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小売業(一般)(その8)(「イトーヨーカ堂」3題:「イトーヨーカ堂」が都内屈指の好立地店から立ち退きのナゼ…ライバル「イオン」が後継テナントに、イトーヨーカドー、23区全店訪れて見えた"厳しさ" 消費者理解の欠如に、ちぐはぐな改善策も…、ヨーカドー、大量撤退で「無責任」批判なぜ起きた 「地元の商店街をぶち壊したのに…」の声の"誤解") [産業動向]

小売業(一般)については、昨年5月2日に取上げた。今日は、(その8)(「イトーヨーカ堂」3題:「イトーヨーカ堂」が都内屈指の好立地店から立ち退きのナゼ…ライバル「イオン」が後継テナントに、イトーヨーカドー、23区全店訪れて見えた"厳しさ" 消費者理解の欠如に、ちぐはぐな改善策も…、ヨーカドー、大量撤退で「無責任」批判なぜ起きた 「地元の商店街をぶち壊したのに…」の声の"誤解")である。

先ずは、昨年12月7日付け日刊ゲンダイが掲載した経済ジャーナリストの重道武司氏による「「イトーヨーカ堂」が都内屈指の好立地店から立ち退きのナゼ…ライバル「イオン」が後継テナントに」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/333023
・『50年以上も連れ添った古女房を叩き出し、新しいカミさんを迎え入れる。しかも新旧両妻は、かねて因縁の間柄──とあっては格好の世間話ネタと言えなくもない。 流通大手、イトーヨーカ堂が「都内屈指」(業界関係者)ともいわれる好立地店から立ち退きを迫られる。後継テナントと目されているのは、最大のライバル、イオンだ。 焦点となっているのは「イトーヨーカドー上板橋店」。東武東上線上板橋駅から徒歩2分という超駅近物件だ』、こんな「好立地店から立ち退きを迫られる」には特別の事情があるのだろう。 
・『■1971年に開業  地上4階建て、食料品のほか衣料品なども扱う総合スーパー(GMS)で、平日昼間でも多くの買い物客で賑わう。ヨーカ堂は土地・建物を所有する地元の不動産会社、小宮恒産と賃貸借契約を結び、1971年に開業した。 しかし、本体の業績悪化を受けて2000年以降、小宮恒産側に複数回にわたって賃料の減額を要請。小宮恒産もやむなくこれに応じてきたが、この間、ヨーカ堂側からは「建て替えを含む収益力向上に向けた抜本的な提案が何らなされなかった」(事情通)という。) このため、小宮恒産は21年末での賃貸借契約の終了を通告。ヨーカ堂側がこれを無視して居座り続けたことから明け渡しを求めて東京地裁に提訴、係争事件に発展していた。その結果、1審、2審ともヨーカ堂の敗訴で終わったことから、ヨーカ堂としては「上告審まで争っても勝ち目はない」(関係者)と判断、11月下旬になって退去を決めた。 店舗閉鎖の時期などは今後、両者で協議するが、小宮恒産側は「立ち退き料を支払う意向を示している」(事情通)という。そのうえで小宮では現有物件を解体。建て替えを行ってイオンに賃貸する方向のようだ。イオンでは新たな都市型ショッピングセンターブランド「そよら」での展開も含めて出店形態を検討しているとされる。 ヨーカ堂は3期連続最終赤字に陥っている。このため、親会社のセブン&アイ・ホールディングスは都内を中心に店舗網を集約。足元124店舗を26年2月末までに93店舗に絞り込む計画を進めている。ただ、上板橋店の“喪失”は「想定外」(幹部)とみられ、グループ内からは「痛い」の声も漏れる』、「本体の業績悪化を受けて2000年以降、小宮恒産側に複数回にわたって賃料の減額を要請。小宮恒産もやむなくこれに応じてきたが、この間、ヨーカ堂側からは「建て替えを含む収益力向上に向けた抜本的な提案が何らなされなかった」(事情通)という」、「本体の業績悪化」を理由として「値下げ」を迫ったようだが、本来はあくまで「上板橋店」が生み出すキャッシュフローが基礎となるべきで、そうすれば値下げの理由はなかっらのかも知れない。「小宮恒産は21年末での賃貸借契約の終了を通告。ヨーカ堂側がこれを無視して居座り続けたことから明け渡しを求めて東京地裁に提訴、係争事件に発展していた。その結果、1審、2審ともヨーカ堂の敗訴で終わったことから、ヨーカ堂としては「上告審まで争っても勝ち目はない」(関係者)と判断、11月下旬になって退去を決めた」、「ヨーカ堂側」はよにかく安くすることを優先し、よもやライバルが狙っているとは知らなかったのだろう。交渉担当チームはあとで、こっぴどく叱られた筈だ。

次に、本年2月16日付け東洋経済オンラインが掲載したチェーンストア研究家・ライターの谷頭 和希氏による「イトーヨーカドー、23区全店訪れて見えた"厳しさ" 消費者理解の欠如に、ちぐはぐな改善策も…」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/735015
・『イトーヨーカドーが北海道・東北・信越の全17店舗をこの春から順次撤退していくというニュースが報道された。多くの論者が指摘する通り、都心周辺の店舗を残し、都心に特化する戦略だ。 前回(大量閉店「イトーヨーカドー」どこで間違えたのか)はこうした経緯に至る過程を、立地戦略というマクロな視点から概観した。 今回は、よりミクロな視点でヨーカドーについて考えてみよう。都心でヨーカドーは勝ち抜くことができるのか? それを考えるべく、筆者は週末から平日にわたって、東京都23区にあるイトーヨーカドー全15店舗を実際に巡り、現場を徹底的に分析してきた。 この後繰り広げる論考は、あくまで、イチ消費者かつイチ・イトーヨーカドーファンである筆者の個人的な感想に過ぎない。しかし、数日でギュッと見てきたからこその濃さはあるはずだ』、興味深そうだ。
・『見えてきたヨーカドーの“リアルな姿”  というわけで、筆者は数日間で23区の15店舗を巡った(疲れた)。連続でイトーヨーカドーに行き続けることはなかなかないが、それゆえに現場レベルで多くの発見を得ることができた。まずは、回ってみての率直な感想を箇条書きで説明していこう。 ①どの店舗も、食料品売り場と、テナントとして入居しているチェーンストアには人がいる(逆にほとんどの客がそこにしかいない)) このことは、すでに情報として知ってはいたが、実際に行くと、すごい。本当に衣料品コーナーや雑貨コーナーには人がいないのだ。 ヨーカドーの店舗通路は広く、それは歩きやすいということでもあるのだが、人がいないと逆に不思議な風通しが生まれて、余計寂しく思えてしまう』、「衣料品コーナーや雑貨コーナーには人がいないのだ。 ヨーカドーの店舗通路は広く、それは歩きやすいということでもあるのだが、人がいないと逆に不思議な風通しが生まれて、余計寂しく思えてしまう」、なるほど。
・『一方、盛況だった食料品売り場  逆に食料品売り場はどの店もかなり混んでいて、活気がある。特に大森店などは非常に賑わいがあり、試食品販売の声なども相まって、楽しい。 食料品売り場は、さまざまな装飾もなされていて、わくわくする空間もある。 また、最近改装した店舗の食料品売り場ではディスプレイなどにも工夫が凝らされている。 たとえば、イトーヨーカドーアリオ西新井店では、商品棚の上にディスプレイを置いており、イトーヨーカドーアリオ北砂店でも、「ご当地レトルトカレーライブラリー」として、カレーが陳列されていた。食料品売り場にはこうした工夫もあった』、「食料品売り場」はどこも「盛況」のようだ。「食品スーパー」に堅調なところが多い訳だ。
・『チェーン系のテナントも混んでいた  また、もう一つ混んでいるのが、入居するチェーン系のテナントだ。 代表的なものに、マクドナルド、100円ショップ、ミスタードーナツ、カルディ、GUなどがある。GMS部分がガラガラでも、こうした店には人が集まっている。つまり、人がいないわけではないのだ。 2024年秋頃の閉店が決定している上板橋店で一番混んでいたのは、マクドナルドだった』、「チェーン系のテナント」は激烈の競争に勝ち残った勝者だ。
・『②改装に伴い、売り場の至る所に空きがある。バックヤードをあけすけに見せてしまっている  ヨーカドーは衣料品部門の不採算化を受けて、大規模な店舗改革に乗り出している。後述するが、不採算部門をテナントに変える方向だ。 現在、どの店でもそのためなのか、改装に伴って、売り場に空きが見られた。本来は店舗を盛り上げるための改装なのだが、逆に売り場が空きだらけで、イメージとして寂しさが増幅している。 もちろん、これは一過性のものなのだろうが、この問題が本質的なのは、例えばポップアップストアの展開前の機材がそのまま置かれていたり、客から見えるところにダンボールが積んであったり、「バックヤード」があからさまに見えてしまっていることだ。 というより、「バックヤード」を隠す意識があまりないようにさえ思える。 たとえば、イトーヨーカドー綾瀬店では、紅白幕で隠しているが、商品やダンボールの類が見えてしまっていた。また、イトーヨーカドー赤羽店では、無造作に置かれたマネキンたちが確認できた。 もちろん店舗運営において、こうしたバックヤードを完全に隠すことはとても難しいだろう。しかし、消費者の立場からすれば、ダンボールが乱雑に置かれていたり、売り場がスカスカなのは、良い印象を抱かないはずだ。 実際、百貨店などでフロアの改装が行われる場合は、目隠しのための壁が用意されていることが多い。今回のイトーヨーカドー行脚を通じて、「あの壁には意味があったんだな」と感じさせられた』、「百貨店などでフロアの改装が行われる場合は、目隠しのための壁が用意されていることが多い。今回のイトーヨーカドー行脚を通じて、「あの壁には意味があったんだな」と感じさせられた」、なるほど。
・『せっかくの改革案も、消費者目線ではない感が…  ③改装した店舗では、商品構成を大きく変えているが、それが逆にわかりづらい 近年、ヨーカドーは業績悪化を受けて、さまざまな売り場改革をしている。 例えば、「イトーヨーカドー高砂店」では、これまで衣料品や雑貨として売られていたフロアが再編され「新しい生活様式のフロア」となっている。高砂店以外のいくつかのヨーカドーでもこうした売り場は見られた。) この編成によって、商品はその種類ではなく、「家事をする」「毎日をサポートする」「身なりを整える」というように機能で分類されている。 これ自体はより生活に密着した売り場にしようという意図が見えるのだが、問題はその分類のわかりづらさだ』、「機能で分類されている。 これ自体はより生活に密着した売り場にしようという意図が見えるのだが、問題はその分類のわかりづらさだ」、一時的にはやむを得ないだろう。
・『DX面でも本末転倒な施策が見られた  例えば、高砂店の「家事をする」というコーナーには時計やライト、マウスなどが分類されて置かれていた。正直いえば「家事をする」というイメージで、これらの商品を探し出すのは難しいのではないかと思う。 こうした点で、逆に売り場のわかりにくさが増幅しているところも散見された』、「高砂店の「家事をする」というコーナーには時計やライト、マウスなどが分類されて置かれていた。正直いえば「家事をする」というイメージで、これらの商品を探し出すのは難しいのではないかと思う。 こうした点で、逆に売り場のわかりにくさが増幅しているところも散見された」、これも一時的にはやむを得ないだろう。
・『④セルフレジが機能していない  また、近年ではどこのスーパーでも採用されているが、改装した店舗では、セルフレジの台数も多い。 しかし、特にヨーカドーの場合、客層はシニア層が多く、店舗によってはほとんどセルフレジが使われていないところもあった。セルフレジが多い分、有人レジの台数は少なく、レジの行列が長くなっているところがあるのだ。 DXに伴う改革は、小売店であればもちろん対応する必要があるだろう。しかしなぜDXをするのかといえば、それは顧客の利益になるからだ。しかし、現在のヨーカドー店舗の多くでは、本末転倒な事態が起こっている。 労働者不足の昨今では、セルフレジをある程度導入しないと現場が回らない現実もあるかもしれないが、だからといってシニア層の足が遠のく原因になってはいけないはずだ。 ここまで、店舗を巡って感じた率直な意見を書いてきた。正直なところ、都内の店舗でも、駅前の便利なところにあるから行く、ぐらいに思えてしまうのがつらい』、「特にヨーカドーの場合、客層はシニア層が多く、店舗によってはほとんどセルフレジが使われていないところもあった。セルフレジが多い分、有人レジの台数は少なく、レジの行列が長くなっているところがあるのだ」、店の特性に合わせた「有人レジの台数」に「すべきだろう。
・『15店舗めぐった筆者なりの改善策を考えてみた  では、イトーヨーカドーに勝ち筋はあるのだろうか。 以下、ここまでのフィールドワークを通して、僭越ではあるが、イトーヨーカドーがどうなれば、より楽しい買い物体験ができるのかを考えてみた。 これは、コンサルとか偉そうなものではなく、私がイトーヨーカドーにこうなってほしい、というような、それなりのファン精神を含んだイチ顧客としての願望混じりのものであることをあらかじめ断っておきたい。 ①ショッピングモール化を推し進める(食料品売り場の他に客数が多いのは、入居しているチェーンである。特にミスタードーナツやカルディ、100円ショップ(ダイソー、キャンドゥ、Seria等)に多くの人が集まっている。 これらが人気の理由については、それぞれいくつかの記事も発表されているだろうからここでは詳しく書かないが、とにかく売るものの「コンテンツ」でいえば、ヨーカドーはこれらの店に敵わない。 であれば、GMSという「コンテンツ」は捨て、むしろ、そうしたコンテンツをさまざまに集め配置する「プラットフォーム」に変化することが一つの可能性としてあるだろう。つまり、ショッピングモール化である。) 実は、ヨーカドーはこうしたショッピングモール化に舵を切ろうとしている。 近年の改革では、GMSとして扱う商品のうち、不採算部門である肌着以外の衣料品売り場をなくし、それらを専門店へと変化させようとしている。いわば、GMSという存在自体を否定する改革だ。 では、これで一安心かといえばそうではないと思う。というのも、「ショッピングモール化」は確かに必要なプロセスにしても、最終的な目的ではないからだ。そこで次の②だ』、「「ショッピングモール化」は確かに必要なプロセスにしても、最終的な目的ではない」、「最終的な目的」とは何なのだろう。
・『②顧客ニーズをもっと汲み取り、消費者理解を進める  なぜ、テナントに人が集まるのか。それは入居するチェーンストアが、顧客に選ばれているからだ。なぜ、顧客に選ばれているのかといえば、それは顧客ニーズを満たしているから。 100均は安く、さまざまな商品が手に入るし、意外な商品があったりもして楽しい買い物体験を提供してくれる。ミスタードーナツは、美味しいドーナツを低価格で食べられ、居心地も良く、最近では多くのファンも生み出している。こうした人気の店舗は、常に消費者が何を求めているのかを敏感にキャッチし、それを経営戦略に活かしている。 あまりにも当然だが、消費者理解がすべてにおいて重要なのだ。消費者の動向を考えれば、GMSという業態が古く、ショッピングモールのようなもののほうがニーズを満たしていることは明白で、だからこそショッピングモール化を進めるべきなのだ』、「GMSという業態が古く、ショッピングモールのようなもののほうがニーズを満たしていることは明白で、だからこそショッピングモール化を進めるべきなのだ」、その通りだ。
・『そこに消費者理解の姿勢はあるのか?  では、こうした消費者理解の姿勢が、イトーヨーカドーにあるかといえば、やはり疑問符が付いてしまう。それは、先ほども述べてきたところだ。 実は、ヨーカドーはもともと、消費者理解、消費者に寄り添う経営を大事にしてきた企業であった。その創業者である伊藤雅俊は、ヨーカドーの事業を多角化せず、GMS業態だけを守り続けた。それは、事業を多角化して、本業のGMSの売り場が荒れると顧客からの信用がなくなってしまうという伊藤の危機感にあったといわれている。 また、POSシステムによる単品管理を行ったのも早かったが、これも伊藤が、かつての個人商店のように「顔の見えるお客さん」がそれぞれどのようなニーズで商品を購入しているのかを的確に把握できるようにするためのものであった(三品和広+三品ゼミ『総合スーパーの興亡』)。) そもそも、ヨーカドーの始まりは、浅草にあった洋品店で、そこでは顔の見える関係性の中で商いが行われていたはずだ。そのような消費者理解の原点に立ち返るべきなのではないか』、「顔の見える関係性の中で商いが行われていたはずだ。そのような消費者理解の原点に立ち返るべきなのではないか」、今さら原点に立ち返」ろうとしても困難なのではなあろうか。
・『③立地を活かす  創業者の伊藤は、その立地について非常に慎重だったという。出店地域の交通量や家族構成などを綿密に調べあげたうえで最終的に出店にGOサインを出した。そのため、特に都内23区のヨーカドーの立地は非常に優れている。 また、ヨーカドーが多く出店をする、江戸川区、江東区などの東東京エリアは、東京スカイツリーの開業以後、不動産価値も上がり続けている地域だ。 近年では、かつしかけいたのマンガ『東東京区区』でその地域の多様性が描かれるなど、文化的に再注目を集めている。筆者の知り合いも、ヨーカドーがある木場に引っ越すなど、エリアとしての価値は高い。 その点で、こうしたエリアに店舗を持っていることの意義は深いはずだ。ヨーカドーが店舗改革の成功例としている大森店は、大森という下町の代表的な場所に位置していて、食料品売り場の活気も非常にある。試食品販売なども盛んで、かつての商店街を見ているかのような賑わいであった。 試食品の実演コーナーを設けるなどの工夫が、最近の店舗改革では見られるが、そうした改革で、いかに下町の活気をうまく取り込めるかが重要だ』、「大森店」のような「成功例」を如何に増やしていくかが重要だ。
・『買い物の楽しさをヨーカドーは取り戻せるか  というわけで、ずいぶんと好き勝手に書いてしまった。これらは15店舗を全部巡ったからこそ見えてきた視点だったと思う。) 基本的に筆者は、楽しく買い物をしたいし、楽しんで買い物をできる場所が増えてくれればいいな、と感じている。 伊藤雅俊が築いたヨーカドーは、立地の面、そして知名度の面でも、たぶん、うまくやれば楽しい買い物体験を提供できる場所になるポテンシャルはあると思う。 ヨーカドーが今後どうなっていくのかは誰にもわからない。 しかし、筆者はまた数年後、23区内のヨーカドーを全部巡ってみようと思う。そのとき、ヨーカドーで楽しい買い物経験ができることを願いながら……。 =敬称略= 筆者が巡った23区内・全店舗はこちら)』、「うまくやれば楽しい買い物体験を提供できる場所になるポテンシャルはある」、そのポテンシャルを引き出して、「買い物の楽しさを」「取り戻せるか」がポイントだ。

第三に、2月21日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したチェーンストア研究家・ライターの谷頭 和希氏による「ヨーカドー、大量撤退で「無責任」批判なぜ起きた 「地元の商店街をぶち壊したのに…」の声の"誤解"」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/735986
・『セブン&アイ・ホールディングス(HD)傘下のイトーヨーカ堂が、北海道・東北・信越地方の17店を閉店すると報じられた。同エリアからの撤退により、ヨーカドー空白地帯が拡大することになる。中四国、九州、沖縄にはすでにヨーカドーはない。 筆者はこれまで2回、このニュースを受けて、ヨーカドーの歴史や、実際の現地のフィールドワークを通して見えてきたそのリアルな姿について書いてきた。今回は、そのシリーズのラストとして、今回のヨーカドー撤退に伴って巻き起こった「ヨーカドーは無責任」という言説について、検討してみたい』、興味深そうだ。
・『商店街を潰したヨーカドーが撤退するのは無責任?  ヨーカドーが撤退するというニュースを受けて、各所から聞こえた声の一つが「無責任」という声だった。いろいろな人の投稿の要点をまとめると、こんな感じだ。 「ヨーカドーは出店する際にさんざん地元商店をぶち壊した。にもかかわらず、利益が上がらなければ撤退するとは無責任だ、けしからん」 このとき言われる「地元商店」とは往々にして「商店街」のことが念頭に置かれている場合が多く、こうした言説は、たしかに私たちの頭にすんなりと入ってくるものである。「スーパーvs商店街」とでもいおうか。) こうした構図は、なぜか私たちの頭の中に小売りをめぐる「型」としてインストールされている。「ありきたりな決まり文句」を「クリシェ」というが、まさにこうした言説は小売りをめぐるクリシェである。 今回、ヨーカドーが撤退するというニュースを受けて、私たちの中にあるそのクリシェが顔を出した、というわけだ。 しかし、この「スーパーが商店街を潰した」という構図、実はかなりイメージ先行のものであることを指摘しなければならない。 まず、最初に断っておかなければならないのは、もちろん、日本全国でみれば、ヨーカドー等のGMSが出店したことによって存続が厳しくなった中小小売店が存在することも確かだ、ということ。それはもちろん認識したうえで、このクリシェに隠された「ウソ」を見ていきたい。 『日本流通史: 小売業の近現代』などの著作を持つ満薗勇によれば、そもそも「商店街」という小売りの形態が本格的に成立したのは1920〜1930年代で、全盛期を迎えたのは1950年〜1970年代。そして、衰退期を迎えるのは1970年代以降。「商店街実態調査報告書」によれば、自身の商店街を「繁栄している」と回答したのは、1970年の39.5%から1990年には8.5%になる。 満薗が指摘するのは、この商店街が最も栄えた1950〜1970年代は同時に、総合スーパーが隆盛を極めた時期でもあったということだ。ダイエーが大きく店舗を伸ばしたのは1960年代だし、ヨーカドーがGMSとして「ヨーカ堂」となったのも1958年のことだ。 私たちのイメージの時系列でいえば、「商店街」→「スーパー」という流れで捉えられることが多いのだが、実はこの2つはかなりの時期、共存してきたのである』、「私たちのイメージの時系列でいえば、「商店街」→「スーパー」という流れで捉えられることが多いのだが、実はこの2つはかなりの時期、共存してきた」、なるほど。
・『「大店法廃止」への批判も、実は的外れ  実は、こうした併存の形は、現在でも都内を中心とするヨーカドーではかなり見ることができる姿でもある。 一つ前の記事で、筆者は23区のヨーカドーすべてを実際に見て回ったのだが、例えばヨーカドー大森店の近くには、大森の商店街があって、基本的にはどちらも賑わいがあった。私たちが「スーパーvs商店街」と思うほどには、その両者は鋭くは対立しないのである。 関連記事:イトーヨーカドー、23区全店訪れて見えた"厳しさ" また、こうした議論のときによく言われる「大店法廃止」の影響も、実は時期からいうと検討はずれの批判だ。) 「大店法」は1974年から始まった法律で、大規模な小売店舗の出店を規制するものであった。それがスタートした1974年は、すでに商店街の衰退は始まっていて、むしろ衰退していくものを守ろうという応急処置にしかならなかった。 大店法が廃止されたのは2000年で、さきほどの「商店街実態調査報告書」では、すでに、自身の商店街が繁栄している、と思っていたのは2%前後の人しかいなかった。大店法があろうがなかろうが、商店街の衰退は行くところまで行っていたのだ。 以上のようなデータも踏まえると、今回のヨーカドー撤退における批判が、イメージ先行であることがよくわかるだろう』、「大店法があろうがなかろうが、商店街の衰退は行くところまで行っていたのだ」、なるほど。
・『「スーパーマーケット=悪」論とファスト風土批判論は似ている  しかし、なぜ、こうした「スーパーvs商店街」という構図がここまで根強いイメージを持ち続けているのだろうか。 この点について、筆者は以前東洋経済オンラインで「地方都市の『ファスト風景化』勝手に憂う人の病理」という記事を書いていて、そこで取り上げた議論が参考にできる。 この記事では、「今の地方はチェーンストアやショッピングモールばかりになってつまらない」という、いわゆる「ファスト風土」を批判する人が多いことに対して、それがいかに「幻想の中の郊外像」にすぎないのかを提示し、なおかつ、そのような人が理想の街の姿として「商店街」を一つの典型パターンとして「人と人との触れ合い」を求める傾向にあると書いた。 今回ヨーカドーの撤退騒動で出てきたクリシェは、まさにこうした感覚と通じるものがあるのではないだろうか。つまり、「スーパー=悪」、「商店街=善」として、単純な善悪の問題でこうした出来事を片付けようという考え方である。 もちろん、これはヨーカドーに限った話ではない。例えばイオンモールなども、「地方の商店街を破壊した存在」として、これまで散々語られてきている。) では、こうした認識はどこから生まれるのか。重要なのは「交通」である。 この記事では、「商店街」を理想の街とする人々の考え方に、「自動車」という交通手段が登場しないことにも触れ、そうした人々の「街」観が「歩行ベース」のものなのではないか、とも書いた。 しかし、現実には、日本国民全体の車の保有台数は歴史上、現在がもっとも高く、多くの商業施設が国道沿いに誕生している。街の形が、線上になっているのだ。 その一方で駅前を中心とする歩行ベースの都市は(シャッター商店街が顕著に表しているように)、衰退している。 実は今回のヨーカドー問題についても、こうした「自動車」と「歩行」の問題は顔をのぞかせている。ヨーカドーが撤退する地域について、「別にヨーカドーがなくても車で少しいけばいくらでも商業施設はある」という意見が見られたからだ。 もちろん、高齢化社会が進み、免許を返納する高齢者が多くなってくることも踏まえる必要はあるし、それはそれで解決しなければいけない問題だが、たしかに』、「駅前からヨーカドーがなくなったとしても、ロードサイド沿いの店舗で買い物をする、という選択肢もある。 実際、駅前から少し離れれば、今回ヨーカドーが撤退した北海道、東北、信越でも、ショッピングモールをはじめとする多くの商業施設が立ち並んでいる。 その意味でも、イメージする「街」観のズレがこうした批判を生ませるのだ」、なるほど。
・『結局、すべてを決めるのは「顧客」  最後に、補足的に重要なことを述べておこう。 近年、商店街が衰退してきたことに対しては、さまざまな理由が指摘されている。その中でも多く語られるのは、結局、商店街自体が顧客にとって魅力あるものでなくなってきた、ということだ。 中小企業診断士の鈴木隆男はこの点について、商店街の「外の敵」、ではなくて「内の敵」がその衰退の要因の一つになっていたという(東京都中小企業診断士協会のサイトより)。 また、中沢孝夫は『変わる商店街』の中で、商店街にある店が「地域独占」で、ある種の「殿様商売」的になっていた可能性を指摘する。 共存していた商店街とGMSは、結果的にGMSだけが生き残っていく状態になったが、それは、顧客の好みを敏感に反映していたのが、GMSだったからではないか。イトーヨーカドーは、かつて「顧客理解」に大きな力を注ぎ、顧客の満足度を高めようとしていた(三品和広+三品ゼミ『総合スーパーの興亡』)。GMSに結果的に客が流れたのは、顧客ニーズを的確にくみ取ったゆえだろう。) こうして考えると、一つの「悪」の組織があって、それが何かを駆逐していくという単純な図式で消費の動向を見ることはできなくて、結局は顧客の満足度に寄与した店が生き残るという当然の結果が見えてくる。 その流れの中で、郊外の商業施設が盛り上がりを見せ、かつて商店街から流れた顧客を満足させてきたイトーヨーカドーが、今度は顧客を満足させられなくなり、苦戦を強いられている』、「結局は顧客の満足度に寄与した店が生き残るという当然の結果が見えてくる。 その流れの中で、郊外の商業施設が盛り上がりを見せ、かつて商店街から流れた顧客を満足させてきたイトーヨーカドーが、今度は顧客を満足させられなくなり、苦戦を強いられている」、なるほど。
・『23区15店舗を歩いてわかったヨーカドーの問題点  前回の記事では、筆者は現在のイトーヨーカドーについて、主に以下の4つを問題にあげている。 ①どの店舗も、食料品売り場と、テナントとして入居しているチェーンストアには人がいる(逆にほとんどの客がそこにしかいない) ②改装に伴い、売り場の至る所に空きがある。バックヤードをあけすけに見せてしまっている ③改装した店舗では、商品構成を大きく変えているが、それが逆にわかりづらい ④セルフレジが機能していない この記事には少なくない反応が寄せられているが、生の声は筆者が思う以上にリアルだった。例えば、以下のような声が一例だ。 「普通のレジ余ってるのに、ガラガラのセルフレジに3人も4人も従業員かけてて普通のレジに長蛇の列ができてるのを延々続けてたりしてるし、よくある自分たちで潰そうとしてるのかと思うパターン」 「それでどうして衣料品売り場も雑貨売り場も重宝される地方から潰していくのか理解できない」 「ヨーカドーのGMSという形態そのものが業績改善の進まない最大の要因なんだよなぁ」 拡大時は「街の商店街を破壊する」と批判され、撤退時にも「さんざん地元の商店街をぶち壊したのに、利益が上がらなければ撤退するとは無責任だ」と言われたヨーカドー。 本稿ではその見方そのものの誤解を説明してきたわけだが、重要なのは、その時代に適したものが生き残るということだ。 消費文化を取り巻く人々のイメージにかかわらず、結局重要なのは、「顧客」を向いているかどうか、なのかもしれない』、「「普通のレジ余ってるのに、ガラガラのセルフレジに3人も4人も従業員かけてて普通のレジに長蛇の列ができてるのを延々続けてたりしてるし、よくある自分たちで潰そうとしてるのかと思うパターン」 「それでどうして衣料品売り場も雑貨売り場も重宝される地方から潰していくのか理解できない」 「ヨーカドーのGMSという形態そのものが業績改善の進まない最大の要因なんだよなぁ」、「重要なのは、その時代に適したものが生き残るということだ。 消費文化を取り巻く人々のイメージにかかわらず、結局重要なのは、「顧客」を向いているかどうか、なのかもしれない」、その通りだ。
タグ:小売業(一般) (その8)(「イトーヨーカ堂」3題:「イトーヨーカ堂」が都内屈指の好立地店から立ち退きのナゼ…ライバル「イオン」が後継テナントに、イトーヨーカドー、23区全店訪れて見えた"厳しさ" 消費者理解の欠如に、ちぐはぐな改善策も…、ヨーカドー、大量撤退で「無責任」批判なぜ起きた 「地元の商店街をぶち壊したのに…」の声の"誤解") 日刊ゲンダイ 重道武司氏による「「イトーヨーカ堂」が都内屈指の好立地店から立ち退きのナゼ…ライバル「イオン」が後継テナントに」 こんな「好立地店から立ち退きを迫られる」には特別の事情があるのだろう。 「本体の業績悪化を受けて2000年以降、小宮恒産側に複数回にわたって賃料の減額を要請。小宮恒産もやむなくこれに応じてきたが、この間、ヨーカ堂側からは「建て替えを含む収益力向上に向けた抜本的な提案が何らなされなかった」(事情通)という」、「本体の業績悪化」を理由として「値下げ」を迫ったようだが、本来はあくまで「上板橋店」が生み出すキャッシュフローが基礎となるべきで、そうすれば値下げの理由はなかっらのかも知れない。 「小宮恒産は21年末での賃貸借契約の終了を通告。ヨーカ堂側がこれを無視して居座り続けたことから明け渡しを求めて東京地裁に提訴、係争事件に発展していた。その結果、1審、2審ともヨーカ堂の敗訴で終わったことから、ヨーカ堂としては「上告審まで争っても勝ち目はない」(関係者)と判断、11月下旬になって退去を決めた」、「ヨーカ堂側」はよにかく安くすることを優先し、よもやライバルが狙っているとは知らなかったのだろう。交渉担当チームはあとで、こっぴどく叱られた筈だ。 東洋経済オンライン 谷頭 和希氏による「イトーヨーカドー、23区全店訪れて見えた"厳しさ" 消費者理解の欠如に、ちぐはぐな改善策も…」 興味深そうだ。 「衣料品コーナーや雑貨コーナーには人がいないのだ。 ヨーカドーの店舗通路は広く、それは歩きやすいということでもあるのだが、人がいないと逆に不思議な風通しが生まれて、余計寂しく思えてしまう」、なるほど。 「食料品売り場」はどこも「盛況」のようだ。「食品スーパー」に堅調なところが多い訳だ。 「チェーン系のテナント」は激烈の競争に勝ち残った勝者だ。 「百貨店などでフロアの改装が行われる場合は、目隠しのための壁が用意されていることが多い。今回のイトーヨーカドー行脚を通じて、「あの壁には意味があったんだな」と感じさせられた」、なるほど。 「機能で分類されている。 これ自体はより生活に密着した売り場にしようという意図が見えるのだが、問題はその分類のわかりづらさだ」、一時的にはやむを得ないだろう。 「高砂店の「家事をする」というコーナーには時計やライト、マウスなどが分類されて置かれていた。正直いえば「家事をする」というイメージで、これらの商品を探し出すのは難しいのではないかと思う。 こうした点で、逆に売り場のわかりにくさが増幅しているところも散見された」、これも一時的にはやむを得ないだろう。 「特にヨーカドーの場合、客層はシニア層が多く、店舗によってはほとんどセルフレジが使われていないところもあった。セルフレジが多い分、有人レジの台数は少なく、レジの行列が長くなっているところがあるのだ」、店の特性に合わせた「有人レジの台数」に「すべきだろう。 「「ショッピングモール化」は確かに必要なプロセスにしても、最終的な目的ではない」、「最終的な目的」とは何なのだろう。 「GMSという業態が古く、ショッピングモールのようなもののほうがニーズを満たしていることは明白で、だからこそショッピングモール化を進めるべきなのだ」、その通りだ。 「顔の見える関係性の中で商いが行われていたはずだ。そのような消費者理解の原点に立ち返るべきなのではないか」、今さら原点に立ち返」ろうとしても困難なのではなあろうか。 「大森店」のような「成功例」を如何に増やしていくかが重要だ。 「うまくやれば楽しい買い物体験を提供できる場所になるポテンシャルはある」、そのポテンシャルを引き出して、「買い物の楽しさを」「取り戻せるか」がポイントだ。 ダイヤモンド・オンライン 谷頭 和希氏による「ヨーカドー、大量撤退で「無責任」批判なぜ起きた 「地元の商店街をぶち壊したのに…」の声の"誤解"」 「私たちのイメージの時系列でいえば、「商店街」→「スーパー」という流れで捉えられることが多いのだが、実はこの2つはかなりの時期、共存してきた」、なるほど。 「大店法があろうがなかろうが、商店街の衰退は行くところまで行っていたのだ」、なるほど。 「駅前からヨーカドーがなくなったとしても、ロードサイド沿いの店舗で買い物をする、という選択肢もある。 実際、駅前から少し離れれば、今回ヨーカドーが撤退した北海道、東北、信越でも、ショッピングモールをはじめとする多くの商業施設が立ち並んでいる。 その意味でも、イメージする「街」観のズレがこうした批判を生ませるのだ」、なるほど。 「結局は顧客の満足度に寄与した店が生き残るという当然の結果が見えてくる。 その流れの中で、郊外の商業施設が盛り上がりを見せ、かつて商店街から流れた顧客を満足させてきたイトーヨーカドーが、今度は顧客を満足させられなくなり、苦戦を強いられている」、なるほど。 「「普通のレジ余ってるのに、ガラガラのセルフレジに3人も4人も従業員かけてて普通のレジに長蛇の列ができてるのを延々続けてたりしてるし、よくある自分たちで潰そうとしてるのかと思うパターン」 「それでどうして衣料品売り場も雑貨売り場も重宝される地方から潰していくのか理解できない」 「ヨーカドーのGMSという形態そのものが業績改善の進まない最大の要因なんだよなぁ」、「重要なのは、その時代に適したものが生き残るということだ。 消費文化を取り巻く人々のイメージにかかわらず、結局重要なのは、「顧客」を向いているかどう
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半導体産業(その11)(NTT「光半導体」が世界の電力不足を救う?iモード失敗の教訓を生かせるか、半導体ルネサス 「異質の巨額買収」の裏に危機感 9000億円弱で電子回路設計ツール企業を買収)     [産業動向]

半導体産業については、昨年8月6日に取上げた。今日は、(その11)(NTT「光半導体」が世界の電力不足を救う?iモード失敗の教訓を生かせるか、半導体ルネサス 「異質の巨額買収」の裏に危機感 9000億円弱で電子回路設計ツール企業を買収)である。

先ずは、本年2月13日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「NTT「光半導体」が世界の電力不足を救う?iモード失敗の教訓を生かせるか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/338708
・『NTTの「光半導体」事業が注目されている。生成AI強化のため世界中でデータセンター需要が急増する中、光半導体がデジタル化と省エネの切り札になるからだ。NTTは国内外の有力企業と連携を強化し、技術開発を急いでいる。その背景には、iモードの世界的な普及を実現できなかった大いなる反省があるだろう』、「光半導体」とは興味深そうだ。
・『NTT「光半導体」の驚くべき潜在能力  最近、相次ぐ半導体工場の建設や水素製鉄、全固体電池の開発など、わが国経済にとって明るいニュースも舞い込むようになった。中でも1月30日、経済産業省が「NTTが進める光半導体事業に最大で452億円を補助する」と発表したのは注目に値する。 振り返れば2019年、NTTは「IOWN」(アイオン、Innovative Optical and Wireless Network)という光を用いた通信技術の研究開発を強化した。光半導体の潜在能力は非常に高い。特に重要なのは、今後、需要が高まるデータセンターの電力消費量を大幅に軽減する可能性があることだ。 近年、生成AIの性能を引き上げるため、世界中でデータセンター需要が急増している。それに伴い消費電力が大きく増加する。国際エネルギー機関(IEA)は、データセンターでのAI学習強化により、26年の電力消費量が22年の2.3倍程度に増えると予想した。 一方、主要国の電力供給能力の余裕は少ない。異常気象で冷暖房需要は増えた。電気自動車(EV)シフトも電力需要を押し上げる。供給面で、脱炭素に対応した発送電インフラの整備は一朝一夕には進まない。地政学リスクの上昇で、エネルギー資源調達コストの上昇も懸念される。光半導体は世界経済の成長率向上と省エネの両立の切り札になりうる。 NTTは光半導体を実用化し付加価値を高めるため、国内外の企業と協力体制を強化している。「iモード」失敗の教訓を生かし、国際的なコンソーシアムの強化を急いでいるようだ。NTT主導で、国際的な企業連合の体制が整備される期待も高い』、「2019年、NTTは「IOWN」(アイオン・・・という光を用いた通信技術の研究開発を強化「(IEA)は、データセンターでのAI学習強化により、26年の電力消費量が22年の2.3倍程度に増えると予想・・・一方、主要国の電力供給能力の余裕は少ない。異常気象で冷暖房需要は増えた。電気自動車(EV)シフトも電力需要を押し上げる。光半導体は世界経済の成長率向上と省エネの両立の切り札になりうる」、なるほど。
・『「光半導体」がデジタル化と省エネの切り札  生成AIの登場に伴い、世界全体でデジタル化が一段と加速している。今後、あらゆる分野でAIが用いられるようになる。主要国や企業は、データセンターを増やしてAIの深層学習を促進する体制づくりが求められている。 現在、データセンターで用いられるGPUやメモリーチップなどは、電子(電気)を用いてデータの演算や転送を行う。回路の線幅や半導体の精度向上などで、より多くの電力が必要になった。また、ロジック半導体の回路線幅の微細化は限界に近いとの指摘も多い。 NTTはそうした課題を克服するため、光半導体の研究開発を強化した。光の速度は、電子を上回る。NTTはその特性を活用し、消費電力性能の向上など、より効率的なデータセンターの構築を目指している。 2030年、世界全体で、データセンターの電力消費量は2600テラワット/時に達するとの見方もある。実に2018年の14倍だ。米オープンAIのサム・アルトマンCEOも、電力問題の克服に強い関心を持っている。同氏は、核融合発電関連の新興企業に投資したことを明らかにした。 一方、短期間で主要国が電力の供給体制を拡大することは難しい。再生可能エネルギーの活用、サーバーの冷却など課題も多い。欧州では、アイルランドでデータセンターが急増し、政府は電力ひっ迫を避けるため、建設を規制せざるを得なくなった。 データセンターの消費電力性能の向上は、生成AIの性能向上に大きく影響する。電力問題の解消は、AI性能向上、それによる中長期的な経済成長、さらに社会の安定にも影響する。その切り札の一つとなるのが、NTTが推進する光半導体である』、「電力問題の解消は、AI性能向上、それによる中長期的な経済成長、さらに社会の安定にも影響する。その切り札の一つとなるのが、NTTが推進する光半導体である」、なるほど。
・『“iモード失敗”の教訓を生かすNTT  光半導体の実用化を目指すNTTは、早い段階から他社との連携を意識してきた。複数社で研究開発を進めることは、リスク分散に有効だ。手始めに、日本電気(NEC)、富士通と連携を強化した(なお、これらの企業は「電電ファミリー」と呼ばれた)。 成果を実用化するため、製造技術の強化も必要だ。光半導体の開発には、キオクシア(旧東芝メモリ)、基盤に形成したチップの切り出しや配線を行う新光電気工業、光ケーブル大手の古河電気工業も参画する。 海外企業との連携も強化している。19年に米インテルやソニーグループとIOWN関連の研究開発を強化すると発表。22年には韓国のSKテレコム(SKグループの移動通信事業会社)とも業務提携を交わした。 国内外の企業との連携を強化し、自社の技術に賛同者を増やす。こうした発想でNTTが事業運営体制を強化するのは珍しい。この背景には、iモードの世界的な普及を実現できなかった大いなる反省があるだろう。 1999年2月に始まったNTTのiモードは、世界初のモバイル・インターネットサービスだった。iモードによってNTTグループが世界トップクラスのIT先端企業になる――。こう予想する経済の専門家も一部にいた。 しかし、現実の展開は大きく異なるものだった。当時のNTTグループにとって、1億人超の人口規模を持つ国内市場で、シェアを維持する考えが強かっただろう。旧ドコモの海外買収戦略の失敗、リーマンショックの発生、デジタル化の遅れによるGAFAMとの格差が拡大し、iモードは“日本のガラパゴス化”の典型例と化した。こうした教訓があるからこそ、光半導体プロジェクトの初期段階からNTTは内外企業との連携を模索している』、「iモードは“日本のガラパゴス化”の典型例と化した。こうした教訓があるからこそ、光半導体プロジェクトの初期段階からNTTは内外企業との連携を模索している」、失敗を教訓にするとは賢明なことだ。
・『国際規格実現に主体的な役割を果たせるか  今般発表された政府からの補助をきっかけに、NTTが国際的なコンソーシアム(企業連合)の形成を目指す可能性は高い。期待したいのは、光半導体の国際規格実現に主体的な役割を果たすことだ。 戦略物資としての半導体の重要性が高まる中、次世代の超高速通信を決定づける光半導体は、世界の経済・安全保障体制により大きな影響を与えるはずだ。主要先進国を中心に、通信規格の統一や、製造技術の第三国への流出阻止など、厳格なルールを策定することがいっそう重要となっている。 そのため、光半導体を実用化し量産技術を確立できる企業が本拠点を置く国は、国際世論・世界経済の運営に主導的な影響を与えるだろう。産業、経済、安全保障などあらゆる分野で光半導体は大きな可能性を秘める。 NTTは法律の制約があることから、世界規模で研究開発を進めることが難しかったとの指摘は多い。しかし、状況は変わりつつある。NTTに期待したいのは、スピードと規模感でIOWNプロジェクトを進めることだ。 研究開発の成果を守りつつ、よりオープンな姿勢で海外企業の参画を呼び込む。それにより賛同企業を増やす。それは、わが国の関連産業の需要獲得につながり、先端分野にかかわる企業を活性化させるはずだ。 ただし、ライバルも多い。米国ではGAFAMなどのIT先端企業と、光通信技術などの開発を行うスタートアップ企業の連携強化が起きている。中国は、武漢光電国家研究センターなど政府主導で光電融合に関する研究開発、先端技術の実用化を目指している。 光半導体に関する製造技術の実装は、NTTが世界規模で新しい市場をつくり、優位に付加価値を獲得する重要な機会になる可能性が高い。NTT、関連企業および政府が一貫した姿勢で先端分野の研究開発を進め、主要国に先駆けて実用化することができるか。それは、中長期的なわが国経済の回復にも大きく影響するはずだ』、「光半導体に関する製造技術の実装は、NTTが世界規模で新しい市場をつくり、優位に付加価値を獲得する重要な機会になる可能性が高い。NTT、関連企業および政府が一貫した姿勢で先端分野の研究開発を進め、主要国に先駆けて実用化することができるか。それは、中長期的なわが国経済の回復にも大きく影響するはずだ」、その通りだ。

次に、2月20日付け東洋経済オンライン「半導体ルネサス、「異質の巨額買収」の裏に危機感 9000億円弱で電子回路設計ツール企業を買収」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/735700
・『大手半導体メーカーのルネサスエレクトロニクスが、同社史上最大となる巨額買収に踏み切る。買収するのは、アメリカに本社を置き、オーストラリア証券取引所に上場するアルティウム。約8879億円を投じ、今年中に全株を取得する予定だ。 「今回の買収は異質。将来への重要な一歩になる」。柴田英利社長は2月15日の会見でそう意気込んだ。 この数年のルネサスは、海外半導体メーカーの買収を積極的に仕掛け、7000億円前後の買収も2件行った。その同社が「異質」と表現するには理由がある。目的が「伝統的な半導体メーカー」からの脱皮にあるからだ』、興味深そうだ。
・『巨額を投じる企業は年商400億円規模  アルティウムは、電機製品の電子回路を設計する際に使われるPCB(プリント基板)設計ツールを手がける。半導体など電子部品の組み合わせをアルティウムのソフトウェア上で仮想的にシミュレーションすることで、物理的に電子部品を組み立てることなくその性能や安全性を検証できる。 サービスは月額数万円から提供。ユーザー数は3万社を超え、日立製作所、アメリカのテスラやロッキード・マーチンなどさまざまな産業の顧客が使用する。年間売上高は足元で400億円前後だが、直近5年で2倍に拡大した成長企業だ。 ルネサス製品を用いた電子回路の検証は現状でも可能であり、その意味でルネサスはアルティウムの提供するプラットフォームの参加者だ。だが巨額を投じて完全子会社化するのは、「参加者としてでは少し踏み込み不足」(柴田社長)だと感じていたからだという。 ルネサスは現在の柴田社長体制下になった2019年以降、同社が「ウィニング・コンビネーション」と呼ぶ戦略を進めてきた。「ルネサスの半導体を組み合わせることでこんな機能が実現できる」と提案し売り込んでいくことで、半導体単品とは異なった付加価値を生み出していく戦略だ。 必要な製品ラインナップを増やすため、この数年間は数百億〜数千億円規模で半導体メーカーの買収を相次いで行ってきた。そうして手に入れた製品群をテコに、収益性は大幅に改善。赤字体質にもがいていたかつての姿からは一変、業績と株式市場からの評価ともに完全復活を果たしている。 こうした経緯を踏まえれば、ソフトウェア企業であるアルティウムの買収は畑違いともいえる。「ルネサスはいったいどこへ向かおうとしているのか」――。買収会見に参加した記者や証券アナリストの関心は、その一点にあった』、「必要な製品ラインナップを増やすため、この数年間は数百億〜数千億円規模で半導体メーカーの買収を相次いで行ってきた。そうして手に入れた製品群をテコに、収益性は大幅に改善。赤字体質にもがいていたかつての姿からは一変、業績と株式市場からの評価ともに完全復活を果たしている」、大したものだ。
・『ものづくりの工程が変化  「従来であればメカだけで事足りた製品の機能も、エレクトロニクスで決まるようになってきている。一方で、購入品が主流のメカ設計と違ってエレクトロニクスの設計では部品を組み合わせる専門知識が不可欠。だからこそ幅広い産業のプレーヤーが使いやすいツールを、プラットフォームとして提供していきたい」 柴田社長が会見で語ったのは、半導体・電子部品と、ルネサスが主顧客とする自動車や産業機械メーカーとを取り巻く環境の変化だ。製造業に強いコンサルティング会社、アーサー・ディ・リトルの赤山真一パートナーも次のように解説する。 「AI(人工知能)やソフトウェアを扱う企業が最終製品を企画し、それからハードウェアを手がける企業にものづくりを任せる、というケースが増えている。その場合、企画段階からシミュレーションで検証できることが重要。自動車や産業機械が“AIの塊”に進化していく中、ルネサスはこの動きについていくと決めたのではないか」) 半導体産業を30年以上見てきた技術ジャーナリストの津田建二氏は、ルネサスの目指すものが「今までになかったビジネスモデルだ」と次のように評価する。 「これまでは半導体メーカーのような〝電気屋〟と、それを組み合わせて電機製品を造る〝機械屋〟の役割は分かれていた。この垣根を徐々にとはいえ取り払おうとしているように見える」 一方で、ある国内半導体メーカーの関係者は懸念も示す。 「アルティウムのようなプラットフォーム企業は、どのメーカーともフラットな関係だからこそ支持される。ルネサスが取り込むことで、参加者に敬遠されることにはならないのか」 前述のように、アルティウムの顧客は電機や自動車メーカー。ルネサスと直接の競合にはならない。とはいえ、アルティウムに「ルネサス色」がつきすぎてしまうことへの懸念があるのも確かだろう』、「「AI(人工知能)やソフトウェアを扱う企業が最終製品を企画し、それからハードウェアを手がける企業にものづくりを任せる、というケースが増えている。その場合、企画段階からシミュレーションで検証できることが重要。自動車や産業機械が“AIの塊”に進化していく中、ルネサスはこの動きについていくと決めたのではないか」・・・「アルティウムのようなプラットフォーム企業は、どのメーカーともフラットな関係だからこそ支持される。ルネサスが取り込むことで、参加者に敬遠されることにはならないのか」、前述のように、アルティウムの顧客は電機や自動車メーカー。ルネサスと直接の競合にはならない。とはいえ、アルティウムに「ルネサス色」がつきすぎてしまうことへの懸念があるのも確かだろう」、こうした利益相反は確かに懸念材料だ。
・「ルネサスは現在の柴田社長体制下になった2019年以降、同社が「ウィニング・コンビネーション」と呼ぶ戦略を進めてきた。「ルネサスの半導体を組み合わせることでこんな機能が実現できる」と提案し売り込んでいくことで、半導体単品とは異なった付加価値を生み出していく戦略だ。 必要な製品ラインナップを増やすため、この数年間は数百億〜数千億円規模で半導体メーカーの買収を相次いで行ってきた。そうして手に入れた製品群をテコに、収益性は大幅に改善。赤字体質にもがいていたかつての姿からは一変、業績と株式市場からの評価ともに完全復活を果たしている」、そんなに業績が改善したとは初めて知った。
・『「伝統的メーカー」のままではいられない  もちろんこうした見方は柴田社長も承知のうえだ。「(成功するためには)オープンなプラットフォームを維持していくことが肝になる。われわれ自身が、一緒に仕事をしていくパートナーと競合にならないことが大事」と強調する。 むしろ強く抱くのは、「デジタル化の流れは不可避。『伝統的な半導体メーカー』でい続ける限り、いずれマージナライズされてしまう(潮流から外れる)だろう」という危機感だ。 昨年には、2013年の経営危機時に出資したINCJ(旧産業革新機構)がすべてのルネサス株を売却。母体となった日立やNECも全株売却の方針だ。真の意味で「新生ルネサス」に生まれ変わることができるのか。それは「異質」な買収の成否が左右する』、「(成功するためには)オープンなプラットフォームを維持していくことが肝になる・・・昨年には、2013年の経営危機時に出資したINCJ(旧産業革新機構)がすべてのルネサス株を売却。母体となった日立やNECも全株売却の方針だ。真の意味で「新生ルネサス」に生まれ変わることができるのか。それは「異質」な買収の成否が左右する」、「真の意味で「新生ルネサス」に生まれ変わることができるのか」、今後の動向を注視したい。
タグ:半導体産業 (その11)(NTT「光半導体」が世界の電力不足を救う?iモード失敗の教訓を生かせるか、半導体ルネサス 「異質の巨額買収」の裏に危機感 9000億円弱で電子回路設計ツール企業を買収) 「光半導体」とは興味深そうだ。 「2019年、NTTは「IOWN」(アイオン・・・という光を用いた通信技術の研究開発を強化「(IEA)は、データセンターでのAI学習強化により、26年の電力消費量が22年の2.3倍程度に増えると予想・・・一方、主要国の電力供給能力の余裕は少ない。異常気象で冷暖房需要は増えた。電気自動車(EV)シフトも電力需要を押し上げる。光半導体は世界経済の成長率向上と省エネの両立の切り札になりうる」、なるほど。 「電力問題の解消は、AI性能向上、それによる中長期的な経済成長、さらに社会の安定にも影響する。その切り札の一つとなるのが、NTTが推進する光半導体である」、なるほど。 「iモードは“日本のガラパゴス化”の典型例と化した。こうした教訓があるからこそ、光半導体プロジェクトの初期段階からNTTは内外企業との連携を模索している」、失敗を教訓にするとは賢明なことだ。 「光半導体に関する製造技術の実装は、NTTが世界規模で新しい市場をつくり、優位に付加価値を獲得する重要な機会になる可能性が高い。NTT、関連企業および政府が一貫した姿勢で先端分野の研究開発を進め、主要国に先駆けて実用化することができるか。それは、中長期的なわが国経済の回復にも大きく影響するはずだ」、その通りだ。 東洋経済オンライン「半導体ルネサス、「異質の巨額買収」の裏に危機感 9000億円弱で電子回路設計ツール企業を買収」 「必要な製品ラインナップを増やすため、この数年間は数百億〜数千億円規模で半導体メーカーの買収を相次いで行ってきた。そうして手に入れた製品群をテコに、収益性は大幅に改善。赤字体質にもがいていたかつての姿からは一変、業績と株式市場からの評価ともに完全復活を果たしている」、大したものだ。 「「AI(人工知能)やソフトウェアを扱う企業が最終製品を企画し、それからハードウェアを手がける企業にものづくりを任せる、というケースが増えている。その場合、企画段階からシミュレーションで検証できることが重要。自動車や産業機械が“AIの塊”に進化していく中、ルネサスはこの動きについていくと決めたのではないか」・・・ 「アルティウムのようなプラットフォーム企業は、どのメーカーともフラットな関係だからこそ支持される。ルネサスが取り込むことで、参加者に敬遠されることにはならないのか」、前述のように、アルティウムの顧客は電機や自動車メーカー。ルネサスと直接の競合にはならない。とはいえ、アルティウムに「ルネサス色」がつきすぎてしまうことへの懸念があるのも確かだろう」、こうした利益相反は確かに懸念材料だ。 そんなに業績が改善したとは初めて知った。 「(成功するためには)オープンなプラットフォームを維持していくことが肝になる・・・昨年には、2013年の経営危機時に出資したINCJ(旧産業革新機構)がすべてのルネサス株を売却。母体となった日立やNECも全株売却の方針だ。真の意味で「新生ルネサス」に生まれ変わることができるのか。それは「異質」な買収の成否が左右する」、「真の意味で「新生ルネサス」に生まれ変わることができるのか」、今後の動向を注視したい。
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コンビニ(その11)(絶頂セブン-イレブンの死角 「食品開発力と調達力」の強みが弱みになり“下剋上”リスク浮上、:内なる「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」を自覚し 広い視野で世の中を見よう ローソン・竹増貞信社長 コンビニ百里の道をゆく、「セブン-イレブン」が太刀打ちできない地域は? 「コンビニ勢力図」から見えてくる意外な強者) [産業動向]

コンビニについては、昨年4月10日に取上げた。今日は、(その11)(絶頂セブン-イレブンの死角 「食品開発力と調達力」の強みが弱みになり“下剋上”リスク浮上、内なる「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」を自覚し 広い視野で世の中を見よう ローソン・竹増貞信社長 コンビニ百里の道をゆく、「セブン-イレブン」が太刀打ちできない地域は? 「コンビニ勢力図」から見えてくる意外な強者)である。

先ずは、昨年8月1日付けダイヤモンド・オンライン「絶頂セブン-イレブンの死角、「食品開発力と調達力」の強みが弱みになり“下剋上”リスク浮上」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/326456
・『コンビニ業界はインフレや人手不足で激変期を迎えている。セブン-イレブンは成功モデルを継承し、出店の再加速と食品の開発力で荒波を乗り切ろうとしている。横綱相撲を続けるセブンに対し、新しい土俵をつくって戦いを挑むのがファミリーマートとローソンだ。それぞれ親会社の伊藤忠商事と三菱商事の力を借りて、新機軸を打ち出し、“下克上”を狙う。特集『セブンの死角 伊藤忠&三菱商事の逆襲』(全15回)の#10では、セブンが抱える、王者であるがゆえの衰退リスクに迫る』、興味深そうだ。
・『横綱相撲のままではファミマやローソンの奇策に対応できず  出店が頭打ちになって成長が鈍化したコンビニ業界を、インフレや人手不足といった大波が襲っている。 波をもろにかぶれば、コスト上昇で減益になるばかりではない。複合的な要因で、コンビニが他業態に市場を奪われかねないのだ。その要因とは、(1)値上げが消費者の許容範囲を超える(2)人手不足で大量生産・長距離輸送の商品が不利になる(3)急成長を前提とした加盟店オーナーやメーカーとの関係が悪化する──などのリスクだ。 (図_コンビニ3社の国内店舗数の推移はリンク先参照) そうしたリスクに晒されている大手コンビニ3社で、唯一これまでの勝ちパターンを繰り返そうとしているのが王者セブン-イレブン・ジャパン(SEJ)だ。 同社の永松文彦社長はダイヤモンド編集部の取材で、2022年度75店だった対前年度比の増加店舗数を、「150~200店に増やしていく」と明言した。 勝ちパターンを踏襲するのは出店戦略だけではない。食品の開発に注力し、総菜やプライベートブランド(PB)の魅力で客を集める戦略も継続する。 実は、21年度にSEJを揺るがす大事件があった。成長のけん引役だったPB、セブンプレミアムの売上高が初めて減少に転じたのだ。 (図_セブンプレミアムの売上高とアイテム数 はリンク先参照) 「食」を戦略の軸に据えるSEJがこのような事態を放置するはずはない。「不人気商品の改廃を進め、22年度後半からPBの売上高を上昇に転じさせた」(青山誠一商品戦略本部長)のだ。まさにSEJならではの横綱相撲といえる。 しかし、である。往年の戦略だけで激変期を切り抜けるのは難しい。むしろ、王者だからこそ戦い方を変えられず、時代の変化への対応が遅れ、負のスパイラルに陥ることもあり得る。 次ページではセブンの急成長を支えてきた三つの強みが、弱みに変わりかねない実態とその要因を明らかにする』、「セブンの急成長を支えてきた三つの強み」はどうなるのだろう。
・『加盟店オーナーとベンダーが離反すれば競争力を失うことになりかねない  SEJの変調の兆候はすでにある。コロナ禍や電力代の値上がりなどで中食ベンダーの経営体力が奪われ、「SEJが開発したい商品を製造するために必要な投資をしてくれるパートナーが少なくなっている」(SEJ関係者)のだ(詳細は本特集の#5『セブン強さの源泉「食品開発・鉄の結束」に綻び!?中食ベンダーの経営悪化&撤退で揺らぐ王座』参照)。 加盟店オーナーとの関係も波乱要因になり得る。オーナーは本部にロイヤルティー(粗利にチャージ率を掛けたもの)を納めるが、SEJのチャージ率はファミリーマートやローソンより高い。 それでもオーナーがSEJとの契約を続けるのは、日販(店舗当たりの1日の売上高)が67万円と、競合の2社より13万円以上多いからだ。この格差は、SEJの最大の武器である食品の売れ行きが良いために生じる。 つまり、SEJは「食品の商品力」→「日販の向上」→「店舗数の拡大」→「高いロイヤルティー収入」→「商品開発力の向上」という好循環を生むことで、チャンピオンとして君臨してきた。 店舗数の拡大は、特定地域に集中出店するドミナント戦略が取られてきた。これは売り上げを伸ばしたい本部には有利だが、近隣店同士が需要を食い合うことになるのでオーナーには不評である。 だが、オーナーやベンダーはSEJの成長性と収益性があるからこそ不満をのみ込んできた。店舗数の拡大や食品の魅力を基軸にした明るいビジョンが見えなくなれば、オーナーやベンダーが離反し、競争力を失うことになりかねない。 (図_セブンの三つの強みとその変調要因 はリンク先参照)』、「店舗数の拡大は、特定地域に集中出店するドミナント戦略が取られてきた。これは売り上げを伸ばしたい本部には有利だが、近隣店同士が需要を食い合うことになるのでオーナーには不評である。 だが、オーナーやベンダーはSEJの成長性と収益性があるからこそ不満をのみ込んできた。店舗数の拡大や食品の魅力を基軸にした明るいビジョンが見えなくなれば、オーナーやベンダーが離反し、競争力を失うことになりかねない」、確かに隠れたリスク要因だ。
・『ファミマは広告事業で ローソンはネット販売の本格展開で勝負  横綱相撲のSEJに対し、新しい土俵をつくって戦おうとしているのがファミマとローソンだ。 両社は、親会社の総合商社の広い知見を活用できる強みがある。 ファミマは伊藤忠商事と店内のディスプレーなどへの広告配信を本格化。5年後に100億円の利益計上を目指す(詳細は本特集の#11『ファミマ&伊藤忠「広告事業」の野望、店舗やアプリを媒体に5年後利益100億円を目指す』参照)。 ローソンは三菱商事とインターネット販売を強化中で、売上高を1割以上増やそうとしている(詳細は本特集の#4『ローソン&三菱商事が大勝負!「アマゾンに勝つ新型ECプラットフォーム」の全貌』参照)。 SEJが「何を売るか」という従来の土俵で勝負しているのに対し、他の2社は「どう売るか」という別の競争軸を立て、経営資源をシフトしているのだ。 SEJにとって、商社系列に属さない独立した立場にいるのは強みだった。取引先を競争させ、品質が良く、価格が安い提案を採用することができたからだ。しかし、この手法は、長期的な視点で成長するパートナーの関係を他社と築くのには適していない。 孤高のSEJと、商社との提携で勝負する競合2社の生き残りを懸けた戦いが始まった』、「SEJにとって、商社系列に属さない独立した立場にいるのは強みだった。取引先を競争させ、品質が良く、価格が安い提案を採用することができたからだ。しかし、この手法は、長期的な視点で成長するパートナーの関係を他社と築くのには適していない。 孤高のSEJと、商社との提携で勝負する競合2社の生き残りを懸けた戦いが始まった」、結果はどう出てくるのだろう。

次に、昨年11月27日付けAERA「内なる「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」を自覚し、広い視野で世の中を見よう ローソン・竹増貞信社長 コンビニ百里の道をゆく」を紹介しよう。
・『「コンビニ百里の道をゆく」は、54歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。 最近、「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」という言葉を耳にすることが増えてきましたね。社会においてそれぞれの「違い」を尊重するダイバーシティー(多様性)&インクルージョン(包括と受容)の観点からも、注目されているようです。 私も「自分にもアンコンシャス・バイアスがある」と常に自覚をもつことは、とても大事なことだと考えています。 人はそれぞれの国、環境や文化の中で育つ過程で、さまざまな常識が身についていきます。実際には同じ日本で育ってもまったく違う価値観や常識を身につける人がたくさんいて当然ですが、どうしても「自分が育った環境や文化に基づいた常識」を軸に物事を考えてしまいます。でもそれが一方で、無意識の差別や相手にとっては誤解でしかない決めつけにつながることも多々ありますよね。) 自分の常識と違うことと向き合ったとき、いかに柔軟に受け止められるか。そこで「あ、私が思っていたのはアンコンシャス・バイアスだったんだ」と気づき取り除くことができれば、「決めつけ」という偏見から来る視野の狭さから解放されていくのではないかなと思います。 それは、商品開発にも思いがけない形でつながります。 例えばローソンで無印良品さんのエイジングケア化粧水を扱うことになった当初、購買層について私たちにはあるイメージがありました。でも実際には、そのイメージからは遠い男性の方々からも「置いてくれてよかったです。すごく重宝してますよ」と言われることも多かったのです。私たちに「化粧水=女性」というバイアスがあったわけです。アンコンシャス・バイアスが取り除かれた瞬間でした。 内なる「無意識の偏見」を自覚し、広い視野で世の中を見ていけたら、皆がより暮らしやすい社会にできるかもしれません。 ◎竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長)』、「ローソンで無印良品さんのエイジングケア化粧水を扱うことになった当初、購買層について私たちにはあるイメージがありました。でも実際には、そのイメージからは遠い男性の方々からも「置いてくれてよかったです。すごく重宝してますよ」と言われることも多かったのです。私たちに「化粧水=女性」というバイアスがあったわけです。アンコンシャス・バイアスが取り除かれた瞬間でした。 内なる「無意識の偏見」を自覚し、広い視野で世の中を見ていけたら、皆がより暮らしやすい社会にできるかもしれません」、実際に「アンコンシャス・バイアス」を取り除くのはかなり困難を伴いそうだ。

第三に、昨年12月23日付け東洋経済オンラインが掲載したデータ可視化職人のにゃんこそば氏による「「セブン-イレブン」が太刀打ちできない地域は? 「コンビニ勢力図」から見えてくる意外な強者」を紹介しよう。
・『昨今、ITを利用してさまざまなデータを集めることができます。しかし、データを漠然と見ていても、そこに隠された本質にたどりつくことは簡単ではありません。これを防ぐ1つの方法がデータの「可視化」です。可視化することで「思い込み」にとらわれていたことに気が付いたり、意外な事実を発見できたりすることがあります。ここでは、『ビジュアルでわかる日本』の著者である、「にゃんこそば」さんが、「コンビニの勢力」を可視化してみました』、興味深そうだ。
・『現在も続くコンビニ「戦国時代」  日本全国、津々浦々に広がるコンビニエンスストア。遠くの街に出かけたときにも「だいたい、そこにある」という安心感が素敵ですが、地域によってセブン-イレブンばかりを見かけたり、またある地域ではご当地コンビニがまとまっていたりと、意外と地域差が大きいと感じます。 この地域差を可視化するために「コンビニ勢力図」を作成してみました(図1)。コンビニ大手6社を対象に、各市区町村を「店舗数が一番多いブランド」で塗り分けたものです。同率1位のブランドが複数ある場合、全国で店舗数が少ないほう(マイナーなほう)の色をつけました。) 全国約5.7万店舗のコンビニチェーンのうち、一番多いのがセブン-イレブン(2.1万店)。業界2位のファミリーマート(1.7万店)に差をつけているものの、全国を“平定”できているわけではないことが読み取れます。大まかな傾向としては、関東地方と中国、九州北部ではセブン-イレブンが優位、中部地方ではファミリーマートが優位、東北北部や山陰、四国などではローソンが陣取っています(図2、3)』、「コンビニ勢力図」によれば、「全国を“平定”できているわけではないことが読み取れます。大まかな傾向としては、関東地方と中国、九州北部ではセブン-イレブンが優位、中部地方ではファミリーマートが優位、東北北部や山陰、四国などではローソンが陣取っています」、なるほど。
・『地域差が生じる理由に、コンビニチェーンの統廃合(図2:(西日本)山陰地方や対馬、五島列島では、ポプラからローソンへの転換が進んでいる はリンク先参照) (図3:(東日本)中部地方ではサークルKがファミリーマートに吸収された はリンク先参照) このような地域差が生じる理由の1つに、コンビニチェーンどうしの統廃合の歴史があります。かつて、名古屋などの中部地方にはサークルK(愛知県の総合スーパー「ユニー」傘下)が広がっていたのですが、2004年にサンクスと合併、さらに2016年にはファミリーマートと経営統合し、2018年までにすべての「サークルKサンクス」がファミリーマートに置き換わりました。) 広島で生まれたポプラ(生活彩家、スリーエイトを含む)も、ローソンとの共同運営を徐々に進めています。こちらはファミリーマートと異なり、ポプラの店舗運営が一部継承されているのが特徴で、両社の共同ブランド店舗「ローソン・ポプラ」では、ポプラ時代に人気を博したポプ弁(あったかいご飯を後から詰める方式の弁当)が健在です』、「地域差が生じる理由の1つに、コンビニチェーンどうしの統廃合の歴史があります」、なるほど。
・『北海道では大手チェーンより強いセイコーマート  北海道には本州と違う色が広がっていますね(図4)。地場のコンビニ、セイコーマートです。 (図4:(北海道・東北)セイコーマートが北海道民の暮らしを支えている はリンク先参照) セイコーマートは1971年に札幌で開業したコンビニチェーンで、2023年8月末現在、道内に1090店、本州に96店を構えています。もともと酒の卸売業を展開していた強みを活かして、取引先の酒屋をコンビニに業態転換。さらには弁当などの製造、流通を自社グループ内で行うことで仕入れコストを削減し、札幌から過疎地や離島までをカバーする一大チェーン店に成長していきました。店内厨房で調理する弁当や総菜「ホットシェフ」が人気です。 コンビニの陣取り合戦には「早い者勝ち」の側面が大きいため、セイコーマートの牙城と言える北海道(とくに道東、道北)には大手チェーンが長らく参入してきませんでした。 2023年8月、稚内市内にローソンが2店舗オープンしましたが、それまでの間、ローソンは約150キロ南(オホーツク海側)の紋別郡雄武町が最北でした。 セブン-イレブンは中川郡美深町(旭川と稚内の中間地点)、さらにファミリーマートは滝川市(札幌から旭川までの道のりを3分の2ほど進んだところ)までしか進出できていません。 セイコーマートの守備は堅く、この勢力図は今後もしばらく変わりそうにありません。 激しい競争が続くコンビニ業界。5年後、10年後の「コンビニ勢力図」はどうなるのでしょうか』、「コンビニの陣取り合戦には「早い者勝ち」の側面が大きい」とするが、むしろネットワーク効果が大きいと考えるべきで、ある程度の密度になるまでは効果が出難いようだ。
タグ:コンビニ (その11)(絶頂セブン-イレブンの死角 「食品開発力と調達力」の強みが弱みになり“下剋上”リスク浮上、:内なる「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」を自覚し 広い視野で世の中を見よう ローソン・竹増貞信社長 コンビニ百里の道をゆく、「セブン-イレブン」が太刀打ちできない地域は? 「コンビニ勢力図」から見えてくる意外な強者) ダイヤモンド・オンライン「絶頂セブン-イレブンの死角、「食品開発力と調達力」の強みが弱みになり“下剋上”リスク浮上」 「セブンの急成長を支えてきた三つの強み」はどうなるのだろう。 「店舗数の拡大は、特定地域に集中出店するドミナント戦略が取られてきた。これは売り上げを伸ばしたい本部には有利だが、近隣店同士が需要を食い合うことになるのでオーナーには不評である。 だが、オーナーやベンダーはSEJの成長性と収益性があるからこそ不満をのみ込んできた。店舗数の拡大や食品の魅力を基軸にした明るいビジョンが見えなくなれば、オーナーやベンダーが離反し、競争力を失うことになりかねない」、確かに隠れたリスク要因だ。 「SEJにとって、商社系列に属さない独立した立場にいるのは強みだった。取引先を競争させ、品質が良く、価格が安い提案を採用することができたからだ。しかし、この手法は、長期的な視点で成長するパートナーの関係を他社と築くのには適していない。 孤高のSEJと、商社との提携で勝負する競合2社の生き残りを懸けた戦いが始まった」、結果はどう出てくるのだろう。 AERA「内なる「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」を自覚し、広い視野で世の中を見よう ローソン・竹増貞信社長 コンビニ百里の道をゆく」 「ローソンで無印良品さんのエイジングケア化粧水を扱うことになった当初、購買層について私たちにはあるイメージがありました。でも実際には、そのイメージからは遠い男性の方々からも「置いてくれてよかったです。すごく重宝してますよ」と言われることも多かったのです。私たちに「化粧水=女性」というバイアスがあったわけです。アンコンシャス・バイアスが取り除かれた瞬間でした。 内なる「無意識の偏見」を自覚し、広い視野で世の中を見ていけたら、皆がより暮らしやすい社会にできるかもしれません」、実際に「アンコンシャス・バイアス」 を取り除くのはかなり困難を伴いそうだ。 東洋経済オンライン にゃんこそば氏による「「セブン-イレブン」が太刀打ちできない地域は? 「コンビニ勢力図」から見えてくる意外な強者」 「コンビニ勢力図」によれば、「全国を“平定”できているわけではないことが読み取れます。大まかな傾向としては、関東地方と中国、九州北部ではセブン-イレブンが優位、中部地方ではファミリーマートが優位、東北北部や山陰、四国などではローソンが陣取っています」、なるほど。 「地域差が生じる理由の1つに、コンビニチェーンどうしの統廃合の歴史があります」、なるほど。 「コンビニの陣取り合戦には「早い者勝ち」の側面が大きい」とするが、むしろネットワーク効果が大きいと考えるべきで、ある程度の密度になるまでは効果が出難いようだ。
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リニア新幹線(その8)(「リニア開業を引き延ばしてもいいことは何もない」静岡市長がそう語る理由、激論 リニア新幹線#4:リニア新幹線、完成したら乗りたい?池上彰が「名古屋までならNO」と答えるワケ、「リニア妨害」川勝知事が議会で激ヅメ…過去に否定した“解決策”を今さら主張する自己矛盾、地下深くの工事「本当に安全か」 調布陥没事故 広がる余波 リニア計画のJR東海 説明会開催へ) [産業動向]

リニア新幹線については、昨年4月29日に取上げた。今日は、(その8)(「リニア開業を引き延ばしてもいいことは何もない」静岡市長がそう語る理由、激論 リニア新幹線#4:リニア新幹線、完成したら乗りたい?池上彰が「名古屋までならNO」と答えるワケ、「リニア妨害」川勝知事が議会で激ヅメ…過去に否定した“解決策”を今さら主張する自己矛盾、地下深くの工事「本当に安全か」 調布陥没事故 広がる余波 リニア計画のJR東海 説明会開催へ)である。

先ずは、昨年12月24日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの池上 彰氏とライター・編集者の梶原麻衣子氏による「「リニア開業を引き延ばしてもいいことは何もない」静岡市長がそう語る理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/336395
・『静岡工区の着工のめどが立たず、2027年開業が危ぶまれているリニア中央新幹線だが、静岡市長は「リニア開業を引き延ばしてもいいことは何もない」という。#1、#2に続き、ジャーナリストの池上彰氏が、静岡県・川勝知事の元側近で現在静岡市長を務める難波喬司氏と対談した』、興味深そうだ。
・『大きな活断層とフォッサマグナ  池上 リニアを巡る問題には、静岡で問われている川の水の問題や、残土置き場の問題以外の危険性を指摘する声もあります。例えば駿台予備学校の名物物理学講師で全共闘世代の山本義隆氏は、南アルプスは造山活動の激しい山岳で、直下には中央構造線と糸魚川―静岡構造線という2つの大きな活断層が走っているため、地震のリスクを懸念しています。また、活火山が多く、地震や地滑りが起こりやすいフォッサマグナも通っています』、「南アルプスは造山活動の激しい山岳で、直下には中央構造線と糸魚川―静岡構造線という2つの大きな活断層が走っているため、地震のリスクを懸念しています。また、活火山が多く、地震や地滑りが起こりやすいフォッサマグナも通っています」、リスク要因が揃ってご丁寧なことだ。
・『「フォッサマグナ」とは  新潟県から伊豆半島にかけて南北に横断する地下6000メートル以上もの溝に堆積物が積み重なった地帯。この地帯では南北に活火山が列をなし、多くの断層が走っている。フォッサマグナを境にして地質が分断されている。 難波 確かに問題の指摘としては理解できます。大井川上流の一番の問題は地層が立っていること。通常の平野は古い地層の上に新しい地層が乗っかっているので、トンネルを掘るにしても均質な層を掘り進んでいけばいいし、地震が来ても均質な層の中で揺れる分には影響が少ない。 しかし大井川上流地域では地層が横ではなく縦に立っている状態なので、それを串刺しする形のトンネル内での揺れ方が部分ごとに違ってくるという点があります』、「大井川上流地域では地層が横ではなく縦に立っている状態なので、それを串刺しする形のトンネル内での揺れ方が部分ごとに違ってくるという点があります」、なるほど。
・『科学でも分からないことは多い  難波 それは事実ですが、この危険性について考えるべき立場にあるのは、第一に事業者であるJR東海です。当然、JR東海側はトンネルの技術者も抱えていますし、リスクに関しても勘案しているはず。克服できると判断したから事業として進めているのでしょう。 もちろん、甘く見てはいけないと思いますし、実際に想定や考慮の度合いが甘い点については指摘してきました。さまざまなリスクを考慮して決めた事業そのものについて、静岡市長が事業全体について「危ないからやめるべきだ」「反対だ」と言えるものではないと思っています。 池上 JR東海としてはさまざまなリスクがあっても、技術的に回避できると思っているからこそ、やると決めたんだろうと。そう解釈しているということですね。 難波 そもそも皆さん、科学には正解があるという前提で話をされていますが、実際には分からないことも多いんです。リスクはもちろん考慮した上で対策を講じなければなりませんが、実際に地震が来たときにどうなるかというのは、事前のリスク管理とは別の問題です』、「科学には・・・分からないことも多いんです」というのはその通りだが、現実の生活では、経験的、科学的に問題ないと判断された上で、やっているが、リニアのトンネルなどの技術は、科学で安全性を確かめる必要がある。
・『真冬に標高1500メートルの非常口に置き去りにされた人はどうするのか  池上 リスクということでいえば、仮にトンネル内で停車してしまったときの避難経路についても問題を指摘されています。例えば地上では南アルプスの高い位置に当たる、その真下のトンネル内で事故が起きたら、乗客はどうするのか。 千石(せんごく)と西俣(にしまた)に非常口が設置される予定ですが、千石非常口は標高1340メートル、地表からの深さは約260メートルで、非常口までの長さは約3キロメートルに及びます。西俣非常口も標高1535メートルで、地表からの深さは約320メートル、非常口までの長さは約3.5キロメートルもある。もし真冬に事故が起きたら、標高1300~1500メートルの高さに脱出しても、今度は凍えてしまいます。 (南アルプストンネルの断面図 はリンク先参照) 難波 しかも出たところで誰もいませんから、もしそういう事故が起きれば静岡市の防災ヘリが救助に向かうことになるでしょう。しかし「真冬に非常口から出てきて標高1300~1500メートルの所に置き去りにされた人はどうするのか」は静岡市が考えるべき問題ではありません。 池上 それもJR東海が考えるべき問題であるということですね。川勝知事はこうしたさまざまなリスクを考慮した上で反対しているのか、それとも別の理由によってルート変更を主張しているのか、このあたりはいかがですか。 難波 反対に至るまでにはさまざまな要素や理由があったと思います。そもそもの川勝知事の持論は、鉄道と空港の連携を図ることでした。リニアは松本側を通る長野ルートを走ることで松本空港との連携を取り、東海道新幹線は静岡の新幹線の新駅と静岡空港とで連携を取る。交通体系としてはこれがベストだという考えはお持ちだったと思います。 池上 それが受け入れられないからリニアに反対だ、と?』、「真冬に非常口から出てきて標高1300~1500メートルの所に置き去りにされた人はどうするのか」について、「JR東海」はどう考えているのだろう。
・『静岡県はメリットがない状況で環境に対するリスクだけ背負わされる  難波 そうではありません。交通体系とリニアへの反対はまったく別の論点です。あくまでも静岡の自然体系、水の問題で影響が出る以上は静岡を通らないルートにしてほしいと。長野ルートの方が明らかに自然環境に対するリスクが少ないのだから、そちらを通られたらどうですかと。 池上 ではJR東海は自然への影響を軽く見ていたということなのかな。まさかそれを理由に、ここまで反対するとは思わなかった、と。 難波 JR東海が環境アセスに対する意識が低かったのは事実だと思います。だから今、(国土交通省の有識者会議で)1年5カ月かけて生物多様性に関する調査をしたでしょう。専門家を入れて、改めてこれだけの月日をかけてやっと、というのが事実です。 大井川の水問題にしても1年8カ月、専門家で議論して、ようやく先進坑貫通までの約10カ月間も含めた全量戻しも決まり、「影響なし」と結論を出しました。だからその点に関しては決して静岡県が難癖を付けて着工を遅らせているのではなく、最初に出してきたJRのアセスの詰めが甘かったということなんです。 池上 東京や神奈川、山梨県などは駅もできるので、早くリニアに開業してほしい。JR東海としても国が事業を認め、社会的な要請を受けているから「そうはいってもそれほど反対はしないだろう」とばかりに甘く見ていた面はありそうです。 難波 そうですね。私はよく講演などでリスクコミュニケーションについて話します。リスクコミュニケーションとは起こり得るリスクを関係者と情報共有し、相互理解を深めるためのコミュニケーションを図ることですね。難しいのは、リスクの受け取り方は立場によって変わることです。 例えば放射線の問題でいえば、誘致してもいないのに原発立地に選ばれたら、「事故が起きたら放射能が怖い」となりますよね。そのときのリスクはものすごく大きく感じられます。 しかし一方で、飛行機に乗る際に受けるX線検査の放射線について、健康リスクを問題視する人は少ない。なぜなら、飛行機に乗ることは自分で選択しているからです。つまり、受動側か能動側かで、リスクの受け取り方が違うのです。 そのため、「環境に対する影響がある」という同じ問題についても、進んでリニアを開通しようと考えている人にとっては、環境に対するリスクは少なく感じられるし、実際にリスクを大きく見ない。 しかし自分たちでリニアの通り道になることを選んだわけではない静岡県民からしてみれば、環境への影響リスクは大きなものになるんです。静岡にはリニアは止まらないわけですから、端的に言えばメリットがない状況で、環境に対するリスクだけは「受け入れろ」と言われているに等しいわけです。 だから川勝知事がリスクについて指摘し、それを静岡県民が支持しているのも当然のことで、何も難癖を付けているわけではないんです。 池上 もし長野ルートを通っていれば長野にも駅ができ、長野県民にもメリットがある。特に伊那は現状では東京まで片道4時間かかりますから、それが30分に短縮できるなら、多少の影響があってももろ手を挙げて大歓迎するでしょうね。それでいうと、静岡県はメリット・デメリットであまりにも釣り合いが取れていない、と。 難波 はい。10月に入ってようやく、静岡にもこれだけの経済効果が出るという試算が出ましたが、当初はこういう話も出てきませんでしたから。しかもあくまでも国交省の試算であって、JRによるものではない。停車本数の増加分も経済効果も、具体的な数字は一切出してきていません。 池上 ということは、JRは初期の段階で静岡とのリスクコミュニケーションに失敗したということですか。 難波 初期の失敗はそこにあったと思います。 池上 リニアが通ってもメリットを感じられない静岡県民にしてみれば、リスクばかり背負わされることになる。大事な自分たちの財産である南アルプスの自然が軽視されている、と。川勝知事はそうした県民心理をうまくつかんだともいえそうです』、「JRは初期の段階で静岡とのリスクコミュニケーションに失敗したということですか・・・リニアが通ってもメリットを感じられない静岡県民にしてみれば、リスクばかり背負わされることになる。大事な自分たちの財産である南アルプスの自然が軽視されている、と。川勝知事はそうした県民心理をうまくつかんだともいえそうです」、なるほど。
・『開業が3年遅れれば1兆円の損失  難波 ただ、静岡県としても、これ以上引き延ばしてもいいことは何もないんです。私がよく申し上げるのは、リニアは1日10億円、1年で3650億円の利益が出る事業です。7兆円、9兆円という予算をかけるということは、そのくらいの利益を出さないと採算が取れない。ということは、開業が3年遅れれば1兆円の損失になるということです。1兆円の損失を出すくらいなら、長野ルートを取っていた方がよかったでしょう。結果論ではありますが。 池上 川勝知事はどう思っているか分かりませんが、さすがに今更ルート変更はできないでしょう。 難波 今更変えられませんから、懸案を解決し、一日も早く進めるしかないと思います。「リニアは国も関わっている、1日10億円の事業」であることを頭に入れて、解決に協力する。 私が国交省にいた時に羽田空港の第4滑走路(D滑走路)の事業に携わったのですが、あの便益はだいたい1日3億円でした。だから職員に、漁業補償の交渉をする際にも、「1年早く済めば、1000億円の社会的便益が出るんだから頑張ろう」と職員にハッパをかけていました。 池上 第4滑走路には私もかなりの恩恵を受けております。 難波 ありがとうございます……って私がお礼を言うのも変なのですが(笑)。だからやはりリニアも、科学的根拠と社会的合意形成がクリアできたら、あとは賛否は別にして、「1日10億円の事業である」ということも前提に対応していく必要があると思います』、「リニアも、科学的根拠と社会的合意形成がクリアできたら、あとは賛否は別にして、「1日10億円の事業である」ということも前提に対応していく必要があると思います」、役人らしい1つの考え方ではある。

次に、この続きを、昨年12月25日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの池上 彰氏とライター・編集者の梶原麻衣子氏による「激論 リニア新幹線#4:リニア新幹線、完成したら乗りたい?池上彰が「名古屋までならNO」と答えるワケ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/336404
・『リニア中央新幹線の工事着工を認めない川勝平太静岡県知事の強固な反対姿勢が注目されているが、そもそもリニア中央新幹線のメリットとデメリットとは。気になる安全面も含めてジャーナリストの池上彰氏が徹底解説する』、興味深そうだ。
・『リニアのメリットとデメリットが多数ある  静岡リニア中央新幹線問題は、川勝平太静岡県知事の強固な反対姿勢が注目を集め、地元紙のみならず多くのメディアで取り上げられています。「静岡を通過することを許さない」とばかりにさまざまな論点で反対を述べる川勝知事に対する批判的な論調もある一方で、「そもそもリニア中央新幹線のメリットとデメリットとはどのようなものなのか」を改めて知りたいという声もあるのではないでしょうか。 そこで、利用者としての立場からリニア中央新幹線をどう考えるべきか、7つの論点から見ていきましょう。 まずは「所要時間」。現在、東京―名古屋間は新幹線「こだま」であれば約2時間40分、新幹線「のぞみ」であれば所要時間は約1時間40分。これがリニアであれば品川―名古屋間でなんと40分で到着します。しかも想定では、料金は新幹線と比べて700円程度の上乗せだと発表されています。安価な追加料金で所要時間が1時間も短縮されるとなれば、特にビジネス利用者にとっては大きな価値があるといえそうです。 何より、品川まで40分となれば、名古屋から東京へ毎朝通勤することも可能になります。そうしたリニア後の需要を見込んでか、現在、名古屋駅周辺は大規模な再開発が進んでおり、高層マンションも林立しています。 さらに東京―新大阪間では現在、最短でも新幹線で2時間30分近くかかるところ、リニアでは67分と見込まれています。1時間半も短縮できるのであれば、使いたいという人も多いはずです。 日頃、新幹線を利用している方は最近如実に感じられるところではないかと思うのですが、コロナ禍明けの現在、新幹線の指定席予約がかなり取りづらくなっている現状があります。というのも、新幹線はこれまでの観光利用、ビジネス利用に加え、インバウンドによる外国人観光客の利用も爆発的に増えているからです。 こうした状況を考えれば、リニアは新幹線利用者の溢れた分を受け入れる輸送手段になり得ます。リニアは「輸送量」で見れば間違いなくプラスです』、「リニアは「輸送量」で見れば間違いなくプラスです」、その通りだ。ただ、料金収入面ではどうなるのだろうか。
・『列車運行中なら乗客を巻き込んで大惨事になっていたかもしれない  ほとんどの区間で地下を走るリニアは、車窓から見える景色を楽しむ機会はほとんどありませんし、所要時間もかなり短いため、旅には向きません。そこで早く現地につくことを優先するビジネス利用者と、旅情を楽しみたい観光客とでリニアと新幹線の使い分けが進むかもしれません。 今、「ほとんどの区間で地下を走る」と述べたように、リニアは286キロメートルの区間のうち、約8割が地下を通ることになります。そのため、リニアは一般的な新幹線に比べて台風や大雨、大雪などの「自然災害」に強いといわれています。近年では台風だけでなく線状降水帯発生の予測段階で翌日の運休などが発表される例も多くなってきた新幹線の代替輸送手段としても、リニアが期待されている面はあります。 一方では少子高齢化、人口減少によって将来的に利用者が減少するのではないかと指摘する声もありますが、現在の利用者増の傾向はまだまだ続きそうですから、利用者の増減現象が逆転する日はもう少し先になりそうです。 ではリニアは「安全性」が高いのか。もちろん高い安全性を確保するための工夫がさまざまなされていますが、何事もゼロリスクはあり得ません。これはリニアに限らず新幹線でも同様です。そこで運行会社は、地震の揺れで最初に出る地震波P波を感知した段階でブレーキをかける仕組みを使っています。その名も「ユレダス」という名称です。 2004年の中越地震の際には、上越新幹線が脱線事故を起こしました。この時にもユレダスを導入していましたが、この地震を契機にJR東日本では地震計同士をネットワークで通信させて、いち早く捉えた地震計の情報を他の変電所に伝えられるようになり、東日本大震災の時に役立ちました。JR東海は現在では独自に開発したテラス(東海道新幹線早期地震警報システム)を導入しています。 ほとんどの場所で地下を走るリニアは地震にも強いといわれています。しかし問題は、リニア開通が予定されている路線上には幾つもの活断層が存在している点です。 断層」とは:長い年月をかけて地下の岩盤に力が加わり、それが限界に達したとき、ある面を境として岩盤が急速に動いてずれることで地震が起こる。この岩盤のずれを断層という。中でも活断層はこの数十万年の間に、おおむね千年から数万年の間隔で繰り返し活動し、今後も再び活動すると考えられている断層を指す。 (地震の発生の仕組みはリンク先参照) 予定路線上には、次の7つの活断層の存在が指摘されています。 (1)曽根丘陵断層帯 (2)糸魚川―静岡構造線断層帯 南部区間 (3)伊那谷断層帯 主部 (4)清内路峠断層帯 (5)木曽山脈西縁断層帯 主部 (6)阿寺断層帯 主部の南部 (7)笠寺断層  この周辺は「30年以内に確実に発生する」と予測されている南海トラフ地震の影響を受ける地帯でもあり、仮にリニアができてから大地震が発生すれば、人的被害を含む大きな損害を免れないのでは、といわれているのです。 実際、これまでにも鉄道路線が活断層で切断された事例があります。北伊豆断層系・丹那(たんな)断層が1930年に引き起こした北伊豆地震(M7.3)の際には、東海道本線の丹那トンネルの掘削工事が行われていました。地震によって東西方向のトンネルが、断層運動によって掘削の先端面が2メートルほどズレてしまい、その分の穴を掘り直したのです。もし、地震が工事中ではなく列車運行中に起きていれば、乗客を巻き込んだ大惨事になっていたかもしれません』、「北伊豆地震(M7.3)」が「工事中」に起きたのは幸いだった。
・『開通までの車両開発のノウハウや運用が生かせる  リニア計画を進めているJR東海は「活断層が心配」との声に対し「地質調査済みである」とした上で「全ての活断層を回避することは現実的ではない」と回答しています。 しかし仮に車両が地下を走っている際に地震が発生すれば、地上まで避難しなければなりません。南アルプスを貫通する地下トンネル内で地震が発生しリニアを急停止させた場合、乗客が避難するには地上の避難口まで標高差300メートル前後登らなければならず、かなり大変です。日本は地震大国であるだけに対策も進んでいますが、一方で常にリスクを抱えていることも考慮すべきでしょう。 リニア新幹線はJR東海という民間企業が国から3兆円もの財政投融資を受けた肝いりプロジェクトですが、一方で国家戦略の一つでもあります。東京・名古屋・大阪を短時間で結ぶ交通網の整備によって、地方経済の活性化や、日本の国際競争強化を見込んでのことです。税金から貸し出された3兆円は30年間も元本返済を猶予することになっています。 これだけのプロジェクトですから、開通までの車両開発のノウハウや運用が蓄積されることで、それ自体が価値を持つようにもなります。例えば「海外へのリニアの輸出」。現在、米国ではニューヨーク―ワシントン間の新幹線構想があり、日本も参画を狙っています。2023年2月には、JR東海が開発主体の米国企業と組んでニューヨークでリニア建設促進PRイベントを開催しました。 さらに私自身も部分的に試験運転として開通している山梨県のリニア実験区で試乗したり、工事現場を取材したりしましたが、トンネル掘削にしても、今回のリニア開通に合わせたさまざまな掘削機械や掘削技術が開発されています。こうしたノウハウも、他国や他の事業で生かせる可能性があります。 このように、リニア開通にはメリットとデメリットが多数あります。では、リニアが開通したら、私・池上彰はリニアを利用するか。答えは「名古屋までならNO」です。一番の理由は、仮に名古屋まで行くにしても40分ではゆっくり駅弁を食べる時間がないことです。名古屋に行くまでに新書を1冊読むという習慣もあるのですが、これまた乗車時間40分では難しい。大阪までの1時間であれば、乗るかもしれません。 つまり、鉄道会社が提示する「時短」という最大のメリットが、私にとっては(少なくとも名古屋までの間は)メリットではないのです。 さて、皆さんはリニアに乗りますか?』、私はトンネルが嫌いなので、大阪まででも「リニア」には乗りたくない。「南アルプスを貫通する地下トンネル内で地震が発生しリニアを急停止させた場合、乗客が避難するには地上の避難口まで標高差300メートル前後登らなければならず、かなり大変です」、死ねと宣告されるに等しい責め苦だ。

第三に、昨年12月27日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したイトモス研究所所長の小倉健一氏による「「リニア妨害」川勝知事が議会で激ヅメ…過去に否定した“解決策”を今さら主張する自己矛盾」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/336561
・『リニア中央新幹線の着工を認めない川勝平太静岡県知事の出した解決策が、波紋を呼んでいる。かつて本人が否定していた「部分開業」案だったためだ。静岡県議会では川勝知事が激ヅメされるシーンも目立ってきたという』、興味深そうだ。
・『「仮定だらけの飛躍した結論」県議会で川勝知事への厳しい糾弾  その言い草はまるで「『飛行機が墜落するかもしれないから乗るな』と言っているような議論にしか聞こえない」と議会からも厳しい指摘を受けるようになった、リニア工事着工を妨害し続ける川勝平太静岡県知事。圧勝した静岡県知事選挙から2年半が過ぎて、だんだんと包囲網が狭まっているようだ。 12月7日に行われた静岡県議会で、「リニアトンネル工事による国の有識者会議と県の専門部会との意見対立が続いておりますが、県の専門部会は川勝知事の意向をくんだ学者やコンサルもおり、その会議たるや、仮定だらけの飛躍した結論で、極論すれば、まるで『交通事故で死ぬかもしれないから車に乗るな』『飛行機が墜落するかもしれないから乗るな』と言っているような議論にしか聞こえてきません。工事をやらせないように遅らせようとするネガティブな議論しかしてないように思われます」と川勝知事を糾弾したのは、桜井勝郎県議(無所属)だ』、手厳しい批判だ。
・『過半数を超える自民党が県知事選では負け続けるのは奇妙  川勝平太静岡県知事は、これまでに何度も失言や暴言を繰り返してきたにもかかわらず、現在4期目を迎えている。この事実は静岡県の政治環境の特異性を示している。県議会の議席は本来68席だが、現在は1人の欠員があるため、実際には67人の議員がいる。自由民主党(会派名は自民改革会議)は41議席を持ち、半数を大きく超えている。一方で、川勝知事を支持する「ふじのくに県民クラブ」は17議席、公明党は5議席、無所属が4議席となっている。 このように自民党が静岡県議会で大きな力を持っているにもかかわらず、県知事選では連続して敗北していることが、静岡県の政治状況の特異さを示している。県議会において自民党がここまで圧倒的な勢力を保持しているのに、県知事選や国政選挙では同じ傾向が得られないのは、奇妙である』、確かに不思議だ。
・『“県議会のドン“が不在で会派はバラバラの状態  地方レベルの選挙では自民党が圧倒的優位に立つが、より大きな規模の選挙では異なる結果が出るのは、地域住民の投票行動の違いや、候補者の資質、政治的なイメージなど、さまざまな要因が絡み合っているからだろうが、自分以外の選挙や、県議会での意思決定で、一つにまとまれないのは静岡自民党の体質かもしれない。 静岡県議会が川勝氏を知事職からいまだに引きずり下ろすことができない状況の中で、2025年6月に予定されている次の静岡知事選に、自民党から強力な対抗馬が出るのかどうかが問題となっているが、静岡県選出の自民党国会議員の存在感はない。 比例復活で当選した塩谷立衆議院議員(安倍派・座長)は、2017年の前々回の知事選で細野豪志衆議院議員(当時民進党、現在自民党)の立候補の意思を黙殺し、2021年の知事選では1年前から準備したにもかかわらず有力候補を立てられずに大敗を喫した。さらに、最近の安倍派の裏金問題で、当面の間、表舞台に立つことはできないだろう。 塩谷氏以外にも、静岡県には、上川陽子外相や城内実自民党静岡県支部連合会会長などがいるが、彼らは国政において外交分野の経験が多く、川勝知事への対抗に積極的な動きを見せていない。彼らには県内の重要な問題に対する熱意が不足しているように見える。 先日、採決された川勝知事への不信任決議案は、地方自治法第178条の規定により、議員数の3分の2以上が出席し、その4分の3以上の賛成が必要だが、1票足らず否決された。自民党職員の一人はこう解説する。 「川勝知事を支持する『ふじのくに県民クラブ』会派の議員たちが、もし1人でも反対に回っていれば、不信任決議が可決された。しかし、これを実現できるような寝技を得意とする自民党の議員がいなかった。静岡県は東部、中部、西部と地域ごとに異なる気質を持っており、自民党の県議団にもそれぞれの地域から声の大きい議員がいる。しかし、全体をまとめ上げることができるような強力なリーダー、いわゆる“県議会のドン“が不在で、結果として会派はバラバラの状態にある。議会は県政に絶大な力を持つにもかかわらず、川勝知事の好き勝手を許してきたのは議会の責任だ。現在、世論は川勝知事に大きな反発を示しているのだから、議会がもっとアグレッシブに行動すべきだ」』、「先日、採決された川勝知事への不信任決議案は・・・その4分の3以上の賛成が必要だが、1票足らず否決された」、僅差だったようだ。
・『「なめられてるんだよ、完全に!」 県議会と知事の緊張関係  とはいえ、川勝知事に吹く風向きは随分変わってきたようだ。文化事業「東アジア文化都市」の発展的継承センターの建設に関して、川勝平太静岡県知事は議会の承認を得る前に、「東アジア文化都市を継承する拠点を三島市に作りたい。土地を物色していて、『詰めの段階』に入っている」と発言し、独断で三島市に拠点を造る計画を進めていることを発表した。 これに対して、県議会のある議員が「訂正させろ!もうちょっと闘う姿勢を見せないとだめ!なめられてるんだよ、完全に!訂正させなきゃだめ!」と強く反発するなどした結果、県議会は川勝知事に発言の訂正を求める決議案を全会一致で可決した。この状況に慌てた川勝知事は、自身の発言を謝罪し、計画を白紙に戻すと表明した。この一連の出来事は、現在の県議会と知事との間の緊張関係を浮き彫りにしている』、「現在の県議会と知事との間」はかなり悪化したようだ。
・『川勝知事の解決策「部分開業」案は本人が過去に否定していた  川勝知事が議会で激ヅメされるシーンも目立ってきた。10月10日の記者会見で川勝知事は「私がJRの意思決定者であれば解決策を出せる自信はある」と話した。静岡県に10年で1600億円を超える経済効果があることがわかっているリニアの開業を、川勝知事がただ妨害し時間を引き延ばしているのは、なぜなのか。関係者は一様に疑問に思っていたものの、地元で川勝知事を応援する静岡新聞を中心に、それについて聞くことを避けてきた。 しかし、12月12日の県議会では、中田次城議員(自民)が「解決策とは一体何なのか?」と質問した。川勝知事は「JR東海との対話を速やかに進めるために、意思決定者である丹羽(俊介)社長には強いリーダーシップを持って取り組んでほしいとの思いを述べたものである」といつものようにはぐらかしたものの、中田議員は「ルート変更を意識して言ったのか?」と再度詰め寄ると「ルート変更は念頭にない」と否定した。 そして、重ねて「解決策」とは何なのかについて質問を受けた結果、「現行ルートを前提にした上で、できるところから、つまり開通できる状況になった部分から開通させることが営業実績となり、解決策となると考えている」などと発言した。 ゴールポストを動かし続けてきた川勝知事が、議会に激ヅメされて、この場で表明させられた「解決策」とはなんと「部分開業」だったということだ。「部分開業」が静岡工区の問題解決に一体どうつながるというのか。しかも、この部分開業案は、川勝知事自身が過去に実現が難しいものとして、すでに主張を取り下げたものだ。この答弁を聞いた誰もが耳を疑ったことだろう。 つまり、一連の質疑を通して、川勝知事には解決策などなく、とにかく建設を止めろと言っているだけであることがハッキリしてしまった』、「一連の質疑を通して、川勝知事には解決策などなく、とにかく建設を止めろと言っているだけであることがハッキリしてしまった」、これは大変だ。
・『解決策がないのにリニア推進を表明することの矛盾  川勝知事は、表向き「リニア中央新幹線の工事着工を推進する」と言いながら、実際には工事を徹底的に妨害する戦略を取っていた。しかし、議会によるこの鋭い質問を受けて、その発言が単なるうそであることが明らかになった。このように二枚舌を使って事実をごまかし続ける知事に対しては、メディアも議会に負けないよう、川勝知事の発言に対してしっかりと追及する必要がある。 静岡県知事の定例記者会見の模様はYouTubeで公開されているが、川勝知事が質問に直接答えず、関係のない自説を延々と続けることが多い。多くの場合、メディア側は2回の問い詰めで諦めてしまうことが多いが、記者たちは細かく質問を詰めていくべきだ。不信任案の決議を恐れる川勝知事は、議員の質問には真摯(しんし)に答えざるを得ない状況にある。メディアだって、その気になれば、川勝知事の本音の答弁を引き出すことが可能だろう。 川勝知事には「解決策がない」ことが明らかになった今、明らかにしておくべきは「解決策がない(川勝知事にとってリニア計画を止めるしか道はない)のに、リニア推進を表明することの矛盾」を答えさせることだ。どんなにはぐらかしを弄(ろう)しても、詰め将棋を一手、一手打っていくような徹底した追及がここでは必要だ。 この矛盾を認めさせることで、この2017年に始まった川勝知事の一連のリニア妨害が、ただの嫌がらせ、ムダだったことが判明する。そうなれば、この間の県政停滞の責任を取らせるべきであり、不信任決議案提出の、大きな、大きな大義となり得よう。 知事任期満了を待つと、川勝知事の対抗馬が与野党間で乱立して、川勝知事の再選に有利に働く可能性が高い。任期途中で突然の知事選へと持ち込むことで一対一の対決ができるかもしれない。そうなれば、勝てる可能性はグンと増すだろう』、「知事任期満了を待つと、川勝知事の対抗馬が与野党間で乱立して、川勝知事の再選に有利に働く可能性が高い。任期途中で突然の知事選へと持ち込むことで一対一の対決ができるかもしれない。そうなれば、勝てる可能性はグンと増すだろう」、面白い展開になってきた。

第四に、やや古い記事だが、2021年6月3日付け東京新聞「地下深くの工事「本当に安全か」 調布陥没事故、広がる余波 リニア計画のJR東海、説明会開催へ」を紹介しよう。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/108239
・『東京都調布市の東京外郭環状道路(外環道)の地下トンネルルート上で陥没や空洞が発生した問題を受け、JR東海が8日に、リニア中央新幹線の工事に関する住民説明会を品川区で開くことが分かった。外環道と同様に深さ40メートル超の大深度地下をシールドマシンで掘る工事のため、沿線住民の不安を解消する狙い。参加予定の住民は「真摯な説明を」と求めている。(梅野光春)』、「大深度地下」の安全性に疑問を投げかけた事故だ。
・『◆都内・川崎・名古屋で大深度地下トンネル  リニアの工事では、品川―名古屋の286キロのうち、都内と川崎市の33キロと名古屋市などの17キロの大深度地下にトンネルを掘る。大深度なら地権者から工事の同意を得る必要はなく、事業者は手続きを省ける。 JR東海は2018年の住民説明会で「シールドトンネルの施工は40メートル以上深い所に計画しており、騒音・振動の影響はほとんどない」としていた。だが昨年10月以降、調布市の外環道工事現場で陥没や空洞が見つかり、東日本高速道路が工事との因果関係を認めて謝罪。リニア沿線からも不安の声が上がった。 【関連記事】調布陥没は「特殊地盤と施工ミス原因」 有識者委が見解 このためJR東海は、品川、大田、世田谷の3区を通るトンネル9・2キロの沿線住民に、施工上の安全対策を説明する』、「東日本高速道路が工事との因果関係を認めて謝罪。リニア沿線からも不安の声が上がった」、「東日本高速道路」で問題が出たのであれば、「リニア」「「シールドトンネル」でも問題が出る可能性がある。
・『◆「外環道での陥没知り、いっそう不安」 大田区の真保雅一さん(65)は自宅直下をリニアが通る予定で「外環道での陥没や空洞を知り、いっそうリニア工事に不安を感じる。JR東海が外環道の件を十分に分析したうえで、本当に安全・安心と言えるのか、納得のいく説明を聞きたい」と話す。 会場はJR大井町駅近くのきゅりあん(品川区東大井5)で先着500人まで。問い合わせは、平日午前9時~午後5時にJR東海中央新幹線東京工事事務所=電03(6847)3701=へ。 【関連記事】<社説>調布陥没の波紋 リニア工事は大丈夫か 
・『◆外環道訴訟では原告「国の主張は破綻」 東京外環道の練馬―世田谷区のトンネル建設を巡り、国による大深度地下の使用認可の無効確認を求めて住民らが起こした訴訟の口頭弁論が2日、東京地裁(鎌野真敬裁判長)であった。原告側は調布市の住宅地での陥没や空洞問題に言及し、「人身の被害が生じかねない危険な工事だ」と主張した。 口頭弁論後に内容を振り返るなどした原告団の集会=2日、東京都千代田区で 口頭弁論後に内容を振り返るなどした原告団の集会=2日、東京都千代田区で この日の弁論で原告側は、陥没などが起きた調布市での事前のボーリング調査について「国は『調査は十分だ』と主張してきたが、陥没や空洞が発生した事実により、その主張は粉砕され破綻した」と指摘。大深度の掘削を認可した国の判断の違法性を、改めて強調した。【関連記事】外環道、トンネル掘削工事を2年凍結 調布の陥没問題で一部区間』、「「国は『調査は十分だ』と主張してきたが、陥没や空洞が発生した事実により、その主張は粉砕され破綻した」と指摘」、恐らくその後問題ないとのニュースがあったのに、それを取り漏らした可能性がある。土木工学上でも「大深度地下」の特性がこれまでのものとは全く異なったものになる可能性がある。 
タグ:梶原麻衣子氏による「「リニア開業を引き延ばしてもいいことは何もない」静岡市長がそう語る理由」 池上 彰氏 ダイヤモンド・オンライン (その8)(「リニア開業を引き延ばしてもいいことは何もない」静岡市長がそう語る理由、激論 リニア新幹線#4:リニア新幹線、完成したら乗りたい?池上彰が「名古屋までならNO」と答えるワケ、「リニア妨害」川勝知事が議会で激ヅメ…過去に否定した“解決策”を今さら主張する自己矛盾、地下深くの工事「本当に安全か」 調布陥没事故 広がる余波 リニア計画のJR東海 説明会開催へ) リニア新幹線 「南アルプスは造山活動の激しい山岳で、直下には中央構造線と糸魚川―静岡構造線という2つの大きな活断層が走っているため、地震のリスクを懸念しています。また、活火山が多く、地震や地滑りが起こりやすいフォッサマグナも通っています」、リスク要因が揃ってご丁寧なことだ。 「大井川上流地域では地層が横ではなく縦に立っている状態なので、それを串刺しする形のトンネル内での揺れ方が部分ごとに違ってくるという点があります」、なるほど。 「科学には・・・分からないことも多いんです」というのはその通りだが、現実の生活では、経験的、科学的に問題ないと判断された上で、やっているが、リニアのトンネルなどの技術は、科学で安全性を確かめる必要がある。 「真冬に非常口から出てきて標高1300~1500メートルの所に置き去りにされた人はどうするのか」について、「JR東海」はどう考えているのだろう。 「JRは初期の段階で静岡とのリスクコミュニケーションに失敗したということですか・・・リニアが通ってもメリットを感じられない静岡県民にしてみれば、リスクばかり背負わされることになる。大事な自分たちの財産である南アルプスの自然が軽視されている、と。川勝知事はそうした県民心理をうまくつかんだともいえそうです」、なるほど。 「リニアも、科学的根拠と社会的合意形成がクリアできたら、あとは賛否は別にして、「1日10億円の事業である」ということも前提に対応していく必要があると思います」、役人らしい1つの考え方ではある。 梶原麻衣子氏による「激論 リニア新幹線#4:リニア新幹線、完成したら乗りたい?池上彰が「名古屋までならNO」と答えるワケ」 「リニアは「輸送量」で見れば間違いなくプラスです」、その通りだ。ただ、料金収入面ではどうなるのだろうか。 「北伊豆地震(M7.3)」が「工事中」に起きたのは幸いだった。 私はトンネルが嫌いなので、大阪まででも「リニア」には乗りたくない。「南アルプスを貫通する地下トンネル内で地震が発生しリニアを急停止させた場合、乗客が避難するには地上の避難口まで標高差300メートル前後登らなければならず、かなり大変です」、死ねと宣告されるに等しい責め苦だ。 小倉健一氏による「「リニア妨害」川勝知事が議会で激ヅメ…過去に否定した“解決策”を今さら主張する自己矛盾」 極論すれば、まるで『交通事故で死ぬかもしれないから車に乗るな』『飛行機が墜落するかもしれないから乗るな』と言っているような議論にしか聞こえてきません。工事をやらせないように遅らせようとするネガティブな議論しかしてないように思われます」と川勝知事を糾弾したのは、桜井勝郎県議(無所属)だ』、手厳しい批判だ。 県議会において自民党がここまで圧倒的な勢力を保持しているのに、県知事選や国政選挙では同じ傾向が得られないのは、奇妙である』、確かに不思議だ 「先日、採決された川勝知事への不信任決議案は・・・その4分の3以上の賛成が必要だが、1票足らず否決された」、僅差だったようだ。 「現在の県議会と知事との間」はかなり悪化したようだ。 「一連の質疑を通して、川勝知事には解決策などなく、とにかく建設を止めろと言っているだけであることがハッキリしてしまった」、これは大変だ。 「知事任期満了を待つと、川勝知事の対抗馬が与野党間で乱立して、川勝知事の再選に有利に働く可能性が高い。任期途中で突然の知事選へと持ち込むことで一対一の対決ができるかもしれない。そうなれば、勝てる可能性はグンと増すだろう」、面白い展開になってきた。 東京新聞「地下深くの工事「本当に安全か」 調布陥没事故、広がる余波 リニア計画のJR東海、説明会開催へ」 東京外郭環状道路(外環道)の地下トンネルルート上で陥没や空洞が発生 「大深度地下」の安全性に疑問を投げかけた事故だ。 「東日本高速道路が工事との因果関係を認めて謝罪。リニア沿線からも不安の声が上がった」、「東日本高速道路」で問題が出たのであれば、「リニア」「「シールドトンネル」でも問題が出る可能性がある。 「「国は『調査は十分だ』と主張してきたが、陥没や空洞が発生した事実により、その主張は粉砕され破綻した」と指摘」、恐らくその後問題ないとのニュースがあったのに、それを取り漏らした可能性がある。土木工学上でも「大深度地下」の特性がこれまでのものとは全く異なったものになる可能性がある。
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鉄道(その11)(富士山登山鉄道「LRTありきでない」発言の矛盾 水面下では事業化に向け専門家会合が同時進行、開業後どうなった?2023年誕生「新路線」の通信簿 宇都宮ライトレールや七隈線は予想以上の好調) [産業動向]

鉄道については、本年9月1日に取上げた。今日は、(その11)(富士山登山鉄道「LRTありきでない」発言の矛盾 水面下では事業化に向け専門家会合が同時進行、開業後どうなった?2023年誕生「新路線」の通信簿 宇都宮ライトレールや七隈線は予想以上の好調)である。

先ずは、本年12月4日付け東洋経済オンライン「富士山登山鉄道「LRTありきでない」発言の矛盾 水面下では事業化に向け専門家会合が同時進行」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/718700
・『富士山のふもとと5合目を結ぶ自動車道路・富士スバルライン上に軌道を整備して、富士山にLRT(軽量軌道交通)の車両を走らせるという「富士山登山鉄道構想」が山梨県で進められている。これに対し、スバルライン5合目の所在地である富士吉田市の堀内茂市長は「電気バスで十分」と反対、「そもそも地元への説明なしに進めているのがおかしい」と批判する。 合意形成を急ぐ長崎幸太郎知事は地元自治体向けの説明会を始めた。その第1弾は11月21日の山中湖村。さらに2024年1月にかけて忍野村、鳴沢村などでも開催する。とくに2回目の説明会となった11月23日は富士吉田市内で行われ、堀内市長も住民の1人として説明会に参加するとあって、がぜん盛り上がりを見せた』、「とくに2回目の説明会となった11月23日は富士吉田市内で行われ、堀内市長も住民の1人として説明会に参加するとあって、がぜん盛り上がりを見せた」、なるほど。
・『富士山「世界遺産の地位喪失」の危機  当日、会場となったふじさんホールにやってきた住民の数はおよそ780人。会場はほぼ満席で後方には立ち見客も出るほど。説明会は定刻の16時にスタートし、冒頭から約45分は知事が登山鉄道構想について説明した。 知事はまず、かなり長い時間をかけて現在の富士山が置かれた状況について説明した。アメリカのCNN、フランスのAFP、イギリスのロイターといった海外メディアの報道を引き合いに、弾丸登山が登山者を危険にさらしていることや、登山道沿いの汚れたトイレやゴミの山で「世界遺産の地位喪失」の危機に直面しているとした。) こんなエピソードも紹介された。富士山は2013年に世界文化遺産として登録されたが、登録に際して「人が多く来訪者のコントロールが必要」とユネスコの諮問機関であるイコモスから注文を付けられていた。登録前年となる2012年のの5合目来訪者数は231万人だったが、2019年には506万人に増えた。来訪者は減るどころか2倍以上になった。イコモスが求めるコントロールがまったくできていない。 さらに、今夏にイタリアが気候変動やオーバーツーリズムからベネチアを守る努力が足りないとして、ベネチアを危機遺産に登録するかどうかをめぐって協議されたことも話題となった。「富士山がそうならないよう、私たちは最悪の場合に備えてあらかじめ手を打つ必要がある」(長崎知事)。 富士山の現状に関する説明に続き、知事は会場に2つの同意を求めた。「富士山が地元の宝、日本の宝であるということに対して、私たちの間に意識の違いはないと思う」、「富士山の世界文化遺産としての価値を後世に引き継がないといけないということに反対する人はいないと思う」。知事が会場に対して「これらの点において私たちとみなさんは共通している。いかがでしょうか」と問うと大きな拍手が起きた』、「登録に際して「人が多く来訪者のコントロールが必要」とユネスコの諮問機関であるイコモスから注文を付けられていた。登録前年となる2012年のの5合目来訪者数は231万人だったが、2019年には506万人に増えた。来訪者は減るどころか2倍以上になった。イコモスが求めるコントロールがまったくできていない。 さらに、今夏にイタリアが気候変動やオーバーツーリズムからベネチアを守る努力が足りないとして、ベネチアを危機遺産に登録するかどうかをめぐって協議されたことも話題となった。「富士山がそうならないよう、私たちは最悪の場合に備えてあらかじめ手を打つ必要がある」・・・」、私は「富士山」が「世界遺産」から外されても、鉄道建設には絶対反対だ。
・『電気バスにも「大いに関心がある」  登山鉄道構想の反対派も拍手をしたかどうかはわからない。しかし、富士山が日本の宝であり、その価値を守らなくてはいけないという理念に反対する人はいないだろう。その点において、知事は登山鉄道構想の賛成派と反対派の共通認識を明確にすることには成功した。 「ではどうやって共通の目標を実現するか。その方法を議論したい」として、知事が「県の案」として持ち出したのが登山鉄道構想である。その内容は9月19日付記事(富士山「登山鉄道」、山梨県がこだわる真の理由)にあるとおりだが、それだけではなく、「LRTは街中にも延ばせる」として、富士山麓から山口湖や河口湖方面への延伸の可能性についても付け加えた。1400億円とされる総事業費については、「すべて県が負担するわけではない」として、国の補助金や民間企業の参加を示唆した。 電気バスについては「大いに関心がある」としつつも、「ゆったりした眺望や会話を楽しめる座席空間、食事など車両でしか体験できないサービス、シンボル性」という点でバスよりもLRTのほうが優れているとした。最後に、知事は「あくまで提案であり、もっとよいアイデアはあるはず。ご関心のある人といっしょに考えて最善のアイデアを作り上げたい」と発言し、説明の内容を締めくくった。 その後は、会場の参加者との質疑応答に移った。すべての質問は知事が自ら回答した。堀内市長が会場から質問することはなかったため、知事と市長の直接対決を見たかった人は肩すかしをくらったことになるが、県と市は富士山のオーバーツーリズム対策で協力関係を築いていることもあり、あからさまな対決は避けたのだろう。大人の対応だ』、「電気バスについては「大いに関心がある」としつつも、「ゆったりした眺望や会話を楽しめる座席空間、食事など車両でしか体験できないサービス、シンボル性」という点でバスよりもLRTのほうが優れているとした」、「電気バス」の優先順位は低いようだ。
・『地元住民「本当の議論をしていない」  気になった会場からの質問とそれに対する知事の回答をいくつか挙げてみる。たとえば、LRTの運賃が1万円というのは高すぎるという質問が出た。知事は「県民は1万円でなくてもいい。無料にすることも考えられる」と回答した。しかし、国費投入を想定するプロジェクトであることを考えれば、山梨県民が無料でそれ以外の日本国民が1万円というのは虫がよすぎる。あくまで地元向けのリップサービスと理解したい。 世界文化遺産登録が抹消されたらどんな影響があるかという質問もあった。知事は「想像もつかない。調べてみる」と回答した。登録抹消とは世界中から「富士山の価値を守っていない」と非難されることを意味するのだからそれを望む人はいないだろう。しかし、世界遺産登録が富士山の来訪者増に拍車をかけたのは間違いなく、登録が抹消されると登山者数は減り、オーバーツーリズムの問題も解消されるかもしれない。その意味では問題の本質を突く”怖い”質問だった。 「地元には反対意見が多いと思う。それは本当の議論をしていないからだ」という地元住民からの発言もあった。これはまったくそのとおり。県はあらゆる交通モードを比較検討してLRTが最善だと判断を下したというが、その過程で地元への説明が行われていなかった。それだけに、なんの議論もなくいきなりLRTという案が出てきたことに不信感を抱く地元住民は少なくない。知事は「今日は議論の始まりだ。LRTはあくまで1つのアイデアだ」と返した。) 数多くの質疑応答の中でも、知事は「これからみなさんといっしょに考えていきたい」と何度も繰り返した。その意味で「鉄道ありきではない」ことを宣言する説明会だったともいえる。 ところが、水面下では大学教授、JR職員など専門家による「富士山登山鉄道構想事業化検討会」が設けられており、事業面、技術面の課題を洗い出し、構想を事業化レベルまで引き上げるための検討が進められている。その第1回の会合が10月30日に都内で行われた。今後も議論を重ね、今年度末をめどに報告書をまとめる予定だ』、「富士山登山鉄道構想事業化検討会」は秘密会なのだろうか。「報告書をまとめる」前に検討状況を開示すべきだ。
・『本当に「鉄道ありきでない」のか  第1回会合の後、県で富士山登山鉄道推進事業を担当する和泉正剛知事政策局次長に「登山鉄道構想の事業化に関する研究を進めているということは、結局のところ”鉄道ありき、LRTありき”ということなのか」と尋ねると、「LRTありきではない。現実的かつ具体的な提案が出れば検討する」という返答があった。とはいえ、「登山鉄道構想事業化検討会」という名前の検討会で、委員が電気バスなど鉄道以外の交通モードについて提案するということは考えにくい。 また、知事が今後行う説明会の質疑応答の場で会場からほかの交通モードの検討を求める発言があったとして、知事がそれを「現実かつ具体的な提案」と認めるかどうか。知事は地域住民と「議論をしたい」「いっしょに考えていきたい」というが、それはどのような形を指すのだろう。少なくとも今回のような説明会で議論をしたり、いっしょに考えたりすることは難しい。 LRTと電気バスのどちらがふさわしいのかはさておき、知事が「鉄道ありきではない」というなら、今後についてはそれを前提に進めていくべきだ。山梨県の組織図を見ると、知事政策局の中に「富士山登山鉄道推進グループ」という部署がある。こういう部署があること自体、「鉄道ありきではない」という発言と矛盾している。本当に知事が「鉄道ありきではない」と考えているなら、この部署名を変えることが先決だろう』、「本当に知事が「鉄道ありきではない」と考えているなら、この部署名を変えることが先決だろう」、その通りだ。

次に、12月30日付け東洋経済オンライン「開業後どうなった?2023年誕生「新路線」の通信簿 宇都宮ライトレールや七隈線は予想以上の好調」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/722179
・『2023年の鉄道界は、新幹線の開業のような「大物」はなかったものの、地域の交通や鉄道ネットワークの姿を変える注目すべき新路線の開業や延伸があった。 3月18日には、東急電鉄東横線・目黒線と相模鉄道(相鉄)線を新横浜駅経由で結ぶ「相鉄・東急新横浜線」が開業。同月27日には、福岡市地下鉄七隈線が従来の終点だった天神南駅から博多駅まで延伸した。そして8月26日には、日本初の全線新設LRT(次世代型路面電車)として、栃木県宇都宮市と隣接する芳賀町を結ぶ「芳賀・宇都宮LRT」(ライトライン)が走り始めた。 地域の期待を集めて開業した各線。「その後」の姿はどうなっているのだろうか』、「その後」の姿をフォローする意味は大きい。
・『予想を下回る新横浜線  首都圏の鉄道ネットワークに新たな変化をもたらしたのが、相鉄・東急直通線だ。2023年3月に新規開業したのは、東急線の日吉駅から新横浜駅を経て、相鉄線の羽沢横浜国大駅までの約10km。東急線側の日吉―新横浜間を「東急新横浜線」、相鉄線側は新横浜―羽沢横浜国大間と、2019年に開業した同駅―西谷間を合わせて「相鉄新横浜線」と呼ぶ。 新規に開業した区間は約10km。これによって相鉄線と東急東横線・目黒線、そして両線に直通する東京メトロ副都心線・東武東上線、メトロ南北線・埼玉高速鉄道、都営地下鉄三田線を結ぶ直通運転がスタートした。直接の乗り入れはないものの、東横線と副都市線を介して線路のつながる西武鉄道を含めると、神奈川・東京・埼玉の1都2県にまたがる7社局14路線、計約250kmにおよぶネットワークが誕生した。 新横浜駅を経由することから、東海道新幹線へのアクセス路線としても注目される同線。JR東海も新横浜駅6時03分発の臨時「のぞみ」を新設し、東京駅や品川駅の始発列車よりも大阪方面へ早く着けることをPRしている。 では、開業後の利用実態はどうか。相鉄ホールディングスの2023年度第2四半期決算発表時の資料によると、相鉄新横浜線の輸送人員は2023年度上期の計画が1日当たり約8万4000人だったのに対し、実績は約7.9万人と計画値を下回る結果となった。東急新横浜の輸送人員は第2四半期までの実績が約1340万人で、こちらも計画を約3割下回っている。 相鉄にとっては2019年11月開業の「相鉄・JR直通線」に次ぐ2つ目の都心直通ルート、東急にとっては東海道新幹線と接続する新横浜へのアクセス路線として期待を集めて開業した相鉄・東急新横浜線。定期外客の利用は堅調というが、定期客の利用が定着するまでにはまだ時間がかかりそうだ』、「相鉄新横浜線の輸送人員は2023年度上期の計画が1日当たり約8万4000人だったのに対し、実績は約7.9万人と計画値を下回る結果・・・東急新横浜の輸送人員は第2四半期までの実績が約1340万人で、こちらも計画を約3割下回っている」、「定期客」の利用が思わしくないようだが、この要因はもっとじっくり分析する必要がありそうだ。
・『大混雑の七隈線、予測上回る宇都宮LRT  一方、好調なのが3月27日に天神南―博多間約2kmが延伸開業した福岡市地下鉄七隈線だ。同線は2005年2月に福岡市西南部の橋本と天神南を結ぶ約12kmが開業。東京の都営地下鉄大江戸線や大阪メトロ長堀鶴見緑地線などと同じ、リニアモーター駆動によってレールの上を車輪で走る「鉄輪式リニアモーター」の地下鉄で、JR在来線などの一般的な車両と比べてやや小ぶりな電車が4両編成で走る。 同線は開業以来、輸送人員が予想を大きく下回る状態が続いていた。当初の1日平均乗車人員の目標値は11万人だったが、2005年4月の1日平均乗車人員は約4万6000人と4割程度で、その後も低迷。天神南駅が繁華街である天神地区の中心から外れており、福岡市地下鉄空港線や西日本鉄道(西鉄)天神大牟田線の駅とも離れていることなどが要因だったとみられる。 だが、博多駅への直結で利用者数は急増。3月に1日当たり約7万5000人だった輸送人員は、延伸開業後の4月には約12万人と一気に1.6倍に。混雑の緩和が課題として急浮上し、8月にはダイヤ改正を実施してラッシュ時の列車を増便するまでになった。約2kmの延伸が大変貌をもたらした。) 8月26日には、栃木県宇都宮市と芳賀町に、LRT(次世代型路面電車)「芳賀・宇都宮LRT」(ライトライン)が開業した。同線はJR宇都宮駅東口から市内の清原工業団地などを経由し、隣接する芳賀町の芳賀・高根沢工業団地まで約15kmを結ぶ。 日本で初めて全線を新設したLRTとしても話題を呼んだ同線。開業初年度の需要予測は平日が1日当たり約1万2800人、休日は約4400人だったが、開業後1カ月の実績は平日がほぼ同程度の一方、休日は1万5000~1万6000人と大幅に予測を上回った。その後も利用は堅調で、11月15日には開業以来の累計利用者数が100万人に達した。 建設費の度重なる増加などで批判を受けたものの、クルマ社会の宇都宮で好調な滑り出しを見せているLRT。開業後の熱気が一段落する2024年からが本番といえる。今後はさらなる増発や快速運転の実施予定なども注目される』、「宇都宮」「LRT」の2024の「本番」が注目される。
・『2024年は北陸新幹線と北急(2024年も新たな路線が開業する。「目玉」となるのは、3月16日に開業する北陸新幹線の金沢(石川県)―敦賀(福井県)間だ。同区間は約125kmで、福井駅や敦賀駅など6駅を新設。東京―福井間は最短で2時間51分と、従来の北陸新幹線・在来線乗り継ぎに比べて約30分短縮される。 初の新幹線開業となる福井県は「100年に1度のチャンス」として、観光振興などに期待を寄せる。一方で並行在来線は第三セクターに分離され、関西方面とを結ぶ在来線特急は敦賀止まりとなり、乗り換えを強いられることになる。 もう1つは北陸新幹線の1週間後、3月23日に開業する北大阪急行電鉄(大阪府)の千里中央―箕面萱野(みのおかやの)間約2.5kmだ。同線は大阪の大動脈、大阪メトロ御堂筋線に直通して一体的に運行しており、箕面市内から新大阪や梅田、難波などへ1本でアクセス可能となる。 新路線の開業は鉄道界にとって明るい話題だが、重要なのは「その後」だ。2023年開業の路線はおおむね好調に推移しているといえる。2024年開業の路線は期待通りの効果を生み出せるか』、「北陸新幹線の金沢―敦賀・・・間だ。同区間は約125kmで、福井駅や敦賀駅など6駅を新設。東京―福井間は最短で2時間51分と、従来の北陸新幹線・在来線乗り継ぎに比べて約30分短縮される、これは便利そうだ。「北大阪急行電鉄・・・の千里中央―箕面萱野・・・間約2.5kmだ。同線は大阪の大動脈、大阪メトロ御堂筋線に直通して一体的に運行しており、箕面市内から新大阪や梅田、難波などへ1本でアクセス可能となる」、これも注目路線だ。 
タグ:「その後」の姿をフォローする意味は大きい。 「本当に知事が「鉄道ありきではない」と考えているなら、この部署名を変えることが先決だろう」、その通りだ。 東洋経済オンライン「開業後どうなった?2023年誕生「新路線」の通信簿 宇都宮ライトレールや七隈線は予想以上の好調」 「北陸新幹線の金沢―敦賀・・・間だ。同区間は約125kmで、福井駅や敦賀駅など6駅を新設。東京―福井間は最短で2時間51分と、従来の北陸新幹線・在来線乗り継ぎに比べて約30分短縮される、これは便利そうだ。「北大阪急行電鉄・・・の千里中央―箕面萱野・・・間約2.5kmだ。同線は大阪の大動脈、大阪メトロ御堂筋線に直通して一体的に運行しており、箕面市内から新大阪や梅田、難波などへ1本でアクセス可能となる」、これも注目路線だ。 「宇都宮」「LRT」の2024の「本番」が注目される。 「相鉄新横浜線の輸送人員は2023年度上期の計画が1日当たり約8万4000人だったのに対し、実績は約7.9万人と計画値を下回る結果・・・東急新横浜の輸送人員は第2四半期までの実績が約1340万人で、こちらも計画を約3割下回っている」、「定期客」の利用が思わしくないようだが、この要因はもっとじっくり分析する必要がありそうだ。 「富士山登山鉄道構想事業化検討会」は秘密会なのだろうか。「報告書をまとめる」前に検討状況を開示すべきだ。 「電気バスについては「大いに関心がある」としつつも、「ゆったりした眺望や会話を楽しめる座席空間、食事など車両でしか体験できないサービス、シンボル性」という点でバスよりもLRTのほうが優れているとした」、「電気バス」の優先順位は低いようだ。 「富士山がそうならないよう、私たちは最悪の場合に備えてあらかじめ手を打つ必要がある」・・・」、私は「富士山」が「世界遺産」から外されても、鉄道建設には絶対反対だ。 「登録に際して「人が多く来訪者のコントロールが必要」とユネスコの諮問機関であるイコモスから注文を付けられていた。登録前年となる2012年のの5合目来訪者数は231万人だったが、2019年には506万人に増えた。来訪者は減るどころか2倍以上になった。イコモスが求めるコントロールがまったくできていない。 さらに、今夏にイタリアが気候変動やオーバーツーリズムからベネチアを守る努力が足りないとして、ベネチアを危機遺産に登録するかどうかをめぐって協議されたことも話題となった。 「とくに2回目の説明会となった11月23日は富士吉田市内で行われ、堀内市長も住民の1人として説明会に参加するとあって、がぜん盛り上がりを見せた」、なるほど。 東洋経済オンライン「富士山登山鉄道「LRTありきでない」発言の矛盾 水面下では事業化に向け専門家会合が同時進行」 (その11)(富士山登山鉄道「LRTありきでない」発言の矛盾 水面下では事業化に向け専門家会合が同時進行、開業後どうなった?2023年誕生「新路線」の通信簿 宇都宮ライトレールや七隈線は予想以上の好調) 鉄道
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エネルギー(その13)(ガソリン価格200円目前でも…補助金は「やめ時」ではないか、JR3社の「水素車両」構想が水素自動車より現実的なワケ) [産業動向]

エネルギーについては、本年8月26日に取上げた。今日は、(その13)(ガソリン価格200円目前でも…補助金は「やめ時」ではないか、JR3社の「水素車両」構想が水素自動車より現実的なワケ)である。

先ずは、本年9月6日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家の山崎 元氏による「ガソリン価格200円目前でも…補助金は「やめ時」ではないか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/328744
・『ガソリン補助金の延長が、岸田政権らしい「ぐずぐず」の展開で決まった。しかし、合理的に考えれば、補助金はもう「やめ時」ではないか。その理由をお伝えする』、興味深そうだ。
・『いかにも岸田政権らしい補助金延長の「ぐずぐず」  ガソリン価格が上昇している。原油価格や円安の影響もあるが、政府の補助金が予定通り縮小されていることの影響が大きい。このままだと1リットル当たりで200円を超えてくる可能性がある。 補助金の縮小は「予定通り」であり、これに伴いガソリンの小売価格が上昇することは国民に周知されていたはずなのだが、ここにきて不満が高まっている。「対策」を求める声があり、岸田文雄首相は、9月で終了するはずだった補助金の年末までの延長を決め、さらに補助金をかさ上げすることにした。そして、今後、補助金はさらに延長される可能性が大きい。 自民党内では、国民がメリットを「実感できる」措置、効果が「目に見える」補助金を求める声が上がっていて、報道ベースでは、「低迷する内閣支持率を気にする」岸田政権という文脈の注釈が付く。 政治家が国民の支持を気にすることは必ずしも悪いことではないが、補助金を下げて、戻して、様子を見るという推移は、いかにも岸田政権らしい「ぐずぐず」の展開だ。政策として一貫性があまりにない。周囲の官僚たちは「混乱しているのは政治家さまで、われわれは振り回されています」と言いたいかもしれないが、両方まとめて無能なのではないか』、「岸田文雄首相は、9月で終了するはずだった補助金の年末までの延長を決め、さらに補助金をかさ上げすることにした。そして、今後、補助金はさらに延長される可能性が大きい。 自民党内では、国民がメリットを「実感できる」措置、効果が「目に見える」補助金を求める声が上がっていて、報道ベースでは、「低迷する内閣支持率を気にする」岸田政権という文脈の注釈が付く』、しかも国民民主党が「トリガー価格」に拘っているとはやれやれだ。
・『「超」複雑なガソリン価格とトリガー条項  ガソリン価格の仕組みは税金と補助金が絡んで複雑であり、政策論として複数の論点をはらんでいる。  元売り業者が、原油を輸入して精製し、保管・輸送してさらにマージンを乗せた元売り価格に、ガソリン税が乗るが、ガソリン税は本則の税率に加えて暫定的な特例税率が上乗せされている。それぞれが小売価格では1リットル当たり20円台後半の金額だ(現在本則28.7円、特例25.1円)。さらに、石油石炭税(2.8円)が加わって、これにガソリン小売業者のマージンが乗って小売価格が形成され、そこに消費税が掛け算されて追加された金額が、ガソリンスタンドでユーザーが目にするガソリン価格になる仕組みだ。 さらに、分かりにくく、補助金と並んで議論になっているのが、暫定税率=特例税率を巡る「トリガー条項」を巡る事情だ。暫定税率は、道路整備のために財源が必要だとして1970年代に導入されたものだが、2010年に道路整備は一段落したとしてこれが廃止された。ところが、同時に同額が特例税率として残って一般財源化された。 ただし、この時にガソリン価格が3カ月連続で160円を超えた場合には特例部分を減税する「トリガー条項」が導入された(発動後、価格が130円を3カ月連続して下回れば税率が元に戻るルールだ)。 ところが、このトリガー条項が11年の東日本大震災の復興財源の確保を理由に凍結されて現在に至っている』、「ガソリン価格が3カ月連続で160円を超えた場合には特例部分を減税する「トリガー条項」が導入された・・・ところが、このトリガー条項が11年の東日本大震災の復興財源の確保を理由に凍結されて現在に至っている」、なるほど。
・『新たな補助金制度を作るよりトリガー条項の凍結解除を検討せよ   制度の趣旨を素直に解釈すると、トリガー条項は、資源価格高騰などやむを得ない事情でガソリン価格が急激に上昇した場合に、これに対応しきれない業者や生活者を救済する激変緩和措置として設けられたものだろう。まさに今の状況がそれに当たるので、この凍結解除、すなわち自然な発動が求められるのではないかと思われるのだが、その気配は全くない。 新たな補助金制度を作るよりも、元々ある制度の趣旨を生かす方が自然だし、制度をシンプルに運用できる。しかし、政府の意向は、暫定税率=特例税率による税収は固定化して守りたいということであるらしい。 そもそも、お金に色は着いていないので、「○○による税収は、××に支出する特定の財源だ」という決め事に実質的な意味はない場合が多いはずだ。「××に対する支出」が一般財源からも支出されなければならない重要度の高いものなら、この支出に充当された税収の分だけ、一般財源に余裕ができるので、「○○の税収」は実質的に一般財源として流用されたのと同じだ。 「○○は××の特定財源だ」という呪文は、専ら「○○税」を創設するために、一定数いる知恵の回らない国民を納得させるための方便にすぎない。このことは、民主党政権時代に一部の政治家も含めて丸め込まれた「消費税は社会保障のための財源」との説明を思い出すとよく分かる。 ただし、税金が実現してしまうと、その金額分を特定の財源に充てたことにしなければならない建て付けは時に不便だ。道路整備が進んだときに暫定税率を特例税率にすり替えて一般財源化した際に、財政当局はうまくやったと思ったかもしれない。しかし、その際に付けたトリガー条項を凍結するに当たって震災の復興財源という別の方便が必要になり、今になってみるとその方便がまた古くなった。 トリガー条項の凍結解除は、もともと野党側(特に国民民主党)から出てきた話なので、自民党は乗りにくいかもしれないが、新たな補助金制度を作るよりは、同条項の凍結解除を先に検討すべきだろう』、「新たな補助金制度を作るよりは、同条項の凍結解除を先に検討すべきだろう」、その通りだ。
・『「価格への補助」はもうやめた方がいい  政府にやる気がないトリガー条項の凍結解除も含めて、現在および目下検討中の「ぐずぐず補助金」も、広い意味では、ガソリン価格を引き下げるための補助金の性質を持つ。そして、この補助の適切性には大いに疑問がある。 まず、資源配分の効率性と価格メカニズムの観点で考えると、原油をはじめとする諸コストが上昇して価格が上がっているのなら、消費者はまずガソリン使用の抑制を考えるべきだ。 世界的に資源価格が上がっている時に、資源の相対的な希少性が増しているのだと考えることは自然だ。 加えて、地球環境に対する配慮の観点から化石燃料の使用抑制がかねて求められていた。 つまり、ガソリンや電気料金の値上げに対して、国民はそれぞれの立場から、ガソリン消費の抑制や節電を考えることが経済合理的であり、近年の社会運動にも合致する方向性なのだ。補助金を使って価格をゆがめることは、経済政策として適切ではない。 とはいえ、ガソリンを多く使うビジネスで急には消費量を減らせない業者や、同じくガソリンの使用を減らすことが短期的には難しい生活困窮者がいるはずだ。彼らに対しては何らかの所得補助措置を考えるべきだろう。もちろん、所得の補助を受けた業者や生活者も、ガソリンの使用抑制に工夫すべきではある。そして、「急には対応できない」というユーザーのために、トリガー条項が存在していることは前述の通りだ』、「ガソリンや電気料金の値上げに対して、国民はそれぞれの立場から、ガソリン消費の抑制や節電を考えることが経済合理的であり、近年の社会運動にも合致する方向性なのだ。補助金を使って価格をゆがめることは、経済政策として適切ではない」、その通りだ。
・『金持ちの高級車のガソリン代を税金で補助する必要があるのか  高所得者・富裕層のガソリン代、電気代を補助しないで済むとするなら、困窮者向けの所得補助に必要な金額は、国民全体が使用するガソリン代、電気代の価格抑制に必要な補助金の額を大きく下回るはずだ。 また、言わずもがななことかもしれないが、価格抑制による補助の分配効果を考えると、富裕層が乗る高級車のガソリン代は低所得者が乗る車のガソリン代を大きく上回るだろうし、大邸宅と小ぶりなアパートの電気代は比較してみるまでもない。価格抑制で得るメリットは、絶対額で見て富裕層の方が大きいのだ。 もちろん、最終的に将来の税金で負担するにせよ、インフレを通じて間接的に負担するにせよ、補助金分の財源を誰が負担するかという問題を併せて考えないと、再分配の効果を確定して論じることはできない。ただ、直接の補助を考えるときに、価格に対する補助が相対的に、より富裕な者をより多く補助していることの分配論上の問題点も認識しておくべきだろう。 街に出ると、いかにもお金持ちが乗っていそうな高級車を目にすることがあろう。あの車のガソリン代を税金で補助する必要があるのか、と考えてみることは無益ではない。 経済的なロジックとしては、価格を抑えるために補助金を投入する政策はもうやめる方がいい』、「最終的に将来の税金で負担するにせよ、インフレを通じて間接的に負担するにせよ、補助金分の財源を誰が負担するかという問題を併せて考えないと、再分配の効果を確定して論じることはできない。ただ、直接の補助を考えるときに、価格に対する補助が相対的に、より富裕な者をより多く補助していることの分配論上の問題点も認識しておくべきだろう」、その通りだ。
・『不合理が実現する合理的な理由  筆者が考える、ガソリン価格に関わるあるべき政策の優先順位を大まかに言うと、 (1). ガソリン価格への補助をやめて、困窮者への所得補助を充実させる、 (2). (1)の早急な実現が不可能で激変緩和措置が必要な場合、トリガー条項の凍結解除を補助金よりも優先する、 というものだ。現実的には、まずトリガー条項の凍結解除からということになるだろう。シンプルでかつ合理的ではないだろうか。 しかし、筆者の案が実現しないと信じるに足る、残念で強力な現実が存在する。その根源は一人一票を大原則とする民主主義と個人の経済合理的判断だと言うと穏やかではないが、以下のような事情だ。 まず、困窮者の所得を補助する政策は困窮者とされた国民には直接メリットがあっても、多数のそうではない国民にとってメリットが見えにくい。多数の国民が、ガソリン価格の高騰を眺めつつガソリンの使用を抑制する工夫を考えなくてはならない現実に直面して、不満に思うだろう。 これに対して、補助金による価格抑制は、個々の効果は小さくても直接的なメリットを感じる国民の数が多い。政権支持率に効くのはこちらの方だろう。 また、困窮者の所得補助は一度仕組みを決めるとそれでガソリン価格も電気代もガス代も価格メカニズムに任せることができる効率の良さがあるが、この効率性は、政治家や官僚にとっては、個々の品目と関連する業界に対して政策を「やっている感」を醸し出す上ではむしろ邪魔になる。 ガソリン価格の上昇が生活者の不満と共に報じられて政府が右往左往することは、政府の当事者にとってはまんざら悪いことでもないのだ。 直接的で近視眼的な賛否を超えて合理的な状態を実現するためには、国民が政策の立案・実行を委託する政治家や官僚に良識と能力が必要だが、どうやらわれわれはそのような政治家や官僚の養成に不熱心だった。 「これが日本国民のレベルなのだ」と言われたら返す言葉がないが、目を背けたくなるような現実がそこにはある』、「困窮者の所得を補助する政策は困窮者とされた国民には直接メリットがあっても、多数のそうではない国民にとってメリットが見えにくい。多数の国民が、ガソリン価格の高騰を眺めつつガソリンの使用を抑制する工夫を考えなくてはならない現実に直面して、不満に思うだろう。 これに対して、補助金による価格抑制は、個々の効果は小さくても直接的なメリットを感じる国民の数が多い。政権支持率に効くのはこちらの方だろう。 また、困窮者の所得補助は一度仕組みを決めるとそれでガソリン価格も電気代もガス代も価格メカニズムに任せることができる効率の良さがあるが、この効率性は、政治家や官僚にとっては、個々の品目と関連する業界に対して政策を「やっている感」を醸し出す上ではむしろ邪魔になる。 ガソリン価格の上昇が生活者の不満と共に報じられて政府が右往左往することは、政府の当事者にとってはまんざら悪いことでもないのだ』、残念ながら民主主義の歪みという他ない。

次に、12月4日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した鉄道ジャーナリストの枝久保達也氏による「JR3社の「水素車両」構想が水素自動車より現実的なワケ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/333393
・『水素で走る燃料電池電気自動車(FCV)の普及は進んでいないが、鉄道ではいずれ「水素時代」が訪れるかもしれない。昨年から鶴見線・南武線でFC車両の走行試験を行っているJR東日本に続き、JR東海とJR西日本が構想を発表したのである。各社の取り組みと実現に向けた今後の計画とは』、興味深そうだ。
・『水素ステーションのネックは鉄道では問題にならない  子どものころ、未来の自動車は「水素」で動くようになると漠然と信じていた記憶がある。たぶん、自動車業界の最新動向を伝えるニュースでも見たのだろう。90年代初頭は大手自動車メーカーが燃料電池電気自動車(FCV)の開発を本格化した時代だった。 2000年代に入るとFCVのリース販売が限定的ながら始まり、2014年にトヨタが量産FCV「MIRAI」を、2016年にはホンダが「クラリティフューエルセル」を発売したが、それ以上の広がりは見えないのが実情だ。 充電時間と航続距離が課題のBEV(バッテリー式電気自動車)に対して、FCVの水素充填時間、航続距離はガソリン車と同等で、エンジン搭載車に近い感覚で利用できる利点がある。しかし、電気があればどこでも充電できるBEVですら普及が遅れている中で、水素ステーションなど専用インフラを必要とするFCVが主流になるのは難しいだろう。) 水素自動車が走り回る「未来」は実現しなさそうだが、もしかすると鉄道には「水素時代」が訪れるかもしれない。昨年から鶴見線・南武線でFC車両の走行試験を行っているJR東日本に続き、JR東海とJR西日本が相次いで将来構想を発表したのである。 鉄道の環境性能は自動車より格段に優れているが、カーボンニュートラルが叫ばれる中、非電化路線を走る気動車(ディーゼル車)の排気ガスを無視できなくなった。ディーゼルエンジンで発電してモーターで走行するハイブリッド車も登場しているが、いずれは内燃機関自体が使えなくなる。 そこで注目されるのが自動車と同様、バッテリー式の電車だ。JR東日本とJR九州は、電化区間は架線から集電して走行と充電を行い、非電化区間ではバッテリーの電力で走行する電車を実用化している。 しかし、航続距離と充電時間がネックなのも同様で、実用的な走行距離は30キロメートル程度、速度も出せない。現状では電化された本線から分岐する非電化の短距離支線に、本線からの直通電車を走らせるのが限度である。 少なくとも現在の技術水準では、非電化ローカル幹線で高速、長距離運転を行う気動車を置き換えることは困難であるため、ディーゼルエンジンと同等以上の走行性能を持ち、航続距離も長いFC車両に注目が集まった。 自動車におけるFCVのネックは、鉄道ではほとんど問題にならなくなる。どこへでも行ける自家用車とは異なり、鉄道は特定の区間をダイヤ通りに走るため、車庫に水素ステーションを設置すれば定期的に充填できるからだ(これはバスやトラックでも同様であり、政府は商用FCVの普及を目指し、インフラ整備を進めている』、「自動車におけるFCVのネックは、鉄道ではほとんど問題にならなくなる。どこへでも行ける自家用車とは異なり、鉄道は特定の区間をダイヤ通りに走るため、車庫に水素ステーションを設置すれば定期的に充填できるからだ(これはバスやトラックでも同様であり、政府は商用FCVの普及を目指し、インフラ整備を進めている)」、なるほど。
・『2030年の実用化を目指すJR東日本  JR東日本が開発したのが、FV-E991系電車「HYBARI」だ。屋根上に設置した水素タンクから床下の燃料電池に水素を供給し、電池に充電。直接的には電池でモーターを回す仕組みだ。搭載するFCスタックは、燃料電池バス「SORA」やMIRAIに使われているトヨタ製のものを流用している。 MIRAIは3本のタンクに計141リットル(充填圧力70MPa、以下同)の水素を搭載し、800キロ程度走行可能なので燃費は5.6km/L。一方、HYBARIは2両編成に20本のタンクを設置し、計1020リットルの水素で最大140キロ走行可能なので0.13km/Lとなる。) ちなみにSORAはタンク10本計600リットルで約200キロなので0.3km/Lだ。当然ながら車体が大きいほど燃費は悪くなるが、定員はMIRAIが5人、SORAが79人、HYBARIが約250人だ。相応の輸送需要があれば効率的だが、閑散区間ではMIRAIを走らせた方が経済的になってしまう。全ての気動車をFC車両で更新するにはまだまだコストの壁が高いと言わざるを得ない。 もうひとつの問題、水素供給体制については2022年5月、ENEOSと鉄道の脱炭素化に向けたCO2フリー水素利用拡大に関する連携協定を締結。2030年までにFC車両、FCバス・FCトラック、駅周辺施設へ、製造・貯蔵に二酸化炭素を排出しない「CO2フリー水素」を供給する定置式水素ステーションを開発する計画を発表した。 また京浜臨海部に整備予定のENEOS拠点から、JR東日本の自家発電所である川崎火力発電所へ水素を供給して水素混焼発電を行い、首都圏に供給する電車用電力の脱炭素化を進める計画だ。こうした条件から、JR東日本はまず川崎を拠点に水素利用拡大を進めることになる』、「FC車両、FCバス・FCトラック、駅周辺施設へ、製造・貯蔵に二酸化炭素を排出しない「CO2フリー水素」を供給する定置式水素ステーションを開発する計画を発表した。 また京浜臨海部に整備予定のENEOS拠点から、JR東日本の自家発電所である川崎火力発電所へ水素を供給して水素混焼発電を行い、首都圏に供給する電車用電力の脱炭素化を進める計画だ」、特定地域での連携は有効だろう。
・『JR西日本は関西電力などとインフラ整備構想で合意  JR西日本は今年4月、環境長期目標「JR西日本グループゼロカーボン2050」の達成に向けて鉄道資産を活用した水素利活用の検討を開始し、燃料電池列車の開発と将来的な気動車の置き換えを進めると発表した。 貨物駅などに総合水素ステーションを設置し、燃料電池列車やバス、トラック、乗用車に対する水素供給と、JR貨物による水素輸送の拠点として活用。自治体や企業と連携して、グリーンで持続可能な交通ネットワークを実現するとともに、JR西日本が水素の利用・供給・輸送に関与するプラットフォーマーになろうという意欲的なビジョンだ。 これを具体化したのが11月21日、「姫路エリアを起点とした水素輸送・利活用等に関する協業」について関西電力、JR貨物、NTT、パナソニックなどと基本合意したとの発表だ。 4月の発表は鉄道の脱炭素化を強調した内容だったが、今回はFC車両開発の具体化を待たず、関西電力が調達した水素を線路敷やNTTの通信用管路に設置したパイプラインで沿線に供給するインフラ整備構想での合意というのが興味深い。もっとも2030年代の社会実装を目指して今後「実現可能性を調査」するというから、見切り発車感は否めないが、構想の具体化に期待したい』、「関西電力が調達した水素を線路敷やNTTの通信用管路に設置したパイプラインで沿線に供給するインフラ整備構想での合意」、興味深い動きだ。
・『水素エンジンの開発に乗り出すJR東海  異なるアプローチで水素活用を検討しているのがJR東海だ。11月16日、既に開発を進めているFC車両に加え、水素を燃料とする「水素エンジン」の開発に着手すると発表したのだ。 水素エンジンといえば、トヨタが開発するガソリンエンジンをベースにした乗用車用のものが有名だが、こちらは既存のディーゼルエンジンを改造し、水素を燃料とする水素エンジンに置き換える「水素化コンバージョン」を手掛ける「i Labo株式会社」と共同で開発する。 二正面作戦の理由は、燃料電池と水素エンジンは出力やエネルギー効率など特性が異なるため、山間部を長距離走行するJR東海の非電化路線への適合性を検証するのが目的とのこと。2024年度以降、走行条件を再現可能な研究施設で水素エンジンの模擬走行試験を実施する計画だ。なお将来の水素供給体制はENEOSと協力する。 水素を脱炭素の有力な選択肢と考える政府は、水素の導入量を2040年までに現状の6倍に引き上げる目標を掲げるが、現状では水素の供給価格は既存燃料の最大12倍に達するという。いくら水素を活用する仕組みができてもコストが見合わなければショーケースで終わり、本格的な展開は不可能だ。 鉄道事業者はこれらの課題についてどう考えているのか、取材の結果は改めてお伝えしたい』、「JR東海」は「既存のディーゼルエンジンを改造し、水素を燃料とする水素エンジンに置き換える「水素化コンバージョン」を手掛ける「i Labo株式会社」と共同で開発する・・・現状では水素の供給価格は既存燃料の最大12倍に達するという。いくら水素を活用する仕組みができてもコストが見合わなければショーケースで終わり、本格的な展開は不可能だ。 鉄道事業者はこれらの課題についてどう考えているのか、取材の結果は改めてお伝えしたい」、続報が楽しみだ。
タグ:エネルギー (その13)(ガソリン価格200円目前でも…補助金は「やめ時」ではないか、JR3社の「水素車両」構想が水素自動車より現実的なワケ) ダイヤモンド・オンライン 山崎 元氏による「ガソリン価格200円目前でも…補助金は「やめ時」ではないか」 「岸田文雄首相は、9月で終了するはずだった補助金の年末までの延長を決め、さらに補助金をかさ上げすることにした。そして、今後、補助金はさらに延長される可能性が大きい。 自民党内では、国民がメリットを「実感できる」措置、効果が「目に見える」補助金を求める声が上がっていて、報道ベースでは、「低迷する内閣支持率を気にする」岸田政権という文脈の注釈が付く』、しかも国民民主党が「トリガー価格」に拘っているとはやれやれだ。 「ガソリン価格が3カ月連続で160円を超えた場合には特例部分を減税する「トリガー条項」が導入された・・・ところが、このトリガー条項が11年の東日本大震災の復興財源の確保を理由に凍結されて現在に至っている」、なるほど。 「新たな補助金制度を作るよりは、同条項の凍結解除を先に検討すべきだろう」、その通りだ。 「ガソリンや電気料金の値上げに対して、国民はそれぞれの立場から、ガソリン消費の抑制や節電を考えることが経済合理的であり、近年の社会運動にも合致する方向性なのだ。補助金を使って価格をゆがめることは、経済政策として適切ではない」、その通りだ。 「最終的に将来の税金で負担するにせよ、インフレを通じて間接的に負担するにせよ、補助金分の財源を誰が負担するかという問題を併せて考えないと、再分配の効果を確定して論じることはできない。ただ、直接の補助を考えるときに、価格に対する補助が相対的に、より富裕な者をより多く補助していることの分配論上の問題点も認識しておくべきだろう」、その通りだ。 「困窮者の所得を補助する政策は困窮者とされた国民には直接メリットがあっても、多数のそうではない国民にとってメリットが見えにくい。多数の国民が、ガソリン価格の高騰を眺めつつガソリンの使用を抑制する工夫を考えなくてはならない現実に直面して、不満に思うだろう。 これに対して、補助金による価格抑制は、個々の効果は小さくても直接的なメリットを感じる国民の数が多い。政権支持率に効くのはこちらの方だろう。 また、困窮者の所得補助は一度仕組みを決めるとそれでガソリン価格も電気代もガス代も価格メカニズムに任せることができる効率の良さがあるが、この効率性は、政治家や官僚にとっては、個々の品目と関連する業界に対して政策を「やっている感」を醸し出す上ではむしろ邪魔になる。 ガソリン価格の上昇が生活者の不満と共に報じられて政府が右往左往することは、政府の当事者にとってはまんざら悪いことでもないのだ』、残念ながら民主主義の歪みという他ない。 枝久保達也氏による「JR3社の「水素車両」構想が水素自動車より現実的なワケ」 「自動車におけるFCVのネックは、鉄道ではほとんど問題にならなくなる。どこへでも行ける自家用車とは異なり、鉄道は特定の区間をダイヤ通りに走るため、車庫に水素ステーションを設置すれば定期的に充填できるからだ(これはバスやトラックでも同様であり、政府は商用FCVの普及を目指し、インフラ整備を進めている)」、なるほど。 「FC車両、FCバス・FCトラック、駅周辺施設へ、製造・貯蔵に二酸化炭素を排出しない「CO2フリー水素」を供給する定置式水素ステーションを開発する計画を発表した。 また京浜臨海部に整備予定のENEOS拠点から、JR東日本の自家発電所である川崎火力発電所へ水素を供給して水素混焼発電を行い、首都圏に供給する電車用電力の脱炭素化を進める計画だ」、特定地域での連携は有効だろう。 「関西電力が調達した水素を線路敷やNTTの通信用管路に設置したパイプラインで沿線に供給するインフラ整備構想での合意」、興味深い動きだ。 「JR東海」は「既存のディーゼルエンジンを改造し、水素を燃料とする水素エンジンに置き換える「水素化コンバージョン」を手掛ける「i Labo株式会社」と共同で開発する・・・現状では水素の供給価格は既存燃料の最大12倍に達するという。いくら水素を活用する仕組みができてもコストが見合わなければショーケースで終わり、本格的な展開は不可能だ。 鉄道事業者はこれらの課題についてどう考えているのか、取材の結果は改めてお伝えしたい」、続報が楽しみだ。
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携帯・スマホ(その12)(赤字縮小の楽天G、三木谷氏に迫る「悪魔シナリオ」 「ポイント経済圏」握る楽天カード上場は危険だ、大前研一「楽天モバイルの大赤字は氷山の一角にすぎない」…三木谷会長がたどる最悪の末路とは 楽天衰退の根本原因は10年前にさかのぼる) [産業動向]

携帯・スマホについては、本年7月24日に取上げた。今日は、(その12)(赤字縮小の楽天G、三木谷氏に迫る「悪魔シナリオ」 「ポイント経済圏」握る楽天カード上場は危険だ、大前研一「楽天モバイルの大赤字は氷山の一角にすぎない」…三木谷会長がたどる最悪の末路とは 楽天衰退の根本原因は10年前にさかのぼる)である。

先ずは、8月12日付け東洋経済オンラインが掲載した経済評論家・百年コンサルティング代表の鈴木 貴博 氏による「赤字縮小の楽天G、三木谷氏に迫る「悪魔シナリオ」 「ポイント経済圏」握る楽天カード上場は危険だ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/693960
・『予想以上によい決算だったというのが、私の印象です。楽天グループは8月10日、2023年12月期中間決算(1~6月)を発表しました。営業赤字は1250億円(前年同期は1987億円の営業赤字)、最終赤字は1399億円(同1778億円の最終赤字)です。莫大な赤字なのに「よい決算」という理由は、赤字幅が大きく縮小し始めたからです。 楽天グループは、連続赤字に陥って4期目になります。理由は新規参入した携帯電話事業が莫大な赤字を産んでいるからです。ある程度の赤字は計画で織り込み済みだったにせよ、楽天グループにとって計算外だったのは、参入後に政府の政策でスマホ価格が大幅に下げられたことでした。 先行する携帯大手3社よりも低コストにネットワークを構築できる方式を取ったことで、本来であれば楽天モバイルは他社よりも劇的に安い料金でスマホサービスを提供できるはずでした』、「楽天グループにとって計算外だったのは、参入後に政府の政策でスマホ価格が大幅に下げられたことでした。 先行する携帯大手3社よりも低コストにネットワークを構築できる方式を取ったことで、本来であれば楽天モバイルは他社よりも劇的に安い料金でスマホサービスを提供できるはずでした」、なるほど。
・『足元の「営業赤字」を評価できる理由  ところが総務省の指導でNTTドコモのahamoが20GBで2970円(税込、以下同じ)になるといった具合に、大手携帯会社が格安スマホの料金でサービスを提供する新しい流れができてしまいました。 こうなると20GBで2178円、データ無制限で3280円という楽天モバイルのプランは安いとはいえ劇的にというほどの価格差ではなく、低コストを武器に急拡大を狙うことが難しくなったのです。 本業の2本柱であるインターネット通販とファイナンス事業が好調であるにもかかわらず、こうしてモバイルが足を引っ張る形の赤字決算が続いてきました。 その赤字幅がいよいよ縮小したというのが、大きなニュースです。過去6四半期で営業赤字を並べていくと、2022年の第1四半期(1~3月)が1131億円で、そこから855億円(4~6月)、942億円(7~9月)、786億円(10~12月)、761億円(2023年1~3月)と続いてきたのが、今回の2023年第2四半期(4~6月)では488億円まで縮小しました。 数字としては赤字ではありますが、前年同期比で367億円の利益増です。何より赤字幅を縮小させるといってきたことを、有言実行できたということが評価できると思います。) 決算発表では具体的に、楽天モバイルの損益分岐点シナリオも提示されました。まだこの先の道のりは険しいままではありますが、楽天グループは一歩前進できたと言えるでしょう。 さて、このような決算発表ではありましたが、楽天グループの未来はこの先、危機の連続です。三木谷浩史会長兼社長CEOが最終的に生き延びられるかどうかを賭けた戦いが待っています。それはグループの資金繰りを巡る、苦難と陰謀に満ちたドラマになるでしょう。 かなりおどろおどろしい表現をしてしまい恐縮なのですが、実際、楽天グループについてはメディアで報道される赤字幅の問題以上に投資家が気にしていることがあります。それがモバイル事業を行うために抱え込んだ、巨額の有利子負債とその返済スケジュールです。楽天グループの有利子負債は、足元で約1.8兆円まで膨張しています。 【2023年8月17日15時追記】有利子負債額を金融事業を除いた数字に修正しました。 これは日本の資本主義の悪い側面といっていいと思いますが、大企業グループの経営がいったん傾き始めると、投資家と金融機関が群がるようにグループの解体を始めます。最近の例でいえば東芝解体がその典型です』、「決算発表では具体的に、楽天モバイルの損益分岐点シナリオも提示されました。まだこの先の道のりは険しいままではありますが、楽天グループは一歩前進できたと言えるでしょう。 さて、このような決算発表ではありましたが、楽天グループの未来はこの先、危機の連続です。三木谷浩史会長兼社長CEOが最終的に生き延びられるかどうかを賭けた戦いが待っています。それはグループの資金繰りを巡る、苦難と陰謀に満ちたドラマになるでしょう・・・実際、楽天グループについてはメディアで報道される赤字幅の問題以上に投資家が気にしていることがあります。それがモバイル事業を行うために抱え込んだ、巨額の有利子負債とその返済スケジュールです。楽天グループの有利子負債は、足元で約1.8兆円まで膨張しています」、なるほど。
・『楽天と東芝の危うい共通点  東芝の場合、経営陣による不正会計とアメリカの原子力関連の買収会社の巨額損失で経営が傾いた結果、グループ解体が始まります。 東芝メディカルシステムズはキヤノンに、テレビのレグザは中国ハイセンスに、パソコンのダイナブックはシャープにといった具合に売却されました。稼ぎ頭でもあるフラッシュメモリは、キオクシアとして分社化され外部の資本が注入されます。 その後、資金調達の必要性から本体にいわゆる物言う株主であるファンドを受け入れたことで、東芝はファンドの思惑に沿ってさらに分社化される寸前まで事態が悪化します。そこで登場した政府系ファンドの力を借りて経営を巡る状況が一転し、このたびTOBが成立する見込みになりました。 これ以上の東芝解体の動きは止まると思われますが、歴史のある大企業ですら、いともたやすく解体されていくというのが日本式の資本主義です。 銀行管理下で企業の解体が行われる場合、おいしい事業から順に手放すのが定石です。わかりやすい例を出しますと、ダイエーや西武グループが傾いた際にはスーパー事業ではなくコンビニ事業を売却しています。そして楽天グループでも、同じことが起き始めているのが懸念点です。 具体的にはまず楽天銀行が上場し、次いで楽天証券が上場準備を開始しています。上場というと一見ポジティブなイベントに見えますが、グループの中枢会社が上場するということは、実際には資金繰りの一環で外部資本を受け取ることと引き換えに子会社を切り売りする財務戦略です。) ここまでは既定路線と言える動きなのですが、今回の決算発表で衝撃を与えたのが、楽天ペイ(オンライン決済)事業と楽天ポイント(オンライン)事業を、楽天カード株式会社へ集約するという機構改革です。並列の子会社だった楽天ペイメントを楽天カードの子会社にするとともに、楽天経済圏の中枢を担うポイントの権限を楽天カードに移管するのです。 楽天グループによれば、これはファイナンス事業の相乗効果の向上策だといいます。カード事業とQR決済事業とポイント事業をひとつの組織に一体化すれば、確かに事業戦略には一貫性が生まれるでしょう。 一方で一部メディアはこの再編を巡って「楽天カード株式会社の上場を検討している」と報道しています。私は経済評論家として長年楽天グループについて注目してきた外部の立場ですが、プレスリリースから感じたことは同じです。 ▽傾きかけた大企業の内部で起こること(嫌な話でもありますので私がこれまで経験してきたことを、あくまで一般論として説明させていただきます。大企業が傾きかけたときに関係者は、3つの勢力に分かれます。必死に経営を立て直そうと尽力する人々、傾いた船から安全な形で逃げ出すことを優先する人々、そしてこの機に一儲けしてやろうと画策する人々です。 最初に動くのはこの機に一儲けしてやろうと画策する人々で、その典型例はハゲタカファンドだったり、晴れた日にしか傘を貸さないと揶揄される銀行だったりします。あくまで一般論です。こういった人たちにとっては企業が傾くことは好機です。通常よりもずっと安いお金で、経営がうまく行っているグループ会社を手に入れることができるからです。 この人たちは目的を達成するために2番目の、傾いた船から安全な形で逃げ出すことを優先する人々を段階的に篭絡していきます。 「このままだといくら儲けても赤字部門に資金を吸い取られるだけだ」 「全体が赤字なら給料も上がらないだろう。気の毒に思うよ」 「健全な部門なのだから、切り出してしまえば君ならもっとずっと成長させられるだろう」 繰り返しこのような言葉を聞かされるうちに、自分のいる組織はグループから独立したほうがいいと心から信じるようになります。実際、この甘言は真実でもあったりします。ダイエーに残って経営破たんを経験することになった従業員よりも、分離されたローソンの従業員のほうがビジネスパーソン人生としてはよかったかもしれません。) こうして子会社を分離させようという一派が動き始めます。親会社にとって、それが最善だと働きかけるようになります。タフな交渉を続けてもなかなか資金を出してくれない金融機関に比べれば、有力な子会社を上場させればずっとイージーに事業継続のための資金が手に入るでしょう。「そのほうがいいですよね」と経営陣にも囁き続けるわけです。 さて、ここまでが一般論なのですが、楽天グループの場合はどうなのでしょうか? 楽天銀行と楽天証券は実は楽天から分離させても、グループの企業価値をそれほど損ねることはありません。資本的に一体化していたほうが戦略は一貫しますが、出資比率が下がってもグループ会社としての緩い一体感がありさえすれば楽天グループの価値に大きな変わりはないでしょう。 たとえて言えば、仮にセブン&アイからセブン銀行が完全に資本離れするようなことが起きたとしても、セブン-イレブンの戦略に大きな影響はないというのと同じです』、「楽天銀行と楽天証券は実は楽天から分離させても、グループの企業価値をそれほど損ねることはありません。資本的に一体化していたほうが戦略は一貫しますが、出資比率が下がってもグループ会社としての緩い一体感がありさえすれば楽天グループの価値に大きな変わりはないでしょう」、なるほど。
・『「虎の子」の分離はありえない  一方で楽天カードは違います。楽天市場で買い物をした人が楽天カードで決済する。これがビジネスモデルの両輪で、楽天はひとりの顧客から二度稼ぐことができます。 そしてここに今回、楽天ポイントと楽天ペイが再編の形で加わりました。そうなると4000万ユーザーを擁する楽天ポイント経済圏の未来も楽天カードに委ねられることになりますし、今後の市場拡大が期待されるキャッシュレスも楽天カードの一部門となります。 当然のことながら楽天カード株式会社は、今回の再編で楽天グループの最重要子会社になりました。この子会社は楽天グループの虎の子であると同時に、楽天経済圏の扇の要であり、楽天グループにとってはビジネスモデル的に不可分な事業体になります。ですから楽天カードを本体から分離させていくことは戦略的にはありえません。 しかし仮に私が悪魔のような考え方をする人物だったら、どうでしょうか。架空のシナリオを考えてみましょう。 ここでは私のことをハゲタカと呼ぶことにします。ハゲタカはたまたま有利なポジションにいたことで、楽天グループとそのステークホルダーたちに影響力を与えることができる人物だったと仮定しましょう。) 私がハゲタカなら楽天カード株式会社を上場させ、楽天グループの有利子負債を返済させる資金源にしようと企てるでしょう。そのためには楽天グループの業績が傾いたほうが都合がいいと考えます。 そこで部下に命じて、たとえば楽天カードのポイント還元率を改悪するような施策を打ちます。グループ内ではカード事業の利益が向上することを評価させる一方で、外部からは「楽天グループ、こんなことをするなんて危ないんじゃないか」という声が上がります。 こうした工作を続けるうちに楽天グループの経営は苦しくなり、銀行団は有利子負債の借り換えに難色を示すようになります。グループが行き詰まればチャンスが生まれます。楽天カードの株式を何らかの形で売却しようというところまで経営陣が追い込まれるからです。 そこでハゲタカは楽天グループを救う形で、楽天カードに資本注入を決定します。持ち株比率を段階的に上げて、いずれは筆頭株主を目指します。 ここで楽天ポイントを握っていることが、ハゲタカに有利に働きます。ポイント還元率を絞れば絞るほど楽天市場は弱体化していくでしょうし、足手まといの楽天モバイルのポイントはゼロにしてしまえば、モバイルはより経営の足を引っ張るようになるでしょう』、「楽天カード・・・は、今回の再編で楽天グループの最重要子会社になりました。この子会社は楽天グループの虎の子であると同時に、楽天経済圏の扇の要であり、楽天グループにとってはビジネスモデル的に不可分な事業体になります。ですから楽天カードを本体から分離させていくことは戦略的にはありえません」、「仮に私が悪魔のような考え方をする人物だったら、どうでしょうか。架空のシナリオを考えてみましょう。 ここでは私のことをハゲタカと呼ぶことにします。ハゲタカはたまたま有利なポジションにいたことで、楽天グループとそのステークホルダーたちに影響力を与えることができる人物だったと仮定しましょう。) 私がハゲタカなら楽天カード株式会社を上場させ、楽天グループの有利子負債を返済させる資金源にしようと企てるでしょう。そのためには楽天グループの業績が傾いたほうが都合がいいと考えます。 そこで部下に命じて、たとえば楽天カードのポイント還元率を改悪するような施策を打ちます。グループ内ではカード事業の利益が向上することを評価させる一方で、外部からは「楽天グループ、こんなことをするなんて危ないんじゃないか」という声が上がります。 こうした工作を続けるうちに楽天グループの経営は苦しくなり、銀行団は有利子負債の借り換えに難色を示すようになります。グループが行き詰まればチャンスが生まれます。楽天カードの株式を何らかの形で売却しようというところまで経営陣が追い込まれるからです。 そこでハゲタカは楽天グループを救う形で、楽天カードに資本注入を決定します。持ち株比率を段階的に上げて、いずれは筆頭株主を目指します」、「足手まといの楽天モバイルのポイントはゼロにしてしまえば、モバイルはより経営の足を引っ張るようになるでしょう」、なるほど。
・『悪魔シナリオから楽天を守れ  最終的に楽天グループが何らかの形で経営破たんすることをハゲタカは待ちます。最終目的があるのです。それは経営破たんしたグループから楽天市場を分社化させて、それを救済し民事再生する形で、ハゲタカが持つ楽天カードの傘下につけることです。モバイルの残骸と借金は創業者に押し付ければ完璧です。 これはあくまで私個人が考える「もし私がハゲタカだったら」という悪魔シナリオです。日本経済では過去にはこんなことも履いて捨てるほど起きてきたのですが、当然ながらこんなことが横行する資本主義経済は発展しません。楽天に悪夢が起きるようであれば、日本経済の発展機会はさらに10年は失われてしまうでしょう。 この楽天の資本問題は関係者以外にとっての対岸の火事ではなく、日本経済の重要な分岐点だと思うべき大事です。そしてメディアもこの先、変なことが起きないように注視すべき事柄なのです』、「経営破たんしたグループから楽天市場を分社化させて、それを救済し民事再生する形で、ハゲタカが持つ楽天カードの傘下につけることです。モバイルの残骸と借金は創業者に押し付ければ完璧です」、「こんなことが横行する資本主義経済は発展しません。楽天に悪夢が起きるようであれば、日本経済の発展機会はさらに10年は失われてしまうでしょう」、同感である。

次に、8月17日付けPRESIDENT Onlineが掲載したビジネス・ブレークスルー大学学長の大前 研一氏による「大前研一「楽天モバイルの大赤字は氷山の一角にすぎない」…三木谷会長がたどる最悪の末路とは 楽天衰退の根本原因は10年前にさかのぼる」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/72584
・『赤字を垂れ流し続ける三木谷楽天の末路とは  楽天グループが崩壊過程に入っている。2023年第1四半期(1~3月期)の最終損益は、マイナス825億円。第1四半期としては、4期連続の赤字になった。グループ全体の足を引っ張っているのは、三木谷浩史会長兼社長肝いりのモバイル事業である。インターネットサービスやフィンテック事業は黒字だが、モバイル事業は1027億円の営業損失を計上した。 モバイル事業への巨額投資が響いて、財務も厳しい。楽天グループが今後5年で償還を迎える社債の額は、1兆2000億円。それに対して、23年3月末の手元資金は1175億円と心細い。 投資家の目もシビアである。21年3月、日本郵政が楽天グループに1500億円の出資を行ったときの株価は1245円だった。それが、23年6月末には499円まで下落。株価が半値以下になり、日本郵政は850億円の特別損失を計上せざるをえなくなった。 もっとも、三木谷楽天王国の崩壊はモバイル事業に手を出すずいぶん前から始まっていた。 10年前に、私は「楽天のビジネスモデルは今後行き詰まる」と指摘した。すると、三木谷会長兼社長本人が抗議にやってきた。私は根拠を示しつつ指摘についての説明を述べたが、結局彼は納得いかない表情で帰っていった』、「10年前に、私は「楽天のビジネスモデルは今後行き詰まる」と指摘・・・三木谷会長兼社長本人・・・は納得いかない表情で帰っていった」、そんなことがあったとは初めて知った。
・『楽天市場とアマゾンの違い  当時指摘したのは、楽天市場とアマゾンの違い。楽天はECの黎明れいめい期である1997年に、当時アメリカで流行していた「ジオシティ」というコンセプトをモデルに、仮想のショッピングモール「楽天市場」をインターネット上につくった。ユーザーが出店している店舗から商品を買い、楽天は手数料で利益を得るビジネスモデルである。 このビジネスモデルの問題点は2つある。1つは物流を握っていないこと。商品を届けるのは第三者依存で、自社ではコントロールができない。 もう1つは、売り上げが立たないこと。商品が売れて取扱高が膨らんでも、楽天市場自身は場所貸しにすぎないので、計上できる売り上げが小さい。 それに対して、00年に日本でEC事業を開始したアマゾンは、自身が企業から商品を買って倉庫に在庫を持つ。このモデルだと物流を管理できて、売り上げも立つ。アマゾンがウォルマートと競い合う世界最大規模の小売業者になったのは、単なるサイバー上の場所貸しにならなかったからである。 三木谷会長兼社長には、ビジネスモデルを見つける才能はある。時代を先取りして、楽天市場というECをつくった嗅覚はさすがだ。しかし、その後アマゾンが出てきたときに、両者のビジネスモデルの違いを理解できなかったのだ。アマゾンの進出時から対抗手段を打っていれば、今ほどEC事業で差をつけられることはなかった。 12年に買収した電子書籍事業Koboも、アマゾンのKindleに大きく後れを取っており、散々だ。 14年にメッセージアプリのViberを買収したが、この狙いは悪くなかった。 流行っているメッセージアプリは、国によって違う。日本ではLINE、イギリスやインドではWhatsApp、アメリカやフランスではFacebook Messenger、中国ではWeChat。そしてヨーロッパ、とくにギリシャやウクライナではViberの人気が高い。 世界で最も利用されているメッセージアプリであるWhatsAppの月間利用者数は20億人。Viberの月間利用者数は2.6億人だが、LINEの月間利用者数が2億人弱ということを考えると、ヨーロッパで健闘しているのがわかる。 メッセージアプリのシェアをイギリスやフランスを含めたヨーロッパ全体で掌握し、勢いそのままに日本へ輸入してLINEを打倒しようと、Viberに目をつけたところまでは良かった。しかし、その後がよろしくなかった。 Viberはイスラエル発の会社で、開発拠点はベラルーシのミンスクにある。買収後にミンスクのオフィスを2度ほど訪問したことがあるが、現地社員は「自由にやらせてもらっていてうれしい」と言っていた。自由にやらせているというと聞こえはいいが、要は放置で、これでは宝の持ち腐れだ。とくにViberはLINEのような通話機能を持っているので、早期に日本へ持ち込めば後発のモバイル事業者として楽天が投資に喘ぐこともなかった。 三木谷会長兼社長は、これから伸びるものを見つけるところまでは優秀。しかし、ダイヤの原石を見つけても、磨こうとしないきらいがあるのだ』、「Viberはイスラエル発の会社で、開発拠点はベラルーシのミンスクにある・・・現地社員は「自由にやらせてもらっていてうれしい」と言っていた。自由にやらせているというと聞こえはいいが、要は放置で、これでは宝の持ち腐れだ。とくにViberはLINEのような通話機能を持っているので、早期に日本へ持ち込めば後発のモバイル事業者として楽天が投資に喘ぐこともなかった。 三木谷会長兼社長は、これから伸びるものを見つけるところまでは優秀。しかし、ダイヤの原石を見つけても、磨こうとしないきらいがあるのだ」、「ダイヤの原石を見つけても、磨こうとしないきらいがある」、困った性格だ。
・『すぐに結果が出ないと投げ出してしまう  楽天グループの海外展開にも、その傾向がよくあらわれている。楽天グループは、社内公用語を英語にすると発表した10年くらい前から、海外展開を加速させた。当初は世界各国・地域でのビジネス展開を意気込んでおり、有望なマーケットを目ざとく見つけ出して事業を始めた。しかし、すぐに結果が出ないと投げ出してしまう三木谷会長兼社長の短期思考がゆえに、いずれの海外事業も尻すぼみになっている。 10年に中国大手IT企業のバイドゥと手を組んで開設した中国版楽天市場「楽酷天らくてん」は、2年後の12年に閉鎖。08年にはECの欧州市場でアマゾンに対抗すべく、欧州拠点としてルクセンブルクに楽天ヨーロッパを置いた。しかし、16年を境に欧州各国からの撤退と縮小が相次ぎ、現在ではフランスでわずかにEC事業を展開しているのみだ。楽天グループの現地法人で今も頑張っているのは台湾くらいで、あとはもう積極的な海外投資をしていない。海外事業の勢いは、最初だけだった。 たとえリーダーが偏ったタイプでも、その下の人たちの足腰が強ければ、事業を回していける。しかし、楽天グループは社員たちも三木谷会長兼社長に似たタイプの寄せ集めで、チームとして結束できておらず、機能不全だ。 日用品や弁当などの宅配システムを九州で展開している、エブリデイ・ドット・コムという会社がある。私が同社のオーナーをしていた十数年前、楽天から業務提携の打診があり、流通や販売など3つの組織の長が来社して打ち合わせをすることになった。朝9時に私がオフィスで出迎えると、3人はその場でお互いに名刺交換を始めた。同じグループでも交流がないのだ。 さらに驚いたのはその後だ。打ち合わせはそれなりに盛り上がり、3人は意気いき軒昂けんこうとして帰っていった。しかしその後、連絡はなかった。実務をフォローする人が誰もいないし、もともと起案した人は既に辞めてしまっていた。 別件で楽天グループ本社に行ったときも、興味深い体験をした。打ち合わせをしていると、突然モニターに三木谷会長兼社長が映り、「今週の進捗は」と英語で語り始めた。社員は最初の1~2分こそ聞いていたが、そのうち自分の仕事に戻り始めた。英語ではわからない、という人を置きざりにしており、トップとしては求心力が低すぎる。 楽天グループには、創業期から三木谷会長兼社長と苦楽を共にしてきた社員がほとんど残っていない。幹部は高い給料で引っ張ってきた高スペック人材が中心だ。彼らは、嫌なら別の会社に転職すればいいと考えていて忠誠心が低い。三木谷会長兼社長に負けず劣らず短期志向なので、足腰も頼りない。 楽天グループは、いわば細い鉛筆を立てて束ねたような組織だ。三木谷会長兼社長が関心を持って見ているうちはまとまって立っているが、手を放すとバラバラと倒れる。これでは事業を太く長く育てていくことは難しい』、「当初は世界各国・地域でのビジネス展開を意気込んでおり、有望なマーケットを目ざとく見つけ出して事業を始めた。しかし、すぐに結果が出ないと投げ出してしまう三木谷会長兼社長の短期思考がゆえに、いずれの海外事業も尻すぼみになっている」、「楽天グループは社員たちも三木谷会長兼社長に似たタイプの寄せ集めで、チームとして結束できておらず、機能不全だ」、「幹部は高い給料で引っ張ってきた高スペック人材が中心だ。彼らは、嫌なら別の会社に転職すればいいと考えていて忠誠心が低い。三木谷会長兼社長に負けず劣らず短期志向なので、足腰も頼りない。 楽天グループは、いわば細い鉛筆を立てて束ねたような組織だ。三木谷会長兼社長が関心を持って見ているうちはまとまって立っているが、手を放すとバラバラと倒れる。これでは事業を太く長く育てていくことは難しい」、なるほど。
・『楽天存続の唯一の術はモバイル事業との決別  モバイル事業での躓つまづきも、グループ全体としての足腰の弱さが原因だ。「楽天であれば、NTTドコモなど大手キャリア3社が寡占している国内携帯市場に風穴を開けられる」。三木谷会長兼社長やそのまわりは、そんな思いでモバイル事業を始めたに違いない。 しかし、これこそ現実が見えていない、頭でっかちな人の考えだ。 まず、ユーザーは既存の通信会社におおむね満足している。世界の多くの国は1~2社の寡占で、生き残れるのはせいぜい3位まで。4位以降が単独で浮上したケースはまずない。日本は既に3社が存在し、4社目は誰も求めていなかった。 もう1つはカバレッジの問題だ。楽天モバイルは人口カバー率99%とアピールしている。ただ、ユーザーが気にしているのは地理的・・・なカバー率である。たとえば旅行中に災害に遭い、助けを呼ぼうとしたときに、つながらない通信会社とは誰も好んで契約しない。本来なら基地局を地味に増やすべきだ。しかし、もともと地理的カバー率を軽視していたし、いざその重要性に気づいても、足腰が弱いために基地局の整備が遅々として進まない。 では、楽天グループは今後どうするべきなのか。私が社長なら、楽天モバイルを今すぐあきらめる。厳しいが、それくらい思い切った手を打たないと、会社は存続できない。 楽天グループは、23年7月に楽天証券ホールディングスの上場申請に踏み切ったが、上場で資金調達できるのはせいぜい2000億円程度。年間5000億円の赤字を垂れ流すモバイル事業の穴埋めにならず、焼け石に水だ。 既存の社債は組み直しで急場を凌ぐと思うが、償還までの道のりは険しい。まずは三木谷会長兼社長が頭でっかちの経営をやめて、モバイル事業に見切りをつけない限り、楽天グループに明るい未来はないだろう』、「ユーザーは既存の通信会社におおむね満足している。世界の多くの国は1~2社の寡占で、生き残れるのはせいぜい3位まで。4位以降が単独で浮上したケースはまずない。日本は既に3社が存在し、4社目は誰も求めていなかった」、「もう1つはカバレッジの問題だ・・・ユーザーが気にしているのは地理的・・・なカバー率である。たとえば旅行中に災害に遭い、助けを呼ぼうとしたときに、つながらない通信会社とは誰も好んで契約しない。本来なら基地局を地味に増やすべきだ。しかし、もともと地理的カバー率を軽視していたし、いざその重要性に気づいても、足腰が弱いために基地局の整備が遅々として進まない」、「私が社長なら、楽天モバイルを今すぐあきらめる。厳しいが、それくらい思い切った手を打たないと、会社は存続できない。 楽天グループは、23年7月に楽天証券ホールディングスの上場申請に踏み切ったが、上場で資金調達できるのはせいぜい2000億円程度。年間5000億円の赤字を垂れ流すモバイル事業の穴埋めにならず、焼け石に水だ。 既存の社債は組み直しで急場を凌ぐと思うが、償還までの道のりは険しい。まずは三木谷会長兼社長が頭でっかちの経営をやめて、モバイル事業に見切りをつけない限り、楽天グループに明るい未来はないだろう」、極めて厳しい見立てだ。それにしても、「三木谷会長兼社長の短期思考」は「楽天」に組織としての力を大きく殺いだようだ。遺産が何も残りそうもないのは寂しい限りだ。
タグ:東洋経済オンライン (その12)(赤字縮小の楽天G、三木谷氏に迫る「悪魔シナリオ」 「ポイント経済圏」握る楽天カード上場は危険だ、大前研一「楽天モバイルの大赤字は氷山の一角にすぎない」…三木谷会長がたどる最悪の末路とは 楽天衰退の根本原因は10年前にさかのぼる) 携帯・スマホ 鈴木 貴博 氏による「赤字縮小の楽天G、三木谷氏に迫る「悪魔シナリオ」 「ポイント経済圏」握る楽天カード上場は危険だ」 「楽天グループにとって計算外だったのは、参入後に政府の政策でスマホ価格が大幅に下げられたことでした。 先行する携帯大手3社よりも低コストにネットワークを構築できる方式を取ったことで、本来であれば楽天モバイルは他社よりも劇的に安い料金でスマホサービスを提供できるはずでした」、なるほど。 「決算発表では具体的に、楽天モバイルの損益分岐点シナリオも提示されました。まだこの先の道のりは険しいままではありますが、楽天グループは一歩前進できたと言えるでしょう。 さて、このような決算発表ではありましたが、楽天グループの未来はこの先、危機の連続です。三木谷浩史会長兼社長CEOが最終的に生き延びられるかどうかを賭けた戦いが待っています。それはグループの資金繰りを巡る、苦難と陰謀に満ちたドラマになるでしょう・・・ 実際、楽天グループについてはメディアで報道される赤字幅の問題以上に投資家が気にしていることがあります。それがモバイル事業を行うために抱え込んだ、巨額の有利子負債とその返済スケジュールです。楽天グループの有利子負債は、足元で約1.8兆円まで膨張しています」、なるほど。 「楽天銀行と楽天証券は実は楽天から分離させても、グループの企業価値をそれほど損ねることはありません。資本的に一体化していたほうが戦略は一貫しますが、出資比率が下がってもグループ会社としての緩い一体感がありさえすれば楽天グループの価値に大きな変わりはないでしょう」、なるほど。 「楽天カード・・・は、今回の再編で楽天グループの最重要子会社になりました。この子会社は楽天グループの虎の子であると同時に、楽天経済圏の扇の要であり、楽天グループにとってはビジネスモデル的に不可分な事業体になります。ですから楽天カードを本体から分離させていくことは戦略的にはありえません」、「仮に私が悪魔のような考え方をする人物だったら、どうでしょうか。架空のシナリオを考えてみましょう。 ここでは私のことをハゲタカと呼ぶことにします。ハゲタカはたまたま有利なポジションにいたことで、楽天グループとそのステークホルダーたちに影響力を与えることができる人物だったと仮定しましょう。) 私がハゲタカなら楽天カード株式会社を上場させ、楽天グループの有利子負債を返済させる資金源にしようと企てるでしょう。そのためには楽天グループの業績が傾いたほうが都合がいいと考えます。 そこで部下に命じて、たとえば楽天カードのポイント還元率を改悪するような施策を打ちます。グループ内ではカード事業の利益が向上することを評価 させる一方で、外部からは「楽天グループ、こんなことをするなんて危ないんじゃないか」という声が上がります。 こうした工作を続けるうちに楽天グループの経営は苦しくなり、銀行団は有利子負債の借り換えに難色を示すようになります。グループが行き詰まればチャンスが生まれます。楽天カードの株式を何らかの形で売却しようというところまで経営陣が追い込まれるからです。 そこでハゲタカは楽天グループを救う形で、楽天カードに資本注入を決定します。持ち株比率を段階的に上げて、いずれは筆頭株主を目指します」、 「足手まといの楽天モバイルのポイントはゼロにしてしまえば、モバイルはより経営の足を引っ張るようになるでしょう」、なるほど。 「経営破たんしたグループから楽天市場を分社化させて、それを救済し民事再生する形で、ハゲタカが持つ楽天カードの傘下につけることです。モバイルの残骸と借金は創業者に押し付ければ完璧です」、「こんなことが横行する資本主義経済は発展しません。楽天に悪夢が起きるようであれば、日本経済の発展機会はさらに10年は失われてしまうでしょう」、同感である。 PRESIDENT ONLINE 大前 研一氏による「大前研一「楽天モバイルの大赤字は氷山の一角にすぎない」…三木谷会長がたどる最悪の末路とは 楽天衰退の根本原因は10年前にさかのぼる」 「10年前に、私は「楽天のビジネスモデルは今後行き詰まる」と指摘・・・三木谷会長兼社長本人・・・は納得いか 「Viberはイスラエル発の会社で、開発拠点はベラルーシのミンスクにある・・・現地社員は「自由にやらせてもらっていてうれしい」と言っていた。自由にやらせているというと聞こえはいいが、要は放置で、これでは宝の持ち腐れだ。とくにViberはLINEのような通話機能を持っているので、早期に日本へ持ち込めば後発のモバイル事業者として楽天が投資に喘ぐこともなかった。 三木谷会長兼社長は、これから伸びるものを見つけるところまでは優秀。しかし、ダイヤの原石を見つけても、磨こうとしないきらいがあるのだ」、「ダイヤの原石を見つけても、磨こうとしないきらいがある」、困った性格だ。 「当初は世界各国・地域でのビジネス展開を意気込んでおり、有望なマーケットを目ざとく見つけ出して事業を始めた。しかし、すぐに結果が出ないと投げ出してしまう三木谷会長兼社長の短期思考がゆえに、いずれの海外事業も尻すぼみになっている」、「楽天グループは社員たちも三木谷会長兼社長に似たタイプの寄せ集めで、チームとして結束できておらず、機能不全だ」、 「幹部は高い給料で引っ張ってきた高スペック人材が中心だ。彼らは、嫌なら別の会社に転職すればいいと考えていて忠誠心が低い。三木谷会長兼社長に負けず劣らず短期志向なので、足腰も頼りない。 楽天グループは、いわば細い鉛筆を立てて束ねたような組織だ。三木谷会長兼社長が関心を持って見ているうちはまとまって立っているが、手を放すとバラバラと倒れる。これでは事業を太く長く育てていくことは難しい」、なるほど。 「ユーザーは既存の通信会社におおむね満足している。世界の多くの国は1~2社の寡占で、生き残れるのはせいぜい3位まで。4位以降が単独で浮上したケースはまずない。日本は既に3社が存在し、4社目は誰も求めていなかった」、「もう1つはカバレッジの問題だ・・・ユーザーが気にしているのは地理的・・・なカバー率である。たとえば旅行中に災害に遭い、助けを呼ぼうとしたときに、つながらない通信会社とは誰も好んで契約しない。本来なら基地局を地味に増やすべきだ。しかし、もともと地理的カバー率を軽視していたし、いざその重要性に気づ いても、足腰が弱いために基地局の整備が遅々として進まない」、「私が社長なら、楽天モバイルを今すぐあきらめる。厳しいが、それくらい思い切った手を打たないと、会社は存続できない。 楽天グループは、23年7月に楽天証券ホールディングスの上場申請に踏み切ったが、上場で資金調達できるのはせいぜい2000億円程度。年間5000億円の赤字を垂れ流すモバイル事業の穴埋めにならず、焼け石に水だ。 既存の社債は組み直しで急場を凌ぐと思うが、償還までの道のりは険しい。まずは三木谷会長兼社長が頭でっかちの経営をやめて、モバイル事 業に見切りをつけない限り、楽天グループに明るい未来はないだろう」、極めて厳しい見立てだ。それにしても、「三木谷会長兼社長の短期思考」は「楽天」に組織としての力を大きく殺いだようだ。遺産が何も残りそうもないのは寂しい限りだ。
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自動車(一般)(その6)(半導体不足 電力不足......日本の自動車産業は崖っぷち?、高校に行かなくても副社長になれる…トヨタ自動車が学歴や門閥を重んじない会社になったワケ むかしから多様性と自由を重んじているからこそ、「まさか売却とは…」ホンダが蜜月ケイレツ・八千代工業“放出”の衝撃) [産業動向]

自動車(一般)については、2021年7月6日に取上げた。久しぶりの今日は、(その6)(半導体不足 電力不足......日本の自動車産業は崖っぷち?、高校に行かなくても副社長になれる…トヨタ自動車が学歴や門閥を重んじない会社になったワケ むかしから多様性と自由を重んじているからこそ、「まさか売却とは…」ホンダが蜜月ケイレツ・八千代工業“放出”の衝撃)である。

先ずは、昨年3月23日付けNewsweek日本版が掲載した在米作家の冷泉彰彦氏による「半導体不足、電力不足......日本の自動車産業は崖っぷち?」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2022/03/post-1265_1.php
・『<日本型の「高付加価値部門の空洞化」に、クリーンエネルギーへの転換の遅れが追い討ちをかければ、自動車産業は風前の灯火に> アメリカの消費者は厳しいインフレに直面していますが、何よりも価格の上昇率が高いのは中古車です。つい先週、11年落ちで19万キロ走った小型SUVを「もらい事故」で廃車にした人の話では、車両保険で1万1000ドル(132万円)の保険金が出たそうです。中古としての市場価値からすると、そんな金額になるのです。 実際に中古車市場を見てみると、5年落ち10万キロ越えの車でも、トヨタの中型SUVで3万3000ドル(396万円)と価格はほとんど新車と変わりません。では、新車を買ったらいいかというと、それは不可能です。市場には在庫がないからです。そうなると売り手市場となって中古が新車と価格が変わらないというクレージーなことになるわけです。 それもこれも、日本の半導体工場が火災になったり、新型コロナの影響で生産が止まったりした影響で、自動車用の汎用半導体が極端な供給不足になっているからです。この種の製品は、日本のシェアが異常に高いので、日本での生産が止まると世界中の自動車メーカーが影響を受け、とりわけ米国では深刻な事態になっています』、「5年落ち10万キロ越えの車でも、トヨタの中型SUVで3万3000ドル(396万円)と価格はほとんど新車と変わりません。では、新車を買ったらいいかというと、それは不可能です。市場には在庫がないからです。そうなると売り手市場となって中古が新車と価格が変わらないというクレージーなことになるわけです。 それもこれも、日本の半導体工場が火災になったり、新型コロナの影響で生産が止まったりした影響で、自動車用の汎用半導体が極端な供給不足になっているからです。この種の製品は、日本のシェアが異常に高いので、日本での生産が止まると世界中の自動車メーカーが影響を受け、とりわけ米国では深刻な事態になっています』、「汎用半導体が極端な供給不足」の影響は想像以上に幅広いようだ。
・『日本の半導体産業が復興?  ここからが本論ですが、「自動車用の半導体」でそんなに日本が強いのなら、そして供給不足で世界中が困っているのなら、強気の価格交渉をして日本の半導体産業を20世紀のように再び強くすることができそうにも思えます。ですが、その可能性はありません。 日本の自動車部品産業は、半導体も含めて多くの場合が「本体」つまり最終組み立てメーカーの資本が入っており、親会社の意向によって価格は低く抑えられています。ですが、ここまで市場占有率が高く、需要と供給のバランスが崩れているのなら、思い切って世界から資金を集めて独立し、価格決定権も奪い返して半導体産業を活性化しても良いはずです。 ですが、多くの場合に経営者は「本体」から送り込まれており、「本体」の意向に沿うような経営しかしません。また仮にダイレクトに資金を集めようにも、日本国内にはリスクを許容するマネーは枯渇していますし、海外から借りるとなると専門性が必要な上、将来の円安を考えると怖くて借りられないということもあります。 そんなわけで、多くの部品産業は価格を安く叩かれており、納入先について日系企業だけでなく世界中を相手にするようになっても、そのデフレ体質を世界中から食い物にされているわけです。 しかも、トヨタをはじめ、多くの日本の最終組み立てメーカーは、国内販売比率が10%前後まで低下しています。そして、海外で販売する部分は、そのほとんどが現地生産になっています。さらに言えば、研究開発、デザイン、マーケティングなど主要な高付加価値部門も海外に出している企業が多くなっています。つまり、日本のGDPに寄与しているのは、日本国内の部品や素材メーカーが価格を叩かれて、薄い利幅にあえぎながら生産している部分が中心ということになります。 つまり、人件費の低い国に生産拠点を移したり、市場に近いところで生産するといったクラシックな空洞化、つまり設計や研究開発など知的で高付加価値な部分を「本国に残す」スタイルではないのです。自動車産業をはじめとした日本の多くの製造業の場合は、利幅の薄い部品と素材の一部だけと、生産性の低い事務部門だけが国内に残って、その他の高度な部分はどんどん海外に出す「日本形の空洞化」が進んでいると言えます』、「人件費の低い国に生産拠点を移したり、市場に近いところで生産するといったクラシックな空洞化、つまり設計や研究開発など知的で高付加価値な部分を「本国に残す」スタイルではないのです。自動車産業をはじめとした日本の多くの製造業の場合は、利幅の薄い部品と素材の一部だけと、生産性の低い事務部門だけが国内に残って、その他の高度な部分はどんどん海外に出す「日本形の空洞化」が進んでいる」、恐ろしいことだ。
・『見通せないエネルギー政策  これに追い討ちをかけそうなのが、エネルギー問題です。今回の電力逼迫が示しているように、もう日本の世論は原子力発電については、部分的であれ期限を限ったものであれ本格稼働を許容することはなさそうです。そうなると、トヨタの豊田章男社長が警告しているように、やがて「化石燃料まみれの電源」を使って作ったクルマは世界では売れなくなり、自動車産業は完全に日本から出ていく可能性もあるといいます。エネルギー政策に答えがなければ、やがて製鉄も国内では不可能になるでしょう。 産業自体が、EV(電気自動車)化や、AV(自動運転車)化へと大きな改革を進める中で、日本の自動車産業は本来であればそこで挽回を図らなければならないはずです。その日本の自動車産業が、空洞化とエネルギー問題で、崖っぷちまで追い詰められているというのは、大変に厳しい状況と思います。 日本の賃金が上がらないのも、貧困が広まっているのも、その多くはここに原因があります。より高付加価値な産業へ転換することもなく、製造業をどんどん国外流出させて、国内には利幅の薄い部品と素材産業だけが残っていくようでは、日本経済はさらに一層の衰退を覚悟しなくてはならなくなります』、「日本の賃金が上がらないのも、貧困が広まっているのも、その多くはここに原因があります。より高付加価値な産業へ転換することもなく、製造業をどんどん国外流出させて、国内には利幅の薄い部品と素材産業だけが残っていくようでは、日本経済はさらに一層の衰退を覚悟しなくてはならなくなります」、残念ながらその通りだ。

次に、本年4月12日付けPRESIDENT Onlineが掲載したノンフィクション作家の野地 秩嘉氏による「高校に行かなくても副社長になれる…トヨタ自動車が学歴や門閥を重んじない会社になったワケ むかしから多様性と自由を重んじているからこそ」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/68210
・『トヨタ自動車の河合満さんは中学卒業後、トヨタ技能者養成所(現トヨタ工業学園)を経て入社し、現場出身者初の副社長になった。なぜ河合さんはそこまで出世できたのか。なぜトヨタは学歴や門閥を重んじない会社になったのか。『図解 トヨタがやらない仕事、やる仕事』(プレジデント社)を上梓した野地秩嘉さんが解説する――』、興味深そうだ。
・『トヨタに学歴や門閥は関係ない  普通の企業では学歴や門閥を重んじる。一流大学を出ていたり、欧米大学のビジネススクールを出てMBAを持っていたりすると確実に得をする。また、企業トップ、医師、弁護士、有名人の子女が入社するとエリート部署に配属される。エリート部署とは経歴に傷がつかないセクションだ。企画室、秘書室、海外との窓口みたいなところだ。炎天下、靴をすり減らして飛び込み営業するような部署にはまず行かない。 ただし、良家の子女であっても「どぶ板営業をやらせてください」という骨のあるビジネスパーソンもいる。そういう人は必ず大成する。 話は戻る。 トヨタは学歴や門閥を重んじない。社内には一流大学を出た人もいればMBAを持っている人もいる。企業トップや有名人の子息もいる。だが、高学歴だからといって得をすることはない。有名人の子どもだからといって特別な配慮があるわけではない。豊田章男新会長はトヨタに入社してから、現場でしごかれた。社長の息子だからといって得をする会社ではない。 一方で、大学や普通高校を出ていなくとも役員になり、会社を引っ張る役職に就くことができるのがトヨタだ。f その典型が「おやじ」兼エグゼクティブフェローの河合満である』、「トヨタは学歴や門閥を重んじない。社内には一流大学を出た人もいればMBAを持っている人もいる。企業トップや有名人の子息もいる。だが、高学歴だからといって得をすることはない。有名人の子どもだからといって特別な配慮があるわけではない・・・大学や普通高校を出ていなくとも役員になり、会社を引っ張る役職に就くことができるのがトヨタだ」、なるほど。
・『ちゃんと叱ってくれ、一緒に謝ってくれる存在  彼は75歳だ。中学を出た1963年、トヨタ技能者養成所(現・トヨタ工業学園)に入所。トヨタに入って60年になる。肩書は「おやじ」。「おやじ」とは居酒屋で酒を飲んで、くだをまく、「オヤジ」のことではない。同社の正式な肩書である。 おやじの仕事は生産現場に目を光らせること。わたしは河合さんが豊田新会長とふたりで本社に隣接している工場にやってきて、若い作業者と話をしていた姿を見たことがある。 おやじについては豊田新会長が、こんな説明をしている。 「トヨタには、かつて、仲間から『おやじ』と呼ばれる人がたくさんいたと思います。 張相談役(富士夫、当時)は、大野耐一さんのことを親しみを込めて『おやじ』と呼ばれていますし、私にとっては張相談役、成瀬(弘、前マスタードライバー)さんらが『おやじ』と呼べる存在です。 もちろん、豊田(章一郎)名誉会長は本当の『おやじ』ですが(笑) 『おやじ』『おふくろ』という言葉に、『包容力』を感じるのは私だけでしょうか。 間違ったことをすれば、ちゃんと叱ってくれる。迷惑をかけた時には、一緒に謝ってくれる。口数は少なくても、いつも見守っていてくれる。職場にも、そんな『おやじ』や『おふくろ』が増えるといいな、と思っています」(トヨタイムズ 2020.6.17)』、「中学を出た1963年、トヨタ技能者養成所・・・に入所。トヨタに入って60年になる。肩書は「おやじ」。「おやじ」とは・・・同社の正式な肩書である。 おやじの仕事は生産現場に目を光らせること。わたしは河合さんが豊田新会長とふたりで本社に隣接している工場にやってきて、若い作業者と話をしていた姿を見たことがある」、なるほど。
・『現場出身者として初の副社長に  河合さんが副社長、そして、おやじになることができたのは、全体を見ることのできる人だったからだ。そして、彼は誰よりも勉強熱心だった。河合さんの職場は鍛造工場だ。鉄を叩いて成型する、うるさくて、暑くて、危ない職場だ。そこで河合さんは職場のカイゼンに励んだ。 少しでも仕事がしやすいよう鍛造機械を改良した。暑さを防ぐために自らミスト扇風機を設計して配置した。カイゼンすれば職場環境が良くなるし、対番(2交代の時の同僚)が喜んでくれるからだ。 河合さんは対番のこと、職場全体を考える人だった。そうしているうちに上司が河合さんを管理職に引き上げ、工場の責任者にした。そして彼は現場出身者として初めての副社長になり、おやじになった。トヨタ以外の会社ではまずありえない。学歴も門閥もないトヨタだからこその人事だ。 河合さんが副社長、おやじになることができたのはトヨタが多様性を重んじるからだ。意見が違うからといって排斥されることはない。国籍もジェンダーも何も関係ない。 ただし、仕事においては原則がある。それは現地現物を大切にすることだ。つねに現場で考え、現場では複雑な工作機械は使わない。 それはリーマンショックの後、赤字になった反省から来ている』、「河合さんの職場は鍛造工場だ。鉄を叩いて成型する、うるさくて、暑くて、危ない職場だ。そこで河合さんは職場のカイゼンに励んだ。 少しでも仕事がしやすいよう鍛造機械を改良した。暑さを防ぐために自らミスト扇風機を設計して配置した。カイゼンすれば職場環境が良くなるし、対番・・・が喜んでくれるからだ。 河合さんは対番のこと、職場全体を考える人だった。そうしているうちに上司が河合さんを管理職に引き上げ、工場の責任者にした。そして彼は現場出身者として初めての副社長になり、おやじになった」、素晴らしい。
・『トヨタが大切にする言葉はなぜ「幼稚」なのか  河合さんはこんな説明をする。 「リーマン(ショック)前には世界中で毎年50万台ずつ増産していき、ラインをどんどん作っていたが、それが設備余剰になってしまった。知恵や工夫、技術を入れない設備をどんどん並べてしまった。まさしく無駄なラインを作った結果だ」 「設備が複雑となり、コストが高くなった。故障しても現場で直せない。生産性は落ちていった」 「人がとことんこだわって手作業でラインを作り込み、改善の積み上げで作業を簡単にしていく。誰がやっても同じ作業となるようにしたうえで、自働化するのが基本だ。そうすることで、シンプル、スリム、フレキシブルなラインになる」(東洋経済オンライン「工場一筋トヨタ副社長が語る車づくりの真髄」2017.10.13) トヨタの現場は複雑な工作機械を使わない。そして、難解な経営用語もまた使わない。 豊田新会長が使ってきたのは「もっといいクルマ」「町いちばん」「自分以外の誰かのために」という3つの単純な言葉だ。 ただ……。評論家やマスコミからの評判はよくない。 「幼稚だ」「意味がわからない」 さんざんなことを言われてきた。 「選択と集中」とか「パーパス経営」とか言っておけば評論家やマスコミは「さすが」と感心する。それは重々、承知のうえで、豊田新会長や河合さんはユーザーや世間が理解しやすい言葉を使う』、「「リーマン(ショック)前には世界中で毎年50万台ずつ増産していき、ラインをどんどん作っていたが、それが設備余剰になってしまった。知恵や工夫、技術を入れない設備をどんどん並べてしまった。まさしく無駄なラインを作った結果だ」 「設備が複雑となり、コストが高くなった。故障しても現場で直せない。生産性は落ちていった」 「人がとことんこだわって手作業でラインを作り込み、改善の積み上げで作業を簡単にしていく。誰がやっても同じ作業となるようにしたうえで、自働化するのが基本だ。そうすることで、シンプル、スリム、フレキシブルなラインになる・・・豊田新会長や河合さんはユーザーや世間が理解しやすい言葉を使う」、なるほど。
・『本業と関係ないフェイスシールドを作った思い  河合さんはこんなことをしゃべっている。「『自分以外の誰かのために』が社会貢献だ」。対番のためにカイゼンを施した河合さんらしい話だ。 「社会貢献については、アメリカで3D(プリンター)を使って、フェイスシールドをつくり出し、欧州・日本の各所に横展(横展開)をして、昨日までで10万(個)以上を医療の方々に送り届けております。 工場ではマスクも自前で作り、近隣の方々にも提供しようとしています。 ちょうど(トヨタの)運動部が(活動を)自粛している最中なので、選手たちもマスク作りをしてくれています。 そこには当然、トヨタ生産方式があり徹底的にムダを排除して、“1枚でも多く”ということで(やっていますので)(TPSの)良い勉強の場となっております。 休校中の小学校・中学校・幼稚園・保育園に出向いて、草刈りや地域貢献をやったりもしてくれていました」(トヨタイムズ 2020.6.17) マスクを配ること、校庭の草刈りをすること。やらないよりもやったほうがいいに決まっている。小さな貢献かもしれないが、確実に喜ぶ人がいる。 トヨタは人事において多様性を大切にしてきた。そして、佐藤恒治新社長になってからはさらにその原則を推し進めている。以下は佐藤新社長の発言だ』、「『自分以外の誰かのために』が社会貢献だ」。対番のためにカイゼンを施した河合さんらしい話だ。 「社会貢献については、アメリカで3D(プリンター)を使って、フェイスシールドをつくり出し、欧州・日本の各所に横展(横展開)をして、昨日までで10万(個)以上を医療の方々に送り届けております。 工場ではマスクも自前で作り、近隣の方々にも提供しようとしています」、なるほど。
・『河合おやじがその身をもって示している  「『多様性』『成長』『貢献』の3つを柱に、人事制度や仕組みの見直しを進めたいと思います。トヨタで働く一人ひとりが、『多様』な個性を力に変えて、挑戦と失敗を繰り返す中で『成長』を実感できる。(中略) まず『多様性』です。 トヨタで働く皆さんが、自分らしい人生を歩むための多様な選択肢をつくってまいります。 そのひとつとして、年内に、製造現場も含めたあらゆる現場で、誰もが気兼ねなく、パートナー育休を取得できる環境を整えます。また、今年の10月からは、社内公募制を本格導入し、2024年4月からは、社内FA制度を新設いたします」(トヨタイムズ 2023.3.15) 河合さんは今も自分が育った鍛造セクションの仕事部屋にいる。そこから現場までは50メートルも離れていない。何があってもすぐに駆けつけることができる。 河合おやじがいるかぎり、トヨタは多様性と自由を重んじている。そして、偉そうな経営用語ではなく、わかりやすい言葉で経営を語る』、「河合さんは今も自分が育った鍛造セクションの仕事部屋にいる。そこから現場までは50メートルも離れていない。何があってもすぐに駆けつけることができる。 河合おやじがいるかぎり、トヨタは多様性と自由を重んじている。そして、偉そうな経営用語ではなく、わかりやすい言葉で経営を語る」、今後の活躍に期待したい。

第三に、本年7月12日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した佃モビリティ総研代表の佃 義夫氏による「「まさか売却とは…」ホンダが蜜月ケイレツ・八千代工業“放出”の衝撃」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/325910
・『関係の深い八千代工業をホンダが売却方針  ホンダが7月4日に連結子会社の八千代工業をインドの自動車部品大手のサンバルダナ・マザーソン・グループに売却すると発表した。ホンダが165億円を投じてTOB(株式公開買い付け)を実施し、八千代工業株を取得した後にマザーソンのオランダ子会社に190億円で一部株式を売却する。TOBの開始は10月を見込んでいる。 八千代工業(ヤチヨ)といえば、ホンダと最も長く、深い関係を持ってきたサプライヤーだ。現在の主力は燃料タンクとサンルーフだが、かつてはホンダの軽自動車の受託生産を一手に引き受けていた。いわば、トヨタ自動車におけるトヨタ車体、日産自動車における日産車体のような位置付けでもあったのだ。 1947年に「大竹塗装所」として創業し、53年に「八千代塗装」を設立。ホンダ創業者の本田宗一郎氏とヤチヨ創業の大竹家の親交もあり、本田技研工業の指定工場となって以来、ホンダとの関係が続いてきた。2006年にホンダの出資比率が34.5%から50.41%に引き上げられホンダの連結子会社となっていた』、興味深そうだ。
・『ヤチヨとホンダの蜜月は長く、ホンダのバギー車や軽トラック「アクティ」、軽乗用車「ビート」、軽商用車「トゥデイ」の受託生産を手掛け、96年にはホンダ軽自動車生産の全面受託をするなど、ホンダの国内軽自動車生産子会社として大きくクローズアップされた頃もある。当時、筆者もヤチヨ鈴鹿工場のトゥディ生産ラインを取材してホンダとヤチヨとの連携を目の当たりにした体験もある。 過去には、ホンダ鈴鹿製作所に近接するヤチヨの鈴鹿工場敷地に新工場を建設して、ホンダの軽乗用N-BOXを集中生産する計画が打ち出されたこともあったほどだ。しかし、この新工場はリーマンショックで建設中止となり、その代わりに軽自動車はホンダ鈴鹿製作所での生産に変更となった。ヤチヨは、苦杯をなめて社員の早期退職を迫られたほどであった。 ホンダ系サプライヤーの中でもホンダの生産計画の変更に翻弄されてきた経験が多いのがヤチヨといえるが、今回も同様に、ホンダのEV(電気自動車)化に向けたサプライチェーン(部品・資材供給網)の構造転換・再構築の一環として、一気に売却されることになったといえよう』、「ホンダ系サプライヤーの中でもホンダの生産計画の変更に翻弄されてきた経験が多いのがヤチヨといえるが、今回も同様に、ホンダのEV(電気自動車)化に向けたサプライチェーン・・・の構造転換・再構築の一環として、一気に売却されることになった」、同情したくなる。
・『ヤチヨ売却とは反対にサプライヤーを取り込む動きも  そもそもホンダの三部敏宏社長は、40年にグローバル新車販売をEVかFCEV(燃料電池車)とする目標を打ち出しており、これに伴い、サプライチェーンの構造転換、見直しを積極的に進めているところだ。 すでに車載電池では、韓国・LGエナジーソリューションと米国に新工場を建設する計画を打ち出した。また、車載電池の素材調達では韓国・ポスコや阪和興業と提携している。 加えて、ホンダのEV戦略へのキーポイントになるとみられるのが、「日立Astemo(アステモ)」だ。近頃、同社の主導権をホンダが握る動きが目立っている。) 日立アステモは、日立製作所の完全子会社だった旧日立オートモーティブシステムズと、ホンダ系部品メーカーのケーヒン・ショーワ・日信工業の3社が21年1月に統合して誕生した企業だ。今年9月までに日立が株式の一部をホンダとJICキャピタルに売却する予定で、ホンダの出資比率は33.4%から40%となり、日立と同等の出資比率となる。 これは、実質的にホンダがアステモの主導権を握ることになるものだ。 さらに、7月1日には、アステモの新社長に竹内弘平ホンダ前副社長が就任した。アステモは、EV駆動装置のイーアクスルなどを基幹製品として手掛けている。このEVにおける重要製品を軸に、サプライヤーとして大きな期待をかけているということだ。 アステモは、元をただせば日立の自動車部品事業部門であり、日産と日立は同じ芙蓉グループとして歴史的つながりが深い。かつてはトヨタのデンソーに対抗して、取引も多かった日産の系列メガサプライヤーになる方向性を目指す動きもあったほどだ。しかし、結果的には、ホンダがEV戦略上のサプライヤーとして取り込むことになった。 アステモは実質的にホンダが日立から取り込みを見せた動きの例ということになるが、一方で、ホンダはEVとの相乗効果が薄い事業おいて、部品企業のドライな売却も進めている。 それが、まさに今回のヤチヨのケースといえるだろう。 ホンダ関係者からも「まさか売却するとは」との驚きの声が上がっているが、実はヤチヨが初のケースというわけではなく、例えば22年には100%子会社でキーレスシステムドア部品などを手掛ける「ホンダロック」をミネベアミツミに売却している。) 三部ホンダとしては、EV・FCEV戦略においてサプライチェーンの構造改革や見直しを図るべく、退路を断つように「ドライ」な経営を進めているところだ。 これは、「四輪事業の収益力向上」というホンダ内部の課題の影響も大きい。ホンダは23年3月期の決算の訂正で、米国リコール費用計上により四輪事業が166億円の営業赤字に転落したことも発表している。四輪事業が年度ベースで赤字となるのは、実に11年ぶりだ。 一方で、ホンダだけでなく、トヨタや日産などOEM各社も国内サプライチェーンの構造転換を迫られている。 トヨタは、EVの生産改革(一体成型で大型鋳造部品を作る新技術「ギガキャスト」など)で素材・部品の転換促進を進めている。 また、日産はすでに系列部品企業の再編の動きが表面化している。かつての日産系主力サプライヤーだったカルソニックカンセイは現マレリとして事業再生途上にあるが、最近では同じく日産系主力部品企業の河西工業が深刻な経営不振にあり、その動向が注目されている。 つまり、世界的な電動化の大きなうねりだけでなく、コロナ禍や半導体不足などを背景としたOEM各社の生産・供給体制の見直しの動きが活発化しているということだ。 これは、従来のOEMを支えてきたサプライチェーンの構造転換を迫るものであり、部品企業にとっては生き残りに向けた戦国時代に突入しているということだろう』、「世界的な電動化の大きなうねりだけでなく、コロナ禍や半導体不足などを背景としたOEM各社の生産・供給体制の見直しの動きが活発化しているということだ。 これは、従来のOEMを支えてきたサプライチェーンの構造転換を迫るものであり、部品企業にとっては生き残りに向けた戦国時代に突入しているということだろう」、大変な時代に入ったものだ。
タグ:「日本の賃金が上がらないのも、貧困が広まっているのも、その多くはここに原因があります。より高付加価値な産業へ転換することもなく、製造業をどんどん国外流出させて、国内には利幅の薄い部品と素材産業だけが残っていくようでは、日本経済はさらに一層の衰退を覚悟しなくてはならなくなります」、残念ながらその通りだ。 「河合さんは今も自分が育った鍛造セクションの仕事部屋にいる。そこから現場までは50メートルも離れていない。何があってもすぐに駆けつけることができる。 河合おやじがいるかぎり、トヨタは多様性と自由を重んじている。そして、偉そうな経営用語ではなく、わかりやすい言葉で経営を語る」、今後の活躍に期待したい。 ダイヤモンド・オンライン 「世界的な電動化の大きなうねりだけでなく、コロナ禍や半導体不足などを背景としたOEM各社の生産・供給体制の見直しの動きが活発化しているということだ。 これは、従来のOEMを支えてきたサプライチェーンの構造転換を迫るものであり、部品企業にとっては生き残りに向けた戦国時代に突入しているということだろう」、大変な時代に入ったものだ。 「ホンダ系サプライヤーの中でもホンダの生産計画の変更に翻弄されてきた経験が多いのがヤチヨといえるが、今回も同様に、ホンダのEV(電気自動車)化に向けたサプライチェーン・・・の構造転換・再構築の一環として、一気に売却されることになった」、同情したくなる。 「『自分以外の誰かのために』が社会貢献だ」。対番のためにカイゼンを施した河合さんらしい話だ。 「社会貢献については、アメリカで3D(プリンター)を使って、フェイスシールドをつくり出し、欧州・日本の各所に横展(横展開)をして、昨日までで10万(個)以上を医療の方々に送り届けております。 工場ではマスクも自前で作り、近隣の方々にも提供しようとしています」、なるほど。 「人件費の低い国に生産拠点を移したり、市場に近いところで生産するといったクラシックな空洞化、つまり設計や研究開発など知的で高付加価値な部分を「本国に残す」スタイルではないのです。自動車産業をはじめとした日本の多くの製造業の場合は、利幅の薄い部品と素材の一部だけと、生産性の低い事務部門だけが国内に残って、その他の高度な部分はどんどん海外に出す「日本形の空洞化」が進んでいる」、恐ろしいことだ。 「汎用半導体が極端な供給不足」の影響は想像以上に幅広いようだ。 冷泉彰彦氏による「半導体不足、電力不足......日本の自動車産業は崖っぷち?」 Newsweek日本版 佃 義夫氏による「「まさか売却とは…」ホンダが蜜月ケイレツ・八千代工業“放出”の衝撃」 「人がとことんこだわって手作業でラインを作り込み、改善の積み上げで作業を簡単にしていく。誰がやっても同じ作業となるようにしたうえで、自働化するのが基本だ。そうすることで、シンプル、スリム、フレキシブルなラインになる・・・豊田新会長や河合さんはユーザーや世間が理解しやすい言葉を使う」、なるほど。 「「リーマン(ショック)前には世界中で毎年50万台ずつ増産していき、ラインをどんどん作っていたが、それが設備余剰になってしまった。知恵や工夫、技術を入れない設備をどんどん並べてしまった。まさしく無駄なラインを作った結果だ」 「設備が複雑となり、コストが高くなった。故障しても現場で直せない。生産性は落ちていった」 「河合さんの職場は鍛造工場だ。鉄を叩いて成型する、うるさくて、暑くて、危ない職場だ。そこで河合さんは職場のカイゼンに励んだ。 少しでも仕事がしやすいよう鍛造機械を改良した。暑さを防ぐために自らミスト扇風機を設計して配置した。カイゼンすれば職場環境が良くなるし、対番・・・が喜んでくれるからだ。 河合さんは対番のこと、職場全体を考える人だった。そうしているうちに上司が河合さんを管理職に引き上げ、工場の責任者にした。そして彼は現場出身者として初めての副社長になり、おやじになった」、素晴らしい。 「中学を出た1963年、トヨタ技能者養成所・・・に入所。トヨタに入って60年になる。肩書は「おやじ」。「おやじ」とは・・・同社の正式な肩書である。 おやじの仕事は生産現場に目を光らせること。わたしは河合さんが豊田新会長とふたりで本社に隣接している工場にやってきて、若い作業者と話をしていた姿を見たことがある」、なるほど。 「トヨタは学歴や門閥を重んじない。社内には一流大学を出た人もいればMBAを持っている人もいる。企業トップや有名人の子息もいる。だが、高学歴だからといって得をすることはない。有名人の子どもだからといって特別な配慮があるわけではない・・・大学や普通高校を出ていなくとも役員になり、会社を引っ張る役職に就くことができるのがトヨタだ」、なるほど。 野地 秩嘉氏による「高校に行かなくても副社長になれる…トヨタ自動車が学歴や門閥を重んじない会社になったワケ むかしから多様性と自由を重んじているからこそ」 PRESIDENT ONLINE (その6)(半導体不足 電力不足......日本の自動車産業は崖っぷち?、高校に行かなくても副社長になれる…トヨタ自動車が学歴や門閥を重んじない会社になったワケ むかしから多様性と自由を重んじているからこそ、「まさか売却とは…」ホンダが蜜月ケイレツ・八千代工業“放出”の衝撃) 自動車(一般)
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JR一般(その2)(「とんでもない変節漢で人間のクズ」…JR東海・葛西敬之が ここまで「誹謗中傷」された理由【牧久×森功対談】、「JR東日本・松田昌士の孫が誘拐されて高速道路の中央分離帯に置かれた」…読売新聞社会部の記者が流したウワサの真実【牧久×森功対談】、東海道新幹線があるのに、本当にリニアが必要なのか? JR東海の天皇・葛西敬之なき今だからこそすべき議論【牧久×森功対談】、JR東日本 “列車内へ持ち込み禁止の危険物 改めて周知”) [産業動向]

JR一般については、昨年4月24日に取上げた。今日は、(その2)(「とんでもない変節漢で人間のクズ」…JR東海・葛西敬之が ここまで「誹謗中傷」された理由【牧久×森功対談】、「JR東日本・松田昌士の孫が誘拐されて高速道路の中央分離帯に置かれた」…読売新聞社会部の記者が流したウワサの真実【牧久×森功対談】、東海道新幹線があるのに、本当にリニアが必要なのか? JR東海の天皇・葛西敬之なき今だからこそすべき議論【牧久×森功対談】、JR東日本 “列車内へ持ち込み禁止の危険物 改めて周知”)である。

先ずは、本年2月6日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの森 功氏と牧久氏の対談「「とんでもない変節漢で人間のクズ」…JR東海・葛西敬之が、ここまで「誹謗中傷」された理由」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/105635?imp=0
・『「国商」という耳慣れない言葉がいま話題になっている。ジャーナリスト森功氏の最新刊『国商 最後のフィクサー葛西敬之』に由来する言葉だ。 日本有数とはいえ、一企業のトップにすぎない葛西氏がなぜ、フィクサーとして長きにわたり安倍政権を裏で操ることができたのか。『国商』はその理由を膨大な取材とともに精緻に描き出している。同書にも出てくるが、葛西氏がJR内で大きな力を持てた源泉は、「国鉄分割民営化」を先頭に立って進めたことにある。「国鉄改革三人組」と呼ばれた男たちがいる。葛西氏、JR東日本元会長・社長の松田昌士氏、JR西日本元会長・社長の井手正敬氏の三人だ。 「国鉄改革」は、当時組合の第二勢力だった「動労」の協力なくしては果たせなかった。動労とはすなわち革マル勢力であり、そのトップが松崎明だった。 松崎と改革三人組の関係は、これまでも様々に論じられてきた。だが、本当のところはいまひとつよくわからない。 今回、森氏と、『暴君 新左翼・松崎明に支配されたJR秘史』著者の牧久氏が、松崎と三人組の「本当の関係」についてとことん語り合う。 前回記事【ばら撒かれた不倫写真…「革マル」松崎明が、自分を裏切ったJR東海・葛西敬之への復讐と、「国鉄改革三人組」との本当の関係 牧久×森功対談】』、興味深そうだ。
・『松崎は葛西をどうしても許せなかった  牧 葛西氏はね、国鉄改革の際に、あまりにもいいように松崎を使ってしまったんです。それがあったから、裏切ったあとの反動も大きかった。 森 労使共同宣言ですね。国鉄改革のときに葛西たちが松崎に協力を仰ぎ、動労が分割民営化賛成に回った。それは労働界を牛耳りたい松崎にとって最大勢力の労働組合だった国労が邪魔だったという裏返しなのでしょうね。 牧 はい。とにかく最大労組の国労を潰すためには、それ以外の労組と手を組まなければならない。そこで、国労に対する意地悪な動きを全部やるわけです。国労が分裂するように持っていくんだね。その総仕上げとも言えるのが、労使共同宣言です。 森 松崎は「膨大な余剰人員の雇用をどう確保するのか。まず労使の決意を示し、世間にお願いするほかない。雇用確保のためなら、蛇といわれ仏といわれようが、この姿勢は貫く」と声明を出し、労使共同宣言に調印します』、「国鉄改革のときに葛西たちが松崎に協力を仰ぎ、動労が分割民営化賛成に回った。それは労働界を牛耳りたい松崎にとって最大勢力の労働組合だった国労が邪魔だったという裏返しなのでしょうね。 牧 はい。とにかく最大労組の国労を潰すためには、それ以外の労組と手を組まなければならない。そこで、国労に対する意地悪な動きを全部やるわけです。国労が分裂するように持っていくんだね。その総仕上げとも言えるのが、労使共同宣言です」、「動労」がライバル「国労」を潰すため、「分割民営化賛成に回った」というのは労働者への裏切りもいいところだ。
・『JR東の初代社長はこうして革マルに絡めとられた  牧 葛西氏は当時、職員局次長という立場でしたが、あれは見事でした。国労を含め動労、鉄労、全施労など主要組合の委員長を国鉄総裁室まで呼び入れて、「労使共同宣言にお前、ハンコつけ」って迫ったわけです。 森 労使共同宣言は、「これからはもうストやりません」という内容だったわけで、国労には呑めないですよね。 牧 葛西氏がうまかったのは、国労にも分裂する要素があったんです。いくつかの派閥に分かれていて、労使共同宣言に調印すべき、という穏健派もあった。しかし、共産党系や、社会党系のなかでも向坂派と呼ばれる強硬派は反対だった。 森 そういう背景をわかっていたからこそ、「ハンコをつけ」と無理やり迫ったら、国労が分裂することも読めていたんですね。当時、葛西氏は40そこそこだったことを考えると、相当の策謀家だと認めざるをえない。 牧 策謀は過激派の専売特許ですから、葛西にいいように利用され操られた挙げ句、裏切られたとなっては、松崎としても革マル内での立場を失う。そこで、「葛西はとんでもない変節漢で人間のクズのような男である」と言いふらし、嫌がらせを始めたというわけです。 森 井手さんは松崎を最初から最後まで信用していなくて、葛西はおそらく、一度は本気で手を組んだけど、手に負えなくて裏切った。これまでの話を総合するとそういうことになりますが、では、JR東日本(元会長・社長)の松田昌士さんはどうだったのでしょう。 牧 かつて週刊文春が「JR東日本に巣食う革マル」というキャンペーンをやってキオスクから排除されたり、その後もジャーナリストの西岡研介氏が『マングローブ テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実』という本を出版し、革マルにいちばんやられたのはJR東日本、というイメージが一般的にはあります。しかし私は、改革三人組の中で松田氏こそが、松崎と本当に人間として付き合い、最後まで一定の信頼関係を築いていた人だったと思うのです。 森 ほう、それは非常に興味深い。松田さんと松崎の関係については、巷間伝えられるほど単純ではない気がしてなりません。古手のJR東日本元役員たちに取材すると、「松崎に抱き込まれたというのは東海の葛西が意図的に流しているだけだ」と口をそろえて言いました。そこは不明な点が今も多い。 牧 松田さんの話に入る前に、まずはJR東日本初代社長の住田正二氏の話をしなければなりません。) 森 国鉄改革を進めた中曽根康弘に非常に近く、旧運輸省の元事務次官として、JR東日本の初代社長に収まった住田氏ですね。 牧 そもそも住田氏が運輸次官として国鉄分割民営化にあそこまで協力したのは、国鉄官僚たちが嫌いだったからです。運輸省から国鉄が公共事業体として分かれた時に、優秀な官僚はみんな国鉄に行ったと言われた。そこで運輸省に残された住田氏には、国鉄官僚に対する強烈なコンプレックスがあったんです。 森 なるほど、それもあって、中曽根は住田氏を分割民営化に利用したわけですね。そしてJR東の初代社長となった住田氏は、まんまと松崎に籠絡されてしまう。最初に松崎と関係を築いたのは松田ではなく住田だったわけですね。 牧 そうです。松崎は組合大会に住田氏を呼ぶんです。そうして、これからの労使関係はどうあるべきかということを、松崎がぶつわけです。労使はある意味対等だ、「ニアリーイコールだ」とね。 森 対決ではなくニアリーイコールだ、というのは、労使関係を曖昧にする松崎のうまい戦略です。 牧 組合員の前で、「それでよろしいですね、住田さん」とまず先にやられて、住田氏は「その通りだ」と言っちゃって、後戻りができなくなるわけです。 「JR東日本・松田昌士の孫が誘拐されて高速道路の中央分離帯に置かれた」…読売新聞社会部の記者が流したウワサの真実【牧久×森功対談】に続きます』、「労使共同宣言は、「これからはもうストやりません」という内容だったわけで、国労には呑めないですよね。 牧 葛西氏がうまかったのは、国労にも分裂する要素があったんです。いくつかの派閥に分かれていて、労使共同宣言に調印すべき、という穏健派もあった。しかし、共産党系や、社会党系のなかでも向坂派と呼ばれる強硬派は反対だった。 森 そういう背景をわかっていたからこそ、「ハンコをつけ」と無理やり迫ったら、国労が分裂することも読めていたんですね。当時、葛西氏は40そこそこだったことを考えると、相当の策謀家だと認めざるをえない」、なるほど。「運輸省から国鉄が公共事業体として分かれた時に、優秀な官僚はみんな国鉄に行ったと言われた。そこで運輸省に残された住田氏には、国鉄官僚に対する強烈なコンプレックスがあったんです。 森 なるほど、それもあって、中曽根は住田氏を分割民営化に利用したわけですね。そしてJR東の初代社長となった住田氏は、まんまと松崎に籠絡されてしまう」、「運輸省に残された住田氏には、国鉄官僚に対する強烈なコンプレックスがあった」、初めて知った。

次に、この続きを、2月6日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの森 功氏と牧久氏の対談「JR東日本・松田昌士の孫が誘拐されて高速道路の中央分離帯に置かれた」…読売新聞社会部の記者が流したウワサの真実【牧久×森功対談】」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/105636?imp=0
・『・・・前回記事【「とんでもない変節漢で人間のクズ」…JR東海・葛西敬之が、ここまで「誹謗中傷」された理由 牧久×森功対談】 森 松田さんに近い元JR東日本の役員たちを取材すると、北海道出身で北海道大卒でもある松田さんは分割民営化されたあとはJR北海道の赴任を希望していたそうです。あまり野心のない人だったといいます。その後、松田さんがJR東日本の社長になって否応なく松崎と対峙しなければならなくなったわけですが、住田前社長時代にズブズブだった松崎との関係を、松田さんは清算しようとしなかったんですか? 牧 そもそも、松田さんは最初、鉄労と手を組もうとしていました。しかし、途中から松崎率いる総連とベッタリになる。その時に何があったんだ、というのは、当時からいろんな憶測が流れました。その中でやはり世間の耳目を引いたのは、「松田が革マルに脅された」という説です。 森 松田さんが日経新聞に書いた「私の履歴書」も話題になりましたね。孫が水を怖がるようになって、理由を聞いたら、プールの監視員に頭を押さえつけれた、と……。 牧 でもあれは、よく読むと、明らかに「犯人は国労の組合員じゃないか」ということを松田さんは匂わせていました。) 森 そうですね。私が松田さんの元秘書に聞いた時も、「あれは国労の話ですよ」とハッキリ言っていました。ただし、嫌がらせの時期が不明なので、犯人が国労なのか、動労なのか、よくわからない書き方をしています。なのでJR東海の幹部は「あれはあからさまに動労に脅されたとか書けないから、松田さんが曖昧にしたのではないか」とも話していました。 牧 たしかに国労の仕業と断定はしていない。そしてもう一つ、強烈な情報が流れます。松田さんの孫が誘拐されて、高速道路の中央分離帯に置かれていた、というのです。 森 私も、話としては小耳に挟んだことはあります。そういうことが、本当にあったんですか。 牧 そういう情報が流れたのは事実です。一生懸命流していたのは、読売新聞社会部の某記者でした。当時、我々社会部(註・牧氏は当時、日経新聞社会部の国鉄担当)は当然、裏取りに奔走しました。 森 さすがに、孫が誘拐されて高速道路の真ん中に置かれたりしたら、警察に言わないわけはない。裏取りは警察筋ということになりますね。 牧 そうです。警察にさんざん裏取りをした結果、その情報はガセだと、私たち担当記者は判断しました。でもこの話は情報としてかなり広まったから、井手さんなんかも最初は事実だと信じちゃっていました。その意味では、情報を流した人間が「松田は革マルの脅しに屈した」と広めるのが目的だったとしたら、その目的はある程度果たされたことになります。 森 「松田が松崎の脅しに屈して、JR東日本は革マルに支配された」という情報が流れて得をする人間は誰か。もちろん、葛西氏の性格からしてデタラメな情報を自ら流すということはあり得ないですが、得をするという意味では、葛西氏も当てはまりますね。 牧 そうですね、自分もさんざん脅されて恥をかいたから、そのことを払拭したいという思いを葛西氏は当時、抱いていたのは間違いない。 森 JR東海関係者の中には、JR東日本が革マルにめちゃめちゃにされている、という話を嬉々として語る人が結構います。天皇・葛西氏好みの話だからかもしれませんね。 東海道新幹線があるのに、本当にリニアが必要なのか? R東海の天皇・葛西敬之なき今だからこそすべき議論【牧久×森功対談】に続きます』、「松田さんの孫が誘拐されて、高速道路の中央分離帯に置かれていた、というのです・・・警察にさんざん裏取りをした結果、その情報はガセだと、私たち担当記者は判断しました・・・自分もさんざん脅されて恥をかいたから、そのことを払拭したいという思いを葛西氏は当時、抱いていたのは間違いない」、「ガセ」までが流れるとは泥沼の争いだったようだ。

第三に、この続きを、2月6日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの森 功氏と牧久氏の対談「東海道新幹線があるのに、本当にリニアが必要なのか? JR東海の天皇・葛西敬之なき今だからこそすべき議論」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/105637?imp=0
・『・・・松田昌士が死の間際に残した証言  牧 話が少し逸れましたが、それで肝心の、松田さんの話です。僕が『暴君 新左翼・松崎明に支配されたJR秘史』を書いていたとき、松田さんはもうかなり身体を悪くしていました。だから、これが最後の取材になるかも、という思いでハッキリと聞いたんです。 「結局、松崎とあなたの関係は、いつからどうだったんですか。みんな、あなたが脅されていたと言うけれど、本当のところはどうだったんですか」と。 森 ほう、それに松田さんは答えたのでしょうか。 牧 彼は、鉄労の志摩委員長を裏切ったあとに、松崎明と二人きりで酒を酌み交わした、と明かしてから、こんな話をしました。 「松崎に革マル疑惑を単刀直入に問い質したら、『自分は今でも革マル派である』と率直に告白をした。そのうえで、『あなたは住田のあと社長になるんだ。社長になった時に、我々(革マル)はあなたに迷惑は一切かけない。ストもやらない。あなたに協力する。だからあなたも我々の言うことを聞いてくれ』と言うから、お互いに協力し合おうということで手を結んだんだ。 だから、俺が社長のときに、彼らが俺に大きな迷惑をかけるような大闘争をやったこともないし、俺が聞いてくれって言ったら聞いてくれるところもたくさんあった。だから、俺はそれから松崎を信用して、手を結んだんだ。松崎が死んだときには、俺は花束を持ってたった一人で松崎の墓参りに行ってきたんだ」) 森 それはすごい証言です。牧さんの本にも、そこまでは書いてませんでしたね。 牧 あのときは松田さんは存命だったからここまで詳しくは書けなかったけれども、松崎を人間として信頼していたという肝になる部分を文章にして、松田さんに持って行って、確認までしているんです。「松田さん、こう書きますけどよろしいですか」って。そうすると松田さんは「この通りだ。これはこの通りだから。俺はあそこでお互いに信用して、手を結んだんだ」と。 森 死の間際にそこまで言うのなら、真実味があります。 牧 改革三人組の、松崎に対するスタンスの違いを見てもわかるように、葛西氏は「謀略家」の側面があり、権力欲が非常に強く、森さんの「国商」という表現はとても的を射ていると思う。彼がこれまでやってきたことは礼讃されるばかりではなく、きちんと検証されなければなりません。 森 そうですね、本人も『未完の国鉄改革』という本を書いていますが、国鉄分割民営化はあくまで「組合潰し」を目的にやったことで、経営を突き詰めて考えてやったわけじゃない。その歪が、JR本州3社以外の経営の逼迫に如実に表れています。 牧 もう一つの問題が、リニア(中央新幹線)です。葛西氏がいなくなった今、リニア本当にやるんですかって話にまでいくんじゃないかと思ってますけどね。 森 そうですね、これから人口も減って、リモートワークも当たり前になる中で、東海道新幹線のほかにリニアが必要ですか、という声が上がるのは当然です。葛西さんはリニアのような国家プロジェクトは俺がやらなければ他にできない、とまで言ってきた自信家でした。 その葛西氏が「国商」として最後に見ていた夢が、リニアでした。彼が天皇として君臨していた間にはできなかった本質的な議論を、いまこそすべきでしょうし、今年はリニアの検証元年になる気がします。 連載第1回【安倍晋三を裏で操った「最後のフィクサー」JR東海・葛西敬之の知られざる正体…安倍が「国士」と称えた男が最期に抱えていた“爆弾”】から読む)』、「「松崎に革マル疑惑を単刀直入に問い質したら、『自分は今でも革マル派である』と率直に告白をした。そのうえで、『あなたは住田のあと社長になるんだ。社長になった時に、我々(革マル)はあなたに迷惑は一切かけない。ストもやらない。あなたに協力する。だからあなたも我々の言うことを聞いてくれ』と言うから、お互いに協力し合おうということで手を結んだんだ。 だから、俺が社長のときに、彼らが俺に大きな迷惑をかけるような大闘争をやったこともないし、俺が聞いてくれって言ったら聞いてくれるところもたくさんあった。だから、俺はそれから松崎を信用して、手を結んだんだ」、なるほど。「これから人口も減って、リモートワークも当たり前になる中で、東海道新幹線のほかにリニアが必要ですか、という声が上がるのは当然です。葛西さんはリニアのような国家プロジェクトは俺がやらなければ他にできない、とまで言ってきた自信家でした。 その葛西氏が「国商」として最後に見ていた夢が、リニアでした。彼が天皇として君臨していた間にはできなかった本質的な議論を、いまこそすべきでしょうし、今年はリニアの検証元年になる気がします」、私も「リニア」不要論である。

第四に、10月10日付けNHK「JR東日本 “列車内へ持ち込み禁止の危険物 改めて周知”」を紹介しよう。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231010/k10014220901000.html
・『9日に、東北新幹線の車内で乗客のかばんから薬品が漏れて6人が病院に搬送されたトラブルを受け、JR東日本の深澤社長は、列車内への持ち込みが禁止されている危険物について、改めてポスターや構内放送を通じて周知していく考えを示しました。 9日に仙台駅付近を走行していた東北新幹線の車内で、乗客のかばんから薬品が漏れ、5歳の子どもら4人がやけどをしたほか、2人が体調不良を訴えて病院に搬送されました。 薬品は、乗客の会社員が仕事に使うため、ペットボトルのような容器に入れて持ち込んだもので、現場で調べたところ、硫酸の可能性がある成分が検出されたことが消防への取材でわかっています。 当時の対応について、JR東日本の深澤祐二社長は10日の定例会見で「今後、検証したいが、まず現場に駆けつけた車掌からの情報が、運転士や指令に共有され、駅に停車したあと速やかに対応できたと思う」と述べました。 JR東日本は、列車内への危険物の持ち込みについて規則を設けていて、硫酸などは密閉した容器に入れ、破損するおそれのないようにした500ミリリットル以内のもの以外は禁止しています。 これについて深澤社長は「飛行機のような全員への手荷物検査は難しい」としたうえで、ポスターや構内放送を通じて改めて周知していくほか、今後、警備犬の配置なども検討する考えを示しました』、「硫酸などは密閉した容器に入れ、破損するおそれのないようにした500ミリリットル以内のもの以外は禁止」、今回のは「ペットボトルのような容器に入れて持ち込んだ」、というのでは、ルール違反になるのではなかろうか。
・『専門家「持ち込み禁止の危険物 改めて発信を」  鉄道の安全対策に詳しい関西大学の安部誠治 名誉教授は「走行中の新幹線の中で持ち込んでいた薬品が漏れて複数の乗客が負傷したケースは非常に珍しい。仕事として薬品を運ぶ場合は多くの人が利用する新幹線ではなく、自社の車や専用車などで運ぶことが適当だ。今回、漏れた原因を調べ、新幹線に持ち込むべきでない危険なものであれば、同じような会社などに対しても持ち込まないことなどルールを守るよう改めて呼びかける必要がある」と指摘しています。 また、同様のトラブルを防ぐための安全対策について、新幹線で手荷物検査を行うことはコストや運行への影響の面で現実的ではないとしたうえで「鉄道事業者も持ち込みを禁止している危険物について駅構内にわかりやすく掲示するなど広報を強化するほか、利用する側も安全に利用するため自分の手荷物が持ち込んでいいものかどうかしっかり確認する必要がある」と話しています』、今回は地質調査会社の社員が職務上の必要性で持ち込んだようだ。いずれにしても、ルールを明確化し、周知させる必要がありそうだ。
タグ:だから、俺が社長のときに、彼らが俺に大きな迷惑をかけるような大闘争をやったこともないし、俺が聞いてくれって言ったら聞いてくれるところもたくさんあった。だから、俺はそれから松崎を信用して、手を結んだんだ」、なるほど。「これから人口も減って、リモートワークも当たり前になる中で、東海道新幹線のほかにリニアが必要ですか、という声が上がるのは当然です。葛西さんはリニアのような国家プロジェクトは俺がやらなければ他にできない、とまで言ってきた自信家でした。 その葛西氏が「国商」として最後に見ていた夢が、リニアでした。彼が天皇として君臨していた間にはできなかった本質的な議論を、いまこそすべきでしょうし、今年はリニアの検証元年になる気がします」、私も「リニア」不要論である。 JR一般 「労使共同宣言は、「これからはもうストやりません」という内容だったわけで、国労には呑めないですよね。 牧 葛西氏がうまかったのは、国労にも分裂する要素があったんです。いくつかの派閥に分かれていて、労使共同宣言に調印すべき、という穏健派もあった。しかし、共産党系や、社会党系のなかでも向坂派と呼ばれる強硬派は反対だった。 「動労」がライバル「国労」を潰すため、「分割民営化賛成に回った」というのは労働者への裏切りもいいところだ。 森 功氏と牧久氏の対談「東海道新幹線があるのに、本当にリニアが必要なのか? JR東海の天皇・葛西敬之なき今だからこそすべき議論」 (その2)(「とんでもない変節漢で人間のクズ」…JR東海・葛西敬之が ここまで「誹謗中傷」された理由【牧久×森功対談】、「JR東日本・松田昌士の孫が誘拐されて高速道路の中央分離帯に置かれた」…読売新聞社会部の記者が流したウワサの真実【牧久×森功対談】、東海道新幹線があるのに、本当にリニアが必要なのか? JR東海の天皇・葛西敬之なき今だからこそすべき議論【牧久×森功対談】、JR東日本 “列車内へ持ち込み禁止の危険物 改めて周知”) 「国鉄改革のときに葛西たちが松崎に協力を仰ぎ、動労が分割民営化賛成に回った。それは労働界を牛耳りたい松崎にとって最大勢力の労働組合だった国労が邪魔だったという裏返しなのでしょうね。 牧 はい。とにかく最大労組の国労を潰すためには、それ以外の労組と手を組まなければならない。そこで、国労に対する意地悪な動きを全部やるわけです。国労が分裂するように持っていくんだね。その総仕上げとも言えるのが、労使共同宣言です」、 「松田さんの孫が誘拐されて、高速道路の中央分離帯に置かれていた、というのです・・・警察にさんざん裏取りをした結果、その情報はガセだと、私たち担当記者は判断しました・・・自分もさんざん脅されて恥をかいたから、そのことを払拭したいという思いを葛西氏は当時、抱いていたのは間違いない」、「ガセ」までが流れるとは泥沼の争いだったようだ。 森 功氏と牧久氏の対談「JR東日本・松田昌士の孫が誘拐されて高速道路の中央分離帯に置かれた」…読売新聞社会部の記者が流したウワサの真実【牧久×森功対談】」 森 なるほど、それもあって、中曽根は住田氏を分割民営化に利用したわけですね。そしてJR東の初代社長となった住田氏は、まんまと松崎に籠絡されてしまう」、「運輸省に残された住田氏には、国鉄官僚に対する強烈なコンプレックスがあった」、初めて知った。 「「とんでもない変節漢で人間のクズ」…JR東海・葛西敬之が、ここまで「誹謗中傷」された理由」 森 そういう背景をわかっていたからこそ、「ハンコをつけ」と無理やり迫ったら、国労が分裂することも読めていたんですね。当時、葛西氏は40そこそこだったことを考えると、相当の策謀家だと認めざるをえない」、なるほど。「運輸省から国鉄が公共事業体として分かれた時に、優秀な官僚はみんな国鉄に行ったと言われた。そこで運輸省に残された住田氏には、国鉄官僚に対する強烈なコンプレックスがあったんです。 「硫酸などは密閉した容器に入れ、破損するおそれのないようにした500ミリリットル以内のもの以外は禁止」、今回のは「ペットボトルのような容器に入れて持ち込んだ」、というのでは、ルール違反になるのではなかろうか。 今回は地質調査会社の社員が職務上の必要性で持ち込んだようだ。いずれにしても、ルールを明確化し、周知させる必要がありそうだ。 NHK「JR東日本 “列車内へ持ち込み禁止の危険物 改めて周知”」 「「松崎に革マル疑惑を単刀直入に問い質したら、『自分は今でも革マル派である』と率直に告白をした。そのうえで、『あなたは住田のあと社長になるんだ。社長になった時に、我々(革マル)はあなたに迷惑は一切かけない。ストもやらない。あなたに協力する。だからあなたも我々の言うことを聞いてくれ』と言うから、お互いに協力し合おうということで手を結んだんだ。 現代ビジネス
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外食産業(その5)(「黒い吉野家」増殖中 上品な“お牛丼”を開発した吉野家の戦略の秀逸設計、スシローは監視のない「ちゃらい場所」になっていた 若者の「客テロ」 背景にある省人化の徹底) [産業動向]

外食産業については、本年2月1日に取上げた。今日は、(その5)(「黒い吉野家」増殖中 上品な“お牛丼”を開発した吉野家の戦略の秀逸設計、スシローは監視のない「ちゃらい場所」になっていた 若者の「客テロ」 背景にある省人化の徹底)である。

先ずは、2月24日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「「黒い吉野家」増殖中、上品な“お牛丼”を開発した吉野家の戦略の秀逸設計」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/318238
・『牛丼でおなじみの吉野家が2種類あることをご存じですか。オレンジの看板の吉野家と、黒い看板の吉野家です。「街の景観に合わせて看板の色を変えただけじゃないの」と思った方、ここには吉野家の絶妙な戦略が隠れています。顧客想定からメニュー設計、出店戦略まで秀逸です。さらに、「隠れた3種類目の吉野家」があることもわかりました』、興味深そうだ。
・『牛丼の吉野家には「オレンジの看板」と「黒い看板」の2種類ある  人生の大半、約50年間にわたり、“牛丼は吉野家一筋”な経済評論家・鈴木貴博です。若い担当編集者からこのような疑問を投げかけられました。 「ついひと昔前まではおじさん達が集う店というイメージもあった吉野家が、最近ではカフェのようなおしゃれ空間になっている理由は何でしょうか?」と言うのです。 「おじハラ」じゃないかと思ったりもするのですが、実はこの疑問は企業戦略的に結構鋭いものでもあります。そこで、今回の記事ではその意図するものについて戦略コンサルタントの視点でまとめてみたいと思います。 さて、そもそものところからお話ししましょう。吉野家がおしゃれ空間になっているというと「わかるわかる」という人と「何?なんでそう思うの?」と思う人に分かれると思います。それには理由があるのです。 今、吉野家の店舗には2種類あるのです。オレンジの看板の吉野家と黒い看板の吉野家です』、「吉野家」には「オレンジの看板」のほか、「黒い看板」があるというのは初めて知った。
・『コンセプトが異なる2つの店舗 黒い看板の吉野家では「お牛丼」が食べられる  オレンジの看板の吉野家がいわゆる昔からずっと存在する吉野家で、黒い看板の吉野家が私の担当者が気になったというおしゃれな吉野家。この2つは店舗コンセプトが異なります。 例えば首都圏の不動産人気ナンバーワンの恵比寿駅には「吉野家恵比寿駅前店」と、「吉野家恵比寿駅東口店」があります。東口店はオレンジの看板の吉野家で、食べログの点数は3.01です。しかし、駅の反対側の代官山方面にある恵比寿駅前店は黒い看板の吉野家で、食べログの点数は3.19と同じ吉野家なのに評価が異なります。 ちょっとだけ誇張して説明すると、前者が私のような忙しい男性ビジネスパーソンが来店して牛丼を注文し、5分で食べ終わって退店するタイプの吉野家。そして後者が代官山近辺にお住まいのお嬢様が友人と来店して、パプリカやれんこん、ブロッコリーなどがのった「お牛丼」をご注文されて、1時間ぐらい昼下がりのトークを楽しんでから退店するお店。 このように、そもそもの設計思想が異なる2種類の吉野家が全国に存在しているのです。 カフェスタイルで小ぎれいで、女性や家族連れも気軽に来店できて、カウンター席にはスマホが充電できるコンセントがあって、ドリンクバーもあって長居ができる。これが新しいタイプの黒い吉野家です。 吉野家ではこの黒い看板の吉野家を「クッキング&コンフォート」という店舗業態名で呼んでいます。ネーミングから類推できるように限定調理メニューが存在し、かつドリンクバーやデザートのアイスが売っていて居心地がいい。 吉野家は全国に1649店舗あるのですが、そのうちの約15%に相当する239店舗がクッキング&コンフォートの業態になります。 ではこの黒い看板の吉野家業態は、戦略的にはどのような意味があるのでしょうか』、「代官山方面にある恵比寿駅前店は黒い看板の吉野家」は、「代官山近辺にお住まいのお嬢様が友人と来店して、パプリカやれんこん、ブロッコリーなどがのった「お牛丼」をご注文されて、1時間ぐらい昼下がりのトークを楽しんでから退店するお店」、「カフェスタイルで小ぎれいで、女性や家族連れも気軽に来店できて、カウンター席にはスマホが充電できるコンセントがあって、ドリンクバーもあって長居ができる。これが新しいタイプの黒い吉野家です。 吉野家ではこの黒い看板の吉野家を「クッキング&コンフォート」という店舗業態名で呼んでいます。ネーミングから類推できるように限定調理メニューが存在し、かつドリンクバーやデザートのアイスが売っていて居心地がいい」、なるほど。
・『「黒い看板の吉野家」には3つのポイントがある  吉野家のように100年の歴史がある老舗の飲食チェーンが売り上げを伸ばすには、新しい顧客の開拓が必要になります。 例えば、吉野家のライバルのすき家を運営するゼンショーは最近、ロッテリアを買収すると発表しました。ゼンショーは他にも回転寿司のはま寿司やファミレスのココスなどさまざまな異業種の飲食チェーンを展開しています。 このように、異業種展開は飲食チェーンにとってのひとつの成長戦略です。 ただ「まったく異なる味、まったく異なる顧客層」を狙った異業種展開は当たり外れのリスクも大きく、ゼンショーのように「牛丼でも回転寿司でも業界トップクラス」という状況に到達するのは簡単ではありません。 そこでもうひとつリスクが小さい成長戦略として、「既存のチェーンに新しい顧客を取り込む」という手段があり得ます。牛丼の例で言えばこれまでは男性が固定客の中心でしたから、女性客が増えれば企業として売り上げの成長につながります。 吉野家から見れば論理的には新しい顧客層としての女性客の取り込みと、将来の固定客への育成を期待した子どもを連れた家族客の取り込みは長期戦略的には重要な目標なのです。それで5年ほど前に試験的に導入されたのが黒い看板の吉野家で、冒頭にお話しした恵比寿駅前店がその1号店なのです。 さて、この黒い吉野家戦略ですが、私のような経営戦略の専門家から見ると、細部の設計で非常に面白く感じるポイントが3つあります。 (1)独自メニューがそれほど多くないこと (2)店舗数が全体の15%と少数派であること (3)なんちゃって黒い吉野家が存在すること ということなのです。 絶妙というか戦略的というか練り込まれたバランスのいい、この3つのやり方について簡単に解説してみます。 まず最初に気づく点は、メニューの観点で黒い吉野家とオレンジの普通の吉野家にはそれほど大きな違いがないということです。ドリンクバーとデザートのカップアイスが置いてあるあたりは明らかに違うのですが、メインメニューだと限定メニューは大きく3点しか違いません』、「リスクが小さい成長戦略として、「既存のチェーンに新しい顧客を取り込む」という手段があり得ます。牛丼の例で言えばこれまでは男性が固定客の中心でしたから、女性客が増えれば企業として売り上げの成長につながります。 吉野家から見れば論理的には新しい顧客層としての女性客の取り込みと、将来の固定客への育成を期待した子どもを連れた家族客の取り込みは長期戦略的には重要な目標なのです。それで5年ほど前に試験的に導入されたのが黒い看板の吉野家で、冒頭にお話しした恵比寿駅前店がその1号店なのです」、なるほど。
・『独自メニューがあまり多くないのはなぜなのか?  女性の好みそうな「ON野菜」(温野菜をのせるという意味でしょうか)メニューと、脂身が少ない豚のロース焼きメニューと、おもちゃが付いたお子様メニューがあることぐらいです。 この設定は極めて戦略的です。要するに家族連れで来店した際に女性が「食べたいものがない」と最初から拒否反応を示さないように、最小限のオプションを用意しているのです。 そもそも吉野家に来て吉野家のメニューすべてに拒否反応を示す女性客であれば、成長戦略の対象にはなりません。そこで女性が好みそうな「ON野菜」の牛丼も選べるようにしているわけで、それを食べた女性が「吉野家の牛丼って初めて食べたけどおいしい」と思ってもらえればそれで成功なわけです。 とにかく黒い看板の吉野家はメニューはそれほど大きな差はなく、けれども居心地が良く設計されています。それで、女性客と子ども連れ家族に吉野家メニューを味わってもらうのです。 当然ながら限定メニューが注文されるよりも、他の店舗でも食べられる牛丼や牛すき鍋膳を試してもらったほうが固定客の増加につながります。だからこそ、黒い吉野家の限定メニューは種類も限定的に設計されているのです』、「黒い看板の吉野家はメニューはそれほど大きな差はなく、けれども居心地が良く設計されています。それで、女性客と子ども連れ家族に吉野家メニューを味わってもらうのです」、なるほど。
・『黒い看板の吉野家の出店割合 「全体の15%」は黄金比  次に、ビジネスモデル上非常に重要だと思われるのが、黒い看板のクッキング&コンフォート店舗は店舗全体の15%しか存在しないという点です。 実はオレンジの看板の吉野家の店舗には、一般の外食チェーンには見られないある優位性が存在します。それが顧客回転率の高さです。 よく普通の吉野家の店舗を見て、一般の飲食店経営者が「いつもがらがらで集客できていないんじゃないか」と感想をもらすことがあります。 吉野家のお店はランチタイムのピーク以外は待たされることはほとんどなく、いつ行っても座れるのが特徴なのですが、だからといって顧客数が少ないわけではありません。例えば同じカウンター数でも人気のラーメン店と比べて、吉野家の来店客数のほうが圧倒的に多かったりします。 その理由が回転率です。ラーメン店との違いを挙げると、吉野家では注文をして1分で牛丼が到着します。おいしく食べてお勘定をして、だいたい5~6分で退店します。ランチのピーク時では1時間で何回転もするのが特徴で、一日平均で見ても吉野家は実に60回転するといわれています。 そこで居心地のいい黒い看板の吉野家ですが、こちらは女性客や学生のような若い顧客を集めて長居させる業態です。学生からしてみれば座席にコンセントがあってPCでレポートを書きながら飲食ができる。ドリンクバーもありますから、女性客ふたりで恋バナでもしながら食後もずっと居続けることもできるわけです。 ここに「全体の15%」という数字が意味を持ってきます。あくまで黒い看板の吉野家は新しい顧客層を取り込むための装置だと考えるとこの戦略の全体像が見えてきます。顧客層を増やすことが戦略目的なので、なるべく居心地をよくすることは大切です。 しかし全店でそれをやってしまうと吉野家最大の武器である「一日60回転するビジネスモデル」が無効化してしまいます。 そこで生まれたのがこの15%という黄金比でしょう。例えば、黒い吉野家をきっかけに、吉野家のメニューのファンになった新規客が、その後、オレンジの看板の吉野家にも訪れたとしましょう。お気に入りの「お牛丼(ON野菜なし)」を食するのですが、そのときには他のお客様と同じように「うまい、安い、早い」を堪能して早くお帰りいただいたほうがビジネスモデル的にはよいのです』、「あくまで黒い看板の吉野家は新しい顧客層を取り込むための装置だと考えるとこの戦略の全体像が見えてきます。顧客層を増やすことが戦略目的なので、なるべく居心地をよくすることは大切です。 しかし全店でそれをやってしまうと吉野家最大の武器である「一日60回転するビジネスモデル」が無効化してしまいます。 そこで生まれたのがこの15%という黄金比でしょう。例えば、黒い吉野家をきっかけに、吉野家のメニューのファンになった新規客が、その後、オレンジの看板の吉野家にも訪れたとしましょう。お気に入りの「お牛丼(ON野菜なし)」を食するのですが、そのときには他のお客様と同じように「うまい、安い、早い」を堪能して早くお帰りいただいたほうがビジネスモデル的にはよいのです」、上手いやり方だ。
・『隠れた3番目の吉野家 「なんちゃって黒い吉野家」の奥深さ  とはいえ、オレンジの看板の吉野家があまりに黒い看板の吉野家と居心地が違うのであれば、期待したほどそのような女性客層は増えないかもしれません。そこで3番目の要素が関係してきます。私が勝手に名付けたネーミングですが「なんちゃって黒い吉野家」が存在するのです。 これは私も最近になって気づいたのですが、私の事務所の近所にもオレンジの看板の吉野家と黒い看板の吉野家がありまして、後者は店舗の内装もスタイリッシュですし、座席でスマホを充電することもできるのです。 しかし店内はカウンター席だけですし、ドリンクバーや限定メニューは置いていません。調べてみると近所の吉野家は看板が黒いだけで吉野家本体からは「クッキング&コンフォート」には認定されていないのです。 これを私は「なんちゃって黒い吉野家」と名付けました。全国にどれだけの数あるのかはわかりませんが、少なくともうちの近所にあるお店で、よくよく考えてみると戦略的には絶妙なポジションにある店舗です。 近所には学生が通う専門学校がいくつもあり、かつ女性も多く住んでいるエリアです。言い換えると駅前にあるオレンジの看板の吉野家よりも客層が若い。だったら外見は黒い吉野家にしてしまったほうが、若い客層は入りやすいわけです。 その一方でメニューはオレンジの吉野家と同じになっているうえに、長居できそうなテーブル席はないわけで、つまり一日60回転の回転率は維持できるわけです。 そう考えると吉野家の店舗業態は実は3種類で、従来のファン層が中心のオレンジの看板の吉野家と、新規の顧客層の取り込みを狙った黒い看板の吉野家、そして新規客でも入りやすいけれどもビジネスモデル的にはオレンジと同じ「なんちゃって黒い吉野家」の3つの業態が絶妙なバランスを保ちながら、吉野家という100年以上続く老舗飲食店の顧客数をこれからも増やしていこうと考えているわけです。 いやいや、企業戦略というものは実に奥が深いと思いませんか?』、「吉野家の店舗業態は実は3種類で、従来のファン層が中心のオレンジの看板の吉野家と、新規の顧客層の取り込みを狙った黒い看板の吉野家、そして新規客でも入りやすいけれどもビジネスモデル的にはオレンジと同じ「なんちゃって黒い吉野家」の3つの業態が絶妙なバランスを保ちながら、吉野家という100年以上続く老舗飲食店の顧客数をこれからも増やしていこうと考えているわけです」、「企業戦略というものは実に奥が深い」のは確かなようだ。

次に、3月18日付け弁護士ドットコムが掲載したライターの国分瑠衣子氏による「スシローは監視のない「ちゃらい場所」になっていた 若者の「客テロ」、背景にある省人化の徹底」を紹介しよう。
https://www.bengo4.com/c_18/n_15775/
・『「スシロー」や「くら寿司」で客が迷惑動画を拡散する「客テロ」が相次いだ。なぜ回転ずしチェーンが狙われたのか。回転ずし評論家の米川伸生さんは、「効率化を追求し省人化を徹底した店舗が、結果として若者がいたずらをする格好の場になった」と指摘する。米川さんに大手回転ずしチェーン特有の経営課題と、客テロ対策、回転ずし市場の展望を聞いた』、興味深そうだ。
・『業務効率化が顧客満足度の低下を招いた  米川さんによると、昔の回転ずし店は郊外が中心で、高校生などの若者だけで利用することは少なかった。それが都心に進出するようになって安く食べられる場所だと知られるようになり、若い客層が増えた。 ファミリーレストランや喫茶チェーンと回転ずし店が違う点は、席や従業員の配置だ。大手回転ずしチェーンは、効率化を追求し、人による監視の目が緩くなった。省人化を加速させたのがコロナ禍だ。運営会社は感染対策として自動精算システムなど入店から退店まで店員と接触しなくてよい「クローズド」な店をつくった。 米川さんは「デジタル化を進めたことで、若者にとって監視の目を逃れやすい『ちゃらい場所』になっていると思います。人の目が届かないことに対策を講じずにゆるく考えていたことが、客テロを招いた一因になったのではないでしょうか」とみる。 これまでにも会計を安く済ませるために皿をテーブルの下に隠すなどのいたずらはあったが、いたずらの矛先が他人の寿司に向いていたことも想定外だったのではないかという。 米川さんが考える客テロを招いたもう1つの要因が、顧客満足度の低下だ。「好きな店には客は敬意を払います。リスペクトは人に対してするものなので、省人化で人がいなくなると顧客満足度が下がってしまう。今回の客テロと無関係ではないように思います」(米川さん)』、「大手回転ずしチェーンは、効率化を追求し、人による監視の目が緩くなった。省人化を加速させたのがコロナ禍だ。運営会社は感染対策として自動精算システムなど入店から退店まで店員と接触しなくてよい「クローズド」な店をつくった。 米川さんは「デジタル化を進めたことで、若者にとって監視の目を逃れやすい『ちゃらい場所』になっていると思います。人の目が届かないことに対策を講じずにゆるく考えていたことが、客テロを招いた一因になったのではないでしょうか」とみる」、なるほど。
・『費用対効果読み切れず、対策費投下は限定的  迷惑行為を防ぐ対策はないのか。人による監視の目を強めれば、客テロ問題は解決するのではと思うが、米川さんは「人を増やすという選択肢は低価格のすしで儲けを出すために人件費をギリギリまで抑えてきた、大手のビジネスモデルそのものが崩れるため、可能性は低い」と言う。 ならば仕組みを変える必要がある。客の迷惑行為を受け、くら寿司は全店舗でAIカメラを使った新システムを導入すると発表した。ただし米川さんは簡易な対策で、様子見の段階ではとみる。 国内外の回転すし店の中には、客席とレーンに完全な仕切りがあり、客は自分の頼んだ寿司しか取り出せない設備を導入している店もある。これぐらい徹底した対策をとることも可能だということだ。 対策を徹底すれば、客数増も見込めるが「数百店舗を展開する大手回転ずしチェーンでは、莫大な費用がかかるため、躊躇しているように見えます」(米川さん)』、「国内外の回転すし店の中には、客席とレーンに完全な仕切りがあり、客は自分の頼んだ寿司しか取り出せない設備を導入している店もある。これぐらい徹底した対策をとることも可能だということだ。 対策を徹底すれば、客数増も見込めるが「数百店舗を展開する大手回転ずしチェーンでは、莫大な費用がかかるため、躊躇しているように見えます」、なるほど。
・『客テロで注目集め、くら寿司もスシローも2月の売り上げは増加  値上げも一案だが、軒並み値上げを続けてきた大手はこれ以上の値上げは難しい。そもそも大手回転ずしチェーンは相次ぐ値上げが要因で客離れが深刻だった。「昔は家族4人で5000円出せばお腹いっぱい食べることができましたが、今は7500〜8000円ぐらいに上がり、焼肉とほぼ変わらなくなりました」(米川さん) ところが、くら寿司、スシローともに「客テロ」が起きた後の2月の全店売上高が、前年同月比で増えた。米川さんは「皮肉にも客テロによって客足が上向いた形です。過去の回転ずしの歴史から見ると、一度客足が戻るとブームはしばらく続きます」と説明する』、「くら寿司、スシローともに「客テロ」が起きた後の2月の全店売上高が、前年同月比で増えた。米川さんは「皮肉にも客テロによって客足が上向いた形です。過去の回転ずしの歴史から見ると、一度客足が戻るとブームはしばらく続きます」と説明する」、不思議なものだ。
・『「国民の8割が大手回転ずししか知らない」  米川さんは「日本国民の8割がスシローやくら寿司など大手回転ずし店しかないと思っています」と指摘する。 地方に行けば大手とは一線を画した地場の回転ずし店がある。「グルメ回転ずし」と呼ばれる業態の店はレーンの内側で職人がすしを握っている。人がいるため、客はいたずらしようとする心理が働かない。今回の客テロでは大手回転ずしチェーンばかりが目立つ』、「「グルメ回転ずし」と呼ばれる業態の店はレーンの内側で職人がすしを握っている。人がいるため、客はいたずらしようとする心理が働かない。今回の客テロでは大手回転ずしチェーンばかりが目立つ」、なるほど。
・『回る店、回らない店 細胞分裂のように回転ずしは変化を遂げていく  客による迷惑行為は収束するのか。一連の迷惑行為では、逮捕者も出た。米川さんは「面白いという承認欲求を満たすことと引き換えに逮捕されたいと思う人はいないでしょう。迷惑客は今後は減っていくと思います」と話す。 回転ずしチェーンの「すし銚子丸」が、「回らない回転ずし」に移行することで話題になっているが、米川さんは今後、大手チェーンでもレーンが回る寿司店、回らない寿司店など、より細分化していくと予想する。 「回転ずしはもともと寿司から派生して、さらに、100円回転ずしとグルメ回転ずしに分かれて、細胞分裂のように発展してきました。これからもその流れが続くのではないでしょうか」 オペレーションの簡略化、省人化を追求した末に若者のいたずらの標的にされてしまった大手回転ずしチェーン。米川さんは「客テロ効果による客数増で喜んでいる企業はないと思います。これから大手がどんな対策を打ち出すのか、人のいない店舗でどう顧客満足度を上げるのか注目しています」と締めくくった』、「これから大手がどんな対策を打ち出すのか、人のいない店舗でどう顧客満足度を上げるのか注目しています」、その通りだ。
タグ:弁護士ドットコム 「黒い看板の吉野家はメニューはそれほど大きな差はなく、けれども居心地が良く設計されています。それで、女性客と子ども連れ家族に吉野家メニューを味わってもらうのです」、なるほど。 吉野家から見れば論理的には新しい顧客層としての女性客の取り込みと、将来の固定客への育成を期待した子どもを連れた家族客の取り込みは長期戦略的には重要な目標なのです。それで5年ほど前に試験的に導入されたのが黒い看板の吉野家で、冒頭にお話しした恵比寿駅前店がその1号店なのです」、なるほど。 吉野家ではこの黒い看板の吉野家を「クッキング&コンフォート」という店舗業態名で呼んでいます。ネーミングから類推できるように限定調理メニューが存在し、かつドリンクバーやデザートのアイスが売っていて居心地がいい」、なるほど。 「代官山方面にある恵比寿駅前店は黒い看板の吉野家」は、「代官山近辺にお住まいのお嬢様が友人と来店して、パプリカやれんこん、ブロッコリーなどがのった「お牛丼」をご注文されて、1時間ぐらい昼下がりのトークを楽しんでから退店するお店」、「カフェスタイルで小ぎれいで、女性や家族連れも気軽に来店できて、カウンター席にはスマホが充電できるコンセントがあって、ドリンクバーもあって長居ができる。これが新しいタイプの黒い吉野家です。 (その5)(「黒い吉野家」増殖中 上品な“お牛丼”を開発した吉野家の戦略の秀逸設計、スシローは監視のない「ちゃらい場所」になっていた 若者の「客テロ」 背景にある省人化の徹底) 「吉野家」には「オレンジの看板」のほか、「黒い看板」があるというのは初めて知った。 例えば、黒い吉野家をきっかけに、吉野家のメニューのファンになった新規客が、その後、オレンジの看板の吉野家にも訪れたとしましょう。お気に入りの「お牛丼(ON野菜なし)」を食するのですが、そのときには他のお客様と同じように「うまい、安い、早い」を堪能して早くお帰りいただいたほうがビジネスモデル的にはよいのです」、上手いやり方だ。 「あくまで黒い看板の吉野家は新しい顧客層を取り込むための装置だと考えるとこの戦略の全体像が見えてきます。顧客層を増やすことが戦略目的なので、なるべく居心地をよくすることは大切です。 しかし全店でそれをやってしまうと吉野家最大の武器である「一日60回転するビジネスモデル」が無効化してしまいます。 そこで生まれたのがこの15%という黄金比でしょう。 鈴木貴博氏による「「黒い吉野家」増殖中、上品な“お牛丼”を開発した吉野家の戦略の秀逸設計」 ダイヤモンド・オンライン 「国内外の回転すし店の中には、客席とレーンに完全な仕切りがあり、客は自分の頼んだ寿司しか取り出せない設備を導入している店もある。これぐらい徹底した対策をとることも可能だということだ。 対策を徹底すれば、客数増も見込めるが「数百店舗を展開する大手回転ずしチェーンでは、莫大な費用がかかるため、躊躇しているように見えます」、なるほど。 「吉野家の店舗業態は実は3種類で、従来のファン層が中心のオレンジの看板の吉野家と、新規の顧客層の取り込みを狙った黒い看板の吉野家、そして新規客でも入りやすいけれどもビジネスモデル的にはオレンジと同じ「なんちゃって黒い吉野家」の3つの業態が絶妙なバランスを保ちながら、吉野家という100年以上続く老舗飲食店の顧客数をこれからも増やしていこうと考えているわけです」、「企業戦略というものは実に奥が深い」のは確かなようだ。 「大手回転ずしチェーンは、効率化を追求し、人による監視の目が緩くなった。省人化を加速させたのがコロナ禍だ。運営会社は感染対策として自動精算システムなど入店から退店まで店員と接触しなくてよい「クローズド」な店をつくった。 米川さんは「デジタル化を進めたことで、若者にとって監視の目を逃れやすい『ちゃらい場所』になっていると思います。人の目が届かないことに対策を講じずにゆるく考えていたことが、客テロを招いた一因になったのではないでしょうか」とみる」、なるほど。 国分瑠衣子氏による「スシローは監視のない「ちゃらい場所」になっていた 若者の「客テロ」、背景にある省人化の徹底」 「リスクが小さい成長戦略として、「既存のチェーンに新しい顧客を取り込む」という手段があり得ます。牛丼の例で言えばこれまでは男性が固定客の中心でしたから、女性客が増えれば企業として売り上げの成長につながります。 「これから大手がどんな対策を打ち出すのか、人のいない店舗でどう顧客満足度を上げるのか注目しています」、その通りだ。 「「グルメ回転ずし」と呼ばれる業態の店はレーンの内側で職人がすしを握っている。人がいるため、客はいたずらしようとする心理が働かない。今回の客テロでは大手回転ずしチェーンばかりが目立つ」、なるほど。 「くら寿司、スシローともに「客テロ」が起きた後の2月の全店売上高が、前年同月比で増えた。米川さんは「皮肉にも客テロによって客足が上向いた形です。過去の回転ずしの歴史から見ると、一度客足が戻るとブームはしばらく続きます」と説明する」、不思議なものだ。 外食産業
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