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TPP問題(6)大筋合意後(医療関連、農業問題など) [外交]

TPP問題については、前回は昨年10月14日に取上げたが、今日はその後判明した驚くべき合意内容を (6)大筋合意後(医療関連、農業問題など) として見てみよう。

先ずは、昨年12月7日付け日刊ゲンダイ「ジャーナリスト堤未果氏 「国民皆保険の切り崩しは始まっています」」を紹介したい(▽は小見出し、Qは記者の質問、Qは堤氏の回答)。
・臨時国会を拒否し、2日間の閉会中審査でTPP審議をはぐらかした安倍政権がバラマキを始めた。最も反対の声が大きい農林水産業界を黙らせ、国民が売国条約の全容を知る前に承認に持ち込もうというハラなのだが、問題は農業だけじゃない。米国が狙う本丸は医療分野だ。その懸念を早くから訴えてきたこの国際ジャーナリストの堤未果氏は、「国民皆保険制度の切り崩しはすでに始まっている」と警鐘を鳴らす。
Q:10月に大筋合意したTPPの全文が11月にようやく公表されました。
A:日本政府が作成した30章97ページの「TPP協定の全章概要」はかなりはしょっています。ニュージーランド政府の英文文書はまったく同じ内容なのに598ページ。文書を含めた全体では1500ページ超が215ページに縮められています。話になりません。
Q:日本政府が公開したのは本当の意味の全文じゃないんですね。
A:私が取材している医療や食品にとって重要な「知的財産章」「投資章」「透明性及び制度に関する規定章」は、138ページが21ページに圧縮されています。そもそも、TPPの正文(国際条約を確定する正式な条約文)は英語、仏語、スペイン語。域内GDPで米国に次ぐ経済力のある日本が入っていないことになぜ外務省は抗議しないんでしょう? 「不都合な真実」を国民に知られまいと、外務省が正文扱いを断ったんじゃないかという臆測まで広まっています。
Q:一般の国民が全容を知るのは不可能に近いですね。国会議員でも怪しいところですが。
A:外務省は英語正文を読み込める国会議員はいないとタカをくくっているんです。外務省が都合よく翻訳した「概要」をベースにいくら審議を重ねても意味がない。いつものように手のひらで転がされるだけです。
▽TPPの正文翻訳を急がなければ安倍政権の思うツボ
Q:国会議員がしっかりしないとマズい。
A:正文に記された内容を正確に把握した上で問題点を追及しなければ、承認を急ぐ安倍政権の思うツボ。日本語の正文がない以上、外注でも何でもして大至急翻訳する必要があります。法律には巧妙な言い回しで“地雷”を埋め込まれていますから、国際弁護士のチェックも欠かせません。適用範囲が拡大したTPPの肝であるISD条項(国と投資家の間の紛争解決条項)はすべての国会議員が目を通すべきですし、厚労委に所属する先生だったら食の安全と医療は最低限押さえるとか、それぞれの専門分野の正文を読むべきです。こういう時のために税金から政党助成金が配分されているんです。30人の国会議員で1章ずつ翻訳を頼めば、アッという間にできる作業でしょう。臨時国会が召集されず、審議が本格化する年明けの通常国会まで時間はあるんですから。
Q:正文の翻訳をHPなりSNSにアップしてくれれば、一般の国民も内容に触れやすくなります。
A:そうですね。まずは全章翻訳ですが、TPPは付属書と日米並行協議などの内容をまとめた2国間交換文書の3つで1セット。法律は付帯文書に核心を仕込んでいることがままありますし、TPP参加の入場券と引き換えに日米並行協議で非関税障壁を要求されています。ここで日本がのんだ「譲歩リスト」は特にしっかり精査しなければなりません。TPPは「1%VS99%の情報戦争」。時間との勝負なんです。
▽米国でTPPが批准されないという見通しは甘い
Q:「1%VS99%」とは、どういうことですか?
A:TPPは「1%のクーデター」とも呼ばれています。1%というのは、米国の多国籍企業や企業の利益を追求するロビイスト、投資家やスーパーリッチ(超富裕層)のこと。彼らの目的は国から国家の機能を奪い、株式会社化して、効率良く利益を最大化することなんです。民営化は彼らをますます潤わせる手段です。いま、米国で最も力のあるロビイストは製薬業界。彼らが虎視眈々と狙っているのが日本の医療分野で、30年前から自由化の圧力をかけてきた。TPPはその総仕上げなんです。
Q:中曽根政権時代ですね。
A:86年のMOSS協議(市場分野別個別協議)で米国から薬と医療機器の市場開放を求められたのが皮切りです。その後も対日年次改革要望書などで混合医療の解禁や米保険会社の市場参入、薬や医療機器の価格を決定する中医協に米企業関係者の参加を要求するなど、さまざまな注文を付けてきた。TPPを批准したら安倍首相の言う通りに皆保険の仕組みは残りますが、確実に形骸化します。自己負担限度額を設けた高額療養費制度もなし崩しになるでしょう。米国民と同じ苦しみを味わうことになってしまいます。
Q:米国では14年にオバマ大統領が皆保険を実施しましたが、そんなにヒドイ状況なんですか?
A:通称「オバマケア」は社会保障の色合いが濃い日本の皆保険とは似て非なる制度。民間医療保険への加入を義務付けられたのです。日本では収入に応じた保険料を支払い、健康保険証を提示すれば誰でもどこでも病院で受診できる。オバマケアは健康状態によって掛け金が変動する民間保険に強制加入させられる上、無加入者は罰金を科されます。オバマケアは政府に入り込んだ保険会社の重役が作った法律。保険会社はリスクが上がるという口実で保険料を引き上げ、プランごとにカバーできる医療サービスや処方薬を見直した。保険料は毎年値上がりするし、米国の薬価は製薬会社に決定権があるため非常に高額。日本と同程度の医療サービスを受けられるのは、ひと握りの金持ちだけ。当初喝采していた政権びいきのNYタイムズまで保険料や薬価が高騰したと批判し始めました。
Q:盲腸の手術に200万円とか、タミフル1錠7万円というのは大げさな話じゃないんですね。
A:WHO(世界保健機関)のチャン事務局長もTPPによる薬価高騰の懸念を示していますし、国境なき医師団も非難しています。「特許期間延長制度」「新薬のデータ保護期間ルール構築」「特許リンケージ制度」は、いずれも後発薬の発売を遅らせるものです。製薬会社にとって新薬はドル箱です。TPPによって後発薬発売が実質延長されるでしょう。米国では特許が切れたタイミングで後発薬を売り出そうとする会社に対し、新薬を持つ製薬会社が難癖をつけて訴訟に持ち込む。裁判中は後発薬の発売ができませんから、引き延ばすほど製薬会社にとってはオイシイんです。
▽「TPPの実態は独占」
Q:HIVや肝炎などを抱える患者にとっては死活問題ですが、日本の薬価や診療報酬は中医協や厚労省が決定権を握っています。
A:TPPの「透明性の章」と関係するんですが、貿易条約で言う「透明性」は利害関係者を決定プロセスに参加させる、という意味。米国は小渕政権時代から中医協に民間を入れろと迫っているんです。TPPでそれを許せば、公共性や医療の正当性を軸にしている審査の場にビジネス論理が持ち込まれてしまう。グローバル製薬業界は新薬の保険適用を縮小したり、公定価格との差額を政府に穴埋めさせるなどして皆保険を残したまま高く売りつけたい。医療費がかさめば、民間保険に加入せざるを得なくなり、保険会社もニンマリですよ。TPPが発効したら、政府は医療費抑制のために3つの選択肢を示すでしょう。+皆保険維持のために薬価は全額自己負担+自己負担率を8割に引き上げ+診療報酬の引き下げ――。診療報酬が下がれば儲からない病院は潰れ、医師は米国と同じように利益を意識して患者を選ばざるを得なくなる。最終的にシワ寄せは私たちにきます。
Q:安倍政権が取り組む国家戦略特区で、大阪は医療分野の規制緩和に向けて動き出しています。
A:大阪だけではすみません。特区内に本社を置けば、特区外でも同様の医療サービスを展開できる。事実上の自由診療解禁です。マスコミはTPPを自由化というスタンスで報じていますが、TPPの実態は独占。国内産業保護のために規制していた参加国のルールは自由化されますが、製薬会社などが持つ特許や知財権は彼らの独占状態になる。1%の人々にとってTPPは夢。ロビイストが米議会にバラまいた献金は100億円を超えましたが、その何百倍もの恩恵を未来永劫得られるのですから安い投資です。米国でTPPが批准されないという見通しは甘い。実現に向けて彼らはさらに札束をまくでしょう。日本が抜ければTPPは発効しません。年明けの国会が最後の勝負です。
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/170925/1

次に、農業問題について、九州大学大学院農学研究院教授の伊東正一氏が、1月28日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「消費者利益無視で血税を無駄遣い TPP「コメ輸入枠拡大」は誰のためか」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽消費者のメリットを犠牲にし国内生産も先細りの悪循環
・2015年10月に政府間合意に至ったTPP交渉だが、食料部門において日本政府は「国内への被害をぎりぎりのところまで抑えた」という表現をして、TPPがいかにも一般大衆に害を与えるようなイメージを醸し出している。だが、農産物輸入の拡大で、最もメリットを受けるのはほかならぬ消費者であるはずである。
・これは食料の分野のみならず、医療などの分野でも同じことが言えよう。国内の生産者サイドは政府も含め、消費者のメリットを犠牲にして自分たちのこれまでの“特権”を守ろうという姿勢がある。本当に消費者を守ろうというのであれば、また、自分たちの生産した商品に自信があれば、海外からの輸入を自由化し、その選択を消費者に委ねるべきである。
・今回の交渉で最も時間のかかった項目の一つであるコメについてその内容を見ると、初年度に米国から5万トン、オーストラリアから6000トンの枠を設定し、13年後までにこの枠を徐々に拡大してそれぞれ7万トン、8400トンとする、というもので、合計8万トン近くの枠拡大となる。これを、政府に輸入米を売る輸入業者と輸入米を買う卸業者が売りと買いの価格をあらかじめ相談して決め連名で入札する、SBS方式(同時売買契約)として輸入するとしている。
・しかし、ガット・ウルグアイラウンドで1994年に最終合意され現在に引き継がれているミニマムアクセス米(MA米)*の、年間76万7000トンの輸入米の中にSBS米の枠が10万トンあるが、これに人気がないとされている。この新たなTPP枠も応札がないであろう、との見通しが強い。仮にそうなると、消費者には何らメリットがない。
・だが、本当にそのようなものなのであろうか。確かに、これまでのSBS米の輸入実績(図1)を見ると、この2年間は10万トンの枠に対して1万トン余の輸入である。そこで、すでに実施されているSBS米輸入における政府のやり方を、よく見てみたい。
・SBS米輸入を含めたミニマムアクセス米輸入を、日本政府は「国家貿易品目」として取り扱っている。国家貿易というのは、そもそも自由貿易の精神にはなじまない。政府があらゆる面において介入し、取引を不自然にし、国内での販売価格を高く設定してしまう。
・これは国内の生産者サイドに悪影響を与えないため、という前提に立っている。この前提がおかしい。自由化に向けた国家間の交渉は、より多く貿易を行い、輸入国においてはそれまでの高い国内価格をより低くする、という目的がある。そのようにして消費者のメリットを拡大し、ひいては経済を活性化するのが本来の目的である。その目的を反故にして、国内生産を守ろうとする姿勢は、何のための自由化交渉なのか理解できない。
・国内生産物の価格が高ければ、その原料資材の価格も高く設定される。そうして、生産コストは高いままとなり、国際的には輸出できない状態が続く。その結果は国内産業の先細りである。国内の消費者は全く浮かばれない。
・その悪循環が日本産の国際競争力を抑えてしまう。それはすなわち、国内の供給サイドも不幸な結末を見ることになるが、消費者にとってはまさに迷惑千万である。海外産のものが国内市場に豊富に出回ることは消費者の選択肢が拡大することであり、消費者にとってはプラスにこそなれ、マイナスにはならない。
・そのようなチャンスをTPPは消費者に与えてくれるはずである。しかし、消費者のチャンスを阻止しようと国内サイド、特に政府が動くとすれば、それでは誰のための政府か、という根本姿勢が問われる。
▽“輸入米は人気がない”は本当か?エサ米処分に米国の稲作農家は激怒
・一般消費者から「アメリカ産のコメはどこで買えるのですか?」という質問をよく受ける。近年、海外産のコメはどこのスーパーにも売っていない状態となっている。なぜこのようなことが起こっているのか。
・日本は世界に約束した76万7000トンのコメを国家貿易として毎年輸入しているのである。しかも、それらは約600項目にも及ぶ残留農薬などの安全検査を現地での出荷前と日本到着との2回にわたり実施して、合格したコメが輸入されているのだ。日本産のコメでさえこのような厳しいチェックは受けていない。そのような安全な輸入米がどうして日本では一般のスーパーで手に入らないのだろうか。外国産のコメは高いのか?
・決してそうではない。いま干ばつによる影響で高騰しているカリフォルニア産米「キャルローズ」でも現地では精米1トン当たり850ドル(精米所の出荷価格)、つまり、精米1kg当たり85セント、これは1ドル120円の為替レートで102円である。これを現地で精米10kgの袋に入れ、日本に関税のかからないミニマムアクセス米として日本に輸入した場合、筆者の計測によれば、小売り2156円で販売できる。干ばつがない状態であれば、現地の相場も下落して、日本での小売価格は同1697円と算出される。中国産の場合であれば、日本人が食べてもおいしいと感じられるコメは2102円で手に入る計算となる。
・農林水産省は外国から輸入されたコメは人気がなく、売れない、と言っている。そうして、せっかく輸入した76万7000トンのコメの半分以上を最後にはエサとして極端な安い価格で処分している。これがこの10年間近く続いている。このため、コメ輸入の採算は毎年のごとく赤字を出しており、年によっては400億円近い赤字、これまでの累計では2778億円(日本農業新聞、2015年2月4日付)に達している。政府の累積赤字が1000兆円を超えるとき、国民の血税がこうも無駄に使われている。
・自分たちが輸出したコメが日本でエサ米になっていると知ったカリフォルニアの稲作農家は激怒していた。自分たちが誇りを持って作ったコメを、しかも海外では日本食レストランで使用しているキャルローズが、日本では「エサにしか売れなかった」とは、輸出した立場からは「我々が育てたコメを馬鹿にするな、日本はどうなっているのだ?」と、怒りとともに疑いたくなるであろう。
▽なぜ輸入米は「売れない」のか?農水省の入札制度のカラクリ
・どうして農水省は、輸入米は「売れない」と言うのであろうか。その問題となる原因と解決策を考えてみたい。
・まず主食として販売されるはずのSBS米の輸入であるが、現在10万トンの枠が設定されている。これはコメの卸業者が買い取りを約束して入札するものであり、政府としては最もやりやすく、また、税収があり、赤字は確実に避けられるコメ輸入である。これが前掲の図1で見るように、最近は応札がない、という状況が起きている。
・この仕組みをよく見ると、入札に対して政府は「予定価格」といわれる価格帯を非公開で設定する。図2に示すように、まず「限界買入れ予定価格」と「限界売渡し予定価格」が設定されるが、これはその差が最大で1kg292円との国際取り決めがあり、それに基づいている。差については国際的な約束があるものの、それぞれの価格の位置については政府の恣意的判断による。極端な場合、この位置が全体的に高く設定されれば、たとえ落札したとしても国内での販売は困難となり、業者は応札しないということになる。
・次に、「買入れ予定価格」と「売渡し予定価格」であるが、「買入れ予定価格」とは政府が輸入業者から買い入れる価格であり、「売渡し予定価格」とは政府が卸業者に売り渡す価格である。この価格の差が政府の税収となる最小限のマークアップ(MU)である。入札においては、応札者はこの二つの「予定価格」の差を上回る形で「売り渡し価格」と「買い入れ価格」を明記し、輸入業者と卸業者がペアになって札入れをする。
▽国家秘密事項の「予定価格」  無駄な縛りが業者の応札を妨げる
・ただ、この政府の設定した一連の「予定価格」は非公開の国家秘密事項となっている。応札者はその価格帯を自分なりに想定し、かつ最小限のMUを上回る価格幅となるような「売渡し価格」と「買入れ価格」を明記して札入れをする。
・落札においては、図2に示すように、その札入れされた価格幅(MU)の大きなものから順に、つまり、A、B、Cの順に落札される。この3つの札入れの場合は、AのMUが最も大きく、つまり、税収が最も大きいので、Aがまず落札されることになる。そうして、予定の枠が満たされるまでB、Cの順に落札される。一方、図の中のD、E、F、Gの札は落札の対象にはならない。DはMUの幅が最小限に達していない、Eは買い入れ価格が政府の「買入れ予定価格」を下回っている、FはEの逆のケース、GはMUの最大限1kg当たり292円を超えている、という理由からである(ただ、農水省の説明によれば、近年はEのケースも最小値のMUを上回っていさえすれば落札の機会が与えられているという。しかし、そのことは業者には十分に告知されてはいない)。
・SBS米の輸入はそもそも政府にとっては税収が入り、売り先も保証されており、何も損することがない入札制度である。卸業者の買い取りが保証された買入れ価格と売渡し価格を明記して札入れするわけであるが、前述のように最低価格と最高価格を設定し、この範囲で入札しなければ落札されない。
・ここに問題がある。そもそもこのような縛りの設定は必要ない。MUの高い入札から順に落札すればよいはずである。
・この農水省による、入札の際の買入れ予定価格及び売渡し予定価格は、前述のように公表されないため、応札する側にとってはかなりの難関である。予定価格の設定について農水省は「会計法で定められているので設定する」と主張するのだが、不要なものは制度から削除していく必要があろう。
・しかも、この設定はSBS米で札入れが予想されるすべてのコメに対して、それぞれ別個に生産現地の価格情報を入手して設定するのだという。仮に100の応札が予定されれば100通りの予定価格が設定される。農水省職員の労力としても多くの時間がそこで費やされている。これも無駄と言えば無駄な労力である。
▽膨大な赤字発生で血税を無駄遣い ミニマムアクセス米の不合理
・次に、加工用として輸入される67万トンのミニマムアクセス一般米であるが、まず政府の買い入れの際に「予定価格」を設定し、それ以下の価格で札入れされたもので、低い価格から順に落札される。ただし、その予定価格は内密にされている。
・そうして、国内で政府が販売する際には、その輸入の入札の予定価格をベースに再び入札される。このときは、予定価格を上回る札の高い順から落札されるが、その予定価格が国内のユーザーにとっては高すぎるため買い手がなく、輸入米は何年間もそのまま放置されて、最後には二束三文でエサとして売られる。膨大な赤字がここで発生する。
・この農水省のやり方は、あまりに機械的であり、赤字を無くすためにできるだけ工夫して販売しようという意思は全く見られない。少なくともミニマムアクセス米の国内販売の際には、輸入する際に設定した予定価格をそのまま再び設定するのではなく、実勢に合わせた適正価格で販売すべきである。
・政府は米国から毎年36万トンを輸入している。全体の輸入量のほぼ半分である。この全量がカリフォルニア産である。そもそもカリフォルニア産は中粒種の「キャルローズ」がほとんどであるが、これらは海外では主食用として用いられている。日本でも価格が安ければ主食として販売されても遜色ないレベルの品質である。しかし、仮に、それが日本では主食として用いられないのであれば、高いカリフォルニア産米の輸入は控え、南部産の安いコメに切り替えて輸入すべきであろう。
・あえて言うならば、カリフォルニア産米が高いのは日本がそれだけを36万トンも輸入するからであり、これを南部産にも広げるならば、カリフォルニア産米も値下がりし、赤字の幅も縮小しよう。現在のような不合理なやり方は血税の無駄遣いである。
・筆者らが調べたカリフォルニア産米の品質は一般の日本産米レベルのものと比べると多少は落ちるものの、価格が安い分、主食としてのニーズはある。よって、コメの卸業者だけでなく、レストランのオーナーや消費者団体、小売店、ネット販売関係者、加工業者など、関心を抱く関係機関は多いはずである。そのような関係者が広くオークションに参加できれば、収穫して1年以内のコメはエサ米よりはるかに高い価格で売れるはずである。しかも、600項目に及ぶ残留農薬等のチェックに合格した日本政府お墨付きの安全なコメなのである。
・また、比較的安い中国・東北三省のジャポニカ米ももっと輸入されてよい。厳しい品質チェックの上で輸入するわけであり、安全が保証されている。買いたいという消費者はいるはずである。
▽日本のコメは正々堂々と勝負すべき 農水省に任せておいてはもはや無理
・日本の農業を育てる、という方針は同感である。だからこそ今は輸入量に制限をつけた貿易となっている。それならば、輸入されたコメに対して日本のコメは正々堂々と戦っていかなければ成長はない。そのような攻めの姿勢が消費者からも支援されるやり方であろう。
・外国産が敬遠されている、という噂を耳にすることは多い。ある業者から「輸入米はスーパーが置いてくれない」という話を聞いた。かつての餃子問題に象徴されるように、輸入食品が安全でない、というイメージをスーパーが抱き、輸入食品を置いているというだけでスーパーのイメージが悪くなる、と感じるオーナーがいてもおかしくはない。
・もしそうであれば、個人向けのネット販売に力を注いでもいいのではないか。国が保証する安くて安全なコメであれば買いたい、と言う消費者からのニーズは少なからずこの日本にもあるはずである。そうした消費者の購入権利を、農水省が管理している今のコメ輸入制度はその操作でもって無視しているのも同然である。
・ミニマムアクセス米のように国が安全性を保証し輸入されているものまで敬遠されるとすれば、それは国の威信にかかわることであり、国としても放置しておけないはずである。膨大な赤字を出しながら毎年毎年、それを座視しているというのはいったい何事であろうか。
・コメ輸入にまつわるこの膨大な赤字を国民としては看過することはできない。さらに、TPPが合意された今、コメ輸入量はさらに増える。このままでは赤字が続き、さらに拡大することにもなりかねない。血税によって輸入するコメに対し、赤字対策にもっと誠意を示すべきではないか。
・しかし、これは農水省に任せておいてはもはや無理であろう。この業務は民間に委託すべきである。農水省はそれをしっかりと監督をすればよい。多少の混乱はあるとしてもあの膨大な血税の垂れ流しに比べると微々たるコストに収まるであろう。否、収益が出ることもあり得よう。
・そのようにして、消費者のことを重視するとともに、国際間で取り決めした輸入米に対し、公平に取り扱いたいものである。そうすることにより、TPP合意のメリットも国内の消費者に享受されよう。
http://diamond.jp/articles/-/85318

第三に、元レバノン大使の天木直人氏が2月2日付けの同氏のブログに掲載した「東京新聞のスクープ記事がTPP批准を阻止することになる」を紹介しよう。
・きょう2月2日の東京新聞が一面トップで大スクープを書いた。すなわち、国を相手に「TPP交渉差し止め・違憲訴訟」を行っている民間団体がTPP協定を読み解いて、TPPが発効すればすべての農水産品の関税が撤廃されることになる、と警告を発したのだ。
・その他にもTPP協定には、到底承認しがたい条項が多くある。 しかし、この、「すべての農水産品の関税が撤廃される」、という事実を暴露することだけでも十分だ。
・もし農水産業者がこの事を知れば、政府に騙された、絶対に認めるわけにはいかない、ということになる。
・実際のところ一般国民は日本政府やメディアに騙されていたのだ。
・TPP協定をよく読めば、農水産品に関税がかけられる事を許されているのは一定期間(7年間)の猶予付きで、最後はすべての品目が例外なく関税ゼロにさせられる。
・これはTPP交渉に関わっているものなら誰もが知っていた事だが、そのことを隠して、農水産品への関税を死守したことばかりが強調されて来た。
・TPP協定を読まない大多数の一般国民は騙されていたのだ。
・この東京新聞のスクープによって国会審議が混乱しなければウソだ。 とりわけ、打撃を受ける農水関係者が、だまされたと騒ぎださなければウソだ。
・野党が追及すれば国会審議が紛糾することは間違いない。TPP批准に向けた混乱は必至である。 東京新聞のスクープ記事がTPP批准を阻止することになると私が書いた理由がそこにある(了)
http://new-party-9.net/archives/3314

TPP協定の英文概要598頁のうち、政府が公表した概要は僅か97頁、英文全文1500頁超が和訳版215頁とは、余りに国会や国民を馬鹿にした話だ。早急に完全翻訳版を公表すべきだ。これを問題にしない野党やマスコミもだらしない限りだ。
「TPPは「1%のクーデター」」とは面白い比喩だ。「格差」を国際的規模で拡大する可能性があるのだろう。
TPPの実態が自由化というより独占というのも、なるほどと思わされる。
SBS米の購入や販売における入札の仕組みは、余りに込み入っていて私の理解力を超えている。伊東正一氏が主張するように、抜本的に見直すべきだろう。それにしても、おいしいカリフォルニア米まで、エサ用として超安値で処分される結果、10年間の赤字累計が2778億円に達するだけでなく、カリフォルニアの稲作農家を怒らせているとは、とんでもないことである。
天木氏が紹介した東京新聞のスクープ記事も、本来はニュースバリューが大きい筈だが、その後、国会で大きく取り上げられたという記憶がない。TPPは民主党がまずやろうと先鞭をつけたこともあり、「攻めあぐねて」いるのだろうか。野党、マスコミの奮起を期待したい。
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