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金融業界(その16)(シリコンバレー銀行にクレディ・スイス…金融不安連鎖で急落する「日本の銀行株」は買いなのか プロが指南する「個人投資家が狙いたい優良投資先」、日本の地銀も他人事ではない欧米の金融不安、含み損で見る「経営不安」の実態) [金融]

金融業界については、3月31日に取上げた。今日は、(その16)(シリコンバレー銀行にクレディ・スイス…金融不安連鎖で急落する「日本の銀行株」は買いなのか プロが指南する「個人投資家が狙いたい優良投資先」、日本の地銀も他人事ではない欧米の金融不安、含み損で見る「経営不安」の実態)である。

先ずは、3月24日付け3/24プレジデント ウーマンが掲載した楽天証券経済研究所所長 兼 チーフ・ストラテジストの窪田 真之氏による「シリコンバレー銀行にクレディ・スイス…金融不安連鎖で急落する「日本の銀行株」は買いなのか プロが指南する「個人投資家が狙いたい優良投資先」」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/67831
・『欧米で金融不安が広がっている。株式市場にどのような影響があるのか。楽天証券チーフ・ストラテジストの窪田真之さんは「米国で銀行株が軒並み急落、日本の銀行株も急落していますが、私は海外展開が進んでいるメガ銀行は買っていいと考えています」という――』、興味深そうだ。
・『急落する日本の銀行株は買いか  米国でシリコンバレー銀行(総資産全米16位)、シグネチャー銀行(同29位)が破綻してから、欧米で金融不安が広がっています。米国で銀行株が軒並み急落、地方銀行の一部で預金の取り付けが起こっています。欧州ではかねてより経営不安が噂されていたクレディ・スイスの株価が急落し、UBSが救済合併に動きました。 欧米の金融当局は、信用不安の拡大を抑えるためにやれることは何でもやる姿勢ですが、金融不安はまだ収まっていません。 欧米の不安は、日本の銀行にとって「対岸の火事」でしょうか。日本の銀行株も急落していますが、買い場と考えていいのでしょうか。私は、三菱UFJフィナンシャル・グループなど海外展開が進んでいるメガ銀行は買っていいと考えています。その理由を解説します』、「私は、三菱UFJフィナンシャル・グループなど海外展開が進んでいるメガ銀行は買っていいと考えています」、一安心だ。
・『シリコンバレー銀行はなぜ破綻することになったか  シリコンバレー銀行(以下、SVBと表記)は、なぜ破綻に追い込まれたのでしょうか? クレディ・スイス(以下、CSと表記)は、なぜ救済合併が必要になるまで財務が悪化したのでしょうか、そこから解説します。 結論から申し上げると、SVBは米国の急激な金利上昇に備えができていなかったために破綻しました。CSは、投資銀行部門の暴走で財務が急激に悪化しました。どちらも特殊要因で信用不安に陥ったもので、日本の大手金融機関が現時点で同様の問題を抱えているとは考えていません。 日本の話をする前に、まずSVBの破綻原因を詳しく解説します。 【図表1】SVB破綻の原因 図表=筆者作成 SVBは、銀行ALM(資産・負債のリスク管理)の初歩ができていなかったために破綻しました。SVBは、テック系新興企業との取引で知られていました。テック系新興企業から預金を預かり、融資をする銀行でした。 ところが、テックバブルで、テック系企業にはベンチャーキャピタルなどから、巨額の資金が供給されていました。すぐに使う予定のない現金をたくさん持つ新興企業が、SVBに多額の預金をしていたため、SVBは預金過多で貸付金が不足していました。そこで、SVBは、期間の長いMBSや米国債など債券投資にのめり込んでいき、金利上昇(債券価格下落)で一気に財務が悪化しました。 通常、金利が上昇しただけで銀行は破綻しません。そうならないように、金利上昇リスクを管理しているからです。具体的に言うと、資産のデュレーション(平均運用期間)と負債のデュレーション(平均調達期間)の乖離かいりが大きくなり過ぎないように管理しています。それが銀行ALMの初歩です。 もう少しわかりやすく言うと、1年定期預金で集めたお金で30年の固定利付住宅ローンを出すようなことはしない、ということです。金利が上昇した時、調達(預金)金利だけ上昇して逆ザヤになるリスクがあるからです。このリスクを避けるため、日本の銀行は30年の固定利付住宅ローンを出したら、金利スワップを使って固定金利を変動金利に変換します。そうすることで、金利上昇リスクに備えます。SVBは、そんな銀行経営の初歩ができていなかったから破綻しました』、「テックバブルで、テック系企業にはベンチャーキャピタルなどから、巨額の資金が供給されていました。すぐに使う予定のない現金をたくさん持つ新興企業が、SVBに多額の預金をしていたため、SVBは預金過多で貸付金が不足していました。そこで、SVBは、期間の長いMBSや米国債など債券投資にのめり込んでいき、金利上昇(債券価格下落)で一気に財務が悪化」、「金利が上昇した時、調達(預金)金利だけ上昇して逆ザヤになるリスクがあるからです。このリスクを避けるため、日本の銀行は30年の固定利付住宅ローンを出したら、金利スワップを使って固定金利を変動金利に変換します。そうすることで、金利上昇リスクに備えます。SVBは、そんな銀行経営の初歩ができていなかったから破綻しました」、お粗末だ。
・『もう1つの破綻原因  SVB破綻のもう1つの原因は、負債サイド(預金)にあります。逃げ足の速い大口の法人預金中心に資金調達していたことも、破綻の原因です。信用が低下すると、すぐに預金の引き出しが集中しました。 銀行ALMにおいて、同じ流動性預金(普通預金や当座預金)でも、個人預金はデュレーションが長い(長い年月にわたって滞留する)ことがわかっています。出入りの激しい法人預金と違って、給与振り込みやクレジットカードの引き落としに指定された個人口座は、長期に滞留するので「コア預金」と呼ばれます。 預金保険制度の存在も、個人預金がコア預金となる要因です。銀行が破綻した場合、日本では1人1000万円まで、米国では1人25万ドル(約3300万円)まで、普通預金や当座預金の残高が保護されます(預金保険機構に加入している銀行)。個人預金は保証額を下回る金額が多いので、信用不安の噂が出てもすぐ引き出しに走ることはありません。ところが、SVBは大口の法人預金を中心に資金を調達していたため、信用不安の噂が出ると、預金の流出が増えて、資金が行き詰まりました』、「SVBは大口の法人預金を中心に資金を調達していたため、信用不安の噂が出ると、預金の流出が増えて、資金が行き詰まりました」、脆弱な資金調達構造が破綻につながったようだ。
・『急激な利上げが直接の原因  このように、SVBは、きわめてリスクの高い資産・負債構造を持っていたために、破綻することになりました。過去に例のないピッチで金利を急騰させたFRB(米連邦準備制度理事会)が、破綻の直接の原因を作りました。0.5%や0.75%など過去に例のない大幅な利上げを繰り返し、1年で一気に4.5%も利上げしたことが、SVBを追い詰めました。 年1%の利上げを4年連続で続けたとしても、SVBは破綻に至らなかったでしょう。年1%ずつの金利上昇ならば、それに対応する資産の入れ替えを少しずつ進めることができたからです。パウエルFRB議長は、2021年当時、米国のインフレは一時的と誤った判断をしていたために、金利引き上げの判断が遅れました。その分、過去に例のない急激な利上げが必要になりました。それが、SVB破綻を生じた直接の原因です』、「過去に例のないピッチで金利を急騰させたFRB・・・が、破綻の直接の原因を作りました」、なるほど。
・『クレディ・スイスはなぜ救済合併が必要になったか  SVBが破綻すると、信用不安が欧州に伝播しました。スイスで2番目の資産規模を持つ大手銀行クレディ・スイス(CS)の株価が急落、放置すれば預金流出が止まらなくなる危機に瀕しました。CSは破綻すると世界の金融システムに重大な影響を与える「国際的に重要な金融機関」に指定されています。破綻すればリーマンショックを超えるダメージが世界の金融システムに及ぶ可能性があります。 CSはなぜ急激に財務が悪化したのでしょうか? 巨大銀行の転落は、さまざまな複合要因が重なった結果です。近年、CSの不祥事が相次いで報道されていました。超富裕層のファミリーオフィスとの取引で巨額損失、不正預金の発覚、経営の混乱……。一連の不祥事の根幹にあるのが、投資銀行部門の暴走です。スイスの銀行が世界中の富裕層から秘密の預金を集めてビジネスをやってきた時代は終わりました。伝統的なスイス銀行のビジネスが衰退する中で、米国流の投資銀行業務を取り入れて収益を稼いでいこうとしたことが、巨大銀行の転落を早めました』、「近年、CSの不祥事が相次いで報道されていました。超富裕層のファミリーオフィスとの取引で巨額損失、不正預金の発覚、経営の混乱……。一連の不祥事の根幹にあるのが、投資銀行部門の暴走です」、「伝統的なスイス銀行のビジネスが衰退する中で、米国流の投資銀行業務を取り入れて収益を稼いでいこうとしたことが、巨大銀行の転落を早めました」、なるほど。
・『法令違反ぎりぎりのきわどい危険な取引  投資銀行部門の暴走で大手金融機関が破綻というと、2008年のリーマンショックを思い出します。リーマンショックの経験から、「国際的に重要な金融機関」には、厳しい自己資本規制が課せられ自己資本を危険にさらす取引は制限されることになりました。そのおかげで、リーマンショック以後、巨大金融機関の危機は起こらなくなっていました。 ところが、CSはその規制をかいくぐる形で危険な取引を繰り返し、財務を毀損きそんしました。CSは見かけ上、自己資本規制をクリアしていましたが、裏で法令違反ぎりぎりのきわどい危険な取引を繰り返し、財務を毀損しました。CSの転落を見ると、リーマンショックの亡霊がよみがえった感を覚えます。 危機拡大を防ぐためスイス金融当局は、すぐに動きました。CSに対し、スイス中銀は15日、最大500億スイスフラン(約7.2兆円)の資金供給を表明し、さらに19日にはスイスのトップ銀行UBSが、約4200億円(円換算額)で買収すると発表しました。通常これだけの大型買収を決める時、資産査定にかなりの時間をかけますが、急転直下で決まったのは、それだけCSの信用不安が深刻だったことになります』、「CSは見かけ上、自己資本規制をクリアしていましたが、裏で法令違反ぎりぎりのきわどい危険な取引を繰り返し、財務を毀損しました。CSの転落を見ると、リーマンショックの亡霊がよみがえった感を覚えます」、「CSに対し、スイス中銀は15日、最大500億スイスフラン(約7.2兆円)の資金供給を表明し、さらに19日にはスイスのトップ銀行UBSが、約4200億円(円換算額)で買収すると発表」、「急転直下で決まったのは、それだけCSの信用不安が深刻だったことになります」、なるほど。
・『「なんでもあり」の救済劇  UBSにCS買収を決断させるために、スイス政府は90億フラン(約1.3兆円)の損失補償をつけました。UBSがCS買収で損失を被った場合、最大90億フランまで政府が補塡ほてんするという内容です。さらに、もう1つ金融市場を驚愕きょうがくさせたのは、CSが資金調達のために発行していた劣後債の一種、AT1債160億スイスフラン(約2.3兆円)を無価値にすると発表したことです。株式に約4200億円の価値をつけておきながら、劣後債の価値をゼロにするというのは、きわめて異例の措置です。CSの預金者の不安を取り除き、預金流出を抑えるために、「なんでもあり」の救済劇が演じられました。 これで一件落着かと言うと、そうはいきません。CSの預金者を安心させるには効果があったと思いますが、代わりに世界中のAT1債保有者に強烈なダメージを与えました。世界中の金融機関がAT1債を使って自己資本を調達してきましたが、AT1債の信用が急低下したことで、今後は発行が難しくなり、銀行資本の調達に支障が生じる可能性が出ています。 また、CSのAT1債への投資家が、無価値化の決定にすんなり納得するとは思えません。これからCSを買収したUBSに対して訴訟が起こされる可能性もあります。CSをめぐる混乱は続きそうです』、「UBSにCS買収を決断させるために、スイス政府は90億フラン(約1.3兆円)の損失補償をつけました」、さらに深刻なのは、「世界中の金融機関がAT1債を使って自己資本を調達してきましたが、AT1債の信用が急低下したことで、今後は発行が難しくなり、銀行資本の調達に支障が生じる可能性が出ています。 また、CSのAT1債への投資家が、無価値化の決定にすんなり納得するとは思えません。これからCSを買収したUBSに対して訴訟が起こされる可能性もあります」、「AT1債」の信用力は、本来は株式より高く、普通社債や預金よりは低い筈なのに、今回は株式が合併により価値が守られ、「AT1債」はデフォルト(債務不履行)になるという極めて異常な事態となった。「AT1債への投資家が、無価値化の決定にすんなり納得するとは思えません。これからCSを買収したUBSに対して訴訟が起こされる可能性もあります」、確かに大いにあり得るシナリオだ。
・『「なんでもあり」の金融不安対策は、奏効するか  SVB・CSの危機を発端に、欧米の金融機関全般に危機が拡散しないよう、米政府は、なんでもありの対策を発動しています。 【1】SVB、シグネチャー銀行の預金を全額保護すると米政府が発表(預金保険機構による預金保護は1人当たり25万ドルまでだが、信用不安の連鎖を防ぐため全額保護としました。 【2】ファースト・リパブリック銀行にJPモルガンなど11行が資金支援(SVB破綻の連鎖で、カリフォルニア州のファースト・リパブリック銀行の株価が急落し、預金流出が深刻になりました。これに対し、JPモルガンなどが300億ドル(約4兆円)の資金支援を実施しました。米政府は、公的資金だけでなく、民間銀行の資金も使って信用不安を抑える姿勢です。 ただし、ファースト・リパブリック銀行の株価下落・預金流出は続いており、信用不安はまだ収まっていません』、「米政府は、公的資金だけでなく、民間銀行の資金も使って信用不安を抑える姿勢です。 ただし、ファースト・リパブリック銀行の株価下落・預金流出は続いており、信用不安はまだ収まっていません」、なるほど。
・『それでもFOMCは利上げを実施  ただ、FRBは金融危機への対応よりも、まだインフレ抑制を重視する姿勢です。22日のFOMC(公開市場委員会)で0.25%の利上げを実施しました。金利上昇がSVB破綻のきっかけになり、信用不安を引き起こしていることに対して、配慮がありませんでした。パウエル議長は22日の記者会見で、「銀行の不安は、放置すると重大なシステム不安につながる」と認識を示したものの、「銀行システムは健全で回復力がある」と、危機が深刻化するリスクが低いとの認識を示しました。私も、このままリーマンショックのような危機に発展する可能性は低いと、現時点では判断しています。 過去の金融危機は、不良債権の拡大で起こりました。日本の1990年代の金融危機は、不動産バブルの崩壊で不良債権が拡大したことで起こりました。米国の2008年の金融危機(リーマンショック)は、米国の住宅価格が急落して、住宅ローン債権(サブプライムローン)が不良債権化したことで起こりました。 今まだ、米国の銀行で、不良債権が急拡大しているということはありません。金利上昇で、保有する米国債などに含み損が生じていますが、不良債権が拡大しない限り、金融全般の危機に広がる可能性は低いと考えています。 ただし、不良債権問題が今後、深刻になるリスクの芽はあります。米国の銀行の資金繰りが厳しくなり貸し渋りが発生していることから、オフィスビルなど不動産市況の下落が始まっていることです。貸し渋りの影響で、不動産市況の下落が加速すると、銀行全体に不良債権が拡大するリスクはあります。そのリスクへの目配りは必要ですが、現時点でそのリスクが高いとは考えていません』、「米国の銀行の資金繰りが厳しくなり貸し渋りが発生していることから、オフィスビルなど不動産市況の下落が始まっている」、「貸し渋りの影響で、不動産市況の下落が加速すると、銀行全体に不良債権が拡大するリスクはあります」、しかし、金融政策は金融政策の論理で展開されるので、銀行システムなどの付随的問題が影響することはないと考えるべきだ。
・『日本のメガ銀行株は買い  欧米の金融不安をきっかけに日本の銀行株も急落しましたが、私は三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、三菱UFJと表記)などメガ銀行株について、買い判断を継続しています。 欧米の金融不安が、日本の銀行にとって対岸の火事と考えているわけではありません。リーマンショックの時と同様、直接的なマイナス影響は大きくありませんが、間接的には大きなマイナス影響を受けます。ただし、そのマイナス影響を勘案してもなお三菱UFJの株価は割安で、長期的な投資魅力は高いと判断しています。 メガバンク買いの理由【1】リーマンショックの影響レビュー  リーマンショックの時、欧米の金融機関が多数破綻しましたが、日本の金融機関への影響は大きくありませんでした。欧米の金融機関が破綻する原因となった北米住宅ローン債権に投資していた銀行は、日本にもあって損失は発生しましたが、日本の金融システム全体への影響は限定的でした。 日本の金融機関は、1990年代に深刻な金融危機を経験し、やっとそこから抜け出した後でしたから、財務的なリスクを拡大することに慎重でした。米国の住宅ローン債権に投資してしまった銀行があったのは、米国の格付機関がトリプルAなどの誤った格付をつけていたためです。信用リスクを取ることに慎重だったので、致命的なダメージを受けた金融機関はほとんどありませんでした。 ただし、リーマンショックを契機に、世界中の中央銀行が大規模な量的緩和を打ち出し、世界的に金利低下が進んだことで、日本の銀行も間接的に大きなマイナス影響を受けました。それに2014年に始まった黒田日銀の異次元緩和が追い打ちをかけました。日本の長期金利はゼロ近辺に沈み、国内商業銀行の預貸金利ザヤを圧迫しました。国内商業銀行業務の比率が高い、国内金融機関の多くが収益にダメージを受けました。 三菱UFJは、海外ビジネスや、投資銀行業務への多角化を進めることで、純利益8000億円から1兆円の高収益を維持してきました。ただし、リーマンショック以降、株価は長期にわたり低迷が続いてきました。低金利が収益にダメージを与える懸念が続いていたからです』、「三菱UFJの株価は割安で、長期的な投資魅力は高いと判断」、異論はない。
・『メガバンク買いの理由【2】今起こっている欧米の金融危機の影響  今ある欧米の金融危機も、日本の銀行への直接的な影響は限定的と考えています。SVB破綻の原因となった米国の金利急騰は、日本の銀行にも影響しています。米金利急騰で、外債に含み損を抱える銀行が増えました。ただし、日本の大手銀行は今、全般的に不良債権比率が低く、保有する株式に含み益があるため、財務的な問題はほとんどありません。 日本には、SVBのように、ALMの初歩を踏み外した銀行も、CSのように投資銀行業務で過剰なリスクを負っている銀行も無いと判断していますので、今回の欧米の信用不安が日本の銀行に連鎖することはないと予想しています。 ただし、日本の銀行も、間接的に大きなマイナス影響を受ける可能性が出ています。今回の危機で、世界的に金利が低下しました。金利低下は、長期的に銀行の利ザヤを低下させる懸念があります。日本の銀行にとって影響が大きいのは、日本の長期金利が低下した影響です。 日本の銀行は、長期金利をゼロ近辺に固定する日銀の政策で、長らくダメージを受けてきました。昨年12月、日銀が長期金利の上限を0.25%から0.5%に引き上げた時、やっと国内商業銀行業務の収益性が改善する期待が出たことを好感して、日本の銀行株は急騰しました。 ところが、3月に入り、欧米の金融危機が伝播すると、日本の長期金利は一時0.25%に戻ってしまいました。0.5%への長期金利引き上げに喜んだのも束の間、また元の低金利に戻る懸念から、日本の銀行株は暴落しました。 【図表3】日本の長期金利(10年国債利回り)と、東証・銀行株指数の推移:2016年1月-2023年3月(22日) 出所=QUICKより楽天証券経済研究所が作成』、「日本の長期金利」が「元の低金利に戻る懸念から、日本の銀行株は暴落」、困ったことだ。
・『長期投資していく価値が高い  先行きのインフレがどうなるか不透明ですが、私は日本にもしぶとくインフレが定着すると予想しています。欧米の金融危機が収束すれば、また日本の長期金利にも上昇圧力が働くと予想しています。そうなると、三菱UFJの株価も見直されて反発していくと予想しています。 仮に長期金利が上昇しないとしても、三菱UFJは、海外ビジネスの拡大や、ユニバーサルバンク経営(投資銀行業務などへの多角化)で安定的に収益を稼いでいく力があると考えています。欧米の金融不安が収まるまで、不安定な値動きが続きそうですが、今の株価は割安で、長期投資していく価値が高いと判断しています。(窪田 真之氏の略歴はリンク先参照)』、「今の株価は割安で、長期投資していく価値が高いと判断」、同感である。

次に、3月31日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したオペレーショナル・デザイナー(沼津信用金庫 非常勤参与)の佐々木城夛氏による「日本の地銀も他人事ではない欧米の金融不安、含み損で見る「経営不安」の実態」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/320429
・『シリコンバレー銀行の破綻とクレディ・スイスの経営不安  3月10日の米国のシリコンバレー銀行(SVB)の経営破綻と、3月15日のスイスのクレディ・スイスグループの経営不安は、それぞれ別要因で起きたものの、これらを契機に、銀行の財務健全性に対する不安が広がっている模様だ。2008年のリーマンショックを契機とした世界金融危機のような事象を防止・抑止しようと、各国の金融当局が緊密に連携されているようだ。 SVBの破綻の引き金となった要因の一つに、米国内のインフレ抑制を目的に繰り返された利上げが、債券価格の下落をもたらしたことが挙げられる。利上げによってSVBが投資・運用していた不動産担保証券(MBS)の価値が毀損し、それに伴う信用不安が預金流出に拍車をかけた事実が報じられている。 米国のみならず、欧州中央銀行も、インフレ率を2%まで引き下げることを目標に、3月まで6回連続で利上げを実施している。従って欧州でも、低金利時代に発行された債券の価格が、漏れなく下落していることだろう。 “金余り”と呼ばれる低預貸率を背景に膨らんだ余裕資金の運用を巡り、邦銀は、かねて投資先に悩んできた。2016年2月のマイナス金利政策導入から既に7年が経過し、利ざやを求めて外国債券(外債)などに投資した残高が、既に相当額に積み上がってもいる。 短期の預金流出によって経営破綻したSVBの預金者に占める法人比率は高く、個人預金比率の高い邦銀の調達構造とは異なる。わが国では個人の預金保険制度への認知度をはじめとする金融リテラシーも総じて高く、短期的には、信用不安を背景とした取り付け騒ぎは発生しないだろう。 その一方で、金利上昇によって投資した債券の価格が下落し、いわゆる含み損となって邦銀の体力を着実に奪っている。その状況について、昨年11月から今年1月にかけて公表された2022年9月末時点の地方銀行62行・第二地方銀行37行の半期ディスクロージャー誌(中間ディスクロージャー誌)より、特徴的な動向を紹介したい』、興味深そうだ。
・『地方銀行・第二地方銀行99行の1行当たりの「貯金」は約156億円(各行の半期ディスクロージャー誌には、保有する有価証券の時価情報が記載されている。掲載情報のうち、利息・配当やキャピタルゲイン目的で投資する有価証券を抽出し、市場における時価を貸借対照表上に計上する「その他有価証券」に着目した。 その他有価証券は、主に「株式」「債券」「その他」の3種で区分けされる。おのおのについて、時価が取得原価(=購入・投資時の原価)を上回る含み益のある有価証券の金額・差益と、取得原価を下回る含み損のある有価証券の金額・差損が表示されている。 これらについて、地方銀行・第二地方銀行99行の金額を合算した[図表1]。ひと言で言えば株式の含み益をそれ以外の含み損が減らし、全体としての含み益の合計は1兆5525億円となった。99行で単純に割った“貯金”は、1行当り156億8223万円となる計算だ』、「1行当り156億8223万円」とは想像以上に小さいようだ。これでは、長期金利が上昇し始めればひとたまりもなく吹き飛ぶだろう。
・『日本の地銀も他人事ではない欧米の金融不安、含み損で見る「経営不安」の実態  含み損が含み益を上回ったのは3行のみ 次に、その他有価証券の内訳別の動向を概観したい。最初に「株式」に着目する。 99行の株式の含み益と含み損を差し引きし、金額順で並べ替えた上で、上位および下位10行を機械的に抽出した[図表2]。 図表2:保有株式含み益順位[単位:百万円] 図表1で示した通り、全体として約3兆8400億円の含み益を保有するだけあって、99行中、ゼロの3行、マイナスの3行を除く93行の評価がプラスだ。上位10行のうち、第二地方銀行は9位の北洋銀行だけ、逆に下位10行のうち地方銀行は90位の東北銀行だけとなっていることが特徴的だ。北洋銀行も、1998年に旧北海道拓殖銀行から道内の営業を譲り受けているため、歴史や事業規模との一定の相関性が認められよう』、「北洋銀行」は「旧北海道拓殖銀行から道内の営業を譲り受け」たことがプラスになっているようだ。
・『全体の9割以上が「債券」で含み損  次に、国債・地方債・社債等を区分する「債券」に着目した。図表2と同様の手順で債券についても含み益と含み損を差し引きし、上位および下位10行を機械的に抽出した[図表3]。 図表3:保有債券含み益順位[単位:百万円] 株式とは逆に、含み益が認められたのはわずか7行にとどまり、全体の9割以上の91行に含み損が認められた。含み益が認められた7行の合計額約260億円のうち、1位の岩手銀行の約184億円だけで、7割を占める。 数値は昨年9月末現在の市場環境での時価だが、その後の昨年12月20日には、日本銀行が大規模な金融緩和政策の修正方針を決定し、±0.25%から±0.50%への事実上の利上げを行っている。 それまでマイナス金利で発行されていた2年国債も12月23日にはプラスに転じ、1月18日までプラスで発行され続けている。3月末まで現在の金利水準で推移した場合には、邦銀が低金利時代に積み上げた債券ポートフォリオの含み損が、さらに膨らむ可能性があろう』、長期金利上昇には脆弱なようだ。
・『「外債・投信」の含み益は11行  内訳の最後は、外債・投信などを含む「その他」の区分だ。株式・債券と同様の通算・並べ替えを行ったが、10位の長崎銀行に続く11位の福邦銀行までがプラス、ゼロの但馬銀行と北九州銀行の2行を除く86行がマイナスとなった。90位から99位までの10行の単純合計だけで、含み損が6552億円に達する[図表4]。 図表4:保有その他含み益順位[単位:百万円]  報道によれば、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、SVBグループの株式と債券を約437億円保有している模様だ。わが国以外でも、ノルウェーの政府系ファンドがSVBグループに投資を行っていた事実とその後の動向が断続的に報じられている。 邦銀が直接SVBに投資を行っていなくとも、SVBの破綻によって損失を被ったこのような機関投資家などに投資していれば、外債などの価格が下落する可能性がある。 ライバル行であったUBSによる買収によって信用不安の収束を図っているクレディ・スイスグループも、3月19日にスイス金融当局がAdditional Tier1債券(偶発転換社債/AT1債)を無価値にして自己資本に組み入れると発表した。) AT1債は株式と劣後債の間に位置付けられ、破綻時の弁済順位が低い分だけリスク・プレミアムが乗る。それゆえに、直接の社債投資のほか、グローバル運用などをうたう投資信託に組み入れられて投資していた可能性もあろう。 もちろん、特定の発行体絡みの信用リスクの低下のみならず、金利上昇による価格低下も見込まれる。昨秋以降の相次ぐ米欧の利上げは、直接的な価格低下をもたらすだろう』、「外債・投信などを含む「その他」」も厳しいようだ。
・『地方銀行・第二地方銀行はグループ化や増資を模索  含み損となった債券は、国内債・外債を問わず満期まで保有すれば全額で償還されるものの、取得価格に対して一定の水準まで価格が下落すれば、帳簿価格を引き下げて損失の計上が求められる。いわゆる減損処理だ。 米欧日が金融緩和からのシフトチェンジ、すなわち利上げをなお模索する中では、国内債・外債共に逆風と言わざるを得ず、減損に至る前に諦めて損失処理に踏み切ろうとする動きが見込まれよう。 その際の経営判断は、自己資本などの経営体力のほか、収益力による補填と対比することとなろう。そこで、その他有価証券の損益通算が赤字となっている地方銀行・第二地方銀行58行について、中間純利益を機械的に2倍して「1年分」とし、「稼ぐ力」の何年分の含み損に該当するのかを試算した[図表5]。 図表5:「その他有価証券」合計含み損解消所要年数(試算([単位:百万円、年]) 不良債権処理などの特殊要因によって中間純利益が赤字となったきらやか銀行と福邦銀行を除く56行のうち、18行が既に2年以上に膨らんでおり、10年以上も3行に及ぶ。従って、減損処理に当たっても各行経営者は慎重な匙加減を図っていることだろう。 今後、わが国発の信用不安を引き起こさないため、地方銀行・第二地方銀行はさらなるグループ化のほか、増資などの資本政策を模索することとなるだろう。 (オペレーショナル・デザイナー〈沼津信用金庫 非常勤参与〉 佐々木城夛)』、「含み損解消所要年数」で「18行が既に2年以上に膨らんでおり、10年以上も3行に及ぶ」、とは深刻だ。今後の長期金利上昇への備えなどないようだ。
タグ:(その16)(シリコンバレー銀行にクレディ・スイス…金融不安連鎖で急落する「日本の銀行株」は買いなのか プロが指南する「個人投資家が狙いたい優良投資先」、日本の地銀も他人事ではない欧米の金融不安、含み損で見る「経営不安」の実態) 金融業界 プレジデント ウーマン 窪田 真之氏による「シリコンバレー銀行にクレディ・スイス…金融不安連鎖で急落する「日本の銀行株」は買いなのか プロが指南する「個人投資家が狙いたい優良投資先」」 「私は、三菱UFJフィナンシャル・グループなど海外展開が進んでいるメガ銀行は買っていいと考えています」、一安心だ。 「テックバブルで、テック系企業にはベンチャーキャピタルなどから、巨額の資金が供給されていました。すぐに使う予定のない現金をたくさん持つ新興企業が、SVBに多額の預金をしていたため、SVBは預金過多で貸付金が不足していました。そこで、SVBは、期間の長いMBSや米国債など債券投資にのめり込んでいき、金利上昇(債券価格下落)で一気に財務が悪化」、 「金利が上昇した時、調達(預金)金利だけ上昇して逆ザヤになるリスクがあるからです。このリスクを避けるため、日本の銀行は30年の固定利付住宅ローンを出したら、金利スワップを使って固定金利を変動金利に変換します。そうすることで、金利上昇リスクに備えます。SVBは、そんな銀行経営の初歩ができていなかったから破綻しました」、お粗末だ。 「SVBは大口の法人預金を中心に資金を調達していたため、信用不安の噂が出ると、預金の流出が増えて、資金が行き詰まりました」、脆弱な資金調達構造が破綻につながったようだ。 「過去に例のないピッチで金利を急騰させたFRB・・・が、破綻の直接の原因を作りました」、なるほど。 「近年、CSの不祥事が相次いで報道されていました。超富裕層のファミリーオフィスとの取引で巨額損失、不正預金の発覚、経営の混乱……。一連の不祥事の根幹にあるのが、投資銀行部門の暴走です」、「伝統的なスイス銀行のビジネスが衰退する中で、米国流の投資銀行業務を取り入れて収益を稼いでいこうとしたことが、巨大銀行の転落を早めました」、なるほど。 「CSは見かけ上、自己資本規制をクリアしていましたが、裏で法令違反ぎりぎりのきわどい危険な取引を繰り返し、財務を毀損しました。CSの転落を見ると、リーマンショックの亡霊がよみがえった感を覚えます」、「CSに対し、スイス中銀は15日、最大500億スイスフラン(約7.2兆円)の資金供給を表明し、さらに19日にはスイスのトップ銀行UBSが、約4200億円(円換算額)で買収すると発表」、「急転直下で決まったのは、それだけCSの信用不安が深刻だったことになります」、なるほど。 「UBSにCS買収を決断させるために、スイス政府は90億フラン(約1.3兆円)の損失補償をつけました」、さらに深刻なのは、「世界中の金融機関がAT1債を使って自己資本を調達してきましたが、AT1債の信用が急低下したことで、今後は発行が難しくなり、銀行資本の調達に支障が生じる可能性が出ています。 また、CSのAT1債への投資家が、無価値化の決定にすんなり納得するとは思えません。これからCSを買収したUBSに対して訴訟が起こされる可能性もあります」、「AT1債」の信用力は、本来は株式より高く、普通社債や預金よりは低い筈なのに、今回は株式が合併により価値が守られ、「AT1債」はデフォルト(債務不履行)になるという極めて異常な事態となった。 「AT1債への投資家が、無価値化の決定にすんなり納得するとは思えません。これからCSを買収したUBSに対して訴訟が起こされる可能性もあります」、確かに大いにあり得るシナリオだ。 「米政府は、公的資金だけでなく、民間銀行の資金も使って信用不安を抑える姿勢です。 ただし、ファースト・リパブリック銀行の株価下落・預金流出は続いており、信用不安はまだ収まっていません」、なるほど。 「米国の銀行の資金繰りが厳しくなり貸し渋りが発生していることから、オフィスビルなど不動産市況の下落が始まっている」、「貸し渋りの影響で、不動産市況の下落が加速すると、銀行全体に不良債権が拡大するリスクはあります」、しかし、金融政策は金融政策の論理で展開されるので、銀行システムなどの付随的問題が影響することはないと考えるべきだ。 「三菱UFJの株価は割安で、長期的な投資魅力は高いと判断」、異論はない。 「日本の長期金利」が「元の低金利に戻る懸念から、日本の銀行株は暴落」、困ったことだ。 「今の株価は割安で、長期投資していく価値が高いと判断」、同感である。 ダイヤモンド・オンライン 佐々木城夛氏による「日本の地銀も他人事ではない欧米の金融不安、含み損で見る「経営不安」の実態」 「1行当り156億8223万円」とは想像以上に小さいようだ。これでは、長期金利が上昇し始めればひとたまりもなく吹き飛ぶだろう。 「北洋銀行」は「旧北海道拓殖銀行から道内の営業を譲り受け」たことがプラスになっているようだ。 長期金利上昇には脆弱なようだ。 「外債・投信などを含む「その他」」も厳しいようだ。 「含み損解消所要年数」で「18行が既に2年以上に膨らんでおり、10年以上も3行に及ぶ」、とは深刻だ。今後の長期金利上昇への備えなどないようだ。
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