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ブラック企業(その15)(「夢とやりがい」を強調する企業はなぜ危険なのか? ブラック企業チェックリスト、元内閣府の官僚が経験した「ブラックな組織」の実態 倒れる前に実践すべき“組織サバイバル術”とは、勤続10年で手取り15万 子を守る現場の低すぎる「命の価値」) [社会]

ブラック企業については、昨年2月26日に取上げた。今日は、(その15)(「夢とやりがい」を強調する企業はなぜ危険なのか? ブラック企業チェックリスト、元内閣府の官僚が経験した「ブラックな組織」の実態 倒れる前に実践すべき“組織サバイバル術”とは、勤続10年で手取り15万 子を守る現場の低すぎる「命の価値」)である。

先ずは、昨年5月6日付け弁護士ドットコムニュース「「夢とやりがい」を強調する企業はなぜ危険なのか? ブラック企業チェックリスト」を紹介しよう。
https://www.bengo4.com/c_5/n_14435/
・『職場でトラブルに遭遇しても、対処法がわからない人も多いでしょう。そこで、いざという時に備えて、ぜひ知って欲しい法律知識を笠置裕亮弁護士がお届けします。 連載の第13回は「入社後のブラック企業の見分け方」です。入社前には分からなかったものの、入社後に自分の会社に対して疑問を感じた人もいるかもしれません。そんなとき、労働時間や賃金、退職届や社風など、いくつかチェックポイントがあります。 本当に問題のある会社かどうかを見分ける方法について、笠置弁護士に解説してもらいました』、なるほど。
・『入社後に見分ける方法  新社会人になられた皆さんの中には、これまでののんびりとした学生生活から、1日の大半を仕事に費やさなければならないという環境の変化に戸惑っている方も多くいらっしゃるのではないかと思います。 さらに皆さんの中には、入社前に聞いていた話とは全く違い、入社した会社の職場環境があまりにも良くないことに苦しんでおられる方も多くいらっしゃるのではないかと思います。 以前、入社前の段階で「ブラック企業」かどうかを見分ける方法について解説をしました(https://www.bengo4.com/c_5/n_13649/)。 今回は、不運にも入社前の段階では見分けることができないまま、「ブラック企業」に入社してしまったかもしれない…という場合において、本当に問題のある会社かどうかを見分ける方法について解説したいと思います』、興味深そうだ。
・『ポイント1「長時間労働、労働時間管理なし」  まず、労働時間に関していうと、求人段階で社員の本当の残業時間を開示している会社はまずないと言ってよいでしょう。 そのため、入社前の段階ではそれほど忙しくなく、残業があったとしても月20時間程度と聞いていたにもかかわらず、実際には過労死ラインを超えるような長時間残業を強いられたり、有休を取得することを拒否されたといったトラブルはよく耳にします。 社員に対し結果を出すことを強く求めつつ、結果を出すためには長時間労働は当然であることを強調したり、労働時間管理をきちんと行わないなどといった会社は、要注意です』、「社員に対し結果を出すことを強く求めつつ、結果を出すためには長時間労働は当然であることを強調」、これはまさにやりがい詐欺だ。
・『ポイント2「固定残業代に注意」  賃金に関しても、注意すべきポイントがあります。トラブルになることが特に多いのは、固定残業代です。 例えば、入社前の段階では基本給額が月22万円だということで提示を受けていたにもかかわらず、入社した後に提示された契約書には、基本給が14万円、固定残業代が8万円と書かれており、いくら働いても残業代が出ないというケースです。 このような会社は、新入社員であっても長時間労働をあらかじめ見込んでいるため、人件費を節約するために固定残業代制度を導入しているわけですが、基本給額が14万円などという会社には誰も人が集まらないため、入社前の段階ではあたかも一般的な基本給額であるかのように装って求人を行っているのです。 このようなケースにおいて、国による監督が十分機能しているとは言えないため、問題のある求人条件が横行してしまっている状況にあります。なぜ基本給額をごまかすのかといえば、安く長時間労働をさせるためですから、社員の方々としては要注意です』、これは全くの詐欺だ。
・『ポイント3「辞められないような制度はないか?」  人事管理の面でいえば、社員が簡単に辞められないような制度を採用している会社は要注意です。 例えば、退職届を提出する期限を、退職日から相当前(3か月以上前など)に設定していたり、入社祝い金や会社の研修費用を支給しつつも貸し付けという形をとり、入社後5年以内に辞めた場合には返金を求めたりするなどし、トラブルに発展しているケースがあります。 前借金や損害賠償の予定については、実際には労基法により厳しく規制されています。 会社がなぜこのような制度を導入しているかと言えば、劣悪な職場環境等に耐えかねて社員がどんどん退職してしまうため、少しでも足止めをさせようとしているからです。 離職率の高さは、入社前の段階で「ブラック企業」を見分けるための有用なポイントですが、入社後の段階では、離職をさせないような仕組みを採用しているかどうかが重要なポイントだと言えるでしょう』、「離職をさせないような仕組みを採用しているかどうかが重要なポイント」、なるほど。
・『ポイント4「夢ややりがいの強調」  社風として、夢ややりがいを強調し、努力・気合・感謝などといった精神論を強調している会社も要注意です。会社としては、社員に対して精神論を強調することで、会社の劣悪な職場環境について目を向けさせないという狙いがあります。 本当は残業をさせている時間に応じて残業代を払わないといけないところを、「社員自身が好きでやっていることだから」と思わせることで、サービス残業をさせてしまえるわけです。会社にとってこれほど楽な人件費節約術はありません。 経営者の責務は、経営を安定させつつ、社員の生活や健康を考えなければならないはずなのですが、以上に共通しているのは、むしろ会社の出費の節約にばかり目を向けてしまっているということです。このような経営方針の職場は雰囲気が荒み、日常的にハラスメントが蔓延してしまいます。 ここでご紹介したポイントを参考にしていただきつつ、ご自身の会社に問題があるかどうかを今一度確認されてみてはいかがでしょうか。(笠置裕亮弁護士の連載コラム「知っておいて損はない!労働豆知識」では、笠置弁護士の元に寄せられる労働相談などから、働くすべての人に知っておいてもらいたい知識、いざというときに役立つ情報をお届けします』、「社風として、夢ややりがいを強調し、努力・気合・感謝などといった精神論を強調している会社」は前述の「やりがい詐欺」そのものだ。「共通しているのは、むしろ会社の出費の節約にばかり目を向けてしまっているということです。このような経営方針の職場は雰囲気が荒み、日常的にハラスメントが蔓延してしまいます」、こんなブラック企業は働く価値がないので、早目に退職するに越したことはなさそうだ。

次に、6月3日付けダイヤモンド・オンラインが転載したAERAdot「元内閣府の官僚が経験した「ブラックな組織」の実態 倒れる前に実践すべき“組織サバイバル術”とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/309770
・『仕事にやりがいを感じていている人でも、労働環境がブラックな人でも、転職を考えている人の多くは「人間関係」に悩み、それを主な転職理由としています。気まぐれな上司、言うことをきかない部下、一方的に敵視してくる同期……組織とは人がつくり、人で成り立つものであるがゆえに、人間関係の悩みは尽きません。自分が所属する組織の中でどう振る舞い、どのように人間関係を築くかは、決してAIには代替できない「最強のスキル」なのです。特に規律を重んじる官僚組織では、それはより顕著になります。内閣府の元官僚・久保田崇さんはハードな現場で「処世術(スキル)」を武器に生き残ってきました。その一部を『官僚が学んだ究極の組織内サバイバル術』(朝日新書)より抜粋。今回は「ブラックな職場から身を守る術」というテーマで、心身を病む前に人間関係を“やり過ごす”スキルを紹介します。 霞が関の官庁に勤めていた20代から30代の頃は月に150時間の残業をしていました。残業の多さやストレスに耐えかねて体に不調が現れたり国会内で倒れたこともあります。しかし、私にとって幸いだったことは、苦しくてつらい法案作成作業の先には、生きづらさを抱える当事者を支援する仕組みが整い、少しでも社会がよくなるという実感が持てたことでした。さらには、その苦しいときを共に励まし合いながら過ごすことができた上司や同僚、部下などチームのメンバーに恵まれたことです。それがなかったら、とてもやっていけなかったに違いありません。 『ブラック霞が関』(2020年、新潮新書)の著者で友人の千正康裕さんがこう述べています。) <厚労省を含め霞が関では、仕事が増え続ける一方で、人員は減り、長時間労働が常態化しています。長時間労働そのものの問題もありますが、より本質的なつらさは、社会の役に立ちたい、この国で暮らしている人たちの生活を少しでもよくしたい、そのための政策をつくれるはずだという思いで官僚になったのに、そういう実感が持てずにいることです。> 長時間労働が常態化していた過去の自分を振り返ってみても、千正さんのいう通りだと思います。人は、多少残業が多くても、その作業の先にお客さんの笑顔や明るい未来が見えていれば、なんとか頑張っていけます。その逆に、その作業がなんの役に立っているかわからない、あるいは後ろ向きな内容であるとき、人の精神は病んでいきます。それに加えて、パワハラ上司に心ない言葉をぶつけられたり人を人と思わないような扱いをされれば耐えきれずに病んだり壊れたりするのは当たり前です。 長時間労働を正当化してはいけませんし、それを強いる組織(会社)に問題があることは明らかですが、どうしても今すぐにそれを改善することが難しい場合、組織や上司はその先にあるビジョンを共有したりチームが励まし合うような雰囲気づくりなどを心がけていただきたいと思います』、「人は、多少残業が多くても、その作業の先にお客さんの笑顔や明るい未来が見えていれば、なんとか頑張っていけます。その逆に、その作業がなんの役に立っているかわからない、あるいは後ろ向きな内容であるとき、人の精神は病んでいきます。それに加えて、パワハラ上司に心ない言葉をぶつけられたり人を人と思わないような扱いをされれば耐えきれずに病んだり壊れたりするのは当たり前です」、なるほど。
・『長時間労働から身を守る方法  とはいえ、長時間労働を避けられるならば、避けるに越したことはありません。個人として身を守る方法を身につけた方が良いでしょう。 1 業務を効率化する 2 人間関係を向上させて余計な業務を生じさせない 3 職場改善提案を行う ここでは3つの方法に触れます。 1つ目は業務の効率化です。電子化によるスピードアップなどは誰しも取り組んでいることかと思いますが、その作業のアウトプットの「イメージ」や「完成度」についても吟味すべきです。 さまざまな観点からの批判やツッコミに耐えられるようによく練ってつくった文章や資料が、発注者の課長に見せたところ、よく見ずにボツにされた。そんな経験があなたにもあるのではないでしょうか? これは、発注者が求めるアウトプットの「イメージ」が受注者のあなたの「イメージ」とずれていたのでしょう。また、「イメージ」は一致していたとしても、発注者が求めているのはもっと簡易な資料であって、あなたが労力をそこまで投入して完成度を高める必要はなかったというケースも良くあることです。このようなズレを無くすために、労力を投入する前にアウトプットのラフイメージを持って発注者と打ち合わせをすべきです。そうすれば無駄な作業を減らすことができます。) 2つ目は上司を含む職場内の人間関係の構築です。これをすることによって、あなたが担当する仕事がスムーズに進みます。逆にこれを怠ると、「俺はこの件を聞いていないぞ」などと言われ、仮に相手に悪意がないとしても無駄な作業が生じたり、時間が余計にかかったりしてしまいます。 3つ目は、長時間労働が生じていることや人員の増加が必要であること、作業を効率化するための電子・ペーパーレス化などを人事課や総務課などに提案することです。これは個人が提案するより人数を集めたほうが効果的なので、職場の仲間にも相談して連携して声をあげましょう。職場に労働組合があるのなら、そのような場を通じて声をあげるやり方もあるでしょう。私は内閣府に勤めていた頃は、省庁横断の若手官僚の会「新しい霞ヶ関を創る若手の会(プロジェクトK)」の仲間とともに職場環境の改善提案を行いました』、「労力を投入する前にアウトプットのラフイメージを持って発注者と打ち合わせをすべき」、「上司を含む職場内の人間関係の構築」、「長時間労働が生じていることや人員の増加が必要であること、作業を効率化するための電子・ペーパーレス化などを人事課や総務課などに提案すること」、これらは確かに有効なようだ。
・『「その人を変えられる」と思わないこと  ワンマン社長やパワハラ上司に悩んだ経験がある方は多いと思います。本書は、人間関係をサバイバルすることを推奨していますが、心身がすでに限界の状態にある方に、無理してでも頑張れというつもりはありません。限界の状態になる前に、まずは医療機関を受診されることをおすすめします。 そして、原因となっている相手を「変えられる」と思わないことが大切です。こちらがあいさつをしても返してこないような相手に変わってほしいと思うから、腹を立てたり嫌な気持ちになったりするのです。「この人はこういう人なのだ」と受け入れること、その人と距離を置いてできるだけ関わらないようにすること(仕事上の最小限の付き合いに止めること)が大事です。 「その人を変える」より、自分の考え方や対応方法を変えることの方が有効ですので、難しい人間関係においても、なんとかやり過ごす術(サバイバル術)を身につけることが大事です。そして、難しい人間関係のサバイバル術を身につければ、新しい環境や転職先においても、活躍できる場面が多くなります。なぜなら、逆説的になりますが、転職理由で職場の人間関係を挙げる人が多いということは、それをサバイバルできる能力を身につけた人は貴重な存在となり、どんな職場でもしなやかに働くことができるからです。 また、組織で新規事業等への人事配置を担当した経験から言えば、複雑な人間関係を問題なくやり過ごせそうな職員は、それだけで評価の対象となります。とは言え、すでに述べたようにその相手が暴力やパワハラ、違法行為や不正に関わっている場合は、記録を残すなどして毅然(きぜん)とした対処をすることをおすすめします。(久保田崇氏の略歴はリンク先参照)』、「「その人を変える」より、自分の考え方や対応方法を変えることの方が有効ですので、難しい人間関係においても、なんとかやり過ごす術(サバイバル術)を身につけることが大事です。そして、難しい人間関係のサバイバル術を身につければ、新しい環境や転職先においても、活躍できる場面が多くなります。なぜなら、逆説的になりますが、転職理由で職場の人間関係を挙げる人が多いということは、それをサバイバルできる能力を身につけた人は貴重な存在となり、どんな職場でもしなやかに働くことができるからです」、「難しい人間関係においても、なんとかやり過ごす術(サバイバル術)を身につけることが大事です。そして、難しい人間関係のサバイバル術を身につければ、新しい環境や転職先においても、活躍できる場面が多くなります」、確かにその通りなのかも知れない。

第三に、本年3月8日付け日経ビジネスオンラインが掲載した健康社会学者(Ph.D.)の河合 薫氏による「勤続10年で手取り15万 子を守る現場の低すぎる「命の価値」」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00238/
・『今回は「命の価値」について考えてみる。 ーー突然ですが。 わたしのお給料は基本給 11万5000円 そこに手当がついて、手取り15万円ほど。賞与はほぼ寸志です。年収は250万に届きません。指定管理(注)の児童館長として8年。1円も上がっていません。(中略) とてもいい仕事。だいすきな仕事。 だけど、今日会社から言い渡された 更なる減額と職員数カット。 心が折れかけています』、「給料」がずいぶん安いのに驚かされた。
(注)指定管理:指定管理者制度とは、公の施設をノウハウのある民間事業者等に管理してもらう制度のこと(自治調査会、ニュースレター019)
・『「お金ない! 無理!」と民間に丸投げ  2022年の11月28日、児童館の館長を務める40代の女性が投稿した冒頭のツイートは、1.4万リツイートされた。NHKが女性に取材したところ、児童厚生員の資格を持つこの女性は、週6日勤務で、1日の労働時間は9時間ほど。基本給は、この10年近くの間で1円も上がってないという。そう、10年。地域の子どもの遊び場であり、学びの場であり、子どもの成長を支える、児童館の館長さんの基本給が、「10年で、1円も上がってない」。 「土日も開館している上、悩みを抱える子どもから夜中に電話がかかってくることもある」という(NHKの取材から)、子どもを支える“美しい仕事”をしている人たちの生活が、ちっとも“美しくない”状況に追いやられている。 低賃金の理由は「指定管理者制度」。経費削減と市民へのサービス向上を目的に、公共施設の管理・運営に民間企業などの参入を認める制度で、03年の地方自治法の改正に伴って導入された。 市民サービス向上と言えば聞こえはいいが、本来は公務員がやるべき仕事を、「お金ない! 無理!」と民間に丸投げした、自治体による自治体のための制度と言えよう。 実際、導入が認められた当初から、「経費は削られるばかりなのに、依頼される業務は増え続けている」「これができてない、あれが足りないと責められるばかりで採算が取れない」といった窮状が指摘され、撤退したがる会社は年々増加した。最近は、「公募しても手を挙げる会社がゼロ」という事態も相次いでいるという(資料、https://www.nikkei.com/article/DGKKZO67131970U2A221C2EA5000/)。 経費が減らされても、目の前には子どもたちがいる。“ここ”をよりどころにする子どもだ。) 現場で働く人たちは、自分たちの賃金を減らすことによってしか、「市民のため」のサービスを運営、維持できない。行政のスリム化により急増した「低賃金の非正規公務員」と同様の構図が、公立の児童館、図書館、美術館、スポーツセンター、ユースホステルなどでも起きているのだ。 22年8月にもある地方都市の公立図書館で、非正規の図書館員(会計年度任用職員)として働く20代女性が、「最低賃金+40円、手取り9万8000円」で、一人暮らしができないような労働条件は不当だとし、SNS(交流サイト)で「私たちを助けてください」と訴えた。7万人超の賛同署名が集まり、22年11月7日に文部科学省と総務省に要望書を提出した。 「雇用年限の撤廃」「最低賃金2000円」「退職金の支給」「図書館員の研修充実」を提案するとともに、図書館員の勤務実態について調査を行うよう求めている』、「市民サービス向上と言えば聞こえはいいが、本来は公務員がやるべき仕事を、「お金ない! 無理!」と民間に丸投げした、自治体による自治体のための制度」、「現場で働く人たちは、自分たちの賃金を減らすことによってしか、「市民のため」のサービスを運営、維持できない。行政のスリム化により急増した「低賃金の非正規公務員」と同様の構図が、公立の児童館、図書館、美術館、スポーツセンター、ユースホステルなどでも起きているのだ」、なるほど。
・『やりきれない現実が続いている  共働き世帯が増えた今、児童館は大切な「子どもの居場所」だ。 15年には、鎌倉市立図書館の公式Twitterが「学校が始まるのが死ぬほどつらい子は、学校を休んで図書館へいらっしゃい」とつぶやき、話題になったこともある。 その公共図書館における非正規雇用職員の割合は70%超だ(資料、https://www.jla.or.jp/Portals/0/data/iinkai/seisakukikaku/chousakekka_20100608%202.pdf)。 学童保育、保育士、児童相談員という子どもの生活を支えるケア労働は、多くの非正規雇用の大人によって支えられている。どれも経験とスキルが極めて重要な仕事なのに、長く経験を積んでも昇給はなく、退職金もない。 政府は「異次元の少子化対策」をうたい、誰もが「子どもは国の宝」と声高に言うのに、数少ない大切な子どもたちに寄り添う人たちが、「普通に生活できない」って……、おかしくないですか? 低賃金のケア労働者に支えられているのは、子どもだけではない。生活困窮者をケアする生活保護面接相談員やハローワークの相談員も非正規・非常勤化が拡大している。「仕事を失った人」を、不安定な身分かつ低賃金の職員=非正規公務員がサポートするという、やりきれない現実が続いているのである。) これまでも地方自治体に講演会などでお邪魔する度に、非正規公務員の「耳を疑うような過酷な現実」を聞かされてきた。昨今の急激な物価高騰もあり、「低賃金」という言葉では言い尽くせないほどのひどい報酬だ。 新型コロナウイルス禍で非正規という雇用形態がいかに脆弱であり、最低賃金の低さにも問題があることは明々白々だった』、「学童保育、保育士、児童相談員という子どもの生活を支えるケア労働は、多くの非正規雇用の大人によって支えられている。どれも経験とスキルが極めて重要な仕事なのに、長く経験を積んでも昇給はなく、退職金もない。 政府は「異次元の少子化対策」をうたい、誰もが「子どもは国の宝」と声高に言うのに、数少ない大切な子どもたちに寄り添う人たちが、「普通に生活できない」って……、おかしくないですか?」、「新型コロナウイルス禍で非正規という雇用形態がいかに脆弱であり、最低賃金の低さにも問題があることは明々白々だった」、その通りだ。
・『申し訳ないけど「人を雇ってはいけない」  なのに、20年「引き上げなければならなかった最低賃金」は、凍結された。「雇用維持」という4文字が連日飛び交い、「33時間に及ぶ協議の結果、20年度の最低賃金は、事実上据え置きで決着」したのだ。 「最低賃金を上げると、もっともっと雇用に悪影響が出る」という理屈に基づく決定だった。 翌21年も最低賃金の引き上げを巡り、「雇用を維持するためには~」「雇用維持が一番大事~」「雇用維持ができなくなる~」など、「雇用維持」という言葉が飛び交った。 結果的には、全国平均で過去最大の28円増となり、「引き上げ率は3.1%!」とメディアは騒ぎ立てたが、日本の最低賃金の水準が先進国の中で際立って低いことは周知の事実だし、日本が据え置いた20年も諸外国では賃上げが相次いでいたのだから、3%程度ではむしろ少ないくらいだった。 おまけに、テレビの画面には「時給を28円引き上げると、月額〇〇円で、年間〇万円の負担増ですよ。これじゃあやっていけない」と苦悩する経営者の表情が映し出された。 中小企業の経営が厳しいことは十分に理解できる。でも、そこで働く人が生活できないレベルの賃金しか払えない経営者は……、申し訳ないけど「人を雇ってはいけない」と思う。 最低賃金法の第1条には、「この法律は、賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする」とある。 最低賃金法9条2項には「地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならない」とあるが、07年の同法改正で同条に「労働者の生計費を考慮するに当たっては、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとする」が加わった。) これが意味するものは何か? 最低賃金は「働く人が普通に生活できる生計費」が最も重視されていると考えるのが、妥当ではないのか。 なのに、最低賃金の議論の度、「企業の支払い能力」ばかりにスポットが当てられ、現場の人の生活は無視され続けている』、「最低賃金の議論の度、「企業の支払い能力」ばかりにスポットが当てられ、現場の人の生活は無視され続けている」、確かに不当だし、こんなことを続けていてはデフレからの脱却など無理だ。
・『子育てに必要な世帯所得が不足する事態  トヨタやホンダは満額回答! 「春闘」で大幅な賃上げ相次ぐ、などと景気のいいニュースばかりが飛び交っているけど、私たちの生活に不可欠なサービスを提供している人たちの生活は? 正社員の賃金アップばかりに注目が集まってるけど、働く人の4割近くを占める非正規雇用の賃金は? むろん、パートタイムなどの非正規従業員の時給を引き上げる動きはある。しかし、その多くは「一部の大企業」だ。 働く人の7割近くが中小企業に勤め4割近くが非正規労働者で、非正規を含めた給与所得者の2割強は、年収が200万円以下のワーキングプア。300万円以下は全体の3分の1を上回り、400万円以下は半数を超える。 私は常々、「働くこと、それにどう報いるのか?」は、その国の本質的な「人」への考え方、価値観を物語るものだと訴えてきた。それは働く人の「命の価値」を考えることに等しい。 「非正規」という単なる雇用形態により、「命の価値」が軽んじられている。労働者全体の4割近くまで増えた非正規の賃金を時給ベースで見ると、正社員の平均時給が2500円であるのに対し、派遣社員は1660円、パートタイムは1050円だ。 静岡県立大短期大学部の中澤秀一准教授は、「最低賃金は全国一律で1500円は最低限必要」と試算している。 モデルにしているのは単身で健康な20代男性。住む場所は、都内ではなく地方。車を持つ場合は、7年落ちの軽自動車を中古で購入し、6年以上使う。しかし、1500円でなんとか生活できても、家庭を持ったり親の介護を補助したりする金銭的な余裕はないという。 エッセンシャルワーカーに、非正規雇用の女性が多いことを鑑みれば、最低賃金が少子化対策にも影響を及ぼすことは明らかであろう。日本の労働者の賃金は1990年代以降上がってないどころか低下する一方で、女性の労働者は増え共働き世帯が増えているのに、女性の賃金は安いまま。それは「子育てに必要な世帯所得が不足する事態」を招いていると考えて当然であろう。) コロナ禍では、エッセンシャルワーカーという新しい言葉の下、「みんなで感謝しよう!」と建物をライトアップしたり、皆で一斉に拍手をしたりという試みがあちこちで起きた。 しかし、一方で、エッセンシャルワーカーの人たちへの、カスハラ(カスタマーハラスメント)が横行した。 「私たち」の生活が、ホワイトカラーの正社員による仕事よりも、むしろ非正規で働く人が多いエッセンシャルワーカーに支えられていることを、誰もが痛感したはずなのに。 これを「職業差別」と言わずしてなんと言えよう』、「日本の労働者の賃金は1990年代以降上がってないどころか低下する一方で、女性の労働者は増え共働き世帯が増えているのに、女性の賃金は安いまま。それは「子育てに必要な世帯所得が不足する事態」を招いていると考えて当然であろう」、「エッセンシャルワーカーの人たちへの、カスハラ・・・が横行した」、虐げられている「エッセンシャルワーカー」にハラスメントを働く人々の心の貧しさには空いた口が塞がらない。
・『とてもいい仕事。だいすきな仕事  しかも、低賃金の仕事は若い人たちから敬遠される。やっと入ってくれた若者でさえ、「生活できない」現実に幻滅し仕事を辞め、働く人たちの高齢化にも拍車がかかる。 低賃金の代名詞だった「介護職」の現場でも、高齢化は著しい。 2022年8月に公表された介護労働安定センターの「介護労働実態調査」によると、各職種の中で最も平均年齢が高いのが訪問ヘルパーで、54.4歳(前回調査より0.3ポイント高い)。60歳以上の訪問ヘルパーの割合は37.6%(同0.6ポイント高い)。 そのうえ、訪問ヘルパーの年齢層で最も多いのは「60歳以上65歳未満」の13.2%。「55歳以上60歳未満」が12.3%、「70歳以上」は12.2%と続いている。 ケア労働などのヒューマンサービスに関わる人たちは、「人が好き、人の役に立ちたい」という気持ちが強い、とても心優しい人たちだ。 ――とてもいい仕事。だいすきな仕事。 くしくも冒頭の児童館の館長さんは、こうつぶやいた。「私」たちの生活は、やりがい搾取により回っているのだ。 最後に実に興味深く、考えさせられるデータを紹介する(資料、https://www.jtuc-rengo.or.jp/activity/roudou/shuntou/2020/wage_report/wage_report.pdf)。 以下の図は、非役職者は実線、課長職は点線、部長職は太線で、その推移を企業規模ごとに見たもので、白斑点のタテ棒は、部長級と非役職の賃金差、黒いタテ棒は課長級と非役職の賃金差だ。 ご覧の通り、1000人以上規模の大企業で賃金格差が著しく大きくなっていることが分かる。部長級と非役職の差は約40から約63へとおよそ23ポイント拡大、課長級と非役職とでは約30から約42へと12ポイントほど広がった。 日本労働組合総連合会「連合・賃金レポート2019 -賃金30年史-」 この報告書では大企業で見られる役職間賃金格差は、1990年代以降の新自由主義やグローバリズムの進行が影響していると指摘。最初に、上場企業役員の報酬が上昇し始め、それに引きずられる形で「部長級」が上昇。「課長級」は10年遅れで上昇したものの2010年以降は小休止状態だ、という。 大きいもの、強きもの、が優先される社会。これが今の日本の現実。 小さいもの、弱きものの「命の価値」は?』、「最初に、上場企業役員の報酬が上昇し始め、それに引きずられる形で「部長級」が上昇。「課長級」は10年遅れで上昇したものの2010年以降は小休止状態だ」、しかも中堅・中小企業と大企業との格差は広がっている格差社会、やはり「新自由主義やグローバリズムの進行」の「影響」は大きいようだ。「ケア労働などのヒューマンサービスに関わる人たちは、「人が好き、人の役に立ちたい」という気持ちが強い、とても心優しい人たちだ。 ――とてもいい仕事。だいすきな仕事。 くしくも冒頭の児童館の館長さんは、こうつぶやいた。「私」たちの生活は、やりがい搾取により回っているのだ」、社会を支える「ケア労働」は大きく歪められたようだ。
タグ:ブラック企業 (その15)(「夢とやりがい」を強調する企業はなぜ危険なのか? ブラック企業チェックリスト、元内閣府の官僚が経験した「ブラックな組織」の実態 倒れる前に実践すべき“組織サバイバル術”とは、勤続10年で手取り15万 子を守る現場の低すぎる「命の価値」) 弁護士ドットコムニュース「「夢とやりがい」を強調する企業はなぜ危険なのか? ブラック企業チェックリスト」 ポイント1「長時間労働、労働時間管理なし」 「社員に対し結果を出すことを強く求めつつ、結果を出すためには長時間労働は当然であることを強調」、これはまさにやりがい詐欺だ。 ポイント2「固定残業代に注意」 これは全くの詐欺だ。 ポイント3「辞められないような制度はないか?」 「離職をさせないような仕組みを採用しているかどうかが重要なポイント」、なるほど。 ポイント4「夢ややりがいの強調」 「社風として、夢ややりがいを強調し、努力・気合・感謝などといった精神論を強調している会社」は前述の「やりがい詐欺」そのものだ。「共通しているのは、むしろ会社の出費の節約にばかり目を向けてしまっているということです。このような経営方針の職場は雰囲気が荒み、日常的にハラスメントが蔓延してしまいます」、こんなブラック企業は働く価値がないので、早目に退職するに越したことはなさそうだ。 ダイヤモンド・オンライン AERAdot「元内閣府の官僚が経験した「ブラックな組織」の実態 倒れる前に実践すべき“組織サバイバル術”とは」 『ブラック霞が関』(2020年、新潮新書) 「人は、多少残業が多くても、その作業の先にお客さんの笑顔や明るい未来が見えていれば、なんとか頑張っていけます。その逆に、その作業がなんの役に立っているかわからない、あるいは後ろ向きな内容であるとき、人の精神は病んでいきます。それに加えて、パワハラ上司に心ない言葉をぶつけられたり人を人と思わないような扱いをされれば耐えきれずに病んだり壊れたりするのは当たり前です」、なるほど。 「労力を投入する前にアウトプットのラフイメージを持って発注者と打ち合わせをすべき」、「上司を含む職場内の人間関係の構築」、「長時間労働が生じていることや人員の増加が必要であること、作業を効率化するための電子・ペーパーレス化などを人事課や総務課などに提案すること」、これらは確かに有効なようだ。 「「その人を変える」より、自分の考え方や対応方法を変えることの方が有効ですので、難しい人間関係においても、なんとかやり過ごす術(サバイバル術)を身につけることが大事です。そして、難しい人間関係のサバイバル術を身につければ、新しい環境や転職先においても、活躍できる場面が多くなります。なぜなら、逆説的になりますが、転職理由で職場の人間関係を挙げる人が多いということは、それをサバイバルできる能力を身につけた人は貴重な存在となり、どんな職場でもしなやかに働くことができるからです」、 「難しい人間関係においても、なんとかやり過ごす術(サバイバル術)を身につけることが大事です。そして、難しい人間関係のサバイバル術を身につければ、新しい環境や転職先においても、活躍できる場面が多くなります」、確かにその通りなのかも知れない。 日経ビジネスオンライン 河合 薫氏による「勤続10年で手取り15万 子を守る現場の低すぎる「命の価値」」 「給料」がずいぶん安いのに驚かされた。 (注)指定管理:指定管理者制度とは、公の施設をノウハウのある民間事業者等に管理してもらう制度のこと(自治調査会、ニュースレター019) 「市民サービス向上と言えば聞こえはいいが、本来は公務員がやるべき仕事を、「お金ない! 無理!」と民間に丸投げした、自治体による自治体のための制度」、「現場で働く人たちは、自分たちの賃金を減らすことによってしか、「市民のため」のサービスを運営、維持できない。行政のスリム化により急増した「低賃金の非正規公務員」と同様の構図が、公立の児童館、図書館、美術館、スポーツセンター、ユースホステルなどでも起きているのだ」、なるほど。 「学童保育、保育士、児童相談員という子どもの生活を支えるケア労働は、多くの非正規雇用の大人によって支えられている。どれも経験とスキルが極めて重要な仕事なのに、長く経験を積んでも昇給はなく、退職金もない。 政府は「異次元の少子化対策」をうたい、誰もが「子どもは国の宝」と声高に言うのに、数少ない大切な子どもたちに寄り添う人たちが、「普通に生活できない」って……、おかしくないですか?」、「新型コロナウイルス禍で非正規という雇用形態がいかに脆弱であり、最低賃金の低さにも問題があることは明々白々だった」、その通りだ 「最低賃金の議論の度、「企業の支払い能力」ばかりにスポットが当てられ、現場の人の生活は無視され続けている」、確かに不当だし、こんなことを続けていてはデフレからの脱却など無理だ。 「日本の労働者の賃金は1990年代以降上がってないどころか低下する一方で、女性の労働者は増え共働き世帯が増えているのに、女性の賃金は安いまま。それは「子育てに必要な世帯所得が不足する事態」を招いていると考えて当然であろう」、「エッセンシャルワーカーの人たちへの、カスハラ・・・が横行した」、虐げられている「エッセンシャルワーカー」にハラスメントを働く人々の心の貧しさには空いた口が塞がらない。 「最初に、上場企業役員の報酬が上昇し始め、それに引きずられる形で「部長級」が上昇。「課長級」は10年遅れで上昇したものの2010年以降は小休止状態だ」、しかも中堅・中小企業と大企業との格差は広がっている格差社会、やはり「新自由主義やグローバリズムの進行」の「影響」は大きいようだ。 「ケア労働などのヒューマンサービスに関わる人たちは、「人が好き、人の役に立ちたい」という気持ちが強い、とても心優しい人たちだ。 ――とてもいい仕事。だいすきな仕事。 くしくも冒頭の児童館の館長さんは、こうつぶやいた。「私」たちの生活は、やりがい搾取により回っているのだ」、社会を支える「ケア労働」は大きく歪められたようだ。
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