日本の政治情勢(その63)(【ドバイに集うクセモノ日本人】ガーシーが最長10年居住できる「ゴールデンビザ」を取得した経緯、【ドバイに集うクセモノ日本人】UAEに引きつけられる世界中のグレーゾーンの人々、日本には「世襲政治家」が多すぎる、ビジネス界からの転身が少ない根本理由、岸田首相襲撃の根源に「アベ政治」への激しい怨嗟…見えてきた木村隆二容疑者の犯行動機) [国内政治]
日本の政治情勢については、2月26日に取上げた。今日は、(その63)(【ドバイに集うクセモノ日本人】ガーシーが最長10年居住できる「ゴールデンビザ」を取得した経緯、【ドバイに集うクセモノ日本人】UAEに引きつけられる世界中のグレーゾーンの人々、日本には「世襲政治家」が多すぎる、ビジネス界からの転身が少ない根本理由、岸田首相襲撃の根源に「アベ政治」への激しい怨嗟…見えてきた木村隆二容疑者の犯行動機)である。
先ずは、3月27日付けNEWSポストセブン「【ドバイに集うクセモノ日本人】ガーシーが最長10年居住できる「ゴールデンビザ」を取得した経緯」を紹介しよう。
https://www.news-postseven.com/archives/20230327_1853600.html?DETAIL
・『国会の欠席を続け参議院から除名処分となったガーシーこと東谷義和氏(51)は、名誉毀損などの疑いで逮捕状を出されながら、いまだ拘束されていない。遠く、中東のドバイにいるからだ。 ドバイに集うヤバい日本人は、彼だけではない。元ネオヒルズ族から元赤軍派まで、ガーシー一味を中心に、ドバイは日本の裏人脈の“梁山泊”となっていたのだ。富める者はますます富み、税負担の重い日本を脱出して自由を満喫する──ドバイには、日本の格差社会、拝金主義の一端が現われていると言える。朝日新聞ドバイ支局長としてガーシーに密着し始め、退職して『悪党 潜入300日 ドバイ・ガーシー一味』(講談社+α新書)を上梓した伊藤喜之氏が現地からレポートする(文中敬称略)。【前後編の前編】』、興味深そうだ。
・『「一生帰国しない」 国会議員から一転して容疑者に──。国会欠席を理由に参議院議員の資格を剥奪されたばかりのガーシーこと東谷義和に対し、警視庁はYouTubeチャンネル「ガーシーCH」で人気俳優らに対する常習的脅迫などの疑いがあるとして逮捕状を取った。 「一生帰国しない覚悟ができた」 SNSでの配信で宣言した東谷は今後もドバイがあるアラブ首長国連邦(UAE)にとどまり続けるのか、それとも第三国に移動するのかが一つの焦点になっている。 あくまで密着を続けてきた私の予想で言えば、東谷はUAEにとどまる可能性が高いと考えている。逮捕状が出たことで日本外務省は旅券返納命令を出したが、東谷が4月13日までに応じなければ、日本のパスポートは失効する。今後はカネを積めば買える他国のパスポートを取得するとの憶測も一部で報じられているが、たとえ取得したとしても、当面の拠点はUAEになるだろう。 当然だが、これまでUAEに長期滞在してきた東谷はUAEで居住ビザを取得している。昨年1月から東谷はドバイに呼び寄せた人物の近親者がオーナーである和食レストランでアルバイトしていたため、その就労目的でビザ発給を受けたが、その後、アルバイトを辞めてYouTube活動を本格化させたため、ビザを切り替える必要が出てきた。 UAEでは近年、多額の投資をする投資家や博士号取得者、医師、研究者、芸術家など各分野で優れた能力を持つ人に対して最長10年の居住ビザを取得できる「ゴールデンビザ」の制度が始まった。東谷も自ら明かしているが、約120万人のチャンネル登録者数を誇った人気ユーチューバーということで、「クリエーター」の枠で申請したところ、昨年夏ごろにゴールデンビザ取得に成功したのだ。 そして、UAEの場合、ビザ所持者の母国のパスポートがたとえ失効していたとしてもビザ期限が有効である限りは滞在し続けられるとされる。パスポート失効=不法滞在とはならず、すぐさま強制送還となる可能性は限りなく低いのだ。TBSが、警視庁の捜査幹部が「何年かかっても必ず逮捕する」とコメントしたと報じていたが、レバノンに逃亡したカルロス・ゴーン被告と同じく、警察も東谷の逮捕のハードルは非常に高いことはすでに覚悟しているだろう』、「UAEでは近年、多額の投資をする投資家や博士号取得者、医師、研究者、芸術家など各分野で優れた能力を持つ人に対して最長10年の居住ビザを取得できる「ゴールデンビザ」の制度が始まった。東谷も自ら明かしているが、約120万人のチャンネル登録者数を誇った人気ユーチューバーということで、「クリエーター」の枠で申請したところ、昨年夏ごろにゴールデンビザ取得に成功した」、「UAEの場合、ビザ所持者の母国のパスポートがたとえ失効していたとしてもビザ期限が有効である限りは滞在し続けられるとされる」、「パスポート失効=不法滞在とはならず、すぐさま強制送還となる可能性は限りなく低い」、なるほど。
・『秒速で1億円稼ぐ男 ドバイでの東谷を1年近く追った拙著『悪党 潜入300日 ドバイ・ガーシー一味』では、東谷の周囲に集まっていた者たちにも取材した。動画配信サイト「FC2」創業者の高橋理洋、元赤軍派の経営コンサルタント・大谷行雄、元バンドマンで秘書の墨谷俊、年商30億円の経営者・辻敬太、そして東谷に著名人暴露を提案した黒幕A……。 それぞれが日本社会に何らかのルサンチマン(遺恨)や情念を抱えながら、ガーシーCHに対して暴露ネタの提供から、動画制作の助言、地元王族の紹介など陰に陽に手を貸していることに気づき、その様子を描いた。脛に傷を持ちながらもギラギラとした野心を見せつける彼らに、戦前に中国や東南アジアなどに渡った大陸浪人に近しいものを私は感じたのだった。 彼らに限らず、近年、後ろ暗さを抱えながらドバイやアブダビなどUAEに移住する日本人は増えている。邦人人口は在留届が出ている限りでUAE全体で4000人ほどと言われているが、届け出をしていない人も含めれば、その倍、あるいは1万人近くいる可能性があるとも言われる。 とりわけ多いのは暗号資産界隈で生息する人々だ。ドバイの金満なイメージを広めたのはなんと言っても、「秒速で1億円稼ぐ男」と言われた与沢翼だろう。情報商材ビジネスで知られネオヒルズ族として注目を浴びたが、2014年に資金ショートで会社が倒産。深手を負いながら海外に向かい、個人商売に切り替え暗号資産投機で復活を遂げた。いったんはシンガポールなどに居住した後にドバイに移ってきた。 暗号資産で財をなした与沢がドバイでロールスロイスを乗り回す光景はテレビ映像などで拡散し、多くの日本人に影響を与えたのは間違いない。UAE全体が所得税や法人税の負担がないタックスヘイブン(租税回避地)であること(今年6月からは法人税9%を導入予定)もあり、日本の重い租税負担を逃れる目的もあり、暗号資産を主な収入源とする人々の移住が相次ぐようになった。(後編に続く)』、「近年、後ろ暗さを抱えながらドバイやアブダビなどUAEに移住する日本人は増えている。邦人人口は在留届が出ている限りでUAE全体で4000人ほどと言われているが、届け出をしていない人も含めれば、その倍、あるいは1万人近くいる可能性があるとも言われる。 とりわけ多いのは暗号資産界隈で生息する人々だ」、「「秒速で1億円稼ぐ男」と言われた与沢翼だろう。情報商材ビジネスで知られネオヒルズ族として注目を浴びたが、2014年に資金ショートで会社が倒産。深手を負いながら海外に向かい、個人商売に切り替え暗号資産投機で復活を遂げた。いったんはシンガポールなどに居住した後にドバイに移ってきた。 暗号資産で財をなした与沢がドバイでロールスロイスを乗り回す光景はテレビ映像などで拡散し、多くの日本人に影響を与えたのは間違いない」、「UAE全体が所得税や法人税の負担がないタックスヘイブン(租税回避地)であること(今年6月からは法人税9%を導入予定)もあり、日本の重い租税負担を逃れる目的もあり、暗号資産を主な収入源とする人々の移住が相次ぐようになった」、なるほど。
次に、3月27日付けNEWSポストセブン「【ドバイに集うクセモノ日本人】UAEに引きつけられる世界中のグレーゾーンの人々」を紹介しよう。
https://www.news-postseven.com/archives/20230327_1853601.html?DETAIL
・『国会の欠席を続け参議院から除名処分となったガーシーこと東谷義和氏(51)は、名誉毀損などの疑いで逮捕状を出されながら、いまだ拘束されていない。遠く、中東のアラブ首長国連邦(UAE)のドバイにいるからだ。 ドバイに集うヤバい日本人は、彼だけではない。「秒速で1億円稼ぐ男」と言われた与沢翼氏などの元ネオヒルズ族や元赤軍派など、ガーシー一味を中心に、ドバイは日本の裏人脈の“梁山泊”となっていたのだ。富める者はますます富み、税負担の重い日本を脱出して自由を満喫する──ドバイには、日本の格差社会、拝金主義の一端が現われていると言える。朝日新聞ドバイ支局長としてガーシーに密着し始め、退職して『悪党 潜入300日 ドバイ・ガーシー一味』(講談社+α新書)を上梓した伊藤喜之氏が現地からレポートする(文中敬称略)。【前後編の後編。前編から読む】 ドバイ在住歴が長い日本人コンサルタントの男性が言う。 「UAEは諸経費込みで1人当たり日本円100万円ほどあれば法人設立と3年有効のビザも取れてしまう。そして、コロナ禍でも国境を開放し続け、PCR検査だけで入国できた。同じくタックスヘイブンで人気があったシンガポールも2020年から外国人へのビザ発給を厳しくして高額の所得制限などをかけたり、コロナ禍の行動を厳しく制限したこともあり、UAEでは2021年初頭ごろから急激に暗号資産界隈の日本人が増えました」 UAEが積極的に受け入れ策をつくり、暗号資産関連のスタートアップのために複数のフリーゾーン(経済特区)が整備され、バイビットやCrypt.com、バイナンス、FTXなどの大手暗号資産取引所も相次いで事業拠点をドバイに設けるようになった。 その中には資金調達だけを目的とした未上場の暗号通貨で、最後まで上場することなく、調達できた資金だけを持ち逃げするような詐欺コインの事業者も流入していると指摘されているのもまた事実だった』、「ドバイは日本の裏人脈の“梁山泊”となっていた」、「ドバイには、日本の格差社会、拝金主義の一端が現われていると言える」、「同じくタックスヘイブンで人気があったシンガポールも2020年から外国人へのビザ発給を厳しくして高額の所得制限などをかけたり、コロナ禍の行動を厳しく制限したこともあり、UAEでは2021年初頭ごろから急激に暗号資産界隈の日本人が増えました」 UAEが積極的に受け入れ策をつくり、暗号資産関連のスタートアップのために複数のフリーゾーン(経済特区)が整備され、バイビットやCrypt.com、バイナンス、FTXなどの大手暗号資産取引所も相次いで事業拠点をドバイに設けるようになった」、なるほど。
・『暗号資産でトラブル 拙著でも、そんな詐欺コインを販売したなどと指摘されている人物を取り上げた。かつて与沢に師事する形で情報商材を売るネオヒルズ族として名を上げ、「SNSで年収2億」をキャッチフレーズに知名度を上げた久積篤史だ。彼はその後、情報商材の世界から転身し、2015年ごろから暗号資産ビジネスを手がけるようになっていた。 「PATRON」「CHIP」「BADGE」といった暗号資産トークンを発行するプロジェクトを主導したが、その後、コイン価格は暴落し、損失を出す人が続出し、一部で被害者の会が立ち上げられていた。日本警察や関東財務局からマークされていると感じた久積は2021年12月にドバイにやってきた。 そこで出会ったのが自らの詐欺疑惑が発覚して、どん底の状況にあった東谷だった。2人とも共通の人物、黒幕Aによってドバイに呼び寄せられていた。 ちなみに与沢と久積はかつてネオヒルズ族として同じ釜の飯を食った仲だが、今は関係が悪化し疎遠になっている。同じドバイに滞在していても、私が知る限り、直接的に接触した形跡はない。昨年7月、久積は与沢を糾弾する動画をYouTubeにあげ、一部で話題になった。暗号資産NXDやツイッターでのお金配り企画などで知られる投資家の瀧澤龍哉もドバイ在住だが、SNS上などで久積が「BADGEコインの上場を邪魔された」などと指摘し、トラブルになっている。ドバイを舞台にして、こうした暗号資産関連の日本人同士のいさかいも起きているのが現実だった。 そうした状況はUAEアブダビにある日本大使館やドバイにある日本総領事館も憂慮しているようだ。3月20日付の総領事館からの注意喚起メールには、こんな一文があった。 「不動産や仮想通貨等の投資案件に起因する日本人同士のトラブルも散見されていますのでご注意ください」 外務省関係者によると、UAE国内で何らかの詐欺的な行為などが報告されている件も含めて、大使館並びに総領事館が調査対象としている要注意の日本人リストは80人前後にのぼり、ここ数年で急増しているという』、「UAE国内で何らかの詐欺的な行為などが報告されている件も含めて、大使館並びに総領事館が調査対象としている要注意の日本人リストは80人前後にのぼり、ここ数年で急増」、「要注意の日本人」がそんなに多いとは驚かされた。
・『官邸を攻撃対象に 一方で、UAEに引きつけられるグレーゾーンの人々は日本人に限らない。とりわけ有名なのは世界中からの政治亡命者の多さだ。 最近では、アフガニスタンのガニ前大統領、スペイン国王だったフアン・カルロス1世、タイのタクシン元首相、インラック元首相の兄妹もアブダビやドバイで事実上の亡命生活を続けているとされる。みな母国に戻れば、過去の汚職などで刑事訴追を受ける可能性があると取り沙汰されている。こうした亡命者は、小国の元首脳や国会議員レベルも含めれば数えきれないほどいる。 経済人も多い。ロシア発のメッセージアプリ・テレグラム創業者で「ロシアのマーク・ザッカーバーグ」の異名を持つパベル・ドゥロフ氏もプーチン政権と距離を置いたとされ、拠点をドバイに移している。ロシアのウクライナ侵攻後には経済規制逃れで欧州に持っていたスーパーヨットなどの資産をUAEに移動させたり、ドバイの高級レジデンスを購入したりしているロシア人富豪(オリガルヒ)も複数いると報道されている。 UAEがなぜ選ばれるのか。この国であれば欧米と遜色ない先進国の暮らしが享受できるという側面のほか、米国、中国、ロシアといった大国とそれぞれ良好な関係を持つ全方位外交を基本にしており、国際政治で中立的な立ち位置を確立していることが大きい。2020年夏にはトランプ米政権の仲介で長らく敵対していたイスラエルと電撃的に国交を開くなど、経済実利を優先するお国柄でもある。) 「寛容」を国是とし、寛容担当大臣という大臣職もつくっている。全世界の約200の国籍の人々が暮らすとされ、外国人を受け入れることが国家の生存戦略の「1丁目1番地」であり、それが外国人に対してオープンであり続ける理由だ。 東谷は最近、警察捜査を「国策捜査」などと指摘し、その不当性を主張し始めている。常習的脅迫や名誉毀損の疑いがあるとされている人気俳優らへの暴露行為はあくまでも事実に基づいた告発であり、そうした容疑には当たらないと訴える一方で、東谷は岸田内閣のキーマンである木原誠二官房副長官を攻撃対象とするなど、政権中枢にも刃を向けてきたため、東谷への捜査は「官邸了解案件」であると囁かれている。 すでに除名されたとはいえ元国会議員でもあり、確かに官邸の関与は十分ありうる話だろう。前述したようにUAEはそうした母国では政治的な迫害を受ける恐れがある者を保護する可能性があり、今後の展開次第では、東谷が政治亡命者として保護下に置かれるウルトラCのシナリオもありうると考えている。 (了。前編から読む)』、「UAEがなぜ選ばれるのか。この国であれば欧米と遜色ない先進国の暮らしが享受できるという側面のほか、米国、中国、ロシアといった大国とそれぞれ良好な関係を持つ全方位外交を基本にしており、国際政治で中立的な立ち位置を確立していることが大きい」、「「寛容」を国是とし、寛容担当大臣という大臣職もつくっている。全世界の約200の国籍の人々が暮らすとされ、外国人を受け入れることが国家の生存戦略の「1丁目1番地」であり、それが外国人に対してオープンであり続ける理由だ」、「すでに除名されたとはいえ元国会議員でもあり、確かに官邸の関与は十分ありうる話だろう。前述したようにUAEはそうした母国では政治的な迫害を受ける恐れがある者を保護する可能性があり、今後の展開次第では、東谷が政治亡命者として保護下に置かれるウルトラCのシナリオもありうると考えている」、そんな「ウルトラCのシナリオ」は実現してほしくない。
第三に、4月19日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏による「日本には「世襲政治家」が多すぎる、ビジネス界からの転身が少ない根本理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/321431
・『昨今は「世襲政治家」への批判が再燃している。自身のホームページに「家系図」を掲載した岸信千代氏、「公用車で観光」疑惑が浮上した岸田翔太郎氏などの言動が目立つからだ。かつては世襲体質を変えようと、各政党が「候補者の公募」に力を入れていた時期もあったが、結果的に「小泉チルドレン」「小沢ガールズ」などと呼ばれた新人は失言や問題行動を繰り返した。なぜ、ビジネス界で活躍する優秀な人材は、あまり政界に入ってこないのだろうか。その根本的要因を考察する』、興味深そうだ。
・『岸信千代氏に岸田翔太郎氏…「政治家の世襲」が批判の的に 議員の辞職・死去などに伴って、欠員を補充するための「補欠選挙」が4月23日に実施される。衆議院で補欠選挙を行う選挙区は、千葉5区、和歌山1区、山口2区・4区の4つである。 このうち衆議院山口2区の補欠選挙は、岸信夫・前防衛相の辞職に伴うものだ。自民党は公認候補として岸氏の長男・信千代氏を擁立している。 ところが今年2月、信千代氏には思わぬ「逆風」が吹いた。 信千代氏は公式ホームページを開設した際、自身のプロフィールとともに、政界の“重鎮”である親族の名前を列挙した家系図を掲載した。それが、堂々と「世襲」をアピールしていると厳しく批判されたのだ。 家系図に名前が記された親族は、父の信夫氏、伯父の安倍晋三氏、祖父の晋太郎氏、曽祖父の安倍寛氏、岸信介氏、曽祖叔父の佐藤栄作氏の6人である。 補欠選挙の話題からは離れるが、世襲といえば、岸田文雄首相による息子・翔太郎氏の“優遇”も記憶に新しい。 岸田首相は翔太郎氏を首相秘書官に起用し、欧米5カ国訪問時に帯同させたのだが、翔太郎氏には公用車で観光していた疑惑が浮上。首相の息子という「特権」を利用したと批判された(本連載第324回)。「政治家の世襲」に対する批判は昔からあるが、ここに来て再燃している。 「政治家の世襲」とは、親は祖父母など親族が作った「三バン」(地盤、かばん、看板)と呼ばれるものを継承して政治活動を行うことをいう。また、三バンを引き継いでいない場合でも、親子などの親族関係があれば、世襲とみなされる場合もある。 自民党国会議員のおおむね3割が世襲議員である。選挙のたびにその割合は上下する。自民党が選挙に敗れたときに、世襲議員の割合が約4割に上がることもある。世襲議員は選挙において「逆風」に左右されない強さがあるとされる。) 世襲議員は、政界でキャリアを重ね、閣僚・党幹部になるのに有利である。第二次岸田改造内閣が2022年8月に発足した際、親族から直接地盤を継承した「純粋な世襲議員」は閣僚20人中9人だった(その後、閣僚辞任によって7人に減少)。また、平成元(1989)年以降の歴代首相の7割が世襲議員である。 だが、世界の中では、世襲議員は当たり前の存在というわけではない。米国議会における世襲議員の比率は約5%にすぎない。ブッシュ家、ケネディ家などは少数派である。 英国では世襲議員はほぼいない。下院議員の約7割が、生まれ故郷でも職場でもない選挙区から立候補する「落下傘候補」である。保守党、労働党など各政党では、「公募」を実施して候補者を決定する「実力主義」が貫かれている。 世襲議員の全員がダメだというつもりはないが、その能力や言動に批判があるのも事実だ。そこで今回は、日本で世襲議員が多い理由と、その背景にある問題を考えたい』、「自民党国会議員のおおむね3割が世襲議員」、「平成元(1989)年以降の歴代首相の7割が世襲議員」、他方、「米国議会における世襲議員の比率は約5%にすぎない」、「英国では世襲議員はほぼいない」、「日本で世襲議員が多い理由と、その背景にある問題を考えたい」、興味深そうだ。
・『実力者が成り上がる昭和の「閨閥」システムとは? 平成以降、世襲議員が首相になることが多くなったが、それ以前は違っていた(本連載の前身『政局LIVEアナリティクス』の第23回)。 昭和の時代に活躍した首相の初当選年齢とキャリアは、以下のようなものだった。 ・池田勇人氏:49歳(1期目に蔵相就任) ・佐藤栄作氏:47歳(当選前に官房長官、1期目に自由党幹事長、郵政相) ・岸信介氏:45歳(戦前に商工相などを歴任、戦後に公職追放解除後4年で初代自民党幹事長) ・福田赳夫氏:47歳(4期目に政調会長、幹事長) ・大平正芳氏:42歳(5期目に官房長官) こうした経歴を見ると、当時の日本では、財界・官界で出世した人物が40代以降に初当選し、即幹部に抜擢(ばってき)される実力主義だったことがうかがえる。 ただし、この実力主義は「条件付き」であり、必ずしも世襲と無縁というわけではなかった。 というのも、当時の総理には、ビジネス界や皇族などのそうそうたるメンバーと血縁・婚姻関係を結び、「閨閥(けいばつ)」と呼ばれる親族関係を形成している人物が多かった。 歴代総理の縁戚関係をたどると、日本を代表する財閥である三井家や住友家、ブリヂストン創業者の石橋一族、森コンツェルンの森一族、昭和電工の安西一族、住友銀行元会長の堀田一族、日本郵船元社長の浅尾一族、そして天皇家などに行きつく。 当時の首相の多くは、本人が名門家系の令嬢と結婚するか、自身の子供を名門家系と結婚させることで縁戚関係を築き、「閨閥議員」として権力を握ったのだ』、「当時の首相の多くは、本人が名門家系の令嬢と結婚するか、自身の子供を名門家系と結婚させることで縁戚関係を築き、「閨閥議員」として権力を握った」、なるほど。
・『外部参入組よりも世襲議員が力を持つ理由とは かつて、官僚となり「閨閥」入りすることは政界への最短コースであり、庶民階級から政界入りする一つの道として確立されていた。 今考えると「閨閥」というシステムは前時代的であり、世襲の一種であることに変わりはないのだが、筆者はこの仕組みに一定の評価を与えている。 あくまで実力でのし上がってきた“強者”たちが、縁戚関係の力を借りて出世の道を切り開くという意味で、「純粋な世襲」とは異なるからだ。実力のない者は、そもそも「閨閥」入りすることは難しく、無条件で既得権益を享受できるわけではない。 だが現在は、閨閥のシステムは終焉を迎え、「純粋な世襲」が当たり前の時代になった。もちろん、外部から政界に参入してくる人材も存在するが、世襲議員のほうが政界でより指導的立場になりやすいのは事実だ。 その一因には、自民党の年功序列システム(当選回数至上主義)の完成がある(前連載第24回)。当選回数至上主義とは、国会議員の当選回数に応じて、閣僚、副大臣、国会の委員会、党の役員といった、さまざまなポストを割り振っていく人事システムである。 自民党議員は当選5~6回で初入閣までは横並びで出世し、その後は能力や実績に応じて閣僚・党役員を歴任していく。 約300人もいる自民党の国会議員の全員が納得できるように党の役職を割り振るのは簡単ではないため、「当選回数」というわかりやすい基準を設けたのだ。このシステムは自民党政権の長期化に伴って固定化し、「当選回数」が国会議員を評価する絶対的な基準となった。 このシステムでは、若くして国会議員に当選すると、それだけ党内での出世に有利となる。そして、強固な選挙区(地盤)、政治資金(かばん)、知名度(看板)を引き継ぐ世襲議員の初当選年齢は若い。 例えば、小泉純一郎氏は30歳、橋本龍太郎氏は26歳、羽田孜氏は34歳、小渕恵三氏は26歳である。ちなみに、史上最年少で自民党幹事長を務めた小沢一郎氏は27歳で初当選した』、「約300人もいる自民党の国会議員の全員が納得できるように党の役職を割り振るのは簡単ではないため、「当選回数」というわかりやすい基準を設けたのだ。このシステムは自民党政権の長期化に伴って固定化し、「当選回数」が国会議員を評価する絶対的な基準となった。 このシステムでは、若くして国会議員に当選すると、それだけ党内での出世に有利となる。そして、強固な選挙区(地盤)、政治資金(かばん)、知名度(看板)を引き継ぐ世襲議員の初当選年齢は若い」、なるほど。
・『「世襲体質」を変えようとした結果 大物政治家の「チルドレン」が暴走の皮肉 一方、この人事システムでは、官界・ビジネス界で成功した後や、知事などを経験した後に40~50代で政界入りした人物の実績はほとんど考慮されない。「ただの1年生議員」として扱われ、そこから政界でのキャリアをスタートさせねばならない。 そして、40~50代で政界入りすると、初入閣するのは 50代後半か60代前半となる。そのとき、彼らと同年代の世襲議員は、既に主要閣僚・党幹部を歴任したリーダーとなっている。 世襲議員を要職に抜擢する人事としては、小泉純一郎内閣の安倍晋三自民党幹事長や石原伸晃国土交通相、麻生太郎内閣の小渕優子少子化担当相、菅義偉内閣の小泉進次郎環境相などが代表例である。 一方、確かに自民党など各政党は、「世襲批判」を受けて「候補者の公募」を行うなど、参入障壁の緩和を図ってきた側面もある。 実際に、2000年代に入ると「小泉チルドレン」(自民党、2005年総選挙)、「小沢ガールズ」(民主党、2009年総選挙)、「安倍チルドレン」(自民党、2012年総選挙)など、三バンを持たない新人の大量当選現象が起こった。 しかし、その結果は惨憺(さんたん)たるものだった。チルドレンのさまざまな失言や不適切な行動によって、「政治家の資質」の低下がより厳しく批判されるようになった。 世襲ありきのシステムを改革しようとした結果、外から政界入りした人材が不祥事を連発させたのだから皮肉なものである。 ビジネス界で活躍する優秀な人材は、なぜあまり政界に入ってこないのだろうか。 筆者は、その理由は二つあると考える。 一つ目は、「1年生議員」として扱われる状況下で出世へのモチベーションを描けないこと。二つ目は、終身雇用・年功序列の「日本型雇用システム」から逸脱するのが難しいことだ(第156回)。 今回は、後者を掘り下げて解説する。現在の雇用慣行では、企業で「正社員」のステータスを得た若者が、年功序列・終身雇用のレールから一度外れると、その恩恵を再び享受することが難しくなる。 そのため転職する場合も、似たような雇用慣行の他社に移る程度であり、政界入りなどの挑戦に踏み切る人は珍しい。) もし政界挑戦などによって会社員としての“空白期間”ができると、中途採用で低評価され、ビジネス界には戻りづらくなるからだ。 すなわち、一般企業の社員が日本で政治家になるということは、大学4年生時の「新卒一括採用」で得た「正社員」の座を捨てることである。生まれながらに三バンを持つ「世襲」の候補者を除けば、大きなリスクのある挑戦となる。 そうなると、年功序列・終身雇用のレールに乗って順調に出世している優秀な人が、わざわざ退職して政治家になる理由がない。会社を辞めるのは、社内で満足な評価を得られず、不満を募らせている人だろう』、「「候補者の公募」を行うなど、参入障壁の緩和を図ってきた側面も」、「小泉チルドレン」・・・「小沢ガールズ」・・・、「安倍チルドレン」、「三バンを持たない新人の大量当選現象が起こった。 しかし、その結果は惨憺(さんたん)たるものだった。チルドレンのさまざまな失言や不適切な行動によって、「政治家の資質」の低下がより厳しく批判されるようになった」、思い出した。
・『世襲議員を高学歴の官僚が支える「逆・学歴社会」が誕生 なお、会社員だけでなく公務員(官僚)でも、「くすぶっている人が外に出たがる」傾向があるという。 あるエリート官僚によると、彼と同じ省から国会議員に転身する人は少なくないものの、政界入りした人物の中で「尊敬できるのは1人しかいない」という。 すなわち、省内で出世コースに乗り、仕事が充実している官僚は政治家に転身しない。転身するのは、省内で評価されず、不満を持っていた官僚なのだ。 ちなみに、英国など欧州では、政治家への道は日本ほどリスキーではない。早期に主要閣僚の業務をこなせる能力を持つ優秀な若者が政界入りしている。40代で首相に就任する政治家も少なくなく、閣僚も若手が起用されることが多い(第131回)。 また、首相や閣僚を辞任後、政界からビジネス界に転じることも多い。米国のIT企業でCEOを務める者もいる。このようなキャリア形成が可能なのは、年功序列・終身雇用がないからに尽きる。 要するに、優秀な人材が政界を目指せる風土を生むには、政界の中だけでなく、日本社会全体の改革が必要だといえるだろう。 あえて皮肉な言い方をすれば、現在の日本の政界は、成蹊大学、成城大学、学習院大学や、幼稚舎から慶応に入った「世襲のお坊ちゃま・お嬢さま」が牛耳っている。 それ以外の外部参入組は、会社や省庁で出世できずに、政界に転じた人たちで占められている。 そうした人々を、東京大学や京都大学を卒業した官僚が支えているのだ。この構図は「逆・学歴社会」だといえる(第233回)。 これでは、優秀な人材はバカバカしくなって政界に興味を持たなくなる。これが「政治家の世襲問題」の本質なのではないだろうか』、「これが「政治家の世襲問題」の本質」、興味深い仮設だ。
第四に、4月19日付け日刊ゲンダイ「岸田首相襲撃の根源に「アベ政治」への激しい怨嗟…見えてきた木村隆二容疑者の犯行動機」を紹介しよう。
・『何が凶行に駆り立てたのか──。岸田首相襲撃犯の木村隆二容疑者(24)が黙秘を続ける中、少しずつ犯行に至った背景が浮かび上がってきた。動機解明の手掛かりとなりそうなのが、「民主主義への挑戦」を続ける「アベ政治」への憤りだ』、興味深そうだ。
・『「民主主義への挑戦」に憤り 木村容疑者は昨年6月、参院選(同年7月実施)に立候補できないのは憲法違反だとして、国に損害賠償を求めて神戸地裁に提訴。その訴訟で安倍元首相の国葬実施や、安倍元首相と統一教会(現・世界平和統一家庭連合)との関係を批判していたことが判明した。 木村容疑者は昨年10月、地裁に提出した準備書面で、「岸田内閣は故安倍晋三の国葬を世論の反対多数の中、閣議決定のみで強行した」と指摘。「民主主義への挑戦は許されるべきではない」と強い言葉で非難していた。 安倍国葬を「暴力に屈せず、民主主義を断固として守り抜く決意を示す場」と位置づけていた岸田首相が、民主的プロセスをないがしろにして国葬を断行したことは批判されて当然である。だからといって、爆弾を自作して襲撃していい理由には決してならないが、木村容疑者が「民主主義への挑戦」に怒りを覚えていたであろうことは想像に難くない。 「国葬は世論の反対が6割以上に上る中、強行されました。木村容疑者も6割を超えた人々のひとりです。彼のものとみられるツイッターを読む限り、統一教会などの宗教組織票を含む『地盤』と『看板』『カバン』を持った世襲への怨嗟や、そうした『持てる者』が階級支配を再生産することへのイラ立ちが透けて見えます。一方で、自民党保守派のような排外主義的な主張も散見される。もともとは自民党支持者ながらも、投票などの正当な手続きでは格差や階級支配をどうにもできない、と絶望した末の犯行ではなかったのか」(高千穂大教授・五野井郁夫氏=国際政治学)』、「もともとは自民党支持者ながらも、投票などの正当な手続きでは格差や階級支配をどうにもできない、と絶望した末の犯行ではなかったのか」、面白い仮設だ。
・『透ける格差や世襲へのイラ立ち 振り返れば、安倍政権は「民主主義への挑戦」の連続だった。選挙で勝利するたび「民意」を錦の御旗に、多くの重要法案も数の力に任せて強行採決。集団的自衛権の行使容認も閣議決定の解釈改憲で片づけてしまった。 民主的な手続きを骨抜きにする政治スタイルを岸田首相も踏襲。防衛予算倍増や原発政策の転換など、自民1強をいいことに、やりたい放題である。 「持てる者」が「強者の論理」に寄りかかり、対話と熟議に基づく民主主義をないがしろにする──。10年以上に及ぶ「アベ政治」が、木村容疑者を蛮行に駆り立てた背景にあるのではないか。 自民党内からは「テロを起こした人間の主張や背景を一顧だにしない」(細野豪志衆院議員)との意見も出ているが、「木村予備軍」は確実にいる。だからこそ、再発防止のために動機や背景を探る必要があるはずだ。 「木村容疑者の犯行が民主主義の破壊行為であることは言うまでもありませんが、ゆえに動機も背景も捨て置くというのは、あまりにも雑です。政治家なら、この国の格差や世襲といった本質的な問題を問うていかないといけないと思います」(五野井郁夫氏) 政治への怨嗟を放置していては、また同じことが繰り返されるだけだ。再び襲撃犯を生みださない責任は、権力を持つ政治側にもある』、「木村容疑者の犯行が民主主義の破壊行為であることは言うまでもありませんが、ゆえに動機も背景も捨て置くというのは、あまりにも雑です。政治家なら、この国の格差や世襲といった本質的な問題を問うていかないといけないと思います」、同感である。
先ずは、3月27日付けNEWSポストセブン「【ドバイに集うクセモノ日本人】ガーシーが最長10年居住できる「ゴールデンビザ」を取得した経緯」を紹介しよう。
https://www.news-postseven.com/archives/20230327_1853600.html?DETAIL
・『国会の欠席を続け参議院から除名処分となったガーシーこと東谷義和氏(51)は、名誉毀損などの疑いで逮捕状を出されながら、いまだ拘束されていない。遠く、中東のドバイにいるからだ。 ドバイに集うヤバい日本人は、彼だけではない。元ネオヒルズ族から元赤軍派まで、ガーシー一味を中心に、ドバイは日本の裏人脈の“梁山泊”となっていたのだ。富める者はますます富み、税負担の重い日本を脱出して自由を満喫する──ドバイには、日本の格差社会、拝金主義の一端が現われていると言える。朝日新聞ドバイ支局長としてガーシーに密着し始め、退職して『悪党 潜入300日 ドバイ・ガーシー一味』(講談社+α新書)を上梓した伊藤喜之氏が現地からレポートする(文中敬称略)。【前後編の前編】』、興味深そうだ。
・『「一生帰国しない」 国会議員から一転して容疑者に──。国会欠席を理由に参議院議員の資格を剥奪されたばかりのガーシーこと東谷義和に対し、警視庁はYouTubeチャンネル「ガーシーCH」で人気俳優らに対する常習的脅迫などの疑いがあるとして逮捕状を取った。 「一生帰国しない覚悟ができた」 SNSでの配信で宣言した東谷は今後もドバイがあるアラブ首長国連邦(UAE)にとどまり続けるのか、それとも第三国に移動するのかが一つの焦点になっている。 あくまで密着を続けてきた私の予想で言えば、東谷はUAEにとどまる可能性が高いと考えている。逮捕状が出たことで日本外務省は旅券返納命令を出したが、東谷が4月13日までに応じなければ、日本のパスポートは失効する。今後はカネを積めば買える他国のパスポートを取得するとの憶測も一部で報じられているが、たとえ取得したとしても、当面の拠点はUAEになるだろう。 当然だが、これまでUAEに長期滞在してきた東谷はUAEで居住ビザを取得している。昨年1月から東谷はドバイに呼び寄せた人物の近親者がオーナーである和食レストランでアルバイトしていたため、その就労目的でビザ発給を受けたが、その後、アルバイトを辞めてYouTube活動を本格化させたため、ビザを切り替える必要が出てきた。 UAEでは近年、多額の投資をする投資家や博士号取得者、医師、研究者、芸術家など各分野で優れた能力を持つ人に対して最長10年の居住ビザを取得できる「ゴールデンビザ」の制度が始まった。東谷も自ら明かしているが、約120万人のチャンネル登録者数を誇った人気ユーチューバーということで、「クリエーター」の枠で申請したところ、昨年夏ごろにゴールデンビザ取得に成功したのだ。 そして、UAEの場合、ビザ所持者の母国のパスポートがたとえ失効していたとしてもビザ期限が有効である限りは滞在し続けられるとされる。パスポート失効=不法滞在とはならず、すぐさま強制送還となる可能性は限りなく低いのだ。TBSが、警視庁の捜査幹部が「何年かかっても必ず逮捕する」とコメントしたと報じていたが、レバノンに逃亡したカルロス・ゴーン被告と同じく、警察も東谷の逮捕のハードルは非常に高いことはすでに覚悟しているだろう』、「UAEでは近年、多額の投資をする投資家や博士号取得者、医師、研究者、芸術家など各分野で優れた能力を持つ人に対して最長10年の居住ビザを取得できる「ゴールデンビザ」の制度が始まった。東谷も自ら明かしているが、約120万人のチャンネル登録者数を誇った人気ユーチューバーということで、「クリエーター」の枠で申請したところ、昨年夏ごろにゴールデンビザ取得に成功した」、「UAEの場合、ビザ所持者の母国のパスポートがたとえ失効していたとしてもビザ期限が有効である限りは滞在し続けられるとされる」、「パスポート失効=不法滞在とはならず、すぐさま強制送還となる可能性は限りなく低い」、なるほど。
・『秒速で1億円稼ぐ男 ドバイでの東谷を1年近く追った拙著『悪党 潜入300日 ドバイ・ガーシー一味』では、東谷の周囲に集まっていた者たちにも取材した。動画配信サイト「FC2」創業者の高橋理洋、元赤軍派の経営コンサルタント・大谷行雄、元バンドマンで秘書の墨谷俊、年商30億円の経営者・辻敬太、そして東谷に著名人暴露を提案した黒幕A……。 それぞれが日本社会に何らかのルサンチマン(遺恨)や情念を抱えながら、ガーシーCHに対して暴露ネタの提供から、動画制作の助言、地元王族の紹介など陰に陽に手を貸していることに気づき、その様子を描いた。脛に傷を持ちながらもギラギラとした野心を見せつける彼らに、戦前に中国や東南アジアなどに渡った大陸浪人に近しいものを私は感じたのだった。 彼らに限らず、近年、後ろ暗さを抱えながらドバイやアブダビなどUAEに移住する日本人は増えている。邦人人口は在留届が出ている限りでUAE全体で4000人ほどと言われているが、届け出をしていない人も含めれば、その倍、あるいは1万人近くいる可能性があるとも言われる。 とりわけ多いのは暗号資産界隈で生息する人々だ。ドバイの金満なイメージを広めたのはなんと言っても、「秒速で1億円稼ぐ男」と言われた与沢翼だろう。情報商材ビジネスで知られネオヒルズ族として注目を浴びたが、2014年に資金ショートで会社が倒産。深手を負いながら海外に向かい、個人商売に切り替え暗号資産投機で復活を遂げた。いったんはシンガポールなどに居住した後にドバイに移ってきた。 暗号資産で財をなした与沢がドバイでロールスロイスを乗り回す光景はテレビ映像などで拡散し、多くの日本人に影響を与えたのは間違いない。UAE全体が所得税や法人税の負担がないタックスヘイブン(租税回避地)であること(今年6月からは法人税9%を導入予定)もあり、日本の重い租税負担を逃れる目的もあり、暗号資産を主な収入源とする人々の移住が相次ぐようになった。(後編に続く)』、「近年、後ろ暗さを抱えながらドバイやアブダビなどUAEに移住する日本人は増えている。邦人人口は在留届が出ている限りでUAE全体で4000人ほどと言われているが、届け出をしていない人も含めれば、その倍、あるいは1万人近くいる可能性があるとも言われる。 とりわけ多いのは暗号資産界隈で生息する人々だ」、「「秒速で1億円稼ぐ男」と言われた与沢翼だろう。情報商材ビジネスで知られネオヒルズ族として注目を浴びたが、2014年に資金ショートで会社が倒産。深手を負いながら海外に向かい、個人商売に切り替え暗号資産投機で復活を遂げた。いったんはシンガポールなどに居住した後にドバイに移ってきた。 暗号資産で財をなした与沢がドバイでロールスロイスを乗り回す光景はテレビ映像などで拡散し、多くの日本人に影響を与えたのは間違いない」、「UAE全体が所得税や法人税の負担がないタックスヘイブン(租税回避地)であること(今年6月からは法人税9%を導入予定)もあり、日本の重い租税負担を逃れる目的もあり、暗号資産を主な収入源とする人々の移住が相次ぐようになった」、なるほど。
次に、3月27日付けNEWSポストセブン「【ドバイに集うクセモノ日本人】UAEに引きつけられる世界中のグレーゾーンの人々」を紹介しよう。
https://www.news-postseven.com/archives/20230327_1853601.html?DETAIL
・『国会の欠席を続け参議院から除名処分となったガーシーこと東谷義和氏(51)は、名誉毀損などの疑いで逮捕状を出されながら、いまだ拘束されていない。遠く、中東のアラブ首長国連邦(UAE)のドバイにいるからだ。 ドバイに集うヤバい日本人は、彼だけではない。「秒速で1億円稼ぐ男」と言われた与沢翼氏などの元ネオヒルズ族や元赤軍派など、ガーシー一味を中心に、ドバイは日本の裏人脈の“梁山泊”となっていたのだ。富める者はますます富み、税負担の重い日本を脱出して自由を満喫する──ドバイには、日本の格差社会、拝金主義の一端が現われていると言える。朝日新聞ドバイ支局長としてガーシーに密着し始め、退職して『悪党 潜入300日 ドバイ・ガーシー一味』(講談社+α新書)を上梓した伊藤喜之氏が現地からレポートする(文中敬称略)。【前後編の後編。前編から読む】 ドバイ在住歴が長い日本人コンサルタントの男性が言う。 「UAEは諸経費込みで1人当たり日本円100万円ほどあれば法人設立と3年有効のビザも取れてしまう。そして、コロナ禍でも国境を開放し続け、PCR検査だけで入国できた。同じくタックスヘイブンで人気があったシンガポールも2020年から外国人へのビザ発給を厳しくして高額の所得制限などをかけたり、コロナ禍の行動を厳しく制限したこともあり、UAEでは2021年初頭ごろから急激に暗号資産界隈の日本人が増えました」 UAEが積極的に受け入れ策をつくり、暗号資産関連のスタートアップのために複数のフリーゾーン(経済特区)が整備され、バイビットやCrypt.com、バイナンス、FTXなどの大手暗号資産取引所も相次いで事業拠点をドバイに設けるようになった。 その中には資金調達だけを目的とした未上場の暗号通貨で、最後まで上場することなく、調達できた資金だけを持ち逃げするような詐欺コインの事業者も流入していると指摘されているのもまた事実だった』、「ドバイは日本の裏人脈の“梁山泊”となっていた」、「ドバイには、日本の格差社会、拝金主義の一端が現われていると言える」、「同じくタックスヘイブンで人気があったシンガポールも2020年から外国人へのビザ発給を厳しくして高額の所得制限などをかけたり、コロナ禍の行動を厳しく制限したこともあり、UAEでは2021年初頭ごろから急激に暗号資産界隈の日本人が増えました」 UAEが積極的に受け入れ策をつくり、暗号資産関連のスタートアップのために複数のフリーゾーン(経済特区)が整備され、バイビットやCrypt.com、バイナンス、FTXなどの大手暗号資産取引所も相次いで事業拠点をドバイに設けるようになった」、なるほど。
・『暗号資産でトラブル 拙著でも、そんな詐欺コインを販売したなどと指摘されている人物を取り上げた。かつて与沢に師事する形で情報商材を売るネオヒルズ族として名を上げ、「SNSで年収2億」をキャッチフレーズに知名度を上げた久積篤史だ。彼はその後、情報商材の世界から転身し、2015年ごろから暗号資産ビジネスを手がけるようになっていた。 「PATRON」「CHIP」「BADGE」といった暗号資産トークンを発行するプロジェクトを主導したが、その後、コイン価格は暴落し、損失を出す人が続出し、一部で被害者の会が立ち上げられていた。日本警察や関東財務局からマークされていると感じた久積は2021年12月にドバイにやってきた。 そこで出会ったのが自らの詐欺疑惑が発覚して、どん底の状況にあった東谷だった。2人とも共通の人物、黒幕Aによってドバイに呼び寄せられていた。 ちなみに与沢と久積はかつてネオヒルズ族として同じ釜の飯を食った仲だが、今は関係が悪化し疎遠になっている。同じドバイに滞在していても、私が知る限り、直接的に接触した形跡はない。昨年7月、久積は与沢を糾弾する動画をYouTubeにあげ、一部で話題になった。暗号資産NXDやツイッターでのお金配り企画などで知られる投資家の瀧澤龍哉もドバイ在住だが、SNS上などで久積が「BADGEコインの上場を邪魔された」などと指摘し、トラブルになっている。ドバイを舞台にして、こうした暗号資産関連の日本人同士のいさかいも起きているのが現実だった。 そうした状況はUAEアブダビにある日本大使館やドバイにある日本総領事館も憂慮しているようだ。3月20日付の総領事館からの注意喚起メールには、こんな一文があった。 「不動産や仮想通貨等の投資案件に起因する日本人同士のトラブルも散見されていますのでご注意ください」 外務省関係者によると、UAE国内で何らかの詐欺的な行為などが報告されている件も含めて、大使館並びに総領事館が調査対象としている要注意の日本人リストは80人前後にのぼり、ここ数年で急増しているという』、「UAE国内で何らかの詐欺的な行為などが報告されている件も含めて、大使館並びに総領事館が調査対象としている要注意の日本人リストは80人前後にのぼり、ここ数年で急増」、「要注意の日本人」がそんなに多いとは驚かされた。
・『官邸を攻撃対象に 一方で、UAEに引きつけられるグレーゾーンの人々は日本人に限らない。とりわけ有名なのは世界中からの政治亡命者の多さだ。 最近では、アフガニスタンのガニ前大統領、スペイン国王だったフアン・カルロス1世、タイのタクシン元首相、インラック元首相の兄妹もアブダビやドバイで事実上の亡命生活を続けているとされる。みな母国に戻れば、過去の汚職などで刑事訴追を受ける可能性があると取り沙汰されている。こうした亡命者は、小国の元首脳や国会議員レベルも含めれば数えきれないほどいる。 経済人も多い。ロシア発のメッセージアプリ・テレグラム創業者で「ロシアのマーク・ザッカーバーグ」の異名を持つパベル・ドゥロフ氏もプーチン政権と距離を置いたとされ、拠点をドバイに移している。ロシアのウクライナ侵攻後には経済規制逃れで欧州に持っていたスーパーヨットなどの資産をUAEに移動させたり、ドバイの高級レジデンスを購入したりしているロシア人富豪(オリガルヒ)も複数いると報道されている。 UAEがなぜ選ばれるのか。この国であれば欧米と遜色ない先進国の暮らしが享受できるという側面のほか、米国、中国、ロシアといった大国とそれぞれ良好な関係を持つ全方位外交を基本にしており、国際政治で中立的な立ち位置を確立していることが大きい。2020年夏にはトランプ米政権の仲介で長らく敵対していたイスラエルと電撃的に国交を開くなど、経済実利を優先するお国柄でもある。) 「寛容」を国是とし、寛容担当大臣という大臣職もつくっている。全世界の約200の国籍の人々が暮らすとされ、外国人を受け入れることが国家の生存戦略の「1丁目1番地」であり、それが外国人に対してオープンであり続ける理由だ。 東谷は最近、警察捜査を「国策捜査」などと指摘し、その不当性を主張し始めている。常習的脅迫や名誉毀損の疑いがあるとされている人気俳優らへの暴露行為はあくまでも事実に基づいた告発であり、そうした容疑には当たらないと訴える一方で、東谷は岸田内閣のキーマンである木原誠二官房副長官を攻撃対象とするなど、政権中枢にも刃を向けてきたため、東谷への捜査は「官邸了解案件」であると囁かれている。 すでに除名されたとはいえ元国会議員でもあり、確かに官邸の関与は十分ありうる話だろう。前述したようにUAEはそうした母国では政治的な迫害を受ける恐れがある者を保護する可能性があり、今後の展開次第では、東谷が政治亡命者として保護下に置かれるウルトラCのシナリオもありうると考えている。 (了。前編から読む)』、「UAEがなぜ選ばれるのか。この国であれば欧米と遜色ない先進国の暮らしが享受できるという側面のほか、米国、中国、ロシアといった大国とそれぞれ良好な関係を持つ全方位外交を基本にしており、国際政治で中立的な立ち位置を確立していることが大きい」、「「寛容」を国是とし、寛容担当大臣という大臣職もつくっている。全世界の約200の国籍の人々が暮らすとされ、外国人を受け入れることが国家の生存戦略の「1丁目1番地」であり、それが外国人に対してオープンであり続ける理由だ」、「すでに除名されたとはいえ元国会議員でもあり、確かに官邸の関与は十分ありうる話だろう。前述したようにUAEはそうした母国では政治的な迫害を受ける恐れがある者を保護する可能性があり、今後の展開次第では、東谷が政治亡命者として保護下に置かれるウルトラCのシナリオもありうると考えている」、そんな「ウルトラCのシナリオ」は実現してほしくない。
第三に、4月19日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏による「日本には「世襲政治家」が多すぎる、ビジネス界からの転身が少ない根本理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/321431
・『昨今は「世襲政治家」への批判が再燃している。自身のホームページに「家系図」を掲載した岸信千代氏、「公用車で観光」疑惑が浮上した岸田翔太郎氏などの言動が目立つからだ。かつては世襲体質を変えようと、各政党が「候補者の公募」に力を入れていた時期もあったが、結果的に「小泉チルドレン」「小沢ガールズ」などと呼ばれた新人は失言や問題行動を繰り返した。なぜ、ビジネス界で活躍する優秀な人材は、あまり政界に入ってこないのだろうか。その根本的要因を考察する』、興味深そうだ。
・『岸信千代氏に岸田翔太郎氏…「政治家の世襲」が批判の的に 議員の辞職・死去などに伴って、欠員を補充するための「補欠選挙」が4月23日に実施される。衆議院で補欠選挙を行う選挙区は、千葉5区、和歌山1区、山口2区・4区の4つである。 このうち衆議院山口2区の補欠選挙は、岸信夫・前防衛相の辞職に伴うものだ。自民党は公認候補として岸氏の長男・信千代氏を擁立している。 ところが今年2月、信千代氏には思わぬ「逆風」が吹いた。 信千代氏は公式ホームページを開設した際、自身のプロフィールとともに、政界の“重鎮”である親族の名前を列挙した家系図を掲載した。それが、堂々と「世襲」をアピールしていると厳しく批判されたのだ。 家系図に名前が記された親族は、父の信夫氏、伯父の安倍晋三氏、祖父の晋太郎氏、曽祖父の安倍寛氏、岸信介氏、曽祖叔父の佐藤栄作氏の6人である。 補欠選挙の話題からは離れるが、世襲といえば、岸田文雄首相による息子・翔太郎氏の“優遇”も記憶に新しい。 岸田首相は翔太郎氏を首相秘書官に起用し、欧米5カ国訪問時に帯同させたのだが、翔太郎氏には公用車で観光していた疑惑が浮上。首相の息子という「特権」を利用したと批判された(本連載第324回)。「政治家の世襲」に対する批判は昔からあるが、ここに来て再燃している。 「政治家の世襲」とは、親は祖父母など親族が作った「三バン」(地盤、かばん、看板)と呼ばれるものを継承して政治活動を行うことをいう。また、三バンを引き継いでいない場合でも、親子などの親族関係があれば、世襲とみなされる場合もある。 自民党国会議員のおおむね3割が世襲議員である。選挙のたびにその割合は上下する。自民党が選挙に敗れたときに、世襲議員の割合が約4割に上がることもある。世襲議員は選挙において「逆風」に左右されない強さがあるとされる。) 世襲議員は、政界でキャリアを重ね、閣僚・党幹部になるのに有利である。第二次岸田改造内閣が2022年8月に発足した際、親族から直接地盤を継承した「純粋な世襲議員」は閣僚20人中9人だった(その後、閣僚辞任によって7人に減少)。また、平成元(1989)年以降の歴代首相の7割が世襲議員である。 だが、世界の中では、世襲議員は当たり前の存在というわけではない。米国議会における世襲議員の比率は約5%にすぎない。ブッシュ家、ケネディ家などは少数派である。 英国では世襲議員はほぼいない。下院議員の約7割が、生まれ故郷でも職場でもない選挙区から立候補する「落下傘候補」である。保守党、労働党など各政党では、「公募」を実施して候補者を決定する「実力主義」が貫かれている。 世襲議員の全員がダメだというつもりはないが、その能力や言動に批判があるのも事実だ。そこで今回は、日本で世襲議員が多い理由と、その背景にある問題を考えたい』、「自民党国会議員のおおむね3割が世襲議員」、「平成元(1989)年以降の歴代首相の7割が世襲議員」、他方、「米国議会における世襲議員の比率は約5%にすぎない」、「英国では世襲議員はほぼいない」、「日本で世襲議員が多い理由と、その背景にある問題を考えたい」、興味深そうだ。
・『実力者が成り上がる昭和の「閨閥」システムとは? 平成以降、世襲議員が首相になることが多くなったが、それ以前は違っていた(本連載の前身『政局LIVEアナリティクス』の第23回)。 昭和の時代に活躍した首相の初当選年齢とキャリアは、以下のようなものだった。 ・池田勇人氏:49歳(1期目に蔵相就任) ・佐藤栄作氏:47歳(当選前に官房長官、1期目に自由党幹事長、郵政相) ・岸信介氏:45歳(戦前に商工相などを歴任、戦後に公職追放解除後4年で初代自民党幹事長) ・福田赳夫氏:47歳(4期目に政調会長、幹事長) ・大平正芳氏:42歳(5期目に官房長官) こうした経歴を見ると、当時の日本では、財界・官界で出世した人物が40代以降に初当選し、即幹部に抜擢(ばってき)される実力主義だったことがうかがえる。 ただし、この実力主義は「条件付き」であり、必ずしも世襲と無縁というわけではなかった。 というのも、当時の総理には、ビジネス界や皇族などのそうそうたるメンバーと血縁・婚姻関係を結び、「閨閥(けいばつ)」と呼ばれる親族関係を形成している人物が多かった。 歴代総理の縁戚関係をたどると、日本を代表する財閥である三井家や住友家、ブリヂストン創業者の石橋一族、森コンツェルンの森一族、昭和電工の安西一族、住友銀行元会長の堀田一族、日本郵船元社長の浅尾一族、そして天皇家などに行きつく。 当時の首相の多くは、本人が名門家系の令嬢と結婚するか、自身の子供を名門家系と結婚させることで縁戚関係を築き、「閨閥議員」として権力を握ったのだ』、「当時の首相の多くは、本人が名門家系の令嬢と結婚するか、自身の子供を名門家系と結婚させることで縁戚関係を築き、「閨閥議員」として権力を握った」、なるほど。
・『外部参入組よりも世襲議員が力を持つ理由とは かつて、官僚となり「閨閥」入りすることは政界への最短コースであり、庶民階級から政界入りする一つの道として確立されていた。 今考えると「閨閥」というシステムは前時代的であり、世襲の一種であることに変わりはないのだが、筆者はこの仕組みに一定の評価を与えている。 あくまで実力でのし上がってきた“強者”たちが、縁戚関係の力を借りて出世の道を切り開くという意味で、「純粋な世襲」とは異なるからだ。実力のない者は、そもそも「閨閥」入りすることは難しく、無条件で既得権益を享受できるわけではない。 だが現在は、閨閥のシステムは終焉を迎え、「純粋な世襲」が当たり前の時代になった。もちろん、外部から政界に参入してくる人材も存在するが、世襲議員のほうが政界でより指導的立場になりやすいのは事実だ。 その一因には、自民党の年功序列システム(当選回数至上主義)の完成がある(前連載第24回)。当選回数至上主義とは、国会議員の当選回数に応じて、閣僚、副大臣、国会の委員会、党の役員といった、さまざまなポストを割り振っていく人事システムである。 自民党議員は当選5~6回で初入閣までは横並びで出世し、その後は能力や実績に応じて閣僚・党役員を歴任していく。 約300人もいる自民党の国会議員の全員が納得できるように党の役職を割り振るのは簡単ではないため、「当選回数」というわかりやすい基準を設けたのだ。このシステムは自民党政権の長期化に伴って固定化し、「当選回数」が国会議員を評価する絶対的な基準となった。 このシステムでは、若くして国会議員に当選すると、それだけ党内での出世に有利となる。そして、強固な選挙区(地盤)、政治資金(かばん)、知名度(看板)を引き継ぐ世襲議員の初当選年齢は若い。 例えば、小泉純一郎氏は30歳、橋本龍太郎氏は26歳、羽田孜氏は34歳、小渕恵三氏は26歳である。ちなみに、史上最年少で自民党幹事長を務めた小沢一郎氏は27歳で初当選した』、「約300人もいる自民党の国会議員の全員が納得できるように党の役職を割り振るのは簡単ではないため、「当選回数」というわかりやすい基準を設けたのだ。このシステムは自民党政権の長期化に伴って固定化し、「当選回数」が国会議員を評価する絶対的な基準となった。 このシステムでは、若くして国会議員に当選すると、それだけ党内での出世に有利となる。そして、強固な選挙区(地盤)、政治資金(かばん)、知名度(看板)を引き継ぐ世襲議員の初当選年齢は若い」、なるほど。
・『「世襲体質」を変えようとした結果 大物政治家の「チルドレン」が暴走の皮肉 一方、この人事システムでは、官界・ビジネス界で成功した後や、知事などを経験した後に40~50代で政界入りした人物の実績はほとんど考慮されない。「ただの1年生議員」として扱われ、そこから政界でのキャリアをスタートさせねばならない。 そして、40~50代で政界入りすると、初入閣するのは 50代後半か60代前半となる。そのとき、彼らと同年代の世襲議員は、既に主要閣僚・党幹部を歴任したリーダーとなっている。 世襲議員を要職に抜擢する人事としては、小泉純一郎内閣の安倍晋三自民党幹事長や石原伸晃国土交通相、麻生太郎内閣の小渕優子少子化担当相、菅義偉内閣の小泉進次郎環境相などが代表例である。 一方、確かに自民党など各政党は、「世襲批判」を受けて「候補者の公募」を行うなど、参入障壁の緩和を図ってきた側面もある。 実際に、2000年代に入ると「小泉チルドレン」(自民党、2005年総選挙)、「小沢ガールズ」(民主党、2009年総選挙)、「安倍チルドレン」(自民党、2012年総選挙)など、三バンを持たない新人の大量当選現象が起こった。 しかし、その結果は惨憺(さんたん)たるものだった。チルドレンのさまざまな失言や不適切な行動によって、「政治家の資質」の低下がより厳しく批判されるようになった。 世襲ありきのシステムを改革しようとした結果、外から政界入りした人材が不祥事を連発させたのだから皮肉なものである。 ビジネス界で活躍する優秀な人材は、なぜあまり政界に入ってこないのだろうか。 筆者は、その理由は二つあると考える。 一つ目は、「1年生議員」として扱われる状況下で出世へのモチベーションを描けないこと。二つ目は、終身雇用・年功序列の「日本型雇用システム」から逸脱するのが難しいことだ(第156回)。 今回は、後者を掘り下げて解説する。現在の雇用慣行では、企業で「正社員」のステータスを得た若者が、年功序列・終身雇用のレールから一度外れると、その恩恵を再び享受することが難しくなる。 そのため転職する場合も、似たような雇用慣行の他社に移る程度であり、政界入りなどの挑戦に踏み切る人は珍しい。) もし政界挑戦などによって会社員としての“空白期間”ができると、中途採用で低評価され、ビジネス界には戻りづらくなるからだ。 すなわち、一般企業の社員が日本で政治家になるということは、大学4年生時の「新卒一括採用」で得た「正社員」の座を捨てることである。生まれながらに三バンを持つ「世襲」の候補者を除けば、大きなリスクのある挑戦となる。 そうなると、年功序列・終身雇用のレールに乗って順調に出世している優秀な人が、わざわざ退職して政治家になる理由がない。会社を辞めるのは、社内で満足な評価を得られず、不満を募らせている人だろう』、「「候補者の公募」を行うなど、参入障壁の緩和を図ってきた側面も」、「小泉チルドレン」・・・「小沢ガールズ」・・・、「安倍チルドレン」、「三バンを持たない新人の大量当選現象が起こった。 しかし、その結果は惨憺(さんたん)たるものだった。チルドレンのさまざまな失言や不適切な行動によって、「政治家の資質」の低下がより厳しく批判されるようになった」、思い出した。
・『世襲議員を高学歴の官僚が支える「逆・学歴社会」が誕生 なお、会社員だけでなく公務員(官僚)でも、「くすぶっている人が外に出たがる」傾向があるという。 あるエリート官僚によると、彼と同じ省から国会議員に転身する人は少なくないものの、政界入りした人物の中で「尊敬できるのは1人しかいない」という。 すなわち、省内で出世コースに乗り、仕事が充実している官僚は政治家に転身しない。転身するのは、省内で評価されず、不満を持っていた官僚なのだ。 ちなみに、英国など欧州では、政治家への道は日本ほどリスキーではない。早期に主要閣僚の業務をこなせる能力を持つ優秀な若者が政界入りしている。40代で首相に就任する政治家も少なくなく、閣僚も若手が起用されることが多い(第131回)。 また、首相や閣僚を辞任後、政界からビジネス界に転じることも多い。米国のIT企業でCEOを務める者もいる。このようなキャリア形成が可能なのは、年功序列・終身雇用がないからに尽きる。 要するに、優秀な人材が政界を目指せる風土を生むには、政界の中だけでなく、日本社会全体の改革が必要だといえるだろう。 あえて皮肉な言い方をすれば、現在の日本の政界は、成蹊大学、成城大学、学習院大学や、幼稚舎から慶応に入った「世襲のお坊ちゃま・お嬢さま」が牛耳っている。 それ以外の外部参入組は、会社や省庁で出世できずに、政界に転じた人たちで占められている。 そうした人々を、東京大学や京都大学を卒業した官僚が支えているのだ。この構図は「逆・学歴社会」だといえる(第233回)。 これでは、優秀な人材はバカバカしくなって政界に興味を持たなくなる。これが「政治家の世襲問題」の本質なのではないだろうか』、「これが「政治家の世襲問題」の本質」、興味深い仮設だ。
第四に、4月19日付け日刊ゲンダイ「岸田首相襲撃の根源に「アベ政治」への激しい怨嗟…見えてきた木村隆二容疑者の犯行動機」を紹介しよう。
・『何が凶行に駆り立てたのか──。岸田首相襲撃犯の木村隆二容疑者(24)が黙秘を続ける中、少しずつ犯行に至った背景が浮かび上がってきた。動機解明の手掛かりとなりそうなのが、「民主主義への挑戦」を続ける「アベ政治」への憤りだ』、興味深そうだ。
・『「民主主義への挑戦」に憤り 木村容疑者は昨年6月、参院選(同年7月実施)に立候補できないのは憲法違反だとして、国に損害賠償を求めて神戸地裁に提訴。その訴訟で安倍元首相の国葬実施や、安倍元首相と統一教会(現・世界平和統一家庭連合)との関係を批判していたことが判明した。 木村容疑者は昨年10月、地裁に提出した準備書面で、「岸田内閣は故安倍晋三の国葬を世論の反対多数の中、閣議決定のみで強行した」と指摘。「民主主義への挑戦は許されるべきではない」と強い言葉で非難していた。 安倍国葬を「暴力に屈せず、民主主義を断固として守り抜く決意を示す場」と位置づけていた岸田首相が、民主的プロセスをないがしろにして国葬を断行したことは批判されて当然である。だからといって、爆弾を自作して襲撃していい理由には決してならないが、木村容疑者が「民主主義への挑戦」に怒りを覚えていたであろうことは想像に難くない。 「国葬は世論の反対が6割以上に上る中、強行されました。木村容疑者も6割を超えた人々のひとりです。彼のものとみられるツイッターを読む限り、統一教会などの宗教組織票を含む『地盤』と『看板』『カバン』を持った世襲への怨嗟や、そうした『持てる者』が階級支配を再生産することへのイラ立ちが透けて見えます。一方で、自民党保守派のような排外主義的な主張も散見される。もともとは自民党支持者ながらも、投票などの正当な手続きでは格差や階級支配をどうにもできない、と絶望した末の犯行ではなかったのか」(高千穂大教授・五野井郁夫氏=国際政治学)』、「もともとは自民党支持者ながらも、投票などの正当な手続きでは格差や階級支配をどうにもできない、と絶望した末の犯行ではなかったのか」、面白い仮設だ。
・『透ける格差や世襲へのイラ立ち 振り返れば、安倍政権は「民主主義への挑戦」の連続だった。選挙で勝利するたび「民意」を錦の御旗に、多くの重要法案も数の力に任せて強行採決。集団的自衛権の行使容認も閣議決定の解釈改憲で片づけてしまった。 民主的な手続きを骨抜きにする政治スタイルを岸田首相も踏襲。防衛予算倍増や原発政策の転換など、自民1強をいいことに、やりたい放題である。 「持てる者」が「強者の論理」に寄りかかり、対話と熟議に基づく民主主義をないがしろにする──。10年以上に及ぶ「アベ政治」が、木村容疑者を蛮行に駆り立てた背景にあるのではないか。 自民党内からは「テロを起こした人間の主張や背景を一顧だにしない」(細野豪志衆院議員)との意見も出ているが、「木村予備軍」は確実にいる。だからこそ、再発防止のために動機や背景を探る必要があるはずだ。 「木村容疑者の犯行が民主主義の破壊行為であることは言うまでもありませんが、ゆえに動機も背景も捨て置くというのは、あまりにも雑です。政治家なら、この国の格差や世襲といった本質的な問題を問うていかないといけないと思います」(五野井郁夫氏) 政治への怨嗟を放置していては、また同じことが繰り返されるだけだ。再び襲撃犯を生みださない責任は、権力を持つ政治側にもある』、「木村容疑者の犯行が民主主義の破壊行為であることは言うまでもありませんが、ゆえに動機も背景も捨て置くというのは、あまりにも雑です。政治家なら、この国の格差や世襲といった本質的な問題を問うていかないといけないと思います」、同感である。
タグ:日本の政治情勢 (その63)(【ドバイに集うクセモノ日本人】ガーシーが最長10年居住できる「ゴールデンビザ」を取得した経緯、【ドバイに集うクセモノ日本人】UAEに引きつけられる世界中のグレーゾーンの人々、日本には「世襲政治家」が多すぎる、ビジネス界からの転身が少ない根本理由、岸田首相襲撃の根源に「アベ政治」への激しい怨嗟…見えてきた木村隆二容疑者の犯行動機) NEWSポストセブン「【ドバイに集うクセモノ日本人】ガーシーが最長10年居住できる「ゴールデンビザ」を取得した経緯」 『悪党 潜入300日 ドバイ・ガーシー一味』(講談社+α新書) 「UAEでは近年、多額の投資をする投資家や博士号取得者、医師、研究者、芸術家など各分野で優れた能力を持つ人に対して最長10年の居住ビザを取得できる「ゴールデンビザ」の制度が始まった。東谷も自ら明かしているが、約120万人のチャンネル登録者数を誇った人気ユーチューバーということで、「クリエーター」の枠で申請したところ、昨年夏ごろにゴールデンビザ取得に成功した」、「UAEの場合、ビザ所持者の母国のパスポートがたとえ失効していたとしてもビザ期限が有効である限りは滞在し続けられるとされる」、 「パスポート失効=不法滞在とはならず、すぐさま強制送還となる可能性は限りなく低い」、なるほど。 「近年、後ろ暗さを抱えながらドバイやアブダビなどUAEに移住する日本人は増えている。邦人人口は在留届が出ている限りでUAE全体で4000人ほどと言われているが、届け出をしていない人も含めれば、その倍、あるいは1万人近くいる可能性があるとも言われる。 とりわけ多いのは暗号資産界隈で生息する人々だ」、 「「秒速で1億円稼ぐ男」と言われた与沢翼だろう。情報商材ビジネスで知られネオヒルズ族として注目を浴びたが、2014年に資金ショートで会社が倒産。深手を負いながら海外に向かい、個人商売に切り替え暗号資産投機で復活を遂げた。いったんはシンガポールなどに居住した後にドバイに移ってきた。 暗号資産で財をなした与沢がドバイでロールスロイスを乗り回す光景はテレビ映像などで拡散し、多くの日本人に影響を与えたのは間違いない」、 「UAE全体が所得税や法人税の負担がないタックスヘイブン(租税回避地)であること(今年6月からは法人税9%を導入予定)もあり、日本の重い租税負担を逃れる目的もあり、暗号資産を主な収入源とする人々の移住が相次ぐようになった」、なるほど。 NEWSポストセブン「【ドバイに集うクセモノ日本人】UAEに引きつけられる世界中のグレーゾーンの人々」 「ドバイは日本の裏人脈の“梁山泊”となっていた」、「ドバイには、日本の格差社会、拝金主義の一端が現われていると言える」、「同じくタックスヘイブンで人気があったシンガポールも2020年から外国人へのビザ発給を厳しくして高額の所得制限などをかけたり、コロナ禍の行動を厳しく制限したこともあり、UAEでは2021年初頭ごろから急激に暗号資産界隈の日本人が増えました」 UAEが積極的に受け入れ策をつくり、暗号資産関連のスタートアップのために複数のフリーゾーン(経済特区)が整備され、バイビットやCrypt.com、バ イナンス、FTXなどの大手暗号資産取引所も相次いで事業拠点をドバイに設けるようになった」、なるほど。 「UAE国内で何らかの詐欺的な行為などが報告されている件も含めて、大使館並びに総領事館が調査対象としている要注意の日本人リストは80人前後にのぼり、ここ数年で急増」、「要注意の日本人」がそんなに多いとは驚かされた。 「UAEがなぜ選ばれるのか。この国であれば欧米と遜色ない先進国の暮らしが享受できるという側面のほか、米国、中国、ロシアといった大国とそれぞれ良好な関係を持つ全方位外交を基本にしており、国際政治で中立的な立ち位置を確立していることが大きい」、 「「寛容」を国是とし、寛容担当大臣という大臣職もつくっている。全世界の約200の国籍の人々が暮らすとされ、外国人を受け入れることが国家の生存戦略の「1丁目1番地」であり、それが外国人に対してオープンであり続ける理由だ」、「すでに除名されたとはいえ元国会議員でもあり、確かに官邸の関与は十分ありうる話だろう。前述したようにUAEはそうした母国では政治的な迫害を受ける恐れがある者を保護する可能性があり、今後の展開次第では、東谷が政治亡命者として保護下に置かれるウルトラCのシナリオもありうると考えている」、そんな 「ウルトラCのシナリオ」は実現してほしくない。 ダイヤモンド・オンライン 上久保誠人氏による「日本には「世襲政治家」が多すぎる、ビジネス界からの転身が少ない根本理由」 「自民党国会議員のおおむね3割が世襲議員」、「平成元(1989)年以降の歴代首相の7割が世襲議員」、他方、「米国議会における世襲議員の比率は約5%にすぎない」、「英国では世襲議員はほぼいない」、「日本で世襲議員が多い理由と、その背景にある問題を考えたい」、興味深そうだ。 「当時の首相の多くは、本人が名門家系の令嬢と結婚するか、自身の子供を名門家系と結婚させることで縁戚関係を築き、「閨閥議員」として権力を握った」、なるほど。 「約300人もいる自民党の国会議員の全員が納得できるように党の役職を割り振るのは簡単ではないため、「当選回数」というわかりやすい基準を設けたのだ。このシステムは自民党政権の長期化に伴って固定化し、「当選回数」が国会議員を評価する絶対的な基準となった。 このシステムでは、若くして国会議員に当選すると、それだけ党内での出世に有利となる。そして、強固な選挙区(地盤)、政治資金(かばん)、知名度(看板)を引き継ぐ世襲議員の初当選年齢は若い」、なるほど。 「「候補者の公募」を行うなど、参入障壁の緩和を図ってきた側面も」、「小泉チルドレン」・・・「小沢ガールズ」・・・、「安倍チルドレン」、「三バンを持たない新人の大量当選現象が起こった。 しかし、その結果は惨憺(さんたん)たるものだった。チルドレンのさまざまな失言や不適切な行動によって、「政治家の資質」の低下がより厳しく批判されるようになった」、思い出した。 「これが「政治家の世襲問題」の本質」、興味深い仮設だ。 日刊ゲンダイ「岸田首相襲撃の根源に「アベ政治」への激しい怨嗟…見えてきた木村隆二容疑者の犯行動機」 「もともとは自民党支持者ながらも、投票などの正当な手続きでは格差や階級支配をどうにもできない、と絶望した末の犯行ではなかったのか」、面白い仮設だ。 「木村容疑者の犯行が民主主義の破壊行為であることは言うまでもありませんが、ゆえに動機も背景も捨て置くというのは、あまりにも雑です。政治家なら、この国の格差や世襲といった本質的な問題を問うていかないといけないと思います」、同感である。