インド(その2)(グローバルサウスの盟主を目指すインドの危うさ モディ首相の触れられたくない過去も問題視、悪名高き「お役所仕事」が最大障壁…!インドが「人口世界一」になっても「世界経済を引っ張る“次の中国”」になる日は来ない「残念なワケ」、「第2の中国」になるのは難しいのか?…インドの「経済成長」を阻む「政情不安」と「ナショナリズム」の不穏な関係) [世界情勢]
インドについては、2021年8月13日に取上げた。今日は、(その2)(グローバルサウスの盟主を目指すインドの危うさ モディ首相の触れられたくない過去も問題視、悪名高き「お役所仕事」が最大障壁…!インドが「人口世界一」になっても「世界経済を引っ張る“次の中国”」になる日は来ない「残念なワケ」、「第2の中国」になるのは難しいのか?…インドの「経済成長」を阻む「政情不安」と「ナショナリズム」の不穏な関係)である。
先ずは、本年4月11日付けデイリー新潮が掲載した経済産業研究所コンサルティングフェローの藤和彦氏による「グローバルサウスの盟主を目指すインドの危うさ モディ首相の触れられたくない過去も問題視」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/04110602/?all=1
・『「中国という全体主義国家は、多方面からの戦略を用いて米国を追い落とし、世界に君臨する超大国になろうとしている」 インド陸軍のパンデ参謀長は3月27日、米誌ニューズウィークのインタビューでこのように述べた。近年のインドの高官としては最も過激な中国批判の1つだ。 パンデ氏は中印国境の最前線で指揮をとるインド軍の最高幹部だ。 インドと 中国が軍事衝突したのは、1962年。両国の間の全長約3400キロメートルに及ぶ実効支配線の一部をめぐっての争いだった。その後、小康状態が続いていたが、2020年6月に、半世紀近くなかった死者を出す衝突が発生し、昨年12月にはインド軍が米国情報機関の支援を得て実効支配線の西側から侵入した中国軍を撃退したとされている。 パンデ氏は「北部国境沿いの軍の配備を見直し、高次の準備態勢を維持している」と自信を示しているが、中国との対立は長期にわたって続くことが懸念されている。 中国との国境紛争を重く見たインド政府は3月中旬、銀行や貿易業者に対して、ロシアからの輸入代金支払いに中国の人民元を使わないように働きかけている(3月13日付ロイター)。 これは、インドがロシア産の原油や石炭の最大の買い手になったことが関係している。 ウクライナ戦争の影響でロシアでは、米ドルに代わり人民元が最も取り引きされている外貨となっている。中国は3月末、アラブ首長国連邦(UAE)産の液化天然ガス(LNG)を人民元建てで購入する契約を成立させた。 エネルギー取引の分野で人民元のプレゼンスが高まっているのにもかかわらず、「インド準備銀行(中央銀行)は人民元による貿易決済に乗り気ではない」とインドの銀行関係者は語り、「政府が人民元の利用を妨げている」と嘆いている。 インド政府はさらに4月から自国通貨ルピー建ての貿易を促進する方針を明らかにしており、マレーシアやミャンマーとの貿易をルピーで決済することを発表している』、「中国との国境紛争を重く見たインド政府は3月中旬、銀行や貿易業者に対して、ロシアからの輸入代金支払いに中国の人民元を使わないように働きかけている」、「インド政府はさらに4月から自国通貨ルピー建ての貿易を促進する方針を明らかにしており、マレーシアやミャンマーとの貿易をルピーで決済することを発表」、「ルピーで決済」は「ルピー」の通貨価値が不安定なので、それほど進まないだろう。
・『「今年はインドが世界を主導するきっかけに…」 中国との確執が通貨の問題に波及した形だが、最近のインドはとにかく鼻息が荒い。インドの経済規模は中国の6分の1に過ぎないが、足元はインドが俄然優勢だからだ。 インドの昨年の実質国内総生産(GDP)は6.7%の成長となり、中国の伸び率を上回った。 ドルベースの昨年の名目GDP(約3兆3800億ドル)は日本の8割に迫っている。 昨年、中国が人口減に転じたのに対し、インドは2060年代まで人口増が続き、17億人に近づくと予測されている。 パンデ氏はこのような現状を踏まえ「インドは今日、世界の舞台で一大勢力として台頭している。現在のインドは、経済成長や他国との戦略的連携を後ろ盾に『グローバルサウス』の声となっている。今年はインドが世界を主導するきっかけとなる分水嶺の年になる」と自信満々だ。 グローバルサウスとは、南半球に多いアジアやアフリカなどの新興国・途上国の総称だ。北半球の先進国と対比して使われることが多い。 ウクライナ情勢を巡り欧米諸国とロシアとの対立が深まる中、国連決議などの場面でグローバルサウスの動向が注目されるようになっている。 成長著しいインドだが、世界銀行による位置づけは「下位中所得国」であり、途上国が直面する問題を当事者として理解できる立場にある。 西側諸国が中国やロシアと対抗する上で、同じ民主主義を看板に掲げるインドを重視するようになっていることも追い風だ。特に、日米豪との「クアッド」の枠組みはインドにとって戦略的な強みとなっている。 モディ首相もこのことを十分に自覚している。西側諸国と良好な関係を武器にグローバルサウスの盟主として、目障りなライバルである中国を追い詰めようとしている』、「グローバルサウスとは、南半球に多いアジアやアフリカなどの新興国・途上国の総称だ」、「ウクライナ情勢を巡り欧米諸国とロシアとの対立が深まる中、国連決議などの場面でグローバルサウスの動向が注目」、「日米豪との「クアッド」の枠組みはインドにとって戦略的な強みとなっている」、なるほど。
・『強権国家に近づいているとの指摘も だが、「世界最大の民主主義国家に危うい一面が目立つようになってきた」との指摘も出てきている。 モディ首相は最近「欧米など先進国のツケをサウスの国々が不当に払わされている」との不満をたびたび口にするようになっている。 モディ首相は3月2日、ブリンケン米国務長官が参加している20カ国・地域(G20)外相会合の場で、米国が築いた第2次世界大戦後の国際秩序を「失敗」と一刀両断した。インドの批判に対し、西側諸国は同国の人権状況を問題視し始めている。 米人権団体フリーダムハウスは2020年の報告書で「ニューデリーと北京の価値観の違いが曖昧になりつつある」と記述し、インドが中国のような強権国家に近づく可能性に警鐘を鳴らしている。2021年には政治状況に関するインドの評価を「自由」から「部分的自由」に引き下げている。 モディ首相についても「州首相時代の2002年に少数派イスラム教徒を弾圧した」との批判が持ち上がっているが、植民地時代への恨みが根強く残るインドでは「旧宗主国の傲慢な物言いだ」との反発が高まるばかりだ。 インドは成長著しいものの、深刻な雇用不足に悩んでいる。都市部では若年層の失業増加で治安が悪化しつつあり、インド政府が強権的な取り締まりに踏み切れば、人権状況を巡る西側諸国との軋轢はさらに激化することだろう。 インドと西側諸国との蜜月関係はいつまで続くかどうかわからない。日本でもインドは大きな存在になったが、その距離の取り方は一筋縄ではいかないのではないだろうか。 (藤和彦氏の経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官) はリンク先参照)』、「米人権団体フリーダムハウスは2020年の報告書で「ニューデリーと北京の価値観の違いが曖昧になりつつある」と記述し、インドが中国のような強権国家に近づく可能性に警鐘を鳴らしている。2021年には政治状況に関するインドの評価を「自由」から「部分的自由」に引き下げている。 モディ首相についても「州首相時代の2002年に少数派イスラム教徒を弾圧した」との批判が持ち上がっているが、植民地時代への恨みが根強く残るインドでは「旧宗主国の傲慢な物言いだ」との反発が高まるばかりだ。 インドは成長著しいものの、深刻な雇用不足に悩んでいる。都市部では若年層の失業増加で治安が悪化しつつあり、インド政府が強権的な取り締まりに踏み切れば、人権状況を巡る西側諸国との軋轢はさらに激化することだろう』、「ニューデリーと北京の価値観の違いが曖昧になりつつある」との「警告」は重く受け止める必要がある。「インドは成長著しいものの、深刻な雇用不足に悩んでいる。都市部では若年層の失業増加で治安が悪化しつつあり、インド政府が強権的な取り締まりに踏み切れば、人権状況を巡る西側諸国との軋轢はさらに激化することだろう」、その通りだ。
次に、6月6日付け現代ビジネスが掲載した経済産業研究所コンサルティングフェローの藤 和彦氏による「悪名高き「お役所仕事」が最大障壁…!インドが「人口世界一」になっても「世界経済を引っ張る“次の中国”」になる日は来ない「残念なワケ」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/111119?imp=0
・『インドは中国のように経済大国になるか? 世界一の人口大国となることが確実視されるインド経済の存在感が、大きくなっている。 過去20年間、世界経済を牽引してきた中国が、人口が減少に転じ「ピークが過ぎた」との見方が強まっていることが背景にある。 世界経済の減速が懸念される中、「人口が増加し続けるインドが『第2の中国』となる」との期待が高まっているが、はたしてそうだろうか。 インドは世界で最も若年人口の比率が高い国の1つだが、2021年の労働参加率(生産年齢人口(15歳から64歳までの人口)に占める労働力人口の割合)は46%とアジアで最も低い(日本は84%)。 女性の労働参加率はさらにひどく、世界最低の水準で推移している』、「2021年の労働参加率・・・は46%とアジアで最も低い・・・女性の労働参加率はさらにひどく、世界最低の水準で推移」、若年労働力へ職を提供できないというのは、致命的だ。
・『高度成長できないインドの弱点 中国を始めアジアの国々は、労働集約型の製造業の製品輸出のおかげで多くの雇用を創出できたが、製造業に弱みを抱えるインドは慢性的な雇用不足に苦しめられている。 世界銀行によれば、製造業がGDPに占める割合(2021年時点)は中国が27%、ベトナムが25%であるのに対し、インドは14%に過ぎない。 インドでは過去10年、毎年700万職者が市場に参入してきたが、新規の雇用を満足につくることができなかった。このため、職にありつけない若者は農村にとどまるしかなく、インドでは全労働者の半数近くが農村などで日々を生き抜くための低賃金の仕事に従事している。 「宝の持ち腐れ」になっていると言っても過言ではない』、「製造業に弱みを抱えるインドは慢性的な雇用不足に苦しめられている」、「製造業がGDPに占める割合(2021年時点)は中国が27%、ベトナムが25%であるのに対し、インドは14%に過ぎない。 インドでは過去10年、毎年700万職者が市場に参入してきたが、新規の雇用を満足につくることができなかった。このため、職にありつけない若者は農村にとどまるしかなく、インドでは全労働者の半数近くが農村などで日々を生き抜くための低賃金の仕事に従事している。 「宝の持ち腐れ」になっていると言っても過言ではない」、「宝の持ち腐れ」とは言い得て妙だ。
・『足を引っ張る「お役所仕事」 モデイ政権は「GDPに占める製造業の比率を25%にまで引き上げる」との政策目標を掲げているが、言うは易し、行うは難しだ。 中国一辺倒の投資に不安を感じ、グローバル企業はリスクの分散先としてインドを選択し始めているが、苦戦を強いられている。米アップルは、インドで現地生産の拡大を目指しているが、製造される部品のうちiPhoneの組み立て工場に納品できる合格品が約半分にとどまっている。 インド経済の足かせとなってきた悪名高い「お役所仕事」も変わっていない。 米格付け会社ムーデイーズ・インベスター・サービスは5月23日「政策の実行ベースの遅さやお役所仕事のせいで、製造業やインフラなどのセクターで外国からの投資が減少する恐れがある」と指摘した。 後編記事『「第2の中国」になるのは難しいのか?…インドの「経済成長」を阻む「政情不安」と「ナショナリズム」の不穏な関係』では、インドの内情から経済成長への障壁をさらに検証していこう』、「米アップルは、インドで現地生産の拡大を目指しているが、製造される部品のうちiPhoneの組み立て工場に納品できる合格品が約半分にとどまっている」、これほど「合格品」が低いのは労働力の質も低いと考えざるを得ない。「米格付け会社ムーデイーズ・インベスター・サービスは5月23日「政策の実行ベースの遅さやお役所仕事のせいで、製造業やインフラなどのセクターで外国からの投資が減少する恐れがある」と指摘」、これは深刻だ。
第三に、この続きを、6月6日付け現代ビジネスが掲載した経済産業研究所コンサルティングフェローの藤 和彦氏による「「第2の中国」になるのは難しいのか?…インドの「経済成長」を阻む「政情不安」と「ナショナリズム」の不穏な関係」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/111120?imp=0
・『インドを取り巻く火種の数々 過去20年間、世界経済を牽引してきた中国が人口減少に転じたことで、やがて世界一の人口大国となるインドの存在感が高まっている。しかし、残念ながらインドが「第2の中国」となる日は、やってきそうにない。 前編『インドが「人口世界一」になっても「世界経済を引っ張る“次の中国”」になる日は来ない「残念なワケ」』でも紹介したとおり、アジア最下位の労働参加率や高度成長に不可欠な製造業に発展の兆しが見られないことが、足を引っ張っているからだ。 さらに近年では、ナショナリズムの台頭から様々な火種がくすぶるようになってきた。 インドで活動するグローバル企業にとってのさらなるリスクは、テロの脅威だ。 統制が厳しい中国とは異なり、インド国内ではイスラム過激派などにテロ事件が多発しており、2008年のムンバイ同時多発テロでは日本人も犠牲になった。 このところ卑劣なテロ事件は発生していないが、インドの治安機関などは頻繁にテロ警戒アラートを発信しているのが現状だ(3月28日付FNNプライムオンライン)』、「残念ながらインドが「第2の中国」となる日は、やってきそうにない・・・アジア最下位の労働参加率や高度成長に不可欠な製造業に発展の兆しが見られないことが、足を引っ張っているからだ。 さらに近年では、ナショナリズムの台頭から様々な火種がくすぶるように」、「インドで活動するグローバル企業にとってのさらなるリスクは、テロの脅威だ。 統制が厳しい中国とは異なり、インド国内ではイスラム過激派などにテロ事件が多発しており、2008年のムンバイ同時多発テロでは日本人も犠牲になった。 このところ卑劣なテロ事件は発生していないが、インドの治安機関などは頻繁にテロ警戒アラートを発信しているのが現状だ」、「インドの治安機関などは頻繁にテロ警戒アラートを発信している」、外資にとっては嫌な国だ。
・『最高峰のエコノミストも「経済減速」を指摘 好調に見えるインド経済にも景気後退の影が忍び寄ってきている。 インド人材採用連盟は5月23日「同国のIT業界で昨年4月から今年3月までの1年間に嘱託社員の雇用が前年に比べ7.7%減少し、約6万人が失業した」と発表した。 識者の間でもインド経済の今後を悲観視する声が強まっている。その代表格は元インド準備銀行(中央銀行)総裁のラグラム・ラジャン氏だ。 ラジャン氏は「高成長を見込める要因が見当たらず、インド経済は減速する」と手厳しい(2023年4月19日付日本経済新聞)。 1950年代から80年代にかけて、インドの経済成長は途上国の中で低かったため、「ヒンズー成長率」と揶揄されてきたが、この用語が再び囁かれるようになっている。インドは過去何度となく高成長の期待を裏切ってきたが、今回も「二の舞」を踏むことになるのだろうか』、「1950年代から80年代にかけて、インドの経済成長は途上国の中で低かったため、「ヒンズー成長率」と揶揄されてきたが、この用語が再び囁かれるようになっている」、「インドは過去何度となく高成長の期待を裏切ってきたが、今回も「二の舞」を踏むことになるのだろうか」、「「ヒンズー成長率」とは有り難くないネーミングだ。
・『豊富な若年層が政権の凶器となる日 グローバルサウスの代表を自認するインドに対して、西側諸国は同国の人権状況を問題視し始めていることも気になるところだ。 米人権団体フリーダムハウスは2020年の報告書で「ニューデリーと北京の価値観の違いが曖昧になりつつある」と記述し、インドが中国のような強権国家に近づく可能性に警鐘を鳴らしている。 2021年には政治状況に関するインドの評価を「自由」から「部分的自由」に引き下げている。 経済が失速すればインドの失業問題がさらに悪化するのは明らかだ。 若年人口が社会の過半を占めるインドでは暴力事件が多発しており、過去には政権を揺るがす事態に発展したこともあった。豊富な若年人口は、インドにとって好機とともに脅威をもたらす「諸刃の剣」なのだ。 インド政府が強権的な取り締まりに踏み切れば、人権状況を巡る西側諸国との軋轢はさらに激化することだろう。 イスラム教徒への差別の問題も火種となりつつある』、「インドが中国のような強権国家に近づく可能性に警鐘」、「豊富な若年人口は、インドにとって好機とともに脅威をもたらす「諸刃の剣」なのだ。 インド政府が強権的な取り締まりに踏み切れば、人権状況を巡る西側諸国との軋轢はさらに激化することだろう。 イスラム教徒への差別の問題も火種となりつつある」、 「豊富な若年人口は、インドにとって好機とともに脅威をもたらす「諸刃の剣」」とは、高齢化が激化している「日本」からみると、贅沢な悩みだ。
・『台頭するナショナリズム 米政治学者のフランシス・フクヤマ氏は「インドはかつて宗教的にも言語的にも多様性に富んだ国だったが、現在のインド与党はヒンドウー教のナショナリストの国に変えようとしている。必ず暴力が起きる」と警告を発している(5月27日付AERA)。 モデイ首相についても「州首相時代に少数派イスラム教徒を弾圧した」との批判が英国から出ているが、与党サイドは「旧宗主国の傲慢な物言いだ」とけんもほろろだ。 「世界最大の民主主義国家」と称されるインドだが、西側諸国との蜜月関係はいつまで続くかどうかわからなくなっている。 残念ながら、インドは「次の中国」になれないのではないだろうか。 さらに連載記事『習近平から逃げ出した中国人が、アメリカで直面した「過酷な現実」…!その原因となったとある「薬物」の名前』では、いまアメリカで起こる異変について詳しくレポートしよう』、「フランシス・フクヤマ氏は「インドはかつて宗教的にも言語的にも多様性に富んだ国だったが、現在のインド与党はヒンドウー教のナショナリストの国に変えようとしている。必ず暴力が起きる」と警告を発している」、「「世界最大の民主主義国家」と称されるインドだが、西側諸国との蜜月関係はいつまで続くかどうかわからなくなっている。 残念ながら、インドは「次の中国」になれないのではないだろうか」、「インド」にはつくずく失望した。
なお、鉄道事故については、まだきちんとした記事がないので、出次第、取上げるつもりだ。
先ずは、本年4月11日付けデイリー新潮が掲載した経済産業研究所コンサルティングフェローの藤和彦氏による「グローバルサウスの盟主を目指すインドの危うさ モディ首相の触れられたくない過去も問題視」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/04110602/?all=1
・『「中国という全体主義国家は、多方面からの戦略を用いて米国を追い落とし、世界に君臨する超大国になろうとしている」 インド陸軍のパンデ参謀長は3月27日、米誌ニューズウィークのインタビューでこのように述べた。近年のインドの高官としては最も過激な中国批判の1つだ。 パンデ氏は中印国境の最前線で指揮をとるインド軍の最高幹部だ。 インドと 中国が軍事衝突したのは、1962年。両国の間の全長約3400キロメートルに及ぶ実効支配線の一部をめぐっての争いだった。その後、小康状態が続いていたが、2020年6月に、半世紀近くなかった死者を出す衝突が発生し、昨年12月にはインド軍が米国情報機関の支援を得て実効支配線の西側から侵入した中国軍を撃退したとされている。 パンデ氏は「北部国境沿いの軍の配備を見直し、高次の準備態勢を維持している」と自信を示しているが、中国との対立は長期にわたって続くことが懸念されている。 中国との国境紛争を重く見たインド政府は3月中旬、銀行や貿易業者に対して、ロシアからの輸入代金支払いに中国の人民元を使わないように働きかけている(3月13日付ロイター)。 これは、インドがロシア産の原油や石炭の最大の買い手になったことが関係している。 ウクライナ戦争の影響でロシアでは、米ドルに代わり人民元が最も取り引きされている外貨となっている。中国は3月末、アラブ首長国連邦(UAE)産の液化天然ガス(LNG)を人民元建てで購入する契約を成立させた。 エネルギー取引の分野で人民元のプレゼンスが高まっているのにもかかわらず、「インド準備銀行(中央銀行)は人民元による貿易決済に乗り気ではない」とインドの銀行関係者は語り、「政府が人民元の利用を妨げている」と嘆いている。 インド政府はさらに4月から自国通貨ルピー建ての貿易を促進する方針を明らかにしており、マレーシアやミャンマーとの貿易をルピーで決済することを発表している』、「中国との国境紛争を重く見たインド政府は3月中旬、銀行や貿易業者に対して、ロシアからの輸入代金支払いに中国の人民元を使わないように働きかけている」、「インド政府はさらに4月から自国通貨ルピー建ての貿易を促進する方針を明らかにしており、マレーシアやミャンマーとの貿易をルピーで決済することを発表」、「ルピーで決済」は「ルピー」の通貨価値が不安定なので、それほど進まないだろう。
・『「今年はインドが世界を主導するきっかけに…」 中国との確執が通貨の問題に波及した形だが、最近のインドはとにかく鼻息が荒い。インドの経済規模は中国の6分の1に過ぎないが、足元はインドが俄然優勢だからだ。 インドの昨年の実質国内総生産(GDP)は6.7%の成長となり、中国の伸び率を上回った。 ドルベースの昨年の名目GDP(約3兆3800億ドル)は日本の8割に迫っている。 昨年、中国が人口減に転じたのに対し、インドは2060年代まで人口増が続き、17億人に近づくと予測されている。 パンデ氏はこのような現状を踏まえ「インドは今日、世界の舞台で一大勢力として台頭している。現在のインドは、経済成長や他国との戦略的連携を後ろ盾に『グローバルサウス』の声となっている。今年はインドが世界を主導するきっかけとなる分水嶺の年になる」と自信満々だ。 グローバルサウスとは、南半球に多いアジアやアフリカなどの新興国・途上国の総称だ。北半球の先進国と対比して使われることが多い。 ウクライナ情勢を巡り欧米諸国とロシアとの対立が深まる中、国連決議などの場面でグローバルサウスの動向が注目されるようになっている。 成長著しいインドだが、世界銀行による位置づけは「下位中所得国」であり、途上国が直面する問題を当事者として理解できる立場にある。 西側諸国が中国やロシアと対抗する上で、同じ民主主義を看板に掲げるインドを重視するようになっていることも追い風だ。特に、日米豪との「クアッド」の枠組みはインドにとって戦略的な強みとなっている。 モディ首相もこのことを十分に自覚している。西側諸国と良好な関係を武器にグローバルサウスの盟主として、目障りなライバルである中国を追い詰めようとしている』、「グローバルサウスとは、南半球に多いアジアやアフリカなどの新興国・途上国の総称だ」、「ウクライナ情勢を巡り欧米諸国とロシアとの対立が深まる中、国連決議などの場面でグローバルサウスの動向が注目」、「日米豪との「クアッド」の枠組みはインドにとって戦略的な強みとなっている」、なるほど。
・『強権国家に近づいているとの指摘も だが、「世界最大の民主主義国家に危うい一面が目立つようになってきた」との指摘も出てきている。 モディ首相は最近「欧米など先進国のツケをサウスの国々が不当に払わされている」との不満をたびたび口にするようになっている。 モディ首相は3月2日、ブリンケン米国務長官が参加している20カ国・地域(G20)外相会合の場で、米国が築いた第2次世界大戦後の国際秩序を「失敗」と一刀両断した。インドの批判に対し、西側諸国は同国の人権状況を問題視し始めている。 米人権団体フリーダムハウスは2020年の報告書で「ニューデリーと北京の価値観の違いが曖昧になりつつある」と記述し、インドが中国のような強権国家に近づく可能性に警鐘を鳴らしている。2021年には政治状況に関するインドの評価を「自由」から「部分的自由」に引き下げている。 モディ首相についても「州首相時代の2002年に少数派イスラム教徒を弾圧した」との批判が持ち上がっているが、植民地時代への恨みが根強く残るインドでは「旧宗主国の傲慢な物言いだ」との反発が高まるばかりだ。 インドは成長著しいものの、深刻な雇用不足に悩んでいる。都市部では若年層の失業増加で治安が悪化しつつあり、インド政府が強権的な取り締まりに踏み切れば、人権状況を巡る西側諸国との軋轢はさらに激化することだろう。 インドと西側諸国との蜜月関係はいつまで続くかどうかわからない。日本でもインドは大きな存在になったが、その距離の取り方は一筋縄ではいかないのではないだろうか。 (藤和彦氏の経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官) はリンク先参照)』、「米人権団体フリーダムハウスは2020年の報告書で「ニューデリーと北京の価値観の違いが曖昧になりつつある」と記述し、インドが中国のような強権国家に近づく可能性に警鐘を鳴らしている。2021年には政治状況に関するインドの評価を「自由」から「部分的自由」に引き下げている。 モディ首相についても「州首相時代の2002年に少数派イスラム教徒を弾圧した」との批判が持ち上がっているが、植民地時代への恨みが根強く残るインドでは「旧宗主国の傲慢な物言いだ」との反発が高まるばかりだ。 インドは成長著しいものの、深刻な雇用不足に悩んでいる。都市部では若年層の失業増加で治安が悪化しつつあり、インド政府が強権的な取り締まりに踏み切れば、人権状況を巡る西側諸国との軋轢はさらに激化することだろう』、「ニューデリーと北京の価値観の違いが曖昧になりつつある」との「警告」は重く受け止める必要がある。「インドは成長著しいものの、深刻な雇用不足に悩んでいる。都市部では若年層の失業増加で治安が悪化しつつあり、インド政府が強権的な取り締まりに踏み切れば、人権状況を巡る西側諸国との軋轢はさらに激化することだろう」、その通りだ。
次に、6月6日付け現代ビジネスが掲載した経済産業研究所コンサルティングフェローの藤 和彦氏による「悪名高き「お役所仕事」が最大障壁…!インドが「人口世界一」になっても「世界経済を引っ張る“次の中国”」になる日は来ない「残念なワケ」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/111119?imp=0
・『インドは中国のように経済大国になるか? 世界一の人口大国となることが確実視されるインド経済の存在感が、大きくなっている。 過去20年間、世界経済を牽引してきた中国が、人口が減少に転じ「ピークが過ぎた」との見方が強まっていることが背景にある。 世界経済の減速が懸念される中、「人口が増加し続けるインドが『第2の中国』となる」との期待が高まっているが、はたしてそうだろうか。 インドは世界で最も若年人口の比率が高い国の1つだが、2021年の労働参加率(生産年齢人口(15歳から64歳までの人口)に占める労働力人口の割合)は46%とアジアで最も低い(日本は84%)。 女性の労働参加率はさらにひどく、世界最低の水準で推移している』、「2021年の労働参加率・・・は46%とアジアで最も低い・・・女性の労働参加率はさらにひどく、世界最低の水準で推移」、若年労働力へ職を提供できないというのは、致命的だ。
・『高度成長できないインドの弱点 中国を始めアジアの国々は、労働集約型の製造業の製品輸出のおかげで多くの雇用を創出できたが、製造業に弱みを抱えるインドは慢性的な雇用不足に苦しめられている。 世界銀行によれば、製造業がGDPに占める割合(2021年時点)は中国が27%、ベトナムが25%であるのに対し、インドは14%に過ぎない。 インドでは過去10年、毎年700万職者が市場に参入してきたが、新規の雇用を満足につくることができなかった。このため、職にありつけない若者は農村にとどまるしかなく、インドでは全労働者の半数近くが農村などで日々を生き抜くための低賃金の仕事に従事している。 「宝の持ち腐れ」になっていると言っても過言ではない』、「製造業に弱みを抱えるインドは慢性的な雇用不足に苦しめられている」、「製造業がGDPに占める割合(2021年時点)は中国が27%、ベトナムが25%であるのに対し、インドは14%に過ぎない。 インドでは過去10年、毎年700万職者が市場に参入してきたが、新規の雇用を満足につくることができなかった。このため、職にありつけない若者は農村にとどまるしかなく、インドでは全労働者の半数近くが農村などで日々を生き抜くための低賃金の仕事に従事している。 「宝の持ち腐れ」になっていると言っても過言ではない」、「宝の持ち腐れ」とは言い得て妙だ。
・『足を引っ張る「お役所仕事」 モデイ政権は「GDPに占める製造業の比率を25%にまで引き上げる」との政策目標を掲げているが、言うは易し、行うは難しだ。 中国一辺倒の投資に不安を感じ、グローバル企業はリスクの分散先としてインドを選択し始めているが、苦戦を強いられている。米アップルは、インドで現地生産の拡大を目指しているが、製造される部品のうちiPhoneの組み立て工場に納品できる合格品が約半分にとどまっている。 インド経済の足かせとなってきた悪名高い「お役所仕事」も変わっていない。 米格付け会社ムーデイーズ・インベスター・サービスは5月23日「政策の実行ベースの遅さやお役所仕事のせいで、製造業やインフラなどのセクターで外国からの投資が減少する恐れがある」と指摘した。 後編記事『「第2の中国」になるのは難しいのか?…インドの「経済成長」を阻む「政情不安」と「ナショナリズム」の不穏な関係』では、インドの内情から経済成長への障壁をさらに検証していこう』、「米アップルは、インドで現地生産の拡大を目指しているが、製造される部品のうちiPhoneの組み立て工場に納品できる合格品が約半分にとどまっている」、これほど「合格品」が低いのは労働力の質も低いと考えざるを得ない。「米格付け会社ムーデイーズ・インベスター・サービスは5月23日「政策の実行ベースの遅さやお役所仕事のせいで、製造業やインフラなどのセクターで外国からの投資が減少する恐れがある」と指摘」、これは深刻だ。
第三に、この続きを、6月6日付け現代ビジネスが掲載した経済産業研究所コンサルティングフェローの藤 和彦氏による「「第2の中国」になるのは難しいのか?…インドの「経済成長」を阻む「政情不安」と「ナショナリズム」の不穏な関係」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/111120?imp=0
・『インドを取り巻く火種の数々 過去20年間、世界経済を牽引してきた中国が人口減少に転じたことで、やがて世界一の人口大国となるインドの存在感が高まっている。しかし、残念ながらインドが「第2の中国」となる日は、やってきそうにない。 前編『インドが「人口世界一」になっても「世界経済を引っ張る“次の中国”」になる日は来ない「残念なワケ」』でも紹介したとおり、アジア最下位の労働参加率や高度成長に不可欠な製造業に発展の兆しが見られないことが、足を引っ張っているからだ。 さらに近年では、ナショナリズムの台頭から様々な火種がくすぶるようになってきた。 インドで活動するグローバル企業にとってのさらなるリスクは、テロの脅威だ。 統制が厳しい中国とは異なり、インド国内ではイスラム過激派などにテロ事件が多発しており、2008年のムンバイ同時多発テロでは日本人も犠牲になった。 このところ卑劣なテロ事件は発生していないが、インドの治安機関などは頻繁にテロ警戒アラートを発信しているのが現状だ(3月28日付FNNプライムオンライン)』、「残念ながらインドが「第2の中国」となる日は、やってきそうにない・・・アジア最下位の労働参加率や高度成長に不可欠な製造業に発展の兆しが見られないことが、足を引っ張っているからだ。 さらに近年では、ナショナリズムの台頭から様々な火種がくすぶるように」、「インドで活動するグローバル企業にとってのさらなるリスクは、テロの脅威だ。 統制が厳しい中国とは異なり、インド国内ではイスラム過激派などにテロ事件が多発しており、2008年のムンバイ同時多発テロでは日本人も犠牲になった。 このところ卑劣なテロ事件は発生していないが、インドの治安機関などは頻繁にテロ警戒アラートを発信しているのが現状だ」、「インドの治安機関などは頻繁にテロ警戒アラートを発信している」、外資にとっては嫌な国だ。
・『最高峰のエコノミストも「経済減速」を指摘 好調に見えるインド経済にも景気後退の影が忍び寄ってきている。 インド人材採用連盟は5月23日「同国のIT業界で昨年4月から今年3月までの1年間に嘱託社員の雇用が前年に比べ7.7%減少し、約6万人が失業した」と発表した。 識者の間でもインド経済の今後を悲観視する声が強まっている。その代表格は元インド準備銀行(中央銀行)総裁のラグラム・ラジャン氏だ。 ラジャン氏は「高成長を見込める要因が見当たらず、インド経済は減速する」と手厳しい(2023年4月19日付日本経済新聞)。 1950年代から80年代にかけて、インドの経済成長は途上国の中で低かったため、「ヒンズー成長率」と揶揄されてきたが、この用語が再び囁かれるようになっている。インドは過去何度となく高成長の期待を裏切ってきたが、今回も「二の舞」を踏むことになるのだろうか』、「1950年代から80年代にかけて、インドの経済成長は途上国の中で低かったため、「ヒンズー成長率」と揶揄されてきたが、この用語が再び囁かれるようになっている」、「インドは過去何度となく高成長の期待を裏切ってきたが、今回も「二の舞」を踏むことになるのだろうか」、「「ヒンズー成長率」とは有り難くないネーミングだ。
・『豊富な若年層が政権の凶器となる日 グローバルサウスの代表を自認するインドに対して、西側諸国は同国の人権状況を問題視し始めていることも気になるところだ。 米人権団体フリーダムハウスは2020年の報告書で「ニューデリーと北京の価値観の違いが曖昧になりつつある」と記述し、インドが中国のような強権国家に近づく可能性に警鐘を鳴らしている。 2021年には政治状況に関するインドの評価を「自由」から「部分的自由」に引き下げている。 経済が失速すればインドの失業問題がさらに悪化するのは明らかだ。 若年人口が社会の過半を占めるインドでは暴力事件が多発しており、過去には政権を揺るがす事態に発展したこともあった。豊富な若年人口は、インドにとって好機とともに脅威をもたらす「諸刃の剣」なのだ。 インド政府が強権的な取り締まりに踏み切れば、人権状況を巡る西側諸国との軋轢はさらに激化することだろう。 イスラム教徒への差別の問題も火種となりつつある』、「インドが中国のような強権国家に近づく可能性に警鐘」、「豊富な若年人口は、インドにとって好機とともに脅威をもたらす「諸刃の剣」なのだ。 インド政府が強権的な取り締まりに踏み切れば、人権状況を巡る西側諸国との軋轢はさらに激化することだろう。 イスラム教徒への差別の問題も火種となりつつある」、 「豊富な若年人口は、インドにとって好機とともに脅威をもたらす「諸刃の剣」」とは、高齢化が激化している「日本」からみると、贅沢な悩みだ。
・『台頭するナショナリズム 米政治学者のフランシス・フクヤマ氏は「インドはかつて宗教的にも言語的にも多様性に富んだ国だったが、現在のインド与党はヒンドウー教のナショナリストの国に変えようとしている。必ず暴力が起きる」と警告を発している(5月27日付AERA)。 モデイ首相についても「州首相時代に少数派イスラム教徒を弾圧した」との批判が英国から出ているが、与党サイドは「旧宗主国の傲慢な物言いだ」とけんもほろろだ。 「世界最大の民主主義国家」と称されるインドだが、西側諸国との蜜月関係はいつまで続くかどうかわからなくなっている。 残念ながら、インドは「次の中国」になれないのではないだろうか。 さらに連載記事『習近平から逃げ出した中国人が、アメリカで直面した「過酷な現実」…!その原因となったとある「薬物」の名前』では、いまアメリカで起こる異変について詳しくレポートしよう』、「フランシス・フクヤマ氏は「インドはかつて宗教的にも言語的にも多様性に富んだ国だったが、現在のインド与党はヒンドウー教のナショナリストの国に変えようとしている。必ず暴力が起きる」と警告を発している」、「「世界最大の民主主義国家」と称されるインドだが、西側諸国との蜜月関係はいつまで続くかどうかわからなくなっている。 残念ながら、インドは「次の中国」になれないのではないだろうか」、「インド」にはつくずく失望した。
なお、鉄道事故については、まだきちんとした記事がないので、出次第、取上げるつもりだ。
タグ:インド (その2)(グローバルサウスの盟主を目指すインドの危うさ モディ首相の触れられたくない過去も問題視、悪名高き「お役所仕事」が最大障壁…!インドが「人口世界一」になっても「世界経済を引っ張る“次の中国”」になる日は来ない「残念なワケ」、「第2の中国」になるのは難しいのか?…インドの「経済成長」を阻む「政情不安」と「ナショナリズム」の不穏な関係) デイリー新潮 藤和彦氏による「グローバルサウスの盟主を目指すインドの危うさ モディ首相の触れられたくない過去も問題視」 「中国との国境紛争を重く見たインド政府は3月中旬、銀行や貿易業者に対して、ロシアからの輸入代金支払いに中国の人民元を使わないように働きかけている」、「インド政府はさらに4月から自国通貨ルピー建ての貿易を促進する方針を明らかにしており、マレーシアやミャンマーとの貿易をルピーで決済することを発表」、「ルピーで決済」は「ルピー」の通貨価値が不安定なので、それほど進まないだろう。 「グローバルサウスとは、南半球に多いアジアやアフリカなどの新興国・途上国の総称だ」、「ウクライナ情勢を巡り欧米諸国とロシアとの対立が深まる中、国連決議などの場面でグローバルサウスの動向が注目」、「日米豪との「クアッド」の枠組みはインドにとって戦略的な強みとなっている」、なるほど。 「米人権団体フリーダムハウスは2020年の報告書で「ニューデリーと北京の価値観の違いが曖昧になりつつある」と記述し、インドが中国のような強権国家に近づく可能性に警鐘を鳴らしている。2021年には政治状況に関するインドの評価を「自由」から「部分的自由」に引き下げている。 モディ首相についても「州首相時代の2002年に少数派イスラム教徒を弾圧した」との批判が持ち上がっているが、植民地時代への恨みが根強く残るインドでは「旧宗主国の傲慢な物言いだ」との反発が高まるばかりだ。 「ニューデリーと北京の価値観の違いが曖昧になりつつある」との「警告」は重く受け止める必要がある。「インドは成長著しいものの、深刻な雇用不足に悩んでいる。都市部では若年層の失業増加で治安が悪化しつつあり、インド政府が強権的な取り締まりに踏み切れば、人権状況を巡る西側諸国との軋轢はさらに激化することだろう」、その通りだ。 現代ビジネス 藤 和彦氏による「悪名高き「お役所仕事」が最大障壁…!インドが「人口世界一」になっても「世界経済を引っ張る“次の中国”」になる日は来ない「残念なワケ」」 「2021年の労働参加率・・・は46%とアジアで最も低い・・・女性の労働参加率はさらにひどく、世界最低の水準で推移」、若年労働力へ職を提供できないというのは、致命的だ。 「製造業に弱みを抱えるインドは慢性的な雇用不足に苦しめられている」、「製造業がGDPに占める割合(2021年時点)は中国が27%、ベトナムが25%であるのに対し、インドは14%に過ぎない。 インドでは過去10年、毎年700万職者が市場に参入してきたが、新規の雇用を満足につくることができなかった。このため、職にありつけない若者は農村にとどまるしかなく、インドでは全労働者の半数近くが農村などで日々を生き抜くための低賃金の仕事に従事している。 「宝の持ち腐れ」になっていると言っても過言ではない」、「宝の持ち腐れ」とは言い得て妙だ。 「米アップルは、インドで現地生産の拡大を目指しているが、製造される部品のうちiPhoneの組み立て工場に納品できる合格品が約半分にとどまっている」、これほど「合格品」が低いのは労働力の質も低いと考えざるを得ない。 「米格付け会社ムーデイーズ・インベスター・サービスは5月23日「政策の実行ベースの遅さやお役所仕事のせいで、製造業やインフラなどのセクターで外国からの投資が減少する恐れがある」と指摘」、これは深刻だ。 藤 和彦氏による「「第2の中国」になるのは難しいのか?…インドの「経済成長」を阻む「政情不安」と「ナショナリズム」の不穏な関係」 「残念ながらインドが「第2の中国」となる日は、やってきそうにない・・・アジア最下位の労働参加率や高度成長に不可欠な製造業に発展の兆しが見られないことが、足を引っ張っているからだ。 さらに近年では、ナショナリズムの台頭から様々な火種がくすぶるように」、「インドで活動するグローバル企業にとってのさらなるリスクは、テロの脅威だ。 統制が厳しい中国とは異なり、インド国内ではイスラム過激派などにテロ事件が多発しており、2008年のムンバイ同時多発テロでは日本人も犠牲になった。 このところ卑劣なテロ事件は発生していないが、インドの治安機関などは頻繁にテロ警戒アラートを発信しているのが現状だ」、「インドの治安機関などは頻繁にテロ警戒アラートを発信している」、外資にとっては嫌な国だ。 「1950年代から80年代にかけて、インドの経済成長は途上国の中で低かったため、「ヒンズー成長率」と揶揄されてきたが、この用語が再び囁かれるようになっている」、「インドは過去何度となく高成長の期待を裏切ってきたが、今回も「二の舞」を踏むことになるのだろうか」、「「ヒンズー成長率」とは有り難くないネーミングだ。 「インドが中国のような強権国家に近づく可能性に警鐘」、「豊富な若年人口は、インドにとって好機とともに脅威をもたらす「諸刃の剣」なのだ。 インド政府が強権的な取り締まりに踏み切れば、人権状況を巡る西側諸国との軋轢はさらに激化することだろう。 イスラム教徒への差別の問題も火種となりつつある」、 「豊富な若年人口は、インドにとって好機とともに脅威をもたらす「諸刃の剣」」とは、高齢化が激化している「日本」からみると、贅沢な悩みだ。 「フランシス・フクヤマ氏は「インドはかつて宗教的にも言語的にも多様性に富んだ国だったが、現在のインド与党はヒンドウー教のナショナリストの国に変えようとしている。必ず暴力が起きる」と警告を発している」、「「世界最大の民主主義国家」と称されるインドだが、西側諸国との蜜月関係はいつまで続くかどうかわからなくなっている。 残念ながら、インドは「次の中国」になれないのではないだろうか」、「インド」にはつくずく失望した。 なお、鉄道事故については、まだきちんとした記事がないので、出次第、取上げるつもりだ。