支援を求めた際の文書によれば、同月時点で恒大集団が不動産開発プロジェクトで提携する企業は8441社にのぼる。大手不動産企業である恒大集団のキャッシュフローが途絶えれば、川上川下の取引先企業の経営に直接的なダメージを与え、一部の企業は破産リスクに直面することになる。 同文書によれば、2020年6月時点で、販売済みでありながら引き渡しができていない住宅の数は61.7万戸となっている。さらに、恒大集団が危機に陥れば、204万人の不動産オーナーたちが未竣工の物件を受け渡されたり、そもそも物件を受け取れないなどのリスクに直面すると記されている。そして1年後の現在、状況はさらに悪化している。 「住宅の引き渡しは数十万の家庭と地方政府の安定に関わる。しかし、巨大な不動産市場の信用が揺らげば、施工事業者も費用を立て替えるのは避けたがるだろう。広東省の住建部門が現在、事業再開に関する問題を解決しようと協議しているようだ」。恒大集団に関心を寄せているある銀行員はこう話す。 恒大集団の財務報告書によると、商業手形のほか、買掛金も同様に年々増加している。2021年6月30日時点で、一部の不動産開発関連の頭金が支払われておらず、その結果、一部のプロジェクトが停止されたと記されている。また、期間内の流動負債の内、貿易に関する買掛金およびその他の買掛金の額は9511.33億元(約16兆円)に達し、前年比で14.71%増となっている。 現在、恒大集団は支払いの延期や不動産売却による延滞金の相殺などによって不動産開発事業を再開しようと、サプライヤーや建設請負業者と交渉をしている。実際、2021年7月1日~8月27日の期間内で、恒大集団は不動産を売却して延滞金の一部を相殺しており、その総額は約251.7億元(約4300億円)となっている。 恒大集団の手元資産の大半が土地だ。2021年6月30日時点で、恒大集団は778件のプロジェクトを手がけており、計画されている総建設面積は2億1400万平方メートル、それらの土地の取得原価は4568億元(約7.7兆円)だ。そのほか、恒大集団は146件の都市再開発プロジェクトを手がけており、中でもグレーターベイエリア(広東省と香港・マカオ)のプロジェクト数が131件を占めている。 だが、9月10日、緊急に開かれたグループ会議の場で、恒大財富の杜亮社長はグループ創業者の許家印前会長のコメントを引用して、ほとんどの土地は売却することができないと発言した。「中国において土地は最も価値のあるもの。恒大財富の最大の武器であり、最後の財産だからだ」と、杜亮社長は語っている。 「例えばある土地を取得するのに10億元(約170億円)を支払い、その後その土地の価値が20億元(約340億円)に達したとしても、今の市場の取引相手が提示する額はわずか3億元(約51億円)ということもある。元手をすってまで売却してしまえば、恒大集団は再起するための資本も失ってしまう」(杜亮社長) 施工再開さえすれば、土地開発によって住宅の買い戻し資金を賄うことが可能で、そうすれば恒大集団はすべての債務を返済し、元の状態に戻ることができるのだという』、「ゼネコンの江蘇南通三建集団はすでに大部分の作業を完了させ、5億元(約85億円)の資金を立て替えたが、恒大集団の支払い済み金額は2.9億元(約50億円)にも達していない。さらにそのうち、現金で支払われたのはわずか8%だという。 残りの金額はすべて商業引受為替手形・・・によって決済されており、満期になっても償還されていない商業手形の規模は1.2億元(約20億円)」、「施工再開さえすれば、土地開発によって住宅の買い戻し資金を賄うことが可能で、そうすれば恒大集団はすべての債務を返済し、元の状態に戻ることができるのだという」、「施工再開」は支払いが円滑化する必要がある。
・『6月初旬から多数の不動産資産の売却計画も  一方、財新が入手した情報によれば、恒大集団は6月初旬から、多くの不動産資産を売却する計画に取り掛かっており、過去3カ月ほどで中国海外発展や万科などの大手不動産企業、そして中国金茂などの国有企業が恒大集団と接触している。 ただ今に至るまで、恒大集団傘下の大部分のプロジェクトの買い手は実質的には定まっていない。多くの不動産関係者によると、「恒大集団が手がけるプロジェクトの内容は一見悪くなさそうだが、債務構造が複雑で整理するのが非常に難しい」という。 恒大集団が一部資産の譲渡を正式に認めたのは8月10日夜のことだ。恒大集団傘下の自動車および不動産セクターの一部資産を売却するとのことだった。しかし9月14日の発表では、恒大集団は多くの投資家と積極的に接触したが、法的拘束力のある契約は締結できていないとしている。 最近立案された自力救済計画において、恒大集団は何度も「投資用不動産、ホテル、およびその他の不動産資産などを売却することで投資家を引き入れ、資本金を増やす」と説明している。 会社側は依然として、「さまざまな要因が重なり合って生じた流動性危機である」と主張しており、破産するのではないかという噂を否定している。また「年間7000億元(約11.9兆円)の販売と土地の在庫、商品価値があれば、恒大集団は今回の危機を乗り切ることができる」としている。 しかし、これらはすべて資産処理が進展するかどうか、また簿外資産も含めて債務の全容解明がなされた後の恒大集団の真実の姿次第とも言えるだろう。 本文:王婧、陳博、於寧、朱亮韜、王娟娟、周文敏 『財新周刊』9月20日号より抄訳』、実態はやはり不明で、「今回の危機を乗り切ることができる」か否かは不透明だ。なお、テレビ東京のワールド・ビジネス・サテライトによれば。中国の中央銀行は、不動産市場の健全な発展を守ると声明を出したようだ。
タグ:中国経済 (その11)(恒大危機3題:みずほ証券ストラテジスト大橋英敏氏に聞く 中国恒大集団にどれだけの「政府介入」があるのか、不動産ガリバーが陥った「理財商品」の闇 中国「恒大集団デフォルト危機」驚異の全内幕、会社側は依然として「危機を乗り切る」と主張 中国「恒大集団危機」取引先8000社に走る激震) 東洋経済Plus 大橋英敏 「みずほ証券ストラテジスト大橋英敏氏に聞く 中国恒大集団にどれだけの「政府介入」があるのか」 株式市場には下記のように影響が僅かながらも出ている。 「債務のデフォルトは秩序だった形ですでに始まっている」、「中国政府は中国恒大集団の無秩序なデフォルトや保有資産の投げ売りによる金融システム不安の誘発、それを増幅させうる不動産市場の急落はさまざまな手段を使って回避するとみている」、そこまでコントロールできるのであれば、問題は少なそうだが・・・。 「格付け」は既に「トリプルC(デフォルトを織り込み済み)となっているようだ。 (注)理財商品:小口で短期の投資信託のような集団投資スキームの商品(Wikipedia) 「リーマンショック級の危機にはなる可能性は低く」ようであれば、一安心だ。 「不動産価格に対する懸念は、金融システム不安に直結する」、ので、現在は「急落していない」とはいえ、要注意だ。 「中国政府は」「危機的な局面になれば、」様々な対策を「矢継ぎ早に導入する」、強権的な政府の強味だ。 「中国国内の変化というのはわかりにくいので、グローバル金融市場およびグローバルクレジット市場は、大半の局面では鈍感だが、いったん心配し始めると過度に悲観的になる傾向がある」、要注意の市場のクセだ。 「資本主義国がみてきた過去数十年の中国経済と、今後の中国経済は体制・仕組みが大きく変化する可能性があることを頭の片隅に置いておきたい」、その通りなのかも知れない。 財新編集部 「不動産ガリバーが陥った「理財商品」の闇 中国「恒大集団デフォルト危機」驚異の全内幕」 「理財商品(資産運用商品)の償還を延期」、「投資家」が「大混乱の渦に巻き込まれる」のはやむを得ない。 「恒大集団」の「投資家」への説明が不十分だからだろう。 「恒大集団の20万人の社員は、日常業務の一環として恒大財富で一定額の理財商品を購入している。また社員たちは恒大集団の取引先と不動産オーナーたちにもこの理財商品を購入するように勧めていたほか、親戚や友人たちにも販売してきた」、「社員」たちは自分の利害だけでなく、「取引先と不動産オーナーたち」や「親戚や友人たち」にも売った責任を感じているようだ。 「中信信託を含む中信銀行」が「恒大集団」に「オフバランスシート(簿外取引)方式の融資」したり、「資金調達用の理財商品」を発行させていたとは、銀行もグルのようだ。 「資金難が深刻化した後、恒大集団は現職幹部の「超收宝」の元金返済を優先した。ある投資家が財新に提示した証拠によれば、2021年8月末~9月初旬までの間、恒大集団は様々な請負事業者の口座を通じて現職の社員に「超收宝」の元金17億元(約290億円)分を前倒しで償還している」、債権者に平等に返済するのでなく、関係者に優先して返済するとは飛んでもない不法行為だ。 「会社側は依然として「危機を乗り切る」と主張 中国「恒大集団危機」取引先8000社に走る激震」 「100億元(約1700億円)を超える資金を各地の請負業者に輸血」、「輸血」とは資金を提供した意味のようだが、本来、払うべき債務を履行してないのに、どういうことなのだろうか。 「ゼネコンの江蘇南通三建集団はすでに大部分の作業を完了させ、5億元(約85億円)の資金を立て替えたが、恒大集団の支払い済み金額は2.9億元(約50億円)にも達していない。さらにそのうち、現金で支払われたのはわずか8%だという。 残りの金額はすべて商業引受為替手形・・・によって決済されており、満期になっても償還されていない商業手形の規模は1.2億元(約20億円)」、「施工再開さえすれば、土地開発によって住宅の買い戻し資金を賄うことが可能で、そうすれば恒大集団はすべての債務を返済し、元の状態に戻ることができる
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幸福(その3)(脳科学者・中野信子が「人生では正解を選んではいけない」と言い切る理由 「幸せホルモン」を味方にする方法、「一家の大黒柱がしんどい」世界で唯一 女性より男性の幸福度が低くなる日本の特殊事情 なぜ男性のネガティブ感情が高いか、際立つ「40~50代未婚男性」幸福度の低さの背景 しあわせは「幸せ」ではなく「仕合わせ」である) [人生]

幸福については、2019年10月30日に取上げた。今日は、(その3)(脳科学者・中野信子が「人生では正解を選んではいけない」と言い切る理由 「幸せホルモン」を味方にする方法、「一家の大黒柱がしんどい」世界で唯一 女性より男性の幸福度が低くなる日本の特殊事情 なぜ男性のネガティブ感情が高いか、際立つ「40~50代未婚男性」幸福度の低さの背景 しあわせは「幸せ」ではなく「仕合わせ」である)である。

先ずは、昨年11月3日付けPRESIDENT Online /PRESIDENT BOOKSが掲載した脳科学者・医学博士の中野 信子氏による「脳科学者・中野信子が「人生では正解を選んではいけない」と言い切る理由 「幸せホルモン」を味方にする方法」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/40006
・『「不安心理」が広く世の中を覆っています。迷いや葛藤に押しつぶされることなく、「幸せ」を感じながら生きられるようになるにはどうしたら……。脳科学者の中野信子さんは「幸せホルモン」とも呼ばれる「オキシトシン」を上手に活用することを勧めます。セブン-イレブン限定書籍として刊行された『引き寄せる脳 遠ざける脳』(プレジデント社)から、そのコツを紹介します。 ※本稿は、中野信子『引き寄せる脳 遠ざける脳』(プレジデント社)の一部を再編集したものです』、興味深そうだ。。
・『「幸せを感じる」ことは、脳と体の相互作用  脳科学の観点で見ると、「幸せを感じる」という営みは、脳と体が絶えず行う相互作用に過ぎません。 そのとき、脳で分泌される神経伝達物質である「オキシトシン」の作用が、幸せの感情をもたらすことが明らかになっています。オキシトシンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、まだそのすべてが解き明かされていない“謎多き物質”ですが、幸せのカギを握るたくさんの可能性があるとわたしは見ています。 そして、人の「幸せ」についての考え方は主観的なものであり、ひとつのものさしで測ることはできません。 見る人から見れば、たとえバカ騒ぎとしか思えない振る舞いでも、当の本人たちは仲間とわいわい騒ぐことで「みんなから愛されて幸せだ」と感じ、それによってオキシトシンがたくさん出る人もいるわけです』、「人の「幸せ」についての考え方は主観的なものであり、ひとつのものさしで測ることはできません」、なるほど。
・『「幸せのものさし」は人それぞれ  その一方で、ひとりきりの空間で心地良い服を着て、自分の好きな音楽を聴きながらリラックスすることで、オキシトシンが分泌される人もいるでしょう。 人それぞれ好みもちがえば、オキシトシンが出やすい環境もちがうということ。「あの人はいつも“ぼっち”でかわいそう」などと、一概にはいえないわけですね。 幼少期に培われた人間関係のなかで、愛着の対象や自分自身のことをどう思っていたかによって、幸せの価値観もそれぞれちがってくるのです』、「幼少期に培われた人間関係のなかで、愛着の対象や自分自身のことをどう思っていたかによって、幸せの価値観もそれぞれちがってくる」、「幼少期」の影響があるとは驚いた。
・『あなたの選んだ選択肢に「間違い」はない  他者と幸せの大きさを競うことに、ほとんど意味はありません。 たとえば、世の中には多動的な人がいて、彼らは多くの人と広く浅く交流し、たくさんの情報を交わし合うことによろこびを感じ、そんな自分を肯定して生きています。とくに、いまの時代はSNSなどで情報過多になっているため、そうした交流をうまくやっている人が目立ったり、「幸せ」に見えたりもします。 でも、そうでない人たちが不幸せかというと、まったくそうとはいえません。むしろ、わたしは「幸せの基準はたくさんある」ことを、救いに思ったほうがいいと考えています。 「わたしはあの人よりも幸せじゃないかも」「自分もあの人のように前向きに生きなければダメなんじゃないか」 もし、いまそんな思いや迷いを感じている人がいたら、わたしは脳科学者として、ひとりの人間として、このようにいいたいです。 「あなたの選んだ選択肢で生きることに、なにも間違いはないんだよ」と』、「あなたの選んだ選択肢に「間違い」はない」、嬉しいことで、もっと以前から知っていればよかった。
・『人間は成人するまでに14万8000回もの否定的な言葉を聞かされる  人はなぜ、自分と他人を比べて思い悩むのでしょうか? それは、おそらくわたしたち日本人が、子どものころから「正解を選ぶ人生」というものに、あまりに慣らされてしまっているからだとわたしは見ています。 人間は成人するまでに、約14万8000回もの否定的な言葉を聞かされるとする説もありますが、これと同じように、わたしたちはあまりにも、「次のなかから正解を選びなさい」といわれ過ぎているのではないかと感じます』、「人はなぜ、自分と他人を比べて思い悩むのでしょうか? それは、おそらくわたしたち日本人が、子どものころから「正解を選ぶ人生」というものに、あまりに慣らされてしまっているからだ」、面白い見方だ。
・『選んだ答えを「正解」にしていくのが人生  しかし、大人になれば「選んだ答えを正解にする力」こそが試されることになる。 「甲斐性のない亭主を選んだけれど、なんとかわたしが出世させてやる」「自分で選んだ奥さんだから、もう自分好みに仕立てるしかない!」 例として適切でないかもしれませんが……現実には、人生にはさまざまな「正解の仕方」があるわけです。 むしろ、選んだ答えを「正解にする」ことのほうがずっと大切ではないでしょうか。実際に自分が本当に正解を選んだかどうかは、死ぬまで、いや、死んでもわからないのです。「歴史にifはあり得ない」というのは、そういうことです。 本来、誰もが自分の好きなように生きていいのです。自分が感じる幸せの基準にもっと正直になって、そのうえでバランスをうまく取ればいいのです』、「選んだ答えを「正解」にしていくのが人生」、とは能動的で、面白い見解だ。
・『「自分の正解の基準」を見つけよう  そして、そんな自分をある程度肯定することも大切です。
 とくに女性の場合、なんだかんだと婚活を話題にされることがありますが、「この人が相手で本当にいいのだろうか」と、多くの人が悩むでしょう。そのときに、「みんなが正解だと思う人」を選びたくなる傾向がどうも強いようです。 でも、あたりまえですが、「自分が正解だと思う人」を選ぶべきです。なぜなら、その選択には誰も責任を取ってくれないからです。本来は自分で選べる力を持ったはずの人でも、あまりに正解を求めるくせがついてしまっていることで、多くの人が苦しんでいるように見えます。 そんな自分の考え方のくせを乗り越えていくには、自分の正解の基準を、丁寧に自分の気持ちと向き合いながら見つけていくことだと思います。地味な作業ですが、これはとても大切なことです。 そして、その基準に則って選択をする自分を、自分で肯定するのです』、「自分の正解の基準を、丁寧に自分の気持ちと向き合いながら見つけていくこと」、その通りだろう。
・『日本人は不安傾向が強い  繰り返しになりますが、その「肯定力」が心許なく感じるくらい、わたしたちは間違いを選ぶことを許さないように育てられてきたのかもしれません。 また、「とされています。日本には自然災害が多く、それに備えるには楽観的な性質よりも、不安傾向の高いほうが生き延びやすい環境であったわけです。 自分の決断をなかなか正解と思いにくく、曖昧であったり、迷ったりしがちなことが日本人の性質を表しています』、「日本人はもともと不安傾向の高い人が多い遺伝子プールである」、「自分の決断をなかなか正解と思いにくく、曖昧であったり、迷ったりしがち」、厄介な性格だ。
・『「迷うこと」は人生の幅の広さの証明  でも、考えてみれば、「迷える」ということは、それだけ自分の可能性が残されていると捉えることもできます。 「この人で良かったのかな」「この仕事で合っているのだろうか」 そのように人は迷いますが、迷うこと自体が、これからの人生の幅がまだまだ広いことを証明しているわけです。 自分なりの幸せを築いていくなら、まず自分の選択や決断をなにより重視する。 そして、迷ったとしても、その迷うことすら自分の「幸せ」の可能性を広げてくれるものとして、堂々と受け入れていく必要があるのでしょう』、「迷うことすら自分の「幸せ」の可能性を広げてくれるものとして、堂々と受け入れていく必要がある」、極めて前向きな考え方で、大いに参考になる。

次に、7月9日付けPRESIDENT Online が掲載した統計探偵/統計データ分析家の本川 裕氏による「「一家の大黒柱がしんどい」世界で唯一、女性より男性の幸福度が低くなる日本の特殊事情 なぜ男性のネガティブ感情が高いか」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/47667
・『「幸福度」を国別・男女別にみると、先進国や発展途上国を含むほとんどの国は女性のほうが男性より低い。一方、日本は逆に男性のほうが低い。統計データ分析家の本川裕氏は「OECDの統計を分析すると、世界のスタンダードは『女性・高齢・低学歴の者ほど幸福度が低い』が、日本人はこれにすべて反している」という――』、興味深そうだ。
・『世界の中で日本人の幸福度は低いのか高いのか  本連載で以前、「世界120位『女性がひどく差別される国・日本』で男より女の幸福感が高いというアイロニー」(2021年4月7日公開)というテーマを扱い、反響が大きかった。 今回はこの時とは別のデータを使い、やはり日本人の幸福度は、世界の傾向とは反対に女性の方が高い点を示すとともに、男女別だけでなく、年齢別、学歴別といったその他の属性でも日本人の幸福度は世界の傾向に反していることを紹介することにしよう。 本題に入る前に、まず、「日本人の幸福度は全体として高いのか低いのか」という点について確認しておこう。 OECD(経済協力開発機構)の幸福度白書の最新版(「How’s Life? 2020」)では、旧版と同様、幸福度を構成するさまざまの指標のひとつとして主観的幸福度(Subjective Well-being)のデータを掲載している。 私は、幸福度を論じる場合、幸福を左右すると思われる所得や生活環境、災害などに関するさまざまな指標を総合化して判定する方法では、どんな指標を使うかウエイトづけから恣意的になりがちなので、むしろ、この主観的幸福度そのものを重視すべきだと考えている。 同白書によれば「OECDのガイドライン」は主観的な幸福度の測定方法として以下の3つを区別している(※1)。 ①生活評価(生活満足度など生活の全体評価) ②感情(喜怒哀楽など、機嫌の良し悪し) ③ユーダイモニア(Eudaimonia)(人生の意味や目的、生きがい) ※1 同白書では、①として0~10までの段階別に答えさせた「生活満足度」、②として回答者の感情状態から作成した「ネガティブ感情度」のデータを掲げ、分析を行っている。①では日本や米国は該当する公式統計がないので比較対象から除外されている。③は国際比較できる高品質データがないとしてそもそも非掲載である。 まず、「日本人の幸福度の程度は」という疑問を解くために、4月7日の記事でも使った世界価値観調査の「幸福感」(※2)と、OECD幸福度白書が掲載している「ネガティブ感情度」(※3)という両方のデータで幸福度の各国比較を試みることにしよう。 ※2「幸福かどうか」の設問に「非常に幸せ」及び「やや幸せ」と答えた割合の計 ※3 調査日前日の感情状態についてネガティブな回答(怒り、悲しみ、恐れなど)がポジティブな回答(くつろぎ、喜び、笑う、など)を上回っている割合を指し、ギャラップ世界調査の結果からOECDが算出』、なるほど。
・『日本人の幸福度は、韓国やコロンビア、ポーランドなどよりも低い  図表1には、OECD諸国の幸福度ランキングを「幸福感」と「ネガティブ感情度」の両方で示した(※4)(図表1はリンク先参照)。後者では、指標値の低いほうが幸福度は高く、指標値の高いほうが幸福度は低いと解した。 ※4 一般に、先進国と途上国では事情や背景が大きく異なるので、生活レベルが一定水準以上の先進国だけで比較したい場合、先進国クラブと称されるOECD諸国のランキングが用いられることが多い。OECD諸国に関しては、統一基準で収集されたデータベースが整備されていて、相互比較の信憑性が高い点もOECD諸国比較が多用される一因となっている。ここでもそうした点を考慮してOECD諸国のデータを用いている。もっとも、最近、OECDの新規加盟国が増え、メキシコ、コロンビアといったラテンアメリカやスロベニア、エストニアといった東欧圏に属する必ずしも先進国とは言えない国々も含まれるようになっているので、その点にも分析上の配慮が必要である。 日本のOECD諸国の対象31カ国における幸福度ランキングは、世界価値観調査の「幸福感」では20位と低いほうである一方で、ギャラップ世界調査を用いた「ネガティブ感情度」では5位と高いほうである』、「幸福感」は低く、「ネガティブ感情度」は高いというのは、あまりいいことではなさそうだ。
・『主要先進国(G7)の中で日本と似ているのは、ドイツ  主要先進国(G7)の中で日本と似ているのは、ドイツであり、幸福感(表左側)では23位と低いが、ネガティブ感情度(表右側)からは13位とそれほど低くない(ネガティブ度が日本より低い)。主要先進国の中では、英国、フランスなどは、日本やドイツは逆に、幸福感は高いもののネガティブ感情度ではずっと低くなっている。 この結果を私なりに総括すると、 日本やドイツ:ふだんの機嫌がよいにもかかわらず幸福をあまり感じていない 英国やフランス:ふだんの機嫌が悪くても幸福を感じてはいる国民 の2タイプがあるのではないか。一方、 米国やイタリア:幸福に関する感情と幸福の自己理解にあまり齟齬が見られない 主観的な幸福度だけでも測り方によってかなり変わってくる点が興味深い』、「日本やドイツ」が似ているというのは、なんとなく感じる実感に近い。
・『「女性のほうが幸福度が低い」という世界の通例に反する日本人  ここからは、「ネガティブ感情度」を使って、男女、年齢、学歴といった属性別の幸福度の各国比較を見ていこう。原データはこれまでと同じ国ごとに毎年1000サンプル程度で行われているギャラップ調査であるが、結果のばらつきを抑えるため、長期間の平均値(2010~18年)が使用されている。 経済環境や文化の違いがあるため主観的幸福度の値を国民間で比較するのはやはり少し無理がある。感情面を指標化した「ネガティブ感情度」は、幸せかどうかを直接聞いた結果の「幸福感」より客観的であるとはいえ、やはり、国民性に多少左右されざるを得ないであろう。 しかし、考え方や感じ方を共有する同じ国民の間における男女、年齢、学歴といった属性間の比較は、全体としての幸福度ランキングより、むしろ、信憑性、有
効性が高いと考えられる。 結論から言ってしまうと、世界のスタンダードは「女性・高齢・低学歴の者ほど幸福感が低い」というものだが、日本人は、これにすべて反している。日本は世界的に見て、特殊な国民であるということが見てとれる。 まず、男女差(ジェンダー差)から見ていこう(図表2参照)(図表2:「女性の方が否定的な感情に陥りがちだが、日本人は例外的に逆」は(リンク先参照)』、私は一般的問題では、「日本人」特殊論には組しないが、この調査の結果は認めざるを得ない。
・『女性の方が否定的な感情に陥りがちだが日本人は例外的に逆  うつ病は、男性より女性のほうが多いというのが世界の通例であることからも類推できるように、ネガティブ感情度の男女比(男性÷女性)は、日本を除くすべての対象国で、1以下である。すなわち、女性のほうがネガティブで「マイナスの感情」を抱きがちである。 こうした世界的傾向について、ジェンダー論者は、男女差別によってこれが引きおこされていると速断しがちである。自殺がうつ病とは逆に男性のほうが多いのが世界の通例であることからもうかがえるように、ことは、そんなに単純ではない。 例えば、北欧諸国は一般的に男女平等意識が高いが、同じ北欧諸国でも、ノルウェー、デンマークでは、女性のほうが、ネガティブ感情度がかなり高くなっている(図表2、縦軸0.8以下」)のに対して、フィンランド、アイスランドでは、むしろ、男女比が1に近くなっており(男性も女性と同様にネガティブ感情度が高い傾向にある)、状況にかなり差があるのである。 それより何といっても、最も特徴的なのは、日本人だけ男性のネガティブ感情が女性を上回っている点(しかも14%も)である。これは、世界価値観調査などの幸福感でも日本人の幸福度の女性優位が目立っているのと軌を一にする現象であるといえる』、「日本人だけ男性のネガティブ感情が女性を上回っている」、要因は以下にあるようだ。
・『“世界で唯一”なぜ日本は女性よりも男性がネガティブな感情を抱くのか  なぜ、日本人の男性は女性よりもネガティブな感情を抱きやすいのか。 理由として考えられるのは、女性が男性と比べて個人的、社会的に尊重されていてネガティブな感情に陥る場合が少なくなっているから、あるいは、男性だけがネガティブな感情に陥りがちな特殊な社会環境があるか、のどちらかであろう。 私は、後者の側面が大きいと考えている。 本連載の4月7日の記事でも述べた通り、日本では、相続や選挙権に関する制度的な男女平等が戦後実現したのと並行して、現代では、かつてに比べて儒教道徳から女性がかなり解放されたのに対して、男性のほうは「男は一家の大黒柱」あるいは「男はか弱い女性を守らなければならない」といったような旧い道徳観になお縛られていることが多いから、こうした結果が生じているのではないかと感じるが、どうだろうか。男は、男(自分)への期待感が大きい。それだけ幸福度を感じにくくなっているのである。 なお、同じような状況にある韓国でも(日本の男性ほどネガティブな感情を抱いていないが)、やはり、OECD諸国の中でネガティブ感情度の男女比が3位と高い点もこの点を裏づけていると考えられる。 世界的に権威があるはずの「OECD幸福度白書」のこのデータを日本のジェンダー論者が参照することは、まず、ないだろう。しかし、男性が幸福になれなければ女性も幸福になれないと仮定した場合、図表2で客観的に表した深い真実を直視しない限り、日本における本当の男女平等は永遠に実現できないかもしれない』、日本人の「男は、男(自分)への期待感が大きい。それだけ幸福度を感じにくくなっているのである」、納得した。
・『高齢者、低学歴者ほど幸福度が低いという通例が当てはまらない日本人  次に、年齢差とネガティブ感情度(幸福度)に関してみていこう(図表3参照)。(図表3:「若者は幸せで高齢者は気持ちがネガティブになる場合が多いが日本人は例外」はリンク先参照)(表の「●」は50歳以上、「ー」は30~49歳、「▲」は15~29歳の数値だ(数値が高いほどネガティブ感情度が高い)。男女差ほど決定的ではないが、世界的には、若者のほうが高齢者よりネガティブ感情度が低いのが通例である。若者には未来があり、死が遠くない高齢者は病苦で苦しむ者も多いのであるから当然ともいえる。 年齢差が大きい国はといえば、図の左側の国、すなわち途上国的な性格を残している国である。途上国の高齢者は生活していくだけでも心労が絶えないのである。一方、図の右側、すなわち、日本を含む、比較的所得水準の高い国では年齢差は目立たなくなる。社会保障が充実して、高齢者でも生活苦や病苦で悩むことが少なくなるからである。 こういう見方でグラフを眺めると、若者だけで比較した場合、各国のネガティブ感情度は、国による違いがかなり小さいことに気がつく。どんなに生活が苦しくても若者には未来があるのである。一方、高齢者のネガティブ感情度の差は大きく、高所得国ほど低くなっていることが分かる(左端のリトアニアは30超、日本は10弱)。 そして、働き盛りの年齢(「―」の数値)では、ネガティブ感情度は若者と高齢者の中間である場合が一般的である。 しかし、米国より右に位置する国では、おおむね、若者や高齢者の両方より働き盛り年齢のネガティブ感情度のほうが高くなる傾向にある。これは、子どもや高齢者を大切にする社会保障の発達した国でも、仕事や子育て、介護などに伴う働き盛りの年齢の悩みは消えない(あるいはむしろ大きくなる)からだと考えられる』、なるほど。
・『<消極的に天命に安んじる態度には、我々は懐しみを覚えさせられる>  さて、改めて日本の位置を確認しよう。高齢者のネガティブ感情度は最も低いほうから2番目である。高齢者のネガティブ感情度は、高福祉社会と言われる北欧諸国が世界で最も低く、それに伴って年齢差も最も低くなっているが、日本もこれに伍しているのである。 少なくとも感情の状態からは、日本は高福祉社会の域に十分達しているといえよう。しかも、日本の高齢人口の割合は世界でもっとも高い点を考慮すれば、よくやっていると評価せざるをえない。 もっとも日本の社会保障の充実度が北欧並みと考えるのは少し行き過ぎの見方かもしれない。むしろ、諦観という日本人の習性に理由を見出すべきなのかもしれない。 正宗白鳥は永井荷風を論じた評論のなかで荷風を含め老境にある日本人について、こう言っている。 「外国人のうちには、老境に達して落伍しても、天を怨まず人を嫉まず、与えられた境遇を楽む者は甚だ稀なようだが、日本では古来都鄙を通じて、そういう気持の老人が少なくなかった。伝統的日本気質の現れであって、この消極的に天命に安んじる態度には、我々は懐しみを覚えさせられるのだ」(『作家論』岩波文庫、p.331)』、「高齢者のネガティブ感情度は、高福祉社会と言われる北欧諸国が世界で最も低く、それに伴って年齢差も最も低くなっているが、日本もこれに伍しているのである」、これは「日本の社会保障の充実度が北欧並みと考えるのは少し行き過ぎの見方かもしれない。むしろ、諦観という日本人の習性に理由を見出すべきなのかもしれない」、その通りなのだろう。
・『学歴による格差が幸福度の差に結びつかないようなメカニズム  最後に、学歴とネガティブ感情度(幸福度)について見てみよう(図表4参照)。 (図表4:「高学歴の者ほど感情がネガティブでない国民が多い中で日本人は例外」はリンク先参照) 日本は、中等教育卒業者のネガティブ感情度(「―」の数値)がメキシコに次いで低く、初等教育卒業者(「▲」の数値)の場合は最も低くなっている。そして、こうした状況によって学歴差が最も小さい国の一つである。また、初等教育卒業者のほうが高等教育卒業者(「●」の数値)よりネガティブ感情度が低いという国は日本だけである。 学歴と階級・職種・所得は密接に関係しており、これを背景に、世界ではネガティブ感情度は低学歴の者ほど高く、高学歴の者ほど低いというのがスタンダードである。ところが、ここでも日本は学歴の差が幸福度に比例しないという例外的な特徴をあらわしているのである。 理由としては、実際に学歴による所得や生活水準の格差が小さいからかもしれないし、あるいは、学歴による格差があってもそれが幸福度の差に結びつかないようなメカニズムが働いているからかもしれない。私は、年齢差の場合と同じように、日本の場合は、前者だけでなく後者の側面も大きいのではないかと考えている。 いずれにせよ、以上のように、「感情状態」から見た幸福度について、男女差、年齢差、学歴差を見る限り、日本人ほど“よい方向”に世界の常識が当てはまらない国民はいないのだといえよう。こうしたデータからは、日本は「奇跡の国」と見なされてもおかしくはないのである』、確かに「日本は「奇跡の国」と見なされてもおかしくはない」ようだ。

第三に、9月16日付け東洋経済オンラインが掲載した独身研究家・コラムニストの荒川 和久氏による「際立つ「40~50代未婚男性」幸福度の低さの背景 しあわせは「幸せ」ではなく「仕合わせ」である」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/455386
・『幸福度は、未婚者より既婚者のほうが高く、男性より女性のほうが高い。 これは世界的にも割と共通した傾向で、2017~2020年の「世界価値観調査」においても、調査対象77カ国中、未婚者より既婚者の幸福度が高い国は70%を超え、男性より女性の幸福度が高い国も53%あります。 日本もその多数派に属します。それどころか、既婚者の幸福度が高い順では日本は5位、女性の幸福度が高い順では3位とトップグループにランクインします』、第二の記事を「日本」中心にみたもののようだ。
・『40~50代未婚男性の幸福度の低さ  日本における年代別でみてもその傾向は顕著ですが、私が2020年に国内で調査した以下のグラフにもあるとおり、とくに気になるのは40~50代の未婚男性の幸福度の際立つ低さです。逆にいえば、未婚の40~50代男性の不幸度がいちばん高いということになります。これは2016年から継続調査の推移を見ても同様の傾向です。 未婚男性の幸福度が突出して低い理由として、すぐ思いつく要因としては「未婚男性は低年収だから」というものがあります。 実際『「金がないから結婚できない」と嘆く人の大誤解』の記事でも考察しましたが、東京や大都市圏においては「金がないから結婚できない」という問題は確かに存在します。しかし、未婚男性の低い幸福度は年収だけのせいなのかというとそうでもないのです。 年収別に幸福度を20~50代未既婚で比べると、未婚も既婚も年収が上がるごとに幸福度は増しますが、同じ年収でも未婚と既婚とでは幸福度に大きな差があります。年収100~900万円の間ではほぼ20ポイントの差が均等にあります。 むしろ、未婚男性は1000万円の年収で幸福度が頭打ちになり、それ以降は下がる傾向すら見られます。これを見る限り、年収より未婚か既婚かの配偶関係のほうが幸福度に強く影響を与えていると考えられます』、「男性」の場合、「年収より未婚か既婚かの配偶関係のほうが幸福度に強く影響を与えている」、興味深い結果だ。
・『恋愛経験との関係は?  次に、恋愛経験と幸福度の関係についてみてみます。 以下のグラフは、「現在恋人がいる」「今はいないが過去には恋人がいた」「今まで一度も付き合った相手がいたことがない」という状況別に未婚男女での幸福度を比較したものです。「幸福だ」と感じる割合だけではなく、「不幸だ」と感じる割合もあわせてみるために、幸福と不幸の割合の差分にて比較してみることとします。 こちらも男女差が明確に出ます。未婚男性は「現在恋人がいる」群ではすべての年代で幸福が不幸を上回りますが、「今まで一度もいない」群はすべてマイナス(不幸割合が幸福割合を上回る)という結果となりました。 女性も同じような傾向はありますが、40代の「今まで一度もいない」群を除けば、すべて幸福割合のほうが上回ります。つまり、恋愛経験があるかないかで幸不幸の影響を最も受けているのが、「一度も恋愛経験のない」未婚男性たちということになります。 一般的に、「恋愛=幸せ」の図式は女性にあてはまるものと考えられがちですが、既婚より未婚の幸福度が低い結果とあわせると(既婚者は少なくとも恋愛経験を経ている)、男性の幸せにおいて重要な因子は、むしろ年収より恋愛なのではないかという仮説も成り立ちます。 だからといって、「恋愛すれば幸福になれる」「結婚すれば幸福になれる」などという因果はありません。当然、恋愛経験なしの中には、そもそも「恋愛や結婚に興味がない」層も一定数います。恋愛をしていない人=不幸と断じるつもりもありません。しかし、マクロ的に見れば、多くの未婚男性の低い幸福度は、「恋愛を望んでいるにもかかわらずそれが実現できない」という環境にあるともいえるでしょう。 一方で、恋愛経験がなくても幸福度が高い群も存在します。『「オタクは結婚できない」という大いなる誤解』という記事で紹介したように、何かしらのオタク趣味をもつ未婚男性の幸福度は、「現在恋人がいる」未婚男性のそれに匹敵します。恋愛をしていなくてもオタク趣味がある未婚男性は十分幸せなのです』、「男性の幸せにおいて重要な因子は、むしろ年収より恋愛なのではないかという仮説も成り立ちます」、面白い結果だ。
・『幸せとはいったい? そもそも、幸せとはなんでしょうか?  もともと、「幸」という文字は「手かせ」つまり「手錠」の象形であると言われています。手錠でつながれて不自由な状態がしあわせというのは一体どういう意味なのでしょう? この解釈については、諸説ありますが、「手錠をはめられている状態から解放されると幸せだから」という説もあります。また、「幸」に「丸」と書くと「執」になります。「執」という漢字を使った熟語には、「執着」「固執」など、あまりいい意味は感じられません。 そもそも、この「丸」という漢字は、ひざまずいて両手を前に差し出す人の姿を現します。差し出した先が「幸」という手錠ですから、これはどう考えても、逃げられない不自由な状態にさせられた人間を表しているでしょう。どうやら「幸」という字は本来あまりいい意味ではないようです。 しかし、実は「幸せ」という表記になったのは江戸時代以降の最近の話で、もともとは「仕合わせ」と表記していました。中島みゆきさんの歌の「糸」で使われているのも、この「仕合わせ」という漢字です。 さらに語源をたどれば「仕合わせ」とは「為し合わす」でした。「為す」とは動詞「する」で、何か2つの動作などを「合わせる」こと、それが「しあわせ」だという意味です。つまりは、「誰かと何か行動をする」こと自体が「しあわせ」ということなのです。もともとは動詞であったことから、「しあわせ」とは状態ではなく「しあわせる」という行動そのものだったことがうかがえます。 結婚しているとか、いい会社に就職しているとか、さらにはお金を所有しているという状態にしあわせはありません。結婚にしても、就職にしても、そこで誰と何をするのかがしあわせなのであり、お金や時間に関して言えば、そのお金と時間を使って誰と何をするのかがしあわせなのだろうと思います。 いうまでもなく、その誰かとは異性に限らず、同性の友人であってもいいし、初対面の相手であってもいい。つまりは、しあわせとは「人のつながり」であり、「つながった人と何をするのか」が問われているのです。 こんな場面を想像してみてください。 公園などにあるシーソー。そのシーソーの片側に自分だけが座っていても、何も動きません。どんなにもがいても、自分1人だけではシーソーは動きません。そこに必要なのが人とのつながりなのです。 多くの人は、自分が下にいる状態が不幸なのだと考えてしまうでしょう。そうではありません。 反対に、シーソーが上がって自分の身体が頂点に達したときだけが幸せでもありません。それでは、自分の幸せのために誰かの犠牲を要求することになります。「しあわせ」とは、シーソーが上に行ったり下に行ったりする過程の中で、刹那生じる中間地点にあります。誰かと何かを「なしあわせる」ことで生まれる一瞬のバランス状態。これが「しあわせ」の瞬間です。 よって「しあわせ」とは静止状態で享受できるものではなく、つねに動的状態で、繰り返し訪れるもの。寄せては返す波のようなものです。「しあわせ」を感じる過程で、有頂天になったり、どん底の気分を味わうこともあるでしょう。でも、それこそが真ん中の状態を通り過ぎるための力点の1つになるわけです。 そして、シーソーをこぐ相手はいつも一緒の人である必要もありません。あなた自身も通りすがりで誰かのシーソーにいったん座っていることもあるでしょう。幸と不幸、光と闇というように二項対立で捉えがちですが、そう区別できるものではないのです。すべてが流れの中にあり、すべてが循環し、つながっています』、「「しあわせ」とは静止状態で享受できるものではなく、つねに動的状態で、繰り返し訪れるもの。寄せては返す波のようなものです」、面白い見方だ。
・『生きている限り誰かとシーソーをする  そう考えれば、未婚に比べて既婚の幸福度が高いのは、配偶者や子どもといったつねに「しあわせる」相手と何かをしていることによるものですし、未婚でも恋愛相手がいる人の幸福度が高いのも同じことでしょう。男性より女性のほうが全体的に幸福度が高いのも配偶関係によらず、女性のほうがコミュニケーションをとる回数が多いということかもしれません。 恋愛相手がなくても、オタク未婚男性の幸福度が高いのも、オタク趣味を通じて、誰かとつながり、誰かの役に立っている実感が得られるという、いわば「擬似恋愛・擬似子育て」行動だからでしょう。 「結婚すれば幸せになれる」「お金持ちになれば幸せになれる」という状態依存にとらわれていると、ますます自分を不幸に陥れます。「そういう状態にない自分は幸せではないのだ」と自己暗示にかけているようなものだからです。 私たちは、生きている限り、無意識に誰かとつかの間のシーソーをしています。仕事でも買い物でも、あなたの行動は何かしら誰かに影響を与えているものです。それもまた人とのつながりです。 人とのつながりは、最初は小さな点でしかありません。でも、その小さな点もつながりが増えることによって、1本の糸になります。さらにつながりが広がると、糸が交錯して、大きな布になります。まさに、中島みゆきさんの曲「糸」の歌詞そのままです。 「Be happy」ではなく「Do happy」へ。「幸せ」から「仕合わせ」へ。「幸せ」という手錠をいったん外して、本来の「仕合わせる」行動をしてみてはどうでしょうか?』、「「幸せ」という手錠をいったん外して、本来の「仕合わせる」行動をしてみてはどうでしょうか?」、面白く新鮮な幸福論だ。
タグ:(その3)(脳科学者・中野信子が「人生では正解を選んではいけない」と言い切る理由 「幸せホルモン」を味方にする方法、「一家の大黒柱がしんどい」世界で唯一 女性より男性の幸福度が低くなる日本の特殊事情 なぜ男性のネガティブ感情が高いか、際立つ「40~50代未婚男性」幸福度の低さの背景 しあわせは「幸せ」ではなく「仕合わせ」である) 幸福 PRESIDENT Online /PRESIDENT BOOKS 中野 信子 「脳科学者・中野信子が「人生では正解を選んではいけない」と言い切る理由 「幸せホルモン」を味方にする方法」 『引き寄せる脳 遠ざける脳』(プレジデント社) 「人の「幸せ」についての考え方は主観的なものであり、ひとつのものさしで測ることはできません」、なるほど。 「幼少期に培われた人間関係のなかで、愛着の対象や自分自身のことをどう思っていたかによって、幸せの価値観もそれぞれちがってくる」、「幼少期」の影響があるとは驚いた。 「あなたの選んだ選択肢に「間違い」はない」、嬉しいことで、もっと以前から知っていればよかった。 「人はなぜ、自分と他人を比べて思い悩むのでしょうか? それは、おそらくわたしたち日本人が、子どものころから「正解を選ぶ人生」というものに、あまりに慣らされてしまっているからだ」、面白い見方だ。 「選んだ答えを「正解」にしていくのが人生」、とは能動的で、面白い見解だ。 「自分の正解の基準を、丁寧に自分の気持ちと向き合いながら見つけていくこと」、その通りだろう。 「日本人はもともと不安傾向の高い人が多い遺伝子プールである」、「自分の決断をなかなか正解と思いにくく、曖昧であったり、迷ったりしがち」、厄介な性格だ。 「迷うことすら自分の「幸せ」の可能性を広げてくれるものとして、堂々と受け入れていく必要がある」、極めて前向きな考え方で、大いに参考になる。 PRESIDENT ONLINE 本川 裕 「「一家の大黒柱がしんどい」世界で唯一、女性より男性の幸福度が低くなる日本の特殊事情 なぜ男性のネガティブ感情が高いか」 「幸福感」は低く、「ネガティブ感情度」は高いというのは、あまりいいことではなさそうだ。 「日本やドイツ」が似ているというのは、なんとなく感じる実感に近い。 私は一般的問題では、「日本人」特殊論には組しないが、この調査の結果は認めざるを得ない。 「日本人だけ男性のネガティブ感情が女性を上回っている」、要因は以下にあるようだ。 日本人の「男は、男(自分)への期待感が大きい。それだけ幸福度を感じにくくなっているのである」、納得した。 「高齢者のネガティブ感情度は、高福祉社会と言われる北欧諸国が世界で最も低く、それに伴って年齢差も最も低くなっているが、日本もこれに伍しているのである」、これは「日本の社会保障の充実度が北欧並みと考えるのは少し行き過ぎの見方かもしれない。むしろ、諦観という日本人の習性に理由を見出すべきなのかもしれない」、その通りなのだろう。 確かに「日本は「奇跡の国」と見なされてもおかしくはない」ようだ。 東洋経済オンライン 荒川 和久 「際立つ「40~50代未婚男性」幸福度の低さの背景 しあわせは「幸せ」ではなく「仕合わせ」である」 第二の記事を「日本」中心にみたもののようだ。 「男性」の場合、「年収より未婚か既婚かの配偶関係のほうが幸福度に強く影響を与えている」、興味深い結果だ。 「男性の幸せにおいて重要な因子は、むしろ年収より恋愛なのではないかという仮説も成り立ちます」、面白い結果だ 「「しあわせ」とは静止状態で享受できるものではなく、つねに動的状態で、繰り返し訪れるもの。寄せては返す波のようなものです」、面白い見方だ。 「「幸せ」という手錠をいったん外して、本来の「仕合わせる」行動をしてみてはどうでしょうか?」、面白く新鮮な幸福論だ。
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株式・為替相場(その12)(「安い」日本と円の「実質実効為替レート」低下 何を象徴するのか=唐鎌大輔氏、総裁選をきっかけに日本株が急上昇 今後の株価は?【個人投資家必見】、世界のバブル崩壊がついに始まったと言える理由 恒大集団をネタにした下落に隠されている真実) [金融]

株式・為替相場については、3月6日に取上げたままだった。日経平均株価は31年ぶりの高値を付け、今た。今日は、(その12)(「安い」日本と円の「実質実効為替レート」低下 何を象徴するのか=唐鎌大輔氏、総裁選をきっかけに日本株が急上昇 今後の株価は?【個人投資家必見】、世界のバブル崩壊がついに始まったと言える理由 恒大集団をネタにした下落に隠されている真実)である。

先ずは、9月18日付けロイターが掲載したみずほ銀行 チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔 氏による「コラム:「安い」日本と円の「実質実効為替レート」低下、何を象徴するのか=唐鎌大輔氏」を紹介しよう。
https://jp.reuters.com/article/column-daisuke-karakama-idJPKBN2GD0E1
・『国内の新聞・雑誌メディアでは、最近になって「安い日本」が頻繁に特集されている。9月16日の日本経済新聞は「iPhone価格、10年で3倍の19万円 日本人平均月収の6割」と題し、新しいiPhoneの値段が日本人にとって高騰している事実を報じていた。 iPhoneに限らず、高級車や高級時計など輸入されるブランド品は、過去に比べて明確に値段が上がっている。もちろん、定価自体の上昇も世界的に認められるだろうが、その程度をどれくらい大きなものと受け止めるかどうかは、当該国のマクロ経済情勢に依存する部分もある。 以下で議論するように、過去1年間において円の下落幅は、主要通貨の中でも群を抜いて大きく、これは日本経済の購買力低下を意味する』、興味深そうだ。
・『<過去1年間、最も長期平均からかい離した円>  購買力という観点からは、ドル/円相場ではなく、貿易量および物価水準を用いて算出される通貨の総合力である実質実効為替レート(以下、REER)を中心に議論するのがよい。 足元で国際決済銀行(BIS)が月次で公表する円のREERは、1970年代前半並みの水準まで落ち込んでいる。これは今年6月以降、より顕著な傾向として見い出せる。 そこで今年8月分のREERに関し、長期平均(20年平均)とのかい離率を主要通貨で比較すると、円の特異な立ち位置が浮かび上がる。 8月時点で円の長期平均からのかい離率はマイナス19.7%と、主要通貨では突出して大きな過小評価となっている。これに次ぐメキシコペソのマイナス15.5%と比べてもかなり大きいことが分かる。 しかも、メキシコペソは1年前のマイナス25.5%からプラス10%ポイント程度上方修正が進んでいるが、円は1年前のマイナス14.2%からマイナス5.5%ポイントの下方修正が進んでいる。 この下方修正の「幅」に着目しても、円は目立つ。円の次にこの「幅」が大きいのがスイスフランスでマイナス4.3%ポイントだが、そもそもスイスフランは1年前のプラス8.7%が過大評価だったのであり、今年プラス4.3%まで下方修正されているという話である。 要するにメキシコペソは過大な割安が割高方向へ、スイスフランスは過大な割高が割安方向へ調整が進んでおり、それ自体は健全な話である。しかし、円は過大な割安からさらに過大な割安へとに進んでおり、それは健全な話では全くない』、「実質実効為替レート」の「長期平均(20年平均)とのかい離率」をみると、「円は過大な割安からさらに過大な割安へとに進んでおり」、極めて不健全な姿だ。
・『<円の割安修正、断たれている経路>  一方、ドルは過去1年間を通じてプラス6─7%の割高が維持されている。現状では、ドル/円という通貨ペアは「最も割高な通貨」と「最も割安な通貨」の組み合わせであり、REERが平均回帰性向を有することを思えば、円高・ドル安を予想するのが理論的に無難である。筆者もかつてはそのような基本認識を抱いていた。 だが、既知の事実ではあるが、もはや日本は円安になっても輸出数量が増える国ではない。REERがいくら割安感を強めてもそれが輸出数量を押し上げ、貿易黒字を増やすという展開は期待できない。 とすれば、名目ベースの円相場が上昇する経路は、断たれたままである。アベノミクス初期を思い返せばよく分かる。2012年12月から2015年6月(ここがアベノミクス下での円安のピーク)までの間にドル/円相場は約50%も上昇したが、輸出数量は極めて緩慢な動きが続き、当然ながら貿易黒字も増えなかった。 「円安が過剰」と評価されるためには、結局、それが貿易黒字に直結し、自国通貨買いを招き、割安感が解消されていく必要がある。 ところが、既に多くの日本企業が海外生産移管を進め、「円安─輸出」という経路が機能不全になっていると考えられる中、REERの割安感が名目円高を約束するとは限らない。 これは過去10年余りで日本の誇る「世界最大の対外純資産」の中身の半分が直接投資残高になっていることからも類推できる。2000年代前半も日本は「世界最大の対外純資産」を持っていたが、当時、半分は証券投資残高で占められており、直接投資残高は20%未満だった。 リスク回避ムードの高まった場合、証券投資はリパトリエーション(本国回帰)が期待できるものの、直接投資(要は海外企業買収)はそう簡単には行かないだろう。「リスクオフの円買い」が発生する経路も、今は細っているように感じられる』、「既に多くの日本企業が海外生産移管を進め、「円安─輸出」という経路が機能不全になっていると考えられる中、REERの割安感が名目円高を約束するとは限らない」、「「リスクオフの円買い」が発生する経路も、今は細っている」、このように「円の割安修正、断たれている経路」、市場メカニズムに自動調整機能が失われてしまったとは、困ったことだ。
・『円安は修正されないのか>  また、周知の通り、近年では対ドルに限らず、名目ベースの円相場は大して動いていない。それでもREERが割安感を強めているということは、日本の一般物価が諸外国に比べて出遅れていることを意味する。 実際、足元に目を向けても欧米でインフレが懸念されているのに、日本の物価はむしろ下がっている。 こうした物価格差に起因する実質ベースの円安は、名目ベースの円高で相殺されるというのが、これまでの日本の歴史だった。しかし、上述してきたように、今後はもうその経路が難しくなっている。名目は円安のままで、物価も上がらないとすれば、REERで見た円は沈むしかない。 もちろん、ドル全面安が極まる地合いが到来すればその限りではないが、政治・経済・金融情勢が今の日本より劣後する先進国を見出すのは難しく、ドル安だからと言って円安を招来するとは限らない。実際、今年4─6月期は世界的にドル全面安が進んだが、円だけは買われなかった。 平均回帰性向を踏まえ、「REERはいずれ修正するもの」という考え方に立つのは教科書的には正しいものの、これを前提とした為替予想は危険をはらみそうである。 少なくともコロナ禍における日本の防疫政策は戦略性がなく、出口の到来を全く予感させない。常に「相手のある話」にしかなら(注:「な」が抜けている)い為替の世界において、円の価値が劣化し続けるというのは、今の日本経済と欧米経済の差を見ていると致し方ないと感じさせられる。(本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)』、「円の割安修正、断たれている経路」の結果として、「円の価値が劣化し続ける」のは全く異常なことだ。歯止めをかける何らかの要因が表れてほしいものだ。

次に、9月21日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した法政大学大学院教授の真壁昭夫氏による「総裁選をきっかけに日本株が急上昇、今後の株価は?【個人投資家必見】」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/282567
・『新政権が期待にこたえられるか 経済成長と株価に重要な影響  9月3日、菅義偉首相が退陣する意向を表明した。それをきっかけに、日本株は上昇の勢いを強め、一時、約31年ぶりの高値まで上り詰めた。 支持率低下などで政策運営に行き詰まり感のあった菅首相が、総裁選に出馬しないことが決まり、海外投資家の日本株に対する見方に変化が表れた。また、国勢選挙が実施される直前には、日本株は堅調な展開になりやすいという一種の成功体験もあった。 それらに伴い、それまで日本株の売りに回っていた海外投資家の中には、日本株の割安感や新政権への期待感を理由に日本株を徐々に買い始めた。それとほぼ同時期に、コロナ感染者数が徐々に減りはじめ、経済の正常化に対する期待も盛り上がった。 ただ、期待先行で株価が上げた分、今後、新政権の政策運営に失望感が出るようだと、株価調整の可能性はあるだろう。自民党総裁選の次は衆議院選挙と重要な選挙が続く。新政権がわが国の成長期待を高める産業政策を実施することができれば、株価上昇の展開が続くこともあるだろうが、逆に、投資家の失望感を誘うようだと、株価上昇トレンドの継続は難しいはずだ。新政権がどの程度期待にこたえられるか、わが国経済の成長と株価の展開に重要な影響を与えることになる』、「菅首相が、総裁選に出馬しないことが決まり、海外投資家の日本株に対する見方に変化が表れた」、「菅首相」にとってはみっともない話だ。
・『日本株に悲観的だった海外の大手投資家  これまで、大手の海外投資家の多くは、日本株に悲観的な見方が多かった。わが国の経済がなかなか成長過程に復帰できないことに加えて、今後の政治情勢にも明るい見方ができなかった。特に、菅政権が続いた場合、自公連立政権が総選挙で過半数を維持するのは難しく、政権の不安定化を懸念する投資家の見方は根強かった。 7月に入ると、わが国ではコロナ変異株による感染再拡大によって、経済活動に欠かせない人流が抑制された。社会の閉塞感は高まり、政権支持率が低下した。当然ながら、経済活動にも重要なマイナス要因となった。 同時期、海外投資家は空売りも含めて「日経225先物」(日経平均株価を対象とした株価指数先物取引)を売り越した。加えて、彼らは日経平均株価に採用されている現物株も売った。それによって、日本株の展開は不安定化し、それが売りを呼ぶ悪循環に陥った。 元々、世界の主要投資家の日本株に対する見方は、日本株イコール「世界の景気敏感株」との認識が強かった。日本経済の構造を見ると、自動車など一部の製品を除いてかつてのような独創的な製品群は見当たらない。そのため、自力で需要を創出する実力が十分ではない。世界の景気が上向きになれば、それなりの業績回復を実現することができる一方、世界の景気が落ち込むと、どうしても日本経済全体も足を引っ張られることになってしまう。 日本株の趨勢(すうせい)は、世界経済次第ということだ。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって、世界経済の先行きが不透明になると、どうしても日本株に手を出すことが難しくなる。それが、海外投資家が日本株への関心を低下させていた大きな理由だ』、「日本株イコール「世界の景気敏感株」との認識が強かった」、不名誉なことだ。
・『海外投資家が日本株の急上昇を支えた背景  9月に入って、まず、海外投資家の日本株に対する見方が変化した。夏場の海外投資家などの売りの増加によって、世界的に見て日本株には割安感が出た。主要国の株価収益率(PER)は歴史的に14~17倍が適正水準といわれる。8月中旬、日経平均株価のPERは予想ベースで12倍台まで低下した。他方で、米株は史上最高値を更新した。日本株の出遅れ感が目立ち始め、日本株への物色は増えやすい状況が出現した。 加えて、8月下旬ごろから、わが国の政治動向など複合的な要因が目先の投資家心理を強気にさせた。菅首相の退陣表明のインパクトは大きい。2013年以降の世論調査の推移を見ると、直近の政権支持率は過去最低の水準だ。退陣表明によって、新政権の景気対策を期待する投資家が増えた。その結果、夏場に日本株を売った海外のファンド勢などが一気に買い戻しに動いた。 自民党総裁選に続けて衆議院選挙が続くことも株価上昇を支えた。1990年以降の衆議院選挙期間中、日本株は上昇した。それが、「総選挙の時は日本株が上昇する」という主要投資家の「思い込みの心理」を増やした。そうした一種のアノマリー(法則や理論から合理的な説明ができない現象)も株価上昇の一因だ。 また、8月下旬以降、国内のコロナ感染者は減少傾向にある。楽観はできないが、その状況が続くのであれば、移動自粛は徐々に緩和され、個人消費を中心に景気は持ち直す可能性が高まる。そうした期待も9月に入ってからの株価上昇を支えた』、「8月中旬、日経平均株価のPERは予想ベースで12倍台まで低下・・・日本株の出遅れ感が目立ち始め」、「8月下旬ごろから、わが国の政治動向など複合的な要因が目先の投資家心理を強気にさせた・・・新政権の景気対策を期待する投資家が増えた」、なるほど。
・『期待先行で上昇した株価の今後の展開予想  重要なのは、期待先行の相場展開はいつまでも続かないことだ。期待先行で上昇した分、株価調整の可能性はある。自民党総裁選挙で誰が当選するか、そして、衆議院選挙がどうなるかは、投票の結果を確認しなければならない。 それらの不確定要素を背景に、海外投資家中心に徐々に利益確定の売りを入れ、今後の展開を見極めようとする動きは増えるだろう。それが現実のものになると、9月上旬のような株価の上昇の勢いは弱まる可能性が高い。 高揚した期待の落ち着き以外に、世界経済の供給ボトルネックの深刻化の影響も軽視できない。東南アジアでの感染再拡大やワクチン接種の状況を見る限り、世界経済の供給制約は長引く可能性がある。半導体不足によって本邦自動車メーカーの生産減が長引くとの見方が増えれば、国内株への売り圧力は増える可能性がある。さらなるウイルスの変異も株価にはマイナスだ。 一方、次期政権がデジタル化や脱炭素など、世界的に加速する環境変化に対応できると、株価の展開は違ってくるかもしれない。 新政権が、わが国経済全体が的確に対応する政策を立案し、実行につなげられれば、わが国経済の潮流にも変化が期待できる。具体的には、エネルギー政策の転換や労働市場の流動性向上は不可欠だろう。いずれも、過去の政権が取り組みを表明したものの、十分な効果があったとは言いづらい。 中長期的な展開を考えると、わが国経済の実力向上に向けて新政権がどの程度の力を示せるかが、長い目で見て日本株に大きく影響する。株価上昇を一時的な現象に終わらせないためにも、新政権は明確なビジョンを示し、実現することが求められている』、「株価上昇を一時的な現象に終わらせないためにも、新政権は明確なビジョンを示し、実現することが求められている」、その通りだ。

第三に、9月25日付け東洋経済オンラインが掲載した財務省出身で慶應義塾大学大学院准教授の小幡 績 氏による「世界のバブル崩壊がついに始まったと言える理由 恒大集団をネタにした下落に隠されている真実」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/458019
・『9月20日から22日にかけて、中国以外の世界の主要株式市場が一時急落した。きっかけは、中国不動産大手の一角、恒大集団の破綻懸念だった』、「小幡」氏の見解とは、興味深そうだ。
・『「今後も株価は大丈夫」とは言えない  久々の大幅下落で、市場よりもメディアが騒ぎ立てた。中国の巨大な不動産バブルがこれで崩壊するのか? リーマンショックのようなことになるのか? 世界株式市場の大暴落がやってくるのか? 結論から言えば、中国不動産バブルは、いますぐには崩壊しないだろう。リーマンショックのような世界金融システムへのリスクはない。だから、今は世界的な株価大暴落とはならない。「なーんだ、たいしたことないのか。じゃあ、株価はまだまだ上昇し続けるのね」ということでいいのだろうか。 いや、それは間違いだ。ここで、バブルはいきなりは崩壊しないが、世界株式バブルの崩壊の第一歩はついに始まったのである。中国も金融システムも問題なくて、株価も下がらないのに、なぜ、バブル大崩壊の一歩なのか? それは、今回、株価が反転したからである。それこそが、大バブル崩壊の兆候なのだ。 中国の恒大集団の破綻懸念とは何を意味するのか?第1に、中国の不動産市場は明らかなバブル、それも相当のバブルだ、ということである。第2に、その事実を世界中の投資家は知っている、ということだ。第3に、このニュースはネガティブであることは間違いがないが、そのインパクトの量的な判断についてはコンセンサスがない、ということである。 これがそのまま株価の動きに現れた。つまり、中国の不動産会社の破綻懸念が出た、これはネガティブだ、そしてそれを誰もが知っている、だからみんな売るだろう。ならば、自分もとりあえず売っておこう、そういう思考プロセスである。) しかし、これがバブルの完全崩壊につながるかどうかわからない。なぜなら、自分もこのニュースのインパクトがサイズとしてはわからない。ということはほかの投資家にもわからないだろう。だから、投げ売りになるかどうかはわからない。したがって、様子を見ながら売ってみよう。こんな具合だ。 この結果、20日のアメリカの株式市場は、寄りつきから下げたが、下げを拡大して行ったのである。取引時間中に、とくに新しいニュースは出ていない。それなら、ファイナンス理論どおり、ニュースはすぐに株価に織り込まれるなら、寄りつきでみんな売って、その後はモミ合いになったはずだ』、「ファイナンス理論」に基づく解釈は新鮮で面白い。
・『急落後の21日が小動きになったワケ  だが、当日は、ほぼ1日ずっと下げ続けた。そして、引け際に買い戻しが入り、少し戻して終えた。最後の戻しは、デイトレード的に空売りを仕掛けた人々が手仕舞いしたことによると思われるが、ほぼ1日下げ続けたのは、ほかの投資家がどれほど売りたがっているかが不透明だったので、それを確認しながら少しずつ売ったというところだろう。 すなわち、このときに重要なのは、恒大集団の深刻度合いではなく、ほかの投資家がどれほど売りたがっているか、ということがすべてであったのである。 したがって、不動産危機の深刻度、というファンダメンタルズに関する情報は重要ではなく、投資家たちがどれほど売り意欲があるか、およびどれほど「売り」という行動に動くか、ということが重要だったのである。 そして、それは1日でわかった。となると、翌日からは、あまり不安はない。ただ、みなが売ってから翌日に話し合いの結果売ってくるような「動きの遅い」機関投資家もいるから、その様子を見ることが必要だった。それが、21日の小動きとなった。 さらに、もうひとつの大きな要因として、アメリカでのFOMC(連邦公開市場委員会)の声明が22日に公表される、ということがあった。アメリカの中央銀行であるFED(連銀)のテーパリング(緩和縮小)の開始時期、利上げの開始時期、これに関する情報が市場ではもっとも重要だった。その情報が22日に出てくるのをみな待ちたかった。それが動きのなさにつながったのである。 そして22日。予想以上に、FOMCの声明はタカ派だった。普通ならこれで売られそうなものであるが、今回はともかくFOMCが終わった、ということ、そしてほかの投資家たちも今は投げ売りをするのではなく、少しだけ売ったことがはっきりしたので、売った分を買い戻す動きになった』、「重要なのは、恒大集団の深刻度合いではなく、ほかの投資家がどれほど売りたがっているか、ということがすべてであった」、なるほど。
・『今回の急落の理由は「株を売りたい」がすべて  つまり、今回の世界的な株価の急落は、中国の不動産業界の状況とはまったく無関係で「株をそろそろ売りたい」という投資家がほとんどであったことが理由のすべてだ。そして、誰もがネガティブだと思う、コンセンサスが明らかに成り立つニュースに反応して、ほとんどの投資家が売ったということである。 とにかく不動産のニュースや状況の中身はどうでもよかった。だからこそ、どこまで売るかは、ほかの投資家がどこまで売るか、すなわち、どのくらい下がるか、にかかっていたのである。だから、投資家同士のにらみ合いになり、2日間かけて下落幅を確認していったのである。 そして「中国の不動産」というのは、きっかけや合図にすぎないから、本当に重要なニュースは、アメリカの中央銀行であるFEDの意向であった。だから、そのニュースを待ったのである。 そもそも株価はなぜ下がるのか?それは、誰かが売ったからである。 株価下落の理由はこれ以外ありえない。それなら、その次の質問は、なぜみんな売ったか?ということであるが、これも答えはひとつしかない。 株価が上がってきたからである。 下がる理由はひとつ。その前に上がったからである。上がった後しか下がらない。下がり続けているときは、誰も「なぜ下がった?」と聞かないから、下がった理由を探しているときであれば、その答えは必ず「その前に上がっていたから」ということになる。これまた、これ以外の答えはありえない。 この2つの大原則。これが、行動ファイナンスにおいて、私が考える最も重要な原理である。「そんなの当たり前だ」とみなさんは言うかもしれない。だが、それはまったく違う。当たり前でないのだ。 下がったときは、誰かが売った。誰が売ったのか。それを徹底的に知る必要がある。その次には、彼らが売った理由を徹底的に考える。この2つを行えば、相場はすべてわかる』、「そもそも株価はなぜ下がるのか?それは、誰かが売ったからである。 株価下落の理由はこれ以外ありえない。それなら、その次の質問は、なぜみんな売ったか?ということであるが、これも答えはひとつしかない」、の意味は私の理解の限度を超えている。
・『今が「バブルの後半の後半」である理由  今回はどうだろう。売ったのは誰か? ほぼ全員である。だから急落になったのである。 売った理由は何か?これまで上がって来たからである。つまり、ほとんどすべての投資家が「これまでだいぶ上がったから、いつ売ろうかな」と考えていた、ということである。これが相場の現状の本質である。すなわち、これはバブルの後半の後半、末期あるいはそれに近い時期であることを示している。 みんなが売りたがっている。これまで上がったから売るタイミングを探している。そして、きっかけのニュース、号砲がなったら、とりあえず売る。これはバブルの後半の後半にしか見られない現象である。 さらに、私が「末期の可能性がある」と判断した理由は、FOMCで株価が下落しそうなニュースであったにもかかわらず、上昇したことにある。これは「受け入れたくない現実からの逃避行動」と考えられる。冷静な時期であれば、ニュースを逆向きに解釈することはない。ポジティブ、ネガティブ、その方向性については、間違えようがないのである。常に問題なのは「ネガティブだがどの程度か」ということのはずだからだ。 しかし、今回のFOMCは、中国不動産問題を受けて、少しテーパリングの時期を遅らせるだろう、ましてや利上げの時期を示唆するようなことは打ち出さないだろうと誰もが思っていた。しかし、FOMCはまったく逆で、次回11月頭にテーパリングの開始を決定することがほぼ確実であることを示唆した。 さらに驚いたことに、いわゆるドットチャートで、2023年から利上げが始まるとFOMCの投票権を持つ理事たちは示していたのが、2022年の半ばからに前倒しになったのである。これは明らかに「事件」であり、株式投資家たちがもっとも恐れていたニュースである。それにもかかわらず、株価は上昇した。これは、投資家たちが目先、受け入れたくない事実を無視したことを意味する。) 一方で、リーマンショック時とは大きく異なることも事実だ。なぜなら、銀行システムは、リーマンショック後、欧米では規制が強化され、かなり保守的に運用されているからである。しかし、銀行システムの破綻がなくとも、株価は簡単に暴落する。上がりすぎたものは大きく下がる。2000年のテックバブル崩壊と同じことである。 しかも、テックバブルは経済社会へのダメージが小さかったことと異なり、今回、もし暴落すれば影響はとてつもなく大きくなるだろう。なぜなら、金融バブルが崩壊すると、経済や市場のいちばん弱いところから破綻していくからだ。 リーマンブラザーズは破綻したが、結局は同じ金融大手でもゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーは破綻しなかった。ただし、サブプライム問題でも2006年にはすでに問題を来していたが、プライム市場は破綻しなかった。大手金融も当初は大丈夫だった。サブプライム関連企業とサブプライムローンを借りていた質の悪い借り手が破綻しただけであった。しかし、それが翌2007年のパリバショックになり、2008年のリーマンショックへと連なり、強いはずの別の業種の企業まで破綻していったのである』、「みんなが売りたがっている。これまで上がったから売るタイミングを探している。そして、きっかけのニュース、号砲がなったら、とりあえず売る。これはバブルの後半の後半にしか見られない現象である」、「今回、もし暴落すれば影響はとてつもなく大きくなるだろう。なぜなら、金融バブルが崩壊すると、経済や市場のいちばん弱いところから破綻していくからだ」、恐ろしい見立てだ。
・『今、もっとも弱っているのは政府・中央銀行  今回は、コロナバブルにより、格差はあらゆるところで広がった。ワクチンがすすんでない途上国、弱小国は回復が大きく遅れている。その多くの国は通貨も財政も弱いから、アメリカの回復により金利が上昇し、通貨安となり、負債返済に行き詰まるだろう。そして世界的に不況が広がっていく。 中国は、特殊な部分もあるが、不動産のバブルは大きすぎて、必ず、どこかのタイミングで、破綻がやってくる。そのときには、先進国も影響を受けるだろう。常に弱いところからやられるのだから、先進国も弱いところからやられるだろう。 問題は、今、先進国でいちばん弱っているセクターはどこか?ということである。それは、金融緩和を大規模に行い、巨額の財政出動をしている政府である。つまり、先進国に危機が波及したときに、やられるのは、政府か中央銀行のどちらか弱いほうであり、しかも政府と中央銀行の関係性からいけば、片方がやられれば、もう片方も沈没するのは必然である。 したがって、私は、今回のバブルは、銀行セクターが比較的頑健で、なかなか世界的な銀行危機にはならないが、その分、バブルはさらにふくらみ、そのしわ寄せが、政府や中央銀行に津波のように押し寄せ、リーマンショックよりも遥かに大きなバブル崩壊になると予想している(ここで本編は終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを展望するコーナーです。あらかじめご了承下さい)』、「リーマンショックよりも遥かに大きなバブル崩壊になる」場合、異次元緩和から唯一脱出できない日銀、節度を完全に喪失した日本の財政が、最も「しわ寄せ」を被り易いことは、要注意だ。私見では大幅円安、資本の海外流出、国債利回りの急騰など、日本は破綻の淵に追い込まれるだろう。異次元緩和に賭けたアベノミクスの完全破綻である。
タグ:株式・為替相場 (その12)(「安い」日本と円の「実質実効為替レート」低下 何を象徴するのか=唐鎌大輔氏、総裁選をきっかけに日本株が急上昇 今後の株価は?【個人投資家必見】、世界のバブル崩壊がついに始まったと言える理由 恒大集団をネタにした下落に隠されている真実) ロイター 唐鎌大輔 「コラム:「安い」日本と円の「実質実効為替レート」低下、何を象徴するのか=唐鎌大輔氏」 「実質実効為替レート」の「長期平均(20年平均)とのかい離率」をみると、「円は過大な割安からさらに過大な割安へとに進んでおり」、極めて不健全な姿だ。 「既に多くの日本企業が海外生産移管を進め、「円安─輸出」という経路が機能不全になっていると考えられる中、REERの割安感が名目円高を約束するとは限らない」、「「リスクオフの円買い」が発生する経路も、今は細っている」、このように「円の割安修正、断たれている経路」、市場メカニズムに自動調整機能が失われてしまったとは、困ったことだ。 「円の割安修正、断たれている経路」の結果として、「円の価値が劣化し続ける」のは全く異常なことだ。歯止めをかける何らかの要因が表れてほしいものだ。 ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫 「総裁選をきっかけに日本株が急上昇、今後の株価は?【個人投資家必見】」 「菅首相が、総裁選に出馬しないことが決まり、海外投資家の日本株に対する見方に変化が表れた」、「菅首相」にとってはみっともない話だ。 「日本株イコール「世界の景気敏感株」との認識が強かった」、不名誉なことだ。 「8月中旬、日経平均株価のPERは予想ベースで12倍台まで低下・・・日本株の出遅れ感が目立ち始め」、「8月下旬ごろから、わが国の政治動向など複合的な要因が目先の投資家心理を強気にさせた・・・新政権の景気対策を期待する投資家が増えた」、なるほど。 「株価上昇を一時的な現象に終わらせないためにも、新政権は明確なビジョンを示し、実現することが求められている」、その通りだ。 東洋経済オンライン 小幡 績 「世界のバブル崩壊がついに始まったと言える理由 恒大集団をネタにした下落に隠されている真実」 「小幡」氏の見解とは、興味深そうだ。 「ファイナンス理論」に基づく解釈は新鮮で面白い。 「重要なのは、恒大集団の深刻度合いではなく、ほかの投資家がどれほど売りたがっているか、ということがすべてであった」、なるほど。 「そもそも株価はなぜ下がるのか?それは、誰かが売ったからである。 株価下落の理由はこれ以外ありえない。それなら、その次の質問は、なぜみんな売ったか?ということであるが、これも答えはひとつしかない」、の意味は私の理解の限度を超えている。 「みんなが売りたがっている。これまで上がったから売るタイミングを探している。そして、きっかけのニュース、号砲がなったら、とりあえず売る。これはバブルの後半の後半にしか見られない現象である」、「今回、もし暴落すれば影響はとてつもなく大きくなるだろう。なぜなら、金融バブルが崩壊すると、経済や市場のいちばん弱いところから破綻していくからだ」、恐ろしい見立てだ。 「リーマンショックよりも遥かに大きなバブル崩壊になる」場合、異次元緩和から唯一脱出できない日銀、節度を完全に喪失した日本の財政が、最も「しわ寄せ」を被り易いことは、要注意だ。私見では大幅円安、資本の海外流出、国債利回りの急騰など、日本は破綻の淵に追い込まれるだろう。異次元緩和に賭けたアベノミクスの完全破綻である。
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パンデミック(医学的視点)(その22)(ラムダにミューも 新型コロナの変異株 知っておきたい10のこと、なぜ「ワクチン接種で死亡」の原因究明が進まないのか 法医学者に聞く、イスラエルの調査で判明「ブースタ接種」の難題 感染予防の底上げ効果は高齢者で数週間) [パンデミック]

パンデミック(医学的視点)については、8月24日に取上げた。今日は、(その22)(ラムダにミューも 新型コロナの変異株 知っておきたい10のこと、なぜ「ワクチン接種で死亡」の原因究明が進まないのか 法医学者に聞く、イスラエルの調査で判明「ブースタ接種」の難題 感染予防の底上げ効果は高齢者で数週間)である。

先ずは、9月10日付け日経ビジネスオンライン「ラムダにミューも 新型コロナの変異株、知っておきたい10のこと」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00210/090900021/
・『日本でも猛威を振るう新型コロナウイルスの変異株。「デルタ株」の感染が急拡大しており、「ミュー株」などの新たな変異株も国内での感染が確認された。そもそも変異株とはどのようなもので、それぞれどんな特徴があるのか。世界で次々と発見されている新型コロナウイルスの変異株について、知っておきたい10項目を整理した。 1:新型コロナウイルスの変異株とは何? 2:変異が起きる仕組みは? 3:現在確認されている主な変異株の種類は? 4:なぜ株の名前はギリシャ文字で表記される? 5:変異株にはどんな特徴がある? 6:報道で目にする「N501Y」や「L452R」はどういう意味? 7:変異株にはワクチンが効きにくい? 8:日本国内で感染が確認されている変異株は? 9:変異株の感染予防のための対策は? 10:今後、変異株はどうなっていきそう? 
(各項目を詳しくみると)1:新型コロナウイルスの変異株とは何?  生物やウイルスの遺伝情報が変化することを「変異」と呼ぶ。一般的にウイルスは増殖や感染を繰り返す中で、その遺伝情報は少しずつ変化していく。幾つかの遺伝情報の変異により、従来のウイルスとは異なる性質を持つようになったものを変異株といい、世界保健機関(WHO)はそのリスクの評価に基づいて、注目すべき変異株(VOI)と懸念される変異株(VOC)とを定義し、「アルファ株」「ベータ株」などの命名を行っている。 日本でも国立感染症研究所が、主に感染性や重篤度が増す・ワクチン効果を弱めるなど性質が変化した可能性のある株をVOC、主に感染性や重篤度・ワクチン効果などに影響を与える可能性が示唆される株をVOIとして分類している)。 2:変異が起きる仕組みは?  ウイルスは自己増殖できないため、生物の細胞のなかで複製が行われる。例えば、新型コロナウイルスがヒトの細胞内に侵入すると、RNAの情報からウイルスを形成するためのたんぱく質がつくられる。それと同時にRNA自体も大量に複製されるが、その時にコピーミスが起こることで少しずつ変異する。ウイルスの性質に関わる遺伝情報のコピーミスが起こると、性質も変化する)。 3:現在確認されている主な変異株の種類は?     VOI(注目すべき変異株)とVOC(懸念される変異株)に該当する変異株に対して、WHOはギリシャ文字による命名を行っている。現在はアルファ(α)~ミュー(μ)までの変異株に分類されている。 VOC、VOIに当てはまる変異株は以下の通り。 VOC(懸念される変異株) アルファ株(2020年9月に英国で発見) ベータ株(2020年5月に南アフリカで発見) ガンマ株(2020年11月にブラジルで発見) デルタ株(2020年10月にインドで発見) VOI(注目すべき変異株) イータ株(2020年12月に複数の国で発見) イオタ株(2020年11月に米国で発見) カッパ株(2020年10月にインドで発見) ラムダ株(2020年12月にペルーで発見) ミュー株(2021年1月にコロンビアで発見) 4:なぜ株の名前はギリシャ文字で表記される?  WHOは2021年5月末に新型コロナの変異株をギリシャ文字で表記すると発表した。その理由は、人々がしばしば変異株を発見された場所の名前で呼び、それが差別などにつながる懸念があるからだという。ギリシャ文字はアルファ(α)からオメガ(ω)まで全24種類あり、現在は12番目のミュー(μ)まで使われている。 新型コロナウイルス自体は現在「SARS-CoV-2」、新型コロナウイルス感染症という疾患は「COVID-19」と称されているが、これも地名などは使われていない。流行当初は日本でも疾患に対して武漢肺炎などの表現が使われていた。また、ドナルド・トランプ米大統領(当時)はTwitterでウイルスを「the Chinese Virus」などと表記していた。テドロス・アダノムWHO事務局長は「(COVID-19などの)名前を付けることで、不正確な名前や汚名を着せるような名前の使用を防ぐことが重要だ」と発言している』、インドも「インド株」でイメージダウンになると主張していたのも記憶に新しいところだ。
・『5:変異株にはどんな特徴がある?  VOIは、主に感染性や重篤度・ワクチン効果などに影響を与える可能性が示唆される株である。VOCは、主に感染性や重篤度が増す・ワクチン効果を弱めるなど性質が変化した可能性のある株で、VOIのうち感染性や重篤度、ワクチン効果などと関連していることが実証されるとVOCとされる。 6:報道で目にする「N501Y」や「L452R」はどのような意味?   N501Yはアルファ株、ベータ株、ガンマ株に共通する変異であり、ウイルスが細胞にくっつく際に必要な「スパイク」と呼ばれる突起のたんぱく質を構成するアミノ酸の変異を示す。スパイクたんぱく質のうち、501番目にあるアミノ酸がN(アスパラギン)からY(チロシン)に変わっているという意味だ。L452Rも同様で、スパイクたんぱく質を構成しているアミノ酸のうち、452番目がL(ロイシン)からR(アルギニン)に変異したということだ。これらの変異により、従来のウイルスとは性質が変化したと考えられている。 7:変異株にはワクチンが効きにくい?  アルファ株については発症や感染に関してワクチンの効果は変わらないとされている。一方で、ベータ株とデルタ株については、重症化に対するワクチンの効果は変わらないものの、発症に対する効果は弱まる可能性があるとの指摘がある。ガンマ株に対するワクチンの効果の変化は明らかになっていない。 8:日本国内で感染が確認されている変異株は?  VOC、VOIに分類される変異株は全て日本で検出されている。東京都健康安全研究センターが行ったスクリーニング検査によると、都内で発生した変異株の割合は、アルファ株やベータ株の「N501Y」の変異を持つウイルスが5月時点で6~7割程度だったが、8月23日~29日の期間では1.7%に減少している。代わりに猛威を振るっているのがL452Rという変異を持つデルタ株で、同期間では82.8%を占めている。 8月末には、N501Sの変異を持つ新たなデルタ株が国内で確認されたと東京医科歯科大学が発表した。この変異はアルファ型などのN501Y変異と類似したものと見られている』、「VOC、VOIに分類される変異株は全て日本で検出されている」のであれば、日本の水際対策の実効性も大したことなさそうだ。
・『9:変異株の感染予防のためにできる対策は?  新型コロナウイルス感染症対策分科会は6月に「変異株が出現した今、求められる行動様式に関する提言」を出している。そこでは、フィルター性能の高い不織布マスクの着用や換気への留意などが示されている。感染力が強く、重症になりやすい変異株が目立つ中で、高性能なマスクを使うことに加えて、3密を避け、外出を控えるといった、基本的な対策を一層徹底することが求められている。 10:今後、変異株はどうなっていきそう?  ウイルスの変異は複製時に一定の確率で起こるため、今後も変異株は現れ続けるとの意見が専門家の間では多い。海外では感染力の強い変異株を念頭に、ワクチンの追加接種(ブースター接種)を進める動きがある。追加接種により変異株の感染をどの程度防げるかは今後の研究が待たれる』、「ブースター接種」については、3番目の記事で紹介する。

次に、9月21日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した医療ジャーナリストの木原洋美氏による「なぜ「ワクチン接種で死亡」の原因究明が進まないのか、法医学者に聞く」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/282431
・『新型コロナウイルスワクチンの接種が進む一方で、重篤な副反応や健康被害については慎重な調査が必要となる。中でも接種後の死亡については、その死因究明が詳細に正しく行われることが重要だ。しかしながら、ワクチン接種後の死亡例については、そのほとんどがワクチン接種によるものなのかきちんと判定されていないままだという。ワクチンの安全な接種にも重要な、死因究明の課題とは何か。法医学者で国際医療福祉大学医学部講師の本村あゆみ氏に話を聞いた』、「ほとんどがワクチン接種によるものなのかきちんと判定されていないまま」、私も疑問に思っていたので、興味深い。
・『ワクチン接種後の死亡 ほぼ100%「因果関係」不明  9月13日政府が公表した集計によると、日本における新型コロナワクチン接種率は1回目が63%、2回目は50.9%に達している。河野太郎規制改革担当相は今月4日、ワクチン接種について、「希望する全国民に対して11月上旬に完了する」との見通しを示しているが、ワクチンに関しては接種率を上げる以前に注力してほしい課題がある。 それは、接種後の死亡と報告された事例の死因究明だ。例えばファイザー製のワクチンについては、2021年2月17日から8月8日までに報告された991の死亡事例中、「ワクチンと死亡との因果関係が否定できないもの」は0件、「ワクチンと死亡との因果関係が認められないもの」5件、「情報不足等によりワクチンと死亡との因果関係が評価できないもの」986件で、大部分の死因はワクチン接種によるものかどうかちゃんとした判定はされていない(厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会が8月25日に公表した調査より)。 国や専門家は、「健康被害のリスクを踏まえてもメリットが圧倒的に上回る」とワクチン接種を推奨し、「健康被害が予防接種によるものであると厚生労働大臣が認定したときは、予防接種法に基づく救済(医療費・障害年金等の給付)が受けられます」と安心を強調してきたが、最悪の健康被害である死亡例については、ほとんど解明されていないのが現状だ。救済は予防接種との因果関係が認定されなければ受けられないことを考えると、8月20日までにワクチン接種後1093人(米ファイザー社製ワクチン1077例、米モデルナ社製ワクチン16例)もの人が亡くなっているのに、救済された人は1人もいないことになる。 死因究明は、亡くなる人を減らすためにも欠かせない。その人の体内で何が起きて死に至ったのか、またそれがワクチン接種によるものなのかどうかが分かれば、重篤な事態が生じないよう先手を打つこともできるからだ。 そういう意味では、死因究明は生きている人のための医学でもある。 そこで今回は、「法医学は、亡くなられた方の死因を究明した結果を、生きている人や社会に還元していく医学です」と語る法医学者で国際医療福祉大学医学部講師の本村あゆみ氏に話を聞いた(Qは聞き手の質問、Aは本村氏の回答)』、「救済は予防接種との因果関係が認定されなければ受けられないことを考えると、8月20日までにワクチン接種後1093人・・・もの人が亡くなっているのに、救済された人は1人もいないことになる」、いくら忙しいにしても、酷い職務放棄だ。
・『「心不全」「心肺停止」は 状態であって死因ではない  Q:厚生科学審議会が公表している死因を一つ一つ見ていくと、「心不全」「心肺停止」といった、死因とするには疑問符が付くものが何度も登場してきます。専門家は、このような死因を「死因」と呼ぶのでしょうか? A:厚生科学審議会の調査で死因を判断しているのは各医療機関の報告医なので、診療時の血液検査や画像検査などを踏まえて、死因を推定しているものと思われます。いわゆる通常の臨床医の死因判断です。なので、傷病名ではない「心肺停止」という文言での報告が散見されるのだと思います。 これらの報告を踏まえて、専門家がワクチン接種との関連性の有無を判断されているようですが、やはり元になる死因について解剖を含めた詳細な調査はなされていないことがほとんどで、これでは判断しようがないと言わざるを得ません。 Q:中には、「情報不足で判断できない」というものもかなり多くあります。行政はワクチン接種後に亡くなった人の死因究明に積極的ではないように感じるのですが、先生はどう思いますか? A:ワクチン関連にかかわらず、行政においては死因究明の必要性が理解されていないのではないでしょうか。CTその他検査で、医者が見れば死因は分かるものと思っているのかもしれません。 Q:では、死因究明はそんな単純なものではない? A:即時型のアナフィラキシーショックはまだしも、接種後に起きる可能性が指摘されている心筋炎や血栓症は、もし病院で十分な検査を受ける間もなく亡くなってしまった場合には、外表の所見のみで診断することは不可能です。 そもそも、個別の死因のみをもって接種と死亡の因果関係を問うことは困難です。正確な情報の集積、統計を行い、平時や非接種者との比較によって、接種後の影響を判定する必要があります。しかしながら現状では、土台となるべき死因診断が正確でない可能性があり、また情報そのものが少なすぎて、「因果関係が不明」とせざるを得ないのがほとんどという状況になっています。 例えば厚生科学審議会の資料だと、接種後の「心肺停止」が多いということになるのですが、そもそも死亡とは心肺停止の状態。その事例を検討しているわけですから、心肺停止が多いのは当たり前ですよね。検討するには、その原因を探らないといけません。 急性心不全が死因などとされているものも、中には心筋炎が含まれるかもしれない。せっかく一部の事例では病理解剖まで行って、詳細な検討の結果として例えば凝固因子欠乏※を指摘されていても、他にも同様の病態を示す事例が確認されなければ、この方だけの特異な症状ということになり、一般的なワクチンによる副反応には計上されないままでしょう。※血液が凝固するために必要なタンパク質が著しく減少することで血が止まりにくい症状 これでは接種の安全性は十分に担保されませんし、副反応で亡くなってしまった方も因果関係不明とされたままでは、遺族にも十分な補償が行き届かないということになります。 Q:パンデミック下だから仕方ない」という意見もあります。 A:いいえ。平時から、解剖を含めた死因調査は重要ですが、このようなパンデミック下での緊急事態の時こそ、より正確な情報収集が重要であることは明らかですし、接種後の死因調査として特別に予算や施設、情報管理システムなどの整備をするといった対応が必要です』、「厚生科学審議会の資料だと、接種後の「心肺停止」が多い」、これでは接種と死亡の関係を見られないので、本来は詳細な死因を記入させるべくだ。「より正確な情報収集が重要であることは明らかですし、接種後の死因調査として特別に予算や施設、情報管理システムなどの整備をするといった対応が必要です」、同感である。
・『日本の法医解剖率は1.6%程度 十分な死因究明が行われない理由  Q:ワクチン接種と死亡例の因果関係、死因をきちんと調べるには、どのようなことが必要なのでしょうか? A:やはり解剖を含めた詳細な死因調査が議論の基礎として必要です。死因が分からない、あるいは誤解されたままでは、情報が少ないとして因果関係不明と結論付けられてしまうのも仕方ありません。 コロナではありませんが、千葉県では交通事故死亡事例について、県内の医療機関が集まってPTD(preventable trauma death:避けられた外傷死)ではなかったかどうか、専門家による調査・検討を行っています。救急隊や医療機関からの情報を基に、病院の選定は妥当であったか、診療内容は適切であったかなどを検討するのですが、やはり情報が十分でないと判断が難しくなります。 また、ごく一部では解剖検査が行われ、その結果とも照合して検討するのですが、既往症や生活状況など初療時には分からなかった情報が警察を通じて得られていますし、中には損傷の見落としによって、当初判断された死因が正確でないことが判明するケースもあり、評価の土台としての解剖結果の重要性を実感しています。 Q:コロナに限らず、日本では法医解剖率の低さが以前から問題になっています。現状として、警察取り扱い死体における法医解剖率は11.5%(2019年)、全死亡中では1.6%程度と、日本では十分な死因究明が行われていません。 そうですね。現在の日本では解剖を含めた死因調査自体が十全に行われているとはいえません。法律を制定するなどして解剖を増やす努力は行政、司法、法医学各方面で続けられているところではありますが、予算も限られており、解剖率は諸外国にいまだ到底及びません。 特に、新型コロナウイルスやワクチンに関連した死亡のように犯罪による死亡が疑われない場合、ほとんどの自治体では、警察が取り扱う死体の死因調査として行われる司法解剖や死因身元調査法解剖の対象としてそぐわないことが考えられます。東京23区や大阪市など監察医制度のある地域では行政解剖を行うことができますが……。 例えば千葉県では準行政解剖として知事の権限で行う承諾解剖の制度がありますが、これは年間10件程度の予算しかないため、運用には高いハードルがあります。さらに、通常の解剖に比べて抗原検査やPCR検査、詳細な組織検査など追加の特殊な検査が多く必要となりますので、費用もかさんでしまいます。 いかなる死亡であっても、死因を正しく判断することは死者、遺族の権利であり、その情報に基づいて健康に関する施策を享受することは国民の権利です。国はそのことをよくご理解いただき、このような新しい感染症の脅威、これに対する予防、治療の安全性、有効性をきちんと評価するためにも、改めて予算を組んで既存の行政解剖や承諾解剖を充実させる必要があります』、「通常の解剖に比べて抗原検査やPCR検査、詳細な組織検査など追加の特殊な検査が多く必要となりますので、費用もかさんでしまいます」、しかし、「いかなる死亡であっても、死因を正しく判断することは死者、遺族の権利であり、その情報に基づいて健康に関する施策を享受することは国民の権利です」、「国は」、「新しい感染症の脅威、これに対する予防、治療の安全性、有効性をきちんと評価するためにも、改めて予算を組んで既存の行政解剖や承諾解剖を充実させる必要があります」、その通りだ。無論、対象を全件でなく、サンプルにすることで費用圧縮を図るのは当然だろう。
・『情報連携や費用に課題 解剖を増やすことはできるのか  Q:解剖を増やすのは難しいことなのでしょうか? クリアすべき課題はいくつかあります。一つはお金の問題。人員や物品の確保、諸検査に必要な経費など、国で予算を検討していただく必要があります。特に接種後の死亡についてはさまざまな要因が考えられ、アナフィラキシー、血栓症、心筋炎など、解剖でも肉眼的に直ちに診断するのは難しい病態が多く想定されます。検査も多岐にわたると考えられ、通常の解剖経費では賄いきれません。 またシステムの問題もあります。解剖の体制が整備されたとしても、情報が個々の施設や各都道府県などで保管されたままでは意味がありません。ワクチン接種後の死亡例については厚生労働省に報告を行い、審議会での検討の俎上に乗せなくてはならないということを広く周知する必要があります。 そもそも前提として、ワクチン接種後の死亡なのかどうかが解剖時に分からないことも問題です。接種が始まった頃、(本村氏も解剖する際に)接種と死亡の関連も考えなければと思い、解剖に搬入されたご遺体について警察官に「この方、ワクチンの接種は終わっていますか?」と聞きましたが、はっきりした返答はほとんど返ってきませんでした。 「(ご遺体発見時)部屋に接種券はなかった」程度の把握しかされておらず、行政と警察との連携、公益的な情報の共有についても整備が必要だと考えられます。 Q:海外では、ワクチン接種後の予期せぬ死について、どのような検証がなされているのでしょうか? A:アメリカではVAERS(Vaccine Adverse Event Reporting System)、イギリスではMDRA(Medicines & Healthcare products Regulatory Agency)へのYellow Cardなど、各国で接種後の有害事象について報告するシステムがあり(日本でも厚生労働省に報告するところは同じ)、報告された事例について、臨床症状や検査結果、死亡例では死因を含めた検討が行われています。調べた限りでは、コロナ禍において特別に解剖を増やして行うという報告は見られませんでしたが、死因の検討としてもちろん解剖結果は反映されています。 また、日本の監察医業務を含むメディカルエグザミナーの連合体であるNational Association of Medical Examiners(NAME)のサイトには、新型コロナウイルスワクチン接種後死亡を取り扱う際のガイドラインが出ており、「なるべく解剖してアナフィラキシーなど確認すべし」とされています。 ちなみに日本の監察医務院(東京都)、監察医事務所(大阪府)、監察医務室(兵庫県)からは特にこのような案内はありません。法医学会からも特に提言などはありません(感染者の解剖について案内あり)。会員として申し訳ない気持ちです。 そもそも日本は解剖率が低いので、どうしても死因の裏付けという点で根拠が乏しいのが問題になるかと思います。 海外のワクチン摂取後死亡の解剖例に関する論文報告では、血栓症や心筋炎が死因となった事例が提示されています。いずれも副反応による可能性は示唆されるものの、現時点での確定は難しいようですが、これらの事例の集積、統計により今後副反応としての死因に計上されてくる可能性はあるかもしれません。ですから、やはり詳細な死因を調査し、エビデンスとして残しておくことは非常に重要なのです。 2019年6月6日に死因究明等推進基本法が成立し、翌年4月1日より施行されてはいるが、「死因究明ならびに法医をめぐる状況は、肌感覚としては全く変わりないです」と本村氏。潜在しているであろうワクチン接種関連死を掘り起こし、新たな犠牲者の防止に生かすことは、結果として、ワクチン接種率向上につながる。コロナ禍を機に、日本は死因究明後進国からの脱却をはかるべきなのではないだろうか。 (筆者略歴はリンク先参照)』、「行政と警察との連携、公益的な情報の共有についても整備が必要」、「コロナ禍を機に、日本は死因究明後進国からの脱却をはかるべき」、同感である。

第三に、9月23日付け東洋経済オンラインが転載したThe New York Times「イスラエルの調査で判明「ブースタ接種」の難題 感染予防の底上げ効果は高齢者で数週間」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/457343
・『新型コロナワクチンの追加接種(ブースター接種)の是非をめぐる意見対立が激しくなる中、イスラエルの研究者は9月15日、60歳以上に関してはファイザー製ワクチンの3回目接種で感染と重症化の両方を少なくとも12日間防ぐことができるという調査結果を発表した。 世界には未接種者がたくさんいるため、健康な成人にブースター接種を行うことについては厳しい異論が出ている。ジョー・バイデン政権も広く一般にブースター接種を行う計画だったが、医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」で発表された今回の研究で、ブースター接種をめぐる意見対立はさらに深まった』、「3回目接種で感染と重症化の両方を少なくとも12日間防ぐことができる」、効果が小さいことに驚かされた。
・『高齢者でさえ必要ないかもしれない  これまでに累積されたデータを見る限り、ブースター接種が必要なのは高齢者だけで、高齢者ですらブースター接種は必要ないかもしれない、と複数の独立した科学者は語った。 専門家によると、これまでに発表されたすべての研究において、ワクチンは重症化と入院の予防に関しては、今も圧倒的大多数の人々に対して高い有効性を維持している。ただ感染の予防については、とくに感染力の強いデルタ株にさらされた場合には、すべての年齢層で効果が下がってきているように見えるという。 今回、イスラエルのデータで明らかになったのは、ブースター接種を行えば高齢者の予防効果を数週間引き上げられる可能性がある、ということだ。専門家によれば、想定内の結果であり、ブースター接種の長期的なメリットが示されたわけではない。 シアトルにあるワシントン大学の免疫学者マリオン・ペッパー氏は「免疫反応はブースター接種で高まるだろうが、その後、再び低下することが予想される」と話す。「しかし、3〜4カ月(の効果底上げ)というのは、私たちが目指しているものなのだろうか」。 バイデン大統領のパンデミック対策で首席医療顧問を務めるアンソニー・ファウチ氏をはじめとする連邦保健当局の高官は、ワクチン接種の効果が時間の経過とともに低下することを示唆するイスラエルのデータなどを根拠に、ブースター接種計画を正当化してきた。 そのためアメリカ国民には、正式に認可される前から、ブースター接種を受けようと先を争う動きが一部で見られる。しかしブースター接種計画に対しては、政府の科学者からも懐疑的な見方や怒りが向けられるようになっている』、「ブースター接種計画に対しては、政府の科学者からも懐疑的な見方や怒りが向けられるように」、どういうことなのだろう。
・『「予防可能な死」を防ぐことが先決  アメリカ食品医薬品局(FDA)でワクチン部門を率いていた2人の科学者がこの秋に退任すると発表した理由の1つは、連邦政府の研究者によるエビデンス(科学的証拠)の精査を待たずしてブースター接種を推し進めようとする政権への不満だという。 13日には、退任するFDA高官を含む国際的な科学者グループが、ブースター接種の推進を強く非難した。同グループは医学誌「ランセット」で論文を発表し、数十の研究を分析した結果、ワクチンは数十億人の未接種者を守るのに使ったほうが世界のためになると結論づけた。 「今回のパンデミックにおける私たちの第1目標は、まず予防可能な死をすべて回避し、終わらせることにあった」と、世界保健機関(WHO)のチーフサイエンティストで、ランセットの論文の共著者でもあるスミヤ・スワミナサン氏は述べた。「私たちはそのための非常に効果的な手段を手にしているのだから、世界中で(予防可能な)死を防ぐのに使うべきだ」。 ウイルスがデルタ株よりもさらに危険な形態に変異し、免疫を完全に回避する変異株が出現するのを防ぐため、ブースター接種よりも未接種者を減らすほうが課題としては緊急性が高いと専門家らは言う。 ブースター接種の効果に関するイスラエルの今回の研究は、60歳以上の住民110万人以上の健康記録に基づくもので、ブースター接種から少なくとも12日後の感染率は2回しか接種していない人に対し11分の1、重症化率は20分の1近くにまで下がっていたことが確認された。 ただ、研究者は結果が暫定的なものであることを認めている。エルサレム・ヘブライ大学のミハ・マンデル教授(統計学・データサイエンス)は「長期的にどうなるかは、現時点ではわからない」と語った。 ブースター接種が科学的に難しい問題となっているのは、1つには「感染予防」と「重症化や死亡の予防」という目標の間に極めて大きな違いがあるためだ。 体内の最前線で感染を防ぐのが抗体だが、科学者によると、長期にわたる感染予防効果をワクチンで確実に得られる可能性は低い。というのは、ワクチンが人体を刺激することで産生される抗体は時間の経過による減少が避けられないからだ。 ただしワクチンによって作られた細胞性免疫は、重症化や死亡を防ぐのに極めて強力な武器となる。細胞性免疫に書き込まれた「免疫記憶」は、効果が表れるまでに数日を要するものの、しっかりとした効果が何カ月にもわたって維持される』、「(FDA)でワクチン部門を率いていた2人の科学者がこの秋に退任すると発表した理由の1つは、連邦政府の研究者によるエビデンス・・・の精査を待たずしてブースター接種を推し進めようとする政権への不満」、対立は予想以上に深刻なようだ。「ウイルスがデルタ株よりもさらに危険な形態に変異し、免疫を完全に回避する変異株が出現するのを防ぐため、ブースター接種よりも未接種者を減らすほうが課題としては緊急性が高い」、「長期にわたる感染予防効果をワクチンで確実に得られる可能性は低い」、その通りなのかも知れない。
・『終わりなきワクチン接種から抜け出せなくなる  この点にこそブースター接種の問題がある、と一部の科学者は指摘する。入院や死亡を防ぐ道具なら、すでに手元にある。しかし感染予防を目指すとなれば、その国はブースター接種の終わりなきサイクルから抜け出せなくなる。 「本当に感染予防を目標にするなら、半年ごとのブースター接種が必要になるだろうが、非現実的だし達成も不可能だ」と、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の感染症専門家ピーター・チンホン氏は話す。 自身がこれまでに病院で実際に目にしたワクチン接種済みの患者たちは、免疫機能が弱っている人か、持病のある70歳以上の高齢者ばかりだった、とチンホン氏は付け加えた。 ブースター接種が必要な理由として、ファウチ氏をはじめとする保健当局者は、あらゆる年齢層で接種者が重症化するケースが増えているというイスラエルのデータを引き合いに出していた。ただ、すべての年齢層をひとまとめにすると、統計上、重症化率が膨らんで見えることがある。 実際、イスラエルの統計を年齢別に分解してみると、重症化の予防に対するワクチンの有効性の低下がはっきりと見られたのは60歳以上だけだった、とニューヨークのベルビュー・ホスピタル・センターの感染症専門家で、バイデン政権の顧問だったこともあるセリーヌ・ガウンダー氏は指摘する。 「高齢者ではワクチンによる免疫反応が比較的弱くなることは、以前から知られていた」とガウンダー氏は言う。「高齢者に追加のワクチン接種を勧めることは物議を醸すような問題にはならない」。 アメリカのこれまでの研究も、ワクチンの重症化予防効果が弱まるのは高齢者だけだと示唆する結果になっている。アメリカ疾病対策センター(CDC)が9月上旬に公開した3つの研究によれば、75歳以上を除くと、ワクチンによる入院予防効果はデルタ株が登場した後でさえ、ほとんど変化しなかった。 科学者の中には、高齢者で感染予防効果が弱まるということは、ブースター接種の必要性を裏付ける強い論拠になる、と主張する向きもある。 ニューヨークにあるロックフェラー大学の免疫学者ミシェル・ヌーセンツワイグ氏は自らもブースター接種を受けたいと話す一方で(同氏は66歳だ)、感染の連鎖を防ぐため広く一般にもブースター接種を行うことを支持していると語った。 若い層の免疫はまだ弱まっているわけではないが、追加接種で感染防止効果を上げれば、周囲のワクチン未接種者に感染させるのを抑えられる、という理屈だ。「それが結果的にほかの人の入院を防ぐことにつながり、ひいてはアメリカの今後にもプラスになる」と言う』、なるほど。
・『追加接種を繰り返すと免疫が疲労する  一方で別の専門家たちは、ブースター接種を正当化できるほど明白な2次感染の抑制効果を示すデータは存在しないとして、上述のような前提には疑問を呈している。 若い人々を対象にブースター接種を行う場合、当局は3回目の接種で得られる限定的なメリットと、血栓や心臓障害といった副反応のリスクとの間でバランスを取らなければならない、と専門家らは言う。さらに前出のペッパー氏によれば、体内の防御機構に繰り返し刺激を与えると「免疫疲労」と呼ばれる現象を引き起こすおそれもある。 「何度も免疫反応を増加させようとすることには、明らかに何らかのリスクが存在する」とペッパー氏は話す。「仮に6カ月ごとに追加接種するサイクルに入り込めば、私たちにマイナスに作用する可能性がある」』、「体内の防御機構に繰り返し刺激を与えると「免疫疲労」と呼ばれる現象を引き起こすおそれもある。「何度も免疫反応を増加させようとすることには、明らかに何らかのリスクが存在する」、そうであれば、「ブースター接種」はするべきではないようだ。日本も年末あたりから、「ブースター接種」に踏み切るとの見方もあるが、慎重に考えた方がよさそうだ。
タグ:パンデミック (医学的視点) (その22)(ラムダにミューも 新型コロナの変異株 知っておきたい10のこと、なぜ「ワクチン接種で死亡」の原因究明が進まないのか 法医学者に聞く、イスラエルの調査で判明「ブースタ接種」の難題 感染予防の底上げ効果は高齢者で数週間) 日経ビジネスオンライン: 「ラムダにミューも 新型コロナの変異株、知っておきたい10のこと」 インドも「インド株」でイメージダウンになると主張していたのも記憶に新しいところだ。 「VOC、VOIに分類される変異株は全て日本で検出されている」のであれば、日本の水際対策の実効性も大したことなさそうだ。 「ブースター接種」については、3番目の記事で紹介する。 ダイヤモンド・オンライン 木原洋美 「なぜ「ワクチン接種で死亡」の原因究明が進まないのか、法医学者に聞く」 「ほとんどがワクチン接種によるものなのかきちんと判定されていないまま」、私も疑問に思っていたので、興味深い。 「救済は予防接種との因果関係が認定されなければ受けられないことを考えると、8月20日までにワクチン接種後1093人・・・もの人が亡くなっているのに、救済された人は1人もいないことになる」、いくら忙しいにしても、酷い職務放棄だ。 「厚生科学審議会の資料だと、接種後の「心肺停止」が多い」、これでは接種と死亡の関係を見られないので、本来は詳細な死因を記入させるべくだ。「より正確な情報収集が重要であることは明らかですし、接種後の死因調査として特別に予算や施設、情報管理システムなどの整備をするといった対応が必要です」、同感である。 「通常の解剖に比べて抗原検査やPCR検査、詳細な組織検査など追加の特殊な検査が多く必要となりますので、費用もかさんでしまいます」、しかし、「いかなる死亡であっても、死因を正しく判断することは死者、遺族の権利であり、その情報に基づいて健康に関する施策を享受することは国民の権利です」、「国は」、「新しい感染症の脅威、これに対する予防、治療の安全性、有効性をきちんと評価するためにも、改めて予算を組んで既存の行政解剖や承諾解剖を充実させる必要があります」、その通りだ。無論、対象を全件でなく、サンプルにすることで費 「行政と警察との連携、公益的な情報の共有についても整備が必要」、「コロナ禍を機に、日本は死因究明後進国からの脱却をはかるべき」、同感である。 東洋経済オンライン The New York Times 「イスラエルの調査で判明「ブースタ接種」の難題 感染予防の底上げ効果は高齢者で数週間」 「3回目接種で感染と重症化の両方を少なくとも12日間防ぐことができる」、効果が小さいことに驚かされた。 「ブースター接種計画に対しては、政府の科学者からも懐疑的な見方や怒りが向けられるように」、どういうことなのだろう。 「(FDA)でワクチン部門を率いていた2人の科学者がこの秋に退任すると発表した理由の1つは、連邦政府の研究者によるエビデンス・・・の精査を待たずしてブースター接種を推し進めようとする政権への不満」、対立は予想以上に深刻なようだ。 「ウイルスがデルタ株よりもさらに危険な形態に変異し、免疫を完全に回避する変異株が出現するのを防ぐため、ブースター接種よりも未接種者を減らすほうが課題としては緊急性が高い」、「長期にわたる感染予防効果をワクチンで確実に得られる可能性は低い」、その通りなのかも知れない。 「体内の防御機構に繰り返し刺激を与えると「免疫疲労」と呼ばれる現象を引き起こすおそれもある。「何度も免疫反応を増加させようとすることには、明らかに何らかのリスクが存在する」、そうであれば、「ブースター接種」はするべきではないようだ。日本も年末あたりから、「ブースター接種」に踏み切るとの見方もあるが、慎重に考えた方がよさそうだ。
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半導体産業(その4)(台湾TSMCを巻き込む「日の丸半導体復活」構想が 日本の衰退を早める理由、「日の丸半導体」が凋落したこれだけの根本原因 富士通・元半導体部門トップが直言(前編)、「日の丸半導体」復活には5兆円投じる覚悟必要 富士通・元半導体部門トップが直言(後編)) [イノベーション]

半導体産業については、5月25日に取上げた。今日は、(その4)(台湾TSMCを巻き込む「日の丸半導体復活」構想が 日本の衰退を早める理由、「日の丸半導体」が凋落したこれだけの根本原因 富士通・元半導体部門トップが直言(前編)、「日の丸半導体」復活には5兆円投じる覚悟必要 富士通・元半導体部門トップが直言(後編))である。

先ずは、6月3日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「台湾TSMCを巻き込む「日の丸半導体復活」構想が、日本の衰退を早める理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/272934
・『気合入りまくり!政治主導で日本の半導体復活…!?   「日本はこんなもんじゃない。『ジャパン・アズ・ナンバー・ワン・アゲイン』を目指して先陣を切っていきたい」 先月21日、自民党の「半導体戦略推進議員連盟」設立総会で、甘利明会長は気を吐いた。 今や半導体は世界で奪い合う「戦略物資」となっており、「半導体を制するものが世界を制する」という言葉さえあるほどだが、「日の丸半導体」はひいき目で見ても、世界を制する兆しは見えない。 白物家電と同じく80年代には世界市場シェア50%を占めていたが、韓国や台湾に次々と追い抜かれ、今や2021年第1四半期の売上高ランキングにおいても、日本企業は15位にキオクシアが入るのみ。全体的に存在感が薄いのだ。 そこで、「経済安全保障」の重要性を強く主張している甘利氏がトップとなって、米中経済戦争の中で「1人負け」しないよう、政治主導で半導体産業を強くしておこうというわけだ。 その気合の入りっぷりは、「ポスト菅」のチョイスに影響力アリアリの安倍晋三元首相と麻生太郎副総理兼財務大臣が最高顧問として名を連ねていることからもうかがえよう。 アメリカでも韓国でも台湾でも、そして中国でも半導体ビジネスの支援は今や「国策」となっている。そのような意味では、ぜひとも頑張っていただきたいところなのだが、正直あまり期待はできないのではないかと思っている。 甘利氏のかけ声は勇ましいが、その一方で経済産業省(経産省)は「ジャパン・アズ・ナンバー・ワン・アゲイン」や「経済安全保障」という方向性とは、真逆の半導体産業支援政策を進めているからだ。 それは端的にいうと、「台湾の半導体大手・TSMCと連携して日の丸半導体復活」という構想、いや「官僚の妄想」とも言っていい青写真である』、「自民党の「半導体戦略推進議員連盟」」は『ジャパン・アズ・ナンバー・ワン・アゲイン』」と「かけ声は勇ましい」。他方で、「経産省」は「「官僚の妄想」とも言っていい青写真」、やれやれだ。
・『台湾・大手と連携強めるほど、日本の競争力は低下  自民党・半導体議連設立の10日後、経産省は、半導体受託製造で世界最大手の台湾企業TSMCが日本で実施する先端半導体の研究開発を支援し、5年間で190億円を拠出すると発表した。この研究は、国内半導体関連企業約20社が共同で行うそうで、「世界的に半導体の開発競争が激化する中、最先端の技術を持つTSMCとの連携で国際競争力を高めるのが狙い」(時事通信5月31日)だという。 「狙う」のは自由だが、残念ながらTSMCの日本研究拠点と連携を強めれば強めるほど、日本の半導体の競争力が低下していく可能性の方が高い。つまり、わずかに残った世界で戦える半導体装置企業などがTSMC傘下へ組み込まれたり、技術者の国外流出に繋がってしまたりという恐れがあるのだ。 「中国企業ならいざ知らず、友好国・台湾の企業と手を組んでそんなことになるはずがないのでは…」と思う人も多いだろう。 しかし、このような危険性を指摘する声は、経産省主導の半導体支援がことごとく失敗してきたことを間近に見てきた半導体業界から多く上がっている。その中でも、服部コンサルティングインターナショナルの服部毅氏の指摘が非常にわかりやすいので、引用させていただく。 「韓中両国の大手半導体メーカーのR&D拠点、さらには米国DRAMメーカーの製造拠点が日本に以前から置かれているが、これらにより日本の半導体産業全体の復興が実現しているだろうか。TSMCだけは他社とは違うとでもいうのだろうか。台湾出張もままならぬ弱小サプライヤーが自社製品を売り込むチャンスにはなるかもしれないし、日本の半導体メーカーに見切りをつけて(あるいは無理やりリストラされて)TSMCへ転職したい技術者にはチャンス到来かもしれない。しかし、日本の半導体産業全体の復興につながるような話ではないだろう」(日経クロステック) 服部氏も指摘しているように、海外の半導体メーカーの多くはずいぶん昔から日本に研究・製造拠点を置いている。中には、国内企業と共同研究をおこなったこともある。しかし、それが「日の丸半導体」側に還元されて国際競争力が高まったという話はほとんどない。 なぜか。答えは簡単だ』、「TSMCの日本研究拠点と連携を強めれば強めるほど、日本の半導体の競争力が低下していく可能性の方が高い。つまり、わずかに残った世界で戦える半導体装置企業などがTSMC傘下へ組み込まれたり、技術者の国外流出に繋がってしまたりという恐れがある」、「「日本で研究を行う建前になってはいるが、実際の目的は、日本国内の企業や大学研究室からの技術情報収集・・・、装置・材料の調達、日本企業に勤務する技術者のリクルートのいずれかあるいはすべてだろう」、「このような意図を持つであろう台湾企業を平身低頭で日本に呼び寄せて、税金までくれてやるというわけだ」、全く馬鹿げた話だ「海外の半導体メーカーの多くはずいぶん昔から日本に研究・製造拠点を置いている。中には、国内企業と共同研究をおこなったこともある。しかし、それが「日の丸半導体」側に還元されて国際競争力が高まったという話はほとんどない」、なるほど。
・『日本の競争力は奪われるばかり 海外勢はボランティアで連携するのではない!  海外の半導体企業が日本に研究拠点をつくるのは、何も「日本の国際競争力を高めてやろう」などというボランティア精神からではなく、シンプルに「自社の競争力向上のため」だ。だから、連携したからといって、日本企業に海外の技術力が簡単に奪われ吸収されるはずもない。 そのあたりも前出・服部氏がズバリ指摘しているので引用させていただく。 「日本で研究を行う建前になってはいるが、実際の目的は、日本国内の企業や大学研究室からの技術情報収集(あるいは少額の研究資金を提供した協業)、装置・材料の調達、日本企業に勤務する技術者のリクルートのいずれかあるいはすべてだろう」(日経クロステック) このような意図を持つであろう台湾企業を平身低頭で日本に呼び寄せて、税金までくれてやるというわけだ。 江戸末期、日本のエリートは「外国人を呼んで技術を教えてもらう」という発想で近代化を進めたが、官僚の頭の中はそこから時計の針が止まっているということなのかもしれない』、「「日本で研究を行う建前になってはいるが、実際の目的は、日本国内の企業や大学研究室からの技術情報収集・・・、装置・材料の調達、日本企業に勤務する技術者のリクルートのいずれかあるいはすべてだろう」、「このような意図を持つであろう台湾企業を平身低頭で日本に呼び寄せて、税金までくれてやるというわけだ」、全く馬鹿げた話だ。
・『TSMCの八方美人ぶり  こんなに嫌味を言うと、愛国心溢れる方たちの間から、「世界的企業なのだからそれくらいの打算があることは当然だが、互いに中国の脅威に立ち向かうために協力するしかないのだ」というようなご意見が出るかもしれない。 たしかに、米中経済戦争の中で、一部中国企業への製品供給停止を発表し、米国寄りの姿勢を見せたTSMCとしても、日本という「同志」と手を組む必要がある。だから、逆に日本も国益のためと割り切って、TSMCをしたたかに利用すればいい…という考え方はできる。 しかし、そういう壮大な計画に水を差すようで恐縮だが、TSMCは別にそこまで深刻に中国に背を向けているわけではないのだ。客観的に見れば、米中どちらにもいい顔をして非常にうまく立ち回っている。対中国を念頭に、日本とそこまで強固な同盟関係を結ぶ必要もないのだ。 今年4月、TSMCはバイデン政権への配慮から、一部中国企業への製品供給停止を発表している。 しかし、その発表からほどなくした4月26日、日本経済新聞が、TSMCが現在フル稼働中の中国・南京市のファウンドリー(TSMC Fab16)に新ラインを設置し、28億8700万ドル(約3100億円)を投じ、車向け半導体などを増産すると報じている。日本政府の「5年間で190億」が霞んで見える投資だ』、「TSMCは別にそこまで深刻に中国に背を向けているわけではないのだ。客観的に見れば、米中どちらにもいい顔をして非常にうまく立ち回っている」、当然だろう。
・『鴻海に学ぶ、米中の狭間で巧みに泳ぐ処世術  5月25日、日本の自動車産業を長く取材し続けて、近年は「経済安全保障」の重要性を唱えているジャーナリストの井上久男氏が「サイバースパイが日本を破壊する」(ビジネス社)を上梓した。 その中で、米中が激しく対立をする中で、グローバルでビジネスをしている企業が取るべきスタンスを端的に述べている。 『「米中経済戦争」の中で、どちらかの国に近い企業か、色付けされるのは得策ではない。』(第7章 企業が取るべき道と覚悟、P.195) そして、この「色付け」を絶妙なバランス感覚で避ける企業の事例として、TSMCと同様、台湾を代表するEMS(電子機器受託製造サービス)世界最大手の鴻海精密工業(鴻海)を挙げている。その理由をとして、井上氏は以下のような指摘をしている。 鴻海は台湾メーカーの中では「中国寄り」とされているが、EV事業では中国と米国の2箇所に工場を建設すると発表、さらに1200社に及ぶサプライヤーには、日本電産や村田製作所、NTTなどの日本企業だけではなく、アメリカのマイクロソフトやアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)や、ドイツのインフィニオンテクノロジーズなどグローバルサプライヤーとの連携を強化している。 このようなサプライチェーンのデカップリング(分離)によって「中国色」を薄めているのだ。こうした絶妙のバランス感覚について、井上氏は「この鴻海ほど米中の狭間で巧みに泳いできた企業はない」と述べている。 今回の一連のTSMCの動きを見る限り、鴻海と似たものを感じるのは筆者だけか。 つまり、「アメリカ寄り」という基本スタンスをとりながらも一方で、巨大市場である中国への取り組みを強化するという立ち回りである。そう考えると、大したメリットもない日本への研究拠点設置には、アメリカ側への「忠誠」をアピールするという狙いもあるかもしれない。 そこに加えて、税金ももらえるし、日本企業の技術に対して情報収集やリクルートもできる。うまくいけば、鴻海がシャープを傘下にしたように、技術力がありながらも経営に苦しむような日本企業を手中におさめることができるかもしれない。韓国としのぎを削るTSMCにとって何かしらのメリットがあると判断したということだ。いずれにせよ、彼らの頭には、「日本の半導体の国際競争力を高めてやろう」なんて発想が1ミリもないことは間違いない』、「今回の一連のTSMCの動きを見る限り、鴻海と似たものを感じる」、確かに巧みに泳ぎ回る様子はさすがだ。
・『米国の「属国」・日本は隙だらけ 根本的に日本の政治システムがまずい  日本はどうしても米国の「属国」感が強いので、鴻海やTSMCのような大国の間をしたたかに立ち回る企業カルチャーがなかなか育たない。巨大な中国市場でガッツリと稼いでおきながら、アメリカに何か言われると官僚に呼び出されてシュンとなる。そういう露骨な態度がまた中国につけ込まれる。 経済政策でリーダーシップを取るはずの政治家も「保守」と言いながらも、アメリカに弱い。世界では「保守系政治家」は国益や国内企業の保護がまず第一なので、アメリカなど大国からの介入を嫌うのが普通だが、日本では「親米保守」という、愛国なんだか売国なんだかよくわからない人々が政治を動かしている。 そうなると当然そのしわ寄せは経済、つまり民間企業に押しつけられる。 井上氏も米中経済戦争によって日本政府、日本企業に対して、「些細なことでも安全保障と絡むリスクと考えるようにしなければ、両国に押しつぶされてしまいかねない」と警鐘を鳴らしている。 まったく同感だ。われわれは「経済安全保障」と絡むリスクをもっと日本全体で真剣に議論していかなければいけない。 では、半導体の経済安全保障を進めるうえで何が必要かというと、やはり「投資」という意見が多い。アメリカは半導体の国内生産回帰の実現に向けて500億ドル(約5.5兆円)を出す。EUも半導体を含むデジタル投資に2~3年で1350億ユーロ(約18兆円)以上を投資するという。かたや日本は、国内メーカー20社を集めた新技術開発に「5年で190億」、ポスト5G基金も2000億。その差は歴然だ。 ただ、これも大事だが、本当に必要なことは別にあるのではないか、と個人的には思う。 これまで日本が半導体産業にやってきたことや、コロナのワクチン政策を見れば明白だが、「やることなすこと日本を衰退させていく政策」が量産されていくという今の政治システムを変える必要がある。 これだけ医療崩壊だなんだと大騒ぎをしているのに不思議と「国民皆保険を含めて現行の医療制度を危機に強くするように見直すべきではないか」「パンデミックに機能しない民間病院のあり方を考えるべきでは」と叫ぶ政治家は少ない。自民党はもちろん、野党議員の多くが全国津々浦々の選挙で医師会の世話になっているからだ。 日本の経済安全保障的にも大きなリスクをもたらしている「日本の医療偏在」が放置されている原因をたどっていくと、落選を恐れる政治家の皆さんの「自己保身」に突き当たる。 最近、政治家の皆さんは口を開ければ、「経済安全保障は大事だ」と勇ましく口にするが、まずは実は自分たちこそが最大の経済安全保障的なリスクだということを認めないことには、議論もへったくれもないのではないのか』、「日本では「親米保守」という、愛国なんだか売国なんだかよくわからない人々が政治を動かしている。 そうなると当然そのしわ寄せは経済、つまり民間企業に押しつけられる」、「日本の経済安全保障的にも大きなリスクをもたらしている「日本の医療偏在」が放置されている原因をたどっていくと、落選を恐れる政治家の皆さんの「自己保身」に突き当たる」、同感である。

次に、9月22日付け東洋経済オンライン「「日の丸半導体」が凋落したこれだけの根本原因 富士通・元半導体部門トップが直言(前編)」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/456631
・『半導体の重要性が再認識されている。アメリカや中国は経済安保の観点からも兆円単位の国家支援を打ち出し、日本でも、経済産業省が「半導体・デジタル産業戦略」を発表している。ただ、かつて世界に覇を唱えた日本の半導体産業はすっかり凋落してしまった。なぜ日本の半導体が成功し、なぜダメになったのか。そして、復活には何が必要か。富士通で半導体部門のトップを務め、現在は半導体の設計ベンチャーを経営する藤井滋氏に話を聞いた(Qは聞き手への質問、Aは藤井氏の回答)。今回はその前編。 Q:そもそも半導体産業の黎明期に日本はなぜ勝てたのですか。 A:1940年代後半に半導体を発明したのはアメリカだ。1980年代にそのアメリカに日本は半導体の製造で勝った。それは、1970年代に日本が新しい技術を作ったからだ。 たとえばクリーンルームという概念を生み出した。アメリカでは製造現場に靴で入っていたが、日本では清浄な環境で造らないと不良が出る、とクリーンルームを作った。半導体の基本特許はアメリカ発かもしれないが、LSI(大規模集積回路)にしたのも日本だ。私たちの先輩がゼロから切磋琢磨しながらやった』、「クリーンルーム」は日本発の「概念」とは、言われてみれば納得する。
・『市場がパソコン中心になって「安さ」優先に  もう1つ大事なことがある。マーケットがあったことだ。当時、日本の大手電機はみんなNTTファミリーで通信機器やコンピュータを造っていた。半導体は自社の通信機器やコンピュータの部門が大口顧客だった。自社のハードを強くするために強い半導体がいる。通信機器部門やコンピュータ部門にとって、自社で半導体部門を持つメリットがあった。 各社がよりよいコンピュータを作ろうと競い合った。自社の大口顧客に応えるために、半導体部門も開発に力を注いだ。半導体を利用する顧客が近くにいることでよいものができた。それを外に売れば十分に勝てた。1980年代から90年代の初頭まではね。 Q:そうした成功方程式はなぜ崩れたのでしょう。 A:マーケットが通信機器と大型コンピュータからパソコンに変わったからだ。当初は各社独自のパソコンだったが、IBMの標準機になった。半導体も同じものをいかに安く作るかの競争になった。 NTT仕様の自社の通信機器向け半導体は35年保証の世界。設計、プロセス、品質管理もその水準でやっていた。それをパソコン向けにも展開したが、必要とされたのは品質より安さだった。パソコンは数年もてばいい。 そこに出てきたのが韓国勢だ。当時、富士通の半導体の断面は神様が切ったようにきれいだったが、韓国メーカー製はガタガタ。でも動く。何より安かった。 Q:過剰品質の問題に気がつかなかったのですか。 A:当然認識していたから、同じ設備でもアウトプットを2倍にするような設計やプロセスを採用して(高品質製品と)ブランドを分ける議論を散々やった。だが、分けられなかった。同じラインで2つの違う製品を流してもコスト削減効果はあまりないからだ。むしろ、2重のコストがかかる。 Q:依然として高品質を求める顧客もいます。 A:たとえば自動車がそうだ。トヨタさんからは「クラウンが動いている限り半導体を供給しろ」と求められる。自動車用半導体に障害が起きたときの対応コストは膨大になるから、品質を上げてくれというのは当然の要求だ。それは通信も同じ。半導体の故障で海底ケーブルを引き上げたら何億円もかかる。 ただし、今の半導体の設備投資や技術を引っ張っているのは大型コンピュータでも海底ケーブルでも自動車でもない。パソコンですらなく、スマートフォンだ。スマホ用はパソコン以上に品質を求められない。そのスマホ向けが技術的には最先端で、台湾のTSMC(台湾積体電路製造)は技術開発でスマホにフォーカスしている』、「スマホ用はパソコン以上に品質を求められない。そのスマホ向けが技術的には最先端で、台湾のTSMC・・・は技術開発でスマホにフォーカスしている」、なるほど。
・『半導体を知らない本社主導の弊害  Q:半導体産業振興のために国によるプロジェクト(国プロ)が数多くありました。初期の国プロは成功しましたが、それ以降はうまくいったものはありません。 A:国プロでは1970年代の超LSI技術研究組合はうまくいった。しかし、その後のさまざまな国プロが成功したとは思えない。その理由はいくつもある。たとえば、国プロに参加した人材は研究者としてはトップクラスも多かったが、成果を持ち帰って事業を興そうと考えた人材はほとんどいなかった。一方、欧米の国プロでは関わった技術者がその後に会社を作った。 また、国プロに参加した企業、東芝や富士通、NECは総合電機で、半導体は1部門でしかない。(経営的な)決定権を持っていない人材が集まっていた。 半導体部門自体が決定権を持っていないということは、国プロが成功しないという問題だけにとどまらなかった。投資などを決めるのは本社様で、半導体のマーケットをわかっている人間が(投資の)賭けに打って出ることはほとんどできなかった。しかも、半導体が儲かったときは(利益を)全部吸い上げられるし、損をしたときは(事業を)止めろと言われる。 欧米では1990年代に半導体事業が総合電機からスピンアウトした。日本でそれが起こったのは2000年になってからだ。そうしてできたのがエルピーダ(メモリ)とルネサス(エレクトロニクス)の2社だが、意思決定が10年以上遅かった』、「半導体部門自体が決定権を持っていないということは、国プロが成功しないという問題だけにとどまらなかった。投資などを決めるのは本社様で、半導体のマーケットをわかっている人間が(投資の)賭けに打って出ることはほとんどできなかった。しかも、半導体が儲かったときは(利益を)全部吸い上げられるし、損をしたときは(事業を)止めろと言われる」、「半導体事業が総合電機からスピンアウト」の「意思決定が10年以上遅かった」、「総合電機」のコングロマリットの問題点が如実に表れたようだ。
・『技術も人材も海外へ流出  Q:10年の遅れはどういう意味を持ちますか。 A:その10年間で工場を1つ作る費用が500億円から5000億円という世界になった。全社の投資額が年間3000億円のところ、半導体に5000億円の投資はできない。富士通だけではなくNECも日立(製作所)も同じだ。対して、(韓国の)サムスン(電子)やTSMCはそれができた。 10年遅れて半導体事業を切り離す決断をしたが、日本の総合電機は半導体の業績や市況が悪いときに捨ててしまった。事業を売る判断も本社。総合電機のトップは半導体出身ではなく、半導体を調達先としてしか考えていなかった。彼らから見ると半導体は金食い虫で早く手を切りたかった。 エルピーダも同じだ。こちらは銀行が耐えられなかった。結果論だが、あと半年耐えられたら状況は変わっていた。市況がよくなって儲かるようになった。誰が儲けたか。倒産したエルピーダを買ったアメリカのマイクロンだ。 Q:海外企業に売却された案件をどのように評価していますか。 ほぼ全員アンハッピー。技術も残っていないし、人材も散ってしまった。事業の撤退や再編で会社から捨てられて国内ではどうしようもない。多くは中国でメシを食っているはずだ。 Q:韓国の半導体産業は日本の技術者が立ち上げたと言われています。 A:サムスンや現代(現SKハイニックス)の半導体事業は、当時の日本の技術者が週末に韓国へ行って指導して立ち上げた。ただ、中国に関しては早期退職でクビになった日本の技術者が現地に渡って立ち上げた。そうした構図は液晶もプラズマ(ディスプレイ)も同じ、エレクトロニクス全般に当てはまる。) Q:近年は技術流出が問題視されていますが。 A:技術者をどう処遇するか、という問題だ。彼らが持つノウハウを将来にわたって国がどうキープするかは労務政策であり、産業政策でもある。日本はそれを各社に任せてきた。そして各社は年寄りの技術者をいらないと捨ててきた。 TSMCの(創業者)モーリス・チャン氏は新技術を立ち上げるために、IBMや日立などからキーマンを大金で一本釣りした。日本以外の企業ではトップ人材をヘッドハントするのは当たり前だ。 日本はそうしたスカウトをやらなかった。半導体産業の初期にアメリカ企業から正式に技術導入したり、自社で技術開発をしたりしてきたので人材の裾野は広かった。だが、全員を食わせられなくなって捨てた。そうした人材が韓国や中国に渡った。中国も韓国も、優秀な技術者の待遇はすばらしい。中国では5年間免税などもあると聞いている』、「総合電機のトップは半導体出身ではなく、半導体を調達先としてしか考えていなかった。彼らから見ると半導体は金食い虫で早く手を切りたかった。 エルピーダも同じだ。こちらは銀行が耐えられなかった。結果論だが、あと半年耐えられたら状況は変わっていた。市況がよくなって儲かるようになった。誰が儲けたか。倒産したエルピーダを買ったアメリカのマイクロンだ」、「エルピーダ」はもったいないことをしたものだ。
・『賃金の平等主義が競争力を落とした  Q:日本メーカーは自前で技術を開発したというと聞こえはよいですが、外からトップ人材を採用して、相応の処遇をすることができなかっただけでは。 A:そうかもしれない。優秀な人材に何億円も出すという大リーガー方式を採るのか、みんなで同じ給料の社会人野球をやるか。社会人野球に大リーガーは来ないだろう。 日本は労働者の流動性がないので全体の賃金が抑えられるが、トップ人材も雇えない。結果、エレクトロニクス分野では日本は三等国になってしまった。復活を目指すなら労務政策を変えないといけないが、平等主義を変える覚悟が日本にあるか。ないだろう。 Q:2000年代などには日本企業の経営者は口を開けば従業員の賃金が高いと文句を言っていました。 A:今はもう高くない。とくにエリートに関しては全然高くない。一般従業員でも高くない。上海と比較しても変わらない。ただし、それは東京の話。日本でも、地方の工場従業員の賃金は高い。 富士通時代、会津や三重の工場の駐車場にはBMWが並んでいた。東京からの転勤者が乗っているのはマーチ(日産)だった。東京と地方では物価が違うのに給料水準は同じ。労働組合は全国で共通だったからだ。 地方の半導体工場は子会社ではなかったから、東京で本社のSEの給料を上げたら半導体工場の労務費も上がってしまった。地場の賃金水準の2倍以上になった。それでよく戦っていたと思う。 日本メーカーの東京在住の技術者の給料は、国際的に見て低いから優秀な人材が奪われてしまう。日本だけの争いなら同じ競争環境だから戦えるが、グローバルな戦いになった瞬間にその弱点がモロに出てしまった。それがエレクトロニクスの敗北の大きな理由だと思う。 Q:半導体産業は設計から生産まで一貫して手掛ける垂直統合型から、設計はファブレス、製造はファウンドリーが請け負う水平統合型に変わりました。日本ではファブレス、ファウンドリーとも有力企業が育ちませんでした。富士通時代にシステムLSIの製造受託ビジネスを経験され、独立後はファブレスを経営している経験から、その理由をどう見ていますか。 A:通信のモデムを例に説明しよう。1970年代から80年代には富士通やIBMが売っていたのは弁当箱くらいの大きさのモデムで、富士通では通信部隊が作っていた。半導体部隊はモデムに使われるデジタル信号処理用半導体などを作っていた。 1990年代になるとモデムは弁当箱からカードになり、1990年代後半にはモデムチップとしてパソコンに取り込まれた。さらにインテルのチップセットにモデム機能が吸収されたため、モデムチップが消えてしまった。 各社のモデムの設計者がどうなったか。アメリカではカードになったときにモデム設計者の多くがクビになった。クビになった設計者がモデムカードのスタートアップを作ったり、モデムチップの設計会社、ファブレスを興したりした。ところが、日本企業では商売がなくなった技術者は起業するのではなく、社内の別の業務に移った。培ってきた技術は全部消えてしまい、ファブレスも誕生しなかった。 また、アメリカには起業した人間に投資するエンジェルがいる。そして成功した人間がまたカネを出す。技術だけでなくカネも循環している。技術者が大成功できる。かつ、カネを出している連中がCEOやCFOを送り込んで儲けている』、「日本企業では商売がなくなった技術者は起業するのではなく、社内の別の業務に移った。培ってきた技術は全部消えてしまい、ファブレスも誕生しなかった」、日本的雇用調整のマイナス面が表れた形だ。
・『ファンドが差配するアメリカの強み  Q:日本でファブレスが出てこなかった理由はわかりました。ファウンドリーが成功しなかったのはなぜでしょう。富士通も含めてチャレンジはしていました。 A:僕がカスタムLSIを作るビジネスをしていたとき、そうしたスピンアウトをしたベンチャーが客だった。1990年後半頃から彼らがTSMCに製造を切り替える動きがあった。理由を調べてみたら、ベンチャーにカネを出しているファンドがTSMCにも多額の出資をしていた。 ファンドがファブレスにもファウンドリーのTSMCにも資金を出して、両方の取締役会に人を送り込んでいた。調達や購買の人間は「富士通の製造技術はすばらしい」と言っても、資本の論理が別にあった。 サンノゼの高級ホテルの最上階にファブレスやTSMCにカネを出しているファンドの連中が集まって、「もっと安くしろ」とか「この時期に(発注を)出せ」とやって決まっていた。富士通の営業がファブレスの購買と話をしても受注が決まらない。大型案件では経営者や資本家が介入してくる。負けたのはF(富士通)だけではない。NTH(NEC、東芝、日立)もみんなやられた』、「日本」が「ファンド」ビジネスで立ち遅れていたのは確かだ。

第三に、この続きを、9月23日付け東洋経済オンライン「「日の丸半導体」復活には5兆円投じる覚悟必要 富士通・元半導体部門トップが直言(後編)」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/456632
・『半導体の重要性が再認識されている。アメリカや中国は経済安保の観点からも兆円単位の国家支援を打ち出し、日本でも、経済産業省が「半導体・デジタル産業戦略」を発表した。ただ、かつて世界に覇を唱えた日本の半導体産業はすっかり凋落してしまった。復活には何が必要か。富士通で半導体部門のトップを務め、現在は半導体の設計ベンチャーを経営する藤井滋氏に聞く(Qは聞き手の質問、Aは藤井氏の回答)。前編「『日の丸半導体』が凋落したこれだけの根本原因」に続く、後編。 Q:経済安全保障の観点から最先端の半導体工場を日本でも持とうという動きがあります。国がTSMCの工場誘致を探る動きもありますが、日本勢でやることは可能ですか。 A:これまで自動車向けには枯れた技術の半導体が使われていた。が、電動化や自動化で先端半導体も使うようになる。日本の自動車メーカーの半導体調達における地政学リスクをヘッジするなら、TSMCと同じくらいの最先端工場を日本に造らないといけない。 国が支援するとしたら2000億円規模では話にならない。国が年間5000億円を10年間出すと言えば、どこかが名乗りを上げるかもしれない。ただ、経済産業省が資金を出すと言っても、実際は大企業に「裏書きしろ」と言ってくる。それでは無理だ。5000億円を10年間、5兆円をドブに捨てる覚悟で誰かに賭けるしかない。 Q:資金力はともかく先端半導体を製造する技術を持つ企業は日本に残っていますか。 A:残っていない。個別で人材を集めるしかない。日本人だけではなくグローバルにだ。アメリカはサムスンやTSMCに工場を造らせようとしている。アメリカには先端半導体のマーケットがあるが、日本にはない。同じものを大量に作るという顧客がいない。スマホもない。だから誰も工場を造らない』、「アメリカには先端半導体のマーケットがあるが、日本にはない」、寂しい限りだ。
・『ファブレスで勝てない日本の弱点  Q:ファウンドリーのような製造での最先端が難しければ、設計専門のファブレスで強い企業を育成することはできませんか。 A:ファブレスの場合は、人材に加えてEDAツールも問題になる。 EDAツールとは半導体などの回路設計を自動化し支援するソフトとハードウェアだ。昔は各社で内製ツールを使っていた。このEDAツールの問題を当初イージーに考えていた。当時の富士通は先端だったから設計ルールも作っていた。 カスタムLSIのビジネスでは、顧客にある程度は設計してもらわないといけない。とくに海外の顧客の場合、自社でサポートする余力がない。ちょうどアメリカ西海岸で出始めていたEDAツール会社をお願いした。それでシノプシスやケイデンスといったEDAツール企業を育ててしまった。 そのときに富士通の設計ルールをあっけらかんと社外のEDAツール会社に出してしまった。今から思うと犯罪的なノウハウの流出だ。そうこうしているうちに半導体が高度化し、第三者、専門メーカーのEDAツールを使わざるをえなくなった。それが1990年代から2000年代頭の話だ。 結果、現在何が起きているか。ファブレスとしてTSMCやサムスンに最先端のプロセスでの製造を依頼するには彼らが指定するEDAツールを使う必要がある。ファブレスはそのEDAツールのルールに従って回路を設計しないといけない』、「富士通の設計ルールをあっけらかんと社外のEDAツール会社に出してしまった。今から思うと犯罪的なノウハウの流出だ」、その価値を見抜けなかったので、「富士通」の完全なミスだ。
・『他社のルールに従わざるをえないことの問題  Q:ルールに従ってはダメなのですか。 A:たとえば、熱や帯電を逃がすために回路の線と線にこれくらいの距離を開けるといったルールがある。ファウンドリーは歩留まり悪化の責任を取りたくないのでルールを守るよう要求する。だが、ルール通りにやったらマージンばかりで競争力のない商品になる。昔は自分たちでルールを決めていたから、ここはサボればいいというのがわかった。今は見極めができなくなった。 10年くらい前まではTSMCに行って「このルールはなぜ必要なのか」と尋ねたら答えてくれた。「ここはマージンを取り過ぎている」と言えばルール破りも許容してくれた。日本へのリスペクトがあったから。今はダメだ。 もう日本勢は設計でも世界を追随できなくなった。先端工場のそばでしか先端のルールはできない。日本では何もできない。日本勢がTSMCの5ナノや3ナノのプロセスを使おうとしたら、それが使えるケイデンスかシノプシスのEDAツールを買ってきて、言われた通りに設計するしかない。それでは本当に高い競争力を持つ製品はできない。 Q:アメリカのファブレスも同じ悩みを持っているのですか。 A:アメリカは違う。最初の話に戻るが、アメリカでは大手電機が半導体をやめたり、半導体メーカーが潰れたりした場合、プロセス技術者が外に出る。多くがファブレスに移る。プロセス技術がわかる彼らが、客(ファウンドリー)の立場で工場に対して「なぜこのルールがあるのか」「なぜこの製造装置を使うのか」といじめに来る。最もいじめられたのがTSMCだ。 工場側の手の内がわかっている技術者を多く抱えているのがアメリカのファブレス。だから交渉力がある。歩留まりが悪かったら解析する能力を持つ人材が何人もいる。ファンドがそうした優秀な技術者をファブレスに紹介する。それがTSMCとの交渉力になるし、TSMCもそれに応えてレベルアップしてきた。人の流動性とエコシステムができている。 日本でもファブレスはあるが、生産プロセスがわかる技術者やパッケージがわかる技術者はいたとしても数人。そうするとファウンドリーの言いなりになるしかない。 しかも、アメリカのクアルコムやアップルはTSMCのファーストティアだ。TSMCが2ナノの製造装置を選別するときには彼らから承認をもらう。クアルコムは「この装置じゃダメだ。ASMLのこの装置を使え、設計基準はこうしろ」とTSMCに要求できる。 ファーストティアの顧客はTSMCに対して指導力を発揮して投資方針も変更できる。ルールも決められる。そうして開発した技術をTSMCはセカンドティアの顧客に展開する。そのときはTSMCが自分のルールでやる。日本企業はセカンドティアにも入れていない』、「アメリカでは大手電機が半導体をやめたり、半導体メーカーが潰れたりした場合、プロセス技術者が外に出る。多くがファブレスに移る。プロセス技術がわかる彼らが、客(ファウンドリー)の立場で工場に対して「なぜこのルールがあるのか」「なぜこの製造装置を使うのか」といじめに来る。最もいじめられたのがTSMCだ。 工場側の手の内がわかっている技術者を多く抱えているのがアメリカのファブレス。だから交渉力がある。歩留まりが悪かったら解析する能力を持つ人材が何人もいる。ファンドがそうした優秀な技術者をファブレスに紹介する。それがTSMCとの交渉力になるし、TSMCもそれに応えてレベルアップしてきた。人の流動性とエコシステムができている」、ここまで違うとシャッポを脱ぐしかなさそうだ。
・『金融庁が日本の半導体を殺した!?  Q:ほかに日本の半導体が負けた理由はありますか。 A:金融庁の指導で100%子会社も含めて経理システムを一本化した影響が大きかった。富士通の場合、それまでは半導体部門の減価償却は定率法だったが、本社で統一するときに定額法になった。変更した瞬間は利益が出るが、その後は償却負担が重くて死んでしまう。 韓国や台湾は半導体産業に対して、減価償却と税制で手厚い優遇措置が整っている。日本はもともと減価償却の自由度が少ないところに、総合電機のようにビジネスモデルが違う事業の経理システムを統一してしまった。そうすると同じ中身でも利益が出ていないように見えるので投資もできず、捨てられてしまう。利益が出たら出たで税金で取られてしまう。) インフラコストや税金も高い。国内で半導体工場を造ろうとして水代や電気代を見るとビックリする。法人税も固定資産税も高い。戦略的に産業を伸ばそうとしたら、そういうところも直さないといけない。 Q:日本の半導体産業の復権は不可能に思えてきます。とはいえ、産業競争力の観点からも、経済安保の観点からも半導体は重要です。国はこれまでにない支援の姿勢を示していますが。 A:半導体復権を国がやるなら、日本株式会社でやらないと無理だろう。アメリカもそうしている。中国なんて完全に中央政府の統制でやっていて利益の分配も自在だし、労働争議も起きない。 ただ、国が資金を投じたから勝てるかと言われたら、苦しい。でも、やらなければ勝てはしない』、やはり、「日本」には「半導体復権」は夢のまた夢のようだ。
タグ:半導体産業 (その4)(台湾TSMCを巻き込む「日の丸半導体復活」構想が 日本の衰退を早める理由、「日の丸半導体」が凋落したこれだけの根本原因 富士通・元半導体部門トップが直言(前編)、「日の丸半導体」復活には5兆円投じる覚悟必要 富士通・元半導体部門トップが直言(後編)) ダイヤモンド・オンライン 窪田順生 「台湾TSMCを巻き込む「日の丸半導体復活」構想が、日本の衰退を早める理由」 「自民党の「半導体戦略推進議員連盟」」は『ジャパン・アズ・ナンバー・ワン・アゲイン』」と「かけ声は勇ましい」。他方で、「経産省」は「「官僚の妄想」とも言っていい青写真」、やれやれだ。 「TSMCの日本研究拠点と連携を強めれば強めるほど、日本の半導体の競争力が低下していく可能性の方が高い。つまり、わずかに残った世界で戦える半導体装置企業などがTSMC傘下へ組み込まれたり、技術者の国外流出に繋がってしまたりという恐れがある」、「「日本で研究を行う建前になってはいるが、実際の目的は、日本国内の企業や大学研究室からの技術情報収集・・・、装置・材料の調達、日本企業に勤務する技術者のリクルートのいずれかあるいはすべてだろう」、「このような意図を持つであろう台湾企業を平身低頭で日本に呼び寄せて、税金 「「日本で研究を行う建前になってはいるが、実際の目的は、日本国内の企業や大学研究室からの技術情報収集・・・、装置・材料の調達、日本企業に勤務する技術者のリクルートのいずれかあるいはすべてだろう」、「このような意図を持つであろう台湾企業を平身低頭で日本に呼び寄せて、税金までくれてやるというわけだ」、全く馬鹿げた話だ。 「TSMCは別にそこまで深刻に中国に背を向けているわけではないのだ。客観的に見れば、米中どちらにもいい顔をして非常にうまく立ち回っている」、当然だろう。 「今回の一連のTSMCの動きを見る限り、鴻海と似たものを感じる」、確かに巧みに泳ぎ回る様子はさすがだ。 「日本では「親米保守」という、愛国なんだか売国なんだかよくわからない人々が政治を動かしている。 そうなると当然そのしわ寄せは経済、つまり民間企業に押しつけられる」、「日本の経済安全保障的にも大きなリスクをもたらしている「日本の医療偏在」が放置されている原因をたどっていくと、落選を恐れる政治家の皆さんの「自己保身」に突き当たる」、同感である。 東洋経済オンライン 「「日の丸半導体」が凋落したこれだけの根本原因 富士通・元半導体部門トップが直言(前編)」 富士通で半導体部門のトップを務め、現在は半導体の設計ベンチャーを経営する藤井滋氏に話を聞いた 「クリーンルーム」は日本発の「概念」とは、言われてみれば納得する。 「スマホ用はパソコン以上に品質を求められない。そのスマホ向けが技術的には最先端で、台湾のTSMC・・・は技術開発でスマホにフォーカスしている」、なるほど。 「半導体部門自体が決定権を持っていないということは、国プロが成功しないという問題だけにとどまらなかった。投資などを決めるのは本社様で、半導体のマーケットをわかっている人間が(投資の)賭けに打って出ることはほとんどできなかった。しかも、半導体が儲かったときは(利益を)全部吸い上げられるし、損をしたときは(事業を)止めろと言われる」、「半導体事業が総合電機からスピンアウト」の「意思決定が10年以上遅かった」、「総合電機」のコングロマリットの問題点が如実に表れたようだ。 「総合電機のトップは半導体出身ではなく、半導体を調達先としてしか考えていなかった。彼らから見ると半導体は金食い虫で早く手を切りたかった。 エルピーダも同じだ。こちらは銀行が耐えられなかった。結果論だが、あと半年耐えられたら状況は変わっていた。市況がよくなって儲かるようになった。誰が儲けたか。倒産したエルピーダを買ったアメリカのマイクロンだ」、「エルピーダ」はもったいないことをしたものだ。 「日本企業では商売がなくなった技術者は起業するのではなく、社内の別の業務に移った。培ってきた技術は全部消えてしまい、ファブレスも誕生しなかった」、日本的雇用調整のマイナス面が表れた形だ。 「日本」が「ファンド」ビジネスで立ち遅れていたのは確かだ。 「「日の丸半導体」復活には5兆円投じる覚悟必要 富士通・元半導体部門トップが直言(後編)」 「アメリカには先端半導体のマーケットがあるが、日本にはない」、寂しい限りだ。 「富士通の設計ルールをあっけらかんと社外のEDAツール会社に出してしまった。今から思うと犯罪的なノウハウの流出だ」、その価値を見抜けなかったので、「富士通」の完全なミスだ。 「アメリカでは大手電機が半導体をやめたり、半導体メーカーが潰れたりした場合、プロセス技術者が外に出る。多くがファブレスに移る。プロセス技術がわかる彼らが、客(ファウンドリー)の立場で工場に対して「なぜこのルールがあるのか」「なぜこの製造装置を使うのか」といじめに来る。最もいじめられたのがTSMCだ。 工場側の手の内がわかっている技術者を多く抱えているのがアメリカのファブレス。だから交渉力がある。歩留まりが悪かったら解析する能力を持つ人材が何人もいる。ファンドがそうした優秀な技術者をファブレスに紹介する。そ やはり、「日本」には「半導体復権」は夢のまた夢のようだ。
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外国人労働者問題(その17)(「手や足を引っ張り まるで動物のように…」30代女性に名古屋入管職員が行っていた"許されざる行為" ビデオを見た遺族は言葉を失った、名古屋入管・スリランカ人女性死亡問題に見える「外国人嫌悪」という日本の闇、入管でスリランカ人女性死亡の背景に「特高マインド」 70年前の法律の見直しを) [社会]

外国人労働者問題については、6月23日に取上げた。今日は、(その17)(「手や足を引っ張り まるで動物のように…」30代女性に名古屋入管職員が行っていた"許されざる行為" ビデオを見た遺族は言葉を失った、名古屋入管・スリランカ人女性死亡問題に見える「外国人嫌悪」という日本の闇、入管でスリランカ人女性死亡の背景に「特高マインド」 70年前の法律の見直しを)である。

先ずは、8月22日付けPRESIDENT Onlineが掲載したフォトジャーナリストの安田 菜津紀氏による「「手や足を引っ張り、まるで動物のように…」30代女性に名古屋入管職員が行っていた"許されざる行為" ビデオを見た遺族は言葉を失った」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/49117
・『今年3月にスリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさん(当時33)が名古屋入国管理局の施設で死亡した問題で、国は最終報告書を公表した。フォトジャーナリストの安田菜津紀さんは「施設内でのウィシュマさんの様子を写した約2週間分の映像はごく一部が遺族のみに開示されたのみで、真相の解明とは言えない内容だった。2007年以降、入管施設では17人が死亡し、そのうち5人は自殺だ。このままでいいはずがない」という――』、興味深そうだ。
・『1人の留学生が収容され、亡くなるまで  「人間を人間として扱ってほしい」――この言葉を何度、ウィシュマさんのご遺族から耳にしただろう。そう誰かに言わせてしまう社会は、果たして望ましい社会だろうか。 3月6日、スリランカ出身のウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)が、名古屋出入国在留管理局(以下、名古屋入管)の収容施設で亡くなった。 ウィシュマさんは「日本の子どもたちに英語を教えたい」と夢見て来日後、学校に通えなくなり、在留資格を失って昨年8月から施設に収容されていた。 今年1月頃から体調を崩し、やがて自力で歩けないほど衰弱していく。嘔吐してしまうため、面会中もバケツを持っていたと面会を重ねていた支援団体などが指摘してきた。こうした状態に追い込まれても、点滴などの措置は最後まで受けられなかった』、「入管」施設といえども、入所者を保護する義務がある筈だが・・・。
・『国連から「国際法違反」の指摘を受ける日本の「入管」  そもそもこの「収容」とはどういった措置なのかということをまず振り返りたい。 例えば、仕事を失ってしまう、困難を抱えて学校に行けなくなってしまう、パートナーと離婚するなど、様々な生活の変化によって、日本国籍以外の人々は、日本に暮らすための在留資格を失ってしまうことがある。空港で難民申請をした人の中には、最初から在留資格がない人もいる。 「収容」とは本来、在留資格を失うなどの理由で、退去強制令書を受けた外国人が、国籍国に送還されるまでの「準備」としての措置という「建前」のはずだ。 ところが、収容や解放の判断に司法の介在がなく、期間も無期限で、何年もの間、施設に閉じ込められたまま、いつ出られるのかも定かではない人たちもいる。 昨年、国連人権理事会の「恣意的拘禁作業部会」が、こうした実態を「国際法違反」と指摘した。それ以前から、国連の「拷問禁止委員会」などの条約機関からも度々勧告を受けてきている』、「日本の「入管」」は、「以前から、国連の「拷問禁止委員会」などの条約機関からも度々勧告を受けてきている」、札付きのようだ。
・『入管が「拷問していることを認めている」 ウィシュマさんは、同居していたパートナーからのDVと、その男性から収容施設に送られてきた手紙に、「帰国したら罰を与える」など身の危険を感じるような脅しがあり、帰国ができないことを訴えていた。 2018年1月、入管局長名で全国の入管施設に出された「DV事案に関わる措置要領」の改訂版には、DV被害者にどのように対応すべきかが細かく記載されていたが、職員にその存在さえ周知されていなかったことが「最終報告書」でうかがえる。 ウィシュマさんはDV被害者として対応されることもなく、仮放免(一時的に収容を解かれること)を申請するも不許可となり、二度目の仮放免申請の判断が出る前に亡くなった。 「最終報告書」では、ウィシュマさんの仮放免を不許可にし、収容を続けた理由として、「一度、仮放免を不許可にして立場を理解させ、強く帰国を説得する必要あり」などという記載している。 これは本来掲げられている「建前」とはかけ離れたものではないだろうか。8月10日の記者会見で遺族代理人の指宿昭一弁護士は、「長期収容による身体的、精神的苦痛を与えて、意思を変えさせることを“何が悪いのか”と開き直っていますが、拷問していることを入管は認めている」と強く指摘した。 全体としても、施設内の医療体制の「制約」など、表面的な改善点を挙げるのみに留まり、収容体制の根本には切り込んでいない。遺族の求める「真相解明」とは程遠いものだ』、「最終報告書」は「最終」とは程遠いものだ。
・『遺族だけに見せられた監視カメラの映像  さらに8月12日、入管庁はウィシュマさんが亡くなるまでいたとされる居室の監視カメラのビデオ2週間分を、わずか約2時間分に切り縮め、遺族のみに見せた。 姉が苦しみ亡くなる映像を見ること自体、あまりに精神的負荷が大きいことだろう。ところが代理人弁護士の同席は、「特別の人道上の対応としてご遺族にご覧いただく」「現段階においても保安上の問題などがあることから、ご遺族外への開示は相当ではない」という理屈にもならない理由を掲げられ、認められなかった。 その状況でビデオを見せたこと自体もまた暴力だろう。指宿弁護士は、「代理人の制度を、法務省自ら否定している」、と憤る。 結局、ご遺族は1時間10分ほどの映像を見進めた時点で中断し、ビデオを見たウィシュマさんの妹で次女のワヨミさんは、涙が止まらず、嘔吐してしまう場面もあったという。 「人権なんてここに全くありません。姉を助けることはできたはずなのに、犬のように扱っていました」と震える声で語った。日ごろは穏やかに話すワヨミさんの、心からの叫びだった。「すべての外国人の皆さんに伝えたいです。明日はあなたの番かもしれません」』、「代理人」「弁護士」にすら「ビデオ」の開示を拒否するとは、確かに「代理人の制度を、法務省自ら否定している」、由々しい問題だ。
・『職員が馬鹿にしたように笑う場面も  「最終報告書」には、2月26日午前5時15分頃、ベッドから落下したウィシュマさんが、「数回に渡り」インターフォンで職員の呼び出しを試みたことが記されている。2名の職員がベッドに戻そうとするも、持ち上げられず、勤務者が増える8時頃まで床の上に寝かせていたことが、さも「やむをえなかった」ことのように書かれていた。 映像を見たご遺族によると、ウィシュマさんは泣きながらインターフォンで「23度」にわたり職員に助けを求めていたのに対し、職員は「そこには行けない、自力でやりなさい」と答えていたという。 その後、職員が部屋に来たものの、手や服の一部などを引っ張り、ウィシュマさんに対し「肩を上げなさい」など自力で動くよう指示した上、「大声出さないで」などと対応したという。体を持ち上げてベッドに戻そうとする様子にはとても見えなかったという。 「最終報告書」には、亡くなる5日前の3月1日、ウィシュマさんがカフェオレを飲もうとしたところ、うまく飲み込めずに鼻から噴出してしまう様子に、「鼻から牛乳や」と職員が発言していたり、亡くなった当日でさえ、反応を殆ど示さないウィシュマさんに対して「ねえ、薬きまってる?」などと発言していたと記されていた。 だがビデオを見たご遺族は、他にもウィシュマさんの尊厳を傷つけるような発言があったと指摘する。ベッドの上で、自力で体を動かせないウィシュマさんを介助しようとした職員が、「重いですね」「食べて寝てを繰り返しているから太っている」と馬鹿にしたように笑う場面もあったというのだ。 記者会見に臨んだウィシュマさんの妹、ポールニマさんは、痛がっているウィシュマさんに対し「手や足を引っ張ったり、まるで動物のように扱っていました。姉にこのような扱いをしたのであれば、他の外国人にも同じことをするのでは」と憤る。「ここで働く人間には心がないのでしょうか?」。 暴言を吐いた職員について、この日の午前中に遺族と面会した入管庁の佐々木長官は、「注意と指導はしています」と述べるにとどめ、具体的な処分について踏み込んだ発言はなかったという』、「代理人」の制度を、法務省自ら否定している」、信じられないほど酷い話だ。
・『国は監視カメラの映像を隠し続ける  あくまでも「保安上の理由」を国側は掲げ続けているが、過去に国賠訴訟の過程などで内部の映像は開示されている。 2014年、茨城県牛久市の「東日本入国管理センター」の入管施設でカメルーン人男性が亡くなった後、原告である遺族側が裁判の中で国に映像の提出を求めた。 遺族側の代理人を務める児玉晃一弁護士によると、国側は裁判所に、職員がさも適切に対応していたかのように見える部分だけを恣意的に切り取り、編集した45分のビデオを“証拠”として提出してきたという。 開示された監視カメラの映像を見ると、床をのたうち回るほどの苦痛を訴え続け、「I'm dying」「みずー」と叫ぶ、あまりに凄惨な状況がそこに映し出されているが、カメラはそんな男性に、対応にあたった職員がぞんざいな対応をし、体の上をまたいでいく様子も捉えていた。さらに、職員たちは監視カメラで男性の様子を観察しても、動静日誌に「異常なし」と書き込んでいたという。 そもそもこれは、国の管理下の施設で起きた事件であり、ウィシュマさんが映るビデオは、佐々木長官や上川法務大臣の私物ではない』、「国」としては、「管理」「責任」を果たすためにも、説得力ある説明が求められる。
・『「収容という苦痛を与え、追い詰める」  8月13日、真相解明とビデオ開示を求めオンライン署名を続けていた「ウィシュマさん死亡事件の真相究明を求める学生・市民の会」が、5万筆をこえる署名を、丸山秀治出入国管理部長に手渡した。 この日の署名提出会見には、小説家の中島京子さんも駆けつけ、「収容という苦痛を与えて、それから逃れるためには帰国しかない、というふうに追い詰める。収容施設はそのための“手段”と化しているのだと思います。そのことに反省がなければ、何度でも同じことを繰り返すでしょう」と訴えた』、裁判所の監視もなしに「苦痛」を与えるとすれば、特別公務員暴行陵虐罪に該当する可能性もあり、許される筈はない。
・『難民に門戸を閉ざし続ける日本  こうした中、アフガニスタンではタリバンが首都カブールを制圧した。カナダのトルドー首相は早々に、他国への退避を求めるアフガニスタンの市民2万人の移住を支援する考えを示した。カナダは米国と共に2001年、アフガニスタンに侵攻した国でもあり、その意味での責任も問われてくるだろう。 ただ、それ以外の国が何も応答する必要がないわけではないだろう。難民条約に加入している、日本はどうか。そもそも日本の難民認定率は1%にも満たず、難民条約に加入しながら、難民にほぼ門戸を閉ざしてきた。そして、入管での冷酷な処遇は、難民申請者に対しても変わらない。 児玉弁護士によると、2001年、突然収容されたアフガニスタンの難民申請者が、解放後に顔を出して会見に臨んだ後、本人たちの銀行口座の残高など、本来の難民該当性とは何ら関係のない個人情報を公開されるなど、法務省からの嫌がらせがあったという。 今後アフガニスタンからの難民申請者への適切な対応が必要である一方、入管行政の根本が変わらなければ、また人権侵害や無期限収容に苦しむ人々を生み出してしまうかもしれない』、「アフガニスタンの難民申請者」への「個人情報を公開されるなど、法務省からの嫌がらせ」も、弁護士を通じ国の不法行為を訴えるべきだろう。
・『ウィシュマさんを最後の犠牲者するために  今回の事件はウィシュマさんの問題だけにとどまらない。2007年以降、17人もの人々が、入管の収容施設で亡くなっている。うち5人は自殺だ。このままの「幕引き」では、ウィシュマさんを最後の犠牲者にすることはできないだろう。上川陽子法務大臣は8月20日、再発防止に向け、省内に「出入国在留管理庁改革推進プロジェクトチーム」を発足させたことを公表したが、まっとうな検証なくしてどんな「改革」が成り立つだろうか。その前に、独立した第三者調査の実施とビデオの開示をすることが、真相解明のため、そして繰り返さないために、国として最低限果たす責務ではないだろうか』、「独立した第三者調査の実施とビデオの開示」、は急務だ。野党もこの問題を積極的に取り上げるべきだろう。

次に、9月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した編集・ライターの小川たまか氏による「名古屋入管・スリランカ人女性死亡問題に見える「外国人嫌悪」という日本の闇」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/282418
・『2021年3月6日に、名古屋入国管理局の施設で、スリランカ人のウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)が亡くなった。遺族や支援者が真相解明を求める一方で、ネット上では心ない虚偽の内容も出回っている。一体なぜ、死者が出た事実の背景を知るための行動が、一部から批判されるのだろうか』、第一の記事で明らかにならなかった事実もありそうだ。
・『“飢餓状態“のウィシュマさんに点滴はほどこされなかった 「報告書では、入管施設は幾度もウィシュマさんに病院で治療を受けさせたことが記載されています。入管側もそれなりに努力したのではないでしょうか」 9月10日、日本記者クラブで行われた記者会見で、新聞記者からこんな質問が上がった。これに対して、指宿昭一弁護士は淡々と、しかしはっきりとこう答えた。 「幾度も?2回しか外部院(*)には見せていません。まずですね、点滴を一度も打っていない。何度も本人や支援者から点滴を打ってくれと、痩せて飢餓状態になっていたから水分と栄養分を補充する必要があった。この肝心のことをやっていない。そのことを全く評価できないと思います」(*外部の病院という意味と思われる) 指宿弁護士ら遺族代理人や支援者が真相究明を求めているが、明らかになっていない部分は多い。 8月に公表された最終報告書で初めて、2月15日に行われたウィシュマさんの尿検査数値が「飢餓状態」を示すものであり、それを少なくとも医療関係者のうち一人が確認していたことはわかった。その時点でなぜ救急車が呼ばれなかったのか。救急車が呼ばれたのは亡くなった当日の3月6日で、病院に着いた時点でウィシュマさんの息はすでになかった。 記者会見では他の記者から、入管の行為は保護責任者遺棄致死や、未必の故意による殺人罪に当たるのではないかという質問も上がった。 2007年以降、ウィシュマさんを含め17人の収容者が入管で亡くなっている。理由は、病死、自死、餓死など。これらについて、入管職員が責任を追及され起訴されたなどという報道は見当たらない。 指宿弁護士は「ウィシュマさんの件は、刑法上の問題が成立すると思う。殺人罪の可能性もありますし、保護責任者遺棄致死の可能性もあると思う」と語った上で、「名古屋地検で捜査が進められている。検事が法律家としての良心に基づいて調査するなら、必ず起訴されると思う。起訴されなければならない、と思います」と重ねた』、「名古屋地検で捜査が進められている」、起訴しなければ、弁護士が訴えるまでだ。 
・『メディアを含め、外国人嫌悪があるのではないか  会見があった10日、指宿弁護士らはウィシュマさんの妹のワヨミさん、ポールニマさんとともに、ウィシュマさんの入管での生前の様子が記録されたビデオ映像の後半を確認するために法務省を訪れた。代理人弁護士を立ち会わせるように繰り返し求めていたが、入管側はこの日も立ち会いを認めなかったため、映像の確認を取りやめたという。 収容者の措置や仮放免も入管の裁量なら、記録の開示も、映像確認にあたっての立ち会いも入管側の裁量…。入管内で人命が失われたことの真相解明を求めているのに、入管側のルールに則ってそれを行えと言われている状況だ。 さらに、指宿弁護士は会見で何度か、「ゼノフォビア(外国人嫌悪)」という言葉を口にした。 簡単にいえば、マスコミ側のこの問題に対する勝手な思い込みや偏見を突いたのだ。例えば、「外国人の問題は読者からの反発が強いから…」とか、「外国人に関する問題は慎重にやらないといけないから、強く書けない」などというような考えが根底にあるのではないかということだ。マスコミだけではなく、現在の入管の問題点の背景にもゼノフォビアがあるとも指摘した』、「マスコミだけではなく、現在の入管の問題点の背景にもゼノフォビアがある」、その通りなのだろう。
・『虚偽の情報がツイッターで拡散 DV被害も不正確に伝えられる  ウィシュマさんについては、ツイッター上で虚偽の内容が拡散されている。 たとえば、「入管に収容された後、帰国するはずだったのにそれを支援者が引き止めた」「ハンガーストライキの末に死亡した」などだ。 ウィシュマさんは、同居していた男性からのDVを恐れ帰国できないと訴えていた。また、入管で抗議のハンガーストライキの末に亡くなった人は過去にいるが、それはウィシュマさんではない。 ウィシュマさんは2017年6月に来日し、英語を日本の子どもに教えるという夢を持って日本語学校に通った。しかしその後、学校に通わなくなり、2020年8月に警察を訪れた。 その際に同居していたスリランカ人男性からDVを受けて家から追い出されたと語っていたという。そこで在留資格が切れていることが明らかになり、そのまま入管に収容される。スリランカに帰国すれば危害を加えるという趣旨の手紙を男性から受け取り、帰国できないと訴えていた。 ウィシュマさんが語っていたDVの内容は最終報告書にも記されており、その中には「無理やり中絶させられた」というものもあった。 フォトジャーナリスト・安田菜津紀さんは、毎日新聞の記事の中で、DV加害者である(少なくともその疑いがある)同居男性が仮放免を許され、DV被害と体調不良を訴えていたウィシュマさんが仮放免を許されなかったのはなぜなのか、という疑問を提示している』、「虚偽の情報がツイッターで拡散」、ネット右翼の仕業なのだろうあ。「DV加害者である(少なくともその疑いがある)同居男性が仮放免を許され、DV被害と体調不良を訴えていたウィシュマさんが仮放免を許されなかったのはなぜなのか」、確かに大きな疑問だ。
・『黒塗りの文書が15万6760円 何でもかんでも「パフォーマンス」と、ねたむ声  ツイッター上で拡散される虚偽の内容は、真相解明を阻止したい、あるいは入管の姿勢を擁護したいように見えるものが多い。 人が亡くなった事実があるのに、なぜ亡くなったか詳細がわかっていない。だからこそ真相解明を求めているのに、支援者らの活動をパフォーマンスだと言い立てる人もいる。 たとえば日本人が国内のある機関に収容されているときに亡くなってその理由がわからない、という場合に同じことが言われるだろうか。外国人嫌悪あるいは、外国の人たちが日本国内で直面する問題への無関心から来る無知を感じざるを得ない。 8月17日、指宿弁護士らは、約1万5000枚の黒塗り文書の前で記者会見を行った。名古屋入管に対して行政文書の開示を求めたところ、3カ月後に送られてきたのが大量の黒塗り文書だったが、支払った手数料は15万6760円。 名古屋入管は黒塗りの理由を「個人の権利利益を害するおそれがある」「当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある」などと説明した、と報道されている。真っ黒に塗り潰された文書の前での会見が報道されると、さすがに非難の声があふれた。 しかし、これさえも一部では、支援者らがわざと大量の文書開示を行って黒塗り文書を出させ、記者の前でパフォーマンスを行ったかのような内容のツイートが拡散され、うのみにしている人もいる。 これは、支援者らがウィシュマさんの死に関する情報開示を求めたところ、入管側から情報開示手続きを提示され、それに従って開示請求を行っただけにすぎない。正しい手続きのどこが「パフォーマンス」なのか。 支援者らに疑念を持つ根底には、ゼノフォビアの他に「日本の行政機関がそんなおかしなことをするわけがない」といった過信もあるのではないかと感じる。 壁は厚く高いものの、会見の中で指宿弁護士は希望も語った。今年の5月には支援者らが「改悪案」と呼んだ入管法改正案が廃案となった。 また、オンライン署名「#JusticeForWishma 名古屋入管死亡事件の真相究明のためのビデオ開示、再発防止徹底を求めます」は、現在までに7万5000筆以上が集まっている。この署名を始めたのは「ウィシュマさん死亡事件の真相究明を求める学生・市民の会」。若い世代が疑問を持って声を上げたようだ。 入管で収容者が亡くなり、その実態が解明されない問題は、ウィシュマさん以前から指摘されてきた。報道や関心の高まりを消してはならない』、開示の「手数料は15万6760円」、殆ど「黒塗り」の割には高い気もするが、国家権力の嫌がらせなのだろう。

第三に、6月24日付けAERAdot「入管でスリランカ人女性死亡の背景に「特高マインド」 70年前の法律の見直しを」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/aera/2021062200055.html?page=1
・『巨大な裁量権を持つ入管。そこでは、14年間で17人が亡くなっている。指摘されているのが入管の「体質」だ。「密室」で、一体何が起きているのか。AERA 2021年6月28日号から。 スリランカ人のウィシュマ・サンダマリさん(当時33)の死の真相解明は3カ月以上たっても進んでいない。日本を愛したウィシュマさんは3月6日、収容先の名古屋出入国在留管理局の収容施設で命を落とした。入管収容施設は、オーバーステイなどで在留資格のない外国人を送還させるまでの間、収容する場所。全国に17カ所あり、名古屋入管はその一つだ。 支援団体などによると、2017年6月、ウィシュマさんは「日本の子どもたちに英語を教えたい」という夢を持ち留学生として来日。しかし学費が払えず、19年1月に在留資格を失った。昨年8月、同居中のスリランカ人男性のDVから逃れようと警察に駆け込むと、不法残留容疑で逮捕された。その後、名古屋入管に収容され、今年1月中旬から体調が悪化。トイレやシャワー時には職員の介助が必要になり、体重は半年で20キロ近く減ったという。 名古屋入管での面会活動などを続ける支援団体「START(外国人労働者・難民と共に歩む会)」の学生メンバー、愛知県立大学3年の千種(ちくさ)朋恵さん(20)は、2月に2回、ウィシュマさんと面会した。 「1度目の面会の時は、2人の職員に両脇を抱えられ今にも倒れそうな状態で、『指先がしびれる』などと話していました」』、「体重は半年で20キロ近く減った」、深刻な体調だが、医者の診断はどうだったのだろう。
・『■仮放免を2度申請  次の面会では、ウィシュマさんは車いすで現れた。嘔吐してしまうため、面会中もバケツを持っていた。熱が37.5度以上あり、「体が石みたいで動かない」と訴えたという。千種さんたちは、入管の処遇部門にウィシュマさんが点滴を受けられるよう申し入れを行ったが受け入れられなかった。またウィシュマさんは、一時的に収容を解く「仮放免」も2度申請したが、認められないまま亡くなった。 収容中に何が起きたのか。入管庁に問いただすと、 「最終報告書をまとめているところで、現時点で何もお答えすることはできない」とだけ回答した。 外国人の在留資格などを定めた出入国管理法(入管法)は1951年、出入国管理令(ポツダム政令)として制定され、翌52年に法律としての効力を持つようになった。以来、収容制度は一度も改正されていない。 閉ざされた「密室」で、一体何が起きているのか。 入管施設での死はウィシュマさんが初めてではない。病死、自死、餓死……。07年以降、彼女を含め17人が死亡している。1年に1人以上、国の施設で人が死んでいることになるのだ。指摘されているのが、入管の「体質」だ』、どういうことなのだろう。
・『■在留資格がないと害悪  ウィシュマさんの遺族の代理人を務める高橋済(わたる)弁護士は、組織全体に「特高マインド」があると指摘する。特高とは「特別高等警察」の略で、昭和のはじめに国民弾圧の最前線の役割を果たした。高橋弁護士は言う。 「収容者を『制圧行為』と称し多数で首を絞めたり骨折するまで暴行を加えたり、瀕死(ひんし)の状態になっても放置しておく。入管ではそうした事例がたびたび起きています。刑事事件を担当しても、警察でもここまでひどいことはまずしません」 東日本入国管理センター(茨城県牛久市)で、収容中に、職員から暴行を受けたとしてトルコ出身のクルド人男性(40代)が国に損害賠償を求めた訴訟で、国側は19年12月、取り押さえる様子を録画した映像を証拠として東京地裁に提出した。そこには、「痛い」「やめて」と叫ぶ男性を、複数の入管職員が力ずくで押さえつけ、「制圧、制圧」と言いながら馬乗りになって後ろ手に手錠をかけたりする場面が収められている。 「これまでの弁護の過程で、この入管職員は常に懐疑心と差別心を持ち、在留資格がなくなった外国人は社会に害悪だから隔離拘禁しなればいけないと考えているとしか思えない、と感じる場面が何度もありました。特高のマインドが引き継がれているというのは、現場感覚としてすごく納得がいきます」(高橋弁護士) 5月、国会審議中だった入管法改正案は人権上の数々の疑問が指摘され実質廃案となった。だが、現行の入管法は残る。このままでは第2、第3のウィシュマさんが出る恐れがある。 高橋弁護士は、次の3点を改善するべきだと提言する』、「特高のマインドが引き継がれている」、ありそうなことだ。
・『■恣意的な判断が横行  1点目は「全件収容主義」。在留資格のない外国人は誰でも収容してよいとする考えで、日本の入管政策の特徴だ。 「収容中に亡くなる事例は、すべてこの政策の下で起きています。在留資格がない外国人は危険だと考え施設に閉じ込めていますが、日本も批准している自由権規約では『非拘禁』、つまり身体の自由が原則で収容は例外的だと定めています。日本では民主国家における行政機関として、あってはならないことが行われています」(高橋弁護士)) 2点目は、「収容期限の上限の設定」だ。先進国の多くは収容期間の上限を定め、ヨーロッパではEU加盟国は原則6カ月。しかし日本は理論上無期限で、現実に数年にわたって長期収容される事例が後を絶たず心身を病む人は多い。 最後は、身体拘束や仮放免の審査に裁判所が介入する「司法審査」。日本では、身体拘束をするかしないかに関しても裁判所が介入する余地がない。刑事手続きでも身柄の拘束には裁判所の令状が必要とされている。公正さや透明性を担保する上で、司法審査は大事だと強調する。 「入管は70年近く前にできた法律の枠組みを、使い勝手がいいからとそのまま使っている。しかし、毎年のように収容された外国人が亡くなっている中、当時の法制度のままでいいはずがない。抜本的な政策の見直しが不可欠です」(高橋弁護士)』、「日本も批准している自由権規約では『非拘禁』、つまり身体の自由が原則で収容は例外的だと定めています。日本では民主国家における行政機関として、あってはならないことが行われています」、法務省は国際的規制を遵守する気はさらさらないようだ。
・『■人権を土台に施策を  元入管職員で、「未来入管フォーラム」を立ち上げ入管行政の改革を訴える木下洋一さん(56)は、入管問題の根本は入管が巨大な裁量権を持っていることだと指摘する。 「裁量それ自体を否定するつもりはありません。しかし、入管における裁量は、例えば在留特別許可や仮放免などの可否判断に関して、法律で基準が定められているわけでも第三者機関が関与するわけでもありません。判断過程が極めて不透明で、ブラックボックスの中にあります。そのため、往々にして担当官の個人的な主観や価値観が混入し、極めて恣意(しい)的な判断の横行を許すことにつながっていきます」 木下さんは、入管は「絶対権力」だと語る。その権力は、ブラックボックスの中で腐敗し暴走する、と。暴走を食い止めるにはどうすればいいか。木下さんは(1)基準の明確化、(2)チェック機能体制を確立──この2点が大切だと述べる。 「出入国管理に関しては国家から幅広い裁量に任されているので判断基準を明確にするのはなじまない、というのが入管のロジックです。しかしそれは、ひと昔もふた昔も前の発想。適正手続きの順守がもはや当たり前とされている昨今、ガイドラインを法定化するなど、明確化された基準の下で入管の裁量は行使されるべきです」 チェック機能体制の確立については、第三者機関による機能体制を確立しなければいけないと述べる。 「入管が、身体を拘束するという非常に強権的な権力を行使し得る役所である以上、それが適正に行われているかどうか監視が必要。そのためには人権の専門家など第三者機関に積極的に関与させ、常に厳しい目を光らせていないといけない。強権的ではなく、人権を土台にした施策が、長期的に見て不法残留者の減少につながると考えます」 ウィシュマさんの死の真相はまだ何も解明されていない。入管庁は、最終報告書を7月中に出すとしている。「闇」に光は差すか』、「入管」を知り貫いた「木下」氏の提言は説得的で、大賛成である。
タグ:外国人労働者問題 (その17)(「手や足を引っ張り まるで動物のように…」30代女性に名古屋入管職員が行っていた"許されざる行為" ビデオを見た遺族は言葉を失った、名古屋入管・スリランカ人女性死亡問題に見える「外国人嫌悪」という日本の闇、入管でスリランカ人女性死亡の背景に「特高マインド」 70年前の法律の見直しを) PRESIDENT ONLINE 安田 菜津紀 「「手や足を引っ張り、まるで動物のように…」30代女性に名古屋入管職員が行っていた"許されざる行為" ビデオを見た遺族は言葉を失った」 「入管」施設といえども、入所者を保護する義務がある筈だが・・・。 「日本の「入管」」は、「以前から、国連の「拷問禁止委員会」などの条約機関からも度々勧告を受けてきている」、札付きのようだ。 「最終報告書」は「最終」とは程遠いものだ。 「代理人」「弁護士」にすら「ビデオ」の開示を拒否するとは、確かに「代理人の制度を、法務省自ら否定している」、由々しい問題だ。 「代理人」の制度を、法務省自ら否定している」、信じられないほど酷い話だ。 「国」としては、「管理」「責任」を果たすためにも、説得力ある説明が求められる。 裁判所の監視もなしに「苦痛」を与えるとすれば、特別公務員暴行陵虐罪に該当する可能性もあり、許される筈はない。 「アフガニスタンの難民申請者」への「個人情報を公開されるなど、法務省からの嫌がらせ」も、弁護士を通じ国の不法行為を訴えるべきだろう。 「独立した第三者調査の実施とビデオの開示」、は急務だ。野党もこの問題を積極的に取り上げるべきだろう。 ダイヤモンド・オンライン 小川たまか 「名古屋入管・スリランカ人女性死亡問題に見える「外国人嫌悪」という日本の闇」 第一の記事で明らかにならなかった事実はあるのだろうか。 第一の記事で明らかにならなかった事実もありそうだ。 「名古屋地検で捜査が進められている」、起訴しなければ、弁護士が訴えるまでだ。 「マスコミだけではなく、現在の入管の問題点の背景にもゼノフォビアがある」、その通りなのだろう。 「虚偽の情報がツイッターで拡散」、ネット右翼の仕業なのだろうあ。「DV加害者である(少なくともその疑いがある)同居男性が仮放免を許され、DV被害と体調不良を訴えていたウィシュマさんが仮放免を許されなかったのはなぜなのか」、確かに大きな疑問だ。 開示の「手数料は15万6760円」、殆ど「黒塗り」の割には高い気もするが、国家権力の嫌がらせなのだろう。 AERAdot 「入管でスリランカ人女性死亡の背景に「特高マインド」 70年前の法律の見直しを」 「体重は半年で20キロ近く減った」、深刻な体調だが、医者の診断はどうだったのだろう。 「特高のマインドが引き継がれている」、ありそうなことだ。 「日本も批准している自由権規約では『非拘禁』、つまり身体の自由が原則で収容は例外的だと定めています。日本では民主国家における行政機関として、あってはならないことが行われています」、法務省は国際的規制を遵守する気はさらさらないようだ。 「入管」を知り貫いた「木下」氏の提言は説得的で、大賛成である。
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就活(就職活動)(その8)(コロナで激変する就活「ホワイト企業」の新序列 1位 2位は外資系IT企業 日本企業は?、新卒市場をけん引したリクナビが一人負け 業界3位に停滞する理由、「日本の就活」が陥るガラパゴス化 グローバル人材確保を遠ざけている実態) [社会]

就活(就職活動)については、2019年4月19日に取上げた。今日は、(その8)(コロナで激変する就活「ホワイト企業」の新序列 1位 2位は外資系IT企業 日本企業は?、新卒市場をけん引したリクナビが一人負け 業界3位に停滞する理由、「日本の就活」が陥るガラパゴス化 グローバル人材確保を遠ざけている実態)である。

先ずは、本年3月26日付け東洋経済オンラインが掲載した元NHK記者で森友問題取材で辞任し、大阪日日新聞(新日本海新聞社)論説委員となった相澤 冬樹氏による「コロナで激変する就活「ホワイト企業」の新序列 1位、2位は外資系IT企業、日本企業は?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/418553
・『1位 グーグル 2位 Facebook Japan 3位 三菱商事 4位 三井物産 5位 サントリーホールディングス IT企業、商社、飲料メーカーが並ぶこのランキング。いったい何かと言うと、働く人にやさしく、就職活動をする学生にオススメしたい「ホワイト企業」と呼ばれる企業のトップ5である。 誰だって、長時間労働と低賃金で、働く人を“搾取”する「ブラック企業」より、残業が少なくても高収入で、働く人の生きがいを大切にする「ホワイト企業」に就職したいだろう。でも、その違いを普通の就活生が見抜くのはなかなか難しい。実際に働いてみないとわからないこともある。 そこでホワイト企業の調査・評価を行う「ホワイト企業総合研究所」は、現役社員のアンケートや転職者の口コミを、調査会社を使って集めている。同時に、残業時間、有給休暇取得率、給与や福利厚生、社員のスキルアップへの投資、財務指標といったデータを調べ、これらすべてを100点満点で数値化。全国約1万3000企業のランキング上位100社を毎年公開している。 前年は三菱地所がトップ 冒頭に紹介したのは、来年春卒業する学生に向け、ホワイト企業総合研究所が2月25日に発表した「2022年卒版 新卒で入りたい一流ホワイト企業ランキング」のトップ5だ。これを1年前のトップ5と比較すると興味深い。 1位 三菱地所 2位 グーグル 3位 三井物産 4位 三菱商事 5位 味の素 三菱地所は去年まで3年連続でトップだった。今年も8位だから上位ではあるがトップからは退き、代わりにネットで検索と言えば「ググる」と呼ばれる、グーグルがトップに。そして2位にやはりIT業界の雄、Facebook Japanがランク外から急上昇している。これはなぜなのか。 ホワイト企業総合研究所や就活塾「ホワイトアカデミー」を運営する、Avalon Consulting(アバロンコンサルティング)の代表、竹内健登さんは言う。 「新型コロナウイルスの影響です」 竹内さんによると、大手デベロッパーは都心に優良物件を多数抱え、賃貸で安定した収入が稼げる。高給で離職率も低いので人気の就職先だ。ところがコロナで在宅勤務が増えた。オフィス需要が減ってテナントの空室率が高まる傾向にある。 一方、企業のテレワークやオンライン会議などの増加、自宅でも巣ごもり状態が増えたことは、IT業界全体の順位を大きく押し上げた。トップ2社以外にも18社が上位100位にランクインしている。同様にコロナの影響としては、メーカー、広告業界、ホテル業界などが軒並み順位を下げている。 竹内さんは指摘する。 「これほど1つの要素でランキングが入れ替わることはめったにありません。コロナは就活にも大きな影響を与えています。でもランクが下がったと言ってもトップ100の中での話ですから、競争率の高い人気企業であることは変わりませんけどね」』、「コロナ」が「新卒で入りたい一流ホワイト企業ランキング」にも予想通り「大きな影響を与えている」ようだ。
・『総合商社が上位にランクインする理由  そういう中で三菱商事、三井物産など商社は変わらず上位にいる。伊藤忠商事(12位)、住友商事(21位)、双日(72位)、兼松(88位)もランクインしている。 「総合商社は海外で大きなビジネスをしたい人にオススメです。ビジネスパーソンとして長期的にマネジメントに関わっていくようなスキルが身につきますから、自分を成長させられる。そこがホワイト企業としての魅力ですね」 トップ100のリストでひときわ目立つのが、リクルート。31位にランクインしているのをはじめ、リクルートと名の付くグループ企業が計6社も上位100位に入っている。 「リクルートは社員や転職者へのアンケートで極めて評価が高いんですよ。社内での成長も、転職・独立もしやすいと。上司に独立を申し出たら『メシに困ったらうちの案件やっていいよ』と言われた人もいたそうです。独立教習所みたいな側面があるんですよね。 若いうちにどんどん辞めていくから、年配者があまりいない。会社にとっても、若くて人件費の安いうちにバリバリ働いて、給与が高くなる前に独立していくから、どちらにもメリットがあるんですよ」 筆者の周辺でも「元リク」と呼ばれるリクルート転職者は目立つ。いずれも事業を成功させ、元リク同士の結束も固い。確かに就職先として魅力だが、竹内さんによると「自分で考えて行動できる人しか採りませんから、就活は楽ではありませんよ」とのことだ。 さて、このようなホワイト企業に入ることができればいいのだが、こういう企業は当然、競争率が高い。ホワイトアカデミーは就活生への就活指導もしているが、その点、どのようにアドバイスするのだろう。 「それはずばり“隠れホワイト企業”を同時に狙わせるんです」 ここまで名前をあげたような企業は広く知られている。だから就活生が集まりやすく、競争率も高くなって、なかなか入れない。だが、トップ100にランクインしている企業でも、それほど一般の人に名前が知られていなくて、狙い目の会社があるのだという。 こういった“隠れホワイト企業”の内定を獲得しながら、本命の一流と呼ばれるホワイト企業にも挑戦していくのが、ホワイトアカデミー流の就活戦略なのだという。 例えば、62位にランクインしている井上特殊鋼という大阪の会社。私は大阪に住んでいるが知らなかったし、初めて目にする人も多いのではないか。この会社は特殊な鋼材を専門に扱う商社で、取引先はすべてメーカー。普通の消費者を相手に商売することはない。 こういう会社はBtoBと呼ばれる。BはBusiness。つまり企業が企業に商品(サービス含む)を提供するビジネスモデルだ。消費者(Consumer)を相手にするBtoCのように個々の消費者に対応する必要が比較的少なく、CMなどの広告宣伝費を大量に投下する必要がないため利益が出やすい。 加えて、大口の取引先に安定して商品を供給することができるので、勤務形態も急な変動が起こりにくく、残業なども発生しにくい。だから「ホワイト企業」の条件を満たすのだが、社名がそれほど知られていないから就活生にとって狙い目というわけだ。本社は大阪だが、東京をはじめ全国に支店や営業所を構えているため勤務地も幅広い』、「リクルート」出身者には、若い時から大きな仕事を任されてきたので、優秀な人間が多いようだが、次の記事では、最近の同社に対する評価は下がっているようだ。「井上特殊鋼」のような「BtoB」だが、「利益が出やすい」というのは間違いだ。競争は厳しく、「残業」も決して少なくはない。
・『大手企業のグループ会社も狙い目  このほかにも、ホワイト企業にランクインしている大手企業のグループ会社は狙い目とのこと。そこもランクインしている大手企業と同様にホワイト企業であることが多く、その割に大手よりは入りやすいからだという。 では、私が長年所属してきたマスコミ業界はどうだろう。竹内さんは苦笑しながら答えた。 「マスメディアは残業が多いですからね。どうしてもホワイト企業のランキングからは外れますね」 実際、今年のトップ100の中に入っているマスコミ企業は日本テレビ放送網(86位)だけ。コロナでスポンサーが減ったことも打撃だったようだ。 一方で、ネットメディアやネット広告の会社は伸びている。35位にはVOYAGE GROUPというネット広告の会社がランクインしている。これも今の時代のトレンドだろう。 ホワイト企業ランキングを眺めて感じるのは、就活は世の趨勢を反映するということ。採用する企業側も大きな変化が求められそうだ。次頁以降は、(2022年版 新卒で入りたい一流ホワイト企業ランキングの表(50位まで) (2022年版 新卒で入りたい一流ホワイト企業ランキングの表(51位-100位)』、「グループ会社」は、入り易いかも知れないが、親会社との格差を様々な場面で感じさせられ、決して居心地が良いとはいえないと思う。

次に、6月29日付け日経ビジネスオンラインが掲載した採用コンサルタント/採用アナリストの谷出 正直氏による「新卒市場をけん引したリクナビが一人負け、業界3位に停滞する理由」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00323/062500001/
・『新卒求人を取りやめた企業が出始めた2020年。企業や業界ごとに傾向変化があるが、一番の新卒市場の変化は新卒の雄「リクルート」が一人負けしてしまったことだろう。新卒採用の開拓者リクルートがなぜ一人負けしてしまったのか』、なぜだろう。
・『大手企業の求人変化を評価する  コロナ禍で「就職氷河期」がやってくるという論調のニュースや報道がメディアをにぎわせたが実態は異なる。リクルートワークス研究所が発表した「大卒求人倍率調査(2022年卒)」によると、大卒求人倍率は1.50倍(前年比マイナス0.03ポイント)だった。リーマン・ショック後や就職氷河期、超氷河期の変化と比較すると微減と言えるだろう。その内訳を見ると景況感の不透明さにより、中小・中堅企業で採用予定数が減少。飲食店・宿泊業、旅行・航空業界では採用予定数が減少した企業が多い。対して小売業や運輸業、情報通信業界などは通常よりも求人量を増やしている。 そんな求人規模の縮小の裏側で、新卒採用支援の代表企業であるリクルートが一人負け状態だ。新卒採用における主要就職サイト(リクナビ、マイナビ、キャリタス)について、22年卒向けサイトオープン時点(21年3月1日時点)での掲載企業数を確認するとリクナビ(リクルート)は1万830社。前年比で44%だ。マイナビ(マイナビ)2万4215社、キャリタス(ディスコ)は1万6330社と比較すると業界最大手だったリクルートは、もはや3番手だ。 追う立場だったマイナビは、ダブルスコアを付けてリクルートを突き放している。これまで3位だったキャリタスにまで負けている現状は、これまででは考えられなかった結果だ。 こうしたリクルートの惨状とも言える残念な状況は、コロナショックだけが要因ではない』、「就職サイトでの掲載企業数」が「44%」減少、順位も1位から3位に後退とはまさに「一人負け」だ。
・『なぜ新卒市場で活躍できなくなってしまったのか  要因は色々あるが、まず大きな問題としてあげられるのは、19年に問題発覚した「内定辞退予測問題」だ。「リクナビDMPフォロー」と呼ばれるサービスが過去の行動履歴を分析し、学生の内定辞退率を予測するというもの。会員学生の十分な同意を得ないまま個人情報を販売していた。本サービスは企業・学生・学校などから批判を受け、サービスを急きょ廃止した。 そうした問題提起を生んだサービスは企業や学生だけでなく学校からもNGを突きつけられた。そんな19年のトレンドは時間差で21年に影響が発生。新卒採用はインターンを含め数年単位で計画しサービス利用をするため、徐々に影響が表れ、21年に問題が大きく表れた形だ。予測にはなるが22年にも引き続き影響が続くことだろう。 また、リクルートからマイナビに切り替えた大手人事担当に話を聞くと、あくまで個人見解と前置きしたものの「リクルートは殿様商売。大手企業にはとにかく高いプランを全て売りつけようとする。マイナビは営業がしっかりしている。志望学生の属性に合わせた最適なプランを提示してきた」とのこと。 1位のマイナビは、この人事担当者の言うように営業力の高さについては評価されることも多い。過去には15~16年卒のタイミングでマイナビがリクルートを追い抜いている。17年にリクナビが再逆転してからの今回の大敗。リクルートが失ったブランドを取り戻すには困難な道が待ち受けている。 こうした不満があるのは大手企業だけではない。大規模求人サイトとなると知名度が高い企業ほどエントリーを集めることに優位になる。採用を行うのは大企業だけでなく、中堅・中小企業も実施している。採用数が1桁の中小企業では「学生から自社を見つけてもらうのは運頼み」「大手企業落ち人材の落ち穂拾い戦略」と嘆く人事担当もいるほどだ。そんな状況では就職サイトに掲載しておけば優秀な学生に出会えるという神話は崩壊してしまっている』、「内定辞退予測問題」は確かに悪質だ。影響は「時間差で21年に」「発生」したようだ。
・『2つの新卒業界の大きな変化  求人票を置き換えたビジネスモデルは変容しつつある。ひとつは8年ほど前から一般化してきたスカウト型サービスの台頭だ。「オファーボックス」や「iroots(アイルーツ)」、「dodaキャンパス」など企業側から学生へのアプローチを軸にしたサービスが増加。学生は登録をしておけば、企業のほうからアプローチしてくる。企業の側は、大量採用型から脱却しマッチする学生を一本釣りすることが可能だ。人事側の負担は増加するが、マッチする学生に直接アプローチができるので、面接回数の減少や離職率低下などが見込めるだろう。 もちろん、リクルートをはじめとする求人サイトもスカウト機能を追加している。だが、こうしたスカウト型は中小企業でも良い学生と平等に出会いが生まれるようになった点でコンセプトがそもそも大きく異なる。結果、中小企業から人気を博したスカウト型は今では大企業も参戦し、現在は右肩上がりで利用者数が増えている業界だ。 コロナショックによる大規模就活イベントや採用プロセスの変化も触れておこう。大規模ブースを構え企業ブランディングと共に、多くの学生(応募者)を集めて、エントリーシートや適性テスト、集団面接などで取捨選択する採用形式は陳腐化してしまった。現在は、総合サイトだけでなくSNSやオンラインセミナーも活用しながら学生に知ってもらい、出会っていかなれけばいけない。SNSを活用してもマスで求人数を集めることが難しくなった。その半面、正しいアプローチができれば優秀な学生を根こそぎ獲得できる。人事では効率化から戦略的な求人を行う時代への変化が起きている。 また企業のインターンシップやセミナーに何度も通わせ会社を知ってもらうことも難しくなった。最終面接以外はオンライン(ZOOMやTeams、Skypeなど)で実施する企業が増えてきた。地方学生の都市部就職や、都市部学生のUターン就職やIターン就職など新卒学生の地域流動性が増し、東京への一極集中から地方のチャンスが増加したと言えるだろう』、「最終面接以外はオンライン(ZOOMやTeams、Skypeなど)で実施する企業が増えてきた。地方学生の都市部就職や、都市部学生のUターン就職やIターン就職など新卒学生の地域流動性が増し、東京への一極集中から地方のチャンスが増加した」、地方企業にとってはやり易くなったようだ。
・『3番手となったリクルートの逆襲はどこに  そんなリクルートだが、新卒業界を作り上げていた先駆者であるからこそ事業撤退や縮小という選択肢はないだろう。多くの新卒向け求人サイトは、数年に一度システムリニューアルを行っている。そんな他社と比較するとリクルートはレガシーサービスに引っ張られ大きな変化を行ってこなかった。 だが現時点で、リクルートは挑戦者。大幅リニューアルや新規サービスの開発を行わない理由はない。今までは、大企業ニーズに寄っていたサービスツールであった。しかし、中小企業や学生目線に立ったサービスへリニューアルを実施していく可能性もある。 新卒採用とは企業の未来への投資である。強いて言えばこれからの日本への投資だ。好不況に限らず活躍する人材をしっかりと獲得できるかどうか、求人サービス各社のサービスにかかっている。多くの学生が効率的に、効果的に就職活動ができる仕組みが求められる今、これからの新たなトレンドをリクルートがまたつくれるのか。人材業界全体の活性化にも期待したいと思う』、「リクルート」が底力を発揮して巻き返すことが出来るかを見守りたい。

第三に、9月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの姫田小夏氏による「「日本の就活」が陥るガラパゴス化、グローバル人材確保を遠ざけている実態」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/282421
・『日本は「言葉だけがグローバル」  日本における“内定までの道のり”は、「インターンシップ→エントリー→説明会→面接」といった決まった流れが基本的にあるが、外国人留学生は「世界的に類を見ない活動」だと煙たがる。 討論会の参加者の一人は「この型にはまった流れが、採用側に『どういう学生が欲しいのか』を分からなくさせているのでは」と疑問を投げかけていた。 外国人留学生の間では「東京大学の外国人留学生でさえも就活の波に乗れずに失敗して、結局は祖国に帰って行った」という“伝説”もあるくらいだ。多くのグローバル人材はパターン化された日本式就活を「クリエイティビティーにつながるのか」と冷静な視点で見つめている。 日本企業のグローバル化は進んでいるのか、という本質的な問題に目を向ける人もいた。「『グローバル採用プログラム』を掲げる企業の説明会に行くと“言葉だけのグローバル化”であることにギャップを感じます」とする意見がそれだ。 「言葉だけのグローバル化」とは言い得て妙なり、である。都内の私大に通う中国人留学生H君もまた「名刺に印刷された会社名は英文表記、会社代表もXXCEO、説明会では英語の専門用語を好んで使いますが、日本の企業は外国人に対して、相変わらず偏見に満ちています」と嘆いていた』、「「言葉だけのグローバル化」とは言い得て妙なり」、である。
・『他国にはない「外国人採用」という言葉  なぜ外国人を採用するのか、原点に戻って考え直してほしい」という意見もある。登壇者からは「外国人を採用すればブランドイメージがアップすると思っているのかもしれない」という声すら出た。 採用段階から外国人留学生は別グループ扱いで、入社以降も別枠扱い…、それが多くの日本企業の現状だろうが、他の国ではそもそも「海外では国籍を分けた採用はない」という。討論会では「『グローバル採用』と言っている時点で、その企業はグローバルとは言えないのでは」といった厳しい意見もあった。 かつてインバウンドツーリズムが真っ盛りだった頃、多くの日本企業がグローバル人材を欲しがったが、採用者の間では不満も漏れていた。「私たちの仕事は通訳・翻訳業務にとどまり、肝心な仕事は任せてもらえず、常に日本人スタッフのサポート的な仕事ばかりでした」(大手小売業に就職した中国籍のGさん)といったコメントをよく耳にした。 日本の就職環境についての現実と矛盾を目の当たりにし、あるいはすでに日本を去った先輩からの就活談を聞かされるにつれ、日本企業への就職に対する積極性を失ってしまうグローバル人材は少なくない』、「日本企業への就職に対する積極性を失ってしまうグローバル人材は」、「少なくない」どころではなく、「多い」とした方は実態を示していると思う。
・『日本の就活システムのメリットもある  もっとも「海外での就職活動はもっと大変」という意見もある。 海外の外資企業への就職は、採用時期も不定期で、常に行きたい会社をウオッチしていなければならないからだ。英国の企業に就職した日本人のYさんは「日本の就職活動は、その時期が来ればどの会社も採用の門戸を一斉に開いてくれるという意味で、悪くはないシステムだと思います」と語る。 Yさんは、日本での就活を一通り経験したが、在学中は日頃から、関心のある企業へピンポイントでアプローチしていた。ギネスブックの発行元であるギネスワールドレコーズに憧れていたYさんは、同社社員から話を聞くことができるところまで駒を進めるが、結局「今のところ採用枠はない」と告げられるなど、独自の「売り込み作戦」は空振りが続いた。 しかし、この経験が「個性をアピールする人材を歓迎する」という欧州での職探しに結び付いたことは、思わぬ果報となった。 振り返れば、昭和の時代は国際化の黎明(れいめい)期ゆえ、グローバル企業は数えるほどしかなかった。就活も“手書きの履歴書”を人事担当者に送って連絡を待つというアナログなものだったが、その時代なりの良さもあった。その一つが、企業側の人を見極める嗅覚と人間味だった。「多少成績が悪くてもこの学生はいける」と直感し、“型にはまらない逸材”を掘り出し面倒を見て、業績に結び付けた企業も少なくなかった。 外国人留学生が投げかけるのは、今の就活スタイルは「採用側と求職側が互いに響き合うような出会いの場になっているのか」、という問いでもある。 2019(令和元)年度に大学(学部・院)を卒業または修了した留学生は3万0504人、そのうち、日本国内で就職した者は1万0490人〈参照:2019(令和元)年度外国人留学生進路状況・学位授与状況調査結果〉で、就職率は約34.4%にとどまる。国が目標とする5割にはなかなか届かない。 「日本の産業にイノベーションをもたらす」と期待される外国人留学生だが、企業が求めるのは“日本化したグローバル新卒”とも言えそうだ。外国人目線がとらえた矛盾の解消こそが、日本経済の再興に一歩前進をもたらすのかもしれない』、「日本の就活システムのメリットもある」、のも事実だ。「大学(学部・院)を卒業または修了した留学生」の「就職率は約34.4%にとどまる。国が目標とする5割にはなかなか届かない」、「企業が求めるのは“日本化したグローバル新卒”とも言えそうだ」、寂しい話で、これではいつまでたっても真の「グローバル」化はおぼつかないだろう。
タグ:(就職活動) 就活 (その8)(コロナで激変する就活「ホワイト企業」の新序列 1位 2位は外資系IT企業 日本企業は?、新卒市場をけん引したリクナビが一人負け 業界3位に停滞する理由、「日本の就活」が陥るガラパゴス化 グローバル人材確保を遠ざけている実態) 東洋経済オンライン 相澤 冬樹 「コロナで激変する就活「ホワイト企業」の新序列 1位、2位は外資系IT企業、日本企業は?」 「コロナ」が「新卒で入りたい一流ホワイト企業ランキング」にも予想通り「大きな影響を与えている」ようだ。 「リクルート」出身者には、若い時から大きな仕事を任されてきたので、優秀な人間が多いようだが、次の記事では、最近の同社に対する評価は下がっているようだ。「井上特殊鋼」のような「BtoB」だが、「利益が出やすい」というのは間違いだ。競争は厳しく、「残業」も決して少なくはない。 「グループ会社」は、入り易いかも知れないが、親会社との格差を様々な場面で感じさせられ、決して居心地が良いとはいえないと思う。 日経ビジネスオンライン 谷出 正直 「新卒市場をけん引したリクナビが一人負け、業界3位に停滞する理由」 「就職サイトでの掲載企業数」が「44%」減少、順位も1位から3位に後退とはまさに「一人負け」だ。 「内定辞退予測問題」は確かに悪質だ。影響は「時間差で21年に」「発生」したようだ。 「最終面接以外はオンライン(ZOOMやTeams、Skypeなど)で実施する企業が増えてきた。地方学生の都市部就職や、都市部学生のUターン就職やIターン就職など新卒学生の地域流動性が増し、東京への一極集中から地方のチャンスが増加した」、地方企業にとってはやり易くなったようだ。 「リクルート」が底力を発揮して巻き返すことが出来るかを見守りたい。 ダイヤモンド・オンライン 姫田小夏 「「日本の就活」が陥るガラパゴス化、グローバル人材確保を遠ざけている実態」 「「言葉だけのグローバル化」とは言い得て妙なり」、である。 「日本企業への就職に対する積極性を失ってしまうグローバル人材は」、「少なくない」どころではなく、「多い」とした方は実態を示していると思う。 「日本の就活システムのメリットもある」、のも事実だ。「大学(学部・院)を卒業または修了した留学生」の「就職率は約34.4%にとどまる。国が目標とする5割にはなかなか届かない」、「企業が求めるのは“日本化したグローバル新卒”とも言えそうだ」、寂しい話で、これではいつまでたっても真の「グローバル」化はおぼつかないだろう。
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