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医薬品(製薬業)(その5)(「緊急避妊薬の市販化」に日本が踏み込めない根深い理由、小林化工<上>水虫薬に睡眠導入剤が混入で業務停止116日間、小林化工<下>前途多難…オリックスが前面で経営再建か?、東大研究者が発見した「老化細胞」除去薬の衝撃 100歳まで健康に生きることが「自然」な時代へ) [科学技術]

医薬品(製薬業)については、昨年3月3日に取上げた。1年ぶりの今日は、(その5)(「緊急避妊薬の市販化」に日本が踏み込めない根深い理由、小林化工<上>水虫薬に睡眠導入剤が混入で業務停止116日間、小林化工<下>前途多難…オリックスが前面で経営再建か?、東大研究者が発見した「老化細胞」除去薬の衝撃 100歳まで健康に生きることが「自然」な時代へ)である。

先ずは、本年1月1日付けダイヤモンド・オンライン「「緊急避妊薬の市販化」に日本が踏み込めない根深い理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/258013
・『性交渉後、72時間以内に服用することにより、高い確率で妊娠を防ぐことができる緊急避妊薬。日本では医師による診察を経た上でないと入手することはできないが、目下、薬局での販売を可能にする制度改正が進められている。薬へのアクセスが容易になることによって意図しない妊娠が減ると期待される一方、性の乱れや薬の悪用を心配する声も根強い。現役の産婦人科医であり性教育の事情にも詳しい重見大介氏に、緊急避妊薬市販化の問題を考える上で大事なポイントを聞いた』、興味深そうだ。
・『市販化の実現で低価格化の可能性も  少子化の進行に拍車がかかる中、人工妊娠中絶の件数はここ10年でほぼ横ばい状態を見せている。中でも未成年が占める割合は小さくなく、人工妊娠中絶を受ける未成年者の数は平均で1日約40人と看過できない数字だ。 意図しない妊娠と人工妊娠中絶の数は必ずしもイコールではないが、緊急避妊薬が市販化され、身近なものになれば「意図しない妊娠によって体への負担、心への深い傷、経済的負担を負う女性が少なくなる」と語るのは、産婦人科医の重見氏だ。 「緊急避妊薬は72時間以内に服用する必要がありますが、服用する時間が早ければ早いほど避妊の成功率は高くなります。したがって、薬へのアクセスが改善されることによって、実効性は確実に上がると考えられます」 緊急避妊薬が市販化されることによってもたらされるメリットは、それだけにとどまらない。 「緊急避妊薬が市販化されている諸外国では1000~2500円程度で買えるところが多く、中には未成年に無料で提供している国もあります。しかし日本では、緊急避妊薬の値段は各病院が任意で定めており、1回の服用で大体1万5千円から8000円と高価です。現在、緊急避妊薬は保険診療の対象外であり全額自己負担となっていますが、薬局での販売が実現すれば、価格が大幅に下がることも期待できるかもしれません」』、「緊急避妊薬が市販化されている諸外国では1000~2500円程度で買えるところが多く」、「無料」にまでする必要はなくても、この程度なら妥当だろう。
・『反対派が懸念する市販化による性の乱れ  緊急避妊薬は現在世界の90カ国以上で市販化されており、日本でもしばしば厚生労働省によって検討され、直近では2017年に議題に上るも否決された過去がある。一体どんな要因によって、日本における緊急避妊薬の市販化は妨げられてきたのだろうか。重見氏はこう語る。 「決定を下す役割を担う専門家の方々の判断を鈍らせている理由として、市販化されることによって薬が悪用されるリスクと、女性が性に対して奔放になってしまうといったことへの懸念が挙げられています。2017年の検討会では産婦人科の学会である『日本産婦人科医会』もそのような意見に賛同し、『別の避妊方法に頼るべきだ』という理由で市販化に賛成する意見を退けています」 「モラルの乱れを誘発するのではないか」という懸念によって実現が阻まれてきた、緊急避妊薬の市販化。しかし、その懸念は妥当なものなのだろうか。 2017年に複数回にわたって行われた検討会のメンバーは一部を除いてほとんどが男性であり、女性の意見がほとんど反映されていない。また年齢層も高く、40代~60代が大多数だ。上記の懸念は男性による“妄想”とまでは言わないが、仮に検討会のメンバーの男女比を逆転させた上で同じ議論を行ったとしたら、違う結論になっていた可能性は否定できないだろう。) 「緊急避妊薬の避妊成功率は100%ではありません。たとえわずかであっても妊娠してしまう可能性がある限り、緊急避妊薬を服用したとしても、多くの女性は妊娠のリスクを考えるはずです。『緊急避妊薬があるから何をしても平気』だと思う女性はほとんどいないのではないでしょうか。緊急避妊薬の市販化を巡る問題には、議論を進める男性側が懸念するイメージと、使用者である女性側の気持ちとの間に齟齬(そご)があるようでなりません」』、「検討会のメンバーは一部を除いてほとんどが男性」、「年齢層も高く、40代~60代が大多数だ」、これでは公正な判断は期待できない。『日本産婦人科医会』が「『別の避妊方法に頼るべきだ』という理由で市販化に賛成する意見を退けています」、というのも、解せない。
・『実現の鍵となる薬剤師の役割  薬の乱用や避妊しない性行為の増加といった“風紀の乱れ”が懸念され、かき消されてきた緊急避妊薬の市販化を求める声。これまでは局所的な議論にとどまってきたが、SNSの普及も手伝い、若い女性や、現場の医師の意見が可視化されることによって、これまでにない広がりを見せている。 緊急避妊薬の市販化が実現している海外諸国において、モラルの崩壊が起きたといった事例は報告されておらず、日本においても「市販化を妨げる科学的根拠はない」と語る重見氏に、今後の議論の進展を見守る上で注目すべきポイントを伺った。 「これまでの経緯を踏まえれば、市販化が実現した際には『第1類医薬品』に分類される可能性が高いと考えられます。そうなった場合、薬はカウンターの後ろの棚や鍵付きのショーケース内に置かれ、薬剤師の説明を聞いた上でないと購入することはできません。また悪用や他者への譲渡を防ぐため、薬剤師の立ち会いの下で服用することを購入の条件に加える、といった議論も出ており、緊急避妊薬の市販化と聞いて多くの人が思い浮かべる“開放的なイメージ”とはまた違った形に落ち着く可能性があります。いずれにせよ、現在は医師が果たしている役割を担うことになる薬剤師の存在と、研修や情報連携などの仕組み作りが、今後の議論において鍵になっていくはずです」 賛成派と反対派の意見が紛糾している緊急避妊薬の市販化を巡る議論。どのような形で決着がつくのか、今後も要注目だ』、「緊急避妊薬の市販化が実現している海外諸国において、モラルの崩壊が起きたといった事例は報告されておらず、日本においても「市販化を妨げる科学的根拠はない」」、「現在は医師が果たしている役割を」「薬剤師」に担わせる方向で、対応すべきだろう。

次に、2月10日付け日刊ゲンダイが掲載したジャーナリストの有森隆氏による「小林化工<上>水虫薬に睡眠導入剤が混入で業務停止116日間」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/285022
・『爪水虫などの皮膚病用の飲み薬に睡眠導入剤の成分が混入した問題で、福井県が9日、薬を製造したジェネリック医薬品(後発薬)メーカーである小林化工(福井県あわら市、小林広幸社長、非上場)に対し116日間の業務停止処分を出した。116日間は医薬品メーカーへの行政処分で過去最長だ。 この問題の発端を、地元紙・福井新聞は「検証小林化工、異変伝える1本の電話」(2020年12月17日付オンライン)と報じた。 〈「そちらで処方された薬をのんでいた人が、意識消失で救急搬送されました」――。11月27日、岐阜県高山市の久保賢介医師(63)の元に、救急病院から連絡があった。59歳の男性が車を運転中に意識を失い、溝に脱輪したという。“異変”の始まりだった〉 〈久保医師は、内科とアトピーの治療を専門とする有床診療所の院長。59歳男性の救急搬送以後、入院患者4人についても普段と様子が違っていることに気が付いた。朝食を食べたら夜まで寝ていたり、起こすと記憶を一部失っていたりすることがあった。 他の外来患者に関しても、12月2日の朝には30代女性が意識もうろうとした状態になり寝てしまった。32歳の男性は配送の仕事中にトンネル内で意識がなくなり、センターラインのポールに衝突した。本人は当時の記憶がなく、事故後も、もうろうとしたまま仕事を続けたという。 意識障害があった患者7人には共通点があった。久保医師は「全てイトラコナゾールが原因だと確信した」と振り返る。 同診療所では、アトピー性皮膚炎に多いマラセチア毛包炎の治療に経口抗真菌剤イトラコナゾール錠を用いていた。製造したのは、ジェネリック医薬品の中堅メーカー、小林化工である。 久保医師の訴えが、多数の健康被害が発覚する端緒になった。 12月10日、小林化工が製造し、睡眠導入剤の成分が混入した皮膚病用の飲み薬を服用した70代の女性が、首都圏の病院に入院中に死亡したほか、80代の男性も亡くなっている』、「116日間の業務停止処分」、とはよほど酷かったのだろう。
・『小林化工は11日に死亡を発表。翌12日に小林広幸社長は報道陣の取材に応じ、「重大な過失を犯し、責任を痛感している。会社全体で償っていきたい」と謝罪した。 この問題では、福井県や厚生労働省が12月21日、22日の2日間にわたり、小林化工に立ち入り調査を実施し、省令や社内規定違反が相次いで明らかになった。 睡眠導入剤成分が混入したのは皮膚病用治療薬「イトラコナゾール錠50『MEEK』」。国が承認した手順書では、薬の主成分を全て1回で入れることになっているが、「裏手順書」が存在し、2度に分けて入れると記載されていた。錠剤を固まりやすくするための便法とみられており、製造現場では十数年前から「裏手順書」が採用されていた。 問題の薬では、従業員が主成分を2度目に入れようとして、睡眠導入剤と取り違えていた。主成分と睡眠導入剤は同じ棚の上下に並べて置かれていた。2人1組で相互にチェックしながら薬の調合にあたるとする社内規定に反し、1人が作業場から離れた時間帯があったことや、離れた1人が作業の確認済みのサインをしたこともわかった。 「イトラコナゾール錠50」は20年夏に製造され、約9万錠が出荷された。服用した患者は全国31都道府県に344人。6割超の214人が意識消失、記憶喪失、ふらつきなどの健康被害を訴えた。このうち2人が死亡し、運転中に意識を失うなどして22人が交通事故を起こしている。小林化工は1月27日、18年3月以降に出荷した22製品についても、新たに自主回収をすると発表した』、「製造現場では十数年前から「裏手順書」が採用」、「主成分と睡眠導入剤は同じ棚の上下に並べて置かれていた。2人1組で相互にチェックしながら薬の調合にあたるとする社内規定に反し、1人が作業場から離れた時間帯があったことや、離れた1人が作業の確認済みのサインをした」、安全性が最重視されるべき製薬企業にあるまじきズサンさだ。
・『実はオリックスの連結子会社  小林化工は1961年に設立された経口剤や注射剤などのジェネリック医薬品のメーカー。 誤飲を防ぐ視認性の高い製剤など付加価値の高い医薬品を扱っているほか、成長が見込める抗がん剤の開発もやっている。 20年3月期の売上高は370億円、従業員は796人。270品目を販売しており、後発医薬品業界では日医工(東証1部)、沢井製薬(同、4月からサワイグループホールディングス)、東和薬品(同)の“ご三家”に続く第2グループに位置する。 実は、小林化工は総合リース大手オリックスの連結子会社である。20年1月に子会社になったばかりだった。=つづく』、「オリックスの連結子会社」になってなければ、破綻していたところだが、「オリックス」もとんだババを掴んだものだ。

第三に、この続きを、2月11日付け日刊ゲンダイ「小林化工<下>前途多難…オリックスが前面で経営再建か?」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/285091
・『小林化工(福井県あわら市)の株式の過半数を保有し、資本・業務提携しているオリックスは1月20日、福井新聞の取材に「出資者として誠に遺憾。小林化工が社会的な責任を少しでも早く全うすることができるように、最大限のサポートを行っている」とコメントした。 オリックスは20年1月14日、小林化工を子会社にすると発表した。発行済み株式の過半数を取得するが、出資比率や株式取得に要した金額は非公開。現経営体制を維持し、代表取締役の変更はないが、社外取締役2人と監査役にオリックスの社員が就任した。 オリックスは経営戦略を立案し、財務基盤の強化を図る。 オリックスが医療用医薬品事業に手を染めるのは初めてだ。 「医療法人向けのリースやファイナンス、医療機器関連のレンタルサービスの提供だけでなく、これまで原薬商社、医療機器販売会社、動物薬メーカーに出資するなどヘルスケア業界に注目して幅広い事業を展開しています」) オリックスのプレスリリースにこう書いてある。 小林化工は「オリックスの国内外のネットワークの事業基盤と連携し、さらなる品質向上、安定向上を目指す」とした。海外進出を視野に入れていることはいうまでもない』、今回の不祥事が明らかになる前の「プレスリリース」、など殆ど意味がない。
・『出発は「富山の薬売り」  小林広幸代表取締役社長は創業家の3代目である。創業者は小林政国。配置薬を売る「富山の薬売り」で、戦後の1946年に配置薬を製造する小林製薬所を創業した。61年、小林化工を設立、医療用医薬品に進出した。 小林広幸は薬剤師だ。金沢大学の研究室を経て、住友製薬(現・大日本住友製薬)に就職。家業を継ぐべく94年、小林化工に入社。当時の年商は12億円程度と零細企業だった。2007年、父・小林喜一の後を継いで代表取締役社長の椅子に座った。) 後発医薬品業界に追い風が吹いた。医療費抑制の一環として政府は02年から後発薬の普及目標を段階的に引き上げていった。医療現場では先発薬から後発薬への置き換えが進んだ。02年から現在までに後発薬の販売数量は2倍に拡大した。 後発薬使用促進策の流れに乗り、小林化工は急成長を遂げる。02年当時の年商30億円が、20年3月期には370億円と12・3倍になった。利益は工場の増産投資に充当。それが、また増収につながる好循環に入った。 政府は後発薬の使用割合を20年までに数量ベースで80%に引き上げる目標を設定。20年9月時点で後発薬の数量シェアは79・3%とほぼ目標を達した。 後発薬市場は成熟期を迎え、成長に陰りが見え始めた。 国内が頭打ちになれば外に目が向く。日医工、沢井製薬、東和薬品の国内専業大手は欧米の後発薬企業を買収し、欧州や米国市場に進出した。準大手で非上場の小林化工が選択したのがオリックスを戦略パートナーにすることだった。オリックスの力を借りて海外に出ていく。) 小林広幸社長は、一般財団法人日本医薬情報センターの会員向け機関誌「JAPIC NEWS」(20年11月号)で、オリックスの傘下に入った理由を、こう語っている。 「一時は上場も検討しましたが、オリックスがパートナーであれば、強固な信頼関係のもとでサポートを受けつつ、さまざまな課題を解決していけると考え、資本・業務提携しました。(中略)同業他社から声がかかりましたが、今後の当社の発展には、オリックスの信用力やネットワークが必要だと判断しました」 「多すぎる」(厚生労働省幹部)と言われる後発医薬品会社の再編は必至である。小林化工は業種の枠を超えたM&Aの道を選んだ。 しかし、新・小林化工は船出した直後に、薬害事故で死者まで出し、突然、座礁した。過去最長となる116日間の業務停止処分を受けることになったわけで、小林社長以下経営陣の総退陣は免れないだろう。睡眠剤混入薬の被害者から集団訴訟を起こされることも想定される。 親会社、オリックスが前面に出てこざるを得まい。 “敗戦処理”の方法としてはオリックス主導による自主再建もあるが、「同業他社に小林化工を売却する」(株式を公開しているジェネリック大手の首脳)といったうがった見方も、一部で浮上している。=敬称略)』、「経営陣の総退陣」、今回の事件で明らかになったお粗末な内部管理体制、などを踏まえると、「オリックス主導による自主再建」は容易ではなく、「同業他社に小林化工を売却」のシナリオの方が可能性が高いのではなかろうか。それにしても、今回、傷がついた「ジェネリック医薬品」のイメージをどう回復していくかも大きな課題だ。

第四に、2月20日付け東洋経済オンライン掲載した東京大学医科学研究所癌防御シグナル分野教授の中西 真氏による「東大研究者が発見した「老化細胞」除去薬の衝撃 100歳まで健康に生きることが「自然」な時代へ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/411265
・『もしいくつになっても若い体や心のままで生きることが可能となったら、社会、ビジネス、あなたの人生はどう変わるのだろうか? ハーバード大学医学大学院の教授で、老化研究の第一人者であるデビッド・A・シンクレア氏の全米ベストセラー『LIFESPAN(ライフスパン):老いなき世界』では、人類が「老いない身体」を手に入れる未来がすぐそこに迫っていることが示され話題となっているが、日本でも、老化研究に関する大きなニュースが飛び込んできた。 2021年1月15日、東京大学医科学研究所の中西真教授らのグループが、老齢のマウスに「老化細胞」だけを死滅させる薬剤を投与し、加齢に伴う体の衰えや生活習慣病などを改善することに成功したと米科学誌『サイエンス』に発表したのだ。老化研究はどこまで進化しているのか。中西氏に話を聞いた(Qは聞き手の質問、Aは中西氏の回答)』、興味深そうだ。
・『老化の原因「老化細胞」除去とは  Q:老齢のマウスの「老化細胞」を特異的に死滅させる薬剤を発見されましたが、この「老化細胞」の除去とはどういったことでしょうか。 A:「老化細胞」とは、ストレスによってダメージを受けるなどして、増殖できなくなってしまった細胞のことです。 60年ほど前、アメリカのヘイフリック博士が、正常なヒトの細胞を試験管の中で培養していくと、一定の分裂回数のうちに増殖を停止して、二度と増殖できなくなるステージに入ることを発見しました。この状態になってしまった細胞を「老化細胞」といいます。 細胞は、つねにさまざまなストレスにさらされており、ストレス過多になった場合、遺伝子に傷が入ったり、タンパク質がダメージを受けるなどします。軽微なダメージなら、細胞は修復して生き続けることができますが、修復不可能な損傷の場合、細胞そのものを殺すか、細胞の老化を誘導し、異常な細胞を蓄積させない仕組みが働きます。その結果、細胞は増殖することができない老化細胞となってしまいます。 そして、この老化細胞が、臓器組織の機能低下や老年病などの発症を誘発するというのが最も基本的な「老化のメカニズム」の1つです。) これまでの研究では、老化細胞を除去することでさまざまな老化現象が改善することはわかっていました。しかし、組織や臓器により老化細胞は性質が異なるため、それらどんなタイプの老化細胞にも効く薬剤の開発には至っていませんでした。 われわれ研究チームは、老化細胞の生存に必須な遺伝子を探し、それが「GLS1」という遺伝子であることを突き止めました。さらに、老化細胞は、リソソームと呼ばれる細胞内小器官の膜に傷ができ、細胞全体が酸性に傾くが、「GLS1」が過剰に働くことで中和され、死滅しないまま細胞を維持することも明らかにしました。 そこで、この遺伝子「GLS1」の働きを止める薬剤を投与したところ、老化細胞が除去され、老化に伴う体力の衰えや生活習慣病が改善することを証明しました』、「この遺伝子「GLS1」の働きを止める薬剤を投与したところ、老化細胞が除去され、老化に伴う体力の衰えや生活習慣病が改善」、そんな魔法のような「薬剤」があるとは医学も進歩したものだ。
・『老化は「常識」から「サイエンス」になった  老化研究が注目されるようになったのは、ごく最近のことです。僕は、いまから30年前、アメリカに留学していた頃に細胞老化という現象に興味を持ち、それ以来ずっと研究を続けていますが、当初はほとんど注目されておらず、現象論ばかりで分子機構も明らかにされていない時代でした。 当時盛んだったのは、細胞周期に関する研究です。2001年には細胞周期の制御因子を発見した研究者がノーベル賞をとり、僕もその波に乗って細胞周期の研究に取り組みつつ、ほそぼそと細胞老化の研究も並行してきました。 老化研究のいちばん難しいところは、とにかく時間がかかるということです。例えば、一口に「カメの寿命にともなう死亡率の研究」と言っても、カメは100年以上生きますからね。高齢マウスの研究でも、2~3年はかかります。たかだか20~30年の研究者人生の中でできることには限りがあるのです。 社会にとっては非常に必要な研究だけれど、何十年もなんの結果も出さずにいることは、許してもらえませんからね。 そんな老化研究全体の空気が変わったのは、この数年です。まず、2014年に科学誌『ネイチャー』で、老化の過程は生物種によってかなり異なるということが報告されました。ヒトは、老化による機能低下などで寿命を迎えますが、生物種のなかには、老化そのものが寿命を規定していないものがたくさんいるというのです。 また、2016年には、同誌に、ヒトの最大寿命は120歳であるという報告も掲載されました。それまでなんとなく「年とともに老いて、長くても120歳ぐらいで死ぬものなんだろう」と思われていたことが、サイエンスとして一流の科学誌に取り上げられたわけです。 老化現象というものが、一般常識の範疇から、サイエンティフィックに非常に面白い対象なのだと認識されることになり、多くの研究者が参入するきっかけになりました。 とくに、生物種によって老化の過程が異なるというのは、非常に面白い話です。 ヒトは、加齢に伴って死亡率が急激に増加する典型的な生物ですが、ある種のカメやワニなどには、そのような現象が起きません。もちろん、ある決まった寿命で死ぬのですが、年をとっても、人間でいう白髪が出たり老けたりという、老化の表現型が出ないのです。 つまり、20歳の死亡率と70歳の死亡率が変わらない。「ピンピンコロリ」の一生を送るすごい生物がたくさんいるということです。 興味深いのは、ゾウです。ゾウは、ストレスが加わったときに、自らの体内で老化細胞になる前に傷ついた細胞を死滅させてしまうと言われています。われわれが開発したような薬を飲まなくとも、もともとそういうシステムを体内に持っているわけですね。 ゾウにはがんがないというのも有名な話です。がん細胞のような悪い細胞をすぐに死滅させてしまうからです。がんのあるゾウを探すのは、非常に難しいと言われるほどです。 悪い細胞を体内に残しておくから病気になるわけですが、ただ、生態系全体として見ると、ヒトは、老化細胞を残しておくことに、個体としてなんらかのメリットがあり、それが進化の過程で有利に働いているという部分もあるのかもしれません。 老化によって臓器組織の機能が低下し、老年病を引き起こすなどして健康寿命を決めているメカニズムと、生物種の最大寿命そのものを決めているメカニズムはまったく次元が違うはずです。 老化研究は、まだまだわからないことが多く、あくまでもわれわれ自身である「ヒトの老化」という範疇から出ていません。今後ますます俯瞰的に理解していくことで、より研究が深まっていくでしょう』、「生物種のなかには、老化そのものが寿命を規定していないものがたくさんいるというのです」、「ヒトは、加齢に伴って死亡率が急激に増加する典型的な生物ですが、ある種のカメやワニなどには、そのような現象が起きません。もちろん、ある決まった寿命で死ぬのですが、年をとっても、人間でいう白髪が出たり老けたりという、老化の表現型が出ないのです」、「老化研究は、まだまだわからないことが多く、あくまでもわれわれ自身である「ヒトの老化」という範疇から出ていません」、殆ど研究され尽くしていると思っていたが、そうではないことを初めて知った。
・『ヒトへの実用化までのハードル  老化改善の薬は、これからヒトへの実用化に向かっていきますが、まだまだハードルがあります。 ひとつは、本当にその薬に副作用がないか、もっと効果的な薬はないかという短期的なハードル。そしてもうひとつは、まだ個体の老化はすべてが解明されていないという長期的なハードルです。 われわれの研究もそうですが、これまでは、培養された細胞を使った研究ばかりで、個体の中での研究はほとんど行われていません。老化細胞が、個体の中で加齢や老年病の発症に関わっているのは確かですが、現実には、個体の中はまだブラックボックスなのです。個体のいったいどこに老化細胞が蓄積しているのか。それがどのような機能や性質を持ち、どう作用しているのかはわかっていません。 これからは個体の中での老化細胞の働きを解明する必要がありますし、そのような研究が進めば、もっと優れた標的や、もっと優れた治療法が見つかるだろうと僕は信じています。) Q:日本人は世界的にも長寿ですが、ほかの国の人々に比べてどのような要因が考えられるのですか。 A:ひとつは、日本人の食生活が大きく影響していると考えられます。日本人は、アルコールの摂取量も世界的に見れば少ない人種です。 もうひとつは、日本人には、肥満など特殊な体質が非常に少ないことです。もちろん日本人にも肥満体質の方はいらっしゃいますが、欧米人に比べるとかなりその程度は軽いと思います。 アルコール摂取量が多かったり、生活習慣が原因で肥満が起きたりする環境では、それが細胞に対するストレスになり、老化細胞が増えやすいということは十分に予測できます。日本人の普通の食生活や生活習慣が、欧米人に比べればストレスを受けにくいということですね。 人種にかかわらずヒトの最大寿命は決まっています。世界一の長寿とされたジャンヌ・カルマンさんはフランス人女性ですから、日本人が最長というわけではありません。ですから、少なくとも欧米人が日本人のような生活習慣になれば、長寿に近づいていくと言えるでしょう』、「日本人は、アルコールの摂取量も世界的に見れば少ない人種です。 もうひとつは、日本人には、肥満など特殊な体質が非常に少ない」、「日本人の普通の食生活や生活習慣が、欧米人に比べればストレスを受けにくい」、私の常識的知識とも合致するようだ。
・『老化は「病気」として治療できる  Q:シンクレア氏の『ライフスパン』では、「老化は病気である」と定義されていますが、先生のお考えをお聞かせください。 A:僕も、少なくとも、加齢に伴って起きるような臓器組織の機能低下や老年病などは治せるものだと考えています。 ただ、最大寿命を延ばすのは非常に難しいことですし、倫理的にも問題があると思いますので、そこはもう少しよく考えなければなりません。まずは、健康に生きる時間を長くするということだと思います。 昨年12月、シンクレア先生が山中因子(iPS細胞)を使って、高齢マウスの視力を回復させたという論文を『ネイチャー』に発表されました。非常にインパクトがあり、本当に老化細胞が若い細胞に戻っているのなら、これはすごいことだと僕は思います。 ただ、山中因子によって実際にどんな細胞が生まれて、それがどういう形で老化した細胞を再生させているのかということについては、まだ証明されていません。まだまだこれからということになるでしょう。) Q:アメリカでは、グーグルなどが老化研究のベンチャーに投資していますが、日本ではそのような動きはありますか? A:日本では、残念ながらまだほとんどありません。そのようなベンチャーもありませんし、カルチャーもありません。 アメリカには、「失敗してもいいじゃないか、作ってダメならまたやり直せばいい」というカルチャーがありますが、日本は違います。「失敗したくない」「失敗するとダメージにつながる」という発想にとらわれていて、なかなかそのような会社はできないんですね。 ただ、20~30代の世代では、ベンチャーをやってみようというハードルが低く、そのような芽ははっきりとあります。今後、老化研究の分野に投資したいという動きは大きくなるかもしれませんね。 いま、がん研究については、かなり煮詰まったところまで来ています。もちろん、本庶佑先生のようなすごい発見も今後生まれると思いますし、すい臓がんなど治療困難なものもありますが、基本的に、がんは治る病気になりつつあるんですね。そうなると、人類の最後の未知なる領域は「老化」ということになり、そこへシフトしていく流れがはじまったのだろうと思います』、「人類の最後の未知なる領域は「老化」ということになり、そこへシフトしていく流れがはじまったのだろう」、今後が楽しみだ。
・『100歳まで健康に生きることが「自然」  「老化も死も自然のままがいい」という感覚の方も多いようですが、僕は、なにをもって「自然」と言うかは難しいと考えます。老化は、人によって程度がまったく違うもので、90歳でも100歳でも元気な人もいれば、50歳でもいろんな病気にかかってしまう人もいます。 病気にかかることが自然なのかというと、僕は、やはりそうではない、100歳まで健康に生きることが自然だと思うのです。僕の両親もそうですが、年老いた人は不自由を感じていますし、それを改善できるということは、すごく大きなことだと思います。 自然に生きることを助け、サポートしていくことが、老化研究です。実現すれば、短期的には医療費の問題が解決し、もっと別のことにお金が使えるようになりますし、個々の方の人生そのものも幸せになりますよね。やはり健康は、最もお金で買えない幸せだと僕は思っています』、「100歳まで健康に生きることが「自然」」、医学の進歩で、それに近づいてほしいものだ。
タグ:医薬品 東洋経済オンライン 日刊ゲンダイ ダイヤモンド・オンライン 有森隆 (製薬業) (その5)(「緊急避妊薬の市販化」に日本が踏み込めない根深い理由、小林化工<上>水虫薬に睡眠導入剤が混入で業務停止116日間、小林化工<下>前途多難…オリックスが前面で経営再建か?、東大研究者が発見した「老化細胞」除去薬の衝撃 100歳まで健康に生きることが「自然」な時代へ) 「「緊急避妊薬の市販化」に日本が踏み込めない根深い理由」 市販化の実現で低価格化の可能性も 人工妊娠中絶を受ける未成年者の数は平均で1日約40人と看過できない数字だ 「緊急避妊薬が市販化されている諸外国では1000~2500円程度で買えるところが多く」、「無料」にまでする必要はなくても、この程度なら妥当だろう 反対派が懸念する市販化による性の乱れ 「検討会のメンバーは一部を除いてほとんどが男性」、「年齢層も高く、40代~60代が大多数だ」、これでは公正な判断は期待できない。 『日本産婦人科医会』が「『別の避妊方法に頼るべきだ』という理由で市販化に賛成する意見を退けています」、というのも、解せない 実現の鍵となる薬剤師の役割 「緊急避妊薬の市販化が実現している海外諸国において、モラルの崩壊が起きたといった事例は報告されておらず、日本においても「市販化を妨げる科学的根拠はない」」 「現在は医師が果たしている役割を」「薬剤師」に担わせる方向で、対応すべきだろう。 「小林化工<上>水虫薬に睡眠導入剤が混入で業務停止116日間」 「116日間の業務停止処分」、とはよほど酷かったのだろう。 「製造現場では十数年前から「裏手順書」が採用」、「主成分と睡眠導入剤は同じ棚の上下に並べて置かれていた。2人1組で相互にチェックしながら薬の調合にあたるとする社内規定に反し、1人が作業場から離れた時間帯があったことや、離れた1人が作業の確認済みのサインをした」、安全性が最重視されるべき製薬企業にあるまじきズサンさだ 実はオリックスの連結子会社 「オリックスの連結子会社」になってなければ、破綻していたところだが、「オリックス」もとんだババを掴んだものだ 「小林化工<下>前途多難…オリックスが前面で経営再建か?」 今回の不祥事が明らかになる前の「プレスリリース」、など殆ど意味がない。 出発は「富山の薬売り」 「経営陣の総退陣」、今回の事件で明らかになったお粗末な内部管理体制、などを踏まえると、「オリックス主導による自主再建」は容易ではなく、「同業他社に小林化工を売却」のシナリオの方が可能性が高いのではなかろうか。それにしても、今回、傷がついた「ジェネリック医薬品」のイメージをどう回復していくかも大きな課題だ。 中西 真 「東大研究者が発見した「老化細胞」除去薬の衝撃 100歳まで健康に生きることが「自然」な時代へ」 老化の原因「老化細胞」除去とは 「この遺伝子「GLS1」の働きを止める薬剤を投与したところ、老化細胞が除去され、老化に伴う体力の衰えや生活習慣病が改善」、そんな魔法のような「薬剤」があるとは医学も進歩したものだ 老化は「常識」から「サイエンス」になった 「生物種のなかには、老化そのものが寿命を規定していないものがたくさんいるというのです」、 「ヒトは、加齢に伴って死亡率が急激に増加する典型的な生物ですが、ある種のカメやワニなどには、そのような現象が起きません。もちろん、ある決まった寿命で死ぬのですが、年をとっても、人間でいう白髪が出たり老けたりという、老化の表現型が出ないのです」、 「老化研究は、まだまだわからないことが多く、あくまでもわれわれ自身である「ヒトの老化」という範疇から出ていません」、殆ど研究され尽くしていると思っていたが、そうではないことを初めて知った ヒトへの実用化までのハードル 「日本人は、アルコールの摂取量も世界的に見れば少ない人種です。 もうひとつは、日本人には、肥満など特殊な体質が非常に少ない」 「日本人の普通の食生活や生活習慣が、欧米人に比べればストレスを受けにくい」、私の常識的知識とも合致するようだ 老化は「病気」として治療できる 「人類の最後の未知なる領域は「老化」ということになり、そこへシフトしていく流れがはじまったのだろう」、今後が楽しみだ 「100歳まで健康に生きることが「自然」」、医学の進歩で、それに近づいてほしいものだ
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