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中国情勢(軍事・外交)(その14)(「中国の資金援助は助かる」と日本人研究者…破格の待遇で世界の人材を集める「千人計画」の恐ろしい目的 日米欧による"科学技術の競争"とは狙いがまったく違う、バルト三国すべてが「中国離れ」を決断…欧州で進めていた「一帯一路」が行き詰まりを見せ始めたワケ 次の標的はハンガリーとギリシャだが…、中国・習近平がもくろむ「世界分断計画」の現実味 日本がやるべきことは?) [世界情勢]

中国情勢(軍事・外交)については、6月6日に取上げた。今日は、(その14)(「中国の資金援助は助かる」と日本人研究者…破格の待遇で世界の人材を集める「千人計画」の恐ろしい目的 日米欧による"科学技術の競争"とは狙いがまったく違う、バルト三国すべてが「中国離れ」を決断…欧州で進めていた「一帯一路」が行き詰まりを見せ始めたワケ 次の標的はハンガリーとギリシャだが…、中国・習近平がもくろむ「世界分断計画」の現実味 日本がやるべきことは?)である。

先ずは、6月21日付けPRESIDENT Onlineが掲載した前国家安全保障局長の北村 滋氏による「「中国の資金援助は助かる」と日本人研究者…破格の待遇で世界の人材を集める「千人計画」の恐ろしい目的 日米欧による"科学技術の競争"とは狙いがまったく違う」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/57786
・『中国は2008年から外国の優秀な研究者を集める「千人計画」を進めている。目的は一体何なのか。元国家安全保障局長の北村滋さんは「破格の待遇で研究者を呼んでいる。中国が行っているのは単なる技術競争ではない」という――。 ※本稿は、北村滋、大藪剛史(聞き手・構成)『経済安全保障 異形の大国、中国を直視せよ』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。Qは聞き手の質問、Aは北村氏の回答』、興味深そうだ。
・『中国の論文数は2016年に世界トップになった  Q:中国の科学発展の歴史について聞きたい。 A:中国は1950年代から、核兵器と弾道ミサイル、人工衛星の開発を並行して行う「両弾一星」のスローガンを掲げて、軍主導の宇宙開発に乗り出した。有人宇宙活動や月探査など、現在の宇宙事業も、軍が密接に関与しながら進められている。 文化大革命(66~76年)では知識人が迫害され、科学技術の発展が遅れた。だが、最高実力者の鄧小平氏が70年代後半から「国家の根幹は科学技術力にある」として立て直しを図った。90年代に海外から中国人留学生を呼び戻す「海亀政策」を進め、先端技術を取り込んだ。94年には、国外で活躍する優秀な人材を中国に呼び戻す政策の一環として「百人計画」が始まった。 中国製のスーパーコンピューターが2010年、計算速度で世界一を達成し、13年には無人探査機「嫦娥じょうが3号」が月面探査に成功した。科学の発展は、論文数にも表れている。日本の文部科学省の集計では、1981年に1800本だった中国の論文数は、2015年までに160倍増となった。全米科学財団(NSF)の報告書によると、16年に中国が初めて米国を抜いて世界トップに立ったようだ』、「論文数」で「16年に中国が初めて米国を抜いて世界トップに立った」、大したものだ。
・『外国から優秀な人材を集める「千人計画」  中国版GPSと呼ばれるグローバル衛星測位システム「北斗」が既に運用されている。人工衛星は、艦艇や航空機の位置把握、ミサイル誘導などの軍事目的にも役立つ。 21年3月の全国人民代表大会(全人代)で採択された新5カ年計画には、「科学技術の自立自強を国の発展の戦略的な支えとする」との文言が盛り込まれた。最先端の民間技術を積極的に軍事に転用する国家戦略「軍民融合」の下、今後も、世界トップレベルの研究者の招請や企業買収などを通じ、最先端技術を吸収していくだろう。 軍民融合の一環として、中国は「千人計画」を進めている。百人計画が成功したのを受けて、外国から優秀な人材を集める中国政府の人材招致プロジェクトだ。国家レベルでは08年から実施されている。採用される日本人研究者も増えている。 Q:外国人研究者は破格の待遇で集められているようだ。読売新聞の取材では、研究経費として500万元(約8600万円)が補助され、100万元(約1700万円)の一時金が与えられる例もあったようだ。 A:招聘に応じた日本人研究者には、「日本の大学だと研究費が年数十万円ということもある。日本の研究者は少ない研究費を奪い合っている。中国からの資金補助はとても助かる」と話す人もいる』、「世界トップレベルの研究者の招請」する「千人計画」では、「研究経費として500万元(約8600万円)が補助され、100万元(約1700万円)の一時金が与えられる例もあった」、と破格の待遇で搔き集めているようだ。
・『補助金、広い研究室にマンション、運転手付きの車まで…  補助金だけではない。広い研究室やマンションも与えられる。家賃はほとんど中国政府が払ってくれる、家政婦付きのマンションを与える、運転手付きの車が使えるとか、そんな話もある。退職した後の仕事を探していた大学教授や研究者が、こういった好条件につられて中国に渡航するケースが多い。 米司法省は、20年1月28日、「千人計画」への参加を巡って米政府に虚偽の説明をした米ハーバード大化学・化学生物学科長の教授を起訴した。ナノテクノロジーの世界的な権威だ。この教授は、12~17年頃に千人計画に参加し、月5万ドル(約550万円)の給料や15万8000ドル(約1740万円)の生活費を受け取った。この教授は国防総省などから研究費を受け取っていたため、外国から資金提供を受けた際に米政府へ報告する義務があったが、「千人計画」への参加を隠していたということだ。 中国が米国の最新技術や知的財産を狙い、この教授に接近したのだろう。 Q:中国政府は外国人の研究者らをどうやって招いているのか。 A:日本に留学していた中国人の元教え子や、日本で共同研究を行った中国人の研究者が誘うケースがあるようだ。元々の知り合いのつてを利用しているのだろう』、「補助金だけではない。広い研究室やマンションも与えられる。家賃はほとんど中国政府が払ってくれる、家政婦付きのマンションを与える、運転手付きの車が使えるとか、そんな話もある」、これは魅力的だ。「米司法省は・・・「千人計画」への参加を巡って米政府に虚偽の説明をした米ハーバード大化学・化学生物学科長の教授を起訴した。ナノテクノロジーの世界的な権威だ。この教授は、12~17年頃に千人計画に参加し、月5万ドル(約550万円)の給料や15万8000ドル(約1740万円)の生活費を受け取った。この教授は国防総省などから研究費を受け取っていたため、外国から資金提供を受けた際に米政府へ報告する義務があったが、「千人計画」への参加を隠していたということだ」、これでは「起訴」されて当然だ。
・『兵器開発とつながりが深い大学に所属する研究者も  Q:「千人計画」に応じて中国に渡った研究者らは、どういったところで研究をするのか。 A:中国軍の兵器開発とつながりが深い「国防7校」(国防七子)に所属していた研究者もいる。 国防7校は、軍と軍事産業へ理工科人材供給を目的に設置された以下の7つの大学だ。 ・ハルビン工業大(宇宙工学や通信、電子、新素材、生産自動化) ・北京航空航天大(航空・宇宙工学、電子、素材、コンピューター、AI) ・北京理工大(素材、ソフトウェア、光エレクトロニクス) ・西北工業大(航空、宇宙、海洋・船舶工学) ・ハルビン工程大(船舶工業、海軍装備、深海工程と原子力) ・南京航空航天大(航空・宇宙工学) ・南京理工大(化学工業、AI、交通自動化、素材、通信、電子)』、「国防7校」とは権威がありそうだ。
・『本国と全く同じ研究施設を再現する「シャドーラボ」  Q:「千人計画」によって、これまでどのような技術が中国に奪われたのか。 A:米軍の最新鋭ステルス戦闘機F-35のエンジンに関するデータを中国に流出させた事例も報告されている。日本のある研究機構で働いていた中国人が、「風洞ふうどう設備」の技術を中国に持ち帰ったことも確認されている。 風洞設備は、飛行機や宇宙へ向かうロケットなどが空気中を飛ぶ際の空気抵抗や、機体周辺の空気の流れを調べるためのものだ。大きな筒のような洞ほらの中に、航空機の模型を置き、人工的に空気を流す設備だ。 この研究者は1990年代半ば、この研究機関で研究し、2000年に中国に帰っている。今は北京の中国科学院力学研究所に所属している。ここに日本のものと酷似した風洞設備が完成していることが確認されている。この研究所は極超音速ミサイルを研究している。つまり、開発中のミサイルの空気抵抗を減らしたり、宇宙から弾道弾が大気圏に再突入する際の熱防護素材を作ったりする研究に利用されているということだ。 本国にあるのと全く同じ研究施設を再現する、こういった例を「シャドーラボ」(影の研究室)という』、「中国科学院力学研究所に」、「日本のものと酷似した風洞設備が完成」、こうした「シャドーラボ」により「極超音速ミサイル研究」は、それがなかった場合に比べ、はかどったことだろう。
・『ノーベル賞級の研究をする人を集める「万人計画」  Q:「千人計画」に応じた人たちにはノルマはあるのか。 A:論文執筆のノルマを課しているようだ。『ネイチャー』や『サイエンス』など世界的に名だたる科学誌への掲載を求めていた。さきほど、中国の論文数が増えていると説明したが、こういった圧力も反映されているのだろう。 中国は、00年から17年までに、6万6690人を留学させて、彼等は米国で博士号を授与されている。米国の大学で博士号を取得する学生のおよそ1割強が中国人留学生だ。シリコンバレーや研究機関で、中核的役割を果たしている。07年に5万人以下だった海外人材の帰国者数は、17年に48万人に急増している。高度な技術を母国に持ち帰っているということだ。 中国には「万人計画」もある。ノーベル賞級の研究を行う研究者を集めるものだ』、「07年に5万人以下だった海外人材の帰国者数は、17年に48万人に急増している。高度な技術を母国に持ち帰っているということだ」、「千人計画」、「万人計画」といいスケールが大きい。。
・『日米欧と中国では「目指す未来」がまったく違う  Q:日本は米国や欧州各国とも、科学技術の競争をしている。中国との競争はそれとは違うのか。 A:全く違う。日米欧など西側先進諸国と中国は、国際秩序に関する考えで大きな隔たりがある。西側先進諸国が目指す秩序は「自由で開かれた、法の支配に基づく世界」だ。それぞれの国が平等で、法の支配、自由を尊重するというものだ。 中国が目指す秩序は何か。習主席は頻繁に「新型国際関係」という言葉を使うが、西側主導の秩序への挑戦にほかならない。「自由、人権、民主主義」といった日米欧の価値観に真っ向から挑戦している。中国共産党による一党支配が自由や平等、法の支配とはほど遠いものであることは、中国が新疆ウイグル自治区や香港で行っていることを見れば明らかだ。対外関係でも、他国と対等なつながりを持とうとしているようには見えない。 習主席の言う「中華民族の偉大な復興」「中国の夢」に基づき、中国を頂点としたピラミッド型の国家連合を目指しているというのが本質だ。「一帯一路」構想の一環でアジアやアフリカの途上国に、インフラ整備のための桁違いの投資を行っているが、単なる経済協力ではない。それは、しばしば当該国の財政を圧迫し、「援助」自体がエコノミック・ステートクラフト化している。最終的に目指しているのは、中国の資金を背景とした影響力の行使だ。 中国は、単なる技術競争をしているだけではない。習主席の視線の先には、我々西側先進諸国が想像するのと全く異なる人類の未来が広がっている』、「西側先進諸国が目指す秩序は「自由で開かれた、法の支配に基づく世界」だ。それぞれの国が平等で、法の支配、自由を尊重するというものだ。 中国が目指す秩序は何か。習主席は頻繁に「新型国際関係」という言葉を使うが、西側主導の秩序への挑戦にほかならない。「自由、人権、民主主義」といった日米欧の価値観に真っ向から挑戦」、「「中華民族の偉大な復興」「中国の夢」に基づき、中国を頂点としたピラミッド型の国家連合を目指しているというのが本質だ。「一帯一路」構想の一環でアジアやアフリカの途上国に、インフラ整備のための桁違いの投資を行っているが、単なる経済協力ではない。それは、しばしば当該国の財政を圧迫し、「援助」自体がエコノミック・ステートクラフト化している。最終的に目指しているのは、中国の資金を背景とした影響力の行使だ」、恐ろしいことだ。
・『日本にとっての軍事的な脅威は増していく  Q:中国の国家体制は盤石なのか。 A:短期的に習主席の基盤が固まっていることは間違いないと思う。 ただ、習主席は、政権全体の動揺を懸念していると思われる。中国共産党とは異なる価値を信じる組織に対する恐れは、日本人が考える以上に大きい。チベット、台湾、ウイグル、民主派、法輪功の5つを彼らは「五毒」と称し、いずれも中国共産党の体制に服さないものとして徹底的に弾圧していることが、その表れだろう。中国の歴史を見ると平和的、民主的な政権移行はなく、王朝が代わることにより政権が代わるというのが歴史が示すところだ。中国共産党は王朝ではないが、民主的政権交代を容認しない中国共産党による一党支配であり、そうした中国自身の歴史が常に念頭にあると思う。 習近平政権は、「中華民族の偉大な復興」「中国の夢」を実現するために、富強、強軍の政策を継続することは間違いない。日本にとって軍事的な脅威は増していくことを覚悟しなければならない』、「習近平政権は、「中華民族の偉大な復興」「中国の夢」を実現するために、富強、強軍の政策を継続することは間違いない。日本にとって軍事的な脅威は増していくことを覚悟しなければならない」、「日本」としては、ノウハウや情報、人材の流出に気を付けるのがせいぜいだろう。

次に、8月26日付けPRESIDENT Onlineが掲載した三菱UFJリサーチ&コンサルティング 調査部 副主任研究員の土田 陽介氏による「バルト三国すべてが「中国離れ」を決断…欧州で進めていた「一帯一路」が行き詰まりを見せ始めたワケ 次の標的はハンガリーとギリシャだが…」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/60947
・『リトアニアと中国の外交関係が極めて悪化  8月11日、エストニアとラトビアが中国との経済的な協力枠組みである「中国―中東欧国家合作」(通称「16+1」)から離脱すると発表した。 中国北京市で2022年7月26、27両日、省部級の主要指導幹部対象の「習近平総書記の重要演説の精神を学び、中国共産党第20回全国代表大会を迎える」特別研修班が開かれ、習近平中国共産党中央委員会総書記・国家主席・中央軍事委員会主席が開講式で重要演説を行った 昨年、リトアニアがこの2カ国に先行してこの枠組みから離脱を表明しており、今回のエストニアとラトビアの決断によって、いわゆるバルト三国の全てが「中国離れ」を進めることになった。 とはいえ、バルト三国のこの決断は時間の問題だった。 2021年2月、新型コロナの流行を受けて2年ぶりに北京で開催された「17+1サミット」(当時はまだリトアニアが参加していたため「17+1」だった。)にもバルト三国は首脳の参加を見送り、高官を派遣するにとどめた。当時から、中国に対して徐々に距離を取っていたわけだ。 その後、周知のとおり、リトアニアと中国の外交関係が極めて悪化した。台湾をめぐる問題に端を発したものだが、これにロシアのウクライナ侵攻に伴う地政学的な緊張の高まりも複雑に絡む事態になったと考えられる。 共通してロシアへの対抗意識が強いバルト三国が、中国への対応でも連帯を強めたという側面も大きいのではないだろうか。 それにバルト三国は、これまで「16+1」の枠組みを通じて中国から満足な投融資を得ていなかった。将来的にも、欧州連合(EU)が中国に対する圧力を強めている状況の下では、中国からの投融資が増えるとは考えにくい。 貿易面でも中国に対する依存度はそれほど高くないため、バルト三国は中国との枠組みから離脱できたといえよう』、「バルト三国」は、「中国から満足な投融資を得ていなかった」、「貿易面でも中国に対する依存度はそれほど高くない」、などから、「中国との枠組みから離脱できた」なるほど。
・『中東欧に「選択と集中」をかける中国  しかしながら、中国にとってバルト三国の決断が衝撃だったかというと、むしろ想定内だったはずだ。中国は中国で、2021年2月の北京サミット前後から、経済協力の対象を絞ってきた。 具体的にその対象とは、2019年に当時の「17+1」に参加したギリシャを筆頭に、ハンガリーとクロアチア、そしてEU未加盟の西バルカン諸国となる。 2019年9月に就任したミツォキタス首相の下、ギリシャと中国の関係は良好なものとなっている。そうした中で、2021年10月には中国の国有海運最大手、中国遠洋海運集団(コスコ・グループ)がピレウス港に対する出資額を引き上げたほか、習近平政権が抱える「一帯一路」構想につき、両国の協力関係を深化させる旨で合意に達した。 こちらも関係が良好なハンガリーに対しては、中国企業による大型投資が相次いでいる。6月にはパソコン大手の聯想集団(レノボ・グループ)がハンガリーに建てた工場が稼働、8月には電気自動車(EV)用電池大手、寧徳時代新能源科技(CATL)が73億ユーロ(約1兆円)を投じ、ハンガリーにバッテリー工場を建設すると発表した。 中国はハンガリーの首都ブタペストと隣国セルビアの首都ベオグラードを結ぶ鉄道の更新プロジェクトも支援している。また建設大手、中国交通建設の子会社である中国路橋工程(CRBC)は、クロアチア南部の沿岸部に巨大な斜張橋(ペリェシャツ橋)を建設したが、これは5億2600万ユーロ(約730億円、うちEUが7割弱を資金支援)規模の巨大プロジェクトだ。 2025年のEU加盟が視野に入るセルビアとは、先述のハンガリーとの間の鉄道網の改修以外にも、中国は協力関係の深化を模索している。 つまり中国は、ギリシャを起点として、西バルカン諸国やクロアチアを経由し、ハンガリーに至る一帯に「選択と集中」をかけて、中国は経済協力関係の深化を試みていると整理できる』、「中国は、ギリシャを起点として、西バルカン諸国やクロアチアを経由し、ハンガリーに至る一帯に「選択と集中」をかけて、中国は経済協力関係の深化を試みていると整理できる」、「さしずめ「バルト三国」は「選択」対象から漏れたようだ。
・『有効な対抗手段を持っていないEU  加えて中国は、上記の国々に対して新型コロナウイルスのワクチン(シノバック社やシノファーム社製)を提供した実績がある。 中国製のワクチンは重症化しにくいとされるオミクロン株の流行や欧米製のワクチンに比べた場合の有効性の低さなどから需要が減退したが、友好関係の深化という意味では一定の役割を果たしたといえよう。) EUは立法機関である欧州議会を中心に、対中姿勢を硬化させている。 一方で、中国は引き続きヨーロッパの市場へのアクセスを重視している。その足場として、バルカン半島からハンガリーを一体的にとらえているように考えられる。これらの国々がロシアとも比較的友好的であることも、中国にとっては都合がいいといえるのではないか。 インフラ投資といったハード面のみならず、公衆衛生でのサポートという一種のソフトパワーも行使した中国に対して、EUは有効な対抗手段をまだ用意できていない。EU版一帯一路ともいえる「グローバル・ゲートウェイ」構想下での支援対象からEU加盟済みの中東欧諸国は外れているし、EU未加盟の国々への支援の展望も描きにくい。 EUによる開発支援は、当然だがEUの経済観が色濃く反映される。新興国ではインフラの建設には経済性よりも政治性が重視される傾向が強いが、EUは支援に当たり経済性の高さを強く要求する。さらに「グローバル・ゲートウェイ」構想では、EUが重視する「デジタル化」と「脱炭素化」にかなう領域でのサポートを念頭に置いている。 とはいえ、新興国でそうした諸条件をクリアできるプロジェクトなど、まずない。欧米諸国が「債務の罠」につながると警告を繰り返したところで、新興国にとって話が早い中国からの投融資は魅力的である。結局のところEUは、有効な手立てをとることができないまま、バルカンからハンガリーにかけて中国の進出を許し続けている』、「欧米諸国が「債務の罠」につながると警告を繰り返したところで、新興国にとって話が早い中国からの投融資は魅力的である。結局のところEUは、有効な手立てをとることができないまま、バルカンからハンガリーにかけて中国の進出を許し続けている」、やむを得ないだろう。
・『岐路に立つ中国の「一帯一路」  そもそも「16+1」は、習近平政権の「一帯一路」構想の延長線上にあったものだ。 中国がもともと「一帯一路」構想に確たるビジョンを持っていたわけでもないが、バルト三国が離反したことや、コロナ禍で中国が中東欧の「選択と集中」を進めていたことは、この「一帯一路」構想そのものが岐路に立っていることの証左といえよう。 時を同じくして生じたスリランカの国家破綻も、中国の「一帯一路」構想が岐路に立っていることをよく示している。スリランカは7月5日、国家が破産したと宣言した。スリランカのハンバントタ港は、その建設から運営までが中国の手によって行われており、スリランカが陥った「債務の罠」を象徴する存在としてよく知られている。 もともとは長期にわたって政権を担っていたラージャパクサ一族によるバラマキ政策が、スリランカが国家破綻に陥った直接的な原因だ。それにハンバントタ港に関しては、中国の貸し手責任と同様にスリランカの借り手責任も問われるべきである。 さらにいえば、ハンバントタ港は中国にとって本当に資産性があるのか、議論の余地があろう』、「岐路に立つ中国の「一帯一路」」、当然だ。
・『「債務の罠」は中国にとっての「不良債権の罠」  スリランカから海を隔たればインドがある。そのインドと中国は是々非々で協力し、反目もする特有の緊張関係にある。8月中旬に中国軍の調査船がハンバントタ港に入港したが、当然ながらインドの強い反発を招いた。 両国が軍事的な緊張を回避したいという思惑を持つ中で、中国にとってハンバントタ港の使い勝手は必ずしもよくない。 それに、国家破綻に陥ったスリランカでは社会が不安定化している。ハンバントタ港やその周辺の治安維持のコストも急増せざるを得ないはずだが、そのコストを負担するのはもちろん中国になる。 またスリランカは、債権者に対して債務再編を要請すると考えられる。中国が簡単に応じるわけもないが、出方を間違えれば新興国の支持も失う。 ハンバントタ港でさえこの状況である。中国が「一帯一路」構想の下で投融資を行った海外のプロジェクトの多くは、中国にとって使い勝手が良くない資産が多いはずだ。 つまり、新興国にとっての「債務の罠」は中国にとっての「不良債権の罠」と裏返しである。中東欧やスリランカの事例は、そうした「不良債権の罠」の序章かもしれない』、「スリランカは、債権者に対して債務再編を要請すると考えられる」、これを邪険に扱えば、「中国にとっての」「不良債権の罠」問題が深刻化する。「中国」には微妙な綱渡りが求められそうだ。

第三に、8月31日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した評論家・翻訳家の白川 司氏による「中国・習近平がもくろむ「世界分断計画」の現実味、日本がやるべきことは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/308567
・『習近平氏とプーチン氏 裏目に出た「永遠の友情」  8月16日、中国の李克強首相が広東省深センを視察したときに発した言葉が物議を醸している。李氏は「中国の開放はまだ引き続き進めなければならない。黄河と長江は逆流しない」と述べて、鄧小平氏(故人)の改革開放路線の保持を訴えて、対米強硬と内製化に傾く習近平国家主席を批判したのではないかと憶測を呼んでいるのである。政権内で習主席に対する風当たりが強まっていることがうかがえる。 習主席は対米強硬を強化するとともに、ロシアとの連携強化に乗り出している。中ロが現在のような連携関係となるきっかけとなったのが、2021年2月4日の北京オリンピック開会式の後に行われた両者の会談だった。ウイグル問題で多くの国家首脳が参加を見合わせる中、堂々と出席してくれたプーチン大統領に、習主席は「ロシアに対する無限の友情」を約束した。 ロシアがウクライナに軍事侵攻したのは、その後のことだった。 2014年ソチオリンピックでも、両者は首脳会談を行っており、第2次世界大戦70年でナチスや日本軍と対抗した「戦勝国」の立場からの連携を確認しているものの、それ以上の連携には進まなかった。 当時、ロシアはウクライナのNATO加盟の動きに軍事圧力をもって対抗して、各国から非難を浴びていた。ロシアが軍事侵攻に及ぶと予期した専門家は少なく、中国もその可能性を小さく見積もっていたと伝えられている。たとえ軍事侵攻が起こったとしても、ごく短期で終わるという見方が大勢を占めていた。 だが、2月24日以降のウクライナ軍事侵攻で、ロシア軍は首都キーウ攻略作戦で苦戦を強いられて、撤退に追い込まれてしまった。ロシアは国際的な非難を受け、ウクライナ軍には武器援助が集まり、ウクライナ軍の奮闘ぶりが各国に伝えられた。 これは中国、特に習主席としては大誤算だった。中国はこれまでロシアとは一定の距離を取り、2014年のロシアのクリミア併合の際も、中国はあくまで中立を保っていた。だが、ウイグル問題で中国が非難されて、「ハレの舞台」である北京オリンピックに対して西側からの政治的ボイコットを受けたことで、習氏はロシアへの「無限の友情」を確約したのである。このことがプーチン大統領にウクライナ軍事侵攻を決心させる一つの要因となったことは間違いないだろう。 メディアでウクライナ軍の快進撃が報じられ続ける一方で、ロシア軍による民間人への被害や虐待行為などが伝えられるようになると、その批判が中国にも向くようになった。西側は経済制裁でロシアを締め上げる策に出たが、中国がそれを和らげるバッファーになっていたことが明らかだったからである。 これまでロシアに対しては慎重姿勢だった中国が、積極支援に入った途端に国際的なロシア孤立政策に巻き込まれることになったことからも、習主席が外交センスに恵まれていないことは明らかだろう。しかも、異例の3期目には入れるかどうかの重要な時期であったことで、習主席は自分の首を絞めることとなった。 また、この状況は異例の3選を企んでいた習主席にとっては打撃になった。不動産投資規制などの規制策が裏目に出ていた上に、ゼロコロナ政策で人民の不満が爆発寸前になっていたために、反習勢力が3選を阻止するための材料に使い始めたからである。そのため、経済再建派の李克強首相が権力闘争で勢いを盛り返し始めた』、「北京オリンピック開会式の後に行われた両者の会談だった。ウイグル問題で多くの国家首脳が参加を見合わせる中、堂々と出席してくれたプーチン大統領に、習主席は「ロシアに対する無限の友情」を約束した。 ロシアがウクライナに軍事侵攻したのは、その後のことだった」、よほど「ロシア」の参加が嬉しかったのだろう。「不動産投資規制などの規制策が裏目に出ていた上に、ゼロコロナ政策で人民の不満が爆発寸前になっていたために、反習勢力が3選を阻止するための材料に使い始めたからである。そのため、経済再建派の李克強首相が権力闘争で勢いを盛り返し始めた」、面白い展開になってきた。
・『内政も外交も失敗 それでも盤石な権力基盤  習近平指導部がこれまで取ってきた政策は「ほとんどが失敗」と言ってもいいほど惨憺たるものだった。 たとえば、習主席が先導してきた国家的プロジェクトである「中国製造2025」と「一帯一路」は、いずれもここにきて行き詰まりを見せている。 中国製造2025においては、先端半導体の内製化に失敗して半導体自給率は目標を大きく下回り、一帯一路も現地で雇用を生まず収益性も考慮されていなかったことから、各地で反中感情を高めた。 先述したゼロコロナ政策や不動産投資規制は中国経済に直接ダメージを与えており、IT企業への規制も虎の子の自国IT企業を痛めつけるだけであり、習主席の肝いりだったスマートシティー「雄安新区」もうまくいってないと伝えられている。やることなすことが裏目に出ていると言ってもいいだろう。 本来であれば異例の3期目など狙える状態ではないはずだが、それでも次に向けた習主席の権力基盤は着々と固まり、反習派への巻き返しが始まっている。習主席の権力基盤が思いのほか頑強で、失政にもかかわらず取って代わるほどの人材がいないからだろう。 さらに、6月の全人代(中国全国人民代表大会)の常務委員会では、趙克志公安相の後任として、習主席側近の王小洪が起用されることとなった。王氏は習主席が福建省役員だったころからの部下だった。公安はもともと反習派の牙城といわれていた組織だったが、そのトップを習派にすげ替えることに成功したわけである。 ところが、その習主席に大きなダメージを与えかねない事件がアメリカから訪れる。8月のペロシ米下院議長の台湾訪問である。ペロシ氏の訪台は4月に計画されていたが、本人が新型コロナに感染して延期されていたものだ。 4月時点での訪台は中国側から大きな反発は見られなかった。だが、8月は習主席が異例の3期目をかけて権力闘争を繰り広げている真っただ中にあり、習近平指導部としてどうしてもペロシ氏訪台は避けたかった。直前のバイデン大統領との電話会談でも習主席は「火遊びをする者は火で焼け死ぬ」ということわざを使って恫喝すらいとわなかったが、ペロシ氏は訪台して蔡英文総統と会談し、習主席は顔に泥を塗られることとなった。 ペロシ氏が台湾をたつと、人民解放軍が台湾海峡の中間線を越えて軍事示威行動を続けた。さらに、日本の排他的経済水域(EEZ)にも5発のミサイルを撃ち込んでいる。これは「中国の軍事計画が一つ先に進んだ」という面があるが、同時に日米が中国による台湾有事に備えることを強いた点で、中国にとっては外交上の失策ともいえる。 アメリカ側はその後も超党派で下院議員を送って、台湾を守るというメッセージを送り続け、米中関係は悪化を極めている。これは3期を目指す習主席にとってはマイナスなる。習近平指導部は内政に加えて、外交も失敗したのである』、「本来であれば異例の3期目など狙える状態ではないはずだが、それでも次に向けた習主席の権力基盤は着々と固まり、反習派への巻き返しが始まっている」、「アメリカ側はその後も超党派で下院議員を送って、台湾を守るというメッセージを送り続け、米中関係は悪化を極めている。これは3期を目指す習主席にとってはマイナスなる。習近平指導部は内政に加えて、外交も失敗したのである」、さんざんなのに地位を守れているのは不思議だ。
・『ウクライナ戦争の長期化で高まる欧米への不満  失策続きの習近平指導部だったが、ウクライナ戦争が長引くごとに、情勢は徐々に中国に有利に働き始めた。エネルギーと小麦などの食料が高騰することで、途上国などのグローバルサウス(南北問題の南側)が、ウクライナ支援とロシア経済制裁を強める欧米に対して、不満を持ち始めたのである。そのため、ウクライナ支援を続ける西側とグローバルサウスの分裂が始まってしまったのだ。 習主席は4月に「世界安全保障構想(GSI)」という新たな戦略的枠組みを発表して、グローバルサウスの取り込みに入ったのである。まだ始まったばかりではあるが、ウクライナ戦争の余波でハイパーインフレや食料不足に苦しむ途上国や新興国から賛同を得る可能性が高まっている。 さらに、9月にカザフスタンのサマルカンドで開催される上海協力機構サミットでは、中国が習・プーチン会談を実施しようとしていることをアメリカ経済紙の『ウォール・ストリート・ジャーナル』がすっぱ抜いている。 上海協力機構(本部は北京)は中国・ロシア・カザフスタン・キルギス・タジキスタン・ウズベキスタン・インド・パキスタンの計8カ国で構成される国際組織であるが、中国が近隣国をまとめるための枠組みだと言っていいだろう。 ここでの最大の懸念はインドだ。インドはもともと反米親ロの傾向があるのだが、それを日米側に引き入れたのが安倍晋三元首相だった。安倍首相は中国との領土問題でインド国内で反中感情が強まっていた時期にモディ首相の信頼を勝ち取り、トランプ大統領を説得して日米豪印の4カ国による「クアッド(4カ国戦略対話)」を成立させた。 インドの反対で軍事同盟化することはできなかったものの、海側から日米が、陸側からインドが中国を牽制することで、中国を封じることを中心とした戦略的枠組みとして中国封じ込め政策は大きく前進した。 だが、ウクライナ戦争でインドはウクライナ側に付かず、ロシアに配慮した中立に近い姿勢を見せた。インドは武器とエネルギーをロシアに依存しており、西側がいくら要請してもロシア封じ込めには参加するわけにはいかないのである。インドのみならず、ロシアのエネルギーが西側より安く買えるのであれば、中ロ側に付きたいと考える国は多いはずだ。 そのインドをはじめ、イスラエル、トルコ、ブラジルなど一筋縄ではいかない国々の首脳の信頼を勝ち取ってきたのが、安倍元首相だったのだが、それらの国の気持ちは、ウクライナ戦争の長期化によって西側から離れつつある。 ウクライナ戦争が長引くごとに南北の分裂が深まり、南側のリーダーとして中国の存在感が高まっているのである。習主席の3期目が決まり南北分裂が進めば、冷戦期ほどのはっきりした対立にはならないものの、両者がそれぞれの陣営で共存し合う「ソフト冷戦」に突入する可能性が否定できない。 また、ロシアを封じ込めると中東やアフリカなどでロシアの影響下にある国々は、今度はアメリカではなく、多くが中国の支援を受けようとするはずである。つまり、ロシアの影響力を制限しようとすれば、中国の影響力が拡大するのである。これは西側にとって得策ではない。 日本としても、台湾防衛を第一に考えるなら、現在の状態は望ましいものではない。また、中国のこのような動きはまだ始まったばかりであり、巻き返しはじゅうぶん可能だ。 中国包囲網は先進国のみでは完成しない。少なくともロシアを含む新興国や途上国を中国側に付かせてしまっては、中国の覇権拡大を止めることは困難である。ウクライナ戦争を一日でも早く停戦に持ち込んで、再び日米中心でインドをはじめとするグローバルサウスを引き入れる必要がある。 先述したようにインドはもともと反米・親ロの傾向が強い。ロシアと敵対したままであると、せっかく日米側に引き入れたインドが、今度は中ロ側にシフトする可能性すらある。中ロが連携することは日本にとってデメリットがあまりにも大きい。ウクライナ戦争を一日も早く終わらせ、ロシア包囲網を解いてこれ以上の中ロ接近を阻止することは、日本の安全保障にとっても重要である。 それらの仲介者の役割に最適なのが日本だ。だが、外交で大仕事ができる安倍元首相は帰らぬ人だ。世界がいま「ポスト安倍」を必要としているのである』、「ウクライナ戦争が長引くごとに南北の分裂が深まり、南側のリーダーとして中国の存在感が高まっているのである」、「ロシアを封じ込めると中東やアフリカなどでロシアの影響下にある国々は、今度はアメリカではなく、多くが中国の支援を受けようとするはずである。つまり、ロシアの影響力を制限しようとすれば、中国の影響力が拡大するのである。これは西側にとって得策ではない」、「中国包囲網は先進国のみでは完成しない。少なくともロシアを含む新興国や途上国を中国側に付かせてしまっては、中国の覇権拡大を止めることは困難である。ウクライナ戦争を一日でも早く停戦に持ち込んで、再び日米中心でインドをはじめとするグローバルサウスを引き入れる必要がある。 先述したようにインドはもともと反米・親ロの傾向が強い。ロシアと敵対したままであると、せっかく日米側に引き入れたインドが、今度は中ロ側にシフトする可能性すらある。中ロが連携することは日本にとってデメリットがあまりにも大きい。ウクライナ戦争を一日も早く終わらせ、ロシア包囲網を解いてこれ以上の中ロ接近を阻止することは、日本の安全保障にとっても重要である。 それらの仲介者の役割に最適なのが日本だ。だが、外交で大仕事ができる安倍元首相は帰らぬ人だ。世界がいま「ポスト安倍」を必要としているのである」、岸田首相は外相経験も長く、「ポスト安倍」にうってつけである。ただ、ハッタリも必要になる外交交渉能力には疑問なしとしないが、大筋では筆者の主張に同意できる。
タグ:『経済安全保障 異形の大国、中国を直視せよ』(中央公論新社) 北村 滋氏による「「中国の資金援助は助かる」と日本人研究者…破格の待遇で世界の人材を集める「千人計画」の恐ろしい目的 日米欧による"科学技術の競争"とは狙いがまったく違う」 PRESIDENT ONLINE (その14)(「中国の資金援助は助かる」と日本人研究者…破格の待遇で世界の人材を集める「千人計画」の恐ろしい目的 日米欧による"科学技術の競争"とは狙いがまったく違う、バルト三国すべてが「中国離れ」を決断…欧州で進めていた「一帯一路」が行き詰まりを見せ始めたワケ 次の標的はハンガリーとギリシャだが…、中国・習近平がもくろむ「世界分断計画」の現実味 日本がやるべきことは?) 中国情勢(軍事・外交) 先述したようにインドはもともと反米・親ロの傾向が強い。ロシアと敵対したままであると、せっかく日米側に引き入れたインドが、今度は中ロ側にシフトする可能性すらある。中ロが連携することは日本にとってデメリットがあまりにも大きい。ウクライナ戦争を一日も早く終わらせ、ロシア包囲網を解いてこれ以上の中ロ接近を阻止することは、日本の安全保障にとっても重要である。 それらの仲介者の役割に最適なのが日本だ。だが、外交で大仕事ができる安倍元首相は帰らぬ人だ。世界がいま「ポスト安倍」を必要としているのである」、岸田首相は外相経 「ウクライナ戦争が長引くごとに南北の分裂が深まり、南側のリーダーとして中国の存在感が高まっているのである」、「ロシアを封じ込めると中東やアフリカなどでロシアの影響下にある国々は、今度はアメリカではなく、多くが中国の支援を受けようとするはずである。つまり、ロシアの影響力を制限しようとすれば、中国の影響力が拡大するのである。これは西側にとって得策ではない」、「中国包囲網は先進国のみでは完成しない。少なくともロシアを含む新興国や途上国を中国側に付かせてしまっては、中国の覇権拡大を止めることは困難である。ウクライ 「本来であれば異例の3期目など狙える状態ではないはずだが、それでも次に向けた習主席の権力基盤は着々と固まり、反習派への巻き返しが始まっている」、「アメリカ側はその後も超党派で下院議員を送って、台湾を守るというメッセージを送り続け、米中関係は悪化を極めている。これは3期を目指す習主席にとってはマイナスなる。習近平指導部は内政に加えて、外交も失敗したのである」、さんざんなのに地位を守れているのは不思議だ。 「北京オリンピック開会式の後に行われた両者の会談だった。ウイグル問題で多くの国家首脳が参加を見合わせる中、堂々と出席してくれたプーチン大統領に、習主席は「ロシアに対する無限の友情」を約束した。 ロシアがウクライナに軍事侵攻したのは、その後のことだった」、よほど「ロシア」の参加が嬉しかったのだろう。「不動産投資規制などの規制策が裏目に出ていた上に、ゼロコロナ政策で人民の不満が爆発寸前になっていたために、反習勢力が3選を阻止するための材料に使い始めたからである。そのため、経済再建派の李克強首相が権力闘争で勢い 白川 司氏による「中国・習近平がもくろむ「世界分断計画」の現実味、日本がやるべきことは?」 ダイヤモンド・オンライン 「スリランカは、債権者に対して債務再編を要請すると考えられる」、これを邪険に扱えば、「中国にとっての」「不良債権の罠」問題が深刻化する。「中国」には微妙な綱渡りが求められそうだ。 「岐路に立つ中国の「一帯一路」」、当然だ。 「欧米諸国が「債務の罠」につながると警告を繰り返したところで、新興国にとって話が早い中国からの投融資は魅力的である。結局のところEUは、有効な手立てをとることができないまま、バルカンからハンガリーにかけて中国の進出を許し続けている」、やむを得ないだろう。 「中国は、ギリシャを起点として、西バルカン諸国やクロアチアを経由し、ハンガリーに至る一帯に「選択と集中」をかけて、中国は経済協力関係の深化を試みていると整理できる」、「さしずめ「バルト三国」は「選択」対象から漏れたようだ。 「バルト三国」は、「中国から満足な投融資を得ていなかった」、「貿易面でも中国に対する依存度はそれほど高くない」、などから、「中国との枠組みから離脱できた」なるほど。 土田 陽介氏による「バルト三国すべてが「中国離れ」を決断…欧州で進めていた「一帯一路」が行き詰まりを見せ始めたワケ 次の標的はハンガリーとギリシャだが…」 「習近平政権は、「中華民族の偉大な復興」「中国の夢」を実現するために、富強、強軍の政策を継続することは間違いない。日本にとって軍事的な脅威は増していくことを覚悟しなければならない」、「日本」としては、ノウハウや情報、人材の流出に気を付けるのがせいぜいだろう。 「西側先進諸国が目指す秩序は「自由で開かれた、法の支配に基づく世界」だ。それぞれの国が平等で、法の支配、自由を尊重するというものだ。 中国が目指す秩序は何か。習主席は頻繁に「新型国際関係」という言葉を使うが、西側主導の秩序への挑戦にほかならない。「自由、人権、民主主義」といった日米欧の価値観に真っ向から挑戦」、「「中華民族の偉大な復興」「中国の夢」に基づき、中国を頂点としたピラミッド型の国家連合を目指しているというのが本質だ。「一帯一路」構想の一環でアジアやアフリカの途上国に、インフラ整備のための桁違いの 「07年に5万人以下だった海外人材の帰国者数は、17年に48万人に急増している。高度な技術を母国に持ち帰っているということだ」、「千人計画」、「万人計画」といいスケールが大きい。。 「中国科学院力学研究所に」、「日本のものと酷似した風洞設備が完成」、こうした「シャドーラボ」により「極超音速ミサイル研究」は、それがなかった場合に比べ、はかどったことだろう。 「補助金だけではない。広い研究室やマンションも与えられる。家賃はほとんど中国政府が払ってくれる、家政婦付きのマンションを与える、運転手付きの車が使えるとか、そんな話もある」、これは魅力的だ。「米司法省は・・・「千人計画」への参加を巡って米政府に虚偽の説明をした米ハーバード大化学・化学生物学科長の教授を起訴した。ナノテクノロジーの世界的な権威だ。この教授は、12~17年頃に千人計画に参加し、月5万ドル(約550万円)の給料や15万8000ドル(約1740万円)の生活費を受け取った。この教授は国防総省などから 「世界トップレベルの研究者の招請」する「千人計画」では、「研究経費として500万元(約8600万円)が補助され、100万元(約1700万円)の一時金が与えられる例もあった」、と破格の待遇で搔き集めているようだ。 「論文数」で「16年に中国が初めて米国を抜いて世界トップに立った」、大したものだ。
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安倍元首相暗殺事件(その2)(安倍元総理と統一教会の“ズブズブ癒着”に新証言 「誰が統一教会の支援を受けるかは安倍さんの一存」、旧統一教会の名称変更は“総理のご意向”か…認証前後「安倍首相×下村文科相」面会8回も、フランスで統一教会は「反セクト法」で“過去の遺物”に 一方 創価学会は今も熱心に活動中、もしかして岸田首相はまだ気づいていない?カルトの手法に嵌められた自民党 萩生田氏の統一教会施設訪問 リークしたのは「教団関係者」の意味を考えよ) [国内政治]

安倍元首相暗殺事件については7月23日に取上げた。今日は、(その2)(安倍元総理と統一教会の“ズブズブ癒着”に新証言 「誰が統一教会の支援を受けるかは安倍さんの一存」、旧統一教会の名称変更は“総理のご意向”か…認証前後「安倍首相×下村文科相」面会8回も、フランスで統一教会は「反セクト法」で“過去の遺物”に 一方 創価学会は今も熱心に活動中、もしかして岸田首相はまだ気づいていない?カルトの手法に嵌められた自民党 萩生田氏の統一教会施設訪問 リークしたのは「教団関係者」の意味を考えよ)である。

先ずは、8月3日付けデイリー新潮「安倍元総理と統一教会の“ズブズブ癒着”に新証言 「誰が統一教会の支援を受けるかは安倍さんの一存」」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2022/08030557/?all=1
・『文鮮明の釈放を懇願する文書  自民党と統一教会の関係が次々に報じられる中、選挙時の統一教会の支援対象は、安倍氏の一存で決まっていたという証言が。実際、統一教会内部の文書には、安倍氏の子飼い議員に対する選挙応援を〈首相からじきじき〉に依頼があった、との記述が見られるのだ。 日米安保条約改定で嵐吹き荒んだ政治の季節。岸信介政権下の1950年代末、渋谷区南平台にあった岸邸で幼き安倍晋三氏は周囲の喧騒をよそに「アンポ、ハンターイ」と言って、祖父を苦笑いさせたという。かように有名なエピソードが語られる岸邸の隣にかつて統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の関連施設があった。そのことが岸家と統一教会を結ぶ一つのきっかけになったとされる。 そして2022年夏、その“ご近所付き合い”が、凶弾を放たれるきっかけになるとは――。岸家と安倍家の誰もが想像しえなかったに違いあるまい。 1968年に統一教会は「国際勝共連合」を設立。当時、岸氏の後ろ盾があったとされ、反共産主義の政治団体として活動してきた。また、「週刊新潮」7月28日号では、当誌の依頼でジャーナリストの徳本栄一郎氏がアメリカで発掘した1984年の知られざる書簡をご紹介した。それは当地で巨額脱税により実刑判決を受け、収監されていた統一教会の開祖・文鮮明の釈放を、岸氏がロナルド・レーガン大統領(当時)に懇願する内容だったのだ』、「岸邸の隣にかつて統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の関連施設があった。そのことが岸家と統一教会を結ぶ一つのきっかけになった」、「当地(アメリカ)で巨額脱税により実刑判決を受け、収監されていた統一教会の開祖・文鮮明の釈放を、岸氏がロナルド・レーガン大統領(当時)に懇願する内容」、「統一教会」は「岸」には頭が上がらない訳だ。
・『「安倍さんの一存で決まる」  こうした密接な関係は安倍晋太郎、そして晋三へと引き継がれ、自民党の議員も巻き込みながら、現在まで連綿と続くことになる。 「選挙で誰が統一教会の支援を受けるかは、安倍さんの一存で決まるといわれていました」と自民党のベテラン秘書。 「教会の組織票は約8万票といわれています。ただ、衆院選では1選挙区あたりの統一教会の票数はそれほどでもないので、参院の全国比例でその組織力が発揮されます。どの候補を応援するかは、安倍さんの意向がかなり反映される。落選しそうな意中の候補がいれば、安倍さんから“彼を頼む”といった具合です」 実際、過去に統一教会系の団体から推薦を受けた元議員はこう語る。 「推薦を受けるにあたって団体のトップと面談をします。そこでは、不倫スキャンダルや金銭トラブルがないことが条件で、さらに安倍元総理が応援している候補であれば、ほぼ確実に支援してもらうことができます。選挙の直前になると、統一教会系の施設で泊りがけの研修を行います。自分の場合は妻同伴で2泊3日でした」』、「選挙で誰が統一教会の支援を受けるかは、安倍さんの一存で決まるといわれていました」、「統一教会」との関係は安倍氏に引き継がれたようだ。
・『安倍氏が選挙応援を教団に依頼  そうした安倍氏肝いりの候補の一人だったのが、元産経新聞記者で、2013年の参院選全国比例で初当選した安倍派の北村経夫参院議員だ。 カルト宗教に詳しいジャーナリストの鈴木エイト氏によれば、 「初当選時、当時首相だった安倍氏が北村氏の選挙応援を教団に依頼しているのです」 教団の内部文書にはこう書かれていた。 「〈首相からじきじきこの方(北村氏)を後援してほしいとの依頼〉〈まだCランクで当選には遠い状況です〉〈今選挙で北村候補を当選させることができるかどうか、組織の『死活問題』です〉と。19年の参院選でも統一教会内部で北村氏を応援するビラが出回っていました。当時、大宮で行われた演説会では国際勝共連合の関係者が仕切っており、300人以上が入れる会場に半分から3分の2くらいは信者が動員されていました」 自民党山口県連の関係者が後を受ける。 「北村さんはいずれの選挙も盤石な地盤を築いていたとは言い難く、安倍さんが選挙直前になって慌てて、統一教会に支援を依頼したといわれています。“統一教会のおかげで当選できた”と地元ではまことしやかにささやかれているのです」 北村事務所は、「旧統一教会から支援を受けたことも、見返りを求められたこともありません」と回答するも実際、統一教会の推薦が決まると手厚い支援が受けられるようで、 「一般的に統一教会サイドから20~30人程度のボランティアが連日手伝いに来てくれます。電話作戦やチラシ配り、ポスター張りなどの機動部隊となってくれるので、貴重な戦力です。15~20人くらいの人員で選対事務所を切り盛りしているところもありますから、本当に助かります」(県連関係者)』、「当選には遠い状況」の「北村氏」を推薦するに際し、「大宮で行われた演説会では国際勝共連合の関係者が仕切っており、300人以上が入れる会場に半分から3分の2くらいは信者が動員されていました」、その結果、「“統一教会のおかげで当選できた」とはやはり「統一教会」には力があるようだ。
・『細田衆議院議長の熱のこもったスピーチ  鈴木氏が再び言う。 「議員側が統一教会の支援を受けるメリットの一つはこのマンパワーです。候補者は選挙の時の支援スタッフや事務所スタッフを賄える。ほかにも、いきなり国政は難しくても、息のかかった地方議員を育て、国政に打って出させるといったケースもあります」 統一教会の「政界汚染」はこうした例にとどまらない。 鈴木氏は、統一教会の関連団体のイベントへの出席歴や献金を受けたりした議員を独自に調査し、100人を超えるリストを公表している。そこには、麻生太郎自民党副総裁をはじめ多くの“重鎮”が名を連ねている。 例えば、元安倍派の議員では、女性記者へのセクハラ疑惑が報じられている細田博之衆院議長。19年10月に、統一教会系の天宙平和連合(UPF)が主催する会合に出席し、披露したのは、以下のような熱のこもったスピーチだった。〈韓鶴子総裁の提唱によって実現したこの国際指導者会議の場は、大変意義が深いわけでございます。この会が大きな成果を上げ成功されることを念じまして、ごあいさつとさせていただきます〉』、本来は中立的立場が求められる「衆院議長」とは思えないような内容だ。
・『汚染は野党にも  ほかにも安倍元総理の「秘蔵っ子」と呼ばれた稲田朋美元防衛相は09年と10年に統一教会系の団体のイベントで講演を行っており、菅政権で官邸を仕切っていた前官房長官の加藤勝信氏は18年に関連イベントに秘書を代理出席させたほか、同氏が代表を務める自民党支部は関連団体に会費を支払っている。 汚染は野党にも及ぶ。国民民主党の玉木雄一郎代表は「世界日報」の元社長から計3万円の寄付を受け、前原誠司氏は統一教会系米紙「ワシントン・タイムズ」の全面意見広告に名を連ねている。 それぞれの事務所に見解を尋ねると、細田事務所は回答ナシ。稲田事務所は、「両集会への参加は事実です。当日はひと言挨あいさつをし、途中退席しました。講演はしていません」 ほかの議員は、「慶事や行事などの案内などを受けることもあり、適宜事務所で判断して対応しています」(加藤事務所) 「賛同者として名を連ねたとありますが、前原にその認識はなく、(中略)統一教会の活動には一切関わりはございません」(前原事務所) 「(寄付は)いずれも事実です」(玉木事務所)』、「世界日報」自体はしっかりした雑誌だが、「玉木代表」や「前原」氏は脇が甘いようだ。
・『「見破れなかったこと自体が問題」  前出の鈴木氏が教団側の意図を解説する。 「統一教会が政治家と付き合うメリットは、内部統制の意味合いが強いと思います。信者の中には霊感商法や過度の献金などで教団に不信感を抱いている人もいる。そこで名のある政治家がメッセージを寄せれば、教団への信頼を担保することができるのです」 政治家としては前述した“見返り”を期待してのことなのだろうが、統一教会による被害に詳しい弁護士の紀藤正樹氏は手厳しい。 「統一教会には数えきれないほどの関連団体、友好団体があり、専門家でもすべてを見分けることは難しい。そうやって自分たちの正体を隠して政治家に接近するのが、カルト宗教の手口です。そうと知らずに協力してしまった政治家もいるかもしれませんが、見破れなかったこと自体が問題です。結果的に統一教会へのお墨付きを与える格好となり、社会全体としてカルトを糾弾する状況が生まれなかったのですから」』、「「統一教会には数えきれないほどの関連団体、友好団体があり、専門家でもすべてを見分けることは難しい。そうやって自分たちの正体を隠して政治家に接近するのが、カルト宗教の手口です・・・見破れなかったこと自体が問題です。結果的に統一教会へのお墨付きを与える格好となり、社会全体としてカルトを糾弾する状況が生まれなかったのですから』、同感である。

次に、8月7日付け日刊ゲンダイ「旧統一教会の名称変更は“総理のご意向”か…認証前後「安倍首相×下村文科相」面会8回も」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/309424
・『岸田首相が来週10日に内閣改造と自民党役員人事を行うという。9月上旬の予定だったのに、突然の前倒しだ。旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と自民党議員との“癒着”が明らかになり、内閣支持率が急落。現職閣僚も関係を持っていたことが露呈する中、人事刷新で局面打開をはかる狙いとみられる。 現職閣僚では、萩生田経産相、末松文科相、二之湯国家公安委員長、岸防衛相が、教団や関連団体と接点があることが明らかになっている。5日は、新たに山口環境相が関連イベントに祝電を送っていたことをニヤニヤ笑いながら明らかにし、小林経済安保担当相はイベントで挨拶したと説明した。 “癒着”は底なしの様相で、内閣改造で旧統一教会と関係の深い議員を一掃したところで国民の不信は到底、解消されそうにない。 いま問題になっている旧統一教会からの名称変更について、5日野党の合同ヒアリングに出席した元文科次官の前川喜平氏は、旧統一教会の名称変更が承認された2015年当時、説明に来た文化庁宗務課長に対し「認証すべきではないと述べました」と言い、「(当時の事務方ナンバー2だった)私のノーを上回るイエスという判断ができる人は誰かというと、私の上には事務次官と大臣しかいない」と説明。当時の下村文科相の「意思が働いていたことは間違いない」と断言した。 「文科相よりさらに上、官邸の意思が働いていた可能性もあります。安倍元総理が凶弾に倒れてから、旧統一教会との蜜月ぶりが次々と明らかになり、安倍氏本人が教団票を割り振っていたという証言も出てきた。政権に返り咲いた12年の総裁選で旧統一教会の幹部が安倍氏を支援したと明言しているし、恩義を感じた安倍氏が教団の悲願だった名称変更を下村氏に指示していても不思議はない。少なくとも、当時の役所の空気としては、大臣よりも官邸の意向を気にしていました」(文科省関係者) 名称変更の申請は2015年6月で、文化庁は同年7月に受理、同年8月26日に認証した。 当時の首相動静を確認すると、下村氏の名前は8回登場する。 6月12日 閣議後、山谷えり子国家公安委員長とともに安倍首相と会談。 6月22日 午後6時47分から7時3分まで安倍首相とサシで会談。 6月30日 午後2時26分から3時5分まで当時の山中伸一文科事務次官とともに安倍首相と会談。 7月7日 午後6時22分から安倍首相や菅官房長官、佐藤国対委員長らと都内のホテルで懇談。 7月17日 午後2時30分から森元首相、菅官房長官、遠藤五輪相とともに安倍首相と面会。 8月7日 午後2時10分から官邸で安倍首相とサシ会談。 認証決定前日の8月25日は午後7時7分から、安倍首相と山谷えり子氏、JR東海名誉会長の故・葛西敬之氏らと会食していた。 認証直後の8月28日にも閣議後に安倍首相と話し込んでいた。 末松文科相は5日の閣議後会見で、旧統一教会の名称変更について「政治的判断を行ったものではないと認識」と話したが、97年からずっと名称変更の要望を突っぱねていた文化庁が安倍政権下で認めたのはなぜなのか、明確な説明が欲しい。「総理のご意向」はなかったのか』、「末松文科相」の「政治的判断を行ったものではないと認識」は嘘だ。「前川喜平氏は、旧統一教会の名称変更が承認された2015年当時、説明に来た文化庁宗務課長に対し「認証すべきではないと述べました」と言い、「(当時の事務方ナンバー2だった)私のノーを上回るイエスという判断ができる人は誰かというと、私の上には事務次官と大臣しかいない」と説明」と明らかに矛盾する。やはり、文科省大臣の「下村」氏、あるいは、「安倍首相」からの指示があったとみる方が自然だろう。「当時の首相動静を確認すると、下村氏の名前は8回登場する」、やはり「8回」とは決定的だ。

第三に、8月20日付けデイリー新潮「フランスで統一教会は「反セクト法」で“過去の遺物”に 一方、創価学会は今も熱心に活動中」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2022/08200700/?all=1
・『出版社のダイヤモンド社が手がけるネットメディア「DIAMOND online」は8月1日、「ひろゆきが語る『カルト団体にダマされないための、たった1つの教え』」という記事を配信した。 2ちゃんねる創始者の「ひろゆき」こと西村博之氏(45)が記事に登場。「カルトを信じている人とは距離を置くこと」や「投票に行って宗教団体の集票力を低下させること」などを訴えた。 だが、これは本題ではない。ここで注目したいポイントは、ごくわずかとはいえ、フランスにおける「反セクト法」について言及している点だ。担当記者が言う。 「セクトはカルトと同義です。フランスでは2001年、『反セクト法』が制定されました。ある団体をセクトと見なすかどうかは、3つの要件が設けられています」 この3つの要件とは、【1】法的形態や目的を問わず 【2】その活動に参加する人の心理的または肉体的服従を創造したり利用したりすることを目的または効果とするあらゆる法人 【3】法人そのものまたはその法的あるいは実質的指導者が以下の1つまたは複数の犯罪について、複数の確定有罪判決を受けた ──となっている。この3要件を満たすと、罰則が科せられる場合がある。 該当するセクトの反社会性や悪質性を勘案し、資金募集の禁止や事務所の閉鎖を命じることが可能だ。最も重い処分は団体の解散となっている。 なぜフランスで反セクト法が成立したのか、背景として旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合。以下「統一教会」)の活動が大きな影響を与えたという。 「統一教会は1960年代末からヨーロッパで布教を開始しました。70年代から厳しい集金システムや、子供が信者となって親と意思疎通が不可能になることなどが報じられ、日本と同じような社会問題に発展しました」(同・記者)』、「フランスで反セクト法が成立したのか、背景として旧統一教会・・・の活動が大きな影響を与えた」、自由を重視する「フランス」で「反セクト法が成立」した背景をみてみたい。
・『フランスメディアの報道  朝日新聞は1994年3月、「統一教会、欧州で勢力広げる 布教めぐりトラブルも」の記事を朝刊に掲載した。ポイントを紹介しよう。 ◆統一教会はアメリカを経由し、70年代にヨーロッパで布教を開始。範囲は西欧から東欧、旧ソ連に及んでいる。 ◆教祖・文鮮明氏(1920~2012)の妻で現在は統一教会の総裁を務める韓鶴子氏(79)も、93年秋、パリ、ウィーン、フランクフルトなどの集会に出席した。 ◆統一教会はヨーロッパの右翼政党と親密な関係を結んでいる。 ◆日本と同様、壷を高く売りつける信者の行動も表面化し、「息子や娘が過激な布教に巻き込まれている」と信者の親などから批判が出ている。 7月8日、安倍晋三元首相(享年67)が奈良市内で射殺されるという衝撃的な事件が起きた。当然ながら全世界のメディアが報じた。 その中でもフランスのマスコミは、事件の発生当初から「統一教会」の名称を堂々と報道。日本では大手メディアが「ある団体」と伏せ続けたのとは対照的だった。 その後、大手メディアも「旧統一教会」と呼称するようになり、今では自民党を中心とした「国会議員と統一教会の関係」に焦点が集まっている』、「日本では大手メディア」の慎重姿勢が目立った。「メディア」にも「統一教会」の影響が及んでいる可能性がある。広告費を通じて影響力を及ぼしているのだろうか。
・『続報は皆無  この現状がフランスでも報道されると、「日本は政教分離が遅れた異常国家だ」と呆れられるのではないか──。 そこで、フランスのメディアはどのように「統一教会と自民党の関係」を報じているのか、現地在住のジャーナリストで『EU騒乱―テロと右傾化の次に来るもの─』(新潮選書)などの著作がある広岡裕児氏に取材を依頼した。 「端的に申し上げて、『統一教会と与党・自民党の密接な関係』といった日本の報道は、フランスのメディアではあまり紹介されていません。もちろん安倍元首相が射殺された事件は大きく取り上げられましたが、続報はかなり限定的なものにとどまりました」 なぜフランスのメディアは続報に消極的なのか、広岡氏によると理由は2つあるという。 なによりも、日本という国そのものの存在感が低下しているからです。バブル崩壊後、経済の中心が中国に移ったこともあり、日本発のニュースに対してフランスの人々の関心が低下しているからです。あくまでも遠い国の国内的な問題ですし。2つ目には、元首相の射殺を正当化するように見られることを危惧しています」 統一教会と政治の問題は日本人が対処すべきであって、フランス人が口を出すべき事柄ではない──という考えもあるという。 「フランスの政治家やメディアは、他国の批判はしても、他国にこうしなさいとは言いません。内政干渉になるからです。ウクライナに対するロシアの姿勢と同じことになってしまいます」(同・広岡氏)』、「日本発のニュースに対してフランスの人々の関心が低下」、「統一教会と政治の問題は日本人が対処すべきであって、フランス人が口を出すべき事柄ではない──という考えもある」、なるほど。
・『過去の遺物  更にフランスでは「統一教会がフランス国内で様々なトラブルを引き起こした」という事実は、既に忘れ去られてしまったという。 「80年代以来、セクト問題を追っていて、統一教会がヨーロッパ全土で問題視された時も現地で取材を行っていました。セクト対策法の成立も一部始終を目の当たりにしました。ところが今回の射殺事件で、フランスの新聞各紙は『そもそも統一教会とは……』という解説記事を掲載していたのです。いい意味で風化したのだと思います」(同・広岡氏) なぜ統一教会はフランスで“過去の遺物”となったのか、これは反セクト法が世界でもトップクラスの厳しさを誇っていることも大きいという。 「法律の厳しさと世論の理解と支持から、統一教会がフランスからはほぼ一掃されたのです。今は国内で問題を起こしていない組織となると、どうしても人々の関心は低くなります。安倍元首相の死去を巡る報道で、フランスで続報があまり伝えられていないのは、統一教会を巡るトラブルを誰も覚えていないことも大きいでしょう」(同・広岡氏)』、「「法律の厳しさと世論の理解と支持から、統一教会がフランスからはほぼ一掃されたのです。今は国内で問題を起こしていない組織となると、どうしても人々の関心は低くなります」、「統一教会を巡るトラブルを誰も覚えていないことも大きい」、なるほど。
・『人権とセクト  アメリカの状況と比較すると、フランスの反セクト法の厳しさや法律が持つ“精神”が理解しやすくなるという。 「アメリカでは、憲法修正第1条で、宗教を特別視しています。アメリカの法制度は信仰の自由を絶対視する傾向があります。銃と同じです。セクト=カルトの疑いがある団体でも、宗教と名乗れば許されてしまうのです」(同・広岡氏) 一方のフランスは、1789年、神から授けられたものとしてではなく、人間の理性の産物として「人権宣言」を制定したという歴史を持つ。史上初めて宗教とは離れた“人権”という概念を樹立したのだ。 「反セクト法は『宗教団体にブレーキをかける』ために制定されたのではありません。『人権を抑圧する組織は認めない』という考えが根本にあります。ですから対象は宗教団体に限りません。マルチ商法でもセラピーでも企業研修でも同じです。例えば今、フランスに連合赤軍のような組織があれば、対象となるでしょう。参加メンバーの人権を蹂躙するような組織は許さない、というフランス人の強い決意が浮き彫りになっていると言えるのではないでしょうか」(同・広岡氏)』、「人間の理性の産物として「人権宣言」を制定したという歴史を持つ。史上初めて宗教とは離れた“人権”という概念を樹立したのだ。 「反セクト法は『宗教団体にブレーキをかける』ために制定されたのではありません。『人権を抑圧する組織は認めない』という考えが根本にあります。ですから対象は宗教団体に限りません。マルチ商法でもセラピーでも企業研修でも同じです」、「人権」に至上の価値を置く「フランス」ならではのようだ。
・『ヒジャブの問題  政教分離という言葉も、日本では少し誤解されている点があるという。 「政治家で敬虔なキリスト教徒がいたとして、フランスでは当たり前のことです。キリスト教をベースにした政党や労働団体も普通に活動しています。宗教団体であっても『人権を抑圧しない組織』ならば、堂々と政治の世界に参画することができます」(同・広岡氏) フランスの場合、反セクトの追求が行きすぎてしまうこともある。国内のイスラム教徒に過度な“政教分離”を求めるようなケースだ。 「イスラム教徒の女性が顔を隠す“ヒジャブ”の着用を巡り、フランスで議論が起きていることは日本でも報道されているでしょう。実は、フランスのイスラム教徒は、移民の人も含め誰もスカーフも被っていません。しかし、過激派が出てきたために、ヒジャブ姿の人が出てきたのです。“反ヒジャブ”を強く主張しているのは、いわゆる極左と極右、キリスト教原理主義の政治家や支持者です」(同・広岡氏)』、「フランスのイスラム教徒は、移民の人も含め誰もスカーフも被っていません。しかし、過激派が出てきたために、ヒジャブ姿の人が出てきたのです」、「過激派」への対抗として「ヒジャブ」を「被っている」とは初めて知った。
・『統一教会の存在感  興味深いことに、統一教会は“過去の遺物”でも、創価学会は今でもフランスで活動を続け、多くの人々が“セクト”として認知しているという。 「フランスに住み、『私は仏教徒です』と説明する人は、かなりの確率で創価学会の信者です。それほどフランスでは浸透しています。市民レベルでは、かなりの人が、学会をセクトと見なしています。しかし、以前から『(創価学会は)セクトではない』という立場をとっていた知識人に加え、日本で連立与党の一翼を担っているということを利用したロビー活動によって、政治家に食い込んでいます」 他にも学会は、問題点が報道されるとすぐに改善するという。 「例えば、学会の過度な集金が、フランスでもかつて社会問題となったことがありました。ところが、フランスの国内ニュースとして取り上げられると、たちまち緩やかなものにしました。こうしたことが積み重なり、今ではセクトではないとするマスコミも出てきています」(同・広岡氏)』、「市民レベルでは、かなりの人が、学会をセクトと見なしています」、しかし、「以前から『(創価学会は)セクトではない』という立場をとっていた知識人に加え、日本で連立与党の一翼を担っているということを利用したロビー活動によって、政治家に食い込んでいます」、「今ではセクトではないとするマスコミも出てきています」、さすが「創価学会」だけあって、「統一教会」とは違うようだ。

第四に、8月22日付けJBPressが掲載したフリージャーナリストの青沼 陽一郎氏による「もしかして岸田首相はまだ気づいていない?カルトの手法に嵌められた自民党 萩生田氏の統一教会施設訪問、リークしたのは「教団関係者」の意味を考えよ」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/71455
・『いったい“踏み絵”はなんだったのか。自民党の萩生田光一政調会長のことだ。 今月10日に行った内閣改造、自民党役員人事にあたって、岸田文雄首相は統一教会(現・世界平和統一家庭連合)との関係を重視していたはずだった。 「国民の皆さんの疑念を払拭するため、今回の内閣改造に当たり、私から閣僚に対しては、政治家としての責任において、それぞれ当該団体との関係を点検し、その結果を踏まえて厳正に見直すことを言明し、それを了解した者のみを任命いたしました」 内閣改造後の記者会見で、岸田首相はそう明言していた。自民党役員人事についても、また然りであることは、前日の記者会見で語っている』、今回の「内閣改造、自民党役員人事」後の「統一教会」との関係の相次ぐ判明を見ていると、今回の人事での「“踏み絵”」が絵空事に過ぎなかったことが明確になった。
・『生稲議員、「スタッフが判断」したから教団関連施設を訪問  改造前まで経済産業大臣だった萩生田氏は、2014年に地元の支援者の依頼で出席した会合の冒頭であいさつしたこと、同年に別のイベントに後援会役員が、17年のイベントに秘書が出席したことを公表。祝電を数回送った可能性もあるとしたが「盛会をお祝いする一般的なものだった」としていた。それが閣外に出たとはいえ、横滑りで政調会長という党の要職に就いた。これには自民党内からも人事の基準が曖昧との不満が漏れていた。 それから1週間が経って、新たな事実が発覚する。先月の参院選で初当選した、元「おニャン子クラブ」のメンバーの生稲晃子参院議員を伴って、選挙遊説中に八王子市内の教団関連施設を訪問していたことを、週刊誌媒体が報じたのだ。 その翌日の17日に生稲氏の事務所がコメントを発表。「6月にご指摘団体の関連施設に萩生田光一先生と伺った事は事実です」と認めた上で、こう説明している。 「当時演説をお聞きの方より、『他にも仲間が集まっているのでお話を聞かせてもらいたい』とのご依頼があり、新人の立場ですのでより多くの方に政策を聞いていただきたいという思いで、スタッフが判断しました」 「スタッフが判断」とは、人任せで政治家としてあまりに無責任な言いぐさだが、それ以上に「他にも仲間が集まっているのでお話を聞かせてもらいたい」というだけで、ホイホイと付いていってしまうことにも驚かされる。この「仲間」というのが統一教会員だった、ということだ』、「週刊誌媒体が報じた」ので発覚とは悪質この上ない。
・『教団関連施設の訪問、本当にたまたま声かけられたからなのか  萩生田氏もこの事実を認めている。17日の夜にはNHKの取材に、書面でこう回答している。 「生稲氏との街頭演説の終了後、聴衆から『近くで仲間が集まっているので話を聞かせてほしい』と申し出があり、スタッフが調整したと聞いた。スタッフが預かった名刺に『世界平和女性連合』とあったと聞き、生稲氏も不慣れなこともあり同行した」 これを見る限りは、相手が『世界平和女性連合』という団体の依頼であることを認識していたことになる。同団体は、統一教会の関連団体として、先月来、政治家との関わりが取り沙汰されている。突然の申し出に応じたとするのなら、無視するわけにもいかない相手と知ってのことだろう。あるいは、偶然を装っているが、最初から予定に組まれていたのか。素性も知れない相手からの突然の申し出に、新人候補の後見とはいえ、現職の経済産業大臣が付いていくことなど、あり得るのだろうか』、常識的には不自然なことが行われたようだ。
・『「信者たちからすれば“家族”同然」  端緒となった週刊誌報道によると、萩生田氏は2009年の自民党が下野するきっかけとなる衆院選で落選し、12年までの3年間、浪人生活を余儀なくされているが、その間に月1〜2回のペースで地元、八王子の教会施設を訪れていたという。毎年クリスマス・イブの前後に八王子市内の宴会場で、『世界平和女性連合』が主催するクリスマス会に、萩生田氏の秘書は必ず出席し、本人も夫人同伴で何度か顔を出していたとされる。 「信者たちからすれば“家族”同然だと思っていたんですから」という証言もとれている。 萩生田氏はNHKの取材に、教団施設に月1〜2回訪れ、演説を行っていたことは否定している。 ともあれ、萩生田氏は統一教会との関係について、国民に嘘をついていたことになる。ただ、隠していただけ、言わなかっただけ、と言い訳したところで、岸田首相の言う「国民の皆さんの疑念を払拭するため」にはなっていないどころか、むしろ「国民の疑念」は強まった。「当該団体との関係を点検」「厳正に見直す」ことを了解したとする“踏み絵”も奏効していない。 さらに追い打ちをかけるのが、萩生田氏の資金管理団体が2012年と14年に、やはり萩生田氏が代表を務める自民党東京都第24選挙区支部が2015年と17年に、ここでも『世界平和女性連合』に会費として計6万円を支払っていたことが、17日に報道されたことだ。もはや岸田首相の面目も立たない。 ただ、ここでもっとも注意すべきは、週刊誌報道が統一教会関係者の内部告白によるものであることだ』、「2015年と17年に、ここでも『世界平和女性連合』に会費として計6万円を支払っていた」、「週刊誌報道が統一教会関係者の内部告白によるものであることだ」、なるほど。
・『教団関係者からの「リーク」は自民党への脅しではないのか  萩生田氏が教団との関係を公に説明していることに対して、実情はそうではない、と反論するところからはじまっている。つまり、政治家が惚けたり、嘘をついたりしてまで、統一教会と距離を置いたり、縁を切ろうとしたところで、都合よくそうはさせない、と脅していることに等しい。 これこそが、「カルト」と呼ばれる組織の手法だ。 これまでも繰り返し指摘してきたことだが、統一教会が問題とされるのは、手はじめの勧誘方法にある。 家族の死や家庭のトラブルなどで傷ついた人の弱みに付け込んで、「不幸なのは先祖の因縁だ」「死者の霊が地獄で苦しんでいる」「供養しなくてはいけない」「このままではあなたも地獄に堕ちる」などと言葉巧みに脅し、やがて教団への高額の献金を持ちかける。 あるいは、学生組織であれば、素性を明かさずに友人として近づき、信頼を得たところで「聖書の勉強をしましょう」と持ちかけてくる。そうやっていつの間にか教義を教え込む。最近では、正体を隠してビデオセンターに誘い込んで信者にしていくケースも目立つ。 そしてカルトと呼ばれる組織が最後に仕掛けるのが「恐怖説得」だ。関係を絶とうとすれば、「こんなに大事な教えを知ったのに」からはじまって、「ここで辞めたら地獄に堕ちる」「○○さんはここで辞めて事故にあった」などと脅して、抜け出せなくする。家族の秘密などを知られていたら、余計に離れにくい。 政治家が統一教会と関係を絶とうとしたところで、蜜月ぶりを一番よく知っているのは、他でもない教団だ。ここまで追い立てられた果ての教団が、実態を暴露すれば、傷つくのは政治家の側だ。政治生命にも関わりかねない。「ここで辞めたら地獄に堕ちる」と言われているようなものだ。あるいは、今回の報道は「萩生田さんはここで辞めて事故にあった」との見せしめと汲んでも、辻褄の合わない話でもあるまい。 としたら、自民党はどっぷりとカルトの手法にはまっていることになる』、「政治家が惚けたり、嘘をついたりしてまで、統一教会と距離を置いたり、縁を切ろうとしたところで、都合よくそうはさせない、と脅していることに等しい。 これこそが、「カルト」と呼ばれる組織の手法だ」、「政治家が統一教会と関係を絶とうとしたところで、蜜月ぶりを一番よく知っているのは、他でもない教団だ。ここまで追い立てられた果ての教団が、実態を暴露すれば、傷つくのは政治家の側だ。政治生命にも関わりかねない」、「自民党はどっぷりとカルトの手法にはまっていることになる」、公党がはまってしまったとは、恐ろしい限りだ。
・『これで「組織的関係はない」と言えるのか  内閣改造、自民党役員人事の行われた同じ日、統一教会は日本外国特派員協会で記者会見を開いている。詳細とその太々しさについては、すでにまとめているが*、そこで記者から、岸田首相が自民党の党員や閣僚に対し教団と距離を置くように、縁を切るように指示しているとされていることについて問われると、会見に臨んだ田中富広会長はこう答えている。 * 【参考記事】「脅しや罵声が」と被害訴えた統一教会会長、では私の体験を披露しよう(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/71364) 「このたびの政権の判断が、どのような深い意図があって判断されているかまでは、私達が言及する立場ではありませんが、当法人との関わり方が、強く判断の基準に定められたと言うならば、それはすごく残念なことであり、さらには多くの今日のメディア報道を通じながら、その心にその報道に入れる世論に対しての気遣いもまた介入していたというふうに否定することはできないと思いますので、その点においては、誠に遺憾に思っております」 ずいぶんと控え目な言い回しで、抗議する態度もなかった。むしろ、媚びている。 政権の座にある者から、宗教団体が名指しされて距離を置け、縁を切れ、といわれたら、当該団体は「宗教弾圧」として、徹底的に抗議する必要がある。それこそ差別であり、「宗教の自由」「思想、良心の自由」を侵害する行為だからだ。 だが、統一教会はそうしなかった。あえて政権与党に忖度する。それもこれも、与党の標榜する姿勢も一時的なもの、表層的なものであって、縁を切ることなど到底できない、深い関係にあることが、腹の内で強い自信につながっていた、と見立てたら穿ち過ぎだろうか。 党として組織的関係はない、などと自民党は表明しているが、政調会長や閣僚などが、統一教会との抜き差しならない関係を脅され、言いなりにならないとも限らない。だからこそ、カルトは恐ろしい。 岸田首相の“踏み絵”も、中途半端で曖昧だ。国会議員が誤魔化すこともあり得ることは、今回の政調会長の件で知れた。対応がおざなりであれば、当該団体が逆手にとらないとも限らない。カルトの恐ろしさを身をもって知る時がきている』、「政権の座にある者から、宗教団体が名指しされて距離を置け、縁を切れ、といわれたら、当該団体は「宗教弾圧」として、徹底的に抗議する必要がある。それこそ差別であり、「宗教の自由」「思想、良心の自由」を侵害する行為だからだ。 だが、統一教会はそうしなかった」、「あえて政権与党に忖度する。それもこれも、与党の標榜する姿勢も一時的なもの、表層的なものであって、縁を切ることなど到底できない、深い関係にあることが、腹の内で強い自信につながっていた、と見立てたら穿ち過ぎだろうか」、「岸田首相の“踏み絵”も、中途半端で曖昧だ。国会議員が誤魔化すこともあり得ることは、今回の政調会長の件で知れた。対応がおざなりであれば、当該団体が逆手にとらないとも限らない。カルトの恐ろしさを身をもって知る時がきている」、同感である。
タグ:「政権の座にある者から、宗教団体が名指しされて距離を置け、縁を切れ、といわれたら、当該団体は「宗教弾圧」として、徹底的に抗議する必要がある。それこそ差別であり、「宗教の自由」「思想、良心の自由」を侵害する行為だからだ。 だが、統一教会はそうしなかった」、「あえて政権与党に忖度する。それもこれも、与党の標榜する姿勢も一時的なもの、表層的なものであって、縁を切ることなど到底できない、深い関係にあることが、腹の内で強い自信につながっていた、と見立てたら穿ち過ぎだろうか」、「岸田首相の“踏み絵”も、中途半端で曖昧 安倍元首相暗殺事件 「政治家が惚けたり、嘘をついたりしてまで、統一教会と距離を置いたり、縁を切ろうとしたところで、都合よくそうはさせない、と脅していることに等しい。 これこそが、「カルト」と呼ばれる組織の手法だ」、「政治家が統一教会と関係を絶とうとしたところで、蜜月ぶりを一番よく知っているのは、他でもない教団だ。ここまで追い立てられた果ての教団が、実態を暴露すれば、傷つくのは政治家の側だ。政治生命にも関わりかねない」、「自民党はどっぷりとカルトの手法にはまっていることになる」、公党がはまってしまったとは、恐ろしい限りだ。 「2015年と17年に、ここでも『世界平和女性連合』に会費として計6万円を支払っていた」、「週刊誌報道が統一教会関係者の内部告白によるものであることだ」、なるほど。 常識的には不自然なことが行われたようだ。 「週刊誌媒体が報じた」ので発覚とは悪質この上ない。 今回の「内閣改造、自民党役員人事」後の「統一教会」との関係の相次ぐ判明を見ていると、今回の人事での「“踏み絵”」が絵空事に過ぎなかったことが明確になった。 青沼 陽一郎氏による「もしかして岸田首相はまだ気づいていない?カルトの手法に嵌められた自民党 萩生田氏の統一教会施設訪問、リークしたのは「教団関係者」の意味を考えよ」 JBPRESS 「市民レベルでは、かなりの人が、学会をセクトと見なしています」、しかし、「以前から『(創価学会は)セクトではない』という立場をとっていた知識人に加え、日本で連立与党の一翼を担っているということを利用したロビー活動によって、政治家に食い込んでいます」、「今ではセクトではないとするマスコミも出てきています」、さすが「創価学会」だけあって、「統一教会」とは違うようだ。 「フランスのイスラム教徒は、移民の人も含め誰もスカーフも被っていません。しかし、過激派が出てきたために、ヒジャブ姿の人が出てきたのです」、「過激派」への対抗として「ヒジャブ」を「被っている」とは初めて知った。 「人間の理性の産物として「人権宣言」を制定したという歴史を持つ。史上初めて宗教とは離れた“人権”という概念を樹立したのだ。 「反セクト法は『宗教団体にブレーキをかける』ために制定されたのではありません。『人権を抑圧する組織は認めない』という考えが根本にあります。ですから対象は宗教団体に限りません。マルチ商法でもセラピーでも企業研修でも同じです」、「人権」に至上の価値を置く「フランス」ならではのようだ。 「「法律の厳しさと世論の理解と支持から、統一教会がフランスからはほぼ一掃されたのです。今は国内で問題を起こしていない組織となると、どうしても人々の関心は低くなります」、「統一教会を巡るトラブルを誰も覚えていないことも大きい」、なるほど。 「日本発のニュースに対してフランスの人々の関心が低下」、「統一教会と政治の問題は日本人が対処すべきであって、フランス人が口を出すべき事柄ではない──という考えもある」、なるほど。 「日本では大手メディア」の慎重姿勢が目立った。「メディア」にも「統一教会」の影響が及んでいる可能性がある。広告費を通じて影響力を及ぼしているのだろうか。 「フランスで反セクト法が成立したのか、背景として旧統一教会・・・の活動が大きな影響を与えた」、自由を重視する「フランス」で「反セクト法が成立」した背景をみてみたい。 デイリー新潮「フランスで統一教会は「反セクト法」で“過去の遺物”に 一方、創価学会は今も熱心に活動中」 「末松文科相」の「政治的判断を行ったものではないと認識」は嘘だ。「前川喜平氏は、旧統一教会の名称変更が承認された2015年当時、説明に来た文化庁宗務課長に対し「認証すべきではないと述べました」と言い、「(当時の事務方ナンバー2だった)私のノーを上回るイエスという判断ができる人は誰かというと、私の上には事務次官と大臣しかいない」と説明」と明らかに矛盾する。やはり、文科省大臣の「下村」氏、あるいは、「安倍首相」からの指示があったとみる方が自然だろう。「当時の首相動静を確認すると、下村氏の名前は8回登場する」、 日刊ゲンダイ「旧統一教会の名称変更は“総理のご意向”か…認証前後「安倍首相×下村文科相」面会8回も」 「「統一教会には数えきれないほどの関連団体、友好団体があり、専門家でもすべてを見分けることは難しい。そうやって自分たちの正体を隠して政治家に接近するのが、カルト宗教の手口です・・・見破れなかったこと自体が問題です。結果的に統一教会へのお墨付きを与える格好となり、社会全体としてカルトを糾弾する状況が生まれなかったのですから』、同感である。 「世界日報」自体はしっかりした雑誌だが、「玉木代表」や「前原」氏は脇が甘いようだ。 本来は中立的立場が求められる「衆院議長」とは思えないような内容だ。 「当選には遠い状況」の「北村氏」を推薦するに際し、「大宮で行われた演説会では国際勝共連合の関係者が仕切っており、300人以上が入れる会場に半分から3分の2くらいは信者が動員されていました」、その結果、「“統一教会のおかげで当選できた」とはやはり「統一教会」には力があるようだ。 「選挙で誰が統一教会の支援を受けるかは、安倍さんの一存で決まるといわれていました」、「統一教会」との関係は安倍氏に引き継がれたようだ。 「岸邸の隣にかつて統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の関連施設があった。そのことが岸家と統一教会を結ぶ一つのきっかけになった」、「当地(アメリカ)で巨額脱税により実刑判決を受け、収監されていた統一教会の開祖・文鮮明の釈放を、岸氏がロナルド・レーガン大統領(当時)に懇願する内容」、「統一教会」は「岸」には頭が上がらない訳だ。 デイリー新潮「安倍元総理と統一教会の“ズブズブ癒着”に新証言 「誰が統一教会の支援を受けるかは安倍さんの一存」」 (その3)(安倍元総理と統一教会の“ズブズブ癒着”に新証言 「誰が統一教会の支援を受けるかは安倍さんの一存」、旧統一教会の名称変更は“総理のご意向”か…認証前後「安倍首相×下村文科相」面会8回も、フランスで統一教会は「反セクト法」で“過去の遺物”に 一方 創価学会は今も熱心に活動中、もしかして岸田首相はまだ気づいていない?カルトの手法に嵌められた自民党 萩生田氏の統一教会施設訪問 リークしたのは「教団関係者」の意味を考えよ)
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今日は更新作業に手間取り、更新できないので、明日にご期待を!

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安全保障(その12)(いま「経済安全保障」が 驚くほど「バブル化」している理由 経産官僚たちの思惑、岸田政権が進める「経済安全保障」 その「危うさ」を考える 監視社会に繋がらないか、なぜ「防衛庁のミサイル研究データ」は北朝鮮側に渡ったのか…元国家安全保障局長が解説する"流出経路" 委託先 再委託先の把握が不足していた) [外交・防衛]

安全保障については、4月20日に取上げた。今日は、(その12)(いま「経済安全保障」が 驚くほど「バブル化」している理由 経産官僚たちの思惑、岸田政権が進める「経済安全保障」 その「危うさ」を考える 監視社会に繋がらないか、なぜ「防衛庁のミサイル研究データ」は北朝鮮側に渡ったのか…元国家安全保障局長が解説する"流出経路" 委託先 再委託先の把握が不足していた)である。

先ずは、5月4日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの川邊 克朗氏による「いま「経済安全保障」が、驚くほど「バブル化」している理由 経産官僚たちの思惑」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/95001?imp=0
・『経済安保バブル  岸田内閣のもとで、経済安保政策が「バブル化」している。 岸田内閣が今国会で重要法案に掲げていた経済安全保障推進法案が4月7日、呆気なく衆院を通過してしまった。当初は「対決法案」と豪語し、立法に反対していた立憲民主党をはじめとする野党の議員が、こぞって、ロシアのウクライナ侵攻であらわになった「戦争リアリティ」に及び腰になり、法案反対どころか賛成に回ったからである。 もとはと言えば、この経済安全保障政策、安倍晋三政権時代に、今井尚哉首相秘書官ら経済産業官僚が主導したものだった。今井秘書官ら経産官僚は、外交・安全保障政策の司令塔である国家安全保障局(NSS)のトップに警察庁出身の北村滋内閣情報官が就いたことを利用し、米国の「中国脅威論」を引き合いに、経済安保政策を持ち出したのだった。 そして「首相官邸支配」の雰囲気のなか、「力の省庁」である防衛省、警察庁までもが、「バスに乗り遅れるな」と、「経済安保」担当セクション創設モードに前のめりとなった。その省益、利権確保の主戦場となったのが、今年度予算である。そこでは、経済安保推進法成立より一足早く、900億円超の経済安保関連予算が積み上げられ、「バブル化」が明らかになった。 この間、安倍後継の菅義偉内閣から岸田内閣へ政権が移行した。それにともなって、安全保障政策の「メインストリーム」を自負する外務省が、秋葉剛男事務次官によるNSS局長ポストを奪還し、首相官邸から経産官僚の影響力が排除されると、「オルタナティブ」である「経済安保」熱も冷めるかに見えた。 ところが、「商工族のドン」として経産官僚の後ろ盾となってきた甘利明元TPP担当相が、岸田内閣誕生の論功行賞人事で、二階俊博幹事長に取って代わると、経済安全保障政策の法案化は一気に加速した。同時にそれは、「本当にこれが国家安全保障政策の一環である経済安保政策なのか」と疑いたくなるようなものへと変質していったのである。) 法案は、具体的には、(1)重要物資のサプライチェーン(供給網)強化、(2)基幹インフラの安全性確保、(3)先端技術の育成・支援、(4)特許非公開の仕組み、を目指すというものだが、法律の運用は、国会審議も経ずに、政府が後日「政令」「省令」などで決めるというもので、その数は138項目に及んでいる。 要は、「『安全保障政治』と呼ばれる、私人、私企業、特定の圧力団体の利益の、『国家安全保障』の衣をまとったカモフラージュ現象」(船橋洋一『経済安全保障論 地球経済時代のパワー・エコノミックス』東経選書)という代物である』、「経済安保バブル」とは興味深そうだ。「当初は「対決法案」と豪語し、立法に反対していた立憲民主党をはじめとする野党の議員が、こぞって、ロシアのウクライナ侵攻であらわになった「戦争リアリティ」に及び腰になり、法案反対どころか賛成に回った」、野党も情けない。「甘利明元TPP担当相が、岸田内閣誕生の論功行賞人事で、二階俊博幹事長に取って代わると、経済安全保障政策の法案化は一気に加速」、「甘利」氏にそんな政治力があったとは意外だ。
・『甘利氏の存在感  経済安保法制のウラには、甘利氏の影響力が見え隠れする。 じつは岸田政権の経済安保戦略は、自民党内で甘利氏が座長として主導した「新国際秩序創造戦略本部」がすでに準備してきたものである。法案自体も、同本部が2020年12月に行った「提言」を上書きしたものに他ならない。 そして今年1月の施政方針演説で、経済安保は「外交・安保」の枠組みではなく、「成長と分配の好循環」を謳った「新しい資本主義」構想の文脈の中で語られるだけであった。とりわけ、コロナ危機のなかで露呈した、あまりにも海外に依存した情報技術(IT)のサプライチェーン・リスクの大きさに、今や「産業のコメ」となった半導体問題が、国産半導体計画へのテコ入れや工場建設等として、経済安保を絡めた政策へ拡大解釈されていった。 振り返れば甘利氏は、昨年10月の衆院選小選挙区で落選(比例区復活)し、幹事長職は退いたものの、その影響力はつづいている。選挙後の同年11月の改造内閣には、先述の自民党「新国際秩序想像戦略本部」でそれぞれ幹事長、事務局長として甘利座長を支えた山際大志郎氏が経済再生担当相(再任)、小林鷹之氏が新設の経済安全保障相、兼科学技術政策・宇宙政策担当相を配置し、経済安保シフトが敷かれた。しかも甘利氏と岸田首相の蜜月はその後も続いており、甘利氏が依然経済安保の「陰の主役」であるという』、「岸田政権の経済安保戦略は、自民党内で甘利氏が座長として主導した「新国際秩序創造戦略本部」がすでに準備してきたものである。法案自体も、同本部が2020年12月に行った「提言」を上書きしたものに他ならない」、「甘利」氏に政治力があったというより、ヒマな時に準備してきたものが、実ったという面もあったようだ。ただ、「甘利氏と岸田首相の蜜月はその後も続いており、甘利氏が依然経済安保の「陰の主役」であるという」、なるほど。
・『経産官僚の動き  経産官僚の動きも注目に値する。 岸田首相官邸では、藤井敏彦内閣官房経済安保法制準備室室長が経済安保を差配するはずだった。しかし藤井氏は、国会への法案提出直前に、無届兼業と朝日新聞の女性記者との不倫問題などのスキャンダルで失脚した。藤井氏は、安倍首相秘書官だった今井氏らが、国家安全保障局に新たに立ち上げた経済班のリーダーとして、古巣の経産省の藤井氏を据え、官邸に経産省の新たな「拠点」とする野心があったようだ。 本来なら首相外交から安全保障政策まで取り仕切りたい外務官僚にとって、「経済安保バブル」は迷惑な話だったはずだが、こうした「失脚」騒動もあり、岸田首相が政務秘書官に抜擢した嶋田隆経産事務次官の前に目下のところ出番はなく、また安倍政権時代の「政高党低」から「政と党のバランス」へと是正され、さしあたっては事なきを得ているようだ。 しかし、今後そうしたバランスが崩れないとも限らない』、「本来なら首相外交から安全保障政策まで取り仕切りたい外務官僚にとって、「経済安保バブル」は迷惑な話だったはず」、さもありなんだ。
・『保守政治の伝統  そもそも経済安保と経産官僚・商工族議員の関係はどのようなものなのだろうか。 かつて戦後日本の経済的繁栄を支えてきた貿易・投資のルール(自由貿易)とパワーポリティクスが形成する国際秩序が崩壊過程に入り、日本が経済において最も深く相互依存している米国、中国の両国の構造的対立は、すでに一部では「冷戦(a cold war)」の局面に入ったとも言われる。 自国ファーストを打ち出し、「力による平和」を強行しようとしたトランプ前米大統領時代以降、日本もTPPを離脱した米国に歩み寄り、インド太平洋地域での中国進出を食い止めるために、日米の協力関係は、「経済」においても一歩踏み出していたのである。 先の自民党「提言」を待つまでもなく、平和的方法としての「国際協調」を後景に追いやり、国民への説明を後回しにして、米国に追随して「同盟国」「同志国」との連携に舵を切ったということのようだ。 そしてそれが、この国の保守政治が脈々と受け継いできた、政治の統治技術であり、その担い手が今回、「通商国家」再生に生き残りに賭ける経産官僚、新商工族議員の面々だったようだ』、「平和的方法としての「国際協調」を後景に追いやり、国民への説明を後回しにして、米国に追随して「同盟国」「同志国」との連携に舵を切ったということのようだ。 そしてそれが、この国の保守政治が脈々と受け継いできた、政治の統治技術であり、その担い手が今回、「通商国家」再生に生き残りに賭ける経産官僚、新商工族議員の面々だったようだ」、なるほど。
・『経産省の来歴  こうした経産官僚や新商工族議員の存在の背景には、長い歴史がある。 1960年代、経産省の前身である通商産業省は、敗戦国・日本を奇跡的な高度経済成長で復活させたとの世界的な評価を得た。1970年代には、二度にわたる石油危機で、霞が関における通産省の地盤地下が始まったが、原子力エネルギー、通信・放送、IT等の科学技術の分野に活路を見出してきた。 しかし、「失われた30年」による国内産業の空洞化と福島原発事故による「原発ムラ」崩壊などを受けて、「経産省解体論」が再燃していた。最近では「霞が関のすき間産業」とも揶揄される、教育、医療、交通・観光等のデジタル分野にも触手を伸ばす。 経産官僚、商工族議員たちの人脈も興味深い。 先述の藤井氏が無届で兼業をしていた「バイト先」である「不識塾」という勉強会は、経営幹部向けのリベラルアーツ研修が売りだった。主宰の中谷巌代表は、1990年代、大阪大や一橋大といった国立大学を拠点に、グローバル資本主義を唱え、時の政権の経済ブレーンとして構造改革路線を主導した。しかし2008年に新自由主義からの転向を表明、以後ビジネスとしての経済への志向を強め、私立の多摩大学では学長までも務めるという異色の経歴を持つ。) その多摩大学に2016年に設置された「ルール形成戦略研究所」という研究開発機構に、顧問やシニアフェロー、客員教授といった肩書きで招聘されていたのが、甘利氏であり、藤井氏であった。逆に、多摩大の同研究所からは、政府や自民党の会合にスタッフが動員され、一連の経済安保戦略つくりに参画しており、「政・官」と「学」の、人脈はお互い共鳴し合ってきた。 またやや余談めくが、同研究所は米国系コンサルタント企業のような色彩が強いと言われてきただけに、中国企業の排除を念頭に、日米間のこれまでの貿易摩擦や防衛装備調達をめぐる衝突などと同様、経済安保も、米国に日本市場を開放していくことに収斂するのではとの懸念が政府内から早くも出ている。ちなみに国家安全保障局で経済安保を先取りした北村氏も、局長辞職後はコンサルト業を起業している。 これらが、経済安保がバブル化している背景と言えるが、では、経済安保にはどのような危うさがあるのだろうか。【後編】「岸田政権が進める「経済安全保障」、その「危うさ」を考える」で詳しく見ていこう』、「中谷巌」氏が「学長」を務める「多摩大学」の「「ルール形成戦略研究所」という研究開発機構に、顧問やシニアフェロー、客員教授といった肩書きで招聘されていたのが、甘利氏であり、藤井氏であった」、【後編】を見てみよう。

次に、この続きを、5月4日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの川邊 克朗氏による「岸田政権が進める「経済安全保障」、その「危うさ」を考える 監視社会に繋がらないか」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/95003?imp=0
・『私が、「経済安全保障」に関心を持ったのは、TBSに入社して間もない1978年に、当時朝日新聞記者だった船橋洋一氏が米国ハーバード大学に提出した論文を基にした著作を読んでからのことであった。 1970年代に国際社会の経済相互依存が強まり、冷戦イデオロギーに代わるヘゲモニー論として注目を浴びた。2010年代になって、米中テクノ覇権戦争にともう知的財産の流出や、国家に退場を迫るグローバル資本主義の巨大IT企業によるデータ独占、さらにサイバー戦争時代の到来等々が話題となり、国家の安全保障も、外交・軍事から経済インテリジェンスへの路線転換が避けて通れなくなった。 日本も、安倍長期政権の下、「選択と集中」で経済成長路線の演出を担ってきた経産官僚が、経済安保戦略に新たな省益を夢想したのも「故なし」というわけではなかったのかもしれない』、「経済安全保障」には長年関心を持っていた「筆者」の見方を詳しく知りたいものだ。
・『保守政治の二つの潮流  戦後の保守政治には、経済成長を巡って、二つの流れがあったという。 「自由な市場経済の下での自助努力」を重んじ、「積極的成長」つまり「消費」の拡大を目指す系譜と、「計画性のある自立経済」を確立し、「安定成長」つまり「生産」を重んじるという系譜である。前者が、吉田茂-池田勇人のハト派の「宏池会」であり、後者が岸信介-福田赳夫のタカ派の「清和会」の流れであった(『評伝 福田赳夫 戦後日本の繁栄と安定を求めて』五百旗頭真編、岩波書店)。 しかし戦後80年にならんとする今、曖昧模糊とした「新しい資本主義」と言い出した宏池会の岸田と、アベノミクスという放漫な自由経済を信奉した清和会の安倍、両氏の立ち位置は完全に入れ替わってしまった。 これは、冷戦崩壊から「ポスト冷戦」後に至る過程で、「ハト派」と「タカ派」がボーダーレス化し、同時に経済面で中ソ等の共産主義国も資本主義体制に移行したため、国家運営の座標軸を見失ってしまったからだろう。この経済成長を巡る保守政治内での倒錯が、安全保障政治に「経済安保」が徘徊する余地を与えることになった』、「曖昧模糊とした「新しい資本主義」と言い出した宏池会の岸田と、アベノミクスという放漫な自由経済を信奉した清和会の安倍、両氏の立ち位置は完全に入れ替わってしまった。 これは、冷戦崩壊から「ポスト冷戦」後に至る過程で、「ハト派」と「タカ派」がボーダーレス化し、同時に経済面で中ソ等の共産主義国も資本主義体制に移行したため、国家運営の座標軸を見失ってしまったからだろう。この経済成長を巡る保守政治内での倒錯が、安全保障政治に「経済安保」が徘徊する余地を与えることになった」、「宏池会の岸田と、アベノミクスという放漫な自由経済を信奉した清和会の安倍、両氏の立ち位置は完全に入れ替わってしまった」、「この経済成長を巡る保守政治内での倒錯が、安全保障政治に「経済安保」が徘徊する余地を与えることになった」、大変、興味深い見解だ。
・『経済安保の危うさ  では、経済安保には、どのような危うさがあるのだろうか。 経産官僚による、一連の経済安保戦略の手段として、国際的なサプライチェーンに関する二つの概念が注目を浴びた。 その一つは、「戦略的不可欠性」である。 先端科学・技術を振興し、他国の追随を許さない産業分野を開拓し、政治的にも国際社会での優位性を打ち立てるというものだ。アカデミズムから民間企業まで、研究機関などを動員した国家システムの構築に主眼を置く。 しかしそれは、「軍産」とか「産学」とか、とかく批判を浴びてきたスキームに直結するものではなく、2004年の国立大学の独立法人化に続き、甘利氏が展開してきた大学資源や知的インフラの活用、大学ファンドなどによる付加価値を創造する「知識産業体」へのイノベーション構想をイメージしているようだ。 戦前、商工省の岸信介、椎名悦三郎ら「革新官僚」は、軍部と一線を画し、官民一体となって、中央集権的な指令型の経済計画を市場型に転換し、計画的な自由経済の創出という「満州国」モデルを打ち立てた。戦略的不可欠性には、そうしたモデルを彷彿とさせるものがあるが、岸氏らの成功体験も、本土帰国後は、図らずも軍部や翼賛政治家らによって軍国主義が貫徹した「国家総動員」体制へ組み込まれていった。 それだけに、政・官の、民への関与・統制は、研究を単なる軍事研究に転用するために動員システムに変質するおそれがある。現在の経済界の「寡黙な抵抗」も当然の成り行きと言えるだろう。 戦略のもう一つの柱が、「戦略的自律性」である。 日本の経済社会活動の維持に不可欠な基幹インフラの強靭化と、そのデータの保全によって、他国、とりわけ「安全保障上の懸念がある国」への過度の依存を排除するというものである。外には基礎科学研究・技術開発の情報漏洩を徹底して阻止し、内には研究者のみならず、研究環境にまで政府の徹底した監視システムを発動するというものだ』、「政・官の、民への関与・統制は、研究を単なる軍事研究に転用するために動員システムに変質するおそれがある。現在の経済界の「寡黙な抵抗」も当然の成り行きと言えるだろう」、確かに「経済界」は沈黙を守っているようだ。「内には研究者のみならず、研究環境にまで政府の徹底した監視システムを発動する」、恐ろしいことだ。
・『警察の権力拡大  こうした米国追随の流れのなか、「経済安保バブル」に素早い反応を見せたのが日本警察、とりわけその中核を担う外事警察である。大都市圏を抱える各警察本部は、専従班を発足させ、「オレオレ詐欺」防止キャンペーンや交通安全運動紛いに、民間企業や大学を対象に、先端技術の海外流出防止策や海外研究者らとの交際術などに関するコンサルティングを買って出ているのである。 1981年の商法改正のときのことが蘇る。この改正は、一部の暴力団が転身した総会屋への利益供与を禁止するというものだったが、汚職や企業犯罪の摘発だけでなく、予防という名目で企業個々への監視とその過程で、企業情報の組織的収集が可能となった。しかも今回の場合は、公安警察機能の拡大に道を開くことが可能になる。 「学問の自由」や「大学の自治」の名の下に、戦後一貫して聖域化されてきた「アカデミア」に警察が公然と足を踏み入れることも容易になりそうだ。その意味では、政府方針に異を唱える人文・社会科学系学者6人の会員任命が拒否された、安倍・菅内閣以来漂流を続けている「日本学術会議問題」は、その助走に過ぎなかったのかもしれない』、「公安警察機能の拡大に道を開くことが可能になる。 「学問の自由」や「大学の自治」の名の下に、戦後一貫して聖域化されてきた「アカデミア」に警察が公然と足を踏み入れることも容易になりそうだ」、「警察権力」にとっては、地位向上の好機のようだ。
・『「ココム」の再現?  冷戦構造の崩壊後の外事警察は、民族・宗教という新たなキー・プレイヤーの出現で、アルカイーダなどのイスラム過激派組織や北朝鮮に翻弄されるが、その後の米中の「経済スパイ戦争」時代を迎え、冷戦型の諜報手法に回帰しそうだ。 かつて外事警察は、共産圏への戦略物資・技術移転を禁止する、対共産圏輸出委員会(ココム)違反事件として、さまざまな主体を摘発してきた。今回は、当時の「共産圏」を「安全保障上懸念がある国」に言い換える、ということだろう。 またココムが毎年改定していた、規制対象となる「ココムリスト」も、所管が経産省から防衛省に移管されたとしても、その運用は外事警察の裁量に委ねられ、さらに特定秘密保護や共謀罪法といった新たな治安立法も駆使するとなると、政・官の民への強権化は必然である。 むしろ、時代が要請している「経済安全保障」は、サイバー・セキュリティが本筋である。技術革新により、サイバー・宇宙・電磁波等々、安全保障の戦域は拡大し、サイバー空間一つとってみても、国際犯罪組織や国家ぐるみのサイバー部隊によって、日本企業は狙い撃ちにされているのが実態である。しかもITインフラの破壊やデータ流出などの被害実態は不明と言うから、何をか況や。 折しもこの4月、警察庁はサイバー局を新設し、独自に広域捜査を行うFBI(連邦捜査局)方式の「サイバー隊」を発足させたが、能力不足は歪めない。 「経済安保バブル」は、中国による南シナ海や東シナ海での領土的膨張や、ロシアによるクリミア併合に始まる現在進行形のウクライナ侵略を受けて、「地政学」ブーム再来と軌を一にしている。第二次世界大戦後も、さまざまな国家間の戦闘は、朝鮮半島、東南アジア、中近東、アフリカ、中南米、中央アジアと、「戦場」を次々に移して、今振り出しのヨーロッパに戻ってきた。) そしてそこで可視化されたのは、「軍事力」「情報力」「外交力」の、安全保障の三つの要諦の現実である。日本はと言えば、うわべだけの「平和主義」といっときだけの「人道主義」に酔いしれている。かと思えば、トップリーダーたちは、無邪気に「核シェア」論や「敵基地先制攻撃」を振りかざし、“国防キッズ”は防衛費増額論を唱導する。 こうした「自衛隊活用論」という「軍事力」の前では、「経済安全保障」は陳腐であり、もはや経済安保バブルは弾けてしまっているのではと錯覚してしまう程である。そして次なる「戦場」が、北東アジアになるとすれば、“ハト派”の岸田首相の謳う「新時代リアリズム外交」は、「平和」にどこまで有効なのだろうか。 国家安全保障政策は、国民の安全と平和を守るために、戦争回避、そのための事前の策が全てである。何よりもまず「外交力」、自立した外交戦略の構想と、冷徹で強かな外交戦術の発想が緊喫の課題である。「平和のハト」は自分でつかむものである。それが、「ウクライナ」の歴史的教訓でもある』、「またココムが毎年改定していた、規制対象となる「ココムリスト」も、所管が経産省から防衛省に移管されたとしても、その運用は外事警察の裁量に委ねられ、さらに特定秘密保護や共謀罪法といった新たな治安立法も駆使するとなると、政・官の民への強権化は必然である」、「むしろ、時代が要請している「経済安全保障」は、サイバー・セキュリティが本筋である」、「この4月、警察庁はサイバー局を新設し、独自に広域捜査を行うFBI(連邦捜査局)方式の「サイバー隊」を発足させたが、能力不足は歪めない」、「トップリーダーたちは、無邪気に「核シェア」論や「敵基地先制攻撃」を振りかざし、“国防キッズ”は防衛費増額論を唱導する。 こうした「自衛隊活用論」という「軍事力」の前では、「経済安全保障」は陳腐であり、もはや経済安保バブルは弾けてしまっているのではと錯覚してしまう程である」、「国家安全保障政策は、国民の安全と平和を守るために、戦争回避、そのための事前の策が全てである。何よりもまず「外交力」、自立した外交戦略の構想と、冷徹で強かな外交戦術の発想が緊喫の課題である。「平和のハト」は自分でつかむものである。それが、「ウクライナ」の歴史的教訓でもある」、その通りだ。

第三に、5月31日付けPRESIDENT Onlineが掲載した前国家安全保障局長の北村 滋氏による「なぜ「防衛庁のミサイル研究データ」は北朝鮮側に渡ったのか…元国家安全保障局長が解説する"流出経路" 委託先、再委託先の把握が不足していた」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/57672
・『2005年、防衛庁(当時)から、ミサイルの研究データが北朝鮮側に流出していたことが判明した。なぜ流出してしまったのか。元国家安全保障局長の北村滋さんは「業務の委託先、再委託先をしっかり把握することが、経済安全保障上は極めて重要だ」と指摘する――。 ※本稿は、北村滋、大藪剛史(聞き手・構成)『経済安全保障 異形の大国、中国を直視せよ』(中央公論新社)の一部を再編集したものです』、興味深そうだ。なお、質疑応答形式でQは質問、Aは回答。
・『ミサイルの研究データが北朝鮮側に流出していた  Q:北朝鮮に絡む情報流出はあったのか。 A:2005年、防衛庁(現・防衛省)から、ミサイルの研究データが北朝鮮側に流出していたことが判明した。 防衛庁は当時、配備を予定していた「03式中距離地対空誘導弾システム」(中SAM)の研究をしていたが、このデータの一部が流出した。 Q:中SAMとは。 A:「地対空」は地上から発射し、対空、つまり空から近づいてくる相手戦闘機などを狙うミサイルのことだ。地対空を意味する英語Surface-to-Air Missileを略したのがSAM。「中」は中距離の略だ。中SAMは「ちゅうさむ」と読む。陸上自衛隊が保有するミサイルだ。 Q:どのような情報が流出したのか。 A:さきほど、「空から近づいてくる相手戦闘機などを狙う」と説明したが、敵が撃ち込んできた他の飛翔体を迎撃することも視野にあったのかもしれない。それに関する説明資料が流出していた。資料の表紙には「平成七年(1995年)四月二十日」と作成日が書かれていた。資料には、中SAMが対象を迎え撃つべき高度や距離、範囲などに関するデータが記載されていた。他国から攻撃された時に自衛隊がどう対処するかという手の内を北朝鮮にさらしてしまったことになる』、「中SAMが対象を迎え撃つべき高度や距離、範囲などに関するデータが記載」、「他国から攻撃された時に自衛隊がどう対処するかという手の内を北朝鮮にさらしてしまったことになる」、情けない限りだ。
・『委託先、再委託先の把握は経済安全保障において極めて重要  Q:どういう経路で流出したのか。 防衛庁は1993~95年、研究開発を三菱電機に委託した。三菱電機は研究に関する社内報告書の作成を三菱総合研究所に委託していた。三菱総研はさらに、「在日本朝鮮人総聯合会」(朝鮮総聯。「主体チュチェ思想」を指導的指針とする在日朝鮮人が組織する民族団体)の傘下団体「在日本朝鮮人科学技術協会」(科協)の幹部だった男性が社長を務める東京・豊島区のソフトウエア会社に、報告書作成関連業務の一部を委託していた。 別の事件が端緒だった。警視庁が2005年10月、薬事法違反容疑で男性の関係先としてこのソフトウエア会社を捜索したところ、資料が見つかった。防衛庁が三菱電機に委託していた中SAMの研究試作に関する報告書にある図表数点と同一だった。図表には、三菱総研のロゴが入っていた。自衛隊法上、機密レベルとしてはかなり高いものだった。 防衛庁は06年1月、情報流出の事実を発表した。男性の会社に業務の一部が委託されていたことは知らなかったという。委託先、再委託先をしっかり把握することが経済安全保障上は極めて重要だ』、「三菱総研」が北朝鮮系の朝鮮人が経営する「豊島区のソフトウエア会社に、報告書作成関連業務の一部を委託」、したことで漏洩したようだ。わざわざ北朝鮮系の朝鮮人が経営する会社に委託するとは信じ難い話だ。
・『設計図流出自体は立件できなかった  Q:設計図流出自体は立件できなかったのか。 A:できなかった。設計図そのものに機密度の高い事項が記載されていなかったからだ。今回の件に限らず、機密度が高い情報は書類に書かず、空白にしておくことが多い。情報保全のためだ。捜査上は、「機微な性能データまでは流出しなかった」という判断になってしまった。 このころは朝鮮総聯と、北朝鮮の金正日一族との関係が現在よりも緊密だった。北朝鮮の貨客船・万景峰マンギョンボン号がまだ定期的に新潟西港(新潟市)に入っていた時期だったから。私は警察庁外事課長の時、万景峰号が入ってくるのを新潟までよく見に行っていた。 その後、北朝鮮への制裁に基づいて、万景峰号は入港できなくなった。これで北朝鮮と朝鮮総聯との人、物資の行き来の大きなパイプが切断されたことになる。それに伴い、朝鮮総聯の北朝鮮本国における発言力も低下しているようだ。 私は内閣情報官だった16年から17年にかけて、北朝鮮が頻繁に弾道ミサイルを発射するという危機を経験した。深夜や未明に官邸に駆けつけるたびに、「流出した中SAMの情報が、日本に飛んでいるミサイルに役立ったのかも知れない」などと思ったものだ』、責任感溢れた感想だ。
・『核開発に使用できる測定機を輸出したミツトヨ事件  Q:2006年には、大手精密測定機器メーカー「ミツトヨ」(川崎市高津区)が、核兵器製造にも使用できる「三次元測定機」を海外に輸出していた事件もあった。 A:三次元測定機とは、文字通り、立体の物を三次元で測るものだ。測る物を測定機の台に置くと、高さ、幅などだけでなく、曲面や輪郭といった形状を測れる。 核開発のためにウランを濃縮するには遠心分離器という機械が必要になるが、これが高速回転できるかどうかを調べるため、円筒のゆがみなどを測定するのに三次元測定機は使われる。遠心分離器の保守管理には不可欠だ。計測誤差が小さいことが求められており、一定水準を上回る高性能の機種は輸出が規制されている。 警視庁は、2006年2月、外為法違反(無許可輸出)の疑いで、ミツトヨの本社や宇都宮市の工場などを捜索した。01年に三次元測定機と、測定機を作動させるソフトウエアを1セットずつ、経産大臣の許可を受けないで中国とタイにある日本企業の現地法人に輸出した疑いだった。現地にそれぞれ、測定機の操作方法を指導する技術者を派遣してもいた。外為法は、軍事転用可能な精密機器の無許可輸出だけでなく、技術指導も禁じている』、「日本企業の現地法人」からさらに輸出されたのだろうか。
・『「核の闇市場」を通じてリビアに運び込まれたようだ  警視庁は、06年8月、ミツトヨの社長、副会長、常務ら5人を外為法違反(無許可輸出)容疑で逮捕した。01年10月と11月、経産大臣の許可を受けないまま、測定機を1台ずつ、約470万円で、東京港からシンガポール経由でマレーシアのミツトヨ現地法人に輸出した疑いだった。うち1台は、国際原子力機関(IAEA)が03年12月~04年1月にリビアに核査察に入った際、核関連研究施設で発見されている。「核の闇市場」を通じて運び込まれたのだろう。 Q:測定機はどういう経緯でリビアに運び込まれたのか。 A:日本のミツトヨ↓シンガポールにあるミツトヨの現地法人↓マレーシアにあるミツトヨの現地法人↓マレーシアの精密機器メーカー「スコミ・プレシジョン・エンジニアリング」↓ドバイ↓リビア というルートだったようだ。 Q:スコミ社とは。 A:パキスタンの「核開発の父」と呼ばれたパキスタン人の核開発研究者アブドル・カディル・カーン博士が、側近に指示して設立した企業といわれる。カーン博士は、インド中部で生まれ、その後、パキスタンに移住した。欧州の核関連施設で働き、ウラン濃縮用の遠心分離器技術を盗み出したとされる人物だ。帰国後はパキスタンの核開発を中心的に担い、核実験を成功させた。「核の闇市場」と呼ばれる世界的なネットワークを作り、北朝鮮とイラン、リビアに核関連技術を提供した。イランと北朝鮮は獲得した技術を生かし、現在も核開発を進めている』、「うち1台は、国際原子力機関(IAEA)が03年12月~04年1月にリビアに核査察に入った際、核関連研究施設で発見されている」、他にもリビア以外で使われているのだろう。
・『ミツトヨの業績は90年代初めから悪化していた  ミツトヨの測定機がスコミ社に納品されたのは02年1月だった。スコミ社は当時、「リビアから発注を受けた」と説明していた。「測定機の操作方法はミツトヨの技術者に教わった」「その様子を撮影したビデオをスコミ社がリビアに持ち込み、リビア側に操作方法を教えた」とも認めていた。ミツトヨの測定機がリビアの核開発に役立っていたことを証明している。 スコミ社からドバイ、ドバイからリビアへの海上輸送に使われた貨物船は、イラン船籍だった。一連の動きに関わっている勢力が、イランにもいたのだろう。 Q:ミツトヨはイランと関係があるのか。 A:ミツトヨは、1989年から5年間にわたり、毎年1台ずつ、測定機などをイランに輸出していた。イランの軍事機関である革命防衛隊や国防軍需省、核開発関連企業が輸出の相手先だった。 Q:イランに輸出するきっかけは。 A:イラン出身で日本に帰化した男性が経営する東京都渋谷区の商社が輸出をミツトヨに提案していた。この商社は、対戦車ロケット砲の照準器に使われる目盛り板を埼玉県の光学機器メーカーがイランに無許可輸出した外為法違反事件で、00年1月に警視庁に捜索されている。イランが日本企業から軍事物資や精密機器類を調達する際の窓口だったのだろう。 そもそも、ミツトヨは、バブル崩壊のあおりを受けて90年代初めから、業績が急速に悪化していた。有望な輸出先を探していたのだろう』、「業績が急速に悪化」、していたのであれば、何とかしたくなるのだろう。
・『「このままでは何も輸出できなくなる。何とかしろ」  そうしたさ中、イランに輸出を続けていたミツトヨに転機が訪れる。 92年7月、ミツトヨは、イラン企業に三次元測定機を輸出しようと、当時の通商産業省(現・経済産業省)に届け出た。ところが、通産省は93年6月、測定機は核兵器製造にも使えるとの理由で、外為法に基づき、輸出を許可しなかった。92年末の外為法関連政令改正で、輸出規制対象製品が18種類から、精密測定機器を含む51種類に拡大されていた。93年以降、大量破壊兵器の開発疑惑の強いイラン、イラク、リビア、北朝鮮の「懸念国」4カ国への輸出で5万円以上の取引となるケースは、すべて通産大臣の許可が必要となった。 ミツトヨの経営幹部が93年ごろ、「このままでは何も輸出できなくなる。何とかしろ」と輸出管理の担当者に指示していたことが判明している。この輸出不許可が、無許可輸出を行うようになったきっかけかもしれない。 輸出先としてシンガポールの現地法人を選んだのは、規制を逃れる迂回うかい戦術だったのだろう。ミツトヨがシンガポールの現地法人への輸出を急増させたのは、イランへの輸出規制が強まった後の95年以降だ。それまで年間20台程度だった精密機器類の輸出は、年間約200台のペースになっていった。海外の現地法人などを経由することで、懸念国への直接輸出を避ける狙いがあったのだろう』、「ミツトヨの経営幹部が93年ごろ、「このままでは何も輸出できなくなる。何とかしろ」と輸出管理の担当者に指示していたことが判明している。この輸出不許可が、無許可輸出を行うようになったきっかけかもしれない」、「何とかしろ」、とは強烈な命令だ。
・『性能を低く見せかけて輸出していた  Q:どうやって、輸出規制をかいくぐっていたのか。 A:三次元測定機の性能を低く見せかけて輸出していた。性能を示す数値を低く見せかける数値改竄ソフトを自社開発していた。実に悪質だ。逮捕された副会長や常務らが中心になって開発したようだ。改竄ソフトは、測定機が物体をどのくらい正確に計測できるかといった性能データを実際より低い数値で表示する仕組みだった。 イランなどへの輸出規制が厳しくなった後の、遅くとも94年ごろに開発されたようだ。ソフトは「COCOM」と名付けられていた。 Q:COCOMとはどういう意味か。 A:対共産圏輸出統制委員会の英語名、Coordinating Committee for Multilateral Strategic Export Controlsの略だ。ココムと読む。冷戦当時、共産圏の国々への軍事技術、戦略物資の輸出を規制していた組織だ。日本も加わっていた。ミツトヨとしては、「自由な輸出を阻んできたCOCOMのようなものを打ち破りたい」という思いがあったのかもしれない。 このソフトを使った不正輸出が始まったのは95年ごろからのようだ。測定機を輸出する時にこのソフトを使い、数値を実際よりも低く見せかける偽装(スペックダウン)が恒常的に行われていた。輸出後にソフトをもう一度入れると、数値が元に戻る仕掛けだった。 当時の捜査で、ソフトの入ったCD-ROMが約1000枚押収されたのは忘れられない。測定機を約1000台、不正輸出していたということを意味するからだ』、「性能を示す数値を低く見せかける数値改竄ソフトを自社開発していた。実に悪質だ。逮捕された副会長や常務らが中心になって開発したようだ」、ここまでやるとは極めて悪質だ。
・『効率的に審査をする制度が「抜け道」として悪用された  逮捕容疑となった2001年10月と11月の不正輸出でも、輸出直前の書類には、計測誤差が実際より大きいように書き換えられていた。製造直後の完成検査では、輸出規制に触れる数値になっていたにもかかわらず、だ。 Q:ミツトヨ社内の輸出管理体制はどうだったのか。 A:逮捕された社長は、社内のチェック機関である「輸出管理審査委員会」の最高責任者を務めていたが、他の容疑者らによる不正輸出を黙認していたようだ。ミツトヨの関係者は「社内に輸出管理規定はあるが、管理体制は甘い。ほとんどチェックできていない」と話していた。 しかも、ミツトヨは1996年2月、通産大臣から、輸出にあたって輸出審査を個別に受けなくても済む「包括許可」を受けていた。包括許可は、 ・輸出する製品の性能が比較的低い ・輸出先が、大量破壊兵器を開発する「懸念国」ではない ことなどを条件に、個別の輸出許可審査を省く制度だ。許可を更新するまでの3年間は事実上、無審査となる。 外為法違反(無許可輸出)の疑いで警視庁の捜索を受けたことで、2006年6月には許可を取り消されたが、効率的に審査を進める国の制度が、抜け道として悪用されていたわけだ。 IAEAがリビアでの査察で、三次元測定機を見つけなかったら、無許可輸出が明らかにならなかった可能性もある』、「1996年2月、通産大臣から、輸出にあたって輸出審査を個別に受けなくても済む「包括許可」を受けていた」、「外為法違反(無許可輸出)の疑いで警視庁の捜索を受けたことで、2006年6月には許可を取り消されたが、効率的に審査を進める国の制度が、抜け道として悪用されていたわけだ」、「IAEAがリビアでの査察で、三次元測定機を見つけなかったら、無許可輸出が明らかにならなかった可能性もある」、「ミツトヨ」にとっては、ついてなかったことになるが、違法輸出が続いていたとすれば、それは由々しい大問題だったことになる。やはり見つけてくれた「IAEA」に感謝すべきだろう。
タグ:「性能を示す数値を低く見せかける数値改竄ソフトを自社開発していた。実に悪質だ。逮捕された副会長や常務らが中心になって開発したようだ」、ここまでやるとは極めて悪質だ。 (その12)(いま「経済安全保障」が 驚くほど「バブル化」している理由 経産官僚たちの思惑、岸田政権が進める「経済安全保障」 その「危うさ」を考える 監視社会に繋がらないか、なぜ「防衛庁のミサイル研究データ」は北朝鮮側に渡ったのか…元国家安全保障局長が解説する"流出経路" 委託先 再委託先の把握が不足していた) 現代ビジネス 安全保障 「ミツトヨの経営幹部が93年ごろ、「このままでは何も輸出できなくなる。何とかしろ」と輸出管理の担当者に指示していたことが判明している。この輸出不許可が、無許可輸出を行うようになったきっかけかもしれない」、「何とかしろ」、とは強烈な命令だ。 「日本企業の現地法人」からさらに輸出されたのだろうか。 「曖昧模糊とした「新しい資本主義」と言い出した宏池会の岸田と、アベノミクスという放漫な自由経済を信奉した清和会の安倍、両氏の立ち位置は完全に入れ替わってしまった。 これは、冷戦崩壊から「ポスト冷戦」後に至る過程で、「ハト派」と「タカ派」がボーダーレス化し、同時に経済面で中ソ等の共産主義国も資本主義体制に移行したため、国家運営の座標軸を見失ってしまったからだろう。この経済成長を巡る保守政治内での倒錯が、安全保障政治に「経済安保」が徘徊する余地を与えることになった」、「宏池会の岸田と、アベノミクスという放漫な 「経済安全保障」には長年関心を持っていた「筆者」の見方を詳しく知りたいものだ。 「1996年2月、通産大臣から、輸出にあたって輸出審査を個別に受けなくても済む「包括許可」を受けていた」、「外為法違反(無許可輸出)の疑いで警視庁の捜索を受けたことで、2006年6月には許可を取り消されたが、効率的に審査を進める国の制度が、抜け道として悪用されていたわけだ」、「IAEAがリビアでの査察で、三次元測定機を見つけなかったら、無許可輸出が明らかにならなかった可能性もある」、「ミツトヨ」にとっては、ついてなかったことになるが、違法輸出が続いていたとすれば、それは由々しい大問題だったことになる。やは 「国家安全保障政策は、国民の安全と平和を守るために、戦争回避、そのための事前の策が全てである。何よりもまず「外交力」、自立した外交戦略の構想と、冷徹で強かな外交戦術の発想が緊喫の課題である。「平和のハト」は自分でつかむものである。それが、「ウクライナ」の歴史的教訓でもある」、その通りだ。 「業績が急速に悪化」、していたのであれば、何とかしたくなるのだろう。 「うち1台は、国際原子力機関(IAEA)が03年12月~04年1月にリビアに核査察に入った際、核関連研究施設で発見されている」、他にもリビア以外で使われているのだろう。 責任感溢れた感想だ。 『経済安全保障 異形の大国、中国を直視せよ』(中央公論新社) PRESIDENT ONLINE 「またココムが毎年改定していた、規制対象となる「ココムリスト」も、所管が経産省から防衛省に移管されたとしても、その運用は外事警察の裁量に委ねられ、さらに特定秘密保護や共謀罪法といった新たな治安立法も駆使するとなると、政・官の民への強権化は必然である」、「むしろ、時代が要請している「経済安全保障」は、サイバー・セキュリティが本筋である」、「この4月、警察庁はサイバー局を新設し、独自に広域捜査を行うFBI(連邦捜査局)方式の「サイバー隊」を発足させたが、能力不足は歪めない」、「トップリーダーたちは、無邪気に「 「公安警察機能の拡大に道を開くことが可能になる。 「学問の自由」や「大学の自治」の名の下に、戦後一貫して聖域化されてきた「アカデミア」に警察が公然と足を踏み入れることも容易になりそうだ」、「警察権力」にとっては、地位向上の好機のようだ。 「政・官の、民への関与・統制は、研究を単なる軍事研究に転用するために動員システムに変質するおそれがある。現在の経済界の「寡黙な抵抗」も当然の成り行きと言えるだろう」、確かに「経済界」は沈黙を守っているようだ。「内には研究者のみならず、研究環境にまで政府の徹底した監視システムを発動する」、恐ろしいことだ。 川邊 克朗氏による「岸田政権が進める「経済安全保障」、その「危うさ」を考える 監視社会に繋がらないか」 「中谷巌」氏が「学長」を務める「多摩大学」の「「ルール形成戦略研究所」という研究開発機構に、顧問やシニアフェロー、客員教授といった肩書きで招聘されていたのが、甘利氏であり、藤井氏であった」、【後編】を見てみよう。 「平和的方法としての「国際協調」を後景に追いやり、国民への説明を後回しにして、米国に追随して「同盟国」「同志国」との連携に舵を切ったということのようだ。 そしてそれが、この国の保守政治が脈々と受け継いできた、政治の統治技術であり、その担い手が今回、「通商国家」再生に生き残りに賭ける経産官僚、新商工族議員の面々だったようだ」、なるほど。 「本来なら首相外交から安全保障政策まで取り仕切りたい外務官僚にとって、「経済安保バブル」は迷惑な話だったはず」、さもありなんだ。 「岸田政権の経済安保戦略は、自民党内で甘利氏が座長として主導した「新国際秩序創造戦略本部」がすでに準備してきたものである。法案自体も、同本部が2020年12月に行った「提言」を上書きしたものに他ならない」、「甘利」氏に政治力があったというより、ヒマな時に準備してきたものが、実ったという面もあったようだ。ただ、「甘利氏と岸田首相の蜜月はその後も続いており、甘利氏が依然経済安保の「陰の主役」であるという」、なるほど。 「経済安保バブル」とは興味深そうだ。「当初は「対決法案」と豪語し、立法に反対していた立憲民主党をはじめとする野党の議員が、こぞって、ロシアのウクライナ侵攻であらわになった「戦争リアリティ」に及び腰になり、法案反対どころか賛成に回った」、野党も情けない。「甘利明元TPP担当相が、岸田内閣誕生の論功行賞人事で、二階俊博幹事長に取って代わると、経済安全保障政策の法案化は一気に加速」、「甘利」氏にそんな政治力があったとは意外だ。 川邊 克朗氏による「いま「経済安全保障」が、驚くほど「バブル化」している理由 経産官僚たちの思惑」 「三菱総研」が北朝鮮系の朝鮮人が経営する「豊島区のソフトウエア会社に、報告書作成関連業務の一部を委託」、したことで漏洩したようだ。わざわざ北朝鮮系の朝鮮人が経営する会社に委託するとは信じ難い話だ。 北村 滋氏による「なぜ「防衛庁のミサイル研究データ」は北朝鮮側に渡ったのか…元国家安全保障局長が解説する"流出経路" 委託先、再委託先の把握が不足していた」 「中SAMが対象を迎え撃つべき高度や距離、範囲などに関するデータが記載」、「他国から攻撃された時に自衛隊がどう対処するかという手の内を北朝鮮にさらしてしまったことになる」、情けない限りだ。
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中国経済(その16)(中国で「住宅ローン支払い拒否宣言」続出の理由 救済が待たれる事情とは、中国で「不動産バブル崩壊・失業」が深刻化 習近平政権は正念場に、中国の高度経済成長 予想より早く終わる可能性 成長を押し下げる中長期的構造要因と日本企業の対応策) [世界経済]

中国経済については、7月10日に取上げた。今日は、(その16)(中国で「住宅ローン支払い拒否宣言」続出の理由 救済が待たれる事情とは、中国で「不動産バブル崩壊・失業」が深刻化 習近平政権は正念場に、中国の高度経済成長 予想より早く終わる可能性 成長を押し下げる中長期的構造要因と日本企業の対応策)である。

先ずは、7月29日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したフリーランスライターのふるまいよしこ氏による「中国で「住宅ローン支払い拒否宣言」続出の理由、救済が待たれる事情とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/307181
・『中国各地で、建設途中のマンションで工事が止まったまま放置されるという事態が起きている。全国に300以上あるという未完成マンションの中でも多いのが、経営危機に陥った恒大グループが関わっている開発案件だという。できる見込みがないマンションでもローンは払わねばならず、補償もされないため、中には「不払い宣言」をする人も……中国の不動産界隈で何が起こっているのか』、「中国の不動産」事情に疎い我々にとっては興味深そうだ。
・『中国で300以上のマンションが、未完成のまま放置されている  中国で「爛尾楼」(らんびろう)騒ぎが拡大中だ。 「爛尾」とは「尾っぽ部分がずさん」という意味で、「爛尾楼」は「尻切れトンボ状態になった不動産」を指す。つまり、建設途中に開発業者の資金がショートしてしまい、未完成のまま放置されているマンションのことだ。そんな爛尾楼が、中国各地ですでに300以上あることが分かっている。 近年、中国政府も過熱が続く不動産ブームを抑制すべく、2軒目、3軒目購入には頭金を引き上げたり、銀行ローンに規制をかけたりしてきた。だが、それでもやすやすとそのハードルを超えたり、さらには住宅購入のためにわざわざ離婚手続きまでとって(元)家族が別々に不動産を購入したりするなど、文字通りの「上には政策、下には対策」※が展開されてきた。 ※「上有政策、下有対策」。中国のことわざで、政府がいかに政策を施行しても、庶民は何らかの対策を編み出して政策を骨抜きにする、という意味。 しかし同じタイミングでコロナ対策による都市封鎖や行動規制が繰り返されて、消費意欲が激減してしまった。慌てた政府は今年に入って積極的に不動産開発用地の競売を進めているが、当の不動産開発業者がここにきて青息吐息になっていることが報告されている』、「不動産開発業者がここにきて青息吐息になっている」、これではテコ入れは難しそうだ。
・『恒大グループの債務危機がきっかけに  香港の不動産王が中国市場から撤退するなどの動きから業界内では静かに「バブル崩壊」が長年語られ続けていたが、目に見える形で事態が人々の前に現れたのは、昨年一挙に噴き出した、不動産開発の大手「恒大グループ」の債務危機がきっかけだった。 恒大といえば、創設者でグループ会長の許家印氏は中国の富豪トップランキングの常連。ほんの数年前までは、国内の人気サッカークラブを所有し、一時はそのクラブとヨーロッパの名門サッカークラブ「レアル・マドリード」が提携するなど、本業以外にも派手なパフォーマンスで注目されていた。ところが昨年春からささやかれていた「恒大不安」が9月になって事実上のデフォルトへと発展、あっという間に大騒ぎになった。 現在「爛尾楼」物件としてリストアップされているマンションのうち、4分の1、あるいは3分の1が恒大グループの開発マンションという報道もある。こうした報道が引き起こした連鎖反応もさることながら、その他にもともと「あまり良いうわさのなかった開発業者」がコロナ対策期間中に資金崩れを起こしたのだ。 経済メディア「財新網」によると、分かっているだけで「爛尾楼」の総面積は2.31億平方メートル、今年上半期における全国住宅不動産市場の3.85%を占めている。さらにそんな「爛尾楼」関連のローン規模は0.9兆元(約18兆円)と、全国の金融機関ローン残高の1.7%に当たるとされる』、「「爛尾楼」の総面積は2.31億平方メートル、今年上半期における全国住宅不動産市場の3.85%を占めている」、比重が予想以上に大きいのには驚かされた。
・『被害者たちが「ローン不払い」宣言  爛尾楼の被害者たちはこれまでも、開発業者、銀行、地方政府に陳情を繰り返してきた。しかし何の進展もなく、逆に拘束されてしまうことも日常茶飯事だった。だが、とうとう不満を爆発させた江西省のマンション購入者たちがこの6月末に、「ローン不払い」声明を銀行や政府の不動産政策担当局に送りつけたことが報道されるや、またたくまに他の地区の爛尾楼被害者たちにも広がり、各地で「ローン不払い」宣言が行われた。 すると、それまで「爛尾楼」騒ぎに対して知らん顔をしてきた金融業界もにわかに慌て始め、それと同時に政府当局が対策に乗り出し始めたことで、やっと事態が注目を集めるようになったのだ』、腰の重い「金融業界」や「政府当局」を動かすには、「「ローン不払い」宣言」のようなショック療法も必要だったようだ。
・『原因は、中国ではおなじみの「住宅プレ販売」制度  爛尾楼騒ぎの根本的な原因は、中国ではすっかりおなじみの不動産販売手法になっている「住宅プレ販売制度」にある。開発業者は美麗なモデルルームと完成図で客を引き寄せ、まだ建設予定地は基礎工事も済んでいない状況から、熱心に販売を開始する。 一般的に、こうしたプレ販売でマンションを購入すると、現物購入(=完成後購入)よりも選択肢が広く、また希望の間取りや内装も簡単に実現でき、さらには10~20%安になるとうたわれているために、マイホーム、あるいは投機のための住宅購入を考える人たちは、さっさと頭金を払ってローンを組む。あとはローンを払いながら、1~2年後のマンションの完成を待つだけである。 開発業者はプレ販売に力を入れ、建物を建設する前にその売却金を先に手に入れることができる。手に入れた資金を元に次の建設予定地を買い付け、そこに建設するマンションの図面とモデルルームで再びプレ販売をし……という自転車操業が繰り返されてきた。 しかし、コロナがこの自転車のチェーンを叩き切った。社会的な不安や失業の懸念、収入の減少などから消費者の不動産購買欲が減退、大型消費を控え始めたことでプレ販売が進まず、予想された資金が開発業者に入らなくなり、そして資金がショートし、デフォルトを起こす。その結果、建設が止まった。 建設が止まっても、購入者は金融機関と交わした契約通り、でき上がるはずのマンションを夢見てローンを支払い続けなければならない。コロナの地区封鎖や強制隔離の影響で工事が遅れ、引き渡し時期がずれ込む程度ならまだ良いほうで、どう見ても現地の建設作業が止まっている場合、購入者たちは当然不安にかられる。開発業者に問い合わせてもらちが明かない、あるいはすでに開発業者と連絡が取れなくなっている……これが大規模な爛尾楼騒ぎへと発展した。 中にはもう、元の開発業者との対応を諦め、一方で自分の購入した物件・権利をどこか他の業者が買い取ったり、工事を続けたりしてくれないか探し求めるケースもあるという。もっと悲惨なのは、自分が購入した階や建物まで建設が進まないまま中断してしまったケースだ。毎月生活を切り詰めて契約通りにローンを支払い続けているのに、自分が買ったはずのマイホームは中空に浮いたまま……』、「プレ販売でマンションを購入すると、現物購入(=完成後購入)よりも選択肢が広く、また希望の間取りや内装も簡単に実現でき、さらには10~20%安になるとうたわれているために、マイホーム、あるいは投機のための住宅購入を考える人たちは、さっさと頭金を払ってローンを組む。あとはローンを払いながら、1~2年後のマンションの完成を待つだけである。 開発業者はプレ販売に力を入れ、建物を建設する前にその売却金を先に手に入れることができる」、「コロナがこの自転車のチェーンを叩き切った。社会的な不安や失業の懸念、収入の減少などから消費者の不動産購買欲が減退、大型消費を控え始めたことでプレ販売が進まず、予想された資金が開発業者に入らなくなり、そして資金がショートし、デフォルトを起こす。その結果、建設が止まった」、「建設が止まっても、購入者は金融機関と交わした契約通り、でき上がるはずのマンションを夢見てローンを支払い続けなければならない」、購入者保護の仕組みが殆どないリスキーな手法だ。
・『プレ販売制度は、都合のいい部分だけ香港から輸入された手法  こうしたプレ販売制度は本来、香港から導入されたシステムだったといわれる。だが、多くの報道が指摘するように、参考にされた香港の制度は「半分だけ」で、香港がかつての経験から培ったバックアップ体制の残り半分は中国には導入されなかった。 例えば、香港ではプレ販売で得た顧客側の支払いを、開発業者が直接、懐に入れることはできない。銀行と開発業者の間で信託基金が作られ、そこにプールされるのである。 もし業者が建設中に資金不足となれば、それをもとに銀行から融資を受けることができる。業者が不動産代金全額を手に入れられるのは、物件が完成し、正式な引き渡し完了が証明されたあと。開発業者は不動産建設の前にそれにふさわしい資金をもっていることが証明されなければ、香港政府が建設許可を出さない仕組みにもなっている。) また香港では開発業者は土地を手に入れた時点で、政府にその地代を全額一括で支払わなければならない。このため、中国のように土地の所在地である地方政府と使用権を得た開発業者が、「開発」を挟んで持ちつ持たれつの曖昧な関係を取ることはできない。 こうした爛尾楼防止策はすべて、中国への導入時には無視された。プレ販売した購入代金はそのままするりと開発業者の口座に入り、銀行は別途購入者と結んだローン契約に従って粛々とローンを回収するスタイルが一般化された。そのため、銀行側にも業者に対する責任感が非常に薄かった』、「こうした爛尾楼防止策はすべて、中国への導入時には無視された。プレ販売した購入代金はそのままするりと開発業者の口座に入り、銀行は別途購入者と結んだローン契約に従って粛々とローンを回収するスタイルが一般化された。そのため、銀行側にも業者に対する責任感が非常に薄かった」、香港の仕組みのうち、「ローン契約」者保護につながる部分が無視されて導入したとは、初めから欠陥のある制度だったようだ。
・『「ローン不払い」宣言には大きな危険が伴う  今回の「ローン不払い」運動は、そんな不良開発業者とローン提携を結んだことへの責任は銀行にあると突きつけたものだ。 だが、この「ローン不払い」を実行すると、購買者も大きな枷(かせ)を負う。というのも、今やデータによる「信用クレジット」が大きく生活に影響する中国で、「ローン踏み倒し」は間違いなくネガティブ評価になるからだ。そうなれば銀行業務以外にも、高速鉄道や飛行機のチケットすら買えなくなる恐れもある。 なぜそんな危険を冒してまで「ローンを踏み倒す」と宣言するのか? そこには、「生活を切り詰めて切り詰めて、やっと家を買ったと思ったら、それが爛尾楼だった。このままローン支払いで未来もない切り詰め生活を送り続けるのと、個人クレジットに黒がつくのとどっちが大変だと思う?」というギリギリの追い詰められた思いがあった』、「個人クレジットに黒が」ついてでも、「「ローン不払い」を実行」する覚悟でやっているようだ。
・『プレ販売に代わり、現物販売の導入が始まった  実は政府もこの爛尾楼問題にはとっくに気がついていたようだ。 というのも、すでに昨年あたりから各地方政府が、住宅用地競売参加条件に不動産開発業者に「現物販売」を義務付け始めていたことが、その後の報道から明らかになってきたからだ。 プレ販売に代わり最も早く「現物販売」が導入されたのは、中国最南端にある島まるごと新しく開発が進む海南省で、2020年3月から「新たに土地を取得して建設される商品不動産は現物販売制度とする」ことが不動産開発政策に明記されている。もちろん、現物とは水道、電気、ガス、通信設備がすべて揃った状態のことを指す。 だが、昨年4月に同様の義務付けを行った浙江省では、その数カ月後に不動産用地10地区の競売がすべて流札となったと大きく報道された。それでも、今後この方法は進められるはずで、北京市や杭州市などの住宅需要の高い大都市でも導入される予定だという。 そんなところに7月下旬、中国国務院(内閣に相当)が3000億元(約6兆円)を投じて政府肝いりの不動産基金を設立することを決めたと、ロイターがすっぱ抜いた。 記事によると、政府と中央銀行、そして中国建設銀行などの主要国有銀行がそれぞれ資金を出し合う形で約3000億元を集め、爛尾楼を買い取って完成させてから政府の賃貸住宅にするという。明らかに危機に瀕している主要不動産開発業者と銀行の共倒れ回避策だ。 しかし、この報道を読んで不安になった。そこにはマイホームの夢を見て、頭金を手渡し、ローンを支払い続けている人たちへの救済については触れられていない。またもや個人は見捨てられてしまうのか? 爛尾楼事件の今後が気がかりである』、「不動産基金」の行方、「爛尾楼事件」での「個人債務者」の動向を注視していきたい。

次に、8月2日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁 昭夫氏による「中国で「不動産バブル崩壊・失業」が深刻化、習近平政権は正念場に」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/307365
・『中国で不動産バブルの後始末が深刻化している。大手デベロッパーは資産売却を加速しているが、資産価格の下落スピードはそれを上回る。習近平政権は銀行に不動産業界向けの融資を増やすよう規制を緩めているが、相場底打ちの兆しが見えない。1~6月期の不動産開発投資は前年同期比5.4%減り、分譲住宅の売上高は同28.9%も減少した。懸念されるのが失業の増加だ。6月、中国の若年層(16~24歳)の調査失業率は19.30%に上昇、調査開始以来最高だった』、確かに「不動産バブルの後始末」は「深刻」なようだ。
・『深刻化する不動産バブル崩壊の後始末 企業業績が悪化、失業率は上昇する  中国経済が、かなり厳しい状況を迎えている。主因は不動産バブル崩壊だ。共産党政権の厳格な融資規制は、人々のリスク許容度を急低下させた。債務問題は悪化している。 加えて、ゼロコロナ政策は建設活動を停滞させている。他方、成長期待の高いIT先端企業の規制強化が先行き懸念をさらに高める。それらの結果として、若年層を中心に失業者が急増。ローンの返済を拒む住宅購入者も急増している。 地方政府の財政悪化も鮮明だ。債務返済の延期を銀行に求める地方政府まで、出現しはじめた。 中国の不動産バブルの後始末は拡大するだろう。今後、大手不動産デベロッパーの資金繰りはさらに行き詰まる可能性が高い。ゼロコロナ政策も続き、個人消費は減少基調で推移する。 他方、世界のインフレも深刻だ。中国企業のコストプッシュ圧力は一段と強まり、企業業績は悪化するだろう。生き残りをかけて多くの企業が雇用を削減せざるを得なくなり、若年層を中心に失業率は追加的に上昇するだろう。失業問題は、共産党政権にとって無視できない問題だ』、秋の共産党大会を控えて指導部もヒヤヒヤだろう。
・『長きにわたる不動産バブル膨張「三つのレッドライン」導入後の誤算  中国で不動産バブルの後始末が深刻化している。長い期間にわたって、中国では不動産バブルが膨張した。根底には、共産党の経済政策があった。 共産党指導部は地方政府に経済成長目標を課す。達成のために地方の共産党幹部は土地の利用権を中国恒大集団(エバーグランデ)などのデベロッパーに売却する。それは地方政府の主要財源となった。デベロッパーはマンションを建設する。建設活動の増加が、雇用を生み出し、建材の需要も増える。インフラ投資も加速する。 そうして地方政府はGDP成長率目標を達成し、幹部は出世を遂げた。中国全体で「党の指示に従えば豊かになれる」という価値観が形成され、「不動産価格は上昇し続ける」という神話が出来上がった。さらに、リーマンショック後は世界的なカネ余りが価格上昇を支えた。上がるから買う、買うから上がる、という根拠なき熱狂が不動産バブルを膨張させた。 しかし、いつまでも価格が上昇し続けることはない。2020年8月、共産党政権は「三つのレッドライン」を導入。金融機関は不動産デベロッパー向けの融資を減らし、デベロッパーは資産売却による資金捻出に追い込まれた。そうすることで共産党政権は経済全体での債務残高を削減し、資産価格の過熱を解消しようとした。 問題は、三つのレッドラインが想定以上の負の影響を経済に与えたことだ。急速な融資規制は神話を打ち壊し、不動産バブルは崩壊した。それ以降、売るから下がる、下がるから売るという負の連鎖が止まらない。  エバーグランデなどは資産売却を加速しているが、資産価格の下落スピードはそれを上回る。習近平政権は銀行に不動産業界向けの融資を増やすよう規制を緩めているが、相場底打ちの兆しが見えない。1~6月期の不動産開発投資は前年同期比5.4%減り、分譲住宅の売上高は同28.9%も減少した。不良債権問題が深刻化し始めている』、「習近平政権は銀行に不動産業界向けの融資を増やすよう規制を緩めているが、相場底打ちの兆しが見えない」、一旦、下落を始めたのを政策的にテコ入れしようとしても、上手くはいかないものだ。
・『企業・個人・地方政府に拡大する不良債権問題  不良債権問題を三つに分けて考えてみる。まず、企業に関して。エバーグランデなど大手のデフォルト(債務不履行)が相次いでいる。銀行セクターでは、ずさんなリスク管理の実態が浮上した。 河南省では41万人の銀行預金が凍結された。貸し倒れ、担保資産の価値急落によって、銀行の資金繰りが急激に悪化している。同省では3000人が参加して、預金の支払いを求めるデモが起きた。取り付け騒ぎだ。それを阻止しようとした当局との衝突も発生した。 中国の金融システムの現況は、わが国の1990年代中頃を想起させる。連鎖倒産が起き、不良債権は雪だるま式に増え、金融システムの不安定感が高まる一連の流れだ。 次に、個人(家計)について。住宅ローンの返済拒否が増加している。例えば江西省では、不動産デベロッパーが経営体力を失ったせいで、1年以上建設が止まったままのマンションがある。ゼロコロナ政策も拍車をかけて、建設現場に作業員が集まることすら難しい。一部の購入者は、10月までに工事が再開されない場合、翌月から返済を停止すると表明した。購入した住宅がいつ完成するのか、不安視する人が増えるのは当然だ。支払い拒否は、他の地域でも急増している。 最後に、地方政府の返済能力が低下している問題だ。一例として、貴州省政府は債務返済の先送りを金融機関に求め始めた。鉄道などインフラ事業の収益性は低く、土地利用権の売却収入も減っている。結果、同省政府は債務返済負担に耐えられなくなったようだ。 インフラ投資積み増しのために債権発行などを増やす地方政府が増えている。債権者に返済期間の延長、さらには一部債務減免(ヘアカット)を求める地方政府が急増する可能性が高まっている。 かくして、「灰色のサイ」と呼ばれる中国の債務問題は深刻化している』、「深刻」さは日本のバブル期の「債務問題」をはるかに上回るようだ。
・『失業問題の深刻化 貧富の格差拡大も避けられない  懸念されるのが失業の増加だ。6月、中国の若年層(16~24歳)の調査失業率は19.30%に上昇、調査開始以来最高だった。建国以来で見ても、新卒学生を取り巻く雇用環境は最悪だろう。中国人留学生の中には、帰国せず日本での就職を目指す者が多い。 今後、中国では銀行の貸しはがしや貸し渋りが増える。不動産をはじめ民間企業の資金繰りは切迫する。ウクライナ危機をきっかけに、世界全体でインフレも深刻だ。中国では生き残りをかけてリストラに踏み切る企業が増え、若年層を中心に失業率は上昇するだろう。となると、共産党政権に不満を持つ人が増える展開が予想される。 その展開を回避するために、習政権は高速鉄道などの公共事業を積み増すだろう。しかし、経済全体で資本効率性は低下基調にある。高速鉄道計画では、ほとんどの路線が赤字だ。追加のインフラ投資は、地方政府の借り入れ増を必要とする。結果として、経済対策は不良債権の温床になる。 強引なゼロコロナ政策の継続で、個人の消費や投資は減少せざるを得ない。他方、成長期待の高いIT先端企業の締め付けも強まる。8月からは改正版の独占禁止法が施行される。連鎖反応のように、中国全体で企業の業績は悪化するだろう。 逆に言えば、一時的な失業増を伴う構造改革の実行は容易ではない。今のところ、共産党政権は公的資金を注入し、エバーグランデなどを救済する姿勢も示していない。 中国では、追い込まれる企業・個人・地方政府が増える。その結果、資金流出が加速し、人民元の先安観は強まり、ドル建てをはじめ債務のデフォルトリスクは高まるはずだ。資産売却などリストラを強行せざるを得ない企業は、追加的に増えるだろう。 失業問題が深刻化することで、貧富の格差拡大も避けられない。中国は不動産バブル膨張によって、過剰な債務・雇用・生産能力が出現した。今後は、その整理が不可避だ』、何やら本当に深刻な調整局面が不可避のようだが、なるべく軽く済んでほしいものだ。

第三に、8月17日付けJBPressが掲載したキヤノングローバル戦略研究所 研究主幹の瀬口 清之氏による「中国の高度経済成長、予想より早く終わる可能性 成長を押し下げる中長期的構造要因と日本企業の対応策」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/71411
・『1.高度成長時代の終焉を迎えている可能性  1989年6月の天安門事件の後、一時的に国家による経済統制が強化され、中国経済の市場経済化、自由競争導入の動きに急ブレーキがかかった。 そのため、1989~90年の中国経済は厳しい景気停滞に陥った。 先行きの不透明感が強まっていた状況下、1992年1~2月に鄧小平氏が南巡講話を行い、市場経済化推進の大方針を示した。 その後、朱鎔基総理のリーダーシップの下、市場メカニズムを積極的に導入していく経済政策運営により、従来の計画経済に基づく非効率な経済体制を改革し、様々な構造問題を克服していった。 それ以来約30年間、中国経済は多くの困難に直面しながらも市場経済化の推進をバネに高度成長を力強く持続した。 2009年後半に中国のGDP(国内総生産)の規模は日本に追いつき、2021年には日本の3.5倍に達した。 2010年の実質成長率は10.6%。2桁成長はこの年が最後となった。2010年代の中国経済は1978年以降の40年以上にわたる高度成長時代の終盤局面である。 そして今、いよいよ高度成長時代の終焉を迎えようとしている。 実質GDP成長率の40年間余りの推移(図表1参照)を見れば、現在の中国経済が置かれている局面がよく分かる。 2010年代は1桁台後半で推移する安定的な成長率下降局面だった。 1978年の改革開放政策開始後、年間成長率が5%を下回ったのは天安門事件の1989年(4.2%)と翌年の90年(3.9%)しかなく、2020年(2.2%)はそれ以来初めての5%割れである。 そして今年も5%に届かず、4%程度の成長率となる見通しである。 広い意味で高度成長と言えるのは実質成長率が平均的に5%を上回る期間と考えれば、中国経済は2020年を境にすでに高度成長時代に終わりを告げた可能性がある。 もちろん、今後、中国の成長率が再び数年間5%以上を保つ可能性があることは否定できないが、その可能性は低いと考えられる。 ただし、この話は数字の問題であり、筆者が中国国内の経済専門家、企業経営者などとの意見交換を通じて得ていた印象では、多くの有識者の認識は、昨年までは高度成長の延長線上にあったと感じていたように思われる。 大半の経営者もこれまでの高度成長が続くことを前提に経済活動を行っていたように見える。 しかし、今年に入りその前提が崩れ始めたように感じられる。 まだ高度成長時代の終焉が確定したわけではないが、中国経済の局面が変化したと感じさせるいくつかの要因が生じている。以下ではその点について整理してみたい。 (図表1:実質GDP成長率(単位・前年比%)の推移はリンク先参照)』、興味深そうだ。
・『2.足許の成長率を低下させた短期的要因  高度成長期と安定成長期の一つの大きな違いは期待成長率の差である。 人々が常に5~10%の経済成長を実現できると信じていれば、それに合わせて生産、投資、雇用などの計画を立てる。 しかし、成長率が5%に達しないという期待が広く共有されれば、生産計画は縮小し、投資規模も抑制され、賃金上昇率も低下し、購買意欲も低下する。 こうして経済は安定成長期に入る。 2020年以降の成長率の低下の原因が、短期的な特殊要因であれば、その要因が解消するとともに、再び5%台の成長に戻る可能性が高い。 そうした観点から足許の経済下押し要因を見ると、短期的な特殊要因であると考えられるものが2つある。 1つ目は、ゼロコロナ政策の有効性低下と経済への悪影響のリスクの高まりである。 2020年の第1四半期にも武漢を中心に厳しいロックダウンが実施され、経済が急落したが、その直後から厳格なゼロコロナ政策の徹底により、中国経済は急回復した。この時、人々は武漢のロックダウンが終われば、中国経済は再び元に戻ると信じていた。 2022年入り、感染力が強く無症状患者の比率が高いオミクロン株の感染拡大により、ゼロコロナ政策の有効性が低下した。 それでも中央政府はゼロコロナ政策を堅持したため、上海市は長期のロックダウンを余儀なくされ、その影響で中国経済全体が深刻な停滞に陥った。 2つ目は、若年層の失業率の増大である。 全体の失業率は2022年4月に6.1%に上昇したが、6月には5.5%に低下した。しかし、16~24歳の若年層の失業率は6月に19.3%に達した。 これは、第1に今年の大学卒業者数が1076万人と昨年に比べて一気に167万人も増加したこと。 第2に大卒者に人気があるIT、教育、不動産など比較的賃金が高い産業が、昨年の政府の締め付け強化などの要因から業績が悪化し、リストラが続いていること。 第3に、経済の先行きに対する不透明感の強まりから、企業の採用姿勢が慎重化していることなどが影響した。 以上2つの経済下押し要因は、いずれも短期的な特殊要因であるため、コロナに対する有効な対策の導入や大卒者の雇用機会の確保が実現すれば、下押し圧力が弱まる可能性が高い。 ただし、これらが短期的要因であるにもかかわらず、こうした問題が再び繰り返されるのではないかという不安を抱く人々が増えているという話を聞くことが多い。 これは中国国民が高度成長時代には当然のように共有していた経済のレジリアンスに対する自信がやや後退していることを反映していると解釈することもできる』、「16~24歳の若年層の失業率は6月に19.3%に達した」のは、今年の大学卒業者数が1076万人と昨年に比べて一気に167万人も増加したこと」による部分もあるとはいえ、やはり深刻だ。
・『3.中国の成長率を押し下げる中長期要因  中国経済の局面が変化したと感じさせる要因の中には、短期的な特殊要因とは言えないものが含まれており、しかもそれぞれが相互に関係し合っている。具体的には以下のとおりである。 第1に少子高齢化の加速。 2022年1月、国家統計局は、2021年末の人口が14億1260万人で、前年同期比48万人増にとどまったと発表した(図表2参照)。 これを受けて、従来人口のピークは2028年と予想されていたが、2022年がピークとなる可能性が指摘されている。 経済活動への影響が大きい生産年齢人口(中国の定義では15歳以上60歳未満)は2011年の9億4072万人をピークに緩やかに減少し始めており、2020年代後半に減少が加速する見通しであることは従来から指摘されていた。 第2に都市化のスローダウン。 北京、上海、広州、深圳などの1級都市やそれに準ずる2級都市への人口集中は今後も続くが、3~4級都市の多くは人口流入による人口の増加が期待できなくなっている。 第3に大規模インフラ建設投資の減少。 特に中央政府が不良債権増大リスク抑制のために公共事業の審査基準を厳しくしていることが、この傾向を加速している。 第4に不動産市場停滞の長期化。 これは中央政府の不動産投機抑制策の強化が直接的要因である。 それに加えて、人口減少予想や都市化のスローダウン予想などが将来の不動産需要下押し要因として意識されていることも影響している。 不動産市場の停滞長期化は、財政面では、地方財政の財源難と中央政府の負担増大をもたらす。 金融面では、地方の中小金融機関の不良債権問題を引き起こし、破綻金融機関救済のための各種金融・財政負担が増大する。 (図表2:総人口(単位・万人)の推移はリンク先参照) 第5に米中対立の長期化。 中国マクロ経済への直接的な影響はそれほど大きくないが、経済人に与える心理的影響は無視できない。 第6に期待成長率の下方屈折。 上述の要因が合わさって将来の経済に対する期待を弱気化させ、それが企業経営者の投資姿勢の慎重化と消費者の購買意欲の低下を招く。 第7に以上の要因を背景に成長率が低下すれば、経営効率の低い国有企業の業績が悪化し、中央・地方政府による赤字補填が拡大し、財政負担の増大を招く。 これらの中長期的要因は従来2025年前後から表面化すると予想されていた。 しかし、新たな統計データの発表や政府の政策運営の影響などから表面化の時期が3年ほど早まったように感じられる』、ということは、「表面化」は2022年から始まったようだ。
・『4.中国経済の下支え要因  以上のマイナス要因しかなければ中国経済の成長率は今後急速な低下を余儀なくされるはずである。 しかし、次のような下支え要因も存在するため、成長率の低下はいくぶん緩やかなものに留まると考えられる。 第1に外資企業の対中投資拡大の持続。 中国国民の急速な所得水準の上昇とともに高付加価値製品の需要が拡大し、中国国内市場の魅力はますます増大しつつある。 加えて、内需の伸び鈍化を懸念する中国政府が、優良外資企業に対する誘致姿勢を一段と積極化し、手厚いサポートを提供することも外資企業の投資拡大にとって追い風となる。 このため、グローバル市場で高い競争力を持つ日米欧主要企業の大部分は中国市場での積極姿勢を変えない方針。 第2に中国企業の国際競争力の増大。 大学卒業者数の急速な増加により高学歴人材が大幅に増加しつつある。 こうした豊富な高学歴人材の支えを背景に、EV、リチウム電池、太陽光パネル、半導体、PC、スマートフォンなどの分野における中国企業の競争力が着実に向上してきている。 今後も中国企業が優位性を持つ産業分野の拡大が続くことが予想される。 第3にアジア域内の発展途上国との経済交流の増加。 中国はこれまで一帯一路政策を強力に推進し、周辺の発展途上国、特にアジア域内の連携を強化してきた。 今後、中長期にわたり、ASEAN(東南アジア諸国連合)およびインドの長期的な経済発展が続く見通しであることから、それらの国々と中国経済との相互連携は一段と深まり、水平分業などの協力関係がさらに拡大していくことが予想される。 第4に大規模な不良債権問題の回避。 中国は日本の不動産バブルの経験を深く研究し、リスク回避のための政策を積み重ねてきた。 その成果は1~2級都市の不動産市場における投機抑制策の成功といった形で表れている。 こうした状況から見て、日本の1990年代のようなバブル経済崩壊に伴う国家経済全体の長期停滞は回避できる可能性が高いと見られている。 以上の要因から見て、2020年代に中国の経済成長率の低下が続く局面においても、日本および世界の企業にとって中国市場の魅力が急速に低下する可能性は低いと考えられる。 日本企業としては、経済成長率低下を強調するメディア報道などに振り回されず、中国市場の分野別の市場ニーズの変化を冷静かつ詳細に把握し、的確なマーケティングと迅速な経営判断により中国市場での競争に勝ち残る努力が不可欠である。 中国市場での競争相手は、一段と技術力を高めてきている中国企業とグローバル市場で高い競争力を保持する欧米・韓国台湾の一流企業である。 その厳しい競争の中で生き残るためには、高い専門能力を備えた高学歴人材の育成と、グローバル市場での競争に大胆にチャレンジする人材を生み出すリーダーシップ教育が今後の日本企業の生き残りのカギとなる』、「日本の1990年代のようなバブル経済崩壊に伴う国家経済全体の長期停滞は回避できる可能性が高いと見られている」、というのは甘過ぎるようで、もっと厳しくみるべきだろう。「厳しい競争の中で生き残るためには、高い専門能力を備えた高学歴人材の育成と、グローバル市場での競争に大胆にチャレンジする人材を生み出すリーダーシップ教育が今後の日本企業の生き残りのカギとなる」、同感である。
タグ:「日本の1990年代のようなバブル経済崩壊に伴う国家経済全体の長期停滞は回避できる可能性が高いと見られている」、というのは甘過ぎるようで、もっと厳しくみるべきだろう。「厳しい競争の中で生き残るためには、高い専門能力を備えた高学歴人材の育成と、グローバル市場での競争に大胆にチャレンジする人材を生み出すリーダーシップ教育が今後の日本企業の生き残りのカギとなる」、同感である。 2.足許の成長率を低下させた短期的要因 1.高度成長時代の終焉を迎えている可能性 瀬口 清之氏による「中国の高度経済成長、予想より早く終わる可能性 成長を押し下げる中長期的構造要因と日本企業の対応策」 JBPRESS 「こうした爛尾楼防止策はすべて、中国への導入時には無視された。プレ販売した購入代金はそのままするりと開発業者の口座に入り、銀行は別途購入者と結んだローン契約に従って粛々とローンを回収するスタイルが一般化された。そのため、銀行側にも業者に対する責任感が非常に薄かった」、香港の仕組みのうち、「ローン契約」者保護につながる部分が無視されて導入したとは、初めから欠陥のある制度だったようだ。 「建設が止まっても、購入者は金融機関と交わした契約通り、でき上がるはずのマンションを夢見てローンを支払い続けなければならない」、購入者保護の仕組みが殆どないリスキーな手法だ。 「プレ販売でマンションを購入すると、現物購入(=完成後購入)よりも選択肢が広く、また希望の間取りや内装も簡単に実現でき、さらには10~20%安になるとうたわれているために、マイホーム、あるいは投機のための住宅購入を考える人たちは、さっさと頭金を払ってローンを組む。あとはローンを払いながら、1~2年後のマンションの完成を待つだけである。 開発業者はプレ販売に力を入れ、建物を建設する前にその売却金を先に手に入れることができる」、「コロナがこの自転車のチェーンを叩き切った。社会的な不安や失業の懸念、収入の減少な 確かに「不動産バブルの後始末」は「深刻」なようだ。 真壁 昭夫氏による「中国で「不動産バブル崩壊・失業」が深刻化、習近平政権は正念場に」 「不動産基金」の行方、「爛尾楼事件」での「個人債務者」の動向を注視していきたい。 「個人クレジットに黒が」ついてでも、「「ローン不払い」を実行」する覚悟でやっているようだ。 何やら本当に深刻な調整局面が不可避のようだが、なるべく軽く済んでほしいものだ。 腰の重い「金融業界」や「政府当局」を動かすには、「「ローン不払い」宣言」のようなショック療法も必要だったようだ。 「「爛尾楼」の総面積は2.31億平方メートル、今年上半期における全国住宅不動産市場の3.85%を占めている」、比重が予想以上に大きいのには驚かされた。 「不動産開発業者がここにきて青息吐息になっている」、これではテコ入れは難しそうだ。 「中国の不動産」事情に疎い我々にとっては興味深そうだ。 ふるまいよしこ氏による「中国で「住宅ローン支払い拒否宣言」続出の理由、救済が待たれる事情とは」 ダイヤモンド・オンライン 「深刻」さは日本のバブル期の「債務問題」をはるかに上回るようだ。 「習近平政権は銀行に不動産業界向けの融資を増やすよう規制を緩めているが、相場底打ちの兆しが見えない」、一旦、下落を始めたのを政策的にテコ入れしようとしても、上手くはいかないものだ。 秋の共産党大会を控えて指導部もヒヤヒヤだろう。 中国経済 ということは、「表面化」は2022年から始まったようだ。 「16~24歳の若年層の失業率は6月に19.3%に達した」のは、今年の大学卒業者数が1076万人と昨年に比べて一気に167万人も増加したこと」による部分もあるとはいえ、やはり深刻だ。 3.中国の成長率を押し下げる中長期要因 4.中国経済の下支え要因 (その16)(中国で「住宅ローン支払い拒否宣言」続出の理由 救済が待たれる事情とは、中国で「不動産バブル崩壊・失業」が深刻化 習近平政権は正念場に、中国の高度経済成長 予想より早く終わる可能性 成長を押し下げる中長期的構造要因と日本企業の対応策)
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株式・為替相場(その17)(異常な円安をすぐ止めるにはどうすればいいのか 日銀が投機筋に打ち勝つ有効な計画を教えよう、日経平均2万8000円に戻した株価の回復は「本物」か?) [金融]

株式・為替相場については、5月14日に取上げた。今日は、(その17)(異常な円安をすぐ止めるにはどうすればいいのか 日銀が投機筋に打ち勝つ有効な計画を教えよう、日経平均2万8000円に戻した株価の回復は「本物」か?)である。

先ずは、7月16日付け東洋経済オンラインが掲載した慶應義塾大学大学院准教授の小幡 績氏による「異常な円安をすぐ止めるにはどうすればいいのか 日銀が投機筋に打ち勝つ有効な計画を教えよう」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/604586
・『毎回同じことばかり書いていると言われそうだが、7月20~21日に行われる金融政策決定会合を前に、日本銀行の政策について総括したうえで、「最新の最重要アクションプラン(行動計画)」を提示したい。 以下の複数のプランの目的はいずれも日銀への信頼、金融政策への信頼性を維持することにある。また、敵は投機を繰り返すトレーダーであって、日銀ではない。 今回の決定会合は日銀が動くチャンスかもしれない。なぜなら、市場のトレーダーたちはアメリカの中央銀行の政策決定会合であるFOMC(連邦公開市場委員会、26~27日開催)における利上げ幅の予測の議論に掛かり切りで、日銀の政策変更を狙った投機的動きがないからである。政策変更が投機に屈したことにならない大チャンスだ』、今回の「決定会合」では「日銀」は全く動かなかったが、次回以降も動く可能性がある。
・『なぜ「連日指し値オペ」を即刻やめるべきなのか  早速、日銀が原則毎営業日行っている「連日指し値オペ」(日銀が国債の利回りを指定して、無制限に買い入れる措置)の出口戦略から提案したい。 超短期:「指し値オペ出口戦略」 目的:投機的トレーダーを追い払うため アクション1:連日指し値オペを即時中止する。今回の金融政策決定会合で行う。 解説:① 日銀は自ら宣言して市場に約束した手前、アクションは縛られている。したがって、投機トレーダーに完全に読まれている。というか、読む必要もない。そのアクションを利用して、むしろ絶好のターゲットとして、好きなときに好きなだけ揺さぶりをかけることができる。 ② 国債を先物で売る投機トレーダーは失うものがない。国債の値上がり(利回り低下)の可能性はほぼゼロで、金利の上昇を避けようとして日銀が動けば儲かる。 ③ 一方、日銀は追い込まれている。金融政策も、中央銀行の信頼性も背負っているから、自由度がない。さらに、物価高の主要要因の1つである円安の1つの原因である日銀が政治的に、かつほぼ全国民から責められている。異次元緩和に当初から反対してきた経済学者だけでなく、これまで支持してきたエコノミストまで日銀総批判に回っている。 ④ 連日指し値オペは、当初は少ない国債買い入れ量で効果を持つという狙いとメリットがあった。しかし、現在では逆になっており、連日指し値オペが狙われて、それに対抗するため、結果的に、国債購入量が急増している。したがって「コミットメント戦法」ではなく、むしろ不意打ち、読めない戦略をとるために、事前には明かさず、指し値オペと量的入札を併用し、しかも、指し値の水準も毎回戦略的に動かすべきである。 アクション2:国債の買い入れは、先物市場でも行えるようにする。株式ETF(上場投資信託)についても日経平均株価、TOPIX(東証株価指数)先物も買えるようにする。やはり今回の決定会合で決定するか、もしくは、検討されたことを議事要旨に書き込む。 解説:① 投機トレーダーは先物を多用するからだ。なぜかといえば、小額で大きく動かせるからである。そこへ、規模で圧倒的に大きい日銀が参入してくれば、先物市場も日銀に支配され、トレーダーたちの勝ち目はない。 ② 「日銀が先物市場に入ってくる可能性」だけで、十分投機トレーダーを撤退させることができる。彼らは、リスク小さく楽に儲ける、勝ち戦にしか参入しない小心者である。勝ち目がなければすぐに逃げる。 ③ 国債(株式も)の現物保有量を減らすことができる。少ない保有量で同じ金融緩和効果を持つので、先物利用はもともと望ましい。 アクション3:指し値オペと量による買い入れを併用し、かつ、10年もの利回り0.1%で指し値オペを行う。 目的:日銀側のアクションを読ませないように、多様な手段を持つ。かつ、利回りは絶対に低下しない、という投機トレーダーの予想を大きく外し、彼らにいったんポジション解消で撤退させる。 解説:① そもそも0.25%は変動幅の上限にすぎず、目標値でない。目標値は0%程度である。だから、0.1%指し値は極めて妥当、普通、むしろ本来の政策により整合的である。 ② ただし、いったん彼らを退却させたら直ちに次のアクションに移る』、「連日指し値オペは、当初は少ない国債買い入れ量で効果を持つという狙いとメリットがあった。しかし、現在では逆になっており、連日指し値オペが狙われて、それに対抗するため、結果的に、国債購入量が急増している。したがって「コミットメント戦法」ではなく、むしろ不意打ち、読めない戦略をとるために、事前には明かさず、指し値オペと量的入札を併用し、しかも、指し値の水準も毎回戦略的に動かすべきである」、「国債の買い入れは、先物市場でも行えるようにする」、「指し値オペと量による買い入れを併用し、かつ、10年もの利回り0.1%で指し値オペを行う」、現在の硬直的なやり方を柔軟にする上で有効そうだ。
・『指し値オペ出口戦略の「次」は?  短期1:イールドカーブコントロール(長短金利操作)出口戦略 目的:投機家との戦いの場を、最後まで徹底的に戦い抜ける土俵に移す アクション1:イールドカーブコントロールの目標を10年物から5年物に短期化する。 解説:① イールドカーブコントロールの修正は、効くとしても1度だけである。何度も小刻みに修正することは、日銀が投機トレーダーに負けたことを意味する。したがって、修正後はとことん戦える土俵にする必要がある。 ② 5年物か2年物か、など期間については、状況次第である。重要なのは、修正は最大1回まで。それ以上は負けだ。 ③ したがって、5年でも2年でも勝ちきれないのであれば、イールドカーブコントロールを修正せずに、即座に(今回の決定会合でもよい)終了してしまう手もある(その際はアクション2となる)。 ④ その場合は、傷が深くなる前に、さっさと戦いをやめることである。小を捨てて、本丸を守るということである。 ⑤ 本丸とは、日銀の金融政策への信頼の維持である。修正を繰り返し、ずるずると後退すれば、信頼を失うだけである。) 短期2:異常な円安の修正戦略 目的:円安を修正し、景気にプラスの影響を与えるため。なぜなら①円安は貿易赤字が巨大な現在、景気にマイナスである。②物価高は、日本においては、輸入コストの上昇が主な理由だ。つまり円安になれば、さらに輸入コストは上昇する。円安を解消すれば物価高は軽減される。 解説:① 為替は金融政策の目的ではない。つまり、為替相場にひずみを与えるような金融政策は望ましくない。為替相場は、経済、金融市場の妥当なバランスの上に決まるべきものである。 しかし、現在、為替市場に異常なひずみをもたらしているのは、日銀の連日指し値オペを手段としたイールドカーブコントロールである。日銀の金融政策が通常モードの金融緩和であれば、金融政策を為替市場のために変える必要はない。しかし、日銀の金融政策が金融市場の機能を殺し、異常な状態にしているために、異常な投機が起きている。それを止めることは、金融政策の役割である。 ② 要は、手段が歪んでいる金融政策を、金融緩和の効果は維持したまま、修正するだけのことであり、為替市場が金融政策の目的になるかどうか、というような哲学的、理論的、枠組み的話ではなく、ただのテクニカルな修正である。バグを取り払うのである。 ③ そして、円安修正は日本の景気にプラスである。貿易赤字は異常に膨らんでおり、経常収支まで一時赤字になり、今後は再び赤字になり継続しそうな勢いである。この状況では、輸出よりも輸入のほうが圧倒的に大きいのだから、円安になれば、赤字は拡大し景気にはマイナスである。エネルギーや食品への支出額の増加によって、それ以外への消費、投資額が減少する。つまり、貧しくなる。 ④ 物価高の要因は、エネルギー・食料品などの必需品の輸入コストの上昇、必需品の部品など(スマートフォンなどの製品も)の上昇だから、為替は直接に影響する。円安が修正されれば、輸入インフレの影響は大きく減る』、「イールドカーブコントロールの目標を10年物から5年物に短期化する。 解説:① イールドカーブコントロールの修正は、効くとしても1度だけである。何度も小刻みに修正することは、日銀が投機トレーダーに負けたことを意味する。したがって、修正後はとことん戦える土俵にする必要がある。 ② 5年物か2年物か、など期間については、状況次第である。重要なのは、修正は最大1回まで。それ以上は負けだ。 ③ したがって、5年でも2年でも勝ちきれないのであれば、イールドカーブコントロールを修正せずに、即座に(今回の決定会合でもよい)終了してしまう手もある」、「現在、為替市場に異常なひずみをもたらしているのは、日銀の連日指し値オペを手段としたイールドカーブコントロールである。日銀の金融政策が通常モードの金融緩和であれば、金融政策を為替市場のために変える必要はない。しかし、日銀の金融政策が金融市場の機能を殺し、異常な状態にしているために、異常な投機が起きている。それを止めることは、金融政策の役割である」、なるほど。
・『投機トレーダーを打ちのめすために団結せよ!  以上述べたことは、金融政策について、どんな立場をとろうとも、日本経済にプラスになるように行動しようと考えている人々であれば、議論の余地がなく、なんのデメリットもないはずだ。政治も国民も歓迎する。批判的な有識者、エコノミスト、経済学者も歓迎する。だから、即刻実行するべきである。 冒頭でも一部触れたが、大事なことは①金融引き締めではなく、緩和の継続であり、緩和の持続性、有効性を高めるために必須である。テクニカルな政策の修正にすぎない。②何よりも目的は日銀への信頼、金融政策への信頼性を維持することである。また、敵は投機トレーダーである。日銀ではないということだ。 有識者、メディアも日銀を攻撃するのをやめ、一致団結して、日銀と日銀の金融政策を支え、支持しよう。まずは、日本金融市場、日本経済、日本社会を混乱に陥れて、リスクなく儲けようとしている投機トレーダーを打ちのめそう。 そして、その後、異次元緩和の出口戦略については、喧々諤々議論しようではないか(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースや競馬について語るコーナーです。あらかじめご了承ください』、「まずは、日本金融市場、日本経済、日本社会を混乱に陥れて、リスクなく儲けようとしている投機トレーダーを打ちのめそう。 そして、その後、異次元緩和の出口戦略については、喧々諤々議論しようではないか」、同感である。

次に、8月10日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏による「日経平均2万8000円に戻した株価の回復は「本物」か?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/307880
・『米国をはじめとして世界中で利上げが続出し、新型コロナウイルス感染拡大「第7波」も重なる中、意外にも日経平均株価は堅調だ。ほぼ2万8000円まで戻したこの株価の回復は「本物」なのか考えてみよう』、「日経平均株価」のグラフは
https://finance.yahoo.co.jp/quote/998407.O/chart?styl=cndl&frm=dly&scl=stndrd&trm=1m&evnts=&ovrIndctr=sma%2Cmma%2Clma&addIndctr=
・『意外に堅調な株価 ほぼ2万8000円まで戻す  ロシアのウクライナ侵攻、新型コロナウイルスの流行「第7波」、安倍晋三元首相の非業の死など、経済的な悪材料に事欠かない中で、株価は意外に堅調だ。8月9日火曜日の日経平均株価は2万7999円(端数切捨)とほぼ2万8000円の水準にある。これは昨年末の2万8791円と大きく変わらず、ロシアのウクライナ侵攻の前日(2月23日)の2万6449円をかなり上回っている。 ロシアのウクライナ侵攻がエネルギーや食糧などのインフレにつながり、これを受けた米連邦準備制度理事会(FRB)の急激な金融引き締めを背景に、内外の株式市場は不調である――。そんなイメージをお持ちの方が多いのではないかと推測するのだが、現在の株価の推移は少々意外なのではないだろうか。 株価の回復は今後も続くと見ていいのだろうか』、どうだろうか。
・『日本の株価は米国の株価次第 「小国のマーケット」  長期的には「ズレ」が生じるとしても、日本の株価の動きは米国の株価と連動せざるを得ない。ここまで、世界株に占める日本株の割合が低下し、世界の大きな投資資金がグローバル投資への傾斜を強めてきた。そうした背景から、日本の株価は、日本国内の要因で独自に価格形成されるバブル時代のような「大国のマーケット」ではなくなった。今は、世界の主要マーケットである米国株と連動して上下する「小国のマーケット」となっている。 さて、米国の株式市場の状況を考えると、「下落相場はまだ終わっていない」と考えることが妥当ではなかろうか。 下図は、金融政策と景気の場合分けで株価の典型的な上下の循環パターンを図式化したものだ。 (図はリンク先参照) 左上の第2象限からスタートすると、景気はまだ良くないが金融緩和政策の影響が優勢で株価が上昇する「金融相場」の状況を想定している。その後、景気が回復して企業業績の改善が株価の上昇を牽引する「業績相場」(第1象限)、しかし景気が過熱してインフレが問題となり、強い金融引き締めが行われて株価が下落する「逆・金融相場」(第4象限)、不景気から企業業績が悪化することが株価の下落につながる「逆・業績相場(第3象限)」と株価と景気、金融政策、物価が循環するのが典型的なパターンとして想定できる。 「○○相場」の前に「逆」と付いている呼称は、「○○」が主導する「下げ相場」の意味で、わが国の株式投資の世界では、割合広く使われている言い回しだ。 周知の通り、米国のインフレは消費者物価指数(CPI)で9.1%(6月、前年同月比)、企業物価(卸売物価)で11.3%という、「FRBが焦る」状況となっている。先ほどの図の循環で考えると、普通なら円で循環するところが、右に大きく引っ張られた楕円になってしまったような状況だと考えられる』、「日本の株価は、日本国内の要因で独自に価格形成されるバブル時代のような「大国のマーケット」ではなくなった。今は、世界の主要マーケットである米国株と連動して上下する「小国のマーケット」となっている」、寂しい話だ。
・『原油価格に変化あり ウクライナ危機前の水準まで下落  ただ、物価の状況には少々変化が見られる。小麦などはすでにロシアのウクライナ侵攻前をかなり下回るところまで価格が下落していた。さらに、ここにきて原油相場も米国の原油指標WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で見て一時90ドル割れまで下落しており、侵攻直前の約92ドルを下回る場面もあった。 商品市場では景気後退を価格に織り込み始めたということでもあるし、ロシアに対する経済制裁が有効に機能しなくなっていることの表れでもあるだろう。従って、必ずしも喜べない状況だが、インフレに頭打ち感が出てくる可能性はある。 一方、エネルギーは欧州向けのガス供給量の操作を通じて、むしろロシア側の武器になっている。冬の需要期に向けてロシアが欧州向けのガス供給を絞って、エネルギー価格の上昇が再び起こる可能性は捨てきれない。現時点で「インフレの頭打ち」を決めつけるのは早計だろう。 米国のCPIではサービス価格の影響が大きいが、労働市場の逼迫を通じた賃金の上昇でサービス価格の上昇に歯止めが掛からなくなっている。先般発表された7月の雇用統計(非農業部門雇用者数)は52.8万人増と市場の予想を大きく上回り、失業率は前月の3.6%から3.5%に低下した。 FRBは物価と雇用の二つの目的を追う組織だが、雇用が堅調であることから物価抑制に集中しやすい状況になっている。 今や金融政策のさじ加減が分からなくなってしまったように見えるFRBが賃金の上昇に歯止めをかけるためには、景気を悪化させるところまで金利を引き上げる必要がある。しかも一般に雇用は景気に対する遅行指標なので、金融引き締めが物価抑制に効果を上げるところまでの道のりは長い。 先の図式でいうと、「逆・金融相場」の規模と期間は想定を上回る可能性がある。さらに、金融引き締めの終わりまでには「逆・業績相場」的な状況が現出することが予想される。 典型的な循環のパターンと要因から見ると「株価下落はもう終わった」と安心できる状況ではないようにみえる』、「典型的な循環のパターンと要因から見ると「株価下落はもう終わった」と安心できる状況ではないようにみえる」、その通りだろう。
・『「岸田リスク」の行方は? 金融所得課税、金融政策変更…  岸田文雄首相と株式市場は、これまで相性がいいとは言えない関係だった。これまで、金融所得課税の見直し(増税)や、自社株買いへの規制、日本銀行の金融政策見直しの可能性など幾つかのリスク要因を株式市場に提供した。そのうちの幾つかは小さいながら株価が急落する「岸田ショック」をもたらし、岸田首相が慌ててそれらを撤回する場面があった。 他方、話自体は言葉の印象ほど大きくなさそうだが、「資産所得倍増計画」を打ち出したことは、各種のNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)の拡充への期待を通じて、株式市場にフレンドリーな言動だった。 小さな問題から片付けると、金融所得課税の見直しは、自民党の税制調査会会長である宮沢洋一氏が最近のテレビ番組で「議論はしないといけない」と述べているように、「まだ死にきっていない」。従って、年末にかけての税制の議論の中で再登場して株価を下げるリスクが残っている。 投資のリスクを取って利益を得ることを処罰するがごとき悪しき増税であるし、政府が掲げる「貯蓄から投資へ」に逆行する施策でもある。そのため、実現はしないと思われるが、税の世界の住人たちの中では「いまだ諦めていない人たちがいる」ことは警戒しておきたい。 一方、「特大の岸田リスク」になり得るのは、岸田首相が来春の日銀正副総裁3人の交代人事に絡めて、日銀の金融緩和政策を大きく転換する可能性だ。これは、リフレ派が減った今年の政策委員会人事で既に示唆されていると見ることができる。また、「アベノミクス」の名の下に金融緩和政策を主導してきた安倍元首相が不在となったことの政治的影響もあって、大いに懸念されるところだ。 本日10日に行われるとされている内閣改造で、「悪い円安論者」であると同時にほぼ財務省の言いなりの鈴木俊一財務大臣が留任するようだと、一段と心配が増す(本稿執筆時点では「留任調整」の報道があった)。 9月27日に予定されている安倍元首相の国葬が終わってから日数を経て、追悼ムードが薄れてくる頃合いが株式市場的には心配だ。 円安で上場企業の業績は好調であり、上方修正含みだ。また、日本企業がいわば有利なハンディキャップをもらっている効果を上げている点で、日本の金融緩和継続がもたらしている円安は、日本国内での技術・設備・人材への投資の大きなチャンスを提供している』、「日銀の金融緩和政策を大きく転換する可能性」については、私個人は出口戦略に入るべきと考えるが、岸田政権はそこまで大胆な政策転換には踏み切れないとの見方が有力だ。
・『政策手段の見直し  例えば日銀の上場投資信託〈ETF〉買いはいい政策だとは思えない)は必要であるとしても、金融緩和の維持はまだしばらくの間必要だろう。岸田氏が功を焦って自分の政策を打ち出したがるリスク、あるいは緊縮財政や金融の引き締めを指向する官僚に担がれて利用されるリスクには注意が必要だ。 一方、資源価格の上昇が一服していることや、FRBの金融引き締めが続いて円安がキープされそうな状況は、日本の株価に対してはプラスのファクターだ』、なるほど。
・『個人投資家はどうしたらいいか? 株価下落を「楽しみにする」心構えを  前述の通り、株価の循環のパターンを考えると、「株価下落のリスクは遠のいた」とはまだ言えそうにない。 だが、一方では、FRBが金融引き締めを継続しそうだという株価下落リスクの主因となる状況は、多くの市場参加者の知るところでもある。従って、現在の株価にもある程度織り込まれていると考える必要もある。 内外の株式に投資している個人投資家は、「株価の下落に耐える準備をしながら」(自分にとって過大なリスクは早急に排除すべきだ、という程度の意味である)、「逆・金融相場」と「逆・業績相場」をやり過ごして、次の株価上昇を待つのが概ね上策だろう。 「持ち株をいったん売って、安く買い戻す」オペレーションは、想像する以上に難しく、機関投資家でも平均的にはうまくいかない。 精神的にタフでないとなかなかできないが、相場の循環パターンに「何周も付き合って長期投資する」のが投資の王道だ。利益が出たところで持ち株を売却すると、その時点で課税されることの不利も長期的にはばかにならない。 近年投資を始めて、つみたてNISAやiDeCoなどを開始した投資家は、今後来るかもしれない株価の下落局面を「むしろ楽しみにする」くらいの心境で積立投資を継続するのがいいだろう。 また、長期投資中心のオーソドックスな投資家も、意外に大きな株価の下げ局面が現れたときに追加投資する金策を想像しておくといい。「だいたい投資済みだが、まだ少し投資する余力がある」というくらいの状況は、多くの投資家にとって「適正なリスク量」に近いと想像する。 もちろん個人差はあるが、将来の稼ぎと支出の柔軟性を考えると、多くの人がイメージしている以上に自分のリスク負担能力は大きい。「株価下落の可能性」を説きながら言うのも気が引けるが、どっしり構えて投資を続けてほしい』、「どっしり構えて投資を続けてほしい」、言うは易く、行うは難しいが、それを目指していきたい。
タグ:「典型的な循環のパターンと要因から見ると「株価下落はもう終わった」と安心できる状況ではないようにみえる」、その通りだろう。 「日本の株価は、日本国内の要因で独自に価格形成されるバブル時代のような「大国のマーケット」ではなくなった。今は、世界の主要マーケットである米国株と連動して上下する「小国のマーケット」となっている」、寂しい話だ。 「日経平均株価」のグラフは https://finance.yahoo.co.jp/quote/998407.O/chart?styl=cndl&frm=dly&scl=stndrd&trm=1m&evnts=&ovrIndctr=sma%2Cmma%2Clma&addIndctr= 「どっしり構えて投資を続けてほしい」、言うは易く、行うは難しいが、それを目指していきたい。 「日銀の金融緩和政策を大きく転換する可能性」については、私個人は出口戦略に入るべきと考えるが、岸田政権はそこまで大胆な政策転換には踏み切れないとの見方が有力だ。 山崎 元氏による「日経平均2万8000円に戻した株価の回復は「本物」か?」 ダイヤモンド・オンライン 「まずは、日本金融市場、日本経済、日本社会を混乱に陥れて、リスクなく儲けようとしている投機トレーダーを打ちのめそう。 そして、その後、異次元緩和の出口戦略については、喧々諤々議論しようではないか」、同感である。 「イールドカーブコントロールの目標を10年物から5年物に短期化する。 解説:① イールドカーブコントロールの修正は、効くとしても1度だけである。何度も小刻みに修正することは、日銀が投機トレーダーに負けたことを意味する。したがって、修正後はとことん戦える土俵にする必要がある。 ② 5年物か2年物か、など期間については、状況次第である。重要なのは、修正は最大1回まで。それ以上は負けだ。 ③ したがって、5年でも2年でも勝ちきれないのであれば、イールドカーブコントロールを修正せずに、即座に(今回の決定会合でもよ 「連日指し値オペは、当初は少ない国債買い入れ量で効果を持つという狙いとメリットがあった。しかし、現在では逆になっており、連日指し値オペが狙われて、それに対抗するため、結果的に、国債購入量が急増している。したがって「コミットメント戦法」ではなく、むしろ不意打ち、読めない戦略をとるために、事前には明かさず、指し値オペと量的入札を併用し、しかも、指し値の水準も毎回戦略的に動かすべきである」、「国債の買い入れは、先物市場でも行えるようにする」、「指し値オペと量による買い入れを併用し、かつ、10年もの利回り0.1% 「連日指し値オペ」を即刻やめるべき 今回の「決定会合」では「日銀」は全く動かなかったが、次回以降も動く可能性がある。 「最新の最重要アクションプラン(行動計画)」 小幡 績氏による「異常な円安をすぐ止めるにはどうすればいいのか 日銀が投機筋に打ち勝つ有効な計画を教えよう」 東洋経済オンライン (その17)(異常な円安をすぐ止めるにはどうすればいいのか 日銀が投機筋に打ち勝つ有効な計画を教えよう、日経平均2万8000円に戻した株価の回復は「本物」か?) 株式・為替相場
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半導体産業(その8)(ASMLーゴミ捨て場に生まれた企業が世界の半導体製造を制覇した 技術力がニコン・キヤノンの躓きの石、日本の半導体が「凋落」を経て決断した新たな戦略 挽回 推進 布石の3ステップで巻き返せるか、世界のTSMCが触手 日本の圧倒的な「半導体技術」 日本企業がいなければインテルのCPUも動かない、サムスン電子とTSMCの決算比較で 半導体市況の変化の兆しが丸わかり) [イノベーション]

半導体産業については、2月8日に取上げた。今日は、(その8)(ASMLーゴミ捨て場に生まれた企業が世界の半導体製造を制覇した 技術力がニコン・キヤノンの躓きの石、日本の半導体が「凋落」を経て決断した新たな戦略 挽回 推進 布石の3ステップで巻き返せるか、世界のTSMCが触手 日本の圧倒的な「半導体技術」 日本企業がいなければインテルのCPUも動かない、サムスン電子とTSMCの決算比較で 半導体市況の変化の兆しが丸わかり)である。

先ずは、2月20日付け現代ビジネスが掲載した一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏による「ASMLーゴミ捨て場に生まれた企業が世界の半導体製造を制覇した 技術力がニコン・キヤノンの躓きの石」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/92525?imp=0
・『1990年代中頃まで、半導体露光装置で、キヤノンとニコンは世界を制覇した。しかし、その後、オランダのASMLがシェアを伸ばし、現在では、EUVと呼ばれる半導体製造装置の生産をほぼ独占している。日本のメーカーは、なぜASMLに負けたのか?』、「キヤノンとニコン」が「半導体露光装置」で完敗した要因とは興味深い。
・『ASMLとは何者?  オランダにASMLという会社がある。時価総額2642.2億ドル。これは、オランダの企業中でトップだ。オランダのトップ企業はフィリップスだと思っていた人にとっては驚きだ。「そんな会社、聞いたこともない」という人が多いだろう。 実際、ASMLは、歴史の長い企業ではない。生まれたのは1984年。フィリップスの1部門とASM Internationalが出資する合弁会社として設立された。フィリップスのゴミ捨て場の隣に建てたプレハブで、31人でスタートした。 しかし、いまの時価総額は、日本のトヨタ自動車2742.5億ドルとほぼ同じだ。世界第678位のフィリップス(293.5億ドル)の10倍近い。世界の時価総額ランキングで32位。29位のトヨタとほぼ並ぶ。 ASMLの2020年の売上は160億ドル(約1兆8000億円)、利益(EBIT)は46.3億ドルだ。トヨタの場合には、売上が2313.2 億ドル。利益(EBIT)は169.9億ドルだ。売上に対する利益の比率は、ASLMが遙かに高い。 しかも従業員数は28000人しかいない(2020年)。トヨタ自動車(37万人)の7.6%でしかない。 ASMLは、最先端の半導体製造装置を作っている。極小回路をシリコンウエハーに印刷する極端紫外線リソグラフィ(EUV)と呼ばれる装置だ。この技術は、 ASMLがほぼ独占している。 年間の製造台数は50台ほどだ(2020年度は31台。2021年は約40台、2022年は約55台の見通し)。1台あたりの平均価格が3億4000万ドル(約390億円)にもなる。大型旅客機が1機180億円程度と言われるので、その2機分ということになる。 主なクライアントは、インテル、サムスン、TSMCなどだ』、「1984年」、「フィリップスのゴミ捨て場の隣に建てたプレハブで、31人でスタートした」のが、いまや「時価総額は、日本のトヨタ自動車2742.5億ドルとほぼ同じだ。世界第678位のフィリップス(293.5億ドル)の10倍近い」、「利益(EBIT)は46.3億ドル」。「トヨタ」「169.9億ドル」、「従業員数は28000人」とトヨタ自動車(37万人)の7.6%」、凄い超優良企業だ。
・『かつてのニコン、キヤノンの優位をASMLが崩した  半導体露光装置は、もともとは、日本の得意分野だった。ニコンが1980年にはじめて国産化し、1990年にはシェアが世界一になった。 キヤノンも参入し、1995年ごろまで、ニコンとキヤノンで世界の70~75%のシェアを占めた。 ASMLの最初の製品は、やはり半導体露光装置だった。しかし、この時代、キヤノンやニコンは、ゴミ捨て場に誕生した会社のことなど、歯牙にも掛けなかっただろう。 しかし、ニコン・キヤノンのシェアは、90年代後半に低下していった。その半面で、1990年には10%にも満たなかったASMLのシェアは、1995年には14%にまで上昇、2000年には30%になった。 2010年頃には、ASMLのシェアが約8割、ニコンは約2割と逆転した。そして、キヤノンはEUV露光装置分野から撤退した。ニコンも、2010年代初頭に、EUV露光装置の開発から撤退した』、「日本の得意分野」が20年強で「撤退」を余儀なくされるとは情けない限りだ。
・『日本メーカーの自社主義がASMLの分業主義に負けた  ASMLとニコン、キヤノンの違いは何だったのか? それは、中核部品を外注するか、内製するかだ。 ASMLは中核部品を外注した。投影レンズと照明系はカールツァイスに、制御ステージはフィリップスに外注した。自社で担当しているのは、ソフトウェアだけだ。 製造機械なのに、なぜソフトウエアが必要なのか? 半導体露光装置は「史上最も精密な装置」と呼ばれるほど複雑な機械であり、安定したレンズ収差と高精度なレンズ制御が重要だ。装置として完成させるには、高度にシステム化されたソフトウエアが不可欠なのだ。 自動車の組み立てのように人間が手作業で作るのではなく、ロボットが作業するようなものだから、そのロボットを動かすためのソフトウェアが必要なのだと考えれば良いだろう。 それに対して、ニコンは、レンズはもちろんのこと、制御ステージ、ボディー、さらに、ソフトウェアまで自社で生産した。外部から調達したのは、光源だけだ。 このように、ほとんどを自前で作ったため、過去の仕組みにこだわるという問題が生じたと言われる。 また、レンズをどう活用して全体の性能を上げるかというよりは、どうやってレンズの性能を引き出すかが優先されるというような問題が発生したといわれる。 結局、日本型縦割り組織を反映して全てを自社で内製化しようとする考えが、負けたということだ』、「ASMLは中核部品を外注・・・自社で担当しているのは、ソフトウェアだけだ」、「ニコンは、レンズはもちろんのこと、制御ステージ、ボディー、さらに、ソフトウェアまで自社で生産した。外部から調達したのは、光源だけだ。 このように、ほとんどを自前で作ったため、過去の仕組みにこだわるという問題が生じた」、「結局、日本型縦割り組織を反映して全てを自社で内製化しようとする考えが、負けたということだ」、ここまで完敗する前に、軌道修正できなかったのだろうか。
・『核になる技術を持っていたことで躓いた  キヤノンもニコンも核になる技術、つまり「レンズ」を持っていた。それに対してASMLは、部品については、核になる技術を持っていない。レンズすらも外注しているのだ。他社が作っているものを、ただ寄せ集めているだけのようにさえ見える。 しかし、それにもかかわらず、売上の3割という利益を稼ぎ出すことができるのだ。このことは、ビジネスモデルに関する従来の考えに反するものだろう。 いままでは、企業は核になる技術を持っていなければならず、その価値を発揮できるようなビジネスモデルを開発することが重要だと言われてきた。しかし、ASMLは、このルールには当てはまらない。 部品について、ASMLは製造者ではなく購入者であったため、品質評価が客観的であったと言われる。 また、多くの技術を他社に依存する必要があったため、他社と信頼関係を築く必要があった。そして、顧客であるTSMCやサムスン、インテルなどと連携して、技術と知識が蓄積された。それが成功につながったと言われる。 それに対して、技術力が高いニコンは、他社と協業するという意識が低かった。それが開発スピードを低下させ、開発コスト負担増を招いたというのだ』、「企業は核になる技術を持っていなければならず、その価値を発揮できるようなビジネスモデルを開発することが重要」といった経営学の常識が覆された例だ。「ASML」は「多くの技術を他社に依存する必要があったため、他社と信頼関係を築く必要があった。そして、顧客であるTSMCやサムスン、インテルなどと連携して、技術と知識が蓄積された。それが成功につながった」、「技術力が高いニコンは、他社と協業するという意識が低かった。それが開発スピードを低下させ、開発コスト負担増を招いた」、やはり日本側には慢心もあったのではなかろうか。
・『ASMLの時価総額は、キヤノンの10倍、ニコンの60倍  現在のキヤノン、ニコンはどのような状態か? キヤノンは、時価総額が255.9億ドル、世界第759位だ。2007年には784 億ドルだったのだが、このように減少した。 ニコンは、時価総額が41.8億ドルで、 世界第 2593位だ。 2007年には126億ドルだった。 2007年には、ASMLの時価総額は126億ドル程度で、ニコンとほぼ同じ、キヤノンの6分の1だった。しかし、いまでは、キヤノンの10倍程度、ニコンの60倍程度になってしまったのだ。 こうした状態では、日本の賃金が上がらないのも、当然のことと言える』、この格差は「キヤノン、ニコンの従業員」によりもたらされたというよりも、経営者の怠慢によりもたらされたと見るべきだろう。
・『もしデジタルカメラを生産しなかったら  日本企業敗退の原因は、自社主義だけではない。 もう一つは、ビジネスモデル選択の誤りだ。つまり、カメラという消費財に注力したことだ。 もし、2000年代の初めに、キヤノンやニコンがデジタルカメラに注力するのでなく、半導体製造装置に注力していたら、世界は大きく変っていただろう。 2010年頃、日本では、円高などが6重苦になっているといわれた。そして、「ボリュームゾーン」を目指した戦略を展開すべきだと言われた。これは、勃興してくる新興国の中間層をターゲットに、安価な製品を大量に供給しようというものだ。ASMLとは正反対のビジネスモデルだ。 そして、日本ではこの方向が受入れられ、企業の経営者もそれを目指した。その結果が、いまの日本の惨状なのだ。 もちろん、将来がどうなるかは分からない。半導体の微細化をさらに進めるために、3次元の回路を作るということも考えられている。そうした技術が実用化された時に、はたしてASMLが生き残れるかどうかは、誰にも分からない。 日本企業が再逆転してほしいが、果たしてできるだろうか? 奇跡が起こることを祈る他はない』、「ビジネスモデル選択の誤り」は致命的だ。「「ボリュームゾーン」を目指した戦略を展開」、というのは、日本企業の得意技ではあるが、「カメラ」事業自体がそれほど収益性のあるものではない点で「選択の誤り」は明らかだ。

次に、6月23日付け東洋経済オンライン「日本の半導体が「凋落」を経て決断した新たな戦略 挽回、推進、布石の3ステップで巻き返せるか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/598732
・『自動車向けなど用途の拡大で活況を呈する半導体。その安定調達は経済安全保障に直結するとして国も本腰を入れて支援に乗り出している。 「量子コンピューターやAI(人工知能)を実装するために、次世代半導体の実用化に大胆にチャレンジしていかなければならない」。 5月13日、岸田文雄首相は次世代半導体の強化を話し合った車座会議の冒頭でこう述べた。アメリカからはIBMシニアバイスプレジデントのダリオ・ギル氏、国内からは理化学研究所理事長の五神真氏らを総理官邸に招き、1時間にわたって意見を交わした。 桁違いの計算性能を持つ量子コンピューターが2030年代に実用化されると、現在のコンピューターでは事実上不可能な、膨大な組み合わせの中から最適解を探す計算処理が可能になる。医薬品開発にかかる計算時間が劇的に短縮できるなど、非連続的な社会変革さえ起こるといわれる』、「岸田文雄首相」が「次世代半導体の強化を話し合った車座会議」で重要性を学んだことは意義深そうだ。
・『次世代半導体の重要性は岸田首相にも伝わった  「量子コンピューターは新しい社会インフラになる。社会実装に向けたレースはまだ始まっておらず、日本が存在感を発揮できる可能性がある。その実用化段階でどうしても必要なのが、回路線幅2ナノメートル(ナノは10億分の1)の最先端の半導体だ」 経済同友会副代表幹事でJSR名誉会長の小柴満信氏はそう話す。小柴氏も車座会議に出席。量子コンピューターと次世代半導体の重要性は岸田首相に十分伝わったと感じる。 将来ますますキーパーツとなる半導体について、強化策を主導しているのが経済産業省だ。経産省は有識者や産業界の関係者を集めて、2021年3月から「半導体・デジタル産業戦略検討会議(半デジ会議)」を開いている。 同会議で経産省が示したのが、「我が国半導体産業復活の基本戦略」と題された3つのステップだ(次ページ表)。内容を要約すると、半導体生産能力の「挽回」、次世代半導体開発の「推進」、将来技術への「布石」となる。 ステップ1では、半導体の製造拠点を国内に確保する。 その第一手となったのが台湾TSMCの工場の国内誘致だ。TSMC、ソニーグループの半導体事業子会社、デンソーの3社合弁による熊本県での半導体工場設立計画を認定し、最大4760億円の補助金を国が支給する。) 自動車など日本の基幹産業にとって、TSMCから調達するロジック(演算用)半導体は今や欠かせない重要部品だ。ソニーグループが得意とし、スマホカメラで「目」のような役割を果たすCMOSイメージセンサーにもロジック半導体が用いられるが、調達の大部分をTSMCに依存している。 台湾に対する中国の政治的圧力が高まる中、TSMCの台湾拠点に調達を依存する状態はリスクを伴う。「半導体は食糧やエネルギーと同様に社会を支える基盤。国家戦略として安定確保していく必要がある」。半デジ会議で事務方を務める経産省情報産業課の西川和見課長はそう強調する』、「我が国半導体産業復活の基本戦略」は経産省らしいビジョンだ。
・『「将来技術」が産業の競争力を左右する  ステップ2は次世代半導体技術の確立を目指す。 次世代品の一例が「ビヨンド2ナノ」の製品だ。半導体では電子回路を細かく作るほど性能が上がる。現在の最先端半導体は回路線幅が3ナノメートルのものだが、さらに小さい回路線幅を実現するための技術開発が各国で行われている。 ステップ1と同様に自前主義にとらわれず、海外の「同盟国、友好国全体で強化していく」(西川氏)のが特徴だ。5月23日の日米首脳会談では、次世代半導体開発に向けた共同タスクフォースの設置が決まった。 ステップ3は、量子コンピューターをインフラとして広く提供することや、超低消費電力と高速データ処理を同時に可能にする新技術の実現をグローバル連携で目指す。完全自動運転の自動車では、搭載されているAIがスマホ数百台分の電力を消費するといわれる。2030年代にはこれら将来技術が人々の社会生活や産業競争力を左右するとみられる。 これら経産省による振興策を政治が後押しする。自民党内の「半導体戦略推進議員連盟(半導体議連)」は5月24日、「今後10年間で官民合わせて10兆円の投資を行うべき」と決議。党の政務調査会や総務会などで議論を深める方向だ。) 議連事務局長の関芳弘議員は、「(10兆円という)半端でない投資額と羅針盤を示して、民間企業の経営者の背中を押すのがわれわれの役割だ」と話す。現在、先端半導体の工場設立には1兆円程度の投資が必要とされる。巨額投資に二の足を踏む民間企業の経営者の不安を解消したいとの考えだ。 議連の会長は甘利明前幹事長、最高顧問は安倍晋三元首相や麻生太郎副総裁が務める。議連の決議の影響力は無視できない。 半デジ会議は2022年4月までに5回開かれた。メンバーの1人である東京理科大学の若林秀樹教授は、「ステップ1は80点をつけられる」と及第点を与える。ハードルが高いと思われた熊本へのTSMC誘致を実現し、日本の産業で必要とする半導体の確保に道筋をつけたからだ。 2021年3月の第1回会合は政府の本気度に対して懐疑的なメンバーもいたという。だがTSMC誘致の成功により、「『政府もやるな』と雰囲気が一変した」(若林氏)』、「TSMC誘致の成功により、「『政府もやるな』と雰囲気が一変した」」、には疑問も感じた。
・『重要なことは「次世代半導体」をどう使うのか  日本の半導体産業が世界市場で占めるシェアは、1988年の約50%から2019年には約10%にまで下がった。 この著しい「凋落」の原因はいくつか挙げられるが、その1つが「日の丸自前主義の落とし穴」だ。自前主義にこだわったことで、世界の流れに遅れをとった。その点、今回はTSMCをはじめ海外勢の力を当初から活用しており、大きく前進している。 問題はここからだ。ステップ2も現状は「誰がどのようにやって、いくら投じるのかもわからない」(若林氏)。また、次世代半導体をどう作るのかだけでなく、それがどう使われるのかという視点も重要となる。 「日本の半導体産業は、大手電機企業の一部門だった経緯から顧客企業に製品仕様を決めてもらい発注を待つ『部品屋』の色彩が濃い。しかしそれでは、グーグルやアマゾンのデータセンター用AI半導体などへと、半導体の需要先が変わっている時代についていけない」 製造業に強いコンサルティング会社、アーサー・ディ・リトルの赤山真一パートナーはそう指摘する。半導体における海外先進企業は、企画力やマーケティング力を発揮し需要先のニーズを先回りして新製品に落とし込む。今後の市場ニーズもみすえて次世代品を開発しないと、無用の長物になりかねない。 30年以上にわたって半導体産業をウォッチしてきたジェフリーズ証券の中名生(なかのみょう)正弘シニアアナリストも同様に、「メタバースや自動運転といった最終需要あっての半導体」と述べる。次世代半導体の需要を新たに生み出すIT企業やスタートアップ企業を育てる政策が並行して必要となる。 中名生氏は「需要家の要望を半導体の設計に落とし込み、実際に工場で生産するところまでの間をつなぐ人材が不足している」とも指摘する。需要と供給の両サイドをうまく橋渡しするには、技術も理解しておかなければならない。そのような技術者を育成する政策が求められるというわけだ。 「本当の勝負はこれからだと思っている」――。 萩生田光一経産相は6月17日、TSMC熊本工場への補助金支給の決定に際し、そうコメントした。将来にわたって半導体産業だけなく経済社会を発展させていけるのか。まさに第一歩となる』、「TSMC熊本工場への補助金支給」が「将来にわたって半導体産業だけなく経済社会を発展させてい」く「第一歩」となってほしいものだ。

第三に、6月24日付け東洋経済オンライン「世界のTSMCが触手、日本の圧倒的な「半導体技術」 日本企業がいなければインテルのCPUも動かない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/598732
・『巨額の設備投資でしのぎを削る半導体。そうした中、日本勢が強みを持つ「後工程」に追い風が吹いている。 6月24日、茨城県のつくば市に施設を構える産業技術総合研究所の一角に、日本政府関係者や企業幹部、学者らが一堂に会する。 その目的は「TSMCジャパン 3DIC研究開発センター」の開所式だ。日本政府が主導して半導体製造の世界チャンピオン・台湾TSMCを誘致し、2021年2月に3DIC研究開発センターの設立が発表された。TSMCと日本の産学が共同し、半導体の「後工程」に関する研究開発を同センターで進める』、興味深そうだ。
・『参画企業は「オールジャパン」の顔ぶれ  ディスコや芝浦メカトロニクス、日立ハイテクなどの半導体製造装置メーカーや、イビデン、新光電気工業、東京応化工業といった半導体材料メーカーの計約20社がパートナー企業として参画する。TSMC以外は産総研、東京大学なども含め「オールジャパン」の顔ぶれだ。 パートナー企業の1社は、「研究段階から入り込むことでTSMCに自社の装置が採用されれば、量産に至ったときに大きな受注が手に入る」と期待をあらわにする。ほかの企業も「国内だと人の行き来がしやすい。TSMCとのビジネス拡大を狙いたい」と意気込む。 TSMCは半導体受託製造(ファウンドリー)分野で世界シェアの半分を占める。特に先端半導体の製造は同社への依存が高まっており、世界の電機・半導体メーカーが「TSMC詣で」をするほどの存在だ。 そのTSMCが半導体の「後工程」、しかも日本企業と共同研究開発を行うのには理由がある。 400~600と長い半導体の製造工程は大きく2つに分けられる。 1つは「前工程」だ。半導体を作る土台となる直径20cmや30cmのウエハに電子回路を描く。もう1つが、ウエハからチップを切り出し、パッケージで包み、検査する「後工程」だ。 半導体の性能は、電子回路をいかに細かく作るかに大きく左右される。微細にすればするほど、1つのチップにたくさんの回路を描き込むことができるため、処理速度や電力効率が上がる。ただ、その微細化が物理的な限界に近づきつつあり、「終わり」が意識され始めている。 そこで注目されているのが「3次元実装」と呼ばれる手法だ。ロジック(演算用)やメモリーなどの半導体チップを縦に積み上げることで、横に並べたときよりも面積が小さくなる。半導体チップ同士を結ぶ配線も短く済む。処理能力や電力効率が上がる次世代半導体の実現につながる』、「注目されているのが「3次元実装」と呼ばれる手法だ。ロジック(演算用)やメモリーなどの半導体チップを縦に積み上げることで、横に並べたときよりも面積が小さくなる。半導体チップ同士を結ぶ配線も短く済む。処理能力や電力効率が上がる次世代半導体の実現につながる」、なるほど。
・『「後工程」で日本の装置・材料は高シェア  「3次元実装」の実用化に向けては、製造装置メーカーや材料メーカーの協力が欠かせない。そして「後工程」の分野では日本メーカーしか持っていない技術がある。 ウエハを精緻に切断し、チップに分ける「ダイシングソー」では、日本のディスコが72%の市場シェアを持つ。切り分けたチップを保護するパッケージ基板(サブストレート)は「ミルフィーユのような複雑な構造」ともいわれ、最先端品では日本のイビデンと新光電気工業の2社寡占に近い。 「前工程」の微細化競争は半導体進化の一丁目一番地だ。そのため年間で兆円単位に上る巨額の研究開発投資を続けてきたTSMCのような企業に、半導体メーカーは製造を委託してきた。 一方、「後工程」はこれまで付加価値が低いとされ、人件費の安い東南アジアの企業などへ組み立てと検査が委託されてきた。それらの企業に代わって、日本の製造装置や材料メーカーに技術やノウハウが蓄積された。 後工程は進歩の余地が大きく、半導体の進化のカギを握っているといっても過言ではない。その中で、ひときわ存在感が大きいのがイビデンだ。 同社はパソコンやサーバーに搭載されるCPU(中央演算処理装置)向けにパッケージ基板を供給。アメリカのインテル向けが売上高の43%を占める。大げさに聞こえるかもしれないが、「イビデン製品がなければインテルのCPUは動かない」。TSMCが実用化を目指す「3次元実装」においてもパッケージ基板が重要技術となる。 「世界最先端の微細化をしているTSMC、トップランナーの材料メーカーと情報交換して、次世代の技術が習得できるのはありがたい」。イビデンの青木武志社長は、つくば市でのTSMCとの共同研究開発に期待感を示す。 岐阜県大垣市にある同社の大垣中央事業場。記者が訪れたのは日曜夕刻だったが、多くの車が出入りしており、繁忙を極めていることをうかがわせた。青木社長によると、足元の爆発的な半導体需要拡大に伴い、パッケージ基板のすべての工場が定期修繕以外24時間365日フル稼働だという』、「「後工程」はこれまで付加価値が低いとされ、人件費の安い東南アジアの企業などへ組み立てと検査が委託されてきた。それらの企業に代わって、日本の製造装置や材料メーカーに技術やノウハウが蓄積された。 後工程は進歩の余地が大きく、半導体の進化のカギを握っているといっても過言ではない」、大げさな感じもあるが、本当だろうか。
・『増産に向けて東京ドーム約3個分の土地を確保  もはや供給量は上限に達し、新たに工場を建てなければ顧客の要望に答えられない。そこでイビデンは年間売上高の約半分にあたる1800億円を投じ、河間(がま)事業場(岐阜県大垣市)を建て替えて増産する。 さらに、近隣の岐阜県大野町では過去最大となる15万㎡の土地を取得し、2026年度以降の増産を目指す。「河間事業場の建て替え後もすでにフル稼働が見通せているため、新たな土地を買った」と青木社長は説明する。 取得した土地の広さは東京ドーム約3個分、河間事業場の敷地面積の3倍弱にあたる。総投資額は数千億円規模に上るもようだ。現在、2023年夏の土地引き渡しに向けて多数の重機が土ぼこりを上げて整地作業を進めている。 新工場が立地する大野町は歓喜に沸いている。工場1棟あたり約1000人の人手が必要になるため、人口約2万2000人の大野町にとってはかなり大きなインパクトだ。 大野町では2007年から人口減が続いているが、「大規模な雇用が生まれることで、町外に流出する人口を食い止められる」(産業建設部建設課の後藤崇課長)との期待がかかる。新工場には最新鋭の高額な設備を導入するため、町に入る固定資産税も多額になりそうだ。 「クリティカル(死活的に重要)な材料は切り替えるコストが高くつく。サプライチェーンを維持して品質を保証し、必要なときに必要な量を供給する実績を長年積んできた日本勢に強みがある」 JSRの名誉会長で経済同友会副代表幹事の小柴満信氏は、日本の後工程技術の優位性をそう分析する。後工程の一部に必要な化学材料を手がけるJSRは、つくば市でのTSMCとの研究開発センターにも参画している』、「総投資額は数千億円規模」、「工場1棟あたり約1000人の人手が必要」、とはインパクトが大きそうだ。
・『予定通り人材を集めることができるのか  日本勢の完成されたサプライチェーンに一日の長があるとはいえ、人材確保が成長のボトルネックになりかねない。イビデンの青木社長は、「核になる技術者が足りない。最先端の半導体パッケージに関する技術は入社して2、3年で勉強できるものではなく、適した人材はそう多くない」と打ち明ける。 イビデンは新工場の立ち上げに向けて、地元に限定せず全国を対象に採用をかけるが、半導体関連の技術者をめぐる争奪戦は激しさを増す。予定通り増産するには早めの人材確保が欠かせない。 世界のTSMCも着目する日本の後工程技術。つくば市での研究開発の成果は、日本勢が次世代半導体を牽引する突破口になるかもしれない』、「つくば市での研究開発の成果は、日本勢が次世代半導体を牽引する突破口になるかもしれない」、とは楽しみだ。

第四に、7月26日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「サムスン電子とTSMCの決算比較で、半導体市況の変化の兆しが丸わかり」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/306792
・『2022年4~6月期の半導体業界は、メモリ半導体を主体として収益を得ている半導体メーカーの業績拡大ペースが鈍化した。台湾TSMCと韓国サムスン電子の連結決算を比較すると、それがよく分かる。ポイントは、ビジネスモデルの違いと営業利益だ』、興味深そうだ。
・『メモリ半導体市況は調整色が強まる ロジック・車載用半導体の不足は続く  足元の半導体市況を見ると、車載用の半導体などは依然としてタイトであるものの、代表的なメモリ半導体であるDRAM(Dynamic Random Access Memory)の需給は緩み始めている。それに伴い、台湾積体電路製造(TSMC)などの台湾勢、韓国のサムスン電子など大手半導体メーカーの収益状況は変化し始めている。 今後、メモリ半導体市況は調整色が強まる可能性が高い。ただ、精密度の高いロジック半導体や車載用半導体の不足は続くとの見方が有力だ。特に、最先端のロジック半導体の需給は、かなりタイトな状況が続くことが想定される。 そうした状況下、有力メーカーの存在感はさらに顕著になっている。一つの例は、ファウンドリ分野におけるTSMCのシェア拡大だ。また、半導体製造装置分野では、現在、最先端の生産に必要な露光装置(ステッパー)を、世界で唯一製造できるオランダASMLの存在感が一段と増している。 世界の半導体産業は、製造技術や経営体力などの総合力がモノをいう時代を迎えた。最先端の製造技術に磨きをかけることができるか否かが、大手半導体メーカーの優勝劣敗に決定的影響を与える。わが国の企業はそうした状況に追いつく努力をしないと、世界の半導体市場で生き残れなくなることが懸念される』、「世界の半導体産業は、製造技術や経営体力などの総合力がモノをいう時代を迎えた。最先端の製造技術に磨きをかけることができるか否かが、大手半導体メーカーの優勝劣敗に決定的影響を与える。わが国の企業はそうした状況に追いつく努力をしないと、世界の半導体市場で生き残れなくなることが懸念される」、由々しい事態だ。
・『TSMCとサムスン電子の決算比較 ビジネスモデルの特徴と営業利益は?  2022年4~6月期の半導体業界は、メモリ半導体を主体として収益を得ている半導体メーカーの業績拡大ペースが鈍化した。TSMCとサムスン電子の連結決算を比較すると、それがよく分かる(サムスン電子は速報)。 ビジネスモデルの特徴として、TSMCは5ナノや次世代のロジック半導体の生産能力に磨きをかけている。それによってTSMCはアップルやエヌビディアなどの顧客が設計・開発したチップの製造を多く受託し、急成長した。 一方、サムスン電子はスマホなどに加え、メモリ半導体に強みを持つ。近年はTSMCとの差を縮めるため、ファウンドリ分野での設備投資が積み増された。 4~6月期のTSMCとサムスン電子の連結決算のポイントは、営業利益だ。TSMCの営業利益は2621億台湾ドル(約1兆2000億円)で、12年来の過去最高を更新。前年同期と比べると79.9%も増加した。 他方、サムスン電子の営業利益は同11%増の14兆ウォン(約1兆4500億円)で、増益率は20年1~3月期以来の低水準だった。半導体事業はサムスン電子の営業利益の6割を稼ぐ。特に、メモリ半導体は稼ぎ頭だ。サムスン電子の世界シェアはNAND型フラッシュメモリで約34%、DRAMで約42%に達する。 世界のメモリ半導体業界は、在庫調整局面にシフトした。それが、サムスン電子のメモリ半導体事業の成長鈍化につながった。TSMC経営陣も、在庫調整が進むとの認識を示した。 メモリ半導体の需要が減少した一因は、中国経済の急速な減速だ。ゼロコロナ政策は人流・物流を寸断した。個人消費の急減によってスマホなどの需要が低下し、メモリ半導体需要を押し下げた。テレワーク拡大の一服もあり、世界全体でパソコン需要が減少し始めている。 そうした結果、メモリ半導体は値下がりし、サムスン電子の営業利益は伸び悩んだ。メモリ半導体の受託製造を手掛ける台湾の力晶積成電子製造も、需要減少に直面している。メモリ大手の米マイクロンでは、6~8月期の収益見通しが市場予想を下回ってもいる』、「TSMCは5ナノや次世代のロジック半導体の生産能力に磨きをかけている。それによってTSMCはアップルやエヌビディアなどの顧客が設計・開発したチップの製造を多く受託し、急成長した。 一方、サムスン電子はスマホなどに加え、メモリ半導体に強みを持つ。近年はTSMCとの差を縮めるため、ファウンドリ分野での設備投資が積み増された」、「世界のメモリ半導体業界は、在庫調整局面にシフトした。それが、サムスン電子のメモリ半導体事業の成長鈍化につながった」、なるほど。
・『最先端ロジック半導体は増加基調 TSMCは約6兆円の設備投資計画を維持  こうした状況下、TSMCは自社の競争優位性に自信を示している。背景には、「最先端のロジック半導体の需要が増加する」との見方がある。世界経済のデジタル化は、回路線幅3ナノや2ナノなど消費電力量が少なく、より高速なデータ処理を可能にするチップ需要を押し上げる。 ビッグデータの収集と分析の増加によって、最先端のロジック半導体需要は多少の変化を伴いつつも、増加基調となるだろう。そうした展開を予想してTSMCは400億~440億米ドル(約5.5兆~6兆円)の設備投資計画を維持している。 今後、競合他社が設備投資計画を下方修正した際、TSMCが投資計画を引き上げるか否かが見ものだ。他の大手半導体メーカーも最先端のロジック半導体生産体制の強化を急ぐ。米インテルはかつて10ナノレベルの生産ライン立ち上げにつまずき、遅れを取り戻すために、TSMCの製造技術に頼らざるを得なくなった。 また、サムスン電子は3ナノの量産体制を確立したと発表した。サムスン電子の微細化の実力に関してはさまざまな見方があるが、いずれにせよ、DRAMの需要急減をカバーするために、ロジック半導体の生産体制強化は急務だ。 また、TSMCやインテル、サムスン電子、台湾UMCなどが相次いで値上げを実施した。それだけ、最先端分野のロジック半導体の需要が強いということだ。インフレによる原材料価格の高騰も値上げの一因だ。 汎用型の生産ラインを用いて生産されるマイコンやセンサなど、車載用半導体も不足している。想定以上に事態は深刻で、トヨタ自動車は7月の追加減産を発表した。車載半導体分野でのシェア拡大を急ぐインテルは、「来年・再来年も半導体不足が続く」と予想している。 7月の米半導体イベント「SEMICON West 2022」において独フォルクスワーゲンは、「自社で半導体分野の取り組みを強化する」と表明した。世界全体で車載用半導体の供給が需要に追い付いていない。電動化や自動運転技術の実用化などによって、自動車に搭載される半導体点数が急増しているからだ。また、ウクライナ危機と中国のゼロコロナ政策が供給制約を深刻化させたことも大きい』、「世界経済のデジタル化は、回路線幅3ナノや2ナノなど消費電力量が少なく、より高速なデータ処理を可能にするチップ需要を押し上げる・・・そうした展開を予想してTSMCは400億~440億米ドル(約5.5兆~6兆円)の設備投資計画を維持」、「サムスン電子は3ナノの量産体制を確立したと発表した。サムスン電子の微細化の実力に関してはさまざまな見方があるが、いずれにせよ、DRAMの需要急減をカバーするために、ロジック半導体の生産体制強化は急務だ」、なるほど。
・『半導体メーカーの優勝劣敗は鮮明に これまで以上に経営体力が問われる  今後、世界の有力半導体メーカーの優勝劣敗は鮮明となるだろう。同じことは半導体の製造装置、部材メーカーにも当てはまる。これまで以上に企業の経営体力が問われる。 メモリ半導体の一角で、急速に需給は緩んでいる。しかし、それが半導体市況全体の大きな調整につながるとは考えづらい。特に、これまであまり半導体が使われてこなかった製品に、より多くのチップが搭載されるようになっている。スマート家電、スマートホームのように、スマホやITデバイスで家電や住宅設備を操作する機会が急増している。 製造業分野ではメタバース技術によって生産ラインが、自宅などでバーチャルに再現される。デジタル化の加速が、新しいチップ需要を創出する。 脱炭素にも同じことが言える。蓄電池やスマートグリッドなどの利用は増加する。それが電流の管理などを行うパワー半導体の需要を生み出す。すでに、その兆候が出ている。 7月に入り、物価高騰や供給制約など世界経済の先行き懸念が高まる中、米クアルコムはスタートアップのセルワイズを買収した。高速通信に対応したチップ開発を加速するためだ。EUV(極端紫外線)を用いた製造、検査装置のニーズも増える。「23年の半導体製造装置の世界販売は4年連続で過去最高を更新する」と国際団体のSEMIは予想する。 半導体メーカーは、新しい取り組みを強化し続けられるか否かが、優勝劣敗に直結する。わが国の半導体関連企業は、競合他社に見劣りしない規模で設備投資を積み増すことが不可欠だ。 特に、超高純度のフッ化水素やレジストなどの半導体部材、半導体の製造と検査装置で本邦企業は競争力を維持している。汎用型の車載用やパワー半導体分野でも、国内企業は一定のシェアを持つ。 成長加速のために、各社は事業運営の効率性を飛躍させつつ、研究開発や設備投資を積み増す必要がある。それができるか否かが、不安定な半導体産業で生き残りをかけた決定打となるはずだ』、「半導体メーカーは、新しい取り組みを強化し続けられるか否かが、優勝劣敗に直結する。わが国の半導体関連企業は、競合他社に見劣りしない規模で設備投資を積み増すことが不可欠だ。 特に、超高純度のフッ化水素やレジストなどの半導体部材、半導体の製造と検査装置で本邦企業は競争力を維持している。汎用型の車載用やパワー半導体分野でも、国内企業は一定のシェアを持つ。 成長加速のために、各社は事業運営の効率性を飛躍させつつ、研究開発や設備投資を積み増す必要がある」、日本の「半導体」関連産業の生き残りを期待したい。
タグ:「TSMCは5ナノや次世代のロジック半導体の生産能力に磨きをかけている。それによってTSMCはアップルやエヌビディアなどの顧客が設計・開発したチップの製造を多く受託し、急成長した。 一方、サムスン電子はスマホなどに加え、メモリ半導体に強みを持つ。近年はTSMCとの差を縮めるため、ファウンドリ分野での設備投資が積み増された」、「世界のメモリ半導体業界は、在庫調整局面にシフトした。それが、サムスン電子のメモリ半導体事業の成長鈍化につながった」、なるほど。 「世界の半導体産業は、製造技術や経営体力などの総合力がモノをいう時代を迎えた。最先端の製造技術に磨きをかけることができるか否かが、大手半導体メーカーの優勝劣敗に決定的影響を与える。わが国の企業はそうした状況に追いつく努力をしないと、世界の半導体市場で生き残れなくなることが懸念される」、由々しい事態だ。 「「後工程」はこれまで付加価値が低いとされ、人件費の安い東南アジアの企業などへ組み立てと検査が委託されてきた。それらの企業に代わって、日本の製造装置や材料メーカーに技術やノウハウが蓄積された。 後工程は進歩の余地が大きく、半導体の進化のカギを握っているといっても過言ではない」、大げさな感じもあるが、本当だろうか。 「注目されているのが「3次元実装」と呼ばれる手法だ。ロジック(演算用)やメモリーなどの半導体チップを縦に積み上げることで、横に並べたときよりも面積が小さくなる。半導体チップ同士を結ぶ配線も短く済む。処理能力や電力効率が上がる次世代半導体の実現につながる」、なるほど。 東洋経済オンライン「世界のTSMCが触手、日本の圧倒的な「半導体技術」 日本企業がいなければインテルのCPUも動かない」 「半導体メーカーは、新しい取り組みを強化し続けられるか否かが、優勝劣敗に直結する。わが国の半導体関連企業は、競合他社に見劣りしない規模で設備投資を積み増すことが不可欠だ。 特に、超高純度のフッ化水素やレジストなどの半導体部材、半導体の製造と検査装置で本邦企業は競争力を維持している。汎用型の車載用やパワー半導体分野でも、国内企業は一定のシェアを持つ。 成長加速のために、各社は事業運営の効率性を飛躍させつつ、研究開発や設備投資を積み増す必要がある」、日本の「半導体」関連産業の生き残りを期待したい。 「世界経済のデジタル化は、回路線幅3ナノや2ナノなど消費電力量が少なく、より高速なデータ処理を可能にするチップ需要を押し上げる・・・そうした展開を予想してTSMCは400億~440億米ドル(約5.5兆~6兆円)の設備投資計画を維持」、「サムスン電子は3ナノの量産体制を確立したと発表した。サムスン電子の微細化の実力に関してはさまざまな見方があるが、いずれにせよ、DRAMの需要急減をカバーするために、ロジック半導体の生産体制強化は急務だ」、なるほど。 半導体産業 真壁昭夫氏による「サムスン電子とTSMCの決算比較で、半導体市況の変化の兆しが丸わかり」 「つくば市での研究開発の成果は、日本勢が次世代半導体を牽引する突破口になるかもしれない」、とは楽しみだ。 ダイヤモンド・オンライン 「総投資額は数千億円規模」、「工場1棟あたり約1000人の人手が必要」、とはインパクトが大きそうだ。 「TSMC熊本工場への補助金支給」が「将来にわたって半導体産業だけなく経済社会を発展させてい」く「第一歩」となってほしいものだ。 「TSMC誘致の成功により、「『政府もやるな』と雰囲気が一変した」」、には疑問も感じた。 「我が国半導体産業復活の基本戦略」は経産省らしいビジョンだ。 「岸田文雄首相」が「次世代半導体の強化を話し合った車座会議」で重要性を学んだことは意義深そうだ。 東洋経済オンライン「日本の半導体が「凋落」を経て決断した新たな戦略 挽回、推進、布石の3ステップで巻き返せるか」 「ビジネスモデル選択の誤り」は致命的だ。「「ボリュームゾーン」を目指した戦略を展開」、というのは、日本企業の得意技ではあるが、「カメラ」事業自体がそれほど収益性のあるものではない点で「選択の誤り」は明らかだ。 この格差は「キヤノン、ニコンの従業員」によりもたらされたというよりも、経営者の怠慢によりもたらされたと見るべきだろう。 「企業は核になる技術を持っていなければならず、その価値を発揮できるようなビジネスモデルを開発することが重要」といった経営学の常識が覆された例だ。「ASML」は「多くの技術を他社に依存する必要があったため、他社と信頼関係を築く必要があった。そして、顧客であるTSMCやサムスン、インテルなどと連携して、技術と知識が蓄積された。それが成功につながった」、「技術力が高いニコンは、他社と協業するという意識が低かった。それが開発スピードを低下させ、開発コスト負担増を招いた」、やはり日本側には慢心もあったのではなかろう 「ASMLは中核部品を外注・・・自社で担当しているのは、ソフトウェアだけだ」、「ニコンは、レンズはもちろんのこと、制御ステージ、ボディー、さらに、ソフトウェアまで自社で生産した。外部から調達したのは、光源だけだ。 このように、ほとんどを自前で作ったため、過去の仕組みにこだわるという問題が生じた」、「結局、日本型縦割り組織を反映して全てを自社で内製化しようとする考えが、負けたということだ」、ここまで完敗する前に、軌道修正できなかったのだろうか。 「日本の得意分野」が20年強で「撤退」を余儀なくされるとは情けない限りだ。 「キヤノンとニコン」が「半導体露光装置」で完敗した要因とは興味深い。 「1984年」、「フィリップスのゴミ捨て場の隣に建てたプレハブで、31人でスタートした」のが、いまや「時価総額は、日本のトヨタ自動車2742.5億ドルとほぼ同じだ。世界第678位のフィリップス(293.5億ドル)の10倍近い」、「利益(EBIT)は46.3億ドル」。「トヨタ」「169.9億ドル」、「従業員数は28000人」とトヨタ自動車(37万人)の7.6%」、凄い超優良企業だ。 野口 悠紀雄氏による「ASMLーゴミ捨て場に生まれた企業が世界の半導体製造を制覇した 技術力がニコン・キヤノンの躓きの石」 現代ビジネス (その8)(ASMLーゴミ捨て場に生まれた企業が世界の半導体製造を制覇した 技術力がニコン・キヤノンの躓きの石、日本の半導体が「凋落」を経て決断した新たな戦略 挽回 推進 布石の3ステップで巻き返せるか、世界のTSMCが触手 日本の圧倒的な「半導体技術」 日本企業がいなければインテルのCPUも動かない、サムスン電子とTSMCの決算比較で 半導体市況の変化の兆しが丸わかり)
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パンデミック(経済社会的視点)(その24)(重症患者の7割にせん妄が出ている…新型コロナの「脳感染」が引き起こす肺炎より恐ろしい症状 肺炎が重症化していなくても呼吸不全を起こす場合がある、尾身会長がNHKで“職務放棄”の仰天発言!コロナ対策は自助で、犠牲は国民の「許容度」の問題、コロナ感染の若者を見放す制度の不備にモノ申す 大学の定期試験や国家資格試験の機会損失大きい) [パンデミック]

パンデミック(経済社会的視点)については、5月28日に取上げた。今日は、(その24)(重症患者の7割にせん妄が出ている…新型コロナの「脳感染」が引き起こす肺炎より恐ろしい症状 肺炎が重症化していなくても呼吸不全を起こす場合がある、尾身会長がNHKで“職務放棄”の仰天発言!コロナ対策は自助で、犠牲は国民の「許容度」の問題、コロナ感染の若者を見放す制度の不備にモノ申す 大学の定期試験や国家資格試験の機会損失大きい)である。

先ずは、7月23日付けPRESIDENT Onlineが掲載した複十字病院 認知症疾患医療センター長の飯塚 友道氏による「重症患者の7割にせん妄が出ている…新型コロナの「脳感染」が引き起こす肺炎より恐ろしい症状 肺炎が重症化していなくても呼吸不全を起こす場合がある」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/59630
・『新型コロナウイルスが脳に感染した場合、致命的な影響を与えることが最新の研究でわかってきた。複十字病院認知症疾患医療センター長の飯塚友道さんは「新型コロナウイルスは嗅覚神経や血管を通じて脳に感染することがある。急死したケースでは、肺炎ではなく脳感染によって中枢神経がダメージを受けていた可能性がある」という――。(第2回) ※本稿は、飯塚友道『認知症パンデミック』(ちくま新書)の一部を再編集したものです。なお、脚注はリンク先参照』、「脳に感染」、「急死」とは恐ろしい話だ。
・感染者に致命的な影響を与える“脳感染”  本稿では、新型コロナウイルスの感染が直接脳に与える影響について考えていきたいと思います。恐ろしいことに、このウイルスが思いのほか脳に感染して様々な症状を引き起こし、ときに致命的な影響を与えることがわかってきました。 新型コロナウイルス感染により神経症状が出現するという現象については、2019年に中国・武漢で最初に報告されました(*1)。2020年1月16日から同年2月19日までのデータでは、平均年齢53歳の214人の患者のうち78人の患者(36%)で神経症状がみられました。 重症の感染者ではより頻度が高く、46%です。ほとんどの神経症状は病気の初期に起こりました。神経症状は実に多様で、中枢神経系の症状(めまい、頭痛、意識障害、急性脳血管疾患、運動失調)、末梢まっしょう神経系の症状(味覚障害、嗅覚障害、視力障害および神経痛)、骨格筋損傷がみられました。重症の感染者の神経症状は急性脳血管疾患、意識障害、骨格筋損傷などでした。 この武漢の中枢神経障害のデータは、その後の各国からの報告よりは比較的低い頻度でした。当初は重症化する肺炎に注目が集まっていたのが一因かもしれませんが、それ以降は脳障害に関する報告が増加します。感染と神経症状との関連については、アンギオテンシン変換酵素2(ACE2)という細胞膜に存在するタンパク質が新型コロナウイルスの受容体として同定されました。 ウイルスの感染には細胞表面に存在する受容体との結合が必要です。ACE2は神経系および骨格筋などに存在しますので、この受容体の神経症状における役割は大きいと考えられます。その後も神経症状には注目が集まり、米国ワシントン州の病院からの2020年2月20日から同年5月4日の入院患者404人の神経学的症状の報告があります(*2)』、「神経症状は実に多様で、中枢神経系の症状(めまい、頭痛、意識障害、急性脳血管疾患、運動失調)、末梢まっしょう神経系の症状(味覚障害、嗅覚障害、視力障害および神経痛)、骨格筋損傷がみられました。重症の感染者の神経症状は急性脳血管疾患、意識障害、骨格筋損傷などでした。 この武漢の中枢神経障害のデータは、その後の各国からの報告よりは比較的低い頻度でした」、「重症の感染者の神経症状」はやはり恐ろしいものだ。
・『中枢神経に関連する症状が多数報告されている  この病院は米国で新型コロナウイルス患者の死亡例を報告した最初の病院で、神経学的所見は295人でみられ73%にのぼりました。そのうち中枢神経症状は204人(52%)でみられ、多い順に精神症状、頭痛、めまいでした。 米国ミシガン州からの報告もあり、こちらは2020年3月1日から同年5月31日の間に集中治療室に入院した比較的重度の148人の患者を対象としています(*3)。せん妄は平均年齢58歳の73%の患者で認められ、その持続期間は4~17日で中央値は10日でした。 さらに、入院中にせん妄を発症していた患者の中で退院後の調査をしたところ、24%は自宅に退院した後にもせん妄が出現しました。また、23%は認知症を疑わせる持続した認知機能障害がみられ、12%は退院後2カ月以内にうつ状態と診断されています。せん妄は70歳以上の高齢者で出現しやすいことは知られていますが、平均年齢58歳の中高年でもせん妄を起こし、それが退院後も遷延するという現象が注目されました。 そして、スペインからの報告ですが、2020年3月に入院した新型コロナウイルス感染と診断されたすべての患者を体系的に見直しました(*4)。平均年齢66歳の841人の患者のうち、57%が何らかの神経症状を発症しました。 たとえば、筋肉痛、頭痛、めまいなどの非特異的症状のほとんどが、感染初期段階で存在していました。嗅覚障害と味覚障害は早期に発症しやすく(最初の臨床症状として60%)、軽症例で頻度が高い傾向がありました。意識障害やせん妄は、主として高齢患者や重度例で発症しました』、「米国ミシガン州からの報告」では、「集中治療室に入院した比較的重度の148人の患者を対象」、「せん妄は平均年齢58歳の73%の患者で認められ、その持続期間は4~17日で中央値は10日でした。 さらに、入院中にせん妄を発症していた患者の中で退院後の調査をしたところ、24%は自宅に退院した後にもせん妄が出現しました。また、23%は認知症を疑わせる持続した認知機能障害がみられ、12%は退院後2カ月以内にうつ状態と診断されています。せん妄は70歳以上の高齢者で出現しやすいことは知られていますが、平均年齢58歳の中高年でもせん妄を起こし、それが退院後も遷延するという現象が注目」、「せん妄は平均年齢58歳の73%の患者で認められ」、かなり高い割合だ。「12%は退院後2カ月以内にうつ状態と診断」、本当に影響は深刻だ。
・『重症患者の約7割にせん妄が出ることが判明した  急性期にはコロナ感染症例の約20~70%が何らかの中枢神経障害を起こしており、脳血管障害、頭痛、意識障害、せん妄、めまいなどを引き起こしています。 特に集中治療室の重症患者の約70%にせん妄が出現することも判明しました。これに関しては感染予防のため、患者の日用品を院内に持ち込むことができなかったり、家族の面会が制限されたりしたことの影響もあったでしょう。 医療スタッフ側としては防護服の不足などの理由で、せん妄防止のためのプロトコルがあっても普段のようには実行できなかったという事情があり、それがせん妄が多く見られた要因とも考えられます。それから退院後も続く症状があり、そこではせん妄や認知機能障害があります。 米国のメイヨー・クリニックでは感染症で入院中の患者について、神経損傷の生物学的指標であるバイオマーカーを調べています(*5)。ここでは血液中の神経線維フィラメント軽鎖(NfL)というタンパク質を分析しました。このNfLは神経軸索にしかないタンパク質ですので、これが血中に漏れ出ていることは神経軸索が損傷していることを意味します。 142人の入院患者から採取した血清ではNfLは正常値よりも上昇していました。さらに、血清NfLの検出量は疾患の程度と関係していて、レムデシビルで治療された患者100人においては血清NfLが減少する傾向も見られました。このように重症度、治療の有無と神経損傷には関係があり、感染すると神経系に損傷を与えることの間接的な証拠になります。逆にNfLが低ければ、レムデシビルの治療が有効であることが実証できます』、「142人の入院患者から採取した血清ではNfLは正常値よりも上昇していました。さらに、血清NfLの検出量は疾患の程度と関係していて、レムデシビルで治療された患者100人においては血清NfLが減少する傾向も見られました。このように重症度、治療の有無と神経損傷には関係があり、感染すると神経系に損傷を与えることの間接的な証拠になります」、なるほど。
・『ウイルスはどのようにして脳に感染するのか 新型コロナウイルスの脳への感染ルートですが、まず鼻粘膜上皮にはこのウイルスの受容体であるACE2が存在し、そこにウイルスが到達するとACE2と結合して嗅覚神経細胞内に侵入し、嗅覚障害を起こすと想定されています。 実際、症状が出現した人の85%で嗅覚障害がみられています(*6)。その約半数では防御機構が感染を抑えて早期に嗅覚が回復しますが、残りの患者ではウイルスが嗅覚神経から脳内に侵入し、最終的には脳幹に達し、重度の呼吸不全を引き起こします。その場合の多くは呼吸困難の自覚がありません。 また、このウイルスは血管内皮細胞に存在するACE2受容体にも結合し、血管内皮で炎症を引き起こします。感染治療中に発症する脳卒中は、この血管内皮炎によって生じる血栓が原因であると考えられます。ACE2受容体の同定からさらに、ニューロピリン-1(NRP1)というタンパク質も新型コロナウイルスの受容体であることがわかりました(*7)。 NRP1は呼吸器系、鼻粘膜上皮、神経系に豊富に存在します。ウイルスの細胞内侵入を媒介するACE2の役割に加えて、NRP1はウイルスの感染性を高める作用をしていて、同じウイルスの受容体でも役割は異なるようです。 感染した脳のどこに新型コロナウイルスが多く存在するかを調べるために、脳でのこのウイルスのRNA量を測定した報告もあります(*8)』、「ウイルスの受容体であるACE2が存在し、そこにウイルスが到達するとACE2と結合して嗅覚神経細胞内に侵入し、嗅覚障害を起こすと想定されています。 実際、症状が出現した人の85%で嗅覚障害がみられています(*6)。その約半数では防御機構が感染を抑えて早期に嗅覚が回復しますが、残りの患者ではウイルスが嗅覚神経から脳内に侵入し、最終的には脳幹に達し、重度の呼吸不全を引き起こします」、「嗅覚障害」程度ならまだしも、「最終的には脳幹に達し、重度の呼吸不全を引き起こします」、恐ろしいことだ。
・『中枢神経への感染が強ければ、死亡リスクが高まる  新型コロナウイルス感染で亡くなった33人の脳でRT-PCR(DNAではなくRNAを検出するPCR検査)によりウイルスRNA量を評価したところ、11人から中枢神経、特に嗅覚神経と脳幹でウイルスRNAが多く検出されました。 ここで注目すべきは、中枢神経におけるウイルスRNAの量は亡くなるまでの罹病りびょう期間と逆相関していたことです。罹病時間の短さは高いRNA量と関連し、罹病期間の長さは低いRNA量と関連していました。つまり、中枢神経への感染が強いことは死亡リスクを高めることになります。新型コロナウイルス感染は肺炎で死亡するイメージがありましたが中枢神経、特に脳幹への感染は致命的と考えられます。 このように、新型コロナウイルスによる脳感染の実態が徐々にわかってきました。ここで新型コロナウイルス感染患者における呼吸症状と脳病変との関連についての総説を紹介します(*9)。 2021年2月までの新型コロナウイルス感染患者の脳に関する27の報告によると、神経病理学的変化は134人の患者のうち78人の脳幹で観察されました。実に亡くなった方の半数以上で脳幹病変が存在したことになります。 新型コロナウイルスについては、脳幹の血管障害または低酸素病変をもつ患者と比較して、脳幹にグリア細胞浸潤(グリオーシス)とリンパ球浸潤を示した患者のほうがはるかに高く検出されました。これは重要な所見です。 新型コロナウイルス感染症の脳幹病変は重症肺炎に伴う低酸素による非特異的かつ間接的な所見との見解もありますが、脳幹病変を示した患者でウイルス検出が多かったことは、感染の脳幹への直接的な影響を示唆しています』、「脳幹病変を示した患者でウイルス検出が多かったことは、感染の脳幹への直接的な影響を示唆しています」、なるほど。
・『肺炎ではなく脳感染が急死の原因だった可能性がある  これらの報告から現在のところ、神経系への新型コロナウイルスの侵入経路として次の二つが考えられます。まず神経経路ですが、一般的にウイルスは末梢神経に沿って逆行性に神経組織に入ることができます。 新型コロナウイルスの場合、嗅覚神経からのルートで脳に侵入する可能性が最も有力ですが、他の脳神経である、視神経や三叉神経などを介して脳に侵入することも想定されます。脳幹の心呼吸中枢にウイルス感染が起こると肺炎の重症度にかかわらず、呼吸不全を引き起こす可能性があるとも指摘されています。 次に血液循環経路ですが、ウイルスは血行性で中枢神経系に入る可能性もあり、その場合はまず、脳室にある脈絡叢における血液脳脊髄液関門の上皮細胞に感染します。脈絡叢は脳脊髄液を産生する部位ですが、血管が豊富な部位でもあります。そこから神経細胞やグリア細胞に感染していくのです。新型コロナウイルスに脳が直接感染してダメージを与え、それには炎症だけでなく血管障害も関わっているようです。 脳への侵襲、特に脳幹にある呼吸や心拍・血圧を制御する生命中枢へのダメージは発生する割合としては少ないのですが、致命的で恐ろしいものです。病院に向かっている途中に急変し、到着時には心肺停止に陥るという報道もありました。 いくら肺炎が急速に進行したとしても、肺炎が原因で数十分単位で死に至ることは通常は考えられないことです。数分から数十分で死に至る可能性のある疾患のほとんどは、脳出血や心筋梗塞など脳あるいは心臓の急性病変に由来するものです。 したがって新型コロナウイルス感染での急死には、脳幹の生命中枢への直接的ダメージが関与していたと考えると納得がいくのです』、「新型コロナウイルス感染での急死には、脳幹の生命中枢への直接的ダメージが関与していたと考えると納得がいくのです」、「新型コロナウイルス感染」の恐ろしさを再認識させられた。

次に、7月25日付け日刊ゲンダイ「尾身会長がNHKで“職務放棄”の仰天発言!コロナ対策は自助で、犠牲は国民の「許容度」の問題」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/308759
・『第7波の感染拡大が止まらない。24日の新型コロナウイルスの新規感染者数は17万人を超え、日曜日として過去最多を更新した。感染拡大は、8月中旬まで続く可能性が高い。不安を強めている国民も多いはずだ。ところが、新型コロナ政府分科会の尾身茂会長から、専門家とは思えない驚きの発言が飛び出した。 耳を疑った視聴者もいたのではないか──。24日のNHK日曜討論で尾身氏は「従来までは国、自治体が国民にお願いし、国民が従うというフェーズだった。今は、いろんなことを学んできたので一般市民が主体的に自分で判断していろいろと工夫するフェーズに入った」と強調した。 「一般市民が自分で判断」とは聞こえがいいが、要するに「自助で何とかしろ」ということだ。コロナ禍の2年半、コロナ対策は的外れなものが多く、後手対応も目立った。政府に従った国民は多大な犠牲を強いられた。その張本人である政府分科会の責任者が、今度は「一般市民が主体的に」とは、視聴者が呆気に取られても不思議はない』、従来から「尾身会長」の発言は、無責任で評判が良くなかったが、今回のは最悪だ。
・『第7波は“お手上げ”ということなのか  さらに、驚きの発言は続く。「このまま放っておくと、体力が悪い、体の脆弱な高齢者の死亡者数は第6波を超える可能性がある」と危機感を示した。第6波では高齢者を中心に1万2000人超の死者を出した。第7波では、それを超える犠牲者数になる可能性があると明言したのだ。 なのに、肝心の「感染対策」については、こう続けた。 「重症者数、感染者数、一般医療の制限をどこまで我々が許容するか、国民的なコンセンサスが必要だ」 感染に伴うさまざまな「犠牲」は、国民の「許容度」の問題だというのである。無責任な発言は、もはや第7波は“お手上げ”ということなのか。 「世論に委ねるかのような尾身氏の発言は、もはや科学ではありません。たとえ、一定の犠牲に対し、国民が許容していたとしても、それを“よし”とはせず、科学的に最善の感染対策を考えるのが専門家の仕事です。これまでの6度の波に対して政府分科会は有効な対策を打ち出せませんでした。過去をはるかに上回る第7波がやって来て、職務放棄したようにしか見えません。尾身氏は会長職を退くべきだと思います」(西武学園医学技術専門学校東京校校長の中原英臣氏=感染症学) 科学を忘れた尾身氏が居座れば、第7波はとんでもない事態になりかねない』、「たとえ、一定の犠牲に対し、国民が許容していたとしても、それを“よし”とはせず、科学的に最善の感染対策を考えるのが専門家の仕事です」、「過去をはるかに上回る第7波がやって来て、職務放棄したようにしか見えません。尾身氏は会長職を退くべきだと思います」、その通りだ。

第三に、7月31日付け東洋経済オンラインが掲載した医療ガバナンス研究所理事長の上 昌広氏による「コロナ感染の若者を見放す制度の不備にモノ申す 大学の定期試験や国家資格試験の機会損失大きい」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/604781
・『新型コロナウイルスの第7波が猛威を振るっている。若年者を対象としたオミクロン株対策を論じたい。 まず、強調したいのは、オミクロン株の流行の中心が若年層であることだ。東京都によれば、7月27日、2万9012人の感染が確認されたが、このうち1万6764人(58%)は30歳代以下だった』、興味深そうだ。
・『隔離期間の長さが若者の機会損失を生む  ただ、若年者はコロナに罹っても重症化することは少ない。「感染しても大丈夫」とお考えの人も多いだろう。ところが、話はそう簡単ではない。コロナに罹ると若年者は機会損失を被る。機会損失とは、感染により活動を停止せざるをえなくなることだ。 コロナが特殊なのは、感染症法により、感染者は、入院、施設、あるいは自宅での療養が義務化されていることだ。その期間も法定されており、症状があれば発症から10日間、無症状なら陽性確認から1週間だ。この期間は、人前に出ることはできない。 すでに数多くの機会損失が出ている。例えば、東京大学教養学部は、今年度の前期試験から感染者・濃厚接触者の救済措置を中止した。この結果、コロナに罹患したため、授業や試験を欠席せざるをえなくなり、留年を余儀なくされた学生もいるという。 6月13日、東京大学教養学部学生自治会は、大学に対して「新型コロナウイルスへの感染が疑われる場合等の代替措置に関する要望書」を提出したが、同月30日の回答では、「実質的に学生からの申し出のみによる審査・決定となり、審査の信頼性が担保できない状況となった」と、学生の訴えを却下した。これは、学生の言い分が信頼できないと言っているのと同じであろう。 この対応は、いくつかのメディアで報じられた。7月28日、東洋経済オンラインは「東大『期末試験はコロナ救済なし』で陥るジレンマ 陽性・濃厚接触者は登校自粛なのに…学生が猛反発」という記事を掲載した。この中で、東京大学は、2年生の前期試験までの成績で、進級する学部/学科が決まる進学振り分け制度を採用しているため、「コロナ以外の病気や事故で欠席した学生との公平性を担保する必要がある」と、学生自治会への回答とは異なる内容の説明をしている。 さらに、同日、学生に対して、「教養学部前期課程における定期試験代替措置とその廃止について」という通知を出し、「進学選択実施における学生間の成績の公平性がきわめて強く求められます」と述べている。進学振り分けでの平等性を担保したいなら、欠席した学生には、補講・追試で単位を認定するも、その科目の点数を、進学時の平均点の算定から除外するなど、やりようはあるはずだ。 現に、東京大学は今年3月の入学試験の合格判定で、コロナ感染により2次試験を受験できなかった13人は共通テストの成績や高校が作成した調査票などで合否判定し、共通テストを受験できなかった4人は2次試験の成績、および調査票などを用いて評価し、救済している。今回の東京大学の説明は、額面通りには受け取れない』、「東京大学教養学部は、今年度の前期試験から感染者・濃厚接触者の救済措置を中止した。この結果、コロナに罹患したため、授業や試験を欠席せざるをえなくなり、留年を余儀なくされた学生もいるという」、ウィズコロナとは全く逆行する施策だ。「入学試験」では「救済措置」があるのとも整合的でない。
・『東大と京大の対応は対照的  京都大学の対応は違う。4月1日に発表した『感染予防マニュアル令和4年度前期授業等の実施における配慮について(第8版)』に、感染した学生に対して「部局長及び授業等の担当教員の判断により、履修上の配慮を行うこと」「孤立しないよう連絡を取る」「担当教員と学生との双方向の連絡体制を確保する」とある。東京大学と京都大学への学生への対応は対照的で興味深い。 実は、東京大学の対応には、感染症法の主旨を無視している疑いがある。それは、コロナ感染で入院や自宅療養が求められるのは、感染症法に基づく法的措置だからだ。その目的は、感染を拡大させないための防疫だ。だからこそ、軽症や無症状者にも適応される。社会の防疫のために、国民に犠牲を強いるのだから、機会損失を被った人を救済する義務があるだろう。 では、政府は、どのように対応しているのだろう。もちろん、政府も、問題は認識している。文部科学省は、「学生1人ひとりの立場に立って、きめ細かな対応」「不安の中にある学生に寄り添った対応」、「判断の理由や根拠も含めて学生1人ひとりに伝え、学生の理解を得るよう努めること」を求める通知を各大学に出しているが、説得力がない。 それは、文科省自体が「学生1人ひとりの立場に立って、きめ細かな対応」を放棄しているからだ。例えば、教員職員免許法に基づいて文科省が実施する教員資格認定試験の令和4年度の受験要項には、発熱や倦怠感などのコロナ感染を示唆する症状、および濃厚接触者、自宅待機者を挙げ、「以下に該当する場合は、受験を見合わせてください。これらを理由とした欠席者向けの再試験は実施しません」と記されている。 この状況は、感染症法を所管する厚生労働省も変わらない。同省は医師国家試験など22の国家資格試験を実施しているが、入院中、宿泊または自宅療養中、一部の濃厚接触者の受験は認めず、再試験も実施していない。 厚労省は、その理由として、NHKの取材に対し、「短期間で追試の問題を作成するのは困難だ。広く機会を与える観点から柔軟な形で行われている大学入試などとは異なり、(医療関係職種の国家試験では)従来から心身の不調を理由とした追試は実施していない」(NHK NEWSWEB/追試はないの? コロナ禍の国家試験/2022年2月7日配信)と説明している。コロナと「心身の不調」を一緒に、議論していることには呆れざるをえない。要は面倒臭いことはしたくないと言っているだけだ。こんな無責任なことはない』、「京都大学」は「履修上の配慮」を行うようだが、「東大」の官僚主義的対応は、「文科省」、「厚労省」と同じで、情けない。
・『感染症2類相当から5類への変更は行われず  無責任なのは、官邸も同様だ。岸田首相は「ウィズコロナでも経済引き上げる」(7月25日、経済財政諮問会議)など、ウィズコロナを強調する。ところが、松野官房長官は7月13日の記者会見で「(コロナを5類に変更することを)現実的でない」と発言している。 2類感染症とはポリオ、重症急性呼吸器症候群(SARS)、鳥インフルエンザなど、感染した場合、重症化・死亡するリスクが高い病原菌だ。だからこそ、隔離が必要だ。こんな感染症とは、「ウィズ」の状態を維持できるはずがない。コロナを感染症法2類相当から5類に変更すれば、多くの問題は解決するが、政府は臨時国会まで動くつもりはなさそうだ) わが身は自分で守るしかない。どうすればいいのか。私は、ワクチン接種をお奨めしたい。ところが、若年世代のワクチン接種率は低い。7月25日現在、70歳代以上の3回目接種率は90%を超えるのに対し、12~19歳は33%だ。 6月16日、福島県相馬市が発表した調査結果が興味深い。相馬市はワクチン接種が全国で最も迅速に進んでいる自治体の1つだ。6月15日現在、中高生1834人中1066人(58.1%)が3回目接種を終えている。全国平均より27.1%高い。 相馬市によれば、4月1日から6月15日のオミクロン株流行期間に中高生65人が感染しているが、3回目接種完了者、未完了者の感染率は0.67%、7.16%だった(表)。相馬市では、3回目接種により、中高生の感染を91%予防したことになる。 (外部配信先では表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)』、政府が「若年世代のワクチン接種率」を低いままにしているのは、おかしい。「相馬市」に倣って接種率向上に努めるべきだ。
・『コロナに対しては徐々に免疫が形成される  この結果は、医学的にも納得がいく。コロナはインフルエンザのように、1回のワクチンで完全な免疫はできない。何度も感染し、何度もワクチンを打つことで、徐々に免疫が形成される。人生経験が短い若年世代は、新型コロナ流行前から存在した、従来型コロナに感染した経験が少なく、免疫をもっていなかったのだろう。ただ、高齢者と比べて、ワクチンへの反応性は高いから、ワクチンを追加接種することで、免疫力が急速に向上する。 以上、これから夏本番を迎える若者に伝えたい情報だ。科学的に合理的な対応を採りながら、夏を満喫していただきたい』、同感である。
タグ:同感である。 政府が「若年世代のワクチン接種率」を低いままにしているのは、おかしい。「相馬市」に倣って接種率向上に努めるべきだ。 「京都大学」は「履修上の配慮」を行うようだが、「東大」の官僚主義的対応は、「文科省」、「厚労省」と同じで、情けない。 「東京大学教養学部は、今年度の前期試験から感染者・濃厚接触者の救済措置を中止した。この結果、コロナに罹患したため、授業や試験を欠席せざるをえなくなり、留年を余儀なくされた学生もいるという」、ウィズコロナとは全く逆行する施策だ。「入学試験」では「救済措置」があるのとも整合的でない。 「脳に感染」、「急死」とは恐ろしい話だ。 飯塚 友道氏による「重症患者の7割にせん妄が出ている…新型コロナの「脳感染」が引き起こす肺炎より恐ろしい症状 肺炎が重症化していなくても呼吸不全を起こす場合がある」 PRESIDENT ONLINE 上 昌広氏による「コロナ感染の若者を見放す制度の不備にモノ申す 大学の定期試験や国家資格試験の機会損失大きい」 東洋経済オンライン 「たとえ、一定の犠牲に対し、国民が許容していたとしても、それを“よし”とはせず、科学的に最善の感染対策を考えるのが専門家の仕事です」、「過去をはるかに上回る第7波がやって来て、職務放棄したようにしか見えません。尾身氏は会長職を退くべきだと思います」、その通りだ。 従来から「尾身会長」の発言は、無責任で評判が良くなかったが、今回のは最悪だ。 日刊ゲンダイ「尾身会長がNHKで“職務放棄”の仰天発言!コロナ対策は自助で、犠牲は国民の「許容度」の問題」 「新型コロナウイルス感染での急死には、脳幹の生命中枢への直接的ダメージが関与していたと考えると納得がいくのです」、「新型コロナウイルス感染」の恐ろしさを再認識させられた。 「脳幹病変を示した患者でウイルス検出が多かったことは、感染の脳幹への直接的な影響を示唆しています」、なるほど。 「ウイルスの受容体であるACE2が存在し、そこにウイルスが到達するとACE2と結合して嗅覚神経細胞内に侵入し、嗅覚障害を起こすと想定されています。 実際、症状が出現した人の85%で嗅覚障害がみられています(*6)。その約半数では防御機構が感染を抑えて早期に嗅覚が回復しますが、残りの患者ではウイルスが嗅覚神経から脳内に侵入し、最終的には脳幹に達し、重度の呼吸不全を引き起こします」、「嗅覚障害」程度ならまだしも、「最終的には脳幹に達し、重度の呼吸不全を引き起こします」、恐ろしいことだ。 「142人の入院患者から採取した血清ではNfLは正常値よりも上昇していました。さらに、血清NfLの検出量は疾患の程度と関係していて、レムデシビルで治療された患者100人においては血清NfLが減少する傾向も見られました。このように重症度、治療の有無と神経損傷には関係があり、感染すると神経系に損傷を与えることの間接的な証拠になります」、なるほど。 「せん妄は平均年齢58歳の73%の患者で認められ」、かなり高い割合だ。「12%は退院後2カ月以内にうつ状態と診断」、本当に影響は深刻だ。 「米国ミシガン州からの報告」では、「集中治療室に入院した比較的重度の148人の患者を対象」、「せん妄は平均年齢58歳の73%の患者で認められ、その持続期間は4~17日で中央値は10日でした。 さらに、入院中にせん妄を発症していた患者の中で退院後の調査をしたところ、24%は自宅に退院した後にもせん妄が出現しました。また、23%は認知症を疑わせる持続した認知機能障害がみられ、12%は退院後2カ月以内にうつ状態と診断されています。せん妄は70歳以上の高齢者で出現しやすいことは知られていますが、平均年齢58歳の中 「神経症状は実に多様で、中枢神経系の症状(めまい、頭痛、意識障害、急性脳血管疾患、運動失調)、末梢まっしょう神経系の症状(味覚障害、嗅覚障害、視力障害および神経痛)、骨格筋損傷がみられました。重症の感染者の神経症状は急性脳血管疾患、意識障害、骨格筋損傷などでした。 この武漢の中枢神経障害のデータは、その後の各国からの報告よりは比較的低い頻度でした」、「重症の感染者の神経症状」はやはり恐ろしいものだ。 (その24)(重症患者の7割にせん妄が出ている…新型コロナの「脳感染」が引き起こす肺炎より恐ろしい症状 肺炎が重症化していなくても呼吸不全を起こす場合がある、尾身会長がNHKで“職務放棄”の仰天発言!コロナ対策は自助で、犠牲は国民の「許容度」の問題、コロナ感染の若者を見放す制度の不備にモノ申す 大学の定期試験や国家資格試験の機会損失大きい) パンデミック(経済社会的視点)
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医療問題(その37)(日本が「医療貧国」であるこれだけの理由 無駄に長い入院・過剰な病床数…、「うつは、感染症から体を守るための防御メカニズム」肥満や座りっぱなしがうつにつながる意外な理由 脳が私たちを引きこもらせようとする、東京女子医科大学病院の「ICU崩壊状態」を招いた、患者の命を軽視した経営方針と恐怖政治 東京女子医大の闇 #6) [生活]

医療問題については、6月16日に取上げた。今日は、(その37)(日本が「医療貧国」であるこれだけの理由 無駄に長い入院・過剰な病床数…、「うつは、感染症から体を守るための防御メカニズム」肥満や座りっぱなしがうつにつながる意外な理由 脳が私たちを引きこもらせようとする、東京女子医科大学病院の「ICU崩壊状態」を招いた、患者の命を軽視した経営方針と恐怖政治 東京女子医大の闇 #6)である。

先ずは、7月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した医師・医学博士の奥 真也氏による「日本が「医療貧国」であるこれだけの理由、無駄に長い入院・過剰な病床数…」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/305622
・『現在、日本は「医療先進国」だと言われている。しかし、その裏にある「多額の医療費」の存在を忘れてはならない。医師・医学博士の奥真也氏は、著書『医療貧国ニッポン』の中で、日本は医療費の公費負担割合が非常に高い一方、患者自身の負担額は少ないため、「安くて手厚い医療が当たり前」という意識から抜け出せず、将来的な医療費の増大に歯止めがかからない。この状況が続けば、医療費で国が破綻する「医療貧国」になってしまう、と警告する。本記事では、そんな日本の医療費増大の大きな要因である「入院日数の長さ」「病床の多さ」、さらには「乱立する赤字病院」という大問題に迫る。 ※本記事は奥真也著『医療貧国ニッポン』(PHP研究所)の一部を抜粋・再編集しています』、興味深そうだ。
・『日本の入院数は長すぎる!? その背景とは  日本の医療費増大に直結する問題はいくつかありますが、その1つが「入院日数の長さ」です。海外と比べてみると、日本は驚くほど長いことがわかります。 OECD加盟国の急性期医療の平均在院日数を見ると、ドイツ8.9日、フランス8.8日、イギリス6.9日、アメリカ6.1日、それに対して日本は16.0日と突出して入院期間が長いのです。アメリカだったら手術して3日後には退院するような病気でも、日本は7、8日後の退院になります。 しかし、これでも日本は以前に比べて入院期間がかなり短縮されるようになったのです。日本の診療報酬の支払い方式は、以前は入院も外来もすべて「出来高払い制」でした。医療行為をすればするほど診療報酬が増えるため、入院期間が必要以上に長くなりやすかったのです。) そこで入院医療費の適正化を図るために、2003年から「包括支払い制度」が取り入れられました。急性期入院医療を対象として、傷病の種類ごとに医療費を一括して計算する「疾診断群分類別包括評価制度(DPC制度:Diagnosis Procedure Combination)が導入されたのです。 これによって、入院日数が長引くことが医療機関の収益にプラスにならなくなったため、病院の都合で入院期間が引き延ばされるようなことは減りました。しかし、入院期間が短縮されると病床の空きが増え、病院としては経営に影響します。 病院にとって、「病床稼働率」は収益に大きく影響するのです。病床稼働率を上げるために、金曜日に入院、月曜日に退院というかたちを探る医療機関が日本にはいまだに存在します。 金曜日に入院しても、土日は医師の診療も検査もありません。場合によっては外泊OK、つまり自宅に帰ってもいいということもあります。まだ何も医療を受けていないのに、ベッド代はかかります。個室だったら差額ベッド代も取られます。 また退院は、土日をはさんで月曜日。建前としては、週が明けた月曜日に担当医師の診察を受けて退院許可が下りた、という体裁です。極端な例は減ってきましたが、悪い慣習は根絶されない。入院についての説明の際、患者さんは「この日に入院しないと、他に空きがありません」といわれて承諾することになるのでしょうが、例えば本来なら手術後、10日間の人が15日間の入院になったりする。 日本には「高額療養費制度」といって医衆費が高額になった場合はあとから還ってくる仕組みもありますから、入院が長引いても結果的に患者さん自身があまり懐を痛めることにならずに済むこともあって、まかり通っているのです。 厚労省は、金曜入院、月曜退院のケースが頻発する病院にぺナルティを課す制度を設けたりして病院側の都合で入院を引き延ばすことを抑刷しようとしていますが、まだまだこうしたことが行われている現実があります』、「病床稼働率を上げるために、金曜日に入院、月曜日に退院というかたちを探る医療機関が日本にはいまだに存在します。 金曜日に入院しても、土日は医師の診療も検査もありません。場合によっては外泊OK、つまり自宅に帰ってもいいということもあります。まだ何も医療を受けていないのに、ベッド代はかかります。個室だったら差額ベッド代も取られます」、こんなやり方がまかり通っているとは驚いた。
・『日本は「病床大国」でもある コロナで病床逼迫だったのはなぜ?  さらに、日本の医療体制の中で、海外に比べて日本が抜きん出て多いものがまだあります。それは「人口あたりの病床数」です。OECD加盟国の病床数(人口1000人当たり)を見ると、日本は12.8床でトップです。OECD平均は4.4床なので、平均の3倍近くの数があることになります。 しかし、ここである疑問が頭に浮かぶ方もいるかもしれません。「こんなに病床が多いのに、コロナ禍で病床逼迫が叫ばれていたのはなぜ?」と。 日本では病床は、「精神病床」「感染症病床」「結核病床」「療養病床」「一般病床」と分類されています。2020年当時、新型コロナの患者急増の対応に感染症病床だけでは足りないということで、行政側は他の病床をコロナ用に回せないかと病院に要請したわけです。 当初、病院側は積極的ではありませんでした。病床稼働率が収益に響くのに、いつ来るかわからない患者のために何床もベッドを空けておくことに難色を示したのです。そこで、国がベッド空け賃として補助金を手厚く出すことにしたら、協力的なところが増えたという経緯がありました。 病床そのものが本当に逼迫した状態になったことは、日本ではあまりなかったのではないかと思います。実際に逼迫していたのは、ベッドよりも医師や看護師などの医療スタッフです。ケアするスタッフがそろわなくて対応できなかったというのが実情です。 重症患者に用いる人工心肺装置「ECMO(エクモ)」にしても、日本は保有台数がとても多いのです。しかしエクモを操作できる技師がまだ少なく、24時間態勢の医療に対応するには2交代、3交代のスタッフが必要になります。 が、それだけのスタッフを揃えられない状況で他の診療部門には余剰人員がいても、簡単に配置転換できないなど、制度の運用が硬直化しているという側面もありました。コロナ禍の日本の「医療過迫」は、見かけ上の医療スタッフの逼迫、人不足の問題でもあったのです。 話を病床の多さに戻しましょう。日本はもともとそんなに病床の多い国ではありませんでしたが、1970年代から1990年ごろにかけて、猛烈な勢いで病床が増えました。 高齢者の医療費無料化を実践した第二次田中内閣が、「一県一医大構想」を打ち出したため、次々と地方に医科大学が新設され、併せて付属病院がつくられました(なお、医科大学が新設され、その後に附属病院がつくられるのは日本特有のやり方で、アメリカなどは異なります)。 また、自宅でケアできない高齢者のための療養病床がどんどん増やされました。日本には海外のナーシングホームにあたる長期療養型の施設がなかったため、本来ならば病院を退院して療養施設に移るのが望ましい人たちに対して、長期的な入院措置がとられている状況がありました。 例えば、精神疾患を持つ人たちを収容している精神病床などもそうです。入院というより、社会に出さないための超長期的収容施設です。高齢者用の療養病床が「社会的入院」と呼ばれたのも、それに近い仕組みといえます。こういった長期入院が多いことも日本の病床の多さに関係しています。 先進諸国は、医療の効率化を目指して入院日数を短縮させたり、病床回転率を上げたりするなどして、病床数そのものを減らす方向に進められています。日本も同じように、病床を減らしたいのです。実際、厚労省が医療計画に基づいて病床の総量規制を求めています。けれども法的に病床の新設を認めないという規制はあっても、病床を減らせという規制はかけにくいです。民業を圧迫することはつねに慎重に行われます。 国や知事などの行政は、医療機関や医師に対して「命令」することができず、「要請」か「誘導」しかできません。医師免許が強い権限を持っていることにも関連します。日本は、経済も社会も上り調子だった時代にたくさん病床がつくられました。当時の状況からほぼ横ばいのまま、多くの病床がいまも残っているのです』、「実際に逼迫していたのは、ベッドよりも医師や看護師などの医療スタッフです。ケアするスタッフがそろわなくて対応できなかったというのが実情です・・・コロナ禍の日本の「医療過迫」は、見かけ上の医療スタッフの逼迫、人不足の問題でもあったのです」、「長期療養型の施設がなかったため、本来ならば病院を退院して療養施設に移るのが望ましい人たちに対して、長期的な入院措置がとられている状況がありました」、「精神疾患を持つ人たちを収容している精神病床などもそうです。入院というより、社会に出さないための超長期的収容施設です。高齢者用の療養病床が「社会的入院」と呼ばれたのも、それに近い仕組みといえます。こういった長期入院が多いことも日本の病床の多さに関係しています」、「国や知事などの行政は、医療機関や医師に対して「命令」することができず、「要請」か「誘導」しかできません」、なるほど。
・『病院が赤字経営に苦しむ時代 国公立病院が特に深刻  国民皆保険制に基づいた日本の公的医療保険制度は、個人負担は軽いにもかかわらず、高いレベルの医療をみんなが受けられる、至れり尽くせりといってもいいようなラグジュアリーな制度です。世界一の高齢化、長寿化は、こうした手厚い保険制度があったからこそなしえたことだということができるでしょう。 しかし、これまでのやり方では、もうやっていけないのです。なぜなら、日本では赤字経営に苦しむ病院が多数存在しているからです。 ニッセイ基礎研究所が厚生労働省「医療経済実態調査」を基に発表したレポートによれば、医療法人設立の病院は黒字の病院が増加傾向にあるが、それでも全体の65%ほどです(2018年)。さらに、国公立の病院を見ると、黒字の病院の割合は減少傾向で、全体のわずか7%に過ぎません。とくに損益率がマイナス30%を下回る赤字病院の数は25%にも上ります。 一般企業であれば、採算のとれない赤字部署は潰されたり再編されたりして淘汰されていきます。しかし病院は医療を提供する場という役割があるため、簡単に潰したりすることができません。 とくに、地域医療の提供者として公的な性格を強く持つ公立病院はそうです。一方、公立病院は、民間病院よりも経営に対する危機感がシビアではない、ともいえます。いざとなったら税金で補填されてなんとかなるだろうという意識があるからです。 厚労省は2019年、赤字経営が目立ち、再編統合の必要があると見られる全国424の公的病院名を公表しました。これらの病院には、病床数の削減や診療機能の縮小、他病院との統合といった赤字経営脱却のための施策の実施を要請しています。 コロナ禍によってしばらくこの話は下火になっていましたが、ポストコロナの時代になって、あなたの住む地域の病院もこれから大きな変革が迫られるようになります』、「国公立の病院を見ると、黒字の病院の割合は減少傾向で、全体のわずか7%に過ぎません。とくに損益率がマイナス30%を下回る赤字病院の数は25%にも上ります」、「ポストコロナの時代になって、あなたの住む地域の病院もこれから大きな変革が迫られるようになります」、「公立病院」の「赤字経営脱却のための施策」が急務のようだ。

次に、7月23日付けPRESIDENT Onlineが掲載した精神科医のアンデシュ・ハンセン氏による「「うつは、感染症から体を守るための防御メカニズム」肥満や座りっぱなしがうつにつながる意外な理由 脳が私たちを引きこもらせようとする」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/59739
・『私たちはなぜうつになるのか。『スマホ脳』や『最強脳』で、脳のメカニズムを明らかにしてきたスウェーデンの精神科医、アンデシュ・ハンセンさんは「社会的な要因を疑う人は多い。人間関係、仕事や学校などだ。しかしその視点で見ている限り、うつにも役割があることを理解できないだろう」という――。(第1回/全3回) ※本稿は、アンデシュ・ハンセン『ストレス脳』(新潮新書)の一部を再編集したものです』、興味深そうだ。
・『なぜ「炎症」が起こるのか  精神的になるべく元気でいるためには、免疫系とうつの関係を知っておいたほうがいい。その理由を理解するために、混同されがちな2つの概念──「感染」と「炎症」──を見ておこう。 「感染」とは身体が感染性物質、つまり細菌やウイルスに冒されている状態だ。一方「炎症」というのは物理的に圧迫されたり、怪我けがをしたり、毒や細菌、ウイルスによる攻撃など、あらゆる刺激に対して身体が返す答えだ。つまり炎症は感染によっても起きるが、別の要因によっても起きる。 腕を掻いて皮膚が赤くなるのも炎症だ。パンをカットする際に手が滑って指を切ったら、それも炎症。あなたの膵臓から腹部に消化酵素が漏れ出して命が危うくなるのも炎症の一種だ。 身体のどこが炎症を起こしているにしても、次のようなことが起きる。組織が損傷したり、圧迫、細菌、ウイルスによって影響を受けた細胞は、サイトカインという形で緊急シグナルを発する。その部分への血流を増やして、白血球に侵略者を倒させるためだ。血流が増えるとその部分が腫れて、神経を圧迫するので痛みが生じる』、人体は本当によく出来ていると再認識した。
・『炎症は人間を守ってきた  炎症は多くの病気において中心的な要素なので、なるべく起きてほしくないと思うだろう。しかしそれは大きな間違いで、私たちは炎症なくしては生きられない。とはいえ、良いことも度がすぎると良くないのは世の常だ。炎症が長期間続くと問題が生じてしまう。心筋梗塞や脳卒中、リューマチ、糖尿病、パーキンソン病、アルツハイマー型認知症などは長く続いた炎症が主な原因になる病気のほんの一部だ。 長期的、つまり慢性的な炎症は様々な深刻な病気を引き起こす。それでは、なぜ私たちにはそんなに大きな弱味があるのかという問いが芽生える。身体のあちこちで病気を引き起こすリスクを抱えるなんて、進化がどこかでうっかり間違えたのだろうか。 いや、そうではない。炎症は祖先が子供の頃に命を奪う恐れのあったものから私たちを守ってきた。例えば死に至る細菌やウイルスへの感染だ。一方で、慢性的な炎症からくる病気というのは基本的に人生のあとのほうで生じる。進化の秤にかけると、歴史的にほとんどの人が到達しなかった年齢になってから生じる病気よりも、細菌やウイルスから命を守ることのほうが重いのだ』、「炎症は祖先が子供の頃に命を奪う恐れのあったものから私たちを守ってきた。例えば死に至る細菌やウイルスへの感染だ」、なるほど一定の効用があるようだ。
・『座りっぱなし、ストレス、睡眠不足、肥満が引き起こす炎症  さらに重要なのが、現在では炎症を起こす要因が昔と同じではないことだ。人間の歴史のほとんどの期間、炎症は細菌やウイルスによる感染や怪我で起きていた。それが今では現代的なライフスタイルが炎症を引き起こしている。 長いことじっと座っていると筋肉や脂肪組織の炎症につながることが判明しているし、長期的なストレス(日や数週間ではなく、数カ月や数年という期間)も全身の炎症の度合いを高めるようだ。睡眠不足や環境汚染物質にも同じ作用がある。加工食品は胃腸の炎症につながるし、肥満も脂肪組織の炎症につながり、喫煙は肺や気道の炎症を引き起こす。 歴史的に炎症を起こしてきたもの──細菌やウイルスそして怪我は、ほとんどの場合、一過性のものだ。しかし現代の要因──ずっと座っていること、肥満、ストレス、ジャンクフード、喫煙、環境汚染物質などは長く続く傾向がある。体内のプロセスとして歴史的には短期的だった炎症が、今では進化で適応してきたよりも長く続くようになった』、「歴史的に炎症を起こしてきたもの──細菌やウイルスそして怪我は、ほとんどの場合、一過性のものだ。しかし現代の要因──ずっと座っていること、肥満、ストレス、ジャンクフード、喫煙、環境汚染物質などは長く続く傾向がある」、「長く続く」「炎症」はどのような影響を及ぼすのだろう。
・『身体にとっては「炎症は炎症」  身体が炎症の原因を見分けられれば、免疫系を無駄に起動させなくてすむのだが、問題は身体が「炎症は炎症」と捉え、現代のライフスタイル要因を細菌やウイルスに攻撃されているのと同じように解釈してしまうことだ。 身体はつまり、炎症が感染によるものなのか現代のライフスタイル要因によるものなのかを見分けることができない。 同じことが脳についても言える。現代の炎症要因でも、細菌やウイルスに攻撃されている時と同じシグナルが脳に送られてしまう。そのシグナルが長く続きすぎると──そして現代の炎症要因というのは長期的なものだから──脳は「命が危険にさらされていて、常に攻撃を受けている!」と誤解してしまう。そこで脳は気分を下げるという調整を行い、私たちを引きこもらせようとする。精神的に立ち止まらせ、その状態が長く続く。何しろ現代の炎症要因というのは自然に消えてくれることはないのだから。 結果として長期的に精神が停止状態に陥る。つまり私たちがうつと呼ぶ状態だ。このように、うつも炎症に起因する病気のリストに入ってくるのだ』、「現代の炎症要因でも、細菌やウイルスに攻撃されている時と同じシグナルが脳に送られてしまう。そのシグナルが長く続きすぎると・・・脳は「命が危険にさらされていて、常に攻撃を受けている!」と誤解してしまう。そこで脳は気分を下げるという調整を行い、私たちを引きこもらせようとする。精神的に立ち止まらせ、その状態が長く続く。何しろ現代の炎症要因というのは自然に消えてくれることはないのだから。 結果として長期的に精神が停止状態に陥る。つまり私たちがうつと呼ぶ状態だ。このように、うつも炎症に起因する病気のリストに入ってくるのだ」、「うつ」も「炎症に起因する病気のリストに入ってくる」、なるほど。
・『現代最大の炎症要因、ストレスと肥満  現代における最大の炎症要因、長期的なストレスと肥満を詳しく見てみよう。身体の最も重要なストレスホルモン、コルチゾールにはエネルギーを動員する役割がある。 例えば犬に激しく吠えられるとコルチゾールのレベルが上がり、尻尾を巻いて逃げられるように、筋肉にエネルギーが送られる。しかし危険が過ぎ去るとコルチゾールには別の役割がある。体内の炎症を鎮めるというものだ。つまりコルチゾールは炎症のスイッチを切るタイミングを制御している』、なるほど。
・『身体が反応するのをやめてしまう  長期間ストレスにさらされているとコルチゾールのレベルが高いまま暮らすことになり、ついには身体がそのレベルに慣れてしまう。何度も「オオカミが来たぞ!」と叫ぶのと同じで、最後には誰にも気にしてもらえなくなるのだ。その結果、身体はコルチゾールに反応するのをやめ、炎症を鎮める能力を失ってしまう。 なぜそれがそんなに重要なのかを説明しよう。身体では常に小さな炎症が起きている。肌についた小さな傷、筋肉の小さな亀裂、もしくは血管の内側の傷などだ。それ自体はごく自然なことだし、コルチゾールがそういった炎症を見守ってくれる。しかし身体がコルチゾールに反応するのをやめてしまうと、小さな炎症はくすぶったままになり、全身の炎症の度合いが上がってしまう。そういうことが長期的なストレスによって起きてしまうのだ。 しかしあらゆるストレスが危険だという結論には走らないでほしい。ストレスは生き延びるために重要な意味をもつ。ただし身体はストレスのシステムが常にオンになっているようにはできていないのだ』、「長期間ストレスにさらされているとコルチゾールのレベルが高いまま暮らすことになり、ついには身体がそのレベルに慣れてしまう」、「身体はコルチゾールに反応するのをやめ、炎症を鎮める能力を失ってしまう」、「小さな炎症はくすぶったままになり、全身の炎症の度合いが上がってしまう」、なるほど。
・『「回復」がエネルギー動員のスイッチを切る  つまりここでポイントになるのは「回復」だ。具体的に言うと、ストレスによって起きるエネルギー動員のスイッチを切ること。回復さえできれば、たいていのストレスには勝つことができる。 回復に必要な時間は個人差があるが、目安としては、労働負荷の軽い仕事ならシフトとシフトの間の休憩は16時間で足りる。仕事の負荷が重い場合は回復にもっと時間がかかり、週末および時には長期休暇も必要になる。回復の際には睡眠と休養を優先すること。リラックスし、色々な「やらなければいけないこと」を最低限に抑えることだ。 長期的なストレス以外には、確実に「肥満」が体内で炎症を起こす最大の要因だ。脂肪組織は単なるエネルギー備蓄ではなく、サイトキシンが全身にシグナルを送って免疫系を起動する。 自分の身体の一部を脅威と見なすなんて、身体はなぜ自分自身のエネルギー備蓄に対して免疫系を動員するのだろうか。確実な答えは誰にもわからないが、可能性としては、肥満が歴史的には存在しなかったからかもしれない。身体はお腹周りの脂肪を見知らぬものと認識し、炎症を起こすことで侵入者、つまり余分な脂肪に闘いを挑むのだ。 肥満がうつのリスクを高めるのは、肥満自体が社会的に不名誉であることも要因だが、脂肪組織の炎症のせいだという可能性もあるのだ』、「身体はお腹周りの脂肪を見知らぬものと認識し、炎症を起こすことで侵入者、つまり余分な脂肪に闘いを挑むのだ。 肥満がうつのリスクを高めるのは、肥満自体が社会的に不名誉であることも要因だが、脂肪組織の炎症のせいだという可能性もあるのだ」、やはり「肥満」も出来るだけ避ける方がよさそうだ。
・『脳が私たちを引きこもらせる  ここまでの内容をまとめてみよう。あなたや私は狩猟採集をして暮らすよう進化した。しかし座っている時間が長く、恒常的にストレスを受け続ける現代のライフスタイルによって、体内で炎症の度合いが高くなっている。それを脳が「危険にさらされている」と解釈する。人間の歴史のほとんどの期間、脳にそれを伝えることが炎症の役割だったのだから。 そして常に攻撃を受けているのだと認識する。だから脳は感情を使って私たちを引きこもらせる。感情というのは私たちの行動を制御するために存在するからだ。 脳は私たちのテンションを下げ、気分を落ち込ませ、精神状態を悪化させ、そのせいで私たちは引きこもる。炎症はつまり感情のサーモスタットなのだ。炎症が起きれば起きるほど、精神状態を悪くしなければいけない。私たちの中にはそのサーモスタットがとりわけ過敏な人もいて、それも部分的には遺伝子によるものなのだが、うつになる可能性を高めてしまう。 ということは、うつの人は全員体内で炎症が起きているのだろうか。そういうわけではない。炎症はうつを引き起こす重要な要因の1つだが、要因は炎症だけではない。 うつ全体の3分の1程度が炎症に起因しているとされる。ならばうつにも抗炎症剤が効くのではないかと思うだろう。そう、まさに効くことを示す点が多くある。炎症性サイトカインの産生をブロックする薬はうつにもある程度の効果がある。その薬だけでは充分な効果がないのだが、抗うつ薬の効果を高めるようだ。ただし、それはあくまでうつの原因が炎症だった場合で、そうでなければ効果はない』、「炎症はうつを引き起こす重要な要因の1つだが、要因は炎症だけではない。 うつ全体の3分の1程度が炎症に起因しているとされる」、なるほど。
・『うつは「隠された防御メカニズム」  私が診たうつ患者の多くが、自分は何が原因でうつになったのだろうかと頭をひねっていた。 社会的な要因を疑う人は多い。人間関係、仕事や学校などだ。しかしその視点で見ている限り、うつにも役割があることを理解できないだろう。 先述のとおり、うつを生理現象として捉え、細菌やウイルスとの関係性も考慮しなくてはならない。つまり、今日私たちにふりかかる比較的軽度な脅威ではなく、私たちが地球に現れて99.9%の時間、2人に1人の命を奪ってきた要因を元にして考えるということだ。 うつとはつまり、私たちを様々な感染から救ってきた「隠された防御メカニズム」なのだ。しかし現代のライフスタイルがその防御メカニズムを暴走させてしまうことがある』、「うつは「隠された防御メカニズム」、意外な事実だ。
・『うつは肺炎や糖尿病と変わらない  精神医学だけではなく、生理学的な見地からもうつを考えるうちに気づいた点がある。生物学上、うつは肺炎や糖尿病と何ら変わらない。肺炎も糖尿病もうつも、その人の性格に問題があるせいではない。だから、うつの人に「しっかりしろ」と声をかけるのは、肺炎や糖尿病の人に「しっかりしろ」とはっぱをかけるくらい馬鹿げている。病院で肺炎や糖尿病の治療を受けるのと同じで、うつも治療を受けるべき状態なのだ。 うつの生物学的な仕組み、そしてなぜうつが引き起こされるのかを学んだからといって、すぐに治るわけではない。だが、そこからスタートするのは悪くない。自分の脳や精神状態が免疫学的なプロセスに左右されるという知識をもつことで、私自身もライフスタイル関連のアドバイスを真剣に受け止めるようになった。 当然あなたも「運動はしたほうがいいし、しっかり睡眠を取って、予測不可能なストレスや長期的なストレスは減らしたほうがいい」というのはわかっているだろう。しかし「なぜ」そうしたほうがいいのかという生物学的な理屈を学ぶことで、運動、睡眠、適度なストレス、そして回復というアドバイスが深い意味を帯びるようになる。そういった要因が炎症にブレーキをかけること、脳が「攻撃されている」と誤解するようなシグナルをそれ以上送らないようにすることを学べば、それに適した生活をするようになるだろう』、「しかし「なぜ」そうしたほうがいいのかという生物学的な理屈を学ぶことで、運動、睡眠、適度なストレス、そして回復というアドバイスが深い意味を帯びるようになる。そういった要因が炎症にブレーキをかけること、脳が「攻撃されている」と誤解するようなシグナルをそれ以上送らないようにすることを学べば、それに適した生活をするようになるだろう」、その通りだ。
・『脳の“病気”というより“正常な反応”  だからと言って、炎症に抗う方法なら何でも──例えば特定の食事療法など──がうつに効くというわけではない。残念ながらそんなに単純な話ではないのだ。 起きている間ずっと予測不可能なストレスを受け続ける職業もある。そんな労働環境がなぜうつにつながるのか、それも理解できるようになる。 無気力になり引きこもりたくなるのは病気ではなく、健全な反応なのだ。つまり一番良いのは労働環境を変えること。もちろん言うは易しだが、ここでポイントになるのは、異常な環境に対する異常な反応は脳の病気というよりむしろ正常な反応だということだ』、「異常な環境に対する異常な反応は脳の病気というよりむしろ正常な反応だということだ」、これまでの誤解がクリアに払拭できた。

第三に、8月20日付け文春オンライン「東京女子医科大学病院の「ICU崩壊状態」を招いた、患者の命を軽視した経営方針と恐怖政治 東京女子医大の闇 #6」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/56739
・『集中治療科の医師9人が一斉退職することが決まり、ICU(集中治療室)が事実上の崩壊状態になる、東京女子医科大学病院。9月から移植など高度な外科手術がストップするなど、東京都民の命が脅かされる可能性が高い。取材の結果、患者の命を無視した経営方針と、職員の医師たちを恐怖で支配する女子医大の異常な実態が見えてきた。 疑惑追及キャンペーン第5弾の後編は、複数の女子医大関係者の証言によって、前代未聞のICU崩壊状態に至る内幕を告発する。(前編#5を読む/最初から読む:東京女子医大の闇 #1 #2 #3 #4) ※女子医大は教職員に対して、メディア取材に個別対応すると懲戒処分を行うと通告している。そこで本記事は個人の特定を避けるために、複数の職員の証言を区別せずに表記した』、興味深そうだ。
・『死亡事故の再発防止策「小児ICU」を託されたのはカナダの大学で活躍していた専門医のA氏(女子医大「ICU崩壊状態」の原点、それは、苦労して設立した集中治療科の「小児ICU」チームを8カ月で解散させた、経営陣の不可解な対応にあった。 そもそも小児ICUが設立されたのはある重大な事故がきっかけだった。2014年、当時2歳の孝祐くんが、女子医大病院の耳鼻咽喉科で手術を受けた後、鎮静薬プロポフォールを過剰投与されて死亡したのである。医師の間で情報が共有されず、責任の所在が不明確だったことなどが原因だったとされる。 第三者委員会は、再発防止策として、8つに分散していた「ICUの集約化」、そして「小児ICUの新設」(医療機関での呼称はPICU)などを提言した。女子医大はまずICUを集約化してから、次に小児ICUの設立に向けて動いた。 「小児の集中治療専門医はとても少なく、カナダの大学で活躍していた日本人のA氏に白羽の矢が立ちました。2020年1月、A氏に一時帰国してもらい、岩本絹子理事長との面談を経て、小児ICUの責任者(特任教授)として内定したのです」(女子医大関係者)』、「小児の集中治療専門医はとても少なく、カナダの大学で活躍していた日本人のA氏に白羽の矢が立ちました。2020年1月、A氏に一時帰国してもらい、岩本絹子理事長との面談を経て、小児ICUの責任者(特任教授)として内定」、「小児ICUの責任者」の決定は、極めて重要な意味があった筈だ。
・『経営陣は小児ICUが救った子供の命にあまり関心を示さなかった  ただし、A氏が赴任する上で、解決しなければならない問題があった。一般病院の5割~7割程度といわれる、女子医大の低い給与体系だ。 「女子医大の医師は、低い給与を補うために週1~2回、他院でアルバイトをしています。しかし、小児ICUは24時間体制の勤務なので、アルバイトが難しい。それで、A氏は一時帰国した際、一般病院並みの給与を保証してほしいと岩本理事長に相談して、その場で了承されたそうです」(同) こうして2021年、A氏はカナダから帰国し、集中治療科の小児ICU特任教授に就任した。6人の小児ICU専門医と専属の看護師が集まり、7月に小児ICUが始動する。 すぐに成果は現れた。新型コロナで重症になった小児の患者を引き受け、全員が元気に退院。さらに、心臓移植を待つ小児患者など、全国各地から重症の子供たちを次々と受け入れていく。 だが、経営陣は小児ICUが救った子供の命にあまり関心を示さなかった、と関係者は証言する』、「経営陣は小児ICUが救った子供の命にあまり関心を示さなかった」、病院の「経営陣」としては、何を考えているのだろう。
・『「土下座するつもりで、岩本理事長に謝ってもらっていいですか」  「経営陣は、小児ICUの採算性とA特任教授の給与に着目していました。岩本理事長は、『他の職員とのバランスがとれない』と一方的に給与の合意を撤回したのです。これに驚いたA特任教授は丸義朗学長に説明を求めましたが、納得のいく返答はなかった、と肩を落としていました」(同) しかも経営陣は、A特任教授が説明を求めた行動自体を問題視した。上司にあたる、集中治療科の野村岳志教授に対して、驚くべき要求をしたという。 「医学部長らから『A先生の件で、岩本理事長に会ってください』と言われたそうです。どうしたらいいのかと聞くと、『土下座するつもりで、岩本理事長に謝ってもらっていいですか』と。もちろん、野村教授は断ったと聞きました」(同) 岩本理事長に土下座して謝る――。 もし本当なら、教育機関としてのモラルを疑う言葉だ。さらに、今年2月の教授会で、丸学長が次のような説明を行っていた』、「医学部長」が「上司にあたる、集中治療科の野村岳志教授に対して」「土下座するつもりで、岩本理事長に謝ってもらっていいですか」、驚くべき打診だ。
・『「発言は YES という意味ではなかったのでしょうか」  「A特任教授は、カナダで年収7000万円だったので、本学で2500万から3500万の給与を要望したが、理事長は応じなかった。A特任教授と規定以上の給与の合意はない」(2/18 教授会での丸学長発言要旨) 教授会から2日後、集中治療科の野村岳志教授は、丸学長にメールを送った。全教授らにBCCで同時配信したので、公開質問状といえるだろう。 「(A特任教授が一時帰国した)2020 年1月、田邉病院長、私、A先生で、岩本理事長と経営統括部長に面談しました。私はよく覚えております。給与総額について理事長は 1、2 秒考え、『そのくらい大丈夫よね、部長』 と経営統括部長に伝え、彼は無言で首を縦に振りました。理事長から『では、頑張ってください』と激励を受けました。この発言は YES という意味ではなかったのでしょうか。 また、A特任教授は、カナダの大学でそんなに貰っていないとのことです。どうして、そのような話をされたのか、確認させてください」(2/20 野村教授から丸学長宛メールより抜粋要約) 回答を求められた丸学長は、直接答えずに、法務部の弁護士に対応させた。 「理事長との面談時にいかなるやり取りがあったにせよ、教員の給与は学長が決定する権限を有しておりますので、理事長との面談のみにより教職員との給与を確定させることはできません」(2/25 女子医大・法務部弁護士からのメールより、抜粋) 木で鼻をくくったような回答である。しかもA特任教授のカナダでの給与について、丸学長がなぜ虚偽の説明をしたのか、法務部の弁護士は答えていない』、「丸学長がなぜ虚偽の説明」をしたのかも疑問だ。
・『リーダーを失った小児ICUチームは“解散”  この一方で、丸学長はA特任教授に対して、「令和4年度の契約は更新しない」と言い渡していた。 A特任教授は、辞表を提出せざるを得なかった。だが、筆者が入手したA特任教授の辞令に、任期は「令和5年3月31日」までと記されていた。つまり、女子医大は任期を1年残して、A特任教授に事実上の解雇通告したことになる。 リーダーを失った小児ICUチームは、医師全員が辞職や異動したことで“解散”となった。 「小児ICUは、幼い命に対する重い責任を背負っていました。同時に、女子医大にしか救えない重症の子供たちの命を守るという、使命感もありました。こうした現場のことを、経営陣は何も理解していなかった。ただ気に入らないから壊した、としか思えません」(女子医大関係者)』、「こうした現場のことを、経営陣は何も理解していなかった。ただ気に入らないから壊した、としか思えません」、信じ難い状況だ。
・『経営陣の「患者の安全性を軽視した判断」  経営陣の暴挙は、これだけではない。集中治療科のホームページを担当する医師が、「小児集中治療専門医は全員退職、2022年2月末で小児ICUの運用は停止」とサイトに記したところ、これが問題だとして、女子医大は、医師に「降格」の懲戒処分を行ったのである。なぜ医師は処分の対象となるのか──。 「経営側にとって都合が悪かったのです。女子医大が多額の貸付を受けている福祉医療機構(厚労省の関連団体)などに、A特任教授らが辞表を出した後も『小児ICUは維持していく』と説明していたので、整合性がとれなくなりますから」(同) 野村教授はこの件に関連して、メール履歴を勝手に調べられ、部下の監督不行き届などの理由で、「減給」の懲戒処分を受けた、と関係者は語った。 「みんな恐怖政治に怯えています。女子医大の内部監査室に警察OBを雇って、メールの内容まで勝手にチェックするなんて、教育機関とは思えません」(同) 事実上の“ICU崩壊”が迫る中、8月16日に行われた女子医大病院の会議で、板橋道朗病院長は当面の方針を示した。 「9月からICUに入室した患者は、各々の診療科で責任を持って管理する。何かあったら、麻酔科と救命救急センターの先生が駆けつける体制を継続する。安定するまでは、リスクの高い症例は控えてもらう。一致団結して、安全な集中治療体制を維持していきたい」 各診療科で対応という苦肉の策で、体面上は“ICUを維持”するという。これに対して、現場の医師たちからは疑問の声が相次いだ。 「移植でかなりICUを使っていたので、これから患者を救えなくなるかもしれない、と本当に危惧している」 「大半が集中治療に慣れていないので、今までのようには対応できない。高度な医療をすると、事故を起こす可能性がある」 「小児ICUも潰されてしまった。スタッフが減る予定で、当直が回せるかどうか本当にギリギリ。ICUを診ろと言われると厳しい」 また、板橋病院長は、7月半ばに野村教授が辞表を提出するなど、動きが急激だったので(後任などの準備が)間に合わなかったと会議で説明した。だが、内情をよく知る関係者は次のように証言する。 「後任の医師を探す時間をつくるため、野村教授は6月に辞表を提出した、と聞いています。けれども経営陣は、医師を確保できず、最近までICUに最も関係する外科にも知らせませんでした。9月に移植手術を予定している診療科は大混乱です」(女子医大関係者)』、「女子医大が多額の貸付を受けている福祉医療機構(厚労省の関連団体)などに、A特任教授らが辞表を出した後も『小児ICUは維持していく』と説明」、よくぞこんないい加減な説明をするものだ。
・『孝祐くんを失った父親「強い怒りを覚えます」  当時2歳の孝祐くんを失った父親は、小児ICUチームの解散に続き、事実上のICU崩壊が避けられない状況について、次のように述べた。 「女子医大は、ICUの管理体制を抜本的に見直して、二度と同じ過ちを繰り返さないと、私たち遺族に説明してきました。それは全て嘘だったのでしょうか。現場の医師や看護師の努力を傲慢にも踏みにじった経営陣に、強い怒りを覚えます」 経営陣に翻弄され続けたICUのスタッフたち。騒動の渦中にいる野村教授が、こんなことを言っていたという。 「女子医大の良さは、自由で新しいことにチャレンジする精神でした。それがすっかり変わってしまった。反対意見さえも言えないのなら、ここで医師を教育することはできません」 これまで筆者は、週刊文春と文春オンラインで、女子医大の「疑惑のカネ」について報じてきた。さらに、国税局課税部資料調査課が、「疑惑のカネ」をめぐり税務調査を続けている。それでも経営陣の責任を問う動きは、女子医大の組織内から起きていない。 このままでは、ICUの事実上の崩壊に連鎖して、さらに多くの医師や看護師が去っていき、女子医大は自壊するだろう。その影響を受けるのは、ここで学ぶ約1400人の学生と、命を預ける患者たちである。(前編#5を読む)』、「「女子医大の良さは、自由で新しいことにチャレンジする精神でした。それがすっかり変わってしまった。反対意見さえも言えないのなら、ここで医師を教育することはできません」、経営陣はどうするつもりなのだろうか。
タグ:(その37)(日本が「医療貧国」であるこれだけの理由 無駄に長い入院・過剰な病床数…、「うつは、感染症から体を守るための防御メカニズム」肥満や座りっぱなしがうつにつながる意外な理由 脳が私たちを引きこもらせようとする、東京女子医科大学病院の「ICU崩壊状態」を招いた、患者の命を軽視した経営方針と恐怖政治 東京女子医大の闇 #6) 医療問題 ダイヤモンド・オンライン 奥 真也氏による「日本が「医療貧国」であるこれだけの理由、無駄に長い入院・過剰な病床数…」 奥真也著『医療貧国ニッポン』(PHP研究所) 「病床稼働率を上げるために、金曜日に入院、月曜日に退院というかたちを探る医療機関が日本にはいまだに存在します。 金曜日に入院しても、土日は医師の診療も検査もありません。場合によっては外泊OK、つまり自宅に帰ってもいいということもあります。まだ何も医療を受けていないのに、ベッド代はかかります。個室だったら差額ベッド代も取られます」、こんなやり方がまかり通っているとは驚いた。 「実際に逼迫していたのは、ベッドよりも医師や看護師などの医療スタッフです。ケアするスタッフがそろわなくて対応できなかったというのが実情です・・・コロナ禍の日本の「医療過迫」は、見かけ上の医療スタッフの逼迫、人不足の問題でもあったのです」、「長期療養型の施設がなかったため、本来ならば病院を退院して療養施設に移るのが望ましい人たちに対して、長期的な入院措置がとられている状況がありました」 「精神疾患を持つ人たちを収容している精神病床などもそうです。入院というより、社会に出さないための超長期的収容施設です。高齢者用の療養病床が「社会的入院」と呼ばれたのも、それに近い仕組みといえます。こういった長期入院が多いことも日本の病床の多さに関係しています」、「国や知事などの行政は、医療機関や医師に対して「命令」することができず、「要請」か「誘導」しかできません」、なるほど。 「国公立の病院を見ると、黒字の病院の割合は減少傾向で、全体のわずか7%に過ぎません。とくに損益率がマイナス30%を下回る赤字病院の数は25%にも上ります」、「ポストコロナの時代になって、あなたの住む地域の病院もこれから大きな変革が迫られるようになります」、「公立病院」の「赤字経営脱却のための施策」が急務のようだ。 PRESIDENT ONLINE アンデシュ・ハンセン氏による「「うつは、感染症から体を守るための防御メカニズム」肥満や座りっぱなしがうつにつながる意外な理由 脳が私たちを引きこもらせようとする」 『ストレス脳』(新潮新書) 人体は本当によく出来ていると再認識した。 「炎症は祖先が子供の頃に命を奪う恐れのあったものから私たちを守ってきた。例えば死に至る細菌やウイルスへの感染だ」、なるほど一定の効用があるようだ。 「歴史的に炎症を起こしてきたもの──細菌やウイルスそして怪我は、ほとんどの場合、一過性のものだ。しかし現代の要因──ずっと座っていること、肥満、ストレス、ジャンクフード、喫煙、環境汚染物質などは長く続く傾向がある」、「長く続く」「炎症」はどのような影響を及ぼすのだろう。 「現代の炎症要因でも、細菌やウイルスに攻撃されている時と同じシグナルが脳に送られてしまう。そのシグナルが長く続きすぎると・・・脳は「命が危険にさらされていて、常に攻撃を受けている!」と誤解してしまう。そこで脳は気分を下げるという調整を行い、私たちを引きこもらせようとする。精神的に立ち止まらせ、その状態が長く続く。何しろ現代の炎症要因というのは自然に消えてくれることはないのだから。 結果として長期的に精神が停止状態に陥る。つまり私たちがうつと呼ぶ状態だ。このように、うつも炎症に起因する病気のリストに入ってく 「長期間ストレスにさらされているとコルチゾールのレベルが高いまま暮らすことになり、ついには身体がそのレベルに慣れてしまう」、「身体はコルチゾールに反応するのをやめ、炎症を鎮める能力を失ってしまう」、「小さな炎症はくすぶったままになり、全身の炎症の度合いが上がってしまう」、なるほど。 「身体はお腹周りの脂肪を見知らぬものと認識し、炎症を起こすことで侵入者、つまり余分な脂肪に闘いを挑むのだ。 肥満がうつのリスクを高めるのは、肥満自体が社会的に不名誉であることも要因だが、脂肪組織の炎症のせいだという可能性もあるのだ」、やはり「肥満」も出来るだけ避ける方がよさそうだ。 「炎症はうつを引き起こす重要な要因の1つだが、要因は炎症だけではない。 うつ全体の3分の1程度が炎症に起因しているとされる」、なるほど。 「うつは「隠された防御メカニズム」、意外な事実だ。 「しかし「なぜ」そうしたほうがいいのかという生物学的な理屈を学ぶことで、運動、睡眠、適度なストレス、そして回復というアドバイスが深い意味を帯びるようになる。そういった要因が炎症にブレーキをかけること、脳が「攻撃されている」と誤解するようなシグナルをそれ以上送らないようにすることを学べば、それに適した生活をするようになるだろう」、その通りだ。 「異常な環境に対する異常な反応は脳の病気というよりむしろ正常な反応だということだ」、これまでの誤解がクリアに払拭できた。 文春オンライン「東京女子医科大学病院の「ICU崩壊状態」を招いた、患者の命を軽視した経営方針と恐怖政治 東京女子医大の闇 #6」 「小児の集中治療専門医はとても少なく、カナダの大学で活躍していた日本人のA氏に白羽の矢が立ちました。2020年1月、A氏に一時帰国してもらい、岩本絹子理事長との面談を経て、小児ICUの責任者(特任教授)として内定」、「小児ICUの責任者」の決定は、極めて重要な意味があった筈だ。 「経営陣は小児ICUが救った子供の命にあまり関心を示さなかった」、病院の「経営陣」としては、何を考えているのだろう。 「医学部長」が「上司にあたる、集中治療科の野村岳志教授に対して」「土下座するつもりで、岩本理事長に謝ってもらっていいですか」、驚くべき打診だ。 「丸学長がなぜ虚偽の説明」をしたのかも疑問だ。 「こうした現場のことを、経営陣は何も理解していなかった。ただ気に入らないから壊した、としか思えません」、信じ難い状況だ。 「女子医大が多額の貸付を受けている福祉医療機構(厚労省の関連団体)などに、A特任教授らが辞表を出した後も『小児ICUは維持していく』と説明」、よくぞこんないい加減な説明をするものだ。 「「女子医大の良さは、自由で新しいことにチャレンジする精神でした。それがすっかり変わってしまった。反対意見さえも言えないのなら、ここで医師を教育することはできません」、経営陣はどうするつもりなのだろうか。
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歴史問題(17)(ホモ・サピエンスが繁栄し ネアンデルタール人が絶滅した「意外な理由」、「弥生人」の定説に待った ゲノム解析で迫る日本人の由来の新説、東京大空襲で地下鉄への避難が禁じられた理由 コロナ医療崩壊に通じる日本の悪習) [文化]

歴史問題については、2月25日に取上げた。今日は、(17)(ホモ・サピエンスが繁栄し ネアンデルタール人が絶滅した「意外な理由」、「弥生人」の定説に待った ゲノム解析で迫る日本人の由来の新説、東京大空襲で地下鉄への避難が禁じられた理由 コロナ医療崩壊に通じる日本の悪習)である。

先ずは、7月25日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した作家の橘玲氏と人類学者の篠田謙一氏の対談(前編):ホモ・サピエンスが繁栄し、ネアンデルタール人が絶滅した「意外な理由」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/306758
・『人類の祖先(ホモ・サピエンス)は、なぜ世界を席巻できたのか。ネアンデルタール人などの旧人や、いまだ謎の多いデニソワ人を圧倒した理由はどこにあったのか。ゲノム(遺伝情報)の解析によって解明を進め、『人類の起源』(中央公論新社)などの著書がある人類学者・篠田謙一氏に、自然科学、社会科学にも詳しい作家・橘玲(たちばな・あきら)氏が、ユニークな観点からその謎に迫る』、興味深そうだ。
・『人類の祖先は水の中で暮らしていた!? 「水生人類説」の可能性は?  橘玲氏(以下、橘) 以前から遺伝人類学にはとても興味がありました。遠い過去のことは、これまでは化石や土器でしかわからなかった。ところが、篠田さんが『人類の起源』で詳しく描かれたように、古代の骨のゲノム解析ができるようになったことで、人類の歴史を大きく書き換える「パラダイム転換」が起きています。せっかくの機会なので、これまで疑問に思っていたことを全部お聞きしたいと思います。 私を含む多くの読者の興味として、人類の誕生と日本人の誕生があると思います。人類とパン属(チンパンジーとボノボ)が共通の祖先から分岐したのは、約700万年前のアフリカということでよいのでしょうか? 篠田謙一氏(以下、篠田) そうですね。化石が示しているのがそれくらいで、ヒトとチンパンジーのゲノムの比較でもだいたい700万年前ということがわかっています。ただ、その後も交雑を繰り返したと考える人もいて、最終的な分岐は500万年前ぐらいではないかという説もありますね。 この700万年前から500万年前の間は化石がほとんど見つかっていないので、なかなか確たることが言えないというのが現状です。 橘 人類の祖先が分岐したのは、環境の変化で森からサバンナに移り住み、二足歩行を始めたからだというのがこれまでの定説でした。しかし今、この常識も疑問視されていますよね。 篠田 地球環境がうんと変わって森がサバンナになってしまったので、地面に降りざるを得なかったんだというのが、一般的に考えられている学説です。ただ、よく調べると数百万年もの間、化石に木のぼりに適応できる形態が残っているので、実はそんなに劇的に環境が変わったわけじゃないじゃないかと。 地面に降りた説が一般に信じられている背景には、「環境が物事を決める」という現代の思想があると思います。テクノロジーに左右されるように、私たちは環境によってどんどん変わっていくんだと。社会が受け入れやすいものが、その時代の定説となっていくんです。逆に言うと、まだそれほど確実なことはわかってないということです。 橘 人類の祖先が樹上生活に適応していたとするならば、なぜ木から降りたのかという話になりますよね。 人類学では異端の考え方だと思うんですが、水生類人猿説(アクア説)に興味があるんです。人類の祖先は森の近くの河畔や湖畔などで長時間過ごすようになったという説で、これだと直立したことがシンプルに説明できます。四足歩行だと水の中に沈んでしまいますから。 体毛が喪失したのに頭髪だけが残ったことや、皮下脂肪を付けるようになったこともアクア説なら説明可能です。より面白いのは鼻の形で、においをかぐのが目的なら鼻腔は正面を向くはずなのに、人間は下向きになっている。なぜなら、鼻の穴が前を向いていると潜ったときに水が入ってきてしまうから。 さらに、今でも水中出産が行われているように、新生児は泳ぐことができる。という具合に、この水生類人猿説は、素人からするとかなり説得力があると思うんですが。 篠田 いただいた質問リストにその質問があったので、「困ったな」と思ったんです(笑)。1970年代、私が学生だったころ提唱された説ですね。当時、本で読んで面白いなと思ったのを覚えています。しかし人類学の仲間とも話をしたんですけども、みんな「これは追わないほうがいい」って言ってましたね。 というのも、この説は「なるほど」と思わせますが、化石の証拠が何もないんです。もちろん可能性としてはあるんですが、証拠のほうから追求することができない。だから研究者はみんなここに手を出さないんです。 橘 わかりました。ではこれ以上、先生を困らせないようにします(笑)。 700万年前に人類の祖先が分岐した後、250万年ほど前から石器が使われるようになり、200万年ほど前に原人が登場する。これも共通理解となっているのでしょうか。 篠田 今ある化石証拠によれば、そういう話になっています。基本的には、脳が大きくなって、直立二足歩行も現在の人間に近い状態になっていくわけですけれども、その理由はまだよくわかっていないんです。最近は、「火を使うようになったからだ」という説もあります。食生活が大きく変わったからだという話ですね。250万年前から200万年前の間は本当に重要な時代なんですけども、いろんな人類のグループがいて、なかなか整理がついていないんです。 橘 となると、そのさまざまなグループの中からどういう経路でヒトの祖先が出てきたのかというのは推測でしかない。 篠田 そうです。完全にスペキュレーション(推測、考察)です。) 橘 原人が1回目の出アフリカを敢行してユーラシア大陸に進出した後、西(ヨーロッパ)の寒冷地帯に住むネアンデルタール人だけでなく、中央アジアや東アジアにデニソワ人という別の旧人が存在していたというのは衝撃的な発見です。彼らはどこで、どういうふうに生まれてきたのでしょうか。 篠田 そこは現在、最も混沌(こんとん)としているところでもあるんです。人類進化の研究は、基本的に化石を調べることでした。何十年もの間、古い時代、古い時代へとさかのぼっていたんです。ですから、ほとんどの努力がアフリカ大陸で行われていました。旧人類についてはアフリカ大陸以外のところ、特にユーラシア大陸で骨を探すという努力になるんですが、これまでそれほど注目されていませんでした。最近になってDNA人類学がこの時代の進化のストーリーを提唱したばかりなんです。 橘 ホモ・サピエンスはこれまでアフリカで誕生したというのが定説でした。しかし、近年の遺伝人類学では、ネアンデルタール人やデニソワ人と同様、ユーラシア大陸で共通祖先から分岐した可能性が出てきたんですね。これこそまさに、最大のパラダイム転換です。 篠田 ホモ・サピエンスとネアンデルタール、デニソワ人が共通祖先から分かれたのがおよそ60万年前、最も古いホモ・サピエンスと認識できる化石が出てくるのが30万年ほど前になります。ですから私たちの進化の過程の最初の30万年間は謎に包まれているんです。祖先がどこにいたのか、今後より古いホモ・サピエンスの化石の探求は、アフリカだけでなく、ユーラシア大陸まで視野に入れたものになるでしょう』、「近年の遺伝人類学では、ネアンデルタール人やデニソワ人と同様、ユーラシア大陸で共通祖先から分岐した可能性が出てきた」、学説も想像以上に変化しているようだ。
・『ホモ・サピエンスはなぜ、生き残れたのか  橘 6万年ほど前にホモ・サピエンスによる出アフリカが起こり、アフリカ(サブサハラ)以外のヒトはみなその子孫というのが定説ですが、最新の研究ではどうなっているんでしょうか?) 篠田 それはある程度従来の予想通りといえそうです。7万年から5万年前、だいたい6万年前にアフリカ大陸を出た数千人のホモ・サピエンスのグループが、今のアフリカ人以外の人類の先祖であるという考え方、そこは揺らいでいないと思います。 ユーラシア大陸における初期拡散の様子(『人類の起源』より) 橘 それまで東アフリカと中近東の一部に押し込められていたサピエンスが、わずか2万年ほどでユーラシア大陸の東端まで到達し、ネアンデルタール人やデノソワ人などの先住民が絶滅していく。そこでいったい何があったのかは誰もが知りたいところです。 篠田 ネアンデルタール人のゲノムと、ホモ・サピエンスのゲノムとを比べていったとき、私たちに伝わらなかった部分があります。X染色体のある部分もそのひとつです。 そこは何に関係しているかというと、生殖能力だという話があるんです。つまり結局、サピエンスが世界を席巻できたのは、ネアンデルタール人より生殖能力が高かったからだと。繁殖能力が高かったという、そういう考え方です。 一方で、ご指摘のように彼らとは文化が違うんだと。それが席巻する理由になったんだという考え方ももちろんあります。ただ、今はそちらの旗色はあまりよくないんです。 というのは、ヨーロッパでネアンデルタール人が作った文化は、ホモ・サピエンスに近いレベルのものであったという証拠が出始めているんです。 ネアンデルタール人の位置づけは歴史的にすごく変遷していて、時代によって野蛮人だったり、我々に近かったりと捉え方もさまざまです。今は我々に近いところだと考えられているんですけども、だから彼らは滅んだというより、私たちサピエンスが吸収してしまったとみるほうが正しいんじゃないかという人もいます。 橘 単に生殖能力が違っていたということですか。 篠田 ヨーロッパのネアンデルタール人は人口比でサピエンスの10分の1くらいしかいなかっただろうといわれています。 彼らも進化の袋小路に入りかけていて、なかなか数が増やせなかったところに、とにかく多産なホモ・サピエンスが登場したので、吸収されたんだと。ネアンデルタール人との交雑によって、最初はホモ・サピエンスのゲノムに10%くらいネアンデルタール人のゲノムが入っていったと考えられていて、それはまさに両者の人口比そのものだったのではという説もあります』、「それまで東アフリカと中近東の一部に押し込められていたサピエンスが、わずか2万年ほどでユーラシア大陸の東端まで到達し、ネアンデルタール人やデノソワ人などの先住民が絶滅していく。そこでいったい何があったのかは誰もが知りたいところです」、「ヨーロッパのネアンデルタール人は人口比でサピエンスの10分の1くらいしかいなかっただろうといわれています。 彼らも進化の袋小路に入りかけていて、なかなか数が増やせなかったところに、とにかく多産なホモ・サピエンスが登場したので、吸収されたんだと」、なるほど。
・『橘 なるほど。 篠田 ネアンデルタール人とサピエンスは融合してゆくんですけれども、サピエンスのほうが結果的に人を増やすことができた。そこが一番大きいんじゃないかと私は思いますけどね。 橘 その一方で、サピエンスによるジェノサイド説がありますよね。チンパンジーは、自分たちと異なる群れと遭遇すると、オスと乳児を皆殺しにして、妊娠できるようになったメスを群れに加えます。 現在のロシアとウクライナの紛争を見ても、人間の本性だって同じようなものじゃないか。6万年前のホモ・サピエンスが、容姿の大きく異なるネアンデルタール人やデニソワ人と初めて遭遇したとき、「友達になりましょう」なんてことになるわけがないというのは、かなり説得力があると思うんですが。 篠田 今の社会状況を見れば、直感的に受け入れやすい学説かもしれません。 橘 サピエンスは言語や文化(祭祀や音楽、服や入れ墨)などを印(シンボル)として、1000人規模の巨大な社会を構成できるようになった。それに対してネアンデルタール人の集団はせいぜい数十人なので、抗争になればひとたまりもなかった。 生物学的に、男はできるだけ多くの女と性交して遺伝子を後世に残すように設計されているから、チンパンジーと同様に、先住民の女を自集団に取り込んで交雑が進んだ。リベラルの人たちには受け入れがたいでしょうが、納得してしまいますよね。 篠田 人類がなぜ進化したのかについて、第2次世界大戦が終わったころはそういう説が多かったんです。「キラーエイプ」という考え方です。今はそれがある意味、復権しているところもありますね。 ただ、もしそれが起きていたとしたら、ネアンデルタール人の(母親から受け継がれる)ミトコンドリアDNA系統が私たちの中に残っているはずなんです。それがないですから、やはりそんなふうには交雑していなかったんだろうと私は思いますね。 橘 少なくとも大規模な交雑はなかったと。 篠田 交雑の際、メスだけが選抜的に取り込まれたという証拠はないはずです。エビデンスがない領域の議論は結局、先ほど申し上げたようにスペキュレーションの世界なので、イデオロギーが入ってきてしまうのです。 社会状況によって、解釈しやすいものがみんなの頭の中にスッと入ってきちゃうんですよね。その中で真実を探すのは、とても難しいんです。) 橘 しかし、遺伝人類学の近年の知見では、その先祖より前に、ユーラシア大陸にはホモ・サピエンスがいたとされているわけですよね。 篠田 そうです。ある程度は出ていたのでしょう。それも難しいところでして。中国では10万年くらい前にサピエンスがいたという説があったんですが、それは化石の年代が間違っていたんだという話もあって。出たんだ、いや違うっていうところでせめぎ合っていますが、6万年前より前に出ていたという証拠が多くなってきています。ただし、彼らは現在の私たちにつながらなかったということになりますが。 橘 それ以前から中近東や北アフリカで細々と暮らしていたサピエンスは、かなり脆弱(ぜいじゃく)な種で、ほぼ絶滅してしまったということですか。 篠田 そういうふうに考えています。 橘 だとすると、6万年前に出アフリカしたサピエンスが、なぜ短期間で南極を除く地球上に繁殖したのか、という疑問が出てきますよね。それまでネアンデルタール人やデニソワ人に圧倒されていたのに、いきなり立場が大逆転してしまう。旧サピエンスに対して、ミュータント・サピエンスというか、「ニュータイプ」が現れたんじゃないかと思ってしまいます。 東アフリカのサピエンスの一部が突然変異で大きな前頭葉を持ち、知能が上がって複雑な言語を使うようになって、大きな社会を作るようになったからだという説もありますね。 篠田 『5万年前――このとき人類の壮大な旅が始まった』(ニコラス・ウェイド著、安田喜憲監修、沼尻由起子訳、イースト・プレス)という有名な本がありまして、まさにその発想で書かれているんです。ホモ・サピエンスには言葉や集団を束ねる力があったといった話をされているんですけれども。 ただ、文化の視点で見ていくと、例えばビーズを作ることは10万年以上前からやっているんですね。アフリカ大陸全体で。そういうことから考えると、サピエンスは徐々に変化していったんだろうと私は考えているんです。そのころ、サピエンスに知識革命が起こったんだっていう説は、今では信じていない人のほうが多くなっていると思います。 じゃあ、なんで6万年前に出たのかと言われると、ちょっと答えが見つからなくて。まさにそこ、サピエンスがアフリカを出たということ、世界を席巻したということがキーになっているんです』、「エビデンスがない領域の議論は結局、先ほど申し上げたようにスペキュレーションの世界なので、イデオロギーが入ってきてしまうのです。 社会状況によって、解釈しやすいものがみんなの頭の中にスッと入ってきちゃうんですよね。その中で真実を探すのは、とても難しいんです」、「ホモ・サピエンスには言葉や集団を束ねる力があった」、なるほど。では対談の続きを見てみよう。

次に、この続きを、7月26日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した作家の橘玲氏と人類学者の篠田謙一氏の対談(後編)「「弥生人」の定説に待った、ゲノム解析で迫る日本人の由来の新説」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/306767
・『化石となった人骨のゲノム(遺伝情報)を解析できるようになり、数十万年に及ぶ人類の歩みが次々と明らかになってきた。自然科学に詳しい作家・橘玲(たちばな・あきら)氏が、国立科学博物館の館長でもある遺伝人類学者・篠田謙一氏に、人類の歴史にまつわる疑問をぶつける特別対談。後編では、日本人の歴史に焦点を当てる。現在の日本人に連なるいにしえの人々は、いったいどこからやって来たのだろうか――』、興味深そうだ。
・『日本人のルーツは? 縄文人のDNAから考える(橘玲氏(以下、橘) 日本人の話題に入りたいと思います。6万年ほど前に出アフリカを敢行した数千人のホモ・サピエンスは、ネアンデルタール人やデニソワ人などの旧人と各地で出会い、交わりながらユーラシア大陸を東に進んでいきます。その東端にある日本列島に到達した人たちが縄文人になるわけですが、主要なルートは朝鮮半島経由とシベリア経由と考えていいんでしょうか。 篠田謙一氏(以下、篠田) ほぼその通りですね。5万年くらい前、人類は東南アジアから海岸伝いに北に上がってくるんです。そのころは中国大陸の海岸線が今より広がっていて、朝鮮半島も台湾も大陸の一部でした。日本列島は孤立していますけれど、今より大陸との距離は近かったんですね。) 大陸で数万年間かけて分化していった集団が、北方からであったり朝鮮半島経由であったり、複数のルートで日本列島に入ってきた。それがゆるやかに結合することで出来上がったのが縄文人だと考えています。 私たちは北海道の縄文人のDNAを多く解析したんですけども、そこには(ロシア南東部の)バイカル湖周辺にあった遺伝子も多少入っているんです。もしかすると、ユーラシア大陸を北回りで東にやって来た人たちの遺伝子も、東南アジアから来た人たちと混血して、日本に入ってきたのではないかと考えています。 橘 中国も唐の時代(618年~907年)の長安には、西からさまざまな人たちが集まっていたようですね。 篠田 大陸は古い時代からヨーロッパの人たちと遺伝的な交流があったと思いますよ。例えばモンゴルは、調べてみるととても不思議なところで、古代からヨーロッパ人の遺伝子が入っています。陸続きで、しかも馬がいる場所ですから、すぐに遺伝子が伝わっていくんです。 橘 ということは、長安の都を金髪碧眼(へきがん)の人たちが歩いていたとしても、おかしくはない。 篠田 おかしくはないですね。ただ、それが現代の中国人に遺伝子を残しているかというと、それはないようですけれども』、「大陸で数万年間かけて分化していった集団が、北方からであったり朝鮮半島経由であったり、複数のルートで日本列島に入ってきた。それがゆるやかに結合することで出来上がったのが縄文人だと考えています」、「モンゴルは、調べてみるととても不思議なところで、古代からヨーロッパ人の遺伝子が入っています。陸続きで、しかも馬がいる場所ですから、すぐに遺伝子が伝わっていくんです」、「モンゴルは」、「すぐに遺伝子が伝わっていく」、さもありなんだ。
・『弥生人の定説が書き換えられつつある  橘 日本の古代史では、弥生時代がいつ始まったのか、弥生人はどこから来たのかの定説が遺伝人類学によって書き換えられつつあり、一番ホットな分野だと思うのですが。 篠田 そう思います。 橘 篠田さんの『人類の起源』によれば、5000年くらい前、西遼河(内モンゴル自治区から東に流れる大河)の流域、朝鮮半島の北のほうに雑穀農耕民がいて、その人たちの言葉が日本語や韓国語の起源になったというのがとても興味深かったんですが、そういう理解で合っていますか?) 篠田 私たちはそう考えています。1万年前よりも新しい時代については、中国大陸でかなりの数の人骨のDNAが調べられているので、集団形成のシナリオがある程度描けるんです。その中で、いわゆる渡来系といわれる弥生人に一番近いのは、西遼河流域の人たちで、黄河流域の農耕民とは遺伝的に少し異なることがわかっています。 橘 黄河流域というと、今でいう万里の長城の内側ですね。そこでは小麦を作っていて、西遼河の辺りはいわゆる雑穀だった。 篠田 まあ、中国でも小麦を作り始めたのはそんなに昔ではないらしいんですが、違う種類の雑穀を作っていたんでしょうね。ただ陸続きで、西遼河も黄河も同じ農耕民ですから、全く違ったというわけではなくて、それなりに混血して、それが朝鮮半島に入ったというのが今の説なんです。 さらに誰が日本に渡来したのかっていうのは、難しい話になっています。これまではいわゆる縄文人といわれる人たちと、朝鮮半島で農耕をやっていた人たちは遺伝的に全く違うと考えられてきたんですね。それがどうも、そうではなさそうだと。 朝鮮半島にも縄文人的な遺伝子があって、それを持っていた人たちが日本に入ってきたんじゃないかと。しかもその人たちが持つ縄文人の遺伝子の頻度は、今の私たちとあまり変わらなかったんじゃないかと考えています。 橘 「日本人とは何者か」という理解が、かなり変わったんですね。 篠田 変わりました。特に渡来人の姿は大きく変わったと言ってよいでしょう。さらに渡来人と今の私たちが同じだったら、もともと日本にいた縄文人の遺伝子は、どこに行っちゃったんだという話になります。 両者が混血したのだとすれば、私たちは今よりも縄文人的であるはずなんですけども、そうなっていない。ですから、もっと後の時代、古墳時代までかけて、より大陸的な遺伝子を持った人たちが入ってきていたと考えざるを得なくなりました。 橘 なるほど。西遼河にいた雑穀農耕民が朝鮮半島を南下してきて、その後、中国南部で稲作をしていた農耕民が山東半島を経由して朝鮮半島に入ってくる。そこで交雑が起きて、その人たちが日本に入ってきたと。) 篠田 日本で弥生時代が始まったころの人骨は、朝鮮半島では見つかってないんですけども、それより前の時代や、後の三国時代(184~280年)の骨を調べると、遺伝的に種々さまざまなんです。縄文人そのものみたいな人がいたり、大陸内部から来た人もいたり。遺跡によっても違っていて。 橘 朝鮮半島というのは、ユーラシアの東のデッドエンドみたいなところがありますからね。いろいろなところから人が入ってきて、いわゆる吹きだまりのようになっていた。 篠田 しかもそれが完全には混じり合わない状態が続いていた中で、ある集団が日本に入ってきたんだろうと考えています。 橘 その人たちが初期の弥生人で、北九州で稲作を始めたのが3000年くらい前ということですね。ただ、弥生文化はそれほど急速には広まっていかないですよね。九州辺りにとどまったというか。 篠田 数百年というレベルでいうと、中部地方までは来ますね。東へ進むのは割と早いんです。私たちが分析した弥生人の中で、大陸の遺伝子の要素を最も持っているものは、愛知の遺跡から出土しています。しかもこれは弥生時代の前期の人骨です。だから弥生時代の早い時期にどんどん東に進んだんだと思います。 ただ、九州では南に下りるのがすごく遅いんです。古墳時代まで縄文人的な遺伝子が残っていました。 橘 南九州には縄文人の大きな集団がいて、下りていけなかったということですか。 篠田 その可能性はあります。今、どんなふうに縄文系の人々と渡来した集団が混血していったのかを調べているところです。おそらくその混血は古墳時代まで続くんですけれども。 当時の日本列島は、ある地域には大陸の人そのものみたいな人たちがいて、山間とか離島には、遺伝的には縄文人直系の人がいた。現在の私たちが考える日本とは全然違う世界があったんだろうと思います。平安時代に書かれた文学なんかは、きっとそういう世界を見たと思うんです。 橘 すごくロマンがありますね。 篠田 今の私たちの感覚では、わからないものなのかなと思いますね』、「当時の日本列島は、ある地域には大陸の人そのものみたいな人たちがいて、山間とか離島には、遺伝的には縄文人直系の人がいた。現在の私たちが考える日本とは全然違う世界があったんだろうと思います。平安時代に書かれた文学なんかは、きっとそういう世界を見たと思うんです」、確かに「ロマン」がある話だ。
・『弥生人の渡来に中国の動乱が関係?  橘 中国大陸の混乱が、日本列島への渡来に影響したという説がありますよね。3000年前だと、中国は春秋戦国時代(紀元前770~紀元前221年)で、中原(華北地方)の混乱で大きな人の動きが起こり、玉突きのように、朝鮮半島の南端にいた人たちがやむを得ず対馬海峡を渡った。 古墳時代は西晋の崩壊(316年)から五胡十六国時代(439年まで)に相当し、やはり中原の混乱で人々が移動し、北九州への大規模な流入が起きた。こういったことは、可能性としてあるんでしょうか。 篠田 あると思います。これまで骨の形を見ていただけではわからなかったことが、ゲノム解析によって混血の度合いまでわかるようになった。今やっと、そういうことがゲノムで紐解ける時代になったところです。 古墳を見ても、副葬された遺物が当時の朝鮮半島直輸入のものだったり、あるいは明らかに日本で作ったものが副葬されたりしてさまざまです。その違いが埋葬された人の出自に関係しているのか、ゲノムを調べれば解き明かすことができる段階になっています。 橘 イギリスでは王家の墓の古代骨のゲノム解析をやっていて、その結果が大きく報道されていますが、日本の古墳では同じことはできないんですか。 篠田 それをやるには、まず周りを固めることが先かなと思いますね。「ここを調べればここまでわかるんですよ」というのをはっきり明示すれば、やがてできるようになると思います』、「これまで骨の形を見ていただけではわからなかったことが、ゲノム解析によって混血の度合いまでわかるようになった。今やっと、そういうことがゲノムで紐解ける時代になったところです」、ところが、以下にみるような政治的な難しさがあるようだ。
・『政治的な思惑で調査が進まないプロジェクトも  橘 古墳の古代骨のゲノム解析ができれば、「日本人はどこから来たのか」という問いへの決定的な答えが出るかもしれませんね。中国大陸から朝鮮半島経由で人が入ってきたから、日本人は漢字を使うようになった。ただ、やまとことば(現地語)をひらがなで表したように、弥生人が縄文人に置き換わったのではなく、交雑・混血していったという流れなんでしょうか。 篠田 そう考えるのが自然だと思います。弥生時代の初期に朝鮮半島から日本に直接入ってきたんだとしたら、当時の文字が出てきているはずなんです。ところがない。最近は「硯(すずり)があった」という話になっていて、もちろん当時から文字を書ける人がいたのは間違いないんですが、弥生土器に文字は書かれていません。一方で古墳時代には日本で作られた剣や鏡に文字が書かれています。 橘 日本ではなぜ3世紀になるまで文字が普及しなかったのかは、私も不思議だったんです。 篠田 弥生時代の人たちは稲作を行い、あれだけの土器、甕(かめ)なんかも作りましたから、大陸から持ち込んだ技術や知識は絶対にあったはずなので。いったい誰が渡来したのか、その人たちのルーツはどこにあったのかっていうところを解きほぐすことが必要だと思っています。 橘 古墳時代に文字を使うリテラシーの高い人たちが大量に入ってきて、ある種の王朝交代のようなものが起きて、『古事記』や『日本書紀』の世界が展開する。縄文から弥生への二段階説ではなく、縄文・弥生・古墳時代の三段階説ですね。 篠田 そうしたことが、おそらくこれからゲノムで読み取れるんだろうなと思います。 弥生時代、最初に日本に入ってきた人というのは、現在の我々とは相当違う人だったというのが現在の予想です。それを知るには当時の朝鮮半島の状況、弥生時代の初期から古墳時代にかけてどうなっていたのか、人がどう動いたのかをちゃんと調べる必要があるんですが、難しいんですよ。いろいろと政治的な問題もあって。 橘 国家や民族のアイデンティティーに絡んできますからね。 篠田 現地の研究者との間では「この人骨を分析しましょう」という話になるんですけれども、上からOKが出ないわけです。「今この人骨を渡すのは困る」と。それでポシャったプロジェクトがいくつかあって。なかなか進まないんです。 橘 政治の壁を突破して、ぜひ調べていただきたいです。朝鮮半島は「吹きだまり」と言いましたが、日本こそユーラシア大陸の東端の島で、北、西、南などあらゆる方向から人々が流れ着いてきた吹きだまりですから、自分たちの祖先がどんな旅をしてきたのかはみんな知りたいですよね。 篠田 ここから東には逃げるところがないですからね。 次に「日本人の起源」というテーマで本を書くのであれば、5000年前の西遼河流域から始めようと思っているんです。 朝鮮半島で何が起こったかわからないので今は書けないんですけれども、そこでインタラクション(相互の作用)があって、今の私たちが出来上がったんだというのがおそらく正しい書き方だと思うんですよね。 橘 それは楽しみです。ぜひ書いてください』、「古墳時代に文字を使うリテラシーの高い人たちが大量に入ってきて、ある種の王朝交代のようなものが起きて、『古事記』や『日本書紀』の世界が展開する。縄文から弥生への二段階説ではなく、縄文・弥生・古墳時代の三段階説ですね。 篠田 そうしたことが、おそらくこれからゲノムで読み取れるんだろうなと思います」、「当時の朝鮮半島の状況、弥生時代の初期から古墳時代にかけてどうなっていたのか、人がどう動いたのかをちゃんと調べる必要があるんですが、難しいんですよ。いろいろと政治的な問題もあって。 橘 国家や民族のアイデンティティーに絡んできますからね。 篠田 現地の研究者との間では「この人骨を分析しましょう」という話になるんですけれども、上からOKが出ないわけです」、いまだにこんなことが政治的圧力で調査が難しいというのは困ったことだ。

第三に、8月18日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「東京大空襲で地下鉄への避難が禁じられた理由、コロナ医療崩壊に通じる日本の悪習」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/308165
・『ロンドン大空襲と東京大空襲の差 日本でなぜ民間人が大勢亡くなったのか(諸説あるが、8月15日は「終戦の日」とされている。 毎年この日の前後になると、77年前に終わった戦争を忘れないために多くの報道があるが、大事な視点が欠けてしまっていると、いつも感じる。 それは「77年前も今も日本は実はそれほど大きく変わっていない」という視点だ。太平洋戦争は遠い昔の話などではなく、令和の今にも通じる、「日本社会の構造的な問題」が引き起こした“人災”なのだ。 一体どういうことか、日本の戦争被害を語るうえで避けては通れない「空襲」を例に説明しよう。 当初、連合国は軍事施設を狙っていたが、わずか数時間で10万人が亡くなった東京大空襲をきっかけに、全国の都市部でも無差別に行われて、死者は50万人以上ともされている。そのため、日本国内では「空襲」と聞くと、「連合国による民間人を狙った卑劣な戦争犯罪」というイメージを抱く方も少なくない。 ただ、この膨大な数の犠牲者は、「連合国側が日本の一般市民の命を軽くみた」とか「戦争とはそういう残酷なもの」なんて話だけでは説明ができない。日本という社会が持つ構図的な問題が被害を拡大させて、「本来は助かったはずの人の命を奪った」という側面もあるのだ。 例えば、この時期に無差別に空襲された都市部は、実は東京や大阪だけではない。1940年にはナチス・ドイツがイギリスのロンドンで連続57日間の夜間空襲をしている。いわゆるThe Blitz(ロンドン大空襲)だ。 東京はわずか数時間でも10万人規模の市民が亡くなっているのだから、57日も続けばはるかに上回る数のすさまじい数の犠牲者が出たと思うかもしれないが、この空襲で亡くなった民間人は4万3000人以上とされている。 なぜこんなに被害の違いがあるのか。「日本は木造家屋だから被害が拡大した」なんて上っ面の話ではなく、シンプルに国家としての対応の違いだ。イギリス政府は空襲に備えて「エアレイドシェルター」という防空壕を多く設置して、そこに入りきらない貧しい人々などは、地下鉄構内へ避難するように誘導した。 では、なぜ日本では同じようなことができなかったのか』、「イギリス政府は空襲に備えて「エアレイドシェルター」という防空壕を多く設置して、そこに入りきらない貧しい人々などは、地下鉄構内へ避難するように誘導」、当然のことだが、日本で出来なかった理由をみてみよう。
・『地下鉄構内に逃げることを禁止!? 日本社会が人命より重視しているものとは  1945年時点で、東京大空襲があった東京でも浅草―渋谷間の銀座線は運行されていたし、大阪でも梅田―天王寺の御堂筋線があった。しかし、空襲が起きた時に地下鉄構内に逃げ込むことは禁止された。空襲になると、駅のホームや車内にいた人は地上に追い出されて、入口は閉鎖された。 なぜ日本では、ロンドンで多くの市民の命を空襲から救った避難場所から追い出して、火の海の中を逃げ回らせるという、「人命軽視の空襲対策」をとったのか。 「そ…それはみんなが一気に地下鉄に押し寄せたらパニックになって将棋倒しになるからだろ!」という感じで、とにかく日本が国民の安全や命に配慮していたと考えたい人もいるだろうが、それは「後付け」の説明だ。 1941年2月、帝国議会貴族院で、ある議員が、ロンドン空襲での事例や、各国が地下鉄を空襲の避難場所として想定していることを引き合いに、日本もそうすべきではないかという質問をした。しかし、鉄道省監督局長はその方針に難色を示し、理由をこのように述べている。  「交通機関トシテノ機能ヲ害スル」(貴族院・帝都高速度交通営団法案特別委員会、1941年2月15日) 空襲になると、地上は火の海になるので、軍の物資や人員を運ぶことができなくなってしまう。つまり、空襲時に地下鉄は唯一の交通機関になるので、そのインフラの維持を優先すべきというわけだ。これを受けて、1944年7月に内務省・軍需省などが制定した「中央防空計画」にもこうしっかりと明記されるようになる。 <第一二七条 地下鉄道ノ施設ハ之ヲ待避又ハ避難ノ場所トシテ使用セシメザルモノトス>  さて、このように「人命よりも社会インフラ優先」という、イギリスと明らかに異なる国家の対応とみて「そういや、つい最近もなんかこんなことがなかったっけ?」とお気づきになった方はいないだろうか。 そう、新型コロナウイルス感染拡大による「医療崩壊」だ』、「人命よりも社会インフラ優先」という、イギリスと明らかに異なる国家の対応は、確かに「新型コロナウイルス感染拡大による「医療崩壊」」でも見られた。
・『人命より社会インフラ 政府や国民に根付いている意識  日本では新型コロナウイルス感染症は感染症法上の「2類相当」という扱いにしたことで当初、大きな病院や公立病院の現場は阿鼻叫喚の地獄と化した。症状が悪化した患者まで受け入れてくれる病院が見つからず、「たらい回し」にされて亡くなってしまうなんて悲劇も起きた。 しかしその一方、個人経営のクリニックなどのいわゆる「町医者」の多くは、「地域医療を守るという使命がある」ということから、コロナ患者を受け入れることは少なかった。中には、外出を控えるムードから診療も激減して、閑古鳥が鳴くようなクリニックもあった。 つまり、感染拡大で命の危険にさらされていた医療従事者や患者があふれていた一方で、地域医療は「社会インフラを守る」ということで市民に開放されなかったのである。 戦時中の日本の構造と照らし合わせてみると、空から焼夷弾の雨が降る中で、命からがら逃げ惑う人々がいた一方で、地下鉄は「社会インフラを守る」ということで市民に開放されなかったことと瓜二つだ。 では、なぜ日本の行政は「人命よりも社会インフラ優先」という方向に流れがちなのか。その謎を解く鍵も実は77年前の戦争にある。 先ほど鉄道省の局長が、貴族院で地下鉄を避難場所に使わせないということを明言したことを紹介したが、これは何もこの局長が個人の独断で決めているわけではない。国家の「大きな方針」に沿っている。 日本という国は、国民に「空襲から逃げず、恐れずみんなで消火せよ」と義務付けていた。スローガンや「お願いベース」などではなく、法律に基づいて「強制」していたのだ』、「日本という国は、国民に「空襲から逃げず、恐れずみんなで消火せよ」と義務付けていた。スローガンや「お願いベース」などではなく、法律に基づいて「強制」していた」、日本という国は個人よりも集団の利害を優先する恐ろしい国のようだ。
・『同調圧力による社会の空気 マスコミも不安に怯える国民を「叱責」  この時代、「防空法」という法律があり、戦局が厳しくなるにつれて改正されていくのだが、そこで一貫しているのが「都市部から逃げてはならない」「空襲で家屋が燃えたら防空壕から出て、隣組で協力をして消火活動をせよ」というものだ。 この法律についてまとめている労作「検証 防空法・空襲下で禁じられた避難」(法律文化社)を読めば、当時のマジメな日本国民が、「人命軽視」も甚だしいこの悪法に従わざるを得なかった理由もわかる。  <都市からの退去禁止(八条ノ三)に違反した場合、「六月以下ノ懲役又ハ五百円以下ノ罰金二処ス」と規定されていた(防空法一九条ノ二第二号)。(中略)実際にこの条項により処罰された例は少ないと思われるが、単なる努力義務ではなく罰則を伴う禁止規定とされたこと自体が、都市の住民に対して強い威嚇効果をもたらす>(同書、P.67) この威嚇効果はちょっと前の「マスク警察」を思い浮かべていただければわかりやすい。何の法律的な根拠も罰則もない「お願い」であるにもかかわらず、同調圧力が起きて、マスクをしていない人間は厳しくバッシングする人々が大量にあらわれた。法律で罰則規定があるということは、あれをはるかに上まわる「空襲から逃げるな」という同調圧力が社会にまん延してたいたということだ。 しかも、同じ時期に制定された戦時刑事特別法(10条1項)では、「防空ノ妨害」をした者は死刑・無期懲役と定められた。「みんな!空襲が来るから逃げようぜ」なんて隣近所に呼びかけたら死罪になっていたのだ。 この同調圧力をさらに悪化させたのが、マスコミだ。マスクやコロナパニック(トイレットペーパーが街から消えるなど混乱が起きた)の時も、マスコミ報道が人々の不安をあおったことがわかっているが、77年前も同じことが起きている。 例えば、「大阪毎日新聞」は「防空指導方針」を引き合いに、空襲の脅威に怯える国民はこのように叱責した。  「勝手に防空壕を掘るな 避難、退去は一切許さぬ」(大阪毎日新聞1941年10月2日)』、「マスコミ」がここまで激しく「国民」を「叱責した」とは改めて驚かされた。
・『戦時中のエリートたちの思想 人命軽視で戦う軍が「命」重視にできるか  さて、こういう「人命軽視」のクレイジーな国家の方針を聞くと、「当時の政府や軍部は完全に狂っていたのでは」と思うかもしれないが、そんなことはない。彼らの多くは国際情勢にも明るく、海外留学の経験もあって、日本の置かれている苦しい状況をよくわかっていた。 わかっていたけれど、こういう「人命軽視」の大方針を打ち出した。なぜかというと、社会インフラを守るためには、市民が一定数犠牲になってもしょうがない、という思想がエリートの間にまん延しているからだ。 1941年11月、衆議院で開かれた防空法改正の審議で、佐藤賢了・陸軍省軍務課長が述べた答弁に、当時の日本のエリートたちの思想がすべて集約されているので、紹介しよう。 「空襲を受けたる場合において実害そのものは大したものではないことは度々申したのであるが、周囲狼狽混乱に陥ることが一番恐ろしい、またそれが一時の混乱にあらずしてつひに戦争継続意志の破綻といふことになるのが最も恐ろしい」(衆議院防空法中改正法律案特別委員会、1941年11月20日) なぜここまで恐怖だったのかというと、「軍」というインフラが崩壊してしまうからだ。 ご存じのように、日本軍では「絶対に逃げずに死ぬまで持ち場を守れ」と現場に叩き込んでいた。連合国の兵士たちは負けそうだと自覚すると、祖国に生きて帰る確率が上がるので当たり前のように「投降」をしたが、日本軍では「生き恥を晒すな」「捕虜になるくらいなら鬼畜米英を1人でも巻き添えに自爆しろ」というのが常識だった。 軍隊がそのように人命軽視で戦っている中で、銃後の庶民に「空襲が来るから避難せよ」なんてぬるいことが言えるだろうか。 言えるわけがない。世界の一般的な国では、「軍人は戦争をして、市民を守る」という役割分担が明確になされているが、日本の場合、そのような役割分担はない。「いくぞ1億火の玉だ」という国威発揚スローガンがわかりやすいが、銃後の女性も子どももいざとなったら爆弾を抱えて、鬼畜米英に体当たりして一矢報いよという「総力戦」を唱えていた。 だから、市民も最前線の兵士と同様に、「絶対に逃げずに死ぬまで持ち場を守れ」ということが求められた。 軍隊と同じことを求められるので当然、市民の間でも、軍隊と同じような悲劇が起きる。人命無視をした悲劇といえば、神風特攻隊や人間魚雷「回天」が思い浮かべるだろうが、実は空襲の現場でも同じようなことが起きていた』、軍国主義の恐ろしいような成行きだ。
・『「空襲も焼夷弾も怖くない」というウソ 77年進化していない日本を見つめ直せ  1942年、国はそれまでは家から離れた庭先など屋外に防空壕をつくれと言っていたのを、「床下に簡素に作れ」という「屋内防空壕」という方針へと転換した。もちろん、これは「すぐに防空壕から飛び出して消火活動ができるから」からだ。 これを真に受けて、家の軒下に簡単な防空壕をつくった人はどうなるのかは言うまでもない。空襲を受けた家屋は燃えるので、一度逃げ込んだら逃げられない。柱なども崩壊するので生き埋めになって、むごい熱さの中で蒸し焼きにされて亡くなっていくのだ。 特攻隊や人間魚雷のことを「非人道的な作戦」というが、実は一般庶民も同じように「非人道的な作戦」によって、多くの人々が命を奪われていたのである。 また、焼夷弾の直撃を逃れたのに、燃え盛る家を消火しようという無謀なことをさせられて亡くなった人もたくさんいる。当時、日本政府は、焼夷弾はホウキなどで叩けば簡単に消火できるというデマを流して、国民に空襲は怖くないというプロパガンダをしていた。 東京大空襲の少し前、政府が発行する「週報」(第四二八号)には、軍部や政府関係者がどうやって空襲を乗り切るかということを議論する「決戦防空座談会」が掲載されているのだが、そこにはこんな感じで結論まとめられている。 「焼夷弾は恐ろしいもんぢゃないといふ感じを皆に持たせる。さうして、どうして消したらよいかといふことを徹底させることが一番必要だと思ひます」 インフラを守るためには、市民がある程度の犠牲を払うのはしょうがない――。これは現代でも脈々と引き継がれている日本のエリートたちの典型的な思考パターンである。 だから、コロナ感染者があふれても「2類相当」に固執をする。先進国の中でもダントツに低い賃金で、多くの労働者が年収200万以下で貧しさにあえいでいるのに、「地方の雇用を支える中小企業を守れ」なんてことを大真面目に訴えている。 やっていることが、医療や経済というだけで、基本的には77年前の戦争と方法論は何も変わっていない。国家のインフラを守るためには、弱い者はじっと我慢をせよ――というのは、今も昔も変わらない日本の基本的な考え方なのだ。 ということは、今のままでは、医療も経済もあの戦争と同じ道を歩むということだ。 「戦争の記憶を語り継げ」なんて悠長なことを言っている場合ではない。今こそ我々の社会が77年前と同じ破滅の道を歩んでいる事実を直視すべきだ』、強く同意する。 
タグ:「日本という国は、国民に「空襲から逃げず、恐れずみんなで消火せよ」と義務付けていた。スローガンや「お願いベース」などではなく、法律に基づいて「強制」していた」、日本という国は個人よりも集団の利害を優先する恐ろしい国のようだ。 「人命よりも社会インフラ優先」という、イギリスと明らかに異なる国家の対応は、確かに「新型コロナウイルス感染拡大による「医療崩壊」」でも見られた。 「イギリス政府は空襲に備えて「エアレイドシェルター」という防空壕を多く設置して、そこに入りきらない貧しい人々などは、地下鉄構内へ避難するように誘導」、当然のことだが、日本で出来なかった理由をみてみよう。 窪田順生氏による「東京大空襲で地下鉄への避難が禁じられた理由、コロナ医療崩壊に通じる日本の悪習」 「古墳時代に文字を使うリテラシーの高い人たちが大量に入ってきて、ある種の王朝交代のようなものが起きて、『古事記』や『日本書紀』の世界が展開する。縄文から弥生への二段階説ではなく、縄文・弥生・古墳時代の三段階説ですね。 篠田 そうしたことが、おそらくこれからゲノムで読み取れるんだろうなと思います」、「当時の朝鮮半島の状況、弥生時代の初期から古墳時代にかけてどうなっていたのか、人がどう動いたのかをちゃんと調べる必要があるんですが、難しいんですよ。いろいろと政治的な問題もあって。 橘 国家や民族のアイデンティテ 「これまで骨の形を見ていただけではわからなかったことが、ゲノム解析によって混血の度合いまでわかるようになった。今やっと、そういうことがゲノムで紐解ける時代になったところです」、ところが、以下にみるような政治的な難しさがあるようだ。 「当時の日本列島は、ある地域には大陸の人そのものみたいな人たちがいて、山間とか離島には、遺伝的には縄文人直系の人がいた。現在の私たちが考える日本とは全然違う世界があったんだろうと思います。平安時代に書かれた文学なんかは、きっとそういう世界を見たと思うんです」、確かに「ロマン」がある話だ。 「大陸で数万年間かけて分化していった集団が、北方からであったり朝鮮半島経由であったり、複数のルートで日本列島に入ってきた。それがゆるやかに結合することで出来上がったのが縄文人だと考えています」、「モンゴルは、調べてみるととても不思議なところで、古代からヨーロッパ人の遺伝子が入っています。陸続きで、しかも馬がいる場所ですから、すぐに遺伝子が伝わっていくんです」、「モンゴルは」、「すぐに遺伝子が伝わっていく」、さもありなんだ。 橘玲氏と人類学者の篠田謙一氏の対談(後編)「「弥生人」の定説に待った、ゲノム解析で迫る日本人の由来の新説」 「エビデンスがない領域の議論は結局、先ほど申し上げたようにスペキュレーションの世界なので、イデオロギーが入ってきてしまうのです。 社会状況によって、解釈しやすいものがみんなの頭の中にスッと入ってきちゃうんですよね。その中で真実を探すのは、とても難しいんです」、「ホモ・サピエンスには言葉や集団を束ねる力があった」、なるほど。では対談の続きを見てみよう。 「それまで東アフリカと中近東の一部に押し込められていたサピエンスが、わずか2万年ほどでユーラシア大陸の東端まで到達し、ネアンデルタール人やデノソワ人などの先住民が絶滅していく。そこでいったい何があったのかは誰もが知りたいところです」、「ヨーロッパのネアンデルタール人は人口比でサピエンスの10分の1くらいしかいなかっただろうといわれています。 彼らも進化の袋小路に入りかけていて、なかなか数が増やせなかったところに、とにかく多産なホモ・サピエンスが登場したので、吸収されたんだと」、なるほど。 「近年の遺伝人類学では、ネアンデルタール人やデニソワ人と同様、ユーラシア大陸で共通祖先から分岐した可能性が出てきた」、学説も想像以上に変化しているようだ。 篠田謙一氏の対談(前編):ホモ・サピエンスが繁栄し、ネアンデルタール人が絶滅した「意外な理由」」 ダイヤモンド・オンライン 歴史問題 (17)(ホモ・サピエンスが繁栄し ネアンデルタール人が絶滅した「意外な理由」、「弥生人」の定説に待った ゲノム解析で迫る日本人の由来の新説、東京大空襲で地下鉄への避難が禁じられた理由 コロナ医療崩壊に通じる日本の悪習) 「マスコミ」がここまで激しく「国民」を「叱責した」とは改めて驚かされた。 軍国主義の恐ろしいような成行きだ。 「戦争の記憶を語り継げ」なんて悠長なことを言っている場合ではない。今こそ我々の社会が77年前と同じ破滅の道を歩んでいる事実を直視すべきだ』、強く同意する。
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