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新国立競技場問題(その2) [社会]

新国立競技場問題については、このブログの5月27日で取上げたが、その後のドタバタ劇が続いているので、今日はその2である。
建設費は昨年想定の1625億円から2520億円に膨らみ、さらに追加費用も予想、競技場の収支も黒字幅が1/10に縮小。 さすがに、日経新聞ですら10日付けの社説で「この新国立競技場を未来へ引き渡せるか」と批判。すると、同日の夕刊で、第一義的な責任がある筈の下村文科相は「新国立競技場、デザイン選考検証へ 「値段と別ならずさん」」と、恥ずかしげもなく他人事のように責任転嫁の批判までする始末。とんだ「道化」である。他方で、今日付けの日経新聞で、安部首相は「新国立競技場の設計変更は「間に合わない」ので困難」と言明
 
そこで、今回の混迷の背景を解説する記事として、先ずは、7月9日付け日刊ゲンダイ「デタラメ「新国立」 総工費・アーチ代・修繕費で5千億円超も」のポイントを紹介したい。
・ハッキリ分かったことは3つ。(1)大会後に開閉式屋根の設置などで追加費用が260億円以上かかる。(2)大規模修繕費が当初試算の656億円から1046億円に増える。(3)3.3億円と見込んでいた大会後の年間収支が1/10の3800万円の黒字に落ち込む
・税金を払う国民にはマイナスしかないのに、森元首相に至っては「私は極めて妥当な値段だと思う。大事な視点を忘れて(反対の)論陣を張るマスコミはおかしい」と責任転嫁
・当初計画より900億円高くなった理由を、政府関係者は「消費増税と建設資材の高騰」と説明してきたが、そのうちの765億円が「キールアーチ」(弓形の巨大な2本の柱)の値段と認めた
・建築エコノミストの森山高至氏は、「ザハ・ハディド氏がデザインした『キールアーチ』は全長370メートルあり、東京スカイツリーの半分ほどの大きさに匹敵。しかも、新国立の建設現場は渋谷川の流れていた湿地帯。地盤をどれだけ掘ればアーチがしっかり固定するか分からないし、そのためにクレーンが何台必要なのかも不明。ですから本当に765億円で収まるかも分かりません。場合によって2倍、3倍と膨れ上がる可能性」
・“アーチ代”が今の3倍に膨らめば2295億円。これにスタンド代1570億円が加わり、大規模修繕費1000億円、開閉式屋根の設置台が加われば、アッという間に5000億円を突破
・スポーツ評論家の玉木正之氏が言う。「深刻なのは新国立の設計図が未完成なこと。キールアーチだけでなく、建設物を載せる大きく平らな土台を造るのにいくら必要かの詳細な費用も分かっていません。総工費が増えれば大規模修繕費や維持費もかさむ。2520億円は始まりであって、これからまだまだ雪ダルマ式に膨れ上がる恐れがあります」
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/161558/1

次に、7月11日付けダイヤモンド・オンライン「新国立競技場2520億円をゴリ押ししたのは誰か」のポイントを紹介しよう。
・現在、建設費に確保されている財源は626億円。国が392億、スポーツ振興基金が125億円、totoの売り上げ金から109億円を供出
・これに、新国立競技場のネーミングライツ(命名権)で200億、totoの売り上げから660億を供出する予定だが、それでもぜんぜん足らず、文部科学省は東京都に500億を負担するよう言い出した。舛添要一都知事は寝耳に水だったようだが、おカネがなければ税金があるじゃん、とお役人さんが得意とする身勝手作戦がオリンピックでも展開されようとしている。それでも、まだ534億円もの建設費が不足
・「JSC(スポーツ振興センター)も文科省の官僚も最悪だ。都市計画の変更などは難しいと思っていたが、まさか本体をつくる能力もないとは」政府関係者は呆れているそうだ
・「2016年の招致では、『世界一コンパクトな五輪』を掲げ、1964年の東京五輪のレガシー(遺産)である旧国立競技場とベイエリアを結ぶ晴海に新スタジアムをつくるというプラン。旧国立競技場を残し、二つのスタジアムを併用する理想的なプランでしたが、招致失敗でこの案は消えた
・2020年招致に向けて再始動する過程で、新国立競技場を建設するプランが浮上」。「JSCは、旧国立競技場に耐震補強を施し、改修して継続利用する“改修案”を検討。JSCは設計会社に依頼して、改修案が作成。この案では、収容人員は約7万人(中略)予算は777億円」
・オリンピックのメインスタジアム建設費は、アテネが約300億円、北京が約650億円、ロンドンが約700億円と言われているから、777億は妥当な数字ではあった。2012年3月、各分野十四人のメンバーからなる『国立競技場将来構想有識者会議』が設立。発足当時は「8万人収容」「開閉式の屋根」「可動式観客席の導入」等々の方針が決められた
・問題となる国際デザインコンクール――、いわゆるコンペの実施を発表したのがその年の7月だ。審査委員長には建築家の安藤忠雄氏が就任するが、このときから新国立競技場建設をめぐる迷走が始まる。コンペの発表が7月。応募の締め切りが9月25日という異例のスケジュール。オリンピックのメインスタジアムにして日本の国立競技場を決めるコンペなのに、応募期間がわずかに2ヵ月しかないというのは、実に不可解
・「コンペの応募資格が、収容人数1.5万人以上のスタジアム設計経験者と、国際的な建築賞を受賞したことのある人物に限定、そのこと自体かなり異例」(東京電機大学の今川憲英教授)
・応募は、海外から34点、国内から12点の計46点。これをブラインドで一次審査にかけ、二次審査には11点(海外7・国内4)が残った。二次審査は、各委員(日本人8・海外2)が良いものから順に三点を選ぶ方式が取り入れられたが、不可解なのは、この後の審査過程だ
・「ザハ案(今回採用された女性建築家)以外、豪州と日本の設計事務所の案が残りました。ここから安藤さんの意向で日本案が外され、最後は二案になる“決選投票”となった」(スポーツ紙デスク)。 「決選投票は4対4で割れてしまい、その後もめいめいが意見を述べましたが、いったん休憩。皆が席を離れた後、ひとりの委員が安藤さんに『こういうときは委員長が決めるべきでしょう』と話しかけた。実際、それ以上繰り返しても結果は変わりそうになく、安藤さんも『わかりました』と応じていました」
・安藤忠雄氏は、さきの有識者会議のメンバーでもある。「だから他の委員が詳しく知り得ない“上の意向”にも通じていたのでしょう。一時間ほどの休憩をはさみ、再び委員が席に着くと、安藤さんは『日本はいま、たいへんな困難の中にある。非常につらいムードを払拭し、未来の日本人全体の希望になるような建物にしたい』という趣旨のことを口にし、ザハ案を推した。そこで安藤さんは全員に向かって『全会一致ということでよろしいですか』と念を押し、誰も異論がなかったので、そのまま決まりました」
・安藤氏曰く、あれが『未来の日本人全体の希望』だそうだ。安藤忠雄という建築家は、ぜんぜん使えない東急東横みなとみらい線の渋谷駅を設計した人
・「専門家が見れば、予算の範囲でつくれないのは審査段階でわかります。だいいち、建物の一部が敷地外に飛び出しており、本来ならば失格の作品を最優秀賞に選んでしまった。せめて招致が決まった段階で、ザハ案が違反であると公表し、十分な条件によるコンペを開いて仕切り直すべきでした。それをしなかったのは、安藤さんの責任」(今回、二次審査まで残った建築家の渡辺邦夫氏)。ザハ氏の作品は、昆虫の触角のように伸びたスロープがJR線をまたぎ、施設の高さも制限をオーバー。応募条件から大きく逸脱していたにもかかわらず、安藤忠雄氏はコンペの優勝者とした
・「たしかに有識者会議でデザインは決めたけど、ぼくらは何の権限もなく、契約はJSCがやるわけだから、どうなっていくのかわかりません。五輪までに間に合ってほしいとは思いますけどね」(こんな無責任発言をしたのは、有識者会議・佐藤禎一委員長(元文部事務次官))。本来なら昨年7月に始まるはずだった解体工事の入札で官製談合の疑いが浮上し、昨年12月、3回目の入札でようやく業者が決まるなど、JSCがいかにお粗末な組織であるかも判明
・当初、五輪招致への再挑戦に消極的だった石原氏を口説き落としたのが元総理の森喜朗氏。スポーツジャーナリストの谷口源太郎氏は、「そこには森氏のしたたかな計算があった」と指摘
・「森氏は日本ラグビー協会の会長を長く務め、2019年に日本で開催されるラグビーW杯招致に尽力。彼の狙いはまさにラグビーW杯の会場として新国立競技場を建設すること。ラグビーW杯は準決勝と決勝の会場は集客人数8万人以上が望ましいとされているのですが、ラグビーW杯のために新国立を主張しても世論は動かせない。そこで、東京五輪のメインスタジアムにすることを口実にした」
・JSCが新体制になってからのことだ。「新理事長に就いたのはラグビー協会の理事・河野一郎氏。彼は筑波大の教授で、五輪やラグビー代表のチームドクターでもあったドーピングの専門家。英語が堪能で弁も立つことから、森氏の強い意向で2016年の五輪招致委員会の事務総長に選ばれた」(スポーツ紙記者)。が、彼が力を入れたのはラグビーW杯招致のほうで、2016年の五輪招致には失敗。「ラグビーW杯招致にばかり熱心で、IOC委員にアタックできるチャンスをみすみす逃していたと招致委員会内部からも批判の声
・それなのに招致失敗の責任をとるどころか、スポーツ行政の鍵を握るJSCのトップに就任したので、周囲も驚いていました」。森喜朗氏の狙いがラグビーW杯の開催にあり、そのためにまずオリンピック・パラリンピックの東京開催を実現させ、JSCの理事長に息のかかったラグビー協会の理事をスライド就任させる。そして、W杯の準決勝・決勝戦を行なうため、8万人を収容できるよう国立競技場新しく建て替えさせた――、とすれば、森氏はたいしたマキャベリストではないか
・新国立競技場の工費は2520億だが、ここには1.5万席の仮設スタンド、開閉式屋根の工費(168億円)は含まれていない。べらぼうな費用がかかる新国立競技場は、完成した後も問題をはらんでいる。競技場の維持管理費に、50年間で1046億円が必要に。年間収支の黒字見込みは約3800万円ほどで、すると、新国立競技場は、毎年20億円前後が赤字に。文科省やJSCは、その赤字ぶんの補填すらも、私たちの税金で補う心づもりでいるのだろう
http://diamond.jp/articles/-/74806

自民党のなかでも批判が出てきた。7月9日付けTBSNEWSは「国立競技場建設、国会では野党が追及 自民・後藤田氏が代替案」を報じた。後藤田正純衆院議員の注目される発言のポイントは以下の通り。
・「負のシンボルとしての象徴が青山の東京の一等地にぽつんとできる」
「何のため誰のためのオリンピックですか。誰のお金なんですか。戦中のまさに玉砕的な何かそういう走り出したら止まらないみたいなね、これはやっぱりやってはいけないんですよ」
・「建設費用が回収できず、維持費も赤字になったら誰が責任を取るのか」
・「まだ間に合う」と代りの案をまとめました。オリンピックの後、収容人数を8万人から5万5000人に縮小してプロ野球チームのホーム球場にする。スタジアムの一部を移動してラグビー場に改修するもので、総工費は950億円。今の計画の4割未満です」
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2536465.html

森元首相の「マキャベリスト」ぶりには改めて驚かされると同時に責任のかなりを負うべきと思った。さらに、単にラグビーW杯のためだけでなく、背後に「利権」があった可能性も否定できないのではなかろうか。後藤田議員の「戦中のまさに玉砕的な何かそういう走り出したら止まらないみたいな」は言いえて妙である。JSCも文科省からの出向者が多いのに、下村文科相の責任転嫁発言も理解に苦しむと同時に、それを記事にした文科省記者クラブの記者の姿勢にも今さらながら失望させられた。建設が簡単な代替案は、後藤田議員以外にも出ている。今からでも遅くはないので見直し、国際オリンピック委員会(IOC)の理解を得るよう努めるべきだろう。
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