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パンデミック(経済社会的視点)(その16)(コロナとさえ戦わない絶望の国ニッポン、尾身会長を「都合よく使う」菅政権の重罪 政府が専門家の価値を暴落させる、「研究所流出説」を甦らせた素人ネット調査団 新型コロナの始祖ウイルスを「発見」!) [パンデミック]

パンデミック(経済社会的視点)については、5月10日に取上げた。今日は、(その16)(コロナとさえ戦わない絶望の国ニッポン、尾身会長を「都合よく使う」菅政権の重罪 政府が専門家の価値を暴落させる、「研究所流出説」を甦らせた素人ネット調査団 新型コロナの始祖ウイルスを「発見」!)である。

先ずは、5月3日付けNewsweek日本版が掲載した財務省出身で慶応義塾大学准教授の小幡 績氏による「コロナとさえ戦わない絶望の国ニッポン」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/obata/2021/05/post-65_1.php
・『<コロナ危機が始まって一年、既得権益との戦いも国民的な議論もなく、ただただ戦いから逃げてきた結果、日本は大変なことになっている> 私は、日本に絶望した。 第一に、コロナ危機はいまや日本だけだ。世界ではコロナ危機は過去のものとなり、いまだに苦しみ、先が見えていないのは、インドと日本だけだ。 第二に、オリンピックなどという不要不急、重要性の低いイベントに国が囚われてしまっている。物事の優先順位がつけられない国は、普通は、滅亡する。歴史においてはそうだった。 第三に、専門家も政治家も嘘ばかり付いている。意図的な嘘なのか、物事をあまりに知らなくて間違っているだけなのか、よくわからないが、いずれにせよ、当たり前のことすらまったくわかっていない。間違ったことを言い続けている』、「オリンピックなどという不要不急、重要性の低いイベントに国が囚われてしまっている。物事の優先順位がつけられない国は、普通は、滅亡する」、痛烈な批判だ。
・『誰も何もやる気がない  第一の点は、3つに分けられる。1)コロナ対策そのものが最悪だし、2)医療体制は整っているはずなのに、実効性が低く、3)コロナ危機の程度が軽いにもかかわらず、経済への悪影響は、世界最高水準。悪い、悪い、悪いの三拍子だ。 日本のコロナ危機は、ワクチンの遅れと、イギリス型変異ウイルスが理由と思われているが、そうではない。変異ウイルスは世界中で発生しており、それは警戒が必要ではあるが、どの国も同じである。第二に、韓国でもワクチン接種は欧米よりも遅れている。当たり前だ。欧米の新型コロナによる死者と東アジアでの死者の数は比較にならず、緊急性の高い欧米、イスラエルで進んだだけで、感染者が少ない日本で、ワクチンが欧米よりも遅れるのは当たり前だ。 問題は、コロナ対策が、実際にはまったく何も行われていないことにある。 スマートフォンの感染者接触アプリCOCOAもデジタル庁もどこかに消えてしまい、保健所のDX(デジタルトランスフォーメーション)も導入したが、機能していない。検査も増えない。 医療の体制も混乱の極みだ。政府そしてとりわけ知事たちはこの1年、テレビに出る以外に何をしてきたのか。 医療体制が混乱しているのは、医療システムを社会全体のために動員する仕組みもやる気も存在しないからだ。とりわけ、やる気のほうが大きい。 病院と医師たちは、一部(せいぜい半分)の良心的で献身的な人々の善意、ボランティアに依存するばかりで、過半の病院と医師たちは新型コロナと無関係である。コロナに追われて手薄になった病院や医師たちをフォローする体制もないし、一肌も脱がないし、これをチャンスとばかり儲けようとして、結果的に社会に貢献することもない。 怪しいPCR検査、簡易検査の広告が出るぐらいで、触らぬウイルスに祟りなし、といった雰囲気だ。) しかし、病院と医師が自発的に動かないと文句を言っていても仕方ないし、それこそが政府と知事たちの役割で緊急動員体制を作るのが仕事だ。政治家たちは、医師会に気兼ねして何もできず、裏取引や利益誘導をして動員する度量もリスクテイクも悪知恵も野心もない。きれいでも汚くてもどっちでもいいから仕事のできる政治家が必要だ。仕事がとにかくしたい、と言っていた総理はどこへ行ったのか。 しかし、いまさら政治を批判していても仕方がない。この20年衰退の一途だった政治にいまさら期待するほうが間違いで、人々は自衛するしかないし、それが当然のサバイバル術だ。ところが、人々は、恐怖と欲望に支配されて、政治家並みに見るも無残な有様だ。 緊急事態宣言は何の効果もないが、1回目は絶大な効果があったように見え、2回目はそれほどでもないが、多少影響があったように感じられ、3回目の今回は、誰がどう見ても効果ゼロだ。 しかし、1回目の効果に見えたのは、緊急事態宣言ではなく、自称有識者が、ロンドンとニューヨークの危機を吹聴して、ことさらに人々を脅し、専門家までが、極端な8割削減、死亡者数数十万と、こちらも煽って、人々を恐怖に陥れたからだ』、「1回目の効果に見えたのは、緊急事態宣言ではなく、自称有識者が、ロンドンとニューヨークの危機を吹聴して、ことさらに人々を脅し、専門家までが、極端な8割削減、死亡者数数十万と、こちらも煽って、人々を恐怖に陥れたからだ」、面白い見方だ。
・『恐怖で麻痺した個人消費  そして、芸能人が死亡し、人々、とりわけ高齢者は死に怯え、恐怖が彼らを支配し、日本は自粛に包まれ、街は静まり返った。一方、若者たちは、緊急事態、コロナ危機を、初めてのハロウィンのように、目新しいイベントとして受け止めた。知的な大人を自認する意識高い系の人々にとっては、自粛を推奨すること、欧米の危機を伝えることが知的な作業と感じ、手当たりしだいの情報をSNSで拡散し、自己満足し、その結果、高齢者を恐怖に陥れた。 つまり、高齢者は恐怖に支配され、若者たちは、イベント参加あるいは知的自画自賛に陶酔するという欲望に身を任せた。これが1年前であった。 2回目の緊急事態宣言は、政治がGoToなどで迷走する中、何の意味も持たなかったが、東京の新規感染確認者数が一日で2000を超えた、というその2000という数字が人々を恐怖に陥れ、再び恐怖が社会を支配し、年末年始の日本は自粛が支配した。 しかし、3回目は何も効かない。唯一効果があるのは、変異ウイルスの恐怖で、それを政府が意識的にか無意識にか利用し、多少の効果を収めた。恐怖で人々の行動を制限したのである。 この結果、経済は最悪となった。 海外輸出は好調で、企業はDXなど好景気に沸く企業も多いが、個人消費関連は、特にサービスセクターで壊滅状態である。なぜなら、実際のコロナ危機とは無関係に、また外出禁止も小売店営業停止もないにもかかわらず、日本の消費の中心である高所得者層や小金持ちの小資産家層は中高年であるため、恐怖に支配されて動けないからだ。個人消費は激減した。そして、株式投資だけが盛り上がった。) 一方、自粛というイベントに飽きた若者層は、旅行でも外食でも行きたかったが、カネがなく、GoToキャンペーンという税金補助もなくなったので、一気にカネを使わずに、路上飲みや友人宅でパーティーを行った。サービス消費経済は大きく落込んだのである。 日本経済がこれだけ危機に陥り、社会は恐怖に包まれているのに、なぜか、政府はオリンピックに躍起になり、すべてを差し置いてオリンピック優先である。GoToは世論の逆襲にあってやめたが、なぜか聖火リレーは続けられ、会食禁止、集まり禁止と言いながら、芸能人を多数起用し、ギャラなしでオリンピックを盛り上げるイベントに動員し、沿道にミーハーな人々の密を作った。 そして人々は、政府の緊急事態宣言もワクチン戦略もすべてはオリンピックのためだと解釈し、非難し、飲食店の人々はとりわけ怒りに燃えた。それにもかかわらず、もちろん感染状況次第ではオリンピックはできません、しかし、その最悪の事態にならないように全力を尽くしますと言えばいいだけなのに、オリンピックができないこともありうるというのは禁句で、何があっても触れない、という態度が、人々の政治不信を加速し、自粛要請に対する反発を高め、今後の政府の分析、説明、呼びかけ、すべての効果をさらに失わせている。 ただ一言、感染状況次第と言えばいいだけなのに、頑なに否定し、自分たちの権力の影響力を低下させることをあえてやっている。馬鹿なのか、利害関係からオリンピックをどうしてもやりたいという気持ちに正直すぎるのか、いずれにせよ、意味不明で、この些細なイベントにより、政策の優先順位がすべて混乱している』、「最悪の事態にならないように全力を尽くしますと言えばいいだけなのに、オリンピックができないこともありうるというのは禁句で、何があっても触れない、という態度が、人々の政治不信を加速し、自粛要請に対する反発を高め、今後の政府の分析、説明、呼びかけ、すべての効果をさらに失わせている」、その通りだ。
・『ワクチン接種では公平性に拘る愚  コロナワクチンの話もそうだ。とにかく、早く多くの人に打つことが重要であるにもかかわらず、隣町との公平性が重要で、市町村にどう割り振るかで揉めている、誰に打つかで揉めている、不手際はいちいち批判される、まったく行政の効率性は最低レベルである。 一方、人々も、副作用に過剰反応し、申し込みにも殺到し、感情的にしか行動できない。優先順位が間違っている。とにかく、早く大勢に打つことが重要で、自分が打とうが、周りが打とうが、効果はあるのだから、全員が打ち終わるのを早くすればよい。公平性は後だ。 しかし、最大の問題は、政治家も専門家も、間違ったことばかり1年も言い続けている。これが最大の問題だ。 まず、感染リスクについてすら、いまだに通勤電車の混雑を減らせ、テレワーク7割などと言っている。ソーシャルディスタンスや三密など、すでに間違いだったことがはっきりしたことを誰も訂正しないどころか、いまだにそれを主張し続けている。 これが人々を愚かにさせる。唾液の飛まつだけだから、しゃべらなければ移らない。スーパーのレジで並んでいると、裕福そうな初老の女性に、いきなり振り向かれて、ソーシャルディスタンスと叫ばれ、私が70センチに接近していることを殺人未遂であるかのように非難する。貴方の叫びによる飛まつが一番危ないのだが、と思い、マスク越しであっても飛まつが一切でないように、黙って肩をすくめると、鬼のような形相でどこかへ行ってしまった。 しかし、最大の嘘は、日本の法体系では、強制力を持った措置が取れない、と政治家も有識者とやらも、知ったような顔でそれを大前提として議論をしていること。それは嘘だ』、「ソーシャルディスタンスや三密など、すでに間違いだったことがはっきりしたことを誰も訂正しないどころか、いまだにそれを主張し続けている」、マスコミも政府の誤ったキャンペーンの片棒を担いでいる。
・『ロックダウンも可能だった  憲法、基本的人権において、欧米と日本の法的な制限の差はない。いわゆる欧州大陸法と英米法(コモンロー)とで、法律の書き方、裁判制度などは異なるが、基本的人権の制限に関する差はない。実際、フランスでもドイツでもイギリスと同じように行動は制限され、外出は禁止されている。 単に、日本においては、特別措置法で、その規定がない、と言うことに過ぎない。なければ、作ればよい。特措法改正をしたときに、もっといろいろできるようにすればよかっただけだ。それは、医師会や世論が怖くて、できない、面倒だからしない、それだけのことだ。 1年間、国会でも戦わず、医師会とも戦わず、世論とも戦わず、政治も政府も何もしてこなかった。それを誰も責めなかった。むしろ、行動制限には補償がセットで必要だと、訳知り顔で政府を攻撃する。そんなことはない。社会秩序、社会全体の保健衛生上の危機がある場合には、一般的な規制をすることは憲法違反にならない。個別の措置は、憲法違反になる可能性があるが、それは裁判をやって判断するだけのことだ。 百貨店だけに休業を命令するのは明らかな憲法違反だが、特定の地域の人々全員に外出を禁止するのは憲法違反でない。小売店すべてに休業命令を出すのも違反でない。飲食店すべて休業命令を出すのは、違反でないと思われるが、飲食店の側で争う余地はある。 しかし、それは議論しなければ結論は出ない。裁判所であれ、国会であれ、メディアであれ、どこでも議論を戦わせずに、戦いから逃げてきた1年間。政治もわれわれも。それが、現在の結果をもたらしている。 そして、この戦いから逃げる姿勢は現在も継続している。太平洋戦争も同じだった、ともいえるだろう。 つまり、日本は絶望的で、望みがないのではないか、と思ってしまうのである』、「日本においては、特別措置法で、その規定がない、と言うことに過ぎない。なければ、作ればよい。特措法改正をしたときに、もっといろいろできるようにすればよかっただけだ」、憲法改正する口実に憲法問題を持ち出しているとすれば、罪が深い。

次に、6月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏による「尾身会長を「都合よく使う」菅政権の重罪、政府が専門家の価値を暴落させる」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/273412
・『政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長が、東京オリンピック・パラリンピックの開催に警鐘を鳴らしたことで大騒動が巻き起こっている。それに対する政府の対応はお粗末なもので、政治家としての能力不足を露呈した。今回の問題は、政府が尾身会長の専門性と権威を自分たちに都合のいい内容ばかりに使おうとしていることにある。尾身会長の扱い方いかんで、「政府が使う専門家」の価値が大きく動くことになるかもしれない』、興味深そうだ。
・『コロナ対策分科会の尾身茂会長が東京五輪のリスクを警告  政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の会長を務める尾身茂氏が、6月2日に東京オリンピックの開催の可否について問われて、「普通はない。このパンデミックで」と答えたことが波紋を呼んでいる。 言葉を補うと「現在のようなパンデミック(感染症の大流行)の状況下では、東京オリンピックのようなイベントを開くことは、常識的には行うべきでない」という意味に解される。これまで政府の意向に沿った情報発信を行ってきて、「御用学者」などとやゆする声も一部にあった尾身氏だが、政府がやりたがっているように見える東京オリンピックの開催に明確に反対する意見を述べたことに驚きが広がった。 尾身会長のコロナ対策は「人流を抑える」ことに要点があった。そのため、数万人単位の人間が国境を越えて動く、異次元の人流イベントである東京オリンピック開催に対して否定的な意見を持つことは、全く自然に思われる』、その通りだ。
・『「尾身発言」に応えられない菅政権 政治家として能力不足  オリンピック開催に反対の国民からは「尾身さん、よく言ってくれた。ありがとう」との声がある一方、ある「与党幹部」はこの発言に対して「越権行為だ」と不快感を表明したとの報道もある。 後者については、尾身氏は自身がオリンピック開催の可否の決定者でないことについて、十分に認識しているように思われる。彼は、「普通はない」が、それでもやる場合には、なぜやるのか理由の十分な説明が国民に対して必要だと言っている。別段の越権はない。 問題は、これに十分応えることができていない菅義偉首相以下の政府の側にある。はっきり言って、政治家として能力不足だ。職務の継続に無理があるのは尾身会長の方ではなく、菅首相の方ではないだろうか。「安全・安心なオリンピック」と呪文を唱えるだけで、「どのようにすると、なぜ、安全なのか?」が分からないので、国民は政府を信用できずにいる。各種の調査で内閣支持率が下落している大きな理由だろう。 尾身氏の発言を重視した野党は、分科会に東京オリンピックの安全性に関して諮問を求めるべきだと要求しているが、政府はこれを拒否している。東京オリンピックの開催に対して否定的な意見を分科会の答えとして受け取ってしまうと、不都合だということなのだろう。改めて言うまでもないが、諮問云々の手続きが問題なのではなく、リスクに対する専門家の判断が問題なのだから、全くばかばかしいこだわりだ』、このブログの「東京オリンピック(五輪)(その18)」でみたように、「菅首相」はどうもオリンピックが始まってしまえば、国民はオリンピックに熱狂することに賭けているようだ。無論、そんな本音は口に出す訳にはいかない。
・『政府にとっての専門家の「利用価値」  現時点で、尾身氏は、独自に情報を発信する意向だと報じられている。 感染症対策の「専門家」として、コロナ禍におけるオリンピック開催のリスクや、どうしても開催する場合に必要な対策を提示することが自らの責任だと考えておられるようだ。極めて「まとも」で「普通」の考えだと、筆者は思う。 政府に対して、時には企業や学校などの組織に対して、「専門家」は微妙な位置に立つ場合がある。 多くの場合に専門家は、政府などの組織が実行したいと考えることの正しさを専門家として裏書きして、その正当性を補強する役割を期待される。例えば、昨年の「Go Toキャンペーン」の際には、Go Toキャンペーンが感染症対策と両立できるという情報発信を専門家が行ってくれると、政府としては好都合だった。 かくして、多数の「委員会」や「有識者会議」が生まれる。 一般に、こうした会議に呼ばれる専門家には、(1)政府に認められた専門家としてステータスを得る、(2)専門的な知見を広く世間に知らせることができる、(3)自分の所属組織(例えば大学)が政府と良好な関係を持つことにメリットがある(研究費などで)、といったモチベーションがある。 なお、この3番目のメリットに関しては、学者の場合にそれなりに重要な場合があるだろう。ただ、政府との関わりが自分の所属する会社に受注をもたらすような関係性になると、不適切な場合がある。今回、名指しは避けるが、政府に関係する「会議」のメンバーにはこの点で深刻な疑義を感じさせる人物が存在する。 尾身会長は元官僚であり、地域医療機能推進機構の理事長だが、(3)に関する疑義は今のところ感じられない。また、尾身会長の分科会については存じ上げないが、この種の有識者会議の出席に関する謝礼金はごく安いのが普通で、尾身氏のような方にとってほとんど意味がない金額だ。 従って尾身会長は、これまで専門家としての使命感から「手弁当」的な感覚で協力してきたと実感しているに違いない』、その通りだろう。
・『尾身会長vs菅政権、問題の本質は「専門家を都合よく使おうとすること」  今回の政府と尾身会長の間の問題は、政府の側が、尾身会長の専門性と権威を自分たちに都合のいい内容ばかりに使おうとしていることにある。 政府の行うことが正しいと専門家が判断する限りでは、この関係性は専門家自身にとっても問題はない。 しかし、今回の東京オリンピックの感染症リスクは、尾身氏の専門家としての知見から看過できないものなのだろう。 あるいは、筆者の邪推の可能性もあるが、尾身会長は、東京オリンピックの開催は不可避と判断した上で、開催後の感染問題の深刻化の可能性を踏まえて「専門家として事前に警告した」という事跡を残しておきたいのかもしれない。 この場合、尾身氏の対社会的な保身行為だともいえる。しかし、万一そうした理由があるとしても、リスクを警告するという行為自体は国民一般に対する「専門家」の行動として適切である。リスクを知っていて何も言わずにいるよりは、いかなる形であっても情報を発信する方がずっといい。 情報の受け手である国民としては、尾身氏の発言の背景が上記のいずれであるとしても、「尾身氏の目から見て、東京オリンピック開催には深刻なリスクがある」と受け取ることができる。 オリンピックを開催したい政府としては、尾身会長に「オリンピックを安全に開催することは十分可能だ」と言ってもらえると都合がよかったのだろうが、そうはならなかった。 「それでも開催する」という判断なら、判断の責任者が国民に納得のいく説明をする必要がある。尾身氏の専門性を隠れみのにして、説明の代用にしようとすることは虫が良すぎる』、「尾身氏の専門性を隠れみのにして、説明の代用にしようとすることは虫が良すぎる」、同感である。
・『個人と組織にとっての「専門家キャピタル」  東京オリンピックの開催に深刻なリスクを認める場合、尾身会長にとって今回の発言は、専門家としての権威や評判の価値、いわば自らの「専門家キャピタル」を守るための行動だと解することができる。 政府や企業が「専門家」を使おうとする場合、個々の専門家にとって自らの価値を守る上で譲れない一線がどの辺りにあるのかを見極めることが重要だ。専門家(特に学者)は、経済的な利にさとい人や、自説にこだわらずに御用学者に徹することを役割と考える人もいるが、多くは「仲間内の評判」に敏感だ。専門家は専門家仲間によって承認され合うことによってその世界での価値を維持している。 政府はこれまで、尾身氏の「専門家キャピタル」を大いに利用してきたが、今回同じ手が利かなくなったことに対してどう対処するのだろうか。 いかにもありそうな選択肢は、(1)別の専門家を使う、(2)尾身氏に圧力を掛けて好都合な発信を強いる、の二つだが、どうなるか。 (1)は「ノーベル賞級の御用学者」が必要だが、適任者が急には見つからないかもしれない。(2)は、尾身氏に個人的な弱みがあるのか否かが問題になる。週刊誌などで、尾身氏の個人的なスキャンダルが見出しとなるような事態が今後起これば、背後で(2)のような事態が進行した可能性が大きいと推測できる。どちらにせよ、感じのいい進展ではない。 三つ目の選択肢があるとすれば、(3)警告を無視してオリンピックを強行する、だろう。知性のかけらも感じさせない強引な方法だが、時間の切迫具合から見て、こうなりそうな予感はある』、確かに(3)の可能性が高そうだ。
・『政府が選んだ専門家が信用されなくなる そんな未来が訪れかねない  政府が、専門家が有する「専門家キャピタル」を各種の「会議」や「委員」などの立て付けを使って都合よく利用する行動は、今後も続くだろう。ただし、専門家の使い方があまりに粗末だと、そもそも政府が選んだ専門家が信用されなくなるという、政府レベルでの「専門家キャピタル」の毀損が起こりかねない。 新型コロナも東京オリンピックも国民の関心の高いテーマだ。専門家としての尾身会長の扱い方いかんで、政府が使う専門家というものの価値が大きく動くことになるかもしれない。 例えば一転して、政府が尾身氏の警告に耳を傾け、東京オリンピックの開催を断念した場合、「専門家」への国民の尊敬は高まるだろうし、菅内閣の支持率は上昇するかもしれない。 政府に限らず、企業でも学校でも、「専門家」の扱い方は重要であると同時に難しい。もちろん、専門家自身の身の振り方も簡単ではない』、さすが山崎氏らしい深い考察だ。

第三に、6月4日付けNewsweek日本版が掲載したローワン・ジェイコブソン氏による「「研究所流出説」を甦らせた素人ネット調査団、新型コロナの始祖ウイルスを「発見」!」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/06/post-96453_1.php
・『<パンデミック発生後早い段階で「反中の陰謀説」とされてきた新型コロナウイルスの「研究所流出説」がここへ来て急に見直されているのは、中国の説明がおかしいと感じた世界各地のアマチュアネットユーザーがチームを組んで否定しがたい新事実を科学界と大メディアに突きつけたからだ> 新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な大流行)は中国・武漢の研究所から手違いでウイルスが流出して引き起こされた──これはつい最近までオルト・ライト(新右翼)的な陰謀論としておおむね無視されてきた主張だ。 ワシントン・ポストは2020年初め、「専門家が何度もその誤りを証明した陰謀論を、執拗に蒸し返している」として、トム・コットン上院議員を批判。CNNは「陰謀論や誤情報を信じている友人や家族を説得する方法」を伝え、ニューヨーク・タイムズも「非主流の説」扱いをし、公共放送のNPRも「研究所の事故で流出したという説は虚偽だと証明されている」と述べるなど、アメリカの他の主要メディアもおおむねこの説を否定していた。 そうした中で、本誌は例外的に2020年4月、武漢ウイルス研究所(WIV)はウイルスの病原性や感染性を強める「機能獲得型」研究を行なっており、ここから流出した可能性も否定できないと報道した。同様の報道を行なったのは、左派系雑誌のマザー・ジョーンズに加え、ビジネス・インサイダー、ニューヨーク・ポスト、FOXニュースと、ごく少数のメディアだけだ』、「研究所流出説」も当初は少数派だったようだ。
・『あるのは好奇心と根気だけ  だがこの1週間ほど、研究所流出説がにわかに注目を浴び始めた。ジョー・バイデン米大統領は情報機関に追加調査を指示。主要メディアも手のひらを返したように、流出説をあり得る仮説として扱い始めた。 雲行きが変わった理由は明らかだ。この何カ月かの間に武漢の研究所からの流出を疑わせる状況証拠が次々に明るみに出て、無視できないほどに蓄積された。 それらの証拠を探り当てたのは、ジャーナリストでもスパイでも科学者でもない。アマチュアの「探偵」たちだ。彼らの武器は好奇心、そして来る日も来る日もインターネット上の膨大な情報をかき分け、手掛かりを探す根気強さ。それだけだ。 パンデミックが始まってからというもの、その原因に関心をもった世界各地のアマチュア20数人が独自に調査を行い、埋もれた文書を掘り起こし、断片的な情報をつなぎ合わせてきた。彼らがばらばらに発信した推理が1つ、また1つとツイッター上でつながり、やがてはまとまったストーリーが紡ぎ出されてきた。 それは言ってみれば「オープンソースの自由参加型ブレインストーミング」であり、ネット調査と市民ジャーナリズムの要素が合体した、全く新しい調査方法である。彼らは自分たちをDRASTIC(Decentralized Radical Autonomous Search Team Investing COVID-19=新型コロナウイルス感染症に関する分散型の急進的な匿名の調査チームの頭文字を取った略称だ)と名乗る。 DRASTICの調査結果は長い間、ツイッター上のオタク世界の片隅に埋もれ、少数のフォロワーにしか知られていなかった。探偵たちはたびたび捜査の袋小路にぶつかったし、時には彼らの解釈に異を唱える科学者たちと論争になった。それらの数々のツイートは、ツイッターの「ファイヤーホース」サービスを介して、1つのまとまったニュースの流れを形づくった。 調査の質はしだいに向上し、事実究明に向けたその執念がより幅広いフォロワーを引きつけ、科学者やジャーナリストもその内容に注目するようになった。 DRASTICのおかげで、今ではいくつかの重要な事柄が分かっている』、「パンデミックが始まってからというもの、その原因に関心をもった世界各地のアマチュア20数人が独自に調査を行い、埋もれた文書を掘り起こし、断片的な情報をつなぎ合わせてきた。彼らがばらばらに発信した推理が1つ、また1つとツイッター上でつながり、やがてはまとまったストーリーが紡ぎ出されてきた。 それは言ってみれば「オープンソースの自由参加型ブレインストーミング」であり、ネット調査と市民ジャーナリズムの要素が合体した、全く新しい調査方法である」、素人集団がここまでやるとは素晴らしい。
・『どう見ても疑うしかない新事実  まず、武漢の研究所が長年、コウモリのいる洞窟で何種類ものコロナウイルスを収集してきたこと。その多くは2012年にSARS(重症急性呼吸器症候群)のような症状を起こして3人の鉱山労働者が死亡した銅鉱山で見つかったもので、新型コロナと最も近縁なウイルスもそこに含まれるとみられている。 また、武漢の研究所はこれらのウイルスを使ってさまざまな実験を行なっていたが、安全管理はお粗末で、曝露や流出の危険性があったことも明らかになった。研究所も中国政府もこうした活動を外部に知られないよう、ひた隠しにしていたのだ。 さらに、新型コロナの発生源とされた武漢の華南海鮮市場で最初の集団感染が起きるよりも何週間も前に、既に感染者が発生していたことも分かった。 これらのいずれも、研究所流出説を裏付ける決定的な証拠とは言えない。研究所が発生源ではない可能性も十分にある。しかしDRASTICが集めた証拠は、検察官の言う「相当な理由」にはなる。つまり、研究所から出た可能性を疑い、本格的な捜査を行うに足る理由がある、ということだ。) アメリカやその他の国々が精力的に調査を進めても、研究所流出説を裏付ける明白な証拠が得られるという保証はない。中国の全面的な協力なしには、徹底した調査はできないが、中国の協力は得られそうにない。 それでも、この雑多な背景を持つ少数のアマチュアたちがやってのけた草の根の調査報道は、21世紀の最大のスクープとなる可能性がある。 以下はその詳しい経緯だ。 DRASTICの1人、「シーカー(探索者)」と名乗る20代後半のインド人男性がメールとテキストメッセージで本誌の取材に応じてくれた。 彼はインド東部の西ベンガル州在住。地元の伝統的な舞踊に使われる仮面をツイッターのロゴにしている。仕事は建築、絵画、映像制作など。母や姉妹がよく作るインドのお粥「キチュリー」のように雑多な素材が混じり合うことで、意外性に富む作品ができるそうだ。 熱心な独学者で、グーグルが監視の目を光らせるネット上の「表通り」からは外れた「路地裏」に精通し、興味を持ったトピックについてはそこでせっせと情報収集をしてきた。その成果をレディットに頻繁に投稿し、75万カル・ポイントを獲得したという。 本誌に明かしてくれたプロフィールは以上。本名の公表は控えたいそうだ』、「この雑多な背景を持つ少数のアマチュアたちがやってのけた草の根の調査報道は、21世紀の最大のスクープとなる可能性がある」、ずいぶん面白い時代になったものだ。
・『「流出説」を揉み消した大物の正体  パンデミックが始まった当初、新型コロナ関連のニュースを追っていた人たちの例に漏れず、シーカーも武漢の海鮮市場で野生動物からヒトに感染が広がったと信じていた。3月27日付のツイートで、彼は「珍しい動物の取引で生まれたおかしなウイルスで、親や祖父母が死ぬなんて、ひどい話だ」と嘆いた。 彼がそう信じたのは、主要メディアがそう報じたからで、主要メディアがそう報じたのは何人かの科学者がそう主張したからだ。 そう主張した科学者の筆頭格がピーター・ダザック。パンデミックを起こす可能性がある自然界の病原体について大規模な国際調査を行う非営利の研究機関、エコヘルス・アライアンスの代表だ。 ダザックは、武漢ウイルス研究所に所属するコウモリのウイルス研究の第一人者、石正麗(シー・ジェンリー)と長年共同研究を行なってきた。十数本近い論文を共同執筆し、分かっているだけで60万ドルの米政府の助成金を彼女に回してきた。) 世界で最も多くコロナウイルスを収集してきた研究所のすぐそばで、未知のコロナウイルスの集団感染が発生したとなると、研究所から流出した疑いを持つのは理の当然だ。ダザックはすかさずそれに待ったをかけた。他の26人の科学者と連名で2020年2月19日、医学誌ランセットで公開書簡を発表。「新型コロナウイルス感染症が自然な発生源を持たないことを示唆する陰謀論を、私たちは断固として非難する」と宣言したのだ。 今では情報自由法の請求記録から、ダザックが研究所流出説を潰すための公開書簡の作成を主導したことが分かっている。彼は書簡の草案を作成し、仲間の科学者たちに署名させて、それが幅広い科学者の見解を示すものに見えるように画策したのだ。 ダザックは科学者たちに署名を求めるメールの中で、「この声明にはエコヘルス・アライアンスのロゴは入らないし、特定の組織や人物が作成したものだと特定されることはない」と確約していた。武漢ウイルス研究所と研究内容が重なる科学者たちは、「(署名から)研究内容を逆にたどられることがないように」署名しないことで同意した。 だが当時、ダザックが果たした役割については、それをほのめかす兆しもなかった。公開書簡が発表されたことがきっかけでメディアに頻繁に登場するようになったダザックは、研究所流出説を「不合理」「根拠に欠ける」「完全なでたらめ」と一蹴した。彼はまた、同研究所につながる証拠を発表した複数の科学者を攻撃。研究所流出説が理にかなわない理由の一部として、武漢ウイルス研究所では、新型コロナウイルスに少しでも似ているウイルスを一切培養していなかったと主張した』、「情報自由法の請求記録から、ダザックが研究所流出説を潰すための公開書簡の作成を主導したことが分かっている。彼は書簡の草案を作成し、仲間の科学者たちに署名させて、それが幅広い科学者の見解を示すものに見えるように画策した」、隠蔽工作も手がこんでいるようだ。
・『コウモリウイルスの専門家、石正麗  ダザックは長期にわたって、驚くほど大きな影響力を持ち続けた。彼のしたことが公にされれば、彼のキャリアも組織も大きな打撃を受けただろうが、メディアがそうした疑問を提起することはほとんどなかった。 皮肉にもダザックの「共犯」となったのが、ドナルド・トランプ前米大統領だった。「中国ウイルス説」を唱えるトランプ政権がエコヘルス・アライアンスへの助成金を打ち切ると、メディアはダザックを陰謀論者たちの「犠牲者」として同情的に取り上げたのだ。 シーカーは、2020年前半までにはその考え方に疑問を抱くようになっていた。そこで、通説のあら探しをしていた人々とのやり取りを始めた。 その中で見つけた重要な情報が、カナダの起業家ユーリ・デイギンによる、オンラインプラットフォーム「メディウム」への投稿だ。デイギンはこの中で、石正麗が2月3日に科学誌ネイチャーで発表したウイルス「RaTG13」を取り上げていた。石正麗は論文の中で、新型コロナウイルスについての詳細な分析結果を紹介。新型コロナウイルスと遺伝子レベルで似ているウイルスとして、「RaTG13」(コウモリコロナウイルス)を挙げていた。) 論文はRaTG13の起源については曖昧で、中国南部の雲南省に生息するコウモリから以前検出されたと述べるだけで、いつ・どこで発見されたのか具体的な言及はなかった。 デイギンはこの論文に疑念を抱いた。新型コロナウイルスは、RaTG13あるいはその関連ウイルスを調べていて、遺伝子を混ぜ合わせたり、照合したりする作業の過程で生まれた可能性があるのではないかと考えた。デイギンの投稿内容は包括的で、説得力があった。シーカーはデイギンの説をレディットに投稿。するとすぐに、彼のアカウントは永久凍結された。 この検閲の気配が、シーカーの好奇心とやる気を刺激した。ツイッター上にあるグループのアイデアをさらに読んでいくと、「この問題について活発に議論し、調査しているグループが見つかった」と、彼は本誌へのメールで述べた。 この刺激的なグループを構成していたのは、起業家やエンジニア、それにロッサーナ・セグレトという米インスブルック大学の微生物学者もいた。彼らは互いに面識はなかったが、新型コロナウイルスの起源が動物という通説に疑問をもった点が共通していた。 アジアのどこかに暮らしているという冗談好きのコーディネーターがグループの会話を管理していた。この人物はビリー・ボスティックソンという偽名を使っており、ツイッターのアイコンには、痛めつけられた研究用のサルの絵を使っている』、「「中国ウイルス説」を唱えるトランプ政権がエコヘルス・アライアンスへの助成金を打ち切ると、メディアはダザックを陰謀論者たちの「犠牲者」として同情的に取り上げたのだ」、皮肉なことだ。「刺激的なグループを構成していたのは、起業家やエンジニア、それにロッサーナ・セグレトという米インスブルック大学の微生物学者もいた。彼らは互いに面識はなかったが、新型コロナウイルスの起源が動物という通説に疑問をもった点が共通していた」、なるほど。
・『真相を明らかにする使命感  まさにシーカーにぴったりのグループだった。「彼らの手助けを得て、詳しいことを学んでいった」と彼は言う。「いつの間にか、この謎にすっかり夢中になっていた」 彼を駆り立てたのは好奇心だけではなく、ひとりの市民としての責任感でもあった。「新型コロナウイルスは、数えきれない人の命を奪い、大勢の人の生活を破壊した。多くの謎も残しているのに、その追跡調査が行なわれていない。人類には答えを知る権利がある」 シーカーをはじめとするメンバーたちは徐々に、RaTG13がその「答え」の一部を解明する上での鍵を握っているのではないかと確信するようになった。 グループのスレッドでは、6人ほどの参加者がこの謎について活発な議論を展開。彼らはヒントを求めて、インターネットや武漢ウイルス研究所の過去の論文をくまなく調べた。彼らは世界中の人々が見られる形で、リアルタイムでデータを更新し、さまざまな仮説を検証し、互いの意見を修正し合い、幾つかの重要な指摘を行った。 RaTG13の遺伝子配列が、石正麗が何年も前に発表した論文に記されていた遺伝子コードの一部と完璧に一致した、というのもその一つだ。この遺伝子コードは、武漢ウイルス研究所が雲南省のコウモリから発見したウイルスのものだった。) DRASTICチームは、2つの論文に含まれる重要な詳細情報を過去の複数の報道と結びつけて、RaTG13は雲南省の墨江ハニ族自治県にある鉱山の坑道で発見されたウイルスだと断定した。ここでは2012年に、コウモリの糞を除去していた男性6人が肺炎を発症し、そのうち3人が死亡していた。DRASTICはこれが、ヒトが新型コロナウイルスの始祖ウイルス(おそらくRaTG13かそれに類似したウイルス)に感染した初めての症例だったのではないかと考えた。 石正麗は科学誌「サイエンティフィック・アメリカン」に掲載されたプロフィールの中で、複数の鉱山労働者が死亡した墨江ハニ族自治県の鉱山について調査を行なったことを認めている。だが彼女はこの銅鉱山の一件とRaTG13を関連づけることは避けており(論文の中でも触れていない)、作業員たちは洞窟の中の「真菌(カビ)」が原因で死亡したと主張した。 DRASTICの面々は納得しなかった。鉱山労働者を死に追いやったのは真菌ではなく、SARSウイルスに似たウイルスで、研究所は何らかの理由でそれを隠そうとしているのではないかと、彼らは考えた。だが、それは直感にすぎず、証明する手立てはなかった』、「RaTG13の遺伝子配列が、石正麗が何年も前に発表した論文に記されていた遺伝子コードの一部と完璧に一致した」、こんなことが起こり得るとは謎解きも面白そうだ。
・『2012年の鉱山労働者の死因を追え  だがネット情報を探るうちに、シーカーは中国の学術誌や論文を網羅した巨大なデータベース、CNKI(中国学術文献オンラインサービス)を見つけた。ここにある膨大な学術文献の中に、鉱山労働者の死に関連した情報が埋もれているかもしれない。 彼はベッドの横のテーブルにチャイを用意し、携帯電話とノートパソコンで夜を徹して探索を続けた。問題の鉱山がある地域の名称(墨江ハニ族自治県)に思いつく限りの関連キーワードを付けて、グーグル翻訳で英語を簡体字の漢字に変換して検索をかけ、検索結果をまた英語に翻訳して目を通す。「墨江+肺炎」「墨江+武漢ウイルス研究所」「墨江+コウモリ」「墨江+SARS」という具合だ。 1回の検索で何千もの結果が出て、雑誌、本、新聞、修士論文、博士論文などのデータベースが半ダースほども表示される。シーカーは来る夜も来る夜もそれらに目を通したが、有用な情報は得られなかった。精魂尽きるとチャイを飲み、アーケードゲームで気分転換して、また作業を続ける。) その宝物に出くわしたのは、あきらめかけた時だった。昆明医科大学の院生が2013年に提出した60ページに及ぶ修士論文だ。タイトルは「未知のウイルスによる6人の重症肺炎患者の分析」。患者1人1人の症状と治療の進展を事細かく述べた上で、執筆者は疑わしい「犯人」を挙げていた。「シナキクガシラコウモリ、あるいはその他のコウモリ由来のSARSのような(症状を引き起こすコロナウイルス)」の仕業だ、と。 シーカーは淡々と、論文のタイトルとリンクをツイッターに投稿した。2020年5月18日のことだ。次に、中国疾病対策予防センターの博士研究員(ポスドク)が執筆した同じテーマの論文を調べると、内容の多くは最初の論文と一致していた。鉱山労働者のうち4人はSARSウイルスに似たウイルスの抗体検査で陽性だったこと、これらの検査結果は全て、武漢の研究所に報告されていたことも分かった(シーカーが2つの論文のリンクを貼った直後に、中国はCNKIのアクセス管理を変更し、彼が行なったような調査はできなくなった)』、「中国」の隠蔽工作は徹底しているようだ。
・『主要メディアの無関心に呆れる  2012年にSARSウイルスに似たウイルスが見つかり、その事実が隠蔽され、武漢の研究所が問題の鉱山からさらにサンプルを採取して持ち帰るためにスタッフを派遣したのだとすれば、これは一大スクープだ。欧米の主要メディアはすぐさま飛びついて派手に報道するはずと思ったが、何週間も話題にすらならなかった。イギリスではサンデー・タイムズが特集を組んだほか、少数のメディアが報道したが、米メディアは全く取り上げなかった。 「メディアは大騒ぎになると思っていた」と、シーカーは本誌に打ち明けた。「事実や因果関係に対する関心のなさに、あきれるばかりだった。潤沢なリソースを持つ主要メディアが、調査報道で(アマチュア集団に)大幅な後れを取るなんて、さっぱり理解できない」 DRASTICは数日のうちに、墨江ハニ族自治県にある鉱山の位置を突き止めたが、主要メディアがそのツイートに注目し、記者たちが我先に問題の坑口を目指し始めたのは、2020年も終わりに近づいてからだ。 ※後編はこちら:武漢研究所は長年、危険なコロナウイルスの機能獲得実験を行っていた』、「イギリスではサンデー・タイムズが特集を組んだほか、少数のメディアが報道したが、米メディアは全く取り上げなかっのた」、そんなもだろう。「潤沢なリソースを持つ主要メディアが、調査報道で(アマチュア集団に)大幅な後れを取るなんて、さっぱり理解できない」、「主要メディア」には商業主義の制約もあるのだろう。既に長くなったので、「後編」の紹介は下記リンクの紹介に留めた。いずれにしろ、「武漢研究所」の疑いが一段と深まったようだ。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/06/2-361_1.php
タグ:小幡 績 ダイヤモンド・オンライン さすが山崎氏らしい深い考察だ。 「日本においては、特別措置法で、その規定がない、と言うことに過ぎない。なければ、作ればよい。特措法改正をしたときに、もっといろいろできるようにすればよかっただけだ」、憲法改正する口実に憲法問題を持ち出しているとすれば、罪が深い。 「潤沢なリソースを持つ主要メディアが、調査報道で(アマチュア集団に)大幅な後れを取るなんて、さっぱり理解できない」、「主要メディア」には商業主義の制約もあるのだろう。既に長くなったので、「後編」の紹介は下記リンクの紹介に留めた。いずれにしろ、「武漢研究所」の疑いが一段と深まったようだ。 https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/06/2-361_1.php 「ソーシャルディスタンスや三密など、すでに間違いだったことがはっきりしたことを誰も訂正しないどころか、いまだにそれを主張し続けている」、マスコミも政府の誤ったキャンペーンの片棒を担いでいる 「RaTG13の遺伝子配列が、石正麗が何年も前に発表した論文に記されていた遺伝子コードの一部と完璧に一致した」、こんなことが起こり得るとは謎解きも面白そうだ。 「「研究所流出説」を甦らせた素人ネット調査団、新型コロナの始祖ウイルスを「発見」!」 ローワン・ジェイコブソン 「中国」の隠蔽工作は徹底しているようだ。 「尾身氏の専門性を隠れみのにして、説明の代用にしようとすることは虫が良すぎる」、同感である。 尾身会長は、これまで専門家としての使命感から「手弁当」的な感覚で協力してきたと実感しているに違いない』、その通りだろう パンデミック Newsweek日本版 (その16)(コロナとさえ戦わない絶望の国ニッポン、尾身会長を「都合よく使う」菅政権の重罪 政府が専門家の価値を暴落させる、「研究所流出説」を甦らせた素人ネット調査団 新型コロナの始祖ウイルスを「発見」!) 確かに(3)の可能性が高そうだ。 「最悪の事態にならないように全力を尽くしますと言えばいいだけなのに、オリンピックができないこともありうるというのは禁句で、何があっても触れない、という態度が、人々の政治不信を加速し、自粛要請に対する反発を高め、今後の政府の分析、説明、呼びかけ、すべての効果をさらに失わせている」、その通りだ。 「研究所流出説」も当初は少数派だったようだ。 「「中国ウイルス説」を唱えるトランプ政権がエコヘルス・アライアンスへの助成金を打ち切ると、メディアはダザックを陰謀論者たちの「犠牲者」として同情的に取り上げたのだ」、皮肉なことだ。「刺激的なグループを構成していたのは、起業家やエンジニア、それにロッサーナ・セグレトという米インスブルック大学の微生物学者もいた。彼らは互いに面識はなかったが、新型コロナウイルスの起源が動物という通説に疑問をもった点が共通していた」、なるほど。 「1回目の効果に見えたのは、緊急事態宣言ではなく、自称有識者が、ロンドンとニューヨークの危機を吹聴して、ことさらに人々を脅し、専門家までが、極端な8割削減、死亡者数数十万と、こちらも煽って、人々を恐怖に陥れたからだ」、面白い見方だ。 「菅首相」はどうもオリンピックが始まってしまえば、国民はオリンピックに熱狂することに賭けているようだ。無論、そんな本音は口に出す訳にはいかない パンデミック発生後早い段階で「反中の陰謀説」とされてきた新型コロナウイルスの「研究所流出説」がここへ来て急に見直されているのは、中国の説明がおかしいと感じた世界各地のアマチュアネットユーザーがチームを組んで否定しがたい新事実を科学界と大メディアに突きつけたからだ 東京オリンピック(五輪)(その18) 「尾身会長を「都合よく使う」菅政権の重罪、政府が専門家の価値を暴落させる」 「情報自由法の請求記録から、ダザックが研究所流出説を潰すための公開書簡の作成を主導したことが分かっている。彼は書簡の草案を作成し、仲間の科学者たちに署名させて、それが幅広い科学者の見解を示すものに見えるように画策した」、隠蔽工作も手がこんでいるようだ 「この雑多な背景を持つ少数のアマチュアたちがやってのけた草の根の調査報道は、21世紀の最大のスクープとなる可能性がある」、ずいぶん面白い時代になったものだ。 「オリンピックなどという不要不急、重要性の低いイベントに国が囚われてしまっている。物事の優先順位がつけられない国は、普通は、滅亡する」、痛烈な批判だ 「コロナとさえ戦わない絶望の国ニッポン」 山崎 元 「イギリスではサンデー・タイムズが特集を組んだほか、少数のメディアが報道したが、米メディアは全く取り上げなかっのた」、そんなもだろう (経済社会的視点) 「パンデミックが始まってからというもの、その原因に関心をもった世界各地のアマチュア20数人が独自に調査を行い、埋もれた文書を掘り起こし、断片的な情報をつなぎ合わせてきた。彼らがばらばらに発信した推理が1つ、また1つとツイッター上でつながり、やがてはまとまったストーリーが紡ぎ出されてきた。 それは言ってみれば「オープンソースの自由参加型ブレインストーミング」であり、ネット調査と市民ジャーナリズムの要素が合体した、全く新しい調査方法である」、素人集団がここまでやるとは素晴らしい。
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パンデミック(医学的視点)(その20)(コロナワクチン副反応で無視できない重大事実 体の小さい日本人が米国人並み投与量でいいか、インタビュー/東京大学医科学研究所教授 石井健 ロナワクチン「国産」が出遅れた根本原因、ワクチン輸出国だった日本が、「輸入ワクチン頼み」に落ちぶれた根本原因 開発途絶を招いた「全面敗訴」の重み) [パンデミック]

パンデミック(医学的視点)については、4月22日に取上げた。今日は、(その20)(コロナワクチン副反応で無視できない重大事実 体の小さい日本人が米国人並み投与量でいいか、インタビュー/東京大学医科学研究所教授 石井健 ロナワクチン「国産」が出遅れた根本原因、ワクチン輸出国だった日本が、「輸入ワクチン頼み」に落ちぶれた根本原因 開発途絶を招いた「全面敗訴」の重み)である。

先ずは、4月30日付け東洋経済オンラインが掲載した医療ガバナンス研究所理事長の上 昌広氏による「コロナワクチン副反応で無視できない重大事実 体の小さい日本人が米国人並み投与量でいいか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/425737
・『新型コロナウイルスワクチン接種の副反応が関心を集めている。 相馬中央病院の藤岡将医師は「2回目の接種が終わったあと2日間は倦怠感が強く、仕事の空き時間は医局で寝ていました」という。藤岡医師が勤務する病院の職員の中には、接種後の発熱・倦怠感が強く、入院が必要になった人もいるという。 コロナワクチンの副反応については、私も同じイメージを抱いている。接種者の多くが、発熱や倦怠感などを訴えている。特に2回目の接種で顕著だ』、私も先週、1回目の接種をした。幸い「副反応」は出なかったが、「2回目の接種で顕著」、まだまだ安心できないようだ。
・『副反応の疑いは0.17%  ただ、このような副反応は、厚労省の調査ではカウントされていないようだ。厚労省によると、4月18日現在、医療従事者を対象に193万111件の接種が実施され、副反応疑いとして3298件が報告されている。その頻度は0.17%だ。 コロナワクチンの副反応は、492件報告されているアナフィラキシーに関心が集まるが、ワクチン接種に伴う「強い炎症反応」に対して、厚労省は関心がない。 これではいけない。私が注目するのは死者が出ていることだ。4月21日現在、10名の死者が報告されている。死因は脳出血4例、心不全・不整脈・化膿性脊髄炎・誤嚥性肺炎・溺死・不明それぞれ1例だ。 もちろん、これだけでワクチンによるものと結論づけられない。ただ、否定もできない。医薬品の臨床試験では、原因を問わず、あらゆる死亡を有害事象として扱う。一見、無関係に見える溺死も、遊泳中や入浴中に不整脈が生じた結果かもしれない。不整脈は解剖してもわからないことが多く、このようなケースを有害事象から除外すれば、そのリスクを過小評価しかねない。 今回のケースで、私が注目するのは8例が接種後10日以内、6例が4日以内に死亡していることだ。この中には接種後4日目に脳出血で死亡した26歳女性や、3日後に死因不明で亡くなった37歳男性も含まれる。2人とも特記すべき基礎疾患はない。 彼らの死亡がワクチン接種と無関係なら、死亡日がワクチン接種数日後に集中することはない。今回の医療従事者の接種は、国立病院機構などの臨床研究としても実施されており、接種後数日以内の死亡だけ報告したという「報告バイアス」の可能性も低い。以上の事実を考慮すれば、このような死亡と接種後の炎症反応が関係している可能性は否定できない。 なぜ、こうなるのだろうか。私は、日本人に対して過剰投与になっている可能性があると考えている。 ファイザー製のワクチンの場合、3週間隔で30㎍を2回接種する。これは欧米での用量を、そのまま日本人に応用したためだ。この際に、日本人と欧米人の体格の差は考慮されていない』、「私が注目するのは8例が接種後10日以内、6例が4日以内に死亡している」、「このような副反応は、厚労省の調査ではカウントされていない」、のは接種促進へのマイナスの影響を懸念したためなのだろうか。「このような死亡と接種後の炎症反応が関係している可能性は否定できない」、「私は、日本人に対して過剰投与になっている可能性があると考えている」、なるほど。
・『日本人とアメリカ人の体格差は1.3倍  日本人成人の平均体重は男性約70kg、女性は約50kgだ。一方、アメリカ人は男性約90kg、女性約75kgだ。日本人男性は米国人の1.3倍、女性は1.5倍のワクチンを投与していると考えることもできる。 では、ファイザー製のワクチンの副反応は、投与量とどのような関係があるのだろうか。これについては、アメリカの医学雑誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン』に昨年10月14日に掲載された第1相臨床試験の結果が参考になる。この試験では、試験に参加したボランティアを10㎍、20㎍、30㎍に振り分け、副反応の頻度を比較した。 18~55歳に対する2回目接種で発熱が生じた頻度は、それぞれ0%、8%、17%だし、倦怠感は33%、58%、75%、悪寒は8%、42%、58%である。副反応と接種量の間には明白な用量依存性がある。 実は、コロナワクチンの副反応は、高齢者は若年者よりも軽微だ。65~85歳に対する2回目接種では、10㎍、20㎍、30㎍投与群での発熱は、それぞれ0%、0%、8%だ。倦怠感は17%、50%、42%、悪寒は17%、8%、17%である。 体重当たりに換算すれば、日本人は欧米人の3割から5割増しのワクチンを投与されていることになる。これは欧米での投与量の40~45㎍に相当する。筆者の周囲の若年の医療従事者の多くが、倦怠感や悪寒を生じたのも納得できる。 幸い、若年者は体力がある。多少副反応が出ようが、乗りこえることができる。一方、高齢者は臓器の予備力が低く、体力もない。さらに、若年成人と比べて、10%程度体重は減少する。彼らに欧米人並みのコロナワクチンを投与すれば、どのような副反応が生じるか予想できない。 これまで、私が知る限り、ワクチンが国内外で異なる用量で用いられているケースはない。おそらく、これまでのワクチンは相当に安全性が高かったのだろう。 コロナワクチンはわからない。これまで臨床応用されたことがないmRNAベースのワクチンだからだ。日本は、国際共同研究の結果を基に特例承認することなく、独自に第1相臨床試験を実施したのに、この試験では30㎍が投与されただけで、用量設定試験は実施しなかった。安全性について検証するせっかくの機会を失った』、「体重当たりに換算すれば、日本人は欧米人の3割から5割増しのワクチンを投与されていることになる」、「日本は、国際共同研究の結果を基に特例承認することなく、独自に第1相臨床試験を実施したのに、この試験では30㎍が投与されただけで、用量設定試験は実施しなかった。安全性について検証するせっかくの機会を失った」、もったいないことをしたものだ。
・『厚労省に求められる正確な説明  もちろん、厚労省にも言い分はある。安全性の観点から海外より少ない20㎍が適切な投与量となった場合、その量での有効性を再度、第3相臨床試験で検証しなければならないからだ。ファイザー社は実施しないだろう。これでは日本にワクチンが入ってこない。 重要なのは、このような苦しい事情を、国民に正確に説明することだ。そうすれば、国民が問題点のありかを認識できる。持病をもつ高齢者はかかりつけ医で接種してもらい、主治医はワクチン接種量を減量することも可能だ。また、副反応が強ければ、早期に解熱剤、鎮痛剤を投与することもできる。要は、問題を認識すれば、それぞれやりようがあるのだ。高齢者の接種でのワクチン投与量について、再考が必要だと問題提起したい』、「このような苦しい事情を、国民に正確に説明することだ。そうすれば、国民が問題点のありかを認識できる。持病をもつ高齢者はかかりつけ医で接種してもらい、主治医はワクチン接種量を減量することも可能だ。また、副反応が強ければ、早期に解熱剤、鎮痛剤を投与することもできる」、「主治医はワクチン接種量を減量することも可能」、初めて知ったが、同氏の見解には同意する。

次に、6月2日付け東洋経済Plus「インタビュー/東京大学医科学研究所教授 石井健 ロナワクチン「国産」が出遅れた根本原因」を紹介しよう。
・『新型コロナワクチンの大規模接種が始まったが、使われているのは海外メーカーの製品だ。国内メーカーはなぜ後塵を拝したのか。 ついに日本でも新型コロナワクチンの大規模接種が始まった。 だが、接種に使われているのはアメリカの製薬大手ファイザーやモデルナが製造したワクチンだ。そこに国内メーカーが開発した「純国産ワクチン」はない。複数の候補は臨床試験段階で、実用化まではまだ時間がかかりそうだ。 実は、今回のようなパンデミック(感染症の世界的大流行)を見据え、2016年からコロナウイルスの「模擬ワクチン」の開発に乗り出していた研究者がいる。東京大学医科学研究所の石井健教授だ。 石井教授は、アメリカの規制当局であるFDA(食品医薬品局)でワクチンの基礎研究や臨床試験の審査業務に携わった経験も持つ、ワクチン研究の第一人者だ。そして、模擬ワクチン開発で活用しようとしていた技術こそ、ファイザーやモデルナが活用して開発レースで他社を圧倒した「RNAワクチン」の技術だった。 なぜ日本企業は開発レースで完全に出遅れたのか。また、石井教授が日本で進めていた模擬ワクチンのプロジェクトはなぜ頓挫したのか。これまでのワクチン産業、ワクチン行政に横たわる課題について石井教授に聞いた(Qは聞き手の質問、Aは石井教授の回答)』、日本の「ワクチン」敗戦についての、第一人者による解説とは、興味深そうだ。
・『ワクチン産業が抱えるトラウマ  Q:「敗戦」とまで言われている国内のワクチン開発状況をどう見ていますか? A:アメリカが100億ドルの予算を確保して進めてきた「ワープスピード計画」と比較すれば、実用化のタイミングでは完全に敗戦した。でもそれは想定内だ。 むしろ、先に実用化されたワクチンが予想以上に良いワクチンになったので、後発組の開発が非常にやりにくくなっている。 接種が進めば感染者は出なくなるだろうし、よいワクチンがあるのに(治験薬の有効性を確認するために)偽薬を打つプラセボ試験も行いづらくなってしまった。 Q:なぜ国産ワクチンの開発が遅れているのでしょうか? A:国産ワクチンの開発体制が整っていないのは、(技術革新が進んだ)この20年にわたって続いてきた問題だ。  とくに日本で大きいのが「ワクチン禍」。最近では子宮頸がんワクチンのケースを筆頭に、副反応の大きさに焦点が当たりがちで、単純に言うと「ワクチン嫌いの人」が多くなった。 病気を治療するものではないので、接種することによるベネフィットがわかりづらい。そうしたこともあって、日本の産業界は興味を示してこなかった。 それ以上に大きいのは、2009年に新型インフルエンザのパンデミックが起こってからの一連の出来事だった。ワクチン産業にとってのトラウマになっている。 Q:トラウマとは? A:当時も、国産ワクチンは敗戦した。国内での開発が間に合わず、海外メーカーのものを緊急輸入した。幸いにも輸入してから感染が収束に向かったため、そのほとんどを廃棄することになったわけだが。 その敗戦を受けて政府内で議論が巻き起こり、「国産ワクチンを開発する体制を整備しなくては」となった。今とほとんど同じことが、当時議論されていたわけだ。 結果、国は4社のメーカーにそれぞれ200億円から300億円という巨額の助成金を出して、次の新型インフルエンザが流行するときのために、最新鋭のワクチン工場を作らせた。製造体制を5年以内に整えて、国に納入できるようにしなさい、と。 だが、そのうちの1社、阪大微研(阪大微生物病研究会)は開発を断念し辞退。工場を建設していたものの、助成金は国に全額返還させられた。別の1社である北里第一三共(現、第一三共バイオテック)も、(製造体制の整備について)時期が遅れたという理由で遅延損害金を支払うことになった。 そのため、当時手を挙げた国内のワクチンメーカー2社にとってはいい思い出がない。今回、ワクチンメーカーの動き出しが非常に鈍かったのは、10年前のことを引きずっていたということもあるだろう』、「ワクチン禍」で「ワクチン嫌いの人」が多くなったことに加え、「2009年に新型インフルエンザのパンデミックが起こってからの一連の出来事だった。ワクチン産業にとってのトラウマになっている」、ことが業界サイドの主因のようだ。
・『海外は「有事対応」でワクチンを開発  Q:今回、当時の経験や議論を生かすことはできなかったのでしょうか。 A:インフルエンザウイルス用に当時作った設備は今回使えなかった。それに、助成金であっても、今回も大規模な工場を建設してもモノにならなかったらどうするのか、ということが頭をよぎったはず。メーカーの人ははっきりそう言わないまでも、当初積極的ではなかったのは確かだ。 だからこそ、ワクチン開発にまず名乗りを上げたのは、こうしたしがらみがなかったバイオベンチャーのアンジェスや塩野義製薬だった。 Q:仮に当初から国内メーカーにやる気があったとしても、欧米メーカーとの開発競争についていけたのかという問題もあるのではないでしょうか。 A:今回、ヨーロッパ、アメリカ、中国、ロシアは当初から巨額の予算を組んで戦争と同じような有事対応をしていた。 一方で、日本は災害規模とはいえ公衆衛生上の対応にとどまった。確かに、国の危機感とサポートの規模は明らかに違っていた。 とくに、国内でRNAワクチンの開発にすぐに取りかかれなかったのは大きい。従来の開発方法に比べて圧倒的に早く、簡便だからだ。 【キーワード解説】RNAワクチン  新たなアプローチで開発されたワクチン。従来型のワクチンは、実際のウイルスに人為的な操作を加えてから体内に送り込み、抗体を作り出すことでウイルス増殖を抑える。一方、RNAワクチンはウイルスの設計図である遺伝情報のみを体内に入れ、抗体が生み出されることを狙う。 RNAワクチンの技術そのものは20年前からあって、徐々に技術が成熟してきていた。当時からワクチン技術の「地殻変動」と呼んでいたが、破壊的なイノベーションになる可能性を秘めていた。 この技術を、国内ですぐに応用できるレベルに温めてこられなかったのは誰が悪いというわけではないが、自分自身も反省している。 Q:石井教授が開発しようとしていたモックアップ(模擬)ワクチンもこの技術を使っていました。 A:いずれ来るかもしれない感染症に対して、模擬ワクチンを作っておくというプロジェクトを進めていた。そのモックアップを作っておければ、実際に感染が広がってワクチンが必要になった場合に、すぐに本番の試験に進めるからだ。 Q:当時やろうと思ったのにはどういう経緯が? A:アメリカのFDA(食品医薬品局)に所属していたときに、「9・11」の後に炭疽菌によるバイオテロがあった。なので、緊急時にはワクチンがいきなり必要になるときがあるということを、身をもって学んでいた。 RNAワクチンという技術を知ったときに、これは緊急的な感染症のワクチンに使えるな、とすぐに思った。 その後、2015年に韓国でMERS(中東呼吸器症候群)コロナウイルスのアウトブレイク(突発的発生)があった。一気に感染者が増えて、人がどんどん死んでいた。これは間違いなく日本に来ると感じた。 絶対にやらなければと思い、(日本で)RNAワクチン研究の予算をもらった。 Q:2018年度までは研究予算が6000万円ありました。しかし、開発費用がよりかかるはずの後半にはむしろ1000万円にまで減額されています。 A:当初の計画では、2020年からMERSワクチンのフェーズ1の臨床試験を行う予定だった。 サルでの実験まではうまくいき、次はヒトでの試験をしましょうと。でもヒトでの試験をするとなると、それまで数千万円で済んでいた研究費が、数億円単位で必要になる。さすがにこの予算は国からは出せない、という話になり計画が頓挫してしまった。 国としては、企業のほうに臨床試験の費用を負担してもらってくれと。企業は、公益性が高いことなので国のほうに負担してもらってくれと。この狭間でどうしようもできなかった。 Q:企業としては収益に繋がらないから、ですね。 A:MERSのアウトブレイクはもう終息していたので、試験の現実味が薄いのも確かだった。結果的に日本で感染者は出ていなかったのでビジネスにもならない。さらに、当時はRNAワクチンについてよく知られていなくて、「そんなもの危なくて人に打てるか」という雰囲気もあった。 もしもの話だが、あのときにベンチャー企業を作って治験費用を集められていれば、今回開発に成功しているモデルナやビオンテックなどと同じような状況になっていたのかな、と思うこともある。 当時、なぜ諦めてしまったのかというと、自分自身が「狼少年」になりたくなかったからかもしれない。実際、MERSは現在もアウトブレイクを起こしてはいない。仮に開発に成功したとしても、将来的に製品としては無価値になる可能性もある。 ただ、当時実際に事を動かそうとしていたのは私だけだったので、今となっては国や企業に頼らず、各方面に必要性を主張し続ければよかったと反省している』、「今回、ヨーロッパ、アメリカ、中国、ロシアは当初から巨額の予算を組んで戦争と同じような有事対応をしていた。 一方で、日本は・・・公衆衛生上の対応にとどまった。確かに、国の危機感とサポートの規模は明らかに違っていた」、「RNAワクチン研究の予算・・・2018年度までは研究予算が6000万円ありました。しかし、開発費用がよりかかるはずの後半にはむしろ1000万円にまで減額されています。 A:当初の計画では、2020年からMERSワクチンのフェーズ1の臨床試験を行う予定だった。 サルでの実験まではうまくいき、次はヒトでの試験をしましょうと。でもヒトでの試験をするとなると、それまで数千万円で済んでいた研究費が、数億円単位で必要になる。さすがにこの予算は国からは出せない、という話になり計画が頓挫」、日本の国の支援には大きな問題があったようだ。
・『感染症の研究は“オワコン”だった  Q:2009年に新型インフルエンザのパンデミックが起きる以前も、国内でのワクチン開発体制の足腰は弱かったのでしょうか? 2007年に、国から「ワクチン産業ビジョン」という方針が出されたことがある。 【キーワード解説】「ワクチン産業ビジョン」 2007年3月に厚生労働省から発表された。「世界的にも新たな病原体が出現し続けている現在、国民を感染症から防御することは国家の果たすべき重要な役割」として、政府の取り組みや産業界のめざすべき方向性、需給安定化の取り組みなど、複数のアクションプランが示された。 1980年代以降、ワクチンの副反応によって多くの訴訟が起きていた。社会的に風当たりが強く、企業としてワクチンビジネスのうまみがなくなっていた。そのため日本発の新しいワクチンの開発が行われなくなってしまっている状況をどうにかしよう、という思いが背景にあった。 ただそれ以前に、感染症の研究はもはや“オワコン”だった。 感染症研究は先端的だと思われていなくて、分野として忘れ去られていた感があった。むしろホットだったのはがんとかゲノムとか脳の研究。免疫の領域でも、格好よかったのはワクチンとは違う分野の研究だった。 感染症、しかもワクチン研究なんてしていると「お前、大丈夫か」という感じだった。 Q:研究者としては、当然、予算配分が厚い分野に行くわけですね。 A:2000年代初めから、ゲノムやがんにお金が行きすぎていたということはあるだろう。 行きすぎ、ということはなくともバランスは取れていなかった。RNAワクチンのような破壊的なイノベーションは10年、20年の基礎研究の下地があってようやく生まれてくるものだ。そこへの国のサポートは明らかに足りなかった。 Q:改めて、ワクチンはなぜ国産である必要があるのでしょうか? A:「国防」という観点から考えれば説明は必要ないだろう。 今回だって、開発したのがアメリカだからたまたま輸入できているだけかもしれない。実際に、世界中では政治的な駆け引きに使われてしまっている。 すべて輸入すればいいじゃないかというかもしれないが、将来的に国際的な立場が弱くなって優先度が低くなった場合など、国民を守るにはどうすればいいのか。また、日本だけでバイオテロが起きる可能性もある。国産ワクチンが必要ないという議論は成り立たない。 災害が起きたときにインフラを復旧する手立てが必要なのと同じように、国産ワクチンは必要だ。 Q:アメリカのFDAにいた当時、周囲の認識も同じでしたか? A:緊急対策用のワクチンがつねに必要だということは、アメリカでは常識だった。世界中に展開する軍があるので、世界中に存在する感染症はアメリカにいなくても十分脅威だ。バイオテロ対策はもちろんだが、だからこそお金が軍から出てくる。 それに、感染症研究が日本と違って“オワコン”ではなかった。HIV などを含めて、研究予算が潤沢だった。なので、むしろ日本に戻ってきた際には他の分野に比べて予算が少ないことに改めて愕然とさせられた。 Q:日本政府はワクチンの「世界トップレベルの研究開発拠点」を作る方針です。 A:この問題は司令塔がないと動かない。ワクチンの基礎研究は文部科学省、産業化するには経済産業省、厚生労働省の中でもワクチン開発、審査、予防接種事業すべてが縦割りになっていてバラバラだ。 官僚1人ひとりは真剣にやっている。でもそれが縦割りとなっていることで、組織としてはまったく機能していなかった。 今からでも、ワクチンの基礎研究から臨床試験ができて、ビジネスの論理にかかわらず重要度の高いものから開発できるような体制を整えることが理想だ。5年、10年後に同じことが起きたときに、今までの失敗体験をすべてポジティブに変えられるような組織になればいい』、「感染症研究は先端的だと思われていなくて、分野として忘れ去られていた感があった。むしろホットだったのはがんとかゲノムとか脳の研究。免疫の領域でも、格好よかったのはワクチンとは違う分野の研究だった」、まさに「“オワコン”」だ。「ワクチンの基礎研究は文部科学省、産業化するには経済産業省、厚生労働省の中でもワクチン開発、審査、予防接種事業すべてが縦割りになっていてバラバラだ」、こんなところにまで縦割りの弊害が表れているようだ。「5年、10年後に同じことが起きたときに、今までの失敗体験をすべてポジティブに変えられるような組織になればいい」、これは単なる願望のようだ。

第三に、6月1日付けPRESIDENT Online「ワクチン輸出国だった日本が、「輸入ワクチン頼み」に落ちぶれた根本原因 開発途絶を招いた「全面敗訴」の重み」を紹介しよう。
・『ようやく「国産ワクチン」の開発に踏み切るが…  一向に収束する気配が見えない新型コロナウイルス。ようやく日本が「国産ワクチン」の開発に踏み切る。6月2日の「COVAX(コバックス)ワクチンサミット」で菅義偉首相は、国産ワクチンの研究開発拠点の整備構想を表明、官民あげてのワクチン開発が動き出す。 コバックス・サミットは日本政府と国際機関の共催だ。ワクチンの接種が遅れる日本は米国から「渡航中止勧告」を出されるなど、世界から孤立しつつある。このため、米国や欧州の主要国など30の国・地域の参加を要請。各国を巻き込んで「ワクチン後進国」の汚名返上をアピールしたい考えだ。 日本は米国のファイザーやモデルナなど3社のワクチンが薬事承認され、供給体制が整いつつある。東京や大阪など大都市を中心に65歳以上の接種が始まった。しかし、海外産のワクチンに頼る状況には変わりない。変異株がまたぞろ出てくれば、それに対応したワクチンの開発が必要になり、日本への供給は後回しになる。「コロナ優等生」と言われた台湾でも変異株が蔓延。ワクチンの接種が遅れる蔡英文総統は一転して苦しい立場に置かれている』、「コバックス・サミット」で「「ワクチン後進国」の汚名返上をアピールしたい考え」、そんなことでは「汚名返上」など及びもつかない筈だ。
・『日本は1980年代までは「ワクチン先進国」だった  日本と同様、台湾や韓国は国産ワクチンの開発に後れを取った。ワクチン接種の遅れが「経済回復の遅れ」を招く中で、日韓台の焦りの色は日に日に濃くなるばかりだ。 起死回生を目指す日本はコバックスサミットで、資金や体制面での支援のほか、実用化までの国の制度の再構築を掲げる。世界トップレベルの研究開発拠点を設けて、治験や新薬の承認などの面で規制を緩和し、大学や製薬会社が共同研究に取り組む体制を構築する。製薬会社の資金面での懸念を払しょくするために開発したワクチンを政府が買い上げる仕組みや基金設立に向けても検討する。 今や、他国のワクチンに頼る日本だが、1980年代までは「ワクチン先進国」だった。水痘、日本脳炎、百日ぜきなどのワクチンを世界に先駆けて開発、米国などに技術供与していたほどだ。 では、なぜ、ワクチンの開発が途絶するまで衰退したのか。その大きな要因の一つが訴訟だ』、「日本」が「1980年代までは「ワクチン先進国」だった」、はいいとしても、「衰退したのか。その大きな要因の一つが訴訟だ」というのは。本当だろうか。
・『副作用を恐れる保護者の判断などで接種率は一気に低下  70年ごろから、天然痘ワクチンやはしかや風疹、おたふくかぜなど予防接種や子宮頸がんワクチンでの健康被害が社会問題化し、国は相次いで起訴された。その様子をみた企業も需要が安定した予防接種用の既存ワクチンの製造だけを担う「護送船団方式」で細々と続け、新規開発に及び腰になった。 決定的だったのが92年の東京高裁での国の全面敗訴だ。世論に押される形で国は上告を断念した。94年には予防接種法が改正されて接種は「努力義務」となり、副作用を恐れる保護者の判断などで接種率は一気に下がり、それと同時に日本の製薬会社はワクチン開発から身を引き始めた。 そして薬害エイズ事件がとどめを刺した。この事件で当時の厚生省の担当課長が業務上過失致死罪で有罪判決を受けた。ワクチン接種を許可する行政も一気に腰が引けた。 ※編集部註:血液製剤についての説明が間違っていました。当該部分を削除します。(6月3日9時55分追記)』、「天然痘ワクチンやはしかや風疹、おたふくかぜなど予防接種や子宮頸がんワクチンでの健康被害が社会問題化し、国は相次いで起訴」、「92年の東京高裁での国の全面敗訴・・・94年には予防接種法が改正されて接種は「努力義務」となり、副作用を恐れる保護者の判断などで接種率は一気に下がり」、「薬害エイズ事件がとどめを刺した」、確かにこれだけ重なれば「製薬会社はワクチン開発から身を引」くのもやむを得ない。
・『米国はワクチン開発と供給に約2兆円を投資  一方、海外は事情が異なる。2000年ごろから重症急性呼吸器症候群(SARS)やエボラ出血熱、中東呼吸器症候群(MERS)など、致死率の高いウイルス感染症が次々と流行。それへの対応策として、ワクチン開発が急速に進んだ。新型コロナワクチンとして注目を集めるmRNAワクチンはもともとがんの治療手段として研究されていたが、新型コロナに応用された。 米国は01年の炭疽たんそ菌事件を契機に、感染症に対する制度や体制を抜本的に見直した。有事には保健福祉省(HHS)が司令塔になって、製薬会社や研究機関などと連携。ワクチン開発資金の支援や臨床試験(治験)、緊急使用許可といった取り組みが一気通貫で進む。 中国の隣国である台湾で、新型コロナウイルスの感染初期に感染者の爆発を防げたのはSARSでの手痛い経験があったからだ。 米国はトランプ政権時にワクチン開発と供給の計画を立ち上げ、およそ2兆円を投資した。バイデン政権は国防生産法に基づいてワクチン製造支援に企業を注力させる方針を打ち出した。中国も政府主導でワクチンを開発し、海外で供給する「ワクチン外交」に乗り出している』、「mRNAワクチンはもともとがんの治療手段として研究されていたが、新型コロナに応用された」、初めて知った。
・『画期的技術をもっていたUMNファーマは債務超過に  現在、日本では主に5社が開発に取り組み、うち4社が臨床試験中だが、年内に供給できる見通しは立っていない。寒々とした状況だが、一回消えかけたワクチン開発が盛り上がる機運はあった。09年から10年にかけて蔓延した新型インフルエンザの世界的流行だ。日本でも推定で2000万人が感染、200人を超える死者を出した。 この際、政府は約1000億円の補助金を出して国内3社に新型インフルエンザワクチンの製造工場を整備させた。しかし、インフルエンザの収束であえなく計画は立ち消えとなる。有事にしか使わないワクチンの製造設備を民間企業が維持するのは過大な負担となるからだ。 さらに14年には、鶏卵で培養する従来方法ではなく、遺伝子組み換え技術を用いて開発した同ワクチンを厚労省所管の「医薬品医療機器総合機構」に新規メーカーのUMNファーマが承認申請した。鶏卵培養だとワクチン製造に約半年かかるところ、この方法なら1~2カ月に短縮できる画期的技術だ。 当時、UMNファーマは最大8000万人分のワクチン生産能力を有する工場をもち、同社の季節性インフルエンザワクチンの原液はその後、仏サノフィの米子会社にも提供された。米国では承認されていたためだ。しかし、同機構は明確な理由を示さないまま、UMNファーマの申請を3年間放置し、同社は2017年に取り下げを余儀なくされた。その後、UMNファーマは債務超過になり、今は塩野義製薬の傘下に入っている』、「医薬品医療機器総合機構」が「明確な理由を示さないまま、UMNファーマの申請を3年間放置」、「UMNファーマは債務超過になり、今は塩野義製薬の傘下に入っている」、放置した理由などは何だったのだろう。
・『日本の「mRNAワクチン開発」は予算カットで18年に凍結済み  2010年には政府の有識者会議もワクチン製造会社の支援や開発の推進などの提言をしていたが、結局、この提言が日の目を見ることはなかった。 新型コロナワクチンの開発に道を開いたとされるmRNAワクチンでも国立研究開発法人である医薬基盤・健康・栄養研究所が開発を進めていたが、臨床試験の予算がカットされ、18年には計画が凍結された。 米バイオのモデルナが13年に47億円、16年に135億円の支援を国防省や保健社会福祉省からそれぞれ受けていたのとは対照的だ。平時での備えがあったからこそ、新型コロナの世界的感染から1年余りで同社が新型ワクチンの開発ができたのだ』、「2010年には政府の有識者会議もワクチン製造会社の支援や開発の推進などの提言をしていたが、結局、この提言が日の目を見ることはなかった」、「「mRNAワクチン開発」は予算カットで18年に凍結済み」、もっと一貫して支援策が必要だ。
・『責任をすべて行政に押し付けるのは得策ではない  米国や中国のワクチン開発は安全保障との絡みで語られることが多い。しかし、日本がいつまでもワクチンの輸入に頼るようなことにとどまれば、変異を繰り返すコロナの猛威が起きるたびに、新たなワクチンの供与を要請する事態が繰り返されることになる。財政支出で「買い占める」ことをすれば、諸外国から集中非難を受けることにもなりかねない。 ワクチン開発には巨額な資金がかかる一方で、実際に感染が起こらなければワクチンが使われることもない。研究施設や製造設備の維持にかかる負担を企業だけに課すことは難しい。 英国では製薬会社に毎年一定額を支払い、必要な時に必要な量を優先的に受け取れる「サブスクリプション(定額制)」方式の新薬の調達契約を導入している。同方式であれば、製薬会社も資金回収への懸念を抱えることなく設備を維持できる。 新型コロナ以外の感染症は今後も続く可能性はある。副作用が起こるかもしれない新型ワクチンの認可に厚労省の役人が慎重になる心情は理解できる。責任をすべて行政に押し付けるのは得策ではない。これまでの失敗を生かし、ワクチンを含めた新たな薬や治療法の開発を進められる仕組みを作らなければ、日本の感染症対策はいつまでたっても世界に劣後することになる』、「英国」での「「サブスクリプション・・・」方式の新薬の調達契約を導入」、はなかなかよさそうな方式だ。様々な工夫をして「ワクチンを含めた新たな薬や治療法の開発」を支援すべきだ。
タグ:パンデミック (医学的視点) (その20)(コロナワクチン副反応で無視できない重大事実 体の小さい日本人が米国人並み投与量でいいか、インタビュー/東京大学医科学研究所教授 石井健 ロナワクチン「国産」が出遅れた根本原因、ワクチン輸出国だった日本が、「輸入ワクチン頼み」に落ちぶれた根本原因 開発途絶を招いた「全面敗訴」の重み) 東洋経済オンライン 上 昌広 「コロナワクチン副反応で無視できない重大事実 体の小さい日本人が米国人並み投与量でいいか」 私も先週、1回目の接種をした。幸い「副反応」は出なかったが、「2回目の接種で顕著」、まだまだ安心できないようだ。 「私が注目するのは8例が接種後10日以内、6例が4日以内に死亡している」、「このような副反応は、厚労省の調査ではカウントされていない」、のは接種促進へのマイナスの影響を懸念したためなのだろうか。 「このような死亡と接種後の炎症反応が関係している可能性は否定できない」、「私は、日本人に対して過剰投与になっている可能性があると考えている」、なるほど。 「体重当たりに換算すれば、日本人は欧米人の3割から5割増しのワクチンを投与されていることになる」、「日本は、国際共同研究の結果を基に特例承認することなく、独自に第1相臨床試験を実施したのに、この試験では30㎍が投与されただけで、用量設定試験は実施しなかった。安全性について検証するせっかくの機会を失った」、もったいないことをしたものだ。 「このような苦しい事情を、国民に正確に説明することだ。そうすれば、国民が問題点のありかを認識できる。持病をもつ高齢者はかかりつけ医で接種してもらい、主治医はワクチン接種量を減量することも可能だ。また、副反応が強ければ、早期に解熱剤、鎮痛剤を投与することもできる」、「主治医はワクチン接種量を減量することも可能」、初めて知ったが、同氏の見解には同意する 東洋経済Plus 「インタビュー/東京大学医科学研究所教授 石井健 ロナワクチン「国産」が出遅れた根本原因」 日本の「ワクチン」敗戦についての、第一人者による解説とは、興味深そうだ。 「ワクチン禍」で「ワクチン嫌いの人」が多くなったことに加え、「2009年に新型インフルエンザのパンデミックが起こってからの一連の出来事だった。ワクチン産業にとってのトラウマになっている」、ことが業界サイドの主因のようだ 今回、ヨーロッパ、アメリカ、中国、ロシアは当初から巨額の予算を組んで戦争と同じような有事対応をしていた。 一方で、日本は・・・公衆衛生上の対応にとどまった。確かに、国の危機感とサポートの規模は明らかに違っていた」 「RNAワクチン研究の予算・・・2018年度までは研究予算が6000万円ありました。しかし、開発費用がよりかかるはずの後半にはむしろ1000万円にまで減額されています。 A:当初の計画では、2020年からMERSワクチンのフェーズ1の臨床試験を行う予定だった。 サルでの実験まではうまくいき、次はヒトでの試験をしましょうと。でもヒトでの試験をするとなると、それまで数千万円で済んでいた研究費が、数億円単位で必要になる。さすがにこの予算は国からは出せない、という話になり計画が頓挫」、日本の国の支援には大きな問題 「感染症研究は先端的だと思われていなくて、分野として忘れ去られていた感があった。むしろホットだったのはがんとかゲノムとか脳の研究。免疫の領域でも、格好よかったのはワクチンとは違う分野の研究だった」、まさに「“オワコン”」だ。 「ワクチンの基礎研究は文部科学省、産業化するには経済産業省、厚生労働省の中でもワクチン開発、審査、予防接種事業すべてが縦割りになっていてバラバラだ」、こんなところにまで縦割りの弊害が表れているようだ。「5年、10年後に同じことが起きたときに、今までの失敗体験をすべてポジティブに変えられるような組織になればいい」、これは単なる願望のようだ。 PRESIDENT ONLINE 「ワクチン輸出国だった日本が、「輸入ワクチン頼み」に落ちぶれた根本原因 開発途絶を招いた「全面敗訴」の重み」 「コバックス・サミット」で「「ワクチン後進国」の汚名返上をアピールしたい考え」、そんなことでは「汚名返上」など及びもつかない筈だ。 「日本」が「1980年代までは「ワクチン先進国」だった」、はいいとしても、「衰退したのか。その大きな要因の一つが訴訟だ」というのは。本当だろうか。 「天然痘ワクチンやはしかや風疹、おたふくかぜなど予防接種や子宮頸がんワクチンでの健康被害が社会問題化し、国は相次いで起訴」、「92年の東京高裁での国の全面敗訴・・・94年には予防接種法が改正されて接種は「努力義務」となり、副作用を恐れる保護者の判断などで接種率は一気に下がり」、「薬害エイズ事件がとどめを刺した」、確かにこれだけ重なれば「製薬会社はワクチン開発から身を引」くのもやむを得ない。 「mRNAワクチンはもともとがんの治療手段として研究されていたが、新型コロナに応用された」、初めて知った 「医薬品医療機器総合機構」が「明確な理由を示さないまま、UMNファーマの申請を3年間放置」、「UMNファーマは債務超過になり、今は塩野義製薬の傘下に入っている」、放置した理由などは何だったのだろう 「2010年には政府の有識者会議もワクチン製造会社の支援や開発の推進などの提言をしていたが、結局、この提言が日の目を見ることはなかった」、「「mRNAワクチン開発」は予算カットで18年に凍結済み」、もっと一貫して支援策が必要だ。 「英国」での「「サブスクリプション・・・」方式の新薬の調達契約を導入」、はなかなかよさそうな方式だ。様々な工夫をして「ワクチンを含めた新たな薬や治療法の開発」を支援すべきだ。
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パンデミック(経済社会的視点)(その15)支える側の実態4題(支援現場の医師が訴える医療者の窮状 クラスター施設職員「2~3割がうつ症状」の悲惨、医療従事者のメンタル悪化が「放置」される複雑背景 うつに不眠、「心の異変」相次ぐ医療現場の深刻実態、クラスター施設では行政の支援が待ったなし 暗中模索の医療機関、コロナで不足する「職員ケア」) [パンデミック]

パンデミック(経済社会的視点)については、3月26日に取上げた。今日は、(その15)支える側の実態3題(支援現場の医師が訴える医療者の窮状 クラスター施設職員「2~3割がうつ症状」の悲惨、医療従事者のメンタル悪化が「放置」される複雑背景 うつに不眠、「心の異変」相次ぐ医療現場の深刻実態、クラスター施設では行政の支援が待ったなし 暗中模索の医療機関、コロナで不足する「職員ケア」)を紹介しよう。

先ずは、5月2日付け東洋経済Plus「支援現場の医師が訴える医療者の窮状 クラスター施設職員「2~3割がうつ症状」の悲惨」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/26864
・『コロナ禍で医療従事者や自治体職員の心の問題が顕在化している。患者や住民を「支える立場」にある人たちへの支援が急務だ。 医療従事者や自治体職員のメンタルヘルスが悪化している。コロナ対応に追われて過重労働が常態化し、うつ症状などに悩む人が増えている。 福島県立医科大学・災害こころの医学講座の主任教授を務める前田正治氏は、クラスター(集団感染)が発生した医療・介護施設の職員のメンタルヘルス・ケアを行う。前田教授に、医療従事者らのメンタル危機を防ぐための支援のあり方などについて話を聞いた(Qは聞き手の質問、Aは前田氏の回答)。 Q:コロナ禍で、医療従事者にどのような心のストレスがかかっていますか。 A:医療従事者のうつ症状が強くなる原因は、過重労働による疲弊と、強く自分を責める感情にある。医療従事者は自分が感染する不安より、「(家族や友人などの)誰かに感染させてしまうのではないか」と自分を責める感情のほうが強い。身の周りの人が陽性者や濃厚接触者になった場合には、いっそう自分を責める感情が強くなる。 感染のリスクをゼロにはできない。だが、医療従事者は自分が感染すると社会的な制裁を受けるのではないかという不安も大きい。ある感染症病棟の看護師は、「記者会見で謝罪している自分の姿をよく思い浮かべます」と話していた。(他者に感染させるリスクへの不安から)誰にも会わなくなるなど、職場以外でも萎縮してしまう。 直接コロナ患者に接するスタッフはそれほど増やすことができず、一部の職員に負担がのしかかってしまいがちだ。現場のスタッフからは「まず何より休息がほしい」という声を聞くが、スタッフに十分な休息を与えるシフトを組むことが難しい。 こうした過重労働やストレスが、睡眠不足をもたらすこともある。コロナに対応するスタッフに最も多い訴えの一つが睡眠障害だ』、「医療従事者のうつ症状が強くなる原因は、過重労働による疲弊と、強く自分を責める感情にある」、確かに大変そうだ。
・『「火をつける」との脅しも  Q:クラスターが発生した施設では、具体的に職員の間でどんなメンタルの不調が見受けられるのでしょうか? A:次々に職員が陽性になると、残った職員に負担が集中する。家族にも話すことができず、孤立しがちだ。クラスターが発生した施設の職員に対してストレスチェックを行うと、職員の2~3割に強いうつ症状が出ている。 私が支援に入ったクラスター発生施設の職員は、(周辺の)住民から「家に火をつける」と脅されるなどの嫌がらせを受け、深刻なうつ状態に陥ってしまった。感染症病棟で働く医療スタッフの不足や、医療機関がコロナ対応を避ける状況の背景には、社会的な偏見にさらされる不安や恐怖があるのではないか。 あるコロナ重症者を受け入れている病院では、クラスターが発生して機能が完全にストップした。こうした機能不全も、自然災害ならば職員も「自分たちが災害を被った結果」だと感じるが、コロナの場合は「(感染を予防できなかった)自分たちが悪かった結果」だと感じて深く傷つきがちだ。心の傷が深いほど、職場復帰が難しくなるし、離職につながりかねない。 クラスター発生施設では施設の内外で感染ルートの疫学調査が行われるが、やり方によっては「犯人捜し」のようになる。疫学調査は犯人捜しにならないように、慎重に行うべきだ。 Q:医療従事者と同じく、保健所などの自治体職員の過重労働も問題になっています。 A:保健所も余力がまったくないほど、業務がパンクしている。休暇を取れず、うつ病で休職する職員もいる。ここで辞めれば一生の悔いが残るという気持ちから、辞めることもできない。仕事と家庭のどちらを優先させるかという葛藤に苦しんでいる。 行政に対する住民からのバッシングも起こりやすい。自然災害は一目で被災の状況がわかる。それに対して今回のコロナ禍では(影響度合いが見えづらく)さまざまな公的補償の対象が恣意的な線引きで決まり、不公平感が生まれやすい。その線引きに住民の不満が向かっている。その構図は、原発被災者にとても似ている。 連合の地方組織「連合福島」と福島県立医科大が共同で行った調査(調査期間2020年10月1日~11月23日)では、回答した連合の組合員の50.4%に強いうつ・不安症状が認められた。コロナ禍の前年(2019年)の福島県民のデータ(31.5%)と比べても著しく高かった。 (広く県民の間でも)コロナの影響は感染不安ばかりではなく、情報不安やコミュニケーションの減少など生活全般に及んでいることがうかがえる。総じて女性や医療介護職のストレスが高い結果だった。 Q:医療従事者らにどのような支援が必要なのでしょうか。 A:専門職である医療従事者へのメンタルケアが必要なのかと問われることがある。だが、福島県内で私たちが支援する病院職員らは「震災時以上に大変だ」と口をそろえる。 都道府県にはメンタルヘルスの相談窓口が設置されているが、相談を待っているだけではほとんど利用されない。顔が見られる関係でなければ相談はできないからだ。 コロナ感染症対応病棟のスタッフからは、「不安よりも不満」という言葉をよく聞く。クラスターが発生すると、時にスタッフの怒りが噴出して、病院内の管理体制では組織のコントロールができなくなることがある。 スタッフの不満が最も高まるのがクラスターの収束後、病院再開のときだ。再開の時期をめぐって、地域医療や経営を考える管理者と、過酷な状況にいる現場の看護師の間に亀裂が深まりやすい。クラスターの発生が、そのまま組織の存続危機をまねきかねない』、「クラスターが発生した施設の職員に対してストレスチェックを行うと、職員の2~3割に強いうつ症状が出ている」、「「連合福島」と福島県立医科大が共同で行った調査・・・では、回答した連合の組合員の50.4%に強いうつ・不安症状が認められた。コロナ禍の前年(2019年)の福島県民のデータ(31.5%)と比べても著しく高かった」、「クラスターが発生すると、時にスタッフの怒りが噴出して、病院内の管理体制では組織のコントロールができなくなることがある」、やはり「クラスター」は可能な限り抑え込む必要がありそうだ。
・『外部の支援が足りない  そこで必要なのが、外部の支援チームだ。福島県では県の新型コロナウイルス感染症対策本部のもとで感染症防御の専門家チームと災害派遣医療チーム(DMAT)が協働し、福島県立医科大・災害こころの医学講座の医師、臨床心理士で作る「こころのケア・チーム」がクラスター発生施設を支援している。私たちのチームでは、病院再開後1カ月間は職員のメンタルケアの支援を続けている。復興期こそ心のケアは重要だ。 なかでも必須となるのが、遠隔支援だ。私たちは事前に職員へのアンケートでうつ病などの症状を確認し、その後、ズームや電話で面談をしている。治療が必要な場合や希死念慮(自殺願望)があるような重篤なケースは、対面での面談も行っている。 施設や職員からのメンタルヘルス支援のニーズはあるものの、外部のチームによる積極的な支援はまだ一部の自治体に限られている。 通常の災害では被災地には、(病院や大学などから派遣された)こころのケア・チームの支援が入る。それがコロナ禍では感染リスクなどから、クラスター発生施設に(支援チームを)派遣することに、派遣する側の組織が消極的だ。しかし、訪問が難しい場合でもオンラインを使って支援する方法はあるので、それらを活用すべきだ』、「クラスター発生施設に(支援チームを)派遣する」、「訪問が難しい場合でもオンラインを使って支援」、その通りだ。

次に、この続き、5月2日付け東洋経済Plus「医療従事者のメンタル悪化が「放置」される複雑背景 うつに不眠、「心の異変」相次ぐ医療現場の深刻実態」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/26879
・『コロナ禍で医療従事者や自治体職員の心の問題が顕在化している。患者や住民を「支える立場」にある人たちへの支援が急務だ。 2020年12月、長野県のある公立病院では近隣の2カ所の介護施設で新型コロナウイルスのクラスター(集団感染)が発生し、多数の感染患者を受け入れた。それまで最低限の人員で回していたコロナ病棟には、新たにほかの病棟から看護師が投入された。 「準備期間がなく、ぶっつけ本番に近い状態でコロナ病棟に入った。感染防護具を着るのも初めてで、感染の恐怖は大きかった」。コロナ病棟に回された看護師は、こう振り返る。この病院では看護師5人が院内感染しているという。 コロナ患者を受け入れる別の病院で働く理学療法士の男性は、昨年11月下旬にうつ症状が現れ、通院するまでになった。症状が出る前、男性が働く病院ではクラスターが発生。自宅には生まれたばかりの子どもがいたため、家族への感染リスクを懸念し、ホテルで寝泊まりする日々が続いていた』、「理学療法士の男性は・・・うつ症状が現れ、通院する」、「家族への感染リスクを懸念し、ホテルで寝泊まりする日々が続いていた」、という厳しい勤務環境からは同情する他ない。
・『自分が"感染源"になる恐怖  地方自治体職員の労働組合の自治労(全日本自治団体労働組合)が昨年、公立病院で働く医療者に行った調査によると、コロナ患者と直接かかわる職員の約2割にうつ症状の自覚があった。 コロナの感染拡大から1年以上。足元では第4波も広まり、病院職員の間で長期戦によるメンタルの悪化が深刻さを増している。 日本赤十字社医療センター(渋谷区)が2020年4~5月に全職員に行った調査でも、うつ症状があった職員は27.9%に上った。同年11~12月に調査を再び実施したが、うつ症状の職員は25.6%と、なお高い割合だ。同センターで職員支援に当たるメンタルヘルス科の臨床心理士の秋山恵子さんは、「慢性的な疲労やストレスが蓄積しており、依然として油断できない状況だ」と危惧する。 医療者たちが共通して抱くのは、自らが感染源になる恐怖だ。札幌市内の民間病院で働く看護師の女性は、「体調を自己管理するのは限界」と悲鳴を上げる。女性が働く病院は、呼吸器専門の内科だ。 「(病院全体の)入院患者の8割が呼吸器系の重症患者だ。職員はコロナの検査をしてもらえないため、熱を測って自分で体調管理するしかない。自分がウイルスを持ち込んで患者に感染させたらと思うと不安でたまらない」 感染リスクを恐れて、家族や友人とも接触を控える生活が続く日々。そのうえ、「いつもなら同僚と愚痴を言って励まし合っていたが、病院の休憩室で話すことすら禁じられている」(複数の看護師)。 コロナ患者の対応に当たる医師や看護師の睡眠不足も深刻だ。複数の医療機関の職員の電話相談を受けている臨床心理士は、次のように現場の実情を明かす。 「医療者は自分が休むことが患者の命と関係すると考えてしまう。病棟の夢を見る、人工呼吸器のアラーム音が耳から離れないなど、睡眠に影響が出ている人が多い。本人が自覚をしていなくても、眠れているかと質問すると、平均して2~3時間しか眠れていない」』、「職員はコロナの検査をしてもらえないため、熱を測って自分で体調管理するしかない。自分がウイルスを持ち込んで患者に感染させたらと思うと不安でたまらない」、病院は「クラスター」発生を予防するためにも、自らの職員にも検査を徹底すべきだ。
・『根底にある長時間労働とパワハラ  コロナ禍以前から、医療現場は過酷な労働環境が問題視されてきた。 厚労省の「医師の働き方改革の推進に関する検討会」では、一部医師の時間外労働時間の上限を「年間1860時間」(月平均155時間相当)まで認める方針をおおむね固めている。これは、過労死ラインとされる「月80時間」の約2倍。同検討会の資料によると、約1割の医師が年間1860 時間を超えて働いている。 コロナ対応で現場が逼迫する中、経験の浅い医師にも負荷が押し寄せている。 千葉県の民間病院で働く研修医は、「若手医師の当直回数が増えている」と吐露する。「地方ではもともと医師が足りず、ベテラン医師には当直を頼みにくいため、若手に集中しがち」という。通常の研修がおろそかにされ、コロナ診療に回される研修医も多い。 研修医や、専門医の取得を目指す"専攻医"は、「上司に逆らえないうえ、自分を責めやすい」と、勤務医らで作る全国医師ユニオンの代表を務める植山直人医師は話す。 「メンタルを病んでつぶれた医師はたくさんいる。根底にあるのは、当たり前のように横行する長時間労働と、それとセットのパワハラだ。上司に長時間労働の改善を求められないし、言ったとしても相手にされない。メンタル不調に陥ると、本人の闘う気力も失われる」(植山医師) 長時間労働を背景とした医師のメンタル不調は、数字にも表れている。筑波大学医学医療系・客員准教授の石川雅俊医師が行った専攻医への調査(調査期間は2020年10月10日~23日)では、中等度の抗うつ症状があった医師は18.6%。勤務時間が長いほど、その割合が高くなることもわかった』、「厚労省の「医師の働き方改革の推進に関する検討会」では、一部医師の時間外労働時間の上限を「年間1860時間」(月平均155時間相当)まで認める方針をおおむね固めている。これは、過労死ラインとされる「月80時間」の約2倍。同検討会の資料によると、約1割の医師が年間1860 時間を超えて働いている」、「医師」の「長時間労働」はやはり酷いようだ。「メンタルを病んでつぶれた医師はたくさんいる。根底にあるのは、当たり前のように横行する長時間労働と、それとセットのパワハラだ」、「中等度の抗うつ症状があった医師は18.6%。勤務時間が長いほど、その割合が高くなることもわかった」、なるほど。 
・『"弱さを見せない"特殊な文化  過度なストレスがかかりやすい職場であるにもかかわらず、従来から医療者の心の問題は放置されやすい傾向が強い。 横浜労災病院の勤労者メンタルヘルスセンターでは、業種を問わず労働者の心の悩みのメール相談を受けている。2020年のメール相談件数は、前年の約1.6倍の1万5223件。メール相談を開始した2000年以降で過去最多となった。 だが、メール相談に応じる山本晴義センター長は、「最もストレスを感じているはずの医療者からの相談は、思っているよりも少なかった」と言う。 「医療者には『弱さを見せない』という特有の文化がある。そのため、身体に症状が出るまで我慢してしまうことが多い」。医療事故問題に詳しい早稲田大学法学学術院の和田仁孝教授は、こう分析する。 和田教授が理事を務める一般社団法人「Heals」では、医療事故を体験した医療者からの相談を受ける活動をしている。設立した理由は、医療者が事故を起こしたときに安心して相談できる場が少なかったからだ。 「医療機関は、組織の中に専門知識を持つ医師や看護師がいるため、職員へのケアは誰でもできると思われがちだ。そのため医療者への精神的なケアは、エアポケット(空白)になりやすかった」(和田教授)』、「医療者には『弱さを見せない』という特有の文化がある。そのため、身体に症状が出るまで我慢してしまうことが多い」、周囲はそれを見込んで対応する必要がありそうだ。
・『院内の窓口には「相談できない」  一定の職員数を超える医療機関は通常、職員向けの専用相談窓口を設置している。だが、その利用率は低い。自治労の調査によると、勤務している施設内にメンタルヘルス相談窓口があると答えた職員は41%だった。ただし、相談したことがあるという職員は6.5%にとどまる。 利用されにくい事情として、「相談窓口があるが、元看護部長がやっているので組織内の不満を言えない」「相談しても組織が改善されない」(複数の医療者)といった声が上がる。 前出の病院職員の電話相談を受ける臨床心理士も、「元看護部長が相談に乗っているケースは多い。経験があるだけに、『もう少しがんばってみて』と、あと一歩無理をさせてしまう」と指摘する。 「Heals」では現在、医療従事者らを対象にコロナに関する電話相談も受けている。相談内容で目立つのが、組織内部での葛藤だ。「感染リスクの高い仕事ばかりやらされる」といった不公平感や、管理職の指示などに対する不満を持つ職員からの相談が多いという。 特殊な職場環境の下、最前線でコロナ対応に当たる医療従事者のメンタルの悪化は表面化しにくい。それゆえに深刻だ。彼らの自助努力を求める体制はすでに限界を迎えている』、「勤務している施設内にメンタルヘルス相談窓口があると答えた職員は41%だった。ただし、相談したことがあるという職員は6.5%にとどまる」、やはり職場では相談し難いケースもあるだろうから、外部に設ける必要があるのだろう。

第三に、この続き、5月2日付け東洋経済Plus「クラスター施設では行政の支援が待ったなし 暗中模索の医療機関、コロナで不足する「職員ケア」」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/26880
・『コロナ禍で医療従事者や自治体職員の心の問題が顕在化している。患者や住民を「支える立場」にある人たちへの支援が急務だ。 長期化する新型コロナウイルス感染拡大への対応に追われ、うつ症状や不眠など、メンタルの悪化に苦しむ医療従事者が増えている。 医師や看護師が多数在籍する医療機関では、職員のメンタルヘルスの相談対応も、外部の専門家に任せず組織内の人間でまかなうことが多い。そのため院内に相談窓口があったところで、「(同僚や上司に)組織内部の不満を言えない」(複数の医療従事者)といった理由から、広くは利用されていないのが実態だ。 「自分たちが言ったことが組織に反映されると思われなければ、職員に面談の意味も理解されない。個別の励ましや労いの言葉より、拾い上げた声を組織づくりに生かす方が、ずっと大きな心理的サポートになる」 こう話すのは、日本赤十字社医療センター(渋谷区)・メンタルヘルス科の臨床心理士、秋山恵子さんだ。同センターではコロナの感染拡大が本格化した2020年4月、院内に職員支援の専門チーム「スタッフサポートチーム」を作り、職員のメンタルケアを開始した』、なるほど。
・『メンバーが各部署に出向く  日赤医療センターには、災害時に被災者への心理的支援などに当たる職員が「こころのケア要員」として在籍している。こうしたメンバーが中心となり、総勢31人で全職員のメンタルケアに取り組む。 職員へのメンタル支援に必要なのは、ただ話を聞くだけでなく、相談内容を組織改革などへつなげることだ。同センターの支援チームでは、これまでに延べ209人の個人面談を実施。相談者から許可を得られた意見は、各部署の上司や管理職にも報告する。 他方で前述のように、医療機関では相談窓口があっても、利用されないケースも多い。 窓口の利用を促すため、チームではまず、職員自身がストレスに気づくように啓発ポスターを院内に掲示。さらに支援を必要とする職員の声を拾い上げるため、メンバーが定期的に各部署に出向いている。職員との雑談の中で困り事はないかなどを聞き、助言を行うほか、必要に応じて個人面談を促す。 埼玉医科大学病院(埼玉県毛呂山町)も、2020年4月から精神科のメンバーが中心となり、職員からの相談を受ける「こころのケアチーム」を発足。チームの中核を担う神経精神科・心療内科の松岡孝裕医長は、「コロナ病棟で働く職員だけでなく、間接的に関わる職員のストレスも大きい」と話す。 「相談依頼は直接コロナ対応に関わる職員に加え、周辺の職員からも少なからず届く。救急外来の職員やレントゲンを撮影する検査技師、食事を運搬する職員、窓口職員など、全職種への支援が必要だ」(松岡医師) ただ、現状こうした専門チームを作れる病院は、院内に精神的ケアの専門知識を有する人材を豊富に抱える病院に限られている』、「総勢31人で全職員のメンタルケアに取り組む。 職員へのメンタル支援に必要なのは、ただ話を聞くだけでなく、相談内容を組織改革などへつなげることだ。同センターの支援チームでは、これまでに延べ209人の個人面談を実施。相談者から許可を得られた意見は、各部署の上司や管理職にも報告する」、「支援を必要とする職員の声を拾い上げるため、メンバーが定期的に各部署に出向いている。職員との雑談の中で困り事はないかなどを聞き、助言を行うほか、必要に応じて個人面談を促す」、さすが「日赤医療センター」だけあって、取り組みは本格的だ。
・『電話相談を外部に委託  コロナ禍での職員のケアを強化するため、相談窓口の運営を組織内ではなく、外部機関に委託する事例もある。 大手民間病院グループの徳洲会は2020年4月から、職員向けにメンタルヘルス相談の電話窓口を設置している。相談窓口は、企業の従業員のメンタル支援を受託する民間会社のスノーム(名古屋市)が担う。同社は医療従事者向けの相談実績もある。相談内容は相談者の許可が得られた場合にのみ、病院側にフィードバックされる。 窓口導入のきっかけは、同グループの葉山ハートセンター(神奈川県葉山町)でダイヤモンド・プリンセス号の感染患者を受け入れたことだった。 「同調圧力によって、コロナ患者への対応に不安があっても言い出せない職員がいるのではないか」。 そう考えた同グループの医療安全・質管理部の野口幸洋課長補佐は、臨時的な電話相談窓口を設置し、職員へ周知した。「まずは病院側が、職員をフォローしているというメッセージを明確に示すことが重要だった」(野口氏)。 職員支援の必要性を即座に考えた背景には、災害支援での経験があった。 徳洲会では、災害時に医師や看護師で作るチームを被災地に派遣する仕組みがある。被災地に派遣された職員には、派遣直後と3カ月後にメンタルチェックを必ず行う。実際、水害支援に入った職員が被災地を思い出し、フラッシュバックを起こしたケースもあったという』、「徳洲会」の「葉山ハートセンター・・・でダイヤモンド・プリンセス号の感染患者を受け入れたことだった。 「同調圧力によって、コロナ患者への対応に不安があっても言い出せない職員がいるのではないか」。 そう考えた同グループの医療安全・質管理部の野口幸洋課長補佐は、臨時的な電話相談窓口を設置し、職員へ周知した。「まずは病院側が、職員をフォローしているというメッセージを明確に示すことが重要だった」(野口氏)。 職員支援の必要性を即座に考えた背景には、災害支援での経験があった」、早手回しに「職員支援」の体制を整えたというのはさすがだ。
・『休職者も出るクラスター施設  一方、医療機関の中でも突出して職員のメンタル支援の必要性が高まっているのが、クラスター(集団感染)が発生した施設だ。 厚生労働省によると、全国でクラスターが発生した医療機関と福祉施設は4648施設に上る(4月26日時点)。ひとたびクラスターが発生すると、別の業務に当たっていた職員も突然、コロナ対応の最前線に立たされる。職員が次々に陽性になると、残った職員に業務の負荷が集中する。 「クラスターが発生した施設では職員のメンタルケアが後回しになり、休職者が出るほど(メンタルの悪化が)深刻になる」 沖縄県立総合精神保健福祉センターの宮川治所長は、こう警鐘を鳴らす。沖縄県では2020年8月から同センターが中心となり、クラスターが発生した医療・介護施設の職員に対してメンタル支援を行ってきた。 同県では、コロナ対策本部の中に災害派遣精神医療チーム(DPAT)の調整本部を設置。DPATとは、災害時に被災者のメンタルケアや精神科病院の運営支援を行う専門チーム。地域の医療機関などから集められた医師や看護師で構成される。宮川所長が調整役となり、DPATや沖縄県公認心理師協会が、クラスター発生施設の職員のストレスチェックやカウンセリングに当たっている。 県のコロナ対策本部の中に、職員支援の調整機能を位置づけた意味は大きい。支援の存在が医療機関や介護施設側に周知され、クラスター発生の初期段階からのケアが可能となった。2021年3月末までに沖縄県では16施設に支援を実施した。 クラスター発生時には、経営存続を考える管理者側と過酷な環境で働く現場職員の間に溝が生まれやすい。「管理者からの情報不足により、職員の不満はたまる。職員支援では、両者のコミュニケーションの潤滑油となり、両者間の溝を埋める役割になる」(宮川所長)』、「沖縄県」では「コロナ対策本部の中に災害派遣精神医療チーム(DPAT)の調整本部を設置。DPATとは、災害時に被災者のメンタルケアや精神科病院の運営支援を行う専門チーム」、「DPATや沖縄県公認心理師協会が、クラスター発生施設の職員のストレスチェックやカウンセリングに当たっている」、「クラスター発生時には、経営存続を考える管理者側と過酷な環境で働く現場職員の間に溝が生まれやすい。「管理者」と「職員」の「コミュニケーションの潤滑油となり、両者間の溝を埋める役割になる」、なかなかいい仕組みだ。
・『自治体で取り組みに温度差  もっともクラスター発生施設の職員への積極的なメンタル支援は、一部の自治体に限られる。 累計のコロナ陽性者数が最も多い東京都では、沖縄県のようなDPATの仕組みはまだ活用されていない。都内にある3つの精神保健福祉センターでは、クラスター発生施設から要請を受けた場合に職員支援を行う仕組みがある。各センターへの取材によると、東京都立精神保健センター(台東区)では、6施設への支援を実施したが、他の2センターでの実施はなかった。 2021年3月末、厚労省は「新型コロナウイルス感染症感染制御等における体制整備等に係る DPAT の活用等について」という依頼を各自治体に通知し、DPATの活用を促した。ただ、同省の地域医療計画課の担当者は「DPATの派遣状況は把握していない」と言う。 国はコロナに対応できる医療機関の拡充を進めている。だが、代わりの効かない医療者の多くがメンタル不調に陥れば、病院の存続自体が危うくなる。医療機関独自の取り組みだけでなく、行政主導で実効力のある職員支援の拡充が急がれる』、「DPATの活用を促した」のに、「同省の地域医療計画課の担当者は「DPATの派遣状況は把握していない」、無責任だ。把握すべきだろう。「医療機関独自の取り組みだけでなく、行政主導で実効力のある職員支援の拡充が急がれる」、同感である。
なお、この他のパンデミックについては、後日、改めて取上げるつもりである。
タグ:パンデミック (経済社会的視点) (その15)支える側の実態4題(支援現場の医師が訴える医療者の窮状 クラスター施設職員「2~3割がうつ症状」の悲惨、医療従事者のメンタル悪化が「放置」される複雑背景 うつに不眠、「心の異変」相次ぐ医療現場の深刻実態、クラスター施設では行政の支援が待ったなし 暗中模索の医療機関、コロナで不足する「職員ケア」) 東洋経済Plus 「支援現場の医師が訴える医療者の窮状 クラスター施設職員「2~3割がうつ症状」の悲惨」 「医療従事者のうつ症状が強くなる原因は、過重労働による疲弊と、強く自分を責める感情にある」、確かに大変そうだ。 「クラスターが発生した施設の職員に対してストレスチェックを行うと、職員の2~3割に強いうつ症状が出ている」、「「連合福島」と福島県立医科大が共同で行った調査・・・では、回答した連合の組合員の50.4%に強いうつ・不安症状が認められた。コロナ禍の前年(2019年)の福島県民のデータ(31.5%)と比べても著しく高かった」、「クラスターが発生すると、時にスタッフの怒りが噴出して、病院内の管理体制では組織のコントロールができなくなることがある」、やはり「クラスター」は可能な限り抑え込む必要がありそうだ。 「クラスター発生施設に(支援チームを)派遣する」、「訪問が難しい場合でもオンラインを使って支援」、その通りだ。 「医療従事者のメンタル悪化が「放置」される複雑背景 うつに不眠、「心の異変」相次ぐ医療現場の深刻実態」 「理学療法士の男性は・・・うつ症状が現れ、通院する」、「家族への感染リスクを懸念し、ホテルで寝泊まりする日々が続いていた」、という厳しい勤務環境からは同情する他ない 「職員はコロナの検査をしてもらえないため、熱を測って自分で体調管理するしかない。自分がウイルスを持ち込んで患者に感染させたらと思うと不安でたまらない」、病院は「クラスター」発生を予防するためにも、自らの職員にも検査を徹底すべきだ。 「厚労省の「医師の働き方改革の推進に関する検討会」では、一部医師の時間外労働時間の上限を「年間1860時間」(月平均155時間相当)まで認める方針をおおむね固めている。これは、過労死ラインとされる「月80時間」の約2倍。同検討会の資料によると、約1割の医師が年間1860 時間を超えて働いている」、「医師」の「長時間労働」はやはり酷いようだ。「メンタルを病んでつぶれた医師はたくさんいる。根底にあるのは、当たり前のように横行する長時間労働と、それとセットのパワハラだ」、「中等度の抗うつ症状があった医師は18. 「医療者には『弱さを見せない』という特有の文化がある。そのため、身体に症状が出るまで我慢してしまうことが多い」、周囲はそれを見込んで対応する必要がありそうだ。 「勤務している施設内にメンタルヘルス相談窓口があると答えた職員は41%だった。ただし、相談したことがあるという職員は6.5%にとどまる」、やはり職場では相談し難いケースもあるだろうから、外部に設ける必要があるのだろう。 「クラスター施設では行政の支援が待ったなし 暗中模索の医療機関、コロナで不足する「職員ケア」」 「総勢31人で全職員のメンタルケアに取り組む。 職員へのメンタル支援に必要なのは、ただ話を聞くだけでなく、相談内容を組織改革などへつなげることだ。同センターの支援チームでは、これまでに延べ209人の個人面談を実施。相談者から許可を得られた意見は、各部署の上司や管理職にも報告する」、「支援を必要とする職員の声を拾い上げるため、メンバーが定期的に各部署に出向いている。職員との雑談の中で困り事はないかなどを聞き、助言を行うほか、必要に応じて個人面談を促す」、さすが「日赤医療センター」だけあって、取り組みは本格的 「徳洲会」の「葉山ハートセンター・・・でダイヤモンド・プリンセス号の感染患者を受け入れたことだった。 「同調圧力によって、コロナ患者への対応に不安があっても言い出せない職員がいるのではないか」。 そう考えた同グループの医療安全・質管理部の野口幸洋課長補佐は、臨時的な電話相談窓口を設置し、職員へ周知した。「まずは病院側が、職員をフォローしているというメッセージを明確に示すことが重要だった」(野口氏)。 職員支援の必要性を即座に考えた背景には、災害支援での経験があった」、早手回しに「職員支援」の体制を整えたと 「沖縄県」では「コロナ対策本部の中に災害派遣精神医療チーム(DPAT)の調整本部を設置。DPATとは、災害時に被災者のメンタルケアや精神科病院の運営支援を行う専門チーム」、「DPATや沖縄県公認心理師協会が、クラスター発生施設の職員のストレスチェックやカウンセリングに当たっている」、「クラスター発生時には、経営存続を考える管理者側と過酷な環境で働く現場職員の間に溝が生まれやすい。「管理者」と「職員」の「コミュニケーションの潤滑油となり、両者間の溝を埋める役割になる」、なかなかいい仕組みだ 「DPATの活用を促した」のに、「同省の地域医療計画課の担当者は「DPATの派遣状況は把握していない」、無責任だ。把握すべきだろう。「医療機関独自の取り組みだけでなく、行政主導で実効力のある職員支援の拡充が急がれる」、同感である。 なお、この他のパンデミックについては、後日、改めて取上げるつもりである。
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パンデミック(医学的視点)(その19)(PCR宗教戦争がコロナ第3波で再び 「国民全員検査」で本当に感染拡大は止まるのか、イベルメクチンに超期待する人が知らない真実 コロナ治療薬?「過熱報道と臨床現場の温度差」、政府が決して言わない、進化生物学的に見て危険な「日本のワクチン接種計画」の"あるリスク" 変異とワクチンのイタチごっこ…) [パンデミック]

パンデミック(医学的視点)については、1月28日に取上げた。今日は、(その19)(PCR宗教戦争がコロナ第3波で再び 「国民全員検査」で本当に感染拡大は止まるのか、イベルメクチンに超期待する人が知らない真実 コロナ治療薬?「過熱報道と臨床現場の温度差」、政府が決して言わない、進化生物学的に見て危険な「日本のワクチン接種計画」の"あるリスク" 変異とワクチンのイタチごっこ…)である。

先ずは、2月15日付けダイヤモンド・オンライン「PCR宗教戦争がコロナ第3波で再び、「国民全員検査」で本当に感染拡大は止まるのか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/262508
・『止まらぬコロナ感染拡大に2度目の緊急事態宣言を余儀なくされた日本。有症状者や濃厚接触者(感染対策なしに、検査陽性者と接触した者)に限って検査を行ってきた政府の戦略に、再び批判の目が向けられている。特集『免疫力の嘘』(全13回)の#1では、第1波からくすぶってきた「国民全員PCR検査」で感染拡大を食い止めることはできるのかを検証する』、私は「国民全員に検査」との立場をとってきたが、その妥当性が批判されているようだ。
・『無症状者が多く感染者の可視化が困難 全員検査で隔離すれば「ゼロコロナ」にできる?  新型コロナウイルス第3波を迎え、昨年の第1波以来、「PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)論争」が再び勃発している。「国民全員に検査」VS「有症状、濃厚接触者など必要な人を対象とすべき」といった構図である。 日本がコロナ対策としてクラスター(感染者集団)追跡に検査のリソースを絞る方針を採ったこと、そして第1波では、症状があったり濃厚接触者であったりしても、大都市圏を中心に検査を受けるまでに数日かかってしまう事例が続出したことで不安が広がり、それがメディアやSNSで盛んに取り上げられるようになったからだ。 確かに、国民全員にPCR検査をして陽性になった人を他人に感染させなくなるまで隔離すれば、他の人はこれまでと同じ生活を送れるし、隔離施設の中でコロナウイルスも撲滅できて一石二鳥のように思える。 しかも、感染すると症状が現れる確率の高いインフルエンザと異なり、コロナは無症状の感染者が多く、コミュニティーの中で感染者を可視化しにくい厄介な性質を持っている。だから無症状者も含め、広く検査をしようというのは単純明快で分かりやすいロジックだ。 「簡単に受けられない」となれば「何としても受けたい」と思うのが人情。検査を受けたいというニーズともマッチして、世論も一時期は「国民全員PCR検査」に大きく傾いた。とはいえ、その後は行政の検査のキャパシティーも充足し始め、PCR論争は下火となっていった。 そこへ、第3波。各地で連日過去最高の新規感染者数を更新する事態となり、再び検査のリソースが逼迫している。ここで「全員にPCR検査をすれば感染拡大を防げた」という論調が息を吹き返してきた。しかし東京大学公共政策大学院の鎌江伊三夫特任教授は「国民全員PCR論は、大規模検査の“わな”を見落としている」と指摘する。そのわなとは何だろうか』、興味深そうだ。
・『まずは、この数字を見てほしい。下のような三つの集団があるとしよう。 
(1)1000人中500人が真の感染者(有病率50%)
(2)1000人中100人が真の感染者(有病率10%)
(3)1000人中10人が真の感染者(有病率1%)
実は、この集団に対して、PCR検査を行うと、このようなバラツキのある結果となる。
(1)陽性適中率=98.59%、陰性適中率=76.74%
(2)陽性適中率=88.61%、陰性適中率=96.74%
(3)陽性適中率=41.42%、陰性適中率=99.69%
つまり、(3)では「本当は陽性ではないのに陽性の結果となる人が60%近くもいる」のだ。なぜ、このような事態になるのか、説明していこう。 大前提として、100%正しい結果を出せる、つまりは検査結果と実際の感染が100%一致する検査は、現状この世に存在しない。 感染してからの日数で検出できる体内の細菌やウイルス量が異なっていたり、検査の標的とは異なる物質に試薬などが反応してしまう場合があるためである。「技術的な問題なら改善すればいい」といっても仕方がない。 100%の正しい結果を出せない、ということは「陽性ではないのに陽性という結果になる偽陽性」と「陰性ではないのに陰性という結果になる偽陰性」が生じるということでもある。今、ちまたに溢れているPCR検査の論争は、この「偽陽性&偽陰性」が起こす「人道的観点&経済性」の問題を無視したものがほとんどだ。 検査能力を表す指標に「感度」「特異度」の二つがある。感度は、全員が特定の病気にかかっている集団を検査した場合、どのくらいの割合を陽性と判定できるかという能力を表したものである。特異度は、逆に全員が特定の病気にかかっていない集団に検査をした場合、どのくらいの割合を正しく陰性と判定できるか、だ。 コロナのPCR検査の能力はまだはっきりとした結論は出ていないが、各種論文によれば感度70%、特異度99%というのがある程度のコンセンサスになっている。) その条件を当てはめたものが、前述の三つの集団への検査結果だ。下図の式で求めることができる。 図表:偽陽性、偽陰性、陽性的中率、陰性的中率の求め方(リンク先参照) 感度70%、特異度99%のコロナPCR検査で、(1)1000人中500人が真の感染者(有病率50%)(2)1000人中100人が真の感染者(有病率10%)(3)1000人中10人が真の感染者(有病率1%)、それぞれの集団に検査をした場合の陽性適中率と陰性適中率を求めると(小数第3位以下四捨五入)
(1)陽性適中率=98.59%、陰性適中率=76.74% 
(2)陽性適中率=88.61%、陰性適中率=96.74% 
(3)陽性適中率=41.42%、陰性適中率=99.69%。 
となる。陽性適中率は検査で陽性と判定された人のうち本当に感染していた人の割合、「陰性適中率」はその逆である。繰り返すが、(3)では陽性の結果でも、陽性ではなかった人がおよそ58.58%で、人数で言えばおよそ10人(9.9人)も含まれるのだ』、確かに(3)の「陽性適中率」の低さは問題だ。
・『大規模検査は逆に感染拡大のリスク大 多くの“ぬれぎぬ”者を出す人道的問題もはらむ  つまり、検査を行う人の中にどのくらいの割合で真の感染者がいるか(有病率)によって、同じ検査でもその値が変わってしまうわけだが、ここでPCR論争における両派が、検査のターゲットにすべきだと主張する集団を振り返ってみよう。 まず「有症状もしくは無症状なら濃厚接触者など必要な人を対象とすべき」派は、感染している恐れがある、つまり有病率がある程度高いであろう層をターゲットに絞って検査をすべきだと解釈できる。 一方「国民全員PCR」派が想定するターゲットは、有症状や濃厚接触者の集団と比較すると、はるかに低い有病率であることは容易に想像できる。日本で最も感染がまん延している東京都でも、12月に実施されたコロナの抗体検査(陽性なら過去の感染を意味する)で陽性は0.9%だった。 つまり、先ほど求めた数字なら(3)に近いわけで、陽性適中率は有病率が低いほど下がり、陰性適中率は逆に上がる。実はこの数字から「国民全員PCR」派が主張する大規模検査の重大な欠陥をあぶり出すことができる。 まずは、陰性適中率。(3)の陰性適中率は99.69%だから、「本当は感染ありなのに陰性と判定された人(偽陰性)」は、わずか0.3%ほどで、問題がないように思える。しかし、なにしろ「国民全員PCR」なのである。感染拡大を防ぐ上では、陰性適中“率”よりも絶対数の方がはるかに重要になるのだ。 ここでは計算式は省くが、(3)の条件(1%の有病率)では偽陰性は200人の集団なら1人出るか出ないかだ。ところが、100万人が対象では、偽陰性が3000人程度も出てしまう計算になる。 (3)は三つの条件の中で、最も偽陰性率が低いのに、その結果なわけだから、有病率の高低にかかわらず、まず大規模検査自体が本当は感染しているのに“陰性”のお墨付きを得た人を大量に街に放出するリスクが非常に高いのだ。その上、「検査で陰性なら」と、マスクなどの感染対策をしないで他人と接する可能性も十分考えられる。 現在の検査の能力では、大規模検査が逆に感染を拡大させてしまう恐れがあることは、PCR検査を論じる上で、まず知っておく必要がある』、「大規模検査自体が本当は感染しているのに“陰性”のお墨付きを得た人を大量に街に放出するリスクが非常に高いのだ。その上、「検査で陰性なら」と、マスクなどの感染対策をしないで他人と接する可能性も十分考えられる」、確かにその通りだ。
・『もう一つ、感染拡大の観点以外でも「国民全員PCR」派が見落としている大規模検査の重大な欠陥がある。 陽性適中率は、検査対象集団の有病率が低くなるほど急激に下がっていくことを先ほど示したが、これは、有病率の低い集団に大規模検査を行った場合、本当は感染していないのに陽性と判定される(偽陽性)、つまりぬれぎぬを着せてしまう人を大量に出すことを意味するのだ。 例えばある集団の中で陽性者が出て、濃厚接触者50人に検査をするとしよう。この場合の有病率を10%と仮定(日本におけるPCR検査の陽性率を参考に設定した)すると、偽陽性者は1人出るか出ないか。一方で、1%の有病率である100万人を対象とした場合、偽陽性者は9900人となる。 国民全員PCR派は、偽陽性者も見越して複数回の検査を行うとしているが、1回目の検査でぬれぎぬを着せられた9900人は次の検査までいったん隔離せざるを得ない。彼らは、「全員が検査を受けることで、国民の不安が解消される」と主張しているが、これだけ多くの偽陽性者が隔離対象となることについて、人道的観点とコストの面からどのように考えているのだろうか。 数百万、数千万人に何度も検査したり隔離のために生じる莫大なコストを考えれば実現性にも乏しい』、「1回目の検査でぬれぎぬを着せられた9900人は次の検査までいったん隔離せざるを得ない」、その通りだ。
・『コストに対する解決策としては、一人一人の検体を個別に検査する従来の方式ではなく、複数人の検体を交ぜて検査し、陽性となれば個別に検査をするという「プール検査」という方式も登場してはいる。 これなら大規模検査も可能だと、国民全員PCR派は言うが、鎌江特任教授によれば、このプール検査は、有病率が低くなるにつれ、陽性適中率が個別検査よりさらに低くなり、偽陽性者もより多く出てしまう(下図)。 図表:PCR検査能力の方式別の比較と有病率による変化(リンク先参照) 「本来、PCR検査は、病院など感染リスクが高く有病率も高いと推定される環境で、治療を前提とした診断の確定を目的として行われるべきもの。さらに集団に行うのであれば、陰性適中率の低さを改善するために複数回の繰り返し検査が必要となる」(鎌江特任教授)。いくらコストが抑えられるといっても、検査の正確性が格段に落ちるようでは費用対効果の面でも疑問は残る。) 最後に、海外の事例についても触れておこう。というのも、PCR検査に関する議論では外国では「検査が多数行われている」と引き合いに出す論者が多いからだ。しかし、実際に、各国の人口当たりのPCR検査数と感染者数に相関は全く見られない。(下図) 最後に、海外の事例についても触れておこう。というのも、PCR検査に関する議論では外国では「検査が多数行われている」と引き合いに出す論者が多いからだ。しかし、実際に、各国の人口当たりのPCR検査数と感染者数に相関は全く見られない。(下図) 図表:各国・地域人口当たりのコロナ検査数と感染者数の比較(リンク先参照)  しかも、PCR検査数上位20の国の中で、感染者数上位20にもランクインしている国が七つもあることから、検査数の多さが感染拡大予防に寄与しないことは明白なのである。 従って、大規模検査は感染拡大にも寄与しないし、費用対効果も疑問と言わざるを得ない。 大規模検査を主張する有識者には医師も多いが、「医師など医療関係者には、検査の科学的根拠に基づく論議を望みたい」(鎌江特任教授)。 中には、PCR検査をマネタイズしたいという思惑が見え隠れする医師もいる。もし、メディアで大規模検査の有用性を主張する医師がいれば、周囲でPCR検査のビジネスをやっていないか確認してみるとよいだろう』、「PCR検査をマネタイズしたいという思惑が見え隠れする医師もいる」、とんでもない話だ。
・『日本人にとって検査は好きなときに受けられるもの 自費PCR検査産業が生まれるのは必然だった  日本人にとって「検査」は身近だ。病院や診療所を受診して疑わしき症状があれば、医者も「では検査しましょう」と気軽に勧めてくる。「希望すれば検査を受けられる」。それがこれまでの日本の当たり前だった。それがコロナで症状が出ているのに検査を受けられない事態になれば、パニックになるのは必然だ。 人々の不安につけ込んだ新たな市場が生まれるのは世の常である。都市部では激安PCR検査センターが雨後のたけのこのように現れ、薬局でキットも販売されるようになっている。そこに群がる者を生み出したのは、不安をあおったメディアの罪も大きいが、国が検査戦略の科学的根拠について分かりやすい説明をしなかったという誹りも免れない。 自費PCR検査産業の誕生は、このようなパンデミック(世界的大流行)において、行政と市民のコミュ二ケーションエラーが招いた産物であるということは、教訓として残していかなければならないだろう。 鎌江伊三夫(かまえ・いさお)/東京大学公共政策大学院特任教授、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。1977年京都大学工学部、85年神戸大学医学部卒業。95年米ハーバード大学公衆衛生学博士取得。93年より島根医科大学、神戸大学、慶應義塾大学大学院、明治大学などで教鞭を執り、現職。』、「不安をあおったメディアの罪も大きいが、国が検査戦略の科学的根拠について分かりやすい説明をしなかったという誹りも免れない」、確かに国の説明責任を果たしていないのも問題だ、

次に、3月13日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストの岩澤 倫彦氏による「イベルメクチンに超期待する人が知らない真実 コロナ治療薬?「過熱報道と臨床現場の温度差」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/416242
・『首都圏の緊急事態宣言は3月21日まで再延長された。新型コロナウイルスの新規感染者数は、大きく減少しているが、まだ次のステップに進む道筋は見えない。 こうした中、「イベルメクチン」という薬が注目を集めている。海外で新型コロナの予防や治療に高い効果を示したとして、「奇跡の薬」「コロナ特効薬」と一部メディアが称賛。早期承認を求める声が高まり、個人輸入でイベルメクチンを服用する人も急増しているようだ。 盛り上がる「イベルメクチン現象」に対して、新型コロナの治療にあたる医師や医薬品の専門家は危機感を募らせている。それはいったいなぜか? コロナ治療薬をめぐって、錯綜する情報と診療現場の現実を追った──』、興味深そうだ。
・『コロナ軽症者の孤独と死の恐怖  「PCR検査の結果は陽性でした。すぐ保健所から連絡がありますので、指示に従ってください」 新型コロナウイルスの感染は電話で告げられた。翌日、筆者は民間の救急車で療養施設のビジネスホテルに運ばれ、隔離生活が始まった。 「コロナはただの風邪」という声をよく聞く。 感染しても大半が無症状で済むからだろう。しかし、私は違っていた。 激しい頭痛と、焼けるような咽頭痛。せきの発作が起きるたび、肺の内側を針で刺されたような痛みが走る。熟睡できない日々が続き、体力と気力が奪われていく。重症化する予感が頭から離れない。 オンライン診療で(といっても電話)医師に症状を伝えると、処方薬がホテルに届いた。それは葛根湯やせき止めなどの一般的な風邪の治療薬。世界的な脅威のコロナに感染しても、そんなものかと唖然とした。 自宅やホテル療養になると、それなりに症状があっても医師の診察は受けられない。朝夕2回、体温と酸素飽和度を看護師に電話で申告するだけ。ほぼ、医療からも隔離された状態になる。 呼吸が苦しいなどの異常を感じたときは、「コロナ119番」に自分で連絡して、助けを呼ぶように保健所から指示された。でも、本当に苦しいときに、電話などできないだろう。この時期、自宅やホテル療養中の人が死亡するケースが続出したが、誰がそうなっても不思議ではない。私は1週間を過ぎると症状が一気に鎮まって、9日間の療養生活で退所した』、「処方薬がホテルに届いた。それは葛根湯やせき止めなどの一般的な風邪の治療薬」、当初は軽症者への治療法は確立してなかったので、そんなものなのかも知れない。
・『埼玉医科大学総合医療センターで、新型コロナ対応の指揮をとる感染症専門医の岡秀昭教授。当初、世界中が手探りだった新型コロナの治療が、この1年間で劇的に変化したと話す。 「新型コロナの肺炎は、ウイルスを排除する免疫が暴走してしまうサイトカインストームによって、肺に炎症を起こし、呼吸が苦しくなることがわかってきました。そこでデキサメタゾン(ステロイド)を入れて炎症を鎮める。炎症が起きると血液が凝固してしまうので、ヘパリンという血液をサラサラにする薬で凝固を食い止める。酸素吸入が必要な患者には、これが最も効果的でスタンダードな治療法になっています」 「当初、理論的にはステロイドは使わないほうがいい、と言われていました。ステロイドには炎症を鎮める効果だけでなく、免疫をつかさどる白血球の動きを止めてしまう働きがあるからです。かえってコロナウイルスが元気になってしまうだろうと考えられていたんですね」 「ステロイドの治療がスタンダードになったのは、イギリスで多くの患者を対象にした、質の高いRCT(Randomized Controlled Trial)と呼ばれる『ランダム化比較試験』で、死亡率を下げることが証明されたからです」 「注意したいのは、軽症患者にステロイドを使うと免疫が下がり、かえって感染症を悪化させて逆効果になる可能性です。それにステロイドの副作用で全身状態を悪化させてしまう場合がありますので、ステロイドは軽症者に使いません」 岡教授によると、残された課題は軽症者を重症化させない薬だという。コロナの場合、すでにある薬を使う「リポジショニング」が圧倒的に多いが、前評判の高い薬が臨床試験で否定されるケースが続いている』、「イギリスで多くの患者を対象にした、質の高いRCT」、日本で目先の治療に手一杯で、RCTなど行われてないのではなかろうか。
・『イベルメクチンも明確な有効性は証明されていない  「例えば、ヒドロキシクロロキンという、アメリカのトランプ前大統領が服用した抗マラリア薬は、臨床試験で有効性がないと判定されました。注目を集めたアビガンも有力な候補ですが、まだ有効性は証明されていません。 話題のイベルメクチンも質の高い大規模な臨床試験で有効性が証明されておらず、ガイドラインでも推奨されていません。未承認の薬なので、現場で患者を実際に診ている私たち医師は研究目的以外には処方していないのです」 一般社会に広まる情報と診療現場にはギャップがある、と話す岡教授。 だが最近になって一部メディアが「奇跡の薬」「コロナの特効薬」として、イベルメクチンを取り上げるようになっている。 1974年、北里研究所の室長だった大村智博士は、静岡県のゴルフ場の土壌から新種の放線菌を発見。これをアメリカ・メルク社との共同研究を経て誕生したのが、抗寄生虫薬・イベルメクチンである。 アフリカや中南米などに蔓延するオンコセルカ症は、失明に至る恐ろしい病だが、メルク社と北里研究所はイベルメクチンを無償で配布した。これによって中南米のオンコセルカ症は、根絶された。イベルメクチンによる寄生虫治療が評価され、大村博士は2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。 イベルメクチン(商品名:ストロメクトール)は、日本で寄生虫や疥癬(かいせん)の治療薬として承認されたが、新型コロナの治療薬としては未承認だ。 北里大学では、「COVID-19対策北里プロジェクト」を寄付金で立ち上げ、イベルメクチンの医師主導治験(臨床試験)は公的研究費で行われている。 同プロジェクトの司令塔を務める花木秀明教授は、イベルメクチンの新型コロナの予防と重症化を防ぐ、2つの効果が海外で報告されたと話す。 「南米のペルーでは、去年の新型コロナ第1波が来たとき、60歳以上の住民に、イベルメクチンを8つの州で予防薬として無料配布しました。すると新規感染者数と死亡者数が、一気に減少したのです(グラフの青色部分)。 第2波が来ても、下げ止まりしたままでした。 一方、首都のあるリマ州は、3?4カ月遅れでイベルメクチンを配布したので、新規感染者数と死亡者数も配布と同時に減少していることがわかります(グラフの赤色部分)」 (外部配信先ではグラフを全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください) 花木教授によると、イベルメクチンの治療効果に関しては、バングラデシュ、エジプト、トルコ、インドなど世界27カ国、86件の臨床試験(RCTを含む)や観察研究が行われているという。また、17件のRCTを対象にしたメタアナリシス(複数の論文を解析する研究)で、「初期治療で71%の改善」「後期治療で50%の改善」「予防投与で91%改善」という結果が出たという(「COVID-19 early treatment:real-time analysis of 319 studies」の研究結果。これは医学誌に掲載された論文ではない)』、なるほど。
・『第3波の影響で臨床試験は事実上ストップ  現在、北里大がイベルメクチンの第2相臨床試験を行いながら、コロナ治療としての承認を得ようとしている。だが第3波の影響で、遅れが出ていることを花木教授は明らかにした。 「患者が急増して、イベルメクチンの臨床試験は事実上ストップになりました。治療が優先だからです。東京都医師会や都立病院が臨床試験に参加してくれることになりましたが、空白期間を巻き返せるかわかりません。 イベルメクチンは30年以上、年間約3億人が服用して、大きな副作用もなく、価格も安い。海外で有効性が報告されているので、第2相臨床試験の結果をもって特別な承認も検討してもらいたい」 (筆者注:医薬品の承認は通常は第3相臨床試験まで必要)) イベルメクチンがコロナ治療薬として承認されるのを待ちきれず、「実力行使」に出る人たちも現れている。個人輸入で海外のイベルメクチンを購入する方法だ。ツイッターには、その体験談があふれている。 「わが家では家族そろって2回目を飲み終えました」 「ワンシートが12ミリグラムだと勘違いして2粒24ミリグラム飲んでしまいました。とくに体調に変化なし」 「早速1錠服用したが、とくに副作用もなし。いろいろみて医療従事者ではないからまた2週間後という独自判断」このように個人輸入した人たちの大半が医師や薬剤師に相談もせず、ネットの情報や経験者のアドバイスを参考にして服用している。また海外で行われている臨床試験の用法用量などを勝手に解釈し、ツイッターに掲載している個人輸入の業者もいる。このような服用は極めて危険だ。 イベルメクチンは臨床試験によって、プロトコール(治験実施計画)が違う。1回のみの服用もあれば、連続5日間服用の研究もある。1回の服用量もさまざま。しかも海外のイベルメクチンは1錠当たりの量が違うのだ。 「イベルメクチンは安全な薬」とされるが、それは承認された効能効果のために、定められた用法用量が前提である。新型コロナの予防や治療としての有効性と安全性が担保された用法用量は、まだ確立されていない。 加えて、海外の医薬品は偽物のリスクが避けられない。すでにメキシコでは、「偽イベルメクチン」が出回っていることが報道されている』、「第3波の影響で臨床試験は事実上ストップ」、やむを得ないとはいえ、残念だ。ただ、そうなると、「イベルメクチンがコロナ治療薬として承認されるのを待ちきれず、「実力行使」に出る」ケースが増えてしまうのも困ったことだ。
・『「過剰摂取すると死亡する可能性」とFDAが警告  一般の人が自己判断でイベルメクチンをコロナ治療薬として服用する問題は、世界各地でも起きている。 今月5日、アメリカの食品医薬品局(FDA)は、「新型コロナの予防や治療にイベルメクチンを服用すべきではない理由」とする注意喚起を行った。 「コロナ治療薬としてのイベルメクチンは、まだ初期研究の段階だ。未承認の段階で、イベルメクチンを服用するのは非常に危険である。『イベルメクチンを大量に服用しても大丈夫』という情報は間違い。イベルメクチンの過剰摂取は、嘔吐、下痢、アレルギー反応、めまい、発作、昏睡、そして死を引き起こす可能性がある」(※一部抜粋・要約)) 3月4日、信頼性の高いアメリカ医師会の医学誌『JAMA』に、コロンビアで行われたイベルメクチンの研究論文が公表された。新型コロナの軽症患者400人をランダムに2つのグループに分け、5日間連続でイベルメクチンを投与したグループ、プラセボ(偽薬)を投与したグループを比較したRCTである。この結果、コロナの症状が解消するまでの期間に2つのグループに統計的な有意差はなかった。 北里大・花木教授は、この研究について次のように指摘する。 「この論文は、悪化率がイベルメクチン投与群で2.2%(6人/275人)、プラセボ群で3.0%(6人/198人)でした。通常、感染者の20%が悪化するので、本治験は信じられないほど低い数字です。97%以上が自然治癒する母集団になります。この母集団ではイベルメクチンが効いても効かなくても有意差はつきません。 このRCTの本来の目的はイベルメクチンの悪化率抑制ですが、悪化する患者がいないので目的を達成できず、そのために目的を変更しています。通常、治験の根幹となる目的変更を行ったRCTの信頼度はとても低くなります。ほかにもプラセボが準備されていないのに試験を開始するとか、プラセボ群の75人にイベルメクチンを投与するとか、95%以上が在宅患者など、どうやって治験をコントロールしているのか不思議な治験だと思います」 一方、医薬品の臨床試験に長く関わっている、日本医科大学の勝俣範之教授(腫瘍内科)は、別の見解を示した』、「RCTの本来の目的はイベルメクチンの悪化率抑制ですが、悪化する患者がいないので目的を達成できず、そのために目的を変更しています。通常、治験の根幹となる目的変更を行ったRCTの信頼度はとても低くなります」、「悪化する患者がいない」のであれば、「目的変更」もやむを得ない。
・『コロナ軽症患者に大きな有効性は認められない?  「イベルメクチンの研究は、後ろ向き研究や小規模の前向き研究(※)など、信頼性の乏しいものばかりでした。今回の研究はイベルメクチンの有効性を検証した、初めての質の高い大規模臨床試験の結果です。評価を悪化率から完全寛解率に変更したり、一部のプラセボ群にイベルメクチンが投与されるプロトコール違反があったりするなど、問題点も見受けられました。 ただし、その問題点を考慮して、完全寛解率75%と計算、誤って有意差が出なくするエラーを20%に保つようにして、プロトコール違反があった症例を除いて解析するなどしています。さらに複数の方法で念入りに解析した結果、イベルメクチン投与群とプラセボ投与群に有意差はみられませんでした。少なくとも、コロナ軽症患者に、イベルメクチンは大きな有効性は認められないと判断してよいでしょう」 (※後ろ向き研究は、治療が終了した患者を対象に、仮説を立てて過去にさかのぼって原因と結果を研究する手法。研究側の選択バイアスがかかりやすい。治療開始から追跡する前向き研究のほうが、質が高い)) 実は、コロナ軽症患者を対象にした治療薬の候補として、イベルメクチン以外にも複数の薬が存在している。その1つが痛風治療薬のコルヒチン。カナダ、アメリカなど6カ国が参加したCOLCORONA試験では、重症化リスクのある軽症患者4488例が対象。コルヒチン投与群は、30日後の死亡および入院リスクが、プラセボ群より21%抑制された(公表データは査読前論文)。 日本でコルヒチンの医師主導治験を進めている、琉球大学の植田真一郎教授(臨床薬理学講座)に研究の意義を聞いた。 「コロナウイルスの変異株が出ているので、ワクチンだけでコロナを解決できるかどうかわかりません。少なくとも軽症患者が重症化しない治療薬があれば、病床逼迫も回避できるはずです』、「病床逼迫も回避」のためにも「軽症患者が重症化しない治療薬」も重要だ。
・『日本でコルヒチンがまったく評判になっていない理由ですか?  それは治験中に期待を持たせすぎると、患者の誘導になるので、私たちが積極的にアピールしていないからでしょう。有効性があるか否か、わからないから治験を行うのです。それなのにコロナに効くというイメージを、患者に与えるのは倫理的に問題です」(琉球大・植田教授) 国のコロナ対策や専門家に対して不信感が深まり、SNSでは個人の思い込みや根拠に乏しい情報が飛び交うようになった。一例として、「アビガンが承認されていないのは陰謀」という説が一部で信じられている。 医薬品の承認を受ける際のRCTは、「治験薬」か「プラセボ(偽薬)」か、患者にはわからないようにするのが大原則。アビガンの場合、それが不完全だったというのが真実だ。現在、アビガンは再審査に向けて臨床試験の準備が進められている』、「アビガン」は安部前首相が入れあげていたが、審査で忖度なしに不合格にした厚労省は立派だった。
・『イベルメクチンを特効薬とする報道は論外  医薬品の承認審査に詳しい東京大学薬学部の小野俊介准教授は、イベルメクチンをめぐる騒動についてこう述べた。 「ちょっと頭を冷やして、と言いたいですね。コロナ禍という非常事態であっても、イベルメクチンを特効薬とする報道は論外です。現時点では、イベルメクチンは効くかもしれないし、効かないかもしれない。 RCTにも、研究によって信頼性に差があるので、海外のデータが日本で同じ結果になるとは限らない。薬の審査は、そんなに単純なものではありません。質の高い数千人、数万人の大規模臨床試験を行わない限り、当面の有効性はわからないのです」 軽症患者の治療薬があれば、新型コロナも「ただの風邪」として、恐れる必要はなくなるかもしれない。いま日本を含めた世界各地で、さまざまなコロナ治療薬の臨床試験が進んでいる。その結果は、そう遠くない時期に判明するはずだから、一部メディアの情報に惑わされず、もうしばらく冷静に見守りたい』、薬事審査は雑音に煩わされずに済々と進めてほしいものだ。

第三に、4月18日付けPRESIDENT Onlineが掲載した岡山大学学術研究院 環境生命科学学域 教授の 宮竹 貴久氏による「政府が決して言わない、進化生物学的に見て危険な「日本のワクチン接種計画」の"あるリスク" 変異とワクチンのイタチごっこ…」を紹介しよう。
・『なぜこんなに変異型が増えるのか?  イギリス型、ブラジル型、南アフリカ型と新型ウイルス(SARS-CoV-2)の変異体が世界的に増えている。巷ちまたでは「なぜこんなに変異型が増えるのか?」という声をよく耳にするようになった。 なぜなのか? それは変異することが生物の基本だからである。 私たちの顔つきや、体格、性格がみんな違うように、すべての種類の生物に変異は見られる。その変異は次の世代に受け継がれ、つまりコピーされ、また世代をつないだ変異だけが生き残れる。進化生物学的に考えると、ウイルスに変異体が現れるのは当たり前だ』、「ウイルス」についてじっくり考えてみる価値もありそうだ。
・『変異と薬剤開発の繰り返し…  「農薬抵抗性」という言葉をご存じと思う。これも生物の変異がもたらす結果である。 私の専門は昆虫学なので、害虫防除の過程で生じた話に少しお付き合いいただきたい。夏になると害虫が増える。増える勢いがすさまじいと、人は農薬の散布に頼らざるを得ない。すると必ず問題になるのが、農薬に抵抗性を持った害虫のタイプ、つまり変異体が現れて農薬が効かなくなることだ。これが農薬抵抗性である。 抵抗性を持った害虫が蔓延まんえんすると、農薬会社は新しい農薬の開発に資本を投資する。やっと開発された農薬もまた撒まき続けると、その農薬に抵抗性を持った変異体が現れ、多くのケースで害虫の抵抗性獲得と新たな農薬開発の「鼬いたちごっこ」が始まる。 薬剤に対する抵抗性と、薬の開発との「鼬ごっこ」は、農業害虫の話だけではない。世間でよく知られているように、病院の中で抗生物質に抵抗性を持つ病原菌が出現し、新たな抗生剤を投与しなくてはならなくなる院内感染菌もまた、製薬会社による新薬の開発と病菌による抵抗性獲得の「鼬ごっこ」を繰り広げているのだ』、生物(ウィルスを含む)にとって「変異体」は生き残り戦略のようだ。
・『害虫駆除の「不妊化」という方法)  害虫の駆除法に話を戻そう。 環境に優しい害虫防除法が最近ではつぎつぎと開発されている。その1つに、虫のオスを大量に増やして不妊にし、野外に放す「不妊化法」と呼ばれる駆逐法が流行はやっている。 ブラジルや中国では、伝染性の病気を媒介する蚊を根絶するために、不妊化した蚊を大量に野に放つプロジェクトが展開されている(*1)。 不妊化したオスは野生のメスと交尾するが、不妊オスと交尾したメスは子供を残せない。毎世代、たくさんの不妊オスを放つと、ついには根絶に至るという害虫の根絶方法で、その原理は1950年代にアメリカで生まれた(*2)』、「不妊化法」「の原理は1950年代にアメリカで生まれた」、さすが「アメリカ」だ。
・『世界初の大規模成功例は「日本」  主に海外で展開されているこの不妊化法であるが、世界で初めて大規模スケールで害虫の根絶に成功したのは、実は日本である。 みなさんは、沖縄産のゴーヤー(ニガウリ)やマンゴーを食べたことがあるだろう。こうした沖縄産の野菜や果物を、東京や大阪で食べることができるようになったのは、比較的最近で1993年以後である。1993年は野菜と熱帯果樹の大害虫であるウリミバエが、不妊化法によって南西諸島から根絶された年となる。 この根絶プロジェクトは、農林水産省と沖縄と鹿児島の両県が莫大な予算を投じて害虫であるウリミバエを増やし、コバルト60を照射して不妊にしたオスを野に放ったもので、野に放たれたオスは野生メスをひたすら探し出して交尾をせんとする。 不妊オスと交尾できた野生メスは卵を産むが、不妊オスの異常精子を授精しても卵は孵かえらず、子を残せない。圧倒的な数の不妊オスを撒き散らすと、野生メスは数世代で野生のオスと出会う機会がなくなり、その種は根絶にいたる。南西諸島でヘリコプターから地上に撒き散らかされた不妊オスの数は、毎週1億匹であり、根絶までにはのべ530億匹の不妊オスが放たれた(*3)。 この巨大プロジェクトの成功によって、1993年には南西諸島のすべてからウリミバエは一匹残らず駆逐された(*3)。そして、沖縄や奄美で栽培された野菜や果物は日本全国に流通するようになった』、「世界初の大規模成功例」は「ウリミバエが、不妊化法によって南西諸島から根絶」とは初めて知った。「沖縄や奄美で栽培された野菜や果物は日本全国に流通するようになった」、ご利益あらたかだ。
・『抵抗性を持ったメスが登場  ウリミバエの根絶は薬剤抵抗性のような駆除する側と駆除されるものとの果てしない戦いである「鼬ごっこ」が生じない完璧な駆逐法だと、誰もが考えた。そして不妊化法は、環境にやさしい害虫防除法として、一躍有名になり、世界中に広まった。 しかし、その華やかな表舞台の裏で、不妊オスに対する抵抗性をもった野生メスが進化していたことを示唆しさするデータがあることはほとんど知られていない。不妊オス抵抗性をもったメスの出現である。 不妊化されたオスと野生オスを見分けることのできる野生メスが出現したことを当時のデータは示している(*4)。先述したとおり、あらゆる生物には変異がある。オスを見分けるメスの能力にだって、個体による差があるのは当然だ』、「不妊化されたオスと野生オスを見分けることのできる野生メスが出現した」、とは驚かされた。
・『時間を与えず一気に殲滅せよ  不妊オスとの交尾を避けるメスが、野外で進化した──。 この事実は関係者を震撼しんかんさせた。そして対策がとられた。不妊オス抵抗性が進化したとされる沖縄本島、中部の勝連半島に、大量の不妊オスを追加で放したのである。この地域には石油コンビナートの基地があり、ヘリコプターを飛ばせず、空中散布することができなかったことも、この地域でウリミバエを完全に根絶できなかった大きな要因であった。 沖縄県のウリミバエ対策本部がとった手段は、人海戦術だった。来る日も来る日も、大量の不妊蛹を衣装ケースに詰めて車に乗せ、現地に運び人の手で不妊オスを撒き続けた。 当時、担当部署で働いていた私は、毎朝、ウリミバエの生産工場に行き、仲間とともに大量の不妊蛹を衣装ケースに詰めては車に乗せ、現場に出向いて野山に撒き続けた。大量の不妊オスでその地域が満たされれば、不妊オスを見分ける能力を持ったメスとて、選ぶための野生オスに出会えないという論理である。 この作戦は見事に功こうを奏そうし、1990年にはウリミバエを沖縄本島から駆逐できたのだった。 このことから関係者が学んだ大切なことがひとつある。敵を駆逐するには、「大量の不妊オスで、一気に野生メスを囲い込み、即時に1匹残らず駆逐してしまわなければならない」ということだ。野生メスに不妊オスを選ばせる時間的なゆとりを与えては、抵抗性の反撃にあって作戦は壊滅するのだ』、「ヘリコプターを飛ばせず」、「私は、毎朝、ウリミバエの生産工場に行き、仲間とともに大量の不妊蛹を衣装ケースに詰めては車に乗せ、現場に出向いて野山に撒き続けた」、ご苦労なことだ。
・『ワクチン接種の「先送り」は進化生物学的に正しくない  新型のコロナウイルスもハエと同じ生物である。そのため、常に変異し続けている。ウリミバエが卵から親になって子を産むまでは1カ月はかかるが、ウイルスは半日から1日程度で世代交代が起きる(*5)。つまり、変異体の現れるスピードが圧倒的に早いわけだ。 新型コロナウイルスが中国・武漢に出現してわずか2カ月の間に世界で3つのタイプの変異型が生じたことは2020年の同じ時期に寄稿した(参考記事はこちら)。 変異したウイルスのほとんどは、ワクチンによって感染できなくなるだろう。しかし、わずかでもワクチンによる防御を見破る仕組みを持ったウイルスが現れると、その変異ウイルスはワクチン接種が速攻で進まない地域においては、ウイルスの大半を占めるように進化してしまうと予測される。 インフルエンザウイルスに複数のタイプがあり、そのタイプによってワクチンによる対処法が異なるのはお馴染なじみだ。 いったん、ワクチンの防御システムを破る変異体が出てくれば、感染源のある地域では、その変異体が一気に蔓延する可能性がある。ワクチンは、その地域にある感染源に一気にできる限り多くの人に接種して、感染源をなくすことが、進化生物学的に考えると大切なのである。 この件に関して「先送り」は生物学的に正しくない』、「ウイルスは半日から1日程度で世代交代が起きる・・・つまり、変異体の現れるスピードが圧倒的に早いわけだ」、「わずかでもワクチンによる防御を見破る仕組みを持ったウイルスが現れると、その変異ウイルスはワクチン接種が速攻で進まない地域においては、ウイルスの大半を占めるように進化してしまうと予測される」、恐ろしいことだ。
・『「ワクチン後」の世界に起こること  これまで新型コロナウイルスは、ワクチンの存在しない世界で感染を爆発的に拡大させてきた。ここで立ち止まって、少し考えてみてほしい。 ワクチンのない「これまで」と、ワクチンの存在する「これから」では、ウイルスの変異の仕方はどう変わるだろうか。 これまではウイルスに生じたほぼすべての変異が生き残ることができたに違いない。イギリス型のように感染力のより強い変異体は、より生き残りに長けていたので、あっと言う間に従来のものと置き換わってしまった。さて、ワクチン接種が始まったあとでは、どのような変異体が生き残りやすいだろうか。 ワクチンによって人が獲得した免疫に防御される変異体は、今後は容易には生き残れない。 ウイルスは常に変異し続けている。無数の変異のなかに1個でも免疫をかいくぐる仕組みを持った変異体は、ワクチンの抵抗性を獲得したウイルスとして、あっと言う間に地域にそして全国に拡散するだろう。大事なことは、ウイルスにそのような変異を起こす時間的なゆとりを与えるのは、限りなく危険な行為だということだ。 たとえば小さな離島のように、ある地域で一気に全員にワクチンを接種できるのは、進化生物学的に考えると理想である。ウイルスの感染源が消滅するため、ウイルスも消滅するしかない。しかし、地域の一部の人たちにワクチンを接種して、徐々にその地域の人間集団全体に接種を広げていく手法が、とても時間のかかるものであった場合……その結末は想像に難くない。 ハエやヒアリの根絶でも同じなのだが、被害(感染)の激しいところを集中的に叩きつつ(「封じ込め」)、そこへの「移動規制」をどう徹底していくかが肝要なのだ』、その通りだろう。
・『反撃を許す時間を与えることは、変異を許す時間を与えること  突然変異はランダムに、しかも非常に早い速度で黙々とウイルスに生じている。 たいていの変異は、抵抗性とは関係のない小さな変異であるのは確かだろう。けれども、ランダムに生じるのだから、ワクチン抵抗性に関連した部位に変異が生じる可能性も否定できない。 進化の目はその突然変異を見逃すはずがなく、そして瞬またたく間に抵抗性を持った変異体が蔓延する恐れがある。敵に反撃を許す時間を与えることは、抵抗性の変異を許す時間を与えることになる。 2021年3月8日、南アフリカ型の変異体の性質が従来のワクチンによる予防効果を脅おびやかすという研究結果がNature誌に公表された(*6)。この結果は別の研究チームによっても支持されている(*7)。 ウイルスは絶えず変異している。進化生物学的に考えると、ワクチン抵抗性を持ったウイルスはいつ現れてもおかしくない。 いったんそれが現れると、ワクチン接種というウイルスに対しての選択圧から逃れたその変異体は、一気に世に蔓延するだろう。そして製薬会社と抵抗性ウイルスとの「鼬ごっこ」が始まり、私たちはまた一からすべてのことをやり直さなくてはならない』、後手に回って、「「鼬ごっこ」が始まる」事態は何としても避けたいものだ。
タグ:ダイヤモンド・オンライン (医学的視点) (その19)(PCR宗教戦争がコロナ第3波で再び 「国民全員検査」で本当に感染拡大は止まるのか、イベルメクチンに超期待する人が知らない真実 コロナ治療薬?「過熱報道と臨床現場の温度差」、政府が決して言わない、進化生物学的に見て危険な「日本のワクチン接種計画」の"あるリスク" 変異とワクチンのイタチごっこ…) パンデミック 「PCR宗教戦争がコロナ第3波で再び、「国民全員検査」で本当に感染拡大は止まるのか」 国民全員PCR論は、大規模検査の“わな”を見落としている 確かに(3)の「陽性適中率」の低さは問題だ。 「大規模検査自体が本当は感染しているのに“陰性”のお墨付きを得た人を大量に街に放出するリスクが非常に高いのだ。その上、「検査で陰性なら」と、マスクなどの感染対策をしないで他人と接する可能性も十分考えられる」、確かにその通りだ 「1回目の検査でぬれぎぬを着せられた9900人は次の検査までいったん隔離せざるを得ない」、その通りだ 「PCR検査をマネタイズしたいという思惑が見え隠れする医師もいる」、とんでもない話だ。 「不安をあおったメディアの罪も大きいが、国が検査戦略の科学的根拠について分かりやすい説明をしなかったという誹りも免れない」、確かに国の説明責任を果たしていないのも問題だ 東洋経済オンライン 岩澤 倫彦 「イベルメクチンに超期待する人が知らない真実 コロナ治療薬?「過熱報道と臨床現場の温度差」」 「処方薬がホテルに届いた。それは葛根湯やせき止めなどの一般的な風邪の治療薬」、当初は軽症者への治療法は確立してなかったので、そんなものなのかも知れない。 「イギリスで多くの患者を対象にした、質の高いRCT」、日本で目先の治療に手一杯で、RCTなど行われてないのではなかろうか 「第3波の影響で臨床試験は事実上ストップ」、やむを得ないとはいえ、残念だ。ただ、そうなると、「イベルメクチンがコロナ治療薬として承認されるのを待ちきれず、「実力行使」に出る」ケースが増えてしまうのも困ったことだ 「RCTの本来の目的はイベルメクチンの悪化率抑制ですが、悪化する患者がいないので目的を達成できず、そのために目的を変更しています。通常、治験の根幹となる目的変更を行ったRCTの信頼度はとても低くなります」、「悪化する患者がいない」のであれば、「目的変更」もやむを得ない 「アビガン」は安部前首相が入れあげていたが、審査で忖度なしに不合格にした厚労省は立派だった。 薬事審査は雑音に煩わされずに済々と進めてほしいものだ。 PRESIDENT ONLINE 宮竹 貴久 「政府が決して言わない、進化生物学的に見て危険な「日本のワクチン接種計画」の"あるリスク" 変異とワクチンのイタチごっこ…」 生物(ウィルスを含む)にとって「変異体」は生き残り戦略のようだ 「不妊化法」「の原理は1950年代にアメリカで生まれた」、さすが「アメリカ」だ。 「世界初の大規模成功例」は「ウリミバエが、不妊化法によって南西諸島から根絶」とは初めて知った。「沖縄や奄美で栽培された野菜や果物は日本全国に流通するようになった」、ご利益あらたかだ。 「不妊化されたオスと野生オスを見分けることのできる野生メスが出現した」、とは驚かされた。 「ヘリコプターを飛ばせず」、「私は、毎朝、ウリミバエの生産工場に行き、仲間とともに大量の不妊蛹を衣装ケースに詰めては車に乗せ、現場に出向いて野山に撒き続けた」、ご苦労なことだ。 「ウイルスは半日から1日程度で世代交代が起きる つまり、変異体の現れるスピードが圧倒的に早いわけだ」 「わずかでもワクチンによる防御を見破る仕組みを持ったウイルスが現れると、その変異ウイルスはワクチン接種が速攻で進まない地域においては、ウイルスの大半を占めるように進化してしまうと予測される」、恐ろしいことだ 後手に回って、「「鼬ごっこ」が始まる」事態は何としても避けたいものだ。
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パンデミック(経済社会的視点)(その14)(緊急時に司令塔があいまいな菅政権…分科会メンバーが指摘する “第3波で痛感した日本型組織の弱点”、ワクチン確保計画は破綻寸前!? 河野ワクチン担当大臣周辺や各省庁の不協和音、小田嶋氏:宣言解除に神風は吹くのだろうか) [パンデミック]

パンデミック(経済社会的視点)については、1月29日に取上げた。今日は、(その14)(緊急時に司令塔があいまいな菅政権…分科会メンバーが指摘する “第3波で痛感した日本型組織の弱点”、ワクチン確保計画は破綻寸前!? 河野ワクチン担当大臣周辺や各省庁の不協和音、小田嶋氏:宣言解除に神風は吹くのだろうか)である。

先ずは、2月13日付け文春オンラインが掲載した東京財団政策研究所研究主幹の小林慶一郎氏による「緊急時に司令塔があいまいな菅政権…分科会メンバーが指摘する “第3波で痛感した日本型組織の弱点”」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/43451
・『「文藝春秋」3月号に寄稿した「 コロナ第3波『失敗の本質』 」では、コロナ対策に深くかかわるメインプレイヤーとして、菅義偉首相、分科会、厚生労働省、都道府県知事、世論(国民)の5者を挙げ、緊急事態宣言の再発出に至るコロナ対策の意思決定について、何が失敗だったのか、今後の対策においてどのような点に注意すべきか、問題提起をしています。 分科会メンバーの一人である私がなぜこのような記事を書いたのか。それはコロナ対策の政策決定に関わる問題点を広く一般国民に知ってもらうべきだと考えたからです。コロナ対策の中心は「国民の行動変容」ですが、それは、全国民の協力がなければできません。国民一人一人の納得と協力を得る上で、コロナ対策の政策決定のプロセスがどうなっているのか、意思決定システムの問題点は何か、広く知ってもらうことは極めて重要だと考えました』、「分科会メンバーの」「小林氏」の主張とは興味深そうだ。
・『コロナ禍でも“平時の仕組み”を変えられなかった  第3波を経験する中で、何より痛感したのは、コロナ禍という、政治家のトップダウンが必要な有事において、平時のボトムアップの意思決定の仕組みを変えられなかったことが問題の本質なのではないかということです。感染拡大の危機に直面しても、なかなか政策転換できなかった理由の一つは、政策決定する政治家と、彼らに進言する役人や学者の関係が平時と変わらなかったためと思われます。コロナ禍においては、専門家の意見は参考にしつつも、それに依存せず、国家国民の視点で即断即決する政治が必要とされているのです。 この記事ではいくつか問題点を指摘しましたが、その後、さまざまな動きが起きています。緊急事態宣言は3月7日まで延長されることになりました。記事では、「分科会は医療行政や医療界への遠慮があるためか、医療提供体制について意見を言わない」と書きましたが、宣言延長が決まった2月2日の分科会提言には、医療提供体制の拡充について多くの内容が盛り込まれました。同日、政府から水際対策の強化も発表されました。 変異種の侵入を少しでも減らすためには水際対策をさらに強化するべきだと思い、原稿でもその問題点を指摘しましたが、一歩前進ではあります。一方、接触確認アプリCOCOAがアンドロイドのスマホでは9月から機能していなかった、という政府の本気度に首を傾げたくなる事案も発覚しました』、「政治家のトップダウンが必要な有事において、平時のボトムアップの意思決定の仕組みを変えられなかったことが問題の本質」、とはさすが的確な指摘だ。
・『拙速な緊急事態宣言解除は危ない  記事の目的は、菅首相や厚生労働省など特定の個人や組織を貶めることではありません。長丁場が予想されるコロナ対策をどのような体制で進めて行ったらいいのか。今後、意思決定の見直しが重要です。 たとえば、分科会には医療施設の管理や災害時の医療体制についての専門家が入るべきかもしれません。また、変異種に対する水際対策などに関しては、今のところ感染症専門家が主導していますが、国内に侵入する前に感染拡大を水際で止めるためには、安全保障や危機管理の専門家が主導すべきかもしれません。 ワクチンについても、いま重要な意思決定の問題があります。ジョンソン・エンド・ジョンソンが開発したワクチンは、接種は1回だけでよく、何か月も通常の冷蔵庫で保存できます。運搬や管理が圧倒的に楽で「プロジェクトX」のような困難なしに接種ができるはずですが、このワクチンの採用を日本政府は積極的に検討しているように見えません。スムーズなワクチン接種がもたらす大きな経済社会的利益を考えるならば、政治がリーダーシップを発揮して、このワクチンの確保を検討すべきではないでしょうか。 コロナとの戦いが始まってから1年がたちました。第3波の山は少しずつ収まりつつありますが、拙速に緊急事態宣言を解除すれば再び感染が拡大して3度目の緊急事態宣言を発出することになりかねません。 いまは行動制限で感染拡大を抑えこみ、その後は高齢者施設や繁華街で頻繁なPCR検査を行ってリバウンドを防ぎ、最終的にはワクチンの普及でコロナを収束させる……これが政府の目論見ですが、今後も未知の事態に襲われることも十分あり得ますし、コロナとの戦いに収束の目途が立ったとは言えません。今回の私の寄稿が、今後の戦いに少しでも役立つことを心から願っています。 ◆ ◆ ◆ 司令塔があいまいな日本政府、危機が高まるほど「村社会」化する各組織、現場からの情報を汲み取らなかった厚労省、時間のコストを軽視した菅首相……新型コロナウイルス感染症対策分科会のメンバーである小林氏(東京財団政策研究所研究主幹)の寄稿「 コロナ第3波『失敗の本質』 」(「文藝春秋」3月号および「文藝春秋digital」)には、過去の歴史でも繰り返された日本的な失敗についてくわしい分析がなされている。日本型組織の研究としても読まれるべき論考だ』、「PCR検査」についてはあれほど重要性が指摘されていながら、いまだに実施数が本格化しないのは、厚労省のサボタージュのような気がする。

次に、2月19日付けAERAdot「ワクチン確保計画は破綻寸前!? 河野ワクチン担当大臣周辺や各省庁の不協和音〈週刊朝日〉」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/wa/2021021600057.html?page=1
・『コロナ対策の「切り札」とされるワクチン。海外から第1便の約20万人分が届き、ようやく希望が見えたかと思いきや、実は、6月末までに全国民に必要な数量のワクチンを確保するという政府の目標の達成が見通せなくなっているという、衝撃的な情報が飛び込んできた。日本が結んだ契約に、政府が目標とする「6月末まで」の記載がないというのだ。省庁間の連携も滞り、確保計画は「破綻寸前」との指摘も。 なぜこんな事態になっているのか。背景には各国がしのぎを削るワクチン争奪戦がある。欧州連合(EU)は1月末、域外へのワクチンの輸出規制を導入。出荷のたびに加盟国政府やEU当局の承認が必要とされるようになった。米国でもバイデン大統領が、国外への輸出を禁じるトランプ政権の方針を支持している。 こうした状況下で、日本政府の交渉も難航している。政府が昨年7月に米ファイザー社とワクチン供給について基本合意した際は「21年6月末までに1億2千万回分(6千万人分)」という条件だった。ところが、1月20日にファイザーと最終合意して結んだ契約は、「年内に1億4400万回分(7200万人分)」と、数は増えたが時期が半年も後ろ倒しされてしまった。厚労省の関係者は内情をこう語る。 「契約時期が変わったのはファイザーから『厳しい』と言われたから。それでも必死で交渉し、なんとか『年内』という言葉を入れた。イスラエルのように相場より高く買ったり患者のデータを提供したりと交渉の余地はあったはずだが、承認手続きや薬害、副反応のリスクを考えてどうしてもおよび腰になり、最終判断が遅れた。ファイザーはなかなか決断できない日本を横目に、他国にワクチンを回すようになってしまった」 ワクチンを思うように確保できない状況にしびれを切らした菅義偉首相は1月、官邸主導で打開しようと、河野太郎行政改革相をワクチン担当大臣に指名。河野氏の「突破力」に期待した形だが、就任早々ひと悶着があった。 1月21日に坂井学官房副長官が会見でワクチンについて「6月までに接種対象となる全ての国民に必要な数量の確保は見込んでいる」と語ったが、河野氏が翌22日、「修正させて頂く」「まだ供給スケジュールは決まっていない」などと噛みついた。両者は結局、「6月に確保することを目指す」という表現で着地したが、この騒動も契約内容の解釈を巡って勃発したという』、「承認手続きや薬害、副反応のリスクを考えてどうしてもおよび腰になり、最終判断が遅れた。ファイザーはなかなか決断できない日本を横目に、他国にワクチンを回すようになってしまった」、ワクチン入手では手痛い失敗である。
・『内情に詳しい政府関係者は、ワクチン契約をめぐる情報が行政内部でも十分に共有されていないと指摘する。 「河野氏は「『情報管理』や『機密保持』を徹底するあまり、製薬会社との交渉を担う厚労省や、輸出規制を導入したEUとの窓口になる外務省にさえ情報を伝えていない。中でもワクチンの供給契約の詳しい情報は『最高機密』で、一部の人間しか知らない。交渉にも支障が出ており、省庁間の関係もぎくしゃくしています」 自民党新型コロナウイルスに関するワクチン対策プロジェクトチームの役員会でも「契約の詳細がわからないのでEUと交渉ができない」という外務省の不満も取り上げられた。メンバーの佐藤正久参院議員が振り返る。 「厚労省の説明では、外務省の交渉担当者とは情報を共有していると言っていましたが、一部の担当者に限られるようです。相手方(製薬会社)との関係もありますし、(情報を共有する職員は)非常に限定されているのでしょう」 情報共有が十分でないことからくる不協和音は、いまや関係する各省庁に広がっている。 河野氏が担当大臣となる以前、ワクチン確保を所管していたのは和泉洋人首相補佐官や、和泉氏と「コネクティングルーム不倫疑惑」が報じられたこともある厚労省の大坪寛子審議官らを中心としたチーム。コロナ対策を担当する西村康稔経済再生担当相や田村憲久厚労相も関わり、外務省や総務省の存在も大きい。 だが、こうした厚労省を中心とした体制での契約交渉が順調だったとは言い難く、事態を打開するために河野氏が送りこまれた経緯がある。 「河野氏はこれまでワクチン確保の中心となってきた和泉氏、厚労省に代わって主導権を握り、自身に情報を一手に集めている。しかし、専門のブレーンがいないのに、外交ルートを有する外務省や製薬会社とパイプのある厚労省を遠ざけて、うまくいくのか危惧されている。いまやワクチン確保のための体制は破綻寸前の状態です」(前出の政府関係者) 各自治体が実施するワクチン接種をとりまとめる総務省の担当者も困惑しているという。) 「自治体ではいま、厚労省が示したスケジュールに間に合わせるため、医師や看護師の手配や会場の確保に追われています。各自治体の担当者から『ワクチンがどれだけ確保できるかがわからなければ準備を進められない』と突き上げられています。我々も最新データを知りたいと厚労省に再三伝えているのですが、『国内の承認を得られるまでは教えられない』の一点張り。少しの情報でもいいから提供してほしい」(地域政策課) 国際医療福祉大学医学部(公衆衛生学)の和田耕治教授は、こうした状況にこう警鐘を鳴らす。 「ワクチンの接種で重要なのは、ワクチンの『供給速度』です。世界的な争奪戦の中、いつ、どのくらいの数量を確保できるかが大事。ワクチンの必要量と供給量にギャップができれば、混乱が生じます。例えば、同じ医療従事者といっても、国内で感染者が多い地域もあれば、少ない地域もあり、優先順位を考える必要が出てくる。供給速度がわからなければ、こうした優先づけを行うのも難しく、接種のための人員や場所の用意も進められません。政府と国民の信頼関係にも響きます」 どこかの段階で、ワクチン供給のスケジュールが大幅に遅れることが判明すれば、国民は大きな衝撃や失望を受けることになる。 「現状では、国民の不安や怒りを噴出させないという意味において情報コントロールが成功してしまっているのかもしれません。ただ、ワクチンにかける期待感が失速した瞬間に、政権が国民に期待感のみを抱かせ、実体が伴っていなかったことに気付かされるでしょう」(前出の政府関係者) 河野氏にワクチンの供給契約の詳しい内容や確保の見通し、情報開示が消極的な理由などを尋ねたが、期限内の回答は「時間を取る余裕がない」とのことだった。厚労省も「契約の内容はお答えできない」と言うのみだった。 河野氏は2月16日の会見で、「政府の基本的な対処方針は令和3年前半までに国民に必要な数量のワクチンの確保を目指すということで変わっていない」とした。一方、「確保を目指すと語っているわけで、接種の時期について申し上げたわけではありません」とも語った。 また、東京五輪の開催前までに国民への接種が間に合わなかった場合について問われると、「五輪については橋本(聖子)大臣にお尋ねをいただきたいと思います」。希望する全国民が接種を追える時期については「現時点では定かではありません」とした』、「ワクチン確保を所管していたのは和泉洋人首相補佐官や、和泉氏と「コネクティングルーム不倫疑惑」が報じられたこともある厚労省の大坪寛子審議官らを中心としたチーム」、「不倫」騒動でワクチン入手交渉が放置されたとまでは思わないが、政府の無責任ぶりを如実に示している。「河野大臣」の守秘と情報公開のバランスをなどの手際の悪さには、失望した。

第三に、3月19日付け日経ビジネスオンラインが掲載したコラムニストの小田嶋 隆氏による「宣言解除に神風は吹くのだろうか」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00116/00112/
・『東京でも桜が咲き始めた。 毎年、この時期はせわしない気持ちになる。 ただ、今年は少し風向きが違う。首都圏の1都3県に、新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく緊急事態宣言が発令されているからだ。 とはいえ、時期が来れば桜は咲く。 そして、花が一斉に咲き始めると、私たちは、必ずや落ち着きを失うことになっている。 今回は、日本人の季節感を振り返りつつ、そのわれわれの季節感の特別さと新型コロナウイルス対策の関係について、いささか勝手な見立てをご紹介するつもりでいる。 菅義偉首相は、17日の夜、記者団に向けて、首都圏の1都3県に出されている緊急事態宣言を、再延長後の期限通り、3月21日限りで解除する方針を明らかにした。 むずかしい政治判断であったことは想像がつく。 首都圏の飲食店や観光業者は、先の見えない営業自粛に食い扶持を召し上げられている格好だ。こんな状態をいつまでものんべんだらりと続けていて良いはずはない。政府の首脳が、どこかの時点で見切りをつけるべきだと考えたことは、十分に理解できる。 しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大は収束していない。 むしろこの10日ほどは、緊急事態宣言の期間を延長しているにもかかわらず、感染者数は微増のトレンドで推移している。 してみると、いまここで宣言を解除してしまうことは、相応のリスクを伴う決断になる。政府はこの時期にあえて宣言を解除する理由を、どんな言葉で説明しているのだろうか。 報道をチェックすると 《閣僚の一人は16日、「宣言の効果が薄れている。解除で一度、仕切り直さないといけない」と述べた。》《「感染者数や病床の使用率といった数字が解除の方向に入っているということだ」(菅総理)》《また、政府関係者は、「みな、疲弊しており、このままでは次の波が来た時に頑張れない」と述べ、これ以上宣言を延長しても、自粛疲れなどで十分な効果が見込めないという認識を示しました。》 と、談話レベルの話は伝わってくるものの、然るべきチャンネルを通じて、決定的な理由が明らかにされているわけではない。 というよりも、メディアを介して伝えられている情報を総合すると 「あきらめた」「投げ出した」というニュアンスすら感じ取れる。 これはこの種の施策を告知するやり方として、とてもよろしくないと思う。 少なくとも私は「成績の上がらない中学生が勉強をやめる時の言い草そのものじゃないか」と、思った。 仮に宣言を解除して、これまでとは違う、新たな感染防止対策を打ち出すことになるのだとしても、国民に向けたアナウンスの仕方は、もっと工夫しないといけないはずだ。 「効果が上がらなくなった」(←これまでの施策は無意味だった)「自粛疲れが出ている」(←もう無理だよね)「ゆるみが出ている」(←国民の努力不足にばかり責任を求めてもねえ) みたいな言い方は、ストレートな自己否定に聞こえる点でよろしくない。 政府の側にそういう意図が無いのだとしても、上からの発表を 「われわれは、これまで無駄な我慢をしていました」という告白として受け止める国民は、必ずや一定数あらわれる』、「この時期にあえて宣言を解除」した「決定的な理由が明らかにされているわけではない」、いつもの説明責任を放棄した政府のやり方だ。
・『特に「コロナなんてただの風邪だ」「あんなウイルスは雑魚キャラだ」などと、早い時期から利いたふうなマッチョなご意見を開陳しつつ引っ込みがつかなくなっていた冷徹業界のみなさんは、わが意を得たりとばかりに 「ほら、オレが前から言っていた通りじゃないか」「自粛なんて、しょせん過剰反応だったってことだよ」てなことを言い始めるはずだ。 私はその種のバカな反動が再び力を得る近未来の到来を憂慮している。 なぜというに、この種の事情通ぶった逆張りの言説は、これまでにわれわれが積み上げてきた地道なコロナ対策の努力と成果を、土台の部分から無効化してしまう「呪い」だからだ。 私個人は、緊急事態宣言が効果を発揮していなかったとは思っていない。この10日ほど、リバウンドの兆候があらわれていたのは、宣言が「無駄」(あるいは「効果ゼロ」)だったからではなくて、「効力を発揮しにくくなってきた」からだと考えるのが普通だろう。 だとすれば、何が足りなかったのかを検討して、その分の対策をあらためて追加するのが正しい話の筋道であるはずだ。 ここで、ヤケを起こして 「宣言は無駄だった」「自粛一辺倒の対策は経済を殺しただけだった」 みたいな極論に走ってしまったら、これまで、宣言下で押し下げられていた感染拡大のカーブを、いよいよ破滅的なパンデミックに向けて再上昇させる結果を招く。 ある程度勉強をしたことのある人なら誰でも知っていることだが、努力と成果は必ずしも正比例しない。 平たく言えば、「勉強したからといってすぐに成績が上がるわけではない」ということだ。 実際、スポーツでも同じことだが、コツコツ練習しているのに記録が伸び悩む時期というのは必ずやってくる。 そこで、成績が上がらないからという理由で、トレーニングをやめてしまったら、その時点で間違いなく実力は停滞する。 だからこそ、目先の結果に一喜一憂せず、近視眼的な結果にまどわされることなく、その時点で積み重ねることのできる努力を続けることが重要なのだ。 なんだか意識の低い中学生に向かって説教を垂れているみたいな話で、自分ながら居心地が良くないのだが、現実問題として、政府が出来の悪い中学生みたいな態度をキメてきているのだから仕方がない。ここは国民の側が説教をしてあげないとダメだ。 宣言解除の可能性が噂にのぼり始めた3月14日の午後、私は、ツイッターに以下のツイートを連投した。 《3月21日をもって緊急事態宣言を解除する理由は下記のうちから選べ 1.GOTOの予算費消期限から逆算 2.五輪開催へのGOサインから逆算 3.今年こそ卒業式、入学式を開催したい学校関係者からの突き上げ 4.歓送迎会での売り上げを見込んだ飲食店関係者によるロビイング 5.自棄を起こしました 午後5:13 - 2021年3月14日》』、「政府が出来の悪い中学生みたいな態度をキメてきているのだから仕方がない。ここは国民の側が説教をしてあげないとダメだ」、面白い見方でその通りだ。
・『《6.花見の宴会を切望する酔漢に媚びました 7.国民に自己責任を思い知らせる良い機会だと思いました 8.小池知事にまたしてもおいしいところを持っていかれるのが不快なので 9.河野太郎ワクチン担当相を早めに失脚させたいと思っているので 午後5:17 - 2021年3月14日》 無論、これらは底意地の悪い冗談以上のものではない。ただ、私自身は、ここに並べた解答案のうちのいくつかは、そんなにハズれてもいないだろうと考えている。 というのも、政府は、感染爆発の可能性を含みおいた上で、それでも何らかの「期限切れ」を意識して、その「期限」に追われるようにして、宣言解除に踏み切ったはずだからだ。 もうひとつ見逃せないのは、政府の人々が、何かを「空頼み」している可能性だ。 これは、昔からわが国のリーダーが窮地に陥ると非常に高い確率で陥るトラップで、なんというのか、われわれは 「超自然的な僥倖」や「神風」を期待して、そこに賭けてしまいがちな人々なのである。 あるいはこれは、日本人に限った話ではないのかもしれない。 世界中どこの国でも、特定の民族の中に含まれている一定数の愚かな人々は、誰もが同じように、最後には 「神なる偶然」だったり 「海が割れる奇跡」だったりする超自然の力にすがるようになるものなのかもしれない。 ここで、話は冒頭に戻るわけなのだが、「桜」だ。 私は、今回の宣言解除は、桜の開花と無縁ではないと考えている。 なぜというに、桜の花が咲いているこの限られた一時期、われら日本人の多くは、なぜなのか、平常心を保てなくなるからだ。 しかも、われわれは、桜の花に誘われて酔狂な振る舞いに及ぶことを、恥だと考えない。むしろ、落花狼藉の狂態を誇ってさえいる。 このあたりの機微については、もう少しくわしい説明が必要だろう。 というのも、桜を愛でる日本人の感覚がいかに異常であるのかについて常日頃私が考えている内容は、普通の日本人から見れば「偏見」以外のナニモノでもないはずだからだ。それゆえ、私自身、自分のこの「偏見」については、どれほど丁寧に説明を試みたところで、2割程度の人にしかわかってもらえないだろうと、あらかじめあきらめてもいる』、「政府の人々が、何かを「空頼み」している可能性だ。 これは、昔からわが国のリーダーが窮地に陥ると非常に高い確率で陥るトラップで、なんというのか、われわれは 「超自然的な僥倖」や「神風」を期待して、そこに賭けてしまいがちな人々なのである」、情けない話だ。「桜を愛でる日本人の感覚がいかに異常であるのかについて常日頃私が考えている内容は、普通の日本人から見れば「偏見」以外のナニモノでもないはずだからだ」、どういうことだろう。
・『以下、一応説明をするだけしてみる。 私が桜に強い印象を抱くようになったきっかけは、20代の頃にアルバイトをしていたラジオ局でいくつか話を聞かされたからだ。 その話というのは、「上野で花見をしている人たちはどうかしている」という、ごく当たり前のエピソードだった。 普通なら 「知ってました」と答えてそれでおしまいになる話だ。 しかし、話はそこで終わらなかった。 「でもなオダジマ。おまえはわかってないぞ」と、その私より3歳ほど年長の、ベテランのキャスタードライバーだった女性は強い調子で断言した。 「上野で花見をしている男たちが、どれほどアタマがおかしいのかは、その場でその狂った人間たちに囲まれた女じゃないとわからないんだよ」と彼女は言った。 大柄で、ふだんはこわいものなどひとつもなさそうに見える彼女が、「本当にこわかった」と振り返った現場は、後にも先にも上野の花見中継以外に存在しない。 彼女以外にも、ラジオのナマ放送で花見の現場中継をこなしたことのある女性リポーターは異口同音に花見客の異常さを訴えたものだった。 「地獄だよ。あそこは」と。 1週間も前から新入社員に場所取りのための野宿をさせることで上野の一等地に花見の宴の席を確保するタイプのオフィスには、やはりそれなりに狂った社員さんたちが集まるものらしく、彼らの飲みっぷりと暴れっぷりとセクハラっぷりは、およそ言語を絶するものだったというのだ。 もちろん、令和の時代の花見風俗は、1980年代前半の上野の花見ほどの狂態ではないのだろう。 でも、基本は変わっていない。 桜は、われら日本人を「花は桜木男は◯◯」式の、集団主義的な花びらの一片に変えてしまうことのできる植物だ。であるから、桜が咲いている時期、われわれは、忙しく散っていく花びらに思いをはせながら、極めて刹那的な人生観の中で暮らすことになる。 だからこそ、桜は、「宴会」や「同期の桜」や「散らばもろともえいままよ」式の、自棄っぱちなフレーズを召喚しつつ、その枝の下で酒を飲む男たちを同期の桜という極めて刹那的な絆で紐帯してやまないのである。 以前、何かの(たぶんテレビ番組の)アンケートで視聴者に 「日本が好きな理由」を尋ねたところ 「四季があるから」という回答が、かなり高い順位(たぶん2位か3位)だったことに驚かされたことがある』、「桜が咲いている時期、われわれは、忙しく散っていく花びらに思いをはせながら、極めて刹那的な人生観の中で暮らすことになる。 だからこそ、桜は、「宴会」や「同期の桜」や「散らばもろともえいままよ」式の、自棄っぱちなフレーズを召喚しつつ、その枝の下で酒を飲む男たちを同期の桜という極めて刹那的な絆で紐帯してやまないのである」、確かに「桜」には特別な意味があるのかも知れない。
・『私は、第一感で 「四季ならどこにだってあるだろ」「4つに分けるのかどうかはともかく、地球上で人間が居住している地域であれば、当然、固有の季節的な気候変動はあるよな」と思ったものなのだが、落ち着いて考えてみれば、この回答のキモは、 「日本に四季があること」そのものや「日本の四季が美しいこと」にあるのではない。 むしろ、人々が日本を愛する理由として「四季があること」を挙げたのは、彼らが、「四季の変化を繊細に感じ取るわたくしども日本人の感覚の特別さ」を強く意識していることの反映と考えるべきだ。 つまり、桜や紅葉や四季折々の風物の話をする時、われら日本人は、自分たちを世界に類を見ない繊細な感覚の持ち主として特別視するモードの中にいるわけなのである。 それゆえ、あるタイプの文芸愛好家は歳時記を暗記することで、自分の感覚がいよいよ研ぎ澄まされると思い込んでいたりするわけなのだが、それはそれとして、「季節」は、日本人に、「特権意識」を醸成せずにおかない。 どういうことなのかというと、「季節感」は私たちの中に 「これほどまでに季節の変化に敏感で繊細で上品でセンスの良い特別な私たちであれば、諸外国の野蛮な人たちとは別次元の何かを達成できるはずだ」 という夜郎自大を育てるのである。 昨年の6月、わが国の新型コロナウイルス感染による死亡者が、国際水準から見て異例に低い水準にあった当時、麻生太郎副総理がその理由について 「国民の民度のレベルが違う」と発言したことがあった。 さらに、麻生副総理は、この時に「民度」発言を批判されたことを根に持っていたらしく11月に再び同じ言葉を持ち出して日本人の「民度」を誇っている。 個人的には、一国の政治家が「民度」という言葉を使うこと自体、不見識極まりない態度だと思う。ついでに言えば、メディアは「民度」なる概念の差別性について、きちんとした見解を示すべきだとも考えている。 とはいえ、麻生副総理による二度にわたる「民度発言」が、それほど大きな問題にならず、結果としてスルーされたことは、やはり軽視できない。 どうして、スルーされたのだろうか。 答えは簡単。 スルーされた理由は、麻生さんがあらわにした他民族へのあからさまな偏見が、国民の間に広く共有されている国民的偏見だったからだ。 私はそう思っている。 どんなにひどい偏見であっても、国民の多数派が同じ偏見を抱いているのであれば、それは「偏見」として扱われない。 けしからぬ「偏見」として血祭りに上げられるのは、少数派の人間が抱いている少数の「偏見」だけなのだ。 つまり、麻生さんが思っている(そして口に出して言ってしまってもいる) 「日本人は民度が高い」という偏見(←これは、諸外国の国民は民度が低いという偏見とセットになっている)は、われら日本人の共通認識なのである。 そして、その日本人の民度の高さを証拠立てるひとつの傍証が、 「日本人の季節感の繊細さ」「桜を愛でる日本人の心根の潔さ」だったりするのだね』、「「日本人は民度が高い」という偏見・・・は、われら日本人の共通認識なのである」、私は「日本人は民度が高い」とは思わない少数派のようだ。
・『今回のコロナ禍についても、少なからぬ日本人が 「日本人なら大丈夫じゃないかな」という思い込みを抱いている。 しかもその思い込みを支えているのは 「繊細で賢明で上品な日本人なら、適切に感染を防ぎつつなおかつ経済も回すみたいな微妙な舵取りもできるのではなかろうか」「お上があえて明示的な指示を出さなくても、一人ひとりが高い意識を持っている民度の高いわれら日本人なら、きっとコロナを克服できるだろう」 といったあたりの無根拠な妄想だったりする。 事態は、非常にマズい段階に到達している。 国民の大多数がこういう思い込みを抱くにいたっているということは、われわれがそれだけ追い詰められているということだ。 私は、先の大戦の経過の中で、「神風」という言葉が使われ始めたのが、いつ頃からのことだったのかを、よく知らないのだが、現時点で多くの人々がそれを待望していることは、肌で感じている。 ついでに言っておくと、私は神風は吹かないと思っている』、「現時点で多くの人々が」「神風」「を待望している」、のが真実であれば、恐ろしいことだが、私はそこまでは至ってないと思う。
タグ:(経済社会的視点) パンデミック 「政治家のトップダウンが必要な有事において、平時のボトムアップの意思決定の仕組みを変えられなかったことが問題の本質」、とはさすが的確な指摘だ 「分科会メンバーの」「小林氏」の主張とは興味深そうだ 「文藝春秋」3月号に寄稿した「 コロナ第3波『失敗の本質』 「緊急時に司令塔があいまいな菅政権…分科会メンバーが指摘する “第3波で痛感した日本型組織の弱点”」 小林慶一郎 文春オンライン (その14)(緊急時に司令塔があいまいな菅政権…分科会メンバーが指摘する “第3波で痛感した日本型組織の弱点”、ワクチン確保計画は破綻寸前!? 河野ワクチン担当大臣周辺や各省庁の不協和音、小田嶋氏:宣言解除に神風は吹くのだろうか) 「PCR検査」についてはあれほど重要性が指摘されていながら、いまだに実施数が本格化しないのは、厚労省のサボタージュのような気がする AERAdot 「ワクチン確保計画は破綻寸前!? 河野ワクチン担当大臣周辺や各省庁の不協和音〈週刊朝日〉」 「承認手続きや薬害、副反応のリスクを考えてどうしてもおよび腰になり、最終判断が遅れた。ファイザーはなかなか決断できない日本を横目に、他国にワクチンを回すようになってしまった」、ワクチン入手では手痛い失敗である 「ワクチン確保を所管していたのは和泉洋人首相補佐官や、和泉氏と「コネクティングルーム不倫疑惑」が報じられたこともある厚労省の大坪寛子審議官らを中心としたチーム」、「不倫」騒動でワクチン入手交渉が放置されたとまでは思わないが、政府の無責任ぶりを如実に示している 「河野大臣」の守秘と情報公開のバランスをなどの手際の悪さには、失望した 日経ビジネスオンライン 小田嶋 隆 「宣言解除に神風は吹くのだろうか」 「この時期にあえて宣言を解除」した「決定的な理由が明らかにされているわけではない」、いつもの説明責任を放棄した政府のやり方だ 「政府が出来の悪い中学生みたいな態度をキメてきているのだから仕方がない。ここは国民の側が説教をしてあげないとダメだ」、面白い見方でその通りだ 「政府の人々が、何かを「空頼み」している可能性だ。 これは、昔からわが国のリーダーが窮地に陥ると非常に高い確率で陥るトラップで、なんというのか、われわれは 「超自然的な僥倖」や「神風」を期待して、そこに賭けてしまいがちな人々なのである」、情けない話だ 「桜を愛でる日本人の感覚がいかに異常であるのかについて常日頃私が考えている内容は、普通の日本人から見れば「偏見」以外のナニモノでもないはずだからだ」、どういうことだろう 「桜が咲いている時期、われわれは、忙しく散っていく花びらに思いをはせながら、極めて刹那的な人生観の中で暮らすことになる。 だからこそ、桜は、「宴会」や「同期の桜」や「散らばもろともえいままよ」式の、自棄っぱちなフレーズを召喚しつつ、その枝の下で酒を飲む男たちを同期の桜という極めて刹那的な絆で紐帯してやまないのである」、確かに「桜」には特別な意味があるのかも知れない 「「日本人は民度が高い」という偏見・・・は、われら日本人の共通認識なのである」、私は「日本人は民度が高い」とは思わない少数派のようだ 「現時点で多くの人々が」「神風」「を待望している」、のが真実であれば、恐ろしいことだが、私はそこまでは至ってないと思う
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パンデミック(経済社会的視点)(その13)(厚労省「PCR拡充にいまだ消極姿勢」にモノ申す あの中国が国内感染を抑え込んだ本質は何か、菅首相は逃げの一手 “8割おじさん”西浦氏の予算委出席拒否、パワハラ調査に揺れる旭川医大「病院長電撃解任」の深層、感染症法改正 「罰金」でも“逮捕”は十分可能 罰則軽減で妥協すべきではない) [パンデミック]

パンデミック(経済社会的視点)については、1月11日に取上げた。今日は、(その13)(厚労省「PCR拡充にいまだ消極姿勢」にモノ申す あの中国が国内感染を抑え込んだ本質は何か、菅首相は逃げの一手 “8割おじさん”西浦氏の予算委出席拒否、パワハラ調査に揺れる旭川医大「病院長電撃解任」の深層、感染症法改正 「罰金」でも“逮捕”は十分可能 罰則軽減で妥協すべきではない)である。

先ずは、1月14日付け東洋経済オンラインが掲載した医療ガバナンス研究所理事長の上 昌広氏による「厚労省「PCR拡充にいまだ消極姿勢」にモノ申す あの中国が国内感染を抑え込んだ本質は何か」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/403436
・『1月7日、菅義偉首相は1都3県に2回目となる緊急事態宣言を発令した。飲食店を中心とした営業規制に批判が集中している。一連の議論で抜け落ちていることがある。それはPCR検査体制の強化だ。 日本では、PCR論争が続いている。日本が世界で例を見ないレベルでPCR検査を抑制してきたことは広く知られている。(外部配信先では図表やグラフを全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください) PCR検査の議論は聞き飽きたと言われる方もおられることだろう。一体、どういうことだろうか。実は、第3波以降、世界ではPCR検査の見直しが進んでいる。本稿でご紹介したい』、安部前首相も検査拡大努力を約束したのに、何故増えないのだろう。
・『なぜ日本でPCR検査が増えないのか  まずは日本の状況だ。なぜ、日本でPCR検査が増えないかといえば、厚生労働省で医療政策を担う医系技官と周囲の専門家たちがPCR検査を増やす必要がないと考えているからだ。この姿勢は流行当初から一貫している。 例えば、政府の新型コロナウイルス(以下、コロナ)感染症対策分科会のメンバーである押谷仁・東北大学大学院教授は、2020年3月22日に放映されたNHKスペシャル『”パンデミック”との闘い~感染拡大は封じ込められるか~』に出演し、「すべての感染者を見つけなければいけないというウイルスではないんですね。クラスターさえ見つけていれば、ある程度の制御ができる」、「PCRの検査を抑えているということが、日本がこういう状態で踏みとどまっている」と述べている。 今となっては、間違っていたことは明白なのだが、この姿勢は現在も変わらない。11月25日の衆議院予算委員会で枝野幸男・立憲民主党代表から、PCR検査が増えない理由を質問された田村憲久厚生労働大臣は、「『ランセット』に掲載されている論文だが、(感染の)蓋然性が高いところで定期的に検査をやると、当該集団から感染を29~33%減らすことができるが、一般の集団に広く検査をした場合には、接触者調査とこれに基づく隔離以上に感染を減らす可能性は低い」と答弁している。 さらに、そのことを支持する事実として、「アメリカは1億800万回検査しているが、毎日十数万人が感染拡大している」ことを挙げている。 この説明は適切でない。田村大臣が紹介したのは、6月16日に『ランセット感染症版』が掲載した「CMMID COVID-19ワーキンググループ」のモデル研究だ(「Early dynamics of transmission and control of COVID-19: a mathematical modelling study」2020年5月1日)。確かに、この中で、彼らは、一般集団を広く検査しても感染は5%しか減らせないが、発症者を見つけ、家族とともに隔離し、さらに接触者をトレースすれば、感染を64%も減らすことができると推定している。 ただ、その後の研究で、多くの無症状感染者がいることが判明し、彼らは態度を変えた。「CMMID COVID-19ワーキンググループ」は、11月10日に「コロナ感染を検出するためのさまざまな頻度での無症状感染者へのPCR検査の有効性の推定」という論文を発表し、無症状の人へのPCR検査が有効で、積極的に検査を活用すべきと結論している。この論文はイギリスでは大いに話題になったようだが、田村厚労大臣は触れなかった』、海外の事例も日々新たなものが出てくるので、参考にするにはきちんとフォローすべきだ。
・『実は欧米は検査数が足りていない  では、PCR検査を「闇雲」にやっても流行が抑制できない欧米の現状はどう考えればいいのだろう。実は、欧米は検査数が足りていないのだ。表をご覧いただきたい。主要先進国と東アジアにおけるPCR検査と感染状況を示している。 注目すべきはPCR検査数を感染者で除した数字だ。1人の感染者を見つけるために、どの程度のPCR検査を実施したかを示している。中国が1808.7回と突出し、韓国66.6回、カナダ24.3回、イギリス22.2回、ドイツ21.0回、日本19.5回と続く。最下位はアメリカの12.7回だ。中国の142分の1である。 実は、コロナ対策を考えるうえで、中国のように「闇雲」にPCR検査をやることは合理的だった。コロナの特徴は感染しても無症状の人が多いことだ。無症状の人が巷にあふれれば、偶然、症状が出た発症者と濃厚接触者をしらみつぶしに探すだけでは、大部分の無症状感染者を見過ごすことになる。 無症状感染者は、どこにいるかわからないから、彼らを「隔離」(自宅を含む)しようとすれば、網羅的に検査するしかない。仮に住民の0.1%が無症状感染だとすると、1人の感染者を見つけるためには、1000人の検査が必要になる。まさに、中国が採った戦略だ。 1月5日、北京近郊の石家荘で54人の感染者が確認されると、1100万人の検査を実施することを決めたのも、このような戦略に従っただけだ。) コロナ対策が成功した国として、中国以外にはニュージーランド、台湾、ベトナムなどが存在する。このような国と中国は違う。それは、このような国は水際作戦が成功し、国内へのコロナの侵入を食い止めているのに対し、中国はいったん国内で感染が蔓延したのを抑制し、現在にいたるまで、その状態を保っているからだ。 日本では武漢に対して、中国政府が命じた厳しい都市封鎖にばかり関心が集まっているが、注目すべきは再燃を許さなかったことだ。PCR検査を徹底して、感染が小規模なうちに封じ込んだのである。これぞ、合理的なコロナ対策といっていい。世界は、PCR検査数を増やすのに懸命だ。 前述したように、欧米先進国は感染者数に比して、検査数が足りない。多くの無症状感染者を見落とし、彼らが市中で感染を拡大している。中国とは政治体制が異なる欧米先進国は、中国とは異なる方法で検査数を増やそうとしている。注目すべきはアメリカだ。産官学が協同で検査体制を急ピッチで整備している』、「中国のように「闇雲」にPCR検査をやることは合理的だった」、「無症状感染者は、どこにいるかわからないから、彼らを「隔離」(自宅を含む)しようとすれば、網羅的に検査するしかない」、「日本では武漢に対して、中国政府が命じた厳しい都市封鎖にばかり関心が集まっているが、注目すべきは再燃を許さなかったことだ。PCR検査を徹底して、感染が小規模なうちに封じ込んだのである。これぞ、合理的なコロナ対策といっていい」、ズバリ本質を突いた指摘だ。
・『アメリカでは自宅でできる検査キットが広がる  例えば、カリフォルニア大学サンディエゴ校は1月に入り、11台のPCR検査自動販売機をセットした。今後、1~2週間でさらに9台を追加する。同大学の学生はIDカードをスワイプするだけで、無料で検査できる。これまでの2週間に1回から、毎週1回検査を受けるように推奨されるという。 アメリカでは各地で無料あるいは定額で検査が受けられるが、多忙な現役世代はわざわざ検査を受けに行けない。このような人たちへの商品開発も進んでいる。 11月17日に、自宅で利用できる検査キット(Lucira COVID-19 All-In-One Test Kit)に緊急使用許可が与えられた。30分程度で結果が出る。ただ、このキットを入手するには医師の処方箋が必要だ。12月15日には処方箋不要の抗原検査(Ellume COVID-19 Home Test)に対して緊急使用許可が与えられた。そして、1月6日には、アマゾンがデクステリティ社の検査キットのオンライン販売を開始した。1パック約1万1300円だ。 企業も検査体制強化に協力している。ネットフリックスやゴールドマンサックスなどの一部の企業は、無症状の感染者を判別するために、企業が費用を負担し、検査を提供しはじめている。グーグルは9万人の社員に対して、毎週検査を実施する。) アメリカが本気になると、体制整備は一気に進む。このことを象徴するのが複数の検査をまとめられる「プール検査」の確立だ。昨年11月、デューク大学の医師たちが、プール検査の研究成果を発表した。この研究では、5つのサンプルをまとめて検査し、もし、陽性が出た場合に、個別に検査するという方法を用いても、感度は損なわれず、80%試薬を節約でき、さらに再検査の場合でも18~30時間程度の遅れで済んだ。 この研究成果は、アメリカの疾病対策センター(CDC)が発行する週報「MMWR」が掲載し、『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン』を発行するマサチューセッツ医師会も、この論文を『ジャーナル・ウォッチ』というニュース・レターの中で紹介した。そして、「プール検査の有効性は明白」と評している。一気にコンセンサスを確立したことになる。 プール検査の有効性については、昨年10月にルワンダの研究者が『ネイチャー』に報告しており、遅きに失した感があるが、アメリカが巻き返しに必死なのがわかる』、「アメリカ」では検査キットなどの開発競争が本格化してきたようだ。
・『日本は本気でPCR検査を増やすつもりがない?  日本は対照的だ。11月20日の衆議院経済産業委員会で、佐原康之・厚労省危機管理医療技術総括審議官は「現在、国立感染症研究所において、その検査性能および再検査を含む総コスト、時間等について研究を実施している」「非常に手間がかかるなど、実用化に向けても課題がある」と答弁し、いまだに臨床応用されていない。本気でPCR検査を増やすつもりがないことがわかる。 厚労省は流行当初から、PCR検査を懸命に抑制してきた。シンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ」(船橋洋一理事長)の調査により、政府中枢に対して「PCR検査は誤判定がある。検査しすぎると陰性なのに入院する人が増え、医療が崩壊する」と説明に回っていたことがわかっているし、7月16日には、コロナ感染症対策分科会は「無症状の人を公費で検査しない」と取りまとめている。 これは翌日に、塩崎恭久・元厚労大臣などが主導して、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」を閣議決定することへの対応だ。この中にPCRの拡大、感染症法の改正などが入っていた。 結局、日本におけるPCR検査の増加は、民間の動きを待つしかなかった。その嚆矢は12月4日に新橋駅前で操業を開始した「新型コロナPCR検査センター」だ。ウェブで予約すれば、検査センターを訪問して唾液を採取するだけで、翌日にはメールで結果が届く。1回の費用は3190円だ。同様の検査センターは続々と立ち上がっている。どこも希望者が殺到している。 ところが、このような動きを厚労省は快く思っていない。12月16日、朝日新聞は『民間PCR施設、都心に続々ばらつく精度、陽性なのに「陰性」も厚労省が注意喚起』という見出しの記事を掲載している。 私は、この記事を読んで、どのような根拠に基づき精度に問題があると主張しているのかわからなかった。根拠を示さなければ、単なる営業妨害だ。厚労省も、その意向をそのまま報じるメディアもいただけない。国家をあげて検査体制を強化しようとする世界とは対照的だ』、「アジア・パシフィック・イニシアティブ」の提言は厚労省の意向を踏まえたものの可能性がある。「理事長」の「船橋洋一」氏もとんだ食わせ者のようだ。
・『厚労省が方針転換しなければ迷走は続く  最近、政府は不特定多数の無症状者を対象とした無料のPCR検査を、都市部の繁華街や空港など多くの人が集まるところではじめる方針を打ち出した。 ただ、これは期待できないだろう。私はアリバイ作りと考えている。なぜなら、このような検査施設を立ち上げるのは3月とされているからだ。政府が本気でPCR検査を増やしたければ、民間検査センターを支援すればいい。検査サービスは多様化し、アメリカのように大学などさまざまな場所で検査を提供するようになるだろう。薬局で検査キットを販売し、通信販売を認めれば、さらに検査数が増える。 このような体制をとることは、厚労省が自らの過ちを認めることになる。これまでの彼らのやり方をみていると、そんなことは期待できない。現在、日本が適切な対応をとれない最大の障壁は厚労省医系技官と周辺の専門家の存在にあると私は思っている。彼らが責任を認め、人事を一新しなければ、このまま迷走が続くのは避けられない。菅首相のリーダーシップが問われている』、「現在、日本が適切な対応をとれない最大の障壁は厚労省医系技官と周辺の専門家の存在にある」、ここにメスを入れるには「菅首相のリーダーシップ」は頼りなさそうだ。

次に、1月26日付け日刊ゲンダイ「菅首相は逃げの一手 “8割おじさん”西浦氏の予算委出席拒否」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/284372
・『25日開かれた衆院予算委員会で、立憲民主党の長妻昭議員が、菅首相と自民党に対して抗議する場面があった。政府の新型コロナウイルス対策をめぐって、予算委に京都大教授の西浦博氏(理論疫学)の出席を求めたのに、自民党が「ブロック」したというのだ。 「民間人は呼ばない」というのが理由。しかし、コロナ第1波の際に人との接触を8割減らすことを求め、「8割おじさん」として名を馳せた西浦氏は現在も厚労省のアドバイザリーボードの指名委員を務めている。純粋な「民間人」にはあたらず、拒否の理由は通らない。 長妻議員は「都合の悪い方は呼ばないというのはあってはならない」「科学的に議論する姿勢が感じられない」と非難していたが、一体、どういう事情なのか。長妻議員にあらためて聞いた。 「西浦氏が今月13日のアドバイザリーボードに提出した資料について、予算委で議論しようと思っていました。緊急事態宣言の解除基準について、西村大臣は『東京で新規感染者が1日に500人を下回ることが目安になる』としましたが、西浦氏は『(2月に)500人で解除したら、4月14日には感染が元のレベルに戻ってしまう』と試算しています。資料は厚労省からもらったものなのに、なぜ拒否するのか」) 昨年春の緊急事態宣言時には、安倍前首相が「専門家の試算では、人と人との接触機会を『最低7割、極力8割』削減することができれば、2週間後には感染者を減少に転じさせることができる」と幾度も訴え、西浦氏の試算に乗っかっていた。だが、いまや菅政権にとって西浦氏は“煙たい存在”らしい』、「西浦氏の試算」は「緊急事態宣言の解除基準」に関わるので「予算委」の「出席」を「ブロック」されたのだろう。
・『実際、西浦氏は週刊文春(1月14日号)で、<緊急事態宣言の判断が遅かった><(変異種対策について)ビジネス往来を継続したのは生ぬるい>と批判。<安倍政権の頃と比較しても、感染症対策に関する専門家の意見が総理へと簡単には通らなくなっているかも知れません>ともこぼしている。前出の長妻議員が言う。 「普通なら西浦氏を拒否しませんよ。呼ばなければ、あること、ないこと言われますから。スキャンダルでもないのに。今の自民党には、そういう判断すらできる人がいないのでしょうか」 26日の予算委にも野党議員が西浦氏を呼ぼうとしたが、自民党が拒否したという。内閣支持率下落が止まらない菅政権には、逃げの一手しかないのか』、自民党の言論統制もここまで来たか、と溜め息しか出ない。

第三に、1月25日付けYahooニュースが転載したFRIDAY「パワハラ調査に揺れる旭川医大「病院長電撃解任」の深層」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/0a7066f58970241f9404ed015d171231aee19bde
・『1月25日付で、旭川医科大学病院の病院長が電撃解任された。昨年来問題が指摘されてきた「学長」が、ではない。学長から「(コロナ患者を)受け入れるなら、代わりにお前が辞めろ」と言われた「病院長」の古川博之氏が解任されたのだ。 「こんな暴挙がまかり通るとは…学内は驚き、呆れています」(旭川医科大病院の職員のひとり)』、コロナ禍の乗り切りで皆、必死なのに、お家騒動とは。
・『突然の、一方的な「説明会」の果てに  昨年12月に発売された「週刊文春」(12月24日号)で「学長の暴言」が報じられたことが発端となった「旭川医大パワハラ疑惑」問題。簡単に経緯を説明すると、旭川市内の民間病院・吉田病院から新型コロナの患者受け入れ要請を受けた旭川医科大病院長の古川氏が、吉田晃敏学長に受け入れを提案したところ「(吉田病院が)コロナをぐじゅぐじゅと撒き散らして」と問題発言したうえに、患者を受け入れるなら「代わりにお前が辞めろ」と暴言を吐かれた。 吉田学長の一連の言動に対して、文部科学省が「パワハラの疑いがある」として、異例の調査に入ってた。その騒動の渦中での「解任」であるから、普通は、調査の対象となっている吉田学長が解任されたと思うところ。 しかし、実際に解任されたのは、「被害者」の立場にある病院長。驚きが広がるのも当然だ。 関係者によると、1月25日昼前、学内一斉メールで「一連の報道に関する、職員への説明の会」を開催するという連絡があったという。なにごとかとかけつけたおよそ400人の医師や職員の前で、大学役員会のメンバーからあった「説明」は「学内の情報を外部に流し、病院を混乱させた古川病院長を解任する」というものだった。 「役員会からは、吉田学長が病院長に『辞めろ』と言ったのは『その時点でコロナ受け入れの体制が整っておらず、職員を守るための選択だった』という旨の説明がありました。だから『パワハラにはあたらない、と役員会議が判断した』と。 こんな説明で納得できるわけがありません。問題のすり替えだし、ハラスメントかどうかは、受けた側が判断することでしょう」(病院関係者)』、「文部科学省が「パワハラの疑いがある」として、異例の調査に入ってた。その騒動の渦中での「解任」、よほど図太い神経のようだ。
・『いくらなんでも…  説明会では「院長解任」の発表に、驚きと同時に諦めの空気もあったという。そんななか、ひとりの教授が質問に手をあげた。 「『この解任は納得できません。決定の経緯が不透明すぎるのでは』という質問でした。みんなが諦めかけていた中で、この質問をするのは勇気がいったと思います」(出席者) この問いに対し、役員会は「4時間にわたって話し合った、その結果である」とあっさり返答。しかし、「病院長の解任という重大事案について、たった4時間の会合で決めること自体おかしい」という声も聞こえてくる。 病院長「だった」古川氏は、昨年からの新型コロナ対策の先頭に立ち、スタッフの信頼も厚かった。年頭の挨拶で、 「我々は地域の病院として、患者さんたちを守っていかなきゃならない。ここまで職員みなさんほんとうに頑張ってきた。あと一歩、頑張りましょう」 と話し、これを聞いた職員は「涙が出た」という。 現場のスタッフは「古川先生の働きを知っています。土日も出てきて、病院を支えてました。古川先生だから、私たちも踏ん張ってこられたんです」と悔しさをにじませながら語った。別の医師は、 「今は病院にとってだけでなく、旭川、北海道にとって『有事』のときです。こんな内部事情で混乱している場合じゃない。これまでもこの組織でやりづらさを感じていましたが、今回は本当に『辞めたい』と思いました」と本音を明かしたうえで、 「目の前に患者さんがいる。だから、手を抜くことも辞めることもできないんです。私たち医療者はそうやって仕事をしています。組織としてダメだからといって、質を落としたり量を落としたりすることはできませんから…。 役員会はさまざまな『理由』をつけて説明をしている。しかし、医療は、ルールの前に倫理。なんだったら、仮にルールにそえなくても、倫理を優先する。それが私たちの仕事なんです」と苦悩を漏らした。 説明会では「当事者なので今回の決定には関与していない」と繰り返しアナウンスされ、壇上に座っていた吉田学長。しかし、最後にはマイクをもって「職員を守る。みなさんはファミリーですから」と発言したという。 「今、この切迫した時期にこんなことをして…そのうえで『家族』と言われてぞっとしました」(出席した関係者) 同大学は26日に記者会見を開き、解任に至る経緯を外部に向けても説明。古川氏が内部の情報を外部に漏らしたと結論づけたことや、マスコミの取材を受け学内を混乱させたことなどを解任の理由として挙げた。 旭川医科大病院は、日本最北の医療の砦といわれる。今日も、多くの患者がここを頼り、命をつないでいる。そんな旭川医科大病院の院長室は今、無人になっている。混乱が収束し、大学と病院が正常に機能し続けることを願うばかりだ』、「役員会」は「学長」の支配下にあるようだ。文科省の調査はどうなるのだろう。一刻も古川氏の復職を含め早く正常化してもらいたいものだ。

第四に、1月27日付けYahooニュースが掲載した郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士の郷原信郎氏による「感染症法改正、「罰金」でも“逮捕”は十分可能、罰則軽減で妥協すべきではない」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/byline/goharanobuo/20210127-00219612/
・『22日に閣議決定された感染症法改正案で、入院拒否や入院先から逃亡した場合に「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」とする罰則導入の規定が設けられていることに対して、野党やマスコミから批判が高まり、日弁連、保健師協会、ハンセン病患者団体等側も反対を表明していることを受けて、26日に与野党の修正協議が開かれ、入院拒否に対する「懲役刑の削除」罰金の「100万円以下」から「50万円以下」への引き下げが検討されていると報じられている(【感染者の入院拒否に懲役、削除へ調整 野党の反対受け】)。 しかし、この感染症法改正による罰則導入については、罰則を導入することで、検査や感染報告を躊躇させることになり、かえって感染拡大につながりかねないという実質的面からの指摘がある。 それに加え、【感染症法改正「入院拒否罰則導入」への重大な疑問】でも述べたように、現行法で、「入院勧告」に従わない場合に、本人の意思によらない「強制的な入院措置」をとることを認めているのに、「入院拒否」に対する罰則を適用することの意味がわからないという問題がある(厚労省は、「入院措置」は、本人の意思にかかわりなく入院させることができる「即時強制」と説明しているが、実際には使われていない)。 罰則導入自体をやめるべきであり、懲役刑の削除とか罰金刑の引下げ等による「妥協」は行うべきではない。 懲役刑を削除し、罰金刑を「50万円以下」に引き下げても、実際に罰則が適用される場合の「刑罰による人権侵害」は質的に変わるものではなく、決して小さなものとはいえない。 当然のことだが、罰金も刑罰であり、その執行の手続きは、基本的に懲役刑と変わらない。 もし、罰則が導入され実際に、「入院拒否」「入院者逃亡」に対して罰則が適用されるのはどのような場面であろうか。 所定の期日までに入院をせず、或いは入院先から逃亡して、別の場所に所在しているということであり、入院を強く拒んでいるからこそ刑罰が適用されるのであり、その執行の手段は「逮捕」しかない。感染防護措置をとった警察官が逮捕状により逮捕した上、釈放して、入院させることになるだろう。 「罰金50万円以下の罪で逮捕などされるのか」と疑問に思う人もいるだろう。 しかし、罰金は、科料とは異なり、財産刑としては最も重い刑罰であり、逮捕、勾留については、懲役刑と基本的に変わるところはない。 被疑者の逮捕の要件を定める刑訴法199条は、「軽微な犯罪」については、「住居不定か出頭拒否の場合」に限って逮捕を認めている。この「軽微な犯罪」の範囲は、刑法犯、暴力行為処罰法などでは「30万円以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪」とされ、それ以外の特別法犯については、「罰金2万円以下」とされている。 つまり、特別法犯である感染症法違反の犯罪については、「罰金50万円以下」でも逮捕が可能なのである。 実際に、「郵便不正事件」では、2009年4月、障害者団体向け郵便料金割引制度を悪用したとされる郵便法違反事件で、大阪地検特捜部が、ダイレクトメール(DM)の不正送付に関与したとして、障害者団体、大手家電量販店会社、広告代理店、大手通販・印刷会社などの10名の関係者を逮捕した。これは、「不法に郵便に関する料金を免れ、又は他人にこれを免れさせた者は、これを三十万円以下の罰金に処する。」という郵便法84条の規定に違反したというもので、「罰金30万円以下」の法定刑の罪だった。 この事件の背景には、郵政民営化には凡そ似つかわしくない古色蒼然たる規定が並ぶ「郵便法」の中に、「第三種郵便」について法律の体系の矛盾を抱えたまま、「郵便料金を不正に免れさせる行為」に対して罰金30万円以下の罰則が残っていたということがあった。そこに目を付けた大阪地検特捜部が、政界、官界をめぐる事件の摘発を狙って、多数の関係者の逮捕を行い、それが、後に、村木厚子氏の逮捕・起訴が無罪判決、証拠改ざんの発覚という、検察の大不祥事に発展した。その根本にあったのが、体系に問題がある法律に「罰金だけの罰則」が残されていたことだった。 今回の感染症法改正では、「入院勧告」「入院措置」の関係すら明確ではないという法律の体系的な不備があるのに、それに目を背けたまま、政府の感染症対策の失敗の連続を糊塗する目的で、入院拒否等への罰則の導入が行われようとしている。「罰金だけの罰則」であっても、絶対に許してはならない。 今、行うべきことは、実質的な必要性もなく、法律上も重大な問題がある罰則導入ではない。現行の感染法は、精神障害者を強制的に精神科の病院に入院させる「措置入院」と同様の規定で、感染者に対する「入院措置」を認めている。それを、感染症法の前文に書かれている「過去にハンセン病、後天性免疫不全症候群等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かすこと」「感染症の患者等の人権を尊重し」という理念に沿うよう、実施の手続・判断基準等を明確化し、「感染者の人権への最大限の配慮」と「感染防止対策の実効性の確保」の両立を図ることが、国会での議論の対象とされるべきである』、「罰則導入自体をやめるべきであり、懲役刑の削除とか罰金刑の引下げ等による「妥協」は行うべきではない」、「今回の感染症法改正では、「入院勧告」「入院措置」の関係すら明確ではないという法律の体系的な不備があるのに、それに目を背けたまま、政府の感染症対策の失敗の連続を糊塗する目的で、入院拒否等への罰則の導入が行われようとしている。「罰金だけの罰則」であっても、絶対に許してはならない」、「感染症法の前文に書かれている「過去にハンセン病、後天性免疫不全症候群等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かすこと」「感染症の患者等の人権を尊重し」という理念に沿うよう、実施の手続・判断基準等を明確化し、「感染者の人権への最大限の配慮」と「感染防止対策の実効性の確保」の両立を図ることが、国会での議論の対象とされるべきである」、なるほど、やはり今回のドタバタの法律改正には、かない無理があるようだ。
タグ:(経済社会的視点) (その13)(厚労省「PCR拡充にいまだ消極姿勢」にモノ申す あの中国が国内感染を抑え込んだ本質は何か、菅首相は逃げの一手 “8割おじさん”西浦氏の予算委出席拒否、パワハラ調査に揺れる旭川医大「病院長電撃解任」の深層、感染症法改正 「罰金」でも“逮捕”は十分可能 罰則軽減で妥協すべきではない) 上 昌広 東洋経済オンライン 「厚労省「PCR拡充にいまだ消極姿勢」にモノ申す あの中国が国内感染を抑え込んだ本質は何か」 安部前首相も検査拡大努力を約束したのに、何故増えないのだろう 海外の事例も日々新たなものが出てくるので、参考にするにはきちんとフォローすべきだ なぜ日本でPCR検査が増えないのか パンデミック 実は欧米は検査数が足りていない 中国のように「闇雲」にPCR検査をやることは合理的だった」、「無症状感染者は、どこにいるかわからないから、彼らを「隔離」(自宅を含む)しようとすれば、網羅的に検査するしかない」 日本では武漢に対して、中国政府が命じた厳しい都市封鎖にばかり関心が集まっているが、注目すべきは再燃を許さなかったことだ。PCR検査を徹底して、感染が小規模なうちに封じ込んだのである。これぞ、合理的なコロナ対策といっていい」、ズバリ本質を突いた指摘だ アメリカでは自宅でできる検査キットが広がる 日本は本気でPCR検査を増やすつもりがない? 「アジア・パシフィック・イニシアティブ」の提言は厚労省の意向を踏まえたものの可能性がある 厚労省が方針転換しなければ迷走は続く 現在、日本が適切な対応をとれない最大の障壁は厚労省医系技官と周辺の専門家の存在にある」、ここにメスを入れるには「菅首相のリーダーシップ」は頼りなさそうだ 日刊ゲンダイ 「菅首相は逃げの一手 “8割おじさん”西浦氏の予算委出席拒否」 「西浦氏の試算」は「緊急事態宣言の解除基準」に関わるので「予算委」の「出席」を「ブロック」されたのだろう。 26日の予算委にも野党議員が西浦氏を呼ぼうとしたが、自民党が拒否したという。内閣支持率下落が止まらない菅政権には、逃げの一手しかないのか』、自民党の言論統制もここまで来たか、と溜め息しか出ない yahooニュース FRIDAY 「パワハラ調査に揺れる旭川医大「病院長電撃解任」の深層」 旭川医科大学病院の病院長が電撃解任 「文部科学省が「パワハラの疑いがある」として、異例の調査に入ってた。その騒動の渦中での「解任」、よほど図太い神経のようだ いくらなんでも 「役員会」は「学長」の支配下にあるようだ。文科省の調査はどうなるのだろう。一刻も早く正常化してもらいたいものだ 郷原信郎 「感染症法改正、「罰金」でも“逮捕”は十分可能、罰則軽減で妥協すべきではない」 罰則導入自体をやめるべきであり、懲役刑の削除とか罰金刑の引下げ等による「妥協」は行うべきではない 今回の感染症法改正では、「入院勧告」「入院措置」の関係すら明確ではないという法律の体系的な不備があるのに、それに目を背けたまま、政府の感染症対策の失敗の連続を糊塗する目的で、入院拒否等への罰則の導入が行われようとしている。「罰金だけの罰則」であっても、絶対に許してはならない 感染症法の前文に書かれている「過去にハンセン病、後天性免疫不全症候群等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かすこと 「感染者の人権への最大限の配慮」と「感染防止対策の実効性の確保」の両立を図ることが、国会での議論の対象とされるべきである
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パンデミック(医学的視点)(その18)(新型コロナ 「ワクチンを打てば感染対策は不要」が間違いな理由、感染力高い変異種の病原性「弱いはずがない訳」 インフル研究の第一人者が見るコロナの先行き、いまだに「マスクに基準がない」という大問題 アメリカではようやく規格づくりが進んでいる) [パンデミック]

パンデミック(医学的視点)については、昨年12月14日に取上げた。今日は、(その18)(新型コロナ 「ワクチンを打てば感染対策は不要」が間違いな理由、感染力高い変異種の病原性「弱いはずがない訳」 インフル研究の第一人者が見るコロナの先行き、いまだに「マスクに基準がない」という大問題 アメリカではようやく規格づくりが進んでいる)である。

先ずは、本年1月10日付けダイヤモンド・オンラインが転載したヘルスデーニュース「新型コロナ、「ワクチンを打てば感染対策は不要」が間違いな理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/259387
・『ワクチンを打てばCOVID-19対策は不要?  新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチンの接種が一部の国で開始され、国内でも今春の接種開始が見込まれている。1年にわたり、外出自粛やマスク着用などの物理的な手段に限られていた感染予防対策だが、ようやく医学的な手段でウイルスに対抗できることになる。感染後の重症化リスクの高い基礎疾患のある人は、優先的にワクチン接種を受けられる可能性があり、糖尿病患者の期待も大きい。 ワクチン接種さえ受ければ以前の日常を取り戻せると、期待を膨らませている人もいるだろう。しかし、感染症の専門家は、既に供給が開始されているファイザー社やモデルナ社のワクチン、あるいは現在開発中のワクチンのいずれであっても、接種したからといって感染予防策が不要になるわけではなく、引き続きマスクを着用し、社会的距離を維持する必要があると警告している。 専門家によると、これらのワクチンの安全性と有効性を検証した臨床試験では、主にCOVID-19の重症化や死亡を防ぐことができるかどうかに焦点が当てられているという。よって、ワクチン接種を受けた人が感染した場合は無症状で経過することが多いと考えられるものの、その人から周囲の人にウイルスが伝播してしまう可能性の有無は、まだ分かっていない。 米ヴァンダービルト大学医療センターのWilliam Schaffner氏は、「ワクチンを接種していても感染する可能性があり、かつ他者に感染させる可能性もある。COVID-19のワクチン接種後にそのようなことが起きた事例はまだ確認されていないが、それが起きないと否定できる根拠もない」と述べている。 この意見には他の専門家も同意している。米ジョンズ・ホプキンス大学健康安全保障センターのAmesh Adalja氏もその一人だ。「ワクチン接種を受けた後に症状のない状態が続いていたとしても、ウイルスを保持しておらず他者に感染させることはないとの保証はできず、引き続き注意が必要だ」と同氏は語っている。そして、ワクチン接種後にもマスクを着用し社会的距離を保つことで、自分が無症候性の保因者になるリスクを下げられるとしている』、「接種したからといって感染予防策が不要になるわけではなく、引き続きマスクを着用し、社会的距離を維持する必要があると警告」、「ワクチンを接種していても感染する可能性があり、かつ他者に感染させる可能性もある」、期待が大きかっただけに、いささか失望した。
・『同氏はまた、「ワクチン接種後に、もし糖尿病患者や60歳以上などのハイリスクの人をハグしたりすると、その人たちに感染させてしまうかもしれない」と警告を発している。 一方、ワクチンの有効性が十分でないと指摘する声も聞かれる。接種により罹患リスクが低下するが、それでもわずかながらリスクは存在するという。米マウントサイナイ医科大学のWaleed Javaid氏は、「ワクチンの有効性は95%だ。つまり、5%のリスクが残されているということだ」と指摘する。 ワクチンが広く行き渡るまでの期間も問題だ。米フィラデルフィア小児病院のPaul Offit氏は、「米国内のすべてのハイリスク者を守るために必要な、推定3億回分のワクチンを生産するには、2021年の秋までかかる可能性が高い」と述べている。これに関連し、前出のJavaid氏は「今は忍耐の時期だ」と語る。同氏は、「現在われわれは効果的なワクチンを手にし、その供給が急速に広がっている。ワクチン接種者の増加とともに、このパンデミックは終息していくだろう」と、展望を示している。(HealthDay News 2020年12月16日)』、「「ワクチンの有効性は95%だ。つまり、5%のリスクが残されているということだ」と摘する」、言われてみれば、その通りだ。「米国内のすべてのハイリスク者を守るために必要な、推定3億回分のワクチンを生産するには、2021年の秋までかかる可能性が高い」、しばらくは「忍耐の時期」のようだ。

次に、1月28日付け東洋経済オンラインが掲載したノンフィクション作家の辰濃 哲郎氏による「感染力高い変異種の病原性「弱いはずがない訳」 インフル研究の第一人者が見るコロナの先行き」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/407734
・『イギリスなどで蔓延している新型コロナウイルスの変異株(変異種)が日本にも上陸しているが、どう対処したらよいのだろう。インフルエンザ研究の第一人者で、1968年の香港かぜの伝播経路を突き止めた北海道大学人獣共通感染症リサーチセンターの喜田宏特別招聘教授に話を聞いた。ウイルスが蔓延すれば、人に適合した変異株が必ず優勢になるのは自然のなりゆきだという。こういったウイルスは人の体内で増殖力が高く、つまりは病原性が高くなるとも指摘する(Qは聞き手の質問、Aは喜田氏の回答)。 Q:イギリスなどで新型コロナウイルスの変異株が出現し、世界中が警戒をしています。 A:大騒ぎになっているけど、これは当たり前のこと。人の間で感染を繰り返すうちに、体内で増殖しやすいウイルスが選ばれ、生き残った結果なんです。ウイルスは変異株の集団で、なかには増えやすい変異ウイルスもいる。その増えやすいウイルスが優勢になって感染を繰り返すと考えたらいい。 コロナウイルスの遺伝子RNAは、4種類の塩基が約3万個並んでいる。その配列に塩基が新たに挿入されたり、欠失したり、置換されたりして配列が変わることを遺伝子変異と呼んでいる。人の体内で細胞への侵入効率が高くなるなど、増殖しやすいウイルスが優勢になるわけです。それはイギリスや南アフリカ、ブラジルなど報告のあった国々だけでなく、日本でもまったく新しい変異ウイルスがいつ見つかるかわからない。すでに増殖しやすい変異ウイルスが生まれている可能性もある』、「ウイルスは変異株の集団で、なかには増えやすい変異ウイルスもいる。その増えやすいウイルスが優勢になって感染を繰り返すと考えたらいい」、なるほど。
・『増殖力の高いウイルスは要注意  Q:イギリスの変異株は感染性が70%高まったそうですが、一層の注意が必要になりますか。 A:70%というのが確実に証明されているわけではないが、感染性が高いということは、病原性が高いとみていい。人の体内でどんどん増えたら、重症化するのは当然でしょう。上気道や肺の細胞で増えるウイルスも、もしかしたら別の臓器、あるいは全身で増えるようなウイルスが優勢になるかもしれない。 昨年の春先に、あなた(聞き手の辰濃のこと)に「今のうちにかかったほうが得かも」って冗談で話したけど、人獣共通感染ウイルスが動物から人に感染してすぐは、さほど増殖効率がよくないはず。人から人に感染を繰り返すうちに、人に順応して体内でより増殖する、すなわち病原性の高い変異ウイルスが出てくることを警告したかった。 例えば、2009年の新型インフルエンザウイルス(H1N1)のパンデミックのとき、そのシーズンでの死者は国内で約200人でしたね。世界的にも15カ月で2万人足らずしか亡くなっていない。でも、その子孫ウイルスが起こす季節性インフルエンザでは、死者は何十倍にも膨れ上がっている。ウイルスが人に適合して、増殖する変異ウイルスが優勢になったから。 1918年にパンデミックを起こしたスペインかぜでも、第1波より、その子孫ウイルスが起こした第2波、第3波、すなわち季節性インフルエンザのほうが重症者も死者も多かった。感染性と病原性はリンクしていることを知っておいたほうがいい』、「人獣共通感染ウイルスが動物から人に感染してすぐは、さほど増殖効率がよくないはず。人から人に感染を繰り返すうちに、人に順応して体内でより増殖する、すなわち病原性の高い変異ウイルスが出てくる」、困ったことだ。
・『ウイルスを擬人化して議論するのは間違いのもと  Q:宿主を殺してしまうとウイルスが生存できないから、弱毒化すると話す専門家もいますが。 A:ウイルスを擬人化して進化論や適者生存、選択淘汰の議論をするのは、間違いのもと。ウイルスは賢いとか、ウイルスの戦略など「たとえ話」の範疇からはみ出している言葉が使われるのは嘆かわしい。何万年もかけて自然宿主との共生関係ができるのは、選択圧力(変異を促す要素)がなくなってから、の話です。いまの新型コロナウイルスには、当てはまらない。 第1に、毒性とか強毒化とか弱毒化とか言っている時点でおかしい。ウイルスは毒素ではないから正しくは「病原性」です。ウイルスの体内増殖に対する人の免疫応答が病気なのですから。 Q:先生は専門のインフルエンザウイルスの観点から、コロナウイルスを見ています。 A:新型コロナウイルスの正体を探るためには、インフルエンザウイルスを参考にするとわかりやすいかもしれません。インフルエンザウイルスの自然宿主はカモで、大腸で増殖して糞とともに排出されます。夏場はシベリアの営巣湖沼にいるが、秋になると南方へカモと一緒に飛来する。でも、病原性がないのでカモも死なないし、人に感染することもない。 でも、ウイルスが渡った先で他の鳥や動物に感染すると、新しい宿主で感染を繰り返すうちに、増殖する変異ウイルスが選ばれて感染が拡大する。それが鶏の間で受け継がれているうちに、養鶏場の鶏の全身で増殖する高病原性鳥インフルエンザウイルスが生まれるわけです。100%の致死率です。これは鶏の間で何百、何千代もの継代を経てやっと生まれる。新型コロナウイルスが人の間でどんどん感染を繰り返すうちに、増殖しやすいウイルスが優勢になるのと同じこと。 加えて、人の新型インフルエンザウイルスは、鳥のウイルスから直接、人に感染したものではない。 カギを握るのはブタです。ブタは人と鳥の両方のインフルエンザウイルスに感染するレセプターを持っている。レセプターとは、ウイルスの持つ鍵に合致する受容体のこと。 つまり、人と鳥の両方のインフルエンザウイルスの鍵穴を持っているブタに、両方のウイルスが同時感染し、体内で交雑してブタで受け継がれた結果、人に感染できるウイルスが生まれることがある。人類が経験したことのない型だと、これが新型インフルエンザウイルスとしてパンデミックを起こすことになる』、「人と鳥の両方のインフルエンザウイルスの鍵穴を持っているブタに、両方のウイルスが同時感染し、体内で交雑してブタで受け継がれた結果、人に感染できるウイルスが生まれることがある」、「ブタ」がパンデミックの仲介役になっているとはやれやれだ。
・『ウイルスの起源と伝播経路は未解明  Q:1968年の香港かぜの伝播経路を突き止めましたね。 A:カモ由来のウイルスがアヒルなどの家きんを経由してブタに感染し、同時に人のアジアかぜウイルス(H2N2)に感染したブタの体内で、この両方のウイルスが交雑して生まれたのが、H3N2の香港かぜであることを実証しました。2009年の新型インフルエンザウイルスも、メキシコかアメリカ南部のブタを介して生まれたことがわかっています。 全世界でブタの感染を注視しておくことが、新型インフルエンザウイルスの出現予測につながります。だから伝播経路の解明は大切なんです。重症急性呼吸器症候群(SARS)もコウモリが自然宿主だというのは確かかもしれないが、中間宿主が分かっていない。 新型コロナウイルスの伝播経路を解明するためにWHOの調査団が中国に入っているが、中国がどこまで調査に協力してくれるかにかかっている。そう簡単ではない。いずれにせよ、このウイルスの宿主と考えられるコウモリから直接、人に感染したとは思えない。必ず中間宿主がいるはず。 気になるのは、動物から人に感染を始めたばかりの新型コロナウイルスが、いきなりこれほど人に適合して中国・武漢で見られたような効率のいい感染爆発を起こすとは思えない。どこかで小規模の流行があって、インフルエンザと勘違いして見逃していた可能性もある。少なくとも、武漢の海鮮市場で人への感染が始まったという情報には疑問がある。 Q:変異株対策として、国境封鎖は有効ですか。 A:感染症に国境なんてありません。国境の封鎖がまったくダメだとは言わないが、いずれ入ってくるわけだし、日本だけで解決しようとしても意味はない。それに日本で増殖しやすい別種の変異株が生まれている可能性だってあります。全世界が連帯して対策を練らないといけないし、すべきことは、いまと同じです。マスクに消毒、それに3密をさけるなどの基本的な対策の徹底だ。) 実は、鳥インフルエンザウイルスの場合は、水を介して鳥に感染するのが主だが、感染した鳥を食べたカラスやアザラシが全身感染して死んでいるケースを何回も目撃した。個人的な感触だが、飛沫感染より胃に入ったほうが重症化するような気がする。だから、ウイルスの付いた手で食事をしないよう手洗いは重要だと、知人には伝えている。 とにかくいまは、感染拡大を止めることに力を注ぐべき。重要なのは経済か感染防御かで、あやふやな対策を講じないこと。そもそも両立させるのは無理です。優先順位を決めて失敗を恐れずにやること。命を最優先するためにはどうしたらよいかを考えるべきだと思います』、「いまは、感染拡大を止めることに力を注ぐべき。重要なのは経済か感染防御かで、あやふやな対策を講じないこと。そもそも両立させるのは無理です」、その通りだ。
・『ワクチンは感染を防がない  Q:ワクチンが間もなく日本でも接種される予定ですが。 A:変異株に対するワクチンの有効性は、塩基配列が少しくらい変わったとしても、抗体を誘導する抗原を決める部分に大きな変異がない限り大丈夫だとは思う。世界中の人に免疫ができた後、選択圧力が加わって、その部分に変異が起きる可能性はゼロではないが。流通し始めたメッセンジャーRNA(mRNA)のワクチンは、人類史上初めての試みで、効き目と副反応の程度については未知数です。 これまでのワクチンは不活化ワクチンが主流で、有効性に疑問符が付けられていた。今回のmRNAワクチンは90%とか95%とか言われる有効性だけど、そもそも感染を完全に防ぐことはできない。気をつけなければならないのは、ワクチンを打っても症状を抑えるが、無症候や軽症だとしても少量ながらウイルスは排出する。ウイルスを撲滅できるわけではない。 中国では、鳥インフルエンザのワクチン製造を国策として進めている。そのために鳥インフルエンザウイルスがなかなか消えないのと同じ理屈です。ワクチンは発症を抑えるが、感染しても、それに気づかない。結果的にウイルスが広がってしまっている。昨年から今年にかけて日本でも相次いでいるH5N8鳥インフルエンザウイルスによる養鶏場の被害も、このため。 新型コロナウイルスも、ウイルスの特性をよく解析したうえで対策を立てないと、間違った方向に進んでしまうと思いますよ』、「ワクチンを打っても症状を抑えるが、無症候や軽症だとしても少量ながらウイルスは排出する。ウイルスを撲滅できるわけではない」、「ワクチンは発症を抑えるが、感染しても、それに気づかない。結果的にウイルスが広がってしまっている」、大いに留意すべきだ。

第三に、1月17日付け東洋経済オンラインが転載したThe New York Times「いまだに「マスクに基準がない」という大問題 アメリカではようやく規格づくりが進んでいる」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/404218
・『現在、10万以上の種類のフェイスマスクが売られている。絹製のもの、綿製のもの、合成繊維のものがあり、フィルター付きのものとないものがある。またオーバーヘッドバンド式のものと耳に掛けるものがある。キラキラがついたもの、ひまわり柄のもの、友好的なあいさつや侮辱する言葉がついたもの、漫画のキャラクター柄がついたものがある。 こうしたマスクに欠けているのが、どの程度感染粒子を防ぐことができるかを示す表示であり、この欠如はコロナ禍にあって公衆衛生当局者をいらだたせている。専門家の多くは、デザインによってその効果に大きな幅があると指摘しており、中にはほとんど粒子を除去しないものもあるとしている』、日本では大学入試の共通試験で、鼻出しマスクをした受験生が監督者の注意に従わず、受験が無効化される問題が起きたばかりだ。「マスク」を軽視していたアメリカで「マスクに基準がない」のは当然だろう。
・『安全なマスクを身につけているかわからない  「もっとも根本的で、基本的な疑問はどれが最も安全なマスクなのか、そうしたマスクを自分や、自分の家族、子どもたちが持っているか、ということだ」と、昨年8月にアメリカ・メリーランド州の副書記官としての職を辞したフラン・フィリップス氏は語る。「われわれがいまだにそうした情報を持っていないというのは驚くべきことだ」。 それももうすぐ変わるかもしれない。疾病対策センター(CDC)は最低限度のフィルター効果基準を策定し、どの製品がそうした基準を満たすのかを示す表示を作ろうとしている。というのも、マスクやフェイスカバーの市場は巨大化していると同時に混乱しているからだ。 CDCの一部門であり、「NIOSH」として知られる国立労働安全衛生研究所は、ASTMインターナショナル(かつてのアメリカ材料試験協会)とともに粛々とガイドラインを書き続けてきた。それらは近々に公表されることが予想されている。 「基準を設けることによって、出回っているマスク製品を評価する首尾一貫した見方を得ることができ、どの程度の予防効果を期待できるのか知ることができる」と、NIOSHの国立個人用保護具技術研究所の所長マリアン・ダレッサンドロ氏は話す。 パンデミックが始まって以来、マスクやフェイスカバーに対するアメリカ政府の監督はほとんどなされてこなかった。食品医薬品局(FDA)とCDCそれぞれが産業を監督する権限を持っている。入手可能なうち最も予防力のあるN95マスクについてはFDAとNIOSHがそれぞれ監督権限を持っているが、多くのアメリカ人が身につけている布切れのようなマスクはいかなる規制当局も監督権限を持っていない。 昨年4月、FDAが緊急措置を公表したときはちょうど医療施設が防護服などを確保しようと躍起になっており、マスクの売り上げも急激に伸びた。この時の発表を見ると、マスクを販売する会社に対してFDAが規制等を講じることはない、と部分的には読み取れる』、「疾病対策センター(CDC)は最低限度のフィルター効果基準を策定し、どの製品がそうした基準を満たすのかを示す表示を作ろうとしている」、「国立労働安全衛生研究所は、ASTMインターナショナル・・・とともに粛々とガイドラインを書き続けてきた。それらは近々に公表されることが予想」、どんなものになるのだろう。日本の当局も直ぐ追随するのだろう。
・『「マスクの効果は0%〜80%」  一方、FDAは同時にこうしたマスクは「液体防御性やろ過効率の基準を満たすかもしれないし、満たさないかもしれない」とも述べていた。もっともこうした警告が市場を弱めることはなく、多くの効果が鈍い製品が売られているのはFDAの責任だと非難する専門家もいる。 「FDAには状況改善に向けてできることがたくさんあった。とくにどのマスクが有効で、どのマスクがそうでないのか、という研究が世に知れ始めた頃だったのだから」と、非営利の健康政策団体である国立健康研究センターの所長ダイアナ・ズッカーマン氏は話す。 「FDAはマスクをぴったり着用すること、少なくとも二層の布でできており、伸縮性の素材で作られていないことといったガイドラインを発表することだってできたはずだ。かわりに会社間の自由競争になってしまった」 マスクの効果は「素材の構成、層の数、層の接着の仕方によって0%から80%」の幅が生じることがある、と防護装備コンサルティングサービスの会長デール・フリーム氏は語る。同氏はまた、マスクのガイドライン作成に関わる基準策定作業部会のメンバーでもある。 マスクの絶対的な基準はN95である。このマスクはぴったり肌に密着し、とても小さな粒子でも少なくとも95%を除去することができる。だがN95マスクは一般的に医療従事者に用意されたものであり、感染爆発が起こって以来品薄になっている。一部の病院はN95を確保するために、闇市場で手に入れようとしていた。 こうした品不足分を補うためにFDAは昨春、KN95の販売を認可した。アメリカのN95に相当する中国産のものだ。しかしFDAはただちに不正かつ偽造の製品を見つけ、許容できるKN95の輸入範囲を狭くした。それでもいまだに不正品が横行しており、無数の会社がFDAの基準に満たないマスクに「KN95」の表示をつけている。 予防の観点でN95より一段劣るものが、FDAが認可した外科手術用マスクであり、特定の基準を満たさなければならない。外科手術用マスクもまた、多くの企業によってコピーされ、予防レベルが同等ではない模造品が出回るようになった。 そしてもちろん荒ぶる西部のスタイルがある。あらゆる使用可能な生地から作り上げた何百万とあるマスクのことだ。中にはバンダナやゲートルといったものもある。バンダナとゲートルは首の周りに巻き付けた生地をループ状にして1つにつなげたもので、伸ばして顔の下半分を覆うことができる』、「荒ぶる西部のスタイルがある]、いかにもアメリカらしい。,
・『国主導のマスク認可プログラムが必要  まったくマスクをしないよりは、どんなマスクでも付けたほうがいいと公衆衛生の専門家たちは言う。CDCはマスクに関する自らのガイダンスを何度となく改定し、密に編み込まれた多層構造の生地のほうが一層の生地もしくは緩いニットから作られたマスクよりも予防効果が高いとしている。これは装着している人だけでなく、その人が接触する人たちにとってもそうだとしている。 ただし、CDCのウェブサイトはフィルター付きのマスクがフィルターのないマスクよりも予防効果があるかどうかについて明らかにしていないし、合成繊維が綿やそのほかの素材と比較してどうなのかについても明らかにしていない。 「マスクをテストして認定する国主導の機関が必要だし、一般の人々にマスクの使い方や手入れ方法などを伝える必要性もある」と、バージニア工科大学で土木環境工学の教授を務めるリンゼイ・マー氏は語る。同氏は空気中の浮遊ウイルスに関する専門家でもある。 アメリカ政府と産業界の代表者で構成される作業部会は、製造業者が最高ろ過率と最低ろ過率を製品表示に入れられるようにした。最低の基準は20%で、最高は50%だ。 一見低いように見えるが、予防効果は低くない。ろ過効率とは0.3ミクロン大の粒子をろ過する場合の製品効率に基づく。0.3ミクロンは一般に最も貫通力のある粒子としてNIOSHのテストで基準とされている。 「0.3ミクロンで20%の効率ということは、1から2ミクロンの粒子では50%の効率ということになり、粒子をブロックする効率が80%の場合は、4から5ミクロンもしくはそれ以上の粒子ということになる」とマー氏は言う。「この数値のマスクであれば有用だと言える」。 マー氏によると、コロナウイルス自体は0.1ミクロンではあるが、だいたい0.5ミクロン以上のエアロゾルに包まれて運ばれる』、「アメリカ政府と産業界の代表者で構成される作業部会は、製造業者が最高ろ過率と最低ろ過率を製品表示に入れられるようにした」、やはりこうした標準は必要だろう。
・『信頼できる研究所での製品テストが必要  基準策定の助手を務めているジェフリー・スタル氏が語るには、作業部会は「呼吸しやすさ」の点でもマスクとフェイスカバーを評価していくという。基準策定プロジェクトは長期にわたる仕事だった、と彼は話す。 ASTMの規格を満たしていると表示するには生産業者はまず、自社製品を信用のある研究所で製品テストをしてもらう必要がある。また、マスクが国民の多くに十分にフィットすることも示さなければいけない。これをクリアできた場合、製品あるいはパッケージにASTMの規格を満たしていると表示することができる。ただし、表示は強制されるものではない。 ハーバード大学の政治学教授、ダニエル・カーペンター氏はNIOSHの基準を策定する仕事を「規制における起業化精神」と呼んだ。 「『たとえ正式な規制の道具を持っていないにしても、今持っている道具を使おう』と言っているようなものだ」とカーペンター氏は話す。「これは従来とは違う規制のあり方で、これによって極めて重要な規制効果を得ることができる。なぜならもし基準を満たしていなければ、承認の印を得ることができないのだから」 フリーム氏もこの基準が広まることを期待している。「今回できた基準は非常にいいものだ」と同氏は話す。「製造業者はこれに合わせて製品をデザインするだろうし、市場に出荷する製品とパッケージにも規格を満たしているか表示するだろう。消費者もその商品を信頼することができる」。 「ショッピングサイトで売り出されている多く、そして、隣人の車庫で作られているような製品の多くはこの規格を満たすことはできないだろう」 』、「ASTMの規格を満たしていると表示することができる」ためには、「自社製品を信用のある研究所で製品テストをしてもらう必要がある。また、マスクが国民の多くに十分にフィットすることも示さなければいけない」、などの努力も求められるようだ。日本でもマスクの規格づくりを検討すべきだ。
タグ:パンデミック (医学的視点) (その18)(新型コロナ 「ワクチンを打てば感染対策は不要」が間違いな理由、感染力高い変異種の病原性「弱いはずがない訳」 インフル研究の第一人者が見るコロナの先行き、いまだに「マスクに基準がない」という大問題 アメリカではようやく規格づくりが進んでいる) ダイヤモンド・オンライン ヘルスデーニュース 「新型コロナ、「ワクチンを打てば感染対策は不要」が間違いな理由」 ワクチンを打てばCOVID-19対策は不要? 接種したからといって感染予防策が不要になるわけではなく、引き続きマスクを着用し、社会的距離を維持する必要があると警告 「ワクチンを接種していても感染する可能性があり、かつ他者に感染させる可能性もある」、期待が大きかっただけに、いささか失望した 「「ワクチンの有効性は95%だ。つまり、5%のリスクが残されているということだ」と摘する」、言われてみれば、その通りだ 「米国内のすべてのハイリスク者を守るために必要な、推定3億回分のワクチンを生産するには、2021年の秋までかかる可能性が高い」、しばらくは「忍耐の時期」のようだ 東洋経済オンライン 辰濃 哲郎 「感染力高い変異種の病原性「弱いはずがない訳」 インフル研究の第一人者が見るコロナの先行き」 「ウイルスは変異株の集団で、なかには増えやすい変異ウイルスもいる。その増えやすいウイルスが優勢になって感染を繰り返すと考えたらいい」 増殖力の高いウイルスは要注意 「人獣共通感染ウイルスが動物から人に感染してすぐは、さほど増殖効率がよくないはず。人から人に感染を繰り返すうちに、人に順応して体内でより増殖する、すなわち病原性の高い変異ウイルスが出てくる」 ウイルスを擬人化して議論するのは間違いのもと 「人と鳥の両方のインフルエンザウイルスの鍵穴を持っているブタに、両方のウイルスが同時感染し、体内で交雑してブタで受け継がれた結果、人に感染できるウイルスが生まれることがある」、「ブタ」がパンデミックの仲介役になっているとはやれやれだ ウイルスの起源と伝播経路は未解明 「いまは、感染拡大を止めることに力を注ぐべき。重要なのは経済か感染防御かで、あやふやな対策を講じないこと。そもそも両立させるのは無理です」 ワクチンは感染を防がない ワクチンを打っても症状を抑えるが、無症候や軽症だとしても少量ながらウイルスは排出する。ウイルスを撲滅できるわけではない ワクチンは発症を抑えるが、感染しても、それに気づかない。結果的にウイルスが広がってしまっている The New York Times 「いまだに「マスクに基準がない」という大問題 アメリカではようやく規格づくりが進んでいる」 鼻出しマスクをした受験生が監督者の注意に従わず、受験が無効化される問題が起きたばかりだ 安全なマスクを身につけているかわからない 「マスク」を軽視していたアメリカで「マスクに基準がない」のは当然だろう 疾病対策センター(CDC)は最低限度のフィルター効果基準を策定し、どの製品がそうした基準を満たすのかを示す表示を作ろうとしている 「国立労働安全衛生研究所は、ASTMインターナショナル・・・とともに粛々とガイドラインを書き続けてきた。それらは近々に公表されることが予想」 どんなものになるのだろう。日本の当局も直ぐ追随するのだろう 「マスクの効果は0%〜80%」 「荒ぶる西部のスタイルがある]、いかにもアメリカらしい 国主導のマスク認可プログラムが必要 「アメリカ政府と産業界の代表者で構成される作業部会は、製造業者が最高ろ過率と最低ろ過率を製品表示に入れられるようにした」、やはりこうした標準は必要だろう 信頼できる研究所での製品テストが必要 「ASTMの規格を満たしていると表示することができる」ためには、 「自社製品を信用のある研究所で製品テストをしてもらう必要がある。また、マスクが国民の多くに十分にフィットすることも示さなければいけない」 などの努力も求められるようだ
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パンデミック(経済社会的視点)(その12)(医療危機に「国民のがんばり」で立ち向かう 戦時中と変わらぬ日本の姿、「本当に1カ月で解除できるのか」中途半端な緊急事態宣言にある巨大リスク 「政府はこの1年何をしていたのか」。「医療崩壊」はもう起きている…遅すぎた宣言発令で見えた菅政権のお粗末ぶり) [パンデミック]

昨日に続いて、パンデミック(経済社会的視点)(その12)(医療危機に「国民のがんばり」で立ち向かう 戦時中と変わらぬ日本の姿、「本当に1カ月で解除できるのか」中途半端な緊急事態宣言にある巨大リスク 「政府はこの1年何をしていたのか」。「医療崩壊」はもう起きている…遅すぎた宣言発令で見えた菅政権のお粗末ぶり)を紹介しよう。

先ずは、1月7日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「医療危機に「国民のがんばり」で立ち向かう、戦時中と変わらぬ日本の姿」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/259102
・『緊急事態宣言の再発令で疲弊する医療機関にトドメか  いよいよまた、緊急事態宣言が発出される。 「再び全国で緊急事態宣言を出すべきだ」という声が世論調査などで6割を超え、専門家などからも「遅すぎだ」「もっと早く出すべきだった」という声があふれる中で、こんなことを言うと「非国民」扱いされてしまうかもしれないが、筆者は今回の緊急事態宣言には反対だ。 まず、よく言われることだが、大した休業補償がない中で8時以降の営業をやめさせるというのは、飲食業などの人々への負担があまりに大きい。前回の緊急事態宣言後に廃業や失業が相次いで、コロナの死者数を上回るほどの自殺者が出たことを踏まえると、社会へのダメージが大きすぎる。 また、ただでさえ疲弊する医療機関にトドメを刺す恐れもある。 昨年末、『医療崩壊の真実』(エムディエヌコーポレーション)を上梓した、全国800以上の急性期病院のビッグデータを有するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパンの分析でも、緊急事態宣言を境に多くの病院の経営が急速に悪化していることが明らかになっている。外出自粛で新規感染者数は減ったが、同時に感染を恐れてコロナ以外の患者も病院に近づかなくなったことで、通常の医療をしている病院の収入がブツリと途絶えてしまったからだ。 人の流れを止めれば、確かに感染者数は減る。が、それは「カネ」の流れを止めることでもあるので、多くの人々が「経済死」する。医療は商売ではないが、医療費で運営されている以上、この構造はそれほど変わらない。つまり、緊急事態宣言の乱発は回り回って、疲弊する医療従事者の皆さんの「経済死」を招くことになり、医療体制をこれまで以上にシビアなものにするだけなのだ。 という話をすると、「これだけ感染者が出ているのに、経済死だなんだと言っているような場合ではない!」と怒る方たちがたくさんいらっしゃると思うが、筆者からすれば、いくらコロナを恐れるからといって、それはあまりにも「経済死する人」の命を軽視している』、「筆者は今回の緊急事態宣言には反対だ」、私とは正反対だが、「疲弊する医療従事者の皆さんの「経済死」を招く」との見方を紹介するため取上げた。
・『国民に「経済死」を強いる政府がまだ手を尽くしていないこと  本来、国家が国民に「経済死」を強いるなどということは、最後の最後にやる奥の手だ。しかし、今の日本政府はまだ手を尽くしたとは言い難い。 その最たるものが、コロナ医療資源の「偏在」の解消である。 今回の問題の本質は、1400万人という世界有数の大都市であり、医師が4万人以上、看護師が10万人以上もいる東京が、コロナ重症患者100人たらずで「崩壊」してしまったように、日本の医療資源のポテンシャルを活かしていない「戦略ミス」にあることは明白だ。 前回の「『多すぎる病院』が、コロナ禍で医療現場の危機を招きかねない理由」の中でも触れたが、世界一病院も病床も多い日本で、諸外国と比べてケタ違いに数が少ない感染者、重症者によって医療がパンクをしてしまっているのは、よく言われる「2類相当の指定感染症」という非効率な対応方針もさることながら、コロナ治療に投入する医療資源が偏りすぎていることが大きい。 わかりやすく言えば、一部の病院だけに重症患者が集中して「野戦病院」のようになっている一方で、コロナ患者を受け入れることなく、いつも通りにのんびりとした診療を行っている病院も山ほどあるのだ。 この「偏在」の問題を解消したうえで、それでもなお持ちこたえられないというのなら、営業自粛でもロックダウンでもなんでもやればいい。というか、躊躇なくやるべきだ。 しかし、今のコロナ医療はまだ見直すべきところが山ほどある。にもかかわらず、早々に「国民のがんばり」に依存するのは、あまりにもご都合主義というか、筋が違うのではないかと申し上げたいのだ。 「コロナの専門家でもないくせに、わかったような口を叩いて、医療従事者にすまないと思わないのか!」というお叱りを受けるだろうが、国民の一致団結が求められるムードの中であえてこんなことを言わせていただいたのは、これが日本の陥りやすい「負けパターン」だからだ。 「無策」を放置して、「国民一丸となって頑張るぞ」と突き進むと、結局最前線で戦っている人たちや国民に、多数の犠牲者が出る。そんな悲劇が過去にもあった。そう、先の太平洋戦争だ。 いろいろな分析がなされているが、日本が戦争に敗れてしまった原因の1つに「無策」があったということに、賛同する方は少なくないのではないか。 その象徴が、一説には140万人とも言われる日本軍の膨大な餓死者だ。自身も復員経験のある歴史学者の藤原彰氏の『餓死した英霊たち』(ちくま学芸文庫)によれば、日中戦争以降の軍人・軍属の戦没者数約230万人のうち、140万人(全体の61%)は餓死、もしくは栄養失調による病死だと推察されるという』、「一部の病院だけに重症患者が集中して「野戦病院」のようになっている一方で、コロナ患者を受け入れることなく、いつも通りにのんびりとした診療を行っている病院も山ほどあるのだ。 この「偏在」の問題を解消したうえで、それでもなお持ちこたえられないというのなら、営業自粛でもロックダウンでもなんでもやればいい。というか、躊躇なくやるべきだ」、「「無策」を放置して、「国民一丸となって頑張るぞ」と突き進むと、結局最前線で戦っている人たちや国民に、多数の犠牲者が出る。そんな悲劇が過去にもあった。そう、先の太平洋戦争だ」、同感である。
・『「国民のがんばり」に頼って大量の犠牲者を出した戦時中の教訓  なぜこんなことが起きたのかは、専門家によって意見もさまざまだ。「兵站」を軽視していたという人もいれば、「いや、日本軍のインフラは当時でも世界トップレベルだった。能力以上に戦場を広げすぎたことが敗因だ」という人もいる。 いずれにせよ、「お国のために1人でも多くの鬼畜米英を殺して来い!」と送り出され、時に玉砕まで命じられた日本の若者たちの多くは、戦闘ではなく飢えや病で亡くなっているのだ。「無策」のツケを「国民のがんばり」で払うという意味では、これほどわかりやすく、これほど残酷なケースはない。 もちろん、この構造は戦地の兵士だけではなく、国民にも当てはまった。「欲しがりません勝つまでは」などというスローガンのもとで、「贅沢は慎め」と自粛ムードが社会を支配する中で、国民一丸となって頑張った。飛行機をつくる鉄が足りないと鍋や釜を差し出して、食料も取り上げられて「経済死」をする人もたくさんいたが、「戦地で戦う兵隊さんのため」と文句を言わずに歯を食いしばった。 しかし、戦地で140万人の餓死者が出たことからもわかるように、この「国民のがんばり」は意味がなかった。戦争に負けたのは、日本人の「がんばり」が足りなかったからではなく、もっと根本的な国家の方針や、戦争のやり方が間違っていたからだ。 つまり足りなかったのは、世の中のムードに流されず、「この方向で突き進んだらやばいかも」と立ち止まる勇気や、自分たちが置かれた状況を客観的に分析する、冷静な視点だったのである。 そんな戦時下のムードと、昨年1年間の日本のムードは妙に重なる。 「コロナに負けるな」「みんなでステイホーム」などのスローガンのもと、自粛ムードが支配する社会において、国民一丸となって頑張った。営業自粛を強いられて「経済死」をする人もたくさんいたが、「現場で戦う医療従事者のため」と文句を言わずに歯を食いしばった。責任感の強い人たちは、自粛をしない人たちを探し出して注意もした。感染拡大地域のナンバーをつけた自動車に石を投げる人もいた。やっていることは、戦時中の「非国民狩り」と変わらなかった。 しかし、そんな国民の血のにじむような努力も、最前線の医療従事者を救うことはできなかった。日本看護協会が昨年、コロナ感染者を受け入れた病院の21%で看護師が離職したことを明らかにしたことからもわかるように、「第1波」時程度の感染者数であっても、コロナ医療の現場は日本軍のガタルカナル島の戦いのように、厳しい消耗戦を強いられたのだ。 戦時中の国民の自粛が最前線の兵士にとって何の役にも立たなかったように、「国民のがんばり」がコロナ医療の現場に届いていないのである』、「足りなかったのは、世の中のムードに流されず、「この方向で突き進んだらやばいかも」と立ち止まる勇気や、自分たちが置かれた状況を客観的に分析する、冷静な視点だった」、「責任感の強い人たちは、自粛をしない人たちを探し出して注意もした。感染拡大地域のナンバーをつけた自動車に石を投げる人もいた。やっていることは、戦時中の「非国民狩り」と変わらなかった。 しかし、そんな国民の血のにじむような努力も、最前線の医療従事者を救うことはできなかった」、その通りだ。
・『政府が後ろ向きな緊急事態宣言を自ら求める日本人の「自粛意識」  ただ、このような共通点もさることながら、筆者が今の日本と戦時中の日本のムードが丸かぶりだと感じるのは、政府が後ろ向きな「緊急事態宣言の発出」を多くの国民が望んでいるという点だ。要するに、国民の「自粛意識」が政府のそれを飛び越えてしまっているのだ。 実は、戦時中もそうだった。わかりやすいのが娯楽規制だ。 戦争中の映画、ラジオ、演劇、落語などの大衆娯楽は軍部が厳しく弾圧したというイメージが定着しているが、最近の研究ではそうではなく、軍は国民の「自粛ムード」に突き動かされていたことがわかっている。 金子龍司氏の『「民意」による検閲―「あゝそれなのに」から見る流行歌統制の実態』(日本歴史 2014年7月号)によれば、ラジオの選曲が西洋風だと「日本精神に反する」と怒りのクレームを寄せる「投書階級」と呼ばれる人々がたくさんいた。投書は年間2万4000件にものぼり、番組編成や検閲当局にも影響を与えていたという。言論統制や娯楽統制を強く求めたのは、軍ではなく実は「民意」だったのだ。 当時の日本には、このようなポピュリズムが蔓延していた。『戦前日本のポピュリズム』(筒井清忠著 中公新書)でも、大衆を支持基盤とする近衛文麿とポピュリズム外交をしていた松岡洋右が、日本の開戦を引き返せないところまでもっていったとして、日米開戦を引き起こしたのはポピュリズムだったと考察している』、「国民の「自粛意識」が政府のそれを飛び越えてしまっているのだ。 実は、戦時中もそうだった」、それは確かだが、「国民」には「自粛」以外に打つ手がないのも事実だ。「日米開戦を引き起こしたのはポピュリズムだった」、同感だ。
・『令和日本のポピュリズムが「コロナ敗戦」を招く  令和日本にもそんなポピュリズムの匂いが漂う。菅義偉首相は緊急事態宣言に対してずっと消極的な姿勢を貫いていた。しかし、世論調査で支持率が急落して世間から叩かれ始めた途端、あっさりとその信念を覆した。ニコニコ生放送で「どうも、ガースーです」などと柄にもないことを口走ったように、菅首相もポピュリズムに傾倒しつつあるのだ。 ということは、令和日本も太平洋戦争時の日本と同じ道を辿る恐れがあるということでもある。つまり、最前線で戦う人々が援軍もないまま次々と倒れているのに、「戦略ミス」を認めず、ただひたすら国民に「自粛」を呼びかける。根本的な問題が解決されないので、犠牲者はどんどん増えていくのだ。 ちなみに今問題になっている、政治家が国民に自己犠牲と我慢を呼びかける裏で、実は優雅な会食やパーティをして叩かれるという現象は、太平洋戦争時にもあった。時代背景は違うが、社会のムードは驚くほど酷似している。 今回の「戦争」の犠牲者は、前回と異なって「経済死」や「自殺」なのでわかりづらいが、今のまま「国民のがんばり」で押し切ろうとすれば、甚大な被害を招くはずだ。ましてや数カ月先には、100人程度の重症患者で医療崩壊している東京で、世界中からアスリートを招いて五輪を開催するという「無謀な作戦」も控えている。 「コロナ敗戦」という言葉が頭にちらつくのは、筆者だけだろうか』、「今回の「戦争」の犠牲者は、前回と異なって「経済死」や「自殺」なのでわかりづらいが、今のまま「国民のがんばり」で押し切ろうとすれば、甚大な被害を招くはずだ」、そうなれば、「五輪」開催は中止すべきだろう。

次に、1月8日付けPRESIDENT Onlineが掲載した経済ジャーナリストの磯山 友幸氏による「本当に1カ月で解除できるのか」中途半端な緊急事態宣言にある巨大リスク 「政府はこの1年何をしていたのか」」を紹介しよう。
・『感染者が減らなければ、期限はズルズルと延びる  政府は1月7日、「非常事態宣言」を再度発出した。前回の2020年4~5月時とは違い、今回は東京都と神奈川県、千葉県、埼玉県の1都3県だけとし、全面的な休業要請ではなく、飲食店など業種を絞っての午後8時までの時短要請など“限定的”な対策に留めた。期限は2月7日までの1カ月としたが、これで新型コロナウイルスを封じ込めて感染者を減らすことができなければ、期限がズルズルと延びていくことになりかねない。 西村康稔担当相は前回とは違って“限定的”な対策に留めたことについて「エビデンス(証拠)がある」と強調した。1年近い新型コロナとの闘いの中で、「学んできた」と胸を張ったわけだ。つまり、昨年4月のように完全に人の動きを止めなくても、新型コロナは封じ込められるとしているわけだ。 だが、本当だろうか。さっそく厳しい予測が出されている。 西浦博・京都大教授(感染症疫学)は試算を公表し、昨年4~5月の宣言時に近い厳しい対策を想定しても、東京の1日当たりの新規感染者数が100人以下に減るまで約2カ月が必要だとした。さらに今回の飲食店の時短営業など“限定的”な対策では、2月末になっても新規感染者数は1300人と、現状と横ばいになると予測している。つまり、現状の対策では「生ぬるい」と言っているわけだ』、「西浦博・京都大教授」の「試算」では、「今回の飲食店の時短営業など“限定的”な対策では、2月末になっても新規感染者数は1300人と、現状と横ばいになると予測」、気休めでしかないようだ。
・『第1波では経済への打撃を小さくできたが…  いったい政府は昨年の緊急事態宣言から何を学んだのだろうか。 明らかなのは、緊急事態宣言で完全に人の動きを止めようとすると、経済が大打撃を被るということだ。2020年4~6月期のGDPは1~3月に比べて年率換算で29.2%の減少と、戦後最悪の結果になった。7~9月はその反動で前の3カ月に比べれば22.9%増になったが、実態は「回復」と呼べるものではなく、前年同期比では5.7%の減少が続いている。 例えば4月の全国百貨店売上高は、日本百貨店協会の集計によると前年同月比72.8%減、5月も65.6%減となった。全日本空輸(ANAホールディングス)の4~6月期の国内線旅客は88.2%も減っている。大幅な赤字に転落する企業も続出。パートやアルバイトを中心に非正規雇用も大幅に減少した。 この経済の「猛烈な縮小」から人々の生活を守るために、特別定額給付金や持続化給付金などを支給し、雇用調整助成金の特例を導入して企業に雇用を維持させるなど対策を講じた。結果、第1波は諸外国に比べて影響を小さいまま封じ込めることができた』、「第1波」の「影響を小さいまま封じ込めることができた」のは確かだ。
・『ブレーキとアクセルを踏み続けた菅政権  ところが、それ以降、政府の対応は「経済優先」へと大きくシフトしていく。安倍晋三首相の辞任を受けて就任した菅義偉首相は「Go Toトラベル」の継続にこだわり続け、新規感染者が増え始めてもブレーキを踏むことに躊躇した。 「Go Toトラベルで感染が拡大したというエビデンスはない」と言い続け、11月後半の3連休などは新型コロナ流行前を上回る人出が繰り出した。感染者が増えても「検査件数を増やしていることが一因」とし、「重症者は少ない」としたことで、国民の間から危機感が失せていった。 自粛を要請するなどブレーキをかける一方で、Go Toトラベルなどアクセルも踏み続けた結果が、12月以降の「感染爆発」につながったのは明らかだろう。“限定的”な緊急事態宣言というのは、まさにブレーキとアクセルを両方踏む「過去の失敗」の延長線上にある』、「“限定的”な緊急事態宣言というのは、まさにブレーキとアクセルを両方踏む「過去の失敗」の延長線上にある」、その通りだ。
・『封じ込めに有効なのは「短期決戦」のはず  1月7日に東京都が発表した感染確認者は2447人と過去最多を記録したが、全体の7割が「感染経路が不明」という。どこの誰からどうやってうつったか、ほとんど分からないわけで、酒を伴う会食が原因とするにはエビデンスが十分ではない。 もちろん、可能性がある以上、会食を制限するのは対策としては正しい。だが、午後8時までに営業を短縮すれば感染者が増えない、という話にはならない。欧米のようにレストランなどは一斉に休業要請するのが、新型コロナを封じ込めるには取るべき手だろう。 酒の提供は19時までとなると、居酒屋などは事実上、営業できていないのも同然だ。店舗に補償金が支払われるといっても人件費などを考えれば経営を成り立たせるのは不可能に近い。感染拡大のためのブレーキとしては不十分な上に、経営も危機に瀕するとなれば、極めて中途半端な対策ということになる。 4~5月の教訓は、思い切って経済を犠牲にすれば、感染拡大は食い止められるということだ。1カ月耐えれば、その先に明かりが見えるということなら、経営者も従業員も辛抱できる。「短期決戦」で思い切った経済停止を行うことこそ、新型コロナ封じ込めには有効なはずだ』、同感である。
・『迅速に助成金を届ける仕組みもできていない  本来、経済を止める一方で、人々の生活を守る術を考える必要があるのだが、結局、政府の動きは鈍いままだ。昨年4月には国民1人当たり10万円の特別定額給付金の支給を決めた。全員に一律とすることで短期間に支給できるという話だったが、実際は、支払いに膨大な手間と時間を要した。 行政のデジタル化が進んでいないことが原因とされ、菅首相は「デジタル庁の新設」を指示したが、実際にデジタル庁ができるのは早くて今年9月。データベースの整理やシステム構築などを考えれば、実際にシステムが稼働するのは3年から5年はかかる。つまり、昨年の教訓から学んでいれば、本当に支援が必要な人に迅速に助成金を届ける仕組みを真っ先に整備すべきなのに、一向にそれは整っていない。 米国は年末の12月21日に、総額9000億ドル(約90兆円)に及ぶ新型コロナ対策を盛り込んだ法案を可決した。そこには2度目となる現金給付も盛り込まれている。成人・未成人ともに1人当たり600ドルが支給される。ただし、今回は全員に給付するのではなく、2019会計年度の年収が7万5000ドル超の場合、原則100ドルを超過するごとに5ドルずつ減額され、年収9万9000ドル以上の成人には支給されない。 つまり、本当に困窮している人に支給する仕組みとしているのだ。失業保険についても、1週間当たり300ドルを追加で給付することを決めた』、米国は手回しがいいが、日本では官僚のサボタージュと思いたくなるほど、何も進んでいないようだ。
・『冬の感染爆発は「想定内」だったはずだ  もしかしたら冬になれば感染爆発が起きるということは、菅内閣が発足した時から「想定内」だったはずだ。危機管理は最悪の事態を想定することが基本である。営業停止を求めることになれば、営業補償だけでなく、失業したり給与が激減する人が急増することも分かっていたはずだ。そのために、個人に助成金をどう届けるか、とりあえずの方法を構築しておく必要があった。 今回の新型コロナに伴う経済危機の特徴は、飲食業や宿泊業の現場で働く弱者を直撃していることだ。今回の緊急事態宣言による対策で事態はさらに深刻化する。1カ月の「緩い」対策の結果、感染者が減らなかった場合に時短措置が延長されるようなことになれば、現場での解雇や雇い止め、廃業、倒産が激増することになるだろう。そうした現場の弱者を救う日本のセーフティーネットがあまりにも貧弱であることが露呈することになりかねない。 1月7日の夜に会見した菅首相の言葉は、どこか他人事のようで、国民の心に響くものとは言えなかった。給与も賞与もほとんどカットされていない政治家や高級官僚には、現場でとたんの苦しみを味わっている弱者の気持ちは分からないのだろうか。過去から謙虚に学び、将来のリスクへの対策を講じる。危機を想定できない政府が国の存亡を危うくする』、完全に同感である。

第三に、1月8日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの長谷川 幸洋氏による「「医療崩壊」はもう起きている…遅すぎた宣言発令で見えた菅政権のお粗末ぶり」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/79102?imp=0
・『入院できない感染者が3000人  新型コロナの感染拡大を受けて、2度目の緊急事態宣言が発令される中、衝撃的な数字が発表された。東京都で「入院や療養先が決まらない人が3000人を超えた」という。もはや完全な医療崩壊である。宣言より先に、現実はとっくに緊急事態に突入していたのだ。 1月7日付各紙は政府の緊急事態宣言絡みの話を大きく扱った。たとえば、読売新聞1面トップの大見出しは「緊急事態 来月7日まで」である。だが、私は、その横の縦3段見出し「都内『自宅待機』週3000人」に目を奪われた(https://www.yomiuri.co.jp/medical/20210106-OYT1T50215/)。 記事は「東京都で新型コロナに感染したが、入院先や療養先が決まらず『調整中』となっている人が12月27日から1月2日までの週で3000人を超えた」と伝えている。ようするに「感染しているのに、病院やホテルに入れない人が3000人もいる」というのである。 医療崩壊の定義はいろいろあるかもしれないが、私はこれこそ「医療崩壊」と思う。厚生労働省の資料を探してみたら、10分ほどで見つかった。「新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード」の会合に添付された「東京都内の陽性者の調整状況(週別)」という資料である(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000715529.pdf)。東京都内の陽性者の調整状況(厚生労働省ホームページより) これを見ると、12月20〜26日の週は「入院・療養等調整中」が1700人超くらいだったが、27〜1月2日の翌週は一挙に3000人を超えた(青い棒グラフ)。「調整中」は11月29〜12月5日の週の700人超から徐々に増えていたが、ここへきて突然、急増したのは明らかだ。 これとは別に「東京都内の陽性者の調整状況(処遇別)」というグラフもある。処遇が「自宅療養」と決まった場合は「自宅療養」として記載されている。調整中は処遇が決まらず「宙ぶらりん」の状態にある人だ。ほとんどが「自宅待機」だろう。 この事態について、同じ会合の別資料はこう記している(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000715536.pdf)。 〈入院調整に困難をきたす事例や通常の医療を行う病床の転用が求められる事例など通常医療への影響も見られており、各地で迅速な発生時対応や新型コロナの診療と通常の医療との両立が困難な状況の拡大が懸念される。また、入院調整が難しい中で、高齢者施設等でのクラスターの発生に伴い、施設内で入院の待機を余儀なくされるケースも生じている〉 後段にある「高齢者施設内で待機を余儀なくされるケース」は、とりわけ深刻だ。施設でクラスターが発生しているのに「入院先が見つからないから、やむを得ず、そのまま施設にとどまっている」という状態である』、「感染しているのに、病院やホテルに入れない人が3000人もいる」、「これこそ「医療崩壊」」、その通りだ。
・『医師の治療すら受けられない  これが現状だとすると、東京では「これから新型コロナに感染しても、入院できない」と覚悟しなければならない。となれば、自宅にとどまらざるを得ないが、そうなると当然、家族に感染する可能性が高くなる。 だからといって、自宅で家族と完全に分かれて暮らすのは、難しい。トイレも風呂も別にするなど不可能だ。もはや感染は本人の話だけではない。「自分が感染したら、家族にも感染させてしまう」と考えなければならない。これが一点。) 医師と看護師による治療も受けられない。6日には「昨年3〜12月で全国の変死事案で新型コロナに感染していた人が122人いた」というニュースも報じられた(https://www.nikkei.com/article/DGXZQODG061OU0W1A100C2000000)。とくに、12月は56人と急増した。これは「自宅待機」が増えた話と裏腹だろう。話が東京だけにとどまらないのは、このニュースで分かる。 自宅待機あるいは自宅療養が続いて、十分な治療が受けられなかったので、死亡してしまったのだ。今後、こうしたケースが続発する可能性は極めて高い。こうなってしまったからには、とにかく感染しないように、当面は自主防衛するしかない。 ここまで書いたところで、7日の東京都の新規感染者が過去最多の2447人に達した、というニュースが入ってきた。中には、自宅療養する人もいるだろうが、入院ないし宿泊療養が必要な人は当分、受け入れ先が見つからない。明日以降もこの状態が続くのだ。 以上を踏まえれば、1月7日に発令された「緊急事態宣言はやはり遅かった」と言わざるを得ない。本来であれば、医療崩壊を避けるための宣言であるはずなのに、現実は「医療崩壊が始まってからの宣言」になってしまった』、「本来であれば、医療崩壊を避けるための宣言であるはずなのに、現実は「医療崩壊が始まってからの宣言」になってしまった」、菅政権の優柔不断さの結果だ。
・『後手に回った菅政権の残念さ  宣言発令までのプロセスも残念だった。菅義偉内閣は小池百合子東京都知事らの発令要請を受けて、仕方なく発令したような印象がある。小池氏ら1都3県の知事が西村康稔経済再生担当相と会談し、発令を要請したのは1月2日、政府が発令を検討すると表明したのは2日後の4日だった。 政府が宣言発令を想定していなかったのか、と言えば、そんなことはない。たとえば、西村氏は昨年12月30日、ツイッターで「感染拡大が続けば、国民の命を守るために、緊急事態宣言も視野に入ってくる」と発信している。大臣がこう言うからには、当然「いずれ発令もあり得る」と考えていたはずだ。 同僚コラムニストで内閣官房参与を務めている高橋洋一さんは1月6日に収録した「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」で「第3次補正予算をあれだけ大きな規模で組んだのだから、12月の段階で当然、頭に入れていた」と語っている。 だが、そんな政府の姿勢はまったく国民に伝わっていない。決定的だったのは、昨年12月31日の大晦日である。この日、東京都の新規感染者が1337人というショッキングな数字が出た。これを受けて、菅首相は官邸で即席会見に応じた。記者が「緊急事態宣言について、どう考えているか」と質問すると、首相は宣言には触れず「いまの医療体制をしっかり確保し、感染拡大に全力を挙げる」と答えた。記者が重ねて問うても、首相は「いま申し上げた通りです」と語っただけで、後ろを向いて歩き去ってしまった。これで、菅首相が発令に消極的な姿勢が鮮明になった。 こういう経緯があるから「宣言に慎重だった菅政権が4知事の要請を受けて、しぶしぶ発令した」という印象が強まるのだ。政府の実情を知る高橋さんが後で「実は政府も検討していた」と解説しても、普通の国民に政権内部の様子は分からない。報道で知るだけだ。) 「いま何を、どのように検討しているか」を国民に伝えるのは、政権の重要な仕事である。「決定前には話せない」としても、そこを微妙なニュアンスで伝えるのが広報の役割だ。政府と国民のコミュニケーションとは、そういうものだ。 たとえば、首相は「1337人という数字には、私も衝撃を受けている」くらいは言うべきだった。そう言えば、国民も共感する。深読みする記者なら「もしかしたら宣言を出すかも」とピンと来て「政府が宣言、検討」と報じたかもしれない。首相の言葉次第なのだ。 それがないから「あたかも、小池氏らに押し込まれて出した」という話になってしまう。ずばり言えば、これは「広報の失敗」である。このままでは「菅政権のコロナ対策は後手後手だ」という批判を避けられない。菅政権は早急に広報体制を立て直す必要がある』、「菅政権」には共同通信の論説副委員長だった柿崎明二氏を総理補佐官に就任させたが、まだ機能してないのだろうか。まあ、「総理補佐官」の問題ではなく、「総理」自身の問題なのだろうが・・・。 
タグ:パンデミック (その12)(医療危機に「国民のがんばり」で立ち向かう 戦時中と変わらぬ日本の姿、「本当に1カ月で解除できるのか」中途半端な緊急事態宣言にある巨大リスク 「政府はこの1年何をしていたのか」。「医療崩壊」はもう起きている…遅すぎた宣言発令で見えた菅政権のお粗末ぶり) 「医療危機に「国民のがんばり」で立ち向かう、戦時中と変わらぬ日本の姿」 社会へのダメージが大きすぎる 筆者は今回の緊急事態宣言には反対 窪田順生 国民に「経済死」を強いる政府がまだ手を尽くしていないこと 緊急事態宣言の再発令で疲弊する医療機関にトドメか 疲弊する医療従事者の皆さんの「経済死」を招く ダイヤモンド・オンライン (経済社会的視点) ただでさえ疲弊する医療機関にトドメを刺す恐れもある 一部の病院だけに重症患者が集中して「野戦病院」のようになっている一方で、コロナ患者を受け入れることなく、いつも通りにのんびりとした診療を行っている病院も山ほどあるのだ。 この「偏在」の問題を解消したうえで、それでもなお持ちこたえられないというのなら、営業自粛でもロックダウンでもなんでもやればいい。というか、躊躇なくやるべきだ 「「無策」を放置して、「国民一丸となって頑張るぞ」と突き進むと、結局最前線で戦っている人たちや国民に、多数の犠牲者が出る。そんな悲劇が過去にもあった。そう、先の太平洋戦争だ」、同感である 「国民のがんばり」に頼って大量の犠牲者を出した戦時中の教訓 足りなかったのは、世の中のムードに流されず、「この方向で突き進んだらやばいかも」と立ち止まる勇気や、自分たちが置かれた状況を客観的に分析する、冷静な視点だった 責任感の強い人たちは、自粛をしない人たちを探し出して注意もした。感染拡大地域のナンバーをつけた自動車に石を投げる人もいた。やっていることは、戦時中の「非国民狩り」と変わらなかった。 しかし、そんな国民の血のにじむような努力も、最前線の医療従事者を救うことはできなかった」、その通りだ 政府が後ろ向きな緊急事態宣言を自ら求める日本人の「自粛意識」 「国民の「自粛意識」が政府のそれを飛び越えてしまっているのだ。 実は、戦時中もそうだった」、それは確かだが、「国民」には「自粛」以外に打つ手がないのも事実だ。「日米開戦を引き起こしたのはポピュリズムだった」、同感だ 令和日本のポピュリズムが「コロナ敗戦」を招く 今回の「戦争」の犠牲者は、前回と異なって「経済死」や「自殺」なのでわかりづらいが、今のまま「国民のがんばり」で押し切ろうとすれば、甚大な被害を招くはずだ」、そうなれば、「五輪」開催は中止すべきだろう PRESIDENT ONLINE 磯山 友幸 「本当に1カ月で解除できるのか」中途半端な緊急事態宣言にある巨大リスク 「政府はこの1年何をしていたのか」」 感染者が減らなければ、期限はズルズルと延びる 「西浦博・京都大教授」の「試算」では、「今回の飲食店の時短営業など“限定的”な対策では、2月末になっても新規感染者数は1300人と、現状と横ばいになると予測」、気休めでしかないようだ 第1波では経済への打撃を小さくできたが… ブレーキとアクセルを踏み続けた菅政権 「“限定的”な緊急事態宣言というのは、まさにブレーキとアクセルを両方踏む「過去の失敗」の延長線上にある」、その通りだ 封じ込めに有効なのは「短期決戦」のはず 「短期決戦」で思い切った経済停止を行うことこそ、新型コロナ封じ込めには有効なはずだ』、同感である 迅速に助成金を届ける仕組みもできていない 米国は手回しがいいが、日本では官僚のサボタージュと思いたくなるほど、何も進んでいないようだ。 冬の感染爆発は「想定内」だったはずだ 給与も賞与もほとんどカットされていない政治家や高級官僚には、現場でとたんの苦しみを味わっている弱者の気持ちは分からないのだろうか。過去から謙虚に学び、将来のリスクへの対策を講じる。危機を想定できない政府が国の存亡を危うくする 現代ビジネス 長谷川 幸洋 「「医療崩壊」はもう起きている…遅すぎた宣言発令で見えた菅政権のお粗末ぶり」 入院できない感染者が3000人 「感染しているのに、病院やホテルに入れない人が3000人もいる」、「これこそ「医療崩壊」」、その通りだ 医師の治療すら受けられない 「菅政権」には共同通信の論説副委員長だった柿崎明二氏を総理補佐官に就任させたが、まだ機能してないのだろうか。まあ、「総理補佐官」の問題ではなく、「総理」自身の問題なのだろうが・・・
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パンデミック(経済社会的視点)(その11)(コロナ独自路線のスウェーデンが失敗 欠けていたのはロックダウンではなく.....、日本医師会が「医療緊急事態」で騒ぐ本当の理由 医療が逼迫する原因は感染拡大ではない、日本のコロナ重症患者対応が抱える決定的弱点 医療崩壊の責任は民間病院でなく厚労省にある、【第3波を乗り越える】正しいことをやってると信じている全体主義ほど 恐ろしいものはない《岩田健太郎教授・感染症から命を守る講義㊸》) [パンデミック]

パンデミック(経済社会的視点)については、昨年11月27日に取上げた。今日は、(その11)(コロナ独自路線のスウェーデンが失敗 欠けていたのはロックダウンではなく.....、日本医師会が「医療緊急事態」で騒ぐ本当の理由 医療が逼迫する原因は感染拡大ではない、日本のコロナ重症患者対応が抱える決定的弱点 医療崩壊の責任は民間病院でなく厚労省にある、【第3波を乗り越える】正しいことをやってると信じている全体主義ほど 恐ろしいものはない《岩田健太郎教授・感染症から命を守る講義㊸》)である。

先ずは、昨年12月22日付けNewsweek日本版が掲載したカールヨハン・カールソン氏による「コロナ独自路線のスウェーデンが失敗、欠けていたのはロックダウンではなく......」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/12/post-95240_1.php
・『国民への「望ましい行動」の勧告がコロナ対策として不十分だった──という批判は的外れではないが> 独自の新型コロナウイルス対策で世界的な注目を集めてきたスウェーデンが、ついに方針を転換した。これまでスウェーデン政府はロックダウン(都市封鎖)を避けて、強制措置ではなく、「望ましい行動」を国民に勧告することでコロナ禍を乗り切ろうとしてきた。 ところが11月に入ると、感染の再拡大を受けて商業活動の禁止措置を発表。レストランやバーの営業時間を午後10時30分までに制限した。 この結果、国民への勧告だけでは感染拡大を防げないことがはっきりした──スウェーデンの新型コロナ対策に批判的な国外の論者は、そう考えている。 そうした批判は的外れとは言えない。実際、スウェーデン国民は、政府の指針を守ってこなかった。人口1000万人の国で死者が約8000人に上っても、人々はいまだに混雑したショッピングモールで買い物をし、バーで互いに密接して過ごしている。 そもそも、政府が強制措置を導入したくても権限がないという問題もあった。2020年4月、議会は政府にレストラン、ショッピングモール、スポーツジム、公共交通機関を閉鎖させる権限を期限付きで与えたが、この法律は一度も使われずに6月に失効した。その際、政府は法律の延長を求めなかった。集団免疫(注)により、感染第2波は防げると考えていたからだ。 しかし、スウェーデンのコロナ対策に本当に欠けていたのは、強制措置ではなく、明確な方針だった。 2020年2月に感染拡大が始まったとき、疫学者のアンデシュ・テグネルが主導する公衆衛生庁は、国民に明確な指針を示すことの重要性を強調していた。それにより、一人一人が責任ある行動を取りつつ、日々の生活を続けられるようにし、経済活動の停滞を避けたいと考えたのだ。 ただ実際には、政府が国民に示す指針に問題があったため、指針が十分に守られなかった。まず、買い物や食事の仕方に始まり、教会での礼拝の形式に至るまで、ガイドラインの数があまりに多過ぎた』、一部では、スウェーデンは「集団免疫」の実験ともいわれたが、「政府が国民に示す指針に問題があったため、指針が十分に守られなかった」、というのでは、話にならない。
(注)集団免疫:多くの人が免疫を持つようになることで感染が広がりにくくなること。米政府コロナ専門家は「人口の70~90%が免疫持つ必要」とした(NHK12月25日)。
・『マスクに関する指針の混乱もあった。公衆衛生庁は当初、あらゆる場におけるマスク着用を求めず、公共交通機関など一部の場では有効である「可能性がある」と述べるにとどまった。その際も、マスク着用により「誤った安心感」を抱けば逆効果になりかねないとクギを刺していた。しかし、政府は12月18日、混雑時の公共交通機関でマスク着用を推奨する方針に転換した。 ロベーン首相とテグネルの発するメッセージの食い違いも、混乱に拍車を掛けた(憲法の規定により、公衆衛生庁は政権からの独立性が確保されている)。感染拡大が始まった頃は、公衆衛生庁が対策を取り仕切っていたが、政府の新型コロナ対策への批判が高まるようになると、政府は公衆衛生庁への相談なしに行動し始めた。 政府は11月半ば、公共の場での9人以上の集会を初めて禁止した。テグネルはこの措置について「公衆衛生庁が強く求めた措置では断じてない」と述べている。 スウェーデン政府の計画は、責任と引き換えに国民に自由を与えるというものだったが、責任ある行動の指針を明確に示すことができなかった。もし政府が明確な指針を示していれば、スウェーデンの新型コロナ対策は称賛こそされても、批判を浴びることはなかったかもしれない』、「憲法の規定により、公衆衛生庁は政権からの独立性が確保されている」とはいっても、「政府の新型コロナ対策への批判が高まるようになると、政府は公衆衛生庁への相談なしに行動し始めた」、「政府」としては当然のことだろう。実験がこのような形で中途半端に終わったのは、残念だ。

次に、12月25日付けJBPressが元NHK職員でジャーナリストの:池田 信夫氏による「日本医師会が「医療緊急事態」で騒ぐ本当の理由 医療が逼迫する原因は感染拡大ではない」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/63431
・『12月21日、日本医師会など9団体は、異例の医療緊急事態宣言を出した。それによると「このままでは、新型コロナウイルス感染症のみならず、国民が通常の医療を受けられなくなり、全国で必要なすべての医療提供が立ち行かなくなります」という。 たしかに医療現場は大変だろう。感染が拡大していることも事実だが、ヨーロッパでは感染爆発が起こっている。それよりはるかに死者の少ない日本で、医療が崩壊するというのは本当だろうか』、確かに全体としては供給が過剰な「日本」の「医療が逼迫」の真因はどこにあるのだろう。
・『コロナ患者の診療拒否は合理的  まず日本の現状を数字でみてみよう。下の図のようにヨーロッパでは人口10万人あたりの累計死者が100人に達するのに対して、日本は2.4人。ほぼ40分の1である。日本で医療が崩壊するなら、ヨーロッパは全滅しているだろう。 (ヨーロッパと日本の死亡率のグラフはリンク先参照) 他方で日本の医療の水準は高く、人口あたりベッド数はOECD平均の3倍で世界一だ。コロナで人工呼吸の必要な重症患者は全国で約450人に対して、人工呼吸器は4万5000台。全国的には、重症患者が医療資源の限界を超えることは考えられない。 ではなぜ医療が逼迫しているのだろうか。1つの原因は、医師の数がOECD平均の70%と少ないことだ。次の図は感染症指定医療機関の対策病床使用率で、東京都の使用率は94%、大阪府は98%と逼迫している。(コロナ対策病床の使用状況(出所:COVID-19 Japan 新型コロナウイルス対策ダッシュボードはリンク先参照) しかし全国では50.3%と、ほぼ半分があいている。兵庫県は54%、奈良県は44%、和歌山県はわずか5%なので、近隣の病院から大阪府に医師や看護師が応援するか、患者を近隣の指定医療機関に移送すればいいのだが、それはできない。医療法では、都道府県知事が医療機関に指示・命令できないからだ』、どうして出来ないのだろう。
・『行政が民間病院に指示できない特殊事情  医師法の「応召義務」にも罰則がなく、昨年(2019)末に厚労省が「第1類・第2類相当の感染症については診療拒否できる」という通知を出したので、指定感染症(第1類相当)に指定されたコロナ患者の受け入れを拒否することは、民間病院にとっては合法的かつ合理的なのだ。 このため大阪府の吉村知事は、2次救急病院にコロナ患者の受け入れを要請した。公立病院は行政が受け入れを指示できるが、民間の病院は患者を受け入れる義務はないので、行政は「お願い」するしかない。 この背景には、公立病院が少ない日本の特殊事情がある。日本の医療機関数(2014年)は8442と先進国では突出して多く、しかもそのうち公立病院が20%しかない。公立病院の人員配置は国や自治体が指示できるが、民間病院には指示できないのだ。 ヨーロッパでは60~90%が公立病院である。アメリカは22%で日本とほぼ同じだが、公的医療保険が整備されていない。日本のように国民皆保険で国が医療費の7割以上を負担する国で、民間病院がこれほど多いのは奇妙である。 これは戦後復興の時期に、日本の医療が開業医中心に急いで整備され、彼らが地域の中で大きな影響力をもって公的病院の整備を阻止したためだ。ベッドや検査機器の保有台数が多いのも、このように中小企業が多いためだ。 民間病院は経営努力する点ではいいが、感染症のような緊急事態では、行政のコントロールが難しい。医療法にも医師法にも行政が民間病院に命令する法的根拠がないので、コロナは指定感染症に指定して国が規制している』、「戦後復興の時期に、日本の医療が開業医中心に急いで整備され、彼らが地域の中で大きな影響力をもって公的病院の整備を阻止したためだ」、「開業医」優先の「医療行政」の歪みがこんなところにまで及んでいるとは、やれやれだ。
・『特措法を改正して診療拒否に罰則を  しかし実は、指定医療機関にも患者を受け入れる義務はない。感染症法19条では「都道府県知事は、感染症指定医療機関に入院させるべきことを勧告することができる」と定めているだけだ。おかげで今のように一部の病院でスタッフが逼迫しても、国や自治体が他の地域から応援させることができない。 コロナ患者を受け入れると、院内感染で43人の患者が死亡した東京の永寿総合病院のようにマスコミが騒いでバッシングを受け、他の患者が寄りつかなくなるので、普通の病院は受け入れを拒否するのだ。 この問題を解決する1つの方法は、緊急時には行政が民間病院にも患者の受け入れを命じられるように特措法(新型インフルエンザ等対策特別措置法)を改正することだ。 政府は飲食店の営業停止に罰則を設けることを検討しているようだが、それより知事の要請に応じない指定医療機関に罰則を設けることが望ましい。 だがそれはできないだろう。医師会の政治力は、飲食店よりはるかに強いからだ。今のように(実際には罰則のない)指定感染症で圧力をかけるしか行政のとれる手段はないが、これは必要のない事務が膨大で、看護師が疲弊している。 医師会は一般国民に自粛を呼びかける前に、傘下の医師に呼びかけて指定医療機関を応援してはどうだろうか。これには法的根拠は必要ない。その資金は国が特措法でつければいいし、クラウドファンディングで募集してもいい。 もちろん緊急時にボランティアに頼ることは好ましくない。本来は特措法を改正して、緊急時には行政の指示に従わない医師の医師免許を停止するなどの罰則を設けることが本筋だ。医師会が本当に危機感をもっているのなら、制度改正に協力してはどうだろうか』、最近「医師会」は政府のコロナ対策に様々な注文を付けているが、池田氏の主張は説得力が溢れ、同意できる。

第三に、12月28日付け東洋経済オンラインが掲載した医療ガバナンス研究所理事長の上 昌広氏による「日本のコロナ重症患者対応が抱える決定的弱点 医療崩壊の責任は民間病院でなく厚労省にある」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/399850
・『新型コロナウイルス(以下、コロナ)の感染が拡大し、日本の医療は崩壊の瀬戸際にある。12月21日、日本医師会や日本看護協会など9つの団体は、「このままでは全国で必要な全ての医療提供が立ち行かなくなる」と「医療緊急事態宣言」を発表した。 12月25日には、田村憲久・厚生労働相が、病床が逼迫している地域で、重症向け病床がある医療機関に対して、1床あたり1500万円を補助することを表明した。詳細は公表されていないが、実際の患者の受け入れとは関係なく、病床を整備すれば支払われるのだろう。 もちろん対応は不可欠だが、筆者は、このようなやり方に違和感を抱いている。本稿では、日本の重症コロナ対策を海外と比較して論じたい。 まずは下記の表をご覧頂きたい。東アジアおよび欧米の人口当たりのコロナ感染者数、死者数、医師数、病床数を示している。欧米と比較して、日本は感染者も重症患者も少ないことがわかる。12月25日現在、人口1000人あたりの感染者数は1.7人だ。アメリカの33分の1、フランスの24分の1、イギリスの19分の1、ドイツの11分の1だ。 (外部配信先では図表やグラフなどを全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください) 日本の医師数はアメリカの96%、フランスの76%、イギリスの89%、ドイツの59%だが、急性期病床数はアメリカの3.2倍、フランスの2.5倍、ドイツの1.3倍もある(イギリスは不明)。慢性期病床も加えた総病床数はさらに多い。コロナ重症者に対して、欧米諸国が、それなりに対応しているのに、数の面で大きく見劣りするわけではない日本の医療がどうして崩壊してしまうのだろう。個別個別の病院や医療関係者に責任があるわけではない。全体を統括する厚生労働省の方針、運営に問題があると言わざるをえない』、「全体を統括する厚生労働省の方針、運営に問題がある」にも拘わらず、一般のマスコミが忖度して記事にしないのは大いに問題だ。
・『重症者を集中的に診る病院が整備されていない  ずばり言えば、日本ではコロナ重症者を集中的に診る病院が整備されていないことだ。12月26日現在、都内の病院に入院している重症患者は81人だ。東京都は重症者用ベッドとして220床をすでに確保しており、250床まで増やすように医療機関に要請中だ。 では、どのような病院が重症患者を受け入れているのだろうか。実は、このことについて厚生労働相と東京都は情報を開示していない。知人の東京都議に調査を依頼したが、「東京都からは教えることはできない」と回答があったという。) 厚労省が「特定感染症指定医療機関」に認定している国立国際医療研究センター病院や、「第一種感染症指定医療機関」に認定している都立駒込病院、都立墨東病院、東京都保健医療公社荏原病院、自衛隊中央病院は受けているだろうが、残りはわからない。大学病院で積極的に受け入れている病院は、東京医科歯科大学などごくわずかだ。 知人の都立病院勤務医に聞くと、「1つの病院で受け入れる重症患者は5人程度」という。多くの病院が少数の重症患者を受け入れていることになる』、「多くの病院が少数の重症患者を受け入れている」とは非効率の極みだ。
・『中国やアメリカは専門病院で集中的に治療  実は、このような対応をしている国は少ない。中国の武漢を第1波が襲ったとき、中国政府はコロナ専門病院を建設し、全土から専門家を招聘したことは有名だ。コロナ感染者を専門病院で集中的に治療した。 実は、このような戦略を採ったのは、中国だけではない。下表は、第1波のある時点でのアメリカのマサチューセッツ州における主要病院のコロナ感染者の受け入れ数を示している。トップのマサチューセッツ総合病院は278人で、このうち121人は集中治療室での治療が必要な重症患者だった。 実はマサチューセッツ総合病院は、ハーバード大学の関連施設で、世界でもっとも有名な病院の1つだ。ハーバード大学には付属病院がないため、マサチューセッツ総合病院が実質的にその役割を担っている。 平素は先進医療に力を注ぎ、世界最高峰の医学誌である『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン』には、「マサチューセッツ総合病院の症例記録」という定期連載のコーナーがあるくらいだ。 病床数は1000床で、日本の大病院と同規模だが、コロナの流行において、重症患者を一手に引き受けたことになる。受け入れた患者数は、現在の都内の重症患者数の総数よりも多い。 これは東京大学医学部付属病院がコロナ重症者を一手に引き受けたのと同じだ。多くの専門医や看護師を抱えるため、多数の施設に分散して受け入れるより効率的だ。) このような状況はアメリカだけに限らない。イギリスの主たるコロナ引き受け病院を以下の表に示す。マサチューセッツ総合病院ほどではないにしろ、一部の施設で集中的に患者を受け入れているのがわかる。 このような状況を知れば、日本の医療が欧米の数十分の一の重症患者で崩壊してしまうのもご理解いただけるだろう。やり方が悪いのだ。誰の責任かと言えば厚労省だ。 メディアに登場する有識者の中には、民間病院が協力しないので、政府の権限を強化し、強制的に重症患者を受け入れさせるべきだと主張する人もいるが、それは的外れだ。 日本の医療は診療報酬、病床規制、医学部定員規制などを通じて、厚労省が、がんじがらめにしている。小泉政権以降、診療報酬は据え置かれ、開業医と比べて、政治力が弱い病院、特に民間病院は、コロナ感染が拡大したからと言って、病院経営者が柔軟にコロナ重症病床を拡大させる余裕はない。このあたり、病院経営者の本音が知りたければ、筆者が編集長を務めるメルマガ「MRIC」で配信した「コロナ禍における診療体制維持」(http://medg.jp/mt/?p=10026)をお読み頂きたい。都内民間病院院長(匿名)による切実な現状が紹介されている。 5~10人程度のコロナ重症患者を受け入れて、それに対して高額な診療報酬が支払われても、通常の手術などの件数が激減すれば、病院は倒産してしまうし、さらにコロナ重症患者の治療は手がかかり、多くの医師・看護師を要するが、普通の病院にそのような人的リソースはない』、このような状態を放置してきた厚労省・自民党の責任は重大だ。
・『やるならば国公立か独立行政法人しかない  もし、やるとすれば、多数の医師や看護師を抱え、たとえ赤字が出ても、公費で補填される国公立病院(大学病院を含む)か独立行政法人しかない。この「コロナ禍における診療体制維持」を書いた院長は、コロナ感染症対策専門家分科会の会長を務める尾身茂医師に対して手厳しい。 文中で「多くの民間医療機関は新型コロナの入院診療に対応する事は難しく、中心として働くことは困難と言わざるを得ない。今を憂いているならばぜひとも発信してほしい。自らが属する地域医療機能推進機構(JCHO)所謂第3セクター医療機関や公的医療機関が新型コロナ診療に特化するなど中心的役割を果たす」と述べている。私も同感だ。 コロナ重症患者を適切に治療するには、中核施設を認定して、集中的に資源を投下するしかない。これは現在の厚労省の施策と正反対だ。いまのやり方を押し通せば、多くの施設が疲弊し、PCR検査を抑制している現状では、院内感染の多発が避けられない。まさに現在の日本の状況だ。 コロナ対策の「正解」は誰にもわからない。世界中が試行錯誤を繰り返している。われわれは海外から学び、合理的な対応を採ることが必要だ。コロナ重症者対策は方向転換しなければならない』、「日本の医療が欧米の数十分の一の重症患者で崩壊してしまうのもご理解いただけるだろう。やり方が悪いのだ。誰の責任かと言えば厚労省だ」、「コロナ重症患者を適切に治療するには、中核施設を認定して、集中的に資源を投下するしかない。これは現在の厚労省の施策と正反対だ。いまのやり方を押し通せば、多くの施設が疲弊し、PCR検査を抑制している現状では、院内感染の多発が避けられない」、説得力溢れる主張で、全面的に同意したい。

第四に、1月2日付けYahooニュースが転載したBEST TIMES「【第3波を乗り越える】正しいことをやってると信じている全体主義ほど、恐ろしいものはない《岩田健太郎教授・感染症から命を守る講義㊸》」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/012cddafc237839395630541e68879125de82c38
・『なぜ、日本の組織では、正しい判断は難しいのか。 なぜ、専門家にとって課題との戦いに勝たねばならないのか。 この問いを身をもって示してたのが、本年2月、ダイヤモンド・プリンセスに乗船し、現場の組織的問題を感染症専門医の立場から分析した岩田健太郎神戸大学教授である。氏の著作『新型コロナウイルスの真実』から、命を守るために組織は何をやるべきかについて批判的に議論していただくこととなった。リアルタイムで繰り広げられた日本の組織論的《失敗の本質》はどこに散見されたのか。敗戦から75年経った現在まで連なる教訓となるべきお話しである』、正論を断固主張する「岩田氏」の主張とは興味深そうだ。
・『全体主義に抗う  同調圧力が極まると、全体主義に行き着きます。これは日本だけの話じゃなくて、世界のどの国にも全体主義に転ぶリスクは常にあるんです。 ぼくはダイヤモンド・プリンセスのときに、結果的には日本を批判するという形になったので、そのせいで左翼扱いされています。日本って不思議な場所で、日本を批判すると左翼、日本を褒めると右翼扱いされますよね。本来は違うのですが、この国では一応、そういうふうに言葉が使われる形になっています。 でも本当は、右翼も左翼もどちらも良くない。ヒトラーもスターリンも毛沢東もポル・ポトも、みんな危険です。右も左も関係なく、全体主義、言い換えると多様性を認めないことが、とても危ういんです。「合わない人は排除する」という論理は、行き着くと彼らがやったような虐殺に結び付く。 ダイヤモンド・プリンセスでぼくに起こったことは、典型的な全体主義でした。違う意見を認めないで、排除する。しかも追い出した人は、「みんな頑張ってるのに和を乱す奴がおかしい。自分たちは正しいことをやったんだ」と思ってるわけです。それが一番危うい。 正しいことをやってると信じている全体主義ほど、恐ろしいものはないですよ。例えば相模原の障害者施設での虐殺でもそうだし、東京医科大学などで起こった入試での女性差別もそうだし、とにかく「調和を乱す人は排除する」という論理が正当化されると、何でもありになってしまう。極めて危険です』、「ぼくはダイヤモンド・プリンセスのときに、結果的には日本を批判するという形になったので、そのせいで左翼扱いされています。日本って不思議な場所で、日本を批判すると左翼、日本を褒めると右翼扱いされますよね」、「右も左も関係なく、全体主義、言い換えると多様性を認めないことが、とても危ういんです・・・ダイヤモンド・プリンセスでぼくに起こったことは、典型的な全体主義でした。違う意見を認めないで、排除する。しかも追い出した人は、「みんな頑張ってるのに和を乱す奴がおかしい。自分たちは正しいことをやったんだ」と思ってるわけです。それが一番危うい」、「ダイヤモンド・プリンセス」に乗った際に、「感染学」の立場から余りにずさんな対応が行われていたのを批判したとたんに、「下船」を命じられたのは有名だ。
・『だから正しいかどうかとは関係なく、多様性は保持することこそが大事なのです。たとえ間違った意見だったとしても、多様性を保持しないとダメなんです。 その意見がどんなに荒唐無稽であろうと、その意見があるということだけは認めるという原則が守られないと、危ない。「俺はおまえの意見が間違ってると思うから、排除」という社会は、極めて危ない。多様な意見があることそのものは、絶対に否定してはいけません。 例えば上昌広先生がテレビのワイドショーに出て「PCRをどんどんやるべきだ」って言ってますよね。あれに対して、医療界は結構、袋叩きモードになっています。「あの人は感染症の専門家でもないくせに、勝手なことを言って」みたいな人格攻撃をし出していますが、あれはあれで良くない。 ここまでに説明してきたとおり、ぼくも上先生の意見には賛成しませんけれど、だったらそれはそれとして、意見を言う権利はちゃんと認めて、「そこはこういうふうに間違ってますよ」と反応すればいいだけなんです。 そこのところ、医療界はすぐに「上とかいう人間は、けしからん」みたいな話に持っていってしまう。ぼく自身の業界が排除型、全体主義的なところだから、まずは自分の業界から直していくべきですね。 議論に対しては、議論で対応するべき。その上で「これはいい」「悪い」というのはいくらでもやっていいし、やるべきなんだけど、「あいつが許せない」か「排除しろ」みたいな話に持っていくのは、極めて危険です。科学を守るという意味でも、社会を守るという意味でも、この風潮には絶対に抗わないといけない』、「俺はおまえの意見が間違ってると思うから、排除」という社会は、極めて危ない。多様な意見があることそのものは、絶対に否定してはいけません」、小池都知事も野党再編劇で、「排除」の論理を振りかざして大失敗したが、「多様な意見があることそのものは、絶対に否定してはいけません」、同感である。政府・厚労省が狭い視野での「排除」対応を続ける限り、感染拡大防止は期待できそうもない。
タグ:パンデミック (経済社会的視点) (その11)(コロナ独自路線のスウェーデンが失敗 欠けていたのはロックダウンではなく.....、日本医師会が「医療緊急事態」で騒ぐ本当の理由 医療が逼迫する原因は感染拡大ではない、日本のコロナ重症患者対応が抱える決定的弱点 医療崩壊の責任は民間病院でなく厚労省にある、【第3波を乗り越える】正しいことをやってると信じている全体主義ほど 恐ろしいものはない《岩田健太郎教授・感染症から命を守る講義㊸》) Newsweek日本版 カールヨハン・カールソン 「コロナ独自路線のスウェーデンが失敗、欠けていたのはロックダウンではなく......」 これまでスウェーデン政府はロックダウン(都市封鎖)を避けて、強制措置ではなく、「望ましい行動」を国民に勧告することでコロナ禍を乗り切ろうとしてきた。 ところが11月に入ると、感染の再拡大を受けて商業活動の禁止措置を発表。レストランやバーの営業時間を午後10時30分までに制限した。 「集団免疫」の実験ともいわれたが、「政府が国民に示す指針に問題があったため、指針が十分に守られなかった」、というのでは、話にならない 憲法の規定により、公衆衛生庁は政権からの独立性が確保されている」とはいっても、「政府の新型コロナ対策への批判が高まるようになると、政府は公衆衛生庁への相談なしに行動し始めた」、「政府」としては当然のことだろう。実験がこのような形で中途半端に終わったのは、残念だ JBPRESS 池田 信夫 「日本医師会が「医療緊急事態」で騒ぐ本当の理由 医療が逼迫する原因は感染拡大ではない」 コロナ患者の診療拒否は合理的 医療法では、都道府県知事が医療機関に指示・命令できない 行政が民間病院に指示できない特殊事情 戦後復興の時期に、日本の医療が開業医中心に急いで整備され、彼らが地域の中で大きな影響力をもって公的病院の整備を阻止したためだ」、「開業医」優先の「医療行政」の歪みがこんなところにまで及んでいるとは、やれやれだ 特措法を改正して診療拒否に罰則を 最近「医師会」は政府のコロナ対策に様々な注文を付けているが、池田氏の主張は説得力が溢れ、同意できる 東洋経済オンライン 上 昌広 「日本のコロナ重症患者対応が抱える決定的弱点 医療崩壊の責任は民間病院でなく厚労省にある」 全体を統括する厚生労働省の方針、運営に問題がある」にも拘わらず、一般のマスコミが忖度して記事にしないのは大いに問題だ 重症者を集中的に診る病院が整備されていない 多くの病院が少数の重症患者を受け入れている」とは非効率の極みだ 中国やアメリカは専門病院で集中的に治療 このような状態を放置してきた厚労省・自民党の責任は重大だ やるならば国公立か独立行政法人しかない 日本の医療が欧米の数十分の一の重症患者で崩壊してしまうのもご理解いただけるだろう。やり方が悪いのだ。誰の責任かと言えば厚労省だ コロナ重症患者を適切に治療するには、中核施設を認定して、集中的に資源を投下するしかない。これは現在の厚労省の施策と正反対だ。いまのやり方を押し通せば、多くの施設が疲弊し、PCR検査を抑制している現状では、院内感染の多発が避けられない yahooニュース BEST TIMES 「【第3波を乗り越える】正しいことをやってると信じている全体主義ほど、恐ろしいものはない《岩田健太郎教授・感染症から命を守る講義㊸》」 ダイヤモンド・プリンセス に乗船し、現場の組織的問題を感染症専門医の立場から分析した岩田健太郎神戸大学教授 全体主義に抗う ぼくはダイヤモンド・プリンセスのときに、結果的には日本を批判するという形になったので、そのせいで左翼扱いされています。日本って不思議な場所で、日本を批判すると左翼、日本を褒めると右翼扱いされますよね 右も左も関係なく、全体主義、言い換えると多様性を認めないことが、とても危ういんです ダイヤモンド・プリンセスでぼくに起こったことは、典型的な全体主義でした。違う意見を認めないで、排除する。しかも追い出した人は、「みんな頑張ってるのに和を乱す奴がおかしい。自分たちは正しいことをやったんだ」と思ってるわけです。それが一番危うい 「ダイヤモンド・プリンセス」に乗った際に、「感染学」の立場から余りにずさんな対応が行われていたのを批判したとたんに、「下船」を命じられたのは有名だ 俺はおまえの意見が間違ってると思うから、排除」という社会は、極めて危ない。多様な意見があることそのものは、絶対に否定してはいけません」、小池都知事も野党再編劇で、「排除」の論理を振りかざして大失敗したが、「多様な意見があることそのものは、絶対に否定してはいけません 同感である。政府・厚労省が狭い視野での「排除」対応を続ける限り、感染拡大防止は期待できそうもない
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パンデミック(経済社会的視点)(その10)(GoToは全廃が筋、コロナ第3波「日本に決定的に足りてない対策」 無症状者への検査と院内感染への備えは不十分、コロナ第3波とGo To見直しは「失政」の当然の帰結) [パンデミック]

パンデミック(経済社会的視点)については、11月8日に取上げた。今日は、(その10)(GoToは全廃が筋、コロナ第3波「日本に決定的に足りてない対策」 無症状者への検査と院内感染への備えは不十分、コロナ第3波とGo To見直しは「失政」の当然の帰結)である。

先ずは、11月21日付けNewsweek日本版が掲載した財務省出身で慶応義塾大学准教授の小幡 績氏による「GoToは全廃が筋」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/obata/2020/11/goto_1.php
・『<国の新規感染者は遂に2500人を超えた。今こそ、もともと 間違っていたGoTo政策をやめて病院や保健所の充実に金を使うべきだ> 全国の新型コロナウイルスの感染者が初めて2500人を超える感染拡大の中で、政府はGoToトラベルやGoToイートの運用を見直すと発表した。感染地域への旅行予約や、食事券発行の一時停止などを検討するという。いっそ全廃すればいいのだ。続けなければならない理由が何かあるだろうか? 何もない。 継続しているのは、感染リスクはどうでもよくとにかく経済を戻したいと思っているか、もしくは、自分の決めた政策に文句を言われるのが嫌か、耳の痛い諫言を聞くのが嫌か、どちらかしか考えられない。 GoToは、どう考えても、即刻終了すべきだ。 理由は3つ。 第一に、GoToの役割は終わった。唯一意味のあった役割は、自粛しすぎていた日本の消費者たちに、遠慮せずに旅行や外食に行っていいんだよ、というきっかけ、自粛自縛からの解放のきっかけをつくってあげたことだ。これに尽きる。 そして、それは十分に効果を発揮した。だから、もうすぐにやめるべきだ。 今は、感染拡大している。一方で自粛を求めつつ、外食、旅行を必要以上にしろ、と税金でバーゲンセールするのは120%意味不明だ』、「GoTo」は菅首相が官房長官時代に取組んだ案件で、政権の後ろ盾である二階幹事長も全国旅行業協会の会長であることもあって、札幌や大阪発の「GoTo」トラベルを一時中止する程度でお茶を濁そうとしているようだ。
・『奪われる教育機会や治療機会  第二に、解放の対象も間違っていた。なぜなら、もともと自粛に熱心でない、むしろ相対的に注意不足、対策不足の人々が大手を振って活動を活発化させた一方、本来はそこまで自粛する必要がないのに、過度に自粛し恐れてしまっている人々の自粛は解けていない。また注意不足の人々が政策によって感染拡大リスクをさら拡大させているのを認識すれば、過剰な自粛はさらに過剰になる。 しかし、9月よりは今の方が慎重になるべきなのは間違いがなく、恐れるのは論理的に正しい。論理的に正しいが、過度に恐れている人々は高齢の富裕層が多く、彼らの活動が委縮していることは、経済にとっても大きなマイナスだ。 普段行ったことのない高級旅館に、一生に一度だけ、感染リスクへの意識が希薄な人々が押し寄せ、税金で値引きされたからとエンジョイし、しかし、税金の値引きで行っているだけだから、税金値引きが効かないものは消費せず、消費拡大効果は限定的だ。もちろん旅行や外食に行かないよりは効果があるが、税金支出のコストパフォーマンスとしては悪く、この2か月だけでなく、この先数年の経済を考えればマイナスの効果で、経済活動以外の教育機会やコロナ以外の治療機会、介護の機会を縮小させているので、社会にとってはとことん悪い。) 実際、人気のある高級旅館は、100%とはいかないが、8割方客は戻っており、GoToのおかげで、優良顧客の常連さんが、混んでるなら行かないということで、GoToの客に押し出されてしまって迷惑をこうむっているという声は強い。人気がやや劣る高級旅館は助かっており、日本人が行かなくなった安いだけのインバウンド向けの宿などは、GoToで一息つけて大変ありがたがっている。そういう構造だ。 飲食も同じで、人気店は予約がとれなかったのが、予約が取りやすくなり、普通に回っていたのだが、GoToで余計な客が押し寄せ、客単価が下がって迷惑している。一方、人気店が予約でいっぱいなので仕方なく人々が行っていた二番手の飲食店は、コロナで、人気店に行きたい人が行けるようになって、流れてこなくなり、悲鳴を上げていた。そういう店は、GoToで客が戻り、非常に喜んでいるそうだ。 地味な高齢の常連さんで細々やっていたところは、何をしようがあまり変わらない。人々の感情的には、そういう店こそ助けたいのだが、そこにGoToは関係ない。あざといサイトとチェーン店とさらにあざとい客が税金の恩恵を受けているだけだ』、同感である。
・『そもそもが間違いだった  第三に、もともと、GoToという政策が間違っている。4月に、適切に恐れ、適切に対応すれば十分なのに、緊急事態宣言を知事たちとメディアが求め、それに人気取り政策で政権が応じてしまったことが間違いで、もともと、あそこまで自粛する必要はなかったのだ。 しかし、日本国民は従順で臆病だから、知事とメディアとそれに登場する、欧州やニューヨークの例を挙げる間違った有識者に(まちがった知識を持っている人も有識者だ)、脅され、おびえて、自粛に励んだ。 しかし、この自粛カードは一回しか通用しなかった。 これは、欧米でも同じで、もはや全面ロックダウンはどのような状況になっても、人々は受け入れず、だから、政治もそれを実行はできない。 日本もまったく同じで、自粛要請は人気取り政策として意味がなくなったから、どの知事も言わなくなった。 過度にリスクを警戒しすぎたが、基本的には自分たちの立場で感染症のことだけ考えてバランスの悪い提言をし続けてきた専門家たちは、今度も感染対策を最優先として提言する。 このアドバイスを政権が聞くはずもないし、メディアに押されて部分的に聞き入れたアリバイ作りをするだけだろう。 そして、人々は自粛に飽きてしまったので、どんなに感染者数が増えても、気にしない人々の割合がすでに増加しており、自粛要請も、メディアの警告も、前述のような恐れすぎる人、自粛しすぎていて、現在でもそれほどそこまで自粛する必要のない人々だけさらに自粛させ、いまはさすがに自粛すべき人々はほぼ自粛せず、感染は少しずつ広がり続けるだろう。 政権は何をしているのか。 離婚するのにはんこを押さなくて済むようにすることには熱心だが、保健所のファックス問題、濃厚接触確認アプリの未普及問題には、何をやってきたのか。デジタル庁の法案を作る前に、保健所、病院のDX(デジタル・トランスフォーメーション)をまずすることが先ではないのか。 いまだに、病院の役割分担も不十分だ。コロナに関係なく人々は医療を適切に受けられず、困ったり死んだりしている。 何がやりたいのか。 政権が維持したいだけか? しかし、このような対応では、それも難しくなってくることに、そろそろ自分自身でも気づいているだろう』、このままでは東京都や大阪市での医療崩壊は時間の問題になって、年明けの解散・総選挙どころではんsくなる筈だ。

次に、11月25日付け東洋経済オンラインが掲載した医療ガバナンス研究所理事長の上 昌広氏による「コロナ第3波「日本に決定的に足りてない対策」 無症状者への検査と院内感染への備えは不十分」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/390991
・『11月21日、菅義偉首相は新型コロナウイルス(以下、コロナ)が拡大している地域での、「Go Toキャンペーン」の運用を見直すことを表明した。遅きに失した感もあるが、時宜を得た対応だ。 冬場を迎え、全国的にコロナ感染が拡大するなか、税金を投じて人の移動を促進させるのはめちゃくちゃだ。こんなことを続けていたら、感染を拡大させるだけでなく、経済も悪化する。いま、政府がやらなければならないのは、国民に移動を自粛するように呼びかけることだ。これが世界の標準的な対応だ。米疾病対策センター(CDC)は、11月26日の感謝祭に合わせた旅行を控えるように促している。 「Go Toキャンペーン」は、日本のコロナ対策を象徴する存在だ。エビデンスに基づく、合理的な対応がなされていない。本稿では、この点について論じたい』、現実には「Go Toキャンペーン」の見直しは極めて小幅に止まった。
・『日本のコロナ対策は科学的か?  11月11日、イギリスの『エコノミスト』誌は「政府のコロナ対策は科学的ですか」という記事を掲載した。この記事では、世界各国の約2万5000人の研究者に対して、24カ国を対象に、政府のコロナ対策が、どの程度科学的かを聞いた研究が紹介されていた。この記事を読めば世界が日本のコロナ対策を、どう評価しているかがわかる。 この研究では、最も科学的と評価された国はニュージーランド、次いで中国だった。70%以上が「科学的」と回答している。一方、最も「非科学的」なのはアメリカ、次いでブラジル、イギリスと続く。 アメリカについて「科学的」と回答した研究者は約20%で、約70%が「非科学的」と回答している。日本に対しては約40%が「科学的」、25%が「非科学的」と回答している。日本は24カ国中17位、アジア5カ国中最低で、日本のコロナ対策の評価は低い。 この評価は日本のコロナ対策の実情を反映している。日本のメディアはあまり報じないが、日本は死者数、経済的ダメージともに大きい。下記の表は東アジア4カ国の人口10万人当たり死者数、GDPの前年同期比を示したものだ。直近の7~9月期の場合、死者数は0.5人、GDPはマイナス5.8%だ。いずれも東アジアで最低である。 7~9月期は、コロナが猛威を振るった欧州の多くの国より、経済ダメージは大きくなっている。10月28日現在、7~9月期の経済統計が公開されていないロシア・ポーランドを除く、人口3000万人以上の欧州5カ国で、日本より経済ダメージが大きいのはイギリスとスペインだけだ。ドイツに関しては、死者数も日本と変わりない。 日本のコロナ対策費の総額は約234兆円で、GDPの42%だ。これは主要先進7カ国で最高だ。ドイツとイタリアは30%台、イギリス、フランス、カナダが20%台、アメリカが15%台だ。日本のコロナ対策の費用対効果は極めて悪い』、「イギリスの『エコノミスト』誌は「政府のコロナ対策は科学的ですか」」を世界各国の約2万5000人の研究者に」アンケートした結果によれば、「日本は24カ国中17位、アジア5カ国中最低で、日本のコロナ対策の評価は低い」、にも拘らず、日本の主要マスコミは政府に忖度して無視したようだ。「日本のコロナ対策費の総額は約234兆円で、GDPの42%だ。これは主要先進7カ国で最高だ・・・日本のコロナ対策の費用対効果は極めて悪い」、その通りだ。
・『日本の検査体制はこのままでいいのか  何が問題か。主要なコロナ対策は、マスク、ソーシャル・ディスタンス、検査だ。 日本がマスク着用、ソーシャル・ディスタンスの点で優等生であることは改めて言うまでもない。問題は検査だ。厚労省の方針で、PCR検査数は、先進国最低のレベルに抑え込まれている。私は、この方針を貫けば第3波でさらに大きな被害を生じると考えている。 それは、第3波では、若年の無症状感染者の占める割合が高まっているからだ。彼らが職場や家庭、さらに「Go Toキャンペーン」などを介して、感染を拡大させている。 このことは世界も注目している。11月12日、アメリカのウォール・ストリート・ジャーナルは「新型コロナの症状観察、無症状感染者をほぼすべて見落とし=研究」という記事を掲載した。 この記事は、11月11日、アメリカの医学誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン』オンライン版に掲載されたアメリカ海軍医学研究センターの臨床研究を紹介したものだ。 この研究の対象は、1848人の海兵隊員の新兵だ。彼らは、サウスカロライナ州のシタデル軍事大学に移動し、訓練を開始するにあたり、14日間の隔離下に置かれた。その際、到着後2日以内に1回、7日目、14日目に1回ずつ合計3回の検査を受けた。この結果、51人(3.4%)が検査陽性となった。 意外だったのは、51人すべてが定期検査で感染が確認され、46人は無症状だったことだ。残る5人も症状は軽微で、あらかじめ定められた検査を必要とするレベルには達していなかった。若年者は感染しても、無症状者が多く、有症状者を中心とした検査体制では、ほとんどの感染者を見落とす可能性が高いことを示唆している。 さらに、51人の検査陽性者のうち、35人は初回のPCR検査で陰性だった。多くは入所後に感染したのだろう。この事実は無症状の感染者を介して、集団内で感染が拡大したことを意味する。この研究は、これまでに実施された無症状者スクリーニングの世界最大の研究だ。信頼性は高い。だからこそ、世界最高峰の医学誌である『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン』が掲載し、ウォール・ストリート・ジャーナルが紹介した。 日本でも、無症状感染者の存在は確認されている。10月15日、世田谷区は区内の17の介護施設の職員271人にPCR検査を実施したところ、2人(0.74%)が陽性だったと報告している。流行が拡大した現在、無症状感染者の数はさらに増加している可能性が高い』、確かに日本のように医者が患者を診断して感染の恐れがある者だけをPCR検査するのでは、「無症状感染者」が感染を広げている恐れが強い。
・『厚労省は無症状者への検査に消極的  ところが、厚労省は無症状の人に対する検査に消極的だ。7月16日、コロナ感染症対策分科会は「無症状の人を公費で検査しない」と取りまとめている。現在も、この方針を踏襲している。厚労省はさまざまな通知を濫発しているが、対応を抜本的に見直す気配はない。 飲食店やイベントでの感染リスクに対する考え方も変わってきた。コロナ対策の研究が進んだためだ。 特記すべきは、10月30日~11月1日の3日間、横浜スタジアムで実施された実証実験だ。プロ野球の横浜DeNAベイスターズの公式戦の収容人数を、現行の上限である50%から80%以上に段階的に増やしながら、人の流れや場所ごとの混雑状況、さらに感染拡大に与える影響を調べた。 11月12日に公表された速報によると、来場者は初日が1万6594人で収容率51%、2日目は2万4537人で76%、最終日は2万7850人で86%だった。この中には、少なからぬ無症状感染者がいたはずだ。 ところが、本稿を執筆している11月23日現在、クラスター発生は報告されていない。屋外での大規模イベントを安全に実施できたことになる。そもそも屋外で感染リスクが低いことに加え、声を出しての応援の禁止、マスク着用、人混みを回避しソーシャル・ディスタンスを維持するなど、対策がうまくいったのだろう。 感染リスクが高いとされる飲食店についても同様だ。マスコミ報道では「過去最多となる23人の感染が明らかになった愛媛県では、6人が松山市内のスナック2軒の従業員や客だった」「静岡県内でも飲食店関係者7人の感染を確認した沼津市内の接待を伴う飲食店について新たにクラスターとして認定した」(いずれも日本経済新聞2020年11月23日)などの記事が目立つが、第3波でクラスターの中味は変わってきている。 第2波までは飲食店、とくに接待を伴う飲食店が中心を占めたが、第3波では、医療機関、教育機関、介護施設などに多様化している。 この現象は、コロナ感染拡大を予防するための社会の合理的な反応を反映している。11月10日、アメリカ・スタンフォード大学の研究者たちがイギリスの『ネイチャー』誌に発表した研究が興味深い。 彼らは、人々の動きがコロナの拡大にどのように影響したかを調べるために、アメリカのセーフグラフ社が収集した携帯電話の位置データを用いて、第1波の3~4月の間に、アメリカの10の主要都市で、人々がレストラン、教会、ジムなどの施設をどの程度利用したかマッピングした。 そしてこの期間内に、この地域内で発生した感染の位置データ、感染者数のデータなどと照らし合わせたところ、このような施設の利用者が感染拡大に大きな影響を与えていたことが明らかとなった。彼らが作成したモデルは、感染者数の増加を正確に予測したという。 この事実は、8月、イギリスで”Eat Out to Help Out”というイギリス版「Go To Eat」キャンペーンを実施したところ、レストラン利用者が急増し、コロナの感染を最大で17%増やしたこととも一致する』、「第3波でクラスターの中味は変わってきている。 第2波までは飲食店、とくに接待を伴う飲食店が中心を占めたが、第3波では、医療機関、教育機関、介護施設などに多様化」、確かに「飲食店」叩きは一頃よりは収まったようだ。
・『飲食店でのクラスター発生の報告は少なくなった  ところが最近、状況は変わりつつある。ドイツの接触追跡データの分析によると、レストランは主要な感染源ではなかったし、日本の第3波の状況は前述のとおりだ。第1波で目立った居酒屋、カラオケ、屋形船のような飲食施設でのクラスター発生の報告は少なくなった。 これは飲食店の利用者が減ったからだろう。11月6日に公開された9月の家計調査によれば、2人以上の世帯において一般外食は前年同月比で25.2%減少している。飲食店、とくに接待を伴う飲食店の利用者が激減しているのだろう。 前出のスタンフォード大学の研究では、レストランなどの施設の利用者と感染者数は相関していた。彼らはレストランの利用が20%に制限されれば、感染者数は80%以上低下すると議論している。 日本でも、飲食店の利用者が大幅に減ったことで、このような施設を介したクラスターの発生が減った可能性が高い。飲食店の利用者が減ることで、隣の客との距離が広がり、飲食店内のソーシャル・ディスタンスが強化されるため、第3波では、飲食施設でのクラスター発生は抑制されるだろう。 これは、コロナ対策にとっては吉報だが、飲食店経営者にとってはたまらない。ただ、飲食店の利用者の減少は、コロナへの感染を危惧する人たちの自主的な反応だ。「Go Toキャンペーン」などの形で利用を促進しても、その効果は限定的だ。コロナの流行が拡大する北海道では、11月10日に販売を開始したGo To イートプレミアム付き食事券は、11月16日現在で発行済みの100万冊のうち、16万冊しか販売されていない。 飲食店の利用者を増やすには、「安全」であることを示さねばならない。理想的には、コロナの流行を抑制することだが、次善の策としては、検査で陰性の客だけ利用できるように配慮してはどうだろう。精度のいい簡易検査を開発し、入店前にチェックすることも考えられる。その費用を公費で負担すればいい』、「日本でも、飲食店の利用者が大幅に減ったことで、このような施設を介したクラスターの発生が減った可能性が高い」、なるほど。
・『医療機関や介護施設の院内感染対策が肝  では、第3波で最重視しなければならない点は何だろうか。私は医療機関や介護施設の院内感染対策と考える。11月16日、虎の門病院(東京都港区)は、職員や患者11人が集団感染したと公表した。血液内科病棟で死亡者も出ている。11月20日には、アメリカのメイヨークリニックで、900人の集団感染があったことが明らかとなった。 いずれも日米を代表する巨大病院だ。最高レベルのスタッフと医療設備を備えている。感染対策も最高レベルだ。それでも院内感染を防げなかった。 私が注目するのは、個人経営のクリニックより、このような大病院で集団感染が発生していることだ。両者の違いは職員数だ。個人クリニックの職員は多くて10人程度だが、大病院の職員は1000人を超える。アメリカ海兵隊の研究で示されたように、この中には少なからぬ無症状感染者がいるはずだ。 このような医療機関では、マスクや防護具は使用しているだろうが、病床はいつも満床だろう。飲食店で利用者が減ることで、はからずも「ソーシャル・ディスタンス」が強化されたようなことは期待できない。無症状感染の職員がいれば、院内感染へと発展するリスクが高い。 コロナ対策でやれるとすれば、感染地域の病院職員に対して、定期的にPCR検査を実施することだ。まさに、アメリカ海兵隊が試みようとしていることだ。) 病院職員はコロナが流行するなかでも、働いて社会に貢献しているエッセンシャル・ワーカーだ。PCR検査の費用は公費負担の先進国が多い。このようなエッセンシャル・ワーカーには病院職員だけでなく、介護職員、公務員、警察官、保育士などが含まれることが多い。 ところが、日本では感染症法で公費負担が保障されているのは、感染者と濃厚接触者だけだ。厚労省は通知による拡大解釈で、コロナ流行地域の病院職員のPCR検査を行政検査として、公費を支出するとしているが、はたして、虎の門病院では検査を実施していたのだろうか。私の知る限り、コロナが大流行している都内の医療機関で、無症状の病院職員に対して、公費で定期的にPCR検査をしているところはない』、確かに「エッセンシャル・ワーカー」には「公費負担」で「PCR検査」すべきだ。厚労省はいつまでPCR検査の入り口を狭めておくのだろう。
・『日本中で院内感染が蔓延する?  厚労省の意向と現場の実情に乖離が存在する。コロナ対策における喫緊の課題だ。解決するには、感染症法を改正し、検査対象を拡充するしかない。ところが、厚労省には、そのつもりはなさそうだ。臨時国会で感染症法改正は議論されず、来年の通常国会でも「県と保健所設置市の情報共有等」について改正されるだけだ。これでは、日本中で院内感染が蔓延するのは避けられそうにない。このまま無策を貫けば、介護施設などでも同様の事態に陥るだろう。 コロナ第3波対策の肝は、無症状感染者を早期診断し、隔離することだ。 世界各国は試行錯誤を繰り返し、その結果を学術論文として発表している。日本に求められるのは、海外から学び、合理的な対応をとることだ。 非合理的な「我慢」を国民に強いるのは現実的ではない。毎日新聞11月19日朝刊には「密閉防止でやむない寒さ」という55才男性からの寄稿が掲載されたが、これははたして、どの程度科学的な根拠があるのだろうか。理性的で合理的な議論が必要だ』、いつもながら「上 氏」の主張には説得力が溢れている。厚労省の医療技官の反論を聞きたいものだ。

第三に、11月26日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した立教大学大学院特任教授・慶應義塾大学名誉教授の金子 勝氏による「コロナ第3波とGo To見直しは「失政」の当然の帰結」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/255322
・『東京などの首都圏や大阪、北海道など、全国の新型コロナウイルスの感染拡大が過去最多を更新するなかで、政府はGo Toトラベルの新規予約停止など、「Go To」事業の見直しに追い込まれた。 感染拡大防止と経済社会活動の両立を言いながら、実際は総選挙を意識して経済回復を最優先する菅新政権の戦略は早くも頓挫した形だが、予想されたことだ』、「「Go To」事業の見直し」は、前述のように極めて小幅に止まったようだ。
・『検査や隔離などの対策なおざり 検査数は世界で下位のまま  新型コロナの感染「第3波」は、起こるべくして起きている。徹底してPCR検査を行い、隔離し、追跡し、治療するという基本的な対策をずっとなおざりにしてきたからだ。 検査の徹底を言いながら「37.5度の発熱4日間」といった条件をつけ、外国のように自動化やプール方式でも遅れ、ドライブスルーなどでもできる体制には程遠い。 人口100万人当たりの検査数は世界の219の国と地域の中で、日本は150位前後と低いままで、100万人当たりの死亡率は15人と、感染を比較的に抑え込んでいる中国、韓国、台湾などの東アジア諸国の中でも突出して高くなっている。 検査などがなおざりにされているから、ウイルスが変異するたびに、周期的な感染拡大の波が押し寄せてくる。 徹底検査をしなければ、無症状者を見逃し、そこから感染が拡大するからだ。外出や営業などの自粛で陽性者数が一時的に減っても、自粛によって無症状のまま街中に感染者が潜ることにもなり、経済活動を再開すると感染者数が一気に拡大することになる。 政府は「ウィズ・コロナ」あるいは「新しい生活様式」を掲げてきたが、結局は、自粛か経済活動か、というジレンマに陥ってしまう』、「ウィズ・コロナ」というからには、「徹底検査」のような対抗措置が不可欠だった筈だ。
・『感染防止との「両立」言いながら「Go To」にこだわった首相  菅首相は「感染拡大の防止と社会経済活動の両立に全力で取り組む」と言ってきたが、実際はGo Toキャンペーンをはじめ経済活動を再開することに重点を置いてきた。 「Go To」事業には、医療の専門家だけでなく少なからずの人が感染を拡大させる懸念を指摘してきたが、安倍政権の官房長官時代から自身が旗を振ってきた政策だったこともあり聞く耳を持たなかった。 外食や旅行などの「自粛」で経済的に厳しい状況に追い込まれている事業者の苦境を救う対策は考えるべきだが、徹底した感染防止対策が行われないと、自粛と感染拡大がいたちごっこのようになる。 トランプ前米大統領をはじめボリス・ジョンソン英首相、ブラジルのボルソナーロ大統領らは皆そうした方針をとって、結局、政策が破綻した』、「菅首相」がコロナ抑制に失敗した海外の有力政治家と並ばせられているのを知ったら、どんな顔をするだろうか。
・『巨額の財政赤字で支える限界 ますます異常になる金融緩和  これまで政府が行ってきたコロナ対策は、検査や医療体制の拡充といった抜本対策よりも財政支出や金融政策で需要を支えることに重きが置かれていた。 「Go To」事業のように自らが感染拡大を引き起こしながら、財政で給付金などをばらまいて「救済」する、マッチポンプのような詐欺商法に似ている。 その結果、財政支出も膨らむばかりだ。売り上げが急減した事業者への持続化給付金や雇用調整助成金の拡充など必要なものもあるが、財政でずっと支えるのには限度がある。 当初予算の歳出が約102.6兆円の大規模な2020年度予算は、コロナによって2次にわたる補正予算が追加され結局、歳出規模は約160兆円の巨額に達している。そのうえに12月には「30兆円規模」の第3次補正予算を編成するという。 補正予算の財源は全て国債発行で調達され、日本の政府債務残高はGDPの2倍を超えた。先進国では突出しており、高齢化などによる社会保障費の膨張もあって、財政はすでに危機的な状況だ。 金融政策も異常な状況だ。日銀は8年近くも国債買い入れによる金融緩和策を続けてきた。だが「2%物価目標」はいまだ実現できていないだけでなく、国債買い入れは事実上の財政ファイナンスのようになり、財政規律をゆがめることになっている。 このところは「年間80兆円」という国債買い入れ額を達成できなくなり、2017年は約30兆円、2018年は約29兆円、2019年には約14兆円弱まで国債購入額は落ちている。 コロナ対策では、2次にわたる補正予算の際に、政府は銀行、地方銀行、信用金庫を通じて実質無利子・無担保の貸し付けをさせる企業金融支援を決めたが、日銀は、金融機関の持つ企業や個人に対する民間債務を担保にしてこれら金融機関に対してゼロ金利の貸付金を大量に供給し始めている。 これは、マイナス金利で経営が苦しくなっていた地方銀行や信用金庫の収益支援策でもあるが、一方で地銀などの企業債務や家計債務を日銀に付け替える政策でもある。 実際、その金額は58兆円以上に及び、2020年11月段階の貸付残高は約107兆円まで達している。 全ての金融機関の貸し出しが増えているが、とくに経営的に苦しい第二地銀は3月には貸し出しが前年比で5%以上も減っていたが、4月以降には貸し出しが増加し続け、10月には6.9%も伸びている。同じように、3月前までに貸し出しの伸び率が1%と低迷していた信金も、10月には8.0%も増加している。 こうした日銀の資金供給で、11月17日には株価も一時2万6000円台に到達した。さらに今年5月に8割以上も落ち込んだ首都圏マンションの販売も、7月以降にはほぼ前年水準を上回っている。 コロナ禍でいびつなバブルが起きている状況だといってよい。 だがバブルが崩壊すれば、第二地銀や信金が破綻する危険性は高まる。2020年9月の中間決算でも地銀77行中の49行の決算が赤字か減益を記録した。 仮にこうした金融機関が破綻するとなれば、民間債務担保を日銀に付け替えているので、日銀自体のバランスシートが棄損される可能性がある。) こうした事態を避けようと、菅政権は地方銀行や中小企業の再編統合を進める方針を打ち出し、日銀は経営合理化や統合をする地銀などに、その当座預金に0.1%の付利を与える「補助」を出す新制度を始めるという。 異常な金融緩和が地銀を破綻に追い込んでいき、そのリスクを「回避」するために、さらに日銀から隠れた補助金を支給する。まるでマッチポンプのような「救済」策。 日銀は国債やETF(指数連動型上場株式投信)、社債、CP(コマーシャルペーパー)の買い入れを次々と拡大してきた。その資産は700兆円近くに上り、名目GDPの1.37倍に達している。 だが国債やETFは売るに売れず、一方で株価などが下落すれば買い増しせざるを得ないという“出口のないねずみ講”に陥っている。そのうえに、地域金融機関のリスク管理の弱い貸付債権まで抱えて、過剰な流動性を供給し、バブルを起こしているといってよい』、「国債買い入れは事実上の財政ファイナンスのようになり、財政規律をゆがめることになっている」、放漫財政に対するブレーキ役を働かなくした黒田総裁の責任は重大だ。
・『コロナ感染拡大が続く限り実体経済の悪化は続く  こうして見ると、菅政権の経済政策の本質が見えてくる。 来年秋には衆議院議員の任期満了になり、少なくとも1年以内に総選挙が行われる。それを意識して、なんとかバブルを持たせようということのようだ。 Go To事業の継続や東京オリンピック・パラリンピックの開催にこだわるのも、経済優先で景気を回復させることが政権維持に直結すると考えているからだろう。 無観客だと米国のテレビは放映料を支払わないとしているために、IOCも東京オリンピックの開催に固執している。オリンピックが中止になれば、五輪利権が損なわれ、菅政権にとってもバブル崩壊をもたらすきっかけになるからだ。 だが前述したように、無症状者への徹底検査を怠って、「ウィズ・コロナ」や「新しい生活様式」といった政策をとる限り、感染拡大が続き、結局、経済の回復も遅れる。 企業収益の悪化と倒産・休廃業は止まらず、雇用削減も続く危険性が高い。 つまり、菅政権が「異常」な金融緩和でバブル経済を持たせようとしても、コロナ禍が続く限り、企業収益と雇用という実体経済の悪化が続かざるを得ないのだ。 そして企業や個人への融資の焦げ付きが生じれば、日銀信用まで著しく傷つけてしまう。 最悪の場合、日銀のバランスシートが痛み自己資本の毀損(きそん)となれば資本注入という事態になって、それは国民の負担になる。他方で、円への信認が崩れ、財政不安と増幅する形で円安が加速すれば、超インフレになり、これも結局は国民の負担増ということになる』、「菅政権が「異常」な金融緩和でバブル経済を持たせようとしても、コロナ禍が続く限り、企業収益と雇用という実体経済の悪化が続かざるを得ないのだ。 そして企業や個人への融資の焦げ付きが生じれば、日銀信用まで著しく傷つけてしまう。 最悪の場合、日銀のバランスシートが痛み自己資本の毀損(きそん)となれば資本注入という事態になって、それは国民の負担になる」、「円への信認が崩れ、財政不安と増幅する形で円安が加速すれば、超インフレになり、これも結局は国民の負担増」、最悪のシナリオも覚悟しておくべきだろう。
・『将来の経済ビジョン見えずスカスカの産業政策  本来、コロナ禍から経済を立ち直らせ再び成長軌道に乗せるためには、感染拡大防止を第一義に考えながら、将来の日本経済をけん引する新産業をどう育てるかにかかっている。 だが菅政権が打ち出した経済の目玉政策の特徴は、極めて視野が狭いことにある。 菅首相は7年半にわたって官房長官として安倍政権を裏方で支えてきたが、その間は、森友・加計問題や桜を見る会などの収拾に終始し、多くの国民を説得する将来の社会や経済のビジョンを立てる能力が磨かれてきたとは言い難い。 実際、首相の口からは、人口減少や高齢化が進むなかで日本や日本経済の将来展望が具体的に語られることはない。日本の産業衰退の原因を指摘し、どのような具体的な立て直し策が必要かを語ることが求められているのだが、それはなされない。 菅首相は、総務相の時に「ふるさと納税」創設で「剛腕」をふるったが、本格的な閣僚経験は総務相以外にないゆえに、出てくる政策はほとんど総務省案件が目立っている。 就任早々に打ち出した携帯料金の引き下げやデジタル庁設置などは将来を見据えた産業戦略とは言い難いし、地方銀行や中小企業の統合再編促進という方針にしても何か新しい産業革新をもたらすとは考えにくい。 総務省案件である携帯料金の引き下げについては、時を合わせたかのように、NTTがNTTドコモを完全子会社化した。ライバルの携帯他社に比べてシェアや収益で差をつけられているのを、再びNTTグループに統合することで巻き返しを図ろうということのようだ。 しかし、NTTは財務省が33.93%の株主であることを考えると、NTTドコモを完全「国有化」することによって、政府の命令で携帯料金を引き下げ、ドコモのシェアを上げることになる。だがこれは菅政権が他方で打ち出している規制緩和政策と根本的に矛盾する。 結局、携帯料金の引き下げは、NTTが携帯各社が使っている送信網の利用料金を引き下げ、格安スマホの料金だけが引き下げられるという看板倒れに終わりそうだ。 「デジタル庁」の設立も、GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)にはまったく太刀打ちできなくなっている日本の情報通信産業を立て直す方策は見えない。 マイナンバー(社会保障や税に関する個人番号制度)の普及促進が前面に出て、個人情報保護などのセキュリティーは不十分なまま省庁の縦割り打破が最優先の目的かのように何でも詰め込もうとしている印象が否めない。 日本経済の立て直しに本当に必要なのは、米国や中国企業が開発や実用化にしのぎをけずるクラウド・コンピューティングや5Gでもはるかに後ろに置かれている日本の情報通信産業の競争力強化や、エネルギー革命に対応し再生可能エネルギー普及のために小規模電力をIoTで調整するスマートグリッドの開発などだ。 東京オリンピックの開催によって総選挙までは経済を持たせることができても、オリンピックが終われば、株価や不動産バブルを生み出すネタもなくなる。その時、コロナ感染防止の不徹底と産業衰退の深刻さが改めて露呈することになるだろう』、いよいよ経済オンチの「菅首相」の馬脚が表れてくるかも知れない。
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