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働き方改革(その39)(NTT「3万人テレワーク」が日本経済に変革ドミノをもたらす、「初任給42万円」のサイバーエージェントはいい就職先か?、「休めない日本人」いまだ生み出す抵抗勢力の正体 小室淑恵「現役時代の休み方が定年後を決める」) [経済政策]

働き方改革については、6月11日に取上げた。今日は、(その39)(NTT「3万人テレワーク」が日本経済に変革ドミノをもたらす、「初任給42万円」のサイバーエージェントはいい就職先か?、「休めない日本人」いまだ生み出す抵抗勢力の正体 小室淑恵「現役時代の休み方が定年後を決める」)である。

先ずは、6月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏による「NTT「3万人テレワーク」が日本経済に変革ドミノをもたらす」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/305135
・『NTTグループは7月から、主要7社の従業員3万人規模にテレワークを導入するという。この取り組みは、日本経済と日本企業に変革を次々と起こしていく可能性を大いに秘めている。どんなことが起きていくのか、共に考えてみよう』、興味深そうだ。
・『NTTを褒める文章は初めて?「3万人テレワーク」で働き方が変わる  NTTという会社について、筆者が肯定的な文章を書くのは初めてかもしれない。1980年代の株式売り出しの頃から折に触れて注目しているので、かれこれ30年以上NTTおよびNTTグループについて見ていることになる。 NTTグループは、主要7社の従業員の半分となる約3万人を原則としてテレワークの働き方にして、国内のどこにでも居住できる制度を7月から導入する。勤務場所は自宅やサテライトオフィスなどとして、出社が必要になる場合は交通費・宿泊費等を出張扱いで支給する方針だという(「日本経済新聞」6月19日)。 いわゆる「IT企業」と呼ばれるような相対的に歴史の浅い会社でテレワークを導入している会社は多くあった。しかし、NTTのように歴史のある大企業がこれだけ大規模にテレワークを導入する事例は聞いたことがない。 率直に言って素晴らしいと思うし、間違いなく他の大企業にも影響が及ぶだろう。後退させずに実現してほしいものだ。 日経新聞の記事は、この施策を導入する理由を「優秀な人材の獲得につなげる」と説明している。エンジニア、マーケティング、企画などの優秀な人材は各社が欲しいと思っている。そのため、今回発表されたような自由度の高いテレワークを提供するNTTグループ各社に対抗するためには、同様の働き方を認めるか、より高い報酬を支払うか、何らかの対抗措置が必要になる。 本件の影響として、テレワークが一層普及すると見るのが、まずは妥当だろう。システム開発などのエンジニア人材をNTTのグループ企業と取り合う関係にある企業は数多ある。波及効果は大きいだろう。 テレワークについて、これまで通勤に要した「時間」だけを考えるとしても、効果は大きい。その時間が生産に使えたり、余暇時間の拡大につなげられたり、休養に充てられたりする。通勤による疲労やストレスがなくなる点も大事だ。まして、今回のNTTのテレワークなら自分の好きな場所に住めるのだ。個人にとって魅力は大きい』、「NTTのように歴史のある大企業がこれだけ大規模にテレワークを導入する事例は聞いたことがない。 率直に言って素晴らしいと思うし、間違いなく他の大企業にも影響が及ぶだろう」、「テレワークについて、これまで通勤に要した「時間」だけを考えるとしても、効果は大きい。その時間が生産に使えたり、余暇時間の拡大につなげられたり、休養に充てられたりする。通勤による疲労やストレスがなくなる点も大事だ。まして、今回のNTTのテレワークなら自分の好きな場所に住めるのだ。個人にとって魅力は大きい」、その通りだ。
・『NTT「3万人テレワーク」によって人事評価と報酬も変わる  テレワークの一般論として言われることだが、テレワークの下では仕事の成果によって個々の社員を評価するウエートが増えるはずだ。それ以外に納得性のある方法がない。そして、例えばシステムの開発者の場合、個人間の生産性には大きな差があるはずであり、報酬はこれを反映したものにならざるを得ない。 生産性に10倍の差があって、報酬は2倍しか違わないという状況が可視化されると、生産性の高い社員は納得しないだろう。その場合、他社でも同様のテレワーク環境が提供されていれば、転職に至る確率は高くなるはずだ。 テレワーク環境が当初はNTTグループ独自の魅力であっても、人材を取り合う状況になると、その条件は長く続かないだろう。 テレワークの普及は、人事評価の成果主義化を加速し、生産性の高い社員の報酬の上昇につながるとみられる』、「テレワーク環境が当初はNTTグループ独自の魅力であっても、人材を取り合う状況になると、その条件は長く続かないだろう。 テレワークの普及は、人事評価の成果主義化を加速し、生産性の高い社員の報酬の上昇につながるとみられる」、その通りだ。
・『テレワークが日本社会に浸透すれば「副業」も変わるだろう  付け加えると、テレワークは副業にもなじみがいい。現在のNTTグループの企業が、一気に社員の副業について全面解禁や副業推奨にまで向かうのかどうかは分からない。ただ、テレワークで時間と居住地が自由になれば、社員は副業を行うことが容易になる。仮にNTTが社員の副業に対して消極的だとしても、競合他社が副業に積極的になると、それに追随せざるを得なくなるのではなかろうか。 副業の普及は概ねいいことだ。社員の自由の拡大だし、収入機会の拡大でもある。また、副業がセカンドキャリアへのスムーズな移行を助けたり、場合によっては起業につながったりするケースも出てくるはずだ。いきなり独立するのではなく、副業の形で新しいビジネスを試すのは、リスクコントロール上有効な方法だ。 テレワーク拡大の副次的効果として、副業の普及にも期待したい』、「仮にNTTが社員の副業に対して消極的だとしても、競合他社が副業に積極的になると、それに追随せざるを得なくなるのではなかろうか。 副業の普及は概ねいいことだ。社員の自由の拡大だし、収入機会の拡大でもある。また、副業がセカンドキャリアへのスムーズな移行を助けたり、場合によっては起業につながったりするケースも出てくるはずだ。いきなり独立するのではなく、副業の形で新しいビジネスを試すのは、リスクコントロール上有効な方法だ」、その通りだ。
・『テレワーク浸透→転職コスト低下 次に来るのは「人材の流動化」  さて、多くの会社がテレワークを自由にしたら、社員から見ると就職先の立地の制約が緩和される分、転職のコストが下がる。しかも、人事評価は成果主義に傾き、報酬も生産性に応じてより弾力的になるので、社員の転職が増える要因になるだろう。 転職のコストが減少し、人材が流動化して再配置される機会が増えるのはいいことだ。労働者同士の競争が厳しくなるが、総体としては個人が自分の生産性を上げようとするモチベーションとして働くだろう。 また、企業同士が優秀な社員に対して提供する条件を競う関係になるので、賃金の上昇にもつながるだろう。企業間での人材獲得競争が盛んになることの効果は大きい。 また、テレワークで生産に関わる人物は、必ずしも「社員」である必要はない。社員のように働きつつも、企業と個人、あるいは大企業と個人会社のような契約関係を結ぶような自由度も、当事者がうまく活用すると双方にとってのメリットになり得る。また、「優秀な人材」は必ずしも日本国内に居住する者でなくてもいい。テレワークを前提に業務を組み立てることは、優秀な人材を探す範囲の拡大にもつながるだろう』、「テレワーク浸透→転職コスト低下 次に来るのは「人材の流動化」」、「テレワークで生産に関わる人物は、必ずしも「社員」である必要はない」、あり得るシナリオだ。
・『上級社員層にもようやく「資本主義」がやって来る  テレワークの普及で、今まで大企業に囲い込まれていた技術職の社員のような非流動的な人材層の待遇が弾力化し、雇用が流動化する。雇用が流動化する際に、人材はあたかも商品のように取引されることになる。 これまで日本では、比較的シンプルな労働に従事する非正規労働者や彼らと競合する層の正社員は、労働力が徹底的に商品化されて競争にさらされてきた。ところが、大企業の正社員はいったん入社すると数十年にわたるメンバーシップを持ち、個人の生産性の差をあまり反映しない報酬システムの下に安住していた。「労働力の商品化」の度合いは極めて小さかったといえるだろう。 しかし、テレワークの普及は、「(所得階層的に)上級社員層」にも労働力の商品化をもたらす要因として働く可能性がある。つまり、「上級社員層」にやっと資本主義化が及ぶわけだ。岸田文雄首相が勘違いしているように「新しい資本主義に移行する」というよりも、「新しく、資本主義がもたらされる」のである。 しかも、ここで生まれる人材流動化のいいところは、「会社間」にも厳しい競争がもたらされることだ。この競争によって、賃金の上昇が後押しされる可能性がある。似た事例としては、かつての外資系の投資銀行間の人材引き抜き合戦が、投資銀行マンの報酬の高騰をもたらしたことを想起してほしい。 会社間の人材獲得競争に自ら乗り出すことは、NTTのようにある程度人材を抱え込むことができている古参の大企業にとって短期的には有利でないはずだ。ただ、内外のIT企業などとの人材獲得・確保の競争状況を考えると、積極的に競争を仕掛けていかざるを得ない事態の切迫を感じたのだろう。 日本の上級社員層の間に「資本主義」が広がることは、経済の成長と活性化のために大変結構なことだ。テレワークの普及はその流れを後押しする一つの要因になるはずだ。 まさか、あのNTTがやってくれるとは思わなかった。大胆な決断に拍手を送るとともに、その実行がうまくいくことを祈りたい』、「日本の上級社員層の間に「資本主義」が広がることは、経済の成長と活性化のために大変結構なことだ。テレワークの普及はその流れを後押しする一つの要因になるはずだ」、同感である。

次に、7月27日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏による「「初任給42万円」のサイバーエージェントはいい就職先か?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/307023
・『サイバーエージェントが新入社員の初任給を42万円に引き上げた。一方、それと同時期に有名大企業の働き方に関するニュースも目にした。サイバーエージェントはいい就職先なのか。有名大企業との比較も交えて考えてみたい』、興味深そうだ。
・『「働き方」の二つのニュース 一つは良い、もう一つは残念  日本企業の経営と労働者の働き方に関わる二つのニュースが目についた。 一つは、ソニーグループ、キリンホールディングス、SOMPOホールディングスといった日本の主要企業が、社員のリスキリング(学び直し)で連携する協議会の設置が発表されたことだ。経済産業省と金融庁の支援の下に8月に「人的資本経営コンソーシアム」なるものを設置するという。社員が相互に兼業・副業する仕組みを設けたり、共同で学び直しの場を提供したりすることが検討されるらしい。 もう一つは、サイバーエージェントが2023年度の新入社員の初任給を42万円に引き上げることを発表したというニュースだ。22年春入社の社員と比べて2割を超える大幅な増額となる。人材獲得の競争が激化する中での、同社の経営戦略だ。 筆者は、一方を「良いニュース」だと思い、他方を「残念なニュース」だと思った。 ポジティブに解釈したのはサイバーエージェントの初任給引き上げだ。 率直に言って、新卒時点で相対的に優秀な社員を採用することの価値は極めて大きいはずだ』、確かに「サイバーエージェントが2023年度の新入社員の初任給を42万円に引き上げることを発表したというニュース」は確かに「良いニュース」ではあるが、私は2022年度や2021年度の入社組の給与との調整をどうするのかが気になった。
・『大企業批判を恐れて初任給だけ低くする日本の一流企業のつまらない慣行  典型的には工場と製造プロセスを経て製品ができるかつてのビジネスと、デジタル化された情報のハンドリングの巧拙やビジネス上のアイデアが成否を分ける近年のビジネスとではスピードが違う。そのため、「有能な個人」の価値が大きく異なり、かつ早くから影響が現れる。 知的能力でも、デザインなどのセンスでも、コミュニケーション力でも、「できる人材」と「普通の人材」の生産性の差は10倍以上違っていておかしくない。何はともあれ、初任給を上げて新卒採用マーケットで「買い負けしない」ようにしようという経営方針は素直でいい。 新卒のマーケットだけなのが残念だが、「普通の資本主義」(≒労働力の商品化)が実現することは、経済全体にとっても人的資源の効率的な配分の上で好ましい。 「初任給42万円(月額換算)」は年収換算で500万円と少々なので(サイバーエージェントの採用ホームページには「年俸制504万円」とある)、外資系の金融機関やコンサルティング会社などに対して競争力を持つほどではない。しかし、「大企業の厚遇批判」を恐れて初任給だけ低位にするような日本のつまらない一流企業の慣行を考えると(大卒の平均初任給は22万?23万円くらいだ)新入社員へのメッセージとしてインパクトを持つ。 大企業が初任給を大幅に引き上げるのは、(サラリーマン経営者は勇気がないから)それなりに大変なので、サイバーエージェントはいいポイントを突いたと思う。向こう2、3年くらいは有効な施策ではないだろうか。 初任給を不当に安く抑える現在の慣行のばかばかしさへの批判にもなっている点で、社会貢献でもある』、「「大企業の厚遇批判」を恐れて初任給だけ低位にするような日本のつまらない一流企業の慣行を考えると・・・新入社員へのメッセージとしてインパクトを持つ。 大企業が初任給を大幅に引き上げるのは、・・・それなりに大変なので、サイバーエージェントはいいポイントを突いたと思う。向こう2、3年くらいは有効な施策ではないだろうか」、「初任給を不当に安く抑える現在の慣行のばかばかしさへの批判にもなっている点で、社会貢献でもある」、同感である。
・『「人的資本経営コンソーシアム」の何がダメなのか  一方、人的資本経営コンソーシアムの構想は、関わる個々人にとっては「他社」が刺激となることで印象的なリスキリングの事例が生まれる程度のことは少々想像できるのだが、経営のあり方として全く魅力を感じない。このようなものに本気で期待する経営者がいるのだろうか。) もちろん、会社には「大人の事情」がある。同コンソーシアムの発起人企業として名を連ねた有名大企業(全てが文句なしの有名会社だ)の経営者たちも、経産省に旗を振られると「付き合わないわけにはいかない」ということだったのかもしれない。 しかし、例えば「発起人」に名を連ねるソニーや日立製作所の技術者が、キリンに出向してビール営業を体験することをどう考えるか。本人にとって新鮮な気付きがあるかもしれないが、出身会社にとって大きな価値を持つようには思えない。これは事例が意地悪すぎるかもしれないが、それでは、コンソーシアムの参加会社の社員が一緒に何らかの研修プログラムに参加することに、どのような意味があると考えるのか。 社員にどのような教育を提供し、それでどれだけの競争優位の要因をつくることができるかは、企業の経営にとって中核的な問題の一つだ。 他社との「コンソーシアム」のようなくだらないものに自社の社員のリスキリングを任せるくらいなら経営者は、事業と社員をまとめて売り払ってしまうか、無能な自分がさっさと引退するかした方がいい。 コンソーシアムには、企業の「人的投資」に対する一般的な情報の開示の基準を作る意図があるのではないかと推察する。ただ「まともな企業」は、自分たちがどれだけ社員の能力開発に対して投資を行っているのかを、自分たちの流儀で徹底的に公開・宣伝して独自に競うといい。世間の「基準」など待つ必要はない。基準は競争を通じて自ずと出来上がるはずであって、誰かが旗振りをする必要はない』、「「まともな企業」は、自分たちがどれだけ社員の能力開発に対して投資を行っているのかを、自分たちの流儀で徹底的に公開・宣伝して独自に競うといい。世間の「基準」など待つ必要はない。基準は競争を通じて自ずと出来上がるはずであって、誰かが旗振りをする必要はない」、その通りだ。
・『ソニーと日立の社員が同じ研修なら少なくとも一方の人事部は機能不全  若者は、どこの企業に就職すると自分の人材価値にどのようなプラス効果があるのかに敏感だ。若手だけではなく、中堅社員もある程度は気にしている。社員に対して企業がどれだけ、どのような内容に投資するのか。これについては、半ばカルテルのように「一緒に」やらせるよりは、企業間で大いに競争させるといい。 例えば、「○○社に就職すると、××××のような研修を受けることができて、これは自分のプラスになる(将来の転職にも役立つ)」といった立派な研修プログラムを持つことは、企業にとって大いにプラスになる。もちろん、スキルを身に付けた社員は「戦力」になるし、企業にとって差別化の源泉の一つになる。「他社と一緒にやろう」などと考える企業の未来には期待できない。 社員にどのような知識・スキルとマインドセットを持ってほしいのかについては、個々の企業で戦略を反映した違いがあって然るべきだ。例えば、ビジネスが近い2社だが、仮にソニーの社員と日立の社員が同じ研修を受けるのであれば、少なくともどちらかの人事部は「まともに機能していない」と考えた方がいいだろう。 このコンソーシアムは、官民の仲良しクラブの中では有意義な企画なのかもしれない。しかし、企業経営の次元では心から情けない。このプロジェクトに関わるサラリーマンの中間管理職諸氏には大いに同情する。 ともかく、経営者は大丈夫なのか。自社の中に競争力のある社員教育プログラムを持たないこと、社員に投資しないこと、社員への投資をアピールできないことは、経営者の無能力としか言いようがない』、「社員に対して企業がどれだけ、どのような内容に投資するのか。これについては、半ばカルテルのように「一緒に」やらせるよりは、企業間で大いに競争させるといい」、「自社の中に競争力のある社員教育プログラムを持たないこと、社員に投資しないこと、社員への投資をアピールできないことは、経営者の無能力としか言いようがない」、その通りだ。
・『人材の資本主義化を進めよう 生産性に見合う報酬と「クビ」の選択肢  近年、「生産性」という言葉を頻繁に聞くようになった。付加価値を生み出す効率というくらいの意味で捉えておくといいと思うのだが、個人の生産性に対する貢献には大差があり、その差は傾向として拡大している。 企業にとっての経済合理性から考えて、社員個人に対する報酬は、個人の生産(≒利益獲得)への貢献に見合ったものであるべきだ。価値を下回る見合わない報酬であれば、その社員は転職してしまう公算が大きい。真に「できる個人」には、社長の給料以上の額であっても報酬を払うくらいの柔軟性が必要なのだ。たぶん、サイバーエージェントのような会社では自然に理解されている事柄だろう。 稼ぎに貢献した社員に対して高額のボーナスその他を支払うことは元々外資系の金融機関などにはよくあることだ。有能な人材を確保するためには、貢献が期待できる有能な人材に対して好条件を提示できるのでなければならない。 一方、雇う側も間違えるし、雇う側と雇われる側の両方に見込み違いが生じる場合もある。 合理的なやり方は、期待値に基づいて雇ってみて、期待値に満たなかったらクビにするオプションも含めて条件を見直すことだ。もちろん、解雇には金銭的補償のルールが必要だが、「クビ」というオプションがあるかないかは、経営の効率性にとって極めて大きい。 また、率直に言って「クビ」があり得る職場とそうでない職場とでは、緊張感が違うので生産性に差がつく。職場としてストレスは増えるが、生産性は上がるはずだ。 現在の日本の雇用制度では、正社員を「クビ」にすることが難しい。しかも、社員間の報酬の差が小さい。企業は必然的に賃金に生産性が見合わない社員を抱えている。こうした社員がいわば「席を空けない」ことが、新しい社員の採用の邪魔になっている。また、雇ったらクビにできないことが「試しに雇ってみよう」のリスクとコストを高めるので、社会全体として人材移動が十分増えない。 転職と中途採用はかつてよりも盛んになったが、人材の流動性はまだまだ不十分だ。社会全体として、効率的な人材の再配置が行われる機会が乏しい。また、人材間の競争が不十分だ。 加えて、有能な人材を企業が取り合う形での報酬の上昇が起こりにくい。 「社員をクビにするオプションが必要、緊張感で生産性が違う、社員の報酬にもっと差があっていい、人材間の競争が必要」…。このように書いてみると、何やら自分が薄情で強欲な人になったような居心地の悪さを覚えるが、どうやら、わが国の成長が不十分であることや賃金上昇が十分でないことの背景には、人材の流動性の不足がありそうだ。 特に先の「コンソーシアム」に参加するような大企業にあって、わが国は十分「資本主義化」していない。資本主義は、労働力という商品によって、モノ・サービスを生み出す仕組みだが、はっきり言って「労働力の商品化」が、大企業層で不十分なのだ。 だから、人材の効率的再配置が不足するし、競争が不足する。そして、おそらく賃金も上昇しにくい。岸田文雄首相の言う「新しい資本主義」以前に、日本の会社や社会は「まだ十分に資本主義化していない」のである』、「日本の会社や社会は「まだ十分に資本主義化していない」、「「労働力の商品化」が、大企業層で不十分なのだ」、同感である。
・『「外資系金融のような職場は嫌だ」 そんな読者に想像してほしいこと  「外資系の金融機関のようなギスギスした職場は嫌だ」とお感じになる読者が少なくないと想像するが、二つの点について想像を巡らせてみてほしい。 まず、彼らのいささか高すぎるようにも思える報酬水準は、業界内の人材獲得競争によって生じたものだ。労働力という「商品」については、売り手側でも買い手側でも競争が生じ得る。日本の大企業労働者の賃金は、買い手側である企業側にあって競争が不十分なので上がりにくい一面がある。競争が十分に働く環境なら、多くのビジネスパーソンの給料はもっと高くていいはずなのだ。 もう1点、「クビ」がある職場は確かにギスギスするが、同一業界内で人材の流動性がある方が、クビになった場合に次の職場を探しやすい。就職先の「空席」が生じやすいし、「入れ替え」が起こることもある。「試しに雇ってもらう」ことがより容易になる。 人材に関して「資本主義化」を進めることによって、企業側にももっと競争させることが必要なのではないだろうか。 冒頭の問題に戻ると、採用の入り口の問題とはいえ、人材の競争的獲得に積極的に乗り出したサイバーエージェントの「初任給42万円」を歓迎したい。企業が進むべき方向に対して自覚的な同社は、求職者にとって、おそらくいい就職先であることだろう』、「人材に関して「資本主義化」を進めることによって、企業側にももっと競争させることが必要なのではないだろうか」、「人材の競争的獲得に積極的に乗り出したサイバーエージェントの「初任給42万円」を歓迎したい。企業が進むべき方向に対して自覚的な同社は、求職者にとって、おそらくいい就職先であることだろう」、同感である。

第三に、6月26日付け東洋経済オンラインが掲載した内科医・心療内科医の鈴木 裕介氏と、ワーク・ライフバランス代表取締役社長の 小室 淑恵氏による「「休めない日本人」いまだ生み出す抵抗勢力の正体 小室淑恵「現役時代の休み方が定年後を決める」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/596725
・『会議時間とストレスの相関を調べた調査では、1日4件の会議参加を境に高ストレス者が急増する一方で、連続する会議で5分程度の休憩を挟む「会議間インターバル」と、7時間以上の睡眠時間を確保する「勤務間インターバル」2つの休みを取り入れることで、そのリスクを軽減できることが明らかになりました。(「ネット会議やたら多いエリートの体調が危ない訳」4月1日配信) 有給取得率が60%に到達せず、生理休暇の取得率は1%前後。「休めない日本人」と揶揄されるほど、日本では休暇を取らずに働きづめのビジネスパーソンが大多数です。 「休めない空気」を生み出す、抵抗勢力の正体は?テレワーク時代に求められる「休む技術」とは? 心療内科医/産業医として、「休めない日本人」に向き合い続けてきた鈴木裕介医師と、男性の育児休暇取得や勤務間インターバルなど、「休む」に関連する法律を政策提言し続ける中で、その抵抗勢力とも向き合い続けた、株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役・小室淑恵氏が語り合いました』、興味深そうだ。
・『小室淑恵氏が「休む」ことの重要性を痛感した大失敗  鈴木 裕介(以下、鈴木):私は臨床現場で患者さんにお休みすることを提言する立場にいます。しかしこれまでの経験から、休むことに対して、申し訳なさや恥ずかしさ、恐怖といった心理的ハードルがあると感じてきました。 疲労がたまりすぎて危険な水域に入っていても、休職などまとまった休みを取ることに対する抵抗が強い方はとても多いです。ある方は、休職することに「目標や指示もない部署にいきなり放り込まれるような怖さ」を感じるとおっしゃっていました。これまでの日常から切り離されて、先の見えないところに飛ばされる恐怖があるのだと考えています。 また、その方の性格や状態にもよりますが、罪悪感を持たずに“ただ休む”ことができるようになるまでだいたい1カ月くらいはかかるんですね。 その後、やっと自分の体にとって休むことが大事だと実感できるんです。その経過を見ていると、休んでみないとわからないことがあるんだなと、常々患者さんから学んでいます。 小室 淑恵(以下、小室):私自身は元々は、仕事をどこで終わりにするか線が引けないタイプでした。前職では持ち帰りの仕事は当たり前。ですが、長男を出産後、同じスタイルは継続できないとすぐにわかりました。) 日中の育児に加えて夜中も続く授乳。当時は育児や仕事も、できるタイミングでできる限りやらないとと考えていました。しかしながら、睡眠が不足していくと、ちょっとしたことにネガティブな感情を抱くようになっていきました。そしてある日の夜中に、授乳のために起きたタイミングでメールチェックしてしまい、気になったことを指摘する社内向けに書いた強い口調のメールを、お客様に誤送信してしまったんです!!。大反省しました。 そこから生活スタイルを大転換しました。夜9時半には子どもと一緒に寝て、翌朝5時半に起きる生活にしました。授乳が必要な時には夫と交代制にするなど、もちろん育児の工夫もいろいろと凝らした結果、それまで喧嘩が増え続けていた家族関係も改善に向かったんです。大きなターニングポイントでした。睡眠、休息を取ることの大切さを痛感しましたね。休むことが物事の捉え方や認知の歪みも解消することを体感した時期でした。 鈴木:そうですね、まずご自身が休むことの必要性に気づいてもらうのはとても大切なポイントになります。 休むこと、睡眠不足に陥ると小室さんのような失敗が起こるのは、睡眠不足が、交感神経優位のバトルモード状態だからです。 交感神経は身体を興奮させ、動きを活発にする「バトルモード」で、副交感神経は身体をリラックスさせ、休んで元気をためる「休息モード」です。 人は「ここは安心だ」と思える環境や感覚を得て、自律神経が副交感神経優位の時になったときにのみゆっくり寝たりご飯を食べたりできるようにプログラムされているんですね。裏を返すと、睡眠不足とは「ここは安心だ」と思えない環境にいる状態で、言動も「バトルモード」になりがちです』、「元々は、仕事をどこで終わりにするか線が引けないタイプ」、「授乳のために起きたタイミングでメールチェックしてしまい、気になったことを指摘する社内向けに書いた強い口調のメールを、お客様に誤送信してしまったんです!!。大反省しました。 そこから生活スタイルを大転換しました。夜9時半には子どもと一緒に寝て、翌朝5時半に起きる生活にしました。授乳が必要な時には夫と交代制にするなど、もちろん育児の工夫もいろいろと凝らした結果、それまで喧嘩が増え続けていた家族関係も改善に向かったんです。大きなターニングポイントでした。睡眠、休息を取ることの大切さを痛感」、やはり大失敗をしないと気づかないようだ。
・『休むことに抵抗感が強い会社で最初にやる施策とは  小室さんは、ご自身の経験から、7時間以上の睡眠時間確保を目指す「勤務間インターバル」を政策提言されています。 しかし、経済同友会が、国内のスタートアップ企業について、一定条件のもとで「時間外労働の上限規制の適用対象から除外すべき」とする提言を発表したことが象徴するように、休むことへの抵抗勢力が、日本には根強く存在します。 企業の働き方改革コンサルティングの場面でも、そうした抵抗感の強い会社と対峙することも多いと思いますが、どのように向き合ってきたのでしょうか?) 小室:休むことに抵抗感が強い職場で最初にやる施策があります。それが「マニュアル休暇」です。全員が2週間程度のまとまった休みを取る練習をするんです。まず休みが取れたら何をしたいかを全員で書き出してもらいます。育児や介護などの理由がなくても、独身者も全員でカレンダーに休む予定を入れます。そして休む期間の仕事の引き継ぎの問題が発生するので、その際に利用するマニュアルを作成していくんです。マニュアルは、仕事を引き継ぐ側が書くと、いざその仕事をやってみる際に機能するマニュアルが作れます。 マニュアル休暇の効果はいくつかあります。独身/既婚・子どもの有無等にかかわらずみんなが休みを取ることによって、お互い様になるので肩身が狭くなく休めるようになります。また、マニュアル化が行われるので劇的に仕事の属人化が解消されます。個人商店的な雰囲気から、チームへの配慮も生まれます。 従来個人商店の働き方だと、誰かが困っていても助けられないので放っておくしかなかった状況が生まれてしまっていました。属人化を脱することが助け合える土壌を作るんです。 鈴木:土壌作り、マニュアルもできて一挙両得ですね。それは当院でもぜひやってみたいです。 ある日突然休職する方の傾向として、自分の都合よりも周りを優先して、環境や他者からの期待に完璧に近い形で従おうとする「過剰適応」傾向が挙げられます。そうした方の95%が、口癖のように「大丈夫です」と言ってしまうという結果が出ていますが、SOSを出すのが苦手な方にとっては、誰かが日常的に休暇を取得している状態というのは、安心して休暇を取得できますね』、「マニュアル休暇」、「全員が2週間程度のまとまった休みを取る練習をするんです。まず休みが取れたら何をしたいかを全員で書き出してもらいます。育児や介護などの理由がなくても、独身者も全員でカレンダーに休む予定を入れます。そして休む期間の仕事の引き継ぎの問題が発生するので、その際に利用するマニュアルを作成していくんです。マニュアルは、仕事を引き継ぐ側が書くと、いざその仕事をやってみる際に機能するマニュアルが作れます。 マニュアル休暇の効果はいくつかあります。独身/既婚・子どもの有無等にかかわらずみんなが休みを取ることによって、お互い様になるので肩身が狭くなく休めるようになります。また、マニュアル化が行われるので劇的に仕事の属人化が解消されます。個人商店的な雰囲気から、チームへの配慮も生まれます」、なかなかいい仕組みのようだ。
・『抵抗勢力を生み出す、アドレナリンの罠  休みやすい土壌作りができても、次にハードルになるのが、ストレスは自覚するのが難しく、そもそも休む必要性を感じづらい点です。 高ストレス者の57%が、自身が高ストレス者であることを自覚していないという結果が明らかになっています。 対策としては次のようなことが考えられます。開発者によって精度にばらつきはあり発展途上の領域ではありますが、声や自律神経など生体情報を活用したストレスチェックのアプリなども存在します。自身の感覚だけに頼らず、そうしたテクノロジーを活用するのも、選択肢の1つだと思います。 実はストレス状況下では、アドレナリンやコルチゾールなどの抗ストレスホルモンが分泌されることで、一時的にパフォーマンスが上がっていることが多いんですね。そうなると、ますますストレスを実感することが難しく、むしろ「調子がいい」とすら感じるので、注意が必要です。疲労感が伴わないまま、密かに進行する疲労というのがいちばん厄介です。 小室:このアドレナリンによる罠も、抵抗勢力が根強く存在する理由の1つです。 DawsonとReidの1997年の研究によると、人間の脳が集中力を発揮できるのは、起床から13時間以内で、それ以降は酒気帯び運転と同程度の集中力しか保てません。 さらに怖いのは、アドレナリンやコルチゾールによって、起きてから24時間を超えると集中力が一時的に上がってしまう点です。 ここで一時的に仕事が進んだ感覚を経験すると、それが強い成功体験になってしまいます。実際には朝起きて13時間から24時間までの11時間は、著しく生産性が落ちているわけですから、トータルで見た時には企業にとっても本人にとっても大きなマイナスなのですが、最後の数時間の記憶が、長時間労働を成功体験にしてしまい、休むことを軽視しがちです。 そうした背景もあり、私は7時間以上の睡眠時間確保を目指す「勤務間インターバル」を政策提言しています。 ストレスと密接な関係がある睡眠時間の確保を、法律で仕組み化することで、自覚できていないストレスにも対策可能にすることが狙いです』、「人間の脳が集中力を発揮できるのは、起床から13時間以内で、それ以降は酒気帯び運転と同程度の集中力しか保てません。 さらに怖いのは、アドレナリンやコルチゾールによって、起きてから24時間を超えると集中力が一時的に上がってしまう点です。 ここで一時的に仕事が進んだ感覚を経験すると、それが強い成功体験になってしまいます。実際には朝起きて13時間から24時間までの11時間は、著しく生産性が落ちているわけですから、トータルで見た時には企業にとっても本人にとっても大きなマイナスなのですが、最後の数時間の記憶が、長時間労働を成功体験にしてしまい、休むことを軽視しがちです。 そうした背景もあり、私は7時間以上の睡眠時間確保を目指す「勤務間インターバル」を政策提言しています」、確かに「起きてから24時間を超えると集中力が一時的に上がってしまう」、「トータルで見た時には企業にとっても本人にとっても大きなマイナスなのですが、最後の数時間の記憶が、長時間労働を成功体験にしてしまい、休むことを軽視しがちです」、確かに「勤務間インターバル」は有力な歯止め策のようだ。
・『抵抗勢力が押し黙る、データの正体  鈴木:小室さんは「一時的に仕事が進んだ感覚を経験した」抵抗勢力の方々に遭遇したときは、どのように向き合っていますか? 小室:2021年6月科学雑誌『ネイチャー』に、現役時代に 6時間以下の睡眠を続けた人は、定年後の認知症の発症率1.3倍、というデータが掲載されました。このデータを管理職研修などで紹介すると、場の空気が変わります。人生100年時代ということは、約40年も続く定年後の人生です。そのQOLを決めるのは、現役時代の働き方・休み方なのだ、ということですね。) また、抵抗勢力の人たちは「正義感が強い」ことも理解する必要があります。 以前「もし有休が取れたら本当は何をしたいか」をテーマに付箋を使ったワークショップを実施しました。 出てきた回答は「ライブに行きたい」「ディズニーランドに行きたい」など、もし休みが取れたらやりたいことが沢山ある!そんな思いが詰まった回答がたくさん出てきたんですね。 それを見た抵抗勢力だった人は驚かれていました。「休むよりも仕事をしたいと思っていたのは自分だけ?」とハッとしたと言います。 その方はみんなと一緒に成果を出したい、みんなの役に立ちたい気持ちが高い人でもありましたが、そこで初めて自分の考え方や行動が、みんなが休めない状況を作っていたことに気がついたんです。 悪気なく自分の考え方を強制していたことに最初はショックを受けていたようでした』、「もし休みが取れたらやりたいことが沢山ある!そんな思いが詰まった回答がたくさん出てきたんですね。 それを見た抵抗勢力だった人は驚かれていました。「休むよりも仕事をしたいと思っていたのは自分だけ?」とハッとしたと言います。 その方はみんなと一緒に成果を出したい、みんなの役に立ちたい気持ちが高い人でもありましたが、そこで初めて自分の考え方や行動が、みんなが休めない状況を作っていたことに気がついたんです。 悪気なく自分の考え方を強制していたことに最初はショックを受けていたようでした」、「抵抗勢力」は「みんなの役に立ちたい気持ちが高い人でもありましたが、そこで初めて自分の考え方や行動が、みんなが休めない状況を作っていたことに気がついたんです」、意外にも善人だったようだ。
・『権力と影響力を理解することは重要  鈴木:自分の背後に流れるパワー(権力)とその影響力を理解することは重要ですよね。自覚していなくても強制力を持ってしまったり、本音を聞けていなかったり。いつのまにか自分が権力側に立っていて、自分にとって耳当たりのいいことばかりしか耳に入らないようになってくる。これはとても恐ろしいことだと思います。 それに、「強者」だけでなく、「弱者」にあたる人の背後にもパワーが流れている、ということも重要な点だと思います。 最近では「心理的安全性」(注)の重要性が言われるようになって久しいですが、それを意識しするあまり上司が部下に何も言えなくなる場合が出てきて、かえってコミュニケーションの質が下がっているケースが少なくありません。「強者」と「弱者」は容易に入れ替わります。新しい仕組みやカルチャーを推進していくうえで、こうしたパワーの感覚への深い理解が欠かせないと思います』、「「心理的安全性」・・・を意識しするあまり上司が部下に何も言えなくなる場合が出てきて、かえってコミュニケーションの質が下がっているケースが少なくありません。「強者」と「弱者」は容易に入れ替わります。新しい仕組みやカルチャーを推進していくうえで、こうしたパワーの感覚への深い理解が欠かせないと思います』、「「強者」と「弱者」は容易に入れ替わります」、複雑な世の中になったものだ。
(注)「心理的安全性」:組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言できる状態のこと。「チームの他のメンバーが自分の発言を拒絶したり、罰したりしないと確信できる状態」と定義(リクルートマネジメントソリューションズ))
タグ:働き方改革 (その39)(NTT「3万人テレワーク」が日本経済に変革ドミノをもたらす、「初任給42万円」のサイバーエージェントはいい就職先か?、「休めない日本人」いまだ生み出す抵抗勢力の正体 小室淑恵「現役時代の休み方が定年後を決める」) ダイヤモンド・オンライン 山崎 元氏による「NTT「3万人テレワーク」が日本経済に変革ドミノをもたらす」 「NTTのように歴史のある大企業がこれだけ大規模にテレワークを導入する事例は聞いたことがない。 率直に言って素晴らしいと思うし、間違いなく他の大企業にも影響が及ぶだろう」、「テレワークについて、これまで通勤に要した「時間」だけを考えるとしても、効果は大きい。その時間が生産に使えたり、余暇時間の拡大につなげられたり、休養に充てられたりする。通勤による疲労やストレスがなくなる点も大事だ。まして、今回のNTTのテレワークなら自分の好きな場所に住めるのだ。個人にとって魅力は大きい」、その通りだ。 「テレワーク環境が当初はNTTグループ独自の魅力であっても、人材を取り合う状況になると、その条件は長く続かないだろう。 テレワークの普及は、人事評価の成果主義化を加速し、生産性の高い社員の報酬の上昇につながるとみられる」、その通りだ。 「仮にNTTが社員の副業に対して消極的だとしても、競合他社が副業に積極的になると、それに追随せざるを得なくなるのではなかろうか。 副業の普及は概ねいいことだ。社員の自由の拡大だし、収入機会の拡大でもある。また、副業がセカンドキャリアへのスムーズな移行を助けたり、場合によっては起業につながったりするケースも出てくるはずだ。いきなり独立するのではなく、副業の形で新しいビジネスを試すのは、リスクコントロール上有効な方法だ」、その通りだ。 「テレワーク浸透→転職コスト低下 次に来るのは「人材の流動化」」、「テレワークで生産に関わる人物は、必ずしも「社員」である必要はない」、あり得るシナリオだ。 「日本の上級社員層の間に「資本主義」が広がることは、経済の成長と活性化のために大変結構なことだ。テレワークの普及はその流れを後押しする一つの要因になるはずだ」、同感である。 山崎 元氏による「「初任給42万円」のサイバーエージェントはいい就職先か?」 確かに「サイバーエージェントが2023年度の新入社員の初任給を42万円に引き上げることを発表したというニュース」は確かに「良いニュース」ではあるが、私は2022年度や2021年度の入社組の給与との調整をどうするのかが気になった。 「「大企業の厚遇批判」を恐れて初任給だけ低位にするような日本のつまらない一流企業の慣行を考えると・・・新入社員へのメッセージとしてインパクトを持つ。 大企業が初任給を大幅に引き上げるのは、・・・それなりに大変なので、サイバーエージェントはいいポイントを突いたと思う。向こう2、3年くらいは有効な施策ではないだろうか」、「初任給を不当に安く抑える現在の慣行のばかばかしさへの批判にもなっている点で、社会貢献でもある」、同感である。 「「まともな企業」は、自分たちがどれだけ社員の能力開発に対して投資を行っているのかを、自分たちの流儀で徹底的に公開・宣伝して独自に競うといい。世間の「基準」など待つ必要はない。基準は競争を通じて自ずと出来上がるはずであって、誰かが旗振りをする必要はない」、その通りだ。 「社員に対して企業がどれだけ、どのような内容に投資するのか。これについては、半ばカルテルのように「一緒に」やらせるよりは、企業間で大いに競争させるといい」、「自社の中に競争力のある社員教育プログラムを持たないこと、社員に投資しないこと、社員への投資をアピールできないことは、経営者の無能力としか言いようがない」、その通りだ。 「日本の会社や社会は「まだ十分に資本主義化していない」、「「労働力の商品化」が、大企業層で不十分なのだ」、同感である。 「人材に関して「資本主義化」を進めることによって、企業側にももっと競争させることが必要なのではないだろうか」、「人材の競争的獲得に積極的に乗り出したサイバーエージェントの「初任給42万円」を歓迎したい。企業が進むべき方向に対して自覚的な同社は、求職者にとって、おそらくいい就職先であることだろう」、同感である。 東洋経済オンライン 鈴木 裕介 小室 淑恵 「「休めない日本人」いまだ生み出す抵抗勢力の正体 小室淑恵「現役時代の休み方が定年後を決める」」 「元々は、仕事をどこで終わりにするか線が引けないタイプ」、「授乳のために起きたタイミングでメールチェックしてしまい、気になったことを指摘する社内向けに書いた強い口調のメールを、お客様に誤送信してしまったんです!!。大反省しました。 そこから生活スタイルを大転換しました。夜9時半には子どもと一緒に寝て、翌朝5時半に起きる生活にしました。授乳が必要な時には夫と交代制にするなど、もちろん育児の工夫もいろいろと凝らした結果、それまで喧嘩が増え続けていた家族関係も改善に向かったんです。大きなターニングポイントでした 「マニュアル休暇」、「全員が2週間程度のまとまった休みを取る練習をするんです。まず休みが取れたら何をしたいかを全員で書き出してもらいます。育児や介護などの理由がなくても、独身者も全員でカレンダーに休む予定を入れます。そして休む期間の仕事の引き継ぎの問題が発生するので、その際に利用するマニュアルを作成していくんです。マニュアルは、仕事を引き継ぐ側が書くと、いざその仕事をやってみる際に機能するマニュアルが作れます。 マニュアル休暇の効果はいくつかあります。独身/既婚・子どもの有無等にかかわらずみんなが休みを取 「人間の脳が集中力を発揮できるのは、起床から13時間以内で、それ以降は酒気帯び運転と同程度の集中力しか保てません。 さらに怖いのは、アドレナリンやコルチゾールによって、起きてから24時間を超えると集中力が一時的に上がってしまう点です。 ここで一時的に仕事が進んだ感覚を経験すると、それが強い成功体験になってしまいます。実際には朝起きて13時間から24時間までの11時間は、著しく生産性が落ちているわけですから、トータルで見た時には企業にとっても本人にとっても大きなマイナスなのですが、最後の数時間の記憶が、長時 確かに「起きてから24時間を超えると集中力が一時的に上がってしまう」、「トータルで見た時には企業にとっても本人にとっても大きなマイナスなのですが、最後の数時間の記憶が、長時間労働を成功体験にしてしまい、休むことを軽視しがちです」、確かに「勤務間インターバル」は有力な歯止め策のようだ。 「もし休みが取れたらやりたいことが沢山ある!そんな思いが詰まった回答がたくさん出てきたんですね。 それを見た抵抗勢力だった人は驚かれていました。「休むよりも仕事をしたいと思っていたのは自分だけ?」とハッとしたと言います。 その方はみんなと一緒に成果を出したい、みんなの役に立ちたい気持ちが高い人でもありましたが、そこで初めて自分の考え方や行動が、みんなが休めない状況を作っていたことに気がついたんです。 悪気なく自分の考え方を強制していたことに最初はショックを受けていたようでした」、「抵抗勢力」は「みんなの役 「「心理的安全性」・・・を意識しするあまり上司が部下に何も言えなくなる場合が出てきて、かえってコミュニケーションの質が下がっているケースが少なくありません。「強者」と「弱者」は容易に入れ替わります。新しい仕組みやカルチャーを推進していくうえで、こうしたパワーの感覚への深い理解が欠かせないと思います』、「「強者」と「弱者」は容易に入れ替わります」、複雑な世の中になったものだ。 (注)「心理的安全性」:組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言できる状態のこと。「チームの他のメンバーが自分の発言
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今日は更新を休むので、明日にご期待を!

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幸福(その5)(人より「幸せを感じやすい人」が自然にしている事 自己肯定感の高い人と低い人の差どこにある?、《この国は不寛容社会》「幸福度ランキング58位」の日本人に足りないたった1つの習慣 『アメリカはいつも夢見ている』より #1、自分も周りも幸せに!笑顔がもたらす5つの効果 笑うのが無理なら 軽く微笑むだけでもOK) [人生]

幸福については、2月27日に取上げた。今日は、(その5)(人より「幸せを感じやすい人」が自然にしている事 自己肯定感の高い人と低い人の差どこにある?、《この国は不寛容社会》「幸福度ランキング58位」の日本人に足りないたった1つの習慣 『アメリカはいつも夢見ている』より #1、自分も周りも幸せに!笑顔がもたらす5つの効果 笑うのが無理なら 軽く微笑むだけでもOK)である。

先ずは、昨年9月30日付け東洋経済オンラインが掲載したメンタルコーチの中島 輝氏による「人より「幸せを感じやすい人」が自然にしている事 自己肯定感の高い人と低い人の差どこにある?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/458028
・『コロナ禍が長引く中、自分のあり方や未来などに不安を抱えていたり、自信を失っていたりする人は少なくありません。日本人は自己肯定感が低いと言われますが、「いいときも悪いときも自分を信じて前進できる人には、心に"あそび"がある」と語るのは、自己肯定感の第一人者で心理カウンセラーの中島輝氏です。中島氏の著書『うまくいっている人がしている 自己肯定感を味方にするレッスン』から、人生をより豊かにするためのメソッドを紹介します』、「人生をより豊かにするためのメソッド」とは有り難い。
・『「幸せになる自分」を選ぶのは、自分  同じ環境で同じように暮らしていても、喜びや幸せを感じられる人と、悲しみにさいなまれて幸福感を得られない人がいます。いったい何が違うのでしょうか?両者の違いを解説するとき、私は次のエピソードを紹介しています。 囚われの身である2人の男が鉄格子から外を見ていた。  1人は下を向いて地面の泥を見ながら絶望感を抱いていた。  1人は上を向いて空に輝く星を眺めて希望を抱いていた。 つらいことがあったとき、美しいものに気が付いて、気持ちが晴れた経験は誰にでもあると思います。地面の泥を見て絶望に打ちひしがれていた男も、もし空を見上げる余裕があったなら、輝く星に未来への期待を見出せたかもしれません。 鉄格子の中から上を向くか下を見るか。つまり、希望を見つけるか、絶望に浸るかは、他人に強要されるものではなく、自分自身の選択です。 「今日は上司に怒られて、恥をかかされ、作業のやり直しにも時間がかかって最悪だった」と泥を見つけるのも自分の選択。「今日は上司に怒られたけれど、自分のミスに気づけたし、やり直すことで学びがあった。明日はもっとうまくできそうだ」と星を眺めるのも自分の選択です。 「泥という絶望」を見るか、「星のような希望」を見るのかを自分で選択できるということは、「自分を幸せにできる選択」は自分自身でできるということ。もしその選択が失敗だったとしても、自分で選んだ道なら後悔は少なく、納得できるでしょう。 自分で選択することを続けていけば、他人と自分を比較して落ち込むことが減っていきます。表面だけを取り繕ってごまかす必要もなくなり、自分の信念に基づいて、次々と新たな「幸せ」を選択できるようになるでしょう。 鉄格子の中から星を見上げた男のように、物事をポジティブに捉えることができるのは、自分を信じられる人、つまり自己肯定感が高い人です』、「「泥という絶望」を見るか、「星のような希望」を見るのかを自分で選択できるということは、「自分を幸せにできる選択」は自分自身でできるということ。もしその選択が失敗だったとしても、自分で選んだ道なら後悔は少なく、納得できるでしょう。 自分で選択することを続けていけば、他人と自分を比較して落ち込むことが減っていきます。表面だけを取り繕ってごまかす必要もなくなり、自分の信念に基づいて、次々と新たな「幸せ」を選択できるようになるでしょう」、「物事をポジティブに捉えることができるのは、自分を信じられる人、つまり自己肯定感が高い人です」、なるほど。
・『本来自己肯定感は生まれながらに備わっている  ここで改めて、自己肯定感とは何かを説明しておきましょう。 自己肯定感とは、「私が私であることに満足でき、自分を価値ある存在だと受け入れられること」。私は、自己肯定感こそが「人生を支える軸となるエネルギー」だと考えています。 本来、自己肯定感は誰にでも生まれながらに備わっているもの。実は、自己肯定感が一番高いのは赤ちゃんのときです。伝い歩きを始めた赤ちゃんは、「転ぶかもしれない」「怖いからやめよう」なんて微塵も考えていません。何度転んでも「自分はきっと歩ける」と信じてチャレンジし続けます。 誰もが赤ちゃんのときは「きっとできる」と、自己肯定感に満ち溢れています。しかし、成長するにしたがい、さまざまなネガティブな経験によって自己肯定感は低下してしまいます。 でも、安心してください。自己肯定感は何歳からでも高めることが可能です。ただ、高めることができても、一生自己肯定感の高い人でいられるわけではなく、人生のさまざまな出来事の中で上がったり下がったりします。大切なのは、自己肯定感が下がってしまったとき、再び高められる方法を把握しておくことです。) ところで、あなたは「自己肯定感の高い人」と聞いてどのような人物を思い浮かべますか? ブレない自分を持っている人、強い芯のある人、どんなときも堂々と自分の考えを主張できる人──これらは、自己肯定感が強い人の典型だといえるでしょう。しかし、ブレない強さにこだわり過ぎると逆に、小さな失敗をしただけで心がポキッと折れるようになってしまうのです』、「伝い歩きを始めた赤ちゃんは、「転ぶかもしれない」「怖いからやめよう」なんて微塵も考えていません。何度転んでも「自分はきっと歩ける」と信じてチャレンジし続けます。 誰もが赤ちゃんのときは「きっとできる」と、自己肯定感に満ち溢れています。しかし、成長するにしたがい、さまざまなネガティブな経験によって自己肯定感は低下してしまいます」、確かに「誰もが赤ちゃんのときは「きっとできる」と、自己肯定感に満ち溢れています」、「自己肯定感」なくしては歩くことなどできない筈だ、「大切なのは、自己肯定感が下がってしまったとき、再び高められる方法を把握しておくこと」、「ブレない強さにこだわり過ぎると逆に、小さな失敗をしただけで心がポキッと折れるようになってしまう」、やはりバランスも重要なようだ。
・『選択肢に柔軟性を持てる人の強み  自己肯定感が高い人には「柔軟性」が備わっています。この柔軟性を私はよく、「心に"あそび"がある」と表現しています。 あらゆる物事に対し、「絶対にAだ」と執着せず、周囲の意見を受け入れる。「Aもいいけれど、Bも素敵だな。でも今日はCにしておこう」と選択肢に柔軟性を持つことができる。これが心に「あそび」のある状態です。もしCに失敗したとしても、「こんなこともあるよね」と笑顔で受け入れられるようになることが大切なのです。 「あそび」は心の中にある、まっさらで自由な空間。空間があるから、自分とは異なる人の意見も、広い心で受け入れることができます。 自己肯定感が低いと、どうしても視野が狭くなり、一度決めた物事に固執してしまう傾向になります。そんなときは、心に「あそび」があるかどうか、自分自身に問いかけてみてください。 自分には青い服が似合う、青を選んでいれば間違いないと思い込んでいたけれど、たまには赤い服を選んでみるのもいいかもしれない。緑色を試すのもおもしろそうだ――そんなふうに、ときには迷ったりブレたりした方が、自分の可能性も広がって、日々が輝き、人生が楽しいものになります。 自己肯定感が高いと、「私の未来は明るいんだから、1回ぐらい失敗したって大丈夫!」と前向きな気持ちで赤や緑色を選択できるようになります。すると、ますまずポジティブなエネルギーが湧いてきて、人生を楽しむためのアイデアがどんどん生まれてきます。 今持っている自分の価値観を強く信じ続けるのではなく、ときには自分自身を疑ってみてください。自分は何を大切にして生きていきたいのか、どんな人間になりたいのか――時の流れとともに、答えは少しずつ変化しているはずです。 迷って、ブレて、変化するから、次の新しい発想や行動が生まれ、人生に豊かな彩りを与えてくれます。変化に対応するのは難しいことでも大変なことでもなく、実はとても楽しいことなのですから。 「何があっても受け入れる」という柔軟な心で自己肯定感を養っていくと、自分の人生を自分でデザインできるようになります。あなたは今までの自分とは違う実感と自信に気づくことができるでしょう』、「「何があっても受け入れる」という柔軟な心で自己肯定感を養っていくと、自分の人生を自分でデザインできるようになります」、なるほど。
・『自分に起きることはすべてギフト  自分は何を選んで、何を大切にして、どんな人間になりたいのかを考え、迷ったり、ブレたりしながら人生を歩んでいく。その時々で自分が選んできたものが、自分の人生を形作ります。 世間の常識や体裁など、誰かが敷いたレールの上を走るのではなく、自分で考えた道を自分の足で歩んでいるという実感。ここに、人生の大きな喜びがあるのです。 いいことも悪いことも、好きなことも嫌いなことも、自分の身に起きるすべては、理想の人生をデザインするための「ギフト」です。 幸せとは満ち足りることではなく、気づき続けることです。毎日自分の身に起こるさまざまな出来事(=ギフト)から、どんな気づきを得ることができるのか。それは人ぞれぞれ異なります。 最初に述べた「鉄格子の中」という過酷なギフトから、「希望」を見いだせた人のように、どんなギフトを受け取っても、肯定的に受け止めて感謝をすること。その積み重ねによって自己肯定感が高まり、人生がますます楽しくなっていくはずです。 迷って、ブレて、変化するから、次の新しい発想や行動が生まれ、人生に豊かな彩りを与えてくれます。変化に対応するのは難しいことでも大変なことでもなく、実はとても楽しいことなのですから。 「何があっても受け入れる」という柔軟な心で自己肯定感を養っていくと、自分の人生を自分でデザインできるようになります。あなたは今までの自分とは違う実感と自信に気づくことができるでしょう』、「「何があっても受け入れる」という柔軟な心で自己肯定感を養っていくと、自分の人生を自分でデザインできるようになります。あなたは今までの自分とは違う実感と自信に気づくことができるでしょう」、実際には難しい面もあるが、理想形としてはその通りだ。
・『自分に起きることはすべてギフト  自分は何を選んで、何を大切にして、どんな人間になりたいのかを考え、迷ったり、ブレたりしながら人生を歩んでいく。その時々で自分が選んできたものが、自分の人生を形作ります。 世間の常識や体裁など、誰かが敷いたレールの上を走るのではなく、自分で考えた道を自分の足で歩んでいるという実感。ここに、人生の大きな喜びがあるのです。 いいことも悪いことも、好きなことも嫌いなことも、自分の身に起きるすべては、理想の人生をデザインするための「ギフト」です。 幸せとは満ち足りることではなく、気づき続けることです。毎日自分の身に起こるさまざまな出来事(=ギフト)から、どんな気づきを得ることができるのか。それは人ぞれぞれ異なります。 最初に述べた「鉄格子の中」という過酷なギフトから、「希望」を見いだせた人のように、どんなギフトを受け取っても、肯定的に受け止めて感謝をすること。その積み重ねによって自己肯定感が高まり、人生がますます楽しくなっていくはずです』、「いいことも悪いことも、好きなことも嫌いなことも、自分の身に起きるすべては、理想の人生をデザインするための「ギフト」です」、ここまで割り切るのは、実際にはかなり困難だろう。その壁を乗り越えると、「最初に述べた「鉄格子の中」という過酷なギフトから、「希望」を見いだせた人のように、どんなギフトを受け取っても、肯定的に受け止めて感謝をすること。その積み重ねによって自己肯定感が高まり、人生がますます楽しくなっていくはずです」、となるようだ。

次に、本年4月30日付け文春オンラインが掲載したアメリカ在住のエッセイストの渡辺 由佳里氏による「《この国は不寛容社会》「幸福度ランキング58位」の日本人に足りないたった1つの習慣 『アメリカはいつも夢見ている』より #1」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/53876
・『「日本人の幸福度は全世界で58位」――ある時期、そんなニュースがSNSをにぎわせた。 なぜ日本人は幸せを感じづらいのか? その理由を、アメリカ在住のエッセイスト・渡辺由佳里さんの新刊『アメリカはいつも夢見ている』より一部を抜粋。国連がまとめた「幸福度ランキング」を見ることで、欧米人にあって日本人に足りないものが見えてきた。(全3回の1回目/#2、#3を読む)』、興味深そうだ。
・『日本は幸福度ランキング58位  Twitterに流れてくる日本のニュースで、国連がまとめた幸福度ランキングで日本が2018年から4つ順位を下げて58位になったということを知った(2019年)。 このニュースだけでは内容がよくわからないので、情報の大元である2019年WHR(World Happiness Report)をダウンロードして読んでみた。統計の専門家ではないので計算方法などはよくわからないが、このレポートは日本と日本人の幸福感について重要なことをいくつか指摘してくれていると感じた。 WHRの幸福度ランキングはギャラップの世論調査(Gallup World Poll Questions)を元にしている。ビジネス経済、社会関与、コミュニケーションとテクノロジー、多様性(社会問題)、教育と家族、感情(幸福感)、環境とエネルギー、食と住居、政府と政治、法と秩序(治安)、健康、宗教と倫理、交通、仕事の14の分野での質問があり、回答者は「カントリルラダー」という指標を使って答える。「はしご(ラダー)」を想像し、想像できる最悪の状態を0、最高の状態を10として主観的な評価をするものだ。 WHRでは、その結果の幸福度を説明する重要なファクターとして「一人あたりの国内総生産」、「社会的支援」、「出生時の平均健康寿命」、「人生の選択をする自由」、「他者への寛大さ」、「公職者が汚職/堕落しているという国民の認識」の6つを挙げている。 幸福度ランキングのグラフを見ると、トップからフィンランド、デンマーク、ノルウェー、アイスランドと北欧の国々が並んでいる。銃による大量殺人があり、オピオイド依存症が深刻になっているアメリカですら19位に入っている。それなのに、日本が58位だというのは不思議に思える。 グラフをよく見ると、日本は「一人あたりの国内総生産」、「社会的支援」、「出生時の平均健康寿命」という左から3つのファクターでは上位の国々とほとんど変わらないことがわかる。 上位の国々と日本との大きな違いは、「他者への寛大さ」と最後の「ディストピア+レジデュアル」である。日本は「出生時の平均健康寿命」では156ヶ国中2位というチャンピオンなのに、「他者への寛大さ」においては92位というほぼ最低レベルなのだ。) 繰り返すが、幸福度のスコアはそれぞれの国の回答者の主観的な評価の平均であり、6つのファクターはその因果関係を説明しようとしているだけである。例えば「他者への寛大さ(generosity)」が高いからといってその国がスコアを上げてもらっているわけではない。 まずはこの「他者への寛大さ」と幸福感について語ろう』、「日本は「一人あたりの国内総生産」、「社会的支援」、「出生時の平均健康寿命」という左から3つのファクターでは上位の国々とほとんど変わらないことがわかる。 上位の国々と日本との大きな違いは、「他者への寛大さ」と最後の「ディストピア+レジデュアル」である」、具体的な内容はこのあと説明があるようだ。 
・『日本人はなぜ幸せになれないのか?  WHRの「幸福と社会性がある行動」という章は、人間が非常に社会的な動物であり、家族や友人だけでなく見知らぬ他人を助けることによって満足感や幸福感を得ることを説明している。見返りを求めずに自分の金を提供する寄付や、自分の時間を提供するボランティアがその代表的なものだ。 しかし、レポートには「(それらに加えて)いろいろな方法で他者を援助することができる。例えば、見知らぬ人のためにドアを開けてあげるとか、褒めてあげるとか、病に臥せっている親戚を介護するとか、伴侶を気遣ってあげるとか、拾った財布を持ち主に返してあげるとか、小さいけれども意義がある寛大な行動だ」と書いてある。ランダムに親切な行動をする実験では、親切な行動をしたグループのほうがしなかったグループよりも幸せになったという。 次の「ディストピア+レジデュアル」という項目は少しわかりにくい。「ディストピア」とは世紀末的なSFでよく使われる言葉で、ユートピアの反対の社会である。この調査では、幸福度を説明する6つの重要なファクターが世界で最悪である架空の国を「ディストピア」と設定する。「ディストピア」に住んでいる人は世界で最も不幸であるという仮定で、カントリルラダーにおける「最悪」の基準にする。その基準と照らし合わせて自国の自分の生活の評価をするのだ。 ディストピアの国民の自己評価の平均推定値が1.88で、それに「レジデュアル」を加えたのがこの部分ということらしい。「レジデュアル(残余)」とは(グラフの左の6つのファクターで)「説明されていない構成要素(unexplained components)」ということで、日本人はここが異常に少ない。) たとえば世界で12位のコスタリカでは、幸せの理由を具体的に説明する6つの要素は日本より少ないのに世論調査での総合的な幸福度のスコアは日本よりずっと高い。6つの要素では説明されない部分で、彼らは幸せを感じているのだろう。 見方を変えると、「日本は他国に比べて幸せになる社会的な条件はけっこう揃っているのに、なぜか幸せを感じていない」ということが浮かび上がってくる。 これら2つの特徴を考慮すると、日本人が幸せになる近道は、「他者に寛大/寛容で親切になる」ことと「自分がけっこう幸せであることを自覚する」ことになる。 「自分が幸せであることを自覚する」というのは漠然としていて難しいので、わかりやすくやりやすい「寛大/寛容になる」ことから始めればいいだろう。 経済的に余裕がない人が無理に大金を寄付したり、寝る時間がない人がボランティアをしたりする必要はない。電車で辛そうにしている人がいたら席を譲ってあげ、ベビーカーを押している人がいたら電車やエレベーターの乗り降りを手伝ってあげるといったことなら誰でもできる。朝、道ですれ違う人に「おはよう」と声をかけたり、レジの人に「今日はいいお天気でよかったですね」と笑顔で話しかけて「ありがとう」と言うだけでも、相手に小さな幸せを与えてあげられるし、それによって自分も少し幸せになれる』、「「日本は他国に比べて幸せになる社会的な条件はけっこう揃っているのに、なぜか幸せを感じていない」ということが浮かび上がってくる。 これら2つの特徴を考慮すると、日本人が幸せになる近道は、「他者に寛大/寛容で親切になる」ことと「自分がけっこう幸せであることを自覚する」ことになる。 「自分が幸せであることを自覚する」というのは漠然としていて難しいので、わかりやすくやりやすい「寛大/寛容になる」ことから始めればいいだろう」、なるほど。
・『善人ぶってもいいじゃないか  私はアメリカの慣習にならって郵便局などでよく私の後ろから来た人にドアを開けて先に入れてあげたり、レジで少ない品数の人が後ろに並んだら「私は沢山買うので、お先にどうぞ」と譲ってあげたりするのだが、たいていの人は笑顔で「ありがとう」と言ってくれる。 常連になっているいくつかのスーパーマーケットでは従業員の人たちとよく挨拶を交わしているのだが、韓国系スーパーで無表情に客の対応をしているレジの女性たちが私を見かけたとたんにぱっと笑顔になってくれるのがとても嬉しい。別のレジの人までが振り向いて「ハウアーユー」と言ってくれるのも。オーガニック専門スーパーマーケットでは、1週間姿を見せなかっただけで精肉コーナーのおじさまたちが「旅行にでも行っていたの?」と話しかけてくれる。 そんな小さなふれあいだけでも一日が明るくなるし、幸福度が上昇するものだ。 このような話をすると、日本のソーシャルメディアでは「善人ぶっている」という反応が戻ってくることがある。赤ん坊を連れたお母さんに優しくしてあげることを呼びかけると、「こっちも大変なのに、そんな時間に電車に乗るほうが悪い」といった激しい反論が来ることもある。) 国連の幸福度ランキングが教えてくれるのは、もしかすると、そういう心の余裕のなさと不寛容が日本人の幸福度を下げているかもしれないということだ。 善人ぶって他者に親切にしてもいいではないか。それを自慢してもいいではないか。また、自慢している人を褒めてあげてもいいではないか。それで助かる人がいるのだから』、「国連の幸福度ランキングが教えてくれるのは、もしかすると、そういう心の余裕のなさと不寛容が日本人の幸福度を下げているかもしれないということだ。 善人ぶって他者に親切にしてもいいではないか。それを自慢してもいいではないか。また、自慢している人を褒めてあげてもいいではないか。それで助かる人がいるのだから」、同感である。
・『「寛容のなさ」が日本人から幸福を奪っている  このレポートには書いていないが、髪の色やスカートの長さのように奇妙なところまで縛る厳しい校則や個々の社員の自発的な対応まで縛ってしまうような社則、社員の私生活や性格にまで踏み込んでくるような上司、といったことも、日本人から幸福感を奪っている「寛容のなさ」かもしれない。 そう感じるのは、欧米で生活する日本人が「こちらに来て楽になった」とよく話題にするのがこの部分だからだ。 自分自身の経験から言えるのは、「他者に寛容になれると、自分にも寛容になれる」ということだ。他人の役に立つことができれば、自分を好きになることも容易になる。自分を好きになれたら、幸福のはしごをもうけっこう上まで登ったことになる。 日本人が寛容さを広めることができたら、6つのファクターで説明できない部分の幸福度も自然と増えていくのではないかと思うのだ』、「「他者に寛容になれると、自分にも寛容になれる」ということだ。他人の役に立つことができれば、自分を好きになることも容易になる。自分を好きになれたら、幸福のはしごをもうけっこう上まで登ったことになる」、その通りなのだろう。

第三に、5月28日付け東洋経済オンラインが掲載した精神科医の和田 秀樹氏による「自分も周りも幸せに!笑顔がもたらす5つの効果 笑うのが無理なら、軽く微笑むだけでもOK」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/590526
・『コロナ禍のマスク生活が始まって、すでに2年以上が経過しています。不自由な毎日が長く続いていますから、自分のことを「明るい」と考えている人でも、「最近、ちょっと暗くなっているかも」と感じているのではないでしょうか。 「暗い気持ちでいると、どうしてもネガティブな方向に考えが向いてしまいます」と言うのは、精神科医の和田秀樹氏です。「ネガティブな考え方をしていても、何もいいことはありませんが、明るい気持ちで前を向いていれば、不思議と物ごとがいい方向に動き出します」。 では、しんどいとき、落ち込んでいるとき、気分を上げるにはどうすればいいのか。和田氏の新刊『なぜか人生がうまくいく「明るい人」の科学』をもとに3回にわたり解説します。 私たちは会社や学校、地域社会で生活していますから、仕事や勉強のことで不安になったり、人間関係に悩んで暗い気持ちになることがあります。 同じような環境で生活していても、いつも明るく、楽しそうに毎日を送っている人もいます。 あなたの周りにも、そいう人がいるのではないでしょうか?そういう人は、ほぼ例外なく「笑顔」でいるはずです。この違いは、どこにあるのでしょうか? ・明るい気持ちでいるから、毎日が楽しくなるのか? ・毎日を楽しくしようとしているから、表情が明るくなるのか? そのどちらも正解だと思いますが、暗い顔をしている人に比べて、明るい笑顔でいる人というのは、周りの人たちの気持ちを明るくします。毎日が楽しくなるような「いい環境」ができやすいのです』、「明るい笑顔でいる人というのは、周りの人たちの気持ちを明るくします。毎日が楽しくなるような「いい環境」ができやすい」、「明るい笑顔でいる人」はどの組織にとっても貴重なようだ。
・『気持ちが明るい人には人が寄ってくる  いつも気持ちが明るい人というのは、心理的な垣根が下がりますから、自然と人が寄ってきます。部下の人たちに威厳を示そうと「仏頂面」をしている上司より、ニコニコと愛想がいい課長や部長のところには、やはり人が集まってきます。 女性が管理職になると、「部下にナメられたくない」と思って必要以上に厳しい顔をする人がいますが、それでは逆効果です。仕事ができる人というのは、男性でも女性でも意外と愛想がいいものです。 明るい笑顔の人が周囲の人も明るくするというのは、その人が持っている雰囲気とか心理的な影響だけでなく、科学的にも証明されています。笑顔の人と一緒にいると、その人につられて笑顔になる……という経験をしたことがあると思いますが、それは「エンドルフィン」の働きによるものと考えられています。 エンドルフィンとは、脳内で機能する神経伝達物質の1つで「体内で分泌されるモルヒネ」の意味があります。モルヒネの数倍の鎮痛効果があると考えられ、「気分が高揚」したり「幸福感」が得られたりするという作用を持っています。 笑顔の人につられて一緒になって笑うと、周囲の人たちの脳内でもエンドルフィンが放出されるため、一体感や安心感が生まれます。人に笑いかけることは、「私はあなたの敵ではない」ということを相手に伝えるだけでなく、相手を笑顔にして、その人の気分を明るくする効果があるのです。 その相手の笑顔を見ることによって、笑顔の人はさらに明るい気持ちが増幅されて、幸福感を得られる……というフィードバック効果もあります。笑顔の人の周囲に幸せオーラが感じられるのは、こうした明確な理由があるのです』、「エンドルフィンとは、脳内で機能する神経伝達物質の1つで「体内で分泌されるモルヒネ」の意味があります。モルヒネの数倍の鎮痛効果があると考えられ、「気分が高揚」したり「幸福感」が得られたりするという作用を持っています。 笑顔の人につられて一緒になって笑うと、周囲の人たちの脳内でもエンドルフィンが放出されるため、一体感や安心感が生まれます」、「人に笑いかけることは、「私はあなたの敵ではない」ということを相手に伝えるだけでなく、相手を笑顔にして、その人の気分を明るくする効果があるのです。 その相手の笑顔を見ることによって、笑顔の人はさらに明るい気持ちが増幅されて、幸福感を得られる……というフィードバック効果もあります。笑顔の人の周囲に幸せオーラが感じられるのは、こうした明確な理由があるのです」、なるほど。
・『仏頂面で暗い顔をしていませんか?  人が笑顔でいると、そのほかにもさまざまな「恵み」があります。仏頂面をして暗い気持ちでいるより、明るい気持ちで笑顔でいる方が、何となくいいことがありそうですが、それをハッキリと認識している人は少ないかもしれません。 毎日を明るく過ごすためには、笑顔の効果を知っておくことも大切です。以下に主な5つを紹介しましょう。 ①気持ちに余裕が生まれる(笑顔になると、人は明るい気持ちになり、心に余裕が生まれます。リラックスして日常を過ごすことで、自然と疲れやストレスを蓄積しにくくなり、何ごとに対しても「やる気」が出ます。 前向きな姿勢で物ごとに向き合えますから、いい結果が出やすくなります。ビジネスの世界に限らず、さまざまな分野で成功している人に明るいイメージの人が多いのは、こうしたことも要因の1つです。) ②相手に心を開いているサインになる(周囲の人と円滑なコミュニケーションを図るという点でも、笑顔は欠かすことのできない大切な要素です。あいさつや会話の際に笑顔でいると、相手に心を開いているサインになります。相手もリラックスできますから、お互いの心理的な距離を素早く縮めることができます。) ③生き生きした印象を与える(女性が美しさを維持するためにも、笑顔には大きな意味があります。笑顔の回数が多い人ほど表情筋を使う機会が多くなり、顔のコリがほぐれて血行がよくなり、シワやたるみが目立たなくなります。口角の上がった美しい笑顔でいることは、生き生きした印象を与えることができます。 いつもニコニコしていると、表情筋が発達して表情が若々しくなります。逆に、あまり笑わないと表情筋が緩んでしまい、人に老けた印象を与えます。疲れているように見えたり、不機嫌そうに見えてしまうのです。) ④免疫力が高まる(笑顔になると、健康面でもいい影響があります。笑うことでリンパ球の一種であるNK(ナチュラルキラー)細胞が活性化され、免疫力が高まって病気の予防に役立ちます。) ⑤精神的に安定する(「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンが分泌されることで、安らぎや安心感が得られて、精神的に安定することも明らかになっています。声を上げて笑うと肺や心臓が刺激されて、脈拍や血圧が安定してリラックスしたり、自律神経を整えてくれます。全身の筋肉が動くことで、代謝も上がります。 近年の研究によって、こうした健康面のメリットは「作り笑顔」でも同じ効果が得られることがわかっていますから、意識的に笑顔を心がけるだけで、心身共に健康に一歩近づくことができるのです』、「健康面のメリットは「作り笑顔」でも同じ効果が得られることがわかっていますから、意識的に笑顔を心がけるだけで、心身共に健康に一歩近づくことができるのです」、「「作り笑顔」でも同じ効果が得られる」、とは意外だ。
・『明るい気持ちで過ごすには笑顔が大切  明るい気持ちで毎日を過ごすためには、日ごろから「笑顔」を心がけることが大切です。笑顔が無理ならば、軽く「微笑む」だけでもいいのです。非常にシンプルなことですが、明るい気持ちで毎日を過ごすためには、実は最も重要なことであり、最も効果が出やすいことでもあります。 人は誰でも、「暗い顔」になったり、「落ち込んだ顔」になったりすることがあります。そんなときに「あれ、いま暗い顔をしているな」と気づいて、「こんな顔をしていちゃダメだな。笑顔を心がけよう」と思うだけでいいのです。 少なくとも、他の人がいる前だけでも笑顔を心がけて、明るい気持ちでいよう……ということです。あなたが笑顔でいれば、周囲の人も明るい気持ちになります。その明るい気持ちが、あなたを明るい気分にさせてくれるのです。 明るい笑顔になれば、人に与える印象も大きく変わります。普段、難しそうな顔をしている人が笑顔になると、周囲の人もホッとして、和やかな雰囲気が生まれます。 笑顔が無理なら、「こんにちは」というあいさつだけでもいいのです。普段、仏頂面をしている人が「よう!」と明るく手を上げるだけで、印象は確実に変わります。いつも笑顔の人より効果があったりするものです。 美容整形で二重まぶたにすることは簡単にできても、笑顔がチャーミングな顔にするのは意外に難しいといいます。 男性をハンサム系やイケメン系に変身させることはできても、魅力的な笑顔の持ち主にすることは、至難の業なのです。最新医学を持ってしても難しい笑顔に、そう簡単になれるわけがないと考える人もいるかもしれません。 でも、笑顔が無理ならば、話題の選び方を工夫するとか、物ごとの考え方を改めるなど、何らかの工夫をすることはできます。そうした工夫を繰り返し続けることは、笑顔を心がけることと同じくらい大事な意味を持っています』、「人は誰でも、「暗い顔」になったり、「落ち込んだ顔」になったりすることがあります。そんなときに「あれ、いま暗い顔をしているな」と気づいて、「こんな顔をしていちゃダメだな。笑顔を心がけよう」と思うだけでいいのです。 少なくとも、他の人がいる前だけでも笑顔を心がけて、明るい気持ちでいよう……ということです。あなたが笑顔でいれば、周囲の人も明るい気持ちになります。その明るい気持ちが、あなたを明るい気分にさせてくれるのです」、同感である。
タグ:(その5)(人より「幸せを感じやすい人」が自然にしている事 自己肯定感の高い人と低い人の差どこにある?、《この国は不寛容社会》「幸福度ランキング58位」の日本人に足りないたった1つの習慣 『アメリカはいつも夢見ている』より #1、自分も周りも幸せに!笑顔がもたらす5つの効果 笑うのが無理なら 軽く微笑むだけでもOK) 幸福 東洋経済オンライン 中島 輝氏による「人より「幸せを感じやすい人」が自然にしている事 自己肯定感の高い人と低い人の差どこにある?」 「人生をより豊かにするためのメソッド」とは有り難い。 「「泥という絶望」を見るか、「星のような希望」を見るのかを自分で選択できるということは、「自分を幸せにできる選択」は自分自身でできるということ。もしその選択が失敗だったとしても、自分で選んだ道なら後悔は少なく、納得できるでしょう。 自分で選択することを続けていけば、他人と自分を比較して落ち込むことが減っていきます。表面だけを取り繕ってごまかす必要もなくなり、自分の信念に基づいて、次々と新たな「幸せ」を選択できるようになるでしょう」、「物事をポジティブに捉えることができるのは、自分を信じられる人、つまり自己 「伝い歩きを始めた赤ちゃんは、「転ぶかもしれない」「怖いからやめよう」なんて微塵も考えていません。何度転んでも「自分はきっと歩ける」と信じてチャレンジし続けます。 誰もが赤ちゃんのときは「きっとできる」と、自己肯定感に満ち溢れています。しかし、成長するにしたがい、さまざまなネガティブな経験によって自己肯定感は低下してしまいます」、確かに「誰もが赤ちゃんのときは「きっとできる」と、自己肯定感に満ち溢れています」、「自己肯定感」なくしては歩くことなどできない筈だ、「大切なのは、自己肯定感が下がってしまったとき 「「何があっても受け入れる」という柔軟な心で自己肯定感を養っていくと、自分の人生を自分でデザインできるようになります」、なるほど。 「「何があっても受け入れる」という柔軟な心で自己肯定感を養っていくと、自分の人生を自分でデザインできるようになります。あなたは今までの自分とは違う実感と自信に気づくことができるでしょう」、実際には難しい面もあるが、理想形としてはその通りだ。 「いいことも悪いことも、好きなことも嫌いなことも、自分の身に起きるすべては、理想の人生をデザインするための「ギフト」です」、ここまで割り切るのは、実際にはかなり困難だろう。その壁を乗り越えると、「最初に述べた「鉄格子の中」という過酷なギフトから、「希望」を見いだせた人のように、どんなギフトを受け取っても、肯定的に受け止めて感謝をすること。その積み重ねによって自己肯定感が高まり、人生がますます楽しくなっていくはずです」、となるようだ。 文春オンライン 渡辺 由佳里氏による「《この国は不寛容社会》「幸福度ランキング58位」の日本人に足りないたった1つの習慣 『アメリカはいつも夢見ている』より #1」 『アメリカはいつも夢見ている』 「日本は「一人あたりの国内総生産」、「社会的支援」、「出生時の平均健康寿命」という左から3つのファクターでは上位の国々とほとんど変わらないことがわかる。 上位の国々と日本との大きな違いは、「他者への寛大さ」と最後の「ディストピア+レジデュアル」である」、具体的な内容はこのあと説明があるようだ。 「「日本は他国に比べて幸せになる社会的な条件はけっこう揃っているのに、なぜか幸せを感じていない」ということが浮かび上がってくる。 これら2つの特徴を考慮すると、日本人が幸せになる近道は、「他者に寛大/寛容で親切になる」ことと「自分がけっこう幸せであることを自覚する」ことになる。 「自分が幸せであることを自覚する」というのは漠然としていて難しいので、わかりやすくやりやすい「寛大/寛容になる」ことから始めればいいだろう」、なるほど。 「国連の幸福度ランキングが教えてくれるのは、もしかすると、そういう心の余裕のなさと不寛容が日本人の幸福度を下げているかもしれないということだ。 善人ぶって他者に親切にしてもいいではないか。それを自慢してもいいではないか。また、自慢している人を褒めてあげてもいいではないか。それで助かる人がいるのだから」、同感である。 「「他者に寛容になれると、自分にも寛容になれる」ということだ。他人の役に立つことができれば、自分を好きになることも容易になる。自分を好きになれたら、幸福のはしごをもうけっこう上まで登ったことになる」、その通りなのだろう。 和田 秀樹氏による「自分も周りも幸せに!笑顔がもたらす5つの効果 笑うのが無理なら、軽く微笑むだけでもOK」 「明るい笑顔でいる人というのは、周りの人たちの気持ちを明るくします。毎日が楽しくなるような「いい環境」ができやすい」、「明るい笑顔でいる人」はどの組織にとっても貴重なようだ。 「エンドルフィンとは、脳内で機能する神経伝達物質の1つで「体内で分泌されるモルヒネ」の意味があります。モルヒネの数倍の鎮痛効果があると考えられ、「気分が高揚」したり「幸福感」が得られたりするという作用を持っています。 笑顔の人につられて一緒になって笑うと、周囲の人たちの脳内でもエンドルフィンが放出されるため、一体感や安心感が生まれます」、「人に笑いかけることは、「私はあなたの敵ではない」ということを相手に伝えるだけでなく、相手を笑顔にして、その人の気分を明るくする効果があるのです。 その相手の笑顔を見るこ 「健康面のメリットは「作り笑顔」でも同じ効果が得られることがわかっていますから、意識的に笑顔を心がけるだけで、心身共に健康に一歩近づくことができるのです」、「「作り笑顔」でも同じ効果が得られる」、とは意外だ。 「人は誰でも、「暗い顔」になったり、「落ち込んだ顔」になったりすることがあります。そんなときに「あれ、いま暗い顔をしているな」と気づいて、「こんな顔をしていちゃダメだな。笑顔を心がけよう」と思うだけでいいのです。 少なくとも、他の人がいる前だけでも笑顔を心がけて、明るい気持ちでいよう……ということです。あなたが笑顔でいれば、周囲の人も明るい気持ちになります。その明るい気持ちが、あなたを明るい気分にさせてくれるのです」、同感である。
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グローバル化(その2)(水野和夫法政大教授 ブロック圏で回す経済システムが必要、「グローバル化は日本を縮小させる」フランス人歴史学者が断言するワケ、スティグリッツ氏「『脱グローバル化』を正しく理解しよう」) [世界情勢]

グローバル化については、2020年4月25日に取上げた。今日は、(その2)(水野和夫法政大教授 ブロック圏で回す経済システムが必要、「グローバル化は日本を縮小させる」フランス人歴史学者が断言するワケ、スティグリッツ氏「『脱グローバル化』を正しく理解しよう」)である。

先ずは、2020年5月27日付け日刊ゲンダイ「水野和夫法政大教授 ブロック圏で回す経済システムが必要」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/273711
・『世界で猛威を振るい続ける新型コロナウイルス。感染が急拡大した原因は、グローバル経済のもとに世界各地に広がった人・モノ・カネの流れに沿ってウイルスが拡散したことだ。そのため、世界規模で経済活動を停止せざるを得なくなり、各国の識者からは従来の経済システムに代わる新たな動きを求める声も出始めた。終息の出口が見えない「新型コロナ禍」が浮き彫りにしたグローバル経済の問題。果たして今後の経済システムはどうあるべきか。経済学者の法政大学教授の水野和夫氏に聞いた(Qは聞き手の質問、Aは水野氏の回答)』、水野氏は国際証券(現:三菱UFJ証券)のエコノミストから法政大教授になり、大きな枠組みでの分析は定評があった。
・『Q:新型コロナ禍で明らかになったグローバル経済の問題をどう考えていますか。 A:世界はこれまで、あたかも「グローバルウイルス」に感染したかのように「グローバル化した経済システムこそが正しい姿なのだ」と刷り込まれ、洗脳されてきました。そして、各国企業は世界中にサプライチェーン(供給網)を張り巡らせてきたわけですが、皮肉にも、そうやって拡大させてきたサプライチェーンに伴いビジネスマンの出張機会が多くなったり、格安LCCの登場で観光客の移動も頻繁となったりしたことが新型コロナの移動を活発化させ感染を拡大する原因となりました。 2008年の「リーマン・ショック」の時、今回のようにサプライチェーンが分断された自動車メーカーの幹部は「3次下請けまでは自分の会社で把握、管理しているけれども、4次、5次、6次の下請けとなると、もはや、どこから部品が来るのか分からない」などと言っていました。つまり、その当時から、グローバル経済に伴うサプライチェーンの問題は指摘されていたのです』、「自動車メーカーの幹部は「3次下請けまでは自分の会社で把握、管理しているけれども、4次、5次、6次の下請けとなると、もはや、どこから部品が来るのか分からない」と、「問題は指摘されていた」、なるほど。
・『サプライチェーンは資本が搾取する構造  Q:すでにグローバル経済の限界は見えつつあったわけですね。 A:「リーマン・ショック」の時も「100年に1度の経済危機」と大騒ぎしたのに、企業はサプライチェーンを縮小するどころか、さらに拡大、膨張させました。ある会社の経営者は経済紙の記事で、「我が社のサプライチェーン(をつなぐ距離)は地球と月を往復するぐらい」などと言っていましたが、要するに地球を何十周もするほどの距離で物流網を敷き、ヒトやモノを動かしてきたのです。そして、新型コロナでそれが分断され、「スペイン風邪以来、100年に1度の危機だ」と嘆いている。要するに「リーマン・ショック」の時の反省もないまま、全く同じことを言っているのです。 おそらく、多くの企業は新型コロナ禍が落ち着いて1年ぐらい過ぎたら、また世界中にサプライチェーンを張り巡らせるでしょう。そして、また新たな感染症が流行したら大騒ぎするという繰り返しです。一体、何度、同じ目に合えば気が付くのでしょうか。 「リーマン・ショック」の時はサブプライム層と言われる中産階級の一歩手前の人が被害者になりましたが、今回の新型コロナでは、各国でインフラを支えていた人たちが大きな影響を受けました。サプライチェーンの仕組みというのは結局、資本が賃金の安い場所を求め、搾取に搾取を重ねていく構造です。こうした弱者に痛みを押し付ける仕組みをいつまで続けるのか。マルクスは「地球が太陽に吸い込まれでもしない限り、資本家はカネもうけをやめない」という趣旨の言葉を残していますが、まったく絶望的な状況と言わざるを得ません』、「「リーマン・ショック」の時の反省もないまま、全く同じことを言っているのです。 おそらく、多くの企業は新型コロナ禍が落ち着いて1年ぐらい過ぎたら、また世界中にサプライチェーンを張り巡らせるでしょう。そして、また新たな感染症が流行したら大騒ぎするという繰り返しです」、「サプライチェーンの仕組みというのは結局、資本が賃金の安い場所を求め、搾取に搾取を重ねていく構造です。こうした弱者に痛みを押し付ける仕組みをいつまで続けるのか。マルクスは「地球が太陽に吸い込まれでもしない限り、資本家はカネもうけをやめない」という趣旨の言葉を残していますが、まったく絶望的な状況と言わざるを得ません」、その通りだ。
・『ブロック圏で経済を回す構造に転換するべき  Q:経済の在り方をどう見直すべきなのでしょうか。 A:まず、真っ先にやることはグローバル化脱退宣言。グローバル化をやめることです。今から100年前の自由貿易主義が叫ばれた時代は、自国で足りないモノ(原料や部品など)がたくさんありました。そのため、地球の裏側から運んでくる必要があったわけです。つまり、自由貿易というのは自国に足りないモノを求めて遠方に広がり、しかも、当時は移動コストも安かった。ところが、今の時代は違います。移動コストは高くなり、物流に伴う自動車や鉄道、航空機、船などの大量移動で地球温暖化や気候変動の問題も指摘されるようになりました。 一方、近代はどの国も(工業、農産物などの)生産力が向上しており、わざわざ遠方に出向く必要もなくなりました。もはや、世界中にサプライチェーンを張り巡らせる必要はなく、近隣諸国などの限られた地域で経済システムを完結できるようになったのです。 Q:世界規模でサプライチェーンを作るのではなく、近隣諸国などと緊密に連携するべきだと。 A:典型的なのがEUですが、例えば農産物はフランスや東ヨーロッパ、工業製品はドイツ、良し悪しは別として原子力エネルギーはフランス……というように、EU圏内で経済は成り立っています。日本の場合も、韓国、台湾、豪州、ニュージーランドと経済的連携を強め、ブロック圏を作るべきでしょう。特にパネルやICチップなどの工業製品については、韓国、台湾で十分です。日本企業がわざわざ欧米に工場を進出したり、輸入したりする必要はありません。農産物は豪州、ニュージーランドがあります。エネルギーについても再生自然エネルギーに切り替えれば、ほぼこの圏内で経済は完結すると思います。つまり、膨張したサプライチェーンを縮小し、人・モノ・カネの流れを限定した地域内で経済を回していく。新型コロナ禍によってグローバル経済という秩序が崩壊しつつある中、新たな世界経済の構造へと大転換させるべき時なのです。 感染症対策も近隣諸国と情報交換した方が早い対応が取れるでしょう。各国で状況が異なるのに、世界規模で足並みをそろえて対策を考えるのは現実的ではないからです。新型コロナ対策でも、日本は出遅れましたが、韓国や台湾などは成功している。新たな感染症が起きた時、こうした国々と協力して防疫対策を構築し、次のウイルスの脅威に備える体制を整えるべきだと思います』、「移動コストは高くなり、物流に伴う自動車や鉄道、航空機、船などの大量移動で地球温暖化や気候変動の問題も指摘されるように」、「近代はどの国も(工業、農産物などの)生産力が向上しており、わざわざ遠方に出向く必要もなくなりました。もはや、世界中にサプライチェーンを張り巡らせる必要はなく、近隣諸国などの限られた地域で経済システムを完結できるようになった」、「新型コロナ禍によってグローバル経済という秩序が崩壊しつつある中、新たな世界経済の構造へと大転換させるべき時」、その通りだ。
・『安倍首相は経団連に内部留保の活用を呼び掛けるべき  Q:グローバル化以外で見直すべき部分はありますか。 A:都市の集中、大都市化というのも限界に来ていると思います。新型コロナの感染者数が最も多いのは米国ですが、ニューヨーク、ワシントン、ボストンなど人口規模の多い州で、米国内の感染者、死者数の半分以上を占めています。つまり、「集積の利益が一番、利潤を極大化する」という発想から都市化が進んだわけですが、人口の密集地域ほど感染症が直撃する実態が明らかになった今、都市への集中もやめる必要があると思います。 Q:新型コロナで経済が大きなダメージを受けている日本企業、政府はどうあるべきでしょうか。 A:日本経済の最大の問題は供給過剰にあるということです。例えば、食料品は生産しても廃棄するばかり。いわゆる食品ロスです。住宅も空き家が増えているのに新築住宅を作り続けています。無理な経済成長を目指して労働時間を増やしているだけなのです。この結果、大企業は現在、世界でも例を見ない460兆円にもおよぶ内部留保を積み上げましたが、この中には本来、働く人の労働生産性の上昇に応じて支払われるべきだった賃金が含まれています。 利潤を上げているのに利息も払わず、まさかのためにと言って労働者などに支払ってこなかった「一時預かり金」などを含めると、ざっと130兆円ほどになるでしょう。新型コロナの影響を受けた国民生活を救済するため、まず、このお金を国民のために活用するべきです。そして、さらに残りの内部留保の一部を償還財源として、政府が「新型コロナ国債」を発行する。そして、政府や自治体の自粛要請で営業できず、苦境に追い込まれている小売業や宿泊、飲食業の家賃補てん、休業補償に充てればいい。政府は(緊急事態宣言の発令下でも)開店していたパチンコ店に苦言を呈するのではなく、安倍首相が経団連に対して内部留保の活用を呼び掛けるべきなのです』、「内部留保460兆円」のうち、「働く人の労働生産性の上昇に応じて支払われるべきだった賃金」などの「一時預かり金」、ざっと130兆円ほどを、「新型コロナの影響を受けた国民生活を救済するため、まず、このお金を国民のために活用するべき」、「残りの内部留保の一部を償還財源として、政府が「新型コロナ国債」を発行する。そして、政府や自治体の自粛要請で営業できず、苦境に追い込まれている小売業や宿泊、飲食業の家賃補てん、休業補償に充てればいい」、「開店していたパチンコ店に苦言を呈するのではなく、安倍首相が経団連に対して内部留保の活用を呼び掛けるべきなのです」、同感である。

次に、2020年9月10日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した歴史学者のエマニュエル・トッド氏による「「グローバル化は日本を縮小させる」フランス人歴史学者が断言するワケ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/247077
・『“フランス最大の知性”ともよばれる歴史人口学者エマニュエル・トッド氏は、日本における「能力主義」は他国とその性質が異なると指摘する。その理由とは?トッド氏の最新刊『大分断 教育がもたらす新たな階級化社会』(訳:大野 舞)から一部を抜粋して紹介する』、興味深そうだ。
・『日本における「能力主義」 他国と異なる特徴とは?  アメリカやフランスのような平等主義の社会では、能力主義は平等という理想の歪んだ形として表出してしまいました。最初は、誰もが学業をするべきで、教育は皆のものだと言われました。しかし、マイケル・ヤングが気づいたのは、大衆層の中の優秀な人たちが進学すると、社会は再び階級化するだろうということでした。そして上層には、上層にいると考える人たちによって新たなグループが形成されるのです。 フランスなどでは能力主義のコンセプトは常にポジティブに評価されてきました。人々は、能力主義は民主主義から生まれたものだと捉えているのです。多くの人は、これが実は教育の民主化の悲惨な二次的影響であり、結局は自己破壊に陥ってしまうものであることを理解していません。この民主化プロセスは最終段階(100%の人が高等教育を受ける段階)まで行き着けないものなのですから。 戦後の日本においてもこの能力主義という考え方は非常に根強かったのではないでしょうか。ただ、日本の特殊な点は、直系家族構造における不平等を受け入れる価値観と、江戸時代の非常に特殊なヒエラルキーの考え方、この二つをベースにしながら、それと同時に能力主義の考え方があったという点です。一方でフランスでは、能力主義とは人類の平等と強く結びついた観念であることを先ほど述べました。この違いがあるため、二つの国の結果は異なるのです。 基本的に直系家族を基盤とする日本のような社会は、そもそもが身分制の社会です。ここでは長男が重要とされてきました。それは徐々に男性全体が特権を持つ、つまり男性優位社会へと変化していきました。日本でももちろん、戦後には能力主義の発展が見られましたが、そこにはフランスで見られるような、平等に対する強いこだわりがないのです。日本にも奥深いところで、巧妙な形での平等主義が存在するとは思います。例えば、あるレベルにおいてはどの仕事も高尚であり、正しく為されるべき、といった考え方です。「馬鹿な人はいても馬鹿げた仕事はない」ということです。そしてきちんと為された仕事はそれがどんな仕事であれ評価されます。それぞれがある身分に属していて、そこで自分の仕事をきちんとこなすという社会です。 もちろん、日本にも高等教育を受けたエリートが存在しますが、他国と異なるのは、人々がその身分の序列を認めているという点です。ここでは上層部の下層部に対する軽蔑、あるいは下層部の上層部に対する憎しみというものはないのです』、「日本では」、「上層部の下層部に対する軽蔑、あるいは下層部の上層部に対する憎しみというものはない」、というのは本当だろうか。他国と同様にあるような気もする。
・『なぜ日本ではポピュリズムが力を持たないか  日本における高等教育の発展というのは、フランスよりもさらに突き詰められたもので、例えば大学入学の際に非常に激しい競争プロセスが存在します。また、大学もレベルによって明確に序列化されています。しかしこの能力主義的なプロセスは、日本の根本にある文化とは矛盾しないのです。 また、もう一つ重要なことは、日本にはポピュリズムがないということです。私が言うポピュリズムというのは、エリート主義を批判することで政治システムに入ってくる政党のことです。このような形は日本ではうまくいかないでしょう。もちろん、東大法学部出身者はフランスのENA出身者と同様の立場にいるでしょう。しかし、繰り返しになりますが、日本ではフランスに比べて、身分に対して傲慢な感情がないのです。 これらを踏まえた上で、日本社会の矛盾とは、身分制が色濃い社会であるにもかかわらず非常に踏み込んだ教育促進のプロセスがあり、能力主義化も進められたということではないでしょうか。日本は身分制の社会ですが、明治の頃からすでに教育の重要性を認識してきました。私が思うにこれもまた、国家が生き延びるためだったのだろうということです。日本人であると感じることや、西洋からの脅威に対抗し生き延びるために、日本社会は自分たちの価値観を超越し、階級化したシステムを残したままで大規模な民主化へ進んでいったのだと思うのです。) なお、直系家族構造の社会の問題は、非常に効率的ではあるのですが、現状の形をそのまま繰り返すという傾向があり、無気力な社会になることと関係しているという点です。直系家族の罠は、自分と全く同じものを作り出そうとする点にあるのです。それと同時に、虚弱なシステムでもあるため外からショックを受けた時に再び活性化するという側面もあります。 同じ直系家族構造を持つドイツもそうです。例えば、フランス革命やイギリスの産業革命を目の当たりにし、イギリスやフランスよりも識字率が高かったドイツは、自分たちの社会を奮い立たせる必要に迫られ、最終的には国の再発展につなげていったのです。これは日本がアメリカと接することによって明治を迎えたのと似ています。直系家族社会は、敵や刺激、外的な脅威などをうまく利用してきたとも言えるでしょう。ただ、このようなシステムからは階級闘争やエリート対大衆というような構図は生まれません』、「日本にはポピュリズムがない」、「フランス革命やイギリスの産業革命を目の当たりにし、イギリスやフランスよりも識字率が高かったドイツは、自分たちの社会を奮い立たせる必要に迫られ、最終的には国の再発展につなげていったのです。これは日本がアメリカと接することによって明治を迎えたのと似ています」。なるほど。
・『グローバル化への適応と人口減少の関係  先ほど明治維新について述べましたが、日本について考察する際に重要なのは、日本の適応性という問題だと思います。日本の近代の歴史は、変化の激しい、また時には脅威ともなる周辺世界にいかに適応するかという問題に集約されるからです。 江戸時代に日本は商業面でも技術面でも、自国のみで目をみはる発展を遂げました。その発展の仕方のある部分は、不思議なことに一部の西ヨーロッパの発展と並行したものだったりもしました。こうして鎖国を続けていた日本でしたが、とうとうアメリカから黒船が突然訪れ、接触を迫られ、不意の恐怖に襲われたのです。 これ以降の日本の歴史は「グローバル化にいかに適応していくか」という点に集約されると思います。ある意味、安全ではない状態がずっと安定していると言ってしまうこともできるわけです。そしてこの黒船の来航による反響の一つが明治維新で、それは驚くべきものでした。工業化への適応力や戦後の回復もまた素晴らしいものでした。西洋に追いつくために進めた回復、つまり突然の変化への適応力によって、結果的に世界第二位の経済国にまでなったのです(2011年まで)。ちなみに、私は一国の力をGDP(国内総生産)だけで判断せずに、技術の能力なども含めて見ます。そうした意味で、日本はいまだに大国であると思っています。 とはいえ、昔から変わらない一つの問題があるのです。それが人口の問題です。韓国なども似たような状況です。 日本は自由貿易を完全に受け入れた国ではないと思います。完全ではありませんが、ある程度、日本は自国を守ってきたと思うのです。日本国内で様々な問題があるのはもちろんわかっていますが、自由貿易によって引き起こされる社会的な崩壊、国内格差という現象に対しては、フランスやイギリス、あるいはアメリカよりも、うまく自国を守れているだろうと思います。日本の適応のための一連の努力、教育面の努力や技術面のそれは完璧主義につながっており、他には類を見ない形で高い均質性のレベルと社会の安定性を維持してきました。 しかしこれらは人口の側面を犠牲にする形で進められたと見ることができるでしょう。日本の出生率の低さはドイツに似たものがありますが、日本の出生率を分析すると、その原因には女性の微妙な地位や、キャリアか子供かを選ばなければいけない状況、父権制の名残があることなどが挙げられます。 日本や韓国のような国では、今もそうかもしれませんが、西洋システムというとてつもない圧力をかけてくるものに対抗するために、本当に多くの努力をしなければならなかったという背景がありました。そうして社会の一貫性や文化などを守ってきましたが、社会が再生され続けるために必要なレベルの出生率を保つということまではできなかったのです』、「日本の適応のための一連の努力、教育面の努力や技術面のそれは完璧主義につながっており、他には類を見ない形で高い均質性のレベルと社会の安定性を維持してきました。 しかしこれらは人口の側面を犠牲にする形で進められたと見ることができる」、面白い見方だ。
・『グローバル化は日本を縮小させる  先にも述べたように、日本はポピュリズム不在の国です。ポピュリズムは、グローバル化が引き起こす社会の格差が政治的な形で表出したものです。ですから日本にポピュリズムがないということは、格差が他国よりもましだということを意味するのです。また、前述したように、日本の近代史というのは国家の生き残りの歴史でした。そうして、国外からの圧力に対抗し、自己を守り、前進し、生き延びるために西洋に追いつくことを繰り返してきました。そんな中で、人口減少が実はその対価だったと言えると思うのです。 日本がグローバル化から完全に自由だったならば、人口の均衡を保つ術を見つける時間もあったでしょう。しかし今日、日本は経済的に厳しい状況にあります。グローバル化による経済的なプレッシャーは、日本のような国がその最も重要な課題である出生率の回復と向き合うこと、つまり支援のためにお金を注ぎ込むことを邪魔しているとも言えるのです(ここでの出生率の支援というのは、単なる手当金のことを指しているのではありません。それは高等教育費を減らすことなども含めます)。グローバル化の圧力は日本を分断するのではなく、日本全体を縮小させているのです。グローバル化は日本がその最も喫緊とする問題と向き合うことを阻止していると言えるでしょう。 ※本文は書籍『大分断 教育がもたらす新たな階級化社会』を一部抜粋して掲載しています』、「グローバル化の圧力は日本を分断するのではなく、日本全体を縮小させているのです。グローバル化は日本がその最も喫緊とする問題と向き合うことを阻止していると言える」、「低い」「出生率」に「グローバル化氏圧力」があるというのは、面白い視点だが、「日本全体を縮小させている」というのは困ったことだ。

第三に、本年6月14日付け日経ビジネスオンラインが掲載した米コロンビア大学教授のジョセフ E.スティグリッツ氏による「スティグリッツ氏「『脱グローバル化』を正しく理解しよう」」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00351/060900031/
・『2年以上ぶりに開催された世界経済フォーラムは、1995年以来、私が参加してきたこれまでのダボス会議とは明らかに様子が違っていた。1月の明るい雪と晴天から一転、雪がないスキー場と、5月のどんよりとした霧雨に見舞われた、気候のことではない。 これまでのフォーラムは、グローバル化を擁護してきた。だが今回は、サプライチェーンの寸断、食料やエネルギー価格の高騰、一部の製薬会社が数十億の追加利益を得るために何十億もの人々が新型コロナウイルスワクチンを手にすることができない知的財産権(IP)体制などといった、グローバル化の失敗に主眼を置いていた。 こうした諸問題への対応策として提案されたのは、生産の「再集積」または「友好国化」、さらに「国の生産能力を高めるための産業政策」の制定だ。誰もが国境のない世界を目指しているように見えた時代は過ぎ去り、突然、誰もが少なくともいくつかの国の国境が経済発展と安全保障の鍵であることを認識するようになったのである。 かつて自由なグローバリゼーションの擁護者であった人々にとって、ダボスのこの方向転換は結果として明らかな不協和音をもたらした。「友好国化」と自由で無差別な貿易の原則を両立させることができず、ダボス会議に参加した実業界と政界のリーダーの大半は、ありふれた話に終始した。なぜこのような事態に陥ったのか、あるいは、グローバリゼーションが全盛の時代にまん延していた「欠陥のある超楽観主義的な論理」について、反省の色はほとんど見られなかった。 もちろん、問題はグローバリゼーションだけではない。市場経済全体にレジリエンス(回復力)が欠けているのだ。私たちは、基本的にはスペアタイヤのない車を作り、現在の価格を数ドル下げただけで、将来の緊急事態にはほとんど注意を払ってこなかった。 ジャストインタイムは、経済がわずかな変動にしか直面しない限りにおいては、素晴らしい革新的技術であった。だが、新型コロナウイルスによる操業停止に直面すると、例えばマイクロチップの不足が新車の不足を引き起こすなどといった供給不足の連鎖を引き起こし、大打撃を被ったのだ。 2006年に筆者が『世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す(Making Globalization Work)』(徳間書店)で警告したように、市場はリスクの「値付け」をうまくできない(二酸化炭素の排出量に価格を付けないのと同じ理由だ)。例えばドイツは、明らかに信頼がおけない貿易相手国のロシアからガス供給を受け、依存することを選択した。今、ドイツは、予想され、かつ予測可能であった結果に直面している。 18世紀にアダム・スミスが見出したように、資本主義は独占へと自然に向かっていく傾向があるため、自助努力だけで成り立つシステムではない。しかし、米国のレーガン大統領と英国のサッチャー首相が「規制緩和」の時代を築いて以来、市場の集中が常態化し、電子商取引やソーシャルメディアなど注目される分野だけの現象ではなくなった。 今春、米国で起きた悲惨な粉ミルクの品不足は、それ自体が独占の結果であった。アボット・ラボラトリーズが安全性の問題で生産停止に追い込まれた後、米国人はすぐに、たった1社で米国の供給量の半分近くを占めていることに気づいたのである』、「ダボス会議に参加した実業界と政界のリーダーの大半は、ありふれた話に終始した。なぜこのような事態に陥ったのか、あるいは、グローバリゼーションが全盛の時代にまん延していた「欠陥のある超楽観主義的な論理」について、反省の色はほとんど見られなかった」、「米国のレーガン大統領と英国のサッチャー首相が「規制緩和」の時代を築いて以来、市場の集中が常態化し、電子商取引やソーシャルメディアなど注目される分野だけの現象ではなくなった。 今春、米国で起きた悲惨な粉ミルクの品不足は、それ自体が独占の結果であった」、痛烈な批判だ。
・『米国の偽善に冷ややかな新興国  今年のダボス会議では、グローバリゼーションの失敗が政治に与えた影響も存分に見られた。ロシアがウクライナに侵攻したとき、クレムリンは即座に、しかもほぼ全世界から非難を浴びた。しかしその3カ月後、新興国や途上国(EMDCs)はより曖昧な立場を取るようになった。多くの者が、2003年には偽りの口実でイラクに侵攻したにもかかわらず、ロシアの侵略に説明責任を求める米国の偽善を指摘している。 EMDCsはまた、欧州と米国による最近のワクチンナショナリズムの歴史も強調している。これは、30年前に押し付けられた世界貿易機関(WTO)のIP条項によって維持されてきたものだ。そして、食料とエネルギー価格の上昇の矢面に立たされているのが、EMDCsである。過去の不正義と相まって、こうした最近の動きは、民主主義と国際的な法の支配を提唱する欧米の信用を失墜させるものだ。 確かに、米国による民主主義擁護の支援を拒否する多くの国は、いずれにせよ民主的ではない。しかしほかの国々は民主的だ。この戦いをリードすべく立ち上がったように見える米国は、制度的な人種差別や権威主義者に媚(こ)びたトランプ政権から、投票を抑制して2021年1月6日の米国議会議事堂での暴動から有権者の注意をそらそうとする共和党の執拗な試みまで、自らの失敗によって立場を損なわれてきたのである。 米国にとって最善の方法は、食料とエネルギーのコスト高騰に対処できるよう支援することで、新興国に対してより大きな連帯感を示すことであろう。これは、富裕国の特別引き出し権(国際通貨基金の準備資産)を再配分し、世界貿易機関(WTO)で新型コロナウイルス関連の強力な知的財産権の放棄を支持すれば、可能になる。 さらに、食糧やエネルギー価格の高騰は、多くの貧困国で債務危機を引き起こし、このパンデミック(世界的大流行)による悲劇的な不公平をさらに悪化させる可能性がある。もし米国と欧州が真のグローバル・リーダーシップを発揮したいのであれば、各国が負担しきれないほどの債務を負うようそそのかした大銀行や債権者の味方をするのはやめるべきだ。 40年にわたりグローバリゼーションを擁護してきたダボス会議の面々は、明らかに舵(かじ)取りを誤った。ダボス会議は、先進国、途上国を問わず繁栄を約束してきた。しかし、北半球の巨大企業が豊かになる一方で、すべての人がより良くなるはずのプロセスは、代わりにあらゆる場所で敵を作っただけだった。「トリクルダウン経済学」とは、富裕層が豊かになれば、自動的にすべての人が恩恵を受けるというものだが、理論も根拠もない詐欺のようなものだ。 今年のダボス会議は、残念な結果に終わった。世界に今日のような状況をもたらした意思決定と政策について、真剣に考える機会であり得たはずだ。グローバリゼーションがピークに達した今、その衰退を管理することが、その隆盛を管理したときよりもうまくいくことを願うばかりである』、「ダボス会議は、先進国、途上国を問わず繁栄を約束してきた。しかし、北半球の巨大企業が豊かになる一方で、すべての人がより良くなるはずのプロセスは、代わりにあらゆる場所で敵を作っただけだった。「トリクルダウン経済学」とは、富裕層が豊かになれば、自動的にすべての人が恩恵を受けるというものだが、理論も根拠もない詐欺のようなものだ」、「グローバリゼーションがピークに達した今、その衰退を管理することが、その隆盛を管理したときよりもうまくいくことを願うばかりである」、皮肉たっぷりだ。
タグ:「自動車メーカーの幹部は「3次下請けまでは自分の会社で把握、管理しているけれども、4次、5次、6次の下請けとなると、もはや、どこから部品が来るのか分からない」と、「問題は指摘されていた」、なるほど。 水野氏は国際証券(現:三菱UFJ証券)のエコノミストから法政大教授になり、大きな枠組みでの分析は定評があった。 日刊ゲンダイ「水野和夫法政大教授 ブロック圏で回す経済システムが必要」 「移動コストは高くなり、物流に伴う自動車や鉄道、航空機、船などの大量移動で地球温暖化や気候変動の問題も指摘されるように」、「近代はどの国も(工業、農産物などの)生産力が向上しており、わざわざ遠方に出向く必要もなくなりました。もはや、世界中にサプライチェーンを張り巡らせる必要はなく、近隣諸国などの限られた地域で経済システムを完結できるようになった」、「新型コロナ禍によってグローバル経済という秩序が崩壊しつつある中、新たな世界経済の構造へと大転換させるべき時」、その通りだ。 「「リーマン・ショック」の時の反省もないまま、全く同じことを言っているのです。 おそらく、多くの企業は新型コロナ禍が落ち着いて1年ぐらい過ぎたら、また世界中にサプライチェーンを張り巡らせるでしょう。そして、また新たな感染症が流行したら大騒ぎするという繰り返しです」、「サプライチェーンの仕組みというのは結局、資本が賃金の安い場所を求め、搾取に搾取を重ねていく構造です。こうした弱者に痛みを押し付ける仕組みをいつまで続けるのか。マルクスは「地球が太陽に吸い込まれでもしない限り、資本家はカネもうけをやめない」とい グローバル化 (その2)(水野和夫法政大教授 ブロック圏で回す経済システムが必要、「グローバル化は日本を縮小させる」フランス人歴史学者が断言するワケ、スティグリッツ氏「『脱グローバル化』を正しく理解しよう」) 「内部留保460兆円」のうち、「働く人の労働生産性の上昇に応じて支払われるべきだった賃金」などの「一時預かり金」、ざっと130兆円ほどを、「新型コロナの影響を受けた国民生活を救済するため、まず、このお金を国民のために活用するべき」、「残りの内部留保の一部を償還財源として、政府が「新型コロナ国債」を発行する。そして、政府や自治体の自粛要請で営業できず、苦境に追い込まれている小売業や宿泊、飲食業の家賃補てん、休業補償に充てればいい」、「開店していたパチンコ店に苦言を呈するのではなく、安倍首相が経団連に対して内 ダイヤモンド・オンライン エマニュエル・トッド氏による「「グローバル化は日本を縮小させる」フランス人歴史学者が断言するワケ」 「日本では」、「上層部の下層部に対する軽蔑、あるいは下層部の上層部に対する憎しみというものはない」、というのは本当だろうか。他国と同様にあるような気もする。 「日本にはポピュリズムがない」、「フランス革命やイギリスの産業革命を目の当たりにし、イギリスやフランスよりも識字率が高かったドイツは、自分たちの社会を奮い立たせる必要に迫られ、最終的には国の再発展につなげていったのです。これは日本がアメリカと接することによって明治を迎えたのと似ています」。なるほど。 「日本の適応のための一連の努力、教育面の努力や技術面のそれは完璧主義につながっており、他には類を見ない形で高い均質性のレベルと社会の安定性を維持してきました。 しかしこれらは人口の側面を犠牲にする形で進められたと見ることができる」、面白い見方だ。 「グローバル化の圧力は日本を分断するのではなく、日本全体を縮小させているのです。グローバル化は日本がその最も喫緊とする問題と向き合うことを阻止していると言える」、「低い」「出生率」に「グローバル化の圧力」があるというのは、面白い視点だが、「日本全体を縮小させている」というのは困ったことだ。 日経ビジネスオンライン ジョセフ E.スティグリッツ氏による「スティグリッツ氏「『脱グローバル化』を正しく理解しよう」」 「ダボス会議に参加した実業界と政界のリーダーの大半は、ありふれた話に終始した。なぜこのような事態に陥ったのか、あるいは、グローバリゼーションが全盛の時代にまん延していた「欠陥のある超楽観主義的な論理」について、反省の色はほとんど見られなかった」、「米国のレーガン大統領と英国のサッチャー首相が「規制緩和」の時代を築いて以来、市場の集中が常態化し、電子商取引やソーシャルメディアなど注目される分野だけの現象ではなくなった。 今春、米国で起きた悲惨な粉ミルクの品不足は、それ自体が独占の結果であった」、痛烈な批判だ 「ダボス会議は、先進国、途上国を問わず繁栄を約束してきた。しかし、北半球の巨大企業が豊かになる一方で、すべての人がより良くなるはずのプロセスは、代わりにあらゆる場所で敵を作っただけだった。「トリクルダウン経済学」とは、富裕層が豊かになれば、自動的にすべての人が恩恵を受けるというものだが、理論も根拠もない詐欺のようなものだ」、「グローバリゼーションがピークに達した今、その衰退を管理することが、その隆盛を管理したときよりもうまくいくことを願うばかりである」、皮肉たっぷりだ。
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幼児虐待(その8)(わいせつ事件があった「キッズライン」でまた不祥事 経沢香保子社長の「涙の謝罪」は何だったのか〈dot.〉、大和市7歳児殺害事件で母逮捕…家裁が児相の入所要求を却下したプロセスは?、5歳児虐待死で再逮捕…同居男女3人「異様な関係と凄惨な暴行」、2歳女児放置死 亡くなる5日前から祖母ら外泊 大阪) [社会]

幼児虐待については、2020年10月7日に取上げた。久しぶりの今日は、(その8)(わいせつ事件があった「キッズライン」でまた不祥事 経沢香保子社長の「涙の謝罪」は何だったのか〈dot.〉、大和市7歳児殺害事件で母逮捕…家裁が児相の入所要求を却下したプロセスは?、5歳児虐待死で再逮捕…同居男女3人「異様な関係と凄惨な暴行」、2歳女児放置死 亡くなる5日前から祖母ら外泊 大阪)である。

先ずは、昨年1月30日付けAERAdot「わいせつ事件があった「キッズライン」でまた不祥事 経沢香保子社長の「涙の謝罪」は何だったのか〈dot.〉」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2021012900095.html?page=1
・『昨春、登録していたベビーシッターが相次いでわいせつ事件を起こした「キッズライン」でまたも不祥事が発覚した。今度は、法律で義務付けられている自治体への届け出をしていないシッターを多数登録していたことが発覚。政府は補助金の返還を求める方針だとしている。シッターによるわいせつ事件は社会問題となり、法改正の動きにまで発展した。昨秋には同社の経沢香保子社長も複数のメディアの取材に涙を浮かべながら反省と謝罪を述べていた。それからわずか4カ月――不祥事が繰り返される背景には何があるのか。 28日の昼、FNNプライムオンラインで<【独自】キッズライン 補助金返還要求へ 無届けシッター75人>と題する記事が配信された。 1月25日時点で、キッズラインには法律で義務付けられた届けが確認できないシッターが75人おり、半数とは連絡が取れない状態であること、これを受けて内閣府は同社に補助金の返還を求める方針であることが報じられた。返還額は1000万円規模になりそうだという具体的な記述もあり、「その辺を歩いている見知らぬ人に子どもを預けるのと一緒だ」という内閣府関係者の批判も紹介された。 なぜこのような事態になったのか。キッズラインによると、シッターの届け出は、登録時にシッター自身が自治体に提出する記入済みの認可外保育施設設置届の写しをデータでアップロードする決まりになっており、同社はそれで確認をしていたという。しかし、その後に届け出書が自治体に受理されたかどうかを確認するフローがなく、無届けのシッターが登録されてしまったという。 「最後まで確認を行っていなかったことは、当社の法令理解の不十分さによるものだと考えています」(キッズライン広報) 現在はフローを改善して、複数の方法で自治体への提出を確認できるように改めたという。 内閣府は、無届けのシッターにかかわる補助金を3月12日までに返還するように求めている。金額はフジテレビの報道では「1000万円規模」となっているが、キッズラインは「正確な金額については現在調査中です」(広報)と回答した』、「登録時にシッター自身が自治体に提出する記入済みの認可外保育施設設置届の写しをデータでアップロードする決まり」、「その後に届け出書が自治体に受理されたかどうかを確認するフローがなく、無届けのシッターが登録されてしまった」、確かにこれでは「「その辺を歩いている見知らぬ人に子どもを預けるのと一緒だ」という内閣府関係者の批判」、が当てはまる。
・『昨年の4月と6月に起きたシッターによるわいせつ事件は、本サイトも含めた一部メディアが報じた後に、ようやくキッズラインも事実を公表したという経緯がある。今回の無届け問題も昨年8月に自治体からの指摘で発覚していたが、同社がこの件をホームページに掲載したのは昨年12月28日だった。 昨年からキッズラインの問題を追求してきたジャーナリストの中野円佳氏は、同社で不祥事が続く背景をこう指摘する。 「組織のガバナンス不足が大きな要因だと思います。経沢香保子社長はゼロから事業を立ち上げて規模を拡大していくことは上手ですが、ビジョン先行型で、質への配慮は苦手な印象を受けます。しかし保育事業という子どもの命を預かる仕事は、リスクを限りなくゼロに近づける努力が必要な領域です。その観点で仕組みを構築する参謀、片腕のような人がキッズラインにはいないのでしょう。経沢さんに意見を上げにくい雰囲気、異論を出しにくい社風も根底にあったと聞いています」 中野氏は、わいせつ事件が起こった後の昨年9月、経沢氏にオンラインでインタビューをしている。その際、経沢氏は組織の抜本的改革と自身の意識改善などを涙ながらに訴えていた。また、シッター無届け問題でも今年1月に中野氏は直接話を聞いており、経沢氏は「コンプライアンス第一という認識の甘さ」を反省していた。だが、社長がいくら反省と謝罪を繰り返しても、不祥事が止まらない。経沢氏が語っていた言葉は一体なんだったのか。 SNSの発信なども見ていて、経沢さんは『コトの重大性が本当にわかっているのだろうか』と感じることはありました。取材時の印象としても、言葉が軽く、会社全体としても切迫感が感じられない。事業に対する熱い思いはわかるのですが、わいせつ事件や世の中からの批判に対しては、自分たちも“被害者”と感じているのかもしれません。だから、不祥事も報道や外部からの指摘があってから、後手後手で対応することになる。自分たちの組織を自分たちの手でよくしていこうという自浄作用が働いていないことは、大きな問題だと思います」(同)』、「取材時の印象としても、言葉が軽く、会社全体としても切迫感が感じられない。事業に対する熱い思いはわかるのですが、わいせつ事件や世の中からの批判に対しては、自分たちも“被害者”と感じているのかもしれません。だから、不祥事も報道や外部からの指摘があってから、後手後手で対応することになる。自分たちの組織を自分たちの手でよくしていこうという自浄作用が働いていないことは、大きな問題だと思います」、「自分たちも“被害者”と感じているのかもしれません」、信じ難い勘違いだ。
・『今回は、閣僚からも苦言が呈された。共同通信によると、29日、坂本哲志少子化対策担当相は記者会見で「大変遺憾だ」と述べたうえで、キッズラインについて「(過去に)わいせつ事案もあった」と指摘。「子どもや親のためしっかり厳しく取り組まなければならない」と強調したという。 地域政党「自由を守る会」代表の上田令子都議は、昨年からキッズラインの企業姿勢に疑問を持ち、東京都にベビーシッター利用支援事業の認定基準の見直しなどを求めてきた。上田氏は「補助金返還は当然だ」としたうえで、次のように語る。 「補助金を返したら終わり、では済まされない行為です。75人も無届けのシッターがいたこともさることながら、連絡がつかない人が半数以上いたことはもっと問題です。会社でシッターの管理がまったくできていなかったわけであり、子どもの命を預かる事業者として不適格です。内閣府は割引券等取扱事業者としての認定を取り消すべきだと思います。内閣府が取り消せば、東京都も追随せざる得ません。行政が厳しい措置を取らなければ、昨年と同じような事件が、いつまた起こるかわかりません」 キッズラインは補助金返還の負担についてこう回答した。 「補助金の返還要請につきましては、(シッター個人ではなく)当社が全額負担いたします」 繰り返されるキッズラインの不祥事。たとえお金を返したとしても、利用者や世間からの「信用」を取り戻すことは容易ではない』、「75人も無届けのシッターがいたこともさることながら、連絡がつかない人が半数以上いたことはもっと問題です。会社でシッターの管理がまったくできていなかったわけであり、子どもの命を預かる事業者として不適格です」、恐るべき管理不在だ。「補助金返還」「当社が全額負担いたします」、は当然だ。

次に、本年3月8日付け弁護士ドットコム「大和市7歳児殺害事件で母逮捕…家裁が児相の入所要求を却下したプロセスは? 」を紹介しよう。
https://www.bengo4.com/c_1009/n_14194/
・『2019年8月に当時小学1年生の次男(7歳)を自宅で殺害したとして、次男の母親が2月20日、神奈川県警に殺人容疑で逮捕された事件が波紋を呼んでいる。 報道などによると、次男は生後5カ月で心肺停止となった際に神奈川県大和綾瀬地域児童相談所に保護された。約2年半後に帰宅したものの、その後三男が死亡するという出来事があったことから、同児相は2017年4月に2度目の一時保護を実施した。 一時保護中の次男が「お母さんに投げ飛ばされて口から血が出た」などと話したこともあったことから、同児相は「施設入所措置が適当」との方針を決定。しかし、同施設への入所の同意が母親から得られなかった。 そのため、同児相は2018年2月、次男の入所を求めて横浜家裁に審判の申立てをおこなったが、同家裁は「保護者が故意に何かをしたという根拠はない」などとして、同年10月に申立てを却下。自宅に戻った次男は約9カ月後に死亡した。 女性には次男の他に3人の子どもがいたが、長男と長女は乳児期に死亡。三男も1歳5カ月で急死していた。もっとも、この点について、同家裁では保護者の責任で死亡した根拠がないと判断されたようだ。 事件の詳細はまだ明らかになっていないが、2度保護した児相の申立てを家裁が却下したことで自宅に戻った次男が結果として死亡したことから、家裁の判断も議論を呼びそうだ。一般的に、児相の申立てに対して、家裁はどのようなプロセスで判断するのだろうか。高橋麻理弁護士に聞いた(Qは聞き手の質問、Aは高橋弁護士の回答)』、信じ難い事件で、興味深そうだ。
・『申立ては「施設入所に親権者が反対した場合」におこなわれる  Q:児童相談所が家庭裁判所に対して施設入所を求める申立てとはどのようなものでしょうか。 A:児相は、親権者が反対しているときでも、家裁の承認を得ることによって、子どもについて施設入所等の措置をとることができるということが児童福祉法で定められています。 家裁の承認を得るためには、(1)保護者が、子どもを虐待し、著しくその監護を怠り、その他保護者に監護させることが著しく子どもの福祉を害する場合、(2)施設入所等の措置をとることが子どもの親権者等の意に反する場合、という2つの要件を満たす必要があります。 Q:具体的にどのようなときに申し立てをおこなうのでしょうか。 A:一時保護している子どもについて、「子どもを保護者のもとに戻すことが子どものためによくない。施設入所が望ましい」と思われる場合です。   一時保護とは、子どもの安全確保をするとともに、今後の子どもや家族に対し、どのようなかかわり方をしたほうがよいかという方針を決めるための手続きです。一時保護は無制限にはおこなえず、原則として2カ月を超えてはならないことになっています。 児相は、その一時保護の期間に、その後、子どもを家庭で引き取るのがよいのか、児童養護施設等に入所させたほうがよいのかなどという方針を決めます。 もっとも、児童養護施設等に入所させたほうがよいと判断しても、法律上、子どもの親権者が反対したら、その意思に反して施設入所等させることができません。 子どもの親権者に反対されたら、施設入所等させることができなくなってしまうと、救わなければならない子どもを救えない事態も発生してしまうでしょう。そのような場合におこなわれるのが今回のような家裁への申立てです』、「子どもの親権者に反対された」場合に、「施設入所等」をさせるかどうかが、「家裁への申立て」で決まるようだ。
・『申立てを受けた家庭裁判所の判断プロセス  Q:申立てを受けた家庭裁判所はどのように対応するのでしょうか。 A:申立てを受けた家裁は、申立てが不適法なとき、申立てに理由がないことが明らかなときを除いて、子どもを現に監護する者、子どもに対して親権を行う者、子どもの未成年後見人、子ども自身(15歳以上の場合のみ)の陳述を聴かなければならないことになっています。 Q:家裁は、子どもの親権者などからどのような話を聞くのでしょうか。 A:まず、児相による申立てが認められるための要件の1つでもある、「児相が主張する『子どもについて施設入所等の措置をとるべき』ということについて反対の意向を持っているのか」という点について確認します。 裁判官の示唆を踏まえて、親権者らが同意するということもあり得るからです。 親権者らが、子どもを施設入所等させることについて同意するということになれば、家裁が承認するための要件を欠くことになるため、申立ての却下または児相に申立ての取り下げを示唆するという流れになるでしょう。 親権者らが、子どもの施設入所等に反対する意向が明確になった場合は、家裁は、申立ての実情に関する事実関係について、親権者らに確認します。 児相は、申立てにあたり、「なぜ、子どもを保護者のもとに戻すことが子どもの福祉のためにならないと考えるか」、「なぜ、施設入所等の措置が必要であると考えるか」ということを裏付ける事実を主張します。 保護者が子どもを虐待していること、子どもが生きていくために必要な保護等を著しく怠っていること、これからも保護者が虐待等に及ぶ可能性が高いことなどを具体的に主張します。 家裁は、その児相の主張する事実関係について、争いないのか、それとも、前提となる事実が間違っているのか、親権者らの認識を明らかにするため、親権者らの言い分を確認するのです。 Q:当事者の言い分や主張以外にも家裁の判断材料となるものはありますか。 A:家裁は通常、当事者の言い分などを踏まえた上で、子どもの状況や家庭環境等について、家庭裁判所調査官に調査命令を下します。 家庭裁判所調査官は、家裁で取り扱っている家事事件や少年事件について調査を行うことを主な仕事としており、子どもに面接をして、問題の原因や背景を調査したり、必要に応じて社会福祉や医療などの関係機関との連絡等を行い、子どもにとってどのような対応が望ましいかという意見を裁判官に報告します。 裁判官は、家庭裁判所調査官の報告を踏まえ、主張する事実に食い違いがある場合には調査結果や、児相が主張を裏付けるために提出する資料、審問期日での親権者らの陳述等をもとに、何が事実なのか判断したうえで、子どもについて施設入所等の措置をとるべきなのかについて検討して結論を出します。 Q:判断結果について不服のある当事者がさらに争う手立てはあるのでしょうか。 A:不服申立ての手続きとして、「即時抗告」があります。 児相の申立てに対し、家裁が承認するという結果が出た場合には親権者らが、申立てを却下するという結果が出た場合には申立人である児相が即時抗告することができます。即時抗告は、審判の告知がされた日から2週間以内にする必要があります』、本件でも「家庭裁判所調査官」が調査に当たったのだろうが、詳細は不明だ。
・『「必ずしも多くの判断材料がそろうケースばかりではない」  Q:児童相談所の対応や家庭裁判所の判断に関する是非が今後問われそうです。 A:事実関係がまだよくわからない状態で、具体的なコメントは難しいところです。 ただ、全国的に見ても、児相による施設入所を求める申立てについては認容率が8割程度と高く、却下件数は少ないです。 そのような中で、本件がなぜ却下となったのか、という点を疑問に思う声はあると思います。 一般論で考えたとき、家裁の判断の前提となる材料は十分にそろっていたのかは気になるところです。もっとも、家庭内で起きた出来事について、必ずしも多くの判断材料がそろうケースばかりではないでしょう。 刑事裁判の場合は、「疑わしきは罰せず」という大原則があります。 もし、このような考え方が、子の福祉にかかわる審判の判断過程に持ち込まれると、特に、判断材料が集まりにくいケースでは、救えたはずの子どもを救えなくなる事態も生じかねません。家裁における事実認定のありかたについても考えるべき点があるのではないかと思えます』、「疑わしきは罰せず」という「刑事裁判の」大原則が、「子の福祉にかかわる審判の判断過程に持ち込まれ」た懸念が高く、「家裁における事実認定のありかたについても考えるべき点がある」ようだ。

第三に、3月31日付けFRIDAY「5歳児虐待死で再逮捕…同居男女3人「異様な関係と凄惨な暴行」」を紹介しよう。
https://friday.kodansha.co.jp/article/236722
・『「床に投げ飛ばした。しつけのためだった」  母親ら3人の容疑者の供述から、幼い子どもの遺体が地中から発見された痛ましい事件の全容が、ようやく明らかになりつつある。 埼玉県本庄市に住む柿本歩夢(あゆむ)君(当時5)の遺体が、自宅の庭から見つかったのは今年3月5日。埼玉県警は3月26日、歩夢君を自宅の床に何度も投げ飛ばすなどして死亡させたとし、母親の柿本知香(30)、丹羽洋樹(34)、石井陽子(54)の3容疑者を傷害致死容疑で再逮捕した。警察は、日常的に虐待が行われていたとみて捜査を進めている。 「異変が発覚したのは1月12日です。この日を最後に歩夢君は、通っていた保育園へ姿を見せなくなりました。8日後の20日に、柿本容疑者は退園届けを提出します。園には『実家のある大阪府和泉市で元気に暮らしている』と説明したとか。 しかし本庄市が和泉市に照会したところ、転居の事実がないことがわかったんです。本庄市は『子どもの安否が確認できない』と警察に相談。同居する丹羽容疑者ら3人から事情を聞くと、1月中旬に遺体を自宅の庭に埋めたことを認めました」(全国紙社会部記者) 当初、3人の逮捕容疑は死体遺棄。歩夢君が亡くなった原因は不明だったが、容疑者たちの供述などから激しい暴行を受けていたことが判明したのだーー』、「柿本容疑者は退園届けを提出」するなど悪質だ。「3容疑者」の関係はどうなのだろう。
・『2時間正座させて説教  夫と別れる前の柿本容疑者。当時の画像からは幸せそうな様子が伝わってくる(本人のフェイスブックより) 3容疑者は、本庄市内の築約50年の木造一軒家で同居していた。血縁関係はない。奇妙な共同生活が始まったのは、昨年1月のことだ。 「旦那さんと別れた柿本容疑者は、1人で歩夢君を育てていたそうです。丹羽容疑者と知り合ったのは、昨年の秋頃。しばらくしてから柿本容疑者は歩夢君と一緒に、丹羽容疑者と石井容疑者の暮らす一軒家で同居するようになりました」(同前) 共同生活が始まってから、歩夢君の異様な様子がたびたび目撃されるようになる。 「よく歩夢君を含め4人で、自宅近くの飲食店を訪れていたそうです。ただ歩夢君はずっと丹羽容疑者に叱られ、料理もろくに食べさせてもらえなかったとか。長い時は2時間ほど、正座をさせられたまま……。柿本容疑者が、歩夢君が叱られる様子をスマートフォンで撮影しようとしたこともあったと聞いています。 スーパーの駐車場で、石井容疑者が歩夢君に向かって『このガキ!』と怒鳴っているのを目撃した住民もいました。柿本容疑者は、常に疲れた様子だったとか。歩夢君も保育園でボンヤリしていることが多く、精神的な虐待があるのではと周囲は心配していました」(別の全国紙記者) 事件は1月18日に起きる。自宅1階で、3容疑者は歩夢君を繰り返し床に投げ飛ばし死亡させたようだ。 「歩夢君の後頭部には大きなキズがあり、それが直接の死因になりました。もともと歩夢君は、明るく快活な子どもだったとか。3容疑者の共同生活が始まってから、どんどん元気をなくしていったそうです」(同前) 激しい虐待を受け地中に埋められた歩夢君。「しつけのためだった」という3容疑者の言い分が、通用するハズがない』、「柿本容疑者は歩夢君と一緒に、丹羽容疑者と石井容疑者の暮らす一軒家で同居するようになりました」、それ以降、虐待が始まったようだが、「歩夢君はずっと丹羽容疑者に叱られ」、「虐待」は「丹羽容疑者」中心だった可能性がある。いずれにしろ、信じ難いような事件だ。

第四に、7月20日付けYahooニュースが転載したテレ朝news「2歳女児放置死 亡くなる5日前から祖母ら外泊 大阪」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/56e948b40ab4a897bac6b273faae5f421a36a02f
・『大阪府富田林市の自宅で2歳の女の子が熱中症で死亡した事件で、祖母らが、女の子が死亡する5日前から外泊していたことが新たに分かりました。 小野真由美容疑者(46)と、桃田貴徳容疑者(50)は先月29日、孫の小野優陽ちゃん(2)を自宅に放置した疑いが持たれています。 これまでに小野容疑者らは、優陽ちゃんが熱中症で死亡する2日前からユニバーサル・スタジオ・ジャパンの周辺に宿泊していたことが分かっています。 その後の捜査関係者への取材で、5日前から大阪府内のホテルに宿泊していたことが分かりました。 2人はこの間、日中にいったん帰宅していた日もあったということです。 警察は、育児放棄が常態化していたとみて調べています』、「優陽ちゃんが熱中症で死亡する2日前からユニバーサル・スタジオ・ジャパンの周辺に宿泊」、「2人はこの間、日中にいったん帰宅していた日もあった」、信じ難い事件だ。「小野優陽」ちゃんの母親について一切、報道がないのも気になるところだ。いずれにしろ、「小野真由美容疑者(46)と、桃田貴徳容疑者(50)」、いい歳をしても、大人としての分別が欠如していたようだ。或いは、「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」は正常は大人を狂わすほどの魅力があるのだろうか。やはり、2人が「大人としての分別が欠如していた」とみるべきだろう。とんでもない時代になったようだ。
タグ:幼児虐待 (その8)(わいせつ事件があった「キッズライン」でまた不祥事 経沢香保子社長の「涙の謝罪」は何だったのか〈dot.〉、大和市7歳児殺害事件で母逮捕…家裁が児相の入所要求を却下したプロセスは?、5歳児虐待死で再逮捕…同居男女3人「異様な関係と凄惨な暴行」、2歳女児放置死 亡くなる5日前から祖母ら外泊 大阪) AERAdot「わいせつ事件があった「キッズライン」でまた不祥事 経沢香保子社長の「涙の謝罪」は何だったのか〈dot.〉」 「登録時にシッター自身が自治体に提出する記入済みの認可外保育施設設置届の写しをデータでアップロードする決まり」、「その後に届け出書が自治体に受理されたかどうかを確認するフローがなく、無届けのシッターが登録されてしまった」、確かにこれでは「「その辺を歩いている見知らぬ人に子どもを預けるのと一緒だ」という内閣府関係者の批判」、が当てはまる。 「取材時の印象としても、言葉が軽く、会社全体としても切迫感が感じられない。事業に対する熱い思いはわかるのですが、わいせつ事件や世の中からの批判に対しては、自分たちも“被害者”と感じているのかもしれません。だから、不祥事も報道や外部からの指摘があってから、後手後手で対応することになる。自分たちの組織を自分たちの手でよくしていこうという自浄作用が働いていないことは、大きな問題だと思います」、「自分たちも“被害者”と感じているのかもしれません」、信じ難い勘違いだ。 「75人も無届けのシッターがいたこともさることながら、連絡がつかない人が半数以上いたことはもっと問題です。会社でシッターの管理がまったくできていなかったわけであり、子どもの命を預かる事業者として不適格です」、恐るべき管理不在だ。「補助金返還」「当社が全額負担いたします」、は当然だ。 弁護士ドットコム「大和市7歳児殺害事件で母逮捕…家裁が児相の入所要求を却下したプロセスは? 」 信じ難い事件で、興味深そうだ。 「子どもの親権者に反対された」場合に、「施設入所等」をさせるかどうかが、「家裁への申立て」で決まるようだ。 本件でも「家庭裁判所調査官」が調査に当たったのだろうが、詳細は不明だ。 「疑わしきは罰せず」という「刑事裁判の」大原則が、「子の福祉にかかわる審判の判断過程に持ち込まれ」た懸念が高く、「家裁における事実認定のありかたについても考えるべき点がある」ようだ。 FRIDAY「5歳児虐待死で再逮捕…同居男女3人「異様な関係と凄惨な暴行」」 「柿本容疑者は退園届けを提出」するなど悪質だ。「3容疑者」の関係はどうなのだろう。 「柿本容疑者は歩夢君と一緒に、丹羽容疑者と石井容疑者の暮らす一軒家で同居するようになりました」、それ以降、虐待が始まったようだが、「歩夢君はずっと丹羽容疑者に叱られ」、「虐待」は「丹羽容疑者」中心だった可能性がある。いずれにしろ、信じ難いような事件だ。
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電子政府(その6)(デジタル人材必読 電子立国エストニアはこれだけすごい 安全保障によって鍛えられた歴史、役所のDXはなぜ難しい?行政にはびこる「絶対間違えられない」の呪縛、役所に残る「メールよりFAX」信仰、時代錯誤な住民の行政批判もDXの壁に) [経済政策]

電子政府については、昨年11月1日に取上げた。今日は、(その6)(デジタル人材必読 電子立国エストニアはこれだけすごい 安全保障によって鍛えられた歴史、役所のDXはなぜ難しい?行政にはびこる「絶対間違えられない」の呪縛、役所に残る「メールよりFAX」信仰、時代錯誤な住民の行政批判もDXの壁に)である。

先ずは、本年2月2日付けWedge Onlineが掲載した中曽根康弘世界平和研究所主任研究員の大澤 淳 氏による「デジタル人材必読 電子立国エストニアはこれだけすごい 安全保障によって鍛えられた歴史」を紹介しよう。
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/25609
・『バルト三国の一番北に位置するエストニアは、森と湖が国土の大半を占める平坦な国である。人口約132万人、国土面積は約4万5000平方キロメートルで、例えるなら、関東地方と新潟県を合わせた広さの土地に、さいたま市と同じ人口が暮らしている。 1918年にロシアから独立したが、40年にソビエト連邦に占領・編入された苦難の歴史がある。89年の東欧の民主化の波をうけ、91年に独立を回復した。 エストニアの首都タリンは、写真のように中世ハンザ都市の面影を強く残していて、観光で訪れる日本人が持つ第一印象は恐らく、「おとぎ話の舞台のような北欧」というものであろう。世界遺産に登録されているタリンの旧市街を歩けば、ドイツ騎士団領時代に建設された丸い塔が特徴のヴィル門や、ロシア統治時代に建設されたタマネギ型のドームが印象的なアレクサンドル・ネフスキー大聖堂があり、大国に翻弄されてきたこの国の歴史を感じることができる』、「首都タリンは、写真のように中世ハンザ都市の面影を強く残していて、観光で訪れる日本人が持つ第一印象は恐らく、「おとぎ話の舞台のような北欧」というものであろう」、行ってみたくなる。
・『道路にパーキング・メーターがない理由  街の中を一見しただけでは、この小国エストニアが、世界最先端の「電子立国」であることを見逃してしまうだろう。だが、街路で目をこらして見ると、世界の大都市によくあるパーキング・メーターがないことに気がつく。 駐車スペースと思われる道端には、駐車区域コードと駐車料金が記載されたPのマークの看板が設置されている。看板には、「m-pakimine」すなわち「モバイル・パーキング」との表示がある。 駐車するドライバーは、スマホから位置情報アプリかショートメッセージサービス(SMS)で区域コードを送信して駐車登録を行い、出発する際に駐車登録を解除する。小銭を取り出して料金を支払う必要はなく、月末に携帯電話料金と共に利用者の銀行口座から引き落とされる。m-パーキングでは、利用者の本人確認、車両登録情報、位置情報、携帯電話情報、銀行口座情報のデータが、瞬時に行政機関や通信事業者のサーバー間で交換されている』、「モバイル・パーキング」は確かに合理的だ。
・『北欧の「電子立国」エストニア  エストニアは、「e-Estonia」を掲げ、世界で最先端の「電子立国」を実現している。電子サービスは、m-パーキング以外にも、e-タックス、e-スクール、e-チケット、i-投票、e-警察、e-司法、e-医療、e-処方箋、e-土地登記簿、e-ビジネス(企業登録)、e-バンキングなどほぼすべての公的サービスに広がっている。 例えば、申告の95%がオンラインで行われているe-タックスでは、納税者の1年間の収入・控除などが自動集計され、納税者はシステムにログインして、自分のデータを確認・修正して電子署名を承認するだけで、3〜5分で申告が終了する。その他、処方箋の98%、銀行取引の99.8%、駐車料金の90%がオンライン経由で行われており、行政サービスの99%はオンラインで提供され、24時間365日利用可能である』、「e-タックスでは、納税者の1年間の収入・控除などが自動集計され、納税者はシステムにログインして、自分のデータを確認・修正して電子署名を承認するだけで、3〜5分で申告が終了」、全て手入力させられる日本のとは段違いに便利だ。「処方箋の98%、銀行取引の99.8%、駐車料金の90%がオンライン経由で行われており、行政サービスの99%はオンラインで提供され、24時間365日利用可能」、さすが「電子立国」だけある。 
・『「電子立国」を支える2つの基盤技術  エストニアの「電子立国」を支える最も重要な基盤が、安全なeID(デジタル身分証)と安全が担保されたX-Road(データ交換基盤)である。エストニアのIDカードは、日本のマイナンバーカードと同様のもので、個人識別コード、eID(デンタル本人確認証明書、暗号化証明書、電子署名証明書)が格納されている。 2002年に導入されたeIDは、プラステック製のIDカード専用の読取り装置か携帯電話のSIM(モバイルIDを入れた特別なもの)経由でも利用が可能である』、なるほど。
・『普及のためなら高齢者に何度も説明  このIDカードの普及率はなんと驚きの98%である。筆者はエストニア政府の担当者に「普及の秘訣は何ですか。高齢の方にどうやって納得してもらったのですか?」と質問する機会があったが、「落伍者を一人も出さないという目標を掲げ、街頭での普及活動に加え、高齢者のご家族にも説明を手伝ってもらい、必要なら担当者が何度も森の中のお宅に出向いて説明した」との答えが返ってきた。 エストニアの「電子立国」は、とことん国民に寄り添い、国民生活を楽に、便利にすることに主眼が置かれている。カードの普及率を上げることが目的化し、2兆円近い税金を使ってポイントで釣る日本のやり方は、再考の余地がある。 「電子立国」のもう1つの基盤X-Roadは、規格化された分散型のデータ交換基盤で、01年に政府により導入された。データベースを統合して1つにすると効率的だが、天変地異やサイバー攻撃で破壊されてしまえば、すべてのデータが消失するリスクがある。そのため、データベースを分散し、データベース間を安全につなぐことにしたのである。 X-Roadはインターネット通信プロトコル(TCP/IP)ベースで、インターネットを介してデータを交換する。そのため、データベースとX-Roadの間にセキュリティサーバーを置き、交換されるデータを暗号化して通信を行っている。また、それぞれのデータベースへのアクセスには、正当なアクセスであるユーザー認証を認証局から得る必要があり、不正なアクセスや情報漏洩が起こらない仕組みを構築している。昨今セキュリティ業界では「ゼロトラスト(何も信用せずにセキュリティ対策を講ずる)」が流行だが、エストニアのX-Roadは、20年前からゼロトラストの思想で設計されている』、「IDカードの普及率はなんと驚きの98%」、「落伍者を一人も出さないという目標を掲げ、街頭での普及活動に加え、高齢者のご家族にも説明を手伝ってもらい、必要なら担当者が何度も森の中のお宅に出向いて説明した」、「2兆円近い税金を使ってポイントで釣る日本のやり方は、再考の余地がある」、その通りだ。
・『基盤を支える「暗号アルゴリズム」 「電子立国」の基盤であるeIDとX-Roadの安心・安全を担保しているのが、権限を持つ本人であるかどうかをデジタルで証明する技術(アナログ社会の日本ならハンコと印鑑と印鑑証明にあたる)と、漏洩や改ざんされずにデータをやりとりできる技術(封書と書留にあたる)となる。この2つの技術の土台となるのが、「暗号アルゴリズム」である。 「暗号アルゴリズム」は、情報の暗号化や復号を行うための手順や計算式を定めたルールのことで、忍者の「山」「川」といった合言葉や真珠湾攻撃の開戦を指示した暗号電報「ニイタカヤマノボレ」も事前に意味が合意されたルールであり、暗号アルゴリズムの一種である。例をあげて簡単に説明すれば、文字を2文字後ろにずらすルール(アルゴリズム)を使うと、「ABC」という通信は「CDE」となり、「DOG(犬)」という内容も「FQI」という全く意味不明の通信となり、アルゴリズムを知らない他人には通信内容がわからなくなる。 現在では、上記の例のようなルール(鍵)を共有する「共通鍵暗号」と、暗号化ルール(公開鍵)と複合化ルール(秘密鍵)をセットにした「公開鍵暗号」の両方が使われている。公開鍵暗号は、ルールを事前に共有しなくても暗号通信のやりとりができるため、ネット時代のデジタル社会を支える技術基盤になっており、エストニアでも公開鍵基盤が政府によって運営されている』、なるほど。
・『起源はソビエト支配時代の研究開発  人口132万人の小国エストニアが、最先端の「暗号アルゴリズム」を用いた「電子立国」を、どのようにして世界に先駆けて実現できたのか。その答えは、ソビエト支配時代の科学技術開発にさかのぼる。 もともと、エストニアの首都タリンには、1918年にタリン工科大学が設立され、電気工学などの学問が盛んであった。そのような人的基盤を元に、60年にサイバネティクス研究所が設立された。同研究所では、自動制御、プログラミング、アルゴリズム、ソフトウェア開発が行われ、70年代末には500人の研究者が在籍していた。 エストニアのコンピューター科学の父といわれるEnn Tõugu教授も、当時研究所の一員で、ソフトウェア工学を研究する研究室を78年に研究所内に開いている。このサイバネティクス研究所は、閉鎖的なソビエトの科学技術開発の中で、珍しく西側に交流の窓が開かれており、スウェーデンやフィンランドの研究者との交流を通じて、エストニアが最先端のコンピューター科学の技術力を保持する母体となった。このサイバネティクス研究所からは、暗号アルゴリズムを専門とするCybernetica社が民間企業として97年に独立し、政府と一体となってエストニアのX-Roadや認証技術の開発を担っている』、「サイバネティクス研究所は、閉鎖的なソビエトの科学技術開発の中で、珍しく西側に交流の窓が開かれており、スウェーデンやフィンランドの研究者との交流を通じて、エストニアが最先端のコンピューター科学の技術力を保持する母体となった。このサイバネティクス研究所からは、暗号アルゴリズムを専門とするCybernetica社が民間企業として97年に独立し、政府と一体となってエストニアのX-Roadや認証技術の開発を担っている」、「サイバネティクス研究所」が「珍しく西側に交流の窓が開かれて」いたのはラッキーだった。
・『安全保障が鍛える「電子立国」の技術  このエストニアの「電子立国」の基盤技術は、その後厳しい安全保障環境の中で鍛えられていくこととなる。30カ国が加盟する北大西洋条約機構(NATO)の中でも、国境を直にロシアと接しているのは、エストニアも含めわずか5カ国にすぎず、その中でもエストニア−ロシア国境が294キロと最も長い。エストニアはNATOの最前線に位置するが、それはサイバー空間でも同じである。 2007年4月、エストニア政府、議会、金融機関、メディアなどがDDoS(分散型サービス拒否)を用いた機能妨害型のサイバー攻撃に襲われ、市民生活に大きな影響が生じた。一国を標的とした世界初めての大規模なサイバー攻撃で、世界に衝撃が走った。 エストニア政府はこのサイバー攻撃の教訓から、X-Roadで交換される重要なデータについて、「データの完全性(データが改ざんされていないこと)」をブロックチェーン技術で担保する技術開発を、翌08年に着手した。現在、この技術が、医療、土地登記、企業登記、政府公告などで使われている』、「「データの完全性」をブロックチェーン技術で担保する技術が、「医療、土地登記、企業登記、政府公告などで使われている」、「大規模なサイバー攻撃」の経験が生かされたようだ。
・『領土が侵略されてもデータは守る  14年には、ロシアがウクライナを侵攻し、クリミア半島を奪取した。クリミア紛争では、サイバー戦と軍事侵攻が同時に行われ、「ハイブリッド戦」が注目されるようになった。これを受け、エストニア政府は、「電子立国」の究極の安全保障政策として、Data Embassy(データ大使館)構想を15年から実行に移している。 先に述べたように、エストニアは歴史的に何度も大国の侵略に遭い、国土を蹂躙された経験を有している。そのため万が一、「物理的に領土が侵略されても、国民とその財産である国民のデータを守る覚悟」をもって、Data Embassy構想を進めている。 Data Embassyは、国外の第三国との間で、外交使節に関するウィーン条約第22条(使節団の公館は不可侵)の覚え書きを交換し、当該国に設置するサーバーにも公館不可侵の原則を適用してもらい、エストニア政府が保管する国民のデータのバックアップを、当該国のサーバー(Data Embassy)に保存するという構想である。 17年にルクセンブルグとの間で覚書が調印され、最初のData Embassyがルクセンブルク国内のデータセンターに設置された。その他にも、場所は明らかにされていないが、複数の国で同様のData Embassyが設置されている』、「「電子立国」の究極の安全保障政策として、Data Embassy(データ大使館)構想を15年から実行に移している」、面白い試みだ。
・『持つべき安全保障への覚悟  筆者がエストニアを訪問した際に、この構想についての「覚悟」を説明してくれたエストニア政府高官は、「攻めてくるのは隣の大きな熊(ロシア)ですよね?」という私の質問に対して、「明日にも宇宙人がやってくるかもしれないでしょ」といたずらっぽい目をして答えてくれた。 「どんなことがあっても、サイバー空間で国家を存続させる」と語る彼の口調からは、エストニアが置かれた安全保障環境の厳しさと、それに立ち向かって、国民の生命と財産を技術で守り抜くという真剣な覚悟が痛いほど伝わってきた。「電子立国」を成り立たせるために、そういった安全保障の覚悟があることをわれわれ日本人は真摯に受け止める必要がある。 『Wedge』2021年12月号で「日常から国家まで 今日はあなたが狙われる」を特集しております。 いまやすべての人間と国家が、サイバー攻撃の対象となっている。国境のないネット空間で、日々ハッカーたちが蠢き、さまざまな手で忍び寄る。その背後には誰がいるのか。彼らの狙いは何か。その影響はどこまで拡がるのか─。われわれが日々使うデバイスから、企業の情報・技術管理、そして国家の安全保障へ。すべてが繋がる便利な時代に、国を揺るがす脅威もまた、すべてに繋がっている。 特集はWedge Online Premiumにてご購入することができます』、「どんなことがあっても、サイバー空間で国家を存続させる」、との「エストニア政府高官の「覚悟」が貫徹されることを願っている。

次に、5月4日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの酒井真弓氏による「役所のDXはなぜ難しい?行政にはびこる「絶対間違えられない」の呪縛」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/302583
・『日本の役所には「自分たちは間違えてはいけない、間違わないために前例を踏襲する」という考えが浸透している。実際には日々テクノロジーの進化によって、より良いモノや手法が生まれているのに、「間違ったことをしてはいけない」という概念にとらわれすぎて、前例踏襲主義から抜け出せない。そんな行政を変える動きが、少しずつだが生まれている』、興味深そうだ。
・『牧島かれんデジタル大臣が語った「無謬性神話からの脱却とアジャイル」とは  「無謬(むびゅう)性神話からの脱却」 牧島かれんデジタル大臣は、柔軟に政策の見直し・改善を行っていく「アジャイル型政策形成・評価の在り方に関するワーキンググループ」の立ち上げに際し、そう語った。 無謬とは、理論や判断に間違いがないこと。日本の政府や官僚組織には無意識のうちにこの無謬性神話にとりつかれている人が多い。自分たちは間違えてはいけない、間違わないために前例をきちんと守る……。 一方、アジャイルとは、「仕様や設計には変更がある」ということを前提に、最初から厳格な仕様を決めず、より良い姿を目指して臨機応変に形を変えていく開発スタイルだ。初めに仕様を決め、決められた工程を順に進めていくウォーターフォール型と比較して、市場環境やニーズの変化に柔軟に対応できるとして、取り入れる企業も増えている。 行政で働く人たちにも「本当はこうしたい」という思いがある。しかし、「間違ったことをしてはいけない」という概念にとらわれすぎて、前例踏襲主義から抜け出せない。リスクを取って変えたところで、失敗したら評価が下がる。時には建設的とは言えない批判に日常業務が圧迫されることもある。重要な決断が先延ばしにされ、新型コロナのような緊急事態での対応を遅らせる元凶は、無謬性を追い求めるがゆえの硬直した考え方にある。 時代の流れは速く、複雑性も増している。まずはスピード感を持って政策を投入し、EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング:証拠に基づく政策立案)に則って早い段階で見直し、改善を重ねていくこともできるのではないか。 無謬性神話から脱却して、アジャイルで政策を形成し、評価するというのは非常に難しい。しかし牧島さんは、「コロナ禍でアジャイルのモデルケースができた」と語る。ワクチン接種記録システム(VRS)によって接種状況が可視化され、実際の数字と現場の声を掛け合わせ、柔軟に改善を図ることができたという。こうした動きは、霞が関のみならず、企業のDXにも一石を投じるもののように思う』、「「コロナ禍でアジャイルのモデルケースができた」と語る。ワクチン接種記録システム(VRS)によって接種状況が可視化され、実際の数字と現場の声を掛け合わせ、柔軟に改善を図ることができたという」、どこが「アジャイルのモデルケース」なんだろうか、説明不足も甚だしい。
・『ある地方自治体の行政パーソンの胸の内  牧島さんの話に深く共感する人がいた。 民間企業から、ある地方自治体のIT担当者に転身したAさんは、一歩引いた目線で「間違いがないことは、行政パーソンが一番大事にしていること。理念に近い」と語る。一方で、IT担当者として何かを変えようとすると、その無謬性が足かせになることがあるという。Aさんは「中の人」になって初めて、行政パーソンが抱える苦しさを知ったという。 まず、着任して早々、Aさんは驚いた。仕事で使うパソコンから、直接インターネットに接続できなかったのだ』、「インターネット接続」できる「パソコン」を限定するのは、「地方自治体」だけでなく、民間でも銀行や証券会社で採用されたやり方だ。
・『自治体がインターネットにつながらなくなった理由  これは、2016年に始まった「三層の対策」(三層分離)に起因する。三層の対策とは、2015年、日本年金機構が不正アクセスを受け、個人情報の一部が流出した事件を機に、総務省の要請によって進められたセキュリティ強化策だ。自治体のネットワークを、通常業務で使用するLGWAN(総合行政ネットワーク)接続系、マイナンバーに関わる業務を行うための個人番号利用事務系、インターネット接続系の3つに分離し、セキュリティを高めるといったアプローチだ。 狙い通り、インシデント数は大幅に減少した。しかし、全国約1700の自治体のほとんどが、業務端末から直接インターネットに接続できなくなり、業務効率の低下につながってしまった。 2016年といえば、世間では若年層のスマホ保有率が8割を超え、クラウドも当たり前の時代にシフトしていた。そんな中、自治体はインターネットからある意味切り離され、情報収集したくても、手間がかかるようになってしまったのだ。 三層の対策は、2020年に総務省が見直しを表明したものの、各自治体に深く影響が残っている。今は、世界中で何十億人が使うアプリと、行政のアプリのUI/UXが同じ土俵で比べられてしまう時代だ。行政パーソンもそれをひしひしと感じている。しかし、多くの自治体は、直接インターネットに接続できないがゆえ、クラウドサービスの利用に制約がかかっている状態。UI/UX(注)を改善する以前に、自分たちが優れたサービスを使って、「今どきのワークスタイルとはこういうものだ」と実感するのも難しいのが実情なのだ。 Aさんは、「インターネット接続の課題が改善されない限り、自治体のDXは進まない」と語る。いくら民間から新しい風を入れ、改善に動いても、技術的な制約によって早々に足止めをくらってしまう。これは、どの自治体にも共通する課題だ。それに、「インターネット」を他に置き換えれば、多くの企業で同じような現象が起きているのではないだろうか』、「三層の対策は、2020年に総務省が見直しを表明したものの、各自治体に深く影響が残っている」、困ったことだ。
(注)UI/UX:ユーザーインターフェイス(UI)とは、ユーザーとの間に現れるサービスやプロダクトの外観。ユーザーエクスペリエンス(UX)とは、ユーザーがプロダクトやサービスを通して得られた体験。
・『ミスをすることが、なぜこんなにも重いのか  AさんがIT担当者として初めに着手したのは、メールの誤送信対策として続けてきたPPAP(パスワード付き圧縮ファイル)と送信遅延の廃止だった。 次にAさんは、Bcc強制変換を廃止しようとした。Bcc強制変換とは、宛先に大量の外部宛てメールアドレスを指定した場合、強制的に「Bcc」(ブラインドカーボンコピー。複数の利用者宛にメールを同時送信する際、受取人以外の送信先メールアドレスを伏せること)に自動変換する機能のことだ。誤送信や個人情報漏えいを防ぐために導入している自治体は多いのだが、受信側は、返信の際に一つ一つメールアドレスを入れ直す必要があり、かなりの手間がかかっていた。 Aさんは、Bcc強制変換の廃止も受け入れられるだろうと思っていた。しかし、役所内からは「個人情報の保護を優先すべきだ」という声が上がった。自分たちの利便性向上よりも、セキュリティや個人情報保護を優先する背景には、「ミスによって市民からの信頼を失ってはならない」という責任感が垣間見えた。改革には、そこで働く人たちが大切にしてきたことへの共感やリスペクトが必要だ。Aさんにとってはこれが、行政パーソンが何を大事に業務に取り組んできたかを最初に実感した出来事だったという。 「民間企業として自治体と仕事をしてきたので、自治体の働き方、考え方についてそこそこ理解しているつもりでした。しかし、この一年で、何も分かっていなかったということがよく分かりました。本当のところは、中に入ってみないと分からないものですね」(Aさん)) 無謬性にとらわれているのは行政だけではない。Aさんは今、一部の業務がスマホでもできるよう準備を進めているのだが、業務時間中にスマホを見ていると、市民から「仕事中にスマホを触るとは何事だ」と電話が入ったという。 適切な時代認識を持たない一部の市民やメディアが本質からずれた批判をすることで、行政はさらに息苦しくなっていく。自分たちは間違えてはいけない。それが根底にあるからこそ真に受けて、変わることをやめてしまう』、「市民から「仕事中にスマホを触るとは何事だ」と電話が入った」、管理職からそんなクレームは無視してよい旨を伝えておけば済む話だ。
・『役所の変革こそ一筋縄ではいかない  行政を取材すると、「役所の変革こそ一筋縄ではいかない」という声を聞く。何かを変えようとすれば、受け継いだ政策をまずは「是」とするのが役人のイロハだと、役人としての資質を問われることになる。 冒頭の答弁で、牧島かれんデジタル大臣は、「企業の常識が霞が関の常識になっていない」と指摘した。「まずはデジタル庁が無謬性にとらわれず、新たなショーケースとなり、他の省庁にも展開しやすくしていきたい」という。 適切な時代認識とともに、世の中の当たり前を霞が関の当たり前に。そして、自治体の当たり前に。今がその分水嶺だ』、「世の中の当たり前を霞が関の当たり前に。そして、自治体の当たり前に」、困難を乗り越えて、頑張ってほしいものだ。

第三に、5月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの酒井真弓氏による「役所に残る「メールよりFAX」信仰、時代錯誤な住民の行政批判もDXの壁に」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/302975
・『日本のDXが進まないと言われて久しいが、一般企業以上に進んでいないのが行政のDXだ。行政のDXを妨げる要因はどこにあるのか。「役所は遅れている」と批判する前に、自治体を取り巻く閉塞感の正体と、私たち住民ができることを考えてみたい』、興味深そうだ。
・『90年代のパソコン環境のままで、時が止まっている  前回、『役所のDXはなぜ難しい?行政にはびこる「絶対間違えられない」の呪縛』では、実例を踏まえ、行政のDXを妨げる要因に触れた。まずは、なぜ多くの自治体が、いまだに電話やFAX、紙をベースに業務を進めているのか考えてみたい。 1995年、Windows 95によってパソコン画面に色や絵が表示されるようになり、1996年にはInternet ExplorerやOutlook Expressが登場し、今に続くコミュニケーションの基礎ができあがった。自治体のIT環境やベースとなる考え方は、ほとんどこの時点で止まっている。この時期に決められたルール、導入した機器やソフトウエアが脈々と受け継がれているのだ。 市や町では、パソコンが1人1台支給されていないケースもある。支給されていたとしても、すぐにフリーズしてしまうような古いパソコンを大切に使い続けていたりする。ウェブ会議用のカメラが付いていないことも多く、ウェブ会議ツールのライセンスが部署ごとにしか発行されていなかったりもする。自治体とのウェブ会議では一つの画面に何人か収まっていることがあるのだが、そういう理由かもしれない。 加えて、前回も紹介したインターネット接続の課題だ。2016年に総務省の要請で始まったセキュリティー強化策「三層の対策」により、全国約1700ほとんどの自治体が、業務で使うパソコンから直接インターネットに接続できなくなった。一般企業では考えられないことだが、行政のDXを考える上では念頭に置くべき制約だ。 三層の対策は、2020年に総務省から見直しが表明されているものの、現場では尾を引いている。過度なセキュリティー対策に加え、「インターネットは危険なもの」という認識から迷信も根強く残る。一部の自治体で「メールよりFAXのほうが安全」と言われるのもその一つだ』、「1995年、Windows 95」、「1996年にはInternet ExplorerやOutlook Expressが登場し、今に続くコミュニケーションの基礎ができあがった。自治体のIT環境やベースとなる考え方は、ほとんどこの時点で止まっている。この時期に決められたルール、導入した機器やソフトウエアが脈々と受け継がれているのだ」、驚くべきことだ。
・『自治体のDXを妨げる4つの要因  一方で、自治体で働く人の多くが、私生活ではデジタルに慣れ親しんでいる。ギャップを知っているからこそ、庁内のパソコンを積極的に使おうとは思わない。すぐにフリーズするから最低限の機能を残して停止するし、会議は紙の資料で進んでいく。税金を使っている以上は最低限のスペックでというが、最低限のスペックとは時代とともに変化するものだ。民間企業の「普通」を享受することは、決してぜいたくではない。 自治体のDXを妨げる要因をかなり抽象化すると、大きく以下の4つに分けられそうだ。 (1)前時代的なIT環境(予算や政策との兼ね合いもある) (2)失敗を恐れる文化(4の原因となる場合もある) (3)年功序列・終身雇用(長い下積みや人材流動性の低さ) (4)意思決定と事業推進の遅さ(3による中間管理職層の厚さもその理由) これらは互いに影響し合っている。いくら(2)(3)(4)の改善に動いても、インターネット接続の課題を解決しない限り、技術的制約によって足止めをくらってしまう。民間から優秀なIT人材を採用しても、実力を発揮する以前の問題で去っていくということが起こり得るのだ』、「インターネット接続の課題を解決」するのが先決のようだ。
・『安易な行政批判やクレームがもたらすもの  既存のやり方を否定することが改善につながるかというと、そうではない。「間違ったことをして信頼を失ってはいけない」というコンテクストに背を向けて、失敗を恐れる文化を頭ごなしに批判したり、アジャイルを訴えたりしても、平行線をたどるのは目に見えている。 また、前回の記事では、Aさんが、スマホでも一部の業務が進められるよう準備を始めたところ、市民から「仕事中にスマホを触るとは何事だ」とクレームが入ったというエピソードを紹介した。 行政のDXが進まない原因は、適切な時代認識を持たない一部の住民やメディアにもある。民間企業なら無視できることも、行政では難しい。自己流の正義を振りかざす人たちは、自分たちの声で進化が止まってしまう可能性を考えたことがあるだろうか。どうか仕事の邪魔をしないであげてほしい。 実は地方公共団体の職員数は、1994年をピークに大幅に削減されている。これには地方財政の健全化、定員や給与の適正化、民間委託の推進などが関係しているが、今後は、なり手の減少によって行政サービスの維持すら厳しくなる自治体も出てくるだろう。業務効率化は急務だ。 事実、多くの自治体が人材確保に苦労している。「なりたい職業ランキング」では常に上位、人気の職業という印象の公務員だが、近年、定員割れや内定辞退が相次いでいる。北海道庁では、2017年から2年連続で内定辞退率が6割を超えて話題となった。コロナ禍で志願者は微増しているものの、一時的である可能性は高い。 さらに定着率を高めるには、働く人たちの満足度を高める必要がある。昨今、一部の民間企業では、従業員満足度の向上が生産性を高めるとして、EX(Employee Experience)の改善に取り組んでいる。行政には、地域や住民に貢献したいと志して入った人が多いだろう。だが、人を幸せにする前に、役所で働く人たち自身が幸せであってほしい。ただの「やりがい搾取」ではなく、働く環境や評価、待遇など、後回しにしてきた多くのことを見直す時期にさしかかっているのだ』、「さらに定着率を高めるには、働く人たちの満足度を高める必要がある」、「働く環境や評価、待遇など、後回しにしてきた多くのことを見直す時期にさしかかっている」、同感である。
・『役所から見て、住民は「顧客」なのか?  行政で働く人は、住民を「顧客」と表現することがある。これは、行政サービスをより良くするために必要な心がけかもしれない。だが、筆者はスマートシティーを取材して「それって本当はちょっと違うのかも」と思った。 スマートシティーを推進する静岡県浜松市は、「アジャイル型の街づくり」を掲げ、トライ&エラーを繰り返すことで変化に強い街づくりを進めている。担当者は、「まずはベータ版でPoC(概念実証)を回し、市民の皆さんの反応を見て改善していきたい」と語ってくれた。 はっとした。スマートシティーとはコミュニティーであって、住民がサービスを享受するだけのお客様では成立しないのだ。自治体も同じだ。私たち住民の理解と協力なしに、行政のDXは成し遂げられない』、「スマートシティーとはコミュニティーであって、住民がサービスを享受するだけのお客様では成立しないのだ。自治体も同じだ。私たち住民の理解と協力なしに、行政のDXは成し遂げられない」、その通りだ。
・『必要なのは住民と自治体の共創、自治体自身がもっと発信すべき  国内でも、住民と自治体の共創が少しずつ始まっている。代表的なのが、市民が協力して主体的に行政サービスの課題を解決していく「Civic Tech」だ。 行政側では、経済産業省の「PoliPoli Gov」や、デジタル庁の「アイデアボックス」、香川県高松市の「たかまつアイデアFACTORY」など、住民の声を可視化する取り組みが始まっている。重要なのは、意見募集にとどまらず、改善に向けた対応、結果や展望も含め、行政側の活動も可視化されることだ。こうした動きが見えないと、住民が主体性を保ち続けるのは難しい。 何より自治体は、自分たちを取り巻く課題を自ら発信してほしい。本当の共創は、住民が課題を知るところから始まる。批判を恐れて言えないとか、「自治体ってこういうものだから」と諦めてしまっている部分もあると思う。それでも、自治体は何に苦しみ、本当はどうしたいのか教えてほしい。そうでなければ、味方になってくれる人を振り向かせることすらできないのだから』、「自治体は何に苦しみ、本当はどうしたいのか教えてほしい。そうでなければ、味方になってくれる人を振り向かせることすらできないのだから」、同感である。
タグ:(その6)(デジタル人材必読 電子立国エストニアはこれだけすごい 安全保障によって鍛えられた歴史、役所のDXはなぜ難しい?行政にはびこる「絶対間違えられない」の呪縛、役所に残る「メールよりFAX」信仰、時代錯誤な住民の行政批判もDXの壁に) 電子政府 Wedge Online 大澤 淳 氏による「デジタル人材必読 電子立国エストニアはこれだけすごい 安全保障によって鍛えられた歴史」 「首都タリンは、写真のように中世ハンザ都市の面影を強く残していて、観光で訪れる日本人が持つ第一印象は恐らく、「おとぎ話の舞台のような北欧」というものであろう」、その通りだ。 「首都タリンは、写真のように中世ハンザ都市の面影を強く残していて、観光で訪れる日本人が持つ第一印象は恐らく、「おとぎ話の舞台のような北欧」というものであろう」、行ってみたくなる。 「モバイル・パーキング」は確かに合理的だ。 「e-タックスでは、納税者の1年間の収入・控除などが自動集計され、納税者はシステムにログインして、自分のデータを確認・修正して電子署名を承認するだけで、3〜5分で申告が終了」、全て手入力させられる日本のとは段違いに便利だ。「処方箋の98%、銀行取引の99.8%、駐車料金の90%がオンライン経由で行われており、行政サービスの99%はオンラインで提供され、24時間365日利用可能」、さすが「電子立国」だけある。 「IDカードの普及率はなんと驚きの98%」、「落伍者を一人も出さないという目標を掲げ、街頭での普及活動に加え、高齢者のご家族にも説明を手伝ってもらい、必要なら担当者が何度も森の中のお宅に出向いて説明した」、「2兆円近い税金を使ってポイントで釣る日本のやり方は、再考の余地がある」、その通りだ。 「サイバネティクス研究所は、閉鎖的なソビエトの科学技術開発の中で、珍しく西側に交流の窓が開かれており、スウェーデンやフィンランドの研究者との交流を通じて、エストニアが最先端のコンピューター科学の技術力を保持する母体となった。このサイバネティクス研究所からは、暗号アルゴリズムを専門とするCybernetica社が民間企業として97年に独立し、政府と一体となってエストニアのX-Roadや認証技術の開発を担っている」、「サイバネティクス研究所」が「珍しく西側に交流の窓が開かれて」いたのはラッキーだった。 「「データの完全性」をブロックチェーン技術で担保する技術が、「医療、土地登記、企業登記、政府公告などで使われている」、「大規模なサイバー攻撃」の経験が生かされたようだ。 「「電子立国」の究極の安全保障政策として、Data Embassy(データ大使館)構想を15年から実行に移している」、面白い試みだ。 「どんなことがあっても、サイバー空間で国家を存続させる」、との「エストニア政府高官の「覚悟」が貫徹されることを願っている。 ダイヤモンド・オンライン 酒井真弓氏による「役所のDXはなぜ難しい?行政にはびこる「絶対間違えられない」の呪縛」 「「コロナ禍でアジャイルのモデルケースができた」と語る。ワクチン接種記録システム(VRS)によって接種状況が可視化され、実際の数字と現場の声を掛け合わせ、柔軟に改善を図ることができたという」、どこが「アジャイルのモデルケース」なんだろうか、説明不足も甚だしい。 「インターネット接続」できる「パソコン」を限定するのは、「地方自治体」だけでなく、民間でも銀行や証券会社で採用されたやり方だ。 「三層の対策」(三層分離) 「三層の対策は、2020年に総務省が見直しを表明したものの、各自治体に深く影響が残っている」、困ったことだ。 (注)UI/UX:ユーザーインターフェイス(UI)とは、ユーザーとの間に現れるサービスやプロダクトの外観。ユーザーエクスペリエンス(UX)とは、ユーザーがプロダクトやサービスを通して得られた体験。 「市民から「仕事中にスマホを触るとは何事だ」と電話が入った」、管理職からそんなクレームは無視してよい旨を伝えておけば済む話だ。 「世の中の当たり前を霞が関の当たり前に。そして、自治体の当たり前に」、困難を乗り越えて、頑張ってほしいものだ。 酒井真弓氏による「役所に残る「メールよりFAX」信仰、時代錯誤な住民の行政批判もDXの壁に」 「1995年、Windows 95」、「1996年にはInternet ExplorerやOutlook Expressが登場し、今に続くコミュニケーションの基礎ができあがった。自治体のIT環境やベースとなる考え方は、ほとんどこの時点で止まっている。この時期に決められたルール、導入した機器やソフトウエアが脈々と受け継がれているのだ」、驚くべきことだ。 「インターネット接続の課題を解決」するのが先決のようだ。 「さらに定着率を高めるには、働く人たちの満足度を高める必要がある」、「働く環境や評価、待遇など、後回しにしてきた多くのことを見直す時期にさしかかっている」、同感である。 「スマートシティーとはコミュニティーであって、住民がサービスを享受するだけのお客様では成立しないのだ。自治体も同じだ。私たち住民の理解と協力なしに、行政のDXは成し遂げられない」、その通りだ。 「自治体は何に苦しみ、本当はどうしたいのか教えてほしい。そうでなければ、味方になってくれる人を振り向かせることすらできないのだから」、同感である。
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子育て(その5)(「親の愛着が足りない子」が示す3つの問題行動 親の愛情が一貫していない子に見られる兆候は、【てぃ先生X精神科医Tomyが教える】子育てのイライラを解決するアドバイス、日仏の「夏休みの差」に愕然…フランスは宿題・部活なし 経済援助まで) [生活]

子育てについては、昨年10月3日に取上げた。今日は、(その5)(「親の愛着が足りない子」が示す3つの問題行動 親の愛情が一貫していない子に見られる兆候は、【てぃ先生X精神科医Tomyが教える】子育てのイライラを解決するアドバイス、日仏の「夏休みの差」に愕然…フランスは宿題・部活なし 経済援助まで)である。

先ずは、本年6月15日付け東洋経済オンラインが掲載したUCLA医科大学精神科臨床教授のダニエル・J・シーゲル氏と 児童青年心理療法士の ティナ・ペイン・ブライソン氏による「「親の愛着が足りない子」が示す3つの問題行動 親の愛情が一貫していない子に見られる兆候は」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/596465
・『今、世界の教育界で最も注目されている「愛着」。子どもの自己肯定感を育むには、親からの揺るぎない愛着が必要だというものだ。本稿では、『自己肯定感を高める子育て』の著者で、UCLA医科大学精神科教授ダニエル・J・シーゲルと全米で人気の心理セラピスト、ティナ・ペイン・ブライソンの新著『生き抜く力をはぐくむ愛着の子育て』より、親からの愛着を受けている子と、適切に受けていない子の違い、そしてそうした子たちに現れる特徴について解説する』、興味深そうだ。
・『スキルや能力よりも大切な「土台」  「子どもがこの不安定な世界を生き抜くために、親としてできるいちばん重要なことは、なんですか?」 世界中の親たちは、子どもに必要なスキルや能力を育むチャンスを自分は与えていないのではないかといつも不安だ。でも安心してほしい。子どもに育んであげたいスキルや能力よりも、親であるあなたが、親子関係にどう取り組むかに焦点を当てることのほうが大切だ。 親と確かな愛着で結ばれている子どもは、学校で、人間関係で、そして人生で成功する可能性がはるかに高くなる。 では、子どものなかに確かな愛着を育むにはどうすればいいのか?ただ、寄り添えばいい。科学研究が繰り返し示しているとおり、子どもがどう育つかを予測するうえで最もよい判断材料となるのは、少なくとも1人の大人(必ずしも親でなくてもいい)が感情面で支えになり、そばにいたかどうかだ。 子どもにすくすくと健全に育つ最上の機会を与えたいなら、ただ安全で、見守られ、なだめられ、安心できると、感じさせてあげればいい。そしてそのためには、ただそばにいてあげればいい。つまり、その子をありのままに受け入れ、安心させてやることなのだ。 (愛着に必要な4つのSの図はリンク先参照)) 確かな愛着によって良好な結果が生まれるのには、いくつか大きな理由がある。 まず、あなたが寄り添っていると、子どもは生活全般で自分が安全だという安心感をいだく。世界を「自分の居場所」と感じながら生きているので、たとえ思いどおりにいかないことがあっても自分は大丈夫だと思える。 子どもが障害や挫折にぶつかったとき、確かな愛着が緩衝材のような働きをすると考えるとわかりやすい。確かな愛着があっても、ネガティブな状況や感情から子どもを遠ざけることはできない。それが人生というものだ。子どもは苦痛だけでなく、失望や、いら立ち、不満なども感じるだろう』、「あなたが寄り添っていると、子どもは生活全般で自分が安全だという安心感をいだく。世界を「自分の居場所」と感じながら生きているので、たとえ思いどおりにいかないことがあっても自分は大丈夫だと思える。 子どもが障害や挫折にぶつかったとき、確かな愛着が緩衝材のような働きをすると考えるとわかりやすい」、なるほど。
・『挫折や失敗を経験させないようにするより大事なこと  親としてのあなたの仕事は、挫折や失敗を経験させないようにすることではなく、人生の嵐を乗り切るのに必要なツールと情緒面での立ち直る力を与え、その嵐のなかをいっしょに歩いてやることだ。 そのとき、確かな愛着は、スケートボードをするときのヘルメットと同じ、気持ちの防具のように働く。ヘルメットをかぶっていても事故は防げないが、転んだときのダメージは大きく変わってくるだろう。 あたり前だが、確かな愛着を養った子どもでも、成長に伴うたくさんの苦痛やショックを回避できるわけではない。友だちの誕生日パーティーに呼ばれなければ、やはり仲間外れにされたような気分になるだろう。初めての恋に傷つくこともあるだろう。 しかし、そういう難題にぶつかっても、うまく立ち直るためのヘルメットがあるから、しっかりした自我を失うことなく、つらい胸の痛みを乗り越えられる。 確かな愛着があれば、特に、大きなショックを伴う人生経験や、環境からのストレス、発達上あるいは医療上、遺伝上の障害、学習困難など、特別な問題に向き合っている子どもも生きやすくなる。 ほかの子たちより生きていくのに苦労する子もいる。そういう子たちは、つねに急な坂で自転車をこいでいるようなものだろう。あなたは重力を取り除いたり、坂を平らにしたりはできないかもしれない。しかしつねに寄り添って確かな愛着を育めば、少なくとも坂の勾配を変えて、それほど骨を折らずにペダルを踏めるようにはしてやれる』、「つねに寄り添って確かな愛着を育めば、少なくとも坂の勾配を変えて、それほど骨を折らずにペダルを踏めるようにはしてやれる」、なるほど。
・『母親との関係が如実に現れる実験  1960年代、科学者たちは、1歳の誕生日を迎えた子どもとその保護者を対象とする、興味深い実験を行った。 まず、子どもが生まれて最初の1年間、訓練を積んだ観察者が家庭訪問して、一定の評価尺度で母親と乳児の関係を評価した。次に、その年の終わりに、それぞれの親子が約20分間の実験のため、ある部屋に入れられた。〝ストレンジ・シチュエーション法〟と呼ばれる実験だ。 赤ちゃんが母親と引き離されて、〝慣れない状況(ストレンジ・シチュエーション)〟つまり知らない人たちと一緒か、1人きりでなじみのない部屋に残されたとき、何が起こるかに注目する。 部屋を出ていく母親を目にするストレスに1歳の子がどう対処するか、特に母親が戻ってきたときにどう反応するかを観察すれば、赤ちゃんの愛着のシステム――赤ちゃんがどのように親とつながり、その関係を〝確かな土台〟として使っているか――についてさまざまなことが学べる。 こういう実験が何千回も繰り返された結果、関係性を解くカギは、「母と子の再会の段階にあること」がわかってきた。つまり、戻ってきた母親を子どもがどう迎えるか、どのくらいで落ち着くか、どのくらいすばやくおもちゃ遊びに戻るか(のちに同じ実験が父親でも行われ、全般的に同様の結果が得られたので、母親だけでなく保護者と子どもの関係の評価と言っていいだろう)。 確かな愛着を育まれた赤ちゃんは、母親が部屋を出ていくと、はっきりと寂しそうな様子を見せ、戻ってくるとうれしそうに迎えてから、すぐに落ち着いて、おもちゃ遊びやその他の活動に戻る。) 安定した愛着を育まれた子どもの場合、家庭訪問による観察では、つながりを求める赤ちゃんの気持ちに母親が敏感に反応して赤ちゃんの合図を読み取り、いつも要求に応じていることがわかった。 言い換えれば、親は子どもの合図を受け取ると、子どもの内面――子どもの行動に隠れた心――で、その合図が何を意味しているかを理解してから、タイミングよく敏感に、普段どおりの効果的なやりかたで対応している。 安定した愛着を育まれた子はどのくらいいるのだろう? この実験をした研究者によると、約3分の2の子どもは親とのあいだに安定した愛着を築いている。そういう子たちには完璧な親(それがどういう意味であれ)がいるわけではないが、必要なときには常に寄り添ってくれる親がいる。それが安定した愛着を育んでいるのだ』、「確かな愛着を育まれた赤ちゃんは、母親が部屋を出ていくと、はっきりと寂しそうな様子を見せ、戻ってくるとうれしそうに迎えてから、すぐに落ち着いて、おもちゃ遊びやその他の活動に戻る」、「親は子どもの合図を受け取ると、子どもの内面――子どもの行動に隠れた心――で、その合図が何を意味しているかを理解してから、タイミングよく敏感に、普段どおりの効果的なやりかたで対応している」、我が子のうち1人はカンが強かったので、「母親が部屋を出ていくと」、大泣きして、「戻って」きても泣きやまない筈だ。
・『不安定な愛着を受けた子の3つの特徴  残り3分の1の子どもたちは、保護者とのあいだに「不安定型愛着」を形成していて、それは3つのグループに分けられる。以下の説明を読むとき、1つ心に留めておいてほしいことがある。この分類は、親子関係と、その関係に子どもがどう適応しているかを表すもので、子ども自体を評価した結果ではない。 不安定型?親を無視する「回避型愛着」の子ども(実験で観察したとき、「不安定型愛着」を示す子どもの第1グループは、「回避型愛着」を見せる。母親が立ち去って1人で残されると、そういう子は部屋のおもちゃにひたすら熱中する。それどころか、母親がいなくなってもほとんど悲しい様子や動揺したそぶりを見せず、母親が戻っても無視したり、避けたりすることさえある。 ご推察のとおり、回避型愛着を示す子どもを家庭で観察したところ、親は子どもの合図や要求に無関心で鈍感だった。そういう親たちは、子どもの身体面の要求には応じ、おもちゃや遊びを与えているが、感情面の要求を無視している。 結果として子どもは、内面で苦痛を感じていても、外面に表すべき愛着の要求を最小限にするスキルを学んでしまう。子どもの内面の状態をなだめてもらう必要が〝地下に潜って〟しまうらしい。 つまり、その赤ちゃんは、基本的な人間関係のなかでの要求が満たされないことに順応している。「回避型愛着」を形成した子どもの場合、苦痛の合図さえ親に無視されるので、子どもは自分の苦しみには関心を向けてもらえないのだと考え、騒いで不満をあらわにしないほうがよい対応をしてもらえると察するようになる。 こういう子は〝行動回避〟によって、親との関係に順応する。母親が部屋にいてもいなくてもかまわないと伝えることによって、親の無関心に対処しているのだ。 ところで、念のために言っておくと、こういう「愛着戦略」は、特定の親とのやりとりの歴史を対象にしているので、別の保護者について評価すればまったく別の結果になることもある。子どもは一方の親とは回避型愛着を築いているかもしれないが、別の保護者とは安定型愛着で結ばれて、その恩恵を受けている場合もある』、なるほど。
・『どんな状況でも落ち着かない  不安定型②いつも心が落ち着かない「葛藤型愛着」の子ども(不安定型愛着を示す子どもの第2グループは、「葛藤型愛着」に分類される。こういう子の親は、一貫して細やかな愛情を注ぐわけでもなければ、一貫して無関心で鈍感なわけでもない。問題なのは、親の一貫性のなさだ。 親は、細やかで敏感な反応をすることもあれば、しないこともある。結果としてこの愛着関係は、親を信頼できるかどうかについて、子どもの心に大きな不安と葛藤を引き起こす。 たとえば、この実験では、葛藤型愛着を示す乳児は、母親が出ていったときも戻ってきたときも、なかなか落ち着かせることができない。安定型愛着を示す子のようにおもちゃ遊びに戻ることもなく、心配そうに、あるいは必死に親にしがみつく。そこには、愛情深い世話や慰めから生まれる信頼が欠けているように見え、母親と身体的に触れ合っても子どもは安心感をいだけない。 一貫性のない対応をしてきたせいで、子どもの内面は混乱している。そこへ親が戻ってくると、不安定な気持ちになるようだ。葛藤型愛着を示す子は、自分が目を離すと母親が立ち去ってしまうかもしれないと思い、その注意をそらすことを恐れる。そういう形で、愛着システムが最大限に活性化されている』、「一貫性のない対応をしてきたせいで、子どもの内面は混乱している。そこへ親が戻ってくると、不安定な気持ちになるようだ。葛藤型愛着を示す子は、自分が目を離すと母親が立ち去ってしまうかもしれないと思い、その注意をそらすことを恐れる」、なるほど。
・『混乱、動揺、支離滅裂な行動を示す子  不安定型?親にどう反応すればいいのかわからない「混乱型愛着」の子ども(不安型愛着を示す子どものなかで最も大きな苦痛を抱えている第3グループは「混乱型愛着」に分類される。こういう子は、母親が部屋に戻ったとき、どう反応すればいいのかをうまく決められず、結果として混乱し動揺、あるいは、支離滅裂な行動を示す。 たとえば、怖がっているようなそぶりを見せたあと、母親に近づき、また身を引いたかと思うと、床に倒れこんで泣き、今度は身を固くする。場合によっては、母親にしがみつきながら、同時に身をそらすこともある。 子どもが「混乱型愛着」を示すようになるのは、親がおびえさせる存在だったり、親自身がおびえていたりするせいで、子どもが「極度の愛情不足」を感じている場合だ。 安定型だろうと不安定型だろうと、細やかな親、あるいは無関心な親、一貫性のない親に対応して一定のパターンの愛着を形成した子たちと違って、こういう子は、いつ親に怖い目に遭わされるかわからないので、一貫した効果的な対処法を思いつけない』、「こういう子は、いつ親に怖い目に遭わされるかわからないので、一貫した効果的な対処法を思いつけない」、こうしてみると、「親」の「愛着」如何で、「子どもが」、「回避型愛着」、「葛藤型愛着」、「混乱型愛着」など が生まれるとすれば、「親」も罪深い。

次に、6月25日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した精神科医 Tomy氏による「【てぃ先生X精神科医Tomyが教える】子育てのイライラを解決するアドバイス」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/304744
・『関東の保育園に勤務するかたわら、園児たちの日常をつぶやくTwitterが55万フォロワー超えと大人気のカリスマ保育士・てぃ先生。子育てや保育に関するお役立ち情報を発信するYouTubeチャンネルも登録者数65万を超え、今やテレビやラジオなどのメディアでも引っ張りだこ。『子どもに伝わるスゴ技大全 カリスマ保育士てぃ先生の子育てで困ったら、これやってみ!』『子どもが伸びるスゴ技大全 カリスマ保育士てぃ先生の子育て〇×図鑑』といった著書も軒並みベストセラーとなっている。 一方の精神科医Tomy先生は、Twitterで日々悩める人々の心を救い、30万フォロワー突破。『精神科医Tomyが教える1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』をはじめシリーズ27万部突破と大ヒット中。自身初の感動小説『精神科医Tomyが教える 心の荷物の手放し方』も増刷を重ねて乗りに乗っている。 普段から子育て中の親世代と接している2人は、何かと相談を持ちかけられることが多い。また、SNSでは悩みに答える発信を得意とするインフルエンサーでもある。よくある親の悩みにどう答えるか、子どものメンタルの問題への向き合い方、SNSで発信する際に心がけていることなど、2人が語り合った内容をお届けする』、興味深そうだ。なお、「Tomy先生」は日本人である。
・『朝、子どもが園に行きたがらない理由とは?  Tomy:てぃ先生の本を読ませていただいて、ものすごく勉強されているというのを感じました。心理学など、けっこう専門的なことを学んでいらっしゃいますね。 てぃ先生:そうですね。こういう話をすると「冷めてる」と言われることもあるんですけど、僕はあまり感情論みたいなものには興味がなくて、1+1がどうして2なのかをちゃんと理屈で納得したいタイプなんです。だから、専門書なんかも読んで、理屈の部分を学ぶことも多いんです。 Tomy:どういう情報源を活用されているんですか? てぃ先生:「子育て」とか「保育」に関わる本は、基本的にAmazonなどの新着順で上から全部買って読んでいます。あと、最近は論文を読めるサイトもいっぱいあるので、そういったものに登録して読むことも多いです。 Tomy:保育士としてお仕事されているときに、お母さんやお父さんから直接子育ての悩みを持ちかけられることって、あるんですか? てぃ先生:てぃ先生としての活動の中ではもちろん、保育園の中でも相談を受ける機会はたくさんあります。 Tomy:アテクシも、子育てに悩むお母さんから困りごとを聞く機会があるんです。自分自身が結婚もしていなければ、子どももいないので、想像で「こうしてみれば、いかがですか?」とアドバイスするしかないんです。実はトンチンカンなことを言っているんじゃないかな、といつも不安に思っています。特によく聞くのが朝の悩みです。「朝、幼稚園や保育園に送っていこうとすると、子どもが嫌がってギャーギャー泣いてしまう。どうしていいかわからない」と訴えるお母さんが多いんです。でも、「まあ、そういう日もありますよね」くらいしか言えなくて……。 てぃ先生は、「子どもが朝泣きわめいて保育園に行きたがらない」という悩みにどうお答えになりますか』、「てぃ先生:「子育て」とか「保育」に関わる本は、基本的にAmazonなどの新着順で上から全部買って読んでいます。あと、最近は論文を読めるサイトもいっぱいあるので、そういったものに登録して読むことも多いです」、勉強熱心なのには驚かされた。
・『親のイライラの原因は、子どもじゃない  てぃ先生:この場合、親は子どもにイライラしているんじゃなくて、時間に対してイライラしていると思うんです。例えば、「家を出るまでに、あと5分しかない」という中で、子どもが着替えない、靴を履きたくないと言い始めたら、誰でも困るし、イライラすると思います。でも、「あと2時間あります」という状況だったら、誰もイライラしないんですよね。 子どもが行動しないことに対して怒っているとか、子どものことが嫌だから怒っているんじゃなくて、ほとんどは時間の問題なんです。だから、「最近子どもが自発的に動いてくれない」と悩んでいる人は、子どもにどう行動させるかを考える前に、「どうしたら子どもが納得しながら着替えなどを進められる時間を確保できるか」を考えたほうがいいと思うんです。 たとえば、今まで朝から掃除をしていたとか、手間のかかる朝ご飯を作っていたというのであれば、別に朝から掃除をしなくてもいいですし、手間をかけた朝ご飯でなくてもいいわけです。手放してもいいものは手放し、効率化できることはどんどん効率化していき、とにかく時間をつくることが大事じゃないかと思います。 Tomy:なるほど。「時間の余裕を作ってください」とアドバイスをすれば、気持ちがラクになれるかもしれないですね。 てぃ先生:もちろん、ご家庭によっては、これ以上時間を切り詰めることができない場合もあります。その場合は、「外に出たくないのか」「着替えたくないのか」「靴を履きたくないのか」といった、それぞれの事例に合わせてアドバイスを送るようにしています』、「「最近子どもが自発的に動いてくれない」と悩んでいる人は、子どもにどう行動させるかを考える前に、「どうしたら子どもが納得しながら着替えなどを進められる時間を確保できるか」を考えたほうがいいと思うんです。 たとえば、今まで朝から掃除をしていたとか、手間のかかる朝ご飯を作っていたというのであれば、別に朝から掃除をしなくてもいいですし、手間をかけた朝ご飯でなくてもいいわけです。手放してもいいものは手放し、効率化できることはどんどん効率化していき、とにかく時間をつくることが大事じゃないかと思います」、合理的・冷静な判断で説得力がある。

第三に、7月25日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したNagata Global Partners代表パートナーでINALCO(フランス国立東洋言語文化大学)非常勤講師の永田公彦氏による「日仏の「夏休みの差」に愕然…フランスは宿題・部活なし、経済援助まで」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/306880
・『バカンスシーズン真っただ中のフランスですが、子どもたちも2カ月の夏休みの折り返し点に差し掛かります。彼らには、夏休みの宿題や部活はありません。理由は文字通り「夏休み」だからです。その代わり、どの家庭環境の子ども達も普段できない活動をします。一方、中高生を中心に、日本の多くの子どもたちは正反対です。夏休み返上で、先生や親から課された学期中の延長線上の活動に励みます。宿題、部活、補習、塾の夏期講習などです。偏差値と受験に偏重した時代錯誤の教育システムに組み込まれ、夏休みに休まない日本の子どもたちの将来は一体どうなるのでしょうか?』、「夏休みの宿題や部活はありません。理由は文字通り「夏休み」だからです」、さすが「バカンス」本場の「フランス」だ
・『フランスの子どもたちの夏休みの過ごし方  子どもたちにとり夏休みは、学校を忘れ、普段できないことをする絶好の機会です。初めて出会う子どもたちと一緒に文化活動、スポーツ、地域活動をする、家族でキャンプや旅行に行く、遠方に住む祖父母と過ごす、田舎や国外で生活体験するなどです。 子どもたちは、こうした新しい非日常的な活動を通じ、新しい世界を知り、新しい友達をつくり、家族を再発見します。そして、想像力、思考力、社交性、情操、好奇心などを育み自らを大きく成長させます。またバカンスは、人に満足感を与え、ポジティブな気分を生み出し、幸福感を高めるとの研究もあります 。 こうした認識のもと、フランスの子どもたち(3~17歳)の7~8割が、バカンス(自宅以外で4泊以上連続で過ごす)に出かけます(出所:国民教育・青少年省他)。また、自宅近くでさまざまなアクティビティーができる施設で過ごします(以下、夏休みの過ごし方の典型例)。 子どもたちの夏休み2カ月の過ごし方(典型例、都市部一般中流家庭の3~15歳) 2週間:祖父母や親戚・家族の家で過ごすか、彼らと旅行 2週間:自宅近くの余暇教育センター(Centre de loisirs educatif )で、文化、芸術、スポーツ、自然体験などの活動 1週間:ホリデーキャンプ(Colonies de vacances)で、文化、芸術、語学、スポーツ、キャンプ、田舎生活体験などの活動 2週間:親とバカンス 1週間:新学年スタート前準備』、「フランスの子どもたち(3~17歳)の7~8割が、バカンス(自宅以外で4泊以上連続で過ごす)に出かけます」、なるほど。
・『ジレンマを抱える日本の親たち  日本でも、我が子が夏休みを楽しく伸び伸びと過ごし、新しい体験を通じ成長してほしいと願う親御さんは多いはずです。 例えば、菓子メーカーのクラシエフーズが、昨年5月に3歳から9歳までの子どもがいる母親を対象に実施した意識調査では、そのことが如実に表れています。 「夏休みを迎えるにあたって、子育てにおいて楽しみなことは?」との問いに対し、上位3項目は、1位:家族で思い出を作ること(48.5%)、2位:子どもに新たな体験をさせてあげられること(37.5%)、3位:非日常の体験を一緒にすること(36.3%)となっています。 また「夏休みに子どもに体験させたいことは?」との問いに対し、上位5項目は、1位:自然に触れさせたい(56.0%)、ストレスを発散させたい(48.3%)、旅行に連れていきたい(32.5%)、新しいことに挑戦させたい(28.5%)、個性を伸ばしたい(24.0%)となっています。 他方、日本の子どもたちは大忙しで、ゆとりがありません。宿題、自由研究、補習に加え、部活や塾で大忙しです。日本の中高生の85%が部活に励みますが、夏休み中も、体育系の4割がほぼ毎日(3割が週3~5日)、文化系の2割がほぼ毎日(2割が週3~5日)と、お盆休みを除く大半の時間を部活に割いています(出所:ベネッセ2016年)。また全国平均の通塾率は、公立小学校の子どもの4割近く、公立中学校の子どもの7割近くと学校以外でも勉強に追われています(出所:文部科学省「子どもの学習費調査2018年」)。 このように、我が子が伸び伸びと夏休みを楽しく過ごし、新しい体験を通じ成長してもらいたいが、(1)周りと同じように勉強や部活を怠ることはできない、(2)自分たちも休みが短く子どもの面倒を見る時間も限られている、(3)旅行やキャンプに連れてゆくまたは送り込みたいが、どのプログラムも高く、公的支援も期待できず経済的に限界がある…こうしたジレンマを抱えている親御さんが多いのではないでしょうか』、「日本の子どもたちは大忙しで、ゆとりがありません。宿題、自由研究、補習に加え、部活や塾で大忙しです。日本の中高生の85%が部活に励みますが、夏休み中も、体育系の4割がほぼ毎日(3割が週3~5日)、文化系の2割がほぼ毎日(2割が週3~5日)と、お盆休みを除く大半の時間を部活に割いています」、「日本の子どもたちは大忙しで、ゆとりがありません。宿題、自由研究、補習に加え、部活や塾で大忙しです」、なるほど。
・『夏休み格差を縮めるために社会全体で親子を支えるフランス  皆さんの中には、前述したフランスの子どもたちの過ごし方の典型例を見て「これでは金がいくらあっても足りない」と感じる方が多いかもしれません。ところが、実際にはやり方によりかなり節約できます。 その最大の理由は、歴史的にフランスでは、子どもたちの夏休み格差を縮め、より多くの子どもたちが有意義に過ごせるようにしようとの社会的コンセンサスがあるからです。そのため、国、地方自治体、企業の従業員委員会、家族手当基金、共済団体、社会支援NGOなど、社会全体で財政支援も含め支えています。 このように大人が子どもたちの夏休みを大事にする背景には、次の二つの要因があります。 一つは歴史的な経緯です。170年前にナポレオン3世が初めて有給休暇10日を上級公務員に与え、1936年にはそれが大衆化し、バカンス文化が国民全体に浸透します。従って、今の子どもたちの両親や祖父母はもとよりご先祖様も、自らのバカンスを通じてその素晴らしさを体感しているからです。 二つ目は、フランス革命で生まれた平等と友愛というフランス共和国の標語です。皆が平等にバカンスを有意義に過ごす権利を持つ。その実現に向け皆で支え合おうということです。 法的にもこの二つの精神が反映されています。1946年憲法は「すべての人、特に子ども、母親、高齢の労働者に休息と余暇を保障する(前文11項)」としています。また、1998年7月制定の「排除との戦いに関する法律」は、「文化、スポーツ、休日、レジャーを生涯にわたり全ての人が平等に活用できることは、国の目標であり、有効な市民権行使の保障を可能にする(第140条)」と休日を過ごす権利を国家目標として規定しています』、「170年前にナポレオン3世が初めて有給休暇10日を上級公務員に与え、1936年にはそれが大衆化し、バカンス文化が国民全体に浸透」、「平等と友愛というフランス共和国の標語です。皆が平等にバカンスを有意義に過ごす権利を持つ。その実現に向け皆で支え合おう」、「1946年憲法は「すべての人、特に子ども、母親、高齢の労働者に休息と余暇を保障する(前文11項)」としています」、さすが「バカンス」発祥国だけある。
・『夏休みの数カ月前から親は子どもの預け先を準備  フランス人は、平均2週間の夏のバカンスに出かけます(主に7~8月)。従って、一般的に子どもも親と2週間のバカンスを過ごしますが、残りの6週間は親とは別に何かの活動をする必要があります。親の7割がフルタイムの夫婦共働きのため、その間、子どもの面倒を見るのが困難だからです。 そこで親としては、この間に我が子(特に小学生以下)を預かり成長につながることを、1円でも安く提供してくれる人や団体がいると助かるわけです。そのため、夏休みが始まる数カ月前からさまざまな準備をします。 まず、家族親戚を頼りにできそうな人は、祖父母や叔父叔母などと相談します。彼らが、近所に住んでいるのか遠方なのか、別荘を持つか否か、旅行に連れて行ってくれるか否かにより過ごし方は異なるものの、何らかの形で数日でも預かってくれると親は助かります。 しかし家族とはいえ、そう長く世話になる訳にはいきません。また、我が子を預けられる家族親戚がいない夫婦もいます。 そこで多くの親たちが世話になるのが、余暇教育センター(Centre de loisirs educatif )とホリデーキャンプ(Colonies de vacances)の二つを筆頭に、国、地方自治体、企業の従業員委員会、家族手当基金、共済団体、社会支援系NGOなどが財政も含め支援する各種プログラムです』、「余暇教育センター」と「ホリデーキャンプ」など「財政も含め支援する各種プログラム」が充実しているようだ。
・『フランスの親子を支援するさまざまなプログラム  余暇教育センターは、学期中でも学校のない水曜日や夏休みなどに、自宅近くにある学校や公共施設で、文化、芸術、スポーツ、自然体験等の活動をするものです。 全国で年間285万人の子どもたち(5~19歳)が利用しています(出所:Ovlej、2022年6月)。半日または1日のさまざまなプログラムが用意され、国が認定するインストラクター資格を持つお兄さんお姉さんが、子どもの数に応じ複数で対応します。利用費は自治体が一部を補填し、親の収入により数段階に分けられています。例えばパリ市は10段階で、1日昼食付きプログラムで、0.94ユーロ(約130円)から52.6ユーロ(約7360円)の幅になります(2022年度)。 ホリデーキャンプ(仏語ではコロニー・ド・バカンス)は、1876年にスイスのチューリッヒで牧師が恵まれない子どもたち向けに行い、その後、フランスでも1883年に開始されています。基本理念は、休みの間、さまざまな家庭環境の子どもたちが共に自然の中で文化・レクレーション・スポーツ、共同生活をすることで社会性と創造性を養うというものです。 フランス国内で、年間約140万人の子どもたち(5~19歳)が夏場を中心に参加しています。2518の主催団体(NGO、自治体、企業など)が、全国2518の市町村にある3900カ所の施設で1泊2日から2週間までさまざまなプログラムを展開しています(出所:国民教育・青少年省、2021年2月) 。近年は、インストラクター不足や参加費用の高騰などで、参加人数は減少傾向にあるものの、今でも8割の国民から親しみをもたれている国民的プログラムです。 以上の二つの仕組みが、最も多くのフランスの子どもたちが利用するものですが、他にもさまざまな支援制度があります。 企業により従業員委員会が一部費用を補填し、社員に前述のホリデーキャンプなどを割引料金で提供したり、バカンス小切手(Go To トラベルキャンペーンのクーポンのようなもの)を支給する制度があります。 また国が、新型コロナの影響で学習が遅れた主に低所得者層の子どもたち向けに2020年夏から導入した「学びのバカンス(vacances apprenantes)」があります。5億ユーロ(約700億円)の予算をかけ(2020~22年)、無償で100万人の子どもたちが、自宅近くの学校や全国の宿泊付き施設を利用し、補習・文化活動・スポーツを組み合わせた各種のプログラムに参加できる仕組みです』、「余暇教育センター」「全国で年間285万人の子どもたちが利用」、「ホリデーキャンプ」、「年間約140万人の子どもたちが夏場を中心に参加」、いろいろ充実しているようだ。
・『日本の子どもの幸福に必要な大人の価値転換  ご存じの通り、日本人の幸福度は世界54位で、他の先進国と比べるとかなり低い状況です(出所:国連・世界幸福度調査2022年度)。また、自分自身への満足度、職場や学校生活への満足度 自国社会への満足度も、先進7カ国の若者比較調査では最低です(出所:内閣府、平成30年「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」) これまでお伝えしたように、子どもにとって夏休みは非日常的な環境に身を置き成長する絶好の機会です。それがわかっていても、多くの親子がそれを実現できません。 その根本的な原因は、多くの大人たちが、今や時代錯誤でガラパゴス的なキャリア観や教育観を持ち続けていることです。その前提にあるのは、人を肩書で判断や評価する肩書信仰です。どの学校に行ったか、どの職業に就くか、どの会社に勤めているか、どの役職についているか、正社員か非正規社員か、どのエリアに住んでいるかなどです。その結果、学校の成績や偏差値を重視した受験教育システムは、いまだに脈々と生き続けています。 世界に目を転じると、VUCA(先行き不透明で、将来の予測が困難な状態)が進行する中、サステナブル社会への転換、そのための既存の社会・経済・政治システムの創造的破壊が進みつつあります。 従って、大人たちの役割は、子どもたちをこうした潮流の中で強く生きられるようにしてあげることです。戦後の高度成長期から続く古びたレールに乗せることではありません。欧米を中心に世界では既にそうですが、日本でもこれからは、「どの学校を出たか」という学歴の意味は薄れてきます。逆に重要なのは、「何を勉強して何が得意になったか」です。また、時代が激しく変化しようとも、それに柔軟に対応し「自分は世界のどこでもやっていける」という能力を生涯磨き続けることです。 まずは、問題の本質であるこの大人の価値観転換が起きずして、夏休みに休めない日本の子どもたちという状況が変わることはありません。逆に、これが起きれば、子どもたちが豊かに伸び伸びと夏休みを過ごすために必要な、経済、財政、制度的な環境も整うはずです。その結果、子どもたちは、幸福度のみならず、職場や学校生活への満足度、自国社会への満足度も高い大人へと成長することでしょう』、「日本でもこれからは、「どの学校を出たか」という学歴の意味は薄れてきます。逆に重要なのは、「何を勉強して何が得意になったか」です。また、時代が激しく変化しようとも、それに柔軟に対応し「自分は世界のどこでもやっていける」という能力を生涯磨き続けることです。 まずは、問題の本質であるこの大人の価値観転換が起きずして、夏休みに休めない日本の子どもたちという状況が変わることはありません。逆に、これが起きれば、子どもたちが豊かに伸び伸びと夏休みを過ごすために必要な、経済、財政、制度的な環境も整うはずです。その結果、子どもたちは、幸福度のみならず、職場や学校生活への満足度、自国社会への満足度も高い大人へと成長することでしょう」、「バカンス」の問題が「大人の価値観転換」など大きく広がったが、同感である。
タグ:子育て (その5)(「親の愛着が足りない子」が示す3つの問題行動 親の愛情が一貫していない子に見られる兆候は、【てぃ先生X精神科医Tomyが教える】子育てのイライラを解決するアドバイス、日仏の「夏休みの差」に愕然…フランスは宿題・部活なし 経済援助まで) 東洋経済オンライン ダニエル・J・シーゲル氏 ティナ・ペイン・ブライソン氏 「「親の愛着が足りない子」が示す3つの問題行動 親の愛情が一貫していない子に見られる兆候は」 スキルや能力よりも大切な「土台」 「あなたが寄り添っていると、子どもは生活全般で自分が安全だという安心感をいだく。世界を「自分の居場所」と感じながら生きているので、たとえ思いどおりにいかないことがあっても自分は大丈夫だと思える。 子どもが障害や挫折にぶつかったとき、確かな愛着が緩衝材のような働きをすると考えるとわかりやすい」、なるほど。 「つねに寄り添って確かな愛着を育めば、少なくとも坂の勾配を変えて、それほど骨を折らずにペダルを踏めるようにはしてやれる」、なるほど。 「確かな愛着を育まれた赤ちゃんは、母親が部屋を出ていくと、はっきりと寂しそうな様子を見せ、戻ってくるとうれしそうに迎えてから、すぐに落ち着いて、おもちゃ遊びやその他の活動に戻る」、「親は子どもの合図を受け取ると、子どもの内面――子どもの行動に隠れた心――で、その合図が何を意味しているかを理解してから、タイミングよく敏感に、普段どおりの効果的なやりかたで対応している」、我が子のうち1人はカンが強かったので、「母親が部屋を出ていくと」、大泣きして、「戻って」きても泣きやまない筈だ。 「一貫性のない対応をしてきたせいで、子どもの内面は混乱している。そこへ親が戻ってくると、不安定な気持ちになるようだ。葛藤型愛着を示す子は、自分が目を離すと母親が立ち去ってしまうかもしれないと思い、その注意をそらすことを恐れる」、なるほど。 「こういう子は、いつ親に怖い目に遭わされるかわからないので、一貫した効果的な対処法を思いつけない」、こうしてみると、「親」の「愛着」如何で、「子どもが」、「回避型愛着」、「葛藤型愛着」、「混乱型愛着」など が生まれるとすれば、「親」も罪深い。 ダイヤモンド・オンライン Tomy氏による「【てぃ先生X精神科医Tomyが教える】子育てのイライラを解決するアドバイス」 興味深そうだ。なお、「Tomy先生」は日本人である。 「てぃ先生:「子育て」とか「保育」に関わる本は、基本的にAmazonなどの新着順で上から全部買って読んでいます。あと、最近は論文を読めるサイトもいっぱいあるので、そういったものに登録して読むことも多いです」、勉強熱心なのには驚かされた。 「「最近子どもが自発的に動いてくれない」と悩んでいる人は、子どもにどう行動させるかを考える前に、「どうしたら子どもが納得しながら着替えなどを進められる時間を確保できるか」を考えたほうがいいと思うんです。 たとえば、今まで朝から掃除をしていたとか、手間のかかる朝ご飯を作っていたというのであれば、別に朝から掃除をしなくてもいいですし、手間をかけた朝ご飯でなくてもいいわけです。手放してもいいものは手放し、効率化できることはどんどん効率化していき、とにかく時間をつくることが大事じゃないかと思います」、合理的・冷静 永田公彦氏による「日仏の「夏休みの差」に愕然…フランスは宿題・部活なし、経済援助まで」 「夏休みの宿題や部活はありません。理由は文字通り「夏休み」だからです」、さすが「バカンス」本場の「フランス」だ 「日本の子どもたちは大忙しで、ゆとりがありません。宿題、自由研究、補習に加え、部活や塾で大忙しです。日本の中高生の85%が部活に励みますが、夏休み中も、体育系の4割がほぼ毎日(3割が週3~5日)、文化系の2割がほぼ毎日(2割が週3~5日)と、お盆休みを除く大半の時間を部活に割いています」、「日本の子どもたちは大忙しで、ゆとりがありません。宿題、自由研究、補習に加え、部活や塾で大忙しです」、なるほど。 「170年前にナポレオン3世が初めて有給休暇10日を上級公務員に与え、1936年にはそれが大衆化し、バカンス文化が国民全体に浸透」、「平等と友愛というフランス共和国の標語です。皆が平等にバカンスを有意義に過ごす権利を持つ。その実現に向け皆で支え合おう」、「1946年憲法は「すべての人、特に子ども、母親、高齢の労働者に休息と余暇を保障する(前文11項)」としています」、さすが「バカンス」発祥国だけある。 「余暇教育センター」と「ホリデーキャンプ」など「財政も含め支援する各種プログラム」が充実しているようだ。 「余暇教育センター」「全国で年間285万人の子どもたちが利用」、「ホリデーキャンプ」、「年間約140万人の子どもたちが夏場を中心に参加」、いろいろ充実しているようだ。 「日本でもこれからは、「どの学校を出たか」という学歴の意味は薄れてきます。逆に重要なのは、「何を勉強して何が得意になったか」です。また、時代が激しく変化しようとも、それに柔軟に対応し「自分は世界のどこでもやっていける」という能力を生涯磨き続けることです。 まずは、問題の本質であるこの大人の価値観転換が起きずして、夏休みに休めない日本の子どもたちという状況が変わることはありません。逆に、これが起きれば、子どもたちが豊かに伸び伸びと夏休みを過ごすために必要な、経済、財政、制度的な環境も整うはずです。その結果、
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日本の政治情勢(その62)(杉並区長選で野党共闘まさか勝利 岸田自民が恐れる“ノブテルの呪い”と参院選敗北の予兆、日本政治にとって「大転換点」となった参議院選挙 安倍政治が終わり 平和志向の戦後政治も転機を迎えた、立憲民主党はなぜ参院選で大敗した?「提案型野党」が支持されない理由) [国内政治]

日本の政治情勢については、6月5日に取上げた。今日は、(その62)(杉並区長選で野党共闘まさか勝利 岸田自民が恐れる“ノブテルの呪い”と参院選敗北の予兆、日本政治にとって「大転換点」となった参議院選挙 安倍政治が終わり 平和志向の戦後政治も転機を迎えた、立憲民主党はなぜ参院選で大敗した?「提案型野党」が支持されない理由)である。

先ずは、6月21日付け日刊ゲンダイ「杉並区長選で野党共闘まさか勝利 岸田自民が恐れる“ノブテルの呪い”と参院選敗北の予兆」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/307069
・『まさかの結果だ。20日開票された東京都杉並区の区長選挙。自公がバックアップした現職の田中良氏(61=当選3回)が、野党統一候補の岸本聡子氏(47)に約190票差で敗れたのだ。 杉並区といえば、有権者に嫌われ、昨年の衆院選で落選した石原伸晃・自民党元幹事長の地盤。田中区長と伸晃氏は蜜月関係だけに、「敗因はノブテルの呪いか」なんて声も上がっている。想定外の結果に、岸田首相の周辺は、国民の怒りのマグマがたまっているのではないか、と疑念を強めている。 今回、立憲民主党、共産党、れいわ新選組、社民党が推薦し、初当選した岸本氏は、オランダの政策研究NGOの研究員。田中区政が進めた駅前再開発などについて「いったん立ち止まって、住民とともに考える」と訴えてきた。 フリーランスライターの畠山理仁氏は、「岸本氏は有権者の声に耳を傾け、選挙中に政策をバージョンアップさせるなど、従来の野党の戦い方とは全く別物だった」とみる。 「昨年、衆院選で伸晃氏を破った立憲の吉田晴美衆院議員が連日、応援に入ると、徐々に追い上げムードが高まっていった。最終的に蓮舫参院議員や枝野前代表ら大物が応援に入るなど、国政選挙並みの力の入れようでした。れいわ新選組の山本太郎代表も駆けつけ、勢いは十分だった」(野党関係者) 一方、田中陣営は、自民党の国会議員が応援に入ったが、杉並区議会の自民会派が「親田中派」と「反田中派」に分裂し、足並みが揃わなかったという。 自民党は、現職区長が無名の野党候補に負けただけでなく、区長選と一緒に行われた区議補選で票を減らしたことも不安材料とみているという。自民新人が当選したものの、前回2018年の区議補選の時に獲得した4万3000票から、1万6000票も減らしている』、「現職の田中良氏(61=当選3回)が、野党統一候補の岸本聡子氏(47)に約190票差で敗れた」、「杉並区議会の自民会派が「親田中派」と「反田中派」に分裂し、足並みが揃わなかった」、その割には「約190票差」とはいささか寂しい。
・『国民の怒りは“沸点”間近  実際、区長選と補選は、物価高や生活苦を一向に解消できない政権与党に対する世論が反映された可能性がある。 立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言う。 「物価高で国民の生活は苦しくなっているのに、『検討する』としか言わない岸田首相への怒りが募るのは当然です。世論調査でも内閣支持率は下がり、政府の物価高対策を『評価しない』という声が大きくなっています。今回の区長選の結果は、これまで声を上げなかった国民の怒りがジワジワと高まっていることを示している可能性があります。参院選に向けて、自民党はこの流れが続くのを恐れているに違いありません」 昨年の衆院選では、自民党の“象徴”的存在だった伸晃氏がまさかの落選を喫し、自民党に衝撃が走った。この参院選では予想外の事態が起きるかもしれない』、「参院選」の結果を見る限り、「区長選の結果」は自民党の内部分裂の結果に過ぎず、「国民の怒りは“沸点”間近」ではなかったことになるのは残念だ。

次に、7月12日付け東洋経済オンラインが掲載した法政大学教授の山口 二郎氏による「日本政治にとって「大転換点」となった参議院選挙 安倍政治が終わり、平和志向の戦後政治も転機を迎えた」を紹介しよう。
・『安倍晋三元首相が遊説中に暗殺されるという衝撃の中で投票日を迎えた今回の参議院選挙は、さまざまな意味で政治の転換の契機となるだろう。 第1は、1989年7月の参院選から始まった政治再編の模索が終わるという点である。 33年前の選挙では、リクルート事件、消費税導入の衝撃の中で、自民党による一党優位体制がほころびを来した。以後30年間、日本政治では選挙制度改革をテコとした政党再編成の試みが繰り返された。自民党が1990年代の危機をしのいで生き残ったために、政党再編のテーマは自民党に対抗する2大政党の一角をつくり出すことに絞られた』、「さまざまな意味で政治の転換の契機となる」とは興味深そうだ。
・『自民党による1党優位体制が続く  民主党政権崩壊後、2大政党の夢はついえたかに見えたが、2015年の安保法制反対運動を起点に選挙協力による野党ブロックの形成という方法で、立憲民主党を軸とした野党結集が進んだ。しかし、昨年秋の衆議院選挙で野党協力は失敗という烙印を押され、2大ブロックの対決という構図はこの参院選では成立しなかった。 衆院選では日本維新の会が躍進し、参院選の比例区でも野党最多の得票を挙げた。また、日本共産党との協力を嫌う国民民主党は予算に賛成し、与党に近づいている。両党は自民党政権を前提として、政権に提案を聞いてもらうことに自らの役割を求めている。政権交代を起こせる大きな野党は幻影となった。 立憲民主党は泉健太代表の下で体制立て直しを図ったが、低迷から抜け出せる展望は開けなかった。今後当分の間、自民党による一党優位体制が続くことになる。) 30年間追求してきた政権交代可能な政党システムというテーマに取り組むためには、立憲民主党を軸に野党を再構築するしかない。その際に重要なのは、連合の役割である。民主党の時代には、連合が支えて政権交代を目指していた。 しかし、芳野友子会長の下では、共産党と協力しないことが強調され、立憲民主党の指導部もそれに同調した。それゆえ、参院選の1人区での戦いも、共産党や市民を巻き込んだものとはならず、前回、前々回のようなエネルギーを生み出せなかった。 すぐに政権交代の道筋を描くことは困難だが、当面、翼賛体制に反対する強い野党の結集に向けて、立憲民主党と連合が方向性を共有することが必要である。選挙協力はその後の話である。 ▽狭い選択の幅の中で議論することになる(第2は、戦後政治に流れてきた平和志向の終わりという点である。 憲法擁護の旗頭だった社会民主党はかろうじて1議席を獲得したが、衰弱は止まっていない。2020年夏に立憲民主党からの合流呼びかけをめぐって分裂したことが響いている。ウクライナ侵攻を受けて安全保障が重要な争点となった選挙で、伝統的な憲法9条擁護の訴えが広い支持を集めることはなかった。今後は、自衛隊と日米安保の運用について狭い選択の幅の中で議論することになるのだろう。 社民党の未来はない。ただ、社民党には地方議員、地方組織があるので、これを有効に生かすべきである。憲法擁護、平等志向で主張が近い立憲民主党に合流し、この党の左側の派閥をつくることが、日本社会党の遺産を日本政治に生かす唯一の方法である。それは野党の軸を再建するためにも必要だ。 第3は、安倍政治の終わりという点である。暗殺によって有力政治家の時代が終わることは、民主主義においてあってはならない。この点は何度も強調しなければならない。それにしても、安倍氏が首相退任後も持論を展開し、自民党内に大きな影響力を振るってきた状況は一変する。) 岸田文雄政権発足後の自民党における政策論議では安倍氏が改憲・防衛力増強や積極財政・金融緩和などのテーマで持論を唱え、党内世論を引っ張った。これに対して岸田首相は慎重に考えるという姿勢を示し、明確な言質を与えずに党内調整を促すという構図であった。 岸田首相が意図的にあいまい戦術を取ってきたことは、次の記事からも明らかである。 <改憲に前向きなのか、そうでもないのか。側近議員の間でも見解は分かれる。「憲法改正は本気。だれもなしえなかったレガシーだ」という見方もあれば、「改憲を押し出す考えはさらさらない。保守層向けの分かりやすいメッセージだ」との声もある。>(朝日新聞・7月5日) 岸田首相は安倍氏の推す防衛事務次官を退任させたことから、防衛力増強という路線を取りながらも安倍流の政策転換と一線を画すサインを出している。安倍氏がいなくなれば、保守派を束ねる次のリーダーは不在となり、岸田首相は自由に行動できるようになる』、「安倍氏」葬儀の国葬化をみると、必ずしも「岸田首相は自由に行動できるようになる」とはいかないようだ。
・『冷静な政策議論を主導できるかどうか  岸田政権にとっての最大の脅威は、世界的インフレが日本を本格的に襲い、国民の不満が高まる中、従来の金融政策が破綻するシナリオである。国民は憲法改正よりも、経済や物価を重視している。国民の意思を理解し、安倍氏の遺志などという感情論を排して現実的な課題に取り組み、冷静な政策論議を主導できるかどうか、岸田首相の力量が問われる。 ただし、自民党の穏健路線に対する攪乱要因がこの参院選で明らかになった。それは、参政党、NHK党という右派ポピュリスト政党が議席を獲得した点である。自民党に飽き足らない急進保守層が析出したことは、日本政治におけるオピニオンの布置状況が右に寄ったことを意味する。 他方、暗殺事件の容疑者は、安倍氏も交流のあった宗教団体に対する怨恨から犯行に及んだと供述している。この団体は、悪徳商法で法外な利益を得たり、若者を洗脳したりと、反社会的活動をしてきた。同時に自民党内にもシンパの政治家を持って、同性婚や選択的夫婦別姓について強硬な反対論の発信源となっていた。 事件の真相解明が日本政治の暗部を暴くことになると、予想外の混乱が起こるかもしれない。ジャーナリズムの力量が問われることになる』、「参政党、NHK党という右派ポピュリスト政党が議席を獲得した点である。自民党に飽き足らない急進保守層が析出したことは、日本政治におけるオピニオンの布置状況が右に寄ったことを意味する」、「暗殺事件の容疑者は、安倍氏も交流のあった宗教団体に対する怨恨から犯行に及んだ」、「この団体は、悪徳商法で法外な利益を得たり、若者を洗脳したりと、反社会的活動をしてきた。同時に自民党内にもシンパの政治家を持って、同性婚や選択的夫婦別姓について強硬な反対論の発信源となっていた。 事件の真相解明が日本政治の暗部を暴くことになると、予想外の混乱が起こるかもしれない。ジャーナリズムの力量が問われることになる」、本件については、昨日のこのブログでも取上げたが、「事件の真相解明」が楽しみだ。

第三に、7月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した室伏政策研究室代表・政策コンサルタントの室伏謙一氏による「立憲民主党はなぜ参院選で大敗した?「提案型野党」が支持されない理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/306708
・『7月10日に投開票が行われた参院選は、自民党の大勝に終わった。一方、これに抗するはずの立憲民主党は、現職が何人も落選する惨敗だった。立憲民主党は、なぜここまでの「大敗」を喫してしまったのか、これから何をすればいいのか、徹底検証する』、興味深そうだ。
・『参院選は自民大勝 一方の立民は「大敗」  去る7月10日に投開票が行われた参議院選挙は、自民党の大勝に終わった。これまでの選挙では、「大勝」とはいっても実は自民党の得票数は減っているということがあったが、今回の選挙では、前回の3年前の参院選と比べて、選挙区、比例区ともそれぞれ50万票以上得票数が増えている(もちろん、候補者数の多寡は得票数に関係しているので、厳密に言えば単純比較は難しいともいえるが)。 名実ともに自民党が勝利した今回の参院選、これに抗するはずの立憲民主党はといえば、現職が何人も落選する惨敗であった。得票数については、前回の参院選の時の立憲民主党と、今回の参院選の立憲民主党は形式的には別ものであるが実質的には同じなので、得票数を比較してみると、比例区では110万票以上減らしている。端的に言って大敗である。比例区の結果からすれば、立憲民主党という政党に対する支持も期待も、急落したと言ってしまっていいだろう。 一方で選挙区ではどうかと言えば、前回の参院選に比べて20万票近く増えている。これも候補者数との関係性もあるが、当落を無視して少なくとも候補者個人ベースで考えれば、まだまだ立憲民主党に対する期待や支持は根強くあり、候補者選定や候補者の立て方次第では、これを伸ばすことが可能であるといえよう。 ただ、比例票は大幅に減ったのであるし、躍進したといえるほど議席数を増やすことができなかったどころか、改選議席の維持すらできなかった。このため、立憲民主党は今回の選挙では存在感を示すことができなかったと言っていいだろう。 しかし、その「存在感を示すことができなかった」というのは今回の選挙に始まった話ではないだろう。提案型野党を標榜して登場した泉健太代表体制は、国会での論戦において、批判や追及を極力減らして提案型の質問を行うことを打ち出していった。 これまでの国会であれば、与党の不祥事やスキャンダル追及で予算委員会が空転するといったことが、恒例行事のように見られ、その姿が連日のように大手メディアで取り上げられた。そのことに味をしめた野党議員たちは、スキャンダル追及に血道を上げるようになり、国会の質疑の空洞化が懸念されるようになった。 さらに、反論できない役人を何時間も拘束してつるし上げる「野党ヒアリング」は、格好の「見せ場」として使われた(筆者の先輩や同期も、詳細に答えられる立場にないにもかかわらず「悪役」に仕立て上げられ、理由なくどう喝されていた。その場面を、動画を通して見たときは心が痛んだ)。提案型への転換を図ろうとしたのは、そんなことでは支持は頭打ち、政権交代なんて夢のまた夢とでも思ったからなのだろう。 確かに、故なきどう喝やつるし上げ、過剰なスキャンダル追及はもってのほかであり、国会活動として妥当な範囲を逸脱していることもあるだろうが、本来野党の役割は、政府・与党を追及すること、政府・与党が示した法案や予算案についてその問題点を明らかにして、それを正すよう求めること、何が問題で、わが国の社会経済にどのような影響を与え得るのかを明らかにすること、そして、問題点を解決するには何をすればいいのかを示すこと、である(最後の問題点の解決には、いわゆる対案だけではなく、法案そのものの廃案も含まれる)』、「本来野党の役割は、政府・与党を追及すること、政府・与党が示した法案や予算案についてその問題点を明らかにして、それを正すよう求めること、何が問題で、わが国の社会経済にどのような影響を与え得るのかを明らかにすること、そして、問題点を解決するには何をすればいいのかを示すこと、である」、その通りだ。
・『立憲民主党「泉健太体制」は野党の役割を果たせているのか  こうした役割を泉健太体制の立憲民主党は果たせていただろうか。筆者の見るところ、全くではないものの、果たせていたとは言い難い状況だったように思われる。岸田政権は参院選を控えて徹底した「安全運転」を行い、凪(なぎ)の状態を保つことを心掛けていた。ならば野党側が批判・追及という風を起こして波を立てればよかったのだが、それをほとんどしなかった。したがって、先の通常国会では、特定の法案や争点に関して国会の審議の状況が連日伝えられるようなことはなかった。 これで参院選へ突入であるから、今回の選挙結果はさもありなんであろう。 そもそも「提案型」とは、聞こえはいいが、ややもすると単なる与党への迎合になりかねない。筆者はその姿をかつて「第三極」において間近に見てきた。当時、みんなの党はまさにこの「提案型」を標榜し、国会の質疑においては「提案型」の質問が心掛けられたが、首相所信や施政方針に対する代表質問のような、まさしく「見せ場」を除いて、穏やかに追及するか、与党にすり寄るかのような、「提案型」と称した質問が多く見られた。 その「提案」が採用されたとすることをもって、ある種の「成果」とするがごとき風潮も見られた。そもそもその「提案」も与党側が採用可能な範囲のものであり、筆者の目には迎合としか映らなかった(一方で、参院経由で国会に提出された議員立法は、ほとんどが与党が採用困難な「高めの球」ばかりであった)。 先の通常国会における泉健太体制下の立憲民主党は、まるで迎合を「提案」と言い換えていたかつてのみんなの党のようであった。それでもみんなの党は政策の柱が分かりやすく立っていたので支持を集めたが、現在の立憲民主党は、それすらも分かりにくい。それでは、今後もひたすら埋没への道を歩むだけであろう』、「当時、みんなの党はまさにこの「提案型」を標榜し、国会の質疑においては「提案型」の質問が心掛けられたが、首相所信や施政方針に対する代表質問のような、まさしく「見せ場」を除いて、穏やかに追及するか、与党にすり寄るかのような、「提案型」と称した質問が多く見られた。 その「提案」が採用されたとすることをもって、ある種の「成果」とするがごとき風潮も見られた。そもそもその「提案」も与党側が採用可能な範囲のものであり、筆者の目には迎合としか映らなかった」、「先の通常国会における泉健太体制下の立憲民主党は、まるで迎合を「提案」と言い換えていたかつてのみんなの党のようであった」、「今後もひたすら埋没への道を歩むだけであろう」、「みんなの党」の「提案型」を見てきただけに説得力がある。
・『中途半端な「提案型」は放棄して徹底した対立野党を目指すべき  今回の参院選の結果を受けて、立憲民主党内で、泉降ろしや党内政局の動きが出ているとは聞いていない。もっとも、当選期数の多い、いわゆるベテラン議員たちはいきり立っているようである。党勢の立て直しは必要であるとしても、お家騒動をやっているようでは、国民の支持はさらに離れていくことになり、「とりあえず与党」という消極的な岸田政権への支持を増やすことに貢献するだけだろう。加えて、風見鶏議員の離党によって、野党第一党の地位を失うことにもなりかねない。 もし、立憲民主党が多くの国民から期待を寄せられる野党になりたいのであれば、中途半端な「提案型」姿勢は放棄して、徹底した対立野党、政権批判・追及野党に生まれ変わるべきであろう。 ただしそのためには、スキャンダル追及に価値を置くのではなく、委員会にかかわらず、つまり目立つ・目立たないにかかわらず、与党の提示する法案や予算案についてしっかり分析した上で、具体的かつ詳細な委員会質疑をすることに価値を置き、これを行う姿勢を明確に打ち出すことが必要だ。そしてそれが可能なように、当選期数に関係なく政策に明るい議員が泉健太代表を支える体制を創出することが求められる。 これまでも立憲民主党では、スキャンダル追及や目立つ質問が上手い議員を、予算委員会の質疑、特にテレビ入りの質疑においては優先して質疑に立てる傾向があったが、これも改める必要があろう(端的に言って、これは民主党系のあしき風習であるが)。 野党が批判姿勢を明確にし、かつ質の高い質問をぶつけてくるようになれば、与党も活性化し、党内議論もさらに活発化することにつながり、日本の政治の質の向上に資することになろう。 まさにこの手の「提案」を立憲民主党が受け入れるか否かに、同党の将来がかかっている、と筆者は勝手に考えている』、「立憲民主党が多くの国民から期待を寄せられる野党になりたいのであれば、中途半端な「提案型」姿勢は放棄して、徹底した対立野党、政権批判・追及野党に生まれ変わるべきであろう。 ただしそのためには、スキャンダル追及に価値を置くのではなく、委員会にかかわらず、つまり目立つ・目立たないにかかわらず、与党の提示する法案や予算案についてしっかり分析した上で、具体的かつ詳細な委員会質疑をすることに価値を置き、これを行う姿勢を明確に打ち出すことが必要だ。そしてそれが可能なように、当選期数に関係なく政策に明るい議員が泉健太代表を支える体制を創出することが求められる」、私も「立憲民主党」の「提案型」への取り組みには違和感を感じてきたが、この室伏氏の提案には全く同感である。「立憲民主党」の議員もこの記事を読んでいる筈なので、「中途半端な「提案型」姿勢は放棄して、徹底した対立野党、政権批判・追及野党に生まれ変わるべきであろう」、「与党の提示する法案や予算案についてしっかり分析した上で、具体的かつ詳細な委員会質疑をすることに価値を置き、これを行う姿勢を明確に打ち出すことが必要だ」、一刻も早く方向転換してほしいものだ。
タグ:日本の政治情勢 (その62)(杉並区長選で野党共闘まさか勝利 岸田自民が恐れる“ノブテルの呪い”と参院選敗北の予兆、日本政治にとって「大転換点」となった参議院選挙 安倍政治が終わり 平和志向の戦後政治も転機を迎えた、立憲民主党はなぜ参院選で大敗した?「提案型野党」が支持されない理由) 日刊ゲンダイ「杉並区長選で野党共闘まさか勝利 岸田自民が恐れる“ノブテルの呪い”と参院選敗北の予兆」 「現職の田中良氏(61=当選3回)が、野党統一候補の岸本聡子氏(47)に約190票差で敗れた」、「杉並区議会の自民会派が「親田中派」と「反田中派」に分裂し、足並みが揃わなかった」、その割には「約190票差」とはいささか寂しい。 「参院選」の結果を見る限り、「区長選の結果」は自民党の内部分裂の結果に過ぎず、「国民の怒りは“沸点”間近」ではなかったことになるのは残念だ。 東洋経済オンライン 山口 二郎氏による「日本政治にとって「大転換点」となった参議院選挙 安倍政治が終わり、平和志向の戦後政治も転機を迎えた」 「さまざまな意味で政治の転換の契機となる」とは興味深そうだ。 「安倍氏」葬儀の国葬化をみると、必ずしも「岸田首相は自由に行動できるようになる」とはいかないようだ。 「参政党、NHK党という右派ポピュリスト政党が議席を獲得した点である。自民党に飽き足らない急進保守層が析出したことは、日本政治におけるオピニオンの布置状況が右に寄ったことを意味する」、「暗殺事件の容疑者は、安倍氏も交流のあった宗教団体に対する怨恨から犯行に及んだ」、「この団体は、悪徳商法で法外な利益を得たり、若者を洗脳したりと、反社会的活動をしてきた。同時に自民党内にもシンパの政治家を持って、同性婚や選択的夫婦別姓について強硬な反対論の発信源となっていた。 事件の真相解明が日本政治の暗部を暴くことになると ダイヤモンド・オンライン 室伏謙一氏による「立憲民主党はなぜ参院選で大敗した?「提案型野党」が支持されない理由」 「本来野党の役割は、政府・与党を追及すること、政府・与党が示した法案や予算案についてその問題点を明らかにして、それを正すよう求めること、何が問題で、わが国の社会経済にどのような影響を与え得るのかを明らかにすること、そして、問題点を解決するには何をすればいいのかを示すこと、である」、その通りだ。 「当時、みんなの党はまさにこの「提案型」を標榜し、国会の質疑においては「提案型」の質問が心掛けられたが、首相所信や施政方針に対する代表質問のような、まさしく「見せ場」を除いて、穏やかに追及するか、与党にすり寄るかのような、「提案型」と称した質問が多く見られた。 その「提案」が採用されたとすることをもって、ある種の「成果」とするがごとき風潮も見られた。そもそもその「提案」も与党側が採用可能な範囲のものであり、筆者の目には迎合としか映らなかった」、「先の通常国会における泉健太体制下の立憲民主党は、まるで迎合を 「立憲民主党が多くの国民から期待を寄せられる野党になりたいのであれば、中途半端な「提案型」姿勢は放棄して、徹底した対立野党、政権批判・追及野党に生まれ変わるべきであろう。 ただしそのためには、スキャンダル追及に価値を置くのではなく、委員会にかかわらず、つまり目立つ・目立たないにかかわらず、与党の提示する法案や予算案についてしっかり分析した上で、具体的かつ詳細な委員会質疑をすることに価値を置き、これを行う姿勢を明確に打ち出すことが必要だ。そしてそれが可能なように、当選期数に関係なく政策に明るい議員が泉健太代 泉健太代表を支える体制を創出することが求められる」、私も「立憲民主党」の「提案型」への取り組みには違和感を感じてきたが、この室伏氏の提案には全く同感である。「立憲民主党」の議員もこの記事を読んでいる筈なので、「中途半端な「提案型」姿勢は放棄して、徹底した対立野党、政権批判・追及野党に生まれ変わるべきであろう」、「与党の提示する法案や予算案についてしっかり分析した上で、具体的かつ詳細な委員会質疑をすることに価値を置き、これを行う姿勢を明確に打ち出すことが必要だ」、一刻も早く方向転換してほしいものだ。
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安倍元首相暗殺事件(その1)(「安倍氏は三代にわたって付き合いがあった」マスコミが書かない山上容疑者・統一教会・自民党をつなぐ点と線 安倍氏と統一教会の間には「裏取引疑惑」も、安倍氏銃撃事件で露呈した「固定観念の罠」 動機・銃撃能力・警備体制…、【独自】安倍家と統一教会との“深い関係”を示す機密文書を発見 米大統領に「文鮮明の釈放」を嘆願していた岸信介、警察はなぜ旧統一教会を放置し続けた? 1995年の摘発を退けた「政治圧力」) [国内政治]

今日は、安倍元首相暗殺事件(その1)(「安倍氏は三代にわたって付き合いがあった」マスコミが書かない山上容疑者・統一教会・自民党をつなぐ点と線 安倍氏と統一教会の間には「裏取引疑惑」も、安倍氏銃撃事件で露呈した「固定観念の罠」 動機・銃撃能力・警備体制…、【独自】安倍家と統一教会との“深い関係”を示す機密文書を発見 米大統領に「文鮮明の釈放」を嘆願していた岸信介、警察はなぜ旧統一教会を放置し続けた? 1995年の摘発を退けた「政治圧力」)を取上げよう。

先ずは、7月13日付けPRESIDENT Onlineが掲載したやや日刊カルト新聞主筆の鈴木 エイト氏による「「安倍氏は三代にわたって付き合いがあった」マスコミが書かない山上容疑者・統一教会・自民党をつなぐ点と線 安倍氏と統一教会の間には「裏取引疑惑」も」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/59539
・『安倍晋三元首相の銃撃事件で、逮捕された山上徹也容疑者は「『統一教会』に恨みがあり、安倍元首相が近しい関係にあると思ってねらった」と供述していると報じられている。フリージャーナリストの鈴木エイトさんは、「統一教会は、その関連組織である勝共連合を通じて、長年にわたり日本の政界に幅広く浸透しており、特に第2次安倍政権以降、政界工作を活発化させていた」という――』、興味深そうだ。
・『山上容疑者が口にした「統一教会」とは  「統一教会」(現在の正式名称は「世界平和統一家庭連合」、かつての「世界基督教統一神霊協会」)は、1954年に韓国で教祖・文鮮明(ムン・ソンミョン)が創設した団体である。 58年に日本へ進出、翌59年には日本統一教会が設立され、64年には宗教法人の認証を受けている。 その後、教団は、反共産主義を掲げる関連政治組織・国際勝共連合(1968~)を通じて、自民党を中心とした保守系政治家に接近し、秘書や運動員を派遣するなど、活発な政界工作を行った。 その一方で、日本社会との軋轢も表面化する。 65年には教団系列の学生組織・原理研究会(CARP)への批判報道(「親泣かせの原理運動」朝日新聞)がなされる。80年代以降は、高額な壺や、印鑑などを購入させる「霊感商法」、正体と目的を隠した「偽装勧誘」、教祖が選んだ相手とマッチングされた日本人女性信者が、韓国へ嫁がされた「合同結婚式」などの問題が報じられた』、「霊感商法」、「合同結婚式」などは記憶にある。
・『原罪を解消する儀式「合同結婚式」  統一教会は、文教祖と妻の韓鶴子総裁を絶対的な「真の父母様」として崇める教団である。 その統一教会が最も重要視するのが、「合同結婚式」(国際合同祝福式・祝福)だ。 教団の教えでは、人類の始祖であるアダムとエバが、蛇の姿をしたサタンと性交したことにより、全人類に原罪が生まれたとしている。 その「原罪」を、神の下での祝福によって解消するための、教団の最高儀式が、「合同結婚式」である。 1960年に第1回目の合同結婚式が韓国で行われる。 それ以降、四十数回にわたり、韓国を中心に、世界各国で開催される。 日本からも信者が多額の献金を持参し、韓国で「祝福」を受けてきた。 1990年代には、芸能人や有名スポーツ選手の参加が報じられ、大きな騒動となった。 現在は2世信者同士がお見合い形式でマッチングされるケースも増えたが、90年代までは教祖が信者の写真を見てマッチングしていた時期が長く、会場で初めて顔を合わせるカップルがほとんどだったという。 教団内では「エバ国家である日本はアダム国家である韓国に尽くす義務がある」とされており、「従順な日本人女性と結婚できる」として、「にわか信者」となった韓国人男性とマッチングされた、というケースも多数報告されている。また、合同結婚式によって生まれた「祝福家庭」の2世信者には、自由な恋愛感情を抱くことすら禁じられるという』、「「エバ国家である日本はアダム国家である韓国に尽くす義務がある」とされており」、「韓国」らしい一方的な教義だ。「合同結婚式によって生まれた「祝福家庭」の2世信者には、自由な恋愛感情を抱くことすら禁じられる」、ずいぶん窮屈な教義だ。
・『「勝共連合」を通じて日本の政界に接近  その「統一教会」のいわば「別動隊」として、さまざまな政治活動を行っているのが、「国際勝共連合」である。 国際勝共連合は、徹底した反共産主義を掲げる、右派・保守系の組織だ。 その主張としては、中国共産党政権と日本共産党への批判が主で、韓国への批判は皆無という特徴がある。 日本の保守層においては、近年、反韓・嫌韓感情が渦巻いているが、そうした空気感とは異なり、1990年代以前の日韓両国は「反共の同志」として良好な関係にあった。 米CIAの後ろ盾の下、「北朝鮮の共産主義に打ち勝って統一/勝共統一」をスローガンに、反共活動組織を必要としていた韓国の朴正煕(パク・チョンヒ)政権(1961~79)の庇護を受けるため、統一教会の文教祖は、反共産主義を掲げて朴大統領に取り入った。 67年に文教祖は、山梨県の本栖湖畔で、戦後右翼の大物らと日韓反共首脳会談を開催。 それを契機として、翌68年1月、韓国で国際勝共連合を創設。 日本でも同年4月、安倍氏の祖父・岸信介元総理大臣の後ろ盾によって、国際勝共連合が創設されることになる。 教団が政治に接近する狙いは、政権からの体制保護を得ることと、与党国会議員の教団イベント参加といった便宜供与にある。 一方、政治家のほうでは、選挙における組織票や、事務所スタッフの人手を欲している。 教団の「秘書養成所」で訓練された信者が、議員の元に送り込まれ、秘書や事務所スタッフ、選挙運動員となる。 当時の日本は安保闘争の真っただ中にあり、献身的に反共運動に邁進する青年を抱える勝共連合は、日本の政財界へ浸透していく。 70年9月には、勝共連合の主導により、日本武道館において「WCAL(世界反共連盟)世界大会」が開催される。74年5月、文鮮明教祖が帝国ホテルで開いた「希望の日」晩餐会には、岸氏の他、福田赳夫氏、安倍晋太郎氏ら、40人もの自民党国会議員と財界の要人が出席した』、「献身的に反共運動に邁進する青年を抱える勝共連合は、日本の政財界へ浸透していく」、政界にとっては便利な存在だったようだ。
・『自民党と統一教会の蜜月関係  1979年にも、勝共連合は、「スパイ防止法」の立法を目指す自民党を後押しする。 教団は、フロント組織として、91年に世界平和連合、92年に世界平和女性連合を創設。 また、地方議員の後援会を結成するなど、政治の裏側で暗躍し続けている。 1990年代初頭には、衆参両院に、約200人もの「勝共推進議員」がいたとされる。 しかし、教団が引き起こしたさまざまな社会問題の影響や、東西冷戦の終結により、共産主義との戦いの必要性が薄れたことなどの影響で、教団と近しい関係の政治家たちは、90年代以降、次第に統一教会・勝共連合と距離を置くようになった。 2000年代後半には、日本全国の複数都市で、「霊感商法」を行う販社が摘発を受ける。  日本本部への家宅捜索や、宗教法人の認可剝奪を危惧した教団本部は、政治家対策を強化する。 近年では、自民党が法制化を進める「家庭教育支援法」や「青少年健全育成基本法」など、さまざまな法整備の背後で教団が協力していると言われている。 また、自民党の悲願である憲法改正への動きについても、さまざまな工作で下支えするほか、憲法24条の「家庭条項」を改正するため策動しているとされる。 教団の日本法人は、2015年、「世界基督教統一神霊協会」から「世界平和統一家庭連合」へ、法人名の変更を認可されている。その際、安倍元首相の側近閣僚からの「圧力」があったのではと、永田町では噂になった』、「「世界平和統一家庭連合」へ、法人名の変更を認可されている。その際、安倍元首相の側近閣僚からの「圧力」があったのではと、永田町では噂になった」、「日本本部への家宅捜索や、宗教法人の認可剝奪を危惧した教団本部は、政治家対策を強化する。 近年では、自民党が法制化を進める「家庭教育支援法」や「青少年健全育成基本法」など、さまざまな法整備の背後で教団が協力していると言われている。 また、自民党の悲願である憲法改正への動きについても、さまざまな工作で下支えするほか、憲法24条の「家庭条項」を改正するため策動しているとされる」、「さまざまな法整備の背後で教団が協力」、「憲法改正への動きについても、さまざまな工作で下支えするほか、憲法24条の「家庭条項」を改正するため策動」、「法整備」のみならず、「憲法改正」でまで「さまざまな工作で下支えする」とは、もはや自民党の別動隊ともいえる存在だ。
・『安倍晋三氏と統一教会の「三代にわたる関係」  こうした教団の政治進出が特に強まったのが、第2次安倍政権以降である。 憲法改正を掲げ、左翼批判を強めていた安倍晋三氏は、選挙支援などで、統一教会への依存を強め、統一教会との共存共栄関係が築かれていった。 政治家対策を担うUPFジャパンの梶栗正義会長は国際勝共連合会長就任前の17年8月、韓国での幹部集会で、韓鶴子総裁にこう報告している。 「最近、日本は雰囲気が変わってきました。以前、勝共連合の活動が活性化していた時と同じような、その当時は200名を超える議員たちがご父母様に侍はべっていたのですが、その時と同じような雰囲気が近づいています」 安倍晋三氏の祖父である岸信介元首相は、首相公邸として使っていた建物を教団本部として使用させたほど、文教祖や教団と友好関係にあった。 また、父親の安倍晋太郎元外相は、統一教会員を自民党国会議員に対して秘書としてあっせんし、各議員を教団のセミナーに勧誘していたという。 しかし、安倍晋三氏は2006年の時点では、統一教会と一定の距離を置いていた形跡がある。 安倍氏と統一教会との関係が最初に取り沙汰されたのは2006年5月。 UPFが福岡で開催したイベント「祖国郷土還元日本大会」に、当時官房長官だった安倍氏が祝電を送ったことが報じられた。 在野時代、保守系団体の会合や野外イベントで、安倍晋三氏は、妻の昭恵氏とともに、ある統一教会関連団体幹部と親しくなったという。 その後の安倍氏は、急激に教団との距離を縮めていく。12年12月に、安倍氏が政権を奪取すると、自民党議員の一部には、選挙の際には「組織票」となり、また選挙支援スタッフを派遣してくれる教団に依存する動きもみられた』、「岸信介元首相は、首相公邸として使っていた建物を教団本部として使用させたほど、文教祖や教団と友好関係にあった」、そこまで親密だったとは初めて知った。「教団の政治進出が特に強まったのが、第2次安倍政権以降である。 憲法改正を掲げ、左翼批判を強めていた安倍晋三氏は、選挙支援などで、統一教会への依存を強め、統一教会との共存共栄関係が築かれていった」、「安倍氏が政権を奪取すると、自民党議員の一部には、選挙の際には「組織票」となり、また選挙支援スタッフを派遣してくれる教団に依存する動きもみられた」、なるほど。
・『13年参院選の「裏取引」疑惑  安倍氏と統一教会の間には「裏取引」疑惑もあった。 2013年7月の参院選において、統一教会が全国の信者へ出した「通達」の中には、祖父・岸信介氏の恩人の孫で、安倍晋三氏肝いりの候補者への「後援」を「首相からじきじき」に「依頼」された旨の記述がある。 実際、当該候補は、教団の支援を受け、13年の参院選において当選している。 以降、教団やフロント団体のイベントに、安倍氏の側近を含む、多数の自民党国会議員の来賓が確認されている。 2016年に、UPFが創設した「世界平和国会議員連合」の日本創設式典には、当時の閣僚5人を含む、100名以上の国会議員(代理出席の秘書含む)が出席している。 また、統一教会と関係の深い議員が多数、閣僚や副大臣などに登用されている。 また、教団2世信者組織による安倍政権支持を訴える街宣活動が全国で行われたほか、複数の教団幹部が秘密裏に首相官邸へ招待されていたことも明らかとなっている。 全国弁連は2018年と翌19年に、全国会議員事務所に、統一教会と関係を持たないよう求める要望書を届けたが、以降も関係を続ける議員が続出した。 2021年9月12日、韓国の教団施設で開催された大規模オンライン集会に、安倍氏がリモート登壇し、韓総裁を礼賛する映像が配信された。その翌月、梶栗正義・国際勝共連合兼UPFジャパン会長は、安倍氏との関係について、「温めてきた信頼関係がある」とし、文教祖や教団会長を歴任した父親(梶栗源太郎氏)時代から、岸信介氏、安倍晋太郎氏、安倍晋三氏との三代にわたる「付き合い」を誇った』、「複数の教団幹部が秘密裏に首相官邸へ招待されていた」、とは初めて知った。「岸信介氏、安倍晋太郎氏、安倍晋三氏との三代にわたる「付き合い」を誇った」、なるほど。
・『統一教会の分派「サンクチュアリ教会」とは何か  12年9月に文教祖が死去し、韓鶴子総裁が名実ともに最高権力者となる。 その韓鶴子総裁は、教祖から後継者に指名されていた息子たちを追放し、自身の独裁体制を構築。日本の教団組織をその指揮系統下に置き、政界工作に従事させる。 当初、文教祖の後継者と目されていたのは、三男・文顯進(ムン・ヒョンジン)である。 その三男は、教祖存命中の10年に追放されている。 教団の経済部門である「統一教財団」を受け継いだ四男・文國進(ムン・クッチン/統一教維持財団理事長)と、宗教部門「世界宣教本部」を統括していた七男・文亨進(ムン・ヒョンジン/統一教会世界会長)も、文教祖の死後、相次いで要職を解かれた。 三男・文顯進は、10年に、教団の資産管理団体UCIを手中に収め、17年にはFPA(世界家庭教会)を創設。 文亨進は15年に米国で「サンクチュアリ教会」を設立。 そのサンクチュアリ教会に対しては、文教祖より銃砲会社を受け継いだ四男・文國進が、経済的支援を行っている。 韓鶴子派とこれら息子たちの分派の間では、資金送付先や不動産利権、教団ロゴマークの著作権などを巡って訴訟沙汰となった。 山上容疑者自身は、同教団と対立するこれらの分派に所属しているという情報もある。 特に銃弾で作られた王冠を巻き、銃を持って礼拝を行う「サンクチュアリ教会」との親和性が指摘されている。 ただし、同教会の日本支部「日本サンクチュアリ協会」は否定しており、事実関係については慎重に検証していく必要がある』、これだけ「安倍氏」と「統一教会」の関係が深いのであれば、今回の事件も「安倍氏」の身から出たサビといえそうだ。

次に、7月14日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した軍事ジャーナリストの田岡俊次氏による「安倍氏銃撃事件で露呈した「固定観念の罠」、動機・銃撃能力・警備体制…」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/306370
・『「民主主義への挑戦」なのか 銃撃事件が浮き彫りにしたもの  安倍晋三元首相銃撃事件が発生した直後、与野党の政治家や報道機関は、「政治的テロ」かのように捉えての言動や報道が相次いだ。 「言論を銃撃、暴力で封殺する行いは断じて許すことはできない」などと犯人を激しく非難し、「民主主義が決してテロに屈してはならない」と訴えた。 だが山上徹也容疑者(41)を奈良県警が取り調べたところ、独善的な政治理念といった“高尚”な動機ではなく、個人的な不遇の鬱憤を晴らす行動だったことが分かってきた。 これに似た事件が起きたのが、2008年6月、東京・秋葉原で起きた25歳の青年による殺傷事件だ。買い物客で雑踏する歩行者天国にトラックで突入、大型ナイフで人々を刺してまわり、7人が死亡、10人を負傷させた。 青年は、青森県の進学高校を卒業したが大学に入らず、職場を転々、自殺をほのめかしていたという。メディアは青年が派遣社員として働いていたことから不遇で「社会に不満を抱いた派遣社員の犯罪」と伝えた。 その後の裁判では教育に熱心だった母親への鬱積した感情が主な動機だったことが明らかになる。 ある種の固定観念が問題の本質を捉え間違えたり、本当の課題を見えにくくしたりする「罠」といってもいいだろう』、「安倍晋三元首相銃撃事件が発生した直後、与野党の政治家や報道機関は、「政治的テロ」かのように捉えての言動や報道が相次いだ。 ・・・「民主主義が決してテロに屈してはならない」と訴えた」、確かに的外れもいいところだ。
・『元自衛官だったことを銃撃能力と結び付ける無理  山上容疑者も奈良県随一とされた高校の優等生で応援団長を務めて人望もあったようだが、卒業後は家庭の都合からか大学には進学せず、専門学校に入った。 2年間専門学校で学んだ後、2003年から2005年まで3年間は任期制自衛官として海上自衛隊に勤めた。 任期制自衛官というのは、3カ月の基礎訓練後、階級が最下位の2等海士(2等水兵)となり、3年後本人が希望し、選考に通ればさらに2年間継続任用される。 これに対して、防衛大学校や一般大学出身者は入隊すると菅長(下士官の最上位)に任じられ、1年後には3尉(少尉)の士官となる。 中学、高校で優等生だった山上容疑者にとっては、鬱屈した思いを抱くことがあったのではないか。継続任用されずに除隊したのは嫌気が差したか、協調性に欠けると見られたのかもしれない。 今回の事件では、山上容疑者が短期ながら海上自衛隊にいたことで、射撃や拳銃製作の知識、経験を得たかのように報じられている。 だが2等水兵は、小銃射撃については、基礎教育で一応習う程度だ。彼は護衛艦「まつゆき」の砲雷科に属したが、扱うのは口径76ミリの艦砲や対空、対艦、対潜水艦ミサイルで、拳銃とはほとんど無縁だ。 約17年も前に海上自衛隊にいたことを今回の銃撃事件に結び付けるのは無理がある。これも固定観念からの見方だ』、「約17年も前に海上自衛隊にいたことを今回の銃撃事件に結び付けるのは無理がある。これも固定観念からの見方だ」、その通りだ。
・『あまりに短絡的な動機 旧統一教会幹部と同一視  山上容疑者は取り調べに対し、建設業者だった父が亡くなった後、母が韓国に本部があるキリスト教の亜流の統一教会(現在は「世界平和統一家庭連合」)に入信し、多額の寄付をし、家も売却するなど家庭が崩壊したことを恨んで、その宗教団体の幹部を成敗しようとして爆弾や拳銃を作った、と語っているという。 だが宗教団体の幹部を殺害するのは難しいと判断し、昨年9月、世界平和統一家庭連合の集会で約5分間のリモート演説をして、その幹部を称賛した安倍元首相を狙ったと動機を語っているという。) かつて警察庁が「最も悪質な商法」と断言して取り締まりを指示した「霊感商法」や大学のキャンパスで正体を隠した勧誘、「合同結婚式」などで非難された宗教団体を、自民党の最大派閥を率いる安倍氏が称賛する演説をしたのは、いかがなものかと思われる。 だが、安倍氏が韓国系の宗教団体の信者ではなかったことは明白で、山上容疑者の母親が多額の寄付をしたことに安倍氏は何の責任もない。 その宗教団体幹部と同一視する発想はあまりに短絡的で、山上容疑者の殺意は八つ当たりのようなものだ。 今にして思えば安倍氏は見境がないといってもいいほど、外国人に対し好感を与える“天才的八方美人”で、韓国の宗教団体への祝辞もその一端にすぎなかったのだろうと思われる。 なるべく敵を作らず、友好国を増やすのに努めるのは外交の定石だが、安倍氏の対外的言動は他国の好感を得ることはできても首尾一貫しないことが少なくなかった。 実際、安倍外交自体、外交の定石とはいえ、方向性がはっきりしなかったことは否めない。 対中外交では、第1次安倍内閣の成立当初から安倍氏は中国との「戦略的互恵関係」を唱え、尖閣諸島問題では2014年11月に習近平国家主席と会談し「双方が異なる見解をを有する」ことを認めて互恵関係の原点に立ち戻り関係を改善することで握手した。中国が進める「一帯一路」計画に対しては2017年6月に協力を表明、安倍氏が習氏を国賓として招いたが、コロナ禍で実現しなかった。日中関係改善に尽力したことは事実だ。 だがその一方で、2016年8月に「自由で開かれたインド太平洋」を目指す米国の中国包囲網結成に賛同し、米中戦争を念頭に同盟と防衛力強化を進め、米、印、豪などとの共同演習を行った。 安倍元首相の死去に際して、北朝鮮を例外にウクライナ問題で対立が激化するロシアのプーチン大統領や台湾など多くの国々からも続々と急逝を悼む弔電が送られ、安倍氏が友好に貢献したことに感謝した。 だがそれぞれ利害が異なる国々がこぞって安倍氏の友好的政策を評価したのは、安倍氏が相手国に気に入られるような矛盾した言動を続けた証左とも思われる。 弔意と感謝を示すのは礼儀と同時に、日本が約束したことを再確認する手法でもあるだろう。 成果のほどは確定しないが、よくもこれだけ八方美人を演じられたものと感服せざるを得ない。こうした中でも、韓国の旧統一教会への祝辞はやり過ぎの感があり、それが安倍氏の命取りとなってしまった』、「韓国の旧統一教会への祝辞はやり過ぎの感があり、それが安倍氏の命取りとなってしまった」、その通りだ。
・『杓子定規だった警護体制 テロの対象者や実行者も変化  固定観念の「罠」ということでいえば、テロ防止でも、今回の事件は教訓を残した。 今回、安倍元首相の警備では、東京の警察庁から派遣されていた要人警護を専門とするSPは1人で、しかも役割はおそらく本省との連絡官にすぎず、警護の中心は奈良県警の警察官が当たっていた。 現職の閣僚などには、通常は数人のSPが付くのだが、安倍元首相は退任後は一衆議院議員ということで、SPを1人しか付けなかったようだ。 だが安倍氏は自民党内の最大派閥を率いる実質的には最大の権力者の一人で、それだけに憎まれることも多かったはすだ。SPは要人の前後左右に4人は付けるのが現実的だったろう。官僚の杓子定規の判断が災いしたといえる。 要人警護では対象の人物の官職の上下よりは、襲われる可能性の大小をもっぱら考える戦術的判断が重要なはずだ。 さらにいえば、テロの対象者や実行者に対する観念も変える必要があるかもしれない。 従来の極右、極左のテロリストは何らかの組織に属した者が一般的だったから、公安当局が兆候を知り、事前防止がある程度できた。 だが、今回の安倍元首相銃撃や秋葉原の無差別殺傷のように将来への絶望感や個人的な動機から要人殺害や多数の人々を殺傷しようとする個人的なテロは予防が難しい。 日本は銃器の取り締まりが厳しいとはいえ、鉄パイプや火薬の材料となる薬物、陸上競技のスタートピストル用の雷管などを使い、先込み銃を作ることはそう難しくない。爆弾も自爆テロ用なら簡単に作れるから、今回の事件の模倣犯が出る危険が案じられる。 2019年7月に京都市伏見区で起きた京都アニメーション制作会社の放火(死者36人、負傷者33人)や2021年12月に大阪市曽根崎で起きた精神科医院の放火(死者26人、負傷者1人)もそうした一匹狼のテロ事件だった。 こうしたテロを考えれば、放火による大量殺人を防ぐため、火の手が上がると自動的に天井から水あるいは消火液を散布するスプリンクラーの設置に関係省庁と自治体が取り組むことも、「テロとの戦い」に有効な対策になると考えられる』、「今回の安倍元首相銃撃や秋葉原の無差別殺傷のように将来への絶望感や個人的な動機から要人殺害や多数の人々を殺傷しようとする個人的なテロは予防が難しい」、その通りだ。「京都アニメーション制作会社の放火」事件は、ビルの設計事態に重大な問題があったと思うが、これに言及した記事は見当たらず、お涙頂戴記事ばかりだったのは、誠に残念だ。

第三に、7月20日付けデイリー新潮「【独自】安倍家と統一教会との“深い関係”を示す機密文書を発見 米大統領に「文鮮明の釈放」を嘆願していた岸信介」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2022/07201200/?all=1
・『文鮮明の釈放を嘆願する文書  山上徹也容疑者(41)の凶行の背景には、安倍晋三元総理と統一教会の関係があることはすでに広く知られている。今回ご紹介する機密資料は、安倍元総理の祖父・岸信介元総理が1984年に当時の米大統領、ロナルド・レーガンに宛てた親書である。一族と統一教会の深い関係を物語る文書の内容とは――。 「文尊師は誠実な男」 岸信介氏がレーガン大統領に宛てた驚きの文書(リンク先参照) この書簡は、関連資料を保管する米カリフォルニア州のロナルド・レーガン大統領図書館のファイルに収められているもの。ジャーナリストの徳本栄一郎氏が5年前、本誌(「週刊新潮」)の依頼で同所を訪れた際に発掘した、この貴重な文書に登場するのは、統一教会の開祖・文鮮明の名前だ。 〈文尊師は、現在、不当にも拘禁されています。貴殿のご協力を得て、私は是が非でも、できる限り早く、彼が不当な拘禁から解放されるよう、お願いしたいと思います〉 出された日付は84年11月26日。差出人は岸信介。文鮮明はその前に、アメリカで脱税容疑にて起訴され、84年4月には懲役1年6カ月の実刑判決を受けて連邦刑務所に収監されていた。つまりこの書簡は、日本の元総理がアメリカの現職大統領に宛てて、韓国人「脱税犯」の逮捕が不当だとして釈放を依頼するという、極めて異例の内容なのだ』、「「脱税犯」の逮捕が不当だとして釈放を依頼」、とは信じ難い依頼だ。いくら「文鮮明」との関係が深かったとしても、「脱税犯」では「不当逮捕」の可能性は極めて小さくなる筈だ。
・『文鮮明は「誠実な男」「希少かつ貴重」  手紙の後半に進むと、岸氏の懇願調は増す。〈文尊師は、誠実な男であり、自由の理念の促進と共産主義の誤りを正すことに生涯をかけて取り組んでいると私は理解しております〉 〈彼の存在は、現在、そして将来にわたって、希少かつ貴重なものであり、自由と民主主義の維持にとって不可欠なものであります〉 この時点で日本では、既に教会による若者への強引な勧誘などが社会問題化していたが、その教団の首領を、「誠実で貴重」と評価しているというわけだ。 「この手紙を受け、アメリカ政府は対応を協議します。元総理で、その当時もなお自民党の実力者であった岸氏の依頼だけにむげにはできなかったのでしょう。返事も書いたようですが、それは今も機密解除されていません。国家安全保障上の理由とのことでした」(徳本氏) 結局、釈放は難しいと判断され、文鮮明が出所できたのは翌85年の夏だった。 嘆願書の3年後、岸氏は90歳で没するが、その後も岸・安倍一族と教会との関係は維持されていた――。 教会への恨みを安倍元総理に向けるというのは破綻した論理であるし、命を奪った行為は決して許されない。一方で岸・安倍一族と統一教会の間にあった深い関係は無視されるべきではないだろう。7月21日発売の「週刊新潮」では、安倍元総理、そして現役自民党議員と統一教会との関係性について詳しく報じている』、「岸・安倍一族と統一教会の間にあった深い関係は無視されるべきではないだろう」、その通りで、このブログでもそれにチャレンジしている。

第四に、7月22日付け日刊ゲンダイ「警察はなぜ旧統一教会を放置し続けた? 1995年の摘発を退けた「政治圧力」」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/308594
・『「統一教会の被害者にとっては、政治家とのつながりがあるから警察がきちんと捜査してくれないという思いがずっとあると思います。私どもにもあります」 12日に開かれた「全国霊感商法対策弁護士連絡会」の会見で、渡辺博弁護士はこう断言した。 2009年、霊感商法の会社「新世」が通行人に声を掛け、印鑑などを売りつけたとして、社長と従業員らに懲役刑が下された。霊感商法が初めて犯罪認定され、世間の耳目を集めた。 これでようやく捜査の手が統一教会そのものに及ぶかと思われたが、それ以降も警察がメスを入れることはなかった。 渡辺弁護士はその背景をこう明かした。 「後に統一教会の機関誌で、新世事件の責任者が<政治家との絆が弱かったから、警察の摘発を受けた。今後は政治家と一生懸命つながっていかないといけない>と語ったことが、彼らの反省点でした。我々が国会議員に『統一教会の応援をするのはやめてください』と呼び掛けている理由もそこにある」) 昨年までの35年間で消費生活センターなどが受けた統一教会に関する相談は3万4537件、被害総額は約1237億円に上る。弁護団によるとそれも「氷山の一角」だという。これほど被害が膨らんでいるのに、なぜ警察は一向に捜査に動かないのか』、「新世事件の責任者が<政治家との絆が弱かったから、警察の摘発を受けた。今後は政治家と一生懸命つながっていかないといけない>と語ったことが、彼らの反省点」、「統一教会に関する相談は3万4537件、被害総額は約1237億円に上る。弁護団によるとそれも「氷山の一角」だという」、なるほど。
・『「信教の自由」を御旗に放置  そこで興味深いのが、統一教会問題を30年以上、追い掛け続けている参院議員の有田芳生氏の証言だ。 安倍元首相を銃撃した山上徹也容疑者(41)の母親が統一教会に入信したのは、1991年ごろ。有田氏は95年、警視庁公安部の幹部から「統一教会の摘発を視野に入れている。相当な情報源ができた。金の関係から入る」と打ち明けられている。しかし、摘発はなかった。 有田氏がこう続ける。 「10年後、元幹部に『今だから言えることを教えて欲しい。なんでダメだったのか』と聞いたら、答えは『政治の力だった』の一言でした。警察は個人名を含めた全国の捜査リスト『統一教会重点対象名簿』を作り、実際に動いていたのですが」) 「全国連絡会」の紀藤正樹弁護士も、会見でこう指摘していた。 「統一教会のような伝道、経済活動、合同結婚式の3点セットがすべて違法となる集団は世界中どこにもありません。我々はすべて民事事件で解決してきました。普通はどこの国でも、これだけ問題を起こせば途中で刑事事件になります。日本だけが放置され、信教の自由の御旗の下に許されてきたから現実に今、統一教会がある」 山上容疑者は犯行動機について、「新型コロナウイルスで(教祖の)韓鶴子が来日しないので安倍元首相に狙いを変えた。自分が安倍を襲えば、統一教会に非難が集まると思った」と供述している。 90年代、そして2000年代以降も摘発のチャンスはあった。警察が統一教会を徹底的に洗い出していれば、悲劇も、これほど多くの被害者も生まれなかったかもしれない』、「警察は個人名を含めた全国の捜査リスト『統一教会重点対象名簿』を作り、実際に動いていたのですが」、「政治の力」でダメだった。「「統一教会のような伝道、経済活動、合同結婚式の3点セットがすべて違法となる集団は世界中どこにもありません・・・普通はどこの国でも、これだけ問題を起こせば途中で刑事事件になります。日本だけが放置され、信教の自由の御旗の下に許されてきたから現実に今、統一教会がある」、「「新型コロナウイルスで(教祖の)韓鶴子が来日しないので安倍元首相に狙いを変えた」、やはり安倍元首相の身から出たサビのようだ。
タグ:安倍元首相暗殺事件 (その1)(「安倍氏は三代にわたって付き合いがあった」マスコミが書かない山上容疑者・統一教会・自民党をつなぐ点と線 安倍氏と統一教会の間には「裏取引疑惑」も、安倍氏銃撃事件で露呈した「固定観念の罠」 動機・銃撃能力・警備体制…、【独自】安倍家と統一教会との“深い関係”を示す機密文書を発見 米大統領に「文鮮明の釈放」を嘆願していた岸信介、警察はなぜ旧統一教会を放置し続けた? 1995年の摘発を退けた「政治圧力」) PRESIDENT ONLINE 鈴木 エイト氏による「「安倍氏は三代にわたって付き合いがあった」マスコミが書かない山上容疑者・統一教会・自民党をつなぐ点と線 安倍氏と統一教会の間には「裏取引疑惑」も」 「霊感商法」、「合同結婚式」などは記憶にある。 「「エバ国家である日本はアダム国家である韓国に尽くす義務がある」とされており」、「韓国」らしい一方的な教義だ。「合同結婚式によって生まれた「祝福家庭」の2世信者には、自由な恋愛感情を抱くことすら禁じられる」、ずいぶん窮屈な教義だ。 「献身的に反共運動に邁進する青年を抱える勝共連合は、日本の政財界へ浸透していく」、政界にとっては便利な存在だったようだ。 「「世界平和統一家庭連合」へ、法人名の変更を認可されている。その際、安倍元首相の側近閣僚からの「圧力」があったのではと、永田町では噂になった」、「日本本部への家宅捜索や、宗教法人の認可剝奪を危惧した教団本部は、政治家対策を強化する。 近年では、自民党が法制化を進める「家庭教育支援法」や「青少年健全育成基本法」など、さまざまな法整備の背後で教団が協力していると言われている。 また、自民党の悲願である憲法改正への動きについても、さまざまな工作で下支えするほか、憲法24条の「家庭条項」を改正するため策動しているとされる」、「さまざまな法整備の背後で教団が協力」、「憲法改正への動きについても、さまざまな工作で下支えするほか、憲法24条の「家庭条項」を改正するため策動」、「法整備」のみならず、「憲法改正」でまで「さまざまな工作で下支えする」とは 「岸信介元首相は、首相公邸として使っていた建物を教団本部として使用させたほど、文教祖や教団と友好関係にあった」、そこまで親密だったとは初めて知った。「教団の政治進出が特に強まったのが、第2次安倍政権以降である。 憲法改正を掲げ、左翼批判を強めていた安倍晋三氏は、選挙支援などで、統一教会への依存を強め、統一教会との共存共栄関係が築かれていった」、「安倍氏が政権を奪取すると、自民党議員の一部には、選挙の際には「組織票」となり、また選挙支援スタッフを派遣してくれる教団に依存する動きもみられた」、なるほど。 「複数の教団幹部が秘密裏に首相官邸へ招待されていた」、とは初めて知った。「岸信介氏、安倍晋太郎氏、安倍晋三氏との三代にわたる「付き合い」を誇った」、なるほど。 これだけ「安倍氏」と「統一教会」の関係が深いのであれば、今回の事件も「安倍氏」の身から出たサビといえそうだ。 ダイヤモンド・オンライン 田岡俊次氏による「安倍氏銃撃事件で露呈した「固定観念の罠」、動機・銃撃能力・警備体制…」 「安倍晋三元首相銃撃事件が発生した直後、与野党の政治家や報道機関は、「政治的テロ」かのように捉えての言動や報道が相次いだ。 ・・・「民主主義が決してテロに屈してはならない」と訴えた」、確かに的外れもいいところだ。 「約17年も前に海上自衛隊にいたことを今回の銃撃事件に結び付けるのは無理がある。これも固定観念からの見方だ」、その通りだ。 「韓国の旧統一教会への祝辞はやり過ぎの感があり、それが安倍氏の命取りとなってしまった」、その通りだ。 「今回の安倍元首相銃撃や秋葉原の無差別殺傷のように将来への絶望感や個人的な動機から要人殺害や多数の人々を殺傷しようとする個人的なテロは予防が難しい」、その通りだ。「京都アニメーション制作会社の放火」事件は、ビルの設計事態に重大な問題があったと思うが、これに言及した記事は見当たらず、お涙頂戴記事ばかりだったのは、誠に残念だ。 デイリー新潮「【独自】安倍家と統一教会との“深い関係”を示す機密文書を発見 米大統領に「文鮮明の釈放」を嘆願していた岸信介」 「「脱税犯」の逮捕が不当だとして釈放を依頼」、とは信じ難い依頼だ。いくら「文鮮明」との関係が深かったとしても、「脱税犯」では「不当逮捕」の可能性は極めて小さくなる筈だ。 「岸・安倍一族と統一教会の間にあった深い関係は無視されるべきではないだろう」、その通りで、このブログでもそれにチャレンジしている。 日刊ゲンダイ「警察はなぜ旧統一教会を放置し続けた? 1995年の摘発を退けた「政治圧力」」 「新世事件の責任者が<政治家との絆が弱かったから、警察の摘発を受けた。今後は政治家と一生懸命つながっていかないといけない>と語ったことが、彼らの反省点」、「統一教会に関する相談は3万4537件、被害総額は約1237億円に上る。弁護団によるとそれも「氷山の一角」だという」、なるほど。 「警察は個人名を含めた全国の捜査リスト『統一教会重点対象名簿』を作り、実際に動いていたのですが」、「政治の力」でダメだった。「「統一教会のような伝道、経済活動、合同結婚式の3点セットがすべて違法となる集団は世界中どこにもありません・・・普通はどこの国でも、これだけ問題を起こせば途中で刑事事件になります。日本だけが放置され、信教の自由の御旗の下に許されてきたから現実に今、統一教会がある」、「「新型コロナウイルスで(教祖の)韓鶴子が来日しないので安倍元首相に狙いを変えた」、やはり安倍元首相の身から出たサビのよ
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認知症(その1)(安藤優子氏が語る認知症介護「最もつらい時期」 大好きな母がヘルパーをクビにし罵詈雑言…、認知症支援の成年後見制度がはらむ「巨大な経済リスク」とは) [社会]

今日は、認知症(その1)(安藤優子氏が語る認知症介護「最もつらい時期」 大好きな母がヘルパーをクビにし罵詈雑言…、認知症支援の成年後見制度がはらむ「巨大な経済リスク」とは)を取上げよう。

先ずは、4月4日付けダイヤモンド・オンライン「安藤優子氏が語る認知症介護「最もつらい時期」、大好きな母がヘルパーをクビにし罵詈雑言…」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/300674
・『『週刊ダイヤモンド4月9・16日合併号』の第一特集は「後悔しない『認知症』」です。大好きな母が壊れていく…。ジャーナリストの安藤優子氏が経験した認知症介護の日々は、誰の身にも降りかかり得るものです。皆がかかるかもしれないのが認知症という脳の病。親、家族がなったとしても焦らずに済む情報、「こうしておけば…」と後悔せずに済む情報を網羅しています』、興味深そうだ。
・『「自分は至って普通」だと受診を拒んだ母が壊れていった  「しっかり者で社交的だった母がなぜこうなってしまったのか」──。ジャーナリストの安藤優子氏が、多忙な日々の裏で、16年間にわたった実母の壮絶な認知症介護の日々を振り返る。 母の場合、実は「認知症」と明確に診断されたのはそれらしき症状が現れてから数年後、高齢者施設に入居してからでした。多くの認知症の方と同様だと思うのですが、母も「自分は至って普通」だと、病院にはかたくなに行こうとしませんでしたから。 そして専門医はどこにいるのか、どの診療科にかかればいいのか。適切な診断を受けるための情報も乏しい。受診を嫌がる認知症の親を医療につなげるのは、ごく普通の家族にとって非常にハードルが高いと感じました。幸い、母が入居した施設にクリニックが併設されていて、そこでやっと認知症の確定診断を得ることができたのです。 最初に母の様子がおかしくなったのは、70代前半の頃でした。ある日「ベランダから飛び降りてやる!」と叫んだのです。当時は年齢的に「まだ早いな」と思ったのですが、今にして思えばすでに老人性うつの症状が現れていたのでしょう。 それからしばらくして、母が玄関先で転倒してそのまま起き上がれず、一緒に暮らしていた父も助け起こすことができずに、一晩毛布だけ掛けて床に横たわって過ごすという事件が起こりました。 明朝、駆け付けた姉が万が一のために救急車を呼んだのですが、マンションの高層階に住んでいたため、はしご車が出動するなどの大騒ぎに。大正生まれの母にとって、たかが転倒で近所を騒がせたショックと羞恥心は耐え難く、その一件以来人が変わったようにふさぎ込むようになりました。 本格的に母に認知症の症状が現れるきっかけになったのが、父の死です。最初の異変から5年後のことでした。父ががんを患い入院してからというもの、目に見えて症状が進みましたね』、「受診を嫌がる認知症の親を医療につなげるのは、ごく普通の家族にとって非常にハードルが高いと感じました。幸い、母が入居した施設にクリニックが併設されていて、そこでやっと認知症の確定診断を得ることができたのです」、「駆け付けた姉が万が一のために救急車を呼んだのですが、マンションの高層階に住んでいたため、はしご車が出動するなどの大騒ぎに。大正生まれの母にとって、たかが転倒で近所を騒がせたショックと羞恥心は耐え難く、その一件以来人が変わったようにふさぎ込むようになりました」、「たかが転倒で近所を騒がせたショックと羞恥心は耐え難く」、プライドが高い「母」にはよほどのショックだったようだ。
・『助けてもらうはずのヘルパーさんを母が次々にクビにし始めた…  当時、母はすでに要介護認定を受けていて、父は母の身の回りの一切合切を担っていました。父がいなくなれば誰かが面倒を見なければ母は生活できません。そこで私たちきょうだいが日替わりで在宅介護をし、昼間はヘルパーさんに助けてもらうことにしたのですが、なんと、困ったことに母がヘルパーさんを次々にクビにし始めたのです。 私は週5日の生放送番組を抱え、突発的な海外取材もある仕事。兄も姉も家庭があるのに、ヘルパーさんに頼れないとなれば、早晩行き詰まりますよね。 もちろん母本人の生活の質も大幅に下がります。介護の素人である私たちではお風呂に入れることもままなりませんから。でも、母は「知らない他人に裸を触らせることなどとんでもない」と断固拒否。 日本の介護制度は優秀ですが、制度があってもサービスを受ける本人が他人の存在を拒絶すれば、もう家族だけで背負うしかありません。心身共に最もつらい時期でしたね。 ある日私が行くと、焦げ付いた鍋の臭い、物が散乱する部屋、そして床を見るとペットの犬の排せつ物があらゆる所に転がっている、壮絶な状態でした。その光景を見て「犬もかわいそうだし、もう自宅で介護するのは限界だ」と、きょうだい3人で話し合い、施設に入居してもらうことにしたのです。 実際に施設に入ってもらうまでにも一悶着ありました。「家の水道が壊れたからしばらく住めなくなった」と母にうそをついて入居させたのですが、頭のいい人だからすぐに見抜かれましたね。面会に行けば「自宅があるのになぜそこに住んではいけないのか」「苦労して育ててきたのになぜこんな仕打ちをするのか」など、私たちきょうだいにありとあらゆる罵詈雑言を浴びせました。 罪悪感のあまり、一度は母を引き取ることも考えましたが、私の自宅に来ていたお手伝いさんにこう諭されたのです。 「優子さんが海外取材に行っている間は誰が見るんですか?一時の感情に任せてできないことは言わない方がいい」と』、あの「安藤」さんですら、「罪悪感のあまり、一度は母を引き取ることも考えましたが」、「お手伝いさんにこう諭されたのです。 「優子さんが海外取材に行っている間は誰が見るんですか?一時の感情に任せてできないことは言わない方がいい」と」、「お手伝いさんに」、「諭された」、やはり自分が当事者になると冷静さを失うようだ。
・『後悔の芽を摘んでおくための「医療・介護・相続・保険」全対策  『週刊ダイヤモンド』4月9・16日合併号の第一特集は「後悔しない『認知症』」です。 同じことを何度も聞いてくる。些細なことで怒りっぽくなった。よく物をなくして探し物をしている。ごみの分別ができていないようだ……・。離れて暮らす親や家族の様子がおかしい。認知症かもしれない。そのとき、何をどうすればいいのでしょうか。診断・医療、介護、相続、保険などさまざまな分野について、「こうしておけばよかった」と後悔しないための情報をお送りします。 認知症という病気には、困ったことに誤診がつきまといます。治せるはずの病気をみすみす放置することになりかねません。厄介な病気であることをまずは理解すること、そしてアルツハイマー型認知症だろうと決めつけずにきちんと診断を受けることが大切です。認知症専門の医療機関への調査結果リストも受診の参考にしてください。 認知症は、認知機能の低下によって生活に支障が出ている状態を指します。誰もがかかり得る脳の病気であり、その介護も誰もが直面する可能性があります。ところが、予備知識がないまま、引きずり込まれるように経験することになる家族がほとんどです。在宅介護サービス、高齢者向けの施設など、公的介護保険を賢く使うにはどこに注意すればいいのか。必須ポイントをきちんと押さえておきましょう。 認知症によって不幸を呼び込まないために、欠かせないのはお金に関わるリスクへの対処です。「認知症相続」に何の備えもなければ、残された家族が大損する事態に陥りかねません。もしものときの備えとして、生命保険なども選択肢となります。元気なうちに講じておくべき手立てとは何なのか。肝心なところをとらえておきましょう。 親、家族、あるいは自分もいずれ認知症にかかるかもしれません。なったとしても焦らずに済む情報、「こうしておけばよかった」と後悔せずに済む情報を網羅しました。問題や悩みを一人で抱え込まず、地域包括支援センターなど公的な相談窓口を活用することも大切です。家族や自分の将来のため、本特集をぜひご活用ください』、「問題や悩みを一人で抱え込まず、地域包括支援センターなど公的な相談窓口を活用することも大切」、同感である。

次に、7/20ダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏による「認知症支援の成年後見制度がはらむ「巨大な経済リスク」とは」を紹介しよう。
・『認知症の支援制度のはずが、経済的に「とんでもなく不自由でかつ不経済な状態」に不可逆的に陥ることまで考えられる危うい制度が存在する。そんなことが起こる理由から、そのリスクを回避するための手立てまでをお伝えしたい』、興味深そうだ。
・『認知症対策で要注意 「法定後見」の前に考えよう  人は老いるし、認知症を発症することがある。これは、健康な人でも自分に起こり得ることを想定しなければならないリスクだ。また、事故などで重い障害が残ることがあるし、知的な障害がありながら生まれてくる場合もある。こうした場合に、親や兄弟・姉妹などの家族が本人の将来を心配することになる。 俗にマネーリテラシーと呼ばれるお金の扱い方の知識体系を完結するためには、お金を持っている本人がお金について判断を下すことができなくなる可能性にどう対処するかについて、知識と具体的な方法を持つ必要がある。この問題を解決しないと、いわば最後のピースが埋まらなくて、マネーリテラシーが完結しないのだ。 財産の管理に関する判断能力を持たない人をサポートする仕組みとして、「成年後見制度」があるが、成年後見の利用には幾つか重大な注意事項がある。 例えば、後見が必要になるケースで最も多い事情は銀行取引だ。認知症が進みつつある本人の家族が、銀行員の案内に従って家庭裁判所に後見人の選任を申し立てたとしよう。 すると、家族を後見人に推薦しても、弁護士・司法書士などの職業後見人が選任される場合がある。さらにその後に、経済的に「とんでもなく不自由でかつ不経済な状態」に不可逆的に陥ることまで考えられる。財産の扱いが不自由になったり、サービスに見合わない多額の費用(年間24万〜96万円。後見人の報酬は家庭裁判所が決定する)が、本人が亡くなるまで掛かり続けたりするようなことが起こり得るのだ』、「サービスに見合わない多額の費用(年間24万〜96万円。後見人の報酬は家庭裁判所が決定する)が、本人が亡くなるまで掛かり続けたりするようなことが起こり得るのだ」、とんでもないことだ。
・『後見の手続きを進める前に「必読」の1冊がある  銀行員の言ったことに間違いも悪意もない。「後見人に家族を推薦できる」というのも本当だ。しかし家庭裁判所は、特に本人の銀行預金残高が大きい場合、職業後見人を選任する場合が多い。 銀行取引や不動産取引、施設への入所などの際に、「後見人が必要だ」と言われて不用意に手続きを進めてしまうと、大変なことになる場合があるのだ。 「後見」の手続きを進める前に、ぜひ本を1冊読んでほしい。宮内康二著『成年後見制度の落とし穴』(青志社)だ。著者の宮内氏は、一般社団法人・後見の杜(こうけんのもり)の代表で、成年後見の制度と事例に詳しい。また、かつて東京大学でジェロントロジー(「老年学」と訳される)の教鞭を執っておられた。 同書によると、成年後見制度がスタートした2000年には親族が後見人に選ばれるケースが約9割と圧倒的に多かった。一方、12年には弁護士等の職業後見人が選ばれるケースが逆転し、20年には職業後見人が付くケースが8割を占めるに至っているという』、「成年後見制度がスタートした2000年には親族が後見人に選ばれるケースが約9割と圧倒的に多かった。一方、12年には弁護士等の職業後見人が選ばれるケースが逆転し、20年には職業後見人が付くケースが8割を占めるに至っている」、裁判所は「職業後見人」のために付けさせているのではないか、とすら思えてくる。
・『資産8.4兆円に対して費用848億円 毎年1%ずつ財産が減る制度  前掲書の推計によると、21年12月末時点でざっと8兆4000億円の資産が成年後見制度(後見、補佐、補助、任意後見)の利用下にある。そして、約848億円の費用(後見人、監督人の報酬)が支払われているという。 判断能力が低下した本人の財産を管理し、年に一度財産目録を家庭裁判所に提出する程度の仕事に対する報酬としては不当に高いように思われる。 また、この本の事例を見ると、本人のためにも家族のためにもなっていないケースが多々載っている。例えば後見人によって不動産が売却され、本人が施設に入れられて、本人と家族が会うことを妨害されるなどといったケースが挙げられる。読んでいるうちに、怒りで背中が熱くなるような話が全国あちこちで生じているのだ。 後見人を務める全ての弁護士や司法書士が悪いわけではあるまいが、経済的な利害が存在して、後見という制度に独特な権限が絡むと、驚くような悪事が発生する場合があるのだ。制度の失敗事例として興味深い。) なお、同書によると例えば「司法書士 後見 横領」とインターネットで検索するだけで多くのケースが出てくるという。確かにその通りだ。 ちなみに、弁護士、司法書士等の職業後見人は、不動産を売却した場合に事務の報酬が別途支払われるし、裁判所が決める後見人・監督人の報酬は被後見人の銀行預金残高に応じて決められる仕組みだ。従って、後見人が不動産を売却したり、保険の解約や有価証券を売却したりするなど、預金残高が増える状態を好むインセンティブが働く仕組みになっている。さらに、職業後見人が生活費を家族に出し渋る原因にもなっていると考えられる。 経済取引の常識で考えると、何とも不細工で理不尽な仕組みなのだ。 同書には高齢者の認知症のケースも多数載っているし、障害がある子どもとその親の身につまされるケースも複数取り上げられている。 ともかく、後見人の選任を申し立てようかと思う人は「手続きをする前に」一読してほしい。手続きを始めてしまうと手遅れになる場合がある。後見が必要か否かの判断方法、トラブルの際の対処方法や連絡先なども載っている』、「資産8.4兆円に対して費用848億円 毎年1%ずつ財産が減る」、「判断能力が低下した本人の財産を管理し、年に一度財産目録を家庭裁判所に提出する程度の仕事に対する報酬としては不当に高いように思われる」、「裁判所が決める後見人・監督人の報酬は被後見人の銀行預金残高に応じて決められる仕組みだ。従って、後見人が不動産を売却したり、保険の解約や有価証券を売却したりするなど、預金残高が増える状態を好むインセンティブが働く仕組みになっている。さらに、職業後見人が生活費を家族に出し渋る原因にもなっていると考えられる」、どうも「職業後見人」の制度は歪んでいるようだ。
・『後見制度のリスクを避けるにはどうしたらいいか?  では、まだ成年後見制度を利用していない「普通の人」はどうしたらいいのか。 宮内氏が、前掲書の後書きで述べる「結論」は以下の2点だ。 (1)今の法定後見制度には慎重に臨む (2)実際に使うためでなく、法定後見から身を護る楯として心当たりの人と任意後見契約を締結しておく 何はともあれ、「職業後見人を付けられかねない法定後見を避けよ」ということだ。そのために、後見が必要な場合にあらかじめ指定した人物が後見人になることができる任意後見契約を締結しておくといいが、任意後見契約もできるだけ発効しない方がいいということなのだ。「後見」とは、一体誰のためにある制度なのだろうか。 任意後見契約で、親族などが後見人となる場合にも、この後見人が適切に後見しているかどうかをチェックする「監督人」という、いささかお節介で余計な役割がある。弁護士・司法書士などが選任され、監督人に報酬が発生するのだ。 親族の後見人が被後見人の財産を使い込むようなケースがあり得なくはないのだが、家族にとっては監督人が不要と感じられる場合が多いはずだ』、「「職業後見人を付けられかねない法定後見を避けよ」、なるほど。
・『山崎家の場合、任意後見契約と財産管理等委任契約の組み合わせ  何をどうしたらいいのかを具体的な事例で説明しよう。北海道札幌市にある筆者の実家で、5年ほど前に行ったあれこれをご説明する。 約6年前、筆者の父が90歳を目前に他界した時、父が主に母(当時81歳)のために遺した金融資産がいくばくかあった。相続人は、母の他に、筆者と筆者の妹(筆者の11歳下である)がいたが、子ども2人は相続を放棄し、母が全額を相続した。この手続きは簡単だった。 当時元気で長命が予想され、消費意欲の旺盛な母だったが、彼女の生活費が足りなくなることはなさそうで、子どもたちには大した金額が残りそうにない絶妙な加減の遺産だった。 母の銀行口座にもある程度の残高があり、その他に証券会社で個人向け国債(変動金利型10年満期)を少々持っていた。そこに、父の銀行預金と証券口座の有価証券が加わった。 必要な作業は、将来母の心身が衰える可能性に対処する契約を作ることと、母の下に集約された金融資産の状態を整理することだった。当時の母は、まだゴルフを続けているくらい大いに元気だったのだが、あれこれの手続きは、このタイミングが良かったとつくづく思う。 妹と母は、二つの契約を結んだ。一つは、金融機関との取引を母が妹に委任する「財産管理等委任契約」、もう一つは、将来必要な状態になった場合に妹が母の後見人になる「任意後見契約」だ。これらを合体した契約書を、妹が母と共に札幌の公証役場に行って締結してきた。 契約書のドラフトは、ネット上にあるサンプルを検索するなどして、筆者と妹とで作り、ほぼその文面で締結した』、「山崎」氏がアドバイスしてくれるのであれば、「妹と母」は安心だったろう。
・『任意後見契約のために必要なのは「合計4万円」  ただし、1回目の際には、公証人さんが「任意後見契約」の部分を無視して、「財産管理等委任契約」だけだと即断したのでうまくいかなかった。妹には、もう一度公証役場に行ってもらった。公証人さんがこの種の契約に慣れているかどうかが影響する場合があるのかもしれない。 費用は数万円としか記憶がないが、宮内氏の前掲書には、任意後見契約のために掛かるのは合計4万円だとある。公証人に払う費用と、契約内容を法務局に登記する費用の二つの合計額だ。 後見を引き受ける人を追加する場合は、1人当たり1万1000円増えるという。山崎家の場合は、筆者よりも妹が大幅に若く、女性の方が寿命が長い傾向もある。そのため、母の金融取引の代理人と、必要が生じた場合の後見人は妹にすることとした。 その後、5年の間に幾つかのきっかけがあって、母は子どもたちにとって意外なほど心身の機能が衰えた。現在、かつて父がお世話になったのと同じ高齢者向けの施設に入所している。入所の際の費用は彼女の預金で賄った。 今のところ、母は身体機能が衰えたものの、認知機能に関しては後見を要するような状態にない。また、今後仮に彼女の認知機能が衰えても、監督人を付けられてしまう任意後見に移行することはできるだけ避けたいと思っている。 宮内氏によると、山崎家と同様の契約(移行型の任意後見契約)を持っていても、任意後見に移行せずに、代理人である親族が本人の財産を管理することで足りる場合が9割以上だという』、「山崎家と同様の契約(移行型の任意後見契約)を持っていても、任意後見に移行せずに、代理人である親族が本人の財産を管理することで足りる場合が9割以上」、「監督人を付けられてしまう任意後見に移行する」のはどんな場合なのだろう。
・『山崎家の場合、「金融資産の整理」 父が遺した証券口座を見て後悔  金融資産の整理についても経緯を説明しておこう。 預金は、父から母が相続した預金を母の預金口座に統合すればよいので簡単だった。 父が持っていた証券会社の口座には、生前父が楽しみを兼ねて投資していた個別株が数銘柄と、毎月分配型などの投資信託があった。筆者は、自分が投資にコメントする仕事をしていたし、父の楽しみに介入しない方がいいという思いがあって、父の証券口座については生前にチェックもアドバイスもしなかった。しかし、彼の残した口座の残高明細を見て息子として少々後悔した。 もう少し合理的に運用していればもっと増えていたはずだという思いもあった。ただそれ以上に、このようなポートフォリオでは楽しくなかっただろうと、個別銘柄についても投信についても思った。生前のかなり早い段階から、なぜ父親に運用の方法をコーチしなかったのかということは、彼の息子としての筆者の後悔の一つだ。父は、キャッチボールの相手もしてくれたし、囲碁も教えてくれたのだから、恩返しに投資の方法くらい教えるべきだった。 読者も、親御さんの金融資産の状態を見てあげてほしい。誇張でなく「息を飲むような状態!」になっている場合が少なくないはずだ。 さて、父が持っていた有価証券は全て売却して、母が同じ証券会社に持っていた口座に現金を移動した。ネット証券に母の口座を開いて資産を移管しようかとも思ったが、母が高齢のため口座の開設手続きがいささか面倒だったし、父が使っていた証券会社なので、そのまま使う事にした』、「生前のかなり早い段階から、なぜ父親に運用の方法をコーチしなかったのかということは、彼の息子としての筆者の後悔の一つだ。父は、キャッチボールの相手もしてくれたし、囲碁も教えてくれたのだから、恩返しに投資の方法くらい教えるべきだった。 読者も、親御さんの金融資産の状態を見てあげてほしい」、なるほど。
・『証券会社の担当者と上司に伝えた「高齢の母に営業勧誘は一切しないで」  筆者が行ったことは二つだ。 一つは、母と一緒に証券会社を訪ねて、母の担当者とその上司に、「母はもう高齢なので、今後一切営業勧誘はしないでほしい」との意向を伝えたことだ。これは、高齢の親御さんが証券会社や銀行と取引している場合には「ぜひとも必要な手続き」だと思う。親御さんの持っている金融商品を見ると、そう思う人が少ないはずだ。 もう一つは、金融資産の組み替えだ。これは筆者が何冊も書いた書籍で言っているように、内外の株式のインデックスファンドと個人向け国債変動金利型10年満期の組み合わせが「無難」で「ほったらかし」にできるので、そのようにした。 ただし、対面営業の証券会社の支店では、手数料が安いインデックスファンドを取り扱っていない場合が多い。筆者と母が訪ねた証券会社の支店もそうだったので、インデックスファンドは上場投資信託(ETF)で行うことにした。株式の売買と同様の手数料が掛かるが、ETFは運用管理費用(信託報酬)の安いものを選ぶことができるので、投資のコストを小さく抑えることができる。 なお、今なら内外株式に分散投資せずとも、全世界株式(含む日本株)のインデックスファンド1本でいいと思う。大手ネット証券で投資信託を買えるなら「eMAXIS Slim全世界株式(オールカントリー)上場投資信託」ないし、これに近い商品がいい。対面営業の証券会社で投資商品を選ぶならETFで「MAXIS上場投資信託全世界株式(オールカントリー)」(銘柄コード2559)などを選ぶといいだろう。 母のポートフォリオは、5年前に組み替えて、その後今日まで「ほったらかし」の状態にある。そして、幸い母は元気だ。希望も含めて言うと母は長命だろうし、今後それなりにお金も掛かる。子どもたちに大したお金は残ると思えないが、「2世代運用」は今のところ順調だ』、証券会社の担当者と上司に伝えた「高齢の母に営業勧誘は一切しないで」、上手いやり方だ。これであれば、「担当者」も「上司」から「営業勧誘」を迫られることもないだろう。「今なら内外株式に分散投資せずとも、全世界株式(含む日本株)のインデックスファンド1本でいいと思う」、便利な時代になったものだ。
タグ:認知症 (その1)(安藤優子氏が語る認知症介護「最もつらい時期」 大好きな母がヘルパーをクビにし罵詈雑言…、認知症支援の成年後見制度がはらむ「巨大な経済リスク」とは) ダイヤモンド・オンライン「安藤優子氏が語る認知症介護「最もつらい時期」、大好きな母がヘルパーをクビにし罵詈雑言…」 「受診を嫌がる認知症の親を医療につなげるのは、ごく普通の家族にとって非常にハードルが高いと感じました。幸い、母が入居した施設にクリニックが併設されていて、そこでやっと認知症の確定診断を得ることができたのです」、「駆け付けた姉が万が一のために救急車を呼んだのですが、マンションの高層階に住んでいたため、はしご車が出動するなどの大騒ぎに。大正生まれの母にとって、たかが転倒で近所を騒がせたショックと羞恥心は耐え難く、その一件以来人が変わったようにふさぎ込むようになりました」、「たかが転倒で近所を騒がせたショックと あの「安藤」さんですら、「罪悪感のあまり、一度は母を引き取ることも考えましたが」、「お手伝いさんにこう諭されたのです。 「優子さんが海外取材に行っている間は誰が見るんですか?一時の感情に任せてできないことは言わない方がいい」と」、「お手伝いさんに」、「諭された」、やはり自分が当事者になると冷静さを失うようだ。 後悔の芽を摘んでおくための「医療・介護・相続・保険」全対策 「問題や悩みを一人で抱え込まず、地域包括支援センターなど公的な相談窓口を活用することも大切」、同感である。 ダイヤモンド・オンライン 山崎 元氏による「認知症支援の成年後見制度がはらむ「巨大な経済リスク」とは」 「サービスに見合わない多額の費用(年間24万〜96万円。後見人の報酬は家庭裁判所が決定する)が、本人が亡くなるまで掛かり続けたりするようなことが起こり得るのだ」、とんでもないことだ。 宮内康二著『成年後見制度の落とし穴』(青志社) 「成年後見制度がスタートした2000年には親族が後見人に選ばれるケースが約9割と圧倒的に多かった。一方、12年には弁護士等の職業後見人が選ばれるケースが逆転し、20年には職業後見人が付くケースが8割を占めるに至っている」、裁判所は「職業後見人」のために付けさせているのではないか、とすら思えてくる。 「資産8.4兆円に対して費用848億円 毎年1%ずつ財産が減る」、「判断能力が低下した本人の財産を管理し、年に一度財産目録を家庭裁判所に提出する程度の仕事に対する報酬としては不当に高いように思われる」、「裁判所が決める後見人・監督人の報酬は被後見人の銀行預金残高に応じて決められる仕組みだ。従って、後見人が不動産を売却したり、保険の解約や有価証券を売却したりするなど、預金残高が増える状態を好むインセンティブが働く仕組みになっている。さらに、職業後見人が生活費を家族に出し渋る原因にもなっていると考えられる」、 「山崎」氏がアドバイスしてくれるのであれば、「妹と母」は安心だったろう。 「山崎家と同様の契約(移行型の任意後見契約)を持っていても、任意後見に移行せずに、代理人である親族が本人の財産を管理することで足りる場合が9割以上」、「監督人を付けられてしまう任意後見に移行する」のはどんな場合なのだろう。 「生前のかなり早い段階から、なぜ父親に運用の方法をコーチしなかったのかということは、彼の息子としての筆者の後悔の一つだ。父は、キャッチボールの相手もしてくれたし、囲碁も教えてくれたのだから、恩返しに投資の方法くらい教えるべきだった。 読者も、親御さんの金融資産の状態を見てあげてほしい」、なるほど。 証券会社の担当者と上司に伝えた「高齢の母に営業勧誘は一切しないで」、上手いやり方だ。これであれば、「担当者」も「上司」から「営業勧誘」を迫られることもないだろう。「今なら内外株式に分散投資せずとも、全世界株式(含む日本株)のインデックスファンド1本でいいと思う」、便利な時代になったものだ。
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