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パンデミック(経済社会的視点)(その19)(コロナ死者を追悼もしない日本に漂う強烈な不信 私たちはなぶり殺し同然にされるのを恐れている、なぜPCR検査数は増えないのか? 背景に「衛生の歴史」と「官僚の利権意識」、ワクチンじゃない?謎のコロナ急減解く3つの鍵 ロックダウンなど強い行動制限なしでも急減した) [パンデミック]

パンデミックについては、(医学的視点)を昨日取上げ、(経済社会的視点)は8月30日に取上げた。今日は、(その19)(コロナ死者を追悼もしない日本に漂う強烈な不信 私たちはなぶり殺し同然にされるのを恐れている、なぜPCR検査数は増えないのか? 背景に「衛生の歴史」と「官僚の利権意識」、ワクチンじゃない?謎のコロナ急減解く3つの鍵 ロックダウンなど強い行動制限なしでも急減した)である。第一の記事は、政府のコロナ対策に対する批判のなかでも、私がこれまで読んだなかでも最大限に手厳しいもので、必読である。

先ずは、9月5日付け東洋経済オンラインが掲載した評論家・著述家の真鍋 厚氏による「コロナ死者を追悼もしない日本に漂う強烈な不信 私たちはなぶり殺し同然にされるのを恐れている」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/452729
・『新型コロナウイルスに感染し、肺炎を起こして入院した女優・綾瀬はるかさんに対して、ネット上では「上級国民だから優先的に入院できた」といった批判が沸き起こった。中等症だから入院できるのは当然との反論もあったが、ご承知の通り東京都内では、中等症で救急車を呼んでも入院先が見つからず、自宅療養を余儀なくされるケースが相次いでおり、最悪の場合そのまま死亡してしまうことも珍しくない。つまり、医療提供体制がまともに機能していないのである。 もちろん上級国民は幻想だ。しかしそのような特権階級がいるかのように思わせる社会的な不公平性がすでに顕在化しているからこそ、「たまたま入院できた」という出来事の真相を解き明かす上級国民というパワーワードが一定のリアリティを持ってしまうのである』、「中等症で救急車を呼んでも入院先が見つからず、自宅療養を余儀なくされるケースが相次いでおり、最悪の場合そのまま死亡してしまうことも珍しくない。つまり、医療提供体制がまともに機能していないのである」、「そのような特権階級がいるかのように思わせる社会的な不公平性がすでに顕在化しているからこそ、「たまたま入院できた」という出来事の真相を解き明かす上級国民というパワーワードが一定のリアリティを持ってしまうのである」、コロナ対策の欠陥を突いた手厳しい批判である。
・『人命軽視としか評しようのない政府のコロナ対策  それらの疑心暗鬼を作り出す心理的な背景となっているのは、現在進行している人命軽視としか評しようのない政府のコロナ対策だ。自宅療養、自宅待機という名の医療提供の放棄が横行し、事実上の無政府状態が出現していることへの国民の不安といら立ちが、デルタ株の感染爆発という新しい段階において急速に膨れ上がっている。菅義偉首相は9月3日に辞任を表明したが、それだけで事態が好転するワケではない。 第5波の真っただ中にある東京では、病床の逼迫が深刻化し、自宅療養中の死亡が続出している。入院患者は4000人を超え、自宅療養者はおよそ2万人に上っている(9月1日現在)。 東京都の新型コロナウイルス感染症モニタリング会議における「医療提供体制は深刻な機能不全に陥って」「救える命が救えない事態となる」「自分の身はまず自分で守ることが必要である」という言葉には、「生物としての人間」を維持するために不可欠なロジスティクス(兵站)を軽んじた代償を現場の指揮官や兵士、軍属や民間人に押し付けた戦時中の無責任体制を髣髴(ほうふつ)とさせるものがある。 これはかつて第2次世界大戦で従軍し戦後評論家として活躍した山本七平が語っていたことで、セクショナリズムが国益を食い潰す文化が絡んでいる。しかも今回は、感染爆発に備えるだけの十分な時間があり、人員や病床の確保や、地域医療を含めた支援体制の構築等々オールジャパンで取り組める素地がないわけではなかった。けれども、為政者はパン(=GoToキャンペーン)とサーカス(=東京五輪)ばかりに貴重な資源を費やし、せっかくのチャンスを台無しにした。 元厚生労働省医系技官で医師の木村盛世氏は、既存の病床をICUとして使用できるといった法整備、人工呼吸器を扱える医師やスタッフをかき集めるのに十分な時間があったはずなのに、厚労省も日本医師会もこのような取り組みをいっさいしてこなかったと批判。「その結果として、欧米に比して極めて少ない感染者数と死亡者数でいとも簡単に医療が逼迫してしまった」と述べ、「現在の医療の逼迫は、実際には新型コロナウイルスの登場から1年以上がたったにもかかわらず、重症化対応に関して、なんの努力もしなかった厚労省と日本医師会の責任」と強調した(『新型コロナ、本当のところどれだけ問題なのか』飛鳥新社)。 さらに付け加えれば、いまだに重症化を防ぐための早期診断、早期治療を施す基本的な診療体制すら構築されていない。まさにコロナ戦争において戦時医療体制の構築を怠り、「救える命が救えない事態」を作り出してしまったのは、大戦中と同じく政治決定における重大な過ちに基づくものと言わざるをえない』、「自宅療養、自宅待機という名の医療提供の放棄が横行し、事実上の無政府状態が出現していることへの国民の不安といら立ち」、「「医療提供体制は深刻な機能不全に陥って」・・・という言葉には、「生物としての人間」を維持するために不可欠なロジスティクス(兵站)を軽んじた代償を現場の指揮官や兵士、軍属や民間人に押し付けた戦時中の無責任体制を髣髴(ほうふつ)とさせるものがある」、「感染爆発に備えるだけの十分な時間があり、人員や病床の確保や、地域医療を含めた支援体制の構築等々オールジャパンで取り組める素地がないわけではなかった。けれども、為政者はパン・・・とサーカス・・・ばかりに貴重な資源を費やし、せっかくのチャンスを台無しにした」、「既存の病床をICUとして使用できるといった法整備、人工呼吸器を扱える医師やスタッフをかき集めるのに十分な時間があったはずなのに、厚労省も日本医師会もこのような取り組みをいっさいしてこなかったと批判。「その結果として、欧米に比して極めて少ない感染者数と死亡者数でいとも簡単に医療が逼迫してしまった」と述べ、「現在の医療の逼迫は、実際には新型コロナウイルスの登場から1年以上がたったにもかかわらず、重症化対応に関して、なんの努力もしなかった厚労省と日本医師会の責任」と強調」、ここまで手厳しい批判は初めて読んだ。
・『権力や権益のほうが重要で国民の生命は二の次に  政治決定において自らの権力の延命や自組織の権益の保全のほうが重要な場合、国民の生命や財産を守ることは二の次となる。コロナ禍でどれだけ犠牲者が生じても関心には上らなくなる。死者や遺族に対する認識にそれが如実に表れている。 ドイツ政府は今年4月、新型コロナウイルス感染症によって亡くなった8万人近い死者を追悼する式典を執り行なった。フランクワルター・シュタインマイヤー大統領は、「あらゆる数字の裏に人の運命があり、人々の存在があるということを、われわれ社会が自覚できていないような印象がある」と述べ、コロナ禍の孤独の中で亡くなった人々に思いをはせるよう訴えた(ドイツ政府、式典でコロナ死者追悼 国民に団結求める/2021年4月19日/AFP)。 同様の死者追悼は、イギリスではロックダウンのちょうど1年後に当たる今年3月に、アメリカでは同2月に実施している。犠牲者数が多いからという見方もできるが、中国では昨年4月に先祖の墓参りの時期に死者追悼を執り行っている。 日本でこのような国民の心情に配慮した死者追悼を寡聞にして知らない。ここにこそ為政者のメッセージが刻印されているといえる。つまり、たとえ「人災」の側面があったとしても、悪いのは人流を抑制できない国民であり、協力的でない民間の医療機関であり、犠牲者のことなどどうでもいいのである。 わたしたちは、かなり前からこのことに気付いていたはずだ。経済学者のジャック・アタリが言っていたように、「指導者は、自分たちを守るためになすべきことをしかるべき時期に実行しなかったのではないか」という疑念はすぐに確信に変わったのではないだろうか(『命の経済パンデミック後、新しい世界が始まる』林昌宏・坪子理美訳、プレジデント社)』、国家による「死者追悼」が「日本」で行われないのは、「悪いのは人流を抑制できない国民であり、協力的でない民間の医療機関であり、犠牲者のことなどどうでもいいのである」、「日本政府」は「自分たちを守るためになすべきことをしかるべき時期に実行しなかった」のは確かだ。
・『シワ寄せを受けるのは社会的に不利な立場の人々  これら一連のコロナ対策のシワ寄せを受けるのは、とりわけ感染しやすい就業環境で働いていたり、重症化の因子となる基礎疾患を持っていたり、いまだワクチン接種を受けられなかったり、さまざまな理由によって社会的に不利な立場にいる人々である。 そこで、いっそのこと日本が崩壊してしまえば、そこから新しい世界が立ち上がるなどといった願望とも予言ともつかない観測にすがる傾向が出てくるが、これはあまりにもおめでたい希望的観測だろう。個人化した快適な生活というバブルに閉じてしまったわたしたちは、真に何が重要な事柄なのかを見定める以前に、自分の運のよさを日々のニュースを一瞥することで確かめ、同情と憂いのため息をついてみせるのが関の山であり、具体的なアクションを起こすには至らないからだ。 そういう意味において東京五輪で注目された「バブル方式」という概念は、すでに人々の間に定着していた、数多の階層や、健康状態、情報環境などによって囲い込まれ、泡(バブル)の膜で外部を遮断する処世を、目に見えるグロテスクな形で再現した模倣にすぎなかったといえる。 要するに、その真意とは、どれだけ社会が悪化しようともバブルの中にいる人々は痛くもかゆくもなく、パニック映画のようなわかりやすい破局はついに訪れず、統計的に犠牲者だけが緩慢なペースで増えてはいくものの、それは別のバブルで発生した避けられない悲劇のように受容され、総体として社会は問題なく継続していく極めて不愉快なものなのである。 哲学者のスラヴォイ・ジジェクは、現在のような事態は、これまでハリウッド映画が描いてきたいずれのディストピアとも異なると主張し、「COVID?19パンデミックに関する真に奇妙な点」は「その〝非終末的な〟性質」であり、「世界の完全な破滅という通常の意味での終末でもなく、ましてや、これまで隠されていた真実の暴露という本来の意味での終末もない」と注意を促した。 そう、我々の世界はバラバラに崩れようとしているが、この崩壊のプロセスはダラダラと続いて終わりが見えないのだ。感染者と死亡者の数字が増えているときにも、メディアはピークがいつ来るかの憶測ばかり。すでに今がピークじゃないかとか、あと一、二週間はどうかとか。皆がパンデミックのピークが来るのを見守り心待ちにしていて、まるでその後は徐々に平常を取り戻せるかのように思っている。が、危機はいつまでも続くのだ。おそらく、たとえCOVID?19のワクチンが開発されたとしても、今後も感染発生や環境変動に脅かされ続ける〝ヴァイラルワールド〟から逃れられないーーということを受け入れる勇気を持つべきだろう。(『パンデミック2COVID-19と失われた時』岡崎龍監修、中林敦子訳、Pヴァイン)。 決定的な終末はやって来ない。「感染爆発による日本の崩壊」もありえない。崩壊するのは個々の現場の医療、個々の現場の家族であり、ずさんな支援体制の下、最前線で職務に当たっている医師や看護師、保健所の職員などが疲弊し、健康リスクの高い人々とその家族が重症化と死の恐怖に怯え、改善できたはずの構造的欠陥の犠牲者としてカウントされていくのである。このような終わりなき悪夢がいつまでも繰り返され、わたしたちは自分の身に降り掛かってから初めて、その悪夢の実相に触れて驚愕することになるのだろう』、「危機はいつまでも続くのだ。おそらく、たとえCOVID?19のワクチンが開発されたとしても、今後も感染発生や環境変動に脅かされ続ける〝ヴァイラル(注)ワールド〟から逃れられないーーということを受け入れる勇気を持つべきだろう」、不吉な予告だ。
(注)ヴァイラル:「情報が口コミで徐々に拡散していく」さま(IT用語辞典)
・『全力で異議を唱えなければ危機の片棒を担ぐのと同じ  私たちが本当に恐れているのは、コロナという新興感染症がもたらす災厄ではない。世界的な危機において、欧米諸国に比べて相当恵まれた状況にありながら、信じられないほど無能で、想像を上回るほど役立たずで、国民の命を屁とも思わないように見える国家、恥知らずな為政者の不作為によって、結果的に通常の医療さえ受けられず、なぶり殺し同然になることを心底恐れているのである。 これに全力で異義を唱えないことは、コロナ禍以後に起こりうる次なる危機においても、まったく同じ目詰まりによって危機が助長され、より熾烈化する〝ヴァイラルワールド〟の片棒を担ぐことに等しい。 わたしたちは進んでバブルの外に出なければならない』、「欧米諸国に比べて相当恵まれた状況にありながら、信じられないほど無能で、想像を上回るほど役立たずで、国民の命を屁とも思わないように見える国家、恥知らずな為政者の不作為によって、結果的に通常の医療さえ受けられず、なぶり殺し同然になることを心底恐れているのである。 これに全力で異義を唱えないことは、コロナ禍以後に起こりうる次なる危機においても、まったく同じ目詰まりによって危機が助長され、より熾烈化する〝ヴァイラルワールド〟の片棒を担ぐことに等しい。 わたしたちは進んでバブルの外に出なければならない』、全く同感である。

次に、昨年8月11日付けAERAdot「なぜPCR検査数は増えないのか? 背景に「衛生の歴史」と「官僚の利権意識」」を紹介しよう。昨年の記事でやや古いが参考になるので取上げた次第。
https://dot.asahi.com/aera/2020081700036.html?page=1
・『感染が不安だ。だが希望してもPCR検査を受けられない。そんな状況が今も続く。背景には戦前か続く「医療」と「衛生」の分断や、官僚の利権意識がある。AERA 2020年8月24日号で掲載された記事から。 「自治体の現場を知る者として申し上げたいのは、(PCR検査は)絶対に増えない構造になっています」 8月4日に日本記者クラブで記者会見した東京都世田谷区の保坂展人区長は、新型コロナウイルスのPCR検査の拡充の難しさについてこう述べた。 同区の人口は都内最大の約92万人。7月末までに約1千人の区民が感染した。最近では家庭内、職場内での感染も広がっているという。保坂区長は、検査の拡充が難しいとは認めつつ、それでも拡充しなければいけないという考えだ。 「これだけ市中感染が広がると、PCR検査のハードルをぐっと低くする、もしくはなくしていく(ことが必要だ)。ニューヨークでやっているような『いつでも、どこでも、何度でも』ということを最終的に目指していく」 同区では、東京大学の児玉龍彦名誉教授の提案を元に、検査数の桁違いの拡充や医療や介護の現場で働く人たちへの検査体制の確立に向けて動き出した。「うまくいった例を参考にして、ということになると、PCR検査を制限するという話にはならない」(保坂区長) 安倍晋三首相が4月に1日2万件を目指すと表明した国内のPCR検査数は、7月30日現在で1日あたりの能力で3万5664件。感染が急激に広がっているさなかの7月19~30日の12日間の実際の検査数をみると、6712~2万2302件。2万件を超えたのは2日しかなく、1万件を切った日は3日ある。安定的に目標を達成している状況ではない。 ウェブサイト「worldometer」では5日現在、人口比の検査人数で、日本は世界215の国と地域の中で155位だ』、最新の「人口比の検査人数」は、下記のように100万人当たり210千件、ランキングは分からぬが、低水準であることは確かだ。
https://www.worldometers.info/coronavirus/
・『医師で、医療ガバナンス研究所(東京)の上昌広理事長は、検査が増えない理由について、日本の公衆衛生が成り立ちの経緯から医療の現場と“距離感”があることを指摘する。 「国内の感染症対策は、感染研(国立感染症研究所)と保健所が感染者を隔離してその周囲の人たちを検査するという仕組みになっています。これは、戦前は衛生警察と言われる警察の業務だった経緯もあり、現在の医療システムとは切り離されているとも言えます。感染研や保健所にはキャパシティーがないため、大量の検査をこなすことはそもそもできません」 英キングス・カレッジ・ロンドンの渋谷健司教授(公衆衛生学)もこんな指摘をする。 「一つはPCR検査を行政検査という枠にはめたことです。外国ならいわゆる上気道感染の識別診断という形で通常の医療の中で行われますが、日本は感染症法に基づく行政検査にすることで、医師の判断で通常の検査ができませんでした」 厚生労働省の組織と利権の問題だと指摘する声もある。厚労相時代に新型インフルエンザの流行を経験した舛添要一氏は、安倍首相が目指したほど検査数が十分に増えていないことについて、「加藤(勝信)厚労相に直言できるブレーンがいないのでは」との見方を示す。 「民主党から自民党に政権が戻ったとき、厚労省でも能力のある人たちが『お前ら民主党に協力したな』とずいぶんパージされました。長期政権になって、大臣にモノが言える役人がいなくなったようです」(舛添氏) しかし、そもそも「増やせ」という総理の意向があるのに、なぜ大臣に言えないのか。 「今は状況が違います。コロナ対応の失敗が続く中で『安倍は終わり』と思っている官僚は多い。検査を大幅に増やすということは、感染研の情報独占体制を脅かしかねないので、厚労省の官僚たちは、安倍首相を守るより、自分たちの利権を守るべきだと考えたはずです」(舛添氏) 前出の上理事長も、少ない検査数に対する国民の批判と“公衆衛生ムラ”の情報独占のバランスを取る苦肉の策としてできたのが、民間医療機関への検査の業務委託だとみる。 ここまでの3氏はいずれもPCR検査の拡充を訴えているが、別の考え方もある』、「感染研・・・と保健所が感染者を隔離してその周囲の人たちを検査するという仕組みになっています。これは、戦前は衛生警察と言われる警察の業務だった経緯もあり、現在の医療システムとは切り離されている」、「PCR検査を行政検査という枠にはめたことです。外国ならいわゆる上気道感染の識別診断という形で通常の医療の中で行われますが、日本は感染症法に基づく行政検査にすることで、医師の判断で通常の検査ができませんでした」、「少ない検査数に対する国民の批判と“公衆衛生ムラ”の情報独占のバランスを取る苦肉の策としてできたのが、民間医療機関への検査の業務委託」、なるほど、歴史的経緯もあるようだが、政府が増やせと命じたのに、さほど増えないのは官僚のサボタージュだろう。
・『2009年の新型インフルエンザ流行時、厚労相だった舛添氏の私的アドバイザーを務めた山形大医学部附属病院検査部の森兼啓太部長はこう話す。 「当初は東京都など検査のキャパシティーが明らかに足りないところがあり、準備不足という点で確かに問題はありました。ただ、今は民間も含めて随分キャパシティーは大きくなっています。『山ほど増やせ』という意見もありますが、現状で適正な規模だと考えられますし、そもそもロジスティクス(工程)的に難しいのではないでしょうか」 厚労省結核感染症課の医系技官、加藤拓馬さんも、そもそも感染者数が違うので外国との比較をしたうえで「増やせ」という議論には意味がないという考えだ。「感染予防の観点から必要な検査だけをやればよいのです」と話す』、厚労省やその息のかかった専門家は厚労省の肩を持つのは当然だが、その意見は割り引いてみる必要がある。

第三に、10月27日付け東洋経済オンラインが掲載した東京大学大学院経済学研究科 准教授 の仲田 泰祐氏による「ワクチンじゃない?謎のコロナ急減解く3つの鍵 ロックダウンなど強い行動制限なしでも急減した」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/464336
・『東京都では7月後半から新型コロナウイルスの感染が急拡大した。8月前半には多くの人々が、人流を大幅に削減しなければ感染は減少しないと主張した。ロックダウンを求める声もあった。 現実には8月中旬から多くの人流データは増加に転じた、もしくは下げ止まったにもかかわらず、感染は急速に減少した。東京都での1日新規感染者数(7日間平均)は8月19日には4774人であったが、その1カ月後の9月19日には815人、2カ月後の10月19日には52人である。この記事を書いている現在もまだ減少は続いている。 この急速な感染減少の要因に関してさまざまな推測・仮説が提示されているが、それらの定量的重要性を探った分析はあまり提示されていない。今後さまざまな分析が提示されてくると推測するが、現時点では、10月19日に発表された名古屋工業大学の平田研究室(平田晃正教授)の分析「7〜9月における新規陽性者数の増加と減少について」とわれわれが今回公表した分析の2つである。 この論考では、われわれのレポートの要旨を読者の皆様にお届けしたい(別府その他〈2021〉「東京での感染減少の要因:定量分析」』、大きな謎を解き明かしてくれそうで、興味深そうだ。
・『ワクチンだけが感染急減の要因にならない  重要ポイントは、以下の4つである。 1.ワクチン接種は7月後半から感染を抑制させる大きな力を継続的に働かせているが、それだけでは8月後半からの感染減少のタイミングと急速さは説明しにくい。 2. 基本再生産数の過大評価・医療逼迫に伴う人々のリスク回避行動・120日周期の存在は、その1つひとつが感染減少の多くを説明することが可能である(だからと言ってこれらが正しい仮説とは必ずしも言えないことには留意)。 3. 仮説によっては、今後の見通しは大きく改善する。 4. どの仮説が正しいかにかかわらず、「追加的な人流抑制をしなくても感染が急速に減少することもある」ことが判明したことは、今後の政策に大きな含意がある。 この分析の出発点は「感染減少が始まる直前の8月中旬に人流データを重要視していたら提示したであろう仮想の感染見通し」である。過去のデータから推定されたわれわれのモデルの接触率パラメーターと人流データにはある程度の相関関係がある。) 人流データの8月後半以降の実現値を仮に当時知っていて、過去の人流と感染の相関関係を利用していたら提示していた仮想の見通しが図1の青い線である。 この見通しによると、8月後半以降も感染拡大が続き10月第1週には1日新規感染者数約7000人となっている。この仮想見通しは、後ほど言及する当時の藤井仲田チームが提示していたものとは違うことは留意していただきたい。 (「図1:8月中旬の仮想基本見通し」はリンク先参照) (外部配信先では図を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください) この仮想見通しをベースとして「感染減少要因として挙げられている要素を考慮していたら見通しはどのくらい減少したであろうか?」というシミュレーションをすることで、それぞれの要因の定量的重要性を探っていく』、なるほど。
・『ワクチン接種が遅くても感染減少は起こっていた  1つひとつの要因を眺める前に強調しておきたいポイントは、上記の仮想見通しはその後に観察されたワクチン接種率向上を考慮していることである。ワクチン接種率向上をきちんと考慮してもここで提示した見通しは感染減少を予見できていない。程度の違いはあれ、この特徴は8月中旬に提示されていたさまざまな研究チームによる見通しに共通している。 (「図2:ワクチンの感染拡大抑制効果」はリンク先参照) ワクチン接種率向上が8月後半からの急速な感染減少の説明としては成り立ちにくいことは、ワクチン接種がこれまで感染抑制に貢献していないということではない。図2では、仮にワクチン接種ペースが遅かった場合の感染の推移を計算しているが、7月後半からワクチンが感染拡大を大きく抑制してきたことが読み取れる。それと同時に、感染推移の輪郭はワクチン接種の有無には強く影響されないことも読み取れる。 ワクチン接種ペースはこれまで連続的に推移しているので、ワクチン接種の影響だけで感染がある時期に急速に増減することは起こりにくい。8月後半からの感染減少のタイミングと急速さを説明するためには、ワクチン以外の要因も必要そうだと言える。 ワクチン接種が8月後半からの急速な感染減少を説明しにくいのであれば、どのような要素が説明できるのであろうか?』、「ワクチン接種の影響だけで感染がある時期に急速に増減することは起こりにくい」、確かにその通りだが、では要因は何なのだろう。
・『感染減少に貢献したかもしれない3つの要素  ここでは3つの要素を定量分析する。紙面の都合上、感染減少に大きな貢献をしたとは言えなさそうないくつかの仮説には触れることはできないが、そちらにも興味のある方々は元のレポートをご覧になっていただきたい。また、資源的・時間的制約から、世の中に提示されている興味深い仮説をすべて定量化することはできなかったことは理解していただきたい。 1.当時の想定よりも低いデルタ株の感染力(われわれは、7月最終週の感染急拡大を観察した直後に「デルタ株の感染力は想定以上に高い」と判断し、デルタ株のアルファ株に対する相対的感染力の設定を1.3倍から1.5倍に変更した。 しかしながら、デルタ株割合が増加し始めた6月下旬からの実効再生産数の推移を見てみると、7月最終週に大きな値を記録した以外はそれほど高くないレベルで推移している。7月最終週の値を、デルタ株の感染力の高さのシグナルとして捉えるのではなくほかの特別要因によるものとして捉えたほうがよかったのかもしれない。 8月中旬にデルタ株の感染力をアルファ株の1.5倍ではなく例えば1.2倍と評価していたら、感染見通しは10月第1週で約3500人減少する(図3の水色の線)。 (「図3:想定よりも低い基本再生産数」はリンク先参照) この仮説はより広く、標準的なモデルに考慮されていない集団免疫獲得の閾値を下げるさまざまな要素の定量的重要性を捉えていると解釈してもいい。そういった要素の例としては、個人間での免疫力の異質性・細分化されたコミュニティーの存在等などがある。 どんなに複雑なモデルも現実を単純化しており、単純化のされ方によって集団免疫獲得の閾値を過大評価してしまう可能性がある。運用しているモデルを変更せずにそういった影響を修正する1つの方法は、基本再生産数を低く設定することである。もし、モデルと現実の乖離が理由で基本再生産数が想定よりも低いと判断するのならば、図3の水色の線で示した以上に低い基本再生産数設定も正当化しうる。 この仮説が正しいとすると、今後の見通しは改善する。低い基本再生産数は、集団免疫獲得までに必要な感染者数を減少させるからだ。 2.医療逼迫による人々のリスク回避(われわれが分析を始めた昨年から重視している感染増減メカニズムの1つが「医療逼迫による人々のリスク回避・個人レベルでの感染症対策の徹底」である。このメカニズムはさまざまな研究者がコロナ危機発生直後から重要視しており、それをサポートする実証研究も存在する。 肌感覚としてこの仮説に納得感を持つ人も少なくないと考える。個人的な話で恐縮だが、8月前半に東京都で深刻な医療逼迫を理由に外出も控えた人々はわれわれの周りに少なからずいる。SNSで同様の行動変容をした人々を探せばいくらでも見つかる。もちろんまったく医療逼迫に動揺しなかった人々もたくさんいると推測するが、このような行動変容をした人々が一定数いた可能性がまったくなかったとは断言しにくい。) 既存のデータだけではわからないことも多い中では、こういった事例証拠(Anecdotal Evidence)も積極活用するのが自然である。中央銀行は、データだけからは経済・金融の全体像がつかめないこともあることを長年の経験で理解しているので、事例証拠を政策判断の一部として積極的に活用している。もちろん事例証拠に頼りすぎたり、自分と似たような価値観の人々だけと意見交換をしたりしていると、判断を誤るので要注意であるが』、「深刻な医療逼迫を理由に外出も控えた人々はわれわれの周りに少なからずいる・・・このような行動変容をした人々が一定数いた可能性」、「既存のデータだけではわからないことも多い中では、こういった事例証拠・・・も積極活用するのが自然」、その通りだろう。
・『追加的な人流抑制なしでも感染は急減する  このメカニズムを根拠に、われわれは7月後半・8月前半には「自主的な行動変容による感染拡大抑制シナリオ」というものを提示していた。このシナリオでの見通しは定量的には現実との乖離もあるが、「追加的な人流抑制なしでも感染は急速に減少する」というパターンを大体捉えている。 図4では、この仮説の定量的重要性を捉えるために、過去の接触率パラメーターと新規感染者数、重症病床使用率の過去の相関関係を取り入れていたら、仮想見通しはどのように変化したかを示している。過去のデータによると、新規感染者数・重症病床使用率の増加はその後の実効再生産数の減少を予測する力がある。 結果としては、図に示されているように、この仮説は8月後半からの感染者減少をある程度説明することが可能である。 (「図4:医療逼迫によるリスク回避」はリンク先参照) この仮説の弱点は、新規感染者数が減少して重症病床使用率が下がった10月以降でも、感染減少が続いていることを説明しにくいことである。われわれは、この仮説は8月後半・9月前半の感染減少にある一定の貢献をしたが、それ以降の感染減少の説明には他の要因が必要であると判断している。 3.自然の周期(ウイルスの流行・変異には自然の周期というものがあり人間の行動とは関係なしに増加したり減少したりするという主張も聞かれる。季節性インフルエンザが人流抑制とはまったく関係なしに毎年冬に訪れることを考えると、ウイルス学を専門としないわれわれには十分に検討に値する仮説に思える。 (「図5:120日周期」はリンク先参照) 実際に、図5に示されているように、120日のサイクルと過去の接触率パラメーターとの相関関係を考慮した見通しを立てていたら、8月後半以降の感染減少をある程度捉えることができる。この仮説が正しいならば、感染症対策と社会経済活動の両立という視点からの最適な政策というものは根本的に見直す必要があるかもしれない。 この要素の今後の見通しへの影響は、周期がなぜ生まれるかに依存する。冬に拡大・4カ月後にアルファ株が蔓延・その4カ月後にデルタ株が蔓延したことで外生的に120日周期が発生してきたとする。そうすると、冬にまた拡大すると考えることもできれば、デルタ株よりも強い変異株が出てこない限り、拡大はもう起こらないと考えることもできる。もしこのような周期が上記したような人々の自主的なリスク回避行動によって内生的に発生するのであれば、それは再度波が来る可能性を示唆する』、「このような周期が上記したような人々の自主的なリスク回避行動によって内生的に発生するのであれば、それは再度波が来る可能性を示唆する」、要警戒だ。
・『急速な感染減少の政策含意  今回のレポートでは、急速な感染減少に関するいくつかの仮説の定量的重要性を分析した。こういった分析の結果は分析手法によって大きく変わる。したがって、われわれの分析結果を真実として受け止めるのではなく、今後出てくるであろう数ある分析結果の1つとして受け止めていただきたい。また、われわれもこの分析を最終地点として位置付けているわけではなく、今後も分析を続ける。分析でわかりにくい点・物足りない点等があれば、気軽に連絡していただけるとありがたい。 分析によって上記した3つの仮説が有力に見えてきたが、これら3つの仮説のすべてがある程度正しいのか、1つが正しくてほかの2つはまったく間違っているのか、等はまったくわからない。しかしながら、どの要素がどのくらい感染減少に貢献したかにかかわらず今回の感染減少からはっきりとしたことがある。それは「ロックダウン等の強い追加的行動制限なしでも感染は急速に減少することがある」という事実である。 この事実は、今後感染症対策と社会経済の両立を考えていくうえで示唆がある。もし周期性や医療逼迫によるリスク回避説にある程度の正当性があるのならば、感染拡大時において休校・時短要請・イベントでの人数制限等の追加的な人流削減政策を打たなくても、感染はある時点で減少に向かうと考えられる。政府は人々に正しい情報を提供することに徹することが重要であると言えるかもしれない。 上記の事実は、行動制限政策が無力であることを必ずしも意味しない。柔軟性があるとは言いがたい医療体制、保健所や一部のコロナ患者受け入れ病院の疲労、高齢者の重症化率や致死率の高さ等を考慮すると、行動制限政策が効果的な局面もあるかもしれない。 だが、そういった政策は社会・経済・文化・教育へ多大な負の影響をもたらす。飲食・宿泊業に従事されている方々をはじめ、これまで多くの方々がさまざまな生活の犠牲を払ってきた。自殺者もコロナ禍で若い世代を中心に増加しており、子ども達への発育・教育への長期的な負の影響も懸念されている。 今回の経験を記憶に刻み、「感染のリスク評価」と「感染症対策のリスク評価」の両方に配慮しながら意見形成・政策判断をしていただけたらと願う』、分科会メンバーに統計学の専門家が加わって、「行動制限政策」がどこまで有効だったのか、検証がさらに進み、科学的根拠に基づいて政策が展開されてほしいものだ。
タグ:「自宅療養、自宅待機という名の医療提供の放棄が横行し、事実上の無政府状態が出現していることへの国民の不安といら立ち」、「「医療提供体制は深刻な機能不全に陥って」・・・という言葉には、「生物としての人間」を維持するために不可欠なロジスティクス(兵站)を軽んじた代償を現場の指揮官や兵士、軍属や民間人に押し付けた戦時中の無責任体制を髣髴(ほうふつ)とさせるものがある」、「感染爆発に備えるだけの十分な時間があり、人員や病床の確保や、地域医療を含めた支援体制の構築等々オールジャパンで取り組める素地がないわけではなか AERAdot 「ワクチン接種の影響だけで感染がある時期に急速に増減することは起こりにくい」、確かにその通りだが、では要因は何なのだろう。 大きな謎を解き明かしてくれそうで、興味深そうだ。 「感染研・・・と保健所が感染者を隔離してその周囲の人たちを検査するという仕組みになっています。これは、戦前は衛生警察と言われる警察の業務だった経緯もあり、現在の医療システムとは切り離されている」、「PCR検査を行政検査という枠にはめたことです。外国ならいわゆる上気道感染の識別診断という形で通常の医療の中で行われますが、日本は感染症法に基づく行政検査にすることで、医師の判断で通常の検査ができませんでした」、「少ない検査数に対する国民の批判と“公衆衛生ムラ”の情報独占のバランスを取る苦肉の策としてできたのが、 仲田 泰祐 「コロナ死者を追悼もしない日本に漂う強烈な不信 私たちはなぶり殺し同然にされるのを恐れている」 「欧米諸国に比べて相当恵まれた状況にありながら、信じられないほど無能で、想像を上回るほど役立たずで、国民の命を屁とも思わないように見える国家、恥知らずな為政者の不作為によって、結果的に通常の医療さえ受けられず、なぶり殺し同然になることを心底恐れているのである。 これに全力で異義を唱えないことは、コロナ禍以後に起こりうる次なる危機においても、まったく同じ目詰まりによって危機が助長され、より熾烈化する〝ヴァイラルワールド〟の片棒を担ぐことに等しい。 わたしたちは進んでバブルの外に出なければならない』、全く同感 (経済社会的視点)(その19)(コロナ死者を追悼もしない日本に漂う強烈な不信 私たちはなぶり殺し同然にされるのを恐れている、なぜPCR検査数は増えないのか? 背景に「衛生の歴史」と「官僚の利権意識」、ワクチンじゃない?謎のコロナ急減解く3つの鍵 ロックダウンなど強い行動制限なしでも急減した) 東洋経済オンライン 「なぜPCR検査数は増えないのか? 背景に「衛生の歴史」と「官僚の利権意識」」 「危機はいつまでも続くのだ。おそらく、たとえCOVID?19のワクチンが開発されたとしても、今後も感染発生や環境変動に脅かされ続ける〝ヴァイラル(注)ワールド〟から逃れられないーーということを受け入れる勇気を持つべきだろう」、不吉な予告だ。 (注)ヴァイラル:「情報が口コミで徐々に拡散していく」さま(IT用語辞典) パンデミック 真鍋 厚 「このような周期が上記したような人々の自主的なリスク回避行動によって内生的に発生するのであれば、それは再度波が来る可能性を示唆する」、要警戒だ。 国家による「死者追悼」が「日本」で行われないのは、「悪いのは人流を抑制できない国民であり、協力的でない民間の医療機関であり、犠牲者のことなどどうでもいいのである」、「日本政府」は「自分たちを守るためになすべきことをしかるべき時期に実行しなかった」のは確かだ。 「中等症で救急車を呼んでも入院先が見つからず、自宅療養を余儀なくされるケースが相次いでおり、最悪の場合そのまま死亡してしまうことも珍しくない。つまり、医療提供体制がまともに機能していないのである」、「そのような特権階級がいるかのように思わせる社会的な不公平性がすでに顕在化しているからこそ、「たまたま入院できた」という出来事の真相を解き明かす上級国民というパワーワードが一定のリアリティを持ってしまうのである」、コロナ対策の欠陥を突いた手厳しい批判である。 最新の「人口比の検査人数」は、下記のように100万人当たり210千件、ランキングは分からぬが、低水準であることは確かだ。 https://www.worldometers.info/coronavirus/ 「深刻な医療逼迫を理由に外出も控えた人々はわれわれの周りに少なからずいる・・・このような行動変容をした人々が一定数いた可能性」、「既存のデータだけではわからないことも多い中では、こういった事例証拠・・・も積極活用するのが自然」、その通りだろう。 「既存の病床をICUとして使用できるといった法整備、人工呼吸器を扱える医師やスタッフをかき集めるのに十分な時間があったはずなのに、厚労省も日本医師会もこのような取り組みをいっさいしてこなかったと批判。「その結果として、欧米に比して極めて少ない感染者数と死亡者数でいとも簡単に医療が逼迫してしまった」と述べ、「現在の医療の逼迫は、実際には新型コロナウイルスの登場から1年以上がたったにもかかわらず、重症化対応に関して、なんの努力もしなかった厚労省と日本医師会の責任」と強調」、ここまで手厳しい批判は初めて読んだ。 厚労省やその息のかかった専門家は厚労省の肩を持つのは当然だが、その意見は割り引いてみる必要がある。 「ワクチンじゃない?謎のコロナ急減解く3つの鍵 ロックダウンなど強い行動制限なしでも急減した」 分科会メンバーに統計学の専門家が加わって、「行動制限政策」がどこまで有効だったのか、検証がさらに進み、科学的根拠に基づいて政策が展開されてほしいものだ。
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パンデミック(医学的視点)(その23)(3回接種が進んだイスラエルで感染爆発 4回目を準備 データ提供という「偉大な貢献」、政府の説明ではさっぱり分からない「なぜ第5波は終息したのか」 感染者データを用いたコロナ感染者予測モデルから分かること、感染急減の日本が油断大敵になってはいけない訳 ワクチン効果は徐々に薄れ 追加接種が不可欠、ワクチン3回目接種 2回終えた“全員対象”の方針 厚労省分科会) [パンデミック]

パンデミック(医学的視点)については、9月24日に取上げた。今日は、(その23)(3回接種が進んだイスラエルで感染爆発 4回目を準備 データ提供という「偉大な貢献」、政府の説明ではさっぱり分からない「なぜ第5波は終息したのか」 感染者データを用いたコロナ感染者予測モデルから分かること、感染急減の日本が油断大敵になってはいけない訳 ワクチン効果は徐々に薄れ 追加接種が不可欠、ワクチン3回目接種 2回終えた“全員対象”の方針 厚労省分科会)である。

先ずは、10月4日付けPRESIDENT Onlineが転載した「ニューズウィーク日本版」「3回接種が進んだイスラエルで感染爆発、4回目を準備 データ提供という「偉大な貢献」」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/50503
・『<ブースター接種が1回で不十分だとすれば、いったい何回打てば感染を防げるのか、ワクチンは万能薬ではないのか、世界も近く問題に直面する:サマンサ・ロック>  新型コロナウイルスのワクチン接種で世界の先陣を切ったイスラエルは、ワクチンの効果を持続させるブースター接種(3回目の接種)にもいち早く着手した。それにもかかわらず今、感染者が急増している。 9月14日には新たな感染者数が1万730人、直近7日間の平均は1万1027人だ。 「これまでの波では存在しなかった記録だ」イスラエル保健省の新型コロナ対策を率いるナフマン・アッシュは9月14日に議会の委員会にオンラインでそう語ったと、地元メディアが伝えた。 今年6月には1日の感染者数を10数人前後まで抑え込めていたが、今は過去のピークを上回る第4波の真っ只中にある。 「1週間前には明らかな減少傾向が見られたが、ここに来て下げ止まり、Rの数字が(再び)1を上回った」と、アッシュは警告した。Rとは1人の感染者が何人に感染させるかを示す実効再生産数(Rt)のこと。1を下回れば感染は収束に向かうが、上回れば拡大を続ける。「今後より顕著に減少すると思いたいが、現時点ではその兆しは見えない」』、せっかく「ブースター接種」に「着手」しても、「感染者が急増」しているようだ。
・『学生フェスや巡礼で密集  イスラエル政府のコロナ対策の最高責任者サルマン・ザルカによると、9月13日の新規感染者1万556人の半数は未成年者だ。 ザルカによれば、保健省は政府に対し、大規模な集会を規制し、サッカーの試合など大観衆が集まるイベントを禁止するよう要請してきた。だが当局の警告にもかかわらず、9月初めには港湾都市エイラートで恒例の学生フェスが実施され、全土から集まった若者たちがどんちゃん騒ぎを繰り広げた。高名なラビ(ユダヤ教の聖職者)の墓があるウクライナ中部のウマニへの巡礼も、昨年は見送られたが今年は再開され、ワクチン接種を拒む超正統派のユダヤ教徒が大挙して参加した。 今後もこうした大規模イベントが次々に実施されると見られる。 今月に入りザルカは4回目のワクチン接種に向けて準備を進める考えを示した。 「ウイルスが存在し、今後も存在し続ける以上、4回目の接種にも備える必要がある」と、ザルカは9月4日、公共ラジオの取材に応えて語ったが、実施時期は明らかにしなかった。 ザルカによれば、4回目の接種では、感染力が強いデルタ株など新たな変異株に対応した改変型のワクチンを使う予定だ。今後も新たな変異株が次々に出現し、感染拡大の「波が繰り返される」と見られるため、定期的なブースター接種が「ニューノーマルになる」と、ザルカは予告する。イスラエル保健省は、今の第4波を乗り越えても、第5波は必ず起きるとの前提で準備を進めているという。 イスラエルは昨年12月に他国に先駆けてワクチン接種を開始し、今年3月初めには国民の半数以上が2回目の接種を済ませていた。 その後保健当局は、新たなデータで時間の経過と共にワクチンの効果が低下することがわかったと発表。7月末には高齢者を対象にいち早くブースター接種を開始した。 当初は、重症化のリスクが高い60歳以上を対象に、ファイザー製ワクチンの3回目接種を行なっていたが、8月には対象年齢が40歳以上に拡大された』、「4回目のワクチン接種に向けて準備を進める」、ずいぶん手回しがいいようだ。「高名なラビ・・・の墓があるウクライナ中部のウマニへの巡礼も、昨年は見送られたが今年は再開され、ワクチン接種を拒む超正統派のユダヤ教徒が大挙して参加した」、「ワクチン接種を拒む超正統派のユダヤ教徒」とは困ったものだ。
・『米政府も追加接種を目指すが  イスラエルのナフタリ・ベネット首相は先月フェイスブックの公式アカウントで、わが国は世界に先駆けてブースター接種を実施することで、グローバルなコロナとの戦いに、データ提供という「偉大な貢献」をしていると述べた。 「イスラエルはグローバルな知識に偉大な貢献をもたらそうとしている。われわれなしでは、世界はブースター接種の正確な有効性も、打つべきタイミングも、感染状況への影響も、重症化への影響も分からないだろう」 イスラエルでは早期にワクチン接種を受けた人たちの抗体レベルの低下を示すデータがあると、公衆衛生当局の責任者シャロン・アルロイプライスは述べているが、追加接種が進む今も、全土で感染者が増え続けている状況を見ると、ワクチンだけでは感染拡大は止められそうもない。 アメリカでも近々、ブースター接種が始まる。米食品医薬品局(FDA)は9月12日、臓器移植を受けた人など免疫力が低い人に限り、ファイザー製とモデルナ製ワクチンの3回目の接種を認める方針を発表した。 バイデン政権は9月末から医療従事者や高齢者を対象にブースター接種を進めたい考えだが、FDAも米疾病対策センター(CDC)も今のところ一般の人たちは2回の接種で十分に守られているとして、追加の接種は必要ないとの見解を変えていない』、「イスラエルはグローバルな知識に偉大な貢献をもたらそうとしている。われわれなしでは、世界はブースター接種の正確な有効性も、打つべきタイミングも、感染状況への影響も、重症化への影響も分からないだろう」、その通りだ。「追加接種が進む今も、全土で感染者が増え続けている状況を見ると、ワクチンだけでは感染拡大は止められそうもない」。

次に、10月8日付けJBPressが掲載したスタイルアクト(株)代表取締役・不動産コンサルタントの沖 有人氏による「政府の説明ではさっぱり分からない「なぜ第5波は終息したのか」 感染者データを用いたコロナ感染者予測モデルから分かること」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/67233
・『コロナ第5波は終息したが、なぜ終息したかは明らかではなく、何をすれば感染減に繋がるのかという点も曖昧なまま。感染に関わる膨大なデータが日々発表されるにもかかわらず、新型コロナウイルス感染症対策分科会は科学的とは言えない説明に終始している。来たるべき第6波に備えるため、われわれは何を指標とすべきなのか──。統計解析のスペシャリスト、スタイルアクトの沖有人氏が分析する。 新型コロナの第5波が終息した理由は何だったのだろうか。 第5波のピークだった8月20日前後は全国で毎日2万5000人が感染する状況だったが、その後、急速に感染者は減少し、9月末には1000人台となっている。結果、緊急事態宣言は解除されたが、流行と抑え込みのメカニズムはいまだに分かっておらず、第6波の到来を前に、私たちはただおびえるしかない。 この謎を科学的に解くにはどうすればいいのだろうか。私は統計分析を生業としており、主に不動産や人口予測の分野でマーケティングのための様々な予測モデルを構築してきた。その知見を生かして、どういう条件で新規感染者や死亡者が増加するか、予測モデルを作成した。そこで分かったことを、ここでみなさんにお伝えしようと思う。 9月末の緊急事態宣言解除の記者会見では、当時の菅首相だけでなく、新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身会長が5つの要因を提示した。しかし、ここで挙げられた要因は、残念ながら統計的にはほぼ説明できないことばかりだった』、「尾身会長が5つの要因を提示」したが、「ここで挙げられた要因は、残念ながら統計的にはほぼ説明できないことばかりだった」、非科学的なやり方にはガッカリする。
・『感染の減少と因果関係が見えない尾身会長の説明  (1)一般市民の感染対策強化(第5波の山は高く、急降下している。この山と谷を説明するには極端な変化を伴う変数が必要だが、公開されているデータを分析する限り、そういった変数は見当たらない。自分の日常やメディアの報道を通してという限定的な範囲だが、このピークの前後で国民の日常生活が劇的に変わったという事実は見当たらない。国民の努力に対するリップサービスなのかもしれないが、因果関係は全く把握できない。 (2)人流、特に夜間の滞留人口減少(公開情報を分析したところ、人流の減少は多く見ても、直近ピーク時の2割程度というところだ。 例えば、お盆の時期の移動は東海道新幹線の乗車率の推移で分かる。それを見ると、8月の乗車率は7月以下で、お盆に例年のような大移動は起きていない。また、政府は人流を重視するが、ただの外出で感染した人がどれぐらいいるのだろうか。人流で感染拡大するのであれば、毎日、山手線でクラスターが発生していてもおかしくない。 飛沫感染が主な理由と言われていることを考えれば、外出の制限に意味があるという統計的な説明はできない。 なお、夜間の滞留人口を夜10~12時に外出している人だと定義すれば、いわゆる夜の店に行っている人が中心だろう。それは「うつるべくしてうつった人」であり、一般的な人流とは異なるのではないだろうか』、このように要因をきちんと切り分けることも重要だ。
・『ワクチン接種率40%でピークアウトと説明するには無理がある  (3)ワクチン接種率の向上(第5波の山がピークアウトしたのは、2回目のワクチン接種率が40%程度の時だ。ワクチン接種率は月間で10%程度上昇しているので、ワクチン接種率が30%の頃に生まれた大きな波が40%でピークアウトすると説明するのは無理がある。 また、ワクチンに絶大な効果があるのであれば第5波の上昇を抑えられたはずだが、山はこれまで以上に高かった。ワクチンに新型コロナを抑え込む効果が一定程度あることは統計を用いて後述するが、決定的な要因にはなっていない。 (4)医療機関・高齢者施設での感染者の減少(日本国民の中で、病院や高齢者施設にいる人は1%もいない。そこでの数が倍増しようが、全体の感染者の数値に影響を与えることはない。そうした施設の話をわざわざ持ち出したのは、コロナの最前線で戦った医療機関や高齢者施設に対するリップサービスなのだろうか。少なくとも公共の電波で伝えるような要因とは思えない。 (5)気象の要因(夏が終わりに近づき、気温が下がったら感染者が減るという指摘には、全く因果関係がない。ここまで来ると、もはや滑稽な話でしかない。 ここまで、尾身会長の説明に統計的な説得力がないということを説明してきた。次に、統計的に今後の感染者数がどうなっていくのかという点について見ていこう』、なるほど。
・『日々の感染者数で1週間後は予測可能  毎日ニュースとして耳にする感染者数は、過去の推移から短期的な将来を予測することができる。 予測対象は、陽性者数→入院治療等を要する者→重症者数→死亡者数の順で相関関係が明らかに出る。つまり、陽性者が増えれば入院患者が増え、重症者が増え、死亡者が増えるという関係だ。 それゆえに、明日の陽性者数は今日の陽性者数と昨日から今日の数の変化でほぼ説明できる。昨日100人、今日110人なら、増加数10人なので、今日の110人と増加数10人の影響を受けて明日は123人──という具合に決まるような話だ。 例えば、入院治療等を要する者はその前日水準と陽性者数(過去2週間)とワクチン2回目接種率の3つの変数で説明でき、並べた順で影響力が強い。私の分析では、ワクチン接種率が10%上がると、入院等を要する者が1750人減少する。 同様に、重症者数は入院治療等を要する者(1週間前)とワクチン2回目接種率(接種率10%上がると、重症者数は70人減少)の2つの変数で説明できる。 死亡者数は、その前日水準と重症者数(1週間前)とワクチン2回目済率(10%上がると、死亡者数は10人減少)で説明できる。この2か月でワクチン接種率は20%ほど上昇したので、毎日20人の命が救われていることになる。ただ、死亡者の場合、最も効く変数は重症者数であり、ワクチン接種率ではない。 これらのモデルから分かることは、(1)毎日の動きが予測の最大の根拠となる (2)ワクチンの効果は一定程度あるが、補助的であり決定的ではない (3)このモデルでは1週間先はほぼ予測できる』、確かに「1週間先はほぼ予測できる」ようだ。
・『節目の変わるタイミングでは何が起きているか?  なお、波が来ることも、ピークアウトすることも、前日との差(前週の同じ曜日と比較しての差)で予測可能だ。具体的に言えば、連続して4日同じ方向に動いた時にトレンドが転換する。つまり、4日連続で新規感染者数が増加に転じたら、第6波がやってくると考えた方がいい。 ただ、その山の高さ(感染者数の多さ)は予見することができない。実行再生産数を用いることもできるが、これは単なる仮定に過ぎず、実行再生産数自体を予測することはできない。 このように、現状では毎日変化するグラフの傾きに応じて1週間程度先を予測することくらいしかできないが、それでも1週間後に向けて事前に対処できるということに意味はあるはずだ。 第5波の教訓として語られるべきことは、山の高さをもたらした要因を正確に把握することだ。これが分かれば、第6波に備えられる。 第5波である7月、8月の感染者を見ると、20代以下が5月より+8%、6月より+4%と大幅に増えている。この年代の人々からすれば、ワクチン接種は先の話になりそうで、たとえ感染しても死亡する確率は極めて低い。そうした状況から気を緩めてしまった人によって、山が高くなったというのは明らかな傾向としてある。 この層は夜間の滞留人口と同様で、「うつるべくしてうつった人」なのかもしれない。「かもしれない」と語尾を緩めたが、データがないだけで、これは調べることができる。感染者の感染経路を全件調査し、感染パターンを類型化し、何%を占めるかを明確にすればいいのだ。 感染経路は現在4割程度しか判明していないが、この結果が有効な行動制限を確定させる決め手となる。 例えば、「マスクをせず飲み会に参加した」「カラオケでマイクの消毒をせず歌い続けた」「感染者らしき人に出くわした後に手洗いを忘れた」といった感染理由が浮上したとして、その感染パターンとは関係ないことを気をつけても仕方がない。恐らく、外出を控えても効果がないことはここから分かるだろう。自粛という形を取る以上、具体的な行動を自粛対象として告知することが端的に効果を出す何よりの方法だ』、「感染経路は現在4割程度しか判明していないが、この結果が有効な行動制限を確定させる決め手となる」、でも判明率を上げるのは困難だろう。
・『科学的とは言えない分科会メンバー  第6波が来るとしたら、10月の下旬以降になりそうだ。冬場で大流行する可能性もあり備える必要があるが、「何をすべきかが分からない」という事態は避けなければならない。そのためには、日本の科学の英知を結集することが必要だ。 2020年4月の第1回の緊急事態宣言の際は、専門家の委員会は感染病の専門家と医療関係者だけだった。その後、経済学者が入り、経済を動かす必要性を提言することになった。 現在の分科会メンバーについては、偏っていて科学的でないという印象を受ける。科学的とは、分からないことを数多く明らかにし、分からないことは分からないと明示することだ。予測モデルで因数分解したように、各要因の因果関係と影響度は統計で処理できる。これほど毎日の数字が克明に出るのに、定性的なぼんやりとした話を繰り返すのは数字を扱い、判断する能力がないと考えた方がいい。 その意味で、統計学者は委員に1人必要だろう。また、具体的な感染パターンの把握と自粛行動へのアナウンスも、人間心理に長けた心理学者が欲しいところだ。その人の役目は、人心を把握し、効果を最大化する説得力ある発信をすることにある。 まだ、コロナとの闘いは終わってはいない。菅首相が退陣を余儀なくされたように、ただ一生懸命に取り組むだけでは評価されない。リーダーたるもの、効果を見せながら、「この人の言うことは守らなければ」と思われるようにならなければならない。そこには、事実に基づいた実行性のある見識が必要である』、「分科会メンバー」には「経済学者が入り」、経済学者であれば、統計のことも分かっている筈だ。ただ、専門的な「統計学者」や「人間心理に長けた心理学者」がいる方が望ましい。彼らの助言を得て、「首相」には「事実に基づいた実行性のある見識」を示してほしいものだ。

第三に、10月26日付け東洋経済オンラインが掲載した医療ガバナンス研究所理事長の上 昌広氏による「感染急減の日本が油断大敵になってはいけない訳 ワクチン効果は徐々に薄れ、追加接種が不可欠」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/464390
・『冬の足音が聞こえてきた。多くの欧州諸国では、感染者の増加が顕著だ(図1)。日本のメディアは「規制撤廃の英国新型コロナ200人超え」(テレビ朝日10月20日)のように、感染者増を規制緩和に伴う人流増に求める論調が強いが、それは的外れだ。欧州の感染増を知れば、季節性変化の影響が大きいと考えるのが合理的だ。 図1(Daily new confirmed COVID-19 Ccases per million peopleの図はリンク先参照)』、上氏は独自の視点から筋論を展開するとして、私が注目している医者だ。「欧州の感染増を知れば、季節性変化の影響が大きいと考えるのが合理的だ」、なるほど。
・『第6波で未曾有の感染爆発が起こる可能性は残る 日本でも早晩、感染者は増加し、冬場の大流行を迎える。イギリス・オックスフォード大学が提供するデータベース「Our World in Data」によれば、昨秋、日本は10月22日の感染者数4.23人(人口100万人あたり、7日間平均)を底に、感染者数は増加の一途を辿った。ピークは1月11日の同51.14人だった。今年も、似たような推移をたどるだろうと私は予想している。 今年、注目すべきは変異株の存在だ。昨冬の流行の中心は変異がない従来株だった。今冬はデルタ株、あるいはイギリスで感染が確認されているデルタ・プラス株のような新たな変異株かもしれない。日本の足元の感染状況は1年数カ月ぶりの低水準まで収まっているが、その理由もはっきりしないだけに、今後、第6波で未曾有の感染爆発が起こる可能性も十分以上に残されていると考えたほうがいい。 では、どうすればいいのか。最優先はワクチンの追加接種だ。コロナに限らず、ワクチン接種は感染症対策の中核となる。コロナ対策でも、昨年12月にイギリスでの接種開始を振り出しに、世界各国はワクチン接種を促進してきた。接種開始が今年2月となった日本だが、その後、急速に追い上げた。10月21日現在の接種完了率は69%で、カナダ(73%)、イタリア(71%)に次いで、主要先進7カ国(G7)で第3位だ。すでにフランス(68%)、イギリス(67%)、ドイツ(66%)、アメリカ(57%)を抜いている。 ところが、それでも楽観視できない。それは、コロナワクチンは接種から時間が経てば、その効果が低減するからだ。このあたり、ワクチン接種を済ませば、ほぼ一生にわたって効果が続く麻疹ワクチンとは違い、有効期間が5カ月と言われているインフルエンザワクチンに近い。アメリカのファイザーは、デルタ株の場合、2回接種から4カ月目には感染予防効果は53%まで低下すると報告していし、アメリカ・モデルナも、ワクチン接種後約5カ月で、感染予防効果が36%低下したと報告している。 すでに日本からも同様の調査結果が報告されている。10月13日、福島県相馬市は、コロナワクチン接種を終えた相馬市民500人から採血し、中和活性を測定した結果を発表した。この研究では、中和活性は、2回目接種から30日未満で2024 AU/mL、30~90日で753 AU/mL、90日以上で106 AU/mLと急速に低下していた。10月22日には、同じく福島県南相馬市からも同様の調査結果が報告された。一連の研究をリードしたのは、坪倉正治・福島県立医科大学教授を中心とした研究チームだ』、「日本」でも「コロナワクチン接種」後の効果が日数経過と共に低下してくる研究があるというのは、初めて知った。
・『イスラエルで今夏大流行が起こったワケ  ワクチンの効果が切れた段階で、コロナが流行すればどうなるのか? 参考になるのはイスラエルの経験だ。イスラエルは、世界で最も早くワクチン接種を進めた国だ。1月30日には国民の20%、2月16日には30%、5月2日には40%、そして5月17日には50%がワクチン接種を済ませている。 (図2) 日本同様、イスラエルでも6月下旬からデルタ株による感染者が増加した。夏の流行のピークは9月14日で、新規感染者数は1254人(人口100万人あたり)で、同国の冬のピーク(981.2人)を大きく上回った。日本の今夏のピークの6.8倍に当たる。今夏、イスラエルの感染者数は、G7諸国よりはるかに多かったが(図2:Daily new confirmed COVID-19 Ccases per million peopleの図はリンク先参照))、これはワクチンの効果が切れた時期に、デルタ波の流行が重なったためだろう。ワクチンの感染予防効果は、接種からの時間とともに減衰することを、認識しなければならない。  問題は感染予防だけではない。これまで、ワクチン接種を済ませておけば、たとえデルタ株であろうが、感染しても重症化しないと考えられてきた。わが国では、今夏、デルタ株が大流行したのに、第3波、第4波ほど死者数は増えなかったのもワクチン接種の恩恵と考えられている(図3)。そうなると、ワクチン接種による、このような重症化予防効果がいつまで続くかが大きなポイントになる。 (図3:Daily new confirmed COVID-19 deaths per million peopleの図はリンク先参照))) イスラエルの経験は、重症化予防効果も、意外に早く低下する可能性があることを示唆している。図4はイスラエルと日本のコロナ感染者の致死率の推移を示したものだ。イスラエルでは、今年3月から7月にかけて致死率が上昇している。特に5、6月の致死率は5%以上を維持し、5月23日には9.5%、6月14日には9.4%に達した。 (図4:Moving average case fatality rate of COVID-19の図はリンク先参照) この時期、決して死者の総数が増えた訳ではない。イスラエルの夏の流行で、死者数が増えるのは8月以降だ。以上の事実は、重症患者が増えて、病床が逼迫したため、致死率が高まった訳ではないことを意味する。なぜ、こんなことが起こるのだろうか』、何故だろう。
・『ワクチン接種を終えて4カ月後に起きた変化  私は、基礎疾患を抱える高齢者でワクチンの効果が切れ始めたためと考えている。イスラエルは2020年12月19日から、高齢者・持病を抱える人・医療従事者を対象にワクチン接種を開始した。2021年1月末の接種完了率は21%。イスラエルの高齢化率は12%だから、1月中には高齢者の接種を終えたことになる。致死率が急上昇した5月は、ワクチン接種を終えて4カ月となる。 イスラエル政府は、この致死率急上昇に焦った。7月11日には免疫力の低い人を対象に追加接種を始める方針を明かしている。注目したいのは、7月11日の人口100万人あたりの感染者数は51.4人だったことだ。その1週間前の7月4日の33.8人からはやや増加したが、イスラエルで感染者が本格的に増え始めるのは7月後半で、同月末には237.6人に達している。 イスラエル政府は、ワクチン接種を済ませた人に感染するブレイクスルー感染が増え始めて、追加接種を検討したのではない。私は、コロナワクチンの効果の持続性に当初から疑問を抱き、春以降致死率が高まってきたことを考慮したからではないかと考えている。 追加接種は著効した。6月14日の致死率9.4%から、8月15日には0.60%、9月24日には0.15%に低下している。10月7日、イスラエルの研究チームはアメリカの『ニューイングランド医学誌』に、追加接種の有効性について、追加接種から12日が経過した段階で、非接種群と比べ、追加接種群の感染率は11.3分の1、重症化率は19.5分の1まで低下したと発表している。 その後、イスラエル政府は、追加接種の対象を拡大し、12歳以上とした。そして、世界のどの国よりも速く追加接種を進めている。10月22日現在の追加接種完了率は44%で、9月12日には、イスラエル保健省高官が、4回目の追加接種に必要なワクチンの確保を進める方針を明かしている』、「4回目の追加接種に必要なワクチンの確保」とは早手回しだ。
・『高齢者や免疫抑制患者に追加接種は不可欠  イスラエルの経験は貴重だ。多くの先進国が追加接種を加速させている。10月16日現在、追加接種の完了率はアメリカ3.6%、フランス3.5%、ドイツ1.8%、イタリア1.6%だ。中国でも、すでに追加接種は始まっている。10月13日、アメリカのニューヨーク・タイムズは、武漢を含む湖北省で4万人以上が追加接種を受けたことを報じている。 高齢者や免疫抑制患者に追加接種が必要なことは、いまや世界的コンセンサスだ。9月22日、米食品医薬品局(FDA)は、ファイザー社製ワクチンの65歳以上の高齢者と重症化リスクが高い人に対する追加接種を承認し、10月20日には、米モデルナとジョンソン・エンド・ジョンソン社製ワクチンについても承認した。 FDAは、ファイザー製については、40歳以上に承認対象を拡大する予定だ。欧州でも、10月4日、イスラエル、イギリスに続き、欧州医薬品庁(EMA)がファイザー製ワクチンの18歳以上に対する追加接種を承認した。さらに、途上国でのワクチン接種を推進するため、当初、追加接種に否定的だった世界保健機関(WHO)も、10月11日、感染を防ぐ抗体が十分にできなかった人に限って推奨すると声明を発表している』、主要国は「追加接種」へと動いているようだ。
・『追加接種については、さまざまな臨床研究が進んでいる。懸念される副反応については、9月28日、米疾病対策センター(CDC)は、2回目接種後と同程度という研究成果を報告している。 効果については、イスラエルからの研究は前述のとおりだ。他には、9月30日、アメリカ・アリゾナ大学の研究チームが、固形癌で抗がん剤治療中の患者53人を対象に、追加接種の有効性を検証した論文をイギリス『ネイチャー・メディスン』に発表している。この研究によれば、追加接種により抗体価は上昇するが、細胞性免疫の活性化は軽微だった。研究者たちは、それでも免疫学的に有益である可能性が高いという結論を出している。かくのごとく、追加接種の臨床研究は急速に進んでいる』、なるほど。
・『日本はワクチンが余っているのに  日本はどうだろうか。厚生労働省は、12月から追加接種を始める方針を明かしている。これでは遅すぎる。日本で、高齢者のワクチン接種が本格化したのは5月だ。早い時期にワクチンを打った人は、接種後半年以上が経過する。免疫は低下していると考えていい。今冬、コロナに罹患すれば、重症化あるいは死亡する可能性が高まってしまう。可及的速やかに追加接種を始めたほうがいいだろう。 何がボトルネックか。日本にワクチンが足りない訳ではない。日本経済新聞は10月7日、1面トップに「先進国でワクチン余剰」という記事を掲載した。この記事では、日本の状況について、「11月ごろまでに希望者への接種がほぼ一巡し、その後は在庫が膨らむ見通し」と説明している。さらに、自治体が設置するワクチン接種会場はガラガラだ。その気になれば、いますぐにでも追加接種を始めることができる。 日本で追加接種が進まないのは、「厚労省の手続きなどの準備が間に合わない(厚労省関係者)」からだ。具体的には薬事承認、審議会での審議などだ。菅義偉・前首相のリーダーシップで、約2カ月のワクチン接種の遅れは挽回した。ところが、追加接種の準備を怠った厚労省の不作為で、また、3カ月以上の遅れができてしまった。昨年末のワクチン導入の失敗と同じことを繰り返したことになる。厚労省の奮起、岸田文雄首相のリーダーシップに期待したい』、「日本で追加接種が進まないのは、「厚労省の手続きなどの準備が間に合わない(厚労省関係者)」からだ」、「菅義偉・前首相のリーダーシップで、約2カ月のワクチン接種の遅れは挽回した。ところが、追加接種の準備を怠った厚労省の不作為で、また、3カ月以上の遅れができてしまった。昨年末のワクチン導入の失敗と同じことを繰り返したことになる」、「岸田文雄首相」は総選挙応援終了後は、直ちに取り組むべきだ。

第四に、10月28日付けNHK NEWS WEB「ワクチン3回目接種 2回終えた“全員対象”の方針 厚労省分科会」を紹介しよう。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211028/k10013326011000.html
・『新型コロナウイルスワクチンの3回目の接種について、厚生労働省の専門家の分科会は28日、2回目の接種を終えた人全員を対象とする方針で一致しました。これを受け厚生労働省は、ことし12月に医療従事者から順次、3回目の接種を始める方針です。 厚生労働省は28日、専門家でつくる分科会を開いて、新型コロナウイルスワクチンの3回目の接種の対象者について議論しました』、やはり「2月に医療従事者から順次、3回目の接種を始める方針」と悠長なことを言っているようだ。
・『感染予防の効果 2回目接種の5か月後以降には「低下」  分科会では、ファイザーのワクチンの感染を予防する効果が、2回目の接種から5か月後以降にどう変化したかが報告されました。 アメリカの研究結果として、 ▼16歳から44歳では89%が39%に、 ▼45歳から64歳では87%が50%に、 ▼65歳以上では80%が43%に それぞれ低下したとするデータが示されました」、なるほど。
・『入院予防の効果については 目立った低下は見られず  厚生労働省によりますと、入院を予防する効果については、アメリカの研究では、2回目の接種から5か月後以降にはそれぞれ次のようになり、目立った低下は見られなかったということです。 ▼16歳から44歳で88%が90%に ▼45歳から64歳で91%が90%に ▼65歳以上で84%が83%に』、「入院予防の効果については 目立った低下は見られず」、とは結構なことだ。
・『3回目接種 分かれる海外の対応  日本は「全員対象に」  続いて分科会では、海外の対応を確認したうえで、日本での対応を検討しました。 この中では、アメリカは高齢者や18歳以上の特定の疾患がある人などとしている一方、イスラエルは接種が認められている12歳以上の全員とするなど、各国で対応が分かれていることが説明されました。 これに対し、分科会の委員からは「希望する人全員に接種機会を提供すべきだ」とか「自治体の実務上、全員に打てるようにすることが現実的だ」などといった意見が出て、分科会として2回目の接種を終えた人全員を対象にする方針で一致しました。 また、高齢者など重症化を予防する効果が低下しやすい人などには、できるだけ3回目の接種を受けるよう呼びかけることも厚生労働省に求めました』、事務的には「全員対象に」が、混乱を少なくする方法だ。
・『3回目接種後の副反応は“2回目までと同程度”  分科会では、3回目の接種後の副反応についても、アメリカのデータが示されました。 それによりますと、ファイザーやモデルナのワクチンでは、報告された副反応が2回目までと同じ程度だったということです。 厚生労働省は、来月にも改めて分科会を開き、正式に方針を決めたうえで、12月に医療従事者から順次、3回目の接種を始めることにしています』、「副反応は“2回目までと同程度”」、一安心した。
・『海外の3回目接種 各国の対象者の範囲は?  海外でも新型コロナウイルスワクチンの追加接種が始まっていますが、対象者の範囲は異なっています。 厚生労働省によりますと、 +アメリカでは65歳以上の高齢者や、18歳から64歳で特定の疾患がある人や仕事などでウイルスにさらされるリスクが高い人などが追加接種の対象となります。 +イギリスでは50歳以上の人や、16歳から49歳で重症化のリスクを高める疾患がある人、介護施設の居住者や職員、それに医療従事者などです。 +カナダでは長期療養施設などに入っている高齢者です。 +フランスでは自宅で生活する65歳以上の高齢者や高齢者施設などの居住者、重症化リスクが非常に高い人、基礎疾患がある人、それに医療従事者や救急隊員などです。 +イスラエルは、当初、追加接種の対象を60歳以上としていましたが、対象を段階的に拡大し、現在は12歳以上としています』、本来であれば、第三の上氏の主張のように、主要国に遅れないようもっと早目に取り組むべきだろう。
タグ:パンデミック (医学的視点)(その23)(3回接種が進んだイスラエルで感染爆発 4回目を準備 データ提供という「偉大な貢献」、政府の説明ではさっぱり分からない「なぜ第5波は終息したのか」 感染者データを用いたコロナ感染者予測モデルから分かること、感染急減の日本が油断大敵になってはいけない訳 ワクチン効果は徐々に薄れ 追加接種が不可欠、ワクチン3回目接種 2回終えた“全員対象”の方針 厚労省分科会) PRESIDENT ONLINE ニューズウィーク日本版 「3回接種が進んだイスラエルで感染爆発、4回目を準備 データ提供という「偉大な貢献」」 せっかく「ブースター接種」に「着手」しても、「感染者が急増」しているようだ。 「4回目のワクチン接種に向けて準備を進める」、ずいぶん手回しがいいようだ。「高名なラビ・・・の墓があるウクライナ中部のウマニへの巡礼も、昨年は見送られたが今年は再開され、ワクチン接種を拒む超正統派のユダヤ教徒が大挙して参加した」、「ワクチン接種を拒む超正統派のユダヤ教徒」とは困ったものだ。 「イスラエルはグローバルな知識に偉大な貢献をもたらそうとしている。われわれなしでは、世界はブースター接種の正確な有効性も、打つべきタイミングも、感染状況への影響も、重症化への影響も分からないだろう」、その通りだ。「追加接種が進む今も、全土で感染者が増え続けている状況を見ると、ワクチンだけでは感染拡大は止められそうもない」。 JBPRESS 沖 有人 「政府の説明ではさっぱり分からない「なぜ第5波は終息したのか」 感染者データを用いたコロナ感染者予測モデルから分かること」 「尾身会長が5つの要因を提示」したが、「ここで挙げられた要因は、残念ながら統計的にはほぼ説明できないことばかりだった」、非科学的なやり方にはガッカリする。 このように要因をきちんと切り分けることも重要だ。 確かに「1週間先はほぼ予測できる」ようだ。 「感染経路は現在4割程度しか判明していないが、この結果が有効な行動制限を確定させる決め手となる」、でも判明率を上げるのは困難だろう。 「分科会メンバー」には「経済学者が入り」、経済学者であれば、統計のことも分かっている筈だ。ただ、専門的な「統計学者」や「人間心理に長けた心理学者」がいる方が望ましい。彼らの助言を得て、「首相」には「事実に基づいた実行性のある見識」を示してほしいものだ。 東洋経済オンライン 上 昌広 「感染急減の日本が油断大敵になってはいけない訳 ワクチン効果は徐々に薄れ、追加接種が不可欠」 上氏は独自の視点から筋論を展開するとして、私が注目している医者だ。「欧州の感染増を知れば、季節性変化の影響が大きいと考えるのが合理的だ」、なるほど。 「日本」でも「コロナワクチン接種」後の効果が日数経過と共に低下してくる研究があるというのは、初めて知った。 「4回目の追加接種に必要なワクチンの確保」とは早手回しだ。 主要国は「追加接種」へと動いているようだ。 「日本で追加接種が進まないのは、「厚労省の手続きなどの準備が間に合わない(厚労省関係者)」からだ」、「菅義偉・前首相のリーダーシップで、約2カ月のワクチン接種の遅れは挽回した。ところが、追加接種の準備を怠った厚労省の不作為で、また、3カ月以上の遅れができてしまった。昨年末のワクチン導入の失敗と同じことを繰り返したことになる」、「岸田文雄首相」は総選挙応援終了後は、直ちに取り組むべきだ。 NHK NEWS WEB 「ワクチン3回目接種 2回終えた“全員対象”の方針 厚労省分科会」 やはり「2月に医療従事者から順次、3回目の接種を始める方針」と悠長なことを言っているようだ。 「入院予防の効果については 目立った低下は見られず」、とは結構なことだ。 事務的には「全員対象に」が、混乱を少なくする方法だ。 「副反応は“2回目までと同程度”」、一安心した。 本来であれば、第三の上氏の主張のように、主要国に遅れないようもっと早目に取り組むべきだろう。
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ネットビジネス(その11)(「黒いインフルエンサー」が使う超典型的な技術 「扇https://blog.ss-blog.jp/_pages/user/auth/article/index?blog_name=keiwasaki&id=114849694動情報」から自分を守るために必要な知識、べログ“チェーン店点数急落訴訟”で公正取引委員会が異例の意見書、「レビューの4割超がやらせ」アマゾンから怪しい日本語の感想がなくならない本当の理由 ステマ業者は法律で規制するべきだ) [イノベーション]

ネットビジネスについては、2月18日に取上げた。今日は、(その11)(「黒いインフルエンサー」が使う超典型的な技術 「扇動情報」から自分を守るために必要な知識、べログ“チェーン店点数急落訴訟”で公正取引委員会が異例の意見書、「レビューの4割超がやらせ」アマゾンから怪しい日本語の感想がなくならない本当の理由 ステマ業者は法律で規制するべきだ)である。

先ずは、2月22日付け東洋経済オンラインが掲載したメンタリストでジェネシスヘルスケア顧問、新潟リハビリテーション大学特任教授の DaiGo氏による「 「黒いインフルエンサー」が使う超典型的な技術 「扇動情報」から自分を守るために必要な知識」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/410452
・『インフルエンサーという言葉が定着し、企業も個人もどうすれば人を動かすことができるか試行錯誤する昨今。人の心を読み解き、著書累計330万部超、YouTube登録者数232万人超の影響力を持つまでに至っているのが、メンタリストDaiGo氏だ。 最初まったくの無名だったというDaiGo氏は、どのようにして今のポジションを築くに至ったのか?社会を巻き込むトレンドの生み出し方から、会社・家庭・恋愛・就活といった目の前の人の動かし方までをまとめた書籍『超影響力~歴史を変えたインフルエンサーに学ぶ人の動かし方』より一部を抜粋してお届けします』、興味深そうだ。
・『群集心理を扇動する権力者の黒いテクニックを見破る  「説得力と影響力を組み合わせ、人々の行動を促す技術」として研ぎ澄まされていった大衆扇動の手法の中には、人々の欲望や恐怖心、無知や誤解を利用して心を動かす悪用厳禁とも言える黒いテクニックがいくつもあります。 歴史に名を残すような政治家、独裁者、経営者、宗教指導者たちも要所要所で黒いテクニックを活用し、国民、大衆、社員、消費者、信者たちを彼らの望む方向へと動かしていきました。 本稿では、そうした単純な仕掛けでありながら、強力な説得力、影響力を発揮する「7つの黒いテクニック」のうち、本から抜粋して「ハイピング」(注:後述)について紹介します。あなたが悪意による扇動に踊らされないために役に立つはずです。 「毒は薬にもなる」という言葉があるように、大衆扇動に関する黒いテクニックについて知っておくことは、権力を握っている人たちやメディアなどが発信する情報に仕掛けられた、巧妙な罠を見抜くヒントとなります。 多くの人たちが扇動されてしまっているとき、あなただけは冷静に状況を見極め、群集心理に惑わされることなく行動できるはずです。そして、その知識によって大切な人たちを手助けすることもできるでしょう。 例えば、株価が乱高下するとき、多くの投資家が損を回避したいという恐怖心によって衝動的な選択をしてしまいます。しかし、その恐怖の原因となった情報は本当に公平で、正しいものだったのでしょうか?) 経済の動き、社会の変化、流行の始まりと終わり。すべてのことは、人々の心理と深く関係しています。権力者やメディアが群集心理をコントロールするために使うテクニックのからくりを学ぶことで、あなたは彼らが望んでいる群集心理の向かう方向を予測し、冷静で客観的な判断が下せるようになるのです』、「群集心理を扇動する権力者の黒いテクニックを見破る」ことが出来るようになるとは、有難い。
・『事実を捻じ曲げる「ハイピング」  「ハイピング」とは、「うそをつくこと」です。 私たちは子どもの頃から「うそはつくのはいけないこと」「うそはいつかバレる」と教わってきました。しかし、プロパガンダ分析研究所のデータによると、プロパガンディストたちは多種多様のうそをつき、ハイピングによって人々を動かしてきたのです。 「うそはいつかバレる」と言われますが、心理学の研究によると表情の変化を見抜く訓練など、特殊なトレーニングを積んでいない一般の人が相手のうそを見抜ける確率は54%だという結果が出ています。つまり、話し手がつくうその半分は見抜かれることなく、聞き手に伝わっていくわけです。 プロパガンディストたちが使うハイピングは、この認知の性質を利用し、事実の中の一部をねじ曲げる、誇張する、有利な証言だけを強調するなどして、人々を動かしてしまうダークなテクニック。彼らが巧妙なのは、聞き手が聞きたいと願っている情報を事実の中に紛れ込ませていくところです。 というのも、プロパガンディストたちは「人には自分の信じたいものを事実だと思い込む傾向」があることも知っています。ですから、相手の求めているうそを事実に紛れ込ませることで、仮に聞き手が「これはうそかもしれない」と感じても、「いや、信じたい、信じられる」と考えることを見越しているのです。 こうして意図的に練り上げられたうそはほとんどの場合、バレません。 そこで、よく使われる情報発信の仕方の1つが、「オミッション」。事実の一部を省略し、強調したい情報を際立たせる手法です。 例えば、新型コロナウイルスに関するニュースでは、回復して退院した患者数よりも、1日で新たに増えた感染者数の発表がクローズアップされてきました。とくに民放の情報番組やワイドショーでは、感染者数の増加と症状の危険性を伝える場面が目立っています。 もちろん、感染の広がりを抑制するための報道であることはわかります。しかし、新規の感染者数ばかりを強調する一方で、回復した人数などの情報を省略するような伝え方には、メディアのオミッションを感じずにはいられません』、「意図的に練り上げられたうそはほとんどの場合、バレません。 そこで、よく使われる情報発信の仕方の1つが、「オミッション」」、気を付けたい。
・『訓練を積んだ専門家でも、うそを完全には見抜けない  かつては私自身、ビジネスの交渉の場でハイピングを受けることがありました。 こちらにとってマイナスになる情報は割愛され、興味を引く部分だけを強調。そのうえで、不利な契約を結ばせようとしてくるのです。 うそを見抜ける確率は54%という数字を出しましたが、これは経験と知識によって上昇します。例えば、うそについての研究をしている心理学者は70%、要人警護を担ってつねに周囲を警戒しているシークレットサービスのベテランは80%以上の確率でうそを見抜けるというデータもあります。 それに準じて言えば、私も人間の心理を見抜くメンタリストですから一般の人よりも高い確率でうそに気づくことができます。ただ、それでも2割から3割の穴はあり、騙されるときは騙されてしまうのです。 そこで、私はハイピングやオミッションの対策として、相手の話に出てくる数字、データについてしっかりとメモを取るようにしてきました。 そして、交渉の場で即断即決しないよう心がけていました。 なぜなら、その場を離れたあとに相手の示した数字やデータの裏づけを取るからです。 すると、業界の平均とは違う数字が出ていたり、伝えられたデータは全体の一部分を都合に合わせて加工したものであったり、といったケースに気づきます。つまり、相手は重要な部分をオミッションし、ハイピングを仕掛けていたわけです。 事実は都合のいいようにねじ曲げることができます。でも、ねじ曲げられていることに気づければ、そんな相手は信用しなければいいだけです。 そこで、あなたがハイピングを仕掛けられたとき、その被害を回避できるよう、うそを見抜くためのポイントを紹介します』、「私はハイピングやオミッションの対策として、相手の話に出てくる数字、データについてしっかりとメモを取るようにしてきました。 そして、交渉の場で即断即決しないよう心がけていました。 なぜなら、その場を離れたあとに相手の示した数字やデータの裏づけを取るからです」、上手いやり方だ。
・『うそをついた相手が発している6つのサイン  人はハイピングを仕掛けるとき、説得行動と回避行動が増えます。ここで言う説得行動、回避行動とは、聞き手を言いくるめるために出てしまう話し方の変化です。 【説得行動】1. 前置きが増える 2. いつもよりも細かい内容を話す 3. いつもよりも話が長くなる 4. ポジティブな単語が増える これらはうそに気づかれず、相手を説得したい気持ちの表れです。 まず、「実はね……」「正直に言うと……」「ここだけの話……」「驚くかもしれないけど……」など、前置きが増えます。これは前置きを増やすことで自分を落ち着かせ、ハイピングがスムーズに進むストーリーを練っているからです。 そして、信憑性を高めるために詳細なエピソードが入るので、結果的に話が長くなります。加えて、「本当にすごい儲け話なんだよ」「今しかないよい話だと思うよ」「俺も初めて聞いたときはめちゃくちゃ興奮した」など、ポジティブな感情をアピールする単語が増えます。これはうそに気づかれたくない気持ち、勢いで相手を押し切ろうという焦りがあるからです』、「ポジティブな感情をアピールする単語が増えます。これはうそに気づかれたくない気持ち、勢いで相手を押し切ろうという焦りがあるからです」、なるほど、気を付けたいものだ。
・『【回避行動】5. 曖昧な言葉遣いが増える 6. 一人称が少なくなる 聞き手が疑問に思ったことを質問したとき、「こう思うんだよね」「……かもしれない」「だったはず」といった曖昧な言葉遣いが増えます。 また、「私が」「僕が」など、一人称が少なくなる傾向も。これはハイピングを仕掛ける側にも、根底には「できれば正直でいたい」「うそはつきたくない」という思いがあるため、一歩引いた視点からストーリーを語ろうとするから。曖昧な言葉遣いと合わせて、責任を逃れたい気持ちの表れです。 交渉相手と話していて、ここに挙げたような説得行動、回避行動が出ていると感じたら要注意。この話には「うそがある」と疑っていきましょう。 その場で決断しないこと。話し手の勢いに押し流されないことが大切です』、「ハイピングを仕掛ける側にも、根底には「できれば正直でいたい」「うそはつきたくない」という思いがあるため、一歩引いた視点からストーリーを語ろうとするから。曖昧な言葉遣いと合わせて、責任を逃れたい気持ちの表れです」、「ハイピングを仕掛ける側にも」、一定の良心はあるようだ。この記事を読んだことで、「ハイピング」への免疫が出てほしいものだ。

次に、10月20日付け文春オンライン「食べログ“チェーン店点数急落訴訟”で公正取引委員会が異例の意見書」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/49448
・『「食べログにおいてアルゴリズムの変更で評点が急落したのは、飲食店の公正な競争に悪影響を及ぼし、独占禁止法に違反する」として、韓国料理チェーン「KollaBo」の運営会社・韓流村が食べログの運営会社・カカクコムを訴えている裁判で、公正取引委員会が異例の意見書を出していたことが「週刊文春」の取材でわかった。 食べログの点数が急落したのは2019年5月21日のこと。韓流村の任和彬(イムファビン)社長が言う。 (19年5月21日の前(上)と後(下)で点数が大幅変化 の図はリンク先参照)(「食べログ」公式HPより)』、興味深そうだ。
・『カカクコムはアルゴリズムを変更したことを認める  悪い口コミが増えたわけでもないのに、当社の店舗では、平均で0・2点、最大で0・45点も急に点数が下がったのです。他にも焼肉トラジ、一蘭、天一なども下がっていました。共通するのはみなチェーン店だということです。点数が下がったことで、当社の売上は月平均で約2500万円も落ち込みました」 そこで任社長は2020年5月、点数を下げる“チェーン店ディスカウント”で損害を負ったとして、訴訟に踏み切った。任社長が語る。 「カカクコム側はアルゴリズムを変更したことは認めたものの、『公平公正にやっている』と言うばかり。また、ぐるなびなどの競合他社も存在するから優越的地位にないと主張。最大の争点である点数については、『非会員など食べログと取引をしていない店舗にも用いられる指標で、韓流村との取引には当たらない』、だから不公正な取引方法を行った事業者を処罰する独禁法違反にはならないと、言い続けたのです」』、「カカクコム側」が点数が下がった理由を説明せず、「『公平公正にやっている』と言うばかり」とは酷いものだ。
・『食べログ側が優越的地位にあるかどうかも考慮要素  だが今年6月、裁判体が独禁法などの訴訟を中心に扱う民事第8部に変更になると、裁判官が公取に見解を求める。そして9月19日、公取から「公審第650号」と題された意見書が出されたのだ。 そこでは、カカクコム側の「取引には当たらない」との主張に対して、「点数」表示のサービスは〈「取引の条件又は実施」に当たると考えられる〉と否定。さらに今後の裁判において、食べログが優越的地位にあるかどうか、そしてアルゴリズムの設定・運営が恣意的になされたか否かについても、裁判の〈考慮要素となる〉と述べているのである。 独禁法に詳しい平山賢太郎弁護士は、「裁判所が公取に独禁法解釈の意見を聞くこと自体、異例のことです」と驚く』、「裁判所」が真剣に取り組みだした証で、喜ばしい。
・『意見書に関する見解を尋ねると…  「この意見書は、争点である点数について『取引』だと認めたことに意義があります。また、食べログ側が優越的地位にあるかどうかも考慮要素とされました。今後、明確な道筋に沿って、審議は進んでいくでしょう」 カカクコムに意見書に関する見解を尋ねると、広報担当者は「係属中の訴訟に関する内容のためコメントは控えさせて頂きます」と答えた。 一体なぜチェーン店の点数が下がったのか、食べログの会員になるとどのような特典があるのか、裁判の流れを変えた元公取の大物の意見書の中身、公取の意見書が出された後の裁判でのカカクコム側の反応など、詳しくは10月20日(水)16時配信の「週刊文春 電子版」及び10月21日(木)発売の「週刊文春」が報じている』、「裁判」の行方を注目したい。

第三に、10月26日付けPRESIDENT Onlineが掲載した成蹊大学客員教授の高橋 暁子氏による「「レビューの4割超がやらせ」アマゾンから怪しい日本語の感想がなくならない本当の理由 ステマ業者は法律で規制するべきだ」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/51198
・『ネット通販では一部の企業が悪質な「やらせレビュー」を大量発生させている。成蹊大学客員教授の高橋暁子さんは「こうした行為はレビューに対する信頼を傷つけ、消費者にも企業にもマイナスになる。欧米では違法化が進んでおり、日本でも早急に規制を強化すべきだ」という――』、「欧米では違法化が進んでおり」、またしても取り残されるとはみっともない。
・『アマゾンに投稿された4割超が不正レビュー  ネット通販では、商品に「レビュー」をつけられるサイトが多い。ただ、その内容には注意が必要だ。ある40代男性は「アマゾンのレビューは信頼できない。日本語として怪しいものも多いし、極端に点数が高いときは業者のやらせレビューではないか確認してから買うようにしている」と話す。同じように考える人は多いかもしれない。 2021年5月、セキュリティ製品のレビューサイトSafetyDetevtivesが、アマゾンで不正レビューを行う組織のデータベースを発見した。レビュー投稿を依頼する業者と顧客のやり取りのほか、20万人以上のメールアドレス、報酬の支払いに利用するPayPalアカウントなどが含まれていた。その直後、アマゾンから600以上の中国ブランドが削除された。いずれも不正レビューにかかわっていたとみられている。 新型コロナウイルスの感染拡大の影響でネット通販利用が伸びたことで、ステルスマーケティング(ステマ。中立な評価を装った広告)は増加傾向にある。不正レビューを判定するChrome拡張機能を提供するFakespotによると、コロナ禍でアマゾンの不正レビュー件数は急増し、投稿された7億2000万件のうち42%を占めるという。なぜこのような事態となっているのだろうか』、「コロナ禍でアマゾンの不正レビュー件数は急増し、投稿された7億2000万件のうち42%を占める」、とは驚かされた。
・『「悪質市場」批判で、不正レビューは削除したが…  アマゾンは、米通商代表部(USTR)から偽ブランドや偽造品などを販売または販売の手助けをしているとして、2019年と20年の2年連続で「悪質市場」に指定されている。 アマゾンは対処していないわけではない。カスタマーレビューについては規約で「他のお客様からの商品に対する率直な評価を反映したものである必要があります。その一方で、レビューが宣伝や販促の目的で利用されることのないよう、防止に努めています。販促目的でレビューを書くことは厳しく禁じられています。」と明記している。 2016年には、出品者が自身の商品や競合他社など金銭的利害関係を持つ商品に対してレビューを投稿する行為、また対価と引き換えに他人にレビューを依頼したり、レビューの変更・削除を求める行為を明確に禁止した。 また、詐欺や不正出品を防止するため、7億円以上の投資をして1万人以上を雇用。その結果100億件以上の商品の出品を防ぎ、2021年5月には小売業者らが同社の物流拠点に送ってきた商品のうち偽造が疑われる200万点以上を破壊処分もしている。同時に、パトロールと機械学習システムによって不正レビューの削除も行っている』、「アマゾン」が「米通商代表部(USTR)から偽ブランドや偽造品などを販売または販売の手助けをしているとして、2019年と20年の2年連続で「悪質市場」に指定」、「同社の物流拠点に送ってきた商品のうち偽造が疑われる200万点以上を破壊処分」、「パトロールと機械学習システムによって不正レビューの削除も行っている」、一応、企業努力もしているようだ。
・『売上目当ての悪徳業者とのイタチごっこ  しかし、実態はまだまだステマに当たる不正レビューがあふれている状態だ。これは、SNSなどアマゾンの監視の目が届かないプラットフォーム上でステマレビュー募集などの不正行為が横行しており、完全に排除することが難しいためと考えられる。 事実、FacebookやInstagramでは「ベスト1000レビュアーを募集中」「注文で半額返金し、レビューで全額返金」「PayPalで返金」といったステマレビューの取引行為が相次いでいる。自動で発見、削除したり、新規投稿を禁止するなど対処しているというが、執筆時点でまだまだ多くのレビュー募集が見られる。 つまりアマゾンがいくら対策をしても、次々と投稿を繰り返す業者との間で、イタチごっこになっているのだ』、「ステマレビューの取引行為が相次いでいる」、「アマゾンがいくら対策をしても、次々と投稿を繰り返す業者との間で、イタチごっこになっている」、よほど儲かるのだろう。
・『米英独は違法化で消費者を守っている  ステマレビューによって被害を受けるのは、高評価を信じて時に粗悪品を購入してしまう消費者だ。アマゾンに限らず、ネット上にあふれているステマは規制されないのだろうか。 ステマ対策は国ごとに異なっている。たとえば米国では、2009年に「広告における推奨及び証言の利用に関する指導」が改訂され、ステマは違法と規定された。PR活動において、広告主との関係や金銭授受の有無を公開することが義務付けられているのだ。 ヨーロッパでも、英国では2008年に不正取引からの消費者保護に関する規制法が施行され、ステマは違法と規定されているなど、違法とされることが多い。これはドイツでも同様で、消費者に広告と気づかせない方法で商品紹介サイトへ誘導する行為は違法とされる。違法となることで、ステマ投稿が減ることは間違いないだろう。 一方日本では、景品表示法や軽犯罪法に該当すれば違反とされるものの、ステマ自体を規制する法律は存在しない。WOMマーケティング協議会のガイドラインにより、広告主とインフルエンサーの関係を明示することとされているのみだ。投稿内に「#PR」「#タイアップ」など明記する必要があるとされるが、あくまで自主規制であり、ガイドラインに違反しても罰せられるわけではない。 ▽ディズニー作品でもステマが常態化か(執筆現在、検索サイトで「ステマ」と検索すると、関連キーワードとして「ディズニー」「フジ」「アナウンサー」などが表示される。 ディズニーとは、2019年末の「アナと雪の女王2」に関するステマ事件を指すと考えられる。ほぼ同時刻にTwitterで複数の漫画家によってレビュー漫画が投稿されたが、広告という表記がなかったため、ステマと疑われたのだ。その後漫画家らは、投稿が企業から依頼されたPR広告だった旨を説明のうえで謝罪している。 「フジ」「アナウンサー」とは、今年4月、フジテレビの女子アナたちのInstagramにおける美容室に関する投稿がステマだった疑惑を指すと見られる。当事者として名前が挙がった女子アナたち9人は後日、謝罪している。 さらにディズニーを巡っては、過去にアベンジャーズやキャプテン・マーベルでも同様に同時刻に複数の漫画レビューが投稿されていたことが明らかになるなど、ステマが常態化していたらしいこともわかっている』、「米英独は違法化で消費者を守っている」のに、「日本」が殆ど何もしてないとは情けない。業界関係者は猛省すべきだ。
・『消費者がレビューを信用できるようになるには  SNSを使ったPRは、投稿する人によっては高い宣伝効果が期待できる。しかし、ステマは信頼性を逆手に取って消費者を裏切る行為だ。 このインターネット時代、ステマが疑われれば誰でも簡単に検証可能だ。アナ雪のケースのように、同じ内容を一斉に投稿すればすぐに検索で「共犯者」が見つかる。ステマをしても罰せられることこそないが、信頼性を損ない、疑いの目で見られ続けることになることを考えると、長期的に見ればマイナスでしかないだろう。 現状、SNSなどで高評価をする場合、「ステマではないです」と断り書きを書かねばならなくなっている。またYouTubeでも、インフルエンサーらが企業から依頼されて商品を紹介する動画には「プロモーションを含みます」といったテロップが入る。 それだけステマが蔓延し、レビューが疑いの目で見られるようになっているということだ。これは消費者にとっても、SNSをマーケティングに活用したいすべての企業にとっても大きなマイナスであり、ステマを減らすことは双方のメリットにつながる。 失なわれたレビューへの信頼性を取り戻すために、法制化を含めて規制強化を検討すべき時期がきていると言える』、「ステマが蔓延し、レビューが疑いの目で見られるようになっているということだ。これは消費者にとっても、SNSをマーケティングに活用したいすべての企業にとっても大きなマイナスであり、ステマを減らすことは双方のメリットにつながる。 失なわれたレビューへの信頼性を取り戻すために、法制化を含めて規制強化を検討すべき」、同感である。
タグ:ネットビジネス (その11)(「黒いインフルエンサー」が使う超典型的な技術 「扇https://blog.ss-blog.jp/_pages/user/auth/article/index?blog_name=keiwasaki&id=114849694動情報」から自分を守るために必要な知識、べログ“チェーン店点数急落訴訟”で公正取引委員会が異例の意見書、「レビューの4割超がやらせ」アマゾンから怪しい日本語の感想がなくならない本当の理由 ステマ業者は法律で規制するべきだ) 東洋経済オンライン DAIGO 「 「黒いインフルエンサー」が使う超典型的な技術 「扇動情報」から自分を守るために必要な知識」 群集心理を扇動する権力者の黒いテクニックを見破る 「7つの黒いテクニック」のうち、本から抜粋して「ハイピング」 「群集心理を扇動する権力者の黒いテクニックを見破る」ことが出来るようになるとは、有難い。 「意図的に練り上げられたうそはほとんどの場合、バレません。 そこで、よく使われる情報発信の仕方の1つが、「オミッション」」、気を付けたい。 「私はハイピングやオミッションの対策として、相手の話に出てくる数字、データについてしっかりとメモを取るようにしてきました。 そして、交渉の場で即断即決しないよう心がけていました。 なぜなら、その場を離れたあとに相手の示した数字やデータの裏づけを取るからです」、上手いやり方だ。 「ポジティブな感情をアピールする単語が増えます。これはうそに気づかれたくない気持ち、勢いで相手を押し切ろうという焦りがあるからです」、なるほど、気を付けたいものだ。 「ハイピングを仕掛ける側にも、根底には「できれば正直でいたい」「うそはつきたくない」という思いがあるため、一歩引いた視点からストーリーを語ろうとするから。曖昧な言葉遣いと合わせて、責任を逃れたい気持ちの表れです」、「ハイピングを仕掛ける側にも」、一定の良心はあるようだ。この記事を読んだことで、「ハイピング」への免疫が出てほしいものだ。 文春オンライン 「食べログ“チェーン店点数急落訴訟”で公正取引委員会が異例の意見書」 「カカクコム側」が点数が下がった理由を説明せず、「『公平公正にやっている』と言うばかり」とは酷いものだ。 「裁判所」が真剣に取り組みだした証で、喜ばしい。 「裁判」の行方を注目したい。 PRESIDENT ONLINE 高橋 暁子 「「レビューの4割超がやらせ」アマゾンから怪しい日本語の感想がなくならない本当の理由 ステマ業者は法律で規制するべきだ」 「欧米では違法化が進んでおり」、またしても取り残されるとはみっともない。 「コロナ禍でアマゾンの不正レビュー件数は急増し、投稿された7億2000万件のうち42%を占める」、とは驚かされた。 「アマゾン」が「米通商代表部(USTR)から偽ブランドや偽造品などを販売または販売の手助けをしているとして、2019年と20年の2年連続で「悪質市場」に指定」、「同社の物流拠点に送ってきた商品のうち偽造が疑われる200万点以上を破壊処分」、「パトロールと機械学習システムによって不正レビューの削除も行っている」、一応、企業努力もしているようだ。 「ステマレビューの取引行為が相次いでいる」、「アマゾンがいくら対策をしても、次々と投稿を繰り返す業者との間で、イタチごっこになっている」、よほど儲かるのだろう。 「米英独は違法化で消費者を守っている」のに、「日本」が殆ど何もしてないとは情けない。業界関係者は猛省すべきだ。 「ステマが蔓延し、レビューが疑いの目で見られるようになっているということだ。これは消費者にとっても、SNSをマーケティングに活用したいすべての企業にとっても大きなマイナスであり、ステマを減らすことは双方のメリットにつながる。 失なわれたレビューへの信頼性を取り戻すために、法制化を含めて規制強化を検討すべき」、同感である
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教育(その26)(文科省が進める「生命の安全教育 性教育と言えないのはなぜ?、秋田県の子どもの学力が「13年間連続トップクラス」なワケ) [社会]

教育については、6月15日に取上げた。今日は、(その26)(文科省が進める「生命の安全教育 性教育と言えないのはなぜ?、秋田県の子どもの学力が「13年間連続トップクラス」なワケ)である。

先ずは、7月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したフリーライターの小川 たまか氏による「文科省が進める「生命の安全教育」、性教育と言えないのはなぜ?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/276274
・『今年から公立学校で試験的にスタートしている「生命(いのち)の安全教育」。性犯罪・性暴力の被害者にも加害者にもならないための教育であり、中身は「性の安全教育」だが、そのように名付けられていない。識者は、2000年代の性教育バッシングの影響が今も残ると指摘する』、興味深そうだ。
・『中身は「性」なのに、なぜ「生命」と呼ぶのか  公立校で「生命(いのち)の安全教育」が始まりつつあることをご存じだろうか。文部科学省(以下、文科省)では2021年から複数の学校での実証を行い、2023年には全国の小中高において普及・展開を図る予定だ。 「生命(いのち)の安全教育」と聞くだけでは、その内容を推測できる人は少ないだろう。文科省の説明を読めば、これは明確に、性犯罪・性暴力を防ぐための教育であることが分かる。子どもたちを、性暴力の被害者にも加害者にもしないための教育を目指すとされている。 しかしそれではなぜ、「性教育」や「性に関する安全教育」とはせずに言葉を選んだのだろうか。 この背景には、2000年代に行われた性教育への激しいバックラッシュ(反動)や、保守議員に根強い性教育への抵抗感があると指摘されている。(参照:政治家のジェンダー意識改革を止めた?2000年代の「バックラッシュ」とは) とはいえ、性教育の「暗黒時代」からようやく一歩を踏み出したとはいえる。日本の性教育の過去と現在について、一般社団法人“人間と性”教育研究協議会代表幹事で、複数の大学でセクソロジーに関する講座を担当してきた経験を持つ水野哲夫氏に話を聞いた(Qは聞き手の質問、Aは水野氏の回答)』、「2000年代に行われた性教育への激しいバックラッシュ(反動)」とはどういうことだろう。
・『日本の性教育は2000年代に大きく後退した  Q:まず、日本の性教育の歴史について簡単にご説明をお願いします。 水野哲夫氏(以下略) 1980年代後半に「エイズパニック」がありました。間違った報道も多かったのですが、このときの危機感から公立学校で性教育が行われるようになりました。日本の教育機関は問題対処型ですが、性教育の始まりについてもそうですね。90年代は性教育が盛んで、文部省(当時)としての最高の到達点は、同省が1999年に出した『学校における性教育の考え方、進め方』でした。 この中では、学校教育の中で行われた性教育を振り返り、反省点を認めつつこれからも続けるという前向きさが見えます。しかしその後すぐにバックラッシュが起こります。 Q:2003年の七生養護学校事件(※)が有名ですね。 A:はい。その頃から現場の教員が教育委員会から「授業で使ったプリントや教材を提出しろ」と言われたり、「こういう授業をするな」と言われたり、それまでのように性教育を行えなくなりました。教員を続けられないほどのプレッシャーを感じた人もいたそうです。 ※七生養護学校事件…東京都日野市の養護学校で行われていた性教育の授業を自民党議員らが視察して批判。東京都教育委員会が当時の校長や教職員に厳重注意処分を行った。その後、民事裁判でこれが不当介入であったことや、元校長らへの処分取り消しが認められている。 当時の圧力が不当であったことは認められたものの、現場が萎縮した期間が長かったことの弊害は続いています。文科省は20世紀を最後に「性教育」という言葉をやめました。「性に関する指導」と言い換えるようになったんですね。 Q:そこにはどんな意味があるのですか。 A:これは明確に言及されているわけではないですが、「〜教育」よりも「〜に関する指導」の方がランクは下です。たとえば「情報モラル教育」とか「国際理解教育」という場合には、学校はカリキュラムを作って系統的に教えなければいけません。 けれど「〜に関する指導」とは、各学校で状況判断をして、必要があれば集団指導と個別指導を上手に組み合わせて行ってください、というようなものです。学校長が「うちは問題ないから個別指導でよい」と判断したら、そうなってしまいます。 Q:つまり、性暴力防止対策の「生命(いのち)の安全教育」は必須となる予定なのに「性に関する指導」は任意。 A:そうですね。「性に関する指導」では体の器官や月経、性感染症については教えますが、性交について教えることにはなっていません。たとえば、コンドームは性感染症予防になるという知識は教えますが、使い方や性交について教えるわけではないので、「コンドームって東京ドームとかと同じ建物のことだと思っていた」という子どもも中にはいるんですね。 Q:ちょっと変ですよね。性行為について教えることは極力避けながら、性暴力の防犯を教えることができるのでしょうか。 A:そこが非常に謎に満ちています』、「七生養護学校事件」は明白な政治による「教育」への介入だ。保守政治家は「性」にうるさいのだろう。最終的に裁判に勝っても、「現場が萎縮した期間が長かったことの弊害は続いています」。
・『なぜ「性の安全教育」と言えなかったのか  Q:性教育を忌避していた時代が長かったのに、文科省が急に「生命(いのち)の安全教育」をスタートさせたことを水野さんはどう見ていらっしゃいますか? A:そもそもこれは、文科省主導の取り組みではありません。2020年6月に、内閣府の男女共同参画で「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」が決定し、内閣府、警察庁、法務省、文科省、厚生労働省の各省庁がそれぞれの対策を行うことになりました。 ※参考:2020年6月11日の通知 昨今報道されることが増えた、わいせつ教員への厳正な処分や学校で相談を受ける際の体制の強化など文科省の課題はいくつかあり、その中のひとつという位置付けです。 Q:「性教育」という文脈ではない。 A:はい。文科省の関係者が「これは性に関する指導ではない」と明言したと聞いています。 Q:そもそも、なぜ「生命(いのち)の安全教育」と名付けたのか。 A:中身からすると、どう見ても「性の安全教育」なんですよね。「性暴力、性犯罪の被害者にも加害者にもしない」という意図は明確ですし、そこには「性」という文字が出てくるのです。やはり保守派議員からの「性教育」への抵抗感が根強かったようだと聞いています。 Q:性教育をなぜそこまで忌避するのか、一般からすると分かりづらい感覚だと思います。 A:根本にあるのは、「日本の伝統的な家族観を破壊する」という考え方です。選択的夫婦別姓や同性婚の反対と同じですね。性教育や男女平等の考え方は、それを脅かすものとなっていると考える人は政治家の中にも一定数います』、「性教育を」「忌避する」のは、「日本の伝統的な家族観を破壊する」という考え方です。選択的夫婦別姓や同性婚の反対と同じですね。性教育や男女平等の考え方は、それを脅かすものとなっていると考える人は政治家の中にも一定数います」、なるほど。
・『工夫が必要な点はあるが、やらないより100倍よい  Q:ともあれ、「生命(いのち)の安全教育」が2020年から試験校で始まりました。教材を見てどのような感想をお持ちですか? ※「生命の安全教育」の「教材及び指導の手引き」は文科省のサイトから確認することができる。 A:まず、やらないよりもやった方がよいのは間違いありません。一歩前進であることは間違いないのですが、とはいえ、やはり改善点は多いと感じています。 Q:どのような点でしょうか? A:たとえば、中学生向けと高校生向けの資料がほとんど同じなんですね。その年齢の成長は著しいですから、小学校を卒業したばかりの12歳と、間もなく成人を迎える18歳が同じでよいとは思えません。大雑把な作り方をしている。 また、イラストが「女性」「男性」に描き分けされているところも気になります。「Consent for kids」という動画と同じように棒人間でよいと思いますね。同性同士での被害もありますし、性自認も多様ですから。※「Consent for kids」…イギリスで制作された性的同意を子どもが学ぶための動画。大人のための「Consent-it’s simple as tea」もある。日本語吹替版は函館性暴力防止対策協議会が作成。 Q:そのほかに気になる点はありますか。 A: 「痴漢」に関する記述が一切ありません。痴漢こそ、最も多くの生徒たちが被害を受けている身近な性暴力なのですが。 ※「青少年の性行動全国調査報告」(2017年)によれば、痴漢の被害率は、高校生(女子10.6%、男子1.4%)、大学生(女子24.0%、男子2.5%) また、もっとも気になっているのが、最初に「よい人間関係ってどういうものか考えてみよう」と問いを出して、そのすぐ後に答えを提示している点です。生徒たちが自分で考えるプロセスを大切にして、豊かな結論を導き出すことが大事だと思うのですが、これでは「良い人間関係とは自分も相手も大切にすることです」「性暴力の被害者は悪くありません、加害者が悪いのです」といった徳目を実感なく覚えることになってしまうのではないか。その点を心配しています。 とはいえ繰り返しになりますが、やらないよりやるほうが100倍いいです。見直しや工夫を重ね、より良いものにしていってほしいと考えています』、「生命の安全教育」は「やらないよりもやった方がよいのは間違いありません。一歩前進であることは間違いないのですが、とはいえ、やはり改善点は多いと感じています」、「見直しや工夫を重ね、より良いものにしていってほしい」、同感である。

次に、10月26日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した阿部 昇氏による「秋田県の子どもの学力が「13年間連続トップクラス」なワケ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/283900
・『13年間連続で学力トップクラスの秋田県  今年も文部科学省が「全国学力・学習状況調査」の結果を公表した。秋田県は、第1回以来、今年まで13年連続でトップクラスの結果を出している。小学校・中学校ともに、国語、算数・数学でほぼ上位3番以内に入っている。 秋田県が連続でトップクラスの結果を残している要因はさまざまあるが、ここでは三つに絞って紹介していきたい』、「秋田県」が「13年連続でトップクラスの結果を出している」、とは初めて知って、驚いた。
・『要因1 秋田県のスタンダード「探究型授業」  まず注目したいのが、県内の小学校・中学校で20年以上前から行われている「探究型授業」だ。 探究型授業とは、子ども同士の対話を生かしながら課題を解決していくスタイルの授業である。秋田県では、国語や算数・数学などをはじめほとんどの教科で、この探究型授業が行われている。2017年の学習指導要領では「対話的な学び」の授業を進めるべきだという提言がされたが、探究型授業はその典型的なかたちであり先駆けといえる。 全国学力・学習状況調査では、子ども一人一人に児童・生徒質問紙、各学校に学校質問紙が配布され、それに答えるという調査も含まれる。次の質問をみてほしい。 (学級の友達・生徒との間で話し合う活動を通じて、自分の考えを深めたり、広げたりすることができていますかの質問で「1.当てはまる」と答えた子どもの割合の表はリンク先参照) 秋田県は、上記の質問で「当てはまる」と答えた子どもの割合が小・中ともに全国で最も高かった。探究型授業が、スタンダードなものとして県内全域で行われていることの証拠である。そのため、秋田の子どもたちは、自ら考えを深め記述して答える設問に強い。 ここで今年の全国学力・学習状況調査の記述式設問における秋田県の平均正答率を確認しよう。(秋田県の記述式設問における正答率の表はリンク先参照) 秋田県は記述式設問での正答率が、全国平均よりもかなり高いことがわかる。さらに同じ記述式でも、国語では複数の情報を関連させながら答える設問、算数・数学では数式の意味を言葉でわかりやすく説明する設問などで、全国平均をより大きく上回る好結果を出している。これはOECD(経済協力開発機構)が2000年に始めた国際学力調査PISA(生徒の学習到達度調査)でも、特に重視されている高次の学力要素である。 また、秋田県は無回答率も他の都道府県に比べたいへん低い。今年の全国学力・学習状況調査で秋田県は、小学校・中学校の全ての教科でもっとも無回答率が低かった。 秋田県の無回答率の低さも探究型授業に深く関わっている。 (秋田県の平均無回答率の表はリンク先参照) 探究型授業では、学習課題を子どもと先生で決める。その後、課題についてまず一人で考え、次にそれをグループで検討する。その結果を学級に発表して話し合うという過程を繰り返しながら、課題の解決をはかっていく。そして、最後に学びを振り返り文章にまとめる。 普段からこのような授業に参加している秋田県の子どもたちは、難しい課題に挑戦することが当たり前となっている。だから、全国学力・学習状況調査の中で難しい設問に当たっても、ひるまずに自分の力で答えを模索しようとする』、「秋田県」は極めて先進的な「教育」をしているようだ。
・『要因2 家庭学習の質の高さを保障する取り組み  家庭学習について考えるとき、通塾率との関係にも着目する必要がある。児童・生徒質問紙を見ると、秋田県の子どもの通塾率は全国的に見てたいへん低い。 秋田県は、学習塾の先生や家庭教師に「教わっていない」と答えた割合が、小学校では全国でもっとも高く、中学校では全国で3番目の高さだった。 そういう中でも秋田県の子どもたちは、家庭学習を充実させている。それを実現しているのが「家庭学習ノート」だ。 まず先生の助言を受けながら、自分で家庭学習の計画を立てる。その時、復習・予習のほか、自分で発展的に学習したいことも盛り込む。その計画に基づき「家庭学習ノート」を使って家庭学習を行う。そのノートを翌日、先生に提出すると、先生は帰りまでにそれを確認して赤ペンでコメントをして返してくれる。先生の赤ペンを励みに子どもは家庭学習を改善していく。つまり、先生が子どもたちに家庭学習の具体的な方法を丁寧に指導することで、家庭学習の習慣化を形作っている。 その成果として、秋田県の子どもたちの多くは、自分で計画を立てて家庭学習を進める習慣が身に付いている。 次の学校質問紙、児童・生徒質問紙、それぞれの質問について、秋田県は全国でもっとも高い値だった。 (家庭学習の取組として学校では児童・生徒に家庭での学習方法等を具体的に挙げながら教えるようにしましたか(教科共通)の質問で「1.よく行った」と答えた学校の割合の表はリンク先参照) 家で自分で計画を立てて勉強をしていますかの質問で「1.よくしている」と答えた子どもの割合の表はリンク先参照) 子どもの家庭学習を充実させたい場合は、先生に相談し家庭学習の計画立案などについて助言してもらうとよい。また、毎日でなくても家庭学習のノートを先生に見てもらい、赤字のコメントを入れてくれるようにお願いすることは、可能であろう』、「庭学習のノート」も理想的だが、「先生は帰りまでにそれを確認して赤ペンでコメントをして返してくれる」、忙しい「先生」にとっては手間だろうが、教育効果は高そうだ。
・『要因3 子どもたちの前向きな学習姿勢  子どもたちの学習姿勢についても、ぜひ触れたい。秋田県の子どもたちは学習に対してたいへん前向きである。次の児童・生徒質問紙の答えを見てほしい。 (A.国語の勉強は大切だと思いますかの質問で「1.当てはまる」と答えた子どもの割合の表、B.算数・数学の勉強は大切だと思いますかの質問で「1.当てはまる」と答えた子どもの割合の表はリンク先参照) 国語、算数・数学の勉強を大切だと考える子どもたちの割合は、全国平均に比べて非常に高い。Aの中学校は2番目、それ以外は全国で一番高い割合だった。これには、探究型をスタンダードとする普段の授業のあり方が深く関係している。課題を自分たちで解決したり、その過程を自分たちの言葉で表現したりする中で、学びの意義を実感するようになっていると考えられる。 また、秋田県の先生は子どもたちをとにかくよくほめる。次の児童・生徒質問紙からも明らかだ(2021年はこの質問がないため、2019年児童・生徒質問紙から引用)。 (先生はあなたのよいところを認めてくれていると思いますかの質問で「1.当てはまる」と答えた子どもの割合の表はリンク先参照) これらは、子どもたちが先生を強く信頼するということにもつながっている。そういう環境で育つ子どもたちは、学校の活動に前向きに臨むようになる。保護者も先生を強く信頼している。これらもまた、秋田の学力に大きく影響しているといえる』、「秋田県」の教育は実に理想的だ。もっと有名であってもいいのではなかろうか。
・『秋田県の大学進学率が低い理由とは  最後に大学進学率について少し考えたい。実は、秋田県は、同じく全国学力・学習状況調査で上位県の石川県、福井県に比べると大学進学率が低い。2020年の大学進学率は45.0%、全国でも6番目の低さである(注1)。しかし、秋田県の子どもたちは、高校進学後に学力を下げているわけではない。 秋田県の大学進学率の低さには、二つの理由がある。一つは、各都道府県の1人あたりの平均所得との関係である。秋田県の大学進学率の低さは、各都道府県の1人あたりの平均所得が連動している。大学進学率と各都道府県の平均所得との相関係数は約0.6とその相関がみてとれる(注2)。 日本はOECD加盟国の中で、対GDPの公費による教育費の支出が極めて低い。その分、私費つまり各家庭が負担する教育費がかなり多くなっている。そのため、各家庭の収入が大学進学率に連動するかたちになっているのだ。 もう一つは、各都道府県にある大学の数と大学進学率の相関だ。大学が多ければ多いほど、大学進学率も高くなる傾向にある。これは前述した平均所得とも関係するが、自宅から通える距離に大学があることが重要なのだ。 秋田県の子どもたちの多くが、小学生・中学生のころから「将来の夢」を持っている。これは全国でも小・中ともにもっとも高い割合である。 将来への夢を持っている子どもたちが、各家庭の所得や地域にある大学数によって大学進学がかなわないとしたら、これは問題である。 たとえばフィンランドは大学の学費が無料、その上学生たちに返還義務のない奨学金が支給される。日本がせめてOECD平均くらいの教育費の公費負担になれば、この状況はかなり改善されるだろう。 秋田県には、全国各地だけでなく海外からも数多くの教育視察が訪れる。高次の学力を育てる探究型授業、質の高い家庭学習、子どもたちの前向きな学習姿勢、さらには無回答率の低さなど、いずれもこれからの教育で目指すべき方向を示唆している。秋田県の教育は、これからの日本の教育のモデルの一つとなることは間違いない。 注1:文部科学省「学校基本調査 / 令和2年度 卒業後の状況調査 高等学校 全日制・定時制 」2020年 注2:注1の資料及び内閣府「県民経済計算(2018年度)」2021年をもとに算出 (秋田大学大学院教育学研究科・特別教授 阿部 昇)』、「秋田県には、全国各地だけでなく海外からも数多くの教育視察が訪れる。高次の学力を育てる探究型授業、質の高い家庭学習、子どもたちの前向きな学習姿勢、さらには無回答率の低さなど、いずれもこれからの教育で目指すべき方向を示唆している。秋田県の教育は、これからの日本の教育のモデルの一つとなることは間違いない」、にも拘らず、「将来への夢を持っている子どもたちが、各家庭の所得や地域にある大学数によって大学進学がかなわないとしたら」、もったいないことこの上ない。「大学数」はともかく、「返還義務のない奨学金」の充実などにより、「大学進学」が高まってほしいものだ。
タグ:(その26)(文科省が進める「生命の安全教育 性教育と言えないのはなぜ?、秋田県の子どもの学力が「13年間連続トップクラス」なワケ) 教育 阿部 昇 ダイヤモンド・オンライン 「生命の安全教育」は「やらないよりもやった方がよいのは間違いありません。一歩前進であることは間違いないのですが、とはいえ、やはり改善点は多いと感じています」、「見直しや工夫を重ね、より良いものにしていってほしい」、同感である。 「2000年代に行われた性教育への激しいバックラッシュ(反動)」とはどういうことだろう。 小川 たまか 「七生養護学校事件」は明白な政治による「教育」への介入だ。保守政治家は「性」にうるさいのだろう。最終的に裁判に勝っても、「現場が萎縮した期間が長かったことの弊害は続いています」 「秋田県の子どもの学力が「13年間連続トップクラス」なワケ」 「性教育を」「忌避する」のは、「日本の伝統的な家族観を破壊する」という考え方です。選択的夫婦別姓や同性婚の反対と同じですね。性教育や男女平等の考え方は、それを脅かすものとなっていると考える人は政治家の中にも一定数います」、なるほど。 「文科省が進める「生命の安全教育」、性教育と言えないのはなぜ?」 「秋田県」が「13年連続でトップクラスの結果を出している」、とは初めて知って、驚いた。 要因1 秋田県のスタンダード「探究型授業」 「秋田県」は極めて先進的な「教育」をしているようだ。 要因2 家庭学習の質の高さを保障する取り組み 「庭学習のノート」も理想的だが、「先生は帰りまでにそれを確認して赤ペンでコメントをして返してくれる」、忙しい「先生」にとっては手間だろうが、教育効果は高そうだ。 要因3 子どもたちの前向きな学習姿勢 「秋田県」の教育は実に理想的だ。もっと有名であってもいいのではなかろうか。 「秋田県には、全国各地だけでなく海外からも数多くの教育視察が訪れる。高次の学力を育てる探究型授業、質の高い家庭学習、子どもたちの前向きな学習姿勢、さらには無回答率の低さなど、いずれもこれからの教育で目指すべき方向を示唆している。秋田県の教育は、これからの日本の教育のモデルの一つとなることは間違いない」、にも拘らず、「将来への夢を持っている子どもたちが、各家庭の所得や地域にある大学数によって大学進学がかなわないとしたら」、もったいないことこの上ない。「大学数」はともかく、「返還義務のない奨学金」の充実などに
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いじめ問題(その11)(小山田圭吾氏を「引きずり下ろした」政府が隠したい 日本のいじめの不都合な真実、「処分はしない」能代イジメ16歳自殺未遂 高校が保護者に伝えた驚きの“言い分”、「いじめで不登校→中卒フリーター→弁護士」の東京都議が成し遂げたいたった一つのこと 社会の優しさを感じたことがない) [社会]

いじめ問題については、5月3日に取上げた。今日は、(その11)(小山田圭吾氏を「引きずり下ろした」政府が隠したい 日本のいじめの不都合な真実、「処分はしない」能代イジメ16歳自殺未遂 高校が保護者に伝えた驚きの“言い分”、「いじめで不登校→中卒フリーター→弁護士」の東京都議が成し遂げたいたった一つのこと 社会の優しさを感じたことがない)である。

先ずは、7月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「小山田圭吾氏を「引きずり下ろした」政府が隠したい、日本のいじめの不都合な真実」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/277302
・『政府が小山田氏の人事にプレッシャーをかけた理由  「イジメや虐待はあってはならない行為」「大会組織委員会が適切に対応してほしい」。今月19日、加藤勝信官房長官は、五輪開会式で音楽を担当していた小山田圭吾氏の「障害者いじめ」問題についてこのように述べた。 一般市民にはわかりづらいが、これを「永田町語」に翻訳すると、大会組織委員会(組織委)に対して「何が留任だよバカ、さっさと辞任させろ」と強く迫っていることに他ならない。事実、この官房長官会見から6時間ほど経過した同日夕方に、小山田氏は辞意を表明し、夜にはそれを組織委員会が受け入れている。 多くのメディアは、小山田氏に引導を渡したのは「官邸」だと指摘している。 「当然だろ、あのまま留任していたら世界に日本の恥をさらしてしまう」という反応の方が多いだろうが、永田町界隈ではこの対応はかなり驚かれた。これまで官邸は、組織委員会がどんなに世界に恥をさらしても「人事」については一歩引いたスタンスだったからだ。 事実、森喜朗前会長の女性蔑視発言では、加藤官房長官は「辞任うんぬんということは、組織委でそもそも決めること」と我関せずの姿勢を貫いた。五輪に政治介入しない、という政府の原理原則に沿った加藤氏らしい「模範回答」だ。 しかし、今回はそうではなかった。「おい!早く、あのヤバい奴をクビにしろ!」と言わんばかりに前のめりで組織委にプレッシャーをかけている。では、なぜこのような異例の対応になったのかというと、政治の世界に生きる人々からは、「首相のメンツを守るためだったのでは」という指摘が多い』、「首相のメンツを守るため」であれば、「異例の対応」もするようだ。
・『辞任翌日は菅首相のスピーチが…矛盾を避けるためにはどんなことでもやる!  小山田氏が辞任した19日の翌日、菅義偉首相がIOC総会でスピーチし、この大会のテーマ「多様性と調和」を訴え、「女性アスリートの割合は過去最高」と胸を張った。そして、「心のバリアフリー精神を世界に発信したい」なんて、キャッチーなスローガンまで披露している。 もしこの段階で、小山田氏が辞任していなかったらどうか。 「障害者いじめをしていた人間の音楽を開会式で流しておいて、よくそんなことが言えるな」というツッコミが世界中から寄せられ、官邸スタッフが徹夜でつくったスピーチは大スベリしていた恐れもある。この最悪の事態を避けるため、「諸悪の根源」である小山田氏に消えてもらうしかなかった、と永田町の一部ではささやかれているのだ。 確かに、いかにも官邸が考えそうなことだ。安倍晋三前首相が森友学園問題の追及を受けて発した「私や妻が関係していたら首相や議員も辞める」という国会答弁とつじつまを合わせるため、財務省が書類を改ざんしたことからもわかるだろう。国家中枢にいるエリートたちというのは、首相が発したメッセージの「矛盾」を解消するためならばどんなことでもする。 そういう意味では、この推測にはまったく同意だが、一方で、官邸がここまで大慌てで火消しに奔走したのは、「首相のメンツ」からさらにもう一歩踏み込んだ、「国家のリスク」も考慮したからではないか、と個人的には考えている』、「森友学園問題」にみるように、「国家中枢にいるエリートたちというのは、首相が発したメッセージの「矛盾」を解消するためならばどんなことでもする」、「国家のリスク」とはどういうことだろう。
・『人権問題に世界から厳しい目 日本の「いじめ」の不都合な真実  小山田氏が開閉会式の音楽担当というポジションに居座り続けたまま五輪がスタートした場合、「日本の人権意識ってどうなの?」という国際的な批判に発展してしまう可能性が高い。そうなると当然、話題は「障害者いじめ」にとどまらず、日本の人権問題全般へとフォーカスが当たってしまう。 これは何かとまずい。日本は、多様性や人権関連でいくつか深刻な問題を抱えているからだ。まずひどいのが「男女平等」だ。 世界経済フォーラム(WEF)が今年3月に発表した2021年版「ジェンダー・ギャップ指数」では、日本は世界156カ国中、120位。G7の中でダントツに低いだけではなく、日本人が何かと「下」に見る韓国(102位)、中国(107位)より男女平等が実現できていない。 「人手不足は低賃金の外国人労働者でスカッと解決!」でお馴染みの「技能実習生」にも海外から厳しい指摘が多い。例えば、今年7月、米国務省は、世界各国の人身売買に関する報告書の中で、日本の技能実習制度を「外国人労働者搾取のために悪用し続けている」と批判し、日本政府に対しても、「最低基準を満たしていない」とダメ出しをしている。 しかし、これらよりも日本政府が悪目立ちさせたくない問題がある。「いじめ」だ。実はこの分野に関しては、我々日本人の間でもあまり知られていない「不都合な真実」がある。それは「日本でいじめられている子どもたちは、世界と比較して最も“絶望”を感じている」というものだ』、「日本でいじめられている子どもたちは、世界と比較して最も“絶望”を感じている」ことは、確かに外国人には隠しておきたい日本の恥だ。
・『日本のいじめは「傍観者」が多く、「消極的にいじめを容認する」  昨年9月、ユニセフが「イノチェンティ レポートカード16 子どもたちに影響する世界 先進国の子どもの幸福度を形作るものは何か」を発表した。その中で、先進国38カ国を対象に生活満足度が高い子どもの割合を調べたところ、トップのオランダ(90%)を筆頭に先進国のほとんどが8〜7割におさまっているところ、日本は62%と37番目だった。 なぜ日本の子どもたちは「幸せ」を感じられないのか。ひとつの要因は「いじめ」だ。各国で、頻繁にいじめを受けている子どもの生活満足度の高さを調べたところ、どの国でもいじめを受けていない子どもよりも低くなるという結果が出た。当然と言えば当然の結果だが、そこで注目すべきは日本の割合だ。 「日本についても、頻繁にいじめられている子どものうち生活満足度が高い子どもの割合は約50%で、これは、調査対象となった国々の中でほぼ最も低い割合でした」(レポートカード16) これは見方を変えれば、日本でいじめを受けている子どもというのは、あらゆる国の子どもの中で最も「絶望」を感じている、ということもである。 「大袈裟なことを言うな、日本のいじめなんて海外に比べたらかわいいものだ」という声も聞こえてきそうだが、実はこの「不都合な真実」を裏付けるような、データがある。少し古いが、国立教育政策研究所と文科省が編纂した「平成17年度教育改革国際シンポジウム報告書」におさめられた、「いじめー傍観者と仲裁者ーの国際比較」というものだ(参照:PDF)。 日本とヨーロッパ3カ国のいじめを調べたところ、いじめの発生率は日本はそれほど高くない。むしろ、低いくらいだ。しかし、他国には見られない日本だけの特徴が浮かび上がった。 それは日本のいじめ現場は、他国と比べて、いじめを見て見ぬふりをする「傍観者」がやたらと多くて、やめさせようという「仲裁者」が少ないということだ。 他国では、中学生くらいになると、「傍観者」の割合が減って、いじめをやめさせようという「仲裁者」が増えていく。しかし、日本だけは「傍観者」が中学に入っても右肩上がりで増えて、逆に「仲介者」は減っていく。日本のいじめ現場というのは、自分がいじめてなくても、「消極的にいじめを容認する」というスタンスの人が他国と比べても多いという特徴がある。 これを踏まえれば、先ほどのユニセフ調査結果にも納得だ。いじめられても、周囲が見て見ぬふりをして、誰も手を差し伸べてくれないという状況は「絶望」以外の何ものでもない。つまり、「日本の子どもの精神的幸福度は38カ国中37位」というのは、我々日本人が知らぬ間に刷り込まれている「消極的にいじめを容認する」という傍観者カルチャーが影響している可能性があるのだ』、「「日本の子どもの精神的幸福度は38カ国中37位」というのは、我々日本人が知らぬ間に刷り込まれている「消極的にいじめを容認する」という傍観者カルチャーが影響している可能性がある」、「傍観者カルチャー」とは卑怯で、恥ずべきことだ。
・『TVやSNSで飛び交う「擁護発言」 いじめ被害者のことをどれだけ考えたのか  「そんなのは貴様の勝手な妄想だ」という声もあろうが、実はこの仮説を裏付けるような現象を、我々はこの1週間ほど目の当たりにしている。それは、小山田氏の問題が発覚してからの、ワイドショーのコメンテーター、あるいはネットやSNSで「論客」と呼ばれるような方たちから繰り返される「擁護発言」だ。筆者が実際に耳にしたものだけでも、ざっとこんな感じだ。 「確かに小山田氏のやったことは許されることではないが、叩けばいいというものなのか。あのような行為や発言が容認された時代背景から問題を考えるべきだ」「このインタビューがネットで話題になるのはもう3回目、犯罪者でもないのに、いつまで社会的制裁を受けなくてはいけないのか」「小山田を叩いている人は、かつて小山田氏が障害者にやったことを同じことをしていることを自覚すべきだ」 「過ちを犯した人を、排除をすればいいというのも五輪の精神からして違うのではないかと思う」 一見すると、公正公平で、理性的な意見のような気もするが、これらの主張に共通するのは、ある人々の視点が気持ちいいくらいに見事に抜け落ちていることだ。「いじめ被害者」である。 10年経とうが、40年経過しようが、レイプやセクハラを受けた女性の心の傷が決して癒えることがないように、いじめられた側が受けた心の傷は決して癒えることがない。忘れたくても死ぬまでつきまとい続ける。 記者時代、子どもの時に壮絶ないじめを受けた男性にインタビューをしたことがある。小山田氏がやったほどではないが、不良グループから、殴られ蹴られ、女子の前で裸にされたり、お尻の穴に棒を入れられたりという性的な嫌がらせも受けた。遺書にいじめっ子の名前を書き連ねて、自殺しようと考えたことも何度もあったという。 ただ、本当の問題はそれが「大昔」のことではないということだ。いじめから20年以上が経過しても時々、いじめられていた時の夢を見て叫んで目が覚める。なぜ自分だけはあんな目に遭わないといけなかったのか。避けられなかったのか。それとも、自分が悪いのか。ずっと悩んで自分を責め続ける。混み合ったエレベーターに乗っていた時に、集団で袋叩きにされた記憶がフラッシュバックして、吐きそうになったこともあるという。 こういう「被害者の現実」を少しでも知っていたら、「過去の過ちは許されないのか」「いつまでも叩き続けるのは逆にいじめだ」なんて言葉が軽々しく出るわけがないのだ。 事実、ハリウッドなどでも有名俳優や大物プロデューサーが30年上前に犯したセクハラなどで告発され、謝罪に追い込まれ、社会的制裁も受けているが、その際に、マスコミが「彼がセクハラをした時代背景も考慮すべきでしょう」なんてワケのわからない擁護はしない。 人間としての尊厳を踏みにじった相手に対して謝罪も償いもしていない加害者は、何年、何十年も経とうが批判されるのは、どのような国であっても「常識」なのだ』、「人間としての尊厳を踏みにじった相手に対して謝罪も償いもしていない加害者は、何年、何十年も経とうが批判されるのは、どのような国であっても「常識」なのだ」、その通りだ。
・『「いじめっ子に罰を与えるのもどうかと思うよ」 日本社会は加害者をやたらかばう  しかし、日本ではなぜか加害者をやたらかばう。特に異様なのが、「小山田氏を叩いている人は、小山田氏がやったことと同じことをしている」という主張だ。ネットリンチだ、イジメだと大騒ぎするが、小山田氏が叩かれているのはたかだかこの1週間程度の話。もっといえば、あれだけのことをして一部から批判もされてきたのに、なんの説明もなく五輪の仕事を引き受けた結果なのだから、「自業自得」といっていい。 なんの落ち度もなく、障害を抱えていたというだけの理由で小山田氏にいじめられ、その記憶を40年近くも引きずっている被害者と、どこをどう見たら「同じ」なのかまったく理解に苦しむが、このように考える人が一定数存在する。 特にワイドショーにはそういう同調圧力が強い。「いじめは絶対に許されないことだというのは大前提として」と予防線を張って、やたらと批判をやめろと呼びかける。 確かに、小山田氏の息子などにからむなどの行為は許されることではない。しかし、小山田氏のような振る舞いを「悪」だと断罪しなければ、かつての小山田氏のように、いじめを娯楽として楽しんでいるような子どもに、「炎上しても、この人みたいに謝罪すりゃ、どうにかなるのね」と誤った認識を与えてしまう恐れもある。 そして、 インテリたちがしたり顔で言う「いじめは良くないけど、だからと言って、いじめっ子に罰を与えるのもどうかと思う」という傍観者丸出しのコメントは、現在進行形でいじめを受けている子どもたちに、「結局、いじめる側にまわった方が得じゃん」と感じさせて、生きることに「絶望」をさせている。 61万2496件という過去最多の「いじめ認知件数」(2019年度)となったのは、日本の大人たちがいつまでも「いじめの傍観者」から抜け出せていないことも大きい。 今回の小山田氏の炎上騒動は、このような日本の現実を見事に浮かび上がらせた。そのような意味では、筆者は小山田氏が五輪に関わってくれてよかったと思っている。 五輪の音楽担当者になったからこそ、一部でしか知られていなかった小山田氏の過去が注目をされたのである。逆に言えば、五輪の仕事を引き受けなかったら、今も小山田氏は批判されることもなく、こういう事実があったことさえ一般国民にはわからなかった。 これこそが今回の五輪の「レガシー」ではないか。 他にもここまで様々な問題が噴出したが、どれも実は日本社会がかねてから抱えていた問題だ。五輪によってあぶり出されたそのような「醜悪な現実」から目を背けるのではなく、真摯に受け止めて、おかしなことをおかしいと声をあげていく。 「がんばれ、ニッポン!」と叫んで、メダルの数が増えた減ったと大騒ぎをするよりも、こちらの方が、よほど「日本のため」になるだろう』、「61万2496件という過去最多の「いじめ認知件数」(2019年度)となったのは、日本の大人たちがいつまでも「いじめの傍観者」から抜け出せていないことも大きい」、「五輪の仕事を引き受けなかったら、今も小山田氏は批判されることもなく、こういう事実があったことさえ一般国民にはわからなかった。 これこそが今回の五輪の「レガシー」ではないか」、皮肉だが、同意できる。

次に、8月5日付け文春オンライン「「処分はしない」能代イジメ16歳自殺未遂、高校が保護者に伝えた驚きの“言い分”《秋田県知事は「重大事態」認定》」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/47627
・『2月2日、当時高校1年生だった佐藤洋二郎くん(仮名)が自宅のカーテンレールに縄跳びをかけ、首を吊って自殺を図った事件。文春オンラインでは、男子生徒が同じ学校の3人の女子生徒から半年にわたって執拗なイジメを受け、追い詰められた末の自殺未遂だったことを報じた(#1)。 佐藤くんが通っていたのは、秋田県立能代西高校の農業科。2021年4月にバスケットボールの名門としても知られる能代工業高校と統合され、現在は能代科学技術高校となっている。能代工業はバスケットボール漫画「SLAM DUNK」に登場する山王工業のモデルになった高校でもある。 現地取材によって、イジメを主導した生徒やその家族の不誠実な対応、そして学校側の対応が後手に回り続けていたことが見えてきた。(全2回の2回目/前編を読む)』、興味深そうだ。
・『「時間がかかれば口裏を合わせられてしまう」  2021年1月18日、佐藤くんが学校で意識を失って倒れたことをきっかけにイジメが発覚した。倒れた理由を尋ねる母親に本人が「イジメ被害に遭っていた」と告白し、母親は翌日にイジメの事実を学校に報告するとともに事態への対処を要求した。 「洋二郎が倒れた翌日は学校を休ませ、学校に電話をして数カ月に及ぶイジメについて話をしました。最初は担任の先生でしたが、要領を得ず途中で学年主任のK先生に代わりました。すると『学校としては事実確認をしたいので短時間でも登校させてほしい』と言われましたが、本人の体調が悪そうだったので断りました。 さらに翌日の1月20日には学校から電話があり、『C子は嫌がらせの事実を認めたがB子は否定している』という報告を受けました。他の生徒にも確認するので少し時間が欲しいとのことでしたが、息子の同級生から“C子がイジメを認めたことに対してB子が激怒して口論していた”という話を聞き、時間がかかれば口裏を合わせられてしまうと心配していました」(佐藤くんの母親)』、「佐藤くん」は「イジメ」易い恰好の対象だったようだ。
・『「処分はしない」「答えられない」  その後も、学校による調査はなかなか進まなかった。学校側はイジメを主導した生徒たちへの処分について「厳しく注意しました」と説明したが、佐藤くんの母親が生徒たちの保護者の反応を尋ねると「保護者には伝えていない」と答えたという。この頃から、佐藤くんの母親は学校の対応に不信感を募らせていった。 「1月26日に学校に電話し、意識を失って倒れるほどに息子を追い込んだイジメに対して『犯罪の意識を持って厳しい処分を望みます』と教頭先生に伝えました。しかし返答は『処分はしない』という信じられないものでした。それどころかイジメた生徒たちの保護者に連絡したかどうかさえ『答えられない』と事を大きくしたくないという学校の意志が伝わってきました」(同前』、「学校」側は「佐藤くんの母親」をまるでモンスターペアレントのように考えて、誠実には対応しなかったのではなかろうか。
・『「このような診断書を見せられても」  教頭との話し合いでは、18日に倒れてから過呼吸などの症状がおさまらず1週間ほど学校を休んでいた佐藤くんの登校再開時期に話が及んだ。 「病院へ行き、『過呼吸、動悸、不安、抑うつ気分などが認められ、通学が困難な状況になっている。学校におけるいじめが症状の要因になっていると考えられる。このため学校の環境調整を要する』という抑うつ状態の診断だったことを教頭に報告すると、『診断書を持って来てください』と求められました」(同前) そして翌1月27日、医師に渡された診断書を手に佐藤くんの父親は学校を訪れた。 「診断書を受け取った校長は『このような診断書を見せられても、過呼吸の原因になったイジメが、小学校の時か中学校のときかわからない』と言ったんです。なんてセコい逃げ方をするのだろうと怒りがわいてきました。その後、教室への登校が無理なら別室で授業を受けることも可能と言われましたが、夫は『教室を出なければならないのはイジメ加害者であり、息子ではない。加害者を別室にするべきではないか』と反論しました。それに対する校長の答えは『それは停学扱いになるからできない』というもの。結局、4時間半の話し合いで何ひとつ結論は出ませんでした」(同前)』、「校長」が「過呼吸の原因になったイジメが、小学校の時か中学校のときかわからない」、こんな見え見えの責任逃れをするとは信じ難い。
・『「このままでは息子が殺されてしまう」  イジメ発覚から約2週間、解決への糸口が見つからない状況が続いた2月2日未明、佐藤くんはついに自殺未遂に及んでしまう。 「部屋でぐったりしている洋二郎とカーテンレールに掛けられた紐の輪を見て、このままでは息子が殺されてしまうと思いました。その日の夕方、今後の話し合いのためにK先生が自宅に来たのですが、洋二郎の自殺未遂について話しても顔色を変えずにメモを取っていて、その姿に言葉を失いました」(同前) 自殺未遂翌日の2月3日、佐藤くんは母親に付き添われて再度病院へ行き、重度のストレス反応の診断を受けた。この診断書には「現在通学している高等学校におけるいじめが症状の要因になっていると考えられる」と明記されている』、「診断書」でここまで特定すれば、校長も文句つけようがないだろうが、ここまで書き込む医者のサービス精神にも驚かされた。
・『「なぜイジメたのか」「はぁ?」  事態が進展しないまま自殺未遂事件から1週間が経った2月9日、学校から佐藤くんに「生徒同士で話し合いの場を作りたい」という申し出が届いた。学校の面談室で、担任、学年主任のK先生、教頭、養護教諭らの立ち会いで佐藤くんとB子、C子の話し合いの場が設けられたのだ(D子は、学校側がイジメを主導したことを把握していなかったため不参加だった)。佐藤くんが当日の様子を振り返る。 「C子さんから『嫌な思いをしてるんだったら悪いと思ってる』という言い方をされて、僕は『許す気はないけど分かりました』と言いました。B子さんとC子さんに『なぜイジメたのか?』と聞いたら、ふたりは『はぁ?』と言いました。その後に『イジメた自覚はあった?』と質問すると、『なんでお前の話は聞かれて私たちの話は聞かれないの?』とC子さんが大声で叫び、それで僕はまた気分が悪くなってしまって30分ほどで解散になりました」』、「B子さんとC子さん」には罪の意識がないようだが、その言い分をもっと詳しく聞いてみたいものだ。
・『女子生徒の保護者への報告を1カ月間せず  その時点でも、女子生徒たちの保護者への連絡はまだ行われていなかった。K先生は佐藤くんの両親に対して「相手の親に話すつもりでいるが、来週いっぱいまで時間がほしい」(2月10日)、「明日頃から相手の親に報告する」(2月16日)と説明している。しびれを切らした佐藤くんの両親は、能代警察署に被害届を提出することを決めた。 「2月5日から警察に相談をしていたところ、2月26日に能代警察署の生活安全課の方から『明日、話し合いの場を設けたので警察署に来てください』と電話がありました。誤解があるのであれば話し合いで誤解を解いてはどうか、とのことで2月27日に能代警察署内で警察官の立ち会いで私たち夫婦と校長、担任、学年主任で話し合いをすることになりました。 その話し合いで、女子生徒たちがほとんどのイジメ行為を否定していることや、暴言についても『別の人に対して言った』と証言していることもわかりました。夫が『今回の件はいじめ防止対策推進法28条の重大事態に該当するが、どう考えていますか?』と校長に質問しても、『法令的にはイジメと捉えている』と繰り返すばかりで女子生徒への懲戒処分などは明言しないんです。煮え切らない態度に私が感情的になってしまい、その場を後にしました」(佐藤くんの母親) その後、佐藤くんの両親が能代警察署に提出した被害届は4月15日に受理されたが、8月1日時点では具体的な捜査状況などの報告はまだ届いていない』、「イジメ」で「警察」に「被害届」を出したというのも、大げさ過ぎる印象だ。
・『「今度は死ね」という罵声も  学校で倒れた翌日の1月19日から学校を欠席していた佐藤くんは、「女子生徒たちは別教室で授業を受けさせる」という教頭の約束を信じて、女子生徒が停学中だった4月27日から本格的な通学を再開した。佐藤くんが受けたイジメについては、秋田県教育委員会の申し出で秋田県知事によっていじめ防止対策推進法28条の「重大事態」に認定され、4月には第三者委員会も設置されている。 だが女子生徒の停学が明けた5月になると、別教室の話は反故にされ、学校の廊下などで顔を合わすことが増えた。 佐藤くんはそのストレスで学校で倒れるようになり、弁護士に相談して登校時間や歩く廊下のルートを分けるなどの項目を学校側に約束させた。しかし現在も精神科に通院し、不定期に訪れるフラッシュバックに苦しめられている。 「5月に弁護士を通して学校側にイジメの調査状況を確認したところ6月に回答があり、3人の女子生徒たちは『“死ね”“キモい”“ウザい”等といった言葉をごく近い距離で複数回話したこと』だけは認めて他は否定しているという回答でした。学校は、3人が認めない限り何もできないという主張なのです。暴言について数日間の停学処分があったようですが、どんな処分かを私たちは教えてもらえませんし、鶏糞のついた靴を顔に突きつけて洗うよう強要したなどの行為については処罰すらされていません。しかも女子生徒たちは、洋二郎に対して『今度は死ね』『今すぐ退学しろ』という罵声を今も浴びせているんです」(同前) 佐藤くんがイジメを苦に自殺未遂を起こしたことについて、3人の女子生徒たちはどう考えているのだろうか。未成年という事情を考慮し、保護者に取材を行ったが、B子の母親は「話すことは特にないです」と多くを語らず、C子の母親は「失礼ですけどお話することないので! 玄関に入ったら、警察に通報します」と声を荒げた。D子の母親も話を聞いたが「何もお答えする気ないので。二度と来ないでください」と回答は得られなかった。 能代科学技術高校に事実関係を問い合わせると「生徒の個人情報に関わるため、一切お答えできません」という回答だった。 当時の関係者で唯一取材に応じたのは、2021年3月まで能代西高校で校長を務め、イジメ事件のA Qは聞き手への質問、Aは元能代西高校校長の回答) Q:佐藤くんが受けたイジメについて、学校の対応は適切だったと思われますか。 A:「佐藤くんが学校に来られなくなって、まずは学校に来られるような環境作りをなんとかしていこうと努めてはいたのですが、本人と直接会う機会もつくれず難しい部分がありました。(被害者と加害者の証言が食い違い)心証のところをしっかり決められなかった気はしています」 Q:イジメを主導したとされる3人の生徒の保護者への報告を1カ月近く行わなかったのはどんな理由だったのでしょう? A:「事実関係について佐藤くん自身の話と3人の女子生徒の話が噛みあわない部分も多く、延び延びになってしまった。教育委員会とも相談しながら対応を探ったりはしていたのですが、2021年4月の統合で私は能代西高校を離れることになりました。再度しっかり調べて、もし新しい事実がわかれば佐藤くんが早く復帰できるように対応していこうと、新しい学校に引き継いだというところです」 Q:3人の女子生徒への対応は適切でしたか? A:「(校長、副校長、学年主任、スクールカウンセラー、学校医らで構成する)学校いじめ対策委員会でしっかり指導したつもりではいます。懲戒指導だけが指導ではないので。対応が適切だったかどうかは難しいところではありますけども、本人が自殺に至るほど苦しんでいたということで、もっと深く踏み込んで考えてやるべきだったなと思います」』、なるほど。
・『「目立たなくていいから普通に生きたかった」  高校が夏休みに入った佐藤くんに、現在の心境を聞いた。 「現状は、自分が思い描いていた高校生活とだいぶ違います。普通に部活してみんなと話してっていう感じで、変に注目されることもなく、目立たなくていいから普通に生きたかったです……。日常的に『死ね』『気持ち悪い』『学校来なければいいのに』という言葉を聞こえるように言われ続けて、モンペ(モンスターペアレント)と親の事までからかわれた時は、手を出しそうになりました。 イジメを受けていたことを母に話して、父が校長先生に診断書を渡しても『能代西高校でのイジメが原因かどうかわからない』と言われて、言葉で伝わらないなら分かってもらえることをするしかない、と思い詰めて2月2日の出来事(自殺未遂)を起こしてしまいました。今はその時のことは思い出さないようにしています」 ※厚生労働大臣指定法人「いのち支える自殺対策推進センター」が掲載している、悩みを抱えた時の相談先はこちらから』、酷い事件で、学校側は責任逃ればかりしているが、加害者への指導を含めもっと責任ある対応をするべきだ。

第三に、9月28日付けPRESIDENT Onlineが掲載した東京都議会議員の五十嵐 衣里氏による「「いじめで不登校→中卒フリーター→弁護士」の東京都議が成し遂げたいたった一つのこと 社会の優しさを感じたことがない」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/49958
・『2021年7月の東京都議会議員選挙で初当選した五十嵐衣里さんは、中学時代に不登校になり、高校へは進学せずにフリーターになった。その後、22歳のときに一念発起して勉強を始め、30歳で司法試験に合格している。その原動力は何だったのか。五十嵐さんに話を聞いた――』、立憲民主党に所属しているなかなかの美人だ。URLは https://igarashi-eri.com/profile/
・『今でも思い出すことに苦痛を伴う「いじめ」の記憶  2021年7月の東京都議会議員選挙で初当選した五十嵐衣里さんは、政治家としては異色の経歴の持ち主だ。中学2年の頃から不登校になり、高校には進まずフリーターに。そこから一念発起して勉学に励み、弁護士になった。政界に進むことを決意したのは「誰も取り残されない社会をつくりたい」という決意からだ。一時は「死んでしまうかもしれない」とまで思いつめた彼女の目に、今の社会はどう映っているのか。 学校に行くのをやめたのは、静岡市内に住んでいた中学2年生の頃だ。ある日突然、クラスメイトからポケットベルに「きもい」「死ね」などといったメッセージが届くようになった。無視されたり、私物を隠されたりと、心無い嫌がらせも受けるようになった。 「強い立場にあるグループの子たちが、そのときの気分でいじめの対象を決める。私の順番がついに来たんだなという感じでした。学生時代にはよくあることですよね」(五十嵐さん) そう語る口調は淡々としているが、記者が質問を重ねるにつれて、だんだん弱々しくなっていく。30代になった今でも、当時のことを思い出すのは苦痛を伴うのだ。いじめられていると気付いてまもなく、登校できなくなった。いじめがエスカレートして、自分の体や心が一層傷つけられていくことを思うと、足がすくんだ』、「30代になった今でも、当時のことを思い出すのは苦痛を伴うのだ」、なるほど。
・『学校に行かないことは、自分自身を殺さないため」、の選択  「学校へ行かずに『普通』のルートから外れることが、将来、どういうふうに影響してくるかは何となく理解していたつもりです。でも、尊厳を削られたくなかった。平気な顔をして耐え抜ける自信もなかった。事情を知らない両親には泣きながら『学校へ行ってくれ』と頼まれましたが、学校に行かないことは私にとって、自分自身を殺さないで済むための選択だったのです」(五十嵐さん) もともと集団生活が苦手だったわけではない。小学校時代は楽しく通学していた。でも、そのいじめをきっかけに、自信も意欲も奪われた。高校へ進む年齢になっても変わらず迫ってくる、「また攻撃されたらどうしよう」という恐怖。勉強は好きだったが、その恐怖を乗り越えてまでやらなければならないものとは思えなかった。中学を卒業すると、自立のためアルバイトで働くようになった』、「学校に行かないことは私にとって、自分自身を殺さないで済むための選択だった」、よほどのトラウマだったのだろう。
・『アルバイト先で解雇を経験、労働基準法の存在を知る  いじめられたのは運が悪かった。ただ、中学に行かない選択をしたのも、高校へ進学しない選択をしたのも、すべては自分の責任だ――。当時はそう考えていたという五十嵐さん。しかし、2年ほどアルバイト勤務していたレストランで初めて、自分を取り巻く社会に対して違和感を抱く経験をする。 17~18歳頃の年末のこと。勤務していた店舗の店長から突然、クビを言い渡された。理由は明確に説明されなかったが、年末年始のシフトにどれくらい入れるかをめぐって、先方の都合に沿えなかったことが原因のようだった。 「いきなり不機嫌になって『もう明日から来なくていいよ』って。最初は『アルバイトなんかこんなもんか』『私は高校にも行ってないわけだし……』なんて、自分が悪い理由ばかり探そうとしていました。だけど、次の仕事を見つけるのも容易ではない。やはり、どうしても納得できないと思って、インターネットで必死に調べました。そしたら、労働基準法という法律があることを知って、すぐに労働基準監督署に駆け込みました」(五十嵐さん) 企業などの使用者が労働者を解雇するに当たっては、少なくとも30日前に解雇予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければならない。労基法ではそう定められている。労基署の担当者が勤務先に指摘すると、五十嵐氏は数万円の解雇予告手当を受け取ることができた』、「インターネットで必死に調べました。そしたら、労働基準法という法律があることを知って、すぐに労働基準監督署に駆け込みました」、すごい行動力だ。
・『「社会が優しい、温かいと感じたことは一度もなかった」  「ホッとした一方で、権威のある人が言わないと支払われないのだなと複雑な気持ちにもなりました。知識がないと、こんなにも簡単に搾取されてしまう。この社会で自分や自分の大切な人を守っていくために、知識こそが武器になるのだと痛感したのがこのときです」(五十嵐さん) それでも、急に暮らし向きを変えられたわけではない。10代で実家を出て一人暮らしを始めてからは、家賃と生活費を稼ぐため、4トントラックでの配送業務などの職を転々とした。体力的に過酷だったことに加え、社会に受け入れられていないという感覚が強かった。 「社会が優しいとか温かいとか感じられたことは一度もありませんでした。『このままでは死んでしまう』という直感さえありました。貧しさはもちろん苦しかった。ただ今振り返れば、私や私と同じような立場で働いている人たちの尊厳が守られないのも苦しかった。『そう扱われてもしかたないような選択をしてきたせいだ』と思わされる社会そのものが、恐ろしいと感じていたと思います」(五十嵐さん)』、「『そう扱われてもしかたないような選択をしてきたせいだ』と思わされる社会そのものが、恐ろしいと感じていたと思います」、新自由主義的な自己責任論に違和感を抱いたとはさすがだ。
・『弱い立場の人ほど「しょうがない」と思わされている  「死んでしまう」と思わずにはいられない環境から、何とかして抜け出したい――。自分にできることを懸命に探したとき、頭に浮かんできたのは「勉強すること」しかなかった。フリーターのときに経験したたくさんの悔しさをぶつけるように、毎日机に向かった。22歳で高卒認定試験を受け、静岡大学の夜間コースで学びながら行政書士の資格も取得。その後は名古屋大学法科大学院に進み、卒業してまもない30歳で司法試験にも合格した。 「勉強は、改めて取り組んでみたら全く苦ではなかった」と五十嵐さん。「どん底」を経験したからこそ、自身の努力と能力でたくましくのし上がっていった実績を誇りに思っても不思議ではない。だが彼女は「そういう感覚はない」と言い切る。謙遜でも卑下でもない。「勉強が苦ではないという私の素質を、たまたまこの社会で一定の仕事を得るために必要な条件と合わせただけ」と説明する。 「生まれ持った素質や環境がもとで、知識を身に付けることができず、社会の不公正に対して怒りを抱くことさえできない人たちがたくさんいます。私はたまたま『勉強をするという場において、頑張れば報われた』だけ。苦しい状況にあっても『頑張ることが可能な環境』が与えられた。私はそこで得た力を、自分が勝ち抜くためだけに使おうとは思えません。『努力をすれば成功できる』というのは、成功している人の地位を正当化するための言葉です。そして、弱い立場にある人ほど『しょうがない』と諦めさせられている。この社会の仕組みを変えたい。それが私の負うべき責任だと考えています」(五十嵐さん)』、「静岡大学の夜間コースで学びながら行政書士の資格も取得。その後は名古屋大学法科大学院に進み、卒業してまもない30歳で司法試験にも合格」、大したものだが、「『努力をすれば成功できる』というのは、成功している人の地位を正当化するための言葉と、決して強者の立場に立たないのはさすがだ。
・『「怒り」を自分自身や同じ境遇の人に向けないでほしい  社会の仕組みやその背景にある価値観に対して働きかけられる仕事を考えたとき、政治の道に関心を抱いた。参院議員の政策秘書と、弁護士の実務の両方を経験したが、志は変わらなかった。今回、政策秘書時代の仲間から声をかけられ、立候補を決断した。 2021年7月4日に投開票された都議選では、武蔵野市選挙区(定数1)で、都民ファーストの会現職(当時)と、元市長の娘の自民党公認候補らを破って当選。若い世代の政治に対する期待の低さは課題視しつつも「こんなにたくさんの人が支持してくれたのは、どこかで『今の社会は間違っている』という実感を共有できているからだと思います」と語る。 「その怒りを、自分自身や自分と同じ苦しい境遇にある人たちに、どうか向けないでほしい。今行われている政策、その背景、自己責任を正当化する社会に対して、疑問を持ってみてほしい。私一人ですぐに状況を変えられるわけではないことも分かっています。議員として課題を解決する方法を模索しながら、もっともっと、皆さんの声を聞きたい。困ったときにはお互いに支え合える、他者を認める社会をつくっていきたいです」(五十嵐さん)(五十嵐氏の略歴はリンク先参照)』、こんなしっかりした考えの女性が、有力者を破って都議に当選したというのは誠に頼もしい限りだ。
タグ:(その11)(小山田圭吾氏を「引きずり下ろした」政府が隠したい 日本のいじめの不都合な真実、「処分はしない」能代イジメ16歳自殺未遂 高校が保護者に伝えた驚きの“言い分”、「いじめで不登校→中卒フリーター→弁護士」の東京都議が成し遂げたいたった一つのこと 社会の優しさを感じたことがない) いじめ問題 ダイヤモンド・オンライン 窪田順生 「小山田圭吾氏を「引きずり下ろした」政府が隠したい、日本のいじめの不都合な真実」 「首相のメンツを守るため」であれば、「異例の対応」もするようだ。 「森友学園問題」にみるように、「国家中枢にいるエリートたちというのは、首相が発したメッセージの「矛盾」を解消するためならばどんなことでもする」、「国家のリスク」とはどういうことだろう。 「日本でいじめられている子どもたちは、世界と比較して最も“絶望”を感じている」ことは、確かに外国人には隠しておきたい日本の恥だ。 「「日本の子どもの精神的幸福度は38カ国中37位」というのは、我々日本人が知らぬ間に刷り込まれている「消極的にいじめを容認する」という傍観者カルチャーが影響している可能性がある」、「傍観者カルチャー」とは卑怯で、恥ずべきことだ。 「人間としての尊厳を踏みにじった相手に対して謝罪も償いもしていない加害者は、何年、何十年も経とうが批判されるのは、どのような国であっても「常識」なのだ」、その通りだ。 「61万2496件という過去最多の「いじめ認知件数」(2019年度)となったのは、日本の大人たちがいつまでも「いじめの傍観者」から抜け出せていないことも大きい」、「五輪の仕事を引き受けなかったら、今も小山田氏は批判されることもなく、こういう事実があったことさえ一般国民にはわからなかった。 これこそが今回の五輪の「レガシー」ではないか」、皮肉だが、同意できる。 文春オンライン 「「処分はしない」能代イジメ16歳自殺未遂、高校が保護者に伝えた驚きの“言い分”《秋田県知事は「重大事態」認定》」 「佐藤くん」は「イジメ」易い恰好の対象だったようだ。 「学校」側は「佐藤くんの母親」をまるでモンスターペアレントのように考えて、誠実には対応しなかったのではなかろうか。 「校長」が「過呼吸の原因になったイジメが、小学校の時か中学校のときかわからない」、こんな見え見えの責任逃れをするとは信じ難い。 「診断書」でここまで特定すれば、校長も文句つけようがないだろうが、ここまで書き込む医者のサービス精神にも驚かされた。 「B子さんとC子さん」には罪の意識がないようだが、その言い分をもっと詳しく聞いてみたいものだ。 「イジメ」で「警察」に「被害届」を出したというのも、大げさ過ぎる印象だ。 酷い事件で、学校側は責任逃ればかりしているが、加害者への指導を含めもっと責任ある対応をするべきだ。 PRESIDENT ONLINE 五十嵐 衣里 「「いじめで不登校→中卒フリーター→弁護士」の東京都議が成し遂げたいたった一つのこと 社会の優しさを感じたことがない」 立憲民主党に所属しているなかなかの美人だ。 「30代になった今でも、当時のことを思い出すのは苦痛を伴うのだ」、なるほど。 「学校に行かないことは私にとって、自分自身を殺さないで済むための選択だった」、よほどのトラウマだったのだろう。 「インターネットで必死に調べました。そしたら、労働基準法という法律があることを知って、すぐに労働基準監督署に駆け込みました」、すごい行動力だ。 「『そう扱われてもしかたないような選択をしてきたせいだ』と思わされる社会そのものが、恐ろしいと感じていたと思います」、新自由主義的な自己責任論に違和感を抱いたとはさすがだ。 「静岡大学の夜間コースで学びながら行政書士の資格も取得。その後は名古屋大学法科大学院に進み、卒業してまもない30歳で司法試験にも合格」、大したものだが、「『努力をすれば成功できる』というのは、成功している人の地位を正当化するための言葉と、決して強者の立場に立たないのはさすがだ。 こんなしっかりした考えの女性が、有力者を破って 都議に当選したというのは誠に頼もしい限りだ。
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中国情勢(軍事・外交)(その11)(習近平の「一世一代の大仕事」が凍結に…中国「戦狼外交」が“裏目”に出てきた!、中国が考える本当の領土?「国恥地図」実物を入手 「領土的野望」の起源が「この地図」にあった、中国 8月に極超音速ミサイル実験 米情報機関は技術力に驚き) [世界情勢]

中国情勢(軍事・外交)については、昨年12月25日に取上げた。今日は、(その11)(習近平の「一世一代の大仕事」が凍結に…中国「戦狼外交」が“裏目”に出てきた!、中国が考える本当の領土?「国恥地図」実物を入手 「領土的野望」の起源が「この地図」にあった、中国 8月に極超音速ミサイル実験 米情報機関は技術力に驚き)である。

先ずは、5月27日付け現代ビジネスが掲載した中国生まれで日本に帰化した 評論家の石平氏による「習近平の「一世一代の大仕事」が凍結に…中国「戦狼外交」が“裏目”に出てきた!」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/83441?imp=0
・『EUの拒絶の意味  欧州連合(EU)議会は5月20日、EUと中国が昨年12月に合意した投資協定をめぐり、その批准手続きを凍結する決議を圧倒的な賛成多数で採決した。 こうなったことの直接な理由は、EUに対する中国側の報復制裁にあった。 3月22日、EUがウイグル人への人権侵害を理由に中国に制裁措置を発動したことに対し、中国は報復の制裁をEUにかけた。上述のEU議会決議はそれに反発し、中国が制裁を解除するまでに投資協定の批准を審議しない姿勢を明確にしたものだ。 EUの対中国制裁措置と中国の報復措置の中身は後述するが、とにかく今の時点では、EUと中国の間の制裁の応酬は結果的に、EU議会における投資協定の審議・批准をストープさせることとなった。一旦合意された協定の成立はかなり危うくなっているのである。 しかしそれは中国にとって、実に重大な外交上の頓挫であって、多くの戦略上の展望が一気に崩れかけているという深刻な出来事である』、なるほど。
・『長年の交渉の結果  EUと中国との投資協定は習近平政権スタートの翌年の2014年から交渉が始まって、20年年末までには双方が7年間の歳月をかけて交渉を重ねてきた。EU側でそれを主導したのはドイツのメルケル首相であるのに対し、中国側で先頭に立ってそれを積極的な推進してきたのは、習近平国家主席その人である。 以前の江沢民政権が残した大いなる功績の1つは、中国のWTO加入を実現させることによって、先進国を中心とした世界の市場を中国企業のために開かせたことである。 これに対し、EUとの投資協定の締結をもって、欧州資本を中国に全面的に誘い込みたいのは習主席の思惑である。 欧州資本は中国に大量に入り込めば、それが企業の過大負債や金融のリスク拡大などの大問題を抱えて停滞気味の中国経済に成長の新しい原動力を注入することになるだろうと期待されている。投資協定の成立は、中国経済にとっては大きなメリットがあって、まさに意義重大である。 その一方、数年前に当時のトランプ政権が対中国貿易戦争を発動して以来、EUと中国の投資協定は、中国にとってはもう1つ重要性を持つようになってきている。 中国からすれば、投資協定の締結によって中国経済とEU圏経済の緊密化・一体化が進んでいれば、中国がアメリカ発動の貿易戦争には十分に対応できるし、アメリカが企んでいる中国経済とのデカップリング(切り離し)も全然怖くはない』、「7年間の歳月をかけて交渉を重ねてきた。EU側でそれを主導したのはドイツのメルケル首相であるのに対し、中国側で先頭に立ってそれを積極的な推進してきたのは、習近平国家主席その人である」、「中国経済にとっては大きなメリットがあって、まさに意義重大」、その承認が棚上げされるのは異常事態だ。
・『国策レベルの大戦略だが  そして、EU・中国投資協定の中国にとってのメリットは何も経済領域のそれに限ることではない。習政権がこの協定にかけているもう1つの大いなる期待がある。 今、アジア地域の安全保障の面では、クワッドと呼ばれる日米豪印の4ヵ国連携が出来上がっていて、インド・太平洋における中国の侵略的な拡張を封じ込めようとしている。 そして今年になると、イギリス・フランス・ドイツの「欧州3大国」が揃い揃って海軍をアジア地域に派遣してきて、海からの「中国包囲網」に加わろうとしている。 その一方、中国国内で行われているウイグル人などへの人権侵害に対し、アメリカ・カナダ・イギリスなど多くの国々の政府と議会はそれを「ジェノサイド」と認定して厳しく批判したり制裁を加えたりしている。 言ってもれば、安全保障と人権保護という2つの領域においては今、米英日を中心とした自由世界の国々は一致団結して対中国包囲網を構築している最中である。その中で孤立感を深めた習近平政権としはて、何としても包囲網の突破を図りたい。 そして中国からすれば、経済の緊密化・一体化を土台にしてEUとの政治関係をより緊密なものにすることは、西側先進国の中国包囲網を打破するのに大きな戦略的な効果があるのであろう。 少なくとも、ドイツやフランスを含めたEU諸国の資本を中国に全面的に誘いこむことができれば、これらの国々は米英日主導の中国包囲網と一線を画さざるをえない。それだけでも、中国にとっては大きいな戦略的メリットがあるのである。 経済と国際政治の両面においてこれほど多くのメリットがあるから、中国の習政権にとって、EUとの投資協定の締結は実に意味重大であって、まさに国策レベルの重要なる戦略の一環である』、「経済と国際政治の両面においてこれほど多くのメリットがあるから、中国の習政権にとって、EUとの投資協定の締結は実に意味重大であって、まさに国策レベルの重要なる戦略の一環である」、「国策レベルの重要なる戦略の一環」が頓挫したのは外交上の重大な失点だ。
・『習近平、一世一代の大仕事  だからこそ習主席自身はイニシアチブをとってそれを積極的に推進した。そして2020年12月、中国がEU側に大幅な譲歩を行ったことの結果、双方が交渉の完結と成功を宣言して、投資協定の締結に合意した。 12月30日、習近平主席はただ1人で、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長、欧州理事会(EU首脳会議)のシャルル・ミシェル常任議長、ドイツのメルケル首相らを相手にテレビ会議に臨み、EUの首脳と一緒に投資協定の合意を宣言した。 その時の習主席の高揚感と満足感は半端ではない。まさに一世一代の大仕事を成し遂げた後のご満悦の様子であった。 そしてその日からの数日間、中国国内のメディアや関係者らは大変な興奮状態となって、「外交上の大勝利」だと自賛したり「来る新年への最高のプレゼント」だと持ち上げたりして、歓喜のお祝いムードを大々的に盛り上げていた。 軍事的に包囲されていて、人権問題で西側諸国からの袋叩きにあって深い孤立感を味わった中国人にとって、協定の合意はまさに未来に希望を与えた重大なる勝利であって、そして新年への最高のプレゼントなのだ』、「軍事的に包囲されていて、人権問題で西側諸国からの袋叩きにあって深い孤立感を味わった中国人にとって、協定の合意はまさに未来に希望を与えた重大なる勝利であって、そして新年への最高のプレゼント」、そんな「重大なる勝利」が何で無になってしまったのだろう。
・『EUのアリバイ作りに大報復してしまう  しかし、中国国内の勝利ムードは時期的にちょっと早すぎた。「議会」が単なる政権の飾り物である中国の場合とは違って、EUの場合、首脳たちが中国との間で合意に達したとしても、投資協定は議会の審議・批准を通過しなければ成立できない。そして、EU議会がこの投資協定を審議している最中の2021年3月、EUと中国との間で問題が生じた。 まずは3月22日、EUは新疆自治区で行われているウイグル人への人権侵害に対抗して、それに関わっている自治区の共産党幹部・公安幹部4人と公安局に制裁措置を発動した。EU加盟国への入国禁止や資産凍結は制裁措置の中身である。 筆者の私からすれば、EUのこの制裁措置はアメリカなどと比べれば生ぬるいというしかない。 制裁の対象はまず中国共産党中央指導部や中央政府の幹部を避けて、新疆の地方幹部に限定されている。新疆の地方幹部の中でも、自治区党委員会書記の陳全国氏こそはジェノザイドなどの人権侵害の現地責任者であってアメリカの制裁の標的にもされているが、EUの制裁はこの人物さえ避けていて、陳の部下の幹部4人に絞った。 EUの制裁は十分に中国政府に配慮した、半ばアリバイ作りのようなものであることがよく分かるが、本来、中国政府はそれに対して過剰に反応する必要は全くない。地方幹部4人が制裁されたことは中国政府にとって本当は痒くもなければ痛くもない。 その際、EUからの配慮に配慮して、制裁を単に黙殺するのか、あるいは軽い程度の反撃に止まるのかは、中国にとってもっとも賢明な反応の仕方である。特に、EUとの大事な投資協定が審議されている最中だからなおさらこうすべきである。 しかし意外というか案の定というか、この生ぬるい程度のEUの制裁措置に対し、中国側は激しい反応を示した。EUの制裁発表の当日に、中国政府が間髪も入れずにしてEU議会の議員や加盟国の学者など個人10人と4団体に対してEUと同様の制裁措置を発動した。 EUが中国の地方幹部4人に制裁をかけたのに対し、中国はEU議会の議員を含めた10人に報復制裁を発動した。倍返しを超えたところの「倍以上返し」の報復措置である。しかしどう考えて見てもそれは必要以上の過剰反応であって、単なるやり過ぎではないのか』、「EUの制裁は十分に中国政府に配慮した、半ばアリバイ作りのようなものであることがよく分かる」、にも拘らず、「中国は」「倍返しを超えたところの「倍以上返し」の報復措置・・・どう考えて見てもそれは必要以上の過剰反応」、外国では報復は慎重にするのが一般的だ。
・『習近平政権の首を絞めるのは習近平政権だ  今や「戦狼外交」と呼ばれるようになった習近平政権の外交スタイルからすれば、中国がこのような脊髄反射的な報復制裁に打って出るのは必至のことであろうが、習政権にとっての最大の誤算は、このような無遠慮の報復措置は、EU域内の世論とEU議会を激怒させて敵に回したことである。 中国が報復措置をとった直後から、EU議会は例の投資協定の審議を中止した。しかしそれ以来、中国側は事態の収拾や関係の改善に努めた痕跡はほとんどないし、EUの中での反中感情が高まる一方である。 こうして5月20日、EU議会はとうとう、圧倒的な賛成多数で投資協定の批准を凍結するに至った。 その結果、習政権が戦略的に大きな期待をかけている投資協定の行方はかなり危うくなって、中国人が大いに興奮して自賛した「外交上の大勝利」が水の泡になりかけているのではないか。 そして一番皮肉なのは、EUとの投資協定をこうして潰しかけているのは、この協定を喉から手が出るほど欲しがっている習政権自身であることだ。 EUからの生ぬるい制裁に対し短絡的な過剰報復を行ったことで、習政権は結果的に、自分たちの首を絞めることになっているのである。 中国古典の論語には「小不忍即乱大謀(小忍ばざれば則ち大謀を乱る)」という言葉がある。「小さなことで我慢できないようでは、遠大な計画を実現できない」という意味合いであるが、習近平政権がEUに対してやったことは、まさにこの言葉の意味を絵に描いているようなものだ。 EUの軽い制裁に対する過剰反応の報復は結局、習主席自身が企んでいる「EU取り込み」の「大謀」を台無しにしているのでしないかからだ。 EU・中国投資協定は最終的にどうなるかはまた分からない。EU議会の凍結がいずれか解除されることもありうるが、今のところではその可能性は非常に低い。 EU議会は中国が報復制裁を撤回しない限り凍結を解除しない方針であるのに対し、強硬姿勢一辺倒の習政権の体質からすれば、中国は報復制裁を自ら撤回するようなことはほとんど考えられない。将来のかなり長い期間において、投資協定が宙に浮いたままの状況となる公算が高い』、「一番皮肉なのは、EUとの投資協定をこうして潰しかけているのは、この協定を喉から手が出るほど欲しがっている習政権自身であることだ。 EUからの生ぬるい制裁に対し短絡的な過剰報復を行ったことで、習政権は結果的に、自分たちの首を絞めることになっているのである」、中国外交は戦略的で懐が深いと信じていた私の予想を見事に裏切ってくれた。
・『大局観のかけらもなし、不動の原則「戦狼外交」  しかしこの1件からは、中国の習近平政権の外交とはどういうものかはよく分かってくるのであろう。 西側諸国に対して「戦狼」的な強硬姿勢を貫くことは今、習近平外交の不動の基本原則となっている。 そのためには諸国のあらゆる「反中国行為」に対して、外交上に必要な柔軟性と冷静さを失って脊髄反射的な過剰反応を示していくのが中国外交の流儀となっているが、これでは上手な外交ができるわけはない。 仲間を増やして敵を減らすという外交の常道に反して、彼らは今、仲間を減らして敵を増やすだけの外交をやっているのである。 このような外交には大局観や戦略性といったものはもはやない。というよりも投資協定の場合のように、習政権は今、自分たちの策定した外交戦略を、自分たちの短絡的な過剰反応によって潰すようなことをやっているのである。 昔から、「したたかな中国外交」というのは日本のマスコミが中国外交に捧げる定番の賛辞であるが、今になって見ると、習政権の外交には「したたかさ」というものはどこにも見あたらない。彼らがやっているのは単に向こう見ずの無鉄砲外交であって、その場その場の脊髄反射外交でしかない。 「したたかな中国外交」という言葉は今、もはや死語となっているのである』、「西側諸国に対して「戦狼」的な強硬姿勢を貫くことは今、習近平外交の不動の基本原則となっている。 そのためには諸国のあらゆる「反中国行為」に対して、外交上に必要な柔軟性と冷静さを失って脊髄反射的な過剰反応を示していくのが中国外交の流儀となっているが、これでは上手な外交ができるわけはない。 仲間を増やして敵を減らすという外交の常道に反して、彼らは今、仲間を減らして敵を増やすだけの外交をやっているのである」、「彼らがやっているのは単に向こう見ずの無鉄砲外交であって、その場その場の脊髄反射外交でしかない。 「したたかな中国外交」という言葉は今、もはや死語となっている」、全ては「習近平」の思い上がりが招いた問題のようだ。

次に、6月30日付け東洋経済オンラインが掲載した作家の譚 璐美氏による「中国が考える本当の領土?「国恥地図」実物を入手 「領土的野望」の起源が「この地図」にあった」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/462344
・『台湾海峡や南シナ海での挑発行動、新疆ウイグル自治区や香港での人権侵害。中国の強硬姿勢が報じられない日はない。なぜここまでやるのだろうか。じつは彼らの頭のなかには、「立ち返るべき本当の中国領土」があるのだ。それを示した特殊な地図を、「国恥地図」という。作家の譚?美さんによる新刊『中国「国恥地図」の謎を解く』から、貴重な実物を入手、検証した記録を紹介する』、「国恥地」とは大げさな印象もあるが、何事も大げさな「中国」ならではの表現なのだろう。
・『中国の「恥」を描いた地図  「国恥地図(こくちちず)」というものがあると耳にした。1997年、「香港返還」の半年後のことだった。香港在住の友人によると、それは中国の古い地図で、復刻版が発売されて話題になっているという。 「国の恥を描いた地図」とは、なんとおぞましい名称だろう。そこには深い恨みと憎悪の念がこめられているようで、聞くだけで恐ろしかったが、怖いもの見たさから興味も湧いた。 ネットで探してみると、国恥地図には5、6種類のパターンがあり、過去100年間の戦争によって外国に奪われた中国の国土範囲を表した地図のようだ。戦前の中華民国の時代に作られたものらしいということもわかった。 無論、現在の国際基準に従ったものではなく、「領土」として示す範囲は実際の中国のゆうに2倍以上はあろうかという荒唐無稽な代物だ。こんな怪しげな地図を、いったいだれが、なんの目的で作ったのか。私は呆然とするばかりだった。 地図と言えば、ここ数年、中国は地図の表記に強いこだわりを表している。 あまり注目されなかったが、中国国務院は2015年11月、「地図管理条例」を制定して、「社会に公開する地図は、関係行政部門で審査を受けなければならない」として、国家による厳格な地図の審査制度を開始した。 2017年8月には、中国国内にある世界地図を調査した後、「中国が認めていない国境線が描かれている」などとして、3万点あまりの地図を一斉に廃棄した。具体的な処分の理由は、「台湾を国扱いしている(『中国台湾』と表記していない)」ことや、インド北部のアクサイチン地方の「国境線が誤っている(中国領になっていない)」ことなどを挙げている。 これ以後、外国人でも業務や観光で中国へ行った際、町の書店などで買った古地図や地図帳を国外へ持ち出そうとすると、税関で厳しい審査を受けることになった。もし税関が「違法な地図」だと判断すれば、没収されるだけでなく、罰金や禁錮刑になる恐れもあるというから、由々しき問題だ。中国へ行く際には、くれぐれも心しておく必要がある。 それにしても、今、なぜ中国はそれほど地図にこだわるのだろうか。 中国が領土拡張を目論んでいるからか。それとも香港で復刻版が発売されたという「国恥地図」と何か関係があるのだろうかと考えてみるが、見当もつかない。 その頃、私は長編ノンフィクション作品を書いており、それ以外のことは何も手につかなかった。ただ偶然にも、読んでいた資料の中から、かつて中国で「国恥」教育が実施されたという記述を見つけていた。『蒋中正先生年譜長編』という台湾で出版された本で、蒋介石にまつわる記録文書をまとめたものである。どうやら「国恥地図」もそれと関係しているようだった。 2019年3月、5年越しで書いた『戦争前夜――魯迅、蒋介石の愛した日本』が出版に漕ぎつけたのを機に、私は改めて「国恥地図」について調べてみることにした。 ネットを探して、驚いた。中国はおろか、日本やアメリカのサイトでも、ネット販売や古書店のリストから「国恥地図」という名称の地図が、ひとつ残らず消え去っているではないか。ウェブ検索で画像は出てくるが、現物が見当たらない。 中国政府が「地図管理条例」を定めたことで、中国の書店から姿を消したのなら、まだ分かる。だが、海外のサイトや古書店まで一斉に取り扱わなくなったのは、なぜだろう。中国のネット監視による妨害工作だろうか、それとも海外のサイトや古書店が、中国に忖度して自主的に取り下げたのか。謎はいよいよ深まるばかりだった』、「海外のサイトや古書店まで一斉に取り扱わなくなったのは、なぜだろう。」、不思議なこともあるものだ。
・『小学生用の地理教科書に  ただ幸いなことに、中国が「地図管理条例」を実施して間もない頃、私はたいして重要だとも思わずに、戦前の中国で使われていた小学校用の地理の教科書を1冊、古書店から手に入れていた。 古い本を見ると、つい買いたくなってしまうのは物書きの習性かもしれない。すぐには役立たないとわかっていても、今を逃したらもう二度と手に入らないかもしれないという強迫観念にかられて、反射的に買ってしまうのが習い性になっている。 この地理の教科書には一般的な「中国地図」があり、その裏に「中華国恥図」という名称の地図がある。もちろん教科書の1ページだから、詳細な情報が詰まった地図ではないかもしれないが、とりあえず、この国恥地図を観察することから始めることにした。 後のことだが、この地理の教科書こそ、実は、国恥地図の謎を解明するうえで重大な手がかりを与えてくれる資料のひとつだったと、判明するのである。もっともこの時点では、そうした展開が待ち受けているとは、予想すらしていなかった。 私はテーブルに積み上げた本の山から、ようやく目当てのものを捜し出した。 A4サイズの半分ほどで、単行本のサイズに近い(正確には19cm×13cm)。古い教科書だからひどく傷み、ページを開くだけで剥がれ落ちそうだった。私はまず大枚1万5000円をはたいて製本店に補修してもらった。 表紙には、赤い大きな文字で『小学適用本國新地圖』とある(「圖」は「図」の意味)。1933年に上海の世界輿地学社から発行された小学校用の地理の教科書である。 最初のページを開くと目次があり、続く「第一図」は二つ折りの「中華民国全図」だった。東アジア大陸の真ん中に中国が示されている。日本列島も右端に見える。その裏に、「第二図」として、同じ大きさの「中華国恥図」がある。これこそがお目当ての国恥地図だ』、「国恥地図」を「大枚1万5000円をはたいて製本店に補修してもらった」、とは手回しがいい。
・『驚愕するほかない「国境線」  何よりも目を引いたのは、中国を中心とした広大な地域をぐるりと囲んだ黒の破線と、その上に引かれた太い赤線だった。 日本周辺から見ていこう。赤線は日本海の真ん中を通り、種子島・屋久島をかすめたところで東側に急カーブし、沖縄を含む「琉球群島」を範囲内に収めながら南下する。台湾、「東沙(群)島」の岩礁も囲って進み、フィリピンのパラワン島を抜けたところで、再び急にスールー諸島を取り囲むために東へ寄っている。 ここからボルネオ島北部のマレーシア、ブルネイ、マレーシアとシンガポールのあるマレー半島すべて、そしてインド領のアンダマン諸島まで囲いこんでから、ようやく北上するのだ。 北上した先の陸地では、ミャンマーの西側を通り、ネパールとインド国境を進み、タジキスタンとアフガニスタン、ウズベキスタンやカザフスタンまで含んだ赤線は、中露国境を通ってモンゴルへ向かう。そしてモンゴルもすべて領内としたうえ、樺太すべて、最後に朝鮮半島をまるごと収めて、ようやく環を閉じる。 いくら中国そのものが広大といっても、この赤線が取り囲む範囲は、中国の面積のゆうに2倍を超えているだろう。数えてみると中国に近隣18カ国を加え、さらに日本を含む3カ国の一部を範囲内としている。果たしてこの赤線は、何を意味するものなのか。いったい、小学生たちに何を教えようとしていたのだろうか。 さらに拡大鏡を近づけてみると、この赤線に沿って、2mm四方ほどの小さな赤い文字で、その領土がいつ、どのように失われたかという短い説明書きがある。地図全体で35カ所の説明書きが確認できた。例えばサハリンの右側にはこうある。 「俄?一七九〇年後喪失日?」(ロシアが占領、1790年以後喪失、日本が占領) 地図左隅には「図例」があり、色分けした区分の帰属説明がある。 現有地=黄色俄(ロシア)属地=薄緑色英(国)属地=薄桃色 日(本)属地=薄黄色法(フランス)属地=水色自主国=濃い緑色 両属地=濃い緑色と薄桃色の二色 目が釘づけになったのは、その次にある2つの表記、「現今国界(げんこんこっかい)」と「舊時(旧時)国界(こっかい)」だった。 「現今国界」は二点鎖線(―・・―)で示され、現在の中国の国境線を示している。 「舊時(旧時)国界」は破線(――)で示され、その上に前述の赤い太線を重ねたもの。「旧時」とは、古い時代を意味し、「旧時国界」は、「古い時代の国境線」を示しているという』、なかなかよく出来ているようだ。
・『表向きは近代国家でも  つまり、地図には「現在」と「古い時代」の2つの国境線が示されていることになる。驚くべきことに、「古い時代」には、赤線で囲んだ広大な範囲がすべて中国の領土だったと主張しているのだ。 そして赤線と「現今国界」に挟まれた〝領土〟の差、これらを失ったことが、中国の「国の恥」だと訴えるのがこの「中華国恥図」のメッセージなのだ。 前述したように、第一図の「中華民国全図」と第二図の「中華国恥図」が、裏表に印刷されているのは、実に象徴的と言えるだろう。 繰り返しになるが、この教科書が発行されたのは1933年だ。表向きは、第1図のように、近代国家を打ち出した中華民国政府(1912年樹立)が国際(公)法に基づき、外国との条約を遵守して領土を規定していた。だが、その裏では、第2図にあるように、「古い時代」の国土意識が厳然として存在し続けており、それを子どもたちに教えていたことを、如実に示しているのである。 「中華国恥図」の次ページには、「中国国恥誌略」がある。国恥地図についての解説文で、2ページにわたって細かい文字でぎっしり書かれている。 いったいどのような事柄や歴史的事実を「国恥」だと主張しているのだろうか』、「「古い時代」には、赤線で囲んだ広大な範囲がすべて中国の領土だったと主張しているのだ。 そして赤線と「現今国界」に挟まれた〝領土〟の差、これらを失ったことが、中国の「国の恥」だと訴えるのがこの「中華国恥図」のメッセージなのだ」、なるほど。「いったいどのような事柄や歴史的事実を「国恥」だと主張しているのだろうか」、答えはないが、知りたいところだ。

第三に、10月18日付けNewsweek日本版が転載したロイター「 中国、8月に極超音速ミサイル実験 米情報機関は技術力に驚き:」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/10/8-57.php
・『中国が今年8月、核弾頭を搭載できる極超音速ミサイルの実験を行い、その技術に米情報機関が驚きを示した。16日付英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が、5人の関係者の話として伝えた。 報道によると、中国軍は極超音速で滑空する物体を積んだロケットを打ち上げ、この物体が地球上を低周回軌道で移動しながら標的に向かい、目標から約24マイルの地点に到達した。この実験について「中国が極超音速兵器開発で目を見張るほどの進歩を見せ、米当局の認識のはるか先にあった」と、米情報機関から説明を受けた関係者が語ったという。 中国国防省はロイターからのコメント要請には回答していない』、この「ロケット」は「極超音速」なので、イージス艦などの通常の迎撃手段は無効なようだ。これに対処可能なの兵器はまだないが、開発されれば導入論が出てくるだろう。 
タグ:中国情勢 (軍事・外交) (その11)(習近平の「一世一代の大仕事」が凍結に…中国「戦狼外交」が“裏目”に出てきた!、中国が考える本当の領土?「国恥地図」実物を入手 「領土的野望」の起源が「この地図」にあった、中国 8月に極超音速ミサイル実験 米情報機関は技術力に驚き) 現代ビジネス 石平 「習近平の「一世一代の大仕事」が凍結に…中国「戦狼外交」が“裏目”に出てきた!」 「7年間の歳月をかけて交渉を重ねてきた。EU側でそれを主導したのはドイツのメルケル首相であるのに対し、中国側で先頭に立ってそれを積極的な推進してきたのは、習近平国家主席その人である」、「中国経済にとっては大きなメリットがあって、まさに意義重大」、その承認が棚上げされるのは異常事態だ。 「経済と国際政治の両面においてこれほど多くのメリットがあるから、中国の習政権にとって、EUとの投資協定の締結は実に意味重大であって、まさに国策レベルの重要なる戦略の一環である」、「国策レベルの重要なる戦略の一環」が頓挫したのは外交上の重大な失点だ。 「軍事的に包囲されていて、人権問題で西側諸国からの袋叩きにあって深い孤立感を味わった中国人にとって、協定の合意はまさに未来に希望を与えた重大なる勝利であって、そして新年への最高のプレゼント」、そんな「重大なる勝利」が何で無になってしまったのだろう。 「EUの制裁は十分に中国政府に配慮した、半ばアリバイ作りのようなものであることがよく分かる」、にも拘らず、「中国は」「倍返しを超えたところの「倍以上返し」の報復措置・・・どう考えて見てもそれは必要以上の過剰反応」、外国では報復は慎重にするのが一般的だ。 「一番皮肉なのは、EUとの投資協定をこうして潰しかけているのは、この協定を喉から手が出るほど欲しがっている習政権自身であることだ。 EUからの生ぬるい制裁に対し短絡的な過剰報復を行ったことで、習政権は結果的に、自分たちの首を絞めることになっているのである」、中国外交は戦略的で懐が深いと信じていた私の予想を見事に裏切ってくれた。 「西側諸国に対して「戦狼」的な強硬姿勢を貫くことは今、習近平外交の不動の基本原則となっている。 そのためには諸国のあらゆる「反中国行為」に対して、外交上に必要な柔軟性と冷静さを失って脊髄反射的な過剰反応を示していくのが中国外交の流儀となっているが、これでは上手な外交ができるわけはない。 仲間を増やして敵を減らすという外交の常道に反して、彼らは今、仲間を減らして敵を増やすだけの外交をやっているのである」、「彼らがやっているのは単に向こう見ずの無鉄砲外交であって、その場その場の脊髄反射外交でしかない。 「した 東洋経済オンライン 譚 璐美 「中国が考える本当の領土?「国恥地図」実物を入手 「領土的野望」の起源が「この地図」にあった」 「国恥地」とは大げさな印象もあるが、何事も大げさな「中国」ならではの表現なのだろう。 「海外のサイトや古書店まで一斉に取り扱わなくなったのは、なぜだろう。」、不思議なこともあるものだ。 「国恥地図」を「大枚1万5000円をはたいて製本店に補修してもらった」、とは手回しがいい。 なかなかよく出来ているようだ。 「「古い時代」には、赤線で囲んだ広大な範囲がすべて中国の領土だったと主張しているのだ。 そして赤線と「現今国界」に挟まれた〝領土〟の差、これらを失ったことが、中国の「国の恥」だと訴えるのがこの「中華国恥図」のメッセージなのだ」、なるほど。「いったいどのような事柄や歴史的事実を「国恥」だと主張しているのだろうか」、答えはないが、知りたいところだ。 Newsweek日本版 ロイター 「 中国、8月に極超音速ミサイル実験 米情報機関は技術力に驚き:」 この「ロケット」は「極超音速」なので、イージス艦などの通常の迎撃手段は無効なようだ。これに対処可能なの兵器はまだないが、開発されれば導入論が出てくるだろう。
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中国経済(その12)(住民にとってはたまらない!習近平の「信念」が起こした大停電 予告のない電力供給停止で経済活動 地域住民の生活が大混乱、「チャイナショック」が再来?中国不動産バブル崩壊が世界にもたらす激震、中国「恒大危機」で経済の主力エンジンが止まる日 不動産バブル凍結が消費失速の引き金に) [世界情勢]

中国経済については、9月27日に取上げた。今日は、(その12)(住民にとってはたまらない!習近平の「信念」が起こした大停電 予告のない電力供給停止で経済活動 地域住民の生活が大混乱、「チャイナショック」が再来?中国不動産バブル崩壊が世界にもたらす激震、中国「恒大危機」で経済の主力エンジンが止まる日 不動産バブル凍結が消費失速の引き金に)である。

先ずは、9月30日付けJBPressが掲載したジャーナリストの福島 香織氏による「住民にとってはたまらない!習近平の「信念」が起こした大停電 予告のない電力供給停止で経済活動、地域住民の生活が大混乱」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/67139
・『9月下旬、中国の東北3省の多くの都市で相次いで大規模な停電が発生した。23日、瀋陽の公道では信号が消えたため渋滞が起こり、マンション、ビルではエレベータが止まり、断水し、食事が作れなかったりトイレが流せない状況が起きた。停電時間は短くて5時間、長い場合は十数時間に及び、断水は2日に及ぶところもあった。携帯電話が充電できず電子決済ができなかったり、親戚と連絡が取れない状況も起きた。パソコンが使えないから仕事もできない。学校は休校。一部商店ではロウソクで営業するありさまとなった。 予告なしの突然の電力供給停止であったため、一部工場や家屋では、石炭火力を使った装置や暖房の排気のための換気システムが止まり、一酸化炭素中毒などの事故も発生した。たとえば9月24日、遼寧澎輝鋳業有限公司では、停電で排気システムが止まり、鋳造用の高炉から発生するガスによる一酸化炭素中毒で工員23人が遼陽市内の病院に運び込まれた』、「予告なしの突然の電力供給停止」であれば「事故も発生」、市民や進出した日系企業の迷惑も甚だしいだろう。
・『突然の大停電が経済活動、市民生活を直撃  この停電について地域住民は地方当局から一切説明を受けていなかった。 9月26日、吉林市新北水務有限公司(水道会社)は微信のオフィシャルアカウントで、次のような公告を出した。 「国家電力網公司(ステート・グリッド)の要請に応じ、東北電力管理局と吉林省エネルギー局は電力使用の優先順位にあわせて、不定期、不定時に非計画、非通知の電力供給停止、電力使用制限を実施します。この措置により2022年3月まで、停電や断水などが常態化します」) この通知をみて、地元の企業や住民たちが真っ青になって飲料水やロウソクを買い占めに走ったのは言うまでもない。 さすがに、この公告は地元の不安を引き起こしたとして上層部から厳しい叱責があったようで、新北水務公司は27日に再度SNSを通じて公告を出し、次のように釈明した。 「臨時停電によって供水地域のユーザーに対して臨時断水が引き起こされるとの懸念から、弊社アカウントはユーザーの皆様に適時に水の備蓄を準備してもらうよう(26日のSNSで)注意を促しました。ですが、この通知には不適切な言葉遣いと不正確な内容があり、ユーザーの皆様に誤解を生んでしまいました。深く責任を感じ、厳粛に対応し、会社の規則に厳格に則って関連の責任者を処遇します」 こうした電気・水道企業の慌てぶり、混乱ぶりが示すように、今回の東北大規模停電は尋常ではない事件だった。 中国で計画停電、電力使用制限措置は珍しいことではない。雨季の大洪水や冬季の大雪害による送電網の寸断、乾期の水不足によるダム湖枯れの水力発電不足、あるいは国家的大規模イベントの開催に合わせて空気のきれいな青空を演出するために火力発電所の稼働時間を制限したりして電力が逼迫することもあった。だが、今回の大規模な予告なしの電力使用制限、停電の背景は、もっと複雑にいろんな問題が絡み合っている。 まず、これまでの電力使用制限措置は、主に工業用電力に対して計画的に行われてきた。だが今回の東北停電は計画的でなく、地域住民の生活にも混乱をもたらした。東北はすでに冬が始まっており、この調子で民生用電力にも影響が及び続けるようであれば、これから零下十数度から数十度の極寒地域での人々の生活安全すら脅かされかねない。 なぜ、このような広範囲にして「突然の電力供給制限」が今秋、中国で起きたのだろうか』、計画経済の中国で発生した要因を知りたいものだ。
・『背景に石炭火力発電の電力不足  多くの人たちが想像したのは、習近平政権が導入している「エネルギー消費双制御」(総エネルギー消費制御、エネルギー消費強度制御)政策によるものではないか、ということだった。 実のところ電力供給制限はメディアで騒がれている東北3省(吉林、遼寧、黒竜江)だけでなく全国範囲で散発している。特に9月中旬以降、全国の多くの省で電力使用制限措置を取らざるを得ない状況に陥っていた。中でも、江蘇、雲南、浙江などの省の電力使用制限は、中央の「2030年カーボンピークアウト・2060年カーボンニュートラル」政策における温暖化ガス排出削減目標を達成するために、地方政府が企業に対して電力使用制限を要請したものだった。 一方、広東省、湖南省、安徽省などの電力使用制限措置は、電力逼迫が主な原因だった。昨年(2020年)から顕著になっている石炭の高騰により、発電企業は赤字削減のために発電量を圧縮した。電気料金は政府により低価格で抑えられているため、原料の石炭が高騰すれば、電力企業は発電所を稼働させるほど赤字になる。しかも、習近平の政策では温暖化ガス削減目標が掲げられているのだ。この結果、電力会社の発電量は、新型コロナ流行から脱して生産量、輸出量が回復してきた企業・工場の電力需要を下回ってしまい、こうした地域は産業の優先順位に従って工場ごとに稼働時間を割り振ったり計画停電を実施する措置がとられた。 だが、東北地域の大停電は、政府による「エネルギー消費双制御」政策とは関係なく、計画停電でもないという。 遼寧省でも実のところ7月以降、広東省などと同じように電力逼迫は起きており、9月10日から計画停電措置が導入され、プライオリティの高い産業から優先的に電力が割り振られるようになっていた。だが、そうした逼迫状況に加えて、9月23~25日の気候変化のせいで風力発電量が急落した。この地域の送電網は一般に50ヘルツで稼働している。49.8ヘルツ以上が安全閾値で、これより低くなると電力系統の安定維持のために出力抑制や負荷(需要)遮断が行われる。遼寧では急激な電力不足による周波数低下が起きたため、この安全措置が取られたのだった。同様の停電はたとえば2019年8月9日に英国で発生している。 遼寧では今年1~8月、社会用電力使用量が前年同期比で9.47%増え、電力負荷が過去最高になっていた。これは新型コロナ禍から社会・経済活動が急激に回復したことにもよるものだ。 同時に習近平政権の打ち出すカーボンニュートラル目標、温暖化ガス排出制限目標に従って火力発電所の稼働が次々と停止されていった。それを風力など再生可能エネルギーが補う格好になっていたという。2020年末の段階で、東北3省の電力供給バランスは、火力発電が63%、風力発電が18%、太陽光8%、水力7%、原子力4%。だが、中国「財経」誌によれば、遼寧の火力発電出力は設備容量の半分ほどにとどめられていたという。このため、発電量が気候の変化で急減する風力発電に頼る部分が大きくなったことが、周波数低下リレーによる負荷遮断を引き起こした要因といえる。 直接的な原因は、風力発電量の急落だが、その背景には石炭火力発電の電力不足がある。 石炭火力発電の電力不足は、カーボンニュートラル政策のための発電所の稼働停止と、全国的な石炭不足、石炭価格の高騰による電力企業の発電量圧縮が原因である。 石炭が高騰している理由は、カーボンニュートラル政策を掲げたことから石炭採掘への投資が大きく落ち、石炭生産量の伸びが減速中であることに加え、習近平の戦狼外交が招いたオーストラリアとの関係悪化により、オーストラリアからの石炭購入を昨年以来取りやめていることが挙げられる。石炭価格は環渤海石炭価格指数によれば、昨年1月に1トン当たり550元前後だったのが、今年9月には750元前後に高騰。中国の石炭の備蓄量は昨年1月の段階では2億2000万トン近くあったのが、今は1億2000万トンを切りそうな状況となっている。) 業界内の事情通が財経誌に語ったところによれば、東北地域で1990年代以降、こうした大規模な電力使用制限措置が取られたことはなかったという。そもそも東北の電力需要は沿海部ほど高くなく、長らく電力不足とは無縁であった。東北送電網はむしろ、河北や山東へ電力輸出をしていたくらいなのだ。このため、東北地元政府が電力不足による電力使用制限の対応に慣れておらず、また送電網の電力制御の経験も不足していたことが、今回の混乱に一層の拍車をかけたという。 とりあえず、東北3省からの省外への電力輸出はすでに一時停止している。このため山東、華北地域の電力供給も逼迫してくるとみられている』、「突然の電力供給制限」の要因は様々のようだが、「オーストラリアからの石炭購入を昨年以来取りやめている」のも一因となっているようだ。
・『習近平の譲れない政治目標  こうした背景をみると、今回の東北大停電の問題は一時的なものではなく、かなり長引く問題ではないかと思われる。そもそもなぜ電力が逼迫しているかというと、すべて習近平の政策がもたらしたものだ。たぶん、それは最初から分かっていたことである。 おそらく習近平としては、経済成長を犠牲にしても譲れない政治目標がいくつもあるのだろう。2030年までのカーボンピークアウト、2060年までのカーボンニュートラル実現もその1つだ。不動産バブルの圧縮も、インターネットプラットフォームや教育、文化、エンタメ産業のコントロール強化も、結果的には成長産業の目をつぶし、民営企業家を委縮させ、GDPにはマイナスの影響を及ぼすだろう。だが、自らが考える理想の中国、共同富裕社会への道、そして自らの政治権力集中のためならば、経済や人民の暮しを犠牲にすることに躊躇しないのが、習近平の性格なのだろう。 目下、程度の差はあれ、電力使用制限措置が取られているのは20省に拡大している。人民にとっても企業にとっても厳しい冬になりそうだ。そんな中で、北京冬季五輪が国威発揚とばかり華々しく豪華に開催される。それが習近平の理想とする共同富裕社会らしい』、「自らが考える理想の中国、共同富裕社会への道、そして自らの政治権力集中のためならば、経済や人民の暮しを犠牲にすることに躊躇しないのが、習近平の性格なのだろう」、「北京冬季五輪が国威発揚とばかり華々しく豪華に開催」、日本のようにマスコミからの批判もないのでやり易いのだろう。

次に、9月19日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した法政大学大学院教授の真壁昭夫氏による「「チャイナショック」が再来?中国不動産バブル崩壊が世界にもたらす激震」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/285076
・『10月に入り中国の不動産業界では、恒大集団(エバーグランデ)などが発行してきたドル建て社債などの元利金の支払い遅延が日増しに増加している。過去、世界各国で起きたバブル崩壊の事例では、まず不動産業界で資金繰りに行き詰まる企業が増え、本格的なデフォルトが発生する。中国経済が急減速すると、2015年に起きた「チャイナショック」の再来というべき負の影響が、世界的に波及すると予想される』、興味深そうだ。
・『中国の不動産業界が下降局面 世界経済にマイナス要因  中国の不動産業界で、いよいよバブル崩壊が現実味を帯びてきた。大手の恒大集団(エバーグランデ)に続き、いくつかのデベロッパーのデフォルト懸念が一段と高まっている。これまで経済成長を支えた不動産業界が、下降局面を迎えることは、中国経済全体にとって潮目が変わることになるだろう。それは、世界経済にとっても無視できないマイナス要因になるはずだ。 今後、エバーグランデなどが本格的なデフォルトに陥り、中国内外の社債投資家、国内の理財商品などにマイナス影響が及ぶ恐れがある。その影響は、二つの経路を通って世界経済に影響を及ぼすと考えられる。 一つは、エバーグランデなどのデフォルトが直接的なトリガーとなって、リーマンショックのような世界的な金融危機が発生することだ。ただ、詳細は後述するが、現時点ではその可能性は低いだろう。 もう一つの経路は、デフォルトの増加により中国経済が急減速し、世界経済の足を引っ張ることだ。それが現実のものになると、2015年に起きた「チャイナショック」の再来というべき負の影響が、世界的に波及すると予想される』、なるほど。
・『現実味を帯びるエバーグランデなどのデフォルト  エバーグランデなどのデフォルトが現実味を帯び始めた。10月に入り中国の不動産業界では、エバーグランデなどが発行してきたドル建て社債などの元利金の支払い遅延が日増しに増加している。エバーグランデは、9月23日、29日に続き、10月11日のドル建て社債の利払いも実施できなかった。 加えて、当代置業(モダン・ランド・チャイナ)が、10月25日のドル建て社債の償還を延期するよう投資家に要請した。中国共産党政権が不動産への投機抑制のために導入した「3つのレッドライン」によって、これまで借り入れを増やして投資を実行してきた不動産デベロッパーの資金繰りは一段と悪化している。 共産党政権は、経営問題を抱えるデベロッパーなどへの救済にかなり慎重な姿勢を維持している。例えば9月下旬、融創中国(サナック)が浙江省紹興市当局に支援を求めたと報じられた(会社側は後に否定した)。中国の不動産業界では、資金繰りの悪化、住宅価格の下落などによって、事業継続が困難になる企業が増加している。それでも、共産党政権はデベロッパーへの公的資金注入を行っていない。 過去、世界各国で起きたバブル崩壊の事例では、まず不動産業界で資金繰りに行き詰まる企業が増え、本格的なデフォルトが発生する。そして不動産デベロッパーは、資産の売却によって債務の返済を行おうとするが、一方で急速に不動産などの価格が下落して不良債権が増える。その結果、債務再編や経営破綻に追い込まれる企業が増え、金融システムにストレスがかかる恐れがある』、「共産党政権はデベロッパーへの公的資金注入を行っていない」、この姿勢をいつまで続けられるのだろうか。
・『半導体、自動車、工作機械 IT機器、鉱物資源が落ち込む恐れ  中国の不動産市場の先行きは楽観できない。エバーグランデなどの本格的なデフォルトが起きれば、世界経済にさまざまな経路でマイナス影響が波及することになる。 まず、経営破綻に陥った中国企業の社債などを保有する、主要先進国の金融機関が直接、損失を被るリスクだ。ただ、今回のケースでは、もともと格付けの低い中国の不動産会社の債権を保有している欧米企業は限定的とみられ、その損失は限られた範囲にとどまるだろう。エバーグランデなどのデフォルトが、リーマンショックに匹敵する世界的な金融危機を発生させる可能性は低い。 一方、世界経済に対して間接的な影響は軽視できない。デベロッパーのデフォルト発生は、中国経済を支えてきた不動産市況を悪化させる。それによって、中国経済の減速は一段と鮮明化するだろう。その展開が現実のものになると、中国の個人消費は減少し、設備投資も落ち込む。日本をはじめドイツや韓国、アジア新興国など、中国経済に依存する国の経済は大きく足を引っ張られ、世界全体でGDP成長率が低下する恐れがある。 具体的には半導体、自動車、工作機械、産業用ロボット、パソコンなどのIT機器、鉱物資源、中国から海外への観光需要などが落ち込む恐れがある。世界経済における中国の存在感が大きくなってきただけに、中国経済の減速が世界経済に与える負の影響は軽できない』、その通りだろう。
・『世界経済を取り巻く不確定要素は増えている  今後の展開として懸念されるのは、15年夏に起きたチャイナショックの再来だ。当時、カネ余りに支えられて上海株などが大きく上昇していたところ、急落した。中国人民銀行は人民元切り下げや金融緩和を実施したが、景気は減速し、世界経済全体で景況感が悪化した。 当時と比べると、現在の世界経済を取り巻く不確定要素はむしろ増えている。「エネルギー危機」と呼ばれるほど、天然ガスや石炭、原油などの需給がひっ迫し価格が高騰している。それに伴いインフレ懸念が高まっている。国ごとに違いはあるが新型コロナウイルス感染再拡大によって物流・人流が絞られた影響も残り、世界的に供給制約が深刻だ。 そうした状況下、中国の不動産バブルが崩壊し中国経済が急減速すると、チャイナショックと同様のマイナス影響が世界に波及するだろう。デフォルト増加で中国国内の理財商品の価格が下落すると、個人の金融資産が毀損(きそん)し消費は減少するだろう。中国事業を強化してきた主要国の企業業績は悪化し、世界経済が減速する可能性がある。 その場合、共産党政権はインフラ投資の積み増しや金融システムへの流動性供給などによって、景気減速を食い止めようとするだろう。それは一時的に景気を下支えするだろうが、インフラ投資が一巡した現在、景気刺激効果は限定的になる可能性がある。 長期の傾向として中国では資本効率性が低下し、投資に依存した経済成長は限界を迎えつつある。一時的な効果があったとしても、需要が飽和しつつある中でのインフラ投資の積み増しは、結果的に経済全体での過剰投資を増加させ、債務問題は深刻化する恐れがある。バブル崩壊後のわが国の教訓をもとに考えると、いかにして成長期待の高い新産業を育成して新しい需要を創出するか、共産党政権の経済運営の実力が問われる。 エバーグランデのデフォルトなどに端を発する中国経済の減速リスクは、わが国をはじめ世界経済に逆風だ。不確定要素が増える中、岸田新政権が経済のパイ拡大につながる政策を迅速に実施できるか、中長期的なわが国経済の展開に大きく影響することになる』、「岸田新政権が経済のパイ拡大につながる政策を迅速に実施できるか」、政権発足時の公約をいち早く大幅修正しているようでは、信頼に足る「政策」は到底、待できない。

第三に、10月19日付け東洋経済オンラインが転載したThe New York Times「中国「恒大危機」で経済の主力エンジンが止まる日 不動産バブル凍結が消費失速の引き金に」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/462575
・『中国政府は、負債が危険なまでに膨らんだ住宅市場の熱を冷まそうとしている。住宅市場の過熱が以前にも増して国家的な脅威と見なされるようになったのだ。 しかし、3000億ドル(約34兆円)の負債を抱える不動産開発大手・中国恒大集団がもたらす危機の封じ込めを進める中で、中国政府は経済成長の主力エンジンを傷つけるおそれがある。そのエンジンとは、ホー・チエンさんのような住宅購入者だ。 中国の不動産市場を楽観視していたホーさんは、問題の恒大集団からマンションを購入。その後、自らも不動産仲介業者となり、同社のマンションを何百戸と販売した。 「人々はもう不動産を買う気分ではない」 ホーさんは最近、かなり悲観的になっている。中国南部の岳陽市出身の彼は、自身が購入したマンションにまだ入居できていない。恒大集団が建設を中断したためだ。住宅購入に神経質になっている人があまりにも多いため、以前の自動車販売の仕事に戻ることを考えているという。 「人々はもう不動産を買う気分ではない」とホーさん。 ホーさんのような現役世代を魅了した中国の不動産ブームは目下、劇的な修正局面を迎えている。一時は購買意欲が熱狂的に高まり、販売開始から数分で物件が売り切れる状況が続いていた。投機的な購入によって物件価格は高騰。一部の推計によると、中国の経済成長に対する不動産市場の貢献度合いは25%を超えるレベルにまで拡大し、中国では住宅が家族の主な資産形成手段になった。 今では、中国における世帯資産のおよそ4分の3が不動産と結びついている。不動産市場に対する信頼の喪失は、自動車や家電製品の販売減に波及し、経済にさらなる打撃を及ぼす可能性があるということだ。 中国の小売売上高の減速はすでに始まっており、消費者が不安を募らせている兆候がうかがえる。人々が住宅の購入を敬遠する中、不動産市場に介入し債務を抑制するという政府の決定は経済全体の成長を危うくしかねないと専門家らは指摘する。 「不動産市場は現に深刻な落ち込みを示している。価格、販売、建設活動は低下しており、今後数四半期にわたって経済成長の足を引っ張る可能性が高い」と独立調査会社ガベカル・ドラゴノミクスのマネージング・ディレクター、アーサー・クローバー氏は語る』、「中国の経済成長に対する不動産市場の貢献度合いは25%を超えるレベルにまで拡大」、「不動産市場に対する信頼の喪失は、自動車や家電製品の販売減に波及し、経済にさらなる打撃を及ぼす可能性がある」、その通りだ。
・『高級不動産会社もデフォルト  恒大集団はかつて中国不動産ブームの象徴だったが、最近では経営危機のニュースで世界の市場を揺るがす存在となった。ここ数週間だけでも、外国人投資家に対する重要な利払いをいくつも見送っている。 恒大問題は世界各国の中央銀行トップがコメントを発し、アメリカの国務長官が中国に「責任ある行動」を求める事態にまで発展している。 不動産業界のデータ企業・中国房産信息集団(CRIC)によると、中国の不動産企業上位100社の9月売上高は前年比で3分の1以上減少したもようだ。10月初旬には高級マンションで知られる不動産開発企業・花様年控股集団(ファンタジア)が予想外のデフォルト(債務不履行)を起こし、金融市場に衝撃が広がった。 恒大危機は9月にもっと深刻なものになっていた可能性もある。恒大集団は投資家に対し、売上高の「著しい落ち込みが引き続き」見込まれると警告。中国のあらゆる都市で同社物件の建設は停止しており、約160万人のマンション購入者が待ちぼうけを食らって、にっちもさっちも行かない状況に置かれている。 以前は不動産の購入に興味を示していたホーさんの知人や隣人は、決して完成することのないマンションに頭金を支払うことになるのではないかという不安を口にするようになった。以前は多くの家族を引き寄せていた恒大集団の洗練された営業所も、今では人々から避けられるようになっている。 ホーさんは、このような人たちを責める気にはなれない。) 自分が買ったマンションの建設も6月にストップしたからだ。このほかにも、ホーさんの住む町では恒大集団が進めていた3つの大規模プロジェクトの建設が停止したか、停止する見通しだ。建設業者への支払いが滞ったためとされる。 地元住民の声を吸い上げる目的で政府がオンライン上に用意した掲示板は、恒大集団からマンションを購入した人々からの怒りのこもった苦情であふれかえっている。完成もしていない物件に対し住宅ローンを払い続ける必要があるのか、恒大集団が倒産したら全財産が「水の泡」になるのか、といった疑問をぶつける人もいる。 ある住宅購入者の一団は広州の掲示板で、恒大集団が頭金で得た資金を、地方政府の管理下で厳格に管理されているのとは違う私的な口座に入れていることがわかったと述べた。四川省眉山市の別の住宅購入者は掲示板を使って、当局者に「国民のために正義を!」と訴えた』、「恒大集団が頭金で得た資金を、地方政府の管理下で厳格に管理されているのとは違う私的な口座に入れていることがわかった」、こういった不正も部分的にはあるのだろう。
・『当局の沈黙がもたらす景気の沈滞  恒大集団の倒産は2008年に世界金融危機の引き金を引いたリーマンショックの中国版になるのではないか——。そうした疑問が著名な投資家らの間で浮上しているにもかかわらず、中国政府はほぼ沈黙を貫いている。 「大きすぎて潰せない」とみられてきた企業であっても救済の対象とはならない、というスタンスだ。そのため地方政府は、住民のいら立ちに孤立無援で対応しなければならない状態となっている。 恒大集団をはじめとする不動産開発企業の建設継続や巨額債務対応を支援するという明確なメッセージが中国政府から発せられない中、多くの国民は現金にしがみつき、住宅購入を先延ばしするようになった。 ホーさんはまだ、恒大集団から購入したマンションの完成予定を聞けていない。同社から遅延の通知は来ていないとはいえ、建設が数カ月前に止まったのは見ればわかる。 ホーさんは来年5月に結婚する予定だが、それも見直さなければならない状況だ。本来ならマンションは年末までに完成する予定で、結婚式の一環として華々しく披露できるよう内装に手を加える時間も十分に確保できるはずだった。 ホーさんが言う。「建設が遅れたから、結婚式も延期だね」』、「中国政府は・・・「大きすぎて潰せない」とみられてきた企業であっても救済の対象とはならない、というスタンスだ」、こうした建前論をどこまで貫けるのだろうか。 
タグ:中国経済(その12)(住民にとってはたまらない!習近平の「信念」が起こした大停電 予告のない電力供給停止で経済活動 地域住民の生活が大混乱、「チャイナショック」が再来?中国不動産バブル崩壊が世界にもたらす激震、中国「恒大危機」で経済の主力エンジンが止まる日 不動産バブル凍結が消費失速の引き金に) JBPRESS 福島 香織 「住民にとってはたまらない!習近平の「信念」が起こした大停電 予告のない電力供給停止で経済活動、地域住民の生活が大混乱」 「予告なしの突然の電力供給停止」であれば「事故も発生」、市民や進出した日系企業の迷惑も甚だしいだろう。 計画経済の中国で発生した要因を知りたいものだ。 「突然の電力供給制限」の要因は様々のようだが、「オーストラリアからの石炭購入を昨年以来取りやめている」のも一因となっているようだ。 「自らが考える理想の中国、共同富裕社会への道、そして自らの政治権力集中のためならば、経済や人民の暮しを犠牲にすることに躊躇しないのが、習近平の性格なのだろう」、「北京冬季五輪が国威発揚とばかり華々しく豪華に開催」、日本のようにマスコミからの批判もないのでやり易いのだろう。 ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫 「「チャイナショック」が再来?中国不動産バブル崩壊が世界にもたらす激震」 「共産党政権はデベロッパーへの公的資金注入を行っていない」、この姿勢をいつまで続けられるのだろうか。 世界経済における中国の存在感が大きくなってきただけに、中国経済の減速が世界経済に与える負の影響は軽できない』、その通りだろう。 「岸田新政権が経済のパイ拡大につながる政策を迅速に実施できるか」、政権発足時の公約をいち早く大幅修正しているようでは、信頼に足る「政策」は到底、待できない。 東洋経済オンライン The New York Times 「中国「恒大危機」で経済の主力エンジンが止まる日 不動産バブル凍結が消費失速の引き金に」 「中国の経済成長に対する不動産市場の貢献度合いは25%を超えるレベルにまで拡大」、「不動産市場に対する信頼の喪失は、自動車や家電製品の販売減に波及し、経済にさらなる打撃を及ぼす可能性がある」、その通りだ。 「恒大集団が頭金で得た資金を、地方政府の管理下で厳格に管理されているのとは違う私的な口座に入れていることがわかった」、こういった不正も部分的にはあるのだろう。 「中国政府は・・・「大きすぎて潰せない」とみられてきた企業であっても救済の対象とはならない、というスタンスだ」、こうした建前論をどこまで貫けるのだろうか。
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北朝鮮問題(その22)(「第1書記」を新設した金正恩総書記の頭の中 北朝鮮の権力体制に劇的な変化は生じるのか、北朝鮮の武器取引に10年間潜入した「スパイ」が初告発 数々の修羅場とは?、北朝鮮伝統の「ミサイル芸」 日本の国政選挙のタイミングに合わせる深い理由) [世界情勢]

北朝鮮問題については、2月10日に取上げた。今日は、(その22)(「第1書記」を新設した金正恩総書記の頭の中 北朝鮮の権力体制に劇的な変化は生じるのか、北朝鮮の武器取引に10年間潜入した「スパイ」が初告発 数々の修羅場とは?、北朝鮮伝統の「ミサイル芸」 日本の国政選挙のタイミングに合わせる深い理由)である。3番目の記事は特に傑作なので必読である。

先ずは、6月26日付け東洋経済オンライン「「第1書記」を新設した金正恩総書記の頭の中 北朝鮮の権力体制に劇的な変化は生じるのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/436855
・『北朝鮮が2021年1月に開催した朝鮮労働党第8回大会で同党規約を改正したが、具体的な中身が最近になって明らかになった。とくに最高指導者である金正恩総書記の下に「第1書記」を新設するという内容が注目を集めている。これには、あまりにも権力が集中している金総書記の役割をほかの最高幹部に移譲すると同時に、朝鮮労働党という党としての体制管理を強めようとしているとの見方がある。ロシア人研究者で韓国・国民大学教授のアンドレイ・ランコフ氏に、今回の第1書記新設の狙いや金正恩体制の行方を聞いた(Qは聞き手の質問、Aはランコフ氏の回答)』、興味深そうだ。
・『重要会議で出てこなかった「第1書記」  Q:2021年1月の朝鮮労働党第8回党大会の際に、党規約が改正されたと発表されました。最近、その具体的な中身が明るみとなり、中でも「第1書記」が新設されたことが注目されています。しかし、6月中旬に行われた朝鮮労働党第8期第3回総会(全員会議)に関する北朝鮮側の報道では、「第1書記」は出てきませんでした。 A:今回の党総会で「第1書記」に関する報道がなかったことで、仮説が2つ立てられると思います。今回、北朝鮮当局は第1書記という職位が設置されたことを北朝鮮国内向けに大きく知らせることはありませんでした。もちろん、第1書記という職位は極めて敏感なものだからこそ、北朝鮮の国営メディアは慎重に接近する必要があったのです。 第1書記が任命されたのか、あるいはまだ空席なのか。最初の仮説は「北朝鮮はすでに第1書記を任命したが、この事実を公開しないことに決めた」というもの。北朝鮮の政治文化を考えると、第1書記がすでに任命されたとしても、この事実は少数の高級幹部のみが知っている状態であり、このような状態が今後数年間続くこともありえます。 そしてもう1つの仮説は、「北朝鮮は第1書記を設置したものの、これはあくまでも非常的な設置だと当局が考えている」というものです。これは金正恩総書記の健康状態によります。金総書記の健康状態を考慮し、現段階では第1書記を任命する必要がないと判断したのかもしれない。それならば、第1書記は「空席」となります。 北朝鮮の高級幹部の中でも、第1書記になりたい人は少ないと思います。なぜなら、この職位はとても危険な職位だからです。金総書記からすれば、第1書記となった幹部はいつでも陰謀者として見なされがちであり、そのぶん粛清される可能性もあります。金総書記の実妹である金与正(キム・ヨジョン)党副部長が第1書記になったとしても、危険性は残るでしょう。でも、下馬評に挙がった趙勇元(チョ・ヨンウォン)党政治局常務委員や崔竜海(チェ・リョンヘ)最高人民会議常任委員会委員長など金一族ではない人が第1書記になれば、彼らは非常に危険な状況に直面する可能性が高まります。 この2つの仮説のうち、どちらが事実に近いのかはわかりません。ただ、私は2つめの仮説、つまりまだ第1書記を任命せずに空席にしている可能性がより高いと考えます。) Q:そもそも第1書記という職位は、北朝鮮の政治体制においてどのような位置づけになると考えたらいいでしょうか。 これは政権を担っている世界の共産党や共産主義国家の歴史の中で、前例のない職位です。北朝鮮は事実上、アメリカの副大統領と似たような職責を新設したことになります。さらに興味深いのは、北朝鮮の指導部はこのような決定を下しただけでなく、党規約の改正を通じてすべての人民にこの事実を知らせています。 党規約改正でもう一つ注目すべきなのは、「朝鮮労働党総書記の委任により、党中央委員会政治局常務委員会委員は政治局会議を司会できる」(党規約第28条)と規定したことです。これは数十年間、首領・指導者だけが行える重要な職務が他の幹部たちに委任されうることを意味します。 これらを考えると、いちばん説得力のある説明は1つだけです。金正恩総書記をはじめとする北朝鮮の最高指導部は、「金正恩氏がそれほど遠くない時期に死亡、あるいは身体の問題に陥ると考えている可能性が高い」と考えていることです。金総書記をはじめ北朝鮮指導部は金氏一族の権力を維持するため、また北朝鮮のエリート層の権力を維持するためにも、非常事態に備えて制度的な準備を始めたのではないかと考えます』、「いちばん説得力のある説明は1つだけ」、「金総書記をはじめ北朝鮮指導部は金氏一族の権力を維持するため、また北朝鮮のエリート層の権力を維持するためにも、非常事態に備えて制度的な準備を始めたのではないかと考えます」、なるほど。
・『金総書記の健康状態悪化に備える  Q:最高指導者の健康問題がそれほど深刻だということでしょうか。 A:私からみれば、これらの動き金総書記の死亡に備えたものというよりは、金総書記の身体状態が悪くなり執務ができなくなる状態に備えたものだと思います。もし金総書記が亡くなったら、常務委員は党規約第28条に規定された「総書記の委任」を受けることができません。第1書記はアメリカの副大統領に最も近い立場にあると考えられます。 Q:この第1書記には、前に指摘された趙勇元氏が就く、あるいは就いたというのが下馬評になっています。彼は金正恩時代になって注目を集め、金総書記からの信頼が厚い人物だとされています。 趙氏が第1書記になるという見方に私はとても懐疑的です。北朝鮮ではロイヤルファミリーでない人は、副大統領になることはできないからです。北朝鮮は韓国の財閥企業と同じような国家です。例えばサムスングループで、創業者の李一族ではない人が会長になれるでしょうか。そうだとすればガバナンス上、とんでもない話になります。経験豊富で実績もある幹部でさえ、李一族でなければそうはなれません。よくてグループ会社の社長、副社長までです。北朝鮮もこれに似ています。 まとめてみると、北朝鮮は金総書記の健康状態が深刻で非常事態になる可能性が出てきたということです。しかし、これは決して北朝鮮の体制崩壊を意味しません。確かに金総書記が死亡すれば、体制崩壊の可能性は高まりそうです。とはいえ、金総書記の健康状態にかかわらず体制は生存する可能性が高いと考えています。 Q:指摘されたように第1書記という職位が北朝鮮の「最高尊厳」に対する不幸な事態を想定したものであったとしても、彼らはそんな事態を想定して事前に動くでしょうか。 A:北朝鮮の体制が維持されるということは、そうなるように事前準備をしているということです。これを考えると、金総書記はとても勇敢な人です。仮に、韓国のある財閥の若いトップが、がんで死期も近いことを自ら知ったとしましょう。そのうえで、自分の財閥を維持・継承させるために全力を注ぐのであれば、彼はそれだけ責任感が強いことになります。いずれにせよ、北朝鮮は制度的な準備を事前に行っており、彼らは金総書記の健康状態が引き起こすよくない事態からの衝撃を緩和させる可能性は高いでしょう。 さらに、金総書記にもしものことがあったとしても、北朝鮮の世襲的なエリート階層は依然として体制を維持する必要があるということです。体制が崩れたら、彼らにとって未来がないことを十分にわかっています。そのため、金総書記の健康が悪化した場合、彼らは団結を維持する可能性が高いでしょう。 また、中国という変数も無視できません。現段階では米中が対立しているため、北朝鮮という緩衝地帯が必要となっています。そのため、中国は必要に応じて北朝鮮の国内政治に介入することができて、また北朝鮮の内部の混乱を速やかに予防することもできます』、「北朝鮮は制度的な準備を事前に行っており、彼らは金総書記の健康状態が引き起こすよくない事態からの衝撃を緩和させる可能性は高いでしょう。 さらに、金総書記にもしものことがあったとしても、北朝鮮の世襲的なエリート階層は依然として体制を維持する必要がある」、ただ、「金総書記」の健康状態はよくなったように見える。
・『金正恩総書記なりの「首領化」  Q:金総書記は金日成主席、金正日総書記という、これまでの「首領」の威光から抜け出ようとしているかのように見えます。つまり、祖父や父親が残した権力ではなく、金総書記独自の政治体制をつくろうとしているのではないかと思えるのです。仮に今回の第1書記が新設されたとすれば、それも「独自体制づくり」の一環ではないでしょうか。 「首領化」は北朝鮮体制の基本論理です。事実上の絶対君主国家であるということです。このような国では、代を継いで王様の権力を正当化する思想があり、王様の偉大さを示す文章もあり、当然ながら、人民の忠誠心を強調する方法もあります。 絶対君主制の国では、王様が食べるものや住む所すべてに伝統があります。例えば明朝や清朝などの中華帝国では、新しく即位した皇帝が「自分は天子ではない」と主張することができるでしょうか。 金総書記が“即位”した後に始まった首領化は、時が経つにつれて金日成、金正日が敷設した軌道を進むしかありません。近いうちに、彼の肖像画や国民が胸に付けるバッジもできるし、「金正恩元帥の歌」も銅像も、そして「金正恩花」さえできるでしょう。仮に金総書記がこのような軌道を進むつもりがないとしても、彼にはほかの選択肢はありません。 最近になって興味深いことに気づきました。北朝鮮では金日成、金正日、そして金日成の妻だった金正淑への崇拝が弱まっていることです。さらに言えば、金日成の両親である金亨稷(キム・ヒョンジク)・姜盤石(カン・バンソク)にまつわる話を、20~30年前に比べると耳にすることがかなり少なくなりました。確かに金正恩時代になり、次第に「脱金日成・金正日」の傾向が強くなっているように思えます。 Q:党大会やほかの主要会議でも、主体思想や先軍政治といった金正日時代のキーワードへの言及が徐々に少なくなってきたように思えます。 A:金正日総書記に対する言及は早くに消えています。とくに金正恩総書記が行う演説において、「金正日」への言及は消えています。心理学的に言えば、金正恩総書記は亡き祖父や父にいらだっているのかもしれません。 北朝鮮においては前任の首領に対する個人崇拝をある程度行い、維持する必要はあります。もちろん、金正恩総書記は前任の首領を格下げする、という致命的なことはしませんでした。前任の首領たちが果たしてきた役割や偉大さを熱心に強調していく必要はありますが、金正恩総書記を見ているとこのような作業を熱心に行っているように見えないのです』、「前任の首領たちが果たしてきた役割や偉大さを熱心に強調していく必要はありますが、金正恩総書記を見ているとこのような作業を熱心に行っているように見えないのです」、何故なのだろう。
・『首領化こそが統治者の条件  Q:もし金総書記が首領化されている、あるいはされつつあるのなら、これは彼にとってどんな利益があるでしょうか。 A:「首領化」とは、金総書記の権力基盤を強化することです。それだけでなく、北朝鮮で統治者が自分に対する首領化を行わなければ権力を長く維持できません。北朝鮮での首領化は、権力者にとって政治的に存在するために必要な条件です。 (アンドレイ・ランコフ氏の略歴はリンク先参照) 旧ソ連のことを例にとりましょう。スターリン時代、スターリンの次男のワシーリーは問題児でした。彼は大酒飲みで女性にだらしないなど、たくさんの問題がありました。彼があるスキャンダルを起こした時、思いあまってスターリンは彼を呼んで大声で叱りました。 「おまえは自分がスターリンだと思っているのか。おまえはスターリンではない」と一喝したのです。ところがその直後に「私をスターリンだと思っているのか。実は、私もスターリンではない」と告げました。そしてスターリンは、壁に掛けられた自分の肖像画を指し示し「これこそスターリンだ」と言ったというのです。 言い換えれば、国民から崇拝されず、絶対的な存在として描かれない指導者は、1940年代のソ連はもとより、今の北朝鮮を統治できないということです』、「国民から崇拝されず、絶対的な存在として描かれない指導者は、1940年代のソ連はもとより、今の北朝鮮を統治できない」、独裁者といえども、「国民から崇拝され」、「絶対的な存在として描かれ」るのが、条件のようだ。

次に、10月3日付けAERAdot.「北朝鮮の武器取引に10年間潜入した「スパイ」が初告発、数々の修羅場とは?」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2021092800052.html?page=1
・『国際社会が経済制裁を科す裏で、今も武器取引で外貨を稼ぎ続けている北朝鮮。その実態を赤裸々に撮影したドキュメンタリー映画「THE MOLE(ザ・モール)」が10月15日に公開される。「モール」とはモグラのことで、「潜入スパイ」を意味する隠語だ。自らの意思で10年もの間、北朝鮮の武器取引ネットワークに潜り込み、その実態を撮り続けてきた男、ウルリク・ラーセンさん(45)に話を聞くことができた。 【写真】北朝鮮側の“キーマン”と握手するウルリクさんの姿はこちら  映画は平凡なデンマークの料理人だったウルリクさんが北朝鮮関連団体に潜入し、平壌で朝鮮親善協会の会長のスペイン人・アレハンドロと出会うところから始まる。実は、このスペイン人、「親善団体」を隠れみのにした武器取引の仲介人なのだ。ウルリクさんは投資家「ミスター・ジェームズ」を装った役者と手を組んで、アレハンドロに巧みに接近。武器取引の話を引き出していく。アレハンドロを信用させて北朝鮮との契約を成立させた後は、武器工場を建設するためにアフリカのウガンダまで飛んで、政府要人と交渉。島ごと買収しようと計画する、という規格外のドキュメンタリーだ。 周知のとおり、北朝鮮は極端な秘密主義国家で、その実像は闇につつまれている。ましてや、武器取引の実態などは、まったくうかがい知ることはできなかった。 ところが、驚くべきことにこの映画はその様子を詳細に写し出す。あまりの鮮明さに、最初は「これはヤラセではないか?」と疑ったほどだ。 当然のことながら、撮影は極めて危険な行為で、バレれば即、命の危険にさらされる』、「北朝鮮」が「ウガンダ」に「武器工場を建設」、そんなことまでしていたとは驚いた。
・『東ドイツで実感した人々の恐怖  そこまでの危険をおかして、なぜ北朝鮮に潜入する“スパイ”となったのか。 ウルリクさんは冷戦時代、東ドイツを訪れたときの思い出を語り始めた。 「私の父親はフェリーの監督で、デンマークと東ドイツの間を行き来していた。私はときどき父親についていった。12歳のころ、東ドイツの少年と手紙を交わす仲になり、遊びに訪れるようになると、人々の間にはびこる暗い影を感じるようになっていった」 それをはっきりと感じたのは対西ドイツ戦のサッカーの試合を見ていたときだった。 「私が西ドイツ国歌を歌い始めたら、『やめろ』と言われた。『あちらは資本主義で、ぼくらは社会主義だから』と。自分は安全な環境に暮らしていたけれど、彼は違っていた」 当時、東ドイツでは「シュタージ」と呼ばれる秘密警察が反体制的な言動を厳しく監視していた。盗聴は当たり前で、肉親を含めて、密告者はどこにでもいた』、「当時」の「東ドイツ」では当然のことだ。
・『バレた! もう終わりだ  その後、ウルリクさんは料理人となったが、慢性疾患で仕事を失い、福祉手当で暮らすようになった。 「人生が変わってしまいました。でも、何か新しいことをやりたい、と思った。そんなときに見たのが(「THE MOLE」を撮影した)マッツ・ブリュガー監督の反北朝鮮映画『ザ・レッド・チャペル』だった。少年時代の記憶がよみがえり、北朝鮮の実態を暴きたいと思った」 2009年、ウルリクさんは北朝鮮支持者を装い、デンマーク朝鮮友好協会に入会。ブリュガー監督とも連絡をとり始めた。 本格的に撮影が始まったのは12年、平壌を訪れたときだった。 「監督から『カメラは使えるのか?』と聞かれたので、『スピルバーグ並みに撮れます!』って、答えた(笑)」 しかし、ウルリクさんは“スパイ”として専門的な訓練を受けたわけではない。国家の後ろ盾もなく、身を守ってくれる人は誰もいない。時には、命の危険を感じることもあった。 17年、武器取引について北朝鮮側と話し合うため、投資家役の「ミスター・ジェームズ」を連れて再び平壌を訪れたときだった。 朝、車に乗ると、北朝鮮の案内人にこう告げられた。 「あなたの力になれる人に会いに行く」 車は郊外へ向かい、廃虚となった工場のような建物に着くと、階段を下りるように指示された。地下は薄気味悪い場所だった。わざわざ、こんな人気のない場所に連れてこられたことに、“最悪の事態”も頭に浮かんだ。 「あのときは、(バレた! もう終わりだ)と思った。家族のことが思い浮かんだ」 ところが、連れて行かれた地下にある大きなドアが開くと、突然、豪華な部屋が現れた。 「カタログが手渡され、(うそだろう?)と思った。そこには弾道ミサイルから対戦車砲まで、どこかの国で内戦が起こせるくらいの兵器とその価格が載っていた」』、スパイ映画さながらだ。
・『「ほんとうに危機一髪。吐きそうだった」  さらに恐ろしい思いをしたのは、ウガンダに武器工場の建設が決まり、その相談でスペインにあるアレハンドロの「基地」を訪ねたときのことだった。 鋼鉄製の2重ドアをくぐり抜けると、アレハンドロと仲間がいた。 アレハンドロは「アフリカでは情報漏れに気をつけろ」とアドバイスし、盗聴器の探知機を持ち出した。スイッチを入れたとたん、信号音が鳴り出した。 「そのとき私は胸と肩、バッグにカメラとマイクを仕込んでいた。足には記録用のハードディスクを巻きつけていた。(これは、マズい!)と思った」 ウルリクさんは、冷静を装って「レンタカーのリモコンが反応しているんでしょう」とかわした。だが、信号音はしばらく鳴りやまない。 「さりげなく、腕を交差して、探知機がそれ以上近づかないようにした。ほんとうに危機一髪だった。車に戻ったとたん、吐きそうになった」 大きく息を吐き、ハンドルを握った。5キロほど離れた場所で待機する撮影チームの所に車を走らせた。 「技術者に『体につけた機材をすぐに外してくれ』と頼んだ。たまらず、自分でもカメラを外した」 この一件以来、相手と接触する際は、会う場所を自分から指定し、近くに元特殊部隊員の仲間が待機するようになった』、「盗聴器の探知機」の「信号音が鳴り出した」、先方に気付かれなかったのは幸運だ。
・『「ぼくらは中国のパスポートを持っている」  映画の公開後は、デンマークの諜報機関が身辺警護を申し出てくれた。 「もちろん、北朝鮮には行くな、と言われています。中国やロシア、ベラルーシなど、北朝鮮との結びつきが強い国へも」 さらに、ウガンダを訪れたときの体験を語った。 「そこにやってきた北朝鮮の人たちは『ぼくらは中国のパスポートを持っているから』と言っていた。それを聞いて、(怖いな)と思った。つまり、世界中の中国の大使館を通じて『誰かが』が送られてくる可能性があるわけです」 講演活動などで海外を訪れる際には必ずセキュリティーガードがつくという。 「デンマークだけでなく、世界中に顔が知られてしまいました。歩いていると、声をかけられ、ヒーローだと言ってくれる人もいる。今回の作品で少しでも北朝鮮の体制に穴が開けられるのであれば、とても誇らしく思います」』、「ぼくらは中国のパスポートを持っているから・・・世界中の中国の大使館を通じて『誰かが』が送られてくる可能性がある」、「北朝鮮」と国交がある国は少ないが、「中国」がここまで「北朝鮮」を支援しているとは初めて知った。

第三に、10月21日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「北朝鮮伝統の「ミサイル芸」、日本の国政選挙のタイミングに合わせる深い理由」を紹介しよう。これは傑作である。
https://diamond.jp/articles/-/285337
・『「そろそろミサイル発射か」と予期していた? 東京不在の首相、過去にも(衆議院議員選挙公示日である10月19日午前、北朝鮮が日本海へ向けてミサイルを発射した。北朝鮮の国防科学院の発表では、新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)だったという。 この時、岸田文雄首相は選挙の第一声を上げるため福島にいた。「官邸危機管理の要」である松野博一官房長官も自身の選挙区である千葉県にいた。慌てて官邸に戻った岸田首相は、国家安全保障会議を開催して、「北朝鮮のミサイル技術の著しい発展は我が国と地域の安全保障にとって見過ごすことができない」として、関係閣僚に「敵基地攻撃能力の保有」の検討を指示した。 実は今回のミサイル発射に関しては、日本の防衛関係者、そして政府高官の多くは、「そろそろ発射するだろうなあ」と予測していた可能性が高い。つまり「想定内」だったのだ。 なぜかというと、北朝鮮の金正恩最高指導者は権力の座に座ってから、日本や韓国の国政選挙を意識したスケジュール感で、ミサイルを打ち上げてきた、という「実績」があるからだ。 例えば、2016年の参院選は今回とまるっきり同じパターンで、6月22日の公示日にやはり北朝鮮が弾道ミサイルを発射している。この時も、安倍晋三元首相はやはり選挙の第一声をあげるため、大分県由布市に滞在していた。官邸には菅義偉官房長官がいたが、対応状況を確認してから選挙の遊説に出かけてしまったことで叩かれている。当時、民進党の岡田克也代表はこう訴えた。 「我々の時にも北朝鮮問題があり、関係閣僚5、6人が選挙期間中も東京にいた」(読売新聞2016年6月23日)』、「ミサイル発射」時に「首相」・「官房長官」が「官邸」にいなかったのは、今回だけでなく、安部時代も同様だったとは初めて知った。
・『日本の国政選挙のタイミングでミサイル発射する北朝鮮  岡田氏の言葉の通り、実は自民党が政権奪取をした2012年の衆院選も公示の3日前、北朝鮮がミサイルを発射すると事前予告をしたことがあったのだ。この時は12月16日が投票日だったのだが、北朝鮮が“人工衛星”を10日以降の午前中に打ち上げると宣言。そのため、野田佳彦首相(当時)が想定される時間帯の遊説の自粛をしなくてはいけなくなった。 そういう状況の中で、12月8日には藤村修官房長官(当時)が自身の選挙区で「要は北朝鮮のミサイルがいつ上がるかだ。さっさと月曜日(10日)に上げてくれるといいんですが」(読売新聞2012年12月8日)と失言。当時は野党だった自民・安倍総裁から批判されるというようなドタバタも起きている。結局、官房長官が「待ち焦がれていた」北のミサイルは13日、投票日の3日前に発射された。 このように、北朝鮮がこれまで日本の国政選挙にドンピシャのタイミングで、ミサイルを打ち上げてきたという動かし難い事実がある。 そこに加えて今回は、自民党総裁選前の9月13日に巡航ミサイル、15日には弾道ミサイル2発が発射されている。セオリーでいけば、衆院選の公示前後にも仕掛けてくると考えるのは当然だ。日本の防衛関係者、安全保障担当者がこのようなリスクを、官邸に報告しないわけがない。これが冒頭で「想定内」と申し上げた理由である』、今回のが「想定内」だった理由が理解できた。
・『北朝鮮の巧みな「熱湯風呂」ネタ的PR戦略  さて、そこで皆さんが気になるのが、なぜ北朝鮮が国政選挙のタイミングを狙ってくるのかということだが、これはシンプルで、「北朝鮮という国をたっぷり恐れてもらいたい」というPR戦略に尽きる。 ご存じのように、庶民が飢える中で北朝鮮が巨額の費用をかけたミサイルを日本海に落とし続けるのは、軍事技術に磨きをかけているからだけではなく、アメリカに「北の脅威」を認識させて、交渉のテーブルにつかせるという「ミサイル外交」のためでもある。 本連載の過去記事『金正恩、実は高度なPR戦略と交渉術を持つ男の真の狙い』の中で紹介しているが、ミサイル発射で国際社会で批判されていた2012年、朝鮮労働党高級幹部が講演の中で、金正恩氏のこんな「名言」を誇らしげに紹介している。 「実は賛成の中で発射するより、反対の中で発射する方が、我々の威力を誇示できる」 これはダチョウ倶楽部の伝統芸「熱湯風呂」をイメージしていただければわかりやすい。素直に熱湯風呂に浸かろうとしている上島竜兵さんを突き落としても何も面白くない。しかし、「押すなよ、絶対に押すなよ」としつこく訴える上島さんの背中を押すので盛り上がって「芸」として成立する。 金正恩氏もこれをよくわかっている。日米韓から「ミサイル発射するなよ、発射したらただじゃおかないぞ」と強く警告されればされるほど、ポチッとやる時に大きな衝撃がある。北朝鮮ここにあり、と存在を世界にアピールすることができる。まさしく父・金正日氏の代から続く、伝統の「ミサイル芸」と言っていい。 だから、米韓の軍事演習などでは必ずミサイルを飛ばす。そしてもうひとつ格好のタイミングが選挙だ。 日本でも韓国でも対北朝鮮政策は極めて大きな政治的イシューだ。選挙になれば、候補者は必ず訴える。有力議員はテレビに出演して、コメンテーターと激論もする。そんな時に日本海にミサイルを落とせば、日本全国に散らばった候補者たちが「北の脅威」を朝から晩まで演説をしてくれる。そのPR効果たるや凄まじいものがある。 要するに、広告代理店やウェブマーケティング会社の人間がちょっと前、何かとつけて口にした「バズらせる」ことができるのだ』、「金正恩氏のこんな「名言」・・・「実は賛成の中で発射するより、反対の中で発射する方が、我々の威力を誇示できる」、「日米韓から「ミサイル発射するなよ、発射したらただじゃおかないぞ」と強く警告されればされるほど、ポチッとやる時に大きな衝撃がある。北朝鮮ここにあり、と存在を世界にアピールすることができる」、面白く説得力がある解釈だ。
・『ミサイル発射は強硬姿勢の政党に有利  ここまでの話を聞くとモヤモヤしたものを感じる方も多いだろう。 もし選挙期間を狙ってミサイルを発射したら、安倍晋三元首相や高市早苗氏のように、北朝鮮に強硬な姿勢でのぞむ政治家や、厳しい制裁を訴えるような政党に票が流れてしまうおそれもある。そんな自分たちの首を絞めるようなことをするだろうか…と。 そのご指摘はごもっともで、確かに北朝鮮が選挙のタイミングにミサイルを打てば打つほど、「国際社会と連携して制裁すべし」と訴える自民党の議席が増えて、「ミサイル発射はとんでもないが、まずは対話が基本」などと弱腰の政党が失速する、という現象が起きている。 例えば、先ほども触れた2012年のミサイル発射後、「衆院選の候補者は敏感に反応。発射を強行した北朝鮮を一斉に非難した」(読売新聞2012年12月13日)と有権者の投票行動にも大きな影響を与えた。ミサイル発射直後、群馬県の会社員はこう述べている。 「打ち上げられたと聞いてどきっとした。今度の選挙でも日本の安全保障をきちんと考えてくれる政党を選びたい」(同上) この時、自民党は294議席獲得して大勝し、民主党から政権を奪取した。公示日にミサイル発射があった2016年の参院選も、自民党は議席を6増やして121議席。民進党は32議席に後退した。 この傾向は、韓国も同じだ。日本の与野党候補者が選挙カーで「北の脅威」を連呼していた2012年12月、実は韓国も19日に大統領選挙を控えてザワザワしていた時だったのだ。当時、聯合ニュースが、任期を終える李明博大統領のインタビューを報じていて、その中で李氏は、北朝鮮が過去にも国政選挙に合わせて武力挑発を仕掛けてきたと指摘したうえで、こう述べている。 「北朝鮮好みの候補がいるかもしれないが、北朝鮮が(有権者の投票行動に)影響を与えることはできない」(読売新聞2012年12月3日) しかし、蓋を開ければ、朴槿恵氏が、筋金入りの親北政治家・文在寅氏に108万票余の差をつけて大勝している。投票日の6日前に発射された北のミサイルの影響もゼロではないはずだ』、「日本」だけでなく、「韓国」でも「ミサイル発射は強硬姿勢の政党に有利」とは皮肉なものだ。
・『敵視してくれる政治家・政党は北朝鮮の思う壺?  こういう事実を踏まえると確かに、「金正恩の選挙を狙ったミサイル発射は自分の首を絞めている」と感じる方もいらっしゃるだろう。しかし、筆者は「逆」ではないか、と考えている。 国政選挙のタイミングでミサイルを発射するのは、北朝鮮の脅威を唱える政治家、厳しい対応を主張する政党が台頭してくることを期待しているようにしか見えない。 つまり、金正恩氏が選挙のたびにミサイルを発射するのは、「北朝鮮に対して強硬姿勢の政治家・政党」を、文字通り「援護射撃」をしているのだ。 なぜそんな自分を窮地に立たせるようなことをするのかというと、「体制維持」のためである。 ヒトラー、カエサルなど歴史上の独裁者を見れば明白だが、独裁政権の維持のためには「強い外敵」の存在が必要不可欠だ。侵略や略奪に対する恐怖心のある国民は、議会制民主主義で不毛な議論を延々と続けられるより、「強いリーダー」がスピード感を持って「敵を叩く」と宣言するような専制スタイルを待望する。そのような国民的人気があれば、独裁者は政敵やクーデターをねじ伏せられる。 つまり、独裁者にとっての「強い外敵」とは、「ものわかりの良い平和的な隣人」よりも、「常にけんか腰で何かとつけてイチャモンをつけるクレーマー」の方がありがたいのだ。 激しいけんかを続けるにしても、和解して信頼関係を築くにしても、独裁者自身の「唯一無二の存在」という価値がつり上がるからだ。 これは親子三代で独裁を続けてきた金正恩氏にも当てはまる。それを示したのがトランプ前米大統領だ』、「独裁者にとっての「強い外敵」とは、「ものわかりの良い平和的な隣人」よりも、「常にけんか腰で何かとつけてイチャモンをつけるクレーマー」の方がありがたいのだ。 激しいけんかを続けるにしても、和解して信頼関係を築くにしても、独裁者自身の「唯一無二の存在」という価値がつり上がるからだ」、素晴らしい解釈だ。
・『北朝鮮が切望する日本の「次のトランプ」  トランプ氏は周囲やメディアが狂人扱いする中で、ミサイル発射をちらつかせる金正恩氏を「リトル・ロケットマン」などとバカにした。これに対して、金氏も「老いぼれ」「おじけづいた犬」などと応酬。ジャーナリストの中には、「第三次世界大戦の危機」などと騒いだが結果として、2人は蜜月となった。 トランプ氏は手のひら返しで「とても頭がよく、才能がある」「彼のようにタフに国家の運営をしてきた人物は1万人に1人」と絶賛。互いに連絡を取るようになった。トランプ氏が負けて、米朝関係は振り出しに戻ったが、これこそが金正恩氏が理想とする「ミサイル外交」の姿だ。強い外敵とバチバチ火花を散らし、緊張を極限まで高めて、内政でも外交でも「やはり金正恩がいないとダメだ」というブランディングをするのだ。 そう考えていくと、金正恩氏が日本の選挙のたびにミサイル発射をしているのは、一体誰を「援護射撃」するためなのか、という構図が見えてくる。北朝鮮に厳しく、拉致被害者奪還を叫び、厳しい制裁を強く求めていく。そう、安倍元首相をはじめとした保守系政治家の皆さんだ。 口では安倍元首相のことを「ならず者」「白痴」などと口汚く罵るが、結果として安倍政権をずっと支えた陰の立役者になっている。ミサイルを発射するたび、スキャンダルで弱った自民党は息を吹き返している。 この両者の「強敵と書いて友と読む」的な関係は、安倍元首相もよくわかっているのではないか。 そう思えるのが、前回、2017年10月22日の衆院選だ。実はこの時には北朝鮮のミサイルは飛んでいないが、これまで同様に「北のミサイル」が争点になった。というよりも、安倍元首相がそうした。 8月29日、北海道えりも町の上空を、北朝鮮の弾道ミサイルが通過して、太平洋に落下したのだ。さらに9月に入ると核実験も行い、15日には再び北海道上空を越えるミサイルを発射した。これまで日本海に落ちていたミサイルが、日本の上空を超えていった。これで「北の脅威」のステージが上がったのだ。 その13日後、安倍元首相は解散を決断。これを「国難突破解散」と名付けて、実質的に選挙戦に突入したのである。 当時、モリカケ問題などで逆風の中だったが、この衆院選は議席増減なくなんとか乗り越えた。起きた現象だけを客観的に見れば、安倍政権にとって、金正恩氏のミサイルは「ナイスアシスト」になっているのだ。 さまざまな事実が示しているとおり、北朝鮮のミサイルが、日本の選挙と密接な関係があることはお分かりいただけただろうか。これまでの状況を見れば、金正恩氏が望んでいるのは、「強い外敵」、日本で言えばゴリゴリの対中・対北朝鮮強硬派だ。 これまでのミサイル発射の傾向を見ると、その役割を安倍元首相に求めてきたフシがあるが、世代交代でもっと過激で、もっと若い政治家を望んでいるはずだ。 そこで思い浮かぶのは、新たな「保守のマドンナ」となった高市早苗氏だ。今回も選挙応援で引っ張りだこだという。 敵基地無力化を強く主張する高市氏は、拉致問題を最重要課題の一つに位置づけて、総裁選でも金正恩氏と1対1の対談の場をつくるべきであり、北朝鮮に乗り込んででも話をつける、と力強いメッセージを発信した。 そういえば、しばらくおとなしかった北朝鮮がミサイルが発射し始めたのは、自民党総裁選からだ。今回のミサイルは、金正恩氏なりの高市氏への「ラブレター」かもしれない』、「金正恩氏が日本の選挙のたびにミサイル発射をしているのは、一体誰を「援護射撃」するためなのか・・・安倍元首相をはじめとした保守系政治家の皆さんだ」、「今回のミサイルは、金正恩氏なりの高市氏への「ラブレター」かもしれない」、安部や高市にも読ませてやりたい。日本のリベラル派からみると、「金正恩氏」による「日本の」「選挙時の」「保守系政治家」への「援護射撃」は腹立たしい限りだ。 
タグ:北朝鮮問題 (その22)(「第1書記」を新設した金正恩総書記の頭の中 北朝鮮の権力体制に劇的な変化は生じるのか、北朝鮮の武器取引に10年間潜入した「スパイ」が初告発 数々の修羅場とは?、北朝鮮伝統の「ミサイル芸」 日本の国政選挙のタイミングに合わせる深い理由) 東洋経済オンライン 「「第1書記」を新設した金正恩総書記の頭の中 北朝鮮の権力体制に劇的な変化は生じるのか」 「いちばん説得力のある説明は1つだけ」、「金総書記をはじめ北朝鮮指導部は金氏一族の権力を維持するため、また北朝鮮のエリート層の権力を維持するためにも、非常事態に備えて制度的な準備を始めたのではないかと考えます」、なるほど。 「北朝鮮は制度的な準備を事前に行っており、彼らは金総書記の健康状態が引き起こすよくない事態からの衝撃を緩和させる可能性は高いでしょう。 さらに、金総書記にもしものことがあったとしても、北朝鮮の世襲的なエリート階層は依然として体制を維持する必要がある」、ただ、「金総書記」の健康状態はよくなったように見える。 「前任の首領たちが果たしてきた役割や偉大さを熱心に強調していく必要はありますが、金正恩総書記を見ているとこのような作業を熱心に行っているように見えないのです」、何故なのだろう。 「国民から崇拝されず、絶対的な存在として描かれない指導者は、1940年代のソ連はもとより、今の北朝鮮を統治できない」、独裁者といえども、「国民から崇拝され」、「絶対的な存在として描かれ」るのが、条件のようだ。 AERAdot 「北朝鮮の武器取引に10年間潜入した「スパイ」が初告発、数々の修羅場とは?」 「北朝鮮」が「ウガンダ」に「武器工場を建設」、そんなことまでしていたとは驚いた。 「当時」の「東ドイツ」では当然のことだ。 スパイ映画さながらだ。 「盗聴器の探知機」の「信号音が鳴り出した」、先方に気付かれなかったのは幸運だ。 「ぼくらは中国のパスポートを持っているから・・・世界中の中国の大使館を通じて『誰かが』が送られてくる可能性がある」、「北朝鮮」と国交がある国は少ないが、「中国」がここまで「北朝鮮」を支援しているとは初めて知った。 ダイヤモンド・オンライン 窪田順生 「北朝鮮伝統の「ミサイル芸」、日本の国政選挙のタイミングに合わせる深い理由」 「ミサイル発射」時に「首相」・「官房長官」が「官邸」にいなかったのは、今回だけでなく、安部時代も同様だったとは初めて知った。 今回のが「想定内」だった理由が理解できた。 「金正恩氏のこんな「名言」・・・「実は賛成の中で発射するより、反対の中で発射する方が、我々の威力を誇示できる」、「日米韓から「ミサイル発射するなよ、発射したらただじゃおかないぞ」と強く警告されればされるほど、ポチッとやる時に大きな衝撃がある。北朝鮮ここにあり、と存在を世界にアピールすることができる」、面白く説得力がある解釈だ。 「日本」だけでなく、「韓国」でも「ミサイル発射は強硬姿勢の政党に有利」とは皮肉なものだ。 「独裁者にとっての「強い外敵」とは、「ものわかりの良い平和的な隣人」よりも、「常にけんか腰で何かとつけてイチャモンをつけるクレーマー」の方がありがたいのだ。 激しいけんかを続けるにしても、和解して信頼関係を築くにしても、独裁者自身の「唯一無二の存在」という価値がつり上がるからだ」、素晴らしい解釈だ。 「金正恩氏が日本の選挙のたびにミサイル発射をしているのは、一体誰を「援護射撃」するためなのか・・・安倍元首相をはじめとした保守系政治家の皆さんだ」、「今回のミサイルは、金正恩氏なりの高市氏への「ラブレター」かもしれない」、安部や高市にも読ませてやりたい。日本のリベラル派からみると、「金正恩氏」による「日本の」「選挙時の」「保守系政治家」への「援護射撃」は腹立たしい限りだ。
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ドイツ(その4)(「タブー視してきたツケか」ドイツで"ユダヤ人憎悪"のデモが広がる厄介な理由 「移民受け入れ」を進めてきた副作用、西ドイツの“成金都市”から東独の「歴史文化都市」に引っ越して感じたこと、メルケル首相の16年とドイツの行方) [世界情勢]

ドイツについては、昨年6月11日に取上げた。今日は、(その4)(「タブー視してきたツケか」ドイツで"ユダヤ人憎悪"のデモが広がる厄介な理由 「移民受け入れ」を進めてきた副作用、西ドイツの“成金都市”から東独の「歴史文化都市」に引っ越して感じたこと、メルケル首相の16年とドイツの行方)である。

先ずは、本年6月8日付けPRESIDENT Onlineが掲載した在独作家の川口 マーン 惠美氏による「「タブー視してきたツケか」ドイツで"ユダヤ人憎悪"のデモが広がる厄介な理由 「移民受け入れ」を進めてきた副作用」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/46679
・『ドイツではユダヤ人差別は問答無用で糾弾される。しかし、5月に開かれたイスラエルに抗議する合法デモが、ユダヤ排斥を叫ぶ違法デモに変わるということが起きた。在独作家の川口マーン惠美さんは「2015年以降、難民として中東から移り住んだ人々の中から新たな『反ユダヤ主義』が生まれていることも一因だ」と指摘する――』、興味深そうだ。
・『停戦前の戦場に駆けつけた独外相  5月20日、イスラエルとパレスチナの間でミサイルが飛び交っていた最中、ハイコ・マース独外相はイスラエルを訪問し、ミサイル攻撃で破壊されたばかりの瓦礫の中に立っていた。彼がイスラエル国民に伝えたかったのは、ドイツ人のイスラエルに対する強い連帯の情であり、それは、その後、テルアビブでネタニヤフ首相と交わした力強い握手によっても、しっかりと伝えられたはずだ。 マース外相は前々から、学生時代に強制収容所を見学したことがきっかけで政治家になろうと決心したと語っていた政治家であったから、イスラエル訪問は、まさにその信条の実践でもあったのだろう。外交においては、時にこういう象徴的な、危険をも顧みないで駆けつけたといったようなポーズが重要な意味を持つ。 同日、マース外相はイスラエルからさらにヨルダン川西岸に移動し、パレスチナ自治政府のアッバース大統領とも会談した。ただ、戦闘行為を働いているのはパレスチナ自治政府ではなく、ガザ地区のハマス、およびジハード(イスラム聖戦機構)といった、米国やEUからテロ組織に指定されているイスラム原理主義者の戦闘集団なので、結局、マース外相にできたのは、アッバース大統領と共に1日も早い休戦を願うことぐらいだった。 なお、具体的には、被害の大きいガザ地区への人道支援も申し出ている。 そして、これらの調停役的な行動の成果が実ったのか、あるいは、17日のバイデン米大統領とネタニヤフ大統領の電話会談が効いたのか、5月21日未明には停戦が発効した。6月2日現在も、停戦協定は守られている』、「外交においては、時にこういう象徴的な、危険をも顧みないで駆けつけたといったようなポーズが重要な意味を持つ」、その通りだが、日本の政治家には無理だろう。
・『ベルリンの反イスラエルデモに異変が  一方、この頃、ドイツ国内では予想もしない事態が勃発していた。ガザ地区の重篤な被害に憤慨した在独アラブ系の人たちが、イスラエルに抗議するために起こした合法なデモが、あっという間にユダヤ排斥を叫ぶ暴動となってしまったのだ。 5月15日の土曜日、ベルリンではデモ隊(警察発表では3500人が参加)が暴徒化して警官隊と衝突。パレスチナの旗を掲げ、熱狂的に反イスラエル・反ユダヤを叫ぶアラブ系の人々の姿は唾棄すべきもので、日本人としては、ふと、2005年当時の中国の反日暴動を思い出した。 この日は最終的に93人の警官が負傷、60人が逮捕された。ドイツ人は、自国にこれほど多くの過激なアラブ人が潜んでいたことに驚きを隠せなかった。 さらに翌16日には、約1000人が400台の車に分乗し、ベルリン市内を隊列を組んでクラクションを鳴らしながら走り、その他の都市でも、イスラエルの国旗が焼かれたり、シナゴーグ(ユダヤ教会)やユダヤ関連の記念碑が毀損されたりと、ユダヤ攻撃が相次いだ。 いうまでもなく、ホロコーストを絶対悪と定めるドイツでは、イスラエルには常に気を遣い、ユダヤに関する非難めいた発言は、それが差別であろうがなかろうが許されない。それどころか、反ユダヤ主義的言動は刑法に触れる。ホロコーストは絶対に忘れてはならず、近年は、政治家が「記憶の文化」などという新造語まで作り、国民の贖罪意識の風化を防ごうとしてきた』、「ベルリンの反イスラエルデモ」は暴動に近いようだ。
・『ユダヤ人を憎悪する人々は何者なのか  そんな国で、あたかも75年の空白を破るかのように、突然、反ユダヤのプラカードが掲げられ、ユダヤ冒涜のシュプレヒコールが響き渡ったのだから、その衝撃は大きかった。当然のことながら、国中で一気にユダヤ議論に火がつき、まさにパンドラの箱の蓋が開いたかのようだった。 論点は複合的だ。最初の疑問は、デモで反ユダヤを叫んでいるアラブ系の人たちはいったい誰なのかということ。 アラブ人(イスラム教徒)とユダヤ人(ユダヤ教徒)は骨肉相食む仲だが、ドイツにはそのイスラム教徒が多く暮らす。例えば70年代に労働移民として入ったトルコ人や、内戦から逃れてきたレバノン人。その数は膨大ではあるが、しかし、彼らの多くはすでにドイツ国籍を取得し、今や4世が育つ。もちろん、2世以上は皆、ドイツで教育を受け、社会に根付いているため、今回の暴動の主役ではありえない。それどころか、彼らなしではもはやドイツ社会はまともに機能しないと言ってもよいほどだ』、「2世以上は皆、ドイツで教育を受け、社会に根付いているため、今回の暴動の主役ではありえない」、なるほど。
・『新たな反ユダヤ主義が持ち込まれている  ところが、移民の中には、都会の一角に独自の生活を送る並行社会を形成し、全くドイツ社会に溶け込まない人たちもいる。 ドイツ人にはホロコーストの強いトラウマがあり、特に政治家は今でも、外国人に対して何らかの要請を行うことにひどく消極的だ。そのためドイツ政府は、何十年ものあいだドイツが移民受け入れ国であるということを認めず、外国人租界のようになった一角が犯罪の温床、あるいは、イスラム過激派の根城となっていっても目をつむった。反ユダヤ主義がそういう場所でしっかりと温存され続け、今の反ユダヤ主義の暴発につながっている可能性は確かにある。 それに加えてドイツには、2015年と2016年に受け入れた膨大な数の中東難民がいる。彼らが「ユダヤ憎悪」というアラブの常識を、おそらく無意識のまま、ドイツに持ち込んだことは疑いの余地がない。 当時、無制限受け入れを積極的に進めたのはメルケル首相だったが、これについては彼女自身が2018年、イスラエルのテレビ放送のインタビューに答えてこう語っている。 「私たちは、難民、およびアラブ系の人々を受け入れたことで、新しい現象に直面しています。それは、新しい形の反ユダヤ主義が、再び国内に持ち込まれたということです」』、「難民」「受け入れ」が「新しい形の反ユダヤ主義が、再び国内に持ち込まれた」、とは皮肉だ。
・『彼らの感情を利用し、暴発させたか  実際問題として、以来、ユダヤ人に対する嫌がらせや襲撃が急増し、それが頻繁に報じられるようになった。 ユダヤ人中央評議会のドイツ支部代表のシャルロッテ・クノブロッホ氏は、ミュンヘンの日刊紙Merkurのインタビュー(6月1日付)で、「反ユダヤ主義がこのような形で再燃するとは思ってもみなかった」と語り、このままではユダヤ系の人々がドイツでの将来の生活に対する信頼を失うことを警告した。実際、子育て中の若い家族の間で、イスラエルへの移住を考えたり、あるいは、すでに踏み切ったりするケースが増えているという。 ちなみに、1932年生まれのクノブロッホ氏はナチ時代の生き証人でもある。 これらの状況を総合すると、今回の暴力的なデモは、イスラム原理主義の拡大を目指す過激な組織が、中東紛争を利用し、さまざまなアラブ系の若者たちを引き込み、もともと、彼らの中に潜んでいた反ユダヤ感情を暴発させたものだという仮説が成り立つ。そうだとすると、その責任の一端は、長年、有効な移民政策を敷かなかったドイツ政府や、難民を無制限に入れたメルケル首相、それを支持した左派勢力やメディアにもあるのではないかということにもなる』、「「ドイツ政府」、「メルケル首相」、「左派勢力やメディア」にも「責任の一端」がある」、確かにそうした面があることは事実かも知れないが、「酷」過ぎる気もする。
・『ドイツ人の偏見度合いを調べると…  それに加えて、今回の暴動は単にアラブ系の人たちだけの問題ではなく、実はドイツ国民の間にも、今なお根強い反ユダヤ主義が潜在しているのではないかという疑問も生んだ。これが事実だとすると、75年間、反ユダヤ主義の撲滅に励んできたはずのドイツ人にとっては、極めて深刻な事態だ。 5月18日、Die Welt紙のオンライン版に興味深い記事が載った。ユダヤ人の経済モラルについて、ドイツ人が偏見を持っているかどうかというテーマで、ドイツ人経済学者2人が行った調査結果だ。 調査は単純で、124人の被験者に次のような文章を示し、そのモラル度を問う。 「XYは1974年にミュンヘン生まれで、現在45歳。ミュンヘンのIT企業で中間管理職の一員として働く。叔母から5万ユーロの遺産を受け継ぎ、それを子供達の学費として活用するため、ドイツと米国の企業の株に投資した。株の選択は、自動車、薬品、鉱物資源を扱う企業に重点を置いた。今後、大きな市場の動きに対応するため、株の動きをスマホでフォローするつもりだ」というものだ』、何が問題なのだろう。
・『名前を変えたら見えてきた事実  何の変哲もない内容だが、ミソはXYの名前のところで、半分はユダヤ風の名前とし、残りの半分は典型的なドイツ風の名前とした。 その結果、ユダヤ風の名前に対しては、これはモラルを問われるべき行為、あるいは、非常にモラルを問われるべき行為であるという答えが34.8%で、ドイツ風の名前の場合は14.8%と、差が出た。 調査の精度を高めるため、ユダヤの名前の代わりに、英国やイタリアの名前を入れると、結果はドイツの名前と差がなかったという。 つまり、被験者はユダヤの名前に反応した可能性が高い。類似の研究は英国などでも行われており、やはり同様の結果だという。 これをドイツ人のユダヤ人に対する偏見と解釈すべきかどうかはさておくとして、ただ、ここでの問題は、ドイツ人の間では、たとえユダヤに対する偏見や反ユダヤの感情があったとしても、本人が一切気づいていない可能性が高いのではないかということだ。あるいは、気づいていても、理性で閾下いきかに押し込めている可能性だ』、「ドイツ人の間では、たとえユダヤに対する偏見や反ユダヤの感情があったとしても、本人が一切気づいていない可能性が高いのではないかということだ。あるいは、気づいていても、理性で閾下いきかに押し込めている可能性だ」、あり得そうだ。
・『ユダヤ問題も難民問題も自由に語れない  ドイツ人は75年間、政治的にイスラエル擁護を貫いてきたし、その教育も徹底していた。だから現在も、アラブ系の人たちの暴発を見て、多くの人が心を痛め、イスラエル支援を掲げて立ち上がっている。 ただ一方で、ドイツ人の感情の中には、いわゆるパレスチナ難民の運命への同情も根強くあり、それどころか、軍事的に優位なイスラエルに対する反発さえ潜んでいるようにも感じる。つまり、イスラエルもパレスチナも多くの側面があるだけに、複雑なのだ。 ただ、今のドイツでは、ユダヤ問題はもとより、難民問題もなかなか自由には語れない。前者は政治的にタブーだし、後者に言及すると、すぐさま極右や国家主義者のレッテルを貼られる危険が大だ。しかも、ドイツ政界には今、反ユダヤ主義の台頭を封じ込めるため、罰則の強化を図ろうという動きが出ている。 せっかく75年間も掛かって築いてきた人道国家の評判を落としてはならぬと焦っているのはよく分かるが、罰則があれば、自由な議論までがこれまで以上に妨げられる可能性も出てくるのではないか。 本来ならこの問題の解決には、まずは新入りのアラブ系の人たちに、ドイツに留まりたければ反ユダヤ主義は許されないことを強く啓蒙し、さらには、国民全員に、過去の歴史やホロコーストなど、検証さえもタブーであった事柄についてのオープンな議論の場を設けることのほうが先決のような気がする』、「国民全員に、過去の歴史やホロコーストなど、検証さえもタブーであった事柄についてのオープンな議論の場を設けることのほうが先決」、もっともな気もするが、筆者が触れてないような根深い問題があるのかも知れない。

次に、10月15日付け現代ビジネスが掲載した在独作家の川口 マーン 惠美氏による「西ドイツの“成金都市”から東独の「歴史文化都市」に引っ越して感じたこと」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/88310?imp=0
・『2021年10月9日のライプツィヒ  コロナのせいで日独の間の往来はもちろん、ドイツ国内の移動も不便になって、すでに1年半が過ぎた。私が旧東独のライプツィヒに越したのは今から2年余り前だが、せっかく素晴らしいドイツ東部の文化や風土を、まだ十分に堪能することができずにいる。 旅行に行こうにも、長いあいだホテルはビジネス客しか泊まれず、レストランも閉まっていた。オペラ座やコンサートホールも閉鎖が続き、ようやく開いたあとも小さい編成の、あまり知られていない演目ばかり掛かっていた。今、だんだんそれらが急速に元に戻り始めているのが嬉しい。 ちなみに、これまで休暇は外国で過ごすことの多かったドイツ人だが、現在、国内の観光地がブームになっている。たとえお隣のイタリアやフランスであっても、予期しないコロナ禍に巻き込まれる面倒は避けたいという防御反応が働いているのだ。ドイツには風光明媚な場所が多々あるので、皆、思いがけない「ドイツ再発見」に、結構満足しているようにも見える。 ライプツィヒ市はザクセン州に属し、ポーランドと国境を接している(ザクセン州の南部はチェコとも繋がっている)。東西ドイツの統一は1990年だが、これは統一というより、西による東の併合だった。 東の人が喜んだのは束の間で、あっという間に西の「占領軍」がやってきて、民間企業でも役所でも大学でも、長と名のつく役職は全て奪っていった。東の人々にしてみれば、不平等条約が横行するようなやりきれない思いだったと想像する。 以来すでに31年が過ぎたが、人口は東から西へとコンスタントに流れ続け、東の過疎と高齢化には今も歯止めがかからない。 東西を結ぶ鉄道網は、南北方向の路線に比べると貧弱だし、東の新しいアウトーバーンは交通量が少ないため、サービスエリアやガソリンスタンドの密度が低い。東で働いていた人と、西で働いていた人の年金には、今なお差があるし、人々の心のわだかまりも無くなったわけではない。 ところが、その旧東独の中で珍しく人口が増えているのがライプツィヒだ。現在の人口は60万5000人で、ザクセンの州都ドレスデンよりも5万人近く多い。出生率もV字回復中という元気な町である』、「これまで休暇は外国で過ごすことの多かったドイツ人だが、現在、国内の観光地がブームになっている・・・ドイツには風光明媚な場所が多々あるので、皆、思いがけない「ドイツ再発見」に、結構満足しているようにも見える」、「コロナ」のとんだ効用だ。
・『ドイツの中心は東にあった  私はここへ来る前、シュトゥットガルトに37年間も住んでいた。シュトゥットガルトというのは自動車の町で、ベンツとポルシェの本社がある。当然、その関連会社も山ほどあり、景気は良く、人々は自信満々。地価の高騰さえ自慢の一つだった。そして、西の人間の例に漏れず、たいてい東を少しだけ見下していた。 さて、そんな町に住み、漠然とドイツのことは知り尽くしているような気になっていた私だが、ライプツィヒに住み始めると、目から鱗ともいうべき新たな発見が多く、衝撃的だった。 まず、肌で感じたのが、そもそもドイツの中心は、東にあったのだという歴史的事実。その中でもライプツィヒは、学問、商業、芸術(特に音楽)、どれをとっても、まさにその頂点を極めた町で、その名残は、今も町のそこかしこに色濃く残っていた。 町の中心には、バッハが25年も音楽監督をしていたトーマス教会があり、当たり前のように礼拝やコンサートが行われていたし、通りがかった建物にさりげなく貼ってあるプレートを見ると、「クララ・シューマンの生家」などと書いてあった。 ライプツィヒ大学の入口ホールには、ここで教鞭を取ったり学んだりした人々、たとえば哲学者ライプニッツや、メビウスの輪で有名な数学者メビウス、ゲーテやニーチェなどの胸像がずらりと並んでいた。また、入り組んだ建物の間には、過去の瀟洒な商館を彷彿とさせるパッサージュと呼ばれるアーケードなどがそのまま残っていたりもした。 ライプツィヒはまた音楽のメッカでもあり、ここで音楽会を訪れると、シュトゥットガルトとは一風違った空気が漂っていた。人々は、ステータスを見せびらかすためではなく、音楽を聴くために粛々と集まってきた。 東独時代の40年間、西に比べて娯楽の少なかったこの国で、人々が愛し、守り続けた伝統が、今もなお頑固に受け継がれているように感じられた。今まで私が聞いていた音楽がデジタルなら、ライプツィヒはアナログで、人間の息遣いが残っているようだった。 市内の建物は、東独時代には煤けて見窄らしくなっていたに違いないが、今ではすっかり修復されて、有名なものも、そうでないものも威風堂々としている。そして、その建物と空気に、何世紀分もの歴史が澱のようにへばりついていた。 ライプツィヒに来て、私はようやく思い出した。戦前までのシュトゥットガルトは貧しい土地であったということを。ライプツィヒの長い栄華に比べれば、自動車産業やIT産業の勃興などつい最近の話だ。その西の人間が東を見下すとは、まるでお門違いだと思った。 東の人たちは寡黙なプライドを胸に秘めつつ、何も言わないけれど、ひょっとすると、心の中で西の成金ぶりに苦笑しているのではないか』、「戦前までのシュトゥットガルトは貧しい土地であった・・・ライプツィヒの長い栄華に比べれば、自動車産業やIT産業の勃興などつい最近の話だ。その西の人間が東を見下すとは、まるでお門違いだと思った」、歴史的な視点も確かに重要だ。
・『2年ぶりに開かれた「光の祭典」  1989年のベルリンの壁の崩壊を招いた国民運動は、ライプツィヒで始まった。町の中心にあるニコライ教会で、毎週月曜日に開かれていた集会は、最初は宗教のヴェールを被っていたが、そのうちに「外へ!」というスローガンとともに教会から飛び出した。ドイツ史に名を残すことになる「月曜デモ」である。 9月4日、デモの参加者は初めて1000人を超えたが、独裁国での政府に対する抗議集会であるから、当然、逮捕者が出た。しかし、人々は諦めず、25日には8000人、10月2日には1万5000人と、参加者は鰻登りに増えていった。 真の突破口となったのは10月9日だ。この日、参加者は一気に7万人に膨らんだ。当然、その情報は当局に筒抜けで、ホーネッカー書記長は警察に武力介入を命じていた。夜、サーチライトの光る中、集まった市民と武装警官隊の間には一触即発の緊張が張り詰めた。惨劇になってもおかしくないはずのところ、しかし、この夜、警官隊はホーネッカーの命令に従わなかった。市民が勝ったのだ。 この後、全東独で抵抗運動が炸裂し、ちょうど1ヶ月後にベルリンの壁が落ちる。東西ドイツの統一は、国民の力で民主主義を達成した無血革命と言われるが、中でもライプツィヒ市民の果たした役割は大きかった。 それを記念して、ここでは毎年10月9日の夜、「光の祭典」と名付けたイベントが催される。去年はコロナ禍で中止されたが、今年はそれを取り戻すかのようで、夜の帳が下りるころには、町はすごい数の人々で溢れた。あちこちで、小さなキャンドルを入れたプラスチックのカップを配っており、皆がその一点の光を手に暗い町をそぞろ歩く。ただそれだけで絵になる美しさだ。 今年のイベントは、密集を避けるために3ヵ所に分けられたが、オペラ座の前のアウグストゥス広場でのイベントが特に印象に残った。 広場の中心の櫓に設置された映写機から周りに向かって、何本かの光が放射線状に放たれている。そして、そこに用意されている長い柄のついた看板のような形のスクリーンを、集まった市民がそれぞれ自主的に手に取り、頭上に掲げて、映写機からの光の束を受ける。すると初めて、映写機から出ているその光が、それぞれのスクリーン上で像を結んだ。 映写されたのは、1989年の10月9日のデモの写真だった。モチーフは、デモの参加者の真剣な表情や、彼らが持ち寄った手作りのプラカードなど、当日の現場写真だ。そして広場中にBGMのように、デモのオリジナルの音声が響いていた。当時の悲痛な呼びかけや、人々のシュプレヒコールを聴きながら立っていると、あたかもデモの現場にいるような緊迫した臨場感に包まれた。 スクリーンは、何人かが協力して横並びにくっつけると、映し出される映像は細切れでなく、大きくなる。見知らぬ人たちのそんなさりげない共同作業が、無言のままにも、辺り一帯に心地よい連帯感を醸し出していた。スクリーンの持ち手は、しばらくするとそれを誰かにバトンタッチして去っていく。ただ、それだけなのに、なぜか感動した。 ライプツィヒでよく思う。私はドイツをまだまだ知らないと。これまでろくに旧東独を知らずにドイツを知っているつもりだったのは、恥ずかしいことだった。おそらく、ライプツィヒと、旧東独のその他の田舎の間にも、今の私が想像もつかないほどの大きな差があるのだろうと思う。 ある国を完全に知ることなど不可能だが、今、ライプツィヒのおかげで、しばらく忘れていたドイツに対する興味が再び蘇ってきている』、「ベルリンの壁の崩壊を招いた国民運動は、ライプツィヒで始まった」、「警官隊はホーネッカーの命令に従わなかった。市民が勝ったのだ」、初めて知った。「ある国を完全に知ることなど不可能だが、今、ライプツィヒのおかげで、しばらく忘れていたドイツに対する興味が再び蘇ってきている」、初心に戻ったとも考えられる。

第三に、9月30日付けNHK時論公論「メルケル首相の16年とドイツの行方」を紹介しよう。
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/455003.html
・『「混乱・分裂か、不透明だが新しい始まりのチャンスだ」ドイツのメディアは今の状態をこう表現しています。メルケル政権の後継体制を決めるドイツの総選挙は、社会民主党が16年ぶりに第1党の座を奪還し、連立政権の樹立に向けて動き出しました。しかし、キリスト教民主社会同盟も政権維持をあきらめておらず、小政党の動向がカギを握っています。選挙の結果をふまえて新しい政権の見通しとメルケル首相の16年、そしてドイツの今後を考えます。 まず26日に投開票が行われた連邦議会・下院議員選挙の暫定結果です。 投票率はコロナ禍でも前回を上回りました。 ▼第1党は中道左派の社会民主党で、206議席を獲得。 ▼メルケル首相が所属する中道右派のキリスト教民主社会同盟は196議席にとどまりました。得票率は24.1%で結党以来最低です。 ▼緑の党と自由民主党はともに議席を増やしました。 2005年に第2党に転落して以来低迷が続いた社会民主党は、キリスト教民主社会同盟が保守層の支持を失い、議席を大きく減らしたことで第1党に復帰しました。 同じような状況は98年にもありました。キリスト教民主社会同盟はドイツ統一の立役者で4期16年首相を務めたコール氏のもとで大敗を喫し、社会民主党に政権を明け渡しました。安定志向が強く急激な変化を望まないドイツでも長期政権に飽き、政治の刷新を求める声がうねりのように高まっていたことを現地で取材していて感じました。 今回は新しい政治を求める声以上に国民に幅広い人気のあるメルケル氏の引退が大きく影響したといえそうです。ドイツは主要政党が首相候補を立てて争うため、政策より誰に国のかじ取りをまかせるかに注目が集まる傾向があります。キリスト教民主社会同盟の首相候補ラシェット氏は洪水の被災地で笑顔で談笑していた姿が報じられて批判を浴び失速。社会民主党のショルツ氏はライバルたちの自滅によりトップに浮上しました。財務相として手堅い手腕が評価されるショルツ氏がポスト・メルケルに一歩近づいたかたちです。とはいえ過半数には3党の連立が必要で、ラシェット氏も連立政権樹立をめざすと表明したためまだ予断を許しません』、「ドイツは主要政党が首相候補を立てて争うため、政策より誰に国のかじ取りをまかせるかに注目が集まる傾向があります」、面白い傾向だ。
・『考えられる連立の組み合わせは3通りあります。 ▼1つは社会民主党と緑の党、自由民主党の連立で、政党の色から赤緑黄色の「信号連立」と呼ばれます。▼一方、キリスト教民主社会同盟も緑の党、自由民主党との連立を目指しており、この場合は黒緑黄色で「ジャマイカ連立」と呼ばれます。緑の党は社会民主党に近く98年から7年間連立を組みました。自由民主党は政策が近いキリスト教民主社会同盟と何度も連立を組んできました。この2党がそろって2大政党のどちらにつくかで政権が決まります。▼3党の連立交渉が決裂した場合は、今と同じ2大政党による大連立の可能性も残されていますが、双方とも連立は望んでいません。ショルツ氏、ラシェット氏ともにクリスマスまでの政権発足をめざしていますが、3党の交渉は難航も予想されます。 新政権にはコロナ後の経済の立て直しとともに、メルケル政権が積み残した様々な課題が待ち構えています。 格差の是正とデジタル化の推進、それに気候変動対策などです。とくに気候変動対策は緑の党の連立入りが確実なだけにこれまで以上に重点が置かれることになります。 ドイツは2045年までの脱炭素社会実現をめざしていますが、緑の党は20年後の実現を掲げ、自由民主党は産業の競争力低下につながる政策には慎重です。また緑の党は富裕層への増税強化を求めているのに対し自由民主党は増税に反対しており、政策が大きく異なるこの2党がどう折り合いをつけるかが今後のカギです』、「信号連立」、「ジャマイカ連立」など政党を色で表すとは面白い。
・『メルケル首相は新政権発足までとどまりますが、なぜ16年もの長期政権を維持することができたのでしょうか。 メルケル氏はアメリカの雑誌フォーブスで、世界で最も影響力のある女性に10年連続1位に選ばれていますが、首相に就任した当初はここまで長期政権が続くと予想した人はほとんどいませんでした。メルケル氏は旧西ドイツで生まれた直後に牧師をしていた父親の仕事で旧東ドイツに移り住みました。1990年の東西ドイツ統一後初めて行われた選挙で、当時のコール首相に見いだされて初当選を果たし閣僚のポストを得ました。 2000年には闇献金疑惑で辞任した党首の後を継ぎましたが、党内の基盤はなく、カトリック教徒の党員が多い中プロテスタントで旧東ドイツ出身の女性政治家という当時としては異色の存在でした。取材でもごく普通の地味な政治家という印象を持ちましたが、2005年の選挙で勝利し、ドイツ初の女性首相に就任しました。 当初は大きな期待もなかったメルケル氏が、国民から「ムティー」、お母さんと呼ばれ、ヨーロッパを代表する指導者にまでなったのは、安定感があり何事にも冷静で柔軟に対応する能力があるためだと言われます。その1例が脱原発です。首相就任後、産業界の要請を受けてシュレーダー前政権が決めた原発の全廃を見直し、稼働延長を打ち出しましたが、東京電力福島第一原発事故を受けて、「2022年までの原発廃止」に転じました。科学者としての冷静な目と臨機応変な判断に基づくものでした。金融危機やコロナ禍では危機管理能力の高さを示しました。 一方で同性婚の容認や徴兵制の廃止、それに多数の難民受け入れなど保守政党ながらリベラルで人道主義に基づく政策を進め、伝統的な保守層の支持を失いました。また、対中政策で人権問題に目をつぶり経済関係を優先したように現実的な面も持ちあわせています。恩人であるコール氏をはじめ党内のライバルを次々と蹴落としてトップの座を射止めた冷徹さも兼ね備えています。それが後継者が育たず、政権を明け渡すことにつながったのかもしれません』、「当初は大きな期待もなかったメルケル氏が、国民から「ムティー」、お母さんと呼ばれ、ヨーロッパを代表する指導者にまでなったのは、安定感があり何事にも冷静で柔軟に対応する能力があるためだと言われます」、「首相就任後、産業界の要請を受けてシュレーダー前政権が決めた原発の全廃を見直し、稼働延長を打ち出しましたが、東京電力福島第一原発事故を受けて、「2022年までの原発廃止」に転じました。科学者としての冷静な目と臨機応変な判断に基づくものでした」、「原発廃止」から「稼働延長」にしたのを、再び「原発廃止」にしたというのも、「科学者としての冷静な目と臨機応変な判断」は大したものだ。
・『では、メルケル後のドイツはどこへ向かうのでしょうか。 アメリカは内向き志向を強め、代わって中国が台頭、フランスやイギリスは影響力が低下しました。世界は多極化が進み、欧米ではポピュリズムが広がり民主主義の危機が叫ばれてきました。そうした中でメルケル首相は、自由と民主主義、法の支配の堅持を訴え、トランプ前大統領にもひるまずモノを言い続けました。ヨーロッパがユーロ危機などを乗り越え、結束を保ってきたのもメルケル氏の存在があったからだと言われます。 誰が次のリーダーになるにせよ、ヨーロッパをまとめることができるか、また、民主主義と多国間主義の守り手として各国指導者とわたりあうことができるか、手腕が問われることになります。ヨーロッパもまたドイツの強いリーダーシップを求めています。さらにドイツは近年中国への過度の依存を見直してインド太平洋地域に目を向け、日本などとの関係を重視する姿勢に転じました。この路線は変わらないと見られますが、対中国・ロシア関係をめぐっては中ロに近い社会民主党と人権重視の緑の党の対立も予想されます。 ドイツは来年G7の議長国です。政治空白の長期化は許されず1日も早く政権を発足させてほしいと思います。日本としてもアメリカ一辺倒ではなくドイツを要とするヨーロッパとの経済、安全保障をはじめ幅広い分野での関係強化に向けて、新政権が生まれるこの機会が絶好のチャンスだと思います』、「メルケル後のドイツはどこへ向かう」のか、冷静なドイツ国民の良識に期待したい。 
タグ:ドイツ (その4)(「タブー視してきたツケか」ドイツで"ユダヤ人憎悪"のデモが広がる厄介な理由 「移民受け入れ」を進めてきた副作用、西ドイツの“成金都市”から東独の「歴史文化都市」に引っ越して感じたこと、メルケル首相の16年とドイツの行方) PRESIDENT ONLINE 川口 マーン 惠美 「「タブー視してきたツケか」ドイツで"ユダヤ人憎悪"のデモが広がる厄介な理由 「移民受け入れ」を進めてきた副作用」 「外交においては、時にこういう象徴的な、危険をも顧みないで駆けつけたといったようなポーズが重要な意味を持つ」、その通りだが、日本の政治家には無理だろう。 「ベルリンの反イスラエルデモ」は暴動に近いようだ。 「2世以上は皆、ドイツで教育を受け、社会に根付いているため、今回の暴動の主役ではありえない」、なるほど。 「難民」「受け入れ」が「新しい形の反ユダヤ主義が、再び国内に持ち込まれた」、とは皮肉だ。 「「ドイツ政府」、「メルケル首相」、「左派勢力やメディア」にも「責任の一端」がある」、確かにそうした面があることは事実かも知れないが、「酷」過ぎる気もする。 何が問題なのだろう。 「ドイツ人の間では、たとえユダヤに対する偏見や反ユダヤの感情があったとしても、本人が一切気づいていない可能性が高いのではないかということだ。あるいは、気づいていても、理性で閾下いきかに押し込めている可能性だ」、あり得そうだ。 「国民全員に、過去の歴史やホロコーストなど、検証さえもタブーであった事柄についてのオープンな議論の場を設けることのほうが先決」、もっともな気もするが、筆者が触れてないような根深い問題があるのかも知れない。 現代ビジネス 「西ドイツの“成金都市”から東独の「歴史文化都市」に引っ越して感じたこと」 「これまで休暇は外国で過ごすことの多かったドイツ人だが、現在、国内の観光地がブームになっている・・・ドイツには風光明媚な場所が多々あるので、皆、思いがけない「ドイツ再発見」に、結構満足しているようにも見える」、「コロナ」のとんだ効用だ。 「戦前までのシュトゥットガルトは貧しい土地であった・・・ライプツィヒの長い栄華に比べれば、自動車産業やIT産業の勃興などつい最近の話だ。その西の人間が東を見下すとは、まるでお門違いだと思った」、歴史的な視点も確かに重要だ。 「ベルリンの壁の崩壊を招いた国民運動は、ライプツィヒで始まった」、「警官隊はホーネッカーの命令に従わなかった。市民が勝ったのだ」、初めて知った。「ある国を完全に知ることなど不可能だが、今、ライプツィヒのおかげで、しばらく忘れていたドイツに対する興味が再び蘇ってきている」、初心に戻ったとも考えられる。 NHK時論公論 「メルケル首相の16年とドイツの行方」 「ドイツは主要政党が首相候補を立てて争うため、政策より誰に国のかじ取りをまかせるかに注目が集まる傾向があります」、面白い傾向だ。 「信号連立」、「ジャマイカ連立」など政党を色で表すとは面白い。 「当初は大きな期待もなかったメルケル氏が、国民から「ムティー」、お母さんと呼ばれ、ヨーロッパを代表する指導者にまでなったのは、安定感があり何事にも冷静で柔軟に対応する能力があるためだと言われます」、「首相就任後、産業界の要請を受けてシュレーダー前政権が決めた原発の全廃を見直し、稼働延長を打ち出しましたが、東京電力福島第一原発事故を受けて、「2022年までの原発廃止」に転じました。科学者としての冷静な目と臨機応変な判断に基づくものでした」、「原発廃止」から「稼働延長」にしたのを、再び「原発廃止」にしたという 「メルケル後のドイツはどこへ向かう」のか、冷静なドイツ国民の良識に期待したい。
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SNS(ソーシャルメディア)(その10)(「クラブハウス」の狂乱が日本に残したもの、クラブハウスが下火になっても「音声メディア」の可能性が広がり続ける必然~『ボイステック革命』(緒方憲太郎 著)を読む、SNSがアメリカと日本にもたらした「真逆の現象」 どちらもコミュニケーション不全状態に) [メディア]

SNS(ソーシャルメディア)については、4月12日に取上げた。今日は、(その10)(「クラブハウス」の狂乱が日本に残したもの、クラブハウスが下火になっても「音声メディア」の可能性が広がり続ける必然~『ボイステック革命』(緒方憲太郎 著)を読む、SNSがアメリカと日本にもたらした「真逆の現象」 どちらもコミュニケーション不全状態に)である。

先ずは、7月5日付け日経ビジネスオンライン「「クラブハウス」の狂乱が日本に残したもの」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00324/070100003/
・『米中と比べ、「聴く文化」は日本にはまだ浸透していない。米調査会社のリポートを見ても、日本で少なくとも月に1回ポッドキャストを開く人口は米中の3分の1にすぎない。 この状況を一変させたのが2021年初頭に日本で巻き起こった音声SNS「Clubhouse(クラブハウス)」ブームだ。招待制も相まって熱狂の渦を巻き起こした。数カ月で騒ぎは沈静化したものの、「聴く習慣」を日本にもたらした効果は大きい。 コロナ禍で働き方が多様化し、リモートワークが一気に普及した点も音声市場にとって追い風となっている。長時間にわたるオンライン会議やデスクワークで、「目の疲れ」が慢性化しているためだ。 日本に「聴く習慣」が根付き、「聴く文化」へと昇華していくためには良質なコンテンツは欠かせない。音声メディア「Voicy(ボイシー)」を運営するVoicy代表取締役最高経営責任者の緒方憲太郎氏による著書『ボイステック革命 ~GAFAも狙う新市場争奪戦~』から一部抜粋・再編集して掲載する。 今、世界で音声市場が成熟しつつあるのは、アメリカと中国だ。米調査会社のMAGNA(マグナ)による「The Podcasting Report(2019年7月)」によると、「少なくとも月に1回はポッドキャストを開く人口」(インターネットの普及率に応じて補正した値)はアメリカが26%、中国が29%と大きく、日本は8%にとどまっている。これを「日本はすっかり出遅れている」としか見ないか、「日本の伸びしろはすさまじく大きい」と考えるか。 まずはそれぞれの市場を簡単に見ていこう。 アメリカについては、既にスマートスピーカーやポッドキャストに焦点を当てて説明したが、もう少し音声市場拡大の背景にある特徴について紹介したい。 アメリカはもともと、スマートスピーカーやワイヤレスイヤホンなどのデバイスが普及する随分前から、「聴く」文化が定着していた。国土が広く、車社会のため、通勤や移動するとき、運転しながら音声を楽しむ人が多い。 ラジオも発達しており、英語、スペイン語、ロシア語などのさまざまな言語、ニュース、スポーツ、カントリーやR&Bなどのさまざまなジャンルの音楽などで細分化された専門ラジオ局があり、その数は全米で1万5000以上といわれている。 車の中で本を「聴く」ことも当たり前になっていて、早いうちからカセットテープやCDによる「オーディオブック」市場が形成されていた。そしてスマホの普及で、これらがそのままポッドキャストやスマホで聞くオーディオブックなどに置き換わってきた。アメリカのオーディオ出版社協会(APA)によると、2019年のアメリカのオーディオブックの売り上げは、前年比16%増の12億ドル(約1300億円)に上り、8年連続の2ケタ成長を続けている』、「「少なくとも月に1回はポッドキャストを開く人口」・・・はアメリカが26%、中国が29%と大きく、日本は8%にとどまっている」、これは大きな開きだ。ただ、「中国」が多い理由は何故なのだろう。
・『世界で巻き起こるVoiceTech革命  GAFAと呼ばれる米IT大手が音声への投資を続けている。米グーグルや米アマゾン・ドット・コム、米…  こうした背景からも、スマートスピーカーへの抵抗感は低かったことが考えられる。スマートスピーカーは、今や「1家に1台」から「1部屋に1台」の時代になっているともいわれ、アメリカ人が音声コンテンツに触れる時間はどんどん長くなっている。 ポッドキャストコンテンツの成長ぶりも前述の通りだ。大手IT各社が競い合うようにポッドキャストに投資しているほか、大手新聞社やテレビ局、ラジオ局などの既存マスメディアも、質の高いポッドキャスト専用番組を制作している。 例えば、実録クライム(犯罪)系の連続シリーズとして制作された「Dirty John(ダーティ・ジョン)」は、リリースから6週間で1000万回以上、累計5200万回以上ダウンロードされた。ニューヨーク・タイムズのニュース番組「The Daily(ザ・デイリー)」は1日で200万人が聴く人気コンテンツになっている』、「スマートスピーカーは、今や「1家に1台」から「1部屋に1台」の時代になっているともいわれ、アメリカ人が音声コンテンツに触れる時間はどんどん長くなっている」、日本とはずいぶん違うものだ。
・『ポッドキャストに目をつけたスポティファイ  注目すべきは、スポティファイが2019年に、ポッドキャストコンテンツの制作スタジオGimlet Media(ギムレット・メディア)とParcast(パーキャスト)の2社を買収し、オリジナル番組で差別化の勝負に出たことだ。さらに配信サービスのAnchor(アンカー)、広告プラットフォームを展開するMegaphone(メガフォン)、スポーツやポップカルチャーの番組を得意とするThe Ringer(ザ・リンガー)などを次々と買収している。 また、オバマ元大統領夫妻、世界1位のポッドキャスト番組を運営するコメディアンのジョー・ローガン、イギリスのヘンリー王子とメーガン妃らと相次いでポッドキャストの独占契約を結んでいる。スポティファイの担当者は、音楽よりも(ポッドキャストのような)音声コンテンツの方が課金につながりやすいという趣旨の発言をしている。同社が、「音楽の次」のコンテンツとして、ポッドキャスティングをターゲットとしているのは明白だ。 前述の通り、アメリカのポッドキャスト市場は急速に成長しており、今やアメリカの12歳以上の人口の37%がポッドキャストを聴いているとの試算もある。ポッドキャストの広告市場も急拡大しており、2021年は10億ドルを超えて、3年前の3倍近くになると予測されている。良質な音声コンテンツがリスナーを増やし、さらなる投資を生むという好循環が起こっていると言えそうだ』、「同社が、「音楽の次」のコンテンツとして、ポッドキャスティングをターゲットとしているのは明白」、「今やアメリカの12歳以上の人口の37%がポッドキャストを聴いているとの試算も」、日米でこれほど違いがあるのも珍しい。
・『広告よりも有料課金が大きい中国  もともと中国では、文字入力の煩雑さなどから音声入力のニーズが高く、音声認識の技術も進んでいた。そして現在の中国のポッドキャスト市場は、有料コンテンツのユーザーの多さが一つの特徴となっており、その規模は70億ドルと、アメリカの音声市場(130億ドル)の半分以上にも達する。広告市場よりも、有料課金コンテンツ市場の方が圧倒的に大きい。 中国では人口の29%がインターネットアクセスを持つとされているが、そのうちの53%が月に最低1回はポッドキャストを聴いていると推計されている。多くのユーザーが、ビジネスやプレゼンテーションスキルなどの学習コンテンツを有料で購入している。 主なプレーヤーを見てみよう。 中国の音声配信サービスでトップシェアを占めるのが、日本版の名称としては「himalaya(ヒマラヤ)」で知られる「シマラヤFM」だ。中国では6億以上のアプリダウンロード、月間1億1000万のアクティブユーザーを持つ。配信者は約600万人で、主にプロのクリエイターが配信するPGC(Professionally Generated Contents:プロ生成コンテンツ)が中心だ。 ヒマラヤは、版権を取得して音声化した作品を提供することで、優良な音声コンテンツを提供してきた。ユーザーは、音声コンテンツのリスナーとなるだけでなく、ヒマラヤが版権を持つコンテンツを音声化する配信者としても参加できる仕組みだ。例えば、人気の小説投稿サイトとヒマラヤが提携し、権利を取得した小説をヒマラヤ内で公開。ユーザーはその小説を音声化して配信する。ユーザー投票によって選ばれた配信者には報酬が支払われる。 さまざまな課金システムがあり、コンテンツの単品販売、月額料金によるサブスクリプション、投げ銭(ギフティング)などがある。ユーザーと配信者がコミュニケーションを取ることもできる。 チンティンFM(QingTing FM、以下チンティン)も、ヒマラヤと同様にPGCが中心。スマートスピーカーやインターネットテレビ、5G搭載の自動車などのハードウエア製品と提携してユーザーを伸ばしているのが特徴だ。アクティブユーザー数は月間1億3000万。ヒマラヤはスマホアプリが中心だが、チンティンはこうした多様なハードウエアを介した戦略を取っている。チンティンもヒマラヤと同様、配信者に報酬を支払ってコンテンツの充実を図っている。2019年には1年間で1000万元(約1億5000万円)を売り上げた作品が登場したり、プロではない配信者の作品が3カ月で100万元(1500万円)を売り上げたりしている。 ライチFM(Lizhi FM)は、ヒマラヤやチンティンとは異なり、素人のオリジナル作品を中心とした音声配信サービスだ。ユーザー層は若者が多く、1990~2000年代生まれの若者がユーザーの約60%を占めている。約590万人のアクティブ配信者による1億7000万本以上のコンテンツが公開されており、アクティブユーザーは月間5100万人に上る。中国最大のUGC(User Generated Contents:ユーザー生成コンテンツ)音声コミュニティーだ。 インタラクティブ性が強く、配信者とユーザー間のコミュニティーとなっている面があり、インスタグラムやユーチューブに近い特性を持っていると言える。ライブ配信では投げ銭課金の売り上げが伸びている。2020年1月には音声配信サービスで中国初のナスダック上場を果たしている。) 中国では、「ナレッジシェア(知識の共有)」としてテキストや動画、音声などにお金を払う文化が浸透しているといわれており、ヒマラヤやチンティンはその文脈に沿って成長してきた。その一方で、プロコンテンツを作るための作品の著作権使用料が負担になっているとされる。このため近年は、ヒマラヤも広告ビジネスに力を入れ始めている。2018年には米スターバックスの中国法人とコラボし、音声コンテンツ番組へのリンクを印字したカップ飲料を300万杯限定で販売。コンドームの英デュレックスは、恋愛や性の悩みについて語るチャンネルを立ち上げた。 また、米ケンタッキー・フライド・チキンの店内に公式ラジオ局を作り24時間生配信をした番組は、1842万回再生・最大同時聴取数6万5000人を記録している。音声コンテンツのマネタイズ手法が多様化してきていると言えるだろう』、「もともと中国では、文字入力の煩雑さなどから音声入力のニーズが高く、音声認識の技術も進んでいた。そして現在の中国のポッドキャスト市場は、有料コンテンツのユーザーの多さが一つの特徴となっており、その規模は70億ドルと、アメリカの音声市場(130億ドル)の半分以上にも達する」、なるほど、同じ漢字を使っているとはいえ、日中の違いも大きいようだ。
・『なぜ日本の音声コンテンツは未成熟だったのか  急拡大しているアメリカや中国に比べると、日本の音声市場はようやく成長し始めたところだ。 市場の規模もそうだが、聴かれているコンテンツの内容についても、アメリカ・中国などの成長市場とは異なる。じっくり聴くタイプのポッドキャストやオーディオブックなどは、日本ではまだそれほど多く聴かれていない。音楽や、BGM的にさらっと聴き流すタイプのコンテンツが中心である。 音声の聴取は、大きく分けて2パターンある。一つは、例えば事務作業などの仕事をしているときや、勉強をしているときなど、視覚を使い、思考しているときに聴くものだ。聴くものは、思考の邪魔にならないような音楽などが中心となる。日本のラジオは比較的こちらに入るものが多いだろう。 もう一つは、体を使い、思考はそれほどしていないときに聴くものだ。家事や運動、何かの袋詰めや畑仕事など、反復作業をしているときをイメージしてもらうとよいだろう。こうした場合は、BGM的なものでなくても、思考や集中力が必要な学習コンテンツ、オーディオブックなどもマッチする。 日本の音声コンテンツは、前者のBGM的なものは多くあるが、後者の、集中して聴き思考を要するものは諸外国に比較して少ない。情報欲求や学びの欲求が高まる中、思考や学びにつながる音声コンテンツの需要はもっと広がるはずだ。 これはあくまでも私個人の印象なのだが、アメリカや中国などに比べて、日本ではこれまで、「視覚で楽しむ」傾向が強かったように感じられる。ユーチューブですら音を消して見る人が多いし、テレビ番組も、特にバラエティーや情報番組などでは字幕を多用し、視覚情報で楽しむ傾向が強い。このためか、これまでなかなか良質な「面白い」音声コンテンツが生まれる土壌がなかった』、「日本の音声コンテンツは、前者のBGM的なものは多くあるが、後者の、集中して聴き思考を要するものは諸外国に比較して少ない。情報欲求や学びの欲求が高まる中、思考や学びにつながる音声コンテンツの需要はもっと広がるはずだ」、後半部分は本当だろうかと疑問に思う。
・『「聴く習慣」の広がり  聴く習慣がないから良質な音声コンテンツが生まれないのか、良質な音声コンテンツがないから聴く習慣が生まれないのか。おそらくそのどちらでもあるのだろう。私がボイシーのサービスを立ち上げたときも、一番苦労したのは「聴く習慣」を広げることだった。 海外でポッドキャストが急成長している一方、日本でポッドキャストに注目が集まるようになってきたのはつい最近のこと。日本ではまだ、ポッドキャスト専門の制作スタジオや配信サービスは少なく、これまでは、ラジオ局が電波で流している番組をそのままポッドキャストに仕立てたものが多かった。「ポッドキャストといえば、英語学習者が海外の英語コンテンツを聴くためのもの」といったイメージもあったのではないだろうか。 世界的な広告代理店インター・パブリック・グループ・オブ・カンパニーズ(IPG)傘下のマーケティング調査会社であるマグナグローバル(MAGNA)は、日本でこれまでポッドキャストがなかなか伸びなかった理由として、日本ではもともと、海外に比べてデジタルで音声を聴く習慣がないことを挙げている。一例として、「スポティファイが上陸した2016年時点で、音楽市場の8割をCDが占めており、歴史的に、レコードレーベルは楽曲をストリーミングサービスに提供することに抵抗感を持っていた」ことを挙げている。 インターネットを介してアプリなどで聴ける音声コンテンツの老舗といえば、2010年にサービスを開始した「radiko(ラジコ)」がある。ラジオの電波が届かないところを補完する目的で始まり、当初は関東や関西の一部のエリアのみが対象だったが、徐々に対象地域やラジオ局が広がり、現在では民放ラジオ全99局の番組を聴くことができる。スマホのアプリで聴くことができるため、今では「ラジオは聴かないけどラジコは聴く」という若者も多い。 そして2010年代後半から、ほかにもさまざまな音声配信サービスが生まれ始めた。2016年にボイシーがサービスを開始しているほか、2017年には中国発のヒマラヤ、エキサイトの社内ベンチャーとして生まれた「Radiotalk」が始まった。 2018年には韓国の「Spoon(スプーン)」が上陸、ライブ配信やコミュニティー機能を持つ「stand.fm」も開始した。2020年になると、HIKAKINなどの人気ユーチューバーを抱えるUUUMが、「REC.」を立ち上げている。そして2021年に入り、音声SNSのクラブハウスブームが巻き起こったことで、「音声」にようやく注目が集まり始めた。 ただ実は、それよりも前の2020年12月の時点で、「1カ月に1回以上ポッドキャストを聴く人の割合」は14.2%、人口の推定で1123万人にまで増えていたことが、デジタル音声広告を手掛けるオトナルと朝日新聞の共同調査で分かっている。この調査では、ポッドキャストを聴いている人のうちの47.1%は、聴き始めたのが1年以内と回答。そのきっかけとして22.5%が、「スポティファイやAmazon Musicでポッドキャストが聴けるようになったから」と答えている。海外でのポッドキャストブームが、日本にも波及し始めていると言えるだろう。 日本でも「機は熟した」と言えそうだ。私自身も今年に入ってから、音声ビジネスに関する取材が急激に増え、他業界の人からも「ちょっと話を聞きたい」と声を掛けられることが多くなった。 その背景としては、グローバルの動きと同様、音声認識などのテクノロジーの進化と、スマートスピーカーやワイヤレスイヤホンなどのデバイスの普及などがあるだろう。 デバイスの進化が進んでいたところに世界中を襲ったのが、新型コロナウイルスの感染拡大だった。感染拡大を抑えるために、各国でロックダウンや外出自粛が行われ、リモートワークが推進されるようになった。オンライン会議が増え、イヤホンをしながら仕事をする習慣が広がると同時に、いわゆる「Zoom疲れ」「パソコンやスマホの画面疲れ」も引き起こした。そうした人たちが、音声に目を(耳を)向け始めたのは、ある意味自然なことだっただろう』、「海外でのポッドキャストブームが、日本にも波及し始めていると言えるだろう。 日本でも「機は熟した」と言えそうだ」、なるほど。
・『クラブハウスの上陸による「気付き」  そのタイミングで上陸したのが音声SNSのクラブハウスだ。Zoomと違って画面がないので、着替えたり身だしなみを整えたりする必要がなく、何かをしながらでも気軽に参加できる。招待制、iPhoneのみの対応といったハードルにもかかわらず、人と自由に会えない生活が続き、気軽な雑談さえできない寂しさを埋めるのにちょうどいい場として、日本でも爆発的に参加者が増え、ちょっとした「クラブハウスブーム」が起きた。 アメリカのアプリ調査会社センサータワーによると、クラブハウスのユーザーは2020年の5月には数千人程度だったが、2021年2月19日にはアプリのダウンロード数が1000万を超えた。このうち700万は1月25日以降で、日本は約150万を占める。 ポッドキャストの場合、15分から30分程度のものも多いが、1時間程度の番組もあったりと、聴くのに比較的まとまった時間がかかる。一方クラブハウスは、より雑談を聴くのに近く、さまざまな会話が行われているルームを少しずつのぞき見(のぞき聴き)する感覚なので、時間の長さよりもタイミングが勝負。細切れの時間でも十分楽しめる。今まで、わざわざラジオやポッドキャストを聴いたりしなかったような、隙間時間にも入り込んできた。クラブハウスのおかげで「聴く習慣」がついた人も多いはずだ。 上陸から2、3カ月がたつと、当初のブームは沈静化したものの、多くの人が音声の可能性に目を向けるきっかけになった。クラブハウスで話してみて、これまでのテキストや動画での発信と、音声による発信の違いに気付いた人も多いだろう。 また、誰もが目の疲れを感じていたのではないだろうか。一日中パソコンやスマホの画面を凝視し続ける生活には限界がある。特にコロナ下のリモートワークでは、「Zoom疲れ」という言葉が聞かれたように、映像コミュニケーションを負担に感じたり、パソコン画面を見続けることに疲れたりして、画面から離れ目を休ませたいというニーズも増えたようだ。 当初は、「クラブハウスが出てきたせいで、日本の音声サービスは危ないんじゃないか」「海外サービスに蹂躙(じゅうりん)されるんじゃないか」といった意見をよく見かけたが、たくさんの人がクラブハウスを使い、特性について理解を進めるにつれ、そうした意見は聞かれなくなってきた。むしろ、クラブハウスによって日本の音声業界は活性化したし、私もそうしたメッセージを意識的に伝えてきた。 ボイシーについても、当初は「クラブハウスは競合になるのではないか」という見方をしていた人が多かったが、私自身は相乗効果を得られる相手だということを実感している。それはデータにも表れており、ボイシーのユーザー数はクラブハウス上陸前に比べて、3カ月で2.5倍になった。また、リスナーが増えただけでなく、「ボイシーでしゃべりたい」という人も増えた。 それは数字にもはっきり表れている。クラブハウスは、「誰かとしゃべりたい。人の声が聴きたい」という欲求は満たしてくれるが、やはり発信者にしてみると物足りなさが残る。話したことが残らないと、自分の世界観を表現し、維持したいという欲求は満たされないからだ。 ボイシーはおそらく、「自分の声を残しておきたい」「自分の場所をつくりたい」「フォロワーの反応も知りたい」といった欲求を持った発信者や、「クラブハウスで話すことの楽しさを知り、もっとやってみたくなった」という人たちの、受け皿になったのだと思う。 クラブハウスブームの数カ月前までは、1カ月に5人くらいしか新しいパーソナリティーを増やしていなかったが、2021年2月には一気に50人ほど増えた。パーソナリティーへの応募数自体が増え(パーソナリティーは応募者の中からボイシーが選考している)、かつそのレベルも上がったからだ』、「クラブハウスは、「誰かとしゃべりたい。人の声が聴きたい」という欲求は満たしてくれるが、やはり発信者にしてみると物足りなさが残る。話したことが残らないと、自分の世界観を表現し、維持したいという欲求は満たされないからだ。「ボイシーはおそらく、「自分の声を残しておきたい」「自分の場所をつくりたい」「フォロワーの反応も知りたい」といった欲求を持った発信者や、「クラブハウスで話すことの楽しさを知り、もっとやってみたくなった」という人たちの、受け皿になったのだと思う」、さて「クラブハウス」や「ボイシー」は今後、どうなってゆくのだろう。

次に、9月30日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した情報工場チーフ・エディターの吉川清史氏による「クラブハウスが下火になっても「音声メディア」の可能性が広がり続ける必然~『ボイステック革命』(緒方憲太郎 著)を読む」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/282749
・『視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のチーフ・エディターである吉川清史が豊富な読書量と取材経験などからレビューします』、興味深そうだ。
・『「クラブハウス」ブームが示した「声」の可能性  2021年初頭のインターネット界隈で話題をさらったものといえば、「クラブハウス」が筆頭に挙がるのではないだろうか。これは周知の通り、米国発の「音声」に特化したSNSだ。本国でサービスがローンチされたのは2020年4月だが、2021年1月に本格的に日本上陸を果たす。すると、何人もの有名人が発信を始めたこともあり、またたく間に利用者が拡大、一大ブームとなった。 だが、3月に入る頃には、早くも人気が沈静化。もちろん使用が習慣化しているユーザーも少なくないのだろうが、今では話題に上ることも少なくなった。 人気が衰えた理由については、さまざまなメディアで考察されているが、おそらく、参加が「招待制」だったことが大きいのではないか。7月に「ベータ版」終了とともに自由に参加できるようになったが、当初は既存ユーザーから招待されなければ入会できず、しかも招待枠が1人2枠しか与えられていなかった。 また、5月にAndroid版アプリが配布されるまで、iPhoneでしか使えず、アプリの使い勝手も決して良いとはいえなかった。さらに、発信された音声は録音不可で、リツイートのように拡散できない仕様になっていた。クローズドなサービスのまま人気が爆発したために、ユーザー拡大のチャンスを逸したのだろう。 しかし、クラブハウスが示した「音声メディア」の可能性はついえたわけではない。フェイスブックは今年4月に、音声特化型SNSサービスの新設を発表、6月に米国で「Live Audio Rooms」という名でスタートした。ツイッターも、昨年12月からテストを行っていた音声チャットサービス「Space」を、今年5月からフォロワー数600人以上のユーザー限定で正式スタートしている。 アップルやアマゾン、スポティファイなどで配信されているポッドキャストの人気も高い。今年7月期放送の深夜ドラマ「お耳に合いましたら。」(テレビ東京系)は、元乃木坂46の伊藤万理華さん扮する主人公がポッドキャスト番組を始めるストーリーで、スポティファイのポッドキャスト番組との連動も注目された。 本書『ボイステック革命』では、国内の音声メディアVoicy(ボイシー)の創業者でCEOを務める緒方憲太郎氏が、クラブハウス人気で弾みがついた「ボイステック(音声関連のテクノロジー)」市場の現状と可能性について詳細に解説している。 緒方氏が主宰するボイシーは2016年に創業。現在、ビジネスのプロや芸能人などの「声のブログ」、4大マスメディアの記事が声で聴ける「メディアチャンネル」、企業が発信する「声の社外報」「声のオウンドメディア」など500以上のチャンネルが楽しめる音声プラットフォームとなっている。昨今の「音声ブーム」や、コロナ禍の「巣ごもり需要」もあり、昨年末時点で約100万人だった月間ユーザー数は、今年3月には約250万人と、急激に増加している』、ずいぶん急速に「月間ユーザー数」が増えたものだ。
・『「ながら聴き」と手軽な発信が音声メディアのメリット  緒方氏によると、音声メディアの最大のメリットは「ながら聴き」ができることだ。昔ながらのラジオも同様だが、流しておけば、家事や仕事、食事など何か別のことをしながら楽しめる。この点で音声は、テキストや動画に比べ、圧倒的に有利だ。 さらに、ながら聴きを容易にしているのが、Amazon Echo、Google Homeといったスマートスピーカーや、アップルのAirPodsをはじめとするワイヤレスイヤホンの普及だ。私の知人にも、仕事から帰宅してから寝るまで、ほぼワイヤレスイヤホンを付けっ放しという人がいる。 音声コンテンツを「発信」する側の手軽さもメリットだ。ポッドキャストの場合、スマホの録音ボタンをタッチしてしゃべるだけで、コンテンツができ上がる。10分のコンテンツを作るのに(録り直しをしなければ)10分しかかからない。テキストや動画の場合、こうはいかないだろう。動画は編集の手間と時間がかかるし、文章を書くにはそれなりの時間がかかる。 これまで多忙で、SNSなどに投稿する時間がなかった人たちでも、音声メディアならば気軽に発信側にもなれる。忙しくてスマホの画面チェックもままならなかった人でも「ながら聴き」で情報収集の幅を広げられる。このようにして音声メディアは、ネットコミュニティーへの参加者を格段に増やす働きをする可能性があるのだ。 そもそも、インターネット上の情報発信やコミュニケーションは、当初は技術的な制約からテキストベースで始まった。その後、日進月歩の技術進化により大きな画像や動画もストレスなく送信、閲覧できるようになったものの、利用者数の多いツイッターやLINEのコミュニケーションは、テキストによるものが主流だ。 テキストで伝えられる情報量は、リアルな対面に比べ圧倒的に少ない。画像や動画、さらにはVR(仮想現実)などが使えるのであれば、より多くの情報が伝えられ、コミュニケーションを深められるはずだ。それなのに、VRはさほど普及せずに、現状、多くの人がテキストのコミュニケーションで満足している。 おそらく現代のネットユーザーの多くは、「深いコミュニケーション」をネットに求めていないのだろう。それよりも、手軽さを優先させる。浅いコミュケーションや情報交換を、多く行う。ジャーナリストの佐々木俊尚氏は、著書『広く弱くつながって生きる』(幻冬舎新書)の中で、「浅く、広く、弱い」つながりこそが、これからの時代の人間関係のあり方と述べている。 おそらく、これからもテキストによるコミュニケーションは主流であり続けると思われる。そして、それに次ぐネットでのコミュニケーション手段として「音声」が台頭してくるのではないだろうか』、「これからもテキストによるコミュニケーションは主流であり続けると思われる。そして、それに次ぐネットでのコミュニケーション手段として「音声」が台頭してくるのではないだろうか」、なるほど。
・『声はうそをつかない その人の全てが表れる  緒方氏は、音声の「本人性」の高さも強調する。テキストは、たとえ署名があったとしても、本当に本人が書いたかどうかわからない。手書きならば筆跡でわかるかもしれないが、画面上の文字で判断するのは難しい。画像や動画も、いわゆる「盛っている」ことがままあり、アップした本人の本当の姿であることは、むしろまれだ。その点、音声は、声質や話し方に個性や「人となり」が表れやすい。 音楽・音声ジャーナリストの山﨑広子氏が著した『声のサイエンス―ーあの人の声は、なぜ心を揺さぶるのか』(NHK出版新書)によると、人が声を出す時には、口だけでなく、体のさまざまな器官を総動員しており、そのため声には、身長、体格、顔の骨格、性格、生育歴、体調から心理状態まで、その人の全てが表れる。言葉でうそはつけても、声はうそをつかないのだという。 緒方氏は、「ボイステック」の事例として、2012年に設立された医療系ボイステックベンチャー企業PSTによる、「声」をAI分析して、うつ病や認知症、パーキンソン病などの診断に役立てる試みを紹介している。 また山﨑氏は、私たちのほとんどは普段「作り声」を出しているが、「本物の声」を出すことで、心身を健全に保つとともに、人の心を動かせるのだと述べている。 ボイシーでは、人気を集めるパーソナリティー(メディアで話をする人)は、豊かな人生を生きる、人間として魅力のある人が多いのだそうだ。彼らはおそらく「本物の声」で話しているのだろう。そのために、話の内容だけでなく、その人の生き方が声を通して伝わり、ファンになるリスナーが後を絶たないとのことだ。 コロナ禍は、テクノロジーでは補強しきれない、生身の「人間」の弱さを改めて認識させることになった。GAFAをはじめとするテック企業が今、音声に注目するのは、もしかしたら生身の人間が持つ力を取り戻そうとする動きなのかもしれない』、「コロナ禍は、テクノロジーでは補強しきれない、生身の「人間」の弱さを改めて認識させることになった。GAFAをはじめとするテック企業が今、音声に注目するのは、もしかしたら生身の人間が持つ力を取り戻そうとする動きなのかもしれない」、「生身の人間が持つ力を取り戻そうとする動き」であればいいのだが・・・。

第三に、10月15日付け東洋経済オンラインが掲載した作家・元外務省主任分析官の佐藤 優氏による「SNSがアメリカと日本にもたらした「真逆の現象」 どちらもコミュニケーション不全状態に」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/462069
・『いまの社会は、SNSの発達などによりコミュニケーションツールは非常に充実しています。しかし、本当にそれによって私たちはコミュニケーションをうまく行えているでしょうか?ちょっと考えてみても、じつに怪しく心もとない感じがします。私は、SNSがじつは人間関係を結びつけるどころか、むしろ分断するツールになると思っています。その理由を拙著『読解力の強化書』をもとに解説します』、「SNSがじつは・・・人間関係を・・・分断するツールになる」、とは思い切った仮設だ。
・『ある現象によって分断されるアメリカ  SNSが私たちを分断するツールになる──。そんな危険性が巷に知られるようになったのは、2008年、バラク・オバマがマケインを破り大統領に就任した際の、選挙戦にさかのぼります。 当時、民主党のオバマ陣営はSNSを駆使してライバルに大きな差をつけて勝利しました。陣営と支持者たちの間で、SNSを通じてさまざまなやり取りが行われました。それが集票につながった、最初の大統領選挙だと言われています。 その後、あるリサーチャーによる調査によって、面白い現象が明らかになりました。民主党と共和党のそれぞれのブログコミュニティーのつながりを解析したのです。すると、それぞれのつながりの中で完結し、両党の間でのコミュニケーションがほとんど行われていなかったのです。 このことによって、SNSは同質性の高い集団の中においてはコミュニケーションを活性化させる働きが強い一方、立場や意見が違う者同士を排除する閉鎖性が強いツールであることが指摘されるようになりました。 その後、共和党のドナルド・トランプが登場し、民主党のヒラリー・クリントン候補を破った大統領選挙では、この傾向にますます拍車が掛かりました。この頃から言われるようになったのが、「エコーチェンバー現象」と言われるものです。 エコーチェンバー現象とは、ある人物の意見や主張が、肯定され評価されながら、集団内のメンバーによって繰り返される現象を言います。それはあたかもこだまが鳴り響くかのように反響し、共鳴して、集団内で一層大きく強力なものになっていきます』、「SNSは同質性の高い集団の中においてはコミュニケーションを活性化させる働きが強い一方、立場や意見が違う者同士を排除する閉鎖性が強いツールであることが指摘されるように」、「エコーチェンバー現象」によって、「こだまが鳴り響くかのように反響し、共鳴して、集団内で一層大きく強力なものになっていきます」、SNSの危険性を的確に指摘している。
・『主義主張の違うもの同士の対立を煽った  トランプの過激なツイッターの投稿が、支持者たちの間でリツイートされながら、エコーチェンバー現象によって大きな力になっていった。それによって巷の予想を裏切り、多くの支持を集めたトランプは大統領に就任します。 彼は大統領就任後もSNSの力を最大限利用し、ときに相手をおとしめ誹謗するかのようなツイートを上げながら、自らの支持者をより熱狂的なトランプ教の信者に仕立て上げます。彼が行ったことは、民主主義の下での国民同士の対話ではなく、主義主張の違う者同士の対立と敵対感情を煽り、結果的にアメリカを分断することでした。 その結末が、2021年1月6日、1000名近いトランプ支持者が、選挙の不正を訴え、バイデンの大統領就任を阻止するべく、連邦議会を襲撃した事件です。そして彼らの多くが、トランプこそがさまざまな陰謀からアメリカや国民を救う救世主であり、バイデンなどの民主党やその支持者は、自らの利権と権力をほしいままにするために真実を歪め不正を働く、悪の集団だと信じていました。 この事件によって、ここ数年の間でアメリカに深刻な社会的な分断が起きていることが明らかになりました。同質性の高い内輪のコミュニケーションだけで完結し、異質なものを排除する。エコーチェンバー現象によって自己正当化が行われ、対立や分断が深まる。その結果が、この事件だと言えるでしょう。 他者の存在を意識し、認識するところから始まる、本来の民主主義の理念はすでにそこにはありません。 代わってはびこったのが、自分たちと立場を異にする者に対する敵愾心や恐れでしょう。そして誰かが自分たちの立場や利益を脅かそうと目論んでいるに違いない、という被害妄想、被害者意識が生まれてくる。それによって自己保身的に他者を排除したり、攻撃したりする排外主義が大手を振って台頭しているのです。 言葉を換えて言うならば、アメリカ人が対象を理解しようとする「読解力」を決定的に失ってしまった、ということに他なりません』、「はびこったのが、自分たちと立場を異にする者に対する敵愾心や恐れでしょう。そして誰かが自分たちの立場や利益を脅かそうと目論んでいるに違いない、という被害妄想、被害者意識が生まれてくる。それによって自己保身的に他者を排除したり、攻撃したりする排外主義が大手を振って台頭しているのです」、ツイッター社やフェイスブック社が、「トランプ」のフェイクニュースなどを阻止したのも、SNSのマイナス面を意識した行動なのだろう。
・『「異質な意見」が入りにくくなりがちに  翻って日本はどうでしょうか?アメリカほど深刻な分断が起きているわけではありません。しかしながら、日本の場合は、社会全体が一つのコンセンサスに基づいて一元化しがちです。アメリカのように分断、分裂化するほどの社会的なダイナミズムがあるわけではありませんが、同調圧力が高く、エコーチェンバー現象が起きやすい文化的な土壌があるように思います。 その上にネットやSNSツールの持つ閉鎖性が重なることで、同じ考え方や価値観を持った、同質性の高い者同士でネットワークが完結し、異質な意見が入り込みにくくなりがちです。自分たちの考えや意見が、あたかも多数派のように錯覚してしまうのです。 自分にとって心地よく都合の良い情報ばかりに囲まれ、いつしかそれが当たり前になってしまう。しかもSNSでやり取りするのは、皆自分と同じ意見の人たちばかり……。それが続くとどうなるか? 自分の意見や価値観が大多数の意見だと錯覚し、自分にとって異質な情報、都合の悪い情報を受け入れる許容力がなくなってしまうでしょう。コミュニケーションツールはたくさんあり、その中でのやり取りは膨大ですが、その内容は非常に貧困でワンパターンなものばかりです。 一見コミュニケーションがたくさんあるようで、じつはコミュニケーション不全の状態といってよいでしょう。そこでは決定的に「読解力」が失われていくことになるのです。 その流れの中で起きているのが、ときに過剰に思える日本礼賛ムードだと思います。テレビの番組でも、相変わらず日本の伝統文化や科学技術などを外国人に紹介し、彼らが驚き、賞賛する様子を映すという、日本礼賛番組がゴールデンタイムに流されます。 このような日本礼賛ものは、最近はとくにYouTubeなどに比重が移ってきているように感じます。「中国人が日本のラーメンのおいしさに絶句!」「日本の街の美しさに驚く欧米人」といったタイトルの動画が目立ちます。 あたかも、日本人が他国民に比べて文化度が高く、手先が器用で繊細で、創造的なセンスにあふれた国民であるような気持ちになる。 ですが、ちょっと目を転じれば、多くの国々にもモノづくりの確固とした歴史や伝統があり、古くからの地場産業が栄え、世界的なブランドが出ている地域がたくさんあります。それらに目を向けようとせず、十分な比較や検証もなく、自分たちの文化が優れている、特殊だと考えるのは単なる思い込みで、自己満足的な妄想に近いのです』、「日本礼賛ムード」のなかでも特にいやらしいのは、政府が旗を振るクール・ジャパン運動や、NHKの番組だ。これについては、このブログの2019年8月26日にも取り上げた。
・『ワイプで人の表情を抜く目的は?  テレビの話が出たついでにもう1つ。ワイドショーなどで、出演者たちの表情をワイプ(注)で抜くことがいまや当たり前になっています。悲惨なニュースには悲しい出演者の顔を映し出し、楽しい話の時には笑顔が映る。30年ほど前にはなかった映像手法だと思います。果たしてそのような映像が必要かと私などは思いますが、ワイプで誰かの表情を確かめないと安心できないということなのでしょうか。 1つの出来事に対する反応や判断は人それぞれですから、いろんな反応、表情があったっていい。ところがワイプに出て来る表情は、皆同じです。もし、心和むような話の時に苦虫をかみつぶしたような表情をしていたら?きっとツイッターなどでさんざんに叩かれるでしょう。 ある出来事に対して、誰もが同じ感覚、同じ感情を持たなければいけない。そんな同調圧力のようなものを感じるのは、私だけではないと思います。 皆が笑っている時につまらなそうにしていたり、皆が悲しんでいる時に平然としていたりするのを許さない。いまの日本の社会の同調圧力、異質なものを認めないという傾向が表れているようにも思えます。つまり、異質なものに対する耐性が弱いということでしょう。自分と異質なものに対する恐怖心が、かなり強くなっているのではないでしょうか』、「いまの日本の社会の同調圧力、異質なものを認めないという傾向が表れているようにも思えます。つまり、異質なものに対する耐性が弱いということでしょう。自分と異質なものに対する恐怖心が、かなり強くなっているのではないでしょうか」、強く同感する。
(注)ワイプ:画面Aが紙芝居のように横に引き抜かれて、次の画面Bに替わること(Wikipedia)
タグ:SNS ソーシャルメディア (その10)(「クラブハウス」の狂乱が日本に残したもの、クラブハウスが下火になっても「音声メディア」の可能性が広がり続ける必然~『ボイステック革命』(緒方憲太郎 著)を読む、SNSがアメリカと日本にもたらした「真逆の現象」 どちらもコミュニケーション不全状態に) 日経ビジネスオンライン 「「クラブハウス」の狂乱が日本に残したもの」 緒方憲太郎氏による著書『ボイステック革命 ~GAFAも狙う新市場争奪戦~』 「「少なくとも月に1回はポッドキャストを開く人口」・・・はアメリカが26%、中国が29%と大きく、日本は8%にとどまっている」、これは大きな開きだ。ただ、「中国」が多い理由は何故なのだろう。 「スマートスピーカーは、今や「1家に1台」から「1部屋に1台」の時代になっているともいわれ、アメリカ人が音声コンテンツに触れる時間はどんどん長くなっている」、日本とはずいぶん違うものだ。 「同社が、「音楽の次」のコンテンツとして、ポッドキャスティングをターゲットとしているのは明白」、「今やアメリカの12歳以上の人口の37%がポッドキャストを聴いているとの試算も」、日米でこれほど違いがあるのも珍しい。 「もともと中国では、文字入力の煩雑さなどから音声入力のニーズが高く、音声認識の技術も進んでいた。そして現在の中国のポッドキャスト市場は、有料コンテンツのユーザーの多さが一つの特徴となっており、その規模は70億ドルと、アメリカの音声市場(130億ドル)の半分以上にも達する」、なるほど、同じ漢字を使っているとはいえ、日中の違いも大きいようだ。 「日本の音声コンテンツは、前者のBGM的なものは多くあるが、後者の、集中して聴き思考を要するものは諸外国に比較して少ない。情報欲求や学びの欲求が高まる中、思考や学びにつながる音声コンテンツの需要はもっと広がるはずだ」、後半部分は本当だろうかと疑問に思う。 「海外でのポッドキャストブームが、日本にも波及し始めていると言えるだろう。 日本でも「機は熟した」と言えそうだ」、なるほど。 「クラブハウスは、「誰かとしゃべりたい。人の声が聴きたい」という欲求は満たしてくれるが、やはり発信者にしてみると物足りなさが残る。話したことが残らないと、自分の世界観を表現し、維持したいという欲求は満たされないからだ。「ボイシーはおそらく、「自分の声を残しておきたい」「自分の場所をつくりたい」「フォロワーの反応も知りたい」といった欲求を持った発信者や、「クラブハウスで話すことの楽しさを知り、もっとやってみたくなった」という人たちの、受け皿になったのだと思う」、さて「クラブハウス」や「ボイシー」は今後、どう ダイヤモンド・オンライン 吉川清史 「クラブハウスが下火になっても「音声メディア」の可能性が広がり続ける必然~『ボイステック革命』(緒方憲太郎 著)を読む」 ずいぶん急速に「月間ユーザー数」が増えたものだ。 「これからもテキストによるコミュニケーションは主流であり続けると思われる。そして、それに次ぐネットでのコミュニケーション手段として「音声」が台頭してくるのではないだろうか」、なるほど。 「コロナ禍は、テクノロジーでは補強しきれない、生身の「人間」の弱さを改めて認識させることになった。GAFAをはじめとするテック企業が今、音声に注目するのは、もしかしたら生身の人間が持つ力を取り戻そうとする動きなのかもしれない」、「生身の人間が持つ力を取り戻そうとする動き」であればいいのだが・・・。 東洋経済オンライン 佐藤 優 「SNSがアメリカと日本にもたらした「真逆の現象」 どちらもコミュニケーション不全状態に」 「SNSがじつは・・・人間関係を・・・分断するツールになる」、とは思い切った仮設だ。 「SNSは同質性の高い集団の中においてはコミュニケーションを活性化させる働きが強い一方、立場や意見が違う者同士を排除する閉鎖性が強いツールであることが指摘されるように」、「エコーチェンバー現象」によって、「こだまが鳴り響くかのように反響し、共鳴して、集団内で一層大きく強力なものになっていきます」、SNSの危険性を的確に指摘している。 「はびこったのが、自分たちと立場を異にする者に対する敵愾心や恐れでしょう。そして誰かが自分たちの立場や利益を脅かそうと目論んでいるに違いない、という被害妄想、被害者意識が生まれてくる。それによって自己保身的に他者を排除したり、攻撃したりする排外主義が大手を振って台頭しているのです」、ツイッター社やフェイスブック社が、「トランプ」のフェイクニュースなどを阻止したのも、SNSのマイナス面を意識した行動なのだろう。 「日本礼賛ムード」のなかでも特にいやらしいのは、政府が旗を振るクール・ジャパン運動や、NHKの番組だ。これについては、このブログの2019年8月26日にも取り上げた。 「いまの日本の社会の同調圧力、異質なものを認めないという傾向が表れているようにも思えます。つまり、異質なものに対する耐性が弱いということでしょう。自分と異質なものに対する恐怖心が、かなり強くなっているのではないでしょうか」、強く同感する。 (注)ワイプ:画面Aが紙芝居のように横に引き抜かれて、次の画面Bに替わること(Wikipedia)
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