保育園(待機児童)問題(その13)(2歳児を公園に置き去りにして帰ってくる…全国の保育園で「昔にはあり得なかったこと」が起きている根本原因 保育が「儲かるビジネス」になり、質が低下している、「保育園の重大事故」園だけを責められない問題点 「待機児童ゼロ作戦」によって本末転倒な状況に、"国会での論戦"で見えた「日本の保育」重大争点 「異次元の少子化対策」保育においてはどうなのか?) [社会]
保育園(待機児童)問題については、2021年5/月8日に取上げた。久しぶりの今日は、(その13)「をを2歳児を公園に置き去りにして帰ってくる…全国の保育園で「昔にはあり得なかったこと」が起きている根本原因 保育が「儲かるビジネス」になり、質が低下している、「保育園の重大事故」園だけを責められない問題点 「待機児童ゼロ作戦」によって本末転倒な状況に、"国会での論戦"で見えた「日本の保育」重大争点 「異次元の少子化対策」保育においてはどうなのか?」を紹介しよう。
先ずは、本年2月9日付けPRESIDENT Onlineが掲載した労働経済ジャーナリストの小林 美希氏による「2歳児を公園に置き去りにして帰ってくる…全国の保育園で「昔にはあり得なかったこと」が起きている根本原因 保育が「儲かるビジネス」になり、質が低下している」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/66268
・『「いつ置き去り事故が起こってもおかしくない」 「子どもを公園に置いて園に帰ってきてしまう。少し前なら、あり得ないことが起こっているのです」 都内の認可保育園の小田明子園長(仮名、60代半ば)は、驚きを隠せない。小田園長は公立保育園も含めて40年以上、保育現場に携わっている。現在は私立の認可保育園の園長で、これまで大きな事故もなく過ごしてきたが、1年ほど前に保育士が2歳の園児を公園に置いたまま散歩から帰ってきてしまい、肝を冷やした。 園児がいないことに気づき、慌てて園長と保育者数人とで外を探すと、近隣の住民に保護され、ことなきを得た。もしも誤って道路に飛び出していれば交通事故に遭っていたかもしれないと思い、身震いした。担任保育士は経験が浅く、ケガが起きないように見るので精一杯。「早く保育園に帰って、給食の準備をしなければ」という焦りがあって、園児の点呼を忘れていたという。 こうした事態に小田園長は頭を悩ます。 「園児が全員いるかどうか点呼することは、基本中の基本です。公園に着いた時はもちろん、遊んでいる最中、園に帰る時も全員が揃っているか、常に確認する。それが、業務に追われて目の前の子どもが見えなくなっているのです。いつ置き去り事故が起こってもおかしくない環境なのです」』、「園児が全員いるかどうか点呼することは、基本中の基本です」、でも未熟な「保育士」は時として忘れてしまうようだ。「園児の点呼」は習慣化しておうべきだ。
・『20人の子どもたちを4畳半程度のスペースに… それというのも小田園長が勤める法人は、保育園の数を増やして事業拡大することと利益を上げることを優先させている。人件費を抑えるため、保育士は低賃金で人員体制はギリギリという状態なのだ。若手が疲弊して、2~3年で辞めていく。そうしたなかで起こった置き去りだった。 他の都内の私立の認可保育園でも、園児が保育園から一人で出ていこうとしていた。たまたま居合わせた保護者の飯田恵さん(仮名、40代)が止めたが、その後の対応が不十分だった。飯田さんは、「子どもが勝手に出ていかないようにと、登園時やお迎えラッシュの時間帯は20人もの子どもたちが、4畳半程度のスペースに囲った柵のなかに詰め込まれるようになりました」と憤りを隠せない。 日頃から、園児同士の噛みつき、ひっかきも多い。大きなすり傷に気づいた飯田さんが理由を尋ねても、担任の保育士は「見ていなかったので分からない」と言うだけ。改善を求めてもケガが続いたことから、飯田さんは「これではいつ子どもが死ぬかも分からない」と子どもを転園させた』、「保育園の数を増やして事業拡大することと利益を上げることを優先させている。人件費を抑えるため、保育士は低賃金で人員体制はギリギリという状態なのだ。若手が疲弊して、2~3年で辞めていく。そうしたなかで起こった置き去りだった」、「20人もの子どもたちが、4畳半程度のスペースに囲った柵のなかに詰め込まれるようになりました」、「日頃から、園児同士の噛みつき、ひっかきも多い」、狭いなかに大勢が閉じ込められるストレスはさぞや強いのだろう。
・『安倍政権下で保育は「儲かるビジネス」と化した 福岡県中間市や静岡県牧之原市で起こった通園バス園児死亡事件は、出欠確認が徹底されないことによって園児がバスに置き去りになった。この事件は、保育の基本中の基本である園児の出欠確認ができないほど、現場の質が劣化していることを意味する。 園児が置き去りにされる、不適切な保育が横行するなどの保育の質の低下は、保育士の労働環境の悪化が大きく影響しているのだ。 その背景にあるのは、安倍晋三政権下で待機児童対策が目玉政策となり、急ピッチで保育園が作られるようになったことだ。 公的な保育園は、2013年度の2万4038カ所から22年度は3万9244カ所へと大幅に増えた。安倍政権が「株式会社に受け皿整備を担ってもらう」という方針を打ち出したことで、営利企業による認可保育園は13年の488カ所から21年に3151カ所にまで急増した(厚生労働省「社会福祉施設等調査」)。 保育園の増加ペースに人材が追い付かないうえ、事業者のモラルが低下。保育を「3兆円を超える市場」と捉え、儲けるために参入する事業者が雨後の筍のように現れた。利益を出すために人件費が削られ、保育士の労働環境が劣悪になった』、「安倍政権が「株式会社に受け皿整備を担ってもらう」という方針を打ち出したことで、営利企業による認可保育園は13年の488カ所から21年に3151カ所にまで急増した」、「儲けるために参入する事業者が雨後の筍のように現れた。利益を出すために人件費が削られ、保育士の労働環境が劣悪になった」、これで「安倍政権の保育施策」の当然の帰結だ。
・『人件費がほかの費目に流用できるようになった かつて、認可保育園は公共性の高さから自治体か社会福祉法人しか設置・運営ができなかった。それが2000年の規制緩和によって、営利企業、宗教法人、NPO法人の参入が容認された。それと同時に、私立の認可保育園に支払われる運営費の使途の規制緩和である「委託費の弾力運用」が大幅に認められるようになった。 私立の認可保育園の運営費は「委託費」と呼ばれ、税金を主な原資とする。委託費の算定基準である「公定価格」では、人件費は基本的な部分だけでも全体の約8割を占める。人件費のほか、玩具や絵本を買うなど保育に要する「事業費」が約1割、職員の福利厚生費などの「管理費」が約1割必要だと国が想定し、委託費が各園に支払われている。 「委託費の弾力運用」が認められると、それまであった「人件費は人件費に使う」という使途制限が緩和され、人件費分を事業費や管理費へ流用するという各費目の相互流用のほか、同一法人が運営する他の保育園や介護施設への流用、施設整備費への流用などが許されるようになった。 ある程度の経営の自由度は必要だが、自民党政権下で規制緩和が繰り返され、今では委託費の年間収入の4分の1もの金額を他の費目に流用できるようになっている。そこに目をつけた事業者は、人件費を抑えて事業を拡大し、利益を得ていったのだ』、「規制緩和が繰り返され、今では委託費の年間収入の4分の1もの金額を他の費目に流用できるようになっている」、「同一法人が運営する他の保育園や介護施設への流用、施設整備費への流用などが許されるようになった。 ある程度の経営の自由度は必要だが、自民党政権下で規制緩和が繰り返され、今では委託費の年間収入の4分の1もの金額を他の費目に流用できるようになっている」、「委託費の流用」が「同一法人が運営する他の保育園や介護施設への流用、施設整備費へ」とまで野放図に認められるようになったというのは驚きだ。
・『565万円→381万円…200万円はどこに消えたのか その結果、委託費の8割以上を占めるはずの人件費が抑え込まれた。東京都による2018年度実績の調査では、都内の社会福祉法人の人件費支出の割合は7割、株式会社では5割にとどまり、その傾向は今も変わっていない。 委託費を算出するための「公定価格」は全国8つの地域区分に分かれ、それぞれ単価が異なる。公定価格が最も高い東京23区で見てみると、2021年度の保育士一人当たりの基本的な賃金年額は約442万円となる。 営利企業が集中して進出する東京23区では、その442万円に処遇改善費が加わると、単純計算だが、最大で約565万円の賃金が公費で出ていることになる。しかし、東京23区で実際に保育士が手にとる賃金は約381万円と少ない(内閣府「幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査」2018年度実績)。計算上、公費から出る賃金額と実際に保育士に支払われる金額の差が、最大で年間200万円近くになる。その差はどこに消えるのか』、「最大で約565万円の賃金が公費で出ていることになる。しかし、東京23区で実際に保育士が手にとる賃金は約381万円と少ない・・・金額の差が、最大で年間200万円近くに」、この差はどういうことだろうか。
・『基準より人員を多く雇う保育園はあるが… ただ、賃金が低くなる正当な理由もある。人件費は基本的には最低配置基準に沿って出るため、基準より多く雇えば一人当たりの賃金が低くなるケースがある。 認可保育園などの保育士の最低配置基準は、0歳児が園児3人に対して保育士1人(「3対1」)、1~2歳児が「6対1」、3歳児が「20対1」、4~5歳児が「30対1」となっている。4~5歳児の基準は戦後から70年以上も変わっていないため、この体制では不十分だと判断して人員を多く雇う保育園は多く、ひとつの認可保育園で平均3~4人を多く配置している(内閣府調査)。このように保育士の多い園では、一人当たりの賃金が低くなってもやむを得ない事情がある。 とはいえ冒頭のように、配置基準ギリギリにして人件費を抑える保育園は少なくない。利益重視の事業者は営利企業でも社会福祉法人でも、「コストコントロール」を図るため、「保育士の適正配置」「職員配置の適正化」を掲げている。つまり「人件費カットのため、最低配置基準を守れば人員体制はギリギリでいい」(複数の業界関係者)という考え方だ』、「人員を多く雇う保育園は多く、ひとつの認可保育園で平均3~4人を多く配置している・・・。このように保育士の多い園では、一人当たりの賃金が低くなってもやむを得ない事情がある」、なるほど。
・『都内30カ所で違反が常態化している ある中堅企業傘下の保育園で働いていた保育士は「園児の欠席が多いと、配置基準上で保育士が余るので、他園にヘルプに出されました。普段みていない園児を保育するのは不安でした。職員の数に余裕がないため、誰かが急に休むと、とたんに配置基準を割ってしまいます。これでは、いつ事故が起きてもおかしくないと思って辞めました」と話す。 1年半ほど前に筆者は東京都が認可保育園に対して行った2017~19年度の監査結果について調べており、「保育士が適正に配置されていない」などの文書指摘を受けた保育園が都内で合計153カ所に上った。 それらの違反の詳細について都に情報開示請求を行うと、「保育士配置違反が常態化している」「無資格者しかいない時間帯がある」などの実態が明らかになった。保育士配置違反が常態化している園と違反状態が長く続いていると見られる園は合計30カ所もあった。そもそも少ない配置基準でさえ守られないのでは、保育士は疲弊し、子どもの安全を守ることは難しいだろう』、「保育士配置違反が常態化している園と違反状態が長く続いていると見られる園は合計30カ所もあった。そもそも少ない配置基準でさえ守られないのでは、保育士は疲弊し、子どもの安全を守ることは難しいだろう」、その通りだ。
・『6年間で保育事故は3.5倍に 保育士の配置基準については、2014年3月の段階で、1歳児を現行の園児6人に対し保育士1人(「6:1」)から「5:1」へ、4~5歳児は「30:1」から「25:1」にすると国は計画し、必要な予算を約1300億円と試算していた(「子ども・子育て支援新制度における『量的拡充』と『質の改善』について」)。 配置基準の引き上げは保育業界の長年の悲願であり、ようやく2023年度から「チーム保育推進加算」を拡充することで、大規模園の4~5歳児の「25対1」の実現が図られる。これを第一歩に、抜本的な改善が必要だ。 保育事故は年々増えている。内閣府の「教育・保育施設等における事故報告集計」から、認可保育園で起こった死亡・負傷等の事故件数を見ると、2015年の344件から2021年は1191件となり、この6年で3.5倍近く増えている。 2021年の保育事故の状況を詳しく見ると、負傷等のうち最も多いのが骨折の937件、その他(指の切断、唇、歯の裂傷等を含む)が242件あり、意識不明が8件、火傷が2件、死亡が2件だった。年齢別では、保育士配置が手薄になる4~5歳の多さが目立ち、それぞれ246件、404件だった』、「認可保育園で起こった死亡・負傷等の事故件数を見ると、2015年の344件から2021年は1191件となり、この6年で3.5倍近く増えている」、なるほど。
・『事業者が利益を得るための制度ばかりが変わっていく 政府は1月27日、通園バス園児置き去りの再発防止のための調査結果を公表した。通園バスをもつ保育園などのうち約2割に乗降時の子どもの安全管理に課題があったとしている。4月からは通園バスに安全装置の設置が義務付けられるが、問題の本質は保育士不足や保育の質の低下であり、保育士の労働条件の改善こそが急務の課題だ。 4月にこども家庭庁が発足する今こそ、最低配置基準の引き上げを行い、それと同時に前述した「委託費の弾力運用」の規制を強化して人件費の流出を食い止めなければ、保育士の労働環境は変わらない。保育士が守られなければ、犠牲になるのは子どもたちだ。 この国は、保育事業者が利益を得るための制度は次々に変えていくが、保育現場で子どもが命を落としても、子どもにとって必要な制度は変わらない。保育は児童福祉法に基づく福祉行政の一貫として行われていることを忘れてはならない』、「この国は、保育事業者が利益を得るための制度は次々に変えていくが、保育現場で子どもが命を落としても、子どもにとって必要な制度は変わらない。保育は児童福祉法に基づく福祉行政の一貫として行われていることを忘れてはならない」、同感である。
次に、4月24日付け東洋経済オンラインが掲載したフェリス女学院大学 文学部英語英米文学科 助教の関口 洋平氏による「「保育園の重大事故」園だけを責められない問題点 「待機児童ゼロ作戦」によって本末転倒な状況に」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/667340#:~:text=%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%BB%E6%95%99%E8%82%B2%20%3E%E5%AD%90%E8%82%B2%E3%81%A6-,%EF%BD%A2%E4%BF%9D%E8%82%B2%E5%9C%92%E3%81%AE%E9%87%8D%E5%A4%A7%E4%BA%8B%E6%95%85%EF%BD%A3%E5%9C%92%E3%81%A0%E3%81%91%E3%82%92%E8%B2%AC%E3%82%81%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%AA%E3%81%84,%E3%81%AB%E3%82%88%E3%81%A3%E3%81%A6%E6%9C%AC%E6%9C%AB%E8%BB%A2%E5%80%92%E3%81%AA%E7%8A%B6%E6%B3%81%E3%81%AB&text=%E6%97%A5%E5%B8%B8%E3%81%AE%E3%81%84%E3%81%9F%E3%82%8B%E3%81%A8%E3%81%93%E3%82%8D%E3%81%A7%E6%BF%AB%E7%94%A8,%E3%81%AE%E5%85%AC%E8%A1%A8%E3%81%8C%E7%BE%A9%E5%8B%99%E5%8C%96%E3%80%82%E2%80%A6
・『日常のいたるところで濫用され、消費されている「イクメン」という表現。2022年10月から改正育児・介護休業法により「産後パパ育休」が施行され、この4月からは育児休業取得状況の公表が義務化。「イクメン」という言葉の流布から10年以上が経ち、再び注目されるキーワードになった今こそ、その意味を構造的に問いなおすことが必要なのではないだろうか。 本稿は、子育ての話題の中でも特に議論を呼ぶ「保育園」を取り巻く問題について、検証する。自身も子育て中のアメリカ研究者が「イクメン」という言葉そのものに疑義を抱くところから始まる最新著書『「イクメン」を疑え!』(集英社新書)より、一部抜粋・再構成してお届けします。 アメリカでは保育園の設置基準が統一されていないのに対して、日本では国が認可保育所の条件を定めている。どの認可保育所を利用しても最低限の質は担保されているので、利用者は比較的安心して子どもを預けることができる。日本に住む私たちにとって、そうした質の高い保育は「育児のネットワーク」の重要な一部をなしている。 ところが、ここ20年あまりの新自由主義的な潮流のなかで、育児に対する公的な支援は日本でも徐々に削減されてきた。一言で言えば、日本においても保育の市場化が急速に進んだのである。本稿では少子化や待機児童といった日本独自の事情を勘案しつつ、新自由主義が日本の保育に与えた影響を検討したい』、「少子化や待機児童といった日本独自の事情を勘案しつつ、新自由主義が日本の保育に与えた影響を検討したい」、興味深そうだ。
・『保育園から「突然の通告」 はじめに、ここではひとつの具体例を紹介したい。東京都目黒区在住の竹内冬美さんは、いわゆる「保活」の末に2019年から区立保育園を利用し始めた。その区立園は評判どおりに保育の質が高く、2021年からは第二子も預けることができて満足していた――そんな矢先の4月半ばである。 竹内さんは保育園から1枚の薄い藁半紙を受け取った。その紙に掲載されていたQRコードを読み取って区のホームページを見ると、その区立園が数年後に別の区立園と統合されたうえで民営化されることが事務的に記されていた。) 青天の霹靂としか言いようのない保育園民営化計画を知って、竹内さんは困惑と怒りの混ざった感情を抱いたという。 慣れ親しんだ保育士がいなくなったとき、子どもたちはどのような反応をするだろうか?新しい保育園において保育の質はどこまで保持されるのだろうか?あるいは、公立の保育園がそれまで担ってきた公的役割─地域の避難所や子育て支援の拠点としての機能、障がい者の受け入れなど─はどうなるのだろうか? 区による一方的な決定に疑問を感じた竹内さんたち保護者は、区立園の存続に向けた活動を始めた(※1)。 この例からもわかるとおり、保育園民営化は現在に至るまでさまざまな自治体において重要な争点になっている。だが、民営化の議論は近年に始まったことではない』、確かに「保育園民営化」は、「慣れ親しんだ保育士がいなくなったとき、子どもたちはどのような反応をするだろうか?新しい保育園において保育の質はどこまで保持されるのだろうか?あるいは、公立の保育園がそれまで担ってきた公的役割─地域の避難所や子育て支援の拠点としての機能、障がい者の受け入れなど─はどうなるのだろうか?」、などクリアすべき問題も多い。。
・『「待機児童ゼロ作戦」で目指したこと 日本において保育への公的支出がカットされ始めたのは、1980年代のことである。公立保育園の数が1983年に過去最多を記録した一方で、この時代には保育園運営費の国家負担率が徐々に削減されていった。公立保育園にのみ多額の公費が投入されることや、公立保育士の賃金の高さなどが批判されたのである。 このような流れのなかで、鈴木善幸内閣・中曽根康弘内閣の第二次臨時行政調査会は、保育園の民営化をひとつの目標として掲げた。 ところが、この時代には「生活可能な、主体的に働くことを選んでいる共働き層への保育サービスの供給は『公費の乱用』と指摘された」というから、待機児童の増大と少子化を背景とした現在の保育園民営化とは事情が大きく異なる(※2)。 共働きの家庭が現在ほど一般的でなかったこの時代においては、保育園の数を増やすどころか、むしろ抑制することが課題とされたのである。事実、1980年を境に保育園の入所児童数は緩やかに減少していった(※3)。 そのような方針を一変させる要因となったのが、1990年のいわゆる「1.57ショック」である。1973年には2.14であった合計特殊出生率(ひとりの女性が一生の間に産む子どもの数)は急速に低下し、1989年に1.57となったのだ。 この衝撃を受けて、政府は少子化対策としてさまざまな政策を矢継ぎ早に策定した。1994年の「エンゼルプラン」、1999年の「新エンゼルプラン」、2003年の次世代育成支援対策推進法・少子化社会対策基本法などがその一例である。 (※1)2021年8月21日、個人インタビュー。 (※2)萩原久美子「保育供給主体の多元化と公務員保育士─公共セクターから見るジェンダー平等政策の陥穽」『社会政策』8.3(2017年)66頁。 (※3)汐見稔幸・松本園子・髙田文子・矢治夕起・森川敬子『日本の保育の歴史子ども観と保育の歴史150年』(萌文書林、2017年)318頁。) 一連の少子化対策のなかで重視されたのが、保育園の量的な拡大だった。2001年に発足した小泉純一郎内閣は「待機児童ゼロ作戦」を掲げ、2002年度から3年間で15万人の保育園児の受け入れ増を目指した。「聖域なき構造改革」というキャッチフレーズを掲げて小泉政権が新自由主義的な政策を推進したことはよく知られているが、「待機児童ゼロ作戦」もその延長線上にある。 保育園の量的拡大を実現するために重用されたのは、規制緩和と民営化という二本柱であった。産業構造の変化により、いわゆる「家族賃金モデル」(父親がひとりで家族全員を養うことができるだけの賃金を終身雇用制により保障するシステム)が崩壊し、共働き世帯が増加していたことも相まって、これらの改革は急速に進行した』、「1980年代のことである。公立保育園の数が1983年に過去最多を記録した一方で、この時代には保育園運営費の国家負担率が徐々に削減されていった。公立保育園にのみ多額の公費が投入されることや、公立保育士の賃金の高さなどが批判された」、「共働きの家庭が現在ほど一般的でなかったこの時代においては、保育園の数を増やすどころか、むしろ抑制することが課題とされたのである。事実、1980年を境に保育園の入所児童数は緩やかに減少していった」。 「そのような方針を一変させる要因となったのが、1990年のいわゆる「1.57ショック」である。1973年には2.14であった合計特殊出生率・・・は急速に低下し、1989年に1.57となったのだ。 この衝撃を受けて、政府は少子化対策としてさまざまな政策を矢継ぎ早に策定した」、「一連の少子化対策のなかで重視されたのが、保育園の量的な拡大だった。2001年に発足した小泉純一郎内閣は「待機児童ゼロ作戦」を掲げ、2002年度から3年間で15万人の保育園児の受け入れ増を目指した・・・保育園の量的拡大を実現するために重用されたのは、規制緩和と民営化という二本柱」、歴史的経緯がよく理解できた。
・『規制緩和で起こった「詰め込み保育」の弊害 新自由主義改革が保育という領域に与えた影響を理解するために、まずは規制緩和という側面に注目してみよう。 小泉政権が促進したのは、保育園の入所定員の「弾力化」である。「弾力化」とは耳慣れない言葉かもしれないが、規制を緩和して制度を柔軟に適用するということであり、この文脈では、「詰め込み保育」を意味している。この改革により、待機児童が多い自治体では、保育園の定員を超えて(年度初めは15%増しまで、年度途中は25%増しまで、年度後半は無制限)子どもを預かることが認められた。 小泉政権は保育園の入所定員だけでなく、保育士の配置基準も緩和した。1998年には常勤の保育士を原則とする規定が撤廃され、基準配置数の2割までという条件付きで短時間勤務保育士(非常勤保育士)を配置することが認められた。 小泉政権はこの規制緩和をさらに推し進め、非常勤保育士の上限を撤廃した。各クラスに1?2名以上常勤の保育士がいれば、あとはすべて非常勤保育士でもよくなったのである。 入所定員の弾力化や保育士の配置基準の緩和は、待機児童を減らすという意味では一定の効果があった。その一方で、規制緩和により保育の質が低下したこともまた事実である。 常勤の保育士が原則であったのは、保育士が頻繁に入れ替わると子どもが安定した人間関係を築けないからである。保育園に定員が設定されているのは、キャパシティを超えて園児を受け入れると十分に目が行き届かず、事故の可能性が高まるからだ。) 事実、保育園で起きた痛ましい死亡事故に関する報道は後を絶たない。ジャーナリストの猪熊弘子によれば、「事故が起きた施設の多くは、保育室の面積が非常に狭く、職員が少なく、無資格者や資格を持っていたとしても経験の少ない場合がほとんど」であり、「余裕のない保育施設の運営が、子どもの死亡事故を招いている」という(※4)。 事故を起こした個々の保育施設を責めることは簡単だが、その背後に構造的な要因が潜んでいることが看過されてはならない』、「「事故が起きた施設の多くは、保育室の面積が非常に狭く、職員が少なく、無資格者や資格を持っていたとしても経験の少ない場合がほとんど」であり、「余裕のない保育施設の運営が、子どもの死亡事故を招いている」という」、なるほど。
・『「保育園民営化」の推進で何が起こったか 待機児童対策のために政府が重視したもうひとつの方針が、民営化である。2000年には営利企業も認可保育所に参入できるようになった。自治体か社会福祉法人しか認可保育所を設置・運営してはならないという規制が撤廃されたのである。 小泉政権は、民営化の流れをさらに加速させた。2003年に内閣府により発表された報告書では、「保育サービスの需要は今後ますます増大し、将来有望な市場となる」一方で、「株式会社の参入を認めるなど規制緩和が進んだにもかかわらず、そのメリットが利用者にきちんと還元されて」いないことが問題視された(※5)。 公立保育園では「効率的に経営が行われて」おらず、規制緩和の徹底により民間企業の参入を促すことが必要である、というのがこの報告書の結論である。公立保育園のコスパの悪さを強調する一方で保育サービスが将来的に有望な市場であることを明記するこの報告書には、「すべての領域を金銭化する」新自由主義の基本方針が明確に反映されている。 この報告書の議論を受け、2004年にはいわゆる三位一体改革の一環として公立保育園の運営費が一般財源化された。それまでは国庫補助負担金という形で保育園の運営のためだけに使える予算が自治体へ支給されていたが、この補助金の廃止によって用途が特定されない予算が自治体に支給され、自治体ごとにその予算を自由に割り振れるようになったのである。 (※4)猪熊弘子『「子育て」という政治少子化なのになぜ待機児童が生まれるのか?』(角川SSC新書、2014年)101頁。 (※5)内閣府国民生活局物価政策課「保育サービス市場の現状と課題─『保育サービス価格に関する研究会』報告書─」2003年。) この一般財源化を機に、多くの自治体は保育園関連の予算を大幅にカットした。その結果、先述したような民営化による混乱が2000年代には続発した(※6)。また、公立・私立を問わず、保育士の非正規雇用化が進んだ。 慢性的な財政難に苦しむ自治体にとって、民営化によるコスト削減は魅力的である。民営化や統廃合が進むにつれて公営保育園の数は徐々に減り、2007年には私営保育園の数を下回った。2021年時点で、公営保育園が7919カ所あるのに対し、私営保育園は2万2076カ所である。 2000年の時点では公営・私営それぞれ1万2707カ所と9492カ所であったので、保育園の総数が増えていること、また公営・私営の割合が著しく逆転していることがわかる(図 ※7) 』、「2021年時点で、公営保育園が7919カ所あるのに対し、私営保育園は2万2076カ所である。 2000年の時点では公営・私営それぞれ1万2707カ所と9492カ所であったので、保育園の総数が増えていること、また公営・私営の割合が著しく逆転していることがわかる」、なるほど。
・『保育の質が低下することへの懸念 誤解しないでほしいのだが、私は民間の保育園や非正規の保育士は質が低いと主張したいわけではないし、公立の保育園が完璧であると言いたいわけでもない。私の個人的な経験から言っても、民間であれ、非正規であれ、有能で熱心な保育士は数多く存在している。 問題は、拙速な民営化によって保育の質が担保されないような構造ができ上がってしまったことなのだ。待機児童問題の深刻さを考えれば、営利企業の参入という判断は妥当であったかもしれない。だが、それによって保育の質が低下し、子どもを安心して預けられないのでは元も子もないはずである。 (※6)2000年代の保育園民営化については、たとえば以下の文献を参照。汐見稔幸・近藤幹生・普光院亜紀『保育園民営化を考える』(岩波ブックレット、2005年)、二宮厚美『構造改革と保育のゆくえ』(青木書店、2003年)、平松知子『保育は人保育は文化ある保育園民営化を受託した保育園の話』(ひとなる書房、2010年)。(※7)厚生労働省、平成12年?令和3年社会福祉施設等調査』、「問題は、拙速な民営化によって保育の質が担保されないような構造ができ上がってしまったことなのだ。待機児童問題の深刻さを考えれば、営利企業の参入という判断は妥当であったかもしれない。だが、それによって保育の質が低下し、子どもを安心して預けられないのでは元も子もないはずである」、その通りなのだろう。
第三に、5月4日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストの小林 美希氏による「"国会での論戦"で見えた「日本の保育」重大争点 「異次元の少子化対策」保育においてはどうなのか?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/669534
・『国会中継などで見かける大臣と議員の激しい論戦。その内容を注視して見たことはあるだろうか。 そこでは日本の未来を左右する重要な論点が多く扱われている。今の日本において見逃せない論点とは何か。ジャーナリストの小林美希さんが国会でとくに話題となった議論をたどりながら、問題の焦点に迫る。今回は「保育」の問題について取り上げる。 岸田文雄首相が大々的に掲げる「異次元の少子化対策」。保育園の通園バスに置き去りになって園児が死亡した事故や、保育士による虐待事件が相次ぐなど、保育の業界では事件・事故が続いている。そうした中、子どもを守る保育士の数を増やすべきと、人員増が求められている。 保育園には園児の年齢ごとに保育士の最低配置基準があり、現在、保育士1人で1~2歳児を6人、4~5歳児を30人みることができる。それでは保育士の負担が重いうえ、子どもたちに充分に目が行き届かないと、保育士の配置基準を引き上げることが検討課題になっている。 昨年来、国会では連日この問題が取り上げられ、当事者の運動も広がりを見せたことから、「配置基準が今年こそ引き上げられるのではないか」と期待がかかった。しかし3月末に発表された「異次元の少子化対策」の「たたき台」では、基準の「引き上げ」ではなく、手厚い保育を実施する園への運営費上乗せという「改善」に留まった。いったい配置基準引き上げを巡り、国会ではどんな論戦が行われ、議論の現在地はどうなっているのか』、興味深そうだ。
・『戦後から続いてきた「配置基準」をめぐる攻防 2022年11月9日、衆議院の厚生労働委員会では、大西健介議員が”難事”に向かった。持ち時間の多くを割いて説いたのは、保育士の最低配置基準引き上げの重要性についてだ。 認可保育園には保育士の最低配置基準が決められており、他のタイプの公的保育園もその基準に倣っている。配置基準が決められたのは戦後間もない1948年で、それ以降、大きく変わっていないことが問題視されている。) 振り返れば基準が置かれた1948年の当初、0~1歳児は園児10人を保育士1人でみる「10対1」だった。0歳児は1967年に「6対1」へ、1998年に「3対1」へと基準が手厚い方向に変更された。 1~2歳児は1967年に「6対1」になって以降、50年以上変わっていない。4~5歳児は75年前からずっと「30対1」のまま。海外を見てみると、英国では保育者の持つ資格によるが、3歳以上5歳未満が「13対1」や「8対1」、ドイツは州ごとに異なるが3歳児未満の平均が「4.5対1」、3~6歳児が「11.8対1」や「8.6対1」などの厚みがある(厚生労働省の委託事業「諸外国における保育の質の捉え方・示し方に関する研究会」報告書2019年)。日本の基準引き上げは長年の課題だ。 大西議員は「基本的な考え方を聞いていきたい。大臣には是非、御自身のお言葉で、率直にお考えを」と切り出した。 「1歳児の基準は私が生まれた頃から変わっていない。4~5歳児は基準制定の1948年以来、70年以上変わっていないのです。1948年は戦後の第1次ベビーブーム。当時の出生数は約268万人、そして、昨年(2021年)の出生数は81万人。全く世の中が変わってしまっているのに、保育士の配置基準は変わっていない。ある種、異常なことだと思うが、大臣の率直な意見をお聞かせいただきたいと思います」(大西議員) 国会で議員が質問する内容は、事前に各省府庁に通告されて官僚が答弁を作り、それを基に閣僚が答えていく。大西議員は、大臣に対して官僚が作った答弁書を読むのではなく、大臣自身の言葉を求めた。 ところが加藤勝信厚生労働相が説明し始めたのは、2015年度に行われた3歳児の配置改善についてだった。国は2014年に配置基準を引き上げる計画を立ており、一部は改善されている。 当時、消費税の税率を引き上げる際に、保育園の数を増やす「量的拡充」のための施策に必要な0.7兆円を消費税で賄い、そのなかで3歳児の配置基準の「20対1」を「15対1」にすると計画された。基準そのものは引き上げられなかったが、消費税を財源に「15対1」体制をとる園の運営費を「加算」して支給する形で、2015年度に改善した。 また、消費税以外を財源とする0.3兆円で「質の改善」を行うとして、1歳児の「6対1」を「5対1」へ、4~5歳児の「30対1」を「25対1」に引き上げるなどの計画が立てられた。それら保育の質を向上するための施策は「0.3兆円メニュー」と呼ばれているが、財源がないことを理由に2014年以降、実現しなかった。 加藤大臣は、「(目標としている)4~5歳児の配置改善は実施できていない。このことは強く認識をしているところ。引き続き、財源をしっかり確保する努力をしていきたい」と、淡々と答弁書を読み上げた。 大西議員は「答弁を読むのではなくて、70年前と今の社会、子どもを取り巻く状況は全く違う。70年で1回も配置基準が変わらないことが、率直に言って、これは普通ですか」と強調した。) ここで、愛知県の保育園関係者が結成した「子どもたちにもう1人保育士を!実行委員会」が2022年2月~3月に行ったアンケート調査の内容が紹介された。現場で実際に働く保育士が考える、保育士1人が受け持つ子どもの適切な人数は何人なのか。 国の基準は1歳児が「6対1」だが、保育士の約半数が「3対1」と答えている。同様に4~5歳児の国の基準は「30対1」だが、現場で最も多かったのは4歳児が15人、5歳児が20人だった。 大西議員は「これが現場の受け止めなんです。実際の配置基準と大きく乖離していることについて大臣の受け止めをお聞きしたいと思います」と重ねた。 これに対し加藤大臣は、またも「3歳児の配置改善を行った」と成果を強調。そして、「1歳児、4~5歳児についての宿題を果たすべく、しっかり財源も確保し実現できるよう努力したい」と、”財源確保”を理由に逃げるかのような答弁をするにとどまった。 業を煮やした大西議員は「繰り返しになりますけれど、私が最初に聞いたのは、50年、70年変わっていない、これが変ですよねという話ですよね。配置基準と現場の感覚が全く違うことを大臣に認めていただきたいんです」と語尾を強め、畳みかけた。 「1歳児、2歳児は、国の基準では6対1です。これで災害の時に子どもの安全を守ることができるのでしょうかということを聞きたいんです。例えばアンケートの自由記載の部分では、次のような回答がありました。 『子どもの発達には個人差があり、1歳児でも歩けない子どもがいるなか、6対1の配置では全く十分でない。おんぶ、だっこ、両手をつないで守れるのは4人まで。残り2人を声かけで避難など到底、無理』 大臣は、1歳児や2歳児6人に保育士1人という配置で、例えば地震などの災害が起きた場合、火事が起きた場合、安全を守ることができるとお思いになりますでしょうか」 ここでも問いに答えない加藤大臣。「地域の関係機関と連携して必要な協力が得られるよう努めるなどの対応をお示ししているところ。保育所には安全計画、それに沿った対応をお願いできるよう努力したい」と、論点をずらした。 大西議員は「全く、かみ合っていないと思うんですよ。安全計画を立てても、おんぶ、だっこ、両手をつないで4人、これしか無理なんです。逃げられないですよ。だから、これでは安全を守れないですよね、ということを言っているんです」と怒りを露わにした。) これは災害には限らない。アンケートの別の回答も切実だ。 「『3歳児18人を1人で担任していた時に、まだお漏らしをする子も多い中、便の始末にかかっている間に、部屋にいる子がけんかで、かみつきがあったり、椅子に上って大人の事務戸棚からセロテープをとろうとしてテープカッターを落としてしまい、テープカッターの刃の部分で隣にいた子の頭を切ってしまい3針縫うけがをさせてしまったことがあります』。 場面が思い浮かぶようなリアルなエピソードですが、3歳児は今、20対1の配置基準です。こういう配置基準だと、今言ったように目が届かなくて事故が起こるのが避けられないと私は思うのですが、これは大臣、いかがでしょうか」(大西議員) 加藤大臣は質問には答えず「保育士の皆さんは大変なご苦労をいただいているというふうに承知したおります」と言って、保育士の補助を行う保育補助者の雇い上げに必要な費用、業務の効率化のための登園管理システムの導入するためのICT化の推進など保育士の負担軽減策を行っていると細かな説明を始めた。 大西議員は「またかみ合ってない。子どもの発達という点でも、ぎりぎりの人数でやっている現状というのは、私は問題だと思っています」と指摘した。 そして、再びアンケート結果に話を戻した。アンケートでは「国の保育士配置基準が改善されればどのようなよい点があるか」という質問に対して、「1人ひとりにじっくり向き合える」「子どもたちの主体性を大切にし、いろんなことに挑戦したり、なかなかできない遊びを保障できる」「事務負担も分担してサービス残業も減る」「一人の負担も減るからメンタル的なしんどさも解消され、保育士を辞める人も減る」という回答が寄せられた。 大西議員が「子どもの発達、保育士の退職防止のためにも配置基準の見直しは必要。大臣、いかがでしょうか」と質問してやっと、加藤大臣は「今の基準を保持していくべきだということを申し上げているのではなく、既に、1歳児、4~5歳児は見直していくことを決めている」と国のスタンスに言及したのだった。とはいえ、「それを進めるにあたって安定的な財源をどう確保するか議論を進めたい」と、またも財源論。 大西議員は「決まって、この話になり、お金がないからできないと言って50年、70年やってこなかった。保育の質が置き去りになっているのは大問題。もう財源の確保を言い訳にしないで、必要なことはやる。こども家庭庁ができ、今まさにそのタイミングが来ている。加藤大臣、是非、ご決断いただきたいと思います」と迫った。 「政治判断が下されれば、予算は作られる」というのが永田町と霞が関の”常識”でもある。1歳児と4~5歳児の配置基準を引き上げるために必要な予算は、年に約1300億円。国家予算の規模からすれば、決して大きすぎる額ではない。) この問題に迫っているのは、大西議員だけではない。この質疑の1カ月前、2022年10月20日の参議院予算委員会では、片山大介議員が予算確保の必要性について岸田首相に迫り、10年前から実現しない「0.3兆円メニュー」の存在を改めて掘り起こしていた。 「10年前の子ども・子育て関連三法の付帯決議で、配置基準の改善に必要な予算の確保を図るということを求めています。当時の民主党、自民党、公明党の三党で社会保障の一体改革のなかの確認書で、保育の質を上げようという話になっている。俗にいう0.3兆円メニューですが、あれから10年経っても実現されていないのです」 岸田首相は明言を避けたが「おっしゃるように、保育の質と予算とのバランスは考えていかなければならない課題だと思います。時代の変化のなかで果たすべき役割との関係で考えていく課題であると認識します」と含みを持たせるような答弁をした。 2023年に入って岸田首相が「異次元の少子化対策」を掲げ、政府は3月末に「たたき台」をまとめた。保育士の配置基準の改善のほかの主な対策は、①児童手当の所得制限の撤廃、②育児休業の給付金の拡充、③高等教育の経済負担の軽減策―――。他にも、出産費用の保険適用化、学校給食の無償化など、多岐に渡る政策が並んだ。 統一地方選を前に高所得者層の不満を解消すべく、児童手当の所得制限の撤廃がフォーカスされるなかでの「たたき台」の発表だった。 議論が児童手当の所得制限の撤廃に集中するあまり、国会周辺では「財源が児童手当の拡充にもっていかれては、配置基準の引き上げに予算がかけられないのではないか」という心配があった。「厚生労働省や内閣府は何年も前から配置基準の引き上げを行おうとしていたが、安倍晋三政権で保育園や幼稚園の無償化政策が行われた時も多額の予算が割かれてしまった」(関係者)という経緯もある。 岸田首相が「子ども予算倍増」と言う一方で、配置基準引き上げについて政府は煮え切らない。複数の関係者が「3月末に出た『たたき台』に向けて、内閣府と厚労省からは配置基準の引き上げは必須として、他の質の向上に関する政策も含めてすべて提出されていた」としており、「要望を受け取った小倉將信少子化担当大臣が頭を抱えていたようだ」と明かす。一方で、「国会でも大きく取り上げられ、さすがに今回は配置基準を変えるだろう」との見方も強まったが、結局のところ基準の「引き上げ」ではなく「改善」に留まった。 今後、「たたき台」をベースに岸田首相を議長とした「こども未来戦略会議」での議論を経て必要な政策や予算、財源が6月の「骨太の方針」までに示される。 こども家庭庁が発足して間もない4月4日、参議院の内閣委員会では井上哲士議員も配置基準を「引き上げ」るのか「改善」なのかを追及すると、小倉大臣が「基準の引き上げは行わない」と答えた。) 「最低基準を引き上げた場合、すべての保育園で基準をクリアする必要が出るため、保育士確保で現場に混乱が生じる可能性もあります。現状、様々な園において基準に達しないということも起こる可能性がある」(小倉大臣) の答弁に対して井上議員は、保育士の資格を持ちながら保育士として働いていない潜在保育士の多さを指摘。「厚生労働省の資料では、2019年で保育士の有資格者は160万7000人いるが、保育所などで働いているのは62万6000人で38.9%に過ぎない」と切り返した。 そして、井上議員は「配置基準の抜本改定は、魅力とやりがいのある職場につながる。基準どおり配置できない保育園ができるということでない。これだけの資格者がいるわけですから、保育士が保育園で働けるようにするためにも1人当たりの子ども数を減らす点で、基準の改定は待ったなしだ」と小倉大臣に詰め寄った。 くの国会議員が基準引き上げを求めるなか、国が言い訳にする保育士確保の問題には疑問が残る。 022年12月の段階で、認可保育園全体の約2割が既に「チーム保育推進加算」という運営費の上乗せ制度を使って4~5歳児の「25対1」を図っている実態を、内閣府は把握していた。そのうえで、現場が「25対1」でない園の定員分布を分析。「121人以上の大規模な認可保育園が全体の約2割を占め、その4歳児クラス、5歳児クラスの人数が平均で25人を超えている」(内閣府、当時)として、2023年度から「チーム保育推進加算」を拡充したのだ。つまり、既に大半の園で「25対1」になっているのだ。 1歳児の配置については、東京都などの自治体が上乗せ補助を行い「5対1」を既に実現しているケースが少なくない。出生数減少により定員割れしている保育園が急増するなか、行政サイドからも「待機児童が多かった数年前であれば基準引き上げで混乱が生じてしまうが、今は状況が違う。最初は加算方式でも、何年かかけて基準を引き上げればいい」との見方がある。一方で、複数の国会議員が「保育園経営に近い立場の国会議員が、基準引き上げに猛烈に反対した」と明かす。 都市部や地方の複数の保育園経営者、業界団体の役員などは「園の評判が悪いことで保育士が集まらない場合があるだろうが、現状、配置基準が引き上げられても保育士確保に問題はない」と口を揃える。たとえ直ちに配置基準の引き上げとならなくても、数年後に基準を変えると宣言して猶予期間を作るなど、工夫はできる。今後の国会論戦でも国を動かす議論は見られるだろうか』、「加藤大臣」は財務省出身で答弁は手慣れているだけに、平気で論点ずらしも行い、不誠実な大臣の筆頭格だ。大臣のこうした答弁姿勢を熟知している「大西議員」も、もっと突っ込んだ質問をしてほしかった。
先ずは、本年2月9日付けPRESIDENT Onlineが掲載した労働経済ジャーナリストの小林 美希氏による「2歳児を公園に置き去りにして帰ってくる…全国の保育園で「昔にはあり得なかったこと」が起きている根本原因 保育が「儲かるビジネス」になり、質が低下している」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/66268
・『「いつ置き去り事故が起こってもおかしくない」 「子どもを公園に置いて園に帰ってきてしまう。少し前なら、あり得ないことが起こっているのです」 都内の認可保育園の小田明子園長(仮名、60代半ば)は、驚きを隠せない。小田園長は公立保育園も含めて40年以上、保育現場に携わっている。現在は私立の認可保育園の園長で、これまで大きな事故もなく過ごしてきたが、1年ほど前に保育士が2歳の園児を公園に置いたまま散歩から帰ってきてしまい、肝を冷やした。 園児がいないことに気づき、慌てて園長と保育者数人とで外を探すと、近隣の住民に保護され、ことなきを得た。もしも誤って道路に飛び出していれば交通事故に遭っていたかもしれないと思い、身震いした。担任保育士は経験が浅く、ケガが起きないように見るので精一杯。「早く保育園に帰って、給食の準備をしなければ」という焦りがあって、園児の点呼を忘れていたという。 こうした事態に小田園長は頭を悩ます。 「園児が全員いるかどうか点呼することは、基本中の基本です。公園に着いた時はもちろん、遊んでいる最中、園に帰る時も全員が揃っているか、常に確認する。それが、業務に追われて目の前の子どもが見えなくなっているのです。いつ置き去り事故が起こってもおかしくない環境なのです」』、「園児が全員いるかどうか点呼することは、基本中の基本です」、でも未熟な「保育士」は時として忘れてしまうようだ。「園児の点呼」は習慣化しておうべきだ。
・『20人の子どもたちを4畳半程度のスペースに… それというのも小田園長が勤める法人は、保育園の数を増やして事業拡大することと利益を上げることを優先させている。人件費を抑えるため、保育士は低賃金で人員体制はギリギリという状態なのだ。若手が疲弊して、2~3年で辞めていく。そうしたなかで起こった置き去りだった。 他の都内の私立の認可保育園でも、園児が保育園から一人で出ていこうとしていた。たまたま居合わせた保護者の飯田恵さん(仮名、40代)が止めたが、その後の対応が不十分だった。飯田さんは、「子どもが勝手に出ていかないようにと、登園時やお迎えラッシュの時間帯は20人もの子どもたちが、4畳半程度のスペースに囲った柵のなかに詰め込まれるようになりました」と憤りを隠せない。 日頃から、園児同士の噛みつき、ひっかきも多い。大きなすり傷に気づいた飯田さんが理由を尋ねても、担任の保育士は「見ていなかったので分からない」と言うだけ。改善を求めてもケガが続いたことから、飯田さんは「これではいつ子どもが死ぬかも分からない」と子どもを転園させた』、「保育園の数を増やして事業拡大することと利益を上げることを優先させている。人件費を抑えるため、保育士は低賃金で人員体制はギリギリという状態なのだ。若手が疲弊して、2~3年で辞めていく。そうしたなかで起こった置き去りだった」、「20人もの子どもたちが、4畳半程度のスペースに囲った柵のなかに詰め込まれるようになりました」、「日頃から、園児同士の噛みつき、ひっかきも多い」、狭いなかに大勢が閉じ込められるストレスはさぞや強いのだろう。
・『安倍政権下で保育は「儲かるビジネス」と化した 福岡県中間市や静岡県牧之原市で起こった通園バス園児死亡事件は、出欠確認が徹底されないことによって園児がバスに置き去りになった。この事件は、保育の基本中の基本である園児の出欠確認ができないほど、現場の質が劣化していることを意味する。 園児が置き去りにされる、不適切な保育が横行するなどの保育の質の低下は、保育士の労働環境の悪化が大きく影響しているのだ。 その背景にあるのは、安倍晋三政権下で待機児童対策が目玉政策となり、急ピッチで保育園が作られるようになったことだ。 公的な保育園は、2013年度の2万4038カ所から22年度は3万9244カ所へと大幅に増えた。安倍政権が「株式会社に受け皿整備を担ってもらう」という方針を打ち出したことで、営利企業による認可保育園は13年の488カ所から21年に3151カ所にまで急増した(厚生労働省「社会福祉施設等調査」)。 保育園の増加ペースに人材が追い付かないうえ、事業者のモラルが低下。保育を「3兆円を超える市場」と捉え、儲けるために参入する事業者が雨後の筍のように現れた。利益を出すために人件費が削られ、保育士の労働環境が劣悪になった』、「安倍政権が「株式会社に受け皿整備を担ってもらう」という方針を打ち出したことで、営利企業による認可保育園は13年の488カ所から21年に3151カ所にまで急増した」、「儲けるために参入する事業者が雨後の筍のように現れた。利益を出すために人件費が削られ、保育士の労働環境が劣悪になった」、これで「安倍政権の保育施策」の当然の帰結だ。
・『人件費がほかの費目に流用できるようになった かつて、認可保育園は公共性の高さから自治体か社会福祉法人しか設置・運営ができなかった。それが2000年の規制緩和によって、営利企業、宗教法人、NPO法人の参入が容認された。それと同時に、私立の認可保育園に支払われる運営費の使途の規制緩和である「委託費の弾力運用」が大幅に認められるようになった。 私立の認可保育園の運営費は「委託費」と呼ばれ、税金を主な原資とする。委託費の算定基準である「公定価格」では、人件費は基本的な部分だけでも全体の約8割を占める。人件費のほか、玩具や絵本を買うなど保育に要する「事業費」が約1割、職員の福利厚生費などの「管理費」が約1割必要だと国が想定し、委託費が各園に支払われている。 「委託費の弾力運用」が認められると、それまであった「人件費は人件費に使う」という使途制限が緩和され、人件費分を事業費や管理費へ流用するという各費目の相互流用のほか、同一法人が運営する他の保育園や介護施設への流用、施設整備費への流用などが許されるようになった。 ある程度の経営の自由度は必要だが、自民党政権下で規制緩和が繰り返され、今では委託費の年間収入の4分の1もの金額を他の費目に流用できるようになっている。そこに目をつけた事業者は、人件費を抑えて事業を拡大し、利益を得ていったのだ』、「規制緩和が繰り返され、今では委託費の年間収入の4分の1もの金額を他の費目に流用できるようになっている」、「同一法人が運営する他の保育園や介護施設への流用、施設整備費への流用などが許されるようになった。 ある程度の経営の自由度は必要だが、自民党政権下で規制緩和が繰り返され、今では委託費の年間収入の4分の1もの金額を他の費目に流用できるようになっている」、「委託費の流用」が「同一法人が運営する他の保育園や介護施設への流用、施設整備費へ」とまで野放図に認められるようになったというのは驚きだ。
・『565万円→381万円…200万円はどこに消えたのか その結果、委託費の8割以上を占めるはずの人件費が抑え込まれた。東京都による2018年度実績の調査では、都内の社会福祉法人の人件費支出の割合は7割、株式会社では5割にとどまり、その傾向は今も変わっていない。 委託費を算出するための「公定価格」は全国8つの地域区分に分かれ、それぞれ単価が異なる。公定価格が最も高い東京23区で見てみると、2021年度の保育士一人当たりの基本的な賃金年額は約442万円となる。 営利企業が集中して進出する東京23区では、その442万円に処遇改善費が加わると、単純計算だが、最大で約565万円の賃金が公費で出ていることになる。しかし、東京23区で実際に保育士が手にとる賃金は約381万円と少ない(内閣府「幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査」2018年度実績)。計算上、公費から出る賃金額と実際に保育士に支払われる金額の差が、最大で年間200万円近くになる。その差はどこに消えるのか』、「最大で約565万円の賃金が公費で出ていることになる。しかし、東京23区で実際に保育士が手にとる賃金は約381万円と少ない・・・金額の差が、最大で年間200万円近くに」、この差はどういうことだろうか。
・『基準より人員を多く雇う保育園はあるが… ただ、賃金が低くなる正当な理由もある。人件費は基本的には最低配置基準に沿って出るため、基準より多く雇えば一人当たりの賃金が低くなるケースがある。 認可保育園などの保育士の最低配置基準は、0歳児が園児3人に対して保育士1人(「3対1」)、1~2歳児が「6対1」、3歳児が「20対1」、4~5歳児が「30対1」となっている。4~5歳児の基準は戦後から70年以上も変わっていないため、この体制では不十分だと判断して人員を多く雇う保育園は多く、ひとつの認可保育園で平均3~4人を多く配置している(内閣府調査)。このように保育士の多い園では、一人当たりの賃金が低くなってもやむを得ない事情がある。 とはいえ冒頭のように、配置基準ギリギリにして人件費を抑える保育園は少なくない。利益重視の事業者は営利企業でも社会福祉法人でも、「コストコントロール」を図るため、「保育士の適正配置」「職員配置の適正化」を掲げている。つまり「人件費カットのため、最低配置基準を守れば人員体制はギリギリでいい」(複数の業界関係者)という考え方だ』、「人員を多く雇う保育園は多く、ひとつの認可保育園で平均3~4人を多く配置している・・・。このように保育士の多い園では、一人当たりの賃金が低くなってもやむを得ない事情がある」、なるほど。
・『都内30カ所で違反が常態化している ある中堅企業傘下の保育園で働いていた保育士は「園児の欠席が多いと、配置基準上で保育士が余るので、他園にヘルプに出されました。普段みていない園児を保育するのは不安でした。職員の数に余裕がないため、誰かが急に休むと、とたんに配置基準を割ってしまいます。これでは、いつ事故が起きてもおかしくないと思って辞めました」と話す。 1年半ほど前に筆者は東京都が認可保育園に対して行った2017~19年度の監査結果について調べており、「保育士が適正に配置されていない」などの文書指摘を受けた保育園が都内で合計153カ所に上った。 それらの違反の詳細について都に情報開示請求を行うと、「保育士配置違反が常態化している」「無資格者しかいない時間帯がある」などの実態が明らかになった。保育士配置違反が常態化している園と違反状態が長く続いていると見られる園は合計30カ所もあった。そもそも少ない配置基準でさえ守られないのでは、保育士は疲弊し、子どもの安全を守ることは難しいだろう』、「保育士配置違反が常態化している園と違反状態が長く続いていると見られる園は合計30カ所もあった。そもそも少ない配置基準でさえ守られないのでは、保育士は疲弊し、子どもの安全を守ることは難しいだろう」、その通りだ。
・『6年間で保育事故は3.5倍に 保育士の配置基準については、2014年3月の段階で、1歳児を現行の園児6人に対し保育士1人(「6:1」)から「5:1」へ、4~5歳児は「30:1」から「25:1」にすると国は計画し、必要な予算を約1300億円と試算していた(「子ども・子育て支援新制度における『量的拡充』と『質の改善』について」)。 配置基準の引き上げは保育業界の長年の悲願であり、ようやく2023年度から「チーム保育推進加算」を拡充することで、大規模園の4~5歳児の「25対1」の実現が図られる。これを第一歩に、抜本的な改善が必要だ。 保育事故は年々増えている。内閣府の「教育・保育施設等における事故報告集計」から、認可保育園で起こった死亡・負傷等の事故件数を見ると、2015年の344件から2021年は1191件となり、この6年で3.5倍近く増えている。 2021年の保育事故の状況を詳しく見ると、負傷等のうち最も多いのが骨折の937件、その他(指の切断、唇、歯の裂傷等を含む)が242件あり、意識不明が8件、火傷が2件、死亡が2件だった。年齢別では、保育士配置が手薄になる4~5歳の多さが目立ち、それぞれ246件、404件だった』、「認可保育園で起こった死亡・負傷等の事故件数を見ると、2015年の344件から2021年は1191件となり、この6年で3.5倍近く増えている」、なるほど。
・『事業者が利益を得るための制度ばかりが変わっていく 政府は1月27日、通園バス園児置き去りの再発防止のための調査結果を公表した。通園バスをもつ保育園などのうち約2割に乗降時の子どもの安全管理に課題があったとしている。4月からは通園バスに安全装置の設置が義務付けられるが、問題の本質は保育士不足や保育の質の低下であり、保育士の労働条件の改善こそが急務の課題だ。 4月にこども家庭庁が発足する今こそ、最低配置基準の引き上げを行い、それと同時に前述した「委託費の弾力運用」の規制を強化して人件費の流出を食い止めなければ、保育士の労働環境は変わらない。保育士が守られなければ、犠牲になるのは子どもたちだ。 この国は、保育事業者が利益を得るための制度は次々に変えていくが、保育現場で子どもが命を落としても、子どもにとって必要な制度は変わらない。保育は児童福祉法に基づく福祉行政の一貫として行われていることを忘れてはならない』、「この国は、保育事業者が利益を得るための制度は次々に変えていくが、保育現場で子どもが命を落としても、子どもにとって必要な制度は変わらない。保育は児童福祉法に基づく福祉行政の一貫として行われていることを忘れてはならない」、同感である。
次に、4月24日付け東洋経済オンラインが掲載したフェリス女学院大学 文学部英語英米文学科 助教の関口 洋平氏による「「保育園の重大事故」園だけを責められない問題点 「待機児童ゼロ作戦」によって本末転倒な状況に」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/667340#:~:text=%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%BB%E6%95%99%E8%82%B2%20%3E%E5%AD%90%E8%82%B2%E3%81%A6-,%EF%BD%A2%E4%BF%9D%E8%82%B2%E5%9C%92%E3%81%AE%E9%87%8D%E5%A4%A7%E4%BA%8B%E6%95%85%EF%BD%A3%E5%9C%92%E3%81%A0%E3%81%91%E3%82%92%E8%B2%AC%E3%82%81%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%AA%E3%81%84,%E3%81%AB%E3%82%88%E3%81%A3%E3%81%A6%E6%9C%AC%E6%9C%AB%E8%BB%A2%E5%80%92%E3%81%AA%E7%8A%B6%E6%B3%81%E3%81%AB&text=%E6%97%A5%E5%B8%B8%E3%81%AE%E3%81%84%E3%81%9F%E3%82%8B%E3%81%A8%E3%81%93%E3%82%8D%E3%81%A7%E6%BF%AB%E7%94%A8,%E3%81%AE%E5%85%AC%E8%A1%A8%E3%81%8C%E7%BE%A9%E5%8B%99%E5%8C%96%E3%80%82%E2%80%A6
・『日常のいたるところで濫用され、消費されている「イクメン」という表現。2022年10月から改正育児・介護休業法により「産後パパ育休」が施行され、この4月からは育児休業取得状況の公表が義務化。「イクメン」という言葉の流布から10年以上が経ち、再び注目されるキーワードになった今こそ、その意味を構造的に問いなおすことが必要なのではないだろうか。 本稿は、子育ての話題の中でも特に議論を呼ぶ「保育園」を取り巻く問題について、検証する。自身も子育て中のアメリカ研究者が「イクメン」という言葉そのものに疑義を抱くところから始まる最新著書『「イクメン」を疑え!』(集英社新書)より、一部抜粋・再構成してお届けします。 アメリカでは保育園の設置基準が統一されていないのに対して、日本では国が認可保育所の条件を定めている。どの認可保育所を利用しても最低限の質は担保されているので、利用者は比較的安心して子どもを預けることができる。日本に住む私たちにとって、そうした質の高い保育は「育児のネットワーク」の重要な一部をなしている。 ところが、ここ20年あまりの新自由主義的な潮流のなかで、育児に対する公的な支援は日本でも徐々に削減されてきた。一言で言えば、日本においても保育の市場化が急速に進んだのである。本稿では少子化や待機児童といった日本独自の事情を勘案しつつ、新自由主義が日本の保育に与えた影響を検討したい』、「少子化や待機児童といった日本独自の事情を勘案しつつ、新自由主義が日本の保育に与えた影響を検討したい」、興味深そうだ。
・『保育園から「突然の通告」 はじめに、ここではひとつの具体例を紹介したい。東京都目黒区在住の竹内冬美さんは、いわゆる「保活」の末に2019年から区立保育園を利用し始めた。その区立園は評判どおりに保育の質が高く、2021年からは第二子も預けることができて満足していた――そんな矢先の4月半ばである。 竹内さんは保育園から1枚の薄い藁半紙を受け取った。その紙に掲載されていたQRコードを読み取って区のホームページを見ると、その区立園が数年後に別の区立園と統合されたうえで民営化されることが事務的に記されていた。) 青天の霹靂としか言いようのない保育園民営化計画を知って、竹内さんは困惑と怒りの混ざった感情を抱いたという。 慣れ親しんだ保育士がいなくなったとき、子どもたちはどのような反応をするだろうか?新しい保育園において保育の質はどこまで保持されるのだろうか?あるいは、公立の保育園がそれまで担ってきた公的役割─地域の避難所や子育て支援の拠点としての機能、障がい者の受け入れなど─はどうなるのだろうか? 区による一方的な決定に疑問を感じた竹内さんたち保護者は、区立園の存続に向けた活動を始めた(※1)。 この例からもわかるとおり、保育園民営化は現在に至るまでさまざまな自治体において重要な争点になっている。だが、民営化の議論は近年に始まったことではない』、確かに「保育園民営化」は、「慣れ親しんだ保育士がいなくなったとき、子どもたちはどのような反応をするだろうか?新しい保育園において保育の質はどこまで保持されるのだろうか?あるいは、公立の保育園がそれまで担ってきた公的役割─地域の避難所や子育て支援の拠点としての機能、障がい者の受け入れなど─はどうなるのだろうか?」、などクリアすべき問題も多い。。
・『「待機児童ゼロ作戦」で目指したこと 日本において保育への公的支出がカットされ始めたのは、1980年代のことである。公立保育園の数が1983年に過去最多を記録した一方で、この時代には保育園運営費の国家負担率が徐々に削減されていった。公立保育園にのみ多額の公費が投入されることや、公立保育士の賃金の高さなどが批判されたのである。 このような流れのなかで、鈴木善幸内閣・中曽根康弘内閣の第二次臨時行政調査会は、保育園の民営化をひとつの目標として掲げた。 ところが、この時代には「生活可能な、主体的に働くことを選んでいる共働き層への保育サービスの供給は『公費の乱用』と指摘された」というから、待機児童の増大と少子化を背景とした現在の保育園民営化とは事情が大きく異なる(※2)。 共働きの家庭が現在ほど一般的でなかったこの時代においては、保育園の数を増やすどころか、むしろ抑制することが課題とされたのである。事実、1980年を境に保育園の入所児童数は緩やかに減少していった(※3)。 そのような方針を一変させる要因となったのが、1990年のいわゆる「1.57ショック」である。1973年には2.14であった合計特殊出生率(ひとりの女性が一生の間に産む子どもの数)は急速に低下し、1989年に1.57となったのだ。 この衝撃を受けて、政府は少子化対策としてさまざまな政策を矢継ぎ早に策定した。1994年の「エンゼルプラン」、1999年の「新エンゼルプラン」、2003年の次世代育成支援対策推進法・少子化社会対策基本法などがその一例である。 (※1)2021年8月21日、個人インタビュー。 (※2)萩原久美子「保育供給主体の多元化と公務員保育士─公共セクターから見るジェンダー平等政策の陥穽」『社会政策』8.3(2017年)66頁。 (※3)汐見稔幸・松本園子・髙田文子・矢治夕起・森川敬子『日本の保育の歴史子ども観と保育の歴史150年』(萌文書林、2017年)318頁。) 一連の少子化対策のなかで重視されたのが、保育園の量的な拡大だった。2001年に発足した小泉純一郎内閣は「待機児童ゼロ作戦」を掲げ、2002年度から3年間で15万人の保育園児の受け入れ増を目指した。「聖域なき構造改革」というキャッチフレーズを掲げて小泉政権が新自由主義的な政策を推進したことはよく知られているが、「待機児童ゼロ作戦」もその延長線上にある。 保育園の量的拡大を実現するために重用されたのは、規制緩和と民営化という二本柱であった。産業構造の変化により、いわゆる「家族賃金モデル」(父親がひとりで家族全員を養うことができるだけの賃金を終身雇用制により保障するシステム)が崩壊し、共働き世帯が増加していたことも相まって、これらの改革は急速に進行した』、「1980年代のことである。公立保育園の数が1983年に過去最多を記録した一方で、この時代には保育園運営費の国家負担率が徐々に削減されていった。公立保育園にのみ多額の公費が投入されることや、公立保育士の賃金の高さなどが批判された」、「共働きの家庭が現在ほど一般的でなかったこの時代においては、保育園の数を増やすどころか、むしろ抑制することが課題とされたのである。事実、1980年を境に保育園の入所児童数は緩やかに減少していった」。 「そのような方針を一変させる要因となったのが、1990年のいわゆる「1.57ショック」である。1973年には2.14であった合計特殊出生率・・・は急速に低下し、1989年に1.57となったのだ。 この衝撃を受けて、政府は少子化対策としてさまざまな政策を矢継ぎ早に策定した」、「一連の少子化対策のなかで重視されたのが、保育園の量的な拡大だった。2001年に発足した小泉純一郎内閣は「待機児童ゼロ作戦」を掲げ、2002年度から3年間で15万人の保育園児の受け入れ増を目指した・・・保育園の量的拡大を実現するために重用されたのは、規制緩和と民営化という二本柱」、歴史的経緯がよく理解できた。
・『規制緩和で起こった「詰め込み保育」の弊害 新自由主義改革が保育という領域に与えた影響を理解するために、まずは規制緩和という側面に注目してみよう。 小泉政権が促進したのは、保育園の入所定員の「弾力化」である。「弾力化」とは耳慣れない言葉かもしれないが、規制を緩和して制度を柔軟に適用するということであり、この文脈では、「詰め込み保育」を意味している。この改革により、待機児童が多い自治体では、保育園の定員を超えて(年度初めは15%増しまで、年度途中は25%増しまで、年度後半は無制限)子どもを預かることが認められた。 小泉政権は保育園の入所定員だけでなく、保育士の配置基準も緩和した。1998年には常勤の保育士を原則とする規定が撤廃され、基準配置数の2割までという条件付きで短時間勤務保育士(非常勤保育士)を配置することが認められた。 小泉政権はこの規制緩和をさらに推し進め、非常勤保育士の上限を撤廃した。各クラスに1?2名以上常勤の保育士がいれば、あとはすべて非常勤保育士でもよくなったのである。 入所定員の弾力化や保育士の配置基準の緩和は、待機児童を減らすという意味では一定の効果があった。その一方で、規制緩和により保育の質が低下したこともまた事実である。 常勤の保育士が原則であったのは、保育士が頻繁に入れ替わると子どもが安定した人間関係を築けないからである。保育園に定員が設定されているのは、キャパシティを超えて園児を受け入れると十分に目が行き届かず、事故の可能性が高まるからだ。) 事実、保育園で起きた痛ましい死亡事故に関する報道は後を絶たない。ジャーナリストの猪熊弘子によれば、「事故が起きた施設の多くは、保育室の面積が非常に狭く、職員が少なく、無資格者や資格を持っていたとしても経験の少ない場合がほとんど」であり、「余裕のない保育施設の運営が、子どもの死亡事故を招いている」という(※4)。 事故を起こした個々の保育施設を責めることは簡単だが、その背後に構造的な要因が潜んでいることが看過されてはならない』、「「事故が起きた施設の多くは、保育室の面積が非常に狭く、職員が少なく、無資格者や資格を持っていたとしても経験の少ない場合がほとんど」であり、「余裕のない保育施設の運営が、子どもの死亡事故を招いている」という」、なるほど。
・『「保育園民営化」の推進で何が起こったか 待機児童対策のために政府が重視したもうひとつの方針が、民営化である。2000年には営利企業も認可保育所に参入できるようになった。自治体か社会福祉法人しか認可保育所を設置・運営してはならないという規制が撤廃されたのである。 小泉政権は、民営化の流れをさらに加速させた。2003年に内閣府により発表された報告書では、「保育サービスの需要は今後ますます増大し、将来有望な市場となる」一方で、「株式会社の参入を認めるなど規制緩和が進んだにもかかわらず、そのメリットが利用者にきちんと還元されて」いないことが問題視された(※5)。 公立保育園では「効率的に経営が行われて」おらず、規制緩和の徹底により民間企業の参入を促すことが必要である、というのがこの報告書の結論である。公立保育園のコスパの悪さを強調する一方で保育サービスが将来的に有望な市場であることを明記するこの報告書には、「すべての領域を金銭化する」新自由主義の基本方針が明確に反映されている。 この報告書の議論を受け、2004年にはいわゆる三位一体改革の一環として公立保育園の運営費が一般財源化された。それまでは国庫補助負担金という形で保育園の運営のためだけに使える予算が自治体へ支給されていたが、この補助金の廃止によって用途が特定されない予算が自治体に支給され、自治体ごとにその予算を自由に割り振れるようになったのである。 (※4)猪熊弘子『「子育て」という政治少子化なのになぜ待機児童が生まれるのか?』(角川SSC新書、2014年)101頁。 (※5)内閣府国民生活局物価政策課「保育サービス市場の現状と課題─『保育サービス価格に関する研究会』報告書─」2003年。) この一般財源化を機に、多くの自治体は保育園関連の予算を大幅にカットした。その結果、先述したような民営化による混乱が2000年代には続発した(※6)。また、公立・私立を問わず、保育士の非正規雇用化が進んだ。 慢性的な財政難に苦しむ自治体にとって、民営化によるコスト削減は魅力的である。民営化や統廃合が進むにつれて公営保育園の数は徐々に減り、2007年には私営保育園の数を下回った。2021年時点で、公営保育園が7919カ所あるのに対し、私営保育園は2万2076カ所である。 2000年の時点では公営・私営それぞれ1万2707カ所と9492カ所であったので、保育園の総数が増えていること、また公営・私営の割合が著しく逆転していることがわかる(図 ※7) 』、「2021年時点で、公営保育園が7919カ所あるのに対し、私営保育園は2万2076カ所である。 2000年の時点では公営・私営それぞれ1万2707カ所と9492カ所であったので、保育園の総数が増えていること、また公営・私営の割合が著しく逆転していることがわかる」、なるほど。
・『保育の質が低下することへの懸念 誤解しないでほしいのだが、私は民間の保育園や非正規の保育士は質が低いと主張したいわけではないし、公立の保育園が完璧であると言いたいわけでもない。私の個人的な経験から言っても、民間であれ、非正規であれ、有能で熱心な保育士は数多く存在している。 問題は、拙速な民営化によって保育の質が担保されないような構造ができ上がってしまったことなのだ。待機児童問題の深刻さを考えれば、営利企業の参入という判断は妥当であったかもしれない。だが、それによって保育の質が低下し、子どもを安心して預けられないのでは元も子もないはずである。 (※6)2000年代の保育園民営化については、たとえば以下の文献を参照。汐見稔幸・近藤幹生・普光院亜紀『保育園民営化を考える』(岩波ブックレット、2005年)、二宮厚美『構造改革と保育のゆくえ』(青木書店、2003年)、平松知子『保育は人保育は文化ある保育園民営化を受託した保育園の話』(ひとなる書房、2010年)。(※7)厚生労働省、平成12年?令和3年社会福祉施設等調査』、「問題は、拙速な民営化によって保育の質が担保されないような構造ができ上がってしまったことなのだ。待機児童問題の深刻さを考えれば、営利企業の参入という判断は妥当であったかもしれない。だが、それによって保育の質が低下し、子どもを安心して預けられないのでは元も子もないはずである」、その通りなのだろう。
第三に、5月4日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストの小林 美希氏による「"国会での論戦"で見えた「日本の保育」重大争点 「異次元の少子化対策」保育においてはどうなのか?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/669534
・『国会中継などで見かける大臣と議員の激しい論戦。その内容を注視して見たことはあるだろうか。 そこでは日本の未来を左右する重要な論点が多く扱われている。今の日本において見逃せない論点とは何か。ジャーナリストの小林美希さんが国会でとくに話題となった議論をたどりながら、問題の焦点に迫る。今回は「保育」の問題について取り上げる。 岸田文雄首相が大々的に掲げる「異次元の少子化対策」。保育園の通園バスに置き去りになって園児が死亡した事故や、保育士による虐待事件が相次ぐなど、保育の業界では事件・事故が続いている。そうした中、子どもを守る保育士の数を増やすべきと、人員増が求められている。 保育園には園児の年齢ごとに保育士の最低配置基準があり、現在、保育士1人で1~2歳児を6人、4~5歳児を30人みることができる。それでは保育士の負担が重いうえ、子どもたちに充分に目が行き届かないと、保育士の配置基準を引き上げることが検討課題になっている。 昨年来、国会では連日この問題が取り上げられ、当事者の運動も広がりを見せたことから、「配置基準が今年こそ引き上げられるのではないか」と期待がかかった。しかし3月末に発表された「異次元の少子化対策」の「たたき台」では、基準の「引き上げ」ではなく、手厚い保育を実施する園への運営費上乗せという「改善」に留まった。いったい配置基準引き上げを巡り、国会ではどんな論戦が行われ、議論の現在地はどうなっているのか』、興味深そうだ。
・『戦後から続いてきた「配置基準」をめぐる攻防 2022年11月9日、衆議院の厚生労働委員会では、大西健介議員が”難事”に向かった。持ち時間の多くを割いて説いたのは、保育士の最低配置基準引き上げの重要性についてだ。 認可保育園には保育士の最低配置基準が決められており、他のタイプの公的保育園もその基準に倣っている。配置基準が決められたのは戦後間もない1948年で、それ以降、大きく変わっていないことが問題視されている。) 振り返れば基準が置かれた1948年の当初、0~1歳児は園児10人を保育士1人でみる「10対1」だった。0歳児は1967年に「6対1」へ、1998年に「3対1」へと基準が手厚い方向に変更された。 1~2歳児は1967年に「6対1」になって以降、50年以上変わっていない。4~5歳児は75年前からずっと「30対1」のまま。海外を見てみると、英国では保育者の持つ資格によるが、3歳以上5歳未満が「13対1」や「8対1」、ドイツは州ごとに異なるが3歳児未満の平均が「4.5対1」、3~6歳児が「11.8対1」や「8.6対1」などの厚みがある(厚生労働省の委託事業「諸外国における保育の質の捉え方・示し方に関する研究会」報告書2019年)。日本の基準引き上げは長年の課題だ。 大西議員は「基本的な考え方を聞いていきたい。大臣には是非、御自身のお言葉で、率直にお考えを」と切り出した。 「1歳児の基準は私が生まれた頃から変わっていない。4~5歳児は基準制定の1948年以来、70年以上変わっていないのです。1948年は戦後の第1次ベビーブーム。当時の出生数は約268万人、そして、昨年(2021年)の出生数は81万人。全く世の中が変わってしまっているのに、保育士の配置基準は変わっていない。ある種、異常なことだと思うが、大臣の率直な意見をお聞かせいただきたいと思います」(大西議員) 国会で議員が質問する内容は、事前に各省府庁に通告されて官僚が答弁を作り、それを基に閣僚が答えていく。大西議員は、大臣に対して官僚が作った答弁書を読むのではなく、大臣自身の言葉を求めた。 ところが加藤勝信厚生労働相が説明し始めたのは、2015年度に行われた3歳児の配置改善についてだった。国は2014年に配置基準を引き上げる計画を立ており、一部は改善されている。 当時、消費税の税率を引き上げる際に、保育園の数を増やす「量的拡充」のための施策に必要な0.7兆円を消費税で賄い、そのなかで3歳児の配置基準の「20対1」を「15対1」にすると計画された。基準そのものは引き上げられなかったが、消費税を財源に「15対1」体制をとる園の運営費を「加算」して支給する形で、2015年度に改善した。 また、消費税以外を財源とする0.3兆円で「質の改善」を行うとして、1歳児の「6対1」を「5対1」へ、4~5歳児の「30対1」を「25対1」に引き上げるなどの計画が立てられた。それら保育の質を向上するための施策は「0.3兆円メニュー」と呼ばれているが、財源がないことを理由に2014年以降、実現しなかった。 加藤大臣は、「(目標としている)4~5歳児の配置改善は実施できていない。このことは強く認識をしているところ。引き続き、財源をしっかり確保する努力をしていきたい」と、淡々と答弁書を読み上げた。 大西議員は「答弁を読むのではなくて、70年前と今の社会、子どもを取り巻く状況は全く違う。70年で1回も配置基準が変わらないことが、率直に言って、これは普通ですか」と強調した。) ここで、愛知県の保育園関係者が結成した「子どもたちにもう1人保育士を!実行委員会」が2022年2月~3月に行ったアンケート調査の内容が紹介された。現場で実際に働く保育士が考える、保育士1人が受け持つ子どもの適切な人数は何人なのか。 国の基準は1歳児が「6対1」だが、保育士の約半数が「3対1」と答えている。同様に4~5歳児の国の基準は「30対1」だが、現場で最も多かったのは4歳児が15人、5歳児が20人だった。 大西議員は「これが現場の受け止めなんです。実際の配置基準と大きく乖離していることについて大臣の受け止めをお聞きしたいと思います」と重ねた。 これに対し加藤大臣は、またも「3歳児の配置改善を行った」と成果を強調。そして、「1歳児、4~5歳児についての宿題を果たすべく、しっかり財源も確保し実現できるよう努力したい」と、”財源確保”を理由に逃げるかのような答弁をするにとどまった。 業を煮やした大西議員は「繰り返しになりますけれど、私が最初に聞いたのは、50年、70年変わっていない、これが変ですよねという話ですよね。配置基準と現場の感覚が全く違うことを大臣に認めていただきたいんです」と語尾を強め、畳みかけた。 「1歳児、2歳児は、国の基準では6対1です。これで災害の時に子どもの安全を守ることができるのでしょうかということを聞きたいんです。例えばアンケートの自由記載の部分では、次のような回答がありました。 『子どもの発達には個人差があり、1歳児でも歩けない子どもがいるなか、6対1の配置では全く十分でない。おんぶ、だっこ、両手をつないで守れるのは4人まで。残り2人を声かけで避難など到底、無理』 大臣は、1歳児や2歳児6人に保育士1人という配置で、例えば地震などの災害が起きた場合、火事が起きた場合、安全を守ることができるとお思いになりますでしょうか」 ここでも問いに答えない加藤大臣。「地域の関係機関と連携して必要な協力が得られるよう努めるなどの対応をお示ししているところ。保育所には安全計画、それに沿った対応をお願いできるよう努力したい」と、論点をずらした。 大西議員は「全く、かみ合っていないと思うんですよ。安全計画を立てても、おんぶ、だっこ、両手をつないで4人、これしか無理なんです。逃げられないですよ。だから、これでは安全を守れないですよね、ということを言っているんです」と怒りを露わにした。) これは災害には限らない。アンケートの別の回答も切実だ。 「『3歳児18人を1人で担任していた時に、まだお漏らしをする子も多い中、便の始末にかかっている間に、部屋にいる子がけんかで、かみつきがあったり、椅子に上って大人の事務戸棚からセロテープをとろうとしてテープカッターを落としてしまい、テープカッターの刃の部分で隣にいた子の頭を切ってしまい3針縫うけがをさせてしまったことがあります』。 場面が思い浮かぶようなリアルなエピソードですが、3歳児は今、20対1の配置基準です。こういう配置基準だと、今言ったように目が届かなくて事故が起こるのが避けられないと私は思うのですが、これは大臣、いかがでしょうか」(大西議員) 加藤大臣は質問には答えず「保育士の皆さんは大変なご苦労をいただいているというふうに承知したおります」と言って、保育士の補助を行う保育補助者の雇い上げに必要な費用、業務の効率化のための登園管理システムの導入するためのICT化の推進など保育士の負担軽減策を行っていると細かな説明を始めた。 大西議員は「またかみ合ってない。子どもの発達という点でも、ぎりぎりの人数でやっている現状というのは、私は問題だと思っています」と指摘した。 そして、再びアンケート結果に話を戻した。アンケートでは「国の保育士配置基準が改善されればどのようなよい点があるか」という質問に対して、「1人ひとりにじっくり向き合える」「子どもたちの主体性を大切にし、いろんなことに挑戦したり、なかなかできない遊びを保障できる」「事務負担も分担してサービス残業も減る」「一人の負担も減るからメンタル的なしんどさも解消され、保育士を辞める人も減る」という回答が寄せられた。 大西議員が「子どもの発達、保育士の退職防止のためにも配置基準の見直しは必要。大臣、いかがでしょうか」と質問してやっと、加藤大臣は「今の基準を保持していくべきだということを申し上げているのではなく、既に、1歳児、4~5歳児は見直していくことを決めている」と国のスタンスに言及したのだった。とはいえ、「それを進めるにあたって安定的な財源をどう確保するか議論を進めたい」と、またも財源論。 大西議員は「決まって、この話になり、お金がないからできないと言って50年、70年やってこなかった。保育の質が置き去りになっているのは大問題。もう財源の確保を言い訳にしないで、必要なことはやる。こども家庭庁ができ、今まさにそのタイミングが来ている。加藤大臣、是非、ご決断いただきたいと思います」と迫った。 「政治判断が下されれば、予算は作られる」というのが永田町と霞が関の”常識”でもある。1歳児と4~5歳児の配置基準を引き上げるために必要な予算は、年に約1300億円。国家予算の規模からすれば、決して大きすぎる額ではない。) この問題に迫っているのは、大西議員だけではない。この質疑の1カ月前、2022年10月20日の参議院予算委員会では、片山大介議員が予算確保の必要性について岸田首相に迫り、10年前から実現しない「0.3兆円メニュー」の存在を改めて掘り起こしていた。 「10年前の子ども・子育て関連三法の付帯決議で、配置基準の改善に必要な予算の確保を図るということを求めています。当時の民主党、自民党、公明党の三党で社会保障の一体改革のなかの確認書で、保育の質を上げようという話になっている。俗にいう0.3兆円メニューですが、あれから10年経っても実現されていないのです」 岸田首相は明言を避けたが「おっしゃるように、保育の質と予算とのバランスは考えていかなければならない課題だと思います。時代の変化のなかで果たすべき役割との関係で考えていく課題であると認識します」と含みを持たせるような答弁をした。 2023年に入って岸田首相が「異次元の少子化対策」を掲げ、政府は3月末に「たたき台」をまとめた。保育士の配置基準の改善のほかの主な対策は、①児童手当の所得制限の撤廃、②育児休業の給付金の拡充、③高等教育の経済負担の軽減策―――。他にも、出産費用の保険適用化、学校給食の無償化など、多岐に渡る政策が並んだ。 統一地方選を前に高所得者層の不満を解消すべく、児童手当の所得制限の撤廃がフォーカスされるなかでの「たたき台」の発表だった。 議論が児童手当の所得制限の撤廃に集中するあまり、国会周辺では「財源が児童手当の拡充にもっていかれては、配置基準の引き上げに予算がかけられないのではないか」という心配があった。「厚生労働省や内閣府は何年も前から配置基準の引き上げを行おうとしていたが、安倍晋三政権で保育園や幼稚園の無償化政策が行われた時も多額の予算が割かれてしまった」(関係者)という経緯もある。 岸田首相が「子ども予算倍増」と言う一方で、配置基準引き上げについて政府は煮え切らない。複数の関係者が「3月末に出た『たたき台』に向けて、内閣府と厚労省からは配置基準の引き上げは必須として、他の質の向上に関する政策も含めてすべて提出されていた」としており、「要望を受け取った小倉將信少子化担当大臣が頭を抱えていたようだ」と明かす。一方で、「国会でも大きく取り上げられ、さすがに今回は配置基準を変えるだろう」との見方も強まったが、結局のところ基準の「引き上げ」ではなく「改善」に留まった。 今後、「たたき台」をベースに岸田首相を議長とした「こども未来戦略会議」での議論を経て必要な政策や予算、財源が6月の「骨太の方針」までに示される。 こども家庭庁が発足して間もない4月4日、参議院の内閣委員会では井上哲士議員も配置基準を「引き上げ」るのか「改善」なのかを追及すると、小倉大臣が「基準の引き上げは行わない」と答えた。) 「最低基準を引き上げた場合、すべての保育園で基準をクリアする必要が出るため、保育士確保で現場に混乱が生じる可能性もあります。現状、様々な園において基準に達しないということも起こる可能性がある」(小倉大臣) の答弁に対して井上議員は、保育士の資格を持ちながら保育士として働いていない潜在保育士の多さを指摘。「厚生労働省の資料では、2019年で保育士の有資格者は160万7000人いるが、保育所などで働いているのは62万6000人で38.9%に過ぎない」と切り返した。 そして、井上議員は「配置基準の抜本改定は、魅力とやりがいのある職場につながる。基準どおり配置できない保育園ができるということでない。これだけの資格者がいるわけですから、保育士が保育園で働けるようにするためにも1人当たりの子ども数を減らす点で、基準の改定は待ったなしだ」と小倉大臣に詰め寄った。 くの国会議員が基準引き上げを求めるなか、国が言い訳にする保育士確保の問題には疑問が残る。 022年12月の段階で、認可保育園全体の約2割が既に「チーム保育推進加算」という運営費の上乗せ制度を使って4~5歳児の「25対1」を図っている実態を、内閣府は把握していた。そのうえで、現場が「25対1」でない園の定員分布を分析。「121人以上の大規模な認可保育園が全体の約2割を占め、その4歳児クラス、5歳児クラスの人数が平均で25人を超えている」(内閣府、当時)として、2023年度から「チーム保育推進加算」を拡充したのだ。つまり、既に大半の園で「25対1」になっているのだ。 1歳児の配置については、東京都などの自治体が上乗せ補助を行い「5対1」を既に実現しているケースが少なくない。出生数減少により定員割れしている保育園が急増するなか、行政サイドからも「待機児童が多かった数年前であれば基準引き上げで混乱が生じてしまうが、今は状況が違う。最初は加算方式でも、何年かかけて基準を引き上げればいい」との見方がある。一方で、複数の国会議員が「保育園経営に近い立場の国会議員が、基準引き上げに猛烈に反対した」と明かす。 都市部や地方の複数の保育園経営者、業界団体の役員などは「園の評判が悪いことで保育士が集まらない場合があるだろうが、現状、配置基準が引き上げられても保育士確保に問題はない」と口を揃える。たとえ直ちに配置基準の引き上げとならなくても、数年後に基準を変えると宣言して猶予期間を作るなど、工夫はできる。今後の国会論戦でも国を動かす議論は見られるだろうか』、「加藤大臣」は財務省出身で答弁は手慣れているだけに、平気で論点ずらしも行い、不誠実な大臣の筆頭格だ。大臣のこうした答弁姿勢を熟知している「大西議員」も、もっと突っ込んだ質問をしてほしかった。
タグ:PRESIDENT ONLINE 小林 美希氏による「2歳児を公園に置き去りにして帰ってくる…全国の保育園で「昔にはあり得なかったこと」が起きている根本原因 保育が「儲かるビジネス」になり、質が低下している」 「園児が全員いるかどうか点呼することは、基本中の基本です」、でも未熟な「保育士」は時として忘れてしまうようだ。「園児の点呼」は習慣化しておうべきだ。 「保育園の数を増やして事業拡大することと利益を上げることを優先させている。人件費を抑えるため、保育士は低賃金で人員体制はギリギリという状態なのだ。若手が疲弊して、2~3年で辞めていく。そうしたなかで起こった置き去りだった」、「20人もの子どもたちが、4畳半程度のスペースに囲った柵のなかに詰め込まれるようになりました」、「日頃から、園児同士の噛みつき、ひっかきも多い」、狭いなかに大勢が閉じ込められるストレスはさぞや強いのだろう。 「安倍政権が「株式会社に受け皿整備を担ってもらう」という方針を打ち出したことで、営利企業による認可保育園は13年の488カ所から21年に3151カ所にまで急増した」、「儲けるために参入する事業者が雨後の筍のように現れた。利益を出すために人件費が削られ、保育士の労働環境が劣悪になった」、これで「安倍政権の保育施策」の当然の帰結だ。 「規制緩和が繰り返され、今では委託費の年間収入の4分の1もの金額を他の費目に流用できるようになっている」、「同一法人が運営する他の保育園や介護施設への流用、施設整備費への流用などが許されるようになった。 ある程度の経営の自由度は必要だが、自民党政権下で規制緩和が繰り返され、今では委託費の年間収入の4分の1もの金額を他の費目に流用できるようになっている」、「委託費の流用」が「同一法人が運営する他の保育園や介護施設への流用、施設整備費へ」とまで野放図に認められるようになったというのは驚きだ。 「最大で約565万円の賃金が公費で出ていることになる。しかし、東京23区で実際に保育士が手にとる賃金は約381万円と少ない・・・金額の差が、最大で年間200万円近くに」、この差はどういうことだろうか。 「人員を多く雇う保育園は多く、ひとつの認可保育園で平均3~4人を多く配置している・・・。このように保育士の多い園では、一人当たりの賃金が低くなってもやむを得ない事情がある」、なるほど。 「保育士配置違反が常態化している園と違反状態が長く続いていると見られる園は合計30カ所もあった。そもそも少ない配置基準でさえ守られないのでは、保育士は疲弊し、子どもの安全を守ることは難しいだろう」、その通りだ。 「認可保育園で起こった死亡・負傷等の事故件数を見ると、2015年の344件から2021年は1191件となり、この6年で3.5倍近く増えている」、なるほど。 「この国は、保育事業者が利益を得るための制度は次々に変えていくが、保育現場で子どもが命を落としても、子どもにとって必要な制度は変わらない。保育は児童福祉法に基づく福祉行政の一貫として行われていることを忘れてはならない」、同感である。 東洋経済オンライン 関口 洋平氏による「「保育園の重大事故」園だけを責められない問題点 「待機児童ゼロ作戦」によって本末転倒な状況に」 「少子化や待機児童といった日本独自の事情を勘案しつつ、新自由主義が日本の保育に与えた影響を検討したい」、興味深そうだ。 確かに「保育園民営化」は、「慣れ親しんだ保育士がいなくなったとき、子どもたちはどのような反応をするだろうか?新しい保育園において保育の質はどこまで保持されるのだろうか?あるいは、公立の保育園がそれまで担ってきた公的役割─地域の避難所や子育て支援の拠点としての機能、障がい者の受け入れなど─はどうなるのだろうか?」、などクリアすべき問題も多い。。 「1980年代のことである。公立保育園の数が1983年に過去最多を記録した一方で、この時代には保育園運営費の国家負担率が徐々に削減されていった。公立保育園にのみ多額の公費が投入されることや、公立保育士の賃金の高さなどが批判された」、 「共働きの家庭が現在ほど一般的でなかったこの時代においては、保育園の数を増やすどころか、むしろ抑制することが課題とされたのである。事実、1980年を境に保育園の入所児童数は緩やかに減少していった」。 「そのような方針を一変させる要因となったのが、1990年のいわゆる「1.57ショック」である。1973年には2.14であった合計特殊出生率・・・は急速に低下し、1989年に1.57となったのだ。 この衝撃を受けて、政府は少子化対策としてさまざまな政策を矢継ぎ早に策定した」、「一連の少子化対策のなかで重視されたのが、保育園の量的な拡大だった。2001年に発足した小泉純一郎内閣は「待機児童ゼロ作戦」を掲げ、2002年度から3年間で15万人の保育園児の受け入れ増を目指した・・・保育園の量的拡大を実現するために重用されたのは、規制緩和と民営化という二本柱」、歴史的経緯がよく理解できた。 「「事故が起きた施設の多くは、保育室の面積が非常に狭く、職員が少なく、無資格者や資格を持っていたとしても経験の少ない場合がほとんど」であり、「余裕のない保育施設の運営が、子どもの死亡事故を招いている」という」、なるほど。 「2021年時点で、公営保育園が7919カ所あるのに対し、私営保育園は2万2076カ所である。 2000年の時点では公営・私営それぞれ1万2707カ所と9492カ所であったので、保育園の総数が増えていること、また公営・私営の割合が著しく逆転していることがわかる」、なるほど。 「問題は、拙速な民営化によって保育の質が担保されないような構造ができ上がってしまったことなのだ。待機児童問題の深刻さを考えれば、営利企業の参入という判断は妥当であったかもしれない。だが、それによって保育の質が低下し、子どもを安心して預けられないのでは元も子もないはずである」、その通りなのだろう。 小林 美希氏による「"国会での論戦"で見えた「日本の保育」重大争点 「異次元の少子化対策」保育においてはどうなのか?」 「加藤大臣」は財務省出身で答弁は手慣れているだけに、平気で論点ずらしも行い、不誠実な大臣の筆頭格だ。大臣のこうした答弁姿勢を熟知している「大西議員」も、もっと突っ込んだ質問をしてほしかった。