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小池都知事問題(その9)(サザン桑田佳祐が「明治神宮外苑」の樹木伐採“反対”ソング発表…小池都知事は真っ青、「厚顔無恥」小池都知事、豊洲観光施設オープン登壇にあきれる声「5年遅れ」開業“元凶”の当事者のはずが) [国内政治]

小池都知事問題については、昨年6月16日に取上げた。今日は、(その9)(サザン桑田佳祐が「明治神宮外苑」の樹木伐採“反対”ソング発表…小池都知事は真っ青、「厚顔無恥」小池都知事、豊洲観光施設オープン登壇にあきれる声「5年遅れ」開業“元凶”の当事者のはずが)である。

先ずは、昨年9月4日付け日刊ゲンダイ「サザン桑田佳祐が「明治神宮外苑」の樹木伐採“反対”ソング発表…小池都知事は真っ青」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/328552#goog_rewarded
・『ついに、日本の音楽シーンの先頭に立つアーティストが、東京で進む「樹木伐採」事業に“反対”の声を上げた。 「サザンオールスターズ」が3日、明治神宮外苑の再開発に伴う樹木伐採問題に懸念を表明する新曲「Relay~杜の詩」の歌詞を公式サイトに掲載。デビュー45年を記念する新曲だ。 ボーカルの桑田佳祐は2日のラジオ番組で、同曲を巡って、再開発に反対していた音楽家の故・坂本龍一さんに言及。「(坂本さんの)思いを受け止めて作った曲と言っていい」と発言し「(外苑は)我々が音楽を作ってきたビクタースタジオの本当に周辺、身近な場所で、自分にとっても本当に大切な故郷を思って作った曲です」とも語っていた』、「「(外苑は)我々が音楽を作ってきたビクタースタジオの本当に周辺、身近な場所で、自分にとっても本当に大切な故郷を思って作った曲です」、なるほど。
・『「アスファルト・ジャングルに変わっちゃうの?」  新曲の歌詞には「麗しいオアシスがアスファルト・ジャングルに変わっちゃうの?」「未来の都市が空を塞いで良いの?」などとつづられ、高層ビルが建設される再開発計画への反対の思いがにじんでいる。 再開発は、三井不動産を中心とした複数の事業者が進めているが、工事を認可したのが東京都であるため、小池都知事に「樹木伐採を許すのか」と批判が集中。これまで、坂本さんの他、小説家・村上春樹らも反対を表明している。それでも小池は反対の声を無視して、「樹木伐採」を容認するのか』、「アスファルト・ジャングル」とは言い得て妙だ。

次に、2月2日付けFRASH「「厚顔無恥」小池都知事、豊洲観光施設オープン登壇にあきれる声「5年遅れ」開業“元凶”の当事者のはずが」を紹介しよう。
https://smart-flash.jp/sociopolitics/272132/1/1/
・『2月1日、東京・豊洲に「豊洲千客万来」がオープンした。江東区の豊洲市場に併設する観光施設で、63店舗の飲食店が集まる「食楽棟」に加え、露天風呂や宿泊施設を備えた「温浴棟」がある。 オープニングセレモニーには歌舞伎俳優の中村獅童と小池百合子・東京都知事が登場。小池知事は「臨海部の新しい顔としての発展を心から願います」と述べた。 【関連記事:「3度も選挙応援に行っておいて」小池百合子都知事が風邪で公務キャンセル…都知事選は「日本保守党から刺客」報道も】 だが、SNSには 《小池百合子、よくオープニングセレモニーに出席できるな。厚顔無恥とはこの人のためにある言葉だな》 《豊洲の千客万来開業のテープカットに小池百合子都知事がいてびっくりした 呼ぶんだ… 行くんだ…みたいな 大人の世界だな》 などの声が多くみられた。 「『千客万来』の開業までには、紆余曲折がありました。 もともとは2016年11月、中央市場の築地から豊洲への移転と同時に開業する予定で、2014年には東京都が『すしざんまい』の運営会社と大和ハウス工業を委託企業に選定していました。しかし、調整が難航し、両社が2015年になって撤退。開業は延期されました。 2016年3月には、再公募によって日本各地で温泉施設を運営する『万葉倶楽部』が事業者に決定します。この時点では、2018年に商業棟を開業、2019年には温泉棟を開業する予定でした。 しかし2016年8月、小池氏が東京都知事に就任したことで、計画が大きく乱れることになりました。就任直後に築地市場の豊洲移転を延期したためです。小池氏は『築地は守る、豊洲を活かす』『築地を食のテーマパークにする』などと発言したため、事業者の万葉倶楽部と東京都は大いに揉めることになりました。 市場は2年遅れで、2018年秋に豊洲に移転したものの、千客万来の協議は難航します。その間、新型コロナウイルス感染症の拡大や建築資材の高騰などもあり、ようやく着工できたのが、2022年春のことです。小池氏が余計なことを言い出さなければ、5年前には開業できていたわけです。 小池氏が問題視した『豊洲の土壌』については、開業から5年を経過してもまったく問題が出てきません。2020年の東京五輪前に開通予定だった、都心部と臨海部を結ぶ環状2号線の開通も、市場の移転延期によって2年半も遅れることになりました。無駄な大騒ぎによって生じた経済的損失は計り知れません」(週刊誌記者) 《どの面下げて小池都知事は千客万来施設のテープカットに出てんだかなー》 という声も。もっともだろう』、「小池氏が余計なことを言い出さなければ、5年前には開業できていたわけです。 小池氏が問題視した『豊洲の土壌』については、開業から5年を経過してもまったく問題が出てきません。2020年の東京五輪前に開通予定だった、都心部と臨海部を結ぶ環状2号線の開通も、市場の移転延期によって2年半も遅れることになりました。無駄な大騒ぎによって生じた経済的損失は計り知れません」、確かに「どの面下げて小池都知事は千客万来施設のテープカットに出てんだかなー」、という気持ちは理解できる。

次に、2月2日付けFRASH「「厚顔無恥」小池都知事、豊洲観光施設オープン登壇にあきれる声「5年遅れ」開業“元凶”の当事者のはずが」を紹介しよう。
https://smart-flash.jp/sociopolitics/272132/1/1/
・『2月1日、東京・豊洲に「豊洲千客万来」がオープンした。江東区の豊洲市場に併設する観光施設で、63店舗の飲食店が集まる「食楽棟」に加え、露天風呂や宿泊施設を備えた「温浴棟」がある。 オープニングセレモニーには歌舞伎俳優の中村獅童と小池百合子・東京都知事が登場。小池知事は「臨海部の新しい顔としての発展を心から願います」と述べた。 【関連記事:「3度も選挙応援に行っておいて」小池百合子都知事が風邪で公務キャンセル…都知事選は「日本保守党から刺客」報道も】 だが、SNSには 《小池百合子、よくオープニングセレモニーに出席できるな。厚顔無恥とはこの人のためにある言葉だな》 《豊洲の千客万来開業のテープカットに小池百合子都知事がいてびっくりした 呼ぶんだ… 行くんだ…みたいな 大人の世界だな》 などの声が多くみられた。 「『千客万来』の開業までには、紆余曲折がありました。 もともとは2016年11月、中央市場の築地から豊洲への移転と同時に開業する予定で、2014年には東京都が『すしざんまい』の運営会社と大和ハウス工業を委託企業に選定していました。しかし、調整が難航し、両社が2015年になって撤退。開業は延期されました。 2016年3月には、再公募によって日本各地で温泉施設を運営する『万葉倶楽部』が事業者に決定します。この時点では、2018年に商業棟を開業、2019年には温泉棟を開業する予定でした。 しかし2016年8月、小池氏が東京都知事に就任したことで、計画が大きく乱れることになりました。就任直後に築地市場の豊洲移転を延期したためです。小池氏は『築地は守る、豊洲を活かす』『築地を食のテーマパークにする』などと発言したため、事業者の万葉倶楽部と東京都は大いに揉めることになりました。 市場は2年遅れで、2018年秋に豊洲に移転したものの、千客万来の協議は難航します。その間、新型コロナウイルス感染症の拡大や建築資材の高騰などもあり、ようやく着工できたのが、2022年春のことです。小池氏が余計なことを言い出さなければ、5年前には開業できていたわけです。 小池氏が問題視した『豊洲の土壌』については、開業から5年を経過してもまったく問題が出てきません。2020年の東京五輪前に開通予定だった、都心部と臨海部を結ぶ環状2号線の開通も、市場の移転延期によって2年半も遅れることになりました。無駄な大騒ぎによって生じた経済的損失は計り知れません」(週刊誌記者) 《どの面下げて小池都知事は千客万来施設のテープカットに出てんだかなー》 という声も。もっともだろう』、「小池氏が余計なことを言い出さなければ、5年前には開業できていたわけです。 小池氏が問題視した『豊洲の土壌』については、開業から5年を経過してもまったく問題が出てきません。2020年の東京五輪前に開通予定だった、都心部と臨海部を結ぶ環状2号線の開通も、市場の移転延期によって2年半も遅れることになりました」、「どの面下げて小池都知事は千客万来施設のテープカットに出てんだかなー》 という声も。もっともだろう」、その通りだ。

第三に、3月6日付けYahoo ニュースが転載したダイヤモンド・オンライン「元週刊文春・月刊文芸春秋編集長の木俣正剛氏による「「小池百合子首相」説が急浮上、悪夢の連立政権誕生シナリオの現実味」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/d3fe54daf012e4de5638eea44926a0dc18aa8b51?page=1
・『自民党内に幽霊が出る 小池百合子という幽霊が  古参の自民党職員が、昭和世代には懐かしい言葉で今の自民党内を自嘲していました。 「自民党内に幽霊が出る――小池百合子という幽霊である。古い自民党のすべての派閥領袖は、この幽霊を退治しようとして同盟を結んでいる。だが、小池百合子はすでに、次期首相の有力候補として認められている」 有名な『共産党宣言』の冒頭の言葉をもじって、裏金問題などで揺れる自民党内に、ポスト岸田の有力候補として、小池百合子氏の名前が「恐怖」と共に浮上しているのです。 確かに、今の自民党および岸田内閣の支持率は史上最悪レベルです。しかし不人気の岸田総理下ろしをして、顔をすげ替え、解散をしたところで、石破茂、河野太郎、小泉進次郎といったかつてのスターは人気が衰え、茂木敏充、萩生田光一、林芳正、高市早苗、上川陽子などの有力者が出馬したところで、劇的に人気を回復するほどの首相候補は見当たりません。 一方、東京都知事としてコロナ禍でも着実に実績を積み重ねてきた小池百合子氏は、2020年の都知事選では366万票の圧倒的得票で当選したという実績を持ちます。しかもその4年前、2016年に安倍・菅長期政権で唯一最大の危機と言われた「希望の党」を小池氏が結党するという騒動では、自民党は政権交替の危険にさえ晒されました。よって現在のこの危機に、喉から手が出るほど候補に欲しい人材ではありますが、これほど毒のある候補もいません。 私は、小池百合子氏の人生が嘘に塗り固められ、権力欲、上昇欲で一貫していることを完璧に暴露したと絶賛されたノンフィクション作品『女帝 小池百合子』(石井妙子著)の取材に協力したので、小池氏のどんなことをしても自分の欲望を実現するという人生観はよくわかっています。そして、実際の政権担当能力も政策の構想能力も否定的に見ていますが、今の自民党が「選挙の顔」としての魅力を感じていることは否定できません。 自民党内で囁かれる、小池氏国政復帰(「自民党」復帰ではなく、あくまでも「国政」への復帰であり、これが自民党にとって悩ましいのです)のシナリオを紹介しましょう』、「小池氏のどんなことをしても自分の欲望を実現するという人生観はよくわかっています。そして、実際の政権担当能力も政策の構想能力も否定的に見ていますが、今の自民党が「選挙の顔」としての魅力を感じていることは否定できません。 自民党内で囁かれる、小池氏国政復帰(「自民党」復帰ではなく、あくまでも「国政」への復帰であり、これが自民党にとって悩ましいのです)のシナリオを紹介しましょう」、なるほど。
・『まことしやかに囁かれる 「小池首相」誕生シナリオ  (1)岸田政権の最初の関門は4月第4日曜におこなわれる3つの衆議院議員補欠選挙です。長崎3区の補選は裏金問題で起訴された谷川弥一議員の政治資金規正法違反による辞職に伴うもので、自民は候補を立てられず不戦敗。島根1区の補選は自公連立ですが苦戦。東京15区の補選は柿沢未途議員の公職選挙法違反によるもので、有力な立候補者はなく、小渕優子選対委員長などはすでに「不戦敗」を考え始め、都民ファーストの会の候補を自公が推薦するという形になりそうです。 しかし、自民勝利の可能性はゼロではありません。野党も乱立気味だからです。日本維新の会が新人の金沢結衣氏(33)を、共産党が新人の小堤東氏(34)を擁立することを決定。立憲民主党も候補擁立を検討。国民民主は候補者の疑惑で立候補を取り下げました。都民ファーストの会もまだ自公の推薦を受けることを正式には表明していません。 野党に有力候補はいないので、自民党ではなく保守系無所属ということで「自民隠し」をすれば、当選の可能性は出てくるのです。野党が確実に勝利するには、野党共闘、候補の調整が必要です。もしここで、小池氏が顧問となる都民ファーストの会の全国版「ファーストの会」が候補を出し、自民党を倒す作戦に変更したらどうなるでしょうか。 第一の可能性として、ファーストの会の候補が小池氏自身であったら圧勝でしょう。しかしそれでは、小池氏は自分を高く自民党に売りつけることができません。政界には、過去に小池氏の裏切りで痛い目に遭った議員が多数いて、一議員として復帰しても、総裁候補となるだけの人数を集められる議員になるとは思えないのです。 (2)次に考えられるのがファーストと日本維新の会の連携です。まずは、小池氏が維新の候補を応援する形で補選をすれば、相手が無名の保守系無所属程度では勝てません。野党勝利となって自民は1勝2敗か全敗。こうなると、岸田政権はかなり厳しい状況に追い込まれます。 そして国政については、3月末日で予算が成立します。岸田首相は、ここで補選も含めた解散総選挙に踏み切る可能性もありますが、政治資金問題の改革など大きなテーマの結論がたった1カ月で出る可能性は低く、大義名分のない解散と受け取られ、お膝元の自民党からも反対される可能性が大きいと考えます。 (3)そうなると解散総選挙は、7月の通常国会終了後か、岸田首相が任期切れとなる10月の自民党総裁選のタイミングが浮上します。この場合も、4月より支持率がアップしているとは思えず、その前に岸田下ろしが始まり、自民党は新しい「首相」候補で選挙に挑むしかありません。なにしろ自民党にはタマがない。しかし、野党にもタマがない。自民党都連など萩生田会長が安倍派不祥事に連座しているため、5月まで会長決定は延期という有様です。) 数字的に分析しても、自民党に厳しい選挙になります。というのは、小選挙区制度になってからの国政選挙では東京・大阪といった浮動票が多い地域での結果が、全体の結果を決めることが多いからです。たとえば、民主党が政権交替をした2009年の衆議院選挙では、東京では25区の選挙区のうち前回の総選挙で自民が24、民主が1だったのに対し、このときは民主が21で自民が4という結果でした。 国全体の結果は民主が308で自民が119。小選挙区では民主221、自民64という大逆転でした。東京が日本を変えたのです。ポスト岸田の選挙でも、東京に強い小池氏とファースト、そして大阪に強い日本維新の会がタッグを組むと、今でも維新は45の議席があるため、その2倍近い議席数も予想できます。しかも、維新もファーストも基本的に保守政党を自称しているので、自民離れした票が流れる可能性が高く、自民党が過半数を制する可能性が少ないことは十二分に予想できます。 過半数割れをした自民には、公明との連立でも数が足りない事態が起きて、自民、維新、小池連合が模索される可能性は高いでしょう。維新と小池氏の思想から見て、立憲や共産との連立は考えにくく、維新の馬場伸幸代表ではあまりに全国での知名度が足りません。そして自民から首相が出るようでは、維新も小池氏も連立を断る可能性が高くなります』、「ポスト岸田の選挙でも、東京に強い小池氏とファースト、そして大阪に強い日本維新の会がタッグを組むと、今でも維新は45の議席があるため、その2倍近い議席数も予想できます。しかも、維新もファーストも基本的に保守政党を自称しているので、自民離れした票が流れる可能性が高く、自民党が過半数を制する可能性が少ないことは十二分に予想できます。 過半数割れをした自民には、公明との連立でも数が足りない事態が起きて、自民、維新、小池連合が模索される可能性は高いでしょう」、なるほど。
・『自民・維新・ファースト連立で 少数政党の小池氏がトップに?  これではあまりに不安定な内閣になるため、少数政党の小池首相を中心に、1993年の政権交代で日本新党の細川護煕氏が首相になったのと同じパターンになる可能性は大いにあります。やはり、実績と知名度が他の候補より相当大きい上に、東京五輪開催を成し遂げ、1000万人という小さな国家なみの人口を抱える東京都の政治を一定期間担ったという安心感もあります。 その上、自民党には小池氏と繋がる二階元幹事長という応援団もいるため、場合によっては、自民党脱党組と野党連合の政権も成立しかねないのです。菅義偉元首相や河野太郎氏、小泉進次郎氏などは可能性が十分あるでしょう。要するに、与党にも野党にも、顔と名前が全国区で好感度が高い、あるいは政治的信頼度が高いという政治家が、ほとんどいないのです。 以上が、選挙通や自民党関係者から集めた「小池首相誕生」というシナリオです。ただ、こんな風に私は小池首相を予想しましたが、決してそれを望んでいるわけではありません。) 都知事に立候補したときの小池知事の公約を覚えているでしょうか。(1)待機児童ゼロ、(2)満員電車ゼロ、(3)残業ゼロ、(4)都内電柱ゼロ、(5)多摩格差ゼロ、(6)介護離職ゼロ、(7)殺処分ゼロという7つの公約でした。そのうち、達成されたのは(7)の殺処分ゼロだけ。このゼロは大々的に宣伝されましたが、実は不健康なペットや病気のペットは保護せず、今まで通り殺処分はされていたので、本当はゼロではなく150匹は殺されていました。 小池氏の生き方は流れを読み、キャッチコピーで人気を得て、その時々の大物に媚びを売って出世するというパターンでした。その本質が都知事経験で変わったとは思えません。小池氏に近い関係者は、「彼女の最近の行動は明らかに国政復帰を目指しているように見える」と言います。「カスハラ条例」をつくるといった若者やマスコミうけする政策、「無駄な出費」と批判を受けた都庁プロジェクションマッピンクも、側近によると「国政進出策と考えると無駄ではない」そうです。 「東京を制する政党が国政を制します。毎日都庁のプロジェクションマッピングを見せつけられたら、古い体質の自民や公明では太刀打ちできない新しい政党という印象を十二分にアピールできる仕掛けになっています」(側近) 小池氏の政治的行動については、小泉郵政選挙で刺客として立候補、小沢一郎氏との蜜月と離別後の小沢氏に対する罵倒、そして盟友だった舛添要一氏のあとを受けての都知事選における舛添氏への悪口雑言と、とにかく裏表があり過ぎる印象です。しかも、実行した政策についてはクールビズなど目先のアイデアしか思いつきません。 唯一の信条がタカ派的な国家観ですが、これが発揮されたのは彼女の人生の最大の失敗である希望の党の「排除の論理」でした。全員が希望の党に入党し、反安倍政権で選挙を闘うと思っていた民主党議員たちはあっと言う間に分裂、立憲民主の結党に走ったため、希望の党は泡のように消えました。憲法観や国家観を全面に出したとき、彼女は大失敗したのです。今回は色々な政党を糾合するのに、どんなキャッチコピーを使うのでしょうか』、「小池氏の生き方は流れを読み、キャッチコピーで人気を得て、その時々の大物に媚びを売って出世するというパターンでした。その本質が都知事経験で変わったとは思えません。小池氏に近い関係者は、「彼女の最近の行動は明らかに国政復帰を目指しているように見える」と言います。「カスハラ条例」をつくるといった若者やマスコミうけする政策、「無駄な出費」と批判を受けた都庁プロジェクションマッピンクも、側近によると「国政進出策と考えると無駄ではない」そうです・・・今回は色々な政党を糾合するのに、どんなキャッチコピーを使うのでしょうか」、なるほど。
・『「空気」は研究し尽くしているが 「失敗の本質」は学んでいるのか  折しも千葉方面では地震が頻発し、都庁でも地震対策について現実的な研究が命じられているようです。私はダイヤモンド・オンラインの過去の連載記事で、震災や噴火がこれから頻繁に起こりかねないのに緊急時の法体制が整備されていないこと、そして大破壊のあとの国家の改造計画がないことについて警告してきました。これはどこの政党が、そしてどんな首相が政権を担当しても、やり遂げねばならない課題です。 次期政権には、せめて災害時に機能する憲法の緊急事態条項を提案するといった、国家百年の大計を作れる政権になってほしいと考えます。小池氏は人生に影響を与えた本として『「空気」の研究』(山本七平著)と『失敗の本質:日本軍の組織論的研究』(野中郁次郎他著)を挙げています。確かに「空気」は研究し尽くしているように見えますが、「一度成功すると同じ作戦を繰り返す」という日本軍の欠点を指摘した『失敗の本質』から学んだようには見えません。 読者の皆さん、日本の将来を決める選挙がすぐそばに迫っていることだけは忘れないでください』、「私はダイヤモンド・オンラインの過去の連載記事で、震災や噴火がこれから頻繁に起こりかねないのに緊急時の法体制が整備されていないこと、そして大破壊のあとの国家の改造計画がないことについて警告してきました。これはどこの政党が、そしてどんな首相が政権を担当しても、やり遂げねばならない課題です。 次期政権には、せめて災害時に機能する憲法の緊急事態条項を提案するといった、国家百年の大計を作れる政権になってほしいと考えます・・・確かに「空気」は研究し尽くしているように見えますが、「一度成功すると同じ作戦を繰り返す」という日本軍の欠点を指摘した『失敗の本質』から学んだようには見えません」 、さて「小池氏が中心になった政権が出来たとしても、『失敗の本質』からも学んでほしいものだ。  
タグ:小池都知事問題 (その9)(サザン桑田佳祐が「明治神宮外苑」の樹木伐採“反対”ソング発表…小池都知事は真っ青、「厚顔無恥」小池都知事、豊洲観光施設オープン登壇にあきれる声「5年遅れ」開業“元凶”の当事者のはずが) 日刊ゲンダイ「サザン桑田佳祐が「明治神宮外苑」の樹木伐採“反対”ソング発表…小池都知事は真っ青」 「「(外苑は)我々が音楽を作ってきたビクタースタジオの本当に周辺、身近な場所で、自分にとっても本当に大切な故郷を思って作った曲です」、なるほど。 「アスファルト・ジャングル」とは言い得て妙だ。 FRASH「「厚顔無恥」小池都知事、豊洲観光施設オープン登壇にあきれる声「5年遅れ」開業“元凶”の当事者のはずが」 「小池氏が余計なことを言い出さなければ、5年前には開業できていたわけです。 小池氏が問題視した『豊洲の土壌』については、開業から5年を経過してもまったく問題が出てきません。2020年の東京五輪前に開通予定だった、都心部と臨海部を結ぶ環状2号線の開通も、市場の移転延期によって2年半も遅れることになりました。無駄な大騒ぎによって生じた経済的損失は計り知れません」、確かに「どの面下げて小池都知事は千客万来施設のテープカットに出てんだかなー」、という気持ちは理解できる。 「小池氏が余計なことを言い出さなければ、5年前には開業できていたわけです。 小池氏が問題視した『豊洲の土壌』については、開業から5年を経過してもまったく問題が出てきません。2020年の東京五輪前に開通予定だった、都心部と臨海部を結ぶ環状2号線の開通も、市場の移転延期によって2年半も遅れることになりました」、「どの面下げて小池都知事は千客万来施設のテープカットに出てんだかなー》 という声も。もっともだろう」、その通りだ。 Yahoo ニュース ダイヤモンド・オンライン「元週刊文春・月刊文芸春秋編集長の木俣正剛氏による「「小池百合子首相」説が急浮上、悪夢の連立政権誕生シナリオの現実味」 「小池氏のどんなことをしても自分の欲望を実現するという人生観はよくわかっています。そして、実際の政権担当能力も政策の構想能力も否定的に見ていますが、今の自民党が「選挙の顔」としての魅力を感じていることは否定できません。 自民党内で囁かれる、小池氏国政復帰(「自民党」復帰ではなく、あくまでも「国政」への復帰であり、これが自民党にとって悩ましいのです)のシナリオを紹介しましょう」、なるほど。 「ポスト岸田の選挙でも、東京に強い小池氏とファースト、そして大阪に強い日本維新の会がタッグを組むと、今でも維新は45の議席があるため、その2倍近い議席数も予想できます。しかも、維新もファーストも基本的に保守政党を自称しているので、自民離れした票が流れる可能性が高く、自民党が過半数を制する可能性が少ないことは十二分に予想できます。 過半数割れをした自民には、公明との連立でも数が足りない事態が起きて、自民、維新、小池連合が模索される可能性は高いでしょう」、なるほど。 「小池氏の生き方は流れを読み、キャッチコピーで人気を得て、その時々の大物に媚びを売って出世するというパターンでした。その本質が都知事経験で変わったとは思えません。小池氏に近い関係者は、「彼女の最近の行動は明らかに国政復帰を目指しているように見える」と言います。「カスハラ条例」をつくるといった若者やマスコミうけする政策、「無駄な出費」と批判を受けた都庁プロジェクションマッピンクも、側近によると「国政進出策と考えると無駄ではない」そうです・・・今回は色々な政党を糾合するのに、どんなキャッチコピーを使うのでしょ しょうか」、なるほど。 「私はダイヤモンド・オンラインの過去の連載記事で、震災や噴火がこれから頻繁に起こりかねないのに緊急時の法体制が整備されていないこと、そして大破壊のあとの国家の改造計画がないことについて警告してきました。これはどこの政党が、そしてどんな首相が政権を担当しても、やり遂げねばならない課題です。 次期政権には、せめて災害時に機能する憲法の緊急事態条項を提案するといった、国家百年の大計を作れる政権になってほしいと考えます・・・ 確かに「空気」は研究し尽くしているように見えますが、「一度成功すると同じ作戦を繰り返す」という日本軍の欠点を指摘した『失敗の本質』から学んだようには見えません」 、さて「小池氏が中心になった政権が出来たとしても、『失敗の本質』からも学んでほしいものだ。
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発達障害(その6)(大人のADHD→44歳で米マイクロソフト転職!異色の日本人が「怠惰であれ」と説く理由~『世界一流エンジニアの思考法』(牛尾 剛 著)を読む、【高学歴発達障害】上智大卒の女性に親は「社会不適合者だから家庭に入れ」→ブラック企業経てたどり着いた天職) [生活]

発達障害については、本年1月15日に取上げた。今日は、(その6)(大人のADHD→44歳で米マイクロソフト転職!異色の日本人が「怠惰であれ」と説く理由~『世界一流エンジニアの思考法』(牛尾 剛 著)を読む、【高学歴発達障害】上智大卒の女性に親は「社会不適合者だから家庭に入れ」→ブラック企業経てたどり着いた天職)である。

先ずは、本年1月26日付けダイヤモンド・オンライン「大人のADHD→44歳で米マイクロソフト転職!異色の日本人が「怠惰であれ」と説く理由~『世界一流エンジニアの思考法』(牛尾 剛 著)を読む」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/337666
・『視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のチーフ・エディターである吉川清史が豊富な読書量と取材経験などからレビューします。今回取り上げるのは、大人になってからADHDと診断された後、44歳で米マイクロソフトに転職した異色の日本人エンジニアが一流の同僚たちに学んだ仕事術を徹底解説した一冊です』、「米マイクロソフトに転職」とはすごい経歴だ。
・『ADHDと診断→米マイクロソフトで活躍! 異色エンジニアの書籍に学ぶ  本連載のようにWebメディアに寄稿する際、書き手が陥りやすい罠がある。自分の意見や集めたネタなどを、一つの記事の中にできるだけ多く盛り込もうとすることだ。すると時間ばかりかかって、無駄に長いだけの焦点のぼやけた記事になりかねない。 良い文章を書くには、思い切って「捨てる」覚悟が必要だ。10のネタがあったら、その中で3~4つだけをピックアップする。残りは捨てるか、次の機会まであたためておく。その後は選んだものに集中し、最良のものに磨き上げる。 筆者は薬の専門家ではないが、文章は医薬品と似ているように思える。発熱、頭痛、せき、目まい、鼻水、腹痛――。これらに効く成分を全部混ぜ合わせたら、果たして「万病に効く薬」が出来上がるのか。 実際は決してそうではなく、薬として意味をなさないだろう。「解熱剤」「頭痛薬」「せき止め」など、特定の症状に絞って調合した方が、間違いなく効果を発揮するはずだ。 Webメディアにおける記事も、どのネタが読者のニーズにマッチするかを熟慮して、その内容に特化して書き上げた方が、手当たり次第に材料を盛り込むよりも読者の心に残るはずだ。そのピックアップする技術こそ、執筆や編集の「妙」というべきものだろう。 この考え方はもちろん、文筆業以外の業種・職種にも応用可能だ。どの業界においても、とりあえず目の前の仕事から手をつけていくという働き方は効率的とはいえず、良い成果も期待しづらい。不要なものを捨て、重要なものに絞って取り組む。この判断が重要なのである。 今回紹介する書籍『世界一流エンジニアの思考法』では、海外の一流ITエンジニアが実践している「取捨選択の妙」などを、著者の豊富なビジネス経験をもとに紹介している。 著者の牛尾剛氏は、国内大手SIerのITエンジニアを経て2009年に独立。15年に米マイクロソフトに入社し、19年から同社のクラウドサービス「Azure Functions」のプロダクトチームでシニアソフトウエアエンジニアを務める人物だ(肩書は刊行当時のもの)。 牛尾氏は、今でこそ世界最高峰ともいえるマイクロソフトのソフトウエア開発チームで活躍しているが、「幼い頃から要領が良くなく、大人になってからADHD(注意欠如・多動症)と診断された」と、本書の冒頭で明かしている。 だからこそ、「どうやったら不得意なことでも効率よく人並みのことができるのか、仕事の生産性を上げる方法を意識的に研究してきた」という。そして努力の末、44歳で米マイクロソフトに転職。「世界一流」のエンジニアとともに仕事をすることになった』、同氏は「幼い頃から要領が良くなく、大人になってからADHD・・・と診断された」・・・だからこそ、「どうやったら不得意なことでも効率よく人並みのことができるのか、仕事の生産性を上げる方法を意識的に研究してきた」という。そして努力の末、44歳で米マイクロソフトに転職。「世界一流」のエンジニアとともに仕事をすることになった」、なるほど。
・『米マイクロソフトの一流エンジニアは「意外と怠惰」だった!?  牛尾氏は転職後、同僚のエンジニアたちが、高い生産性を実現するための「思考法(マインドセット)」を身に付けていることを知る。 彼・彼女らの思考法を注意深く観察し、実践しながら、牛尾氏自身も「世界一流」となるべくさらなる努力を重ねてきた。そのノウハウをまとめたのが本書というわけだ。 「Be Lazy(怠惰であれ)」。牛尾氏は、同僚エンジニアたちのマインドセットを端的に表すものとして、こんな言葉を紹介している。もちろんマイクロソフトがそうした標語を公に掲げているわけではないが、上司などから「Be Lazy」「働きすぎないで」と声を掛けられることがあったという。 より具体的に言うと、一流のエンジニアは「より少ない時間で価値を最大化する」ことを目指している。そのために同僚が実践している習慣として、牛尾氏は以下に示す7つのポイントを挙げている。 (1)望んでいる結果を達成するために、最低限の努力をする (2)不必要なものや付加価値のない仕事(過剰な準備含む)をなくす (3)簡潔さを目指す (4)優先順位をつける (5)時間や費やした努力よりも、アウトプットと生産性に重点を置く (6)長時間労働しないことを推奨する (7)会議は決められた時間内で効率的かつ生産的に行う 一見すると、ビジネスの世界では当たり前の標語だ。だが、同じようなことを意識していても、日本人と「世界一流エンジニア」は捉え方に違いがあるという。 例えば「(4)優先順位をつける」というと、日本人は「重要なタスクから順番に手をつけ、最終的には全部やる」という前提で物事を考える。「その日のうちに」とは限らないが、最初のタスクを終えたら、次、またその次……というように仕事をこなす。多少時間がかかっても、最終的には自身のやるべきことを完璧に処理する。 だが驚くことに、海外の一流エンジニアたちの間では完璧主義は悪手とされる。その証拠に、上記の7項目は、全てが「いかにやることを減らすか」という目的意識に基づいている。 そして一流エンジニアたちには、日本では当たり前の「時間をかけて結局全部やる」という概念がない。「優先順位をつけた後は、最初の1個(最も重要なもの)だけをピックアップしてやる。そして他はやらない。その1つにフォーカスしよう」という感覚らしいのだ。 最重要なタスクだけを優先して集中的に取り組めば、当然短時間で終わる。そこだけにフォーカスしているから生産性が上がり、アウトプットの質も向上するというわけだ』、「一流エンジニアたちには、日本では当たり前の「時間をかけて結局全部やる」という概念がない。「優先順位をつけた後は、最初の1個(最も重要なもの)だけをピックアップしてやる。そして他はやらない。その1つにフォーカスしよう」という感覚らしいのだ」、なるほど。
・『「試行」の前に「思考」! 手を動かす前に仮説を立てるべし  日本のビジネスパーソンには身に覚えのある人も多いだろうが、「時間をかけて結局全部やる」という考え方だと、優先順位の高いものに取り組んでいる時でも、他のタスクがどうしても気になる。その結果、焦りが生じて生産性が下がりがちだ。「2番目以降は割り切って捨てる」という、マイクロソフト流の思い切りの良さを見習うべきだろう。 なお、上記の「(6)長時間労働しないことを推奨する」「(7)会議は決められた時間内で効率的かつ生産的に行う」とも関連しているが、米国には「時間を固定する」という考え方もあるそうだ。 「すべきこと」が終わるまで延々と作業を続けるのではなく、「何時から何時までこれをやる」と時間の枠を決める。そして、その枠の中で成果を最大化することを目指す。「限られた時間内で確実にできること」だけをピックアップし、集中するのだ。日本人が長時間だらだらと会議をしないためにも、有用な考え方だろう。 さらに、「試行錯誤をしない」という考え方も本書で紹介されている。 これに違和感を覚えた人もいるのではないだろうか。日本企業では「結果」だけでなく「プロセス」を評価しがちだ。トライアンドエラーを繰り返しながらじっくり検討を重ねた末に、最適解にたどり着くことが良しとされる。海外の一流企業では、それは重要ではないというのか――。 その答えを示す、一つのエピソードがある。 ある日、牛尾氏は自分のプログラムがうまく動かないときがあった。自力で直そうとすると、原因究明に途方もない時間がかかると考え、ポールという同僚のトップエンジニアに声をかけて「ペアプログラミング」を依頼した。ペアプログラミングとは、2人1組で1台のPCを共有し、一緒にプログラミングする手法だ。 セッションが始まると、PCの画面には、牛尾氏のプログラムに問題があることを示すログ(プログラムが内部でどのように動いているかを示す記録)が表示された。 するとポールは手を一切動かさず、最初の1つのログだけを見て、頭の中で「仮説」を立て始めた。ぶつぶつと独り言を言いながらしばらく考え、データベースを閲覧するソフトを起動。クエリ(システムへの命令文)を1つだけ書いて、「ここだろう」と一言。そのクエリの結果は、エラーの根本原因を正しく示すものだったという。 牛尾氏のかつてのやり方は、「的確な仮説を導き出すべく『思考』を巡らせる」という過程を省き、ひたすら「試行」を繰り返すものだったのかもしれない。その手法では、どれだけ時間がかかるかわからない』、「自力で直そうとすると、原因究明に途方もない時間がかかると考え、ポールという同僚のトップエンジニアに声をかけて「ペアプログラミング」を依頼した。ペアプログラミングとは、2人1組で1台のPCを共有し、一緒にプログラミングする手法だ。 セッションが始まると、PCの画面には、牛尾氏のプログラムに問題があることを示すログ(プログラムが内部でどのように動いているかを示す記録)が表示された。 するとポールは手を一切動かさず、最初の1つのログだけを見て、頭の中で「仮説」を立て始めた。ぶつぶつと独り言を言いながらしばらく考え、データベースを閲覧するソフトを起動。クエリ(システムへの命令文)を1つだけ書いて、「ここだろう」と一言。そのクエリの結果は、エラーの根本原因を正しく示すものだったという」、さすがだ。
・『マジメすぎる日本人は「Be Lazy」の精神で働こう!  しかし、前述した7項目の「(5)時間や費やした努力よりも、アウトプットと生産性に重点を置く」にもある通り、重要なのは所要時間ではない。あくまで結果なのである。だからこそ、困ったときは試行錯誤に長時間かけるのではなく、優秀な仲間の助けを借り、素早く解決していい。「Be Lazy」の精神で働いていいのだ。 なお、これは筆者の見解だが、本書では必ずしも「試行錯誤自体が悪手」と言いたいわけではないのだろう。本書の例では、ポールがプログラムの問題点を一発で見抜いた。だが、より複雑な問題の場合は、そのプロセスを何度か繰り返す必要も出てこよう。 だからこそ、重要なのは「仮説→検証」を繰り返すことなのではないか。頭の中で論理的に、エラーの原因をいくつか考える。どの仮説が正しいのかを、優先順位に基づいて一つ一つ順に検証する。何番目かの仮説が正解で、エラーの原因を突き止められたならば、それは結局「最低限の努力」で済んでいる。これらは「正しい試行錯誤」だという見方もできる。 どんな仕事でもそうだが、多くの人は大量のタスクを抱え込みがちだ。どれから手を付けていいか分からず「時間がない」と焦る。不安になり、いろいろな方法を試してみる。そうする中で、時間だけが過ぎていく。 だが、困った時こそ「急がば回れ」である。深呼吸して、「最低限の努力」で済ませるにはどうすべきかを考える。このことが重要なのだ。 優先順位はどうか。「捨てる」べきタスクは何か。絞ったタスクを、どう効率的にやっていくか。それらを考える時間を惜しんではいけない。不安だからと、やみくもに手を動かすのは我慢しよう。 壁にぶつかった際は「仮説→検証」によって解決策を探る。どうにもならなければ、あっさりと仲間に頼っていい。「Be Lazy」の精神で働くのだ。 これらを意識するだけでも、皆さんの仕事の生産性は確実に上がっていくはずである。 (情報工場チーフ・エディター 吉川清史)』、「困った時こそ「急がば回れ」である。深呼吸して、「最低限の努力」で済ませるにはどうすべきかを考える。このことが重要なのだ。 優先順位はどうか。「捨てる」べきタスクは何か。絞ったタスクを、どう効率的にやっていくか。それらを考える時間を惜しんではいけない。不安だからと、やみくもに手を動かすのは我慢しよう。 壁にぶつかった際は「仮説→検証」によって解決策を探る。どうにもならなければ、あっさりと仲間に頼っていい。「Be Lazy」の精神で働くのだ」、なるほど、その通りなのだろう。

次に、2月29日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したフリーライターの姫野 桂氏による「【高学歴発達障害】上智大卒の女性に親は「社会不適合者だから家庭に入れ」→ブラック企業経てたどり着いた天職」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/338574
・『幼少期から発達障害(ASD)扱いされて精神科に通っていた女性は、得意の数学で上智大に入学。卒業後は大学院に進むほどの優秀な頭脳を持っていたが、ドロップアウトして不本意な職場を転々とするハメに……。ようやくたどり着いた「天職」は、なにが彼女にフィットしたのだろうか。※本稿は、姫野 桂『ルポ 高学歴発達障害』(ちくま新書)の一部を抜粋・編集したものです』、興味深そうだ。
・『医師の父は心を病んで家庭は機能不全 娘の小中時代はほぼ不登校だった  待ち合わせ場所に現れた高橋希美さん(45歳)はすらっとしたモデル体型の女性だった。上智大学の理工学部を卒業、同大学院を中退している。 高橋さんは4~5歳の時点でASD(自閉スペクトラム症)傾向が見つかり、はやくから精神科に通っていた。発達障害をこじらせたことから、義務教育をほとんど受けられない状態になってしまった。多くの人とかかわらなければならない「学校」という空間が高橋さんにとっては苦痛な空間だったのだ。また、家族とも折り合いが悪かった。 「父は医師なのですが、私が幼稚園に入る前に精神を病んでしまって半年くらい精神科に入院していたんです。父は勤務医で、職場の人間関係や激務のストレスなどを全部私にぶつけていました。ひとりっ子でほかにきょうだいはいないし、母は気が強いので、母には当たらず子どもの私に来るんですよね」 「私が小学校低学年の頃まで父は単身赴任をしていて、週1くらいで家に帰ってきていたのですが、その1日が毎週地獄でした。単身赴任が終わってからは父が毎朝毎晩家にいるし、もうどうしようと、死にたいとずっと思っていました。その頃くらいから小学校に行ってないです」 高橋さんはいわゆる機能不全家族で育った。小中学校にはほとんど行くことができず、高校は不登校の生徒や高校中退者を受け入れる高校に4年間通うことになった。高橋さんの学校生活はどのようなものだったのだろうか。 「女子って『一緒にトイレに行こう』とかの集団行動があるじゃないですか。それが私嫌なんです。高校時代は同じ時間に国語を受ける人もいれば数学を受ける人もいれば化学を受けている人もいる。みんな教室はバラバラなのにそうやってつるんでいる人たちを見て、『なんで一緒にトイレに行くの?個人行動すればいいのに』と思っていました」) 周りには勉強熱心な人はあまり多くなく、大学に進学する生徒の数も全体の半分くらいで、進学する大学のレベルもそれほど高くなかった。定期試験もちょっと勉強しただけで90点台が取れるレベルの学校だった。 そのため、評定平均が非常に高く、せっかくだからと推薦入試を受けることにした。しかし、文章を書くのはあまり得意ではなかった高橋さんは、入試に小論文がなく、そこそこレベルの高い大学の中から、数学科のある上智大学を選んだ。 「小さい頃から算数・数学がとにかく好きだったんです。小学校入学前にはもう足し算と引き算はできていたと思います。問題集があればひとりでできるところが数学の魅力です。家でもひとりでできる数学には没頭していました。数学ができることが、得意なことと苦手なことの凸の部分なんだと思います」。 晴れて上智大学に合格して、地方から上京することとなった。だが、入学した理工学部数学科(現在は情報理工学科へ再編)は理系学科であるがために女子が少なく、1年の頃は学科で高橋さんを入れて女子が十数名しかいなかった。 加えて、高橋さん以外の女子が全員自宅から通学していること、女子高出身だったことから、女子は常に固まって行動していたため、その輪に高橋さんは馴染めずにつらい思いをした。 結局、同じ学年の人と仲良くなれることはなかったという。休学も挟み、卒業まで5年かかってしまった。しかし、相変わらず勉強は得意で特に幾何学のテストではベスト3に入っていた』、「問題集があればひとりでできるところが数学の魅力です。家でもひとりでできる数学には没頭していました。数学ができることが、得意なことと苦手なことの凸の部分なんだと思います」。 晴れて上智大学に合格して、地方から上京することとなった。だが、入学した理工学部数学科(現在は情報理工学科へ再編)は理系学科であるがために女子が少なく、1年の頃は学科で高橋さんを入れて女子が十数名しかいなかった・・・同じ学年の人と仲良くなれることはなかったという。休学も挟み、卒業まで5年かかってしまった。しかし、相変わらず勉強は得意で特に幾何学のテストではベスト3に入っていた」、なるほど。
・『就職せず大学院に進むが中退し学生バイトの下で働くみじめさ  卒業後はそのまま大学院へと進学したが、持病のてんかん発作が頻繁に起こるようになったこと、親から「あなたは社会不適合者だから家庭に入るのがいい。地元に戻ってきて結婚相談所に入りなさい」と言われたことでだんだんとメンタルがすり減っていき、勉強にもついていけなくなったことを理由に大学院を中退してしまった。) 「大学院を中退後、しばらくブラブラとニートをしていて、それから発達障害の就労訓練事業をしているところで訓練を受けました。私としては最低2カ月は訓練を受けたかったのですが、1カ月の訓練を終えた時点で団体の代表から猛烈に『早く就職しなさい』と言われたんです」 「そこでハローワークの障害者ブースに行ったら予備校の教材部の求人があって、障害者雇用でパートという形で入社しました。でも、その会社特有だと思うんですけど、なぜか『障害をオープンにしないでくれ』と言われたんです」 高橋さんは障害者雇用で入ったこの会社を3年で辞めている。数学科に所属していたが、別の科の社員でそりが合わない人がいたのと、大学生のアルバイトがバイトリーダー的な存在となり、大学生の部下になってしまったことを惨めに感じてしまったのだという。体重もさらに落ちて40kgを切ってしまい、「これは危ない」と思って退職した。 2社目も教材関係の仕事に就いた。ここではクローズ(自身の障害を企業に開示しない)で、派遣として入社した。この会社がブラックだった。 「数学課の社員の方がパワハラ気質の人で、何をやっても怒られました。私が入社する前に私のポジションにいた人は男性だったらしいのですが、その人が職務中に泣いたというレベルのパワハラ具合で。私もパワハラが嫌になって2~3日無断欠勤したこともあって、もうクビでいいと思ったこともありました。それでも派遣元から『無断欠勤した期間は有給ということにしてあげるから戻ってこないか』ということを言われて戻りました」 「派遣は3カ月ごとの更新制なので、次の更新はもうないだろうなと思っていたら、なぜかまた『お願いします』と言われて。結局2年少々引っ張られて在籍し、最後はもうこっちから辞めたいと言って辞めました」』、なるほど。
・『発達障害であることを伏せて正社員採用された職場の居心地は  その後また別の会社を経て、現在の天職だと語る職場にたどり着くこととなった。塾や予備校などで使用する参考書や教材を編集する仕事だ。もともと数学が好きで、数学を扱えるだけで嬉しいのだという。 高校教科書の練習問題の模範解答がずらっと書かれた本や、学校の教師向けの指導書の作成、中学生向けの高校入試対策模擬試験の作成を行なっている。編集のみならず、ときには執筆や校正を行なうこともある。他にも、中学生向けの高校入試の指導書を作成したり、タブレット教材の制作にも関わっている。 今の仕事で一番楽しいのは、自分が書いたものが本や模擬テストとなって製品になることだという。ここにはクローズで正社員として入社している。 「数学が好きだというのもあるのですが、すごく小さな会社で、上司である社長が穏やかな人だから続けられています。環境がとてもいいんです。もともと数学ができる人ってASD気質の人が多いので、そんなに私が浮いていないんです。これが英語や国語だったら浮いていたと思います」。 なお、クローズで入社しているが、高橋さんは障害者手帳を持っている。障害者控除を受けるために経理に通す必要があるのではないかと尋ねると、会社側には発達障害ではなく、併発しているてんかんで手帳を持っていると伝えているのだという。 クローズで働いている最大の理由はやはりお金だ。障害者雇用の多くは低賃金である。以前、障害者雇用で働いていたときは幸い、親がワンルームマンションを購入してくれて、家賃の負担がなかった。そして今でもその部屋に住み続けている。 「私という人間は数学がなければ何もありません。発達障害があって、数学に秀でていたから今の職に就けたので、一概に発達障害が悪いとは思っていません。社長が元気なうちはずっとこの会社で働き続けたいです」 天職と語る職業に恵まれた一方で、全く苦難がないわけではない。交際中の男性が詳細は話さずざっくりと「彼女は障害者だ」と男性の親に伝えたところ、「障害者の嫁なんていらない」と会わせてもらえなかったことがあったという。高橋さんは障害者差別を受けたことになる。少しでも障害についての理解が一般の人にも認知されることを願うばかりだ』、「もともと数学ができる人ってASD気質の人が多いので、そんなに私が浮いていないんです。これが英語や国語だったら浮いていたと思います・・・クローズで働いている最大の理由はやはりお金だ。障害者雇用の多くは低賃金である。以前、障害者雇用で働いていたときは幸い、親がワンルームマンションを購入してくれて、家賃の負担がなかった。そして今でもその部屋に住み続けている・・・交際中の男性が詳細は話さずざっくりと「彼女は障害者だ」と男性の親に伝えたところ、「障害者の嫁なんていらない」と会わせてもらえなかったことがあったという。高橋さんは障害者差別を受けたことになる。少しでも障害についての理解が一般の人にも認知されることを願うばかりだ」、結婚を前提とした付き合いで「親」の反対は、困ったものだが、やはり現状ではしょうがないと受け止めざるを得ないようだ。
タグ:発達障害 (その6)(大人のADHD→44歳で米マイクロソフト転職!異色の日本人が「怠惰であれ」と説く理由~『世界一流エンジニアの思考法』(牛尾 剛 著)を読む、【高学歴発達障害】上智大卒の女性に親は「社会不適合者だから家庭に入れ」→ブラック企業経てたどり着いた天職) ダイヤモンド・オンライン「大人のADHD→44歳で米マイクロソフト転職!異色の日本人が「怠惰であれ」と説く理由~『世界一流エンジニアの思考法』(牛尾 剛 著)を読む」 「米マイクロソフトに転職」とはすごい経歴だ。 同氏は「幼い頃から要領が良くなく、大人になってからADHD・・・と診断された」・・・だからこそ、「どうやったら不得意なことでも効率よく人並みのことができるのか、仕事の生産性を上げる方法を意識的に研究してきた」という。そして努力の末、44歳で米マイクロソフトに転職。「世界一流」のエンジニアとともに仕事をすることになった」、なるほど。 牛尾氏は以下に示す7つのポイントを挙げている。 (1)望んでいる結果を達成するために、最低限の努力をする (2)不必要なものや付加価値のない仕事(過剰な準備含む)をなくす (3)簡潔さを目指す (4)優先順位をつける (5)時間や費やした努力よりも、アウトプットと生産性に重点を置く (6)長時間労働しないことを推奨する (7)会議は決められた時間内で効率的かつ生産的に行う 「一流エンジニアたちには、日本では当たり前の「時間をかけて結局全部やる」という概念がない。「優先順位をつけた後は、最初の1個(最も重要なもの)だけをピックアップしてやる。そして他はやらない。その1つにフォーカスしよう」という感覚らしいのだ」、なるほど。 「試行」の前に「思考」! 手を動かす前に仮説を立てるべし 「自力で直そうとすると、原因究明に途方もない時間がかかると考え、ポールという同僚のトップエンジニアに声をかけて「ペアプログラミング」を依頼した。ペアプログラミングとは、2人1組で1台のPCを共有し、一緒にプログラミングする手法だ。 セッションが始まると、PCの画面には、牛尾氏のプログラムに問題があることを示すログ(プログラムが内部でどのように動いているかを示す記録)が表示された。 するとポールは手を一切動かさず、最初の1つのログだけを見て、頭の中で「仮説」を立て始めた。ぶつぶつと独り言を言いながらしばらく 考え、データベースを閲覧するソフトを起動。クエリ(システムへの命令文)を1つだけ書いて、「ここだろう」と一言。そのクエリの結果は、エラーの根本原因を正しく示すものだったという」、さすがだ。 マジメすぎる日本人は「Be Lazy」の精神で働こう! 「困った時こそ「急がば回れ」である。深呼吸して、「最低限の努力」で済ませるにはどうすべきかを考える。このことが重要なのだ。 優先順位はどうか。「捨てる」べきタスクは何か。絞ったタスクを、どう効率的にやっていくか。それらを考える時間を惜しんではいけない。不安だからと、やみくもに手を動かすのは我慢しよう。 壁にぶつかった際は「仮説→検証」によって解決策を探る。どうにもならなければ、あっさりと仲間に頼っていい。「Be Lazy」の精神で働くのだ」、なるほど、その通りなのだろう。 ダイヤモンド・オンライン 姫野 桂氏 「【高学歴発達障害】上智大卒の女性に親は「社会不適合者だから家庭に入れ」→ブラック企業経てたどり着いた天職」 姫野 桂『ルポ 高学歴発達障害』(ちくま新書) 「問題集があればひとりでできるところが数学の魅力です。家でもひとりでできる数学には没頭していました。数学ができることが、得意なことと苦手なことの凸の部分なんだと思います」。 晴れて上智大学に合格して、地方から上京することとなった。だが、入学した理工学部数学科(現在は情報理工学科へ再編)は理系学科であるがために女子が少なく、1年の頃は学科で高橋さんを入れて女子が十数名しかいなかった・・・ 同じ学年の人と仲良くなれることはなかったという。休学も挟み、卒業まで5年かかってしまった。しかし、相変わらず勉強は得意で特に幾何学のテストではベスト3に入っていた」、なるほど。 「もともと数学ができる人ってASD気質の人が多いので、そんなに私が浮いていないんです。これが英語や国語だったら浮いていたと思います・・・クローズで働いている最大の理由はやはりお金だ。障害者雇用の多くは低賃金である。以前、障害者雇用で働いていたときは幸い、親がワンルームマンションを購入してくれて、家賃の負担がなかった。そして今でもその部屋に住み続けている・・・ 交際中の男性が詳細は話さずざっくりと「彼女は障害者だ」と男性の親に伝えたところ、「障害者の嫁なんていらない」と会わせてもらえなかったことがあったという。高橋さんは障害者差別を受けたことになる。少しでも障害についての理解が一般の人にも認知されることを願うばかりだ」、結婚を前提とした付き合いで「親」の反対は、困ったものだが、やはり現状ではしょうがないと受け止めざるを得ないようだ。
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外国人問題(その9)(「特高マインド」が脈々と ウィシュマさんの死によって判明した入管の異常な体質、じつはいま中国人が急速に増えている「日本の都市」があった…その名前と「移住の理由」、日本に移住する中国人が「住む場所」に変化が起きていた…その「驚愕の実態」 地区ごとの特徴、埼玉・川口市のクルド人問題が紛糾!「外国人差別」と叫ぶ人が知らない暗黒史) [社会]

外国人問題については、昨年3月29日に取上げた。今日は、(その9)(「特高マインド」が脈々と ウィシュマさんの死によって判明した入管の異常な体質、じつはいま中国人が急速に増えている「日本の都市」があった…その名前と「移住の理由」、日本に移住する中国人が「住む場所」に変化が起きていた…その「驚愕の実態」 地区ごとの特徴、埼玉・川口市のクルド人問題が紛糾!「外国人差別」と叫ぶ人が知らない暗黒史)である。

先ずは、昨年7月6日付けAERAdot「「特高マインド」が脈々と ウィシュマさんの死によって判明した入管の異常な体質」を紹介しよう。
・『名古屋入管で収容中に死亡したスリランカ人女性ウィシュマさんの監視カメラ映像が法廷で上映された。だが彼女の死後も、命を軽視する入管の体質は変わっていない。弁護士が指摘する「特高マインド」とは何か。AERA 2023年7月10日号の記事を紹介する。 ウィシュマさんの遺族代理人の高橋済(わたる)弁護士は、根底には入管に横たわる「特高マインド」があると指摘する。 特別高等警察、略して「特高」。戦前、思想犯や反政府活動などを弾圧してきた秘密警察だ。戦後、特高は解体されるが、その関係者の少なからぬ部分が入管に携わるようになったといわれる。その特高マインドが今も脈々と入管に流れていると感じると、高橋弁護士は言う。 「在留資格のない外国人は『憲法の番外地』、つまり、人権を認めないというのが入管の考え方としてあります。収容者を『制圧行為』と称し、多数の職員で暴行を加えるなど人権を無視する事例は施設内で度々起きています。これは、外国人は取り締まりの対象であり社会に危害を加える存在だという、戦前の特高のマインドが今も引き継がれているからだと思います」 同時に、こうした入管の体質を許してきたのは、日本人が少なからず持っている外国人への差別心とも関係しているという。 5月、日本維新の会の梅村みずほ議員は国会で、ウィシュマさんは「ハンストによる体調不良で亡くなったかもしれない」などと発言した。根拠のない発言にウィシュマさんの遺族は強く抗議したが、こうした言動の根っこには、外国人に対する差別心があると高橋弁護士は話す。 「日本は同質性が高い社会のため、多かれ少なかれ、外国人は自分たちの社会に危害を加えるという、漠然とした差別心があると思います」 そうした中、6月9日に改正入管法が国会で成立した。難民申請が3回目以降の申請者は「相当の理由」が示されなければ送還できるようになる。今後は入管への収容者も増えていくと考えられ、このままでは第2、第3のウィシュマさんが出る恐れがある。 STARTの松井さんは、「今まで以上に収容者への基本的人権の侵害は許されないと発信していく必要がある」と話す。 「救済されるべき人たちは救済されなければならず、強制的に送り返すことは絶対にしてはいけない。そのためにも、強制的に送り返すという入管の方針を転換していく必要があります」』、「在留資格のない外国人は『憲法の番外地』、つまり、人権を認めないというのが入管の考え方としてあります。収容者を『制圧行為』と称し、多数の職員で暴行を加えるなど人権を無視する事例は施設内で度々起きています。これは、外国人は取り締まりの対象であり社会に危害を加える存在だという、戦前の特高のマインドが今も引き継がれているからだと思います」、『憲法の番外地』とは言い得て妙だ。 
・『根本的な見直しが必要  STARTの千種さんは、「施設内で起きる問題を可視化していくことが重要」と話した。 「入管が一番恐れているのは、収容されている当事者たちが団結して自分たちに向かってくることです。そのためにも、入管で起きている問題を、収容されている人たちと一緒に取り上げて声にして社会的に明らかにし、入管が変わらざるを得ない状況をつくりあげていくことです。それが、これ以上、施設で亡くなる人を出さないためにも重要です」 高橋弁護士は、まずは「制度の土台から変えていく必要がある」と指摘する。 「小手先の改革で常勤医師を配置しても何も変わりません。いまは全ての権限が入管に集中しているため、収容するかしないかは入管の裁量次第で決まります。本来は、どのような人を収容するかは法律でルールを明文化し、裁判所が判断していくよう整備しなければいけません。これは、国連の自由権規約委員会からも、改善を求められていることです」 そして最終的には、巨大な裁量権を持つ入管を解体することが必要だという。解体し、収容の判断は裁判所が行い、運用は民間に委託するなどし、難民保護は第三者機関が行う。入管は、入管の本来の目的である強制送還の業務だけを担うようにするなど、抜本的な入管行政の見直しが不可欠だ、と。 「同時に、日本人の中にある外国人に対する差別心をなくしていく教育を子どもも大人も行うなど、社会全体で変わっていく必要があります」(高橋弁護士)』、「本来は、どのような人を収容するかは法律でルールを明文化し、裁判所が判断していくよう整備しなければいけません。これは、国連の自由権規約委員会からも、改善を求められていることです」 そして最終的には、巨大な裁量権を持つ入管を解体することが必要だという。解体し、収容の判断は裁判所が行い、運用は民間に委託するなどし、難民保護は第三者機関が行う。入管は、入管の本来の目的である強制送還の業務だけを担うようにするなど、抜本的な入管行政の見直しが不可欠だ、と。 「同時に、日本人の中にある外国人に対する差別心をなくしていく教育を子どもも大人も行うなど、社会全体で変わっていく必要があります」、その通りだ。

次に、7月10日付け現代ビジネスが掲載した中島 恵氏による「じつはいま中国人が急速に増えている「日本の都市」があった…その名前と「移住の理由」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/112849?imp=0
・『東京に拠点を持つ中国人  近年、国内の政治情勢などを背景に、日本に移住する中国人が増えているが、在日中国人が最も多く住んでいる地域はどこか、ご存じだろうか。法務省の在留外国人統計(2022年6月末時点)によると、それは東京都で、約22万2000人となっている。在日中国人総数は約75万人なので、約3~4分の1が東京都に居住していることになる(続いて多いのは、埼玉県、神奈川県、大阪府、千葉県の順)。 さらに、都内での居住地域を細かく見てみると、最も多いのは江東区だった。2位は足立区、3位は江戸川区、4位は新宿区、5位は板橋区となっており、新宿区を除いて住宅地のイメージが強い地区となっている。中華料理店が多いイメージがある池袋を含む豊島区などはトップ5には入っていない。 なぜ、中国人はこれらの地域に多く住んでいるのか。同じ在日中国人でも、居住地域によって住んでいる人の特徴に違いはあるのか。各行政区の中国人に関する詳細な情報はないが、私はこれらの地区に住む中国人の知人に話を聞き、そこに住む理由を聞いてみた。そこから浮かび上がってきたものは――。』、興味深そうだ。
・『「亀戸は庶民的で中国食材店も多い」  「中国人の友人から、この付近(江東区亀戸)はとにかく物価が安くて、庶民的で、中国食材店も多いから住みやすいよ、と勧められたので、数年前に移り住みました。会社は新宿なので、最寄りのJR総武線亀戸駅から1本で行けるし、出張のときには東京駅にも10分ほどでアクセスできるので、かなり便利ですよ」 こう語るのは、IT企業に勤務する30代の中国人男性Aさん。10年以上前、中国の東北部から来日し、日系、中国系企業に勤務してきた。以前は千葉県に住んでいたが、勤務先がある新宿に少しでも近いほうがよいと考えて、亀戸に移ったという。) 亀戸は、「亀戸天神」や「亀戸餃子」などがあり、下町の庶民的なイメージがある。 その通り、駅から徒歩5分の距離には「亀戸五丁目中央通商店街」があり、レタスが2個で98円など激安の青果店や、Aさんが話していた中国食材店が数軒ある。連続して商店が軒を連ねているわけではないため、同じ総武線の(荒川を超えた江戸川区にある)新小岩、小岩などの商店街と比べると賑わっているというほどではなく、「中国人比率」はそれほど高くないように感じる。 だが、Aさんによると、同商店街から西方向に数分歩いた距離にある「亀戸二丁目団地」では中国人を多く見かけるという。 「私自身もそこに住んでいるのですが、とにかく中国人が多いですよ。家賃が安いし、ここには中国の団地みたいな雰囲気があるんです。団地の真ん中に中庭があり、クルマが中まで入ってこないので、小さな子どもが遊んでいても安心。交通量の多い道路に面したマンションよりも、建物に囲われている分、安心感があるんです」(Aさん) 私もこの団地に足を運んだことがあるが、UR都市機構(独立行政法人都市再生機構)の物件で、保証人が不要であること、家賃が比較的安いこと(UR都市機構のウェブサイトによると、1LDK~3Kまでで約8万4000円~約13万3000円)、敷地内に激安スーパーがあるという諸条件が、中国人比率が全体の5割近い埼玉県川口市の芝園団地と酷似している』、確かに「亀戸」は「下町の庶民的なイメージ」に溢れている。
・『中国人ネットワーク  同じ江東区に、もう一ヵ所、中国人が急速に増えている地域がある。豊洲だ。 地下鉄有楽町線の豊洲駅に降り立つと、高層ビルやタワーマンションが複数そびえ立っており、亀戸と違って、生活感はまったく感じられない。) 私は今年5月に出版した『中国人が日本を買う理由』の中で、豊洲のタワーマンション(約7000万円)を購入した20代の若者のことを書いた。この若者が豊洲に引っ越してきたのは22年春。 彼は私に「中国人の友人から、中国人の間でいま豊洲の人気が上がっていると聞き、20年に一室購入しました。上層階から海が見渡せる眺望も気に入りました」と話していた。 このように、江東区内には、下町風情が漂い、激安店が多い亀戸と、新興都市としてオフィスビルが立ち並ぶ豊洲という2つの対照的な地区がある。公共交通機関も、JR総武線、地下鉄有楽町線、東西線、都営新宿線があり、いずれも都心へのアクセスがいい。それが(在日中国人が住む地域として)1位にランクインした理由の一つかもしれないと感じた。では、2位以下はどうなっているのか。 江東区の次に中国人が多いのは足立区だ。以前はあまりイメージがよくないという日本人もいたが、リクルートが実施している「SUUMO住みたい町ランキング2023首都圏版」では北千住が28位にランクインするなど、近年は人気が上がっている。 駅前にはルミネやマルイなどのファッションビルも立ち並んでいる北千住。駅前に中国をイメージするものはほとんどないが、住宅街や、近隣の竹ノ塚駅のほうまで行ってみると、中華食材店、中華料理店が増えている。 私の知人の中国人も北千住に住んでいるが、彼は「知り合いの中国人不動産屋から、建売のいい一軒家があると紹介されたのが北千住でした。庭つきの家で子どもを伸び伸びと育てたいと、ここにしました。日比谷線の沿線に勤務先があるので便利なんです」と、引っ越してきた理由を話した。 3位の江戸川区は前述した江東区と同じ路線上にあり、千葉県に近い。江東区と同じく、庶民的な商店が多く、家賃や物価が安い。JR総武線の平井駅付近には外国人留学生向けの日本語学校や、中国人専門の大学受験予備校があり、亀戸や小岩と並んで中国人率が非常に高い。 同じ江戸川区葛西に住む知人の中国人は「東西線の葛西や行徳にも中国人が多いですが、平井は第二の高田馬場になるような気がする」と話す。 その高田馬場があるのが4位の新宿区だ。歌舞伎町、大久保などの歓楽街のイメージがあるが、中国人にとっては、日本語学校や専門学校が多いところというイメージ。3年前に中国の高校を卒業後に来日した女性、Bさんは、高田馬場にある日本語学校に入学するのと同時に、同じ駅前にある大学受験予備校にも入学。その予備校の担当者から住居を紹介され、高田馬場にマンションを借りた。日本語学校、大学受験予備校、不動産店のいずれの担当者も中国人だ。 高田馬場駅前を降りると、大学受験予備校の看板が多数並んでいる。そこに通う中国人留学生を目当てにした「ガチ中華」の店も多く、早稲田大学まで続く早稲田通り沿いには、中国で人気の飲食チェーン店が軒を連ねている。 以前、駅前の大学受験予備校でアルバイトをしていたという中国人男性は、「この町が気に入り、受験が終わっても、この町に住み続けるという友だちが少なくないです」と話していた。5位は板橋区。板橋区は池袋がある豊島区に隣接しており、JR埼京線、都営三田線、東武東上線、地下鉄有楽町線・副都心線が走っている。都営三田線を除いた路線はすべて池袋駅につながっており、通勤に便利な割に家賃が比較的安く、庶民的なエリアだ。 このように、中国人が多い地区のトップ5を見てみると、共通点が浮かび上がってくる。それは、比較的物価が安く、中国人の生活に欠かせない中国食材店や中華料理店が多いこと、10年以上前に来日した中国人がすでに多く住んでいて、安心感があること、中国人のネットワークで不動産物件を紹介された人が多いこと、都心への交通アクセスがよいこと、などだ。これらの情報は中国人が頻繁に使っているSNS、ウィーチャットで流れてくる。それを見て、さらに、そこに人が集住するという流れになっている。 【後編】『日本に移住する中国人が「住む場所」に変化が起きていた…その「驚愕の実態」』では、これまでの在日中国人とは様相の異なる「在日中国人」が増えてきたことについて説明する』、「中国人が多い地区のトップ5を見てみると、共通点が浮かび上がってくる。それは、比較的物価が安く、中国人の生活に欠かせない中国食材店や中華料理店が多いこと、10年以上前に来日した中国人がすでに多く住んでいて、安心感があること、中国人のネットワークで不動産物件を紹介された人が多いこと、都心への交通アクセスがよいこと、などだ」、なるほど。

第三に、7月10日付け現代ビジネスが掲載した中島 恵氏による「日本に移住する中国人が「住む場所」に変化が起きていた…その「驚愕の実態」 地区ごとの特徴」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/112850?imp=0
・『近年、国内の政治情勢などを背景に、日本に移住する中国人が増えているが、在日中国人が最も多く住んでいる地域はどこか、ご存じだろうか。法務省の在留外国人統計(2022年6月末時点)によると、それは東京都で、約22万2000人となっている。在日中国人総数は約75万人なので、約3~4分の1が東京都に居住していることになる(続いて多いのは、埼玉県、神奈川県、大阪府、千葉県の順)。 さらに、都内での居住地域を細かく見てみると、最も多いのは江東区だった。2位は足立区、3位は江戸川区、4位は新宿区、5位は板橋区となっており、新宿区を除いて住宅地のイメージが強い地区となっている。中華料理店が多いイメージがある池袋を含む豊島区などはトップ5には入っていない。 なぜ、中国人はこれらの地域に多く住んでいるのか。同じ在日中国人でも、居住地域によって住んでいる人の特徴に違いはあるのか。各行政区の中国人に関する詳細な情報はないが、私はこれらの地区に住む中国人の知人に話を聞き、そこに住む理由を聞いてみた。 【前編】『じつはいま中国人が急速に増えている「日本の都市」があった…その名前と「移住の理由」』で詳しく説明したが、共通点が浮かび上がってくる。 それは、比較的物価が安く、中国人の生活に欠かせない中国食材店や中華料理店が多いこと、10年以上前に来日した中国人がすでに多く住んでいて、安心感があること、中国人のネットワークで不動産物件を紹介された人が多いこと、都心への交通アクセスがよいこと、などだ。これらの情報は中国人が頻繁に使っているSNS、ウィーチャットで流れてくる。 それを見て、さらに、そこに人が集住するという流れになっている』、「共通点が浮かび上がってくる。 それは、比較的物価が安く、中国人の生活に欠かせない中国食材店や中華料理店が多いこと、10年以上前に来日した中国人がすでに多く住んでいて、安心感があること、中国人のネットワークで不動産物件を紹介された人が多いこと、都心への交通アクセスがよいこと、などだ」、なるほど。
・『「馴染みのある地区」を選ばない  だが、近年来日した富裕層の人の中には、これら、長年日本に住んでいる在日中国人にとって「馴染みのある地区」を選ばない人が増えている。タワーマンションが多い豊洲だけは例外だが、近年、日本に移住してきた人に、どこに住んでいるかと聞いてみると、港区、品川区、渋谷区、という答えが返ってきた。 むろん、「中国人富裕層が住む地区の統計」といったものは存在しないので、あくまでも私が取材した範囲内の話だが、彼らは、日本在住歴が長い中国人とは異なるネットワークを持っており、そこで得た情報によって居住区を決めているようだ。) 2年前、日本にある大手中国系IT企業に駐在員としてやってきた30代の男性は、会社の総務部の手配で港区を推薦されたため、そこに住み始めたと話してくれた。 「会社は大手町にあり、そこから近いので六本木の賃貸マンションに住んでいます。私は東京に詳しくなく、地理もよくわかりませんが、ここは治安もいいし、ステータスの面でも満足できると思いました。家賃は30万円以上しますが、会社負担です。 いまは駐在員ですけど、1年以内に、投資目的でこの近くにマンションを購入しようと考えています。他の駐在員仲間も六本木や麻布に多く住んでいますよ。仕事で遅くなっても、タクシーですぐに帰宅できるし、東京タワーも見える眺めのいいマンションなので気に入っています」 その男性によると、富裕層の友人の中には、森ビルが手掛けている高級マンション「麻布台ヒルズ」を購入している人が何人もいるという。彼が入っている駐在員や富裕層のSNSグループには、頻繁に高級物件の情報が流れてくるので、彼自身も投資用に購入したいと話していた』、「近年、日本に移住してきた人に、どこに住んでいるかと聞いてみると、港区、品川区、渋谷区、という答えが返ってきた・・・会社は大手町にあり、そこから近いので六本木の賃貸マンションに住んでいます。私は東京に詳しくなく、地理もよくわかりませんが、ここは治安もいいし、ステータスの面でも満足できると思いました。家賃は30万円以上しますが、会社負担です・・・他の駐在員仲間も六本木や麻布に多く住んでいますよ。仕事で遅くなっても、タクシーですぐに帰宅できるし、東京タワーも見える眺めのいいマンションなので気に入っています」、「中国人」といっても、昔から住んでいる人たちと、最近の人たちは生活スタイル、所得などで大きな差があるようだ。
・『通勤する必要のない富裕層の在日中国人  また、近年来日した富裕層の特徴として挙げられるのが、「日本語があまりできない」ことだ。10年以上前に来日した中国人は、日本の大学を卒業し、日本企業に勤務している人が多い。 彼らは日本社会にある程度溶け込んでおり、日本人と同等の給料を得て生活していることから、日本人と似たような消費意識を持っている。記事の前半で紹介したように、物価が安く、商店街があり、勤務先へのアクセスがいいところに住みたいという日本人のような考え方の人が多いが、近年来日した中国人は感覚がかなり異なるようだ。 彼らの多くは30~50代の働き盛りだが、中国で財を成した人が多く、日本に移住してからはどこかに通勤する必要がない。そして、子ども連れで来日する場合、子どもを日本のインターナショナルスクールに通わせたいと考えている人が多い。 そのため、ある中国人は「港区、目黒区などにあるインターナショナルスクールを検討しているので、住居もその近くにしたい」と話していた。品川区に住む私の知人の中国人も、子どもが虎ノ門にあるインターナショナル幼稚園に通っているため、その近くで物件を探したと言っていた。 これらの富裕層はまだごく一握りしかおらず、在日中国人の中で少数派だが、今後、中国の情勢によって、移住者はもっと増える可能性もある。だが、すでに約75万人に上っている在日中国人の大半は、前編で紹介したような一般会社員などであり、中国人が多く集住している地区を好む傾向があることがわかる。 こうした傾向は、東京都の次に多い埼玉県、神奈川県などでも同様で、埼玉県でいえば川口市、神奈川県でいえば横浜市がそれに当たる。ふだん、すぐそばに住んでいても、その存在について深く考える機会の少ない在日中国人。 だが、その居住地区をよく見てみると、来日した時期や収入などによる彼らの傾向や層、最近の特徴といったものが見えてくるのではないだろうか』、「近年来日した中国人は感覚がかなり異なるようだ。 彼らの多くは30~50代の働き盛りだが、中国で財を成した人が多く、日本に移住してからはどこかに通勤する必要がない。そして、子ども連れで来日する場合、子どもを日本のインターナショナルスクールに通わせたいと考えている人が多い。 そのため、ある中国人は「港区、目黒区などにあるインターナショナルスクールを検討しているので、住居もその近くにしたい」と話していた・・・在日中国人の大半は、前編で紹介したような一般会社員などであり、中国人が多く集住している地区を好む傾向があることがわかる。 こうした傾向は、東京都の次に多い埼玉県、神奈川県などでも同様で、埼玉県でいえば川口市、神奈川県でいえば横浜市がそれに当たる」、その通りなのだろう。

第四に、2月29日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「埼玉・川口市のクルド人問題が紛糾!「外国人差別」と叫ぶ人が知らない暗黒史」を紹介しよう。
・『深刻化する「川口クルド人問題」は「ヘイト」なのか  SNSでたびたび話題になっていた埼玉県川口市の「クルド人問題」が、ついに国会で取り上げられることになった。 日本維新の会の高橋英明衆院議員が、国会質疑で「ちょっとひどい状況だ」「早急に一斉取り締まりを」などと発言したのである。 ……と言われても、関東圏以外の方は「クルド?何それ?」というリアクションの方も多いと思うので、NHK首都圏ニュースの解説を引用させていただく。 《埼玉県川口市で2023年7月、病院に100人近くの外国人が集結する騒動が発生しました。川口市ではトルコから来たクルド人のコミュニティーが拡大し、ゴミ出しのルールや生活習慣などの違いによる、住民との摩擦も目立っています》(NHK首都圏ナビ、2月2日) この問題がややこしいのは「摩擦どころではない」という住民もかなりいることだ。「敷地の駐車場を壊された」「深夜に大音量をかけた改造車が住宅街を暴走する」などの「被害」を訴える人もおり、21年10月にはこんな「悲劇」まで起きている。 「19歳のクルド人少年がトラックで県道を暴走し、横断中の69歳男性をはねて死亡させ、逃走した。少年の所持品に運転免許証はなかったという。事件後、少年は出国しようとしたところを逮捕された」(産経新聞、23年7月30日) そこで、23年6月、川口市議会は「一部の外国人は、資材置き場周辺や住宅密集地などで暴走行為やあおり運転を繰り返し、窃盗や傷害などの犯罪も見過ごすことはできない」との取り締まり強化の意見書を可決した。 同年9月には川口市も国に対して、「不法行為を行う外国人においては、法に基づき厳格に対処(強制送還等)していただきたい」という要望書を提出した。そこからだいぶタイムラグがあったものの、ここにきてようやく川口市の訴えが国会にまでたどり着いた――という流れだ。 しかし、そんな高橋議員による国会質疑は「ヘイトスピーチ」だとボロカスに叩かれている。 共同通信社は配信記事の中で、《「不確かな情報を基にした国会議員による外国人差別だ」と専門家も批判している》(2月27日)とバッサリ。SNSでも「議員を辞めろ」と辛辣な声が挙がっているほか、以下のように日本の「黒歴史」と重ねて警鐘を鳴らす人々もいる。 「これでは関東大震災で流言飛語を広めた連中と同じじゃないか」 ご存じのように、関東大震災下、多くの朝鮮人が虐殺されたが、その原因は「朝鮮人が井戸に毒を入れた」などの「デマ」が拡散されたから、とされている。今回の高橋議員や川口市・市議会の主張している「被害」というのもそれと同じく、クルド人迫害につなげるためにねつ造された「デマ」だというのだ。 ただ、報道対策アドバイザーとして、実際に企業などを悩ます「悪質なデマ」の対策にも携わってきた経験から言わせていただくと、本当に関東大震災の悲劇を繰り返したくないのならば、川口市や市議会が要望している「一部外国人の不法行為への取り締まり強化」をすべきだ。 「デマ」が、ヘイトクライムや集団暴力を引き起こす時、そこには必ず「恐怖」や「憎悪」が存在する。 川口市からの訴えを国が無視して、一部外国人の不法行為を放置し続ければ、「外国人への恐怖や憎悪」はさらにふくれ上がる。そして、中には「国が守ってくれないなら、自分たちの身は自分で守るしかない」と過激な外国人排斥運動へ傾倒する者もあらわれる。 つまり、「外国人ヘイト」のムードを醸成させないためにも、国が「不法行為をする一部の外国人を厳しく取り締まる」という毅然とした態度を見せて、市民の「不安」を払拭しておくべきなのだ』、「外国人ヘイト」のムードを醸成させないためにも、国が「不法行為をする一部の外国人を厳しく取り締まる」という毅然とした態度を見せて、市民の「不安」を払拭しておくべきなのだ」、なるほど。
・『朝鮮人虐殺はなぜ起きた?「恐怖」にあおられた庶民の暴走  なぜそこまで市民のメンタルヘルスに気を遣うのかというと、「外国人ヘイト」は一部のレイシストが起こすものより、市民がパニックになって引き起こす方がはるかに悪質で残酷だからだ。 関東大震災で朝鮮人を日本刀や鎌やこん棒を手に虐殺してまわったのは、警察や憲兵など治安維持をする人たちではない。善良な一般市民たちが、自衛のために結成した「自警団」だ。 そこでちょっと想像力を働かせて考えていただきたい。普段は暴力と無縁の生活を送っていた良き夫であり、良き息子のような人々が、「朝鮮人が火をつけた」「井戸に毒を入れた」といううわさを聞いたくらいで人を殺めることができるだろうか。 最近、映画も公開されて話題になった「福田村事件」でも描かれているが、当時の「自警団」はすさまじく、各所で検問所をつくって、朝鮮人だと見るや、子どもでも妊婦でもお構いなしに殺している。命ごいをする一家まで殺して、勢い余って「しゃべれない」という理由だけで、日本人の聴覚障がい者にまで手をかけた。 「デマにあおられた」だけで、同じ人間にここまで酷い仕打ちができるわけがない。 では、一体何が善良な市民を暴徒にさせたのかというと、「恐怖」である。「不逞鮮人が怖くてパニックになって、自分や家族を守るために目に入るすべての朝鮮人を排除した」のである(※不逞鮮人=戦前の日本において、韓国併合後の日本政府に不満を持つ朝鮮出身者や、満洲の朝鮮人反体制派、朝鮮独立運動家、犯罪者などをこのように呼んだ)。 実はこの惨劇にはちゃんと伏線がある。「デマ」が流れるはるか前から、日本の善良な市民たちの間では、朝鮮人は「何をしでかすかわからないヤバい連中」というイメージが確立していたのだ』、「当時の「自警団」はすさまじく、各所で検問所をつくって、朝鮮人だと見るや、子どもでも妊婦でもお構いなしに殺している。命ごいをする一家まで殺して、勢い余って「しゃべれない」という理由だけで、日本人の聴覚障がい者にまで手をかけた・・・一体何が善良な市民を暴徒にさせたのかというと、「恐怖」である。「不逞鮮人が怖くてパニックになって、自分や家族を守るために目に入るすべての朝鮮人を排除した」のである・・・「デマ」が流れるはるか前から、日本の善良な市民たちの間では、朝鮮人は「何をしでかすかわからないヤバい連中」というイメージが確立していたのだ」、なるほど。
・『「殺られる前にこっちから殺ってやる――」という集団パニック  要因のひとつが、震災の4年前、1919年に朝鮮全土で盛り上がった「三・一独立運動」だ。これによって、日本本土にも朝鮮人の活動家が多く入ってきたのだ。爆弾を隠し持っていたところを摘発されるなんて報道も増えていくなかで、朝鮮人のイメージも急速に悪化していく。それがうかがえる一節が、震災の前年に出版された、当時のベストセラー作家・加藤美侖氏の「刑法知識 罪なき人も油断すな」(朝香屋書店)の中にある。 「例えば政府の転覆とか国土の潜窃などがその例だ。(中略)昔は年中内乱騒ぎがあつたことを歴史が教へるが、今日の聖代に於ては、まあ不逞鮮人でもなければそんな馬鹿をする者があるまい」(66ページ) この時期の一般庶民の間では、「不逞鮮人=国家転覆や国土の略奪を狙うテロリスト」という恐怖のイメージが定着していたのだ。 もちろん、同時期の時局講演などを見ると、新聞などの「不逞鮮人」という呼び方は朝鮮人にとっては侮辱なので改めるべきだというような良識派の声もあった。しかし、現実には「良い朝鮮人」と「不逞鮮人」を見分けることなどできないということで、いつの間にやら「不逞鮮人」というテロリストイメージが「朝鮮人」全体にまで広がってしまう。外見的には日本人とほとんど違いがなく、言葉を発しないと朝鮮人だとわからないため、恐怖にさらなる拍車がかかった。 つまり、1923年の日本には「日本人のふりをしている朝鮮人が、いつ爆弾などで攻撃を仕掛けてくるのか」と、内心ビクビクしながら日常生活を送っていた市民が山ほどいたのである。そんな時、関東大震災が起きて「放火をしている」「井戸に毒を」といううわさ話があちこちから聞こえたら、市民たちは恐怖でパニックに陥るだろう。 しかし、いつまでも恐れていてもしょうがない。守るべき家族や大切な人がいるのだ。そうなると、彼らは家にある日本刀やこん棒、鎌などを手にとってこう思うはずだ。 「殺られる前にこっちから殺ってやる――」 つまり、平時は暴力などとは無縁の日本人たちが、何の罪もない朝鮮人たちを無慈悲に殺せたのは「デマのせい」というのは表面的な話にすぎないのだ。何年もかけてふくれ上がってきた朝鮮人に対する恐怖が、地震によって制御することができなくなって、「集団パニック」に陥ったからなのだ』、「平時は暴力などとは無縁の日本人たちが、何の罪もない朝鮮人たちを無慈悲に殺せたのは「デマのせい」というのは表面的な話にすぎないのだ。何年もかけてふくれ上がってきた朝鮮人に対する恐怖が、地震によって制御することができなくなって、「集団パニック」に陥ったからなのだ」、「集団パニック」とは本当に恐ろしい。
・『「恐怖」にいる住民の声を無視すると「ヘイト」につながる  「そんなバカな」と思われるかもしれないが、人類の歴史を振り返ると、敵対する人々を大量虐殺するような時には、往々にしてこの「恐怖が引き起こす集団パニック」がある。 わかりやすいのは、1994年のルワンダの大量虐殺だ。これはフツ族が隣人であるツチ族の人々を容赦なく殺したという悲劇だが、その引き金になったのは「恐怖」だ。 フツ族である大統領が搭乗した飛行機が追撃された。それをラジオで聴いたフツ族の人々は「自分も襲われるか」と恐怖のどん底に落ちた。そんな時、ラジオからこんな言葉が聞こえてきた。 「殺らなければ殺られる――」 さて、こういう話を聞くと、なぜ筆者が埼玉県の「不法行為をする外国人」の取り締まりを強化すべきだと主張しているのか、理解していただけたのではないか。 川口市や川口市議の意見書のもとになったように、一部のクルド人の皆さんの振る舞いに「恐怖」を感じている住民がいることはまぎれもない事実だ。そのような人々の声を国が無視したところで、彼らの恐怖や不安は消えない。 「外国人との共生社会」を掲げる人たちからすれば、「外国人差別をやめて受け入れればいいのだ」という事なのだろう。しかし、そう簡単に自分の考えを変えられない人たちが一定数いるというのも、この社会の「多様性」だ。 では、川口市の訴えを無視して、取り締まり強化もせず、ただただ「共生」を呼びかけていたら、恐怖を感じている住民はどうなっていくのかというと、これまで以上に外国人を怖がる。 当たり前だ。「怖い」と訴える人たちを力で抑えつけて「怖がるな!怖がる貴様がおかしい」とか説教をしたところで、態度を硬化させて事態を悪化させていくだけだろう。 つまり、これまで不法行為をするクルド人だけに不安を感じていた人たちが、「クルド人を受け入れろ!」「このレイシストめ!」と攻撃されることで態度を硬化させて、何の問題も起こしていない「善良なクルド人」に対してまで恐怖や憎悪を抱いてしまうのである。 ただ、それよりも最悪なのは、国がこの問題を放置し続けたら、「自分の身は自分で守るしかない」と考える人々が、「自警団」のようなものを組織してしまう恐れがあることだ』、「これまで不法行為をするクルド人だけに不安を感じていた人たちが、「クルド人を受け入れろ!」「このレイシストめ!」と攻撃されることで態度を硬化させて、何の問題も起こしていない「善良なクルド人」に対してまで恐怖や憎悪を抱いてしまうのである。 ただ、それよりも最悪なのは、国がこの問題を放置し続けたら、「自分の身は自分で守るしかない」と考える人々が、「自警団」のようなものを組織してしまう恐れがあることだ」、なるほど。
・『「自警団」は暴走する。だから国が取り締まるべき  関東大震災で悲劇の舞台装置となったことからもわかるように「自警団」が危ないのは、「外国人ヘイト」につながることだけでなく、「オレたちのルール」で人を裁くことにある。震災当時の資料を見ると、「朝鮮人はバレないように帽子を被るはずなので、お前のように帽子を被る奴は怪しい」と検問所で詰問されて、確証のないまま殺された人もいる。 こういう「自警団の暴走」を防いで、善良な外国人の安全を守るためにも、国がしっかりとした方針を定めて、不法行為をする外国人を取り締まったり、難民申請中の人たちへの処遇もしっかり定めたりすべきだ。国外退去させられるわけでもなく、在留を認められるわけでもないという「宙ぶらりん」だから、正規の仕事もできず、外国人コミュニティの中で違法な仕事に従事せざるを得ないという外国人もたくさんいるのだ。 「不逞鮮人」を取り締まることができず、結果として日本社会に「朝鮮人に対する恐怖」を広めてしまったように、一部の不法行為をする外国人をしっかりと取り締まることができないと、「外国人はすべて怪しい」という偏ったものの見方を広めてしまう。 そういう「偏った正義」にもっとも弱いのが、善良な一般市民だ。 今、SNSで相手を自殺に追い込むまで誹謗中傷するような人が「自分は社会のために正しいことをしている」と思い込んでいるように、震災時に朝鮮人を虐殺した自警団の多くは「自分は日本のために正しいことをした」と胸を張った、と記録にある。 このような「市民による正義の暴走」を防ぐには、先回りをして国家が「正義」を示すしかない。国が外国人への取り締まりを強化する、と聞くと脊髄反射で「外国人ヘイトだ!」「差別だ!」と批判をする人が多いが、外国人への恐怖や偏見を軽減することで、「善良な外国人」の人権や安全を守ることができるというメリットもある。 外国人だろうが日本人だろうが、不法行為は厳しく取り締まるということこそが、「外国人との共生社会」になるための第一歩なのではないか』、「「市民による正義の暴走」を防ぐには、先回りをして国家が「正義」を示すしかない。国が外国人への取り締まりを強化する、と聞くと脊髄反射で「外国人ヘイトだ!」「差別だ!」と批判をする人が多いが、外国人への恐怖や偏見を軽減することで、「善良な外国人」の人権や安全を守ることができるというメリットもある。 外国人だろうが日本人だろうが、不法行為は厳しく取り締まるということこそが、「外国人との共生社会」になるための第一歩なのではないか」、その通りだ。
タグ:外国人問題 (その9)(「特高マインド」が脈々と ウィシュマさんの死によって判明した入管の異常な体質、じつはいま中国人が急速に増えている「日本の都市」があった…その名前と「移住の理由」、日本に移住する中国人が「住む場所」に変化が起きていた…その「驚愕の実態」 地区ごとの特徴、埼玉・川口市のクルド人問題が紛糾!「外国人差別」と叫ぶ人が知らない暗黒史) AERAdot「「特高マインド」が脈々と ウィシュマさんの死によって判明した入管の異常な体質」 「在留資格のない外国人は『憲法の番外地』、つまり、人権を認めないというのが入管の考え方としてあります。収容者を『制圧行為』と称し、多数の職員で暴行を加えるなど人権を無視する事例は施設内で度々起きています。これは、外国人は取り締まりの対象であり社会に危害を加える存在だという、戦前の特高のマインドが今も引き継がれているからだと思います」、『憲法の番外地』とは言い得て妙だ。 「本来は、どのような人を収容するかは法律でルールを明文化し、裁判所が判断していくよう整備しなければいけません。これは、国連の自由権規約委員会からも、改善を求められていることです」 そして最終的には、巨大な裁量権を持つ入管を解体することが必要だという。解体し、収容の判断は裁判所が行い、運用は民間に委託するなどし、難民保護は第三者機関が行う。 入管は、入管の本来の目的である強制送還の業務だけを担うようにするなど、抜本的な入管行政の見直しが不可欠だ、と。 「同時に、日本人の中にある外国人に対する差別心をなくしていく教育を子どもも大人も行うなど、社会全体で変わっていく必要があります」、その通りだ。 現代ビジネス 中島 恵氏による「じつはいま中国人が急速に増えている「日本の都市」があった…その名前と「移住の理由」」 確かに「亀戸」は「下町の庶民的なイメージ」に溢れている。 「中国人が多い地区のトップ5を見てみると、共通点が浮かび上がってくる。それは、比較的物価が安く、中国人の生活に欠かせない中国食材店や中華料理店が多いこと、10年以上前に来日した中国人がすでに多く住んでいて、安心感があること、中国人のネットワークで不動産物件を紹介された人が多いこと、都心への交通アクセスがよいこと、などだ」、なるほど。 中島 恵氏による「日本に移住する中国人が「住む場所」に変化が起きていた…その「驚愕の実態」 地区ごとの特徴」 「共通点が浮かび上がってくる。 それは、比較的物価が安く、中国人の生活に欠かせない中国食材店や中華料理店が多いこと、10年以上前に来日した中国人がすでに多く住んでいて、安心感があること、中国人のネットワークで不動産物件を紹介された人が多いこと、都心への交通アクセスがよいこと、などだ」、なるほど。 「近年、日本に移住してきた人に、どこに住んでいるかと聞いてみると、港区、品川区、渋谷区、という答えが返ってきた・・・会社は大手町にあり、そこから近いので六本木の賃貸マンションに住んでいます。私は東京に詳しくなく、地理もよくわかりませんが、ここは治安もいいし、ステータスの面でも満足できると思いました。家賃は30万円以上しますが、会社負担です・・・ 他の駐在員仲間も六本木や麻布に多く住んでいますよ。仕事で遅くなっても、タクシーですぐに帰宅できるし、東京タワーも見える眺めのいいマンションなので気に入っています」、「中国人」といっても、昔から住んでいる人たちと、最近の人たちは生活スタイル、所得などで大きな差があるようだ。 「近年来日した中国人は感覚がかなり異なるようだ。 彼らの多くは30~50代の働き盛りだが、中国で財を成した人が多く、日本に移住してからはどこかに通勤する必要がない。そして、子ども連れで来日する場合、子どもを日本のインターナショナルスクールに通わせたいと考えている人が多い。 そのため、ある中国人は「港区、目黒区などにあるインターナショナルスクールを検討しているので、住居もその近くにしたい」と話していた・・・ 在日中国人の大半は、前編で紹介したような一般会社員などであり、中国人が多く集住している地区を好む傾向があることがわかる。 こうした傾向は、東京都の次に多い埼玉県、神奈川県などでも同様で、埼玉県でいえば川口市、神奈川県でいえば横浜市がそれに当たる」、その通りなのだろう。 ダイヤモンド・オンライン 窪田順生氏による「埼玉・川口市のクルド人問題が紛糾!「外国人差別」と叫ぶ人が知らない暗黒史」 「外国人ヘイト」のムードを醸成させないためにも、国が「不法行為をする一部の外国人を厳しく取り締まる」という毅然とした態度を見せて、市民の「不安」を払拭しておくべきなのだ」、なるほど。 「当時の「自警団」はすさまじく、各所で検問所をつくって、朝鮮人だと見るや、子どもでも妊婦でもお構いなしに殺している。命ごいをする一家まで殺して、勢い余って「しゃべれない」という理由だけで、日本人の聴覚障がい者にまで手をかけた・・・一体何が善良な市民を暴徒にさせたのかというと、「恐怖」である。「不逞鮮人が怖くてパニックになって、自分や家族を守るために目に入るすべての朝鮮人を排除した」のである・・・ 「デマ」が流れるはるか前から、日本の善良な市民たちの間では、朝鮮人は「何をしでかすかわからないヤバい連中」というイメージが確立していたのだ」、なるほど。 「平時は暴力などとは無縁の日本人たちが、何の罪もない朝鮮人たちを無慈悲に殺せたのは「デマのせい」というのは表面的な話にすぎないのだ。何年もかけてふくれ上がってきた朝鮮人に対する恐怖が、地震によって制御することができなくなって、「集団パニック」に陥ったからなのだ」、「集団パニック」とは本当に恐ろしい。 「これまで不法行為をするクルド人だけに不安を感じていた人たちが、「クルド人を受け入れろ!」「このレイシストめ!」と攻撃されることで態度を硬化させて、何の問題も起こしていない「善良なクルド人」に対してまで恐怖や憎悪を抱いてしまうのである。 ただ、それよりも最悪なのは、国がこの問題を放置し続けたら、「自分の身は自分で守るしかない」と考える人々が、「自警団」のようなものを組織してしまう恐れがあることだ」、なるほど。 「「市民による正義の暴走」を防ぐには、先回りをして国家が「正義」を示すしかない。国が外国人への取り締まりを強化する、と聞くと脊髄反射で「外国人ヘイトだ!」「差別だ!」と批判をする人が多いが、外国人への恐怖や偏見を軽減することで、「善良な外国人」の人権や安全を守ることができるというメリットもある。 外国人だろうが日本人だろうが、不法行為は厳しく取り締まるということこそが、「外国人との共生社会」になるための第一歩なのではないか」、その通りだ。
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災害(その16)(能登半島地震 防災対策の権威が語る「反省と教訓」 防災と初動対応が遅れた背景に2つの原因、災害時トイレ「断水」復旧になぜ時間がかかるのか 阪神・淡路大震災では仮復旧まで1カ月間要した、災害時に備えたい「携帯トイレ」4人家族の必要数 「使い方」や「使うタイミング」も知っておくこと) [社会]

災害については、本年2月4日に取上げた。今日は、(その16)(能登半島地震 防災対策の権威が語る「反省と教訓」 防災と初動対応が遅れた背景に2つの原因、災害時トイレ「断水」復旧になぜ時間がかかるのか 阪神・淡路大震災では仮復旧まで1カ月間要した、災害時に備えたい「携帯トイレ」4人家族の必要数 「使い方」や「使うタイミング」も知っておくこと)である。

先ずは、本年2月15日東洋経済オンライン「能登半島地震、防災対策の権威が語る「反省と教訓」 防災と初動対応が遅れた背景に2つの原因」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/734427
・『2024年元日を襲った能登半島地震では200人を上回る人命が失われるなど、深刻な被害が発生した。阪神淡路大震災をはじめとして多くの自然災害に向き合い、防災対策の見直しを提唱してきた室﨑益輝・神戸大学名誉教授は「反省すべき点が多くある」と指摘する(Qは聞き手の質問、Aは室﨑氏の回答)。 Q:今回の災害の大きさや深刻度についてどのようにとらえておられますか。 A:とんでもない地震が起きたというか、想像を絶する地震が起きた。家屋の損壊状況もすさまじいものだし、道路という道路が破壊されました。そういった被災状況だっただけに、過去がこうだったから今回こうだとは言えない部分はあります。ただ、救いを求めている被災者がたくさんいる現実にどう応えていくか。行政のみならず、私たち一人ひとりを含む社会全体の責任だと思っています』、「とんでもない地震が起きたというか、想像を絶する地震が起きた。家屋の損壊状況もすさまじいものだし、道路という道路が破壊されました・・・救いを求めている被災者がたくさんいる現実にどう応えていくか。行政のみならず、私たち一人ひとりを含む社会全体の責任だと思っています」、なるほど。
・『すぐに救援に駆けつけられなかった  Q:能登半島地震の発生から1カ月余りが経過しました。これまでを振り返って、どのような教訓や反省点がありますか。 A:震災の教訓を引き出すには、失敗体験をしっかり踏まえなければならない。今回の地震では、助けを求めている被災者のところに救援隊がすぐに駆けつけることができなかった。これが大きな反省点だったと思います。 その根源をたどると、大きく2つの誤ちがあったと言えます。 1つ目の過ちは事前の被害想定の甘さです。 能登地方でこれほど大きな地震は起きるはずがないという思い込みも含めてのことですが、国、石川県ともきわめて小さな地震しか想定していなかった。その結果として、事前の準備がきちんとできていなかった。 孤立集落があちこちで発生する事態を見越していれば、備蓄対策のあり方も違っていたし、平時の情報通信が途絶しても連絡を取れる衛星携帯電話を配備するといった事前準備もやっていたはずです。) 2つ目の過ちは、地震発生直後に被災状況の把握がスムーズにできなかったことが、初動対応の遅れにつながったという点です。 政府は当初、災害対策基本法に基づく態勢としては最も下のクラスの「特定災害対策本部」の設置にとどめた。これを「非常災害対策本部」に格上げし、同本部の会議を初めて開催したのは翌1月2日の午前9時過ぎのことでした。 初動態勢の構築が遅れた結果、自衛隊投入の規模も当初の1000人規模から小出しになってしまった。 (室﨑益輝氏の略歴はリンク先参照) Q:石川県の地域防災計画(地震災害対策編)では、「能登半島北方沖」を震源とする地震としてはマグニチュード7.0を想定し、被害の概況についても「死者数7人、建物全壊120棟」「ごく局地的な災害で、災害度は低い」とされていました。四半世紀にわたってその想定は見直しがなされていませんでした。石川県の災害危機管理アドバイザーを務め、県防災会議震災対策部会長でもある室﨑さんは、2023年2月の同部会で、地震被害想定の抜本的な見直しを決定したという発言をしています。 同部会で被害想定の見直しをしようとしていたことは事実です。 2020年12月以降の奥能登の珠洲市一帯での群発地震をきっかけに、いずれ大きな地震が起きるという緊迫感が芽生えていました。 それを踏まえ、国の地震調査研究推進本部による長期評価や被害想定が出されていなくても、石川県として能登半島でこれから起きる地震の想定をしっかりやろうということで、2023年から議論を始めていました。 しかし、結果的には作業が間に合わなかった』、「今回の地震では、助けを求めている被災者のところに救援隊がすぐに駆けつけることができなかった。これが大きな反省点だったと思います。 その根源をたどると、大きく2つの誤ちがあったと言えます。 1つ目の過ちは事前の被害想定の甘さです。 能登地方でこれほど大きな地震は起きるはずがないという思い込みも含めてのことですが、国、石川県ともきわめて小さな地震しか想定していなかった」、前石川県知事が産業を呼び込むため、震災の想定を低く抑えたと言われている。事実とすれば、許し難い行為だ。「2つ目の過ちは、地震発生直後に被災状況の把握がスムーズにできなかったことが、初動対応の遅れにつながったという点です。 政府は当初、災害対策基本法に基づく態勢としては最も下のクラスの「特定災害対策本部」の設置にとどめた。これを「非常災害対策本部」に格上げし、同本部の会議を初めて開催したのは翌1月2日の午前9時過ぎのことでした。 初動態勢の構築が遅れた結果、自衛隊投入の規模も当初の1000人規模から小出しになってしまった」、なるほど。
・『国の評価を待つという受け身の姿勢だった  Q:石川県の幹部の発言として、国の長期評価の策定・公表を待ってから対策をするという姿勢が長く続いていたという報道があります。その点についてどのように感じていましたか。 A:結果論ですが、そのような待ちの姿勢ではいけなかった。県域のどこにどのような活断層があり、どのくらいの確率で動くかについて、国の長期評価の策定を待ってから対策を話し合うという姿勢が、今回の地震で問われた。 他方で国土交通省が2014年9月に取りまとめた「日本海における大規模地震に関する調査検討会」の報告書では、能登半島沖に活断層があり、津波被害を起こすことが指摘されていました。 ただ、石川県においては、どの活断層がどのように連動するか否かについては、国の科学的知見の発表を踏まえて検討すればいいという姿勢でした。その結果として、地震被害の想定の抜本的見直しが遅れてしまいました。 国のトップダウンに基づく防災ではなく、地方自治体から動くボトムアップの防災に切り替えるには、自ら独自に積極的に被害の想定をしなければならない。 加えてもう一つ問われていることが、社会の前提条件がどんどん変わってきているということです。その社会の変化を想定に反映しなければならない。高齢化や過疎化が進んでいる中で、四半世紀も被害想定の見直しを放置していたということ自体、間違っていたと思います。) Q:政府の初動態勢をどのように評価していますか。 A:マグニチュード7.6(暫定値)というのは、阪神淡路大震災(兵庫県南部地震)や熊本地震よりも大きな地震が起きたことを意味しています。そうだとすると、多くの家屋が倒壊し、たくさんの人が生命の危機にさらされていることは、直後に想像できたはず。 これからは、現地からの報告を待つのではなく、直後に公表される地震の大きさや形状によって、初動対応のスイッチを入れるようにしなければならない。 たとえばマグニチュード7.6であれば、道路が寸断されているということを想定して、海や空からの救助にも早急に着手すべきです。 従来の緊急消防隊の派遣のシステムのまま動いていたのでは、救助活動はうまく進まない。繰り返しになりますが、地震発生直後の情報把握のシステムおよび初動対応のシステムを抜本的に見直さなければいけない』、「石川県の幹部の発言として、国の長期評価の策定・公表を待ってから対策をするという姿勢が長く続いていたという報道があります。その点についてどのように感じていましたか。 A:結果論ですが、そのような待ちの姿勢ではいけなかった。県域のどこにどのような活断層があり、どのくらいの確率で動くかについて、国の長期評価の策定を待ってから対策を話し合うという姿勢が、今回の地震で問われた・・・社会の前提条件がどんどん変わってきているということです。その社会の変化を想定に反映しなければならない。高齢化や過疎化が進んでいる中で、四半世紀も被害想定の見直しを放置していたということ自体、間違っていたと思います・・・地震発生直後の情報把握のシステムおよび初動対応のシステムを抜本的に見直さなければいけない」、その通りだ。
・『モデルにすべきは中越地震時の「山古志方式」  Q:地震発生直後には避難所が開設され、2月3日には仮設住宅への入居が始まりました。 地震を生き延びた人が、その後の健康状態の悪化などによって死亡する「災害関連死」を防がなければならない。そのためには、人々の1日1日の苦しみをいかに和らげるかが重要です。もう一つ重要なことは、苦しみの期間をいかに短くできるかです。 国の災害救助法のルールに基づけば、避難所の開設は原則1週間、応急仮設住宅は本来、20日以内に着工しなければならない。 ただ、現実を見ると、いずれもだいぶ日数がオーバーしている。仮設住宅については1~2カ月遅れでの着工という事態が生じています。 被災者の苦しみの総量を下げるためにも、迅速に仮設住宅を供給しなければならない。そういう意識をどれだけ持って取り組んでいるのかということが問われています。 Q:石川県の発表によれば、応急的な住まいについては3月末までに約1万5000戸を用意する計画です。仮設住宅の提供のあり方についてはどのような配慮が必要でしょうか。 A:モデルにすべきは、2004年の新潟県中越地震の時の「山古志方式」だと思います。 被害の大きかった旧山古志村(現・長岡市)の住民のために長岡市内に仮設住宅団地が作られ、そこに山古志村の人たちはコミュニティ単位で入居しました。そして旧山古志村では2~3年かけてがれきの撤去や道路の整備が実施され、再び住民が帰還できました。 今回も金沢市のスポーツセンターの敷地に1万棟くらいの仮設住宅団地を作り、コミュニティごとに入居するといったような取り組みがあってもいいのではないか。 そこに高校の分校や輪島塗りの工房も一緒に作るといったやり方をすれば、コミュニティを維持できます。) Q:石川県の計画では、約1万5000戸のうち、約8000戸を石川県外の公営住宅によって賄うということになっています。 人々がばらばらになってしまうので良くない。孤立死をもたらすことになりかねない。なるべく多くの人たちがまとまり、お互いにつながり合うことが重要です。 Q:災害救助法では、被災者への「炊き出しその他による食品の給与」が定められています。今回の地震では、一部の2次避難所で食事の費用を徴収している例があると指摘されています。 これ自体は災害救助法違反です。同法では食事の提供の義務がある。ホテルに収容したらおしまいということではないのです。 Q:なぜこうしたことが起きているのでしょうか。石川県自体が災害対応に慣れていないということでしょうか。 A:石川県というよりも、日本の自治体のどこも災害対応に慣れておらず、経験がつながっていないことに原因があります。行政の担当者は2~3年で代わってしまうため、ノウハウと経験が蓄積しない。 石川県も2007年の能登半島地震では素晴らしい対応をしているのに、その対応が今回見られていないというのは、まさに経験を蓄積し、継承するシステムがないことに原因があると言えます。 石川県に、阪神淡路大震災や東日本大震災、中越地震の経験をどれだけしっかり伝えたか、私たち伝える側の責任ももっと問われないといけない』、「石川県も2007年の能登半島地震では素晴らしい対応をしているのに、その対応が今回見られていないというのは、まさに経験を蓄積し、継承するシステムがないことに原因があると言えます」、なるほど。
・『原子力災害時の体制も抜本見直しを  Q:今回の地震では原子力発電所の重大事故には至らずに済みました。ただ、原発事故を含む複合災害に発展した場合、あらかじめ定められていた防災計画が機能しなかったのではないかと見られています。 最大級の地震を想定して、原発そのものの防災計画を見直さなければならない。 もう一つの問題は、原子力災害時の避難の問題です。今回の地震では道路があちこちで寸断し、住民の孤立が発生した。道路が使えない前提で避難計画を作らなければならない。 福島原発事故のような最悪の事態に備え、そうしたことが起きた時にどうするのかという前提に立って、対策を講じなければならないと思っています。 Q:能登半島地震では、ボランティアの受け入れをめぐり賛否の議論が起きました。今行っても迷惑になるという言い方がSNSなどでなされ、行政からも「今はまだ来ないでください」というメッセージが発信されました。 ボランティアは言われてする活動ではないのです。そこに困った人がいれば、迷惑をかけないように最大限の配慮をしながらも、被災者の元に駆けつけなければならない。 ボランティアセンターができたから行きましょうとか、ボランティアは来るなと言われたので行かないというのではなく、そこに支援を求めている人がいるかどうかを判断の基軸にすべきです。 今回のようにボランティアの自主性が失われ、必要なボランティアが被災地に入らないという事態になると、助かる命も助からなくなってしまう。ボランティア側もきちんとリテラシーを持ち、マナーをわきまえたうえで活動すればいいと思います』、「今回のようにボランティアの自主性が失われ、必要なボランティアが被災地に入らないという事態になると、助かる命も助からなくなってしまう。ボランティア側もきちんとリテラシーを持ち、マナーをわきまえたうえで活動すればいいと思います」、その通りだ。

次に、2月26日付け東洋経済オンラインが掲載した日本トイレ研究所代表理事の加藤 篤氏による「災害時トイレ「断水」復旧になぜ時間がかかるのか 阪神・淡路大震災では仮復旧まで1カ月間要した」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/733845
・『能登半島地震でも多く取り上げられた「災害時のトイレをどうするか」問題。 トイレ環境の大切さを広めるべく奔走する「日本トイレ研究所」の代表理事・加藤篤さんが、“トイレ”の視点から防災のノウハウをやさしく解説した『トイレからはじめる防災ハンドブック』より一部の内容を抜粋。忘れたころにやってくる災害への備え、そして起こった後の対応のポイントについて、3回にわたって掲載します。 第1回は、災害とトイレをめぐる基本的な知識をお伝えします』、興味深そうだ。
・『自然災害の発生後にすべきこと  ■発災3時間以内に約4割の人がトイレに行く 自然災害の発生後にすべきことは何でしょうか?地震や豪雨などが起きたときに真っ先にすべきなのは、自分の命を守ること、そして安全な場所に避難することです。ここまでの行動は、全員一致するでしょう。 問題はこのあとです。避難所では避難者の誘導や場所の確保、水・食料の配給などに多くの人が奔走します。もちろんこれらは大切ですが、それと同じくらい重要なのに、忘れられがちなことがあります。それが「トイレ対応」です。 大きな災害が起きると水洗トイレは使えなくなります。しかし、私たちの排泄は待ってくれません。) 2016年4月に発生した熊本地震での調査によると、発災後3時間以内にトイレに行きたくなった人は38.5%、6時間以内では72.9%にのぼります。 発災後6時間は大混乱状態で、おそらくこの約7割の人は水を飲んでおらず、食事も摂っていないはずです。それにもかかわらず、トイレに行きたくなるのです。つまり、水・食料より先にトイレ対応が必要ということです。私たちはこの事実から目をそらしてはいけないのです。(地震後、何時間でトイレに行きたくなったか? はリンク先参照)』、「発災後6時間は大混乱状態で、おそらくこの約7割の人は水を飲んでおらず、食事も摂っていないはずです。それにもかかわらず、トイレに行きたくなるのです。つまり、水・食料より先にトイレ対応が必要ということです」、なるほど。
・『断水したら水洗トイレが使えない  ■水洗トイレには給水と排水の両方必要 断水したら水洗トイレが使えないことは、多くの人が理解しています。水洗トイレは目の前の大小便を水で流し去ってくれる便利なシステムなので、水が無ければ機能しません。 断水の原因は主に2つあります。1つは給水管等の給水装置や配水施設が破損して水を届けられなくなること。もう1つは停電でポンプなどの設備が作動しなくなり、水が届けられなくなることです。 ところが、給水に問題が無くても、水洗トイレは使えなくなることがあります。それは、排水に支障がある場合です。理由は、流れていく先がなくなるからです。 排水に問題が生じる要因としては、排水管が外れる・閉塞する・逆こう配になる、下水道や下水処理場、浄化槽が機能していない、などが考えられます。このような場合、無理に汚水を流すと、どこかからあふれることになります。 給水と排水、それに電気のすべてが機能してこそ、水洗トイレは使用できるようになります。日頃、目にしているのは便器だけですが、その裏に壮大な水洗トイレシステムがあることを知っておいてください。(水洗トイレが機能するためには? はリンク先参照)』、「給水と排水、それに電気のすべてが機能してこそ、水洗トイレは使用できるようになります」、なるほど。
・『■水道の仮復旧までは1カ月以上かかる  私たちは1日に複数回トイレに行きます。水洗トイレを使うには、もちろん水が必要です。節水型の便器でも、1回あたりの洗浄で概ね6?8リットル程度の水を使用します。仮に5回行くとしたら、合計で30?40リットルの水を使うことになります。 水を便器に供給するためには、まず河川などから引いた水を処理する浄水場が機能していることが前提です。また、浄水場からポンプ場を経由して各建物に水を運ぶ配水管が正常であることも必要です。そして、これらの過程では電力も欠かせません。 このため、大きな災害で停電すると断水が発生します。阪神・淡路大震災では約127万戸が断水し、仮復旧が完了するまでに1カ月以上を要しました。また、東日本大震災で被災した地方公共団体へのアンケート調査では、上水道の仮復旧までに要した日数は、平均35日間だったことがわかっています。 この間、トイレの洗浄に必要な水量を人力で供給するのは容易でありません。断水で洗浄水が確保できない場合に、トイレ機能を確保する方法の検討が必要です。 (阪神・淡路大震災のときはどうだった? はリンク先参照)』、「阪神・淡路大震災では約127万戸が断水し、仮復旧が完了するまでに1カ月以上を要しました。また、東日本大震災で被災した地方公共団体へのアンケート調査では、上水道の仮復旧までに要した日数は、平均35日間だった・、かなり長期になるようだ。
・『トイレに行きたくない理由  ■安心できないトイレで起こる問題 トイレを我慢する、つまりトイレに行きたくないと感じてしまう原因は人それぞれ異なります。臭かったり、汚れていたりするトイレは、誰もが避けたくなるものです。 特に女性や子どもであれば、暗がりにあるトイレは怖いでしょう。 寒い時期には、屋外のトイレは使いたくありません。風雨などの悪天候時も同様です。遠くにあって行くのが大変なトイレも使いづらいです。 また、男女共用しかない場合や、数が少なくてトイレ待ちの行列ができる場合も困ります。車いす利用者や足腰が悪い人は、段差があるトイレや和式便器が使えません。和式便器は、慣れていない子どもにとっても困難です。) このようにトイレを不便、もしくは不快と感じてしまうきっかけが1つでもあると、私たちはトイレになるべく行かなくてすむように、意識的にも無意識的にも、水分摂取を控えがちになり、その結果として体調を崩してしまいます。 平成16年新潟県中越地震に関する住民アンケート調査(小千谷市・川口町編)でも、かなりの人が、トイレを理由に水分を控えていたことがわかります。 (避難所で体験した”困ったことと”は? はリンク先参照)』、「トイレを不便、もしくは不快と感じてしまうきっかけが1つでもあると、私たちはトイレになるべく行かなくてすむように、意識的にも無意識的にも、水分摂取を控えがちになり、その結果として体調を崩してしまいます」、大いに気を付けたいことだ。
・『汚染された手を口や鼻に…  ■不衛生なトイレは感染症の温床になる  トイレを使用する際、ほとんどの人が同じ箇所に触れます。例えば、ドアの取っ手、鍵、便座のフタ、便座、トイレットペーパーホルダー、洗浄レバーやボタン、手洗い場の蛇口です。 これらが汚染されていた場合、ウイルスや細菌が人の手を介して伝播することになります。 単に手が汚れるだけでは感染しませんが、私たちは無意識に手で顔に触れているため、目や口、鼻の粘膜を通じて感染するリスクが小さくありません。 手洗いやトイレ掃除が十分にできない不衛生なトイレを不特定多数の人が使用し続けると、感染性胃腸炎などのウイルス感染症に罹患するリスクを高め、集団感染を引き起こします。 東日本大震災では、石巻赤十字病院などの調査で、津波被害のあった石巻市および東松島市、女川町にある公立学校や公民館など、計272カ所の避難所のうち、約4割のトイレで汚物処理が十分にできず、少なくとも約50人に下痢、約20人に嘔吐の症状が見られました。 感染症予防の観点からも、トイレを衛生的に保つことは非常に重要です』、「東日本大震災では、石巻赤十字病院などの調査で・・・計272カ所の避難所のうち、約4割のトイレで汚物処理が十分にできず、少なくとも約50人に下痢、約20人に嘔吐の症状が見られました。 感染症予防の観点からも、トイレを衛生的に保つことは非常に重要です』、その通りだろう。

第三に、3月4日付け東洋経済オンラインが掲載した日本トイレ研究所代表理事の加藤 篤氏による「災害時に備えたい「携帯トイレ」4人家族の必要数 「使い方」や「使うタイミング」も知っておくこと」を紹介しよう。
・『能登半島地震でも多く取り上げられた「災害時のトイレをどうするか」問題。 トイレ環境の大切さを広めるべく奔走する「日本トイレ研究所」の代表理事・加藤篤さんが、“トイレ”の視点から防災のノウハウをやさしく解説した『トイレからはじめる防災ハンドブック』より一部の内容を抜粋、忘れたころにやってくる災害への備え、そして起こった後の対応のポイントについて、3回にわたって掲載します。 第2回では、備えておきたい防災グッズ「携帯トイレ」についてお伝えします』、興味深そうだ。
・『災害時に使う携帯トイレとは?  ■後悔しない携帯トイレの選び方・使い方  携帯トイレとは、便器に設置して使用する袋式のトイレです。袋の中に排泄し、吸収シートや凝固剤で大小便を吸収・凝固させます。 給排水設備が損傷して水洗トイレが使用できないときでも、便器に取りつければすぐに使用できることが利点です。また、使い慣れたトイレ室を活用できるため安心です。 一方、いくつかの注意点があります。) まず携帯トイレを選ぶ際は、大小便をしっかり吸収・凝固できること、一定期間保管しても液体に戻らないこと、臭気対策が施されていることなどをチェックしてください。衛生的な問題が生じないよう、性能の良いものを選びましょう。 また、使用時に直接便器に取り付けることはおすすめしません。 先に45リットル程度のポリ袋を便器に被せてから便座を下ろし、その上に携帯トイレを取り付けましょう。こうすれば、携帯トイレの交換時に水が滴ることはありません。 以下を参考に、事前に使い慣れておくことをおすすめします。(携帯トイレを使うときのポイントは? はリンク先参照)』、「携帯トイレとは、便器に設置して使用する袋式のトイレです。袋の中に排泄し、吸収シートや凝固剤で大小便を吸収・凝固させます・・・携帯トイレを選ぶ際は、大小便をしっかり吸収・凝固できること、一定期間保管しても液体に戻らないこと、臭気対策が施されていることなどをチェックしてください」、なるほど。
・『まずはトイレに携帯トイレを設置  ■災害発生直後は設備点検より先に携帯トイレを  前回の記事で紹介したように、発災から3時間以内に約4割の人がトイレに行きたくなったというデータがあります。発災後3時間でできることは、命を守り、安全な場所に避難して安否確認をすることぐらいではないでしょうか。 このような大混乱のなか、私たちは水や食料のことを心配すると思いますが、実はそれより先にトイレが必要になるのです。 急いですべきことは、避難所や自宅、オフィスなどのトイレに携帯トイレを取り付けることです。もちろん、トイレの天井が壊れていたり、トイレブースが倒壊していたりして、トイレが危険な場合はこの限りではありません。 私たちはトイレに行くとき、誰かに申告して行くわけではありません。基本的には各々が便意や尿意を催したときに誰にも言わずにトイレに行きます。体調を崩して嘔吐することもあると思います。 そのため、どのタイミングで誰がトイレに行くのかはわかりません。停電していても、断水に気づかずに排泄してしまうことが考えられます。) そんなとき、便器に携帯トイレが取り付けてあれば、災害時のトイレ対応であることに気づきます。携帯トイレの使用方法はわからない人がほとんどですので、ポスターやスタッフを介して伝えることも必要です。 給排水設備の点検等は、携帯トイレを取り付けてから実施してください。さきに点検を行っていると、その間にトイレを使用されてしまうからです。設備点検の結果、問題ないことがわかれば、携帯トイレを取り外せばよいだけです。 これまでの震災や豪雨災害において、携帯トイレを活用することでその場を乗り切った事例はあります。繰り返しになりますが、災害時はできるだけ早く携帯トイレを取り付けることが必要です』、「給排水設備の点検等は、携帯トイレを取り付けてから実施してください。さきに点検を行っていると、その間にトイレを使用されてしまうからです。設備点検の結果、問題ないことがわかれば、携帯トイレを取り外せばよいだけです」、なるほど。
・『知っておきたい携帯トイレの使い方  ■災害前に周知しておきたい携帯トイレの使い方  災害時のトイレの初動対応として携帯トイレを用いることが有効です。 しかし、避難者の多くは携帯トイレを知りません。見たこともなければ使い方もわかりません。間違った使い方をしてしまうと不衛生な状態になり、集団感染を引き起こすことにもつながります。 そこで、大事なのが使用方法の周知徹底です。 災害が起きてからでは遅いので、平時の啓発が重要になります。防災訓練や学校での授業、地域のイベントなど、あらゆる機会を活用して伝えることが必要です。動画を活用することも有効です。 災害が起きてしまった後の周知方法は、これまでの経験者の話を踏まえると、主に2つの方法が考えられます。 1つめはイラストや図を用いてポスターを作成し、トイレに掲示することです。2つめはトイレ前にスタッフを配置することです。実際に、東日本大震災の避難所や西日本豪雨の際の病院などで実施されました。 これら2つの方法を両方実施することになると思います。災害時の負担を軽減するためにも平時の啓発を重視したいものです。(携帯トイレの使い方は? はリンク先参照)』、家庭用の場合でも「イラストや図を用いてポスターを作成し、トイレに掲示することです」は通用しそうだ。
・『■使用済みの携帯トイレはフタつきの入れ物で保管  携帯トイレを使用したあとの取り扱い方法について説明します。市町村への確認が必要ではありますが、概ね可燃ごみとして収集・処理されます。 可燃ごみとして収集するということは、ごみ収集車などで運ぶことになります。災害時は地盤沈下や液状化、浸水、建物倒壊などで道路が塞がれてしまう可能性があります。通常であれば、すぐに実施できたごみ収集でも、災害時は思うようにいきません。 災害の規模や被災状況によっても異なりますが、少なくとも数日間は、各自で使用済み携帯トイレを保管することが求められます。 携帯トイレの中身は大小便ですので、臭気対策が必要になります。また、直射日光があたると袋の劣化につながるので、フタつきの入れ物などに入れてベランダや庭など、生活空間と切り離した場所に保管することが必要です』、「少なくとも数日間は、各自で使用済み携帯トイレを保管することが求められます。 携帯トイレの中身は大小便ですので、臭気対策が必要になります。また、直射日光があたると袋の劣化につながるので、フタつきの入れ物などに入れてベランダや庭など、生活空間と切り離した場所に保管することが必要です」、なるほど。
・『どれくらいの数が必要になるか  ■「人数×回数×日数」で携帯トイレを常備  自宅で避難生活を送るには、携帯トイレの備えが欠かせません。では、携帯トイレはどのくらい必要になるのでしょうか? 携帯トイレの必要数を計算するには、避難生活を送る人数、1日当×たりの排泄回数、そして避難生活を送る日数を想定する必要があります。これらがわかれば、「人数×排泄回数×避難日数」という計算式で、携帯トイレの必要数を導き出すことができます。 ここでは仮に4人家族を想定してみます。排泄回数は1人ひとり異なりますので、それぞれが実際に数えてみることをおすすめします。 内閣府(防災担当)が作成した「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」では、1日当たりの平均的なトイレ使用回数の目安は「5回」と記載されています。 避難日数は災害規模によって大きく異なりますが、国が定める「防災基本計画」では、住民に対して最低3日間、推奨1週間分の携帯トイレ・簡易トイレ、トイレットペーパーなどを備蓄することを啓発するように記載されています。 以上をまとめると、4人家族であれば次のような計算になり、140回分の携帯トイレが必要になります』、「4人×5回×7日」で「140回分」というわけだ。早速、ホームセンターで買ってみたい。
タグ:(その16)(能登半島地震 防災対策の権威が語る「反省と教訓」 防災と初動対応が遅れた背景に2つの原因、災害時トイレ「断水」復旧になぜ時間がかかるのか 阪神・淡路大震災では仮復旧まで1カ月間要した、災害時に備えたい「携帯トイレ」4人家族の必要数 「使い方」や「使うタイミング」も知っておくこと) 災害 東洋経済オンライン「能登半島地震、防災対策の権威が語る「反省と教訓」 防災と初動対応が遅れた背景に2つの原因」 「とんでもない地震が起きたというか、想像を絶する地震が起きた。家屋の損壊状況もすさまじいものだし、道路という道路が破壊されました・・・救いを求めている被災者がたくさんいる現実にどう応えていくか。行政のみならず、私たち一人ひとりを含む社会全体の責任だと思っています」、なるほど。 「今回の地震では、助けを求めている被災者のところに救援隊がすぐに駆けつけることができなかった。これが大きな反省点だったと思います。 その根源をたどると、大きく2つの誤ちがあったと言えます。 1つ目の過ちは事前の被害想定の甘さです。 能登地方でこれほど大きな地震は起きるはずがないという思い込みも含めてのことですが、国、石川県ともきわめて小さな地震しか想定していなかった」、前石川県知事が産業を呼び込むため、震災の想定を低く抑えたと言われている。事実とすれば、許し難い行為だ。 「2つ目の過ちは、地震発生直後に被災状況の把握がスムーズにできなかったことが、初動対応の遅れにつながったという点です。 政府は当初、災害対策基本法に基づく態勢としては最も下のクラスの「特定災害対策本部」の設置にとどめた。これを「非常災害対策本部」に格上げし、同本部の会議を初めて開催したのは翌1月2日の午前9時過ぎのことでした。 初動態勢の構築が遅れた結果、自衛隊投入の規模も当初の1000人規模から小出しになってしまった」、なるほど。 「石川県の幹部の発言として、国の長期評価の策定・公表を待ってから対策をするという姿勢が長く続いていたという報道があります。その点についてどのように感じていましたか。 A:結果論ですが、そのような待ちの姿勢ではいけなかった。県域のどこにどのような活断層があり、どのくらいの確率で動くかについて、国の長期評価の策定を待ってから対策を話し合うという姿勢が、今回の地震で問われた・・・ 社会の前提条件がどんどん変わってきているということです。その社会の変化を想定に反映しなければならない。高齢化や過疎化が進んでいる中で、四半世紀も被害想定の見直しを放置していたということ自体、間違っていたと思います・・・地震発生直後の情報把握のシステムおよび初動対応のシステムを抜本的に見直さなければいけない」、その通りだ。 「今回のようにボランティアの自主性が失われ、必要なボランティアが被災地に入らないという事態になると、助かる命も助からなくなってしまう。ボランティア側もきちんとリテラシーを持ち、マナーをわきまえたうえで活動すればいいと思います」、その通りだ。 東洋経済オンライン 加藤 篤氏による「災害時トイレ「断水」復旧になぜ時間がかかるのか 阪神・淡路大震災では仮復旧まで1カ月間要した」 「発災後6時間は大混乱状態で、おそらくこの約7割の人は水を飲んでおらず、食事も摂っていないはずです。それにもかかわらず、トイレに行きたくなるのです。つまり、水・食料より先にトイレ対応が必要ということです」、なるほど。 「給水と排水、それに電気のすべてが機能してこそ、水洗トイレは使用できるようになります」、なるほど。 「阪神・淡路大震災では約127万戸が断水し、仮復旧が完了するまでに1カ月以上を要しました。また、東日本大震災で被災した地方公共団体へのアンケート調査では、上水道の仮復旧までに要した日数は、平均35日間だった・、かなり長期になるようだ。 「トイレを不便、もしくは不快と感じてしまうきっかけが1つでもあると、私たちはトイレになるべく行かなくてすむように、意識的にも無意識的にも、水分摂取を控えがちになり、その結果として体調を崩してしまいます」、大いに気を付けたいことだ。 「東日本大震災では、石巻赤十字病院などの調査で・・・計272カ所の避難所のうち、約4割のトイレで汚物処理が十分にできず、少なくとも約50人に下痢、約20人に嘔吐の症状が見られました。 感染症予防の観点からも、トイレを衛生的に保つことは非常に重要です』、その通りだろう。 加藤 篤氏による「災害時に備えたい「携帯トイレ」4人家族の必要数 「使い方」や「使うタイミング」も知っておくこと」 「携帯トイレとは、便器に設置して使用する袋式のトイレです。袋の中に排泄し、吸収シートや凝固剤で大小便を吸収・凝固させます・・・携帯トイレを選ぶ際は、大小便をしっかり吸収・凝固できること、一定期間保管しても液体に戻らないこと、臭気対策が施されていることなどをチェックしてください」、なるほど。 「給排水設備の点検等は、携帯トイレを取り付けてから実施してください。さきに点検を行っていると、その間にトイレを使用されてしまうからです。設備点検の結果、問題ないことがわかれば、携帯トイレを取り外せばよいだけです」、なるほど。 家庭用の場合でも「イラストや図を用いてポスターを作成し、トイレに掲示することです」は通用しそうだ。 「少なくとも数日間は、各自で使用済み携帯トイレを保管することが求められます。 携帯トイレの中身は大小便ですので、臭気対策が必要になります。また、直射日光があたると袋の劣化につながるので、フタつきの入れ物などに入れてベランダや庭など、生活空間と切り離した場所に保管することが必要です」、なるほど。 「4人×5回×7日」で「140回分」というわけだ。早速、ホームセンターで買ってみたい。
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経済学(その6)(アマゾンが経済学の博士を100人雇う理由、「失われた30年」を いかに克服するか、持続可能な社会に必要な 「新しい公共哲学」とは何か?) [経済政治動向]

経済学については、2022年5月3日に取上げた。今日は、(その6)(アマゾンが経済学の博士を100人雇う理由、「失われた30年」を いかに克服するか、持続可能な社会に必要な 「新しい公共哲学」とは何か?)である。

先ずは、2022年5月9日付け日経ビジネスオンラインが掲載した大阪大学大学院経済学研究科准教授の 」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00448/042500004/
・『最新の経済学は、米グーグルや米アマゾン・ドット・コムをはじめ、多くの米国企業で導入されています。しかし日本に目を向けてみれば、直感や場当たり的、劣化コピー、根性論で進められている仕事も少なくありません。なぜ米国企業は、経済学を積極的に採用しているのか。本当に経済学はビジネスの役に立つのか。役立てるにはどうしたらいいのか。『そのビジネス課題、最新の経済学で「すでに解決」しています。 仕事の「直感」「場当たり的」「劣化コピー」「根性論」を終わらせる』から一部を抜粋し、著者の1人、安田洋祐氏がビジネスと経済学の掛け合わせによる新しい可能性を探ります。2回目は、経済学による、需要分析と利益最大化について』、日本企業が「直感」「場当たり的」「劣化コピー」「根性論」に頼った経営を進めているのは、本当に残念だ。
・『「付加価値を上げる? コストを下げる?」  さて、突然ですが、質問です。会社の利益を増やす方法を「2つ」答えてください──そう聞かれたら何と答えますか。いうまでもなく、利益は売上からコストを差し引いたものです。数式として書くと次のようになります。 利益 = 売上 − コスト …【利益①】 利益を増やすためには、売上を増やすかコストを減らすか(または両方を同時に行うか)しかありません。前者はよりよい製品やサービスを送り出して多くの人に買ってもらうこと、後者はオペレーションを効率化して諸経費を削り利幅を増やすことに対応します。 つまり、商品の「付加価値を高める」か、それとも生産にかかる「コストを下げる」か。この2つは、会社が利益を増やすための基本戦略ともいえるでしょう。 では現実問題として、世の中の企業はどちらの戦略をとることが多いのでしょうか。結論からいうと、「コストを下げる」を選ぶ企業が圧倒的に多いはずです。なぜなら、コストの削減というのはいままでと同じ製品、いままでと同じ売り方のままでもできることだからです。投資や努力、カイゼンなどによってコストを引き下げることに成功すれば、その効果がそのまま利益として跳ね返ってくるのです。 例えば、1個当たり800円の経費をかけて生産し、定価1000円で売っていた商品があるとします。製造・流通過程の至るところで「鬼のコストカット」を断行して、700円でつくれるようになったとしましょう。この商品を同じ定価1000円で売れば、200円だった利幅が300円になりますよね。この差し引き100円分は、コスト削減と同時に確実に実現する利益となります。 これに対して、よりよい商品を生み出して多くの人に買ってもらうというのは、いうほど簡単ではありません。自信をもって売り出した製品やサービスが、箸にも棒にもかからなかった……。企画開発系の仕事に携わるビジネスパーソンであれば、誰しも経験があるはずです。せっかく優れた商品やサービスをつくり出しても、あるいは「つくり出した」という手応えを感じても、それがきちんと売れなければ利益は増えません。 付加価値の創造というのは、コストを下げる場合と違って、利益の改善までに時間がかかり、不確実性も高いのです。付加価値と利益との間には、この意味で大きなギャップがあることが分かります。 言い換えると、すぐに成果が出るコスト削減に対して、付加価値の向上は利益につなげるまでのハードルが高い。結果的に、「まだ見えない商品を新たにつくる」よりも「いま見えているコストを減らす」ほうが取り組みやすいのです。 逆に考えると、付加価値を高めるような投資や取り組みを企業内で加速するためには、「付加価値向上→利益増」を妨げているハードルを引き下げる後押しが必要となります。この点にも、実は武器としての経済学が役に立つことを、次にご紹介しましょう』、「付加価値の創造というのは、コストを下げる場合と違って、利益の改善までに時間がかかり、不確実性も高いのです。付加価値と利益との間には、この意味で大きなギャップがあることが分かります。 言い換えると、すぐに成果が出るコスト削減に対して、付加価値の向上は利益につなげるまでのハードルが高い。結果的に、「まだ見えない商品を新たにつくる」よりも「いま見えているコストを減らす」ほうが取り組みやすいのです」、その通りだ。
・『利益を増やす「第3の道」を探る  利益を増やすためには、「付加価値の向上」と「コストの削減」という2つの方法があることを見てきました。実は、これらとは全く異なる、利益を増やす第3の方法があります。正確にいうと、多くの企業にとって「利益を増やせる可能性が高い」別の方法があるのです。それをお伝えする前に、まずは次の質問にお答えください。 「利益を増やすためには、売上ができるだけ大きくなるように値付けを行うべきである」 この主張は正しいでしょうか、それとも間違っているでしょうか。 先ほどの【利益①】を思い出すと、利益は売上とコストの引き算ですので、売上を最大にすることで利益も最大化されるような気がするかもしれません。しかし、この質問の答えは「間違い」です。その理由を説明するために、【利益①】を、もう少し詳しく書き直してみましょう。それが次の数式になります。 利益 = (価格 − 平均コスト) × 販売量 …【利益②】 この【利益②】は、価格と販売量が明示されているのが大きな特徴です。カッコの中身が商品1つ当たりの利幅(以降は「マージン」と呼びます)で、それにトータルの販売量をかけると利益が求まる、というわけですね。 利益と同様に、売上も価格と販売量のかけ算として次のように表すことができます。 売上 = 価格 × 販売量 …【売上】 一般的に、ほとんどすべての商品は、価格が上がると需要は減ることが知られています。これは「需要法則」と呼ばれ、経済学における最もシンプルかつ普遍的な法則のひとつです。つまり、価格が上がると販売量が減るわけです。これは、【売上】の式において、「販売量の減少に伴うマイナス」を、「価格の上昇というプラス」が上回らない限り、両者のかけ算である売上が増えないことを意味します。 具体的な数値例を用いて考えてみましょう。いま、ある商品の価格を10%上げることで販売量が20%減ったとしましょう。価格が1000円のときには1万個売れていた商品が、価格を1100円に値上げすると8000個しか売れなくなってしまった、という状況をイメージしてください。このとき、売上は1000万円から880万円へと、120万円も減ってしまいます。実に12%減です。売上を増やすという観点からは、値上げは望ましくない状況であることが分かります。 ところが、売上が減る一方で、利益は増える可能性があるのです。これはいったいどういうことなのでしょうか。 いま、商品1個当たりの平均コストが800円だとします。先ほどの【利益②】に、値上げ前と値上げ後の価格、平均コスト、販売量を当てはめて計算すると、利益はそれぞれ次のように求まります。 ・値上げ前の利益 = (1000 − 800)円 × 10000個 = 200万円 ・値上げ後の利益 = (1100 − 800)円 × 8000個 = 240万円 いかがでしょうか。値上げによって利益が200万円から240万円へと、確かに20%も増加していることが確認できるでしょう。一見すると不思議な現象が起きている理由は、マージンの大幅な上昇にあります。値上げ前の200円から値上げ後の300円へと、マージンが一気に50%も増加しているのです。これが、販売量が1万個から8000個へと20%も落ち込んだにもかかわらず、利益が増えたカラクリです。 以上の計算は説明のために用意した架空の数値に基づいたものですが、値上げや値付け(プライシング)の潜在的なパワーを実感された方も多いのではないでしょうか』、「値上げ前の200円から値上げ後の300円へと、マージンが一気に50%も増加しているのです。これが、販売量が1万個から8000個へと20%も落ち込んだにもかかわらず、利益が増えたカラクリです」、確かに「マージン」引上げの効果は大きい。
・『売上か利益か、最大化したいのは?  さらに、需要分析からは次のような一般的な教訓も得ることができます。 〈教訓〉利益を増やすためには売上を犠牲にするほど積極的に値上げすべし! もちろん、すでに十分高い価格を付けているような企業は、さらに値上げする必要はありません。また、どの程度の値上げが最適なのかは、企業や商品の置かれた状況によって異なります。 この〈教訓〉のポイントは、仮に値上げを行ったとしても売上が下がらないような価格水準というのは、利益を最大にする価格と比べて例外なく低すぎる、つまり決して最適にならないという点です。この意味で、「利益を増やすためには、強気の値上げが欠かせない」と解釈することもできるでしょう。 ひょっとすると、日本経済がなかなかデフレの罠(わな)から抜け出せない理由のひとつは、こうしたプライシングの重要性が理解されていない、つまり需要分析が多くの企業にとって武器になっていないからかもしれません。 この仮説が正しいかどうかは分かりませんが、自社の製品やサービスが直面している需要を精緻に予測し、プライシング戦略を見直すだけで、(付加価値向上やコスト削減がなくても)利益を改善できる可能性があるのです。 余談ですが、市場に関する公開情報や顧客のデータから需要予測を行っているのが、統計学や計量経済学(エコノメトリクス)を修めたデータサイエンティストたちです。プライシングだけでなく、ウェブサイトのデザインや広告の送り方など、売り方・伝え方を変えたときに潜在的なカスタマーの需要がどう変化するのかを彼らは精緻に分析しています。 近年では、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)に代表される米国の大手IT企業が、こぞってデータサイエンティストを採用しています。アマゾンでは、経済学博士号をもつ専門家だけでも、100人以上も採用しているといわれています。こうした動きは、需要分析に代表されるデータ分析が、いかに武器として活用されているかを物語っているでしょう』、「仮に値上げを行ったとしても売上が下がらないような価格水準というのは、利益を最大にする価格と比べて例外なく低すぎる、つまり決して最適にならないという点です。この意味で、「利益を増やすためには、強気の値上げが欠かせない」と解釈することもできるでしょう。 ひょっとすると、日本経済がなかなかデフレの罠(わな)から抜け出せない理由のひとつは、こうしたプライシングの重要性が理解されていない、つまり需要分析が多くの企業にとって武器になっていないからかもしれません・・・GAFA・・に代表される米国の大手IT企業が、こぞってデータサイエンティストを採用しています。アマゾンでは、経済学博士号をもつ専門家だけでも、100人以上も採用しているといわれています・・・日本経済がなかなかデフレの罠(わな)から抜け出せない理由のひとつは、こうしたプライシングの重要性が理解されていない、つまり需要分析が多くの企業にとって武器になっていないからかもしれません」、その通りだ。
・『「経済学×ビジネス」で未来は明るい!  ここでは、より幅広いビジネスに活用することができる武器として、「需要分析」について、少し大胆に大風呂敷を広げてお話ししました。わたしの専門分野でもあるマーケットデザインでも、あるいはそれ以外の経済学の分野でも、現実のビジネスや生活に役立つサイエンスの蓄積が進んでいます。 人は「よいものさえつくれば自然に売れる」と考えがちです。職人気質が美徳として尊重されている日本では、ことさらこのムードが強いかもしれません。しかし、よいものがつくれても、人に知ってもらわないと世に存在しないのと大差ありません。だから宣伝や広告、マーケティングが大切なわけです。 専門家による研究はその性質上、専門家以外の人が簡単に理解したり、使ったりすることができません。だったら、わたしたち専門家は、受け身で使い手を待っているのではなく、できるだけ使いやすい武器へと加工して、使ってくれる人のところへ、自分から届けに行けばよいと思うのです。 経済学者のみなさん、武器を磨いてビジネスの世界に飛び込んでみませんか? ビジネスパーソンのみなさん、専門家とのコラボを一度はじめてみませんか? 日本で「経済学×ビジネス」のすてきなマッチングが広がることを願っています』、「よいものがつくれても、人に知ってもらわないと世に存在しないのと大差ありません。だから宣伝や広告、マーケティングが大切なわけです。 専門家による研究はその性質上、専門家以外の人が簡単に理解したり、使ったりすることができません。だったら、わたしたち専門家は、受け身で使い手を待っているのではなく、できるだけ使いやすい武器へと加工して、使ってくれる人のところへ、自分から届けに行けばよいと思うのです。 経済学者のみなさん、武器を磨いてビジネスの世界に飛び込んでみませんか? ビジネスパーソンのみなさん、専門家とのコラボを一度はじめてみませんか?」、同感である。

次に、本年2月29日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した慶應義塾大学経済学部教授インタビュー(前編)の小林慶一郎氏による「「失われた30年」を、いかに克服するか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/339451
・『『日本の経済政策』(中公新書、2024年)は、バブル崩壊から今日までの「失われた30年」の日本経済を精緻に分析し、未来につなぐ教訓を導き出している。『日本経済の罠』(01年)、その増補版文庫(09年、共に加藤創太氏と共著、日本経済新聞出版)と、1990年代から30年間、定期的に日本経済の課題とその処方策を論じてきた著者の小林慶一郎氏に、新書の概要から持続的社会に向けた提言まで幅広く話を聞いた。前編と後編の2回に分けてお送りする(Qは聞き手の質問、Aは小林氏の回答)』、興味深そうだ。
・『経済政策の経緯からみた「日本人の自画像」  Q:『日本の経済政策』は、「失われた30年」の分析を通して、日本経済と社会の根源的課題を明かし、未来に向けた施策を提言する書です。普通の人が読めるように、新書で平易に著されたことも意義深いと思います。また、この間の経済学の発展過程を解説されつつ、通説を覆す論説も興味深く読みました。例えば、1995年ノーベル経済学賞受賞のロバート・ルーカスら合理的期待仮説の学派の人々が、「ケインズ経済学は、政策対象の国民を思考力のある対等な人間とみなしていない」という眼目で批判していると書かれています。イメージは真逆でしたので驚きました。小林教授は、シカゴ大学大学院の院生時代の指導教官がルーカスだったのですね。 A:私は1995年〜98年にシカゴ大学大学院で経済学を学び、PhD.(博士号)を取得したのですが、指導教官がロバート・ルーカスです。ルーカスのパートナーでもあるナンシー・ストーキーやゲイリー・ベッカーからも指導を受けました。ストーキーの専門はマクロ経済学や経済成長論です。ベッカーはミクロ経済学や人的資本(ヒューマン・キャピタル)の理論などが専門で、92年にノーベル経済学賞を受賞しています。私は彼ら3人の指導のもと、人的資本を含めた経済成長の理論を博士論文で書きました(編注:"The Division of Labor, the Extent of the Market, and Economic Growth," (Ph.D. Dissertation), University of Chicago) 本書で示したケインズ経済学への評価は、ルーカスが言ったことではなく、私自身の合理的期待理論の解釈に基づくものです。一般的なイメージは逆ですね。ケインズ経済学は庶民のために財政政策や金融政策を積極的に活用するというイメージで、合理的期待学派は新古典派経済学で市場第一というイメージです。合理的期待学派というと、競争力のない企業は淘汰されても仕方がないというような、人々に対して冷たい印象があると思います。 しかし、実はそうではない、と私は思っています。合理的期待学派は人々がどのように思考しているか、どう経済政策に反応するか、を真剣に考えているのです。 それに対して、教科書に書かれた単純化されたケインズ経済学はその過程を端折っています。教科書的なケインズ経済学で政策を考える論者たちは、「経済政策の対象となる人々」を自分と同じように思考する人間だと見なしていないのです。もちろん意識的にそんなことを言ったりはしませんが、無意識のうちにそういう前提で考えていることが根深い問題なのです。だから結果的に、本書で書いたようないろいろな失敗をしている。政府の政策に対して人々がどう考えるかを突き詰めないという間違いを繰り返しています。 合理的期待理論にも、「人間は完全に合理的だ」と仮定するなど批判されるべき点があることはそのとおりです。しかし、合理的期待学派は、少なくとも何か政策を施行した際に、人々がどう考え、どう反応するかを真剣に見極めようとする姿勢は徹底しているのです。その姿勢が次に論じる「再帰的思考」です。 本書のバックボーンとして、「人々の思考について思考すること」の重要性があります。本書ではこれを再帰的思考という言葉で表しています。簡単に言えば、相手を思いやる、相手の立場になって相手の思考を我がものとして考えようという思考の態度が、再帰的思考です。 「失われた30年」の日本の経済政策の実行において、この再帰的思考ができていなかったというのが私の結論です。不良債権についても、デフレ対策でも、経済政策に国民がどう反応するかを、希望的観測で単純化し、楽観的に考えていた。結果としてそれがことごとく間違いで、反省なく、繰り返されたのだと思います』、「合理的期待学派は、少なくとも何か政策を施行した際に、人々がどう考え、どう反応するかを真剣に見極めようとする姿勢は徹底しているのです。その姿勢が次に論じる「再帰的思考」です。 本書のバックボーンとして、「人々の思考について思考すること」の重要性があります。本書ではこれを再帰的思考という言葉で表しています。簡単に言えば、相手を思いやる、相手の立場になって相手の思考を我がものとして考えようという思考の態度が、再帰的思考です。不良債権についても、デフレ対策でも、経済政策に国民がどう反応するかを、希望的観測で単純化し、楽観的に考えていた。結果としてそれがことごとく間違いで、反省なく、繰り返されたのだと思います」、なるほど
・『「失われた30年」を、いかに克服するか  Q:本書の終章が、「縦割り主義から『再帰的思考』へ」という提言になっています。その提言に至る過程が全体で書かれています。そもそも本書の執筆の動機はどこにあったのでしょうか。 A:自分なりに「私たちの時代」の肖像、経済政策の経緯からみた「日本人の自画像」を書いてみたかったのです。 時評は新聞や雑誌で都度発表してきましたが、現時点できちんとまとめてみたいというのが本書の主旨です。自分自身も経済政策の現場にいたことがありますから、その経験も踏まえて、経済政策から見た過去30年を振り返り、私たちの時代は何だったのかを考えたいと思いました。 「失われた30年」の原因を一言で表現すると、「再帰的思考の欠如」になります。再帰的思考とは前述の通り、他者の思考を自分自身が思考する、他者になり切って思考すること。さらに、自分と他者の両者が互いの思考を読み合っていることを知っていて、「私が考えている、と相手が知っていて、相手が知っていることを私が知っていて、さらにそのことを相手が知っている……」という無限ループが起きていること、それを認識した上で意思決定することです。この再帰的思考が、日本の政策の議論には欠落しているのではないかと思うのです』、「再帰的思考とは前述の通り、他者の思考を自分自身が思考する、他者になり切って思考すること。さらに、自分と他者の両者が互いの思考を読み合っていることを知っていて、「私が考えている、と相手が知っていて、相手が知っていることを私が知っていて、さらにそのことを相手が知っている……」という無限ループが起きていること、それを認識した上で意思決定することです。この再帰的思考が、日本の政策の議論には欠落している」、なるほど。
・『最大の失敗は不良債権処理の先送り  Q:第5章で、そこまでの章をまとめる形で、「失われた30年」の要因を集約していますが、個々の要因における再帰的思考の欠如について具体的に教えてください。 政策の失敗は30年間で約10〜15年間ごとに現出し、企業経営の課題と複合して、日本経済の長期停滞をもたらしたと思います。 最大の失敗は、1990年代〜2005年と15年間もかかった不良債権処理の遅れです。バブル崩壊による巨額の不良債権問題は、世界各地で起きていますが、他国では通常3年程度で処理されています。 日本での長期化要因は、経営者や為政者の課題先送り意識や慣行にあります。当時、債権者の銀行には「不良債権処理=債権放棄=銀行員失格」、債務者の経営者には「倒産=清算=企業の死」の観念が固まっていて、それを回避したかった。いずれ株価や地価が回復して解決できると思い込み、対応先送りで自分たちは逃げ切れるという姿勢でした。 銀行は債権の一部放棄によって回収額が増える可能性があるとか、企業経営者は倒産後の事業再生や新事業育成で成長を回復するという発想がありませんでした。為政者も同様の精神構造で、有効な政策実施を怠りました。 市場の圧力などから、銀行や証券会社が経営破綻に追い込まれ、その度ごとのびぼう策により、日本経済全体の成長力が失われていきました。この点において、第二の政策失敗があります。過剰債務等で疲弊した企業の金利負担を軽くする金融緩和を長期継続し、低収益性企業の存続を支援しましたが、これは社会全体として一時的な痛み止めになる一方、経済の新陳代謝を妨げ、成長を抑制することになりました。企業は、リストラが回避できても、設備投資や人材育成投資を行えず、日本全体で人的資本の劣化につながりました。 Q:いわゆる「ゾンビ企業」を多く生み出したことで、日本全体での新陳代謝が抑制されてしまったのですね。 A:本書第1章で詳述しましたが、その帰結としての「不良債権処理の後も、長期停滞が続いた理由」を最後にまとめました。「企業間分業の萎縮」と「人的資本の劣化」です。 そのメカニズムは、(1)不良債権の大量発生による企業間の相互不振で、企業間の分業が崩れ、生産性が低下する。(2)低生産性の下で、教育や技術向上など人への投資が低調になり、人的資本が劣化する。(3)不良債権処理が長引いて、人的資本が相当程度に劣化すると、企業間で元通りに分業しても採算性が取れなくなるので、企業はサプライチェーンを再生しない。(4)企業間分業が再生しなければ、経済全体で低生産性が続き、人的資本の劣化が進む。人的資本の劣化が進むと、企業間分業は採算が取れないので再生しない、という悪循環が続く、というものです。 2010年代には、異次元緩和による金利負担の長期低減で、財政規律が緩み、政府債務は膨らみ続けます。企業においては、アニマルスピリットを衰退させ、イノベーションを阻害しました。本書に書きましたが、2021年頃から「低金利政策の長期化は、経済成長率を低下させる」という研究が海外を中心に増えています。 また、人口減少と超高齢化という人口動態も、長期経済低迷の背景にあります。少子・高齢化が進む中で財政・社会保障制度の持続性に国民全体が不安を感じ、貯蓄性向を高めます。多少景気が回復しても、消費を増やそうとは考えません。  Q:2001年に小林教授が加藤創太氏(現在、東京財団政策研究所研究主幹)と共に著した『日本経済の罠』(日本経済新聞社)では、それまでの「失われた10年」を分析しています。同書ではすでに、既存の経済理論や経済政策の限界を示し、「不良債権問題の経済学」「バランスシートの罠」という章を設けて詳述していますが、日本の為政者には受け入れらなかったのでしょうか。  当時の経済学や政策決定過程に限界がありました。過去の失敗の蓄積が将来に影響するという体系になっていなかった。1990年代末になって、ようやくマクロ経済学にバランスシートの要素が入って、過去の失敗の蓄積が将来に影響するという問題を分析できるようになりました。 それ以前は、バランスシート変数の問題に着目したマクロ経済学の研究は、ベン・バーナンキ(プリンストン大学教授、後に米国連邦準備制度理事会(FRB)議長、2022年ノーベル経済学賞受賞)による1930年代の大恐慌の研究などごく少数でした。バーナンキの83年の論文では、大恐慌の悪化原因は、貨幣量の収縮にあるという通説だけではなく、銀行危機で銀行から企業等への信用供与が機能不全となったことで総需要が収縮したことにあると論じています。しかし当時この理論はメジャーではなく、その後、洗練され、99年になって標準的なマクロ経済政策の分析ツールとして認められるようになります。 日本が不良債権で苦しんでいた1990年代初頭にはそういう理論はありませんでした。当時の教科書にあるケインズ経済学ではとにかく財政出動、金融緩和で経済を刺激すれば、景気はそのうち回復すると考えられていたのです。実際、そうした経済対策を展開しました。不良債権処理は確かにやるべきことだが、経済政策とは違うというイメージでした。大問題ではあるけれども、それ自体は経済の先行きにさほど影響を与えないんじゃないかという考えを、当時の経済学者や為政者は持っていたと思います。  Q:2000年以前に私たちが学んだケインズ経済学では、景気悪化時には、中央銀行が低金利政策を実施し、0%近くまで下げても民間投資が動き出さない「流動性の罠」に陥ったら、政府が積極的な財政政策を発動するのが良いと言うものでした。 A:流動性の罠についてはちょっと難しい問題があります。日本の場合、ゼロ金利政策を実施したのが1999年で、流動性の罠に陥ったのがこの頃でした。しかし、財政政策はそれまでに限界まで実施していて、これ以上の財政拡大の余地がないというコンセンサスになっていたと思います。経済理論では、流動性の罠に陥ったら、金融緩和は効かないから財政拡大するということになっていますが、現実には財政は出し尽くしていたので、次に打つ手がない状態だったのです。 そこに、「将来見通しの期待を変える」「インフレ期待を作れば大丈夫」という新しい理論が出てきた。それが、いわゆる「リフレ派」の理論です。それまでのケインズ経済学の教科書には書いていないことを唱えた新しい学派です。 Q:本書第2章で詳述されているように、1998年頃の日本経済については、ポール・クルーグマン(当時マサチューセッツ工科大学教授、2008年にノーベル経済学賞受賞)も、「期待を操作すれば良い」と提言していました。 A:クルーグマンは、日本経済は縮小していくと予想し、その予想のもとでは自然利子率(需要と供給が一致する利子率)はマイナスになっていると主張しました。クルーグマンの議論は、日本経済の長期縮小は受け容れた上で、足下の需要と供給が一致するようにさせるために、将来のインフレ期待(予想)を醸成し、現実の金利をマイナスの自然利子率に近づけて、需要喚起を促す策を提言していました。 2000年くらいまでにはバランスシート問題が米国では認識されていたけど、次善の政策として、リフレのような、期待に働きかけることが有効だと思われていました。不良債権処理は社会全体に大きな痛みを伴うので、アカデミズムから政策提言として不良債権処理の推進案はあまり出てきませんでした。期待に働きかけるリフレ案のほうが誰も傷つけず、痛みを伴わないので、そちらの方が言いやすかったのです。 実際、欧米においても、リフレ政策が望ましいということで、2008年のリーマンショック、10年代の欧州債務危機でも、大規模に金融を緩和しました。ただし、それによって期待が変わったかどうかという点はまだ論争が続いています。理論的に必ず期待を変えられるとは言い切れていません。どんどん金融緩和をやって量的緩和とかフォワードガイダンスをやれば、何がしかインフレ的になるということは各国で経験したけれども、それは政策が効いたからかどうか、疑問視する研究者もいます』、「不良債権処理は社会全体に大きな痛みを伴うので、アカデミズムから政策提言として不良債権処理の推進案はあまり出てきませんでした。期待に働きかけるリフレ案のほうが誰も傷つけず、痛みを伴わないので、そちらの方が言いやすかったのです。 実際、欧米においても、リフレ政策が望ましいということで、2008年のリーマンショック、10年代の欧州債務危機でも、大規模に金融を緩和しました。ただし、それによって期待が変わったかどうかという点はまだ論争が続いています」、なるほど。
・『自然利子率を与件としてはいけない 潜在成長率を高める施策こそ必要  Q:日本では長期間デフレの状態が続いています。本書の第2章「長期化するデフレ」ではその点を論じています。 先日(2024年2月14日)、日本経済新聞の「経済教室」で「政策で期待は操作できたか」というコラムを書きましたが、日本における金融政策と経済変化を見ると、「中央銀行(日本では日本銀行)の約束だけでは期待は動かしにくい」と私は考えています。 日本全体の潜在成長力をフルに発揮させられる金利、つまり総需要と総供給が一致する自然利子率と呼ばれる金利(中立金利)は、年々下がってきています。前述の通り、90年代の終わりからマイナスにある、という人もいました。GDP(国内総生産)が年々縮小しているということです。 この場合、日銀が名目金利をゼロにしても、インフレ率が0%ぐらいだと、実質金利は中立金利より高くなってしまい、国民は将来に備えて貯蓄に走ってしまいます。それを防ぐため、政策でインフレを起こして実質金利を中立金利になるまで下げるべきだというのがリフレ派のロジックです。 政策金利はすでにゼロなので、発行通貨の量を増やしたり、将来にわたってデフレが終息するまで金融緩和を続けることを約束するフォワードガイダンスなどを実施したりしたわけです。これらの金融政策は従来のものではなかったので、「非伝統的政策」と呼ばれています。 将来の金利やインフレに関しての、国民の期待を、政策によって操作しようという考え方です。しかし、繰り返しますが、日本では当局の思惑通りには、すぐに期待は変化しなかった。こうした経済理論と現実の関係は、本書で詳述しました。 Q:本書第2章は、「何が問題だったのか――リフレ政策の副作用」という節で結んでいます。 要は、政策で何を直したいのか、だと思います。当時のデフレ論争ではここがとても狭く捉えられていました。具体的には、「自然利子率(中立金利)は与えられたもの、所与の条件と考えた上で、需要と供給を一致させるためにどんな金融政策をとるべきか」に論争が終始していました。 本来は、自然利子率が低すぎるのであれば、それを高めるために、中長期的にどういう政策を打つかを考えるべきです。それは日本の経済成長率を長期的に高める構造改革をすることです。構造改革による長期成長をメインの政策として、それとセットで短期的な需要と供給をなるべく一致させるような金融・財政政策を補助的に実施する。このように、経済の全体像および中長期的な視点から経済政策を考えるべきだと思います。  Q:自然利子率を高めるには、日本全体の成長性を高める。人口減少下の日本では、生産性を高める政策が望まれるということになるのでしょうか。 A:そうですね。ここまでの話の流れで言えば、日本全体の新陳代謝を高めていくことです。例えば、収益性の高い企業がその成長に必要な人材を確保できるように政策的に促すことです。低生産性の企業が退出や人材放出を行いやすい制度や環境を整えるとか、もっと人材移動が活発化するような法整備を確立するとか、金融面でそうした新陳代謝を促すことなどです。 個人のリスキリングによる生産性向上はすでに行われていますが、社会保障制度の面で将来不安をなくして、転職や消費行動が活性化していく制度設計は大切ですね。  同じく動き始めているDX(デジタル・トランスフォーメーション)やGX(グリーン・トランスフォーメーション)についても、しっかりと結実するように政策のバックアップが必要です。ただ、財政支出がさらに相当必要なため、今日、最も重要な財政の健全化との両立が難しく、その方法を私自身見出せていないので、本書では言及しませんでした。 *明日公開の後編では、世界金融危機の分析、日本の財政危機と対処策、将来に向けた施策の提言をお伝えします。 (小林慶一郎・・・氏の略歴はリンク先参照)』、「日銀が名目金利をゼロにしても、インフレ率が0%ぐらいだと、実質金利は中立金利より高くなってしまい、国民は将来に備えて貯蓄に走ってしまいます。それを防ぐため、政策でインフレを起こして実質金利を中立金利になるまで下げるべきだというのがリフレ派のロジックです。 政策金利はすでにゼロなので、発行通貨の量を増やしたり、将来にわたってデフレが終息するまで金融緩和を続けることを約束するフォワードガイダンスなどを実施したりしたわけです。これらの金融政策は従来のものではなかったので、「非伝統的政策」と呼ばれています。 将来の金利やインフレに関しての、国民の期待を、政策によって操作しようという考え方です。しかし、繰り返しますが、日本では当局の思惑通りには、すぐに期待は変化しなかった・・・日本全体の新陳代謝を高めていくことです。例えば、収益性の高い企業がその成長に必要な人材を確保できるように政策的に促すことです。低生産性の企業が退出や人材放出を行いやすい制度や環境を整えるとか、もっと人材移動が活発化するような法整備を確立するとか、金融面でそうした新陳代謝を促すことなどです」、なるほど。

第三に、3月1日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した小林慶一郎・慶應義塾大学経済学部教授インタビュー(後編)「持続可能な社会に必要な、「新しい公共哲学」とは何か?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/339538
・『『日本の経済政策』(中公新書、2024年)は、バブル崩壊から今日までの「失われた30年」の日本経済を精緻に分析し、未来につなぐ教訓を導き出している。『日本経済の罠』(01年)、その増補版文庫(09年、共に加藤創太氏と共著、日本経済新聞出版)と、1990年代から30年間、定期的に日本経済の課題とその処方策を論じてきた著者の小林慶一郎氏に、新書の概要から持続的社会に向けた提言まで幅広く話を聞いた。前編に続く後編は、今日の日本社会に求められる「新しい公共哲学」へと話は展開する』、興味深そうだ。
・『シャドーバンクなどに新たな危機の懸念がある  Q:金融危機発生後の対処で、日本の失敗を米国は研究し、リーマンショック対応に生かしたのでしょうか。 米国の学者や為政者は、日本の失敗を十分に研究していました。その研究から、金融危機に陥った際の政策対応は、Too little(小さ過ぎる)や Too late(遅過ぎる)では最悪になるとわかっていたので、迅速な対応ができました。 リーマンショックは、証券化商品の健全性が問題になりました。証券化商品は金融市場で値付けされるので、返済困難になった債務に基づく証券化商品は価格が暴落し、それを資産に持つ金融機関の損失が早期に明らかになりました。 一方、日本では、銀行が個々の取引先への貸出債権としてバランスシートに抱えていたので、償却という形で自ら損失計上するまで隠すことができました。個々の経営判断で問題の先送りができ、監督官庁が全体像を容易に把握できず、政策対応が遅れました。また、どの銀行がどれだけの不良債権を持ち、どの企業がいくらの過剰債務を抱えているかがわからず、信用不安が広がった面もありました。 バブル崩壊による多額の不良債権の発生で、金融機関のバランスシートが痛み、信用創造機能が低下し、国全体が金融危機に陥るという構図は日本も米国も同じだったのですが、直接金融の比重が大きい米国では発覚が早く、日本の失敗を教訓にして、スピーディな対応で、早期に課題を解決したということです』、この他に、「日本の」会計基準の遅れも「発覚」を遅らせた。
・『持続可能な社会に必要な、「新しい公共哲学」とは何か?  Q:米国は、リーマンショックやコロナ禍では果敢に金融緩和を行い、割合と早期に経済が回復しました。一方で、FBR(連邦準備制度理事会)は経済が過熱する懸念があると、金利を上げてそれを抑えるなど、金融政策は柔軟です。また近年、先進国全般に低成長・低インフレ傾向にある中で、米国は現状において金利水準は高めで、FRB元議長のベン・バーナンキは『21世紀の金融政策』(高遠裕子訳、2023年、日本経済新聞出版)で、万が一、経済ショックが起きても、大幅な金融緩和で対処する金利水準での余裕があると書いています。それでも、何が起きるかわからないことを留意しています。  規制体制が十分でないセクター、例えばシャドーバンク(編注:ノンバンクやヘッジファンドなど、証券化のための特別目的事業体など銀行を介さないで金融取引する機関)などに懸念はあると思います。中国における不動産融資の不良債権化などが一例です。 銀行などで問題が起きた際、自己資本比率など規制を厳しくして、次の危機が起きないように備えても、その規制にかからないシャドーバンクを通しての資金調達が拡大するなど、規制強化と新しいビジネスの台頭はイタチごっこのような関係です。リスクをとって、より収益性の高い運用を行う動きは常にあるからです。日本でも、現時点では私たちが気づいていないだけで、伝統的な金融機関の外で問題が蓄積している可能性はあります。  危機に対する経済理論においても、危機防止の規制などの政策においても、まだまだわからない部分があり、私たちは慢心してはいけない。この点は、本書第3章「世界金融危機」の後半で、一連の危機とその対応からの教訓として現時点の考え方をまとめました。 気をつけていても、いつの間にか危機は起こりえます。その際には、問題のある金融機関を見つけて公的資金を注入するとか、不安が広がらないように流動性を高めるとか、思い切った経済政策を展開することです。この点は、地震やコロナ禍など天災発生時の対策と同じです。非常時には、国の借金が増えても、即時かつ十分に対応しないといけない。 Q:第5章後半で、低金利長期化の副作用を指摘しています。日本の金融政策の正常化は今後どのような手順で進めていくべきでしょうか。 A:数カ月で0.25%、数年で1%というように段階的に市場の反応を見ながら、金利を上げていく。将来のクレディブルな経路を示すことです。信頼できる将来像でないと、いくら政府や日銀が将来のバラ色の姿を示しても、意味がありません。 Q:少しインフレ傾向が出てきたからといって、日本銀行が即座に金融緩和をやめてしまったら、それまで言い続けてきた約束を守らないということになるのですね。 A:日銀は、「フォワードガイダンスの条件をクリアしたので政策を変更していいのだ」という明確な理由をきちんと提示できるまでは、現状の政策を続けるだろうと思います。今、そのデータを集めているところだと思います。 この点も本書で書きましたが、「時間整合性」の問題があるのです。デフレの時には物価上昇が安定的に続くまで金融緩和をやめませんと約束するのが最適ですが、インフレになってしまうと、なるべく早めに金融引き締めに移ることが最適な政策になります。事前と事後で、最適な政策が異なるという時間整合性の問題があるのです。市場の信用を失わないように、政策を変更するというのが、今、日銀が直面している最大の難関だと思います』、「「時間整合性」の問題があるのです。デフレの時には物価上昇が安定的に続くまで金融緩和をやめませんと約束するのが最適ですが、インフレになってしまうと、なるべく早めに金融引き締めに移ることが最適な政策になります。事前と事後で、最適な政策が異なるという時間整合性の問題があるのです。市場の信用を失わないように、政策を変更するというのが、今、日銀が直面している最大の難関だと思います」、その通りだ。
・『エレファント・イン・ザ・ルーム 財政危機は放置されている  Q:未来に向けた提言となる本書第6章「日本経済のゆくえ」では、最初に、財政赤字の現状と将来予想を示しています。現状は「国の歳出が歳入を構造的に上回っている。景気が良くなっても財政赤字は無くならない」。将来予想は「2014年の財政制度等審議会で財務省が提出した資料(図表1参照)をもとに、経済成長率2%程度で金利が成長率を上回る経済の正常化が果たされたとしても、国の債務はGDP比で2020年240%(2.4倍)が、2050年には500%(5倍)を優に超える(図の青色の線)」ことが示されています』、「経済成長率2%程度で金利が成長率を上回る経済の正常化が果たされたとしても、国の債務はGDP比で2020年240%(2.4倍)が、2050年には500%(5倍)を優に超える」、やはり財政赤字は深刻だ。
・『持続可能な社会に必要な、「新しい公共哲学」とは何か?  債務問題の解決は、長期的に、歳出と歳入をバランスさせていくしかありません。図では、「毎年の財政収支を改善して2060年度に債務比率を100%まで下げるケース(図の赤色の線)」を財政再建案として示していますが、これを実現するには毎年の歳出(国家予算)を70%削減するか、歳入の大幅な増加、例えば消費税率で計算すると追加約30%の引き上げが必要になります。実行となると、とてもハードルの高い解決策です。 財政再建のための方法は、歳出削減、歳入増、あるいはインフレによる事実上の債務削減(その分の国民負担増)があり、財政再建に向けたいくつかの研究を本書では紹介しました。たたし、いずれにしても、今すぐには政治的に実現不可能なので、まずは国全体で財政再建を実現しようというコンセンサスを早急に作らなければいけません。 財政あるいは社会保障制度の持続性については、多くの人が不安を感じています。しかし、現状においては、何もやっていない。いわゆる「エレファント・イン・ザ・ルーム」という状況です(注:エレファント・イン・ザ・ルームとは、部屋の中に大きな象がいるのにみんな黙っているという状態。重要な問題の存在を誰もが認識しているけれど、誰も直視や言及しないことの譬え)。 実は、1990年代の不良債権と、今日の膨大な政府債務への国民の向き合い方は同じです。ある程度の期間は、問題の先送りができるので、今、課題に向き合うべき現在世代は先送りしようとするのです』、「財政あるいは社会保障制度の持続性については、多くの人が不安を感じています。しかし、現状においては、何もやっていない。いわゆる「エレファント・イン・ザ・ルーム」という状況です」、本当に困ったことだ。
・『世代間問題を解くための新しい公共哲学  Q:現在世代が財政再建を先送りすれば、そうしなかった場合に比べて、将来世代の負担が重くなるという類の「世代間問題」や、その問題を克服する思考について、小林教授は『時間の経済学』(ミネルヴァ書房、2019年)で論考を深めていて、それに基づく解決アプローチ案のいくつかが、本書第6章の後半で提示されています。 将来世代のことを考えて政策を作ることを当たり前のことにするのが理想なのですが、まず今やれそうなことの1つとして、独立財政機関の導入を挙げています。関西経済連合会や経済同友会などいくつかの組織から、すでに提言は出ているものです』、「独立財政機関の導入」とはどういうことなのだろう。
・『持続可能な社会に必要な、「新しい公共哲学」とは何か?  独立財政機関とは、30〜50年先などの超長期の将来までの経済・財政の展望を推計し、その結果を財政運営の基礎情報として国民や政府に公開する機関です。推計の信頼性確保のため、政治的な中立性と独立性を保証します。内閣府や財務省などの既存官庁は、政権のために働くことが任務のため、どうしても忖度が働くので、独立機関が必要なのです。 米国の議会予算局や英国の予算責任庁などが代表例です。2010年代に世界で創設が増え、現在のOECD加盟38カ国のうち31カ国で設置されています。増加の背景には、欧州の債務危機があります。2010年代初めギリシャなどで放漫な財政運営が発覚し、欧州債務危機が広がりました。このことを反省し、EUは、長期的な健全財政のために独立財政機関を作ることを加盟各国に求めるEU指令を13年に出しました。 21世紀における独立財政機関の創設の動きは、19世紀末〜20世紀初頭における中央銀行の設立の流れと同様だと思います。当時は大恐慌など経済混乱が各国で何度も発生し、金融の面から安定化を図るべく中央銀行が各国に設立されていきました。以降、景気変動はそれ以前ほどには激しくなっていない。今日の独立財政機関の設立の動きは、財政面での経済不安定化の防止策と言えます。 Q:『時間の経済学』では、現在世代と次世代の利害が対立する世代間問題を、いかに克服したらいいかを探っています。それは財政危機だけでなく、人類が直面する最大危機である地球温暖化なども同様の、これまでとは「構造」が異なる問題です。例えば、課題解決の意思決定に参加できる仕組みとして正当性が確立されてきた現状の議会制民主主義では、世代間問題の当事者である次世代の意見は原理的には反映されない、と指摘されています。そこで、ロールズ、ハイエク、アーレント、ヨナス、ポーコック、サンデルなど現代の政治哲学者たちの思想を展望し、解決の方向性を提示されています。 その内容をこのインタビューで説明するのは時間的に難しいですが、経済成長を前提としたリベラリズムという近現代の思考のままでは、世代間問題は解決できないので、私たちは何か新しい公共哲学を持たなければいけないというのが提言です。新しい公共哲学を持った上で、国を運営し、政策を立てて行く必要があるということです。 功利主義に基づく現代の経済学では、人間は完全に利己的ではなく、弱い「利他性」を持っていると考えます。また、アダム・スミスは、「共感」の作用によって道徳感情の基準(内なる公平な観察者)が形成されるとして、人々の相互作用による人格形成の過程に注目しました。この共感の作用を世代間問題の解決に活用すれば、将来世代に対する利他性を、現在世代の人々の間の共感によって強化することができるはずだと考えます。 前述の独立財政機関や、さらには将来世代の利益を代表することを職務とする公的機関を創設すれば、世間一般からの共感や構成員相互の共感によって、将来世代の利益を増進する方向で、政策決定に影響を与えられるでしょう。 また、この相互作用は、今日しばしば使われる言葉で言えば「承認欲求」につながるでしょうか。私たちが経済を含めていろいろな活動をする際に、そのモチベーションは何かを突き詰めて考えていくと、他者に自分を認めてもらいたいという要素が強いと思うのです。人生の充足感は、承認欲求に根ざす部分が多いものです。 その際に、自分を承認してくれる他者は誰か。自分の周囲の人から承認されることで私たちは満足を得るわけですが、なぜ周囲の人からの承認が価値を持つかと考えると、私たちを承認してくれる人も、だれかから承認されているから、といえます。 私を承認してくれる人は、別の誰かから承認されていて、その誰かもまたさらに別の誰かから承認されています。この連鎖をたどっていくと、現在世代の枠を超えて、究極的には「無限遠の将来世代からの承認」に行きつきます。遠い未来の将来世代から現在の私たちが承認される(だろう)という信念が、私たちの人生に価値を与えていると言えるわけです。こう考えると、現在世代の相互共感を通じて、将来世代のことも深く考えるようになると思うのです。こうした新しい公共哲学を考えたいのです。 短期的には、現在世代の利害関係者(ステークホルダー)や政治から独立し、将来世代の視点を持つ中立的な公的機関の創設が必要であり、長期的には、そうした活動に対する社会全体のコンセンサスを支える公共哲学を確立していくべきだと思うのです。  Q:最後に、中長期的に進めていくべき施策を、国、企業、個人それぞれ、教えてください。 国の施策としては、将来の見通しを持てるように、信頼できる将来像を示すことです。具体的には、財政と社会保障の持続性です。国民をごまかさないで、国民の反応を自分事として想像する、再帰的思考が必要です。 一方で、イノベーションのためには、政府による大型投資も必要です。この点は、財政支出との整合性が問われます。どのような答えを出せるのか、難問で、私自身も即答できませんが、なんとか両立したいところです。 企業の施策としては、30年先、50年先の未来の社会をイメージし、そこからバックキャストして今するべき事業の意義を再確認すること。フューチャー・デザインを経営で実践するということです。考え抜いた末に、もし現状の事業に将来性がないという結論に至ったならば、早く企業を解散する道筋を考えることも経営者の責務です。 個人の施策としては、将来世代の視点を自分のものにして考えることです。すると、将来世代からの感謝や承認がなければ、現代の私たちの人生に生きる意味を見つけられない、となるのではないでしょうか。他者の承認をたどっていくと、無限遠の未来の将来世代からの承認によって、私たちの人生の価値は支えられているという考えにいたるはずです。(了)』、「独立財政機関とは、30〜50年先などの超長期の将来までの経済・財政の展望を推計し、その結果を財政運営の基礎情報として国民や政府に公開する機関です。推計の信頼性確保のため、政治的な中立性と独立性を保証します。内閣府や財務省などの既存官庁は、政権のために働くことが任務のため、どうしても忖度が働くので、独立機関が必要なのです。 米国の議会予算局や英国の予算責任庁などが代表例です・・・経済成長を前提としたリベラリズムという近現代の思考のままでは、世代間問題は解決できないので、私たちは何か新しい公共哲学を持たなければいけないというのが提言です。新しい公共哲学を持った上で、国を運営し、政策を立てて行く必要があるということです。 功利主義に基づく現代の経済学では、人間は完全に利己的ではなく、弱い「利他性」を持っていると考えます。また、アダム・スミスは、「共感」の作用によって道徳感情の基準(内なる公平な観察者)が形成されるとして、人々の相互作用による人格形成の過程に注目しました。この共感の作用を世代間問題の解決に活用すれば、将来世代に対する利他性を、現在世代の人々の間の共感によって強化することができるはずだと考えます」、我が国では、既存の公務員組織とは別に、独立の組織を、財界や労組などを中心に設立することが考えられる。独立性を如何に維持するか、極めて難しい問題だ。
タグ:経済学 (その6)(アマゾンが経済学の博士を100人雇う理由、「失われた30年」を いかに克服するか、持続可能な社会に必要な 「新しい公共哲学」とは何か?) 日経ビジネスオンライン 日本企業が「直感」「場当たり的」「劣化コピー」「根性論」に頼った経営を進めているのは、本当に残念だ。 「付加価値の創造というのは、コストを下げる場合と違って、利益の改善までに時間がかかり、不確実性も高いのです。付加価値と利益との間には、この意味で大きなギャップがあることが分かります。 言い換えると、すぐに成果が出るコスト削減に対して、付加価値の向上は利益につなげるまでのハードルが高い。結果的に、「まだ見えない商品を新たにつくる」よりも「いま見えているコストを減らす」ほうが取り組みやすいのです」、その通りだ。 「値上げ前の200円から値上げ後の300円へと、マージンが一気に50%も増加しているのです。これが、販売量が1万個から8000個へと20%も落ち込んだにもかかわらず、利益が増えたカラクリです」、確かに「マージン」引上げの効果は新たかだ。 「仮に値上げを行ったとしても売上が下がらないような価格水準というのは、利益を最大にする価格と比べて例外なく低すぎる、つまり決して最適にならないという点です。この意味で、「利益を増やすためには、強気の値上げが欠かせない」と解釈することもできるでしょう。 ひょっとすると、日本経済がなかなかデフレの罠(わな)から抜け出せない理由のひとつは、こうしたプライシングの重要性が理解されていない、つまり需要分析が多くの企業にとって武器になっていないからかもしれません・・・GAFA・・ に代表される米国の大手IT企業が、こぞってデータサイエンティストを採用しています。アマゾンでは、経済学博士号をもつ専門家だけでも、100人以上も採用しているといわれています・・・日本経済がなかなかデフレの罠(わな)から抜け出せない理由のひとつは、こうしたプライシングの重要性が理解されていない、つまり需要分析が多くの企業にとって武器になっていないからかもしれません」、その通りだ。 「よいものがつくれても、人に知ってもらわないと世に存在しないのと大差ありません。だから宣伝や広告、マーケティングが大切なわけです。 専門家による研究はその性質上、専門家以外の人が簡単に理解したり、使ったりすることができません。だったら、わたしたち専門家は、受け身で使い手を待っているのではなく、できるだけ使いやすい武器へと加工して、使ってくれる人のところへ、自分から届けに行けばよいと思うのです。 経済学者のみなさん、武器を磨いてビジネスの世界に飛び込んでみませんか? ビジネスパーソンのみなさん、専門家とのコ ラボを一度はじめてみませんか?」、同感である。 ダイヤモンド・オンライン 慶應義塾大学経済学部教授インタビュー(前編)の小林慶一郎氏による「「失われた30年」を、いかに克服するか」 「合理的期待学派は、少なくとも何か政策を施行した際に、人々がどう考え、どう反応するかを真剣に見極めようとする姿勢は徹底しているのです。その姿勢が次に論じる「再帰的思考」です。 本書のバックボーンとして、「人々の思考について思考すること」の重要性があります。本書ではこれを再帰的思考という言葉で表しています。簡単に言えば、相手を思いやる、相手の立場になって相手の思考を我がものとして考えようという思考の態度が、再帰的思考です。不良債権についても、デフレ対策でも、経済政策に国民がどう反応するかを、希望的観測で単純 「再帰的思考とは前述の通り、他者の思考を自分自身が思考する、他者になり切って思考すること。さらに、自分と他者の両者が互いの思考を読み合っていることを知っていて、「私が考えている、と相手が知っていて、相手が知っていることを私が知っていて、さらにそのことを相手が知っている……」という無限ループが起きていること、それを認識した上で意思決定することです。この再帰的思考が、日本の政策の議論には欠落している」、なるほど。 「不良債権処理は社会全体に大きな痛みを伴うので、アカデミズムから政策提言として不良債権処理の推進案はあまり出てきませんでした。期待に働きかけるリフレ案のほうが誰も傷つけず、痛みを伴わないので、そちらの方が言いやすかったのです。 実際、欧米においても、リフレ政策が望ましいということで、2008年のリーマンショック、10年代の欧州債務危機でも、大規模に金融を緩和しました。ただし、それによって期待が変わったかどうかという点はまだ論争が続いています」、なるほど。 「日銀が名目金利をゼロにしても、インフレ率が0%ぐらいだと、実質金利は中立金利より高くなってしまい、国民は将来に備えて貯蓄に走ってしまいます。それを防ぐため、政策でインフレを起こして実質金利を中立金利になるまで下げるべきだというのがリフレ派のロジックです。 政策金利はすでにゼロなので、発行通貨の量を増やしたり、将来にわたってデフレが終息するまで金融緩和を続けることを約束するフォワードガイダンスなどを実施したりしたわけです。 これらの金融政策は従来のものではなかったので、「非伝統的政策」と呼ばれています。 将来の金利やインフレに関しての、国民の期待を、政策によって操作しようという考え方です。しかし、繰り返しますが、日本では当局の思惑通りには、すぐに期待は変化しなかった・・・日本全体の新陳代謝を高めていくことです。例えば、収益性の高い企業がその成長に必要な人材を確保できるように政策的に促すことです。低生産性の企業が退出や人材放出を行いやすい制度や環境を整えるとか、もっと人材移動が活発化するような法整備を確立するとか、金融面でそう した新陳代謝を促すことなどです」、なるほど。 小林慶一郎・慶應義塾大学経済学部教授インタビュー(後編)「持続可能な社会に必要な、「新しい公共哲学」とは何か?」 この他に、「日本の」会計基準の遅れも「発覚」を遅らせた。 「「時間整合性」の問題があるのです。デフレの時には物価上昇が安定的に続くまで金融緩和をやめませんと約束するのが最適ですが、インフレになってしまうと、なるべく早めに金融引き締めに移ることが最適な政策になります。事前と事後で、最適な政策が異なるという時間整合性の問題があるのです。市場の信用を失わないように、政策を変更するというのが、今、日銀が直面している最大の難関だと思います」、その通りだ。 「経済成長率2%程度で金利が成長率を上回る経済の正常化が果たされたとしても、国の債務はGDP比で2020年240%(2.4倍)が、2050年には500%(5倍)を優に超える」、やはり財政赤字は深刻だ。 「財政あるいは社会保障制度の持続性については、多くの人が不安を感じています。しかし、現状においては、何もやっていない。いわゆる「エレファント・イン・ザ・ルーム」という状況です」、本当に困ったことだ。 「独立財政機関の導入」とはどういうことなのだろう。 「独立財政機関とは、30〜50年先などの超長期の将来までの経済・財政の展望を推計し、その結果を財政運営の基礎情報として国民や政府に公開する機関です。推計の信頼性確保のため、政治的な中立性と独立性を保証します。内閣府や財務省などの既存官庁は、政権のために働くことが任務のため、どうしても忖度が働くので、独立機関が必要なのです。 米国の議会予算局や英国の予算責任庁などが代表例です・・・ 経済成長を前提としたリベラリズムという近現代の思考のままでは、世代間問題は解決できないので、私たちは何か新しい公共哲学を持たなければいけないというのが提言です。新しい公共哲学を持った上で、国を運営し、政策を立てて行く必要があるということです。 功利主義に基づく現代の経済学では、人間は完全に利己的ではなく、弱い「利他性」を持っていると考えます。また、アダム・スミスは、「共感」の作用によって道徳感情の基準(内なる公平な観察者)が形成されるとして、人々の相互作用による人格形成の過程に注目しました。この共感の作用 を世代間問題の解決に活用すれば、将来世代に対する利他性を、現在世代の人々の間の共感によって強化することができるはずだと考えます」、我が国では、既存の公務員組織とは別に、独立の組織を、財界や労組などを中心に設立することが考えられる。独立性を如何に維持するか、極めて難しい問題だ。
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民主主義(その9)(日本が独裁国家に転じれば 国民は幸せになれるのかーーネットで増える「民主主義否定論者」が見落としている事実、【歴史】哲学者プラトンが民主主義を嫌悪していた理由【書籍オンライン編集部セレクション】、ロシア・中国が「民主主義は時代遅れ」と公言「“歴史の終わり”から35年後の危機」【フランシス・フクヤマ】) [経済政治動向]

民主主義については、2021年8月23日に取上げた。今日は、(その9)(日本が独裁国家に転じれば 国民は幸せになれるのかーーネットで増える「民主主義否定論者」が見落としている事実、【歴史】哲学者プラトンが民主主義を嫌悪していた理由【書籍オンライン編集部セレクション】、ロシア・中国が「民主主義は時代遅れ」と公言「“歴史の終わり”から35年後の危機」【フランシス・フクヤマ】)である。

先ずは、昨年12月6日付け現代ビジネスが掲載した経済評論家の加谷 珪一氏による「日本が独裁国家に転じれば、国民は幸せになれるのかーーネットで増える「民主主義否定論者」が見落としている事実」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/120266?imp=0
・『全世界的に非民主的な強権国家の影響力が高まっている。強権的な国家はいわゆる民主主義のコストを負担する必要がなく、経済的に有利な状況にある。日本など民主国家の中からも、こうしたコスト負担を嫌悪する意見が散見されるようになっており、事態を放置すれば民主主義の機能不全につながりかねない』、興味深そうだ。
・『「歴史の終わり」は来なかった  一般的に民主国家を維持するにはかなりの負担がかかるとされている。議会を通じて議論を行なったり、政府が政策について国民に十分に説明し、賛同を得てからでなければ政策を実行に移すことができない。強権的な独裁国家と比べて、合意形成のプロセスに相当な時間や人員を必要とするため、一連の負担のことを「民主主義のコスト」と呼ぶ。 これまでの国際社会は、圧倒的に西側民主国家の影響力が強く、経済規模も大きかった。豊かな先進国は総じて民主国家であり、その圧倒的な経済力を生かし、民主主義のコストを負担するという流れだった。 つまり、経済的豊かさと民主主義はセットであり、そうであればこそ民主主義というのはグローバル社会における完成形と見なされていた。 中高年以上で、一定以上の読書経験を持つ人なら、1990年代前半に出版されたフランシス・フクヤマ氏による「歴史の終わり」がベストセラーになったことを記憶しているだろう。フクヤマ氏は米国人でありながら、欧州のオーソドックスな哲学者であるヘーゲルの弁証法を自在に読み解き、民主主義と自由経済が人類の歴史における最終形になるという鮮やかなロジックを展開した。 知的書物としての内容の素晴らしさという点だけでなく、当時は現実社会もフクヤマ氏の主張に沿って動いているように見えた。 旧ソ連は完全崩壊し、残った共産主義の大国である中国は、凄惨な文化大革命を経て改革開放路線にシフト。共産主義の国でありながら、限りなく資本主義的な制度に舵を切り始めており、時間はかかるものの、民主的な体制に移行していくと多くの人が予想していた(おそらくだが中国人自身もそう思っていたかもしれない)。 だが2000年以降、全世界でIT化が進んだことで、状況が一変した』、「フクヤマ氏は米国人でありながら、欧州のオーソドックスな哲学者であるヘーゲルの弁証法を自在に読み解き、民主主義と自由経済が人類の歴史における最終形になるという鮮やかなロジックを展開した。 知的書物としての内容の素晴らしさという点だけでなく、当時は現実社会もフクヤマ氏の主張に沿って動いているように見えた・・・だが2000年以降、全世界でIT化が進んだことで、状況が一変した」、「2000年以降、全世界でIT化が進んだことで、状況が一変した」とはどういうことなのだろう。
・『インフラがなくても経済成長が可能に  以前の社会では経済成長を実現するには、先進国から多額の投資を受け入れ、鉄道や道路など、生活や産業に必須となるインフラをゼロから作り上げる必要があった。 このため外貨による投資の受け入れが成長の絶対要件となり、こうした投資マネーを受け入れるためには、お金の出し手である西側先進国に対して妥協せざるを得なかった。当然のことながら米国を筆頭とする西側各国は、資金の供出と引き換えに民主化と市場開放を強く要求した。 ところが世界の産業が工業からソフトウェア産業、知識産業に移行したことでこうした巨額の投資が不用となり、十分なインフラが存在しない国でも、急激な経済成長が可能となった。 かつて内戦に明け暮れたカンボジアは、独裁政権でありながらめざましい成長を遂げており、最新のITサービスが次々と立ち上がっている。外に出ると、汚い道路はトゥクトゥクと呼ばれる三輪タクシーで溢れかえっているが、そのトゥクトゥクはアプリを使っていつでも呼び出すことができる。 中国は少し前まではハードウェアの製造が主流だったが、アリババに代表されるネット企業群は米国並みの技術力を持つに至っており、一連のソフトウェア産業が近年の高成長を担ってきた。 民主主義の敗北は統計上の数字にも表れている。図1は世界における民主的な国と非民主的な国の人口推移を示したものである。政治体制については英国エコノミストの調査部門であるEIUが算定した民主主義指数を用いており、同指数の6以上を民主的、6未満を非民主的と分類した。 (図1 民主国家と非民主国家の人口推移 はリンク先参照) 民主的に分類される国の人口と、非民主的な国に人口の両者とも増加という状況だが、非民主的な国のシェアは上昇している。これはあくまで人口なので、この数字が直接的に世界に対する影響力を示しているとは限らない。では、同じような指標でGDP(国内総生産)を比較するとどうなるだろうか』、「非民主的な国のシェアは上昇している。これはあくまで人口なので、この数字が直接的に世界に対する影響力を示しているとは限らない。では、同じような指標でGDP・・・を比較するとどうなるだろうか」、なるほど。
・『強権国家の経済的台頭  図2は同様に、民主主義指数おける分類と各国のGDPを示したものである。ここでは、さらに細かい区分を用い「A:完全な民主国家」「B:欠陥のある民主国家」「C:民主制と独裁制の混合体制」「D:独裁国家」という4つで比較した。 (図2 民主主義指数とGDPの推移 はリンク先参照) 経済力という点で比較すると強権国家の台頭は明らかだ。Aの「完全な民主国家」に属する国のGDPはあまり伸びていないが、独裁国家(D)や欠陥のある民主国家(B)のGDPが大幅に伸び、全体での比率を高めている。 中国は完全な独裁国家でありながら、世界で2番目の経済大国であり、特殊な存在とみなすこともできる。むしろ私たちが注目すべきなのは、2番目のカテゴリーである「欠陥のある民主国家」に属する国々である。このカテゴリーには、シンガポールやインドネシア、タイ、ブラジル、インドといった成長著しい新興国が軒並みカテゴライズされている。 人口のみならず、GDPの絶対値という点でもこれらの国々のプレゼンスは大きく、民主主義のコストの是非について深く考えさせられてしまう。 シンガポールは1人あたりのGDPが日本よりも高く、極めて豊かな国として知られているが、1965年にマレーシアからの独立を果たして以降、建国の父と呼ばれるリー・クアンユー氏とその息子であるリー・シェンロン氏が長く首相を務めるなど、独裁的な国家としての側面も併せ持っている。言論の自由も制限されており、民主主義指数は、「欠陥のある民主国家」の中でも最下位に近い。 一方で手厚い教育制度や、子どもに対して優しい社会環境、外国から優秀な人材を積極的に受け入れる人材戦略など、画期的な政策を実施しており、日本からも子どもの教育目的に多くの人が移住している。 特段、政治に関心を持たず、現実問題として子どもによい教育を施したいと考えるビジネスパーソンからすると、日本とシンガポールとでは社会環境に圧倒的に差があり、同国は魅力的な場所に映る』、「経済力という点で比較すると強権国家の台頭は明らかだ。Aの「完全な民主国家」に属する国のGDPはあまり伸びていないが、独裁国家(D)や欠陥のある民主国家(B)のGDPが大幅に伸び、全体での比率を高めている・・・私たちが注目すべきなのは、2番目のカテゴリーである「欠陥のある民主国家」に属する国々である。このカテゴリーには、シンガポールやインドネシア、タイ、ブラジル、インドといった成長著しい新興国が軒並みカテゴライズされている。 人口のみならず、GDPの絶対値という点でもこれらの国々のプレゼンスは大きく、民主主義のコストの是非について深く考えさせられてしまう」、なるほど。
・『非民主化すれば格差は広がる  先ほど取り上げたカンボジアも、2023年5月、野党を弾圧する中で制限選挙が行われ、与党が圧勝。長く独裁者として君臨してきたフン・セン首相は、息子のフン・マネット氏に首相の座を譲るなど、同族支配が続く。 シンガポールやマレーシアなどの国々はかつて「開発独裁」と呼ばれ、経済成長のために国民の人権が犠牲になっているという批判的ニュアンスで語られていた。その実態は今も変わらないが、日本から教育目的で移住する人が増えるなど、状況は大きく変わった。 各国の国内情勢も同じである。シンガポール国内では、一部の民主主義者が体制批判をしているものの、多くの国民は豊かな暮らしを享受している。政権に対して反発することのリスクを天秤にかけると、批判を行うメリットは乏しい。こうした状況は民主主義にとってやはり脅威といえるだろう。 日本国内では、経済の落ち込みで生活が苦しくなっていることが影響しているのか、ネットなどを中心に民主主義を否定する意見が目立つようになっている。民主主義を否定している人たちは、「民主国家では弱者が過剰に保護される」「合意形成のために経済成長が犠牲になる」などと主張している。 民主主義にそうした面があるのは確かだが、ネットで民主主義否定を声高に叫んでいる人たちは重大な事実を見落としている。 もし日本が非民主的な国になった場合、彼らのほとんどは支配する側ではなく、支配される側に回るのは確実である。しかも被支配者側になってしまえば、内容の如何を問わず、政治体制について批判することは即処罰の対象となり、ネット上で自由に意見を言うことなど出来なくなってしまう。 民主主義の弊害を説く人はどういうわけか、(ネットで自分の意見を口にするなど)自分が支配者側にいるような感覚を持っているのだが、それはあくまで願望に過ぎない。 民主主義はコストがかかりすぎると主張するのは簡単かもしれない。しかしながら、ひとたび非民主的な国に転落すれば、万人に門戸は開かれず、特権的な立場の人とそうでない人の、埋めようのない格差が生じるのが偽らざる現実だろう』、「ネットで民主主義否定を声高に叫んでいる人たちは重大な事実を見落としている。 もし日本が非民主的な国になった場合、彼らのほとんどは支配する側ではなく、支配される側に回るのは確実である。しかも被支配者側になってしまえば、内容の如何を問わず、政治体制について批判することは即処罰の対象となり、ネット上で自由に意見を言うことなど出来なくなってしまう。 民主主義の弊害を説く人はどういうわけか、(ネットで自分の意見を口にするなど)自分が支配者側にいるような感覚を持っているのだが、それはあくまで願望に過ぎない・・・ひとたび非民主的な国に転落すれば、万人に門戸は開かれず、特権的な立場の人とそうでない人の、埋めようのない格差が生じるのが偽らざる現実だろう」、同感である。

次に、本年2月6日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したオーストラリアの政治学者のジョン・キーン氏とジャーナリストの岩本正明氏による「【歴史】哲学者プラトンが民主主義を嫌悪していた理由【書籍オンライン編集部セレクション】」を紹介しよう。
・『ロシア・ウクライナ情勢、中国の経済面・軍事面での台頭と台湾・香港をめぐる緊張、トランプ前大統領の動きをめぐるアメリカ政治の動揺、そして日本で選挙期間中に起こった安倍晋三元首相襲撃事件……これらのことを見て、「このままで民主主義は大丈夫か」と不安になる人は、むしろ常識的な感覚を持っていると言えそうです。自由な選挙、非暴力の議論、権力の濫用のない政治と国民すべてに平等な機会がある中での経済発展のような、民主主義がもたらしてくれることを期待されている価値観が崩れかけています。決められない、豊かさをもたらさない延々と議論が続く民主主義でなく、専制的であっても決断力と行動力のある、強いリーダーがいいと考える国も出てきています。それでも民主主義が優れていると言えるのは、なぜなのでしょう? 困難を極める21世紀の民主主義の未来を語るうえで重要なのは、過去の民主主義の歴史を知ることです。民主主義には4000年もの過去の歴史があり、時に崩壊し、そのたびに進化を繰り返しながら進んできました。刊行された『世界でいちばん短くてわかりやすい 民主主義全史』は、現代に続く確かな民主主義の歴史をコンパクトに、わかりやすく解説しています。オーストラリア・シドニー大学の著者、ジョン・キーン教授が、西欧の価値観に偏りすぎないニュートラルなタッチで語る本書は、現代を生きるための知的教養を求める日本人読者にぴったりの一冊です。同書の中から、学びの多いエピソードを紹介します』、興味深そうだ。
・『ギリシャの民主主義者は無知で貧しい人々?  プラトンは民主主義が二面性を有する統治形態──民衆の資産階級に対する力による支配、もしくは同意による支配──だと指摘したが、権力欲に突き動かされた暴力的不正行為こそが、まさにプラトンが想定していたことだった。 プラトンにとっては、民主主義は無知で貧しい人々に迎合することで善良な統治を破壊する、見かけ倒しの発明だった。航海術など存在しないと信じている無能者──操舵手を役立たずのスターゲイザー(星をただ見つめる者)として扱う愚か者──が船員として働く船にたとえている。 プラトンは、劇場支配制という言葉で表現している。大衆が永久不変の政治法則に逆らってあらゆることに口を出す資格を得ることで、公共の利益を気取りながら、力のない者を美辞麗句でそそのかし、力のある者が無法者のように振る舞う統治のあり方を想定していた。デモクラティアとは、表向きは人民が支配しているように見えながら、実際には支配されている偽りの政治なのだ。 プラトンの見解からわかるとおり、アテネの哲学者はそのほとんどが反民主主義者──民主主義によって培われる平等、不確実性、開放性の精神に対して悪意ある反応をする──だった。民主主義について哲学的に語るには富や余暇を必要とし、政治生活の喧騒から距離を置く必要があった。 ところが民主主義は、一般市民には公の生活に身を捧げることを要求した。その結果、公務で忙しいアテネの民主主義者は声を上げる暇がないなかで、敵には、タコのように顔に墨を吹きかけることを許してしまったのだ。汚名を着せることによって民主主義者を沈黙させるというのが、反民主主義者が民主主義を破壊するために採用した、記録に残っている最初の手法だった。敵から言葉を奪う一方、実際の功績に関しては酷評するのだ。 アテネの民主主義者たちは、表現手段として書くという行為をしなかった。そのため歴史的記録という面では、反民主主義者のなすがままだった。こうした理由から、アテネには民主主義を擁護できる偉大な哲学者がいなかったのだ。アテネの民主主義に関するあらゆる文章が、民主主義が持つ目新しさ、特に金持ちの支配に対する大衆の反発を刺激するという側面を敵視していたのも、そうした理由からだ。 民主主義者は、文章によって自らその価値を擁護しなかったことで、大きな代償を払うことになった。自分たちは女神を味方につけていると固く信じ、民主主義がなくなるリスクを過小評価していた。 記録という部分に関しては、民主主義という醜いカブトムシを足で踏みつぶすことを夢見ていた貴族階級のなすがままになった。彼らは邪悪なことを考えていた。民主主義者の言葉を後世に残さないようにするために、誰にも記録させなければいいと考えていたのだ』、「民主主義者は、文章によって自らその価値を擁護しなかったことで、大きな代償を払うことになった。自分たちは女神を味方につけていると固く信じ、民主主義がなくなるリスクを過小評価していた。 記録という部分に関しては、民主主義という醜いカブトムシを足で踏みつぶすことを夢見ていた貴族階級のなすがままになった」、初めて知った。
・『日本人が知らない意外な民主主義の歴史  ●多くの人は、民主主義はギリシャの都市国家で生まれたと思っているが、民主主義の起源は現在の中東、メソポタミアである。 ●民主主義は、常に時の権力者に敵視されてきた。プラトンやアリストテレスをはじめ、多くの哲学者や知識人も、民主主義は乱暴で不確実性の高い良くない政治制度だと考えた。 ●現在、世界最大の民主主義国は、貧困と格差がはびこるインドであり、アフリカのセネガルはイスラム教をベースとした民主主義国家と言える。民主主義はむしろ多様化している。 ●アメリカ型の自由な民主主義は必ずしも民主主義の最終進化形態とはいえない。民主主義は新たな独裁者や専制主義者、ポピュリストたちから挑戦を受け、新たな進化を遂げつつある…… 古代メソポタミア、ギリシャ・アテネ、イギリス、フランス、スペイン、アメリカの選挙民主主義、ファシズム、帝国主義と民主主義、ポピュリストによる民主主義の破壊、アジア、アフリカの民主主義の勃興、ロシア、中国の台頭からフェイクニュースが渦巻く混乱まで、世界の様々な時代・地域で「民主主義」は立ち上がり、そして時に瓦解してきた歴史が描かれています。オーストラリア・シドニー大学のジョン・キーン教授がシンプルにコンパクトに本書『世界でいちばん短くてわかりやすい 民主主義全史』で紹介するエピソードと解説は、欧米中心主義に偏りすぎず、かといってロシア・中国が主張する「特色ある民主主義」のまやかしとは明確に一線を画した、本質的な民主主義観をつかめます。 いま、「民主主義」が注目される時代になった背景には、私たちが抱える不安の存在がありました』、「民主主義の起源は現在の中東、メソポタミアである・・・民主主義は、常に時の権力者に敵視されてきた・・・世界最大の民主主義国は、貧困と格差がはびこるインド・・・民主主義は新たな独裁者や専制主義者、ポピュリストたちから挑戦を受け、新たな進化を遂げつつある・・・いま、「民主主義」が注目される時代になった背景には、私たちが抱える不安の存在がありました」、なるほど。
・『なぜこんなに、民主主義に危うさを感じるようになったのか? その理由とは?  「民主主義」がこれほど注目される時代になったのは、私たちが不安定な時代を生きているという感覚にさいなまれながら、民主主義が劣勢な立場に置かれていると感じているためではないでしょうか。 【政治的に経済的に】中国のような専制、独裁国家のほうが、決められない民主主義国家よりも有利なのではないか? 【広がる格差】格差を生む資本主義と民主主義は、究極的には相性が悪いのではないか? たとえば、民主主義を支持する私たちも、このような疑問で揺らいでいます。それでもなぜ、民主主義を擁護すべきなのでしょうか? ジョン・キーン教授は、このような疑問に明快に応えてくれます。 私たちは、民主主義国家である日本に育ちながら、民主主義のことをあまりに知りません。日本人を含む民主主義国の国民は、中国やロシア、そしてかつての民主主義国に誕生した「まやかしの民主主義国家」を率いる専制主義者からかつてなくプレッシャーを受けています。民主主義の歴史を知る意味はまさにここにあります。 議論、意思決定、代表、選挙、議会、権力、平等、多様性……民主主義の本質に迫る、さまざまなジャンルの読者の関心に応えられる、新しい時代の教養書として読める一冊です』、「私たちは、民主主義国家である日本に育ちながら、民主主義のことをあまりに知りません。日本人を含む民主主義国の国民は、中国やロシア、そしてかつての民主主義国に誕生した「まやかしの民主主義国家」を率いる専制主義者からかつてなくプレッシャーを受けています。民主主義の歴史を知る意味はまさにここにあります」、大いに考え直すべきだろう。

第三に、2月25日付けダイヤモンド・オンラインが転載したAERAdot.「ロシア・中国が「民主主義は時代遅れ」と公言「“歴史の終わり”から35年後の危機」【フランシス・フクヤマ】」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/337848
・『1989年に発表した論文「歴史の終わり?」で、西側諸国の自由民主主義が、人間のイデオロギー的進化の終着点なのではないかとの見方を示した、政治学者のフランシス・フクヤマ氏。彼は、冷戦終結後も争いが絶えない今の状況をどのように見ているのか。2月13日発売の最新刊『人類の終着点――戦争、AI、ヒューマニティの未来』(朝日新書)から一部を抜粋・再編して公開します(Qは聞き手の質問)。 Q:フクヤマさんは1989年、ベルリンの壁崩壊の数カ月前に、「歴史の終わり?」という論文を発表して、脚光を浴びました。この論文のタイトルには「?」(クエスチョンマーク)がついていました。 その後1992年には『歴史の終わり』という書籍も発表して、米国および世界の思想史で大きな節目となり、大きな注目を集めました。その理由は、多くの人がその時代の本質的な要素を内包していると感じたからだ、と私は思います。 もちろん、ソ連の崩壊もありました。論文の言葉を引用します。「冷戦の終結や戦後の歴史の特定の時期の終わりを目の当たりにしているだけではなく、歴史の終わりを目撃しているのだ。すなわち人類のイデオロギー的な進化と人間の統治の最終形態としての西洋の自由民主主義の普遍化なのだ」と。 あなたの当時の意図はどうであれ、この本は「西洋の勝利を正当化するもの」だと受け止められました。世界で大きな出来事が起こるたびに、この論の妥当性についてよく聞かれるとあなたは認めています。 2022年のロシアによるウクライナへの侵攻を目にして、「これは冷戦後の最後の一幕だ」とか「歴史の終わり論の終わり」だと、言う人もいるでしょう。あなたはこの出来事に関して、どのように考えていますか。 フランシス・フクヤマ:あなたのおっしゃることは、多くの点で正しいと思います。2023年の世界において、「自由民主主義が、いかなる場所においても成功をおさめ得る唯一の代替手段だ」と言う人はいないでしょう。長い目で見れば、その主張は正しいかもしれません。しかし過去15年間、グローバル民主主義は後退しています。 権威主義的な二つの大きな勢力、ロシアと中国が自らの国家像を打ち出そうと試みています。「ロシアと中国が」「両国とも「自由民主主義は時代遅れ」とか「死につつあるイデオロギーだ」と公言しています。現在の世界が大きな課題を抱えているのは、間違いありません。1989年や1992年よりも、楽観的にはなれない状況です』「自由民主主義は時代遅れ」とか「死につつあるイデオロギーだ」と公言しています。現在の世界が大きな課題を抱えているのは、間違いありません。1989年や1992年よりも、楽観的にはなれない状況です「過去15年間、グローバル民主主義は後退しています。 権威主義的な二つの大きな勢力、ロシアと中国が自らの国家像を打ち出そうと試みています。両国とも「自由民主主義は時代遅れ」とか「死につつあるイデオロギーだ」と公言しています。現在の世界が大きな課題を抱えているのは、間違いありません。1989年や1992年よりも、楽観的にはなれない状況です」、なるほど。
・『Q:先ほど中国の話題が出ましたが、『歴史の終わり』を発表して以来、中国は自由民主主義になることはなく、非自由主義的で非民主的な体制が続いています。世界中の多くの人が、「民主主義や自由という価値が、中国の挑戦に対して耐え得るのかどうかが不透明だ」と感じています。中国は冷戦後システムの最大の受益者であり、最も成功した独裁国家と言えるでしょう。昨今の中国の挑戦に対して、あなたはどうお考えですか。) フクヤマ:中国の改革の当初から、「それが自由民主主義に対する一番もっともらしく見える代替案だ」と私は主張しました。権威主義的な政治システムに、準市場経済が混じり合っています。それに、これほど短期間で成長した国は他にありません。その規模を考えると、信じられないくらいです。それが歴史的な達成であることは、間違いありません。 一方で、これが持続可能なモデルなのか、はっきりとしていません。今後10年から20年間、中国を脅威とみなし続けることになるのかについても、明確ではありません。なぜなら、政治モデルと経済モデルに大きな問題があると思うからです。 実際に中国の成長率は、大きく鈍化しています。そしてその鈍化は、独裁的な意思決定システムの失敗と、直接関係があるように思えます。習近平氏は、鄧小平氏が始めた「自由経済改革」を支持しているとは思えませんし、その結果、中国経済は不調に陥っています。 経済以外の文化的、政治的な要素で、人々が真に称賛する中国のシステムがあるとは思えませんし、中国の文化は、自国以外に広がってはいません。「中国に住みたくてたまらない」と思う人は多くないでしょう。 経済的に大きく成長したとはいえ、社会的システムの面では優れているかどうかわかりません。今後数年、中国の動向を注視する必要があります。過去30年に比べると、今後10年はそれほど良い状態にはならないでしょう』、「今後10年から20年間、中国を脅威とみなし続けることになるのかについても、明確ではありません。なぜなら、政治モデルと経済モデルに大きな問題があると思うからです。 実際に中国の成長率は、大きく鈍化しています。そしてその鈍化は、独裁的な意思決定システムの失敗と、直接関係があるように思えます・・・今後数年、中国の動向を注視する必要があります。過去30年に比べると、今後10年はそれほど良い状態にはならないでしょう」、なるほど。
・『Q:2019年6月当時、私は朝日新聞のワシントンDC特派員でした。トランプ政権に最も勢いがある時期でした。そのとき一時的に日本に帰国して、大阪でのG20サミットも取材しました。サミット前日、『フィナンシャル・タイムズ』がプーチン大統領の独占インタビューを掲載しました。そこで彼が「自由主義的な価値は時代遅れだ」と述べていたことに、私は衝撃を受けました。その数年後、プーチン氏のロシアはウクライナへの侵攻を開始しました。執拗で強固なプーチン氏の自由主義への攻撃と、ウクライナへの侵攻はどのように関係しているのでしょうか。 ロシア・中国が「民主主義は時代遅れ」と公言「“歴史の終わり”から35年後の危機」【フランシス・フクヤマ】 フクヤマ:プーチンは、ソ連崩壊を決して受け入れることができないのでしょう。彼はそれを「20世紀最大の悲劇だ」と形容しました。彼の外交政策は、可能な限り「ソ連を取り戻すこと」です。 そして、ソ連が失ったものの中で最も大事なのは、ウクライナです。彼は明確にそう述べています。これは、彼の行動が暗示している類のものではありません。彼は、公然と言ってのけたのです。「ウクライナは死活的な領土で、ロシアの一部であり、ロシアから除くことはできない」と。 「1991年以後の欧州の安定を覆す」という彼の野望を行動で示すのが、彼の外交政策です。これが「単に領土をめぐる問題ではない」と考える理由です。ウクライナへの侵攻は、欧州全体の政治的な秩序に対する紛争なのです。 (フランシス・フクヤマ氏の略歴はリンク先参照)』、「プーチンは、ソ連崩壊を決して受け入れることができないのでしょう。彼はそれを「20世紀最大の悲劇だ」と形容しました。彼の外交政策は、可能な限り「ソ連を取り戻すこと」です。 そして、ソ連が失ったものの中で最も大事なのは、ウクライナです。彼は明確にそう述べています。これは、彼の行動が暗示している類のものではありません。彼は、公然と言ってのけたのです。「ウクライナは死活的な領土で、ロシアの一部であり、ロシアから除くことはできない」と・・・ウクライナへの侵攻は、欧州全体の政治的な秩序に対する紛争なのです」、トランプが大統領になれば、ウケライナへの米国の支援はなくなり、ウクライナは不名誉な停戦を余儀なくされる可能性が強まってきた。残念ながら「プーチン」の勝利に終わるのだろうか。腹立たしい限りだ。
タグ:だが2000年以降、全世界でIT化が進んだことで、状況が一変した」、「2000年以降、全世界でIT化が進んだことで、状況が一変した」とはどういうことなのだろう。 「フクヤマ氏は米国人でありながら、欧州のオーソドックスな哲学者であるヘーゲルの弁証法を自在に読み解き、民主主義と自由経済が人類の歴史における最終形になるという鮮やかなロジックを展開した。 知的書物としての内容の素晴らしさという点だけでなく、当時は現実社会もフクヤマ氏の主張に沿って動いているように見えた・・・ 加谷 珪一氏による「日本が独裁国家に転じれば、国民は幸せになれるのかーーネットで増える「民主主義否定論者」が見落としている事実」 現代ビジネス (その9)(日本が独裁国家に転じれば 国民は幸せになれるのかーーネットで増える「民主主義否定論者」が見落としている事実、【歴史】哲学者プラトンが民主主義を嫌悪していた理由【書籍オンライン編集部セレクション】、ロシア・中国が「民主主義は時代遅れ」と公言「“歴史の終わり”から35年後の危機」【フランシス・フクヤマ】) 民主主義 「非民主的な国のシェアは上昇している。これはあくまで人口なので、この数字が直接的に世界に対する影響力を示しているとは限らない。では、同じような指標でGDP・・・を比較するとどうなるだろうか」、なるほど。 「経済力という点で比較すると強権国家の台頭は明らかだ。Aの「完全な民主国家」に属する国のGDPはあまり伸びていないが、独裁国家(D)や欠陥のある民主国家(B)のGDPが大幅に伸び、全体での比率を高めている・・・私たちが注目すべきなのは、2番目のカテゴリーである「欠陥のある民主国家」に属する国々である。このカテゴリーには、シンガポールやインドネシア、タイ、ブラジル、インドといった成長著しい新興国が軒並みカテゴライズされている。 人口のみならず、GDPの絶対値という点でもこれらの国々のプレゼンスは大きく、民主主義のコストの是非について深く考えさせられてしまう」、なるほど。 「ネットで民主主義否定を声高に叫んでいる人たちは重大な事実を見落としている。 もし日本が非民主的な国になった場合、彼らのほとんどは支配する側ではなく、支配される側に回るのは確実である。しかも被支配者側になってしまえば、内容の如何を問わず、政治体制について批判することは即処罰の対象となり、ネット上で自由に意見を言うことなど出来なくなってしまう。 民主主義の弊害を説く人はどういうわけか、(ネットで自分の意見を口にするなど)自分が支配者側にいるような感覚を持っているのだが、それはあくまで願望に過ぎない・・・ ひとたび非民主的な国に転落すれば、万人に門戸は開かれず、特権的な立場の人とそうでない人の、埋めようのない格差が生じるのが偽らざる現実だろう」、同感である。 ダイヤモンド・オンライン ジョン・キーン氏 岩本正明氏 「【歴史】哲学者プラトンが民主主義を嫌悪していた理由【書籍オンライン編集部セレクション】」 「民主主義者は、文章によって自らその価値を擁護しなかったことで、大きな代償を払うことになった。自分たちは女神を味方につけていると固く信じ、民主主義がなくなるリスクを過小評価していた。 記録という部分に関しては、民主主義という醜いカブトムシを足で踏みつぶすことを夢見ていた貴族階級のなすがままになった」、初めて知った。 「民主主義の起源は現在の中東、メソポタミアである・・・民主主義は、常に時の権力者に敵視されてきた・・・世界最大の民主主義国は、貧困と格差がはびこるインド・・・民主主義は新たな独裁者や専制主義者、ポピュリストたちから挑戦を受け、新たな進化を遂げつつある・・・いま、「民主主義」が注目される時代になった背景には、私たちが抱える不安の存在がありました」、なるほど。 「私たちは、民主主義国家である日本に育ちながら、民主主義のことをあまりに知りません。日本人を含む民主主義国の国民は、中国やロシア、そしてかつての民主主義国に誕生した「まやかしの民主主義国家」を率いる専制主義者からかつてなくプレッシャーを受けています。民主主義の歴史を知る意味はまさにここにあります」、大いに考え直すべきだろう。 AERAdot.「ロシア・中国が「民主主義は時代遅れ」と公言「“歴史の終わり”から35年後の危機」【フランシス・フクヤマ】」 「自由民主主義は時代遅れ」とか「死につつあるイデオロギーだ」と公言しています。現在の世界が大きな課題を抱えているのは、間違いありません。1989年や1992年よりも、楽観的にはなれない状況です「過去15年間、グローバル民主主義は後退しています。 権威主義的な二つの大きな勢力、ロシアと中国が自らの国家像を打ち出そうと試みています。両国とも「自由民主主義は時代遅れ」とか「死につつあるイデオロギーだ」と公言しています。現在の世界が大きな課題を抱えているのは、間違いありません。1989年や1992年よりも、楽観的 にはなれない状況です」、なるほど。 「今後10年から20年間、中国を脅威とみなし続けることになるのかについても、明確ではありません。なぜなら、政治モデルと経済モデルに大きな問題があると思うからです。 実際に中国の成長率は、大きく鈍化しています。そしてその鈍化は、独裁的な意思決定システムの失敗と、直接関係があるように思えます・・・今後数年、中国の動向を注視する必要があります。過去30年に比べると、今後10年はそれほど良い状態にはならないでしょう」、なるほど。 「プーチンは、ソ連崩壊を決して受け入れることができないのでしょう。彼はそれを「20世紀最大の悲劇だ」と形容しました。彼の外交政策は、可能な限り「ソ連を取り戻すこと」です。 そして、ソ連が失ったものの中で最も大事なのは、ウクライナです。彼は明確にそう述べています。これは、彼の行動が暗示している類のものではありません。彼は、公然と言ってのけたのです。「ウクライナは死活的な領土で、ロシアの一部であり、ロシアから除くことはできない」と・・・ ウクライナへの侵攻は、欧州全体の政治的な秩序に対する紛争なのです」、トランプが大統領になれば、ウケライナへの米国の支援はなくなり、ウクライナは不名誉な停戦を余儀なくされる可能性が強まってきた。残念ながら「プーチン」の勝利に終わるのだろうか。腹立たしい限りだ。
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北朝鮮問題(その23)(ロシアにとって北朝鮮との協力には魅力がない ロシア出身の北朝鮮専門家が語るロ朝関係のリアル、北朝鮮とロシアの関係に中国が激怒していた! ロ朝首脳会談にご立腹、中国人の北朝鮮入国を禁止) [世界情勢]

北朝鮮問題については、2021年10月24日に取上げた。久しぶりの今日は、(その23)(ロシアにとって北朝鮮との協力には魅力がない ロシア出身の北朝鮮専門家が語るロ朝関係のリアル、北朝鮮とロシアの関係に中国が激怒していた! ロ朝首脳会談にご立腹、中国人の北朝鮮入国を禁止)である。

先ずは、本年1月10日付け東洋経済オンライン「ロシアにとって北朝鮮との協力には魅力がない ロシア出身の北朝鮮専門家が語るロ朝関係のリアル」を紹介しよう。
・『2024年新年を迎えたが、朝鮮半島では緊張が続いている。北朝鮮の最高指導者で朝鮮労働党の金正恩総書記は2023年12月30日、韓国との関係を「同族関係」ではなく、敵対的な両国関係、交戦関係であると言及した。さらに2024年1月5日、韓国西部・黄海上の国境となるNLL(北方限界線)に向けて「訓練」と称して砲撃を繰り返している。 北朝鮮は何を考えているのか。ロシア出身で、著名な北朝鮮研究者として知られる韓国・国民大学のアンドレイ・ランコフ教授に、朝鮮半島の現状と今後の見通しについて聞いた(Qは聞き手の質問、Aはランコフ教授の回答)。 Q:金正恩総書記は2023年12月30日、国家的な重要会議の一つである朝鮮労働党中央委員会総会拡大会議で、韓国は「同族関係」ではなく「交戦国」だと言及しました。 A:敵対国と言及したことは重要な動きです。ただ、それより重要なことがあります。金総書記が事実上、数十年間にわたって北朝鮮が実施してきた平和統一路線を失敗として認めたということです。「わが党と共和国(北朝鮮)政府が打ち出した祖国平和統一の思想と路線、方針はどれ一つまともな実を結ばなかった」と述べました』、「金総書記が事実上、数十年間にわたって北朝鮮が実施してきた平和統一路線を失敗として認めた・・・韓国は「同族関係」ではなく「交戦国」だと言及」、扱いが現実を直視したものになったようだ。
・『「ソウル火の海」より過激な姿勢  私の記憶が正しければ、北朝鮮側が「交戦国」との言葉もそうですが、これほど強硬な警告と脅威を与えたことはありません。厳密に言えば、彼らが1990年代初頭から時々繰り返してきた「ソウルを火の海にする」といった脅し文句よりもはるかに強いものです。 一方で、これは金総書記が客観的な現実、あるいは真実を認めたとも言えます。実際に、平和統一という話は当初から現実とは距離のあるプロパガンダに過ぎなかったためです。とはいえ、このようなプロパガンダを突然捨てたことにはいろんな意味があります。 韓国の尹錫悦政権は保守政権として、北朝鮮に強硬な姿勢を見せ続けています。こうした政権に対する不満を示したと言えるでしょう。ただ2024年1月2日に、金総書記の実妹で労働党副部長の金与正氏が発表した談話をみると、韓国が保守政権であれ革新政権であれ、「大韓民国」として自分たちには同じ存在ということを何回も強調しています。 今回北朝鮮が韓国を統一の対象とするよりは、隣に存在する敵対国としてみなすという発言をしたことは、長期的な変化の始まりと言えるでしょう。このように変化させたのは、前述したように、現実を認めたとも言えます。) 同族国ではなく「まったくの外国」として描写することで、北朝鮮国内における韓国の魅力を下げようという考えも垣間見えます。言い換えれば、大韓民国を日本やアメリカのように、多くの外国の中の一国だと国民を誘導すれば、北朝鮮人民が持つ統一への関心がある程度低くなるでしょう。 とはいえ、このような政策が実効性のあるものかどうかはわかりません。なぜなら、旧東ドイツでのドイツ社会主義統一党、これが東ドイツの共産党だったのですが、この政党は旧西ドイツはまったくの外国であり、東ドイツの国民も西ドイツとは違う民族だと主張していました。しかし、こういった主張が東ドイツ人民が西ドイツに対して抱く魅力を壊すまでには至りませんでした。 Q:2024年になり、北朝鮮は黄海上のNLL海域での射撃訓練を実施しました。これは「敵対国」という発言による措置でしょうか。 A:私は、今回の射撃事件は金正恩の「敵対国家宣言」とはこれといった関係がないと考えています。 最近、韓国の保守政権は軍事訓練を熱心に行うだけでなく、この訓練をメディアを通じて国民に積極的にアピールし、国民の関心を惹こうとしています。これに北朝鮮はイラついているのが現状です』、「北朝鮮側が「交戦国」との言葉もそうですが、これほど強硬な警告と脅威を与えたことはありません。厳密に言えば、彼らが1990年代初頭から時々繰り返してきた「ソウルを火の海にする」といった脅し文句よりもはるかに強いものです」、なるほど。
・『北朝鮮が持つ「砲弾」には強い関心  また、北朝鮮は韓国や米韓合同の軍事訓練に対抗して、ミサイルを発射したり軍事演習を行うなど対応してきました。強力な行動には強力な行動で対抗するという北朝鮮の姿勢、いわば小規模な「強対強」戦略です。これは北朝鮮がこれまでやってきたことでもあり、今後も行われるでしょう。 それでも、予測可能な未来においては南北の武力衝突の可能性は高くないと考えます。双方は「強対強」路線を信じていますが、現在の状況において大規模な戦争を行うつもりはありません。 ただ、南北関係は緊張状態にあり、2010年に北朝鮮が行った延坪島(黄海のNLL付近の韓国側の島)砲撃のような小規模な武力挑発を行うことはありえるでしょう。 Q:現在進行中のウクライナ戦争に関連して、北朝鮮はロシアとの関係を深めていると指摘されています。武器などをロシアに輸出し、戦争に加担しているのではないかと疑われています。 A:ウクライナ戦争でロシアは砲弾が枯渇しています。そのため、北朝鮮が保有する砲弾の在庫に対する関心は高い。実際に、ロシアは北朝鮮から数十万発の砲弾を受け取りたいとの希望を持っています。 また、ロシアは保有する重要な軍事技術を北朝鮮に移転できることをほのめかしています。しかし、こうした姿勢は北朝鮮のみに向けて言っていることではありません。 ロシアは北朝鮮の砲弾に関心を持ちながらも、一方で韓国がウクライナへ砲弾を輸出することを強く心配しています。韓国は今や、世界有数の砲弾製造国であるためです。) ロシアは北朝鮮へ重要な軍事技術を移転できることをほのめかしながら、韓国に圧力をかけているということになります。ウクライナに砲弾を輸出すれば、ロシアは北朝鮮に軍事技術を移転するとの、いわば脅しです。これは当然、アメリカや欧州各国に向けたものでもあります。 とはいえ、客観的に言えば、ロシアが北朝鮮に大規模な軍事技術を移転する可能性はなくはないですが、高くはないと思います。偵察衛星関連、通常兵器関連の技術移転は可能です。しかし、弾道ミサイルや核兵器に関する技術は事実上、不可能です。 Q:2023年11月に北朝鮮は、軍事偵察衛星の発射に成功したと発表しましたが、これにロシアの技術が利用されたとする見方もあります。 A:偵察衛星への技術移転・供与の可能性は否定できません。北朝鮮が偵察衛星を持ったことは周辺国に対する不安材料にもなりますが、同時に肯定的な側面もあります。それは、北朝鮮側も偵察衛星を通じて周辺国の正しい情報をある程度把握しておくことで、誤った判断をする可能性が減るためです』、「ロシアは北朝鮮へ重要な軍事技術を移転できることをほのめかしながら、韓国に圧力をかけているということになります。ウクライナに砲弾を輸出すれば、ロシアは北朝鮮に軍事技術を移転するとの、いわば脅しです」、なるほど。
・『核兵器の技術移転・協力はありえない  朝鮮半島の緊張状態が続いている中で、戦争へとつながる要素は偶発的な衝突や誤判による過剰行為です。この点からみると、北朝鮮独自の情報源を持つことは決して悪いことではありません。ロシアもそのように、肯定的に考えている部分もあります。 Q:ロシアが北朝鮮に核兵器技術を移転する可能性がないのは、どうしてでしょうか。 A:アメリカは核兵器の拡散に神経を使っていますが、ロシアも核兵器の拡散を最も恐れています。仮に北朝鮮に核心的な技術を提供・移転して北朝鮮が核兵器の製造を完成させ、ひいては高度化させた場合、ロシア自身が核兵器保有国を誕生させたという悪い例をつくってしまうことになるからです。 ロシアの周辺国に北朝鮮の経験が移転され、ロシアの安保環境が悪化することをロシアは極度に恐れます。ロシアの場合、ベラルーシのほかに安心できる国はありません。これは中国もそうでしょう。 中国も核兵器を持っていますが、仮に北朝鮮が核兵器を完成させ、それが拡散してしまうと周辺国が核兵器を持つ可能性が一気に高まってしまいます。これは、ロシアにとっても中国にとっても、最悪のシナリオです。 Q:ロシアと北朝鮮との経済関係が拡大しているとの指摘もあります。 A:実はこの2国間で、一般的な貿易が活発化する可能性はほとんどないと思います。まず、これまでの北朝鮮とロシア(ソ連)との経済交流を振り返ってみると、ロシア側が国家予算を使って経済交流を後押しした場合にのみ、2国間の貿易規模が拡大しているという歴史があります。) 基本的な理由もあります。北朝鮮が国際市場で販売できる品目のうち、ロシアが関心を持つような品目はほとんどありません。北朝鮮は石炭や鉄鉱石など天然資源を持っていますが、これら品目はロシアがより豊富に持っているものです。海産物などもそうです。 たった一つ、ロシアが大きな関心を持っている品目があります。北朝鮮の労働力です。これまでもロシア領内で多くの北朝鮮労働者が働いてきました。ウクライナ戦争も続いており、ロシアはより多くの労働力を必要としています。 ロシアにとって需要があるのは人材です。だからこそ、北朝鮮の労働力は魅力的です。賃金はロシア人より安くて済むし、過度な要求もしない。北朝鮮という国家が間に入るので、ストライキといった面倒なことは起きません。労働者のロシアへの派遣が今後、活発化する可能性は高いと思います。 しかし、ロシア政府が北朝鮮との交流拡大のために支援するかどうかは未知数です。現時点では、ロシア政府にそのような意思があるように見えません。ロシアにとって北朝鮮は、戦略的な価値がそれほど高くないためです』、「ロシアが大きな関心を持っている品目があります。北朝鮮の労働力です。これまでもロシア領内で多くの北朝鮮労働者が働いてきました。ウクライナ戦争も続いており、ロシアはより多くの労働力を必要としています。 ロシアにとって需要があるのは人材です。だからこそ、北朝鮮の労働力は魅力的です。賃金はロシア人より安くて済むし、過度な要求もしない。北朝鮮という国家が間に入るので、ストライキといった面倒なことは起きません。労働者のロシアへの派遣が今後、活発化する可能性は高いと思います」、「北朝鮮の労働力は魅力的です。賃金はロシア人より安くて済むし、過度な要求もしない。北朝鮮という国家が間に入るので、ストライキといった面倒なことは起きません」、「ロシア」にとってはまさに干天の慈雨だ。
・『北朝鮮が持つ戦略的価値は中国にメリット  Q:ウクライナ戦争が勃発し世界が多極化する兆しがはっきりとしてきた中で、それでも北朝鮮とロシア、中国の3カ国が連帯を強めているように思えます。 中国にとって北朝鮮は、ロシアよりもはるかに戦略的価値が高い国です。北朝鮮が朝鮮半島での緩衝地帯という地政学的な意味もある。北朝鮮の輸出品目には、石炭など中国で需要がありよく売れる品目が少なくありません。中国経済の力からすれば、北朝鮮を支援するにしてもその負担はとても小さくメリットが大きいと言えます。 東アジアのこれら3カ国にとって、核となるのはやはり中国です。ロシアと北朝鮮との関係よりは、今こそ関心が高まっていますが、中朝関係ほどは重要にはならないでしょう。 Q:これら3カ国には「反米」的という共通項はありますが、今後も連帯は深まるでしょうか。 A:実は、この3カ国関係はとても深刻な問題を抱えています。例えばGDPで見ると、中国・ロシア・北朝鮮は600:50:1になります。経済的にはあまりにも不平等な関係です。 また、「反米」といった価値観でいえば、まさに反米主義と自由民主主義を拒否するという点以外で、共有できるものがありません。確かにアメリカ中心の世界秩序に対する不満が強く、アメリカが言う「ゲームのルール」に反発しています。) そのため、確かにこれら3カ国はアメリカに対してうるさく反発・攻撃しますが、一方でアメリカと妥協できることを夢見ています。問題は、アメリカがこれら3カ国が望む条件で妥協する考えがいっさいない、ということです。 お互いに不信感を拭いきれない関係でもあります。中国からみると、ロシアは19世紀に沿海州など、本来は中国の領土だった部分を「盗んだ」列強の1つです。北朝鮮はやたら自尊心は強いが非合理主義、そして冒険主義が強い国家です。 ロシアはアジアの国家に対して無視、軽視する傾向が根強い。ロシアのエリート層が客観的な視野を持っているとしても、中国に対し心からパートナーとなりえるとは考えづらいでしょう。 北朝鮮からすれば、この国はもともと他国に対する不信感が強い。隣国の中国であっても、「内政干渉をしばしば行う危険な大国」だと思っています』、「中国からみると、ロシアは19世紀に沿海州など、本来は中国の領土だった部分を「盗んだ」列強の1つです。北朝鮮はやたら自尊心は強いが非合理主義、そして冒険主義が強い国家です。 ロシアはアジアの国家に対して無視、軽視する傾向が根強い・・・中国に対し心からパートナーとなりえるとは考えづらいでしょう」、なるほど。
・『ロ中朝の3カ国関係の結びつきは強くない  Q:3カ国の関係を今後もつなぎ止めるものはありますか。 A:もしロシアで政権交代といったことが生じれば、ロシアはこの3カ国関係から抜け出すでしょう。現時点に限ってみれば、この3カ国関係に加わったことで、砲弾や弾薬を受け取ることができます。 一方で、中国は前述したような戦略的な利益のために、北朝鮮への支援を今後も継続していくと思います。 北朝鮮も国連による経済制裁が重くのしかかっている限り、中国に依存する戦略を放棄しないでしょう。内心、北朝鮮はこんな戦略を好ましいとは思っていませんが、代案を探せずにいます。 金総書記は、自身が政権を継承した2012年から2018年ごろまで続けた市場経済的な改革を放棄しました。そして、住民監視を強化するために有利な中央計画経済を一定程度、復活させました。米中対立が続く中、このような北朝鮮の政策は今後5年から10年は変化を見せないでしょう』、「現時点に限ってみれば、この3カ国関係に加わったことで、砲弾や弾薬を受け取ることができます。 一方で、中国は前述したような戦略的な利益のために、北朝鮮への支援を今後も継続していくと思います。 北朝鮮も国連による経済制裁が重くのしかかっている限り、中国に依存する戦略を放棄しないでしょう・・・金総書記は、自身が政権を継承した2012年から2018年ごろまで続けた市場経済的な改革を放棄しました。そして、住民監視を強化するために有利な中央計画経済を一定程度、復活させました。米中対立が続く中、このような北朝鮮の政策は今後5年から10年は変化を見せないでしょう」、拉致問題への言及はないが、「北朝鮮の政策は今後5年から10年は変化を見せないでしょう」、というのでは、拉致問題の進展も期待できぞうにないようだ。

次に、1月23日付け東洋経済オンラインが掲載した 中国・北朝鮮ウォッチャーの中野 鷹氏による「北朝鮮とロシアの関係に中国が激怒していた! ロ朝首脳会談にご立腹、中国人の北朝鮮入国を禁止」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/729386
・『世界的なコロナ禍が収束する中、北朝鮮の動向に関心が持たれている。ミサイル発射など軍事面での行動が目を引くが、実は自国と海外との往来をいつ解放するのかにも注目が高まっている。2020年1月にコロナの拡大を防ぐため中朝国境を封鎖して以来、正式に解除されていないためだ。貿易など細々とした対外関係は行われているが、そのような中、「本格開放のシグナル?」とも思える動きが見えた。 2024年1月12日、ロシアの旅行会社が「北朝鮮へのスキーツアーを実施する」と、アメリカ政府系ラジオの自由アジア放送(RFA)が伝えた。 観光目的での北朝鮮訪問が実現すれば2020年1月22日、新型コロナウイルスの感染拡大防止を理由に北朝鮮が一切の入国を停止した後で初めてのこととなる。 この報道を契機に、中国の旅行会社からは「なぜロシアからなのか。信じられない」との落胆の声が聞こえてくる』、興味深そうだ。
・『中国の旅行社が落胆する理由  翌1月13日、アメリカ・CNNは、2023年12月に北朝鮮を訪問したロシアのオレグ・コジェミャコ沿海地方知事との会談で、北朝鮮当局と観光ツアーの再開が議題となった可能性があると伝えている。 ロシアの旅行会社が主催するツアーは、2024年2月9日にロシア沿海州のウラジオストクから空路で平壌へ入る計画のようだ。現時点では70人の参加が確定しているという。 旅行日程は、3泊4日で費用は1人750ドル(約11万円)。ツアーの目玉は、北朝鮮東部・元山に近い馬息嶺(マシンリョン)スキー場でのスキー観光となるようだ。 前述のRFAは、ロシアメディアの情報として「観光の本格再開は4月とされ、今回2月実施のスキーツアーは試験的なプレ実施との位置づけだ」とも伝えている。 こうした一連の報道を見ると、北朝鮮旅行は現在ロシアがイニシアティブを取っているように思える。だが、外国人訪朝者の95%強を占めてきた北朝鮮の「お得意様」中国はどうなっているのか。) 今回、中国が後れを取ったのは、中国政府が北朝鮮への人的往来を無期限延期するという、実質的な「制裁」を課していたことが関係筋の証言で浮かび上がってきた。 ロシア・ウラジオストクの旅行社ボストーク・イントゥール社による北朝鮮スキーツアーのポスター。「山岳スキーリゾート馬息嶺」と名づけ、3泊4日のツアーとなっている(写真・同社のホームページより) 実は2023年9月25日、日本のNHKや朝日新聞をはじめとする日本メディアが、「北朝鮮が9月25日から外国人の入国を許可。国営中国中央テレビ(CCTV)が伝える」と大きく報じていた。 しかし、その後も中国から北朝鮮への出入国は正常化されるどころか、北朝鮮から中国への人的往来もコロナ禍前の水準ほどに戻ったとの情報は確認できない』、「今回、中国が後れを取ったのは、中国政府が北朝鮮への人的往来を無期限延期するという、実質的な「制裁」を課していたことが関係筋の証言で浮かび上がってきた」、なるほど。
・『延び延びにされてきた北朝鮮入国  中朝国境の遼寧省・丹東にある国営旅行会社の社長は、「北朝鮮の最高指導者のロシア訪問が、中国政府が人的往来を止めたきっかけ」と打ち明ける。 すなわち、2023年9月12日からの北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記がロシア極東訪問してプーチン大統領との首脳会談を行ったことが、中国の習近平国家主席の逆鱗に触れ、結果として制裁を課したということだ。 この国営旅行会社は、中国人向け北朝鮮旅行手配では最大手となる。国営企業なので丹東駅から平壌駅までの国際列車の乗車券も優先的に取得できるなど、北朝鮮に関する旅行業界での力は絶大なものを持つ。 また、これまで北朝鮮の旅行業を「自分がリードしてきた」という自負も強い。だからこそ、今回の再開1号ツアーがロシアに取られたことは、さぞかしがっかりさせられたことだろう。 では、2020年に北朝鮮が国境を閉鎖して以降、中朝国境ではどのような動きを見せてきたのか。とくに2023年1月以降の動きを振り返ってみたい。) 2023年1月8日、中国・吉林省の琿春と北朝鮮の羅先特別市のイミグレーション圏河口岸(出入国審査場)の封鎖が解除された。そして、車両や人的往来を限定再開させた。 行けるのは羅先のみと限定されており、平壌など他の都市へ移動は制限されたままだ。また、観光客も実質的に通過することができない。 その後、国境付近は穏やかだったが、再びここが注目を集めたのは2023年8月16日に丹東との国境の封鎖が解除され、北朝鮮のテコンドー選手団が国際大会に参加するために中国へ入国した時だ。平壌からの入国者は3年半ぶりだった』、「2023年9月12日からの北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記がロシア極東訪問してプーチン大統領との首脳会談を行ったことが、中国の習近平国家主席の逆鱗に触れ、結果として制裁を課したということだ」、「中国の習近平国家主席」にしては大人げない態度だ。
・『2023年下半期から徐々に増えてきたが…  2023年8月末には丹東からの国際列車に加え、北京や瀋陽からの北朝鮮国営・高麗航空が限定的に運行が再開され、コロナ禍で帰国できなかった北朝鮮人外交官や労働者などの帰国が確認されている。 そして9月16日、中国・杭州で開催されたアジア大会へ参加する選手や関係者など約200人が中国へ入国している。 また8月末からは中国当局が拘束していた脱北者の強制送還が始まった。10月9日には脱北者600人を一斉に送還し、これまで約2600人が北朝鮮へ強制送還されたと、韓国メディアの報道がある。 このように、間欠的に、かつゆっくりと中朝国境の人的往来が正常化されるような動きがあった。 とくに2023年8月中旬、北京の北朝鮮大使館は、関係する貿易・旅行関係者向けに「9月24日前後から人的往来を再開する」と通知を出した。通知を読むと、中朝が合意した内容だと読み取れる内容だった。) 筆者は、この北朝鮮大使館から通知があったことを関係筋から聞いていたので「9月25日、北朝鮮が外国人の入国許可」の報道には驚くことはなかった。強いて言えば、中国人以外の外国人向けの観光業も同時に再開させるとの直前情報に驚いたくらいだ。 実は当初、中国の関係筋から聞いていたのは、以下のような内容だった。 まず先行して中国人を、それも観光目的ではなく、出張者などから往来を再開させ、中国人の北朝鮮旅行は中国で最大の連休期間となる10月1日の国慶節(建国記念日)あたりから再開させる。日本人を含むその他の外国人は、早くて10月末から再開させるのではないか、というものだった』、中国サイドの勝手な思い入れは外れたようだ。
・『往来を「無期限延期」にした理由  かなりハイペースのスケジュールに感じられたため、「観光再開は予想以上に早い。それだけ、北朝鮮の経済状況が悪いのだろう」と受け取っていた。 ところが、前述したように、9月25日に中国メディアが報じたのにもかかわらず、その後は「人的往来が再開した」との報道がパタリと途絶えてしまった。 中国メディアが伝えた情報は、本来のテレビによる報道ではなく、インターネット上での記事だったようだが、その後に削除されたようで今ではその報道を確認できていない。 いったん中国メディアが報じたのにもかかわらず、結局実行されなかった大きな理由は、前述の丹東の国営旅行会社社長が明かしたように、中国政府が金正恩・プーチン会談に激怒し、9月25日に人的往来再開で中朝合意していた約束を中国政府が一方的に反故にし、無期限延期にしたことだろう。 反故にしたタイミングが直前すぎたことも、結局は誤報の原因となった可能性もありそうだ。) ただ、米中対立が深まる中、北朝鮮と中国、ロシアは緩やかな連帯が深まっているとされている情勢なのに、中国政府はなぜ北朝鮮がロシアへ接近したことにそこまで反発したのか。 中国とロシアの関係はよい――。日本にいると中国はロシアに近く、現在のウクライナ戦争についても、中国はロシアよりだとみている日本人は多いと思う。 中国国内では、地元のSNS「微博(ウェイボー)」などで見られるコメントを見ると、ロシア支持のコメントが圧倒的に多い。ウクライナを支持し、戦争そのものへの批判は大部分が削除されていると思われる。これは中国当局による情報統制の一環だろう』、「米中対立が深まる中、北朝鮮と中国、ロシアは緩やかな連帯が深まっているとされている情勢なのに、中国政府はなぜ北朝鮮がロシアへ接近したことにそこまで反発したのか」、中国人にしたら、「北朝鮮」は朝鮮戦争の時に膨大な犠牲を払って守ってやったのに、「ロシア」にくっついたことで、プライドを壊されたためなのかも知れない。
・『日本人が思うほど関係は強くない  実は、中ロ関係は日本人が思う以上に薄っぺらで脆弱な関係だ。中ロ朝の3カ国とも、自分たちの権威主義体制維持を脅かすアメリカに反対するという1点で、しかも細くつながっているだけだ。 互いの利己的な国益のために、水面下ではそうとうなつばぜり合いが繰り返されており、蜜月関係とはとうてい言えるような関係ではない。 2024年1月13日に行われた台湾の総統選挙の結果もあり、中国の関心は台湾に集中しているような情勢ではある。しかし、中国の現実的な狙いは「台湾統一」ではなく、ロシア極東の再併合なのではないのかと思えるフシがある。 実際に、そう指摘する声がロシアと国境を接する吉林省の実業家や旅行業関係者などからもしばしば出されている。 現在の吉林省を含む旧満州、すなわち東北3省の人たちは、現在のウラジオストクを含むロシア沿海地方、アムール州、ユダヤ自治州、ザバイカリエ地方などを「外東北」(日本では外満州)と呼び、ウラジオストクを旧名の「海参崴」と呼び続ける人がいる。 それは、「外満州はロシアと結ばされた不平等条約によってロシア帝国に奪われた土地」と認識している人が少なくないからだ。) 世界史の教科書をひもとくと、1858年のアイグン条約と1860年の北京条約で本来保有していた広大な領地がロシアへ割譲されている。 もちろん、習近平政権は一度も「奪われた外東北を奪還する」などと口にしたことはない。だが、吉林省在住の中国人たちに話を聞くと、そんな清朝時代の最大領土を取り戻すという「中国の夢」が見え隠れするのだ。 中国政府としては武力を用いず、かつ国際社会との摩擦も最小限に抑えてかつての領土を併合したい。そのためにロシアの国力低下を虎視眈々と待っているのだという声も、実は少なくはない』、「現在の吉林省を含む旧満州、すなわち東北3省の人たちは、現在のウラジオストクを含むロシア沿海地方、アムール州、ユダヤ自治州、ザバイカリエ地方などを「外東北」(日本では外満州)と呼び、ウラジオストクを旧名の「海参崴」と呼び続ける人がいる。 それは、「外満州はロシアと結ばされた不平等条約によってロシア帝国に奪われた土地」と認識している人が少なくないからだ。) 世界史の教科書をひもとくと、1858年のアイグン条約と1860年の北京条約で本来保有していた広大な領地がロシアへ割譲されている・・・吉林省在住の中国人たちに話を聞くと、そんな清朝時代の最大領土を取り戻すという「中国の夢」が見え隠れするのだ。 中国政府としては武力を用いず、かつ国際社会との摩擦も最小限に抑えてかつての領土を併合したい。そのためにロシアの国力低下を虎視眈々と待っているのだという声も、実は少なくはない」、なるほど。
・『中国が抱く「沿海州再併合」  中国は、ロシアがウクライナに勝とうが負けようが中国の国益になるようなポジションで動いている。ウクライナ戦争では、仮にロシアが勝利しても、国力や国際的な信用、プレゼンスも大幅低下することは避けられない。敗北すれば、ロシア領土が複数に分割される、などの話も飛び交っている。 前者であれば、疲弊したロシアに対し外満州を金で割譲することを持ちかける。後者であれば、分割された領土に対し歴史的な経緯を主張したり、高麗人(朝鮮半島からロシア沿海地方へ移住した朝鮮民族)を中国の少数民族朝鮮族の同胞だと定義し、少数民族保護などの名目で再併合するシナリオも考えられる。 こうしてみると、中国はロシアがどちらに転んでも自分たちに利益となるような態度をとっているといえる。 しかも、中国による「極東再併合」は、今に始まったことではない。すでに10年以上前から、吉林省の実業家を中心にロシア沿海地方の農地を買収し、中国人を移住させる大規模耕作地を増やしてきた。この件は日本のメディアでも報じられたことがある。) コロナ禍で一時的に中ロ間の人的往来は止まっていたが、2023年1月8日に陸路の中ロ国境封鎖が解除された。 しかし、人的往来が停止している間も中ロの貨物輸送は増えており、ロシア政府系通信社のスプートニク中国語版は2023年1月12日、ロシア・マハリノと中国・琿春間の鉄道による貨物量が2022年には約350万トンとなり、前年比22%増を記録していると伝えた。 さらに、ロシア産石炭の輸出が急増しており、そのため、検問所を24時間体制にし、貨物列車も1日5本を増便させたと伝えている』、「ウクライナ戦争では、仮にロシアが勝利しても、国力や国際的な信用、プレゼンスも大幅低下することは避けられない。敗北すれば、ロシア領土が複数に分割される、などの話も飛び交っている。 前者であれば、疲弊したロシアに対し外満州を金で割譲することを持ちかける。後者であれば、分割された領土に対し歴史的な経緯を主張したり、高麗人(朝鮮半島からロシア沿海地方へ移住した朝鮮民族)を中国の少数民族朝鮮族の同胞だと定義し、少数民族保護などの名目で再併合するシナリオも考えられる。 こうしてみると、中国はロシアがどちらに転んでも自分たちに利益となるような態度をとっているといえる・・・すでに10年以上前から、吉林省の実業家を中心にロシア沿海地方の農地を買収し、中国人を移住させる大規模耕作地を増やしてきた。この件は日本のメディアでも報じられたことがある。) コロナ禍で一時的に中ロ間の人的往来は止まっていたが、2023年1月8日に陸路の中ロ国境封鎖が解除された。 しかし、人的往来が停止している間も中ロの貨物輸送は増えており、ロシア政府系通信社のスプートニク中国語版は2023年1月12日、ロシア・マハリノと中国・琿春間の鉄道による貨物量が2022年には約350万トンとなり、前年比22%増を記録していると伝えた。 さらに、ロシア産石炭の輸出が急増しており、そのため、検問所を24時間体制にし、貨物列車も1日5本を増便させた』、中国人は極めて長期的視点で着々と併合に向けた準備を進めているようだ。
・『ロシア沿海州が中国の租借地化  中国人実業家によると、今では農地だけではなく、鉱山や港などの長期使用権なども獲得していると胸を張る。まるで、ロシア沿海州が中国の租借地状態になりつつあるようだ。 中国共産党の一党支配という国家体制上、こうした沿海州へ進出する中国人たちの背後には、中国政府の意向が働いていることは容易に想像がつく。 そんな中国政府が着々と狙っているエリアに、金正恩総書記がコロナ後、初の外国訪問として訪れた。だから、習近平国家主席がへそを曲げたという想像もつく。しかも、金総書記は2019年にも同じロシア沿海州を訪問し、プーチン大統領と初めての首脳会談をおこなった。 ロシア側からみても、中国の極東再併合の狙いを認識しており、そうした中国を牽制するために、2度も金総書記をロシア沿海州へ厚遇してまで招き首脳会談を開催した可能性がなくもない。 そして北朝鮮は、中ロ間の間隙を利用するかのようにロシアへ接近して、武器を供与し、その見返りとしてミサイル技術をロシアから獲得。さらには、ロシアへ北朝鮮への観光ツアー再開を打診した――。 こうしてみると、中ロ関係を悪化させることが北朝鮮の国益だといわんばかりに動いているようにも見えてくる。) 北朝鮮に激怒し、へそを曲げた状態とされる中国は、今後どのような動きを見せるだろうか。 1つは、中国政府が今後も態度を硬化させて、中国を経由する外国人をも含めた人的往来の再開を無期限延期したままにする。 あるいは、振り上げた拳をそのままにして、拳を振り上げなかったことにし、ロシアがやっているようなことに合わせて人的往来、つまり、北朝鮮観光をあっさりと「許可」して再開させる可能性も十分にある』、「北朝鮮に激怒し、へそを曲げた状態とされる中国は、今後どのような動きを見せるだろうか。 1つは、中国政府が今後も態度を硬化させて、中国を経由する外国人をも含めた人的往来の再開を無期限延期したままにする。 あるいは、振り上げた拳をそのままにして、拳を振り上げなかったことにし、ロシアがやっているようなことに合わせて人的往来、つまり、北朝鮮観光をあっさりと「許可」して再開させる可能性も十分にある」、どちらになるのだろう。
・『もう1つの「中国の夢」  それは、中国も国内経済が悪く、国民に対するガス抜きを行うことが不可欠となっているためだ。 中国政府にとって台湾問題は自国の求心力を高める重要な問題だ。 また極東再併合は、清朝最大領土を奪還する「中国の夢」にも矛盾することもない。台湾問題と比較し、獲得できる資源とリスクを天秤にかけると、どちらに本腰を入れるべき夢なのか。 万が一、ウクライナ戦争の行方次第でロシアが崩壊・分割されるような事態になれば、中国はどさくさに紛れて清朝が領土とみなしたこともないサハリンさえも取りに動くだろう。これは決して筆者の空想ではない。実際にこんな話題が、すでに東北3省の中国人実業家たちからはささやかれているのが現状だ』、「万が一、ウクライナ戦争の行方次第でロシアが崩壊・分割されるような事態になれば、中国はどさくさに紛れて清朝が領土とみなしたこともないサハリンさえも取りに動くだろう。これは決して筆者の空想ではない。実際にこんな話題が、すでに東北3省の中国人実業家たちからはささやかれているのが現状だ」、「東北3省の中国人実業家たちからはささやかれている」というのには心底驚いた。  
タグ:北朝鮮問題 (その23)(ロシアにとって北朝鮮との協力には魅力がない ロシア出身の北朝鮮専門家が語るロ朝関係のリアル、北朝鮮とロシアの関係に中国が激怒していた! ロ朝首脳会談にご立腹、中国人の北朝鮮入国を禁止) 東洋経済オンライン「ロシアにとって北朝鮮との協力には魅力がない ロシア出身の北朝鮮専門家が語るロ朝関係のリアル」 「金総書記が事実上、数十年間にわたって北朝鮮が実施してきた平和統一路線を失敗として認めた・・・韓国は「同族関係」ではなく「交戦国」だと言及」、扱いが現実を直視したものになったようだ。 「北朝鮮側が「交戦国」との言葉もそうですが、これほど強硬な警告と脅威を与えたことはありません。厳密に言えば、彼らが1990年代初頭から時々繰り返してきた「ソウルを火の海にする」といった脅し文句よりもはるかに強いものです」、なるほど。 「ロシアは北朝鮮へ重要な軍事技術を移転できることをほのめかしながら、韓国に圧力をかけているということになります。ウクライナに砲弾を輸出すれば、ロシアは北朝鮮に軍事技術を移転するとの、いわば脅しです」、なるほど。 「ロシアが大きな関心を持っている品目があります。北朝鮮の労働力です。これまでもロシア領内で多くの北朝鮮労働者が働いてきました。ウクライナ戦争も続いており、ロシアはより多くの労働力を必要としています。 ロシアにとって需要があるのは人材です。だからこそ、北朝鮮の労働力は魅力的です。賃金はロシア人より安くて済むし、過度な要求もしない。北朝鮮という国家が間に入るので、ストライキといった面倒なことは起きません。労働者のロシアへの派遣が今後、活発化する可能性は高いと思います」、 「北朝鮮の労働力は魅力的です。賃金はロシア人より安くて済むし、過度な要求もしない。北朝鮮という国家が間に入るので、ストライキといった面倒なことは起きません」、「ロシア」にとってはまさに干天の慈雨だ。 「中国からみると、ロシアは19世紀に沿海州など、本来は中国の領土だった部分を「盗んだ」列強の1つです。北朝鮮はやたら自尊心は強いが非合理主義、そして冒険主義が強い国家です。 ロシアはアジアの国家に対して無視、軽視する傾向が根強い・・・中国に対し心からパートナーとなりえるとは考えづらいでしょう」、なるほど。 「現時点に限ってみれば、この3カ国関係に加わったことで、砲弾や弾薬を受け取ることができます。 一方で、中国は前述したような戦略的な利益のために、北朝鮮への支援を今後も継続していくと思います。 北朝鮮も国連による経済制裁が重くのしかかっている限り、中国に依存する戦略を放棄しないでしょう・・・ 金総書記は、自身が政権を継承した2012年から2018年ごろまで続けた市場経済的な改革を放棄しました。そして、住民監視を強化するために有利な中央計画経済を一定程度、復活させました。米中対立が続く中、このような北朝鮮の政策は今後5年から10年は変化を見せないでしょう」、拉致問題への言及はないが、「北朝鮮の政策は今後5年から10年は変化を見せないでしょう」、というのでは、拉致問題の進展も期待できぞうにないようだ。 東洋経済オンライン 中野 鷹氏による「北朝鮮とロシアの関係に中国が激怒していた! ロ朝首脳会談にご立腹、中国人の北朝鮮入国を禁止」 「今回、中国が後れを取ったのは、中国政府が北朝鮮への人的往来を無期限延期するという、実質的な「制裁」を課していたことが関係筋の証言で浮かび上がってきた」、なるほど。 「2023年9月12日からの北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記がロシア極東訪問してプーチン大統領との首脳会談を行ったことが、中国の習近平国家主席の逆鱗に触れ、結果として制裁を課したということだ」、「中国の習近平国家主席」にしては大人げない態度だ。 中国サイドの勝手な思い入れは外れたようだ。 「米中対立が深まる中、北朝鮮と中国、ロシアは緩やかな連帯が深まっているとされている情勢なのに、中国政府はなぜ北朝鮮がロシアへ接近したことにそこまで反発したのか」、中国人にしたら、「北朝鮮」は朝鮮戦争の時に膨大な犠牲を払って守ってやったのに、「ロシア」にくっついたことで、プライドを壊されたためなのかも知れない。 「現在の吉林省を含む旧満州、すなわち東北3省の人たちは、現在のウラジオストクを含むロシア沿海地方、アムール州、ユダヤ自治州、ザバイカリエ地方などを「外東北」(日本では外満州)と呼び、ウラジオストクを旧名の「海参崴」と呼び続ける人がいる。 それは、「外満州はロシアと結ばされた不平等条約によってロシア帝国に奪われた土地」と認識している人が少なくないからだ。) 世界史の教科書をひもとくと、1858年のアイグン条約と1860年の北京条約で本来保有していた広大な領地がロシアへ割譲されている・・・吉林省在住の中国人たちに話を聞くと、そんな清朝時代の最大領土を取り戻すという「中国の夢」が見え隠れするのだ。 中国政府としては武力を用いず、かつ国際社会との摩擦も最小限に抑えてかつての領土を併合したい。そのためにロシアの国力低下を虎視眈々と待っているのだという声も、実は少なくはない」、なるほど。 「ウクライナ戦争では、仮にロシアが勝利しても、国力や国際的な信用、プレゼンスも大幅低下することは避けられない。敗北すれば、ロシア領土が複数に分割される、などの話も飛び交っている。 前者であれば、疲弊したロシアに対し外満州を金で割譲することを持ちかける。後者であれば、分割された領土に対し歴史的な経緯を主張したり、高麗人(朝鮮半島からロシア沿海地方へ移住した朝鮮民族)を中国の少数民族朝鮮族の同胞だと定義し、少数民族保護などの名目で再併合するシナリオも考えられる。 こうしてみると、中国はロシアがどちらに転んでも自分たちに利益となるような態度をとっているといえる・・・すでに10年以上前から、吉林省の実業家を中心にロシア沿海地方の農地を買収し、中国人を移住させる大規模耕作地を増やしてきた。この件は日本のメディアでも報じられたことがある。) コロナ禍で一時的に中ロ間の人的往来は止まっていたが、2023年1月8日に陸路の中ロ国境封鎖が解除された。 しかし、人的往来が停止している間も中ロの貨物輸送は増えており、ロシア政府系通信社のスプートニク中国語版は2023年1月12日、ロ シア・マハリノと中国・琿春間の鉄道による貨物量が2022年には約350万トンとなり、前年比22%増を記録していると伝えた。 さらに、ロシア産石炭の輸出が急増しており、そのため、検問所を24時間体制にし、貨物列車も1日5本を増便させた』、中国人は極めて長期的視点で着々と併合に向けた準備を進めているようだ。 「北朝鮮に激怒し、へそを曲げた状態とされる中国は、今後どのような動きを見せるだろうか。 1つは、中国政府が今後も態度を硬化させて、中国を経由する外国人をも含めた人的往来の再開を無期限延期したままにする。 あるいは、振り上げた拳をそのままにして、拳を振り上げなかったことにし、ロシアがやっているようなことに合わせて人的往来、つまり、北朝鮮観光をあっさりと「許可」して再開させる可能性も十分にある」、どちらになるのだろう。 「万が一、ウクライナ戦争の行方次第でロシアが崩壊・分割されるような事態になれば、中国はどさくさに紛れて清朝が領土とみなしたこともないサハリンさえも取りに動くだろう。これは決して筆者の空想ではない。実際にこんな話題が、すでに東北3省の中国人実業家たちからはささやかれているのが現状だ」、「東北3省の中国人実業家たちからはささやかれている」というのには心底驚いた。
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哲学(その4)(【出口治明】ロック、ホッブズ、ルソー、モンテスキューとは何者か?、「グレタさん」は現代の「イエスかブッダ」なのか 「人類史の移行期」に生まれる価値観と倫理、なぜハイデガー哲学は 母国ドイツでタブーとされるのか? マルクス・ガブリエルも誤読した?) [人生]

哲学については、昨年12月25日に取上げた。今日は、(その4)(【出口治明】ロック、ホッブズ、ルソー、モンテスキューとは何者か?、「グレタさん」は現代の「イエスかブッダ」なのか 「人類史の移行期」に生まれる価値観と倫理、なぜハイデガー哲学は 母国ドイツでタブーとされるのか? マルクス・ガブリエルも誤読した?)である。

先ずは、2019年9月28日付けダイヤモンド・オンライン「【出口治明】ロック、ホッブズ、ルソー、モンテスキューとは何者か?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/215189
・『世界1200都市を訪れ、1万冊超を読破した“現代の知の巨人”、稀代の読書家として知られる出口治明APU(立命館アジア太平洋大学)学長。歴史への造詣が深いことから、京都大学の「国際人のグローバル・リテラシー」特別講義では世界史の講義を受け持った。 その出口学長が、3年をかけて書き上げた大著が、なんと大手書店のベストセラーとなり、話題となっている。BC1000年前後に生まれた世界最古の宗教家・ゾロアスター、BC624年頃に生まれた世界最古の哲学者・タレスから現代のレヴィ=ストロースまで、哲学者・宗教家の肖像100点以上を用いて、世界史を背骨に、日本人が最も苦手とする「哲学と宗教」の全史を初めて体系的に解説した本だ。なぜ、今、哲学だけではなく、宗教を同時に学ぶ必要があるのか? 脳研究者で東京大学教授の池谷裕二氏が絶賛、小説家の宮部みゆき氏が推薦、某有名書店員が激賞する『哲学と宗教全史』が、発売後たちまち第3刷が決まり、「日経新聞」にも大きく掲載された。 9月7日土曜14時、東京・八重洲ブックセンターに約80名が集結。満員御礼で行われた出版記念講演会の5回目を特別にお送りしよう』、興味深そうだ。
・『ロック、ホッブズ、ルソーは何を考えたか  フランス革命の前に、いろんな哲学者がいました。 有名なのは、ジョン・ロック(1632?1704)です。 人間は生まれながらに固有の平等の権利を持っていると説いた(自然法)。 人間は本来、自然法のもとでみんなが平等に暮らしていたと。ロックは国王の圧政に対していろんな理屈を考え出したのです。 自然状態で自分の平等の権利を持っていた人間はどうしたかといば、有名なホッブズ(1588?1679)対ルソー(1712?1778)の争いになる。 ホッブズは、みんなが自分の権利を主張するとケンカになると考えたのです。 「この土地は俺のもんや」「いや、俺の土地はここや」と境界線はいつの時代も曖昧です。 互いにケンカをしたらきりがない。 みなさんは「万人の万人に対する戦い」という言葉を聞いたことがあるでしょう。 ホッブズは、人間は放っておいたら、永遠に殴り合いをやっている。だからコモンウェルスによって、権力を持つ人がきちんと治めないと人間の生活は成り立たないと主張しました。 でも、ルソーは逆。 そもそも人間はみんな仲良く暮らしてきたと考えた。 だが、時として国王が圧政を行う。それに対抗する理屈を考える中で、いろんな「人権思想」が生まれてきたのです』、「ホッブズは、人間は放っておいたら、永遠に殴り合いをやっている。だからコモンウェルスによって、権力を持つ人がきちんと治めないと人間の生活は成り立たないと主張しました。 でも、ルソーは逆。 そもそも人間はみんな仲良く暮らしてきたと考えた。 だが、時として国王が圧政を行う。それに対抗する理屈を考える中で、いろんな「人権思想」が生まれてきたのです」、なるほど。
・『モンテスキューの「三権分立」  国王が好き勝手なことをやるなら、権力は分けなければいけない。 モンテスキュー(1689?1755)は、司法と立法と行政を分ける「三権分立」の思想を発表した。これは未だに生き残っていますね。分立させたら国王も好き勝手にはできない。もう一つの考え方もある。 権力を持っている人がどんどん悪いことをするなら、ロックが唱えた「抵抗権」がその代表ですが、人民が抵抗する権利を前面に出す。この2つが代表的な考え方ですね。 これも国王が勝手なことをしたから、みんなが必死に考えて、我々には本来抵抗する権利があるとか、生まれながらにして本来みんなは平等だとか、国王には単に統治の権利を委託しているだけだとか、権力自体を分散させようといった考え方が出てきたのです。 でも、この三権分立という考え方も、実は難しい。 これは、ホット・イシューなのであまり深くは立ち入りませんが、国と国とが「これで手打ちしよう」と約束したとします。 それは三権分立でいえば、行政と行政が、あるいは立法と立法が手を結ぶわけです。 でも、本当に権力が分立しているのなら、裁判所が立法や行政と違う判断をしても、「けしからん」と怒ることはできないのですよね。 三権が本当に分立していたら、別に行政や立法がどういおうと、裁判所は自分たち独自で判断するぞと。 そういう意味では、近代国家でつくられた理念は未だに生きているし、なかなか難しいし、理解が難しい面もあるのです。「司法と立法と行政を分ける「三権分立」の思想を発表した。これは未だに生き残っていますね。分立させたら国王も好き勝手にはできない。もう一つの考え方もある。 権力を持っている人がどんどん悪いことをするなら、ロックが唱えた「抵抗権」がその代表ですが、人民が抵抗する権利を前面に出す。この2つが代表的な考え方ですね・・・三権が本当に分立していたら、別に行政や立法がどういおうと、裁判所は自分たち独自で判断するぞと。 そういう意味では、近代国家でつくられた理念は未だに生きているし、なかなか難しいし、理解が難しい面もあるのです』、「「司法と立法と行政を分ける「三権分立」の思想を発表した。これは未だに生き残っていますね。分立させたら国王も好き勝手にはできない。もう一つの考え方もある。 権力を持っている人がどんどん悪いことをするなら、ロックが唱えた「抵抗権」がその代表ですが、人民が抵抗する権利を前面に出す。この2つが代表的な考え方ですね・・・三権が本当に分立していたら、別に行政や立法がどういおうと、裁判所は自分たち独自で判断するぞと。 そういう意味では、近代国家でつくられた理念は未だに生きているし、なかなか難しいし、理解が難しい面もあるのです。

次に、2020年1月27日付け東洋経済オンラインが掲載した京都大学こころの未来研究センター教授の広井 良典氏による「「グレタさん」は現代の「イエスかブッダ」なのか 「人類史の移行期」に生まれる価値観と倫理」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/325646
・『グレタ・トゥーンベリさんの気候変動問題への発言や活動が世界的な注目を集めている。 彼女の提言に対し賛否両論の議論が交わされているが、この「現象」自体はどのような意味を持っているのだろうか。 このたび『人口減少社会のデザイン』を上梓した広井良典氏が、人類が拡大・成長から成熟・定常化への“移行”期にあるという歴史的視点から論じる』、興味深そうだ。
・『「炎上」か「若者の反乱」か  スウェーデンの高校生グレタ・トゥーンベリさんの言動が世界的な注目を集めている。 二酸化炭素排出に伴う気候変動ないし地球温暖化問題を中心に据え、未来世代あるいは若者やこれから生まれてくる者たちのことを考慮しない現在の“大人”たちや政治家、支配層等々の意識・行動やその“偽善性”を容赦なく批判する内容やそのパフォーマンスが、文字どおり「賛否両論」の反応、あるいは賞賛と非難の両極の反応を引き起こしているのである。 それは世界を舞台にしたある種の“炎上”でもあり、あるいは地球環境問題を軸にした現代版“若者の反乱”という側面ももっているかもしれない。 以上、ここでの議論をグレタさんの話からまず始めたのだが、しかし本稿は彼女の主張そのものを論評することが主たる目的ではない。 そうではなく、グレタさんのような言動や主張、あるいはそれに関連するさまざまな現象が、もっと大きな歴史の流れ――いささか大げさに響くかもしれないが、人類の歴史――の中で、どのような意味をもっているかを私なりの視点から探ることが本稿の目的である。) 私自身は、グレタさんの言動をとりたてて“礼賛”しようとする考えは有していないが、しかし彼女の主張には、それを簡単に無視したり批判したりすることでは終わらない、何か重要な意味が含まれているのではないか、という基本的なスタンスをもっている』、「彼女の主張には、それを簡単に無視したり批判したりすることでは終わらない、何か重要な意味が含まれているのではないか、という基本的なスタンスをもっている」、なるほど。
・『人類史における「拡大・成長」と「成熟・定常化」  グレタさんが体現しているような主張ないし思想を、先ほど述べたように人類全体の歴史の中に位置づけて把握するにあたり、どうしても確認しておくべき基本的な認識についてまず述べてみたい。 すなわち、人類史を大きく俯瞰すると、それは人口や経済において「拡大・成長」と「成熟・定常化」というサイクルをこれまで3回繰り返してきており、しかも、(ここが最終的に重要なポイントなのだが)拡大・成長から成熟・定常化への“移行”期において、それまでに存在しなかったような革新的な思想や観念が生成するという点だ。 これは世界人口の長期推移について先駆的な研究を行ったアメリカの生態学者ディーヴェイの仮説的な図式を示したものであり、世界人口の拡大・成長と成熟・定常化に関する3つのサイクルが見て取れる。 すなわち、第1のサイクルは私たちの祖先である現生人類(ホモ・サピエンス)が約20万年前に地球上に登場して以降の狩猟採集段階であり、第2のサイクルは約1万年前に農耕が始まって以降の拡大・成長期とその成熟であり、第3のサイクルは、近代資本主義の勃興あるいは産業革命以降ここ300~400年前後の拡大・成長期である。 この意味では、私たちは今「第三の成熟・定常化」の時代を迎える入り口あるいは移行期に立っていることになる。 ちなみに、こうした人口推計をベースに1人当たりGDPに関する一定の仮定を加えて、アメリカの経済学者のデロングが「世界GDPの超長期推移」を推計している。これはごくラフな性格のものだが、上記の3つのサイクルがおぼろげながらも示唆されている。) ところで、ではそもそもなぜ、人類の歴史においてこうした人口や経済の拡大・成長と定常化のサイクルが起こるのだろうか。 (超長期の世界GDPの推移の図はリンク先参照) これは端的に言えば、人間による「エネルギー」の利用形態、あるいは少し強い言い方をすると、人間による“自然の搾取”の度合いという点と対応している。 つまり、栄養分ないし有機化合物を自らつくることができるのは植物(の光合成というメカニズム)だけなので、動物は植物を食べ、人間はさらにそれらを食べて生存を維持している。それが狩猟採集段階ということになるが、農耕が1万年前に始まったのは、食糧生産つまり植物の光合成を人間が管理し安定的な形で栄養を得る方法を見出したということである。 そして近代ないし工業化の時代になると、「化石燃料」と言われるように、数億年にわたって地下に蓄積した生物の死骸からできた石炭や石油を燃やし、エネルギーを得ることを人間は行うようになった。 言い換えれば、“数億年”という長い時間かかって蓄積された資源を、私たちは“数百年”でほとんど燃やし、使い尽そうとしているのであり、その燃焼の過程で生まれる二酸化炭素量の急激な増加が温暖化の大きな背景になっているのだ。 ここで、いま述べている人類史の話と冒頭に述べたグレタさんの議論が徐々につながっていくことになる』、「農耕が1万年前に始まったのは、食糧生産つまり植物の光合成を人間が管理し安定的な形で栄養を得る方法を見出したということである。 そして近代ないし工業化の時代になると、「化石燃料」と言われるように、数億年にわたって地下に蓄積した生物の死骸からできた石炭や石油を燃やし、エネルギーを得ることを人間は行うようになった。 言い換えれば、“数億年”という長い時間かかって蓄積された資源を、私たちは“数百年”でほとんど燃やし、使い尽そうとしているのであり、その燃焼の過程で生まれる二酸化炭素量の急激な増加が温暖化の大きな背景になっているのだ」、なるほど。
・『定常化への移行期における“文化的イノベーション”  以上のように、人間の歴史には「拡大・成長」と「成熟・定常化」のサイクルがあり、その3度目の定常化の時代を迎える入り口に立っているのが現在の私たちである。 そして、ここでとくに注目したいのは、人間の歴史における拡大・成長から成熟・定常化への移行期において、それまでには存在しなかったような何らかの新たな思想ないし価値、あるいは倫理と呼べるものが生まれたという点だ。 それはいわば“文化的イノベーション”とも呼べるような現象である。グレタさんの話と本稿の内容がより密接につながってくるのもこの点においてである。) 議論を駆け足で進めることになるが、しばらく前から人類学や考古学の分野で、「心のビッグバン(意識のビッグバン)」あるいは「文化のビッグバン」などと呼ばれている興味深い現象がある。例えば加工された装飾品、絵画や彫刻などの芸術作品のようなものが今から約5万年前の時期に一気に現れることを指したものである。 つまり、まさにこのときに、単なる自然の模写や、実用的な利用に尽きない、人間の「こころ」という固有の領域が生まれたのだ。 一方、人間の歴史を大きく俯瞰した時、もう1つ浮かび上がる精神的・文化的な面での大きな革新の時期がある。 それはヤスパースが「枢軸時代」、科学史家の伊東俊太郎が「精神革命」と呼んだ、紀元前5世紀前後の時代である。 この時期ある意味で奇妙なことに、現在に続く「普遍的な原理」を志向するような思想が地球上の各地で“同時多発的”に生まれた。すなわちインドでの仏教、中国での儒教や老荘思想、ギリシャ哲学、中東での(キリスト教やイスラム教の源流となる)旧約思想であり、それらは共通して、特定の部族を超えた「人間」という観念を初めてもつと同時に、物質的な欲望を超えた、新たな価値ないし倫理を説いた点に特徴をもつものだった。 いま「奇妙なことに」これらが“同時多発的”に生じたと述べたが、その背景ないし原因は何だったのだろうか』、「「心のビッグバン(意識のビッグバン)」あるいは「文化のビッグバン」などと呼ばれている興味深い現象がある。例えば加工された装飾品、絵画や彫刻などの芸術作品のようなものが今から約5万年前の時期に一気に現れることを指したものである。 つまり、まさにこのときに、単なる自然の模写や、実用的な利用に尽きない、人間の「こころ」という固有の領域が生まれたのだ・・・精神的・文化的な面での大きな革新の時期がある。 それはヤスパースが「枢軸時代」、科学史家の伊東俊太郎が「精神革命」と呼んだ、紀元前5世紀前後の時代である。 この時期ある意味で奇妙なことに、現在に続く「普遍的な原理」を志向するような思想が地球上の各地で“同時多発的”に生まれた。すなわちインドでの仏教、中国での儒教や老荘思想、ギリシャ哲学、中東での(キリスト教やイスラム教の源流となる)旧約思想であり、それらは共通して、特定の部族を超えた「人間」という観念を初めてもつと同時に、物質的な欲望を超えた、新たな価値ないし倫理を説いた点に特徴をもつものだった」、なるほど。
・『「物質的生産の量的拡大から精神的・文化的発展へ」  興味深いことに、最近の環境史(environmental history)と呼ばれる分野において、この時代、以上の各地域において、農耕の開発と人口増加が進んだ結果として、森林の枯渇や土壌の浸食などが深刻な形で進み、農耕文明がある種の資源・環境制約に直面しつつあったということが明らかにされてきている。 このように考えると、これは私の仮説であるが、枢軸時代ないし精神革命に生成した普遍思想(普遍宗教)は、そうした資源・環境的制約の中で、いわば「物質的生産の量的拡大から精神的・文化的発展へ」という新たな発展の方向を導くような思想として生じたと捉えられるのではないだろうか。 つまり、いわば外に向かってひたすら拡大していくような「物質的生産の量的拡大」という方向が環境・資源制約にぶつかって立ち行かなくなり、そうした方向とは異なる、すなわち資源の浪費や自然の搾取を極力伴わないような、精神的・文化的な発展への移行や価値の創発がこの時代に生じたのではないか。 読者の方はすでに気づかれたかと思うが、これは現在ときわめてよく似た時代状況である。つまり、ここ200~300年の間に加速化した産業化ないし工業化の大きな波が飽和し、また資源・環境制約に直面する中で、私たちは再び新たな「拡大・成長から成熟・定常化へ」の時代を迎えようとしているからだ。 一方、先ほどふれた「心のビッグバン」についても、それが同様のメカニズムで、狩猟採集文明の拡大・成長から定常化への移行の時期に生じたと考えてみるのは不合理なことではないだろう。 つまり狩猟採集段階の前半において、狩猟採集という生産活動とその拡大に伴ってもっぱら“外”に向かっていた意識が、有限な環境の中で資源的制約にぶつかる中で、いわば“内”へと反転し、そこに物質的な有用性を超えた装飾やアートへの志向、それらを含む「心」の生成、そして(死の観念を伴う)「自然信仰」が生まれたのではないだろうか。) 以上の議論をまとめると、狩猟採集段階における成熟・定常化への移行期に「心のビッグバン」が生じ、農耕社会における同様の時期に枢軸時代/精神革命の諸思想(普遍思想ないし普遍宗教)が生成し、両者はいずれも「物質的生産の量的拡大から精神的・文化的発展へ」という内容において共通していたと考えられるのではないか(以上について詳しくは『人口減少社会のデザイン』)。 そして、現在が人類史における第3の定常化の時代だとすれば、狩猟採集段階における「心のビッグバン」や、農耕段階における「枢軸時代/精神革命」に匹敵するような、根本的に新しい思想や価値原理が生成する時代の入り口を私たちは迎えようとしているのではないか。 グレタさんをめぐる動きを起点にしつつ、しかしそこにとどまらず、私たちが考えていくべきは、こうした大きな人類史の捉え直しと、現在の私たちがどのような場所に立っているかについての根本的な洞察なのである』、「狩猟採集段階における成熟・定常化への移行期に「心のビッグバン」が生じ、農耕社会における同様の時期に枢軸時代/精神革命の諸思想(普遍思想ないし普遍宗教)が生成し、両者はいずれも「物質的生産の量的拡大から精神的・文化的発展へ」という内容において共通していたと考えられるのではないか・・・現在が人類史における第3の定常化の時代だとすれば、狩猟採集段階における「心のビッグバン」や、農耕段階における「枢軸時代/精神革命」に匹敵するような、根本的に新しい思想や価値原理が生成する時代の入り口を私たちは迎えようとしているのではないか」、なるほど。
・『「地球倫理」と呼べるような思想・世界観  ではそうした新たな思想とは何か?結論を先に述べれば、それは「地球倫理」と呼べるような思想ないし世界観ではないかと私は考えており、これまでの拙著の中でも一定論じてきた(『コミュニティを問いなおす』、『ポスト資本主義科学・人間・社会の未来』など)。 そしてグレタさんのような主張は、この「地球倫理」と呼びうる思想とどこかでつながっているのではないかというのが私の見立てである。 冒頭でも述べたように、私たちは、グレタさんの主張だけを切り出して論じたり、あるいは彼女のパーソナリティーとか生い立ちとかをあれこれ詮索して議論してもあまり生産的ではない。 そうではなく、今ここで述べているように、私たちが人類の大きな歴史の中でどのような場所に立っているかを新たな視点で捉え返し、「拡大・成長から成熟・定常化への移行期」における新たな思想や価値の創発というテーマを、正面から考えていくことこそが重要なのである。 そこで浮かび上がってくる「地球倫理」の内容について、次回さらに掘り下げる。そしてそれがこれからの時代の企業行動や経営にとってもつ意味を考えてみたい』、「新たな思想とは何か?結論を先に述べれば、それは「地球倫理」と呼べるような思想ないし世界観ではないかと私は考えており、これまでの拙著の中でも一定論じてきた・・・グレタさんのような主張は、この「地球倫理」と呼びうる思想とどこかでつながっているのではないかというのが私の見立てである」、「地球倫理」とは大げさな気もするが、何やら新しい考え方のようだ。

第三に、昨年6月16日付け東洋経済オンラインが掲載した防衛大学校教授の轟 孝夫氏による「なぜハイデガー哲学は、母国ドイツでタブーとされるのか? マルクス・ガブリエルも誤読した?」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/111592?imp=0
・『20世紀を代表する哲学者とされるハイデガーですが、近年、海外におけるその求心力は急速に低下しているといいます。そのきっかけとなったのが、「黒いノート」と呼ばれるハイデガーの覚書に、「反ユダヤ主義的」な言辞が含まれている、とされたことでした。 母国ドイツでは「触れてはいけない」哲学者となったハイデガー。しかし防衛大学校の轟孝夫教授は、こうした非難はハイデガー哲学の誤読にすぎないと説きます。 ハイデガーの思索をたどり、彼が生涯をかけた「存在への問い」を解説する現代新書の新刊『ハイデガーの哲学 『存在と時間』から後期の思索まで』より、「はじめに」の前編をお届けします』、興味深そうだ。
・『今、なぜハイデガーなのか  ハイデガーは20世紀のもっとも重要な哲学者であり、その後の哲学の展開にも大きな影響を与えたのだから、彼の哲学に人びとが関心をもつのは当然のことだと思われるかもしれない。日本ではハイデガーの主著『存在と時間』は翻訳が10種類以上も存在し、そのうち3種の翻訳は21世紀に入ってから刊行されたものである。ハイデガーに関する研究書や解説書も毎月とまでは言わないにせよ、年に数冊は刊行されている。 こうした状況を見ると、ハイデガーの人気は今なお盤石のように見える。しかし外の世界に目を向けると、このことはまったく自明ではなくなる。ハイデガーの生国ドイツでさえも、日本のように一般読者向けの「ハイデガー本」がこれほど刊行されることはちょっと想像しがたいのだ。 もちろんドイツでも、ハイデガーはまったく関心をもたれていないわけではない。しかし彼が関心を集めているのは、圧倒的にナチス加担に関わる「負の側面」においてである。2014年、俗に「黒いノート」と呼ばれる、ハイデガーの覚書が記されたノート群が全集版として刊行されはじめた(「黒いノート」という呼び名自体は、覚書を書き留めたノートが黒いカバーをもつことに由来するのであって、それ以上の深い意味合いはそこにはない)。そのうちの、1930年代終わりから1940年代はじめにかけて書かれたいくつかの覚書の中に、反ユダヤ主義的な言辞が含まれていることが大きなスキャンダルとして報じられたことは、いまだ記憶に新しい。 ハイデガーが一時期、ナチスを支持していたことは、以前から周知の事実だった。しかしハンナ・アーレント(1906ー1975)やカール・レーヴィット(1897ー1973)をはじめとする多くのユダヤ人の教え子や友人と親交を結んでいたこともあり、彼を反ユダヤ主義者と捉える向きはこの刊行以前にはそれほど多くはなかった。ところが「黒いノート」の刊行によって、紛う方なき反ユダヤ主義者と見なされることになったのだ』、「ハイデガー」は本国「ドイツ」より「日本」での関心の方が高いとは意外だ。
・『ハイデガー協会会長の辞任  衝撃の大きさは、フライブルク大学のハイデガーの哲学講座を引き継ぐ著名な教授が、彼の反ユダヤ主義を理由にハイデガー協会の会長を辞任してしまったことにも示されている。彼は現代ドイツの代表的なハイデガー研究者と目されており、それゆえ私の知る何人かの日本人研究者も彼のもとに留学したりしていた。つまり傍から見れば、彼こそはだれよりもハイデガーの名声の恩恵を被った人物だったのだ。にもかかわらず、その教授があっさりハイデガーを切り捨てたことに、いささか私は驚いた。 仮に問題となったハイデガーの言明が反ユダヤ主義的なものだとしても、その「反ユダヤ主義」なるものが何を意味するのかについてはなお解釈の余地があるだろう。しかも本書で論じるように、くだんの言明は、少し検討すればそう単純に反ユダヤ主義的と言い切れるものではないことが明らかになる。にもかかわらず、例の教授はそのような留保もすることなく、ハイデガーを反ユダヤ主義者と決めつけて縁を切ろうとしたのである。こうしたエピソードからも、ドイツにおいてハイデガーと関わること自体が今やいかに危険で、割に合わないと見なされているかがよくわかる』、「ドイツにおいてハイデガーと関わること自体が今やいかに危険で、割に合わないと見なされているかがよくわかる」、なるほど。
・『「黒いノート」編者の言葉  この「黒いノート」の刊行をきっかけとして、いわゆるハイデガーの「反ユダヤ主義」をめぐる研究集会やシンポジウムが世界各地で開かれ、日本でも全集版の「黒いノート」の編者であるハイデガー研究者がドイツから招かれてワークショップが開催された。この研究者はハイデガー全集の「黒いノート」以外の覚書を収録した巻の編集も数多く担当しており、「黒いノート」の内容はもちろん、それが置かれた思想的コンテクストをもっとも熟知しているはずの人物である。 私もそのワークショップで発表する機会を与えられた。私はその場において、物議を醸した「黒いノート」の言明がハイデガー哲学のいかなる思想的文脈のうちに位置づけられるかを示し、それがむしろナチスの反ユダヤ主義的政策に反対するものであると主張した。こうした私の議論に対して、「黒いノート」の編者は開口一番、「ドイツでは政治家が反ユダヤ主義的な発言をすると政治生命を失うのですよ」という趣旨のことを述べた。 欧米において、また日本においても、政治家など公的な立場にある人物が反ユダヤ主義的な発言をすれば大きな問題になることは当然、私も弁えている。それゆえ「黒いノート」の編者に、そうした事情についてまるで無知であるかのような扱いを受けたのは不愉快だった。しかし他方で彼の発言は、問題の覚書が何を意味しているかをテクストに即して解釈するという姿勢そのものが、すでに政治的に不適切な行為と見なされることを示唆していた。この件について許されるのは、ただただハイデガーを政治的、道義的に非難することだけだというわけだ』、「この件について許されるのは、ただただハイデガーを政治的、道義的に非難することだけだというわけだ」、なるほど。
・『ドイツ人学生が触れないハイデガー  その後、私は在外研究の機会を与えられ、2019年4月よりほぼ1年間、ドイツのミュンヘンに滞在した。滞在中は自分を受け入れてくれたミュンヘン大学哲学科の教授が主催する大学院生向けのゼミナールに毎週参加していた。そのゼミは教授が指導する修士課程や博士課程の学生が執筆中の学位論文の内容について発表して、参加者のコメントを受けるというものだった。 私はその演習で夏学期から冬学期にかけて20人以上の発表を聞いた。プラトン、アリストテレス、アウグスティヌス、カント、シェリング、フッサール、ヴィトゲンシュタイン、サルトル、アーレントなどを研究テーマとする学生はいたが、ハイデガーを取り上げた者は一人もいなかった。またゼミ中にその名前が言及されることもほとんどなかった。 教授にいつもこのような感じかと尋ねると、苦笑して、今回は極端だが、基本的にはハイデガーは21世紀になってから研究する人が少なくなったという。まだ20世紀にはハンス・ゲオルク・ガダマー(1900ー2002)などハイデガーの直弟子が何人も存命していた。そのため、そうした人びとの薫陶を受けたこの教授の世代あたりまではハイデガーを重要視する研究者は多かったが、そのあとの世代では関心をもつ人が少なくなったとのことであった。 私自身、せっかくゼミに参加しているので、冬学期に自分の研究について発表させてもらうことにした。私はドイツ滞在中ずっと、ハイデガー哲学の政治的含意を主題とする書物を執筆していた(2020年2月に明石書店より『ハイデガーの超‒政治』として刊行)。ゼミでは同書からその内容の一部、すなわち反ユダヤ主義的と非難された「黒いノート」の覚書を解釈した箇所を抜き出して発表することにした。 これまでの経験から、この主題での発表があまり歓迎されないことは予想された。それゆえ当初はもう少し無難なテーマを取り上げようと思ったが、逆に、この問題に対するドイツの若い哲学研究者の反応を見るのはかえって貴重な経験になると思い直し、あえてこのテーマで発表することにしたのである。
・『不動の前提となっていたハイデガー非難  その内容については本書でも詳しく論じる予定だが、ハイデガーはユダヤ教が、キリスト教を介する形で西洋形而上学という西洋の支配的な「存在」理解のあり方に大きな影響を与えたと見なしていた。そして彼の「存在への問い」とは、まさしくこの、ユダヤ教的にしてまた同時にキリスト教的なものでもある、いわゆる形而上学的な「存在」理解の克服を目指すものであった。その限りにおいて、西洋文明をその根本において規定しているユダヤ-キリスト教との対決というモチーフが、彼の哲学のうちにはたしかに含まれていたのである。 しかしハイデガーは、ナチスのように「科学的人種主義」なるものに基づいて「ユダヤ性」なるものの根絶を説いたりなどは、当然だがまったくしていない。なぜならば、ナチスが立脚するこの「人種主義」自体が、彼が批判して止まない西洋形而上学をその基盤とするものだからである。したがってハイデガーは、「人種主義」に基づいたナチスのユダヤ人迫害を、彼自身が問題視する「ユダヤ的なもの」の真の次元をまったく理解できていない無意味な所業と見なしていた。「黒いノート」における「ユダヤ的なもの」への言及もまた、基本的にはこのようなナチスの哲学的な無知蒙昧を批判する文脈においてなされたものであったのだ。 しかし事前にある程度、覚悟していたことではあったが、ゼミでの討論がかみ合うことはなかった。参加者の議論は結局のところ、ハイデガーの覚書はユダヤ人に対するステレオタイプ的な偏見を示すものにすぎず、政治的、道徳的に不適切だというところに帰着するのだった。ハイデガーを批判するためにも、まずは問題となっている覚書の趣旨を価値判断抜きで明らかにすることが必要だと説いても、だれも聞く耳をもたなかった。とにかくハイデガーは政治的、倫理的に非難されるべき存在であるというのが、あたかもそこでは不動の前提となっているかのようだった。 ハイデガーがナチスに加担したことはもちろん、これまでも周知の事実だった。それゆえ彼の偉大な哲学的業績には敬意を表しつつも、その政治加担には批判的な態度を取るというのが従来のハイデガー研究の暗黙のルールだった。こうした姿勢は、多くのハイデガー研究者が研究の指針として好んで口にする「ハイデガーとともに、ハイデガーに抗して」というモットーに表現されている。 しかし、一方ではハイデガーの哲学的声望を自身の箔付けに利用しながら、その一方では彼のナチス加担を批判することで自身の政治的、道徳的健全性も確保するという虫のよい姿勢は「黒いノート」の刊行以降、完全に不可能になってしまった。というのも、例の覚書によって、彼の哲学そのものが反ユダヤ主義、すなわちナチズム(国民社会主義)に汚染されていることはもはや疑問の余地がないと見なされるようになったからである。以後とりわけ欧米では、ハイデガーの哲学から明確に距離を取ることが「政治的に正しい」態度になっている』、「「黒いノート」の刊行以降」、「欧米では、ハイデガーの哲学から明確に距離を取ることが「政治的に正しい」態度になっている」、なるほど。
・『それでもわれわれはハイデガーを読むべきだ  そうしたドイツの状況と比べると、日本ではハイデガー研究はほとんど異例なほどに盛んである。そもそも本書のような入門書の需要が見込まれるぐらい、研究者以外の読者の関心も高い。 もちろん日本でも「ハイデガーはナチだから、彼の哲学をまじめに取り合う必要はない」と言われることがまったくないというわけではない。しかしそれでも、そのような決めつけがドイツのように研究そのものを抑圧するような状況にはなっていない。 ドイツ人からすると、こうした日本の状況はあまりにも生ぬるく見えるらしい。近年、日本でもなぜかもてはやされている現代ドイツの哲学者マルクス・ガブリエル(1980ー)は、中国哲学研究者の中島隆博との対談を収録した『全体主義の克服』(集英社新書、2020年)で、ハイデガーを「筋金入りの反ユダヤ主義信者」、「完璧なまでのナチのイデオローグ」、「本物のナチ」などとさんざんこき下ろしたうえで、次のように述べている。 「だから2018年に京都大学で講演をしたとき、『ハイデガーを読むのはやめなさい!』と言ったのです。わたしは人々の眼を覚ましたかった。ハイデガーが日本でとても力をもっていることは知っています」(同書、101頁)。 このようにドイツの著名な哲学者が日本人に向けて、ハイデガーなど相手にするなという親身な勧告をしてくれている。こうした勧告に対して、私が本書をとおしてあえて主張したいのは、それでもわれわれはハイデガーを読むべきだということである。 とはいえ、こう主張することで、私はハイデガーの思想的業績をナチス加担とは切り離して扱うべきだと言いたいわけではない。むしろナチスへの積極的な関与は、彼の哲学に全面的に基づいたものであった。 つづく「なぜハイデガーは「ナチ」になり、また「ナチ」を辞めたのか?」では、ハイデガーの「ナチス加担」の実態に迫ります』、「現代ドイツの哲学者マルクス・ガブリエルは」、「2018年に京都大学で講演をしたとき、『ハイデガーを読むのはやめなさい!』と言ったのです。わたしは人々の眼を覚ましたかった。ハイデガーが日本でとても力をもっていることは知っています」・・・このようにドイツの著名な哲学者が日本人に向けて、ハイデガーなど相手にするなという親身な勧告をしてくれている」、しかし「私が本書をとおしてあえて主張したいのは、それでもわれわれはハイデガーを読むべきだということである」、これは単に「ハイデガー」研究者としての著者のノスタルジーに過ぎないのではないだろうか。
タグ:哲学 (その4)(【出口治明】ロック、ホッブズ、ルソー、モンテスキューとは何者か?、「グレタさん」は現代の「イエスかブッダ」なのか 「人類史の移行期」に生まれる価値観と倫理、なぜハイデガー哲学は 母国ドイツでタブーとされるのか? マルクス・ガブリエルも誤読した?) ダイヤモンド・オンライン「【出口治明】ロック、ホッブズ、ルソー、モンテスキューとは何者か?」 「ホッブズは、人間は放っておいたら、永遠に殴り合いをやっている。だからコモンウェルスによって、権力を持つ人がきちんと治めないと人間の生活は成り立たないと主張しました。 でも、ルソーは逆。 そもそも人間はみんな仲良く暮らしてきたと考えた。 だが、時として国王が圧政を行う。それに対抗する理屈を考える中で、いろんな「人権思想」が生まれてきたのです」、なるほど。 「「司法と立法と行政を分ける「三権分立」の思想を発表した。これは未だに生き残っていますね。分立させたら国王も好き勝手にはできない。もう一つの考え方もある。 権力を持っている人がどんどん悪いことをするなら、ロックが唱えた「抵抗権」がその代表ですが、人民が抵抗する権利を前面に出す。この2つが代表的な考え方ですね・・・三権が本当に分立していたら、別に行政や立法がどういおうと、裁判所は自分たち独自で判断するぞと。 そういう意味では、近代国家でつくられた理念は未だに生きているし、なかなか難しいし、理解が難しい面もあ るのです。 東洋経済オンライン 広井 良典氏による「「グレタさん」は現代の「イエスかブッダ」なのか 「人類史の移行期」に生まれる価値観と倫理」 「彼女の主張には、それを簡単に無視したり批判したりすることでは終わらない、何か重要な意味が含まれているのではないか、という基本的なスタンスをもっている」、なるほど。 「農耕が1万年前に始まったのは、食糧生産つまり植物の光合成を人間が管理し安定的な形で栄養を得る方法を見出したということである。 そして近代ないし工業化の時代になると、「化石燃料」と言われるように、数億年にわたって地下に蓄積した生物の死骸からできた石炭や石油を燃やし、エネルギーを得ることを人間は行うようになった。 言い換えれば、“数億年”という長い時間かかって蓄積された資源を、私たちは“数百年”でほとんど燃やし、使い尽そうとしているのであり、その燃焼の過程で生まれる二酸化炭素量の急激な増加が温暖化の大きな背景になっているのだ」、なるほど。 「「心のビッグバン(意識のビッグバン)」あるいは「文化のビッグバン」などと呼ばれている興味深い現象がある。例えば加工された装飾品、絵画や彫刻などの芸術作品のようなものが今から約5万年前の時期に一気に現れることを指したものである。 つまり、まさにこのときに、単なる自然の模写や、実用的な利用に尽きない、人間の「こころ」という固有の領域が生まれたのだ・・・ 精神的・文化的な面での大きな革新の時期がある。 それはヤスパースが「枢軸時代」、科学史家の伊東俊太郎が「精神革命」と呼んだ、紀元前5世紀前後の時代である。 この時期ある意味で奇妙なことに、現在に続く「普遍的な原理」を志向するような思想が地球上の各地で“同時多発的”に生まれた。すなわちインドでの仏教、中国での儒教や老荘思想、ギリシャ哲学、中東での(キリスト教やイスラム教の源流となる)旧約思想であり、それらは共通して、特定の部族を超えた「人間」という観念を初めてもつと同時に、物質的な欲望を超えた、新たな価値な いし倫理を説いた点に特徴をもつものだった」、なるほど。 「狩猟採集段階における成熟・定常化への移行期に「心のビッグバン」が生じ、農耕社会における同様の時期に枢軸時代/精神革命の諸思想(普遍思想ないし普遍宗教)が生成し、両者はいずれも「物質的生産の量的拡大から精神的・文化的発展へ」という内容において共通していたと考えられるのではないか・・・現在が人類史における第3の定常化の時代だとすれば、狩猟採集段階における「心のビッグバン」や、農耕段階における「枢軸時代/精神革命」に匹敵するような、根本的に新しい思想や価値原理が生成する時代の入り口を私たちは迎えようとしている のではないか」、なるほど。 「新たな思想とは何か?結論を先に述べれば、それは「地球倫理」と呼べるような思想ないし世界観ではないかと私は考えており、これまでの拙著の中でも一定論じてきた・・・グレタさんのような主張は、この「地球倫理」と呼びうる思想とどこかでつながっているのではないかというのが私の見立てである」、「地球倫理」とは大げさな気もするが、何やら新しい考え方のようだ。 轟 孝夫氏による「なぜハイデガー哲学は、母国ドイツでタブーとされるのか? マルクス・ガブリエルも誤読した?」 現代新書の新刊『ハイデガーの哲学 『存在と時間』から後期の思索まで』より、「はじめに」の前編をお届けします 「ハイデガー」は本国「ドイツ」より「日本」での関心の方が高いとは意外だ。 「ドイツにおいてハイデガーと関わること自体が今やいかに危険で、割に合わないと見なされているかがよくわかる」、なるほど。 「この件について許されるのは、ただただハイデガーを政治的、道義的に非難することだけだというわけだ」、なるほど。 「「黒いノート」の刊行以降」、「欧米では、ハイデガーの哲学から明確に距離を取ることが「政治的に正しい」態度になっている」、なるほど。 「現代ドイツの哲学者マルクス・ガブリエルは」、「2018年に京都大学で講演をしたとき、『ハイデガーを読むのはやめなさい!』と言ったのです。わたしは人々の眼を覚ましたかった。ハイデガーが日本でとても力をもっていることは知っています」・・・このようにドイツの著名な哲学者が日本人に向けて、ハイデガーなど相手にするなという親身な勧告をしてくれている」、 このようにドイツの著名な哲学者が日本人に向けて、ハイデガーなど相手にするなという親身な勧告をしてくれている」、しかし「私が本書をとおしてあえて主張したいのは、それでもわれわれはハイデガーを読むべきだということである」、これは単に「ハイデガー」研究者としての著者のノスタルジーに過ぎないのではないだろうか。
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コンサルティング(コンサルティングとは? 就活人気の高いコンサル業界を分かりやすく解説!、米マッキンゼー 経営トップ再選も亀裂あらわ ボブ・スターンフェルズ氏が再びグローバル・マネジングパートナーに選出されたが パートナーの間に反対意見があることが明らかに、急成長モノタロウのボスコン出身社長を直撃!今に生きる コンサル時代に得た「3つのスキル」とは?) [産業動向]

本日は、コンサルティング(コンサルティングとは? 就活人気の高いコンサル業界を分かりやすく解説!、米マッキンゼー 経営トップ再選も亀裂あらわ ボブ・スターンフェルズ氏が再びグローバル・マネジングパートナーに選出されたが パートナーの間に反対意見があることが明らかに、急成長モノタロウのボスコン出身社長を直撃!今に生きる コンサル時代に得た「3つのスキル」とは?)を取上げよう。

先ずは、入門編として、2021年8月27日付けen-courege「コンサルティングとは? 就活人気の高いコンサル業界を分かりやすく解説!」を紹介しよう。
https://app.en-courage.com/articles/2021-08-27/45?locale=ja
・『コンサルティングと聞いて何をイメージするでしょうか。聞いたことはあるけれど何をしているか分からないという人も多いのではないでしょうか。この記事ではコンサルティングについて分かりやすく解説していきます。コンサルティングに適性のある人についても解説していきますので、どんな仕事かを知りたい人や興味を持った人は志望企業を考えるうえで参考にしましょう』、興味深そうだ。
・『はじめにーーコンサルティングとは? どんな仕事かを簡単に解説!  コンサルティングとは一言でいうと、相手の課題に対して解決策を示す仕事です。 もっと簡単に言えば「相手(クライアント)の困りごとを解決する仕事」。 この場合の相手は企業、経営者、個人、政府など多岐に渡ります。 困りごとを解決する相手がどんな職種・立場の人かによってコンサルティングの分類が異なります。 この記事ではまず、どんな分類があるのかを見ていきます。 分類を知ったうえで、一般企業とは大きく違う仕事の流れ、具体的な仕事内容を紹介し、コンサルティングの魅力に迫ります。 自分はコンサルティングの仕事に興味があるか、向いているか、やってみたいかを考える参考にしましょう!』、「相手(クライアント)の困りごとを解決する仕事」といっても、実際には幅広い。
・『就活でめざす代表的なコンサルティングファーム  就活をしていると「コンサルティングファーム」「コンサルタント」という言葉をよく聞きます。 コンサルティングファームとはコンサルティングの事業や実施する企業を指す言葉です。「コンサル」と略されます。 そしてコンサルタントとは「コンサルティングを行う人」を指します。 この記事では、就活で学生がめざす代表的なコンサルティングファームを、経営・戦略コンサルティング、業務コンサルティング、ITコンサルティング、金融コンサルティング、シンクタンクに分けて解説します。 「誰の困りごとを解決するのか」によってこれらは分類されます。 それでは、代表的なコンサルティングファームを見ていきましょう』、「「誰の困りごとを解決するのか」によってこれらは分類されます」、なるほど。
・『経営・戦略コンサルティング  経営者やトップマネジメントの課題を解決する仕事です。 継続して優れた業績を上げるにはどのような経営をすればいいか、 この市場には参入すべきか否か、 どんな新規事業を立ち上げれば業績が伸びるか、 などの困りごとを解決していきます。 企業の経営 層を相手に、経営戦略を練り、上記のようなアドバイスをする仕事であるため、高度な知識や分析力、リサーチ能力が要求されます。 このコンサルファームは、外資系企業が多く、グローバル展開されることが多いです。そのため英語力を必要とされる場合が多いです。 戦略コンサルを強みとする代表的な企業にはマッキンゼー・アンド・カンパニー、ボストンコンサルティンググループ、ベイン・アンド・カンパニー、A.T.カーニーなどがあります』、「戦略コンサルを強みとする」ところは、最も高度で、料金も高い。
・『業務コンサルティング  前述の経営・戦略コンサルに対し、経営層というよりその下のマネージャークラスの困りごとを解決する仕事です。 経営・戦略コンサルが長期の経営ビジョンやこの市場に参入すべきかという課題解決をするのに対し、業務コンサルは「どうやって業務コストを削減するか」などのより具体的な日々のテーマ、会社が抱える困りごとに対し戦略を練り、課題解決をします。 業務コンサルといっても「どんな種類の困りごとを解決するか」によってその領域は多岐に渡ります。 例えば以下があります。 ・監査法人 企業の財務書類が法的に問題ないかをチェックする。 監査や税務の手続きなどは複雑で、専門的な知識を必要とすることが多いため、その代行をすることでクライアントの困りごとを解決する。・人事コンサル   企業が優秀な人を採用するにはどうしたらいいか、人材育成をどう行うかなど戦略を考え、課題を解決する』、「業務コンサルティング」は実務的内容だ。
・『ITコンサルティング  IT技術を駆使してクライアント企業の課題を解決する仕事です。 例えば、「商品の受発注の方法が部署によってバラバラで管理しにくい。 受発注のやり方を一元化したい」というクライアントの困りごとに、「こんなITシステムを導入すれば業務が改善されますよ」と提案、実際にシステムの導入から実装までを行います。 業務コンサルに内包されるものの、昨今はIT関連の発展が著しいため「ITコンサルはITの専門家」として業務コンサルと区別される傾向が強いです。 フューチャーアーキテクト、ワークスアプリケーションズ、日本IBMなどがあります』、この他にコンピューターメーカーも「ITコンサルティング」を提供している。
・『金融コンサルティング  資金調達などの事業戦略・M&A・不動産の投資相談などに関するコンサルティングを行います。 「新規事業立ち上げに向けて資金調達をどうしよう」「このビジネスに投資すべきか」など金融面で会社は様々な困りごとを抱えています。 金融コンサルタントは、会計や法務の専門知識を持ち、国際情勢や金融情勢にも常にアンテナを張りながら課題解決をしていきます。 PwCアドバイザリー、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーなどがあります』、ここは投資銀行が取引そのもので勝負をする世界でもある。
・『シンクタンク  元々シンクタンクとは民間や政府の経済問題を調査する研究機関を指しました。 しかしこれらの研究機関が、自らの分野で培ったリサーチ力を生かし、他企業の問題解決、つまりコンサルティングを請け負うようになったため、シンクタンクもコンサルティング業務の一つとする分類が主流となりました。 企業からの調査案件や官公庁向けのリサーチや分析、分析をもとにした政策提言などを行います。 「〇〇の分野での投資をしたいが経済動向はどうなるのだろう」などのクライアントの悩みを専門知識や独自の調査、高い分析力で解決していきます。 代表的な会社に、野村総合研究所、大和総研、日本総合研究所などがあります。 このように「誰の課題を解決するか」「どのように解決するか」によりコンサルティング事業には様々な分類があります』、なるほど。 
・『総合系コンサルティング会社  これは一つの会社のなかに、戦略コンサルの仕事も、業務コンサルの仕事もある会社を指します。 具体的にはアクセンチュア、デロイト トーマツ コンサルティング、アビームコンサルティングなどがあります。 総合系コンサルはアメリカや欧米に本社を構える外資系が多く、クライアントも大企業であるのに対し、国内独立系は日本発のコンサルティングファームです。 クライアント規模も中小企業など様々で、会社の生産・製造など現場に入り込んだコンサルティングを行います。 メーカーが製造した商品を売っていたり、銀行や保険会社が金融商品を売っているのに対し、コンサルティング会社は「課題を解決すること」を売っているといえます。 そのため、商品やエリアごとに部署が分けられるメーカーや金融業界とは仕事の流れ、部署の編成が大きく異なるのが特徴です』、「総合系コンサルはアメリカや欧米に本社を構える外資系が多く、クライアントも大企業であるのに対し、国内独立系は日本発のコンサルティングファームです。 クライアント規模も中小企業など様々で、会社の生産・製造など現場に入り込んだコンサルティングを行います」、なるほど。
・『コンサルティング会社の仕事の流れ 一般企業との大きな違い  コンサルティング会社の実際の仕事の流れを具体的に解説します。 クライアントがコンサルティング会社に依頼する。 或いはコンサルティング会社が営業をしたり、競合他社とのプレゼンをする。→ クライアントに提案を受け入れてもらえると、コンサルティング会社が正式に受注する。 → 社内から適切な人材を集め、プロジェクトチームが編成される。 → キックオフ・ミーティングでチームの顔合わせやスケジュール確認をする。 ↓ インタビューやデータ収集、解決に向けての仮説をたてる。→ チーム内で議論を重ね、課題解決方法を決定する。 → 経営層に報告。クライアントと一緒に実行支援まで行うことも。 → チームは解散し、また新しいプロジェクトに割り当てられる。 つまり、一般企業が商品・サービスやエリアなどによって部署が分けられてるのに対し、具体的な所属部署はなく、編成されたプロジェクトチームに参加して業務を担当します。 そのためプロジェクトごとに一緒に働く上司や同僚が変わります。 場合によってはプロジェクトを同時に2~3個担当することもあったり、クライアント先に常駐するケースもあります』、「プロジェクトを同時に2~3個担当する」のは、繁閑を調整する一般的な方法だ。
・『コンサルティングの役職の具体的な仕事内容とは?  上記で解説したプロジェクトチームには様々な役職の人が入っています。 役職によって仕事内容は異なります。 案件を獲得する人、人を集めプロジェクトチームを作る人、作られたチームの責任者、情報収集や資料作成をする人、集まった情報もとに分析し、仮説をたて、戦略を考える人。 それぞれ役職ごとに役割があります。 どんな役職があるのかをみていきましょう。 ・パートナー 営業をし、案件を獲得します。 コンサルティングファームを経営します。 ・マネージャー プロジェクトが始動したら、その責任者のポジションです。プロジェクトを管理し、顧客と折衝、予算などの管理も行います。 ・コンサルタント 仮説をたてて具体的な課題解決を検証していきます。 ・アナリスト 新卒入社したコンサルタントのスタートポジション。 主に情報収集、資料作成、分析、クライアントへインタビューを行います』、なるほど。
・『コンサルティングの仕事はどんな人に向いてる? 資格は必要?  どの業界のコンサルタントになるか、どの企業でコンサルティングの仕事をするかによって必要な資格は異なります。 財務系であれば簿記や公認会計士などの資格、IT系であればITストラテジストや情報技術者試験などがあります。 しかし、新卒でコンサル業界を受けるのに必ずしも資格が必要というわけではありません。 コンサルの仕事はクライアントの困りごとを解決する仕事です。 企業が自分たちで解決できてしまうような簡単な困りごとであれば、わざわざお金をかけてコンサルに依頼する必要はありません。 企業の内部の人間では解決できないから、高度な知識や分析力、情報収集力、発想力を有するコンサルに相談するのです。 そのため、資格を持っていることより、相手の課題解決に向けとにかく考えることが大切になります。 課題解決に向け考えるというのは、課題を的確に洗い出し、情報を集め、データを分析し、有効な戦略を練るということです。 論理的に考える人、アイディアを出し続けられる人に向いている職種といえます。 日頃から様々な角度で考えること、 疑問に思ったことはすぐ調べること、 もし~をしたら結果はどうなるだろう、 どんな戦略が有効的だろうと仮説をたてて考えること、 自分の考えを分かやすく、説得力を持って人に伝えられるようにすることなど、 日常のなかで「つきつめて考え、発信する力」を養う必要があります』、大企業のクライアントでは、反対派を説得する材料として「コンサル」を活用することもある。
・『コンサルティングの魅力  コンサルには働くうえでどのような魅力があるのでしょうか。 ・年収が高い 会社や分野にもよりますが入社1~3年目のアナリストで400万~800万、パートナーまでいけば2000万以上となります。 経団連の調査によると、日本の平均年収は663.2万円であるため、コンサルティングの年収は高いといえます。 ・自分が成長できる・スキルアップできる 一般的な日系企業では、やりがいが「自分の会社・部署の業績のため」「自分が仕事で担当する商品の売り上げのため」という、会社や部署に軸があるのに対し、部署編成などのないコンサルはもっと個人主義といえます。 会社のためというよりクライアントの課題解決のため、自分のキャリアアップのためという軸であることが多いでしょう。 そのため転職者も多く、コンサル業界のなかでスキルや知識など自分に合った条件の会社を探し、渡り歩く人も多いといいえます。 そういった働き方を理想とする人には合っている業界です。 ・クライアントに感謝されることでやりがいを感じられる クライアントに寄り添い、課題を洗い出し、課題解決に向けとにかく考える仕事という点で、うまくいけば感謝されますし、自分のスキルもどんどん上がっていきます。 会社内のしがらみや上下関係、変な社会慣習などもなく、実力主義の世界です。 こうした魅力がある一方、会社によっては激務であったり、「なぜそう思ったのか」を論理的に説明する能力が求められる難しさもあるといえるでしょう』、「論理的に説明する能力」は必須の「能力」だ。
・『コンサルティング会社を受けるなら就活対策は念入りに!  コンサルティングと一言でいってもその領域や仕事内容は多岐に渡ります。 論理的に、つきつめて考えることが好きな人や説明力のある人、クライアントに寄り添って課題解決をし、感謝されることにやりがいを感じたい人におすすめな業界です。 それゆえに就活でも人気が高い会社が多いです。 コンサルを目指すなら自己分析や面接対策をテスト対策をきっちりすることが必須といえます。 エンカレッジでは、たくさんの先輩方のES全文や選考体験記を公開しています。 人気業界や、有名企業に受かるためのポイントが満載!! 会員登録して、気になる例文をチェックしましょう』、ここはPRなので、紹介は省略。

次に、本年2月7日付けダイヤモンド・オンラインが転載したThe Wall Street Journal「米マッキンゼー、経営トップ再選も亀裂あらわ ボブ・スターンフェルズ氏が再びグローバル・マネジングパートナーに選出されたが、パートナーの間に反対意見があることが明らかに」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/338477
・『昨年のクリスマスの少し前、米コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーの経営トップ、ボブ・スターンフェルズ氏は4万人を超えるスタッフにメモを送り、単純な質問を投げかけた。「マッキンゼーとは何か」 グローバル・マネジングパートナーのスターンフェルズ氏は、この質問には単純な答えはないと記し、2024年を迎えるに当たってマッキンゼーをどう定義するか考えるよう求めた。 この質問に答えるのは難しくなる一方だ。 コンサルティング業界に長年君臨するマッキンゼーは、大手企業や政府の指導者に助言し、未来の最高経営責任者(CEO)や国家元首を輩出してきた。そのマッキンゼーが今、自社の運営に苦労している。 スターンフェルズ氏は、自分を追い出し、2021年以降で3人目となるリーダーを就任させようとする動きを何とか切り抜けて今月1日までに過半数の票を獲得。グローバル・マネジングパートナーとして2期目を勝ち取ったが、最初の2回の投票ではパートナーから再選に十分な支持を得られなかった。 トップを選出するための投票であらわになったのは、世界で最も収益性の高いパートナーシップ制企業の一つであるマッキンゼーの内部に不満が生じていることと、3年ごとにリーダーを選ぶ権限をパートナーに与える珍しい統治構造の潜在的な欠点だ。ビジネスが順調で、何百万ドルという収入をもたらすパートナーが変化を求める理由がほとんどないときには、この構造はうまく機能する。しかしこの数年は安定しているとは決して言えない状態だった。 スターンフェルズ氏がグローバル・マネジングパートナーに就任したのは、新型コロナウイルス禍によって加速したビジネスの変化に対応するため企業がマッキンゼーの助言を求め、同社の急成長が始まった頃だった。同社は人材採用を加速、スタッフ数は2012年の水準の2倍以上に増えた。しかし経済が減速し、顧客が減るにつれ、自社のサービスに対する将来的な需要を読み違えたと批判されてきた。 この1年、マッキンゼーは人員削減を進めた。バックオフィス業務を担当していた1400人を削減し、破産処理業務の一部を段階的に縮小した。またベイン・アンド・カンパニーなど同業他社と同様に、新規採用した経営学修士号(MBA)取得者の入社時期を今年に先送りした。12月に新規に指名したパートナーは約250人で、2022年の380人から減少した。 マッキンゼーは一連のスキャンダル後、評判の修復にも努めている。麻薬性鎮痛剤「オピオイド」の販売でパーデュー・ファーマなどの製薬会社に協力したとして批判を浴びた同社は21年、パーデューに協力したことに対して5億7300万ドル(現在のレートで約850億円)の和解金を支払うと発表。その後、顧客を選ぶ上でパートナーにどの程度の裁量が認められるかが幅広く再検討された。 シニアパートナーらによると、トップクラスのコンサルティングサービスへの需要は今もある。北米担当マネジングパートナー、アストシュ・パディ氏は1月半ばのインタビューで「われわれの今の仕事の質は以前よりはるかに高い」と話した。インタビューを行ったスイス・ダボスでは、スターンフェルズ氏らマッキンゼーのパートナーが経済界のリーダーと親しく言葉を交わしていた。 スターンフェルズ氏は21年のインタビューで「世界が再び速度を落とすことはないだろう。当社の顧客は自分たちより速く動くことをわれわれに求めている」と話した。「より速く動ける世界的企業のモデルをどう作るかだ」 スターンフェルズ氏はまた、マッキンゼーの世界的なパートナーシップモデルを擁護し、適切に運用されれば同社は世界のどこからでも最良の助言を顧客に提供することができると述べた。「パートナーシップのモデルを機能させるには、視点の共有と率直な議論の実施にエネルギーを注がなければならない」と話した』、「麻薬性鎮痛剤「オピオイド」の販売でパーデュー・ファーマなどの製薬会社に協力したとして批判を浴びた同社は21年、パーデューに協力したことに対して5億7300万ドル(現在のレートで約850億円)の和解金を支払うと発表・・・経済が減速し、顧客が減るにつれ、自社のサービスに対する将来的な需要を読み違えたと批判されてきた。 この1年、マッキンゼーは人員削減を進めた。バックオフィス業務を担当していた1400人を削減し、破産処理業務の一部を段階的に縮小した。またベイン・アンド・カンパニーなど同業他社と同様に、新規採用した経営学修士号(MBA)取得者の入社時期を今年に先送りした。12月に新規に指名したパートナーは約250人で、2022年の380人から減少した」、なるほど。
・『750人のシニアパートナー  同社が抱える問題の一つはトップの選出に投票できるシニアパートナーが15年ほど前の約400人から約750人に増加し、合意形成が難しくなったことだ。シニアパートナーは60歳になる前に1期目を終えていれば誰でも選出の対象になる。 シニアパートナーは最初の投票では誰にでも投票できる。2回目の投票に進む候補者は10人に絞られる。この時点で勝者が決まらなければ、上位2人の候補者を対象に3回目の投票が行われる。 もう一つの問題はマネジングパートナーを務めることができる期数を最大3期から2期に短縮すると数年前に決定したことだ。マネジングパートナーの任期を3期(9年)から2期(6年)にすれば、若い世代が昇進できるというわけだ。しかし任期が3年1期しかなければ、または1期しかないという不安があれば、戦略を十分に実施することは難しい。 スターンフェルズ氏の前任のケビン・スニーダー氏は1期目のあと、抗議票によって2021年にトップの座を追われた。同氏は現在、ゴールドマン・サックスのアジア担当上級幹部を務めている。 スターンフェルズ氏は周囲からは決断力のあるリーダーと受け止められている。しかし同氏が関係の近い少人数のチームに頼り、パートナーシップ制企業のリーダーというより従来の最高経営責任者(CEO)のようなやり方で会社を経営していると感じていた一部のパートナーはこの3年間、そのやり方にいら立っていた。 2023年のマッキンゼーの売上高は約160億ドルに増加したが、コロナ下と比べると伸び率は鈍化した。上半期には同社がパートナーに対し、報酬の一部について受け取りの先送りを要請したが、年末までにビジネスが回復し、パートナーは報酬を全額受け取った。 スターンフェルズ氏はスタッフに送付したメモでは会社の再構築や成長の鈍化を取り上げず、その代わりに会社の評価を試みた。「今年は大変な1年だった。われわれはこの1年を切り抜けただけでなく、2024年を迎えるに当たって他とは異なる独自の立場に立っている」と述べた。 同氏はまた、マッキンゼーはコンサルティング会社であるだけでなく、スタートアップ支援組織、デザインラボ、訓練の場などでもあると述べた。「人材獲得担当者と話をするたびに、非常に多くの人がわれわれと同じ立場に立ちたいと考えていることを思い出す。毎年100万人以上が当社に応募している」とも記した。 スターンフェルズ氏の2期目で最後の任期は7月に始まる』、「スターンフェルズ氏の前任のケビン・スニーダー氏は1期目のあと、抗議票によって2021年にトップの座を追われた・・・スターンフェルズ氏は周囲からは決断力のあるリーダーと受け止められている。しかし同氏が関係の近い少人数のチームに頼り、パートナーシップ制企業のリーダーというより従来の最高経営責任者(CEO)のようなやり方で会社を経営していると感じていた一部のパートナーはこの3年間、そのやり方にいら立っていた」、「マッキンゼー」といえどもトップ人事は思うようにはいかないものらしい。

第三に、3月1日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した田村咲耶・MonotaRO代表執行役社長インタビュー「急成長モノタロウのボスコン出身社長を直撃!今に生きる、コンサル時代に得た「3つのスキル」とは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/339658
・『「工具界のアマゾン」などと称され、MRO(修理・整備)市場に特化したEC(電子商取引)企業として急成長を遂げてきたのがMonotaRO(モノタロウ)だ。工具通販のニッチ市場で牙城を築き、2023年12月期決算まで14期連続で最高益を更新。そんな同社は今年1月、12年ぶりのトップ交代で、41歳の田村咲耶氏を新社長に起用した。同氏は外資系戦略ファームのボストン・コンサルティング・グループ(BCG)出身である。長期連載『コンサル大解剖』の本稿では、MonotaRO初の女性社長となった田村氏に、コンサル時代に培った経験を今の職務にどう生かしているのかについて、中長期的な方針などと併せて語ってもらった』、興味深そうだ。
・『急成長MonotaROのボスコン出身社長がコンサル時代に得た「3つの経験」とは?  Q:1月から社長となったMonotaROでは、今後4~5年で売上高を現状のほぼ倍増の5000億円(23年12月期の連結売上高は2543億円)にする方針を掲げています。 A:事業成長を考える上でも、コンサルタント時代の力が生きているかもしれません。 田村咲耶・MonotaRO代表執行役社長 たむら・さくや/2007年4月、外資系戦略ファームのボストン・コンサルティング・グループ(BCG)入社。GEヘルスケア・ジャパンを経て20年3月、MonotaRO入社。サプライチェーンマネジメント部門長、執行役サプライチェーンマネジメント部門長、常務執行役サプライチェーンマネジメント部門長を経て、24年1月から現職。 写真提供:MonotaRO 今まで一つ大きい市場(間接資材調達市場)で考えてきたことの精緻化をしています。攻めていく市場を「スモール」「ミッド」「ラージ」と分解して、それに合わせた事業成長戦略やサービス設計、品ぞろえ、マーケティング戦略を作っていくのが事業成長の鍵ですね。 それによって売り上げを伸ばしていくのと、コスト的にもサービスを支える物流やオペレーションを作っていくところ。あとは将来の大きな成長に向けて、日本発のモデルであるMonotaROを海外に展開していく、という構図だと思います』、「今まで一つ大きい市場(間接資材調達市場)で考えてきたことの精緻化をしています。攻めていく市場を「スモール」「ミッド」「ラージ」と分解して、それに合わせた事業成長戦略やサービス設計、品ぞろえ、マーケティング戦略を作っていくのが事業成長の鍵ですね。 それによって売り上げを伸ばしていくのと、コスト的にもサービスを支える物流やオペレーションを作っていくところ。あとは将来の大きな成長に向けて、日本発のモデルであるMonotaROを海外に展開していく、という構図だと思います」、なるほど。
・『Q:まだ売上高の数%程度である海外事業の重要性も増していきそうですが、どのような戦略を考えていますか。 韓国やインド、インドネシアに展開していますが、やはりインド市場の存在は大きいと考えています。こちらはサプライチェーン上の課題やニーズの違いなどがあり、一歩ずつ作り上げていく必要があります。今は国のニーズや、そこで求められている価値を作っている段階ですね。 インドは、とにかく国土が広い難しさがあります。日本では狭いところで、(オーダーから)次の日には届けることができても、インドではそうはいかない。規模の経済性(スケールメリット)が利く中で、どんな顧客にどのようなサービスを行うかを含めて構築していきたいところです。 Q:業績拡大が続いてきた一方、MonotaROの株価は約3年前(21年2月)に上場来高値を付けて以降、低迷が続いています。市場の高い期待に応えるには、何が必要だと考えますか。 次ページ以降では、外資系戦略ファームのボストン・コンサルティング・グループ(BCG)出身で、MonotaRO初の女性社長となった田村氏に、コンサル時代に培った経験がいかに今の職務へ生かされているのかを明かしてもらう。また、直近で低迷する株価の反発に向けた自身の役割、中長期的な方針などと併せて語ってもらった。) 株価自体はコントロールできませんが、私が期待されているのは事業成長だと考えています。前期(23年12月期)の増収率は12.5%でしたが、その前はもっと高いレベルだった(編集部注:22年12月期の増収率は19.1%、21年12月期は20.6%)中で、事業や戦略の領域を精緻化し、年率15%程度の成長を続ければ「売り上げ2倍」が近づき、株価も伴ってくると考えています。 前年比15%程度(の増収率)の絵を考えると、2028~29年頃には売上高が5000億円になる見込みです。もちろん、そのためには適切な戦略が必要ですが、それに見合う市場の余地はあると考えています。 Q:キャリアの始点は大手戦略系ファームのBCGでした。コンサルタント時代の経験は、これまでの職務へどのように役立っていますか。 A:私自身は有能なコンサルタントではなかったと思っていますが、新卒で入社してとても助かったと考えている経験が三つあります。 一つ目に、構造化・論理力が鍛えられたことです。最初は会議の議事録や、メモした内容を夜通しかけてまとめる、といった場面がよくありました。品質を担保するために一言一句直して、添削してくれるようなことは、事業会社ではなかなか難しく、コンサルのパッケージングの品質ならではであり、今でもこのような経験は財産になっていると考えています。 もう一つは、人前で話す場面が数多く経験できたことです。当時もなぜ、経営層の方が新卒生の話を真剣に聞いてくれるのだろうと思ったのですが、やはり「データや事実」を基に話すからこそ聞いてもらえる。それをたたき込んでもらいました。 三つ目に、ネットワーキングも大きな財産です。BCG時代の同期には、(AI開発の)PKSHA Technology(パークシャー・テクノロジー)の上野山さん(上野山勝也・代表取締役)や、(遠隔画像診断サービスを手掛ける)ドクターネットの長谷川さん(長谷川雅子・代表取締役社長)、(医療データ分析の)JMDCの野口さん(野口亮・代表取締役社長)などがいます。 私の代は結構、社長をしている方も多いですね。同期の他にも、後輩や先輩にいろいろな方がいて、皆興味を持って話を聞いてくれました。助け合う文化があったと思いますし、苦楽を共にした仲間の存在は大きかったと感じています。 Q:BCGのアラムナイ(同窓生)同士で集うこともあるのでしょうか。 A:アラムナイの関係性はすごく強いですね。仲間内で情報を共有することもありますし、基本的にサポートし合う文化があって、先輩からもすごく助けられてきました。 特に同時代に在籍してきた方はそうですが、元BCG同士だと、(プロジェクトを共にした)パートナーが被っていたり、御立さん(元BCG日本代表の御立尚資氏)を知っているよという会話になったり。共通の話題ができることも多いです』、「コンサルタント時代の経験は、これまでの職務へどのように役立っていますか・・・一つ目に、構造化・論理力が鍛えられたこと・・・もう一つは、人前で話す場面が数多く経験できたこと・・・三つ目に、ネットワーキングも大きな財産です・・・アラムナイの関係性はすごく強いですね。仲間内で情報を共有することもありますし、基本的にサポートし合う文化があって、先輩からもすごく助けられてきました。 特に同時代に在籍してきた方はそうですが、元BCG同士だと、(プロジェクトを共にした)パートナーが被っていたり、御立さん(元BCG日本代表の御立尚資氏)を知っているよという会話になったり。共通の話題ができることも多いです」、なるほど。
・『Q:MonotaROに話を戻せば、国内でも既存の競合であるアスクルの他、アマゾンが「アマゾンビジネス」(事業者向けのECサイト)を拡大させるなど、競争環境が激化しています。どこに差別化要素を見いだしていますか。 充実した品ぞろえや、コンサルティングを含めた営業、サプライチェーンと利便性、そこに尽きると思っています。 アマゾンより当社が選ばれるのは、やはりBtoBに特化しているため見つけやすい。早く探せるなど、現場に支持されているところがあります。そこはより強くしつつ、他社からシェアを広げていく上で、切り替えていただくには何が必要なのかを、市場を分けながら考えたいと思っています。 Q:3月の春闘が迫る時期となっていますが、高成長を続ける企業の中では、相対的に平均年収が低いように見受けられます(22年12月期の従業員710人の平均年収は585万円)。 当社もインフレなどの状況に応じて、賃上げの検討を行っています。あとは在籍者の能力向上によって、というところですね。他の会社と比べ、どういった人材を採用しているかにもよりますが、当社は長く安心して働いていただいている方が多いように感じます。 私も外資系では年収が高かったわけですが、カルチャー的には少し違うかなとも思ったりしています。社員自体が成長や仕事に満足を感じる体系にはしていきたいなと思います。 Q:人員の規模が拡大する中で、組織マネジメントも難しさを増しそうです。社長の前任である鈴木雅哉氏は以前、ダイヤモンド編集部が行ったインタビューにおいて、社員の週報のほとんどに目を通していると話していました(『“工具のアマゾン”モノタロウに死角はないのか?鈴木社長が明かす「アマゾンよりも怖い敵」』参照)。 私も社員の週報は、部門長になった時から全て読んでいますよ。社長になるとかなり解像度が上がるし、何が起こっているのか分かるところもありますね。従業員が1000~2000人規模になった時にできるか難しくなってくる中で、どういう風に社員とコミュニケーションしていくかは考えています。やり方そのものは、鈴木の時から変えているわけではありません。 Q:鈴木前社長から受けた、印象的な言葉などはありますか。 A:ずっと一緒に仕事をして、いろいろなことを話しましたが…「感謝と謙虚の気持ちを忘れずに10年頑張れ」ということですね。鈴木が(創業者の)瀬戸(欣哉氏)から受け継ぎ、今回についても当社が10年単位で経営をアップデートしていく流れの一つといえます。 私は世の中でも若い社長になると思いますが、それは先代から続いたカルチャーでもありました(前任の鈴木氏は37歳で2代目社長に就任)。私の力だけではなく、この会社をどうしたいか、という中で引き継いできた。だからこそ感謝だし、作ってくれた仕組みを良くしていきたいところです。あとは、100年続く企業にしたいと二人で話してきました。 Q:鈴木氏から言われたように10年間社長を全うする場合、4~5年後に売上高を倍増させた後、現時点でどのような目標を置きたいと考えますか。 A:次の成長につなげることですね。基本的には、前任者が作った数字のトラック(足跡)を磨いていくのと、私は例えば(売上高)1兆円であるとか、その際は違うビジネスモデルになるかもしれませんが、そうした世界も目指していかなければならないと考えています』、「アマゾンより当社が選ばれるのは、やはりBtoBに特化しているため見つけやすい。早く探せるなど、現場に支持されているところがあります。そこはより強くしつつ、他社からシェアを広げていく上で、切り替えていただくには何が必要なのかを、市場を分けながら考えたいと思っています・・・私の力だけではなく、この会社をどうしたいか、という中で引き継いできた。だからこそ感謝だし、作ってくれた仕組みを良くしていきたいところです・・・次の成長につなげることですね。基本的には、前任者が作った数字のトラック(足跡)を磨いていくのと、私は例えば(売上高)1兆円であるとか、その際は違うビジネスモデルになるかもしれませんが、そうした世界も目指していかなければならないと考えています」、「田村」新社長もなかなか優秀そうだ。今後の活躍を期待したい。
タグ:コンサルティング (コンサルティングとは? 就活人気の高いコンサル業界を分かりやすく解説!、米マッキンゼー 経営トップ再選も亀裂あらわ ボブ・スターンフェルズ氏が再びグローバル・マネジングパートナーに選出されたが パートナーの間に反対意見があることが明らかに、急成長モノタロウのボスコン出身社長を直撃!今に生きる コンサル時代に得た「3つのスキル」とは?) en-courege「コンサルティングとは? 就活人気の高いコンサル業界を分かりやすく解説!」 「相手(クライアント)の困りごとを解決する仕事」といっても、実際には幅広い。 「「誰の困りごとを解決するのか」によってこれらは分類されます」、なるほど。 「戦略コンサルを強みとする」ところは、最も高度で、料金も高い。 「業務コンサルティング」は実務的内容だ。 この他にコンピューターメーカーも「ITコンサルティング」を提供している。 ここは投資銀行が取引そのもので勝負をする世界でもある。 「総合系コンサルはアメリカや欧米に本社を構える外資系が多く、クライアントも大企業であるのに対し、国内独立系は日本発のコンサルティングファームです。 クライアント規模も中小企業など様々で、会社の生産・製造など現場に入り込んだコンサルティングを行います」、なるほど。 「プロジェクトを同時に2~3個担当する」のは、繁閑を調整する一般的な方法だ。 大企業のクライアントでは、反対派を説得する材料として「コンサル」を活用することもある。 「論理的に説明する能力」は必須の「能力」だ。 ここはPRなので、紹介は省略。 ダイヤモンド・オンライン The Wall Street Journal「米マッキンゼー、経営トップ再選も亀裂あらわ ボブ・スターンフェルズ氏が再びグローバル・マネジングパートナーに選出されたが、パートナーの間に反対意見があることが明らかに」 「麻薬性鎮痛剤「オピオイド」の販売でパーデュー・ファーマなどの製薬会社に協力したとして批判を浴びた同社は21年、パーデューに協力したことに対して5億7300万ドル(現在のレートで約850億円)の和解金を支払うと発表・・・経済が減速し、顧客が減るにつれ、自社のサービスに対する将来的な需要を読み違えたと批判されてきた。 この1年、マッキンゼーは人員削減を進めた。バックオフィス業務を担当していた1400人を削減し、破産処理業務の一部を段階的に縮小した。またベイン・アンド・カンパニーなど同業他社と同様に、新規採用した経営学修士号(MBA)取得者の入社時期を今年に先送りした。12月に新規に指名したパートナーは約250人で、2022年の380人から減少した」、なるほど。 「スターンフェルズ氏の前任のケビン・スニーダー氏は1期目のあと、抗議票によって2021年にトップの座を追われた・・・スターンフェルズ氏は周囲からは決断力のあるリーダーと受け止められている。しかし同氏が関係の近い少人数のチームに頼り、パートナーシップ制企業のリーダーというより従来の最高経営責任者(CEO)のようなやり方で会社を経営していると感じていた一部のパートナーはこの3年間、そのやり方にいら立っていた」、「マッキンゼー」といえどもトップ人事は思うようにはいかないものらしい。 田村咲耶・MonotaRO代表執行役社長インタビュー「急成長モノタロウのボスコン出身社長を直撃!今に生きる、コンサル時代に得た「3つのスキル」とは?」 「今まで一つ大きい市場(間接資材調達市場)で考えてきたことの精緻化をしています。攻めていく市場を「スモール」「ミッド」「ラージ」と分解して、それに合わせた事業成長戦略やサービス設計、品ぞろえ、マーケティング戦略を作っていくのが事業成長の鍵ですね。 それによって売り上げを伸ばしていくのと、コスト的にもサービスを支える物流やオペレーションを作っていくところ。あとは将来の大きな成長に向けて、日本発のモデルであるMonotaROを海外に展開していく、という構図だと思います」、なるほど。 「コンサルタント時代の経験は、これまでの職務へどのように役立っていますか・・・一つ目に、構造化・論理力が鍛えられたこと・・・もう一つは、人前で話す場面が数多く経験できたこと・・・三つ目に、ネットワーキングも大きな財産です・・・アラムナイの関係性はすごく強いですね。仲間内で情報を共有することもありますし、基本的にサポートし合う文化があって、先輩からもすごく助けられてきました。 特に同時代に在籍してきた方はそうですが、元BCG同士だと、(プロジェクトを共にした)パートナーが被っていたり、御立さん(元BCG日本 代表の御立尚資氏)を知っているよという会話になったり。共通の話題ができることも多いです」、なるほど。 「アマゾンより当社が選ばれるのは、やはりBtoBに特化しているため見つけやすい。早く探せるなど、現場に支持されているところがあります。そこはより強くしつつ、他社からシェアを広げていく上で、切り替えていただくには何が必要なのかを、市場を分けながら考えたいと思っています・・・私の力だけではなく、この会社をどうしたいか、という中で引き継いできた。だからこそ感謝だし、作ってくれた仕組みを良くしていきたいところです・・・ 次の成長につなげることですね。基本的には、前任者が作った数字のトラック(足跡)を磨いていくのと、私は例えば(売上高)1兆円であるとか、その際は違うビジネスモデルになるかもしれませんが、そうした世界も目指していかなければならないと考えています」、「田村」新社長もなかなか優秀そうだ。今後の活躍を期待したい。
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株式・為替相場(その20)(日本株は誰がなんと言おうと やっぱり暴落する コロナ後の「バブルのおかわり」は3回で終了だ、日経平均「最高値後」のシナリオは?日本株の行方を専門家6人が大展望!、日本株最高値を主導した「物価高・金融緩和・円安」スパイラルの“逆回転”リスク、TOPIXは最高値にまだ8%足りない…算出方法がもたらす日経平均株価の「ゆがみ」とは)

株式・為替相場については、2月10日に取上げたばかりであるが、転換点が近づきつつある気配もあることから、(その20)(日本株は誰がなんと言おうと やっぱり暴落する コロナ後の「バブルのおかわり」は3回で終了だ、日経平均「最高値後」のシナリオは?日本株の行方を専門家6人が大展望!、日本株最高値を主導した「物価高・金融緩和・円安」スパイラルの“逆回転”リスク、TOPIXは最高値にまだ8%足りない…算出方法がもたらす日経平均株価の「ゆがみ」とは)である。

先ずは、2月24日付け東洋経済オンラインが掲載した財務省出身で 慶應義塾大学大学院教授の小幡 績氏による「日本株は誰がなんと言おうと、やっぱり暴落する コロナ後の「バブルのおかわり」は3回で終了だ」を紹介しよう。
・『「小幡の言うことはめちゃくちゃだ」 ほとんどの人はそう思っているようだが、私はまったく違うと思っている。それどころか、私の観察結果はつねに同じで、すべての現象が私の仮説を裏付けるものばかりだ』、いつも通り、自分の見立てには自信満々だ。
・『「株式市場はバブルの真っただ中」にある  この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています【2024年1月5日編集部追記】2024年1月1日、山崎元さんは逝去されました。心から哀悼の意を捧げ、ご冥福をお祈りします)。記事の一覧はこちら 「あのねえ、それを行動経済学では『確証バイアス』(自分の思い込みや願望を肯定する情報に注目し、否定する趣旨の情報を軽視しやすくなる心理)と言うんだよ、小幡くん」と言わそうだが、とんでもない。 客観的には、この数年の株式市場で起きている現象はすべて、ただ1つの事実を指し示している。「現在、株式市場はバブルの真っただ中だ」と。 私は2月17日土曜日の朝に、株価の見通しについて議論するテレビ番組に出席したが、プロフェッショナル2人を差し置いて、私の株価予想が一番高く、「3月8日までに日経平均株価4万円を必ず突破する」「1989年につけた過去の最高値3万8915円は、2月19日の月曜日にでもすぐ突破するか、あるいはその週の22日までには必ず突破する。もし突破すればその勢いで4万円も必ず突破する」などとコメントした。 一方、2月21日水曜日の朝7時過ぎのラジオ番組では、一転して「明日は大暴落するかもしれない」と発言した。 そもそも「明日大暴落する」などと軽々に発言する人は、小幡しかこの世にいないわけで、それだけですでにクレージーであるが、「4万円は必ず行く」と言ったその4日後に「大暴落する」と正反対のことを言い切ってしまうのだから、どうかしている。そして、その断言は見事に外れ、いやそれどころかまさに正反対、22日の日経平均は前日比836円も の大幅上昇となり、日経平均3万8915円の史上最高値をあっさり更新してしまった。 しかし、だからこそ、私は「まごうことなきバブルであり、ほぼ頂点にある」という私の仮説に対するエビデンス(証拠)が次々にそろい続けていると思うのだ。) なぜか』、大胆な正反対の予測が2つとも外れても、強気でいられる理由は何なのだろう。
・『株がバブルであるという「5つの証拠」  第1に、乱高下を繰り返している。バブルの頂点付近であるからこそ、乱高下し、急騰し急落し、それを繰り返しながら最後に大暴騰するのだ。まさにバブルの頂点に典型的な動きを毎日続けている。 第2に、上がり方が急激である。わずか数十分で日経平均が簡単に200円以上も上がることさえある。バブルの頂点では、最後に急激に上がる。そして、崩壊するのである。最後はスピード違反が起きて、暴走し、それで崩壊するのだ。1月からスピード違反を続けているが、今、最後にとことん違反をして暴走し、クラッシュしようとしている。 第3に、取引高が急増している。バブルのピークでは売り買いが交錯し、また乱高下を利用して、トレーダーたちはとにかく売買を繰り返す。乱高下で値幅が大きくなったことを最大限活用し、荒く稼ごうとする。 第4に、先物主導である。さらにTOPIX(東証株価指数)ではなく、日経225先物に偏った動きである。「半導体株が主導している相場だから」と説明されるが、日経225先物が主導で、例えば19日の週は午前中に何度も3万8915円に挑むような動きをつくり、それに誰も乗ってこなくて、その後は失速し下げる、ということを繰り返していた。 2月22日の史上最高値更新も先物主導で上がっていき、午後に最高値付近で現物も張り付いて、高値を続けている。先物主導、日経225主導(TOPIXでなく)というのは、まさに投機的な動きのパターンである。 第5に、史上最高値更新だけが焦点になっている。株価のファンダメンタルズと無関係なことだけが注目されている。そして、実際、先物の動きがすべて従来の最高値3万8915円を中心に動いた。そこがターゲットになり、そこに近づける仕掛けがあり、そこから引き潮があり、翌日、また3万8915円にチャレンジする。 そして、22日にも何度も3万8915円を意識し、最後に突破してからは一気に上げる。つまり、理屈抜きに、史上最高値更新か否かだけが焦点になってせめぎ合いが行われた。これはバブル以外の何物でもない。) 解説を加えると、バブル末期には動きは激しくなる。まともな投資家、長期の投資家は、ここが売りタイミングかどうかは思案するが、売り切っておしまいである。買い戻すことはないし、ポートフォリオの入れ替えすらしない。じっと様子見するか、売る株数をじっくり判断するだけである。 つまり、大量に売買しているのは、短期トレーダーと投機家である。そして、異常に強気な短期投資家である。最後に、浮ついた個人である。すなわち、絶対的な株価水準などまったく気にしない取引者だけが残っているのである。あとは、異常に強気という誤った投資家と、狂った投資家だけである。 だから、まともな投資家は売るべきものは売りつくしている。売り手は存在せず、狂った買い手だけである。それゆえ株価は異常に高い水準であり、異常なスピードで上がっているときほど、ますます、とことん上がる。バブル崩壊直前の、断末魔ではなく、狂喜の叫びである。 だから、取引量も膨らむ。同じトレーダーがとことん繰り返し仕掛けて、売買し続けているのである。今はプログラムが大半だが、プログラム同士の仕掛け合い、せめぎ合い、だまし合いが行われているのである』、「株がバブルであるという「5つの証拠」」はいずれも説得力がある。「大量に売買しているのは、短期トレーダーと投機家である。そして、異常に強気な短期投資家である。最後に、浮ついた個人である。すなわち、絶対的な株価水準などまったく気にしない取引者だけが残っているのである。あとは、異常に強気という誤った投資家と、狂った投資家だけである。 だから、まともな投資家は売るべきものは売りつくしている。売り手は存在せず、狂った買い手だけである。それゆえ株価は異常に高い水準であり、異常なスピードで上がっているときほど、ますます、とことん上がる。バブル崩壊直前の、断末魔ではなく、狂喜の叫びである。 だから、取引量も膨らむ。同じトレーダーがとことん繰り返し仕掛けて、売買し続けているのである。今はプログラムが大半だが、プログラム同士の仕掛け合い、せめぎ合い、だまし合いが行われているのである」、捉え方は行動経済学者らしく、ダイナミックで、説得力がある。
・『皆が「ゲームの『降り時』」を見計らっている  こういうゲームで重要なのは「降り時」である。いつ、このバブルゲームから撤退するか、というタイミングだけだ。 タイミングの根拠は、ほかのトレーダーの動きだけである。多数派の動きに同調し、その流れに乗って、かつ利用して儲ける。モメンタム(勢い)がついているときはとことんついていく。しかし、モメンタムが失われる前に、逃げ遅れないように、ほかのトレーダーより一瞬先に降りる。そのタイミングを計っている。 そうなると、株価が企業収益対比で割高か否かなどは関係ない。雰囲気に尽きる。 また、同時に、日柄(経過日数)が重要である。どのくらいの期間、熱狂が続いてきたか。これは、ある意味、体力、気力が持続する間の勝負だから、みな疲れてくる。そろそろ手じまいして、利益が熱いうちに降りたいと思い始める。しかし、とことん儲けたくもあるから、最後まで残っていたいことはいたい。しかし、疲れてきたら、そろそろ、ということである。 2月19~21日の3日間はそろそろ疲れが見えてきたのであり、世界中のトレーダーが注視しているアメリカの画像処理半導体最大手エヌビディアの決算発表(日本時間22日午前6時過ぎ)を待って、小休止していたのである。 私が、前出のように暴落すると考えたのは、この決算が予想を下回れば、当然いままで一気に上げてきたために、その反動が必然的に生じるからだ。この場合、決算が悪いということはありえない。期待が高すぎて、予想水準がかなり高く、良い決算だったが、高すぎる期待を上回ることはできなかった、という可能性だけがあった。) 一方、たとえ予想を上回っても、いわゆる好材料出尽くしとなる。つまり、好決算を待ち構えていて、実際に好決算だったら、よし、好決算で暴騰するに違いない今こそ売り時だ、絶好の売りタイミングだ、となって、みんな売ろうとする、というのが典型的なパターンである。 絶好の売りタイミングのはずが、全員が売れば、それは誰もうまく売ることができず、一斉の売り、つまり、暴落となる。私は、このどちらかのシナリオになると予想した。 この予想は、これ以上ないというくらい外れた。それは、エヌビディアの決算が、私のような思考をして、売ろうと待ち構えていた投資家たちの予想をさらに超える好決算だったからだ。 となると、「よっしゃ、もうひとヤマ」ということになる。バブルのピークにさらに、もう1つ最後のヤマ(あるいは山)が加わったのである。せっかく儲かるのに、ここでパーティーをしない理由はない。「一気に盛り上げろ―!」ということになる。 これはエヌビディアバブルのほうの話で、日経平均バブルのほうとして、「待ってました! 最後の3万8915円の突破エンジン、ターボジェット噴射の支援が届いたんだから、一気にイケ―――!」ということになったのである』、「エヌビディアの決算が、私のような思考をして、売ろうと待ち構えていた投資家たちの予想をさらに超える好決算だったからだ。 となると、「よっしゃ、もうひとヤマ」ということになる。バブルのピークにさらに、もう1つ最後のヤマ(あるいは山)が加わったのである。せっかく儲かるのに、ここでパーティーをしない理由はない。「一気に盛り上げろ―!」ということになる」、「日経平均バブルのほうとして、「待ってました! 最後の3万8915円の突破エンジン、ターボジェット噴射の支援が届いたんだから、一気にイケ―――!」ということになった」、なるほど。
・『「3回目のアンコール」後、幕が下りるのはいつなのか  つまり、世界株式市場は、完全にバブル崩壊になったはずのコロナショックから、「おまけバブル」が3回もあった。 すなわち、コロナ支援金バブルという「おまけバブルその1」、アメリカの中央銀行であるFEDの利下げを勝手に期待する、金融政策プットオプションバブルという「おまけバブルその2」、そしてAI(人工知能)、半導体バブル、あるいは「マグニフィセント6」(7と言われているが、テスラを除くので6)バブル、あるいは直接的にはエヌビディアバブルという「おまけバブルその3」である。 つまり「バブルのおかわり」を要求する投資家たちに応えた、バブルのアンコールを3回も繰り返した。コンサートではアンコールは2回まで、例外があるとしても3回までだ。4回目はない。ありえないと思われたこの3回目のアンコールのあと、幕は下りるのである。 私はサブシナリオとして、早ければ週明けの26日の月曜日は材料出尽くしで暴落が来る可能性が若干あるとみているが、メインシナリオはこの勢いで26日以降、早々と4万円台を突破し、その後、乱高下を続け、3月8日のいわゆるメジャーSQ(先物とオプション取引が同時に清算を迎える日)、この日に最後の幕が下りると考える。つまり、大暴落が起きる、ということである。 この2つのシナリオ(おそらく26日暴落説はすぐにまた外れることが判明するだろうが)が短期的に実現するかどうかよりも、私にとって重要なのは、これがバブルであり(それは間違いのない事実であるが)、しかもそれがまさに頂点に達しているという仮説が正しいかどうか、である。 バブルの頂点がいつかというのは、見かけ以上に難しく、ほとんど誰も当てることができない。あのアイザック・ニュートン(1642~1727)でさえも、欧州を中心に起きた「南海泡沫バブル」(まさにバブルバブルだ)で失敗した。 簡単に言えば、「もうバブルのピークだ」と自信をもって売って大儲けしたあと、さらにバブルが続き、売ってから約2倍になってしまったので、後悔して買い戻したが、そこが実際のピークで、買い戻した瞬間にバブルが崩壊したのである。これがまさに典型的なバブルである。 ということは、賢明な読者はお気づきと思うが、いちばん可能性の高いシナリオは、小幡が降参して、「バブルは当分崩壊しない」という記事を「東洋経済オンライン」などに書いた直後に暴落する、というものだ。”Stay tuned”.(乞うご期待)。 (本編はここで終了です。この後は競馬好きの筆者が競馬論や週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)』、「これがバブルであり(それは間違いのない事実であるが)、しかもそれがまさに頂点に達しているという仮説が正しいかどうか、である。 バブルの頂点がいつかというのは、見かけ以上に難しく、ほとんど誰も当てることができない・・・いちばん可能性の高いシナリオは、小幡が降参して、「バブルは当分崩壊しない」という記事を「東洋経済オンライン」などに書いた直後に暴落する、というものだ」、「小幡」氏のご託宣は、悲観的なようだ。

次に、2月26日付けダイヤモンド・オンライン「日経平均「最高値後」のシナリオは?日本株の行方を専門家6人が大展望!」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/339343
・『『週刊ダイヤモンド』3月2日号の第1特集は「高成長&高配当 新NISAで狙う強い日本株」です。ついに日経平均株価が「史上最高値」を超え、新次元に突入中です。そこで、日本株相場の行方について専門家6人に緊急アンケートを行い、株高の背景や想定シナリオなどを読み解きました』、興味深そうだ。
・『日経平均がついに最高値更新 専門家が今後のシナリオ大展望!  日本株が、かつてなく動意付いている。年初から上げ相場が続き、日経平均株価は連日のようにバブル後最高値を更新。そして2月22日の東京株式市場では、前日比836円52銭高の3万9098円68銭で取引を終え、ついに1989年末の史上最高値(3万8915円87銭)を超えるに至った。  (図表:過去50年の日経平均株価の推移 はリンク先参照) ダイヤモンド編集部では、日本株の上昇相場が続く中で、2月中旬に専門家6人への緊急アンケートを実施。日本株上昇の背景、今後の見通しなどを回答してもらった。 すると、2024年末時点の日経平均の予想は4万3000~3万3000円となった。回答内で市場関係者の想定するシナリオにほぼ共通するのは、最高値更新があくまでも通過点との見立てだ。 (図表:専門家6人が日本株の行方を大展望 はリンク先参照) 年内の高値想定を4万5000円としたシティグループ証券の阪上亮太株式ストラテジストは、2月15日付のレポートにおいて、従来の予想を上方修正。「日本株の基調は想定以上に強い」として、堅調な米国の経済や株式市場、日本株への資金フローの強さなどを理由に、「強気スタンスの維持が妥当」と指摘した。 そもそもなぜ、これだけ日本株が上がっているのか。複数の専門家から寄せられた回答が、「インフレ」というキーワードだ。 阪上氏と同様、24年末日経平均を4万3000円と予想するマネックス証券の広木隆チーフ・ストラテジストは、「長らく日本経済をむしばんできたデフレが終焉し、マイルドなインフレが定着しつつある」と指摘。これにより「値上げが通りやすくなり、企業が原価を適切に価格に反映し利益を上げやすい構造になってきた。直近で一巡した企業の決算発表を見ても、値上げによる好業績の事例は非常に多い」とみる。 その上で、インフレを含め、七つの要因が日本株を押し上げてきたと分析する。 それは、(1)デフレからインフレへの転換、(2)日本型企業経営の変革(=グローバルスタンダードな資本市場へ)、(3)この点を評価した海外投資家の買い、(4)中国からの資金シフト、(5)米国株の最高値更新、(6)日本の金融緩和の継続観測とそれを背景とした円安、(7)好調な企業業績である。 「これだけ並ぶ要因を眺めれば、日本株の上昇は至極、当然と受け止められるだろう」(広木氏)というわけだ』、「七つの要因が日本株を押し上げてきたと分析」は説得力がある。
・『2024年始動の「新NISA」が日本株への関心を後押し  そして、日本株への関心を大きく高めたのが、今年から大幅に非課税枠が拡充されたNISA(少額投資非課税制度)である。 ところで、「バブル後最高値」更新といったニュースを聞くと、足元の日本株もバブルではないかと気になる向きもあるだろう。この点は、市場関係者が異口同音にそうではないとの見方を示す。 何しろ、89年前後のバブル期は、株価が割安か割高か示す代表的な指標である株価収益率(PER)が上場企業平均で60~70倍にも上り、世界の株式市場でも前例のないほど過大に評価されていた。一方、直近の日経平均は16倍前後で推移する。 確かに「来期の日本株市場(TOPIX)は7%程度の増益予想で、昨年からの株価急上昇は明らかに過大評価」(智剣・Oskarグループの大川智宏主席ストラテジスト)との声はあるが、バブルとまで言い切る市場関係者はほとんど見当たらない。 ただ下期にかけてのリスク要因として、米中の景気下振れや、米利下げに伴う円高などへの警戒感は聞かれる。 日本株を巡っては、著名外資系証券のゴールドマン・サックスも強気の姿勢を示している。同社は今、TOPIXを「オーバーウェイト」とし、米国の代表的な株価指数、S&P500より上振れに期待できるとみている』、「直近の日経平均は16倍前後で推移する。 確かに「来期の日本株市場(TOPIX)は7%程度の増益予想で、昨年からの株価急上昇は明らかに過大評価」(智剣・Oskarグループの大川智宏主席ストラテジスト)との声はあるが、バブルとまで言い切る市場関係者はほとんど見当たらない。ただ下期にかけてのリスク要因として、米中の景気下振れや、米利下げに伴う円高などへの警戒感は聞かれる」、なるほど。
・『「最高値更新」は通過点 新NISAで日本株投資に挑む  『週刊ダイヤモンド』3月2日号の第1特集は「高成長&高配当 新NISAで狙う強い日本株」です。日経平均株価が2月22日、ついに史上最高値を更新しました。ただ専門家の間では、これが通過点に過ぎず、日本株にはかつてなく強気論が高まっています。 そこで本特集のPART1では、新次元に突入した日本株の展望を踏まえ、まだまだ間に合う「新NISA」活用術を徹底指南。陥りがちな「8つの落とし穴」、さらにはすご腕投資家たちの鼎談を通じて、あなたが投資に挑む上での虎の巻を伝授します。 PART2では、成長期待の高いよりすぐりの大型成長株ランキングを大公開します。その上で、大注目の半導体、不動産やゲーム、ITベンダーなど、有望各社の「高成長の仕組み」を解剖。トップアナリストの見解などを基に、優良株の強さの秘密を明らかにします。 さらに、PART3では、新NISAで大人気の「高配当株」関連のランキングを充実化。中長期で狙える「骨太テーマ&注目株」から、今は低PBR(株価純資産倍率)ですが伸びしろ抜群の中小型株、成長性が高い一方で還元姿勢もふんだんの「株主還元全振り系」銘柄に至るまで、多彩な視点で「強い株」を炙り出しました。 新NISAで挑む日本株投資の虎の巻として、大いに活用してもらえれば幸いです』、「専門家の間では、これが通過点に過ぎず、日本株にはかつてなく強気論が高まっています」、なんとなく強気ムードの終焉という気もしなでもない。

第三に、2月27日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミストの木内登英誌による「日本株最高値を主導した「物価高・金融緩和・円安」スパイラルの“逆回転”リスク」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/339476
・『日経平均株価がバブル期から約34年ぶりに史上最高値を更新したのは実体経済の反映ではなく「物価高」「金融緩和」「円安」の循環と相乗効果によるものだ。日銀のマイナス金利解除や米国景気減速を機にスパイラルは逆回転するリスクがあり、高値更新に浮かれている場合ではない。緊急特集『日経平均株価「最高値」の虚実』の#5では、野村総研エグゼクティブエコノミストの木内登英氏の寄稿をお届けする』、「日銀のマイナス金利解除や米国景気減速を機にスパイラルは逆回転するリスクがあり、高値更新に浮かれている場合ではない」、さすが元日銀審議委員だけあって慎重な見方だ。
・『22日に続き26日も最高値更新 生活実感から乖離した水膨れの株高  日経平均株価は、2月22日、3万9098円68銭(終値)を付け、1989年12月29日に付けたこれまでの最高値(3万8915円87銭)を上回った。 週明けの26日も続伸して3万9233円71銭(終値)まで上昇し2営業日連続で最高値更新になった。 しかしバブル期と同じ株価水準といっても、多くの個人にはその実感は乏しいのではないか。 足元の経済状況は悪化している。2023年10~12月期の実質GDPは、前期比年率-0.4%と2四半期連続で減少した。マイナス成長は24年に入っても続いている可能性が考えられる。物価高の強い逆風にさらされている個人消費はとりわけ弱い。 こうした経済状況とバブル期の史上最高値を上回った株価の動きとの間には大きなズレがある。個人にとっては、まさに「実感なき株高」だ。 重要なのは、足元の株価上昇は、日本経済や企業の成長力向上、生活水準の向上をもたらす労働生産性上昇、国際競争力向上といった「実質値」の改善を背景にしているとは考えられない点だ。 株高を支えているのは物価高という「名目値」によるものであり、水膨れの株高ともいえる。 さらに、歴史的なインフレ下でも続く異例の金融緩和も、実質金利(名目金利-期待インフレ率)の低下と円安の双方を通じて株高を強く後押ししている。株高現象は、名目値の水膨れとともに金融現象による金融相場の複合の様相だ。 高値更新に浮かれている場合ではないのではないか』、「株高現象は、名目値の水膨れとともに金融現象による金融相場の複合の様相だ。 高値更新に浮かれている場合ではないのではないか」、その通りだ。
・『「株高の第1の構図」は実質賃金の低下と企業収益の拡大  足元の株高は、「物価高」、「金融緩和」、「円安」の3要因間での循環、相乗効果によって成り立っていると考えられる。 それぞれについて、より詳細に見てみよう。 2022年以降、コアCPI(消費者物価、除く生鮮食品)の前年比上昇率は、第2次オイルショック直後の1980年代初頭以来、ほぼ40年ぶりの高い水準で推移してきた。海外での食料やエネルギー価格の上昇と円安による輸入インフレの色彩が強かったが、企業が輸入原材料価格の高騰分を製品価格に転嫁していく中、消費者物価上昇率も高まっていった。 他方で、賃金上昇率は物価上昇率に追い付いていない。厚生労働省が発表している直近23年12月の実質賃金は、前年同月比-1.9%と大幅下落し、実質賃金のマイナスは21カ月続いている。 今年の春闘は昨年を上回る高い賃上げ率が見込まれているが、賃金上昇率が予想以上に上振れても、年内に実質賃金上昇率がプラスに転じる可能性は低い。 日本では、物価が下落しても企業はベースアップ(基本給引き上げ)を引き下げることが難しいことから、一時的に物価上昇率が高まる局面では、ベースアップ率を物価上昇率以下に抑えることで、中長期的に物価上昇率と賃金上昇率のバランスを取る傾向が強い。その結果、実質賃金が下がり続けているのが現状だ。 実質賃金が低下することは、個人の生活水準が悪化を続けることを意味する。そして所得の分配は企業側に偏り、企業の収益は逆に拡大するのだ。その結果、株価は上昇し、個人の生活実感との間でギャップが広がることになる。これが現在の「株高の第1の構図」だ』、「実質賃金が低下することは、個人の生活水準が悪化を続けることを意味する。そして所得の分配は企業側に偏り、企業の収益は逆に拡大するのだ。その結果、株価は上昇し、個人の生活実感との間でギャップが広がることになる。これが現在の「株高の第1の構図」だ」、なるほど。
・『物価高騰下での金融緩和 円安進行による相乗効果  他方、歴史的な物価高騰の下でも、日本銀行は異例の大規模金融緩和を維持してきた。その結果、企業・家計や金融市場の中長期のインフレ期待(予想物価上昇率)は上振れている。 日銀は、中長期のインフレ期待を安定させるという中央銀行の役割を十分に果たせず、ビハインド・ザ・カーブ(後手に回る)の状態に陥ってしまっている。その結果、実質金利(名目金利-インフレ期待)は顕著に低下したとみられる。金融緩和の効果が、事実上、強化されている状況だ。 実質金利の低下は、通常は景気を刺激すると考えられるが、その影響は実際には明確に見られていない。2四半期連続での実質GDPのマイナス成長にも表れているように、足元の経済は低迷している。 他方で実質金利の低下は、資産価格の押し上げには効果を発揮しているように見える。これが「株高の第2の構図」だ。 さらに、この実質金利の低下は、株式以外にも金融市場に大きな影響を与える。それは、円安の流れを強く後押ししていることだ。円安は輸出企業の収益を拡大させることで株価全体を押し上げる。また、円安によって海外投資家にとって日本株が割安となり、それが日本株への投資を促すことでも株高要因となっている。これが「株高の第3の構図」である』、「実質金利の低下は、通常は景気を刺激すると考えられるが、その影響は実際には明確に見られていない。2四半期連続での実質GDPのマイナス成長にも表れているように、足元の経済は低迷している。 他方で実質金利の低下は、資産価格の押し上げには効果を発揮しているように見える。これが「株高の第2の構図」だ・・・この実質金利の低下は、株式以外にも金融市場に大きな影響を与える。それは、円安の流れを強く後押ししていることだ。円安は輸出企業の収益を拡大させることで株価全体を押し上げる。また、円安によって海外投資家にとって日本株が割安となり、それが日本株への投資を促すことでも株高要因となっている。これが「株高の第3の構図」である」、なるほど。
・『株高支える3要因は持続的でない 物価上昇率鈍化でインフレ期待は低下へ  歴史的な物価高騰は金融緩和の実質的な効果を高め、それは円安を促す。そして円安は物価高をもたらす。そうして「物価高」「金融緩和」「円安」の3つが相乗的に進む中、それぞれが株価を大きく押し上げているのだ。 しかし、株高を支えるこれら3つの要因は、持続的なものとはいえないだろう。 コアCPIの上昇率は過去1年間、明確な低下傾向をたどっており、今年の後半には前年比で+1%台が定着することが予想される。日銀が指摘するように、賃金上昇がサービス価格に転嫁されることで、より持続的な物価上昇につながっていくとの見方も後退していくだろう。 そうして中長期のインフレ期待が低下すれば、企業の収益期待は弱まる一方、実質金利は上昇する。それらは、円安の修正を伴う形で株式市場への逆風になるだろう』、「歴史的な物価高騰は金融緩和の実質的な効果を高め、それは円安を促す。そして円安は物価高をもたらす。そうして「物価高」「金融緩和」「円安」の3つが相乗的に進む中、それぞれが株価を大きく押し上げているのだ。 しかし、株高を支えるこれら3つの要因は、持続的なものとはいえないだろう・・・中長期のインフレ期待が低下すれば、企業の収益期待は弱まる一方、実質金利は上昇する。それらは、円安の修正を伴う形で株式市場への逆風になるだろう」、なるほど。
・『マイナス金利政策解除は円高要因に 実質金利上昇させ株式市場に逆風  さらに日本銀行は、早ければ3月にもマイナス金利政策の解除に踏み切ることが考えられる。それは、実質金利を上昇させ、円安・株高の流れに水を差すだろう。 日銀は、マイナス金利政策解除後も、当面は、政策金利はゼロ近傍の低水準が続くとの見通しを示している。しかし、2%の物価目標の達成を前提にマイナス金利政策の解除に踏み切るのであれば、政策金利をゼロ近傍の低水準に据え置くことは論理的におかしい。 2%の物価目標の達成とは、この先、物価上昇率や中長期のインフレ期待が2%程度で安定的に推移することを意味する。そうした経済状況の下で、政策金利をゼロ近傍に据え置くことは、2%の物価目標の達成後に実質-2%程度の「超緩和」政策を続けることになってしまう。 日銀がそうした政策を続けるとの観測が、足元での急速な円安・株高を生じさせている面がある。 日銀がこうした説明をするのには、政策変更が長期金利の大幅上昇など金融市場の過剰な反応を引き起こさないようにする狙いがあるのだろう。しかし、説明の矛盾を突いて、金融市場の一部で、マイナス金利政策解除後に、日銀は比較的早期に金融政策を中立状態に戻していくとの観測が浮上する可能性も考えられる。そうなれば、長期金利の上昇や急速な円の巻き脅しを生じさせ、株式市場に逆風になる』、「2%の物価目標の達成とは、この先、物価上昇率や中長期のインフレ期待が2%程度で安定的に推移することを意味する。そうした経済状況の下で、政策金利をゼロ近傍に据え置くことは、2%の物価目標の達成後に実質-2%程度の「超緩和」政策を続けることになってしまう。 日銀がそうした政策を続けるとの観測が、足元での急速な円安・株高を生じさせている面がある」、なるほど。
・『米国経済のソフトランディング期待は 修正の可能性。景気減速となれば円高に  円安を支える要因は米国にもある。米国でインフレ率が低下する中、FRB(米連邦準備制度理事会)は、小幅な利下げに踏み切るとの観測が金融市場に強い。ただし、これは予防的な措置であり、米国経済の堅調は続くとの見方が市場では多数だ。経済が堅調を維持する中、金利が低下するというのは、米国株にとってまさにベストシナリオではある。それが世界経済・金融市場の楽観論を支え、リスクテイクの円安と日本株高の流れを促している面もある。 しかし、歴史的な高インフレとそれを受けた大幅な利上げの下、米国経済が安定を維持するというのは、過去の事例から考えても起こりにくいことではないか。 いずれ景気減速の兆候が広がれば、米国株が調整し、その影響は日本株にも及ぶ。FRBが予想以上の大幅な利下げに踏み切るのではという観測が強まれば一転して円高ドル安の流れになるだろう』、「いずれ景気減速の兆候が広がれば、米国株が調整し、その影響は日本株にも及ぶ。FRBが予想以上の大幅な利下げに踏み切るのではという観測が強まれば一転して円高ドル安の流れになるだろう」、なるほど。
・『高値更新に浮かれる場合ではない 実体経済とのギャップを埋める努力を  「物価高」「金融緩和」「円安」の循環は、今までは強力に日本株を押し上げてきたが、それがひとたび逆回転を始めれば、今度は日本株への強い逆風になる。その転換点を正確に予測するのは難しいが、日本銀行が早ければ3月にもマイナス金利政策を解除すると予想されている中で、その転換点はそれほど先のことではないかもしれない。 これまで述べたように、足元の株高と実体経済との間にはギャップがある。実体経済を改善させることで、両者のギャップを埋めるような努力もすべきではないか。企業が引き続き資本効率の向上などに努めることが求められるのは当然だが、働き手も、リスキリング(学び直し)などを通じて、技能を磨き、労働生産性向上に努めることが必要だ。 政府も、労働市場改革や少子化対策、外国人労働力の活用、インバウンド需要の拡大、大都市一極集中の是正などの成長戦略を推進することで、労働生産性上昇率や潜在成長率を上げる取り組みが求められる。 株価の上昇に浮かれることなく、今こそ、こうした企業、個人、政府の地道な努力を進めるべきだろう』、「「物価高」「金融緩和」「円安」の循環は、今までは強力に日本株を押し上げてきたが、それがひとたび逆回転を始めれば、今度は日本株への強い逆風になる。その転換点を正確に予測するのは難しいが、日本銀行が早ければ3月にもマイナス金利政策を解除すると予想されている中で、その転換点はそれほど先のことではないかもしれない・・・足元の株高と実体経済との間にはギャップがある。実体経済を改善させることで、両者のギャップを埋めるような努力もすべきではないか。企業が引き続き資本効率の向上などに努めることが求められるのは当然だが、働き手も、リスキリング(学び直し)などを通じて、技能を磨き、労働生産性向上に努めることが必要だ。 政府も、労働市場改革や少子化対策、外国人労働力の活用、インバウンド需要の拡大、大都市一極集中の是正などの成長戦略を推進することで、労働生産性上昇率や潜在成長率を上げる取り組みが求められる。 株価の上昇に浮かれることなく、今こそ、こうした企業、個人、政府の地道な努力を進めるべきだろう」、同感である。

第三に、3月2日付けダイヤモンド・オンライン「TOPIXは最高値にまだ8%足りない…算出方法がもたらす日経平均株価の「ゆがみ」とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/339740
・『日経平均株価と並ぶ日本株の代表的指標であるTOPIX(東証株価指数)は、いまだに最高値を更新していない。その原因を探っていくと、指数の算出方法における日経平均の“ゆがみ”が浮かび上がる。緊急特集『日経平均株価「最高値」の虚実』の#9では、そのゆがみの構造を解説する』、興味深そうだ。
・『昨年末からの上昇率も日経平均より低いTOPIX  日経平均株価(以下、日経平均)とTOPIX(東証株価指数)。言うまでもなく両者は日本株を代表する株価指数である。2月22日に日経平均は史上最高値を更新したものの、TOPIXはいまだ最高値を更新していない。 TOPIXの最高値は1989年12月18日に付けた2884.80だ。2月22日の終値は2660.71なので、最高値更新まではあと8%強の上昇が必要である。 2023年末から2月22日までの上昇率を比較しても、日経平均の方が高い。日経平均が16.8%上昇したのに対し、TOPIXの同期間の上昇率は12.4%にとどまる。(図表:日経平均株価とTOPIXの上昇度の推移 はリンク先参照) なぜ、二つの指数の間に格差が生じるのか。 225銘柄しか対象としていない日経平均に対して、旧東京証券取引所1部銘柄、プライム市場銘柄を対象に2000以上の銘柄を対象とするTOPIX。構成銘柄の違いはもちろん、格差の理由の一つだが、実は算出方法に違いが大きく影響している。 これが原因となって日経平均の“ゆがみ”を生んでおり、一部企業の株価動向に影響されやすいという指標の妥当性に疑問符を付けている。 次ページ以降、“ゆがみ”を生む日経平均の構造をTOPIXと比較しながら解説してゆく』、「25銘柄しか対象としていない日経平均に対して、旧東京証券取引所1部銘柄、プライム市場銘柄を対象に2000以上の銘柄を対象とするTOPIX。構成銘柄の違いはもちろん、格差の理由の一つだが、実は算出方法に違いが大きく影響している」、なるほど。
・『ウエイト3割占める日経平均上位4銘柄 TOPXでののウエイトはたった4%  日経平均の算出方法は「単純平均」だ。ざっくり説明すると、対象となる銘柄(225社)の株価を合計し、企業数で割った値だ。実際には旧額面の高低による格差を解消するため、銘柄ごとに決められた係数を掛けて株価合計を算出する。割る数も225と一定ではなく、銘柄入れ替え、株式分割などの影響を調整した除数を使う。 簡単な例で考えてみよう。株価が100円、1000円、400円だったとする。単純平均だから、平均は(100円+1000円+400円=)1500円÷3で500円となる。ここでの銘柄ごとのウエイトはそれぞれの株価を1500円で割って求めた6.7%、66.7%、26.7%となる。 ウエイトの高い銘柄の動きが平均を大きく動かす。100円の株価が10%値上がりして110円になると、平均は値上がり分の10円÷3=3.3円上昇する。1000円の株価が10%値上がりして1100円になると、平均は100円÷3=33.3円値上がりする。 このように企業価値である時価総額に関係なく、株価の高い銘柄の動きが平均に大きく影響する。この算出方法のせいで、株価の額面水準が高い銘柄の、日経平均への影響力が高くなる。時価総額の大きい企業よりも、値がさ株の動向に指数全体が左右されてしまうのだ。 これに対し、TOPIXは浮動株を対象とした時価総額に基づく「加重平均」である。個別銘柄の株価水準の高低が、直接には指数に占めるウエイトに影響しない。 先ほどの例で、100円の株価の会社の株式数が100株、1000円の株価の会社の株式数が10株、400円の株価の会社の株式数が25株だとすると、株価と株式数を掛けて求められる時価総額は全て1万円となる。時価総額の合計は3万円だ。銘柄ごとのウエイトは、3銘柄とも1万円を3万円で割った同じ33.3%となる。 だから、どの銘柄が10%値上がりしても、時価総額の増加額は1000円であり、3万1000円÷3万円=1.03333……となるので、指数の上昇率は3.3%となる。このようにTOPIXのような加重平均の指数では、その値動きは個別の銘柄の株価の水準の違いに影響されない。 上記は説明のために、極端な例を挙げたが、実際に、日経平均とTOPIXでの個別銘柄のウエイトの違いを見てみよう。 日経平均プロフィルに基づいて、現在のウエイト上位10銘柄を挙げたのが下表だ(2月22日時点)。 (図表:日経平均株価ウエイト上位10位銘柄 はリンク先参照) ファーストリテイリング、東京エレクトロン、アドバンテスト、ソフトバンクグループの上位4銘柄のウエイト合計は29.74%と3割近い。 この4銘柄が10%値上がりすれば、それだけで日経平均を3%弱ほど押し上げる計算になる。そして、この4銘柄の23年末からの上昇率は全て2割を超えている。 半導体関連株が買いを集める中で値を上げた東京エレクトロン、アドバンテストに至っては40%以上である。4割弱の上昇率のソフトバンクグループも傘下に英半導体設計の子会社アーム・ホールディングスを保有しており、半導体関連株の一角である。 一方、この4銘柄のTOPIXでのウエイト合計比率は4.29%である。また、日経平均採用銘柄内で、TOPIXと同様に時価総額を考慮してウエイトを算出しても4銘柄の合計は5.63%にすぎない。 逆に、東証で時価総額トップのトヨタ自動車のTOPIXでのウエイトは5.12%なのに対し、日経平均では1.5%しかない。 昨年来、米国の利下げ期待が高まるたびに、半導体関連を中止としたテック株が買われた。そこにAI(人工知能)ブームが拍車を掛けた。日経平均の最高値更新の直接のきっかけとなった、市場予想を上回る決算を発表した米エヌビディアが代表例だ。日本市場でも米国市場に合わせる形で半導体関連株が値を上げてきた。 そして、半導体関連株には日経平均に占めるウエイトの高い値がさ株が多い。それ故、日経平均の上昇率がTOPIXを上回っているのだ。もちろん、日経平均に占めるウエイトの高い銘柄の下落率が大きい場合には、TOPIXより日経平均の方が下落率は高くなる。 このように一部の銘柄の影響が大きく出やすい単純平均である日経平均の算出方法には“ゆがみ”があるといえる。 算出開始が50年9月(指数自体は49年5月の東証再開時にさかのぼって算出)である日経平均に対し、TOPIXの誕生は68年1月と遅い。また、「○万○○○○円」というふうに、なじみやすい通貨単位の円で示される日経平均に対し、ポイント制のTOPIXはとっつきにくさを感じさせる。 それ故、日経平均が日本株の代表的指標の一番手として長年君臨してきた。しかし、市場全体の動きを捉えるには、時価総額ベースの加重平均であるTOPIXの方が適している。 一部の銘柄の影響が大きく出やすい日経平均だけを見ていては、日本経済の実態も“ゆがんで”見えてしまうだろう』、「ファーストリテイリング、東京エレクトロン、アドバンテスト、ソフトバンクグループの上位4銘柄のウエイト合計は29.74%と3割近い・・・この4銘柄のTOPIXでのウエイト合計比率は4.29%である・・・「日経平均」は「株価の額面水準が高い銘柄の影響力が高くなる。時価総額の大きい企業よりも、値がさ株の動向に指数全体が左右されてしまうのだ。 これに対し、TOPIXは浮動株を対象とした時価総額に基づく「加重平均」である。個別銘柄の株価水準の高低が、直接には指数に占めるウエイトに影響しない・・・市場全体の動きを捉えるには、時価総額ベースの加重平均であるTOPIXの方が適している。 一部の銘柄の影響が大きく出やすい日経平均だけを見ていては、日本経済の実態も“ゆがんで”見えてしまうだろう」、大いに参考になった。
タグ:小幡 績氏による「日本株は誰がなんと言おうと、やっぱり暴落する コロナ後の「バブルのおかわり」は3回で終了だ」 東洋経済オンライン (その20)(日本株は誰がなんと言おうと やっぱり暴落する コロナ後の「バブルのおかわり」は3回で終了だ、日経平均「最高値後」のシナリオは?日本株の行方を専門家6人が大展望!、日本株最高値を主導した「物価高・金融緩和・円安」スパイラルの“逆回転”リスク、TOPIXは最高値にまだ8%足りない…算出方法がもたらす日経平均株価の「ゆがみ」とは) 株式・為替相場 いつも通り、自分の見立てには自信満々だ。 大胆な正反対の予測が2つとも外れても、強気でいられる理由は何なのだろう。 「株がバブルであるという「5つの証拠」」はいずれも説得力がある。「大量に売買しているのは、短期トレーダーと投機家である。そして、異常に強気な短期投資家である。最後に、浮ついた個人である。すなわち、絶対的な株価水準などまったく気にしない取引者だけが残っているのである。あとは、異常に強気という誤った投資家と、狂った投資家だけである。 だから、まともな投資家は売るべきものは売りつくしている。売り手は存在せず、狂った買い手だけである。それゆえ株価は異常に高い水準であり、異常なスピードで上がっているときほど、ますま す、とことん上がる。バブル崩壊直前の、断末魔ではなく、狂喜の叫びである。 だから、取引量も膨らむ。同じトレーダーがとことん繰り返し仕掛けて、売買し続けているのである。今はプログラムが大半だが、プログラム同士の仕掛け合い、せめぎ合い、だまし合いが行われているのである」、捉え方は行動経済学者らしく、ダイナミックで、説得力がある。 「エヌビディアの決算が、私のような思考をして、売ろうと待ち構えていた投資家たちの予想をさらに超える好決算だったからだ。 となると、「よっしゃ、もうひとヤマ」ということになる。バブルのピークにさらに、もう1つ最後のヤマ(あるいは山)が加わったのである。せっかく儲かるのに、ここでパーティーをしない理由はない。「一気に盛り上げろ―!」ということになる」、 「日経平均バブルのほうとして、「待ってました! 最後の3万8915円の突破エンジン、ターボジェット噴射の支援が届いたんだから、一気にイケ―――!」ということになった」、なるほど。 「これがバブルであり(それは間違いのない事実であるが)、しかもそれがまさに頂点に達しているという仮説が正しいかどうか、である。 バブルの頂点がいつかというのは、見かけ以上に難しく、ほとんど誰も当てることができない・・・いちばん可能性の高いシナリオは、小幡が降参して、「バブルは当分崩壊しない」という記事を「東洋経済オンライン」などに書いた直後に暴落する、というものだ」、「小幡」氏のご託宣は、悲観的なようだ。 ダイヤモンド・オンライン「日経平均「最高値後」のシナリオは?日本株の行方を専門家6人が大展望!」 「七つの要因が日本株を押し上げてきたと分析」は説得力がある。 「直近の日経平均は16倍前後で推移する。 確かに「来期の日本株市場(TOPIX)は7%程度の増益予想で、昨年からの株価急上昇は明らかに過大評価」(智剣・Oskarグループの大川智宏主席ストラテジスト)との声はあるが、バブルとまで言い切る市場関係者はほとんど見当たらない。ただ下期にかけてのリスク要因として、米中の景気下振れや、米利下げに伴う円高などへの警戒感は聞かれる」、なるほど。 「専門家の間では、これが通過点に過ぎず、日本株にはかつてなく強気論が高まっています」、なんとなく強気ムードの終焉という気もしなでもない。 ダイヤモンド・オンライン 木内登英誌による「日本株最高値を主導した「物価高・金融緩和・円安」スパイラルの“逆回転”リスク」 「日銀のマイナス金利解除や米国景気減速を機にスパイラルは逆回転するリスクがあり、高値更新に浮かれている場合ではない」、さすが元日銀審議委員だけあって慎重な見方だ。 「株高現象は、名目値の水膨れとともに金融現象による金融相場の複合の様相だ。 高値更新に浮かれている場合ではないのではないか」、その通りだ。 「実質賃金が低下することは、個人の生活水準が悪化を続けることを意味する。そして所得の分配は企業側に偏り、企業の収益は逆に拡大するのだ。その結果、株価は上昇し、個人の生活実感との間でギャップが広がることになる。これが現在の「株高の第1の構図」だ」、なるほど。 「実質金利の低下は、通常は景気を刺激すると考えられるが、その影響は実際には明確に見られていない。2四半期連続での実質GDPのマイナス成長にも表れているように、足元の経済は低迷している。 他方で実質金利の低下は、資産価格の押し上げには効果を発揮しているように見える。これが「株高の第2の構図」だ・・・この実質金利の低下は、株式以外にも金融市場に大きな影響を与える。それは、円安の流れを強く後押ししていることだ。 円安は輸出企業の収益を拡大させることで株価全体を押し上げる。また、円安によって海外投資家にとって日本株が割安となり、それが日本株への投資を促すことでも株高要因となっている。これが「株高の第3の構図」である」、なるほど。 「歴史的な物価高騰は金融緩和の実質的な効果を高め、それは円安を促す。そして円安は物価高をもたらす。そうして「物価高」「金融緩和」「円安」の3つが相乗的に進む中、それぞれが株価を大きく押し上げているのだ。 しかし、株高を支えるこれら3つの要因は、持続的なものとはいえないだろう・・・ 中長期のインフレ期待が低下すれば、企業の収益期待は弱まる一方、実質金利は上昇する。それらは、円安の修正を伴う形で株式市場への逆風になるだろう」、なるほど。 「2%の物価目標の達成とは、この先、物価上昇率や中長期のインフレ期待が2%程度で安定的に推移することを意味する。そうした経済状況の下で、政策金利をゼロ近傍に据え置くことは、2%の物価目標の達成後に実質-2%程度の「超緩和」政策を続けることになってしまう。 日銀がそうした政策を続けるとの観測が、足元での急速な円安・株高を生じさせている面がある」、なるほど。 「いずれ景気減速の兆候が広がれば、米国株が調整し、その影響は日本株にも及ぶ。FRBが予想以上の大幅な利下げに踏み切るのではという観測が強まれば一転して円高ドル安の流れになるだろう」、なるほど。 「「物価高」「金融緩和」「円安」の循環は、今までは強力に日本株を押し上げてきたが、それがひとたび逆回転を始めれば、今度は日本株への強い逆風になる。その転換点を正確に予測するのは難しいが、日本銀行が早ければ3月にもマイナス金利政策を解除すると予想されている中で、その転換点はそれほど先のことではないかもしれない・・・ 足元の株高と実体経済との間にはギャップがある。実体経済を改善させることで、両者のギャップを埋めるような努力もすべきではないか。企業が引き続き資本効率の向上などに努めることが求められるのは当然だが、働き手も、リスキリング(学び直し)などを通じて、技能を磨き、労働生産性向上に努めることが必要だ。 政府も、労働市場改革や少子化対策、外国人労働力の活用、インバウンド需要の拡大、大都市一極集中の是正などの成長戦略を推進することで、労働生産性上昇率や潜在成長率を上げる取り組みが求められる。 株価の上昇に浮かれることなく、今こそ、こうした企業、個人、政府の地道な努力を進めるべきだろう」、同感である。 ダイヤモンド・オンライン「TOPIXは最高値にまだ8%足りない…算出方法がもたらす日経平均株価の「ゆがみ」とは」 「25銘柄しか対象としていない日経平均に対して、旧東京証券取引所1部銘柄、プライム市場銘柄を対象に2000以上の銘柄を対象とするTOPIX。構成銘柄の違いはもちろん、格差の理由の一つだが、実は算出方法に違いが大きく影響している」、なるほど。 「ファーストリテイリング、東京エレクトロン、アドバンテスト、ソフトバンクグループの上位4銘柄のウエイト合計は29.74%と3割近い・・・この4銘柄のTOPIXでのウエイト合計比率は4.29%である・・・「日経平均」は「株価の額面水準が高い銘柄の影響力が高くなる 。時価総額の大きい企業よりも、値がさ株の動向に指数全体が左右されてしまうのだ。 これに対し、TOPIXは浮動株を対象とした時価総額に基づく「加重平均」である。個別銘柄の株価水準の高低が、直接には指数に占めるウエイトに影響しない・・・市場全体の動きを捉えるには、時価総額ベースの加重平均であるTOPIXの方が適している。 一部の銘柄の影響が大きく出やすい日経平均だけを見ていては、日本経済の実態も“ゆがんで”見えてしまうだろう」、大いに参考になった。
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