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スガノミクス(アベノミクス)(その10)(「君はアベノミクスを批判するのか?」と怒りの電話 “反論する安倍さん”が沈黙した「不都合な出来事」とは、「アベノミクス」で安倍元首相が残した負の遺産 目標未達が逆説的に安倍政権の長期化に作用した、私たちがアベノミクスで豊かにならなかったわけ 超金融緩和の固定化にはこんなにも弊害がある) [国内政治]

スガノミクス(アベノミクス)については、昨年8月7日に取上げた。いまさらスガノミクスでもないが、今日は、アベノミクスを総括する意味で、(その10)(「君はアベノミクスを批判するのか?」と怒りの電話 “反論する安倍さん”が沈黙した「不都合な出来事」とは、「アベノミクス」で安倍元首相が残した負の遺産 目標未達が逆説的に安倍政権の長期化に作用した、私たちがアベノミクスで豊かにならなかったわけ 超金融緩和の固定化にはこんなにも弊害がある)である。

先ずは、6月14日付け文春オンライン「「君はアベノミクスを批判するのか?」と怒りの電話 “反論する安倍さん”が沈黙した「不都合な出来事」とは」を紹介しよう』、
https://bunshun.jp/articles/-/55130
・『「安倍・菅・岸田、3人の総理を一言で表すと?」  5月31日の大分合同新聞に興味深い記事があった。後藤謙次氏(共同通信社・客員論説委員)が話していた。 で、3人の総理を一言で表すと、 「反論する安倍さん、沈黙する菅さん、大きくうなずく岸田さん」 たしかに。ちなみに岸田さんのうなずきはイエスかノーかわからないから“くせ者”という意味だった』、「反論する安倍さん、沈黙する菅さん、大きくうなずく岸田さん」とはよく練られたフレーズだ。
・『安倍元首相が許せなかった言葉  この「反論する安倍さん」の数日後に出た朝日新聞と読売新聞の記事が面白かったのだ。まず朝日。 『「アベノミクス批判するのか」安倍氏怒りの電話 許せなかった言葉』(朝日新聞デジタル6月2日) 《5月19日、自民の財政再建派を中心とする財政健全化推進本部の会合後、安倍氏(67)は、自らの派閥に属する越智隆雄・元内閣府副大臣(58)の電話を鳴らした。「君はアベノミクスを批判するのか?」。声は怒気をはらんでいた。》 越智氏は「批判はしていません」と言ったが、安倍氏は「周りはアベノミクスの批判だと言っているぞ」と迫ったという。 さらに読売ではこんな記事が。 『政権占う「安倍・麻生・菅」…政策・人事 影響力健在』(6月5日) 《「私と麻生さんがやってきたことを否定するんですか」 5月23日、元首相の安倍晋三(67)は議員会館の自室に呼んだ元財務相の額賀福志郎(78)に険しい表情でこう迫った。》 今度は額賀氏に対してだ。自民党の財政健全化推進本部は「アベノミクス」の正当性を打ち消す動きだと安倍氏は受け止めたという。 まさに反論する安倍さん。「君はアベノミクスを批判するのか?」って真骨頂ではないか』、「元財務相の額賀福志郎」氏にまでかみついているようだが、これでは自民党内では、「アベノミクス」はタブーになってしまう。
・『「いっそのこと、自民党が二つに分かれた方が…」  毎日新聞のコラムで与良正男氏は、 《安倍氏はアベノミクスを少しでも否定されるのが許せないのだろう。内政も外交も、自分が進めた政策は全く間違っていなかった――と信じて疑わないのだと思う。》(毎日新聞6月8日) だから岸田首相の政策に安倍元首相が次々と注文をつけて、岸田氏があっさりと妥協する。そんな政治が繰り返されていると。 「いっそのこと、自民党が二つに分かれた方が夏の参院選は投票しやすくなるのに……。そう考えるのは私だけだろうか。」(同前) あ、この感じ思い出した。昨年の岸田政権発足当初に感じたタブロイド紙の変化と同じだ。今まで政権を擁護していた夕刊フジに岸田批判が多くなったのだ。政権批判の日刊ゲンダイは引き続き岸田批判。 こうなると岸田氏はピンチのようにも思えるが実はそうではない。なぜなら「野党」が埋没しているからである。まるで政党が自民党しかないようなマジックになっていたのだが、今回の「岸田VS安倍」もその続きに思える。 先ほどのコラムでも後半に、 《自民党に注目が集まれば、野党の存在はかすんでいく。結果として参院選で自民党が勝利すれば岸田氏にもプラスなのだ。実に巧妙だとさえ言える。》(同前)  と書かれている。もっと言えば「岸田VS安倍」は自民党がすでに参院選後に夢中のようにも思わせる』、「「野党」が埋没している」のは誠に腹立たしい限りだ。
・『安倍元首相の「ちょっと面白い反論」  しかし安倍元首相の反論が目立つのは影響力の誇示だけだろうか。安倍さんには「ちょっと面白い反論」もあるのだ。たとえばこれ。 『安倍晋三氏「プーチン氏は信長みたいなもの、力の信奉者だ」指摘』(毎日新聞WEB4月22日) 『トランプ氏とゴルフ「抑止力のためだった」安倍元首相、郡山で講演』(河北新報4月18日) どちらも共通しているのはロシアのウクライナ侵攻に触れて発言していること。 前者では「言ってみればプーチン氏は戦国時代の武将みたいなもの。たとえば織田信長に人権を守れと言っても全然通用しないのと同じ」とし、後者では政権当時にトランプ前米大統領と親交を深めた「ゴルフ外交」は「抑止力のためだった」と振り返った。 どちらも4月の発言であり、対プーチン外交とは何だったのか? と言われだした時期なので、慌てて反論したと思えば時系列に合う。安倍氏が今も目立つのはアベノミクスとか外交とか「過去の実績」があらためて注目されるから反論に忙しいという事情も浮かぶ。反撃能力を地で行く安倍氏』、「対プーチン外交」については、叩けばもっとホコリが出てくる筈だ。
・『「反論する安倍さん」が沈黙したこと  しかし気になることもある。反撃しないこともあるのだ。桜を見る会夕食会での「サントリーから酒無償提供」の報道には、沈黙したのである。 『スクープ 桜を見る会前夜祭 新たな利益供与 安倍氏側持ち込み ふるまい酒』(しんぶん赤旗日曜版5月29日号)) 赤旗編集部が注目したのは前夜祭の会場となったホテル職員が作成した「宴会ファイル」だった。19年の宴会ファイルには、酒の本数とともに「●●様より前日持ち込み」として電話番号が付記されていた。酒の提供者は黒塗りになっていたが、電話番号はあったのだ。ここに気づいた赤旗が電話すると、 「サントリー秘書部です」 なんとサントリーにつながったのである。この電話、お互いびっくりしただろうなぁ』、「反撃しないこともあるのだ。桜を見る会夕食会での「サントリーから酒無償提供」の報道には、沈黙したのである」、反論する余地もないからだろう。
・『安倍事務所の回答は…  サントリーは無償提供の理由を「弊社製品を知っていただく良い機会と考え、この会に協賛させていただいた」と回答。しかし赤旗は、サントリーの新浪剛史社長は安倍政権下で経済財政諮問会議の民間議員を務めていたこと、安倍氏と面会・会食をよくしていたことから「無償提供」の意味を問うていた。専門家は「違法献金の可能性も」と指摘している。ちなみに「安倍事務所は回答しませんでした」とのこと。 後日、市民団体が「政治資金規正法に違反する企業献金」だとしてサントリー社員らを刑事告発すると、安倍事務所は「収支報告書は訂正すべき点は適正に修正している」とようやくコメントした。 この「サントリーのオールフリー」問題。「反論する安倍さん」なら赤旗の報道にも、きちんと反論したほうがよいのではないでしょうか。反撃能力が気になります。 その他の写真はこちらよりご覧ください』、「安倍事務所は「収支報告書は訂正すべき点は適正に修正している」、とすることで、「サントリー社員ら」への「「政治資金規正法に違反する企業献金」の疑いを晴らす狙いがあるのだろう。

次に、7月15日付け東洋経済オンライン「「アベノミクス」で安倍元首相が残した負の遺産 目標未達が逆説的に安倍政権の長期化に作用した」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/604143
・『安倍晋三元首相が凶弾に倒れたのは、アメリカが40年ぶりのインフレ経済へ突入し、市場でアベノミクスの見直し議論が始まっているさなかのことだった。 ここでは安倍政権とアベノミクスの関係を振り返り、今後を展望してみたい。 アベノミクスは、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略という「3本の矢」で構成された。とくに黒田東彦総裁下の日本銀行で実行された異次元の量的・質的金融緩和が柱となった。 国債の大規模購入がその中心で、足元では新発10年国債の日銀保有シェアは約9割に及ぶ。それにより短期金利のみならず、長期金利もゼロ%程度へ人為的に抑制し続けている』、興味深そうだ。
・『アベノミクスで想定された3つのシナリオ  アベノミクスが始まった2013年当時、想定されたシナリオは大きく分けて次の3つだった。 ①日銀の主張どおり、デフレ脱却を実現し、「2年で物価上昇率2%」の目標を達成。日本経済は名目経済成長率3%という高成長や賃金上昇を実現する。 ②デフレは脱却するが、人口減少や製造業の海外生産シフトを背景に停滞気味の経済成長が続く。そのため、超低金利政策は長期化し国債増発による財政政策を支える一方、政治家の財政規律は弛緩。日本は官民ともに将来の金利上昇に脆弱な体質に陥っていく。 ③日本売りを伴う悪い円安やインフレを招いて金利上昇に追い込まれる。結果、経済や財政が苦境に立つ。 現実は、①や③ではなく、②となったのは周知のとおりだ。 だが、アベノミクスは最良の結果を得られなくても、歴代最長の7年8カ月に及んだ第2次安倍政権の継続にプラスに作用した。なぜなら、目標未達のたびに安倍政権は「うまくいかないのは金融緩和や財政政策が足りないからだ」として、株高などにつながる追加策を打ち出し、それが選挙勝利の原動力になったからだ。 具体的に見てみよう。第2次安倍政権発足後、最初の国政選挙となった13年7月の参院選。このときは、アベノミクスが順調なスタートを切ったさなかで、選挙に圧勝して衆参両院で多数派が異なるねじれ国会を解消した。 だがその後、円安にもかかわらず輸出数量や生産が伸びず、消費増税や欧州債務危機の影響などもあって景気の伸び悩みがはっきりしてきた。「2年で物価上昇率2%」の目標達成が難しいことは誰の目にも明らかになり、株価上昇も完全に止まった。 そこで14年10月に繰り出したのが、日銀の国債購入拡大(追加金融緩和)とGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による株式購入の拡大(運用ポートフォリオ変更)だ。 これで株価は一気に反騰。さらに安倍首相(当時)は15年10月の予定だった8%から10%への消費税率引き上げを17年4月へ延期すると表明し、14年12月に解散総選挙に打って出て大勝した』、長期政権を支えたのが、「目標未達のたびに安倍政権は「うまくいかないのは金融緩和や財政政策が足りないからだ」として、株高などにつながる追加策を打ち出し、それが選挙勝利の原動力になった」とは、皮肉なものだ。
・『増税延期という手段  16年7月の参院選でも消費増税の延期について国民の信を問うという構造をつくり、アベノミクスの目標未達をむしろ味方につけた。 その際の紆余曲折は興味深い。1回目の延期を決めた14年、安倍首相は「リーマンショック並みの危機がない限り、消費増税は再延期しない」と公約していた。 再延期を念頭に置き16年5月、安倍首相は折からの中国経済変調と世界の商品・金融相場の下落に対し、「現在はリーマンショック前夜だ」とG7伊勢志摩サミットで各国首脳に訴えかけた。だが、メルケル独首相(当時)が「世界経済は堅調だ」と反論するなど共通認識は得られなかった。 しかしそれでもめげない。記者会見で「現時点ではリーマン級のショックは発生していないが、これは従来の約束とは異なる新しい判断だ」として19年10月への消費増税再延期を表明。信を問うという形で参院選になだれ込んだ。野党も増税延期や凍結を主張する中、自民党は議席数を伸ばした。 政権後期は、「金融政策だけでは賃金上昇や高成長は望めない」と悟り、安倍首相は積極財政へ軸足を移す。森友・加計学園問題で政権支持率が低迷する中、17年10月に「消費増税の増収分の使途を国の借金返済から幼児教育無償化に変える」と表明、またもや解散総選挙に打って出た。 増税分の使途変更は事実上国債増発による財政拡大に等しい。この頃は与野党とも財政規律の緩みが蔓延しており、安倍政権は3度、消費増税を選挙材料に活用した。 もちろんアベノミクスは、高齢者や女性の就業拡大、失業率低下、インバウンド(訪日外国人観光客)増大などを実現し、成果を得た。 振り返ると、アベノミクスは当初約束した賃金上昇や経済高成長を実現し支持を得たわけではない。反対に、経済成長が不十分だとしてアクセルを踏み続けることを選挙に利用した面が強い。それが長期政権化を可能にし、外交や安全保障で足跡を残す基礎をつくったといえるだろう』、「アベノミクスは当初約束した賃金上昇や経済高成長を実現し支持を得たわけではない。反対に、経済成長が不十分だとしてアクセルを踏み続けることを選挙に利用した面が強い。それが長期政権化を可能にし、外交や安全保障で足跡を残す基礎をつくったといえる」、政治的には、結果オーライの典型だ。
・『日銀に対する風当たりが強まる可能性  問題は、アベノミクスのこれからだ。安倍政権以降、菅義偉政権、岸田文雄政権ではアベノミクスが継承されている。だが、コロナ禍、ウクライナ危機による供給制約や好調な需要を背景に、冒頭で触れたようにアメリカは40年ぶりのインフレとなり、金利上昇(金融引き締め)が急速に進んでいる。 依然としてゼロ%程度に金利を抑制する日本との金利差が拡大し、足元では日本が金融危機下にあった1998年以来の1ドル=137円台前半まで円安が進んだ。これに対し、黒田総裁は「日本では賃金上昇への波及が見られず、インフレは一時的」として金融緩和を堅持する姿勢だ。 だが、日銀や政府が待ち望むようにアメリカのインフレや金利上昇が急速な金融引き締めでいずれは峠を越えるとしても、その後も構造的に以前より高いインフレ率や金利水準が維持される可能性はある。また、国内の家計もアベノミクス当初と違い、インフレに直結する円安を歓迎しなくなっている。日銀への風当たりは強くなりそうだ。 大局的に見れば、現在は前述したシナリオ②から③、つまり、悪い円安の進行やインフレによる金利上昇に追い込まれかねない状況に移行しつつあるといえるだろう。 金利上昇に対する日本経済の脆弱性は今では巨大だ。日銀のバランスシートは世界でも突出した膨張を見せ、その結果、仮に短期金利(当座預金への付利率)を1%引き上げただけで日銀は短期間で債務超過に陥る。 また、金利上昇は国債利払い費の増加で政府の予算を圧迫し、住宅ローン金利の上昇などを通じて景気も冷やす。割引率(金利)の上昇により、株式や不動産など資産の価格下落も招くだろう。 安倍首相が指名した黒田総裁の任期は23年4月まで。岸田政権下で日銀が金融政策の修正に動くかは不明だが、正の遺産と同様、安倍政権が残した負の遺産もまた大きいと言わざるをえない』、「現在は前述したシナリオ②から③、つまり、悪い円安の進行やインフレによる金利上昇に追い込まれかねない状況に移行しつつあるといえる」、「正の遺産と同様、安倍政権が残した負の遺産もまた大きいと言わざるをえない」、私自身は「負の遺産」の方がはるかに大きいと思う。

第三に、8月6日付け東洋経済オンラインが掲載したBNPパリバ証券経済調査本部長の河野 龍太郎氏による「私たちがアベノミクスで豊かにならなかったわけ 超金融緩和の固定化にはこんなにも弊害がある」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/609272
・『日本が貧しくなった原因を「デフレ」としたのは、そもそも誤診だった。 過去30年、グローバリゼーションやICT革命で、日本ではメンバーシップ型雇用が減り、非正規雇用との二極化が進んだ。働き方や家族形態の変容に社会保障制度が対応できず、消費が低迷し、少子化にもつながった。 10年前、多くの人は「2000年代に貧しくなった元凶はデフレ」と判断し、アベノミクスが採用された。そうした政策で私たちは豊かになったのか。 時間当たり実質賃金を見ると、1980年代は年率1.8%、1990年代は1.1%上昇したが、2000年代は0.2%下落し、確かに貧しくなった。そして2010年代は0.3%とわずかに上昇した(上図)』、なるほど。
・『生産性上昇率は低下した  時間当たり実質賃金の変化率は、①時間当たり労働生産性上昇率、②労働分配率の変化率、③交易条件の変化率、の3つに分解できる。このうち、実質賃金の引き上げに不可欠な生産性上昇率は、1980年代は年率2.8%だったが、1990年代は1.8%、2000年代は0.8%、10年代は0.3%と低迷した。 アベノミクスには「3本の矢」があったが、1本目と2本目の金融政策・財政政策頼みで、3本目の成長戦略は進まなかったと考える人が多い。ただ、反成長戦略が取られたわけでもない。なぜ生産性上昇率は低迷を続けたのか。 筆者は、追加財政や金融緩和を完全雇用の下でも続けたことが、生産性上昇率を低下させたと考える。資源配分を歪め、成長戦略の効果を相殺したとみている。 では、生産性上昇率の低下にもかかわらず、2010年代の時間当たり実質賃金が悪化しなかったのはなぜか。労働分配率、続いて、交易条件を見ていこう。 1990年代以降、欧米では労働分配率が大きく低下した。イノベーションで生産性上昇率が上がって経済全体のパイが拡大しても、アイデアや資本の出し手に所得増加が集中し、平均的な労働者の所得はなかなか上昇しないからだ。 日本の労働分配率はどうだったか。1980年代に年率0.5%下落、1990年代は0.3%上昇し、2000年代は0.2%下落した。2000年代は、金融グローバリゼーションで、資本市場のプレッシャーから経営者は賃金を引き上げづらかった。 一方、2010年代の労働分配率は年率0.2%とわずかだが上昇した。アベノミクスの賃上げ策が奏功したのか。イノベーションが進まず、生産性上昇率が低迷する代わりに、欧米のように一部の人に所得が集中することもなかったためだと考えると、痛しかゆしだ』、「なぜ生産性上昇率は低迷を続けたのか。 筆者は、追加財政や金融緩和を完全雇用の下でも続けたことが、生産性上昇率を低下させたと考える。資源配分を歪め、成長戦略の効果を相殺したとみている」、「では、生産性上昇率の低下にもかかわらず、2010年代の時間当たり実質賃金が悪化しなかったのはなぜか。労働分配率、続いて、交易条件を見ていこう」、なるほど。
・『2000年代に貧しくなった真因  交易条件はどうか。1980年代は年率0.5%悪化し、1990年代は0.9%悪化。2000年代にも0.9%悪化して、1970年代の1.1%の悪化に迫った。だが2010年代は0.2%の悪化と大きく緩和した。 2000年代の悪化は、中国の旺盛な需要によって原油などコモディティー価格の水準が切り上がったためだ(下図)。資源価格が上昇すると、資源国に所得が移転してしまい、輸出価格に転嫁できなければ、交易条件が悪化して実質所得は抑制される。2000年代初頭に1バレル=30ドルだった原油価格は、ピークの2008年には140ドル台をつけ、2010年代に入っても100ドル前後で推移していたが、2014年秋に急落し、交易損失は改善された。 ここで筆者が強調したいのは2000年代に貧しくなった真因である。これまで見たように、①労働生産性上昇率の低下と、②労働分配率の比較的大きな低下、③交易条件の大幅悪化が、実質賃金の減少をもたらしていた。 しかし、経済学者の齊藤誠も指摘するように、原油高でGDPデフレーターが低下したため、デフレで貧しくなったと多くの人が誤解した。交易条件の悪化は、原油高によるインフレ現象であり、デフレ現象ではない。しかし、輸入物価の上昇はほかの物価統計と異なりGDPデフレーターを低下させる。GDP統計上、輸入は控除項目であるためだ。 診断を誤り、リフレ政策という誤った処方箋を出してしまったことの帰結が、生産性上昇率の低下であり、それが、2010年代に交易条件の悪化が和らいだことや労働分配率の低下が止まったことによるプラスの効果を相殺したのである。 ちなみに、日本銀行は2014年10月の原油価格急落時に、追加緩和で円安を促し、せっかくの原油安の家計への恩恵を相殺してしまった。2014年といえば、消費増税が家計の実質所得を抑制した年だ。 現在のコモディティー価格上昇は、コロナ禍で供給の回復が遅れる一方、経済再開で需要回復が先行したことが背景にある。「カーボンニュートラル2050」を意識した化石燃料関連の更新投資の滞りやウクライナ危機もエネルギー高に拍車をかける。その結果、交易損失は2022年1~3月期の段階で、2008年7~9月期を超えて悪化した』、「診断を誤り、リフレ政策という誤った処方箋を出してしまったことの帰結が、生産性上昇率の低下であり、それが、2010年代に交易条件の悪化が和らいだことや労働分配率の低下が止まったことによるプラスの効果を相殺した」、経済政策では、「診断を誤り・・・誤った処方箋を出してしまった」、ごくまれに起きることだ。
・『円安は家計を圧迫している  ただ今回は、コモディティー高による輸入物価上昇を円安が増幅し、インフレ的現象であることが一目瞭然だ。人々の関心が再び日銀に向かうとしても、求めるのはリフレ政策ではないだろう。 円安は、日本の財・サービスを割安にし、輸出拡大を促すため、確かに景気刺激効果を持つ。家計が損失を被っても、景気刺激という点からはプラス効果が大きい。 日銀のイールドカーブ・コントロール(YCC)政策には、海外金利が上昇しても、日銀が金利上昇を抑え込み、内外金利差を拡大させることで円安を促し、インフレを醸成するメカニズムがある。2%のインフレ目標の達成を目指す日銀としては、チャンス到来ということかもしれない。 しかし、インフレが安定的な2%の目標に達しないという理由だけで、景気循環を超えて超金融緩和を固定化することは適切だろうか。景気刺激効果だけで政策を決めるのは、視野狭窄ではないか。 名目賃金の上昇が限られる中、円安が輸入物価上昇を増幅すれば、家計の実質購買力は抑制され、消費回復の足かせとなる。輸出企業に恩恵が及ぶとはいえ、企業は儲かってもため込むだけで、賃金を増やさず、人的資本や無形資産、有形資産への投資も活発化させない。何のために経済が存在するのか。 また、超低金利政策の長期化・固定化は、ゼロ金利や超円安なしでは存続できない生産性の低い企業を生き残らせるため、潜在成長率の回復も阻害する。だから実質賃金が上昇しない。 2012年末に日銀の金融政策に社会の関心が集まることで、「政策の窓」が開きリフレ政策が発動された。2000年代の交易条件の悪化がデフレ問題と誤認されたことも背景にあった。今回は、資源高による輸入物価上昇を円安が増幅し、家計の実質所得を抑制していることが、正しく認識されるだろう。 円安に関心が集まる今こそ、景気刺激という短期の視点を超えて、超金融緩和を固定化することの長期のメリット、デメリットを再検討する必要がある』、「円安に関心が集まる今こそ、景気刺激という短期の視点を超えて、超金融緩和を固定化することの長期のメリット、デメリットを再検討する必要がある」、私は、「超金融緩和を固定化することの長期のデメリット」の方が「メリット」より大きいと思うので、出口論議を始めるべきと考える。
タグ:「反論する安倍さん、沈黙する菅さん、大きくうなずく岸田さん」とはよく練られたフレーズだ。 「アベノミクスは当初約束した賃金上昇や経済高成長を実現し支持を得たわけではない。反対に、経済成長が不十分だとしてアクセルを踏み続けることを選挙に利用した面が強い。それが長期政権化を可能にし、外交や安全保障で足跡を残す基礎をつくったといえる」、政治的には、結果オーライの典型だ。 ①日銀の主張どおり、デフレ脱却を実現し、「2年で物価上昇率2%」の目標を達成。日本経済は名目経済成長率3%という高成長や賃金上昇を実現する アベノミクスで想定された3つのシナリオ 東洋経済オンライン「「アベノミクス」で安倍元首相が残した負の遺産 目標未達が逆説的に安倍政権の長期化に作用した」 「診断を誤り、リフレ政策という誤った処方箋を出してしまったことの帰結が、生産性上昇率の低下であり、それが、2010年代に交易条件の悪化が和らいだことや労働分配率の低下が止まったことによるプラスの効果を相殺した」、経済政策では、「診断を誤り・・・誤った処方箋を出してしまった」、ごくまれに起きることだ。 文春オンライン「「君はアベノミクスを批判するのか?」と怒りの電話 “反論する安倍さん”が沈黙した「不都合な出来事」とは」 「なぜ生産性上昇率は低迷を続けたのか。 筆者は、追加財政や金融緩和を完全雇用の下でも続けたことが、生産性上昇率を低下させたと考える。資源配分を歪め、成長戦略の効果を相殺したとみている」、「では、生産性上昇率の低下にもかかわらず、2010年代の時間当たり実質賃金が悪化しなかったのはなぜか。労働分配率、続いて、交易条件を見ていこう」、なるほど。 長期政権を支えたのが、「目標未達のたびに安倍政権は「うまくいかないのは金融緩和や財政政策が足りないからだ」として、株高などにつながる追加策を打ち出し、それが選挙勝利の原動力になった」とは、皮肉なものだ。 「安倍事務所は「収支報告書は訂正すべき点は適正に修正している」、とすることで、「サントリー社員ら」への「「政治資金規正法に違反する企業献金」の疑いを晴らす狙いがあるのだろう。 河野 龍太郎氏による「私たちがアベノミクスで豊かにならなかったわけ 超金融緩和の固定化にはこんなにも弊害がある」 「反撃しないこともあるのだ。桜を見る会夕食会での「サントリーから酒無償提供」の報道には、沈黙したのである」、反論する余地もないからだろう。 「対プーチン外交」については、叩けばもっとホコリが出てくる筈だ。 ③日本売りを伴う悪い円安やインフレを招いて金利上昇に追い込まれる。結果、経済や財政が苦境に立つ 東洋経済オンライン 「現在は前述したシナリオ②から③、つまり、悪い円安の進行やインフレによる金利上昇に追い込まれかねない状況に移行しつつあるといえる」、「正の遺産と同様、安倍政権が残した負の遺産もまた大きいと言わざるをえない」、私自身は「負の遺産」の方がはるかに大きいと思う。 「「野党」が埋没している」のは誠に腹立たしい限りだ。 (その10)(「君はアベノミクスを批判するのか?」と怒りの電話 “反論する安倍さん”が沈黙した「不都合な出来事」とは、「アベノミクス」で安倍元首相が残した負の遺産 目標未達が逆説的に安倍政権の長期化に作用した、私たちがアベノミクスで豊かにならなかったわけ 超金融緩和の固定化にはこんなにも弊害がある) 「元財務相の額賀福志郎」氏にまでかみついているようだが、これでは自民党内では、「アベノミクス」はタブーになってしまう。 「円安に関心が集まる今こそ、景気刺激という短期の視点を超えて、超金融緩和を固定化することの長期のメリット、デメリットを再検討する必要がある」、私は、「超金融緩和を固定化することの長期のデメリット」の方が「メリット」より大きいと思うので、出口論議を始めるべきと考える。 ②デフレは脱却するが、人口減少や製造業の海外生産シフトを背景に停滞気味の経済成長が続く。そのため、超低金利政策は長期化し国債増発による財政政策を支える一方、政治家の財政規律は弛緩。日本は官民ともに将来の金利上昇に脆弱な体質に陥っていく スガノミクス(アベノミクス)
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