原発問題(その21)(これが証拠メールだ 地震本部の警告を骨抜きするよう圧力かけた内閣府の罪 【地震大国日本の今】「津波リスクはなぜ軽んじられた」地震学会元会長が告発、日本原子力発電は“ぼったくりバー”? 2カ所とも稼働停止なのに1000億円の売り上げで黒字) [国内政治]
原発問題については、本年4月28日に取上げた。今日は、(その21)(これが証拠メールだ 地震本部の警告を骨抜きするよう圧力かけた内閣府の罪 【地震大国日本の今】「津波リスクはなぜ軽んじられた」地震学会元会長が告発、日本原子力発電は“ぼったくりバー”? 2カ所とも稼働停止なのに1000億円の売り上げで黒字)である。
先ずは、4月29日付けJBPressが掲載した科学ジャーナリストの添田 孝史氏による「これが証拠メールだ、地震本部の警告を骨抜きするよう圧力かけた内閣府の罪 【地震大国日本の今】「津波リスクはなぜ軽んじられた」地震学会元会長が告発」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/74999
・『地震のリスクを科学的に評価する(リスク評価)。その評価をもとに、被害を小さくするためハードやソフトの対策を進める(リスク管理)。それが地震防災の進め方だ。 しかし311前の東北地方の津波リスク評価は、電力会社を中心とする「原子力ムラ」の圧力でねじ曲げられており、そのため津波で多くの人が亡くなり、原発事故も引き起こした可能性がある。そんな疑惑を、元日本地震学会会長の島崎邦彦・東大名誉教授が、3月末に発売された著書『3.11 大津波の対策を邪魔した男たち』(青志社)で告発した。この告発は、一般の人だけでなく、地震学者など専門家の間でも話題になっている』、「島崎邦彦」氏は前原子力規制委員会委員(委員長代理)でTVでもよく顔が放映されていた。勇気ある内部告発だ。
・『「おかしなことが起こっている」だが背景はわからなかった 島崎さんは、2002年以降、津波のリスク評価が水面下で巧妙にねじ曲げられていった経緯を、公開されていなかった議事録や電子メールなどを引用して、研究者や官僚など関係者の実名も出して細かく描写している。 311前に、津波のリスクを小さくしようとする「おかしなこと」が起こっていると島崎さんは感じていたが、背景はわかっていなかった。後になって、原子力ムラが関係していたと考えると、疑問が氷解したという。原子力ムラの実体は、原発を推進するために、電力会社を中心に、大企業や経済産業省、研究者、メディアなどが絡み合ったコングロマリットのようなものだとされている。 地震リスク評価の第一人者だった島崎さんによる内部告発であることには重みがある。震災後には原子力規制委員会の委員長代理も務め、原子力ムラの実態と力の大きさをよく知る立場にあったことから、告発の信頼性が高まっている』、「地震リスク評価の第一人者だった島崎さんによる内部告発であることには重みがある。震災後には原子力規制委員会の委員長代理も務め、原子力ムラの実態と力の大きさをよく知る立場にあったことから、告発の信頼性が高まっている」、その通りだ。
・『告発「地震本部のリスク評価を内閣府がねじ曲げた」 この本で主に描かれているのは、2002年から2005年にかけて、政府の地震調査研究推進本部(地震本部)による地震のリスク評価(長期評価)を、内閣府がねじ曲げていく過程だ。 地震本部は、文部科学省に事務局があり、地震学者らが月一回程度集まって、各地域でこれからどんな地震が発生するか、長期的な予測(長期評価)をまとめている。「マグニチュード(M)7程度の首都直下地震の発生確率は、今後30年以内で70%程度」「南海トラフでM8〜9級の巨大地震が20年以内に起こる確率は60%程度」*1といった予測を発表している組織だ。 一方の内閣府は、国の防災を担当しており、中央防災会議の事務局でもある。地震などの災害にどう備えるか、防災基本計画の作成などをしている。リスクを評価する地震本部、そのリスクを管理するのが内閣府という役割分担になる。 2002年7月、島崎さんらが中心になって、東北地方の太平洋側で、どこでも津波高さが10mを超えるようなM8級の地震(津波地震)が発生するおそれがあるという新たな予測(長期評価)を地震本部がまとめた*2。これに従えば、福島第一原発の津波想定は従来の3倍近くに上昇し、大がかりな対策工事を迫られることになる*3。 この長期評価の発表直前、内閣府の担当者から「防災担当大臣が非常に懸念している」「発表を見送れ」と、地震本部事務局にメールが送られる(画像参照)。発表が止められないとわかると「津波対策をしなくて良い」と読める文言を挿入するよう内閣府は迫り、長期評価は改変されてしまう*4。 さらに2003〜2005年にかけて、中央防災会議が東北地方の津波対策をまとめる過程で、地震本部の津波地震は葬られてしまう。明治三陸地震のようなすでに起きた津波地震より、長い間地震が起きた記録が無いその南側(宮城〜福島沖)の方が危ないという地震学者らの警告は無視されたのだ。 (*配信先サイトのためメール画像が表示されていない方はJBpressにて記事をご覧ください)』、「2002年7月、島崎さんらが中心になって、東北地方の太平洋側で、どこでも津波高さが10mを超えるようなM8級の地震(津波地震)が発生するおそれがあるという新たな予測(長期評価)を地震本部がまとめた*2。これに従えば、福島第一原発の津波想定は従来の3倍近くに上昇し、大がかりな対策工事を迫られることになる*3。 この長期評価の発表直前、内閣府の担当者から「防災担当大臣が非常に懸念している」「発表を見送れ」と、地震本部事務局にメールが送られる(画像参照)。発表が止められないとわかると「津波対策をしなくて良い」と読める文言を挿入するよう内閣府は迫り、長期評価は改変されてしまう*4」、「さらに2003〜2005年にかけて、中央防災会議が東北地方の津波対策をまとめる過程で、地震本部の津波地震は葬られてしまう。明治三陸地震のようなすでに起きた津波地震より、長い間地震が起きた記録が無いその南側(宮城〜福島沖)の方が危ないという地震学者らの警告は無視されたのだ」、「内閣府」の妨害工作が功を奏した形だ。
・『内閣府の担当者が地震本部に送ったメール 「内閣府の防災担当は、津波地震のうち、明治三陸地震だけにそなえれば良い、とした。このため『備える必要がない』とされた地域で、多数の人々が3.11大津波の犠牲となった」と島崎さんは述べている』、「内閣府の防災担当は、津波地震のうち、明治三陸地震だけにそなえれば良い、とした。このため『備える必要がない』とされた地域で、多数の人々が3.11大津波の犠牲となった」、これは初めtて知ったが、犯罪的だ。
・『中央防災会議が想定した津波の発生場所 東日本大震災による死者・行方不明者は1万8423人*5。死者の9割は津波による溺死だった。さらに震災関連死も3789人*6に上る。津波による死者の大半は、中央防災会議が「備える必要がない」と油断させていた宮城県より南で亡くなっている。 *1 地震調査研究推進本部 今までに公表した活断層および海溝型地震の長期評価結果一覧(2023年1月13日) *2 地震調査研究推進本部 地震調査委員会 「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価について」 2002年7月31日 *3 当時、原発の規制を担当していた原子力安全・保安院は、長期評価によれば福島第一原発にどれぐらいの津波が襲来するか計算するよう要請したが、東電は40分くらい抵抗して、逃げ切った。長期評価が福島第一に大きな影響をもたらすことを長期評価発表当時から東電は知っていたのだ。 *4 木野龍逸 「長期評価の発表を防災担当大臣が『懸念』し修正を要求」 2018年8月1日 Level7news *5 警察庁緊急災害警備本部 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の警察措置と被害状況 2023年3月10日 *6 復興庁 東日本大震災における震災関連死の死者数 2022年6月30日)』、「原発の規制を担当していた原子力安全・保安院は、長期評価によれば福島第一原発にどれぐらいの津波が襲来するか計算するよう要請したが、東電は40分くらい抵抗して、逃げ切った。長期評価が福島第一に大きな影響をもたらすことを長期評価発表当時から東電は知っていたのだ」、これまで「東電」は大きな津波襲来を予想してなかったとしているが、実際は大きな津波襲来のシミュレーションを「40分くらい抵抗して、逃げ切った」、悪質だ。
・『津波対策には金が必要、ならば評価を小さくしてしまえ 科学者たちが津波のリスク評価をまとめた。それは従来の想定よりかなり大きいので、対策にお金がかかる。「ならば評価を小さくしてしまえ」とリスクを管理する側(内閣府)が迫る。それは科学をねじ曲げる異常な動きだ。食品安全委員会が調べた食品のリスクを、厚生労働省が、対策が難しいからと変えさせてしまうようなものである。ところが東北地方の津波想定では、それが起きていたのだ。 「原子力ムラが内閣府防災担当を使って、国の地震防災計画から福島県沖の津波地震を除かせたのだ。私はそう思っている」と島崎さんは推察している。 それは島崎さんの思い込み、根拠の無い陰謀論だという批判もある。確かに、2002年から2005年にかけて地震本部のリスク評価がねじ曲げられた過程で、原子力ムラの圧力が働いた証拠は見つかっていない。ただし別の時期では、同様のリスク評価ねじ曲げに、原子力ムラが関わっていた。行政文書に記録が残っている。 例えば本書の8、9章では、東電が震災直前の2011年、地震本部の長期評価の改訂作業に介入し、自社に都合の悪い津波想定が公開されないようにしていた事実が明らかにされている。長期評価の事務局である文科省と東電が秘密会合を何度も開き、公開前の長期評価の文言を改変していた*7。 本書の第1章で触れられている事例は、1997年の津波想定つぶしだ。これは2002年長期評価の一つ前の津波想定についての出来事である。建設省(現国土交通省)など4省庁がまとめていた津波想定は、福島第一の津波想定を超え、敷地に遡上してしまうものだった。電力会社は、これが発表されることを恐れて、原発を推進する通商産業省(現経済産業省)を通して、発表しないように、あるいは内容を書き換えるように、建設省に圧力をかけていた。その内部文書が、311の後に開示されている*8。 このように、1997年と2011年については、原子力ムラが圧力をかけた確実な証拠がある。その間の2002〜2005年にかけてだけ、何も裏工作が無かったとは、むしろ考えにくい。 また、津波想定ではないが、2000年代に開かれた政府の原発耐震強化についての審議会で、電力会社が専門家たちに根回しして都合の良い内容を代弁してもらったり、あるいは具合の悪いことは黙っていてもらったりして、耐震策を骨抜きしようとしていたことも明らかになっている*9。裏工作する手法、実行を担当する社員、予算、コネクション、それらを電力会社はずっと豊富に維持していたのだ。 *7 橋本学、島崎邦彦、鷺谷威 「2011年3月3日の地震調査研究推進本部事務局と電力事業者による日本海溝の長期評価に関する情報交換会の経緯と問題点」 日本地震学会モノグラフ第3号「日本の原子力発電と地球科学」 2015年3月 p.34-44 木野龍逸 「文科省から政府事故調および国会事故調に提出された資料」 2019年1月22日 添田孝史 「原子力安全・保安院 行政文書ファイル『企調課提出資料』の残りぜんぶ」 2019年1月9日 *8 添田孝史 「四省庁報告書、七省庁手引き関連」 *9 石橋克彦 電力会社の「虜(とりこ)」だった原発耐震指針改訂の委員たち:国会事故調報告書の衝撃 科学82(8)2012年8月 p.841-846 添田孝史 「電力業界が地震リスク評価に干渉した4つの事例」 日本地球惑星科学連合2015年大会 [S-CG56] 日本の原子力発電と地球科学:地震・火山科学の限界を踏まえて 口頭発表 添田孝史 「事故前、対策をとるべきだと伝えていた」Level7news 2021年3月12日 東電の担当者が、津波や地震の研究者に根回していたとメールで報告している』、「津波対策には金が必要、ならば評価を小さくしてしまえ」との「内閣府」のやり方は乱暴極まる。「2000年代に開かれた政府の原発耐震強化についての審議会で、電力会社が専門家たちに根回しして都合の良い内容を代弁してもらったり、あるいは具合の悪いことは黙っていてもらったりして、耐震策を骨抜きしようとしていたことも明らかになっている」、「東電の担当者が、津波や地震の研究者に根回していたとメールで報告している」、なるほど。
・『1000億円規模の利益を守るために見捨てられた津波死者 古い原発を無対策のまま延命させて運転継続できれば、年に1000億円オーダーの利益を得ることができる。そのために津波想定の見直しを、少しでも遅らせたい。そんな動機による東電の裏工作が、原発事故を引き起こしただけでなく、311の津波の死者を増やしてしまったのだろうか。 中央防災会議は311後、「これまでの地震・津波の想定結果が、実際に起きた地震・津波と大きくかけ離れていたことを真摯に受け止め、今後の地震・津波の想定の考え方を抜本的に見直さなければならない」と反省した*10。しかし、なぜ想定を誤ったのか、原因は追及されていない。 「原因の追及がなければ、過ちは繰り返される。過ちがどのようにして起こったか、誰が何をしたかが追及されない限り、何も変わらない」と島崎さんは述べている。 島崎さんは、福島原発事故を調べた政府の事故調査委員会も、内閣府の圧力についての追及が腰砕けになってしまったことを指摘している。「政府事故調は途中で変わったようだ。追及していくうちに、政府自身が追及される立場となり、急に方向転換したのだろう」 震災から12年経つが、まだよくわかっていない重要なことは多い。 *10 中央防災会議 東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会報告 2011年9月28日)』、「政府の事故調査委員会も、内閣府の圧力についての追及が腰砕けになってしまったことを指摘している。「政府事故調は途中で変わったようだ。追及していくうちに、政府自身が追及される立場となり、急に方向転換したのだろう」、こうした勇気ある内部告発が出てきたことは大いに結構なことだ。ただ、第一線を引退してから出てきたのは残念だ。事故原因の追究がこれにより少しでも進展することを期待したい。
次に、5月25日付け日刊ゲンダイが掲載した経済ジャーナリストの重道武司氏による「日本原子力発電は“ぼったくりバー”? 2カ所とも稼働停止なのに1000億円の売り上げで黒字」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/323463
・『「原子力ムラのぼったくりバー」。電力業界関係者らの間ではこんな皮肉も飛び交う。日本原子力発電──原電のことだ。 東京・上野に本店を置く原発専業の卸電気事業者で、茨城県東海村と福井県敦賀市の2カ所に発電所を持つ。ここで発電した電気を東京電力ホールディングス(HD)をはじめとした電力大手に売って収益を稼ぐというのがビジネスモデルだ。 だが、どちらの原発も2011年の東日本大震災による東京電力福島第1原発の過酷事故以降、稼働停止中だ。要するに現時点では売り物となる商品が何もない。にもかかわらず、この会社は毎期1000億円前後の売上高を着実に計上し、しかも黒字を維持し続けているのである。 先週18日に発表された23年3月期決算も減収減益とはいえ売上高は921億円(前期比0.9%減)。9億円弱の特別利益を計上したこともあって最終利益18億円(同25.1%減)を確保した。6年連続の黒字だ。 なぜこんな芸当が可能なのか。その“からくり”が「基本料金」と呼ばれる料金体系だ。原電と電気の供給契約を交わしている電力大手5社(東電HD、東北電力、中部電力、北陸電力、関西電力)は購入した電力量が仮にゼロであっても毎年一定の料金を原電に支払い続けなければならないような仕組みになっているのである。これが原電の経営を支えているわけで、今や「(原電に対する)一種の支援金・寄付金と化している」(東電HD関係者)と言ってもよい。 その総額たるや12年度から22年度までで実に1兆2141億円。原電の連結総資産7285億円(今年3月末)を軽く上回る。 原電の購入先5社のうち東電HD、東北電と北陸電の3社は6月分から家庭用電気の規制料金の値上げに踏み切る。経済産業省が値上げの認可に向けて開いた公聴会などでは当然、こうした原電への「対価なき巨額支出」(事情通)を疑問視する声が上がったとされるが、西村康稔経産相は「(原電と)共同開発した原発の人件費や修繕費などだ」と断定。あっさりと原価算入を認めた。最終的には家計の負担で原電を延命させていることにもなる』、「電力大手5社」は「購入した電力量が仮にゼロであっても毎年一定の料金を原電に支払い続けなければならないような仕組み」、「12年度から22年度まで」の「売上高」は年平均1103億円、「原子力村」のなかで優雅に儲け続けられる「仕組み」のようだ。
先ずは、4月29日付けJBPressが掲載した科学ジャーナリストの添田 孝史氏による「これが証拠メールだ、地震本部の警告を骨抜きするよう圧力かけた内閣府の罪 【地震大国日本の今】「津波リスクはなぜ軽んじられた」地震学会元会長が告発」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/74999
・『地震のリスクを科学的に評価する(リスク評価)。その評価をもとに、被害を小さくするためハードやソフトの対策を進める(リスク管理)。それが地震防災の進め方だ。 しかし311前の東北地方の津波リスク評価は、電力会社を中心とする「原子力ムラ」の圧力でねじ曲げられており、そのため津波で多くの人が亡くなり、原発事故も引き起こした可能性がある。そんな疑惑を、元日本地震学会会長の島崎邦彦・東大名誉教授が、3月末に発売された著書『3.11 大津波の対策を邪魔した男たち』(青志社)で告発した。この告発は、一般の人だけでなく、地震学者など専門家の間でも話題になっている』、「島崎邦彦」氏は前原子力規制委員会委員(委員長代理)でTVでもよく顔が放映されていた。勇気ある内部告発だ。
・『「おかしなことが起こっている」だが背景はわからなかった 島崎さんは、2002年以降、津波のリスク評価が水面下で巧妙にねじ曲げられていった経緯を、公開されていなかった議事録や電子メールなどを引用して、研究者や官僚など関係者の実名も出して細かく描写している。 311前に、津波のリスクを小さくしようとする「おかしなこと」が起こっていると島崎さんは感じていたが、背景はわかっていなかった。後になって、原子力ムラが関係していたと考えると、疑問が氷解したという。原子力ムラの実体は、原発を推進するために、電力会社を中心に、大企業や経済産業省、研究者、メディアなどが絡み合ったコングロマリットのようなものだとされている。 地震リスク評価の第一人者だった島崎さんによる内部告発であることには重みがある。震災後には原子力規制委員会の委員長代理も務め、原子力ムラの実態と力の大きさをよく知る立場にあったことから、告発の信頼性が高まっている』、「地震リスク評価の第一人者だった島崎さんによる内部告発であることには重みがある。震災後には原子力規制委員会の委員長代理も務め、原子力ムラの実態と力の大きさをよく知る立場にあったことから、告発の信頼性が高まっている」、その通りだ。
・『告発「地震本部のリスク評価を内閣府がねじ曲げた」 この本で主に描かれているのは、2002年から2005年にかけて、政府の地震調査研究推進本部(地震本部)による地震のリスク評価(長期評価)を、内閣府がねじ曲げていく過程だ。 地震本部は、文部科学省に事務局があり、地震学者らが月一回程度集まって、各地域でこれからどんな地震が発生するか、長期的な予測(長期評価)をまとめている。「マグニチュード(M)7程度の首都直下地震の発生確率は、今後30年以内で70%程度」「南海トラフでM8〜9級の巨大地震が20年以内に起こる確率は60%程度」*1といった予測を発表している組織だ。 一方の内閣府は、国の防災を担当しており、中央防災会議の事務局でもある。地震などの災害にどう備えるか、防災基本計画の作成などをしている。リスクを評価する地震本部、そのリスクを管理するのが内閣府という役割分担になる。 2002年7月、島崎さんらが中心になって、東北地方の太平洋側で、どこでも津波高さが10mを超えるようなM8級の地震(津波地震)が発生するおそれがあるという新たな予測(長期評価)を地震本部がまとめた*2。これに従えば、福島第一原発の津波想定は従来の3倍近くに上昇し、大がかりな対策工事を迫られることになる*3。 この長期評価の発表直前、内閣府の担当者から「防災担当大臣が非常に懸念している」「発表を見送れ」と、地震本部事務局にメールが送られる(画像参照)。発表が止められないとわかると「津波対策をしなくて良い」と読める文言を挿入するよう内閣府は迫り、長期評価は改変されてしまう*4。 さらに2003〜2005年にかけて、中央防災会議が東北地方の津波対策をまとめる過程で、地震本部の津波地震は葬られてしまう。明治三陸地震のようなすでに起きた津波地震より、長い間地震が起きた記録が無いその南側(宮城〜福島沖)の方が危ないという地震学者らの警告は無視されたのだ。 (*配信先サイトのためメール画像が表示されていない方はJBpressにて記事をご覧ください)』、「2002年7月、島崎さんらが中心になって、東北地方の太平洋側で、どこでも津波高さが10mを超えるようなM8級の地震(津波地震)が発生するおそれがあるという新たな予測(長期評価)を地震本部がまとめた*2。これに従えば、福島第一原発の津波想定は従来の3倍近くに上昇し、大がかりな対策工事を迫られることになる*3。 この長期評価の発表直前、内閣府の担当者から「防災担当大臣が非常に懸念している」「発表を見送れ」と、地震本部事務局にメールが送られる(画像参照)。発表が止められないとわかると「津波対策をしなくて良い」と読める文言を挿入するよう内閣府は迫り、長期評価は改変されてしまう*4」、「さらに2003〜2005年にかけて、中央防災会議が東北地方の津波対策をまとめる過程で、地震本部の津波地震は葬られてしまう。明治三陸地震のようなすでに起きた津波地震より、長い間地震が起きた記録が無いその南側(宮城〜福島沖)の方が危ないという地震学者らの警告は無視されたのだ」、「内閣府」の妨害工作が功を奏した形だ。
・『内閣府の担当者が地震本部に送ったメール 「内閣府の防災担当は、津波地震のうち、明治三陸地震だけにそなえれば良い、とした。このため『備える必要がない』とされた地域で、多数の人々が3.11大津波の犠牲となった」と島崎さんは述べている』、「内閣府の防災担当は、津波地震のうち、明治三陸地震だけにそなえれば良い、とした。このため『備える必要がない』とされた地域で、多数の人々が3.11大津波の犠牲となった」、これは初めtて知ったが、犯罪的だ。
・『中央防災会議が想定した津波の発生場所 東日本大震災による死者・行方不明者は1万8423人*5。死者の9割は津波による溺死だった。さらに震災関連死も3789人*6に上る。津波による死者の大半は、中央防災会議が「備える必要がない」と油断させていた宮城県より南で亡くなっている。 *1 地震調査研究推進本部 今までに公表した活断層および海溝型地震の長期評価結果一覧(2023年1月13日) *2 地震調査研究推進本部 地震調査委員会 「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価について」 2002年7月31日 *3 当時、原発の規制を担当していた原子力安全・保安院は、長期評価によれば福島第一原発にどれぐらいの津波が襲来するか計算するよう要請したが、東電は40分くらい抵抗して、逃げ切った。長期評価が福島第一に大きな影響をもたらすことを長期評価発表当時から東電は知っていたのだ。 *4 木野龍逸 「長期評価の発表を防災担当大臣が『懸念』し修正を要求」 2018年8月1日 Level7news *5 警察庁緊急災害警備本部 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の警察措置と被害状況 2023年3月10日 *6 復興庁 東日本大震災における震災関連死の死者数 2022年6月30日)』、「原発の規制を担当していた原子力安全・保安院は、長期評価によれば福島第一原発にどれぐらいの津波が襲来するか計算するよう要請したが、東電は40分くらい抵抗して、逃げ切った。長期評価が福島第一に大きな影響をもたらすことを長期評価発表当時から東電は知っていたのだ」、これまで「東電」は大きな津波襲来を予想してなかったとしているが、実際は大きな津波襲来のシミュレーションを「40分くらい抵抗して、逃げ切った」、悪質だ。
・『津波対策には金が必要、ならば評価を小さくしてしまえ 科学者たちが津波のリスク評価をまとめた。それは従来の想定よりかなり大きいので、対策にお金がかかる。「ならば評価を小さくしてしまえ」とリスクを管理する側(内閣府)が迫る。それは科学をねじ曲げる異常な動きだ。食品安全委員会が調べた食品のリスクを、厚生労働省が、対策が難しいからと変えさせてしまうようなものである。ところが東北地方の津波想定では、それが起きていたのだ。 「原子力ムラが内閣府防災担当を使って、国の地震防災計画から福島県沖の津波地震を除かせたのだ。私はそう思っている」と島崎さんは推察している。 それは島崎さんの思い込み、根拠の無い陰謀論だという批判もある。確かに、2002年から2005年にかけて地震本部のリスク評価がねじ曲げられた過程で、原子力ムラの圧力が働いた証拠は見つかっていない。ただし別の時期では、同様のリスク評価ねじ曲げに、原子力ムラが関わっていた。行政文書に記録が残っている。 例えば本書の8、9章では、東電が震災直前の2011年、地震本部の長期評価の改訂作業に介入し、自社に都合の悪い津波想定が公開されないようにしていた事実が明らかにされている。長期評価の事務局である文科省と東電が秘密会合を何度も開き、公開前の長期評価の文言を改変していた*7。 本書の第1章で触れられている事例は、1997年の津波想定つぶしだ。これは2002年長期評価の一つ前の津波想定についての出来事である。建設省(現国土交通省)など4省庁がまとめていた津波想定は、福島第一の津波想定を超え、敷地に遡上してしまうものだった。電力会社は、これが発表されることを恐れて、原発を推進する通商産業省(現経済産業省)を通して、発表しないように、あるいは内容を書き換えるように、建設省に圧力をかけていた。その内部文書が、311の後に開示されている*8。 このように、1997年と2011年については、原子力ムラが圧力をかけた確実な証拠がある。その間の2002〜2005年にかけてだけ、何も裏工作が無かったとは、むしろ考えにくい。 また、津波想定ではないが、2000年代に開かれた政府の原発耐震強化についての審議会で、電力会社が専門家たちに根回しして都合の良い内容を代弁してもらったり、あるいは具合の悪いことは黙っていてもらったりして、耐震策を骨抜きしようとしていたことも明らかになっている*9。裏工作する手法、実行を担当する社員、予算、コネクション、それらを電力会社はずっと豊富に維持していたのだ。 *7 橋本学、島崎邦彦、鷺谷威 「2011年3月3日の地震調査研究推進本部事務局と電力事業者による日本海溝の長期評価に関する情報交換会の経緯と問題点」 日本地震学会モノグラフ第3号「日本の原子力発電と地球科学」 2015年3月 p.34-44 木野龍逸 「文科省から政府事故調および国会事故調に提出された資料」 2019年1月22日 添田孝史 「原子力安全・保安院 行政文書ファイル『企調課提出資料』の残りぜんぶ」 2019年1月9日 *8 添田孝史 「四省庁報告書、七省庁手引き関連」 *9 石橋克彦 電力会社の「虜(とりこ)」だった原発耐震指針改訂の委員たち:国会事故調報告書の衝撃 科学82(8)2012年8月 p.841-846 添田孝史 「電力業界が地震リスク評価に干渉した4つの事例」 日本地球惑星科学連合2015年大会 [S-CG56] 日本の原子力発電と地球科学:地震・火山科学の限界を踏まえて 口頭発表 添田孝史 「事故前、対策をとるべきだと伝えていた」Level7news 2021年3月12日 東電の担当者が、津波や地震の研究者に根回していたとメールで報告している』、「津波対策には金が必要、ならば評価を小さくしてしまえ」との「内閣府」のやり方は乱暴極まる。「2000年代に開かれた政府の原発耐震強化についての審議会で、電力会社が専門家たちに根回しして都合の良い内容を代弁してもらったり、あるいは具合の悪いことは黙っていてもらったりして、耐震策を骨抜きしようとしていたことも明らかになっている」、「東電の担当者が、津波や地震の研究者に根回していたとメールで報告している」、なるほど。
・『1000億円規模の利益を守るために見捨てられた津波死者 古い原発を無対策のまま延命させて運転継続できれば、年に1000億円オーダーの利益を得ることができる。そのために津波想定の見直しを、少しでも遅らせたい。そんな動機による東電の裏工作が、原発事故を引き起こしただけでなく、311の津波の死者を増やしてしまったのだろうか。 中央防災会議は311後、「これまでの地震・津波の想定結果が、実際に起きた地震・津波と大きくかけ離れていたことを真摯に受け止め、今後の地震・津波の想定の考え方を抜本的に見直さなければならない」と反省した*10。しかし、なぜ想定を誤ったのか、原因は追及されていない。 「原因の追及がなければ、過ちは繰り返される。過ちがどのようにして起こったか、誰が何をしたかが追及されない限り、何も変わらない」と島崎さんは述べている。 島崎さんは、福島原発事故を調べた政府の事故調査委員会も、内閣府の圧力についての追及が腰砕けになってしまったことを指摘している。「政府事故調は途中で変わったようだ。追及していくうちに、政府自身が追及される立場となり、急に方向転換したのだろう」 震災から12年経つが、まだよくわかっていない重要なことは多い。 *10 中央防災会議 東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会報告 2011年9月28日)』、「政府の事故調査委員会も、内閣府の圧力についての追及が腰砕けになってしまったことを指摘している。「政府事故調は途中で変わったようだ。追及していくうちに、政府自身が追及される立場となり、急に方向転換したのだろう」、こうした勇気ある内部告発が出てきたことは大いに結構なことだ。ただ、第一線を引退してから出てきたのは残念だ。事故原因の追究がこれにより少しでも進展することを期待したい。
次に、5月25日付け日刊ゲンダイが掲載した経済ジャーナリストの重道武司氏による「日本原子力発電は“ぼったくりバー”? 2カ所とも稼働停止なのに1000億円の売り上げで黒字」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/323463
・『「原子力ムラのぼったくりバー」。電力業界関係者らの間ではこんな皮肉も飛び交う。日本原子力発電──原電のことだ。 東京・上野に本店を置く原発専業の卸電気事業者で、茨城県東海村と福井県敦賀市の2カ所に発電所を持つ。ここで発電した電気を東京電力ホールディングス(HD)をはじめとした電力大手に売って収益を稼ぐというのがビジネスモデルだ。 だが、どちらの原発も2011年の東日本大震災による東京電力福島第1原発の過酷事故以降、稼働停止中だ。要するに現時点では売り物となる商品が何もない。にもかかわらず、この会社は毎期1000億円前後の売上高を着実に計上し、しかも黒字を維持し続けているのである。 先週18日に発表された23年3月期決算も減収減益とはいえ売上高は921億円(前期比0.9%減)。9億円弱の特別利益を計上したこともあって最終利益18億円(同25.1%減)を確保した。6年連続の黒字だ。 なぜこんな芸当が可能なのか。その“からくり”が「基本料金」と呼ばれる料金体系だ。原電と電気の供給契約を交わしている電力大手5社(東電HD、東北電力、中部電力、北陸電力、関西電力)は購入した電力量が仮にゼロであっても毎年一定の料金を原電に支払い続けなければならないような仕組みになっているのである。これが原電の経営を支えているわけで、今や「(原電に対する)一種の支援金・寄付金と化している」(東電HD関係者)と言ってもよい。 その総額たるや12年度から22年度までで実に1兆2141億円。原電の連結総資産7285億円(今年3月末)を軽く上回る。 原電の購入先5社のうち東電HD、東北電と北陸電の3社は6月分から家庭用電気の規制料金の値上げに踏み切る。経済産業省が値上げの認可に向けて開いた公聴会などでは当然、こうした原電への「対価なき巨額支出」(事情通)を疑問視する声が上がったとされるが、西村康稔経産相は「(原電と)共同開発した原発の人件費や修繕費などだ」と断定。あっさりと原価算入を認めた。最終的には家計の負担で原電を延命させていることにもなる』、「電力大手5社」は「購入した電力量が仮にゼロであっても毎年一定の料金を原電に支払い続けなければならないような仕組み」、「12年度から22年度まで」の「売上高」は年平均1103億円、「原子力村」のなかで優雅に儲け続けられる「仕組み」のようだ。
タグ:原発問題 (その21)(これが証拠メールだ 地震本部の警告を骨抜きするよう圧力かけた内閣府の罪 【地震大国日本の今】「津波リスクはなぜ軽んじられた」地震学会元会長が告発、日本原子力発電は“ぼったくりバー”? 2カ所とも稼働停止なのに1000億円の売り上げで黒字) JBPRESS 添田 孝史氏による「これが証拠メールだ、地震本部の警告を骨抜きするよう圧力かけた内閣府の罪 【地震大国日本の今】「津波リスクはなぜ軽んじられた」地震学会元会長が告発」 「島崎邦彦」氏は前原子力規制委員会委員(委員長代理)でTVでもよく顔が放映されていた。勇気ある内部告発だ。 「地震リスク評価の第一人者だった島崎さんによる内部告発であることには重みがある。震災後には原子力規制委員会の委員長代理も務め、原子力ムラの実態と力の大きさをよく知る立場にあったことから、告発の信頼性が高まっている」、その通りだ。 「2002年7月、島崎さんらが中心になって、東北地方の太平洋側で、どこでも津波高さが10mを超えるようなM8級の地震(津波地震)が発生するおそれがあるという新たな予測(長期評価)を地震本部がまとめた*2。これに従えば、福島第一原発の津波想定は従来の3倍近くに上昇し、大がかりな対策工事を迫られることになる*3。 この長期評価の発表直前、内閣府の担当者から「防災担当大臣が非常に懸念している」「発表を見送れ」と、地震本部事務局にメールが送られる(画像参照)。発表が止められないとわかると「津波対策をしなくて良い」と読める文言を挿入するよう内閣府は迫り、長期評価は改変されてしまう*4」、「さらに2003〜2005年にかけて、中央防災会議が東北地方の津波対策をまとめる過程で、地震本部の津波地震は葬られてしまう。明治三陸地震のようなすでに起きた津波地震より、長い間地震が起きた記録が無いその南側(宮城〜福島沖)の方が危ないとい う地震学者らの警告は無視されたのだ」、「内閣府」の妨害工作が功を奏した形だ。 「内閣府の防災担当は、津波地震のうち、明治三陸地震だけにそなえれば良い、とした。このため『備える必要がない』とされた地域で、多数の人々が3.11大津波の犠牲となった」、これは初めtて知ったが、犯罪的だ。 「原発の規制を担当していた原子力安全・保安院は、長期評価によれば福島第一原発にどれぐらいの津波が襲来するか計算するよう要請したが、東電は40分くらい抵抗して、逃げ切った。長期評価が福島第一に大きな影響をもたらすことを長期評価発表当時から東電は知っていたのだ」、これまで「東電」は大きな津波襲来を予想してなかったとしているが、実際は大きな津波襲来のシミュレーションを「40分くらい抵抗して、逃げ切った」、悪質だ。 「津波対策には金が必要、ならば評価を小さくしてしまえ」との「内閣府」のやり方は乱暴極まる。「2000年代に開かれた政府の原発耐震強化についての審議会で、電力会社が専門家たちに根回しして都合の良い内容を代弁してもらったり、あるいは具合の悪いことは黙っていてもらったりして、耐震策を骨抜きしようとしていたことも明らかになっている」、「東電の担当者が、津波や地震の研究者に根回していたとメールで報告している」、なるほど。 「政府の事故調査委員会も、内閣府の圧力についての追及が腰砕けになってしまったことを指摘している。「政府事故調は途中で変わったようだ。追及していくうちに、政府自身が追及される立場となり、急に方向転換したのだろう」、こうした勇気ある内部告発が出てきたことは大いに結構なことだ。ただ、第一線を引退してから出てきたのは残念だ。事故原因の追究がこれにより少しでも進展することを期待したい。 日刊ゲンダイ 重道武司氏による「日本原子力発電は“ぼったくりバー”? 2カ所とも稼働停止なのに1000億円の売り上げで黒字」 「電力大手5社」は「購入した電力量が仮にゼロであっても毎年一定の料金を原電に支払い続けなければならないような仕組み」、「12年度から22年度まで」の「売上高」は年平均1103億円、「原子力村」のなかで優雅に儲け続けられる「仕組み」のようだ。