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パンデミック(経済社会的視点)(その16)(コロナとさえ戦わない絶望の国ニッポン、尾身会長を「都合よく使う」菅政権の重罪 政府が専門家の価値を暴落させる、「研究所流出説」を甦らせた素人ネット調査団 新型コロナの始祖ウイルスを「発見」!) [パンデミック]

パンデミック(経済社会的視点)については、5月10日に取上げた。今日は、(その16)(コロナとさえ戦わない絶望の国ニッポン、尾身会長を「都合よく使う」菅政権の重罪 政府が専門家の価値を暴落させる、「研究所流出説」を甦らせた素人ネット調査団 新型コロナの始祖ウイルスを「発見」!)である。

先ずは、5月3日付けNewsweek日本版が掲載した財務省出身で慶応義塾大学准教授の小幡 績氏による「コロナとさえ戦わない絶望の国ニッポン」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/obata/2021/05/post-65_1.php
・『<コロナ危機が始まって一年、既得権益との戦いも国民的な議論もなく、ただただ戦いから逃げてきた結果、日本は大変なことになっている> 私は、日本に絶望した。 第一に、コロナ危機はいまや日本だけだ。世界ではコロナ危機は過去のものとなり、いまだに苦しみ、先が見えていないのは、インドと日本だけだ。 第二に、オリンピックなどという不要不急、重要性の低いイベントに国が囚われてしまっている。物事の優先順位がつけられない国は、普通は、滅亡する。歴史においてはそうだった。 第三に、専門家も政治家も嘘ばかり付いている。意図的な嘘なのか、物事をあまりに知らなくて間違っているだけなのか、よくわからないが、いずれにせよ、当たり前のことすらまったくわかっていない。間違ったことを言い続けている』、「オリンピックなどという不要不急、重要性の低いイベントに国が囚われてしまっている。物事の優先順位がつけられない国は、普通は、滅亡する」、痛烈な批判だ。
・『誰も何もやる気がない  第一の点は、3つに分けられる。1)コロナ対策そのものが最悪だし、2)医療体制は整っているはずなのに、実効性が低く、3)コロナ危機の程度が軽いにもかかわらず、経済への悪影響は、世界最高水準。悪い、悪い、悪いの三拍子だ。 日本のコロナ危機は、ワクチンの遅れと、イギリス型変異ウイルスが理由と思われているが、そうではない。変異ウイルスは世界中で発生しており、それは警戒が必要ではあるが、どの国も同じである。第二に、韓国でもワクチン接種は欧米よりも遅れている。当たり前だ。欧米の新型コロナによる死者と東アジアでの死者の数は比較にならず、緊急性の高い欧米、イスラエルで進んだだけで、感染者が少ない日本で、ワクチンが欧米よりも遅れるのは当たり前だ。 問題は、コロナ対策が、実際にはまったく何も行われていないことにある。 スマートフォンの感染者接触アプリCOCOAもデジタル庁もどこかに消えてしまい、保健所のDX(デジタルトランスフォーメーション)も導入したが、機能していない。検査も増えない。 医療の体制も混乱の極みだ。政府そしてとりわけ知事たちはこの1年、テレビに出る以外に何をしてきたのか。 医療体制が混乱しているのは、医療システムを社会全体のために動員する仕組みもやる気も存在しないからだ。とりわけ、やる気のほうが大きい。 病院と医師たちは、一部(せいぜい半分)の良心的で献身的な人々の善意、ボランティアに依存するばかりで、過半の病院と医師たちは新型コロナと無関係である。コロナに追われて手薄になった病院や医師たちをフォローする体制もないし、一肌も脱がないし、これをチャンスとばかり儲けようとして、結果的に社会に貢献することもない。 怪しいPCR検査、簡易検査の広告が出るぐらいで、触らぬウイルスに祟りなし、といった雰囲気だ。) しかし、病院と医師が自発的に動かないと文句を言っていても仕方ないし、それこそが政府と知事たちの役割で緊急動員体制を作るのが仕事だ。政治家たちは、医師会に気兼ねして何もできず、裏取引や利益誘導をして動員する度量もリスクテイクも悪知恵も野心もない。きれいでも汚くてもどっちでもいいから仕事のできる政治家が必要だ。仕事がとにかくしたい、と言っていた総理はどこへ行ったのか。 しかし、いまさら政治を批判していても仕方がない。この20年衰退の一途だった政治にいまさら期待するほうが間違いで、人々は自衛するしかないし、それが当然のサバイバル術だ。ところが、人々は、恐怖と欲望に支配されて、政治家並みに見るも無残な有様だ。 緊急事態宣言は何の効果もないが、1回目は絶大な効果があったように見え、2回目はそれほどでもないが、多少影響があったように感じられ、3回目の今回は、誰がどう見ても効果ゼロだ。 しかし、1回目の効果に見えたのは、緊急事態宣言ではなく、自称有識者が、ロンドンとニューヨークの危機を吹聴して、ことさらに人々を脅し、専門家までが、極端な8割削減、死亡者数数十万と、こちらも煽って、人々を恐怖に陥れたからだ』、「1回目の効果に見えたのは、緊急事態宣言ではなく、自称有識者が、ロンドンとニューヨークの危機を吹聴して、ことさらに人々を脅し、専門家までが、極端な8割削減、死亡者数数十万と、こちらも煽って、人々を恐怖に陥れたからだ」、面白い見方だ。
・『恐怖で麻痺した個人消費  そして、芸能人が死亡し、人々、とりわけ高齢者は死に怯え、恐怖が彼らを支配し、日本は自粛に包まれ、街は静まり返った。一方、若者たちは、緊急事態、コロナ危機を、初めてのハロウィンのように、目新しいイベントとして受け止めた。知的な大人を自認する意識高い系の人々にとっては、自粛を推奨すること、欧米の危機を伝えることが知的な作業と感じ、手当たりしだいの情報をSNSで拡散し、自己満足し、その結果、高齢者を恐怖に陥れた。 つまり、高齢者は恐怖に支配され、若者たちは、イベント参加あるいは知的自画自賛に陶酔するという欲望に身を任せた。これが1年前であった。 2回目の緊急事態宣言は、政治がGoToなどで迷走する中、何の意味も持たなかったが、東京の新規感染確認者数が一日で2000を超えた、というその2000という数字が人々を恐怖に陥れ、再び恐怖が社会を支配し、年末年始の日本は自粛が支配した。 しかし、3回目は何も効かない。唯一効果があるのは、変異ウイルスの恐怖で、それを政府が意識的にか無意識にか利用し、多少の効果を収めた。恐怖で人々の行動を制限したのである。 この結果、経済は最悪となった。 海外輸出は好調で、企業はDXなど好景気に沸く企業も多いが、個人消費関連は、特にサービスセクターで壊滅状態である。なぜなら、実際のコロナ危機とは無関係に、また外出禁止も小売店営業停止もないにもかかわらず、日本の消費の中心である高所得者層や小金持ちの小資産家層は中高年であるため、恐怖に支配されて動けないからだ。個人消費は激減した。そして、株式投資だけが盛り上がった。) 一方、自粛というイベントに飽きた若者層は、旅行でも外食でも行きたかったが、カネがなく、GoToキャンペーンという税金補助もなくなったので、一気にカネを使わずに、路上飲みや友人宅でパーティーを行った。サービス消費経済は大きく落込んだのである。 日本経済がこれだけ危機に陥り、社会は恐怖に包まれているのに、なぜか、政府はオリンピックに躍起になり、すべてを差し置いてオリンピック優先である。GoToは世論の逆襲にあってやめたが、なぜか聖火リレーは続けられ、会食禁止、集まり禁止と言いながら、芸能人を多数起用し、ギャラなしでオリンピックを盛り上げるイベントに動員し、沿道にミーハーな人々の密を作った。 そして人々は、政府の緊急事態宣言もワクチン戦略もすべてはオリンピックのためだと解釈し、非難し、飲食店の人々はとりわけ怒りに燃えた。それにもかかわらず、もちろん感染状況次第ではオリンピックはできません、しかし、その最悪の事態にならないように全力を尽くしますと言えばいいだけなのに、オリンピックができないこともありうるというのは禁句で、何があっても触れない、という態度が、人々の政治不信を加速し、自粛要請に対する反発を高め、今後の政府の分析、説明、呼びかけ、すべての効果をさらに失わせている。 ただ一言、感染状況次第と言えばいいだけなのに、頑なに否定し、自分たちの権力の影響力を低下させることをあえてやっている。馬鹿なのか、利害関係からオリンピックをどうしてもやりたいという気持ちに正直すぎるのか、いずれにせよ、意味不明で、この些細なイベントにより、政策の優先順位がすべて混乱している』、「最悪の事態にならないように全力を尽くしますと言えばいいだけなのに、オリンピックができないこともありうるというのは禁句で、何があっても触れない、という態度が、人々の政治不信を加速し、自粛要請に対する反発を高め、今後の政府の分析、説明、呼びかけ、すべての効果をさらに失わせている」、その通りだ。
・『ワクチン接種では公平性に拘る愚  コロナワクチンの話もそうだ。とにかく、早く多くの人に打つことが重要であるにもかかわらず、隣町との公平性が重要で、市町村にどう割り振るかで揉めている、誰に打つかで揉めている、不手際はいちいち批判される、まったく行政の効率性は最低レベルである。 一方、人々も、副作用に過剰反応し、申し込みにも殺到し、感情的にしか行動できない。優先順位が間違っている。とにかく、早く大勢に打つことが重要で、自分が打とうが、周りが打とうが、効果はあるのだから、全員が打ち終わるのを早くすればよい。公平性は後だ。 しかし、最大の問題は、政治家も専門家も、間違ったことばかり1年も言い続けている。これが最大の問題だ。 まず、感染リスクについてすら、いまだに通勤電車の混雑を減らせ、テレワーク7割などと言っている。ソーシャルディスタンスや三密など、すでに間違いだったことがはっきりしたことを誰も訂正しないどころか、いまだにそれを主張し続けている。 これが人々を愚かにさせる。唾液の飛まつだけだから、しゃべらなければ移らない。スーパーのレジで並んでいると、裕福そうな初老の女性に、いきなり振り向かれて、ソーシャルディスタンスと叫ばれ、私が70センチに接近していることを殺人未遂であるかのように非難する。貴方の叫びによる飛まつが一番危ないのだが、と思い、マスク越しであっても飛まつが一切でないように、黙って肩をすくめると、鬼のような形相でどこかへ行ってしまった。 しかし、最大の嘘は、日本の法体系では、強制力を持った措置が取れない、と政治家も有識者とやらも、知ったような顔でそれを大前提として議論をしていること。それは嘘だ』、「ソーシャルディスタンスや三密など、すでに間違いだったことがはっきりしたことを誰も訂正しないどころか、いまだにそれを主張し続けている」、マスコミも政府の誤ったキャンペーンの片棒を担いでいる。
・『ロックダウンも可能だった  憲法、基本的人権において、欧米と日本の法的な制限の差はない。いわゆる欧州大陸法と英米法(コモンロー)とで、法律の書き方、裁判制度などは異なるが、基本的人権の制限に関する差はない。実際、フランスでもドイツでもイギリスと同じように行動は制限され、外出は禁止されている。 単に、日本においては、特別措置法で、その規定がない、と言うことに過ぎない。なければ、作ればよい。特措法改正をしたときに、もっといろいろできるようにすればよかっただけだ。それは、医師会や世論が怖くて、できない、面倒だからしない、それだけのことだ。 1年間、国会でも戦わず、医師会とも戦わず、世論とも戦わず、政治も政府も何もしてこなかった。それを誰も責めなかった。むしろ、行動制限には補償がセットで必要だと、訳知り顔で政府を攻撃する。そんなことはない。社会秩序、社会全体の保健衛生上の危機がある場合には、一般的な規制をすることは憲法違反にならない。個別の措置は、憲法違反になる可能性があるが、それは裁判をやって判断するだけのことだ。 百貨店だけに休業を命令するのは明らかな憲法違反だが、特定の地域の人々全員に外出を禁止するのは憲法違反でない。小売店すべてに休業命令を出すのも違反でない。飲食店すべて休業命令を出すのは、違反でないと思われるが、飲食店の側で争う余地はある。 しかし、それは議論しなければ結論は出ない。裁判所であれ、国会であれ、メディアであれ、どこでも議論を戦わせずに、戦いから逃げてきた1年間。政治もわれわれも。それが、現在の結果をもたらしている。 そして、この戦いから逃げる姿勢は現在も継続している。太平洋戦争も同じだった、ともいえるだろう。 つまり、日本は絶望的で、望みがないのではないか、と思ってしまうのである』、「日本においては、特別措置法で、その規定がない、と言うことに過ぎない。なければ、作ればよい。特措法改正をしたときに、もっといろいろできるようにすればよかっただけだ」、憲法改正する口実に憲法問題を持ち出しているとすれば、罪が深い。

次に、6月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏による「尾身会長を「都合よく使う」菅政権の重罪、政府が専門家の価値を暴落させる」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/273412
・『政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長が、東京オリンピック・パラリンピックの開催に警鐘を鳴らしたことで大騒動が巻き起こっている。それに対する政府の対応はお粗末なもので、政治家としての能力不足を露呈した。今回の問題は、政府が尾身会長の専門性と権威を自分たちに都合のいい内容ばかりに使おうとしていることにある。尾身会長の扱い方いかんで、「政府が使う専門家」の価値が大きく動くことになるかもしれない』、興味深そうだ。
・『コロナ対策分科会の尾身茂会長が東京五輪のリスクを警告  政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の会長を務める尾身茂氏が、6月2日に東京オリンピックの開催の可否について問われて、「普通はない。このパンデミックで」と答えたことが波紋を呼んでいる。 言葉を補うと「現在のようなパンデミック(感染症の大流行)の状況下では、東京オリンピックのようなイベントを開くことは、常識的には行うべきでない」という意味に解される。これまで政府の意向に沿った情報発信を行ってきて、「御用学者」などとやゆする声も一部にあった尾身氏だが、政府がやりたがっているように見える東京オリンピックの開催に明確に反対する意見を述べたことに驚きが広がった。 尾身会長のコロナ対策は「人流を抑える」ことに要点があった。そのため、数万人単位の人間が国境を越えて動く、異次元の人流イベントである東京オリンピック開催に対して否定的な意見を持つことは、全く自然に思われる』、その通りだ。
・『「尾身発言」に応えられない菅政権 政治家として能力不足  オリンピック開催に反対の国民からは「尾身さん、よく言ってくれた。ありがとう」との声がある一方、ある「与党幹部」はこの発言に対して「越権行為だ」と不快感を表明したとの報道もある。 後者については、尾身氏は自身がオリンピック開催の可否の決定者でないことについて、十分に認識しているように思われる。彼は、「普通はない」が、それでもやる場合には、なぜやるのか理由の十分な説明が国民に対して必要だと言っている。別段の越権はない。 問題は、これに十分応えることができていない菅義偉首相以下の政府の側にある。はっきり言って、政治家として能力不足だ。職務の継続に無理があるのは尾身会長の方ではなく、菅首相の方ではないだろうか。「安全・安心なオリンピック」と呪文を唱えるだけで、「どのようにすると、なぜ、安全なのか?」が分からないので、国民は政府を信用できずにいる。各種の調査で内閣支持率が下落している大きな理由だろう。 尾身氏の発言を重視した野党は、分科会に東京オリンピックの安全性に関して諮問を求めるべきだと要求しているが、政府はこれを拒否している。東京オリンピックの開催に対して否定的な意見を分科会の答えとして受け取ってしまうと、不都合だということなのだろう。改めて言うまでもないが、諮問云々の手続きが問題なのではなく、リスクに対する専門家の判断が問題なのだから、全くばかばかしいこだわりだ』、このブログの「東京オリンピック(五輪)(その18)」でみたように、「菅首相」はどうもオリンピックが始まってしまえば、国民はオリンピックに熱狂することに賭けているようだ。無論、そんな本音は口に出す訳にはいかない。
・『政府にとっての専門家の「利用価値」  現時点で、尾身氏は、独自に情報を発信する意向だと報じられている。 感染症対策の「専門家」として、コロナ禍におけるオリンピック開催のリスクや、どうしても開催する場合に必要な対策を提示することが自らの責任だと考えておられるようだ。極めて「まとも」で「普通」の考えだと、筆者は思う。 政府に対して、時には企業や学校などの組織に対して、「専門家」は微妙な位置に立つ場合がある。 多くの場合に専門家は、政府などの組織が実行したいと考えることの正しさを専門家として裏書きして、その正当性を補強する役割を期待される。例えば、昨年の「Go Toキャンペーン」の際には、Go Toキャンペーンが感染症対策と両立できるという情報発信を専門家が行ってくれると、政府としては好都合だった。 かくして、多数の「委員会」や「有識者会議」が生まれる。 一般に、こうした会議に呼ばれる専門家には、(1)政府に認められた専門家としてステータスを得る、(2)専門的な知見を広く世間に知らせることができる、(3)自分の所属組織(例えば大学)が政府と良好な関係を持つことにメリットがある(研究費などで)、といったモチベーションがある。 なお、この3番目のメリットに関しては、学者の場合にそれなりに重要な場合があるだろう。ただ、政府との関わりが自分の所属する会社に受注をもたらすような関係性になると、不適切な場合がある。今回、名指しは避けるが、政府に関係する「会議」のメンバーにはこの点で深刻な疑義を感じさせる人物が存在する。 尾身会長は元官僚であり、地域医療機能推進機構の理事長だが、(3)に関する疑義は今のところ感じられない。また、尾身会長の分科会については存じ上げないが、この種の有識者会議の出席に関する謝礼金はごく安いのが普通で、尾身氏のような方にとってほとんど意味がない金額だ。 従って尾身会長は、これまで専門家としての使命感から「手弁当」的な感覚で協力してきたと実感しているに違いない』、その通りだろう。
・『尾身会長vs菅政権、問題の本質は「専門家を都合よく使おうとすること」  今回の政府と尾身会長の間の問題は、政府の側が、尾身会長の専門性と権威を自分たちに都合のいい内容ばかりに使おうとしていることにある。 政府の行うことが正しいと専門家が判断する限りでは、この関係性は専門家自身にとっても問題はない。 しかし、今回の東京オリンピックの感染症リスクは、尾身氏の専門家としての知見から看過できないものなのだろう。 あるいは、筆者の邪推の可能性もあるが、尾身会長は、東京オリンピックの開催は不可避と判断した上で、開催後の感染問題の深刻化の可能性を踏まえて「専門家として事前に警告した」という事跡を残しておきたいのかもしれない。 この場合、尾身氏の対社会的な保身行為だともいえる。しかし、万一そうした理由があるとしても、リスクを警告するという行為自体は国民一般に対する「専門家」の行動として適切である。リスクを知っていて何も言わずにいるよりは、いかなる形であっても情報を発信する方がずっといい。 情報の受け手である国民としては、尾身氏の発言の背景が上記のいずれであるとしても、「尾身氏の目から見て、東京オリンピック開催には深刻なリスクがある」と受け取ることができる。 オリンピックを開催したい政府としては、尾身会長に「オリンピックを安全に開催することは十分可能だ」と言ってもらえると都合がよかったのだろうが、そうはならなかった。 「それでも開催する」という判断なら、判断の責任者が国民に納得のいく説明をする必要がある。尾身氏の専門性を隠れみのにして、説明の代用にしようとすることは虫が良すぎる』、「尾身氏の専門性を隠れみのにして、説明の代用にしようとすることは虫が良すぎる」、同感である。
・『個人と組織にとっての「専門家キャピタル」  東京オリンピックの開催に深刻なリスクを認める場合、尾身会長にとって今回の発言は、専門家としての権威や評判の価値、いわば自らの「専門家キャピタル」を守るための行動だと解することができる。 政府や企業が「専門家」を使おうとする場合、個々の専門家にとって自らの価値を守る上で譲れない一線がどの辺りにあるのかを見極めることが重要だ。専門家(特に学者)は、経済的な利にさとい人や、自説にこだわらずに御用学者に徹することを役割と考える人もいるが、多くは「仲間内の評判」に敏感だ。専門家は専門家仲間によって承認され合うことによってその世界での価値を維持している。 政府はこれまで、尾身氏の「専門家キャピタル」を大いに利用してきたが、今回同じ手が利かなくなったことに対してどう対処するのだろうか。 いかにもありそうな選択肢は、(1)別の専門家を使う、(2)尾身氏に圧力を掛けて好都合な発信を強いる、の二つだが、どうなるか。 (1)は「ノーベル賞級の御用学者」が必要だが、適任者が急には見つからないかもしれない。(2)は、尾身氏に個人的な弱みがあるのか否かが問題になる。週刊誌などで、尾身氏の個人的なスキャンダルが見出しとなるような事態が今後起これば、背後で(2)のような事態が進行した可能性が大きいと推測できる。どちらにせよ、感じのいい進展ではない。 三つ目の選択肢があるとすれば、(3)警告を無視してオリンピックを強行する、だろう。知性のかけらも感じさせない強引な方法だが、時間の切迫具合から見て、こうなりそうな予感はある』、確かに(3)の可能性が高そうだ。
・『政府が選んだ専門家が信用されなくなる そんな未来が訪れかねない  政府が、専門家が有する「専門家キャピタル」を各種の「会議」や「委員」などの立て付けを使って都合よく利用する行動は、今後も続くだろう。ただし、専門家の使い方があまりに粗末だと、そもそも政府が選んだ専門家が信用されなくなるという、政府レベルでの「専門家キャピタル」の毀損が起こりかねない。 新型コロナも東京オリンピックも国民の関心の高いテーマだ。専門家としての尾身会長の扱い方いかんで、政府が使う専門家というものの価値が大きく動くことになるかもしれない。 例えば一転して、政府が尾身氏の警告に耳を傾け、東京オリンピックの開催を断念した場合、「専門家」への国民の尊敬は高まるだろうし、菅内閣の支持率は上昇するかもしれない。 政府に限らず、企業でも学校でも、「専門家」の扱い方は重要であると同時に難しい。もちろん、専門家自身の身の振り方も簡単ではない』、さすが山崎氏らしい深い考察だ。

第三に、6月4日付けNewsweek日本版が掲載したローワン・ジェイコブソン氏による「「研究所流出説」を甦らせた素人ネット調査団、新型コロナの始祖ウイルスを「発見」!」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/06/post-96453_1.php
・『<パンデミック発生後早い段階で「反中の陰謀説」とされてきた新型コロナウイルスの「研究所流出説」がここへ来て急に見直されているのは、中国の説明がおかしいと感じた世界各地のアマチュアネットユーザーがチームを組んで否定しがたい新事実を科学界と大メディアに突きつけたからだ> 新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な大流行)は中国・武漢の研究所から手違いでウイルスが流出して引き起こされた──これはつい最近までオルト・ライト(新右翼)的な陰謀論としておおむね無視されてきた主張だ。 ワシントン・ポストは2020年初め、「専門家が何度もその誤りを証明した陰謀論を、執拗に蒸し返している」として、トム・コットン上院議員を批判。CNNは「陰謀論や誤情報を信じている友人や家族を説得する方法」を伝え、ニューヨーク・タイムズも「非主流の説」扱いをし、公共放送のNPRも「研究所の事故で流出したという説は虚偽だと証明されている」と述べるなど、アメリカの他の主要メディアもおおむねこの説を否定していた。 そうした中で、本誌は例外的に2020年4月、武漢ウイルス研究所(WIV)はウイルスの病原性や感染性を強める「機能獲得型」研究を行なっており、ここから流出した可能性も否定できないと報道した。同様の報道を行なったのは、左派系雑誌のマザー・ジョーンズに加え、ビジネス・インサイダー、ニューヨーク・ポスト、FOXニュースと、ごく少数のメディアだけだ』、「研究所流出説」も当初は少数派だったようだ。
・『あるのは好奇心と根気だけ  だがこの1週間ほど、研究所流出説がにわかに注目を浴び始めた。ジョー・バイデン米大統領は情報機関に追加調査を指示。主要メディアも手のひらを返したように、流出説をあり得る仮説として扱い始めた。 雲行きが変わった理由は明らかだ。この何カ月かの間に武漢の研究所からの流出を疑わせる状況証拠が次々に明るみに出て、無視できないほどに蓄積された。 それらの証拠を探り当てたのは、ジャーナリストでもスパイでも科学者でもない。アマチュアの「探偵」たちだ。彼らの武器は好奇心、そして来る日も来る日もインターネット上の膨大な情報をかき分け、手掛かりを探す根気強さ。それだけだ。 パンデミックが始まってからというもの、その原因に関心をもった世界各地のアマチュア20数人が独自に調査を行い、埋もれた文書を掘り起こし、断片的な情報をつなぎ合わせてきた。彼らがばらばらに発信した推理が1つ、また1つとツイッター上でつながり、やがてはまとまったストーリーが紡ぎ出されてきた。 それは言ってみれば「オープンソースの自由参加型ブレインストーミング」であり、ネット調査と市民ジャーナリズムの要素が合体した、全く新しい調査方法である。彼らは自分たちをDRASTIC(Decentralized Radical Autonomous Search Team Investing COVID-19=新型コロナウイルス感染症に関する分散型の急進的な匿名の調査チームの頭文字を取った略称だ)と名乗る。 DRASTICの調査結果は長い間、ツイッター上のオタク世界の片隅に埋もれ、少数のフォロワーにしか知られていなかった。探偵たちはたびたび捜査の袋小路にぶつかったし、時には彼らの解釈に異を唱える科学者たちと論争になった。それらの数々のツイートは、ツイッターの「ファイヤーホース」サービスを介して、1つのまとまったニュースの流れを形づくった。 調査の質はしだいに向上し、事実究明に向けたその執念がより幅広いフォロワーを引きつけ、科学者やジャーナリストもその内容に注目するようになった。 DRASTICのおかげで、今ではいくつかの重要な事柄が分かっている』、「パンデミックが始まってからというもの、その原因に関心をもった世界各地のアマチュア20数人が独自に調査を行い、埋もれた文書を掘り起こし、断片的な情報をつなぎ合わせてきた。彼らがばらばらに発信した推理が1つ、また1つとツイッター上でつながり、やがてはまとまったストーリーが紡ぎ出されてきた。 それは言ってみれば「オープンソースの自由参加型ブレインストーミング」であり、ネット調査と市民ジャーナリズムの要素が合体した、全く新しい調査方法である」、素人集団がここまでやるとは素晴らしい。
・『どう見ても疑うしかない新事実  まず、武漢の研究所が長年、コウモリのいる洞窟で何種類ものコロナウイルスを収集してきたこと。その多くは2012年にSARS(重症急性呼吸器症候群)のような症状を起こして3人の鉱山労働者が死亡した銅鉱山で見つかったもので、新型コロナと最も近縁なウイルスもそこに含まれるとみられている。 また、武漢の研究所はこれらのウイルスを使ってさまざまな実験を行なっていたが、安全管理はお粗末で、曝露や流出の危険性があったことも明らかになった。研究所も中国政府もこうした活動を外部に知られないよう、ひた隠しにしていたのだ。 さらに、新型コロナの発生源とされた武漢の華南海鮮市場で最初の集団感染が起きるよりも何週間も前に、既に感染者が発生していたことも分かった。 これらのいずれも、研究所流出説を裏付ける決定的な証拠とは言えない。研究所が発生源ではない可能性も十分にある。しかしDRASTICが集めた証拠は、検察官の言う「相当な理由」にはなる。つまり、研究所から出た可能性を疑い、本格的な捜査を行うに足る理由がある、ということだ。) アメリカやその他の国々が精力的に調査を進めても、研究所流出説を裏付ける明白な証拠が得られるという保証はない。中国の全面的な協力なしには、徹底した調査はできないが、中国の協力は得られそうにない。 それでも、この雑多な背景を持つ少数のアマチュアたちがやってのけた草の根の調査報道は、21世紀の最大のスクープとなる可能性がある。 以下はその詳しい経緯だ。 DRASTICの1人、「シーカー(探索者)」と名乗る20代後半のインド人男性がメールとテキストメッセージで本誌の取材に応じてくれた。 彼はインド東部の西ベンガル州在住。地元の伝統的な舞踊に使われる仮面をツイッターのロゴにしている。仕事は建築、絵画、映像制作など。母や姉妹がよく作るインドのお粥「キチュリー」のように雑多な素材が混じり合うことで、意外性に富む作品ができるそうだ。 熱心な独学者で、グーグルが監視の目を光らせるネット上の「表通り」からは外れた「路地裏」に精通し、興味を持ったトピックについてはそこでせっせと情報収集をしてきた。その成果をレディットに頻繁に投稿し、75万カル・ポイントを獲得したという。 本誌に明かしてくれたプロフィールは以上。本名の公表は控えたいそうだ』、「この雑多な背景を持つ少数のアマチュアたちがやってのけた草の根の調査報道は、21世紀の最大のスクープとなる可能性がある」、ずいぶん面白い時代になったものだ。
・『「流出説」を揉み消した大物の正体  パンデミックが始まった当初、新型コロナ関連のニュースを追っていた人たちの例に漏れず、シーカーも武漢の海鮮市場で野生動物からヒトに感染が広がったと信じていた。3月27日付のツイートで、彼は「珍しい動物の取引で生まれたおかしなウイルスで、親や祖父母が死ぬなんて、ひどい話だ」と嘆いた。 彼がそう信じたのは、主要メディアがそう報じたからで、主要メディアがそう報じたのは何人かの科学者がそう主張したからだ。 そう主張した科学者の筆頭格がピーター・ダザック。パンデミックを起こす可能性がある自然界の病原体について大規模な国際調査を行う非営利の研究機関、エコヘルス・アライアンスの代表だ。 ダザックは、武漢ウイルス研究所に所属するコウモリのウイルス研究の第一人者、石正麗(シー・ジェンリー)と長年共同研究を行なってきた。十数本近い論文を共同執筆し、分かっているだけで60万ドルの米政府の助成金を彼女に回してきた。) 世界で最も多くコロナウイルスを収集してきた研究所のすぐそばで、未知のコロナウイルスの集団感染が発生したとなると、研究所から流出した疑いを持つのは理の当然だ。ダザックはすかさずそれに待ったをかけた。他の26人の科学者と連名で2020年2月19日、医学誌ランセットで公開書簡を発表。「新型コロナウイルス感染症が自然な発生源を持たないことを示唆する陰謀論を、私たちは断固として非難する」と宣言したのだ。 今では情報自由法の請求記録から、ダザックが研究所流出説を潰すための公開書簡の作成を主導したことが分かっている。彼は書簡の草案を作成し、仲間の科学者たちに署名させて、それが幅広い科学者の見解を示すものに見えるように画策したのだ。 ダザックは科学者たちに署名を求めるメールの中で、「この声明にはエコヘルス・アライアンスのロゴは入らないし、特定の組織や人物が作成したものだと特定されることはない」と確約していた。武漢ウイルス研究所と研究内容が重なる科学者たちは、「(署名から)研究内容を逆にたどられることがないように」署名しないことで同意した。 だが当時、ダザックが果たした役割については、それをほのめかす兆しもなかった。公開書簡が発表されたことがきっかけでメディアに頻繁に登場するようになったダザックは、研究所流出説を「不合理」「根拠に欠ける」「完全なでたらめ」と一蹴した。彼はまた、同研究所につながる証拠を発表した複数の科学者を攻撃。研究所流出説が理にかなわない理由の一部として、武漢ウイルス研究所では、新型コロナウイルスに少しでも似ているウイルスを一切培養していなかったと主張した』、「情報自由法の請求記録から、ダザックが研究所流出説を潰すための公開書簡の作成を主導したことが分かっている。彼は書簡の草案を作成し、仲間の科学者たちに署名させて、それが幅広い科学者の見解を示すものに見えるように画策した」、隠蔽工作も手がこんでいるようだ。
・『コウモリウイルスの専門家、石正麗  ダザックは長期にわたって、驚くほど大きな影響力を持ち続けた。彼のしたことが公にされれば、彼のキャリアも組織も大きな打撃を受けただろうが、メディアがそうした疑問を提起することはほとんどなかった。 皮肉にもダザックの「共犯」となったのが、ドナルド・トランプ前米大統領だった。「中国ウイルス説」を唱えるトランプ政権がエコヘルス・アライアンスへの助成金を打ち切ると、メディアはダザックを陰謀論者たちの「犠牲者」として同情的に取り上げたのだ。 シーカーは、2020年前半までにはその考え方に疑問を抱くようになっていた。そこで、通説のあら探しをしていた人々とのやり取りを始めた。 その中で見つけた重要な情報が、カナダの起業家ユーリ・デイギンによる、オンラインプラットフォーム「メディウム」への投稿だ。デイギンはこの中で、石正麗が2月3日に科学誌ネイチャーで発表したウイルス「RaTG13」を取り上げていた。石正麗は論文の中で、新型コロナウイルスについての詳細な分析結果を紹介。新型コロナウイルスと遺伝子レベルで似ているウイルスとして、「RaTG13」(コウモリコロナウイルス)を挙げていた。) 論文はRaTG13の起源については曖昧で、中国南部の雲南省に生息するコウモリから以前検出されたと述べるだけで、いつ・どこで発見されたのか具体的な言及はなかった。 デイギンはこの論文に疑念を抱いた。新型コロナウイルスは、RaTG13あるいはその関連ウイルスを調べていて、遺伝子を混ぜ合わせたり、照合したりする作業の過程で生まれた可能性があるのではないかと考えた。デイギンの投稿内容は包括的で、説得力があった。シーカーはデイギンの説をレディットに投稿。するとすぐに、彼のアカウントは永久凍結された。 この検閲の気配が、シーカーの好奇心とやる気を刺激した。ツイッター上にあるグループのアイデアをさらに読んでいくと、「この問題について活発に議論し、調査しているグループが見つかった」と、彼は本誌へのメールで述べた。 この刺激的なグループを構成していたのは、起業家やエンジニア、それにロッサーナ・セグレトという米インスブルック大学の微生物学者もいた。彼らは互いに面識はなかったが、新型コロナウイルスの起源が動物という通説に疑問をもった点が共通していた。 アジアのどこかに暮らしているという冗談好きのコーディネーターがグループの会話を管理していた。この人物はビリー・ボスティックソンという偽名を使っており、ツイッターのアイコンには、痛めつけられた研究用のサルの絵を使っている』、「「中国ウイルス説」を唱えるトランプ政権がエコヘルス・アライアンスへの助成金を打ち切ると、メディアはダザックを陰謀論者たちの「犠牲者」として同情的に取り上げたのだ」、皮肉なことだ。「刺激的なグループを構成していたのは、起業家やエンジニア、それにロッサーナ・セグレトという米インスブルック大学の微生物学者もいた。彼らは互いに面識はなかったが、新型コロナウイルスの起源が動物という通説に疑問をもった点が共通していた」、なるほど。
・『真相を明らかにする使命感  まさにシーカーにぴったりのグループだった。「彼らの手助けを得て、詳しいことを学んでいった」と彼は言う。「いつの間にか、この謎にすっかり夢中になっていた」 彼を駆り立てたのは好奇心だけではなく、ひとりの市民としての責任感でもあった。「新型コロナウイルスは、数えきれない人の命を奪い、大勢の人の生活を破壊した。多くの謎も残しているのに、その追跡調査が行なわれていない。人類には答えを知る権利がある」 シーカーをはじめとするメンバーたちは徐々に、RaTG13がその「答え」の一部を解明する上での鍵を握っているのではないかと確信するようになった。 グループのスレッドでは、6人ほどの参加者がこの謎について活発な議論を展開。彼らはヒントを求めて、インターネットや武漢ウイルス研究所の過去の論文をくまなく調べた。彼らは世界中の人々が見られる形で、リアルタイムでデータを更新し、さまざまな仮説を検証し、互いの意見を修正し合い、幾つかの重要な指摘を行った。 RaTG13の遺伝子配列が、石正麗が何年も前に発表した論文に記されていた遺伝子コードの一部と完璧に一致した、というのもその一つだ。この遺伝子コードは、武漢ウイルス研究所が雲南省のコウモリから発見したウイルスのものだった。) DRASTICチームは、2つの論文に含まれる重要な詳細情報を過去の複数の報道と結びつけて、RaTG13は雲南省の墨江ハニ族自治県にある鉱山の坑道で発見されたウイルスだと断定した。ここでは2012年に、コウモリの糞を除去していた男性6人が肺炎を発症し、そのうち3人が死亡していた。DRASTICはこれが、ヒトが新型コロナウイルスの始祖ウイルス(おそらくRaTG13かそれに類似したウイルス)に感染した初めての症例だったのではないかと考えた。 石正麗は科学誌「サイエンティフィック・アメリカン」に掲載されたプロフィールの中で、複数の鉱山労働者が死亡した墨江ハニ族自治県の鉱山について調査を行なったことを認めている。だが彼女はこの銅鉱山の一件とRaTG13を関連づけることは避けており(論文の中でも触れていない)、作業員たちは洞窟の中の「真菌(カビ)」が原因で死亡したと主張した。 DRASTICの面々は納得しなかった。鉱山労働者を死に追いやったのは真菌ではなく、SARSウイルスに似たウイルスで、研究所は何らかの理由でそれを隠そうとしているのではないかと、彼らは考えた。だが、それは直感にすぎず、証明する手立てはなかった』、「RaTG13の遺伝子配列が、石正麗が何年も前に発表した論文に記されていた遺伝子コードの一部と完璧に一致した」、こんなことが起こり得るとは謎解きも面白そうだ。
・『2012年の鉱山労働者の死因を追え  だがネット情報を探るうちに、シーカーは中国の学術誌や論文を網羅した巨大なデータベース、CNKI(中国学術文献オンラインサービス)を見つけた。ここにある膨大な学術文献の中に、鉱山労働者の死に関連した情報が埋もれているかもしれない。 彼はベッドの横のテーブルにチャイを用意し、携帯電話とノートパソコンで夜を徹して探索を続けた。問題の鉱山がある地域の名称(墨江ハニ族自治県)に思いつく限りの関連キーワードを付けて、グーグル翻訳で英語を簡体字の漢字に変換して検索をかけ、検索結果をまた英語に翻訳して目を通す。「墨江+肺炎」「墨江+武漢ウイルス研究所」「墨江+コウモリ」「墨江+SARS」という具合だ。 1回の検索で何千もの結果が出て、雑誌、本、新聞、修士論文、博士論文などのデータベースが半ダースほども表示される。シーカーは来る夜も来る夜もそれらに目を通したが、有用な情報は得られなかった。精魂尽きるとチャイを飲み、アーケードゲームで気分転換して、また作業を続ける。) その宝物に出くわしたのは、あきらめかけた時だった。昆明医科大学の院生が2013年に提出した60ページに及ぶ修士論文だ。タイトルは「未知のウイルスによる6人の重症肺炎患者の分析」。患者1人1人の症状と治療の進展を事細かく述べた上で、執筆者は疑わしい「犯人」を挙げていた。「シナキクガシラコウモリ、あるいはその他のコウモリ由来のSARSのような(症状を引き起こすコロナウイルス)」の仕業だ、と。 シーカーは淡々と、論文のタイトルとリンクをツイッターに投稿した。2020年5月18日のことだ。次に、中国疾病対策予防センターの博士研究員(ポスドク)が執筆した同じテーマの論文を調べると、内容の多くは最初の論文と一致していた。鉱山労働者のうち4人はSARSウイルスに似たウイルスの抗体検査で陽性だったこと、これらの検査結果は全て、武漢の研究所に報告されていたことも分かった(シーカーが2つの論文のリンクを貼った直後に、中国はCNKIのアクセス管理を変更し、彼が行なったような調査はできなくなった)』、「中国」の隠蔽工作は徹底しているようだ。
・『主要メディアの無関心に呆れる  2012年にSARSウイルスに似たウイルスが見つかり、その事実が隠蔽され、武漢の研究所が問題の鉱山からさらにサンプルを採取して持ち帰るためにスタッフを派遣したのだとすれば、これは一大スクープだ。欧米の主要メディアはすぐさま飛びついて派手に報道するはずと思ったが、何週間も話題にすらならなかった。イギリスではサンデー・タイムズが特集を組んだほか、少数のメディアが報道したが、米メディアは全く取り上げなかった。 「メディアは大騒ぎになると思っていた」と、シーカーは本誌に打ち明けた。「事実や因果関係に対する関心のなさに、あきれるばかりだった。潤沢なリソースを持つ主要メディアが、調査報道で(アマチュア集団に)大幅な後れを取るなんて、さっぱり理解できない」 DRASTICは数日のうちに、墨江ハニ族自治県にある鉱山の位置を突き止めたが、主要メディアがそのツイートに注目し、記者たちが我先に問題の坑口を目指し始めたのは、2020年も終わりに近づいてからだ。 ※後編はこちら:武漢研究所は長年、危険なコロナウイルスの機能獲得実験を行っていた』、「イギリスではサンデー・タイムズが特集を組んだほか、少数のメディアが報道したが、米メディアは全く取り上げなかっのた」、そんなもだろう。「潤沢なリソースを持つ主要メディアが、調査報道で(アマチュア集団に)大幅な後れを取るなんて、さっぱり理解できない」、「主要メディア」には商業主義の制約もあるのだろう。既に長くなったので、「後編」の紹介は下記リンクの紹介に留めた。いずれにしろ、「武漢研究所」の疑いが一段と深まったようだ。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/06/2-361_1.php
タグ:パンデミック 小幡 績 ダイヤモンド・オンライン Newsweek日本版 山崎 元 (経済社会的視点) (その16)(コロナとさえ戦わない絶望の国ニッポン、尾身会長を「都合よく使う」菅政権の重罪 政府が専門家の価値を暴落させる、「研究所流出説」を甦らせた素人ネット調査団 新型コロナの始祖ウイルスを「発見」!) 「コロナとさえ戦わない絶望の国ニッポン」 「オリンピックなどという不要不急、重要性の低いイベントに国が囚われてしまっている。物事の優先順位がつけられない国は、普通は、滅亡する」、痛烈な批判だ 「1回目の効果に見えたのは、緊急事態宣言ではなく、自称有識者が、ロンドンとニューヨークの危機を吹聴して、ことさらに人々を脅し、専門家までが、極端な8割削減、死亡者数数十万と、こちらも煽って、人々を恐怖に陥れたからだ」、面白い見方だ。 「最悪の事態にならないように全力を尽くしますと言えばいいだけなのに、オリンピックができないこともありうるというのは禁句で、何があっても触れない、という態度が、人々の政治不信を加速し、自粛要請に対する反発を高め、今後の政府の分析、説明、呼びかけ、すべての効果をさらに失わせている」、その通りだ。 「ソーシャルディスタンスや三密など、すでに間違いだったことがはっきりしたことを誰も訂正しないどころか、いまだにそれを主張し続けている」、マスコミも政府の誤ったキャンペーンの片棒を担いでいる 「日本においては、特別措置法で、その規定がない、と言うことに過ぎない。なければ、作ればよい。特措法改正をしたときに、もっといろいろできるようにすればよかっただけだ」、憲法改正する口実に憲法問題を持ち出しているとすれば、罪が深い。 「尾身会長を「都合よく使う」菅政権の重罪、政府が専門家の価値を暴落させる」 東京オリンピック(五輪)(その18) 「菅首相」はどうもオリンピックが始まってしまえば、国民はオリンピックに熱狂することに賭けているようだ。無論、そんな本音は口に出す訳にはいかない 尾身会長は、これまで専門家としての使命感から「手弁当」的な感覚で協力してきたと実感しているに違いない』、その通りだろう 「尾身氏の専門性を隠れみのにして、説明の代用にしようとすることは虫が良すぎる」、同感である。 確かに(3)の可能性が高そうだ。 さすが山崎氏らしい深い考察だ。 ローワン・ジェイコブソン 「「研究所流出説」を甦らせた素人ネット調査団、新型コロナの始祖ウイルスを「発見」!」 パンデミック発生後早い段階で「反中の陰謀説」とされてきた新型コロナウイルスの「研究所流出説」がここへ来て急に見直されているのは、中国の説明がおかしいと感じた世界各地のアマチュアネットユーザーがチームを組んで否定しがたい新事実を科学界と大メディアに突きつけたからだ 「研究所流出説」も当初は少数派だったようだ。 「パンデミックが始まってからというもの、その原因に関心をもった世界各地のアマチュア20数人が独自に調査を行い、埋もれた文書を掘り起こし、断片的な情報をつなぎ合わせてきた。彼らがばらばらに発信した推理が1つ、また1つとツイッター上でつながり、やがてはまとまったストーリーが紡ぎ出されてきた。 それは言ってみれば「オープンソースの自由参加型ブレインストーミング」であり、ネット調査と市民ジャーナリズムの要素が合体した、全く新しい調査方法である」、素人集団がここまでやるとは素晴らしい。 「この雑多な背景を持つ少数のアマチュアたちがやってのけた草の根の調査報道は、21世紀の最大のスクープとなる可能性がある」、ずいぶん面白い時代になったものだ。 「情報自由法の請求記録から、ダザックが研究所流出説を潰すための公開書簡の作成を主導したことが分かっている。彼は書簡の草案を作成し、仲間の科学者たちに署名させて、それが幅広い科学者の見解を示すものに見えるように画策した」、隠蔽工作も手がこんでいるようだ 「「中国ウイルス説」を唱えるトランプ政権がエコヘルス・アライアンスへの助成金を打ち切ると、メディアはダザックを陰謀論者たちの「犠牲者」として同情的に取り上げたのだ」、皮肉なことだ。「刺激的なグループを構成していたのは、起業家やエンジニア、それにロッサーナ・セグレトという米インスブルック大学の微生物学者もいた。彼らは互いに面識はなかったが、新型コロナウイルスの起源が動物という通説に疑問をもった点が共通していた」、なるほど。 「RaTG13の遺伝子配列が、石正麗が何年も前に発表した論文に記されていた遺伝子コードの一部と完璧に一致した」、こんなことが起こり得るとは謎解きも面白そうだ。 「中国」の隠蔽工作は徹底しているようだ。 「イギリスではサンデー・タイムズが特集を組んだほか、少数のメディアが報道したが、米メディアは全く取り上げなかっのた」、そんなもだろう 「潤沢なリソースを持つ主要メディアが、調査報道で(アマチュア集団に)大幅な後れを取るなんて、さっぱり理解できない」、「主要メディア」には商業主義の制約もあるのだろう。既に長くなったので、「後編」の紹介は下記リンクの紹介に留めた。いずれにしろ、「武漢研究所」の疑いが一段と深まったようだ。 https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/06/2-361_1.php
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