金融業界(その15)(地方銀行の合従連衡を妨げる"みずほ"の呪縛 フィデアHDと東北銀 経営統合破談の舞台裏、地銀の大株主に出現「村上系ファンド」の腹づもり 株価がまるで冴えない地銀に示した3つの選択肢、みずほとソフトバンク、「情報銀行」の2つの誤算 個人の信用をスコア化する野心はなぜ躓いたか) [金融]
金融業界については、5月25日に取上げた。今日は、(その15)(地方銀行の合従連衡を妨げる"みずほ"の呪縛 フィデアHDと東北銀 経営統合破談の舞台裏、地銀の大株主に出現「村上系ファンド」の腹づもり 株価がまるで冴えない地銀に示した3つの選択肢、みずほとソフトバンク、「情報銀行」の2つの誤算 個人の信用をスコア化する野心はなぜ躓いたか)である。
先ずは、6月6日付け東洋経済オンライン「地方銀行の合従連衡を妨げる"みずほ"の呪縛 フィデアHDと東北銀、経営統合破談の舞台裏」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/594421
・『本業がじり貧に陥り、年々体力を低下させる「構造不況」が定着している銀行業界。一部の地域銀行では経営統合に踏み切ったものの、多くの地銀は依然として業務提携という名の“不可侵条約”を周囲の銀行と結び、自分たちの営業エリアを守ることに終始している。 6月6日発売の『週刊東洋経済』6月11日号では「瀬戸際の銀行」を特集。金融のデジタル化によって、銀行に求められる役割や存在感が急速に低下する中で、今後のあるべき姿とは何なのか。模索を続ける銀行業界の実情に迫った』、興味深そうだ。
・『フィデアHDに君臨する「最高権力者」 「真摯に協議を進めたものの、互いの戦略を理解し、共有することができなかった」 2022年2月、東北銀行の村上尚登頭取は岩手県盛岡市で記者会見し、フィデアホールディングスとの経営統合の基本合意を解消すると硬い表情で発表した。 その半年余り前、村上氏は「本業利益を拡大させていくには、提携から一歩踏み込んで(フィデアと)合流する必要がある」とまで言い切っていた。にもかかわらず、いったいなぜ“婚約破談”に至ったのか。 その背景を探る中で見えてくるのは、“みずほ”の影だ。 そもそも、荘内銀行(山形県鶴岡市)と北都銀行(秋田市)を傘下に持つフィデアと東北銀は、2018年に包括業務提携を結んで、ATMの利用手数料を相互に無料化するなど、連携を深めてきた。 その一方で、東北地方では2021年5月、青森銀行とみちのく銀行が経営統合で基本合意したと発表し、地方銀行再編の大きなうねりが生まれていた。 その動きに触発されたかのように、2カ月後の21年7月に東北銀は拙速ながらも、フィデアとの経営統合交渉に踏み切ったわけだ。 東北銀の幹部によると、「銀行業に対する価値観がフィデアとはまったく違うので、(統合交渉は)当初から破談への不安が強かった」という。 実際にその予感は的中した。顧客情報などをフルに活用した広域での営業体制を志向するフィデアと、地元の中小企業に密着した金融サービスを貫く東北銀とでは、当初からなかなか話がかみ合わなかったのだ。それでも、東北銀の村上氏はフィデア側に「何とか歩み寄ろうと試行錯誤していた」(前出の幹部)という』、カルチャーの違いを無理に乗り越えようとせず、慎重になったのは正解なのかも知れない。
・『”上から目線”の取締役会議長 「理解できない」。2022年に入ると、村上氏はフィデアについて周囲にそう漏らすようになる。 その言葉はフィデアという会社に対してだけでなく、かつてみずほ銀行頭取を務め、現在はフィデアの社外取締役を務める西堀利(さとる)氏に対してのものでもあった。 フィデアの関係者によると、西堀氏は「村上氏に、銀行業のあり方などをかなり“上から目線”で説くようなことがあった。そうした姿勢を含めて、こういう人間がいる銀行とは組めないとなったのではないか」と話す。 とはいえ村上氏としては、口うるさい一人の社外取の発言に、いちいち神経質になっていたわけではないだろう。 フィデアにとって西堀氏は「取締役会議長であり、指名委員会の委員長も務め、旧富士銀行出身の田尾祐一社長の先輩でもある、まさに“最高権力者”」(フィデアの関係者)なのだ。 その最高権力者の考えや方針を理解できなければ、経営統合など当然ありえないわけだ。 その西堀氏は、6月の株主総会を経て社外取から非業務執行の社内取締役に移る見通しだ。まさか指名委員会の委員長として、自らの人事案の決議に参加してはいないだろうが、ガバナンス上はたして問題はないのか。 企業統治に詳しい川北英隆・京都大学名誉教授は、西堀氏が2015年からフィデアの社外取を務めていることから「社内取に移るのであれば、もっと早い段階が適切だった。自らの人事の議論に参加しなかったとしても、影響を及ぼしたとみるのが普通で、透明性のきわめて低い人事だ」としている』、「フィデアにとって西堀氏は「取締役会議長であり、指名委員会の委員長も務め、旧富士銀行出身の田尾祐一社長の先輩でもある、まさに“最高権力者”」、それが「社内取に移る」というのは、確かに「透明性のきわめて低い人事だ」。
・『トラウマの経営統合 みずほ銀出身者によって再編が進まないという事例は、ほかにもある。静岡銀行と名古屋銀行の経営統合を前提としない包括業務提携が、まさにそうだ。 名古屋銀を提携に駆り立てたのは、2021年12月に発表された愛知銀行と中京銀行の経営統合だ。両行が組めば、貸出残高で愛知県トップの座を「愛知+中京」連合に譲り渡すことになる。 両行の最終合意発表が翌月に迫っていた2022年4月27日、名古屋銀は地銀上位行である静岡銀との包括業務提携を発表。製造業が多い静岡と愛知において両行の企業支援の知見・ノウハウを共有し、環境規制など産業構造の変化に対応していく狙いだと説明した。 名古屋銀の藤原一朗頭取は、記者会見で「愛知銀と中京銀の経営統合を意識したのか」と問われると、「ありません」と一蹴し、それ以上言葉を続けなかった。 ただ、経営統合はしないという方針について質問されると、途端に「前職時代に経営統合を経験した。現場にいて大変だったという思いがある」と生々しい記憶を吐露したのだ。 藤原氏の「前職」は日本興業銀行で、「大変だった経営統合」とは、3つの母体銀行による内部抗争とシステム障害を繰り返してきた、みずほ銀のことである。 経営統合や合併が、経営陣や現場の行員にどれだけの苦しみをもたらすのか。藤原氏の20年越しの思いからは、それが垣間見えるようだった』、「名古屋銀の藤原一朗頭取」には、「みずほ」時代の「経営統合」の「苦しみ」の経験があり、それが「愛知銀と中京銀の経営統合」をしないという「方針」につながった可能性がある。やはり「地方銀行の合従連衡を妨げる"みずほ"の呪縛」であることは間違いないようだ。
次に、6月24日付け東洋経済オンライン「地銀の大株主に出現「村上系ファンド」の腹づもり 株価がまるで冴えない地銀に示した3つの選択肢」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/598886
・『地方銀行の経営者にとって決して無視できない動きだろう。 村上ファンド系の投資会社であるシティインデックスイレブンス(以下シティ)が、地銀に触手を伸ばしている。 5月24日に公表された、山梨中央銀行の株主総会招集通知。大株主の欄に、1.92%の株式を保有する第7位の大株主としてシティの社名が記載されている。5月30日に公表された滋賀銀行の招集通知にもシティが登場した。1.67%を保有する第9位の大株主だ。 これ以外にも東洋経済の調査で、シティはさらに3つの地銀の株式を保有していることがわかった』、物言う株主(アクティビスト・ファンド)がいよいよ「地銀に触手を伸ばしている」時代に入ったようだ。
・『財務体質は優良だが、株価水準は著しく低い 1つ目は長野県を地盤とする八十二銀行。シティは1.36%を保有する13位の大株主だ。2つ目は秋田銀行で、0.94%保有し同じく13位に位置する。最後は東京きらぼしフィナンシャルグループ(以下、きらぼし)。保有比率は1%で、こちらは12位だ。 東洋経済の調査によると2021年9月末時点で大株主にシティの名前がなかったことから、地銀への投資は最近になって開始したようだ。 シティが投資した地銀は、自己資本比率の高さが目立つ。全国地方銀行協会によれば、地銀平均の自己資本比率は国内基準行で9.92%、国際統一基準行で14.23%。きらぼしを除く4行は、平均値を超える財務基盤を誇っている。 株価も著しく安い。PBR(株価純資産倍率)は0.1~0.2倍台と、解散価値の目安である1倍を大きく割っている。割安に放置された株式を取得して余剰資本を生かした株主還元を要求し、株価を向上させる出口戦略をとりうるだろう。 シティの狙いは株価水準以外にもありそうだ。東洋経済の取材に対して、村上世彰氏はこう話す。「(機関投資家である)生命保険会社が、地銀の株式を売り始めた。安定株主を失えば、株式市場と向き合わざるをえなくなる」 地銀の大株主として名を連ねながらも、株式の売却を進めているのが日本生命保険だ。 2020年度末時点で八十二銀行株を1700万株保有していたが、2021年度末には1360万株に減少。同様に秋田銀行株も、保有株式数が1年間で62.5万株から43.7万株に減った。安定株主の存在感が低下すれば、シティのようなモノ言う株主の声が通りやすくなる』、「生命保険会社が、地銀の株式を売り始めた。安定株主を失えば、株式市場と向き合わざるをえなくなる」、上場地銀にとっては、悩みの種が増えたことになる。
・『なぜ、きらぼし銀行の株式を保有しているのか 一方で、5つの地銀の中で特異なのがきらぼしだ。自己資本比率は5行で唯一、地銀の平均値(9.92%)を割っており、株主還元を一層強化する余地は限られる。ある地銀役員は「再編を期待した投資だろう」と指摘する。 シティには再編をめぐる「成功体験」がある。昨年にSBIホールディングスがTOB(株式公開買い付け)を行った新生銀行だ。シティはTOBの進捗と並行して新生銀株を買い進め、12月には共同保有者と合わせた保有比率が9.16%にも達した。その後TOBの成立を受け、シティは全株式をSBIに売却した。 銀行業界初となる敵対的買収が成立したことについて、村上氏は「金融庁もマーケット中心主義へと舵を切った」と評価する。企業価値向上に資するなら、金融庁は再編を推奨すると見ている。 きらぼしの再編相手としては、横浜銀行と東日本銀行を傘下に持つコンコルディア・フィナンシャルグループが考えられる。折しも、昨年8月にはストラクチャードファイナンスなどの分野において、きらぼし銀行とコンコルディア傘下の横浜銀行が業務提携を発表した。 きらぼし銀と東日本銀は同じ東京都が地盤で、両者の再編観測は浮かんでは消えを繰り返している。仮に再編が成就すれば、シティにとっては新生銀行に次ぐ「二匹目のどじょう」となる。 シティによる株式保有で何が起こりうるのか。村上氏は地銀株の保有についてこう述べた。 「地銀には3つの選択肢がある。1つ目は合併や買収が起こりうること。2つ目は非上場化すること。3つ目は企業価値を上げること」 今回投資対象となったある地銀は「すでにシティと接触を図っている」と話す。目をつけられた以上、地銀は何らかの対応に動かざるをえないだろう。少なくとも「3つの選択肢」はいずれも難路だ。 全国地方銀行の2021年度決算を徹底分析したランキングはこちら。 ■地銀99行「衰弱度」総合ワーストランキング ■地方銀行、頭痛の種となっている「3大リスク」 ①有価証券評価損益ワーストランキング ②保証依存度ワーストランキング ③自己資本率ワーストランキング』、「今回投資対象となったある地銀は「すでにシティと接触を図っている」と話す。目をつけられた以上、地銀は何らかの対応に動かざるをえないだろう。少なくとも「3つの選択肢」はいずれも難路だ」、地道に業績を上げるのが王道だろう。
第三に、8月15日付け東洋経済オンライン「みずほとソフトバンク、「情報銀行」の2つの誤算 個人の信用をスコア化する野心はなぜ躓いたか」を紹介しよう。
・『みずほとソフトバンクの合弁会社が苦境に立たされている。国内初のフィンテックサービスが軌道に乗らない理由はどこにあるのか。 6月末、ある企業の決算公告が業界紙にひっそりと掲載された。2022年3月期決算では15億円の最終赤字を計上。バランスシートは負債199億円に対して純資産はわずか5億円と債務超過寸前だ。懐事情が苦しい企業の正体は、みずほ銀行とソフトバンクが設立した「J.Score」(Jスコア)だ。 2016年11月に設立されたJスコアは、フィンテックを活用した個人向け融資を手がける。AIを用いた独自の審査技術を武器に、金融機関の審査が通らない個人に対しても、低い貸し倒れリスクで融資を行うことが特徴だ。設立に先立つ記者会見ではみずほ・ソフトバンク両グループのトップが登壇し、旧来のリテール業務に風穴を開ける画期的なビジネスだと印象づけた。 だが、当初の期待とは裏腹に、Jスコアは6期連続で最終赤字を計上。累積赤字は2022年3月末時点で200億円を超えた。当初抱いた野望に対して2つの誤算が生じ、Jスコアはいまだ足踏みを続けている』、「Jスコアは、フィンテックを活用した個人向け融資」、として設立時には大いに注目された。
・『貸し出しの範囲を広げたい 「今までとはまったく違う、レンディングの世界を作りたい」。2016年9月、Jスコアの設立に先立ち行われた記者会見。みずほフィナンシャルグループの佐藤康博社長(当時)は、Jスコアの革新性をそう力説した。同じく登壇したソフトバンクグループの孫正義社長も「このジョイントベンチャー(合弁事業)には非常に期待している」と熱弁していた。 Jスコアの融資は個人向け・無担保・使い道自由。個人情報を基にAIが算出した「スコア」を基に、金利や借り入れ可能額が決まる。 銀行のフリーローンや消費者金融と異なるのは、旧来型の審査基準でははじかれてしまう顧客の発掘だ。収入や借り入れ状況といった信用情報のみならず、学歴や居住形態、資産背景、そして性格に至るまで多面的な属性をAIが分析。現時点での与信が低くとも、将来の成長が見込めれば融資を受けられる点をうたっていた。 2017年9月にサービスを開始し、半年後の2018年3月末時点でスコア取得者数は13万件。貸付極度額は35億円と、みずほ銀内部の計画対比で2倍の進捗をたたき出した。2019年3月末にはスコア取得者数は52万件、貸付極度額は193億円とさらに伸長。一見、事業は好調かに思われた。 ところが、Jスコア自身の業績は上向く気配を見せなかった。2019年3月期決算は47億円の最終赤字を計上。翌2020年3月末時点でのスコア取得者数・貸付極度額はそれぞれ120万件・335億円と躍進した一方、2020年3月期決算の最終赤字は63億円とさらに膨れ上がった。 背景にあるのが、積極的な広告宣伝だ。Jスコアはサービス開始当初からテレビやネット、公共交通機関などあらゆるメディアに広告を打ち、知名度向上と顧客の囲い込みに奔走した。結果、貸し出しによる利息収入を広告宣伝費が上回り、営業利益段階から恒常的な赤字に陥っていた。 痛手だったのは、広告費の回収フェーズに入った矢先にコロナ禍に見舞われたことだ。「借り入れ需要が減退してしまった」(同社広報)ことで、右肩上がりだったスコア取得者数や貸付極度額に急ブレーキがかかった。2022年3月期決算では赤字額が縮小しているが、これは広告費を絞ったため。肝心の売上高はむしろ減少している』、「スコア取得者数・貸付極度額はそれぞれ120万件・335億円と躍進」したが、「利息収入を広告宣伝費が上回り、営業利益段階から恒常的な赤字」、「痛手だったのは、広告費の回収フェーズに入った矢先にコロナ禍に見舞われたことだ。「借り入れ需要が減退してしまった」・・・ことで、右肩上がりだったスコア取得者数や貸付極度額に急ブレーキがかかった」、確かに不運だ。
・『進まぬ「情報銀行」構想 もう1つの誤算は、貸出利息に並ぶ収益柱である、利用者の個人情報を第三者に提供する「情報銀行」事業の停滞だ。 Jスコアは利用者の信用力を1000点満点で評価する。現時点での与信のほか、個人情報を任意で提供するほどスコアが上昇し、極度額の引き上げや金利優遇が受けられる。住居や家族構成をはじめ、語学力、保有資格、趣味、さらには性格診断に至るまで質問項目は100を超える。 利用者の同意を得たうえで、Jスコアは収集した情報をマーケティング材料として企業に提供し、対価を得る構想を練っていた。2019年12月に業界団体より「情報銀行」の認定を受け、2020年度にもデータ提供を開始する手筈だった。だが、認定を取得してから2年以上経った記事執筆時点でも、サービスは開始されていない。 遅れの一因とみられるのが、収集した個人情報の取り扱いルールが詰めきれていなかったことだ。総務省および経済産業省は2017年より、情報銀行のあり方を議論する検討会を断続的に開催。2018年6月に情報銀行の認定要件が策定された。だが、個人情報の運用方針や提供先の選定基準などは持ち越しとなった。 2021年11月に開かれた検討会には、Jスコアの担当者も参加。データ分析を通じて個人の趣味嗜好や信用力を予測し、分析結果を第三者に提供する際の留意点について議論が交わされた。 2022年6月に最新の指針が公表され、取り扱いの方針に一端の決着を見た形だ。総務省の担当者は「これまでは明確な指針がなく(個人情報の活用に)慎重だった情報銀行も、できるようになるのでは」と話す。 踊り場を迎えたままのJスコアを、親会社であるみずほ銀とソフトバンクは座視し続けるのか。 株主資本の変動から推測するに、Jスコアは過去4回、みずほ銀とソフトバンクから増資を受けている。創業当初の資本金および資本準備金計50億は3年も持たずに溶け、両社は2018年度に合わせて50億円の増資を引き受けた。 その後もJスコアは増資を重ね、2021年3月期には資本金と資本準備金の合計は200億円に膨らんだ。なお、Jスコアは資本欠損を解消するため、今年2月、資本金を99億円、資本準備金を100億円取り崩すと発表している。 度重なる追加出資に応じた理由は、Jスコアの財務改善だけではない。貸金業法は、貸金業者は純資産額を常時5000万円以上に保つことを定めている。赤字が続くJスコアが融資を続けるには、親会社は否応なく増資を引き受ける必要があった。 Jスコアの業績が短期的に黒字化する見込みは薄く、業務を続けるためにはみずほ銀とソフトバンクGは今後も追加出資を余儀なくされる可能性が高い。Jスコアの業績を反転させるべく、親会社の顧客網を活用したテコ入れ策を検討しているようだ』、「総務省および経済産業省は2017年より、情報銀行のあり方を議論する検討会」、「2022年6月に最新の指針が公表され、取り扱いの方針に一端の決着を見た形だ。総務省の担当者は「これまでは明確な指針がなく(個人情報の活用に)慎重だった情報銀行も、できるようになるのでは」と話す」、「指針」「公表」が遅れたのは大問題だ。ただ、それが決まる前に、それ抜きでとりあえず「Jスコア」を八足させたのも問題だった。
・『個人情報の利用に抵抗感 現状のJスコアは審査基準の違いこそあれ、同業の銀行やノンバンクと同じく無担保ローンの提供にとどまる。本丸である情報銀行が稼働しなければ、点数化した信用力は宝の持ち腐れだ。 ある金融機関関係者は「日本では情報銀行が普及する土壌が乏しい」と指摘する。中国ではアリババの「芝麻信用」が算出するスコアが社会インフラと化しているが、急速な普及の背景にあるのが、クレジットカードのような信用力の物差しが普及しておらず、個人情報活用に対して国民の抵抗感が薄かったことだ。 翻って、国内では2020年8月に「Yahoo!スコア」がサービスを終了した。同サービスは2019年6月に発表。ヤフーIDにひもづいた個人情報やネット通販の購買履歴、クレジットカードの決済動向などから利用者の信用力をスコア化し、外部企業に提供することを企図していた。だが、利用者からの反発を受け、約1年でサービスの終了を余儀なくされた。 今後Jスコアが軌道に乗るかどうかは、日本における情報銀行そのものの成否をも左右する』、「国内では2020年8月に「Yahoo!スコア」が」、「「利用者からの反発を受け、約1年でサービスの終了を余儀なくされた」、とは初めて知った。やはり「日本では情報銀行が普及する土壌が乏しい」のが確かなようだ。「Jスコア」が苦境をどう乗り切っていくかが注目される。
先ずは、6月6日付け東洋経済オンライン「地方銀行の合従連衡を妨げる"みずほ"の呪縛 フィデアHDと東北銀、経営統合破談の舞台裏」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/594421
・『本業がじり貧に陥り、年々体力を低下させる「構造不況」が定着している銀行業界。一部の地域銀行では経営統合に踏み切ったものの、多くの地銀は依然として業務提携という名の“不可侵条約”を周囲の銀行と結び、自分たちの営業エリアを守ることに終始している。 6月6日発売の『週刊東洋経済』6月11日号では「瀬戸際の銀行」を特集。金融のデジタル化によって、銀行に求められる役割や存在感が急速に低下する中で、今後のあるべき姿とは何なのか。模索を続ける銀行業界の実情に迫った』、興味深そうだ。
・『フィデアHDに君臨する「最高権力者」 「真摯に協議を進めたものの、互いの戦略を理解し、共有することができなかった」 2022年2月、東北銀行の村上尚登頭取は岩手県盛岡市で記者会見し、フィデアホールディングスとの経営統合の基本合意を解消すると硬い表情で発表した。 その半年余り前、村上氏は「本業利益を拡大させていくには、提携から一歩踏み込んで(フィデアと)合流する必要がある」とまで言い切っていた。にもかかわらず、いったいなぜ“婚約破談”に至ったのか。 その背景を探る中で見えてくるのは、“みずほ”の影だ。 そもそも、荘内銀行(山形県鶴岡市)と北都銀行(秋田市)を傘下に持つフィデアと東北銀は、2018年に包括業務提携を結んで、ATMの利用手数料を相互に無料化するなど、連携を深めてきた。 その一方で、東北地方では2021年5月、青森銀行とみちのく銀行が経営統合で基本合意したと発表し、地方銀行再編の大きなうねりが生まれていた。 その動きに触発されたかのように、2カ月後の21年7月に東北銀は拙速ながらも、フィデアとの経営統合交渉に踏み切ったわけだ。 東北銀の幹部によると、「銀行業に対する価値観がフィデアとはまったく違うので、(統合交渉は)当初から破談への不安が強かった」という。 実際にその予感は的中した。顧客情報などをフルに活用した広域での営業体制を志向するフィデアと、地元の中小企業に密着した金融サービスを貫く東北銀とでは、当初からなかなか話がかみ合わなかったのだ。それでも、東北銀の村上氏はフィデア側に「何とか歩み寄ろうと試行錯誤していた」(前出の幹部)という』、カルチャーの違いを無理に乗り越えようとせず、慎重になったのは正解なのかも知れない。
・『”上から目線”の取締役会議長 「理解できない」。2022年に入ると、村上氏はフィデアについて周囲にそう漏らすようになる。 その言葉はフィデアという会社に対してだけでなく、かつてみずほ銀行頭取を務め、現在はフィデアの社外取締役を務める西堀利(さとる)氏に対してのものでもあった。 フィデアの関係者によると、西堀氏は「村上氏に、銀行業のあり方などをかなり“上から目線”で説くようなことがあった。そうした姿勢を含めて、こういう人間がいる銀行とは組めないとなったのではないか」と話す。 とはいえ村上氏としては、口うるさい一人の社外取の発言に、いちいち神経質になっていたわけではないだろう。 フィデアにとって西堀氏は「取締役会議長であり、指名委員会の委員長も務め、旧富士銀行出身の田尾祐一社長の先輩でもある、まさに“最高権力者”」(フィデアの関係者)なのだ。 その最高権力者の考えや方針を理解できなければ、経営統合など当然ありえないわけだ。 その西堀氏は、6月の株主総会を経て社外取から非業務執行の社内取締役に移る見通しだ。まさか指名委員会の委員長として、自らの人事案の決議に参加してはいないだろうが、ガバナンス上はたして問題はないのか。 企業統治に詳しい川北英隆・京都大学名誉教授は、西堀氏が2015年からフィデアの社外取を務めていることから「社内取に移るのであれば、もっと早い段階が適切だった。自らの人事の議論に参加しなかったとしても、影響を及ぼしたとみるのが普通で、透明性のきわめて低い人事だ」としている』、「フィデアにとって西堀氏は「取締役会議長であり、指名委員会の委員長も務め、旧富士銀行出身の田尾祐一社長の先輩でもある、まさに“最高権力者”」、それが「社内取に移る」というのは、確かに「透明性のきわめて低い人事だ」。
・『トラウマの経営統合 みずほ銀出身者によって再編が進まないという事例は、ほかにもある。静岡銀行と名古屋銀行の経営統合を前提としない包括業務提携が、まさにそうだ。 名古屋銀を提携に駆り立てたのは、2021年12月に発表された愛知銀行と中京銀行の経営統合だ。両行が組めば、貸出残高で愛知県トップの座を「愛知+中京」連合に譲り渡すことになる。 両行の最終合意発表が翌月に迫っていた2022年4月27日、名古屋銀は地銀上位行である静岡銀との包括業務提携を発表。製造業が多い静岡と愛知において両行の企業支援の知見・ノウハウを共有し、環境規制など産業構造の変化に対応していく狙いだと説明した。 名古屋銀の藤原一朗頭取は、記者会見で「愛知銀と中京銀の経営統合を意識したのか」と問われると、「ありません」と一蹴し、それ以上言葉を続けなかった。 ただ、経営統合はしないという方針について質問されると、途端に「前職時代に経営統合を経験した。現場にいて大変だったという思いがある」と生々しい記憶を吐露したのだ。 藤原氏の「前職」は日本興業銀行で、「大変だった経営統合」とは、3つの母体銀行による内部抗争とシステム障害を繰り返してきた、みずほ銀のことである。 経営統合や合併が、経営陣や現場の行員にどれだけの苦しみをもたらすのか。藤原氏の20年越しの思いからは、それが垣間見えるようだった』、「名古屋銀の藤原一朗頭取」には、「みずほ」時代の「経営統合」の「苦しみ」の経験があり、それが「愛知銀と中京銀の経営統合」をしないという「方針」につながった可能性がある。やはり「地方銀行の合従連衡を妨げる"みずほ"の呪縛」であることは間違いないようだ。
次に、6月24日付け東洋経済オンライン「地銀の大株主に出現「村上系ファンド」の腹づもり 株価がまるで冴えない地銀に示した3つの選択肢」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/598886
・『地方銀行の経営者にとって決して無視できない動きだろう。 村上ファンド系の投資会社であるシティインデックスイレブンス(以下シティ)が、地銀に触手を伸ばしている。 5月24日に公表された、山梨中央銀行の株主総会招集通知。大株主の欄に、1.92%の株式を保有する第7位の大株主としてシティの社名が記載されている。5月30日に公表された滋賀銀行の招集通知にもシティが登場した。1.67%を保有する第9位の大株主だ。 これ以外にも東洋経済の調査で、シティはさらに3つの地銀の株式を保有していることがわかった』、物言う株主(アクティビスト・ファンド)がいよいよ「地銀に触手を伸ばしている」時代に入ったようだ。
・『財務体質は優良だが、株価水準は著しく低い 1つ目は長野県を地盤とする八十二銀行。シティは1.36%を保有する13位の大株主だ。2つ目は秋田銀行で、0.94%保有し同じく13位に位置する。最後は東京きらぼしフィナンシャルグループ(以下、きらぼし)。保有比率は1%で、こちらは12位だ。 東洋経済の調査によると2021年9月末時点で大株主にシティの名前がなかったことから、地銀への投資は最近になって開始したようだ。 シティが投資した地銀は、自己資本比率の高さが目立つ。全国地方銀行協会によれば、地銀平均の自己資本比率は国内基準行で9.92%、国際統一基準行で14.23%。きらぼしを除く4行は、平均値を超える財務基盤を誇っている。 株価も著しく安い。PBR(株価純資産倍率)は0.1~0.2倍台と、解散価値の目安である1倍を大きく割っている。割安に放置された株式を取得して余剰資本を生かした株主還元を要求し、株価を向上させる出口戦略をとりうるだろう。 シティの狙いは株価水準以外にもありそうだ。東洋経済の取材に対して、村上世彰氏はこう話す。「(機関投資家である)生命保険会社が、地銀の株式を売り始めた。安定株主を失えば、株式市場と向き合わざるをえなくなる」 地銀の大株主として名を連ねながらも、株式の売却を進めているのが日本生命保険だ。 2020年度末時点で八十二銀行株を1700万株保有していたが、2021年度末には1360万株に減少。同様に秋田銀行株も、保有株式数が1年間で62.5万株から43.7万株に減った。安定株主の存在感が低下すれば、シティのようなモノ言う株主の声が通りやすくなる』、「生命保険会社が、地銀の株式を売り始めた。安定株主を失えば、株式市場と向き合わざるをえなくなる」、上場地銀にとっては、悩みの種が増えたことになる。
・『なぜ、きらぼし銀行の株式を保有しているのか 一方で、5つの地銀の中で特異なのがきらぼしだ。自己資本比率は5行で唯一、地銀の平均値(9.92%)を割っており、株主還元を一層強化する余地は限られる。ある地銀役員は「再編を期待した投資だろう」と指摘する。 シティには再編をめぐる「成功体験」がある。昨年にSBIホールディングスがTOB(株式公開買い付け)を行った新生銀行だ。シティはTOBの進捗と並行して新生銀株を買い進め、12月には共同保有者と合わせた保有比率が9.16%にも達した。その後TOBの成立を受け、シティは全株式をSBIに売却した。 銀行業界初となる敵対的買収が成立したことについて、村上氏は「金融庁もマーケット中心主義へと舵を切った」と評価する。企業価値向上に資するなら、金融庁は再編を推奨すると見ている。 きらぼしの再編相手としては、横浜銀行と東日本銀行を傘下に持つコンコルディア・フィナンシャルグループが考えられる。折しも、昨年8月にはストラクチャードファイナンスなどの分野において、きらぼし銀行とコンコルディア傘下の横浜銀行が業務提携を発表した。 きらぼし銀と東日本銀は同じ東京都が地盤で、両者の再編観測は浮かんでは消えを繰り返している。仮に再編が成就すれば、シティにとっては新生銀行に次ぐ「二匹目のどじょう」となる。 シティによる株式保有で何が起こりうるのか。村上氏は地銀株の保有についてこう述べた。 「地銀には3つの選択肢がある。1つ目は合併や買収が起こりうること。2つ目は非上場化すること。3つ目は企業価値を上げること」 今回投資対象となったある地銀は「すでにシティと接触を図っている」と話す。目をつけられた以上、地銀は何らかの対応に動かざるをえないだろう。少なくとも「3つの選択肢」はいずれも難路だ。 全国地方銀行の2021年度決算を徹底分析したランキングはこちら。 ■地銀99行「衰弱度」総合ワーストランキング ■地方銀行、頭痛の種となっている「3大リスク」 ①有価証券評価損益ワーストランキング ②保証依存度ワーストランキング ③自己資本率ワーストランキング』、「今回投資対象となったある地銀は「すでにシティと接触を図っている」と話す。目をつけられた以上、地銀は何らかの対応に動かざるをえないだろう。少なくとも「3つの選択肢」はいずれも難路だ」、地道に業績を上げるのが王道だろう。
第三に、8月15日付け東洋経済オンライン「みずほとソフトバンク、「情報銀行」の2つの誤算 個人の信用をスコア化する野心はなぜ躓いたか」を紹介しよう。
・『みずほとソフトバンクの合弁会社が苦境に立たされている。国内初のフィンテックサービスが軌道に乗らない理由はどこにあるのか。 6月末、ある企業の決算公告が業界紙にひっそりと掲載された。2022年3月期決算では15億円の最終赤字を計上。バランスシートは負債199億円に対して純資産はわずか5億円と債務超過寸前だ。懐事情が苦しい企業の正体は、みずほ銀行とソフトバンクが設立した「J.Score」(Jスコア)だ。 2016年11月に設立されたJスコアは、フィンテックを活用した個人向け融資を手がける。AIを用いた独自の審査技術を武器に、金融機関の審査が通らない個人に対しても、低い貸し倒れリスクで融資を行うことが特徴だ。設立に先立つ記者会見ではみずほ・ソフトバンク両グループのトップが登壇し、旧来のリテール業務に風穴を開ける画期的なビジネスだと印象づけた。 だが、当初の期待とは裏腹に、Jスコアは6期連続で最終赤字を計上。累積赤字は2022年3月末時点で200億円を超えた。当初抱いた野望に対して2つの誤算が生じ、Jスコアはいまだ足踏みを続けている』、「Jスコアは、フィンテックを活用した個人向け融資」、として設立時には大いに注目された。
・『貸し出しの範囲を広げたい 「今までとはまったく違う、レンディングの世界を作りたい」。2016年9月、Jスコアの設立に先立ち行われた記者会見。みずほフィナンシャルグループの佐藤康博社長(当時)は、Jスコアの革新性をそう力説した。同じく登壇したソフトバンクグループの孫正義社長も「このジョイントベンチャー(合弁事業)には非常に期待している」と熱弁していた。 Jスコアの融資は個人向け・無担保・使い道自由。個人情報を基にAIが算出した「スコア」を基に、金利や借り入れ可能額が決まる。 銀行のフリーローンや消費者金融と異なるのは、旧来型の審査基準でははじかれてしまう顧客の発掘だ。収入や借り入れ状況といった信用情報のみならず、学歴や居住形態、資産背景、そして性格に至るまで多面的な属性をAIが分析。現時点での与信が低くとも、将来の成長が見込めれば融資を受けられる点をうたっていた。 2017年9月にサービスを開始し、半年後の2018年3月末時点でスコア取得者数は13万件。貸付極度額は35億円と、みずほ銀内部の計画対比で2倍の進捗をたたき出した。2019年3月末にはスコア取得者数は52万件、貸付極度額は193億円とさらに伸長。一見、事業は好調かに思われた。 ところが、Jスコア自身の業績は上向く気配を見せなかった。2019年3月期決算は47億円の最終赤字を計上。翌2020年3月末時点でのスコア取得者数・貸付極度額はそれぞれ120万件・335億円と躍進した一方、2020年3月期決算の最終赤字は63億円とさらに膨れ上がった。 背景にあるのが、積極的な広告宣伝だ。Jスコアはサービス開始当初からテレビやネット、公共交通機関などあらゆるメディアに広告を打ち、知名度向上と顧客の囲い込みに奔走した。結果、貸し出しによる利息収入を広告宣伝費が上回り、営業利益段階から恒常的な赤字に陥っていた。 痛手だったのは、広告費の回収フェーズに入った矢先にコロナ禍に見舞われたことだ。「借り入れ需要が減退してしまった」(同社広報)ことで、右肩上がりだったスコア取得者数や貸付極度額に急ブレーキがかかった。2022年3月期決算では赤字額が縮小しているが、これは広告費を絞ったため。肝心の売上高はむしろ減少している』、「スコア取得者数・貸付極度額はそれぞれ120万件・335億円と躍進」したが、「利息収入を広告宣伝費が上回り、営業利益段階から恒常的な赤字」、「痛手だったのは、広告費の回収フェーズに入った矢先にコロナ禍に見舞われたことだ。「借り入れ需要が減退してしまった」・・・ことで、右肩上がりだったスコア取得者数や貸付極度額に急ブレーキがかかった」、確かに不運だ。
・『進まぬ「情報銀行」構想 もう1つの誤算は、貸出利息に並ぶ収益柱である、利用者の個人情報を第三者に提供する「情報銀行」事業の停滞だ。 Jスコアは利用者の信用力を1000点満点で評価する。現時点での与信のほか、個人情報を任意で提供するほどスコアが上昇し、極度額の引き上げや金利優遇が受けられる。住居や家族構成をはじめ、語学力、保有資格、趣味、さらには性格診断に至るまで質問項目は100を超える。 利用者の同意を得たうえで、Jスコアは収集した情報をマーケティング材料として企業に提供し、対価を得る構想を練っていた。2019年12月に業界団体より「情報銀行」の認定を受け、2020年度にもデータ提供を開始する手筈だった。だが、認定を取得してから2年以上経った記事執筆時点でも、サービスは開始されていない。 遅れの一因とみられるのが、収集した個人情報の取り扱いルールが詰めきれていなかったことだ。総務省および経済産業省は2017年より、情報銀行のあり方を議論する検討会を断続的に開催。2018年6月に情報銀行の認定要件が策定された。だが、個人情報の運用方針や提供先の選定基準などは持ち越しとなった。 2021年11月に開かれた検討会には、Jスコアの担当者も参加。データ分析を通じて個人の趣味嗜好や信用力を予測し、分析結果を第三者に提供する際の留意点について議論が交わされた。 2022年6月に最新の指針が公表され、取り扱いの方針に一端の決着を見た形だ。総務省の担当者は「これまでは明確な指針がなく(個人情報の活用に)慎重だった情報銀行も、できるようになるのでは」と話す。 踊り場を迎えたままのJスコアを、親会社であるみずほ銀とソフトバンクは座視し続けるのか。 株主資本の変動から推測するに、Jスコアは過去4回、みずほ銀とソフトバンクから増資を受けている。創業当初の資本金および資本準備金計50億は3年も持たずに溶け、両社は2018年度に合わせて50億円の増資を引き受けた。 その後もJスコアは増資を重ね、2021年3月期には資本金と資本準備金の合計は200億円に膨らんだ。なお、Jスコアは資本欠損を解消するため、今年2月、資本金を99億円、資本準備金を100億円取り崩すと発表している。 度重なる追加出資に応じた理由は、Jスコアの財務改善だけではない。貸金業法は、貸金業者は純資産額を常時5000万円以上に保つことを定めている。赤字が続くJスコアが融資を続けるには、親会社は否応なく増資を引き受ける必要があった。 Jスコアの業績が短期的に黒字化する見込みは薄く、業務を続けるためにはみずほ銀とソフトバンクGは今後も追加出資を余儀なくされる可能性が高い。Jスコアの業績を反転させるべく、親会社の顧客網を活用したテコ入れ策を検討しているようだ』、「総務省および経済産業省は2017年より、情報銀行のあり方を議論する検討会」、「2022年6月に最新の指針が公表され、取り扱いの方針に一端の決着を見た形だ。総務省の担当者は「これまでは明確な指針がなく(個人情報の活用に)慎重だった情報銀行も、できるようになるのでは」と話す」、「指針」「公表」が遅れたのは大問題だ。ただ、それが決まる前に、それ抜きでとりあえず「Jスコア」を八足させたのも問題だった。
・『個人情報の利用に抵抗感 現状のJスコアは審査基準の違いこそあれ、同業の銀行やノンバンクと同じく無担保ローンの提供にとどまる。本丸である情報銀行が稼働しなければ、点数化した信用力は宝の持ち腐れだ。 ある金融機関関係者は「日本では情報銀行が普及する土壌が乏しい」と指摘する。中国ではアリババの「芝麻信用」が算出するスコアが社会インフラと化しているが、急速な普及の背景にあるのが、クレジットカードのような信用力の物差しが普及しておらず、個人情報活用に対して国民の抵抗感が薄かったことだ。 翻って、国内では2020年8月に「Yahoo!スコア」がサービスを終了した。同サービスは2019年6月に発表。ヤフーIDにひもづいた個人情報やネット通販の購買履歴、クレジットカードの決済動向などから利用者の信用力をスコア化し、外部企業に提供することを企図していた。だが、利用者からの反発を受け、約1年でサービスの終了を余儀なくされた。 今後Jスコアが軌道に乗るかどうかは、日本における情報銀行そのものの成否をも左右する』、「国内では2020年8月に「Yahoo!スコア」が」、「「利用者からの反発を受け、約1年でサービスの終了を余儀なくされた」、とは初めて知った。やはり「日本では情報銀行が普及する土壌が乏しい」のが確かなようだ。「Jスコア」が苦境をどう乗り切っていくかが注目される。
タグ:カルチャーの違いを無理に乗り越えようとせず、慎重になったのは正解なのかも知れない。 東洋経済オンライン「地方銀行の合従連衡を妨げる"みずほ"の呪縛 フィデアHDと東北銀、経営統合破談の舞台裏」 (その15)(地方銀行の合従連衡を妨げる"みずほ"の呪縛 フィデアHDと東北銀 経営統合破談の舞台裏、地銀の大株主に出現「村上系ファンド」の腹づもり 株価がまるで冴えない地銀に示した3つの選択肢、みずほとソフトバンク、「情報銀行」の2つの誤算 個人の信用をスコア化する野心はなぜ躓いたか) 金融業界 「フィデアにとって西堀氏は「取締役会議長であり、指名委員会の委員長も務め、旧富士銀行出身の田尾祐一社長の先輩でもある、まさに“最高権力者”」、それが「社内取に移る」というのは、確かに「透明性のきわめて低い人事だ」。 「名古屋銀の藤原一朗頭取」には、「みずほ」時代の「経営統合」の「苦しみ」の経験があり、それが「愛知銀と中京銀の経営統合」をしないという「方針」につながった可能性がある。やはり「地方銀行の合従連衡を妨げる"みずほ"の呪縛」であることは間違いないようだ。 東洋経済オンライン「地銀の大株主に出現「村上系ファンド」の腹づもり 株価がまるで冴えない地銀に示した3つの選択肢」 物言う株主(アクティビスト・ファンド)がいよいよ「地銀に触手を伸ばしている」時代に入ったようだ。 「生命保険会社が、地銀の株式を売り始めた。安定株主を失えば、株式市場と向き合わざるをえなくなる」、上場地銀にとっては、悩みの種が増えたことになる。 「今回投資対象となったある地銀は「すでにシティと接触を図っている」と話す。目をつけられた以上、地銀は何らかの対応に動かざるをえないだろう。少なくとも「3つの選択肢」はいずれも難路だ」、地道に業績を上げるのが王道だろう。 東洋経済オンライン「みずほとソフトバンク、「情報銀行」の2つの誤算 個人の信用をスコア化する野心はなぜ躓いたか」 「Jスコアは、フィンテックを活用した個人向け融資」、として設立時には大いに注目された。 「スコア取得者数・貸付極度額はそれぞれ120万件・335億円と躍進」したが、「利息収入を広告宣伝費が上回り、営業利益段階から恒常的な赤字」、「痛手だったのは、広告費の回収フェーズに入った矢先にコロナ禍に見舞われたことだ。「借り入れ需要が減退してしまった」・・・ことで、右肩上がりだったスコア取得者数や貸付極度額に急ブレーキがかかった」、確かに不運だ。 「総務省および経済産業省は2017年より、情報銀行のあり方を議論する検討会」、「2022年6月に最新の指針が公表され、取り扱いの方針に一端の決着を見た形だ。総務省の担当者は「これまでは明確な指針がなく(個人情報の活用に)慎重だった情報銀行も、できるようになるのでは」と話す」、「指針」「公表」が遅れたのは大問題だ。 「総務省および経済産業省は2017年より、情報銀行のあり方を議論する検討会」、「2022年6月に最新の指針が公表され、取り扱いの方針に一端の決着を見た形だ。総務省の担当者は「これまでは明確な指針がなく(個人情報の活用に)慎重だった情報銀行も、できるようになるのでは」と話す」、「指針」「公表」が遅れたのは大問題だ。ただ、それが決まる前に、それ抜きでとりあえず「Jスコア」を八足させたのも問題だった。 「国内では2020年8月に「Yahoo!スコア」が」、「「利用者からの反発を受け、約1年でサービスの終了を余儀なくされた」、とは初めて知った。やはり「日本では情報銀行が普及する土壌が乏しい」のが確かなようだ。「Jスコア」が苦境をどう乗り切っていくかが注目される。