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ロシア(その3)(元外交官が語る ロシアが西ヨーロッパから「アジア」だと見做される理由、ロシア・プーチン政権の威信は失墜 ナゴルノ・カラバフでアルメニア降伏) [世界情勢]

ロシアについては、2018年7月28日に取上げた。久しぶりの今日は、(その3)(元外交官が語る ロシアが西ヨーロッパから「アジア」だと見做される理由、ロシア・プーチン政権の威信は失墜 ナゴルノ・カラバフでアルメニア降伏)である。なお、ウクライナ問題は別途、取上げている。

先ずは、昨年2月12日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した著述家・芸術文化観光専門職大学教授の山中俊之氏による「元外交官が語る、ロシアが西ヨーロッパから「アジア」だと見做される理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/295482
・『「人種・民族に関する問題は根深い…」。コロナ禍で起こった人種差別反対デモを見てそう感じた人が多かっただろう。差別や戦争、政治、経済など、実は世界で起こっている問題の”根っこ”には民族問題があることが多い。芸術や文化にも”民族”を扱ったものは非常に多く、もはやビジネスパーソンの必須教養と言ってもいいだろう。本連載では、世界96カ国で学んだ元外交官・山中俊之氏による著書、『ビジネスエリートの必須教養「世界の民族」超入門』(ダイヤモンド社)の内容から、多様性・SDGs時代の世界の常識をお伝えしていく』、興味深そうだ。
・『リーダーシップがある人材はロシアで活躍できない?  アメリカで行われた、ある国際会議に参加した時のことです。リーダーシップの専門家が集まるなかで、ロシア人参加者と雑談する機会があり、私は尋ねてみました。 「ロシアにおけるリーダーシップは、アメリカと違うのでしょうか?」 すると、彼は「ロシアは政治が専制的なところがあるので、『私はリーダーシップを取ります』という発言は良しとされませんよ。出すぎる釘は大統領に打たれる」。 笑みを浮かべた顔つきからして、明らかに冗談まじりの発言でしたが、私は「意外と本音なのかもしれない」と思いました。 アメリカは自主性を重んじる国で、「リーダーであれ」という教育は小学校からなされます。多くのヨーロッパも然りで、「古代ギリシャの時代から我々は自由を尊重してきた。市民の意見によって政治的決断をしてきた」という自負があります。 市民には奴隷や階級が低い人は含まれていないので異論はあるところですが、「民主的な我々に比べてアジアは専制的だ」というのがヨーロッパに一定数見られる意見で、その場合のアジアにはロシアも含まれていることがあります。 「中東、ペルシャ、中国、ロシアなど東は専制国家だ」という考え方は西ヨーロッパの東に対する偏見だと思いつつ、また例外は多数あるものの、うなずける部分もあります。 なぜなら、専制にはグラデーションがあります。「独裁者による絶対的な支配」という専制にはみんなノーといいますが、国のトップが責任を持って物事を決定する、やや緩やかな支配であれば、案外受け入れられています。 常に責任を持って自分の意見をいい、時には対立しても納得がいくまで話しあい、人に指示されて行動するより我が道をいく――これはリーダーシップを取る上で欠かせない姿勢ですが、「そんなの大変すぎる。しんどくて無理」という人たちもいるのは、日本の組織でも見られる現象ではないでしょうか。 「いちいち考えて意見をいったり、議論して対立したりするより、リーダーが決めたことに従うほうがいい」と考える。カリスマ的リーダーに引っ張られ、できれば褒められながら頑張りたい……。東にはそんな傾向が自然にあると感じられます。それが西ヨーロッパ人の目には、「専制的」と映るのかもしれません。 さらにロシアについていえば、絶対的に強いリーダーを求める歴史的な傾向があります。領主が農民を所有する農奴制やそれに近い仕組みは、封建社会の時代には世界中にありましたが、ロシアでは19世紀まで続きました。 農奴は領主の所有物であり、移動も結婚も領主の許可なくしては行えず、長い間奴隷のように売買された記録もあります。農民による反乱は何度もありましたが、鎮圧されるたびに締めつけは過酷になっていきました。 自由を奪われ、従うことに慣れ、自立を諦めた時、人は何を望むでしょう? 支配者に全部お任せして、「どうか暮らしを良くしてください。困ったら面倒を見てください」と願うようになるというわけです。それならリーダーは、強ければ強いほど「頼り甲斐があって良い」となります(全員ではないでしょうが)。 現在のロシアは14の国と陸地で国境を接しています。巨大な国土と多くの国々と接する国境線の存在は、他国との安全保障上の問題が生じやすくなります。北極海に面していますが、氷が多く自由な航海が長くできませんでした。 長い国境線と北極海に囲まれているこの閉塞感がロシアの対外的な恐怖感につながり、対外的に強いリーダーを求める要因になっていると私は考えています。 第一次世界大戦後ロシア革命が起こり、ロマノフ朝は終わりを迎えます。知識層と市民が手を携えて立ち上がった点は多くの国が民主化した流れと同じですが、ロシアの場合、革命の後は世界で初めての共産主義国家ソビエトになります。 レーニン率いるソビエトは、「兵士と労働者のための国家」のはずでしたが、実際は共産党が権力を持ち、秘密警察が跋扈する、厳しい統制が強いられた一党独裁でした。 皇帝から共産党政府へと支配者が変わっただけで、「人々には自由がない」という構造は変わらなかったのですから、個人のリーダーシップなど育みようがなかったのかもしれません。 中国にしてもロシアにしても、それぞれの国の専門家の意見などを総合すると、大きすぎる国はまとめることが難しく、ある程度強権的にせざるを得ない部分もあるのだと思います。 「大きい国=国土が広く人口が多い国」とすれば、専制的でないインドやアメリカも大きな国なので一概にはいえませんが、インドは多民族ながら文化として融和的な傾向があります。 また、アメリカは建国の経緯からして独立心旺盛なので、農奴として生きるしかなかったロシア人とは文化的・歴史的な背景が異なります。 プーチン大統領の絶大な権力を見れば、現在のロシアもまた専制的であるといわざるを得ませんが、政府の汚職やプーチン政権を批判するアレクセイ・ナワリヌイのような若い政治家も登場しています。 毒殺されかかっても収監されても怯まず、「プーチンは国民を奴隷にしている裸の王様だ」と主張するナワリヌイに続く人物も、今後出てくるかもしれません。 そうした人々によって、これからのロシアは転換期を迎える可能性もあります』、「「プーチンは国民を奴隷にしている裸の王様だ」と主張するナワリヌイに続く人物も、今後出てくるかもしれません。 そうした人々によって、これからのロシアは転換期を迎える可能性もあります」、なるほど。
・『なぜいま、「民族」を学ぶべきなのか?  ダイバーシティが重要」「世界の多様な価値観を理解すべき」……。このような声を聞くことが最近増えましたが、ダイバーシティやその前提となる多様な文化・価値観を理解するためには、民族について知っていることが重要です。 しかしながら、世界96カ国を巡り、様々な国や民族の人たちと仕事をしてきた私からすると、日本人の民族への理解――いわば「民族偏差値」は、世界最低レベルだと思います。 日本人は単一民族ではないものの、限りなく単一民族的です。みんな似ているし、争いはあまりないし、言葉もそう違わず、結婚・就職の差別も世界的に見ればとても少ない。 ただし、多様性がないから無知になり、発想が貧しくなります。多様であることが新たな文化を育み、イノベーションのもとになるのです』、「日本人の民族への理解――いわば「民族偏差値」は、世界最低レベルだと思います。 日本人は単一民族ではないものの、限りなく単一民族的です。みんな似ているし、争いはあまりないし、言葉もそう違わず、結婚・就職の差別も世界的に見ればとても少ない。 ただし、多様性がないから無知になり、発想が貧しくなります。多様であることが新たな文化を育み、イノベーションのもとになるのです」、「日本人の民族への理解――いわば「民族偏差値」は、世界最低レベル」、なので。意図的に勉強して理解を深めるべきだ。

次に、本年9月24日付けJBPressが掲載した著作家の宇山 卓栄氏による「ロシア・プーチン政権の威信は失墜、ナゴルノ・カラバフでアルメニア降伏」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/77090
・『9月19日から20日にかけて、アゼルバイジャンは隣国アルメニアとの係争地ナゴルノ・カラバフで軍事作戦を展開し、アルメニア人勢力を降伏させました。今回の軍事作戦はウクライナ戦争の動きとも連動しており、アルメニアを支援してきたロシアの威信失墜にもつながります。プーチン政権にとっては外交上の痛手となるわけですが、今回はこのナゴルノ・カラバフ紛争や、アゼルバイジャンとアルメニアについて歴史を振り返りながら解説します』、興味深そうだ。
・『これまで2回の紛争が発生  これまで、アゼルバイジャンとアルメニアの間で、2回のナゴルノ・カラバフ紛争が起こっています。 1922年以降、両国はソ連に編入されていましたが、1991年、ソ連の解体によって、独立します。しかし、それまで、ソ連の存在によって抑えられていた両国の民族対立が表面化し、アルメニアとアゼルバイジャンの間で、ナゴルノ・カラバフ地域の帰属問題が発生します。 軍事的な衝突が起き、第1次ナゴルノ・カラバフ紛争となります。この紛争では、アルメニアが優勢のまま、周辺地域を含めて実効支配します。もともと、ナゴルノ・カラバフ地域では、アルメニア人が多数派を占めていました。 2020年、両国の間で紛争が再燃し、第2次ナゴルノ・カラバフ紛争が起こります。双方が相手国を空爆し、多くの犠牲者が出ました。ナゴルノ・カラバフ地域はアゼルバイジャンに奪い返されました。アルメニアは停戦に合意しています。 それまでの十数年、アゼルバイジャンはバクー油田などを持つ産油国として、急激に経済成長を遂げました。アゼルバイジャンは豊かな財政で軍備を増強するなど、アルメニアに大きな差を付けます。 一方、アルメニアでは、2018年、民主化で自由主義的な政権が誕生し、新政権は従来の親ロシア路線を修正し、欧米に接近しました。アルメニアとロシアの不和を見越したアゼルバイジャンがトルコの支援を得て、強硬路線に踏み切り、第2次ナゴルノ・カラバフ紛争に勝利したのです。 2020年の第2次ナゴルノ・カラバフ紛争で、既に、アゼルバイジャンの優勢と同地域の実効支配が固まっていましたが、その後も同地域のアルメニア人武装勢力は抵抗を続けていました。 それが今回、アゼルバイジャンは最終的にアルメニア人武装勢力の排除に成功したのです』、「それまで、ソ連の存在によって抑えられていた両国の民族対立が表面化し、アルメニアとアゼルバイジャンの間で、ナゴルノ・カラバフ地域の帰属問題が発生します。 軍事的な衝突が起き、第1次ナゴルノ・カラバフ紛争となります。この紛争では、アルメニアが優勢のまま、周辺地域を含めて実効支配します・・・それまでの十数年、アゼルバイジャンはバクー油田などを持つ産油国として、急激に経済成長を遂げました。アゼルバイジャンは豊かな財政で軍備を増強するなど、アルメニアに大きな差を付けます。 一方、アルメニアでは、2018年、民主化で自由主義的な政権が誕生し、新政権は従来の親ロシア路線を修正し、欧米に接近しました・・・2020年、両国の間で紛争が再燃し、第2次ナゴルノ・カラバフ紛争が起こります。双方が相手国を空爆し、多くの犠牲者が出ました。ナゴルノ・カラバフ地域はアゼルバイジャンに奪い返されました・・・今回、アゼルバイジャンは最終的にアルメニア人武装勢力の排除に成功したのです」、歴史的な流れが一応理解できた。
・『ウクライナ戦争で訪れた軍事作戦の好機  ウクライナ戦争に忙殺されるロシアには、ナゴルノ・カラバフに介入する余裕はないことは明らかであり、アゼルバイジャンにとっては、今が電撃的な軍事作戦を展開する好機だったのです。 メディアでは、「ロシアの平和維持部隊の提案を受けて、アルメニア人武装勢力が停戦を決めた」ということが報道されていますが、実際には、ロシアがさじを投げた格好です。 ウクライナ戦争はナゴルノ・カラバフ紛争の最終決着という、思わぬ副産物を生んだのです。同地域におけるロシアの影響力もまた、完全に排除されたと言えます』、「実際には、ロシアがさじを投げた格好です。 ウクライナ戦争はナゴルノ・カラバフ紛争の最終決着という、思わぬ副産物を生んだのです。同地域におけるロシアの影響力もまた、完全に排除されたと言えます」、なるほど。
・『民族系統はどうなっているのか  「コーカサス三国」という言い方がありますが、これはコーカサス山脈の南部のジョージア(旧名グルジア)、そして、アルメニアとアゼルバイジャンの3つの国を指します。 コーカサス三国は旧ソ連から独立した共和国です。コーカサス山脈の北側地域はロシア連邦領となっています。コーカサス地方はコーカサス山脈周辺の国や地域一帯のエリアで、黒海とカスピ海の間に挟まれたアジアとヨーロッパを結ぶ回廊を成す地域です。 北にロシア、南にトルコとイランが隣接しています。「コーカサス」は「カフカス」とも発音されます。ヨーロッパ、アジア、中東の結節点であり、地球上で最も多様な民族が集まる「人種のるつぼ」として、様々な民族の混血が存在しています。 コーカサス三国の人々はロシア白人に近いのでしょうか、それとも、トルコ人やイラン人に近いのでしょうか。 はっきりしているのはアゼルバイジャン人です。アゼルバイジャン人の多くはトルコ人です。「アゼルバイジャン・トルコ人」と呼ばれることもあり、カスピ海を挟んで対岸のトルクメニスタン人とほとんど同じです。) ただし、かつてロシア領(帝政時代)、ソ連領だったこともあるため、ロシア人とも混血しています。容貌は中央アジア人とほとんど同じです。 言語であるアゼルバイジャン語はトルコ語に属し、トルコ共和国語やトルクメニスタン語(トルクメン語)に近似しています。主な宗教はイスラム教です』、「コーカサス三国の人々」のうち、「アゼルバイジャン人の多くはトルコ人です・・・かつてロシア領(帝政時代)、ソ連領だったこともあるため、ロシア人とも混血しています。容貌は中央アジア人とほとんど同じです。 言語であるアゼルバイジャン語はトルコ語に属し・・・主な宗教はイスラム教です」、なるほど。
・『「多重多層民族」であるアルメニア人  一方、アルメニア人はコーカサス人、トルコ人、ロシア人、イラン人などの容貌の全ての要素を含みます。アルメニア人がどの民族に最も近いかを言うのは困難です。アルメニア人は「コーカサス三国」の民族の中で、最も混血が複雑多様化している民族です。各民族の行き交う十字路にあって、様々な民族の血を複合的に取り込んだ「多重多層民族」であり、それだけに、美しい容貌を持つ人が多いとされます。 アルメニア語はインド・ヨーロッパ語族に属します。アルメニア文字はギリシア文字から創案され、ペルシア語の影響も強く受けています。彼らの言語もまた、ヨーロッパ語に近いのか、ペルシア語に近いのかを言うのは困難です。 主な宗教はキリスト教(アルメニア正教)です。かつて、アルメニア人がロシア人と連携して、アゼルバイジャンに対抗していたのは同じキリスト教正教を奉じているからです。一方、イスラムのアゼルバイジャンはロシアとの関係は良好ではありません。 アルメニア人は自らの国家を持ちませんでした。セルジューク朝やオスマン帝国のトルコ人に支配されたり、イラン人に支配されたり、ロシア帝国に支配されたり、その時代における強者に従属し続けました。従属を嫌ったアルメニア人は故郷を離れ、世界中に離散します。こうしたことから、ユダヤ人のディアスポラ(離散)にたとえられることもあります。 世界各地のアルメニア人はアルメニア正教会を中核とした連帯意識を強く持ちながら、交易を活発に行い、富を蓄えました。アルメニアは301年、世界で最初にキリスト教を国教としています』、「アルメニア人はコーカサス人、トルコ人、ロシア人、イラン人などの容貌の全ての要素を含みます。アルメニア人がどの民族に最も近いかを言うのは困難です。アルメニア人は「コーカサス三国」の民族の中で、最も混血が複雑多様化している民族です。各民族の行き交う十字路にあって、様々な民族の血を複合的に取り込んだ「多重多層民族」であり、それだけに、美しい容貌を持つ人が多いとされます。 アルメニア語はインド・ヨーロッパ語族に属します。アルメニア文字はギリシア文字から創案され、ペルシア語の影響も強く受けています・・・主な宗教はキリスト教(アルメニア正教)です・・・アルメニア人は自らの国家を持ちませんでした。セルジューク朝やオスマン帝国のトルコ人に支配されたり、イラン人に支配されたり、ロシア帝国に支配されたり、その時代における強者に従属し続けました。従属を嫌ったアルメニア人は故郷を離れ、世界中に離散します。こうしたことから、ユダヤ人のディアスポラ(離散)にたとえられることもあります。 世界各地のアルメニア人はアルメニア正教会を中核とした連帯意識を強く持ちながら、交易を活発に行い、富を蓄えました。アルメニアは301年、世界で最初にキリスト教を国教としています』、なるほど。
・『コーカサス地域でトルコが優位に  第1次世界大戦がはじまると、オスマン帝国は領土内の多数のアルメニア人をロシアに協力する敵性民族として、迫害します。1915年、アルメニア人虐殺がはじまります。 現在、アルメニア政府はこの事件を、民族根絶を狙った「ジェノサイド(集団虐殺)」であると主張し、その犠牲者は150万人以上になるとしています。研究機関によっては、数十万人ともされており、はっきりとした犠牲者の数はわかっていません。この事件を巡って、今日でも、アルメニアとトルコとの間で、論争が続いています。 こうした背景からも、トルコはアルメニアと敵対し、アゼルバイジャンを支援しています。19世紀、コーカサス地域の支配権を巡り、ロシア帝国とオスマン帝国が対立してきましたが、今日、この地域への影響力では、ロシアに対するトルコの優位が定まったと言えます』、「第1次世界大戦がはじまると、オスマン帝国は領土内の多数のアルメニア人をロシアに協力する敵性民族として、迫害します。1915年、アルメニア人虐殺がはじまります。 現在、アルメニア政府はこの事件を、民族根絶を狙った「ジェノサイド(集団虐殺)」であると主張し、その犠牲者は150万人以上になるとしています。研究機関によっては、数十万人ともされており、はっきりとした犠牲者の数はわかっていません。この事件を巡って、今日でも、アルメニアとトルコとの間で、論争が続いています。 こうした背景からも、トルコはアルメニアと敵対し、アゼルバイジャンを支援しています。19世紀、コーカサス地域の支配権を巡り、ロシア帝国とオスマン帝国が対立してきましたが、今日、この地域への影響力では、ロシアに対するトルコの優位が定まったと言えます」、「コーカサス三国」の複雑な歴史の一端が理解できた。
タグ:世界各地のアルメニア人はアルメニア正教会を中核とした連帯意識を強く持ちながら、交易を活発に行い、富を蓄えました。アルメニアは301年、世界で最初にキリスト教を国教としています』、なるほど。 ロシア この事件を巡って、今日でも、アルメニアとトルコとの間で、論争が続いています。 こうした背景からも、トルコはアルメニアと敵対し、アゼルバイジャンを支援しています。19世紀、コーカサス地域の支配権を巡り、ロシア帝国とオスマン帝国が対立してきましたが、今日、この地域への影響力では、ロシアに対するトルコの優位が定まったと言えます」、「コーカサス三国」の複雑な歴史の一端が理解できた。 「第1次世界大戦がはじまると、オスマン帝国は領土内の多数のアルメニア人をロシアに協力する敵性民族として、迫害します。1915年、アルメニア人虐殺がはじまります。 現在、アルメニア政府はこの事件を、民族根絶を狙った「ジェノサイド(集団虐殺)」であると主張し、その犠牲者は150万人以上になるとしています。研究機関によっては、数十万人ともされており、はっきりとした犠牲者の数はわかっていません。 ダイヤモンド・オンライン (その3)(元外交官が語る ロシアが西ヨーロッパから「アジア」だと見做される理由、ロシア・プーチン政権の威信は失墜 ナゴルノ・カラバフでアルメニア降伏) 「「プーチンは国民を奴隷にしている裸の王様だ」と主張するナワリヌイに続く人物も、今後出てくるかもしれません。 そうした人々によって、これからのロシアは転換期を迎える可能性もあります」、なるほど。 山中俊之氏による著書、『ビジネスエリートの必須教養「世界の民族」超入門』(ダイヤモンド社) 山中俊之氏による「元外交官が語る、ロシアが西ヨーロッパから「アジア」だと見做される理由」 「それまで、ソ連の存在によって抑えられていた両国の民族対立が表面化し、アルメニアとアゼルバイジャンの間で、ナゴルノ・カラバフ地域の帰属問題が発生します。 軍事的な衝突が起き、第1次ナゴルノ・カラバフ紛争となります。この紛争では、アルメニアが優勢のまま、周辺地域を含めて実効支配します・・・ 宇山 卓栄氏による「ロシア・プーチン政権の威信は失墜、ナゴルノ・カラバフでアルメニア降伏」 JBPRESS 「日本人の民族への理解――いわば「民族偏差値」は、世界最低レベル」、なので。意図的に勉強して理解を深めるべきだ。 「日本人の民族への理解――いわば「民族偏差値」は、世界最低レベルだと思います。 日本人は単一民族ではないものの、限りなく単一民族的です。みんな似ているし、争いはあまりないし、言葉もそう違わず、結婚・就職の差別も世界的に見ればとても少ない。 ただし、多様性がないから無知になり、発想が貧しくなります。多様であることが新たな文化を育み、イノベーションのもとになるのです」、 「コーカサス三国の人々」のうち、「アゼルバイジャン人の多くはトルコ人です・・・かつてロシア領(帝政時代)、ソ連領だったこともあるため、ロシア人とも混血しています。容貌は中央アジア人とほとんど同じです。 言語であるアゼルバイジャン語はトルコ語に属し・・・主な宗教はイスラム教です」、なるほど。 「実際には、ロシアがさじを投げた格好です。 ウクライナ戦争はナゴルノ・カラバフ紛争の最終決着という、思わぬ副産物を生んだのです。同地域におけるロシアの影響力もまた、完全に排除されたと言えます」、なるほど。 ・・・2020年、両国の間で紛争が再燃し、第2次ナゴルノ・カラバフ紛争が起こります。双方が相手国を空爆し、多くの犠牲者が出ました。ナゴルノ・カラバフ地域はアゼルバイジャンに奪い返されました・・・今回、アゼルバイジャンは最終的にアルメニア人武装勢力の排除に成功したのです」、歴史的な流れが一応理解できた。 それまでの十数年、アゼルバイジャンはバクー油田などを持つ産油国として、急激に経済成長を遂げました。アゼルバイジャンは豊かな財政で軍備を増強するなど、アルメニアに大きな差を付けます。 一方、アルメニアでは、2018年、民主化で自由主義的な政権が誕生し、新政権は従来の親ロシア路線を修正し、欧米に接近しました アルメニア語はインド・ヨーロッパ語族に属します。アルメニア文字はギリシア文字から創案され、ペルシア語の影響も強く受けています・・・主な宗教はキリスト教(アルメニア正教)です・・・アルメニア人は自らの国家を持ちませんでした。セルジューク朝やオスマン帝国のトルコ人に支配されたり、イラン人に支配されたり、ロシア帝国に支配されたり、その時代における強者に従属し続けました。従属を嫌ったアルメニア人は故郷を離れ、世界中に離散します。こうしたことから、ユダヤ人のディアスポラ(離散)にたとえられることもあります。 「アルメニア人はコーカサス人、トルコ人、ロシア人、イラン人などの容貌の全ての要素を含みます。アルメニア人がどの民族に最も近いかを言うのは困難です。アルメニア人は「コーカサス三国」の民族の中で、最も混血が複雑多様化している民族です。各民族の行き交う十字路にあって、様々な民族の血を複合的に取り込んだ「多重多層民族」であり、それだけに、美しい容貌を持つ人が多いとされます。
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広告(その1)(大好きな「電通」を辞めて僕たちはどこへ行くのか クリエイティブディレクターが語る広告の未来、「SNSに投稿で一品サービス」が法律違反に!10月1日開始“ステマ規制”の重要点を解説) [文化]

今日は、広告(その1)(大好きな「電通」を辞めて僕たちはどこへ行くのか クリエイティブディレクターが語る広告の未来、「SNSに投稿で一品サービス」が法律違反に!10月1日開始“ステマ規制”の重要点を解説)を取上げよう。

先ずは、昨年3月3日付け東洋経済オンラインが掲載したクリエイティブディレクター/CMプランナー の東畑 幸多氏とコミュニケーション・デザイナー/クリエイティブディレクターの齋藤 太郎氏の対談「大好きな「電通」を辞めて僕たちはどこへ行くのか クリエイティブディレクターが語る広告の未来」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/509268
・『HONDA「ONE OK ROCK Go,Vantage point」やサントリー天然水「宇多田ヒカル 水の山行ってきた」など、数々の名作CMを世に送り出してきたクリエイティブディレクター、東畑幸多氏。この1月に長年勤めた電通を退社した同氏は、なぜ独立という道を選んだのか。そしてどこへ向かうのか。東畑氏と同じく、電通を退社し、今はサントリーの角ハイボールやポケトークの仕掛け人として有名なクリエイティブディレクターの齋藤太郎氏の初著書『非クリエイターのためのクリエイティブ課題解決術』の発売を記念して特別対談を行い、2人に、広告業界の今と未来、そして自分たちのやりたいことを語ってもらった。 齋藤:電通からの独立に関して、僕と東畑さんの共通点は「時代の変わり目にある」ことかなと思います。振り返ると、僕が電通を辞めた2000年代中頃はマスメディアがネットによって変わりつつあった頃でした。 東畑:今はまさに広告業界自体がドラスティックに変わろうとしていて、会社も生き残るために変化をしようとしています。世の中の、効率化と最適化の流れは、不可逆だと思っています。ただ行きすぎた効率化は、答えが同質化するので「らしさ」を失わせる。「らしく生き残る」ために、企業やブランドの存在意義を再発見して、効率だけではなく、意味や価値やLOVEを作る専門家でありたい。自分を役立てる場所をハッキリさせたいと思いました』、「「らしく生き残る」ために、企業やブランドの存在意義を再発見して、効率だけではなく、意味や価値やLOVEを作る専門家でありたい。自分を役立てる場所をハッキリさせたいと思いました」、との「東畑」氏の主張はなかなか高度だ。
・『最高の職場、電通  齋藤:もう1つの共通点に「後ろ髪を引かれる気持ち」があるように思っていて。電通はあまりにもいい会社じゃないですか。居心地がよくて、すばらしい人がいっぱいいて、刺激もある。 東畑:まさにそうで、辞めるにあたって、悩み迷い葛藤しました。たくさんの仲間がいて、やるべき仕事があって、自分にとって本当に居心地のいい場所でした。だから、迷いなく踏み出したわけではなく、51:49、ギリギリの決断でした。 いざ辞めるとリアルに考え出すと、怖くなったり不安になったり。夜中、うなされて目が覚めることが何度もありました。退職ボタンを押すか悩んだ最後の夜に、息子と2人でご飯を食べていたとき、ふと「会社辞めるのが怖いんだ」と打ち明けたんです。そのとき、息子から「どっちがよかったか、教えてよ」と言われて。その一言を聞いて、「挑戦してみよう」と思えたんです。) 齋藤:独立して個人になることで、きっと一段と大きな成長があるはず。東畑さんは今や日本を代表するクリエイティブディレクターだけど、おそらく入社して最初の10年でいちばん成長して、そこからは氷の上を走り出したカーリングのストーン(石)のような感じだったんじゃないかな。その石をもう一度後押しするのが、今回の独立なんだと思います。 東畑:まさに年齢的にもポジション的にも、会社の中である種のゴールが見えてしまった感覚がありました。そのまま余力で残りの時間を過ごすこともできたでしょうけど、もう一度自分を別の場所に連れ出さなければ、新しい自分には出会えない。そう思ったことも独立を考えた理由の1つでしたね。 齋藤:電通を辞める人が僕に報告をしてくれることがあるんだけど、そのときに必ず伝えているのは「絶対うまくいく」ということ。辞めずに会社に残った未来を確認することはできないじゃないですか。そして、自分が選んだ人生をいいものにする「後付け力」が人間にはある。だから「これでよかったんだ」と思える未来は絶対に自分の力で作り出せます』、「電通はあまりにもいい会社じゃないですか。居心地がよくて、すばらしい人がいっぱいいて、刺激もある。 東畑:まさにそうで、辞めるにあたって、悩み迷い葛藤しました。たくさんの仲間がいて、やるべき仕事があって、自分にとって本当に居心地のいい場所でした。だから、迷いなく踏み出したわけではなく、51:49、ギリギリの決断でした」、「電通」は女性社員の過労死問題はあったとはいえ、全体としてはやはり素晴らしい会社のようだ。
・『「教育担当・太郎さん」から学んだこと  東畑:僕が電通に新卒入社して、最初の教育担当が太郎さんでしたよね。社会人として、電通マンとして、大切な基礎を教わりました。あと、入社して早々に太郎さんの結婚式の寿ビデオを作ったことがあって。いわば初めてのクライアントでもあります(笑)。 齋藤:その節はお世話になりました(笑)。 東畑:僕の当時の太郎さんの印象は「ザ・電通」。人間力とパワーがあふれていて、「こんな人には絶対になれないし、この会社で俺はやっていけないかもしれない」と思ったことを覚えています。幸い、その後出会った人で太郎さん以上の人はいませんでしたが。 齋藤:いきなりラスボスに出会った感じだったんだね。 東畑:太郎さんは、相手への気遣いがすさまじいですよね。著書では自身をテイカー(Takeする人)だったと書いていましたけど、めちゃくちゃギバー(Giveする人)だと思います。特に昔聞いてすごく好きなのが「ビッグアイデアよりビッグ愛だ」っていうフレーズで。 齋藤:懐かしい(笑)。相手に愛情を持つことがいちばん重要だというのは、今も変わらず思っていることですね。 東畑:クライアントや関係部署だけでなく、「世の中がどうしたら喜ぶかを考え続けることが仕事なんだ」というメッセージを、僕は太郎さんの姿勢から勝手に受け取っていました。) 東畑:のちに僕が新人の教育係になったときも「相手が何をしたら喜ぶか」という想像力が僕らの仕事にとってとても大事なんだという話をしていましたね。1つひとつ相手の想像を上回るから人の記憶に残るのであり、だからこそ面白いしやりがいがあるのかなと思います。 それに関連する話で、後輩が屋形船で宴会をやってくれたことがあって。1人遅刻で乗れないまま出港したんですけど、1時間後にびしょ濡れで「すみません、遅刻しました」と登場したんです。こっそり隠れておいて、頃合いを見て自分で水を掛けて現れたんでしょうね。 齋藤:面白い(笑)。 東畑:相手の想像を半歩上回る、サービス精神。僕は太郎さんを見ていて、いつもそんな姿勢を感じるんです。仕事はつねに考えることがあってつらい側面もありますが、相手をハッピーにするための仕事は、苦しい顔をしてやるものじゃない。苦しいときは、「そんな顔してやる仕事じゃないだろ」と自分にツッコんでいます。これは太郎さんから大きく影響を受けたことですね』、「「世の中がどうしたら喜ぶかを考え続けることが仕事なんだ」というメッセージを、僕は太郎さんの姿勢から勝手に受け取っていました」、「相手をハッピーにするための仕事は、苦しい顔をしてやるものじゃない。苦しいときは、「そんな顔してやる仕事じゃないだろ」と自分にツッコんでいます」、なるほど。
・『「自分は何ができるのか」を見つける  東畑:僕の中で太郎さんは根アカでポジティブな、「どこでも生きていける人」。dofの「なんとかする会社。」というところに、まさに太郎さんの生き様が集約されているなと思います。 だから太郎さんの著書を読んで、太郎さんも悩みながら自分の存在意義を必死で作ろうともがいてきたんだと、意外な気持ちになりました。 齋藤:根アカでいたり、ポジティブに考えていられるように、人知れず努力と訓練はそれなりにしているからね。よく映画とかで鏡に向かって「俺はできる!」って叫ぶシーンがあるじゃないですか。あれ、僕も毎朝やっているから(笑)。 東畑:仕事って、自分の居場所を作っていくことでもあるじゃないですか。著書にもメディアや営業、経営と、ある種の「辺境」からクリエイティブディレクターのポジションを作るために必死に戦い、その中で存在理由をつむぎ出してきた歴史が書かれている。でも、自分の強みを作ることは弱みを知ることと一緒ですよね。一緒に起業した大島(征夫)さんというクリエイティブディレクターの大ボスみたいな人と対峙しながら、「自分に何ができるのか」を問い続けるのは、大変だったと思います。広告業界の太陽みたいな存在ですからね。 齋藤:太陽のなかでも、ほぼ黒点みたいな人だよね(笑)。 東畑:巨大な太陽の前で、全然違う付加価値を持つクリエイティブディレクターを目指し続ける。これはすごくタフな環境ですよ。だから太郎さんは異常なスピードで成長したんだろうし、そこで「クリエイティブは誰もが持っていて、誰もが用いたほうがいい」という結論にたどり着き、その過程で得てきたメソッドが僕はすごく面白かったです。) 東畑:クリエイティブディレクターとして、太郎さんと僕は違うふもとから同じ頂上を目指していて、そのルートは明確に違う。普段自分が考えたことがない、新しい発見がいっぱいありました。この本は「非クリエイターのため」とあるけど、むしろクリエイターの人が読んだほうがいいんじゃないかな。 齋藤:例えばどんな発見がありました?』、「根アカでいたり、ポジティブに考えていられるように、人知れず努力と訓練はそれなりにしているからね。よく映画とかで鏡に向かって「俺はできる!」って叫ぶシーンがあるじゃないですか。あれ、僕も毎朝やっているから(笑)」、「根アカでいたり、ポジティブに考えていられるように、人知れず努力と訓練はそれなりにしている」、天性のものと思っていたが、「人知れず努力と訓練はそれなりにしている」とは初めて知った。
・『ビジネスを知らないとつねに満塁を目指してしまう  東畑:印象的だったのは、ハイボールの話で、『角瓶』1本から23杯のハイボールを作ることができる。それは飲食店にとってロックや水割りを出すよりも、利益を出せる。そこがハイボールブームの後押しになったというエピソード。業界の収益構造や力学まで理解することで、世の中を巻き込む現象が作れるんだなと、学びがありました。 経営者から話を引き出す「いい質問」を作るために、会社の財務諸表を見ることがヒントになる。そんな視点を持っているクリエイティブディレクターは少ないと思います。まだまだアイデアをたぐり寄せるヒントはあるんだなと思いました。 齋藤:野球で例えると、ビジネスの構造を知ることは球場の広さや相手の戦力を知ることに近いように思っています。ビジネスを理解していないクリエイターはつねに満塁を目指してしまうけど、本当はバントが重宝される案件もあって、状況によって打つべき手は変わるはず。そこを理解し、把握することが僕らの仕事では特に重要だと思うんですよね。 東畑:太郎さんは表現に近づきすぎないというか、全体像を見ている。みんなが課題に向き合ってるときの目線の上げ方や広げ方が、太郎さんの真骨頂ですよね。 齋藤:それは東畑さんも得意なんじゃない? 東畑:太郎さんは身近でわかりやすいんですよ。「ビアガーデンみたいに、ハイボールガーデンがあったらいいよね」っていう提案は捉えやすいじゃないですか。 齋藤:東畑さんの仕事を見ていると、ど真ん中であり、苦しい道を選んでいるのを感じます。置きに行かず、足跡のない道をわざわざ探している。それを繰り返した結果、誰も登ったことのない山の頂上にたどり着くことができているよね。 一方、今はよくも悪くもデータからいろいろなものが見えた気になって、「失敗したくない病」が蔓延している感じがします。地方都市の街並みも、商業施設の各店舗に置いてある洋服も、どれも似通っている。売れ筋や売り方を考えるとどうしても画一的になって、個性が失われていくんですよね。) 東畑:今は過渡期で、多くの企業がDXをはじめ、ルールや体質を変えようと模索しています。持続可能な資本主義に向けて世の中が変わろうとする中、あらゆる企業が存在意義を再定義するタイミングにある。「効率」と「幸福」とが違うことに、みんなそろそろ気がつき始めている。ソロバンも大切だけど、ロマンも忘れちゃいけない。その両方を見据えながら、企業やブランドと向き合っていく必要があると思っています』、「ビジネスを理解していないクリエイターはつねに満塁を目指してしまうけど、本当はバントが重宝される案件もあって、状況によって打つべき手は変わるはず。そこを理解し、把握することが僕らの仕事では特に重要だと思うんですよね」、「「効率」と「幸福」とが違うことに、みんなそろそろ気がつき始めている。ソロバンも大切だけど、ロマンも忘れちゃいけない。その両方を見据えながら、企業やブランドと向き合っていく必要があると思っています」、なるほど。
・『これから再び「らしさ」が重要になっていく  齋藤:広告でも機械が判断した「調査結果がこうなので、この情報を入れてください」によって、70点の広告を量産するようなことが起きている。東畑さんはそこへの危機感があるように思います。足跡がついていない道を歩みながら人の気持ちを動かすことをやらないと、世の中が痩せてしまう感覚があるんじゃないかな。 東畑:僕は、広告とは「にぎわい」を作る仕事だと思っていて。にぎわいができれば、パワーが生まれるし、マネタイズもできる。ブランドに、TVCMに、SNSに、店頭に、イベントに、地域に、企業と企業とのリレーションの間に、「にぎわい」を作っていく。 そのために必要なのは、「人を魅了する」こと。効率も作るけど、フェロモンも作る。それを忘れてしまうと、僕たちは存在意義を失ってしまうのかもしれない。そういう意味では、これから再び「らしさ」が重要になっていくようにも思っています。太郎さんが言うように、今はあらゆる分野で正解を出そうとしてしまっているけど、最後に大切なのは企業やブランドが持つ「らしさ」。太郎さんの「なんとかする」クリエイティブディレクションでも、太郎さんが持っている記憶や視点、感動が役立つわけですよね。 広告業界が生き残ろうと変革する中で不安を持っている人もいるけれど、僕はそれこそ「ビッグ愛」を持って、後輩やこれから広告業界を目指す人に明るい背中を見せられる存在でありたいです。人を魅了する仕事だから人生を懸ける価値があるし、こんな面白い仕事はないですから』、「僕は、広告とは「にぎわい」を作る仕事だと思っていて。にぎわいができれば、パワーが生まれるし、マネタイズもできる。ブランドに、TVCMに、SNSに、店頭に、イベントに、地域に、企業と企業とのリレーションの間に、「にぎわい」を作っていく。 そのために必要なのは、「人を魅了する」こと。効率も作るけど、フェロモンも作る。それを忘れてしまうと、僕たちは存在意義を失ってしまうのかもしれない。そういう意味では、これから再び「らしさ」が重要になっていくようにも思っています。太郎さんが言うように、今はあらゆる分野で正解を出そうとしてしまっているけど、最後に大切なのは企業やブランドが持つ「らしさ」。太郎さんの「なんとかする」クリエイティブディレクションでも、太郎さんが持っている記憶や視点、感動が役立つわけですよね。 広告業界が生き残ろうと変革する中で不安を持っている人もいるけれど、僕はそれこそ「ビッグ愛」を持って、後輩やこれから広告業界を目指す人に明るい背中を見せられる存在でありたいです。人を魅了する仕事だから人生を懸ける価値があるし、こんな面白い仕事はないですから』、「広告」を愛するトップ・「クリエイティブディレクター」らしい含蓄のある発言だ。

次に、本年10月5日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したITジャーナリスト・スマホ安全アドバイザーの鈴木朋子氏による「「SNSに投稿で一品サービス」が法律違反に!10月1日開始“ステマ規制”の重要点を解説」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/330140
・『2012年頃、ほしのあき、熊田曜子といったグラビアアイドルを中心に複数の芸能人が関わっていた「ペニーオークション詐欺事件」を覚えているだろうか。あれから約10年、この一件で広く知られるようになった「ステマ(ステルスマーケティング)」を景品表示法の禁止行為として規制する、通称「ステマ規制」が10月1日から始まった。ステマと聞くと、インフルエンサーや芸能人、あるいは広告を出稿する企業の問題だと思われるかもしれないが、実はこれ、一般的な消費者である“普通”の人たちにも関わってくる内容なのだ。どんな点に注意すればいいのか、専門家に話を聞いた』、「一般的な消費者である“普通”の人たちにも関わってくる」とは、どういうことなのだろう。
・『2023年10月1日施行 “ステマ規制”とは何なのか  「うちの店のことをSNSに投稿してくれたら、お礼にアイスクリームをサービスするよ」 なじみの店で食事した後、店主からこんなふうに問いかけられたことはないだろうか。「親しい仲だし、自分の投稿が役立つなら……」と、投稿した人も少なくないだろう。しかし、良かれと思って投稿したことが、結果的に店主に迷惑をかけてしまう可能性が出てきた。それが、2023年10月1日に施行された、ステルスマーケティング(ステマ)行為を規制する、いわゆる「ステマ規制」だ。 ステルスマーケティングとは、企業が商品やサービスを宣伝する際に、広告であるにもかかわらず、広告であることを隠す行為を指す。例えば、ある人が企業から「報酬を渡すのでこの商品をSNSに宣伝して」と頼まれたとする。その人は報酬を受け取ったことにまったく触れず、商品をSNSでおすすめした。すると、SNS投稿を見た人は「SNSで評価が高かったから」と通常のクチコミとして誤認してしまう可能性がある。 消費者庁はこうした事態を防ぐために、景品表示法(景表法)を改正し、不当な表示に当たる「優良誤認表示」(第5条第1号)、「有利誤認表示」(第5条第2号)、「その他、誤認されるおそれのある表示」(第5条第3号)の中から、「その他、誤認されるおそれのある表示」に「ステルスマーケティング」を追加した。 なぜ消費者庁は景表法にステルスマーケティングを告示したのか、企業だけでなく一般の人にも影響があるのかなど、博報堂ビジネスコンプライアンス局クリエイティブリスクコンプライアンスグループ GMで、一般社団法人クチコミマーケティング協会運営委員会副委員長も務める山本京輔氏に話を伺った』、興味深そうだ。
・『デジタル・アナログを問わず、ネット上の書き込み、レビュー 新聞、ラジオ、テレビ、雑誌などすべて「ステマ規制」の対象  ステルスマーケティングという言葉自体は、2012年頃から話題になり始めた。2012年に発覚したペニーオークション詐欺事件では、複数の芸能人が広告であることを伏せて、自らのブログでペニーオークションサイトを使って商品を安く購入できたとおすすめしていたため、犯罪行為に加担したのではと大きな話題となった。山本氏が所属するクチコミマーケティング協会(WOMJ)では、2010年から、ステルスマーケティングを防止するための指針「WOMJガイドライン」を策定している。 消費者庁がステマ規制に乗り出した理由を山本氏に尋ねた。 「私が分かる範囲でさかのぼると、2021年の時点で消費者庁の景表法の検討会でアフィリエイト広告が問題視され、その流れでステルスマーケティングについても検討が始まりました。その経緯で、最初はデジタルだけが対象となっていたのですが、検討を進め、景表法の指定告示で対応するとなったときに、デジタルだけでなく(景表法の定める)『表示』のすべてが対象となりました」(山本氏) ステマ規制は、商品またはサービスについて行う表示であれば、すべてが対象となる。インターネット上の表示(SNS投稿、ECサイトのレビュー投稿など)だけでなく、新聞、テレビ、ラジオ、雑誌などが該当する。 また、規制の対象となるのは、「商品・サービスを供給する事業者(広告主)」だ。ここに、インフルエンサーやアフィリエイターなどは原則として含まれない。規制の対象となる事業者や広告主は、違反行為が認められた場合、消費者庁(あるいは都道府県)により告示違反に対する措置命令が行われる。もし、表示内容に優良誤認や有利誤認もある場合は、加えて課徴金など景品表示法上の措置を受けることになる。 であれば、商品やサービスの宣伝活動を行っていない、一般の人にはあまり関係がない規制なのだろうか。 「ステルスマーケティングは一部のインフルエンサーだけに関係するものではありません。冒頭のアイスクリームの例では、SNS投稿を行った本人は罰せられることはありませんが、行政処分等で店主に迷惑をかけることになりかねません。また、行政処分の対象にはならなくても、『あの店はステマをしたらしい』という悪評が立ってしまう可能性もあります」(山本氏) 良かれと思ってしたことが、自分の大事な人に迷惑をかけてしまうかもしれない。ステマ規制は“普通”の人にとっても、他人事ではないのだ』、「冒頭のアイスクリームの例では、SNS投稿を行った本人は罰せられることはありませんが、行政処分等で店主に迷惑をかけることになりかねません。また、行政処分の対象にはならなくても、『あの店はステマをしたらしい』という悪評が立ってしまう可能性もあります」(山本氏) 良かれと思ってしたことが、自分の大事な人に迷惑をかけてしまうかもしれない。ステマ規制は“普通”の人にとっても、他人事ではないのだ」、なるほど。
・『「SNS投稿してくれたらサービスするよ」の問題点とは? ステマ規制の対象にならないためのSNS投稿ポイント  とはいえ、常連で通っている飲食店や美容院など、自分が本当に良いと感じておすすめしたい店舗もある。その店のオーナーからSNS投稿への依頼を受けた場合、自分も投稿して力になりたい気持ちがあるだろう。 「もし飲食店からごちそうになった上で、そのお店についてSNS投稿をしたのなら、その投稿は『事業者の表示』となり得ますし、ステマとして不当表示とされる可能性が生じます。しかしそうした場合は、“お店からアイスクリームをいただきました”と明瞭に書いていれば、『事業者の表示』であることが十分に分かるので不当表示とはなりません。もしくは、ハッシュタグでPR表記をするとか、SNSのプロモーション表記機能をオンにするという方法もあります。ケースバイケースで対応しておくといいですね」(山本氏) 「事業者の表示」とは、「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示」のことを指す。さらに「事業者の表示」には、「第三者に表示させる/表示内容を委ねる」場合も含まれる。SNS投稿などの表示に事業者が関与している場合は、表示内容全体から一般消費者にも関与が分かるように明示しなければならない。 つまり、「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」といったキーワードを入れたり、文章で「お店から提供されました」などと説明したりすれば、第三者が見ても誤認しないため、規制対象にはならない。ただし、小さな文字で表記する、その投稿だけでは判別できない、大量のハッシュタグの最後に記載するなど不明瞭な場合は不当表示に該当する恐れがある』、「「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」といったキーワードを入れたり、文章で「お店から提供されました」などと説明したりすれば、第三者が見ても誤認しないため、規制対象にはならない」、なるほど。
・『10月1日より前のSNS投稿も対象に 各プラットフォームの機能を用意するのも手  SNSの場合、プラットフォーム側で関係性を明示する機能を用意しているものもある。ただし、アカウントを一般アカウントからビジネス用に変更するケースもあり、普段からよく宣伝を依頼される人以外にはハードルが高いかもしれない。仕事柄、関係性を明瞭にしておきたい人は以下の機能を利用すると良い。 (図_プラットフォーム別のプロモーション表示機能 はリンク先参照) (Instagramのブランドコンテンツタグ Instagramのブランドコンテンツタグでは、フィードやストーリーズ投稿のサブヘッダーに「XXX(ブランド名)とのタイアップ投稿」と表示される(出所:メタ) はリンク先参照) また、ステマ規制では2023年10月1日以前の投稿も対象になる点も注意が必要だ。山本氏によると、「景表法では消費者の誤認を招く『表示』は、掲出された時期に関わらず対象となりえます。過去に出版された書籍、昔から掲出されている看板なども、現時点で閲覧できるならば『対象』となりえます。しかし、現実的には今回の『ステマ規制』の施行前に出版・放送されたものを処分対象とすることは難しいのだと思います。一方でデジタルに掲出されているものは(現実的に対処が不可能なもの以外は)修正対処が可能であり、かつ一般消費者の誤認を招きかねないものなので、行政処分の対象となりうると考えられます。」という。 過去の投稿をすべて消費者庁がチェックすることは現実的には難しいと思われるが、自分の過去の投稿が規制の対象になる場合には、今からでも表示の追記や投稿の削除などで対応しておくといいだろう』、「過去に出版された書籍、昔から掲出されている看板なども、現時点で閲覧できるならば『対象』となりえます。しかし、現実的には今回の『ステマ規制』の施行前に出版・放送されたものを処分対象とすることは難しいのだと思います。一方でデジタルに掲出されているものは(現実的に対処が不可能なもの以外は)修正対処が可能であり、かつ一般消費者の誤認を招きかねないものなので、行政処分の対象となりうると考えられます」、なるほど。
・『アフィリエイトも対象になるので注意 「ステマ規制」を理解し、問題にならない表示を心がけよう  ここまでは、広告主に当たる人に依頼された場合について説明してきた。しかし、お小遣い稼ぎのためにSNSにアフィリエイトリンクを投稿している人もいるだろう。 アフィリエイトとは、商品やサービスの広告をサイトやSNSなどに掲載し、購買や会員登録などに結び付いた場合に報酬を得られる仕組みだ。Amazonや楽天などのECサイトが提供するアフィリエイトプログラムのほか、アフィリエイトを提供するASP、広告主や代理店からの依頼で行われる。 アフィリエイトのためにWebサイトを開設し、本気で稼いでいる人もいるが、一般的にはECサイトでアフィリエイトリンクを生成して、SNSやブログなどに投稿する程度だろう。その場合もアフィリエイト広告だと分かるように明示する。もし、事業者に依頼された場合は、「広告」などのキーワードや文章で関係性を記載しておけば、規制の対象にはならない。不明瞭にすると事業者からの評価が下がり、依頼が来なくなる可能性があるので注意したい。 消費者としては、ステマにだまされたくない気持ちもある。しかし、山本氏は「私でも完全に見抜くのは難しい」と語る。 「巧妙に行われてしまうと、グレーだなとは思っても、明確な証拠がなければステマだとは言えません。だからこそ、ステマ規制が必要になったということです。雑誌などに広告を出せないスモールビジネスの事業者はインフルエンサーマーケティングを行うことが多いですが、方法を間違えると相当なレピュテーションリスク(企業価値や信用低下を招くリスク)を追う(岩崎注:正しくは「負う」)ことになります。本当に気を付けてほしいと思います」(山本氏)  「ステマ規制」は、宣伝したい事業者だけでなく、消費者である“普通”の人も意識していく必要がある。特に事業者は、消費者庁が公開している「事例で分かるステルスマーケティング告示ガイドブック」を参照されたい。さらに詳しく知りたい場合は、消費者庁の「景品表示法に関する御相談」に参考リンクや相談先の電話番号が記載されている。少しでも疑問を抱く点があったら、確認しておくと安心だ。また、WOMJでも、「にならないクチコミを行うためのガイドラインを公開している。かなり細かいFAQも載っているので、詳しく知りたい人はここを確認することをお勧めする。 次回は、Webメディアや雑誌・新聞など商用媒体で記事や広告を作成する場合、ステマ規制がどのように関わってくるかについて解説する』、「雑誌などに広告を出せないスモールビジネスの事業者はインフルエンサーマーケティングを行うことが多いですが、方法を間違えると相当なレピュテーションリスク・・・を負う)ことになります。本当に気を付けてほしいと思います」、なるほど。「ステマ」自体は、一般消費者を騙すことであり、今回の規制そのものが望ましいことは言うまでもない。
タグ:「「世の中がどうしたら喜ぶかを考え続けることが仕事なんだ」というメッセージを、僕は太郎さんの姿勢から勝手に受け取っていました」、「相手をハッピーにするための仕事は、苦しい顔をしてやるものじゃない。苦しいときは、「そんな顔してやる仕事じゃないだろ」と自分にツッコんでいます」、なるほど。 「電通はあまりにもいい会社じゃないですか。居心地がよくて、すばらしい人がいっぱいいて、刺激もある。 東畑:まさにそうで、辞めるにあたって、悩み迷い葛藤しました。たくさんの仲間がいて、やるべき仕事があって、自分にとって本当に居心地のいい場所でした。だから、迷いなく踏み出したわけではなく、51:49、ギリギリの決断でした」、「電通」は女性社員の過労死問題はあったとはいえ、全体としてはやはり素晴らしい会社のようだ。 「「らしく生き残る」ために、企業やブランドの存在意義を再発見して、効率だけではなく、意味や価値やLOVEを作る専門家でありたい。自分を役立てる場所をハッキリさせたいと思いました」、との「東畑」氏の主張はなかなか高度だ。 齋藤 太郎氏の対談「大好きな「電通」を辞めて僕たちはどこへ行くのか クリエイティブディレクターが語る広告の未来」 (その1)(大好きな「電通」を辞めて僕たちはどこへ行くのか クリエイティブディレクターが語る広告の未来、「SNSに投稿で一品サービス」が法律違反に!10月1日開始“ステマ規制”の重要点を解説) 広告 東畑 幸多氏 東洋経済オンライン 「根アカでいたり、ポジティブに考えていられるように、人知れず努力と訓練はそれなりにしているからね。よく映画とかで鏡に向かって「俺はできる!」って叫ぶシーンがあるじゃないですか。あれ、僕も毎朝やっているから(笑)」、「根アカでいたり、ポジティブに考えていられるように、人知れず努力と訓練はそれなりにしている」、天性のものと思っていたが、「人知れず努力と訓練はそれなりにしている」とは初めて知った。 「ビジネスを理解していないクリエイターはつねに満塁を目指してしまうけど、本当はバントが重宝される案件もあって、状況によって打つべき手は変わるはず。そこを理解し、把握することが僕らの仕事では特に重要だと思うんですよね」、「「効率」と「幸福」とが違うことに、みんなそろそろ気がつき始めている。ソロバンも大切だけど、ロマンも忘れちゃいけない。その両方を見据えながら、企業やブランドと向き合っていく必要があると思っています」、なるほど。 ダイヤモンド・オンライン る仕事だから人生を懸ける価値があるし、こんな面白い仕事はないですから』、「広告」を愛するトップ・「クリエイティブディレクター」らしい含蓄のある発言だ。 そういう意味では、これから再び「らしさ」が重要になっていくようにも思っています。太郎さんが言うように、今はあらゆる分野で正解を出そうとしてしまっているけど、最後に大切なのは企業やブランドが持つ「らしさ」。太郎さんの「なんとかする」クリエイティブディレクションでも、太郎さんが持っている記憶や視点、感動が役立つわけですよね。 広告業界が生き残ろうと変革する中で不安を持っている人もいるけれど、僕はそれこそ「ビッグ愛」を持って、後輩やこれから広告業界を目指す人に明るい背中を見せられる存在でありたいです。人を魅了す 「僕は、広告とは「にぎわい」を作る仕事だと思っていて。にぎわいができれば、パワーが生まれるし、マネタイズもできる。ブランドに、TVCMに、SNSに、店頭に、イベントに、地域に、企業と企業とのリレーションの間に、「にぎわい」を作っていく。 そのために必要なのは、「人を魅了する」こと。効率も作るけど、フェロモンも作る。それを忘れてしまうと、僕たちは存在意義を失ってしまうのかもしれない。 「「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」といったキーワードを入れたり、文章で「お店から提供されました」などと説明したりすれば、第三者が見ても誤認しないため、規制対象にはならない」、なるほど。 「冒頭のアイスクリームの例では、SNS投稿を行った本人は罰せられることはありませんが、行政処分等で店主に迷惑をかけることになりかねません。また、行政処分の対象にはならなくても、『あの店はステマをしたらしい』という悪評が立ってしまう可能性もあります」(山本氏) 良かれと思ってしたことが、自分の大事な人に迷惑をかけてしまうかもしれない。ステマ規制は“普通”の人にとっても、他人事ではないのだ」、なるほど。 「一般的な消費者である“普通”の人たちにも関わってくる」とは、どういうことなのだろう。 鈴木朋子氏による「「SNSに投稿で一品サービス」が法律違反に!10月1日開始“ステマ規制”の重要点を解説」 「雑誌などに広告を出せないスモールビジネスの事業者はインフルエンサーマーケティングを行うことが多いですが、方法を間違えると相当なレピュテーションリスク・・・を負う)ことになります。本当に気を付けてほしいと思います」、なるほど。「ステマ」自体は、一般消費者を騙すことであり、今回の規制そのものは望ましいことは言うまでもない。 「過去に出版された書籍、昔から掲出されている看板なども、現時点で閲覧できるならば『対象』となりえます。しかし、現実的には今回の『ステマ規制』の施行前に出版・放送されたものを処分対象とすることは難しいのだと思います。一方でデジタルに掲出されているものは(現実的に対処が不可能なもの以外は)修正対処が可能であり、かつ一般消費者の誤認を招きかねないものなので、行政処分の対象となりうると考えられます」、なるほど。
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歴史問題(その18)(兵士1591人が「エリートのプライド」の犠牲になった…日本軍の「謹厳実直な武人」が無謀な作戦を立てたワケ 日本の破滅を招いた「恥の文化」、731部隊、朝鮮人虐殺…不都合な歴史を「なかったことにしたい人たち」に感じた“怖さ”、「クソどうでもいい仕事」著者の遺作 人類史の定説を覆す“5500円の本”の中身とは?) [社会]

歴史問題については、本年4月15日に取上げた。今日は、(その18)(兵士1591人が「エリートのプライド」の犠牲になった…日本軍の「謹厳実直な武人」が無謀な作戦を立てたワケ 日本の破滅を招いた「恥の文化」、731部隊、朝鮮人虐殺…不都合な歴史を「なかったことにしたい人たち」に感じた“怖さ”、「クソどうでもいい仕事」著者の遺作 人類史の定説を覆す“5500円の本”の中身とは?)である。

先ずは、5月29日付けPRESIDENT Onlineが掲載した軍事史研究家の藤井 非三四氏による「兵士1591人が「エリートのプライド」の犠牲になった…日本軍の「謹厳実直な武人」が無謀な作戦を立てたワケ 日本の破滅を招いた「恥の文化」」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/69854
・『日本人の「恥の意識」は、非常事態において大変な損害をもたらすことがある。軍事史研究家の藤井非三四さんの著書『太平洋戦争史に学ぶ日本人の戦い方』(集英社新書)より、1941年の第二次長沙作戦で起きた悲劇を紹介しよう――』、興味深そうだ。
・『「恥の文化」は時に国家の破滅をもたらす  日本は「恥の文化」だと語られて久しい。普段は恥を知ることは美徳かもしれないが、戦争などの非常事態となるとそれは国家の破滅をもたらしかねない。 国難に直面した国家の指導者や高級指揮官の多くは、厚顔無恥で融通無碍であるのがごく普通で、勝利を収めさえすればそんな姿勢をあれこれ批判されることもない。ところが日本では、初志貫徹、首尾一貫しなければ恥ずかしく面目ないと凝り固まり、方針転換を渋りに渋って万事手遅れとなる場合が多い。 どうして進んで自縄自縛となったり、意地になって行動の幅を狭めてしまったりするのかと考えると、そこに虚栄心が働いているからだ。自分がいかに意志堅固で、なにかをやり遂げる強い決意があったかを知ってもらい、できれば史書に名前を残してもらいたい、という政治家や高級指揮官の心根が見え隠れする。 太平洋戦争中に限っても、こうした硬直した戦い方をして無意味な損害を被った例は数多くある。まず、昭和16年12月24日からの第二次長沙作戦だ』、「初志貫徹、首尾一貫しなければ恥ずかしく面目ないと凝り固まり、方針転換を渋りに渋って万事手遅れとなる場合が多い・・・そこに虚栄心が働いているからだ。自分がいかに意志堅固で、なにかをやり遂げる強い決意があったかを知ってもらい、できれば史書に名前を残してもらいたい、という政治家や高級指揮官の心根が見え隠れする」、なるほど。
・『日本軍は「不落」の長沙を制圧しにかかった  中国戦線の進攻作戦が一段落した昭和13(1938)年末、支那派遣軍の任務は占領地の治安確立と安定を図ることが主となった。しかし、それだけでは部隊の雰囲気が退嬰的になりかねないとされ、長江沿岸地域で限定的な進攻作戦を行ない、中国軍の戦力を減殺させることとなった。 ところが新たに進攻した地域を確保するだけの戦力がないため、攻め込んでは後退するピストン作戦にならざるを得ない。これを見た中国国民政府は、「またもや日本軍を撃退」と宣伝にこれ努め、日本側を苛立たせていた。 昭和16年9月18日からの「加号」作戦(第一次長沙作戦)もこのピストン作戦だった。実施部隊は4個師団を基幹とする第11軍、軍司令官は阿南惟幾中将(大分、陸士18期、歩兵)だった。目標は中国が「不陥」(攻略不可能)と宣伝してきた湖南省の省都である長沙だ。ここを占領すれば中国に和平の気運が生まれるのではとの淡い期待もあった』、「新たに進攻した地域を確保するだけの戦力がないため、攻め込んでは後退するピストン作戦にならざるを得ない。これを見た中国国民政府は、「またもや日本軍を撃退」と宣伝にこれ努め、日本側を苛立たせていた」、「ピストン作戦」である以上、避けられない事態だが、無駄な「作戦」のように思われる。
・『軍に広がる「完全占領ではなかった」との噂  第11軍の諸隊は、洞庭湖に注ぐ新墻河の線から一斉に攻勢を発起、100キロ南の長沙を目指した。そして早くも9月27日、先遣隊が長沙市街に突入し、翌日には第4師団(大阪)が入城した。予定していた通り、第11軍は10月1日から反転を始め、11月初旬までにもとの態勢に戻った。 ところがすぐに支那派遣軍の内で妙な話が交わされるようになった。中国が言うように長沙市街の一部には中国軍が残っており、第11軍が主張するように完全占領ではなかったらしいという噂だ。 侍従武官も務め、謹厳実直な武人として知られる阿南軍司令官にとって、これは面目の問題となり、この恥辱を雪がなければと思い詰めたようだ。また、長沙入城を第4師団に譲った形となった第3師団(名古屋)の豊嶋房太郎師団長(山口、陸士22期、歩兵)としても、「俺が長沙に行けば、こんな話にならなかったのに」という気持ちになったかもしれない』、「すぐに支那派遣軍の内で妙な話が交わされるようになった。中国が言うように長沙市街の一部には中国軍が残っており、第11軍が主張するように完全占領ではなかったらしいという噂だ。 侍従武官も務め、謹厳実直な武人として知られる阿南軍司令官にとって、これは面目の問題となり、この恥辱を雪がなければと思い詰めたようだ」、なるほど。
・『師団が転用される前に再び長沙を叩く  雪辱戦を行なうとなれば急がねばならない。第4師団は長沙入城で花道を飾って、フィリピンに転用された。これで支那派遣軍に残る精強な常設師団は第3師団と第6師団(熊本)だけとなり、これもまたほかの戦線に転用されるのは時間の問題と思われた。 そうなると支那派遣軍は警備師団、治安師団、独立混成旅団からなる治安軍となり、ピストン作戦すらも行なう戦力がなくなる。そこで第3師団と第6師団が残っているうちに、再び長沙作戦を行なわなければならないという話になった。 しかし、ひとたび南方作戦が始まれば、再度の長沙作戦など大本営はもちろん支那派遣軍も難色を示す。そこで阿南軍司令官が唱え出したのが「徳義の作戦」だった。 開戦劈頭、支那派遣軍の第23軍が香港攻略に向かう。これに対応すべく中国軍は広東省正面に圧力を加えるだろう。そこでこの中国軍の動きを牽制するため、第11軍は再度長沙正面で攻勢に出るという構想だ。 だれもがエゴイストになりがちな戦場で、自ら進んで友軍のために動くというのだから、まさに徳義の作戦、「武人阿南」の面目躍如ということになる(佐々木春隆『長沙作戦 緒戦の栄光に隠された敗北』光人社NF文庫、2007年)』、「支那派遣軍は警備師団、治安師団、独立混成旅団からなる治安軍となり、ピストン作戦すらも行なう戦力がなくなる。そこで第3師団と第6師団が残っているうちに、再び長沙作戦を行なわなければならないという話になった。 しかし、ひとたび南方作戦が始まれば、再度の長沙作戦など大本営はもちろん支那派遣軍も難色を示す。そこで阿南軍司令官が唱え出したのが「徳義の作戦」だった。 開戦劈頭、支那派遣軍の第23軍が香港攻略に向かう。これに対応すべく中国軍は広東省正面に圧力を加えるだろう。そこでこの中国軍の動きを牽制するため、第11軍は再度長沙正面で攻勢に出るという構想だ」、なるほど。
・『軍司令部は長沙作戦に懐疑的だったが…  まず問題となるのは、この作戦の効果だ。長沙と香港付近の広州とは粤漢線で結ばれているが、直線でも550キロ以上も離れている。長沙に圧力が加えられたからと、すぐさま反応するような敏感さを中国軍が持ち合わせているとは思えない。さらに第4師団がフィリピンに転用されたため、第11軍が投入できる兵力は第一次作戦の歩兵大隊46個基幹から22個基幹にまで減っている。 第11軍司令部でも、再度の長沙進攻には懐疑的な意見が多かった。参謀長の木下勇少将(福井、陸士26期、騎兵)は、もし香港攻略の第23軍が苦戦に陥ったならば、やむなく長沙に行かざるを得ないという程度の認識だった。後方担当の参謀副長だった二見秋三郎少将(神奈川、陸士28期、歩兵、航空転科)は、補給幹線を維持できるのは汨水までという姿勢を崩さなかった。作戦参謀の島村矩康中佐(高知、陸士36期、歩兵)にいたっては、ピストン作戦そのものに批判的だった』、「第4師団がフィリピンに転用されたため、第11軍が投入できる兵力は第一次作戦の歩兵大隊46個基幹から22個基幹にまで減っている。 第11軍司令部でも、再度の長沙進攻には懐疑的な意見が多かった。参謀長の木下勇少将・・・は、もし香港攻略の第23軍が苦戦に陥ったならば、やむなく長沙に行かざるを得ないという程度の認識だった。後方担当の参謀副長だった二見秋三郎少将・・・は、補給幹線を維持できるのは汨水までという姿勢を崩さなかった。作戦参謀の島村矩康中佐・・・にいたっては、ピストン作戦そのものに批判的だった」、なるほど。
・『「恥ずかしさ」が軍事的合理性を押し退けた  こうして長沙への再進攻はむずかしくなったが、阿南軍司令官は諦めなかった。ここで断念すれば恥ずかしい限りという意識が働いていたのだろう。加えて第3師団長の豊嶋房太郎も積極的だった。 この2人の関係だが、阿南が陸軍次官のときに豊嶋は憲兵司令官で直属の部下という形だった。そして豊嶋が第3師団長に転出すると、追いかける形で阿南が第11軍司令官となった。中央官衙で上司と部下、出征してからは軍司令官と師団長という関係は、そうあることではない。 豊嶋は第3師団長を昭和15年9月から務めているから、そろそろ転属の時期だ。本人としても花道を飾りたいという思いがあっただろうし、上官の阿南としても飾ってやりたいという気持ちになっても不思議ではない。また、第3師団は昭和12年8月以来、長らく中国戦線にあったから内地に帰還するか、ほかの戦線に転用される可能性が高まっていた。これまた大陸戦線の最後に快勝させて送り出してやりたいという気持ちにもなる。このような人情論が出てくると、軍事的な合理性が引っ込むことになりかねない。 友軍のための「徳義の作戦」という話が称賛の声とともに広まってしまった以上、第11軍としてもなにかしなければ格好がつかない。また、太平洋戦争が開戦となって香港攻略戦が始まると、第11軍正面の中国軍が動きだして南下しつつあることが偵知され、これを牽制することになった。具体的には兵力や補給の問題から長沙までは行かないが、屈原(楚の詩人)が入水したことで知られる汨水の南岸まで進出して中国軍を打撃することと決められた。徳義の作戦を屈原で知られる汨水一帯で展開するとなると、ヒロイズムに酔い出すのが当時の日本人だ』、「兵力や補給の問題から長沙までは行かないが、屈原(楚の詩人)が入水したことで知られる汨水の南岸まで進出して中国軍を打撃することと決められた。徳義の作戦を屈原で知られる汨水一帯で展開するとなると、ヒロイズムに酔い出すのが当時の日本人だ」、なるほど。
・『軍総司令部には一言もなく独断で作戦を決行  第二次長沙作戦に発展する「さ号」作戦は、香港陥落の前日の昭和16年12月24日に始まった。豊嶋は留守近衛師団長(出征した師団のあとを管理する部隊長)への異動内示を受け取っていたが、これを握り潰して第一線に立った。このときすでに豊嶋は長沙に突進する決心を固めており、阿南との暗黙の合意もあったと見てよいだろう。 作戦は順調に進展し、第11軍主力は12月29日までに汨水の南岸に渡河していた。そしてその日の夕刻、中国軍が長沙に向けて後退中と航空偵察で知った阿南軍司令官は、即刻、長沙への追撃を決心した。支那派遣軍総司令部には一言もなく、阿南のまったくの独断だったという。歩兵大隊22個基幹という戦力で長沙まで押しだせるのかという問題はさておき、そもそも補給幹線の準備は岳州から汨水までであり、汨水から長沙までの70キロには補給の準備がない。 昭和17年1月1日から3日にかけて、第3師団と第6師団は長沙市街に取り付いた。ところが中国軍は長沙死守の構えを見せた。そのため軍旗を集めて保管していた第3師団の指揮所までが戦闘に巻き込まれ、豊嶋師団長自らが旗護中隊長を務めるという難戦に追い込まれた。これでは長沙の完全占領など無理と判断され、1月3日から北上、全軍反転となった』、「中国軍は長沙死守の構えを見せた。そのため軍旗を集めて保管していた第3師団の指揮所までが戦闘に巻き込まれ、豊嶋師団長自らが旗護中隊長を務めるという難戦に追い込まれた。これでは長沙の完全占領など無理と判断され、1月3日から北上、全軍反転となった」、なるほど。
・『1591人の命が不合理な判断で奪われた  第二次長沙作戦の本番は、実はそれからだった。中国軍は退却する日本軍の縦隊を両側から叩き上げた。これを中国では「天炉戦法」という。こちらに十分な火力があれば対応できるのだが、日本軍の第一線に弾薬が補給されたのは1月11日が最初で、それまでは一切補給がなかったというから、天炉戦法の前に苦戦するのも無理はない。その結果、第11軍は戦死1591人、戦傷4412人という大損害を被った(図表1参照)。 「長沙を完全には占領できなかった」「占拠5日で逃げ帰った」といった噂話をまともに受け止めて、これは耐えがたい恥辱、雪辱するとなって強行されたのが第二次長沙作戦であり、その結果がこの大損害だった。高い地位にある者に過剰な恥の意識があると、合理的な判断が阻害され、悲劇が生まれることをこの第二次長沙作戦は物語っている』、「高い地位にある者に過剰な恥の意識があると、合理的な判断が阻害され、悲劇が生まれる」、日本軍は全くお粗末だ。

第二に、9月5日付け文春オンライン「731部隊、朝鮮人虐殺…不都合な歴史を「なかったことにしたい人たち」に感じた“怖さ”」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/65538
・『あったことを無かったことにしたい人たちがいる。そんな怖さを感じた記事がこの夏にいくつかありました。 まずは「731部隊」についての企画記事を紹介します。信濃毎日新聞の「戦後78年 731部隊の記憶」です(8月11日~17日)。 第1回の記事は『県内元少年隊員2人にネット上で中傷の声 命懸けの証言「嘘」呼ばわり』。 戦時中、満州で細菌兵器開発や人体実験などの残虐行為を実行した731部隊について元隊員が命懸けで証言したら、ネットで「このジジイ、嘘ついてやがる。か、実在しない人物だな」などの誹謗中傷が少なくなかったという』、さすがネット右翼は動きが早いようだ。
・『国の姿勢に「まだ隠そうとするのか」と疑問  731部隊の「少年隊」に入隊した清水英男さん(93)は、人体実験で犠牲になった捕虜や、故郷から遠く離れた地で亡くなった仲間のために「命を懸けて証言している」と語る。 同じく元隊員の須永鬼久太さん(95)は部隊の撤退時に上官から「公職に就かない」「部隊について口外しない」「隊員同士連絡を取らない」と3つの禁止命令を受けた。須永さんは証言が積み重ねられているにも関わらず、いまだに部隊の活動実態を認めようとしない国の姿勢に「まだ隠そうとするのか」と疑問を感じている。 そんななか、元隊員(清水さん)の体験談は昨年5月の飯田市平和祈念館のオープン時に展示が見送られた。その理由は「さまざまな意見がある」というものだった。 《「さまざまな意見」とは、細菌戦を示す資料は「現時点で確認されていない」とした2003年の小泉純一郎首相(当時)の国会答弁や、人体実験などの証言が「子どもたちには生々しすぎる」といった指摘を指す。》(8月16日) 「さまざまな意見」というが、清水さんは「みんなが本当のことを話してくれていたら、私の証言の展示が見送られることはなかったと思います」と述べる。)』、「部隊の撤退時に上官から「公職に就かない」「部隊について口外しない」「隊員同士連絡を取らない」と3つの禁止命令を受けた」、初めて知ったが、記録が殆ど残ってないのも頷ける。
・『「知らない」ままを望む人もいる  取材を終えた記者は、部隊による残虐行為に対する元幹部たちの反省なき態度を感じたと書いている(8月17日)。 そして、 《部隊の実態について証言できる関係者が亡くなり、記録は残されず、部隊の存在そのものが忘れ去られる――。敗戦時に残虐行為の証拠を徹底的に消し去り、戦後も口を閉ざし続けた部隊の元幹部が待ち望んでいたのは、まさにそうした社会だったのだろう。》』、「敗戦時に残虐行為の証拠を徹底的に消し去り、戦後も口を閉ざし続けた部隊の元幹部が待ち望んでいたのは、まさにそうした社会だったのだろう」、腹立たしいが実現しそうだ。
・『2017年に都議会で起きたこと  では、追悼文を送付しなくなった2017年に何が起きたのか? 3月の都議会でのある自民党都議の質問がきっかけだった。『トリック「朝鮮人虐殺」をなかったことにしたい人たち』(加藤直樹 著)という本によるとこの自民党都議は、 《私は、小池知事にぜひ目を通してほしい本があります。ノンフィクション作家の工藤美代子さんの『関東大震災「朝鮮人虐殺」の真実』であります》 と語ったという。実は『トリック「朝鮮人虐殺」をなかったことにしたい人たち』では、工藤美代子・加藤康男夫妻が著した虐殺否定本を取り上げ、どのように間違っているかを検証し、仕掛けられた“トリック”の数々を明らかにしている。しかしネット上で広まる「虐殺は無かった」論は、工藤美代子氏らの言説を鵜呑みにしたものが多いのだ』、「ネット上で広まる「虐殺は無かった」論は、工藤美代子氏らの言説を鵜呑みにしたものが多いのだ」、歴史を否定する根拠としては、信頼性は低そうだ。
・『「さまざまな説がある」と言うが…  先述した「731部隊」の記事でもそうだったが、公的な人間による「さまざまな説がある」という言葉はあたかも両論併記のように聞こえるが、それは事実から目をそらすことにつながる。しかし先週こんなニュースが。 『関東大震災の朝鮮人虐殺、松野官房長官「事実関係把握する記録見当たらない」』(読売新聞オンライン8月31日) 松野官房長官は30日の記者会見で、デマによって起きた朝鮮人虐殺について「政府として調査した限り、事実関係を把握することのできる記録が見当たらない」と述べた。新たに事実関係を調査する考えはあるかとの問いには否定的な認識を示した。 31日の会見では、過去に政府の会議が報告書で朝鮮人虐殺を認定していることについて「(報告書は)有識者が執筆したものであり、政府の見解を示したものではない」と述べた。 これらは「虐殺はなかった」論を擁護しているとは言わないまでも、野放しに加担してしまわないかという危惧を感じる。むしろ率先しておこなうべきは検証と反省ではないか? 過去の日本人が巨悪で現在の私たちは大丈夫というわけではないからだ。同じ人間だからである。情報不足に不安と興奮、それに偏見と無知が加われば時代は関係ない』、「公的な人間による「さまざまな説がある」という言葉はあたかも両論併記のように聞こえるが、それは事実から目をそらすことにつながる」、「松野官房長官は・・・デマによって起きた朝鮮人虐殺について・・・過去に政府の会議が報告書で朝鮮人虐殺を認定していることについて「(報告書は)有識者が執筆したものであり、政府の見解を示したものではない」、苦しい言い訳だ。「むしろ率先しておこなうべきは検証と反省ではないか?」、その通りだ。
・『差別意識が生んだ悲劇  たとえばこの記事を見ていただきたい。 『記者の目 関東大震災と朝鮮人虐殺 差別意識を克服できたか=島袋太輔(東京社会部)』(毎日新聞 9月1日)  この記事では沖縄出身の男性ら3人が虐殺された「検見川事件」についても書かれている。沖縄出身の男性が殺された理由について「ウチナーンチュ(沖縄の人)はなまりがあるから、朝鮮人と思い込まれたのでは」と研究者は推測する。残る2人は秋田、三重両県の出身で2人もなまりを理由に殺されたとみる。震災当時に上京していた沖縄出身の歴史学者は「朝鮮人だろう」「言葉が少し違う」と詰問されるなどしたという。 沖縄出身の島袋記者は、《朝鮮人だから武装蜂起をしようとしている、知らない言葉を使うから、発音が滑らかでないから朝鮮人に違いない――。こんな思い込みは、どれも差別意識の産物に他ならない。》と書く』、「「検見川事件」についても書かれている。沖縄出身の男性が殺された理由について「ウチナーンチュ(沖縄の人)はなまりがあるから、朝鮮人と思い込まれたのでは」と研究者は推測する。残る2人は秋田、三重両県の出身で2人もなまりを理由に殺されたとみる。震災当時に上京していた沖縄出身の歴史学者は「朝鮮人だろう」「言葉が少し違う」と詰問されるなどしたという」、朝鮮人以外に日本人も虐殺されたとは初めて知った。
・『「無関心が行き着く先は差別だ」  昨年にはこんな出来事があった。 『ひろゆきさん「沖縄の人って文法通りしゃべれない」 配信動画の発言、また物議』(琉球新報10月12日) 『ひろゆき氏「沖縄の人って文法通りしゃべれない」 県民の“日本語”めぐり発言』(沖縄タイムス10月12日) 《辺野古新基地建設に対する抗議行動をやゆしているインターネット掲示板「2ちゃんねる」開設者のひろゆき(西村博之)氏が、自らのユーチューブ配信で「沖縄の人って文法通りしゃべれない」「きれいな日本語にならない人の方が多い」などとヘイトスピーチをしていたことが分かった。沖縄キリスト教学院大学の新垣誠教授(国際人権論)は「非常に危険だ。日本軍は『標準語』ではない沖縄の言葉を話す住民を虐殺した」と批判した。》(沖縄タイムス、前掲) 100年前は過去ではない。「差別意識がうかがえる出来事は今も散見される」「無関心が行き着く先は差別だ。教訓を学ばないから差別は繰り返されるのではないか」(毎日新聞、前掲)という言葉を考えたい』、「ひろゆき(西村博之)氏が、自らのユーチューブ配信で「沖縄の人って文法通りしゃべれない」「きれいな日本語にならない人の方が多い」などとヘイトスピーチをしていた」、飛んでもない話だ。「ひろゆき」には完全に幻滅した。

第三に、9月23日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したロンドン・スクール・オブ・エコノミクス人類学教授のデヴィッド・グレーバー氏とロンドン大学考古学研究所比較考古学教授・ニューヨーク大学客員教授のデヴィッド・ウェングロウ氏による「「クソどうでもいい仕事」著者の遺作、人類史の定説を覆す“5500円の本”の中身とは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/329362
・『17世紀イギリスの哲学者ホッブズは言った。国家や法律のない自然状態における人間は、「万人の万人に対する戦い」から逃れようと、国家を作ったと。18世紀フランスの啓蒙思想家ルソーは言う。自然状態の人間は平和であり闘争がなかったが、私有財産を持ち始めることで不平等が生まれ、強者が弱者を抑圧するルールとしての法律ができたと。いま広く流布されている人類史はほとんどが彼らの著作の延長上にあるものだが、人類学者と考古学者による世界的な大ベストセラーによれば、そうした議論は科学的に間違いだという。では真の人類史とは?本稿は、デヴィッド・グレーバー、デヴィッド・ウェングロウ『万物の黎明 人類史を根本からくつがえす』(光文社)の一部を抜粋・編集したものです』、興味深そうだ。
・『私たちはいったい何者なのか? ほとんどが闇に埋もれた人類史  いうまでもなく、「ビッグ・ヒストリー」は、ここ最近の売れ線である。ハラリ(※編集部注、『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』の著者)、ジャレド・ダイアモンド(同、『銃・病原菌・鉄』)、スティーヴン・ピンカー(同、『暴力の人類史』)などなど。かれらの本はどれも専門家の関心を超え、国際的ベストセラーとなって、世界中の書店に並んでいる。これはなにを意味しているのだろう? おそらく、だれもがじぶんたちの生きている現在を世界史の転換点、ひょっとすると世界史(人類史)のトータルな消滅をすら予感しているといったような感触がひとつ。それにくわえて、DNA解析などの諸技術の急速な発展による、考古学/人類学領域の新発見の続出がひとつ。どうも、わたしたち人類の歴史は大きく書き換えられているようだ。 それはだれもがニュースに接していれば薄々感じるところだろう。いったいそれがわたしたちの過去をどう変貌させているのか?わたしたちはいったい、なにものなのか、本当はどこからきたのか、そしていったいどこにむかっているのか? 人類史のほとんどは、手の施しようもなく、闇に埋もれてしまっている。なるほど、われらがホモ・サピエンスは、すくなくとも20万年前から存在している。だが、いったいその20万年のあいだになにが起きていたのか、わたしたちにわかっているのは、ごくごくわずかの期間にすぎないのだ。 たとえば、スペイン北部のアルタミラ洞窟では、紀元前2万5000年から前1万5000年のあいだ、すくなくとも1万年以上かけて絵画や彫刻が制作されている。おそらく、この時代にも、たくさんのドラマティックな出来事が起きたはずだ。ところが、それがどんな出来事だったのか、わたしたちはほとんどなにも知らないのである。 もし人類史にまつわる大きな問いが浮上してくるとしたら、ふつう、人がこう自問をするようなときである。どうして世界はこうも混乱しているのか、どうして人間はかくも傷つけ合うのか、どうして戦争や貪欲、搾取があるのか、どうして他者の痛みに対する徹底した無関心がはびこるのか。わたしたちは太古の昔からそうだったのか、それともどこかの時点でなにかひどくまちがってしまったのか?) 人が先史時代から教訓をえようとするとき、ほとんど例外なく、この種の問いに舞い戻ってくるのだ。 なかでもなじみ深いのは、かつては無垢な状態で暮らしていた人間が、あるとき原罪によって汚染されてしまったという、キリスト教による解答である。人間は、神のごとき存在にならんと欲し、そのために罰を受けた。いまや堕落の状態にありながら、将来の救済を待ち望みながら生きている、といった具合だ。 ジャン=ジャック・ルソーは、1754年に『人間不平等起源論』という著作を執筆したが、まさにこの著作のアップデート版の数々こそ、いまこのストーリーを普及させている主役である。 むかしむかし、わたしたちが狩猟採集民だった頃。人類は、大人になっても子どものように無邪気な心をもち、小さな集団で生活していました。この小集団は、平等でした。なぜなら、まさにその集団がとても小規模だったからです。 この幸福なありさまに終止符が打たれたのは、「農業革命」が起き、都市が出現したあとのことでした。これが「文明」と「国家」の先触れでした。「文明」や「国家」のもとで、文字による文献、科学、哲学があらわれました。 と同時に、人間の生活におけるほとんどすべての悪があらわれました。つまり、家父長制、常備軍、大量殺戮、人生の大半を書類の作成に捧げるよう命じるいとわしい官僚たちなどなどです、と。 もちろん、これはとても乱暴な単純化ではある。とはいえ、産業心理学者から革命的理論家までのだれもが、「しかし、もちろん人類は、その進化の歴史の大部分を10人か20人の集団で暮らしていた」とか「農業はおそらく人類の最悪のあやまちだった」などといった発言をするたびに、浮上してくる基本的ストーリーが、おおよそこれなのだ』、「わたしたちが狩猟採集民だった頃。人類は、大人になっても子どものように無邪気な心をもち、小さな集団で生活していました。この小集団は、平等でした。なぜなら、まさにその集団がとても小規模だったからです」、「「この幸福なありさまに終止符が打たれたのは、「農業革命」が起き、都市が出現したあとのことでした。これが「文明」と「国家」の先触れでした。「文明」や「国家」のもとで、文字による文献、科学、哲学があらわれました。 と同時に、人間の生活におけるほとんどすべての悪があらわれました。つまり、家父長制、常備軍、大量殺戮、人生の大半を書類の作成に捧げるよう命じるいとわしい官僚たちなどなどです、と」、なるほど。
・『人類は文明によって抑圧されている? その主張は正しいのか?  1651年に公刊されたホッブズの『リヴァイアサン』は、多くの意味で、近代政治理論の基礎となった書物である。人間が利己的生物である以上、初源的自然状態での生活はけっして無垢なものではなく、「孤独でまずしく、つらく残忍でみじかい」もの――基本的には、万人が万人と争い合う戦争状態――であるはずだ。) ホッブズ主義者なら、こう論じるだろう。この悲惨な状態から進歩があったとすれば、それはおよそ、まさにルソーが不満を抱いていた抑圧的機構――すなわち政府、裁判所、官僚機構、警察――のおかげであった、と。 この考え方によれば、人間社会は人間の卑しい本能を集団で抑圧することで成り立っているのであり、多数の人間がおなじ場所で生活しているようなとき、そんな抑圧がいっそう必要になる。それゆえ、現代のホッブズ主義者は、以下のように主張することになろう。 なるほど、人間は進化の歴史のほとんどを小集団というかたちで生存してきた。そしてその小集団は、主に子孫を残すという関心事を共有するおかげで、いっしょにやっていくことができた。 ところが、このような集団も、けっして平等を土台としていたわけではない。ここにはつねに、「ボス男性」(アルファ・オス)であるリーダーが存在していた。ヒエラルキーと支配、そしてシニカルな利己主義が、つねに人間社会の基礎だったのだ。 とはいえ、集団として短期的な本能よりも長期的な利益を優先するほうがじぶんたちの有利になる、もっと正確にいえば、最悪の衝動を経済のような社会的に有用な領域に限定し、それ以外の場所では禁じることを強制する法をつくることが、じぶんたちの有利になると学んできたのだ、云々。 だが、これらの議論は、人類史の一般的な流れを説明するものとしては、 1、端的に真実ではない。 2、不吉なる政治的含意をもっている。 3、過去を必要以上に退屈なものにしている。 考古学、人類学、そしてその他の関連分野で蓄積された証拠(エビデンス)は、おおよそ過去3万年のあいだに人類社会がどのように発展してきたかについて、まったくあたらしい切り口から照明を当ててきた。 いま浮上しはじめている世界像がこれまでのものとどう異なっているか、ちょっとだけ紹介してみよう。農耕開始以前の人類社会が平等主義的な小集団にとどまっていなかったことは、いまやあきらかである。 それどころか、農耕開始以前の狩猟採集民の世界は、大胆な社会的実験の世界でもあり、進化論のような貧しい抽象の提示するイメージより、政治形態のカーニヴァル・パレードこそふさわしいといった具合である。) かたや農耕も、それが私有財産の誕生のきっかけをつくったわけでも、不平等への不可逆的なステップを画したわけでもなかった。実際、最初の農耕共同体の多くは、身分やヒエラルキーから相対的に解放されていたのだ。 また、世界最古の都市の多くが、確固たる階級的区分を有していたどころか、強固なまでの平等主義にもとづいて組織されていた。権威主義的な統治者や野心的な戦士=政治家、あるいはボス然とした役人すらも必要としていなかったのだ。 このような論点にかかわる情報が、世界のあらゆる場所から寄せられている。その結果、世界中の研究者が民族誌や歴史資料をあたらしい見地から検証するようになった。まったく異なる世界史をつくりだすことのできる断片がいま、積み重なっているのだ。 農耕の発明がまず私有財産をもたらし、財産がそれを保護するための市民政府の必要をもたらすことを説明したうえで、ルソーはつぎのように述べている。 「すべての人は、じぶんの自由を確保するつもりで、みずからを縛る鎖に飛びついたのである。かれらは政治制度の利点を理解するだけの理性はそなえていたが、それがどんな危険をもたらすかを予測するだけの経験を積んではいなかった」。 ルソーの想像した自然状態は、なによりもこれを説明するための方法として設定されている。たしかに、自然状態という概念を発明したのはかれではない。 修辞の手段としての自然状態は、すでに1世紀前からヨーロッパの哲学で使用されていた。自然法論者が広く使っていたもので、推測の足場を与えることで、政府の起源に関心をもつすべての思想家(ロック、グロティウスなど)に、神のごとくふるまうことを可能にした。こうして、かれらは人類の初源の状態についておのおの独自の考えを開陳することになるのである』、「修辞の手段としての自然状態は、すでに1世紀前からヨーロッパの哲学で使用されていた。自然法論者が広く使っていたもので、推測の足場を与えることで、政府の起源に関心をもつすべての思想家(ロック、グロティウスなど)に、神のごとくふるまうことを可能にした。こうして、かれらは人類の初源の状態についておのおの独自の考えを開陳することになるのである」、なるほど。
・『ホッブズの「自然状態」はデタラメ 人間は弱者へのケアができる生き物  ホッブズも『リヴァイアサン』で、ほぼおなじことをやっている。人間社会の原初的な状態は、必然的に「万人の万人に対する戦争」Bellum omnium contra omnes である、としているのがそうだ。それを克服できるのは、絶対的な主権権力のみである。ホッブズは、そのような原初的状態でだれもが生活していた時代が実在したとはいっていない。)  にもかかわらず、現代の著述家たちの多数が『リヴァイアサン』を扱うやりかたは、ルソーの『不平等起源論』が扱われるやりかたとおなじである。つまり、あたかも『リヴァイアサン』が進化論的歴史研究の基礎を築いたかのように扱っているのである。そして、両者の出発点はまったく異なっているのだが、その結果はかなり似通ったものになる。 心理学者のスティーヴン・ピンカーはこう述べている。「前国家的状態にある人びとの暴力という点では、ホッブズとルソーの言うことはでたらめだ。2人とも文明以前の人間の生活については何ひとつ知らないからである」。 この点では、ピンカーはまったくただしい。しかしながら、かれはただちに、読者につぎのようにもとめる。1651年のホッブズはともかくもただしい推論をおこない、「今日のどのような分析にもひけをとらない」人類史における暴力とその原因の分析にいたった、と。しかし、これからみるように、そんなことはまったくない。 考古学者がロミート2(Romito2)と呼んでいる(発見されたカラブリアの岩屋の名にちなんで)遺体は、1万年前に埋葬された男性のものである。この遺体は、重度の低身長症である希少な遺伝子疾患(先端骨形成不全症)を有しており、そのため、生前、共同体内では変則的な存在とみなされていただろうし、かつ、かれらの生存に必要な高地での狩猟に参加することもできなかっただろう。 ところが、かれの病理についての研究は、概して健康状態や栄養状態が悪かったにもかかわらず、おなじ狩猟採集民の共同体は、この人物を乳児期から成人期まで苦心して支え、他の人間とおなじように肉を分け与え、最終的には丁寧に保護して埋葬していたことを示している。 ロミート2は、孤立した特殊事例ではない。考古学者が旧石器時代の狩猟採集民の埋葬をバランスよく検証すると、健康上の障害が高い頻度で発見されるいっぽうで、死の直前まで(なかにはきわめて豪華な埋葬を示すものもあり、その意味では死後も)、おどろくほど高いレベルのケアがおこなわれていたことがわかるのである。 古代の埋葬された遺体からえられた健康指標の統計的な頻度にもとづいて、人間社会が原初的にどのような形態をとっていたのかについて一般的な結論をくだすとすれば、ホッブズ(やピンカー)のそれとは真逆のものになるだろう。 つまり、原初にあって、人間の暮らしが、いとわしく、残忍で、短いものである必然性は端的に存在しない。それよりも人間という種は育成やケアをする生物種であった、と、このような結論になるだろう』、「心理学者のスティーヴン・ピンカーはこう述べている。「前国家的状態にある人びとの暴力という点では、ホッブズとルソーの言うことはでたらめだ。2人とも文明以前の人間の生活については何ひとつ知らないからである」、なるほど。「考古学者が旧石器時代の狩猟採集民の埋葬をバランスよく検証すると、健康上の障害が高い頻度で発見されるいっぽうで、死の直前まで(なかにはきわめて豪華な埋葬を示すものもあり、その意味では死後も)、おどろくほど高いレベルのケアがおこなわれていたことがわかるのである。 古代の埋葬された遺体からえられた健康指標の統計的な頻度にもとづいて、人間社会が原初的にどのような形態をとっていたのかについて一般的な結論をくだすとすれば、ホッブズ(やピンカー)のそれとは真逆のものになるだろう。 つまり、原初にあって、人間の暮らしが、いとわしく、残忍で、短いものである必然性は端的に存在しない。それよりも人間という種は育成やケアをする生物種であった、と、このような結論になるだろう」、「人間という種は育成やケアをする生物種であった」との結論には、納得させられると共に、安心させられた。
タグ:つまり、原初にあって、人間の暮らしが、いとわしく、残忍で、短いものである必然性は端的に存在しない。それよりも人間という種は育成やケアをする生物種であった、と、このような結論になるだろう」、「人間という種は育成やケアをする生物種であった」との結論には、納得させられると共に、安心させられた。 「考古学者が旧石器時代の狩猟採集民の埋葬をバランスよく検証すると、健康上の障害が高い頻度で発見されるいっぽうで、死の直前まで(なかにはきわめて豪華な埋葬を示すものもあり、その意味では死後も)、おどろくほど高いレベルのケアがおこなわれていたことがわかるのである。 古代の埋葬された遺体からえられた健康指標の統計的な頻度にもとづいて、人間社会が原初的にどのような形態をとっていたのかについて一般的な結論をくだすとすれば、ホッブズ(やピンカー)のそれとは真逆のものになるだろう。 「心理学者のスティーヴン・ピンカーはこう述べている。「前国家的状態にある人びとの暴力という点では、ホッブズとルソーの言うことはでたらめだ。2人とも文明以前の人間の生活については何ひとつ知らないからである」、なるほど。 「公的な人間による「さまざまな説がある」という言葉はあたかも両論併記のように聞こえるが、それは事実から目をそらすことにつながる」、「松野官房長官は・・・デマによって起きた朝鮮人虐殺について・・・過去に政府の会議が報告書で朝鮮人虐殺を認定していることについて「(報告書は)有識者が執筆したものであり、政府の見解を示したものではない」、苦しい言い訳だ。 「ネット上で広まる「虐殺は無かった」論は、工藤美代子氏らの言説を鵜呑みにしたものが多いのだ」、歴史を否定する根拠としては、信頼性は低そうだ。 「修辞の手段としての自然状態は、すでに1世紀前からヨーロッパの哲学で使用されていた。自然法論者が広く使っていたもので、推測の足場を与えることで、政府の起源に関心をもつすべての思想家(ロック、グロティウスなど)に、神のごとくふるまうことを可能にした。こうして、かれらは人類の初源の状態についておのおの独自の考えを開陳することになるのである」、なるほど。 ダイヤモンド・オンライン す」、「「この幸福なありさまに終止符が打たれたのは、「農業革命」が起き、都市が出現したあとのことでした。これが「文明」と「国家」の先触れでした。「文明」や「国家」のもとで、文字による文献、科学、哲学があらわれました。 と同時に、人間の生活におけるほとんどすべての悪があらわれました。つまり、家父長制、常備軍、大量殺戮、人生の大半を書類の作成に捧げるよう命じるいとわしい官僚たちなどなどです、と」、なるほど。 「ひろゆき(西村博之)氏が、自らのユーチューブ配信で「沖縄の人って文法通りしゃべれない」「きれいな日本語にならない人の方が多い」などとヘイトスピーチをしていた」、飛んでもない話だ。「ひろゆき」には完全に幻滅した。 「「検見川事件」についても書かれている。沖縄出身の男性が殺された理由について「ウチナーンチュ(沖縄の人)はなまりがあるから、朝鮮人と思い込まれたのでは」と研究者は推測する。残る2人は秋田、三重両県の出身で2人もなまりを理由に殺されたとみる。震災当時に上京していた沖縄出身の歴史学者は「朝鮮人だろう」「言葉が少し違う」と詰問されるなどしたという」、朝鮮人以外に日本人も虐殺されたとは初めて知った。 デヴィッド・グレーバー氏 デヴィッド・ウェングロウ氏による「「クソどうでもいい仕事」著者の遺作、人類史の定説を覆す“5500円の本”の中身とは?」 「文明」や「国家」のもとで、文字による文献、科学、哲学があらわれました。 と同時に、人間の生活におけるほとんどすべての悪があらわれました。つまり、家父長制、常備軍、大量殺戮、人生の大半を書類の作成に捧げるよう命じるいとわしい官僚たちなどなどです、と。 もちろん、これはとても乱暴な単純化ではある。とはいえ、産業心理学者から革命的理論家までのだれもが、「しかし、もちろん人類は、その進化の歴史の大部分を10人か20人の集団で暮らしていた」とか「農業はおそらく人類の最悪のあやまちだった」などといった発言をするたびに、浮上してくる基本的ストーリーが、おおよそこれなのだ』、「わたしたちが狩猟採集民だった頃。人類は、大人になっても子どものように無邪気な心をもち、小さな集団で生活していました。この小集団は、平等でした。なぜなら、まさにその集団がとても小規模だったからで デヴィッド・グレーバー、デヴィッド・ウェングロウ『万物の黎明 人類史を根本からくつがえす』(光文社) 藤井非三四さんの著書『太平洋戦争史に学ぶ日本人の戦い方』(集英社新書) 文春オンライン「731部隊、朝鮮人虐殺…不都合な歴史を「なかったことにしたい人たち」に感じた“怖さ”」 藤井 非三四氏による「兵士1591人が「エリートのプライド」の犠牲になった…日本軍の「謹厳実直な武人」が無謀な作戦を立てたワケ 日本の破滅を招いた「恥の文化」」 PRESIDENT ONLINE 「初志貫徹、首尾一貫しなければ恥ずかしく面目ないと凝り固まり、方針転換を渋りに渋って万事手遅れとなる場合が多い・・・そこに虚栄心が働いているからだ。自分がいかに意志堅固で、なにかをやり遂げる強い決意があったかを知ってもらい、できれば史書に名前を残してもらいたい、という政治家や高級指揮官の心根が見え隠れする」、なるほど。 軍は再度長沙正面で攻勢に出るという構想だ」、なるほど。 「新たに進攻した地域を確保するだけの戦力がないため、攻め込んでは後退するピストン作戦にならざるを得ない。これを見た中国国民政府は、「またもや日本軍を撃退」と宣伝にこれ努め、日本側を苛立たせていた」、「ピストン作戦」である以上、避けられない事態だが、無駄な「作戦」のように思われる。 「すぐに支那派遣軍の内で妙な話が交わされるようになった。中国が言うように長沙市街の一部には中国軍が残っており、第11軍が主張するように完全占領ではなかったらしいという噂だ。 侍従武官も務め、謹厳実直な武人として知られる阿南軍司令官にとって、これは面目の問題となり、この恥辱を雪がなければと思い詰めたようだ」、なるほど。 「支那派遣軍は警備師団、治安師団、独立混成旅団からなる治安軍となり、ピストン作戦すらも行なう戦力がなくなる。そこで第3師団と第6師団が残っているうちに、再び長沙作戦を行なわなければならないという話になった。 しかし、ひとたび南方作戦が始まれば、再度の長沙作戦など大本営はもちろん支那派遣軍も難色を示す。そこで阿南軍司令官が唱え出したのが「徳義の作戦」だった。 開戦劈頭、支那派遣軍の第23軍が香港攻略に向かう。これに対応すべく中国軍は広東省正面に圧力を加えるだろう。そこでこの中国軍の動きを牽制するため、第11 「第4師団がフィリピンに転用されたため、第11軍が投入できる兵力は第一次作戦の歩兵大隊46個基幹から22個基幹にまで減っている。 第11軍司令部でも、再度の長沙進攻には懐疑的な意見が多かった。参謀長の木下勇少将・・・は、もし香港攻略の第23軍が苦戦に陥ったならば、やむなく長沙に行かざるを得ないという程度の認識だった。後方担当の参謀副長だった二見秋三郎少将・・・は、補給幹線を維持できるのは汨水までという姿勢を崩さなかった。作戦参謀の島村矩康中佐・・・にいたっては、ピストン作戦そのものに批判的だった」、なるほ ど。 「兵力や補給の問題から長沙までは行かないが、屈原(楚の詩人)が入水したことで知られる汨水の南岸まで進出して中国軍を打撃することと決められた。徳義の作戦を屈原で知られる汨水一帯で展開するとなると、ヒロイズムに酔い出すのが当時の日本人だ」、なるほど。 「中国軍は長沙死守の構えを見せた。そのため軍旗を集めて保管していた第3師団の指揮所までが戦闘に巻き込まれ、豊嶋師団長自らが旗護中隊長を務めるという難戦に追い込まれた。これでは長沙の完全占領など無理と判断され、1月3日から北上、全軍反転となった」、なるほど。 「高い地位にある者に過剰な恥の意識があると、合理的な判断が阻害され、悲劇が生まれる」、日本軍は全くお粗末だ。 さすがネット右翼は動きが早いようだ。 「敗戦時に残虐行為の証拠を徹底的に消し去り、戦後も口を閉ざし続けた部隊の元幹部が待ち望んでいたのは、まさにそうした社会だったのだろう」、腹立たしいが実現しそうだ。 「部隊の撤退時に上官から「公職に就かない」「部隊について口外しない」「隊員同士連絡を取らない」と3つの禁止命令を受けた」、初めて知ったが、記録が殆ど残ってないのも頷ける。 「むしろ率先しておこなうべきは検証と反省ではないか?」、その通りだ。
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大学(その13)(25歳でフリーターからプロテニスへ…全国模試5位、開成ー東大卒の“天才“が歩んだ壮絶な学生時代「ガリ勉の極致みたいな世界だった」テニス選手・市川誠一郎さんインタビュー#1、「俺、人生間違ったわ」「マジで地獄を見た」貯金0でバイト生活…東大卒のエリート(39)はなぜいきなりテニスを始めたのか テニス選手・市川誠一郎さんインタビュー#2、「開成・東大の同期は港区のタワマンに…」年収200万円、未経験から世界ランクを獲得した男性(39)が送ったテニス一筋の14年間 テニス選手・市川誠一郎さんイ [社会]

大学については、本年8月13日に取上げた。今日は、(その13)(25歳でフリーターからプロテニスへ…全国模試5位、開成ー東大卒の“天才“が歩んだ壮絶な学生時代「ガリ勉の極致みたいな世界だった」テニス選手・市川誠一郎さんインタビュー#1、「俺、人生間違ったわ」「マジで地獄を見た」貯金0でバイト生活…東大卒のエリート(39)はなぜいきなりテニスを始めたのか テニス選手・市川誠一郎さんインタビュー#2、「開成・東大の同期は港区のタワマンに…」年収200万円、未経験から世界ランクを獲得した男性(39)が送ったテニス一筋の14年間 テニス選手・市川誠一郎さんインタビュー#3)である。つまり、大学そのものではなく、開成ー東大と典型的なエリートコースに乗っていながら、卒業後、趣味の音楽、さらにはテニスへと進路を選んだ人間を紹介することで、大学の意味を改めて考えさせるエピソードを取上げた。

先ずは、9月9日付け文春オンライン「25歳でフリーターからプロテニスへ…全国模試5位、開成ー東大卒の“天才“が歩んだ壮絶な学生時代「ガリ勉の極致みたいな世界だった」テニス選手・市川誠一郎さんインタビュー#1」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/65282
・『開成中学・高校から東大に進んで現代音楽家を目指すも、25歳で経験のなかったテニスの世界へ飛び込み、ヨーロッパを拠点に活動するテニス選手・市川誠一郎(39)。 今年5月にダブルス世界ランキングで2090位になった彼に、勉強や中学受験をゲームのように捉えていた少年期、音楽に魅せられた開成時代、あらゆる音楽を探求すべく世界を回った日々などについて、話を聞いた。(全3回の1回目/続きを読む)(Qは聞き手の質問)』、興味深そうだ。
・『子供の教育に目を向ける余裕もなかった両親  Q:開成中学、開成高校、東大、テニスとなると、どうしても富裕層のイメージがあるのですが。 市川誠一郎(以下、市川) まぁ、そう思われますよね。実家は町のスーパー的な商店をやっていて、僕が中学生ぐらいまではそこそこうまくいっていたけど、全国チェーンの大きなスーパーの勢力がどんどん拡大してきて。それでうちのスーパーは、どんどん先細りになって他のスーパーに買収されて、父親はそこの社員になったので、ぜんぜんお金持ちではなかったです。 Q:両親は教育熱心だったのですか。 市川 ぜんぜんでしたね。スーパーの経営で忙しかったから、親はほとんど家にいなかったですし、子供の教育に目を向ける余裕もなかったというか。缶チューハイの空き缶とタバコの吸い殻が、キッチンのシンクに山積みになっている風景が当たり前の家だったので。それでも、塾には通わせてもらってました』、「両親は教育熱心だったのですか。 市川 ぜんぜんでしたね。スーパーの経営で忙しかったから、親はほとんど家にいなかったですし、子供の教育に目を向ける余裕もなかったというか・・・塾には通わせてもらってました」、「塾」が刺激になったようだ。
・『順位の競争が激しい日能研に入塾  Q:塾に通ったのは、自分の意志で? 市川 そうです。でも、勉強したいからって理由で塾に通ったんじゃないんです。小学校のとき、鉄ちゃんと呼べるほどじゃないけど、ものすごく電車が好きで。電車に乗って出掛けたいがために、ちょっと遠くの日能研に行かせてほしいと親にせがんだんです。 当時の日能研って、毎週やる全国模試みたいなのがあって。2万人ぐらい受けていたのかな。その順位表から各校の上位50人ぐらいが壁に貼り出されて、席順なんかも点数で決められるんです。だから、座っている場所を見ただけで、その子が何位なのかがわかっちゃう。 さらに全国の上位2000番ぐらいの子は冊子に名前が載って、上位50人になると名前が冊子の表紙にも載って。すっごくシビアな競争社会なんです。多くの人が想像するようなガリ勉の極致みたいな世界だけど、それよりもeスポーツに近しい世界なんです』、「当時の日能研って、毎週やる全国模試みたいなのがあって。2万人ぐらい受けていたのかな。その順位表から各校の上位50人ぐらいが壁に貼り出されて、席順なんかも点数で決められるんです。だから、座っている場所を見ただけで、その子が何位なのかがわかっちゃう。 さらに全国の上位2000番ぐらいの子は冊子に名前が載って、上位50人になると名前が冊子の表紙にも載って。すっごくシビアな競争社会なんです。多くの人が想像するようなガリ勉の極致みたいな世界だけど、それよりもeスポーツに近しい世界なんです」、なるほど。
・『「こいつら、マジでヤベえな」勉強ガチ勢の成績上位者に震える  Q:勉強にゲーム性を感じたと。 市川 シューティングゲームみたいな感覚で、そこに僕はハマったんですよ。スポーツとも近くて、相手と対戦する競技ではないけど、陸上みたいに自分で記録を伸ばしていく感じ。で、日本一の成績を取りたいなって。 そこにのめり込んじゃって。勉強自体がどうかじゃなく、席順を良くしたり、点数を上げていくことにすごく夢中になって。ほとんどの生徒は親に勉強をやらされてるけど、やっぱり上に行くほどガチで勉強していて、マジで強いヤツっているんですよ。 成績上位者の選抜クラスに呼ばれるんですけど、そこに順位表に名前が載っているヤツがいるわけです。すでに順位表で名前も点数も知っているから、顔を見て「こいつが、数学がすげえ〇〇か」とか「国語がすごい〇〇って、こいつか」なんて思って。で、そういう子たちが授業でとんでもない問題を解いているのを見て「こいつら、マジでヤベえな」って震えましたね。思わず「どうやって勉強してるの?」と聞いちゃいましたけどね。 もうどいつもこいつもガチ勢すぎて、もはや選手って感じでしたね』、「勉強にゲーム性を感じたと。 市川 シューティングゲームみたいな感覚で、そこに僕はハマったんですよ。スポーツとも近くて、相手と対戦する競技ではないけど、陸上みたいに自分で記録を伸ばしていく感じ。で、日本一の成績を取りたいなって。 そこにのめり込んじゃって。勉強自体がどうかじゃなく、席順を良くしたり、点数を上げていくことにすごく夢中になって。ほとんどの生徒は親に勉強をやらされてるけど、やっぱり上に行くほどガチで勉強していて、マジで強いヤツっているんですよ。 成績上位者の選抜クラスに呼ばれるんですけど、そこに順位表に名前が載っているヤツがいるわけです。すでに順位表で名前も点数も知っているから、顔を見て「こいつが、数学がすげえ〇〇か」とか「国語がすごい〇〇って、こいつか」なんて思って。で、そういう子たちが授業でとんでもない問題を解いているのを見て「こいつら、マジでヤベえな」って震えましたね。思わず「どうやって勉強してるの?」と聞いちゃいましたけどね。 もうどいつもこいつもガチ勢すぎて、もはや選手って感じでしたね』、できる子どもたちとの競争を「シューティングゲームみたいな感覚で、そこに僕はハマった」、とは本当にいい刺激になったようだ。
・『勉強だけにフォーカスするためにゲーム機やソフトを封印  Q:ガチ勢を前にひるむどころか、より闘志を燃やしてしまったんですね。 市川 そいつらに絶対勝てるように、週間計画表みたいなものを作って「毎日、この時間はこれを勉強する」って細かくスケジュールを立てて。 その子たちよりも多くの勉強量をこなさなきゃって、どんどんエスカレートしていって、ご飯を食べている最中にも勉強をしていました。親には「食べながら勉強なんかするな」とか「早く寝ろ」とか言われてましたけど。 Q:勉強をゲームのように捉えられるぐらいですから、実際のゲームにもハマったのでは。 市川 ゲームは、まぁまぁ好きだったかな。「東京ゲームショウ」でやっていた「ぷよぷよ」の大会に出て勝ったことがありますね。小6の頭までは、塾の友達の家に遊びに行ってゲームしていましたけど、小6の途中で封印しました。 なにかにのめり込むと「これ以外は絶対やっちゃ駄目」みたいなところがあって。勉強だけにフォーカスするために、ゲーム機やソフトもどこかにしまって本当に封印しちゃって。 Q:志望校は、開成一択でしたか。麻布中や武蔵中なども目指していましたか? 市川 日本一の成績を取りたいってところから始まっているので、受験に関しても偏差値が一番高い学校に一番の点数で合格したかったんです。試験日が同じ日に重なっていたら、そのなかで最も偏差値の高い学校を受けるようにして。) 開成、麻布、武蔵の御三家って、当時は同じ日に試験があったと思うんですけど。開成が一番強かったので、開成を受けることに決めたんです。“一番強かった”って発想が、もうおかしいんですけど(笑)。 場所よりも偏差値が重要だったので、親に灘とか栄光も受けたいと言ったけど、住んでいた千葉から遠すぎて却下されました。あと、麻布のほうがちょっと自由な校風なので、親に「こっちのほうが合ってるんじゃないの?」的なことを聞かれた覚えはありますけど、僕は偏差値しか考えてなかったです』、「小6の頭までは、塾の友達の家に遊びに行ってゲームしていましたけど、小6の途中で封印しました。 なにかにのめり込むと「これ以外は絶対やっちゃ駄目」みたいなところがあって。勉強だけにフォーカスするために、ゲーム機やソフトもどこかにしまって本当に封印しちゃって」、目的のためには、「ゲーム機やソフトもどこかにしまって本当に封印」とは、自制心がことのほか強いようだ。
・『開成で全国模試1位~5位勢に会い、中3のなかばまで勉強に燃える  Q:開成のほかに受けた学校って。 市川 1月に試し受験といって、中学受験生はみんなどこかしら受けるんですね。あと、滑り止めもその時期に受けておく。僕は千葉在住だったので、市川学園、東邦、渋幕(渋谷教育学園幕張中学校)かな。 2月1日から都内の学校の試験が始まって、開成、栄光、海城、慶應を受けたかな。とりあえず、開成を含めてすべて受かりましたね。慶應は1次の後に面接があったはずだけど、面接は受けなかったんじゃないかな。 開成に合格したときは、嬉しくて親に抱きついたのを覚えていますね。帰りに、秋葉原でプレイステーションを買ってもらって。まぁ、開成には受かったものの、日本一にはなれなかったですけどね。小6の模試で全国の5位より上には行けなかった。 Q:ひょっとして、その上位5人も開成に。 市川 1番から5番勢に会うわけですよ。「こいつらか……この野郎」と思って、中3のなかばまで勉強に燃えていました』、「開成に合格したときは、嬉しくて親に抱きついたのを覚えていますね。帰りに、秋葉原でプレイステーションを買ってもらって。まぁ、開成には受かったものの、日本一にはなれなかったですけどね。小6の模試で全国の5位より上には行けなかった。 Q:ひょっとして、その上位5人も開成に。 市川 1番から5番勢に会うわけですよ。「こいつらか……この野郎」と思って、中3のなかばまで勉強に燃えていました」、さすが「開成」だ。
・『社会人音楽サークルでバンド活動に打ち込むように  Q:中3のなかばで、なにかあったのですか。 市川 普通、中1や中2あたりで「将来、なにをしたいんだろう」「なんで、こんなことやってるんだろう」とか考えるじゃないですか。僕は精神的に幼くて、それが中3でやってきたんです。「いま頑張ってやってる勉強も、大学受験で終わっちゃうよな」「よく考えたら、べつに勉強が好きじゃないんだよな」とか思い始めて、「なんで好きなことに、このエネルギーを割いてないんだろう。すごい時間の無駄じゃない?」ってところに行き着いて。 そう考えちゃうと、ピタッと勉強するのをやめました。僕は極端で、やりたくないことに対しては1分であろうとも時間を使うのがイヤなんですよ。一応、成績は開成中学のトップ10内に入ってたんですけど。 Q:そのタイミングで勉強を上回るものと出会う?) 市川 音楽ですね。ちょうど、「BUMP OF CHICKEN」とか出てきた頃で、「Hi-STANDARD」とかJ-POPのバンドを聴いて。そのまま開成高校に上がって、そんなに音楽のことを知ってもないのに社会人の音楽サークルに入ってバンドをやりだしました。で、バンド仲間が洋楽を聴いているので、僕も影響されて聴くようになって。 高3になって間もない頃、その社会人サークルのお兄さんたちに「音楽の専門学校に行って、ミュージシャンになろうかなと思って」と話したら、メチャクチャ止められて。「そんないい学校に行ってるなら、大学に進みなよ。大学に行ってからでも、ミュージシャンはなれるから」と言われて。高校生の当時、音楽で生きていける自信が持ちきれなくて、説得されているうちに「じゃあ、受験するか」と』、「僕は極端で、やりたくないことに対しては1分であろうとも時間を使うのがイヤなんですよ。一応、成績は開成中学のトップ10内に入ってたんですけど」、それでも「トップ10内」とは大したものだ。「「BUMP OF CHICKEN」とか出てきた頃で、「Hi-STANDARD」とかJ-POPのバンドを聴いて。そのまま開成高校に上がって、そんなに音楽のことを知ってもないのに社会人の音楽サークルに入ってバンドをやりだしました・・・高校生の当時、音楽で生きていける自信が持ちきれなくて、説得されているうちに「じゃあ、受験するか」と」、なるほど。
・『東大がダメだったら早稲田か慶應に行くつもりだった  Q:すんなりと勉強モードへ切り替えられましたか。 市川 大学まで行っちゃえばいいんだから、高3の1年だけは頑張ろうって思い切ることはできましたね。でも、最初に受けた模試とか偏差値35ぐらいしかなくて。最後の最後までE判定しか出てなくて、ギリギリで受かりましたね。 Q:東大一択で。 市川 滑り止めで、早稲田と慶應を受けてます。とにかく大学に入って音楽をやりたかったので、東大がダメだったら行くつもりでした。連続で早稲田と慶應を受けたけど、ものすごい熱が出ちゃって。東大のほうで追い込みすぎて体調を崩したと思うんですけど、両方とも受かってました。それで心置きなく、東大の受験に臨めましたね。 Q:滑り止めが、早稲田と慶應ですか。 市川 早稲田や慶應は寝ていても受かるレベルじゃないと、東大には受からないです。難易度的に、そのぐらい違います』、「早稲田や慶應は寝ていても受かるレベルじゃないと、東大には受からないです。難易度的に、そのぐらい違います」、なるほど。
・『東大入学後は音楽漬けの日々  Q:東大は、理1ですか? 市川 理2で入りました。理系の生物系です。物理はあんまり好きじゃなかったので興味を持てず、おのずと生物系を選ぶことになりましたね。 中学受験のときみたいに、eスポーツ的な感覚で理3を目指してみたい気持ちもあったけれど、僕は音楽をやってる間に成績も落ちて、そんな余裕はありませんでした。 理3はどんなに頭がよくても落ちることがありえるので。開成のトップ10にいたヤツでも、試験でちょっとミスったら落ちちゃうぐらいですから、そんなリスクは取れなかった。早く大学に入って音楽をしたかったので、浪人なんかしてる場合じゃなかったです。 Q:東大入学後は、音楽漬けで。 市川 ほとんど勉強してないですし、ぜんぜん成績もよくなかったです。というか、自分の成績を見てもないし、卒業もしてもしなくてもいいみたいな感じでした。) 入学してからは古い洋楽を遡って聴いて、ロックに関しては最終的にイギリスのロックが好きになりましたね。東大はジャズのミュージシャンを呼んだ講義もあるので受講して、ジャズがすごく好きになって渋谷のジャズ喫茶にも入り浸って。現代舞踊やバレエの講義もあったので、そこからクラシックとか民族音楽に触れて、パイプオルガンを弾いて、ベルカントってイタリアの伝統的な歌唱法のサークルに入って曲を作って。 そんな感じで、音楽の興味も一気に広がったんですよね。一通り知っておかないと、すごく浅い音楽しかできなくなるだろうなって。とにかく音楽のことを知らなすぎたので、広く音楽を聴いて、そのルーツも知りたいなと思ったんですね』、「理2で入りました。理系の生物系です・・・理3はどんなに頭がよくても落ちることがありえるので。開成のトップ10にいたヤツでも、試験でちょっとミスったら落ちちゃうぐらいですから、そんなリスクは取れなかった。早く大学に入って音楽をしたかったので、浪人なんかしてる場合じゃなかったです」、確実に東大に入るにはやはり「理2」のようだ。「入学してからは古い洋楽を遡って聴いて、ロックに関しては最終的にイギリスのロックが好きになりましたね。東大はジャズのミュージシャンを呼んだ講義もあるので受講して、ジャズがすごく好きになって渋谷のジャズ喫茶にも入り浸って。現代舞踊やバレエの講義もあったので、そこからクラシックとか民族音楽に触れて、パイプオルガンを弾いて、ベルカントってイタリアの伝統的な歌唱法のサークルに入って曲を作って。 そんな感じで、音楽の興味も一気に広がったんですよね」、なるほど。
・『ギターだけ持ち、あちこちの国を回って世界の音楽を追求  Q:東大の音楽サークルには入らなかったのですか? 市川 入りましたよ。最初はバンドサークルに入って、バンドをやって。「ジャズもやります」的なサークルだったので、サックスの入ったバンドで歌って。でも、サークルのクチャクチャした人間関係が好きじゃなかったので抜けて、自分でバンドをやりながらジャズや現代舞踊の講義を受けてたんです。 東大の講堂にパイプオルガンが置いてあって、同好会もあったので、そこに入って何時間も弾いてましたよ。ピアノを置いた部屋もあったので、夜の21時ぐらいから朝まで弾いてたり。 世界の音楽を追求するといって、ギターだけ持ってあちこちの国を回りましたしね』、「最初はバンドサークルに入って、バンドをやって。「ジャズもやります」的なサークルだったので、サックスの入ったバンドで歌って・・・東大の講堂にパイプオルガンが置いてあって、同好会もあったので、そこに入って何時間も弾いてましたよ。ピアノを置いた部屋もあったので、夜の21時ぐらいから朝まで弾いてたり。 世界の音楽を追求するといって、ギターだけ持ってあちこちの国を回りましたしね」、なるほど。
・『パリの音楽院に留学する予定だったが…  Q:探求の速度と深度が、凄まじいですね。 市川 ジャマイカでレゲエのレコードを掘りにいったら、ドレッドになって帰ってきました(笑)。キューバ音楽を聴きにキューバに行ったり、ギターを持ってヨーロッパをプラプラして路上で弾いてみたり。お金はないから、ヒッチハイク、野宿、ユースホステルで。ユースホステルだと「ご自由に」って食べ物が置いてあるから、それで食いつないでましたね。 あと、東京藝術大学で講師をされていた野口実という先生に師事したんですよ。開成高校でギターの授業があって、野口先生はその講師もされていて。大学に入って様々な音楽を知るうちに、実は野口先生が土方巽らが率いた暗黒舞踏という前衛的な現代舞踊の音楽を作っていた音楽家だったことを知り、再び先生を訪れました。実験的というか、聴く人によっては音楽だとすらわからない音楽です。 Q:現代音楽の世界に進んだそうですが、それは野口先生に師事したことも大きかったのですね。 市川 大学を卒業してからも音楽をやってて、パリの音楽院に留学をしようと。留学を認めてもらうには、6曲ぐらい曲を送らないといけないんですよ。先生にピアノや曲をチェックしてもらって、「これで大丈夫」ってクオリティにまで仕上げて、パリの音楽院に送ったら留学OKが出て。 あとはパリに行くだけだったんですけど、急遽取りやめてテニスを始めるんです』、「開成高校でギターの授業があって、野口先生はその講師もされていて。大学に入って様々な音楽を知るうちに、実は野口先生が土方巽らが率いた暗黒舞踏という前衛的な現代舞踊の音楽を作っていた音楽家だったことを知り、再び先生を訪れました。実験的というか、聴く人によっては音楽だとすらわからない音楽です・・・パリの音楽院に留学をしようと。留学を認めてもらうには、6曲ぐらい曲を送らないといけないんですよ。先生にピアノや曲をチェックしてもらって、「これで大丈夫」ってクオリティにまで仕上げて、パリの音楽院に送ったら留学OKが出て。 あとはパリに行くだけだったんですけど、急遽取りやめてテニスを始めるんです」、よく方向転換する姿勢には驚かされる。

次に、この続きを9月9日つけ文春オンライン「「俺、人生間違ったわ」「マジで地獄を見た」貯金0でバイト生活…東大卒のエリート(39)はなぜいきなりテニスを始めたのか テニス選手・市川誠一郎さんインタビュー#2」、を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/65283
・『開成中学・高校から東大に進んで現代音楽家を目指すも、25歳で経験のなかったテニスの世界へ飛び込み、ヨーロッパを拠点に活動するテニス選手・市川誠一郎(39)。 今年5月にダブルス世界ランキングで2090位になった彼に、パリの音楽院留学をやめてまでテニスの世界に進んだ理由、テニスアカデミーで味わった屈辱、選手として一歩進み出すきっかけとなった東京オリンピックのトライアウトなどについて、話を聞いた』、興味深そうだ。
・『大学卒業はフリーターになり、バイトで生計を立てる  Q:東大卒業後は、現代音楽をやっていこうと。そもそも現代音楽って、どういったジャンルなのでしょう。 市川誠一郎(以下、市川) いま現代音楽と言われているものを、どう定義するかは難しいですけど。ここまでのさまざまな音楽の流れを踏まえて、そこからいままでにない新しい表現の形式や作曲の方法とかを作っていこうみたいな。すでにやりつくされている感もあるので、ノイズに走ったり、ドレミファソラシドの間にある音とかを使ってみたり、奇抜な方法を取ろうとするんだけど、なかなか突破口がなくて。 まぁ、音楽でなにか発明しようみたいなジャンルですかね。 Q:卒業してから、パリの音楽院留学を決意するまでの動きは? 市川 就職してサラリーマンになる気なんかまるでなかったし、そういう動機で大学に行ったわけじゃないので。なので、普通にフリーターに。 ホステルのバイト、家庭教師、塾の講師で稼ぎながら、音楽を作ったり、海外を回って音楽を掘ったり。それを1年やって、2年目にパリ留学に向けて動き出したんです』、「就職してサラリーマンになる気なんかまるでなかったし、そういう動機で大学に行ったわけじゃないので。なので、普通にフリーターに。 ホステルのバイト、家庭教師、塾の講師で稼ぎながら、音楽を作ったり、海外を回って音楽を掘ったり。それを1年やって、2年目にパリ留学に向けて動き出したんです」、なるほど。
・『白黒ハッキリしない世界に行くことに迷いが  Q:パリ留学直前でテニスに方向転換したとのことですが、一体なにがあったのでしょう。 市川 音楽をやりまくってはいたけど、やっているうちに迷いが出てきて。どことなく自信がなくて、音楽で生きていく覚悟が決まらなかったんですよ。だから、音楽以外に興味のあるものを探したりもしました。それでも「やっぱり、こっちだよな」と音楽を続けていたんですけど、いざパリの音楽院に行くことになったら、その不安が日を追うごとに大きくなったんですよね。 音楽を作っても、作品の良し悪しって聴いた人によって違うし、ましてや現代音楽なんて普通の人が聴いたら「なにこれ?」ってなる音楽ですから。そもそも音楽や芸術って、ハッキリするものではないじゃないですか。 Q:あらゆるものがモヤモヤしてグラついて、しかたがなかったと。) 市川 自分がやっていることに価値があるのか、いいものが作れているのか、すべてがわからないみたいな。さらにパリに行ったとしたら、それなりにお金もかかるし、そのお金を自分で稼がなきゃいけない。「覚悟はあるのか」とビビってしまったのもあったんですね。 「白黒ハッキリしない世界で、ゴチャゴチャ言ってるくらいなら、受験のときみたいに白黒ハッキリする世界に行ったほうがいいじゃん」って考えるようになって。でも「大人の世界で、そんな白黒つけられる場所ってある?」と悩みました』、「現代音楽なんて普通の人が聴いたら「なにこれ?」ってなる音楽ですから。そもそも音楽や芸術って、ハッキリするものではないじゃないですか・・・受験のときみたいに白黒ハッキリする世界に行ったほうがいいじゃん」って考えるようになって。でも「大人の世界で、そんな白黒つけられる場所ってある?」と悩みました」、なるほど。
・『スポーツの世界に足を踏み入れることを決意  Q:白黒ハッキリできそうと思えたものが、テニスだったと。 市川 勝つか負けるかに加えて、コネとか関係なし、一生懸命やればやるほど結果が出せる、人間関係を気にしなくていい、とか考えまくっていたら「それって、競技スポーツの世界じゃない?」とハッとして、さらに「競技でも個人競技だ」って。 白黒つけるにしても競争相手がたくさんいなければ、結局はぬるくなっちゃう。だからあえて一番メジャーでハードな競技にしようって。メジャーだと、勝てば勝つだけ注目されますから。そういった扱いの明暗でも白黒つきますし。 実際に、いろいろなスポーツを試したんですよ。個人競技じゃなくなっちゃうけど、結構な野球少年だったので野球も考えたんです。でも、すでにその時点で24歳でした。たとえ、採用してもらえそうなことがあっても、僕より若くて同じ能力の人がいたら、チーム競技では若い選手が選ばたりするわけで、僕が求めていた純粋な能力だけの世界ではないなと』、「白黒ハッキリできそうと思えたものが、テニスだったと。 市川 勝つか負けるかに加えて、コネとか関係なし、一生懸命やればやるほど結果が出せる、人間関係を気にしなくていい、とか考えまくっていたら「それって、競技スポーツの世界じゃない?」とハッとして、さらに「競技でも個人競技だ」って」、確かに「テニス」は条件を満たしている。
・『「誰かに迷惑を掛けなきゃいいんじゃない」  Q:野球少年だったゆえに「やるなら球技」、そこから「個人の球技ならテニス」といった具合に? 市川 個人競技というのが先にあって、その中で「テニスと野球って近いな」ってのが、インスピレーションとしてはあった。やはり、打つことが好きだったので。 ボールを使うのはもちろん、ボールを打つという動作も野球と似てるし。それもあって「テニス、いいかもしれないな」と思ってやってみたら、「これだ!」ってドンピシャで。 Q:パリ留学に尽力してくれた恩師の野口実先生は、テニスへの転向にどんな反応を。 市川 「君はそこからトッププロを目指すんだよね」と聞かれて、「それで飯を食えるぐらいにはなるかもしれないけど、いまからイチローみたいになろうってのは無理だろう」と、かなり呆れていたと思います。でも、今思うと当時他の人は全員、僕がテニスプロを目指すことを悪い冗談くらいにしか受け止めなかったのに、先生だけは唯一、僕が本気でトッププロを目指していると受け止めてくれていたかもしれません。 ブチ切れてもおかしくないわけで、なんとか呆れる程度の態度で接してくれました。最終的には「誰かに迷惑を掛けなきゃいいんじゃない」と、背中を押してくれて。いまでも先生とは連絡を取っていて、日本に戻るとお会いしています』、「パリ留学に尽力してくれた恩師の野口実先生は・・・なんとか呆れる程度の態度で接してくれました。最終的には「誰かに迷惑を掛けなきゃいいんじゃない」と、背中を押してくれて」、よく出来た「先生」だ。
・『お金をかけずに練習するため、テニスクラブへ入会  Q:ほかのインタビューによると、まずは横浜のテニスクラブに通ったそうですね。 市川 テニスを始めるにあたってググったら、普通の初心者はテニススクールに通うもので、選手はテニスアカデミーで練習をしているんだと。すぐに大きいアカデミーに電話したら「2ヶ月前に始めました。プロになりたいんです」「え? いや、ちょっと……」って感じで、迷惑電話と思われてしまって。 何軒か電話しているうちに、大きめのアカデミーから「日本ランキング200番からじゃないと受け付けてない」と言われて、「ああ、そういうものなんだ」と。じゃあ、そこまでなんとか自分で持っていかなきゃいけないと考えたんですよ。 マンツーマンでテニスを学ぶって選択肢もあったろうけど、バイト暮らしで経済的にムリだったし、実家も最初に話したようにぜんぜん金持ちじゃないですから。 Q:それでテニスクラブへ。 市川 とにかくお金をかけずに、練習を死ぬほどするしかないなって。そうしたらテニスクラブの存在を知ったんです。テニスクラブってヨーロッパでポピュラーなんですけど、会員になるとコートが使い放題ってシステムで。 日本でも、クラブによっては値段の高くない学生会員やヤング会員があって、月1万円ぐらいで入れるところが多いんですよ。月1万円なら、スクールの月謝とあまり変わらないので「こりゃいいや」と』、「日本でも、クラブによっては値段の高くない学生会員やヤング会員があって、月1万円ぐらいで入れるところが多いんですよ。月1万円なら、スクールの月謝とあまり変わらないので「こりゃいいや」と」、なるほど。
・『オーナーがレッスン代も取らずに毎日練習を見てくれた  「我流でもなんでも練習しまくってやる」と、近所のテニスクラブのオーナーに会いに行って。ドレッドヘアで、テニスラケットを持って「プロになりたいので、ここで練習したいんです」なんて話すもんだから、オーナーは「なんなんだ、コイツは?」って顔をしてましたけど。 「ちょっと考えさせて」と言われたけど、1日か2日そこで練習させてもらっていたら「うちでやるか?」ってOKが。そこは朝の9時から夜の10時までやっていたので、開いてから閉まるまで練習してました。 Q:オーナーの方は、市川さんになにかを感じたんでしょうね。 市川 当時60歳くらいでオープンな方で。コーチもやっていて、レッスン代も取らずに毎日練習を見てくれて。 トレーニングにもなるからって、家からリュックを背負って40分ほど走ってクラブに通ってたんですよ。夏に汗だくで走ってたら、オーナーが「使え」って自転車をくれて。テニスシューズもレンタル落ちのものをくれたし、僕を見ていた会員さんがラケットのおさがりもくれて』、「レッスン代も取らずに毎日練習を見てくれて。 トレーニングにもなるからって、家からリュックを背負って40分ほど走ってクラブに通ってたんですよ。夏に汗だくで走ってたら、オーナーが「使え」って自転車をくれて。テニスシューズもレンタル落ちのものをくれたし、僕を見ていた会員さんがラケットのおさがりもくれて」、熱心さで他人から好意を寄せてもらうのが得意なようだ。
・『会員の人たちも、ドレッドを揺らしながらラケットを振ってる僕を警戒してたんですよ。土砂降りの日でも、外でサーブを打ってるし。テニスって、雨が降ったらやらないんですよ。滑って危ないから。それでもブンブンやってるから「ちょっとおかしいけど、本気ではあるんだ」と思ってくれたようで、市民大会や県大会で優勝してる会員の方が練習の相手をしてくれるようにもなったんですよ』、「テニスって、雨が降ったらやらないんですよ。滑って危ないから。それでもブンブンやってるから「ちょっとおかしいけど、本気ではあるんだ」と思ってくれたようで、市民大会や県大会で優勝してる会員の方が練習の相手をしてくれるようにもなったんですよ」、これも並外れた熱心さが役立った例だ。
・『テニスアカデミーに移ったが、小・中学生の相手にならず  Q:テニスクラブにはどれくらい通ったのですか。 市川 1年ぐらいですね。とりあえず基礎はできただろうと思って、アカデミーに移りました。ランキングに入ってないと大手のアカデミーは入れてくれないから、ウェブサイトで「やる気があるヤツなら来てもいいよ」的なことをうたっているところに入ったんです。技術を育ててくれるアカデミーとして定評もあったので、なおさらいいかなって。 入って5分で、1年やってきたことに意味がなかったと悟りましたね。小学生、中学生のジュニアの子たちと打ち合ったけど、彼らはプロを目指してやってきてるので、僕なんかちっとも相手にならないんです。 初日のトレーニングでやる気だけは示そうと思って、ダッシュしまくってたら吐いちゃって。それでも、そこのヘッドコーチが「がんばってる感じは、ジュニアのいい見本になる」と入ることを許してくれました』、「テニスアカデミー・・・小学生、中学生のジュニアの子たちと打ち合ったけど、彼らはプロを目指してやってきてるので、僕なんかちっとも相手にならないんです。 初日のトレーニングでやる気だけは示そうと思って、ダッシュしまくってたら吐いちゃって。それでも、そこのヘッドコーチが「がんばってる感じは、ジュニアのいい見本になる」と入ることを許してくれました」、これも並外れた熱心さが役立ったさらなる例だ。
・『毎日怒鳴られていた日々のモチベーションになったのは…  Q:そこで技術をいろいろと学べた。 市川 そのヘッドコーチがすさまじく厳しくて、できるようにならない者にボロクソ言うんです。2球ぐらいミスったら「おまえ、全然できねえから、そこ立ってろ」と言われて、コーチが気に入ってるジュニアの選手が練習しているのをずーっと見学させられたり、延々と走らされたりして。 僕は25歳でテニスを始めたからどんくさいし、センスもなかったし。頭では「こうしたらいい」と理解できるんですけど、体でそれができないんですね。 「ジュニアの見本になる」なんて言われたけど、ジュニアたちの前で「こいつみたいには絶対なるな」と毎日怒鳴られるようになって。5年くらいアカデミーにいたけど、その5年間は毎日心がボロボロで、地獄を見ました。 Q:よく5年もいられましたね。 市川 自分でも「俺、これ、人生間違ったわ」とは思いました。大変な道だとはわかっていて始めたけど、「俺って、ここまでできないのか」「テニスって、ここまでキツいのか」って。客観的に見ても全然運動センスがなく、本当にできるようになりませんでした。 更に技術面もですが、とにかくコーチの指導が精神的に辛くて、毎日やめたいどころか死にたいと思っていました。でも、自分で覚悟して始めた道だとなんとか耐えて、コーチのいないところで誰よりも練習しようと、早出練習、居残り練習を続けました。 今思えば、違う練習場所を探しても良かったと思いますが、当時は下手な僕が他に行ける場所はないと感じていて。追い詰められてる人の発想ですね。) その長い5年間に僕の支えやモチベーションとなったのが、平下さんというアシスタントコーチの存在ですね。同い年ぐらいの方で、いつもトレーニングに付き合ってくれて。 雨の日は、河原にある2キロのランニングコースを走っていたんですけど、平下さんが傘を片手にタイムを計ってくれました。アカデミー以外のコートを借りて練習するときも来てくれて。僕は彼に払えるお金もなかったので、すべてボランティアでした。僕が続けられたのは平下さんのおかげです』、「ジュニアたちの前で「こいつみたいには絶対なるな」と毎日怒鳴られるようになって。5年くらいアカデミーにいたけど、その5年間は毎日心がボロボロで、地獄を見ました」、「その長い5年間に僕の支えやモチベーションとなったのが、平下さんというアシスタントコーチの存在ですね。同い年ぐらいの方で、いつもトレーニングに付き合ってくれて・・・僕は彼に払えるお金もなかったので、すべてボランティアでした。僕が続けられたのは平下さんのおかげです」、これも並外れた熱心さが役立ったさらなる例だ。
・『東京オリンピックのトライアウトの最終選考に残り、少しづつ注目されるように  Q:寝ても覚めてもテニスだったようですが、どうやって生計を立てていたのですか? 市川 月曜日から金曜日は、朝から夜まで練習。土曜日は、午前中まで練習。土曜日の午後と日曜日はフルで家庭教師と塾の講師を入れて。 家庭教師の時給が良かったので、なんとか生活が成り立っていましたね。まぁ、ギリギリではあるので、クレジットカードが止まったり、電気やガスを止められたこともありました。貯金なんて、10万円以上になったことないですね。 Q:東京オリンピックのトライアウトに挑んでいますが、それがプロになる足掛かりを掴むきっかけに? 市川 2014年に東京オリンピックへ向けて、身体能力に優れたアスリートを発掘してスポンサーするトライアウトがあって。実技試験で最終選考まで行ったんですけど、平下さんとずっとトレーニングしまくっていたおかげで、いつの間にかすごく走れるようになっていました。 そこで最終に残ったことで、開成から東大、25歳からテニスを始めたキャリアが異色だって日刊スポーツが記事にしてくれたんです。それで用具提供のスポンサーがついて、ちょっとずつ注目されるようになりましたね』、「土曜日の午後と日曜日はフルで家庭教師と塾の講師を入れて。 家庭教師の時給が良かったので、なんとか生活が成り立っていましたね」、「東京オリンピックへ向けて、身体能力に優れたアスリートを発掘してスポンサーするトライアウトがあって・・・そこで最終に残ったことで、開成から東大、25歳からテニスを始めたキャリアが異色だって日刊スポーツが記事にしてくれたんです。それで用具提供のスポンサーがついて、ちょっとずつ注目されるようになりましたね」、「用具提供のスポンサーがつい」たとは大したものだ。
・『自分でスポンサーを探し回って資金を調達  Q:トライアウトのときは、すでにテニスアカデミーを辞めていたのですか。 市川 いえ、当時もアカデミーにいて、厳しかったアカデミーのヘッドコーチが記事を見て用具提供のスポンサーを紹介してくれました。 ただ、僕は前々からヨーロッパに行きたいなと思っていて。やっぱりテニスは、ヨーロッパで盛んな競技なので、日本を出て勝負がしたかったんですよ。テニスを始めた頃から海外のアカデミーとコンタクトも取っていて、どのぐらいお金が掛かるのかとかいろいろと確認していたんです。行くつもり満々だったけど、踏ん切りがつかずにいて。 でも、トライアウトでスポンサーがついたし、その前後から試合でもちょっとだけ勝てるようになってきたんですよ。 Q:こんなこと言ってしまうと失礼ですが、貯金が10万円を切るような経済状況だったわけですから、海外に出るのは難しかったのでは。 市川 自分でスポンサーを探し回って、資金を集めました。 Q:いくら集まりました? 市川 450万円です』、「前々からヨーロッパに行きたいなと思っていて。やっぱりテニスは、ヨーロッパで盛んな競技なので、日本を出て勝負がしたかったんですよ・・・自分でスポンサーを探し回って、資金を集めました。 Q:いくら集まりました? 市川 450万円です」、大したものだ。

第三に、この続きを、9月9日付け文春オンライン「「開成・東大の同期は港区のタワマンに…」年収200万円、未経験から世界ランクを獲得した男性(39)が送ったテニス一筋の14年間 テニス選手・市川誠一郎さんインタビュー#3」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/65284
・『開成中学・高校から東大に進んで現代音楽家を目指すも、25歳で経験のなかったテニスの世界へ飛び込み、ヨーロッパを拠点に活動するテニス選手・市川誠一郎(39)。 今年5月にダブルス世界ランキングで2090位になった彼に、日本を飛び出した理由、海外での活動資金を得るためのスポンサー探し、世界ランカーたちに練習相手を務めさせてしまう術などについて、話を聞いた。(全3回の3回目/最初から読む)』、「現代音楽家」から「テニスの世界」とは凄い変身だ。
・『一刻も早くヨーロッパのどこかに行きたかった  Q:テニスを始めた当初から、海外を拠点にすることを考えていたとのことですが、海外のほうがテニスをめぐる環境が優れていると感じていたわけですか? 市川誠一郎(以下、市川) やはり日本国内に世界のトッププロは非常に少ないですし、日本のトップになっている大坂なおみちゃんと錦織圭君は実質アメリカ育ち。テニスはヨーロッパで生まれたスポーツで、ヨーロッパが中心です。 イタリア料理を本気で勉強したかったら、イタリアに行くじゃないですか。そこは僕が音楽をやっていたときに、レゲエを探求するためにジャマイカに行ったりしたのと同じ理屈だと思うんです。 テニス界の地図があったとして、僕はそれに載っているかどうかもわからない、ちいさなテニスアカデミーにいたんですよ。大海原を知らずに、ラケットを振っていた。それを自分でわかっていたからこそ、一刻も早くヨーロッパのどこかに行きたかったんだけど、お金がないじゃないですか』、「テニスはヨーロッパで生まれたスポーツで、ヨーロッパが中心です・・・一刻も早くヨーロッパのどこかに行きたかった」、なるほど。
・『“開成、東大、25歳からテニス始めました”をウリにスポンサー探し  Q:そこで、スポンサーを募った。 市川 東京オリンピックのトライアウトでスポンサーがついたことが自信になったのもあって、スポンサー集めに踏み切って。人からお金をもらいに行くっていうのもアレだし、金額も何百万になるので「こんなの集まるわけなくね?」と思ったけど、とにかくやるしかないなって。 2015年の年末と2016年の正月休みを使って、じっくり考えました。「スポンサーを集めるためには、どうすればいいのか?」ってのをノートにバーッと書いて整理して、スポンサー募集の案内文を書いて。 Q:友人や知人にも支援をお願いしましたか。 市川 知ってる人すべてに頭を下げました。背に腹は代えられないし、カッコつけてる場合じゃないなって。 だから“開成、東大、25歳からテニス始めました”を、全面的にウリにしました。それまでは、そんなこと言うのは好きじゃなかったんですよ。僕がウリにできるのはそこしかないし、それがなかったら単なるヘタクソなテニス選手なだけですから』、「知ってる人すべてに頭を下げました。背に腹は代えられないし、カッコつけてる場合じゃないなって。 だから“開成、東大、25歳からテニス始めました”を、全面的にウリにしました。それまでは、そんなこと言うのは好きじゃなかったんですよ。僕がウリにできるのはそこしかないし、それがなかったら単なるヘタクソなテニス選手なだけですから」、凄い割り切りようだ。
・『テニスに関係する会社という会社すべてにテレアポ  Q:それがうまくいったわけですよね。 市川 450万円、集まりました。50万も集まらないだろうと思ってたし、集まらなかったら借金しかないなとお金を借りる方法を考えていたぐらいだったんですよ。 でも、僕の異色な経歴だけでお金が集まったわけでもないんですよ。親友のバリバリのビジネスマンの方に、スポンサーを多く集めるための戦略を聞いたり、用意したプレゼン資料を添削してもらったり。ダメ出しが凄かったです(笑)。 南極冒険家の阿部雅龍という友達がいて、彼にも聞きに行きました。彼はホステルでバイトしてたときの仲間で、全くの無名から積み重ねて、何千万円もスポンサーを得て南極に行くほどになっていて。 テニス自体への努力は当然ですが、応援してくれる方々への細かな行動や地道に努力して足で稼ぐ方法を教えてもらいました。 Q:たとえばどんなことをしていたのでしょうか。 市川 テニスに関係する会社という会社すべてにテレアポして、ほとんど全ての友人に、自分が覚悟を決めて「こういう挑戦をするからどうしても助けが必要だ」ということを心の底から直接話して回りました。また、覚悟を示すために、成績のノルマが達成できなかった場合に返金する条件をつけました。 クラウドファンディングも考えていたけど、資金的な面でいうとクラファンは手数料で20%近く持っていかれちゃうんですよ。それと無名なアスリートのクラウドファンディングは自分の周辺からのサポートが多くなりがちで、それならば手数料を払ってプラットフォームを利用する必要はないと思い、直接自分でやりました。 身近なところから一つずつスポンサーの輪を広げるべきで、自分だけでなくスポンサーの人たちをハッピーにして、そこからひとつずつ輪を広げることを考えました』、「テニスに関係する会社という会社すべてにテレアポして、ほとんど全ての友人に、自分が覚悟を決めて「こういう挑戦をするからどうしても助けが必要だ」ということを心の底から直接話して回りました。また、覚悟を示すために、成績のノルマが達成できなかった場合に返金する条件をつけました・・・クラウドファンディングも考えていたけど・・・手数料で20%近く持っていかれちゃう・・・それならば手数料を払ってプラットフォームを利用する必要はないと思い、直接自分でやりました」、なるほど。
・『数珠つなぎに人や会社を紹介してもらい、資金450万円が集まる  Q:友人以外の周辺というと? 市川 僕が住んでいる近所にある会社を回って、1万円、3万円を提供してもらいました。そこから、他の人や会社を紹介してもらって、またスポンサーが増えていって。そうやって集まった450万円で、2016年の4月にスペインのテニスアカデミーに行かせていただきました。 比較的小さな場所で、やりとりしていて家族的な雰囲気を感じたのが決め手でした。またスペイン人は白人の中では比較的小柄で、体格の小さなアジア人に合うかもしれないと思ったのと、そこで日本代表のダニエル太郎君が練習しているのを知って、アジア人の指導のノウハウを持っているだろうと考えました。 アカデミーに入って最初の3日は寮にいたけど、寮費が高いので出ないとヤバくて。ルームメイトがいないコロンビア人がいるのを聞いて。テニスアカデミーって金持ちのヤツが多いから、月500ユーロするような高い部屋にも住んでいるんですけど、彼の部屋は家賃160ユーロだから月2万円以下。彼に接触して、シェアしました』、「数珠つなぎに人や会社を紹介してもらい、資金450万円が集まる・・・スペインのテニスアカデミーに行かせていただきました・・・テニスアカデミーって金持ちのヤツが多いから、月500ユーロするような高い部屋にも住んでいるんですけど、彼の部屋は家賃160ユーロだから月2万円以下。彼に接触して、シェアしました」、たくましい生活力だ。
・『常軌を逸したな練習量に周囲の外国人がザワつく  Q:たくましいですね。 市川 自分で言うのもアレなんですけど、わりとサバイバル能力に長けてるんですよ。これは海外生活で力になってますね。 でも、シェアしてたアパートも出なきゃいけなくなって、別のシェアアパートに移って。電気が点かなかったり、お湯も出なかったりで。冷房もないから窓を開けると、コウモリが飛び込んでくるんですよ。耳をつんざくような鳴き声で。そいつを殺して廊下に叩き出したら、今度はゴキブリがあちこちから湧いて出てくる。そんなとこに暮らしながら、土日も練習しまくって。 みんな午前に2時間、午後に1時間半くらいしか練習しないんですよ。しかもスペインだからシエスタがあって、3時間ぐらい昼寝したり休んだりする。僕は10分で飯を食って、すぐコートに出て1人でひたすらサーブ練習して。もう、練習相手がいないときは掃除のおっちゃんに球出しを頼んでました。おっちゃんもいつも練習してる僕を見て応援してくれていたので。 Q:スペインでも、尋常ならざる練習量にザワつかれたのでは? 市川 掃除のおっちゃんに球出ししてもらってるのがバレて注意されて、それをきっかけに「信じられないぐらい練習するクレイジーな日本人」ってことで知られるようになりました。そうしたらダニエル太郎君が僕のことを面白がってくれて、「家に住んでいいよ」と言ってくれたおかげで、極貧アパートを脱出しました。 太郎君はトップ選手なので、ツアーで家をほぼ空けていて。飼っている猫の面倒も見てほしいからって、猫の世話係の肩書で半年ほど住まわせてもらいました。太郎くんのご家族には本当にお世話になりました』、「別のシェアアパートに移って。電気が点かなかったり、お湯も出なかったりで。冷房もないから窓を開けると、コウモリが飛び込んでくるんですよ。耳をつんざくような鳴き声で。そいつを殺して廊下に叩き出したら、今度はゴキブリがあちこちから湧いて出てくる。そんなとこに暮らしながら、土日も練習しまくって。 みんな午前に2時間、午後に1時間半くらいしか練習しないんですよ。しかもスペインだからシエスタがあって、3時間ぐらい昼寝したり休んだりする。僕は10分で飯を食って、すぐコートに出て1人でひたすらサーブ練習して。もう、練習相手がいないときは掃除のおっちゃんに球出しを頼んでました。おっちゃんもいつも練習してる僕を見て応援してくれていたので・・・掃除のおっちゃんに球出ししてもらってるのがバレて注意されて、それをきっかけに「信じられないぐらい練習するクレイジーな日本人」ってことで知られるようになりました。そうしたらダニエル太郎君が僕のことを面白がってくれて、「家に住んでいいよ」と言ってくれたおかげで、極貧アパートを脱出しました。 太郎君はトップ選手なので、ツアーで家をほぼ空けていて。飼っている猫の面倒も見てほしいからって、猫の世話係の肩書で半年ほど住まわせてもらいました。太郎くんのご家族には本当にお世話になりました』、「ダニエル太郎君が僕のことを面白がってくれて、「家に住んでいいよ」と言ってくれたおかげで、極貧アパートを脱出しました。 太郎君はトップ選手なので、ツアーで家をほぼ空けていて。飼っている猫の面倒も見てほしいからって、猫の世話係の肩書で半年ほど住まわせてもらいました」、なるほど。
・『技術的な面で苦しみ、引退も考えたが…  Q:スペインのアカデミーにいた期間は。 市川 1年です。スポンサーには1年で帰るという公約をしていて。さらにスペイン滞在中に世界ランキング獲得、もしくは帰国後に大会に出て優勝できなかったら全額返済という条件にもしていて。ふたつとも達成できなくて、借金生活となりました。正直、レベル的には日本にいた頃と変わっていませんでしたね。 Q:レベルが向上しなかった要因はなんだと思いますか? 市川 根本的な基礎技術の土台が足りませんでした。ヨーロッパの練習はシンプルで実践的なものが多いですが、それ以前の土台がないから積み上がりませんでした。 でも、向こうに行って世界のトップレベルを知り、テニスという世界の全体像が分かったのは大きかったですし、追いつけないものではないと感じました。 目標達成できず引退もチラついて1週間ぐらい考えたけど、なんとかして続けようって。で、あっちに行ってみて、日本のほうが技術を細やかに教えてくれるなと感じたんです。それで前と違うテニスアカデミーに入って、相変わらず練習しまくりながら技術をとことん学んでいって。) そのアカデミーには2017年から2020年の頭までいて。そこのコーチとトレーナーに、ガッツリ基礎的なところから取り組んでもらって、今まで全然出来なかったのに、2〜3年目あたりのある時から急にボールがしっかり打てるようになったんですよ。 あまり試合の結果には表れませんでしたが、スペインに行った時に感じた基礎技術の問題がクリアされてきたと感じました。これは大きなブレイクスルーでしたね』、「スペイン滞在中に世界ランキング獲得、もしくは帰国後に大会に出て優勝できなかったら全額返済という条件にもしていて。ふたつとも達成できなくて、借金生活となりました。正直、レベル的には日本にいた頃と変わっていませんでしたね・・・根本的な基礎技術の土台が足りませんでした。ヨーロッパの練習はシンプルで実践的なものが多いですが、それ以前の土台がないから積み上がりませんでした」、「日本のほうが技術を細やかに教えてくれるなと感じたんです。それで前と違うテニスアカデミーに入って、相変わらず練習しまくりながら技術をとことん学んでいって。) そのアカデミーには2017年から2020年の頭までいて。そこのコーチとトレーナーに、ガッツリ基礎的なところから取り組んでもらって、今まで全然出来なかったのに、2〜3年目あたりのある時から急にボールがしっかり打てるようになったんですよ・・・ペインに行った時に感じた基礎技術の問題がクリアされてきたと感じました。これは大きなブレイクスルーでしたね」、なるほど。
・『もう日本に帰っちゃダメだ…世界ランカーに声をかけて練習  Q:そのアカデミーにいたのが2020年頭までとのことですが、なにかしらコロナ禍の影響が? 市川 コロナで大変になってきて、東京で練習するのが難しくなるんじゃないかって予感がしたんです。で、県外のテニスクラブで練習をして、また違うアカデミーに入って。そうしたら、そのアカデミーに在籍しているジュニアの子がセルビアで開かれるジュニアの国際大会に出るので、帯同コーチとして一緒に来てくれと。 ちょうど、もう一回ヨーロッパに行こうと考えてたので即「行きます!」って。それが2020年の9月ですね。セルビアってジョコビッチとか強豪を出してる国だし、ジュニアの国際大会にはいろんな国のコーチも集まるじゃないですか。大会の開催中、他の帯同コーチにコンタクトしまくったら、いい人と知り合えて。僕だけセルビアに残って、12月まで彼と練習してました。日本で基礎が固められてたこともあって、またまた技術がレベルアップしたのを感じて。 Q:改めて「やっぱり海外のほうがいい」と。 市川 日本の体育会系って、なんでも上から下にじゃないですか。ヨーロッパは、自分の思ったことをガンガン言えちゃうフラットな雰囲気で、それが自分にすごく合っていて。あと、変わったヤツでも面白がってくれて、とりあえず相手をしてくれる。海外に来たことで、日本にいた頃のストレスがなくなり、一気に世界が開けてテニスが良くなりました。だから、ヨーロッパというか海外にいるしかないなって。 もう日本に帰っちゃダメだと悟って、そのままトルコの国際大会に出て。でも、その時点では試合自体が第一の目的ではなく、世界ランカーがいっぱい出るから、声をかけまくったら練習相手をしてくれる選手がいてレベルアップできるんじゃないかと考えたんです。 その予想は的中して、声をかけてみると相手してくれる世界ランカーって結構いるんですよ。「選手をとっかえひっかえして、5時間も6時間も練習してるヤツがいる」と噂になって、逆に声をかけられたりして』、「アカデミーに在籍しているジュニアの子がセルビアで開かれるジュニアの国際大会に出るので、帯同コーチとして一緒に来てくれと。 ちょうど、もう一回ヨーロッパに行こうと考えてたので即「行きます!」って。それが2020年の9月ですね。セルビアってジョコビッチとか強豪を出してる国だし、ジュニアの国際大会にはいろんな国のコーチも集まるじゃないですか。大会の開催中、他の帯同コーチにコンタクトしまくったら、いい人と知り合えて。僕だけセルビアに残って、12月まで彼と練習してました。日本で基礎が固められてたこともあって、またまた技術がレベルアップしたのを感じて。 Q:改めて「やっぱり海外のほうがいい」と。 市川 日本の体育会系って、なんでも上から下にじゃないですか。ヨーロッパは、自分の思ったことをガンガン言えちゃうフラットな雰囲気で、それが自分にすごく合っていて。あと、変わったヤツでも面白がってくれて、とりあえず相手をしてくれる。海外に来たことで、日本にいた頃のストレスがなくなり、一気に世界が開けてテニスが良くなりました。だから、ヨーロッパというか海外にいるしかないなって。 もう日本に帰っちゃダメだと悟って、そのままトルコの国際大会に出て・・・世界ランカーがいっぱい出るから、声をかけまくったら練習相手をしてくれる選手がいてレベルアップできるんじゃないかと考えたんです。 その予想は的中して、声をかけてみると相手してくれる世界ランカーって結構いるんですよ。「選手をとっかえひっかえして、5時間も6時間も練習してるヤツがいる」と噂になって、逆に声をかけられたりして」、なるほど。
・『去年、一時帰国した際に新しいスポンサーを獲得  Q:どのような方々と練習を。 市川 みんな各国では世代トップで、これまで絶対練習できなかったような強い選手ばかりです。当時下部ツアーを回っていましたが、今はウィンブルドンとか全仏オープンとか、グランドスラムの予選に出るようになった選手もいます。 例えばいま世界ランク100番あたりにいるカルロス・タベルナや、300番ぐらいのビリー・ハリスやエバン・ズー。日本人だと、ウィンブルドンや全米の本選まであがった島袋将くんなども練習してくれたり。各国の選手はもちろん、日本人のプロ選手もたくさん練習してくれて、世界中の選手やコーチとの繋がりもできました。) Q:セルビア以降、ずっとヨーロッパに。 市川 国際大会に出まくって、練習しまくってというのを、2年間続けてます。トルコ、チュニジア、エジプトに、毎週同じ大会をやっているリゾートホテルがあるんです。出場者はそのホテルに泊まらないといけないんだけど、割高なんですよね。なので、大会運営の人たちと仲良くなって、仕事を手伝ったりして宿泊代を安くしてもらったりして、なんとか。 去年、一時帰国した際に新しいスポンサーもついて。節約すれば、なんとかギリギリやっていけています』、「セルビア以降、ずっとヨーロッパに。 市川 国際大会に出まくって、練習しまくってというのを、2年間続けてます。トルコ、チュニジア、エジプトに、毎週同じ大会をやっているリゾートホテルがあるんです。出場者はそのホテルに泊まらないといけないんだけど、割高なんですよね。なので、大会運営の人たちと仲良くなって、仕事を手伝ったりして宿泊代を安くしてもらったりして、なんとか。 去年、一時帰国した際に新しいスポンサーもついて。節約すれば、なんとかギリギリやっていけています」、なるほど。
・『何歳からだってなんだって挑戦できる  Q:そして今年の5月に、ダブルスの世界ランキングで2090位になったと。 市川 そうです。チュニジアの大会で。 Q:25歳からテニスを始めたメリットって、ありますか。 市川 始めたのが遅いから下手だし、伸びるのも時間がかかるし、ほかの選手よりすべてのことのハードルが高い。けど、そのおかげで俺はユニークな存在になっている。むしろ子供の頃から始めていたら、他の選手と同じなんですよ。 でも、僕がなにか成し遂げたら前人未到の記録になるわけで。僕の挑戦というか、やっていることに社会的な価値も生まれているんですよね。きれいなことを言わせてもらえば、何歳からだってなんだって挑戦できるってことを見せられるとは思うんです。 Q:それが今後の展望でもあると。 市川 自分的には挑戦の意味合いが変わってきていて。テニスを続けてきて、僕は人を負かすとか人と戦う競争心はないことに気づいたんですよ。自分と向き合って、それを極限まで突き詰めるのが得意で好きなんだって。 だから勝敗そのものというより、トッププロがプレーしている瞬間の研ぎ澄まされた感覚を知りたいんです。そのレベルに到達しなければわからないからこそ、そこまで行きたいなって。 Q:開成、東大時代の同期には会社を経営されていたり、結婚して家庭を築いている方もいると思いますが、他の人と自分を比べることはないですか。 市川 ないですね。たぶんそこが僕がこの挑戦をできている根本的な理由で。僕は小学生の時から、そういう未来を頭の中に描いたことがあんまりなかったんです。おそらく残念ながら、幼少期から幸せな家庭を持ってなかったことがスタート地点にあったかもしれない。 友達のちょっと裕福な家庭に行っても別に何も思わなかったですし。自分がそうなりたいとかも思わなかった。外資系のコンサル会社とか投資銀行とか、マッキンゼーとかそういうところに勤めて何千万プレーヤーになっている人たちの住む港区のタワーマンションにたまに行ったりしましたけど、それが幸せだとは感じなかったです。 みんな全然いいやつらだし、すごくリスペクトしてますけど、お金があること自体が幸せというわけではないと思っていて。彼らは彼らが見ている幸せを手に入れていると思うので。僕が僕なりの幸せを持っているのと同じで、彼らは彼らの幸せを持っているということです』、「開成、東大時代の同期・・・外資系のコンサル会社とか投資銀行とか、マッキンゼーとかそういうところに勤めて何千万プレーヤーになっている人たちの住む港区のタワーマンションにたまに行ったりしましたけど、それが幸せだとは感じなかったです。 みんな全然いいやつらだし、すごくリスペクトしてますけど、お金があること自体が幸せというわけではないと思っていて。彼らは彼らが見ている幸せを手に入れていると思うので。僕が僕なりの幸せを持っているのと同じで、彼らは彼らの幸せを持っているということです」、「音楽家」、「テニスプレイヤー」ど進路は変わったが、強固な自分を持っているようだ。
・『テニスは35歳で選手生命を終えてるだろうと踏んでいた  Q:お話をうかがって、ふいにテニスをやめて違う世界に進む可能性もなくはないような気がしたのですが。 市川 そういう人やものに出会っちゃったら、行っちゃうとは思います。そうなったとしても、受験でもテニスでもやってきたから、たぶん突破できる気もします。実際、やりたいことがふたつあるんです。 Q:なんですか? 市川 置き去りにしちゃった音楽と脳神経の研究ですね。これもテニスを続けてきて改めてわかったんですけど、やっぱり音楽が大好きだったなと強く思ったんです。あと、理2の生物系で東大に入ったぐらいなので、脳の仕組みとかにも興味があって。 もともとテニスは35歳で選手生命を終えてるだろうと踏んでいて、残った人生を音楽と脳の研究に費やそうと考えていたけど、予想に反して39歳になってもテニスをやれちゃっているんでね。 とりあえず、死ぬまで予定がいっぱいです』、「やりたいことがふたつあるんです。 Q:なんですか? 市川 置き去りにしちゃった音楽と脳神経の研究ですね。これもテニスを続けてきて改めてわかったんですけど、やっぱり音楽が大好きだったなと強く思ったんです。あと、理2の生物系で東大に入ったぐらいなので、脳の仕組みとかにも興味があって。 もともとテニスは35歳で選手生命を終えてるだろうと踏んでいて、残った人生を音楽と脳の研究に費やそうと考えていたけど、予想に反して39歳になってもテニスをやれちゃっているんでね。 とりあえず、死ぬまで予定がいっぱいです』、「テニス」と、「音楽と脳の研究」、で今後の活躍を期待したい。
タグ:とりあえず、死ぬまで予定がいっぱいです』、「テニス」と、「音楽と脳の研究」、で今後の活躍を期待したい。 「やりたいことがふたつあるんです。 Q:なんですか? 市川 置き去りにしちゃった音楽と脳神経の研究ですね。これもテニスを続けてきて改めてわかったんですけど、やっぱり音楽が大好きだったなと強く思ったんです。あと、理2の生物系で東大に入ったぐらいなので、脳の仕組みとかにも興味があって。 もともとテニスは35歳で選手生命を終えてるだろうと踏んでいて、残った人生を音楽と脳の研究に費やそうと考えていたけど、予想に反して39歳になってもテニスをやれちゃっているんでね。 ー」ど進路は変わったが、強固な自分を持っているようだ。 「開成、東大時代の同期・・・外資系のコンサル会社とか投資銀行とか、マッキンゼーとかそういうところに勤めて何千万プレーヤーになっている人たちの住む港区のタワーマンションにたまに行ったりしましたけど、それが幸せだとは感じなかったです。 みんな全然いいやつらだし、すごくリスペクトしてますけど、お金があること自体が幸せというわけではないと思っていて。彼らは彼らが見ている幸せを手に入れていると思うので。僕が僕なりの幸せを持っているのと同じで、彼らは彼らの幸せを持っているということです」、「音楽家」、「テニスプレイヤ 「セルビア以降、ずっとヨーロッパに。 市川 国際大会に出まくって、練習しまくってというのを、2年間続けてます。トルコ、チュニジア、エジプトに、毎週同じ大会をやっているリゾートホテルがあるんです。出場者はそのホテルに泊まらないといけないんだけど、割高なんですよね。なので、大会運営の人たちと仲良くなって、仕事を手伝ったりして宿泊代を安くしてもらったりして、なんとか。 去年、一時帰国した際に新しいスポンサーもついて。節約すれば、なんとかギリギリやっていけています」、なるほど。 未経験から世界ランクを獲得した男性(39)が送ったテニス一筋の14年間 テニス選手・市川誠一郎さんインタビュー#3) だから、ヨーロッパというか海外にいるしかないなって。 もう日本に帰っちゃダメだと悟って、そのままトルコの国際大会に出て・・・世界ランカーがいっぱい出るから、声をかけまくったら練習相手をしてくれる選手がいてレベルアップできるんじゃないかと考えたんです。 その予想は的中して、声をかけてみると相手してくれる世界ランカーって結構いるんですよ。「選手をとっかえひっかえして、5時間も6時間も練習してるヤツがいる」と噂になって、逆に声をかけられたりして」、なるほど。 日本で基礎が固められてたこともあって、またまた技術がレベルアップしたのを感じて。 Q:改めて「やっぱり海外のほうがいい」と。 市川 日本の体育会系って、なんでも上から下にじゃないですか。ヨーロッパは、自分の思ったことをガンガン言えちゃうフラットな雰囲気で、それが自分にすごく合っていて。あと、変わったヤツでも面白がってくれて、とりあえず相手をしてくれる。海外に来たことで、日本にいた頃のストレスがなくなり、一気に世界が開けてテニスが良くなりました。 「小6の頭までは、塾の友達の家に遊びに行ってゲームしていましたけど、小6の途中で封印しました。 なにかにのめり込むと「これ以外は絶対やっちゃ駄目」みたいなところがあって。勉強だけにフォーカスするために、ゲーム機やソフトもどこかにしまって本当に封印しちゃって」、目的のためには、「ゲーム機やソフトもどこかにしまって本当に封印」とは、自制心がことのほか強いようだ。 みたいな感覚で、そこに僕はハマった」、とは本当にいい刺激になったようだ。 「アカデミーに在籍しているジュニアの子がセルビアで開かれるジュニアの国際大会に出るので、帯同コーチとして一緒に来てくれと。 ちょうど、もう一回ヨーロッパに行こうと考えてたので即「行きます!」って。それが2020年の9月ですね。セルビアってジョコビッチとか強豪を出してる国だし、ジュニアの国際大会にはいろんな国のコーチも集まるじゃないですか。大会の開催中、他の帯同コーチにコンタクトしまくったら、いい人と知り合えて。僕だけセルビアに残って、12月まで彼と練習してました。 成績上位者の選抜クラスに呼ばれるんですけど、そこに順位表に名前が載っているヤツがいるわけです。すでに順位表で名前も点数も知っているから、顔を見て「こいつが、数学がすげえ〇〇か」とか「国語がすごい〇〇って、こいつか」なんて思って。で、そういう子たちが授業でとんでもない問題を解いているのを見て「こいつら、マジでヤベえな」って震えましたね。思わず「どうやって勉強してるの?」と聞いちゃいましたけどね。 もうどいつもこいつもガチ勢すぎて、もはや選手って感じでしたね』、できる子どもたちとの競争を「シューティングゲーム 「開成に合格したときは、嬉しくて親に抱きついたのを覚えていますね。帰りに、秋葉原でプレイステーションを買ってもらって。まぁ、開成には受かったものの、日本一にはなれなかったですけどね。小6の模試で全国の5位より上には行けなかった。 Q:ひょっとして、その上位5人も開成に。 市川 1番から5番勢に会うわけですよ。「こいつらか……この野郎」と思って、中3のなかばまで勉強に燃えていました」、さすが「開成」だ。 「勉強にゲーム性を感じたと。 市川 シューティングゲームみたいな感覚で、そこに僕はハマったんですよ。スポーツとも近くて、相手と対戦する競技ではないけど、陸上みたいに自分で記録を伸ばしていく感じ。で、日本一の成績を取りたいなって。 そこにのめり込んじゃって。勉強自体がどうかじゃなく、席順を良くしたり、点数を上げていくことにすごく夢中になって。ほとんどの生徒は親に勉強をやらされてるけど、やっぱり上に行くほどガチで勉強していて、マジで強いヤツっているんですよ。 「当時の日能研って、毎週やる全国模試みたいなのがあって。2万人ぐらい受けていたのかな。その順位表から各校の上位50人ぐらいが壁に貼り出されて、席順なんかも点数で決められるんです。だから、座っている場所を見ただけで、その子が何位なのかがわかっちゃう。 さらに全国の上位2000番ぐらいの子は冊子に名前が載って、上位50人になると名前が冊子の表紙にも載って。すっごくシビアな競争社会なんです。多くの人が想像するようなガリ勉の極致みたいな世界だけど、それよりもeスポーツに近しい世界なんです」、なるほど。 「両親は教育熱心だったのですか。 市川 ぜんぜんでしたね。スーパーの経営で忙しかったから、親はほとんど家にいなかったですし、子供の教育に目を向ける余裕もなかったというか・・・塾には通わせてもらってました」、「塾」が刺激になったようだ。 文春オンライン「25歳でフリーターからプロテニスへ…全国模試5位、開成ー東大卒の“天才“が歩んだ壮絶な学生時代「ガリ勉の極致みたいな世界だった」テニス選手・市川誠一郎さんインタビュー#1」 ど。 「日本のほうが技術を細やかに教えてくれるなと感じたんです。それで前と違うテニスアカデミーに入って、相変わらず練習しまくりながら技術をとことん学んでいって。) そのアカデミーには2017年から2020年の頭までいて。そこのコーチとトレーナーに、ガッツリ基礎的なところから取り組んでもらって、今まで全然出来なかったのに、2〜3年目あたりのある時から急にボールがしっかり打てるようになったんですよ・・・ペインに行った時に感じた基礎技術の問題がクリアされてきたと感じました。これは大きなブレイクスルーでしたね」、なるほ 「スペイン滞在中に世界ランキング獲得、もしくは帰国後に大会に出て優勝できなかったら全額返済という条件にもしていて。ふたつとも達成できなくて、借金生活となりました。正直、レベル的には日本にいた頃と変わっていませんでしたね・・・根本的な基礎技術の土台が足りませんでした。ヨーロッパの練習はシンプルで実践的なものが多いですが、それ以前の土台がないから積み上がりませんでした」、 太郎君はトップ選手なので、ツアーで家をほぼ空けていて。飼っている猫の面倒も見てほしいからって、猫の世話係の肩書で半年ほど住まわせてもらいました。太郎くんのご家族には本当にお世話になりました』、「ダニエル太郎君が僕のことを面白がってくれて、「家に住んでいいよ」と言ってくれたおかげで、極貧アパートを脱出しました。 太郎君はトップ選手なので、ツアーで家をほぼ空けていて。飼っている猫の面倒も見てほしいからって、猫の世話係の肩書で半年ほど住まわせてもらいました」、なるほど。 僕は10分で飯を食って、すぐコートに出て1人でひたすらサーブ練習して。もう、練習相手がいないときは掃除のおっちゃんに球出しを頼んでました。おっちゃんもいつも練習してる僕を見て応援してくれていたので・・・掃除のおっちゃんに球出ししてもらってるのがバレて注意されて、それをきっかけに「信じられないぐらい練習するクレイジーな日本人」ってことで知られるようになりました。そうしたらダニエル太郎君が僕のことを面白がってくれて、「家に住んでいいよ」と言ってくれたおかげで、極貧アパートを脱出しました。 「別のシェアアパートに移って。電気が点かなかったり、お湯も出なかったりで。冷房もないから窓を開けると、コウモリが飛び込んでくるんですよ。耳をつんざくような鳴き声で。そいつを殺して廊下に叩き出したら、今度はゴキブリがあちこちから湧いて出てくる。そんなとこに暮らしながら、土日も練習しまくって。 みんな午前に2時間、午後に1時間半くらいしか練習しないんですよ。しかもスペインだからシエスタがあって、3時間ぐらい昼寝したり休んだりする。 「数珠つなぎに人や会社を紹介してもらい、資金450万円が集まる・・・スペインのテニスアカデミーに行かせていただきました・・・テニスアカデミーって金持ちのヤツが多いから、月500ユーロするような高い部屋にも住んでいるんですけど、彼の部屋は家賃160ユーロだから月2万円以下。彼に接触して、シェアしました」、たくましい生活力だ。 「テニスに関係する会社という会社すべてにテレアポして、ほとんど全ての友人に、自分が覚悟を決めて「こういう挑戦をするからどうしても助けが必要だ」ということを心の底から直接話して回りました。また、覚悟を示すために、成績のノルマが達成できなかった場合に返金する条件をつけました・・・クラウドファンディングも考えていたけど・・・手数料で20%近く持っていかれちゃう・・・それならば手数料を払ってプラットフォームを利用する必要はないと思い、直接自分でやりました」、なるほど。 「知ってる人すべてに頭を下げました。背に腹は代えられないし、カッコつけてる場合じゃないなって。 だから“開成、東大、25歳からテニス始めました”を、全面的にウリにしました。それまでは、そんなこと言うのは好きじゃなかったんですよ。僕がウリにできるのはそこしかないし、それがなかったら単なるヘタクソなテニス選手なだけですから」、凄い割り切りようだ。 「テニスはヨーロッパで生まれたスポーツで、ヨーロッパが中心です・・・一刻も早くヨーロッパのどこかに行きたかった」、なるほど。 「現代音楽家」から「テニスの世界」とは凄い変身だ。 文春オンライン「「開成・東大の同期は港区のタワマンに…」年収200万円、未経験から世界ランクを獲得した男性(39)が送ったテニス一筋の14年間 テニス選手・市川誠一郎さんインタビュー#3」 「前々からヨーロッパに行きたいなと思っていて。やっぱりテニスは、ヨーロッパで盛んな競技なので、日本を出て勝負がしたかったんですよ・・・自分でスポンサーを探し回って、資金を集めました。 Q:いくら集まりました? 市川 450万円です」、大したものだ。 「僕は極端で、やりたくないことに対しては1分であろうとも時間を使うのがイヤなんですよ。一応、成績は開成中学のトップ10内に入ってたんですけど」、それでも「トップ10内」とは大したものだ。「「BUMP OF CHICKEN」とか出てきた頃で、「Hi-STANDARD」とかJ-POPのバンドを聴いて。そのまま開成高校に上がって、そんなに音楽のことを知ってもないのに社会人の音楽サークルに入ってバンドをやりだしました・・・高校生の当時、音楽で生きていける自信が持ちきれなくて、説得されているうちに「じゃあ、受験する 「土曜日の午後と日曜日はフルで家庭教師と塾の講師を入れて。 家庭教師の時給が良かったので、なんとか生活が成り立っていましたね」、「東京オリンピックへ向けて、身体能力に優れたアスリートを発掘してスポンサーするトライアウトがあって・・・そこで最終に残ったことで、開成から東大、25歳からテニスを始めたキャリアが異色だって日刊スポーツが記事にしてくれたんです。それで用具提供のスポンサーがついて、ちょっとずつ注目されるようになりましたね」、「用具提供のスポンサーがつい」たとは大したものだ。 か」と」、なるほど。 「ジュニアたちの前で「こいつみたいには絶対なるな」と毎日怒鳴られるようになって。5年くらいアカデミーにいたけど、その5年間は毎日心がボロボロで、地獄を見ました」、「その長い5年間に僕の支えやモチベーションとなったのが、平下さんというアシスタントコーチの存在ですね。同い年ぐらいの方で、いつもトレーニングに付き合ってくれて・・・僕は彼に払えるお金もなかったので、すべてボランティアでした。僕が続けられたのは平下さんのおかげです」、これも並外れた熱心さが役立ったさらなる例だ。 大学(その13)(25歳でフリーターからプロテニスへ…全国模試5位、開成ー東大卒の“天才“が歩んだ壮絶な学生時代「ガリ勉の極致みたいな世界だった」テニス選手・市川誠一郎さんインタビュー#1、「俺、人生間違ったわ」「マジで地獄を見た」貯金0でバイト生活…東大卒のエリート(39)はなぜいきなりテニスを始めたのか テニス選手・市川誠一郎さんインタビュー#2、「開成・東大の同期は港区のタワマンに…」年収200万円、 「テニスアカデミー・・・小学生、中学生のジュニアの子たちと打ち合ったけど、彼らはプロを目指してやってきてるので、僕なんかちっとも相手にならないんです。 初日のトレーニングでやる気だけは示そうと思って、ダッシュしまくってたら吐いちゃって。それでも、そこのヘッドコーチが「がんばってる感じは、ジュニアのいい見本になる」と入ることを許してくれました」、これも並外れた熱心さが役立ったさらなる例だ。 「テニスって、雨が降ったらやらないんですよ。滑って危ないから。それでもブンブンやってるから「ちょっとおかしいけど、本気ではあるんだ」と思ってくれたようで、市民大会や県大会で優勝してる会員の方が練習の相手をしてくれるようにもなったんですよ」、これも並外れた熱心さが役立った例だ。 「レッスン代も取らずに毎日練習を見てくれて。 トレーニングにもなるからって、家からリュックを背負って40分ほど走ってクラブに通ってたんですよ。夏に汗だくで走ってたら、オーナーが「使え」って自転車をくれて。テニスシューズもレンタル落ちのものをくれたし、僕を見ていた会員さんがラケットのおさがりもくれて」、熱心さで他人から好意を寄せてもらうのが得意なようだ。 「日本でも、クラブによっては値段の高くない学生会員やヤング会員があって、月1万円ぐらいで入れるところが多いんですよ。月1万円なら、スクールの月謝とあまり変わらないので「こりゃいいや」と」、なるほど。 「パリ留学に尽力してくれた恩師の野口実先生は・・・なんとか呆れる程度の態度で接してくれました。最終的には「誰かに迷惑を掛けなきゃいいんじゃない」と、背中を押してくれて」、よく出来た「先生」だ。 「白黒ハッキリできそうと思えたものが、テニスだったと。 市川 勝つか負けるかに加えて、コネとか関係なし、一生懸命やればやるほど結果が出せる、人間関係を気にしなくていい、とか考えまくっていたら「それって、競技スポーツの世界じゃない?」とハッとして、さらに「競技でも個人競技だ」って」、確かに「テニス」は条件を満たしている。 「現代音楽なんて普通の人が聴いたら「なにこれ?」ってなる音楽ですから。そもそも音楽や芸術って、ハッキリするものではないじゃないですか・・・受験のときみたいに白黒ハッキリする世界に行ったほうがいいじゃん」って考えるようになって。でも「大人の世界で、そんな白黒つけられる場所ってある?」と悩みました」、なるほど。 「就職してサラリーマンになる気なんかまるでなかったし、そういう動機で大学に行ったわけじゃないので。なので、普通にフリーターに。 ホステルのバイト、家庭教師、塾の講師で稼ぎながら、音楽を作ったり、海外を回って音楽を掘ったり。それを1年やって、2年目にパリ留学に向けて動き出したんです」、なるほど。 文春オンライン「「俺、人生間違ったわ」「マジで地獄を見た」貯金0でバイト生活…東大卒のエリート(39)はなぜいきなりテニスを始めたのか テニス選手・市川誠一郎さんインタビュー#2」、 先生にピアノや曲をチェックしてもらって、「これで大丈夫」ってクオリティにまで仕上げて、パリの音楽院に送ったら留学OKが出て。 あとはパリに行くだけだったんですけど、急遽取りやめてテニスを始めるんです」、よく方向転換する姿勢には驚かされる。 「開成高校でギターの授業があって、野口先生はその講師もされていて。大学に入って様々な音楽を知るうちに、実は野口先生が土方巽らが率いた暗黒舞踏という前衛的な現代舞踊の音楽を作っていた音楽家だったことを知り、再び先生を訪れました。実験的というか、聴く人によっては音楽だとすらわからない音楽です・・・パリの音楽院に留学をしようと。留学を認めてもらうには、6曲ぐらい曲を送らないといけないんですよ。 「最初はバンドサークルに入って、バンドをやって。「ジャズもやります」的なサークルだったので、サックスの入ったバンドで歌って・・・東大の講堂にパイプオルガンが置いてあって、同好会もあったので、そこに入って何時間も弾いてましたよ。ピアノを置いた部屋もあったので、夜の21時ぐらいから朝まで弾いてたり。 世界の音楽を追求するといって、ギターだけ持ってあちこちの国を回りましたしね」、なるほど。 「入学してからは古い洋楽を遡って聴いて、ロックに関しては最終的にイギリスのロックが好きになりましたね。東大はジャズのミュージシャンを呼んだ講義もあるので受講して、ジャズがすごく好きになって渋谷のジャズ喫茶にも入り浸って。現代舞踊やバレエの講義もあったので、そこからクラシックとか民族音楽に触れて、パイプオルガンを弾いて、ベルカントってイタリアの伝統的な歌唱法のサークルに入って曲を作って。 そんな感じで、音楽の興味も一気に広がったんですよね」、なるほど。 「理2で入りました。理系の生物系です・・・理3はどんなに頭がよくても落ちることがありえるので。開成のトップ10にいたヤツでも、試験でちょっとミスったら落ちちゃうぐらいですから、そんなリスクは取れなかった。早く大学に入って音楽をしたかったので、浪人なんかしてる場合じゃなかったです」、確実に東大に入るにはやはり「理2」のようだ。
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今日は更新を休むので、明日にご期待を!

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日本郵政(その19)(日本郵政 郵便局の統廃合検討 増田社長「整理が必要」、日本国民は気づいていない「郵便局長組織」のヤバすぎる実態…毎年40億円が吸い上げられていく、日本郵便へ移管開始「ネコポス」終了の前途多難 荷物移管量を当初計画より抑えた「慎重な船出」) [国内政治]

日本郵政については、本年3月26日に取上げた。今日は、(その19)(日本郵政 郵便局の統廃合検討 増田社長「整理が必要」、日本国民は気づいていない「郵便局長組織」のヤバすぎる実態…毎年40億円が吸い上げられていく、日本郵便へ移管開始「ネコポス」終了の前途多難 荷物移管量を当初計画より抑えた「慎重な船出」)である。

先ずは、5月11日付け日経新聞「日本郵政、郵便局の統廃合検討 増田社長「整理が必要」」を紹介しよう。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA110UZ0R10C23A5000000/
・『日本郵政の増田寛也社長は日本経済新聞のインタビューで、約2万4000カ所ある郵便局に関し2040年ごろをめどに「整理が必要になる」と述べた。郵便物や人口が減る中で、全国一律での提供が求められる郵便などの「ユニバーサルサービス」のあり方を模索する。 日本郵政は郵政民営化で07年に発足した。国内の郵便局はその際から250ほどしか減っていない。郵便物などの取扱数はインターネットの広がりなどで、ピーク時の01年度の267億通から22年度は185億通と3割減った。 日本郵便の業績も低迷する。連結営業利益はピークの19年3月期に比べ、22年3月期は19%減り、1482億円になった。 郵政民営化法は日本郵政に対し、郵便や金融について郵便局を窓口とし全国一律・同水準のユニバーサルサービスの提供を義務付けている。 地方を中心に郵便局の減少に慎重な政治圧力もあり、日本郵政は本格的な統廃合の可能性に言及してこなかった。 増田氏は抜本的な統廃合を検討する意向を示した。「銀座など都心では賃料などのコストがかなり高いところがある。地方だけでなく都心も整理しなければならない」と語った。 統廃合の時期は「40年が一つのタイミングになる」と述べ、30年代後半から本格検討が必要との認識を示した。「ユニバーサルサービスの水準は維持した上で、新たな形でサービス改善を実感してもらう」と強調した。 コンビニエンスストアのように郵便局での物販を強化したり、自動運転やドローンなどのデジタル化で物流業務の効率を高めたりすることを想定する。店舗や銀行が少ない地域で郵便局がなくなると反発が出る可能性もある。増田氏は「政府や自治体、地域代表の政治家が議論して考えていく必要がある」と提起した。 見直し表明の背景にあるのは日本郵政グループの収益構造のいびつさだ。日本郵政の22年3月期の連結経常利益9914億円の85%はゆうちょ銀行とかんぽ生命保険によるものだ。 金融2社は日本郵便に対し、預貯金や保険販売などの業務委託費を払うほか、郵便のネットワーク維持を名目とした「交付金」を負担している。22年3月期のこれらの支払いは8000億円を超えた。 日本郵政はかんぽ商品の不適切な販売の問題などを受け、増田氏のもとで再建中だ。これまでのところ大胆なコスト削減や、新たな成長の柱の確立はできていない。 海外では物流・郵政の民営化が着実に進む例もある。独ドイツポストは民営化を経て、2000年に株式を上場した。02年には世界的な物流大手のDHLインターナショナルを完全子会社化するなどM&A(合併・買収)をテコに成長している。 日本郵政も26年3月期までの中期経営計画に戦略的なIT(情報技術)に4300億円程度、不動産に5000億円程度を投資すると盛り込んだ。M&Aなどにも最大1兆円程度を投じる方針だ。増田氏は「成長に向けては自前主義ではない」と明言し、業種を超えた提携や出資に意欲を示す。 郵政民営化から10月で16年になる。ユニバーサルサービスの一つの固定電話がかつて事業の主体だったNTTはインターネットのネットワークなどに軸足を移してきた。郵政と同様に金融で稼ぐ収益を実業に回してきた各地の農協も統廃合が進む。競争環境の変化や、人口減少を見据えた改革が日本郵政にも必要になっている。 増田氏は聖域となっていた分野の改革に着手すると踏み込んだ。実現すれば大きな転換となる。中長期の課題となるだけに改革を着実に進めるしかけも重要になる』、「郵政民営化で07年に発足した。国内の郵便局はその際から250ほどしか減っていない。郵便物などの取扱数はインターネットの広がりなどで、ピーク時の01年度の267億通から22年度は185億通と3割減った。 日本郵便の業績も低迷する。連結営業利益はピークの19年3月期に比べ、22年3月期は19%減り、1482億円になった」、「郵政民営化法は日本郵政に対し、郵便や金融について郵便局を窓口とし全国一律・同水準のユニバーサルサービスの提供を義務付けている。 地方を中心に郵便局の減少に慎重な政治圧力もあり、日本郵政は本格的な統廃合の可能性に言及してこなかった」、「増田氏は抜本的な統廃合を検討する意向を示した・・・統廃合の時期は「40年が一つのタイミングになる」と述べ、30年代後半から本格検討が必要との認識を示した。「ユニバーサルサービスの水準は維持した上で、新たな形でサービス改善を実感してもらう」と強調した」、「見直し表明の背景にあるのは日本郵政グループの収益構造のいびつさだ。日本郵政の22年3月期の連結経常利益9914億円の85%はゆうちょ銀行とかんぽ生命保険によるものだ。 金融2社は日本郵便に対し、預貯金や保険販売などの業務委託費を払うほか、郵便のネットワーク維持を名目とした「交付金」を負担している。22年3月期のこれらの支払いは8000億円を超えた」、「日本郵政も26年3月期までの中期経営計画に戦略的なIT(情報技術)に4300億円程度、不動産に5000億円程度を投資すると盛り込んだ。M&Aなどにも最大1兆円程度を投じる方針だ。増田氏は「成長に向けては自前主義ではない」と明言し、業種を超えた提携や出資に意欲を示す」、「増田氏は聖域となっていた分野の改革に着手すると踏み込んだ。実現すれば大きな転換となる。中長期の課題となるだけに改革を着実に進めるしかけも重要になる」、郵政の改革への最大の抵抗勢力である特定郵便局の局長組織(次の記事)による政治家を巻き込んだ抵抗もあるため、増田氏の改革は難航せざるを得ないようだ。

次に、6月5日付け現代ビジネス「日本国民は気づいていない「郵便局長組織」のヤバすぎる実態…毎年40億円が吸い上げられていく」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/111188?imp=0
・『「全特」とも呼ばれる郵便局の裏組織・全国郵便局長会。各地方、地区の郵便局長会を土台とした郵便局長たちによる上意下達のピラミッド型組織だが、その実態は明らかになっていない。そのような組織の“闇”を暴き出した新刊『郵便局の裏組織』より、内部での異様なカネの流れを明らかにしていこう』、興味深そうだ。
・『マンション投資にまで乗り出した  広島駅から歩いて10分ほどの国の名勝「縮景園」。広島藩の初代藩主・浅野長晟が造らせた大名庭園を見下ろすように、地上13階建てのマンションは隣接している。 2016年築で、ワンルーム24戸と2LDK12戸の計36戸。賃料は30平米台のワンルームが7万〜9万円台。60平米弱の2LDKで14万〜15万円台が中心で、典型的な投資用1棟マンションだ。 所有しているのは、一般財団法人である中国地方郵便局長協会だ。所在地や役員は、任意団体である中国地方郵便局長会とほぼ同じで、法人格のない局長会に代わり、不動産保有や積立金運用などによる収益事業を行っている。いわゆる「サイフ」役の組織である。 マンションの登記簿謄本によると、中国地方郵便局長協会が山口銀行から、計7億円を年0.7%の金利で借りていた。2021年末時点では満室で、賃料収入は年間4837万円。借入利息や管理委託費、固定資産税で年1千万円超の出費があるものの、法人による不動産投資としては十分な利回りが見込めそうだ。 中国地方郵便局長協会がマンション経営に乗り出したのは、「10年後の収益事業に資する目的」だと内部文書に記されている。協会自体の目的は「郵便局の業務の円滑な運営及び会員相互の扶助に関する事業」によって「郵政事業の発展に寄与・地域貢献活動を推進」すると定款で定めている。 マンション投資が郵政事業にどう資するかは不明だが、超低金利環境が続くなか、局長向けの融資だけでは稼ぎにくくなったため、新たな収益源の開拓を「不動産投資」に見いだしたとみられる。) マンション投資に乗り出した事例は、ほかにもある。 九州郵便局長協会も、熊本市の中心部にある熊本大学病院のそばに、投資用マンション1棟を保有している。2001年築の6階建てで、九州郵便局長協会が2019年9月に無担保で購入したものだ。 1階には歯科クリニックが入居、40平米台の1LDKを中心に十数戸あり、2021年3月期には計1460万円の家賃収入があった。修繕費などの371万円を引いても1089万円の利益があり、不動産投資としては好調だ。 自社ビルでのテナント経営は、古くから続く。全国郵便局長会(全特)が財団法人を介して東京・六本木に全特ビルを所有するように、全国に12ある地方会のうち、少なくとも四つの地方会がそれぞれの拠点に自前のビルを建てて保有している。ビル内には郵便局を入居させるなどして、賃料収入を得ている。 中国地方郵便局長協会の場合、冒頭のマンションからもほど近い一等地に6階建ての自社ビル「中特会館」を持ち、1階に入居する郵便局も含めて、年4千万円超のテナント収入を得ていた。1970年竣工で電気系統機器の故障や漏水が続発したため、2023年に解体して「中特ビル(仮称)」を建て直す。新たなビルにも郵便局を置こうと画策しており、中長期の安定収益を見込んでいる。 局長組織の潤沢な投資マネー。元手となるのは、会員たちの身銭である』、「マンションの登記簿謄本によると、中国地方郵便局長協会が山口銀行から、計7億円を年0.7%の金利で借りていた。2021年末時点では満室で、賃料収入は年間4837万円。借入利息や管理委託費、固定資産税で年1千万円超の出費があるものの、法人による不動産投資としては十分な利回りが見込めそうだ」、ただ、借入金利が上がれば、「利回り」は急低下するリスクを抱えている。「1970年竣工で電気系統機器の故障や漏水が続発したため、2023年に解体して「中特ビル(仮称)」を建て直す。新たなビルにも郵便局を置こうと画策しており、中長期の安定収益を見込んでいる。 局長組織の潤沢な投資マネー。元手となるのは、会員たちの身銭である」、なるほど。
・『酷熱の河川敷でソフトボール  2019年9月7日、40度近い残暑が続いた東京・八王子の河川敷。青空にときおり打ち上がる白球を追いかけながら、ユニフォーム姿の男たちが歓声を上げていた。 都内16のソフトボールチームが全国大会への出場をかけて争うトーナメント戦。六つの野球グラウンドで、敗者復活や3位決定戦も含めて1日で22試合の熱戦が繰り広げられた。試合の参加者だけで200人規模。応援団や審判も入れると300人以上が週末の河川敷に集まり、汗を流した。ほぼ全員が局長である。 ソフトボール大会は、組織の結束力や個人の忠誠心を試す重要行事の一つ。多くの局長は、強制参加だ。県単位で予選を開き、本戦の地方大会で勝者を決める地方が多い。地方大会を勝ち抜くと全国大会に招かれ、大会前夜にはホテルのホールで大宴会を開く。 1990年から続く恒例行事で、最近は新型コロナの影響で中止されてきたが、2022年から徐々に再開し、秋には沖縄県で全国大会を催した(試合は雨に見舞われ、ジャンケン大会に代わった)。 2019年の東京地方会では、出場者はみな地区会の名前が入ったユニフォームを身にまとい、運営スタッフのTシャツも地方大会のためにデザインされたものだ。計6面の野球グラウンドにそれぞれ数人の審判員を配置し、バットやグローブといった備品もそろえる。 ソフトボール大会にかかる費用は、局長限定のお遊びだけに、さすがに日本郵便の経費をあてるわけにもいかず、会員から徴収するお金が元手になる。うっかり全国大会に勝ち抜くと、臨時の遠征費まで払わされる。こうして費用を積み上げていくと、会員の負担がいかに重たいかが浮かび上がる』、「ソフトボール大会は、組織の結束力や個人の忠誠心を試す重要行事の一つ。多くの局長は、強制参加だ。県単位で予選を開き、本戦の地方大会で勝者を決める地方が多い。地方大会を勝ち抜くと全国大会に招かれ、大会前夜にはホテルのホールで大宴会を開く。 1990年から続く恒例行事で、最近は新型コロナの影響で中止されてきたが、2022年から徐々に再開し、秋には沖縄県で全国大会を催した」、「ソフトボール大会にかかる費用は、局長限定のお遊びだけに、さすがに日本郵便の経費をあてるわけにもいかず、会員から徴収するお金が元手になる。うっかり全国大会に勝ち抜くと、臨時の遠征費まで払わされる。こうして費用を積み上げていくと、会員の負担がいかに重たいかが浮かび上がる』、「ソフトボール大会は、組織の結束力や個人の忠誠心を試す重要行事の一つ。多くの局長は、強制参加だ。県単位で予選を開き、本戦の地方大会で勝者を決める地方が多い。地方大会を勝ち抜くと全国大会に招かれ、大会前夜にはホテルのホールで大宴会を開く」、なるほど。
・『巨額の集金システム   局長1人が組織のために払わされる費用の総額は、ヒラの局長でも年20万円を優に超える。積立金や保険の支払いなどを足せば、金額はもっと大きい。臨時の出費も少なくなく、部会長や地区役員といった役職に就くと徴収額はさらに増える。局長の数で単純計算すれば、少なく見積もっても年40億円超が全国で安定的に吸い上げられるシステムになっている。 年収が額面ベースで800万円程度の40代の局長を事例に、局長会活動の費用負担を概算で示すと、下記の表のようになる。 局長が負担するお金はピラミッド組織の各階層から徴収される会費だけで、年20万円前後に上る。多くの局長は就任してまもなく、局長会主催の「新任局長研修」といった場で銀行口座の引き落とし伝票を書かされる。勝手がわからないうちに「そういうものだ」と思い込ませ、自動引き落としのシステムに局長の口座をはめ込んでおく。 任意団体である郵便局長会には法人格がないため、契約を交わしたり、不動産物件を保有したりするときには、一般財団法人の地方郵便局長協会が使われる。局長から集めた積立金を元手に、局長向けの融資で利息を稼ぎ、会館やマンションといった不動産事業によって賃料収入を得る。積立金は、局長の退職時や局舎の建設時などに払い出される。 局長協会が提供する団体共済も、各地の地方会、地区会でノルマ化されている例が多い。) 局長1人につき自動車と火災、生命共済などで1件ずつ加入させるのが鉄則で、地方会事務局が地区会ごとの達成率をまとめた「推進管理表」や「未加入者リスト」を作成。総務担当の局長会役員が部会長を通じて未加入の局長に圧力をかけて回る。新米の局長には、郵便局の提携保険を解約させてでも乗り換えさせる。財政難の協会ほどノルマや進捗管理が厳しくなる。 郵政退職者連盟は、地域ごとで異なる名前の地方組織があり、現役の局長も加入させられる。選挙で協力してもらうOBへの義理立てで、毎年恒例の総会や旅行、マージャンなどに付き合う。旅行や総会に一定数の局長を参加させ、積立金や臨時出費を請求されるケースもある。 全特の元幹部が役員を務める法人が扱う地方の名産品を、郵便局の物販サービスで扱わせたり、組織を通じて局長に買わせたりしている例もある。元全特会長の個人会社が扱う青森のリンゴジュース、元副会長が手がける北海道の夕張メロンあたりが典型だ。 局長会では「防災士」の資格取得も推進している。毎年一定数の局長が1人数万円をかけて資格を得ている。費用の一部を部会費などで補助する場合もあるが、多くが局長の負担であることに変わりはない。 さらに、全特が例年5月に開く総会に参加させられるときも、そのつど10万〜20万円の臨時出費が課せられる。 部会や地区会レベルでは、強制参加の懇親行事や飲み会が数多い。局長会の会員として組織のために負担する費用は、ことのほか重い』、「局長1人が組織のために払わされる費用の総額は、ヒラの局長でも年20万円を優に超える。積立金や保険の支払いなどを足せば、金額はもっと大きい。臨時の出費も少なくなく、部会長や地区役員といった役職に就くと徴収額はさらに増える。局長の数で単純計算すれば、少なく見積もっても年40億円超が全国で安定的に吸い上げられるシステムになっている。 年収が額面ベースで800万円程度の40代の局長を事例に、局長会活動の費用負担を概算で示すと、下記の表のようになる」、表によれば、年間24万円程度。「さらに、全特が例年5月に開く総会に参加させられるときも、そのつど10万〜20万円の臨時出費が課せられる。 部会や地区会レベルでは、強制参加の懇親行事や飲み会が数多い。局長会の会員として組織のために負担する費用は、ことのほか重い」、かなり重い負担のようだ。

第三に、9月30日付け東洋経済オンライン「日本郵便へ移管開始「ネコポス」終了の前途多難 荷物移管量を当初計画より抑えた「慎重な船出」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/704933
・『10月から、日本郵政グループとヤマトホールディングス(HD)の協業が本格的にスタートする。 カタログなどをポストに投函して送る「クロネコDM便」は2024年1月に終了し「クロネコゆうメール」に変わる。小型荷物を配達先のポストに投函する「ネコポス」も2023年10月から順次移管し、「クロネコゆうパケット」に変わる。ヤマトは集荷のみ行い、配達業務を日本郵便に委託する仕組みだ。 両社は熾烈なシェア争いを繰り広げてきたが、ヤマトの投函商品は仕分けなどが主力の「宅急便」と別の仕組みだった。バイクを軸に全国規模で小回りの利く態勢を整えることも難しく、日本郵便のような「精度の高さや安定性は、真似してもたどり着けなかった」(ヤマトHDの長尾裕社長)』、「両社は熾烈なシェア争いを繰り広げてきたが、ヤマトの投函商品は仕分けなどが主力の「宅急便」と別の仕組みだった。バイクを軸に全国規模で小回りの利く態勢を整えることも難しく、日本郵便のような「精度の高さや安定性は、真似してもたどり着けなかった」、なるほど。
・『クロネコメイト契約終了後の仕事は?  ヤマトは配達業務の移管にあたり、クロネコDM便の配達を担ってきた個人事業主・クロネコメイトの契約終了(最長で2024年度末)に向けた対応を進めている。約3万人が対象とされる。個別に数万円の謝礼金(就労期間などいくつか条件あり)を支払うほか、10月の早い段階で就職支援サイトを立ち上げ、メイト向けに紹介する。 複数メディアがメイトの契約終了について報じているが、6月の協業発表時にはすでに決まっていたことだ。長尾社長も会見で「次のキャリアをどう作っていくか、全力でサポートしていく」と説明していた。 ただし移管にあたり、難題を抱えているのも事実だ。ヤマトが再就職を支援しても、メイトが同じ条件の仕事を見つけるのは難しそうだ。 メイトは比較的小さなエリアで配達を担当している。配達には主に原動機付き自転車などを使い、徒歩で回るケースもある。一部ネコポスも併行して配達するメイトもいる。業務委託契約のため、隙間時間を活用して配達できるのも大きなメリットだ。) ヤマトは日本郵便の仕事もサイトを通じて紹介する方針だが、日本郵便でDM便を担うのは社員だ。正社員と期間雇用社員(時給制の契約社員)が配達している。日本郵便はヤマトとの協業に伴い、仕分け・配達要員を募集する方針だが「個人委託ではなく期間雇用社員の募集を行い、面接等で選考の上、採用する」と説明する。 日本郵便では業務委託で「自由な時間に好きなだけ働く」という条件は準備されていない。ヤマトはメイトに対し、丁寧な説明とともに、できるだけ希望に沿った仕事を紹介するサポートが求められる。 一方、10月からはネコポスの移管がスタートする。こちらも委託会社との調整が必要になる。ネコポスはヤマトのセールスドライバーを中心に配達しているが、EC事業者向けサービス「EAZY(イージー)」の配達を担う委託会社のドライバーも運んでいる。 ネコポスがなくなる分、委託会社には追加でイージーの配送を依頼するなど荷物量の調整が必要になる。ある下請け業者は「イージーを配送しながらネコポスも運んできたのに、なくなってしまうのは困る」と不満を口にする。委託会社と良好な関係を維持していくことも課題だろう』、「10月からはネコポスの移管がスタートする。こちらも委託会社との調整が必要になる。ネコポスはヤマトのセールスドライバーを中心に配達しているが、EC事業者向けサービス「EAZY(イージー)」の配達を担う委託会社のドライバーも運んでいる。 ネコポスがなくなる分、委託会社には追加でイージーの配送を依頼するなど荷物量の調整が必要になる。ある下請け業者は「イージーを配送しながらネコポスも運んできたのに、なくなってしまうのは困る」と不満を口にする。委託会社と良好な関係を維持していくことも課題だろう」、なるほど。
・『「スモールスタート」へ移管見直し  今後の焦点は日本郵便への移管を順調に進めることに尽きる。日本郵政の増田寛也社長は「配達までの日数など、品質を落とさないようにする。量が非常に増えるので、オペレーションをきちんと組めるよう、ヤマトのサポートを受けてやっていく」と語る。 ネコポスは当初、10月に総量20%の荷物から移管する計画だったが、「スモールスタートで確実に実施する観点からエリアを限定し、約13%の引き受けから始める」(日本郵便)と見直した。今後は段階的に引き受けを進め、2025年に完全移管する見通しだ。 日本郵便は社内に「ヤマト協業実行推進室」を設置し、ヤマトと定期的に打ち合わせをこなしてきた。本社と支社間でも毎週会議を開き、課題の洗い出しや進捗を確認している。物量の増加に合わせて、人材確保などネットワークの増強を進められるかが重要ポイントだ。 ヤマトも業務を委託するとはいえ、自社ブランドのサービスであることに変わりはない。移管でトラブルが発生すればイメージダウンにつながるおそれもある。サービス品質を保つために、日本郵便と密に連携していくことが欠かせない』、「ネコポスは当初、10月に総量20%の荷物から移管する計画だったが、「スモールスタートで確実に実施する観点からエリアを限定し、約13%の引き受けから始める」(日本郵便)と見直した。今後は段階的に引き受けを進め、2025年に完全移管する見通しだ」、「ヤマトも業務を委託するとはいえ、自社ブランドのサービスであることに変わりはない。移管でトラブルが発生すればイメージダウンにつながるおそれもある。サービス品質を保つために、日本郵便と密に連携していくことが欠かせない」、「移行」が円滑に進んでほしいものだ。 
タグ:「1970年竣工で電気系統機器の故障や漏水が続発したため、2023年に解体して「中特ビル(仮称)」を建て直す。新たなビルにも郵便局を置こうと画策しており、中長期の安定収益を見込んでいる。 局長組織の潤沢な投資マネー。元手となるのは、会員たちの身銭である」、なるほど。 「マンションの登記簿謄本によると、中国地方郵便局長協会が山口銀行から、計7億円を年0.7%の金利で借りていた。2021年末時点では満室で、賃料収入は年間4837万円。借入利息や管理委託費、固定資産税で年1千万円超の出費があるものの、法人による不動産投資としては十分な利回りが見込めそうだ」、ただ、借入金利が上がれば、「利回り」は急低下する。 「両社は熾烈なシェア争いを繰り広げてきたが、ヤマトの投函商品は仕分けなどが主力の「宅急便」と別の仕組みだった。バイクを軸に全国規模で小回りの利く態勢を整えることも難しく、日本郵便のような「精度の高さや安定性は、真似してもたどり着けなかった」、なるほど。 リスクを抱えている。 「ネコポスは当初、10月に総量20%の荷物から移管する計画だったが、「スモールスタートで確実に実施する観点からエリアを限定し、約13%の引き受けから始める」(日本郵便)と見直した。今後は段階的に引き受けを進め、2025年に完全移管する見通しだ」、「ヤマトも業務を委託するとはいえ、自社ブランドのサービスであることに変わりはない。移管でトラブルが発生すればイメージダウンにつながるおそれもある。 東洋経済オンライン「日本郵便へ移管開始「ネコポス」終了の前途多難 荷物移管量を当初計画より抑えた「慎重な船出」」 年収が額面ベースで800万円程度の40代の局長を事例に、局長会活動の費用負担を概算で示すと、下記の表のようになる」、表によれば、年間24万円程度。「さらに、全特が例年5月に開く総会に参加させられるときも、そのつど10万〜20万円の臨時出費が課せられる。 部会や地区会レベルでは、強制参加の懇親行事や飲み会が数多い。局長会の会員として組織のために負担する費用は、ことのほか重い」、かなり重い負担のようだ。 「10月からはネコポスの移管がスタートする。こちらも委託会社との調整が必要になる。ネコポスはヤマトのセールスドライバーを中心に配達しているが、EC事業者向けサービス「EAZY(イージー)」の配達を担う委託会社のドライバーも運んでいる。 ネコポスがなくなる分、委託会社には追加でイージーの配送を依頼するなど荷物量の調整が必要になる。ある下請け業者は「イージーを配送しながらネコポスも運んできたのに、なくなってしまうのは困る」と不満を口にする。委託会社と良好な関係を維持していくことも課題だろう」、なるほど。 「ソフトボール大会は、組織の結束力や個人の忠誠心を試す重要行事の一つ。多くの局長は、強制参加だ。県単位で予選を開き、本戦の地方大会で勝者を決める地方が多い。地方大会を勝ち抜くと全国大会に招かれ、大会前夜にはホテルのホールで大宴会を開く。 1990年から続く恒例行事で、最近は新型コロナの影響で中止されてきたが、2022年から徐々に再開し、秋には沖縄県で全国大会を催した」、 日経新聞「日本郵政、郵便局の統廃合検討 増田社長「整理が必要」」 「局長1人が組織のために払わされる費用の総額は、ヒラの局長でも年20万円を優に超える。積立金や保険の支払いなどを足せば、金額はもっと大きい。臨時の出費も少なくなく、部会長や地区役員といった役職に就くと徴収額はさらに増える。局長の数で単純計算すれば、少なく見積もっても年40億円超が全国で安定的に吸い上げられるシステムになっている。 サービス品質を保つために、日本郵便と密に連携していくことが欠かせない」、「移行」が円滑に進んでほしいものだ。 なるほど。 「ソフトボール大会にかかる費用は、局長限定のお遊びだけに、さすがに日本郵便の経費をあてるわけにもいかず、会員から徴収するお金が元手になる。うっかり全国大会に勝ち抜くと、臨時の遠征費まで払わされる。こうして費用を積み上げていくと、会員の負担がいかに重たいかが浮かび上がる』、「ソフトボール大会は、組織の結束力や個人の忠誠心を試す重要行事の一つ。多くの局長は、強制参加だ。県単位で予選を開き、本戦の地方大会で勝者を決める地方が多い。地方大会を勝ち抜くと全国大会に招かれ、大会前夜にはホテルのホールで大宴会を開く」、 新刊『郵便局の裏組織』 現代ビジネス「日本国民は気づいていない「郵便局長組織」のヤバすぎる実態…毎年40億円が吸い上げられていく」 「郵政民営化で07年に発足した。国内の郵便局はその際から250ほどしか減っていない。郵便物などの取扱数はインターネットの広がりなどで、ピーク時の01年度の267億通から22年度は185億通と3割減った。 日本郵便の業績も低迷する。連結営業利益はピークの19年3月期に比べ、22年3月期は19%減り、1482億円になった」、 だ抵抗もあるため、増田氏の改革は難航せざるを得ないようだ。 「日本郵政も26年3月期までの中期経営計画に戦略的なIT(情報技術)に4300億円程度、不動産に5000億円程度を投資すると盛り込んだ。M&Aなどにも最大1兆円程度を投じる方針だ。増田氏は「成長に向けては自前主義ではない」と明言し、業種を超えた提携や出資に意欲を示す」、「増田氏は聖域となっていた分野の改革に着手すると踏み込んだ。実現すれば大きな転換となる。中長期の課題となるだけに改革を着実に進めるしかけも重要になる」、郵政の改革への最大の抵抗勢力である特定郵便局の局長組織(次の記事)による政治家を巻き込ん 「ユニバーサルサービスの水準は維持した上で、新たな形でサービス改善を実感してもらう」と強調した」、「見直し表明の背景にあるのは日本郵政グループの収益構造のいびつさだ。日本郵政の22年3月期の連結経常利益9914億円の85%はゆうちょ銀行とかんぽ生命保険によるものだ。 金融2社は日本郵便に対し、預貯金や保険販売などの業務委託費を払うほか、郵便のネットワーク維持を名目とした「交付金」を負担している。22年3月期のこれらの支払いは8000億円を超えた」、 「郵政民営化法は日本郵政に対し、郵便や金融について郵便局を窓口とし全国一律・同水準のユニバーサルサービスの提供を義務付けている。 地方を中心に郵便局の減少に慎重な政治圧力もあり、日本郵政は本格的な統廃合の可能性に言及してこなかった」、「増田氏は抜本的な統廃合を検討する意向を示した・・・統廃合の時期は「40年が一つのタイミングになる」と述べ、30年代後半から本格検討が必要との認識を示した。 (その19)(日本郵政 郵便局の統廃合検討 増田社長「整理が必要」、日本国民は気づいていない「郵便局長組織」のヤバすぎる実態…毎年40億円が吸い上げられていく、日本郵便へ移管開始「ネコポス」終了の前途多難 荷物移管量を当初計画より抑えた「慎重な船出」) 日本郵政
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日本の政治情勢(その68)(「エッフェル姉さん」松川るい氏 “議員の資質”が疑われる根本問題を元官僚が指摘<、歴代総理より一流企業の総合職のほうが高学歴…日本の政治家が「海外では考えられない低学歴」になったワケ 「東大法学部卒の総理大臣」は30年間いない、杉田水脈氏の「人権侵犯」認定で…国連演説で「人間の尊厳」を唱えた岸田首相に怒りの矛先・・・札幌法務局は「人権侵犯の事実があった」と認定) [国内政治]

日本の政治情勢については、8月19日に取上げた。今日は、(その68)(「エッフェル姉さん」松川るい氏 “議員の資質”が疑われる根本問題を元官僚が指摘<、歴代総理より一流企業の総合職のほうが高学歴…日本の政治家が「海外では考えられない低学歴」になったワケ 「東大法学部卒の総理大臣」は30年間いない、杉田水脈氏の「人権侵犯」認定で…国連演説で「人間の尊厳」を唱えた岸田首相に怒りの矛先・・・札幌法務局は「人権侵犯の事実があった」と認定)である。

先ずは、9月1日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した室伏政策研究室代表・政策コンサルタントの室伏謙一氏による「「エッフェル姉さん」松川るい氏、“議員の資質”が疑われる根本問題を元官僚が指摘」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/328396
・『松川るい参院議員を団長とする自民党女性局によるフランス視察について、多くの国民からの批判が殺到している。一方で、「この程度はまだいい方だ」とか「ちゃんと成果はあったはずだ」といった擁護の声も少ないながらも聞こえてくる。本件について筆者は批判側であるが、怒りに任せた批判のための批判では、何が本当に問題なのかが分からなくなり、視察や調査などのための海外出張が一律に萎縮することになりかねないことが懸念される。そこで、自らの経験も踏まえながら、問題の本質を整理してみた』、興味深そうだ。
・『議員としての矜持が疑われる軽率な行動  本件は、エッフェル塔の前で、松川るい参院議員らがエッフェル塔のようなポーズを取った写真をSNSに掲載したことに端を発する。「これではまるで観光旅行ではないか」「自費での旅行ならいざ知らず、公費も原資となった視察出張で堂々と観光とは何事か」といった批判が一気に集まった。  その後、写真はSNSから削除されたが、国民の怒りは収まらず、それどころか謝罪なき、言い訳がましい釈明が国民の怒りに油を注ぐことになり、さらに、すっぱ抜かれた行程表により、全行程3泊5日のうち、実際の職務(研修という名目になっている)に充てられた時間はたった6時間で、シャンゼリゼ通りでの2時間のショッピングの時間も確保されていたことも明らかになり、収拾がつかない状況になっている。 この問題の本質は何か?  国会議員の出張であるにもかかわらず、さも観光に行ったかのような写真をSNSに掲載した軽率さが第一の問題である。 国会議員がSNSや自らの公式サイトなどに写真を掲載するとしても、国会での質疑の様子や、関係団体との懇談や要望を受けたときの様子、行事に参加した際の写真、海外であれば訪問先の行政機関の長や政治家と一緒に撮った写真である。国民・有権者に対して自らの熱心な仕事ぶりをアピールする絶好の機会なのだから当然であろう。 実際に撮影していたとしても、観光写真の類いは掲載しないのが当然である。議員としての矜持が疑われかねないし、実際、松川議員の地元選挙区では、それが疑われ始めているようだ。 仮にこれを民間企業に置き換えてみても、どんな事業を進めているのか、どんなクライアントと仕事をしているのか、提携先はどこなのかなどを知られることになりかねないので、仕事関連の写真のSNSへの掲載は厳に慎むのが今や当たり前である。無論、政治家同様に何かをアピールしたい場合は掲載することもあり得るが、それは話がまとまって公表可能となった段階の話である。  なお、この話を第一の問題として持ってきたのは、これが発端であるということに加えて、最低限認識されて当然のことだからである』、「観光写真の類いは掲載しないのが当然である。議員としての矜持が疑われかねないし、実際、松川議員の地元選挙区では、それが疑われ始めているようだ」、なるほど。
・『海外出張における観光はどこまで許されるか  第二の問題は、当初からの行程において、職務(研修)が半分以下、観光的日程が半分以上であったことである。 出張である以上、「観光する時間が少しでもあるのはまかりならん」とまではいえまい。せっかく行ったのだから、朝の時間を利用して宿舎から徒歩で行ける範囲内で名所・旧跡を見に行くとか、ちょっとした買い物をするとか、そうした隙間時間での観光的な行動まで禁止するのはやりすぎだろう。 要するに、出張は職務が中心なのだから、数時間も確保するような観光的な日程はそもそも入れてはいけないということだ。行程表に観光日程があるようでは、職務の時間があったとしても「職務は名目にすぎず、本当の目的は観光なのではないのか」と批判されても仕方があるまい。 繰り返すが、海外出張に行った際に、観光的な行動は一切してはいけないというのではなく、観光するのであれば、あくまでも時間があるときに付随的に行うものだということだ。 筆者が国家公務員として最後に海外出張に行ったのが、まさに今回問題になったフランスとベルギーであったが、フランスでは在日フランス大使館のご好意もあり、午前午後とみっちりヒアリングなどの日程を入れることができた。 また、ベルギーでの目的はEU本部でのヒアリングと日本の制度の紹介であったが、アポは午前中だったのでパリから早朝の特急でブリュッセルに向かい、午後、帰りの電車までの時間、多少ブリュッセル市内を見て回った。とはいえ、その半分は、昼食および裁判所見学による資料集めに費やしたのだが。 パリでも、調査終了後、隙間時間を見つけて近くの美術館を短時間、駆け足で訪れることもあったが、できる観光はその程度。また別の機会で、海外での国際会議に出席する幹部に随行した際は、会議開催中の隙間時間はほぼゼロで、宿舎のホテルの周辺を多少散歩する程度だった。松川議員がかつて在籍していた外務省でも、こうしたことは当たり前だと思う』、「出張は職務が中心なのだから、数時間も確保するような観光的な日程はそもそも入れてはいけないということだ。行程表に観光日程があるようでは、職務の時間があったとしても「職務は名目にすぎず、本当の目的は観光なのではないのか」と批判されても仕方があるまい」、その通りだ。
・『自民党女性局のフランス視察は明確な目的が設定されていたのか  筆者の考えに対し、「いやいや国費の出張なのだから、少しでも観光するなどあってはならない」と主張する方もおられるかもしれない。 言わんとすることは分からないでもない。だが、目的は職務の遂行であってその目的が達成されれば、その目的にかなうような日程が組まれていればよく、隙間時間や帰国便までの余裕時間も何もするなというのは、少々極端すぎるのではないか。 いずれにせよ、今回の自民党女性局のフランス視察は、職務の遂行という目的が達成されたのかを問題にする以前に、行程表から考えるに、そもそも目的が明確に設定されていたのか、ということである。 筆者は前述のフランス・ベルギー出張の結果を報告書として所属部局内で共有するとともに、外部専門誌(『国際商事法務』)や、当時所属していた総務省の外局である公害等調整委員会の広報誌にその概要を、一緒に出張した課長級の方との共著という形式で、連名で執筆・掲載したが、そこには、出張の目的と手段(ヒアリング先など)と得られた成果について記載してある。 これは筆者に限った話ではなく、国家公務員による調査などの海外出張であれば当然であるので、ぜひさまざまな報告書を参照していただきたいと思うが、今回の自民党女性局出張の場合はどうであろうか。 行程表に記載された観光的日程について、例えばショッピングが目的であれば、手段はシャンゼリゼ通りの店舗を訪れることであり、得られた成果はそこで購入したものということになる。この日程についてはどう報告書などに記載してあるのだろうか。 海外出張が必要であれば、国会議員、地方議員にかかわらず、大いに行っていただきたいと思う。目的と手段、そしてその関連性が明確な出張であれば、時間に余裕ができたときに、多少観光することまで禁止したり、抑制的になったりする必要はない。むしろ今回の件が引き金となって、海外出張全般について抑制的になったり、海外での行動が萎縮されてしまったりしたら、海外出張自体の意味や意義が減退してしまうことにもなりかねない。 今回の自民党女性局案件については、「あれでは観光旅行だ!」といきり立つばかりではなく、何が問題なのかを少々冷静に考えていただきたいものであるし、それが国会議員や国家公務員による海外出張に対する正しい理解や適正な評価につながっていくのではなかろうか』、「目的は職務の遂行であってその目的が達成されれば、その目的にかなうような日程が組まれていればよく、隙間時間や帰国便までの余裕時間も何もするなというのは、少々極端すぎるのではないか・・・今回の自民党女性局のフランス視察は、職務の遂行という目的が達成されたのかを問題にする以前に、行程表から考えるに、そもそも目的が明確に設定されていたのか、ということである」、いずれにせよ、「松川氏」は海外旅行が初めてのミーハーではなく、海外出張もやり馴れた外務省職員というキャリアウーマンだったに、今回のような初歩的なミスをしたとは信じ難い。

次に、9月16日付けPRESIDENT Onlineが掲載した徳島文理大学教授・評論家の八幡 和郎氏による「歴代総理より一流企業の総合職のほうが高学歴…日本の政治家が「海外では考えられない低学歴」になったワケ 「東大法学部卒の総理大臣」は30年間いない」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/73874
・『政治家にはどんな学歴が求められるのか。評論家の八幡和郎さんは「先進国の指導者の多くが輝かしい学歴の持ち主だが、近年の日本の総理大臣はそうではない。国内トップクラスの学歴と知力と専門知識、そして高度な国際経験を持つ人材が指導者でなければ、あらゆる分野で世界の最先端から遅れてしまうだろう」という――』、みっともない話だ。
・『最後の「東大卒・元官僚」は宮澤喜一氏  大統領や首相など国の指導者は、すべての職業の中でも、最高の知力、専門知識、職業経験を必要とする仕事のはずである。実際、米国はハーバード大学、英国はオックスフォード大学、フランスはフランス国立行政学院(ENA)の卒業生が多い。 日本でも、戦前の首相は帝国大学出身の官僚か職業軍人が原則だったし、戦後も昭和が終わるまでは官僚、弁護士、ジャーナリストなどが多かった。 ところが、平成になると地方政治家が多くなり、やがて世襲政治家の天下になった。最後の東京大学法学部出身で元官僚の宰相は、1991年に就任した宮澤喜一である(93年に退任)。 それ以降、上智大学出身の細川護熙以降の最終学歴は、成城大(羽田孜)、明治大(村山富市)、慶應大(橋本龍太郎)、早稲田大(小渕恵三)、早稲田大(森喜朗)、慶應大(小泉純一郎)、成蹊大(安倍晋三)、早稲田大(福田康夫)、学習院大(麻生太郎)、東京大工学部(鳩山由紀夫)、東京工業大(菅直人)、早稲田大(野田佳彦)、法政大(菅義偉)、早稲田大(岸田文雄)だ』、「最後の東京大学法学部出身で元官僚の宰相は、1991年に就任した宮澤喜一」、もうそんなに長いこと「東京大学法学部出身で元官僚の宰相」が出ていないとは、改めて驚かされた。
・『トップクラスの知力の持ち主とは言いがたい  学歴が一人ひとりの知的水準をそのまま表しているわけではないにしても、全般的に見たとき、諸外国の指導者のほとんどが、自国におけるトップクラスの学歴と知力、一般教養、専門知識を持っているのとは大違いだ。上記の総理大臣の学歴リストは、たとえば、一流企業総合職採用の出身校の分布より低レベルなのではないか。 上記のなかで、知力では東京大学工学部卒の鳩山由紀夫が群を抜いているのだろうが、器用な受験勉強的秀才で、一般教養を深めた風情でない。細川護熙は近衛家の伝統につながる公家的で特殊な教養人だ。安倍晋三は地頭の良さは間違いないが、本当にまじめに本を読んで勉強したのは、第1次政権で大失敗して下野してからという印象がある。 これから詳しく分析するように、戦前から戦後にかけての歴代首相が、旧制高校から帝国大学、陸軍士官学校・海軍兵学校から陸軍大学・海軍大学、さらに、ほとんどが海外留学・勤務の経験を持っていたのと比べ、劣化が激しいのである』、「上記の総理大臣の学歴リストは、たとえば、一流企業総合職採用の出身校の分布より低レベルなのではないか」、なるほど。
・『江戸時代は恐るべき低学歴社会だった  歴史的経緯を振り返ると、江戸時代の日本には高等教育機関は存在しなかったし、科挙もなかったので、恐るべき低学歴社会だった。藩校も低レベルの漢学を教えて中国語の読み書きはできるようになったが、あとは、少しばかりの歴史や論理的思考をつまみ食いしていただけだ。 庶民が学べる中等教育学校はなく、家庭教師か私塾くらいしか学ぶ方法はなかった。ようやく幕末になって学問ブームが起き、適塾(大阪)、咸宜園(豊後日田)、松下村塾(萩)などが現れ、さらに慶應義塾に至って高等教育機関らしくなった。幕府、各藩が競って洋学校も設立した。 明治になると、帝国大学(最初は東京だけ)のほか、外国人教官を呼んで留学準備や初歩的な学問を教える学校、軍の学校が設立されたが、体系的な学校制度となったのは、1890年前後からだ。連続テレビ小説「らんまん」で主人公が帝国大学に出入りし始めたのは1884年で、そのころは、外国人教官が留学帰りの日本人に置き換わりつつある時期だった』、「江戸時代は恐るべき低学歴社会だった」、確かにその通りなのだろう。
・『海外事情に精通していた明治時代の首相たち  明治時代の首相はいずれも維新の功労者であり、近代学校制度ができる前の人たちだが、伊藤博文をはじめ、海外留学や数カ月以上の長期視察で海外の事情をしっかり勉強した国際人ばかりだった。例外は、海外渡航経験ゼロの大隈重信だが、もともと長崎の英語学校出身だし、耳学問で世界に通じていた。 大正から終戦までは、首相は帝国大学出身の官僚か職業軍人ばかりとなり、私学出身者は慶應大学出身の犬養毅(ジャーナリスト。少し公務員経験もある)だけ、官僚経験がないのは、旧制一高から京都大学で学び、25歳で貴族院議員となった近衛文麿だけだ。そして、ほとんどが海外留学・勤務の経験者だった。 戦後は旧軍人が排除され、官僚出身者(幣原喜重郎、吉田茂、芦田均、岸信介、池田勇人、佐藤栄作、福田赳夫、大平正芳、中曽根康弘)が主体になった。そのほか、東京大学出身の弁護士(片山哲、鳩山一郎)、早稲田大学出身のジャーナリストだった石橋湛山、高等小学校卒で工務店経営者だった田中角栄、それに、明治大学在学中から長期の洋行を繰り返し卒業直後の選挙で代議士となった三木武夫がいた』、「明治時代の首相は・・・伊藤博文をはじめ、海外留学や数カ月以上の長期視察で海外の事情をしっかり勉強した国際人ばかりだった」、なるほど。
・『総理候補になるだけでも高いハードルがあった  このころ総理大臣候補になるには、たとえ学歴や官僚経験がなくとも、官僚出身者が多い政界で、十分に政策論で対抗する能力が必須であり、外務大臣、大蔵大臣、通産大臣のうちふたつを経験することが総理の条件と言われたこともあった。 だが、大平正芳が現職のまま死去して、妥協の産物として水産講習所(現東京海洋大学)出身で重要閣僚経験がない鈴木善幸が総理になってから、学歴も重要ポストの経験も問われず、政治的な駆け引きと大衆人気だけで総理が決まるようになった。 古典的な官僚出身者である中曽根康弘の後は、はじめての県議出身だった竹下登、同じく宇野宗佑、議員秘書出身の海部俊樹が続き、宮沢喜一以降は先述の通りだ。親が政治と関わりがなかったのは、村山、菅直人、野田だけである(菅義偉の父は町会議員)』、「大平正芳が現職のまま死去して、妥協の産物として水産講習所(現東京海洋大学)出身で重要閣僚経験がない鈴木善幸が総理になってから、学歴も重要ポストの経験も問われず、政治的な駆け引きと大衆人気だけで総理が決まるようになった」、なるほど。
・『英国・フランスの指導者の「華麗なる学歴」  一方、海外ではどうだろうか。もっともエリート主義的なのは、英国とフランスだ。英国では、サッチャー以降の9人の首相のうち、7人が「THE世界大学ランキング」7年連続1位のオックスフォード大学卒で、例外は高校中退のメージャーとエディンバラ大学歴史学科のブラウンだけ。 フランスは、エリート官僚養成校であるENA(国立行政学院、現在は改組されてINSP)出身者が、ジスカールデスタンからマクロンまで6人の大統領のうち4人を占めている。例外はいずれも弁護士出身のミッテラン(ENA設立以前の世代)とサルコジ(ENAの登竜門であるパリ政治学院を終了できなかった)だけだ。 米国では、大学より大学院が問題だが、平成以降に就任した6人の大統領のうち4人(ブッシュ父子、クリントン、オバマ)が、エリート校であるハーバード大学、イェール大学や大学院に何らかの形で在籍していた。例外は、トップクラスのビジネス・スクールであるペンシルベニア大学ウォートン・スクール出身者のトランプと、中の下クラス(小室圭氏のフォーダム大学より下位に位置づけられる)であるシラキュース大学ロースクール出身のバイデンだ。 ドイツの場合、すべての大学が同じ基準で単位を与える仕組みなので、大学名からは学力・知力を判断できないが、コールとメルケルは博士、シュレーダーとショルツは弁護士である』、確かに「英国・フランスの指導者の「華麗なる学歴」は際立っている。
・『指導者の低学歴は日本の悪しき伝統  ゴルバチョフ以降のソ連・ロシアの指導者を見ると、ゴルバチョフは最難関であるモスクワ大学、プーチンとメドベージェフは名門レニングラード大学(現サンクトペテルブルク大学)の法学部。エリツィンはウラル工科大学の建築科、ミシュスチン首相もエンジニアだ。 中国の国家主席では、江沢民は上海交通大学、胡錦濤と習近平はいずれも清華大学出身のエンジニアである。首相も李鵬、朱鎔基、温家宝がエンジニアで、李克強は北京大学法学部、李強は農業エンジニアである。社会主義国ではエンジニアが経済運営の中心にあることの伝統を引き継いでいるといえる。 このようにまとめてみると、いかに日本の歴代総理の学歴が低レベルであるかが理解できるだろう。指導者の低学歴というのはこの国の悪しき伝統であり、政界に限った話ではない。 江戸時代の教育水準が高かったとかいう人がいるが、仮名(かな)というものがあるので低レベルながら読み書きができる人が多かっただけだ。武士は藩校で九九すら教えられなかったから、プロの官僚ないし軍人の役割は果たせず、勘定方とか兵法学者といった世襲の職人集団が担っていた』、「武士は藩校で九九すら教えられなかったから、プロの官僚ないし軍人の役割は果たせず、勘定方とか兵法学者といった世襲の職人集団が担っていた」、「藩校で九九すら教えられなかった」というのは初めて知った。
・『(日本人の留学熱、学習意欲はすっかり冷めている  戦前の旧制高校は一般教養を学ぶにはよかったが、帝国大学で初歩的な専門知識を得た後、官僚になってから仕事や海外勤務での見聞を通じて海外事情についての知識を補った。軍人も軍の大学で学部レベルの勉強はするが、その後、海外で武官として最新知識を得た。 戦後の官僚や企業幹部も、国内では大学院に進まず、大学院レベルの学びは海外留学に頼っている。経済産業省作成の資料によると、日米の時価総額上位100社の経営者のうち、日本では84%が学部卒で大学院修了は15%。米国は67%が院卒で、博士課程修了者も1割いる。 しかも、留学組が政界でも経済界でも優遇されているかといえばそうでもない。さらに、日本人の留学熱はすっかり冷めている。 明治初期は留学熱がすさまじかったのに、国内の教育体制が整備され、そこそこの勉強ができるようになると、それで満足してしまった』、「日米の時価総額上位100社の経営者のうち、日本では84%が学部卒で大学院修了は15%。米国は67%が院卒で、博士課程修了者も1割いる。 しかも、留学組が政界でも経済界でも優遇されているかといえばそうでもない。さらに、日本人の留学熱はすっかり冷めている・・・明治初期は留学熱がすさまじかったのに、国内の教育体制が整備され、そこそこの勉強ができるようになると、それで満足してしまった」、寂しい現状だ。
・『日本が世界の最先端から遅れてしまった理由  そしていま、同じことが起きつつある。私(1951年生まれ)たちの世代から今世紀初頭までは留学熱が高く、競って海外の有名大大学院へ行ったし、留学先は喜んで「新しい超大国」になった日本人を官民問わず受け入れてくれた。 しかし現在、米中対立で少し歯止めがかかってはいるが、欧米の名門大学では日本人が減り、中国人など他のアジア系の学生だらけになっている。こんな状態では、日本はあらゆる分野で世界の最先端から遅れてしまう。 もちろん、日本では本人の能力や職歴より、誰の子どもかのほうが総理大臣の道に進めるかどうかの決め手になるから、政治家の子どもの留学熱が高いのは歓迎したい。だが、これまでは、箔付けと語学を学ぶことが主目的となり、修士や博士になることはオマケ扱いだった。小泉純一郎、麻生太郎、安倍晋三などがそうだ』、「政治家の子どもの留学熱が高いのは歓迎したい。だが、これまでは、箔付けと語学を学ぶことが主目的となり、修士や博士になることはオマケ扱いだった。小泉純一郎、麻生太郎、安倍晋三などがそうだ」、なるほど。
・『総理大臣の低学歴化が影響しているのではないか  閣改造後の新閣僚では、河野太郎が日本でなく米ジョージタウン大学卒、上川陽子、西村康稔、伊藤信太郎、加藤鮎子が米国の大学院を修了している。総理候補と言われる茂木敏充、林芳正、小泉進次郎、玉木雄一郎なども同様だ。留学ブームだった世代が閣僚適齢期になった反映である。 「日本はもはや先進国ではない」と言われて久しいが、国の指導者である総理大臣の近年の低学歴化・海外経験の乏しさが影響しているように思えてならない。 「総理大臣はかつてのように東大卒を主にすべき」というわけでないが、激動の国際情勢や金融情勢についていくには、少なくとも国内トップクラスの学歴と知力と専門知識を持ち、さらには高度な国際経験を持つ政治家、あるいは、学歴はなくとも彼らと議論して負けない政治家が総理候補となるのが望ましいだろう』、「総理大臣の近年の低学歴化・海外経験の乏しさ」は確かに嘆かわしいが、どんなキャリアの政治家を選ぶか、首相にするかは、言うまでもなく、国民や一般政治家の選択の問題だ。

第三に、9月21日付け日刊ゲンダイ「杉田水脈氏の「人権侵犯」認定で…国連演説で「人間の尊厳」を唱えた岸田首相に怒りの矛先・・・札幌法務局は「人権侵犯の事実があった」と認定」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/329410
・『20日、X(旧ツイッター)で「人権侵犯」がトレンド入りした。ジャニーズ事務所の性加害問題で世界中から日本の「人権」意識が問われているなか、法務省に差別発言が認定された自民党の杉田水脈議員(56)の今後が注目されている。 杉田氏は、7年前の2016年、国連の会議に参加したときのことについて、自身のブログで「国連の会議室では小汚い格好に加え、チマチョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場」「完全に品格に問題があります」「同じ空気を吸っているだけでも気分が悪くなる」などとアイヌ民族を差別する投稿を行った。 これに対し、今年3月、アイヌの女性が札幌法務局に人権救済を求める申し立てをし、今月7日付で札幌法務局は「人権侵犯の事実があった」と認定した。 だが、当の本人は報道で明るみに出るまで、事実を公表しておらず、報道後もコメントを出していない。 一方、自身のXでは7日以降も"通常運転"。12日には「石ノ森章太郎 テレビヒーロー大全」の写真とともに、「石垣島から山口県を経由して東京の家に帰ってきたら、届いてました!! きゃー! 家にこもってずっと見ていたい…。そんな訳にはいきません。かと言って、移動の飛行機や新幹線のなかで読んでたら隣の人にギョッとされそうで怖い」とお気楽投稿。その後もヒーローに関する投稿や、15日には「阪神優勝!おめでとうございます。…中略…セールに行っている時間は無さそうですが、どこかでお祝いモードに浸りたいです♪」と盛り上がっていた。) また、今回の問題が北海道新聞に報じられた19日には、Xで「文京区で行われた『新しい教科書をつくる会 東京支部』主催の講演会へ。用意した席では足らず、追加した椅子も満杯になるくらい、多くの皆さんがお越しくださいました」と報告。これには《新しい歴史教科書からアイヌを削除するのはやめましょう》《政治家が教科書に介入するな。歴史学者に任せろ》などと批判の声も出ていたが、杉田議員には響いてなさそうだ。 国民の怒りは、人権侵犯が認められた議員を総務大臣政務官に任命していた岸田文雄首相(66)にも向いている。しかも、このタイミングで、ニューヨークの国連本部で開かれている国連総会の一般討論演説でロシアのウクライナ侵攻などに触れつつ「『人間の尊厳』が尊重される国際社会を」と訴えたことから、SNSはツッコミと批判で炎上中。 《杉田水脈議員を政務官にしたり、「政府に記録がない」と逃げたり。言行不一致も甚だしい》《差別発言を繰り返す杉田水脈を政務官に任命した癖に》 《国連まで出かけて人間の尊厳を唱える岸田には、法務省に人権侵害を指摘された杉田ま水脈についての見解を伺いたい》 《岸田首相、人間の尊厳を言うなら杉田水脈を最低限自民党から追放しろよ》 などと、責任を問う声で溢れている』、「法務省に差別発言が認定された」というのは一般の新聞にも出たのだろうか、記憶がはっきりしない。「《差別発言を繰り返す杉田水脈を政務官に任命した癖に》 《国連まで出かけて人間の尊厳を唱える岸田には、法務省に人権侵害を指摘された杉田ま水脈についての見解を伺いたい》」、その通りだ。
タグ:(その68)(「エッフェル姉さん」松川るい氏 “議員の資質”が疑われる根本問題を元官僚が指摘<、歴代総理より一流企業の総合職のほうが高学歴…日本の政治家が「海外では考えられない低学歴」になったワケ 「東大法学部卒の総理大臣」は30年間いない、杉田水脈氏の「人権侵犯」認定で…国連演説で「人間の尊厳」を唱えた岸田首相に怒りの矛先・・・札幌法務局は「人権侵犯の事実があった」と認定) 室伏謙一氏による「「エッフェル姉さん」松川るい氏、“議員の資質”が疑われる根本問題を元官僚が指摘」 日本の政治情勢 ダイヤモンド・オンライン いずれにせよ、「松川氏」は海外旅行が初めてのミーハーではなく、海外出張もやり馴れた外務省職員というキャリアウーマンだったに、今回のような初歩的なミスをしたとは信じ難い。 「観光写真の類いは掲載しないのが当然である。議員としての矜持が疑われかねないし、実際、松川議員の地元選挙区では、それが疑われ始めているようだ」、なるほど。 「政治家の子どもの留学熱が高いのは歓迎したい。だが、これまでは、箔付けと語学を学ぶことが主目的となり、修士や博士になることはオマケ扱いだった。小泉純一郎、麻生太郎、安倍晋三などがそうだ」、なるほど。 日刊ゲンダイ「杉田水脈氏の「人権侵犯」認定で…国連演説で「人間の尊厳」を唱えた岸田首相に怒りの矛先・・・札幌法務局は「人権侵犯の事実があった」と認定」 「目的は職務の遂行であってその目的が達成されれば、その目的にかなうような日程が組まれていればよく、隙間時間や帰国便までの余裕時間も何もするなというのは、少々極端すぎるのではないか・・・今回の自民党女性局のフランス視察は、職務の遂行という目的が達成されたのかを問題にする以前に、行程表から考えるに、そもそも目的が明確に設定されていたのか、ということである」、 もうそんなに長いこと「東京大学法学部出身で元官僚の宰相」が出ていないとは、改めて驚かされた。 「江戸時代は恐るべき低学歴社会だった」、確かにその通りなのだろう。 八幡 和郎氏による「歴代総理より一流企業の総合職のほうが高学歴…日本の政治家が「海外では考えられない低学歴」になったワケ 「東大法学部卒の総理大臣」は30年間いない」 「武士は藩校で九九すら教えられなかったから、プロの官僚ないし軍人の役割は果たせず、勘定方とか兵法学者といった世襲の職人集団が担っていた」、「藩校で九九すら教えられなかった」というのは初めて知った。 PRESIDENT ONLINE 「法務省に差別発言が認定された」というのは一般の新聞にも出たのだろうか、記憶がはっきりしない。「《差別発言を繰り返す杉田水脈を政務官に任命した癖に》 《国連まで出かけて人間の尊厳を唱える岸田には、法務省に人権侵害を指摘された杉田ま水脈についての見解を伺いたい》」、その通りだ。 「大平正芳が現職のまま死去して、妥協の産物として水産講習所(現東京海洋大学)出身で重要閣僚経験がない鈴木善幸が総理になってから、学歴も重要ポストの経験も問われず、政治的な駆け引きと大衆人気だけで総理が決まるようになった」、なるほど。 「日米の時価総額上位100社の経営者のうち、日本では84%が学部卒で大学院修了は15%。米国は67%が院卒で、博士課程修了者も1割いる。 しかも、留学組が政界でも経済界でも優遇されているかといえばそうでもない。さらに、日本人の留学熱はすっかり冷めている・・・明治初期は留学熱がすさまじかったのに、国内の教育体制が整備され、そこそこの勉強ができるようになると、それで満足してしまった」、寂しい現状だ。 「総理大臣の近年の低学歴化・海外経験の乏しさ」は確かに嘆かわしいが、どんなキャリアの政治家を選ぶか、首相にするかは、言うまでもなく、国民や一般政治家の選択の問題だ。 みっともない話だ。 「上記の総理大臣の学歴リストは、たとえば、一流企業総合職採用の出身校の分布より低レベルなのではないか」、なるほど。 確かに「英国・フランスの指導者の「華麗なる学歴」は際立っている。 「明治時代の首相は・・・伊藤博文をはじめ、海外留学や数カ月以上の長期視察で海外の事情をしっかり勉強した国際人ばかりだった」、なるほど。 「出張は職務が中心なのだから、数時間も確保するような観光的な日程はそもそも入れてはいけないということだ。行程表に観光日程があるようでは、職務の時間があったとしても「職務は名目にすぎず、本当の目的は観光なのではないのか」と批判されても仕方があるまい」、その通りだ。
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GAFA(その7)(GAFAの株価が低調 「成長の限界を迎えた」といえるこれだけの理由、フェイスブックの次はVR離れ…1兆円超えの大赤字を垂れ流す「メタ社」の悲惨な末路 ザッカーバーグ氏は従業員から見放された、国家権力も超える力を持つ「巨大IT」の"別の顔" 「グーグル アップル メタ アマゾン」vs.国家) [イノベーション]

GAFAについては、昨年2月11日に取上げた。今日は、(その7)(GAFAの株価が低調 「成長の限界を迎えた」といえるこれだけの理由、フェイスブックの次はVR離れ…1兆円超えの大赤字を垂れ流す「メタ社」の悲惨な末路 ザッカーバーグ氏は従業員から見放された、国家権力も超える力を持つ「巨大IT」の"別の顔" 「グーグル アップル メタ アマゾン」vs.国家)である。

先ずは、昨年5月10日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「GAFAの株価が低調、「成長の限界を迎えた」といえるこれだけの理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/302879
・『「GAFA」の株価が下落基調にある。これまで注目されてきたビジネスモデルに、行き詰まりの兆しが見え始めているからだ。その軌跡を基本から振り返ると共に、現在のリスク要因を分析し、今後の展開を予測する』、興味深そうだ。
・『GAFAの成長期待が鈍化 ビジネスモデルに行き詰まりの兆し  このところ、「GAFA」(グーグル、アップル、旧フェイスブック・現メタ、アマゾン)の株価が下落基調にある。2022年1~3月期決算が出そろった後も、各社の株価は上昇していない。 最大のポイントは、各社の成長期待が鈍化していることだ。これまで注目されてきたITプラットフォーマーとしてのビジネスモデルに、行き詰まりの兆しが見え始めている。加えて、米国内の人手不足や、「ディ・グローバリズム」(グローバル化に逆行する動き)に伴うコストアップ要因がGAFA各社を直撃している。 今後の展開として、GAFAの成長期待は一段と低下することも想定される。それが現実味を帯びると、各社の株価は下落する可能性が高い。ウクライナ危機や中国のゼロコロナ政策をきっかけに、グローバル化の加速を前提としたアップルの事業運営の効率性は、低下する恐れが強くなっている。主要先進国における個人データ保護規制の強化なども、メタやグーグル、アマゾンの成長期待を低下させるだろう。 米国の連邦準備制度理事会(FRB)は、“インフレ退治”のため周囲の予想を上回るペースで金融引き締めを進めている。それはGAFAの事業運営には逆風となり、株価の下落懸念を高める要因だ』、確かに多くの要因が「GAFA」「株価の下落懸念を高め」ている。
・『これまでのビジネスモデルが神通力を失うGAFA  過去1年間のGAFAの株価の推移を確認すると、大まかな傾向として21年12月前半まで各社の株価は高値圏で推移した。しかし、その後は株価が上昇していない。それが意味することは、各社が高い成長を維持するのが難しくなっているということだ。 まず、アップルの成長期待の鈍化を考えてみよう。1990年代以降の米国経済において、アップルはグローバル化を追い風に高成長を実現した企業の象徴である。97年、同社は経営破綻寸前にまで追い込まれていたが、その状況を救ったのが創業者の一人だった故スティーブ・ジョブズだ。ジョブズは高付加価値なソフトウエアの創出に集中し、iPodやiPhoneなどのデバイスや、iTunesなどのサービスの設計と開発に注力した。 それと同時にアップルは世界各国から優れた部材や部品を集め、完成品のユニット組み立て型生産を、台湾の鴻海精密工業の中国子会社であるフォックスコンに委託した。こうした国際分業によって、製造ラインを自社保有する負担から解放され、高付加価値なソフトウエア創出に集中し、高い収益性を実現したのだ。同社がリーマンショック後の世界経済のデジタル化を加速し、米国および世界経済の成長に与えた影響は計り知れない。 しかし、近年、こうしたビジネスモデルに行き詰まりが見えている。まず、中国の生産年齢人口が減少し、労働コストが上昇したことは大きい。加えて、米中対立によって世界のサプライチェーンが混乱。さらに、新型コロナウイルスの感染再拡大やウクライナ危機など複合的な要因が重なり、供給制約は深刻化し続けている。 そうした環境の変化によって、国際分業体制の強化で高成長を実現してきたアップルが、需要を取りこぼし始めているのだ』、「国際分業体制の強化で高成長を実現してきたアップル」にとっては、環境は完全な逆風だ。
・『SNSへの規制強化、労働組合の結成 逆風強まるITプラットフォーマー  動画や検索、SNSサービスの提供で広告収入を得てきたグーグルやメタ、ネット通販やクラウドコンピューティングなどのサービスを提供してきたアマゾンの成長期待も鈍化している。 グーグルとメタは、ユーザーである個人の検索や動画視聴、知人関係(ネットワーク)、モノやサービスの購入履歴といった膨大なデータ(ビッグデータ)を優先的に手に入れて、それを販売したり、新しいビジネスに用いたりすることによって急速に収益を増やした。 しかし、ロシアがフェイスブックを用いて2016年の米大統領選挙に介入した疑惑が浮上したことなどにより、SNSへの規制が強化されている。メタは人海戦術でフェイクニュースの摘発を強化しなければならなくなり、コストが増加した。また、公正さへの懸念から一時、フェイスブックのユーザーが減少した。 メタの22年1~3月期決算は、売上高の伸び率が上場来で最低となり、同社への懸念は高まっている。同様のことが、検索サービスの強化によって広告収入を増やしてきたグーグルにも当てはまる部分が多い。 アマゾンは世界に「物流革命」を起こした。同社は、積極的な設備投資によって世界各国で効率的な配送網を整備し、自力でラストワンマイルを構築した。さらに消費者一人ひとりの好みを突くアルゴリズムを開発して消費意欲をかき立て、クラウドサービスも提供することによって有力ITプラットフォーマーとしての地位を確立した。 しかし、物流施設での過酷な労働環境への反発から労働組合が結成されるなど、成長力には翳りが出始めている。加えて、米国をはじめ世界的な人手不足を背景に、物流センターでの人員やドライバーの確保が難しくなっているようだ。 倉庫の建設やEV新興メーカーへの投資も業績の重荷になっている。原油などエネルギー資源価格の高騰は燃料費の増加につながり、収益を圧迫している。このようにGAFA各社はこれまでの高い成長スピードを維持することが難しくなっている』、「GAFA各社はこれまでの高い成長スピード」を可能にしてきた様々な要因が逆方向にあるようだ。
・『中長期的なGAFA株の下落懸念 業績拡大ペースは鈍化  GAFA各社は正念場を迎えている。今後の展開として、GAFAの業績拡大ペースは鈍化し、株価が下落する可能性は高まっている。各社ともグローバル化の加速を前提にビジネスモデルを構築してきたからだ。 しかし、ウクライナ危機によって世界経済はグローバル化からブロック化に向かい始めた。世界経済の先行き見通しは悪化したため、広告主の企業はコスト削減を優先しなければならず、SNSや動画サイトでの広告出稿は減少するだろう。また、データ保護やフェイクニュースなどの取り締まりのためのコストも増える。 世界的な供給制約の長期化によって半導体の不足が長引き、スマホなどITデバイスの生産が計画を下回る可能性も高まっている。中国では経済成長の低下傾向が鮮明だ。IT機器やサービスの需要の低下に加えて、生産年齢人口の減少によって労働コストも上昇するだろう。いずれもGAFAの事業運営の効率性向上を阻害する要因だ。 加えて、米国をはじめ世界的に物価が急騰している。FRBは金融政策の正常化を急がなければならない。世界的に金利は上昇するだろう。金利上昇によって、企業が永続的に生み出すと考えられるフリー・キャッシュ・フローの「割引現在価値」(将来得られる価値を現在受け取るとしたらどの程度の価値になるかを計算したもの)は小さくなる。GAFAのように成長期待が高い企業ほど、そのインパクトは大きくなり株価の下落懸念は高まりやすい。 FRBが追加利上げやバランスシート縮小を急ぐ姿勢を一段と強める場合、米国の金利は急速に上昇し、GAFAなどIT先端企業の株価の低下傾向が一段と鮮明化する恐れがある。また、米金利の上昇によって新興国からは資金が流出し、世界経済全体で成長率は低下する展開も想定される。それはGAFAの収益減少要因になるだろう。 言い換えれば、GAFA各社がこれまでの発想にとらわれることなく新しいモノやサービスを生み出し、需要を創出することが出来るか否か、その実力が問われている』、マクロ、ミクロの環境要因がいずれも厳しくなるなかでは、「新しいモノやサービスを生み出し、需要を創出すること」は至難の技だろう。

次に、本年5月20日付けPRESIDENT Onlineが掲載したフリーライター・翻訳者の青葉 やまと氏による「フェイスブックの次はVR離れ…1兆円超えの大赤字を垂れ流す「メタ社」の悲惨な末路 ザッカーバーグ氏は従業員から見放された」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/69634
・『メタバースで大失敗…ザッカーバーグに向けられた従業員の不信感  マーク・ザッカーバーグ率いる米Meta社(旧Facebook社)が、従業員の深刻な士気の低下にあえいでいる。 Facebook、Instagram、WhatsAppなどを運営する同社は昨年、業績が急激に低下。ニューヨーク・タイムズ紙は、ザッカーバーグ氏が2023年を「効率化の年」にすると宣言したと報じている。過去半年で2回のレイオフに踏み切ったほか、今後もさらに2回の実施を予定している。合計で2万1000人規模の削減となる見込みだ。 米デジタルメディアのVoxは、「Metaはまず間違いなく、過去最も厳しい部類に入る年を過ごした」と指摘。18年間ノンストップで成長を遂げたが、株価は昨年、前年比で65%急落したと指摘する。 米IT大手は一様に厳しい時代を迎えているが、MetaはGAFAMと呼ばれる大手5社のなかでも一段と厳しい状況に立たされている。Facebookで一時代を築いた同社が凋落した原因はいくつも指摘されているが、なかでもトップのビジョンの迷走が大きく災いしたようだ。 IT他社が人工知能(AI)の開発に資金を投じるなか、同社はここ数年、「メタバース」と呼ばれるオンライン空間の提供に全力を傾けている。ユーザーが仮想の人物「アバター」の姿を借り、交流を図る仮想の世界だ。だが、現実には過疎化が過疎化を呼ぶ悪循環に陥っている』、「過去半年で2回のレイオフに踏み切ったほか、今後もさらに2回の実施を予定している。合計で2万1000人規模の削減となる見込みだ」、「株価は昨年、前年比で65%急落」、「同社が凋落した原因はいくつも指摘されているが、なかでもトップのビジョンの迷走が大きく災いしたようだ。 IT他社が人工知能(AI)の開発に資金を投じるなか、同社はここ数年、「メタバース」と呼ばれるオンライン空間の提供に全力を傾けている。ユーザーが仮想の人物「アバター」の姿を借り、交流を図る仮想の世界だ。だが、現実には過疎化が過疎化を呼ぶ悪循環に陥っている」、「メタバース」に賭けて社名も「メタ」に変更したほどだ。
・『社内チャットでは不満が渦を巻いている  芽生える気配のないメタバースの開発に大金を注ぎながら、カリフォルニア州メンローパークのMeta本社内では解雇の嵐が吹き荒れる。Metaの従業員たちは、ザッカーバーグ氏らトップへの不信を深めている。 米ワシントン・ポスト紙は、「マーク・ザッカーバーグはいかにしてMetaの労働力を破壊したか」との記事を掲載。従業員たちは、いつ自身を襲うとも知れないレイオフの波に翻弄ほんろうされており、ザッカーバーグ氏はビジョンと従業員からの信頼を失ったとの見方を取り上げた』、「従業員たちは、いつ自身を襲うとも知れないレイオフの波に翻弄ほんろうされており、ザッカーバーグ氏はビジョンと従業員からの信頼を失った」との「米ワシントン・ポスト紙」の指摘は的確だ。
・『同紙はまた、「MetaはVR開発者に最高100万ドル(約1億3000万円)の年俸を支払っていた」が、同社が「今となっては財政難に陥っている」と指摘する。VRヘッドセットのQuestなどを手がける同社のVR/AR部門「Reality Labs」は、昨年137億ドル(約1兆8000万円)以上の損失を出し、赤字額は年を追うごとに増加傾向にあるという。 ニューヨーク・タイムズ紙は、「少し前までシリコンバレーで最も魅力的な職場のひとつだったMeta社だが、社員はいま、時がたつほどに不安定になる未来に直面している」と述べ、「士気の危機」が訪れていると報じている。 社内チャットでは、殺伐とした空気が流れているようだ。チャットの履歴を入手した同紙によると、ある従業員は「大惨事だと思う人は、炎の絵文字を」と呼びかけた。同僚たちからは数十個もの炎の絵文字が寄せられたという。 従業員たちはボーナスの減少に不満を抱き、持ち株の時価減損に胃を痛め、目に見えて悪化する社内の福利厚生に士気を削がれているようだ。同紙は、誰が生き残るとも知れない疑心暗鬼に陥り、オフィスは殺伐とした雰囲気に包まれていると報じている』、「誰が生き残るとも知れない疑心暗鬼に陥り、オフィスは殺伐とした雰囲気に包まれている」、気の毒だが、トップの責任だ。
・『仮想空間の「出会いの場」には誰もいなかった  コミュニケーションがすっかり希薄になったのに加え、これまで従業員たちに無料で提供されていたランドリーサービスや夕食などの複利厚生は縮小した。自身にレイオフが迫るとの噂を聞いた従業員は、親しい従業員との個人や職場のチャットでドクロと骨の絵文字を使った暗喩で連絡を取り合い、情報交換に奔走しているという。 Metaの人事部はレイオフに怯える従業員たちに配慮を寄せるばかりか、こうした会話の規制に乗り出した。Voxは、会社側が「コミュニティ・エンゲージメントへの期待」と題するガイドラインを打ち出したと報じている。ネガティブな会話を禁止し、チームや個人に対して「適切なフィードバックをする」よう求める内容だ。 だが、口を封じたところで従業員の不満が消えるわけではない。同記事によるとある従業員は、「この会社は総じて、社員を失望させるようなことをせずに1週間たりとも過ごすことはできないようです」と不満を露わにしている。 同社肝煎りで普及に努めるメタバースだが、その集客数はほぼゼロと言っていいほどだ。 米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、41歳男性ユーザーの体験を取り上げている。彼は「パンデミック期間中、社会との交流を求めて」VRヘッドセットを購入し、買ったその日に意気揚々と仮想空間に飛び込んだ。だが、メインとなる出会いのスペースに行くと、「そこには誰もいなかった」との悲しい体験が待っていたという。 同紙によると、Facebook、Instagram、WhatsAppなどMeta社のソーシャルメディアには、合計で月間35億人以上のユーザーがいる。これに対し、同社のVRオンラインゲーム・プラットフォーム「Horizon Worlds」は、月間20万人以下であるという。比率にしてわずか0.0057%という惨状だ』、「41歳男性ユーザーの体験を取り上げている。彼は「パンデミック期間中、社会との交流を求めて」VRヘッドセットを購入し、買ったその日に意気揚々と仮想空間に飛び込んだ。だが、メインとなる出会いのスペースに行くと、「そこには誰もいなかった」との悲しい体験が待っていたという。 同紙によると、Facebook、Instagram、WhatsAppなどMeta社のソーシャルメディアには、合計で月間35億人以上のユーザーがいる。これに対し、同社のVRオンラインゲーム・プラットフォーム「Horizon Worlds」は、月間20万人以下であるという。比率にしてわずか0.0057%という惨状だ」、「メインとなる出会いのスペースに行くと、「そこには誰もいなかった」」、確かに「悲しい体験」だ。
・『VRヘッドセットは半年以内でガラクタに…  Horizon Worldsは、VRヘッドセットの「Quest」を装着して利用する。エントリーモデルでも約400ドル(国内価格はQuest 2の場合5万9400円から)と高価な機器だが、同紙が参照した調査によると、飽きは早いようだ。購入後半年以内に、半数以上の個体が使用されなくなるという。 同社の社内文書が「空っぽの世界は悲しい世界である」と内省するように、原因は過疎化にある。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、「(Horizon内のコンテンツである)『ホットガール・サマー・ルーフトップ・パーティー』には女の子がほとんどいないし、『マーダー・ビレッジ』には殺すべき人がいないことが多い」と指摘する。ユーザーの性別についても男性2:女性1と、大きな偏りがある模様だ。 課題は多い。Meta社が実施した調査によると、ユーザーからは、「気に入ったメタバース・ワールドがない」「一緒に遊べる仲間が見つからない」「人がリアルでない」などの不満が聞かれたという。 ウォール・ストリート・ジャーナル紙の記者は、VR空間で開催された「ハウスパーティー」の会場へ赴いた際の悲しい記憶を記事にしている。ユーザーとの交流を期待したが、さびしい現実が待っていたようだ。出席者は記者を含め、2人しかいなかったという。 同記者はボクシングなどをして時間を潰したというが、パーティーの盛り上がりとはほど遠かったようだ。「もう一人のアバターは一言もしゃべらず、10分ほどで試合は終了した。その後、記者自身のアバターはプールに落ち、出る方法がわからなくなった。助けてくれる人は辺りに誰もいなかった』、「プールに落ち、出る方法がわからなくなった。助けてくれる人は辺りに誰もいなかった」、酷い話だ。 
・Meta社だけがメタバースの普及に社運を賭けている  ユーザーの興味が薄れているにもかかわらず、Metaは普及に躍起だ。ニューヨーク・タイムズ紙は、これこそが同社従業員がトップに不信感を抱く原因になっていると指摘する。テック企業の多くがAI開発に乗り出すなか、Meta社だけがメタバースの普及に社運を賭けている状況だ。 ザッカーバーグ氏は2021年10月、VRの重視を鮮明に打ち出し、社名をMetaに変更した。ワシントン・ポスト紙は、「このとき、従業員はこの動きを不安な気持ちで受け止めた」と振り返る。2014年にVR企業のOculusを買収後、ハードウエアの研究開発費は「爆発的に増加」したと同紙は指摘する。) 2018年からはビデオ通話デバイス「Portal」を売り出したが、同紙は「ユーザーにとって魅力的でないことが明らかになった後も、長い間この製品にこだわってきた」と厳しい評価を下している。サンフランシスコのニュースサイトであるSFゲートは、Portalがすでに2022年に製造中止になったと指摘している』、「テック企業の多くがAI開発に乗り出すなか、Meta社だけがメタバースの普及に社運を賭けている状況だ」、何故ここまで「メタバース」にこだわるのだろう。
・『社内で囁かれる「マーク・ザッカーバーグのご機嫌取り」の隠語  過疎化の悪循環に加え、製品の扱いにくさもユーザー離れの原因となっているようだ。皮肉にも、ザッカーバーグ氏主催の社内ミーティングがそれを証明する形となった。ニューヨーク・タイムズ紙によると氏は昨年、バーチャルの会議室を提供する「Horizon Workrooms」内での社内ミーティングを呼びかけた。 だが、多くの従業員はVRヘッドセットを持っておらず、設定にも手こずったと同紙は伝えている。従業員らは上司に知られる前にヘッドセットを入手し、ユーザー登録を済ませるなど、あたかも以前からのユーザーであるように振る舞うのに苦心したという。 ある従業員は同紙に対し、「Horizon Workrooms」上での別のミーティングもうまくいかなかったと明かしている。記事によると「技術的な不具合で会議は中断され、結局のところこのチームはZoomを使うことになった」という。 メタバースの有用性について、社内からも疑問が噴出している。情報筋は同紙に対し、メタバースのプロジェクトが社内の一部では「MMK」と呼ばれていると明かした。「Make Mark Happy(マーク・ザッカーバーグのご機嫌取り)」を意味する隠語なのだという』、「「Horizon Workrooms」上での別のミーティングもうまくいかなかったと明かしている。記事によると「技術的な不具合で会議は中断され、結局のところこのチームはZoomを使うことになった」という。 メタバースの有用性について、社内からも疑問が噴出している。情報筋は同紙に対し、メタバースのプロジェクトが社内の一部では「MMK」と呼ばれていると明かした」、「マーク・ザッカーバーグ」氏はやはり暴君のようだ。
・TikTokへの流出が止まらない  過去であればMeta(当時のFacebook社)は、時代の波を見据えた舵取りを行ってきた。デスクトップ版が主流だった主力サービス・Facebookは、2000年代前半にモバイル対応に成功。Facebook一本槍からの脱却を企図し、2012年にInstagramの買収を通じて若年層を取り込んだところまでは先見の明があった。 しかし近年、VR事業を別にしても、同社を取り巻くビジネス環境は一段と過酷になっている。ネット上にコンテンツが溢あふれるようになった現在、ユーザーはより短時間で消費できる短編動画を求めており、TikTokへの流出は深刻な課題だ。 TikTokにも弱みはあり、中国企業のByteDanceによる運営という立場上、プライバシー問題には懸念が世界から寄せられている。だが、この点でMeta社は決してリードを保っているとは言い難がたい。 もともとFacebookユーザーのプライバシーを収益源としていた同社には、ユーザー保護の視点が欠如しているとの批判が絶えなかった。AppleがiOS上での個人情報の追跡を困難にしてからは、広告収入の明らかな減少に見舞われている』、「もともとFacebookユーザーのプライバシーを収益源としていた同社には、ユーザー保護の視点が欠如しているとの批判が絶えなかった。AppleがiOS上での個人情報の追跡を困難にしてからは、広告収入の明らかな減少に見舞われている」、なるほど。
・『仮想空間は一過性のブームだった  こうしたなかザッカーバーグ氏が希望の光とみるのがメタバースだが、ユーザーの心とは大きな乖離かいりがみられるのが現状だ。VRについては確かに一部ゲームなどで、他社製デバイスも含め、一定のユーザーを獲得している。 だが、Meta社はVRコンテンツのなかでも、ユーザー同士の交流空間であるメタバースの普及に骨を折っている。現在のところ十分な興味を引いているとはいえず、ブームの到来が予言されつつも本格的な普及に至ることなく消えた「セカンドライフ」の後追いだとする否定的な意見さえ聞かれる。 セカンドライフはその名の通り、コンピューター内で「第2の人生」を生きる理想空間を追求したサービスだ。一時は高額で仮想の土地を購入するユーザーが相次ぐなどブームを生んだが、一過性の現象に終わった。 Meta社のHorizon Worldsについては、そもそも一時的なブームにすら至っていない。肝心のユーザーが集まらず、VRヘッドセットを購入した希少なユーザーでさえ、半年とたたずに離脱する悪循環が生じている』、「Meta社のHorizon Worldsについては、そもそも一時的なブームにすら至っていない。肝心のユーザーが集まらず、VRヘッドセットを購入した希少なユーザーでさえ、半年とたたずに離脱する悪循環が生じている」、なるほど。
・『いつまでもメタバースに固執するべきではない  セカンドライフの衰退をみるに、人々がバーチャル空間での交流を求めているという考えは、サービスを提供する側の幻想にすぎないのだろう。MetaのVR事業についても、例えばゲーム用ヘッドセットのハードウエア販売に特化し、仮想ワールドのサービスからは撤退するなど、思い切った事業の整理が求められているように思われる。 FacebookやInstagramで「いいね」を送るだけで温かい気持ちが伝わるいま、ゴーグルを装着しアバターを操作して他人と触れ合うというアイデアは、必ずしも多くのユーザーの賛同を得るに至っていないようだ』、「FacebookやInstagramで「いいね」を送るだけで温かい気持ちが伝わるいま、ゴーグルを装着しアバターを操作して他人と触れ合うというアイデアは、必ずしも多くのユーザーの賛同を得るに至っていないようだ」、その通りだ。「ザッカーバーグ氏」はいつになったら気付くのだろう。

第三に、9月21日付け東洋経済オンラインが掲載した読売新聞記者の小林 泰明氏による「国家権力も超える力を持つ「巨大IT」の"別の顔" 「グーグル、アップル、メタ、アマゾン」vs.国家」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/702133
・『新作スマートフォン「iPhone 15」の発表に、世界が沸いている。アップルは各国にまたがるユーザーからの圧倒的な支持を得て、今日も自らが構築したプラットフォームでサービスを提供し続ける。 だがこれらは、消費者が知る彼らの顔であり、アップルをはじめとする巨大IT企業には「別の顔」もある。とくにいま注目すべきなのが、市場の独占と秘密主義を危惧する各国政府との攻防だ。日米の現場から彼らを追いかけた読売新聞経済部記者による『国家は巨大ITに勝てるのか』の「はじめに」を特別公開する』、興味深そうだ。
・『GAFAの別の顔  巨大IT企業を取材して、7年になる。2016年から3年間を日本で、2019年から3年間をアメリカで、2022年からは再び日本で巨大ITと政府の攻防を追っている。 時には国家側から巨大ITを、時には巨大IT側から国家をみてきた。便利ですばらしいサービスを提供する、アメリカの大きな企業。「GAFA」と呼ばれる巨大IT企業について、最初はそういう印象しかなかった。 グーグル、アップル、フェイスブック(現・メタ)、アマゾン・ドット・コムの総称、「GAFA」。グーグル検索は何かを探すのに便利だし、グーグルマップは外出時に必須だ。アップルのiPhoneはデザインが洗練されていて、本当に使いやすい。アマゾンのネット通販は必ずほしい物が見つかり、しかも配達が速い(フェイスブックは使っていない)。 そんなGAFAの別の顔を垣間見たのは、ある大手通信会社幹部の夜回り取材(夜に自宅などで行う非公式取材)がきっかけだった。アップルのiPhoneを扱う日本の通信会社はアップルと契約を結んで供給を受けている。ある晩、何とはなしにその件を尋ねると、「それは言えない」。その人の口が一気に重くなった。強力な守秘義務がかかっているようだった。その人は慎重に言葉を選んで言った。 「なぜ日本のキャリア(通信会社)が、アンドロイド端末より圧倒的に安い値段でiPhoneを売っているのか。なぜ日本だけiPhoneがこんなに安いのか。考えればわかるよね」 iPhoneの過剰な値引き販売が問題となっていた時期。その口ぶりは、アップルから販売面で何らかの圧力を受けていることを示唆していた。禅問答のようなやりとりが続いた後、その幹部は「私は何も言っていないから」と念を押すように言った。 通信会社は、日本では巨大企業と言っていい存在だ。その幹部をここまで恐れさせるアップルとはいったい、どんな企業なのか──先進的でカッコいい企業、というイメージしかなかった私は、アップルの別の顔に触れた気がした』、「なぜ日本のキャリア(通信会社)が、アンドロイド端末より圧倒的に安い値段でiPhoneを売っているのか。なぜ日本だけiPhoneがこんなに安いのか。考えればわかるよね」、「iPhoneの過剰な値引き販売が問題となっていた時期。その口ぶりは、アップルから販売面で何らかの圧力を受けていることを示唆」、「先進的でカッコいい企業、というイメージしかなかった私は、アップルの別の顔に触れた気がした」、なるほど。
・『複雑で、強く、秘密主義  その後、IT業界を取材していると、アップルやグーグル、アマゾンの周辺でさまざまな問題が起こっていることがわかってきた。しかし、そうした問題を調べようとすると、驚くほど手がかりが少ない。GAFAが自ら丁寧に教えてくれるわけがないし、そもそも彼らに取材を依頼してもほとんど答えが返ってこない。 いろいろな情報を当たっていると、唯一、確かそうな情報が見つかった。それは日本政府、経済産業省や公正取引委員会(以下、公取)が出した報告書だった。 おぼろげに見えてきた彼らのビジネスモデルは複雑で、わかりにくかった。彼らは消費者と企業をつなぐ場、プラットフォームを運営し、消費者が使うプラットフォームと、企業が使うプラットフォームという2つの顔を持つ。問題の多くは、企業向けの「顔」で起きているようだった。中小企業は巨大ITの世界で取引を失うのを恐れ、声を上げられない。取引企業の声は消費者には伝わりづらく、問題は見過ごされているように思えた。) 政府の報告書を読んでも、彼らのビジネスはまだまだ得体の知れないブラックボックスだった。しかし、政府関係者を取材すると、それは政府も同じだった。これまでとはまったく異質な企業を前に、政府ですら戸惑っているのだった。 彼ら巨大IT企業と渡り合える存在は、国家を統治する巨大機構、政府しかないように思えた。しかし、政府でさえ巨大ITの前では頼りなくみえる。選りすぐりのエリート人材、それによって生み出される、精巧なビジネスモデルと巨額のマネー。プラットフォームに集まる企業に課されるルールは、あたかも国家の法律のように機能し、そこに住む者を統べる。それに比べて国家のシステムは古くさく、時代遅れに思えた』、「問題の多くは、企業向けの「顔」で起きているようだった。中小企業は巨大ITの世界で取引を失うのを恐れ、声を上げられない。取引企業の声は消費者には伝わりづらく、問題は見過ごされているように思えた・・・ これまでとはまったく異質な企業を前に、政府ですら戸惑っているのだった」、なるほど。
・『「巨大ITは独占禁止法(以下、独禁法)を一番、怖がっている」  そう聞いた私は、独禁法を所管する公取を精力的に取材した。しかし、「市場の番人」と呼ばれる公取であってもビジネスの全貌をつかみ、問題行為を法執行につなげるのは至難の業だった。彼ら巨大ITは強く、秘密主義だ。政府の言うことを素直に聞く相手ではなく、要求を無視することさえあった』、「公取であってもビジネスの全貌をつかみ、問題行為を法執行につなげるのは至難の業だった。彼ら巨大ITは強く、秘密主義だ。政府の言うことを素直に聞く相手ではなく、要求を無視することさえあった」、なるほど。
・『始まった国家側の反撃  そのうち政府=国家側の反撃が始まった。世界各国は独禁法の執行や規制強化で対抗。巨大ITは本性をむき出しにして抵抗し、国家と巨大ITの攻防は激しさを増した。 政府関係者は無自覚だったかもしれない。しかし私には、それはまるで国家が自らを脅かす存在を本能的に押さえ込もうとしているように見えた。 国家は司法、立法、行政の三権で統治されている。報道機関は政府を監視する役割を担う「第四の権力」と言われる。では巨大ITは? グーグルの元CEO、エリック・シュミットらは2014年の著作『第五の権力』(ダイヤモンド社)でこう述べた。 「これからの時代は、誰もがオンラインでつながることで、私たち1人ひとり、80億人全員が新しい権力、つまり『第五の権力』を握るかもしれない」) インターネットは確かに、個人に力を与えた。しかし、それはIT企業が用意した巨大な手のひらの上で、にすぎない。そして今、巨大ITこそが国家も報道機関も寄せつけない、「第五の権力」として君臨している。 歴史上、類を見ない巨大企業に対し、一国家では立ち向かえないと、近年は国家が連帯して包囲網を築く動きも出ている。「超国家」ともいうべき巨大ITと国家が繰り広げるパワーゲーム。実は私たちは今、その渦中にいる。この本を読めば、そのことを理解していただけると思う』、「今、巨大ITこそが国家も報道機関も寄せつけない、「第五の権力」として君臨している。 歴史上、類を見ない巨大企業に対し、一国家では立ち向かえないと、近年は国家が連帯して包囲網を築く動きも出ている。「超国家」ともいうべき巨大ITと国家が繰り広げるパワーゲーム。実は私たちは今、その渦中にいる」、なるほど。
・『AIでも主導権を握るのは巨大IT  そして──巨大ITは多くの顔を使い分けている。新型iPhoneや新サービスの華々しい発表。そこで見る彼らの顔は世界最先端の洗練されたテクノロジー企業だ。 だが、それは数多くある彼らの顔の1つにすぎない。彼らは消費者にはいつも慈愛の表情で応じるが、企業には時に残酷な表情をみせる。自らの領地にはライバル企業を寄せつけない高い壁を築き、貪欲に金を稼ぐ。優れた弁護士やロビイストを雇い、刃向かう者はたたき潰す。 2022年末、チャットGPTの登場で突如沸き起こったAIブーム。AIでも主導権を握るのは巨大ITであり、国家による規制をめぐって政府への働きかけを強めている。彼らはアメリカ資本主義の申し子だ。つまるところ、彼らを突き動かすのはビジネス拡大の野心であり、社会的な問題も損得勘定で判断しているように思える。 彼らが邪悪だとは思わないし、安易な巨大IT批判に与するつもりもない。ただ、何ごとにも光と影があり、光が強いほど影も濃くなる。便利なサービスの裏で本当は何が起きているのか、巨大ITの「正体」と、知られざる国家の攻防を明るみに出したい』、「巨大IT」は「企業には時に残酷な表情をみせる。自らの領地にはライバル企業を寄せつけない高い壁を築き、貪欲に金を稼ぐ。優れた弁護士やロビイストを雇い、刃向かう者はたたき潰す。 2022年末、チャットGPTの登場で突如沸き起こったAIブーム。AIでも主導権を握るのは巨大ITであり、国家による規制をめぐって政府への働きかけを強めている。彼らはアメリカ資本主義の申し子だ。つまるところ、彼らを突き動かすのはビジネス拡大の野心であり、社会的な問題も損得勘定で判断しているように思える。 彼らが邪悪だとは思わないし、安易な巨大IT批判に与するつもりもない。ただ、何ごとにも光と影があり、光が強いほど影も濃くなる。便利なサービスの裏で本当は何が起きているのか、巨大ITの「正体」と、知られざる国家の攻防を明るみに出したい』、「巨大ITの「正体」と、知られざる国家の攻防を明るみに出したい」とする以上、『国家は巨大ITに勝てるのか』の他の部分も紹介してほしいものだ。
タグ:「公取であってもビジネスの全貌をつかみ、問題行為を法執行につなげるのは至難の業だった。彼ら巨大ITは強く、秘密主義だ。政府の言うことを素直に聞く相手ではなく、要求を無視することさえあった」、なるほど。 「41歳男性ユーザーの体験を取り上げている。彼は「パンデミック期間中、社会との交流を求めて」VRヘッドセットを購入し、買ったその日に意気揚々と仮想空間に飛び込んだ。だが、メインとなる出会いのスペースに行くと、「そこには誰もいなかった」との悲しい体験が待っていたという。 「誰が生き残るとも知れない疑心暗鬼に陥り、オフィスは殺伐とした雰囲気に包まれている」、気の毒だが、トップの責任だ。 青葉 やまと氏による「フェイスブックの次はVR離れ…1兆円超えの大赤字を垂れ流す「メタ社」の悲惨な末路 ザッカーバーグ氏は従業員から見放された」 「従業員たちは、いつ自身を襲うとも知れないレイオフの波に翻弄ほんろうされており、ザッカーバーグ氏はビジョンと従業員からの信頼を失った」との「米ワシントン・ポスト紙」の指摘は的確だ。 「FacebookやInstagramで「いいね」を送るだけで温かい気持ちが伝わるいま、ゴーグルを装着しアバターを操作して他人と触れ合うというアイデアは、必ずしも多くのユーザーの賛同を得るに至っていないようだ」、その通りだ。「ザッカーバーグ氏」はいつになったら気付くのだろう。 「問題の多くは、企業向けの「顔」で起きているようだった。中小企業は巨大ITの世界で取引を失うのを恐れ、声を上げられない。取引企業の声は消費者には伝わりづらく、問題は見過ごされているように思えた・・・ これまでとはまったく異質な企業を前に、政府ですら戸惑っているのだった」、なるほど。 IT他社が人工知能(AI)の開発に資金を投じるなか、同社はここ数年、「メタバース」と呼ばれるオンライン空間の提供に全力を傾けている。ユーザーが仮想の人物「アバター」の姿を借り、交流を図る仮想の世界だ。だが、現実には過疎化が過疎化を呼ぶ悪循環に陥っている」、「メタバース」に賭けて社名も「メタ」に変更したほどだ。 「Meta社のHorizon Worldsについては、そもそも一時的なブームにすら至っていない。肝心のユーザーが集まらず、VRヘッドセットを購入した希少なユーザーでさえ、半年とたたずに離脱する悪循環が生じている」、なるほど。 「巨大IT」は「企業には時に残酷な表情をみせる。自らの領地にはライバル企業を寄せつけない高い壁を築き、貪欲に金を稼ぐ。優れた弁護士やロビイストを雇い、刃向かう者はたたき潰す。 2022年末、チャットGPTの登場で突如沸き起こったAIブーム。AIでも主導権を握るのは巨大ITであり、国家による規制をめぐって政府への働きかけを強めている。彼らはアメリカ資本主義の申し子だ。つまるところ、彼らを突き動かすのはビジネス拡大の野心であり、社会的な問題も損得勘定で判断しているように思える。 東洋経済オンライン 「もともとFacebookユーザーのプライバシーを収益源としていた同社には、ユーザー保護の視点が欠如しているとの批判が絶えなかった。AppleがiOS上での個人情報の追跡を困難にしてからは、広告収入の明らかな減少に見舞われている」、なるほど。 「「Horizon Workrooms」上での別のミーティングもうまくいかなかったと明かしている。記事によると「技術的な不具合で会議は中断され、結局のところこのチームはZoomを使うことになった」という。 メタバースの有用性について、社内からも疑問が噴出している。情報筋は同紙に対し、メタバースのプロジェクトが社内の一部では「MMK」と呼ばれていると明かした」、「マーク・ザッカーバーグ」氏はやはり暴君のようだ。 PRESIDENT ONLINE 「GAFA各社はこれまでの高い成長スピード」を可能にしてきた様々な要因が逆方向にあるようだ。 「テック企業の多くがAI開発に乗り出すなか、Meta社だけがメタバースの普及に社運を賭けている状況だ」、何故ここまで「メタバース」にこだわるのだろう。 「プールに落ち、出る方法がわからなくなった。助けてくれる人は辺りに誰もいなかった」、酷い話だ。 「国際分業体制の強化で高成長を実現してきたアップル」にとっては、環境は完全な逆風だ。 同紙によると、Facebook、Instagram、WhatsAppなどMeta社のソーシャルメディアには、合計で月間35億人以上のユーザーがいる。これに対し、同社のVRオンラインゲーム・プラットフォーム「Horizon Worlds」は、月間20万人以下であるという。比率にしてわずか0.0057%という惨状だ」、「メインとなる出会いのスペースに行くと、「そこには誰もいなかった」」、確かに「悲しい体験」だ。 「巨大ITの「正体」と、知られざる国家の攻防を明るみに出したい」とする以上、『国家は巨大ITに勝てるのか』の他の部分も紹介してほしいものだ。 マクロ、ミクロの環境要因がいずれも厳しくなるなかでは、「新しいモノやサービスを生み出し、需要を創出すること」は至難の技だろう。 「なぜ日本のキャリア(通信会社)が、アンドロイド端末より圧倒的に安い値段でiPhoneを売っているのか。なぜ日本だけiPhoneがこんなに安いのか。考えればわかるよね」、「iPhoneの過剰な値引き販売が問題となっていた時期。その口ぶりは、アップルから販売面で何らかの圧力を受けていることを示唆」、「先進的でカッコいい企業、というイメージしかなかった私は、アップルの別の顔に触れた気がした」、なるほど。 「今、巨大ITこそが国家も報道機関も寄せつけない、「第五の権力」として君臨している。 歴史上、類を見ない巨大企業に対し、一国家では立ち向かえないと、近年は国家が連帯して包囲網を築く動きも出ている。「超国家」ともいうべき巨大ITと国家が繰り広げるパワーゲーム。実は私たちは今、その渦中にいる」、なるほど。 読売新聞経済部記者による『国家は巨大ITに勝てるのか』 「巨大ITの「正体」と、知られざる国家の攻防を明るみに出したい」との今後の筆者の努力に期待したい。 「過去半年で2回のレイオフに踏み切ったほか、今後もさらに2回の実施を予定している。合計で2万1000人規模の削減となる見込みだ」、「株価は昨年、前年比で65%急落」、「同社が凋落した原因はいくつも指摘されているが、なかでもトップのビジョンの迷走が大きく災いしたようだ。 小林 泰明氏による「国家権力も超える力を持つ「巨大IT」の"別の顔" 「グーグル、アップル、メタ、アマゾン」vs.国家」 ダイヤモンド・オンライン 確かに多くの要因が「GAFA」「株価の下落懸念を高め」ている。 (その7)(GAFAの株価が低調 「成長の限界を迎えた」といえるこれだけの理由、フェイスブックの次はVR離れ…1兆円超えの大赤字を垂れ流す「メタ社」の悲惨な末路 ザッカーバーグ氏は従業員から見放された、国家権力も超える力を持つ「巨大IT」の"別の顔" 「グーグル アップル メタ アマゾン」vs.国家) GAFA 真壁昭夫氏による「GAFAの株価が低調、「成長の限界を迎えた」といえるこれだけの理由」
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”右傾化”(その16)(神社庁幹部による約3000万円の「横領」が発覚 横領したのは神道政治連盟・打田会長の親族、「日本のネット右翼」は何人いる?選挙結果から見えた“意外な数字”) [社会]

”右傾化”については、本年5月7日に取上げた。今日は、(その16)(神社庁幹部による約3000万円の「横領」が発覚 横領したのは神道政治連盟・打田会長の親族、「日本のネット右翼」は何人いる?選挙結果から見えた“意外な数字”)である。

先ずは、5月20日付け東洋経済オンライン「神社庁幹部による約3000万円の「横領」が発覚 横領したのは神道政治連盟・打田会長の親族」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/673965
・『全国8万社の神社を包括する神社本庁の傘下組織である東京都神社庁(小野貴嗣庁長)の幹部が、複数年にわたって神社庁の口座などから約3000万円を自身の口座に移し、生活費や競馬代として使っていたことがわかった。この幹部は1月に東京都神社庁を解雇されている。 「金銭上の非違行為」(東京都神社庁の庁報『東神』)で解雇されたのは、現在も都内の神社で宮司をしているM氏。複数の関係者によると、M氏による横領が発覚したのは2022年12月。東京都神社庁の口座から別の口座に不自然に現金が移動していることに職員が気づいたという。 発覚後、M氏が東京都神社庁に提出した「事情説明書」によると、生活資金がままならなくなり、「借入だと勝手に考え資金の流用を繰り返してしまいました」としている。妻との不和によるストレスで競馬に費消した旨も書かれている』、「複数年にわたって神社庁の口座などから約3000万円を自身の口座に移し、生活費や競馬代として使っていた・・・この幹部は1月に東京都神社庁を解雇」、「現在も都内の神社で宮司をしているM氏」、なるほど。
・『「教誨師」の口座を通して  横領の総額はわかっているだけで約3000万円にのぼる。 2022年12月に発覚した横領額は約1900万円。発覚後、東京都神社庁の小野氏がM氏の父親(都内の宮司)にかけあい、弁済させたという。 だが、2023年に入るとM氏の別の横領も明るみに出る。3月には、新たに630万円が東京都神職教誨師会の口座に移された後、引き出されていたことが発覚した。教誨師(きょうかいし)とは、刑務所などで受刑者に精神的、宗教的な教えを説き、二度と罪を犯さぬよう教えを説く者のことで、M氏は東京都神職教誨師会の事務局長を務めていた。 5月11日の役員会では、さらに約600万円が神職教誨師会の口座から引き出されていたことが確認されたが、損害を被ったのが神社庁か神職教誨師会かははっきりしていない。 神社庁として被害届けを出すべきか、それとも刑事告訴すべきか。5月11日の役員会は紛糾した。「小野庁長はじめ役員が引責辞任するべきではないか」という意見も出たが、この日は組織として被害届けを出す方針だけ固まった。 横領の発覚から5カ月が経過しており、不祥事対応としては遅きに失した感はぬぐえない。) 都内の宮司は「この間、神社庁は『調査中』というばかりで横領の手口や、金が何に使われていたのかなど、ほとんど具体的には説明しなかった。警察に被害届けを出すと決めるまでにどうして5カ月もかかったのか」と首を傾げる。 背景に見え隠れするのが、上部組織である神社本庁で起きている内紛だ』、「2022年12月に発覚した横領額は約1900万円。発覚後、東京都神社庁の小野氏がM氏の父親(都内の宮司)にかけあい、弁済させたという。 だが、2023年に入るとM氏の別の横領も明るみに出る。3月には、新たに630万円が東京都神職教誨師会の口座に移された後、引き出されていたことが発覚した」、「5月11日の役員会では、さらに約600万円が神職教誨師会の口座から引き出されていたことが確認されたが、損害を被ったのが神社庁か神職教誨師会かははっきりしていない。 神社庁として被害届けを出すべきか、それとも刑事告訴すべきか。5月11日の役員会は紛糾した。「小野庁長はじめ役員が引責辞任するべきではないか」という意見も出たが、この日は組織として被害届けを出す方針だけ固まった。 横領の発覚から5カ月が経過しており、不祥事対応としては遅きに失した感はぬぐえない」、なるほど。
・『神社本庁で起きている泥沼の争い  神社本庁では2022年から2人の宮司が「総長の座」をめぐって争っている。一人は、2期6年が通例であるところ4期12年の長期政権を敷いてきた田中恆清氏(京都・石清水八幡宮宮司)、もう一人が芦原高穂氏(北海道・旭川神社宮司)だ。 経緯は以下の通り。 2022年5月、全国の神社庁長など約170人が集まる評議員会で、神社本庁の宗教的な権威である「統理」に伊勢神宮大宮司を務めた鷹司尚武氏が全会一致で選任された。 鷹司氏はその後の役員会で次期総長に芦原氏を指名。5期15年を目指した田中氏に退任を迫った。 ところが翌6月の役員会では15人中9人が田中氏の続投を支持。結果、宗教的権威である鷹司氏が指名した芦原氏と、宗教法人である神社本庁の役員会が議決した田中氏が、総長の正当性をめぐって争う構図が生まれた。 2022年の7月、神社本庁は芦原氏が宮司をする北海道の旭川地裁に、芦原氏が神社本庁の総長ではないことを確認する仮処分を申し立て、旭川地裁はこれを認めた。一方の芦原氏は東京地裁に地位確認請求訴訟を提起。「真の総長」をめぐる泥沼裁判が始まってしまう。 こうした中、約3000万円もの金を横領していながら東京都神社庁の態度が煮え切らないのは、実は理由がある。それは、M氏が田中氏を支持する神社本庁の中枢と結びついているからだ。) 旭川地裁が「芦原氏は総長の地位にはない」という決定をした昨年7月7日、地裁の前に白のベンツが乗りつけた。クルマから出てきたのは神社本庁の吉川通泰副総長と小野貴嗣常務理事。小野氏は東京都神社庁の庁長でもあり「田中総長の長期政権を支えた『ポスト田中』の筆頭格」(有力神社の宮司)と言われる人物だ。 【2023年5月20日7時5分追記】上記の初出時の日付を修正しました。 その2人の後ろから姿を現したのが運転をしていたM氏だ。小野氏の出張に同行するなど行動を共にすることが多く、田中氏の側近である神道政治連盟・打田文博会長の親戚でもあることからM氏は自民党国会議員との接点も多い。 【2023年5月22日11時20分追記】上記と記事の見出しで、初出時の親族を親戚に修正しました。 そうしたM氏のポジションから、「芦原総長」を支持する側からは「横領は本当にこれだけなのか。3000万円もの金の使い道は本当に生活費や競馬だけなのか。徹底した調査がなされているのか疑問だ」という声があがる。 というのも、企業や団体で不祥事が発覚すれば、利害関係のない外部の弁護士や会計士が調査するのが通例だが、今回の調査は東京都神社庁内部のみで行われているからだ。しかもその調査には、「総長をめぐる裁判」において田中氏側の代理人であるだけでなく、東京都神社庁の顧問弁護士であり、M氏と親交のある弁護士が関与している。このような調査で、横領の真相は明らかになるのか。関係者の間では疑念が渦巻いている。 【2023年5月24日13時55分追記】上記を初出時から一部修正しました。 「話せるときがきたら話します」 5月22日から1週間、神社本庁では全国の宮司・総代が勢揃いする会議が開かれる。田中体制の執行部はM氏の横領についてどんな説明をするのか。 5月中旬、神社で月に一度の月次祭(つきなみさい)を執り行っていたM氏。祭祀終了後、横領について尋ねた。M氏は「今は、否定も肯定もしないことにしています。話せるときがきたら話します。申し訳ありません」と言うばかりだった。 東洋経済は東京都神社庁と神社本庁に「横領額とその内訳」「横領したM氏が神職の資格を剥奪されない理由」「小野庁長の責任」「M氏と親しい弁護士に横領の調査を任せている理由」などを尋ねたが、どちらからも期限までに回答はなかった』、「神社本庁では2022年から2人の宮司が「総長の座」をめぐって争っている。一人は、2期6年が通例であるところ4期12年の長期政権を敷いてきた田中恆清氏(京都・石清水八幡宮宮司)、もう一人が芦原高穂氏(北海道・旭川神社宮司)だ。 経緯は以下の通り。 2022年5月、全国の神社庁長など約170人が集まる評議員会で、神社本庁の宗教的な権威である「統理」に伊勢神宮大宮司を務めた鷹司尚武氏が全会一致で選任された。 鷹司氏はその後の役員会で次期総長に芦原氏を指名。5期15年を目指した田中氏に退任を迫った。 ところが翌6月の役員会では15人中9人が田中氏の続投を支持。結果、宗教的権威である鷹司氏が指名した芦原氏と、宗教法人である神社本庁の役員会が議決した田中氏が、総長の正当性をめぐって争う構図が生まれた」、「約3000万円もの金を横領していながら東京都神社庁の態度が煮え切らないのは、実は理由がある。それは、M氏が田中氏を支持する神社本庁の中枢と結びついているからだ」、「東洋経済は東京都神社庁と神社本庁に「横領額とその内訳」「横領したM氏が神職の資格を剥奪されない理由」「小野庁長の責任」「M氏と親しい弁護士に横領の調査を任せている理由」などを尋ねたが、どちらからも期限までに回答はなかった」、神社の元締めである「神社本庁」の内紛は、全く酷いものだ。これでは、一般の信者は取り残されてしまう。

次に、7月3日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した作家・評論家の古谷経衡氏による「「日本のネット右翼」は何人いる?選挙結果から見えた“意外な数字”」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/325163
・『近年、なにかと話題になるネット右翼。主にネット上で活動するため、その実態はリアルな世界では分かりにくい。作家・評論家の古谷経衡氏が、そんなネット右翼の人口を可視化した。本稿は、古谷経衡著『シニア右翼 日本の中高年はなぜ右傾化するのか』(中公新書ラクレ)の一部を抜粋・編集したものです』、興味深そうだ。
・『2014年「次世代の党」によってネット右翼の票数が可視化  ネット右翼と呼ばれる人々は日本にどのくらい存在するのだろうか。ネット右翼は上位存在である「保守系言論人」とか「右派系言論人」に寄生する存在である。ようするに彼らの主張をオウム返しする熱心なファンこそがネット右翼である。よって彼らの人口を推しはかるには、まず彼らの上位存在がどのような政党や政治家を支持しているのかを観察し、彼らに支持される政党や政治家が、とりわけ国政選挙においてどのくらいの票を得たのかが大きな参考になるといえる。 「保守系言論人」とか「右派系言論人」は一貫して自民党を支持してきた。しかしながら自民党であればなんでも良いのかと言えば違う。自民党の中でも「タカ派的・復古的」とされる清和会に所属する者や、無所属であってもそれに近い政治家を伝統的な支持対象としてきた。彼らからするとハト派とされる保守本流の宏池会や、対中融和姿勢が「強いとされる」旧経世会系は「反日」なのである。またこれとは別に旧民社党(旧社会党右派)出身の個別議員を支持していたりしたが、やはり主力の支持先は自民党である。 しかし自民党清和会に所属する議員(に限らないが)は衆議院で小選挙区を地盤とする者、ブロック比例と重複する者(比例復活)、比例ブロック単独で出馬する者、参議院では選挙区を基盤とする者、全国比例単独の者など様々であり、衆参それぞれの国政選挙で自民党の総得票数は見えるが、ネット右翼以外の支持基盤である職能団体などの票が大きく混ざるため、永らくネット右翼の投票行動が見えづらかった。よって彼らの総数もまた判然としないものだった。 ところが2014年衆院選挙で憲政史上初めて、これまで自民党票の中に紛れていたネット右翼の票が「分離」され可視化される事象が起こった。「結いの党(旧みんなの党の一部)」との合流を巡って維新から分派し、結党された新党「次世代の党」である。 次世代の党は党首に平沼赳夫をおき、とりわけ復古主義、右派ナショナリズム、反構造改革路線を標榜して「保守系言論人」とか「右派系言論人」から圧倒的な支持を得た。これまで自民党の中に埋没していた彼らの政治的傾向が、はじめて単独の党の中に収斂されたのである。よってネット右翼もまた次世代の党に対し熱狂的な支持を表明した。同党は14年衆院選挙においてネット右翼から極めて高い支持を得て、14年の東京都知事選挙に立候補した元航空幕僚長の田母神俊雄を東京12区に立候補させるなどし、同時にネット動画での選挙活動に力を入れ「タブーブタのウタ」などと称して、根拠不明なまま生活保護受給者へのバッシングを行うなどした』、「2014年衆院選挙で憲政史上初めて、これまで自民党票の中に紛れていたネット右翼の票が「分離」され可視化される事象が起こった。「結いの党(旧みんなの党の一部)」との合流を巡って維新から分派し、結党された新党「次世代の党」である。 次世代の党は党首に平沼赳夫をおき、とりわけ復古主義、右派ナショナリズム、反構造改革路線を標榜して「保守系言論人」とか「右派系言論人」から圧倒的な支持を得た」、なるほど。
・『次世代の党は141万4919票獲得 ネット右翼総人口は200万人?  結果、次世代の党は党首の平沼、園田博之の2名が地盤である小選挙区で当選したほかは全て落選し、比例ブロックでの当選者もゼロであった。とはいえブロック比例での全ての得票を合わせると141万4919票を獲得した。ここに初めて、ネット右翼の投票行動が自民党などと分離される格好となり数字として現れたのである。 141万4919という次世代の党の数字は、ネット右翼の人口を考えるうえでほぼ全ての基礎になる数字である。有権者総数約1億人に対してのこの数字は、すなわち1.5%程度を示す。この時の衆院選の投票率は全体で52.66%という低いものであった(第二次安倍政権下)。いかにネット右翼が強い政治的主張をオウム返しする存在であっても、彼らの100%が投票所に行ったとは考えにくい。雑駁に考えて2%とするべきである。つまりネット右翼の総人口はこのことから有権者の約2%にあたる200万人程度と推定されるのである。 次世代の党は14年衆院選挙で壊滅的打撃を被ったために、落選した多くの議員は自民党に復党した。当選した平沼、園田を筆頭に、落選組では杉田水脈らが自民党に移籍して後に国会議員になった。次世代の党は「日本のこころを大切にする党」に党名変更し、中山恭子が党首になって再建を試みたが、多くの人々が党を去って党勢衰微に歯止めがかからず、2018年11月を以て解党した。ちなみに中山は夫の成彬とともに2017年に希望の党に入党している』、「141万4919という次世代の党の数字は、ネット右翼の人口を考えるうえでほぼ全ての基礎になる数字である。有権者総数約1億人に対してのこの数字は、すなわち1.5%程度を示す・・・つまりネット右翼の総人口はこのことから有権者の約2%にあたる200万人程度と推定されるのである」、なるほど。
・『ネット右翼票は140万前後で推移  次世代の党は実質的に14年衆院選挙でとりわけ有意な数字を残したものの、参考になる数字としてはこれきりで終わった。これ以外に、ネット右翼の総人口を推し量る国政選挙は無いのだろうか。参議院全国比例が適当である。参院全国比例は非拘束名簿式であり、立候補者個人への投票総数が可視化されるため、とりわけ「保守系言論人」とか「右派系言論人」が支持した全国比例候補が個人名でどの程度を得たのかを合算すれば、14年衆院選挙における次世代の党にならぶネット右翼の人口を類推する大きなデータになる。 2016年参院全国比例でのそれは、対象とする候補の得票として青山繁晴48万1890、片山さつき39万3382、山谷えり子24万9844、山田宏14万9833、宇都隆史13万7993(全て自民、当選)であり総合計では約141万3000票になる。 16年選出の改選である2022年参院全国比例では、同じく青山繁晴37万3786、片山さつき29万8091、山田宏17万5871、山谷えり子17万2640、宇都隆史10万1840(全て自民、宇都のみ落選)であり総合計は約112万2000票であった。) 14年衆院選挙を機軸として、概ね後2回の参院全国比例(この時の全国投票率も、14年衆院選挙とほぼ変わらず50%台前半であった)のこのような数字が、ネット右翼の総数が約200万人であるとする根拠である。ただし参院全国比例は政党名で投票しても構わないため、参院全国比例での個人得票がそのままネット右翼を全て網羅しているとは必ずしも言えないので注意が必要である。 とりわけ2022年参議院選挙にはミニ政党「参政党」が政党名で約137万票を獲得しており、私は様々な界隈の情勢を総合して判断した結果、このうち約25%程度(4分の1)がネット右翼であると考えているので、先に挙げた22年の112万に対し「137万×0.25=34.25万」をプラスすると約146万票となる。毎回取り決めたかのようにネット右翼によると思われる投票数が140万前後で可視化されているので、彼らの総数はやはり約200万(有権者人口の約2%)という説を私は強く唱えている。 彼らが増えれば当然こういった数字は増加するし、減少すれば逆の展開になる。が、一貫して「保守系言論人」とか「右派系言論人」が強力に支持し、彼らの寡占するネットメディアや雑誌、媒体などで強く支持を訴える政治家や政党の得票はこのように140万程度で推移している。この数字を追っていけば、必然的にそれはネット右翼の総人口とニアリーイコールになる。今後も大きな増減は無く推移すると思われる』、「2016年参院全国比例でのそれは、対象とする候補の得票として青山繁晴48万1890、片山さつき39万3382、山谷えり子24万9844、山田宏14万9833、宇都隆史13万7993(全て自民、当選)であり総合計では約141万3000票になる・・・2022年参院全国比例では、同じく青山繁晴37万3786、片山さつき29万8091、山田宏17万5871、山谷えり子17万2640、宇都隆史10万1840(全て自民、宇都のみ落選)であり総合計は約112万2000票」、「毎回取り決めたかのようにネット右翼によると思われる投票数が140万前後で可視化されているので、彼らの総数はやはり約200万(有権者人口の約2%)という説を私は強く唱えている。 彼らが増えれば当然こういった数字は増加するし、減少すれば逆の展開になる。が、一貫して「保守系言論人」とか「右派系言論人」が強力に支持し、彼らの寡占するネットメディアや雑誌、媒体などで強く支持を訴える政治家や政党の得票はこのように140万程度で推移している。この数字を追っていけば、必然的にそれはネット右翼の総人口とニアリーイコールになる。今後も大きな増減は無く推移すると思われる」、なるほど。
・『98%の有権者はネット右翼にあらず  ネット右翼人口が200万であるとして、その数字をどう評価すればよいのか。確かに例えば参院全国比例での政党得票数と比べると、日本共産党の約361万8000票に比べれば約5割強、社会民主党の約125万8000票に対しては約1.6倍である。物凄く大きくは無いが、たいへん少ないという事もできない微妙な数字である。しかしやはり彼らは政治的にはマイノリティである。 このようなマイノリティであるネット右翼が、ネット空間で強い影響を持つことにより、メディアの姿勢が萎縮するならば、あってはならないことである。ネット右翼の主張を無視しろと言っているわけではないが、圧倒的多数、98%の有権者はネット右翼ではないので、特定のマイノリティの意見に寄り添ったり、忖度したりするという姿勢がもしあるのであればそれは「政治的偏向」であり、放送法が定めた政治的中立性を毀損するものである。ネット右翼を過小評価してはならないが、過大評価してもならない。 例えば100人の利用客のうち、たった2人からクレームがあったことを以て、サービスを大きく変更する経営者は端的に述べて適正な感覚を有していない。もちろん、民主主義の合意形成プロセスと営利企業の顧客構造はイコールではない。が、民主主義の合意形成プロセスに大きな影響を与えるメディアは、公共性を担保しつつも東証に株式を上場し、株式を公開している営利企業が多い。 であるなら、当然2%の人々に過度に配慮したり影響を受けたりすることに正当性は無いが、彼らの多くはそもそもこういった数字的根拠を知らない。仮に知っていたとしても日々の業務に忙殺される中、仮に200万人のうちの更に2%である4万人から一斉に抗議が来ようものなら現場がたちまちマヒするので、その「声」に抗えないか、最初から彼らから抗議の来ない方向へと事前に内容を「調整」し予防する。これは極めて不健全である。あくまでも数字的根拠を以て客観的に評価するべきである。残りの98人、すなわち98%の人々こそがサイレントマジョリティであり、彼らこそが所謂「優良顧客」の根幹をなすのは言うまでもない』、「圧倒的多数、98%の有権者はネット右翼ではないので、特定のマイノリティの意見に寄り添ったり、忖度したりするという姿勢がもしあるのであればそれは「政治的偏向」であり、放送法が定めた政治的中立性を毀損するものである。ネット右翼を過小評価してはならないが、過大評価してもならない・・・仮に200万人のうちの更に2%である4万人から一斉に抗議が来ようものなら現場がたちまちマヒするので、その「声」に抗えないか、最初から彼らから抗議の来ない方向へと事前に内容を「調整」し予防する。これは極めて不健全である。あくまでも数字的根拠を以て客観的に評価するべきである。残りの98人、すなわち98%の人々こそがサイレントマジョリティであり、彼らこそが所謂「優良顧客」の根幹をなすのは言うまでもない」、「ネット右翼を過小評価してはならないが、過大評価してもならない」、一安心だ。
タグ:「複数年にわたって神社庁の口座などから約3000万円を自身の口座に移し、生活費や競馬代として使っていた・・・この幹部は1月に東京都神社庁を解雇」、「現在も都内の神社で宮司をしているM氏」、なるほど。 ダイヤモンド・オンライン 「約3000万円もの金を横領していながら東京都神社庁の態度が煮え切らないのは、実は理由がある。それは、M氏が田中氏を支持する神社本庁の中枢と結びついているからだ」、「東洋経済は東京都神社庁と神社本庁に「横領額とその内訳」「横領したM氏が神職の資格を剥奪されない理由」「小野庁長の責任」「M氏と親しい弁護士に横領の調査を任せている理由」などを尋ねたが、どちらからも期限までに回答はなかった」、神社の元締めである「神社本庁」の内紛は、全く酷いものだ。これでは、一般の信者は取り残されてしまう。 東洋経済オンライン「神社庁幹部による約3000万円の「横領」が発覚 横領したのは神道政治連盟・打田会長の親族」 経緯は以下の通り。 2022年5月、全国の神社庁長など約170人が集まる評議員会で、神社本庁の宗教的な権威である「統理」に伊勢神宮大宮司を務めた鷹司尚武氏が全会一致で選任された。 鷹司氏はその後の役員会で次期総長に芦原氏を指名。5期15年を目指した田中氏に退任を迫った。 ところが翌6月の役員会では15人中9人が田中氏の続投を支持。結果、宗教的権威である鷹司氏が指名した芦原氏と、宗教法人である神社本庁の役員会が議決した田中氏が、総長の正当性をめぐって争う構図が生まれた」、 「神社本庁では2022年から2人の宮司が「総長の座」をめぐって争っている。一人は、2期6年が通例であるところ4期12年の長期政権を敷いてきた田中恆清氏(京都・石清水八幡宮宮司)、もう一人が芦原高穂氏(北海道・旭川神社宮司)だ。 経緯は以下の通り。 2022年5月、全国の神社庁長など約170人が集まる評議員会で、神社本庁の宗教的な権威である「統理」に伊勢神宮大宮司を務めた鷹司尚武氏が全会一致で選任された。 「圧倒的多数、98%の有権者はネット右翼ではないので、特定のマイノリティの意見に寄り添ったり、忖度したりするという姿勢がもしあるのであればそれは「政治的偏向」であり、放送法が定めた政治的中立性を毀損するものである。ネット右翼を過小評価してはならないが、過大評価してもならない・・・仮に200万人のうちの更に2%である4万人から一斉に抗議が来ようものなら現場がたちまちマヒするので、その「声」に抗えないか、最初から彼らから抗議の来ない方向へと事前に内容を「調整」し予防する。 なる。今後も大きな増減は無く推移すると思われる」、なるほど。 「毎回取り決めたかのようにネット右翼によると思われる投票数が140万前後で可視化されているので、彼らの総数はやはり約200万(有権者人口の約2%)という説を私は強く唱えている。 彼らが増えれば当然こういった数字は増加するし、減少すれば逆の展開になる。が、一貫して「保守系言論人」とか「右派系言論人」が強力に支持し、彼らの寡占するネットメディアや雑誌、媒体などで強く支持を訴える政治家や政党の得票はこのように140万程度で推移している。この数字を追っていけば、必然的にそれはネット右翼の総人口とニアリーイコールに 「2016年参院全国比例でのそれは、対象とする候補の得票として青山繁晴48万1890、片山さつき39万3382、山谷えり子24万9844、山田宏14万9833、宇都隆史13万7993(全て自民、当選)であり総合計では約141万3000票になる・・・2022年参院全国比例では、同じく青山繁晴37万3786、片山さつき29万8091、山田宏17万5871、山谷えり子17万2640、宇都隆史10万1840(全て自民、宇都のみ落選)であり総合計は約112万2000票」、 「141万4919という次世代の党の数字は、ネット右翼の人口を考えるうえでほぼ全ての基礎になる数字である。有権者総数約1億人に対してのこの数字は、すなわち1.5%程度を示す・・・つまりネット右翼の総人口はこのことから有権者の約2%にあたる200万人程度と推定されるのである」、なるほど。 「2014年衆院選挙で憲政史上初めて、これまで自民党票の中に紛れていたネット右翼の票が「分離」され可視化される事象が起こった。「結いの党(旧みんなの党の一部)」との合流を巡って維新から分派し、結党された新党「次世代の党」である。 次世代の党は党首に平沼赳夫をおき、とりわけ復古主義、右派ナショナリズム、反構造改革路線を標榜して「保守系言論人」とか「右派系言論人」から圧倒的な支持を得た」、なるほど。 古谷経衡著『シニア右翼 日本の中高年はなぜ右傾化するのか』(中公新書ラクレ) 古谷経衡氏による「「日本のネット右翼」は何人いる?選挙結果から見えた“意外な数字”」 神社庁として被害届けを出すべきか、それとも刑事告訴すべきか。5月11日の役員会は紛糾した。「小野庁長はじめ役員が引責辞任するべきではないか」という意見も出たが、この日は組織として被害届けを出す方針だけ固まった。 横領の発覚から5カ月が経過しており、不祥事対応としては遅きに失した感はぬぐえない」、なるほど。 「2022年12月に発覚した横領額は約1900万円。発覚後、東京都神社庁の小野氏がM氏の父親(都内の宮司)にかけあい、弁済させたという。 だが、2023年に入るとM氏の別の横領も明るみに出る。3月には、新たに630万円が東京都神職教誨師会の口座に移された後、引き出されていたことが発覚した」、「5月11日の役員会では、さらに約600万円が神職教誨師会の口座から引き出されていたことが確認されたが、損害を被ったのが神社庁か神職教誨師会かははっきりしていない。 (その16)(神社庁幹部による約3000万円の「横領」が発覚 横領したのは神道政治連盟・打田会長の親族、「日本のネット右翼」は何人いる?選挙結果から見えた“意外な数字”) ”右傾化” これは極めて不健全である。あくまでも数字的根拠を以て客観的に評価するべきである。残りの98人、すなわち98%の人々こそがサイレントマジョリティであり、彼らこそが所謂「優良顧客」の根幹をなすのは言うまでもない」、「ネット右翼を過小評価してはならないが、過大評価してもならない」、一安心だ。
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外食産業(その5)(「黒い吉野家」増殖中 上品な“お牛丼”を開発した吉野家の戦略の秀逸設計、スシローは監視のない「ちゃらい場所」になっていた 若者の「客テロ」 背景にある省人化の徹底) [産業動向]

外食産業については、本年2月1日に取上げた。今日は、(その5)(「黒い吉野家」増殖中 上品な“お牛丼”を開発した吉野家の戦略の秀逸設計、スシローは監視のない「ちゃらい場所」になっていた 若者の「客テロ」 背景にある省人化の徹底)である。

先ずは、2月24日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「「黒い吉野家」増殖中、上品な“お牛丼”を開発した吉野家の戦略の秀逸設計」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/318238
・『牛丼でおなじみの吉野家が2種類あることをご存じですか。オレンジの看板の吉野家と、黒い看板の吉野家です。「街の景観に合わせて看板の色を変えただけじゃないの」と思った方、ここには吉野家の絶妙な戦略が隠れています。顧客想定からメニュー設計、出店戦略まで秀逸です。さらに、「隠れた3種類目の吉野家」があることもわかりました』、興味深そうだ。
・『牛丼の吉野家には「オレンジの看板」と「黒い看板」の2種類ある  人生の大半、約50年間にわたり、“牛丼は吉野家一筋”な経済評論家・鈴木貴博です。若い担当編集者からこのような疑問を投げかけられました。 「ついひと昔前まではおじさん達が集う店というイメージもあった吉野家が、最近ではカフェのようなおしゃれ空間になっている理由は何でしょうか?」と言うのです。 「おじハラ」じゃないかと思ったりもするのですが、実はこの疑問は企業戦略的に結構鋭いものでもあります。そこで、今回の記事ではその意図するものについて戦略コンサルタントの視点でまとめてみたいと思います。 さて、そもそものところからお話ししましょう。吉野家がおしゃれ空間になっているというと「わかるわかる」という人と「何?なんでそう思うの?」と思う人に分かれると思います。それには理由があるのです。 今、吉野家の店舗には2種類あるのです。オレンジの看板の吉野家と黒い看板の吉野家です』、「吉野家」には「オレンジの看板」のほか、「黒い看板」があるというのは初めて知った。
・『コンセプトが異なる2つの店舗 黒い看板の吉野家では「お牛丼」が食べられる  オレンジの看板の吉野家がいわゆる昔からずっと存在する吉野家で、黒い看板の吉野家が私の担当者が気になったというおしゃれな吉野家。この2つは店舗コンセプトが異なります。 例えば首都圏の不動産人気ナンバーワンの恵比寿駅には「吉野家恵比寿駅前店」と、「吉野家恵比寿駅東口店」があります。東口店はオレンジの看板の吉野家で、食べログの点数は3.01です。しかし、駅の反対側の代官山方面にある恵比寿駅前店は黒い看板の吉野家で、食べログの点数は3.19と同じ吉野家なのに評価が異なります。 ちょっとだけ誇張して説明すると、前者が私のような忙しい男性ビジネスパーソンが来店して牛丼を注文し、5分で食べ終わって退店するタイプの吉野家。そして後者が代官山近辺にお住まいのお嬢様が友人と来店して、パプリカやれんこん、ブロッコリーなどがのった「お牛丼」をご注文されて、1時間ぐらい昼下がりのトークを楽しんでから退店するお店。 このように、そもそもの設計思想が異なる2種類の吉野家が全国に存在しているのです。 カフェスタイルで小ぎれいで、女性や家族連れも気軽に来店できて、カウンター席にはスマホが充電できるコンセントがあって、ドリンクバーもあって長居ができる。これが新しいタイプの黒い吉野家です。 吉野家ではこの黒い看板の吉野家を「クッキング&コンフォート」という店舗業態名で呼んでいます。ネーミングから類推できるように限定調理メニューが存在し、かつドリンクバーやデザートのアイスが売っていて居心地がいい。 吉野家は全国に1649店舗あるのですが、そのうちの約15%に相当する239店舗がクッキング&コンフォートの業態になります。 ではこの黒い看板の吉野家業態は、戦略的にはどのような意味があるのでしょうか』、「代官山方面にある恵比寿駅前店は黒い看板の吉野家」は、「代官山近辺にお住まいのお嬢様が友人と来店して、パプリカやれんこん、ブロッコリーなどがのった「お牛丼」をご注文されて、1時間ぐらい昼下がりのトークを楽しんでから退店するお店」、「カフェスタイルで小ぎれいで、女性や家族連れも気軽に来店できて、カウンター席にはスマホが充電できるコンセントがあって、ドリンクバーもあって長居ができる。これが新しいタイプの黒い吉野家です。 吉野家ではこの黒い看板の吉野家を「クッキング&コンフォート」という店舗業態名で呼んでいます。ネーミングから類推できるように限定調理メニューが存在し、かつドリンクバーやデザートのアイスが売っていて居心地がいい」、なるほど。
・『「黒い看板の吉野家」には3つのポイントがある  吉野家のように100年の歴史がある老舗の飲食チェーンが売り上げを伸ばすには、新しい顧客の開拓が必要になります。 例えば、吉野家のライバルのすき家を運営するゼンショーは最近、ロッテリアを買収すると発表しました。ゼンショーは他にも回転寿司のはま寿司やファミレスのココスなどさまざまな異業種の飲食チェーンを展開しています。 このように、異業種展開は飲食チェーンにとってのひとつの成長戦略です。 ただ「まったく異なる味、まったく異なる顧客層」を狙った異業種展開は当たり外れのリスクも大きく、ゼンショーのように「牛丼でも回転寿司でも業界トップクラス」という状況に到達するのは簡単ではありません。 そこでもうひとつリスクが小さい成長戦略として、「既存のチェーンに新しい顧客を取り込む」という手段があり得ます。牛丼の例で言えばこれまでは男性が固定客の中心でしたから、女性客が増えれば企業として売り上げの成長につながります。 吉野家から見れば論理的には新しい顧客層としての女性客の取り込みと、将来の固定客への育成を期待した子どもを連れた家族客の取り込みは長期戦略的には重要な目標なのです。それで5年ほど前に試験的に導入されたのが黒い看板の吉野家で、冒頭にお話しした恵比寿駅前店がその1号店なのです。 さて、この黒い吉野家戦略ですが、私のような経営戦略の専門家から見ると、細部の設計で非常に面白く感じるポイントが3つあります。 (1)独自メニューがそれほど多くないこと (2)店舗数が全体の15%と少数派であること (3)なんちゃって黒い吉野家が存在すること ということなのです。 絶妙というか戦略的というか練り込まれたバランスのいい、この3つのやり方について簡単に解説してみます。 まず最初に気づく点は、メニューの観点で黒い吉野家とオレンジの普通の吉野家にはそれほど大きな違いがないということです。ドリンクバーとデザートのカップアイスが置いてあるあたりは明らかに違うのですが、メインメニューだと限定メニューは大きく3点しか違いません』、「リスクが小さい成長戦略として、「既存のチェーンに新しい顧客を取り込む」という手段があり得ます。牛丼の例で言えばこれまでは男性が固定客の中心でしたから、女性客が増えれば企業として売り上げの成長につながります。 吉野家から見れば論理的には新しい顧客層としての女性客の取り込みと、将来の固定客への育成を期待した子どもを連れた家族客の取り込みは長期戦略的には重要な目標なのです。それで5年ほど前に試験的に導入されたのが黒い看板の吉野家で、冒頭にお話しした恵比寿駅前店がその1号店なのです」、なるほど。
・『独自メニューがあまり多くないのはなぜなのか?  女性の好みそうな「ON野菜」(温野菜をのせるという意味でしょうか)メニューと、脂身が少ない豚のロース焼きメニューと、おもちゃが付いたお子様メニューがあることぐらいです。 この設定は極めて戦略的です。要するに家族連れで来店した際に女性が「食べたいものがない」と最初から拒否反応を示さないように、最小限のオプションを用意しているのです。 そもそも吉野家に来て吉野家のメニューすべてに拒否反応を示す女性客であれば、成長戦略の対象にはなりません。そこで女性が好みそうな「ON野菜」の牛丼も選べるようにしているわけで、それを食べた女性が「吉野家の牛丼って初めて食べたけどおいしい」と思ってもらえればそれで成功なわけです。 とにかく黒い看板の吉野家はメニューはそれほど大きな差はなく、けれども居心地が良く設計されています。それで、女性客と子ども連れ家族に吉野家メニューを味わってもらうのです。 当然ながら限定メニューが注文されるよりも、他の店舗でも食べられる牛丼や牛すき鍋膳を試してもらったほうが固定客の増加につながります。だからこそ、黒い吉野家の限定メニューは種類も限定的に設計されているのです』、「黒い看板の吉野家はメニューはそれほど大きな差はなく、けれども居心地が良く設計されています。それで、女性客と子ども連れ家族に吉野家メニューを味わってもらうのです」、なるほど。
・『黒い看板の吉野家の出店割合 「全体の15%」は黄金比  次に、ビジネスモデル上非常に重要だと思われるのが、黒い看板のクッキング&コンフォート店舗は店舗全体の15%しか存在しないという点です。 実はオレンジの看板の吉野家の店舗には、一般の外食チェーンには見られないある優位性が存在します。それが顧客回転率の高さです。 よく普通の吉野家の店舗を見て、一般の飲食店経営者が「いつもがらがらで集客できていないんじゃないか」と感想をもらすことがあります。 吉野家のお店はランチタイムのピーク以外は待たされることはほとんどなく、いつ行っても座れるのが特徴なのですが、だからといって顧客数が少ないわけではありません。例えば同じカウンター数でも人気のラーメン店と比べて、吉野家の来店客数のほうが圧倒的に多かったりします。 その理由が回転率です。ラーメン店との違いを挙げると、吉野家では注文をして1分で牛丼が到着します。おいしく食べてお勘定をして、だいたい5~6分で退店します。ランチのピーク時では1時間で何回転もするのが特徴で、一日平均で見ても吉野家は実に60回転するといわれています。 そこで居心地のいい黒い看板の吉野家ですが、こちらは女性客や学生のような若い顧客を集めて長居させる業態です。学生からしてみれば座席にコンセントがあってPCでレポートを書きながら飲食ができる。ドリンクバーもありますから、女性客ふたりで恋バナでもしながら食後もずっと居続けることもできるわけです。 ここに「全体の15%」という数字が意味を持ってきます。あくまで黒い看板の吉野家は新しい顧客層を取り込むための装置だと考えるとこの戦略の全体像が見えてきます。顧客層を増やすことが戦略目的なので、なるべく居心地をよくすることは大切です。 しかし全店でそれをやってしまうと吉野家最大の武器である「一日60回転するビジネスモデル」が無効化してしまいます。 そこで生まれたのがこの15%という黄金比でしょう。例えば、黒い吉野家をきっかけに、吉野家のメニューのファンになった新規客が、その後、オレンジの看板の吉野家にも訪れたとしましょう。お気に入りの「お牛丼(ON野菜なし)」を食するのですが、そのときには他のお客様と同じように「うまい、安い、早い」を堪能して早くお帰りいただいたほうがビジネスモデル的にはよいのです』、「あくまで黒い看板の吉野家は新しい顧客層を取り込むための装置だと考えるとこの戦略の全体像が見えてきます。顧客層を増やすことが戦略目的なので、なるべく居心地をよくすることは大切です。 しかし全店でそれをやってしまうと吉野家最大の武器である「一日60回転するビジネスモデル」が無効化してしまいます。 そこで生まれたのがこの15%という黄金比でしょう。例えば、黒い吉野家をきっかけに、吉野家のメニューのファンになった新規客が、その後、オレンジの看板の吉野家にも訪れたとしましょう。お気に入りの「お牛丼(ON野菜なし)」を食するのですが、そのときには他のお客様と同じように「うまい、安い、早い」を堪能して早くお帰りいただいたほうがビジネスモデル的にはよいのです」、上手いやり方だ。
・『隠れた3番目の吉野家 「なんちゃって黒い吉野家」の奥深さ  とはいえ、オレンジの看板の吉野家があまりに黒い看板の吉野家と居心地が違うのであれば、期待したほどそのような女性客層は増えないかもしれません。そこで3番目の要素が関係してきます。私が勝手に名付けたネーミングですが「なんちゃって黒い吉野家」が存在するのです。 これは私も最近になって気づいたのですが、私の事務所の近所にもオレンジの看板の吉野家と黒い看板の吉野家がありまして、後者は店舗の内装もスタイリッシュですし、座席でスマホを充電することもできるのです。 しかし店内はカウンター席だけですし、ドリンクバーや限定メニューは置いていません。調べてみると近所の吉野家は看板が黒いだけで吉野家本体からは「クッキング&コンフォート」には認定されていないのです。 これを私は「なんちゃって黒い吉野家」と名付けました。全国にどれだけの数あるのかはわかりませんが、少なくともうちの近所にあるお店で、よくよく考えてみると戦略的には絶妙なポジションにある店舗です。 近所には学生が通う専門学校がいくつもあり、かつ女性も多く住んでいるエリアです。言い換えると駅前にあるオレンジの看板の吉野家よりも客層が若い。だったら外見は黒い吉野家にしてしまったほうが、若い客層は入りやすいわけです。 その一方でメニューはオレンジの吉野家と同じになっているうえに、長居できそうなテーブル席はないわけで、つまり一日60回転の回転率は維持できるわけです。 そう考えると吉野家の店舗業態は実は3種類で、従来のファン層が中心のオレンジの看板の吉野家と、新規の顧客層の取り込みを狙った黒い看板の吉野家、そして新規客でも入りやすいけれどもビジネスモデル的にはオレンジと同じ「なんちゃって黒い吉野家」の3つの業態が絶妙なバランスを保ちながら、吉野家という100年以上続く老舗飲食店の顧客数をこれからも増やしていこうと考えているわけです。 いやいや、企業戦略というものは実に奥が深いと思いませんか?』、「吉野家の店舗業態は実は3種類で、従来のファン層が中心のオレンジの看板の吉野家と、新規の顧客層の取り込みを狙った黒い看板の吉野家、そして新規客でも入りやすいけれどもビジネスモデル的にはオレンジと同じ「なんちゃって黒い吉野家」の3つの業態が絶妙なバランスを保ちながら、吉野家という100年以上続く老舗飲食店の顧客数をこれからも増やしていこうと考えているわけです」、「企業戦略というものは実に奥が深い」のは確かなようだ。

次に、3月18日付け弁護士ドットコムが掲載したライターの国分瑠衣子氏による「スシローは監視のない「ちゃらい場所」になっていた 若者の「客テロ」、背景にある省人化の徹底」を紹介しよう。
https://www.bengo4.com/c_18/n_15775/
・『「スシロー」や「くら寿司」で客が迷惑動画を拡散する「客テロ」が相次いだ。なぜ回転ずしチェーンが狙われたのか。回転ずし評論家の米川伸生さんは、「効率化を追求し省人化を徹底した店舗が、結果として若者がいたずらをする格好の場になった」と指摘する。米川さんに大手回転ずしチェーン特有の経営課題と、客テロ対策、回転ずし市場の展望を聞いた』、興味深そうだ。
・『業務効率化が顧客満足度の低下を招いた  米川さんによると、昔の回転ずし店は郊外が中心で、高校生などの若者だけで利用することは少なかった。それが都心に進出するようになって安く食べられる場所だと知られるようになり、若い客層が増えた。 ファミリーレストランや喫茶チェーンと回転ずし店が違う点は、席や従業員の配置だ。大手回転ずしチェーンは、効率化を追求し、人による監視の目が緩くなった。省人化を加速させたのがコロナ禍だ。運営会社は感染対策として自動精算システムなど入店から退店まで店員と接触しなくてよい「クローズド」な店をつくった。 米川さんは「デジタル化を進めたことで、若者にとって監視の目を逃れやすい『ちゃらい場所』になっていると思います。人の目が届かないことに対策を講じずにゆるく考えていたことが、客テロを招いた一因になったのではないでしょうか」とみる。 これまでにも会計を安く済ませるために皿をテーブルの下に隠すなどのいたずらはあったが、いたずらの矛先が他人の寿司に向いていたことも想定外だったのではないかという。 米川さんが考える客テロを招いたもう1つの要因が、顧客満足度の低下だ。「好きな店には客は敬意を払います。リスペクトは人に対してするものなので、省人化で人がいなくなると顧客満足度が下がってしまう。今回の客テロと無関係ではないように思います」(米川さん)』、「大手回転ずしチェーンは、効率化を追求し、人による監視の目が緩くなった。省人化を加速させたのがコロナ禍だ。運営会社は感染対策として自動精算システムなど入店から退店まで店員と接触しなくてよい「クローズド」な店をつくった。 米川さんは「デジタル化を進めたことで、若者にとって監視の目を逃れやすい『ちゃらい場所』になっていると思います。人の目が届かないことに対策を講じずにゆるく考えていたことが、客テロを招いた一因になったのではないでしょうか」とみる」、なるほど。
・『費用対効果読み切れず、対策費投下は限定的  迷惑行為を防ぐ対策はないのか。人による監視の目を強めれば、客テロ問題は解決するのではと思うが、米川さんは「人を増やすという選択肢は低価格のすしで儲けを出すために人件費をギリギリまで抑えてきた、大手のビジネスモデルそのものが崩れるため、可能性は低い」と言う。 ならば仕組みを変える必要がある。客の迷惑行為を受け、くら寿司は全店舗でAIカメラを使った新システムを導入すると発表した。ただし米川さんは簡易な対策で、様子見の段階ではとみる。 国内外の回転すし店の中には、客席とレーンに完全な仕切りがあり、客は自分の頼んだ寿司しか取り出せない設備を導入している店もある。これぐらい徹底した対策をとることも可能だということだ。 対策を徹底すれば、客数増も見込めるが「数百店舗を展開する大手回転ずしチェーンでは、莫大な費用がかかるため、躊躇しているように見えます」(米川さん)』、「国内外の回転すし店の中には、客席とレーンに完全な仕切りがあり、客は自分の頼んだ寿司しか取り出せない設備を導入している店もある。これぐらい徹底した対策をとることも可能だということだ。 対策を徹底すれば、客数増も見込めるが「数百店舗を展開する大手回転ずしチェーンでは、莫大な費用がかかるため、躊躇しているように見えます」、なるほど。
・『客テロで注目集め、くら寿司もスシローも2月の売り上げは増加  値上げも一案だが、軒並み値上げを続けてきた大手はこれ以上の値上げは難しい。そもそも大手回転ずしチェーンは相次ぐ値上げが要因で客離れが深刻だった。「昔は家族4人で5000円出せばお腹いっぱい食べることができましたが、今は7500〜8000円ぐらいに上がり、焼肉とほぼ変わらなくなりました」(米川さん) ところが、くら寿司、スシローともに「客テロ」が起きた後の2月の全店売上高が、前年同月比で増えた。米川さんは「皮肉にも客テロによって客足が上向いた形です。過去の回転ずしの歴史から見ると、一度客足が戻るとブームはしばらく続きます」と説明する』、「くら寿司、スシローともに「客テロ」が起きた後の2月の全店売上高が、前年同月比で増えた。米川さんは「皮肉にも客テロによって客足が上向いた形です。過去の回転ずしの歴史から見ると、一度客足が戻るとブームはしばらく続きます」と説明する」、不思議なものだ。
・『「国民の8割が大手回転ずししか知らない」  米川さんは「日本国民の8割がスシローやくら寿司など大手回転ずし店しかないと思っています」と指摘する。 地方に行けば大手とは一線を画した地場の回転ずし店がある。「グルメ回転ずし」と呼ばれる業態の店はレーンの内側で職人がすしを握っている。人がいるため、客はいたずらしようとする心理が働かない。今回の客テロでは大手回転ずしチェーンばかりが目立つ』、「「グルメ回転ずし」と呼ばれる業態の店はレーンの内側で職人がすしを握っている。人がいるため、客はいたずらしようとする心理が働かない。今回の客テロでは大手回転ずしチェーンばかりが目立つ」、なるほど。
・『回る店、回らない店 細胞分裂のように回転ずしは変化を遂げていく  客による迷惑行為は収束するのか。一連の迷惑行為では、逮捕者も出た。米川さんは「面白いという承認欲求を満たすことと引き換えに逮捕されたいと思う人はいないでしょう。迷惑客は今後は減っていくと思います」と話す。 回転ずしチェーンの「すし銚子丸」が、「回らない回転ずし」に移行することで話題になっているが、米川さんは今後、大手チェーンでもレーンが回る寿司店、回らない寿司店など、より細分化していくと予想する。 「回転ずしはもともと寿司から派生して、さらに、100円回転ずしとグルメ回転ずしに分かれて、細胞分裂のように発展してきました。これからもその流れが続くのではないでしょうか」 オペレーションの簡略化、省人化を追求した末に若者のいたずらの標的にされてしまった大手回転ずしチェーン。米川さんは「客テロ効果による客数増で喜んでいる企業はないと思います。これから大手がどんな対策を打ち出すのか、人のいない店舗でどう顧客満足度を上げるのか注目しています」と締めくくった』、「これから大手がどんな対策を打ち出すのか、人のいない店舗でどう顧客満足度を上げるのか注目しています」、その通りだ。
タグ:弁護士ドットコム 「黒い看板の吉野家はメニューはそれほど大きな差はなく、けれども居心地が良く設計されています。それで、女性客と子ども連れ家族に吉野家メニューを味わってもらうのです」、なるほど。 吉野家から見れば論理的には新しい顧客層としての女性客の取り込みと、将来の固定客への育成を期待した子どもを連れた家族客の取り込みは長期戦略的には重要な目標なのです。それで5年ほど前に試験的に導入されたのが黒い看板の吉野家で、冒頭にお話しした恵比寿駅前店がその1号店なのです」、なるほど。 吉野家ではこの黒い看板の吉野家を「クッキング&コンフォート」という店舗業態名で呼んでいます。ネーミングから類推できるように限定調理メニューが存在し、かつドリンクバーやデザートのアイスが売っていて居心地がいい」、なるほど。 「代官山方面にある恵比寿駅前店は黒い看板の吉野家」は、「代官山近辺にお住まいのお嬢様が友人と来店して、パプリカやれんこん、ブロッコリーなどがのった「お牛丼」をご注文されて、1時間ぐらい昼下がりのトークを楽しんでから退店するお店」、「カフェスタイルで小ぎれいで、女性や家族連れも気軽に来店できて、カウンター席にはスマホが充電できるコンセントがあって、ドリンクバーもあって長居ができる。これが新しいタイプの黒い吉野家です。 (その5)(「黒い吉野家」増殖中 上品な“お牛丼”を開発した吉野家の戦略の秀逸設計、スシローは監視のない「ちゃらい場所」になっていた 若者の「客テロ」 背景にある省人化の徹底) 「吉野家」には「オレンジの看板」のほか、「黒い看板」があるというのは初めて知った。 例えば、黒い吉野家をきっかけに、吉野家のメニューのファンになった新規客が、その後、オレンジの看板の吉野家にも訪れたとしましょう。お気に入りの「お牛丼(ON野菜なし)」を食するのですが、そのときには他のお客様と同じように「うまい、安い、早い」を堪能して早くお帰りいただいたほうがビジネスモデル的にはよいのです」、上手いやり方だ。 「あくまで黒い看板の吉野家は新しい顧客層を取り込むための装置だと考えるとこの戦略の全体像が見えてきます。顧客層を増やすことが戦略目的なので、なるべく居心地をよくすることは大切です。 しかし全店でそれをやってしまうと吉野家最大の武器である「一日60回転するビジネスモデル」が無効化してしまいます。 そこで生まれたのがこの15%という黄金比でしょう。 鈴木貴博氏による「「黒い吉野家」増殖中、上品な“お牛丼”を開発した吉野家の戦略の秀逸設計」 ダイヤモンド・オンライン 「国内外の回転すし店の中には、客席とレーンに完全な仕切りがあり、客は自分の頼んだ寿司しか取り出せない設備を導入している店もある。これぐらい徹底した対策をとることも可能だということだ。 対策を徹底すれば、客数増も見込めるが「数百店舗を展開する大手回転ずしチェーンでは、莫大な費用がかかるため、躊躇しているように見えます」、なるほど。 「吉野家の店舗業態は実は3種類で、従来のファン層が中心のオレンジの看板の吉野家と、新規の顧客層の取り込みを狙った黒い看板の吉野家、そして新規客でも入りやすいけれどもビジネスモデル的にはオレンジと同じ「なんちゃって黒い吉野家」の3つの業態が絶妙なバランスを保ちながら、吉野家という100年以上続く老舗飲食店の顧客数をこれからも増やしていこうと考えているわけです」、「企業戦略というものは実に奥が深い」のは確かなようだ。 「大手回転ずしチェーンは、効率化を追求し、人による監視の目が緩くなった。省人化を加速させたのがコロナ禍だ。運営会社は感染対策として自動精算システムなど入店から退店まで店員と接触しなくてよい「クローズド」な店をつくった。 米川さんは「デジタル化を進めたことで、若者にとって監視の目を逃れやすい『ちゃらい場所』になっていると思います。人の目が届かないことに対策を講じずにゆるく考えていたことが、客テロを招いた一因になったのではないでしょうか」とみる」、なるほど。 国分瑠衣子氏による「スシローは監視のない「ちゃらい場所」になっていた 若者の「客テロ」、背景にある省人化の徹底」 「リスクが小さい成長戦略として、「既存のチェーンに新しい顧客を取り込む」という手段があり得ます。牛丼の例で言えばこれまでは男性が固定客の中心でしたから、女性客が増えれば企業として売り上げの成長につながります。 「これから大手がどんな対策を打ち出すのか、人のいない店舗でどう顧客満足度を上げるのか注目しています」、その通りだ。 「「グルメ回転ずし」と呼ばれる業態の店はレーンの内側で職人がすしを握っている。人がいるため、客はいたずらしようとする心理が働かない。今回の客テロでは大手回転ずしチェーンばかりが目立つ」、なるほど。 「くら寿司、スシローともに「客テロ」が起きた後の2月の全店売上高が、前年同月比で増えた。米川さんは「皮肉にも客テロによって客足が上向いた形です。過去の回転ずしの歴史から見ると、一度客足が戻るとブームはしばらく続きます」と説明する」、不思議なものだ。 外食産業
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