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中国経済(その15)(習近平が大ピンチ……!中国「ゼロコロナ大不況」が「世界金融危機」へと波及する悪夢のシナリオ、中国の医療・葬儀の修羅場 39℃の救急車運転手と38.5℃の医師が38℃の患者の元へ、中国「習近平体制」がもたらす「経済“大失速”の深層」と 中国型「全体主義」が限界をむかえる「あぶない兆候」、これは宿命なのか・・・「習近平体制」に富裕層が海外逃亡!「先の見えた中国」に国民があいそをつかす日) [世界経済]

中国経済については、昨年2月19日に取上げた。今日は、(その15)(習近平が大ピンチ……!中国「ゼロコロナ大不況」が「世界金融危機」へと波及する悪夢のシナリオ、中国の医療・葬儀の修羅場 39℃の救急車運転手と38.5℃の医師が38℃の患者の元へ、中国「習近平体制」がもたらす「経済“大失速”の深層」と 中国型「全体主義」が限界をむかえる「あぶない兆候」、これは宿命なのか・・・「習近平体制」に富裕層が海外逃亡!「先の見えた中国」に国民があいそをつかす日)である。

先ずは、一昨年12月26日付け現代ビジネスが掲載した経済産業研究所コンサルティングフェロの藤 和彦氏による「習近平が大ピンチ……!中国「ゼロコロナ大不況」が「世界金融危機」へと波及する悪夢のシナリオ」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/103701?imp=0
・『国民の大反発にあった習近平がついに「ゼロコロナ政策」を解除した。しかし、今これまで無菌室だった中国で、猛烈な感染拡大が懸念されている。 それは中国経済を「コロナ大不況」に陥れ、リーマンショック級の金融危機を誘発しかねない状況だ。世界は中国に対して決して警戒を怠ってはならないのだ。 前編「習近平の大誤算…!「ゼロコロナ」がいざなう、中国発「世界大不況」の巨大すぎるインパクト」に続き、詳報する』、「ゼロコロナ政策」に対する国民の不満が高まり、突如、「解除」したが、政策の振れの大きさには驚かされる。
・『すでに瀕死の「中国経済」  ゼロコロナ解除以前の中国経済は既にひどい状態だった。 中国経済の屋台骨と言える不動産投資は11月、前年比19.9%となり、2000年の統計開始以来、最大の落ち込みとなった。住宅価格も14か月連続で低下しており、「先行き悲観」の状況に変わりはない。 新築住宅販売は政府の支援策で持ち直しの兆しを見せていたが、新型コロナの感染拡大のせいで「元の木阿弥」になりつつある。 不動産不況のあおりを受けて、中国の11月の生産者物価指数は10月に続いてマイナスとなった(前年比1.3%減)。中国企業の景況感指数(調査期間は12月1日から16日)は2013年1月以来の低水準だった。 中でもサービス業の雇用指数は深刻な状態になっている。 中国の11月の小売売上高は前年比5.9%減と記録的な落ち込み幅となった。同じく輸出額も前年比8.7%減だった(対米輸出は約3割減少)。 中国のすべての経済指標が絶不調だったところに政府の大失政(ゼロコロナ解除)が猛烈な下押し圧力となって、経済は未曾有の危機に直面してしまうのではないだろうか』、中国のGDP成長率は、2022年は3.0%と目標の5.5%を大きく下回った。10-12月期は前年同期比2.9%と7-9月期の同3.9%より低くなった。
・『「ゼロコロナ」のヤバすぎる影響  ゼロコロナ解除の悪影響は早くも出ている。 市場参加者の間で新型コロナの感染が急拡大したことから、中国の金融市場の取引が低調になっており、好調だった新規株式公開(IPO)にも影響が及んでいる。事実上の「鎖国」状態が解かれたことで中国から大量の資金が流出するリスクも指摘されている。 一方、コロナ禍から抜け出したとされる米国経済にも暗い影が忍び寄っている。 米国の12月の購買担当者景気指数(PMI)は44.6と前月から1.8ポイント悪化し、好不況となる50を6ヶ月連続で下回った。 米国企業の収益はリーマンショック以降で最悪になる見込みだ(12月19日付ブルームバーグ)。 米国のインフレ率は高止まりの状況が続いているが、債券投資家は「来年のインフレ率はリーマンショック直後のペースまで鈍化する」と予想しており(12月13日付ブルームバーグ)、米ウオール街の心配は「インフレ」から「リセッション(景気後退)」にシフトしつつある(12月19日付ZeroHedge)。 米国の金融市場の関心がリセッションに集まる中、中国経済への期待は高まるばかりだ』、リーマン・ショック時は確かに「中国」がプラス成長で世界をリードしたが、もはやそんな底力はなさそうだ。
・『中国経済バブル崩壊の序曲  国際金融協会(IIF)は「来年の世界経済の成長率はリーマンショック後の2009年並みの低水準(1.2%増)となる。牽引役は中国だ」と予測している。 だが、中国が「コロナ大不況」となれば、来年の世界経済は21世紀初のマイナス成長になってしまい、米国の金融市場全体のセンチメントは急速に悪化すると言っても過言ではない。 リセッション懸念で米国の銀行株に対する売り圧力が既に生じているが、最も警戒すべきはリーマンショックの震源地となったクレジット市場だろう。クレジット市場とは信用リスク(資金の借り手の信用度が変化するリスク)を内包する金融商品が取引される市場のことだ。 クレジット商品には、貸出債権や社債など様々な信用リスクを加工して証券の形で売買する「証券化商品」や信用リスクを原資産とする派生商品である「クレジット・デリバテイブ」などが代表的だ』、ちなみに国債のデフォルト確率を示すクレジット・デフォルト・スワップのスプレッドは、米国、日本は低いが、中国、韓国は高水準である。
https://finance-gfp.com/?p=6447
・『「金融危機」への警戒感が高まっている  「米国のジャンク債(低格付け債)バブルが今後崩壊する」との警戒感が強まっており(12月16日付日本経済新聞)、米国消費者ローンの延滞率も来年13年ぶりの高水準になる見通しだ。足元が揺らぎ始めているクレジット市場に外的ショックが直撃すれば、金融市場に大きな混乱が起こる可能性は排除できない。 「金融危機が勃発する」と断言するつもりはないが、中国のコロナ大不況が米国の金融市場に与える負のインパクトを見逃してはならないのではないだろうか。 さらに連載記事「2022年エネルギー危機の正体…!プーチンが招いた「最悪のインフレ」と「原油高騰」がこれからも続く深刻なワケ」では、来年にかけてのエネルギー価格の状況についてレポートしていく』、「中国のコロナ大不況が米国の金融市場に与える負のインパクトを見逃してはならないのではないだろうか」、その通りだ。

次に、昨年2月4日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した日中福祉プランニング代表の王 青氏による「中国の医療・葬儀の修羅場、39℃の救急車運転手と38.5℃の医師が38℃の患者の元へ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/317160
・『2022年12月に、ロックダウンなど厳しい行動制限を伴う「ゼロコロナ」政策を突然解除した中国。それから約2カ月弱、「累計感染者数9億人」「1週間で6000人以上が死亡」など感染が急激に広がったことを示す数字やニュースが世界中で報じられている。実際のところ、中国の医療と葬儀の最前線はどうだったのか。上海の葬儀場や、大学付属病院に勤める友人たちに話を聞いた』、
・『突然のゼロコロナ政策解除から2カ月弱 中国で何が起こっていたのか  昨年12月、これまで約3年間厳格に実施されてきた中国のゼロコロナ政策が解除された。突然の政策転換で、感染者が爆発的に増え、医療機関は崩壊寸前だった。病院にあふれかえった患者の様子や、寒風の中、葬儀場にできた長蛇の列などを撮影した動画が広まり、世の中に衝撃を与えた。 12~1月にかけて、中国の医療や葬儀の現場ではどのようなことが起こっていたのか。今年の春節連休(1月22~28日)、筆者は日頃仕事で交流のある上海の医療業界や葬儀業界の関係者とオンラインで新年会を行った。そこで、第一線でコロナと戦う彼らが話していた、コロナ政策転換後約2カ月弱の間の体験談をご紹介したい』、興味深そうだ。
・『従業員が倒れて「減員厳重」、しかし「39℃以下なら勤務せよ」  話を聞かせてくれたのは、葬儀場に勤務の男性・呉輝さん(仮名、40代)と李海辰さん(仮名、40代)、大学付属病院で看護師として勤める女性・段玲さん(仮名、30代)、そして彼らの職場の友人数人である。 「ここにいる全員、(コロナに)感染したよ、ハハハ……」 オンライン新年会はそんな全員の笑い声から始まった。「今でこそ笑えるが、その時は死も覚悟した。うちの病院の職員の9割が感染した。病棟がいっぱいになったのはいうまでもなく、病院の入り口や廊下まで発熱患者であふれていた。簡易ベッドや点滴用の椅子で埋め尽くされ、病院中、足の踏み場もない状態。これだけ患者がどんどん増えている一方で、スタッフは厳しい減員となった」(段さん) 「減員厳重」――。これはゼロコロナ政策が緩和されて以来、中国でよく使われていた言葉である。つまり、爆発的に拡大した感染で従業員がバタバタと倒れ、働き手が極めて足りなくなった状況を指す。 このような状況下、国家衛生健康委員会(衛生と健康を担当する政府機関)は、「いかなる理由であれ、陽性患者の受け入れを拒否してはいけない。減員による診察の停止や欠勤は断固として禁止する」という通知を出した。そして医療従事者に「熱が39℃以下であれば、勤務を続けよ」と命じた。 そのため、「せき込む人や熱で真っ赤な顔をしている人、点滴の管をつったままの人など、極限状況で同僚たちは働き続けた。突然失神して地べたに倒れた人もいた。今思えば、まるで地獄だった」と段さんは振り返る』、「「いかなる理由であれ、陽性患者の受け入れを拒否してはいけない。減員による診察の停止や欠勤は断固として禁止する」という通知を出した。そして医療従事者に「熱が39℃以下であれば、勤務を続けよ」と命じた」、医療の世界でも強権的指導が一般化しているようだ。
・『39℃の救急車運転手が38.5℃の医者と看護師を乗せて38℃の患者を迎えに行く  中国のSNSでも、この話はブラックジョークの形で拡散されていた。「熱が39℃の救急車のドライバーが、38.5℃の医者と看護師を乗せて、38℃の患者を迎えに行っている」というのだ。そして、多くのネットユーザーは、「これは決してジョークではない。現実に起こっている話だ」と同意するのだった。 「この3年間、まともな休日はなかった。最長だと4カ月間1日も休めない時もあった。そして、ずっと防護服のままだった。病院内だけでなく、1年の半分以上はあちこちのPCR検査に出張した。そこでももちろん終日防護服。できるだけトイレへ行かないように、食事や水を極力控えめにしていた。ダイエットにはちょうどいいかもしれないね」と段さんは苦笑しながら話す』、「39℃の救急車運転手が38.5℃の医者と看護師を乗せて38℃の患者を迎えに行く」、「多くのネットユーザーは、「これは決してジョークではない。現実に起こっている話だ」と同意する」、なるほど。
・『年末年始を挟んだ2カ月弱、新型コロナで亡くなった人は約8万人?  1月28日に中国疾病予防センターは、1月20~26日の1週間で、新型コロナに感染し、国内の医療機関で死亡したのは6364人と発表した。感染対策が大幅に緩和された12月8日から1月26日までの2カ月弱の死者数は合わせて約8万人となったが、これには自宅で死亡した人は含まれておらず、実際にはもっと多いという指摘もあり、国内外のメディアやSNSではさまざまな臆測が飛び交っている。 この数字について、葬儀場の職員として働いている呉さんと李さんに尋ねてみた。「日本を含めて海外の多くのメディアは、中国では高齢者を中心にものすごい数の人が亡くなったと報道していた。それは本当? あと、葬儀場に長蛇の列ができている様子も報じられていたけど、あれはなぜ?」 呉さんの答えは、「自分の肌感覚では、例年同時期に比べると、2割ぐらい増えたと思う」というもの。「もともと12月下旬から春節までは、高齢者の死亡が一番多い時期。しかし、今回はオミクロン株の感染により、高齢者の死亡者数が例年を上回っていたのは事実だ」(呉さん) ちなみに、呉さんと李さんが勤める葬儀場は、年間3万近くの遺体を扱っている巨大な葬儀施設である。職員は300人以上おり、告別式用のホールは20以上、一番大きいホールは1000人以上が入る規模だ』、「自分の肌感覚では、例年同時期に比べると、2割ぐらい増えたと思う」、やはり、「例年同時期に比べると」、「増えた」ようだ。
・『葬儀場の前に長蛇の列ができていた理由は?  上海市では、人が亡くなると、親族から葬儀会社に連絡して、自宅や病院から遺体を引き取ってもらい、告別式までの間は葬儀場に安置される。親族は葬儀場と、告別式の詳細や火葬の日程について打ち合わせし、後日、告別式と火葬を行うというのが一般的な流れである。葬儀場で告別式が終わったら、遺体は火葬場に送られる。親族が火葬場に同行するかしないかは選択できるが、大概は同行しない。そのため、日本のように火葬後に親族による収骨という過程はない。お骨はその後葬儀場に戻り、親族が葬儀場でお骨を引き取り、納棺する。 「もともと一年でもっとも忙しい時期な上に、(昨年末から今年の春節にかけては)職員の3分の2が陽性になった。管理職から事務方、食堂の担当まですべての職員を現場に総動員し、みんな帰宅できず職場に泊まり込んでいた。それでも人手がまったく足りず、業務がたまりにたまって、まるで戦場のようだった。遺体を引き取りにいく人手が足りなくなったため、多くの遺体が病院の霊安室やご家庭に長く安置されていた。ネットで拡散されていた、病院の霊安室に遺体が重ねて安置されている写真はそのためだ。通常なら遺体の引き取りは電話一本で済むが、電話の対応もできなくなったので、手続きは葬儀場で行わなければならない。そのため、市民たちが夜中の1時から並び始めた。列が長い時には、200メートル以上先まで続いていたよ」(李さん) 「国のウィズコロナへの政策転換は賛成だが、緩和するタイミングをもうちょっと考えてほしかった。今回は葬儀場の職員が不在のため、告別式もできなくなった。親族がご遺体とまともなお別れができないままで、遺体が火葬された」(呉さん)』、「職員の3分の2が陽性になった。管理職から事務方、食堂の担当まですべての職員を現場に総動員し、みんな帰宅できず職場に泊まり込んでいた。それでも人手がまったく足りず、業務がたまりにたまって、まるで戦場のようだった。遺体を引き取りにいく人手が足りなくなったため、多くの遺体が病院の霊安室やご家庭に長く安置されていた。ネットで拡散されていた、病院の霊安室に遺体が重ねて安置されている写真はそのためだ。通常なら遺体の引き取りは電話一本で済むが、電話の対応もできなくなったので、手続きは葬儀場で行わなければならない」、大混乱のようだ。
・『「6歳の息子が、会えないまま火葬される」 路地裏で秘密裏に遺体と面会させてあげることも……  「コロナ禍の3年間は、多くの家庭がこのような境遇だった。昨年4月から2カ月間のロックダウンの期間中も、たくさんの凄惨な状況を見てきた。その時は、病院で亡くなった人は火葬場に直送されていたので、入院中はもちろん、亡くなってからも親族との対面が許されなかった。 ある時、6歳の男の子が病院で亡くなったことがあった。両親も祖父母も、入院中ずっと会えずにいた。せめて火葬される前に一目会いたいと相談されて、遺体を火葬場に送る途中、事前に家族と約束したある路地裏でこっそりと会わせたのだ」(李さん) ロックダウン中はこうしたケースが珍しくなかったため「あまりに気の毒で、ロックダウンの間に、親族が遺体と対面したいという要望があれば、規定があるとしても、我々はできるだけ対応していた」と李さんは話す』、「あまりに気の毒で、ロックダウンの間に、親族が遺体と対面したいという要望があれば、規定があるとしても、我々はできるだけ対応していた」、やはり中国でも弾力的な対応をするようだ。
・『第一線の医療関係者に一時奨励金を支給 しかしそれよりも……  彼らの体験談を聞いて、筆者は改めて心から尊敬の意を抱いた。この3年間、新型コロナウイルスと国の政策に翻弄されつつも、呉さんや李さん、段さんのように善良な人たちの献身的な支えがあったからこそ、中国の人々は救われていたのだ。 1月初旬、上海市政府は、コロナ感染治療にあたる第一線の医療関係者らに6000元(約12万円)を一時奨励金として支給した。これは、市民から絶大な支持を得た。「6000元は少ない。もっと差し上げるべきだ!」「医療従事者は我々の救いの神だ」などの声がSNSにあふれたのだ。そしてマスコミも、大きな災害の後、いつも第一線で大きな犠牲を払うこれらの人々に賛辞を惜しまない。「最美医生、最美睡姿」(もっとも美しい女医、もっとも美しい寝顔。あまりの疲れでつい寝てしまったという意味)など称賛の言葉が飛びかっていた。 その話をすると、新年会に出た人たちは皆、「そんなに感謝されなくて結構だ。私たちの仕事にケチをつけたり、差別したりしないで、理解してくれるだけで十分満足」と口をそろえていた。なぜなら中国では、葬儀や介護などの職種に対しての偏見が強く残っている。さらには病院を破壊したり、医師や看護師を襲って大けがを負わせたりといった事件まで起こっているからだ(参考記事:中国医療の過酷な現実、エリート中間層でも一寸先は医療費破産)。 中国における新型コロナウイルスの感染者数や死者数は12月末~1月上旬にピークとなり、春節を迎えるころにはかなり低いレベルに落ち着いた。新年会で話を聞かせてくれた友人だけでなく、中国中の医療従事者や葬儀場で働く人たちがゆっくり体を休めていることを願うばかりだ』、「中国における新型コロナウイルスの感染者数や死者数は12月末~1月上旬にピークとなり、春節を迎えるころにはかなり低いレベルに落ち着いた」、一安心だ。

第三に、2月6日付け現代ビジネスが掲載した経済産業研究所コンサルティングフェローの藤 和彦氏による「中国「習近平体制」がもたらす「経済“大失速”の深層」と、中国型「全体主義」が限界をむかえる「あぶない兆候」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/105564
・『絶対君主の習近平  ゼロコロナ政策の解除を機に、中国経済への期待が高まっているが、果たして本当だろうか。 中国は本格的な人口減少の時代に突入するなど構造的な問題を抱えており、中長期の見通しについて悲観的な見方を示す専門家もまた、増えているからだ。 中国は、肝心かなめの「統治のあり方」に疑問が呈されるようになっている。 このポリティカルリスクのネガティブインパクトは、想像以上に大きいようだ。 中国の習近平国家主席は昨年10月の第20回共産党大会で最高指導部の政治局常務委員に側近を引き上げた。常務委員会の総意による意志決定をやめ、毛沢東以来でもっとも強力な指導者になったと言われている。 習氏の経済分野への介入強化はかねてから懸念されていた』、「習氏」はどうみても「経済」に対する見識には欠けるようだ。
・『習近平で限界を迎えた中国型「全体主義」  「国内の情報の流れを把握するなど影響力を持ちすぎる」との警戒から民間IT企業を厳しく取り締まったことで、世界の投資家の中国に対する信頼が揺らいだ。 その結果、民間部門で最も効率的なセクターの時価総額が数兆ドル規模で消失した。 不動産市場の低迷など経済が悪化していることから、短期的には締め付けが緩和されるだろうが、抜本的な方針転換が図られるとの期待は薄い。 むしろ、習氏への権力集中に伴い、専門家の意見を聞かずに密室で決定される政策が増加し、経済への悪影響がさらに拡大すると危惧されている。 そもそも中国の統治制度はどのような特色を有しているのだろうか。 米スタンフォード大学の許成鋼客員研究員は、中国の統治制度を「地方分権的全体主義」と定義している(1月27日付日本経済新聞)。 中国共産党は1950年代初期、政治・経済を含むあらゆる分野の支配権を中央に集中させる全体主義の制度をソ連(当時)から導入したが、50年代半ば以降、「郡県制」という伝統的な統治手法を加え、その制度を改めた。 個人崇拝などで最高指導者の絶対的権威を確立する一方、行政の立案・運営の権限のほとんどを最高指導者が任命する地方の指導者に与えるものだ。 これにより、中国共産党はソ連より強固な一極集中の体制をつくり上げたことに成功した。 この制度の下に、地方の指導者は最高指導者の意向に沿った取り組みを競い、切磋琢磨してその実現に邁進したのだが、最高の成功事例は改革開放だったことは言うまでもない。 経済成長を巡る地方間の激しい競争が民間セクターの発展を可能にし、政治改革を伴わずに中国は高度成長を長年にわたり享受することができた。 しかし、こうした競争は環境破壊や所得格差の拡大、不動産バブルといった問題をもたらし、改革開放は今や負の側面の方が大きくなっている。 習近平の独裁下のネガティブインパクトはあまりにも大きいようだ。さらに後編記事『これは宿命なのか・・・「習近平体制」に富裕層が海外逃亡!「先の見えた中国」に国民があいそをつかす日』では、中国の政府不信の高まりについて、詳しくレポートする!』、以前は経済は李克強前首相が主に担当していた。現在は、「習氏」の部下だった李強氏が次期首相候補とされている。「習氏」の「独裁」が強化されるようだ。しかし、「独裁」の「強化」は、失政のリスクも高くなることを意味。

第四に、この続きを、2月7日付け現代ビジネスが掲載した経済産業研究所コンサルティングフェローの 藤 和彦氏による「これは宿命なのか・・・「習近平体制」に富裕層が海外逃亡!「先の見えた中国」に国民があいそをつかす日」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/105565
・『中国経済が復活するという楽観論が広がっているが、本当だろうか。 少なくとも中長期的には、ネガティブな情報にあふれている。 長らく「地方分権的全体主義」で機能して「改革開放」に成功した中国だが、いまや経済大失速が顕著になっている。習近平の独裁体制が始動したことで、さら(注)に数々のひずみが明らかとなった。 果たして、中国はこれからどうなってしまうのか。 前編『中国「習近平体制」がもたらす「経済“大失速”の深層」と、中国型「全体主義」が限界をむかえる「あぶない兆候」』に続きレポートする』、興味深そうだ。
(注):「び」ではなく「に」
・『絶対権力者の「落とし穴」  現在、習近平体制が敷こうとしている統治制度の根本的な問題は、最高指導者と地方の間の意思疎通が迅速かつ正確に行われず、カリスマ化した最高指導者に対するチェック機能が働かないことだ。 広大な国土と世界最大級の人口を擁する中国では「鶴の一声」が往々にして極端な結果を招いた。) カリスマ化した前例である毛沢東統治下で起きた「大躍進」や「文化大革命」の悲劇はあまりに有名だ。1979年から実施された「1人っ子政策」でも極端な人口減少を生じさせる結果となった。 習金平のやり方は伝統的な統治制度を復活させた感が強いが、「ゼロコロナ政策の突然の解除によってもう一つの悲劇が生まれるのではないか」との不安が脳裏をよぎる。 習近平の歓心を得るため、これまでゼロコロナ政策を墨守してきた地方政府だが、不動産市場の低迷で土地売却収入が激減し、ゼロコロナ政策を維持するのに必要な巨額の資金を捻出することができなくなってしまった。 台所が「火の車」になった地方政府からの突然の悲鳴に驚いた習近平が、なんら対策を講じることなくゼロコロナ政策を解除してしまったのが内情だろう』、「地方政府だが、不動産市場の低迷で土地売却収入が激減し、ゼロコロナ政策を維持するのに必要な巨額の資金を捻出することができなくなってしまった。 台所が「火の車」になった地方政府からの突然の悲鳴に驚いた習近平が、なんら対策を講じることなくゼロコロナ政策を解除してしまった」、突然の解除の背景がよく理解できた。
・『国民は「政府発信」の情報が信じられない  中国政府は「新型コロナの感染は収束しつつある」と喧伝しているが、専門家の間では「中国の感染爆発は長期にわたって続く」との見方が有力だ。 農村部の高齢者の犠牲を防ぐことがゼロコロナ政策を正当化する根拠だったことから、中国では今後、農村部を中心に100万人以上の死者が出るかもしれない。 中国政府が「不都合な真実」を隠蔽する可能性が高いが、このような姿勢は「人民の安全を守る」という政府の最も重要な責任を放棄したとのそしりを免れないだろう。 ゼロコロナ政策の解除により、政府の存在感が急速に薄れているのが気になるところだ。 新型コロナの感染が急拡大する中、政府から支援を得られない都市部の住民は医薬品などを融通し、助け合いで生き抜こうとしている(1月19日付ブルームバーグ)。 新型コロナの治療についても、保健当局者の発言よりもソーシャルメデイアのインフルエンサーの意見に頼るようになっている(1月24日付ブルームバーグ) ゼロコロナ下で非常に大きな存在感を示していた政府は「今は昔」だ。人々は政府抜きの生活を実感していると言っても過言ではない』、「政府から支援を得られない都市部の住民は医薬品などを融通し、助け合いで生き抜こうとしている」、「新型コロナの治療についても、保健当局者の発言よりもソーシャルメデイアのインフルエンサーの意見に頼るようになっている」、「人々は政府抜きの生活を実感していると言っても過言ではない」、なるほど。
・『富裕層が逃げだした  政府がゼロコロナ政策に伴う渡航制限を解除したことで富裕層の海外移住の動きも加速している(1月26日付ブルームバーグ)。 共産党に楯を突かない限り、富を増やし続けられることができた富裕層は、習近平の経済活動への締め付けや「共同富裕」の動きに辟易としているからだ。 「政府による一党支配を受け入れる代わりに、国民の安全を維持し生活を向上させる」という、これまでの社会契約が無効になりつつある。 慣れ親しんできた統治制度を抜本的に見直すことは困難だ。 だが、そうしない限り、体制の危機が進んでしまうのではないだろうか。 さらに連載記事『習近平が大ピンチ……!中国「ゼロコロナ大不況」が「世界金融危機」へと波及する悪夢のシナリオ』では、負の側面があらわとなった中国経済の深層を詳しくレポートする』、「富裕層は、習近平の経済活動への締め付けや「共同富裕」の動きに辟易としている」、「渡航制限を解除したことで富裕層の海外移住の動きも加速」、「富裕層」が逃げ出すような「中国経済」には展望がなさそうだ。
タグ:中国経済 (その15)(習近平が大ピンチ……!中国「ゼロコロナ大不況」が「世界金融危機」へと波及する悪夢のシナリオ、中国の医療・葬儀の修羅場 39℃の救急車運転手と38.5℃の医師が38℃の患者の元へ、中国「習近平体制」がもたらす「経済“大失速”の深層」と 中国型「全体主義」が限界をむかえる「あぶない兆候」、これは宿命なのか・・・「習近平体制」に富裕層が海外逃亡!「先の見えた中国」に国民があいそをつかす日) 現代ビジネス 藤 和彦氏による「習近平が大ピンチ……!中国「ゼロコロナ大不況」が「世界金融危機」へと波及する悪夢のシナリオ」 「ゼロコロナ政策」に対する国民の不満が高まり、突如、「解除」したが、政策の振れの大きさには驚かされる。 中国のGDP成長率は、2022年は3.0%と目標の5.5%を大きく下回った。10-12月期は前年同期比2.9%と7-9月期の同3.9%より低くなった。 リーマン・ショック時は確かに「中国」がプラス成長で世界をリードしたが、もはやそんな底力はなさそうだ。 ちなみに国債のデフォルト確率を示すクレジット・デフォルト・スワップのスプレッドは、米国、日本は低いが、中国、韓国は高水準である。 https://finance-gfp.com/?p=6447 「中国のコロナ大不況が米国の金融市場に与える負のインパクトを見逃してはならないのではないだろうか」、その通りだ。 ダイヤモンド・オンライン 王 青氏による「中国の医療・葬儀の修羅場、39℃の救急車運転手と38.5℃の医師が38℃の患者の元へ」 「「いかなる理由であれ、陽性患者の受け入れを拒否してはいけない。減員による診察の停止や欠勤は断固として禁止する」という通知を出した。そして医療従事者に「熱が39℃以下であれば、勤務を続けよ」と命じた」、医療の世界でも強権的指導が一般化しているようだ。 「39℃の救急車運転手が38.5℃の医者と看護師を乗せて38℃の患者を迎えに行く」、「多くのネットユーザーは、「これは決してジョークではない。現実に起こっている話だ」と同意する」、なるほど。 「自分の肌感覚では、例年同時期に比べると、2割ぐらい増えたと思う」、やはり、「例年同時期に比べると」、「増えた」ようだ。 「職員の3分の2が陽性になった。管理職から事務方、食堂の担当まですべての職員を現場に総動員し、みんな帰宅できず職場に泊まり込んでいた。それでも人手がまったく足りず、業務がたまりにたまって、まるで戦場のようだった。遺体を引き取りにいく人手が足りなくなったため、多くの遺体が病院の霊安室やご家庭に長く安置されていた。ネットで拡散されていた、病院の霊安室に遺体が重ねて安置されている写真はそのためだ。通常なら遺体の引き取りは電話一本で済むが、電話の対応もできなくなったので、手続きは葬儀場で行わなければならない」、大 「あまりに気の毒で、ロックダウンの間に、親族が遺体と対面したいという要望があれば、規定があるとしても、我々はできるだけ対応していた」、やはり中国でも弾力的な対応をするようだ。 「中国における新型コロナウイルスの感染者数や死者数は12月末~1月上旬にピークとなり、春節を迎えるころにはかなり低いレベルに落ち着いた」、一安心だ。 藤 和彦氏による「中国「習近平体制」がもたらす「経済“大失速”の深層」と、中国型「全体主義」が限界をむかえる「あぶない兆候」」 「習氏」はどうみても「経済」に対する見識には欠けるようだ。 以前は経済は李克強前首相が主に担当していた。現在は、「習氏」の部下だった李強氏が次期首相候補とされている。「習氏」の「独裁」が強化されるようだ。しかし、「独裁」の「強化」は、失政のリスクも高くなることを意味。 藤 和彦氏による「これは宿命なのか・・・「習近平体制」に富裕層が海外逃亡!「先の見えた中国」に国民があいそをつかす日」 「地方政府だが、不動産市場の低迷で土地売却収入が激減し、ゼロコロナ政策を維持するのに必要な巨額の資金を捻出することができなくなってしまった。 台所が「火の車」になった地方政府からの突然の悲鳴に驚いた習近平が、なんら対策を講じることなくゼロコロナ政策を解除してしまった」、突然の解除の背景がよく理解できた。 「政府から支援を得られない都市部の住民は医薬品などを融通し、助け合いで生き抜こうとしている」、「新型コロナの治療についても、保健当局者の発言よりもソーシャルメデイアのインフルエンサーの意見に頼るようになっている」、「人々は政府抜きの生活を実感していると言っても過言ではない」、なるほど。 「富裕層は、習近平の経済活動への締め付けや「共同富裕」の動きに辟易としている」、「渡航制限を解除したことで富裕層の海外移住の動きも加速」、「富裕層」が逃げ出すような「中国経済」には展望がなさそうだ。
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地方自治体(その1)(「給付金4630万円持ち逃げ男」が背負う代償 実刑必至に多額の納税も、4630万円誤送金 9割回収の奇跡を起こした阿武町顧問弁護士がとった“ウラ技”、「早く返金していただきたい」大阪でも1502万円が未回収…実は全国で“役所の誤支給”が頻発しているワケ) [国内政治]

今日は、地方自治体(その1)(「給付金4630万円持ち逃げ男」が背負う代償 実刑必至に多額の納税も、4630万円誤送金 9割回収の奇跡を起こした阿武町顧問弁護士がとった“ウラ技”、「早く返金していただきたい」大阪でも1502万円が未回収…実は全国で“役所の誤支給”が頻発しているワケ)を取上げよう。

先ずは、昨年5月20日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した事件ジャーナリストの戸田一法氏による「「給付金4630万円持ち逃げ男」が背負う代償、実刑必至に多額の納税も」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/303448
・『山口県阿武町が新型コロナウイルス対策の臨時特別給付金4630万円を誤って住民1人の口座に振り込み返還を求めている問題で、山口県警は18日、誤給付と知りながら別の口座に移し替えて不法に利益を得たとして、電子計算機使用詐欺の疑いで無職、田口翔容疑者(24)を逮捕した。既に使い込み、スッカラカンとみられるが「はい、そうですか」で済むわけがない。若者に降って湧いた出来事に魔が差したのかもしれないが、代償は極めて高そうだ』、大いに話題になった有名な事件だ。
・『誤給付されたカネを使いネットカジノで大ばくち  田口容疑者の逮捕容疑は4月12日、阿武町が誤って自分の口座へ4630万円を振り込んだと知りながら、スマートフォンでオンライン決済サービスを使い、決済代行業者の口座に400万円を振り替えて不法な利益を得たとされる。容疑を「間違いありません」と認めているという。 全国紙社会部デスクによると、阿武町が誤給付するまで田口容疑者の口座には665円しかなかったが、町職員が返還を求めに訪れて誤給付の事実を知った同8日から19日まで、決済を計34回にわたり繰り返した。1回当たりの決済額は67万~400万円で、1日に900万円以上を決済した日もあったという。 田口容疑者は逮捕前、代理人弁護士に「複数のネットカジノで全部使った」と説明しており、決済代行業者を通じてカジノを運営する海外の口座に流れたとみられる。逮捕当日の18日時点で、田口容疑者の口座には約6万8000円しか残っていなかった。 「電子計算機使用詐欺罪」(刑法246条の2)は、あまり聞き慣れない罪状と思う。一般的な詐欺罪(同第246条の1)と構成要件は同じで、他人をだまして財物を受け取ったり、不法な利益を得たりする行為を指す』、「「複数のネットカジノで全部使った」と説明しており、決済代行業者を通じてカジノを運営する海外の口座に流れたとみられる。逮捕当日の18日時点で、田口容疑者の口座には約6万8000円しか残っていなかった」、もともと「ネットカジノ」を使い馴れていたのだろうか。
・『罰則は10年以下の懲役 弁済不能で実刑は必至  今回のケースでは、単純に「誰かをだまして金品を詐取」したのではなく、自分の口座とはいえ、町職員に「誤給付」と告げられて(というか、口座を確認すれば普通におかしいと気付くだろうが)他人のお金だと認識しているのに、勝手に口座から移動させた行為が「不法な利益」に当たると判断されたわけだ。 ちなみに新聞やテレビは「決済代行業者の口座に移し替えた疑い」「不法に利益を得た疑い」などと報じているが、誰が被害者か書き込んでいない記事が多い。この場合、正解は「銀行」になる。 誤った振り込みが口座になされたとはいえ、田口容疑者の所有物ではないので、その瞬間は銀行が一時的に「占有」していることになる。その銀行から不当な利益を得たという解釈だ。 ちなみに罰則は10年以下の懲役で、罰金刑はない。通常、詐欺罪のケースは被害を弁済した上で「厳罰を望んでいない」「寛大な処分を望む」と一筆差し入れてもらって執行猶予が付くのが一般的だ。田口容疑者の場合、ほぼ全額使い込んでいるわけだから弁済は無理だろうし、初犯だったとしても金額が金額だけに長い刑期になる可能性もある。 なぜ一括して4630万円分の容疑で逮捕しないのか、という疑問もおありかもしれないが、これは単純に1回の決済として一番金額が多かったからで、再逮捕や追送検という形で勾留を続け、いずれ全額分が立件されるだろう』、「被害者」は「銀行」になる。「誤った振り込みが口座になされたとはいえ、田口容疑者の所有物ではないので、その瞬間は銀行が一時的に「占有」していることになる。その銀行から不当な利益を得たという解釈」、もっとも、「銀行」も「阿武町」から振込を受け付ける際に、同一人物への振込となっていることを、阿武町」に再確認すべきところを怠った責任がある筈だ。
・『4630万円と弁護士費用の支払いは利息だけでも月10万円以上  刑事的な流れは上記の通りだが、刑期を勤めれば使い込んだお金を返還しなくて済むわけでは、当然ない。テレビや新聞が報じている通り、阿武町は5月12日、不当利得の返還と弁護士費用を加えた5100万円余の支払いを求め、山口地裁萩支部に提訴した。 逮捕前、代理人弁護士に「お金を使ってしまったことは申し訳ない」「少しずつでも返していきたい」と話したというが、訴えを全面的に認めるか疑わしい。ほぼ全額を使い込んだ後、返還を求めても「町が悪い(から返す必要はない)」と責任転嫁していたとされる。 こうしたタイプは、答弁書や口頭弁論でも「阿武町に過失があり、全額の返還には応じない」と一部争う姿勢を見せるケースがあるからだ。こうなると、田口容疑者は逮捕・勾留されているだけに訴訟が長期化する可能性はある。 しかし、長くなれば長くなるほど債務は膨れ上がる。民法704条は、得た利益が「不当利得」と知りながら取得した場合、年3%の利息を付けて返還しなければならない。単純計算で年間138万9000円、月に11万5000円余だ。利息は判決確定ではなく、遡って発生するので、月10万円ずつ支払っても、利息にさえならないのだ。 万が一、阿武町側の好意で「利息免除」となったとしても、弁護士費用も含め月10万円の支払いで42年以上かかる。そもそも、こうして有名になってしまった田口容疑者が、出所後にこれほどの額を支払い続けるのは厳しいのではないだろうか』、「訴訟が長期化する可能性はある。 しかし、長くなれば長くなるほど債務は膨れ上がる。民法704条は、得た利益が「不当利得」と知りながら取得した場合、年3%の利息を付けて返還しなければならない。単純計算で年間138万9000円、月に11万5000円余だ。利息は判決確定ではなく、遡って発生するので、月10万円ずつ支払っても、利息にさえならないのだ」、確かに「利息」による「債務」の膨張は膨大だ。
・『犯罪で得た収益にも納税する義務  実は田口容疑者には、恐ろしい組織が待ち構える。国税局だ。 あまり知られていないが、所得税法36条の規定する「収入金額とすべき金額」または「総収入金額に算入すべき金額」について、基本通達で「その収入の基因となった行為が適法かどうか問わない」とある。つまり合法だろうが違法だろうが、懐に入れた金の税率分は納めろというわけだ。 2017年には横浜市の寝具販売業の実質的経営者が従業員と共謀し、悪質な訪問販売に悩む高齢者に「勧誘をやめさせる」とウソをつき、その費用名目でだまし取った現金計約3億4000万円を他人名義の口座に隠したとして組織犯罪処罰法違反の罪で起訴された後、その所得の一部を脱税したとして、法人税法違反の罪で追起訴されたケースがあった。これは、東京国税局査察部が千葉地検に告発していた。 国税局はありとあらゆる媒体から情報を収集し、事件のニュースも網羅しているから、犯罪収益を隠していると目を付けた法人や団体、組織、個人は例外なく調査に出向く。一般的に脱税は仮装・隠蔽(いんぺい)、金額が大きいなどの場合は刑事事件になるが、修正申告するなど反省の姿勢を見せれば行政処分(追徴課税)で済むケースも有る。 今回はどうだろう。前例がないので断言できないが、「一時所得」か「雑所得」のいずれかのはずだ』、確かに国税は、「基本通達で「その収入の基因となった行為が適法かどうか問わない」とある。つまり合法だろうが違法だろうが、懐に入れた金の税率分は納めろというわけだ」とチャッカリしているので、その負担も膨大だ。
・『納税額は約2000万円か 自己破産でも逃れられず  所得税の税率は4000万円を超える場合、45%。誤給付の金額から控除額を引いて単純に計算しても、来年の確定申告で約1870万円の納税義務がある。納税できなければどうなるか。 金額が大きいだけに税務署ではなく、広島国税局課税第1部資料調査課(通称・リョウチョウ)の出番かもしれない。仮装・隠蔽という悪質な手口ではないと認められ重加算税を免れても、納税できなかった場合、無申告加算税(20%)の約370万円が加えられ、計約2240万円。 国税の延滞金は民法の規定のように優しくはなく、時間が経過するにつれて高くなり、最大で14.6%になる。そうすれば利子だけで年約330万円、月30万円近い支払額になるわけだ。 言うまでもなく、「納税」は国民の三大義務。民事訴訟で判決が確定しても「一銭も払わずバックレる」というのはよく聞く話だ。しかし、税金は自己破産しようとも一生、免れることはできない。 使い込んでしまった阿武町の公金を少しずつでも返していくのか、来年から義務が生じる納税を続けていくのか。いずれもバックレて自分の素性を偽り、隠れるように生きていくのか。 大金に目がくらみ、出来心で背負った十字架は随分と重いものになりそうだ』、「国税の延滞金は民法の規定のように優しくはなく、時間が経過するにつれて高くなり、最大で14.6%になる。そうすれば利子だけで年約330万円、月30万円近い支払額になるわけだ」、「大金に目がくらみ、出来心で背負った十字架は随分と重いものになりそうだ」、その通りだ。

次に、5月25日付けデイリー新潮「4630万円誤送金 9割回収の奇跡を起こした阿武町顧問弁護士がとった“ウラ技”」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2022/05251220/?all=1
・『山口県阿武町で起きた誤送金事件は、劇的な結末を迎えた。回収が不可能と思われていた絶望的な状況から一転、町は誤送金した金額の9割に及ぶ約4300万円の回収に成功したのだ。町を救った“ヒーロー”は、昭和30年生まれの地元・山口県の弁護士。同業者の間でも、思いがけない奇策に注目が集まっているという』、確かに「思いがけない奇策」には、私も驚かされた。
・『ドラマのような大逆転劇  「ポイントは回収先として、お金を持っていない24歳男性ではなく、決済代行業者に目をつけたこと。しかも、国税徴収法に基づき、わずかしかないであろう滞納税金に基づき、男性が決済代行業者に有していたとされる債権を全額差し押さえるという奇策に驚きました。やはり、自治体の弁護士は考えることが違うなと」 こう興奮気味に語るのは、「渥美坂井法律事務所弁護士法人 麹町オフィス」代表の渥美陽子弁護士だ。渥美氏ばかりではない。いま弁護士界隈のTwitterには、奇跡の債権回収を成し遂げた阿武町の顧問弁護士に対し、「ドラマのようだ」「これぞプロ」といった賞賛の嵐が吹き荒れているのだ。 大ピンチからの逆転劇を見せたのは、山口県で弁護士事務所を営む中山修身氏。山口県の法曹界では名の知れた、御年67歳の弁護士である。誤振込み問題が発生してからは、中山氏に対する批判の声も大きかった。「なぜ、田口翔容疑者に使い込まれる前に、彼の口座の仮差押えに動かなかったのか」という声もその一つだ。 だが、「債権回収業務は結果がすべて。使い込まれたと気づいてからの迅速な動きについては、見事だと皆が褒め称えています」(渥美氏)。まさに、9回裏に一発大逆転のホームランを放ったのである』、「債権回収業務は結果がすべて。使い込まれたと気づいてからの迅速な動きについては、見事だと皆が褒め称えています」、なるほど。
・『公序良俗に反する契約  いったい中山氏はどのような手法で、不可能と思われた回収を成し遂げたのか。 田口容疑者は、自分の口座に振り込まれた4630万円のほぼすべてを、オンラインカジノに使ったと供述している。 カジノ口座への資金移動は、デビット決済と決済代行業者への振込みだった。賭博罪がある日本では、海外にサーバーがあったとしてもオンラインカジノでのギャンブルは違法。そのため、カジノサイトへ多額の資金を直接移動させるのは難しく、決済代行業者を利用するのが一般的だ。田口容疑者は約340万円をデビット決済で動かしたが、残りの約4300万円を国内3社の決済代行業者3社の口座に移した。 結論から言えば、中山氏はこの3社に詰め腹を切らせたわけである。 「報道によると、阿武町は男性と決済代行業者との間の委任契約は、公序良俗に反する契約で無効だと主張したようです。この主張が通ると考えるならば、決済代行業者は、口座に入金されたお金を男性に返さなければなりません。阿武町は、男性は決済代行業者に対しこのお金の返還を請求できると主張したうえで、決済代行業者の銀行預金を男性の銀行預金とみなし、差し押さえたのだと考えられます」(渥美氏)』、「阿武町は男性と決済代行業者との間の委任契約は、公序良俗に反する契約で無効だと主張したようです」、「決済代行業者は、口座に入金されたお金を男性に返さなければなりません。阿武町は、男性は決済代行業者に対しこのお金の返還を請求できると主張したうえで、決済代行業者の銀行預金を男性の銀行預金とみなし、差し押さえたのだと考えられます」、実に見事だ。
・『恫喝  その際、中山氏が持ち出したのが「国税徴収法」であった。金額は不明だが、田口容疑者はなんらかの税金を滞納していたようだ。 「滞納処分では、民間の案件とは異なり、裁判所で判決を取らなくても徴収職員が滞納者の財産を差し押さえることができます。だから、町は男性の預金とみなされた決済代行業者の預金をいきなり差し押さえることが可能だったのです」(同) それだけではない。その際に、法に基づき”恫喝”したのだ。中山氏は、決済代行業者の口座がある二つの銀行に対して、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」8条1項に基づき、犯罪による収益と関係する「疑わしい取引」が行われているとして金融庁への届出と、同庁の定める「マネー・ロンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」に基づく対応を求めた。 「あなたたちは怪しい取引をしていますよねと暗に圧力をかけたのです。決済代行業者にもやましいところがあったのでは。これ以上突っ込まれることは避けたいと考え、自ら町に全額を返金してしまったのでしょう」(渥美氏)』、「「あなたたちは怪しい取引をしていますよねと暗に圧力をかけたのです。決済代行業者にもやましいところがあったのでは。これ以上突っ込まれることは避けたいと考え、自ら町に全額を返金してしまったのでしょう」、「決済代行業者」の弱みを突くとはさすがだ。
・『決済代行業者は泣き寝入りか?  町は、決済代行業者の預金を差し押さえたが、そこから最終的に受け取ることができるのは、あくまで、滞納されていた税金の額に限られる。しかも、決済代行業者は約4300万円を町に振り込んだため、滞納税金との差額は田口容疑者が自分のものとして、返還を求めることができた。他方、町も田口容疑者に対し、誤送金した4630万円の返還を求めることができる状況にあった。町は、これらの返還請求権を事実上相殺する“ウルトラC的手法”で、田口容疑者に対する債権の回収に成功したわけである。 割を食ったのは決済代行業者である。現在、山口県警が捜査にあたっているが、海外で運営されているオンラインカジノの金の動きを追うのは困難で、田口容疑者が実際にギャンブルで使いきったかどうかはわかっていない。だが、もし彼の供述が事実ならば、決済代行業者は、田口容疑者がギャンブルで浪費した4300万円を自腹で穴埋めしたということになる。 「それが彼らのリスク判断なのでしょう。決済代行業者が男性に対して、損害賠償請求を検討するかもしれませんが、男性は無資力でしょうからそこから回収は難しいのでは」(同)』、「決済代行業者は、田口容疑者がギャンブルで浪費した4300万円を自腹で穴埋めしたということになる。 「それが彼らのリスク判断なのでしょう」、なるほど。
・『反マスク主義者?  しかも、影響は今回のケースにとどまらない可能性があるという。 「決済代行業者が阿武町からの請求を認めて男性からの入金を全額返金したということは、自ら公序良俗に反する取引をしていたと認めてしまったに等しい。今後、オンラインカジノで負けた利用者が、決済代行業者に対し公序良俗に反する取引だったため無効であり、入金額相当の債権があると主張し始めるかもしれません」(渥美弁護士) 決済代行業者にとっては思わぬ波及効果が起きかねないというのである。見事、阿武町を救ったヒーローになった中山氏であるが、24日の記者会見では、突飛なことを言い出して、「変な弁護士」とのレッテルも貼られたという。 「マスクをつけないで会見に臨んでいたのですが、いきなり話の途中で、『申し訳ありませんけれども、私はそういう義務に従うつもりがない。遵法精神がない、同調しないタイプの人間ですので』と断り出したので、ざわつきました」(地元記者) これだけのことを成し遂げたのだから、多少の変人ぶりは目をつぶってもいいのかもしれない』、「マスクをつけないで会見に臨んでいた」、「私はそういう義務に従うつもりがない。遵法精神がない、同調しないタイプの人間です」、やはり「同調圧力」に従うような人間には、こうした思いがけない法的対応は無理なのだろう。

第三に、5月29日付け文春オンライン「早く返金していただきたい」大阪でも1502万円が未回収…実は全国で“役所の誤支給”が頻発しているワケ」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/54706
・『山口県阿武町役場が新型コロナウイルス対策の臨時特別給付金4630万円を誤って24歳の男性に振り込み、「オンラインカジノで使い果たしたから返せない」と突っぱねられた事件。 「小さな自治体では、まともな行政ができるわけがない」などと批判する著名人もいるが、誤支給は都市部も含めて全国で発生している。背景にあるのは、コロナ禍で国や自治体が次々と支給してきた給付金類だ。 対象や額をどうするかで議論になり、ギリギリにならないと制度が決まらないのに、配付の作業だけは急がされる。「重要な施策だが、そのたびに新しく仕組みを作らなければならないので、いつどこでミスが起きないとも限らない」と指摘する市役所職員もいる。 コロナが流行した当初は「間違ってもいいから、とにかく早くカネをばらまけ」と主張する識者もいた。確かに困窮した人には一刻も早く届ける必要がある。が、誤支給を経験した自治体では役所だけでなく、住民にも深い傷が残った。それが一気に顕在化したのが阿武町だった。 阿武町ではオンラインカジノの決済代行業者から約4300万円が役場に“返金”されるなどしたが、誤支給の判明から2年半が過ぎても、まだ返金されていない自治体がある。大阪府摂津市だ。ただしこの場合、コロナ関連ではなく、住民税還付の事例である』、「誤支給の判明から2年半が過ぎても、まだ返金されていない自治体がある。大阪府摂津市だ。ただしこの場合、コロナ関連ではなく、住民税還付の事例」、なるほど。
・『1502万円も過大に還付  間違いが起きたのは2018年春。市役所の課税部門で納税申告書類をコンピュータ入力していた時、本来は166万とすべきところを職員が1ケタ多く打ち込んだ。このため住民の男性に1502万円も過大な住民税を還付してしまった。 だが、市役所で気づく職員はなく、翌19年の課税作業も終えた。「おかしい」と指摘したのは大阪府だった。 摂津市の担当者が説明する。 「国や府は毎年、自治体の課税データの比較を行っています。その過程で摂津市の数値は年度間の乖離(かいり)が大きいと分かり、府の担当者から『一度確認して下さい』と連絡が入りました。『ええっ』ということで、2019年春の課税データを調べ直したのですが、これは合っていました。 『前年の数字がちょっと大きいな』とさかのぼって調べると、2018年に過大な還付をしていたと分かりました。税関連では特に慎重にチェックをしてきたはずなのですが、膨大な事務量となる時期だけに漏れてしまったようでした」』、「摂津市」では「本来は166万とすべきところを職員が1ケタ多く打ち込んだ。このため住民の男性に1502万円も過大な住民税を還付してしまった。 だが、市役所で気づく職員はなく、翌19年の課税作業も終えた。「おかしい」と指摘したのは大阪府だった」、自分たちでは気づかず、「指摘したのは大阪府」、「摂津市」のシステムには欠陥がありそうだ。
・『謝罪・説明を重ねるも裁判に  摂津市は慌てて男性に連絡し、お詫びの文章も届けた。事情説明にも訪ねた。2019年10月のことだ。 「事情は分かっていただけたようでした。すぐに返金してほしいとお願いしたのですが、これには明確な意思表示がありませんでした。その後も何度もお願いしたのですけれど……」と、市の担当者は表情を曇らせる。 翌年の2020年2月、男性は弁護士を立て、その後は代理人同士の話し合いになった。) 「3月ぐらいになって、『返還義務を負うにしても、気づかずに使ってしまったものについては返せない』と通告されました。市としては『気づかずに使ってしまうような額ではないのに、悪意があったのではないですか。返してください』と申し上げました。双方の主張は交わらず、裁判で決めてもらうしかないと大阪地裁に提訴しました」』、「返還義務を負うにしても、気づかずに使ってしまったものについては返せない」、なんと勝手な言い分だろう。「提訴」は当然だ。
・『市が勝訴したものの……  判決は昨年10月、市が勝訴した。地裁は「株の売買で生計を立てており、過去に多額の税金を納めていたため、不思議に思わなかった」という男性の主張を退け、「株取引の利益がどの程度残るかはまさに死活問題で、税額などを把握していなかったとは考えられない」などと認定。男性は控訴しなかったので、判決が確定した。だが、その後返金はなされていない。 このまま無視を決めていたら、事態は悪化するばかりだ。判決では男性に年利5%を付けて市に返金するよう言い渡されており、約1500万円だと1年間で75万円にもなる。返すのが遅れれば遅れるほど積み重なっていく。 「そうしたことも含めて、早く返金していただきたいとお伝えしています。今後も粘り強く交渉していきたい」と市の担当者は話していた』、「判決では男性に年利5%を付けて市に返金するよう言い渡されており、約1500万円だと1年間で75万円にもなる」、それでも「その後返金はなされていない」、払う気が全くないようだ。
・『定額給付金の二重振り込み  ところで、コロナ関連の給付では、多くの自治体でミスが起きている。 最も混乱したのは2020年5月から全国民に1人当たり10万円が配付された「特別定額給付金」だろう。コロナ禍で初の緊急事態宣言発出(2020年4月7日から)という事態が進行する中で議論がなされ、一度は所得が低下した世帯に30万円を給付するとされた。だが、安倍晋三首相(当時)が4月17日に「一律1人10万円」に転換。4月30日に補正予算が可決されて、バタバタと配付が決まった。 政府がマイナンバーカードを使ったオンライン申請を導入したため、暗証番号を忘れてロックがかかる人が続出し、市区町村の窓口はパニック状態に陥った。 こうした給付を決めるのは政治家で、制度を具体化させるのは省庁だ。しかし、実際に支給の作業をするのは市区町村である。自治体の現場では支給決定前から国の動きをにらみながら準備を進めたが、そもそも余裕のない状態だった。 「そうでなくても行革で職員数はギリギリにまで削っています。コロナ対応の様々な業務が発生し、多忙を極めていました。パンク寸前になった保健所への応援は住民の命にかかわりかねない問題でした。そうした時に給付金の配付が始まったのです。きちんと配付するだけでも大変なのに、マイナンバーカードなどの混乱に足を取られました。二重申請をした人がいないかどうかなどの確認や照合作業にも膨大な人数が割かれました」と、東京23区の区役所幹部が語る。 このように、誤支給が起きかねない前提条件は、十分すぎるほどそろっていた。 2020年5月18日、福島県天栄村で二重振り込みのミスが発覚した。 「村の指定金融機関のJAで朝から振り込み作業を始めたところ、システムにエラーが表示されたのです」と、総務課職員が話す。) それと同時に「二重に振り込まれている」と住民から役場に通報があった。当時の人口は約5500人。「住民の顔が見える村」ならではのことだろう。 JAはすぐに振り込み作業を停止したが、この日に予定していたのは375世帯1162人分(1億1620万円)だった』、「コロナ対応の様々な業務が発生し、多忙を極めていました。パンク寸前になった保健所への応援は住民の命にかかわりかねない問題でした。そうした時に給付金の配付が始まったのです。きちんと配付するだけでも大変なのに、マイナンバーカードなどの混乱に足を取られました。二重申請をした人がいないかどうかなどの確認や照合作業にも膨大な人数が割かれました」と、東京23区の区役所幹部が語る。 このように、誤支給が起きかねない前提条件は、十分すぎるほどそろっていた」、なるほど。
・『ミスの原因は何だったのか?  総務課ではすぐさま職員が手分けして、申請書に記された番号に電話を掛け、「そのまま口座に残しておいて下さい」とお願いした。「ほぼその日のうちに全員と連絡がつきました。何が起きたのか説明してほしいという人には、職員が訪問しました」と前出の総務課員が語る。 誤って振り込まれたうち、35人分を除いては、翌日までに金融機関で戻す手立てができた。「現金で返したいという村民もいて、職員が受け取りに行きました。こうして3週間後の6月8日には全額が戻りました」。 原因は二重のデータ作成だった。同じデータを2日間にわたってJAに渡していたのである。 「村には事務職員が60人弱しかいません。出納担当は2人。結果としてはチェックが不十分でした。その後は出納室だけでなく、他の課でも改めて確認するようにしました」と総務課では説明する。個人情報が絡むデータは少数で取り扱うのが原則だが、誤りをなくす確認作業は課をまたいで行うことにしたのだった』、「個人情報が絡むデータは少数で取り扱うのが原則だが、誤りをなくす確認作業は課をまたいで行うことにしたのだった」、賢明な措置だ。
・『寝屋川市では1000世帯近くに「二重振り込み」  一方、金融機関で食い止められなかった自治体もある。大阪府寝屋川市だ。市のチェックで翌日振り込まれる1000世帯分近くが「二重振り込み」と分かったが、銀行では既に処理が終わっていた。 寝屋川市で支給ミスが表面化したのは2020年5月21日の振り込みだ。金額が「足りない」と市民から連絡が入った。給付金は世帯ごとに代表者に一括して振り込まれる仕組みになっているのに、額が世帯人数分に足りなかったのだ。そこで、翌日にチェックすると、5月21日分の振り込みでは195世帯が「過少振り込み」になっていた。 その後、全データを検証すると、5月26日に振り込む予定にしていた993世帯2196人分(2億1960万円)が二重になっていると前日に分かった。市は急いで止めようとしたが、前述したように無理だった。 原因は市が独自に構築したコンピュータのシステムだ。 当時の寝屋川市には23万人を超える人口があり、手作業による配付作業などできるはずがなかった。このためシステムを使って配付データを作成したのだが、コロナ禍で企業活動が抑制され、外部に委託すると時間が掛かると分かった。そこで、エクセルを活用し、職員がシステムを作った。「少しでも早く配付したい」という思いからだ。 システムには二重給付を避けるため、振り込みを終えたデータと突き合わせて、重複があれば弾く仕組みを採り入れていた。ところが、993世帯分については振り込みデータが登録されていないという不具合が生じていて、突き合わせができなかった。) その後、さらに56世帯97人分(970万円)でも二重振り込みなどが起きていたと分かる。市は電話や訪問で謝罪し、理解が得られた世帯から納付書を送り、返金分を振り込んでもらった。 これまでに全体の98.9%が戻ってきたとしている』、「エクセルを活用し、職員がシステムを作った。「少しでも早く配付したい」という思いからだ」、やはり「二重給付」は避けられなかったようだ。
・『13世帯が最後まで返金に応じなかった  使ってしまったのか、一括では返金できない人もいて、少額に分けて返す人もいた。現在も9世帯が分納をしている。 最後まで返金に応じなかった13世帯については、裁判に訴えた。市が債務名義を取得し、強制執行で預金口座を差し押さえようというのである。執行額は誤支給の1人当たり10万円に加え、1割程度の訴訟費用が上乗せされる。既に5世帯で裁判が終わり、うち3世帯が強制執行などで完納、2世帯は分納するなどしている。 残る8世帯は係争中だが、「裁判所から通知が行っているはずなのに、法廷に姿さえ見せてくれず、市が証拠となる資料を提出するだけの裁判が続いています。家を訪問しても誰も出てきません。住民票はあり、交付申請では本人確認の書類も添えて手続きをしたのに、どうしたことか。預金口座にもほとんど残額がないようです」と、市の担当者はいぶかしがる。 こうして誤支給から2年以上が経過した今も処理が続き、市の負担は大きい。他業務との兼務ではあるが、担当の係(3人)を置いているほどだ。間違いは一瞬でも、後遺症は重く、長く残る』、「間違いは一瞬でも、後遺症は重く、長く残る」、その通りだ。
・『誤支給の処理にも人件費がかかる  処理に当たる人件費もばかにならない。 寝屋川市ではないが、どれくらいかかるか、うかがい知る資料がある。 コロナ禍からさかのぼること約5年前のことだ。消費税が5%から8%に上がった2014年、政府は住民税が非課税となる低所得者を対象に臨時福祉給付金制度を設け、2014年は1人当たり1万円、2015年は6000円、2016年は3000円を支給した。作業を行ったのはもちろん市区町村だ。 香川県高松市では、この給付のためにコンピュータのシステムを構築して、対象者選びなどを行った。しかし、税関係のデータを一部組み込まなかったため、除外されるはずの人にも給付された。 誤りが判明したのは2015年の受け付け期間中だ。制度が始まった2014年からだと、451人に計501万1000円が誤支給されたと分かった。 対象者に連絡を取り、事情を説明して、返還作業をお願いしたのだが、発覚直後の2015年11月10日から12月6日までの間に職員の時間外手当などで40万円あまりが掛かっていた。この数字は当時、市に出された住民監査請求で分かっている。 500万円の返金に対して、わずか1カ月弱で40万円の経費。その後も返還がらみの業務は続いたので、額はこれ以上にかさんだと見られる』、「500万円の返金に対して、わずか1カ月弱で40万円の経費。その後も返還がらみの業務は続いたので、額はこれ以上にかさんだと見られる」、公金は公正さが求められるので、経費があさむのはやむを得ない。
・『神戸市でも“誤支給”が起きていた  コロナ禍に話を戻そう。1人10万円の特別定額給付金に関しては、大都市でも誤支給が発生した。 兵庫県神戸市は、18世帯33人に対して二重に振り込むなどした。 同市は「人口の多い政令指定都市であっても早く支給できるように」と、コンピュータのシステムができあがる前から、手作業でエクセルに入力を開始した。 だが、「入力データの行ずれが起きるなどして人の目で行うチェックは大変でした」と、当時の担当者が語る。誤支給はそうした影響で発生したようだ。 さらにこの担当者は「制度上、やむを得ない“誤支給”もありました」と振り返る。 例えば、DV(家庭内暴力)。 「給付金は世帯ごとの支給ですが、妻が避難している場合は別世帯で配らなければなりません。しかし、避難中と認められる前に、夫から給付申請があれば妻の分も含めて支給されてしまいます。国の通知では、加害側の夫に返還請求しなければならないのに、『妻が本当に10万円もらったかどうか、俺は分からない』『確認するため妻の連絡先を教えてくれ』などと言われ、返金のお願いには大変苦労しました」 このような誤支給はどうしたら避けられるか。「内部の議論では、『全員がマイナンバーカードと紐付けられた口座を持っていれば、事務的なミスはなくなるだろう。全員に個別の番号があったら、アメリカのように申請すら要らない』という話になりました」と話す』、「全員がマイナンバーカードと紐付けられた口座を持っていれば、事務的なミスはなくなるだろう。全員に個別の番号があったら、アメリカのように申請すら要らない」、その通りだ。
・『「誤りがあれば、速やかな連絡とお詫び」  一連の作業を通しては、ミスが起きかねない要素も多々あった。申請書類に添付された預金口座の番号が書き間違えられていたり、通帳に記載された金融機関の支店が統廃合でなくなっていたりしたのだ。「各戸へ書類を郵送するにも、何十万世帯分の封書を急に印刷してくれる事業所は限られていて、調整が難しかった」と語る。 誤支給が見つかった時の対応に、回り道はなかったようだ。 「すぐに連絡をして説明し、誠意を込めて謝罪しました。その人には何ら瑕疵(かし)がないのです。むしろ返金作業で迷惑を掛けてしまいます。たいていの場合は誤支給を知らず、驚いていました。怒るよりもびっくりされていて、真摯に謝ると、気は心というか、通じる部分がありました」 村社会のような人間関係がない都市部では特にそうだろう。 「誤りがあれば、速やかな連絡とお詫び。これは突発業務であろうが、通常業務であろうが変わりません。仕事の基本ではないかと思います」。そう淡々と話していた』、「「誤りがあれば、速やかな連絡とお詫び。これは突発業務であろうが、通常業務であろうが変わりません。仕事の基本ではないかと思います」。そう淡々と話していた」、同感である。
タグ:大いに話題になった有名な事件だ。 戸田一法氏による「「給付金4630万円持ち逃げ男」が背負う代償、実刑必至に多額の納税も」 ダイヤモンド・オンライン 地方自治体 (その1)(「給付金4630万円持ち逃げ男」が背負う代償 実刑必至に多額の納税も、4630万円誤送金 9割回収の奇跡を起こした阿武町顧問弁護士がとった“ウラ技”、「早く返金していただきたい」大阪でも1502万円が未回収…実は全国で“役所の誤支給”が頻発しているワケ) 「「複数のネットカジノで全部使った」と説明しており、決済代行業者を通じてカジノを運営する海外の口座に流れたとみられる。逮捕当日の18日時点で、田口容疑者の口座には約6万8000円しか残っていなかった」、もともと「ネットカジノ」を使い馴れていたのだろうか。 「被害者」は「銀行」になる。「誤った振り込みが口座になされたとはいえ、田口容疑者の所有物ではないので、その瞬間は銀行が一時的に「占有」していることになる。その銀行から不当な利益を得たという解釈」、もっとも、「銀行」も「阿武町」から振込を受け付ける際に、同一人物への振込となっていることを、阿武町」に再確認すべきところを怠った責任がある筈だ。 「訴訟が長期化する可能性はある。 しかし、長くなれば長くなるほど債務は膨れ上がる。民法704条は、得た利益が「不当利得」と知りながら取得した場合、年3%の利息を付けて返還しなければならない。単純計算で年間138万9000円、月に11万5000円余だ。利息は判決確定ではなく、遡って発生するので、月10万円ずつ支払っても、利息にさえならないのだ」、確かに「利息」による「債務」の膨張は膨大だ。 確かに国税は、「基本通達で「その収入の基因となった行為が適法かどうか問わない」とある。つまり合法だろうが違法だろうが、懐に入れた金の税率分は納めろというわけだ」とチャッカリしているので、その負担も膨大だ。 「国税の延滞金は民法の規定のように優しくはなく、時間が経過するにつれて高くなり、最大で14.6%になる。そうすれば利子だけで年約330万円、月30万円近い支払額になるわけだ」、「大金に目がくらみ、出来心で背負った十字架は随分と重いものになりそうだ」、その通りだ。 デイリー新潮「4630万円誤送金 9割回収の奇跡を起こした阿武町顧問弁護士がとった“ウラ技”」 確かに「思いがけない奇策」には、私も驚かされた。 「債権回収業務は結果がすべて。使い込まれたと気づいてからの迅速な動きについては、見事だと皆が褒め称えています」、なるほど。 「阿武町は男性と決済代行業者との間の委任契約は、公序良俗に反する契約で無効だと主張したようです」、「決済代行業者は、口座に入金されたお金を男性に返さなければなりません。阿武町は、男性は決済代行業者に対しこのお金の返還を請求できると主張したうえで、決済代行業者の銀行預金を男性の銀行預金とみなし、差し押さえたのだと考えられます」、実に見事だ。 「「あなたたちは怪しい取引をしていますよねと暗に圧力をかけたのです。決済代行業者にもやましいところがあったのでは。これ以上突っ込まれることは避けたいと考え、自ら町に全額を返金してしまったのでしょう」、「決済代行業者」の弱みを突くとはさすがだ。 「決済代行業者は、田口容疑者がギャンブルで浪費した4300万円を自腹で穴埋めしたということになる。 「それが彼らのリスク判断なのでしょう」、なるほど。 「マスクをつけないで会見に臨んでいた」、「私はそういう義務に従うつもりがない。遵法精神がない、同調しないタイプの人間です」、やはり「同調圧力」に従うような人間には、こうした思いがけない法的対応は無理なのだろう。 文春オンライン「早く返金していただきたい」大阪でも1502万円が未回収…実は全国で“役所の誤支給”が頻発しているワケ」 「誤支給の判明から2年半が過ぎても、まだ返金されていない自治体がある。大阪府摂津市だ。ただしこの場合、コロナ関連ではなく、住民税還付の事例」、なるほど。 「摂津市」では「本来は166万とすべきところを職員が1ケタ多く打ち込んだ。このため住民の男性に1502万円も過大な住民税を還付してしまった。 だが、市役所で気づく職員はなく、翌19年の課税作業も終えた。「おかしい」と指摘したのは大阪府だった」、自分たちでは気づかず、「指摘したのは大阪府」、「摂津市」のシステムには欠陥がありそうだ。 「返還義務を負うにしても、気づかずに使ってしまったものについては返せない」、なんと勝手な言い分だろう。「提訴」は当然だ。 「判決では男性に年利5%を付けて市に返金するよう言い渡されており、約1500万円だと1年間で75万円にもなる」、それでも「その後返金はなされていない」、払う気が全くないようだ。 「コロナ対応の様々な業務が発生し、多忙を極めていました。パンク寸前になった保健所への応援は住民の命にかかわりかねない問題でした。そうした時に給付金の配付が始まったのです。きちんと配付するだけでも大変なのに、マイナンバーカードなどの混乱に足を取られました。二重申請をした人がいないかどうかなどの確認や照合作業にも膨大な人数が割かれました」と、東京23区の区役所幹部が語る。 このように、誤支給が起きかねない前提条件は、十分すぎるほどそろっていた」、なるほど。 「個人情報が絡むデータは少数で取り扱うのが原則だが、誤りをなくす確認作業は課をまたいで行うことにしたのだった」、賢明な措置だ。 「エクセルを活用し、職員がシステムを作った。「少しでも早く配付したい」という思いからだ」、やはり「二重給付」は避けられなかったようだ。 「500万円の返金に対して、わずか1カ月弱で40万円の経費。その後も返還がらみの業務は続いたので、額はこれ以上にかさんだと見られる」、公金は公正さが求められるので、経費があさむのはやむを得ない。 「全員がマイナンバーカードと紐付けられた口座を持っていれば、事務的なミスはなくなるだろう。全員に個別の番号があったら、アメリカのように申請すら要らない」、その通りだ。 「「誤りがあれば、速やかな連絡とお詫び。これは突発業務であろうが、通常業務であろうが変わりません。仕事の基本ではないかと思います」。そう淡々と話していた」、同感である。
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資本市場(その9)(JTに物言う株主が株主提案 問われる「親子上場」 上場子会社・鳥居薬品の非上場化、売却を要求、一世を風靡した「SPAC」 明らかになった問題点 新興企業の資金調達の革新を続けることが必要だ) [金融]

資本市場については、昨年4月13日に取上げた。今日は、(その9)(JTに物言う株主が株主提案 問われる「親子上場」 上場子会社・鳥居薬品の非上場化、売却を要求、一世を風靡した「SPAC」 明らかになった問題点 新興企業の資金調達の革新を続けることが必要だ)である。

先ずは、本年1月31日付け東洋経済オンライン「JTに物言う株主が株主提案、問われる「親子上場」 上場子会社・鳥居薬品の非上場化、売却を要求」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/649493
・『アクティビスト(物言う株主)が、子会社に続いて親会社にも噛みついた。2022年、医薬品中堅の鳥居薬品(東証プライム上場)に株主提案したアクティビストが、今度は親会社であるJT(日本たばこ産業)にも、3月の定時株主総会に向けて株主提案したことが東洋経済の取材でわかった。 今年に入って東京証券取引所が親子上場問題に関する研究会を再開させるなど、親子上場問題をめぐる議論が活溌になっているだけに、今回の株主提案は波紋を広げそうだ』、興味深そうだ。
・『「JTは大株主の責任を果たしていない」  提案をしたのは、香港の投資会社であるリム・アドバイザーズ。リムは2022年1月にも、JTが54.8%の株式を握る子会社で、現在は医薬品の販売会社となっている鳥居薬品に対して株主提案を行っている。今回は鳥居薬品に加えて、親会社のJTにも株主提案を行った。 関係者の話を総合すると、リムはJTに対して、同社が鳥居薬品を買収してから25年が経過したにもかかわらず、「一定の実績だと認められるのは、2020年に発売したアトピー性皮膚炎治療剤コレクチムに限られ、親子間のシナジーが見込めなくなっている」としたうえで、「鳥居薬品のPBR(株価純資産倍率)が0.7倍程度で1倍を割っていることに加え、EV/EBITDA倍率(買収にかかるコストを何年で回収できるかを示す指標)が、同規模の医薬品会社が10?15倍程度であるにもかかわらず、それを大きく下回る4倍程度に沈んでいる」ことを問題視しているようだ。 そのためリムは、「JTは鳥居薬品の企業価値向上に失敗し、大株主としての責任を果たしていない」として、JTに対して鳥居薬品の非上場化もしくは売却を求めているという。 またまたJT出身者が代々、鳥居薬品の代表取締役に就任していることについて、その人物たちが「医薬品事業に関する豊富な知見を有しているようには見受けられない」としたうえで、天下りが「鳥居薬品の株式価値を毀損し、引いては親会社であるJTの株主価値も毀損している」と見ており、「JTで5年以上役員または従業員として勤務経験のある者が鳥居薬品の取締役に選任されることを防ぐ定款規定を設ける」よう提案しているという。) さらに、キャピタル・アロケーション(資本の配分)の観点から、グループ内で資金を包括的に管理するキャッシュ・マネジメント・システム(CMS)によって、「鳥居薬品からキャッシュを適切に活用する機会を奪っている」として、CMSをやめることも合わせて求めているもようだ。 これに対しJTは、「株主提案を受領したことは事実」と認めたうえで、「現在、株主提案に対する会社意見を作成中であり、取締役会で承認され次第開示する予定だ」としている。他方でリムは「個別案件にはお答えできない」とコメントした』、「JT出身者が代々、鳥居薬品の代表取締役に就任していることについて、その人物たちが「医薬品事業に関する豊富な知見を有しているようには見受けられない」としたうえで、天下りが「鳥居薬品の株式価値を毀損し、引いては親会社であるJTの株主価値も毀損している」と見ており、「JTで5年以上役員または従業員として勤務経験のある者が鳥居薬品の取締役に選任されることを防ぐ定款規定を設ける」よう提案」、「JT」が単なる天下り先として、「鳥居薬品」を位置づけている懸念もあり、「リム」の要求は、一定の合理性をもつ。
・『東証も親子上場議論を再開  親子上場をめぐっては、東証が2022年4月にスタートさせた市場区分の再編に関する議論の中でも問題視されるなど、ここ数年、市場では大きな検討課題となっている。そのため東証は、プライム市場を選択する企業の基準として「流通株式比率35%以上」を求めるなど、親子上場の解消を間接的に促している。 また、2020年1月に設置し、2020年9月に「中間整理」を発表して以降、休眠状態だった親子上場の問題点を議論する「従属上場会社における少数株主保護の在り方等に関する研究会」も2023年1月6日に再開、議論を再スタートさせた。 というのも市場区分の見直しをきっかけに、東証には海外の機関投資家やアクティビストなどから親子上場に関する抗議の声が相次いで寄せられているといい、無視できない状況に追い込まれているからだ。 リムが昨年鳥居薬品に行った株主提案には、JTからの天下りの禁止やCMSによる資金提供の禁止などが盛り込まれていたが、いずれも株主総会で否決されている。今回は親会社であるJTにも同様の提案を行うことで、親子上場の問題を正面から問いかける姿勢だ。両社の株主はどう判断するか。その結果次第では、他の親子上場会社にも影響を及ぼしそうだ』、「親子上場」は日本の株式市場における恥部だ。「東証も親子上場議論を再開」するので、今後の成り行きを注目したい。

次に、2月1日付け東洋経済オンラインが掲載した関西学院大学経済学部教授の堀 敬一氏による「一世を風靡した「SPAC」、明らかになった問題点 新興企業の資金調達の革新を続けることが必要だ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/648604
・『もし「どこに投資するかは決めていないが、私を信じてあなたのお金を私に預けなさい」と言われたら、多くの人はうさんくさく感じるに違いない。しかし、そんな証券が米国などの市場で取引されている。特別買収目的会社(SPAC)の証券である。 SPACの仕組みはこうだ。まず、設立者(スポンサー)がSPACを上場させ、投資家から資金を集める。この時点では、資金をどこに投資するかは決まっていない。次にスポンサーは株式市場に上場したい未上場の事業会社を探す。合意できればSPACがその会社を買収、合併する。その際、事業会社は存続し、SPACは消滅する。結果的に事業会社が上場したことになり、投資家はその会社の株主になる。 これは新規株式公開(IPO)の一形態と見なすことができる。米国ではSPACの制度自体は以前から存在していたが、2020年ごろから突然、金融業界の関心を集めるようになった。20年と21年にSPACによる資金調達額は飛躍的に成長し、IPO全体に占めるSPACの調達額の割合は半分近くになった』、「設立者(スポンサー)がSPACを上場させ、投資家から資金を集める」、「スポンサーは株式市場に上場したい未上場の事業会社を探す。合意できればSPACがその会社を買収、合併する。その際、事業会社は存続し、SPACは消滅する。結果的に事業会社が上場したことになり、投資家はその会社の株主になる。 これは新規株式公開(IPO)の一形態と見なすことができる」、確かに「IPOの一形態」だ。 20年と21年にSPACによる資金調達額は飛躍的に成長し、IPO全体に占めるSPACの調達額の割合は半分近くになった」、かなりの比重だ。
・『何がSPACの魅力か  SPACは上場証券なので、投資家保護に一定の配慮がある。制度上、スポンサーに持ち逃げされる心配はない。企業との合併には投資家の一定割合の賛成が必要で、スポンサーは独断できない。SPAC上場から事業会社との合併までの期限は多くの場合2年以内とされ、それまでに合併できなければSPACは清算、資金は投資家に返還される。つまり投資の成否を比較的短期間で判断できる。 事業会社にとってもメリットが大きい。伝統的なIPOでは上場までの審査に多大な費用と時間を要する。また上場してみないと、実際にどれだけ資金を調達できるかがわからない。しかしSPACの場合、実態としては新規上場だが形式的には合併なので、審査は伝統的なIPOと比べると相対的に簡単だ。またSPACによる資金調達後に合併交渉を行うので、調達可能額の見通しがつきやすい。 スポンサーはSPAC設立時に自ら出資するが、金額は非常に少額である。一方で合併が成功すれば、事業会社の20%程度の株式を保有できる。株価が上昇すればスポンサーも多額の利益を得る。 だが、いいことばかりではない。第1の問題点は「証券価値の希薄化」である。SPACが事業会社を合併する際には、合併に反対する投資家だけでなく、賛成する投資家もSPAC証券を償還できる。合併に反対する投資家が資金を返還してもらうことは、投資家保護の観点から必要だろう。だが合併に賛成する投資家まで償還可能だと、合併前に予想外の多額の資金がSPACの信託口座から流出する可能性がある。するとスポンサーは事業会社に約束していた資金を提供できなくなって、合併交渉自体が消滅するだろう。 ここで困るのはスポンサーだ。なぜならスポンサーは合併を成功させて初めて報酬を得ることができるからだ。スポンサーには合併を成功させたいという誘因が強く働く。そこでスポンサーは新たに株式を発行して、流失した資金の穴埋めをする。これは多くの場合、私募増資(PIPE)という形態で実施されるが、発行株式数が増加するのでSPAC投資家が保有する株式の価値は低下する。増資はPIPEに応じる投資家に有利な条件で行われる傾向があるので、SPAC投資家の株式の価値はより低下するかもしれない。 第2の問題点は、事業会社に対するスポンサーの審査の精度である。この点について筆者が甲南大学の小佐野広特任教授と行った共同研究の成果を簡単に紹介したい』、「SPAC上場から事業会社との合併までの期限は多くの場合2年以内とされ、それまでに合併できなければSPACは清算、資金は投資家に返還される。つまり投資の成否を比較的短期間で判断できる」、「事業会社にとってもメリットが大きい。伝統的なIPOでは上場までの審査に多大な費用と時間を要する。また上場してみないと、実際にどれだけ資金を調達できるかがわからない。しかしSPACの場合、実態としては新規上場だが形式的には合併なので、審査は伝統的なIPOと比べると相対的に簡単だ。またSPACによる資金調達後に合併交渉を行うので、調達可能額の見通しがつきやすい。 スポンサーはSPAC設立時に自ら出資するが、金額は非常に少額である。一方で合併が成功すれば、事業会社の20%程度の株式を保有できる。株価が上昇すればスポンサーも多額の利益を得る」、「いいことばかりではない。第1の問題点は「証券価値の希薄化」である。SPACが事業会社を合併する際には、合併に反対する投資家だけでなく、賛成する投資家もSPAC証券を償還できる。合併に反対する投資家が資金を返還してもらうことは、投資家保護の観点から必要だろう。だが合併に賛成する投資家まで償還可能だと、合併前に予想外の多額の資金がSPACの信託口座から流出する可能性がある。するとスポンサーは事業会社に約束していた資金を提供できなくなって、合併交渉自体が消滅するだろう。 ここで困るのはスポンサーだ。なぜならスポンサーは合併を成功させて初めて報酬を得ることができるからだ。スポンサーには合併を成功させたいという誘因が強く働く。そこでスポンサーは新たに株式を発行して、流失した資金の穴埋めをする。これは多くの場合、私募増資(PIPE)という形態で実施されるが、発行株式数が増加するのでSPAC投資家が保有する株式の価値は低下する。増資はPIPEに応じる投資家に有利な条件で行われる傾向があるので、SPAC投資家の株式の価値はより低下するかもしれない。 第2の問題点は、事業会社に対するスポンサーの審査の精度である。この点について筆者が甲南大学の小佐野広特任教授と行った共同研究の成果を簡単に紹介」、「SPAC」は案件ごとにメリットとデメリットを比較しながら落ち着くところに落ち着くのだろう。
・『問題が発生する理由  米国では企業が合併する際、ニューヨーク証券取引所やナスダックの規制により、被買収企業が買収企業の純資産の80%以上の価値を有することが条件となっている。したがってSPACは調達額を大きく下回る価値しか持たない企業とは合併できない。 だがこの条件が、スポンサーが事業会社を真剣に審査する誘因をそぐことになる。時間と費用をかけて企業を審査し、その企業が相対的に低価値だとわかったとする。前述の規制によってSPACはその企業とは合併できない。合併できなければスポンサーは報酬を得られない。それならいっそ、審査などせず「この会社は高価値です」と投資家に伝えるほうが得になる。 もちろんすべてのスポンサーがつねにそのような無精をするわけではない。スポンサーの報告が虚偽だと明らかになれば投資家からの信用を失い、以後、SPACを組成することは難しくなるからだ。だが、スポンサーが短期的な利益を志向するのであれば、将来の評判の損失を気にせず虚偽の報告を続けるかもしれない。時間と費用をかけて企業価値を精査する伝統的なIPOと比較すると、審査の精度が低くなる可能性がある。 なぜこのような問題が起きるのか。原因として大きいのが、合併不成立時にはスポンサーの報酬が生じない仕組みだ。また仮にSPACによるIPOが成功したとしても、消費者保護や合併に対する規制が強く機能した結果、それが利害関係者に意図せざる費用を負わせることになっている。 前者の解決は、合併不成立の場合でも一定の報酬がスポンサーに支払われるよう制度を修正すればよいので、それほど難しくはない。しかし後者の解決は容易ではない。既存の法律や規制は何らかの役割があるから存在しているのであって、これを撤廃すれば新たな問題が生じるだけである。明確な解決策はないが、少なくとも時代や環境の変化に応じて既存の法律や規制を見直す機会を絶えず持つことは必要だ。 こうした問題点が意識されるようになったことも影響したのか、22年になってSPACによるIPOは件数も金額も急速に減少している。それを受けて、SPACは「一時的なブームにすぎない」という声も聞かれるようになった。だが確かにそうだとしても、多大な時間と費用を要し、調達額が不透明な伝統的IPOの問題点が解決したわけではない。投資家にとって有益で、新興企業にとって使いやすい新たな資金調達方法が絶えず模索されるべきであろう』、「時間と費用をかけて企業価値を精査する伝統的なIPOと比較すると、審査の精度が低くなる可能性がある」、「原因として大きいのが、合併不成立時にはスポンサーの報酬が生じない仕組みだ。また仮にSPACによるIPOが成功したとしても、消費者保護や合併に対する規制が強く機能した結果、それが利害関係者に意図せざる費用を負わせることになっている。 前者の解決は、合併不成立の場合でも一定の報酬がスポンサーに支払われるよう制度を修正すればよいので、それほど難しくはない。しかし後者の解決は容易ではない。既存の法律や規制は何らかの役割があるから存在しているのであって、これを撤廃すれば新たな問題が生じるだけである。明確な解決策はないが、少なくとも時代や環境の変化に応じて既存の法律や規制を見直す機会を絶えず持つことは必要だ」、「こうした問題点が意識されるようになったことも影響したのか、22年になってSPACによるIPOは件数も金額も急速に減少している。それを受けて、SPACは「一時的なブームにすぎない」という声も聞かれるようになった。だが確かにそうだとしても、多大な時間と費用を要し、調達額が不透明な伝統的IPOの問題点が解決したわけではない。投資家にとって有益で、新興企業にとって使いやすい新たな資金調達方法が絶えず模索されるべきであろう」、同感である。
タグ:(その9)(JTに物言う株主が株主提案 問われる「親子上場」 上場子会社・鳥居薬品の非上場化、売却を要求、一世を風靡した「SPAC」 明らかになった問題点 新興企業の資金調達の革新を続けることが必要だ) 資本市場 「親子上場」は日本の株式市場における恥部だ。「東証も親子上場議論を再開」するので、今後の成り行きを注目したい。 「JT」が単なる天下り先として、「鳥居薬品」を位置づけている懸念もあり、「リム」の要求は、一定の合理性をもつ。 「JT出身者が代々、鳥居薬品の代表取締役に就任していることについて、その人物たちが「医薬品事業に関する豊富な知見を有しているようには見受けられない」としたうえで、天下りが「鳥居薬品の株式価値を毀損し、引いては親会社であるJTの株主価値も毀損している」と見ており、「JTで5年以上役員または従業員として勤務経験のある者が鳥居薬品の取締役に選任されることを防ぐ定款規定を設ける」よう提案」、 東洋経済オンライン「JTに物言う株主が株主提案、問われる「親子上場」 上場子会社・鳥居薬品の非上場化、売却を要求」 東洋経済オンライン 堀 敬一氏による「一世を風靡した「SPAC」、明らかになった問題点 新興企業の資金調達の革新を続けることが必要だ」 「設立者(スポンサー)がSPACを上場させ、投資家から資金を集める」、「スポンサーは株式市場に上場したい未上場の事業会社を探す。合意できればSPACがその会社を買収、合併する。その際、事業会社は存続し、SPACは消滅する。結果的に事業会社が上場したことになり、投資家はその会社の株主になる。 これは新規株式公開(IPO)の一形態と見なすことができる」、確かに「IPOの一形態」だ。 20年と21年にSPACによる資金調達額は飛躍的に成長し、IPO全体に占めるSPACの調達額の割合は半分近くになった」、かなりの 比重だ。 「SPAC上場から事業会社との合併までの期限は多くの場合2年以内とされ、それまでに合併できなければSPACは清算、資金は投資家に返還される。つまり投資の成否を比較的短期間で判断できる」、「事業会社にとってもメリットが大きい。伝統的なIPOでは上場までの審査に多大な費用と時間を要する。また上場してみないと、実際にどれだけ資金を調達できるかがわからない。しかしSPACの場合、実態としては新規上場だが形式的には合併なので、審査は伝統的なIPOと比べると相対的に簡単だ。またSPACによる資金調達後に合併交渉を行う ので、調達可能額の見通しがつきやすい。 スポンサーはSPAC設立時に自ら出資するが、金額は非常に少額である。一方で合併が成功すれば、事業会社の20%程度の株式を保有できる。株価が上昇すればスポンサーも多額の利益を得る」、「いいことばかりではない。第1の問題点は「証券価値の希薄化」である。SPACが事業会社を合併する際には、合併に反対する投資家だけでなく、賛成する投資家もSPAC証券を償還できる。合併に反対する投資家が資金を返還してもらうことは、投資家保護の観点から必要だろう。だが合併に賛成する投資家まで償 還可能だと、合併前に予想外の多額の資金がSPACの信託口座から流出する可能性がある。するとスポンサーは事業会社に約束していた資金を提供できなくなって、合併交渉自体が消滅するだろう。 ここで困るのはスポンサーだ。なぜならスポンサーは合併を成功させて初めて報酬を得ることができるからだ。スポンサーには合併を成功させたいという誘因が強く働く。そこでスポンサーは新たに株式を発行して、流失した資金の穴埋めをする。これは多くの場合、私募増資(PIPE)という形態で実施されるが、発行株式数が増加するのでSPAC投資家が保 有する株式の価値は低下する。増資はPIPEに応じる投資家に有利な条件で行われる傾向があるので、SPAC投資家の株式の価値はより低下するかもしれない。 第2の問題点は、事業会社に対するスポンサーの審査の精度である。この点について筆者が甲南大学の小佐野広特任教授と行った共同研究の成果を簡単に紹介」、「SPAC」は案件ごとにメリットとデメリットを比較しながら落ち着くところに落ち着くのだろう。 「原因として大きいのが、合併不成立時にはスポンサーの報酬が生じない仕組みだ。また仮にSPACによるIPOが成功したとしても、消費者保護や合併に対する規制が強く機能した結果、それが利害関係者に意図せざる費用を負わせることになっている。 前者の解決は、合併不成立の場合でも一定の報酬がスポンサーに支払われるよう制度を修正すればよいので、それほど難しくはない。しかし後者の解決は容易ではない。既存の法律や規制は何らかの役割があるから存在しているのであって、これを撤廃すれば新たな問題が生じるだけである。明確な解決策は ないが、少なくとも時代や環境の変化に応じて既存の法律や規制を見直す機会を絶えず持つことは必要だ」、「こうした問題点が意識されるようになったことも影響したのか、22年になってSPACによるIPOは件数も金額も急速に減少している。それを受けて、SPACは「一時的なブームにすぎない」という声も聞かれるようになった。だが確かにそうだとしても、多大な時間と費用を要し、調達額が不透明な伝統的IPOの問題点が解決したわけではない。投資家にとって有益で、新興企業にとって使いやすい新たな資金調達方法が絶えず模索されるべきで あろう」、同感である。
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韓国(尹錫悦大統領)(その1)(韓国・次期政権が暴くべき文大統領の「ウソと秘め事」 元駐韓大使が解説、韓国経済が深刻な危機!前政権の「負の遺産」問題を元駐韓大使が解説、「中国に依存してきたツケが直撃」輸出で稼げないのに物価上昇が止まらない韓国経済の大ピンチ 米中対立、ウクライナ侵攻、中国ゼロコロナ政策…) [世界情勢]

韓国(文在寅大統領)(その12)については、昨年3月25日に取上げた。今日は、(尹錫悦大統領)(その1)(韓国・次期政権が暴くべき文大統領の「ウソと秘め事」 元駐韓大使が解説、韓国経済が深刻な危機!前政権の「負の遺産」問題を元駐韓大使が解説、「中国に依存してきたツケが直撃」輸出で稼げないのに物価上昇が止まらない韓国経済の大ピンチ 米中対立、ウクライナ侵攻、中国ゼロコロナ政策…)である。

先ずは、昨年4月8日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元・在韓国特命全権大使の武藤正敏氏による「韓国・次期政権が暴くべき文大統領の「ウソと秘め事」、元駐韓大使が解説」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/301250
・『「三不」政策を巡り中韓で異なる主張  尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏が大統領となり、最初に取り組む問題が、外交の健全化だろう。これまで文在寅(ムン・ジェイン)大統領の下で韓国は、中国・北朝鮮にすり寄り、ご機嫌伺いに勢力を注いできた。 その端的な例が、在韓米軍がTHAAD(高高度ミサイル防衛システム)を配備することに対する中国の反発を受け、文在寅大統領が訪中2カ月前に「THAADを追加配備しない」「米国のミサイル防衛システム(MD)に参加しない」「日米韓軍事同盟はしない」といわゆる「三不」政策を表明したことである。これは、韓国の安保に関する主権を制限しかねない内容である。 しかし、文在寅大統領にとっては、中国の機嫌を損なわないことが最優先であった。とはいえ、THAAD問題を中国側と交渉した文政権の複数の当事者は「三不」について、「政府の考えを説明した」ものにすぎず、「約束」ではないと強調してきた。文政権としても約束とするには躊躇(ちゅうちょ)があったのだろう。 ところが、中国国営の環球時報によれば、「三不は韓中相互尊重の結果」として、中国側では約束と受け止めているようである。 韓国メディアは最近、「中国が在韓米軍のTHAADに対し、『三不』に加えて『一限』まで要求していたが、文在寅政権はこれを隠していた」と報じた。ここでいう「一限」とは、すでに配備されたTHAADの運用に制限を加えるという意味である。 この報道が正しければ、「三不」政策は中韓の交渉の結果ということになる。しかも、「三不」に加え、「一限」も交渉の対象となっていたことがうかがえる。「一限」の存在は、環球時報が2017年11月、「三不と一限は韓国が取るべきマジノ線(最低条件)」と主張したことがきっかけで、外交関係者の間で取り上げられるようになった。中韓の交渉の結果であれば、単に「政府の考え方を説明した」では通らないのではないか』、「三不と一限」、「文在寅大統領が訪中2カ月前に「THAADを追加配備しない」「米国のミサイル防衛システム(MD)に参加しない」「日米韓軍事同盟はしない」といわゆる「三不」政策を表明」、「「一限」とは、すでに配備されたTHAADの運用に制限を加えるという意味」、「中韓の交渉の結果であれば、単に「政府の考え方を説明した」では通らないのではないか」、これほど「韓国」の国防に甚大な影響を与えるにも拘らず、「「政府の考えを説明した」ものにすぎず、「約束」ではないと強調」、「文在寅政権」の欺瞞ぶりには呆れ果てる。
・『尹錫悦氏側は文政権の説明に疑義  尹錫悦氏の大統領職引き継ぎ委員会は4日、元壱喜(ウォン・イルヒ)首席副報道官が「当事者たちが真実を国民に細かく明らかにすることが道理だ」とコメントした。 元壱喜副報道官は「記事の内容が事実であれば、今も韓国の軍事主権を侵害する深刻な事案という問題意識を持っている」「事実関係がどうなっているか私たちが確認できる内容は全くないが、現政府には合意に関与した当事者たちがいるので、その人たちが真実を明らかにすることが道理だ」とコメントした。 この当事者とは、当時の康京和(カン・ギョンファ)外相および鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長を指しているようだ。 しかし、韓国政府はこれまで一貫して、「約束」を否定してきた。韓国外交部による引き継ぎ委員からの業務報告でも「三不」や「一限」に関する内容は含まれていなかったという』、こんなことでは、外交の一貫性など期待すべきもない。
・『文在寅政権は次期政権に中韓交渉の真実を伝えるべきだ  尹錫悦氏は大統領選の時からTHAADの追加配備を公言しており、「三不」破棄は既定路線となっている。「三不」については、あくまで文在寅政権での考えとの前提で、追加配備を行う方針であり、これを実行すれば中国側との大きな軋轢(あつれき)を招来することになるだろう。 だが、「一限」についてはそもそも想定外のことである。さらに、「三不」と「一限」が「中韓相互尊重の結果」であれば、これを破棄することで中韓の摩擦は一層大きくなるだろう。 いずれにせよ、尹錫悦氏は中韓交渉の真実を知る必要がある。文在寅政権は、自分たちに不都合なことは外交に限らず、国内政治でも隠し続けてきた。しかし、外交ではこれは通用しない。韓国にとって極めて不適切な合意でも、合意は合意である。尹錫悦政権はその真実を知り、それでも合意を破棄すべき時は、中国との大きな摩擦を覚悟すべきである。 文在寅政権は、中国に外交の主導権を奪われ、中国の言いなりになってきた。しかもそれを国民に知られないように、ひたすら隠し続けてきた。そのツケを負うのは次期政権である。 文在寅政権は、中国の反発を招かない行動を取ることが平和への道だと思い込んでいるが、それは真の平和ではなく、中国に支配された平和である。韓国が主権を取り戻し、正常な外交を行おうとすれば、中国の反発を招く。その原因をもたらしたのは文在寅政権の外交政策である』、「文在寅政権の外交政策」がこんなにも酷いものだったとは改めて驚かされた。
・『中国追随外交を続ける二つの理由  韓国にとって、中国はどのような国なのか、韓国国民は真実を知るべきである。 文在寅大統領は昨年、習近平国家主席との電話会談で中国共産党100周年に対する祝賀を述べた。中国共産党は朝鮮戦争の折、人民解放軍を派遣し、米韓を中心とする国連軍を押し返して、朝鮮半島の分断を固定化した張本人である。その中国共産党に対して100周年の祝賀を述べることは、韓国国民の朝鮮統一に対する思いを踏みにじっているとしか思えない。 また、鄭義溶外相は王毅外相に招かれて台湾海峡の対岸・厦門に、はせ参じた。米韓首脳会談を前に、台湾問題が話題となるのをけん制しようとする中国の策略に乗ったわけである。 このように、韓国政府は中国の機嫌取りに熱心である。 文在寅大統領が中国追従外交を行うのには、二つの理由がある。 第一に、中国が北朝鮮に対して影響力を行使し、北朝鮮と韓国の関係改善に尽力してくれると思い込んでいることだ。しかし、これまでの北朝鮮との交渉の過程で、中国が韓国に協力する姿勢を示してきた事例を筆者は知らない。 第二に、輸出先としての重要性だ。韓国の輸出の4分の1以上が中国向けであり、中国との円満な関係が韓国の経済にとって不可欠と考えている。) しかし、韓国の中国経済専門家は「韓国と中国は経済分野ではここ30年で互恵的な関係からライバル関係に変わったため、韓国企業の対中戦略も見直さなければならない」と指摘する。特に、中国に過度に依存してきたサプライチェーンの多角化が急務だとの声が上がっている。 韓国から中国へ輸出する品目は減り続ける半面、韓国は中国からの原材料の輸入に依存し続けており、韓国の劣勢はますます強まりつつある。多くの品目で過度な中国依存が進めば、韓国は経済的にますます中国から自立できなくなる。中国からの依存脱却は急務である。 中国に対する過度な譲歩姿勢は終わらせるべき時が来ている。現在の中韓関係において、中国はあくまでも自国の利害を基本に韓国に対応してきている。韓国も自国の利益を優先して考えるべき時に来ているのではないか』、「韓国から中国へ輸出する品目は減り続ける半面、韓国は中国からの原材料の輸入に依存し続けており、韓国の劣勢はますます強まりつつある。多くの品目で過度な中国依存が進めば、韓国は経済的にますます中国から自立できなくなる。中国からの依存脱却は急務」、その通りだ。
・『安保リスクの高まりによりTHAADの追加配備は不可避  中国は、THAADのレーダーによって国内の軍の配置が米国に明らかになることを恐れている。しかし、北朝鮮は今年に入り、極超音速ミサイル、鉄道から発射のミサイル、ICBM(大陸間弾道ミサイル)など次々にミサイルの発射を行い、近く核実験も再開すると言われている。こうした北朝鮮の兵器は、いずれも中ロの支援の下に高度化されているのである。 これに対し、韓国は防衛体制を整備し、ミサイル迎撃能力を高める必要がある。それがTHAADの追加配備であり、それは中国の軍の配置を探るためではなく、韓国の防衛のためにすることである。 北朝鮮の核ミサイル能力の向上という新たな安保リスクに対応するためには、「三不」の廃棄はやむを得ない選択である。そもそも、文在寅政権が中国に対し、北朝鮮への有効な抑止を求めることなく、「三不」を表明したことは極めて不適切であった。その表明に至る交渉の実態について、尹錫悦政権は知る必要があり、それを踏まえて中国と話し合っていくべきであろう』、「そもそも、文在寅政権が中国に対し、北朝鮮への有効な抑止を求めることなく、「三不」を表明したことは極めて不適切であった。その表明に至る交渉の実態について、尹錫悦政権は知る必要があり、それを踏まえて中国と話し合っていくべきであろう」、その通りだ。
・『韓国籍タンカー2隻を北朝鮮に売却したことが判明  米政府系放送局ボイス・オブ・アメリカは5日、韓国船籍だったタンカー2隻がこのほど、北朝鮮所有になったことが分かり、国連の対北朝鮮制裁委員会が正式調査に着手した、と報じた。 2隻のタンカーのうちの1隻である「デホ・サンライズ号」は昨年、中国企業に売却された後、北朝鮮所有のシエラレオネ船籍「オーシャン・スカイ号」に変わったという。専門家パネルは船舶の位置を示す自動船舶識別装置を逆追跡、衛星写真資料を分析してこのような情報を得た。) さらに専門家パネルは、かつて韓国船籍だった別のタンカー「ウジョン号」が北朝鮮の旗をつけていることも確認し調査を進めている。同タンカーは昨年8月8、9、10日の3回にわたり違法な船舶間積み替え方式(瀬取り)により、パラオ船籍のタンカーから油類を受け取る様子が捉えられえている。 国連安保理は2016年に採択した制裁決議2321号に基づき、国連加盟国が北朝鮮に船舶を販売することは禁止している。 しかし、文在寅政権は逆に北朝鮮への制裁を緩和するよう欧米各国に働きかけており、国際社会が一致団結して北朝鮮の核ミサイル開発を阻止しようとする動きに反する行動を取っている。 また、文在寅政権は国連の北朝鮮人権決議共同提案国への参加を4年連続で見送った。国連の北朝鮮人権特別報告者が「北朝鮮の人権状況はここ6年でさらに悪化した」と指摘し、複数の国際人権団体は書簡を通じて文在寅大統領に「任期の最後には北朝鮮人権決議案に加わってほしい」と求めたが、文在寅政権は最後まで拒否した。 文在寅政権は20年に、朝鮮労働党の金正恩総書記の妹である金与正(ヨジョン)党第1副部長(当時)の要求で、「対北ビラ禁止法」を制定した。これにより、米国議会では「人権聴聞会」の対象国となった。 また、19年には韓国への帰順の意向を伝えた北朝鮮の漁船乗組員2人を凶悪犯との理由で北朝鮮に強制的に送り返し、国連人権報告者が「深く懸念する」という事態になった。 文在寅大統領は「平和が来れば北朝鮮の人権問題も改善する」という趣旨の発言を繰り返しているが、北朝鮮の人権状況に向き合う姿勢は一向に見えない。 文在寅政権は、米朝首脳会談のお膳立てをする際にも、米国と北朝鮮にそれぞれ聞こえのいいことを伝えた結果、ベトナムでの首脳会談が不調に終わると双方から激しい反発を受けた。文在寅大統領は特にそれ以来、北朝鮮の機嫌を取ることに終始している。 繰り返しになるが、尹錫悦政権は文在寅政権の外交の実態を掌握することが不可欠である(詳細は拙書「さまよえる韓国人」ご参照)。その上で、外交の正常化を図っていかなければならない』、「韓国籍タンカー2隻を北朝鮮に売却したことが判明」、国連決議違反を堂々と行う。「文在寅政権は国連の北朝鮮人権決議共同提案国への参加を4年連続で見送った。国連の北朝鮮人権特別報告者が「北朝鮮の人権状況はここ6年でさらに悪化した」と指摘し、複数の国際人権団体は書簡を通じて文在寅大統領に「任期の最後には北朝鮮人権決議案に加わってほしい」と求めたが、文在寅政権は最後まで拒否した」、「文在寅政権は」まるで「北朝鮮」の利益代表のようだ。

次に、この続きを、6月8日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元・在韓国特命全権大使の武藤正敏氏による「韓国経済が深刻な危機!前政権の「負の遺産」問題を元駐韓大使が解説」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/304421
・『統一地方選挙で勝利した大統領の関心は経済危機へ  中央日報によれば、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は6月3日、「経済危機をはじめとする台風圏にわれわれは入っている」と述べたという。 その際に記者が、1日の統一地方選挙で尹錫悦大統領が率いる保守系与党「国民の力」が勝利したことについて触れ、「(国民の力の)勝利で国政運営能力を確保したという評価が多いが」と質問したところ、「みなさんは今、家の窓、庭の木が揺れていることを感じないだろうか。政党の政治的勝利を口にする状況ではない」と述べ、「選挙の勝利よりも民生経済の危機の克服が重要だ」と力説した。 尹錫悦大統領が「台風圏」と述べた理由の一つが、5月の韓国の消費者物価上昇率が5.4%と、13年9カ月ぶりの高水準になったことである。短期的に物価高・高金利・ウォン安の三つの波に襲われていることが韓国経済の展望を暗くしている。 経済的な困難に見舞われた背景には、ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギーや食料価格の高騰、米国をはじめとする先進各国における物価高騰に対応した金利引き上げ、中国のゼロコロナ政策に伴う上海市の封鎖で生じた、原材料や半導体などのサプライチェーンの混乱などがあげられる。 韓国の中央銀行は物価高騰を抑えるため金利を引き上げている。それは経済成長率の低下に跳ね返ってくるだろう。物価を安定させても、成長の原動力を見つけ、経済体質を改善するという課題がある。こうした中、韓国経済はスタグフレーション(不景気下での物価上昇)に入った、入ろうとしているとの指摘がなされている』、「尹錫悦大統領」が「「選挙の勝利よりも民生経済の危機の克服が重要だ」と力説」、したとは堅実な姿勢だ。
・『新政権への期待は経済の立て直し  韓国の国民が尹錫悦政権に最も望むことは、経済を立て直し、民生を安定化させることである。 文在寅(ムン・ジェイン)政権になってから、国民生活の質は低下した。製造業は韓国での投資に見切りをつけ、良質な雇用は失われている。国民は一生働いても家を持つことが夢となった。こうした経済社会の現状に対する不満が革新政権を終わらせる結果となった。 文在寅政権が行った社会主義国のような改革によって韓国経済の活力は失われ、物価高・高金利・ウォン安という悪循環脱却を著しく困難なものにしている。 尹錫悦政権に与えられた使命は、こうした韓国の経済社会を立て直すことであり、それができなければ、せっかく改善しだした支持率は低下していくであろう』、「文在寅政権が行った社会主義国のような改革によって韓国経済の活力は失われ、物価高・高金利・ウォン安という悪循環脱却を著しく困難なものにしている。 尹錫悦政権に与えられた使命は、こうした韓国の経済社会を立て直すこと」、その通りだ。
・『文在寅政権下で韓国経済は弱体化  グローバル統計サイト「NUMBEO」によると、韓国の「生活の質」指数は、文在寅政権が発足した2017年には67カ国中22位であった。しかし、21年になると82カ国中42位と中位圏に落ちた。その最大の原因は、ソウル市の不動産価格が2倍となるなど、文在寅政権の不動産政策の失敗である。韓国の21年の特殊出生率は0.81であるが、これは希望のない社会を反映している。 韓国の雇用状況の悪化は著しい。それは青年層ばかりでなく、韓国経済を支える40代の雇用率も最低水準に落ち込んでいる。特に、製造業などの良質な雇用が減少しているのは、「反企業的」な韓国政府の政策が原因だ。その代表例が、最低賃金の合理性のない大幅引き上げである。 30年間ソウルで勤務したあるグローバル金融機関のCEOは、「国際資本が韓国経済に興味を失っている」と話す。韓国経済の根本的問題は主要産業の国際競争力の低下である。 韓国経済のGDP成長率は、新型コロナ前の19年でさえ2%だった。それも大幅な財政支出で実現したものであり、それを除けば実質的には1%台であったといわれる。韓国で成長率1%台というのはアジア通貨危機やリーマンショックなど世界経済が困難な時にあったくらいである。19年の世界経済は好調であり、韓国だけがとり残されていた。 家計所得についても、格差が拡大し、低所得者の困難は増大しており、2020年の所得上位20%と下位20%の所得格差は5.26倍に達した。これは過去2番目に高い数字である。 急激な最低賃金の引き上げと週52時間制など無理な所得主導成長のせいで失業が増大し、雇用も非正規雇用、短時間雇用が増えているからである。 こうして韓国の国民生活が困難を極める中、物価高・金利高・ウォン安が襲ってきたのである』、「急激な最低賃金の引き上げと週52時間制など無理な所得主導成長のせいで失業が増大し、雇用も非正規雇用、短時間雇用が増えている」、「物価高・金利高・ウォン安が襲ってきた」、前政権の失政のツケは大きいようだ。
・『韓国が直面している長期低成長の危機  韓国経済にはインフレ、世界的な景気低迷、貿易収支悪化などの「警告灯」がともっている。 ロシアのウクライナ侵攻によって国際的な原油価格、食料価格が急騰している。これに加え、米国におけるインフレ加速を抑制するため、金利が急上昇している。さらに、上海封鎖などにより、中国経済が低迷している。これらの要因は海外発であり、韓国としての対応に限界がある。 韓国でも世界経済の不安でウォン安が進み、輸入物価が上昇、インフレを加速させている。 前述の通り、5月の消費者物価上昇率は5.4%であり、これはグローバル金融危機だった2008年8月(5.6%)以来の高水準である。何より軽油・ガソリンなどの石油類が34.8%と大幅上昇、生産・物流コストの上昇につながり韓国経済全般を冷え込ませている。4月の産業活動動向で全生産が-0.7%、小売り販売が-0.2%、企業の設備投資が-7.5%と、2カ月連続でトリプル減となった。 物価高は今後も続く見通しであり、6~7月には6%台に上昇するとの見通しもある。 貿易収支は、3月は1億1518万ドル(約150億円)の赤字だった。4月は1~20日までで51億9900万ドル(約6800億円)の赤字である。 主な大企業の最高責任者(CEO)は最悪の状況を前提にしたシミュレーションを作成し対応策づくりをしている。 韓国経済は中長期的には潜在成長率の基調的下落が懸念される。韓国は高齢化に直面しており、韓国経済を成長軌道に戻す原動力が見当たらない。韓国銀行の李昌ヨン(イ・チャンヨン)総裁は「長期低成長」を懸念している。) 物価上昇を抑えるため、韓国銀行は政策金利を果敢に引き上げている。コロナ拡大以降、低金利政策を取ってきたため、借金をしてまで投資を行うことがブームとなり、家計債務が1900兆ウォン(約200兆円)に膨らんだ。政策金利の引き上げで貸出金利が上昇すれば、金利負担が増え、個人消費が落ち込むと同時に、債務不履行が増えるリスクがある。 尹錫悦政権は、大統領当選後に急上昇した物価高に起因する経済危機に取り組まなければならない。ただ、前述の通り、物価高・高金利・ウォン安をもたらす海外要因を韓国政府主導で抑え込むことはできず、難しい対応を求められる』、「物価高・高金利・ウォン安をもたらす海外要因を韓国政府主導で抑え込むことはできず、難しい対応を求められる」、その通りだ。
・『文在寅政権時代の悪弊を修正することが第一歩  文在寅政権時に積み上がった韓国経済の「負の遺産」が、韓国経済の物価高対応を一層困難なものにしている。それは文在寅政権が、民主労総(全国民主労働組合総連盟)という過激な労働組合の主張を大幅に取り入れた結果であり、社会主義的な論理で経済をゆがめた結果でもある。 その代表的なものが労働生産性の向上を伴わない一方的な最低賃金の大幅な引き上げと労働時間の制限、労働災害に当たり経営者に懲役刑を含む責任を負わせる法律の制定などである。 韓国経済を復活させ、国民に希望を与えるためには、こうした制度を抜本的に改革する必要がある。それは、韓国経済のあり方そのものに対する保革の論理の対立であり、文在寅政権に近かった過激な労働組合との闘争を意味するだろう。 尹錫悦政権がこれから行う経済政策は、文在寅政権および「共に民主党」(以下、民主党)の経済政策と正面から対立することになる。尹錫悦政権として経済改革は2年後の総選挙まで待つことはできない以上、和戦両様の構えで民主党に臨もうとしているのではないか。 いずれにせよ、民主党が韓国経済社会の国益と未来を考えて尹錫悦政権と建設的な話し合いができるかどうかが、韓国経済復活の分岐点になる』、「文在寅政権が、民主労総・・・という過激な労働組合の主張を大幅に取り入れた結果であり、社会主義的な論理で経済をゆがめた結果でもある。 その代表的なものが労働生産性の向上を伴わない一方的な最低賃金の大幅な引き上げと労働時間の制限、労働災害に当たり経営者に懲役刑を含む責任を負わせる法律の制定などである」、「尹錫悦政権として経済改革は2年後の総選挙まで待つことはできない以上、和戦両様の構えで民主党に臨もうとしているのではないか」、なるほど。
・『文在寅前大統領と周辺への捜査は民主党の現政権への対応次第  文在寅前大統領は退任直前に非民主的手法で、検察から捜査権のほとんどを剥奪する検察捜査権完全剥奪法(検捜完剥法)を成立させた。それは、文在寅前大統領と李在明(イ・ジェミョン)前京畿(キョンギ)道知事を捜査から守るためといわれる。 同法は4カ月の猶予期間を経て、9月から施行される。検察に捜査権限のあった「6大犯罪」のうち、公職者、選挙、防衛産業、大規模な事故の四つは9月以降、警察だけが捜査を行えるようになる。また、1年6カ月後に重大犯罪捜査庁が発足すれば、検察に残された汚職、経済犯罪の捜査権も剥奪される。 文在寅前大統領は検察の捜査権を剥奪すれば安泰と考えていたのかもしれない。しかし、いずれかの機関で必ず捜査は行われる。 捜査権の多くは警察に移管される。文在寅前大統領側は、検察は敵、警察は味方と考えてきた。しかし、警察の人事を握るのは尹錫悦政権だ。尹錫悦政権は2日、警察庁長官に次ぐ7人の幹部のうち任期が特定されている1人を除く6人を交代させた。警察庁長官は7月で任期が終わるため、新たに任命された6人の中から後任の警察庁長官が選抜されるのであろう。これによって警察は文在寅色を一掃することになり、文在寅前大統領とその周辺の捜査も行いやすくなる。 また、検察は、9月までの残りの期間、文在寅政権に絡む不正の追及に本腰を入れ急いでいる。 まず、白雲揆(ペク・ウンギュ)元産業資源相の事務所を押収捜査した。狙いは経済性評価の捏造による月城(ウォルソン)原発の早期稼働停止疑惑だろう。この疑惑は文在寅政権幹部を捜査俎上に載せる可能性があり、文在寅政権と近かったハンギョレ新聞は「文在寅政権に対する捜査のシグナルか」と危機感を募らせている。) 検察はまた、李在明前京畿道知事のキム・ヘギョン夫人の公務用クレジットカードの私的使用で家宅捜索した。李在明氏は国会議員に当選したため、身柄拘束は困難であるが、まずは夫人に捜査のメスを入れたということであろう。 文在寅前大統領は政権から離れた今、検察の捜査権を剥奪する小手先の手法で自己防衛を図ることはできないことを思い知らされたことだろう。さらに今後、検捜完剥法を違憲で提訴する、もしくは国民投票にかけるということも検討されているかもしれない。 いずれにせよ、文在寅前大統領とその周辺が身を守るための最善の方法は、尹錫悦政権と国益を目指して協力することである。文在寅前大統領と民主党が現政権に協力すれば、尹錫悦政権も文在寅前大統領をたたく必要はない。半面、尹錫悦大統領との対決をあおるようなことがあれば、攻撃の矛先が文在寅前大統領に向かうこともあるだろう。 尹錫悦大統領にとっても経済危機に対応するためには民主党の協力を求めたいところだ。 政権基盤の強くない尹錫悦大統領としては、民主党との対立は避けたいところだ。民主党が協力姿勢を示せば、文在寅前大統領とその周辺に対する捜査を行って対立を深めることは望まないはずであり、尹錫悦大統領と文在寅前大統領の双方にとってメリットがあるのではないだろうか』、「文在寅前大統領は検察の捜査権を剥奪すれば安泰と考えていたのかもしれない。しかし、いずれかの機関で必ず捜査は行われる。 捜査権の多くは警察に移管される。文在寅前大統領側は、検察は敵、警察は味方と考えてきた。しかし、警察の人事を握るのは尹錫悦政権だ」、「警察は文在寅色を一掃することになり、文在寅前大統領とその周辺の捜査も行いやすくなる」、「政権基盤の強くない尹錫悦大統領としては、民主党との対立は避けたいところだ。民主党が協力姿勢を示せば、文在寅前大統領とその周辺に対する捜査を行って対立を深めることは望まないはずであり、尹錫悦大統領と文在寅前大統領の双方にとってメリットがあるのではないだろうか」、賢明なやり方だ。

第三に、6月20日付けPRESIDENT Onlineが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁 昭夫氏による「「中国に依存してきたツケが直撃」輸出で稼げないのに物価上昇が止まらない韓国経済の大ピンチ 米中対立、ウクライナ侵攻、中国ゼロコロナ政策…」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/58714
・『韓国の苦境は日本にとってひとごとではない  韓国経済の先行き懸念が高まっている。その要因は複数ある。その中でも、中国での“ゼロコロナ政策”と“脱グローバル化”の加速によって世界のサプライチェーンが寸断され、韓国経済に大きな支障が出ている。 特に、韓国の貿易収支が赤字に転落する月が増えたことは見逃せない。中国のゼロコロナ政策によって韓国経済の成長を牽引してきた輸出の伸びが鈍化している。その一方で、米中対立によってサプライチェーンは混乱した。さらにウクライナ危機によって脱グローバル化が勢いづいた。世界の供給のボトルネックが深刻化し、韓国の輸入物価が急騰している。 その結果、昨年の12月、本年1月に続いて4月、5月と貿易収支は赤字に転落した。輸出は増勢を保っているが事態は深刻だ。今後、韓国の貿易収支は赤字傾向が鮮明化するだろう。それによって韓国ではGDP成長率が低下する。 脱グローバル化によって韓国の輸入物価は上昇し、国内の生産者物価と消費者物価も押し上げられる。経済成長率の低下と物価高騰が同時進行し、資金流出が加速する展開が懸念される。外需を取り込んで景気の持ち直しを実現してきたわが国にとって、韓国経済の現状はひとごとではない』、「貿易収支は赤字傾向が鮮明化」は日本でも同様だ。
・『ゼロコロナ政策の悪影響が直撃している  中国共産党政権がゼロコロナ政策を徹底した結果として、韓国の輸出の増加ペースが鈍化している。2022年5月と1年前の輸出の前年同月比変化率を比較すると一目瞭然だ。2021年5月、韓国の輸出は45.6%増加した。中国経済が急速に持ち直し、半導体や自動車、鉄鋼製品などの輸出が急増したことで、韓国の景気は緩やかに回復した。 しかし、その後、韓国の輸出の増加ペースは鈍化した。不動産バブルの崩壊によって中国は高度経済成長期から安定成長期へ曲がり角を曲がった。 その中で、共産党政権はゼロコロナ政策を徹底することによって感染再拡大を封じ込めようとしている。深圳、上海、北京など経済規模の大きな都市がロックダウンに追い込まれ、個人消費は急速に減少し、景況感は冷え込んでいる。それによって、連鎖反応のように不動産市況が一段と悪化し、都市部でさえ失業率が上昇している。 共産党政権は公共事業や中小企業向けの融資支援策など景気刺激策を強化しているが景気の減速が止まらない。それが韓国経済に与える負の影響は大きい。世界的な半導体の不足が深刻であるため輸出は増えてはいるものの、2022年5月の輸出は同21.3%増と1年前に比べると勢いが弱まっている』、「中国」「共産党政権は公共事業や中小企業向けの融資支援策など景気刺激策を強化しているが景気の減速が止まらない。それが韓国経済に与える負の影響は大きい。世界的な半導体の不足が深刻であるため輸出は増えてはいるものの、2022年5月の輸出は同21.3%増と1年前に比べると勢いが弱まっている」、なるほど。
・『党大会を前に手綱を緩める兆しは見えない  懸念されるのは、ゼロコロナ政策が中国の社会心理にかなりの痛手を与えたことだ。6月に入り上海のロックダウンは解除された。しかし、中旬に入ると上海で感染者が再増加し始め、検査が徹底されて一時封鎖に追い込まれる地区が出ている。秋に党大会を控える習近平政権がゼロコロナ政策の手綱を緩める兆しは見えない。 人々の自由は強く制限された状況が続くだろう。外出が制限され動線の寸断が続くことによって、飲食、宿泊、交通などのサービス業だけでなく生産活動も停滞する。企業も家計も先行きを懸念し、支出を抑え、食料品や在庫を買いだめする。中国経済の減速傾向は一段と鮮明化し、アジア新興国や欧州経済の減速懸念も高まるだろう。中国を中心に韓国の輸出増加ペースはさらに鈍化する可能性が高い』、「中国を中心に韓国の輸出増加ペースはさらに鈍化する可能性が高い」、相手国経済が「減速」すれば、「韓国の輸出」も影響を受けざるを得ない。
・『輸出主導型の経済運営構造がピンチを迎えている  また、世界経済は脱グローバル化し始めた。それによって、韓国の輸入物価が急騰している。グローバル化を追い風にして資材をより安く輸入し、国内で大量生産を行い、より高く販売できる市場に輸出して成長を遂げた韓国経済は大きな転換点を迎えた。1960年代以降の韓国は、基本的には財閥系の大企業を優遇することによって、輸出主導型の経済運営構造を築き上げた。 韓国企業はわが国から家電、自動車、半導体などの製造技術を習得しつつ、資材を輸入し、国内で完成品を大量生産して輸出することによって成長を遂げた。それを加速させたのが冷戦の終結だ。1990年代に入り冷戦が終結すると、世界経済は急速にグローバル化して国境の敷居が下がった。 米国は自由貿易協定(FTA)を推進することなどによって経済運営の効率性を高め、韓国はその恩恵を受けた』、「世界経済は急速にグローバル化」、「米国は自由貿易協定(FTA)を推進することなどによって経済運営の効率性を高め、韓国はその恩恵を受けた」、その通りだ。
・『「米中対立、ウクライナ侵攻、ゼロコロナ」の三重苦  しかし、2018年以降は米中の対立が激化し、半導体やスマートフォンなど世界のサプライチェーンが大きく混乱した。サプライチェーンの再編により企業のコストは上昇した。それに加えてウクライナ危機の発生を境にドイツなどの欧州各国がロシアへのエネルギー依存脱却を急がなければならない。金融、経済制裁によってロシアと西側諸国が分断され、世界経済がブロック化し始めた。その結果、世界的に原油や天然ガスなどのエネルギー資源価格が高騰している。 特に、石油化学製品やガソリンの原料であり、あらゆる経済活動に欠かせない原油価格の上昇は、世界の企業の事業運営コストを急激に押し上げる。ウクライナからの供給が寸断されたため、小麦などの穀物価格も上昇が鮮明だ。さらに肥料の供給も寸断され、世界的に食糧危機の懸念が急速に高まっている。 それによって韓国の輸入物価は跳ね上がった。さらにはゼロコロナ政策によって中国の生産活動や物流が停滞したため韓国では現代自動車がブレーキシステムなどの部品を調達できないなど、モノの不足も深刻化している。その結果として、貿易収支が赤字に転落した。経営体力のある韓国企業は米国への直接投資を積み増すなどして、より多くの需要が期待できる市場で半導体や車載用バッテリーなどの供給体制を強化しようとしている』、「経営体力のある韓国企業は米国への直接投資を積み増すなどして、より多くの需要が期待できる市場で半導体や車載用バッテリーなどの供給体制を強化」、国家経済と個別企業業績が乖離し始めたようだ。
・『かつての“お得意様”が今は競争相手に  今後、韓国の貿易収支は赤字傾向をたどり、経済成長率の低下と物価の高騰がより鮮明となるだろう。米欧などで金融政策が大転換されることにより、資金流出の懸念も高まる。輸出面において中国の需要はさらに落ち込むだろう。 2022年の中国経済の成長率はゼロコロナ政策や不動産バブル崩壊、IT先端企業の締め付けなどによって3%程度に落ち込む恐れが高まっている。ゼロコロナ政策の長期化を恐れ、中国からインドやASEAN各国に流出する資本が増えている。米中対立の先鋭化、台湾海峡の緊迫化懸念も高まる。 他方で、半導体など成長期待の高い先端分野において中国企業は製造能力の向上に取り組む。メモリ半導体、バッテリーなど中国と真正面から競合する製品を輸出してきた韓国企業にとって中国は顧客から競合相手に変質している。産業補助金による工場建設や研究開発の支援、土地供与などによって韓国企業と中国企業の固定費負担の構造は決定的に異なる。韓国企業の輸出競争力は低下するだろう。物価高騰によって米国の個人消費が徐々に鈍化することも韓国の輸出にマイナスだ』、「メモリ半導体、バッテリーなど中国と真正面から競合する製品を輸出してきた韓国企業にとって中国は顧客から競合相手に変質している。産業補助金による工場建設や研究開発の支援、土地供与などによって韓国企業と中国企業の固定費負担の構造は決定的に異なる。韓国企業の輸出競争力は低下するだろう」、「中国は顧客から競合相手に変質」、これは大きな影響を及ぼさざるを得ない。
・『アジア通貨危機、リーマンショックの再来か  その一方で、韓国の輸入物価は今後も上昇するだろう。ウクライナ危機をきっかけにして、多くの国がロシア以外の国と地域からコストをかけてエネルギー資源などを買わなければならない。欧米の制裁によってその傾向は強まる。韓国はより高い価格で資材を輸入しなければならなくなる。 韓国では生活水準の切り下げを余儀なくされる家計が増える。内需の縮小均衡は加速し、海外に進出して成長を目指す経営体力のない中小企業はより強い逆風に直面する。雇用と所得環境が悪化し、労使の対立も激化するだろう。それは韓国経済にマイナスだ。例えば、6月14日に終了したトラック運転手のストライキによって物流は停滞し、生産活動や中国向け輸出に負の影響が出た。 連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)はインフレ退治のために急速に金融を引き締めなければならない。世界的な金利上昇と内需減少懸念によってウォンは売られ、韓国から流出する資金は増えそうだ。アジア通貨危機、リーマンショック、2020年3月のコロナショックなどの際には韓国から海外に資金が急速に流出しドル資金が枯渇した。それとよく似た状況が起こる恐れが増している』、「アジア通貨危機、リーマンショックの再来か」、韓国は日本との通貨スワップ協定を期限切れにしたままだが、改めて契約締結を検討すべきだろう。もっとも、「日本」も「貿易赤字」に苦しむ以上、「韓国」を助けるような余裕は失っているのかも知れない。
タグ:「韓国から中国へ輸出する品目は減り続ける半面、韓国は中国からの原材料の輸入に依存し続けており、韓国の劣勢はますます強まりつつある。多くの品目で過度な中国依存が進めば、韓国は経済的にますます中国から自立できなくなる。中国からの依存脱却は急務」、その通りだ。 「文在寅政権の外交政策」がこんなにも酷いものだったとは改めて驚かされた。 こんなことでは、外交の一貫性など期待すべきもない。 「中韓の交渉の結果であれば、単に「政府の考え方を説明した」では通らないのではないか」、これほど「韓国」の国防に甚大な影響を与えるにも拘らず、「「政府の考えを説明した」ものにすぎず、「約束」ではないと強調」、「文在寅政権」の欺瞞ぶりには呆れ果てる。 「三不と一限」、「文在寅大統領が訪中2カ月前に「THAADを追加配備しない」「米国のミサイル防衛システム(MD)に参加しない」「日米韓軍事同盟はしない」といわゆる「三不」政策を表明」、「「一限」とは、すでに配備されたTHAADの運用に制限を加えるという意味」、 武藤正敏氏による「韓国・次期政権が暴くべき文大統領の「ウソと秘め事」、元駐韓大使が解説」 ダイヤモンド・オンライン 韓国(尹錫悦大統領) (その1)(韓国・次期政権が暴くべき文大統領の「ウソと秘め事」 元駐韓大使が解説、韓国経済が深刻な危機!前政権の「負の遺産」問題を元駐韓大使が解説、「中国に依存してきたツケが直撃」輸出で稼げないのに物価上昇が止まらない韓国経済の大ピンチ 米中対立、ウクライナ侵攻、中国ゼロコロナ政策…) 「そもそも、文在寅政権が中国に対し、北朝鮮への有効な抑止を求めることなく、「三不」を表明したことは極めて不適切であった。その表明に至る交渉の実態について、尹錫悦政権は知る必要があり、それを踏まえて中国と話し合っていくべきであろう」、その通りだ。 「韓国籍タンカー2隻を北朝鮮に売却したことが判明」、国連決議違反を堂々と行う。「文在寅政権は国連の北朝鮮人権決議共同提案国への参加を4年連続で見送った。国連の北朝鮮人権特別報告者が「北朝鮮の人権状況はここ6年でさらに悪化した」と指摘し、複数の国際人権団体は書簡を通じて文在寅大統領に「任期の最後には北朝鮮人権決議案に加わってほしい」と求めたが、文在寅政権は最後まで拒否した」、「文在寅政権は」まるで「北朝鮮」の利益代表のようだ。 武藤正敏氏による「韓国経済が深刻な危機!前政権の「負の遺産」問題を元駐韓大使が解説」 「尹錫悦大統領」が「「選挙の勝利よりも民生経済の危機の克服が重要だ」と力説」、したとは堅実な姿勢だ。 「文在寅政権が行った社会主義国のような改革によって韓国経済の活力は失われ、物価高・高金利・ウォン安という悪循環脱却を著しく困難なものにしている。 尹錫悦政権に与えられた使命は、こうした韓国の経済社会を立て直すこと」、その通りだ。 「急激な最低賃金の引き上げと週52時間制など無理な所得主導成長のせいで失業が増大し、雇用も非正規雇用、短時間雇用が増えている」、「物価高・金利高・ウォン安が襲ってきた」、前政権の失政のツケは大きいようだ。 「物価高・高金利・ウォン安をもたらす海外要因を韓国政府主導で抑え込むことはできず、難しい対応を求められる」、その通りだ。 「文在寅政権が、民主労総・・・という過激な労働組合の主張を大幅に取り入れた結果であり、社会主義的な論理で経済をゆがめた結果でもある。 その代表的なものが労働生産性の向上を伴わない一方的な最低賃金の大幅な引き上げと労働時間の制限、労働災害に当たり経営者に懲役刑を含む責任を負わせる法律の制定などである」、 「尹錫悦政権として経済改革は2年後の総選挙まで待つことはできない以上、和戦両様の構えで民主党に臨もうとしているのではないか」、なるほど。 「文在寅前大統領は検察の捜査権を剥奪すれば安泰と考えていたのかもしれない。しかし、いずれかの機関で必ず捜査は行われる。 捜査権の多くは警察に移管される。文在寅前大統領側は、検察は敵、警察は味方と考えてきた。しかし、警察の人事を握るのは尹錫悦政権だ」、「警察は文在寅色を一掃することになり、文在寅前大統領とその周辺の捜査も行いやすくなる」、 「政権基盤の強くない尹錫悦大統領としては、民主党との対立は避けたいところだ。民主党が協力姿勢を示せば、文在寅前大統領とその周辺に対する捜査を行って対立を深めることは望まないはずであり、尹錫悦大統領と文在寅前大統領の双方にとってメリットがあるのではないだろうか」、賢明なやり方だ。 PRESIDENT ONLINE 真壁 昭夫氏による「「中国に依存してきたツケが直撃」輸出で稼げないのに物価上昇が止まらない韓国経済の大ピンチ 米中対立、ウクライナ侵攻、中国ゼロコロナ政策…」 「貿易収支は赤字傾向が鮮明化」は日本でも同様だ。 「中国」「共産党政権は公共事業や中小企業向けの融資支援策など景気刺激策を強化しているが景気の減速が止まらない。それが韓国経済に与える負の影響は大きい。世界的な半導体の不足が深刻であるため輸出は増えてはいるものの、2022年5月の輸出は同21.3%増と1年前に比べると勢いが弱まっている」、なるほど。 「中国を中心に韓国の輸出増加ペースはさらに鈍化する可能性が高い」、相手国経済が「減速」すれば、「韓国の輸出」も影響を受けざるを得ない。 「世界経済は急速にグローバル化」、「米国は自由貿易協定(FTA)を推進することなどによって経済運営の効率性を高め、韓国はその恩恵を受けた」、その通りだ。 「経営体力のある韓国企業は米国への直接投資を積み増すなどして、より多くの需要が期待できる市場で半導体や車載用バッテリーなどの供給体制を強化」、国家経済と個別企業業績が乖離し始めたようだ。 「メモリ半導体、バッテリーなど中国と真正面から競合する製品を輸出してきた韓国企業にとって中国は顧客から競合相手に変質している。産業補助金による工場建設や研究開発の支援、土地供与などによって韓国企業と中国企業の固定費負担の構造は決定的に異なる。韓国企業の輸出競争力は低下するだろう」、「中国は顧客から競合相手に変質」、これは大きな影響を及ぼさざるを得ない。 「アジア通貨危機、リーマンショックの再来か」、韓国は日本との通貨スワップ協定を期限切れにしたままだが、改めて契約締結を検討すべきだろう。もっとも、「日本」も「貿易赤字」に苦しむ以上、「韓国」を助けるような余裕は失っているのかも知れない。
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ブロックチェーン(その2)(世界に挑む「国産ブロックチェーン」起業家の素顔 「ウェブ3.0は若者に非常に有利な領域だ」、「Web3.0・NFT」って何?「NBAのカードが100万ドルで売買」される理由) [イノベーション]

ブロックチェーンについては、昨年1月15日に取上げた。今日は、(その2)(世界に挑む「国産ブロックチェーン」起業家の素顔 「ウェブ3.0は若者に非常に有利な領域だ」、「Web3.0・NFT」って何?「NBAのカードが100万ドルで売買」される理由)である。

先ずは、昨年4月25日付け東洋経済オンライン「世界に挑む「国産ブロックチェーン」起業家の素顔 「ウェブ3.0は若者に非常に有利な領域だ」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/584073
・『ウェブ3.0の分野で起業する日本の若者が続々と出てきている。日本発のブロックチェーンを標榜するステイク・テクノロジーズの渡辺創太CEO(26)もその1人だ。 インターネットの秩序を大きく変えようとしている「ウェブ3.0」。ブロックチェーン技術を基盤として、特定の管理者が存在せず、ユーザーがデータの所有権を持てる世界だ。 2019年1月にステイク・テクノロジーズを創業し、独自のブロックチェーン「アスター・ネットワーク」を開発した渡辺創太CEO(26)。世界中の暗号資産関連の投資家から資金調達を行うなど、業界内でも日本を代表する起業家として注目を集めている。 起業のきっかけやウェブ3.0における勝ち目について聞いた(Qは聞き手の質問、Aは渡辺氏の回答)』、興味深そうだ。
・『最初から「波に乗れる」と思った  Q:なぜブロックチェーン領域での起業を決めたのですか。 A:テクノロジーには波があると思っていて、一番最初の大波がインターネットの誕生だったと思う。このときは僕らの世代は生まれていなかった。その次の波がモバイルで、アップルのスティーブ・ジョブズがiPhoneを発表したときは、中学生くらいだった。 そして今ブロックチェーンやウェブ3.0の波が起きている。歴史的なテクノロジーの大波の中で、今26歳の自分が最初からそれに乗れるのがこの波だった。ビットコインが生まれてからはまだ13年ほど。既存の常識にとらわれず、体力もある。若者に非常に有利な領域だと思う。 学生時代にインドや中国でボランティア活動に携わり、貧困や格差を解決したいと思ったということもある。ブロックチェーンは搾取されてきた人たちに権力を分配できる技術だ。いわゆる「GAFAM」はネットビジネスで勝ち抜いた。今後20年は、それがウェブ3.0になる。最初から世界を見据えて起業した。 Q:ブロックチェーンが「権力を分配できる」とは? A:ウェブ3.0は「Less trust, More truth(信頼に代わる真実を)」という世界。これまではあらゆる経済活動に、人々に「信頼」された中間的な業者が入っていた。 例えば今ウクライナに寄付をするにも、銀行や赤十字社が間に入る。そのため、現地にお金が届いているのか、「真実」はわかりにくい。あらゆるビジネスはすべて、信頼の上に成り立っているゆえに、間の人たちが実際に何をしているのかは見えない状態だった。 ブロックチェーンはユーザー同士を直接つなぎ、透明性や検証性の高い経済活動を実現する。中抜き構造が変わるのは大きなインパクトになる。 Q:現在開発する「アスター・ネットワーク」というブロックチェーンは、どのような役割を担うのでしょうか。 A:世界には今ビットコインやイーサリアムなど主要なブロックチェーンが20個ほどあるが、相互につながっていない。アスターはこれらをつなげるプラットフォームになる。 アスターは(イーサリアムの共同創設者である)ギャビン・ウッド氏が開発した「ポルカドット」というブロックチェーンに接続する、パラレルチェーンという部分を担っている。これが意味するのは、ポルカドットに接続されたほかのチェーンと相互に通信ができるということ。 ポルカドットに接続するチェーンはすべて同じ開発ツールで作られている。ただイーサリアムやソラナといったほかのチェーンは違う。それらのチェーンとポルカドットをつなぐ存在が必要で、僕らがその役割を担いたいと考えている。 Q:そもそもなぜブロックチェーン同士をつなぐ必要があると?) 今はユーザーがそれぞれのブロックチェーンのことを理解しなければ、アプリケーションが使いづらい。一般にブロックチェーンが普及するには、一つひとつのチェーンを意識せずに、さまざまなアプリケーションが使えることが重要だ。 例えばビットコインでイーサリアム上のNFT(非代替性トークン)を買える、といった世界観。それができなければ、ブロックチェーンがもたらすインクルージョン(包摂)が実現できない。 Q:今年1月にはアスター・ネットワークのトークンを発行し、時価総額は1000億円規模になりました。 A:たくさんのアプリ開発者が入ってきてくれていることが大きい。今後伸びるプラットフォームだと思ってくれていて、そこに早くから参入したいと思う人が入ってくれている。 開発者に対するインセンティブを用意していることも(特徴として)ある。ほかのチェーンではアプリを実装すると、開発者が高額な手数料を支払う必要がある。一方で、われわれのチェーンでは取引数や接続されたウォレットの数など貢献の度合いに応じて、開発者に報酬としてトークンを付与している。 既存のチェーンではコストがかかる構造になっており、開発インセンティブの設計として正しくない。ビットコインではマイニング(ブロックチェーン上の取引の承認に必要なコンピューターの演算作業)をした人に報酬が支払われているが、アスターではマイナー(マイニングをする人)だけでなく、開発者にも報酬を分配している』、「ウェブ3.0は「Less trust, More truth(信頼に代わる真実を)」という世界。これまではあらゆる経済活動に、人々に「信頼」された中間的な業者が入っていた。 例えば今ウクライナに寄付をするにも、銀行や赤十字社が間に入る。そのため、現地にお金が届いているのか、「真実」はわかりにくい。あらゆるビジネスはすべて、信頼の上に成り立っているゆえに、間の人たちが実際に何をしているのかは見えない状態だった。 ブロックチェーンはユーザー同士を直接つなぎ、透明性や検証性の高い経済活動を実現する。中抜き構造が変わるのは大きなインパクトになる」、「ブロックチェーンは搾取されてきた人たちに権力を分配できる技術だ。いわゆる「GAFAM」はネットビジネスで勝ち抜いた。今後20年は、それがウェブ3.0になる」、「ウェブ3.0は「Less trust, More truth(信頼に代わる真実を)」という世界。これまではあらゆる経済活動に、人々に「信頼」された中間的な業者が入っていた・・・あらゆるビジネスはすべて、信頼の上に成り立っているゆえに、間の人たちが実際に何をしているのかは見えない状態だった。 ブロックチェーンはユーザー同士を直接つなぎ、透明性や検証性の高い経済活動を実現する。中抜き構造が変わるのは大きなインパクトになる」、「世界には今ビットコインやイーサリアムなど主要なブロックチェーンが20個ほどあるが、相互につながっていない。アスターはこれらをつなげるプラットフォームになる。 アスターは・・・ギャビン・ウッド氏が開発した「ポルカドット」というブロックチェーンに接続する、パラレルチェーンという部分を担っている。これが意味するのは、ポルカドットに接続されたほかのチェーンと相互に通信ができるということ。 ポルカドットに接続するチェーンはすべて同じ開発ツールで作られている。ただイーサリアムやソラナといったほかのチェーンは違う。それらのチェーンとポルカドットをつなぐ存在が必要で、僕らがその役割を担いたいと考えている」、「今はユーザーがそれぞれのブロックチェーンのことを理解しなければ、アプリケーションが使いづらい。一般にブロックチェーンが普及するには、一つひとつのチェーンを意識せずに、さまざまなアプリケーションが使えることが重要だ。 例えばビットコインでイーサリアム上のNFT(非代替性トークン)を買える、といった世界観。それができなければ、ブロックチェーンがもたらすインクルージョン(包摂)が実現できない。 Q:今年1月にはアスター・ネットワークのトークンを発行し、時価総額は1000億円規模になりました」、「既存のチェーンではコストがかかる構造になっており、開発インセンティブの設計として正しくない。ビットコインではマイニング・・・をした人に報酬が支払われているが、アスターではマイナー・・・だけでなく、開発者にも報酬を分配している」、「開発者にも報酬を分配」とはいいインセンティブになる。
・『ブロックチェーン業界で重視されるのは「TVL」  Q:アスターのチェーン上ではどんなアプリが実際に使われているんでしょうか。 A:「DeFi(Decentralized Finance、ディーファイ/分散型金融)」の取引が盛んだ。アスター上のDEX(デックス、分散型交換所=余剰の暗号資産を持つ人と、手持ちの暗号資産を別の暗号資産に交換したい人をつなげる場)やレンディング(暗号資産の貸し出し)などが増えており、チェーン上の預かり資産額(Total Value Locked、TVL)はグローバルでトップ10に入った。 Q:DeFiで稼ぐ人が増えるということは、渡辺さんが目指しているインクルージョン(包摂)の世界と乖離してしまうのでは? A:それはその通りで、ブロックチェーンの利用者はまだアーリーアダプターが大半。交換所で暗号資産を買って、暗号資産用のウォレットをインストールして、イーサリアムからアスターにトークンを移したりしないといけない。ウェブ3.0の世界はまだ敷居が高い。だからお金が稼げるという動機があり、自分で学んで体験してみたいという人が多いのは事実だ。 ただそういった人たちだけにサービスを提供すればよいわけではなくて、インターフェースや体験、技術的な制約を解決して、一般に普及させなきゃいけない。これは業界の皆が考えていることだ。 自分が日本人で良かったと思うのは、日本がマンガやアニメなどの強いIP(知的財産、キャラクター)の大国であること。それを活用したNFTが国産ブロックチェーンに乗って世界を席巻する将来像を描きたい。それによって日本での普及も進むと思っている。) Q:アメリカのコインベースやシンガポールのCrypto.com、中国のバイナンスといった大手暗号資産交換所の投資部門や、海外のさまざまな暗号資産ファンドから資金調達をしています。ウェブ3.0における世界のプレイヤーから注目されている背景は何でしょうか。 A:Day 1(創業初日)からグローバルを意識しているというところが前提にあると思う。すでに世界で一定の認知度と技術の先端を走っているということが認められている。 あとはコミュニティの大きさ。チェーン上の取引数やアプリの盛り上がりなど、実際にコミュニティが大きくなっている。今後アプリが増えれば、トークンの時価総額も上がるという評価をしてもらっている。中国とアメリカのトップ投資家に支援してもらえたのは大きい。 Q:日本のベンチャーキャピタル(VC)などから資金を調達するという選択肢はなかったのですか。 A:ウェブ3.0はこれまでの株式だとか売上高だとかの世界観とはかなり違うので、既存のVCはアンラーン(学び直し)する必要がある。この領域はすごく盛り上がっているので、売り手市場になっており資金調達自体は難しくない。 日本のVCがついてこれないというのは仕方ない部分もあって、日本のLPS法(投資事業有限責任組合契約に関する法律)で、(投資事業有限責任組合である)VCの投資対象が株式などに限られており、暗号資産で投資ができない。やりたくてもできないのが現状だと思う』、「アメリカのコインベースやシンガポールのCrypto.com、中国のバイナンスといった大手暗号資産交換所の投資部門や、海外のさまざまな暗号資産ファンドから資金調達をしています。ウェブ3.0における世界のプレイヤーから注目されている背景は何でしょうか。 A:Day 1(創業初日)からグローバルを意識しているというところが前提にあると思う。すでに世界で一定の認知度と技術の先端を走っているということが認められている。 あとはコミュニティの大きさ」、なるほど。
・『日本のウェブ3.0起業家は皆、海外へ出ていく  Q:2019年に日本で創業して、2020年にはシンガポールに拠点を移しました。法人が保有するトークンの含み益への期末課税の問題が大きかったようですね。 A:これは本当に深刻で暗号資産を持っているだけで課税されてしまう。 特にわれわれのようにトークンを発行する会社への影響は大きい。トークンを発行して時価総額が1000億円になったとき、この1000億円の含み益に対して課税されてしまう。仮に会社側が発行済みトークンの50%を持っているとすると、500億円の含み益に対して30%課税される。もし日本で事業をしていれば、150億円を納税しなければいけない。 ただ納税のために150億円分のトークンを換金すれば、売り圧力が強すぎてマーケットが崩れてしまう。しかも、このトークンは「ガバナンストークン」といって議決権の役割もあるので、売ってしまうと運営不可能になる。だから今ウェブ3.0の領域で起業する人たちは皆、海外に出てしまっている。 Q:渡辺さんはこうした日本における規制の問題を指摘し続けています。ただ、グローバルでの成功を目指すのであれば、もはや場所は関係なくなってくるようにも思います。 A:個人としても会社としても税金の問題はセンシティブなので、発言するメリットはまったくない。 ただ、やはり1人の日本人として母国が沈んでいくのは悔しいじゃないですか。ウェブ2.0でも結局アメリカや中国のサービスを皆が使っている。データも日本ではなくて海外で管理されている。日本はすでに“デジタル植民地”になっていると思っている。 新しいウェブ3.0の波がある中で、日本人、そして日本の企業として、どれだけウェブ2.0の反省を生かして世界で戦えるか。それが国益にも繋がる。(起業家が海外へ出るという)由々しき事態が一刻も早く解決されることを望んでいる』、「「2019年に日本で創業して、2020年にはシンガポールに拠点を移しました。法人が保有するトークンの含み益への期末課税の問題が大きかった」、「トークンを発行して時価総額が1000億円になったとき、この1000億円の含み益に対して課税されてしまう。仮に会社側が発行済みトークンの50%を持っているとすると、500億円の含み益に対して30%課税される。もし日本で事業をしていれば、150億円を納税しなければいけない。 ただ納税のために150億円分のトークンを換金すれば、売り圧力が強すぎてマーケットが崩れてしまう。しかも、このトークンは「ガバナンストークン」といって議決権の役割もあるので、売ってしまうと運営不可能になる。だから今ウェブ3.0の領域で起業する人たちは皆、海外に出てしまっている」この重課税は由々しい問題だ。「新しいウェブ3.0の波がある中で、日本人、そして日本の企業として、どれだけウェブ2.0の反省を生かして世界で戦えるか。それが国益にも繋がる。(起業家が海外へ出るという)由々しき事態が一刻も早く解決されることを望んでいる」、同感である。

次に、4月26日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「「Web3.0・NFT」って何?「NBAのカードが100万ドルで売買」される理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/302308
・『「ウェブ3.0(スリー)」が注目され、「非代替性トークン」(NFT)の発行が急増している。象徴的な企業が、米国のダッパー・ラボだ。2020年10月、同社はNBAの名プレーシーンをNFTとして集めるゲーム、「NBA Top Shot」を始めた。希少性を担保する仕組みと、レアなカードを集めたいファンの欲求が重なった結果、NBA Top ShotのNFT価格が高騰。ロサンゼルス・レイカーズに所属しているレブロン・ジェームズ選手のNFTが、100万ドルで売りに出されている』、「レブロン・ジェームズ選手のNFTが、100万ドルで売りに出されている」、「希少性を担保する仕組みと、レアなカードを集めたいファンの欲求」があったとはいえ、驚きの高価格だ。
・『世界的に注目されるウェブ3.0  最近、世界的に「ウェブ3.0(スリー)」が注目を集めている。ウェブ3.0により、プライベート型のブロックチェーン技術を用いて、個人が公正なデータの管理などのメリットを享受できる。 そうした取り組みを加速させる企業の一つに、米国のDapper Labs(ダッパー・ラボ)がある。同社は処理能力の高いブロックチェーンを開発し、「非代替性トークン」(Non-Fungible Token、NFT、電子的な証明書)の発行と流通を可能にした。それを用いた、米NBAのスーパープレー動画を記録したNFT取引が、過熱している。国内でも大手芸能事務所などがNFTビジネスに参入している。 ただ、短期間に、GAFAM (Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)を頂点とした世界のIT業界の構図が崩れ、ウェブ3.0に移行するとは想定しづらい。今後、IT先端分野での競争は激化するだろう。その中で、ブロックチェーンなど新しいデジタル技術の利用が増え、分散型と中央集権型のシステム運営が並走する状況が続く可能性が高い。 その中で、より効率的かつ持続的に付加価値を生み出す技術が評価されるはずだ。言い換えれば、IT先端分野の環境変化のスピードは加速し、淘汰される企業が増える。行政を中心にデジタル化の遅れが深刻なわが国の、デジタル・ディバイド(情報格差)が鮮明化することが懸念される』、「IT先端分野の環境変化のスピードは加速し、淘汰される企業が増える。行政を中心にデジタル化の遅れが深刻なわが国の、デジタル・ディバイド(情報格差)が鮮明化することが懸念される」、その通りだ。
・『ウェブ3.0は金融にも変革をもたらす  1990年代から2000年9月の米ITバブル崩壊まで、米国から世界へITサービスが広がった。その一つに、ヤフーは検索機能や電子メールのサービスを提供し、経済運営の効率性が高まった。この時代を「ウェブ1.0(ワン)」と呼ぶ。 次に03年ごろ、世界はウェブ2.0(ツー)に移行したと考えられる。当時、広告シェアにおいてグーグルがヤフーを超えた。グーグルは広告収入を増やし、クラウドサービス事業などに資金を再配分してプラットフォーマーとしての地位を固めた。その後、アマゾンドットコムなどの急成長によってデジタル化は加速し、IT業界は寡占化した。その結果、個人のデータが、一部の大手企業に集中した。 今度は、ウェブ3.0が、そうした中央集権的なネット業界の構造を変えると期待されている。分散型のネットワークテクノロジーであるブロックチェーンによって、特定の組織の影響力が低下するのが特徴だ。 ブロックチェーンは、所有権など個人のデータを記録し、参加者の相互承認によってその取引を行う。理論上、改竄(かいざん)は不可能だ。取引の一例が、仮想通貨のビットコインである。 ビットコインを入手したい人は、一種の数学のクイズを解く。解答が正当か否かを全参加者が確認し、承認する。承認された解答者はビットコインを手に入れる。そうして、この取引のデータ(ブロック)が、過去から鎖のように連なるデータに付け加えられる。 一連の作業は、特定の監視者ではなく、システムが自律的に行う。誰がどれだけのビットコインを保有しているかは、企業ではなく分散型のネットワークシステムが管理する。この技術を用いたウェブ3.0の世界では、個人が自らのデータをよりよく管理し、その利用から利得を手にすることができると期待されている。 ウェブ3.0は金融にも変革をもたらす。銀行が預金を集めて信用審査を行い、信用を供与するのではなく、ブロックチェーン上で資産価額が評価され、融資が行われる。これにより金融ビジネスは、「分散型金融」(Decentralized Finance、DeFi、ディファイ)に向かうとみられている。システム上で資産の所有権や価値の評価などが行われるため、店舗運営などのコストが低下し、効率性が向上することが注目点だ』、「ウェブ3.0は金融にも変革をもたらす。銀行が預金を集めて信用審査を行い、信用を供与するのではなく、ブロックチェーン上で資産価額が評価され、融資が行われる。これにより金融ビジネスは、「分散型金融」・・・に向かうとみられている。システム上で資産の所有権や価値の評価などが行われるため、店舗運営などのコストが低下し、効率性が向上することが注目点だ」、「分散型金融」に向かった「金融ビジネス」は、これまでとは全く異なったものになるのだろう。
・『「NBA Top Shot」では、NFTが100万ドルに  ウェブ3.0を考える上で、NFTの発行が急増していることは見逃せない。その象徴的な企業が、米国のダッパー・ラボだ。2020年10月、同社はNBAの名プレーシーンをNFTとして集めるゲーム、「NBA Top Shot」を始めた。 NBAトップ・ショットは、ダッパー・ラボが開発・運営する「Flow」と名付けられたブロックチェーンが管理する。もともとダッパー・ラボは、他社のブロックチェーンを利用していたが、処理速度が遅いという問題があった。そのため、新しいブロックチェーンのFlowを自社開発し、より円滑な取引環境を利用者に提供している。 取引の仕方はこうだ。まず、NBA Top Shotの公式サイトにアクセスして、デジタル化されたトレーディングカードのパックを購入する。これは、有価証券の発行市場になぞらえることができる。 カードと呼ばれてはいるが、実際に購入するのは短い動画だ。パッケージには、ふつう(Common)、珍しい(Rare)、レジェンド(Legendary)の三つの区分があり、右に行くほど希少性が増し、価格も高くなる。イメージとしては、かつて子供に人気だったプロ野球選手のカード付きスナック菓子を買うことに似ている。 また、公式サイトのマーケットプレイス(流通市場)にアクセスし、他の保有者からデジタルカードを購入したり、売却したりすることもできる。決済はイーサリアムやビットコインといった仮想通貨、クレジットカードなどで行い、ダッパー・ラボは決済の手数料を獲得する。その他、カードを獲得できるイベントも開催されている。 ブロックチェーンが管理するNFTは、その一つ一つが唯一無二のデジタル資産だ。偽造はできない。デジタルであるため劣化もしない。そのため、NBAファンは、いつでもお気に入りの名選手の名プレーを、自分だけのものとして楽しむことができる。 そうした希少性を担保する仕組みと、希少なカードを集めたい欲求が重なった結果、NBA Top ShotのNFT価格が高騰した。一例として、マーケットプレイスでは、ロサンゼルス・レイカーズに所属しているレブロン・ジェームズ選手のNFTが、100万ドル(約1億2800万円)で売りに出されている(4月19日アクセス時点)』、「レブロン・ジェームズ選手のNFTが、100万ドル(約1億2800万円)で売りに出されている」、「希少性を担保する仕組みと、希少なカードを集めたい欲求が重なった結果」、なるほど。
・IT業界の競争激化とわが国への影響  世界経済はウェブ2.0から3.0への移行期にあると考えられる。とはいえ、ブロックチェーンの利用が増えたとしても、中央集権的な仕組みはなくならないだろう。 米FRB(連邦準備制度理事会)や日本銀行などは、「中央銀行デジタル通貨」(CBDC)に関する研究を進めている。パブリック型のブロックチェーンの利用が進むことによって、中央集権的な経済や社会の運営は続く。また、GAFAMのような大手IT企業が、ウェブ3.0企業を買収するなどして、中央集権的なネット運営が続くことも考えられる。 その一方で、ダッパー・ラボのように処理速度の速いブロックチェーン技術を開発し、人々の新しい取り組みや欲求を刺激できる企業は、競争に生き残る可能性がある。 また、現在のウェブ3.0への期待には、「行き過ぎ」の部分がある。筆者がそう考える理由の一つに、世界で金融政策の正常化および引き締めが進んでいることが挙げられる。 物価の高騰によって、米国をはじめ世界の主要中央銀行は利上げやバランスシートの縮小を急ぎ始めた。世界的に金利上昇圧力は高まり、米国のナスダック上場銘柄など、期待先行で上昇した株は売られるだろう。 それに伴って、ウェブ3.0への期待を集めたスタートアップ企業は不安定化し、ビジネスの継続に行き詰まる展開も予想される。2000年のITバブル崩壊の時のような状況が、再来する可能性は排除できない。NFT関連の規制も強化されるだろう。 今後、ウェブ2.0を牽引(けんいん)した企業と、ブロックチェーン開発を進めてNFT取引の拡大を目指す新興企業の競争が激化するはずだ。ひるがえって、わが国には米国や中国の有力プラットフォーマーに匹敵する企業が見当たらない。ダッパー・ラボのように新しく社会の関心と期待をさらうような企業も少ない。 ウクライナ危機をきっかけに、世界経済の分断は深まり、各国の経済運営の効率性も低下するだろう。それは、外需依存度が高まるわが国にマイナス影響をもたらす。ウェブ2.0からウェブ3.0へ、世界が加速度的にシフトする中、わが国のデジタル・ディバイドぶりは一段と鮮明化する恐れがある』、「わが国には米国や中国の有力プラットフォーマーに匹敵する企業が見当たらない。ダッパー・ラボのように新しく社会の関心と期待をさらうような企業も少ない」、「ウェブ2.0からウェブ3.0へ、世界が加速度的にシフトする中、わが国のデジタル・ディバイドぶりは一段と鮮明化する恐れがある」、世界の潮流からこれ以上、取り残されないようにしてもらいたいものだ。
タグ:ブロックチェーンはユーザー同士を直接つなぎ、透明性や検証性の高い経済活動を実現する。中抜き構造が変わるのは大きなインパクトになる」、「世界には今ビットコインやイーサリアムなど主要なブロックチェーンが20個ほどあるが、相互につながっていない。アスターはこれらをつなげるプラットフォームになる。 アスターは・・・ギャビン・ウッド氏が開発した「ポルカドット」というブロックチェーンに接続する、パラレルチェーンという部分を担っている。これが意味するのは、ポルカドットに接続されたほかのチェーンと相互に通信ができるという 「ブロックチェーンは搾取されてきた人たちに権力を分配できる技術だ。いわゆる「GAFAM」はネットビジネスで勝ち抜いた。今後20年は、それがウェブ3.0になる」、「ウェブ3.0は「Less trust, More truth(信頼に代わる真実を)」という世界。これまではあらゆる経済活動に、人々に「信頼」された中間的な業者が入っていた・・・あらゆるビジネスはすべて、信頼の上に成り立っているゆえに、間の人たちが実際に何をしているのかは見えない状態だった。 東洋経済オンライン「世界に挑む「国産ブロックチェーン」起業家の素顔 「ウェブ3.0は若者に非常に有利な領域だ」」 ブロックチェーン (その2)(世界に挑む「国産ブロックチェーン」起業家の素顔 「ウェブ3.0は若者に非常に有利な領域だ」、「Web3.0・NFT」って何?「NBAのカードが100万ドルで売買」される理由) こと。 ポルカドットに接続するチェーンはすべて同じ開発ツールで作られている。ただイーサリアムやソラナといったほかのチェーンは違う。それらのチェーンとポルカドットをつなぐ存在が必要で、僕らがその役割を担いたいと考えている」、「今はユーザーがそれぞれのブロックチェーンのことを理解しなければ、アプリケーションが使いづらい。一般にブロックチェーンが普及するには、一つひとつのチェーンを意識せずに、さまざまなアプリケーションが使えることが重要だ。 例えばビットコインでイーサリアム上のNFT(非代替性トークン)を買える 「アメリカのコインベースやシンガポールのCrypto.com、中国のバイナンスといった大手暗号資産交換所の投資部門や、海外のさまざまな暗号資産ファンドから資金調達をしています。ウェブ3.0における世界のプレイヤーから注目されている背景は何でしょうか。 A:Day 1(創業初日)からグローバルを意識しているというところが前提にあると思う。すでに世界で一定の認知度と技術の先端を走っているということが認められている。 あとはコミュニティの大きさ」、なるほど。 「「2019年に日本で創業して、2020年にはシンガポールに拠点を移しました。法人が保有するトークンの含み益への期末課税の問題が大きかった」、「トークンを発行して時価総額が1000億円になったとき、この1000億円の含み益に対して課税されてしまう。仮に会社側が発行済みトークンの50%を持っているとすると、500億円の含み益に対して30%課税される。もし日本で事業をしていれば、150億円を納税しなければいけない。 ただ納税のために150億円分のトークンを換金すれば、売り圧力が強すぎてマーケットが崩れてしまう ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫氏による「「Web3.0・NFT」って何?「NBAのカードが100万ドルで売買」される理由」 「レブロン・ジェームズ選手のNFTが、100万ドルで売りに出されている」、「希少性を担保する仕組みと、レアなカードを集めたいファンの欲求」があったとはいえ、驚きの高価格だ。 「IT先端分野の環境変化のスピードは加速し、淘汰される企業が増える。行政を中心にデジタル化の遅れが深刻なわが国の、デジタル・ディバイド(情報格差)が鮮明化することが懸念される」、その通りだ。 「分散型金融」・・・に向かうとみられている。システム上で資産の所有権や価値の評価などが行われるため、店舗運営などのコストが低下し、効率性が向上することが注目点だ」、「分散型金融」に向かった「金融ビジネス」は、これまでとは全く異なったものになるのだろう。 「レブロン・ジェームズ選手のNFTが、100万ドル(約1億2800万円)で売りに出されている」、「希少性を担保する仕組みと、希少なカードを集めたい欲求が重なった結果」、なるほど。 「わが国には米国や中国の有力プラットフォーマーに匹敵する企業が見当たらない。ダッパー・ラボのように新しく社会の関心と期待をさらうような企業も少ない」、「ウェブ2.0からウェブ3.0へ、世界が加速度的にシフトする中、わが国のデジタル・ディバイドぶりは一段と鮮明化する恐れがある」、世界の潮流からこれ以上、取り残されないようにしてもらいたいものだ。
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キシダノミクス(その5)(岸田文雄首相の「身内」振る舞いに批判 長男・翔太郎政務秘書官 側近・木原誠二官房副長官の言動、岸田総理の長男・翔太郎氏が父の外遊先パリ ロンドンで“観光三昧” 異例の親バカに元首相秘書官は「観光に行く暇などない」と一喝、岸田首相長男お土産問題「あしき慣習が今でも」と専門家 ネクタイは最低ランク 派閥の長は?、官邸内で“ドラ息子”翔太郎氏の更迭論が浮上…岸田首相の切りたくても切れない「裏事情」の根深さ) [国内政治]

キシダノミクスについては、昨年5月23日に取上げた。今日は、(その5)(岸田文雄首相の「身内」振る舞いに批判 長男・翔太郎政務秘書官 側近・木原誠二官房副長官の言動、岸田総理の長男・翔太郎氏が父の外遊先パリ ロンドンで“観光三昧” 異例の親バカに元首相秘書官は「観光に行く暇などない」と一喝、岸田首相長男お土産問題「あしき慣習が今でも」と専門家 ネクタイは最低ランク 派閥の長は?、官邸内で“ドラ息子”翔太郎氏の更迭論が浮上…岸田首相の切りたくても切れない「裏事情」の根深さ)である。

先ずは、本年1月30日付け文春オンライン「岸田文雄首相の「身内」振る舞いに批判 長男・翔太郎政務秘書官、側近・木原誠二官房副長官の言動」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/60425
・『岸田文雄首相の「身内」の振る舞いが批判を浴びている。今月の欧米歴訪に同行した長男翔太郎政務秘書官が公用車で観光したと報じられ、側近の木原誠二官房副長官が横柄とも受け取られかねない態度を取ったためだ。自民党内では政権への影響を懸念する声が出ている。 報道によると、翔太郎氏は自ら希望し、日本大使館の公用車でロンドンのバッキンガム宮殿や老舗百貨店「ハロッズ」などを訪問。土産も購入したという。 首相側は、対外発信に使用する目的で街の風景を撮影したり、首相の代理で土産を購入したりするために公用車を使用しただけで、「公務以外の不適切な行動はなかった」と説明している。 新たな攻撃材料を得た立憲民主党は「もし観光していたなら閣僚不祥事どころじゃない」(幹部)と批判。27日には外遊中の翔太郎氏の日程を提出するよう与党に要求した。 自民党内には「最悪だ。国民には観光にしか見えない。政権にとってマイナスだ」(関係者)と嘆く声がある一方、「事務方に土産を買わせられない。政務秘書官の雑用の範囲だ」(幹部)と擁護する声もある。 木原氏は13日の日米首脳会談後、取材に応じる首相の近くで両手をズボンのポケットに突っ込んでいる様子が伝えられた。木原氏は17日のユーチューブ番組「魚屋のおっチャンネル」で、ポケットに手を入れて歩きながら考える癖があると釈明。母親から「恥ずかしいからポッケを縫え」と叱られたことも明かした。 24日の同番組では脚を組む癖も指摘され、「欧米では一つの流儀」と回答。自民党中堅は「身内が首相の足を引っ張っている」と漏らした』、「翔太郎氏は自ら希望し、日本大使館の公用車でロンドンのバッキンガム宮殿や老舗百貨店「ハロッズ」などを訪問。土産も購入したという」、「事務方に土産を買わせられない。政務秘書官の雑用の範囲だ」「と擁護する声もある」とはいえ、「バッキンガム宮殿」は買い物ではなく、見物しかあり得ない。それにしても、本人も商社出身とは思えないほど、脇が甘いようだ。

次に、1月31日付けデイリー新潮「岸田総理の長男・翔太郎氏が父の外遊先パリ、ロンドンで“観光三昧” 異例の親バカに元首相秘書官は「観光に行く暇などない」と一喝」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/01310559/?all=1
・『子を愛する余り判断を誤る父。甘えて愚かな振る舞いをする子。世間に「親バカ」「子バカ」の例は山のようにあるが、岸田文雄総理(65)も例外ではなかった。批判に抗して長男に秘書官の重責を担わせてみたものの、その任に堪えず。悪評が漏れ出ているという。【前後編の前編/後編を読む】 ジリ貧の岸田政権にとって剣が峰となる通常国会が1月23日、開幕した。 防衛増税に「異次元の少子化対策」、賃上げ……。総理は厳しい論戦の矢面に立ち、ここでの失敗は命取りになりかねない。 赤じゅうたんの外に目を転じれば、4月には3選挙区で衆院補欠選挙があり、統一地方選挙も行われる。結果によっては、解散や「岸田降ろし」を巡る声も喧(かまびす)しくなる。総理にとって極めて重要な150日がスタートしたのだ。 支持率は低迷。野党は攻勢を強めるばかりか、防衛増税を巡っては自民党内からも異論が噴出している』、「世間に「親バカ」「子バカ」の例は山のようにあるが、岸田文雄総理(65)も例外ではなかった」、「岸田総理」の「親バカ」ぶりは度を超えている。
・『政権の寿命を左右するポジション  そんな中、手負いの総理を支えるのは、身の回り、すなわち“側近”たちの仕事。そこが盤石であればこの難局は乗り切れるはず。 ところが、だ。 「今、政府に関わるスタッフたちの間で“大丈夫か?”と話題になっている“側近”がいるんです」 と声を潜めるのは、さる政府関係者。 「それというのが、首相秘書官の岸田翔太郎さん(32)のこと。言わずと知れた総理のご長男ですよね。昨秋に秘書官に就いたばかりですが、早くもその言動に疑問符が付いているのです」 首相秘書官とは、正確には内閣総理大臣秘書官といい、文字通り総理を秘書、つまり黒子として支える役職だ。 総理が任ずる「政務担当秘書官」と、各省庁から選ばれた「事務担当秘書官」とに分かれ、現在、前者は嶋田隆・元経産省事務次官と翔太郎氏の2名、後者は財務省や警察庁などからの6名の出向者が務めている。 歴代の長期政権には、大物の政務担当秘書官が付き物であった。約5年続いた小泉政権には飯島勲氏が控え、「官邸のラスプーチン」の異名でにらみを利かせていたし、約8年続いた第2次安倍政権時の経産省出身、今井尚哉氏は「総理の分身」と言われるほど信頼が厚かった。その人の資質や能力が政権の寿命を左右すると言っても過言ではない』、「政務担当秘書官」のなかでも、「飯島勲氏」、「今井尚哉氏」は別格だ。
・『「翔太郎氏の振る舞いが…」  「岸田総理は1月の初旬から中旬にかけて、欧米5カ国を訪問しています」 と言うのは、先の政府関係者。 総理一行は1月9日に日本を出国、その後フランス、イタリア、イギリス、カナダ、アメリカでそれぞれのトップと会談を開き、内外記者会見を終えた後、15日に帰国している。 しかし、 「そこに同行していた翔太郎さんの振る舞いがあまりに物見遊山めいていたことが話題になっているんです」(同)』、「翔太郎さんの振る舞いがあまりに物見遊山めいていた」、やれやれだ。
・『観光地を巡りたいという要請  今回の外遊の目的は5月に行うサミットの地ならし。自国、しかも総理の地元・広島で開催するだけに、その成否は支持率に直結するから、G7中5カ国の首脳と会談する意味は極めて重大であった。 「まず、フランスで最初の問題が発生しました」 と先の政府関係者。 岸田総理が同国に到着したのは現地時間の1月9日。到着後、ユネスコ事務局長の表敬を受けた後、憲法院の院長と懇談、国際エネルギー機関の事務局長の表敬も。マクロン大統領とノートルダム大聖堂を訪れた後、共同記者会見、夕食会、会談に臨むという分刻みのスケジュールだ。その間、 「現地の大使館には翔太郎さんから、パリ市内の観光地を巡りたいとの要請があったそうです。大使館は車を回し、彼はお望みの名所を訪れている。それだけでなく、夕食はビストロを、とのことで、現地のアテンドで気心の知れたスタッフと舌鼓を打ったそうです」 翔太郎氏はパリが初めてだったとか。カジュアルなレストランでさぞ楽しい宴を開いたことであろう。ちなみに、その時間、岸田総理は大統領と膝を突き合わせて話し合っていた。 「その次の訪問先、イタリアでは滞在時間も短く、翔太郎さんも大人しくしていたのでは」 と政府関係者が続ける。 「が、続いて訪れたイギリスでは、また“ご要望”が。いわく、ロンドン市内を“見学”したいとのことで、やはり大使館が回した車で、ビッグベンやバッキンガム宮殿を訪れ、ハロッズにも寄っています」』、「パリ」では「現地の大使館には翔太郎さんから、パリ市内の観光地を巡りたいとの要請があったそうです。大使館は車を回し、彼はお望みの名所を訪れている。それだけでなく、夕食はビストロを、とのことで、現地のアテンドで気心の知れたスタッフと舌鼓を打ったそうです」、「イギリスでは、また“ご要望”が。いわく、ロンドン市内を“見学”したいとのことで、やはり大使館が回した車で、ビッグベンやバッキンガム宮殿を訪れ、ハロッズにも寄っています」、誠に結構な身分だ。
・『カナダで“事件”が  老舗超高級百貨店でお買い物を楽しんだわけだが、やはりその日の岸田総理は多忙で、シンクタンク所長の表敬を受け、スナク首相と会談、ロンドン塔を訪れた後は会見にも臨んでいる。親の心子知らずとはこのことか。 翔太郎氏の「諸国漫遊」はこれにとどまらない。この後、一行は大西洋を越え、カナダに到着するが、ここでも周囲のひんしゅくを買う“事件”を起こしたという。 同国で岸田総理は、トルドー首相との会談を行い、その後、首相主催の経済関係者を交えた昼食会に出席した。その場に翔太郎氏も同席していたが、 「彼は首脳たちとは別テーブルだったそうです」 と政府関係者。 「そこで、トルドー首相と写真を撮りたいと言い出した。そんな予定はなかったのでスタッフはあたふたしていたとか。結局ゴネ得で、会の終了後、別室でトルドーと総理と三人で写真に納まることができた。慌てた現場からは“いい気なもんだ”と文句の声が上がっていたそうです」 むろん総理の息子でなければ実現しなかったはず』、「カナダ」では、「「彼は首脳たちとは別テーブルだったそうです」 と政府関係者。 「そこで、トルドー首相と写真を撮りたいと言い出した。そんな予定はなかったのでスタッフはあたふたしていたとか。結局ゴネ得で、会の終了後、別室でトルドーと総理と三人で写真に納まることができた。慌てた現場からは“いい気なもんだ”と文句の声が上がっていた」、およそ遠慮とは無縁の性格のようだ。
・『大使館員も観光に同行  おまけに、海を越えても観光気分は抜けていなかったようで、 「オタワ市内のマーケットに出向き、酒屋でワイン、土産物屋でお土産購入に勤しんでいた、とのこと」(同) 首相との記者会見に臨むパパを横目に、心は日本の友人知人に向かっていたということだろうか。 「その後、岸田総理はアメリカへ向かい、ワシントンでバイデン大統領などと会談して外遊を終えます」 と政府関係者が続ける。 「この旅程の間、翔太郎さんにはリエゾンと呼ばれる、現地での調整・連絡係の大使館員が常に付いていました。ですから、こうしたスタッフも“ご観光”に同行させられることになったんです。また、観光地巡りの度に大使館の公用車を出す必要があったため、それにも手間がかかる。各国の大使館員にとって大きな負担となっていました」』、「この旅程の間、翔太郎さんにはリエゾンと呼ばれる、現地での調整・連絡係の大使館員が常に付いていました。ですから、こうしたスタッフも“ご観光”に同行させられることになったんです。また、観光地巡りの度に大使館の公用車を出す必要があったため、それにも手間がかかる。各国の大使館員にとって大きな負担となっていました」、「各国の大使館員にとって大きな負担となっていました」、その通りだ。
・『“親バカ人事”  翔太郎氏は1991年、広島生まれの32歳。地元の名門・修道中高から慶應義塾大に進み、卒業後は三井物産に就職したエリートだ。6年間勤務した後、2020年に岸田事務所で公設第2秘書となる。岸田家は現総理のみならず先代も先々代も衆議院議員を務めているから、「政治一家」の4代目に当たる。 父の総理就任1年後の昨年10月、首相秘書官に就くも、「縁故採用」と批判されたのは記憶に新しい。 「就任時から岸田総理は、翔太郎さんを秘書官にするつもりでいました」 と解説するのは、政治ジャーナリストの泉宏氏だ。 しかし、岸田事務所には総理が政界入りした時から傍に仕える生え抜きのベテラン秘書がいた。苦労に報いる意味もあり、まずは彼を付け、その後1年経った際に翔太郎さんに交代させた。総理にとっては既定方針でしたが、臨時国会召集翌日のタイミングになったために、“親バカ人事”との批判を招いたわけです」 とはいえ、前述のように、翔太郎氏はまだ32歳で、永田町歴も2年とキャリア不足は否めない。 「総理はそう遠くない将来、跡継ぎとして翔太郎さんの政界入りを想定しているはず。総理自身も翔太郎さんと同じ31歳の年に父上の秘書になり、政界でのキャリアをスタートさせていますから、それと同じ道を歩ませているように見えます」 箔付けの感が強い人事だったというわけである』、「「総理はそう遠くない将来、跡継ぎとして翔太郎さんの政界入りを想定しているはず。総理自身も翔太郎さんと同じ31歳の年に父上の秘書になり、政界でのキャリアをスタートさせていますから、それと同じ道を歩ませているように見えます」、「総理」が願っているようになる可能性はそれほどないと考えざるを得ない。
・『朝食も一緒  その翔太郎氏がどんな仕事をしているかといえば、 「首席秘書官である嶋田さんは、元経産次官であることからわかるように政策の人。一方の翔太郎さんは総理の身近に控え、意向や体調を見つつ、細かい日程管理や調整をするのが仕事です」 と解説するのは、政治ジャーナリストの青山和弘氏。 「総理の細かな変化に配慮することが職務。もうひとつの仕事としてSNS対策があります。岸田総理はSNSを全く見ませんので、それを補うのが若い彼。総理の言動や政策がSNS上でどう見られているかをチェックし、報告しています」 もともと総理のご長男への溺愛ぶりはつとに知られていて、地元・広島の政界関係者によれば、 「岸田さんの事務所の会報のタイトルは『翔』。息子さんの名前から取ったものでしょう。総理になる前は議員宿舎、総理になった今は公邸で一緒に暮らしています。総理就任後は毎朝、4~5時に起き、一緒に朝食を取りながらコミュニケーションを図っているそうです」 自民党関係者も言う。 「翔太郎さんは首相秘書官になる前から、複数回、総理の外遊に同行し、政府専用機にも乗せてもらっていました。将来に向けて経験を積ませるためでしょうが、政府専用機とは文字通り、政府のスタッフが乗るためのもの。息子とはいえ、立場としては衆議院議員の事務所スタッフに過ぎない翔太郎さんが乗っていたのには、違和感を禁じ得ません」』、「翔太郎さんは首相秘書官になる前から、複数回、総理の外遊に同行し、政府専用機にも乗せてもらっていました。将来に向けて経験を積ませるためでしょうが、政府専用機とは文字通り、政府のスタッフが乗るためのもの。息子とはいえ、立場としては衆議院議員の事務所スタッフに過ぎない翔太郎さんが乗っていたのには、違和感を禁じ得ません」、その通りだ。
・『「とても観光に行く暇などなかった」  内閣府によれば、政府専用機はその都度の外遊で必要と判断されたメンバーが搭乗可能で、使用者に特段の規定はないという。 しかし、 「話を聞いて驚きました」 とは、過去の内閣で首相秘書官を務めたさる人物。 「少なくとも自分が秘書官の時は総理の事務所の秘書を政府専用機に同乗させたことはありません。彼らは基本的に外交とは関係がありませんし、身の回りの世話なら、外務省のスタッフで可能。外遊に連れて行くという発想すらありませんでした」 と言うから、やはり「特別扱い」の感ありあり。 物見遊山についても、 「よくそんな暇があったなという印象です。自分は現地で業務に追われ、とても観光に行く暇などなかったですから……」 失礼ながら、翔太郎氏のキャリア不足は否めず、外交現場に行っても役割がなく暇を持て余していたのだろうが、それにしても真剣味に欠けていることだけは間違いない。 【外遊中の写真で「失礼だ」と批判された木原誠二官房副長官の、報じられていない更なる失礼行動について後編を読む】』、「過去の内閣で首相秘書官を務めたさる人物。 「少なくとも自分が秘書官の時は総理の事務所の秘書を政府専用機に同乗させたことはありません。彼らは基本的に外交とは関係がありませんし、身の回りの世話なら、外務省のスタッフで可能。外遊に連れて行くという発想すらありませんでした」 と言うから、やはり「特別扱い」の感ありあり。 物見遊山についても、「よくそんな暇があったなという印象です。自分は現地で業務に追われ、とても観光に行く暇などなかったですから……」 失礼ながら、翔太郎氏のキャリア不足は否めず、外交現場に行っても役割がなく暇を持て余していたのだろうが、それにしても真剣味に欠けていることだけは間違いない』、岸田首相の「親バカ」ぶりにはほとほと呆れ果てた。これでは、「翔太郎氏」にとっても、秘書稼業の厳しさの理解には程遠いようだ。

第三に、2月1日付けAERAdot「岸田首相長男お土産問題「あしき慣習が今でも」と専門家 ネクタイは最低ランク、派閥の長は?」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2023013100063.html?page=1
・『岸田文雄首相の長男で政務秘書官を務める翔太郎氏が、首相の欧米5カ国の歴訪に同行した際、現地で公用車を使って土産を購入し、閣僚に配っていたことが国会で問題になっている。元議員秘書の専門家によると、「派閥の長や幹部には数十万円、同僚議員らには数万円程度と差をつけてお土産を配る習慣がある」という。 岸田首相の息子・翔太郎氏の“公務”が批判の的になっている。 翔太郎氏は1月9~15日にかけて、岸田首相の欧米5カ国の歴訪に同行した。その際、公用車を使い、土産を購入したなどと『週刊新潮』(1月26日発売)で報道された。その後、閣僚にネクタイを贈った、約半数の閣僚がお土産の受領を認めた、という報道も出ている。 岸田首相らは、翔太郎氏が公務として首相のお土産を購入したという立場をとっている。 27日、木原誠二官房副長官は定例会見で、現時点でわかったこととして「政治家としての総理のお土産等の購入」や「ご自身や私用目的での買い物等はない」などと答えた。 さらに31日の衆院予算委員会で岸田首相は「全大臣に買ったと承知している。具体的な内容については控えるが、私自身のポケットマネーで買ったことは間違いない」と答弁した。他方で、政務秘書官が首相のお土産を購入することは「本来業務、すなわち『公務』であると思う」と答えた。 いったい何が起きているのか。衆議院議員秘書の経歴のある明治大客員研究員でコラムニストの尾藤克之さんは「あしき風習がいまでも残っているのだと思います」と指摘する。 首相や大臣に限らず国会議員が外遊に出ると土産を買ってくる風習があるという。派閥の長には数十万円の食器類、幹部や部会長には同額程度の酒類、同僚議員らにはネクタイといった具合だ。 実は、以前からこういった問題は指摘されている。支払いは領収書が不要の「官房機密費」と見られてきた。過去の報道などでは「首相の外遊時にお土産など必要経費として1千万の官房機密費を持っていった」、「サミットのときに2千~3千万持参し、食事会やお土産代などに充てた」といった証言が出ている。 今回の支払いについて岸田首相は「ポケットマネー」と弁解したが、尾藤さんはこう見る。 「土産購入が公務なら、その費用は公費で払うべきです。それを『ポケットマネー』というのは不可解。批判を受けてそういうことにしたのでしょう。公務だとしても、派閥や党内融和のために使うとなれば、それは国のためというより党のためなのではないでしょうか。また、ネクタイは土産のランクでいえば最も低く、派閥議員や同僚議員への土産のように見える。これまでの慣習を踏まえると、土産を受け取ったのは閣僚以外にも増える可能性があります」 政治資金問題に詳しい神戸学院大の上脇博之教授も、公務でポケットマネーを使うことは矛盾しているとしたうえで、問題が起こる背景についてこう指摘する。 「公私の区別が明らかについていません。安倍首相が主催した『桜を見る会』に後援会の関係者を多数招待していたのも『公費の私物化』として問題視されました。日本経済はバブルがはじけてから不況ですが、自民党は政党交付金でバブルな状況があり、さらに官房機密費まで使える。お金があふれ、庶民感覚を失っているのでしょう。一度、余分なお金を断つ“金断治療”をしないと、公金のありがたみがわからないのだと思います」』、「「土産購入が公務なら、その費用は公費で払うべきです。それを『ポケットマネー』というのは不可解。批判を受けてそういうことにしたのでしょう。公務だとしても、派閥や党内融和のために使うとなれば、それは国のためというより党のためなのではないでしょうか」、「自民党は政党交付金でバブルな状況があり、さらに官房機密費まで使える。お金があふれ、庶民感覚を失っているのでしょう。一度、余分なお金を断つ“金断治療”をしないと、公金のありがたみがわからないのだと思います」、同感である。

第四に、2月3日付け日刊ゲンダイ「官邸内で“ドラ息子”翔太郎氏の更迭論が浮上…岸田首相の切りたくても切れなにじい「裏事情」の根深さ」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/318160
・『問題息子を切るのか──。1日の衆院予算委員会で野党の追及が集中したのは、やはり、岸田首相の長男で政務秘書官を務める翔太郎氏の“諸国漫遊”問題だった。先月中旬の岸田首相の外遊に同行し、現地で公用車を乗り回して観光三昧。老舗百貨店で閣僚のお土産にブランドネクタイやハンカチを購入していた一件だ。 翔太郎氏の“買い物”について岸田首相は「さまざまな指摘を頂いており、今後、適切に対応しなければならない」と答弁。政務秘書官に登用したことの妥当性については「政治家としての活動をよく知る人間を採用することは大変意味がある」と説明したが、ひきつった笑みを浮かべ、総理大臣席では天を仰ぎ、明らかにお疲れの様子だった。これ以上、身内の問題を追及されたくないのだろう、ここへきて、官邸内で“長男更迭”論が浮上しているという。 「衆院予算委の2日目だった1月31日、総理は早朝6時から2時間以上にわたって、木原官房副長官と面会している。“翔太郎問題”の対策を協議したとみられています。翔太郎氏が問題を起こすとは想定外だったのでしょう。マスコミに狙われるのは明白なのに、翔太郎氏はあまりに軽率すぎる。官邸内では『そろそろ潮時では』という声が上がっているといいます」(官邸事情通)』、「翔太郎氏はあまりに軽率すぎる。官邸内では『そろそろ潮時では』という声が上がっている」、当然だ。
・『夫人の意向を無視できない  岸田首相本人も、「このまま息子に政務秘書官を任せておくのはマズい」と考えているフシがある。昨年末、翔太郎氏が官邸の機密情報をメディアにリークしているのではないか、という疑惑が浮上した一件にブチ切れてしまったようなのだ。 月刊「テーミス」(2月号)によると、〈首相は翔太郎氏を呼んで『バカ息子、役立たず!』と罵った〉という。ただし、長男切りをそう簡単には決断できない事情がある。 「翔太郎さんを辞めさせるか否かは、裕子夫人がカギを握っているようです。岸田家では、息子の将来に関わることは、岸田さんの意思一つでは決められない。夫人の“承認”がないと難しいでしょう。そもそも、翔太郎さんの後任も見当たらない。それに、後継者として、箔付けのために政務秘書官に抜擢したのに、野党に追及されて更迭したら、箔付けどころか翔太郎さんに“傷”をつけてしまいかねません。仮に今後、切るタイミングがあるとしたら、就任1年の節目となる今年10月でしょう」(永田町関係者) 相変わらず支持率が「低空飛行」の岸田内閣。いつ炸裂するか分からない“爆弾”をまだ半年以上も抱え続けることになるのか』、「「低空飛行」の岸田内閣。 いつ炸裂するか分からない“爆弾”をまだ半年以上も抱え続けることになるのか」、さて、「翔太郎さん」「“爆弾”」はどうなることだろうか。
タグ:文春オンライン「岸田文雄首相の「身内」振る舞いに批判 長男・翔太郎政務秘書官、側近・木原誠二官房副長官の言動」 キシダノミクス (その5)(岸田文雄首相の「身内」振る舞いに批判 長男・翔太郎政務秘書官 側近・木原誠二官房副長官の言動、岸田総理の長男・翔太郎氏が父の外遊先パリ ロンドンで“観光三昧” 異例の親バカに元首相秘書官は「観光に行く暇などない」と一喝、岸田首相長男お土産問題「あしき慣習が今でも」と専門家 ネクタイは最低ランク 派閥の長は?、官邸内で“ドラ息子”翔太郎氏の更迭論が浮上…岸田首相の切りたくても切れない「裏事情」の根深さ) 「翔太郎氏は自ら希望し、日本大使館の公用車でロンドンのバッキンガム宮殿や老舗百貨店「ハロッズ」などを訪問。土産も購入したという」、「事務方に土産を買わせられない。政務秘書官の雑用の範囲だ」「と擁護する声もある」とはいえ、「バッキンガム宮殿」は買い物ではなく、見物しかあり得ない。それにしても、本人も商社出身とは思えないほど、脇が甘いようだ。 デイリー新潮「岸田総理の長男・翔太郎氏が父の外遊先パリ、ロンドンで“観光三昧” 異例の親バカに元首相秘書官は「観光に行く暇などない」と一喝」 「世間に「親バカ」「子バカ」の例は山のようにあるが、岸田文雄総理(65)も例外ではなかった」、「岸田総理」の「親バカ」ぶりは度を超えている。 「政務担当秘書官」のなかでも、「飯島勲氏」、「今井尚哉氏」は別格だ。 「翔太郎さんの振る舞いがあまりに物見遊山めいていた」、やれやれだ。 「パリ」では「現地の大使館には翔太郎さんから、パリ市内の観光地を巡りたいとの要請があったそうです。大使館は車を回し、彼はお望みの名所を訪れている。それだけでなく、夕食はビストロを、とのことで、現地のアテンドで気心の知れたスタッフと舌鼓を打ったそうです」、「イギリスでは、また“ご要望”が。いわく、ロンドン市内を“見学”したいとのことで、やはり大使館が回した車で、ビッグベンやバッキンガム宮殿を訪れ、ハロッズにも寄っています」、誠に結構な身分だ。 「カナダ」では、「「彼は首脳たちとは別テーブルだったそうです」 と政府関係者。 「そこで、トルドー首相と写真を撮りたいと言い出した。そんな予定はなかったのでスタッフはあたふたしていたとか。結局ゴネ得で、会の終了後、別室でトルドーと総理と三人で写真に納まることができた。慌てた現場からは“いい気なもんだ”と文句の声が上がっていた」、およそ遠慮とは無縁の性格のようだ。 「この旅程の間、翔太郎さんにはリエゾンと呼ばれる、現地での調整・連絡係の大使館員が常に付いていました。ですから、こうしたスタッフも“ご観光”に同行させられることになったんです。また、観光地巡りの度に大使館の公用車を出す必要があったため、それにも手間がかかる。各国の大使館員にとって大きな負担となっていました」、「各国の大使館員にとって大きな負担となっていました」、その通りだ。 「「総理はそう遠くない将来、跡継ぎとして翔太郎さんの政界入りを想定しているはず。総理自身も翔太郎さんと同じ31歳の年に父上の秘書になり、政界でのキャリアをスタートさせていますから、それと同じ道を歩ませているように見えます」、「総理」が願っているようになる可能性はそれほどないと考えざるを得ない。 「翔太郎さんは首相秘書官になる前から、複数回、総理の外遊に同行し、政府専用機にも乗せてもらっていました。将来に向けて経験を積ませるためでしょうが、政府専用機とは文字通り、政府のスタッフが乗るためのもの。息子とはいえ、立場としては衆議院議員の事務所スタッフに過ぎない翔太郎さんが乗っていたのには、違和感を禁じ得ません」、その通りだ。 岸田首相の「親バカ」ぶりにはほとほと呆れ果てた。これでは、「翔太郎氏」にとっても、秘書稼業の厳しさの理解には程遠いようだ。 AERAdot「岸田首相長男お土産問題「あしき慣習が今でも」と専門家 ネクタイは最低ランク、派閥の長は?」 「「土産購入が公務なら、その費用は公費で払うべきです。それを『ポケットマネー』というのは不可解。批判を受けてそういうことにしたのでしょう。公務だとしても、派閥や党内融和のために使うとなれば、それは国のためというより党のためなのではないでしょうか」、「自民党は政党交付金でバブルな状況があり、さらに官房機密費まで使える。お金があふれ、庶民感覚を失っているのでしょう。一度、余分なお金を断つ“金断治療”をしないと、公金のありがたみがわからないのだと思います」、同感である。 日刊ゲンダイ「官邸内で“ドラ息子”翔太郎氏の更迭論が浮上…岸田首相の切りたくても切れなにじい「裏事情」の根深さ」 「翔太郎氏はあまりに軽率すぎる。官邸内では『そろそろ潮時では』という声が上がっている」、当然だ。 「「低空飛行」の岸田内閣。 いつ炸裂するか分からない“爆弾”をまだ半年以上も抱え続けることになるのか」、さて、「翔太郎さん」「“爆弾”」はどうなることだろうか。
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ウクライナ(その4)(「子ども」「妊婦」「新生児」を虐殺するロシア軍 「まるで『地獄の黙示録』」マリウポリ住民の証言、ウクライナの悲劇招いた「核の傘」喪失 米・NATOが出した“青信号”・・・悲劇の発端「ブダペスト覚書」 親米革命でロシアは侵略国に変貌、核威嚇で米・NATOを試したプーチン大統領、ウクライナで苦戦するロシア軍 その失敗の本質、ロシアは到底勝てるとは思えない、米欧が考えるこの戦争の落とし所はこの辺り ウクライナ戦争の先にある泥沼世界・前編) [世界情勢]

ウクライナについては、昨年3月10日に取上げた。今日は、(その4)(「子ども」「妊婦」「新生児」を虐殺するロシア軍 「まるで『地獄の黙示録』」マリウポリ住民の証言、ウクライナの悲劇招いた「核の傘」喪失 米・NATOが出した“青信号”・・・悲劇の発端「ブダペスト覚書」 親米革命でロシアは侵略国に変貌、核威嚇で米・NATOを試したプーチン大統領、ウクライナで苦戦するロシア軍 その失敗の本質、ロシアは到底勝てるとは思えない、米欧が考えるこの戦争の落とし所はこの辺り ウクライナ戦争の先にある泥沼世界・前編)である。

先ずは、昨年3月30日付けデイリー新潮「「子ども」「妊婦」「新生児」を虐殺するロシア軍 「まるで『地獄の黙示録』」マリウポリ住民の証言」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2022/03300559/?all=1
・『驚愕の侵攻開始から1カ月。投げられたさいは、誰もが予想しなかった方向へと転がっている。内外で孤立を深める一方の超大国独裁者と、世界の人々の心を味方に付けた、徒手空拳の元コメディアン……。かくして「最狂の皇帝」の前に、地獄の門が口を開けた。 ベトナム戦争ではナパーム弾から逃げ惑う裸の少女。スーダン内戦ではハゲワシに狙われる少女の姿が……。 戦争においては、一枚の写真が戦いの惨劇を知らしめ、時に勝敗を左右することがある。 この「ウクライナ戦争」においては、これが「その一枚」となるのか。猖獗(しょうけつ)を極めるロシア軍のマリウポリ爆撃。3月9日、半壊した産科病院から担架で運び出された妊婦の写真は、世界に衝撃を与えた。 「今すぐ私を死なせて!」 血まみれのお腹を撫でながら金切り声を上げたその女性は、30分後に息絶えた。お腹の中の赤ん坊と共に。 「有名なモスクやビーチがあり、多くの観光客を魅了するにぎやかな港町が、今では映画『地獄の黙示録』のシーンにそっくりだ」 ウクライナの新聞「キエフインディペンデント」でライターを務める寺島朝海さんは、マリウポリ出身のジャーナリストに取材し、そんな証言を得ている』、「多くの観光客を魅了するにぎやかな港町が、今では映画『地獄の黙示録』のシーンにそっくりだ」、悲惨さが伝わってくる。
・『水もなく脱水症状に マリウポリの劇場  同国南東部に位置する人口約40万人のマリウポリは、ロシア軍に包囲され、電気、水道、ガスが遮断された。そこに約35万人の市民が籠城状態を強いられている。 彼女のレポートによれば、 〈人々は凍りそうに寒い地下室に避難を余儀なくされ、十分な食べ物も、水もなく、脱水状態に陥っている〉 生活に必要な物資も、 〈食料品店や薬局には、在庫がもう無いか、ロシア軍に略奪されていた〉 食料や水でさえも、 〈危険なほど不足しているため、氷点下の気温で調理し、暖を取るために木材を切り刻んでいる〉 〈最も被害が大きかった地域に住む人々は、家の中で今は動かなくなったラジエーターを叩いたり、雪を溶かして飲料水にしている。破壊された家の瓦礫の中を歩いて、何か食べられるものを見つける人もいる〉 こうして包囲し、孤立させた街を、ロシア軍が無差別に爆撃しているのは周知の通りだ。 前出の産科病院に続き、16日には避難場所となっていた劇場が爆撃され、数百人が未だ生き埋めになっているといわれている。さらには19日、やはり避難場所となっていた美術学校が爆撃を受けた。 「このマリウポリに外国メディアで唯一入り、状況を伝えているのは、アメリカのAP通信です」 と述べるのは、さる全国紙の外信部デスク。 「英語で書かれたその記事によれば、爆撃によって殺された人々があまりに多過ぎて対応が間に合わず、死体は凍土に掘られた塹壕に投げ捨てられている、と。時に爆撃は毎分にも及び、作業する人も身を守るために無造作に投げ入れざるを得ないとか。葬儀を行うこともできず、当局は“死体は路上に放置しなさい”と指導しているそうです」』、「爆撃によって殺された人々があまりに多過ぎて対応が間に合わず、死体は凍土に掘られた塹壕に投げ捨てられている、と。時に爆撃は毎分にも及び、作業する人も身を守るために無造作に投げ入れざるを得ないとか。葬儀を行うこともできず、当局は“死体は路上に放置しなさい”と指導」、「爆撃によって殺された人々があまりに多過ぎ」、ここまで酷いとは気の毒という他ない。
・『新生児の死体も  塹壕に折り重なる遺体には、頭部を榴散弾で飛ばされた1歳半の乳児や、爆風で足を吹き飛ばされた16歳のサッカー青年のものなどもあるという。 「しかし、そうしたケースはまだましかもしれません。病院の地下には、引き取り手のない遺体が大人も子どもも一緒くたにされて並べられている。中には臍の緒が付いたままの新生児の死体もあるそうです」 当局が発表する死者の数は2500人だが、本当のところは定かではない。 思い起こされるのは、第2次世界大戦時、ドイツ軍に900日近くも取り囲まれ、破壊された「レニングラード包囲戦」。100万人が死に、その97%が餓死だったというナチスの非道に、今度はロシア自身が手を染めているのである』、「病院の地下には、引き取り手のない遺体が大人も子どもも一緒くたにされて並べられている」、「「レニングラード包囲戦」の「ナチスの非道に、今度はロシア自身が手を染めている」、その通りだ。
・『ロシア軍の死者は7千人  2月24日に始まった戦いから1カ月余り。隣国に攻め込んでいるはずのロシア軍は、逆に日に日に追い込まれている。 「アメリカの報道によれば、開戦以来、ロシア軍の死者は7千人に上っているといいます」 と解説するのは、元時事通信モスクワ支局長で、拓殖大学海外事情研究所の名越健郎教授である。 「これはアフガン戦争でアメリカ軍が失った兵士の数をはるかに超えている。米兵のアフガンでの戦いは20年間続きましたが、それを1カ月も経たないうちに軽く超えてしまったのです。プーチンにとってこれは大誤算でしょう」 被害は一般兵に留まらず、 「20名いたロシア軍将官のうち、既に5人が戦死しています(取材当時)。セキュリティーで保護されていない携帯を使っていたことでウクライナ側に盗聴され、ピンポイントでスナイパーに撃たれたようです。ここにもロシア軍の慢心が表れていますよね」(同) 停戦交渉も断続的に開かれてはいるが、双方の主張に隔たりが大きく、進展を見せていない。 こうした苦境を感じてか、 「3月中旬以降、ロシアの世論にも大きな変化が読み取れます」 と述べるのは、元産経新聞モスクワ支局長の佐々木正明・大和大学教授である』、「ロシア軍の死者は7千人」、「アフガン戦争でアメリカ軍が失った兵士の数をはるかに超えている。米兵のアフガンでの戦いは20年間続きましたが、それを1カ月も経たないうちに軽く超えてしまった」、「プーチンにとってこれは大誤算」、その通りだ。
・『カリスマ歌手が反戦歌を公開  流れを作ったのは、ロシア国営放送のスタッフ、マリーナ・オフシャンニコワ女史だ。14日、ニュース放映中にキャスターの後ろに映り込み、「NO WAR」と書いた紙を掲げた姿は世界中で流されたから、ご記憶の方も少なくないだろう。 これに続いて、16日には、世界的バレエ団「ボリショイ・バレエ」のプリマ、オルガ・スミルノワが侵攻に抗議して国を離れた。 17日には、人気女性歌手のゼムフィラが反戦歌を動画で公開。彼女もまたロシアを脱出している。 「とりわけゼムフィラは、日本で言えば、宇多田ヒカルや椎名林檎のような、30~40代に絶大な人気を誇るカリスマ的歌手です」 と佐々木教授が続ける。 「こうしたスターが声を上げたことで今後、さらに雪崩を打って反戦の動きが拡大する可能性があるのです」 女性や文化人だけでなく、副首相を務めたこともあるクレムリンの元高官や、複数のオリガルヒ(新興財閥)も続々と反戦を表明し始めている』、「スターが声を上げたことで今後、さらに雪崩を打って反戦の動きが拡大する可能性がある」、その割には大したことにはなってないようだ。
・『学校での洗脳教育 Zダンス  この状況に危機感を覚えたのか、対するプーチンも“世論工作”に躍起だ。 18日にプーチンは、モスクワのスタジアムで開かれた式典に出席した。暗殺を警戒し、潜伏生活を続けているともいわれてきた大統領が大勢の国民の前に姿を現したのは、開戦以来初。演説では改めて戦争の正当性を強調したが、 「この時も、公務員や国営企業などに大量の動員がかかったといわれています」 と佐々木教授。 「恐ろしいのは、彼が子どもたちまでを『親プーチン運動』に駆り出していること。今、ロシアの学校では子どもたちが、勝利を表す『Z』のマークが描かれたシャツを着てダンスを踊らされたり、『Z』の人文字を作らされたりと、半ば洗脳のような教育が進められている。これは国内で高まる自らへの批判を恐れている証左といえるでしょう」 同時に、反対派への“締め付け”も強化している。 政府は3月、国内でのFacebookやTwitter、3800万人もの利用者がいるとされるInstagramの接続を相次いで遮断した。SNSはロシア当局が隠したい「不都合な真実」に溢れている。そこから目をそらせるためであろう。 更にはこの3月に法改正を行い、軍に関する虚偽情報の拡散や、信用失墜に繋がる行為をした者に対し、罰金や自由剥奪の刑を科すことができるようにした。 佐々木教授が続けるには、 「合わせて、最近のプーチンは、欧米志向のある市民を、スパイを意味する『第五列』と呼び、“ロシア社会を浄化する”“反対派をあぶり出す”などと発言しています。これは、国内の反対派にレッテルを貼り、排除しようとするもので、完全に冷戦下のKGBの発想。まるでソ連時代のごとく国民をコントロール下に置こうとしているかのように見えます」』、「最近のプーチンは、欧米志向のある市民を、スパイを意味する『第五列』と呼び、“ロシア社会を浄化する”“反対派をあぶり出す”などと発言、さすがKGB出身だけある。
・『国際的地位の失墜  「焦燥の皇帝」はもはや末期症状を迎えた感もある。 今後、ロシアの国際的地位が失墜し、大国の地位から引きずり降ろされることは間違いありません」 と述べるのは、同志社大学の浅田正彦教授。 国際法の権威である浅田教授に、プーチンの犯した罪がいかに重いかを解説してもらうと、 「まず国連憲章違反です。国連憲章の柱である2条4項は『武力による威嚇』及び『行使』を禁止している。それに明確に違反したことになります」 これに対してプーチンは、ドネツク、ルガンスクの二つの「国」から要請があり、集団的自衛権を行使した、それは2条4項の例外である、と主張しているが、 「これは通りません。まず二つの州はロシア以外の国からは独立国として承認されておらず、国際社会から国家として認められているとはいえません。国家でないものからの要請は集団的自衛権行使のベースとはなりえません」 実際に行われた戦闘行為についても、ロシアは数々の罪を犯している。 「戦時国際法は、ジュネーヴ諸条約とそれに対する追加議定書により、さまざまなルールが定められています」 と浅田教授が続ける。 「ここに抵触しそうなロシアの行為を挙げれば、まずは文民に対する攻撃です。これは第1追加議定書で絶対的に禁止されていますが、各地でロシア軍は民間人への攻撃を続けています。また、住居・学校への攻撃や、病院への攻撃も、同様に違反している。原発への攻撃はもちろんのこと、原発敷地内の他の施設への攻撃も、原発近隣の施設は軍事目標であっても発電所からの危険な力の放出につながる場合には攻撃してはならないと定めているため、違反の恐れがありますね」』、「「戦時国際法は、ジュネーヴ諸条約とそれに対する追加議定書により、さまざまなルールが定められています」 と浅田教授が続ける。 「ここに抵触しそうなロシアの行為を挙げれば、まずは文民に対する攻撃です。これは第1追加議定書で絶対的に禁止されていますが、各地でロシア軍は民間人への攻撃を続けています。また、住居・学校への攻撃や、病院への攻撃も、同様に違反している。原発への攻撃はもちろんのこと、原発敷地内の他の施設への攻撃も、原発近隣の施設は軍事目標であっても発電所からの危険な力の放出につながる場合には攻撃してはならないと定めているため、違反の恐れ」、サボリージャ原発にはIEAの査察官が来ている間にも、攻撃があったようだ。
・『「プーチンを裁けない」は誤解  問題は、こうした「戦争犯罪人」プーチンを実際に裁くことができるのか、ということである。 責任の追及は、国家に対して行われるものと、個人に対して行われるものに分かれる。前者を扱うのは国際司法裁判所(ICJ)、後者を扱うのは国際刑事裁判所(ICC)だ。 既に両者で手続きが開始されているが、浅田教授がより実効性の高いものとして注目するのは後者である。報道では、「ロシアもウクライナもICCに加盟していないからプーチンを裁けない」と解説されることがあるが、 「正確ではありません。ウクライナは確かに締約国ではありませんが、7年前に無期限で戦争犯罪等について管轄を受け入れると宣言しているため、ICCは本件の手続きを開始することができるのです」 となればあとは、法廷にプーチンを引きずり出せるかどうか。彼に逮捕状が出た場合、どうなるのだろうか。 「その場合、プーチンがICCの締約国を訪れた際に、その国は彼を逮捕してICCに引き渡すことが締約国として義務付けられることになります。実際に逮捕することは、その国にとって、ロシアと決定的に敵対するというリスクを背負い込むことになりかねないだけに難しいかもしれませんが、逆に逮捕をしなければ、その国はICC規程に違反することになる」 つまり、仮にプーチンが来日することがあれば、日本政府は彼に手錠をかけてしまえばいいのである。まあ、岸田首相がそこまでの度胸の持ち主だとは到底思えないが……。 いずれにしても、 「プーチンは今後、123カ国にものぼるICC締約国に行くことは拘束の危険を孕むため、相当困難になる。国際社会での孤立が進むことは間違いありません」』、「「プーチンは今後、123カ国にものぼるICC締約国に行くことは拘束の危険を孕むため、相当困難になる。国際社会での孤立が進むことは間違いありません」、当然の報いだ。
・市民をこのまま押さえつけられるのか  国内外で孤立を深める現代の暴君。 前出・名越教授は、 「どれだけ孤立しても、プーチンが撤収、譲歩、妥協をすることはない」 と言う。 しかし、各国の経済制裁強化により、国民生活への打撃は強まる一方で、 「ここに来て、これまで世界の戦争で様子見をしていた永世中立国のスイスが重い腰を上げ、制裁に参加しましたが、これは大きい。スイスに資産をため込んでいる富豪も多いですから痛手となるでしょう。4月には国債もデフォルトするでしょうし、そうなれば打撃はさらに大きくなる」(同) 前出・佐々木教授も言う。 「プーチン体制が強固なことには違いありませんが、さりとてソ連崩壊後、まがりなりにも欧米流の自由と開かれた言論空間の風を30年も受けてきた市民を、このまま押さえつけることができるかどうか」 いかに最狂の独裁者といえども、歴史という時計の針を巻き戻すことは不可能だ』、「プーチン」は言論機関を抑えているのが強みだ。
・『プーチンを頂点とする“山分けシステム”  「ロシアの権力構造は、プーチンを頂点とする“山分けシステム”で成り立っているわけです」 とは、東京大学先端科学技術研究センターの小泉悠・専任講師。 「プーチンに忠誠を誓っていれば、石油や天然資源から上がる莫大な利益の分配を得られる。逆に言えば、プーチンはこの山分けの利益を与えることによって、何百人のエリートを鼓舞し、従わせてきたのです。しかし、今回の経済制裁を受け、このシステムが他ならぬプーチン自身の暴走によって、崩壊の危機に瀕している。今後、政権内部から“もう彼を担ぐメリットはない”という動きが出てくるかどうか。そしてその場合、プーチンがかつてのスターリンのように、そうした動きを徹底的に粛清するかどうか。いずれにせよ、プーチンがこのまま安穏と権力の座を維持していられないことは間違いありません」 その先にあるのはクーデターか暗殺か。 冒頭のAP通信によるマリウポリレポートに戻れば、砲撃を受けた女児を治療していた医師が、取材のカメラを見据えてこう怒鳴る場面がある。 「プーチンにこの子の目を、泣いている医者たちを見せてやれ!」 地獄を生み出した者は、いずれ地獄に堕ちる。プーチンの目に、この当たり前の道理は見えているだろうか』、「プーチン」にはガンで余命宣告を受けているとの噂もある。「地獄を生み出した者は、いずれ地獄に堕ちる。プーチンの目に、この当たり前の道理は見えているだろうか」、「余命宣告」が正しければ、「地獄に堕ちる」のも時間の問題なのかも知れない。

次に、4月21日付けエコノミストOnline「ウクライナの悲劇招いた「核の傘」喪失 米・NATOが出した“青信号”・・・悲劇の発端「ブダペスト覚書」、親米革命でロシアは侵略国に変貌、核威嚇で米・NATOを試したプーチン大統領」を紹介しよう。
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20220421/se1/00m/020/001000d
・『ウクライナの悲劇が深刻になっている。1991年の旧ソ連崩壊後、NATO(北大西洋条約機構)1色に塗りつぶされてきた東欧の政治地図を、プーチン大統領は力によって変更しようとしている。ロシア軍は首都キーウ攻略戦に敗れ、一転して、東部ドンバス地方のルハンスク、ドネツク2州や南東部マリウポリで総攻撃を開始した。何がこの悲劇を招いたのか。核兵器をめぐる動きを中心に歴史と背景をひもといてみよう』、「核兵器をめぐる動きを中心に歴史と背景」とは興味深そうだ。
・『悲劇の発端「ブダペスト覚書」  ウクライナの悲劇は1994年の「ブダペスト覚書」から始まった。91年のソ連崩壊と同時に独立を果たしウクライナは、自国の命運を左右する難題に直面した。領内に残された旧ソ連の核兵器約1900発の処理という難題である。ウクライナには二つの選択肢があった。一つは、この1900発の核兵器を接収、領有し、ウクライナが米ロに次ぐ第3の強大な核兵器保有国となることだった。二つ目は、それをすべてロシアに移送、返還して、非核保有国として独立国家ウクライナの安全と繁栄を探る道である。 米英仏ロ中の5大核保有国は、当然、ウクライナが核を持つことを拒否し、強烈な外交圧力をくわえた。ウクライナはやむなく2つ目の道を選択し、94年に、旧ソ連の核兵器をすべてロシアに移送するとともに、80年成立の「核拡散防止条約(NPR)」に加盟して、非核保有国となる道を選んだのである。 しかし、ウクライナには大きな不安材料があった。非核保有国となったウクライナに対して、ロシアが核攻撃の脅しや核攻撃をしかけてきたら、果たして5大核保有国のどの国が「核の傘」を提供して、ウクライナの安全を保証してくれるのか、という至極もっともな懸念である。 現在、NPR加盟国は191カ国。5大核保有国を除く非核保有の186カ国は、すべて、今でも、当時のウクライナとおなじ安全保障懸念をかかえている。核保有国のどれかが自国に核威嚇や核攻撃の牙を剥いたら、非核保有国は丸裸の無防備状態にあるからだ。 だから、非核保有国は、特権的な5大核保有国に、①非核保有国には核の脅しや核攻撃をしかけないという「消極的な安全の保証」、②特定の核保有国が核威嚇や、核攻撃の脅しのもとに侵略してきた場合、他の核保有国が非核保有国を防衛してくれるという「積極的な安全の保証」すなわち「核の傘」の、2つの安全の保証を迫ったのである。 だが、5大核保有国はこの要求に応じなかった。それでも78年の第1回国連軍縮特別総会で、それぞれ、核保有国との軍事同盟に加盟していない非核保有国は「核威嚇や核攻撃のターゲットにしない」という「消極的な安全の保証」を渋々言明した。けれども、一番大事な「積極的な安全の保証」(核の傘)の要求は、きっぱりと拒否して顧みることはなかった。 核兵器を持った5大国と非核保有186カ国の間に見られる、この力の落差。ウクライナは、核拡散防止条約体制下の冷酷な現実を熟知していた。けれども、ウクライナには、インド、パキスタン、イスラエルのように核拡散防止条約加盟を拒否して核武装に走ることも、北朝鮮のように一旦加盟後に脱退して核兵器保有にまい進することもなかった。 心細い「消極的な安全の保証」より、せめて、もう一段強力な「積極的な安全の保証」(核の傘)を、とウクライナが外交努力を重ねた成果が、94年12月15日に、ハンガリーの首都ブダペストで開かれた欧州安全保障協力機構(OSCE)会議で、領内の核兵器をロシア移送後に非核保有国となったウクライナ、ベラルーシ、カザフスタン3国と米英ロの核保有3国が署名した「ブダペスト覚書」(正式名称「ベラルーシ、カザフスタン、ウクライナの核拡散防止条約加盟に関連した安全保証上の覚書」)である。 「ブダペスト覚書」は、非核保有国となったベラルーシ、カザフスタン、ウクライナ3国にその代償として、米英ロの核保有3国が以下の3点の保証を約束していた。すなわち、①3国の独立・主権・既存国境の尊重(「力による現状変更の禁止」)、②3国に対する通常兵器・核兵器による脅威・武力行使を抑制(「消極的な安全の保証」)、③3国が特定の核保有国による侵略の犠牲者または核兵器使用の侵略脅威の対象となった場合、3国に支援を提供(「核の傘」提供と「積極的な安全の保証」)の3点である。 フランス、中国もまた、別々の書面で類似の約束をした。しかし、この「ブダペスト覚書」には、安全の保証国となった核保有3国に約束履行や軍事援助を義務づける「法的拘束力」の規定がなく、美辞麗句をならべただけの空文に終わる弱点があった』、「「ブダペスト覚書」には、安全の保証国となった核保有3国に約束履行や軍事援助を義務づける「法的拘束力」の規定がなく、美辞麗句をならべただけの空文に終わる弱点があった」、この「弱点」を突かれた形だ。それにしても、「核兵器」を「ロシア」に返還したのに、「核兵器」による「威嚇」を受ける立場になったとは気の毒だ。
・『親米革命でロシアは侵略国に変貌  それから約20年後の2014年、「ブダペスト覚書」が破られる大事件が突発した。安全の保証国ロシアが、突然、被保証国のウクライナに軍事侵略の牙を剥いたのだ。 ウクライナ東部2州に軍事介入したばかりか、ロシアは、ウクライナ領クリミア半島を占領し、自国に併合してしまったのである。その口実とされたのが、同年2月に勃発した「マイダン革命」だ。すなわち、親西欧の市民運動「ユーロマイダイン」が首都キーウの独立広場で起こした民衆蜂起で、親ロ派のヴィクトル・ヤヌコヴィッチ政権を打倒した政変である。 これを「米国扇動の革命による親米国家の出現である」と非難したロシアのプーチン大統領は、反ロの新国家ウクライナには「安全保証のいかなる義務も負っていない」と断言し、「ブダペスト覚書」違反やその白紙化、死文化を正当化したのである。 米英など他の保証国は、ロシアの行動は「「ブダペスト覚書」の義務違反だ、と非難したが、ウクライナに軍事援助を与え、ロシアの暴挙を阻止する具体的な行動はとらなかった。 安全の「保証国」から真逆の「侵略国」への変貌。ロシアの態度豹変のうらには、東欧諸国の怒涛のようなロシア離れやNATO加盟に対するプーチン大統領の焦燥感、不安感があったようである。 米ソ冷戦初期の1949年に12カ国の原加盟国からスタートしたNATOは、91年のソ連やその軍事同盟「ワルシャワ条約機構」の崩壊後に、ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、アルバニア、エストニア、リトアニア、ラトビアなどを次々と吸収して、30カ国のメンバーを抱える巨大な軍事同盟に膨張した。 プーチン大統領の期待に反して、ロシア盟主の「集団安全保障条約機構(CSTO)」にとどまったのは、ベラルーシ、アルメニア、カザフスタン、キリギリスタン、タジキスタン5カ国にすぎない。肝心の東欧諸国の政治地図は、ロシアに与したのがベラルーシ1国だけで、それ以外の国はすべてNATO加盟の1色に塗りつぶされてしまったのだ。つまり、NATOに加盟しその「核の傘」に入ってしまったのである。 しかし、NATO非加盟でその核の傘に入らない例外が1国だけあった。核使用の威嚇下のロシアの大規模な軍事侵略に対して丸裸、無防備状態におかれたウクライナである。91年の独立以来、親ロ派保守政権と親西欧革新政権が交互に政権交代をくりかえした不安的な政権運営のせいで、NATOの早期加盟の国論統一が不可能だったからである』、「NATO非加盟でその核の傘に入らない例外が1国だけあった。核使用の威嚇下のロシアの大規模な軍事侵略に対して丸裸、無防備状態におかれたウクライナである」、「不安的な政権運営のせいで、NATOの早期加盟の国論統一が不可能だったから」、全く不運という他ない。
・『核威嚇で米・NATOを試したプーチン大統領  「核を含む武力による現状変更」をいとわないプーチン大統領下のロシアにとって、丸裸、無防備状態のウクライナは、かっこうの攻撃ターゲットである。オレンジ革命(2004年)、マイダン革命(14年)など親西欧の草の根民主化運動による親ロ派ヤヌコヴィチ大統領の失脚・追放や、ポロシェンコ(14~19年)、ゼレンスキー(19年~)など相次ぐ親欧米派大統領の誕生を見たプーチン大統領は、これを、持論の「米国扇動による親ロ政権打倒やNATOの攻撃的・侵略的な東方拡大策動」の証左ととらえた。 プーチン大統領からみれば、NATOの核の傘の外にあるウクライナやその親欧米派政権は、ロシアの核威嚇下の大規模軍事侵攻によって簡単に掃討、転覆できるはずであった。まず、米国やNATOの反応を試すために、核威嚇のシグナルを送った。2月19日、ロシア軍は自慢の核戦力を総動員して、ロシアに対する核攻撃への迅速な反撃作戦の大々的な演習をバイデン米大統領に誇示してみせた。つぎに、2月27日、ショイグ国防相やゲラシモフ参謀総長を呼びつけ、じきじきに、テレビカメラの前で、「ロシア核抑止力を特別警戒態勢におけ」と下命した。 この核威嚇のシグナルに、バイデン大統領やストルテンベルグNATO事務総長は、「核保有の米軍とロシア軍の交戦は第3次核世界大戦の引き金になる恐れがあるから、米軍およびNATO軍はウクライナに直接軍事支援はしない」と何度も言明した。プーチン大統領からみれば、この言明は、ロシア軍のウクライナ全面侵攻作戦への青信号であった。 これで、ウクライナへの米軍、NATO軍の直接軍事支援はない、と確信したプーチン大統領は、2月24日から、首都キーウの北部戦線、オデーサの南部戦線、東部2州の東部戦線の3方面から、20万人のロシア軍をウクライナ領内に進撃させる侵略戦争を開始した。この電撃作戦によって短期間にキーウを占領し、ゼレンスキー大統領打倒、傀儡(かいらい)親ロ政権樹立をもって、ウクライナをロシア色1色に塗り変え、東欧地図のロシア色への塗り変え戦略の橋頭保にしようとしたのだ。 しかし、ウクライナ軍の想定外の抵抗という誤算があった。たしかに、NATO軍の直接武力支援はなかったが、ウクライナ軍の強靭な抵抗によって、主進撃路の北部戦線で多大な損失を被ったロシア軍は退却を余儀なくされ、サブ進撃路の東部、南部の両戦線に、明確な戦略目的のない転進を迫られている。しかも、この間、3戦線の進撃路上のウクライナ都市は、無差別ミサイル攻撃で廃墟と化し、多数の住民がロシア軍の戦争犯罪行為によって殺害されている。 「ブダペスト覚書」の白紙化からはじまったウクライナの悲劇は、いま、そのピークに達しようとしている。ウクライナの安全の「保証国」から「侵略国」にかわり、東欧地図の塗り変えという侵略の牙を剥いたロシアは、全世界の非難を浴びている。 おなじ「保証国」だった英米中仏は、ロシアの侵略を阻止する支援をあたえず、悲劇の深刻化、長期化を招いた責任の一端がある。ウクライナは、NATO加盟の国論の統一ができず、その核の傘に入らなかった結果、国土・都市の破壊や人命損失という過酷な代償を払っている。 ウクライナの悲劇を、いつ、だれが、どのように終わらせるのか。ロシア、米英仏中などの特権的核保有国、ウクライナ自身やそれを支援する世界中の国民の責任がいま問われているのである。(丸山浩行・国際問題評論家)』、「核威嚇のシグナルに、バイデン大統領やストルテンベルグNATO事務総長は、「核保有の米軍とロシア軍の交戦は第3次核世界大戦の引き金になる恐れがあるから、米軍およびNATO軍はウクライナに直接軍事支援はしない」と何度も言明した。プーチン大統領からみれば、この言明は、ロシア軍のウクライナ全面侵攻作戦への青信号であった」、「ウクライナへの米軍、NATO軍の直接軍事支援はない、と確信したプーチン大統領は、2月24日から、首都キーウの北部戦線、オデーサの南部戦線、東部2州の東部戦線の3方面から、20万人のロシア軍をウクライナ領内に進撃させる侵略戦争を開始」、「バイデン大統領やストルテンベルグNATO事務総長」は実に不味い「信号」を送ったものだ。

第三に、5月21日付けNewsweek日本版が掲載した元CIAオフィサーのグレン・カール氏による「ウクライナで苦戦するロシア軍、その失敗の本質」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/glenn/2022/05/post-81.php
・『<ヒトラーを蹴散らした歴史を誇るロシア軍がなぜ? 失敗の原因は軍事ドクトリンと経験にある> ウクライナではロシア軍が苦戦を続け、逆にウクライナ軍が見事な応戦を見せている。軍事専門家の目にも驚きの展開だ。 この流れは、侵攻開始当初から見られた。2月24日、ロシア軍はウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊の空港を急襲したが、明らかな戦術ミスによって失敗に終わった。ウクライナ軍は少なくとも輸送機1機を撃墜し、ロシアが誇る空挺部隊を退けた。 以来、ロシア軍は苦しんでいる。民間人の居住区域を空爆し、いくつかの都市を破壊したが制圧できた所は一つもない。侵攻開始から2カ月半が過ぎた今も、ロシア軍は大量の装甲車両と兵力を維持しているが、ウクライナ軍はロシア軍部隊の4分の1以上を「戦闘不能」の状態に追い込んでいる。 強力で非情に見えるのに、実は無能なロシア軍──。この特徴は今後も変わることがないだろう。 ウクライナでのロシア軍の戦いぶりは、その歴史と軍事ドクトリンを反映したものだ。第2次大戦時のスターリンの赤軍以来、ロシア軍は同じことを続けている。民間人を標的にし、相手国の戦闘員と民間人の人権を侵害する。大砲やロケット弾、装甲車、兵器と兵力を大量に投入する一方で、兵站(へいたん)を軽んじる。 民間人を標的にするのは戦争犯罪だ。ところがロシアの軍事ドクトリンは、民間人を戦争における正当な標的と見なしている。「自国の死傷者を減らすためなら、(相手国での)大規模な破壊や民間人の巻き添え死は許容される」と、ロシアの著名な軍事戦略家アレクセイ・アルバトフは2000年に書いた。そうした行為が国際社会から非難されても、ロシア政府は「無視」すべきだと、彼は付け加えている』、「ロシアの軍事ドクトリンは、民間人を戦争における正当な標的と見なしている。「自国の死傷者を減らすためなら、(相手国での)大規模な破壊や民間人の巻き添え死は許容される」と、ロシアの著名な軍事戦略家アレクセイ・アルバトフは2000年に書いた。そうした行為が国際社会から非難されても、ロシア政府は「無視」すべきだと、彼は付け加えている」、「戦争犯罪を堂々と侵す理由が理解できた。
・『残虐さは軍事ドクトリンから(軍事ドクトリンと実際の戦闘の内容は、軍の能力と経験に基づく部分が大きい。ロシア軍は1994年のチェチェン紛争で自軍に多くの死傷者を出し、膠着状態に陥って撤退した。だがウラジーミル・プーチンを大統領の座に押し上げた99年の第2次チェチェン紛争では、ロシアは訓練不足の歩兵に攻撃させる代わりに大砲を大量に配備してチェチェンの首都グロズヌイを破壊し、多数の民間人を殺害。2015年にも、ロシアはシリア内戦への軍事介入で同じ戦術を使い、成功を収めた。 ロシアの戦争のやり方は、ウクライナでも変わっていない。地面にロシア語で「子供たち」と書かれていた南東部マリウポリの劇場への空爆は残虐なものだったが、これも意図的であり、民間人を攻撃するロシア軍のドクトリンを示す例だ。 前線の兵士の独断と意図的な方針が合わさることにより、ロシア軍が組織的な人権侵害を行った記録もある。スターリンが、ドイツ軍に対抗して進軍する自国軍に略奪とレイプを許可していたというのがそれだ。ソ連兵がドイツ人女性を集団レイプしているという報告を受けると、「兵士のやりたいようにやらせろ」と指示した。 この流れは今も続いている。欧州人権裁判所は21年、ロシア軍が08年にジョージア(グルジア)に侵攻した際に民間人を「非人道的」に扱い、捕虜を拷問したと結論付けた。) いまロシア軍は、ウクライナで同じような行為を繰り返している。100万人ともされるウクライナ市民のロシアへの強制連行に、裁判なしの民間人の処刑。ロシア兵がウクライナ女性をレイプした事例も多数報告されている。プーチンは、ウクライナのブチャで戦争犯罪を働いたとされる部隊に名誉称号まで付与した。 ロシアの軍事戦略は、自国の広大な面積と脆弱な地理的条件に基づいている。およそ1000年にわたり東西から侵略を受けてきたロシアの歴代指導者は、中欧の脆弱な平原に位置する緩衝国を支配することで戦略的な安全保障を模索してきた。 ロシアの戦略家が安全保障と帝国の確立を求めてきた場所が、まさに現在のウクライナだ。プーチンは長年にわたってNATOに対し、ロシアにとってウクライナは自国存亡の問題だと警告してきた。ウクライナが親欧路線を強めるなか、「わが国には侵攻以外に選択肢がなかった」とも述べている。 ロシアの軍事文化は貴族社会で発展し、農民が多数死傷しても犯罪的とも言えるほど意に介さず、おびただしい数の兵士を送り込んで圧倒する戦術を特徴とした。自国兵士を軽視するボリシェビキの姿勢にも、類を見ない残忍さがあった。こうした以前からの傾向は、最近ウクライナで傍受されたロシア軍の無線通信にも表れ、「われわれは使い捨ての駒。平和な市民を殺している」と嘆く兵士の声が記録されている。 このような歴史から生まれたロシアの軍事ドクトリンは、いくつかの前提を基にしている。まずロシアは地理的な広さと脆弱性から、戦略的な奇襲に備えておかなければならない。ロシアは戦略的に唯一無二の国だが、西側は自分たちが提案する「軍事改革」(核兵器削減、軍備管理交渉、紛争削減措置など)を通じてわが国の弱体化をもくろんでいる。 さらにロシアの軍事・経済基盤は、敵対する可能性の高いアメリカやNATOより技術的に劣っている......。そのためロシア軍の計画立案者たちは先制攻撃、すなわち「エスカレーション・ドミナンス」に重点を置く。敵にとっての犠牲を増大させる用意があることを示しつつ、応戦すれば危険なことになり得ると思わせて優位に立とうという考え方だ。 ウクライナへの一方的な侵攻は、まさにこの戦略的先制攻撃だ。そしてプーチンが侵攻3日目にして核兵器使用をちらつかせたことも、優位に立って敵を無力化させようとするロシアの典型的なやり方だ。 ロシアの軍事ドクトリンは、先制と奇襲、大規模攻撃の威力による衝撃とスピードを重視してきた。ロシアの戦略担当者は、経済的・技術的に優位な立場にある西側諸国に対して主導権を握るために、短期の通常戦争に重点を置き、核戦争の脅威を利用して西側の優位性に対抗してきたのだ。この点でもウクライナ侵攻は、ロシアの戦略的ドクトリンに合致している』、「ロシアの戦略担当者は、経済的・技術的に優位な立場にある西側諸国に対して主導権を握るために、短期の通常戦争に重点を置き、核戦争の脅威を利用して西側の優位性に対抗してきたのだ。この点でもウクライナ侵攻は、ロシアの戦略的ドクトリンに合致」、なるほど。
・『兵站を軽視したツケは大きい  ロシアは将来の戦争においても、今回のウクライナ侵攻と同じアプローチを、そして同じ失敗を繰り返す可能性が高い。それはロシアが、第2次大戦時の米軍司令官オマー・ブラッドリーの「素人は戦略を語り、プロは兵站を語る」という言葉に耳を傾けてこなかったからだ。 ロシア軍の戦闘部隊は米軍部隊よりも保有している火器は多いが、支援車両や補給車両はずっと少ない。その結果、ロシア軍は何度も燃料切れに陥り、より機敏に動けるウクライナ軍の餌食になってきた。 ロシア軍には通信のトラブルが少なくなかった。軍の装備は長年にわたり修理が行き届かないままの状態で、戦場に配備されている。無線は機能せず、兵士たちが装備の使い方について十分な訓練を受けていないケースも多い。) さらに大隊や連隊レベルに有能な将校が不足しており、部隊間の連携やリーダーシップがうまく機能していない。そのため、将校たちが前線に出ざるを得なくなった。結果として、侵攻当初に前線に就いたロシア軍将校20人のうち、実に12人がウクライナ軍に殺害されている。 しかしトラックや整備士を増やすだけでは、ロシア側は問題を解決できない。 兵站業務には、従軍期間がわずか1年という、訓練不足で士気も低い徴用兵が割り当てられることが珍しくない。腐敗も兵站能力を弱体化させている。横行する腐敗によって軍予算の20~40%が不正流用され、そのために質の低い、あるいは不十分な数の装備しか購入できない事態が慢性化している。 米国防総省によれば、いまロシアは地上戦闘部隊の約75%をウクライナに投入している。侵攻からの2カ月余りで、このうち4分の1の部隊が戦闘不能な状態に陥り、その過半数が精鋭部隊だった。戦闘用の装備も少なくとも25%が破壊され、これらを元のレベルに立て直すには何年もかかるだろう』、「横行する腐敗によって軍予算の20~40%が不正流用され、そのために質の低い、あるいは不十分な数の装備しか購入できない事態が慢性化」、「いまロシアは地上戦闘部隊の約75%をウクライナに投入している。侵攻からの2カ月余りで、このうち4分の1の部隊が戦闘不能な状態に陥り、その過半数が精鋭部隊だった。戦闘用の装備も少なくとも25%が破壊され、これらを元のレベルに立て直すには何年もかかるだろう」、大損害だ。
・『活かされなかったアフガン侵攻の教訓  歴史は未来を見通す窓である。10年に及んだ旧ソ連のアフガニスタン侵攻はソ連の荒廃を招いたが、それでも指導部や軍の専門家は、アナリストが指摘したいくつもの誤りを一切修正しなかった。例えば、いくつかのポイントは次のように修正されるべきだった。 「現地の協力勢力を、ロシア流に当てはめて組織し直そうとするな」 「彼らがわれわれの大義のために進んで戦おうとしなければ、われわれは敗れる」 さらにここに、「アメリカによる敵対勢力への武器供与の意思を過小評価してはならない」という新たなポイントを加えたい。 ロシア軍は将来の紛争でも圧倒的に優位に立つことを狙うだろう。指導部は即座に全面戦争の脅しをかけ、また核兵器を使って敵を守勢に立たせようとする。軍は兵站の大幅な不足に苦しみ、それが軍全体の動きを減速させるかストップさせる。指揮権は上層部に集中し、連隊以下には回ってこない。それでもロシア軍は、とてつもない数の火器を保有し、それを使用し続ける。 多くの兵士が訓練不足のまま戦場に送られ、戦争犯罪や人権侵害を働くだろう。20年にロシアで発表された報告書は「兵士たちの専門的な訓練のレベルが低下し続けている」と指摘。国内のアナリストも、兵士たちには効果的に機能するための士気が欠けていると警告してきた。 ロシア軍の残虐性も、将来の紛争に受け継がれる可能性が高い。徴用兵の間には長年、「デダフシチーナ」という残虐なしごきの伝統がある。上官が若い兵士を殴ったり、あるいはレイプしたりするのだ。 今後10年、あるいはそれ以上にわたり、ロシア軍の低迷は続くだろう。それでも、プーチンの帝国主義的な野望は消え去らないが』、「多くの兵士が訓練不足のまま戦場に送られ、戦争犯罪や人権侵害を働くだろう。20年にロシアで発表された報告書は「兵士たちの専門的な訓練のレベルが低下し続けている」と指摘。国内のアナリストも、兵士たちには効果的に機能するための士気が欠けていると警告してきた」、「徴用兵の間には長年、「デダフシチーナ」という残虐なしごきの伝統がある。上官が若い兵士を殴ったり、あるいはレイプしたりするのだ」、自衛隊員による女性自衛官に対するセクハラには驚かされたが、「ロシア軍」は遥かに酷いようだ。

第四に、本年2月2日付け現代ビジネスが掲載した笹川平和財団主任研究員の畔蒜 泰助氏による「ロシアは到底勝てるとは思えない、米欧が考えるこの戦争の落とし所はこの辺り ウクライナ戦争の先にある泥沼世界・前編」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/105424?imp=0
・『すべての領土奪還まで支援を続けるかは分からない  昨年2022年2月24日にロシアのウクライナ侵攻が始まってから、そろそろ1年が経とうとしている。現時点で全くの膠着状態で先が見えないが、この戦争の決着、そしてその後の世界の様相はどうなっていくのか、探ってみたい。 ます侵攻当初、ロシア側は早期にキエフを陥落させるという計画だったが、それは失敗した。実はその直後、すぐ停戦交渉が始まっている。まずベラルーシのミンスクで、そしてトルコのイスタンブールで。2月末から3月末にかけて行われた。 「ウクライナのNATOからの中立化、ロシアを含む国連安保理常任理事国+アルファの国々によるウクライナへの安全保障の供与、ただしそのギャランティはドンバス地域とクリミアには及ばない、その代わりにロシアは2月24日以前の線に退く」。恐らく、その線で一旦、暫定的な合意に近づいたのではないかという観測がある。ただこれはブチャでのロシア軍による一般住民虐殺が発覚したしたことがあり、吹っ飛んでしまった。 ロシアが、特にプーチンが、本当にどこまで、この時の条件を守るつもりがあったのかは疑問だ。あの時期、まだそれほどロシアは負けているという感じではなかった。これ以降、ロシアは撤退したキエフ攻略部隊などで、東部と南部を増強し、占領地域を拡大する方針に舵を切った。 アメリカのバイデン政権は6月1日にウクライナから求められていた自走多連装ロケット砲システムHIMARSを含む7億米ドルの武器支援パッケージを正式に発表しているが、それに先立つ5月30日、バイデン大統領自身が射程70キロのミサイルは与えるが、ロシア領内への攻撃が可能な300キロの長射程ものは含めないと明言している。 問題はその翌日5月31日に、同大統領がニューヨークタイムズに発表したオプエドだ。この中に「米国の目標は明確だ。我々は更なる侵略を抑止し、自らを防衛できる手段を有する民主的で独立した主権を有する繁栄したウクライナを見たいのだ」との記述がある。ここで注目すべきは、「主権(sovereign)」という言葉はあるが通常必ずこれとセットで使用される「領土の一体性(territorial integrity)が入っていないことだ。 このオプエドは、事実上の外交文書に近い意味を持つ。もし方針として存在するなら、そこに一番重要な言葉を入れないということはあり得ない。 ただし、その後に「この危機を通じた私の原則は“ウクライナの関与なしにウクライナについて何も決めない”というものだ。私は私的にも公的にもウクライナ政府に対して何らかの領土的譲歩をするように圧力を掛けることはしない」とも述べている。 何れにせよ、長射程のミサイルを送らないという、ある種のエスカレーション管理を含めた対ウクライナ方針とセットとなって、その意味するところは、ウクライナがすべての領土を取り戻すまで、ずっと支援するかは分からない、という、ニュアンスをそこに込めたことにある』、「バイデン大統領」の「オプエド」では、ウクライナがすべての領土を取り戻すまで、ずっと支援するかは分からない、という、ニュアンスをそこに込めた」、本当だろうか、初めて知った。
・『あきらめないプーチン、小出しにする西側  この時期、ロシア有利の状況が続くのではという恐れもあった。ただ、この後、アメリカが供与を始めたミサイルや重砲などの兵器が効果を表してきており、ロシアの東部での攻勢などを食い止めていた。そして9月に入って、ロシア側が南部のヘルソン方面を気にして、精鋭部隊をドニエプル川西岸に集めていたところ、ウクライナが東部のハリコフ方面で攻勢をかけ、イジゥーム、リマンなどの拠点を始め、ハリコフ州全域を取り返す事に成功した。 この事態を受け、ロシア側は侵攻当初、否定的だった動員を決断し、9月21日、プーチン大統領が30万人の部分動員を発表。続いて30日に、ドネツク州、ルガンスク州、ザポリージャ州、ヘルソン州の4州の併合を発表し、さらに核の使用を示唆した。こうして態勢を立て直そうとしたが、兵力が整うまでタイムラグがあるのであまりうまくいかず、結局、ヘルソン方面も西岸から撤退することになった。 そして11月には、アメリカのミリー統合参謀本部議長が、「ウクライナはそろそろ確保した奪還地域を交渉で確定させるべきなのではないか、停戦を真剣に考えるべきなのではないか」という発言を行っている。 ただこれに対してはバイデン政権内で異論があった。そもそもプーチンに全くそのつもりがない。プーチンが口にしている停戦というのは、あくまでも4州の併合をウクライナが認めるということを前提にした停戦である、という見方だった。 この前後まで、ヨーロッパでも、フランスのマクロンが停戦に言及するといった動きがあった。だが11月末、マクロンはワシントンに行ってバイデンと会談している。それと同時にドイツのショルツ首相がプーチンに電話している。 その結果、ヨーロッパの中でロシアとの対話が必要といっていた独仏とアメリカの間で、「今はまだロシアに圧力をかけ続ける時期だ」と、アセスメントを近づけていった。このことが年末に歩兵戦闘車を米独仏が同時出すという決定に、さらには1月末に戦車を供与するという動きに繋がっていったと考えられる。 ロシアは部分動員した30万人のうち、すぐに戦場に投入した約8万人以外の人員の訓練を続けており、それが春以降、戦場に投入され、再び大攻勢をかけてくる可能性が高いと、ウクライナも米欧も見ている。逆に言えば、それまでの期間がウクライナにとってのチャンスとなる。 しかし、短い期間のウインドウである。地面が凍結して車両の移動が可能になってから、その凍結が溶け春の泥濘が始まるまでのわずかな期間ならウクライナは優勢なうちに攻勢に出られる。そこで、どれだけ失われた領土を取り返せるのかが、1つの勝負だというのが、ウクライナや西側が見ている局面なのではないかとおもう。 一方、1月にアメリカのバーンズCIA長官がウクライナにベラルーシからのロシアによるキエフ侵攻が再びあるかも知れないという警告を伝えたという報道があった。実際に行うかどうかはわからない。そう見せかけて、ウクライナに東部、南部での攻勢を控えさせるためかも知れない。 しかし、今の段階でいえることは、プーチンは全くあきらめていないということだ。そうでなければ、再動員をする、軍を150万人体制にする、と発言したりはしない。ソ連並みの軍事国家への回帰だ。彼からすると、ウクライナ戦争はネオナチとの戦いなので、現代の大祖国戦争のイメージなのだろう』、「ロシアは部分動員した30万人のうち、すぐに戦場に投入した約8万人以外の人員の訓練を続けており、それが春以降、戦場に投入され、再び大攻勢をかけてくる可能性が高いと、ウクライナも米欧も見ている。逆に言えば、それまでの期間がウクライナにとってのチャンスとなる。 しかし、短い期間のウインドウである。地面が凍結して車両の移動が可能になってから、その凍結が溶け春の泥濘が始まるまでのわずかな期間ならウクライナは優勢なうちに攻勢に出られる。そこで、どれだけ失われた領土を取り返せるのかが、1つの勝負だというのが、ウクライナや西側が見ている局面なのではないかとおもう」、短い「チャンス」を「ウクライナ側」が活かせるのか注目点だ。
・『クリミアには慎重姿勢  1年前の侵攻開始の段階では、今よりも兵力も装備も充実していた。準備も出来ていた。しかし、南部ではかなり侵攻したが、全体としては、計画は挫折し、兵力も大きく失った。結局、西側の軍備体系に質的に勝てないのではないか、それでもなぜあきらめないのか、という見方も確かにあるかも知れない。 ただし、西側が直接、ロシアと戦うわけではない。どこまでも武器を供与するだけ。しかもやはり限定的だ。最終的にはドイツのレオパルド2、アメリカのM1エイブラハムズの供与が決定されたが、それでも、特にドイツは、長い期間、戦車供与に否定的な態度をとり続けていた。 ドイツは今回、ゴーサインを出したが、ウクライナ側が求める300両までどこまで近づけることが出来るか不明だし、しかも時期はかなり後になる。やはりなんだかんだいっても、ウクライナ軍が西側の援助でロシア軍を圧倒して、ウクライナ領から追い出すというのは簡単ではない。 そこで最近、議論されているのは、はやりアメリカの目指すゴールというのは、ウクライナの完全な勝利ではなく、ロシアを追い詰めて、交渉の場に(引き出すこと)引き出す事ではないかということだ。 12月の頭にアメリカのブリンケン国務長官がWSJのフォーラムに出席した際、モデレーターに「エスカレーションのリスクを第一の考えているのか?」と質問され、「アメリカのフォーカスは2月24日の前までに戻すことだ」と答えている。 アメリカも今のところクリミアからロシア軍を追い出す、つまり2014年以前の状態に戻すということが実行可能かといえば、そうは思っていないということだ。それでも、最近では2月24日の前の状況に戻した上で、ロシアがそれに妥協するように、追い込む必要があると考えているようだ。今アメリカが目指しているのはそこだと思う。 だから最近、議論に出ているのが、クリミアへの攻撃を容認するのかしないのかだ。具体的には、ロシアが侵攻当初、まずザポロージャ州を抑えたが、それはロシアにとって、クリミアへの陸の回廊だったからだが、この方面に攻め込むための援助をウクライナに供与すべきかどうかということだ。そのための歩兵戦闘車であり、戦車である。 長射程のミサイルについては、まだそこまでは行かないだろう。それでもザポリージャ州を奪い返し、海岸線まで進出すれば、今持っているミサイルでもクリミアまで届くことになる。 そこまでロシアを追い込めるのかどうか。そこまでいって、改めてロシア側が交渉に乗るつもりにさせることが出来るのか』、「最近では2月24日の前の状況に戻した上で、ロシアがそれに妥協するように、追い込む必要があると考えているようだ。今アメリカが目指しているのはそこだと思う」、なるほど。
・『大した影響のないバフムト戦線  現在、ロシア側は盛んに「交渉、交渉」と叫んでいるが、あれは全くやる気が無いものだ。「西側がウクライナに対して圧力をかけてくれ、我々は今の線だったら呑むぞ」といっているのだ。もちろん西側はそんな話にも圧力に応じる気持ちはない。 さらにいえば、今、ロシアは、ドネツクのバクムット周辺で延々と大攻勢をかけて、優位に立っていると宣伝しているが、戦略的には余り大きな意味を持たないだろう。 戦闘をやっているのは民間軍事会社のワグネルで、囚人兵を大量に犠牲にして攻撃を続け、ロシアの政権や国内向けに自分たちのアピールをしているもので、ハリコフのイジュームから攻勢をかけられるのであれば、ウクライナ軍を包囲できたかも知れないが、ハリコフ州をウクライナが奪い返した今、バクムットを占領しても大勢に大きな影響を与えない。 実はロシアの正規軍はあんなところを占領しても何の意味も無い事はわかっている。だからワグネルに勝手にやらせている。ワグネルからすれば、正規軍と競争関係にあるので存在感のアピールである。 確かに今、わずかでも成果を上げているのはワグネルだけだ。しかし、プーチンはそれを見てどうしたかというと、そのワグネルやチェチェンのカディロフが後押しして総司令官に立てたスロビキンを降格して、彼らが散々批判してきたゲラシモフ参謀総長を総司令官にした。つまりプーチンは依然として正規軍をメインに考えていることになる。だからといってワグネル代表のプリゴジンを完全にパージすると言うことはないと思うが。 東部の戦いで本当の重要なのは、東部戦線におけるロシア軍の補給路のスバトベ-クレミンナの線の帰趨だ。ウクライナ軍はジワジワと前進しているが、なかなか一気に奪うということは難しく、膠着状態に陥っている』、「プーチンはそれを見てどうしたかというと、そのワグネルやチェチェンのカディロフが後押しして総司令官に立てたスロビキンを降格して、彼らが散々批判してきたゲラシモフ参謀総長を総司令官にした。つまりプーチンは依然として正規軍をメインに考えていることになる」、「正規軍」と「ワグネル」の対抗意識は当然ながら高いようだが、「プーチンは依然として正規軍をメインに考えている」、「プーチン」はやはり保守的なようだ。
・『双方があきらめるまで消耗戦  ロシアもウクライナも、それぞれ思い描いている成功を手にするにはほど遠く、この膠着状態の末、妥協せざるを得ない均衡点に達することを、西側は狙っていることになる。 ただ、今はそのタイミングではない。お互い主張している事があまりにもかけ離れている。結局、ウクライナの冬季攻勢、そして、春から夏に兵力を補充したロシアの攻勢があって、その先に、どういう状況が訪れるかということだろう。 西側の援助は、決定的な優位性をウクライナに付与するのではなく、優位性を保ったまま、状況を推移するのを見るという範囲に今でもある。そこには、どこかにエスカレーションリスクへの配慮が見られる。 これまでの経緯から考えると、お互いに目標を完全に達成しきれず、ただ体力だけが削られていく事になりかねないだろう。具体的な停戦の動きが出てくるのは、更にその先ということになる。 ウクライナでの戦闘が終息するまで、まだ相当な道程がある。その過程で、両国が消耗するだけでなく、世界に対する影響も深刻なものになる。ウクライナ戦争後の世界がどのような様相になるのか。大国とはいえないほど衰亡するであろうロシアの立ち回りによって引き起こされる世界の対立構図を【後編・衰退しかないロシアが最後にすがる、「西」vs「南」の世界対立構図はこれだ】で解説する』、「ウクライナの冬季攻勢、そして、春から夏に兵力を補充したロシアの攻勢があって、その先に、どういう状況が訪れるかということだろう。 西側の援助は、決定的な優位性をウクライナに付与するのではなく、優位性を保ったまま、状況を推移するのを見るという範囲に今でもある。そこには、どこかにエスカレーションリスクへの配慮が見られる。 これまでの経緯から考えると、お互いに目標を完全に達成しきれず、ただ体力だけが削られていく事になりかねないだろう。具体的な停戦の動きが出てくるのは、更にその先ということになる」、その通りだろう。もう既に長くなったので、「【後編・衰退しかないロシアが最後にすがる、「西」vs「南」の世界対立構図はこれだ】」の紹介は省略する。
タグ:ウクライナ (その4)(「子ども」「妊婦」「新生児」を虐殺するロシア軍 「まるで『地獄の黙示録』」マリウポリ住民の証言、ウクライナの悲劇招いた「核の傘」喪失 米・NATOが出した“青信号”・・・悲劇の発端「ブダペスト覚書」 親米革命でロシアは侵略国に変貌、核威嚇で米・NATOを試したプーチン大統領、ウクライナで苦戦するロシア軍 その失敗の本質、ロシアは到底勝てるとは思えない、米欧が考えるこの戦争の落とし所はこの辺り ウクライナ戦争の先にある泥沼世界・前編) デイリー新潮「「子ども」「妊婦」「新生児」を虐殺するロシア軍 「まるで『地獄の黙示録』」マリウポリ住民の証言」 「多くの観光客を魅了するにぎやかな港町が、今では映画『地獄の黙示録』のシーンにそっくりだ」、悲惨さが伝わってくる。 「爆撃によって殺された人々があまりに多過ぎて対応が間に合わず、死体は凍土に掘られた塹壕に投げ捨てられている、と。時に爆撃は毎分にも及び、作業する人も身を守るために無造作に投げ入れざるを得ないとか。葬儀を行うこともできず、当局は“死体は路上に放置しなさい”と指導」、「爆撃によって殺された人々があまりに多過ぎ」、ここまで酷いとは気の毒という他ない。 「病院の地下には、引き取り手のない遺体が大人も子どもも一緒くたにされて並べられている」、「「レニングラード包囲戦」の「ナチスの非道に、今度はロシア自身が手を染めている」、その通りだ。 「ロシア軍の死者は7千人」、「アフガン戦争でアメリカ軍が失った兵士の数をはるかに超えている。米兵のアフガンでの戦いは20年間続きましたが、それを1カ月も経たないうちに軽く超えてしまった」、「プーチンにとってこれは大誤算」、その通りだ。 「スターが声を上げたことで今後、さらに雪崩を打って反戦の動きが拡大する可能性がある」、その割には大したことにはなってないようだ。 「最近のプーチンは、欧米志向のある市民を、スパイを意味する『第五列』と呼び、“ロシア社会を浄化する”“反対派をあぶり出す”などと発言、さすがKGB出身だけある。 「「戦時国際法は、ジュネーヴ諸条約とそれに対する追加議定書により、さまざまなルールが定められています」 と浅田教授が続ける。 「ここに抵触しそうなロシアの行為を挙げれば、まずは文民に対する攻撃です。これは第1追加議定書で絶対的に禁止されていますが、各地でロシア軍は民間人への攻撃を続けています。 また、住居・学校への攻撃や、病院への攻撃も、同様に違反している。原発への攻撃はもちろんのこと、原発敷地内の他の施設への攻撃も、原発近隣の施設は軍事目標であっても発電所からの危険な力の放出につながる場合には攻撃してはならないと定めているため、違反の恐れ」、サボリージャ原発にはIEAの査察官が来ている間にも、攻撃があったようだ。 「「プーチンは今後、123カ国にものぼるICC締約国に行くことは拘束の危険を孕むため、相当困難になる。国際社会での孤立が進むことは間違いありません」、当然の報いだ。 「プーチン」は言論機関を抑えているのが強みだ。 「プーチン」にはガンで余命宣告を受けているとの噂もある。「地獄を生み出した者は、いずれ地獄に堕ちる。プーチンの目に、この当たり前の道理は見えているだろうか」、「余命宣告」が正しければ、「地獄に堕ちる」のも時間の問題なのかも知れない。 エコノミストOnline「ウクライナの悲劇招いた「核の傘」喪失 米・NATOが出した“青信号”・・・悲劇の発端「ブダペスト覚書」、親米革命でロシアは侵略国に変貌、核威嚇で米・NATOを試したプーチン大統領」 「核兵器をめぐる動きを中心に歴史と背景」とは興味深そうだ。 「「ブダペスト覚書」には、安全の保証国となった核保有3国に約束履行や軍事援助を義務づける「法的拘束力」の規定がなく、美辞麗句をならべただけの空文に終わる弱点があった」、この「弱点」を突かれた形だ。それにしても、「核兵器」を「ロシア」に返還したのに、「核兵器」による「威嚇」を受ける立場になったとは気の毒だ。 「NATO非加盟でその核の傘に入らない例外が1国だけあった。核使用の威嚇下のロシアの大規模な軍事侵略に対して丸裸、無防備状態におかれたウクライナである」、「不安的な政権運営のせいで、NATOの早期加盟の国論統一が不可能だったから」、全く不運という他ない。 「核威嚇のシグナルに、バイデン大統領やストルテンベルグNATO事務総長は、「核保有の米軍とロシア軍の交戦は第3次核世界大戦の引き金になる恐れがあるから、米軍およびNATO軍はウクライナに直接軍事支援はしない」と何度も言明した。プーチン大統領からみれば、この言明は、ロシア軍のウクライナ全面侵攻作戦への青信号であった」、 「ウクライナへの米軍、NATO軍の直接軍事支援はない、と確信したプーチン大統領は、2月24日から、首都キーウの北部戦線、オデーサの南部戦線、東部2州の東部戦線の3方面から、20万人のロシア軍をウクライナ領内に進撃させる侵略戦争を開始」、「バイデン大統領やストルテンベルグNATO事務総長」は実に不味い「信号」を送ったものだ。 Newsweek日本版 グレン・カール氏による「ウクライナで苦戦するロシア軍、その失敗の本質」 「戦争犯罪を堂々と侵す理由が理解できた。 「ロシアの戦略担当者は、経済的・技術的に優位な立場にある西側諸国に対して主導権を握るために、短期の通常戦争に重点を置き、核戦争の脅威を利用して西側の優位性に対抗してきたのだ。この点でもウクライナ侵攻は、ロシアの戦略的ドクトリンに合致」、なるほど。 「横行する腐敗によって軍予算の20~40%が不正流用され、そのために質の低い、あるいは不十分な数の装備しか購入できない事態が慢性化」、「いまロシアは地上戦闘部隊の約75%をウクライナに投入している。侵攻からの2カ月余りで、このうち4分の1の部隊が戦闘不能な状態に陥り、その過半数が精鋭部隊だった。戦闘用の装備も少なくとも25%が破壊され、これらを元のレベルに立て直すには何年もかかるだろう」、大損害だ。 「多くの兵士が訓練不足のまま戦場に送られ、戦争犯罪や人権侵害を働くだろう。20年にロシアで発表された報告書は「兵士たちの専門的な訓練のレベルが低下し続けている」と指摘。国内のアナリストも、兵士たちには効果的に機能するための士気が欠けていると警告してきた」、「徴用兵の間には長年、「デダフシチーナ」という残虐なしごきの伝統がある。上官が若い兵士を殴ったり、あるいはレイプしたりするのだ」、自衛隊員による女性自衛官に対するセクハラには驚かされたが、「ロシア軍」は遥かに酷いようだ。 現代ビジネス 畔蒜 泰助氏による「ロシアは到底勝てるとは思えない、米欧が考えるこの戦争の落とし所はこの辺り ウクライナ戦争の先にある泥沼世界・前編」 「バイデン大統領」の「オプエド」では、ウクライナがすべての領土を取り戻すまで、ずっと支援するかは分からない、という、ニュアンスをそこに込めた」、本当だろうか、初めて知った。 「ロシアは部分動員した30万人のうち、すぐに戦場に投入した約8万人以外の人員の訓練を続けており、それが春以降、戦場に投入され、再び大攻勢をかけてくる可能性が高いと、ウクライナも米欧も見ている。逆に言えば、それまでの期間がウクライナにとってのチャンスとなる。 しかし、短い期間のウインドウである。地面が凍結して車両の移動が可能になってから、その凍結が溶け春の泥濘が始まるまでのわずかな期間ならウクライナは優勢なうちに攻勢に出られる。そこで、どれだけ失われた領土を取り返せるのかが、1つの勝負だというのが、ウクライナや西側が見ている局面なのではないかとおもう」、短い「チャンス」を「ウクライナ側」が活かせるのか注目点だ。 「最近では2月24日の前の状況に戻した上で、ロシアがそれに妥協するように、追い込む必要があると考えているようだ。今アメリカが目指しているのはそこだと思う」、なるほど。 「プーチンはそれを見てどうしたかというと、そのワグネルやチェチェンのカディロフが後押しして総司令官に立てたスロビキンを降格して、彼らが散々批判してきたゲラシモフ参謀総長を総司令官にした。つまりプーチンは依然として正規軍をメインに考えていることになる」、「正規軍」と「ワグネル」の対抗意識は当然ながら高いようだが、「プーチンは依然として正規軍をメインに考えている」、「プーチン」はやはり保守的なようだ。 「ウクライナの冬季攻勢、そして、春から夏に兵力を補充したロシアの攻勢があって、その先に、どういう状況が訪れるかということだろう。 西側の援助は、決定的な優位性をウクライナに付与するのではなく、優位性を保ったまま、状況を推移するのを見るという範囲に今でもある。そこには、どこかにエスカレーションリスクへの配慮が見られる。 これまでの経緯から考えると、お互いに目標を完全に達成しきれず、ただ体力だけが削られていく事になりかねないだろう。具体的な停戦の動きが出てくるのは、更にその先ということになる」、 その通りだろう。もう既に長くなったので、「【後編・衰退しかないロシアが最後にすがる、「西」vs「南」の世界対立構図はこれだ】」の紹介は省略する。
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今日はウクライナ問題を取上げるつもりだったが、想像以上に根深いので、明日に延期したい。

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