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政府の賃上げ要請(その7)(23年春闘「未曾有の賃上げ」は錯覚 現実は「未曾有の実質賃金下落」、「15%賃上げ」板金加工機の世界大手アマダの危機感 賃上げなくして日本の成長なし、ジョブ型 労働移動の促進で賃下げが増加?岸田政権「三位一体の労働市場改革」が愚策なワケ) [経済政策]

政府の賃上げ要請については、本年3月13日に取上げた。今日は、(その7)(23年春闘「未曾有の賃上げ」は錯覚 現実は「未曾有の実質賃金下落」、「15%賃上げ」板金加工機の世界大手アマダの危機感 賃上げなくして日本の成長なし、ジョブ型 労働移動の促進で賃下げが増加?岸田政権「三位一体の労働市場改革」が愚策なワケ)である。

先ずは、5月18日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏による「23年春闘「未曾有の賃上げ」は錯覚、現実は「未曾有の実質賃金下落」」を紹介しよう。これは、有料記事だが、この記事は今月、無料。
https://diamond.jp/articles/-/323029
・『今春闘賃上げ率、3.7% 「93年以来の伸び」喜んでいいのか  連合の春闘の第4回回答集計結果によると、2023年の春闘賃上げ率は3.69%となった。これまでの伸び率に比べると、格段と高い(図表1)。 「1993年以来の高い伸び率」などと、報道では好調が強調され「このように高率の賃上げが実現したのは、人手不足が深刻化しているからだ」といった解説も見受けられる。今年の春闘で「未曾有の賃上げ」が行なわれたかのような錯覚に陥る。 しかし、実際に起きているのは、正反対のことだ。 春闘賃上げ率が高くなったのは、輸入物価高騰などによる原材料コスト上昇の価格転嫁が行われ企業の粗利益(付加価値)が増えたからだ。 しかし物価上昇率ほど賃金は上がっていないので、実質賃金指数は未曾有の低水準に落ち込んだ。そして賃金分配率も低下している。働き手にとっては、事態はむしろ悪化している』、「物価上昇率ほど賃金は上がっていないので、実質賃金指数は未曾有の低水準に落ち込んだ。そして賃金分配率も低下している。働き手にとっては、事態はむしろ悪化」、なるほど。
・『「実質春闘賃上げ率」はこれまで並みか、それ以下  春闘賃上げ率から消費者物価指数を引いたものを「実質春闘賃上げ率」と呼ぶことにしよう これまでの実質春闘賃上げ率は、図表1に見るように、1%台の後半から2%台の前半の値だった。例外は、消費税増税のあった2014年で、この年には実質春闘賃上げ率はマイナスになった。22年もマイナスだ。 (図表1:春闘賃上げ率と一般労働者賃上げ率 はリンク先参照)  では、23年はどうか? 消費者物価指数(生鮮食料品を除く総合)の前年同月比は、22年4月から2%を超えている。8月以降は3%を超え、12月は4%だ。今後は低下していくことが期待されるが、3%台の値が続く可能性もある。 円ベースの輸入物価指数は、資源価格などの上昇や円安が一時より落ち着いたことから10月までは40%台の上昇だったのが、11月に急速に低下し20%台に、3月に9%台になった。 日本の消費者物価指数は、数カ月のラグで輸入物価の変動をフォローする。したがって、消費者物価は今後、上昇率が鈍化すると予測される。 なお、日本銀行は、4月28日の金融政策決定会合後に公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、23年度の物価上昇率見通しを1.8%にした。すると、23年の実質春闘賃上げ率は、3.7-1.8=1.9%となる(ここでは、年と年度を厳密に区別していない)。この値は、21年までの値とあまり変わらない。むしろ、若干低めだ。 つまり、23年が異例なのは、春闘賃上げ率ではなく、物価上昇率なのだ。 仮に連合が主張していたように春闘で5%台の賃上げ率が実現していたとしたら、実質春闘賃上げ率は5-1.8=3.2%ということになり、16年の2.66%をも上回る値になっただろう。しかし、春闘賃上げ率が3.7%では、物価上昇率が1%程度にまで下がらないと、そうはならない』、「仮に連合が主張していたように春闘で5%台の賃上げ率が実現していたとしたら、実質春闘賃上げ率は5-1.8=3.2%ということになり、16年の2.66%をも上回る値になっただろう。しかし、春闘賃上げ率が3.7%では、物価上昇率が1%程度にまで下がらないと、そうはならない」、「連合」の「春闘賃上げ率」は腰砕けだ。
・『経済全体では実質賃金は未曾有の低水準  全体でみた賃上げ率はどうか。春闘の対象となっているのは主として大企業の従業員なので、経済全体の賃上げ率は、春闘賃上げ率より低くなる。これまでのデータを見ると、図表1に示す通りだ。 b欄で示される経済全体の賃上げ率は、a欄で示される春闘賃上げ率に比べると、かなり低い。2014年以降「官製春闘」と言われたように、政府が春闘に介入したのだが、経済全体の賃金にまで影響を与えることはできなかったのだ。 ただし、22年は例外で、b欄の数字のほうがa欄の数字より大きくなっている。これは、3月30日の本コラム「春闘の好調を生んだ『22年特有の現象』、全体の持続的賃上げは望み薄」で指摘したように、22年は、大企業より中企業の賃上げ率のほうが高かったためだ。 ただし経済全体の実質賃金は、物価高騰によって22年から下落が顕著になっている。 毎月勤労統計調査によると、実質賃金指数(現金給与総額、5人以上の事業所)の対前年同月比は、22年4月から連続してマイナスが続いており、23年1月には△4.1%、2月には△2.9%となった。 その結果、図表2に示すように、実質賃金指数は未曾有の低水準に落ちこんでいる(ここに示すのは、各年1月の値。20年を100とする指数で表しているが、例年1月の値は年平均値より低くなるので、図表2の20年の数字も100より低くなっている)』、「実質賃金指数」の落ち込みは顕著だ。
・『粗利益増えたが賃金分配率は低下 結局、「損をした」労働者  では23年春闘の賃上げ率がかつてなく高いのはなぜか。 それは、前記の本コラムでも書いたように22年は、価格転嫁によって企業の粗利益(付加価値)が大幅に増えたからだ。 輸入物価の高騰による原材料価格の高騰を多くの企業が販売価格に転嫁し、それによる売上額の増加は原価増より大きかったため、粗利益(売上げ-原価)が増えた。22年の粗利益は、前年より4.95%も増えたから、分配率を変えなければ、賃金を5%近く上昇させることが可能だったのだ。 ところが実際には、給与・賞与総額は3.13%しか増えなかった。賃金(従業員一人当たりの給与・賞与)の伸びは2.56%でしかなかった。例外が前述した中企業で、粗利益の増加分以上に賃金を増やしたのだ。 ただ全体でみれば、このデータで見る限り賃金分配率は下がったことになる。22年の分配率の正確なデータ(国民経済計算、制度部門別所得支出勘定)はまだ得られないのだが、賃金の分配率がかなり低下したことは間違いないと考えられる。 以上のように、22年の物価高騰によって、労働者は「損をした」ことになる。賃金上昇率が物価上昇率に追いつかなかったので、実質賃金が下落した。そして分配率も低下したのだ。「未曾有の春闘賃上げ率」といって喜んでいてよい状態ではない。労働者は経済政策の変更を求めなければならない』、「22年の粗利益は、前年より4.95%も増えたから、分配率を変えなければ、賃金を5%近く上昇させることが可能だったのだ。 ところが実際には、給与・賞与総額は3.13%しか増えなかった。賃金(従業員一人当たりの給与・賞与)の伸びは2.56%でしかなかった。例外が前述した中企業で、粗利益の増加分以上に賃金を増やしたのだ。 ただ全体でみれば、このデータで見る限り賃金分配率は下がったことになる」、「22年の物価高騰によって、労働者は「損をした」ことになる。賃金上昇率が物価上昇率に追いつかなかったので、実質賃金が下落した。そして分配率も低下したのだ。「未曾有の春闘賃上げ率」といって喜んでいてよい状態ではない」、その通りだ。

次に、5月30日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「「15%賃上げ」板金加工機の世界大手アマダの危機感、賃上げなくして日本の成長なし」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/323629
・『「従来の労働慣行のまま、成長性を維持することは難しい」――。こう気づいた企業から動き始めている。一例として、板金加工機世界大手のアマダは、2025年の給与水準を現行から15%引き上げる。高い専門性を持つ優秀な人材を確保するために、競争力ある賃金を提示しなければならないとの危機感は強いといえる』、「板金加工機世界大手のアマダは、2025年の給与水準を現行から15%引き上げる」、とは思い切った措置だ。
・『「付加価値に占める人件費の割合」が低い日本  最近、賃金を大幅に引き上げるわが国の企業が相次いでいる。その主たる要因は、人手不足だ。帝国データバンクが公表した、「人手不足に対する企業の動向調査(2023年4月)」によると、正社員が不足していると回答した企業は51.4%に達した。 「賃金を引き上げ優秀な人材を確保しなければ、企業の成長性を維持することが難しい」といった経営者の危機感は強い。物価の上昇が続く中で、私たちの生活を守るためには賃上げは欠かせない。これまでの労働慣行に守られた、わが国の賃金体系は変化しつつあるともいえる。 国際比較を行うと、わが国の「労働分配率」(付加価値に占める人件費の割合)は依然として低い。国際労働機関(ILO)によると20年、わが国の労働分配率は56.9%、米国は60.4%、ドイツは63.4%、G7(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国)平均は60.2%だった。 背景には多くの要因がある。特に、バブル崩壊後、急激な株価・地価下落に直面した企業の多くが過度にリスク回避の心理を強めた。その状況から脱却するため、賃上げを進め、優秀な人材確保を急ぐ企業が増えている。 今後の注目点は、賃上げを持続的に続けられるかだ。そのために企業は、収益基盤を拡充し経営体力をつける必要がある。企業が収益の向上を実現し、賃金を引き上げることによって、労働市場の改革を実践することが日本の成長に不可欠だ』、「わが国の労働分配率は56.9%、米国は60.4%、ドイツは63.4%、G7・・・平均は60.2%だった」、「背景には多くの要因がある。特に、バブル崩壊後、急激な株価・地価下落に直面した企業の多くが過度にリスク回避の心理を強めた」、「わが国の労働分配率」の低さは確かに異常だ。
・『非製造業で賃上げ率が高い、「人手不足」倒産も増加  5月19日、経団連は「2023年春季労使交渉・大手企業業種別回答状況」を公表した。加重平均ベースでみると、回答92社の定期昇給とベースアップ(ベア)を合わせた賃上げ率は3.91%に上昇した。昨年の実績(2.35%)からの上昇幅は大きい。 業種別にみると、製造業(85社、3.88%)よりも非製造業(7社、4.02%)の賃上げ率が高い。ウィズコロナの経済と社会運営によって国内外で人の往来が活発化している。それに伴い、飲食、宿泊、交通などサービス業を中心に労働力の確保が喫緊の課題だ。 5月17日に帝国データバンクが公表した「企業における人材確保・人手不足の要因に関するアンケート」からも、賃金を積み増して優秀な人材の確保を急ぐ企業の増加が確認できる。その要旨によると、人手不足が発生していない要因として、回答企業の51.7%が「賃金や賞与の引き上げ」を挙げた。一方、「働きやすい職場環境づくり」「定年延長やシニア再雇用」の回答割合はいずれも30%台だった。 逆に賃上げを実施することが難しい場合、事業の継続に行き詰まる企業が増えている。東京商工リサーチによると、4月、人手不足に関連した企業の倒産が12件あった。要因として、人件費の高騰は大きい。 なお、日本商工会議所の早期景気観測の4月調査結果によると、「22年度、予定した採用人数を確保できなかった」と回答した企業が、全体の52.4%に達した。競合他社を上回る賃金を提示できない場合、目先の事業運営に必要な人員を確保できず淘汰される企業が増えそうだ。 人手不足に直面するのは民間企業だけではない。政府は国家公務員の給与を引き上げようとしている。わが国全体で、事業の継続、中長期的な収益の増大などを目指し、人材争奪戦は激化している』、「回答92社の定期昇給とベースアップ(ベア)を合わせた賃上げ率は3.91%に上昇した。昨年の実績(2.35%)からの上昇幅は大きい。 業種別にみると、製造業(85社、3.88%)よりも非製造業(7社、4.02%)の賃上げ率が高い」、「昨年の実績・・・からの上昇幅は大きい」とするが、上昇幅の少なさにはガッカリさせられる。
・『板金加工機のアマダが給与15%引き上げの訳  わが国の雇用慣行にも、ようやく変化の兆しが出始めた。これまで多くの企業は、新卒一括採用、年功序列、終身雇用を続けてきた。毎年度、企業は新卒学生を一括で採用した。「和を以て貴しとなす」の考えに基づき、業務を通した教育(OJT)が行われゼネラリストが育成された。 一定の時間が経過すると、従業員は年功に基づいて昇進する。給料も上がる。成績が良い人などが管理職、さらには役員に抜てきされる。組織内、あるいはグループ企業内で労働力の過不足を調整する形で人事異動が行われ、定年退職まで勤め上げる――。ある意味、わが国では企業内に独自の労働分配メカニズムが整備され、労働市場の流動性の向上は遅れた。 しかし、バブル崩壊後、わが国の雇用環境は企業の成長促進よりも「足かせ」の側面が増えたと考えられる。国内では急速な資産価格下落により、企業経営者、家計、政府のリスク回避的心理は高まった。 一方、世界経済は急速にグローバル化し、デジタル家電などの国際分業が加速した。製品の設計開発から生産、販売などを自己完結したわが国企業のビジネスモデルは優位性を失った。2008年以降は人口減少も加速した。経済の縮小均衡を背景に、専守防衛型の経営を優先する企業は増えた。 「従来の労働慣行のまま、成長性を維持することは難しい」――。こう気づいた企業から動き始めている。一例として、板金加工機世界大手のアマダは、25年の給与水準を現行から15%引き上げる。高い専門性を持つ優秀な人材を確保するために、競争力ある賃金を提示しなければならないとの危機感は強いといえる。また、ビール業界では、マーケティングのプロを経営トップに登用して、新商品開発や販売戦略の強化を目指している』、「板金加工機世界大手のアマダは、25年の給与水準を現行から15%引き上げる。高い専門性を持つ優秀な人材を確保するために、競争力ある賃金を提示しなければならないとの危機感は強い」、「ビール業界では、マーケティングのプロを経営トップに登用して、新商品開発や販売戦略の強化を目指している」、こうした動きがもっと広がって欲しいものだ。
・『期待される“令和版ソニーやホンダ”の登場  過去30年以上、わが国では実質ベースで賃金が伸び悩んだ。わが国は持続的な賃上げを目指す極めて重要な局面を迎えている。企業に求められることは、収益分野を拡大して賃上げの原資を増やすことだ。 それが難しい場合、企業収益は伸び悩み、賃上げは一時的な現象にとどまる。その状況が続くと経済の縮小均衡は加速し、わが国が世界第3位の経済規模を維持することも難しくなる。その展開は何としても避けたい。 企業が収益分野を拡充する選択肢の一つは、新しい商品の創出に取り組むことだ。かつて、わが国にはそうした考えを積極的に実行する企業が多かった。代表例は、1946年に誕生したソニー(当時は東京通信工業)や、1948年創業のホンダだ。 ソニーが、トランジスタラジオで磨いた音響関連の技術を用いて、より良い音質で音楽を楽しみたいという願望を実現しようと生み出したのが、「ウォークマン」だった。また、ホンダは二輪車で磨いた内燃機関の製造技術を駆使し、CVCCエンジンを開発し高い走行性と燃費性能を確立した。 そこに共通するのは、最先端の理論や製造技術と「人々により良い生き方を」といった思いを結合し、商品化を実現したことだ。それによってソニーのウォークマンは「ポータブル音楽生成機器」、ホンダのCVCCエンジンは「低燃費車」という世界に新しい市場を創造した。 ソニーは音楽再生機器やCDなど、ホンダは四輪車や航空機へ事業領域を広げ、収益分野は増えた。それが一時期の両社の高成長と、給料の増加を支えた。 最近では、世界の半導体大手企業が対日直接投資を積み増すなど、わが国の製造技術の重要性は高まっている。そうした環境変化をうまく活用して本邦企業が収益分野を拡充し、高付加価値の新しい商品を提供できれば、賃金上昇の持続性は高まるだろう。わが国にはそれが必要だ』、「期待される“令和版ソニーやホンダ”の登場」はその通りだが、その萌芽すら見えないのは残念だ。

第三に、7月12日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した室伏政策研究室代表・政策コンサルタントの室伏謙一氏による「ジョブ型、労働移動の促進で賃下げが増加?岸田政権「三位一体の労働市場改革」が愚策なワケ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/325780
・『6月21日に通常国会は閉会、芸能人の不倫などの話題の陰に隠れて、政治・政策的な話への国民の関心は低下すると思いきや、そうはならなかった。マイナンバーカードを巡る不祥事が相次いで明らかになっていっているからだ。それにもかかわらず、「不安の解消」などと的外れなことを発言し、紙保険証の廃止や、さらには運転免許証との統合まで強行しようとしている岸田政権の支持率は大幅に下落。そもそも何が成果だったのか分からない広島サミットを受けて支持率が上昇したこと自体が理解不能であるが、そうした中で、多少は話題にはなったものの、シラッと決められ、静かに進められている政策がある。三位一体の労働市場改革である』、「三位一体の労働市場改革」は初めて知った。
・『「構造的賃上げ」という聞き慣れない言葉を使う理由  この三位一体の労働市場改革は、岸田政権の目指す賃上げのために進められることとされ、先日閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針2023、いわゆる骨太の方針2023にも多く記載されている。 賃上げを政権の重要課題と考えていることの表れということなのだろうが、結論から言えば、この三位一体の労働市場改革は賃上げにはほとんどつながらず、かえって多くの労働者の賃金を引き下げることとなり、貧困化、デフレ、そしてごく一部の賃金が大幅に上昇する高所得者と、賃金が上がらないその他大勢との分断が進むことにつながりかねないだろう。 賃上げを進めたい岸田政権がそんな政策を進めるはずがないだろうと思われた方もおられるかもしれないが、なぜそんなことが言えるのか、以下解説していきたい。) 三位一体の労働市場改革の具体的な内容、進め方を規定しているのが、「三位一体の労働市場改革の指針」である。本年5月16日、第16回新しい資本主義実現会議において決定された。 この中で、三位一体の労働市場改革による賃上げのことを、「構造的に賃金が上昇する仕組みを作っていく」ものであるとして、「構造的賃上げ」と呼んでいる。聞き慣れないこの言葉、当然のことながら、骨太の方針2023にも何カ所か登場する。 その意味するところはといえば、(1)リ・スキリングによる能力向上の支援、(2)個々の企業の実態に応じた職務給の導入、そして(3)成長分野への労働移動の円滑化により、賃金が上昇する状況を創出するということ。三位一体とはこれらの3つを一体で進めるということのようである。 しかし、この中には国民経済のお金が増える、お金を増やす措置がないので、これらの措置を講じたところで必然的に賃金が上昇するわけではないであろうことは容易に推測できる。だからこその「構造的」であり、賃金を上げるとは書くことができず、賃金が上昇する仕組みという曖昧な表現となっているのであろう』、「「構造的に賃金が上昇する仕組みを作っていく」・・・その意味するところはといえば、(1)リ・スキリングによる能力向上の支援、(2)個々の企業の実態に応じた職務給の導入、そして(3)成長分野への労働移動の円滑化により、賃金が上昇する状況を創出するということ。三位一体とはこれらの3つを一体で進めるということのようである」、なるほど。
・『リ・スキリング普及の恩恵を受けるのは労働者よりも人材関係企業か  これらの措置を一つ一つ見ていこう。 まず、(1)のリ・スキリングによる能力向上の支援。リ・スキリングとは、定まった定義はないようであるが、一般的には学び直し、仕事で必要な新しい知識を学ぶことと考えられている。現在、このリ・スキリングを世界的に強力に提唱しているのは世界経済フォーラム(World Economic Forum)であり、日本で言われるリ・スキリングとは少々方向性を異にするようであるところ、その動きは注視する必要があると考えられるが、その実態については別稿に譲る。 さて、「仕事で必要な」といっても、今の仕事でというよりは新しい仕事で必要とされるであろう知識の習得が念頭に置かれているようである。「エンプロイアビリティ」なる聞き慣れない言葉まで同指針には登場するが、その意味するところは、雇われる能力、要するに「転職できる能力」であるので、リ・スキリングは転職を前提にしたものとしての意味合いが強いと考えていいだろう。 その一方で、優秀な人材を離職させず、引き付けておくためには、企業は「人への投資」として社員個人へのリ・スキリングの支援強化を行うべきであるとも述べられている。相矛盾するような内容が同じ文書の中に記載されているというのはなんともお粗末な話であるが、つまるところ、「リ・スキリングが広まり、行われるようになればいい」ということなのだろう。 リ・スキリングが広まれば転職が活発になり賃金が上がる、リ・スキリングでスキルアップを図れば賃金が上がる、そんなことは確約などできないのだが、リ・スキリングが活況を呈するようになれば、人材育成を行う人材関係企業にとっては新たなマーケットが生まれ、事業機会が拡大する(そうなれば人材関係企業の社員にとっては賃上げが期待できるかもしれないが)。 さらに、民間に在籍するキャリアコンサルタントの本分野における役割強化もうたわれていることも併せ考えると、そのあたりにリ・スキリングが強調される背景事情があるのではないだろうか』、「「エンプロイアビリティ」なる聞き慣れない言葉まで同指針には登場するが、その意味するところは、雇われる能力、要するに「転職できる能力」であるので、リ・スキリングは転職を前提にしたものとしての意味合いが強いと考えていいだろう。 その一方で、優秀な人材を離職させず、引き付けておくためには、企業は「人への投資」として社員個人へのリ・スキリングの支援強化を行うべきであるとも述べられている。相矛盾するような内容が同じ文書の中に記載されているというのはなんともお粗末な話であるが、つまるところ、「リ・スキリングが広まり、行われるようになればいい」ということなのだろう」、「リ・スキリングが活況を呈するようになれば、人材育成を行う人材関係企業にとっては新たなマーケットが生まれ、事業機会が拡大する(そうなれば人材関係企業の社員にとっては賃上げが期待できるかもしれないが)。 さらに、民間に在籍するキャリアコンサルタントの本分野における役割強化もうたわれていることも併せ考えると、そのあたりにリ・スキリングが強調される背景事情があるのではないだろうか」、「「リ・スキリングが活況を呈するようになれば、人材育成を行う人材関係企業にとっては新たなマーケットが生まれ、事業機会が拡大する・・・さらに、民間に在籍するキャリアコンサルタントの本分野における役割強化」、つまり「リ・スキリング」を受ける労働者ではなく、「人材関係企業」や「民間に在籍するキャリアコンサルタント」、などが重要な役割を果たすようだ。
・『ごく少数の賃上げしか期待できず賃下げの可能性もある職務給の導入  次に、(2)個々の企業の実態に応じた職務給の導入。「同じ職務であるにもかかわらず、日本企業と外国企業の間に存在する賃金格差を、国毎の経済事情の差を勘案しつつ、縮小することを目指す」ための措置のようであるが、同じ職務といっても、まさに「個々の企業の実態に応じ」て、その職務の実態は異なるのであるから、同列比較するということ自体おこがましい。 需要が旺盛で、成長している国であれば、賃金が上昇するのは当たり前であり、そのような状況を国が創出すればいいのであって、個別の企業で職務給を導入したところで、どうにかなる話ではない。そもそも、需要が伸びていないか、収縮している経済で、個別企業内で職務給を導入して特定の職務の賃金を増やしたとして、その原資は他の職務の社員の賃金を削ってくるか、何がしかのコスト削減を図るかしかない。 つまりどこかを削ってどこかに付けるということだが、これでは一部の人は賃金が増えるかもしれないが、他の人は賃金が上がらないということになる。これが岸田政権の目指す賃上げであるのであれば、まさに看板に偽りあり、である。 この職務給はジョブ型雇用(人事)とも呼ばれるが、これは職務に対して人を就けるというものであり、その職務の内容や必要とされる能力が明確に定義され、評価基準が設定される。その職務に対して採用なり任用なりされているので、その仕事の実施に徹することが前提である。 士業のような特殊な仕事であれば別だが、年俸制を採るコンサルティング会社のような場合でもチームや組織で仕事をするので、特定の仕事だけしていればいいという話にはならず、人事の評価基準にもチームワーク的なものが設定されることもある。 つまり、職務給の導入が可能な職務は相当程度限定されることが考えられ、その導入によって賃金が上がる人がいたとしてもごく少数になるのではないか。 もしそうではない、職務給になじまない職務に対しても無理やりこれを導入した場合、組織や業務が硬直的になることも想定され、導入したはいいが、返って生産性が低下し、企業の業績が悪化し、職務給の額を引き下げざるを得ない状況になるといったことも考えられるのではないか』、「年俸制を採るコンサルティング会社のような場合でもチームや組織で仕事をするので、特定の仕事だけしていればいいという話にはならず、人事の評価基準にもチームワーク的なものが設定されることもある。 つまり、職務給の導入が可能な職務は相当程度限定されることが考えられ、その導入によって賃金が上がる人がいたとしてもごく少数になるのではないか」、なるほど。
・『労働移動を円滑化することで成長産業が生まれるという詭弁  そして、(3)成長分野への労働移動の円滑化。失業給付制度の見直しや、退職所得課税制度等の見直し(と称した勤続20年以上の者に対する実質的な増税の検討)によってこれを進めようということのようであるが、要するに、転職すれば賃金が上がるはずだという根拠なき前提に立ってこれを進めようとしているということだろう。 そもそも成長分野と言うが、成長していて人手不足の分野であれば、労働移動を円滑化しなくとも転職は進んでいくだろう。かく言う筆者も、成長著しいコンサル会社からの人員増強・新部門設立のお話をいただいて転職した。 それをあえて「成長分野への」と記載するところに、何か本当の目的があるようだ。 「日本に成長産業が生まれないのは、成長分野への労働移動が円滑ではないからだ。円滑にするためには解雇規制を緩和すべきだ」という話を聞いたことがある方もいるのではないだろうか。 なんとなくもっともらしく聞こえてしまうのかもしれないが、筆者からすれば支離滅裂な話でしかない。成長産業が生まれるのは、長期・大規模・計画的な国の投資があっての話。このことについては、筆者が前書きおよび解説を執筆して翻訳版が復刻された、マリアナ・マッツカートの『企業家としての国家』に詳しいのでそちらを参照いただきたいが、少なくとも労働移動の円滑化うんぬんとは関係がない。 国が役割を果たして成長産業を創出し、その事業を安定化させるまで面倒を見ることで、その事業が拡大し、その周辺産業も含めて働き手が集まるようになる。つまり、順番が逆ということであるが、そんな詭弁(きべん)のような話まで作り上げて何をしたいのかと考えれば、本丸は「解雇規制の緩和」ということだろう。 同指針では一言も書かれていないが、これまでの「労働移動の円滑化」を巡る言説を思い返せば、そのことが分かるだろう。 容易に解雇ができるようになって、雇用が不安定化すれば、当然イノベーションは起こりにくくなるし、企業は成長しにくくなる。成長しにくくなるということは賃金が上がりにくくなるか、下がりやすくなるということである。つまり、賃上げは極めて期待薄になるだろうということである。 以上見てきたように、岸田政権の三位一体の労働市場改革を検証していけば、賃上げなど夢のまた夢どころか、多くの人にとってはかえって賃下げにつながることになりかねないことがお分かりいただけたのではないか。 そもそも、なぜ日本で賃金が下がってきたのかといえば、一つには株主資本主義、金融資本主義のまん延により、株主価値の最大化に重きが置かれるようになり、株主配当を増やすためのコスト削減の格好の対象に人件費がなったことである。 さらに加えて、超短期的な経営により中長期的な研究開発が困難になり、イノベーションが起こりにくくなり、マクロで見た場合に賃金が上昇しにくくなったこと、過剰なグローバル化による価格競争のために、製造業を中心にコスト削減の一環として人件費が削減されるか伸びにくくなったこと、人件費削減の手法として正規労働者の非正規労働者による置き換えが進んだこと、政府が緊縮財政を続けたため、国内の需要が収縮するデフレに陥り、そうした中で消費税の増税を強行したため、さらに需要は収縮し、価格を下げて需要を喚起するため人件費を削減せざるを得ない状況が続いてきたことなどである。 これらに加えて、技能実習生や特定技能と称する低賃金移民の受け入れ拡大を進めたことで、賃金を押し下げる圧力がさらに強まっていっていると言っていいだろう。この賃金が上がらない状況は、結婚ができない状況、結婚して子どもを産み育てることができない状況を併発し、少子化の深刻化の大きな原因ともなっている。 したがって、岸田政権が本気で賃上げを実現したいのであれば、最低でもデフレギャップを埋めるだけの国の財政支出を拡大することである。つまり、国全体としてのパイを増やす、お金を国が率先して増やすことである。そして、岸田文雄首相が総裁選の時に掲げた新自由主義からの転換を、株主資本主義の本格的な修正を中心に、本気で進めることである。しかし、そうした措置を講じる気配は、岸田政権には、今のところ見られない』、「岸田政権の三位一体の労働市場改革を検証していけば、賃上げなど夢のまた夢どころか、多くの人にとってはかえって賃下げにつながることになりかねないことがお分かりいただけたのではないか。 そもそも、なぜ日本で賃金が下がってきたのかといえば、一つには株主資本主義、金融資本主義のまん延により、株主価値の最大化に重きが置かれるようになり、株主配当を増やすためのコスト削減の格好の対象に人件費がなったことである。 さらに加えて、超短期的な経営により中長期的な研究開発が困難になり、イノベーションが起こりにくくなり、マクロで見た場合に賃金が上昇しにくくなったこと、過剰なグローバル化による価格競争のために、製造業を中心にコスト削減の一環として人件費が削減されるか伸びにくくなったこと、人件費削減の手法として正規労働者の非正規労働者による置き換えが進んだこと、政府が緊縮財政を続けたため、国内の需要が収縮するデフレに陥り、そうした中で消費税の増税を強行したため、さらに需要は収縮し、価格を下げて需要を喚起するため人件費を削減せざるを得ない状況が続いてきたことなどである。 これらに加えて、技能実習生や特定技能と称する低賃金移民の受け入れ拡大を進めたことで、賃金を押し下げる圧力がさらに強まっていっていると言っていいだろう。この賃金が上がらない状況は、結婚ができない状況、結婚して子どもを産み育てることができない状況を併発し、少子化の深刻化の大きな原因ともなっている。 したがって、岸田政権が本気で賃上げを実現したいのであれば、最低でもデフレギャップを埋めるだけの国の財政支出を拡大することである。つまり、国全体としてのパイを増やす、お金を国が率先して増やすことである。そして、岸田文雄首相が総裁選の時に掲げた新自由主義からの転換を、株主資本主義の本格的な修正を中心に、本気で進めることである」、同感である。「岸田政権の三位一体の労働市場改革」には呆れ果てた、絶対反対である。  
タグ:ダイヤモンド・オンライン 政府の賃上げ要請 (その7)(23年春闘「未曾有の賃上げ」は錯覚 現実は「未曾有の実質賃金下落」、「15%賃上げ」板金加工機の世界大手アマダの危機感 賃上げなくして日本の成長なし、ジョブ型 労働移動の促進で賃下げが増加?岸田政権「三位一体の労働市場改革」が愚策なワケ) 野口悠紀雄氏による「23年春闘「未曾有の賃上げ」は錯覚、現実は「未曾有の実質賃金下落」」 「物価上昇率ほど賃金は上がっていないので、実質賃金指数は未曾有の低水準に落ち込んだ。そして賃金分配率も低下している。働き手にとっては、事態はむしろ悪化」、なるほど。 「仮に連合が主張していたように春闘で5%台の賃上げ率が実現していたとしたら、実質春闘賃上げ率は5-1.8=3.2%ということになり、16年の2.66%をも上回る値になっただろう。しかし、春闘賃上げ率が3.7%では、物価上昇率が1%程度にまで下がらないと、そうはならない」、「連合」の「春闘賃上げ率」は腰砕けだ。 「実質賃金指数」の落ち込みは顕著だ。 「22年の粗利益は、前年より4.95%も増えたから、分配率を変えなければ、賃金を5%近く上昇させることが可能だったのだ。 ところが実際には、給与・賞与総額は3.13%しか増えなかった。賃金(従業員一人当たりの給与・賞与)の伸びは2.56%でしかなかった。例外が前述した中企業で、粗利益の増加分以上に賃金を増やしたのだ。 ただ全体でみれば、このデータで見る限り賃金分配率は下がったことになる」、 「22年の物価高騰によって、労働者は「損をした」ことになる。賃金上昇率が物価上昇率に追いつかなかったので、実質賃金が下落した。そして分配率も低下したのだ。「未曾有の春闘賃上げ率」といって喜んでいてよい状態ではない」、その通りだ。 真壁昭夫氏による「「15%賃上げ」板金加工機の世界大手アマダの危機感、賃上げなくして日本の成長なし」 「板金加工機世界大手のアマダは、2025年の給与水準を現行から15%引き上げる」、とは思い切った措置だ。 「わが国の労働分配率は56.9%、米国は60.4%、ドイツは63.4%、G7・・・平均は60.2%だった」、「背景には多くの要因がある。特に、バブル崩壊後、急激な株価・地価下落に直面した企業の多くが過度にリスク回避の心理を強めた」、「わが国の労働分配率」の低さは確かに異常だ。 「回答92社の定期昇給とベースアップ(ベア)を合わせた賃上げ率は3.91%に上昇した。昨年の実績(2.35%)からの上昇幅は大きい。 業種別にみると、製造業(85社、3.88%)よりも非製造業(7社、4.02%)の賃上げ率が高い」、「昨年の実績・・・からの上昇幅は大きい」とするが、上昇幅の少なさにはガッカリさせられる。 「板金加工機世界大手のアマダは、25年の給与水準を現行から15%引き上げる。高い専門性を持つ優秀な人材を確保するために、競争力ある賃金を提示しなければならないとの危機感は強い」、「ビール業界では、マーケティングのプロを経営トップに登用して、新商品開発や販売戦略の強化を目指している」、こうした動きがもっと広がって欲しいものだ。 「期待される“令和版ソニーやホンダ”の登場」はその通りだが、その萌芽すら見えないのは残念だ。 室伏謙一氏による「ジョブ型、労働移動の促進で賃下げが増加?岸田政権「三位一体の労働市場改革」が愚策なワケ」 「三位一体の労働市場改革」は初めて知った。 「「構造的に賃金が上昇する仕組みを作っていく」・・・その意味するところはといえば、(1)リ・スキリングによる能力向上の支援、(2)個々の企業の実態に応じた職務給の導入、そして(3)成長分野への労働移動の円滑化により、賃金が上昇する状況を創出するということ。三位一体とはこれらの3つを一体で進めるということのようである」、なるほど。 「「エンプロイアビリティ」なる聞き慣れない言葉まで同指針には登場するが、その意味するところは、雇われる能力、要するに「転職できる能力」であるので、リ・スキリングは転職を前提にしたものとしての意味合いが強いと考えていいだろう。 その一方で、優秀な人材を離職させず、引き付けておくためには、企業は「人への投資」として社員個人へのリ・スキリングの支援強化を行うべきであるとも述べられている。相矛盾するような内容が同じ文書の中に記載されているというのはなんともお粗末な話であるが、つまるところ、「リ・スキリングが広まり 、行われるようになればいい」ということなのだろう」、「リ・スキリングが活況を呈するようになれば、人材育成を行う人材関係企業にとっては新たなマーケットが生まれ、事業機会が拡大する(そうなれば人材関係企業の社員にとっては賃上げが期待できるかもしれないが)。 さらに、民間に在籍するキャリアコンサルタントの本分野における役割強化もうたわれていることも併せ考えると、そのあたりにリ・スキリングが強調される背景事情があるのではないだろうか」、 「「リ・スキリングが活況を呈するようになれば、人材育成を行う人材関係企業にとっては新たなマーケットが生まれ、事業機会が拡大する・・・さらに、民間に在籍するキャリアコンサルタントの本分野における役割強化」、つまり「リ・スキリング」を受ける労働者ではなく、「人材関係企業」や「民間に在籍するキャリアコンサルタント」、などが重要な役割を果たすようだ。 「年俸制を採るコンサルティング会社のような場合でもチームや組織で仕事をするので、特定の仕事だけしていればいいという話にはならず、人事の評価基準にもチームワーク的なものが設定されることもある。 つまり、職務給の導入が可能な職務は相当程度限定されることが考えられ、その導入によって賃金が上がる人がいたとしてもごく少数になるのではないか」、なるほど。 「岸田政権の三位一体の労働市場改革を検証していけば、賃上げなど夢のまた夢どころか、多くの人にとってはかえって賃下げにつながることになりかねないことがお分かりいただけたのではないか。 そもそも、なぜ日本で賃金が下がってきたのかといえば、一つには株主資本主義、金融資本主義のまん延により、株主価値の最大化に重きが置かれるようになり、株主配当を増やすためのコスト削減の格好の対象に人件費がなったことである。 さらに加えて、超短期的な経営により中長期的な研究開発が困難になり、イノベーションが起こりにくくなり、マクロで見た場合に賃金が上昇しにくくなったこと、過剰なグローバル化による価格競争のために、製造業を中心にコスト削減の一環として人件費が削減されるか伸びにくくなったこと、人件費削減の手法として正規労働者の非正規労働者による置き換えが進んだこと、政府が緊縮財政を続けたため、国内の需要が収縮するデフレに陥り、そうした中で消費税の増税を強行したため、さらに需要は収縮し、価格を下げて需要を喚起するため人件費を削減せざ るを得ない状況が続いてきたことなどである。 これらに加えて、技能実習生や特定技能と称する低賃金移民の受け入れ拡大を進めたことで、賃金を押し下げる圧力がさらに強まっていっていると言っていいだろう。この賃金が上がらない状況は、結婚ができない状況、結婚して子どもを産み育てることができない状況を併発し、少子化の深刻化の大きな原因ともなっている。 したがって、岸田政権が本気で賃上げを実現したいのであれば、最低でもデフレギャップを埋めるだけの国の財政支出を拡大することである。つまり、国全体としてのパイを増やす、お金を国が率先して増やすことである。そして、岸田文雄首相が総裁選の時に掲げた新自由主義からの転換を、株主資本主義の本格的な修正を中心に、本気で進めることである」、同感である。「岸田政権の三位一体の労働市場改革」には呆れ果てた、絶対反対である。
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