SSブログ

日本の政治情勢(その8)(池田信夫氏の見方:なぜ民進党は小池百合子氏に「身売り」したのか 「吸収合併」で政党をリセットする政治的イノベーション) [国内政治]

日本の政治情勢については、9月12日に取上げた。今日は、民進党の解党を秀逸に謎解きしている、(その8)(池田信夫氏の見方:なぜ民進党は小池百合子氏に「身売り」したのか 「吸収合併」で政党をリセットする政治的イノベーション) である。

ジャーナリストの池田 信夫氏が9月29付けJBPressに寄稿した「なぜ民進党は小池百合子氏に「身売り」したのか 「吸収合併」で政党をリセットする政治的イノベーション」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・民進党は9月28日の両院議員総会で、東京都の小池百合子知事が代表を務める「希望の党」に合流することを決めた。民進党は政党として衆議院選挙に届け出ず、今まで出した公認も取り消し、議員は離党して希望の党に公認申請を行う。公認するかどうかは、希望の党が決めるという。
・これは実質的には解党である。今週できたばかりの新党に、かつて政権を担った党が吸収されるというのは、常識では考えられない。私も最初はマスコミの勇み足だと思ったが、結果的には両院議員総会で了承された。何がこの急転回をもたらしたのだろうか?
▽「身売り」せざるをえなかった民進党
・今年の東京都議会選挙では、彼女の「都民ファースト」が、自民党も上回る第一党になった。彼女には政策も行政手腕もないが、「改革」のイメージだけはあるからだ。 「安倍はヒトラーだ」などという人がいるが、安倍首相はヒトラーとは逆のコンセンサスを重視する政治家だ。小池氏のようにイメージだけで売り込むポピュリストは、日本では橋下徹氏ぐらいだが、彼には「大阪都構想」という目的がそれなりにあった。
・ところが小池氏は、何をしたいのか分からない。「エコ」のイメージで売り込み、いつも緑のスーツを着ているが、豊洲市場の移転問題では「ゼロリスク」を主張して、都政は迷走を続けた。このとき石原慎太郎元知事を悪役に仕立て上げ、都議会で吊し上げた。
・これがいま世界的に流行しているポピュリズムである。ヒトラーからトランプ大統領に至るまで、そのパターンはよく似ている:中身はないが、イメージづくりはうまい。組織は弱いが「共通の敵」をつくる。大衆をバカにして、意味不明のバズワードを振りまく。
・こういう「世界標準」のポピュリストは日本にはあまりいなかった。小池氏は東京では成功したが、それだけでは国政政党にはなれない。今回の「身売り」を持ちかけたのがどっちだったのかは不明だが、民進党にはそうするしかない事情があった。
▽鍵を握る政党交付金150億円
・2009年の民主党には今の希望の党以上の勢いがあり、具体的な「マニフェスト」もあったが、民主党政権が崩壊したあと国民の信頼は失われ、「民進党」と名前を変えたが、政党支持率は8%程度という状況が続いてきた。 このまま選挙になると、小選挙区では生き残れない。かといって共産党を含めた「野党4党共闘」では、政権を取る展望はまったくない。したがって政権交代を目指すなら、民進党が保守・中道勢力と連携するしかないことは分かっていた。
・前原誠司氏も今年の代表選挙でそういう方針を打ち出したが、党内には異論も多い。地方には共産党を含む野党共闘で勝てる民進党候補もいて、候補者調整も始まっていた。それを否定しても、民進党の「右」のパートナーがいない状況では動けなかった。
・そこに現れたのが希望の党である。中身がないことは最初から分かっていたが、マスコミは中身より派手な入れ物に集まる。今年8月の段階で、前原氏は「いま解散したら小池新党は衆議院で40~50議席取る」と読んでいた。90議席そこそこの民進党が生き残るには、これしかないと考えていたようだ。
・希望の党の弱点は、カネである。候補者は「希望の塾」に4000人が集まったが、全国の小選挙区にすべて候補を立てて戦うには100億円以上の資金が必要だ。他方、民進党に交付された政党交付金は今年87億円。今まで蓄えた資産も含めて、約150億円あるという。人気はあるがカネのない小池新党と、カネはあるが人気のない民進党がともに生き残る手段が、両者の合併だった。
・ここまでは早い時期に、両党が合意したと思われる。企業買収なら、実績も資金もある民進党が存続会社になり、希望の党を吸収合併するのが常識だが、そこに大きな障害があった。民進党の左派である。
▽小池氏の「レバレッジ」で左派を切り捨てる
・前原氏と小池氏は、1993年に細川政権が誕生したときの日本新党の同窓生である。当時は社会党が、連立与党で最大の抵抗勢力だった。特に村山富市委員長になってから小沢一郎氏との対立がひどくなり、細川首相の辞任後の連立離脱騒動で政権は空中分解した。
・小池氏はその後も新進党から自由党まで、小沢氏とともに歩んだ。思想的には安倍首相より「右」ともいえるが、前原氏とそう大きな違いはない。特に憲法や安全保障については、安倍首相と小池氏と前原氏の立場はほぼ同じだ。 ところが国会では「安保法制反対」の野党が不毛な論戦を繰り返してきた。ここで左派を切ると、民進党が分裂するおそれが強い。この状況で左派を切る方法は、企業のリストラを考えればいい。
・ 老舗の中堅企業A社が赤字部門を切りたいが、「人員整理する」というと労使問題になってしまう。こういうとき使われるのが企業買収(LBO)である。A社はバブルで株価の上がっている投資ファンドB社と合併するが、このとき存続会社をB社にする。 B社には経営内容は分からないが、どの部門が赤字かはA社の経営者は知っているので、それをB社に教え、B社はA社の赤字部門を売却する。このとき労働組合がA社の経営陣に抗議しても、存続会社はB社なので、どうにもならない。
・ここでA社を民進党、B社を希望の党に置き換えてみると、今回の「身売り」の意味が分かる。小池氏は「民進党と丸ごと合併はしない」といい、議員を一人ひとり選別するという。この基準は「憲法と安全保障」なので、左派は希望の党に入れないだろう。
・つまり前原氏は、小池氏という「レバレッジ」を使って左派を切ったのだ。民進党の中では「憲法改正」も「安保法制容認」もタブーだが、小池氏はそれを踏み絵にできる。彼女に選別させれば、足手まといだった左派を一挙に「リセット」できる。
・民進党は消滅するが、前原氏は「民進党は過渡的な政党だ」と割り切っている。政党はしょせん入れ物であり、政権を取るためには消滅してもかまわない。ただ正式に「解党」すると政党交付金を返還しなければならないので、彼がひとり党に残るという。 これは民進党執行部や両院議員総会で意外にあっさり了承されたので、彼個人の考えではなく、執行部の方針だろう。この奇抜な手法を思いついたのが誰かは分からないが、小池氏と前原氏に共通するのは小沢氏との関係である。
・こういうきわどい「一発逆転」は小沢氏がよく使った手法だが、細川内閣以外はすべて失敗した。今回の「吸収合併」も吉と出るか凶と出るかはまだ分からないが、少なくとも日本の歴史には前例のない政治的イノベーションであることは間違いない。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51212 

なるほど。 『人気はあるがカネのない小池新党と、カネはあるが人気のない民進党がともに生き残る手段が、両者の合併だった』、 『小池氏の「レバレッジ」で左派を切り捨てる』、などというのは、「眼からウロコ」の見事な謎解きだ。ただ、 『民進党執行部や両院議員総会で意外にあっさり了承された』、のは、前原氏のその段階での説明が全員で移るようなイメージであったためではないのだろうか。移るに際して小池氏による「選別」があることが明らかになっていれば、こんなスキームが了承されることはなかった筈だ。前原氏は随分、汚い手を使ったものだ。連合会長は、今日、「全員が移るべき」と、「選別」には不快感を示したようだ。切り捨てられる左派は、無所属で立候補せざるを得ないようで、政党交付金150億円も希望の党にわたってしまうのでは、踏んだり蹴ったりだ。これから、切り捨てられる側から、何らかの巻き返しの動きが出てくる可能性もあろう。今回の小池・前原両氏の「奇策」がどうなるかは、まだしばらく様子を見る必要がありそうだ。
それにしても、日本にはあまりいなかったような 『「世界標準」のポピュリスト』、である小池氏の軍門に下った民進党は、情けない話だ。化けの皮が剥げる前に総選挙になったので、やむを得ない面もあるとはいえ、残念でならない。
なお、明日の10月1日から3日まで更新を休むので、4日にご期待を!
タグ:合流 希望の党 JBPRESS なぜ民進党は小池百合子氏に「身売り」したのか 「吸収合併」で政党をリセットする政治的イノベーション 民進党 実質的には解党 小池氏のようにイメージだけで売り込むポピュリストは、日本では橋下徹氏ぐらいだが 今まで出した公認も取り消し、議員は離党して希望の党に公認申請を行う。公認するかどうかは、希望の党が決めるという 民進党は政党として衆議院選挙に届け出ず 「身売り」せざるをえなかった民進党 こういうきわどい「一発逆転」は小沢氏がよく使った手法 彼女に選別させれば、足手まといだった左派を一挙に「リセット」できる 正式に「解党」すると政党交付金を返還しなければならないので、彼がひとり党に残るという 奇抜な手法を思いついたのが誰かは分からないが、小池氏と前原氏に共通するのは小沢氏との関係 小池氏は「民進党と丸ごと合併はしない」といい、議員を一人ひとり選別するという。この基準は「憲法と安全保障」なので、左派は希望の党に入れないだろう 小池氏の「レバレッジ」で左派を切り捨てる 中身はないが、イメージづくりはうまい。組織は弱いが「共通の敵」をつくる。大衆をバカにして、意味不明のバズワードを振りまく 人気はあるがカネのない小池新党と、カネはあるが人気のない民進党がともに生き残る手段が、両者の合併だった ヒトラーからトランプ大統領に至るまで、そのパターンはよく似ている 鍵を握る政党交付金150億円 世界的に流行しているポピュリズム (その8)(池田信夫氏の見方:なぜ民進党は小池百合子氏に「身売り」したのか 「吸収合併」で政党をリセットする政治的イノベーション) 池田 信夫 日本の政治情勢
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

ブラック企業(その8)(過労死は「気の持ちよう?!」…怒 職場の責任を個人の責任にすり替えさせちゃダメ!、“ほろ酔い気味の医師”に手術させる気か?) [社会]

ブラック企業については、7月27日に取上げたが、今日は、(その8)(過労死は「気の持ちよう?!」…怒 職場の責任を個人の責任にすり替えさせちゃダメ!、“ほろ酔い気味の医師”に手術させる気か?) である。

先ずは、健康社会学者の河合薫氏が8月22日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「過労死は「気の持ちよう?!」…怒 職場の責任を個人の責任にすり替えさせちゃダメ!」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・今回は「似て非なるもの」というテーマで、アレコレ考えてみる。 まずはこらからご覧いただきたい。
 +「ストレスで突然死」仕組み解明…マウスで確認(読売新聞)
 +ストレス起因の胃腸・心疾患、発症の仕組みがわかった!(日刊工業新聞)
 +「病は気から」メカニズム解明 マウスの脳に炎症 北大研究チーム(朝日新聞)
・各々の見出しを読んで、どう思いますか? 「読売と日刊工業のは同じ内容だろ?」 「うん、そんな気がする。だってどっちも過労死の話でしょ」 「昨日まで元気だった人が、なぜ、心筋梗塞とかで死んじゃうのかってことか」 「朝日のは心理実験かなんかかな?」 「う~ん、ネズミにも“病いは気から”なんてあるのか?(笑)
・すっげ~な~」 ええ、そうなんです。読売と日刊工業は「過労死(突然死)のメカニズムの解明」を、朝日新聞は、なんと「ネズミちゃんの世界にも“病いは気から”」があって、そのメカニズムが解明されたことを報じたのです。要するに「ネズミの心理実験」です!  ………というのは、真っ赤なウソ!(朝日新聞さん、すみません)。 実はこれ。違うのは見出しだけで、中身は全く同じもの。
▽ストレスの影響についての画期的な研究
・先週、話題となった北海道大学遺伝子病制御研究所の村上正晃教授らの研究グループが、世界で初めて明らかにした「ストレスが臓器の機能を低下させるメカニズム」に関する内容を報じたものだったのである。  これまでにもストレッサー(ストレスの原因となるさまざまな刺激)に長時間さらされると、生体に変化が起こり、高血圧症、胃・十二指腸潰瘍、糖尿病、心疾患などを発症することは、心理神経免疫学領域の多くの研究で明らかにされてきた。ただ、その分子的なメカニズムは読み解けていなかったため、村上教授らの研究グループが、その解明に挑んでいたのである。
・具体的な実験方法および結果は以下のとおり(日刊工業新聞の記事より抜粋)。
 +睡眠不足のストレスを与えたマウスに、自己免疫疾患モデルのマウスから採取した病原性の免疫細胞「CD4+T細胞」を投与。
 +その結果、70~80%のマウスが1週間で突然死。
 +ストレスのみ、または同細胞のみでは突然死は起こらなかった。
 +突然死したマウスでは、胃や腸など消化管からの出血があり、心疾患と関係が深い血中カリウムイオンも上昇。
 +脳では、視床などに囲まれた特定の血管から同細胞が侵入し、小さな炎症を発症。
 +この炎症が引き金で神経回路が活性化し、消化管や心臓の機能不全の原因になっていることが分かった。
・研究結果は、eLifeという生命科学専門のオンライン誌に掲載され(“Brain micro-inflammation at specific vessels dysregulates organ-homeostasis via the activation of new neural circuit ”)、研究グループの村上教授は、 「T細胞の量を調べることで突然死のリスクの解明や、治療法確立につながるかもしれない」 と述べているという。
・ふむ。いったいこれのどこに「病いは気から」というのが、あるのだろうか? 面白くて分かりやすい見出しは大事だけど 「病いは気から」の意味は、ことわざ辞典にはこう記されている。 病は気からとは、病気は気の持ちようによって、良くも悪くもなるということ。 心配事や不愉快なことがあったりすると、病気になりやすかったり、病が重くなったりするものである。 気持ちを明るく持ち、無益な心配はしないほうが、病気にかかりにくかったり、病気が治りやすかったりするということから「病は気より」ともいう。
・ふむ……。ひょっとするとマウスにも“気持ち”があるってことなのか? ミッキーはいつも元気だし、ミニーもいつも明るく振る舞っている。だからミッキーもミニーの365日、病気になることなく元気に働いているって? ま、まさか……。 仮にマウスに“気持ち”があったとしても、そのマウスの“気持ち”を人間世界のことわざに置き換えることには違和感がある。
・だって、これだけ突然死である「過労死」が問題になっているわけで。 正直に言わせていただくと、ストレス研究の片隅にいる身としては憤りすら覚えてしまったのだ。 新聞の見出しについて言えば、奇しくも、報道された数日前に「『CAの声が震えていた』 全日空緊急着陸」という見出しで、ANAの緊急着陸のトラブルが報じられていただけに気になった。
・このトラブルの起きた日は、32年前、JAL123便が“御巣鷹の尾根”に墜落したときと同じ、8月12日(ちなみに、私が昨年この日に書いたコラムはこちら)。 私が飛んでいたときにも、CAは緊急時に備え厳しく訓練を課せられていたし、1999年の全日空61便ハイジャック事件以降、さらに厳しくなったと同期たちから聞いていたので、「声が震えていた」とは、残念で仕方がなかった。 
・ところが、その後YouTubeにアップされた実際の映像を見ると、「私じゃ、ここまでできないかも……」と思うほど立派で。最初こそ、若干つっかえてはいたけど、あとは極めて冷静に状況を伝えていて、動画からもCAのアナウンスで機内が落ち着いた空気に包まれていくのが伝わってきた。
・私自身、どんなにいいコラムを書いても「読まれてなんぼ」なので、センセーショナルなタイトルをつけることも多い。 それでもやはり「声が震えていた」という部分だけ切り出していたことには、憤りを通り越して恐いと感じた(自戒も込めて)。 朝日新聞は、なぜ「過労死の防止につながる」可能性のある、素晴らしい研究結果に、“病いは気からの仕組み解明”などという見出しをつけてしまったのか?
▽ストレスの影響を定量化できる研究なのに
・定期健康診断のときにT細胞を調べて、「やばい増えてる。仕事休もう!」と自己管理できたり、「あなたはT細胞が増えてるので、残業は禁止です」と従業員の健康管理に使える可能性がある、極めて貴重な研究成果だ。それだけに残念で、残念で、私の脳内の“突っ込み隊”が暴れまくってしまったのである。
・……ところが……(“ところが”だらけで申し訳ない)、 朝日新聞の報道のソースを探っていたところ、驚愕の事実が発覚。 な、なんと北海道大学が研究成果を発表したプレスリリースの見出しに、 世界初!「病いは気から」の分子メカニズムの解明 ――キラーストレスはどのようにして消化管疾患や突然死をもたらすのか――  と、大きく書かれているではないか!
・しかも、プレスリリースの説明によると、 「今回の研究では、過労による突然死や「病いは気から」の原因として認識されるなど社会的に広く問題となっている慢性的なストレスが、特定の神経回路の活性化を介して~~~(略)」 とのこと。 
・えっと、本当に北大の方々には大変申し訳ないのだが……、これってどうなのでしょう??  私の脳レベルでは、書かれていることが日本語的に全く理解不能。 おそらく「同じようにストレスを与えても、ストレス関連ホルモンの分泌に個体差(マウス)がある」ことを「病いは気から」という文章で表現し、「ストレスを与え続けること」を「慢性的ストレス」としたのだろうけど、研究者の端くれとしてはやはり納得できない。
・もちろんそこまで深い意味はなく、「気の持ちよう」というのはポジティブにも、ネガティブにも使える言葉で、難しい研究結果を広く知ってもらうことが目的だったのかもしれないけど……。 「病は気から」ということわざには、どうしても「本人の」気の持ちよう、すなわち自己責任のニュアンスが強くまとわりつく。「ストレスと感じるかどうかは自分次第だろ」と言っているように私には思えて、そこが気になってしまう。
・いずれにしても、今回の研究テーマである「ストレス性の疾患への“気”の影響」は、その人の肉体や、置かれた環境に大きく左右され、「気の持ちよう」に見えて、「気の持ちよう」ではないのである。 例えば、36度という酷暑はストレスだが、身体的抵抗力の低い高齢者や子どもは、若年や壮年期の成人に比べストレスがかかる。この差に「気持ち」は存在しない。
・また、一般的に「ストレスに強い」とされている人だって、「気の持ちよう」で乗り切っているわけじゃない。  ストレスに上手く“対処”することで、ストレスを軽減しているのだ。 対処にはリソースが必要不可欠で、リソースは、専門用語ではGRR(Generalized Resistance Resource=汎抵抗資源)と呼ばれている。これは「世の中にあまねく存在するストレッサー(ストレスの原因)の回避、処理に役立つもの」のこと。
・リソースには、環境が個人に与える「外的な力(=社会的資源や物質的な外的なもの)」と、個人に内在する「内的な力(=認知的、遺伝的体質や気質)」がある。 要するに、ストレスの雨をしのぐ“傘”(=リソース)なくして、ストレスに対処することはできない。単純に「気持ち次第」と言うのは危険だ。だって、傘がなければどうしたって濡れる。気持ちだけでどうにかなるものではないのである。
▽ストレスを「感じなくなる」から大問題なのだ
・そもそも突然死である「過労死」に至る人のほとんどが、亡くなる直前までストレスを感じず、自分が死に至るほど「疲れている」という自覚症状もない。 その「自分が過労死するとは思わずに、過労死するまで働き続けてしまう謎」を解明するために行われたのが、「疲労研究班」(20以上の大学や機関の研究者で構成された文部科学省主導の研究会。平成11~16年にわたって様々な研究を行っている)による、マウスを使った実験である(参考記事:「“スーパーネズミ”はなぜ死んだ?」)。
・人間の脳の中には「疲れの見張り番」と呼ばれる部分があり、見張り番は心身にストレスがかかると「休んでください!」という指令を出す。 ところが、その指令を無視して働き続けると、見張り番自体が疲弊してし「休んでください」という指令を送れなくなる。 指示が出ないから、ストレスが体にかかっていると認識することができなくなり、突然死するまで働きつづける。
・さらに、何度も書いているとおり、生体にストレスとなる長時間労働や睡眠不足、深夜勤務は、「気」でどうにかなるものではない。 ストレスが脳血管疾患、心臓疾患発症のリスクを高めることがは疑いようもなく、国内外の多くの研究で明確に認められている(Liu Y, Tanaka H, The Fukuoka Heart Study Group (2002) “Overtime Work, Insufficient Sleep, and Risk of Non-fatal Acute Myocardial Infarction in Japanese Men" Occup Environ Med, 59, 447-451. など)。
・つまり、「忙しいのにも慣れちゃった」と明るく笑い飛ばしたり、一所懸命であればあるほど、過労死や過労自殺するリスクは高まる。前向きに気持ちを保つこと自体が、もっとも危険な状態なのだ。 つい先日も、某企業の新入社員の男性が(当時22歳)が、入社研修中に男性講師の言動で精神疾患(統合失調症)を発症し過労自殺したとして、労災を認定していたことがわかった。
・男性は、2013年4月の入社直後から8月までの予定で研修を受講。 4月10~12日に行われた、「意識行動変革研修」を受けた際、講師から「吃音」と決めつけられ(報道によっては「言わされた」というのもあり)、いじめられた経験を同期入社の前で言わされ、そのひと月後に自殺したのだ(こちら)。 この事例は、過労自殺であり、過労死ではないし、実際どのような研修が行われていたのかは報道以上のことは、わからない。
・でも、「働く意識」はひとつひとつ仕事に関わる中で変わるものだ。 自分にできなかったことが出来たり、思いもしなかった結果を出せたり、自分では気付かなかった能力を発揮したときにはじめて、仕事への意識は変化する。 それはストレスに上手く対処し、自己の成長につながるプロセスでもある。
▽過労死対策は職場の、社会の責任だ
・大切なのは「ストレスをストレスと感じない精神」を叩き込むことではなく、「遭遇したストレスに対処できるリソース」を職場に備えること。仕事のストレスに悩むことを「個人の責任」ではなく、「職場の責任」と意識を改めることが、今の日本社会にもっとも求められているはずなのだ。
・また、2年前に自殺した産婦人科勤務の男性医師(当時30歳代)が、原因は過労だったとの報道もあった。月173時間もの時間外労働をし、それでも本人は必死でがんばった末の死だった。 「息子は研修医として、その激務にまさに懸命の思いで向かい、その業務から逃げることなく医師としての責任を果たそうとし、その過程で破たんをきたしたものと思われます。 医師も人間であり、また、労働者でもあり、その労働環境は整備されなければこのような不幸は繰り返されると思います」(男性のご両親のコメントより:引用元はこちら、閲覧には登録が必要です)
・過労死(=突然死)は、長時間労働などがもたらす死だし、長時間労働は過労自殺の引き金になる。 どちらも個人の問題ではなく、職場の問題。本人の気の持ちようでどうなるものではない。 逆説的にいえば、今、社会問題となっている過労死や過労自殺は『避けることの出来る死(avoidable death)』。つまり、個人の問題ではなく、社会的な問題なのだ。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/082100118/?P=1

次に、同じ河合氏が9月12日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「“ほろ酔い気味の医師”に手術させる気か? リゲイン世代も仰天、月300時間の時間外労働って何なの」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・大阪府の国立循環器病研究センターが、勤務医や看護職員の時間外労働を「月300時間」まで可能にする36協定を結んでいたという、驚愕の事実が先週報じられた。 「月300時間の労働」じゃありませんよ。「月300時間の時間外労働」です。
・報道によれば、国循人事課の担当者は……(以下、朝日新聞9月7日付朝刊より)、 「医師や一部の看護師、研究職ら約700人について、特別な事情がある場合『月300時間を年6回、年間2070時間』まで延長できるが、実際の労働時間は、36協定の上限までに十分余裕がある」 と説明。
・また、毎日新聞の取材に対しては(こちら)、 「実際は300時間も働いている医師はいない。時間外労働が45時間を超えた場合、月1回の安全衛生委員会で議題に上げ、所属長に業務分担を求めたり、産業医との面談を勧めたりしている。(上限300時間を決めた)当時の担当者は既に退職し、なぜ300時間としたか分からない」と回答したそうだ。
・なんという無責任な回答なのだろう。 担当者がいないからわからない、って? 「実際にはいないから、問題ない」とも取れる対応には、憤りすら感じる。
・そもそも「上限300時間」が明らかになったのは、国循の脳神経外科病棟に勤務していた看護師の女性(当時25歳)が、2001年に過労死し、担当弁護士が情報公開を求めたのがきっかけだった(こちら)。 亡くなった女性は、患者の世話に加え、勉強会や研修会の準備などで日常的に残業を強いられていたところで、新人の指導係にもなった。 くも膜下出血で倒れるまでの時間外労働は、過労死ラインを下回る50~60時間前後。 ただし、勤務の終わりから次の勤務が始まるまでのインターバル期間は、5時間程度しかない日が月平均5回もあった。夜勤の日は20時間近くの連続勤務。 この夜勤勤務の負担が考慮され、過労死が認められたのである。
▽1日当たり約14時間?!
・女性が亡くなったのは16年前で、2008年に過労死認定されてからは10年“も”経つ。 その2年後の2010年4月に国循が国の機関から独立行政法人に移行し、「上限300時間」の協定を締結。その後も毎年同じ内容で更新していたという。
・日本人の年間の労働時間は2010時間前後。時間外の月300時間労働をもし1年間続けたら、時間外だけで平均の1.5倍を超える。つまり、1人で2人分以上働く計算になる。 いや、そもそも、月300時間を1日あたりに換算してみたことがおありだろうか。 単純計算すると、1日あたり約14時間になる。
・え? と思われるかもしれない。 これは、土日とカレンダーの祝日を合わせて、年120日前後の休日があるためだ。これを365日から差し引いて、年間労働日数を260日とすると、月労働日数は21.6日になる。300(時間)を21.6(日)で割れば、労働日数1日あたりの残業時間は13.8となるのだ。 1日の労働時間を8時間とすると、プラス14時間で、22時間勤務が可能になる。 22時間。そう、月300時間を上限、ということは、1日22時間の勤務が可能ということだ。
・えっと、1日って何時間でしたっけ? ……私の理解では「1日は24時間」だと思うのだが、まさか「ナポレオンは3時間しか寝てなかったというし、世の中にはショートスリーパーという人たちもいるしね」と考えた? いやいや、まさか。 ふむ。要するに暗に「休むな! 働き続けろ!」ってことなのだな。きっと。
・では、働き続けるとどういうことになるか。
 +「長時間勤務になると、針刺し事故が統計的に有意に増加(Ayas NT, Bager LK, et.al .Extended work duration and the risk of self-reported percutaneous injuries in interns. JAMA ,2006)」
 +3日に1回、 24 時間以上の長時間連続勤務をした場合と、長時間連続勤務の上限を16時間、週当たりの勤務時間を60時間に制限した場合とを比較すると、24時間以上の連続勤務の「処方ミスと診断ミス」が明らかに多い(Landriga CP, Rotheschild JM, eta al. Fffect of reducing interns’ work hours on serious medical errors in intensive care units. N Engl J Med,2004 )
 +前日に当直であった医師が執刀した手術後 の患者においては、合併症が45%多かった(Haynes DF, Schewedler M, et al. Are postoperative complications relted of resident sleep deprivation? South Med J, 1995)
 +徹夜明けの勤務のパフォーマンスはアルコール摂取時と同等(Dawson D,Reid K. Fatigue, alcohol and performance impairment. Nature ,1997)
 +当直で夜間に呼び出しされた場合の運転技能が、アルコール摂取時の技能と同等か、または低い(Robbins J, Gottelieb F. Sleep deprivation and cognitive testing in internal medicine house staff. West J Med, 1990)
 +長時間連続勤務すると、手術に注意力が低下しミスが増える(Kahol K, Leyba MJ, et al. Effect of fatigue on psychomotor and cognitive skills. Ame J Surg, 2007)
▽聖職だから青天井?
・つまり、休まず働き続ける医療関係者たちは、本人たちのみならず、患者までも危険にさらす。 当直明けの看護師にはケアして欲しくないし、医師には「頼むから手術なんてしてくれるな!」と叫びたくなる調査結果が示されているのだ。
・ちなみに36協定は“青天井”と思われているけど、正確には上限がある。 行政規制ではあるものの、「1日」「1日を超えて3カ月以内の期間」「1年」ごとに延長可能な時間の限度があり、「300時間」は1年間の上限に相当する(労働基準法第三十六条第一項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準<労働省告示第百五十四号>)。
・医師の残業規制の話題になると、「いやいや、俺はもっと患者さんのために働きたい」 「いい医療を施すために、もっと技術や知識を習得したい」と反論する医師たちもいるが、「ホントにいい医療を提供したい」と思ってくださるなら、寝てください。でもって、病院側は強制的にでも休ませて欲しい。
・「こっちとしてはね、医師や看護師などね、医療に関わるものはね、“休む”なんてこと考えちゃいけないのよ。だってうちは“高度医療”も担っていますから。 それに『目の前の患者を救って欲しいというのが、多くの国民の思いであり、医療者の思いでもある』しね」。 私にはこう言っているようにしか聞こえないのだ。 一部の医療関係者たちは、いまだに 「医者は聖職であり、医者は唯一無二の存在だ」 と確信しているのではあるまいか。
・今年3月。「医師は労働者かと言われると違和感がある」との発言が日本医師会の横倉義武会長からあった。 政府が労働時間に罰則付き上限を設ける「働き方改革実行計画」を取りまとめた際に、横倉会長は日本医師会の定例記者会見で次のように語った(政府は医師への規制適用には5年間の猶予を与えるとしている)(こちら)。
▽そりゃ昭和23年の法律でしょう…
・「今回の議論で、多くの患者さんや国民から『医師が労働者であるということは違和感がある』との声をたくさん頂いた。 この機会に、そもそも医師の雇用を労働基準法で規律することが妥当なのかについても、抜本的に考えていきたい。 医師の応招義務については、『たとえ勤務時間の規制に抵触しようと、目の前の患者を救って欲しい』というのが、多くの国民の思いであり、医療者の思いでもある。 これらの諸課題を解決するためにも、厚生労働省内に設置予定の検討の場に日医としても参加し、積極的に議論をリードしていきたい」
・確かに、医師法19条には、 「診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」 との定めがある。 だが、医師である前に労働者だし、病院や企業に雇用されている労働者だ。 もちろん「たとえ勤務時間の規制に抵触しようとも、目の前の患者を救って欲しい」 という気持ちが「ない」と言ったら、それはウソになる。  急病になって 「先生、助けてください!」 と病院にかけつけたとき、 「あ~、ダメダメ。勤務時間外だからムリだよ。他に行って」 なんてことになったら困る。
・しかしながら、この医師法が決められたのは、昭和23年。大学病院などの大きな医療機関の“先生”ではなく、「○○町の▲△医院」といった具合に、お医者さんが自分の家などで治療し、「○○先生のところで診てもらおう」という時代のお話で。 今は「医者」ではなく「○○大学、▲△医療センターなど、病院」にかかる時代だ。  つまり、医師個人ではなく、組織での対応を前提としてくれればいい。
・それでもやはり「○○先生じゃなきゃ、困る」という人はいるだろう。 実際、私は父が救急車に運ばれた時、たまたま主治医が当直の日でものすごく安堵した。「パパ、運が良かったね」と。 だが、担当医がいないことへの不安は「我が病院はチーム医療です!」としつつも、「当然、医師は知っているだろう」と信じていたことが伝わっていなかったりすることが原因であり、「病院という組織」がきちん診てくれる体制なり、組織運営をしてくれればすむ話だ。
・以前、医師の過重労働についてコラムで(「内心、『医者は酷使されていい』と思ってない?」)
 +家族が来た時に、担当医がいないと「これじゃ、家族には親の病気の状態がどうなっているかわからないじゃないか! さっさと呼べ!」って、怒り出す人
 +退院するときに担当医がいないと、不機嫌になる家族。
の実態に触れ、“私たち側”の身勝手な振舞いが、どれだけ医師たちを追いつめ、過重労働に追い込んでいるのかを書いた。
・医者だった大切な息子さんを亡くしたご家族は、 「医者は24時間365日働いて当たり前とでも思っているんでしょうか。真面目にやってきたのに、かわいそうで。『人の命は何よりも重い』と教育されてきたけど、医者の命だけは軽いのかもしれません」 と嘆いていた。
・こういった“医師は万能な存在”と勝手に信じ込む、身勝手な家族から医師を守るためにも、医療側は「医師をきちんと休ませられる体制」を作り、「医師個人の問題」ではなく「医師を雇用する職場の問題」と、医療者側が医師の命を守るバリアになって然るべき。 いったい何人の医師や看護師さんたちが命を絶てば、70年前の昭和23年の考えを変えてくれるのだろう。
・医者から、「食生活を改めなさい!」「もっと運度しなさい!」「タバコをやめなさい!」……さもなければ、「心臓病で死にますよ!」 と何度言われても、実際に習慣を変えられる人は7人に1人にすぎないとの研究結果を嘆く医師が少なくないだけに、なんとも釈然としない気持ちばかりが募ってしまうのである。
▽組織の責任を、個人に丸投げ
・ただでさえネット、携帯など通信機器の発達により私たちの生活は、「仕事」と切り離すのが難しくなった。  一昔前であれば「連絡がつかない」というエクスキューズが使えたのに、今は「なぜ携帯に出なかった!」と叱られる始末だ。 ネットで個人が組織に24時間つながれる状態になったことで、本来「組織」として対応すべき問題が、「仕事への誠実さ」、あるいは「生活」を人質に、「個人」に丸投げされているんじゃないか?
・そういう過酷な状況に置かれて、「誰かのために自分の生活や健康を犠牲にしている」という自覚がある人が増えているから、他人にも自分と同じ対応を求めたくなる人が多くなっているのではないか?
・24時間ワンオペ状況に医師のみならずすべての労働者が置かれていて、頭の片隅には常に「仕事」の文字がうごめいている。 寝る直前にメールを確認し、目覚めとともに携帯やパソコンを見る。 友人と飲み屋に入ると「電波が届いているか」が気になり、旅行に行ってもwifiがつながる場所を必死で探している“自分”がいる。
・疲れているはずなのに目が覚める。 「なんだまだ3時じゃん」などと時計を見て、長く眠れないことが不安になる。 「翌日の仕事への不安感」が高いほど「深い睡眠の時間」が減るため、熟睡できないのだ(Anderson T.Impaired sleep after bedtime stress and worries. Bio Psyco, 2007)。
・そこで近年、欧米を中心に注目されているのがサイコロジカル・ディタッチメント(Psychological detachment)という概念である。 これはドイツの医療科学者ソネンターグ博士により提唱され、 「仕事のストレスや疲労の回復には、仕事を終えて、物理的に仕事(職場)から離れるだけでなく、心理的にも仕事から離れることが重要である」 とし、「睡眠の大切さ」を問う学説やエッセーが大量に出回る火付け役にもなったとされている。
▽時間外のメールは受信拒否!
・2014年にはドイツのノルトライン=ヴェストファーレン州において、社会民主党が「反ストレス法」の制定を提案し話題となり、今年1月にはフランスで、従業員数50人以上の企業に勤務する労働者には、「勤務時間外の仕事関連のメール受信を拒否する」法的権利が与えられることになった。
・通常勤務時間以外のメールでさえ心理的にストレスが増し、睡眠、頭痛、疲労、不安神経症、胃の疾患のリスクが高まり、筋肉障害、心臓や血管の病気との相関関係が高いとされているのだから、“職場に拘束される”ことがいかに健康にマイナスかは容易に想像がつくはずである。
・1990年代以降、深夜交代制勤務者は一貫して上昇傾向にあり、約1200万人以上が深夜業に従事しているとされている(こちら)。 「一億総時間外労働“月300時間”時代」は、あながち冗談ではない。国立循環器病研究センターの問題は他人事ではないということだ。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/091100121/?P=1

第一の記事で、 北海道大学遺伝子病制御研究所の村上正晃教授らの研究グループの研究紹介の新聞記事だけでなく、プレスリリースにも、 『「病いは気から」』、と説明されていたというのは、分かり易さの余り筆がすべってしまったのだろう。  『人間の脳の中には「疲れの見張り番」と呼ばれる部分があり、見張り番は心身にストレスがかかると「休んでください!」という指令を出す。 ところが、その指令を無視して働き続けると、見張り番自体が疲弊してし「休んでください」という指令を送れなくなる。 指示が出ないから、ストレスが体にかかっていると認識することができなくなり、突然死するまで働きつづける』、というのは、初めて知ったが、なるほどと納得させられた。 『過労死対策は職場の、社会の責任だ』、との主張には同感させられた。
第二の記事で、 『大阪府の国立循環器病研究センターが、勤務医や看護職員の時間外労働を「月300時間」まで可能にする36協定を結んでいた』、というのは、驚かされた。 『3日に1回、 24 時間以上の長時間連続勤務をした場合と、長時間連続勤務の上限を16時間、週当たりの勤務時間を60時間に制限した場合とを比較すると、24時間以上の連続勤務の「処方ミスと診断ミス」が明らかに多い』、というのであれば、そんな 『“ほろ酔い気味の医師”に手術』、される可能性があるなどということは、考えるだけでも恐ろしいことだ。 『“医師は万能な存在”と勝手に信じ込む、身勝手な家族から医師を守るためにも、医療側は「医師をきちんと休ませられる体制」を作り、「医師個人の問題」ではなく「医師を雇用する職場の問題」と、医療者側が医師の命を守るバリアになって然るべき』、というのは正論だ。 『サイコロジカル・ディタッチメント』の考え方を、日本でも医療分野だけでなく、一般業種でも出来るだけ前向きに取り入れてゆくべきなのかも知れない。
タグ:大学病院などの大きな医療機関の“先生”ではなく、「○○町の▲△医院」といった具合に、お医者さんが自分の家などで治療し、「○○先生のところで診てもらおう」という時代のお話で (その8)(過労死は「気の持ちよう?!」…怒 職場の責任を個人の責任にすり替えさせちゃダメ!、“ほろ酔い気味の医師”に手術させる気か?) どちらも個人の問題ではなく、職場の問題 、「忙しいのにも慣れちゃった」と明るく笑い飛ばしたり、一所懸命であればあるほど、過労死や過労自殺するリスクは高まる。前向きに気持ちを保つこと自体が、もっとも危険な状態なのだ 医師法が決められたのは、昭和23年 医師の応招義務 GRR(Generalized Resistance Resource=汎抵抗資源) ブラック企業 ところが、その指令を無視して働き続けると、見張り番自体が疲弊してし「休んでください」という指令を送れなくなる。 指示が出ないから、ストレスが体にかかっていると認識することができなくなり、突然死するまで働きつづける 人間の脳の中には「疲れの見張り番」と呼ばれる部分があり、見張り番は心身にストレスがかかると「休んでください!」という指令を出す ストレスが臓器の機能を低下させるメカニズム ストレスを「感じなくなる」から大問題 ストレスに上手く“対処”することで、ストレスを軽減しているのだ。 対処にはリソースが必要不可欠 村上正晃教授らの研究グループ 北海道大学遺伝子病制御研究所 ・リソースには、環境が個人に与える「外的な力(=社会的資源や物質的な外的なもの)」と、個人に内在する「内的な力(=認知的、遺伝的体質や気質)」がある ストレスで突然死」仕組み解明…マウスで確認(読売新聞) 。「ストレスと感じるかどうかは自分次第だろ」と言っているように私には思えて、そこが気になってしまう 「病は気から」ということわざには、どうしても「本人の」気の持ちよう、すなわち自己責任のニュアンスが強くまとわりつく 過労死は「気の持ちよう?!」…怒 職場の責任を個人の責任にすり替えさせちゃダメ! 日経ビジネスオンライン サイコロジカル・ディタッチメント 世界初!「病いは気から」の分子メカニズムの解明 ――キラーストレスはどのようにして消化管疾患や突然死をもたらすのか―― 仕事のストレスや疲労の回復には、仕事を終えて、物理的に仕事(職場)から離れるだけでなく、心理的にも仕事から離れることが重要である 河合薫 医師は労働者かと言われると違和感がある」との発言が日本医師会の横倉義武会長からあった 聖職だから青天井? 長時間連続勤務すると、手術に注意力が低下しミスが増える 当直で夜間に呼び出しされた場合の運転技能が、アルコール摂取時の技能と同等か、または低い 徹夜明けの勤務のパフォーマンスはアルコール摂取時と同等 研究成果を発表したプレスリリース 前日に当直であった医師が執刀した手術後 の患者においては、合併症が45%多かった 長時間勤務になると、針刺し事故が統計的に有意に増加 この夜勤勤務の負担が考慮され、過労死が認められたのである 「病いは気から」 T細胞の量を調べることで突然死のリスクの解明や、治療法確立につながるかもしれない 夜勤の日は20時間近くの連続勤務 勤務の終わりから次の勤務が始まるまでのインターバル期間は、5時間程度しかない日が月平均5回もあった 時間外労働は、過労死ラインを下回る50~60時間前後 、国循の脳神経外科病棟に勤務していた看護師の女性(当時25歳)が、2001年に過労死し、担当弁護士が情報公開を求めたのがきっかけだった 大阪府の国立循環器病研究センターが、勤務医や看護職員の時間外労働を「月300時間」まで可能にする36協定を結んでいた 「“ほろ酔い気味の医師”に手術させる気か? リゲイン世代も仰天、月300時間の時間外労働って何なの」 河合 過労死(=突然死)は、長時間労働などがもたらす死だし、長時間労働は過労自殺の引き金になる 労死対策は職場の、社会の責任だ
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

小売業(一般)(ヨーカ堂 「ハトマーク」でも浮上しない業績、ユニクロが米国で自販機展開、不振ユニーの“ドンキ化”に見る「総合スーパーの末路」、ドンキ「小型店」が失敗続きなのは成功体験の呪縛が原因だ) [企業経営]

小売業については、コンビニと百貨店を取上げてきたが、今日は、(一般)(ヨーカ堂 「ハトマーク」でも浮上しない業績、ユニクロが米国で自販機展開、不振ユニーの“ドンキ化”に見る「総合スーパーの末路」、ドンキ「小型店」が失敗続きなのは成功体験の呪縛が原因だ) である。

先ずは、7月22日付け東洋経済オンライン「ヨーカ堂、「ハトマーク」でも浮上しない業績 約12年ぶり復活、セブン&アイのロゴと同居」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・約12年ぶりにあのマークがひっそりと復活していた――。 セブン&アイ・ホールディングス傘下で総合スーパー(GMS)を運営するイトーヨーカ堂は今年度に入った2017年3月以降、かつて使用していたハトマークの大型看板を一部の店舗で復活させている。
・7月20日時点でセブン&アイは記者の取材に対し、大森店(東京都)、武蔵小杉駅前店(神奈川県)、上板橋店(東京都)、草加店(埼玉県)、沼津店(静岡県)、知多店(愛知県)の合計6店で看板の変更に踏み切ったことを明らかにした。
▽社長就任時に変更を示唆
・実際に足を運んで上板橋店の看板を見てみると、これまで4面がセブン&アイのマークだったのに対し、「2面がハト、2面がセブン&アイ」となっていた。今回の看板変更について会社側は「あくまで老朽化した看板のメンテナンスに伴う変更で、すぐさま全店に波及するわけではない」と説明する。 そもそも今回の変更に至るまでにはいくつかの伏線があった。2017年の年明けには、看板デザインに先駆けて、折り込みチラシの右下にあるロゴデザインがセブン&アイのマークからハトマークに替わった。
・そして、3月には中国事業を長年引っ張ってきた三枝富博氏が社長に就任。三枝氏は3月に東洋経済が行ったインタビューで、「老朽店舗を改装するときに、グループ共通の(セブン&アイの)マークからハトのマークに替えるのには賛成だ」と述べるなど、看板のマークが変更されることを示唆していた。
・そもそもハトマークは1972年にイトーヨーカドーの大型看板で使用が始まり、同ブランドを象徴するマークとして認知されてきた。その後、2005年9月に持ち株会社であるセブン&アイが発足したのをきっかけに、看板のマークがセブン&アイの共通マークに変更された。「セブン&アイのロゴマークも誕生から10年以上が経過し、ある程度認知されてきた」(会社側)という点も、今回のハトマーク復活につながった。
▽業績の”復活”は遠い
・ただ、こうしたハトマークの復活とは裏腹にヨーカ堂の業績は芳しくない。ヨーカ堂の2017年度第1四半期(3~5月期)の本業の儲けを示す営業利益は6.9億円(前期比プラス2.8億円)と増益を達成したものの、その中身は地代家賃や水道光熱費など販管費の抑制によるものにすぎない。
・既存店売上高に至っては前年同期比3.2%減と厳しい状況が続く。客単価は0.1%減と前期並みを保ったが、客数は3.1%減と客離れに歯止めがかかっていない。足元で課題となっているのが食品部門の苦戦だ。 ヨーカ堂の売り上げの4割以上を占める食品部門の売り上げは前年同期比3.3%減。加工食品や生鮮品、総菜などほとんどのカテゴリーでマイナス基調となっている。現在、三枝社長をリーダーとする食品改革プロジェクトを立ち上げ、オペレーションの改善に着手したほか、生鮮品の鮮度管理徹底やインストアベーカリーの導入を進めている。
・ただ、食品改革の取り組みもすぐに効果が出るわけではない。三枝社長はこれまでのヨーカ堂の体質について、「(現場では)トップが言ったことをやっていればいいという受け身の姿勢が、お客様のニーズとの乖離につながっていた」と反省する。こうしたマインドの改善もヨーカ堂の業績浮上には欠かせない。
・今後も各店舗のメンテナンスのタイミングで、ハトマークが復活していくことが想定される。三枝社長は「ハトのマークが大事なのではなく、本当に意味があるのは中身が変わること」と強調したうえで、その中で「業績もよくなればメッセージとしてハトに替わる意味は大きい」と語る。 ハトマークの復活だけではなく、業績回復に向けた施策がヨーカ堂の経営陣に求められる。
http://toyokeizai.net/articles/-/181435

次に、流通ジャーナリストの森山真二氏が8月17日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「ユニクロが米国で自販機展開、地域性を意識しなければ自滅する」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・「ユニクロ」が米国で自動販売機の設置を始めた。米国内の空港やショッピングモールなど約10ヵ所に設置し、ユニクロ製の衣料品を販売していく計画だ。ユニクロはアジア、とくに中国本土をはじめとした中華圏では順調に事業を拡大、そろそろ国内と海外の売上高が逆転しそうな勢いだが、こと米国では苦戦している。柳井正会長兼社長が掲げる2020年に3兆円、その先の5兆円という、真のグローバルプレイヤーの地位を築くためには米国や欧州での成功は不可欠。自販機の設置は米国戦略巻き返しの呼び水になるか――。
▽空港やショッピングモールで自販機を設置
・ユニクロの自動販売機は約14.90ドルの機能性肌着である「ヒートテック」、また約69.90ドルの「ウルトラダウンジャケット」が売られている。両商品ともに日本国内だけでなく、東南アジアでもヒットした商品。 ウルトラライトダウンは箱に入って、商品が見える窓が開いている。ヒートテックは円筒状の缶に入っている。ユニクロらしさというか、商品の機能性が最もよく打ち出されている商品であり、これから秋冬に備えた商品展開といえる。
・ユニクロでは8月からロサンゼルス近郊のショッピングセンターやニューヨーク州クイーンズのショッピングモール、さらにテキサス州のヒューストン空港など全米10ヵ所程度に設置するという計画だ。 広大な米国で気候の違いを感じる空港内では重宝しそうだし、ユニクロ店舗がないショッピングモールでは「何コレ?」と興味を惹かれる商品だと思うが、ネット上では自販機で衣料品を販売して「売れるのか」とか、「失敗するだろうな」などと悪評ふんぷんである。
・ではなぜ、ユニクロがあえてこんな評判の悪い自動販売機の設置に踏み切ったのだろうか。 一つ考えられることは、自販機で本気で儲けようと思っていないのではないかということである。自販機はユニクロの文字が全面に強調された作りになっており人目を惹く。そして自販機のなかには商品が整然とカラーリングされて並んでいる。
・ユニクロは米国では知名度がまだ低く、自販機の商品で「こんなカラーの商品を売っているのか」などと関心を引き、「今度試してみるか」と購買の動機付けになる可能性もあるからだ。 ユニクロの米国の店舗数は前期(2016年8月期)末で45店にとどまっている。米国が本拠とはいえ、米GAP(ギャップ)の米国内の店舗数の10分の1以下、またフォーエバー21に対しも10分の1以下となっている。
▽米国に進出する日系流通は相次いで失敗
・米国にユニクロが進出したのが2006年。すでに10年以上が経過した。にもかかわらず、米国事業は赤字続きである。16年8月期では店舗の減損損失57億円を計上、5店の閉鎖に伴う除却損など計74億円を計上したことから、営業赤字が拡大した。 10年も赤字が続けば、展開の存続すら危ぶまれ、「撤退」の2文字が浮かんできそうなものだが、やはりグローバルプレイヤーを目指す道のりのなかでは、消費大国米国では是が非でも成功させたいところだろう。
・そこで、考えられたマーケティング戦略が、さほどコストのかからない自販機という"宣伝塔"を全米の主要地点に設置してユニクロの知名度を高めるというものであろう。ただ、米国は日本のように自販機大国ではなく、設置場所も今後は限定されていくと見られている。
・実のところ、外食産業を除く日系流通業の米国展開は非常に厳しい。たとえるなら連戦連敗、百戦して百敗という有り様だ。2年前の15年8月にはファミリーマートが米国から撤退しているし、国内では飛ぶ鳥を落とす勢いのニトリも13年に米国に進出したが、まだ6店(17年2月期)とまったく出店に弾みがついていないのだ。
・逆もまた真なりで、日本に進出した流通外資で順調に事業を拡大しているのは、元々競合がなく、流通自体が成熟していなかった玩具専門店チェーンのトイザらス、ご存じネット通販大手の米アマゾン・ドット・コムくらいである。 日本に進出した流通外資では米「ウォルマート・ストアーズ」も西友を買収して上陸しているが、これがまた、決してうまくいっているとは言い難いしフランスの「カルフール」、「セフォラ」、英国のドラッグストア「ブーツ」、はたまた英国のスーパー「テスコ」など死屍累々だ。
・アマゾンは店舗を構える小売業と違い、ネット上での商品政策や価格政策で即座に修正が効くところが大きい。世界で蓄積してきた利便性を武器にネット通販では後進国の日本ではさして強力な競合相手もなく、成長しているといっていいだろう。 では、なぜ日系小売業が米国でうまくいかないのか。
▽日本で成功したビジネスモデルをそのまま持ち込んでもダメ
・ある流通コンサルタントは「日本で成功したビジネスモデルをそのまま持ち込んでいるからだ」と話す。 例えばロサンゼルス発祥のフォーエバー21は元来、韓国系アメリカ人のドン・チャン氏が米国の韓国系アメリカ移民のために作ったブランドであることは知られている。 つまり、アメリカのファッションや文化を知り尽くしているといっていい。アメリカ人として土着しているから、アジア系移民でありながら一気に店舗を拡大できた。しかも国土が広大な米国では地域性も重要だ。
・ユニクロにしても、ニトリにしても日本や東南アジアで軌道に乗っているモデルで米国に進出したきらいは強い。中国など東南アジアでうまくいっているからといって、アングロサクソン文化圏でも同じようにうまくいくとは限らないのである。
・今回、ユニクロが自販機で販売するヒートテックにしても、ウルトラライトダウンにしても機能性が高く、日本などでヒットした商品だ。機能性よりもむしろ、ファッション性を好む米国人は多いし、黒人は、日本人から見ると、「こんなハッキリした色を買うのか」と思うくらい赤や黄色、グリーンなど原色を好む。果たして、米国のユニクロやニトリでは、そのあたりの地域的なニーズや嗜好性はうまく取り込んでやっているのだろうか。
・日本や東南アジアでいう地域性とは「気候の差」である。つまり、気候の差で売れる商品が違うことはある。その気候の寒暖差を見ても、寒い地方と比較的温暖な地方の差はあるものの、それほど極端な差であることは少ない。しかし、米国では地域によって気候の差はもっとハッキリしているし、流行のデザインなどを見ても地域性の違いが明確にあるのだ。
▽H&Mはなぜ成功しているのか
・そのあたりをうまくとらえたH&Mはスウェーデンが母国でありながら、米国でも400店近くを展開し、ドイツ、中国、英国などでも数百店規模で多店舗展開している。 小売業はやはり、ドメスティックな産業である。地域を知ることが重要なのである。 今や、米国ではアマゾンの衣料品の売上高が来年には3兆円に達するというレポートまで出ている。
・ユニクロの競争相手は何も店舗を持つ、H&Mやギャップなどだけではない。見えない相手とも対峙しなければならない。これまで以上に米国をよく知って地域性を反映した商品を作らない限り、グローバルプレイヤーとして地位は遠のくばかりである。
http://diamond.jp/articles/-/138925

第三に、8月28日付けダイヤモンド・オンライン「不振ユニーの“ドンキ化”に見る「総合スーパーの末路」」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・「バランスシート上、GMS(総合スーパー)が小さくなり、経営資源のバランスが良くなる」――。ユニー・ファミリーマートホールディングス(HD)と、ディスカウントストア大手のドンキホーテHDが8月24日に発表した資本・業務提携。ユニー・ファミマHDの高柳浩二社長は記者会見で、こう率直に語った。
・両社は6月に提携検討を発表していたが、急転直下、資本提携を決めた。ユニー・ファミマHDが、GMSを運営する100%子会社のユニーの株式のうち、40%に当たる8万株をドンキHDに売却する。売却価格は非公表だ。
・ユニー・ファミマHDの2017年2月期の業績では、ファミリーマートなどコンビニ事業の純利益は93億円、GMSは90億円と大差ない。だが中期経営計画では、20年2月期にコンビニの純利益が450億円まで拡大するのに対し、GMSは150億円と微増にとどまる。 だが、これとて決して低い目標ではない。東海・北陸を中心に約200店あるユニーのGMS店舗「アピタ」「ピアゴ」を19年2月期までに計36店も閉店するからだ。それだけに、GMSの収益改善はユニー・ファミマHDにとって喫緊の課題だった。
・ユニーに限らず、イオンやセブン&アイ・HD傘下のイトーヨーカ堂など、GMSの売り上げ低迷と収益力低下が叫ばれて久しい。ユニクロやニトリなどの専門店の台頭、都心や地方でもくまなく展開するコンビニ、ひたすら価格が安いディスカウントストアの攻勢を受け、特徴を打ち出しにくいからだ。そこでユニー・ファミマHDは今回、高柳社長自身が語ったように“お荷物”であるユニーの一部を切り出し、ドンキに売り渡すという大胆な解決策を採ったわけだ。
・ユニー・ファミマHDの筆頭株主として経営陣を送り込んでいる伊藤忠商事も、前々からユニーの低迷を懸念し、ドンキHDや他の流通大手に提携を打診していたと言われる。伊藤忠・ファミマ陣営にしてみれば、ユニーとの統合当初からGMSの圧縮をもくろんでおり、ドンキの手を借りてようやく宿願が達成された形だ。
▽長崎屋リニューアルで大成功 したたかなドンキHD
・一方、ドンキにとってもこの資本提携のメリットは大きい。かつて倒産したGMSの長崎屋を買収し、店舗を「MEGAドン・キホーテ」にリニューアル。都心だけでなく郊外まで規模と商圏を拡大した成功体験を活かすことができるからだ。 ドンキHDは今後、ユニーが閉店を決めた店舗の一部を、長崎屋と同様にMEGAドン・キホーテとしてオープンさせる。さらに、営業を続けているが業績が低迷しているアピタまたはピアゴ6店を選んで、ドン・キホーテとの「ダブルネーム」店舗としてユニーに運営させる方針だ。さらに、ドンキ店内へのファミリーマートの出店も検討されている。
・ドンキHDの大原孝治社長は40%出資する意義について、「ユニー店舗の“ドンキ化”への綿密な助言をするため、リスクと責任を負う。大同団結だ」と強調した。だがドンキにしてみれば、従来手薄だった中部地方の店舗と物流網が手に入る。
・ユニー・ファミマHDと筆頭株主の伊藤忠、そしてドンキHDにとってはメリットの多い今回の資本業務提携。対照的に、かつては中部地方の名門として名を馳せたユニーの存在感は低下する一方だ。これもまた、栄枯盛衰の激しい流通業界の、歴史の必然なのかもしれない。
http://diamond.jp/articles/-/140004

第四に、流通ジャーナリストの森山真二氏が9月21日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「ドンキ「小型店」が失敗続きなのは成功体験の呪縛が原因だ」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・ドン・キホーテホールディングスのビッグコンビニや小型店はなぜ出店に弾みがつかないのか――。主力の「ドン・キホーテ」や「MEGAドン・キホーテ」はいたって好調であり、28期連続増収増益の原動力となっている。最近ではユニー・ファミリーマートホールディングス傘下の総合スーパー(GMS)、ユニーにも資本参加を決め共同でGMS再生の乗り出すほどだ。しかし、そんな飛ぶ鳥を落とす勢いのドンキも、なぜか小型店はどれも数店止まり。店舗数が増えない理由は一体、どこにあるのか。
▽コンビニ追討と小型店業に情熱 かつて「オリジン弁当」TOBも表明
・「パワーコンビニ情熱空間は、既存のコンビニエンスストア追討業態である」――。かつてドンキの創業会長兼最高顧問の安田隆夫氏の発言は威勢がよかった。ドンキはかねて小型店業態に並々ならぬ情熱を燃やしていた。
・ドンキの小型店の歴史を紐解いていこう。「情熱空間」は持ち帰り弁当店を併設し、コンビニの売り場の2~3倍はあろうかというスペースがある、いわゆる新型のコンビニだった。もう10年以上前の話でご存じない方も多いだろうが、1000店、2000店という多店舗化構想を打ち出していた。
・当時このコンビニにはできたての総菜や弁当を提供する「中食厨房」という売り場を導入する計画で、そこで当時、順調に店舗を拡大していた「オリジン弁当」を運営するオリジン東秀に着目。ドンキはオリジンの株式を買い集め、TOB(株式の公開買い付け)を表明したが、これにオリジンの経営陣が反対。結局、イオンがホワイトナイトとして現れ、ドンキも保有していた株をイオンに売り渡すことでケリがつくなどの経緯もあった。
・ドンキはその後、情熱空間に独自の弁当店を導入するなど数店舗を展開したが、多店舗展開までには至らず、現在はすべての店舗を閉鎖している。 しばらく間を置いて登場したのが「ドン・キホーテ エッセンス」である。こちらは1000平方メートル前後の売り場に化粧品や医薬品、食品、さらにブランド品までとドラッグストアとバラエティストアを組み合わせた新型店である。
・展開当初は東京・池袋に出店するなど、それこそドンキのエッセンスを抽出した新型の美容・医薬品系品ぞろえ強化型のバラエティストアとして注目を浴びた。だが、こちらも現在は埼玉・川口と東京・練馬に2店を残すのみとなっている。
▽小型店を模索しながらも成功していない
・最近、密かにというか、静かに展開している小型店が「驚安堂」である。店名からしても気合が入っている。当初は「ビッグコンビニ」というキャッチフレーズで、大型のコンビニのような品ぞろえでスタートしたようだ。 1号店となった東京・杉並の店舗ではドンキの得意のネイルカラーやつけまつげ、家電製品や自転車などの売り場など、まるで標準型のドンキの小型版といったような店づくりだった。圧縮陳列こそ採用されていなかったが、品ぞろえと店づくりはドンキそのものであった。
・しかし、それがごく最近では「ビッグコンビニ」というキャッチフレーズを降ろし、「食品ディスカウント」という業態に衣替えしている。これまでのドンキ小型版という路線を転換して、精肉や青果など生鮮食品を中心としたディスカウント型の食品スーパーとし、主婦層を取り込みたい意向の品ぞろえであるのは明確だ。驚安堂については別会社「ライラック」が現在、4店を運営している。
・ディスカウント型の食品スーパーとしては神戸物産が運営する「業務スーパー」、ダイエー系の「ビッグ・エー」などが多店舗展開し勢力を伸ばしている。 食品を軸にした安売りというテーマは今後の高齢化による小商圏化、年金生活者が増加することなどを背景として節約志向に合致した業態といえる。
・さらにドンキには驚安堂やエッセンスのほかに「ピカソ」というミニドンキのような業態もあり現在10店以上を展開している。 だが結局、ドンキの小型店はすべて合わせても20店までいかない規模だ。しかも、すべてコンセプトが違うから総合力も発揮できていない。 ドンキは情熱空間から10年以上もの間、小型店を模索しながら、まとまった出店数を展開できる小型店で成功していないのだ。
・「(流通の新業態の実験は)メーカーの研究開発費のようなものである」とダイエーを創業した中内功氏は語ったことがある。 だが、なぜ、ドンキは試行錯誤の連続なのだろうか。出店に弾みがつかない理由としていくつかのポイントがあると見られている。
▽大きな足かせは強烈な成功体験
・大きな足かせは、ドンキ業態による強烈な成功体験である。これまで展開してきたすべての店でドンキの小型版を作っているきらいがある。ドンキの標準店には「宝を探すように商品を見つける楽しさがある」(同社)のは確かであり、それが大きな魅力と強みになっている。
・しかし、これまでのドンキの小型店は300平方メートルなど、大きくても1000平方メートル以下。ドンキの標準店が醸し出すそんな"時間消費"型の店舗、雰囲気づくりはなかなか実現できない。その物理的なスペースと買い物の楽しさの演出という相克に、ドンキも悩んできたと見られる。 小型店ゆえに品目数も絞らざるを得ない。標準型のドンキは2000~3000平方メートルという売り場面積に、実に4万~6万品目という品ぞろえがある。このため、どことなく雑然として、ジャングルを回遊するような雰囲気がある。
・驚安堂も当初、ドンキの品ぞろえを反映しようとして自転車や、小型家電も販売していた。しかし、どれも売り場スペースの制約から中途半端にならざるを得なかった。 詰まるところ、小型店というのはショートタイムショッピングを実現する場なのである。その典型がコンビニだ。短時間で買い物を済ませられる、3000~3500という商品数を踏まえての売り場作りとなる。
・コンビニは売り場も整然としており、欲しい商品が短時間で見つかるし、品ぞろえは1ヵ月も行かないと相当変わっていることが分かる。しかも独自商品を強化しており、日々新鮮さを与えている。高度な運営システムもバックにある。
▽ドンキの標準店の強さは「究極の個店主義」
・一方、ドンキの標準店の強さの背景には、「究極の個店主義」がある。仕入れや品ぞろえの権限を大胆に個店に委譲し、本部は店舗のサポートに回る方式だ。地域の競合店や消費者の嗜好をよく知る店舗自体が、主体的に仕入れをして運営をするのである。
・それを小型店で実践しようとしても、ロットがまとまらず、仕入れ力も発揮できない。小型店ではドンキがコンセプトとしている“祭り”感を演出するのは難しいというわけだ。 そこで驚安堂はスタート当初に比べ大きく違う方向に舵を切り、今度は地域密着型のディスカウントスーパーとして再出発している。時流をとらえた観はあり今後が注目されるが、「安売り」というドンキの存在理由はそのままに、ドンキの「成功体験」の呪縛から解放されることが、小型店事業を成功するカギを握っているのといえるのではないか。
http://diamond.jp/articles/-/142712

第一の記事で、ヨーカ堂の 看板のマークをセブン&アイの共通マークだけでなく、昔のハトマークを復活させた理由は、記事ではよく分からないが、ヨーカ堂といえども、GMSの構造不況から抜け出す妙案はなく、迷走しているということだろう。
第二の記事で、 『ユニクロが米国で自販機展開』、というのには苦笑を禁じ得い。「ヒートテック」や「ウルトラダウンジャケット」が消費者に認知されている地域ならいざ知らず、殆ど知られてない米国の空港やショッピングモールに設置して、どうなるというのか。記事では、 『自販機の商品で「こんなカラーの商品を売っているのか」などと関心を引き、「今度試してみるか」と購買の動機付けになる可能性もあるからだ』、といわば広告塔的役割を期待しているようだ。 『米国に進出する日系流通は相次いで失敗』、というのは情けない話だ。 『日本で成功したビジネスモデルをそのまま持ち込んでもダメ』、 『小売業はやはり、ドメスティックな産業である。地域を知ることが重要なのである』、などの指摘はその通りだろう。まあ、投資額が小さい自販機であれば、失敗したところで、どうということはなかろうが・・・。
第三の記事で、 『かつて倒産したGMSの長崎屋を買収し、店舗を「MEGAドン・キホーテ」にリニューアル。都心だけでなく郊外まで規模と商圏を拡大した成功体験を活かすことができる』、というのは、リニューアル後も勢いを維持できているのだとすれば、さすがドンキである。
第四の記事では、そのドンキといえども、 10年以上前から「小型店」を様々なタイプで模索したが、失敗続きのようだ。 大型店と小型店では、ノウハウが全く違い、『大きな足かせは(大型店での)強烈な成功体験』、のようだ。なかなか一筋縄ではいかないようだ。
タグ:地域密着型のディスカウントスーパーとして再出発 ドンキの標準店の強さは「究極の個店主義」 物理的なスペースと買い物の楽しさの演出という相克に、ドンキも悩んできたと見られる 大きな足かせは強烈な成功体験 10年以上もの間、小型店を模索しながら、まとまった出店数を展開できる小型店で成功していないのだ すべてコンセプトが違うから総合力も発揮できていない ドンキの小型店はすべて合わせても20店までいかない規模 「ピカソ」というミニドンキのような業態もあり現在10店以上を展開 食品を軸にした安売りというテーマは今後の高齢化による小商圏化、年金生活者が増加することなどを背景として節約志向に合致した業態 食品ディスカウント」という業態に衣替えしている 標準型のドンキの小型版といったような店づくりだった 驚安堂 小型店を模索しながらも成功していない 現在は埼玉・川口と東京・練馬に2店を残すのみ 1000平方メートル前後の売り場に化粧品や医薬品、食品、さらにブランド品までとドラッグストアとバラエティストアを組み合わせた新型店 ドン・キホーテ エッセンス 現在はすべての店舗を閉鎖 持ち帰り弁当店を併設し、コンビニの売り場の2~3倍はあろうかというスペースがある、いわゆる新型のコンビニ 情熱空間 ドンキはかねて小型店業態に並々ならぬ情熱を燃やしていた なぜか小型店はどれも数店止まり ドンキ「小型店」が失敗続きなのは成功体験の呪縛が原因だ ユニー店舗の“ドンキ化”への綿密な助言をするため、リスクと責任を負う 長崎屋リニューアルで大成功 したたかなドンキHD “お荷物”であるユニーの一部を切り出し、ドンキに売り渡すという大胆な解決策 ユニーの株式のうち、40%に当たる8万株をドンキHDに売却 資本・業務提携 ドンキホーテHD ユニー・ファミリーマートホールディングス 不振ユニーの“ドンキ化”に見る「総合スーパーの末路」」 小売業はやはり、ドメスティックな産業である。地域を知ることが重要なのである 韓国系アメリカ人のドン・チャン氏が米国の韓国系アメリカ移民のために作ったブランド フォーエバー21 日本で成功したビジネスモデルをそのまま持ち込んでもダメ 米国に進出する日系流通は相次いで失敗 米国では知名度がまだ低く、自販機の商品で「こんなカラーの商品を売っているのか」などと関心を引き、「今度試してみるか」と購買の動機付けになる可能性もあるからだ ネット上では自販機で衣料品を販売して「売れるのか」とか、「失敗するだろうな」などと悪評ふんぷんである 日本国内だけでなく、東南アジアでもヒットした商品 ウルトラダウンジャケット 「ヒートテック 真のグローバルプレイヤーの地位を築くためには米国や欧州での成功は不可欠 米国では苦戦 米国内の空港やショッピングモールなど約10ヵ所に設置し、ユニクロ製の衣料品を販売していく計画 米国で自動販売機の設置を始めた ユニクロが米国で自販機展開、地域性を意識しなければ自滅する ダイヤモンド・オンライン 森山真二 客数は3.1%減と客離れに歯止めがかかっていない 既存店売上高に至っては前年同期比3.2%減と厳しい状況が続く ヨーカ堂の業績は芳しくない セブン&アイのロゴマークも誕生から10年以上が経過し、ある程度認知されてきた ハトマークの大型看板を一部の店舗で復活 ヨーカ堂、「ハトマーク」でも浮上しない業績 約12年ぶり復活、セブン&アイのロゴと同居 東洋経済オンライン (ヨーカ堂 「ハトマーク」でも浮上しない業績、ユニクロが米国で自販機展開、不振ユニーの“ドンキ化”に見る「総合スーパーの末路」、ドンキ「小型店」が失敗続きなのは成功体験の呪縛が原因だ) (一般) 小売業
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

加計学園問題(その11)(加計獣医学部の図面で発覚  法外な建築単価のウソも露呈か、最上階に“豪華パーティー会場”、加計獣医学部図面から浮上 バイオハザード施設に重大欠陥、前川前文科次官 安倍政権「もうひとつの私物化」を激白) [国内政治]

昨日に続いて、加計学園問題(その11)(加計獣医学部の図面で発覚 法外な建築単価のウソも露呈か、最上階に“豪華パーティー会場”、加計獣医学部図面から浮上 バイオハザード施設に重大欠陥、前川前文科次官 安倍政権「もうひとつの私物化」を激白) を取上げよう。出所はいずれも日刊ゲンダイである。

第一に、8月15日付け「加計獣医学部の図面流出…法外な建築単価のウソも露呈か」を紹介しよう。
・いよいよ森友疑惑とソックリの状況になってきた。文科省の大学設置・学校法人審議会(設置審)で認可判断の「保留」が決まった学校法人「加計学園」(岡山市)の獣医学部新設計画。学園が申請していた教育内容について疑義が生じた――とされているが、設置審が判断を先延ばしした理由はそれだけじゃない。最近になって獣医学部施設の図面が流出し、そこに新たな疑惑が浮上したというのだ。
・「加計学園獣医学部の施設図面が流出したらしい」。永田町でこんな話が駆け巡ったのは、7月24日に加計問題について2度目の閉会中審査が行われた直後だった。
・「加計問題が長引いている理由のひとつは、加計学園や今治市がいまだに獣医学部施設の概要を公表していないことです。本当に『先端ライフサイエンス研究』が可能な施設・設備なのか、炭疽菌や結核菌といった厳重管理が必要な細菌やウイルスを扱う『バイオセーフティーレベル3(BSL3)』施設の構造や耐久性はどうなっているのかが、サッパリ分からない。しかし、図面が明らかになればこれらの疑問が全てが分かるため、流出情報が注目されたのです」(野党議員)
・なるほど、今治市や加計学園がどんなに「従来の獣医学部とは違う」と説明したところで、専門家が図面を確認すれば真偽は一発で分かる。既存の獣医学部と何ら変わらなければ、大ウソだったことになるのだ。  それだけじゃない。施設や設備の中身以上に重要なのは、図面によって、相場の2倍以上といわれる「坪150万円」の建築単価の妥当性が白日の下にさらされることになるのだ。
・加計学園は、このバカ高い建築費を根拠に、今治市に96億円(うち愛媛県が32億円)の補助金交付を申請していた。仮に建築費の“水増し”が明らかになれば、森友の補助金不正受給事件と構図は同じ。大阪地検特捜部に詐欺容疑で逮捕された森友前理事長の籠池泰典、妻・諄子の両容疑者は、国からの補助金5600万円余りを騙し取った――とされているが、加計問題はケタが2つも3つも違う。刑事事件に発展するのは間違いないだろう。そうなれば、そんなインチキ計画を認めた国家戦略特区諮問会議はもちろん、議長である安倍首相も責任を免れないのは言うまでもない。 図面が明らかになるのは時間の問題。その時が安倍政権の終わりの始まりだ。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/211431/1 

第二に、8月20日付け「加計獣医学部の図面で発覚 最上階に“豪華パーティー会場”」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・加計学園の獣医学部新設計画は、やっぱりデタラメだった――。 愛媛県今治市で建設中の岡山理科大学獣医学部キャンパス。建築図面が流出したとのウワサが永田町を駆け巡っていたが、日刊ゲンダイは全52ページにわたるその図面を入手した。驚いたのは、最先端のライフサイエンス研究とは無関係な豪華“パーティー施設”が計画されていることだ。
・日刊ゲンダイが入手したのは〈(仮称)岡山理科大学 獣医学部 今治キャンパス 新築工事及び周辺工事 獣医学部棟〉と題された建築図面。作成者として加計学園関連グループ会社の「SID創研」と「大建設計」の名前がある。日付は平成29年3月。図面は全52ページの詳細なもので、7階建ての獣医学部棟の平面図や断面図、施設配置図や設備品まで事細かに記されている。
・1~6階は講義室や実習室、実験動物飼育室などとなっているのだが、最上階の7階の図面には、教育施設として似つかわしくない表記が出てくる。「ワインセラー」「冷蔵ショーケース」「ビールディスペンサー」……。一体、何のための設備なのか。図面には「パントリー(配膳室)」と書いてある。隣は「大会議室」だ。つまり、会議室を“宴会場”として利用するための設備のようなのだ。
▽立食なら100人規模のパーティー可能
・獣医学部キャンパスは今治市内でも高台にあたる「いこいの丘」にある。最上階ならかなり見晴らしがいいはずで、建物の北西に位置する「大会議室」からは瀬戸内海が望めそうだ。 1級建築士に図面を見てもらったところ、会議室の大きさは「ホテルの宴会場」程度もあり、立食なら100人規模のパーティーが可能だという。まさか、加計孝太郎理事長は、海の見える最上階でワインを傾けながら、親友の安倍首相と「いやぁ、おかげさまで」なんて談笑しようと考えているのか。「男たちの悪巧み…」再び?
・こんな設備を大学に設ける必要があるのかどうか。元文科省審議官の寺脇研氏(京都造形芸術大教授)は、「加計理事長の趣味じゃないか」と言った上でこう続ける。 「ワインセラーやビールディスペンサーが大学内に置いてある例は聞いたことがありません。学生数が数万、数千人単位の“マンモス大学”なら、学部棟とは別に来賓施設があってもおかしくないでしょうが、生徒数1000人にも満たない獣医学部程度のキャンパスに宴会場なんて造る必要はありません。来賓パーティーをやるなら、市内のホテルを借りればいい。これは文科省の設置審査に引っかかりますよ。加計学園が教育や研究よりも、接待を気にしていると思われても仕方ないでしょう」
・どういう目的でワインセラーやビールディスペンサーが必要なのか加計学園に問い合わせたが「夏季休業中のため、休業明けに順次対応する」という返事だった。 ただでさえ、獣医学部新設を巡っては、愛媛県と今治市の補助金算出の根拠となる建設費192億円に“水増し”疑惑が浮上している。膨らんだ建設費の一部が宴会場のためだとすると、ますます税金を投入する理由がなくなる。 図面が明らかになった今、獣医学部新設の必要性、国家戦略特区とアベ友の闇がさらに深まったと言える。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/211875/1

第三に、8月22日付け「加計獣医学部図面から浮上 バイオハザード施設に重大欠陥」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・加計学園が愛媛・今治市に建設中の岡山理科大獣医学部。日刊ゲンダイは先週、計52枚に及ぶキャンパスの建築図面を入手した。獣医学部棟最上階の7階大会議室は、ワインセラーやビールディスペンサーを完備した配膳室の真横。さながら“パーティー会場”だが、問題はそれだけではない。図面から浮かび上がるのは、「世界に冠たる先端ライフサイエンス研究」を行う施設としての重大欠陥だ――。
・加計学園が獣医学部新設の目玉としているのが、バイオセーフティーレベル3(BSL3)の研究施設だ。狂犬病や結核菌、鳥インフルエンザなど、人体に感染したら重篤化の恐れのある病原体を扱う実験室で、WHOの指針によると、<実験室は、建物内の交通が制約されていない区域と切り離されなければならない>と定められている。
・つまり、自由に人が行き来できる場所から遮断する必要があるのだが、今治キャンパスの獣医学部棟に設置されるBSL3施設は、研究エリアやディスカッションスペースのすぐ横に造られる予定だ。WHOの指針を完全に逸脱している。
・万が一の感染リスクについて専門家はどう評価するのか。元国立感染症研究所主任研究員の新井秀雄氏は「病原体を取り扱う以上、人為的ミスや機器の故障などによる実験室内の感染発生の確率はゼロとは言えません」と指摘した上でこう続ける。 「いざという時の処置として、他の人に感染が波及しないように設計上の配慮が求められます。しかし図面を見る限り、学生や教職員が行き来する同一フロア内に、BSL3施設が置かれ、管理区域として区別されていません。実験室感染の対応設備として緊急シャワーが設置されていますが、実験室の前室内ではなく、学生が自由に行き来できるオープンスペースの一角に位置している。これは理解不能です。設計図だけを見ても、感染拡大が懸念されます」
▽「1週間で感染者が出る」
・通常ならば、実験室内部は病原体の外部飛散を防ぐために「陰圧構造」になっているが、それも確認できないという。 「感染症の研究を知らない人が設計に携わったような印象を受けます」(新井秀雄氏) 専門家が見れば一目瞭然。シロート同然の設計なのだ。こんな欠陥施設のために評価額36億円の広大な土地を無償で払い下げ、さらに最大96億円という破格の補助金まで支払われるのだ。締めて、約133億円――。おまけに獣医学部内の事故によってパンデミックが起こっても何ら不思議ではないのだから、害悪施設を税金で建てるようなものだ。
・「図面を見た国立研究所の安全管理専門委員のひとりは、このまま研究を始めたら『1週間で感染者が出る』と指摘しています。加えて、実験室の吸気や排気がどうなっているのか分からず、配管設備も不明のまま。病原体に触れた廃棄物がきちんと処理されるのか不安です」(「今治加計獣医学部問題を考える会」共同代表の黒川敦彦氏)
・本当に獣医学部を新設したいのなら、学園側のトップである加計孝太郎理事長は市民に対して、感染リスクの予防についてきちんと説明する必要がある。 それをせずに逃げていては、先端ライフサイエンス研究なんて“夢のまた夢”だ。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/211953

第四に、9月2日付け「前川前文科次官 安倍政権「もうひとつの私物化」を激白」を紹介しよう。
・“腹心の友”に便宜を図った加計学園疑惑で安倍政権による「国家の私物化」は広く国民が知るところとなったが、どうやら氷山の一角のようだ。加計疑惑を告発した前文科事務次官の前川喜平氏が、自身が経験した「もうひとつの私物化」を明らかにした。2015年に世界文化遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」の選定過程でも“総理のご意向”が働いていた。
・あれもかなり無理筋のお友達案件でした。動き始めたのは第1次安倍内閣のころです。「地域振興」だとして地方の首長さんたちが協議会をつくって、世界遺産登録に取り組んでいた。それをまとめて、ユネスコに働きかけようとしていた中心人物が加藤康子さんという加藤六月元農相の長女でした。安倍家と加藤家は仲が良く、康子さんは安倍首相の幼馴染みだそうです。第2次安倍内閣で、康子さんは内閣官房参与。文科省の3年先輩で元ユネスコ大使の木曽功さん(現・加計学園系列の千葉科学大学長)も同様に参与でした。木曽さんと和泉洋人総理補佐官も世界遺産委員会の現場にいました。
・――「明治日本の産業革命遺産」は、軍艦島(長崎県)や官営八幡製鉄所(福岡県)など九州から岩手まで8県に点在する造船、製鉄、石炭産業など23の施設や遺構。各国の文化遺産推薦枠が年1件という中、文化審議会で既定路線とされた「長崎の教会群」を蹴倒して選ばれ、なぜか安倍首相の地元の松下村塾(山口県)まで含まれていることも“安倍官邸のゴリ押し”と噂されたものだ。
・2015年は長崎でのカトリック信徒再発見から150年目の節目で、長崎県の関係者は「その年に教会群を世界遺産登録したい」と準備をしてきていた。ところが、内閣官房が別の有識者会議を設けて審査し、「産業革命遺産」にすると言ってきた。政府の中に文化審議会と内閣官房の有識者会議という2つの審査機関ができてしまって、「どちらを取るのか」という話になり、最後は政治決断となりました。
・ユネスコの諮問機関であるイコモスの審査はとても厳しい。産業革命遺産は構成資産全体を説明するコンセプトが弱いことと、保全措置が不十分であることが課題でした。特に軍艦島は崩壊が続いている。それで、日本イコモスの専門的な審査をすっ飛ばし、外務省の組織を総動員し、政治力と外交力で押しきったのです。
・――ただ、その“政治力”が来年、新たな国際問題に発展しそうだという。15年7月の世界遺産委員会は「徴用工」の問題で紛糾した。韓国が「強制労働の負の歴史遺産」だとして登録に反対したのだが、日本側が「朝鮮半島の人々が労働を強いられたことを説明する情報センターを設置する」と約束し、韓国側が矛を収めた経緯があるのだ。 その情報センターが、今もできていないのです。登録から3年後に見直すことになっていますから、必ず来年、国際問題になります。韓国側が必ず持ち出してくるでしょう。軍艦島の保全措置という宿題も残っています。無理に無理を重ねて通してしまった結果です。
・――アベ友に木曽氏に和泉氏。加計疑惑と登場人物も同じだ。こうした国家の私物化が安倍政治の至るところで行われているということだろう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/212681

第一の記事で、 『図面によって、相場の2倍以上といわれる「坪150万円」の建築単価の妥当性が白日の下にさらされることになるのだ・・・加計学園は、このバカ高い建築費を根拠に、今治市に96億円(うち愛媛県が32億円)の補助金交付を申請していた。仮に建築費の“水増し”が明らかになれば、森友の補助金不正受給事件と構図は同じ』、というのは驚くべきことだが、一般のマスコミでは無視されたことは残念だ。
第二の記事にある 『最上階に“豪華パーティー会場”』、というのは大いにありそうな話だ。 元文科省審議官の寺脇研氏(京都造形芸術大教授)は、「・・・学生数が数万、数千人単位の“マンモス大学”なら、学部棟とは別に来賓施設があってもおかしくないでしょうが、生徒数1000人にも満たない獣医学部程度のキャンパスに宴会場なんて造る必要はありません・・・文科省の設置審査に引っかかりますよ』、としているが、工事前に図面を文科省に見せて「内諾」をとっていると考える方が自然な感じがする。
第三の記事で、 『バイオハザード施設に重大欠陥・・・「感染症の研究を知らない人が設計に携わったような印象を受けます」(新井秀雄氏) 専門家が見れば一目瞭然。シロート同然の設計なのだ』、というのも、信じられないようなミスだ。“豪華パーティー会場”とは異なり、安全に関わるだけに重大な欠陥で、そのような設計図を認めた加計学園は、このような施設を運営する資格はない。
第四の記事は上記とは異なるが、この明治産業遺産の世界遺産化については、このブログの2015年7月12日に取上げた。 『文化審議会で既定路線とされた「長崎の教会群」を蹴倒して選ばれ、なぜか安倍首相の地元の松下村塾(山口県)まで含まれていることも“安倍官邸のゴリ押し”と噂されたものだ』、だけでなく、 『「徴用工」の問題で紛糾した。・・・日本側が「朝鮮半島の人々が労働を強いられたことを説明する情報センターを設置する」と約束し、韓国側が矛を収めた経緯があるのだ。その情報センターが、今もできていないのです。登録から3年後に見直すことになっていますから、必ず来年、国際問題になります』、安部首相の思い付きで、文化遺産申請まで私物化した結果、「寝た子」を起こし、日韓の紛争を悪化させるというトンデモない愚策だ。
残念ながら、上記問題が国会で問題化するのを避けるように、国会解散・総選挙となるのは、「解散権の濫用」以外の何物でもない。
タグ:こうした国家の私物化が安倍政治の至るところで行われているということだろう その情報センターが、今もできていないのです。登録から3年後に見直すことになっていますから、必ず来年、国際問題になります 日本側が「朝鮮半島の人々が労働を強いられたことを説明する情報センターを設置する」と約束し、韓国側が矛を収めた経緯があるのだ 「徴用工」の問題で紛糾した 政府の中に文化審議会と内閣官房の有識者会議という2つの審査機関ができてしまって、「どちらを取るのか」という話になり、最後は政治決断となりました 文化審議会で既定路線とされた「長崎の教会群」を蹴倒して選ばれ、なぜか安倍首相の地元の松下村塾(山口県)まで含まれていることも“安倍官邸のゴリ押し”と噂されたものだ 第1次安倍内閣のころです あれもかなり無理筋のお友達案件 「明治日本の産業革命遺産」の選定過程でも“総理のご意向”が働いていた 前川喜平 前川前文科次官 安倍政権「もうひとつの私物化 「感染症の研究を知らない人が設計に携わったような印象を受けます」(新井秀雄氏) 専門家が見れば一目瞭然。シロート同然の設計なのだ 陰圧構造 今治キャンパスの獣医学部棟に設置されるBSL3施設は、研究エリアやディスカッションスペースのすぐ横に造られる予定だ。WHOの指針を完全に逸脱 WHOの指針によると、<実験室は、建物内の交通が制約されていない区域と切り離されなければならない>と定められている バイオセーフティーレベル3(BSL3)の研究施設 世界に冠たる先端ライフサイエンス研究」を行う施設としての重大欠陥 加計獣医学部図面から浮上 バイオハザード施設に重大欠陥 教育や研究よりも、接待を気にしている 学生数が数万、数千人単位の“マンモス大学”なら、学部棟とは別に来賓施設があってもおかしくないでしょうが、生徒数1000人にも満たない獣医学部程度のキャンパスに宴会場なんて造る必要はありません ワインセラーやビールディスペンサーが大学内に置いてある例は聞いたことがありません 元文科省審議官の寺脇研氏 最上階ならかなり見晴らしがいいはずで、建物の北西に位置する「大会議室」からは瀬戸内海が望めそうだ 立食なら100人規模のパーティー可能 会議室を“宴会場”として利用するための設備 パントリー(配膳室) 。「ワインセラー」「冷蔵ショーケース」「ビールディスペンサー」 最上階の7階の図面 岡山理科大学獣医学部キャンパス 加計獣医学部の図面で発覚 最上階に“豪華パーティー会場” インチキ計画を認めた国家戦略特区諮問会議はもちろん、議長である安倍首相も責任を免れない 加計問題はケタが2つも3つも違う。刑事事件に発展するのは間違いないだろう 加計学園は、このバカ高い建築費を根拠に、今治市に96億円(うち愛媛県が32億円)の補助金交付を申請していた。仮に建築費の“水増し”が明らかになれば、森友の補助金不正受給事件と構図は同じ 図面によって、相場の2倍以上といわれる「坪150万円」の建築単価の妥当性が白日の下にさらされることになるのだ 加計獣医学部の図面流出…法外な建築単価のウソも露呈か 日刊ゲンダイ (その11)(加計獣医学部の図面で発覚  法外な建築単価のウソも露呈か、最上階に“豪華パーティー会場”、加計獣医学部図面から浮上 バイオハザード施設に重大欠陥、前川前文科次官 安倍政権「もうひとつの私物化」を激白) 加計学園問題
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

加計学園問題(その10)(加計問題で市議会への「買収疑惑」浮上、加計学園関係者が一刀両断「獣医学部新設など言語道断」、加計・獣医学部を白紙撤回?安倍政権が人気挽回サプライズ作戦か) [国内政治]

加計学園問題については、8月27日に取上げた。加計・森友問題隠しといわれる解散・総選挙モードに突入した今日は、加計問題のその後をまとめた、(その10)(加計問題で市議会への「買収疑惑」浮上、加計学園関係者が一刀両断「獣医学部新設など言語道断」、加計・獣医学部を白紙撤回?安倍政権が人気挽回サプライズ作戦か) である。

先ずは、8月1日付け日刊ゲンダイ「加計問題で市議会への「買収疑惑」浮上…議員1人1000万円」を紹介しよう。
・加計学園の獣医学部新設問題で大揺れの愛媛・今治市に再び激震が走っている。加計学園の誘致を巡り、菅良二市長や加計孝太郎理事長らが共謀して市議らにカネを配った疑いがあるとして、市内の男性住民が菅市長や市議らに対する告発状を松山地検に提出したのだ。
・7月27日付の告発状によると、菅市長と加計理事長は2015年6月4日の獣医学部の設置申請にあたり、今治市議会の国家戦略特区特別委担当の市議らに対し、1人当たり1000万円をワイロとして渡していた疑いがあるとしている。
・この問題は7月26日に市内で開かれた市議会報告会で表面化。告発状を提出した「今治加計獣医学部問題を考える会」共同代表の武田宙大氏が質疑応答の場で、「今治市では(獣医学部新設の問題で市議に)1000万円の収賄容疑がある。名誉を守るために加計、市長からカネをもらっていない人は起立してください」「立てんということはワイロをもらっとるということ」などと発言。すると、議員側から「ちょっと待て」「根拠を言え」「退場だ」などと怒声が飛び交う異常事態となった。果たして真相はどうなのか。武田氏にあらためて聞くと、こう答えた。
・「カネの授受の具体的な日時はともかく、この話は加戸守行前愛媛県知事や菅市長の選挙を手伝った支援者から直接聞いた話です。告発状を提出後、ある市議から電話があり、『私はカネをもらっておらず、起立したかったが、周りにためらう雰囲気があった』と明かしました。これは議会内で無言の圧力があるということ。疑惑があるのだから、検察にきちんと調べてほしいと思います」
・加計学園に広大な市有地をタダで差し出し、県と一緒に100億円近い施設費もくれてやる――。賛否が真っ二つに割れてもおかしくない市の重要政策なのに、なぜか議会では「全会一致」で可決だ。市民が「議員は怪しいカネをもらっているのではないか」と疑念を抱くのも当然だろう。検察が告発状を受理して捜査に着手するかどうかは不明だが、仮にワイロが事実で、市長や市議が芋づる式に逮捕されれば、獣医学部開設は間違いなく吹っ飛ぶ。超ド級の大スキャンダルに発展するのは間違いない。
・政界工作のためのワイロが1人1000万円とすれば、議員に広く配るため億単位のカネが必要になる。経営状況が芳しくないといわれる加計学園が、多額の使途不明金を経理処理するのは難しいと言わざるを得ない。 果たして、どこからカネが出たのか。まさか官房機密費ではないだろうが……。 次から次へと新たな疑惑が出てくる加計学園の獣医学部新設問題。やっぱり計画の白紙撤回しかない。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/210535/1

次に、8月11日付け日刊ゲンダイ「加計学園関係者が一刀両断「獣医学部新設など言語道断」」を紹介しよう。
・「加計学園」の獣医学部新設を認めるのか――。設置認可の可否を判断する大学設置・学校法人審議会が実習計画などが不十分だとして、判断を保留する方針を決めた。今月下旬の予定だった文科相への答申は2カ月程度延期される見込みだが、実は加計学園の内部からも異論が出ている。08年から加計学園系列の千葉科学大で客員教授を務める加藤元氏(獣医学)は、「獣医学部の新設なんてとんでもない話。むしろ今、必要なのは大学の数を減らすことですよ」と指摘する。どういうことなのか。
・「現在、獣医学を学べる大学は日本に16校ありますが、世界の最先端をいく米国と比べると、恐ろしいほどレベルが低い。底上げを図るには、今の16校から多くても4校にまで減らし、1校あたりの教授陣のマンパワーと予算を4倍に増やし、獣医師の専門性を高めるカリキュラムを組む必要があります」
・加藤氏は「どうしても大学を新設したいなら、全米獣医師会が設けた基準『AVMAスタンダード』をクリアするようなレベルの高い大学をつくらないと意味がない」と強調。学生1人に対して常勤の教授が1・2倍以上いること、羊、乳牛、馬などの動物が十分にいる環境があることなどがAVMAスタンダードの条件となっている。 「この基準を満たしている大学は日本に一つもありません。難関とされる北大や東大でさえクリアできていないのに、加計学園にクリアできるわけがないのです」
・そもそも加計問題は日本の獣医師不足に端を発したものだったが、加藤氏によると、この前提がおかしいという。 「恒常的に不足しているのは所得が低い地方公務員の獣医師であって、都心の動物病院はいつも飽和状態です。大学を増やし、仮に獣医師を倍増させたところで、地方の待遇改善を図らない限り解決にはつながりません。ところが、安倍政権や加計学園は獣医学部を増やせばいいと考えているようです。私に言わせれば、極めて安易な発想だし、自分たちのエゴばかりで本末転倒です」
・大学で獣医学部・学科は人気の学科の一つ。学生確保のため、新設を望む大学や自治体が多く、その中の一つが加計学園だった。 「加計学園の初代理事長は、獣医学部新設を熱望しており、息子である現理事長も長い間、設置のために尽力してきました。そのことを、加計学園で客員教授を務めている私はよく知っていますが、やはりおかしいものはおかしい。政治家や地方自治体は獣医学・獣医療を本当に必要とする国民の立場に立って物事を考えるべきです」 
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/211194/1

第三に、デモクラシータイムス同人・元朝日新聞編集委員の山田厚史氏が8月17日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「加計・獣医学部を白紙撤回?安倍政権が人気挽回サプライズ作戦か」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・内閣改造、北朝鮮のミサイル騒動など目先が目まぐるしく変わり、支持率急降下の政権は土俵際で踏みとどまった。しかし政治家安倍晋三の信用は傷ついたままだ。 悲願の憲法改正は遠のいてしまった。体制立て直しに解散・総選挙という観測さえ流れている。
・総選挙だろうと憲法改正国民投票だろうと「国民の信」なしに果たせるものではない。避けて通れないのが加計・森友のみそぎだろう。火元は安倍家、首相の不徳に根源がある。個人としてどこまで関与していたかは不明だが、安倍夫妻の人間関係が疑惑の底流にある。追及を逃れようと首相周辺は「記憶にない」を連発、決定に関与した役所は「書類はない」「廃棄した」という。
・うやむやにして逃げ切ろうとする政権の姿勢が有権者の不信を増幅している。お友達が厚遇されているのではないか、と国民は疑っている。そんな中で、加計学園の獣医学部新設を白紙に戻す、という選択肢が首相周辺で語られているという。人気挽回のサプライズとしての戦略だという。
▽加計問題は疑惑を抱えたまま逃げ切りで はたして「安倍政権の勝利」になるのか
・獣医学部の新設が今の日本に必要なのか、加計学園が新学部を作って担当することが望ましいのか、衆目監視の中できちんと議論する。冷静になれば誰でも分かることだ。行政を正常軌道に戻すことしか信頼回復の道はない。その決断が安倍首相にできるか、そこが課題だろう。 加計学園の理事長は、安倍首相の親友で、これまで事業の手助けを頼んできたことはなかった、という。ならば「認可申請の取り下げ」を学校法人として決断することは、親友の窮地を救うことになる。加計孝太郎氏もまた決断を問われている。
・文科省の大学設置・学校法人審議会は、8月末までの予定だった獣医学部新設の認可を10月に先送りした。教授数など教育体制が十分でなく、経営主体である岡山理科大(加計学園系列)からさらに事情を聞く必要がある、という。審議会は専門的な見地から厳格な審査を行うことになっているが、政治問題化している獣医学部の認可は荷の重い仕事だろう。事務局である文科省高等教育局は、学部新設に慎重だった局長が7月の異動で外された。文科大臣も「加計疑惑収拾」を使命とする林芳正氏に替わった。審議会が「不合格」を決定した前例はない。普通なら危ない案件は事前に指導が加えられ、審議会にかかる前に条件はほぼ満たしているからだ。
・今回は、文科省の慎重姿勢を押し切って「2018年4月開学」という官邸からの要請で進んだ案件なので、しわ寄せが大学設置審議会に及んだ。 審査を遅らせ、その間に体制を整えたので認可しました、という筋書きのようだが、果たして世論は納得するだろうか。獣医学部が認可されれば、加計学園の「無理が通った」ということになる。
・国家戦略特区での新設は、国際競争力の強化、国際ビジネスの拠点化、という特区ならでは認定条件に合致しなければならない。さらに、既存の獣医学部ではできない研究や新分野への挑戦という「石破4条件」を満たすことも必要だ。ペットのお医者さん養成という程度の軽い大学では認可の対象にならない。 文科省の内部文書では荻生田官房副長官(当時)もこの点を懸念していた。強引に進めることを迫ったのは「総理のご意向」という殺し文句だった。普通なら認められない申請が認められる、という流れを指摘したのが「行政が歪められた」(前川喜平・前文科省次官)という表現だった。
・審議会が認可すれば、あれだけの騒ぎになっても、走り出した「政府の方針」は変えることができない、疑惑を抱えたまま逃げ切った、と国民の目に映るだろう。この決着で「安倍政権の勝利」になるのだろうか。
▽楯突いた籠池夫妻は逮捕 役所側は“証拠隠滅”と“高飛び”の対照
・森友学園では籠池理事長夫妻は、補助金詐欺で逮捕され、拘留された。加計学園の理事長は姿をくらまし、表舞台に出て説明することもない。自民党は証人や参考人として国会に呼ぶことさえ反対している。  籠池夫妻は「切り捨てられた」という思いから安倍夫妻に異議申し立てしたら、刑事責任さえ問われた。逃げ回る加計理事長は学部新設まで認められ、盾突いた籠池夫妻は留置場。田舎芝居のような現実を、国民はどう受け止めるだろう。憲法改正を叫んでも誰が耳を傾けるだろうか。
・安倍昭恵夫人付きの秘書として森友学園と財務省の連絡役を務めた経産官僚は、イタリア大使館に赴任した。この女性は、文書による仲介の事実が明らかになってから役所にも出勤していない。今度は「ローマの休日」か。一等書記官という厚遇の裏には、東京に置いておけない事情があるとしか思えない人事である。
・籠池夫妻は「証拠隠滅、逃亡の恐れ」と認定され逮捕された。籠池夫妻の要望を受け入れ、9億円の国有地を1億円で売った側はどうなったのだろう。証拠となる内部文書は廃棄、仲介した官僚はローマに「高跳び」。証拠隠滅・逃亡は役所の側のように思える。権力を持つ側は、都合いいことはなんでもできる。森友疑惑はツッコミどころ満載。これで信用回復ができるのだろうか。
▽モリカケ問題で安倍政権は3つの誤りを犯した
・北朝鮮の核ミサイルや中国の膨張主義、北東アジアの脅威は高まり、アメリカではトランプ政権で自国中心主義が露骨になった。加計や森友など小さな問題で大騒ぎしている時ではない。そんな意見をよく聞く。もっともらしく聞こえるが、事件の規模が小さいからと、たいした問題ではない、と考えるのは浅はかである。加計・森友は政権の体質を表す出来事だ。
・政権の命取りになりかねない大事になったのは、致命的な「3つの誤り」を犯したからだ。第一は「権力の私物化」。第二は「都合の悪いことをウソで切り抜ける隠蔽」。第三は「誰も自分の責任と思わない空洞行政」である。
・「安倍さんはいい人だ」とよく聞く。「知り合いを大事にする」という。そんな性格は決して悪いことではないが、最高権力者という自覚がないと周りを振り回すことになる。留学仲間の加計クンとの友情を大事にすることが、加計学園の事業を応援することに繋がっては困る。
・50年門戸が開かなかった獣医学部の扉をこじ開けなければ、と思ったのかもしれないが、こじ開けるとこととお友達関係が直結すると「権力の私物化」になってしまう。友達を大事にしたい首相の我がままに周囲が従ったのが事の起こりではないだろうか。
・「加計学園に」という結論が先に決まり、その結論に落とすよう行政が歪められたとしたら問題だ。首相の奥さんが名誉校長に就任した小学校は、国有地の買い取りが格安にできた。普通ありえないことが「安倍つながり」だと可能になる。悪気がないところが深刻である。上に立つ者が「権力の私物化」に鈍感なら、下はどうなるだろう。未熟な首相に強い権力を与えてしまったことに間違いがあったのかもしれない。
▽常識をわきまえた政治家が中枢におらず 誰一人として深く責任を感じていない
・二つ目の隠蔽体質は、健全な常識をわきまえた政治家が政権中枢にいないことを示している。「ウソで固めて逃げ切る」という対処方針が誤りだった。メディアや国会対策に目が奪われ、その場しのぎの答弁や説明で切り抜けられると思ったのか。
・その場しのぎでウソをつくと、どんどん辻褄が合わなくなり、さらに大きなウソをつかなければならない。多忙な首相が年に5回もゴルフや焼き肉でご一緒しながら、「加計学園が国家戦略特区に申請するということを知ったのは今年1月」。誰も信じないような答弁をする結果となった。
・答弁のつじつま合わせに知恵を絞るが、大局が読めない。浅知恵に長けた側近を重用した結果である。「首相は本当のことを言っていない」と多くの人は受け取った。平気でウソをつく首相が支持を失うのは自然なことだろう。
・官邸主導で迷走する今回の事態に、深く責任を感じている当事者が見当たらない。指揮を執るのは菅官房長官だが、厄介な仕事を押し付けられた、という素振りが見え見え、と官邸詰めの記者は言う。事実上の司令塔は政務担当の今井尚哉秘書官だという。秘書グループが答弁書などの方向付けをしているというが官僚の集まりでしかない。今井秘書官を軸に森友学園は財務省、加計学園は内閣府とその後ろにいる経産省が対応していることに限界がある。
・役人は論理的整合性を重視するが、世間がどう受け止めるかには無頓着だ。担当する部分には知恵を絞るが、全体像に想像が及ばない。菅官房長官の下で事務を仕切る杉田官房副長官や、国家戦略特区を担当する和泉首相補佐官も同様。だれもが責任を感じていないから、誤った政策を転換する、という大きな決断ができない。決めた方向を変えることができないまま、政策暴走を許している。
▽憲法改正を画策する首相が本気で加計学園と心中するか
・事件は小学校や獣医学部の認可で起きたのがせめてもの幸いだった。満州事変から太平洋戦争へとのめり込み、原爆が落とされるまで「政策の軌道修正」ができなかった大失敗の経験が日本にはある。その反省の上に今日があるのに、歴史に学ぶことをしない安倍政権は、愚行を繰り返している。
・森友学園は籠池逮捕で終わらない。詐欺で起訴され、これにて一件落着となれば、「国有地安売り」の財務省へ批判が沸騰するだろう。国税庁長官になったまま姿を現さない元理財局長の佐川宣寿氏への風当たりだけでなく、事件当時の近畿財務局長らに厳しい視線が注がれるだろう。この件については、改めて書く。
・加計学園の獣医学部新設を政府は本気で正面突破するつもりだろうか。方向転換できない政権は突っ走るかもしれないが、冷静に考えれば、一歩後退して安倍政権の体制を立て直すことが得策であると誰でも分かることだ。責任を取らない側近の差配で愚行を改められないなら、政治家はいらない。憲法改正を画策する首相が加計学園と心中するとは思えない。首相周辺で、白紙撤退のダメージを瀬踏みしつつ「選択肢のひとつ」として密かに検討されているという。
・新国立競技場の建設費が膨大になって、政府は計画を白紙に戻した。誰の入れ知恵か知らないが、賢い選択と評価され、安倍内閣への風当たりは和らいだ。完成は東京五輪にはなんとか間に合うが、前年に予定されるラグビーワールドカップの東京開催に間に合わなくなった。ラグビーWCの旗を振った大先輩の森喜朗元首相の顔に泥を塗ってでも決断したのである。背後に高い支持率があった。
・今回は親友の加計理事長に泣いてもらうしかない。その決断を、安倍首相ができるか。政治家としての正念場である。
http://diamond.jp/articles/-/138922

第一の記事で、 『加計学園に広大な市有地をタダで差し出し、県と一緒に100億円近い施設費もくれてやる――。賛否が真っ二つに割れてもおかしくない市の重要政策なのに、なぜか議会では「全会一致」で可決だ』、 『政界工作のためのワイロが1人1000万円とすれば、議員に広く配るため億単位のカネが必要になる。経営状況が芳しくないといわれる加計学園が、多額の使途不明金を経理処理するのは難しいと言わざるを得ない。 果たして、どこからカネが出たのか。まさか官房機密費ではないだろうが……』、というのは、確かに不自然で、今後の解明が待たれるところだが、検察は腰を上げないのではなかろうか。
第二の記事で、 『恒常的に不足しているのは所得が低い地方公務員の獣医師であって、都心の動物病院はいつも飽和状態です。大学を増やし、仮に獣医師を倍増させたところで、地方の待遇改善を図らない限り解決にはつながりません。ところが、安倍政権や加計学園は獣医学部を増やせばいいと考えているようです。私に言わせれば、極めて安易な発想だし、自分たちのエゴばかりで本末転倒です』、となんと加計学園関係者が喝破しているが、正論だ。
第三の記事は、安部政権の支持率がボトム圏にあったころのもので、内閣改造を経て支持率も多少戻し、憲法改正の余地も出てきた現在とは、環境に違いがあるが、それらを別にすればまだ価値がある論考である。 『文科省の大学設置・学校法人審議会は、8月末までの予定だった獣医学部新設の認可を10月に先送りした』、恐らく総選挙後に、「みそぎが済んだ」としてしれっとして認可するのだろう。 山田氏は、『白紙撤退』、もあり得るとしているが、その場合の政治的ダメージの大きさ、さらには、既に投じられた巨額の工事費の負担の問題を考慮すれば、やはり認可するのではなかろうか。
明日も、今日取上げきれなかった記事を取上げる予定である。
タグ:楯突いた籠池夫妻は逮捕 役所側は“証拠隠滅”と“高飛び”の対照 今治市 行政が歪められた」(前川喜平・前文科省次官) 加計問題で市議会への「買収疑惑」浮上…議員1人1000万円 総理のご意向 まさか官房機密費ではないだろうが……。 経営状況が芳しくないといわれる加計学園が、多額の使途不明金を経理処理するのは難しいと言わざるを得ない 日刊ゲンダイ 8月末までの予定だった獣医学部新設の認可を10月に先送りした 文科省の大学設置・学校法人審議会 (その10)(加計問題で市議会への「買収疑惑」浮上、加計学園関係者が一刀両断「獣医学部新設など言語道断」、加計・獣医学部を白紙撤回?安倍政権が人気挽回サプライズ作戦か) 加計学園問題 議員に広く配るため億単位のカネが必要 、「獣医学部の新設なんてとんでもない話。むしろ今、必要なのは大学の数を減らすことですよ ダイヤモンド・オンライン 山田厚史 加計学園の獣医学部新設を白紙に戻す、という選択肢が首相周辺で語られているという 加計孝太郎理事長 客員教授を務める加藤元氏(獣医学) 加計学園系列の千葉科学大 恒常的に不足しているのは所得が低い地方公務員の獣医師であって、都心の動物病院はいつも飽和状態です。大学を増やし、仮に獣医師を倍増させたところで、地方の待遇改善を図らない限り解決にはつながりません。ところが、安倍政権や加計学園は獣医学部を増やせばいいと考えているようです。私に言わせれば、極めて安易な発想だし、自分たちのエゴばかりで本末転倒です 審議会が「不合格」を決定した前例はない 石破4条件 審査を遅らせ、その間に体制を整えたので認可しました、という筋書きのようだが、果たして世論は納得するだろうか 加計・獣医学部を白紙撤回?安倍政権が人気挽回サプライズ作戦か 加計学園関係者が一刀両断「獣医学部新設など言語道断」」 菅良二市長 文科省高等教育局は、学部新設に慎重だった局長が7月の異動で外された。文科大臣も「加計疑惑収拾」を使命とする林芳正氏に替わった 難関とされる北大や東大でさえクリアできていないのに、加計学園にクリアできるわけがないのです 全米獣医師会が設けた基準『AVMAスタンダード』をクリアするようなレベルの高い大学をつくらないと意味がない 獣医学を学べる大学は日本に16校ありますが、世界の最先端をいく米国と比べると、恐ろしいほどレベルが低い 首相周辺で、白紙撤退のダメージを瀬踏みしつつ「選択肢のひとつ」として密かに検討されているという 憲法改正を画策する首相が本気で加計学園と心中するか 加計学園に広大な市有地をタダで差し出し、県と一緒に100億円近い施設費もくれてやる――。賛否が真っ二つに割れてもおかしくない市の重要政策なのに、なぜか議会では「全会一致」で可決だ 加戸守行前愛媛県知事 今治市議会の国家戦略特区特別委担当の市議らに対し、1人当たり1000万円をワイロとして渡していた疑い 共謀して市議らにカネを配った疑いがあるとして、市内の男性住民が菅市長や市議らに対する告発状を松山地検に提出 権力の私物化 底上げを図るには、今の16校から多くても4校にまで減らし、1校あたりの教授陣のマンパワーと予算を4倍に増やし、獣医師の専門性を高めるカリキュラムを組む必要 モリカケ問題で安倍政権は3つの誤りを犯した 役人は論理的整合性を重視するが、世間がどう受け止めるかには無頓着 今井秘書官を軸に森友学園は財務省、加計学園は内閣府とその後ろにいる経産省が対応していることに限界 誰も自分の責任と思わない空洞行政 うやむやにして逃げ切ろうとする政権の姿勢が有権者の不信を増幅している 都合の悪いことをウソで切り抜ける隠蔽
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

日銀の異次元緩和政策(その26)(野田総務相がアベノミクス批判 異次元緩和「空恐ろしい」、「異次元緩和」の出口を探す日銀がインフレ目標の旗を降ろせない理由、日銀は日本経済に金をばらまく「打出の小槌」ではない、米欧で進む金融政策正常化議論 置いてけぼりの日銀が打つべき手) [経済政策]

日銀の異次元緩和政策については、7月21日に取上げたが、今日は、(その26)(野田総務相がアベノミクス批判 異次元緩和「空恐ろしい」、「異次元緩和」の出口を探す日銀がインフレ目標の旗を降ろせない理由、日銀は日本経済に金をばらまく「打出の小槌」ではない、米欧で進む金融政策正常化議論 置いてけぼりの日銀が打つべき手) である。

先ずは、8月31日付け日刊ゲンダイ「野田総務相がアベノミクス批判 異次元緩和「空恐ろしい」」を紹介しよう。
・野田聖子総務相が、閣僚としては異例の「アベノミクス」批判を行った。30日行われたBS朝日の番組収録での発言で、アベノミクスの効果は不十分で、「立ち止まって検討すべき」と経済政策の変更の必要性を指摘した。
・野田氏が特に問題視したのが、アベノミクスの「第1の矢」である金融の異次元緩和。「ある程度の効果はあったとしても予想を下回っている。これでは厳しい」と語った。そして日銀が出口戦略を示していないことを不安視し、「出口はどこかというと正直、空恐ろしい」と発言。このまま異次元緩和を続ければ「若い人にどんなツケを回すか、うすうす国民は分かっている」と指摘した。
・一方、来年の自民党総裁選をめぐって、「出馬の準備を進めている」と明言。2015年の総裁選では、推薦人があと1人足りない19人であったことも明かした。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/212565

次に、9月7日付けダイヤモンド・オンライン「「異次元緩和」の出口を探す日銀がインフレ目標の旗を降ろせない理由」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・日本銀行が「異次元緩和」に踏み出して4年半余り。だが、いまだ「2%物価目標」は達成されないまま、金融は「マイナス金利」、財政も赤字が止まらない「財政と金融の同時破綻」とも言うべき状況だ。「アベノミクスのリスク」を一手に背負いながら超金融緩和をやめるにやめられないジレンマと不安に襲われている日銀の今を、8回シリーズで追った。
▽水面下で路線修正に動く財務省と日銀
・「メガバンク出身の鈴木さんが審議委員になったのは、ひとまずよかった。1人で何ができるかというわけではないが、政策委員会も少しは緩和縮小に向けての“出口”議論が行われるようになるんじゃないか」 7月下旬、日本銀行の金融政策を決める政策委員会の審議委員2人が交代した。そのうちの1人が、鈴木人司・元三菱東京UFJ銀行副頭取に決まった直後、財務省幹部は少しほっとしたような表情を浮かべながら、こうつぶやいた。
・6人の審議委員のうち、任期を迎え交代する2人は、黒田東彦総裁就任後の「異次元緩和」に異を唱え、慎重姿勢を取り続けていた。それだけに後任人事が注目されていた。 「日銀からも(緩和の)流れを変えたいと、内々に言ってきていた。メガバンクとは、マイナス金利導入の際にコミュニケーション不足があって関係が悪化していたから、鈴木さんが委員になれば、それも修復できると考えたのではないか」と財務省幹部は言う。
・こうした日銀の意向を受け、財務省では異次元緩和路線の流れを変えられそうな審議委員の候補ということで、マイナス金利に批判的だった鈴木氏と、もう1人を官邸に推していた。 結局、期待した「緩和慎重派」は鈴木氏1人しか選ばれず、もう1人は積極的な金融緩和と財政拡大を主張する「リフレ派」と知られる三菱UFJリサーチ&コンサルティングの片岡剛士・上席主任研究員だった。 だが、審議委員全員が「緩和積極派」で占められるのを何とか回避できたことを受けて、財務省幹部はつぶやいた。「官邸だって、これまでの人事はやり過ぎたと反省したんだろう」と。
▽国債の買い取りペースが鈍化 「出口戦略」の地ならしか
・図1をご覧いただきたい。これは、日銀が「2%物価目標」を掲げ、2013年4月から導入した「異次元緩和」の概略図だ。 日銀が、国債や株式、ETF(上場投資信託)などを購入し、「緩和マネー」を市中に大量供給すれば、いずれ「インフレ期待」が醸成されて、物価が上がる…。そうしたシナリオの下でスタートした「異次元緩和」だが、これまで6度も目標達成時期が先送りされてきた。
・実は、そのため財務省と日銀は、路線修正に向けて水面下で動き始めている。あまり知られていないことだが、すでに事務方の間では、いかに「異次元緩和」を縮小し、正常化させていくかといった「出口戦略」の検討を始めているのだ。 関係者によると、そのシナリオは、まずは「2%物価目標」を、「短期的な目標」から「中長期の柔軟な目標」として位置付け直すこと。さらにそれとセットで、2016年度決算の残高ベースで418兆円を超えている国債の買い取り額について、「いつまでにどれくらい減らすのか」といったスケジュール感を示すこと──などが検討されているという。
・これは、すでに利上げに踏み出した米国のFRB(連邦準備制度理事会)のやり方を踏襲したもの。財務省と日銀も、米国をベースに“出口戦略”を摸索しているというわけだ。 すでに昨年9月、ベースマネー残高の「量」をターゲットにしたやり方を変え、長期金利などの「金利」を操作目標に戻した「長短金利操作(イールドカーブコントロール)」を導入したのも、「これ以上の緩和はしたくない」という意思表示とも言えた。
・当時、「リフレ派」との妥協で、年間の国債買い取り「80兆円」の枠は維持されたものの、実際の買い取りペースは「50兆〜60兆円」に落ちてきている。市場の間では、いずれ国債の“玉不足”で国債が買えなくなる事態に備えているとの見方とともに、「出口戦略を意識しながらの路線修正が始まった」と見る関係者もいる。
▽日本経済に「副作用」 緩和マネーで市場機能がマヒ
・こうした路線修正の動きが出てきたのはなぜなのか。一言で言えば、日銀が進めてきた超金融緩和政策によって日本経済に「副作用」が生じ、さまざまなリスクを抱え込むことになっているからだ(図2参照)。 当初は「2年程度」で物価目標を実現する“短期戦略”とされていたものの、目標を達成できなかったことで長期化。それに伴って、日銀による国債やETF、不動産リートなどの上場投資信託の買い取り規模はどんどん膨らんできた。
・今や、国債などの市場は、買い手がほぼ日銀という異常な状態。株式市場も、日銀や公的年金による「買い」で下支えされ、値付けなどの機能がマヒし、市場からのシグナルが見えない状態が続いている。 人口減少などによって国内市場が縮小する中で、企業の設備投資はかつてのように増えず、行き場を失った緩和マネーが都市部の不動産やリート物件に流れこみ、一部は「バブル」の様相を呈している。
・一方で株価が、企業業績などと関係なく下支えされているために、企業の財務や経営のガバナンスも働かない。財政も、日銀による実質的な「財政ファイナンス」の下で国債が増発され、財政赤字拡大に歯止めが利かない状況だ。「マイナス金利」によって金融機関は利ザヤが取れず、収益が悪化するという弊害まで生じている。
・まさに、「金融と財政が、もたれあいながらセットで“破綻”に近づいている状況」(日銀OB)といえるのだ。(図3参照)
▽黒田日銀総裁は失敗と分かりつつやり続けるしかないと達観している様子
・財務省にとっても、「異次元緩和」は財政再建を遠のかせるという“負”の側面が意識されるようになってきた。 これまでは、国債の消化が楽にできる上に、金利が低く抑えられることで、国債の発行コストや毎年度の利払い費が少なくて済むという“うまみ”があった。
・だが、財務省のある幹部は「異次元緩和がこのまま続けば、財政再建は遠のくばかり。政治もまじめに財政健全化に取り組もうとしない」と話す。安倍政権では、消費税増税を2回も先送りしているが、2019年10月にも予定されている税率10%への引き上げも、また先延ばししかねない雲囲気だ。
・財務省の危機感を象徴する出来事が、今年の正月にもあった。事務次官や財務官経験者らのOBが都内のホテルに一堂に介した「かるた会」でのことだ。 黒田総裁を何人かの財務省OBが囲んだ。 「君がやっていることは半分、正しい。『デフレ脱却には財政健全化のような構造改革も必要だ』と言っているのは正しい。だけど現実は国債をどんどん買い取って財政を不健全にしているのだよ」 「首相と一緒になってこんなことを続けるのは、君のマイナスになる。総裁は早くやめたほうがいい」
・“財務省一家”の内輪の会だけに、率直な苦言やアドバイスだったが、OBたちの話を、黒田総裁は時に微笑みを浮かべながら聞いていたという。 この会に出席していた藤井裕久・元蔵相はこう話す。 「毎年、このかるた会で黒田君と会っているが、今年は、任期中の物価目標の達成をあきらめているかのようだった。異次元緩和は失敗だったと分かっていても、やり続けるしかないと達観している印象を受けた」
▽「期待」に働き掛ける政策だから目標を降ろせないというジレンマ
・黒田総裁率いる日銀が、「失敗だった」と分かっていたとしても、「2%物価目標」を降ろせないのには、いくつか理由がある。
・7月まで日銀の審議委員を務め、緩和慎重派だった木内登英・野村総合研究所主席研究員はこう話す。  「物価目標は異次元緩和策の大きな柱。それが正しいということで打ち出したのだからやめられない。メンツがある。しかも、目標に達するまで緩和を続けるという『期待』に働き掛ける政策だから、目標を降ろすとなると政策効果はますます落ちてしまうというジレンマを抱えているのだ」
・しかも、日銀が国債を大量に買い続ける中で、流動性が極端に少なくなってきた国債や株式市場は、ちょっとしたきっかけで大きく触れ(注:正しくは「振れ」)たり、混乱したりする懸念がある。 「日銀が、路線変更に動き始めたと市場が感じた時に、市場がどう反応するかが読めないし、混乱するリスクを怖れている」(木内氏)
・結局、市場の反応が怖いから動こうにも動きが取れない、「自縄自縛」の状況に陥っているというわけだ。  加えて政治的な要因も影を落とす。 「物価目標の旗を降ろすとなれば、アベノミクスの失敗と受け取られかねない。路線変更は政治的イシューにもなりかねない」と、日銀幹部は複雑な胸の内を明かす。
・異次元緩和は、「デフレ脱却」や「インフレ目標」を公約に掲げて選挙で大勝した安倍晋三首相が、黒田氏を日銀総裁に任命し、それまでの緩和策を「生ぬるい」と批判してきた「リフレ派」の岩田規久男副総裁とセットで日銀に送り込んだ時から始まった。 そのため、政策委員会のメンバーである審議委員の選任についても、官邸の意向が反映されてきたとされている。
・かつて、日銀の総裁ポストを日銀と財務省(旧大蔵省)が交互に分け合っていた時代は、財務省と日銀の有力OBが話し合って、事実上、決まっていた。審議委員の選任についても日銀の意向が重視されていたが、今や「人事権」は官邸が握っている。このように、「官邸主導の金融政策」の色彩を強める中で、「政策の失敗」を認めるわけにはいかないのだ。
・日銀法が、金融政策に対する政権や政治の過剰な介入を防ぐ狙いで改正されたのは1997年のこと。だが法律上、独立性が強化されても、政権が「人事」を武器に介入を深めているのが実態だ。
・ある日銀OBはこう話す。 「名目で4%弱、実質で2%の成長というのは、財政健全化計画などでも掲げられているアベノミクスのテーゼ。だから、物価目標の位置付けや国債の買い取り枠など全てを曖昧にしたまま、どうにか緩和縮小の道を探っていくしかない」
・一方で、財務省幹部は、「景気拡大が続き、人手不足感も出ているから、そろそろ緩和縮小だと市場が折り込んでくれるのを待つしかない」と語る。だが、今の景気拡大は、超低利と財政支出、海外の需要に支えられたもので、本来の成長に必要なイノベーションや企業の新陳代謝は逆に起こりにくい状況だ。
・「アベノミクスリスク」を、中央銀行である日銀と財政が一手に背負い込む状況は限界に近づいている。そこでこの特集では、日銀の現状を多角的に分析、抱え込むリスクや政治との距離などについて8回シリーズで取り上げていく。 日銀はうまく“出口戦略”を描くことができるのか。それともハードランディングに向かってしまうのか。欧米の中央銀行が“出口”に向かい始める中、残された時間は少ない。
http://diamond.jp/articles/-/141327

第三に、東短リサーチ社長 加藤 出氏が9月14日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「日銀は日本経済に金をばらまく「打出の小槌」ではない」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・「2%物価目標」を達成することができず、金融緩和策を続ける日本銀行。しかし、その影響で「赤字決算」や「債務超過」に陥りかねない状況となっている。それに対し、政府と日銀を一つにして考える「統合政府論」を繰り広げ、日銀をまるで「打出の小槌」のように捉える人たちもいる。中央銀行とは何のためにあるのか──。
▽手のひら返しのごとく懺悔するバーナンキ元FRB議長
・今年5月、FRB(米国準備制度理事会)のベン・バーナンキ元議長が来日し、日本銀行の本店で講演した。そこで語られたのは、意外な言葉だった。 「私はよく分かっていなかった」 「私は楽観的過ぎた」 「私は以前の発言のいくつかのトーンを後悔している」 彼の口から数多くの懺悔の言葉が発せられたのだ。
・かつて彼は日銀に対して、デフレ脱却のためのより積極的な緩和策を実施するよう、ほとんど罵倒に近い口調で勧めていた。 それに対し、日銀の黒田東彦総裁は、その言葉を全て取り込んで見せたばかりか、はるかに上回る大胆さで「超金融緩和策」を実施してきた。にもかかわらず、バーナンキ元議長の言葉は、まるで手のひらを返すかのようなものだった。
・この講演の中でバーナンキ元議長は、日本の「構造問題」に気づいたと語った。 日本では、労働力の減少や生産性の伸びの低さが、「長期停滞(セキュラースタグネイション)」を招いていること、そして高齢化が、耐久財や住宅などの需要を抑え、企業が国内で設備投資を行ってもリターンが低くなっていることを指摘した。 そうした環境において、金利は「短期だけでなく全期間において実質的な下限に近づいている」ため、緩和策の「“道具”としては限界に達しつつある」とし、「私は、中央銀行がデフレを克服できると決意して緩和策を行うことに確信を持ち過ぎていた」と率直に認めた。
・日本のリフレ派エコノミストの“教祖様”の1人だったバーナンキ元議長のこうした“変心”を目の当たりにして、日銀の黒田総裁や岩田規久男副総裁らの胸中に、苦々しい複雑な思いがよぎったことは想像に難くない。  しかし、バーナンキ元議長が変心してしまったのも、無理のない話だった。
・日銀が、市中の現金や、銀行による準備預金など、「マネタリーベースを2年で2倍(260兆円)に拡大すれば、インフレ率は2%へ上昇する」という、いわゆる「2%物価目標」を宣言し、大規模な国債購入を中心とする異次元緩和と呼ばれる「量的質的緩和策(QQE)」を始めたのは、2013年春だった。
▽誤算続きだった日銀の金融緩和策
・しかしその後は、“誤算”続きだったからだ。 どれだけ金融緩和策を講じても、一向に「2%物価目標」は達成できず、今年7月にはついに6回目となる目標達成時期の先送りを決めた。日銀は、2019年度にはと説明しているが、大半の市場参加者は「来年は7回目の先送りが行われるだろう」との冷めた見方がもっぱらだ。
・図1は、4半期ごとに日銀政策委員会が発表している「コアCPI(生鮮食品を除いた消費者物価指数)」の前年比予想である。 2015年度、16年度、17年度のいずれも、当初は2%前後になると予想されていた。だが、その年になると現実に収斂させざるを得なくなり、それらは大幅に下方修正されてきた。
・現在、マネタリーベースは470兆円近くであるのに対し、日銀のバランスシートは、買い取った国債残高が膨らみ510兆円に達している。 国際通貨基金(IMF)の予想によれば、今年の米国の経済規模(名目GDP=国民総生産)は日本の3.9倍近くになりそうだというが、その中央銀行であるFRBよりも日銀の方が巨大になっているほどだ。
・つまり日銀は、“公約”を守ることができなかったばかりか、自らの身を危機にさらしてしまっているのだ。その結果、大きな問題になり得るものの一つとして、“出口政策”時に日銀自身が巨額の「赤字決算」に陥るばかりか、「債務超過」になってしまうリスクが懸念されている。
▽政府と日銀を一つに見て大丈夫と訴える「統合政府」論
・少々難しい話になるが、日銀の収益が悪化するメカニズムはこうだ。 日銀の目標通り、インフレ率が2%を超えるようになったとしよう。 その際、日銀は、市中の短期金利を少なくとも2%以上に引き上げるだろう(ちなみにバブル経済期のピーク時で8%台だった)。貸出先のない銀行が準備預金として日銀に預けている“超過準備”が大量に存在する中で、利上げを実現するには、まず日銀当座預金の「付利金利」を2%以上に押し上げていく必要がある。
・しかし、資産の平均利回りは、2016年度下期でわずか0.26%と驚くほど低い。市場金利を強烈に押し下げながら国債などを購入してきたためである。日銀は当面、マイナス金利やゼロ%近辺の国債を大規模に買い続けると予想されるため、その利回りはさらに低下していくと思われる。 つまり、運用資産からの利息収入よりも、日銀当座預金への支払利息の方が大幅に上回る巨大な“逆ザヤ”が生じる。
・日銀は自己資本を7.8兆円持っているが、それは早々に吹き飛んでしまい、債務超過に陥ってしまうというわけだ(FRBの運用利回りは2.57%と、日銀よりもはるかに高いので、日銀ほど問題は深刻ではない)。  こうした見方に対し、「日銀が赤字になっても、日銀と政府を合体させた『統合政府』と見なせば問題はない」といった見解が国内で時折、喧伝されてきた。
・さらには、より踏み込んで、「『統合政府』として考えるなら、日銀が保有国債を無利子永久国債に交換すれば、政府の債務を事実上消し去ることができる」「無利子永久国債を日銀がさらに大規模に引き受けつつ、それによって得た資金で政府が公共工事や補助金の交付を行えば、コストなしで財政刺激策を行う“ヘリコプターマネー”が可能となる」といった主張まで聞かれる。
・そうした声が正しいのであれば、日銀がこの4年半の間に実施してきた政策に問題はなく、今後はより大胆な財政政策と金融緩和策のパッケージをやっていけばよいことになる。 だが、日銀が、振ればお金がでる“打ち出の小槌”のように、政府の赤字財政を補てんすることが現実に可能なのだろうか。もしそれが持続可能な政策なら、なぜ海外の主要国はそれを実践していないのだろうか。そもそもなぜ米議会では、政府債務の上限引き上げの是非を巡って与野党が激しいせめぎ合いを演じているのだろうか。
▽累積債務が最悪の日本には通用しない
・それでは、「統合政府」の議論で陥りやすい“過ち”について、以下、ポイントを整理してみよう。 第一に、「統合政府で考えれば、中央銀行の赤字や債務超過は問題ない」という解釈は今の日本では無理がある。  日本が財政黒字で、健全な財政状態が今後も維持されそうなのであれば、一時的な中央銀行の赤字は「統合政府」的に見て問題とはならないといえる。しかしながら、日本の累積債務は先進国で最悪だ。
・1800年代、英国の債務残高のGDP比が、現在の日本以上に膨張したことがある。しかし英国政府は、デフォルトもハイパーインフレも起こさず、しかも中央銀行が奇策を弄することもなく、約1世紀をかけて実直に借金を返済していった。 こうしたソフトランディングに成功した理由は、「大英帝国」の植民地からの収益があったことに加え、産業革命が起きて経済規模が爆発的に拡大し、人口も増加していったことにあった。こうしたことによって、過去の借金の1人当たりの負担額が大幅に小さくなったわけだ。
・しかしながら今の日本は、劇的な経済規模の拡大がイメージできないし、急速な高齢化と現役世代の人口減少により、財政赤字は2020年代後半から本番を迎えることになる。 そのような国で中央銀行が債務超過になり、その損失を補うために政府が国債をさらに増発する必要に迫られるとしたら、それは無視できないリスクとなるだろう。
▽通貨の信認に無頓着な日銀の審議委員
・ところで、かつて典型的な中央銀行家といえば、通貨の信認に関して「そこまで心配しなくても」と端から揶揄されるほど、過度に神経質な人物像であったように思われる。ドイツの中央銀行幹部は今でもそうだ。 同行がECB(欧州中央銀行)の超緩和策に極めて批判的なのは、マイナス金利の国債を購入して損失を発生させることは中央銀行の責任として「許容できない」という点から生じている。
・ドイツ政府は近年、財政黒字を継続しており、まさに「そこまで心配しなくても」という状況といえる。だが、裏返して言うと、それだけ財政規律や通貨の信認に神経質だからこそ、財政赤字を抱える先進国が多い中でドイツが財政黒字になっているともいえる。
・また、バーナンキ議長時代のFRBも、QE3(量的緩和策第三弾)の継続によって出口政策時に収益が悪化して、政府に利益を納付できなくなったり、赤字になったりする事態を恐れ、早めに「テーパリング」(国債などの証券購入の段階的縮減)に着手した(バーナンキ元議長の回顧録「行動する勇気」下巻より)。もし、そういった事態になった場合、議会が激怒し、FRBの独立性が剥奪されるリスクがあったためである。
・しかしながら日銀は、原田泰審議委員が今年6月の講演で、「中央銀行の損益が赤字かどうかを気にしてお札を使う人がいるでしょうか」と語るなど、極めて対照的だ。 確かに、日銀が作り出した超低金利環境は、政府の利払い負担を抑制するという“痛み止め効果”を発揮している。その間に、財政再建や構造改革を進めるのであればいいが、実際はその強烈な“痛み止め効果”が、中央銀行幹部も含めて、日本中を“感覚麻痺”に陥れているように思われる。
▽「国債を永遠に保有させれば政府の債務は大幅に減る」は間違い
・話を「統合政府」論の過ちに戻そう。 第二に、日銀が持つ国債を無利子の永久国債に交換させるなどして、「日銀に、市中から買い取った国債を永遠に保有させれば、その分、政府の債務は大幅に減る」という考え方は誤解である。
・日銀が、市中から長期国債を大規模に購入すると、民間金融機関の日銀当座預金への預け金が急増する。図2をご覧いただきたい。これは、国内銀行の資産構成の推移を示したグラフ。QQEが始まった2013年春以降、国債が減って預け金が増えていることが分かる。 日銀の当座預金は、日銀の民間に対するオーバーナイト(1日)の債務だ。つまり日銀が長期国債を買っても、それは日銀当座預金との“交換”であり、「統合政府」で考えれば借金は全く減っていない。しかも、「統合政府」の債務の平均残存期間は、現在よりも猛烈な勢いで短期化することになる。「ヘリコプターマネー」というアイデアも同様である。
・通常は、長期国債よりも日銀当座預金の方が金利は低いため、当初、「統合政府」は利払い負担の低下を居心地良く感じるだろう。しかし、金利上昇期には、利払い負担が急速に重くなるという“脆弱性”がそこに内在している。
・先行き、ヘッジファンドなどがその脆弱性を見抜き、猛烈な円売りを仕掛けたとしよう。その際、政府・中央銀行はまずは外貨準備を売却して円買いを行う。それでも収まらない場合は、短期金利を大幅に引き上げるだろう。実際、ロシアやインドで近年そうした実例が見られた。 仮に、超過準備が500兆円ある中で、それへの付利金利を10%へ引き上げたら、「統合政府」の利払いは1年で約50兆円増加する。今年度、国の年間の税収見込み(当初予算)が58兆円程度しかないにもかかわらずだ。利払い費の増加で生まれた新たな赤字を賄うための国債を、日銀がまた購入して超過準備を増加させたら、それこそ「悪魔のスパイラル」が発生してしまう。
・このように考えると、海外の投機筋にそうした攻撃が成功しそうだと思わせないことが、今後、非常に重要になると考えられる。 心配なのは、高齢化の進展に伴って貯蓄や、対外債権が取り崩されていく環境下で、不幸にも日本の主要産業の国際競争力が低下し、その法人税や社員の給与を通じた所得税の納付が減り、先行きの財政収支の見込みが一段と悪化していくケースが懸念されていることだ。特に、基幹産業である自動車産業が自動運転、電気自動車へのトレンドの変化に上手く乗れなかった場合は、そういったリスクが顕在化するだろう。
▽「悪魔のスパイラル」に陥れば世界経済はすさまじい衝撃
・BIS(国際決済銀行)の元チーフエコノミスト、ビル・ホワイト氏は、日本の「統合政府」の債務が短期化していることを近年、非常に警戒している。 日本のような経済大国が、前述の「悪魔のスパイラル」に陥り、政府債務のリストラクチャリング(国債返済の棚上げ)か、ハイパーインフレ?ションしか選択がなくなったら、「世界経済はすさまじい衝撃を受ける」と恐れており、同氏はそれゆえこれまでの日銀の緩和策は「無謀」だと批判しているのだ。
・しかし、日銀は方向転換できない。民間企業であれば、予想と実績に大きな乖離が生じれば、戦略の根本的な見直しを図るところであろうが、日銀は「インフレ率が安定的に2%をオーバーシュートする(行き過ぎる)までマネタリーベースを拡大する」と宣言しているため、それができないのだ。
・そもそも、過去、日本でインフレ率が2%を安定的に超えた状態になったのはいつだったか。振り返ると、四半世紀前のバブル経済終盤(1990年代初頭)まで遡らなければならない。あれほどの需要の過熱が今後の日本で起きるだろうか。 金融政策だけでは、インフレ率が賃上げや好循環を起こすといった、望ましい形で目標を上回っていくような状況は実現困難だろう。
・例えば、人口増のための移民政策などの大胆な政策も含む、潜在成長率を押し上げるかなりの「構造改革」が必須だ。そうした構造改革なしに、インフレ率が2%を明確にオーバーシュートすることがあるとしたら、それは通貨の信認が壊れて激しい円安になり、輸入価格が急上昇するケースでしかないように思われる。
・マクロ経済政策を「統合政府」で運営することは、長期的に見るとガバナンスに深刻な問題を起こすという「歴史的教訓」をわれわれはあらためて思い出す必要がある。その実例は、古今東西枚挙にいとまがない。そうした過去の反省を込めて、近代、政府から分離された中央銀行が設立され、為政者が安易に紙幣を印刷できないようにしたのだ。
・バーナンキ元議長は、前述の講演で、「日銀の金融政策は限界に来ており、追加景気刺激策が必要なのであれば、現在の緩和策と財政支出拡大策の組み合わせを行うべきだ」と提唱した。「ヘリコプターマネー」を推奨するアデア・ターナー・元英FSA長官や、FTPL(物価水準の財政理論)を提唱するクリストファー・シムズ・プリンストン大学教授も日本に対し、金融緩和策と大胆な財政拡張との組み合わせを推奨している。
・もし、日本経済が抱える問題が、「一時的な需要不足」にあるのなら、財政刺激策などによって経済が好循環に戻るきっかけを作ることは有用だろう。 しかし、図3にもあるように、日本はこの数十年、他国では見られない政府債務を膨張させながら財政支出を拡大させてきた。それで、「財政と金融の同時破綻」ともいうべき「今」があるのだ。
・日本経済の実態に疎い海外の経済学者らの助言を、ただ高名だというだけで安易にうのみにすることは危険であり、注意深く熟考する必要があるだろう。彼らは日本国民に責任はなく、提言した政策が間違っていたとしても、「私は楽観的過ぎた」と懺悔すれば済んでしまうからだ。
・日本経済にとって今、重要なことは、存在しない“打ち出の小槌”を期待し続けたり、「この国の財政はどうせ破綻する」と過度に自暴自棄になったりすることではない。潜在成長率を少しでも引き上げるような地道な構造改革を、一歩一歩進めていくことにある。中央銀行の役割は、そうした構造改革が進みやすいような環境を作ることにあるのだ。
http://diamond.jp/articles/-/142179

第四に、同じ加藤氏が9月21日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「米欧で進む金融政策正常化議論、置いてけぼりの日銀が打つべき手」を紹介しよう。
・債務上限に伴う米政府閉鎖リスクは、議会の“先送り策”によって当面回避された。米財務省の資金繰りは、少なくとも来年3月までは支障が生じないもようだ。確率はまだ高くないが、4月15日まで持ちこたえられれば、給与税が入ってくるため、夏場まで政府閉鎖懸念は再燃しない可能性も出てくる。
・債務上限問題が米国債市場を混乱させる恐れは当面なくなった。そのため、米連邦準備制度理事会(FRB)は9月19~20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)において、10月からのバランスシート縮小開始を決定すると思われる。
・FRBが保有する国債や住宅ローン担保証券(MBS)を減額していくと、基本的にはこれまで圧縮されていた金利のタームプレミアムやリスクプレミアムが元に戻っていく。それは長期金利の押し上げ要因となるが、今のところ市場は落ち着いている。 その理由としては、以下の3点などが考えられる。
 (1)ベン・バーナンキ前FRB議長がバランスシート拡大の段階的停止(テーパリング)を示唆してからすでに4年が経過しており、金融政策正常化に向けての“ガス抜き”が徐々に進んできた
 (2)すでに先行きのバランスシート縮小ペースのイメージをFRBは市場へ丁寧に伝えており、かつ当初はそのペースが遅い
 (3)最近の米国のインフレ率は弱めであり、短期金利(フェデラルファンド金利)の引き上げを含め、今はFRBが正常化策を急ぐ必要性がない 
・ただし、来年になって、バランスシート縮小ペースが徐々に速まり、そこにFRBが短期金利引き上げを再開できるようなインフレ率の上昇が加わると、今よりは長期金利に上昇圧力が生じるので、注意は必要と思われる。
・一方、欧州中央銀行(ECB)は10月の理事会で、金融政策正常化に向けて一歩駒を進めたがっている。ECBの出口政策は基本的にはFRB方式を踏襲したものになる。すなわち、最初にテーパリング(バランスシートの拡大を停止)、次に短期金利(現在マイナス金利)の引き上げを数度実施、その後、バランスシートを縮小、という手順になるだろう。
・しかし、景気のサイクルから推測すると、FRBもECBも正常化策の完了前に次のリセッション(景気後退局面)がやって来る可能性がある。つまり、今回の景気拡大局面では完全には出口に到達できず、数年後に金融緩和策に再び転じるのではないかと思われる。
・そのとき困ってしまうのは日本銀行だ。今の日銀は金融緩和策の全開状態。今年5月、バーナンキ氏も来日講演で指摘したように、追加緩和策の余地はほとんど残されていない。そこで米・欧の中央銀行が緩和策に転じると、円高を止めるすべはないことになる。
・また、中期国債がマイナス金利、10年国債の金利がゼロ%近辺というイールドカーブを日銀が今後も維持すると、2018年以降に経営状態が深刻化する地域金融機関が数多く現れる懸念がある。「日銀発の金融システム不安」という奇妙な事態が起こる恐れもある。
・来年4月8日以降、日銀の黒田東彦総裁が続投しようと、他の人物が引き継ごうと、日銀は2%のインフレ目標を撤回したがらないだろう。しかし、前述のような問題を避けるには、米・欧の中銀が正常化を進めている間に、日銀は要領よく柔軟に、金利水準の若干の引き上げを行うといった現実的な対応策を採るべきである。
http://diamond.jp/articles/-/142873

第一の記事で、 『野田総務相がアベノミクス批判 異次元緩和「空恐ろしい」』、というのは、さすが反主流派として入閣しただけある。ただ、彼女は元郵政族だけあって、日本郵政には「優しい」のは残念だ。
第二の記事で、 『水面下で路線修正に動く財務省と日銀』、 『国債の買い取りペースが鈍化 「出口戦略」の地ならしか』、などというのは少し安心出来る材料だ。 『黒田日銀総裁は失敗と分かりつつやり続けるしかないと達観している様子』、 『「期待」に働き掛ける政策だから目標を降ろせないというジレンマ』、 などは困ったものだ。
第三の記事で、 『手のひら返しのごとく懺悔するバーナンキ元FRB議長』、 『日銀の黒田東彦総裁は、その言葉を全て取り込んで見せたばかりか、はるかに上回る大胆さで「超金融緩和策」を実施してきた。にもかかわらず、バーナンキ元議長の言葉は、まるで手のひらを返すかのようなものだった』、バーナンキ元議長の講演を聞いていた黒田東彦総裁の顔を見てみたかった。まあ、ポーカーフェイスを決め込んでいたのだろうが・・・。 『政府と日銀を一つに見て大丈夫と訴える「統合政府」論』、の誤りを見事に指摘しているのは、正論だ。 『通貨の信認に無頓着な日銀の審議委員』、としてリフレ派の原田審議委員を批判しているがその通りだ。元BISのビル・ホワイト氏は、日本の「統合政府」の債務が短期化していることを近年、非常に警戒している。 日本のような経済大国が、前述の「悪魔のスパイラル」に陥り、政府債務のリストラクチャリング(国債返済の棚上げ)か、ハイパーインフレ?ションしか選択がなくなったら、「世界経済はすさまじい衝撃を受ける」と恐れており、同氏はそれゆえこれまでの日銀の緩和策は「無謀」だと批判しているのだ』、こんな事態になったら、安部や黒田が辞任して済むような話ではなくなる。日本は国際社会では、長きにわたって問題児扱いされることにならざるを得ないだろう。
第四の記事で、 『米・欧の中銀が正常化を進めている間に、日銀は要領よく柔軟に、金利水準の若干の引き上げを行うといった現実的な対応策を採るべきである』、との指摘はその通りだ。
タグ:米・欧の中銀が正常化を進めている間に、日銀は要領よく柔軟に、金利水準の若干の引き上げを行うといった現実的な対応策を採るべきである 日銀発の金融システム不安」という奇妙な事態が起こる恐れもある 今の日銀は金融緩和策の全開状態。今年5月、バーナンキ氏も来日講演で指摘したように、追加緩和策の余地はほとんど残されていない。そこで米・欧の中央銀行が緩和策に転じると、円高を止めるすべはないことになる 今回の景気拡大局面では完全には出口に到達できず、数年後に金融緩和策に再び転じるのではないかと思われる FRBもECBも正常化策の完了前に次のリセッション(景気後退局面)がやって来る可能性がある (ECB)は10月の理事会で、金融政策正常化に向けて一歩駒を進めたがっている 米連邦公開市場委員会(FOMC)において、10月からのバランスシート縮小開始を決定すると思われる 米欧で進む金融政策正常化議論、置いてけぼりの日銀が打つべき手 潜在成長率を少しでも引き上げるような地道な構造改革を、一歩一歩進めていくことにある。中央銀行の役割は、そうした構造改革が進みやすいような環境を作ることにあるのだ 悪魔のスパイラル」に陥れば世界経済はすさまじい衝撃 利払い費の増加で生まれた新たな赤字を賄うための国債を、日銀がまた購入して超過準備を増加させたら、それこそ「悪魔のスパイラル」が発生 短期金利を大幅に引き上げるだろう ヘッジファンドなどがその脆弱性を見抜き、猛烈な円売りを仕掛けたとしよう 金利上昇期には、利払い負担が急速に重くなるという“脆弱性”がそこに内在している 日銀が長期国債を買っても、それは日銀当座預金との“交換”であり、「統合政府」で考えれば借金は全く減っていない。しかも、「統合政府」の債務の平均残存期間は、現在よりも猛烈な勢いで短期化することになる 国債を永遠に保有させれば政府の債務は大幅に減る」は間違い 通貨の信認に無頓着な日銀の審議委員 今の日本は、劇的な経済規模の拡大がイメージできないし、急速な高齢化と現役世代の人口減少により、財政赤字は2020年代後半から本番を迎えることになる。 そのような国で中央銀行が債務超過になり、その損失を補うために政府が国債をさらに増発する必要に迫られるとしたら、それは無視できないリスクとなるだろう 日本が財政黒字で、健全な財政状態が今後も維持されそうなのであれば、一時的な中央銀行の赤字は「統合政府」的に見て問題とはならないといえる。しかしながら、日本の累積債務は先進国で最悪 、「『統合政府』として考えるなら、日銀が保有国債を無利子永久国債に交換すれば、政府の債務を事実上消し去ることができる 運用資産からの利息収入よりも、日銀当座預金への支払利息の方が大幅に上回る巨大な“逆ザヤ”が生じ 政府と日銀を一つに見て大丈夫と訴える「統合政府」論 “出口政策”時に日銀自身が巨額の「赤字決算」に陥るばかりか、「債務超過」になってしまうリスクが懸念 6回目となる目標達成時期の先送りを決めた 誤算続きだった日銀の金融緩和策 日本の「構造問題」に気づいたと語った にもかかわらず、バーナンキ元議長の言葉は、まるで手のひらを返すかのようなものだった。 日銀の黒田東彦総裁は、その言葉を全て取り込んで見せたばかりか、はるかに上回る大胆さで「超金融緩和策」を実施してきた 「私はよく分かっていなかった」 「私は楽観的過ぎた」 「私は以前の発言のいくつかのトーンを後悔している 日本銀行の本店で講演 手のひら返しのごとく懺悔するバーナンキ元FRB議長 日銀は日本経済に金をばらまく「打出の小槌」ではない 加藤 出 「期待」に働き掛ける政策だから目標を降ろせないというジレンマ かるた会 黒田日銀総裁は失敗と分かりつつやり続けるしかないと達観している様子 金融と財政が、もたれあいながらセットで“破綻”に近づいている状況 日銀による実質的な「財政ファイナンス」 緩和マネーが都市部の不動産やリート物件に流れこみ、一部は「バブル」の様相 株式市場も、日銀や公的年金による「買い」で下支えされ、値付けなどの機能がマヒし、市場からのシグナルが見えない状態が続いている 国債などの市場は、買い手がほぼ日銀という異常な状態 日本経済に「副作用」 緩和マネーで市場機能がマヒ 出口戦略を意識しながらの路線修正が始まった」と見る関係者もいる 長短金利操作(イールドカーブコントロール)」を導入したのも、「これ以上の緩和はしたくない」という意思表示 国債の買い取りペースが鈍化 「出口戦略」の地ならしか 官邸だって、これまでの人事はやり過ぎたと反省したんだろう 水面下で路線修正に動く財務省と日銀 財政と金融の同時破綻 「「異次元緩和」の出口を探す日銀がインフレ目標の旗を降ろせない理由 ダイヤモンド・オンライン 出口はどこかというと正直、空恐ろしい 野田総務相がアベノミクス批判 異次元緩和「空恐ろしい」 日刊ゲンダイ (その26)(野田総務相がアベノミクス批判 異次元緩和「空恐ろしい」、「異次元緩和」の出口を探す日銀がインフレ目標の旗を降ろせない理由、日銀は日本経済に金をばらまく「打出の小槌」ではない、米欧で進む金融政策正常化議論 置いてけぼりの日銀が打つべき手) 異次元緩和政策 日銀
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

トランプ大統領(その23)(「トランプは密約をしていた」 トランプ政権の最大のリスクが雲散霧消した、欧米で台頭する「白人至上主義」は「「(マイノリティとなった)白人の文化を尊重せよ」という多文化主義、白人至上主義、トランプ氏の奇策 歴史的な移民改革の扉開くか) [世界情勢]

トランプ大統領については、8月26日に取上げた。今日は、北朝鮮との関係以外の問題について、(その23)(「トランプは密約をしていた」 トランプ政権の最大のリスクが雲散霧消した、白人至上主義、欧米で台頭する「白人至上主義」は「「(マイノリティとなった)白人の文化を尊重せよ」という多文化主義、白人至上主義、トランプ氏の奇策 歴史的な移民改革の扉開くか) を取上げよう。

先ずは、投資銀行家のぐっちーさんが8月26日付け東洋経済オンラインに寄稿した「ぐっちーさん「トランプは密約をしていた」 トランプ政権の最大のリスクが雲散霧消した」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・みなさま、お盆はいかがお過ごしでしたか?日本は相変わらず平和でしたが、アメリカはもうグチャグチャになっておりました。
▽「トランプ政権はアメリカ・ファースト」は本当か
・8月12日、バージニア州・シャーロッツビルでの白人至上主義と反対派の衝突に対し、8月15日にドナルド・トランプ大統領は「双方に非がある」と発言しました。メディアのみならず、共和党内部からも非難轟々となり、これだけでも大騒ぎだったのですが、極めつけは18日になんと、スティーブ・バノン首席戦略官・上級顧問が辞任(事実上の解任)してしまったわけです。
・これまでトランプ大統領を思想的に支えてきた人物で、これでいわゆるトランプ人脈としてはマイケル・フリン(更迭時は大統領補佐官、以下同)、ショーン・スパイサー(報道官)、ラインス・プリーバス(大統領首席補佐官)、アンソニー・スカラムッチ(広報部長)といった「アメリカ・ファースト」を謳ってきた連中がいたわけですが、彼らホワイトハウスの要職が次々に解雇されたうえに、バノンとなるともう、これはトランプ大統領がホワイトハウスのマネジメントができていないと言われても仕方ありません。
・日本のメディアはトランプ政権の「アメリカ・ファースト」こそがトランプ政策の中核だ、というような報道の仕方をしますが、実際はそうでもない。この「トランプ人脈」と、いわゆる「グローバリスト」(伝統的な共和党の考え方に近い人脈)、そして「MMT」(ジェームズ・マディス国防長官、ハーバード・マクマスター大統領補佐官、レックス・ティラーソン国務長官)と呼ばれる軍人派がそれぞれぶつかりあい、全く収拾がつかなかった、というのが真相です。
・現在のところ、実際には影の将軍として権力を示しつつあるジョン・ケリーが首席補佐官というポストに入ってきたときから、軍人による影響力がかなり強くなりつつあり、彼自身、どうも自身が首席補佐官で入ってきたときにその引き換えにバノンを切る、というような密約があったのではないか、と言われているようです。
▽「ケリー将軍」の影響力はかなり大きそうだ
・ケリー自身は海兵隊大将で、輝かしい軍歴を誇り、あらゆるレベルで尊敬を集める人物です(アメリカでマリーン Marine というのは一種独特の響きがあり、出身者自体、国民から大変な尊敬を集めるのですが、その大将となればすさまじい地位があるわけです。「NCIS」などというマリーンを取り扱ったテレビドラマ(NCISは海軍犯罪捜査局のこと)が全米ベストセラーになっているくらいです)。
・実際ケリーは過去、トランプ大統領からの首席補佐官就任の依頼を何度も断っており、なぜ最終的に受けたか、と言えば、やはりアメリカという国のために自分は忠誠を尽くす、というマリーンとしてのプライドがあったことと、このバノン解任という条件をトランプ大統領がのんだ、と言う話には十分に説得力があります。
・当然、ケリーは軍人つながりであるいわゆるMMT(マクマスター、マティス、ティラーソン)に対しては強烈なシンパシーを持っていることは間違いなく、特にマクマスターとは長年の盟友関係にあり、最近特に激しく激突していたバノンとマクマスターの関係を見れば、どちらかを解任する、というのは実は自然な流れでした。
・その中で、ケリーが首席補佐官として入ってきて、当然盟友のマクマスターと手を組む、というのも「十分あり」なわけ、です。一時期マクマスター解任、と言うような話が出てきて、そうはいっても幾らなんでもバノンは切れないだろう、と大多数のメディアは考えたんだろうと思いますが、こうしてバノンを切ったところを見ると、「ケリー将軍」の影響力はかなり大きいと見たほうが良さそうです。
・ということで、全く終わる気配のない「トランプ劇場」ですが、結局はMMT、及びグローバリストと呼ばれるグループが主導権を握りつつあり、いわゆる「アメリカ・ファースト」を叫んでいたトランプ人脈と言われる人たちは「切腹」させられた感があります。 
・昨年トランプ政権に対するコメントに書いた通り、どうも西郷隆盛的な役割を果たし(不満分子をすべて連れて戦争をしかけ、城山で全員切腹してしまい、結果的に新政府に対する不満分子が一掃された)、結局は共和党の伝統的政治手法(軍人、グローバリスト、多国籍企業が中心)に戻ってくる、という当初の予想が当たりそうな気がします。それにしてもアメリカ・ファーストという明らかに共和党にはなじまない政策ではあったのですが、トランプ人脈の人たちがこうして次から次と切られるとなると、トランプ大統領の求心力が落ちるのは当然です。
・最近バノンとマクマスターが一番対立していたのはアフガニスタン問題です。「撤退するべきだ」とするバノン・トランプに対し、「増派するべき」としていたのがマクマスター。その線上にマクマスター辞任という話が出てきたのですが、ケリーの後押しで結局バノンが解任、そして21日にはトランプ大統領自身がアフガニスタン駐留の継続を発表しました。結果としてこれで、マクマスター・マティスのいわゆる軍人ラインにトランプ大統領が乗ったことが明らかになりました。
▽トランプ政権は安定する可能性すらある
・ここから先は、考え方は二つあります。 トランプ人脈はバラバラになったものの、まだ「トランプファミリー」(長女のイバンカ・トランプ及び、その配偶者であるジャレッド・クシュナー)は健在です。
・一方、力を増した軍人、グローバリスト、大企業などの従来からの共和党支持者が力をもつなら、議会で主導を握っているわけですから、政権としてはむしろ安定化する可能性すらあります。
・リスクは先日のシャーロッツビルでのトランプの発言で、共和党内の影響力の強い、ユダヤ系議員がどうでるか、という点に尽きると思います。一時、ゲーリー・コーン国家経済会議委員長兼経済担当大統領補佐官の辞任もうわさされましたが、彼はユダヤ系なので「人種差別に関する発言には耐えられない」と言った、とも伝えられました。また、人種差別発言に対しては力を持ちつつある軍人系の人達からも反対の声が出てきており、ここで彼らが一枚岩になる可能性は十分で、反トランプの機運が一気に盛り上がる可能性も一方ではあります。
・マーケットが妙に静かなのは、どうもこの前者のシナリオを見ているようで、であればウォールストリートにとっては実に居心地がいい政権が出来上がることになります。
・貿易問題も同様で、最も強硬だったバノン自身がいなくなってしまい、伝統的共和党志向に戻ってくる、ということになれば、それほど強硬なこと(スーパー301条の適用など)を言う理由はなくなってきます。ああいう強硬な貿易政策はすべてアメリカ・ファーストの人々が主張していたことですから、誰もいなくなってしまい、親分までいなくなってしまうなら、もう共和党としては無理してやる必要のない政策と言えるでしょう。そもそもTPP(環太平洋経済連携協定)に賛成していたのは共和党なんですからね、どうするんでしょうか。
・いずれにせよ、マーケットはこれらのことから「安定」と読み取っているのが今の姿といえるでしょう。マクロ経済統計も非の打ちどころがないくらい良いわけですし、株価も絶好調。裏付けになる企業決算もIT業界を中心にまさに「快進撃」を続けており、一番のリスクである「トランプがなんか変なことをやるかもしれない」というリスクがバノンと共に霧消した今、マーケットが混乱する理由はむしろなくなった、というのが正解でしょう。しばらくシートベルトサインは消したまま飛行を続けられそうです。
http://toyokeizai.net/articles/-/186028

次に、9月13日付けNHK時論公論「白人至上主義」(別府 正一郎 解説委員)を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽始めに
・建国以来、人種差別撤廃の歩みを進めてきたアメリカで、白人が最も優れた人種だと主張する白人至上主義団体がかつてないほど公然と活動するようになっています。各地で、これに抗議するデモ隊と衝突し、8月には死者が出るなど対立はエスカレートする一方です。自由や平等というアメリカが掲げる理想はどうなっているのか。アメリカ社会で先鋭化する対立とその波紋について解説します。
▽解説のポイント
・①まず、「白人至上主義団体の実態」を見ます。 ②次に、「アメリカ社会に広がる衝撃」を分析します。 ③最後に、この問題が「世界に与える影響」について考えます。
▽バージニア州での衝突
・先月(8月)12日、アメリカ南部のバージニア州のシャーロッツビルに全米の注目が集まりました。 各地から、白人至上主義などを掲げるグループのメンバー数百人が集結し、これに抗議するグループと殴りあうなどして15人がけがをしました。また、抗議のデモ隊に、車が突っ込んで女性1人が死亡し、19人がけがをしました。
▽白人至上主義団体とは
・白人至上主義団体には様々なグループがあります。
 +南北戦争後にできたKKK、クー・クラックス・クラン。黒人へのリンチ事件などを繰り返した秘密結社で、白い三角形の頭巾で知られています。
 +また、ネオナチといわれるグループ。
 +さらに、最近目立つようになっている「オルト・ライト」。オルトは「代替」を意味する「オールタナティブ」という言葉を短くしたもので、「もうひとつの右翼」と呼ばれています。その名の通り、伝統的な右翼とは一線を画し、若い白人男性がネットでつながっているようなグループです。「白人は神に選ばれた人種だ」などという優越思想を掲げている点ではほかのグループと共通しますが、アメリカの人口構成で30年後には白人が半分以下に転じると予測されていることへの危機感を前面に出し、白人こそが、差別是正措置によって損をしていると被害者意識を丸出しにしているのが特徴です。
・様々な人種が暮らすアメリカでは、いずれもきわめて少数の過激な団体と考えられていましたが、シャーロッツビルに大挙したのです。専門家やメディアは、「こうした人種差別グループは存在していたが、ここまで公然と活動するようなことはかつてなかった」と驚きをもって受け止めています。
▽その規模と拡大の背景
・アメリカのNPO「南部貧困法律センター」では、特定の人種や集団を攻撃する団体を「ヘイト・グループ」と呼んで、全米で917団体あることが確認されたとしています。これは過去の調査と比べても、多い方だということです。しかも、実態を把握しにくい、ネット空間だけで活動するグループも多く、実際には、さらに多いと分析しています。
・拡大の背景には、トランプ大統領の誕生があると指摘されています。オルト・ライト運動の中心人物にしても、「本人が望もうが望むまいが、トランプ大統領は仲間だ」と話しています。グローバル化の影響で苦境に立たされる白人貧困層の境遇を理解する人物を当選させることが出来たと考え、勢いづいているのです。
▽アメリカ社会に広がる衝撃
・では、なぜ、白人至上主義団体とその活動が、アメリカ社会に衝撃を広げているのでしょうか? アメリカは、法の下の平等を掲げながらも、アフリカから連れて来られた黒人奴隷制度が歴然と存在し、平等は白人だけのものという大きな矛盾を抱えてスタートした国です。しかし、1860年代の南北戦争で、奴隷制度の存続を主張した南部連合が敗北し、奴隷解放が実現しました。また、1950年代、60年代の公民権運動では、差別の撤廃が進みました。問題があるからこそ、自由や平等という理想を追い求めるのがアメリカという国のあるべき姿なのだ、と考えられているなかでは、白人至上主義は、国の理念への挑戦と受け止められるのです。
・こうした中で、バージニア州で白人至上主義団体が集結したのは、南北戦争で南軍を率いたリー将軍の銅像を公園から撤去する計画に反対するためでした。 リー将軍や南軍兵士の銅像などは、南部を中心に、1500件あまりが確認されています。おととし、南部サウスカロライナ州の教会で、人種差別的な考えを持ち、南軍の旗を好んでいた白人の男が、教会で黒人の男女9人を殺害する事件を起こしたことをきっかけに、こうした銅像などを撤去する動きが出ています。
・しかし、白人至上主義を掲げる団体は、銅像などは人種差別の象徴ではなく、あくまで南部の誇りを示す歴史的な遺産だと主張しています。
▽問題を拡大させるトランプ大統領の発言
・トランプ大統領の発言も衝撃を広げました。 衝突を受けて、トランプ大統領は、当初、白人至上主義団体を明確に非難したなかったものの、批判が強まると、衝突の2日後にはKKKなどを名指しで非難しました。しかし、その翌日の8月15日、「一方のグループは悪かったが、もう一方のグループも非常に暴力的だった。双方に責任がある」と述べました。
・白人至上主義が国の理念にも反するものだとされる中で、相対的に論じたことで擁護したとの印象を与え、差別は絶対に許されないものだという規範が崩れているとして、強い批判を招きました。
▽先鋭化する対立
・ただ、白人至上主義団体に対抗する勢力の中にも過激な主張を掲げる団体が一部で目立つようになっているのも事実です。 そのひとつが、「ファシズムへの反対」を意味する「アンチ・ファシズム」を短くした「アンチ・ファ」と呼ばれる極左集団です。その実態は詳しくは知られていませんが、1月のトランプ大統領の就任式の日に、首都ワシントンで暴動を起こしたことで注目されました。
・また、「黒人分離主義」などの過激な思想を掲げる黒人の団体も急速に増えています。 黒人が白人と結婚することに反対するなど、ほかの人種との共存を否定しています。 アメリカ社会での対立はいっそう、先鋭化しています。「パンドラの箱」が開いてしまったかのようだ、と表現する専門家もいます。
▽世界への波紋
・最後に、この問題の世界への影響について考えてみたいと思います。 国連の人種差別撤廃委員会は、バージニア州での衝突後、トランプ大統領を念頭に、「アメリカ政府の最も高い地位にいる高官が、人種差別に基づく発言や事件が広がっていることについて、明確に拒絶し、非難していないことに困惑している」とした上で、「そうした対応が、世界のほかの国や地域にとっても、悪しき前例になるのではないかと深く懸念する」との声明を発表しました。
・様々な人種が暮らすアメリカは、様々な民族や宗教から成る世界の縮図のような国でもあります。それだけに、アメリカで、人種差別をあからさまに表現する風潮が広がることで暴力や混乱が生じれば、世界のほかの国への悪影響が懸念されているのです。
・公民権運動を率いたキング牧師は、徹底した非暴力主義を貫きながら、法や制度に風穴を開けて差別の撤廃を進めると共に、人種間の和解も目指してきました。 時代背景は違えども、当時も経済格差は深刻な問題でした。アメリカが、世界に範を示すことが出来るのは、自由や平等それに共存という理想を追い求めているからこそだということを、今一度、思い起こしてもらいたいと思います。
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/279641.html

第三に、作家の橘玲氏が9月19日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「橘玲の世界投資見聞録:欧米で台頭する「白人至上主義」は「「(マイノリティとなった)白人の文化を尊重せよ」という多文化主義」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・南北戦争で南軍の英雄だったロバート・リー将軍の銅像を市内の公園から撤去しようとする計画に白人の極右団体などが反発し、アメリカ南部のバージニア州シャーロッツビルに集結した際に、極右の若者が反対派に車で突っ込み死者1名と多数の負傷者が出た。この事件に対し、トランプ大統領が「一方の集団は悪かったが、もう一方の集団もとても暴力的だった」などと“喧嘩両成敗”的な発言をしたことで、「人種差別」とのはげしい非難にさらされることになった。
・シャーロッツビルに集まったような「極右」の白人たちは、アメリカのエリートから「レイシスト」のレッテルを貼られて毛嫌いされている。だが『ニューヨーク・タイムズ』のコラムニスト、デイヴィッド・ブルックスは、彼らを「保守的な白人アイデンティティ主義者」と呼び、人種差別と共通する部分もあるが、両者は同じものではないと述べている。
・米国公共宗教研究所の調査では、共和党員の約48%が米国のキリスト教徒が多くの差別を受けていると思い、約43%は白人が多く差別を受けていると考えているのだという。この調査を受けてブルックスはいう。 「人種差別というのは、ほかの人が自分より劣ると感じることだ。白人アイデンティティ主義は、自分が虐げられていると思うことなのだ」(朝日新聞2017年9月8日付朝刊「コラムニストの眼」)。
・「白人アイデンティティ主義」は人種主義の一種ではあるものの、それを一概に「人種差別」と決めつけることはできない。彼らは、「自分が白人であるということ以外に、誇るもの(アイデンティティ)のないひとたち」なのだ。
▽「白人は差別されている」
・朝日新聞8月29日付朝刊の「再びうごめく白人至上主義 デモ衝突で犠牲者 米に深い傷」は、今年4月にアパラチア山脈の町、ケンタッキー州パイクビルで行なわれた白人至上主義団体の集会を金成隆一記者が取材し、シャーロッツビルの事件を受けて掲載したものだ。
・パイクビルは人口7000人ほどで、「住人の98%超が欧州白人」「子どもの3人に1人、高齢者の5人に1人が貧困層」「トランプ氏の得票が8割を超えた」という、典型的な「貧しい白人たち」の町だ。ここで白人至上主義の団体が集会を開くのは、現状に不満を抱える白人労働者を勧誘するためだ。
・彼らは腰に銃やナイフを携行し、ライフル銃を担ぐ者もいる(アメリカは憲法で国民が武装する権利が認められている)。KKK(クー・クラックス・クラン)や、ナチスと似た「国家社会主義」「神の兵士」「戦うキリスト教徒」を名乗る団体もいる。その異様な姿は、まさに「白人至上主義」そのものだ。
・ところが記者の質問に対して、団体幹部は自分たちの主張をこう説明する。 「米国で白人は優遇されてきたと言われるが、この一帯を車で走れば、違うとわかる。彼らの声は代弁されていない。エリートに見捨てられた白人だ」 「白人やユダヤ人のエリートに虐げられているのは(黒人やヒスパニックら)人種的な少数派と思い込む人が多いが、この産炭地では白人も被害を受けている。帝国主義時代の植民地のようだ」 ここからわかるのは、ブルックスが指摘するように、彼らが「白人は差別されている」と考えていることだ。
・町での示威行動のあと、「白人至上主義」団体は山奥の私有地での集会に移動した。金成記者がこの集会を取材した場面はきわめて興味深いので、その部分を引用しよう。 会場は白人ばかり。記者は好奇の目にさらされたが、日本から来たと自己紹介すると彼らの態度が変わった。敬礼する者もいる。
・KKKの名刺を差し出してきた若者が言った。「私は(戦前の)帝国主義時代の日本を尊敬している。みんなも同じだ。どの民族にも固有の文化があり、尊重されるべきだ。日本は模範だ」 
・白人の優越を信じているのかと質問すると、口々に否定した。「日本人にIQテストで勝てないのは自明だ」。一人が冗談っぽく答えると、隣の男性がまじめな顔で続けた。「私の本業は自動車の修理工だが、日本車の方が米国車より優秀だ。白人の方が優れているというつもりはない。ただ、それぞれの民族が固有の土地を持つべきだと言っているだけだ。
・「白人の優越」を否定し、「日本は模範だ」「日本車の方が米国車より優秀だ」という彼らは、はたして「白人至上主義」なのだろうか。 このやりとりでわかるのは、そもそも彼らは自分たちが「人種差別」をしているとは思っていないことだ。そんな彼らに「レイシスト」のレッテルを貼って批判しても、話がかみ合わないのは当たり前なのだ。
▽「白人至上主義」は「(マイノリティとなった)白人の文化を尊重せよ」という多文化主義
・KKの若者は日本人の記者に「日本は模範だ」といったが、同じように、日本のような国を目指している「極右」の政治家がいる。フランスの国民戦線(FN)党首マリーヌ・ルペンだ。 風刺雑誌『シャルリー・エブド』襲撃事件のあと、朝日新聞のインタビューに応じたマリーヌは、「(両親が外国人でもフランスで生まれた子どもは国籍を付与される)出生地主義の国籍法を改定し、二重国籍を廃止すべきだとしたうえで、「めざすは(どちらも実現している)日本のような制度」と明言してる。EU加入とユーロ導入で通貨主権を失ったことを嘆き、「日本はすばらしい。フランスが失った通貨政策も維持している。日本は愛国経済に基づいたモデルを示しています」とも述べている。さらに、国民戦線の新世代を代表する政治家(仏北部エナンボモン副市長)は、「今は安倍晋三氏の自民党に近い政策の党だ」と自分たちを紹介している(2015年1月27日付朝刊「マリーヌ・ルペン「国民戦線」党首インタビュー」/インタビュアー国末憲人)。
・大西洋をはさんで同じようなイデオロギーが台頭しているのは偶然ではない。それは、「右翼の多文化主義(マルチカリチュラリズム)への反転」ともいうべき奇妙な事態だ。 マリーヌの父親であるジャン=マリー・ルペンが党首だった1980年代に、国民戦線は白人至上主義を離脱し、多文化主義に転換したとされる。
・フランスのオールドリベラル(共和主義者)は、宗教は私的なもので、公的な場では人種や宗教に関係なくだれもが「フランス人」として振る舞わなければならないとして、ムスリムの女子生徒が学校でヴェールを着用すること法で禁じている。それに対してイスラーム主義団体は、自分たちの文化や伝統・宗教を尊重することを求めて「同化政策」を批判している。
・意外なことに、国民戦線はイスラーム急進派の主張に賛同し、ムスリム女性がヴェールをかぶる権利を認めるし、イスラーム法(シャリーア)も尊重する。すべてのひとが、自分にもっともふさわしい「文化」のもとで暮らす権利をもっているとするからだ。それを世俗的で無味乾燥な社会に変えようとするエリートたちの「グローバル資本主義」こそが、彼らの共通の敵なのだ。
・フランスの大統領選では、ルペンと同じく、左翼党のジャン=リュック・メランションがEUからの離脱を唱えて、第1回投票で20%近い票を集めた。米大統領選でのトランプとバーニー・サンダースの関係も同じで、「極右」と「極左」は反グローバリズム、反エリート主義で通底しているのだ。
・ではどこかちがうかというと、左派の多文化主義者はフランス社会のなかで、すべてのひとが自分たちの文化・民族・宗教をアイデンティティとして生きる権利をもっていると主張するのに対して、右派の多文化主義者は、文化や伝統・宗教の異なる集団が共生することは困難なので、「フランス人はフランスで、ムスリム移民はイスラーム国家で」それぞれの幸福を追求すればいい、と主張することだ。
・フランスの右派知識人は「人種主義」を捨て、いまやそれぞれの文化のちがいを尊重するよう求めている。ただし彼らの認識では、北アフリカからの移民の流入と同化政策によって“マイノリティ”として危機にさらされているのはフランス人(白人)であり、だからこそフランス的な共同体を守らなければならない。なぜならフランス人は、そこでしか幸福になれないのだから(中野裕二『フランス国家とマイノリティ』国際書院)。
・すぐにわかるように、フランスの右派知識人の主張は、アメリカのトランプ支持者とまったく同じだ。「白人至上主義」というのは、「(マイノリティとなった)白人の文化を尊重せよ」という多文化主義のことなのだ。
▽ホワイト・ワーキング・クラスの死亡率が増加している理由
・2002年にジャン=マリー・ルペンが大統領選の決選投票に残ったことにフランスのリベラルな知識人は驚愕し、はじめて「極右」の思想と真剣に向き合うことなった。それから15年遅れて、いまではアメリカのリベラルな知識人が、「なぜ自分たちの国の大統領がドナルド・トランプなのか?」を自問している。
・トランプを支持する白人労働者階級は、アメリカでは、「White Trash(ホワイトトラッシュ/白人のゴミ)」として蔑まれている。だが彼らに「人種差別」「性差別」のレッテルを貼るだけでは、問題はなにひとつ解決しないと考えるリベラルが現われた。いま必要なのは、彼らを馬鹿にしたり、茶化したりすることではなく、理解することなのだ。
・カリフォルニア大学法科大学院で労働法を講じるジョーン・C・ウィリアムズの『アメリカを動かす「ホワイト・ワーキング・クラス」という人々』は、そうした試みのひとつだ。 ウィリアムズはこの本のなかで、「ワーキング・クラスとは、どんな人々なのか?」「なぜ、ワーキング・クラスは大学に行こうとしないのか?」「ワーキング・クラスは人種差別主義者なのか?」から、「なぜ、民主党は共和党に比べて、ワーキング・クラスの扱いが下手なのか?」まで、さまざまな疑問に誠実にこたえようとしている。
・すでに繰り返し指摘されているように、アメリカでは「階級」間の経済格差の拡大が顕著で、ホワイト・ワーキング・クラスの生活は苦しくなっている。彼らの家計所得は、第二次大戦後の30年間で2倍になったが、それ以降はほとんど増えていない。1970年には、貧困率10%の地区に暮らす白人の子どもは全体の25%に過ぎなかったが、2000年には40%に達した。
・だがもっとも象徴的なのは、ホワイト・ワーキング・クラスの死亡率が増加していることだ。アメリカでも世界でも平均寿命が延びつづけているというのに、彼らの平均寿命は短くなっているのだ。 プリンストン大学のアン・ケース教授とアンガス・ディートン教授は、白人の低学歴層で平均寿命が短くなっている主な原因はドラッグ、アルコール、自殺だとして、これを「絶望死」と名づけた。
・2人によれば、25~29歳の白人の死亡率は2000年以降、年率約2%のペースで上昇しているが、他の先進国では、この年代の死亡率はほぼ同じペースで低下している。50~54歳ではこの傾向がさらに顕著で、米国における「絶望死」は年5%のペースで増加しているという。
・誰が「絶望死」しているのかも、データから明らかだ。アメリカでは、高卒以下のひとびとの死亡率は、あらゆる年代で全国平均の少なくとも2倍以上のペースで上昇しているのだ。 アメリカの裕福な白人は、貧困層、有色人種、性的少数者(マイノリティ)に同情する一方で、ホワイト・ワーキング・クラスを馬鹿にし、無視してきた。だが気づいてみれば、彼らこそがアメリカ社会でもっとも不幸で、もっとも苦しんでいるひとびとになっていたのだ。
・だがウィリアムズは、ホワイト・ワーキング・クラスの苦境を強調して、彼らを「弱者」として扱うのは逆効果だという。 ウィリアムズのリベラルな同僚は、「私たちには彼らを助ける道徳的・倫理的義務がある」と述べた。だがこれは、トランプ支持者を激怒させるだけだろう。
▽ホワイト・ワーキング・クラスにとっての幸福は円満な家庭を築くこと
・トランプを支持するホワイト・ワーキング・クラスをひと言でいうならば、「アメリカの伝統に根づいた“善きひとびと”」だとウィリアムズはいう。 彼らは敬虔なキリスト教徒で、教会のつながりを大切にする。子どもに高等教育を受けさせないかもしれないが(彼らはそもそも「エリート」を信用しない)、職業人として自立し、自分と家族の生活を支えるよう強く促す。
・彼らの人生の目標は、大富豪になることでもなければ、仕事で「自己実現」することでもない。ホワイト・ワーキング・クラスにとっての幸福とは、円満な家庭を築くことだ。 学歴もなければ特別な技能や才能ももたない彼らは「アメリカンドリーム」から排除されているが、そのこと自体を不満に思っているわけではない。幸福な家庭生活を通じてアメリカの伝統に結びつくことで、「道徳的成功」を主張できるのだから。
・ホワイト・ワーキング・クラスの怒りがスーパーリッチではなく、有色人種の貧困層に向かうのは、彼らが「アメリカの伝統」をないがしろにし、家庭を顧みずに税金でのうのうと暮らしている、と思っているからだ。 たとえば、一日じゅう家にいる貧困層の既婚の母親は、中間層の既婚の母親の2倍以上いる(貧困層は60%、中間層は23%)。フルタイムで働くワーキング・クラスの母親は60%近くいるが、貧困層の母親は42%しかいない。託児所に子供を預けている世帯のうち、貧困層は30%の世帯が助成を受けているが、ワーキング・クラスはほとんどの世帯が助成を受けていない(3%程度)。
・これはすべて事実だが、詳細を調べると事情はすこし異なる。 貧困層に対する育児助成は散発的で、涙が出るほど少ない(1時間につき2ドルという場合もある)。貧困層の母親が家にいるのは、最低賃金があまりに低いために働くとかえって損をするからだ。さらに、貧困層の男性がフルタイムの仕事をなかなか見つけられないのは、パートタイムにすれば雇用主が医療保険を支払わずにすむからなのだ。
・問題はアメリカの社会保障制度が破綻し、機能不全を起こしていることにあるが、ホワイト・ワーキング・クラスは「システム」に責任を負わせることをたんなる言い訳として嫌う。たとえどのような逆境でも、努力によって切り開くことができるはずだ。それをやろうとしないのは、「怠惰」以外のなにものでもないのだ。
・そのためアメリカでは、失業者給付や障害者給付は「これまでの(危険な)労働の対価」と見なされるが、生活保護のような所得制限のある給付を受ける者は「怠け者」の烙印を押され、バッシングの標的にされる。これは日本のネット上で頻繁に炎上する「ナマポ(生活保護)」バッシングと同じ構図だ。
・だが皮肉にも、彼ら誇り高きホワイト・ワーキング・クラスは、いまや仕事を失い、貧困層に落ちつつある。  そのときヒラリー(民主党の伝統的リベラル)は、「困っているならお金をあげましょう」と提案し、トランプは「アメリカに製造業を復活させ、君たちの誇りを取り戻す」と約束した。実現可能性がどうあれ、ホワイト・ワーキング・クラスがどちらに投票するかは自明だろう。
・そんな彼らに対して、エリートの白人リベラルはどのような態度をとるべきだろうか。 ウィリアムズの指摘で重要なのは、「恵まれた白人は、恵まれない白人に人種差別の責任を転嫁することで、人種差別から距離を置こうとしている」というものだ。白人のリベラルが同じ白人に「レイシスト」のレッテルを貼ってバッシングするのは、自らの「内なる人種差別」を免責するお手軽な方法なのだ。
・ウィリアムズの提案は、そうした不愉快な事実から目を背けることなく、またホワイト・ワーキング・クラスを「貧しくかわいそうなひとたち」と同情するのでもなく、ともに理解できるように自分たち(白人エリート)が変わるべきだ、というものだ。 これはリベラルとして、とても良心的な立場だと思う。もっとも、その誠実さが受け入れられるかどうかはかなりこころもとないが。
http://diamond.jp/articles/-/142244

第四に、9月15日付けロイターがみずほ総合研究所欧米調査部長の安井明彦氏へのインタビューを掲載した「オピニオン:トランプ氏の奇策、歴史的な移民改革の扉開くか=安井明彦氏」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・野党・民主党案の事実上の丸のみとなった9月初旬の米財政合意は、既存政治への挑戦を掲げつつも、主義主張の面では民主党との共通点が多いトランプ大統領の特色をあらためて際立たせたと、みずほ総合研究所の安井明彦・欧米調査部長は語る。
・ただし、ディール重視であるがゆえに、今後も民主党と連携を模索するとは限らず、10月中旬にも行われる予算関連決議で早々に袂(たもと)を分かつ可能性もあるとみる。逆に歩み寄りを続ける場合、移民問題を巡る歴史的な「ビッグディール」の実現が期待される一方で、与党・共和党の分裂加速もあり得ると指摘する。  同氏の見解は以下の通り。
▽トランプ大統領の原点回帰
・連邦政府債務上限の3カ月適用停止などを柱とする9月初旬の米財政合意は、民主党案のほぼ丸のみとなった。この電撃合意は主に2つの点で、選挙当初に想定されていたトランプ大統領のイメージをよみがえらせたと思う。 第1に、主義主張の面では民主党に近い部分が多い点だ。共和党は「小さな政府」を標榜していることで知られるが、トランプ氏は選挙当時、民主党的な財政拡大政策への好意を示していた。同氏が強調している「アメリカ第一」の保護主義にしても、本来は民主党の得意とするテーマだ。実際、民主党の主力議員たちは現在、トランプ大統領の保護主義について「手ぬるい」と批判している。
・第2に、既存政治への挑戦だ。選挙時にトランプ氏が訴えていたことは「ワシントンを変える」とのスローガンだ。大統領就任後、移民制度改革や医療保険制度改革法(オバマケア)改廃などの議論のかじ取りを共和党のリーダーシップに任せてきたが、うまくいかないので、民主党に歩み寄ったのが真相かもしれないが、少なくとも歴代の共和党大統領のように、自党の利益やメンツを最優先しない点は明確に示した。
・実は、この点では、共和党の主張を取捨選択して取り入れたクリントン大統領(民主党)に似ている。その対議会戦術は、共和・民主の政策スタンスを両端に置いて、その2点を結んだ基線の中央の真上にホワイトハウスの主張を位置付けたことから、「三角測量」と呼ばれた。トランプ大統領がそこまで戦略的に動いているとは思えないが、全く異質の共和党大統領であることは間違いない。
▽最大の論点は移民問題
・このなると、興味深いのが、米国民の最大の関心事である移民問題で、果たして民主党とのビッグディールもあり得るのかという点だ。  周知の通り、トランプ大統領は、オバマ民主党政権下の2012年に大統領令で導入されたDACA(幼少時に親とともに不法入国した若者の在留資格を認める制度)について、法的根拠を欠くとして、半年後の来年3月末までに議会が立法措置を講じなれば廃止する方針を示している。寛容な移民政策を党是とする民主党は廃止に強く反発しているが、実はトランプ大統領自身も、法的裏付けを条件に、DACA存続には含みを持たせてきた。トランプ大統領の選挙当時の公約であり、こだわりも強い国境警備の強化と引き替えに、民主党とのディールが模索されている。
・トランプ大統領は、財政協議が決着した直後に、物理的な「国境の壁」の建設にはこだわらず、これ以上の不法移民の入国に対する強力な取り締まりと引き換えにDACAの存続を考慮する方向で、早々に民主党指導部との合意を取り付けた。共和党内には異論も強いスタンスだが、財政協議と同様、トランプ大統領が素早く動いた格好だ。もしもトランプ大統領が本当に物理的な「国境の壁」建設ではなく、水際での取り締まり強化で矛先を収めるならば、すでに入国済みの移民に対しては寛容な政策を保持する一方、これから不法入国を試みる他国民に対しては厳しい措置を講じるというアメとムチの内容で、民主党と折り合う可能性はある。
・こうした包括的かつ立法措置を伴う移民制度改革は、ブッシュ共和党政権もオバマ民主党政権も標榜したが成し遂げられなかったことだ。仮にこのビッグディールが実現すれば、トランプ大統領にとっては文字通り最大のレガシー(歴史的な遺産)となり得る。  野党・民主党案の事実上の丸のみとなった9月初旬の米財政合意は、既存政治への挑戦を掲げつつも、主義主張の面では民主党との共通点が多いトランプ大統領の特色をあらためて際立たせたと、みずほ総合研究所の安井明彦・欧米調査部長は語る。
▽二大政党政治が変貌する可能性
・しかし、前述したように、肝心要のトランプ大統領にそこまでの一貫した対議会戦術があるのかは不透明だ。トランプ政権のもう1つの特徴を挙げれば、ハファザード(Haphazard)、すなわち行き当たりばったりの政策運営であり、前述した財政合意も、単にまとまりを欠く共和党に対していら立ちを募らせ、ディールを急いだだけの可能性もある。
・意外と、その真意は早い段階で分かるかもしれない。10月中旬にも行われる予算決議がリトマス試験紙となりそうだ。  やや技術的な話になるが、米上院本会議の法案審議では、「フィリバスター」と呼ばれる議事進行妨害が認められており、これを防ぐには60票の賛成票が必要になる。つまり、法案成立の実質的ハードルは60票であり、共和党の議席(52議席)では足りない。
・しかし、予算決議の審議プロセスでは、1)税制、2)債務上限、3)社会保障などの義務的経費の3項目に限って、フィリバスターを回避できる「財政調整法」の適用が認められている。共和党側が望めば、単純過半数(50議席とペンス副大統領の1票)で法案を通過させることが可能になる(財政調整法の適用決定も単純過半数で可能)。
・ちなみに、次回の予算決議では、税制についてのみ財政調整法の適用を決める予定だが、仮にここに債務上限も加えることになれば、今後の債務上限議論から民主党を外すことを宣言するに等しい。反発は必定で、移民問題でのビッグディールは遠のきそうだ。
・逆に債務上限が次回の予算決議に追記されなければ、トランプ政権と民主党との連携は今後も続く可能性が残る。その場合、トランプ政権が選びそうなシナリオは、税制改革については共和党主導で進めさせ、債務上限問題や全体的な予算づくりでは民主党に歩み寄りつつ、移民問題でのビッグディールを狙うことではないか。 仮にそうなれば、移民政策について穏健派と保守派の隔たりが大きい共和党の分裂は決定的となり、二大政党制を根幹とする米国の政治力学が大きく変わるかもしれない。
http://jp.reuters.com/article/opinion-trump-akihiko-yasui-idJPKCN1BQ0V1

第一の記事で、 『結局はMMT、及びグローバリストと呼ばれるグループが主導権を握りつつあり、いわゆる「アメリカ・ファースト」を叫んでいたトランプ人脈と言われる人たちは「切腹」させられた感があります』、とのことらしい。今日の日経「新聞によると、小池都知事による国政新党の名称に「ファースト」が入らなくなりそうだが、こうした本家アメリカの変化を織り込んで修正したのだろうか。 『貿易問題も同様で、最も強硬だったバノン自身がいなくなってしまい、伝統的共和党志向に戻ってくる、ということになれば、それほど強硬なこと(スーパー301条の適用など)を言う理由はなくなってきます』、ということであれば、日本も一安心できるのかも知れない。
第二の記事で、 『白人至上主義団体に対抗する勢力の中にも過激な主張を掲げる団体が一部で目立つようになっているのも事実です。 そのひとつが、「ファシズムへの反対」を意味する「アンチ・ファシズム」を短くした「アンチ・ファ」と呼ばれる極左集団です・・・「黒人分離主義」などの過激な思想を掲げる黒人の団体も急速に増えています・・・アメリカ社会での対立はいっそう、先鋭化しています。「パンドラの箱」が開いてしまったかのようだ、と表現する専門家もいます』、というのは困ったことだ。トランプは自分の誤りにいつ気づくのだろうか。
第三の記事で、 『「白人至上主義」は「(マイノリティとなった)白人の文化を尊重せよ」という多文化主義』、とのウィリアムズ氏の指摘は新鮮だ。 『ホワイト・ワーキング・クラスの死亡率が増加していることだ・・・白人の低学歴層で平均寿命が短くなっている主な原因はドラッグ、アルコール、自殺だとして、これを「絶望死」』、  『「白人の優越」を否定し・・・そもそも彼らは自分たちが「人種差別」をしているとは思っていないことだ。そんな彼らに「レイシスト」のレッテルを貼って批判しても、話がかみ合わないのは当たり前なのだ』、 『白人のリベラルが同じ白人に「レイシスト」のレッテルを貼ってバッシングするのは、自らの「内なる人種差別」を免責するお手軽な方法なのだ』、(白人エリートは) 『不愉快な事実から目を背けることなく、またホワイト・ワーキング・クラスを「貧しくかわいそうなひとたち」と同情するのでもなく、ともに理解できるように自分たち(白人エリート)が変わるべきだ』、などの指摘も、意外は大いに考えさせられる。
第四の記事で、 『9月初旬の米財政合意は、民主党案のほぼ丸のみとなった』、のには驚かされた。 『選挙当初に想定されていたトランプ大統領のイメージをよみがえらせたと思う』、との指摘はその通りだ。 『移民問題で、果たして民主党とのビッグディールもあり得るのかという点』、は確かに今後の注目点だろう。
タグ:スティーブ・バノン首席戦略官・上級顧問が辞任(事実上の解任) ダイヤモンド・オンライン 橘玲 アメリカ政府の最も高い地位にいる高官が、人種差別に基づく発言や事件が広がっていることについて、明確に拒絶し、非難していないことに困惑している 国民戦線はイスラーム急進派の主張に賛同し、ムスリム女性がヴェールをかぶる権利を認めるし、イスラーム法(シャリーア)も尊重する 白人至上主義 イスラーム主義団体は、自分たちの文化や伝統・宗教を尊重することを求めて「同化政策」を批判している NHK時論公論 白人至上主義団体 この産炭地では白人も被害を受けている。帝国主義時代の植民地のようだ 結局はMMT、及びグローバリストと呼ばれるグループが主導権を握りつつあり、いわゆる「アメリカ・ファースト」を叫んでいたトランプ人脈と言われる人たちは「切腹」させられた感があります 白人こそが、差別是正措置によって損をしていると被害者意識を丸出しにしている ・フランスのオールドリベラル(共和主義者)は、宗教は私的なもので、公的な場では人種や宗教に関係なくだれもが「フランス人」として振る舞わなければならないとして、ムスリムの女子生徒が学校でヴェールを着用すること法で禁じている それほど強硬なこと(スーパー301条の適用など)を言う理由はなくなってきます。ああいう強硬な貿易政策はすべてアメリカ・ファーストの人々が主張していたことですから、誰もいなくなってしまい、親分までいなくなってしまうなら、もう共和党としては無理してやる必要のない政策と言えるでしょう 東洋経済オンライン 白人至上主義は、国の理念への挑戦 ホワイト・ワーキング・クラスの死亡率が増加 恵まれた白人は、恵まれない白人に人種差別の責任を転嫁することで、人種差別から距離を置こうとしている ホワイト・ワーキング・クラスにとっての幸福は円満な家庭を築くこと オルト・ライト ネオナチ kkk 自由や平等という理想を追い求めるのがアメリカという国のあるべき姿 。「白人至上主義」というのは、「(マイノリティとなった)白人の文化を尊重せよ」という多文化主義のことなのだ 公民権運動 ぐっちーさん「トランプは密約をしていた」 トランプ政権の最大のリスクが雲散霧消した 国連の人種差別撤廃委員会 白人の低学歴層で平均寿命が短くなっている主な原因はドラッグ、アルコール、自殺だとして、これを「絶望死」と名づけた 失業者給付や障害者給付は「これまでの(危険な)労働の対価」と見なされるが、生活保護のような所得制限のある給付を受ける者は「怠け者」の烙印を押され、バッシングの標的にされる 人種差別と共通する部分もあるが、両者は同じものではないと述べている フランスの右派知識人の主張は、アメリカのトランプ支持者とまったく同じだ 世俗的で無味乾燥な社会に変えようとするエリートたちの「グローバル資本主義」こそが、彼らの共通の敵なのだ 高卒以下のひとびとの死亡率は、あらゆる年代で全国平均の少なくとも2倍以上のペースで上昇 「アメリカ・ファースト」を謳ってきた連中がいたわけですが、彼らホワイトハウスの要職が次々に解雇されたうえに、バノンとなるともう、これはトランプ大統領がホワイトハウスのマネジメントができていないと言われても仕方ありません いずれもきわめて少数の過激な団体と考えられていましたが、シャーロッツビルに大挙したのです。専門家やメディアは、「こうした人種差別グループは存在していたが、ここまで公然と活動するようなことはかつてなかった」と驚きをもって受け止めています 保守的な白人アイデンティティ主義者 のぐっちーさん (その23)(「トランプは密約をしていた」 トランプ政権の最大のリスクが雲散霧消した、欧米で台頭する「白人至上主義」は「「(マイノリティとなった)白人の文化を尊重せよ」という多文化主義、白人至上主義、トランプ氏の奇策 歴史的な移民改革の扉開くか) トランプ大統領 ・貿易問題 トランプ政権は安定する可能性すらある 欧米で台頭する「白人至上主義」は「「(マイノリティとなった)白人の文化を尊重せよ」という多文化主義 橘玲の世界投資見聞録 国民戦線は白人至上主義を離脱し、多文化主義に転換 右翼の多文化主義(マルチカリチュラリズム)への反転 大西洋をはさんで同じようなイデオロギーが台頭しているのは偶然ではない マリーヌ・ルペン ▽「白人至上主義」は「(マイノリティとなった)白人の文化を尊重せよ」という多文化主義 そんな彼らに「レイシスト」のレッテルを貼って批判しても、話がかみ合わないのは当たり前なのだ 白人のリベラルが同じ白人に「レイシスト」のレッテルを貼ってバッシングするのは、自らの「内なる人種差別」を免責するお手軽な方法なのだ アメリカ社会での対立はいっそう、先鋭化しています。「パンドラの箱」が開いてしまったかのようだ 奴隷解放 そもそも彼らは自分たちが「人種差別」をしているとは思っていないことだ 「白人の優越」を否定 日本車の方が米国車より優秀だ。白人の方が優れているというつもりはない 10月中旬にも行われる予算決議がリトマス試験紙 トランプ政権のもう1つの特徴を挙げれば、ハファザード(Haphazard)、すなわち行き当たりばったりの政策運営 拡大の背景には、トランプ大統領の誕生があると指摘 仮にこのビッグディールが実現すれば、トランプ大統領にとっては文字通り最大のレガシー(歴史的な遺産)となり得る すでに入国済みの移民に対しては寛容な政策を保持する一方、これから不法入国を試みる他国民に対しては厳しい措置を講じるというアメとムチの内容で、民主党と折り合う可能性はある トランプ大統領自身も、法的裏付けを条件に、DACA存続には含みを持たせてきた 米国民の最大の関心事である移民問題で、果たして民主党とのビッグディールもあり得るのかという点 歴代の共和党大統領のように、自党の利益やメンツを最優先しない点は明確に示した 既存政治への挑戦 主義主張の面では民主党に近い部分が多い 電撃合意は主に2つの点で、選挙当初に想定されていたトランプ大統領のイメージをよみがえらせたと思う ディール重視 主義主張の面では民主党との共通点が多いトランプ大統領の特色 野党・民主党案の事実上の丸のみとなった9月初旬の米財政合意 リー将軍の銅像を公園から撤去する計画に反対 、「黒人分離主義」などの過激な思想を掲げる黒人の団体も急速に増えています 、「ファシズムへの反対」を意味する「アンチ・ファシズム」を短くした「アンチ・ファ」と呼ばれる極左集団 オピニオン:トランプ氏の奇策、歴史的な移民改革の扉開くか=安井明彦氏 安井明彦 ロイター ジョーン・C・ウィリアムズ 白人至上主義団体に対抗する勢力の中にも過激な主張を掲げる団体が一部で目立つようになっているのも事実 ・トランプ大統領の発言も衝撃を広げました
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

フィンテック(その2)(「フィンテック」って結局 何?、元・日銀マンがフィンテック企業に転身 安定人生を捨てた理由) [金融]

フィンテックについては、昨年2月27日に取上げた。今日は、(その2)(「フィンテック」って結局 何?、元・日銀マンがフィンテック企業に転身 安定人生を捨てた理由) である。

先ずは、ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長の安東泰志氏が8月30日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「フィンテック」って結局、何?」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・金融界は、ここ数年、フィンテック(FinanceとTechnologyを合成させた造語)の話題で持ちきりである。そして、ここに来て日本でもいくつかのフィンテック系ベンチャーが軌道に乗り始め、銀行界もようやく本格的に取り組みを開始している。本稿では、今なぜフィンテックが重要なのか、それが我々の暮らしや産業をどのように変えてくれるのかについて簡単にまとめてみたい。
・なお、フィンテックについては、取り上げる側面次第では際限なく議論が拡散してしまうので、本稿では、筆者が東京都側で事務局を務める「国際金融都市・東京のあり方懇談会」において日本銀行決済機構局長である山岡浩巳氏が提示した資料を敷衍する形で議論を展開することとする。
▽フィンテックが勃興した背景事情
・フィンテックがここ10年間で爆発的にもてはやされるようになった背景には、金融分野以外でのソフト・ハード両面での技術革新がある。すなわち、ビットコインを生んだブロックチェーン技術の登場、AIやビッグデータ分析技術の進展、そして07年のiPhone誕生を契機とするスマートフォンの普及などである。
・ブロックチェーンは、従来の集中管理型のデータベースではなく、多数のコンピュータ端末で構成されるネットワークだけを用い、データの改ざんを防止する技術を組み込んだデータの束(ブロック)の連なりによってデータベースを構築する。
・したがって、従来のデータベースと異なり、24時間停止せず、改ざんが不可能であるという特徴を持つ。これまでのブロックチェーン技術は、ビットコインなど仮想通貨分野がハイライトされてきたが、上記特徴を生かすことにより、例えば不動産の登記とか証券取引システム等々、社会の様々な分野のシステムを根本的に変える可能性を持つ。 もちろん、現在非常に重いコンピューターセンターを運用し、二重三重のセキュリティーを要する銀行のシステム構成も大きく変化する可能性がある。
・AIやビッグデータ分析技術は2010年頃からIBMが開発した質問応答システムであるWatsonや、アップルがiPhoneに組み込んだSiri、そして、ディープラーニング(深層学習)などが一気に花開いた。それが可能になった理由は、ITインフラの高速化といったハードウエア面の進化もさることながら、SNSやecサイトでの購買履歴や閲覧履歴など、分析すべきデータが豊富に出現したことなどであろう。AIの発達により個々人のニーズに則した金融サービスの提供が可能になった。
・そして、スマホの爆発的な普及により、これまで普通の金融インフラが未発達だった途上国や新興国などで、携帯上で決済等の金融サービスが受けられるようになった。
▽「フィンテック」と言っても種類はさまざま
・一口にフィンテックと言っても、その種類はさまざまだ。もちろん、既に触れたビットコインなどの仮想通貨もその一つだが、それ以外にも以下のように個人向けから大企業向けまで多種多様のサービスが提供されようとしている。
・支払決済の分野では、スマホによるクレジット決済、SNSアプリを通した送金サービスなどが既に普及し始めている。PayPal、Apple Pay、AliPay、WeChat Pay、Google Wallet、M-Passなどについては、それらを利用しているか、少なくとも知っている人が多かろう。これに加えて、TransferWireなど安価な国際送金サービスも提供され始めている。
・金融仲介分野では、クラウドファンディングやP2P(ピア・ツー・ピア)ファンディングが米国を中心に既に市民権を得ており、日本にもその萌芽が見られる。クラウドファンディングとは、ネットを介して不特定多数から資金調達できるスキームで、「寄付型」「購買型」「融資型」「投資型」などの種類がある。P2Pファンディングとは、ウェブサイトを通してお金を貸したい人とお金を借りたい人を結びつける融資手法だ。
・クラウドファンディングは、資金の出し手が必ずしも金銭的な見返りを求めないケースが多いことや、融資型が少数であることなどから、P2Pファンディングとは異なる。P2Pファンディングを行っている企業は英米だけで数十社にのぼり、典型的なのが米国のレンディングクラブだ。銀行は人件費や店舗等の固定費がかかる分だけ、融資スプレッドが高くなり、一方の預金者には低金利しか提供できないのに対し、P2Pファンディングの場合、これら費用が削減できている分だけ融資金利は低くできる一方、資金の出し手にも相応に金利を支払うことができる。
・同じく、金融仲介分野の中でも証券投資に関しては、ビッグデータやAIを活用した投資サポート(ロボアドバイザーなど)が既に日本でも活用され始めている。これも有人店舗のように固定費がかかる投資助言サービスに比べて低コストで投資サポートが提供できる。
・また、個人や企業向けの資産管理や会計サービスの提供も活発になってきた。これにより、後述する銀行APIの進展次第ではあるが、国民全般の利便性が高まるばかりでなく、企業経営の効率化による生産性の向上も期待できる。 こうして見ると、フィンテックは、国民の利便性を高める反面、既存の金融機関の本業である預金・融資・決済などにおいて、そのビジネスモデルを根本から脅かす存在であると言えるだろう。
▽フィンテックによって何が実現できるか
・フィンテックは、我々の日常生活を一変する可能性を持つ。 例えば、今の決済アプリが進化すれば、買い物の後にレジを通らなくても店を出る時に自動的に決済が終わっているインフラや、下車時に自動的に支払いも済ませる配車アプリなども考えられるし、事実、既に米国ではそれらはある程度まで実現している。
・さらに、企業間の決済分野においても、銀行の対応ができるのであれば、送金指図の際に「XML(eXtensible Markup Language)電文」と呼ばれる方式を採用することにより、より詳細なEDI(Electronic Data Interchange、企業間でデータ形式を決めて受発注・納品データなどをデータ交換すること)が送れるようになれば、現在、受取企業側が手作業で行っている売掛金の消し込み作業が自動的にできるようになるほか、フィンテックを応用した受発注システムや会計システムとの連動も簡単にできる。これによって企業の経理業務が大幅に効率化され、生産性の向上が見込めるだろう。
・AIを活用したフィンテックは、怪しげな取引をブロックしてお年寄りの詐欺被害防止に役立てることもできる。例えば、既に車の運転が不可能と思われるほどの高齢者が突然高額なスポーツカーを買う取引などはAIがはじき出して決済を止める。また、生体認証の発達は、暗証番号の漏洩リスクを大きく減らすことになろう。
・同じくAIによる資産運用助言サービス(ロボアドバイザーなど)は、有人対応の場合に必要となる店舗や人員配置といった固定費がかからない。その分を販売手数料の削減に充当できれば、顧客の利便性は大きく向上する。 その資産運用の前提として、家計管理や資産把握などが必要だが、これも、後述する銀行のAPI対応次第で、ほぼフィンテックによって実現できる時代が来るだろう。
・さらに、ブロックチェーン技術を応用すれば、美術品管理、農産物のトレーサビリティを確保したり、複数の病院に通う患者のカルテを管理したりすることが容易になる。もちろん、既に述べたように、銀行の重厚長大な勘定系システムが不要になったり、証券取引所に代わる証券取引システムや、不動産の登記、契約の管理などにも応用できるようになり、これら業界のビジネスモデルを大きく変革することにもなり得るだろう。
・最後に、人類全体について言えば、いわゆる「金融包摂(Financial inclusion)」がある。すなわち、これまで銀行店舗やATMなどの金融インフラが未整備だった地域においてスマホによる決済や融資が実現していくことは、途上国や新興国にとっては、国民に金融サービスを一気に普及させ、先進国に追いつくチャンスとなろう。
▽メリットを享受するために これから求められる取り組み
・このように、フィンテックは我々の暮らしを大きく変化させる可能性を秘めているのだが、人々が十分にそのメリットを享受するためには、まだいくつかの課題が残されている。 第一に、オープンイノベーションの促進だ。先に述べたように、フィンテックは、国民の利便性を高める半面、既存の金融機関の本業である預金・融資・決済などにおいて、そのビジネスモデルを根本から脅かす存在でもある。
・しかし、ここは金融機関、特に銀行とフィンテック企業が協力し、そのための基盤であるオープンAPIや金融EDIを実現させていく必要がある。EDIについては先ほど説明したがオープンAPIはそれにもまして重要なポイントである。
・APIとは、Application Programming Interfaceの略で、他のシステムやソフトウエアに機能を提供するための規約のことだ。例えば、「食べログ」は、Googleが地図情報サービスに設けたAPIを活用し、店舗の地図を添付している。同じように、銀行がAPIを通して口座情報を家計管理システムや会計システムを扱うフィンテック企業に供給すれば消費者利便性は飛躍的に高まるだろう。今年3月には全銀協が事務局を担う「オープンAPIのあり方に関する検討会報告書(中間的な整理案)」が提示され、API仕様の標準化やセキュリティ対策などについての考え方が示されている。
・第二に、フィンテック技術の研究開発や実験の推進だ。ブロックチェーン、分散型台帳、AI、ロボティックスなどは、金融分野だけでなく産業界で幅広く使える新技術であり、学会や業界横断的な取り組みや資金の確保が重要だ。
・第三に、セキュリティ対応だ。フィンテックは、銀行の口座情報はもとより、SNS上の個人情報等を含め、膨大なデータを扱うことになる。情報セキュリティーのあり方やプライバシー保護の方針を確立し、「日本のフィンテックは安心」という信頼を得ることが必要だ。
・最後に、行政の取り組みも重要だ。例えば、英国では2014年に当時のオズボーン財務相がロンドンをGlobal Fintech Capitalとして発展させると宣言した。ロンドン東部のカナリーワーフ地区には「Level 39」というフィンテック産業の集積地が整備され、100を超えるフィンテック企業が集結。フィンテックの業界団体は積極的に政府に情報を発信し、政府・規制当局もRegulatory Sandbox(イノベーションを促すために革新的な事業者に対して現行規制の適用を猶予する制度)を用意してフィンテック企業の育成に力を入れている。また、シンガポール通貨庁とシンガポール銀行協会が「Fin Tech Hackecelerator」というコンテストを実施し、優秀なフィンテック業者を表彰するスキームを用意している。
・東京都が推進しようとしている「国際金融都市・東京」構想においても、フィンテックの育成は極めて重要な課題だ。強い金融機関や金融インフラを持つ民主主義国家、日本が、その強みを生かしてフィンテック分野において少なくともアジアで第一の地位を固めることは、「東京をアジアナンバー1の国際金融都市として復活させる」という小池知事の意欲的な目標達成のための試金石になると言っても過言ではなかろう。
http://diamond.jp/articles/-/139965

次に、9月19日付けダイヤモンド・オンライン「元・日銀マンがフィンテック企業に転身、安定人生を捨てた理由 神田潤一(マネーフォワード渉外・事業開発責任者)特別インタビュー」を紹介しよう(▽は小見出し、Qは聞き手の質問、Aは神田氏の回答、+は回答内の段落)。
・9月1日、ある人事に金融業界は騒然とした。直近は出向先の金融庁で、金融とテクノロジーの融合である「フィンテック」の関連政策を担当した名物官僚が、23年間在籍した日本銀行を退職。フィンテック企業に移籍を果たしたのだ。本人にその異例の転身の真意を聞いた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)
Q:官僚という政策の世界から、有力フィンテックベンチャーであるマネーフォワードというビジネスの世界へと異例の転身。その決断に至った経緯を教えてください。
A:この2年、日本銀行から金融庁に出向して、黎明期のフィンテック業界の推進に携わってきました。その間、多くの人の尽力でフィンテック業界が盛り上がり、その発展の後押しとなる銀行法改正が2年連続で決まった。しかし、いよいよ今からビジネスが花開くという大事な時期で出向期間が終わり、日銀に戻ることになりました。
+そのときは日銀で普通に仕事をすると思っていました。ただ、このタイミングで離れてしまうことに寂しさもあった。そんな思いをフィンテック業界でお世話になった人たちに打ち明けると、「戻ってきて一緒にやりましょう」という話を幾つか頂きました。
+これはもしかしたら、フィンテックの世界に戻れるかもしれない。そこで初めて日銀を辞めるという選択肢が出てきました。それからは、激変の時代において、この大事で面白い時期を1日も逃したくないという思いが強くなった。
Q:数あるフィンテック企業の中で、マネーフォワードを転職先に選んだ理由は何だったのですか。
A:民間企業でありながら、業界全体を盛り上げていく仕事ができる会社を探していました。 その点、マネーフォワードは個人向けの家計簿・個人資産管理アプリでも、法人向けのクラウド会計ソフトでも実績がある。さらに、(マネーフォワードの創業者で社長の)辻(庸介)さんと話をする中で、もっと新しいビジネスもやりたいという話を伺いました。
+その辻さんの人柄も理由の一つです。自分たちも日本のフィンテックもまだまだこんなものじゃない。もっと金融サービスを便利にしたい。業界でトップを走るような会社なのに、そうしたハングリー精神を失わず、ベンチャーとしてチャレンジしていきたいという辻さんの熱さに心が動きました。
Q:金融庁への出向でフィンテックと出会ったそうですが、そこで人生が変わったのでしょうか。
A:そうですね。フィンテック関連の勉強や仕事をする中で、金融が大きく変わる局面に立ち会える、そこで自分が主体的に働き掛けられると思いました。金融も自分の人生も変わるかもしれない。そう気合を入れたのは確かです。 金融庁に出向して携帯電話をiPhoneに変えたときに、その思いを数字に込めたパスコードを設定したんです。ホーム画面のロックを解除するたびに初心に帰って、日本の金融を変えるんだという思いを持ち続けてきました。
Q:東京大学卒・日銀という神田さんのようなキャリアの方は、一般的に保守的なイメージが強いですが、今回の転職は大胆でした。
A:「ここでチャレンジしないと後悔する」という場面ではリスクを取ってきたように思います。 大学時代に陸上競技の長距離走をやっていたのですが、東大って箱根駅伝の本大会に1度だけ出場したことがあるんです(1984年第60回大会)。そして、私の代では「10年ぶり、2度目の出場を果たす」というスローガンを掲げて練習を重ねてきました。 ただ、実は東大初出場の10年後に当たるのは、本来であれば私が卒業した翌年に開催される大会でした。それでも、私は当時チームのエースでキャプテンだったこともあって、大学を留年して箱根駅伝出場にチャレンジしました。
+結果は、チームの成績は伸びたものの、予選突破はかないませんでした。しかし、この挑戦は自分の人生に大きな影響を与えました。 転職のときも、「今決断しないとずっと後悔する」という予感があって、大学の留年を決めたときとすごく似ていました。
+転職では悩みましたし、家族の反対もありました。何かを変えるには勇気が要るし、失敗のリスクも当然ある。日銀に23年勤めて、このままいけば安泰で85~90点という人生が固まりつつありました。それでも十分合格点だったかもしれません。ただ、お金や安定のためではなく、やるべきことに突き進むフィンテック業界の人を見ているうちに、自分も熱い思いを持ってチャレンジして、120点を目指したいと思ったんです。
Q:ご家族の説得は大変でしたか。
A:大変でした。熱い気持ちを語る私と冷静な妻では、「安定を捨ててリスクを取る」という決断に対して議論がかみ合わない。 最終的にお互い冷静になろうと、転職に対する私の考えを紙にまとめることになり、2日ほど徹夜して16ページくらいのレポートを書いて、妻にメールで送りました。そこで私の気持ちが変わらないと悟ったのか、妻も仕方がないと諦めてくれました。
Q:最後に、今後マネーフォワードでやるべき仕事の優先順位について教えてください。
A:転職を決めた後に知ったのですが、マネーフォワードが(東京証券取引所マザーズに)上場するというタイミングでの入社となりました(9月29日上場予定)。上場で調達した資金をどこに振り向けるか。投資家やユーザーに訴求するためにも、このタイミングだからできることを考えたいです。
+(米国の)シリコンバレーでは、面白そうな分野にさまざまな業界の人材が流れ込むという事例を見てきました。日本では今までそうした事例は少なかったかもしれませんが、フィンテックのような成長分野に異業種の人材が流入して市場を拡大していけば、日本全体の経済や金融の活力になると思います。 だから、私のような転身が続いてほしいし、そのためにも私は成功しなければいけません(笑)。
http://diamond.jp/articles/-/142535

第一の記事で、 『フィンテックは、国民の利便性を高める半面、既存の金融機関の本業である預金・融資・決済などにおいて、そのビジネスモデルを根本から脅かす存在でもある。しかし、ここは金融機関、特に銀行とフィンテック企業が協力し、そのための基盤であるオープンAPIや金融EDIを実現させていく必要がある』、と指摘しているが、既に協力した実験的試みも行われている。 『学会や業界横断的な取り組み』、については、既にビジネスチャンスとして動き出しているので、実際には簡単な話ではなさそうだ。  「国際金融都市・東京」構想については、安東氏は事務局をやっているほどの中心人物のようだが、私自身は、政策で推進できる部分は実際には小さいと思っているので、「せいぜい頑張ってくれ」と言うほかない。
第二の記事に関しては、日銀から金融庁に出向するのは、日銀のなかでもエリートなのに、フィンテックに惹かれて転職するとは、なかなか骨がある人物のようだ。もっとも、今後、金融政策が「出口」を迎えると日銀は槍玉に上げられるので、その前に逃亡したと見ることも可能なのかも知れない。マネーフォワードでの活躍を期待したい。
タグ:セキュリティ対応 フィンテック技術の研究開発や実験の推進 オープンAPI 金融機関、特に銀行とフィンテック企業が協力し、そのための基盤であるオープンAPIや金融EDIを実現させていく必要 オープンイノベーションの促進 金融インフラが未整備だった地域においてスマホによる決済や融資が実現していくことは、途上国や新興国にとっては、国民に金融サービスを一気に普及させ、先進国に追いつくチャンス 金融包摂(Financial inclusion) 人類全体 銀行の重厚長大な勘定系システムが不要になったり、証券取引所に代わる証券取引システムや、不動産の登記、契約の管理などにも応用できるようになり、これら業界のビジネスモデルを大きく変革することにもなり得るだろう 我々の日常生活を一変する可能性 国民の利便性を高める反面、既存の金融機関の本業である預金・融資・決済などにおいて、そのビジネスモデルを根本から脅かす存在 個人や企業向けの資産管理や会計サービスの提供も活発になってきた 投資サポート(ロボアドバイザーなど) P2Pファンディング クラウドファンディング 金融仲介分野 支払決済の分野 「フィンテック」と言っても種類はさまざま スマホの爆発的な普及により、これまで普通の金融インフラが未発達だった途上国や新興国などで、携帯上で決済等の金融サービスが受けられるようになった 、SNSやecサイトでの購買履歴や閲覧履歴など、分析すべきデータが豊富に出現したこと 行政の取り組みも重要 フィンテックのような成長分野に異業種の人材が流入して市場を拡大していけば、日本全体の経済や金融の活力になると思います 業界でトップを走るような会社なのに、そうしたハングリー精神を失わず、ベンチャーとしてチャレンジしていきたいという辻さんの熱さに心が動きました 個人向けの家計簿・個人資産管理アプリでも、法人向けのクラウド会計ソフトでも実績がある 、ITインフラの高速化といったハードウエア面の進化 不動産の登記とか証券取引システム等々、社会の様々な分野のシステムを根本的に変える可能性 ビットコインなど仮想通貨分野 AIやビッグデータ分析技術の進展 ビットコインを生んだブロックチェーン技術の登場 金融分野以外でのソフト・ハード両面での技術革新 日本銀行決済機構局長である山岡浩巳氏が提示した資料を敷衍する形で議論を展開 国際金融都市・東京のあり方懇談会 「「フィンテック」って結局、何?」 ダイヤモンド・オンライン 安東泰志 (その2)(「フィンテック」って結局 何?、元・日銀マンがフィンテック企業に転身 安定人生を捨てた理由) マネーフォワード 23年間在籍した日本銀行を退職。フィンテック企業に移籍 融庁で、金融とテクノロジーの融合である「フィンテック」の関連政策を担当した名物官僚 元・日銀マンがフィンテック企業に転身、安定人生を捨てた理由 神田潤一(マネーフォワード渉外・事業開発責任者)特別インタビュー フィンテック
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

暗号通貨(仮想通貨)(その4)(ICOの現在(前・後篇)、「ビットコインは詐欺だ!」1,2) [金融]

暗号通貨(仮想通貨)については、9月15日に取上げたが、今日は、(その4)(ICOの現在(前・後篇)、「ビットコインは詐欺だ!」1,2) である。

先ずは、9月14日付けダイヤモンド・オンライン「『ブロックチェーン・レボリューション』で予言されたICOの現在(前篇)」を紹介しよう(▽は小見出し、+は段落)。
・世界的ベストセラー、『ブロックチェーン・レボリューション』で予言された数々の変革が日本でも起こり始めた。なかでも、大きなインパクトが予想されるのが、ICO(Initial Coin Offering)というこれまでにない資金調達手法だ。 有限責任監査法人トーマツにてFinTech領域の戦略立案に従事し、『ブロックチェーン・レボリューション』の翻訳協力者でもある勝木健太氏に、最新情報を整理してもらった。 (注)当該記事は公開情報に基づいた執筆者の私見であり、有限責任監査法人トーマツの公式見解ではない。
・最近、ICO(Initial Coin Offering)という資金調達手法が大きな注目を集めている。ICOは資金調達の仕組みとして極めて画期的であり、現在の資本市場のあり方を根本的に変革する可能性を秘めている。 書籍『ブロックチェーン・レボリューション』の中でも、ICOのコンセプトは「ブロックチェーンIPO」という名称で紹介されており、著者のドン・タプスコットは「ブロックチェーンIPOが主流になれば、やがて世界の金融システムから多くの役割が消えることになるだろう。証券会社や投資銀行は時代遅れになる」と述べている。
・一方で、ICOには法規制の問題をはじめとして、数々の克服すべき課題が存在する。本稿では、ICOの概要や最新の動向についてお伝えするとともに、海外を中心に盛んになりつつある法規制面の議論について紹介する。
▽ICOとは何か
・ICOとは新規株式公開IPOになぞらえてつくられた言葉であり、簡単に言えば、企業が独自の仮想通貨を発行することで、資金調達を行なう仕組みのことを指す。 これまでは、スタートアップ企業が資金調達を行なう場合、自社の株式を発行することで、エンジェル投資家やベンチャーキャピタルから資金を調達したり、新規株式公開IPOを目指すやり方が一般的だった。
・しかし、ICOの場合、株式を発行する代わりに、ブロックチェーン上で独自トークン(仮想通貨/暗号通貨)を発行し、一般投資家に向けて販売することで、資金調達を行なうことができる。 これは企業側からすれば、実現すべきビジョンを掲げ、ICOを実施することで、世界中の一般投資家から資金を調達できることを意味する。
・投資家側の立場でも、ICOに参加することによって、世界中の有望なスタートアップ企業に対し、アーリーステージの段階から少額投資を機会を得ることができる。 また、トークンによっては、ICOを実施してから数週間の間に仮想通貨取引所で取り扱われる場合があり、セカンダリーマーケットが存在していることも大きなメリットの一つだ。  (ただし、これらの取引所で扱われたものの、取引量が著しく少ない場合や当局が規制対象と認定したトークンについては、取扱いが突然停止される可能性がある点には注意がする必要がある。)
・一方で、冒頭に記載した通り、現状行なわれているICOには数多くの克服すべき課題が存在する。ICOの課題については、後篇で詳細に述べる。
▽ICOで証券会社やベンチャーキャピタルが不要になる可能性も
・冒頭で述べた通り、ICOを活用した資金調達のプロセスにおいては、従来のような「中間管理者」が介在しないため、既存の証券会社やベンチャーキャピタルが「ディスラプト」される可能性が指摘されている。 実際、ICOトークンに投資を行なうベンチャーキャピタルとして知られるPantera Capital(パンテラ・キャピタル)のDan Morehead(ダン・モアヘッド)は「長期的に見れば、VCが資金調達を仲介する必要がなくなる可能性はある」とTech Crunchのインタビューで述べている。
・ただ、逆に、先進的な証券会社やベンチャーキャピタルの中には、ICOをいち早く自社ビジネスに取り込むような動きを見せている企業も存在する。 具体的には、米国において、ICOトークン発行のアドバイザリー業務を提供する証券会社のArgon Group(アルゴン・グループ)が挙げられる。同社は米モルガン・スタンレー出身者が中心となり、2016年に創業された企業だが、すでにいくつかの企業のICOトークン発行をサポートした実績がある(参考 Blockchain Capital / Civic)。
・また、トークンに投資を行なうベンチャーキャピタルとしては、先ほど紹介したPantera Capital(パンテラ・キャピタル)の他にPolychain Capital(ポリチェーン・キャピタル)が挙げられる。 Polychain Capital(ポリチェーン・キャピタル)には、Anrdreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)やUnion Square Ventures(ユニオン・スクエア・ベンチャーズ)といった著名なベンチャーキャピタルが出資している点も見逃すべきではないだろう。
▽ICOの市場規模
・ICOの市場規模は急速に拡大している。米国に本拠を置く調査会社であるSMITH+CROWN(スミス・クラウン)によれば、ブロックチェーン関連企業がICOを活用して資金調達を行なった金額は、2017年では6月時点で約850億円に達しており、昨年の年間実績の7倍に達する水準に到達している。現在では、ブロックチェーン関連のスタートアップに限定すれば、ベンチャーキャピタルではなくICOを活用した資金調達を行なうほうが主流になりつつある。
▽ICOの代表的な事例
・続いて、ICOの代表的な事例を見ていこう。
+ブレイブ・ソフトウェア(BAT:Basic Attention Token) まずはサンフランシスコに本拠を置くBrave Software(ブレイブ・ソフトウェア)が発行したBAT(Basic Attention Token)。24秒で35億円もの金額を調達したことで業界を騒然とさせた。資金調達の成功の要因としては、同社を率いるBrendan Eich(ブレンダン・アイク)氏がブラウザ「Firefox」の開発を手がけるMozilla(モジラ)の最高経営責任者を務めた経験があり、一定の実績を有していることが挙げられる。 また、すでに商用化されているBrave Browser(ブレイブ・ブラウザ)が存在することも強みの一つだ。このBrave Browser内に出稿された広告をユーザーが閲覧したり、シェアすることで、ユーザーに独自トークン「BAT(Basic Attention Token)」が与えられる仕組みだ。デジタル広告の中央集権的な構造を変革することを目的しており、個人的に注目しているプロジェクトである。
+バンコール・ネットワーク(BNT:Bancor Network) イスラエルに本拠を置くBancor Network(バンコール・ネットワーク)は、イーサリアム・ブロックチェーン上で発行されたトークン同士の変換を行なうことを目的とするプロジェクトだ。3時間で160億円もの資金を調達したことで、大きな話題となった。 余談だが、筆者もBNTのICOには参加したが、参加希望者が相次いだため、イーサリアム・ブロックチェーンのネットワークが大混雑し、ETH(イーサ)の送金がなかなか届かず、約1時間にわたり悪戦苦闘した記憶がある。
+イーサリアム(Ethereum) また、上で紹介したEthereum(イーサリアム)も分散型アプリケーションのプラットフォームとして、2014年にICOを実施したことで誕生した。当時のイーサの価値は「1ETH=0.0005BTC」であったため、当時ETHに10万円分投資していただけで、数億円のリターンを得ることができていた計算になる。 ( ちなみに、ICO当時の販売価格からトークンの価格が何倍になったかについてリアルタイムに知る手段としては、「ICO STATS」という海外のウェブサービスの「ROI Since ICO」が参考になる。)
▽投資家としてICOに参加する方法
・投資は自己責任だが、上述のイーサリアムの事例のように、ICOの時点でトークンを購入することで、莫大なリターンを得る可能性も存在するため、ICOトークンへの投資が世界的に注目を浴びている。 Skype(スカイプ)やBaidu(バイドゥ)の初期投資家として著名なTim Draper(ティム・ドレーパー)氏も、Bancor(バンコール)やTezos(テゾス)といったICOに参加しており、大きな話題を呼んだ。
・ICOトークンへの投資は極めてハイリスクであり、個人的には推奨はできないが、少額ならトライしてみるのも悪くないかもしれない。スマートコントラクト機能を体感できる良い機会でもある。一般的には、以下の手順を踏む。
 1.ICOを実施する事業者のウェブサイトにて、ICOが行なわれる日時を確認する
 2.あらかじめウォレットをダウンロードしておき、指定された日時に、指定されたアドレスに仮想通貨を送金する。
 3.送金が完了すると、スマートコントラクト機能により、自動的にトークンがウォレットに送金される
 4.換金を行なう場合は、数週間後、発行されたトークンが仮想通貨取引所で取り扱われた後、換金を行なう 
・ただし、仮想通貨で売却益を得た場合、税金がかかる可能性があるため、在住地の税務署に個別に確認することを推奨する。
▽事業者としてICOトークンを発行する方法
・ICOトークンの発行に関しては、いくつかのやり方がある。我が国では法的な位置づけが定まっていないため、現時点での発行は「慎重さ」を要するが、最も一般的な方法は、イーサリアム・ブロックチェーン上で発行するやり方だ。ソースコード等もGithubに記載されている。代表的なイーサリアムウォレットの一つであるMetamask(メタマスク)のインストールを済ませれば、開発環境も容易に構築することができる。
・また、最近では、Mobile Go(モバイル・ゴー)やStarta(スタータ)のように、Wavesプラットフォーム上でICOを行なうプロジェクトも登場してきている。さらに、NEMベースのブロックチェーン上で発行されたICOも登場してきている。我が国で話題のVALU(バリュー)は「OpenAsset」というプロトコルを採用している。
http://diamond.jp/articles/-/142118

第二に、上記に続きとして、9月18日付け「『ブロックチェーン・レボリューション』で予言されたICOの現在(後篇)」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・(初め書き出しは前編と同じなので省略)
▽世界でもバラつくICOの規制
・前篇で述べた通り、ICOには克服すべき数々の課題が存在する。なかでも、企業が発行する独自トークンの法律上の位置づけについては、いくつかの金融当局が関連するペーパーを出しているが、世界的に明確な共通の基準が存在しているとは言えない状況だ。 その中で、比較的ICOに「寛容」とされてきた国のひとつがシンガポールである。2017年4月にICOを実施したBlockchain Capital(ブロックチェーン・キャピタル)は米国を拠点としているが、ICOを実施するためにシンガポールにも拠点を設けている。
・2017年6月にICOを実施したCofound.it(コーファウンド・イット)という企業もシンガポールに拠点を置き、ICOのプラットフォーム事業を構築している。また、Fund Yourself Now(ファンド・ユアセルフ・ナウ) という企業が同様のプラットフォーム構想を掲げており、シンガポールにてICOを活用した資金調達を実施済である。その他、Digix Dao、TenX、Golem、Qtumといったプロジェクトもシンガポールを拠点として過去にICOを実施している。
・ただし、2017年7月31日、シンガポールの金融当局として知られるMAS(シンガポール金融監督局)が、ICOに関する声明を公式に発表しており、米SEC(証券取引委員会)と同様、トークンの性質によっては「証券」とみなす可能性がある旨、アナウンスした事実は押さえておきたい。
・また、スイスのツークも「クリプトバレー」と呼ばれていることからもわかるように、ICOフレンドリーな都市として知られており、スイスを拠点にICOを実施するプロジェクトも少なくない。 Bitcoin Suisse AGという組織がICOのトークン発行のサポートを行っており、この組織のサポートにより、Bancor、Status、Tezos、OmiseGoといったプロジェクトがトークン発行を実施している。
・他にも、オーストラリア証券投資委員会(ASIC)で議長を務めるGreg Medcraft(グレッグ・メドクラフト)氏が、「ICO市場を規制する必要があるか​​についての明確な見解が出るまで、規制を急ぎすぎるべきではない」との見解を明らかにしている。 実際、オーストラリア発のICOも現れてきており、具体的には、Power Ledger(パワーレッジャー)という企業が「太陽光発電」×「ブロックチェーン」の領域で独自トークンを発行する予定であり、ICOを実施中である。
・さらに、英国の当局であるFCAがレポートの中でICOについて言及しており、状況を注視していることが伺える。 加えて、カナダの金融当局のオンタリオ証券取引所が開催したハッカソンの中で、ICOを規制するアイデアについての募集が過去に行なわれている。そこでは、金融当局がICO案件の情報をまとめた情報ポータルを運営し、事業者のスクリーニングを行なうようなアイデアが出された。2017年8月25日には、CSA(カナダ証券管理局)がICOを監督する必要があることを明らかにしている。
▽米国と中国の動向は
・米国に関しては、SEC(米国証券取引委員会)はこれまでICOに対するスタンスを明確にせず沈黙を続けていたが、先日、米SECが書簡を公開し、トークンの性質によっては「金融商品」とみなされるうることを明らかにした。 米国を拠点とする企業の中には、こうした事態を見越し、あらかじめ拠点を米国外に移したり、免除規定を活用する動きが既に見られる。たとえば、サンフランシスコに本拠を置くBlockchain Capitalは、シンガポールに拠点をつくり、全世界の投資家に向けて独自トークン「BCAP」のICOを実施している。
・一方、米国民に対しては、過去2年間にわたって年間所得が20万ドル以上、総資産100万ドル以上の総資産を有すること等が要件とされる「Accredited Investor:認定された投資家」に限定して、クラウドセールを行なっており、米国向けのトークン販売については「慎重さ」を崩していない。これはSECの「Rule 506 of Regulation D」という免除規定を活用したものである。
・ただし、2017年7月以降、独自トークンを発行したいくつかの米国の仮想通貨関連企業がSECの立ち入り調査を受けた結果、取引停止を言い渡されており、今後、さらなる引き締めが行なわれることが予想される。
・最後に、中国の動向について述べる。2017年9月4日、中国人民銀行はICOを全面的に禁止し、過去にICOを実施したすべての案件について調査を行った上で、これまでにICOを通じて調達した資金の返金を求めることを決定した。 今回、中国当局がICO規制に乗り出した背景としては、投資家保護の観点からのICO詐欺の防止やマネーロンダリング対策等があると言われており、取引所に上場済みのICOトークンについても、「上場廃止」となるケースも現れてきている。
・こうした中国政府の流れを受け、今後は、世界的にICOを厳格に取り締まる流れが加速化する可能性がある一方、ICOを通じた資金調達を全面的に禁止にするのではなく、米国やシンガポールの金融当局が示唆しているように、投資家に配当を与えるような「配当型トークン」については「有価証券」とみなし、従来型の規制の枠組みの中で扱うような法規制のデザインの仕方が主流となる可能性も考えられる。
・SEC(米国証券取引委員会)はICOを通じて発行されたトークンの「セキュリティ監査」の重要性についても公式にアナウンスしており、今後は、プロジェクトを行う事業者の「デューデリジェンス」や「第三者評価」の重要性がますます高まる可能性がある。 こうした一連の流れを踏まえると、今後、世界全体で詐欺的なICOプロジェクトが淘汰される流れが顕在化する可能性が高いように思われる。いずれにせよ、海外のICO関連の法規制の動向については、今後も十分な注意を払う必要があるだろう。
▽日本での法規制はどうなるのか?
・我が国においては、いくつかのICOプロジェクトが現れつつある状況である。法規制面の詳細については、規制当局や弁護士に判断を仰いでいただきたいが、焦点としては、ICOで発行した独自トークンが改正資金決済法上の「仮想通貨」にあたるか否か、金融商品取引法上の「有価証券」にあたるか否か、「集団投資スキーム」にあたるか否か、出資法に抵触するか否か等が挙げられる。その他、民法や消費者契約法等も絡んでくる可能性がある。 一方、ICOはグローバルなクラウドファンディングであり、購入型クラウドファンディングに類するものとの見方を示す有識者も存在する点は押さえておきたい。
・ICOを通じて発行・販売されるトークンが仮想通貨にあたる場合、仮想通貨交換業の登録が必要になる。また、金融商品取引法に抵触する場合、投資家保護の枠組みを整備することが必要になる。 トークンの発行および販売はまったく前例のないスキームであるため、議論は途方もなく難航するだろうが、規制に関する議論を行なう上で、参考になるのが米国のHowey Test(ハウイー・テスト)だ。
・Howey Test(ハウイー・テスト)とは、1946年に米国最高裁判所が扱った判例であり、W.J ハウイー社がフロリダ州の柑橘園を出資者に販売したことが「投資商品」の販売に該当するか否かを争う裁判の結果、下された判決である。米国の証券法”SECURITIES ACT OF 1933”における”Securities”の定義に関する基準を示した判例として知られている。 その判決において、最高裁判所は、以下の4つの条件、つまり 、
 +お金(money)の投資(invest)に関することであり
 +投資先が共同事業(Common Enterprise)であり
 +収益(Profit)を期待して行なわれ
 +収益(Profit)が他人の努力に依存している
に該当した場合に限り、「投資契約(investment contract)」とみなされるという判決を下した。
・現在行なわれているICOのスキームにHowey Test(ハウイー・テスト)が適用されると仮定した場合、「利益」や「投資」、「リターン」といった言葉を用いて投資勧誘を行なっているものについては、法に抵触する可能性がある。詳細については、規制当局や弁護士に相談することを推奨する。
・さらに、ICOの法規制について考える場合、ブロックチェーン企業として世界的に著名なCoinbase(コインベース社)がCoin Center(コインセンター)、Consensys(コンセンサス)、Union Square Ventures(ユニオン・スクエア・ベンチャーズ)と協力のうえ作成した法的なフレームワークも参考になる。これは公的な文書ではないものの、ICO関連のビジネスに取り組むなら、是非とも読んでほしい。
・また、ICOで発行された独自トークンの中でも、その性質は様々である。Bitcoin(ビットコイン)やZCASH(ジーキャッシュ)のような「デジタル通貨」としての性質を持つものもあれば、Ethereum(イーサリアム)におけるETH(イーサ)、Factom(ファクトム)におけるFactoid(ファクトイド)のように、分散型アプリケーション内で使用される「内部通貨」としての性質を持つものもある。The DAOのようにトークン保有者に対して「議決権」や「配当」を与えるタイプのトークンも過去には存在した。
・また、The Dao以外でも、トークン保有者に対して「配当」を約束するようなタイプも存在する。具体的には、SingularDTV(シンギュラー・ディー・ティービー)やChronobank(クロノバンク)等である。このうち、特に、議決権や配当を与えるようなトークンは前述のHowey Test(ハウイー・テスト)を踏まえれば、「投資商品」とみなされる可能性が高いと思われる。
▽最後に
・ICOは資金調達の方法として極めて画期的だが、現状、法規制面が十分に整備されていないこともあり、詐欺的なICO案件も数多く存在すると言われている。 ニューヨークに本拠を置くブロックチェーン関連企業のMONAX(モナックス)にて共同代表を務めるPreston Byrne(プレストン・バーン)氏は、「トークンを個人投資家向けに投資対象として売り出そうとして、登録なしに手続きを進めれば恐らく法に触れる」と述べている。
・また、国際的な法律事務所として知られるHogan Lovells(ホーガン・ロヴェルズ)のパートナーであるLewis Cohen(ルイス・コーエン)は、ロイターのインタビューにおいて、「投資目的で他人から資金を調達することを意図している場合、売却されたコインは証券と見なすことができる」と述べている。
・真偽のほどは定かではないが、投資家から調達した資金を経営者の休暇費用に使っているプロジェクトも存在するとの話もあり、トークンを発行する事業者のデューデリジェンスや資金使途などもチェックする枠組みの整備が求められる可能性がある。また、投資家側の「本人確認」や「適合性の確認」も要件として課される可能性があるだろう。
・イノベーションを促進するうえでも、適切な規制を課すことは極めて重要だ。しかし、あまりに強固に規制の枠をはめることもイノベーションを阻害する要因となりうる。詐欺的なICO事業者を擁護するつもりは一切ないが、VCから調達した資金を私的な目的に流用しているスタートアップ経営者も存在する。ICOを規制するのなら、VCから調達した資金をも徹底的に監視する仕組みを構築するのが筋というものだ。
・規制をできるだけ行なわずに詐欺的なICOを防ぐやり方も考えられる。たとえば、一気に巨額の資金を調達させるのではなく、段階的に少額ずつ事業者に資金を渡すような仕組みをつくることも検討してもよいだろう。 実際、シンガポールに本拠を置くFund Yourself Now(ファンド・ユアセルフ・ナウ)は段階的な資金調達を行なうスキームをつくっており、良い先行事例となる可能性がある。また、同社はNew Alchemyという企業による「スマートコントラクト監査」を受けていることでも知られている。デューデリジェンスを踏まえたICOを実施するプラットフォームの事例として、個人的には注目している。
・また、投資家保護を考えるうえでは、Blockchain Capital(ブロックチェーンキャピタル)のように、「Rule 506 of Regulation D」のような免除規定を活用することで、一定以上の資金を有する「洗練された投資家」にのみトークンを販売するというやり方もある。
・適切に活用することができた場合、ICOは社会を大きく前進させるポテンシャルを持つ革新的な仕組みだ。我が国の対外的な競争力の向上を目指す上で、ICOという仕組みをどのように生かしていくかについて適切な議論を行なっていく必要があるだろう。
http://diamond.jp/articles/-/142119

第三に、9月15日付け闇株新聞に掲載された「「ビットコインは詐欺だ!」」を紹介しよう。
・表題はJPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOが9月12日、NYでの投資家会議で言い放った言葉です。 これ以外にも「ロクな終わり方をしない」「チューリップよりタチが悪い(注)」「ベネズエラやエクアドル、北朝鮮などに住む人や、麻薬密売人や殺人者の類には利用価値があるかもしれない」「(自行の社員が)取り引きすれば即刻解雇する)」「誰も現実が見えていないことにショックを覚える」などとも言い放っており、米国金融界の代表的経営者で少なくとも表面的には紳士であるはずのダイモン氏が痛烈な表現でビットコインを批判しています。 (注)17世紀のオランダで発生した人類最古のバブルで、8月22日付け「世界経済史における3大バブルとは?」に書いてあります。
・ダイモン氏は代表としてビットコインを名指ししただけで、もちろん仮想通貨全般やその参加者やICOなど「安直な資金調達手段」、それにいつまでたっても何の規制も加えない(中国を除く)各国政府の対応などすべてを批判したはずです。
・リーマンショック前には粗悪モーゲージ関連商品を「しこたま」販売して、米国司法省などに140億ドル(現在の為替で1兆5000億円)もの罰金を支払ったJPモルガンのCEOとして、自ら関与できない分野で誰かが大儲けしている事態は放置できなかったはずです。 そうはいっても米国金融界の重鎮による過激な発言は、さすがにビットコインを含む仮想通貨全般の価格を大きく下落させています。ビットコイン価格はダイモン氏の発言前の4400ドルほどから、本日(9月14日)午後10時すぎには3500ドルまで下落しています。
・ビットコイン価格は9月2日に一時4969ドルの史上最高値となりましたが、中国政府が9月4日にICOを前面禁止し、9月8日には国内の仮想通貨取引所を取引停止としたため、それぞれ4000ドル近くまで下落したものの、またすぐに回復していました。 つまり中国政府の規制よりダイモンCEOの過激な発言の方が効いたことになります。
・さて本誌も一貫してビットコインをはじめとする仮想通貨については懐疑的でしたが、かといって「投資すべきではない」とも「弾ける」とも言っていませんでした。 さらに「ビットコインをはじめとする仮想通貨はバブルか?」と聞かれれば、「バブルとはその価値をこえて価格が大きく上昇すること」であり、そもそも仮想通貨に本源的価値などないため(強いて言えばブロックチェーンを維持するための人件費と電気代だけ)、正確には「バブルですらない」となり、そういう意味では綺麗な花が残るチューリップよりはるかにタチが悪いと考えています。
・しかしバブルでも「バブルよりタチが悪いもの」でも、価格が上昇しているうちは(市場に懐疑的な見方があるうちは)簡単に弾けるものではなく、多少の悪材料が出て価格が調整してもすぐにまた大きく上昇するものと考えているからです。この辺は理論的に説明できるものではありません。
・しかし市場から懐疑的な見方が消えた瞬間に「不思議と」価格は下落を始めるもので、その時点では市場には強気が蔓延しているため「必ず」買い下がる参加者が大量に出現し、それでも価格は下落を続けるため「そのうち」持ちきれなくなってもっと大きな下落に見舞われることになります。 それが「バブルが弾ける最も一般的なパターン」となります。ここでビットコインをはじめとする現在の仮想通貨全般が「その過程に入った」とまでは言い切れませんが、ここのところ「市場から懐疑的な見方が消え始めている」とは感じていました。
・そこにダイモン氏の発言が飛び出したことは決して偶然ではなく、百戦錬磨のダイモン氏がまさに最も効果的なタイミングと感じ、意識的に過激な表現を使ったはずです。1か月前では何の効果もなかったはずです。 仮想通貨全般の時価総額はビットコインが史上最高値となった9月2日に1800億ドル(20兆円)もありましたが、現在は1200億ドルを割り込んでいます。つまり短期間に時価総額の3分の1が「吹っ飛んだ」ことになり、仮想通貨価格が上昇する最大の要因だった「慌てて売らない」も崩れ始めるはずです。
・仮想通貨バブルが(バブルよりもタチが悪いものですが)弾けるところを、目の前で見られるかもしれません。だとすると「絶対にやってはならないこと」は中途半端な水準で買ってしまうことです。それがバブルで大やけどをする最も多いパターンだからです。
http://yamikabu.blog136.fc2.com/blog-entry-2086.html

第四に、上記の続きである9月19日付け闇株新聞「「ビットコインは詐欺だ!」  その2」を紹介しよう。
・昨日は衆議院の解散・総選挙について書こうと思っていましたが、うまくまとまらず結局お休みしてしまいました。 そこで「やっぱり気になる」ビットコインについて、通常より半日遅れで更新します。9月15日付け「同題記事」を書いた直後もビットコインは急落し、一時3000ドルを割り込んでいました。
・記事にも書いたダイモンCEOの過激発言もありますが、やはり中国政府がビットコイン取引所を9月末までに取引停止(取引所閉鎖)にするとのニュースの影響が大きかったようです。 
・ビットコインは9月初めに一時5000ドルをこえていましたが(9月15日付け記事ではこえていないと書きましたが、よく調べるとこえていました)、中国政府は9月4日にICOを全面禁止し、9月8日に取引所閉鎖を発表していましたが詳細がよくわからず4000ドル台前半の取り引きが続いていました。 中国政府は9月14日になって人民元によるビットコイン取引を全面禁止としましたが、中国人によるビットコイン(あるいは仮想通貨全般)の保有自体は禁止していないようで、また仮想通貨同士の取り引きも禁止していないようです。したがって取引所によっては生き残るところも出てくるはずです。
・さらにビットコイン価格は急落後に急速に値を戻し、本日(9月19日)朝方には4000ドルを一時回復しています。とりあえず中国政府の規制も(それもかなり過激な規制も)ダイモンCEOの過激は警鐘も、跳ね返したことになります。
・ここで中国政府の「真意」を推測してみますと、もちろん国内資産の海外流出(つまり中国人が人民元を外貨または海外資産に換えて保有すること)を規制する流れの一環ですが、それに加えて中国の資産が本源的価値のないビットコインなど仮想通貨に交換されていくことは許容できないと考えたはずです。 もっと正確に言うと中国政府に帰属する通貨発行益が、正体の見えない誰かに奪われていくことは絶対に許容できないはずだからです。
・例えば中国人が人民元を金(きん)に換えて保有しても、それは本源的価値のある(変動はしますが)資産に交換しただけであり、全体として中国の富が「正体の見えない誰か」に奪われていることにはならず、また中国政府が外貨準備としてドルを保有することも「ギリギリ許容範囲」と考えられます。 先日のダイモンCEOの過激な警鐘も、基本的には同じ論点であるはずです。
・少し考えるとわかりますが、例えば誰かがビットコインを4000ドルで購入すると(基軸通貨である4000ドルを支払う必要があります)、その4000ドルは当然にそのビットコインを売却した人に全額支払われます。  その売却した人がそのビットコインを購入したときは、そのビットコインを売却した人に全額を支払っています。こうやって考えていくと、もともとビットコインはタダ同然だったため(マイニングコストは考えないとして)、この4000ドルは「全額」開闢以来ビットコインを取得した人(もちろん複数です)の儲けでしかありません。  つまりビットコイン価格の中に本源的価値の取得に要する部分が「ゼロ」となります。つまりどこにも「本源的価値」がありません。
・よくマルチ取引では支払った資金の「大半」が親の儲けとなるため詐欺であるとされていますが、ビットコインは「全額」が誰かの儲けとなり、マルチよりもタチが悪いことになります。 まあマルチはそれでも鍋とかマットレスが届きますが、ビットコインは「いまのところ」売却(現金化)できるとか、限られた店舗で財の購入やサービスが受けられるという「特典」がついているだけです。
・また中国政府が真っ先に禁止したICOも、実体のない未公開株を売却すると犯罪となりますが、とりあえず仮想通貨で調達してそれを現金と交換するだけで「先端の資金調達方法」となってしまいます。
・つまり中国政府の過激な規制も、ダイモンCEOの過激な警鐘も、きわめて当然のものとなります。 翻って日本では、金融庁が本年4月からか改正資金決済法により仮想通貨取引所を登録制とし、仮想通貨全般に「お墨付き」を与えたような印象になっています。そこで日本人の参加が爆発的に増えたはずです。 また少なくとも現時点においてビットコインなど仮想通貨全般や、ICOによる「資金調達」や、VALUなど「もっといかがわしいもの」に対する批判的な風潮はほとんどありません。 また金融庁も引き続き仮想通貨を法体系の中に押し込もうと(つまり最低限のルールを作ることにより正当な商取引と認めようと)しています。 漠然とした不安を感じざるを得ません。
http://yamikabu.blog136.fc2.com/blog-entry-2089.html

第一、第二の記事では、9月15日のこのブログでも取上げたICOについて、より深くみている。 『ブロックチェーン関連企業がICOを活用して資金調達を行なった金額は、2017年では6月時点で約850億円に達しており、昨年の年間実績の7倍に達する水準に到達している。現在では、ブロックチェーン関連のスタートアップに限定すれば、ベンチャーキャピタルではなくICOを活用した資金調達を行なうほうが主流になりつつある』、というのは、ブロックチェーン関連企業にとってみれば、自らが強みを持つ方法なので、当然だろう。 『世界でもバラつくICOの規制』、については、全面的に禁止した中国を除けば、概ね米国SECが打ち出した 『トークンの性質によっては「金融商品」とみなされるうる』、との考え方に収束しつつあるようにも思える。 『一気に巨額の資金を調達させるのではなく、段階的に少額ずつ事業者に資金を渡すような仕組みをつくることも検討してもよいだろう』、というのは良さそうなアイデアだ。
第三、第四の記事で、 『リーマンショック前には粗悪モーゲージ関連商品を「しこたま」販売して、米国司法省などに140億ドル(現在の為替で1兆5000億円)もの罰金を支払ったJPモルガンのCEOとして、自ら関与できない分野で誰かが大儲けしている事態は放置できなかったはずです』、というのは強烈な嫌味だ。  『ここのところ「市場から懐疑的な見方が消え始めている」とは感じていました。そこにダイモン氏の発言が飛び出したことは決して偶然ではなく、百戦錬磨のダイモン氏がまさに最も効果的なタイミングと感じ、意識的に過激な表現を使ったはずです』、との見方はさすがだ。ただ、 『中国の資産が本源的価値のないビットコインなど仮想通貨に交換されていくことは許容できないと考えたはずです』、には違和感を感じた。というのも、中国人のビットコイン取得の基本は、人民元と交換に購入したものではなく、大量の電力を使ったマイニングの報酬として取得したものだからだ。ビットコインに 『「本源的価値」がありません』、というのはその通りだが、本源的価値がないのは、円やドルなどの法定通貨も同様である。 『マルチ取引』との比較は、確かにその通りだが、闇株新聞が仮想通貨に対して抱くマイナスイメージが強く表れたのだろう。
タグ:ICO(Initial Coin Offering) 勝木健太 現在では、ブロックチェーン関連のスタートアップに限定すれば、ベンチャーキャピタルではなくICOを活用した資金調達を行なうほうが主流になりつつある 先進的な証券会社やベンチャーキャピタルの中には、ICOをいち早く自社ビジネスに取り込むような動きを見せている企業も存在 株式を発行する代わりに、ブロックチェーン上で独自トークン(仮想通貨/暗号通貨)を発行し、一般投資家に向けて販売することで、資金調達 企業側からすれば、実現すべきビジョンを掲げ、ICOを実施することで、世界中の一般投資家から資金を調達できることを トークンによっては、ICOを実施してから数週間の間に仮想通貨取引所で取り扱われる場合があり、セカンダリーマーケットが存在 ブロックチェーン関連企業がICOを活用して資金調達を行なった金額は、2017年では6月時点で約850億円に達しており、昨年の年間実績の7倍に達する水準に到達している 投資家としてICOに参加する方法 既存の証券会社やベンチャーキャピタルが「ディスラプト」される可能性が指摘 現状行なわれているICOには数多くの克服すべき課題が存在 事業者としてICOトークンを発行する方法 「『ブロックチェーン・レボリューション』で予言されたICOの現在(後篇) 世界でもバラつくICOの規制 MAS(シンガポール金融監督局)が、ICOに関する声明を公式に発表しており、米SEC(証券取引委員会)と同様、トークンの性質によっては「証券」とみなす可能性がある旨、アナウンスした スイスのツーク リプトバレー 米SECが書簡を公開し、トークンの性質によっては「金融商品」とみなされるうることを明らかにした 017年7月以降、独自トークンを発行したいくつかの米国の仮想通貨関連企業がSECの立ち入り調査を受けた結果、取引停止を言い渡されており、今後、さらなる引き締めが行なわれることが予想 米国やシンガポールの金融当局が示唆しているように、投資家に配当を与えるような「配当型トークン」については「有価証券」とみなし、従来型の規制の枠組みの中で扱うような法規制のデザインの仕方が主流となる可能性も考えられる これまでにICOを通じて調達した資金の返金を求めることを決定 中国人民銀行はICOを全面的に禁止 投資先が共同事業(Common Enterprise)であり 米国のHowey Test(ハウイー・テスト) 収益(Profit)を期待して行なわれ お金(money)の投資(invest)に関することであり プロジェクトを行う事業者の「デューデリジェンス」や「第三者評価」の重要性がますます高まる可能性 トークンの「セキュリティ監査」の重要性についても公式にアナウンス 収益(Profit)が他人の努力に依存している 投資契約 、「利益」や「投資」、「リターン」といった言葉を用いて投資勧誘を行なっているものについては、法に抵触する可能性がある ・イノベーションを促進するうえでも、適切な規制を課すことは極めて重要 JPモルガン・チェース 「「ビットコインは詐欺だ!」 段階的に少額ずつ事業者に資金を渡すような仕組みをつくることも検討してもよいだろう あまりに強固に規制の枠をはめることもイノベーションを阻害する要因となりうる 闇株新聞 規制をできるだけ行なわずに詐欺的なICOを防ぐやり方 ・リーマンショック前には粗悪モーゲージ関連商品を「しこたま」販売して、米国司法省などに140億ドル(現在の為替で1兆5000億円)もの罰金を支払ったJPモルガン ジェイミー・ダイモンCEO チューリップよりタチが悪い ロクな終わり方をしない 中国政府が9月4日にICOを前面禁止 市場から懐疑的な見方が消えた瞬間に「不思議と」価格は下落を始めるもので、その時点では市場には強気が蔓延しているため「必ず」買い下がる参加者が大量に出現し、それでも価格は下落を続けるため「そのうち」持ちきれなくなってもっと大きな下落に見舞われることになります 国内の仮想通貨取引所を取引停止 それが「バブルが弾ける最も一般的なパターン」となります 中国の資産が本源的価値のないビットコインなど仮想通貨に交換されていくことは許容できないと考えたはずです ビットコインは詐欺だ!」  その2 中国政府に帰属する通貨発行益が、正体の見えない誰かに奪われていくことは絶対に許容できないはずだからです 百戦錬磨のダイモン氏がまさに最も効果的なタイミングと感じ、意識的に過激な表現を使ったはずです つまりどこにも「本源的価値」がありません マルチ取引 日本では、金融庁が本年4月からか改正資金決済法により仮想通貨取引所を登録制とし、仮想通貨全般に「お墨付き」を与えたような印象になっています 。そこで日本人の参加が爆発的に増えたはずです また少なくとも現時点においてビットコインなど仮想通貨全般や、ICOによる「資金調達」や、VALUなど「もっといかがわしいもの」に対する批判的な風潮はほとんどありません 漠然とした不安を感じざるを得ません 仮想通貨全般の価格を大きく下落 自ら関与できない分野で誰かが大儲けしている事態は放置できなかったはずです ブロックチェーン・レボリューション (その4)(ICOの現在(前・後篇)、「ビットコインは詐欺だ!」1,2) 仮想通貨 『ブロックチェーン・レボリューション』で予言されたICOの現在(前篇)」 ダイヤモンド・オンライン 暗号通貨
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

北朝鮮問題(その11)(自衛隊の電磁波攻撃対策、北朝鮮で「核危機」?こんなの"でっち上げ"だ 原子力技術者向け専門誌の編集長が激白、骨抜き北朝鮮制裁 安倍首相と外務省は軽率で滑稽だった、北朝鮮「完全破壊」警告 メルケル独首相は賛同せず) [世界情勢]

北朝鮮問題については、9月10日に取上げたが、今日は、(その11)(自衛隊の電磁波攻撃対策、北朝鮮で「核危機」?こんなの"でっち上げ"だ 原子力技術者向け専門誌の編集長が激白、骨抜き北朝鮮制裁 安倍首相と外務省は軽率で滑稽だった、北朝鮮「完全破壊」警告 メルケル独首相は賛同せず) である。

先ずは、9月15日付け東洋経済オンライン「自衛隊の電磁波攻撃対策は本当に「ない」のか 海上自衛隊は対策済み、実は古くから議論」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・北朝鮮が9月3日に行った6回目の核実験以降、日本で「電磁パルス攻撃」という言葉が注目されるようになった。にわかにこの攻撃への対策が叫ばれるようになったが、これはどのような被害と影響を与えるのか。
・北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」9月3日付は核実験が成功したことを報道、その中で「戦略的目的によって高空で爆発させて広大な地域に対する超強力EMP攻撃まで加えられる」と発表している。EMPは電磁パルス、ElectroMagnetic Pulseの略。これを発生させる方法としては、高度30キロメートル以上の高高度で核爆発を起こし、そこから放出されるガンマ線によってEMPを発生させるものと、強力なEMPを発生するミサイルや爆弾を爆発させるものとがある。
・北朝鮮にとっては、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射させて狙ったところに着弾させるまでの技術よりも、ただ高高度に飛ばすミサイル技術でEMP弾頭を爆発させる方法がより簡単だ。すでにICBMを飛ばす技術は持っているので、EMP攻撃の可能性にも言及したのだろう。3日付の「労働新聞」には、「朝鮮労働党の戦略的意図に合わせて」など、「戦略的」という言葉が使われている。これは「核攻撃においていろんなオプションを持っているのだ」と誇示したいがための修辞だ。
▽EMPは社会基盤・インフラの運用を狂わせる
・EMP攻撃はコンピュータや通信機などの電子機器を破壊し、敵の作戦能力をマヒさせることが最大の目的だ。人体への影響としては熱や電流を身体に受ける可能性があるが、原子爆弾のように相対的に低空で爆発するものではないため、死に至るほどの被害はないとされる。
・とはいえ、すでに社会基盤・インフラの運用に使われているコンピュータなどの電子機器をEMPが破壊してしまうため、大規模な被害が生じ社会的に大混乱する可能性があることが最大の懸念となっている。実際に1958年、米国が太平洋中部のジョンストン島の上空約76キロメートルで核弾頭を爆発させた際、約1500キロメートル離れたハワイの家庭や工場のヒューズやブレーカーが切れて大停電が発生したことがある。
・北朝鮮がEMP攻撃に言及すると、菅義偉官房長官は「万が一の事態への備えとして、国民生活の影響を最小限にするための努力が必要だ。対応策を検討したい」と述べた。 当然、警戒・対策はすべきだが、EMP攻撃をいたずらに恐れる必要もないようだ。
・「海上自衛隊の艦船など、対策はすでに十分取られている」と紹介するのは、金沢工業大学教授で元海上自衛隊海将の伊藤俊幸氏だ。EMPの原理について伊藤教授は、「ひどい落雷と同じであり、備えとしては建築物から落雷を逃す避雷針の役割を思い浮かべればいい」と指摘する。落雷を受けても避雷針をつたって外に逃がすという方法のことだ。自衛隊の装備では、すでにEMPを受けても大丈夫なようにシールドで覆うなどしており、海上自衛隊の場合は艦船全体としてうまく逃がすように設計段階から対策が取られているという。
・伊藤教授はまた、「北朝鮮が言うような核爆発によるEMP攻撃は影響が広範囲にわたりすぎて、北朝鮮側も影響を受ける」と指摘する。北朝鮮は日本や米国と比べ電子機器が少なく、インフラなどの運営もさほど電子化されていないという見方もあるが、北朝鮮の電子化はそれでも進んでいる。したがって、彼らがEMP攻撃を仕掛ける可能性は極めて低い。
▽EMP攻撃に備えるシステムを提供する企業も
・EMP攻撃に備えるためのシステムを提供している日本企業もある。三菱電機はオフィスビルなどを対象に「電磁シールドシステム」という強力なEMPなどの電磁波攻撃に備えたシステムを提供しているほどだ。実は、EMP攻撃対策で、日本企業が貢献してきた歴史があるのは、あまり知られていない。
・電磁波パルスによる影響は、前述した1958年のジョンストン島の例に加え、1960年代と1980年代前半に真剣に考えられたことがある。トランジスタの開発が本格化した1960年代に、米国がトランジスタを使った人工衛星を発射したが、運用中に、水素爆弾の爆破実験で大気中に放出された放射線によって6週間動作しなくなったことがある。これを受けてトランジスタやその後のIC(集積回路)の開発では、EMPの被害を最小限にすることを念頭に置いてきた。
・また、米国のロナルド・レーガン大統領が「スターウォーズ構想」と呼ぶ戦略防衛構想(SDI)を発表し、これを契機に冷戦が激化した1980年代前半には、弾道ミサイル防衛(BMD)の必要性が騒がれ、この時期にもEMP攻撃と対策が議論された。イージス艦によるミサイル発射によって大気圏外で敵のミサイルを爆破するという現在のBMDとは違い、当時は発射されたミサイルを成層圏内で核爆発の威力によって除去することが想定され、その際に発生するEMPによる被害が懸念された。当時、日本でも国会で取り上げられたことがある。
▽1980年代にすでに対策は存在していた
・1986年11月6日の衆議院予算委員会で、故・楢崎弥之助議員(社会民主連合)がEMP攻撃を取り上げ、対策などについて政府に質問している。EMP攻撃が「今米国の猛烈な関心事になっている」とし、1984年に北米防空司令部と空軍基地を結ぶ光通信装置を日本電気が納入した事実を、EMP対策で購入したのだと紹介、自衛隊の対策はどうなっているのだと追及した。さらに楢崎議員は、海上自衛隊第2術科学校(神奈川県横須賀市、機関科関係、情報、外国語等の教育訓練を行う)で使われている教科書に、対策が書いてあることにまで言及している。
・これに対し、防衛庁防衛局長(当時)だった西廣整輝氏(故人、元防衛事務次官)は、「現在特段に私ども十分な知識があるわけでもないし、その対策を特にとっておるということではございません」と答弁している。また中曽根康弘首相も「電磁パルスの問題については私も前に聞いたことがありまして、個人的には多少勉強もしてみたことがあります。研究課題でもある」と発言している。
・小野寺五典防衛相は9月7日、記者会見で「電磁パルスによる攻撃でどのような影響が出るのか知見が確定しているわけではない」と発言した。少なくとも30年以上前から対策の必要性が指摘されていたにもかかわらず、自衛隊は何もしていなかったということか。防衛省は2018年度予算の概算要求で電磁パルス攻撃対策として14億円を計上、電磁パルス弾の試作や防護技術を研究するという。
・核を使った攻撃は威力は最大だが、その技術は古い。同盟国の米国では対策がなされ、米国と共同行動をとる海上自衛隊でも対策がなされているというならば、小野寺防衛相の発言はどのような意味なのか。
http://toyokeizai.net/articles/-/188717

次に、9月16日付け東洋経済オンラインがロイター記事を転載した「北朝鮮で「核危機」?こんなの"でっち上げ"だ 原子力技術者向け専門誌の編集長が激白」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・北朝鮮は弾道ミサイル発射、核兵器実験、軍事演習など、バカげているが、世界を動揺させることを数多く行っている。しかし、この数カ月の北朝鮮「危機」は、おおむねでっち上げられた危機だ。 1年前、北朝鮮が米国に核弾頭を搭載したミサイルを発射する可能性は、基本的にゼロだっただろう。つまり北朝鮮は、そのような攻撃を行う能力を持ち合わせていなかったのだ。それ以来、北朝鮮政府は技術的な進歩を遂げてきた。
▽北朝鮮が米本土を攻撃することはない
・しかし、一部の軍事アナリストたちがそう信じている一方で、北朝鮮が米国本土を攻撃する飛距離を持つミサイル、それに装備できるように小型化された核弾頭、大気圏に再突入するときの熱と圧力に、弾頭部分が耐えられるようにする大気圏再突入技術を保有しているという、信頼できる公開済みの証拠は存在しない、と主張するアナリストたちもいる。
・もちろんこのことは、北朝鮮危機という「ショー」が無害であると言っているわけではない。しかし、たとえ北朝鮮がそのような技術的能力を持っていたとしても、同国が米国を核ミサイルで攻撃する可能性は、「ある決定的な理由」のために、限りなく低いままだろう。 それはバラク・オバマ政権のジョン・ウルフストホール元軍備管理担当シニアディレクターが詳しく説明したように、北朝鮮の指導者金正恩氏はクレージーでもなければ、自暴自棄にもなっていないからだ。北朝鮮の指導者は、もし核兵器を使用すれば、自らの政権が数時間(それどころか数分)以内で消滅させられるであろうことを知っているのだ。
・米国の弾道ミサイルと爆撃機に装備されたざっと1590発の核弾頭が、その予想を確実なものにしている(この問題について最も信頼のおける報告内容の公表によると、北朝鮮は10発から20発の核弾頭を作るための核分裂性物質を獲得したにすぎない)。
・米国が通常兵器か核兵器で、北朝鮮に先制軍事攻撃を行うということもまた考えにくい。なぜならば、それによって韓国とおそらくもっと多くの地域で、数十万人の死傷者が出ることはほぼ間違いないからだ。北朝鮮はたとえ核兵器を使用しないとしても、北朝鮮の国営通信社が脅してきたように、ソウルを「火の海」に変えるような通常爆薬の集中砲火で、戦争の序盤は数千に及ぶロケット砲やあらゆる砲撃を行うことができるだろう。 北朝鮮政府はまた、化学兵器爆弾、ロケット弾頭もたくさん保有しており、ソウルをサリンとVX神経ガスの海に変える能力も持っている。
・相互抑止力の否定しようがない現実に照らし合わせれば、2017年の北朝鮮「危機」はもっと正確に言えば、自国の宣伝目的のために、金正恩氏とドナルド・トランプ大統領が催しているメディアを使った人形劇のように思える。
▽侮辱と感情的な反応という悪循環
・過熱した報道の中で、政治的影響力、交渉上の強み、自己満足のために始められた正恩氏やトランプ大統領による国際劇場が発する情報は、ケーブルテレビとインターネットで一日中繰り返されているので、あっという間に拡大してしまう。そして、こうした情報は、恥さらしの国家的侮辱と考えられるようになっている。
・その侮辱への感情的な反応には、破局への悪循環が存在する。もっと具体的な言葉で言うならば、もし米軍が、最近日本上空を飛行した北朝鮮のミサイルを打ち落としていたら、正恩氏は立腹、あるいは虚勢を張るためにグアム島の方向に別のミサイルを発射しなかっただろうか。そして、それに対してトランプ大統領は、マッチョな対応を取らざるをえないと感じなかっただろうか? つまりこれは、キノコ雲という最終的な可能性に通じているのだ。
・今回の北朝鮮危機は、でっち上げられた芝居がかったものだが、これによって生じる不慮の戦争の脅威を緩和する最善策は、正恩氏とトランプ大統領という主役を説得することだろう。彼らが催しているショーは信じがたいものだし、これを通じて両者が求めているものを手にすることはできないだろう。
・が、私が言うところの説得では、2人の自己陶酔型指導者たちに、生と死とテレビ視聴率の問題に関して、自らのポリシーをすぐ変更させる完全な動機づけにはならないだろう。
・だから私は、2番目に最善だと思うアプローチを提案する。それは、メディアがあたかもすべてが変わってしまい、戦争がすぐそこに近付いているかのように、記事を書いたり、放送するのをやめるべきだ、というものだ。 
・北朝鮮は何年間も、使用可能な核兵器の貯蔵に取り組んできた。最新の地下核実験は以前の爆発よりも、より高い核出力を持ち、TNT換算で10万トンをやや超える爆発力を生み出した。これは、長崎に落とされた原爆の規模の4倍から5倍に相当する。より高い核出力は、水素同位体で「強化された」核分裂爆弾か、あるいは水素爆弾として一般的に知られる本物の核融合爆弾によるものである可能性が高い。だが、現在わかっている情報だけでは、どちらなのかはハッキリとわからない。
・しかし9月3日の実験が、本当の水素爆弾を取り入れていたとしても、これは「形勢を一変させるもの」にはならないだろうと、ロスアラモス国立研究所の元所長であり、米国の北朝鮮核開発プログラムに関する米国随一の専門家であるジークフリート・ヘッカー氏は最近、私が編集する雑誌『the Bulletin of the Atomic Scientists(原子力科学者会報)』に語っている。 もし米国の都市に核が落とされれば、それが核分裂爆弾だろうが核融合爆弾だろうが、核出力が20、100、あるいは800キロトンだろうが、その都市は荒廃し、数十万人が即死することになるだろう。とはいうものの、核兵器を米国かその同盟国に発射することは、確実に国家的自殺行為となるであろうことを、北朝鮮の指導者は知っている。
▽危機の伝え方が危機を拡大させている
・明らかに、北朝鮮の核爆弾と弾道ミサイル実験は重要な出来事であり、ニュースメディアが報道しなければならない国際ニュースだ。しかし世界のメディアによるその「危機」の伝え方は、実際に危機を拡大する要因となっていて、それゆえ判断の誤りや戦争の可能性を生じさせているのだ。
・もしもっと多くのジャーナリストが正恩氏とトランプ大統領の人形劇を取るに足らないものと扱い始めれば、北朝鮮問題の状況は、一種の長い骨の折れる外交交渉に移行し始めるかもしれない。これなら、受け入れ可能な解決策につながる。 北朝鮮は、米国に深刻な攻撃を行おうものなら、たちまち消えてなくなってしまうような小さく、貧しい国だ。なので、深刻な攻撃を行う可能性はほぼゼロに等しい。メディアが危機感をあおるようなことをしなければ、米国の先制攻撃の可能性も同様に低下するだろう。
・ジャーナリストが米国と北朝鮮の指導者に、責任感のある振る舞いをさせることはできない。しかし、北朝鮮の「危機」が実際には朝鮮半島の膠着状態にすぎず、大言壮語にあふれた人形劇が、プロの外交交渉とは比べものにならない稚拙な代替手段にすぎないということを、メディアは読者や視聴者に理解してもらう手助けはできるのだ。
http://toyokeizai.net/articles/-/188833

第三に、軍事評論家、ジャーナリストの田岡俊次氏が9月17日付け日刊ゲンダイに寄稿した「骨抜き北朝鮮制裁 安倍首相と外務省は軽率で滑稽だった」を紹介しよう。
・北朝鮮が9月3日に水爆実験を行った翌日、国連安全保障理事会緊急会合でのヘイリー米国連大使(インド系女性、強硬右派でトランプ氏のお気に入り)の演説をCNNで聴いて迫力を感じた。 「(北の核開発が始まって以来)この24年間、徐々に制裁を強めてきたが無駄だった。もうたくさんだ」として最も強力、決定的な制裁を求めた。これまで8回の制裁決議が北朝鮮の核・ミサイル開発を阻止できなかったのは事実だから、彼女の叫びにも一理はあった。
・6日に米国が示した制裁案は石油の全面禁輸、北朝鮮国外労働者(推定9万人余)の雇用禁止、金正恩委員長の資産凍結と渡航禁止、承諾なしの船舶の臨検、など極めて厳しかった。
・ところが、米国はそれをほとんど骨抜きにする修正案を10日、安保理メンバー国に示し、11日にそれが全会一致で採択された。「原油の輸出は過去1年間の実績以下」「石油精製品輸出は年200万バレル(27万トン)以下」「国外労働者の新規雇用には安保理の許可が必要」「船舶の検査は旗国(船籍を置く国)の同意を得て行う」などで、金正恩氏への制裁には触れていない。原油供給を減らさないのは「おまえはクビだ!」と怒鳴ったあと、「基本給は従来通り」と言うような形だ。
・ヘイリー大使は「今回の決議はトランプ大統領と中国の習近平国家主席の間で築かれた強い関係がなければ成し得なかった」と安保理で述べた。
・石油の全面禁輸をすれば北朝鮮に致命的で、自暴自棄になりかねない。日本の南部仏印(南ベトナム)進駐に対し、米国が1941年8月に石油禁輸をしたため、日本が「800万トンの石油備蓄が尽きて降伏するよりは」と真珠湾に打って出たのと似た状況になる可能性があった。中国は必死で米国説得につとめ、当初の米国の制裁案には拒否権を行使する構えを示した。
・米国防長官マティス海兵大将(退役)、大統領首席補佐官ケリー海兵大将(同)、安全保障担当官マクマスター陸軍中将(現役)ら軍人も、北朝鮮に武力行使をして、1953年以来休戦状態にある朝鮮戦争が再燃すれば、北朝鮮だけでなく韓国、日本にも途方もない被害が及ぶから慎重で、大統領に現実を説いた。
・今回、北朝鮮が実験した威力160キロトン(爆薬16万トン相当)の水爆の「熱効果」は半径約4.5キロ以内で全員を死亡させ、約6・5キロ以内で「第2度火傷」(皮膚の30%以上に及べばすぐ治療しないと致命的)を生じさせる。もし都心に落ちれば6.5キロ圏内の人口は200万人、昼間ならさらに多い。その半数は死亡する計算になる。それ以外に放射性降下物の犠牲者も出る。
・これを考えれば、戦争になる危険を知らないように、ひたすら厳しい制裁を求めて回った安倍首相や外務省の行動は軽率、滑稽で、それと逆の姿勢を取った中国は米国に感謝され、「強い関係」を裏付ける結果となった。安倍首相は12日「格段に厳しい制裁決議が迅速に全会一致で採択されたことを評価する」と語ったが、予期に反し、北朝鮮を追い詰めないよう、大幅に後退した制裁案を米国が出し、それが9回目の安保理決議となったことで大ヤケドした体面をなんとか保とうと努めているように聞こえる。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/213819/1

第四に、9月21日付けロイター「北朝鮮「完全破壊」警告、メルケル独首相は賛同せず」を紹介しよう。
・ドイツのメルケル首相は20日、トランプ米大統領が前日、米国は北朝鮮を「完全に破壊」せざるを得なくなる可能性があると述べたことについてドイツは賛同できないとし、北朝鮮問題は外交手段のみを通して解決する必要があるとの考えを示した。
・トランプ大統領は19日にニューヨークの国連本部で行った就任後初の一般討論演説で、「米国、もしくは米国の同盟国を守る必要に迫られた場合、北朝鮮を完全に破壊する以外の選択肢はなくなる」述べた。
・これについてメルケル首相はドイチェ・ヴェレ放送に対し、「こうした警告には賛同できない」とし、「いかなる軍事行動も完全に不適切であると考えており、ドイツは外交的な解決を主張する」と述べた。 そのうえで「北朝鮮問題に対しては制裁措置の実施が正しい対処法で、それ以外のすべては誤った手法となる」と語った。 メルケル氏は数日前にトランプ氏と電話で会談し、外交的な解決策を模索する必要があるとの考えを伝えたとしている。
http://jp.reuters.com/article/np-de-merkel-0920-idJPKCN1BV2KC?feedType=RSS&feedName=topNews&utm_source=Sailthru&utm_medium=email&utm_campaign=Weekday%20Newsletter%20%282017%29%202017-09-21&utm_term=JP%20Daily%20Mail

第一の記事で、電磁パルス攻撃(EMP)に対し、 『海上自衛隊の場合は艦船全体としてうまく逃がすように設計段階から対策が取られている』、にも拘らず、自衛隊全体としては、まだということらしい。鋼鉄製の艦船であれば、シールドも簡単だが、陸上自衛隊や航空自衛隊の場合はそう簡単ではないのかも知れない。『1986年11月6日の衆議院予算委員会で、故・楢崎弥之助議員(社会民主連合)がEMP攻撃を取り上げ、対策などについて政府に質問している』、衆院の「爆弾質問男」に相応しい、いい質問だ。 『2018年度予算の概算要求で電磁パルス攻撃対策として14億円を計上』、ということは、 『少なくとも30年以上前から対策の必要性が指摘されていたにもかかわらず、自衛隊は何もしていなかったということか』、なんとも頼りない話だ。或いは、PKO日報問題にみられる文書管理のいいかげんさが影響している、のかも知れない。
第二の記事で、 『2017年の北朝鮮「危機」はもっと正確に言えば、自国の宣伝目的のために、金正恩氏とドナルド・トランプ大統領が催しているメディアを使った人形劇のように思える』、 『もしもっと多くのジャーナリストが正恩氏とトランプ大統領の人形劇を取るに足らないものと扱い始めれば、北朝鮮問題の状況は、一種の長い骨の折れる外交交渉に移行し始めるかもしれない』、などの指摘には同感である。
第三の記事で、 『戦争になる危険を知らないように、ひたすら厳しい制裁を求めて回った安倍首相や外務省の行動は軽率、滑稽で、それと逆の姿勢を取った中国は米国に感謝され、「強い関係」を裏付ける結果となった』、との指摘もその通りだ。
第四の記事で、 『メルケル首相は20日、トランプ米大統領が前日、米国は北朝鮮を「完全に破壊」せざるを得なくなる可能性があると述べたことについてドイツは賛同できないとし、北朝鮮問題は外交手段のみを通して解決する必要があるとの考えを示した』、というのはメルケル首相らしい穏当な反応だ。安部首相がトランプを煽っているのとは大違いで、国際社会がメルケル首相を支持するのは明らかだろう。
タグ:北朝鮮問題 (その11)(自衛隊の電磁波攻撃対策、北朝鮮で「核危機」?こんなの"でっち上げ"だ 原子力技術者向け専門誌の編集長が激白、骨抜き北朝鮮制裁 安倍首相と外務省は軽率で滑稽だった、北朝鮮「完全破壊」警告 メルケル独首相は賛同せず) 東洋経済オンライン 自衛隊の電磁波攻撃対策は本当に「ない」のか 海上自衛隊は対策済み、実は古くから議論 電磁パルス攻撃 1958年、米国が太平洋中部のジョンストン島の上空約76キロメートルで核弾頭を爆発させた際、約1500キロメートル離れたハワイの家庭や工場のヒューズやブレーカーが切れて大停電が発生したことがある 海上自衛隊の艦船など、対策はすでに十分取られている 元海上自衛隊海将の伊藤俊幸氏 三菱電機 オフィスビルなどを対象に「電磁シールドシステム」という強力なEMPなどの電磁波攻撃に備えたシステムを提供 トランジスタやその後のIC(集積回路)の開発では、EMPの被害を最小限にすることを念頭に置いてきた 1986年11月6日の衆議院予算委員会で、故・楢崎弥之助議員(社会民主連合)がEMP攻撃を取り上げ、対策などについて政府に質問している 少なくとも30年以上前から対策の必要性が指摘されていたにもかかわらず、自衛隊は何もしていなかったということか 防衛省は2018年度予算の概算要求で電磁パルス攻撃対策として14億円を計上、電磁パルス弾の試作や防護技術を研究するという ロイター記事を転載 北朝鮮で「核危機」?こんなの"でっち上げ"だ 原子力技術者向け専門誌の編集長が激白 、北朝鮮の指導者金正恩氏はクレージーでもなければ、自暴自棄にもなっていないからだ 2017年の北朝鮮「危機」はもっと正確に言えば、自国の宣伝目的のために、金正恩氏とドナルド・トランプ大統領が催しているメディアを使った人形劇のように思える もしもっと多くのジャーナリストが正恩氏とトランプ大統領の人形劇を取るに足らないものと扱い始めれば、北朝鮮問題の状況は、一種の長い骨の折れる外交交渉に移行し始めるかもしれない 北朝鮮の「危機」が実際には朝鮮半島の膠着状態にすぎず、大言壮語にあふれた人形劇が、プロの外交交渉とは比べものにならない稚拙な代替手段にすぎないということを、メディアは読者や視聴者に理解してもらう手助けはできるのだ 田岡俊次 日刊ゲンダイ 骨抜き北朝鮮制裁 安倍首相と外務省は軽率で滑稽だった 国連安全保障理事会緊急会 6日に米国が示した制裁案は石油の全面禁輸、北朝鮮国外労働者(推定9万人余)の雇用禁止、金正恩委員長の資産凍結と渡航禁止、承諾なしの船舶の臨検、など極めて厳しかった 米国はそれをほとんど骨抜きにする修正案を10日、安保理メンバー国に示し、11日にそれが全会一致で採択された ・ヘイリー大使は「今回の決議はトランプ大統領と中国の習近平国家主席の間で築かれた強い関係がなければ成し得なかった」と安保理で述べた 、戦争になる危険を知らないように、ひたすら厳しい制裁を求めて回った安倍首相や外務省の行動は軽率、滑稽で、それと逆の姿勢を取った中国は米国に感謝され、「強い関係」を裏付ける結果となった ロイター 北朝鮮「完全破壊」警告、メルケル独首相は賛同せず
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感