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宇宙ビジネス(その3)(民間企業スペースXは61回成功 日本は成功ゼロ…日本のロケット開発が高価で失敗続きである根本原因 SNSでは成功したと勘違いする人が続出、H3打ち上げ失敗の影に隠れた、日本の宇宙開発体制の知られざる「重大欠陥」、直撃を受けたら地球は消滅! アメリカの軍事衛星が発見した「宇宙イチ高エネルギー」な天文現象とは?) [科学技術]

これまではロケット・衛星打上げ(その2)として、2017年3月9日に取上げた。今日は、宇宙ビジネス(その3)(民間企業スペースXは61回成功 日本は成功ゼロ…日本のロケット開発が高価で失敗続きである根本原因 SNSでは成功したと勘違いする人が続出、H3打ち上げ失敗の影に隠れた、日本の宇宙開発体制の知られざる「重大欠陥」、直撃を受けたら地球は消滅! アメリカの軍事衛星が発見した「宇宙イチ高エネルギー」な天文現象とは?)である。

先ずは、昨年3月15日付けPRESIDENT Onlineが掲載したジャーナリストの知野 恵子氏による「民間企業スペースXは61回成功、日本は成功ゼロ…日本のロケット開発が高価で失敗続きである根本原因 SNSでは成功したと勘違いする人が続出」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/67441
・『「開発体制のどこかに問題があるのでは」  3月7日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業が共同開発した日本の新しい大型ロケット「H3」初号機の打ち上げが失敗した。昨年10月の小型ロケット「イプシロン」失敗に続いて、半年もたたないうちに起きたロケットの連続失敗。「技術大国日本」の凋落が止まらない。起死回生策はあるのか。 昨年10月のイプシロン、今年3月のH3。どちらも地上から信号を送って機体を破壊した。 宇宙政策に詳しい鈴木一人・東大教授(国際政治経済学)は、「連続して失敗したことで、世界にマイナスの印象を与えた。ロケットの初号機打ち上げ失敗自体は珍しいことではないが、イプシロン失敗を含めて考えると、日本のロケットの開発体制のどこかに問題があるのではないか」と指摘する。 「H3」は、2014年から約2000億円の国費を投じて開発された。日本が新しいロケットを開発するのは30年ぶりで、今後20年にわたって主力ロケットとして使用する予定になっている。 まさに日本の宇宙政策・活動を支える「屋台骨」だ』、「昨年10月のイプシロン、今年3月のH3と、「連続して失敗した」とは深刻な事態だ。
・『安価で売れるロケットを造るのが狙いだが…  H3開発の最大の目的として政府が強調してきたのは、ロケット価格を半減させることだ。 現在の主力ロケット「H2A」は約100億円で、世界相場の倍程度と高い。H3はこれを、世界相場の約50億円に半減し、世界の衛星打ち上げ市場で「売れるロケット」を目指した。 そのために開発方法も変えた。 これまでのロケットは、JAXAが設計・開発し、企業に製造を発注。何機か打ち上げて技術的に安定すると、JAXAから企業に技術を移管し、企業が商用打ち上げサービスを行うというやり方だった。 現在の主力ロケット「H2A」でいえば、技術を移管された三菱重工が打ち上げサービスを行っている。 だが、最先端技術を志向するJAXAが開発するロケットは、高価格になりがちだ。衛星を打ち上げたい顧客にとって使いやすいものかどうかもわからない。 そこで、JAXAと三菱重工が最初から一緒に設計・開発を行い、打ち上げビジネスをしやすいロケットを造ることを目指した。 だが、その1回目からつまずいた』、「最先端技術を志向するJAXAが開発するロケットは、高価格になりがちだ」、「JAXAと三菱重工が最初から一緒に設計・開発を行い、打ち上げビジネスをしやすいロケットを造ることを目指した。 だが、その1回目からつまずいた」、お粗末だ。
・『スペースXは61回成功し、日本はゼロ  今回の失敗によって、日本の宇宙開発は苦境に立たされた。 打ち上げ市場への参入はもちろん、情報収集衛星など国の安全保障にかかわる衛星、米国主導の有人月探査「アルテミス計画」で使う物資輸送機、火星の衛星の探査機など、H3による打ち上げ予定は詰まっている。今後、その調整や見直しが必要になる。 JAXAや文部科学省は原因調査を開始したが、原因を突き止め、対策をほどこし、試験でそれを確かめる、など一連の作業にはかなり時間がかかる。 2003年に情報収集衛星2基を搭載した「H2A」6号機の打ち上げが失敗した時には、再開まで1年3カ月を要した。 時間がかかればかかるほど、H3の開発費は膨れ、世界相場並みの50億円達成はどんどん遠のいていく。 今、世界の宇宙開発は拡大期にある。2018年以降、世界のロケット打ち上げ成功数は大きく増加している。 内閣府の調べによると、2022年は過去最大の177回で、直近10年間で年率9.7%と大幅に伸びた。 打ち上げ成功数は米国が最も多く83回。うち75回が民間企業によるもので、その61回はスペースXのロケットだった。 成功数が次に多いのは中国で62回、次はロシアで21回だった。 一方、日本は成功ゼロだった。世界で存在感を発揮できない中で、さらに追い打ちをかけるH3失敗。日本は世界から取り残され、埋没していく恐れがある』、「打ち上げ成功数は米国が最も多く83回。うち75回が民間企業によるもので、その61回はスペースXのロケットだった。 成功数が次に多いのは中国で62回、次はロシアで21回だった。 一方、日本は成功ゼロだった」、「日本は世界から取り残され、埋没していく恐れがある」、まさに危機的状況だ。
・『成功にこだわっていると市場で勝負できない  今、ロケット打ち上げ市場をリードしているのは、米スペースXだ。 2000年代初頭に宇宙ベンチャー企業として頭角を現し、低価格の「価格破壊ロケット」で、商用打ち上げ市場を席巻するようになった。 スペースXは、ロケットが爆発炎上する派手な失敗もよく起こすが、淡々と対策をほどこし、すぐに次の打ち上げを再開する。 国の研究開発法人のJAXAは、先端技術と完璧さを目指し、それを成し遂げてから打ち上げ市場への売り込みを図ろうと考える。一方、スペースXは走りながら完成度を高めていく。 国費で開発する研究開発法人と、米ベンチャー企業との発想の違いだろうが、日本とは対極的だ。 鈴木教授は「日本には打ち上げを失敗してはいけないと考える文化がある。一度失敗すると二度と失敗しない仕組みを作ろうとする。だが、それによってコストが膨張し、納期が遅れ、打ち上げ市場で勝負できなくなる。一方、スペースXは『失敗なしに成功はない』と考え、失敗しても素早く機敏に開発をしていく。打ち上げ市場でこうした企業と戦おうというのなら、日本でも失敗を許す文化が必要だ」 これまで日本は「H2」「H2A」と大型ロケットを開発したが、市場参入に成功とはいいがたい状況だった。 H3でロケットの価格を半減させて打ち上げ市場参入を目指す、と掲げた以上、日本も今までのやり方を見直す必要があるだろう』、「H3でロケットの価格を半減させて打ち上げ市場参入を目指す、と掲げた以上、日本も今までのやり方を見直す必要がある」、その通りだ。
・『「何が何でも3月中に」JAXAの危機感  例えば、JAXAの開発には、役所の文化が根強く残っている。 役所の予算編成に合わせる「年度縛り」もそのひとつだ。 H3の初号機は、2020年度に打ち上げる予定だったが、2度にわたって延期した。 新規開発の高性能エンジン「LE9」の開発にてこずったためだ。 政治家や産業界からは不満や批判が続出していた。これ以上遅らせてはならないという危機感がJAXAや文科省の間で高まっていた。 このため2022年度中、つまり今年3月中に何が何でも打ち上げを成功させねばならない、それを超えると23年度になってしまう、という焦りがあったとみられる。しかも、地元の漁協などとの調整から、打ち上げは「3月10日まで」という締め切りもあった。 JAXAは2月17日にH3を打ち上げようとしたが、直前に技術トラブルが発生し、中止した。原因解明と対策に時間を要したが、「3月10日まで」を死守することを、記者会見で何度も強調した。2023年度になることを避けたいということだろう。 再度設定した打ち上げ日は、年度縛りに収まる3月7日だったものの、失敗に終わった。 このあたりの経緯や、組織の体質や対応、JAXAと三菱重工との協力関係や責任分担などを今後検証する必要があるのではないか。 失敗原因を解明、対策をほどこした後は、前回の「H2A」6号機失敗の時のように長期間止めることなく、なるべく早く、打ち上げを再開する必要もある』、「失敗原因を解明、対策をほどこした後は、前回の「H2A」6号機失敗の時のように長期間止めることなく、なるべく早く、打ち上げを再開する必要もある」、なるほど。
・『SNSでは成功したと勘違いする人が続出  巨費をかけてロケットを開発するのは、他国に依存することなく、自国の衛星を必要な時に打ち上げる手段を保有するためだ。 鈴木教授は「日本では夢とロマンが強調され、何のためにロケットを打ち上げるかについて、ふわっとした議論しかしてこなかった。H3をどういうロケットにすべきかという議論や説明も不足していた。本当の意味で使えるロケット、衛星を運ぶロケットとしての開発をしてこなかったのではないか」と苦言を呈する。 そうした影響か、ロケットに対する見方は揺れが大きい。 2月17日の打ち上げ直前中止をめぐって、JAXAは「止めることができたので失敗ではない」と説明をした。だが、会見に参加した記者が「それは一般に失敗という」と発言。これを引き金に、SNSで「失敗」「失敗ではない」をめぐって、喧々諤々の議論になった。 3月7日の打ち上げでは、晴れた空の下、H3は地上からきれいに打ち上がり、補助ロケットの切り離しも成功した。だが、すぐにロケットの速度はどんどん下がっていった。第2段エンジンが着火しなかったためだ。 JAXAの打ち上げ中継で「指令破壊信号を送信しました」というアナウンスが流れた直後に、SNSを見て驚いた。「H3成功」の話で盛り上がっていたからだ。 地上から機体が離陸したのを見て、成功したと思った人が多かったのだろう。「打ち上げ成功」「おめでとう!」などのツイートがさかんに流れていた』、「「日本では夢とロマンが強調され、何のためにロケットを打ち上げるかについて、ふわっとした議論しかしてこなかった。H3をどういうロケットにすべきかという議論や説明も不足していた。本当の意味で使えるロケット、衛星を運ぶロケットとしての開発をしてこなかったのではないか」、「2月17日の打ち上げ直前中止をめぐって、JAXAは「止めることができたので失敗ではない」と説明をした。だが、会見に参加した記者が「それは一般に失敗という」と発言。これを引き金に、SNSで「失敗」「失敗ではない」をめぐって、喧々諤々の議論になった」、「失敗」は正々堂々と認めるべきだ。そうないと改善点が明確にならない筈だ。
・『「国民の責任」を求めるわりに説明が足りていない  ロケットは地上から上がれば仕事が終わるわけではない。さらに30分ほど飛行して、衛星を予定の軌道に届けたことを確認できて初めて、技術者もようやく「成功」を宣言する。 ロケットがどの段階まで進めば、「成功」なのか、「失敗」とはどういうことを指すのか。こうした点についての知識や説明がもっと必要だと感じる。 2003年の「H2A」の失敗の後、文科省の有識者会議では、「国民にロケットの抱えるリスクを理解してもらわないといけない」という議論がさかんに行われた。「国民への責任」よりも、「国民の責任」を求める論理に違和感を覚えたが、有識者会議の報告書は「国民側も理解や関心を深めることが必要」と注文をつけた。 その具体策について、当時文科省は「今後、検討する」と述べるにとどめていた。 それから20年たった今もなお、そのための知識提供や広報活動が不足している。 ロケットの打ち上がる姿は勇壮で魅力的だが、そのためだけに巨費を投じて開発するわけではない。打ち上げ花火ではないのだ。ロケットや宇宙開発への夢を語るだけではなく、目的や成否の判断基準などももっと明確に示すべきだろう。 今回の失敗の教訓のひとつだと思う』、「ロケットや宇宙開発への夢を語るだけではなく、目的や成否の判断基準などももっと明確に示すべきだろう」、同感である。

次に、6月27日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したフリーライターの大貫剛氏による「H3打ち上げ失敗の影に隠れた、日本の宇宙開発体制の知られざる「重大欠陥」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/324531
・『20年ぶりにしかも立て続けに2件のロケットの打ち上げに失敗してしまったJAXA(宇宙航空研究開発機構)。実は、その裏でJAXAの宇宙開発と宇宙事業に対する重大な欠陥が明らかになったことは、あまり知られていない。特集『来るぞ370兆円市場 ビッグバン!宇宙ビジネス』(全13回)の#4では、ベテラン宇宙ライターが打ち上げ失敗から見える「日本の宇宙開発体制」の大問題を指摘する』、興味深そうだ。
・『H3ロケットはなぜ失敗したか 「実績のある技術」が原因の可能性  「日本のロケットは定時運行」――。あたかも鉄道や旅客機のような高い信頼性を売り物にしてきたJAXA(宇宙航空研究開発機構)に異常事態が発生している。2023年3月7日、日本の次期大型ロケットとして開発されたH3ロケットが、初号機でいきなり打ち上げに失敗したのだ。 JAXAは03年のH-IIAロケット6号機の打ち上げ失敗の後、43機のH-IIAロケット、9機のH-IIBロケット、5機のイプシロンロケットの打ち上げを成功させており、成功率の高さだけでなく打ち上げ遅延が少ないことも誇ってきた。 ところが22年10月12日、約20年ぶりにイプシロンロケット6号機の打ち上げに失敗、それから半年もたたずに今度はH3ロケット初号機が失敗したのだ。一部の部品を共通使用しているH-IIAロケットも含めて、原因調査と対策のため打ち上げが一時凍結された。結果的に、H-IIAロケットを含むJAXAの全ロケットが飛行停止に追い込まれるという事態になっている。 (図_JAXAの過去のロケット開発史と打ち上げ失敗例 はリンク先参照) 6月末現在、H3ロケット初号機打ち上げ失敗の原因は確定されていない。一度発射したロケット機体は回収できず、完全な原因特定が可能とは限らないのだ。そこでJAXAはまず、失敗の原因になりえる9パターンのシナリオを検討し、全て対策を施すことにした。実はこの9パターンはどれも、H-IIAロケットからH3ロケットへ流用したLE-5Bというエンジンに関するものだ。H-IIAロケットはこれらの対策を施して、今年8月以降に打ち上げを再開することになった。 これまでLE-5BエンジンはH-IIAロケットなど50基以上に使われてきたが、同種のトラブルは一度もない。にもかかわらず、なぜかH3ロケットでは初号機でいきなり失敗した。 なぜH3ロケットは失敗したのか。さらに言えば、実は今回は打ち上げ失敗そのものよりも、より目を向けるべき危機的な状況がある。それは政府とJAXAの宇宙利用計画と人工衛星の打ち上げ計画についての根本的な問題点だ。所管する省庁の性質という背景も見え隠れする。次ページから解説していこう。 これ以降は有料だが、今月の閲覧本数、残り4本までは無料』、「今回は打ち上げ失敗そのものよりも、より目を向けるべき危機的な状況がある。それは政府とJAXAの宇宙利用計画と人工衛星の打ち上げ計画についての根本的な問題点だ」、どういうことだろう。
・『安全ゾーンの宇宙部品が原因で予想外の失敗が発生か  これまでLE-5BエンジンはH-IIAロケットなどで50基以上が使われてきたが、同種のトラブルは一度もない。にもかかわらず、なぜH3ロケットでは1号機でいきなり失敗したのか、現時点ではわかっていない。JAXAは、H3ロケット固有の部品が引き金となった可能性も検討しており、H3ロケットの打ち上げ再開にはさらに数カ月を要しそうだ。 一方、イプシロンロケット6号機については原因が特定された。飛行中の機体から送られてきたデータと製造時の検査データを照合した結果、推進剤(ロケットを推進させるのに用いる薬剤・燃料)タンクの製造上の欠陥が判明したのだ。この欠陥は過去にも存在したがトラブルには至っておらず、欠陥があること自体が見過ごされた。そして「実績のある信頼できる部品」としてそのままイプシロンロケットに採用されてしまっていた。 イプシロンロケット6号機とH3ロケット初号機の打ち上げ失敗に共通するのは、どちらも従来から使用実績のある部品が注目されていることだ。 日本では50年以上にわたって宇宙ロケットを打ち上げてきており、その中で繰り返し使われて信頼性を確認された技術の蓄積も多い。こういった技術で作られた部品は少数生産品で高価なので、イプシロンロケットやH3ロケットでは、自動車用部品など低価格の民生品を大胆に導入してロケット全体のコストを下げることに主眼が置かれたという経緯がある。その一方で、高価でも引き続き採用された宇宙部品は、信頼性が高く、開発の「安全ゾーン」として扱われてきた。 しかし実際には、十分に信頼性が確認されたはずの「安全ゾーンの宇宙部品」で、予想外の失敗が発生してしまった。新型ロケットでは従来のロケットとは使用環境が異なっている場合があるからだ。H3ロケットの失敗原因は未確定だが、新規採用された部品と既存宇宙部品の組み合わせで、予想外のトラブルが発生した可能性が疑われている。先人が蓄積した技術を利用する際には、これまで大丈夫だったから大丈夫だと考えるのではなく、改めて信頼性を確認しなければならないというのが、今回の2回の打ち上げ失敗の教訓といえるだろう。 宇宙ロケットの打ち上げ失敗は見た目にも分わかりやすいため、今回の打ち上げ失敗でもロケット自体に衆目が集まるのはやむを得ない。 だが、今回のH3ロケットに関しては、打ち上げ失敗そのものよりも、より目を向けるべき危機的な状況がある。それは政府とJAXAの宇宙利用計画と人工衛星の打ち上げ計画についての根本的な問題点だ』、「十分に信頼性が確認されたはずの「安全ゾーンの宇宙部品」で、予想外の失敗が発生してしまった。新型ロケットでは従来のロケットとは使用環境が異なっている場合があるからだ。H3ロケットの失敗原因は未確定だが、新規採用された部品と既存宇宙部品の組み合わせで、予想外のトラブルが発生した可能性が疑われている。先人が蓄積した技術を利用する際には、これまで大丈夫だったから大丈夫だと考えるのではなく、改めて信頼性を確認しなければならないというのが、今回の2回の打ち上げ失敗の教訓といえるだろう」、「改めて信頼性を確認しなければならない」というのは確かだ。
・『「打ち上げは失敗しない」と当然視しバックアップのない最重要衛星を失う失態  宇宙開発で実際に利益を生み出す活動をするのは人工衛星だ。ロケットは人工衛星を宇宙に設置するための、輸送機械にすぎない。 今回のH3ロケットは「打ち上げは失敗しない」ことが前提とされていた。そのため「だいち3号」(ALOS-3)という失われてはならない重要な衛星が搭載されていたのだ。これは光学センサーで地球の写真を撮影する衛星で、大地の写真を継続的に撮影して、地図情報を更新する。また、大規模災害発生時には被災地を撮影し、被害状況を俯瞰的・網羅的に把握することも期待されている。 「だいち」シリーズは、国が当初策定していたそもそもの計画から場当たり的で、問題だらけだった。 06年に打ち上げられた初代「だいち」は、光学的に写真を撮影するセンサーと、電波で地上を観測するレーダーを1機の衛星に搭載する大型衛星だった。設計上の寿命目標5年を越えても後継機の打ち上げが行われないままで、11年3月の東日本大震災の被災地観測をなんとかこなし、その1カ月後の4月22日に機能停止した。 その後後継の「だいち2号」が打ち上げられた14年までの3年間、JAXAにはこの種の地球観測衛星が存在しなかった。しかも「だいち2号」は「だいち」の観測機能のうち、レーダーしか搭載していない。これは光学センサーとレーダーを1機の大型衛星に載せるより、別の中型衛星とした方がリスクを分散できるという考えからのものだったが、肝心の光学センサー搭載衛星には予算が付かない、という結果に終わった。 今回H3ロケットは「だいち3号」の打ち上げで、12年間の光学地球観測衛星不在の状況を解消する重要なミッションを持っていたのだ。にもかかわらず、打ち上げ失敗で「だいち3号」は失われ、日本の光学地球観測衛星の空白期間はさらに続くことになってしまった』、「今回H3ロケットは「だいち3号」の打ち上げで、12年間の光学地球観測衛星不在の状況を解消する重要なミッションを持っていたのだ。にもかかわらず、打ち上げ失敗で「だいち3号」は失われ、日本の光学地球観測衛星の空白期間はさらに続くことになってしまった」、もったいない限りだ。
・『失われた民間企業からの信頼 JAXAの民間連携事業に黄信号  この衛星をビジネス活用しようとしていた企業も影響を受けることになった。 「だいち3号」の画像をさまざまな用途に活用するため、JAXAは地理情報システム(GIS)大手企業のパスコと契約を結んでいる。パスコは「だいち」「だいち2号」でも画像の利用・販売を担当しており、「だいち3号」でも引き続き担当するはずだった。 「だいち3号」は性能的にも大きく進歩している。パスコはその性能を前提とした新たなGISサービスを開発して、運用開始に備えていたはずだ。またパスコは「だいち3号」の地上管制そのものも委託されており、施設や人員を用意していた。これらの努力が、「だいち3号」の打ち上げ失敗によって日の目を見なくなったのは、同社にとっては大きな痛手に違いない。 失われた「だいち3号」を再打ち上げするのか、別の方法を模索するのかなどの今後の予定は未定だ。しかし、衛星の運用体制にここまで長い空白期間が生まれるのは、国の社会インフラ整備としてはあまりにもお粗末だといえるだろう』、「衛星の運用体制にここまで長い空白期間が生まれるのは、国の社会インフラ整備としてはあまりにもお粗末だ」、その通りだ。
・『バックアップ体制がない運用計画では民間企業の本腰参入は困難だ  JAXAは政府の宇宙計画を執行する機関であり、計画を決定して予算を確保するのは所管省庁の役割だ。「だいち」シリーズは文部科学省の事業なので、計画の方向性や予算額にはJAXAではなく文部科学省の意思が反映される。 ちなみに、他省庁が管理する衛星では、ちゃんと計画的な運用をされているものもある。 例えば気象庁の気象衛星「ひまわり」シリーズは現在、「ひまわり8号」「ひまわり9号」が同時に飛行している。「ひまわり」の設計寿命は15年だが、2機を交互に8年間使用して7年間は休ませるという運用で、使用中の衛星が故障した際はもう一方が復帰するというバックアップ体制を整えている。気象庁は天気予報という重要な情報サービスを提供する社会インフラを管掌する官庁で、その運用が途切れないような体制を敷いているのだ。 一方「だいち」シリーズを所管するのは文部科学省だ。研究開発を軸としているからか、サービスの継続性より、研究開発の新規性や独自性などを重視する傾向があるように見える。「だいち」シリーズは世界トップクラスの性能を誇っているが、バックアップがない。そのため今回のような打ち上げ失敗や寿命中の故障といったトラブルが発生すれば、直ちにサービスが途絶えてしまう。このような計画で整備されているものを社会インフラとして信頼することは無理がある。 近年は産官学が一体となって宇宙ビジネスを推し進める雰囲気になっているが、このような状態では企業として本腰を入れて事業参画することは難しいだろう。企業にビジネス利用してもらうことを前提に衛星を整備するのなら、政府は打ち上げ失敗を含むトラブルを想定して、バックアップ体制を組むなど、信頼性や事業継続性を重視した計画を立てる必要がある。 JAXAは民間企業との連携に努力しているが、「だいち」シリーズには継続的なサービスを保証するのに必要な予算措置が講じられていなかった。このようなあしき前例を作ってしまったとなると、たとえ今後JAXAが世界最高レベルの宇宙技術を開発しても、それを日本企業がビジネスに活用したいと思えないだろう。民間活用が間違いなくテーマになる今後の宇宙開発と宇宙ビジネスを考えると、政府の宇宙政策には重い課題が突き付けられているといえる』、「企業にビジネス利用してもらうことを前提に衛星を整備するのなら、政府は打ち上げ失敗を含むトラブルを想定して、バックアップ体制を組むなど、信頼性や事業継続性を重視した計画を立てる必要がある」、同感である。

第三に、5月16日付けAERAdot「直撃を受けたら地球は消滅! アメリカの軍事衛星が発見した「宇宙イチ高エネルギー」な天文現象とは?」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2023051100102.html?page=1
・『自然科学の分野では、偶然によって新たな事実が発見されることがある。太陽の8倍以上の質量をもつ恒星が爆発するとき、極度にエネルギーが高い「ガンマ線バースト」が発せられる場合があるが、この天文現象はアメリカが打ち上げた軍事衛星によって偶然発見された。宇宙望遠鏡による天文観測は1960年代にはじまったが、その契機ともなったこの軍事衛星について、拙著『宇宙望遠鏡と驚異の大宇宙』をもとに紹介したい。 【写真】史上初ブラックホールの候補を特定した、NASAのX線観測衛星「SAS-A ウフル」 アメリカ、イギリス、旧ソ連は、1963年に「部分的核実験禁止条約」を締結した。これにもとづいて米国防総省は、各国が同条約を順守し、核実験を実施していないかを監視するため、「ヴェラ」と呼ばれる軍事衛星を打ち上げた。 ヴェラは、地球上のどこかで核爆発が起こると、そこから放射されるX線やガンマ線、中性子線などを軌道上で感知する。米国は1963年から1970年にかけ、AとBの2機からなるヴェラをワンセットにして、計6回、12機のヴェラを打ち上げた。 1967年4月28日に打ち上げられた「ヴェラ4号」がある日、奇妙なデータを補足する。ロスアラモス国立研究所の研究員が調査した結果、それは大気圏内からではなく、宇宙から飛来したガンマ線であることが判明。続いて打ち上げられた5号(1969年5月)と6号(1970年4月)も、同様のガンマ線を複数捕捉し、その発生源の位置を割り出すことに成功した。結果、それは人類にとって未知の天文現象である「ガンマ線バースト」から発せられたものであることが突き止められた。 ガンマ線バーストのイメージ図 (C)NASA, ESA and M. Kornmesser  ガンマ線バーストとは、恒星が爆発(超新星爆発)した際に、閃光(せんこう)のように放出される電磁波のこと。エネルギー量が極度に高く、その出力は太陽が100億年間に放出するエネルギーに匹敵するともいわれる。もしそのビームのような電磁波の直撃を受ければ、地球サイズの天体は瞬時に蒸発してしまうだろう。爆発した恒星の質量が太陽の8倍以上であれば中性子星になり、25倍以上の場合には、そこにブラックホールが誕生すると考えられている。) 謎のガンマ線が宇宙から降り注いでいることがヴェラによって判明すると、各国は本格的に天文観測衛星を打ち上げはじめた。1970年にNASAが打ち上げた世界初のX線観測衛星「SAS-A ウフル」もその一機だ。ガンマ線バーストやブラックホールなど、高エネルギーな電磁波が放出される天文現象では、ガンマ線のほかにX線などが放出される。それを検知する天文観測衛星である。 ウフルは、「はくちょう座」にある超巨星を重点的に観測した。この星は、ペアとなるもうひとつの恒星との共通の重心を周る「連星(双子星)」である。太陽の30倍もの質量を持つこの超巨星が、他の何者かによって、操られるかのように奇妙な軌道を描くからには、その相手の天体はさらに大きな質量を持っていると予想された。しかし、その星が見つからない。つまり、この超巨星とペアを組む相手は、見えないブラックホールである可能性が高い。 ウフルは、見えない相手(主星)がいると予想される領域を重点的に観測した。その結果、強いX線の放射を発見した。これが史上はじめて特定されたブラックホールの有力候補である。後日この天体は「はくちょう座X-1」と命名された。 (「SAS-A ウフル」が捕捉したX線源による全天マップ はリンク先参照) 1960年代、ヴェラによってガンマ線バーストが偶然発見され、1970年代にはウフルがブラックホールの候補を特定した。人類にとって未知であったそれらの天体を発見してから半世紀が過ぎた2019年には、ブラックホールの間接的撮影にも成功し、2021年からはブラックホールのマップ作製も開始されている。 宇宙望遠鏡による天文観測が進化した結果、いまでは宇宙に存在する全エネルギー量を計算することにも成功している。その23%をダークマター、73%をダークエネルギーが占めることも判明しているが、その両者の正体はいまだ謎のままだ。しかし、この半世紀で人類が明らかにした真実と、天文観測技術の劇的な進化を思えば、こうした宇宙の謎が解き明かされる日は、さほど遠くないに違いない』、「「部分的核実験禁止条約」を締結した。これにもとづいて米国防総省は、各国が同条約を順守し、核実験を実施していないかを監視するため、「ヴェラ」と呼ばれる軍事衛星を打ち上げた。 ヴェラは、地球上のどこかで核爆発が起こると、そこから放射されるX線やガンマ線、中性子線などを軌道上で感知する」、そんな監視衛星があることは初めて知った。「ガンマ線バーストとは、恒星が爆発(超新星爆発)した際に、閃光(せんこう)のように放出される電磁波のこと。エネルギー量が極度に高く、その出力は太陽が100億年間に放出するエネルギーに匹敵するともいわれる。もしそのビームのような電磁波の直撃を受ければ、地球サイズの天体は瞬時に蒸発してしまうだろう。爆発した恒星の質量が太陽の8倍以上であれば中性子星になり、25倍以上の場合には、そこにブラックホールが誕生すると考えられている」、「宇宙望遠鏡による天文観測が進化した結果、いまでは宇宙に存在する全エネルギー量を計算することにも成功している。その23%をダークマター、73%をダークエネルギーが占めることも判明しているが、その両者の正体はいまだ謎のままだ」、「この半世紀で人類が明らかにした真実と、天文観測技術の劇的な進化を思えば、こうした宇宙の謎が解き明かされる日は、さほど遠くないに違いない」、「宇宙の謎が解き明かされる日」が早く来てほしいものだ。 
タグ:宇宙ビジネス (その3)(民間企業スペースXは61回成功 日本は成功ゼロ…日本のロケット開発が高価で失敗続きである根本原因 SNSでは成功したと勘違いする人が続出、H3打ち上げ失敗の影に隠れた、日本の宇宙開発体制の知られざる「重大欠陥」、直撃を受けたら地球は消滅! アメリカの軍事衛星が発見した「宇宙イチ高エネルギー」な天文現象とは?) PRESIDENT ONLINE 知野 恵子氏による「民間企業スペースXは61回成功、日本は成功ゼロ…日本のロケット開発が高価で失敗続きである根本原因 SNSでは成功したと勘違いする人が続出」 「昨年10月のイプシロン、今年3月のH3と、「連続して失敗した」とは深刻な事態だ。 「最先端技術を志向するJAXAが開発するロケットは、高価格になりがちだ」、「JAXAと三菱重工が最初から一緒に設計・開発を行い、打ち上げビジネスをしやすいロケットを造ることを目指した。 だが、その1回目からつまずいた」、お粗末だ。 「打ち上げ成功数は米国が最も多く83回。うち75回が民間企業によるもので、その61回はスペースXのロケットだった。 成功数が次に多いのは中国で62回、次はロシアで21回だった。 一方、日本は成功ゼロだった」、「日本は世界から取り残され、埋没していく恐れがある」、まさに危機的状況だ。 「H3でロケットの価格を半減させて打ち上げ市場参入を目指す、と掲げた以上、日本も今までのやり方を見直す必要がある」、その通りだ。 「失敗原因を解明、対策をほどこした後は、前回の「H2A」6号機失敗の時のように長期間止めることなく、なるべく早く、打ち上げを再開する必要もある」、なるほど。 「「日本では夢とロマンが強調され、何のためにロケットを打ち上げるかについて、ふわっとした議論しかしてこなかった。H3をどういうロケットにすべきかという議論や説明も不足していた。本当の意味で使えるロケット、衛星を運ぶロケットとしての開発をしてこなかったのではないか」、 「2月17日の打ち上げ直前中止をめぐって、JAXAは「止めることができたので失敗ではない」と説明をした。だが、会見に参加した記者が「それは一般に失敗という」と発言。これを引き金に、SNSで「失敗」「失敗ではない」をめぐって、喧々諤々の議論になった」、「失敗」は正々堂々と認めるべきだ。そうないと改善点が明確にならない筈だ。 「ロケットや宇宙開発への夢を語るだけではなく、目的や成否の判断基準などももっと明確に示すべきだろう」、同感である。 ダイヤモンド・オンライン 大貫剛氏による「H3打ち上げ失敗の影に隠れた、日本の宇宙開発体制の知られざる「重大欠陥」」 「今回は打ち上げ失敗そのものよりも、より目を向けるべき危機的な状況がある。それは政府とJAXAの宇宙利用計画と人工衛星の打ち上げ計画についての根本的な問題点だ」、どういうことだろう。 「十分に信頼性が確認されたはずの「安全ゾーンの宇宙部品」で、予想外の失敗が発生してしまった。新型ロケットでは従来のロケットとは使用環境が異なっている場合があるからだ。H3ロケットの失敗原因は未確定だが、新規採用された部品と既存宇宙部品の組み合わせで、予想外のトラブルが発生した可能性が疑われている。先人が蓄積した技術を利用する際には、これまで大丈夫だったから大丈夫だと考えるのではなく、改めて信頼性を確認しなければならないというのが、今回の2回の打ち上げ失敗の教訓といえるだろう」、「改めて信頼性を確認しなけれ ればならない」というのは確かだ。 「今回H3ロケットは「だいち3号」の打ち上げで、12年間の光学地球観測衛星不在の状況を解消する重要なミッションを持っていたのだ。にもかかわらず、打ち上げ失敗で「だいち3号」は失われ、日本の光学地球観測衛星の空白期間はさらに続くことになってしまった」、もったいない限りだ。 「衛星の運用体制にここまで長い空白期間が生まれるのは、国の社会インフラ整備としてはあまりにもお粗末だ」、その通りだ。 「企業にビジネス利用してもらうことを前提に衛星を整備するのなら、政府は打ち上げ失敗を含むトラブルを想定して、バックアップ体制を組むなど、信頼性や事業継続性を重視した計画を立てる必要がある」、同感である。 AERAdot「直撃を受けたら地球は消滅! アメリカの軍事衛星が発見した「宇宙イチ高エネルギー」な天文現象とは?」 「「部分的核実験禁止条約」を締結した。これにもとづいて米国防総省は、各国が同条約を順守し、核実験を実施していないかを監視するため、「ヴェラ」と呼ばれる軍事衛星を打ち上げた。 ヴェラは、地球上のどこかで核爆発が起こると、そこから放射されるX線やガンマ線、中性子線などを軌道上で感知する」、そんな監視衛星があることは初めて知った。 「ガンマ線バーストとは、恒星が爆発(超新星爆発)した際に、閃光(せんこう)のように放出される電磁波のこと。エネルギー量が極度に高く、その出力は太陽が100億年間に放出するエネルギーに匹敵するともいわれる。もしそのビームのような電磁波の直撃を受ければ、地球サイズの天体は瞬時に蒸発してしまうだろう。爆発した恒星の質量が太陽の8倍以上であれば中性子星になり、25倍以上の場合には、そこにブラックホールが誕生すると考えられている」、 「宇宙望遠鏡による天文観測が進化した結果、いまでは宇宙に存在する全エネルギー量を計算することにも成功している。その23%をダークマター、73%をダークエネルギーが占めることも判明しているが、その両者の正体はいまだ謎のままだ」、「この半世紀で人類が明らかにした真実と、天文観測技術の劇的な進化を思えば、こうした宇宙の謎が解き明かされる日は、さほど遠くないに違いない」、「宇宙の謎が解き明かされる日」が早く来てほしいものだ。
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