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異次元緩和政策(その44)(日銀が政策転換で日本経済は「アベノミクス終焉」へ…これから始まる「長く険しい道」、前編:日銀のマイナス金利解除は「遅きに失した」元副総裁の山口廣秀氏が語る金融政策正常化の道、後編:日本経済「2%超え金利にも耐性ある」日銀元副総裁の山口氏が語るマイナス金利解除後の世界) [金融]

異次元緩和政策については、昨年4月23日に取上げた。異次元緩和政策の全面的見直しを踏まえた今日は、(その44)(日銀が政策転換で日本経済は「アベノミクス終焉」へ…これから始まる「長く険しい道」、前編:日銀のマイナス金利解除は「遅きに失した」元副総裁の山口廣秀氏が語る金融政策正常化の道、後編:日本経済「2%超え金利にも耐性ある」日銀元副総裁の山口氏が語るマイナス金利解除後の世界)である。なお、「異次元緩和政策」は今回で終わりとし、次回からは金融政策にタイトルを変更する予定である。

先ずは、本年3月2日付け0現代ビジネスが掲載した経済評論家の加谷 珪一氏による「日銀が政策転換で日本経済は「アベノミクス終焉」へ…これから始まる「長く険しい道」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/126001?imp=0
・『日本銀行が2024年3月18日、19日に開催された金融政策決定会合で、マイナス金利政策の解除など大規模な金融緩和策の変更に踏み切った。利上げは17年ぶりであり、長く続いたゼロ金利政策がいよいよ終わりを告げる。今回の決定は、大規模緩和策によって激しく歪んだ日本の金融システムを正常化するための、長く険しい道のスタートラインに過ぎない。金利の上昇によって、むしろ国民生活への逆風は強くなる可能性が高く、ここからがむしろ本番といえるかもしれない』、興味深そうだ。
・『「インフレ」「デフレ」は悪いことなのか  日銀は2013年4月から市場に資金を大量投入して国債を買い上げ、金利をほぼゼロに抑える大規模緩和策を実施してきた。短期金利の調整だけでは不十分と判断した日銀は、本来、政策の対象外である長期金利にもその範囲を広げ、「イールドカーブ・コントロール」と呼ばれる長短金利操作に染めた。 短期間に大量の資金が提供されれば、市場にはインフレ期待が生じる。インフレ期待が生じれば、多くの企業が設備投資などを活性化させ、これが実体経済にプラスの効果を与えると、当時の安倍政権は考えていた。安倍政権は「デフレ脱却」を政治的なスローガンとして掲げていたが、本来、デフレ脱却という言葉は政治的スローガンにはなりえない。 なぜなら、インフレ、デフレというのは、あくまでも貨幣価値と物価の関係を示した用語に過ぎず、物価が上がればインフレ、下がればデフレというだけの意味であり、インフレやデフレそのものに良い悪いのニュアンスはないからである。 だがアベノミクスにおける「デフレ脱却」という言葉には明らかに、良いニュアンスが含まれている。この部分こそが、アベノミクス(=大規模緩和策)というものが持っていたレトリックの集大成といえるだろう』、「インフレ、デフレというのは、あくまでも貨幣価値と物価の関係を示した用語に過ぎず、物価が上がればインフレ、下がればデフレというだけの意味であり、インフレやデフレそのものに良い悪いのニュアンスはないからである。 だがアベノミクスにおける「デフレ脱却」という言葉には明らかに、良いニュアンスが含まれている。この部分こそが、アベノミクス・・・というものが持っていたレトリックの集大成といえるだろう」、その通りだ。
・『デフレだから不景気になったわけではない  上記で説明したように、当初、日本政府はインフレ期待に働きかけることによって設備投資を起点とする持続的な成長を実現しようと試みた。経済学的な一般論として市場にインフレ期待が醸成されれば、現金保有は相対的に不利になるため設備投資が増加する可能性が出てくる。 だが、それは経済全体が健全であればの話であって、将来に対する不安材料が大き過ぎたり、経済が機能不全を起こしている状況では、企業は設備投資に資金を回さない。不動産や外貨など安全資産に資金を退避させるにとどまり、インフレだけが進んで、実体経済はまったくよくならないというシナリオが濃厚となる。 筆者を含め、一部の専門家は、経済全体の仕組みを変えていく政策とセットにしなければ、単に物価上昇だけが進み、景気は良くならず、国民生活が苦しくなる可能性について指摘してきた。 だが当時は「デフレ脱却を最優先せよ!」「これしかない!」といった、感情的で声高な議論ばかりが横行し、アベノミクスが持つリスクについて、多くのメディアや専門家が無視するという異様な雰囲気であった。 ちなみに、不景気の時にはモノが売れず、物価が下がりがちなので、デフレになりやすい。したがって景気が悪い時にデフレになるのは自然なことではあるが、あくまで、それは不景気の結果としてデフレになったに過ぎない。 デフレの結果として不景気になったわけではなく、ましてや物価を上げたからといって景気が良くなるわけでもない。その意味では「デフレ脱却」というのは、まったくもって無意味な言葉だったといってよいだろう』、「当時は「デフレ脱却を最優先せよ!」「これしかない!」といった、感情的で声高な議論ばかりが横行し、アベノミクスが持つリスクについて、多くのメディアや専門家が無視するという異様な雰囲気であった・・・景気が悪い時にデフレになるのは自然なことではあるが、あくまで、それは不景気の結果としてデフレになったに過ぎない。 デフレの結果として不景気になったわけではなく、ましてや物価を上げたからといって景気が良くなるわけでもない。その意味では「デフレ脱却」というのは、まったくもって無意味な言葉だったといってよいだろう」、その通りだ。
・『本当の「円安最大の原因」  だが多くの国民が、「物価が上がって景気が良くなる」という意味で、「デフレ脱却」という言葉を理解しただろうし、ひょっとすると安倍氏自身も、そう思っていたかもしれない。さらに言えば、今でも大半の人がデフレ脱却=好景気と理解しているのではないだろうか。 だが何度も説明しているように、インフレ、デフレと景気が良いことは何の関係もなく、私たちの生活水準向上とも関係がない。景気が良くならなければ、私たちの生活水準も上がらないが、現状では景気が良くなっていない以上、私たちの生活も向上していない。むしろインフレによって物価が上がり、逆に生活が苦しくなっているのではないだろうか。 アベノミクスによる大規模緩和策は、世界でも突出した水準であり、失敗した際に被るリスクも超ド級である。ある意味で日本人は世界の中で自ら先頭に立ち、失敗した場合のリスクが致命的に大きい政策を、危険を顧みず実施するという、大変な役割を買って出た。 想定されていた通り、十分な成果は得られず、600兆円という空前絶後の国債の山という時限爆弾のみが残ってしまった。過去2年、日本円は1ドル=100円台から150円台まで、一気に3分の2まで減価している。 メディアでは日米の金利差が原因と報じているが、厳密にいえば金利差で為替が動くことはありえない。最終的には日米のマネー供給量の違い(とそれにともなう物価見通し)が円安最大の原因であり、エベレストのように積みあがった600兆円の国債の処理ができていないことが、激しい円安を招いているのだ。 GDP(国内総生産)と同規模のマネーを短期間で市場に大量供給しているにもかかわらず、それを吸収する経済活動の拡大が見込めない以上、当然のことながら、その大量のマネーはいつか制御不能な購買力増大として市場に跳ね返ってくる。つまり激しい円安と物価上昇である。 この2つこそが、経済成長に失敗したアベノミクスのツケとして、この先、日本人が引き受けなければならないリスクであり、過度な円安が進み始めた今、日銀にとってもはや残された時間は消滅しつつあった』、「大量のマネーはいつか制御不能な購買力増大として市場に跳ね返ってくる。つまり激しい円安と物価上昇である。 この2つこそが、経済成長に失敗したアベノミクスのツケとして、この先、日本人が引き受けなければならないリスクであり、過度な円安が進み始めた今、日銀にとってもはや残された時間は消滅しつつあった」、その通りだ。
・『正常化のタイミングは今しかない  日銀の本音としては、すぐにでも大規模緩和策をやめ、金利を引き上げないと日本経済が最悪の事態を迎える可能性があり、このタイミングでの政策転換以外、選択肢など存在しなかっただろう。 だが、多くの日本人はこうした現状について理解しておらず、景気にとって逆風となる金利の引き上げを実施することには大きな政治的ハードルを伴う。 しかし「神風」といってしまうと不謹慎かもしれないが、今回、日銀には2つの「神風」が吹いた。ひとつは物価上昇があまりにも激しく、多くのサラリーマンの生活が困窮していることから、企業が重い腰を上げ5%の賃上げに踏み切ったこと。もうひとつは自民党の裏金問題である。 今回の春闘で5%を超える回答が出たことで、少なくとも昨年と比較すれば賃金環境は大きく改善した。賃金が大幅に上がっていれば、金利の引き上げも容認されやすくなる。 政治的にも状況が大きく変わった。いくら経済的環境が整っても、大規模緩和策=アベノミクスであり、常に「政治」としてのニュアンスが付きまとう。 つい最近まで、自民党の安倍派を中心に、日銀のマイナス金利解除について「アベノミクスを否定するのか!」といった意見が出され、日銀の行動を強くけん制していた。だが、裏金問題が政権を揺るがす事態にまで発展し、今の自民党内にアベノミクス云々を議論している余裕はない。 逆に言えば、今のタイミングしか日銀にとっては正常化に踏み切ることはできず、ここで失敗すれば半永久的にタイミングを失う可能性が高かった。その意味では、日銀にとっては千載一遇のチャンスだったといえるかもしれない。 いずれにせよ、長く続いたアベノミクスはいよいよ終焉の時を迎えた。制御できないインフレという最悪の事態こそ回避できたかもしれないが、今回の決定は、長く続く正常化のほんの始まりに過ぎない』、「今回、日銀には2つの「神風」が吹いた。ひとつは物価上昇があまりにも激しく、多くのサラリーマンの生活が困窮していることから、企業が重い腰を上げ5%の賃上げに踏み切ったこと。もうひとつは自民党の裏金問題である。 今回の春闘で5%を超える回答が出たことで、少なくとも昨年と比較すれば賃金環境は大きく改善した。賃金が大幅に上がっていれば、金利の引き上げも容認されやすくなる。 政治的にも状況が大きく変わった。いくら経済的環境が整っても、大規模緩和策=アベノミクスであり、常に「政治」としてのニュアンスが付きまとう・・・日銀にとっては千載一遇のチャンスだったといえるかもしれない。 いずれにせよ、長く続いたアベノミクスはいよいよ終焉の時を迎えた。制御できないインフレという最悪の事態こそ回避できたかもしれないが、今回の決定は、長く続く正常化のほんの始まりに過ぎない」、その通りだ。

次に、3月12日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した日本銀行元副総裁・日興リサーチセンター理事長の山口廣秀氏インタビュー:「前編:日銀のマイナス金利解除は「遅きに失した」元副総裁の山口廣秀氏が語る金融政策正常化の道」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/340302
・『日本銀行が3月18、19日に開く金融政策決定会合で、マイナス金利政策を解除する可能性が高まっている。今後の景気・物価動向、金利の見通し、異次元緩和からの出口戦略の進め方などについて日銀元副総裁である山口廣秀・日興リサーチセンター理事長へのインタビューを2回に分けてお届けする。前編では、もっと早くマイナス金利解除をすべきだった主張する山口氏に、2%物価目標達成の可否、金利引き上げの着地点などについて聞いた』、本音で語ることが多い「山口氏」への「インタビュー」とは興味深そうだ。
・『足元の景気に一服感 物価上昇が消費を抑制  Q:2024年の日本経済の動向をどうみますか。 A:足元、景気全体として一服感がでています。23年7~9月期はマイナス成長となり、10~12月期は小幅のプラス成長となるなど、一進一退です。物価上昇が影響して個人消費が停滞しています。世界経済が減速していくという見通しもあり、企業は設備投資に慎重になっています。 欧州の景気は停滞していますし、不動産バブルの崩壊で中国経済も振るいません。米国の景気も底堅いと言いながら減速しているのは間違いありません。日本の輸出を巡る環境も徐々に悪くなっています。 個人消費はいまひとつ、設備投資も伸び悩み、輸出は後退ということで景気に一服感が出るのも仕方がない状況です。 今後も物価の上昇は続くと思われますから、急減することはないにしても個人消費は下振れる可能性は高いでしょう。輸出環境が悪化すると設備投資はやはり伸び悩みます。海外経済の減速は続くでしょうから、日本の景気も下振れの公算が大きくなってくるとみています。 私が当初予測していたよりは、景気のスローダウンが早く来ています。物価上昇による個人消費の下振れ、先行き警戒感による企業の設備投資姿勢の慎重化が思っていたより強いためです。 Q:予想より物価上昇が個人消費を押し下げる力が強くなった原因はどこにあるのでしょうか。 A:物価動向に対し消費者がやはり敏感であることと、実質賃金のマイナスが続いていることです。ただ、目先、消費者物価の上昇率はやや低下してくると予想しています。春闘で昨年を上回る賃上げが実現すれば実質賃金も上向きますから、個人消費の下支えになると思います。 マイナス金利解除の鍵を握るのは24年春闘における賃上げと今後の物価が安定的に2%の上昇を維持できるかどうかだ。次ページ以降、山口廣秀氏に賃上げ動向、物価動向を検証してもらい、マイナス金利解除、YCC(イールドカーブ・コントロール)の行方について聞いた』、「バランスが取れた見方だ」。
・『物価は下げ止まり反転 再び3%台乗せも(Qは聞き手の質問、Aは山口氏の回答)  Q:賃上げ率はどうみていますか。 A:大企業の経営者の方と話をしていると、人手不足の折、人材を確保するために賃金を上げざるを得ないと考えている方が少なくありません。地方の中小企業の経営者の見方も同じです。最低でも昨年と同水準、うまくすると昨年を上回る賃上げになる可能性は高いと思います。 そうなれば実質賃金もプラスに転じる可能性が出てきます。個人消費が景気の足を引っ張るようなことにはならなくなるでしょう。ただ、日本の消費者は慎重なので消費が盛り上がるということはないとみています。 (山口氏の略歴はリンク先参照) Q:物価はスローダウンしていくのですね。 A:ただ、そのペースは速くない。今回の物価上昇は輸入インフレから始まりました。そこに賃上げが織り込まれ、物価上昇がサービス価格にまで広がってきて、それがまた財の価格上昇につながるホームメードインフレの状況になってきています。物価上昇はある程度の期間持続すると考えます。 原油価格の動きには不透明感はありますが、円相場の対前年比は物価を押し上げる方向に働いてくるはずです。従って、物価はしばらくすると下げ止まって反転上昇に向かうのではないでしょうか。場合によっては3%前後の水準にまで再び上昇することも十分あると思っています。 ただ、私自身は、賃金と物価の好循環という捉え方をしていません。 Q:それはどういう意味ですか。 A:賃金は中央銀行にとって政策目標ではありません。賃金が上がるかどうかは、景気の状況、労働需給、生産性の動向に関わってきます。ですから、賃金と物価の好循環という単純な二つの変数で回っていくものではありません。 景気が良くなれば物価が上がる、物価が上がっていくと企業の売り上げが伸びる、売り上げが伸びれば収益が上向き賃金が上がる。こういう循環が働きはするのですが、持続するかどうかは企業の生産性向上の持続力に左右されます。景気が拡大し、生産性が向上しなければ賃金は上昇しません。 Q:物価はすんなりと下がってはいかないということですね。 A:物価の動きは粘着的です。景気の動きに直ちに連動するということではありません。日本銀行にとっては苦しい状況になると思います。景気は先ほど触れたようにスローダウンしていきます。物価は再び上向きに転じます。スタグフレーションとまでは言いませんが、そういったニュアンスの経済状況になりかねません。景気と物価の両にらみとなると、政策運営で日銀にとって悩ましい局面になるでしょう。 Q:その場合、景気と物価のどちらを優先すべきなのでしょうか。 A:物価を優先すべきです。振り返って第1次石油ショック、第2次石油ショックからの教訓は、景気をにらんで引き締めを緩やかにしてしまうと物価上昇が長く続き、結果として景気後退も長期化してしまうから、物価を優先して早めに引き締めるということです。第2次石油ショックのときには、早めの引き締めが功を奏して物価上昇を抑え込むことができました。二兎を追ってはいけないのです』、「A:物価を優先すべきです。振り返って第1次石油ショック、第2次石油ショックからの教訓は、景気をにらんで引き締めを緩やかにしてしまうと物価上昇が長く続き、結果として景気後退も長期化してしまうから、物価を優先して早めに引き締めるということです。第2次石油ショックのときには、早めの引き締めが功を奏して物価上昇を抑え込むことができました。二兎を追ってはいけないのです」、さすがにしっかりした見方だ。
・『マイナス金利解除後0.1%刻みで2~3回の利上げ  Q:マイナス金利解除はどのタイミングですべきと考えていますか。 A:私は日銀が言う、安定的に2%を超える物価上昇は既に実現しているとみています。ですから、マイナス金利解除は遅きに失した感があると考えています。3月あるいは4月の実施が取り沙汰されていますが、なるべく早く行った方がいいでしょう。 Q:早く解除していれば物価の状況は現在より落ち着いていたでしょうか。 A:植田和男総裁の就任直後とは言いませんが、間を置かずに手を打っていれば様子は違っていたかもしれません。いずれにしても、やろうとしているのはマイナス0.1%の金利をゼロにする程度です。経済にそんなに抑制的な力は働きません。 現在は、金融機関が日銀に預ける当座預金のうち一部である政策金利残高に適用される金利をマイナス0.1%にしていて、それを政策金利としていますが、政策金利は(金融機関同士が資金を融通し合うコール市場の)無担保コール翌日物に変えたらいいと思っています。今の状態は分かりにくいです。 Q:マイナス金利からゼロ金利にしてさらに引き上げていく可能性はありますか。 A:あると思います。ただ、日銀幹部の発言からすると0.1%刻みで進めていくとして2回か3回でしょう。米国は今後、利下げに転じるにしてもこれまでの利上げの効果が表れて景気が減速することは避けられません。加えて、欧州や中国の景気の停滞を考えると追加の利上げを進めるに当たって日銀はかなり悩むことになるでしょう。 Q:YCCの枠組みについては、どうすべきだと考えていますか。 A:YCCは、できるだけ早期に撤廃することが必要だと考えています。YCCの形骸化がいわれていますが、形骸化と撤廃は違います。高い物価上昇が続くと、YCCによって長期金利の上昇が抑えられてしまう。要するに、YCCによって市場の声が封じられるということなので、この声が聞こえるようにしておくことが必要です。 Q:現在の米国景気はあまり減速していないにもかかわらず、インフレ率は低下してきています。金融政策の選択の幅が広がっているとみていいのでしょうか。 A:FRB(米連邦準備制度理事会)が思っているほどに物価は下がっていません。物価目標である2%に低下していく道筋が見えておらず、自信が持てないというのが今のパウエル議長の心境ではないでしょうか。 加えて、NYCB(ニューヨーク・コミュニティ・バンコープ)に代表される中小金融機関の経営悪化の問題が生じています。ちょうど1年前にはSVB(シリコンバレーバンク)の破綻がありました。こうした金利引き上げの影響も考慮しながら、パウエル議長はこの先の政策運営について迷っている状況だと思います。 金利を上げると資産価格が下がり、資産価格が下がると金融機関のバランスシートが傷みます。かといって金融緩和をすれば資産価格の低下は止まりますが、インフレが再燃しかねません。 このジレンマにパウエル議長は立たされているとみています。資産価格の動向にかなり気を使っていると思います。 Q:日本では、欧米の金融システムの話はあまり取り上げられていません。 A:米国だけでなくドイツでも小さな銀行の経営問題が生じ、その株価が急落しています。やはり原因は商業用不動産価格の下落です。金融当局者は銀行の経営が悪化していても、大変な問題になっているとは言いません。 Q:米国経済はうまくソフトランディングできるでしょうか。 A:ソフトランディングは簡単なものではないとみています。1970年代以降、50年間の米国経済を振り返ると、不況に陥らずに物価が落ち着いたことはありません。 ですが、実際に不況に突入するまでは、みんなソフトランディングできると思ってしまう。慎重論を唱えている人、危険だと感じている人が駆逐されてしまう。危険だと警鐘を鳴らすおおかみ少年は、見方を変えずにひたすらおおかみ少年であり続けるべきだと私は思っていますが、多くの場合、それができないのです』、「私は日銀が言う、安定的に2%を超える物価上昇は既に実現しているとみています。ですから、マイナス金利解除は遅きに失した感があると考えています。3月あるいは4月の実施が取り沙汰されていますが、なるべく早く行った方がいいでしょう。 Q:早く解除していれば物価の状況は現在より落ち着いていたでしょうか。 A:植田和男総裁の就任直後とは言いませんが、間を置かずに手を打っていれば様子は違っていたかもしれません・・・1970年代以降、50年間の米国経済を振り返ると、不況に陥らずに物価が落ち着いたことはありません。 ですが、実際に不況に突入するまでは、みんなソフトランディングできると思ってしまう。慎重論を唱えている人、危険だと感じている人が駆逐されてしまう。危険だと警鐘を鳴らすおおかみ少年は、見方を変えずにひたすらおおかみ少年であり続けるべきだと私は思っていますが、多くの場合、それができないのです」、「見方を変えずにひたすらおおかみ少年であり続けるべきだと私は思っていますが、多くの場合、それができないのです」、元中央銀行マンとしての味わい深い述懐だ。

第三に、3月13日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した日本銀行元副総裁・日興リサーチセンター理事長の山口廣秀氏へのインタビュー「後編:日本経済「2%超え金利にも耐性ある」日銀元副総裁の山口氏が語るマイナス金利解除後の世界」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/340360
・『マイナス金利が解除され、利上げが複数回行われたとして日本経済にその耐性はあるのか。10年にわたる異次元緩和の修正はどのように進めるべきなのか。日本銀行元副総裁である山口廣秀・日興リサーチセンター理事長へのインタビューの後編では、あるべき金利水準、金利引き上げの家計、金融機関などへの影響、異次元緩和からの出口戦略について語ってもらった。>>前編から読む』、興味深そうだ。
・『0.1%刻みで3回以上利上げしてもいい  Q:日本経済に金利上昇に対する耐性はありますか。 A:それなりに耐性があると考えています。そうでなければ現在のように物価が上がったり、ゼロ%前後で長く推移していた長期金利が上昇したりはしません。日本経済が少しずつですが活性化してきている証左ではないでしょうか。ある程度金利を上げても耐えていける経済だと思っています。 金利を上げることで経済の新陳代謝が進みます。金利負担増加に耐えられない生産性や収益力の低い企業がマーケットから退出していくことは必要です。そういうことを促していく力が日本経済の中に出てきているとみています。 企業は守らないが、人は守る。失業した人たちに対する手当てを厚くするなどの施策を徹底するべきです。 Q:金利上昇に対する耐性があるとすれば、0.1%刻みで2回ないし3回ではなくもっと引き上げてもいいのではないですか。 A:私自身はもっと引き上げてもいいと思っています。ただ、これまで日本銀行は金利引き上げに相当慎重なスタンスで臨んでいます。それ故大胆に金利を引き上げることはできないでしょう。大胆な利上げができると確信しているのであれば、もっと早く金利を引き上げる方向にかじを切っていたでしょう。 日本経済は金利引き上げにどこまで耐えられるのか。異次元緩和で膨らんだ国債やETF(上場投資信託)の残高はどのように減らしていくべきなのか。次ページ以降、山口廣秀氏に分析してもらった』、「Q:日本経済に金利上昇に対する耐性はありますか。 A:それなりに耐性があると考えています。そうでなければ現在のように物価が上がったり、ゼロ%前後で長く推移していた長期金利が上昇したりはしません。日本経済が少しずつですが活性化してきている証左ではないでしょうか。ある程度金利を上げても耐えていける経済だと思っています。 金利を上げることで経済の新陳代謝が進みます。金利負担増加に耐えられない生産性や収益力の低い企業がマーケットから退出していくことは必要です。そういうことを促していく力が日本経済の中に出てきているとみています・・・Q:金利上昇に対する耐性があるとすれば、0.1%刻みで2回ないし3回ではなくもっと引き上げてもいいのではないですか。 A:私自身はもっと引き上げてもいいと思っています。ただ、これまで日本銀行は金利引き上げに相当慎重なスタンスで臨んでいます。それ故大胆に金利を引き上げることはできないでしょう。大胆な利上げができると確信しているのであれば、もっと早く金利を引き上げる方向にかじを切っていたでしょう」、なるほど。
・『日本と欧米の物価上昇率格差が為替に与えるインパクトは大きくない  Q:2月8日の内田真一・日銀副総裁の奈良県の講演での発言でも、マイナス金利を解除しても緩和的な政策は続けると言っていますね。 A:超金融緩和を続けてきた以上、大枠としての緩和は続けるということであり、引き締めの領域に入ることはすぐにはできないでしょう。 Q:現状で本来あるべき金利水準はどうみていますか。 A:いわゆる(緩和でも引き締めでもない)中立金利の水準はもっと上にあると思っています。物価が2%で安定するとして、潜在成長率が0.5%ということになれば名目金利は2%を超えてもおかしくないわけです。実はそういう水準まで日本経済の金利への耐性はあるとみています。 Q:2%の物価目標は適切なのでしょうか。 (山口氏の略歴は前編で紹介いたので、ここでは省略) 目先、3%前後の上昇もあり得ると言いましたが、中長期的に見て日本経済が持つ物価を押し上げる力はそれほど強くなく、1%の上昇率を維持できる程度かもしれません。その意味で、リジッドな2%目標をやめて1~3%といった幅のある目標に切り替えていくことが望ましいと思います。 Q:物価目標の2%という水準は合理的根拠を積み上げたものではないですよね。 A:消費者物価指数には上方バイアスがあり、物価がマイナスになることは避けたい、金利政策を講じる中央銀行としては、金利をマイナスにしたくない以上、景気悪化に備えて引き下げできる余地を残すために一定ののりしろを持てるようにした方がよいということから、2%の上昇率を目標にするとよい(編集部注:通常であれば、政策金利もプラスを維持できるため)ということだったのです。 しかし、指数のバイアスがあるのかどうかは明確ではありませんし、マイナスの物価上昇率となったときに、量的緩和のような非伝統的金融政策を取る余地があるのならのりしろも大きく取る必要があるのかということになるかと思います。やはり、日本のような物価の上がりにくい経済の場合、2%が正しい目標なのか考え直す必要があると思います。 米国が2%、欧州も2%、日本がそれより低い目標とすると、格差の分だけ円高が進むので2%にすべきだといわれてきましたが、日本の物価上昇率が欧米より低い状況が長く続いても現実の為替相場は円高に振れませんでした。これは為替を意識して物価目標を考えていくことが必ずしも正しくない、物価上昇率の違いが為替相場にインパクトを与える程度は必ずしも大きくないということの証左です。 Q:金利を上げることは家計に対してどう影響するでしょうか。 A:ローンを組んでいる個人にとってはマイナスですが、高齢化が進んでいる経済では預金金利やその他の運用金利が上がることによるプラス効果は大きいでしょう。 Q:金融機関への影響はどうみていますか。 A:保有している債券については、金利を引き上げることで評価損が出ます。一方で、金利を引き上げられるだけ経済の活力が出てくるとなれば資金需要も出てきますから、利ざやが拡大して金融機関にとってはプラスになります。全体としてはプラスだとみていますが、評価損が大きく出る金融機関からは悲鳴が上がるかもしれません。 Q:そうしたマイナスの影響を考慮して金利を引き上げないでいると新陳代謝は進みません。 A:金融機関ごとに影響は違ってきます。金利が上昇することでバランスシートが悪化する金融機関はマーケットから退出を迫られることもあるでしょう。合従連衡も加速するかもしれません。ただ、現時点ではそれが起きるほどの金利上昇は想像できません。金融政策を大きく転換していく段階には達しておらず、長年続いた異次元緩和を変えていく方向にようやく一歩を踏み出した程度です。 Q:戦後の金融行政は長く、体力のない金融機関であってもつぶさないといういわゆる護送船団方式でしたが、金利の世界では実質的に護送船団方式が続いてきたようなものですね。 A:約30年間、超金融緩和を続けてきました。その意味で完全に護送船団方式です。過保護の世界を続けてきました』、「物価が2%で安定するとして、潜在成長率が0.5%ということになれば名目金利は2%を超えてもおかしくないわけです。実はそういう水準まで日本経済の金利への耐性はあるとみています」、なるほど。 「Q:2%の物価目標は適切なのでしょうか・・・目先、3%前後の上昇もあり得ると言いましたが、中長期的に見て日本経済が持つ物価を押し上げる力はそれほど強くなく、1%の上昇率を維持できる程度かもしれません。その意味で、リジッドな2%目標をやめて1~3%といった幅のある目標に切り替えていくことが望ましいと思います」、同感である。
・『国債・ETF購入の効果を検証し 残高縮小に向けた期間、方法を明示すべき  Q:異次元緩和の結果、大量に保有することになった国債やETFを日銀のバランスシートからどう切り離していけばいいのでしょうか。 A:(大量の国債や株式の保有で拡大した)バランスシートを縮小していくことはそれ自体金融を引き締める方向の措置になりますから、十分に影響を考えながら圧縮を進めていかなければなりません。米国は早いうちからバランスシートの縮小の見通しを示していましたし、欧州もバランスシートの縮小を進めています。 金融政策の透明性を確保する意味で、金融政策の方向感、短期金利、長期金利、バランスシートの大きさなどをどう調整していくかをある程度明確に対外的に示す義務が日銀にはあると思います。10年、20年かかるものだとしても、長い時間がかかることを示して進め方をできるだけ明らかにするべきだと考えます。 Q:国債など債券は償還がありますから、償還時に再投資しないということで保有残高を減らしていけますね。 A:国債購入については、日銀は緩和効果があると考えているはずですから、引き締め方向に政策を変えていくのであれば国債残高を減らしていくのは基本の流れです。政策としての効果を検証した上で、償還時に再投資しない形で進めていくのか、市場で売却していくのかなど方法を明らかにすべきです。 Q:ETFはどうすればいいでしょうか。 A:金融システムを維持する目的で、株価低迷時に金融機関のバランスシートの劣化を防ぐために銀行から買い取った株式を現在、すこしずつ売り始めています。目立たないように売っていますが、株価が上昇するような状況であれば売っていい。 このとき、気を付けなければいけないのは、今度は株価が下落したら、買うのかという話になることです。買い続けるにしても売るにしてもこれまでのETF購入の効果とその副作用をきちんと検証し、対外的に示す必要があります。そうでなければ議論ができません。 Q:ETFを買い続けることでやはり株式市場の機能を損ねたのでしょうか。 A:損ねたと思います。どこが底値なのかといったことについての市場参加者の判断が難しくなりました。価格形成は市場に任せるべきだという基本から逸脱しましたね。また、かなりの株を日銀が保有している結果、企業のガバナンスにも影響が出ているかもしれません。 Q:物価見通しや景気見通しを下振れさせるリスクは。 A:米国の資産バブルが大きく崩壊すること、ユーロ圏でも同じ問題が生じること、不動産不況にあえぐ中国の市況がさらに低迷すること。こうした海外のバブル崩壊が日本に波及してくるというリスクです。 今起きているのは、生成AI(人工知能)などを含めて技術革新のバブルではないでしょうか。EV(電気自動車)も含まれます。かつてのITバブルのようなものです。米国の消費者も身の丈を超えた消費をしています。これも一種のバブルです。 地政学リスクも気になります。ウクライナ戦争、イスラエルとハマスの紛争が激化することになれば世界規模での経済収縮が起きかねません。逆に終息に向かえば、経済が上向くでしょう。 Q:上振れリスクはありますか。 A:バブルは後にならなければその規模は分からないものですが、先に触れたバブルが予想より小さいものであって、崩壊してもインパクトが大きくないという可能性はないとはいえません。そして、さらなる技術革新の波が広がる可能性もあるかもしれません。 Q:日経平均株価が高値を更新しました。 A:年初からの急上昇に驚いています。それは、上昇を裏付けるだけの日本企業の収益力の上昇、将来への期待の高まりといった材料は乏しいからです。ファンダメンタルズに照らして行き過ぎの部分が大きい。ですので、長く続く上昇とは考えていません。 PER(株価収益率)で見て割高感がないといわれますが、上昇が続くとこの先どこかで将来に対する見方が変わり、将来のリターン見通しも変わってきます。企業の実態はすぐに変わるわけではないのに、予想収益力に対する見方が大きく変化してしまうのです。 ただ、現在は、PERは高くなく株価は妥当な水準だとみんなが思っています。そして、リターンが水膨れだったとみんなが気付いたときに、株価は調整されます。 バブルはこうして生まれはじけていくのです。これまでも同じことが繰り返されてきました。1980年代後半の日本やリーマンショック前の米国がいい例です』、「バランスシートの大きさなどをどう調整していくかをある程度明確に対外的に示す義務が日銀にはあると思います。10年、20年かかるものだとしても、長い時間がかかることを示して進め方をできるだけ明らかにするべきだと考えます。 Q:国債など債券は償還がありますから、償還時に再投資しないということで保有残高を減らしていけますね。 A:国債購入については、日銀は緩和効果があると考えているはずですから、引き締め方向に政策を変えていくのであれば国債残高を減らしていくのは基本の流れです。政策としての効果を検証した上で、償還時に再投資しない形で進めていくのか、市場で売却していくのかなど方法を明らかにすべきです」、なるほど。
「Q:ETFはどうすればいいでしょうか。 A:金融システムを維持する目的で、株価低迷時に金融機関のバランスシートの劣化を防ぐために銀行から買い取った株式を現在、すこしずつ売り始めています。目立たないように売っていますが、株価が上昇するような状況であれば売っていい。 このとき、気を付けなければいけないのは、今度は株価が下落したら、買うのかという話になることです。買い続けるにしても売るにしてもこれまでのETF購入の効果とその副作用をきちんと検証し、対外的に示す必要があります』、「これまでのETF購入の効果とその副作用をきちんと検証し、対外的に示す必要があります」、同感である。
タグ:異次元緩和政策 (その44)(日銀が政策転換で日本経済は「アベノミクス終焉」へ…これから始まる「長く険しい道」、前編:日銀のマイナス金利解除は「遅きに失した」元副総裁の山口廣秀氏が語る金融政策正常化の道、後編:日本経済「2%超え金利にも耐性ある」日銀元副総裁の山口氏が語るマイナス金利解除後の世界) 現代ビジネス 加谷 珪一氏による「日銀が政策転換で日本経済は「アベノミクス終焉」へ…これから始まる「長く険しい道」」 「インフレ、デフレというのは、あくまでも貨幣価値と物価の関係を示した用語に過ぎず、物価が上がればインフレ、下がればデフレというだけの意味であり、インフレやデフレそのものに良い悪いのニュアンスはないからである。 だがアベノミクスにおける「デフレ脱却」という言葉には明らかに、良いニュアンスが含まれている。この部分こそが、アベノミクス・・・というものが持っていたレトリックの集大成といえるだろう」、その通りだ。 「当時は「デフレ脱却を最優先せよ!」「これしかない!」といった、感情的で声高な議論ばかりが横行し、アベノミクスが持つリスクについて、多くのメディアや専門家が無視するという異様な雰囲気であった・・・景気が悪い時にデフレになるのは自然なことではあるが、あくまで、それは不景気の結果としてデフレになったに過ぎない。 デフレの結果として不景気になったわけではなく、ましてや物価を上げたからといって景気が良くなるわけでもない。その意味では「デフレ脱却」というのは、まったくもって無意味な言葉だったといってよいだろう」、そ の通りだ。 「大量のマネーはいつか制御不能な購買力増大として市場に跳ね返ってくる。つまり激しい円安と物価上昇である。 この2つこそが、経済成長に失敗したアベノミクスのツケとして、この先、日本人が引き受けなければならないリスクであり、過度な円安が進み始めた今、日銀にとってもはや残された時間は消滅しつつあった」、その通りだ。 「今回、日銀には2つの「神風」が吹いた。ひとつは物価上昇があまりにも激しく、多くのサラリーマンの生活が困窮していることから、企業が重い腰を上げ5%の賃上げに踏み切ったこと。もうひとつは自民党の裏金問題である。 今回の春闘で5%を超える回答が出たことで、少なくとも昨年と比較すれば賃金環境は大きく改善した。賃金が大幅に上がっていれば、金利の引き上げも容認されやすくなる。 政治的にも状況が大きく変わった。いくら経済的環境が整っても、大規模緩和策=アベノミクスであり、常に「政治」としてのニュアンスが付きまとう・・・日銀にとっては千載一遇のチャンスだったといえるかもしれない。 いずれにせよ、長く続いたアベノミクスはいよいよ終焉の時を迎えた。制御できないインフレという最悪の事態こそ回避できたかもしれないが、今回の決定は、長く続く正常化のほんの始まりに過ぎない」、その通りだ。 ダイヤモンド・オンライン 山口廣秀氏インタビュー:「前編:日銀のマイナス金利解除は「遅きに失した」元副総裁の山口廣秀氏が語る金融政策正常化の道」 本音で語ることが多い「山口氏」への「インタビュー」とは興味深そうだ。 「バランスが取れた見方だ」 「A:物価を優先すべきです。振り返って第1次石油ショック、第2次石油ショックからの教訓は、景気をにらんで引き締めを緩やかにしてしまうと物価上昇が長く続き、結果として景気後退も長期化してしまうから、物価を優先して早めに引き締めるということです。第2次石油ショックのときには、早めの引き締めが功を奏して物価上昇を抑え込むことができました。二兎を追ってはいけないのです」、さすがにしっかりした見方だ。 マイナス金利解除後0.1%刻みで2~3回の利上げ 「私は日銀が言う、安定的に2%を超える物価上昇は既に実現しているとみています。ですから、マイナス金利解除は遅きに失した感があると考えています。3月あるいは4月の実施が取り沙汰されていますが、なるべく早く行った方がいいでしょう。 Q:早く解除していれば物価の状況は現在より落ち着いていたでしょうか。 A:植田和男総裁の就任直後とは言いませんが、間を置かずに手を打っていれば様子は違っていたかもしれません・・・ 1970年代以降、50年間の米国経済を振り返ると、不況に陥らずに物価が落ち着いたことはありません。 ですが、実際に不況に突入するまでは、みんなソフトランディングできると思ってしまう。慎重論を唱えている人、危険だと感じている人が駆逐されてしまう。危険だと警鐘を鳴らすおおかみ少年は、見方を変えずにひたすらおおかみ少年であり続けるべきだと私は思っていますが、多くの場合、それができないのです」、「見方を変えずにひたすらおおかみ少年であり続けるべきだと私は思っていますが、多くの場合、それができないのです」、元中央銀 行マンとしての味わい深い述懐だ。 イヤモンド・オンライン 山口廣秀氏へのインタビュー「後編:日本経済「2%超え金利にも耐性ある」日銀元副総裁の山口氏が語るマイナス金利解除後の世界」 0.1%刻みで3回以上利上げしてもいい 「Q:日本経済に金利上昇に対する耐性はありますか。 A:それなりに耐性があると考えています。そうでなければ現在のように物価が上がったり、ゼロ%前後で長く推移していた長期金利が上昇したりはしません。日本経済が少しずつですが活性化してきている証左ではないでしょうか。ある程度金利を上げても耐えていける経済だと思っています。 金利を上げることで経済の新陳代謝が進みます。金利負担増加に耐えられない生産性や収益力の低い企業がマーケットから退出していくことは必要です。そういうことを促していく力が日本経済の中に出てきてい とみています・・・Q:金利上昇に対する耐性があるとすれば、0.1%刻みで2回ないし3回ではなくもっと引き上げてもいいのではないですか。 A:私自身はもっと引き上げてもいいと思っています。ただ、これまで日本銀行は金利引き上げに相当慎重なスタンスで臨んでいます。それ故大胆に金利を引き上げることはできないでしょう。大胆な利上げができると確信しているのであれば、もっと早く金利を引き上げる方向にかじを切っていたでしょう」、なるほど。 「物価が2%で安定するとして、潜在成長率が0.5%ということになれば名目金利は2%を超えてもおかしくないわけです。実はそういう水準まで日本経済の金利への耐性はあるとみています」、なるほど。 「Q:2%の物価目標は適切なのでしょうか・・・目先、3%前後の上昇もあり得ると言いましたが、中長期的に見て日本経済が持つ物価を押し上げる力はそれほど強くなく、1%の上昇率を維持できる程度かもしれません。 その意味で、リジッドな2%目標をやめて1~3%といった幅のある目標に切り替えていくことが望ましいと思います」、同感である。 「バランスシートの大きさなどをどう調整していくかをある程度明確に対外的に示す義務が日銀にはあると思います。10年、20年かかるものだとしても、長い時間がかかることを示して進め方をできるだけ明らかにするべきだと考えます。 Q:国債など債券は償還がありますから、償還時に再投資しないということで保有残高を減らしていけますね。 A:国債購入については、日銀は緩和効果があると考えているはずですから、引き締め方向に政策を変えていくのであれば国債残高を減らしていくのは基本の流れです。 政策としての効果を検証した上で、償還時に再投資しない形で進めていくのか、市場で売却していくのかなど方法を明らかにすべきです」、なるほど。 「これまでのETF購入の効果とその副作用をきちんと検証し、対外的に示す必要があります」、同感である。
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健康(その27)(最悪の場合「緑内障」になってしまう…「最近、視力が落ちている」という人が飲み過ぎてはいけない飲み物 これを取り過ぎると眼圧が上がる、11日間 眠らずに起き続けると人はどうなる?高校生による実験の「恐るべき結果」 『ニュートン超図解新書 最強に面白い 睡眠』、健康意識が高い人は注意「塩分 糖分は控えめ」の罠 悪者にされがちだが、不足するリスクも大きい) [生活]

健康については、本年2月28日に取上げた。今日は、(その27)(最悪の場合「緑内障」になってしまう…「最近、視力が落ちている」という人が飲み過ぎてはいけない飲み物 これを取り過ぎると眼圧が上がる、11日間 眠らずに起き続けると人はどうなる?高校生による実験の「恐るべき結果」 『ニュートン超図解新書 最強に面白い 睡眠』、健康意識が高い人は注意「塩分 糖分は控えめ」の罠 悪者にされがちだが、不足するリスクも大きい)である。

先ずは、2月21日付けPRESIDENT Onlineが掲載した医療法人 社団済安堂理事長 井上眼科病院院長の井上 賢治氏による「最悪の場合「緑内障」になってしまう…「最近、視力が落ちている」という人が飲み過ぎてはいけない飲み物 これを取り過ぎると眼圧が上がる」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/78711
・『視力を落とさないためにはどうすればいいのか。眼科医の井上賢治さんは「眼圧を上げるような生活習慣を避けることが重要だ。特に緑内障は生活習慣との関連が指摘されていて、視力低下の原因にもなる」という――。 ※本稿は、井上賢治『いちばん親切でくわしい緑内障の教科書』(世界文化社)の一部を再編集したものです』、「緑内障」は失明につながる恐ろし病気なので、興味深そうだ。
・『気を付けたい「緑内障になる生活習慣」  緑内障の原因はわからないことも多いですが、多くの生活習慣病と同じく、加齢や体に負担となる生活習慣が関わっているのは確かです。 実は、毎日特に意識することなく繰り返している生活習慣の中に、眼圧を上げてしまったり、目に負担をかける可能性があるNG行動があります。 それは、かたよった食事や、運動不足、喫煙やストレス、睡眠不足といった生活習慣などです。これらが糖尿病や動脈硬化、心臓病や脳卒中などの病気につながってしまうことは、皆さんもよくご存知でしょう。 年齢を重ねるのは止められませんが、生活習慣を改善することで、老化スピードを落としたり、病気を予防したりすることはできます。 健康的な生活習慣は、目のためにも大切なことなのです』、「毎日特に意識することなく繰り返している生活習慣の中に、眼圧を上げてしまったり、目に負担をかける可能性があるNG行動があります。 それは、かたよった食事や、運動不足、喫煙やストレス、睡眠不足といった生活習慣などです・・・年齢を重ねるのは止められませんが、生活習慣を改善することで、老化スピードを落としたり、病気を予防したりすることはできます。 健康的な生活習慣は、目のためにも大切なことなのです」、なるほど。
・『「うつ伏せ」で緑内障リスクが高まる  NG行動で特に重要なのは、直接的に眼圧を上げてしまう可能性がある行動です。 うつ伏せやうつむく姿勢、逆立ちなど、目の前面や頭を下にするような姿勢は、眼圧を上昇させるためできるだけ控えましょう。 仕事の合間に眠くなって、机につっぷして居眠りする。 腹ばいになって本を読んだりタブレットで動画を見たりする。 そんな何気なくしている行動が、眼圧を上げてしまうかもしれないのです』、「うつ伏せやうつむく姿勢、逆立ちなど、目の前面や頭を下にするような姿勢は、眼圧を上昇させるためできるだけ控えましょう。 仕事の合間に眠くなって、机につっぷして居眠りする。 腹ばいになって本を読んだりタブレットで動画を見たりする。 そんな何気なくしている行動が、眼圧を上げてしまうかもしれないのです」、大いに気を付けたい。
・『イライラすると眼圧が急上昇  また、現代人は誰もが多少のストレスを抱えています。ストレスはあらゆる病気と関係していますが、緑内障も例外ではありません。 ストレスが血圧を上げ、眼圧に影響することも考えられます。 網膜への血流も悪くなり、視神経にもダメージを与えることがあるかもしれません。 急に興奮したりイライラしたりすることで眼圧が急上昇し、緑内障発作を引き起こすこともないとは言えません。 完全にストレスのない生活を送るのは難しいものですが、ストレスのもとになることを避けたり、ストレスを解消する術を身につけておきたいですね。 避けたいNG行動をご紹介します。すべてをやめるのは難しいでしょうから、できる範囲、続けられる範囲で試してみてください。 緑内障と診断された人は点眼薬による治療をしっかり続けながら、生活習慣を改善し、悪化を防ぎましょう』、「ストレスのもとになることを避けたり、ストレスを解消する術を身につけておきたいですね」、なるほど。
・『暗いところでものを見てはいけない理由  暗いところでものを見るのはNG行動です。暗いとよく見えないだけでなく、眼圧にもよくありません。 暗いところでは、光をたくさん取り込もうとして瞳孔が開きます。瞳孔が開いているとき虹彩は縮み、厚くなっています。そして虹彩が厚くなることで隅角が狭くなり、房水の流れが妨げられて、眼圧が上がってしまうのです。 本を読んだり細かい作業をしたりするときは、手元や部屋を十分に明るくするようにしましょう。 【図表1】暗い場所では隅角が狭くなる出所=『いちばん親切でくわしい緑内障の教科書』』、「暗いところでは、光をたくさん取り込もうとして瞳孔が開きます。瞳孔が開いているとき虹彩は縮み、厚くなっています。そして虹彩が厚くなることで隅角が狭くなり、房水の流れが妨げられて、眼圧が上がってしまうのです。 本を読んだり細かい作業をしたりするときは、手元や部屋を十分に明るくするようにしましょう」、なるほど。
・『「うつむく姿勢」にならない  読書や動画の視聴に夢中になって、うつむいた姿勢をとり続けることはありませんか? 顔が下を向くと、水晶体が下=目の前方に落ちてきて、虹彩を前方に押し、隅角を狭くしてしまいます。 そのため長時間その姿勢でいると、眼圧が上がってしまいます。 手元の作業をするときは、うつむいた姿勢にならないように椅子や机を調節し、背筋を伸ばしたよい姿勢を保ちましょう。 また、ときどき目を閉じて上を向き、休憩するのもおすすめです。 【図表2】うつむくと隅角が狭くなる出所=『いちばん親切でくわしい緑内障の教科書』』、「顔が下を向くと、水晶体が下=目の前方に落ちてきて、虹彩を前方に押し、隅角を狭くしてしまいます。 そのため長時間その姿勢でいると、眼圧が上がってしまいます。 手元の作業をするときは、うつむいた姿勢にならないように椅子や机を調節し、背筋を伸ばしたよい姿勢を保ちましょう。 ま喫煙者は、非喫煙者に比べて緑内障や加齢黄斑変性などの病気の発症リスクが何倍も高いことがわかっています・・・さらに、喫煙によって上強膜静脈の血管が収縮して房水の排出が減ったり、視神経乳頭た、ときどき目を閉じて上を向き、休憩するのもおすすめです」、意識して気を付けるようにした方がよさそうだ。
・『喫煙者は緑内障発症リスクが高い  喫煙者は、非喫煙者に比べて緑内障や加齢黄斑変性などの病気の発症リスクが何倍も高いことがわかっています。 また、喫煙後に眼圧が5mmHg以上、上がる人は、「健康な人に比べて原発開放隅角緑内障患者が多かった」という報告もあります。 さらに、喫煙によって上強膜静脈の血管が収縮して房水の排出が減ったり、視神経乳頭への血流が悪くなるとも考えられており、目の健康を守るうえでは禁煙は絶対条件です。 【図表3】喫煙による目への影響出所=『いちばん親切でくわしい緑内障の教科書』』、「喫煙によって上強膜静脈の血管が収縮して房水の排出が減ったり、視神経乳頭への血流が悪くなるとも考えられており、目の健康を守るうえでは禁煙は絶対条件です」、私も最近、禁煙をしたが、それまで50年以上、喫煙を続けていただけに、「緑内障や加齢黄斑変性などの病気の発症リスクが何倍も高い」ことは覚悟しなければならないようだ。
・『「コンタクトレンズをつけて寝る」とどうなるか  強度近視は緑内障のリスクです。緑内障の患者さんでコンタクトレンズを使っている人は多いと思います。 コンタクトレンズは目の外に装着するので、緑内障の原因にはなりませんし、緑内障になってもコンタクトレンズは使えます。 ただし、緑内障の手術をした場合、その方法によっては、術後、コンタクトレンズを使えないケースもあります。 また、コンタクトレンズは使用方法を守り、清潔に扱うようにし、装用時間は長くても12時間程度にとどめます。 つけたまま寝ると、角膜が酸素不足になり、視神経がダメージを受ける可能性があります。 点眼薬は、コンタクトレンズがハードかソフトか、どんな点眼薬かによってレンズの上からさせるかどうかが違いますので、医師の指示に従うようにしてください。 メガネよりも角膜に傷がついたり、感染を起こしたりというリスクが高いので、正しく使うことが大切です。 カラーコンタクトレンズも含めて、眼科医に処方してもらって正規のルートで購入しましょう』、「コンタクトレンズは使用方法を守り、清潔に扱うようにし、装用時間は長くても12時間程度にとどめます。 つけたまま寝ると、角膜が酸素不足になり、視神経がダメージを受ける可能性があります・・・メガネよりも角膜に傷がついたり、感染を起こしたりというリスクが高いので、正しく使うことが大切です」、なるほど。
・『「いびきがひどい人」は緑内障が悪化しやすい  時間的には寝ているはずなのに、寝起きがスッキリしない人、昼間にひどい眠気におそわれる人、家族に「いびきがひどい」と言われる人は、睡眠時無呼吸症候群かもしれません。 睡眠時無呼吸症候群は緑内障を悪化させる可能性があります。 メカニズムは、はっきりわかっていませんが、無呼吸によって低酸素状態になることが、網膜や視神経にダメージを与えるのではないかと考えられています』、「睡眠時無呼吸症候群」で「無呼吸によって低酸素状態になることが、網膜や視神経にダメージを与えるのではないかと考えられています」、なるほど。
・『睡眠時無呼吸症候群のうち緑内障は7.2%  また、睡眠時無呼吸症候群の患者のうち、緑内障を有する割合は日本では7.2%で、欧米における緑内障を有する割合(2%)と比べて多かったという報告もあります。 睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に10秒以上呼吸が止まる無呼吸発作を、1時間に5回以上繰り返す状態を言います。 睡眠中に舌の根元が落ち込んで気道をふさぐのが原因で、肥満や小さい顎、飲酒などがリスクになります。 治療するためには病院にかかる必要がありますが、耳鼻科や一般内科などさまざまな診療科で相談できるほか、睡眠外来がある病院もあります』、「睡眠時無呼吸症候群の患者のうち、緑内障を有する割合は日本では7.2%で、欧米における緑内障を有する割合(2%)と比べて多かったという報告もあります」、なるほど。
・『紫外線は避けた方がいい  紫外線は体の細胞の老化を早めます。 目も例外ではなく、長時間紫外線を浴び続けると、光が通過する角膜や水晶体、光が届く網膜や視神経の細胞がダメージを受けてしまいます。 日本で紫外線が最も強いのは7?8月ですが、真冬でも曇りの日でも紫外線は降り注いでいます。 紫外線対策をしないで外出するのは、どの季節でも控えましょう。 また、紫外線は窓を通って部屋の中にも入ってきますから、日中はレースカーテンを使うのもおすすめです。 【図表4】紫外線は細胞の老化を加速出所=『いちばん親切でくわしい緑内障の教科書』』、「長時間紫外線を浴び続けると、光が通過する角膜や水晶体、光が届く網膜や視神経の細胞がダメージを受けてしまいます・・・紫外線対策をしないで外出するのは、どの季節でも控えましょう」、なるほど。
・『緑内障の人はトランペットを吹いてはいけない  トランペットを優しく吹くと眼圧が0.88mmHg/秒上がり、激しく吹くと12秒間で眼圧が24?46mmHg上昇したという報告があります。 風船や浮き輪をふくらませるときも同様ですが、息を吐くときに圧がかかるのが問題なのです。 管楽器を演奏することがある人は、やめるのが望ましいのですが、仕事などでやめられない場合もあるでしょう。そのようなときは、どのくらい使用してよいか、どのような使い方をすればよいかなど、医師と相談してください。 【図表5】強く吹くと眼圧が上がる出所=『いちばん親切でくわしい緑内障の教科書』 目にゴミが入ったときや、花粉症で目がかゆいとき、目が乾いてゴロゴロするときなどは、目を洗いたくなりますよね。 でも、目の健康を守る意味でも洗いすぎはNGです。それは、目を守る働きがある涙や緑内障点眼薬なども洗い流してしまうからです。 涙は常に分泌されていて、目の表面を潤しています。それ以外にも、涙には水だけでなく、ナトリウムなどのミネラル、たんぱく質、酵素、脂質やビタミンなどが含まれていて、目の表面が乾燥しないように保護するほか、栄養を運び、感染を防ぎ、傷を治す働きもあります。涙はたくさんの大切な役割を担っているのです。 花粉の季節やホコリが目に入ったときなど、水や市販の洗眼剤でときどき洗うのは問題ないでしょう。でも、1日に何度も洗うのは控えましょう。また、緑内障治療のために点眼薬を使用している人は、目を洗うことで点眼薬の効果が薄まってしまうことも考えられるので注意が必要です』、「涙には水だけでなく、ナトリウムなどのミネラル、たんぱく質、酵素、脂質やビタミンなどが含まれていて、目の表面が乾燥しないように保護するほか、栄養を運び、感染を防ぎ、傷を治す働きもあります。涙はたくさんの大切な役割を担っているのです。 花粉の季節やホコリが目に入ったときなど、水や市販の洗眼剤でときどき洗うのは問題ないでしょう。でも、1日に何度も洗うのは控えましょう」、なるほど。
・『本当は怖い「カフェインのとりすぎ」  コーヒーやエナジードリンクなどに含まれるカフェインには、心拍数の増加、興奮、覚醒といった作用があります。 1日の始まりや、午後に眠気がおそってきたときに飲む人も多いでしょう。 カフェインをとりすぎると眼圧が上がるか否かは明らかになっていませんが、カフェインを多くとる人のほうが眼圧が高い傾向があるというデータがあります。 身近な飲み物でカフェインを最も多く含むコーヒーの場合、1日に1?2杯程度なら問題ないと考えられています』、「カフェインを多くとる人のほうが眼圧が高い傾向があるというデータがあります。 身近な飲み物でカフェインを最も多く含むコーヒーの場合、1日に1-2杯程度なら問題ないと考えられています」、「1日に1-2杯程度なら問題ない」というので安心した。

次に、 3月4日付けダイヤモンド・オンライン「11日間、眠らずに起き続けると人はどうなる?高校生による実験の「恐るべき結果」 『ニュートン超図解新書 最強に面白い 睡眠』」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/339743
・『*本記事は本の要約サイト flier(フライヤー)からの転載です。おすすめポイント  本書は睡眠にまつわるあれこれを科学的に解説したものだ。ニュートンはニュートンプレスから発行されている科学雑誌で、40年以上の歴史を持っている。分野別に情報を絞って解説しているのがニュートン別冊。この超図解新書シリーズは別冊よりもわかりやすく書かれていて、さらに短時間で読むことができるのが魅力だ。本書は睡眠について、エビデンスがあって、なおかつわかりやすい情報がほしい、という人にはもってこいの書籍である。 睡眠は私たちの生活に直結するテーマだ。特別な事情がないかぎり人は毎日睡眠をとるし、それゆえに睡眠が与える健康への影響にも社会の関心は高い。けれども、脳や生理現象の知識がある人はほんの一握りだろう。睡眠は身近で関心の高いテーマであるにもかかわらず、詳しく知る機会が少ないという特殊な領域でもある。 本書は睡眠にかんして人々が抱くであろう疑問のほとんどに答えるような内容になっている。睡眠の基本的な原理や快適な睡眠をとる方法、睡眠にまつわる健康の問題、そして他の動物の睡眠などについても詳しく説明されている。冬眠によってシマリスは若返っている可能性がある、昆虫にも睡眠がある、などのトピックスは普段気にすることもないけれども、少なからず好奇心をくすぐられるものだ。ただ我々の疑問に答えるだけでなく、新しい興味を引き出す本書は、まさに科学雑誌を発行しているニュートンの魅力がぞんぶんに発揮されているといえるだろう』、テレビCMで大谷選手が、よい「睡眠」を宣伝しているのもあって、興味深そうだ。「冬眠によってシマリスは若返っている可能性がある、昆虫にも睡眠がある」、とは驚きだ」。
・『要約本文 ◆睡眠と健康 ◇睡眠負債とは 「睡眠負債」とはなんだろうか。これはただの睡眠不足を意味する言葉ではない。睡眠不足が何日も続き、数日から数週間の単位でそれが慢性化した状態が睡眠負債だ。睡眠負債はさまざまな健康リスクにつながる。しかも、2~3日たっぷり眠っただけでは解消されない。また、あらかじめ寝だめしておいても、その後の睡眠負債の予防になることもない。 そもそも、1日に必要な睡眠時間はいったいどれくらいなのだろうか。一般的には7時間程度眠れば睡眠時間を確保できるとされるが、あくまでもそれは目安であり、個人差がある。自分に必要な睡眠時間はいったいどれくらいなのか。それを知るために有効なのが「睡眠日誌」である。 まずは2週間分の睡眠を日誌に記録する。そして休日と平日の睡眠時間を比較する。休日に平日よりも2時間以上多く眠っているのであれば、それは睡眠負債が溜まっている状態といえる。逆に平日と休日の睡眠時間に差が見られなければ、それが自分にとって必要な睡眠時間だと考えられる。 前述のとおり、休日に睡眠時間を増やしても睡眠負債が解消できるわけではない。1日10時間、明るいところで生活をし、残りの14時間を暗い部屋で横になるという実験では、被験者は実験初日には平均12時間と長く眠り、3週間後には8時間15分に落ち着いた。この8時間15分が本来被験者に必要とされる睡眠時間だと考えられる。もとの平均睡眠時間は7時間36分だったことを考えると、40分の睡眠負債を返すのに3週間かかったことになる。週末に寝だめをしたくらいでは、睡眠負債は解消されないのだ』、「この8時間15分が本来被験者に必要とされる睡眠時間だと考えられる。もとの平均睡眠時間は7時間36分だったことを考えると、40分の睡眠負債を返すのに3週間かかったことになる。週末に寝だめをしたくらいでは、睡眠負債は解消されないのだ」、なるほど。
・『◇眠らないとどうなるか  人は眠らないといつかは死ぬ。ラットを使った実験では2~4週間睡眠を奪われるとすべての個体が死んだ。人間の場合は、サンディエゴの高校生ランディ・ガードナーが1964年に行った実験が有名だ。ランディの断眠は11日間と世界記録を達成したが、その間に幻覚や記憶の欠落、さらに指や眼球のふるえなどの著しい不調に陥った。幸いランディに後遺症が残ることはなかったが、長期の断眠が脳に障害を与えた例もあり、こうした行為は非常に危険である。眠らないことで脳には様々な不具合が発生する。睡眠の役割の一つは、脳の疲労回復だといえる。) 睡眠の役割はそれだけではない。「記憶の固定」にも影響を与えている。学習後に眠ると記憶に残りやすい、という実験結果が報告されているのだ。脳が覚醒しているときは絶え間なくなんらかの情報が入ってきている。その記憶を定着させたいのであれば、新しい情報を入れるのではなく、早く眠ることが効果的なのかもしれない。ただし、この睡眠中に記憶が定着する仕組みはまだ十分に解明されていないのが現状だ』、「眠らないことで脳には様々な不具合が発生する。睡眠の役割の一つは、脳の疲労回復だといえる。 睡眠の役割はそれだけではない。「記憶の固定」にも影響を与えている。学習後に眠ると記憶に残りやすい、という実験結果が報告されているのだ。脳が覚醒しているときは絶え間なくなんらかの情報が入ってきている。その記憶を定着させたいのであれば、新しい情報を入れるのではなく、早く眠ることが効果的なのかもしれない」、「学習後に眠ると記憶に残りやすい」とは初めて知ったが、残念ながら時既に遅しだ。
・『【必読ポイント!】 ◆睡眠の影響 ◇レム睡眠とノンレム睡眠  眠りに入ると、まず「ノンレム睡眠」という状態になる。このノンレム睡眠がおわると、次は「レム睡眠」へと移る。レム睡眠とノンレム睡眠は一回の睡眠で4~6回程繰り返され、これを「睡眠サイクル」と呼ぶ。一回の睡眠サイクルの長さは90分といわれ、レム睡眠の割合は徐々に大きくなっていく。 ノンレム睡眠は3段階に分かれていて、ステージ3が最も深い睡眠となる。ステージ3は睡眠サイクルを経ることで少しずつ割合が小さくなっていくので、ステージ3の割合が大きい最初のノンレム睡眠をしっかりとることが重要だ。 では具体的にノンレム睡眠とレム睡眠はどういった状態を指すのだろうか。レム睡眠のREMとは急速眼球運動「Rapid Eye Movement」の略で、睡眠中に眼球が小刻みに動くことに由来する。レム睡眠の間、大脳は覚醒しているときに近い状態である。しかも、覚醒時よりも活動している領域がいくつかあることもわかってきた。奇妙な夢や大きな感情をともなう夢の多くはレム睡眠中に見ることがわかっているが、これは視覚イメージに関わる「視覚連合野」や感情に関わる「扁桃体」が活発だからと考えられている』、「レム睡眠の間、大脳は覚醒しているときに近い状態である。しかも、覚醒時よりも活動している領域がいくつかあることもわかってきた。奇妙な夢や大きな感情をともなう夢の多くはレム睡眠中に見ることがわかっているが、これは視覚イメージに関わる「視覚連合野」や感情に関わる「扁桃体」が活発だからと考えられている」、なるほど。
・『◇質のよい睡眠をとるには  睡眠にまつわる問題。そのいくつかは、寝室の環境に原因があるかもしれない。睡眠の質を高めるための理想的な環境は「暗いこと」「静かであること」「快適な温度と湿度を保つこと」の3つがそろっていることだ。 光は覚醒をもたらす刺激で、入眠をさまたげる。よって就寝時の照明は必要最小限の明るさにとどめておくのがよいだろう。一方、起床前後に朝の光を浴びると体内時計がリセットされるので、睡眠のリズムを整えるのに役立つ。音も入眠をさまたげる刺激だが、特に人の話し声には大きな覚醒作用がある。暑すぎたり寒すぎたりする温度や高すぎる湿度も睡眠のさまたげとなる。夏や冬はエアコンを使用して快適な温度と湿度を維持するのがよいだろう。) これら3つの要素のほかに、体温も睡眠に大きく関係している。皮膚ではかる「皮膚体温」よりも、体の内部の「深部体温」は3~5℃ほど高く、一般的には夜の9時をピークにして徐々に下がり始め、睡眠中に最も低くなる。逆に、皮膚体温は入眠の前後で徐々に上昇していく。寝る直前に入浴すると深部体温が下がりにくくなって、眠りに入りづらいことがある。入浴は就寝2時間前までに済ませておくのがよいだろう。 脳の視交叉上核という部位に、「マスタークロック」というものがある。これは全身の体内時計の基準になっており、強い光を浴びることでリセットされる。眼球の網膜には「視細胞」という光を感じ取る組織があり、ここからの信号を脳へと中継するのが網膜の「神経節細胞」である。最近の研究で、この神経節細胞の一部は青い光の波長を感じ取り、それがマスタークロックを調整していることがわかってきた。そのため、スマートフォンなどを寝る前に見ると、体内時計が巻き戻されてしまう。体内時計のことを考えると、室内照明なども薄暗いくらいがちょうどよいといえる』、「人の話し声には大きな覚醒作用がある」、我が家の前の道路は大きな声でおしゃべりをする不届き者がたまにいるので、入眠の妨げになるのは腹立たしい。「寝る直前に入浴すると深部体温が下がりにくくなって、眠りに入りづらいことがある。入浴は就寝2時間前までに済ませておくのがよいだろう」、なるほど。
・『◇眠気は寝ることでしか解消しない  仮眠をとると、少ない睡眠時間なのにもかかわらず眠気が解消される場合がある。これはノンレム睡眠のステージ2で眠気の解消がある程度進むためだ。仮眠をとる時間は15分から20分程度がよいとされ、そのくらいの時間で起きればちょうどステージ2の間に目覚めることができる。それ以上寝てしまうと、ステージ3の深い眠りから目覚めることになり、不快感でかえって疲労感が増してしまうことにもなりかねない。仮眠が必要になるのは睡眠負債を抱えているためであることも考えられるので、夜の睡眠時間を確保するようにしたほうがよいかもしれない。 睡眠時間と集中力、判断力は反比例する。徹夜明けの脳機能は、酒酔いと同じ程度まで低下するともいわれる。徹夜をしている間、眠気はどんどん蓄積される。一方、体内時計の信号は普段通りサイクルを刻んでいくので、徹夜明けでも朝になると頭が冴えてくる。だが、眠気は眠ることでしか根本的に解消しない。1回の徹夜によって睡眠のリズムが崩れ、長期的に睡眠負債を抱えるきっかけにもなりかねない』、「仮眠をとる時間は15分から20分程度がよいとされ、そのくらいの時間で起きればちょうどステージ2の間に目覚めることができる。それ以上寝てしまうと、ステージ3の深い眠りから目覚めることになり、不快感でかえって疲労感が増してしまうことにもなりかねない」、「仮眠をとる時間は15分から20分程度がよいとされ」る背景が理解できた。「徹夜をしている間、眠気はどんどん蓄積される。一方、体内時計の信号は普段通りサイクルを刻んでいくので、徹夜明けでも朝になると頭が冴えてくる。だが、眠気は眠ることでしか根本的に解消しない。1回の徹夜によって睡眠のリズムが崩れ、長期的に睡眠負債を抱えるきっかけにもなりかねない」、なるほど。
・『◇眠ることで起こる嬉しい効果  睡眠が人間のパフォーマンスに影響を与えているのは疑いようがない。アメリカでバスケットボール選手の大学生を対象に、睡眠に関する実験が行われた。最初の2~4週間はふだん通りの生活をしてもらい、その後の5~7週間はなるべく長く寝てもらうのだ。その結果、睡眠時間は平均で111分ほど伸びた。実験の前後で身体能力測定やアンケートを行ったところ、走る速さやシュートの成功率が上昇し、自己が感じる達成感までもが上昇した。この調査を行った研究者は、アスリートが睡眠から受けられる恩恵はどのようなスポーツにも等しくあるだろうと述べている。) 睡眠はスポーツだけでなく、子どもの成長にも影響する。昔から「寝る子は育つ」といわれているが、これは科学的にも正しいことがわかっている。子どもの成長に一番大きな役割を果たしているのが、ノンレム睡眠のステージ3である。ステージ3では脳下垂体とよばれる部位から「成長ホルモン」が分泌される。成長ホルモンは子どもの成長に重要な役割を果たし、骨の伸長、筋肉の増大、けがの治癒を促進する。成長ホルモンは成人でも重要で、疲労回復や代謝の促進などの役割をする。子どもも大人も、しっかりと睡眠をとることが重要なのだ』、「子どもの成長に一番大きな役割を果たしているのが、ノンレム睡眠のステージ3である。ステージ3では脳下垂体とよばれる部位から「成長ホルモン」が分泌される。成長ホルモンは子どもの成長に重要な役割を果たし、骨の伸長、筋肉の増大、けがの治癒を促進する。成長ホルモンは成人でも重要で、疲労回復や代謝の促進などの役割をする。子どもも大人も、しっかりと睡眠をとることが重要なのだ」、なるほど。
・『◆睡眠のしくみ  ◇なぜコーヒーで覚醒するのか  どうしてコーヒーを飲むと、眠気を一時的におさえることができるのだろうか。脳には「睡眠中枢」と「覚醒中枢」という神経細胞の集団が存在する。これらが互いに綱を引き合うようにパワーバランスを変化させることで、睡眠と覚醒は切りかえられる。 私たちの体には睡眠と覚醒を切り替えるスイッチの役割を果たす物質が存在する。「アデノシン」はそのなかのひとつで、睡眠を優勢にするはたらきをもっている。一方、「オレキシン」という物質は、覚醒を優勢にする。コーヒーを飲むと眠気がおさえられるのは、コーヒーに含まれるカフェインが、アデノシンの働きを阻害するからだ。 睡眠のしくみは、「ツープロセスモデル」という仮説で説明されてきた。これは、2つの過程によって睡眠と覚醒が進むという仮説だ。1つめのプロセスは、「睡眠圧」だ。覚醒している間、睡眠の欲求を示す「睡眠圧」がだんだん蓄積し、それが十分溜まることで睡眠がはじまる。眠っていると次第に睡眠圧は解消に向かっていく。 2つめのプロセスは体内時計だ。体内時計は睡眠圧の蓄積とは別に、覚醒をうながす信号である覚醒シグナルの強さを約24時間周期で調整している。このシグナルは21時にピークをむかえ、次第に弱まっていく。これにより、睡眠がはじまりやすくなるというわけだ』、「2つの過程によって睡眠と覚醒が進むという仮説だ。1つめのプロセスは、「睡眠圧」だ。覚醒している間、睡眠の欲求を示す「睡眠圧」がだんだん蓄積し、それが十分溜まることで睡眠がはじまる。眠っていると次第に睡眠圧は解消に向かっていく。 2つめのプロセスは体内時計だ。体内時計は睡眠圧の蓄積とは別に、覚醒をうながす信号である覚醒シグナルの強さを約24時間周期で調整している。このシグナルは21時にピークをむかえ、次第に弱まっていく。これにより、睡眠がはじまりやすくなるというわけだ」、なるほど。
・『◇眠気の正体とは  そもそも眠気の正体とはいったい何なのだろうか。その有力な候補となる脳内現象が、2018年に発見された。脳内にある80種類のタンパク質、それが「リン酸化」という化学変化をおこしていたのである。この80種類のタンパク質は「スニップス」と呼ばれ、そのうち69種類は、「シナプス」に集中していた。シナプスは神経細胞どうしが信号を伝達する場所であり、神経細胞どうしの接点である。覚醒時にはスニップスのリン酸化が進み、眠るとリン酸化は解消される。リン酸化の解消に要する時間が、その人の睡眠に必要な時間なのかもしれない』、「眠気の正体とはいったい何なのだろうか。その有力な候補となる脳内現象が、2018年に発見された。脳内にある80種類のタンパク質、それが「リン酸化」という化学変化をおこしていたのである。この80種類のタンパク質は「スニップス」と呼ばれ、そのうち69種類は、「シナプス」に集中していた。シナプスは神経細胞どうしが信号を伝達する場所であり、神経細胞どうしの接点である。覚醒時にはスニップスのリン酸化が進み、眠るとリン酸化は解消される。リン酸化の解消に要する時間が、その人の睡眠に必要な時間なのかもしれない」、なるほど。
・『◇体内時計が生み出すリズム  生物学や医学における体内時計は、1日のリズムを生み出す仕組みのことであり、専門的には「概日リズム」という。 人間の体は太陽がのぼると目が覚めて、夜になると眠くなる。それに伴い血圧や体温なども変化する。こうした体の変化を調整しているのが体内時計である。 その周期は平均で24時間12分とされ、大体は地球の自転と連動している。私たちの睡眠のリズムは、地球の自転周期と大きなかかわりがあるのだ。 体内時計には遺伝子がかかわっていることがわかっている。体内時計にかかわる遺伝子の異常は睡眠に大きな影響を与える。遺伝子異常の種類によっては、眠気を感じて夜8時には眠り、明け方前に目覚めてしまう「睡眠相前進症候群」や、明け方にならないと眠れず朝になっても目覚めない「睡眠相後退症候群」がみられる場合がある。近年の研究では、朝型や夜型の人たちの生活リズムのちがいは、体内時計にかかわる遺伝子の個人差による場合が多いと考えられている』、「間の体は太陽がのぼると目が覚めて、夜になると眠くなる。それに伴い血圧や体温なども変化する。こうした体の変化を調整しているのが体内時計である。 その周期は平均で24時間12分とされ、大体は地球の自転と連動している。私たちの睡眠のリズムは、地球の自転周期と大きなかかわりがあるのだ・・・体内時計にかかわる遺伝子の異常は睡眠に大きな影響を与える。遺伝子異常の種類によっては、眠気を感じて夜8時には眠り、明け方前に目覚めてしまう「睡眠相前進症候群」や、明け方にならないと眠れず朝になっても目覚めない「睡眠相後退症候群」がみられる場合がある。近年の研究では、朝型や夜型の人たちの生活リズムのちがいは、体内時計にかかわる遺伝子の個人差による場合が多いと考えられている」、なるほど。
・『一読のすすめ  要約ではぐっすり眠る方法や、睡眠のしくみといった、多くの人の毎日の睡眠に関係する章を中心にまとめた。本書ではこのほかに、睡眠に関係のある病気や、動物の睡眠についても扱われている。 要約では扱わなかった4章は動物たちの睡眠がテーマだ。脳を片方ずつ眠らせる動物たち、謎の残る冬眠のしくみなど、知的好奇心をくすぐられる話題が並ぶ。人工的に冬眠をつくりだす試み、冬眠が若返りをもたらす可能性や医学への応用など、冬眠についてのさまざまな仮説も紹介されている。睡眠について多角的に理解したいと思ったら、通読をおすすめしたい。「評点」以降は紹介を省略)』、「脳を片方ずつ眠らせる動物たち」とは興味深そうだ。

第三に、3月12日付け東洋経済オンラインが掲載した精神科医の和田 秀樹氏による「健康意識が高い人は注意「塩分、糖分は控えめ」の罠 悪者にされがちだが、不足するリスクも大きい」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/737341
・『塩分や糖分の摂取は控えめに――。健康に気をつけている人ならば、最初に実践する食生活の「常識」のひとつでしょう。しかし、高齢者専門の精神科医として30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わってきた和田秀樹氏は「高齢者になれば、この『常識』がリスクになる」と言います。塩分や糖分の摂取制限だけでなく、健康長寿のために粗食に勤しむ高齢者も注意が必要なのだとか。果たしてその理由とは? ※本稿は和田氏の新著『「健康常識」という大嘘』より、一部抜粋・再構成のうえお届けします』、興味深そうだ。
・『塩分を控えめにした結果「低ナトリウム血症」に  血圧が高い人は、決まったように医者から「塩分控えめ」を忠告されて、真面目な人はそれを頑張って実行します。血圧を測定するたびに数値が下がって医者からほめられれば、それを励みにして、ますます塩分を摂取しなくなったりもします。 私の知人のお父さんも、医者のアドバイスを守って塩分の量には過敏なほど反応し、奥さんが時間をかけてつくった煮魚もタレを洗い落としてから食べていたといいます。 そのような暮らしを続けていた結果、血圧はずっと抑えられていたそうですが、ある時、気分が悪くなり、ひどい頭痛で入院してしまいました。検査をしたところ、頭痛の直接の原因かは定かでないものの「低ナトリウム血症」であることがわかりました。 低ナトリウム血症とは血液中のナトリウム、つまりは塩分の濃度が低くなった状態を言います。ナトリウムには体内の浸透圧を調節したり、神経や筋肉を正しく機能させたりする役割があって、体内のナトリウム濃度が下がると最初は軽い疲労感があり、重症化するとけいれんを起こしたり、昏睡状態に陥ることもあります。 近年増加の一途にある熱中症も、その多くは低ナトリウム血症によるもので、夏の暑い日に塩分を補給することなく水分ばかりを摂っているとひどいめまいに襲われたりするのはそのためです』、「低ナトリウム血症とは血液中のナトリウム、つまりは塩分の濃度が低くなった状態を言います。ナトリウムには体内の浸透圧を調節したり、神経や筋肉を正しく機能させたりする役割があって、体内のナトリウム濃度が下がると最初は軽い疲労感があり、重症化するとけいれんを起こしたり、昏睡状態に陥ることもあります。 近年増加の一途にある熱中症も、その多くは低ナトリウム血症によるもので、夏の暑い日に塩分を補給することなく水分ばかりを摂っているとひどいめまいに襲われたりするのはそのためです」、なるほど。
・『軽度の糖尿病でも長生きなアジア人  塩分と並んで悪者にされがちなのが糖質です。しかし、脳を働かせるためにブドウ糖は欠かせません。元気な子どもでも「朝ごはんを抜くと学校の成績が下がる」といわれるのですから、高齢者でブドウ糖が不足すればなおさら頭が働かなくなります。 糖質を摂取する場合に、パンとごはんのどちらがよいかはきちんとした研究やデータがないのでわかりませんが、どちらも糖質を摂るための大切な食べ物です。 「いつも和食だから自分は健康的だ」と言う人がよくいます。納豆や豆腐のような大豆製品、魚、海藻、キノコ、野菜類をたっぷり使ったお惣菜は健康的で、それらをおかずにして食べる炊きたての白米は本当においしいのですが、食べすぎると血糖が下がりにくくなる「インスリン抵抗性」を起こす原因になります。 どの程度が多食になるかは人それぞれですが、和食は肉類のおかずが少なく、タンパク質や脂質をあまり摂れないため、「健康にいい」と信じすぎるのもどうかとは思います。 さまざまな研究から、アジア人は欧米人と比べて糖尿病にかかりやすいことが指摘されていて、その理由が白米の摂取量にあることもわかっています。 2012年にハーバード公衆衛生大学院のチームが、日本、アメリカ、オーストラリア、中国の4カ国で行なった計35万2384名分の研究報告を分析した結果を発表していて、それによると一日当たりの白米摂取量が茶碗1杯増えるごとに糖尿病のリスクは11%上昇することが明らかになっています。 しかし、それなのにアジア人のほうが寿命の長いことは忘れてはなりません。年をとるほど「栄養が余ること」よりも「足りないこと」の害のほうが多くなるのです。 中高年になればタンパク質や脂質を積極的に摂ることが大切で、ご飯やパン、麺類などの炭水化物の摂取量は、タンパク質や脂質を増やすことで相対的に減らしていくことが健康のためにいいと思います。 作家の幸田露伴は食通としても有名で、味の好みにうるさく、舌に合わないものを供されると「俺は、掃き溜めではない」と激怒したそうです。その一方で「食べ物というのは、うまいと思って食べれば栄養になる。まずいと思って食べれば決して滋養にはならない」とも言っています。こうした心得は、とくに高齢者にとって参考にすべきものでしょう。 ▽免疫力をアップするために好きなものを食べよう(現在、日本国内における死因はがんがもっとも多く、厚生労働省による2022年の統計では38万5797人が、がんで亡くなっています。がんがなぜ発症するかについてはさまざまな説がありますが、いずれにしても毎日体内に発生する、がんになるかもしれないできそこないの細胞を撃退するうえで、免疫の力は欠かせません。 ストレスのある生活を続けていれば、免疫力は間違いなく低下して、健診の数値がすべて正常でも急にがんになってしまう可能性は決して少なくありません。免疫力アップに効果的なのは好きなものを食べることです。) 同じものばかりを過剰摂取するフードファディズム(食べ物の健康への影響を過信すること)は、慢性型アレルギーを発症して身体の酸化を招くリスクがあります。 私もかつて「海藻やソバがよい」と世間でいわれるのを聞いて、意識してたくさん食べていたら、逆に海藻やソバの慢性型アレルギーになってしまいました。 食物アレルギーが人によって異なるのと同じで、身体にいい食べ物も人によって異なるのです。だから自分の身体や脳が欲するサインに素直に応じて、食べたいものを食べるほうがいい。一般的には身体に悪いといわれるカレーや牛丼といった高カロリーの食事も、無理に避ける必要はありません』、「アジア人は欧米人と比べて糖尿病にかかりやすいことが指摘されていて、その理由が白米の摂取量にあることもわかっています・・・同じものばかりを過剰摂取するフードファディズム・・・は、慢性型アレルギーを発症して身体の酸化を招くリスクがあります・・・食物アレルギーが人によって異なるのと同じで、身体にいい食べ物も人によって異なるのです。だから自分の身体や脳が欲するサインに素直に応じて、食べたいものを食べるほうがいい」、なるほど。
・『新型コロナ3回陽性でも無症状だった理由  私は新型コロナ禍に3回の陽性判定を受けましたが、いずれも無症状でした。高血圧、糖尿病、心不全を抱えていて、年齢も60歳を超えています。コロナ発症リスクがもっとも高いとされる条件を満たしていたにもかかわらず、なぜ無症状だったのかと言えば、免疫力が強かったからでしょう。 医者の言うことを聞かないで、血圧が高くても好きなワインを飲み、おいしいものを食べていた。そんな生活こそ免疫力を高めるのだろうと、自らの体験から確信しています。 高血圧や心不全、糖尿病の人が、新型コロナの発症リスクが高いとされたのは、逆に普段からいろんな薬を飲み、節制をしていたことで、さまざまな免疫力が落ちてしまっていたからではないでしょうか。) 好きなことを我慢しているせいで、さらに免疫力が落ちていたところに新型コロナに感染すればひとたまりもない。これはがんに関しても同じようなことが言えるのだろうと思います。 食事については、脳に栄養をいきわたらせるため、とくに朝食をしっかり食べてください。一般的に朝食と昼食の間は4時間程度。昼食と夕食の間は7時間程度の間隔ですが、夕食から朝食までは約12時間もあります。そのため朝は、低血糖を一番起こしやすい時間帯なのです』、「私は新型コロナ禍に3回の陽性判定を受けましたが、いずれも無症状でした。高血圧、糖尿病、心不全を抱えていて、年齢も60歳を超えています。コロナ発症リスクがもっとも高いとされる条件を満たしていたにもかかわらず、なぜ無症状だったのかと言えば、免疫力が強かったからでしょう。 医者の言うことを聞かないで、血圧が高くても好きなワインを飲み、おいしいものを食べていた。そんな生活こそ免疫力を高めるのだろうと、自らの体験から確信しています。 高血圧や心不全、糖尿病の人が、新型コロナの発症リスクが高いとされたのは、逆に普段からいろんな薬を飲み、節制をしていたことで、さまざまな免疫力が落ちてしまっていたからではないでしょうか・・・食事については、脳に栄養をいきわたらせるため、とくに朝食をしっかり食べてください。一般的に朝食と昼食の間は4時間程度。昼食と夕食の間は7時間程度の間隔ですが、夕食から朝食までは約12時間もあります。そのため朝は、低血糖を一番起こしやすい時間帯なのです」、なるほど。
・『60代からはエネルギーを補完することが大切  ブドウ糖が不足した状態は脳の働きを鈍らせて、記憶力などの認知機能において大きなマイナス要因となります。 脳はものすごくたくさんのエネルギーを消費しますから、食事の間が空いてブドウ糖が不足している脳には、できるだけ早くエネルギーを補給する必要があります。 動脈硬化など生活習慣病の予防が大事なのは50代まで。60代からはむしろ老化を防ぐために食事でしっかりエネルギーを補完するべきで、なかでも意識したい栄養素がタンパク質、脂質、亜鉛です。 タンパク質は筋肉の衰えを防ぐとともに、タンパク質に含まれるアミノ酸の一種であるトリプトファンは幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの材料になり、幸福感を呼び込みます。 脂質に含まれるコレステロールは性ホルモンの材料となり、牡蠣やニンニクに含まれセックスミネラルとも呼ばれる亜鉛は元気の源となります。美容面でも、タンパク質や脂質は肌や髪の弾力とツヤに直結します』、「動脈硬化など生活習慣病の予防が大事なのは50代まで。60代からはむしろ老化を防ぐために食事でしっかりエネルギーを補完するべきで、なかでも意識したい栄養素がタンパク質、脂質、亜鉛です」、嬉しいアドバイスだ。 「タンパク質は筋肉の衰えを防ぐとともに、タンパク質に含まれるアミノ酸の一種であるトリプトファンは幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの材料になり、幸福感を呼び込みます。 脂質に含まれるコレステロールは性ホルモンの材料となり、牡蠣やニンニクに含まれセックスミネラルとも呼ばれる亜鉛は元気の源となります。美容面でも、タンパク質や脂質は肌や髪の弾力とツヤに直結します」、健康診断時の食事アドバイスで委縮していたが、和田先生のアドバイス7にはいつも元気づけられる。
タグ:(その27)(最悪の場合「緑内障」になってしまう…「最近、視力が落ちている」という人が飲み過ぎてはいけない飲み物 これを取り過ぎると眼圧が上がる、11日間 眠らずに起き続けると人はどうなる?高校生による実験の「恐るべき結果」 『ニュートン超図解新書 最強に面白い 睡眠』、健康意識が高い人は注意「塩分 糖分は控えめ」の罠 悪者にされがちだが、不足するリスクも大きい) 健康 PRESIDENT ONLINE 井上 賢治氏による「最悪の場合「緑内障」になってしまう…「最近、視力が落ちている」という人が飲み過ぎてはいけない飲み物 これを取り過ぎると眼圧が上がる」 井上賢治『いちばん親切でくわしい緑内障の教科書』(世界文化社) 「緑内障」は失明につながる恐ろし病気なので、興味深そうだ。 「毎日特に意識することなく繰り返している生活習慣の中に、眼圧を上げてしまったり、目に負担をかける可能性があるNG行動があります。 それは、かたよった食事や、運動不足、喫煙やストレス、睡眠不足といった生活習慣などです・・・年齢を重ねるのは止められませんが、生活習慣を改善することで、老化スピードを落としたり、病気を予防したりすることはできます。 健康的な生活習慣は、目のためにも大切なことなのです」、なるほど。 「うつ伏せやうつむく姿勢、逆立ちなど、目の前面や頭を下にするような姿勢は、眼圧を上昇させるためできるだけ控えましょう。 仕事の合間に眠くなって、机につっぷして居眠りする。 腹ばいになって本を読んだりタブレットで動画を見たりする。 そんな何気なくしている行動が、眼圧を上げてしまうかもしれないのです」、大いに気を付けたい。 「ストレスのもとになることを避けたり、ストレスを解消する術を身につけておきたいですね」、なるほど。 「暗いところでは、光をたくさん取り込もうとして瞳孔が開きます。瞳孔が開いているとき虹彩は縮み、厚くなっています。そして虹彩が厚くなることで隅角が狭くなり、房水の流れが妨げられて、眼圧が上がってしまうのです。 本を読んだり細かい作業をしたりするときは、手元や部屋を十分に明るくするようにしましょう」、なるほど。 「顔が下を向くと、水晶体が下=目の前方に落ちてきて、虹彩を前方に押し、隅角を狭くしてしまいます。 そのため長時間その姿勢でいると、眼圧が上がってしまいます。 手元の作業をするときは、うつむいた姿勢にならないように椅子や机を調節し、背筋を伸ばしたよい姿勢を保ちましょう。 また、ときどき目を閉じて上を向き、休憩するのもおすすめです」、意識して気を付けるようにした方がよさそうだ。 「喫煙によって上強膜静脈の血管が収縮して房水の排出が減ったり、視神経乳頭への血流が悪くなるとも考えられており、目の健康を守るうえでは禁煙は絶対条件です」、私も最近、禁煙をしたが、それまで50年以上、喫煙を続けていただけに、「緑内障や加齢黄斑変性などの病気の発症リスクが何倍も高い」ことは覚悟しなければならないようだ。 「コンタクトレンズは使用方法を守り、清潔に扱うようにし、装用時間は長くても12時間程度にとどめます。 つけたまま寝ると、角膜が酸素不足になり、視神経がダメージを受ける可能性があります・・・メガネよりも角膜に傷がついたり、感染を起こしたりというリスクが高いので、正しく使うことが大切です」、なるほど。 「睡眠時無呼吸症候群」で「無呼吸によって低酸素状態になることが、網膜や視神経にダメージを与えるのではないかと考えられています」、なるほど。 「睡眠時無呼吸症候群の患者のうち、緑内障を有する割合は日本では7.2%で、欧米における緑内障を有する割合(2%)と比べて多かったという報告もあります」、なるほど。 「長時間紫外線を浴び続けると、光が通過する角膜や水晶体、光が届く網膜や視神経の細胞がダメージを受けてしまいます・・・紫外線対策をしないで外出するのは、どの季節でも控えましょう」、なるほど。 「涙には水だけでなく、ナトリウムなどのミネラル、たんぱく質、酵素、脂質やビタミンなどが含まれていて、目の表面が乾燥しないように保護するほか、栄養を運び、感染を防ぎ、傷を治す働きもあります。涙はたくさんの大切な役割を担っているのです。 花粉の季節やホコリが目に入ったときなど、水や市販の洗眼剤でときどき洗うのは問題ないでしょう。でも、1日に何度も洗うのは控えましょう」、なるほど。 「カフェインを多くとる人のほうが眼圧が高い傾向があるというデータがあります。 身近な飲み物でカフェインを最も多く含むコーヒーの場合、1日に1?2杯程度なら問題ないと考えられています」、安心した。 「カフェインを多くとる人のほうが眼圧が高い傾向があるというデータがあります。 身近な飲み物でカフェインを最も多く含むコーヒーの場合、1日に1-2杯程度なら問題ないと考えられています」、「1日に1-2杯程度なら問題ない」というので安心した。 ダイヤモンド・オンライン「11日間、眠らずに起き続けると人はどうなる?高校生による実験の「恐るべき結果」 『ニュートン超図解新書 最強に面白い 睡眠』」 テレビCMで大谷選手が、よい「睡眠」を宣伝しているのもあって、興味深そうだ。「冬眠によってシマリスは若返っている可能性がある、昆虫にも睡眠がある」、とは驚きだ」。 「この8時間15分が本来被験者に必要とされる睡眠時間だと考えられる。もとの平均睡眠時間は7時間36分だったことを考えると、40分の睡眠負債を返すのに3週間かかったことになる。週末に寝だめをしたくらいでは、睡眠負債は解消されないのだ」、なるほど。 「眠らないことで脳には様々な不具合が発生する。睡眠の役割の一つは、脳の疲労回復だといえる。 睡眠の役割はそれだけではない。「記憶の固定」にも影響を与えている。学習後に眠ると記憶に残りやすい、という実験結果が報告されているのだ。脳が覚醒しているときは絶え間なくなんらかの情報が入ってきている。その記憶を定着させたいのであれば、新しい情報を入れるのではなく、早く眠ることが効果的なのかもしれない」、「学習後に眠ると記憶に残りやすい」とは初めて知ったが、残念ながら時既に遅しだ。 「レム睡眠の間、大脳は覚醒しているときに近い状態である。しかも、覚醒時よりも活動している領域がいくつかあることもわかってきた。奇妙な夢や大きな感情をともなう夢の多くはレム睡眠中に見ることがわかっているが、これは視覚イメージに関わる「視覚連合野」や感情に関わる「扁桃体」が活発だからと考えられている」、なるほど。 「人の話し声には大きな覚醒作用がある」、我が家の前の道路は大きな声でおしゃべりをする不届き者がたまにいるので、入眠の妨げになるのは腹立たしい。「寝る直前に入浴すると深部体温が下がりにくくなって、眠りに入りづらいことがある。入浴は就寝2時間前までに済ませておくのがよいだろう」、なるほど。 「仮眠をとる時間は15分から20分程度がよいとされ、そのくらいの時間で起きればちょうどステージ2の間に目覚めることができる。それ以上寝てしまうと、ステージ3の深い眠りから目覚めることになり、不快感でかえって疲労感が増してしまうことにもなりかねない」、「仮眠をとる時間は15分から20分程度がよいとされ」る背景が理解できた。「徹夜をしている間、眠気はどんどん蓄積される。一方、体内時計の信号は普段通りサイクルを刻んでいくので、徹夜明けでも朝になると頭が冴えてくる。だが、眠気は眠ることでしか根本的に解消しない。1 回の徹夜によって睡眠のリズムが崩れ、長期的に睡眠負債を抱えるきっかけにもなりかねない」、なるほど。 「子どもの成長に一番大きな役割を果たしているのが、ノンレム睡眠のステージ3である。ステージ3では脳下垂体とよばれる部位から「成長ホルモン」が分泌される。成長ホルモンは子どもの成長に重要な役割を果たし、骨の伸長、筋肉の増大、けがの治癒を促進する。成長ホルモンは成人でも重要で、疲労回復や代謝の促進などの役割をする。子どもも大人も、しっかりと睡眠をとることが重要なのだ」、なるほど。 「2つの過程によって睡眠と覚醒が進むという仮説だ。1つめのプロセスは、「睡眠圧」だ。覚醒している間、睡眠の欲求を示す「睡眠圧」がだんだん蓄積し、それが十分溜まることで睡眠がはじまる。眠っていると次第に睡眠圧は解消に向かっていく。 2つめのプロセスは体内時計だ。体内時計は睡眠圧の蓄積とは別に、覚醒をうながす信号である覚醒シグナルの強さを約24時間周期で調整している。このシグナルは21時にピークをむかえ、次第に弱まっていく。これにより、睡眠がはじまりやすくなるというわけだ」、なるほど。 「眠気の正体とはいったい何なのだろうか。その有力な候補となる脳内現象が、2018年に発見された。脳内にある80種類のタンパク質、それが「リン酸化」という化学変化をおこしていたのである。この80種類のタンパク質は「スニップス」と呼ばれ、そのうち69種類は、「シナプス」に集中していた。シナプスは神経細胞どうしが信号を伝達する場所であり、神経細胞どうしの接点である。覚醒時にはスニップスのリン酸化が進み、眠るとリン酸化は解消される。リン酸化の解消に要する時間が、その人の睡眠に必要な時間なのかもしれない」、なるほど 「間の体は太陽がのぼると目が覚めて、夜になると眠くなる。それに伴い血圧や体温なども変化する。こうした体の変化を調整しているのが体内時計である。 その周期は平均で24時間12分とされ、大体は地球の自転と連動している。私たちの睡眠のリズムは、地球の自転周期と大きなかかわりがあるのだ・・・体内時計にかかわる遺伝子の異常は睡眠に大きな影響を与える。遺伝子異常の種類によっては、眠気を感じて夜8時には眠り、明け方前に目覚めてしまう「睡眠相前進症候群」や、明け方にならないと眠れず朝になっても目覚めない「睡眠相後退症候群 」がみられる場合がある。近年の研究では、朝型や夜型の人たちの生活リズムのちがいは、体内時計にかかわる遺伝子の個人差による場合が多いと考えられている」、なるほど。 「脳を片方ずつ眠らせる動物たち」とは興味深そうだ。 東洋経済オンライン 和田 秀樹氏による「健康意識が高い人は注意「塩分、糖分は控えめ」の罠 悪者にされがちだが、不足するリスクも大きい」 和田氏の新著『「健康常識」という大嘘』 「低ナトリウム血症とは血液中のナトリウム、つまりは塩分の濃度が低くなった状態を言います。ナトリウムには体内の浸透圧を調節したり、神経や筋肉を正しく機能させたりする役割があって、体内のナトリウム濃度が下がると最初は軽い疲労感があり、重症化するとけいれんを起こしたり、昏睡状態に陥ることもあります。 近年増加の一途にある熱中症も、その多くは低ナトリウム血症によるもので、夏の暑い日に塩分を補給することなく水分ばかりを摂っているとひどいめまいに襲われたりするのはそのためです」、なるほど。 「アジア人は欧米人と比べて糖尿病にかかりやすいことが指摘されていて、その理由が白米の摂取量にあることもわかっています・・・同じものばかりを過剰摂取するフードファディズム・・・は、慢性型アレルギーを発症して身体の酸化を招くリスクがあります・・・食物アレルギーが人によって異なるのと同じで、身体にいい食べ物も人によって異なるのです。だから自分の身体や脳が欲するサインに素直に応じて、食べたいものを食べるほうがいい」、なるほど。 「私は新型コロナ禍に3回の陽性判定を受けましたが、いずれも無症状でした。高血圧、糖尿病、心不全を抱えていて、年齢も60歳を超えています。コロナ発症リスクがもっとも高いとされる条件を満たしていたにもかかわらず、なぜ無症状だったのかと言えば、免疫力が強かったからでしょう。 医者の言うことを聞かないで、血圧が高くても好きなワインを飲み、おいしいものを食べていた。そんな生活こそ免疫力を高めるのだろうと、自らの体験から確信しています。 高血圧や心不全、糖尿病の人が、新型コロナの発症リスクが高いとされたのは、逆に普段からいろんな薬を飲み、節制をしていたことで、さまざまな免疫力が落ちてしまっていたからではないでしょうか・・・食事については、脳に栄養をいきわたらせるため、とくに朝食をしっかり食べてください。一般的に朝食と昼食の間は4時間程度。昼食と夕食の間は7時間程度の間隔ですが、夕食から朝食までは約12時間もあります。そのため朝は、低血糖を一番起こしやすい時間帯なのです」、なるほど。 「動脈硬化など生活習慣病の予防が大事なのは50代まで。60代からはむしろ老化を防ぐために食事でしっかりエネルギーを補完するべきで、なかでも意識したい栄養素がタンパク質、脂質、亜鉛です」、嬉しいアドバイスだ。 「タンパク質は筋肉の衰えを防ぐとともに、タンパク質に含まれるアミノ酸の一種であるトリプトファンは幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの材料になり、幸福感を呼び込みます。 脂質に含まれるコレステロールは性ホルモンの材料となり、牡蠣やニンニクに含まれセックスミネラルとも呼ばれる亜鉛は元気の源となります 。美容面でも、タンパク質や脂質は肌や髪の弾力とツヤに直結します」、健康診断時の食事アドバイスで委縮していたが、和田先生のアドバイス7にはいつも元気づけられる。
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宗教(その13)(「カルト後遺症」の深刻 オウム元死刑囚が洗脳から脱した後も“麻原彰晃化”したワケ、ベストセラー著者が語る「旧統一教会問題」と「カルト教祖の共通点」 ロビン・ダンバー氏インタビュー) [社会]

宗教については、本年1月25日に取上げた。今日は、(その13)(「カルト後遺症」の深刻 オウム元死刑囚が洗脳から脱した後も“麻原彰晃化”したワケ、ベストセラー著者が語る「旧統一教会問題」と「カルト教祖の共通点」 ロビン・ダンバー氏インタビュー)である。

先ずは、本年1月19日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した中央大学教授の高橋徹氏による「「カルト後遺症」の深刻、オウム元死刑囚が洗脳から脱した後も“麻原彰晃化”したワケ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/336762
・『若者の不安や不満につけ込む、カルト宗教団体の勧誘は巧みである。親が気づいたときにはもう遅く、離脱は困難だ。しかも、たとえ運良く脱カルトしたとしても、マインドコントロール下で刻み込まれたカルト的思考や行動様式は、数十年たっても消えないという。※本稿は、『「オウム死刑囚 父の手記」と国家権力』(現代書館)の一部を抜粋・編集したものです』、興味深そうだ。
・『逮捕されて父母を泣かせてようやくわかったカルトの罪  金沢市の中心部から車で約一時間、真宗大谷派の浄専寺住職、平野喜之は2007(平成19)年に活動を始めた「『生きて罪を償う』井上嘉浩さんを死刑から守る会」の事務局長を務め、10年以上、嘉浩を支援してきた。平野が井上嘉浩から受け取った手紙は、188通にのぼる。 嘉浩の手紙にはこうある。 「突き詰めますと、麻原を信じたことそのものが罪のはじまりであり、全ての罪の責任は私にあります」 「人にとって救いとは一体何なのでしょうか?その答えがあるとうぬぼれたことが私がオウムに入り大罪を犯しました原因の一つであると今私は考えています」 「麻原は仏教やヨーガの心を変容させていく技術や薬物まで悪用して、徹底的に信者の社会規範や善悪の根本となる個としての人格を破壊していき、代わりに麻原の手足として動く人格を刷り込んでいきました。これが麻原が構築したマインドコントロールです」 「(※編集部注/最高裁で死刑が言い渡された2009年12月10日の)翌日、午前中に両親が面会に参りました。両親がぐったりとしつつ、それでも気丈に振る舞う姿を見て、涙をこらえるのが精一杯でした。父母が、自分たちが悪かったと、なんの責任もないのに、自分たちをせめる姿を見て本当に申し訳ないと、ただただ申し訳ないと、言葉がありませんでした」 「日々、まだ執行されないだろうと思いつつ、いや、わからんぞと、夜明けが恐ろしくもあり、そういうことにとらわれること自体、被害者の方々に申し訳ないと思いつつ、このままでは死にきれない心も消えません。このようなもだえも罪の報いの一つとして静かに見つめている自分もおります」 平野は静かに思いを語った。 「彼にしかできない真相解明とか、彼にしかできないオウム入信者に対して脱会を呼びかけるとか、そういう使命があったと思います。それを果たすことが償うということになったと思いますし、私たちの『守る会』のやっていたことは彼の罪の自覚を深めていくということに集中して支援してきました。罪の自覚を深めることによって本当の心からの被害者への謝罪ができると思います」  教団が救済の名のもとに多くの信徒を集め急拡大し、数々の凶悪事件を起こしていった軌跡は「平成」と重なる。「平成の事件は平成のうちに決着させたい」という政府の思惑だろうか、2018(平成30)年の7月、オウム死刑囚13人の死刑が執行された。) その中の一人が井上嘉浩だった。ホーリーネーム(教団内の宗教名)はアーナンダ。オウム真理教の諜報省トップで、教祖の「側近中の側近」、「修行の天才」、「神通並びなきもの」といわれた教団幹部である。 『生きて罪を償う』井上嘉浩さんを死刑から守る会」は嘉浩の死刑が執行されたことで解散した。機関誌「悲」は16号の追悼号(2018年12月発行)で役目を終えた』、「「平成の事件は平成のうちに決着させたい」という政府の思惑だろうか、2018(平成30)年の7月、オウム死刑囚13人の死刑が執行された」、「死刑囚」の執行が遅れるのが普通だが、「政府の思惑」で異例の執行となったようだ。
・『マインドコントロールが解けてもカルトの傷は残る  平野がもう一つ活動の重点に置いているのが「カルト後遺症」の問題だ。一連のオウム事件がきっかけで誕生した日本脱カルト協会(JSCPR)によると、カルト教団から脱会した人の多くが何らかの『後遺症』に苦しむという。 代表的な症状としては、「神から裁かれるのではないか」という不安感、「自分は裏切り者であり、天罰が下るのではないか」という恐怖感などがあげられる。無理もない話で、身も心も奉じてきた団体の価値観を失い、それまでの理想やアイデンティティをすべて失うことになるからだ。 音楽や映像、においなど些細なことが引き金になり脱会前の心理状態に戻ってしまう、いわゆる「フラッシュバック」もほとんどの人が体験する。 また、せっかく家に戻っても家族や友人、知人との人間関係に悩み、睡眠障害や摂食不良に陥るという例もある。そもそもカルトの多くは、教祖を『父』や『母』としているので、現実の家族に対しては否定的な思いを抱くよう誘導していることが多い。 「何か悪いことが起こると、霊の祟りではないかと、とっさに考えてしまう」と話すのは、日本脱カルト協会の理事で、日本基督教団白河教会牧師の竹迫之だ。 竹迫は1967(昭和42)年、秋田市生まれ。高校3年の時に当時の統一教会(現世界平和統一家庭連合)に勧誘され入会した。「霊感商法」が世間に知られるようになった1980年代半ばのころである。 「マインドコントロールが目指すものは、コントロールする人に対する依存なんです。私の場合は何をするにも指示をしてくれる人の指示を仰ぐというライフスタイルが身についていましたね。なんでも自分で好きに選んでいいよと言われると、かえって何を選んでいいのか分からず混乱する。この依存から離脱するということがマインドコントロールが解けるということなんです。しかし、マインドコントロールは解けても、後遺症は残るんです」) 脱会して十年以上たったころのある体験を竹迫は話してくれた。 「教会の階段を降りていたところ、3段ぐらい踏み外して落ちちゃった。その拍子に左足を3カ所も骨折してしまったんです。そのとき、とっさに霊の祟りではないかと発想が浮かんできた。典型的なカルト後遺症です」 悪いことが起こると、その説明を求めてしまう。竹迫は統一教会を脱会して37年になるが、いまだにそういう瞬間があるという。 「何か不運な目にあったときに、自分に悪いところがあったからではないかと、その原因を追求したくなるものですね。その祟りから逃れるために何かしなくてはいけないという強烈な衝動がわいてくる。私は、マインドコントロール自体は解けているのは間違いないとは思うのですが、けれども後遺症として残っている」』、「悪いことが起こると、その説明を求めてしまう。竹迫は統一教会を脱会して37年になるが、いまだにそういう瞬間があるという・・・カルト後遺症です」、なるほど。
・『被害者どころか支援者にすら独善と映ったオウム元死刑囚  さて、嘉浩にカルト後遺症はあったのだろうか。フォトジャーナリストで『宗教事件の内側 精神を呪縛される人びと』や『カルト宗教事件の深層 「スピリチュアル・アビュース」の論理』などの著書がある藤田庄市は「独善的な修行者意識」という言葉で、嘉浩の後遺症を言い表した。 藤田が注目したのは、目黒公証役場事件で父親を失った仮谷実と嘉浩とのやり取りだった。嘉浩は「亡くなった人たちのことを考えて、できるだけ苦しみを自分に課していきたい」と謝罪したのに対し、仮谷は「被告が苦しんでも、私たちは助からない」と返し、「自らに苦しみを課しても遺族の救済にならない」と突き放した。 「独善的な」とは、修行を続けることにより、人間性も宗教的にも世間より高いところにいるという意識である。 「井上君は麻原教祖とは対決して、『オウムを脱会する』と宣言はしているのだけれども、考え方であるとか、独善的な修行者意識というものは残っていたのではないか。脱会したからといって、カルト思考、カルト的考え方は簡単にはなくならない」と藤田は指摘している。 平野も嘉浩にカルト後遺症を感じていたという。) 「井上君のご両親には申し訳ないが……2018年だったと思うが、『生きて罪を償う会』の内部で、支援を見直そうという声が上がっていた。生来の性格なのか、カルトの後遺症なのか見極めは難しいかもしれないけれども、『麻原は井上君に、こういう指示の仕方をしていたのだ』と感じられるような指示の仕方が井上君から我々『生きて罪を償う会』に対してありました。カルトの怖さは脱会後にも後遺症となって残る。教義から抜けても人間関係の持ち方とか、指示命令系統とかそういうところに残るのではないか」 独善的とも映る嘉浩の振る舞いについて、竹迫はカルト後遺症が影響していた可能性があると話す』、「カルトの怖さは脱会後にも後遺症となって残る。教義から抜けても人間関係の持ち方とか、指示命令系統とかそういうところに残るのではないか」、なるほど。
・『「カルト後遺症」の深刻、オウム元死刑囚が洗脳から脱した後も“麻原彰晃化”したワケ  高橋徹「オウム死刑囚 父の手記」と国家権力(現代書館) 「誰もが権力を振るう立場に魅力を感じます。嘉浩君の場合は、教祖の、麻原の振る舞いを見ていたために、それが増幅されていったのではないでしょうか。自分もやってもいいんだというお墨付きをもらった状態です。高校生のうちから入信したため、『人と人との関係はフラットであるべきだ』という考えに触れたことがなかったのではないでしょうか」。 子供をカルトに取られた親の苦痛を平野はこう話した。神奈川県の教会で出会ったある母親の話である。 「私たちは二重に傷つくのです。一つ目は『子供をカルトにとられたこと』、二つ目は『子供がカルトにとられたのはあなたたちのせいでしょうと世間から偏見の目で見られること』です。私の家庭は上手くいっていました。子供がカルトにとられたのは、勧誘が巧みだっただけでしょうと言いたい」 平野は言う。 「世間には、カルトにとられたのは家族のせいだ、やっぱり家族が悪いと誤解する人がいます。片や親自身が『子供の責任を取らなければいけない』と思い詰める人も少なからずいます。日本では特に『子供の罪は親の罪』として、責任を感じる姿が美化されすぎるきらいがあるのではないでしょうか。そのために親が苦しめられることがあります」 井上家に、嘉浩がまだ幼いころの写真が残っている。自宅の前で、ブルーの短パン、アニメのキャラクターがプリントされた白いポロシャツを着て、上下に動かすことができる透明なシールドが付いた戦隊もののヘルメットをかぶって、無邪気に笑っていた。 「もし神が許してくれるなら、どんなことをしてでも、あのころに戻りたいと思います」 私が嘉浩の父に初めて会った日、父はそう話した』、「「私たちは二重に傷つくのです。一つ目は『子供をカルトにとられたこと』、二つ目は『子供がカルトにとられたのはあなたたちのせいでしょうと世間から偏見の目で見られること』です・・・日本では特に『子供の罪は親の罪』として、責任を感じる姿が美化されすぎるきらいがあるのではないでしょうか。そのために親が苦しめられることがあります」、やはり「カルト後遺症」は深刻なようだ。

次に、3月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した国際ジャーナリストの大野和基氏による「ベストセラー著者が語る「旧統一教会問題」と「カルト教祖の共通点」 ロビン・ダンバー氏インタビュー」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/340568
・『無宗教国ニッポンで、ロビン・ダンバー著『宗教の起原』(白揚社)がベストセラーとなっている。著者は、人間の安定的な集団サイズの上限が「150」であると導き出し、人類学のノーベル賞と称される「トマス・ハクスリー記念賞」を受賞した人物だ。本書では、「私たちはいかに信じる心を獲得したのか」「人類進化の過程で『神』はなぜ生まれたのか」「カルト宗教はなぜ次々と生まれ、人々を惹きつけるのか」といった、人類と宗教を巡る根源的な問いを追求している。著者に、日本の旧統一教会問題なども含めて話を聞いた』、興味深そうだ。
・『「カルト宗教」とは何か  Q:本書の執筆のために、幅広くリサーチをしたと思いますが、最大の発見は? A:結束したコミュニティーを作る際の宗教の役割と宗教の儀式が、脳の「エンドルフィン物質」を活性化することが分かりました。この物質は、人間のフレンドシップを構築するのに使われます。礼拝中の人の脳を調べると、儀式が脳内のエンドルフィンを活性化していたのです。 Q:あなたが無神論者であるからこそ、偏見なくこの本が書けたのでしょうか。 (ロビン・ダンバー氏の略歴はリンク先参照) A:そうですね、私は特定の宗教に何のコミットメントもありません。私は幼少時アフリカで育ったので、さまざまな種類のキリスト教、イスラム教、シーク教、後に仏教、ヒンズー教も経験しました』、「結束したコミュニティーを作る際の宗教の役割と宗教の儀式が、脳の「エンドルフィン物質」を活性化することが分かりました。この物質は、人間のフレンドシップを構築するのに使われます。礼拝中の人の脳を調べると、儀式が脳内のエンドルフィンを活性化していたのです」、「儀式が脳内のエンドルフィンを活性化していた」、とは初めて知った。 
・『Q:本書には「カルト」の章がありますが、これほど深くリサーチをすると、「カルトの作り方」を熟知しているのでは? カルトにおける「教祖」というのは、人生において大きな危機を経験していることが非常に多いです。全財産を失ったとか、大病をして死にかけたとかね。そして自分の殻に閉じこもって、ひどく落ち込んだ経験があります。その間に、宇宙の真実のようなことに目覚めて、それを信じるようになるのです。 宇宙を支配しているものについて斬新なアイデアを持ち、周囲を根気強く納得させます。でないとみんなに笑われて、排除されて終わりです。だから多くのカルトはいささかクレイジーな人が教祖になっているのです。 ほとんどのカルトは、社会的な真実を持つようになり、宗教に変わっていきます。他の人に優しくしたり、慈善を施したりします。一方で宗教にならないカルトは、非常にクレイジーな教義を持っているので、普通は長続きしません。続くケースは非常にまれですね。カルトは教祖のためだけにあり、それ以外の人は搾取されるものなのです。 Q:カルトというとネガティブな響きがあります。日本では政界と旧統一教会の密な関係が報道され続けています。どういう条件で、宗教がカルトになるのでしょうか。) その逆です。つまり世界の全ての宗教は、仏教であれ、神道であれ、キリスト教であれ、イスラム教であれ、シーク教であれ、カルトとして始まっています。宗教とは、「ある真実を発見した」と信じることや、「神のメッセンジャー」を名乗るカリスマ性のあるリーダーを中心に、ローカルで小さなカルトとして始まる、というのが私の見方です。 カルトは時に、ネガティブな含みがありますが、決して全てのカルトが悪いわけではありません。一方で、カルトは簡単に悪くなる可能性も秘めています。ただ、先述したように全ての宗教はカルトから始まり、信奉者が増えて非常に大きなコミュニティーになると、「もはやカルトではなく宗教である」と呼びたくなるのです。 ほとんど全ての宗教は、下部から絶えずカルトが発生している状態とも言えます。神道だって末端でさまざまな団体がありますよね? そして、神道だけでなく仏教を混合した信仰を抱く人もいます。 明らかなのは、末端に出てきたカルトは異端であることが多いことです。正しいセオリーを伝道しているわけではないので、有害になる可能性があります。時に、そうした小さなカルトが暴走してどんどん拡大し、世界的な宗教になることもあります。 キリスト教やイスラム教は、元はと言えばユダヤ教の産物でした。そして、他の多くの宗教がインドや地中海沿岸地方にも入ってきました。キリスト教やイスラム教はさかのぼると、ゾロアスター教に起源があります。 Q:カルトが宗教になる条件は何でしょうか。 A:サイズだけです。多くの異なる国で、かなり広い地域で多くの人が信仰するようになると宗教になります。と同時に大きな宗教にとって非常に重要なことは、正式な教義と儀式があることです。一方で小規模のカルトには盤石な教義はなく、ころころ変わる傾向があります。また、儀式もフォーマルでないことが多い。 Q:カルトについてbrainwashing(洗脳)という言葉を使いますが、宗教について〈洗脳〉という言葉を使いますか? A:yes and noです。カルトと宗教の間には、微妙な区別があります。カルトは往々にして厳格な罰をもって、行動や信じるべきことを強制します。一方で、宗教は強制ではなく「説得」によって行います。つまり、もう少しリラックスしているイメージです。他方で、例えばキリスト教の歴史をたどると、異教徒や正しい教義を信じない者に対して差別や迫害をしていた時代もありました。 いずれにせよbrainwashingは、宗教上の信条であれ、政治的信条であれ、一つのコミュニティーが結束し続けるためには、世界中ですべての信条に当てはまると思います』、「カルトにおける「教祖」というのは、人生において大きな危機を経験していることが非常に多いです。全財産を失ったとか、大病をして死にかけたとかね。そして自分の殻に閉じこもって、ひどく落ち込んだ経験があります。その間に、宇宙の真実のようなことに目覚めて、それを信じるようになるのです。 宇宙を支配しているものについて斬新なアイデアを持ち、周囲を根気強く納得させます。でないとみんなに笑われて、排除されて終わりです。だから多くのカルトはいささかクレイジーな人が教祖になっているのです。 ほとんどのカルトは、社会的な真実を持つようになり、宗教に変わっていきます。他の人に優しくしたり、慈善を施したりします。一方で宗教にならないカルトは、非常にクレイジーな教義を持っているので、普通は長続きしません。続くケースは非常にまれですね。カルトは教祖のためだけにあり、それ以外の人は搾取されるものなのです・・・全ての宗教はカルトから始まり、信奉者が増えて非常に大きなコミュニティーになると、「もはやカルトではなく宗教である」と呼びたくなるのです。 ほとんど全ての宗教は、下部から絶えずカルトが発生している状態とも言えます。神道だって末端でさまざまな団体がありますよね? そして、神道だけでなく仏教を混合した信仰を抱く人もいます。 明らかなのは、末端に出てきたカルトは異端であることが多いことです。正しいセオリーを伝道しているわけではないので、有害になる可能性があります。時に、そうした小さなカルトが暴走してどんどん拡大し、世界的な宗教になることもあります。 キリスト教やイスラム教は、元はと言えばユダヤ教の産物でした。そして、他の多くの宗教がインドや地中海沿岸地方にも入ってきました。キリスト教やイスラム教はさかのぼると、ゾロアスター教に起源があります・・・カルトが宗教になる条件は何でしょうか。 A:サイズだけです。多くの異なる国で、かなり広い地域で多くの人が信仰するようになると宗教になります。と同時に大きな宗教にとって非常に重要なことは、正式な教義と儀式があることです。一方で小規模のカルトには盤石な教義はなく、ころころ変わる傾向があります。また、儀式もフォーマルでないことが多い。 Q:カルトについてbrainwashing(洗脳)という言葉を使いますが、宗教について〈洗脳〉という言葉を使いますか? A:yes and noです。カルトと宗教の間には、微妙な区別があります。カルトは往々にして厳格な罰をもって、行動や信じるべきことを強制します。一方で、宗教は強制ではなく「説得」によって行います。つまり、もう少しリラックスしているイメージです。他方で、例えばキリスト教の歴史をたどると、異教徒や正しい教義を信じない者に対して差別や迫害をしていた時代もありました。 いずれにせよbrainwashingは、宗教上の信条であれ、政治的信条であれ、一つのコミュニティーが結束し続けるためには、世界中ですべての信条に当てはまると思います」、なるほど。
・『宗教は戦争を引き起こすが…  Q:宗教は時に戦争の原因になります。それでも、宗教には有益な面の方が多いのでしょうか。 A:確かに、宗教は宗教戦争を引き起こします。宗教というのは、絆の強いコミュニティーを作るためにあるので、真の信奉者とそうではない人と対比させることで、絆を強化することが往々にしてあるのです。 全体的には、やはり有益な面の方が多いでしょう。帰属感を作り出します。また、少なくとも信者同士では素行が良くなり、老人や病人や貧しい人に施しもします。 一人の内面に、複数の宗教が存在している場合もあります。日本人がその典型です。結婚式は神道で行い、葬儀は仏教でやるということが日本ではよくありますよね? これは、世界的にはまれなケースです。宗教にあまり意識がないからでしょう。 宗教の歴史を振り返ると、異なる宗教で互いの儀式や教義を借り合うことが往々にしてあります。キリスト教の中でも、ユダヤ教を経由してゾロアスター教から、非常に強い影響を受けています。また、儀式や教義の点では、明らかに古い仏教からの影響も見られます。 Q:あなたは、人間が安定的な関係性を維持できる人数の上限がおおむね「150」であると説きましたね(「ダンバー数」)。その150という数字は、宗教とも関係あるのでしょうか? A:寺や教会における集会は150人が最適規模だと分かっています。また、19世紀の米国では移住者が増え続け、人々はコミュニティーを作り、密接な関係を維持しながら暮らしていましたが、その中で宗教のベースがあるコミュニティーでは、150人が平均でした。 これは私の調査とは別のものですが、プロテスタントの集会では100人以下だと教会や神父をサポートするのに十分ではなく、1人当たりの負担金額が大きすぎるという研究結果も出ています。一方で、200人を超えると帰属意識がなくなってきます。つまり、100人と200人の間に全てがうまくいくsweet spot(最大の利益が見込めるところ)があるということです』、「宗教は宗教戦争を引き起こします。宗教というのは、絆の強いコミュニティーを作るためにあるので、真の信奉者とそうではない人と対比させることで、絆を強化することが往々にしてあるのです。 全体的には、やはり有益な面の方が多いでしょう。帰属感を作り出します。また、少なくとも信者同士では素行が良くなり、老人や病人や貧しい人に施しもします。 一人の内面に、複数の宗教が存在している場合もあります。日本人がその典型です。結婚式は神道で行い、葬儀は仏教でやるということが日本ではよくありますよね? これは、世界的にはまれなケースです・・・あなたは、人間が安定的な関係性を維持できる人数の上限がおおむね「150」であると説きましたね(「ダンバー数」)。その150という数字は、宗教とも関係あるのでしょうか? A:寺や教会における集会は150人が最適規模だと分かっています。また、19世紀の米国では移住者が増え続け、人々はコミュニティーを作り、密接な関係を維持しながら暮らしていましたが、その中で宗教のベースがあるコミュニティーでは、150人が平均でした。 これは私の調査とは別のものですが、プロテスタントの集会では100人以下だと教会や神父をサポートするのに十分ではなく、1人当たりの負担金額が大きすぎるという研究結果も出ています。一方で、200人を超えると帰属意識がなくなってきます。つまり、100人と200人の間に全てがうまくいくsweet spot(最大の利益が見込めるところ)があるということです」、「寺や教会における集会は150人が最適規模だと分かっています」、「寺や教会における集会に最適規模」があるとは初めて知ったが、なんとなく感覚的な印象と一致するようだ。 
タグ:宗教 (その13)(「カルト後遺症」の深刻 オウム元死刑囚が洗脳から脱した後も“麻原彰晃化”したワケ、ベストセラー著者が語る「旧統一教会問題」と「カルト教祖の共通点」 ロビン・ダンバー氏インタビュー) ダイヤモンド・オンライン 高橋徹氏による「「カルト後遺症」の深刻、オウム元死刑囚が洗脳から脱した後も“麻原彰晃化”したワケ」 「オウム死刑囚 父の手記」と国家権力』(現代書館) 「「平成の事件は平成のうちに決着させたい」という政府の思惑だろうか、2018(平成30)年の7月、オウム死刑囚13人の死刑が執行された」、「死刑囚」の執行が遅れるのが普通だが、「政府の思惑」で異例の執行となったようだ。 「悪いことが起こると、その説明を求めてしまう。竹迫は統一教会を脱会して37年になるが、いまだにそういう瞬間があるという・・・カルト後遺症です」、なるほど。 「カルトの怖さは脱会後にも後遺症となって残る。教義から抜けても人間関係の持ち方とか、指示命令系統とかそういうところに残るのではないか」、なるほど。 「「私たちは二重に傷つくのです。一つ目は『子供をカルトにとられたこと』、二つ目は『子供がカルトにとられたのはあなたたちのせいでしょうと世間から偏見の目で見られること』です・・・日本では特に『子供の罪は親の罪』として、責任を感じる姿が美化されすぎるきらいがあるのではないでしょうか。そのために親が苦しめられることがあります」、やはり「カルト後遺症」は深刻なようだ。 大野和基氏による「ベストセラー著者が語る「旧統一教会問題」と「カルト教祖の共通点」 ロビン・ダンバー氏インタビュー」 ロビン・ダンバー著『宗教の起原』(白揚社) 「結束したコミュニティーを作る際の宗教の役割と宗教の儀式が、脳の「エンドルフィン物質」を活性化することが分かりました。この物質は、人間のフレンドシップを構築するのに使われます。礼拝中の人の脳を調べると、儀式が脳内のエンドルフィンを活性化していたのです」、「儀式が脳内のエンドルフィンを活性化していた」、とは初めて知った。 「カルトにおける「教祖」というのは、人生において大きな危機を経験していることが非常に多いです。全財産を失ったとか、大病をして死にかけたとかね。そして自分の殻に閉じこもって、ひどく落ち込んだ経験があります。その間に、宇宙の真実のようなことに目覚めて、それを信じるようになるのです。 宇宙を支配しているものについて斬新なアイデアを持ち、周囲を根気強く納得させます。でないとみんなに笑われて、排除されて終わりです。だから多くのカルトはいささかクレイジーな人が教祖になっているのです。 ほとんどのカルトは、社会的な真実を持つようになり、宗教に変わっていきます。他の人に優しくしたり、慈善を施したりします。一方で宗教にならないカルトは、非常にクレイジーな教義を持っているので、普通は長続きしません。続くケースは非常にまれですね。カルトは教祖のためだけにあり、それ以外の人は搾取されるものなのです・・・全ての宗教はカルトから始まり、信奉者が増えて非常に大きなコミュニティーになると、「もはやカルトではなく宗教である」と呼びたくなるのです。 ほとんど全ての宗教は、下部から絶えずカルトが発生している状態とも言えます。神道だって末端でさまざまな団体がありますよね? そして、神道だけでなく仏教を混合した信仰を抱く人もいます。 明らかなのは、末端に出てきたカルトは異端であることが多いことです。正しいセオリーを伝道しているわけではないので、有害になる可能性があります。時に、そうした小さなカルトが暴走してどんどん拡大し、世界的な宗教になることもあります。 キリスト教やイスラム教は、元はと言えばユダヤ教の産物でした。そして、他の多くの宗教がインドや地中海沿 岸地方にも入ってきました。キリスト教やイスラム教はさかのぼると、ゾロアスター教に起源があります・・・カルトが宗教になる条件は何でしょうか。 A:サイズだけです。多くの異なる国で、かなり広い地域で多くの人が信仰するようになると宗教になります。と同時に大きな宗教にとって非常に重要なことは、正式な教義と儀式があることです。一方で小規模のカルトには盤石な教義はなく、ころころ変わる傾向があります。また、儀式もフォーマルでないことが多い。 Q:カルトについてbrainwashing(洗脳)という言葉を使いますが、宗教について〈洗脳〉という言葉を使いますか? A:yes and noです。カルトと宗教の間には、微妙な区別があります。カルトは往々にして厳格な罰をもって、行動や信じるべきことを強制します。一方で、宗教は強制ではなく「説得」によって行います。つまり、もう少しリラックスしているイメージです。他方で、例えばキリスト教の歴史をたどると、異教徒や正しい教義を信じない者に対して差別や迫害をしていた時代もありました。 いずれにせよbrainwashingは、宗教上の信条であれ、政治的信条であれ、一つのコミュニティーが結束し続けるためには、世界中ですべての信条に当てはまると思います」、なるほど。 「宗教は宗教戦争を引き起こします。宗教というのは、絆の強いコミュニティーを作るためにあるので、真の信奉者とそうではない人と対比させることで、絆を強化することが往々にしてあるのです。 全体的には、やはり有益な面の方が多いでしょう。帰属感を作り出します。また、少なくとも信者同士では素行が良くなり、老人や病人や貧しい人に施しもします。 一人の内面に、複数の宗教が存在している場合もあります。日本人がその典型です。結婚式は神道で行い、葬儀は仏教でやるということが日本ではよくありますよね? これは、世界的にはまれなケ ースです・・・あなたは、人間が安定的な関係性を維持できる人数の上限がおおむね「150」であると説きましたね(「ダンバー数」)。その150という数字は、宗教とも関係あるのでしょうか? A:寺や教会における集会は150人が最適規模だと分かっています。また、19世紀の米国では移住者が増え続け、人々はコミュニティーを作り、密接な関係を維持しながら暮らしていましたが、その中で宗教のベースがあるコミュニティーでは、150人が平均でした。 これは私の調査とは別のものですが、プロテスタントの集会では100人以下だと教会や神父をサポートするのに十分ではなく、1人当たりの負担金額が大きすぎるという研究結果も出ています。一方で、200人を超えると帰属意識がなくなってきます。つまり、100人と200人の間に全てがうまくいくsweet spot(最大の利益が見込めるところ)があるということです」、「寺や教会における集会は150人が最適規模だと分かっています」、「寺や教会における集会に最適規模」があるとは初めて知ったが、なんとなく感覚的な印象と一致するよ
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ソフトバンクの経営(その17)(ソフトバンクGの“ぱっとしない決算数字”より要注目!投資事業の「不気味な動き」、LINEヤフー 総務省も呆れ果てた「変わらぬ体質」 情報漏洩で行政指導、資本関係見直しの行方は) [企業経営]

ソフトバンクの経営については、2022年2月13日に取上げた。今日は、(その17)(ソフトバンクGの“ぱっとしない決算数字”より要注目!投資事業の「不気味な動き」、LINEヤフー 総務省も呆れ果てた「変わらぬ体質」 情報漏洩で行政指導、資本関係見直しの行方は)である。

先ずは、昨年8月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「ソフトバンクGの“ぱっとしない決算数字”より要注目!投資事業の「不気味な動き」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/327572
・『8月8日、ソフトバンクグループが決算を発表しました。3四半期連続の最終赤字と、「ぱっとしない」数字です。それでも、私はソフトバンクグループは11月の決算発表で“驚きの業績”を発表すると予想しています。ただ、その先には「不都合な乱高下」が待っているかもしれません。投資事業で「不気味な動き」が見えるのです』、興味深そうだ。
・『ソフトバンクGの株価 23年後半に「乱高下」の可能性  8月8日、ソフトバンクグループ(以下、ソフトバンクG)が2023年4~6月期の決算を発表しました。最終損益は4776億円の赤字で、これは3四半期連続の最終赤字です。1年前に3兆円規模の最終赤字だったことと比べれば赤字幅は大幅に縮小しましたが、AIブームが押し上げる直近のGAFAMのきらびやかな決算発表と比較すると、ぱっとしない数字であることも事実です。 一方で、半年前に再度赤字に転落した後低迷していたソフトバンクGの株価は、この3カ月で回復し、現在では7000円近辺に到達しています。投資家は、ソフトバンクGの23年11月の決算発表が「すごい数字」になることをすでに織り込み済みなのです。 とはいえその後は?というと、実はまた乱高下が待っているかもしれません。これが今回の記事のテーマです。 ソフトバンクGは投資を事業の中心に据える大企業なので、このように決算数字だけでは未来が分かりにくいという特徴があります。この先、ソフトバンクGに何が起きるのか、3つのポイントで予測してみたいと思います』、「この先、ソフトバンクGに何が起きるのか」、知りたいものだ。
・『ぱっとしない数字の原因は「為替差損」と「海外投資の評価損」  さて、未来の話に入る前に足元の状況から確認していきましょう。ソフトバンクGはソフトバンク・ビジョン・ファンド(以下、SVF)とソフトバンク本体が所有する投資部門(以下、本体投資)、二つの大きな投資ビークルを使ってさまざまな企業に投資をしています。 2022年3月期に過去最大の1兆7000億円の最終赤字に転落した際は、このSVFの投資評価額の悪化が大きかったのですが、今回の決算発表の良い兆候としてSVFの利益回復が挙げられました。 SVFの投資損益は今回の四半期でマイナス130億円まで回復、セグメント別税引き前利益は610億円の黒字となり、1年前からの増減では実に2.4兆円近くも利益が改善しています。 実はSVFはこれまで過去5四半期連続して投資損益の下落を続けていて、累計で実に6.5兆円もの利益を失っていました。それが、6四半期ぶりに反転したというのが今回の決算発表における明るいニュースです。 一方で、為替差損と本体投資の赤字計上が全体の決算数字の足を引っ張りました。この投資赤字についてはアリババ、ドイツテレコム、Tモバイルの3社の評価損が大きかったのですが、このうちアリババについてはデリバティブ関連利益で相殺できています。ちなみにこれまでソフトバンクGの“打ち出の小槌(こづち)”だったアリババについては、ほぼ換金化が終わっています。 つまり、今回のぱっとしない決算数字は主にドル建て社債の為替差損と海外の通信2社への投資の評価損で、それ以外の投資については回復基調にあるというのが直近の状況です。 さて、ここからが本題です。ソフトバンクGの未来はこれからどうなるのでしょうか? 3つのポイントで未来を予測しましょう』、「今回のぱっとしない決算数字は主にドル建て社債の為替差損と海外の通信2社への投資の評価損で、それ以外の投資については回復基調にある」、なるほど。
・『傘下・アームの評価額が9月に急騰!ソフトバンクGの決算は好転する  最初のポイントとなるのが、ソフトバンクGが100%株式を保有するイギリスの半導体大手アーム社の上場です。アームは2016年にソフトバンクGが約3兆円で買収し、本体で75%、SVFで25%の株式を保有しています。 このアームに関しては、今AIブームで世界を騒がしている「マグニフィセント7(素晴らしい7社)」の一角であるエヌビディアが2020年に400億ドル、当時の為替レートで約4兆円での買収を申し出ました。ところが、イギリス当局がこの買収について「競争上の深刻な懸念がある」という理由で差し止めを表明し、最終的にソフトバンクGも売却を断念した経緯があります。 ここで重要なことは、エヌビディアがアームを買収しようとした意図です。アームはスマートフォンやIoT機器で利用されるプロセッサーで圧倒的なシェアを持つ会社です。AIで使われるグラフィックボードでも中枢となるプロセッサーにはアームの製品が使われるため、世界の半導体事業会社が重要なプレーヤーだと認識しています。ソフトバンクGの買収後はGPU向け以外にも自動運転の車載向け、データセンター向けなどへの投資を続け、売上高は7割増加しています。 このアームが、今年9月にアメリカのナスダックでの上場を予定しています。 2020年に400億ドルだった評価を考えると、その後の円安分の単純計算だけで価値は5.7兆円。2020年以降に起きたAIブームで半導体各社の株価が急騰したことを考えると、アームの時価総額は、ソフトバンクGの時価総額である約10兆円に匹敵する規模になるでしょう。 +つまり、11月に予定されている次のソフトバンクGの決算では本体投資、SVFどちらも驚愕(きょうがく)すべき評価益を発表することになるはずです』、本年2月9日付けの日経新聞によれば、「ソフトバンクG、黒字転換 10~12月最終 9500億円、AI株高追い風 アーム好調受け株11%高」と好調だったようだ。
・『「アーム以外」の投資では重大な懸念点も  次に2つ目のポイントです。ソフトバンクGにとってアームがアリババに代わる新たな“打ち出の小槌”になることが見えてきたとはいえ、他の投資はどうなのでしょう? 相変わらずの一本足打法でひとつの成功例に依存しながら、他の損失を穴埋めしていく構造が続くのでしょうか? この点で、ソフトバンクGの投資には懸念点があります。 ソフトバンクGはSVFや本体などで2021年度の上期に約29兆円、下期に約15兆円と、合わせて44兆円規模の投資を行ってきました。ところが、2022年度にはSVFの時価が急落したことを受けて、投資額も一年で4兆円と10分の1にまで縮小しました。直近の四半期でも投資は1.8兆円と低水準なのですが、このことについて記者会見で後藤芳光CFOが語った言葉が重要です。 (投資額の推移(SVF1+SVF2+LatAmファンド+SBG他)はリンク先参照) 「22年度は投資を事実上ストップしたが、恐る恐る再開している」という言葉と「(今後)投資の反転攻勢を打ち出す」という言葉です。 なぜ、この言葉が重要なのか? そもそもソフトバンクGが行っているようなレベルの企業投資は、未公開企業が対象です。そのため、お金があるからといって簡単に投資できるものではありません。 つまり、「投資する側(ソフトバンクG)が投資される側にどのようなメリットを与えてくれるか」が投資を実現し成功させるための鍵なのです。 ソフトバンクGが過去に出資に成功してきた背景には、孫正義さんという神話と孫さんをめぐる人脈が大きく寄与してきました。 一方であくまで結果論なのですが、ソフトバンクGには「株の高値づかみをして、その後減損に追い込まれる傾向」という欠点がありました。 そこで懸念点が生まれます。投資の神様であるウォーレン・バフェット氏が教える株の極意を端的に言えば、【市場が浮かれているときは株を売り、誰もが悲観しているときこそ投資をする】というものです。 その観点で眺めると、ソフトバンクGの投資グラフは不気味です』、「ソフトバンクGには「株の高値づかみをして、その後減損に追い込まれる傾向」という欠点がありました」、これは「ソフトバンクGのIT株投資はバフェット氏の“極意”と真逆」だからこそ生じた。
・『ソフトバンクGのIT株投資はバフェット氏の“極意”と真逆  「投資をするタイミングがバフェット氏の極意と真逆」で、不気味なのです。ソフトバンクGは「IT株が急騰している時期」に莫大な投資を行いました。コロナ禍でアメリカの連邦準備制度理事会(FRB)が緊急措置で量的緩和を打ち出し、リモート勤務など社会が急速にDX化する流れと相まったタイミングにです。 一方で、「IT株が急落した時期」に投資を事実上ストップしています。世界経済がインフレとなり、FRBが利上げに転換したタイミングです。 そしてChatGPTが出現し、新たなAI投資が盛んになったこの半年は、先の後藤CFOの言葉を借りると「恐る恐る」です。合計2.3兆円しか投資していません。 なぜ、この話が気になるのか。私は、「過熱したIT株市場のピークが近い」と予測しているからです。 投資の分野にはなりますが、未来予測専門の経済評論家として理由をお話ししたいと思います。 あくまでこの記事を読む皆さまも株式投資は自己責任で行っていただきたいのですが、私の場合、昨年11月に突如ChatGPTブームが起きるとすぐに、マイクロソフト、エヌビディア、テスラなどに投資資金をシフトしました。 しかし、テスラ株は7月の決算発表直前に全株売却し、その後株価は下がっています。エヌビディアについては8月23日の決算まで持っているつもりですが、決算発表後に売却する戦略を立てています。 ちなみに、私よりもずっと賢い世界のファンドや投資銀行に視線を移すと、利益は十分にとったことで、すでにリスクオフをしている機関投資家が多数います。 このようなタイミングで、ソフトバンクGが全社を挙げて「投資を再開する」と宣言している点自体が懸念点なのです。 具体的に言うと、一番おいしかった2022年3月から2023年6月までの期間に投資を抑制し、今、世界中でIT株が高騰してしまった後に投資を再開することで、ソフトバンクGはアームという打ち出の小槌をまた浪費してしまうのではないかという懸念を感じるのです』、「一番おいしかった2022年3月から2023年6月までの期間に投資を抑制し、今、世界中でIT株が高騰してしまった後に投資を再開」、全く素人の投資戦略そのものだ。
・『ソフトバンクGが投資したIT株はAIブームに乗り切れていない  さて、3番目のポイントです。 「AIで世界中の投資家が大儲けをしているタイミングなのに、ソフトバンクGの業績はなぜ、ぱっとしないのか?」という疑問について、ソフトバンクGは決算発表で興味深いグラフを提示してくれています。 (株式市場動向:”Magnificent7” はリンク先参照) これは、2022年3月を100としたときの2023年8月7日の世界の株価の動きについてのグラフです。上記の期間、マグニフィセントセブンと呼ばれるグーグル、アマゾン、アップル、メタ、マイクロソフト、エヌビディア、テスラの7社が世界の株式市場をけん引しました。この7社の時価総額は合計すると、この期間で100から123.1に増えています。 一方でアメリカの株式市場のインデックスであるS&P500の500社からこの7社を除くと、100から105.7までしか増えていない。要するに、この期間にアメリカの株式市場をけん引したのは前述のマグニフィセントセブンであるということです。 (株式市場動向 はリンク先参照) そして、マグニフィセントセブンに続いて株価を上げたのがハイテク企業が多いアメリカのナスダック市場で、全体平均で100から114.5まで伸ばしています。 では、ソフトバンクGが投資をするようなベンチャー市場はどうだったのでしょうか。トムソン・ロイターが発表したベンチャーキャピタルインデックスは100から120.3と、やはり大幅に増加しています。 つまり、S&P500、ナスダック市場、ベンチャー市場が全て好調だったのです。 ここで問題になるのは、この期間にSVFの投資した上場株は、100から108.4にしか増えていないということです。 アメリカのIT株がAIブームに沸く中で、ソフトバンクGの投資はそれほど沸いていないという残念な事実があるのです。 なぜ、そんなことが起きているのでしょうか』、「マグニフィセントセブン」の「時価総額は合計すると、この期間で100から123.1に増え」「ナスダック市場」では「100から114.5まで伸ばしています」、「ベンチャーキャピタルインデックスは100から120.3」、と増加しているのに、「SVFの投資した上場株は、100から108.4にしか増えていない」誠に不振極まる成果だ。
・『ソフトバンクGの未来を左右する「中国市場」に孤立リスクが浮上  ここで、SVFが投資した株の値動きを示した以下のグラフを見てください。 (市場動向SVF1+2の上場株の動き はリンク先参照) よく見ると、SVFが投資した株の値動きと、前ページで見た「株式市場動向」のグラフに描かれている中国のゴールデンドラゴンチャイナのインデックスの動きが、酷似しているのです。 ここから、ソフトバンクGおよび孫正義さんの強みは、やはり中国にあると推測できます。だからこそ、この半年のAIバブルに出遅れたのでしょう。それは仕方がないとして、ここで考慮すべきなのは、「ソフトバンクGのアーム上場後の未来は、中国市場次第かもしれない」ということです。 そのリスクとしてはコロナ後の中国経済が停滞を始めている点や、背景に中国の不動産バブルの崩壊問題が根強くあるという点。そして何よりも気になるのがアメリカと中国の対立に端を発した、中国のIT市場の孤立分断懸念です。 最後に話をまとめてみましょう。 ソフトバンクGはこの9月にアームが上場した直後から、世間の評価ががらりと180度変わり、日本経済の寵児(ちょうじ)の座に再び返り咲くことでしょう。しかしその華やかな未来においては、新規の投資を復活させることで高値づかみのわなに陥る危険性があります。 そして同時に、一番得意とする中国市場での投資が中長期的な未来に影を落とす可能性もあります。 こういったことは、目の前の決算数字ではまったく見えてきません。ソフトバンクGの最終赤字が4776億円だったというニュースだけでは、経済の未来は読めないのです』、「ソフトバンクG」は「新規の投資を復活させることで高値づかみのわなに陥る危険性があります」、「一番得意とする中国市場での投資が中長期的な未来に影を落とす可能性もあります」、深刻な材料が山積で、これは大変だ。

次に、3月15日付け東洋経済オンライン「LINEヤフー、総務省も呆れ果てた「変わらぬ体質」 情報漏洩で行政指導、資本関係見直しの行方は」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/741042
・『「行政指導でここまで踏み込んだ文書は、あまり見たことがない。次こそは許しませんよ、というメッセージだろう」 総務省は3月5日、SNS「LINE」や検索サービス「Yahoo! JAPAN」などを運営するLINEヤフーに行政指導を行った。その指導内容を記した文書を見た通信業界関係者は、驚きの声を上げた。 LINEヤフーは2023年9~10月、LINEの利用者や取引先の情報など約51万9000件を外部に漏洩させていた。総務省はこのうち2万件以上が電気通信事業法上の「通信の秘密」の漏洩に当たると判断した。 具体的な指導項目として、LINEヤフーの親会社に50%出資する韓国のIT大手、NAVERとのシステムの切り離しや、グループ全体のセキュリティガバナンス体制の強化などを要請。その取り組み方針などを4月1日までにとりまとめたうえで、今後少なくとも1年間は、四半期ごとに総務省に対応状況を報告することを求めている』、「今後少なくとも1年間は、四半期ごとに総務省に対応状況を報告することを求めている」、とは厳格だ。
・『指導文書ににじむ総務省の苛立ち  事の発端は、NAVER子会社のNAVER Cloudが、セキュリティに関わる業務を委託していた会社がマルウェアに感染したことだ。 LINEヤフーはNAVER CloudにサーバーやソフトウェアなどのITインフラの運用を委託しており、旧LINE(現LINEヤフー)との間でシステムの認証基盤が共通化されていた。委託企業の感染によってNAVER側が不正アクセスを受けた結果、システムを介してLINEヤフーも被害にあった。 行政指導に当たって総務省がまとめた10ページに及ぶ文書には、苛立ちすら感じ取れるような厳しい言葉が並ぶ。 「旧LINE社に対しては、(中略)アクセス管理の徹底等も含めて行政指導を行っていたにもかかわらず、なおもアクセス管理の不備を一因とする本事案を招いた」 「電気通信事業全体に対する利用者の信頼を大きく損なう結果となったものであり、当省として極めて遺憾である」 さらに、委託先であるNAVER側への適切な管理・監督を機能させるため、親会社も含めたグループ内における経営体制の見直しの検討にまで言及している。) 総務省がここまで厳しい対応を求めたのには、それなりの理由がある。 1億人弱のユーザーを抱えるLINEは、ヤフーを傘下に持つZホールディングス(HD)と2021年3月に経営統合した。さらに2023年10月、持ち株会社のZHDと、傘下の事業会社であるヤフー、LINEが合併して現在の体制へと移った。 旧LINEは経営統合直後の2021年4月にも、総務省から行政指導を受けている。対外的に「データは日本に閉じている」と説明していたにもかかわらず、システム管理を委託していた中国から、利用者の個人情報がアクセス可能となっていたことなどを踏まえたものだった。 その後、親会社であるZHDは、学識経験者や弁護士らによる特別委員会(座長は宍戸常寿・東京大学大学院教授)を設置。データガバナンスの強化に向けて、個々の事業会社による自律的かつ、グループ内での一元的な監督体制を構築するよう提言を受けていた。 個人情報保護法などに詳しい中央大学国際情報学部の石井夏生利教授は「経済安全保障上の意味合いが強かった3年前の問題と性質は異なるが、会社のずさんな体質が背景にある点は共通する。特別委が提言したガバナンス体制も構築できなかったということだろう」と指摘する』、「旧LINEは経営統合直後の2021年4月にも、総務省から行政指導を受けている。対外的に「データは日本に閉じている」と説明していたにもかかわらず、システム管理を委託していた中国から、利用者の個人情報がアクセス可能となっていたことなどを踏まえたものだった・・・会社のずさんな体質が背景にある点は共通する。特別委が提言したガバナンス体制も構築できなかったということだろう」と指摘する」、なるほど。
・『問題の根底にNAVERへの強い依存  今回、総務省がNAVERとの関係見直しにまで言及したのは、同社との強い依存関係が、セキュリティ対策の不全を招いた一因とみているためだ。 LINEヤフーの親会社であるAホールディングス(HD)は、ソフトバンクとNAVERが50%ずつ株式を有している。LINEヤフーにとって、ソフトバンクとNAVERともに実質的な親会社といえる。 (LINEヤフーの資本構成 はリンク先参照) 旧LINEはもともとNAVERの日本法人として誕生した経緯がある。総務省は、こうした上下関係の強さを背景として、「(LINEヤフーから、委託先である)NAVER社側に対して安全管理のための的確な措置を求めることや、適切な委託先管理を実施することが困難であった」と分析している。 行政指導には表向き、法的な強制力はない。しかし総務省は「今後新たな懸念が生じた場合等には、追加的な措置を求める可能性がある」と警告しており、この先の対応次第で、強制力を伴う業務改善命令が発出される可能性もある。 LINEヤフーの出澤剛社長は3月5日、総務省で行政指導の文書を受け取った後、報道陣の取材に「NAVERとは親会社・子会社の関係性の中で、システム共有化などの協業を行ってきた。(セキュリティに対する)リスク認識が甘かったし、優先順位を上げきれなかった」と陳謝した一方、システム分離には最長3年程度かかるとの認識を示した。 ただ、3年でのシステム分離という会社側の説明に、業界からは「そんな悠長なことを言っていたら、その間にまた不祥事が起きる」と危惧する声も上がっている。 資本関係の見直しに踏み込むとなると、焦点はソフトバンク側の対応だ。 総務省は3月5日、ソフトバンクの宮川潤一社長も霞が関の庁舎に呼びつけた。「適切なガバナンスを構築するためにLINEヤフー社から(経営体制見直しなどの)要請があった場合は、親会社のソフトバンクにも協力してほしいと伝えた」(総務省の担当者)という。 これを受け、ソフトバンクは「親会社として実効的なセキュリティガバナンス確保の方策を検討」していくとのコメントを出した。 LINEヤフーの時価総額は約3兆円。ソフトバンクが出資比率を高めるには、NAVERとの交渉に加え、相応の出費が求められる可能性も出てくる。 シティグループ証券の鶴尾充伸シニアアナリストは3月11日付のレポートで、LINEヤフーによる自己株買い、およびソフトバンクによるNAVERの保有株買い取りを組み合わせることで、NAVERのAHDに対する出資比率の引き下げが進められる可能性が高いと予想している。 これら株式の買い取りの原資として、LINEヤフーとソフトバンクの連結子会社であるPayPay株の売り出しがポイントと鶴尾氏はみる。PayPayは株式上場の方針を示しつつも、その時期は長らく未定とされてきたが、「2025年3月期中にも、IPOが進められる可能性は高まる」(鶴尾氏)』、「LINEヤフーによる自己株買い、およびソフトバンクによるNAVERの保有株買い取りを組み合わせることで、NAVERのAHDに対する出資比率の引き下げが進められる可能性が高いと予想している。 これら株式の買い取りの原資として、LINEヤフーとソフトバンクの連結子会社であるPayPay株の売り出しがポイントと鶴尾氏はみる」、そんな先まで待つことは無理だろう。
・『中長期的な拡大戦略にも影  もっとも、NAVERとの資本関係を見直せば、問題が解決されるわけでもない。中央大の石井教授は「LINEヤフーが自社内でセキュリティ措置を講じられるよう、組織体制を現場から変えていくプロセスが必要だ」と説く。 今回の一件はLINEヤフーの拡大戦略にも影を落としかねない。同社の川邊健太郎会長は2023年11月、東洋経済の取材に対して「GAFAMに対抗するため、日本国内の業界再編を仕掛けたいと思っている」と語っていた。 だが、ITプラットフォーマーの根幹をなすユーザーの情報管理でつまずいている現状、大がかりなM&Aなどを仕掛ける余裕はないだろう。ずさんな体質を根本から改めることができなければ、国内最大のITプラットフォーマーの地位も安泰ではない。 総務省が下した鉄槌は、”行政指導”という名以上に、LINEヤフーに重くのしかかっている』、「ITプラットフォーマーの根幹をなすユーザーの情報管理でつまずいている現状、大がかりなM&Aなどを仕掛ける余裕はないだろう。ずさんな体質を根本から改めることができなければ、国内最大のITプラットフォーマーの地位も安泰ではない。 総務省が下した鉄槌は、”行政指導”という名以上に、LINEヤフーに重くのしかかっている」、今後、改善が進まないと、”行政指導”といった生ぬるい措置ではなく、”業務改善命令”という厳格な措置に移行する可能性もありそうだ。
タグ:ソフトバンクの経営 (その17)(ソフトバンクGの“ぱっとしない決算数字”より要注目!投資事業の「不気味な動き」、LINEヤフー 総務省も呆れ果てた「変わらぬ体質」 情報漏洩で行政指導、資本関係見直しの行方は) ダイヤモンド・オンライン 鈴木貴博氏による「ソフトバンクGの“ぱっとしない決算数字”より要注目!投資事業の「不気味な動き」」 「この先、ソフトバンクGに何が起きるのか」、知りたいものだ。 「今回のぱっとしない決算数字は主にドル建て社債の為替差損と海外の通信2社への投資の評価損で、それ以外の投資については回復基調にある」、なるほど。 本年2月9日付けの日経新聞によれば、「ソフトバンクG、黒字転換 10~12月最終 9500億円、AI株高追い風 アーム好調受け株11%高」と好調だったようだ。 「ソフトバンクGには「株の高値づかみをして、その後減損に追い込まれる傾向」という欠点がありました」、これは「ソフトバンクGのIT株投資はバフェット氏の“極意”と真逆」だからこそ生じた。 「一番おいしかった2022年3月から2023年6月までの期間に投資を抑制し、今、世界中でIT株が高騰してしまった後に投資を再開」、全く素人の投資戦略そのものだ。 「マグニフィセントセブン」の「時価総額は合計すると、この期間で100から123.1に増え」「ナスダック市場」では「100から114.5まで伸ばしています」、「ベンチャーキャピタルインデックスは100から120.3」、と増加しているのに、「SVFの投資した上場株は、100から108.4にしか増えていない」誠に不振極まる成果だ。 「ソフトバンクG」は「新規の投資を復活させることで高値づかみのわなに陥る危険性があります」、「一番得意とする中国市場での投資が中長期的な未来に影を落とす可能性もあります」、深刻な材料が山積で、これは大変だ。 東洋経済オンライン「LINEヤフー、総務省も呆れ果てた「変わらぬ体質」 情報漏洩で行政指導、資本関係見直しの行方は」 「今後少なくとも1年間は、四半期ごとに総務省に対応状況を報告することを求めている」、とは厳格だ。 「旧LINEは経営統合直後の2021年4月にも、総務省から行政指導を受けている。対外的に「データは日本に閉じている」と説明していたにもかかわらず、システム管理を委託していた中国から、利用者の個人情報がアクセス可能となっていたことなどを踏まえたものだった・・・会社のずさんな体質が背景にある点は共通する。特別委が提言したガバナンス体制も構築できなかったということだろう」と指摘する」、なるほど。 「LINEヤフーによる自己株買い、およびソフトバンクによるNAVERの保有株買い取りを組み合わせることで、NAVERのAHDに対する出資比率の引き下げが進められる可能性が高いと予想している。 これら株式の買い取りの原資として、LINEヤフーとソフトバンクの連結子会社であるPayPay株の売り出しがポイントと鶴尾氏はみる」、そんな先まで待つことは無理だろう。 「ITプラットフォーマーの根幹をなすユーザーの情報管理でつまずいている現状、大がかりなM&Aなどを仕掛ける余裕はないだろう。ずさんな体質を根本から改めることができなければ、国内最大のITプラットフォーマーの地位も安泰ではない。 総務省が下した鉄槌は、”行政指導”という名以上に、LINEヤフーに重くのしかかっている」、今後、改善が進まないと、”行政指導”といった生ぬるい措置ではなく、”業務改善命令”という厳格な措置に移行する可能性もありそうだ。
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大阪万博(その4)(大阪万博「国費負担1兆円超」でかすむ経済効果…“逃げ”姿勢の吉村知事は「国開催」強調のトホホ、大阪・関西万博はどう考えても延期するしかない これだけの理由【岸田首相に直言】、関係ないから」》、大阪万博の経済効果 本当は「大幅なマイナス」繰り返される過大評価の罪深さ、大阪万博に“目玉”爆誕!2億円トイレは税金ムダ遣いの極み…政治家こぞって「高くない」主張) [国内政治]

大阪万博については、昨年12月17日に取上げた。今日は、(その4)(大阪万博「国費負担1兆円超」でかすむ経済効果…“逃げ”姿勢の吉村知事は「国開催」強調のトホホ、大阪・関西万博はどう考えても延期するしかない これだけの理由【岸田首相に直言】、大阪万博の経済効果 本当は「大幅なマイナス」繰り返される過大評価の罪深さ、大阪万博に“目玉”爆誕!2億円トイレは税金ムダ遣いの極み…政治家こぞって「高くない」主張)である。

先ずは、昨年12月18日付け日刊ゲンダイ「大阪万博「国費負担1兆円超」でかすむ経済効果…“逃げ”姿勢の吉村知事は「国開催」強調のトホホ」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/333536
・『めっちゃカネかかるやん──。2025年大阪・関西万博の開催費用の全体像が判明した。会場建設費や「日本館」の整備など、国費負担の総額は1647億円。万博に直接関係するインフラ整備費は国費負担を含め計8390億円にも上る。あわせて1兆円超の負担を背負わされる国民にしてみれば、「ふざけた話」である。 1647億円の内訳は、+国と大阪府・市、経済界が3分の1ずつ負担する会場建設費783億円 +日本館の整備費360億円▽途上国の出展支援240億円 +警備費199億円 +機運醸成費38億円 +誘致費用27億円。インフラ整備費8390億円のうち「会場周辺の整備費」が810億円、「会場へのアクセス向上費用」が7580億円を占める。 こうした直接経費に加えて間接経費もひっくるめると、インフラ関連費用は計9.7兆円に達する。さらに会場内で運航予定の「空飛ぶクルマ」の実証など、各省庁の万博関連の事業費は3.4兆円と見込まれている。 政府は近く関連事業を含めた費用の全体像を示す方針で、透明性を確保するために第三者委員会の設置を調整中。しかし、いくら取り繕おうと、肝心の盛り上がり感は皆無に等しい。 毎日新聞の世論調査(16、17日実施)によると、万博のチケットについて「購入したいと思う」がわずか10%だったのに対し、「購入したいとは思わない」がナント79%。共同通信の世論調査では、万博を「計画通り実施するべきだ」が18.8%にとどまった。』、「毎日新聞の世論調査・・・によると、万博のチケットについて「購入したいと思う」がわずか10%だったのに対し、「購入したいとは思わない」がナント79%」、こんなに人気がない割に、「事業費」が膨大というのは、無駄遣いの典型だ。
・『やたら「国主催の事業」と強調で経済効果の試算額にも触れず…  赤字必至の状況に、旗振り役の吉村大阪府知事は“逃げ”の姿勢だ。「最後まで責任を持って(万博を)やりたい」とテレビで豪語してきたのに、先週14日の会見では、赤字に陥った際の対応について「万博は国主催の事業ですから、国主催の事業で国が赤字を補填しないと言っている運営費を大阪府・市が負担するのは明らかにおかしい」などと主張。やたら「国の事業」と強調した。 一時は自身のX(旧ツイッター)に頻繁に投稿していた万博による経済効果の試算額(2.4兆~2.8兆円)にも触れなくなった。 膨大な国費負担を前に頼みの経済効果もかすむばかりだ。 吉村知事は自身のインスタグラムで、「ミヤネ屋」の宮根誠司氏と橋下徹元大阪府知事とのスリーショットを公開。〈おっさん筋トレ同好会、やで。無理しない範囲でほどほどにやらなあかんわ〉と感想を添えた。そんなことより、万博は「無理しない範囲」をとっくに超えとるけどな!』、「直接経費に加えて間接経費もひっくるめると、インフラ関連費用は計9.7兆円に達する。さらに会場内で運航予定の「空飛ぶクルマ」の実証など、各省庁の万博関連の事業費は3.4兆円と見込まれている」、信じ難いような膨大な無駄遣いだ。

次に、本年1月9日付け東洋経済オンラインが掲載した元週刊文春・月刊文芸春秋編集長の木俣正剛氏による「大阪・関西万博はどう考えても延期するしかない、これだけの理由【岸田首相に直言】」を紹介しよう。
・『東日本大震災では、震災当日に道路復旧計画が決まっていた  元旦の日本を揺るがした能登半島大地震。岸田首相は「被災者の救命・救助はまさに時間との戦いだ。人命第一の方針のもとに救出に全力をあげる」と宣言し、そのために救助犬を増やすことや道路の復旧を急ぐことなどを指示したと、いかにも政府が全力をあげているような発言を繰り返しています。 しかしこの対応、すでに2011年の東日本大震災時と比べて大幅に遅れているのです。1月4日の時点で、能登半島の道路は寸断されており、各地で渋滞が起こっています。 東日本大震災ではどうだったのでしょうか。実は当時、『月刊文春』で取材していた私は、国土交通省の素早い対応を知りました。震災が起こった11日の翌日には、被災地に向けて11ルートの道路がすでに開かれ、被災地救援物資と機材のみの通過が許され、すでに復興への戦力がどんどん現場に入りつつありました。 現地の指揮官にあたる徳山日出男・東北地方整備局長(のち、国土交通省次官)が、震災直後に、人命救助と捜索のための道路を開くことを決断。津波のために松島空港が全滅。津波がくる寸前に日本で唯一飛ばすことができた国土交通省のヘリの情報から、太平洋岸の被害が激しいと判断し、その日のうちに復興計画の第一弾を作成していたのです。 海寄りの道路を諦め、東北の中心部の無事な道路から海岸に向けて、「くしの歯」のような形で道路を啓開することを計画し、あの揺れに揺れている震災当日に、地元建設業者と連絡をとり、道路啓開部隊を52チームに細かく分けて結成しました。 これが震災当日の話なのです。そして、道路はガタガタでもいいから、とにかく通れるようにしようと奮闘しました。国道事務所の職員、地元建設会社のパワーショベルと操作員、そして土嚢やアスファルトの合同チームが協力して、遺体までかき分けるような作業を重ねて、海岸にむけて前進。地震発生4日目までにさらに40ルートが確保されていました。 地震発生から4日目ということは、今回の能登半島地震でいえば、1月4日までにこうした体制を整えていたことになります。) 足もとでは、1月4日時点でテレビでは記者たちが、「能登半島は海岸沿いの道路しかないので、道路事情が悪く、渋滞でなかなか現地にたどりつけない」などとレポートしていました。東日本大震災時は、当初マスコミの車両などは通行不可で、彼らは現地にヘリで入るしかなかったのですが、この決断と大規模な人員、資材、重機の集中投入が、その後の人名救助において大きな助けとなったことは言うまでもありません。 当時、大畠章宏・国土交通大臣は、「現場の徳山局長の判断を私の判断と考え、国土交通省の所掌に囚われず、予算も考えずに判断せよ」と大幅な権限委譲を行いました。福島原発問題という、いまだすべてが解決しない事故のせいで、国民から大きな評価はされていませんが、これは英断でした。あの大震災では、今回とまったく違うスピードで復旧と人命救助の作業が行われていたことを忘れてはいけません。 もちろん、貢献したのは現地の建設業者だけではありません。大きな道が開けば、復旧のために全国の建設会社が動員され、大量の作業員が努力したことも、世界が驚く復旧の速さに貢献しました。 それに比べて、今回の復旧作業は遅すぎるのではないでしょうか。復旧が遅れれば遅れるほど、被災者の健康も心身の状態も蝕まれていきます。能登半島だけでなく、富山、新潟といった日本の穀物産業を支える地域の労働力が蝕まれてゆくのです。 私には、今回、官邸も国土交通省も統一的な復旧計画を持っていないように思えます。(東日本大震災の場合は、東北整備局と本省を結ぶ回線で、毎日緊密な打ち合わせが行われ、それが危機管理の能力を固めていました)』、「震災が起こった11日の翌日には、被災地に向けて11ルートの道路がすでに開かれ、被災地救援物資と機材のみの通過が許され、すでに復興への戦力がどんどん現場に入りつつありました。 現地の指揮官にあたる徳山日出男・東北地方整備局長・・・が、震災直後に、人命救助と捜索のための道路を開くことを決断。津波のために松島空港が全滅。津波がくる寸前に日本で唯一飛ばすことができた国土交通省のヘリの情報から、太平洋岸の被害が激しいと判断し、その日のうちに復興計画の第一弾を作成していたのです・・・それに比べて、今回の復旧作業は遅すぎるのではないでしょうか。復旧が遅れれば遅れるほど、被災者の健康も心身の状態も蝕まれていきます。能登半島だけでなく、富山、新潟といった日本の穀物産業を支える地域の労働力が蝕まれてゆくのです。 私には、今回、官邸も国土交通省も統一的な復旧計画を持っていないように思えます・・・(東日本大震災の場合は、東北整備局と本省を結ぶ回線で、毎日緊密な打ち合わせが行われ、それが危機管理の能力を固めていました)』、確かに今回の遅れは顕著だ。
・『死者と行方不明者はこれからも増える可能性  1月7日時点では、石川県だけで死者126名、安否不明者242名。東日本大震災時と比べて、被害規模が小さいということも、政府の腰がいまひとつ重い原因の一つかもしれません。しかし、今回の地震は能登だけでなく、北海道から鹿児島まで広範囲の被害をもたらしました。被害の全容が把握されたら、今報道されているような規模でなくなることは確実です』、「被害の全容が把握されたら、今報道されているような規模でなくなることは確実です」、なるほど。
・『熊本地震と比べてわかる「復興への労力」 今こそ岸田首相に求めたい英断  ここで、今度こそ岸田首相の英断を望みたいところです。いや、その英断によって、現在の復旧の遅れを一気に取り戻すほどの気合と希望を、国民全体に与えてほしいと思うのは私だけでしょうか。 決断すべきことは簡単です。まず、建設業者など復旧のための労働力を増やし、予算を十二分に投下するための手段を講じることです。そのために最も簡単な方法があります。それは2025年に開催される日本国際博覧会(大阪・関西万博/以下「大阪万博」と記述)の延期です。  もちろん、関係者が反対することは目に見えています。しかし、それは冷厳に復興費用にかかる数字を公開すれば、説得できるはずです。能登半島地震の被害規模はまだ確定できませんが、2016年に起こった熊本地震の例を「消防白書」のデータから見てみると、大体似通った数字になるであろうことは予想できます。 熊本地震は2016年10月27日時点で、死者139人 、重症者957人。そのうち震災の直接被害による死者が50人、負傷の悪化や避難生活の負担による死者は84人といいますから、死者数は現時点で判明している能登半島地震のそれと似ています。 また、住居の被害は同期間で全壊8298棟、半壊31249棟。その他国道や県道の亀裂、陥没、落石、地方公共団体の庁舎の被災などといった、建物やインフラの被害状況も大体似ています。 避難民の数は熊本県だけで18万3882人。現在報じられている能登半島地震の避難民数は石川、富山、新潟で3万4000人強(読売新聞調べ)ですが、日本海側全県に及んだ被害を考えると、避難民の数は熊本ほどではなくとも、かなりの規模になるでしょう。 こうした中、熊本県は仮設住宅だけで110団地4303戸を建設しました。そして、その復旧に要した予算は概算で500億円にのぼりました。 東日本大震災の場合は復興税という形で予算を確保しました。今回もまた、そういう手段もありえます。しかし、問題は復興・復旧に要する建設業者の数です。) 大阪万博はただでさえ、工事が遅れています。その原因の一つが業者の労働力不足です。 建築ジャーナリストの千葉利弘氏が執筆した記事「大阪万博『工事遅れ』背景に施行能力不足」(東洋経済オンライン)によると、大阪圏(大阪、京都、兵庫、奈良)の建築着工床面積の数字は17年前には年間2500万平方メートルだったのに対し、2022年度には1600平方メートルを切るほどに落ち込んでおり、そのうち住宅が55%を占めているので、産業用建築は700万平方メートルにすぎないとのことです。 つまり、現状でも年間700万平方メートルのビルなどをフル稼働で作っているところに、突然、大阪・関西万博の会場面積155万平方メートルに相当する建設工事が加わっているのです。「いや、これは会場面積であり、その全てがパビリオンになるわけではないだろう」という反論もあるでしょうが、会場だけでなく周辺道路を含めたインフラ整備の負担もあります』、「現状でも年間700万平方メートルのビルなどをフル稼働で作っているところに、突然、大阪・関西万博の会場面積155万平方メートルに相当する建設工事が加わっているのです」、やはり「大阪万博」の延期が最も治まりがよさそうだ。
・『万博会場にはまだ水道も電気も通っていない  万博会場となる夢州(ゆめしま)には、まだ水道も電気も通っていないという報道もありました(2023年12月4日付朝日新聞)。会場近くで送電を担う変電所との契約もまだという状態です。万博に直接関係するインフラ整備費は国費負担を含め計8390億円、会場建設費など万博に直接資する国費負担は計1647億円で、総事業費が1兆円を超えるという試算も報道されているほどの大規模工事ですが、現状でもフル稼働の大阪圏の建設業者だけで、この建設に立ち向かうのは不可能といっても過言ではありません。 実際、建設業界からは「本当に間に合うのか」という疑問が万博協会に寄せられていたそうです。結局、現状で期待されているのは、大阪圏以外の建設業者と外国人労働者ということになります。 しかし、国策事業ではあっても、2024年4月からは建設業に時間外労働の上限規制も適用されるため、施行能力の削減は避けられません。その上、もともと太平洋岸の大都市群の建設を支えていたのは、東北や日本海側からの出稼ぎ労働者でした。 今回、能登半島地震の復興作業で彼らのニーズが急増することが考えられ、彼ら自身も故郷を守る行動をとるはずです。「東日本大震災では、全国から労働者を集められたではないか」という反論もあるでしょう。 しかし、これも数字が冷徹に物語っています。) 当時の東北6県の建設投資額は3.1兆円程度だったのに対し、総額22兆円の復旧復興工事費用が投入されました。しかし、日本全体の建設投資額は年41兆円程度まで落ちていました。阪神淡路大震災の1995年当時は年間79兆円あった建設投資が半減していたため、全国の建設業者を動員しても、そう簡単に22兆円の建設工事はできず、復旧工事が完了するのに10年も時間がかかりました(前出・千葉氏)』、「国策事業ではあっても、2024年4月からは建設業に時間外労働の上限規制も適用されるため、施行能力の削減は避けられません」、やはり「大阪万博」の延期が最も治まりがよさそうだ。
・『全国から業者を動員しても万博工事と能登半島復旧の両立は厳しい  つまり、全国から建設業者を動員しても、大阪万博の工事と能登半島の復旧を同時に短時間で可能とすることなど、不可能なのです。だからこそ、一旦大阪万博を延期して、そこに必要とされる労働力と予算を日本海側の被災地に集中すれば、復旧も復興も確実に早まるでしょう。 当面、日本海側の諸都市では、道路の啓開、倒壊した住宅の撤去や整理、仮設住宅の建設といった多大な建設業者の労働力と予算が必要になります。正直、万博などと言っている場合でしょうか。ただでさえ準備が遅れ、プレハブ方式での突貫工事が揶揄されている大阪万博ですが、1年延期した方が、むしろ内容のあるものが開催できるはずです。 能登半島救援のためという大義名分があれば、大阪万博の最大の推進者である「日本維新の会」も、延期を強くは反対できないはずです。それこそ、決断力も実現力もないと言われる岸田総理の評価を一変させる行動だと思います。 総理が早期に決断を下すために、野党や産業界、そして大メディアにも、大阪万博延期の大合唱をお願いしたいものです』、「大阪万博の工事と能登半島の復旧を同時に短時間で可能とすることなど、不可能なのです。だからこそ、一旦大阪万博を延期して、そこに必要とされる労働力と予算を日本海側の被災地に集中すれば、復旧も復興も確実に早まるでしょう・・・能登半島救援のためという大義名分があれば、大阪万博の最大の推進者である「日本維新の会」も、延期を強くは反対できないはずです。それこそ、決断力も実現力もないと言われる岸田総理の評価を一変させる行動だと思います。 総理が早期に決断を下すために、野党や産業界、そして大メディアにも、大阪万博延期の大合唱をお願いしたいものです」、同感である。

第三に、2月6日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したイトモス研究所所長の小倉健一氏による「大阪万博の経済効果、本当は「大幅なマイナス」繰り返される過大評価の罪深さ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/338334
・『大阪万博の経済効果は2兆~3兆円に上るという試算が、ある組織から発表された。そして、メディアがその数字を拡散しているが、これをうのみにしてはいけない数多くの理由をお伝えしたい』、興味深そうだ。
・『大阪万博の経済効果は3兆円超の試算も 「開催にはメリット」は本当なのか?  大阪・関西万博を巡って、高騰するコストを打ち消すように、莫大(ばくだい)な経済効果が発表されている。これまでも東京オリンピック・パラリンピックやさまざまな大型イベントなどで「ムダ遣い」という批判が起きるたびに「多大なる経済効果のメリット」を前提にプロジェクトは推進されていった。 一般財団法人アジア太平洋研究所が、1月24日に発表した「大阪・関西万博の経済波及効果」によれば、経済波及効果が「基準ケース」で2兆7457億円になるという。さらに、夢洲会場以外のイベントによる追加的な参加(泊数増加)を想定し、リピーター増を考慮した「拡張万博ケース2」では3兆3667億円まで膨らむという試算結果を発表している。 他方、NHK『大阪・関西万博 国費総額1647億円 今後追加費用も 全体像公表』(2023年12月19日)によると、政府が発表した大阪万博の費用の内訳は以下の通りだ。) ・会場建設費の国の負担分が783億円 ・政府が出展するパビリオン建設費などが837億円 ・過去に誘致などにかかった費用が27億円 など直接的な費用の総額は最大で1647億円。 さらに、関連事業として ・道路や鉄道を含むインフラ整備事業費など、およそ9兆7000億円 ・「空飛ぶクルマ」の実証実験など万博に向けた各府省庁の事業の実施費用、およそ3兆4000億円 などの費用が公表された。 政府は「関連事業は、万博開催の有無にかかわらず計画されていたもので、万博のみに資する金額の算出は困難だとする一方、透明性の観点からあえて合計額を示した」と説明している、と前述のNHKの記事は報じている。 政府、大阪府・市、万博の運営側としては、直接経費の1647億円よりも経済効果が上回っているのだから、開催にはメリットがあると信じたいのだろう。 本当なのだろうか』、「政府、大阪府・市、万博の運営側としては、直接経費の1647億円よりも経済効果が上回っているのだから、開催にはメリットがあると信じたいのだろう」、検証が必要だ。
・『経済効果を発表→メディアが拡散 大イベント開催のお決まりパターン  これまで、大きなイベントの開催が決定されると、民間団体がこぞって「経済効果」を発表し、それをうのみにしたメディアによってその数字が拡散されていった。 しかし、事前の影響調査(=経済効果)は、利益を過大評価し、関連するコストを過小評価してしまうということは、研究の分野では広く知られていることだ。莫大な税金を投入する事業において、国民、住民を最も説得しやすいのが、莫大な「経済効果」ということなのだろう。) また政治家の多くは、大きなイベントの開催について、交通網のインフラなどを拡張、改善する機会として捉えることも多い。 今回の大阪万博では、最先端の技術が紹介されるという宣伝がされているようだ。コンセプトは「未来社会の実験場」ということらしい。 過去にオリンピックが開催された都市でも、経済効果がうまく上がらなそうなことが分かってくると、開催の目的が「(経済的発展を見せつける)国威発揚の場」などと論点がすり替えられていった。日本においても東京オリンピックは「(東日本大震災からの)復興のシンボル」と位置付けられた。東京オリンピックのどこが復興のシンボルだったのか、覚えている人はあまりいないかもしれない。 今回の大阪万博には、そんな壮大なテーマはない。朝日新聞(2023年11月6日)の記事でインタビューを受けていた万博の研究者である京都大学大学院の佐野真由子教授(文化政策学)によれば、「時代を活写するのが万博の役割で、日本をアピールし、経済を上向かせる巨大イベントと考えるのは『目的違い』」だという。そして、「万博の期間中に『いのち』について考え、ものの見方が変わった――。来場者らがそんな経験をできれば、万博は成功したと言えると思います」と語っている。 この教授の言っていることはさっぱり訳が分からないが、一人の納税者としては、まずは投じた税金を上回る経済的な利益を得られるかどうかが最大の争点だと考えている』、「一人の納税者としては、まずは投じた税金を上回る経済的な利益を得られるかどうかが最大の争点だ」、なるほど。
・『大阪万博の経済効果を算出するのに「ふさわしい組織か?」という疑問符  それを考える上での第一の問題として、経済効果の算出では、負の要素があることは一切取り扱わないということだ。 それっぽい研究団体や研究者が、経済効果を測定するケースが目立つが、経済効果の額を多めに発表した方が、イベントを開催する既得権益者たちにとって歓迎されることを考えても、中立性の問題が取り沙汰されるべきだ。今回のアジア太平洋研究所のホームページで会員名簿を見ると、大阪万博にカネを出す企業たちが会員として名を連ねているのが分かる。この組織は、公平な経済効果を算出するにふさわしいといえるのだろうか。) 経済効果の測定では、例えば、神戸在住の家族が、沖縄への旅行を中止して大阪万博へ行った場合、旅行への支出は減ってしまうことが予想されるが、万博の経済効果では「プラス」と判断されてしまう。万博ほどの大きなイベントになると、遠距離旅行などの特別な旅行をキャンセルして向かう可能性もあり、純粋に万博の経済効果として計上するには無理がある。 今、「無理がある」と指摘したが、そう感じているのは、私だけでなく、多くの学者が認めているところだ。興味がある人は論文を検索してみてほしい。 また、冒頭の政府の説明(「関連事業は、万博開催の有無にかかわらず計画されていたもので、万博のみに資する金額の算出は困難だ」)では、関連事業はあたかも別立てで計算すべきかのような指摘をしている。だったら、関連事業の経済効果と言われるようなものも全て排除して比較しなくては公正さを欠く。 今回、アジア太平洋研究所が推定した「大阪万博の経済効果」は、万博の有無にかかわらず計上されるものがほとんどと言っていい』、「それっぽい研究団体や研究者が、経済効果を測定するケースが目立つが、経済効果の額を多めに発表した方が、イベントを開催する既得権益者たちにとって歓迎されることを考えても、中立性の問題が取り沙汰されるべきだ。今回のアジア太平洋研究所のホームページで会員名簿を見ると、大阪万博にカネを出す企業たちが会員として名を連ねているのが分かる。この組織は、公平な経済効果を算出するにふさわしいといえるのだろうか・・・今回、アジア太平洋研究所が推定した「大阪万博の経済効果」は、万博の有無にかかわらず計上されるものがほとんどと言っていい」、つまり過大推計をしていることを意味する。
・『万博があろうとなかろうと建設の経済効果は発生したはずだ  例えば、建設工事によって発生する経済効果について考えてみよう。 ジョナサン・バークレー『巨大スポーツイベントの費用と利益の予測』(※1)によれば、大きなイベントの開催に伴う大型の建設工事の経済効果への影響について疑問があるとしている。 「多くの学者の著作において、スポーツスタジアムを建設することと経済発展の間には相関関係が認められないとされている。それにもかかわらず、多くの『経済効果』の測定では、建設をコストではなく便益であると見なしている。建設は経済活動を活発化させるかもしれないが、そのようなプロジェクトへの公共支出は、他の公共サービスの減少、政府の借り入れの増加、または増税を意味するため、膨大な機会費用も考慮する必要もある」という。 万博に半ば強制的にお金を上納させられ、チケットを買わされている企業たちは内部留保を取り崩すことになるが、当然、そのしわ寄せは、企業の成長戦略や社員の給料、消費者に来る。そのデメリットは、経済効果に一切考慮されていない。 さらに、現在の日本は建設需要がひっ迫していることが考慮されていない。つまり、建設会社にとって仕事が溢れかえっている状況だ。単に、多くのお金(税金)を払って、他の工事に先駆けて前倒しをお願いしている状況なのである。万博の建設がなかったとしても影響は限定的ということになる。 他の工事をするよりも多額のお金を支払うという意味で、経済効果は発生している可能性がわずかにあるが、それとて、原資は私たちの税金である。家計へのダメージが及ぼす経済効果は計上されていない。 さらには「混雑を避ける地元民」という頭の痛い問題もある。万博へ思惑通りにたくさんの観光客が訪れたとすれば、大阪の街は人でごった返す事態が考えられる。一部の地元民が混雑を嫌い、これまで大阪府下で落としてきた消費支出を県外へ差し向けることは、当然想定しなくてはいけない事態だ。 「South African Journal of Economics」に掲載された論文(※2)によると、サッカーの日韓ワールドカップ(2002年)が開催された韓国では「韓国を訪れる欧州からの観光客の数は通常より多かったが、この増加は、日本から通常訪れる観光客が同規模減少したことによって相殺された」という。 また同論文では、2002年に米誌「フォーブズ」と米紙「USAトゥデイ」が報じた以下の記事を引用している。 「2002年のワールドカップ期間中に韓国を訪れた外国人観光客の総数は46万人と推定され、これは前年同期の外国人観光客数と同じ数字だった」(フォーブズ) 「テレビやスポーツ用品などの消費財はよく売れたが、一部のカジノやホテルでは、常連客や出張者がワールドカップの混雑を避けたため、売り上げが落ち込んだ」(USAトゥデイ) 訪日客が支出を増やしていることが万博の経済効果を増やすという主張もあるが、これも万博の開催の有無に関係がなく、日本がもともと受けられるメリットである。当然、差し引くべきだ。 経済効果があるのは、例えば、台湾や他の国へ行く予定だった人が、万博があるから旅行地を大阪へと変更したようなケースだ。国内旅行先の切り替えでは、日本全体で考えたときにまるで経済効果になっていない。消費先がスライドしているだけである』、「経済効果があるのは、例えば、台湾や他の国へ行く予定だった人が、万博があるから旅行地を大阪へと変更したようなケースだ。国内旅行先の切り替えでは、日本全体で考えたときにまるで経済効果になっていない。消費先がスライドしているだけである」、その通りだ。
・『関連事業まで経済効果に含めるならコストも同じ土俵で比べるべきだ  文字量がかさんできたのでまとめるが、大阪万博の経済効果には2種類ある。厳密な意味での経済効果と関連事業も含めた経済効果だ。 厳密な意味での経済効果では、大阪万博の計画の有無に関係なく発生する経済効果は全て排除されなければならない。となれば「沖縄旅行へ行くはずだったが、大阪へ行った」「お昼ご飯を神戸ではなく万博の敷地内で食べた」「建設工事の順番において大阪万博を優先した」では、経済効果にはならないのである。現在の試算より限定的なものにとどまることが、お分かりいただけるだろうか。 そして、間接的な関連事業まで経済効果に含めるのであれば、道路や鉄道を含むインフラ整備事業費などにかかる約9兆7000億円、「空飛ぶクルマ」の実証実験など万博に向けた各府省庁の事業の実施費用である約3兆4000億円も、コストに含めなければならない。 アジア太平洋研究所が算出した拡張ケース2の経済効果である「3兆3667億円」でも、到底足りないことになる。大幅なマイナスだ。 経済効果の算定は、大阪万博の計画の有無に関係なく発生する経済効果を全て排除して計算し直すべきだ』、「厳密な意味での経済効果と関連事業も含めた経済効果だ。 厳密な意味での経済効果では、大阪万博の計画の有無に関係なく発生する経済効果は全て排除されなければならない。となれば「沖縄旅行へ行くはずだったが、大阪へ行った」「お昼ご飯を神戸ではなく万博の敷地内で食べた」「建設工事の順番において大阪万博を優先した」では、経済効果にはならないのである。現在の試算より限定的なものにとどまることが、お分かりいただけるだろうか。 そして、間接的な関連事業まで経済効果に含めるのであれば、道路や鉄道を含むインフラ整備事業費などにかかる約9兆7000億円、「空飛ぶクルマ」の実証実験など万博に向けた各府省庁の事業の実施費用である約3兆4000億円も、コストに含めなければならない。 アジア太平洋研究所が算出した拡張ケース2の経済効果である「3兆3667億円」でも、到底足りないことになる。大幅なマイナスだ。 経済効果の算定は、大阪万博の計画の有無に関係なく発生する経済効果を全て排除して計算し直すべきだ」、同感である。

第四に、2月21日付け日刊ゲンダイ「大阪万博に“目玉”爆誕!2億円トイレは税金ムダ遣いの極み…政治家こぞって「高くない」主張」を紹介しよう。
・『2025年大阪・関西万博の目玉として350億円もの巨額建設費が投じられた大屋根(リング)に続き、新たな“見どころ”が爆誕だ。「2億円トイレ」である。 万博会場にはトイレが約40カ所設置される予定。うち8カ所は若手建築家がデザインする「デザイナーズトイレ」なのだが、ベラボーに高いのだ。 日本国際博覧会協会(万博協会)の契約情報によれば、デザイナーズトイレ8カ所のうち3カ所は入札が「取止め・不調」。落札が決まった5カ所の設置費用は計6億6000万円に上る。うち2カ所が各2億円を占め、「高すぎやろ!」と総ツッコミをくらっている。 万博を所管する経産省の斎藤大臣は20日の会見で、「2億円トイレ」について「便器が数十個設置される大規模な設備」「一般的な公衆トイレの建設費用と比べ、取り立てて高額であるとは言えない」などと強弁。自見万博相も同日の会見で、50~60台の便器を備えているとして「規模から考えれば必ずしも高額とは言えない」と言い張った。 大阪府の吉村知事もきのう、「平米単価にすると、一般の公共施設のトイレと値段は大きく変わらないというのが事実」などと主張。「建築家が万博会場で新しい建築技術や価値観というのをトイレに、ある意味、魂も吹き込んでいます」との見解を示した』、「2億円トイレ」は「50~60台の便器を備えている」ので、「規模から考えれば必ずしも高額とは言えない」、なるほど。
・『渋谷区のデザイナーズトイレは1.2億円  そもそも、万博のデザイナーズトイレには1平方メートル当たり174万円のものもある。吉村のように「平米単価」を引き合いに出して「高くない」と言い張ること自体、ナンセンス極まりない。 東京都内で話題を呼んだデザイナーズトイレと比べても、2億円は高い。 渋谷区と日本財団が建築家やクリエーター16人と組んで区内17カ所にオシャレな公衆トイレを設置した「THE TOKYO TOILET」プロジェクトは、整備費用が1カ所当たり約1.2億円だった。ちなみに、17カ所目をデザインしたのは、万博会場のデザインプロデューサーを務める建築家の藤本壮介氏だ。 「魂の2億円トイレ」が後世に残るのならまだしも、万博会場は閉幕後に取り壊される。トイレの利活用について万博協会に尋ねると、「デザイナーの方にはコストや機能性、閉幕後のリサイクル面などを考慮していただいております」(広報担当)とのこと。イマイチ判然としない。 万博のテーマのひとつは「SDGs」だが、半年間しか使われないトイレに2億円をつぎ込む「持続可能性」とは一体、何なのか。まずは税金のムダ遣いをやめるべきだ』、「万博のテーマのひとつは「SDGs」だが、半年間しか使われないトイレに2億円をつぎ込む「持続可能性」とは一体、何なのか。まずは税金のムダ遣いをやめるべきだ」、同感である。
タグ:大阪万博 (その4)(大阪万博「国費負担1兆円超」でかすむ経済効果…“逃げ”姿勢の吉村知事は「国開催」強調のトホホ、大阪・関西万博はどう考えても延期するしかない これだけの理由【岸田首相に直言】、関係ないから」》、大阪万博の経済効果 本当は「大幅なマイナス」繰り返される過大評価の罪深さ、大阪万博に“目玉”爆誕!2億円トイレは税金ムダ遣いの極み…政治家こぞって「高くない」主張) 日刊ゲンダイ「大阪万博「国費負担1兆円超」でかすむ経済効果…“逃げ”姿勢の吉村知事は「国開催」強調のトホホ」 「毎日新聞の世論調査・・・によると、万博のチケットについて「購入したいと思う」がわずか10%だったのに対し、「購入したいとは思わない」がナント79%」、こんなに人気がない割に、「事業費」が膨大というのは、無駄遣いの典型だ。 「直接経費に加えて間接経費もひっくるめると、インフラ関連費用は計9.7兆円に達する。さらに会場内で運航予定の「空飛ぶクルマ」の実証など、各省庁の万博関連の事業費は3.4兆円と見込まれている」、信じ難いような膨大な無駄遣いだ。 東洋経済オンライン 木俣正剛氏による「大阪・関西万博はどう考えても延期するしかない、これだけの理由【岸田首相に直言】」 「震災が起こった11日の翌日には、被災地に向けて11ルートの道路がすでに開かれ、被災地救援物資と機材のみの通過が許され、すでに復興への戦力がどんどん現場に入りつつありました。 現地の指揮官にあたる徳山日出男・東北地方整備局長・・・が、震災直後に、人命救助と捜索のための道路を開くことを決断。津波のために松島空港が全滅。津波がくる寸前に日本で唯一飛ばすことができた国土交通省のヘリの情報から、太平洋岸の被害が激しいと判断し、その日のうちに復興計画の第一弾を作成していたのです・・・ それに比べて、今回の復旧作業は遅すぎるのではないでしょうか。復旧が遅れれば遅れるほど、被災者の健康も心身の状態も蝕まれていきます。能登半島だけでなく、富山、新潟といった日本の穀物産業を支える地域の労働力が蝕まれてゆくのです。 私には、今回、官邸も国土交通省も統一的な復旧計画を持っていないように思えます・・・(東日本大震災の場合は、東北整備局と本省を結ぶ回線で、毎日緊密な打ち合わせが行われ、それが危機管理の能力を固めていました)』、確かに今回の遅れは顕著だ。 「被害の全容が把握されたら、今報道されているような規模でなくなることは確実です」、なるほど。 「現状でも年間700万平方メートルのビルなどをフル稼働で作っているところに、突然、大阪・関西万博の会場面積155万平方メートルに相当する建設工事が加わっているのです」、やはり「大阪万博」の延期が最も治まりがよさそうだ。 「国策事業ではあっても、2024年4月からは建設業に時間外労働の上限規制も適用されるため、施行能力の削減は避けられません」、やはり「大阪万博」の延期が最も治まりがよさそうだ。 「大阪万博の工事と能登半島の復旧を同時に短時間で可能とすることなど、不可能なのです。だからこそ、一旦大阪万博を延期して、そこに必要とされる労働力と予算を日本海側の被災地に集中すれば、復旧も復興も確実に早まるでしょう・・・能登半島救援のためという大義名分があれば、大阪万博の最大の推進者である「日本維新の会」も、延期を強くは反対できないはずです。それこそ、決断力も実現力もないと言われる岸田総理の評価を一変させる行動だと思います。 総理が早期に決断を下すために、野党や産業界、そして大メディアにも、大阪万博延期の大合唱をお願いしたいものです」、同感である。 「政府、大阪府・市、万博の運営側としては、直接経費の1647億円よりも経済効果が上回っているのだから、開催にはメリットがあると信じたいのだろう」、検証が必要だ。 「一人の納税者としては、まずは投じた税金を上回る経済的な利益を得られるかどうかが最大の争点だ」、なるほど。 「それっぽい研究団体や研究者が、経済効果を測定するケースが目立つが、経済効果の額を多めに発表した方が、イベントを開催する既得権益者たちにとって歓迎されることを考えても、中立性の問題が取り沙汰されるべきだ。今回のアジア太平洋研究所のホームページで会員名簿を見ると、大阪万博にカネを出す企業たちが会員として名を連ねているのが分かる。 この組織は、公平な経済効果を算出するにふさわしいといえるのだろうか・・・今回、アジア太平洋研究所が推定した「大阪万博の経済効果」は、万博の有無にかかわらず計上されるものがほとんどと言っていい」、つまり過大推計をしていることを意味する。 「経済効果があるのは、例えば、台湾や他の国へ行く予定だった人が、万博があるから旅行地を大阪へと変更したようなケースだ。国内旅行先の切り替えでは、日本全体で考えたときにまるで経済効果になっていない。消費先がスライドしているだけである」、その通りだ。 「厳密な意味での経済効果と関連事業も含めた経済効果だ。 厳密な意味での経済効果では、大阪万博の計画の有無に関係なく発生する経済効果は全て排除されなければならない。となれば「沖縄旅行へ行くはずだったが、大阪へ行った」「お昼ご飯を神戸ではなく万博の敷地内で食べた」「建設工事の順番において大阪万博を優先した」では、経済効果にはならないのである。現在の試算より限定的なものにとどまることが、お分かりいただけるだろうか。 そして、間接的な関連事業まで経済効果に含めるのであれば、道路や鉄道を含むインフラ整備事業費などにかかる約9兆7000億円、「空飛ぶクルマ」の実証実験など万博に向けた各府省庁の事業の実施費用である約3兆4000億円も、コストに含めなければならない。 アジア太平洋研究所が算出した拡張ケース2の経済効果である「3兆3667億円」でも、到底足りないことになる。大幅なマイナスだ。 経済効果の算定は、大阪万博の計画の有無に関係なく発生する経済効果を全て排除して計算し直すべきだ」、同感である。 日刊ゲンダイ「大阪万博に“目玉”爆誕!2億円トイレは税金ムダ遣いの極み…政治家こぞって「高くない」主張」 「2億円トイレ」は「50~60台の便器を備えている」ので、「規模から考えれば必ずしも高額とは言えない」、なるほど。 「万博のテーマのひとつは「SDGs」だが、半年間しか使われないトイレに2億円をつぎ込む「持続可能性」とは一体、何なのか。まずは税金のムダ遣いをやめるべきだ」、同感である。
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司法(その18)(「特捜検察」の暴走 なぜ無罪判決が相次ぐのか ストーリー優先で証拠集め、調書は検事の作文、警察の「やりすぎ職務質問」5時間拘束!塩を“薬物”と誤解 尿検査シロでも…これ違法?、ロースクール制度は「文科省と法務省の設計ミスが一番の失敗」柴山昌彦・元文科相が激白) [社会]

司法については、昨年5月19日に取上げた。今日は、(その18)(「特捜検察」の暴走 なぜ無罪判決が相次ぐのか ストーリー優先で証拠集め、調書は検事の作文、警察の「やりすぎ職務質問」5時間拘束!塩を“薬物”と誤解 尿検査シロでも…これ違法?、ロースクール制度は「文科省と法務省の設計ミスが一番の失敗」柴山昌彦・元文科相が激白)である。 なお、タイトルから「の歪み」を削除した。

先ずは、昨年9月4日付け東洋経済オンライン「「特捜検察」の暴走、なぜ無罪判決が相次ぐのか ストーリー優先で証拠集め、調書は検事の作文」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/698489
・『司法試験の受験者数が激減。弁護士は「食えない」「AIが代替する」と敬遠され、若き裁判官の離職が相次ぎ、検察官は供述をねじ曲げるーー。『週刊東洋経済』の9月4日(月)発売号(9月9日号)では、「弁護士・裁判官・検察官」を特集。実態とともに、司法インフラの瓦解の足音をお伝えする。 「お試しで逮捕、起訴なんてことはありえないんだよ。俺たちはいいかげんな仕事はできないんだよ。人の人生狂わせる権力持ってるから、こんなちっぽけな誤審とかで人を殺すことだってできるんですよ。失敗したら腹を切らなきゃいけないんだよ。命かけてるんだよ、俺たちは。あなたたちみたいに金をかけているんじゃねえんだ。金なんかよりも大事な命と人の人生を天秤にかけてこっちは仕事をしてるんだよ。なめるんじゃねーよ。必死なんだよ」 これは大阪地検特捜部の田渕大輔検事(肩書は当時、以下同じ)が、不動産開発会社プレサンスコーポレーションの小林桂樹・執行役員の取り調べで放った言葉だ。2019年12月のことだ』、「俺たちはいいかげんな仕事はできないんだよ。人の人生狂わせる権力持ってるから、こんなちっぽけな誤審とかで人を殺すことだってできるんですよ。失敗したら腹を切らなきゃいけないんだよ。命かけてるんだよ、俺たちは。あなたたちみたいに金をかけているんじゃねえんだ。金なんかよりも大事な命と人の人生を天秤にかけてこっちは仕事をしてるんだよ。なめるんじゃねーよ。必死なんだよ」、何と思い上がった姿勢なのだろう。驚いた。
・『人生は狂わされた  田渕の言葉どおり、プレサンスの山岸忍社長の人生は狂わされた。否認をし続けた山岸は248日間勾留された。勾留中に社長を辞任し、自分が創業したプレサンスの株を同業他社に売却した。 ところが山岸の逮捕、起訴は検察の大チョンボだった。田渕は小林にウソの供述をさせていた。大阪地裁はそのことを見抜き、山岸に無罪を言い渡した。検察は控訴を断念した。 飛ぶ鳥を落とす勢いだったプレサンスを経営危機に陥れておきながら、大阪地検から当事者の山岸に謝罪の言葉はまったくない。 厚生労働省の雇用均等・児童家庭局、村木厚子局長事件で無罪を勝ち取った弘中惇一郎弁護士は、近著『特捜検察の正体』の中でプレサンス事件について「大阪地検特捜部は村木事件と同じ過ちを繰り返してしまった」と書いている。) 村木事件をきっかけに導入された取り調べの録音録画がされている中で、田渕は取調室の机をたたき、小林を侮辱し、精神的苦痛を与えた。大阪地裁は「録音録画された中でこのような取り調べが行われたこと自体が驚くべき由々しき事態」と指摘している。 弘中は前出の著書の中で、検察が事件をでっち上げる手法を20に分類している。村木事件など過去に受任した冤罪(えんざい)事件での手法だが、これらは今もなお使われている。 例えばプレサンス事件では「山岸が横領を知っていた」という誤った見立てで証拠集めをした(上表の手法1)。長期勾留し山岸を心身ともに追い込んだ(同9)。 公安警察が立件した大川原化工機事件は検察の手法そのままだ。「生物兵器に転用可能と知っていて不正に輸出した」という誤った見立てをし(手法1)、温度の上がらない箇所があるという客観的・科学的事実には目をつぶり(同2)、警部補が供述調書をひたすら作文した(同3)。調書に「不正に」などの化粧を施して真実らしさを装った(同17)。検察は公安警察の言いなりになって大川原化工機の大川原正明社長らを起訴した』、「弘中は前出の著書の中で、検察が事件をでっち上げる手法を20に分類している。村木事件など過去に受任した冤罪(えんざい)事件での手法だが、これらは今もなお使われている。 例えばプレサンス事件では「山岸が横領を知っていた」という誤った見立てで証拠集めをした(上表の手法1)。長期勾留し山岸を心身ともに追い込んだ(同9)。 公安警察が立件した大川原化工機事件は検察の手法そのままだ。「生物兵器に転用可能と知っていて不正に輸出した」という誤った見立てをし(手法1)、温度の上がらない箇所があるという客観的・科学的事実には目をつぶり(同2)、警部補が供述調書をひたすら作文した(同3)。調書に「不正に」などの化粧を施して真実らしさを装った(同17)。検察は公安警察の言いなりになって大川原化工機の大川原正明社長らを起訴した」、なるほど。
・『最大の武器は人質司法  検察の権力の源泉は何か。元検察官の郷原信郎弁護士は「人質司法が最大の武器だ」と指摘する。 検察は容疑者を逮捕すると48時間拘束できる。裁判所に勾留が認められると10日間拘束でき、再度同じ手続きでさらに10日間延長できる。つまり逮捕から最長で22日間拘束できる。) 起訴されれば法律上は保釈が可能となる。しかしそれは容疑を認めた場合に限られる。否認し続けると起訴後、口裏合わせや証拠隠滅、逃亡のおそれがあるとし、検察は保釈に猛反対する。特捜事件の場合、裁判所は検察に追従する傾向が顕著だ。 なぜ検察は長期勾留で被疑者を追い込むのか。郷原弁護士は「裁判で争わせないようにするためだ」と指摘する。法廷では検察官が罪状を読み上げ、被告が容疑を認める。まるで儀式だ。後は執行猶予をつけるかどうかだけで、検察が負けることはない。刑事事件の有罪率が99.8%と高いことの原因の1つにもなっている。 企業にとって長期勾留の経済的ダメージは大きい。それを見透かして、「罪を認めてさっさと保釈されたほうが得、という考え方をする人もいるよ」と、自白を巧妙に促す検察官もいるくらいだ。 人質司法に頼るあまり特捜検察の質が低下。「刑事事件としての立件の当否を判断する能力が劣ってきている」(郷原弁護士)。誤った見立てで経営者・企業人を逮捕・起訴・長期勾留。供述調書をねじ曲げてきたのが検察の実態だ』、「元検察官の郷原信郎弁護士は「人質司法が最大の武器だ」と指摘する。 検察は容疑者を逮捕すると48時間拘束できる。裁判所に勾留が認められると10日間拘束でき、再度同じ手続きでさらに10日間延長できる。つまり逮捕から最長で22日間拘束できる・・・人質司法に頼るあまり特捜検察の質が低下。「刑事事件としての立件の当否を判断する能力が劣ってきている」(郷原弁護士)。誤った見立てで経営者・企業人を逮捕・起訴・長期勾留。供述調書をねじ曲げてきたのが検察の実態だ・・・企業にとって長期勾留の経済的ダメージは大きい。それを見透かして、「罪を認めてさっさと保釈されたほうが得、という考え方をする人もいるよ」と、自白を巧妙に促す検察官もいるくらいだ」、全く卑劣この上ない検察官だ。
・『検察官同一体の原則  検察庁には「検察官同一体の原則」というものがある。何事も上に伺いを立て、検察官によって違ったことを言ってはならない。 大川原社長は国と東京都を相手に賠償訴訟をしている。その裁判に、大川原社長らを起訴した塚部貴子検事が証人喚問された。別の検事が社長らの起訴を取り消しているというのに、塚部は「当時の判断に間違いがあったとは思わない」とし、謝罪しなかった。 証人台の塚部をほぼ正面の原告席から見ていた大川原社長には「言いたくないことを言わされているたびに検事の顔色が赤黒く変わったように見えた。個人の意思を抑えてしまうからダメなんだ。上司に『違う』と言える検察組織にしていかないと、国としてやばい」。大川原社長は組織を率いる企業経営者として、検察という組織のいびつさを危惧している。(一部敬称略)』、「大川原社長らを起訴した塚部貴子検事が証人喚問された。別の検事が社長らの起訴を取り消しているというのに、塚部は「当時の判断に間違いがあったとは思わない」とし、謝罪しなかった。 証人台の塚部をほぼ正面の原告席から見ていた大川原社長には「言いたくないことを言わされているたびに検事の顔色が赤黒く変わったように見えた。個人の意思を抑えてしまうからダメなんだ。上司に『違う』と言える検察組織にしていかないと、国としてやばい」。大川原社長は組織を率いる企業経営者として、検察という組織のいびつさを危惧している」、その通りだ。

次に、本年3月8日付けダイヤモンド・オンラインが転載した弁護士ドットコムニュース「警察の「やりすぎ職務質問」5時間拘束!塩を“薬物”と誤解、尿検査シロでも…これ違法?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/340025
・『職務質問を受けて荷物を見せたら、財布の中に入れていた「お清めの塩」を違法薬物と勘違いされ、尿検査をする羽目になった――。このような体験をした人から、弁護士ドットコムに「さすがに行き過ぎでは」との相談が寄せられている。 相談者によると、警察は財布の中の「塩」をみつけると、簡易検査をしたという。結果は陰性だったが「塩だとの確証がない」との理由で警察署に連行され、写真を撮られたり、書類を書かされたりしたそうだ。尿検査も陰性だったが、解放されたのは職務質問を受けてから5時間後だったという。 「高圧的な態度をとられて精神的にも苦痛だったが、謝罪の一言もなかった」と相談者は憤りを感じている様子だ。警察に苦情を申し立てる術はないのか。警視庁刑事としての経験も有する澤井康生弁護士に聞いた。Qは聞き手の質問、Aは澤井康生弁護士の回答)』、「職務質問を受けて荷物を見せたら、財布の中に入れていた「お清めの塩」を違法薬物と勘違いされ、尿検査をする羽目になった・・・結果は陰性だったが「塩だとの確証がない」との理由で警察署に連行され、写真を撮られたり、書類を書かされたりしたそうだ。尿検査も陰性だったが、解放されたのは職務質問を受けてから5時間後だったという」、なるほど。
・『警察官の対応「ただちに違法性は認められない」  Q:今回の警察の対応に法的な問題はないのでしょうか。 A:警察官がおこなった措置は、職務質問とそれに付随する所持品検査ならびに尿検査になります。職務質問は警察官職務執行法2条1項に基づき、警察官が対象者の人定事項などを質問する行為です。強制力はないので、あくまで任意ということになります。 所持品検査については明文規定はありませんが、最高裁の判例によれば、職務質問に付随しておこなうことができるとされています(最高裁昭和53年6月20日判決)。こちらも原則として強制力はなく、あくまで任意ということになります。 警察官は職務質問から始めて所持品検査をおこなった結果、違法薬物と疑われる白い粉末が出てきたことから警察署への任意同行を求め、任意での尿検査をおこなっています。すべての手続きは対象者の同意を得て任意でおこなっているため、違法性は認められません。 Q:相談者によると、簡易検査(あるいは予試験:薬物簡易試験)の結果は陰性だったとのことです。 A:警察官は検査の結果だけではなく、自供、対象物の状況、色、包装、所持態様、対象者の身体的状況など他の状況証拠を総合的に判断して、嫌疑の有無を判断することになります。 今回のケースの具体的な状況は不明ですが、簡易検査の結果は「陰性」だったものの他に不審事由があったのかもしれません。ここまでのプロセスについては、ただちに違法性は認められないといえるでしょう』、「警察官は職務質問から始めて所持品検査をおこなった結果、違法薬物と疑われる白い粉末が出てきたことから警察署への任意同行を求め、任意での尿検査をおこなっています。すべての手続きは対象者の同意を得て任意でおこなっているため、違法性は認められません」、なるほど。
・『5時間の留め置き「違法」の可能性も…  Q:相談者は、職務質問を受けてから5時間後にようやく解放されたようです。長時間その場に留め置くことは、法的に問題ないのでしょうか。 参考判例として、神戸地裁姫路支部令和2年6月26日判決があります。覚醒剤の自己使用の事案について、警察署に任意同行された後に帰宅の意思を表示したにもかかわらず、6時間以上にわたって留め置きされた行為の違法性が問題となった事案です。 裁判所は、捜査の適法性の判断基準として「時系列的に必要性、緊急性なども考慮した上、具体的状況のもとで相当と認められる限度内にあるか否かを判断する」としました。 そのうえで、本人が強く帰宅を求めたのであれば、いったん帰らせたうえで追尾などの他の手段を考えることなく本人を留め置いた行為は「任意捜査として許容される留め置きの限度を超えている」と示しました。 この裁判例は、本人が実際に覚醒剤を自己使用し、強制採尿令状の請求に着手していた事案です。対して、今回のケースは覚醒剤ではなく「塩」なので、捜査の必要性、緊急性は高いとはいえないでしょう。 具体的な状況はわかりませんが、相談者が帰宅の意思を明確に示していたにもかかわらず、5時間にわたり留め置いた場合であれば、違法と判断される可能性も否定はできません。 Q:警察官の対応に疑問を感じた場合、苦情を申し立てることはできますか。 A:はい。警察法79条の規定に基づき、公安委員会に対して書面により、苦情の申し出ができます。公安委員会は誠実に処理し、処理結果を書面で申出者に通知するとされています』、「相談者が帰宅の意思を明確に示していたにもかかわらず、5時間にわたり留め置いた場合であれば、違法と判断される可能性も否定はできません。 Q:警察官の対応に疑問を感じた場合、苦情を申し立てることはできますか。 A:はい。警察法79条の規定に基づき、公安委員会に対して書面により、苦情の申し出ができます。公安委員会は誠実に処理し、処理結果を書面で申出者に通知するとされています」、なるほど。

第三に、3月15日付けダイヤモンド・オンラインが転載した弁護士ドットコムニュース「ロースクール制度は「文科省と法務省の設計ミスが一番の失敗」柴山昌彦・元文科相が激白」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/340458
・『2024年3月に開校20年を迎えるロースクール(法科大学院)は、スタート直後こそ多様な人材が集まったものの、次第に入学者数は減り、司法試験の受験者数も低迷した。 これを受けて、国は2019年、法学部3年とロースクール2年の教育課程「法曹コース(いわゆる3+2)」を新設するとともに、「在学中受験」を可能にするなど、法曹志願者数の回復に向けて“テコ入れ”を図った。この時、ロースクールを所管する文部科学省で大臣を務めていたのが弁護士出身の柴山昌彦衆議院議員だ。 脱サラ後司法試験に合格するまで7年かかったという柴山氏は、「博打のような司法試験の結果一発」ではなく「卒業できれば7~8割の人が合格できる『プロセスによる選抜』」を実現し得る存在として、ロースクールには当初大きな期待を寄せていたという。 しかし、いざ始まった新司法試験では合格率が5割超えすら1度もなく、20%台の低空飛行が続いた。 「文部科学省と法務省が初めにしっかり制度設計をしておかなくてはいけなかったことが一番の失敗」と話す柴山氏に、この20年の振り返りとこれからの法曹養成について聞いた。(Qは聞き手の質問、Aは柴山氏の回答)』、「「博打のような司法試験の結果一発」ではなく「卒業できれば7~8割の人が合格できる『プロセスによる選抜』」を実現し得る存在として、ロースクールには当初大きな期待を寄せていたという。 しかし、いざ始まった新司法試験では合格率が5割超えすら1度もなく、20%台の低空飛行が続いた・・・「文部科学省と法務省が初めにしっかり制度設計をしておかなくてはいけなかったことが一番の失敗」と話す柴山氏」、なるほど。
・『一番の失敗は「当初の制度設計」  Q:柴山議員は民間企業での勤務を経て旧司法試験を合格して弁護士になっています。2004年のロースクール開校をどのように見ていましたか。) A:私が大学生だった1980年代は旧司法試験の合格率が1%台の年もあり、10~20年受験している人も珍しくありませんでした。当時の国会でも問題になって、「人生を空費して社会的な損失だ」などと言われてました。 私も民間企業を辞めてから最終合格まで7年かかりましたが、やはり大変厳しい思いをしましたし、不合格を繰り返すことはメンタル的にも非常に辛かった。「司法試験は博打」だと本当に思っていました。 博打と思わせるほど難関な試験に合格する人たちの集団という要素が法曹の社会的地位を高めていたというのはあると思います。 しかし、私に言わせれば、その“既得権益”の上にいる法曹は新しい時代の要請、特に国際的なニーズに応えられていなかった。早くから「このままではだめだ」「司法試験の結果のみという点ではなく、司法試験を受験するまでのプロセスを線で評価すべき」という声はたくさん出ていたにもかかわらずです。 若年層の合格者を増やすことも大事だと思っていましたので、ロースクールの導入及び合格者の拡大で、プロセスによる選抜で若い人たちが合格しやすくなるとともに、法曹人口が増え、多様性や競争によって“既得権益”が打破され業界全体がより活性化するのではないか。そんな思いでロースクールには非常に期待していました。 Q:開校初年度は社会人経験者が半数近く入学するなど、多様な人材の確保・育成に向けて好スタートを切ったかのように見えました。 A:アメリカのロースクール生は、入学してからものすごく勉強します。過酷と言われるほどの学生生活を送るようですが、そこまで頑張らないと卒業させてもらえません。その代わり、卒業できた人は7~8割が司法試験で合格できる。 日本のロースクールでも質の高い、そして進級が難しい厳格な評価をして、卒業できた人は同じように7~8割が合格する。そうなることを期待していましたし、当初はそうなる予定だったはずです。 社会人経験者の入学者もこれまでのキャリアを捨てても7~8割が合格できるならと、ロースクールの門を叩いた人はいたと思います。 Q:いざ新司法試験が始まってみると、初年度の合格率が48.3%で徐々に低下し、4回目からの10年ほどは20%台の低空飛行が続きました。 A:忸怩(じくじ)たる思いです。 雨後の筍のように、大学側が儲かるからといって猫も杓子もロースクールを作るということは想定できていなかったと思います。 決められた合格者数に対して多くのロースクールが作られれば、「司法試験合格者数」というデジタルな数値で綺麗にランク付けされてしまいます。合格率の高低でロースクール間に序列ができることは間違いないし、合格率の低いロースクールは淘汰されざるを得ない宿命にある。 こんなことはわかっていたことですから、私はロースクールができた当初から、「手厚い在校生への支援」と「厳格な評価」の両輪でやっていくべきだと思って教育行政に携わってきましたし、ロースクールの質の確保と再編は絶対必要だと文科省に再三訴えていました。 ところが、文科省の再編の動きは極めて鈍かった。結局ロースクールの再編・統合の動きは鈍く、司法試験を実施している法務省は法曹の質を確保する方向で動いた結果、理想と現実の間にものすごいギャップが生まれてしまいました。 Q:質の確保についてはどうでしょうか。 A:十分に確保できる仕組みでスタートしたとは言い難いと思います。 A:法曹養成の仕組みは基本的にアプレンティスシップ(徒弟制度)で、司法試験を合格した新人はいわば「丁稚」です。司法修習では検察庁や裁判所で実務の“修行”をおこないますが、起案書を出すと、ズタズタになって直されます。 修習を終えた後も同様です。新人は叩かれしごかれて、時間をかけて真のプロフェッショナルになっていくものなんです。にもかかわらず、いきなり新人が急増したら、徒弟制度で育てることなんてできるわけがない。 私自身は法曹人口を増やすべきだという立場ですが、それでも法曹養成の宿命、つまりしっかりと育て上げるというアプレンティスシップな仕組みの中で、急激な拡大というのは物理的に無理があったと考えています。 結局、弁護士人口を増やしたけれども、既存の法律事務所ではとても抱えきれない状況になり、修習後にいきなり独立(即独)する人も出ました。司法研修所を出ただけで、指導してくれる人もいない中いきなり競争にさらされれば、質を高める余裕なんてありません。 弁護士需要と供給の拡大、法科大学院の再編統合、これらの要素をきちんとグリップをきかせて計画を立てていくことが必要だったのではないでしょうか。 合格率についても同様です。 当初の目標では合格者数3000人、合格率7~8割という数値が掲げられていました。単純な数値上の話ではありますが、たとえばロースクール入学者数を4000人前後に絞れば達成できそうに思われます。 しかし、実際には全国で最大74校ものロースクールが開校し、制度開始から数年は入学者数が5500人を上回る一方、合格者数は最大で2000人を少し上回る数にとどまりました。これでは合格率7~8割が実現するはずもありません。 ロースクールの校数や入学者数といった全体の総量をどうするか。文部科学省と法務省がこの点を初めにしっかり制度設計をしておかなくてはいけなかった。これが一番の失敗だと思います。
「当初の目標では合格者数3000人、合格率7~8割という数値が掲げられていました。単純な数値上の話ではありますが、たとえばロースクール入学者数を4000人前後に絞れば達成できそうに思われます。 しかし、実際には全国で最大74校ものロースクールが開校し、制度開始から数年は入学者数が5500人を上回る一方、合格者数は最大で2000人を少し上回る数にとどまりました。これでは合格率7~8割が実現するはずもありません』、「ロースクールの校数や入学者数といった全体の総量をどうするか。文部科学省と法務省がこの点を初めにしっかり制度設計をしておかなくてはいけなかった。これが一番の失敗だと思います」、なるほど。
・『Q:法曹人口を増やすべきだという立場とのことですが、どの程度必要だと考えていますか。 A:具体的な数値を申し上げるのは難しいですが、国民性や法の浸透度というのが無関係ではないと思います。国民がどれほど法的サービスを具体的に求めているのか。法曹の数が、人口比でアメリカに比べて何倍も少ないというような単純な比較はすべきでありません。 ただ、国民性が違うとはいっても、これだけ社会がグローバル化していく中、丁々発止で訴訟などで海外と渡り合うためには、国際法に強い人材を含め、法曹の質と量を充実させることはすごく重要だと思っています。 また、国内でも法曹人口が十分でない地域もあります。それによってもし泣き寝入りしている弱い立場の方が一人でもいるとすれば、それはとても不幸なことですし、やはり法曹はまだまだ日本では足りていないと考えています』、「これだけ社会がグローバル化していく中、丁々発止で訴訟などで海外と渡り合うためには、国際法に強い人材を含め、法曹の質と量を充実させることはすごく重要だと思っています。 また、国内でも法曹人口が十分でない地域もあります。それによってもし泣き寝入りしている弱い立場の方が一人でもいるとすれば、それはとても不幸なことですし、やはり法曹はまだまだ日本では足りていないと考えています」、なるほど。
・『法曹コース創設や在学中受験の実現「理想に一歩近づいた」  Q:ロースクールは現在34校と最盛期の半分以下になるなど状況は変化しています。柴山議員が文部科学大臣だった際、「法曹コース(3+2)」を創設し、ロースクール在学中の受験も可能にしました。 ロースクール進学者数の低迷は、結局のところ、「ロースクールに魅力がない」と見られているからです。卒業しても司法試験に合格できるかどうかわからないうえ、膨大な時間と費用がかかる。メリットが少ないのに負担が多いものを選ぶ人はなかなかいないですよね。 優秀な人材であれば短い期間で合格できる仕組みを作って、「この仕組みで卒業した人はなかなかいい」と評価されるようにすることは、絶対やらなくてはいけないと思っていました。 「3+2」については、時間と費用のデメリットを抑えつつ、司法試験を受験するまでのプロセスを線で評価する仕組みを維持する形として、予備試験の存在をすごく意識しました。 Q:2023年の司法試験では法曹コースの学生が初めて在学中受験をし、合格率は「65.24%」。2022年度の既修者コースを修了した者の合格率「62.82%」、既修者コースに通う在学中受験者全体の合格率「63.31%」をわずかに上回りました。 A:手前味噌ですが、「ロースクールのあるべき理想に一歩近づいた」と自負しています。法曹コースへの進学を考えている方々がこの数字を見てどう感じるかだと思います。ただ、予備試験を経由した人の9割以上が合格していることもまた事実です。 法曹コースに進むと勉強に追われ過ぎるという声もありますが、その分学費の奨学金化や成績優秀者の学費減免などを実施するなど十分なメリットを用意し、法曹コースでしっかり成績を残した人は高い合格率でしかも早く法曹資格を得られる、という道筋をぜひつけてほしいと期待しています。そのために在学中受験も可能にしたわけですから。 Q:法曹コース進学は法学部での教育とセットになっているため、社会人経験者などは事実上入れません。 社会人から転身して弁護士として第2の道を歩みたいという方に大勢集まってもらいたいというのが、ロースクール開校当初の理想だったわけですから、そういった方々にとって魅力あるロースクールでなくてはならないというのは今後の大きな課題だと認識しています』、「2023年の司法試験では法曹コースの学生が初めて在学中受験をし、合格率は「65.24%」。2022年度の既修者コースを修了した者の合格率「62.82%」、既修者コースに通う在学中受験者全体の合格率「63.31%」をわずかに上回りました。 A:手前味噌ですが、「ロースクールのあるべき理想に一歩近づいた」と自負しています。法曹コースへの進学を考えている方々がこの数字を見てどう感じるかだと思います。ただ、予備試験を経由した人の9割以上が合格していることもまた事実です」、なるほど。
・『予備試験の存在「その実益は否定し得ない」  Q:予備試験の位置づけはどう考えていますか。 A:法曹コースであってもロースクールに通えない事情の方もいるでしょうから、あらゆる人に門戸を開くという観点から、補充的な形では今後も残していくべきものだと思います。ただ、今のままの仕組みで続けていくかは、もう少し精査する必要があるかもしれません。 Q:具体的には何を精査する必要があるのでしょうか。 A:予備試験はロースクールを経て受験するコースに対する補充的な意味の位置づけだと考えていますし、合格者数からして現状もその役割で落ち着いています。 司法試験の受験資格を得られるという点で、ロースクールを卒業したのと同等の学力が認められるというのが制度上の建前ですが、本当に同等といえるのかどうか。ロースクールと予備試験のいずれかに法曹志望者が偏るのならば、志望者の実力(レベル)で調整することを考えるのも一案です。 私が受験生時代に、旧司法試験の多浪を防ぐため、受験回数の制限が議論されました。結果として、回数制限ではなく受験回数による特別合格枠、いわゆる「丙案」制度が1996年の試験から導入されました。 受験回数3回までの受験生を優先的に合格させることで合格者の若年化を図るというものです。受験回数の少ない受験生にとっては恩恵ですが、その裏で、合格できる順位だった多浪生がはじかれていました。 たとえば、合格者1000人で特別合格枠が200人だった場合、制度対象外の受験生だと、試験結果の順位は801番目でも、1001~1200番目が全員制度対象の受験生だったらそちらが優先され、実力では801番目でも不合格ということになっていました。同じ司法試験を受けても、受験者の属性によって最低点が違っていたわけです。 「丙案」制度には様々な批判もありましたし、その後合格者がさらに増えたことで2004年以降は廃止されましたが、個人的には、異なる経路や経験によって合否の結果が変わってくることは政策的にあり得ないことではないと思っています。 Q:仕事を辞めるリスクまではとれない社会人にとって、予備試験は重要な選択肢になっているように見受けられます。 A:その実益は否定し得ないと思います。また、予備試験に合格できる実力があるならば、その道が最短であることも事実です。ただし何度も申し上げますように、予備試験はあくまで補充的という位置づけです。) Q:法曹界の採用では、若い合格者が優遇される傾向にあります。 A:多様な人材が活躍する法曹界を目指すという理念からすれば、間違いなく本末転倒な事態だと思っています。 脱サラして弁護士になった身としては、弁護士からサラリーマンやキャリア公務員になる、サラリーマンやキャリア公務員が弁護士になる、というような法曹という職を軸にしたキャリアのリボルビング(回転)が、これからもっと必要になってくると思うんです。 そういった人材を養成する場としてロースクールが一定の役割を果たすというのが私の理想です。 法曹コースを出て20代半ばで判事補になって、ずっと裁判官としてキャリアを積んでいくという道が駄目だと言っているわけではありません。でも最高裁判事を見ても、弁護士や検察官からなる人もいれば、外交官や法学者からなる人もいます。そういう多様性が法曹界でもっと広くあっていいのではないでしょうか。 裁判所や検察庁、大手法律事務所などの採用側が、もう少し長期的なビジョンを持って、年齢だけでなく、真に有益な人材を採用してほしいと思います。 法律の世界でも専門分野の細分化が著しく進んでいます。法律の知識だけで解決できる問題ばかりではありません。たとえば建築関係の紛争で1級建築士の資格を持つ弁護士がいたり、医療訴訟で医師免許を持つ弁護士がいたりすることが紛争解決にどれほど有益か。「国民のための司法」という観点からも、異分野の専門知識を持つ法曹がいることは大変望ましいことです。 Q:法曹養成のあり方について、国は今後どう向き合っていくのでしょうか。 A:既に令和6年度の予算は閣議決定をされ、所属する自民党では重点要望項目などを審査しています。国際情勢を踏まえたバランス感覚と法的思考能力をあわせ持つ人材を広く確保育成する方針です。 検察官出身の赤根智子さんが2018年、日本の法曹として初めて国際刑事裁判所(ICC)判事に就任しましたが、これからも国際的な分野で活躍できる法曹をしっかりと養成していくためには、幅の広いバッググラウンドをもった法曹が必要だろうと思っています。 また、裁判所の予算についても、これまでの37億円から57億円に増額されます。ロースクール制度の今後の在り方については引き続き、政府としてまた国会として取り組まなければならない重要な課題だと認識しています。 Q:法曹養成の課題について、国会内での盛り上がりはどうでしょうか。 A:残念ながら国会内で問題意識を熱心に取り組んでいる議員は多くありません。 法務と文科の両方に取り組んでいた方々は問題意識を強く持ってくださっています。問題意識が高い人たちで国家の様々な改革を後押ししていくことが大事だろうと思います。 法務省と文部科学省とではカルチャーが違います。そこを統べて物事を進めるためには、政治のイニシアチブが必要だと認識しています。 私の大臣時代におこなったロースクール改革も大きなものだったと思っていますし、何とかうまくものにしていけばいいのではないかという見通しが立ったのではないかと自負しています。「柴山の言うことなんて当てになんないよ」と言われるかもしれませんけどね(笑)。 Q:立法府の一員である柴山議員はどう取り組んでいくつもりでいますか。 A:私は現在、党の政調会長代理で、政務調査会での重点担当分野として大臣をしていた文部科学省分野と法務分野が割り当てられており、法曹養成と向かい合えるポジションにいます。 質・量・多様性、この3つをキーワードとして法曹養成にこれからもしっかりと関わっていきたいと考えています』、「弁護士からサラリーマンやキャリア公務員になる、サラリーマンやキャリア公務員が弁護士になる、というような法曹という職を軸にしたキャリアのリボルビング(回転)が、これからもっと必要になってくると思うんです。 そういった人材を養成する場としてロースクールが一定の役割を果たすというのが私の理想です・・・最高裁判事を見ても、弁護士や検察官からなる人もいれば、外交官や法学者からなる人もいます。そういう多様性が法曹界でもっと広くあっていいのではないでしょうか。 裁判所や検察庁、大手法律事務所などの採用側が、もう少し長期的なビジョンを持って、年齢だけでなく、真に有益な人材を採用してほしいと思います・・・法務省と文部科学省とではカルチャーが違います。そこを統べて物事を進めるためには、政治のイニシアチブが必要だと認識しています」、ずれにしろ、「ロースクール」の役割が当初想定されたのとは、大きく異なっている。ここでもう一度、今後の在り方を冷静に考え直す時期に来ているのではなかろうか。
タグ:司法 (その18)(「特捜検察」の暴走 なぜ無罪判決が相次ぐのか ストーリー優先で証拠集め、調書は検事の作文、警察の「やりすぎ職務質問」5時間拘束!塩を“薬物”と誤解 尿検査シロでも…これ違法?、ロースクール制度は「文科省と法務省の設計ミスが一番の失敗」柴山昌彦・元文科相が激白) 東洋経済オンライン「「特捜検察」の暴走、なぜ無罪判決が相次ぐのか ストーリー優先で証拠集め、調書は検事の作文」 「俺たちはいいかげんな仕事はできないんだよ。人の人生狂わせる権力持ってるから、こんなちっぽけな誤審とかで人を殺すことだってできるんですよ。失敗したら腹を切らなきゃいけないんだよ。命かけてるんだよ、俺たちは。あなたたちみたいに金をかけているんじゃねえんだ。金なんかよりも大事な命と人の人生を天秤にかけてこっちは仕事をしてるんだよ。なめるんじゃねーよ。必死なんだよ」、何と思い上がった姿勢なのだろう。驚いた。 「弘中は前出の著書の中で、検察が事件をでっち上げる手法を20に分類している。村木事件など過去に受任した冤罪(えんざい)事件での手法だが、これらは今もなお使われている。 例えばプレサンス事件では「山岸が横領を知っていた」という誤った見立てで証拠集めをした(上表の手法1)。長期勾留し山岸を心身ともに追い込んだ(同9)。 公安警察が立件した大川原化工機事件は検察の手法そのままだ。 例えばプレサンス事件では「山岸が横領を知っていた」という誤った見立てで証拠集めをした(上表の手法1)。長期勾留し山岸を心身ともに追い込んだ(同9)。 公安警察が立件した大川原化工機事件は検察の手法そのままだ。「生物兵器に転用可能と知っていて不正に輸出した」という誤った見立てをし(手法1)、温度の上がらない箇所があるという客観的・科学的事実には目をつぶり(同2)、警部補が供述調書をひたすら作文した(同3)。調書に「不正に」などの化粧を施して真実らしさを装った(同17)。検察は公安警察の言いなりになって大川原 正明社長らを起訴した」、なるほど。 「元検察官の郷原信郎弁護士は「人質司法が最大の武器だ」と指摘する。 検察は容疑者を逮捕すると48時間拘束できる。裁判所に勾留が認められると10日間拘束でき、再度同じ手続きでさらに10日間延長できる。つまり逮捕から最長で22日間拘束できる・・・人質司法に頼るあまり特捜検察の質が低下。「刑事事件としての立件の当否を判断する能力が劣ってきている」(郷原弁護士)。誤った見立てで経営者・企業人を逮捕・起訴・長期勾留。供述調書をねじ曲げてきたのが検察の実態だ・・・ 企業にとって長期勾留の経済的ダメージは大きい。それを見透かして、「罪を認めてさっさと保釈されたほうが得、という考え方をする人もいるよ」と、自白を巧妙に促す検察官もいるくらいだ」、全く卑劣この上ない検察官だ。 「大川原社長らを起訴した塚部貴子検事が証人喚問された。別の検事が社長らの起訴を取り消しているというのに、塚部は「当時の判断に間違いがあったとは思わない」とし、謝罪しなかった。 証人台の塚部をほぼ正面の原告席から見ていた大川原社長には「言いたくないことを言わされているたびに検事の顔色が赤黒く変わったように見えた。個人の意思を抑えてしまうからダメなんだ。上司に『違う』と言える検察組織にしていかないと、国としてやばい」。大川原社長は組織を率いる企業経営者として、検察という組織のいびつさを危惧している」、その通り だ。 ダイヤモンド・オンライン 弁護士ドットコムニュース「警察の「やりすぎ職務質問」5時間拘束!塩を“薬物”と誤解、尿検査シロでも…これ違法?」 「職務質問を受けて荷物を見せたら、財布の中に入れていた「お清めの塩」を違法薬物と勘違いされ、尿検査をする羽目になった・・・結果は陰性だったが「塩だとの確証がない」との理由で警察署に連行され、写真を撮られたり、書類を書かされたりしたそうだ。尿検査も陰性だったが、解放されたのは職務質問を受けてから5時間後だったという」、なるほど。 「警察官は職務質問から始めて所持品検査をおこなった結果、違法薬物と疑われる白い粉末が出てきたことから警察署への任意同行を求め、任意での尿検査をおこなっています。すべての手続きは対象者の同意を得て任意でおこなっているため、違法性は認められません」、なるほど。 「相談者が帰宅の意思を明確に示していたにもかかわらず、5時間にわたり留め置いた場合であれば、違法と判断される可能性も否定はできません。 Q:警察官の対応に疑問を感じた場合、苦情を申し立てることはできますか。 A:はい。警察法79条の規定に基づき、公安委員会に対して書面により、苦情の申し出ができます。公安委員会は誠実に処理し、処理結果を書面で申出者に通知するとされています」、なるほど。 弁護士ドットコムニュース「ロースクール制度は「文科省と法務省の設計ミスが一番の失敗」柴山昌彦・元文科相が激白」 「「博打のような司法試験の結果一発」ではなく「卒業できれば7~8割の人が合格できる『プロセスによる選抜』」を実現し得る存在として、ロースクールには当初大きな期待を寄せていたという。 しかし、いざ始まった新司法試験では合格率が5割超えすら1度もなく、20%台の低空飛行が続いた・・・「文部科学省と法務省が初めにしっかり制度設計をしておかなくてはいけなかったことが一番の失敗」と話す柴山氏」、なるほど。 「ロースクールの校数や入学者数といった全体の総量をどうするか。文部科学省と法務省がこの点を初めにしっかり制度設計をしておかなくてはいけなかった。これが一番の失敗だと思います」、なるほど。 「これだけ社会がグローバル化していく中、丁々発止で訴訟などで海外と渡り合うためには、国際法に強い人材を含め、法曹の質と量を充実させることはすごく重要だと思っています。 また、国内でも法曹人口が十分でない地域もあります。それによってもし泣き寝入りしている弱い立場の方が一人でもいるとすれば、それはとても不幸なことですし、やはり法曹はまだまだ日本では足りていないと考えています」、なるほど。 「2023年の司法試験では法曹コースの学生が初めて在学中受験をし、合格率は「65.24%」。2022年度の既修者コースを修了した者の合格率「62.82%」、既修者コースに通う在学中受験者全体の合格率「63.31%」をわずかに上回りました。 A:手前味噌ですが、「ロースクールのあるべき理想に一歩近づいた」と自負しています。法曹コースへの進学を考えている方々がこの数字を見てどう感じるかだと思います。ただ、予備試験を経由した人の9割以上が合格していることもまた事実です」、なるほど。 「弁護士からサラリーマンやキャリア公務員になる、サラリーマンやキャリア公務員が弁護士になる、というような法曹という職を軸にしたキャリアのリボルビング(回転)が、これからもっと必要になってくると思うんです。 そういった人材を養成する場としてロースクールが一定の役割を果たすというのが私の理想です・・・最高裁判事を見ても、弁護士や検察官からなる人もいれば、外交官や法学者からなる人もいます。 そういう多様性が法曹界でもっと広くあっていいのではないでしょうか。 裁判所や検察庁、大手法律事務所などの採用側が、もう少し長期的なビジョンを持って、年齢だけでなく、真に有益な人材を採用してほしいと思います・・・法務省と文部科学省とではカルチャーが違います。そこを統べて物事を進めるためには、政治のイニシアチブが必要だと認識しています」、ずれにしろ、「ロースクール」の役割が当初想定されたのとは、大きく異なっている。ここでもう一度、今後の在り方を冷静に考え直す時期に来ているのではなかろうか。
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ホテル(その7)(【無料公開】アパが電鉄系を大量買収!「ゾンビ化ホテル」に突き付けられる3つの究極の選択、アパホテル「コロナ禍の逆風でも業績好調」の戦略 「直販+ダイナミック・プライシング」で成功、シャトレーゼホテルに「汚部屋」批判…ホテル再生には“性悪説”が重要だ) [産業動向]

ホテルについては、昨年7月31日に取上げた。今日は、(その7)(【無料公開】アパが電鉄系を大量買収!「ゾンビ化ホテル」に突き付けられる3つの究極の選択、アパホテル「コロナ禍の逆風でも業績好調」の戦略 「直販+ダイナミック・プライシング」で成功、シャトレーゼホテルに「汚部屋」批判…ホテル再生には“性悪説”が重要だ)である。

先ずは、昨年8月2日付けダイヤモンド・オンライン「【無料公開】アパが電鉄系を大量買収!「ゾンビ化ホテル」に突き付けられる3つの究極の選択」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/305778
・『アパグループが電鉄系ビジネスホテルを大量買収するなど攻勢をかけている。アパにとってコロナ危機はチャンスでもあった。一方で宿泊客激減でゾンビ化したホテルは、ピンチを前に「三つの究極の選択肢」を突き付けられている。特集『ホテルの新・覇者』(全18回)の#14では、ゾンビ化ホテルの今後に迫る』、興味深そうだ。
・『アパにチャンス到来 電鉄系ビジネスホテルを買収  新型コロナウイルスの感染拡大により、電鉄会社のホテル売却が相次いだ。本業の鉄道における収益が伸び悩む中、インバウンド需要を当て込んで建てたビジネスホテルの事業が赤字に転落して足を引っ張ったためだ。 ホテル大手のアパグループにとってはチャンス到来。立て続けに電鉄会社のビジネスホテルを買収した(次ページに「アパグループが取得した電鉄系ホテル」のリストを掲載)。 次ページでは、アパがなぜ当該の電鉄系ホテルを選んで買ったのか、その詳細を明らかにする。さらに、宿泊客激減でゾンビ化したホテルが突き付けられている「三つの究極の選択肢」を示す』、「インバウンド需要を当て込んで建てたビジネスホテルの事業が赤字に転落して足を引っ張ったためだ・・・アパグループにとってはチャンス到来。立て続けに電鉄会社のビジネスホテルを買収した」、なるほど。
・『京急と西鉄がホテルを売却 「所有直営」だから選択できた  アパグループはコロナ禍以降、京浜急行電鉄から「京急EXイン羽田・穴守稲荷駅前」と「京急EXイン浅草橋駅前」(いずれも東京都)の2軒、西日本鉄道から「西鉄イン蒲田」(東京都)、「西鉄イン名古屋錦」(名古屋市)、「西鉄イン心斎橋」(大阪市)の3軒を買収した。 アパホテルの空白地帯にあったもの、自社ホテルと競合するエリアにあったものなどで、いずれもアパホテルにリブランドして最近リニューアルオープンした』、「京浜急行電鉄から「京急EXイン羽田・穴守稲荷駅前」と「京急EXイン浅草橋駅前」(いずれも東京都)の2軒、西日本鉄道から「西鉄イン蒲田」(東京都)、「西鉄イン名古屋錦」(名古屋市)、「西鉄イン心斎橋」(大阪市)の3軒を買収した」、なるほど。
・『アパが電鉄系を大量買収!「ゾンビ化ホテル」に突き付けられる3つの究極の選択  赤字を垂れ流して今後も厳しい状況が続く、あるいは完成直前ないし直後にコロナ禍がぶつかりオープンの見通しが立たないことで“ゾンビ化”したホテル――。そうしたホテルを抱える企業は今後どうするか決断を迫られている。 京急や西鉄のように「物件を売却」するのが一つ目の選択肢になる。ただし、この手が使えるのは土地と建物がワンセットになっている場合に限られる。 下図のように、主なホテル運営の方式には「所有直営方式」と「賃貸(リース)方式」がある。 (図表:ホテルの所有と賃貸の仕組み はリンク先参照) 所有直営方式では、土地・建物のオーナーが自ら運営する。この方式のメリットは、自らオーナーとなるため、土地・建物の賃料を払わなくていいこと。不動産取得費用は通常、金融機関からの借り入れで賄われる。そのため資金調達が必要で、短期間でのチェーン展開がしにくいというのがデメリットだ。 この方式なら、電鉄会社のようにホテルを切り売りして手元キャッシュを賄い急場をしのげる。多額の借金が残っている新築物件などは売ってもマイナスになる場合もあるが、早めに手放すことでキャッシュがこれ以上流出していくのを防ぐ手だてとなる。つまり「損切り」である。 収益用マンション開発を本業とする不動産会社、第一リアルターは大胆に損切りを決断した。同社はインバウンド需要の追い風を受け、ビジネスホテルを建てて完成後に投資家に売るという事業に乗り出していた。このホテル建て売りビジネスに2000億円以上を投じ、50棟以上のホテルを建て、業績を急激に伸ばした。「その分野では日本トップだった」と同社の奈良田隆社長は自負する。 ところが、投資したうちの1500億円分程度まで売却が終わったところでコロナ禍に直面した。ここで奈良田社長は買った土地をすぐ損切りしてでも売却すると決め、残っていた建設計画をストップした。「当社は未上場で業績予想を出す必要がない。だから自分で考えられるリスク・リターン分析だけでやれた」と奈良田社長。インバウンド需要で数百億円の利益を得ていたことに加え、コロナ禍の初期段階で“止血”したからこそ「何とか生き残れた」という』、「第一リアルターは大胆に損切りを決断した。同社はインバウンド需要の追い風を受け、ビジネスホテルを建てて完成後に投資家に売るという事業に乗り出していた。このホテル建て売りビジネスに2000億円以上を投じ、50棟以上のホテルを建て、業績を急激に伸ばした。「その分野では日本トップだった」と同社の奈良田隆社長は自負する。 ところが、投資したうちの1500億円分程度まで売却が終わったところでコロナ禍に直面した。ここで奈良田社長は買った土地をすぐ損切りしてでも売却すると決め、残っていた建設計画をストップした。「当社は未上場で業績予想を出す必要がない。だから自分で考えられるリスク・リターン分析だけでやれた」と奈良田社長。インバウンド需要で数百億円の利益を得ていたことに加え、コロナ禍の初期段階で“止血”したからこそ「何とか生き残れた」という」、賢明な手仕舞いだ。
・『「リース方式」の会社はホテル切り売りを選択できない  ホテル運営には賃貸(リース)方式もある。 ホテル会社は、不動産を持たずにオーナーから土地や建物を借りて運営する。メリットは、短期間でのチェーン展開がしやすいこと。しかし、宿泊客がゼロでもオーナーに一定の賃料を支払うという契約になっていることが多く、コロナ禍のようなケースではたちまち赤字に陥ってしまうデメリットがある。 リース方式で運営しているホテル会社は不動産がないため、ホテルを切り売りするという選択ができない。また、更地を借りてホテルは自ら建てようとしていた場合、コロナ禍で建物を建てられずに収益を出す見通しが立たないまま、地代家賃だけをオーナーに支払い続けることになるケースも。 インバウンドやビジネスの需要が戻るまで雇用調整助成金やコロナ融資などで食いつないだとしても、借り入れが膨らみ、コロナ禍が終息してもその返済に追われることになる。返済が追い付かず、金融機関が返済猶予や追い貸しに応じなくなった瞬間、息が続かなくなってしまう。 そのとき迫られる二つ目の選択肢が会社の売却、つまり「身売り」だ』、「迫られる二つ目の選択肢が会社の売却、つまり「身売り」だ」、なるほど。
・『「リース方式」のホテル会社は身売りも難しい  THEグローバル社の身売りは、世間でも話題になった。同社は京都市を中心に、2016年ごろからインバウンド向けのホテルを仕込んで建てまくり、飛ぶ鳥を落とす勢いで業績も急上昇した。 だがコロナ禍で一転、大赤字に。中国平安保険グループとSBIホールディングスが大株主である、マンションデベロッパーのアスコットに買収され、その軍門に下った。 ここで注意を払いたいのは、THEグローバル社に切り売りできる不動産があったからこそ身売りができたという点だ。 一方、ホテルバブルで業績を伸ばしてきた多くのホテル会社はリース方式で、オーナーに固定賃料を支払うために借金を重ねてきた。宿泊料収入がなくなれば、たちまち返済に行き詰まる。 それを投資家も分かっているから、オーナーとの賃料減額交渉が成立しているといったポジティブな要素でも見いだせない限り、リース方式のホテル会社は買わない。 リース方式の会社は身売りも難しいのだ』、「リース方式の会社は身売りも難しいのだ」、なるほど。
・『第三の選択はオフィスなどへの「用途転換」 三つ目の選択肢は、用途をホテル以外に変更する「用途転換(コンバージョン)」だ。 ホテル・旅館売買仲介業務やマーケット分析などを手掛けるバンガード・パートナーズには、日々売り物件の情報が入ってくる。だが、「ビジネスホテルでいい物件はあまりない」と、同社の檜山宗孝社長は言う。 「いい物件はあまりない」というのは価格面、ハード面の両方に当てはまる。価格面では売却希望価格が高く、買い手が出せる金額とのギャップが大きい。売り主はなるべく損切りしたくないため、価格を下げたがらないのだ。 ハード面では、近年造られた新しいものであっても魅力に乏しいものが多い。というのも、客室面積が小さいものが多く、今後の需要の取り込みを期待できないからだ。 ビジネスホテルは供給過多な上に、出張需要はコロナ禍前のレベルに戻らないと見立てるホテル関係者は多い。そうなると1~2人用客室の利用者は限られ、インバウンドからの3~5人用客室のニーズの方が強くなる。実際、損切りを行った第一リアルターの奈良田社長も今後、客室が広めの新たなタイプのホテル開発にチャンスを見いだしている。 バンガード・パートナーズでは最近、ビジネスホテルが供給過多の京都市で、あるホテル売却に携わった。本業が別にあって、ホテルがもうかるからちょっとやってみようという安易な考えで手を出してしまった揚げ句、失敗したというケースだ。 それでも売れればまだましだ。京都市で売りに出ている物件の中には、明らかにインバウンド狙いで住宅地に建ててしまったホテルもある。そうしたホテルは不便な場所にあるなど立地が悪く、コロナ禍以降、いまだに閉じられたままだ。 ホテルとしては価値がなく、そのままでは買い手もつかないという窮地に陥り、オフィスビルに用途転換するケースも出てきた。「客室の天井高がそれなりにあればオフィスにはできる」と檜山社長。もっとも、「採光の問題などから住宅への転用は基本的に難しい」という。 現状で需要は見込めそうもないが、ホテルとして続けたい、あるいは他への用途転換が難しい場合、ベッド数を増やしてファミリー層を取り込むなど顧客のターゲットを変えるといった策もあるにはある。だが、客室面積が小さいホテルではこれができないから、なかなか買い手がつかない。 究極ともいえる三つの選択肢。このどれも実行できなければ、残された道は倒産である。コロナ禍前から事業の急拡大によって多額の有利子負債を抱えていたり、競争激化で業績が低迷していたところは、ことさら危ない』、「ビジネスホテルは供給過多な上に、出張需要はコロナ禍前のレベルに戻らないと見立てるホテル関係者は多い。そうなると1~2人用客室の利用者は限られ、インバウンドからの3~5人用客室のニーズの方が強くなる。実際、損切りを行った第一リアルターの奈良田社長も今後、客室が広めの新たなタイプのホテル開発にチャンスを見いだしている・・・客室面積が小さいホテルではこれができないから、なかなか買い手がつかない。 究極ともいえる三つの選択肢。このどれも実行できなければ、残された道は倒産である。コロナ禍前から事業の急拡大によって多額の有利子負債を抱えていたり、競争激化で業績が低迷していたところは、ことさら危ない」、「ビジネスホテル」を取り巻く環境は厳しそうだ。

次に、8月22日付け東洋経済オンラインが掲載したボナ・ヴィータ代表取締役、BBT大学教授(マーケティング)の菅野 誠二 氏による「アパホテル「コロナ禍の逆風でも業績好調」の戦略 「直販+ダイナミック・プライシング」で成功」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/691314
・『インフレ、増税、円安、リセッションがニュースで報じられる昨今、「価格と利益」について、誰もが一度は考えたことがあるのではないでしょうか。最近、最も世間を騒がせた話題は「卵」の高騰でした。 『価格支配力とマーケティング』の著者 菅野誠二氏は、「自由に価格が設定できて、しかもお客さんが喜んで買ってくれるような、ハッピーな値付けが実現できたら夢のようではないか」と話します。 この記事では、需給が変化しやすいマーケットでも顧客価値創造をしながら価格支配力を獲得するバランスの妙を実現したアパホテルを例に解説します』、興味深そうだ。
・『他のビジネスホテルと異なる  ■出張族のインサイト  密かな楽しみ」から自社の強みを創造する  アパホテルは、コロナの逆風を経ても圧倒的な業績を示し続けている*。 目標、理念として同社は「利益の最大化ではなく、あくまで日本の住まい文化に貢献するという大義にある」としている。アパグループはホテル事業だけでなくリゾート事業、住宅事業、マンション・ビル管理事業も傘下に持つ。 *2022年11月末の連結決算で売上1,382億(過去5年CAGR 3.6%)、営業利益358億円(売上利益率25.9%)、経常利益353億円と、業界内で圧倒的な利益率を誇る。ホテルネットワークとして全国最大の 719 ホテル 110,395 室(建築・設計中、海外、FC、アパ直参画ホテルを含む)を展開 ターゲットは主に、企業の上位5%層のビジネスパーソンだ。このターゲットは急な出張の機会が多く、その際の価格弾力性が低い。会社が費用負担してくれるからである。同社の最大の強みは、「他のビジネスホテルと異なるビジネスマンの顧客インサイトの捉え方」にある。 同社がまず特定したビジネスパーソンのインサイトは「会社の出張費でポイントを貯め、それをプライベートの割引に活用することが出張族の密かな楽しみ」である。 価格弾力性が低く、同社クラスのホテル代なら、企業が支払える価格帯に設定する。 さらに、会社の経理に言えない、もう少し深いインサイトは、「急な出張を強いるのは会社都合なのだから、ホテル料金は高くなる。多めにポイントをもらえるくらいの余禄があってもよいよね」だと考えれば、同社の勝利の打ち手はダイナミック・プライシングにあると、私は理解している』、「アパホテル」は現在テレビCMを大量に流している。「「会社の出張費でポイントを貯め、それをプライベートの割引に活用することが出張族の密かな楽しみ」である。 価格弾力性が低く、同社クラスのホテル代なら、企業が支払える価格帯に設定する」、なるほど
・『ビジネスモデルの8割は「真似」  ■業界の外からダイナミック・プライシングを持ち込む  このビジネスモデル・イノベーションは、もともとは航空業界の手法である。そのため、同社のダイナミック・プライシングは世界初の取り組みではないが、日本のビジネスホテル業界に本格的に持ち込んだ企業がアパホテルなのだ。 「ダイナミック・プライシング」についてはのちほど説明するが、こうしたビジネスモデル・イノベーションを生む思考法を「アナロジー思考」と呼ぶ。 アナロジー/Analogy(類推思考)とは、他の業界の事例をアイデアの発想のもとにすることだ。単なる真似ではなく、新たなアイデアの追加が必要で、世の新規ビジネスモデルのうち80%は他業種にある業態の真似である、といわれる*。 シュンペーターの新結合の思想に同じく、新しいアイデアは既にあるアイデアの組みあわせが多いのだ』、「業界の外からダイナミック・プライシングを持ち込む  このビジネスモデル・イノベーションは、もともとは航空業界の手法である。そのため、同社のダイナミック・プライシングは世界初の取り組みではないが、日本のビジネスホテル業界に本格的に持ち込んだ企業がアパホテルなのだ」、なるほど。 
・『■ギリギリまで最高値で販売できるAIシステム  アパホテルの戦略は、「直販+ダイナミック・プライシング」だ。価格は市場ニーズに応じて一物多価で常に変化させ、価格支配力を維持する。 他社は予約サイトとの力関係上、どうしても値下げに応じて予約サイトへの割り当てを提供しがちだ。しかしアパホテルはTV広告やデジタル・マーケティングで顧客が直接予約サイトを訪れ、決済するまでをうまく誘導している。 また、コロナ禍で窮地に陥った多くのホテル事業者を底値で買収しており、これを「逆張りの投資」と呼んでいる。これまでにも幾多のホテル・観光・不動産不況時に、強靭な財務力と元谷外志雄会長の逆張り発想で、業績が低迷したホテルを底値で買収して事業規模を拡大してきた。 マーケティング・ミックスとそれを支えるシステムとしては、宿泊当日の予約が一番高価格で売れることから、キャンセル料は無料で、ギリギリまで最高値で販売できるようにAIシステムを導入している。最終判断はAIを参考にして各ホテルの支配人がそれぞれ全権を握り、効率的に稼働率を向上させつつ、平均単価をあげる仕組みがある。) ITのシステム上、ホテル比較サイトで近隣の空き部屋状況をリアルタイムで把握しながら空室在庫を分析し、1000円程度、価格をあげてプレミアムを取る。 部屋は豪華ではないが、コンパクトな部屋に大きなTVと、広く上等なベッドがあり、その上でも仕事ができるという仕様だ。徹底的にビジネスパーソンの出張に焦点を当てている。 アパホテルのホームページではロイヤルティプログラムが解説されており、ここで狙うのは「ファン化」である。 会員制度1900万人に対して平均で10%程度キャッシュバックしながら、ホテル予約サイトの宿泊料金設定は「アパ直」が最安値となるようにアパホテルが一括設定している。これによって直販サイトからの顧客流入を増やしてマージンを確保する』、「会員制度1900万人に対して平均で10%程度キャッシュバックしながら、ホテル予約サイトの宿泊料金設定は「アパ直」が最安値となるようにアパホテルが一括設定している。これによって直販サイトからの顧客流入を増やしてマージンを確保する」、なかなか賢明なやり方だ。
・『独自予約サイト利用でポイント  このロイヤルティプログラムでは、「年間利用実績(泊数等)に応じて5つの会員ステータスを用意している。「レギュラー」会員は最大9%だが最高位の「プレジデント」になると最大還元率が15%となる。これらは独自予約サイト「アパ直」経由の宿泊予約でアパポイントがたまるという仕組みだ。 また、「アパトリプルワンシステム」は、ホテル利用時スマホでアプリを使用すると「1ステップ予約」「1秒チェックイン」「1秒チェックアウト」ができる。 こと細かに顧客の使用シーンからペインを取り除いているのだ。 AIを含むITの活用とターゲット顧客に焦点を当てたビジネスモデル・イノベーションが成功の鍵である』、「AIを含むITの活用とターゲット顧客に焦点を当てたビジネスモデル・イノベーションが成功の鍵である」、大したものだ。
・『■ダイナミック・プライシングのリスクとアパホテルのコミュニケーション力  最後に「ダイナミック・プライシング」の解説をしておこう。 近年ではデジタル・マーケティングと相性のよいダイナミック・プライシングがさまざまな業界で活用されるようになってきた。従来、使用されていたアルゴリズムは、競合価格の監視や在庫量にあわせて価格を変動させる自動化レベルだった。 ここに数理、統計をもとに決定を補佐する「機械学習」や、AIが天気・イベントなどから需給に関連する変数をもとに収益最大化の選択肢を提示する「強化学習」が加わっている。 メリットは収益性の向上と在庫の低減にある。 一方でデメリットは、極端な価格変動を体感して「損した」「ぼったくりだ」など、顧客からの不信を生みかねず、ブランド棄損につながる可能性があることだ。 システム導入のコストも高く、解析のための人的能力が必要だし、一定量のデータ蓄積が必要で、成果が出るまでにそれなりの時間がかかることも懸念点である。 一時期、アパホテルに対して繁忙期の価格が高すぎるという不満がSNS上で炎上し、2017年に日経ビジネスが実施したホテル満足度調査では35社中最下位だった』、「一時期、アパホテルに対して繁忙期の価格が高すぎるという不満がSNS上で炎上し、2017年に日経ビジネスが実施したホテル満足度調査では35社中最下位だった」、こうしたデメリットを覚悟した上で、取り組んだようだ。
・『顧客満足度を向上させるために  しかし、日経ビジネスからのインタビュー**に対してアパグループの元谷外志雄代表の対応には、価格支配力への強い意思と戦略性を感じる。 一般論で言えば、価格設定がうまく機能して宿泊料金を上げれば、利用者の評価は下がる。 価格設定が不十分で、高く売れる日に安く売っていれば評価は上がる。 裏を返せば評価が低いということはそれだけ、うちは価格設定がうまいと言えなくもない。 だから非常に高い評価を維持しているホテルは、本来高く売れるのを安く売っているから評価が高いとも言える。 ……儲からないホテルはいいホテルと言えないと思います。 赤字で破綻するようなことがあれば、社会に対しても従業員にも迷惑をかけます。 ……いずれにしてもうちとしても利用者の評価を上げていこうと今、努力中です。 **『アパホテル、繁忙期の料金高騰に不満相次ぐ元谷外志雄代表・芙美子社長が夫婦で語る料金の秘密』日経ビジネス/2017年11月6日価格支配力とマーケティング 実際、顧客満足度を向上させるために価格の上限にキャップをかぶせて表示価格/正規料金の1.8倍とし、ポイントバック制度を活用して設備リニューアルを積極的に導入している。 また、各ホテルの支配人の評価基準をRevPAR/Revenue Per Available Room:販売可能な客室1室あたりの収益を稼働率×単価であらわす値としているため、稼働率が他社と比べて高い。 ダイナミック・プライシングの導入には顧客へのていねいな説明をするコミュニケーション能力が問われるのだが、同社はそれをやってのけているといえるだろう』、「ダイナミック・プライシングの導入には顧客へのていねいな説明をするコミュニケーション能力が問われるのだが、同社はそれをやってのけているといえるだろう」、経営陣の強い意志で導入したとすれば、立派なものだ。

第三に、本年3月1日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「シャトレーゼホテルに「汚部屋」批判…ホテル再生には“性悪説”が重要だ」を紹介しよう。
・『和洋菓子店「シャトレーゼ」を国内外で展開するシャトレーゼホールディングスが運営するホテルが話題です。スイーツでファミリー層を呼び込み稼働率をアップさせる一方で、「汚部屋」批判も集まっています。実は、シャトレーゼには「構造的な弱点」があるのです』、「シャトレーゼには「構造的な弱点」がある」、とはどういうことだろう。
・『シャトレーゼがホテル再生に着手 黒字化の裏で批判も…?  お菓子やケーキの製造直販で全国に1000店舗を展開するシャトレーゼが、ここ数年、ホテル再生を始めています。経営難に陥ったホテルや旅館を買収し、そこにシャトレーゼの価値を加えて再生するという面白い視点の再生事業です。 現在、全国に11カ所のシャトレーゼホテルを運営するところまで広がっていて、その多くで黒字化を実現したといいます。 一方でそれぞれのシャトレーゼホテルの口コミを調べてみると、全体的に評価はいい半面で、一部のホテルの評価がばらついていることに気づかされます。 実はわたしもコンサルタント歴が長いせいで、ホテル再生を手伝ったこともあります。その過程で、わたし自身はホテル再生には向いていないと思いました。 では、シャトレーゼはどうなのかというと、やはり一部のホテルは苦戦しているようです。 今回の記事ではそれらの口コミを切り口に、シャトレーゼのホテル再生事業について見ていきたいと思います』、「ホテル再生」事業と「お菓子やケーキの製造直販」事業にシナジーが働く部分が多いとは思えない、むしろマイナスの影響もあるのではなかろうか。
・『スイーツでファミリー層を呼び込み稼働率アップ! 同時に「引き算」も行っている  まず、シャトレーゼホテルとはどのようなものかを理解するために、長野駅から徒歩5分のところにあるシャトレーゼホテル長野についてご紹介したいと思います。 このホテルは、2022年9月まではメルパルク長野でした。もともと日本郵政グループのホテル事業でしたが、メルパルク全体を民営化後にワタベウェディングへ売却。そのうち長野のホテルをシャトレーゼが買収して、2023年7月にリニューアルオープンさせたものです。 シャトレーゼホテル長野では、15時~17時45分の間にチェックインするとウエルカムケーキとしてシャトレーゼのケーキをドリンク付きで食べることができます。さらに滞在中は、ホテルに2カ所あるアイスバーで好きなアイスバーが食べ放題。そして朝食のバイキングでも、店舗と同じ大きさのシャトレーゼのケーキが提供されます。 旅行サイトで見ると2人で宿泊する場合、朝食付きで一人7000円近辺が最安値となっています。今年4月には現在改装中の1階にシャトレーゼの店舗が開店する予定なので、そうなればお菓子好きにはたまらない宿泊施設になりそうです。 後述するように11のホテルはサービス内容が微妙に異なることもあるのですが、チェックイン時にウエルカムケーキが楽しめて、滞在中はアイスが食べ放題というサービスが滞在客に刺さっている様子です。 そのおかげで、シャトレーゼホテルになってからは家族客が増加したといいます。ホテル再生の方程式としては、これまでの固定客層に加えて新たにシャトレーゼのスイーツ好きな家族客が加わった分、稼働率が上がり、ホテル経営としては増収となり、黒字化しやすくなったというのが基本図式のようです。 ただ当然ですが、ホテル再生というのは簡単な仕事ではありません。前のオーナーがホテル業をやっていてうまくいかず、新しいオーナーはそれにお菓子事業を加えたらうまくいくというようなシンプルな話であれば、皆がそれをまねするはずです。 シャトレーゼホテルの場合、ホテル再生にはそのような足し算だけでなく、引き算もきちんと行っている様子です』、「チェックイン時にウエルカムケーキが楽しめて、滞在中はアイスが食べ放題というサービスが滞在客に刺さっている様子です。 そのおかげで、シャトレーゼホテルになってからは家族客が増加したといいます。ホテル再生の方程式としては、これまでの固定客層に加えて新たにシャトレーゼのスイーツ好きな家族客が加わった分、稼働率が上がり、ホテル経営としては増収となり、黒字化しやすくなったというのが基本図式のようです・・・ホテル再生というのは簡単な仕事ではありません。前のオーナーがホテル業をやっていてうまくいかず、新しいオーナーはそれにお菓子事業を加えたらうまくいくというようなシンプルな話であれば、皆がそれをまねするはずです。 シャトレーゼホテルの場合、ホテル再生にはそのような足し算だけでなく、引き算もきちんと行っている様子です」、なるほど。
・『フロントとスタッフ 「2つのムダ」をそぎ落としている  それは製造業が得意とする「ムダ取り」の手法を、サービス業であるホテル業に導入したという話です。 山梨県にあるシャトレーゼホテル旅館富士野屋は、もともと老舗の温泉旅館だったところをシャトレーゼホテルに改装したものです。その再生についてシャトレーゼの齊藤寛会長が言うには、ホテル業や旅館業には製造業から見たらムダがあるということです。 富士野屋について齊藤会長が指摘されたのは、旅館の顔でもあるフロントです。製造業の視点で見ればスペースが広いわりには結構ガラガラだというのです。それで、これは面白い発想だと思うのですが、その一番重要なスペースを玄関ではなくシャトレーゼグループの高級菓子店であるYATSUDOKIの店舗に改装するのです。 さらに、YATSUDOKIの店舗とレストランの稼働のピーク時間がずれているのもムダがあるといいます。レストランと店舗を隣接させることで、レストランが忙しい時間は店舗のスタッフが手伝えばいいし、その逆もできるというのです。 これらは製造業発想だといえば製造業発想なのですが、ある意味でサービス業の経営にとってはコロンブスの卵のような指摘です。そしてホテルの再生ですから、製造業的なムダ取りという引き算も大いに収益改善に貢献するはずです。 さて、全体としては以前の経営よりも良くなったというのがシャトレーゼホテルの評判ですが、口コミの中には厳しい意見も散見されます。それほど厳しくはないものも含めると、シャトレーゼホテルの改善点とおぼしき口コミは大きく分けて3種類あります』、「シャトレーゼホテルの改善点とおぼしき口コミは大きく分けて3種類あります」、具体的にはどんなものなのだろう。
・『シャトレーゼは組織風土的に横ぐしの運営が苦手  一つ目のかたまりとしては、これはシャトレーゼらしい批判だと思えるのですが、シャトレーゼホテルの間でサービスがそこそこ違うというのです。 あるホテルではケーキがバイキングで提供されていたのに、ここでは一つしかケーキが選べないとか、提供されるケーキが最高級のYATSUDOKIのもののホテルもあれば、安価な(でもおいしいのではありますが)シャトレーゼのホテルもあるといった具合です。 実はシャトレーゼホテルの公式ページを見ても、シャトレーゼホテルでどのようなサービスが受けられるのかは読み取れません。 予約をするためにじゃらんなどの予約サイトを訪れても、価格や部屋の広さ、設備の概要などは書いてあるのですが、顧客が一番知りたいスイーツのサービスの中身がわかる場所に書かれていない。一番ちゃんとわかるのが実は口コミのページだったりします。 そしてこれは、実にシャトレーゼらしい欠点だとわたしは感じました。シャトレーゼはホテル全体といった横ぐしの運営が組織風土的には苦手なのです。 シャトレーゼの社内はプレジデント制を敷いていて、社内に150人ものプレジデントがいらっしゃいます。株式会社シャトレーゼの場合、それぞれのプレジデントが洋菓子や和菓子など縦割りの責任者として責任を持つスタイルです。 わたしは経済評論家として、シャトレーゼは武田信玄型の経営をする企業だと考えています。 シャトレーゼの地元である山梨県甲府市は、武田信玄のおひざ元で、その信玄公は「人は城、人は石垣、人は堀」という言葉で知られるように、人を育て、その人が国そのものを形作る国造りをした人物です。たくさんの人数の社員に小さな縦割り組織の責任を持たせることで人を育てるというのは、信玄公的発想ではないでしょうか。 そのシャトレーゼが経営するホテルですから、おそらくそれぞれのホテルの再生をそれぞれの人物に責任を持たせているのでしょう。 いい意味でそれぞれのホテルが競争しながら再生させていくのでしょうけれども、そうなるとホテルごとに特色が出てくることになります。それもいいことなのですが、そのせいでブランドマネジメントという横ぐしが抜けてしまって、サービスが統一されていないというのが一つ目の課題でしょう。 さて、二番目にほぼすべてのシャトレーゼホテルの口コミに見られるのがハードウエア面の課題です。 ホテル買収後、リニューアル投資をしてシャトレーゼホテルとして再オープンするのですが、それでも「廊下のカーペットが古い」とか「共用部分の壁紙が汚れている」といった元々のホテルの古さが目に付く部分は気になるのでしょう。口コミでは、そのようなマイナスの指摘が散見されます。特に宿泊客が気にするのがWi-Fi設備が古い場合のクレームです。 限られた予算の中でホテルを再生しようとすると、当然ながらすべての改修に手が回るのは難しい。特にシャトレーゼホテルは昔からの経営でうまくいっていないホテルや旅館を改装するので、どうしても古い部分は目立ってしまうようです。この二番目のマイナス点は、わたしはそれほど気にすることではないように思います』、「たくさんの人数の社員に小さな縦割り組織の責任を持たせることで人を育てるというのは、信玄公的発想ではないでしょうか。 そのシャトレーゼが経営するホテルですから、おそらくそれぞれのホテルの再生をそれぞれの人物に責任を持たせているのでしょう。 いい意味でそれぞれのホテルが競争しながら再生させていくのでしょうけれども、そうなるとホテルごとに特色が出てくることになります。それもいいことなのですが、そのせいでブランドマネジメントという横ぐしが抜けてしまって、サービスが統一されていないというのが一つ目の課題でしょう・・・二番目にほぼすべてのシャトレーゼホテルの口コミに見られるのがハードウエア面の課題です。 ホテル買収後、リニューアル投資をしてシャトレーゼホテルとして再オープンするのですが、それでも「廊下のカーペットが古い」とか「共用部分の壁紙が汚れている」といった元々のホテルの古さが目に付く部分は気になるのでしょう」、食品企業にとっては、致命的なのではなかろうか。
・『M&Aの成功には「性悪説的な厳しさ」が必須  さて、三番目に一部のシャトレーゼホテルは他のシャトレーゼホテルよりもマイナスが大きな部分があります。それは働く人に起因する悪い口コミです。 具体例を挙げると、部屋が汚かったという口コミがあります。前の宿泊客の髪の毛が落ちていたとか、冷蔵庫に残り物が入っていたとか、きちんと清掃がなされていたらそんなことが起きないようなことが書き込まれているホテルがあります。 アメニティーが不足しているというような場合にクレームをつけたところ、「対応します」と言っておきながらチェックアウトまでに対応してもらえなかったという口コミもあります。 このようなホテルではスタッフの対応に対するクレームが多くみられることから、働く人に問題があるようです。コンサルタントとしての立場で眺めると、内部の人間関係がギスギスしている場合によくみられる症状です。 そしてこれは、ホテル再生でよくみられる課題でもあります。 ホテルの買収というものはホテル運営をする組織を一緒に買収するわけで、人も一緒に付いてきます。その人がちゃんと再生できないリスクは常にあるのです。 これはコンサル経験からくる私見ですが、M&Aがうまくいくケースは往々にして性悪説によって立った経営者が行うほうが多いように思えます。 経営が傾いた組織の中にはたちの悪い従業員も一定数いるわけで、それを早めに見抜いて厳しく処遇する、ないしはそういった従業員が悪さをしないように目を光らせて早めに手を打つといった厳しさが重要だったりするものです。 それに対して人に期待をし過ぎる経営や、人を信じやすい経営者は、M&Aの結果を出せないケースが結構あるのです。シャトレーゼは長い時間をかけて、従業員や取引先、契約農家など同じ考えを持つ人の数を増やし成長してきた会社です。 そういった強みを持つ会社は、実はM&Aによる事業再生は本質的には向いていないかもしれません。 それを避けるためには、M&Aの前に買収する企業の内部の人についてじっくりとデューデリジェンスをすべきなのですが、わずか2年ほどで11ものホテルを買収したという事実だけから推察するに、その過程が甘かったのかもしれません。 さて、このように口コミから見るといいことばかりではないように見えるシャトレーゼのホテル再生ですが、最初に申し上げたように、全体的には黒字になるホテルも多く、かつ宿泊客はシャトレーゼのファンになってくれる好循環を生んでいるようです。 若干気になるのが、ハイペースでの展開から起きるネガティブな反応だということではあるのですが、まだ再生も始まったばかり。シャトレーゼのファンとしては、うまく乗り越えてシャトレーゼホテルにも成功していただきたいと思います』、「スタッフの対応に対するクレームが多くみられることから、働く人に問題がある・・・前述の「元々のホテルの古さが目に付く部分」と合わせてみると、私には「M&A」に無理があるように思える。私も「シャトレーゼのファン」ではあるが、大きな混乱なく丸く収まってほしいものだ。 
タグ:「迫られる二つ目の選択肢が会社の売却、つまり「身売り」だ」、なるほど。 「当社は未上場で業績予想を出す必要がない。だから自分で考えられるリスク・リターン分析だけでやれた」と奈良田社長。インバウンド需要で数百億円の利益を得ていたことに加え、コロナ禍の初期段階で“止血”したからこそ「何とか生き残れた」という」、賢明な手仕舞いだ。 「第一リアルターは大胆に損切りを決断した。同社はインバウンド需要の追い風を受け、ビジネスホテルを建てて完成後に投資家に売るという事業に乗り出していた。このホテル建て売りビジネスに2000億円以上を投じ、50棟以上のホテルを建て、業績を急激に伸ばした。「その分野では日本トップだった」と同社の奈良田隆社長は自負する。 ところが、投資したうちの1500億円分程度まで売却が終わったところでコロナ禍に直面した。ここで奈良田社長は買った土地をすぐ損切りしてでも売却すると決め、残っていた建設計画をストップした。 「京浜急行電鉄から「京急EXイン羽田・穴守稲荷駅前」と「京急EXイン浅草橋駅前」(いずれも東京都)の2軒、西日本鉄道から「西鉄イン蒲田」(東京都)、「西鉄イン名古屋錦」(名古屋市)、「西鉄イン心斎橋」(大阪市)の3軒を買収した」、なるほど。 「インバウンド需要を当て込んで建てたビジネスホテルの事業が赤字に転落して足を引っ張ったためだ・・・アパグループにとってはチャンス到来。立て続けに電鉄会社のビジネスホテルを買収した」、なるほど。 ダイヤモンド・オンライン「【無料公開】アパが電鉄系を大量買収!「ゾンビ化ホテル」に突き付けられる3つの究極の選択」 (その7)(【無料公開】アパが電鉄系を大量買収!「ゾンビ化ホテル」に突き付けられる3つの究極の選択、アパホテル「コロナ禍の逆風でも業績好調」の戦略 「直販+ダイナミック・プライシング」で成功、シャトレーゼホテルに「汚部屋」批判…ホテル再生には“性悪説”が重要だ) ホテル 「リース方式の会社は身売りも難しいのだ」、なるほど。 「ビジネスホテルは供給過多な上に、出張需要はコロナ禍前のレベルに戻らないと見立てるホテル関係者は多い。そうなると1~2人用客室の利用者は限られ、インバウンドからの3~5人用客室のニーズの方が強くなる。実際、損切りを行った第一リアルターの奈良田社長も今後、客室が広めの新たなタイプのホテル開発にチャンスを見いだしている・・・客室面積が小さいホテルではこれができないから、なかなか買い手がつかない。 究極ともいえる三つの選択肢。このどれも実行できなければ、残された道は倒産である。コロナ禍前から事業の急拡大によって多額の有利子負債を抱えていたり、競争激化で業績が低迷していたところは、ことさら危ない」、「ビジネスホテル」を取り巻く環境は厳しそうだ。 東洋経済オンライン 菅野 誠二 氏による「アパホテル「コロナ禍の逆風でも業績好調」の戦略 「直販+ダイナミック・プライシング」で成功」 「アパホテル」は現在テレビCMを大量に流している。「「会社の出張費でポイントを貯め、それをプライベートの割引に活用することが出張族の密かな楽しみ」である。 価格弾力性が低く、同社クラスのホテル代なら、企業が支払える価格帯に設定する」、なるほど。 「業界の外からダイナミック・プライシングを持ち込む  このビジネスモデル・イノベーションは、もともとは航空業界の手法である。そのため、同社のダイナミック・プライシングは世界初の取り組みではないが、日本のビジネスホテル業界に本格的に持ち込んだ企業がアパホテルなのだ」、なるほど。 「会員制度1900万人に対して平均で10%程度キャッシュバックしながら、ホテル予約サイトの宿泊料金設定は「アパ直」が最安値となるようにアパホテルが一括設定している。これによって直販サイトからの顧客流入を増やしてマージンを確保する」、なかなか賢明なやり方だ。 「AIを含むITの活用とターゲット顧客に焦点を当てたビジネスモデル・イノベーションが成功の鍵である」、大したものだ。 「一時期、アパホテルに対して繁忙期の価格が高すぎるという不満がSNS上で炎上し、2017年に日経ビジネスが実施したホテル満足度調査では35社中最下位だった」、こうしたデメリットを覚悟した上で、取り組んだようだ。 「ダイナミック・プライシングの導入には顧客へのていねいな説明をするコミュニケーション能力が問われるのだが、同社はそれをやってのけているといえるだろう」、経営陣の強い意志で導入したとすれば、立派なものだ。 ダイヤモンド・オンライン 鈴木貴博氏による「シャトレーゼホテルに「汚部屋」批判…ホテル再生には“性悪説”が重要だ」 「ホテル再生」事業と「お菓子やケーキの製造直販」事業にシナジーが働く部分が多いとは思えない、むしろマイナスの影響もあるのではなかろうか。 「チェックイン時にウエルカムケーキが楽しめて、滞在中はアイスが食べ放題というサービスが滞在客に刺さっている様子です。 そのおかげで、シャトレーゼホテルになってからは家族客が増加したといいます。ホテル再生の方程式としては、これまでの固定客層に加えて新たにシャトレーゼのスイーツ好きな家族客が加わった分、稼働率が上がり、ホテル経営としては増収となり、黒字化しやすくなったというのが基本図式のようです・・・ホテル再生というのは簡単な仕事ではありません。 前のオーナーがホテル業をやっていてうまくいかず、新しいオーナーはそれにお菓子事業を加えたらうまくいくというようなシンプルな話であれば、皆がそれをまねするはずです。 シャトレーゼホテルの場合、ホテル再生にはそのような足し算だけでなく、引き算もきちんと行っている様子です」、なるほど。 「シャトレーゼホテルの改善点とおぼしき口コミは大きく分けて3種類あります」、具体的にはどんなものなのだろう。 「たくさんの人数の社員に小さな縦割り組織の責任を持たせることで人を育てるというのは、信玄公的発想ではないでしょうか。 そのシャトレーゼが経営するホテルですから、おそらくそれぞれのホテルの再生をそれぞれの人物に責任を持たせているのでしょう。 いい意味でそれぞれのホテルが競争しながら再生させていくのでしょうけれども、そうなるとホテルごとに特色が出てくることになります。それもいいことなのですが、そのせいでブランドマネジメントという横ぐしが抜けてしまって、サービスが統一されていないというのが一つ目の課題でしょう・ ・・二番目にほぼすべてのシャトレーゼホテルの口コミに見られるのがハードウエア面の課題です。 ホテル買収後、リニューアル投資をしてシャトレーゼホテルとして再オープンするのですが、それでも「廊下のカーペットが古い」とか「共用部分の壁紙が汚れている」といった元々のホテルの古さが目に付く部分は気になるのでしょう」、食品企業にとっては、致命的なのではなかろうか。 「スタッフの対応に対するクレームが多くみられることから、働く人に問題がある・・・前述の「元々のホテルの古さが目に付く部分」と合わせてみると、私には「M&A」に無理があるように思える。私も「シャトレーゼのファン」ではあるが、大きな混乱なく丸く収まってほしいものだ。
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自動車(一般)(その6)(繰り返されるトヨタ系列不正問題に見る “病” の根深さ… 日本的企業が陥る「機能不全」の根本原因とは、トヨタ・豊田章男会長に社外取締役が実名で苦言 「副社長を次々放逐して、率直に物を言う人がいなくなった」 《グループ3社で不正が連続発覚》、文春砲がトヨタに炸裂も 豊田章男は「凡人の戦略」を貫く天才だ) [産業動向]

自動車(一般)については、2021年7月6日に取上げた。今日は、(その6)(繰り返されるトヨタ系列不正問題に見る “病” の根深さ… 日本的企業が陥る「機能不全」の根本原因とは、トヨタ・豊田章男会長に社外取締役が実名で苦言 「副社長を次々放逐して、率直に物を言う人がいなくなった」 《グループ3社で不正が連続発覚》、文春砲がトヨタに炸裂も 豊田章男は「凡人の戦略」を貫く天才だ)である。

先ずは、本年2月15日付け弁護士JPニュース「繰り返されるトヨタ系列不正問題に見る “病” の根深さ… 日本的企業が陥る「機能不全」の根本原因とは」を紹介しよう。
https://www.ben54.jp/news/890
・『2022年に公表された日野自動車のエンジンの排ガス処理装置に関わる試験における認証不正に始まり、昨年末のダイハツ工業、今年に入ってからの豊田自動織機と、トヨタ系列の不祥事が立て続けに公表された。日本を代表する名門企業でいったい何が起きているのか…』、興味深そうだ。
・『セクショナリズム、タイト過ぎる納期の末路  日野自動車では、「みんなでクルマをつくっていない」という言葉に象徴されるセクショナリズムが指摘されている。各部署が自分の役割を果たすことに懸命で、他を振り返る余裕がなく、孤立し追い込まれた部署は不正を行うしかなかったのだ。 ダイハツ工業では、タイトすぎる納期にもかかわらず管理職が現場を支援できなかったことが指摘されている。たとえば進捗の大幅遅延で上司に相談すると、「で?」という返事しか返ってこなかったという。コーチング手法の誤った用い方だ。 このような大きな相談で、「で、君はその問題をどのように解決するつもりかね?」と質問で返されても部下は返答のしようがない。八方ふさがりで思いつめているからこそ、上司に相談しているのだ。結果、部下は「相談しても無駄」とあきらめ、不正を選択してしまった…。 豊田自動織機についても類似の状況がみられ、管理職の機能不全が指摘されている』、「日野自動車では」、「進捗の大幅遅延で上司に相談すると、「で?」という返事しか返ってこなかった」、「結果、部下は「相談しても無駄」とあきらめ、不正を選択」、マネジメントがこんな体たらくでは悲劇的だ。
・『“トヨタ”でも問題が生じる製造業の病の根深さ  「問題は発生したのと同じ次元では解決できない」(アインシュタイン) この原因を現場のコンプライアンス意識の低さやリスク感度の鈍さに求めるのは酷である。では真の原因はどこにあるのか。 この3社に対する第三者委員会報告書では管理の仕組みや教育不足など、多岐にわたって問題原因が指摘されており、それぞれ頷けるものばかりである。 ではそれらの問題を個々につぶしていけば、不正の再発は防げるのだろうか。考えてみてほしい。今回の一連の事件を起こしたのはトヨタ系列である。高度な管理システムの構築では、世界的に定評ある企業群なのだ。 それでも問題が生じてしまった…。ということは、より根本的な部分に原因を求めるしかない。改めてアインシュタインが残した言葉を改めて噛みしめるべきだろう』、「今回の一連の事件を起こしたのはトヨタ系列である。高度な管理システムの構築では、世界的に定評ある企業群なのだ。 それでも問題が生じてしまった…。ということは、より根本的な部分に原因を求めるしかない。改めてアインシュタインが残した言葉を改めて噛みしめるべきだろう」、その通りだ。
・『「任務重視型」をいまだ引きずる日本の組織  元防衛大学校教官の関口高史氏によると軍隊には『環境重視型』と『任務重視型』の二種類があるという。前者はそのときどきの環境に応じてリソース確保を行い、それが出来ないときは任務の内容を柔軟に変更する。それに対して後者は最初に任務ありきで、環境変化があっても「万難を排し、任務を遂行せよ」となる。旧日本陸軍は後者であり、悪名高きインパール作戦のように、「弾薬も食料も送れない。兵力は1/10まで減ったかもしれないが、それでも天長節(天皇誕生日)までにインパールを占領せよ」といった上級司令部からの命令がまかり通る。「ちょっと何言ってるのかわからない」である。「無い袖は振れない」というリソースの制約もあるが、日本人の命令に対する従順さへの甘えもあるだろう』、トヨタに限らず、日本企業の多くは『任務重視型』だ。
・『値引き、厳しい納期、人材不足など多重苦で成果だけは強く求められる理不尽  これは戦争時の話だが、現代の日本企業でも同じことが言える。最近、管理職向けコンプライアンス研修の受講者から、「そんなこと、中間管理職に言われてもね」という冷めた声が聞かれることが増えてきた。これが必ずしも管理職の職責放棄とはいえない点が問題である。 値引きを求められる、納期と品質要求は厳しくなる、必要な人材は与えられず、逆に育てた部下をよそに引き抜かれるという多重苦の状況で、成果実現(任務達成)だけが強く求められる。 経営陣に訴えても、「そこを何とかするのが君の仕事だ。期待してるぞ」という激励の名を借りた責任転嫁が返ってくるばかり。管理職の機能不全の背景に経営陣の機能不全が存在するのである。 これで不正の誘惑に負けなかった多くの管理職こそ賞賛されるべきだ。まさに旧陸軍の悪弊が、形を変えて現代の日本企業にも綿々と受け継がれているのである』、「管理職の機能不全の背景に経営陣の機能不全が存在するのである。 これで不正の誘惑に負けなかった多くの管理職こそ賞賛されるべきだ。まさに旧陸軍の悪弊が、形を変えて現代の日本企業にも綿々と受け継がれている」、その通りだ。
・『もはや経営陣が腹をくくって判断するしかない末期症状  いままさに日本企業は任務重視型から環境重視型へ、経営と組織運営の方向転換を迫られている。 トヨタ系列の3社の報告書に共通するのは、経営陣が現場の事情を理解せず、リソース不足を無視して当初の任務達成だけを強く求めているとの指摘である。 開発期間の短縮が必要なら、そのためのリソースを追加投入しなければならない。そのリソースを新たに調達できないなら他の開発案件から引き抜くしかない。 だとすれば一部の開発案件を中止や延期するしかないが、この判断は経営陣にしかできない。経営陣が腹をくくるべきときに「現場で何とかしろ」で済ませるから問題が起きる。難しい判断から逃げるような者を責任ある地位につけてはならない。 ここまで読んできて、「まさに当社の話を聞いているようだ」と感じている読者も多いことだろう。現場レベルの内部統制ももちろん重要だが、それだけでいまのコンプライアンス問題は防げない。経営陣が腹をくくる。それが本質的な問題解決への処方箋であろう』、「トヨタ系列の3社の報告書に共通するのは、経営陣が現場の事情を理解せず、リソース不足を無視して当初の任務達成だけを強く求めているとの指摘・・・開発期間の短縮が必要なら、そのためのリソースを追加投入しなければならない。そのリソースを新たに調達できないなら他の開発案件から引き抜くしかない。 だとすれば一部の開発案件を中止や延期するしかないが、この判断は経営陣にしかできない。経営陣が腹をくくるべきときに「現場で何とかしろ」で済ませるから問題が起きる。難しい判断から逃げるような者を責任ある地位につけてはならない・・・経営陣が腹をくくる。それが本質的な問題解決への処方箋であろう」、同感である。

次に、本年2月21日付け文春オンライン「トヨタ・豊田章男会長に社外取締役が実名で苦言 「副社長を次々放逐して、率直に物を言う人がいなくなった」 《グループ3社で不正が連続発覚》」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/69100
・『グループ会社3社での検査不正が相次いで発覚したトヨタ自動車。同社の社外取締役を務める菅原郁郎氏(66)が「週刊文春」の取材に応じ、豊田章男会長(67)の経営姿勢に苦言を呈した。 創業家出身で絶対的な存在とされる豊田会長に対する社外取締役からの苦言は、大きな波紋を呼びそうだ』、興味深そうだ。
・『豊田会長は「トヨタにものが言いづらい点もあると思う」  トヨタのグループ会社による検査不正は昨年末から立て続けに明るみに出た。子会社のダイハツ工業は昨年12月20日、車両の認証試験で過去30年以上、データの捏造や改ざんを行っていた事実を公表。「ミライース」など10車種で出荷停止を余儀なくされた。 グループ会社の豊田自動織機も1月29日、トヨタ車「ハイエース」などのエンジン認証試験で不正があった事実を公表。さらに子会社の日野自動車でも2022年、トラックなどのエンジン燃費試験で不正があったことが報告されている。 1月30日に行われたグループビジョン説明会で、豊田会長は「極めて重いことだと受け止めております」と謝罪するとともに、不正を招いた背景には「トヨタにものが言いづらい点もあると思う」などと述べた』、「トヨタ」にものが言いづらい点もあると思う」、と「豊田会長」自身が述懐するのは、どう考えても問題だ。
・『「章男さんは変わってしまった」と菅原氏   こうした中、「週刊文春」の取材に応じたのが、2018年からトヨタの社外取締役を務める菅原氏だ。1981年に旧通産省に入省。経産省製造産業局長などを歴任し、2015年に事務次官に就任。退任後、内閣官房参与を経て、現在のポストに就いた。トヨタの取締役会は10人で構成され、菅原氏は4人いる社外取締役の一人だ。 Q:菅原さんは、章男氏についてどう見ている? A:「章男さんは変わってしまった。昔は一家言持っている人たちが周りにいた。でも2020年頃からかな、副社長を次々放逐したり、3人置くと言ったり。それで置いた人もまたいなくなって。章男さんに引き上げられた人ばかりで、率直に物を言う人がいなくなりました」』、「章男さんに引き上げられた人ばかりで、率直に物を言う人がいなくなりました」、これでは取締役会として本来の役割を果たしておらず、組織としては由々しい問題だ。
・『社長の下に執行役員が21人並ぶ異例の人事  トヨタは2020年4月、「若手役員との接点を増やす」などの理由で、副社長ポスト(6人)を廃止。豊田社長(当時)の下に同格の執行役員が21人並ぶ人事に踏み切った。その後、2022年4月には「外部環境の変化に対応する」などの理由で副社長ポスト(3人)を復活。 ところが、昨年4月にその3人を交代させるなど、毎年のように異例とも呼べる人事を断行してきた。 Q:イエスマンで固めたい思惑が? A:「結果として、そうなったんじゃないかな」 2月21日(水)12時配信の「週刊文春 電子版」および2月22日(木)発売の「週刊文春」では、菅原氏とのより詳しい一問一答のほか、“ダイハツの天皇”こと白水宏典元会長や日野自動車社長への直撃、一般には殆ど知られていないトヨタの“迎賓館”の存在、社内で疑念の声が上がる豊田会長と元レースクイーンや元コンパニオンとの「本当の関係」、豊田会長が日経新聞を“拒絶”するようになった経緯など、トヨタグループを巡る問題について8ページにわたって特集している』、「豊田会長が日経新聞を“拒絶”するようになった経緯」、「豊田会長」は自分の言うことを聞かない「日経新聞」を遠ざけているとすれば、偉ぶった経営者の悪いクセだ。

第三に、2月29日付けダイヤモンド・オンライン イトモス研究所所長の小倉健一氏による「文春砲がトヨタに炸裂も、豊田章男は「凡人の戦略」を貫く天才だ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/338624
・『週刊文春電子版は「【巨弾レポート】元コンパニオンの重用、日経新聞を拒絶…豊田章男・トヨタ会長はなぜ不正を招いたのか《グループ3社で連続発覚》」特集で、トヨタに厳しい姿勢を見せている。最新の国内外のトヨタ報道を読み解く』、興味深そうだ。
・『北朝鮮でトヨタ車が 愛用される理由  北朝鮮が「トヨタ」を愛していることはあまり知られていない。昨年の北朝鮮の金正恩委員長とロシアのプーチン大統領が首脳会談を行った後で、「特別な個人的関係」の証しとして、プーチン大統領も専用リムジンとして使うロシア車の「アウルス・セナート」を贈呈している。 これまで、金委員長は、メルセデス・マイバッハのS650セダンをイタリアの企業が装甲を施したものに乗車していた。そして面白いことに、金委員長の随行員たちは皆、「トヨタ」に乗っていることが確認されている。 <国連の制裁は、贈り物であっても北朝鮮への車の供給を禁止していますが、金正恩はこれらを回避して外国製車のコレクションを維持するのに何の問題もありませんでした。金正恩のお気に入りの車はメルセデス・マイバッハS650セダンだ。金正恩はマイバッハに乗り、レクサスやトヨタのスポーツユーティリティビークルの車列と一緒に行列を組んでいます(英タイムズ紙『ウラジーミル・プーチンから金正恩への最新の贈り物』2月20日)> 車列を組むクルマといえば、実用性を重視しているということが推測されるわけで、トヨタ車へのアツい信頼が北朝鮮からも寄せられていることが明らかになった。 今回は、トヨタについて述べたい』、「金委員長の随行員たちは皆、「トヨタ」に乗っていることが確認されている・・・トヨタ車へのアツい信頼が北朝鮮からも寄せられている」、なるほど。
・『トランプ氏勝利で 電気自動車の普及が止まる可能性  今、世界では、電気自動車が、果たして本当にエンジン車に取って代わることができる存在なのかが、激しく議論されている。少し前までは、いずれガソリン車がなくなると言われていたが、電気自動車がこれ以上普及発展するためには、多くの問題を抱えていることがわかっており、それが技術的に解決できるのかどうかということだ。世界は、混沌としている。 <トランプが大統領選挙に勝利すれば、アメリカの電気自動車ブームは終わりを迎える。トランプの選挙勝利により、アメリカにおける電気自動車に対する風向きはおそらく大きく変わるだろう。2023年秋にミシガン州の自動車産業のストライキ中の労働者たちの前で、トランプは電気自動車に警鐘を鳴らし、ジョー・バイデンによるその支援を軽蔑する発言をした。 トランプは、ストライキを行っている労働者たちに対し、大手自動車会社との交渉で良い結果を得たとしても、電気自動車が彼らを無用の長物にするだろうから、それがどうでも良いと述べた。トランプは労働者たちに向かって、「お前たちが何を手に入れようと、2年後には全員がクビだ」と叫んだ (独経済メディアDeutsche Wirtschaftsnachrichten「電気自動車は内燃機関よりも故障しやすい」2月19日)> 米大統領選挙は、今日投票が行われれば、トランプ氏はバイデン大統領に勝利するような情勢であり、電気自動車の普及は止まることになるかもしれない。しかし、EU(欧州連合)では真逆の情勢だ』、「トランプ氏」が「内燃機関」優遇を続けても、「EU」では「電気自動車」と股裂き状態だ。
・『電気自動車にかじを切ったドイツ 失敗すれば「自らの足を撃つことに」  <ドイツやヨーロッパが「電気自動車」に全てを懸けており、2035年からはEU内での新車のガソリン車販売が不可能になる見込みである。中国は電気自動車とガソリン車の両方を追求している。つまり、電気自動車とガソリン車の二兎を追うのである。中国はガソリン車の禁止を排除している。ドイツおよびヨーロッパの自動車メーカーの電気自動車戦略が成功するか、そして米国、インド、ロシア、南米、アフリカ、東南アジアのような大国でガソリン車の禁止が実際に行われるかは疑問である。もしそうならなければ、ドイツの政策と自動車メーカーは自らの足を撃つことになる。その結果、ドイツの鍵産業と経済拠点としてのドイツにとって壊滅的な影響を与えるだろう(同独メディア)>  これには少し説明が必要かもしれないが、EUでは、2035年以降、環境にやさしい合成燃料(実用化・商用化は40年頃とされている)を使うエンジン車だけは例外として、エンジン車の新車販売を禁止する方針を取っているのだ。フォルクスワーゲンやメルセデス・ベンツがあるドイツでは、頭の痛い問題となってくるであろう。 米国の消費者保護団体「コンシューマー・レポート」の会員を対象に毎年実施している、自動車の信頼性に関する調査によれば、電気自動車は従来のエンジン車よりも80%近く問題が多く、一般的に信頼性が低いことがわかっている。エンジン車であれば5分もすれば満杯になるガソリンの供給も、電気自動車ではだいぶ時間がかかる。寒冷地では航続距離が極端に短くなることも負担となる』、「電気自動車」の問題点は全固体電池の実用化などで今後ある程度改善が見込まれる。
・『「エンジンやるぞ!」 豊田章男の檄  こんな先行きが不透明な状況で、トヨタは何を考えているのか。その手がかりは、トヨタ自動車会長の豊田章男氏の発言にある。 <今、オートサロンの途中ですが、昨日もその会場で「エンジン(編集部注:おそらくエンジン車のこと)やるぞ!」とぶち上げました。いくらBEV(バッテリー電気自動車)が進んだとしても、市場のシェアの3割だと思います。そうすると、あとの7割はHEV(ハイブリッドカー)なり、FCEV(水素を使った燃料電池車)なり、水素エンジンなり。そして、エンジン車は必ず残ると思います。 それは規制値、政治の力ではなく、お客様や市場が決めることだと思います。 だから、全世界で勝負をしているトヨタ自動車は、フルラインナップで、マルチパスウェイをやらせていただいております(第40回NPS研究会の総会・「トヨタイムズ」1月23日)>  マルチパスウェイは、手段よりも目標到達を大事にする考え方だ。トヨタの例でいえば、電気自動車を普及することにこだわらず、エンジン性能の向上、燃料電池車、ハイブリッドカーなど、さまざまな手段でカーボンニュートラルを達成していこうということだ。エンジン部品を製造する工場・会社に、銀行がお金を貸さないという事態が発生していて、トヨタとしても強い危機感を持って、「全方位外交」を続けていくということになる』、「いくらBEV・・・が進んだとしても、市場のシェアの3割だと思います。そうすると、あとの7割はHEV・・・なり、FCEV・・・なり、水素エンジンなり。そして、エンジン車は必ず残ると思います。 それは規制値、政治の力ではなく、お客様や市場が決めることだと思います・・・トヨタ自動車は、フルラインナップで、マルチパスウェイをやらせていただいております」、「トヨタ」は余裕たっぷりのようだ。
・『「凡人中の凡人戦略」を貫く豊田氏は 称賛されてしかるべき  全方位外交、悪く言えば、八方美人であり、全てが中途半端になってしまう懸念が起きるのだが、豊田氏はそんなことは臆せずやっている。トヨタ自動車内のフルラインナップ戦略をはじめとして、マツダ、スズキ、SUBARU、ダイハツ工業、いすゞ自動車に巨額の出資をし、通信業界のNTT、KDDIに出資、ソフトバンクとは「モネ・テクノロジーズ」を立ち上げている。 豊田氏は「町工場から世界規模の自動車メーカーに成長しても、それを忘れてはならない。自分たちはクルマ屋だ。もっといいクルマをつくって、お客様に喜んでもらおう」と言っている。この言葉の意味を、全方位外交を貫いた経営スタイルと重ねて解釈をすれば、こうではないだろうか。 「将来のことは予測不可能で、EVの時代が来るかもしれないし、来ないかもしれない。フルラインナップで何が起きても大丈夫な構えをしておこう」。何か一つの分野に懸けることは一切やろうともしてこなかった、自分たちができる当たり前のことを繰り返すという「凡人中の凡人戦略」を貫いたのは、やはりこの時代に合っているし、称賛されてしかるべきではないだろうか』、「自分たちができる当たり前のことを繰り返すという「凡人中の凡人戦略」を貫いたのは、やはりこの時代に合っているし、称賛されてしかるべきではないだろうか」、いささか褒め過ぎのようだ。
・『元コンパニオンを秘書にしたって 別にいいではないか  週刊文春電子版(2月21日)の「【巨弾レポート】元コンパニオンの重用、日経新聞を拒絶…豊田章男・トヨタ会長はなぜ不正を招いたのか《グループ3社で連続発覚》」特集で、トヨタについて力の入った取材をしている。その中でも、経産省の元事務次官で、18年から社外取締役を務めている菅原郁郎(いくろう)氏のコメントは、トヨタに相当厳しいものがあった。 <昔は一家言持っている人たちが周りにいた。でも20年頃からかな、副社長を次々放逐したり、3人置くと言ったり。それで置いた人もまたいなくなって。章男さんに引き上げられた人ばかりで、率直に物を言う人がいなくなりました> トヨタは、2024年3月期の連結業績予想で、純利益は前年比83.6%増となり、過去最高の4兆5000億円となる見通しだ。これほどの過去最高益を上げてもガバナンスが悪いかのように批判を受けるのは、さすがにかわいそうに感じる。元コンパニオンを秘書にしたって別にいいではないか。赤字だった企業を利益4兆円にしたのだから、稀代の名経営者だ。誰も言ってあげないが、数字だけ見れば、豊田氏は天才ではないのか。 EVやカーボンニュートラルを巡って政治的なリスクを消すには、トヨタのように全てに手を出していくのが一番と思われる。そしてこんなことができるのも日本ではトヨタだけだ。EVをつぶすというトランプリスク、EVだけしかダメというEUリスクに直面したとき、どう転んでも勝てるトヨタの一人勝ちの時代がやってくるだろう。腐敗しきったダイハツのトヨタによる再建が楽しみでならない』、「これほどの過去最高益を上げてもガバナンスが悪いかのように批判を受けるのは、さすがにかわいそうに感じる。元コンパニオンを秘書にしたって別にいいではないか。赤字だった企業を利益4兆円にしたのだから、稀代の名経営者だ。誰も言ってあげないが、数字だけ見れば、豊田氏は天才ではないのか」、ここまで褒め言葉が並ぶと、著者の良識を疑いたくなる。「ダイハツ」を「腐敗させた」のも「トヨタ」の責任なのではなかろうか。ここで「トヨタ」経営陣に恩を売っておこうという下心が見え隠れするようだ。 
タグ:自動車(一般) (その6)(繰り返されるトヨタ系列不正問題に見る “病” の根深さ… 日本的企業が陥る「機能不全」の根本原因とは、トヨタ・豊田章男会長に社外取締役が実名で苦言 「副社長を次々放逐して、率直に物を言う人がいなくなった」 《グループ3社で不正が連続発覚》、文春砲がトヨタに炸裂も 豊田章男は「凡人の戦略」を貫く天才だ) 弁護士JPニュース「繰り返されるトヨタ系列不正問題に見る “病” の根深さ… 日本的企業が陥る「機能不全」の根本原因とは」 「日野自動車では」、「進捗の大幅遅延で上司に相談すると、「で?」という返事しか返ってこなかった」、「結果、部下は「相談しても無駄」とあきらめ、不正を選択」、マネジメントがこんな体たらくでは悲劇的だ。 「今回の一連の事件を起こしたのはトヨタ系列である。高度な管理システムの構築では、世界的に定評ある企業群なのだ。 それでも問題が生じてしまった…。ということは、より根本的な部分に原因を求めるしかない。改めてアインシュタインが残した言葉を改めて噛みしめるべきだろう」、その通りだ。 トヨタに限らず、日本企業の多くは『任務重視型』だ。 「管理職の機能不全の背景に経営陣の機能不全が存在するのである。 これで不正の誘惑に負けなかった多くの管理職こそ賞賛されるべきだ。まさに旧陸軍の悪弊が、形を変えて現代の日本企業にも綿々と受け継がれている」、その通りだ。 「トヨタ系列の3社の報告書に共通するのは、経営陣が現場の事情を理解せず、リソース不足を無視して当初の任務達成だけを強く求めているとの指摘・・・開発期間の短縮が必要なら、そのためのリソースを追加投入しなければならない。そのリソースを新たに調達できないなら他の開発案件から引き抜くしかない。 だとすれば一部の開発案件を中止や延期するしかないが、この判断は経営陣にしかできない。経営陣が腹をくくるべきときに「現場で何とかしろ」で済ませるから問題が起きる。難しい判断から逃げるような者を責任ある地位につけてはならない・・・経営陣が腹をくくる。それが本質的な問題解決への処方箋であろう」、同感である。 文春オンライン「トヨタ・豊田章男会長に社外取締役が実名で苦言 「副社長を次々放逐して、率直に物を言う人がいなくなった」 《グループ3社で不正が連続発覚》」 「トヨタ」にものが言いづらい点もあると思う」、と「豊田会長」自身が述懐するのは、どう考えても問題だ。 「章男さんに引き上げられた人ばかりで、率直に物を言う人がいなくなりました」、これでは取締役会として本来の役割を果たしておらず、組織としては由々しい問題だ。 「豊田会長が日経新聞を“拒絶”するようになった経緯」、「豊田会長」は自分の言うことを聞かない「日経新聞」を遠ざけているとすれば、偉ぶった経営者の悪いクセだ。 ダイヤモンド・オンライン 小倉健一氏による「文春砲がトヨタに炸裂も、豊田章男は「凡人の戦略」を貫く天才だ」 「金委員長の随行員たちは皆、「トヨタ」に乗っていることが確認されている・・・トヨタ車へのアツい信頼が北朝鮮からも寄せられている」、なるほど。 「トランプ氏」が「内燃機関」優遇を続けても、「EU」では「電気自動車」と股裂き状態だ。 「電気自動車」の問題点は全固体電池の実用化などで今後ある程度改善が見込まれる。 「いくらBEV・・・が進んだとしても、市場のシェアの3割だと思います。そうすると、あとの7割はHEV・・・なり、FCEV・・・なり、水素エンジンなり。そして、エンジン車は必ず残ると思います。 それは規制値、政治の力ではなく、お客様や市場が決めることだと思います・・・ トヨタ自動車は、フルラインナップで、マルチパスウェイをやらせていただいております」、「トヨタ」は余裕たっぷりのようだ。 「これほどの過去最高益を上げてもガバナンスが悪いかのように批判を受けるのは、さすがにかわいそうに感じる。元コンパニオンを秘書にしたって別にいいではないか。赤字だった企業を利益4兆円にしたのだから、稀代の名経営者だ。誰も言ってあげないが、数字だけ見れば、豊田氏は天才ではないのか」、ここまで褒め言葉が並ぶと、著者の良識を疑いたくなる。 「ダイハツ」を「腐敗させた」のも「トヨタ」の責任なのではなかろうか。ここで「トヨタ」経営陣に恩を売っておこうという下心が見え隠れするようだ。
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今日は更新を休むので、明日にご期待を!

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