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NHK問題(その7)(稲葉NHKに喧嘩を売った…前会長の前田晃伸氏はみずほFG出身の「無類の硬骨漢」、「完全に冤罪 よくあんな乱暴な処分をしたな」NHK“前田晃伸前会長の変”に新たな展開、【音声入手】NHK首脳が頼みの綱は「税金」と明言!受信料収入激減で“脱・公共放送”シナリオが浮上) [メディア]

NHK問題については、昨年6月2日に取上げた。今日は、(その7)(稲葉NHKに喧嘩を売った…前会長の前田晃伸氏はみずほFG出身の「無類の硬骨漢」、「完全に冤罪 よくあんな乱暴な処分をしたな」NHK“前田晃伸前会長の変”に新たな展開、【音声入手】NHK首脳が頼みの綱は「税金」と明言!受信料収入激減で“脱・公共放送”シナリオが浮上)である。

先ずは、本年1月20日付け日刊ゲンダイが掲載した金融ジャーナリストの小林佳樹氏による「稲葉NHKに喧嘩を売った…前会長の前田晃伸氏はみずほFG出身の「無類の硬骨漢」」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/334981
・『NHKの次期中期経営計画案(2024~26年度)に対する意見募集(パブリックコメント)に、昨年1月まで会長だった前田晃伸氏(79)が意見を寄せていたことが朝日新聞の取材で明らかになった。 意見書は400字詰めの原稿用紙5枚にボールペンで手書きされており、前田氏時代に導入された人事制度改革が稲葉延雄・現会長の下で見直しが進められていることに対し「新体制となり、改革派の職員は、次々と姿を消す事態となった。(昨年)1月以降、経営改革は止まり、古い体制を維持する方向にカジを切ったことは、誠に残念」と痛烈に批判している。 また、今年度予算で未認可の衛星放送の配信業務に絡む不適切な支出の決定に前田氏が関わっていたとして、退職金が10%減額支給された問題にも言及。決定は専門家が放送法に抵触すると指摘しているが、「『冤罪デッチ上げ事件』だ」「放送法違反のおそれがあるという指摘は、完全に間違い」と記している。 これに対し、1月9日に記者会見した稲葉会長は、前田氏の主張について「私の役割は、(前田氏の)『改革の検証と発展』だ。改革を否定しているわけではないので残念」と述べた』、「前田前会長」の「意見書は400字詰めの原稿用紙5枚にボールペンで手書きされており、前田氏時代に導入された人事制度改革が稲葉延雄・現会長の下で見直しが進められていることに対し「新体制となり、改革派の職員は、次々と姿を消す事態となった。(昨年)1月以降、経営改革は止まり、古い体制を維持する方向にカジを切ったことは、誠に残念」と痛烈に批判」、なるほど。
・前代未聞の聴取  前田氏が「冤罪デッチ上げ」と指摘した事件は、衛星放送番組のインターネット配信の整備費約9億円の支出について、22年12月に前田氏や理事ら計9人が承認した稟議プロセスが不透明だというもの。稲葉会長はその解明のため4月の理事会で特命監査を指示。稟議に関わった前田氏や理事らを5月上旬にかけて聴取した。特命監査での会長経験者の聴取は前代未聞だった。 「この特命監査での遺恨が今回の前田氏の異例の意見書につながっていることは確かだ。前田氏はみずほ時代から超がつく堅物で有名だった。ストイックで、人一倍プライドが高い。特命監査で不正を問われたことに我慢がならなかったのだろう」(メガバンク幹部)という。 前田氏をよく知る財界関係者も、「前田氏はみずほフィナンシャルグループ(FG)の社長・会長時代から誰よりも先に出社し、真冬でも暖房を入れず、ダウンを着込んで我慢するほどの硬骨漢だ」と指摘する。 前田氏の故郷は福沢諭吉ゆかりの大分県中津市。地元の進学校・中津南高校を経て、東大法学部に進学し、みずほFGの前身のひとつ富士銀行に入行した。「みずほ誕生を主導した山本恵朗頭取に可愛がられ、みずほFGのトップに上り詰めた」(みずほ関係者)とされる。実父は弁護士で、「前田氏はみずほFGの社長・会長の後、国家公安委員に就いたことに、これで親孝行ができたと喜んでいた」(同)という。 その前田氏に、こともあろうか法的責任を突き付けた稲葉会長の行動は、終生許すことはできないということだろう』、「衛星放送番組のインターネット配信の整備費約9億円の支出について、22年12月に前田氏や理事ら計9人が承認した稟議プロセスが不透明だというもの。稲葉会長はその解明のため4月の理事会で特命監査を指示。稟議に関わった前田氏や理事らを5月上旬にかけて聴取した。特命監査での会長経験者の聴取は前代未聞・・・前田氏はみずほフィナンシャルグループ(FG)の社長・会長時代から誰よりも先に出社し、真冬でも暖房を入れず、ダウンを着込んで我慢するほどの硬骨漢だ・・・その前田氏に、こともあろうか法的責任を突き付けた稲葉会長の行動は、終生許すことはできないということだろう」、なるほど。

次に、2月15日付け文春オンライン「「完全に冤罪。よくあんな乱暴な処分をしたな」NHK“前田晃伸前会長の変”に新たな展開」を紹介しよう。
・『「完全に冤罪。よくあんな乱暴な処分をしたなと」 こうため息をつくのはNHK前会長の前田晃伸氏(79)。「新旧会長の対立」で揺れるNHK。事件は内部監査室で起こった』、興味深そうだ。
・『「放送法違反に当たる恐れがあった」前田氏に異例の処分が下る  ことの発端は、昨年10月にNHKが募集したパブリックコメント(一般からの意見募集)だった。ここに実名で投書し、現経営陣を痛烈に批判したのが、前田氏だ。特に「冤罪デッチ上げ事件」と強い言葉で非難したのが「BS番組のインターネット同時配信をめぐる問題」だった。経済部デスクが解説する。 「まだ放送法で認められておらず、総務省の認可が必要なこの事業に“前田体制”下で約9億円の予算がついた。23年に後任会長に就任した稲葉延雄氏(73)は『そのまま進んでいたら放送法違反に当たる恐れがあった』として、前田氏の退職金を10%減額とする異例の処分を下しました」』、「「まだ放送法で認められておらず、総務省の認可が必要なこの事業(BS番組のインターネット同時配信)に“前田体制”下で約9億円の予算がついた。23年に後任会長に就任した稲葉延雄氏(73)は『そのまま進んでいたら放送法違反に当たる恐れがあった』として、前田氏の退職金を10%減額とする異例の処分、なるほど。
・『前内部監査室長であるA氏に“冤罪疑惑”が浮上  これにパブコメで猛抗議したのが前田氏というわけだ。小誌が前々号で直撃すると、予算をつけたのは「ネット配信の準備のため」であり、なんら法的な問題はなかったと改めて主張。「(稲葉氏は)もっと謙虚に仕事したほうがいい」と吼えた。そして今回、「新旧会長対立」に新展開が。 前内部監査室長であるA氏の“冤罪疑惑”です。昨年12月21日、NHKは内部監査資料を持ち出したことなどを理由として、A氏を含めた内部監査室の職員3名に停職1カ月の懲戒処分を命じた。A氏は『自分は規程違反はしていない』と訴えたのですが、聞き入れられなかった。一連の経緯について口外しないよう、“念書”まで書かされていました」(NHK関係者)』、「昨年12月21日、NHKは内部監査資料を持ち出したことなどを理由として、A氏を含めた内部監査室の職員3名に停職1カ月の懲戒処分を命じた。A氏は『自分は規程違反はしていない』と訴えたのですが、聞き入れられなかった。一連の経緯について口外しないよう、“念書”まで書かされていました」、「“念書”まで書かされていました」とは驚くべきことだ。

第三に、3月25日付けダイヤモンド・オンライン「【音声入手】NHK首脳が頼みの綱は「税金」と明言!受信料収入激減で“脱・公共放送”シナリオが浮上」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/340876
・『「道は二つあります。一つは完全民営化。もう一つは税金です」。NHKの井上樹彦副会長は2023年秋、若手職員を前に臆することなく、NHKの今後の選択肢について、そう強調した。人口減とテレビ離れの加速で、NHKの受信料収入の激減は待ったなし。特集『変局!岐路に立つNHK』(全8回)の#1では、NHK首脳が予見する今後のNHKの絵姿に加え、“生き残り策”を発言内容から明らかにしていく』、興味深そうだ。
・『放送法の改正案が閣議決定 スマホでNHK視聴に受信料  東京・渋谷、自然豊かな代々木公園を背にした場所に、その放送局はある。国内唯一の公共放送機関である日本放送協会(NHK)だ。NHKの社員数は1万0343人(2022年3月時点)。日本で最も大きな放送局である。 この巨大組織が今、大きな“転換点”を迎えている。放送法の見直しだ。1950年に制定された放送法は、第64条で「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、同項の認可を受けた受信契約の条項で定めるところにより、協会と受信契約を締結しなければならない」と定めている。受信設備とはテレビを指し、この条文が受信料徴収の根拠となってきた。 一方、視聴者はスマートフォンやパソコンでNHKのニュースサイトや動画を閲覧しても、受信料は徴収されなかった。ネットコンテンツは「理解増進情報」とされており、テレビ放送を補完するものという位置付けだったためだ。 しかし、政府は3月1日に放送法改正案を閣議決定した。今国会で成立すれば、インターネット活用業務は放送と同格の「必須業務」となる。これにより、NHKはウェブ上での同時配信や見逃し配信、番組情報の発信が義務となる。 その上、NHKの今後を大きく左右しかねない変更が、スマホやパソコンなどでのNHKの視聴に対して受信料が徴収できるようになることだ。ただし、NHKのアプリなどの登録者から受信料を徴収するもので、スマホを保有するだけでは契約義務は生じない。 人口減とテレビ離れの加速で、今後、NHKの受信料収入は先細りしていく可能性が高い。放送法改正案に盛り込まれた“ネット受信料解禁”は、公共放送を支える最後の切り札になり得るのだろうか。 実は、NHKの首脳は現状に楽観的ではないようだ。ダイヤモンド編集部は、NHK首脳が昨秋、若手職員に対して今後のNHKについて語った音声を入手した。発言はプロパー職員のトップである現副会長・井上樹彦氏のものだ。 井上氏は、今後の受信料収入に関して悲観的な見方を示した上で、大胆にも今後NHKが取るべき道を開陳している。そこには「税金」というキーワードも登場する。次ページで、井上氏の発言の全容について明らかにしていく』、NHK内部の本音の見方とはますます興味深そうだ。
・『受信料収入は10分の1まで減少も 二つある道のうち一つは「税金」  NHKの受信料収入は、不祥事が続き、不払い運動が起こった05年度を底に、右肩上がりで伸びてきた。しかし、足元では18年度の7122億円をピークに減少傾向が続いている。 (図_NHKの受信料収入の推移 はリンク先参照) 背景にはテレビを持たない世帯の増加などで、受信料の世帯支払率が減少していることだけではなく、そもそも人口減により契約対象世帯数が減っていることもある。23年10月に受信料の1割値下げに踏み切ったことで、24年度の受信料収入は06年度以来の6000億円割れとなる見通しだ。 国立社会保障・人口問題研究所が公表している「日本の世帯数の将来推計」によると、40年の総世帯数は23年の5419万世帯から、5076万世帯にまで落ち込むとされる。現在の世帯支払率で単純計算すると、受信料収入は5760億円ほどにとどまる。もちろん、テレビ離れがより加速すれば、さらなる下振れ要因となる。 今回の放送法改正案が成立すれば、ネット視聴に対して受信料を徴収できるようになる。だが、NHKの首脳は、これが悪い方向に作用する事態を想定しているようだ。井上氏はこう語る。 「(アプリはテレビと違って)スマホからもうワンアクション、ツーアクションが必要だ。アクションをしてもらえないと、受信料をもらえないわけだ。そこで何が起きるかというと、消費者、受信者からすると比較考慮する。ヤフーのポータルサイトを見ていれば(記事は)無料だから、NHKのアプリは要らないと(なる)。そしたら、そこで受信料は入ってこなくなる」 つまり、テレビと比べると、アプリはそもそもダウンロードしてもらわないと受信料を徴収できない。そして、その手間が大きな打撃となるということだ。 加えて、井上氏はこんな悲観シナリオを打ち明けた。「今、アプリのダウンロード数は10分の1ですよ。このままいくとね、収入が1割減どころか10分の1まで減少する可能性がある」 将来的に受信料収入が先細るという見通しを前提に、井上氏は続けて、NHKの在り方にすら関わる重大な“選択肢”を挙げる。 「道は二つあります。一つは完全民営化。もう公共放送はなくなる。もう一つは税金ですよ」 税金が意味するところは、「国営化」である。つまり、NHKの最高幹部の口から、将来的な民営化シナリオに加え、国営化シナリオが発せられたのだ。いずれも長く堅持してきた公共放送機関からの脱却である。 ただし、井上氏はこうも語っている。「そうはいっても(NHKを)なくすわけにはいかない。それこそ、何が正しい情報か分からなくなる。そうすると、1世帯1000円以下にして(続けることになる)。これドイツ型っていいます。ドイツの公共放送はこれやってるんですね。そうすると存続はできるんですよ」。 井上氏が例に挙げたドイツには地域ごとに9つの公共放送が存在する。NHKと同じく受信料によって運営される公共放送の形を取っているが、実態はやや異なる。なぜなら、国民はテレビやスマートフォン、パソコンの保有の有無に関わらず、受信料を納める義務を負っているからだ。いわば、“税金”といえる。 井上氏が示した民営化と国営化という二つのシナリオは現実的といえるのだろうか。 仮に完全民営化となれば、広告収入によって運営することになる。だが、現在の放送法は、第83条でNHKが広告収入を得ることを明確に禁止している。広告を導入すれば、番組作りにおいて文化の保存や育成よりも、視聴率が優先されてしまう恐れがあるためだ。 そもそもNHKが公共放送として力を入れる災害報道などは商業ベースでは成立が難しい。完全民営化が広告収入による、受信料制度からの自立を指すのであれば、NHKはコンテンツのみならず、組織そのものの姿も大きく変える必要があるだろう。これは、“存続”といえるだろうか。 一方で、国営化のハードルも高い。井上氏が例に挙げたドイツのように、そもそも受信料を全世帯から徴収する“強制徴収”ですら、事実上は困難だ。そもそも放送法第64条の改正が必要となる。有権者の反発を招きかねない施策に対し、政治家が踏み込むとは考えにくい。 そして、国営化はメディアとしてのNHKを大きく揺るがしかねない。一例が、政治を巡る報道である。税金で運営されるメディアが中立的に国家権力を監視するのは極めて難しい。 井上氏は最後にこう言い放っている。「これからどうやっていくのか。僕らはずいぶん生きてきたからいいんだけどね、20代、30代の人は不安を感じるかもしれない」。発言からは、10年後、20年後の展望を描けない“袋小路”に陥った巨大放送局の苦境がにじんでいる』、「テレビと比べると、アプリはそもそもダウンロードしてもらわないと受信料を徴収できない。そして、その手間が大きな打撃となるということだ。 加えて、井上氏はこんな悲観シナリオを打ち明けた。「今、アプリのダウンロード数は10分の1ですよ。このままいくとね、収入が1割減どころか10分の1まで減少する可能性がある・・・将来的に受信料収入が先細るという見通しを前提に、井上氏は続けて、NHKの在り方にすら関わる重大な“選択肢”を挙げる。 「道は二つあります。一つは完全民営化。もう公共放送はなくなる。もう一つは税金ですよ」 税金が意味するところは、「国営化」である。つまり、NHKの最高幹部の口から、将来的な民営化シナリオに加え、国営化シナリオが発せられたのだ。いずれも長く堅持してきた公共放送機関からの脱却である。 ただし、井上氏はこうも語っている。「そうはいっても(NHKを)なくすわけにはいかない。それこそ、何が正しい情報か分からなくなる。そうすると、1世帯1000円以下にして(続けることになる)。これドイツ型っていいます。ドイツの公共放送はこれやってるんですね。そうすると存続はできるんですよ・・・井上氏が示した民営化と国営化という二つのシナリオは現実的といえるのだろうか。 仮に完全民営化となれば、広告収入によって運営することになる。だが、現在の放送法は、第83条でNHKが広告収入を得ることを明確に禁止している。広告を導入すれば、番組作りにおいて文化の保存や育成よりも、視聴率が優先されてしまう恐れがあるためだ。 そもそもNHKが公共放送として力を入れる災害報道などは商業ベースでは成立が難しい。完全民営化が広告収入による、受信料制度からの自立を指すのであれば、NHKはコンテンツのみならず、組織そのものの姿も大きく変える必要があるだろう。これは、“存続”といえるだろうか。 一方で、国営化のハードルも高い。井上氏が例に挙げたドイツのように、そもそも受信料を全世帯から徴収する“強制徴収”ですら、事実上は困難だ。そもそも放送法第64条の改正が必要となる。有権者の反発を招きかねない施策に対し、政治家が踏み込むとは考えにくい。 そして、国営化はメディアとしてのNHKを大きく揺るがしかねない。一例が、政治を巡る報道である。税金で運営されるメディアが中立的に国家権力を監視するのは極めて難しい。 井上氏は最後にこう言い放っている。「これからどうやっていくのか。僕らはずいぶん生きてきたからいいんだけどね、20代、30代の人は不安を感じるかもしれない」。発言からは、10年後、20年後の展望を描けない“袋小路”に陥った巨大放送局の苦境がにじんでいる」、これはと言う妙案はないようだ。特に、「放送法第64条の改正が必要となる。有権者の反発を招きかねない施策に対し、政治家が踏み込むとは考えにくい」、は残念ながらその通りだ。 
タグ:かねない施策に対し、政治家が踏み込むとは考えにくい」、は残念ながらその通りだ。 そして、国営化はメディアとしてのNHKを大きく揺るがしかねない。一例が、政治を巡る報道である。税金で運営されるメディアが中立的に国家権力を監視するのは極めて難しい。 井上氏は最後にこう言い放っている。「これからどうやっていくのか。僕らはずいぶん生きてきたからいいんだけどね、20代、30代の人は不安を感じるかもしれない」。発言からは、10年後、20年後の展望を描けない“袋小路”に陥った巨大放送局の苦境がにじんでいる」、これはと言う妙案はないようだ。特に、「放送法第64条の改正が必要となる。有権者の反発を招き そもそもNHKが公共放送として力を入れる災害報道などは商業ベースでは成立が難しい。完全民営化が広告収入による、受信料制度からの自立を指すのであれば、NHKはコンテンツのみならず、組織そのものの姿も大きく変える必要があるだろう。これは、“存続”といえるだろうか。 一方で、国営化のハードルも高い。井上氏が例に挙げたドイツのように、そもそも受信料を全世帯から徴収する“強制徴収”ですら、事実上は困難だ。そもそも放送法第64条の改正が必要となる。有権者の反発を招きかねない施策に対し、政治家が踏み込むとは考えにくい。 はこれやってるんですね。そうすると存続はできるんですよ・・・井上氏が示した民営化と国営化という二つのシナリオは現実的といえるのだろうか。 仮に完全民営化となれば、広告収入によって運営することになる。だが、現在の放送法は、第83条でNHKが広告収入を得ることを明確に禁止している。広告を導入すれば、番組作りにおいて文化の保存や育成よりも、視聴率が優先されてしまう恐れがあるためだ。 「道は二つあります。一つは完全民営化。もう公共放送はなくなる。もう一つは税金ですよ」 税金が意味するところは、「国営化」である。つまり、NHKの最高幹部の口から、将来的な民営化シナリオに加え、国営化シナリオが発せられたのだ。いずれも長く堅持してきた公共放送機関からの脱却である。 ただし、井上氏はこうも語っている。「そうはいっても(NHKを)なくすわけにはいかない。それこそ、何が正しい情報か分からなくなる。そうすると、1世帯1000円以下にして(続けることになる)。これドイツ型っていいます。ドイツの公共放送 「テレビと比べると、アプリはそもそもダウンロードしてもらわないと受信料を徴収できない。そして、その手間が大きな打撃となるということだ。 加えて、井上氏はこんな悲観シナリオを打ち明けた。「今、アプリのダウンロード数は10分の1ですよ。このままいくとね、収入が1割減どころか10分の1まで減少する可能性がある・・・将来的に受信料収入が先細るという見通しを前提に、井上氏は続けて、NHKの在り方にすら関わる重大な“選択肢”を挙げる。 NHK内部の本音の見方とはますます興味深そうだ。 ダイヤモンド・オンライン「【音声入手】NHK首脳が頼みの綱は「税金」と明言!受信料収入激減で“脱・公共放送”シナリオが浮上」 「昨年12月21日、NHKは内部監査資料を持ち出したことなどを理由として、A氏を含めた内部監査室の職員3名に停職1カ月の懲戒処分を命じた。A氏は『自分は規程違反はしていない』と訴えたのですが、聞き入れられなかった。一連の経緯について口外しないよう、“念書”まで書かされていました」、「“念書”まで書かされていました」とは驚くべきことだ。 「「まだ放送法で認められておらず、総務省の認可が必要なこの事業(BS番組のインターネット同時配信)に“前田体制”下で約9億円の予算がついた。23年に後任会長に就任した稲葉延雄氏(73)は『そのまま進んでいたら放送法違反に当たる恐れがあった』として、前田氏の退職金を10%減額とする異例の処分、なるほど。 文春オンライン「「完全に冤罪。よくあんな乱暴な処分をしたな」NHK“前田晃伸前会長の変”に新たな展開」 は、終生許すことはできないということだろう」、なるほど。 「衛星放送番組のインターネット配信の整備費約9億円の支出について、22年12月に前田氏や理事ら計9人が承認した稟議プロセスが不透明だというもの。稲葉会長はその解明のため4月の理事会で特命監査を指示。稟議に関わった前田氏や理事らを5月上旬にかけて聴取した。特命監査での会長経験者の聴取は前代未聞・・・前田氏はみずほフィナンシャルグループ(FG)の社長・会長時代から誰よりも先に出社し、真冬でも暖房を入れず、ダウンを着込んで我慢するほどの硬骨漢だ・・・その前田氏に、こともあろうか法的責任を突き付けた稲葉会長の行動 「前田前会長」の「意見書は400字詰めの原稿用紙5枚にボールペンで手書きされており、前田氏時代に導入された人事制度改革が稲葉延雄・現会長の下で見直しが進められていることに対し「新体制となり、改革派の職員は、次々と姿を消す事態となった。(昨年)1月以降、経営改革は止まり、古い体制を維持する方向にカジを切ったことは、誠に残念」と痛烈に批判」、なるほど。 小林佳樹氏による「稲葉NHKに喧嘩を売った…前会長の前田晃伸氏はみずほFG出身の「無類の硬骨漢」」 日刊ゲンダイ (その7)(稲葉NHKに喧嘩を売った…前会長の前田晃伸氏はみずほFG出身の「無類の硬骨漢」、「完全に冤罪 よくあんな乱暴な処分をしたな」NHK“前田晃伸前会長の変”に新たな展開、【音声入手】NHK首脳が頼みの綱は「税金」と明言!受信料収入激減で“脱・公共放送”シナリオが浮上) NHK問題
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インフラ輸出(その16)(中国製・高速鉄道がインドネシアで開通!早速乗ってみた…「新幹線が逆転負け」したその実力は?【2023人気記事ベスト4】、入札で不正?欧州向け「中国製車両」に疑惑浮上 ブルガリアの車両案件「外国補助金規制」抵触か) [インフラ輸出]

インフラ輸出については、昨年8月20日に取上げた。今日は、(その16)(中国製・高速鉄道がインドネシアで開通!早速乗ってみた…「新幹線が逆転負け」したその実力は?【2023人気記事ベスト4】、入札で不正?欧州向け「中国製車両」に疑惑浮上 ブルガリアの車両案件「外国補助金規制」抵触か)である。

先ずは、昨年12月28日付け東洋経済オンラインが掲載した中国・ASEAN専門ジャーナリストの舛友雄大氏による「中国製・高速鉄道がインドネシアで開通!早速乗ってみた…「新幹線が逆転負け」したその実力は?【2023人気記事ベスト4】」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/340973
・『2023年度に「ダイヤモンド・オンライン」で読者の反響が大きかった人気記事ベスト10をお届けします!第7位はこちらの記事です。(記事初出時の公開日:2023年11月30日) ※2023年11月30日に公開した記事をもう一度紹介します。全ての内容は初出時のまま 10月2日、インドネシア初の高速鉄道が開業した。首都ジャカルタとバンドン市の間の約140kmを結ぶ高速鉄道は非常に重要なインフラであり、この建設はインドネシアにとっては一大プロジェクトだ。実はこれ、日本との競争に逆転勝ちして中国が建設を受注したもので、中国にとっては広域経済圏構想「一帯一路」の一環という位置づけになっている。先日筆者はインドネシアで、開業したばかりのこの高速鉄道に乗る機会があった。実際に乗ってみると、中国の影響が予想以上に強い。どんなところに驚かされたのかというと……』、これはいわくつきの「高速鉄道」だ。
・『日中が激しく争ったインドネシア高速鉄道建設  2010年代前半、日本と中国はアジアを舞台に、高速鉄道をはじめとするインフラ輸出分野で激しい競争を繰り広げていた。野心的なリーダーとして登場した中国の習近平国家主席は、2013年から一帯一路構想を強力に推進し、日本が主導するアジア開発銀行(ADB)と競合するアジアインフラ投資銀行(AIIB)を立ち上げた。 これに対し、日本は2010年からアジア諸国にある複数の日本大使館に、インフラプロジェクト専門官を派遣するようになっていた。2015年には当時の安倍晋三首相がADBと連携して、質の高いインフラを整備するために今後5年で約1100億ドル(当時のレートで約13兆2000億円)を投じると表明。官邸は和泉洋人首相補佐官を中心に前のめりの姿勢でインフラ輸出を主導し、民間企業が消極的に見えるほどだった。 「新幹線を輸出する」――この事業は関係者にとって、愛国的な熱を帯びていた。それだけに、インドネシアの高速鉄道建設を中国が逆転受注したことは、日本の政府関係者に衝撃を与えた。インドネシアのジョコ大統領が派遣した特使との会談中に、菅義偉官房長官(当時)が怒った表情を見せたのもよく知られる。筆者もインドネシア人外交官から、当時なぜか日本政府関係者との食事会で中華レストランを指定され、暗示めいたものを感じたと聞いたことがある。ネット上で、日本の対インドネシア世論が厳しくなるきっかけともなった。 日本は安全性を、中国はスピーディーな工事やコストの安さをアピールしていた。決定的だったのは、中国側がインドネシア政府に対して政府保証(融資などが焦げ付いた時に、国が代わって返済すると約束すること)を求めなかったことだとされる。 だが、結果的には、予定していた2019年の開業には間に合わず4年遅れることになったし、予算も当初予算を約12億ドル上回り、インドネシア政府は国庫からの支出を余儀なくされた。筆者が、建設中の2018年にインドネシアで取材した際は、土地収用の問題が大きくなっていると実感した。また、外国人労働者の流入を警戒するインドネシアにおいて、中国人労働者の存在もセンシティブな問題となっていた。 今回のインドネシア高速鉄道の開業は、中国政府にとっては、投資額が下火になり「債務のわな」(中国への借金が膨らんで返せなくなること)問題が浮上する中であっても、一帯一路は成功しているとアピールするための絶好のプロジェクトとなった。2022年にG20バリサミットが開かれた際は、習近平国家主席がわざわざオンラインで「視察」した。今年9月には、開業前に中国の李強首相が自ら試乗した。 【2023年度人気記事ランキング】結果はこちら! 1位 頭の悪い人が使っている日本語、納得の「3つのフレーズ」とは? 2位 松本人志さんの“罪”を考察したブログに反響広がる「ぐうの音も出ない」「完璧すぎる論破」 3位 「離婚しようと思うねん」明石家さんまに相談したら…“たった5文字”の返答にグッときた 4位 松本人志氏の提訴に元文春編集長が警鐘「これは相当厳しい戦いになる」 5位 医学部9浪の31歳娘が58歳母をバラバラ死体にするまで…話題本の著者が迫った事件の本質 6位 都道府県魅力度ランキング2023【47都道府県・完全版】 7位 中国製・高速鉄道がインドネシアで開通!早速乗ってみた…「新幹線が逆転負け」したその実力は? 8位 刃物を持った人間と遭遇したとき、生死を分ける「初動」とは? 9位 意味が分かると青ざめる…「中国」の公園で運動する高齢者が多い理由 10位 ジャニーズと戦った元文春編集長が、記者会見を見て感じたこと』、「日本は2010年からアジア諸国にある複数の日本大使館に、インフラプロジェクト専門官を派遣」、そこまで熱を上げていたとは初めて知った。「日本は安全性を、中国はスピーディーな工事やコストの安さをアピールしていた。決定的だったのは、中国側がインドネシア政府に対して政府保証・・・を求めなかったことだとされる。 だが、結果的には、予定していた2019年の開業には間に合わず4年遅れることになったし、予算も当初予算を約12億ドル上回り、インドネシア政府は国庫からの支出を余儀なくされた」、本当にいわくつきの「高速鉄道」だ。
・『開業直後のインドネシア高速鉄道に乗ってみた  先日、ジャカルタ滞在中に、筆者もインドネシア高速鉄道に乗ってみることにした。開業直後のキャンペーン料金は、ジャカルタ→バンドンが片道15万ルピア(約1440円)で、通常料金はまだ発表されていない。採算が取れるのか、見通しはまだまだ未知数だ。 10月21日の早朝、ジャカルタ中心部のホテルから配車アプリ「Gojek」で手配した車に乗り、高速鉄道の駅に向かった。高速鉄道の駅はジャカルタ郊外にあるからだ。 市内の高層ビル群の間から太陽が上っている。もやがかっているのは大気汚染のせいなのだろうか。高速道路の舗装が良くなく、車はガタガタと揺れる。「ブーン」とけたたましいエンジン音を響かせてバイクの群れが並走している。車窓から「私のご飯」という看板が見えた。この国で日本のソフトパワーは根強く、こうして日本語で書かれた宣伝文句を目にする機会も多い。 車が目的地に着き、ドアを開けると迎えてくれたのは野良猫だった。見上げると、ピカピカで、空港と見まがうほどの巨大な建物がそびえ立っていた。ジャカルタ側のターミナル、ハリム駅だ。郊外にある巨大駅、まさに中国の高速鉄道を思い出させる。 乗客とおぼしきインドネシア人たちが、あちこちで記念撮影をしている。SNSにアップするのだろう。人生で初めて高速鉄道に乗るという人も少なくないはずだ』、「ジャカルタ郊外」に「ピカピカで、空港と見まがうほどの巨大な建物がそびえ立っていた。ジャカルタ側のターミナル、ハリム駅だ。郊外にある巨大駅」、なるほど。
・『郊外にある駅は中国の高速鉄道の駅にそっくり  駅構内に入ると、レストランやカフェはまだ開業していないところが多かった。一刻も早く高速鉄道を開業したかったのだろう。看板など、駅構内の案内はインドネシア語で、英語も併記されている。 改札で、アプリで買っておいたチケットのQRコードをかざす。紙のチケットでも入場できるのだが、周りのインドネシア人も老若男女みなQRコードで入場していた。インドネシアのデジタル化のスピードは目を見張るほどで、人口の若さを反映してキャッシュレスが当たり前になっている。特にコロナ後は、日本の先を行っていると感じる場面もあるほどだ。 駅の構造が中国国内の高速鉄道そのもので、懐かしく感じる。まず、2階で荷物のX線検査がある。インドネシアではテロが起きたこともあるため、そこまでの違和感はない。青の巨大掲示板で運行情報が表示されているのも、まさに中国式。一方で、インドネシアらしい意匠の内装も見られた。いずれにせよ、これだけ中国式がスタンダードとして浸透すると、これから路線を伸長する際にはなかなか他の国が入ってこられないのではという気がした。実際、バンドン以東の高速鉄道延長計画でも中国の参画が有力視されている。 プラットホームが巨大なのも、日本の新幹線と違うところだ。日本のようなホームドアはない。発車まで先頭車両と記念撮影をする人がいたので、ピーッと笛が鳴り響き「あと10分で出発ですよ!」と駅員らしき人が注意していた』、「周りのインドネシア人も老若男女みなQRコードで入場していた。インドネシアのデジタル化のスピードは目を見張るほどで、人口の若さを反映してキャッシュレスが当たり前になっている・・・駅の構造が中国国内の高速鉄道そのもので、懐かしく感じる。まず、2階で荷物のX線検査がある。インドネシアではテロが起きたこともあるため、そこまでの違和感はない。青の巨大掲示板で運行情報が表示されているのも、まさに中国式・・・これだけ中国式がスタンダードとして浸透すると、これから路線を伸長する際にはなかなか他の国が入ってこられないのではという気がした。実際、バンドン以東の高速鉄道延長計画でも中国の参画が有力視されている」、もはや日本が入り込む余地はなさそうだ。
・『中国語通訳者、警備員、清掃員が同乗  車両に乗り込んでみると、車内は先進的だなという感じがした。座席番号が印刷ではなく、液晶なのかキラキラと光っていたのだ。天井から小さな液晶画面がいくつもぶら下がっていた。ただ、座ってみると気のせいか新幹線と比べて狭い気もした。 アナウンスが面白い。毎回最後に、「Whoosh, Whoosh, Yes!」(ウーッシュ、ウーッシュ、イエス)というのだ。最初にこのアナウンスが流れた時には客席から笑いが漏れた。Whooshは乗り物のスピードを表す擬音語で、この高速鉄道の正式名称ともなっている。YouTuberの挨拶のようで、妙に耳につく。これはバズるのではと思った。 車内をうろうろしていると、うわさに聞いていた常駐の中国語通訳者を発見。アユさんという女性で、中国南京に3年留学していたという。中国語もかなり流暢(りゅうちょう)だ。同乗するインドネシア人車掌と中国人技術者の間で翻訳が必要なため、通訳者が乗っているのだ。アユさんは、車内には警備員が4人、清掃員が4人乗っていると教えてくれた。 先進的な高速鉄道と対照的に、窓の外に目をやると、ヤシの木や棚田といった牧歌的な光景が広がる。そうこうしているうちに、車内電光掲示板に「現在時速349km」の表示があった。これなどは、十数年前に上海のリニアモーターカーに乗った時に見た表示とそっくりだなと思った。 客席に中国人技術者がいたので話しかけてみた。すでにインドネシアには数カ月滞在しており、現地人へのトレーニングが終わらないと中国に帰国できないんだと嘆いていた。この高速鉄道は中国でも「最高規格」だと胸を張っていた。駅の形状を含めた細かい点はインドネシアの美的センスに合わせたのだという。そうして座席に描かれた雲のような模様を指さした。これはインドネシアでメガムンドゥン(Mega Mendung)といい、西ジャワ・チレボンで有名なバティック(インドネシアの民族衣装)のモチーフだ。 「これから中国は東南アジアで高速鉄道をどんどん敷いていくんでしょうか?」と尋ねてみると、まずは、「中国では高速鉄道が4万km敷かれていて、海外の路線全てを足したよりも長い」と中国の優位性についての指摘があった。ただ、「各国の需要にもよる」とあくまで控えめだった。中国としても、これまでのように大盤振る舞いし、海外で高速鉄道を作れる時期は過ぎ去ったということだろう』、「常駐の中国語通訳者を発見。アユさんという女性で、中国南京に3年留学していたという。中国語もかなり流暢(りゅうちょう)だ。同乗するインドネシア人車掌と中国人技術者の間で翻訳が必要なため、通訳者が乗っているのだ・・・中国としても、これまでのように大盤振る舞いし、海外で高速鉄道を作れる時期は過ぎ去ったということだろう」、なるほど。
・『乗務員は中国語が必須?  自分の席に戻ると、バティックを着てにこやかに笑みを浮かべた乗務員が歩いてきた。「乗務員は中国語必須」という情報がインドネシアのSNSに出回り炎上していたので確かめてみたかった。「ニイハオ!」と中国語で声をかけると、「ニイハオ、シエンション。ニイジャオシェンマ?(こんにちは、お客様。お名前は?)」と返ってきた。 詳しく話を聞くと、乗務員は福利厚生の一環として無料で中国語研修が受けられるとのことだった。他の乗務員もあいさつくらいはできるそうだ。 そうこうしているうちにバンドン側のターミナル、テガルアール駅に着いた。あっという間だ。改札は6つあるが、3つしか使っておらず、大行列ができていた。オペレーションはまだまだ試行段階という気がした。 この駅は周囲に何もないような郊外にあり、構内にレストランやカフェなどはまだ一つもできていなかった。駅員に聞くと「(外に)屋台ならある」と教えられ、あぜんとした。 駅のチケット販売機にエラーが出たようで、インドネシア人スタッフと先ほどの中国人技術者がケータイで翻訳サイトを介してやり取りしつつ修理をしていた。どうやらWeChatグループがあるようで、そこで具体的なトラブルシューティングのためのやり取りが行われているようだ。 開業からそろそろ2カ月がたつ。遅れが出るなどの小さなトラブルやオペレーションの不手際はあるようだが、開業したばかりの路線ではよくあることで、今のところ大きな問題は起きていない。中国がこれからも東南アジアで高速鉄道ネットワークを整備していくかどうかは、インドネシア高速鉄道がどれだけ財政面・運用上共に安定して運行していけるのかが一つの試金石となりそうだ』、「乗務員は福利厚生の一環として無料で中国語研修が受けられるとのことだった・・・中国がこれからも東南アジアで高速鉄道ネットワークを整備していくかどうかは、インドネシア高速鉄道がどれだけ財政面・運用上共に安定して運行していけるのかが一つの試金石となりそうだ」、日本側のインフラ輸出熱は、政権交代で冷めたようだ。

次に、本年2月23日付け東洋経済オンラインが掲載した 欧州鉄道フォトライターの橋爪 智之氏による「入札で不正?欧州向け「中国製車両」に疑惑浮上 ブルガリアの車両案件「外国補助金規制」抵触か」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/736319
・『驚くようなニュースが飛び込んできた。 2月10日付記事「チェコに登場、欧州初『中国製電車』数々の問題点」で紹介した、世界最大シェアを誇る鉄道メーカーの中国中車(CRRC)に、ブルガリアへの車両納入に関する入札で不正疑惑が浮上、欧州委員会(EC)が調査を行っていると発表したのだ』、興味深そうだ。
・『不当な補助金でダンピング?  欧州委員会の発表によると、今回の調査はCRRCの子会社であるCRRC青島四方機車有限公司が欧州委員会に提出した通知を受けてのもので、ブルガリアの運輸通信省が行った最高時速200km、総座席数300席以上の長距離列車20本の製造と15年の保守管理、および職員研修サービスの提供に関する公共調達手続きについてである。推定契約額は約12億レフ(約6億1000万ユーロ=約990億9080万円)で、CRRCのほかにスペインのCAFが応札していた。 今回の疑惑を簡単に説明すると、ブルガリアの鉄道車両入札案件において、CRRCが異常な低価格でCAFを圧倒したのは、「EU域外の第三国」からの不当な補助金によるダンピングが理由ではないか、というものだ。もちろん、その第三国とは中国政府のことである。 EU外からの補助金に関する規則(外国補助金規制 The Foreign Subsidies Regulation/FSR)によると、公共調達で契約予定額が2億5000万ユーロ(約406億1100万円)を超え、かつ届出前の3年間に少なくとも1つの第三国から400万ユーロ(約6億4985万円)以上の資金提供を受けた場合、その企業は入札に参加することを欧州委員会に通知する義務があるとされる。) 欧州委員会は、CRRC青島四方機車から受領した通知の予備審査を行った結果、同社がEU市場を歪める「外国からの補助金」を受けていたことを示す十分な証拠があったことから、詳細な調査を開始することが正当であると判断した、としている。 そのため欧州委員会は、外国からの資金が同社に利益を与える補助金であるか、そのために同社が不当に有利な条件で応札できたかどうかを評価する必要がある。 欧州委員会のプレスリリースには、「外国からの補助金」がどの国からのものか、といった明確な記述はなく、現時点ではあくまで調査中のため、詳細な情報については明らかにされていない。ただ、ヨーロッパのマスコミの論調は、それが中国政府からのものだということを暗に示している』、「CRRC青島四方機車」が「中国政府からの補助金」を受けて「有利な条件で応札できたかどうか」を「欧州委員会」が「調査」するようだ。
・『「公平な競争」重視するEU  中国政府からの資金でCRRCが不当に有利な条件で応札していたとなれば、これまで厳しい競争ルールが適用されてきた欧州系メーカーは不公平に感じることだろう。とはいえ、CRRCが国家による経済的支援を受けていたことが事実であれば違法とみなされ、入札のやり直しはもちろんのこと、下手をすると欧州市場への参入禁止という厳しいペナルティも否定できない。 外国補助金規制は2023年7月12日に施行され、この新しい規則により、欧州委員会は今回のような外国からの補助金による違反行為に対処できるようになった。その結果、EUは貿易と投資の開放を維持しながら、欧州域内市場で活動するすべての企業にとって公平な競争条件を確保できるようになった。 EUでは加盟国に対する特定企業への補助金を原則的に禁止しているが、外国からの補助金を受けた企業がEU域内の企業を買収したり、公共調達の契約を獲得したりする際に、補助金による不当な優位性でEU域内市場の公正な競争を歪めていることが懸念されていた。規制はそれを受けての施行であった。 CRRCは2024年1月22日に届出書を提出していることから、欧州委員会はそこから起算した110営業日以内となる2024年7月2日までに最終的な決定を下すことになる。) もしCRRCの行為が不正とみなされれば、今後どのような影響が予想されるか。 CRRCは現在、ヨーロッパの鉄道市場においては本格的な参入には至っておらず、先般のチェコ国内における連接電車「シリウス」や、ハンガリー鉄道貨物部門のレールカーゴ・ハンガリア向け汎用型機関車「バイソン」が、走行距離を伸ばすためのテスト営業を行っている。一方、オーストリアの民間企業ウェストバーン向けの2階建て電車は、まだ乗客を乗せたテスト営業には至っていない。 つまり、いずれも仮契約のようなもので、ハンガリーとウェストバーンの場合は中国側が車両を貸し出す「リース契約」という形を採っている。もし、今回の件で違法行為があったと認められた場合、これらの本契約に黄信号が灯ることになる』、「CRRCが国家による経済的支援を受けていたことが事実であれば違法とみなされ、入札のやり直しはもちろんのこと、下手をすると欧州市場への参入禁止という厳しいペナルティも否定できない・・・チェコ国内における連接電車「シリウス」や、ハンガリー鉄道貨物部門のレールカーゴ・ハンガリア向け汎用型機関車「バイソン」が、走行距離を伸ばすためのテスト営業を行っている。一方、オーストリアの民間企業ウェストバーン向けの2階建て電車は、まだ乗客を乗せたテスト営業には至っていない。 つまり、いずれも仮契約のようなもので、ハンガリーとウェストバーンの場合は中国側が車両を貸し出す「リース契約」という形を採っている。もし、今回の件で違法行為があったと認められた場合、これらの本契約に黄信号が灯ることになる」、「中国」側にとっては、「CRRC」への「国家による経済的支援」が認められれば、深刻な打撃を受けることになる。
・『欧州でのCRRCの未来は…?  既報の通り、連接電車シリウスはもともと、チェコの民間企業「レオ・エクスプレス」が導入する予定で契約したが、認可取得の遅れで契約を破棄され、行き場を失っていたところを同じチェコの民間企業「レギオジェット」が救いの手を差し伸べ、走行距離を稼ぐための試験走行に協力することになった。 その結果次第では、レギオジェットがCRRCと正式に契約し、これらの車両を購入する可能性もあっただろう。 ただチェコ共和国は、もともと中国に対する国民感情がいいとは言えず、テスト走行についても「なぜ中国に手を貸すのか」「中国の車両はいらない」といった否定的な意見が市民のコメントのみならず、マスコミからも聞こえてきたほどだ。チェコ政府も政権交代により、「脱・親中」へ舵を切り、中国に厳しい立場を取っている。 この不正疑惑によってチェコ国民の目はより厳しいものとなり、レギオジェットが本契約から手を引く可能性は否定できないだろう。 チェコとは対照的に「親中」といわれるハンガリーの場合は、結果次第では導入へ傾く可能性もあるが、オーストリアのウェストバーンは利用者の感情を配慮した場合、リース契約が破棄される可能性が高まるかもしれない。 地道に努力を重ね、ようやくチェコで乗客を乗せたテスト走行を開始するところまでたどり着いたCRRCだったが、ここで大きな局面の変化を迎えることになった。はたして、この調査結果はいかなるものとなるか、その結果次第で欧州におけるCRRCの未来は大きく変わることになるだろう』、「チェコ政府も政権交代により、「脱・親中」へ舵を切り、中国に厳しい立場を取っている」のであれば、「調査結果」も厳しくなりそうだ。
タグ:「チェコ政府も政権交代により、「脱・親中」へ舵を切り、中国に厳しい立場を取っている」のであれば、「調査結果」も厳しくなりそうだ。 一方、オーストリアの民間企業ウェストバーン向けの2階建て電車は、まだ乗客を乗せたテスト営業には至っていない。 つまり、いずれも仮契約のようなもので、ハンガリーとウェストバーンの場合は中国側が車両を貸し出す「リース契約」という形を採っている。もし、今回の件で違法行為があったと認められた場合、これらの本契約に黄信号が灯ることになる」、「中国」側にとっては、「CRRC」への「国家による経済的支援」が認められれば、深刻な打撃を受けることになる。 「CRRCが国家による経済的支援を受けていたことが事実であれば違法とみなされ、入札のやり直しはもちろんのこと、下手をすると欧州市場への参入禁止という厳しいペナルティも否定できない・・・チェコ国内における連接電車「シリウス」や、ハンガリー鉄道貨物部門のレールカーゴ・ハンガリア向け汎用型機関車「バイソン」が、走行距離を伸ばすためのテスト営業を行っている。 「CRRC青島四方機車」が「中国政府からの補助金」を受けて「有利な条件で応札できたかどうか」を「欧州委員会」が「調査」するようだ。 橋爪 智之氏による「入札で不正?欧州向け「中国製車両」に疑惑浮上 ブルガリアの車両案件「外国補助金規制」抵触か」 「乗務員は福利厚生の一環として無料で中国語研修が受けられるとのことだった・・・中国がこれからも東南アジアで高速鉄道ネットワークを整備していくかどうかは、インドネシア高速鉄道がどれだけ財政面・運用上共に安定して運行していけるのかが一つの試金石となりそうだ」、日本側のインフラ輸出熱は、政権交代で冷めたようだ。 「常駐の中国語通訳者を発見。アユさんという女性で、中国南京に3年留学していたという。中国語もかなり流暢(りゅうちょう)だ。同乗するインドネシア人車掌と中国人技術者の間で翻訳が必要なため、通訳者が乗っているのだ・・・中国としても、これまでのように大盤振る舞いし、海外で高速鉄道を作れる時期は過ぎ去ったということだろう」、なるほど。 インドネシアではテロが起きたこともあるため、そこまでの違和感はない。青の巨大掲示板で運行情報が表示されているのも、まさに中国式・・・これだけ中国式がスタンダードとして浸透すると、これから路線を伸長する際にはなかなか他の国が入ってこられないのではという気がした。実際、バンドン以東の高速鉄道延長計画でも中国の参画が有力視されている」、もはや日本が入り込む余地はなさそうだ。 「周りのインドネシア人も老若男女みなQRコードで入場していた。インドネシアのデジタル化のスピードは目を見張るほどで、人口の若さを反映してキャッシュレスが当たり前になっている・・・駅の構造が中国国内の高速鉄道そのもので、懐かしく感じる。まず、2階で荷物のX線検査がある。 「ジャカルタ郊外」に「ピカピカで、空港と見まがうほどの巨大な建物がそびえ立っていた。ジャカルタ側のターミナル、ハリム駅だ。郊外にある巨大駅」、なるほど。 だが、結果的には、予定していた2019年の開業には間に合わず4年遅れることになったし、予算も当初予算を約12億ドル上回り、インドネシア政府は国庫からの支出を余儀なくされた」、本当にいわくつきの「高速鉄道」だ。 「日本は2010年からアジア諸国にある複数の日本大使館に、インフラプロジェクト専門官を派遣」、そこまで熱を上げていたとは初めて知った。「日本は安全性を、中国はスピーディーな工事やコストの安さをアピールしていた。決定的だったのは、中国側がインドネシア政府に対して政府保証・・・を求めなかったことだとされる。 これはいわくつきの「高速鉄道」だ。 舛友雄大氏による「中国製・高速鉄道がインドネシアで開通!早速乗ってみた…「新幹線が逆転負け」したその実力は?【2023人気記事ベスト4】」 東洋経済オンライン (その16)(中国製・高速鉄道がインドネシアで開通!早速乗ってみた…「新幹線が逆転負け」したその実力は?【2023人気記事ベスト4】、入札で不正?欧州向け「中国製車両」に疑惑浮上 ブルガリアの車両案件「外国補助金規制」抵触か) インフラ輸出
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日本の構造問題(その31)(実質賃金下落続く日本と上昇する米国 歴史的インフレ下で「格差」の原因は何か、日本のGDP「4位転落」の“犯人”は  政府の間違った経済政策の継続) [経済政治動向]

日本の構造問題については、1月18日に取上げた。今日は、(その31)(実質賃金下落続く日本と上昇する米国 歴史的インフレ下で「格差」の原因は何か、日本のGDP「4位転落」の“犯人”は  政府の間違った経済政策の継続)である。

先ずは、2月29日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏による「実質賃金下落続く日本と上昇する米国、歴史的インフレ下で「格差」の原因は何か」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/339600
・『近づく?アメリカの利下げ 株価活況でも日米経済の内実に差  いま世界経済の鍵を握っているのは、FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)が、いつどのように金利引き下げに転じるかだ。 この3年近く、コロナ禍やウクライナ戦争による資源価格などの急騰で歴史的なインフレが続いてきたが、ようやくインフレ率が鈍化、FRBがインフレ抑制から景気重視へと舵を切るタイミングが近づいている。 これを巡ってさまざまな予測や思惑が交錯し、株価や為替レートを大きく変動させている。これを象徴するのが、アメリカや日本などでも株価が歴史的な高水準になっていることだ。 日本では、FRBの緩和政策への転換や日本銀行が金融政策を正常化に踏み出すとしても緩和の方向は変わらいとの見方が、日経平均株価の最高値更新の大きな要因になっている。だがこの流れは続くのか。 アメリカの金融政策の行方を正確に予測することはできないのだが、将来を正しく見通すために、特に重要なのは、アメリカのインフレがどのように発生し、それをどのようにコントロールしたかの経緯を理解しておくことだ。この背後にある経済の状況も金融政策の対応も、日本の場合とは大きく異なる。 表向きは同じでも、いまの“活況”を生み出したものは全く違うことに注意する必要がある』、「背後にある経済の状況も金融政策の対応も、日本の場合とは大きく異なる。 表向きは同じでも、いまの“活況”を生み出したものは全く違うことに注意する必要がある」、どう違うのだろうか。
・『実質賃金は23年6月からプラス アメリカと日本の経済状況は大きく違う  最初にアメリカのマクロ経済的な指標を見ておこう。アメリカの消費者物価の推移は、図表1の通りだ。 物価上昇が始まったのは、2021年の春だ。それまで、1~2%程度だった消費者物価の対前年同月比が、4月に4%になった。そして、22年3月から9月までの期間では8%を超えた。しかし、その後低下して、23年4月から3%台になっている。 一方、総報酬の推移は、図表2に示す通りだ(総報酬は、賃金とボーナスの合計)。実質総報酬の対前年同月比は、21年6月期から23年3月期までの間だけマイナスになったが、23年6月期ですでにプラスになった。このように、実質報酬伸びがマイナスだったのは、一時的だった。 アメリカ長期金利の推移を見ると、図表3の通りだ。19年には2%程度であったが、コロナショックに対応するために大幅な金融緩和がなされ、0.6%程度まで引き下げられた。 その後、21年からは、インフレに対応するために金融引締めに転換し、長期金利はかなり急速に上昇してきた。 これに対して、日本の実質賃金は、2年間にわたって下落を続けている。これがいつ終わるのか、見当がつかない。日米間の経済状況は大きく異なる』、「日米間の経済状況は大きく異なる」、その通りだ。
・『アメリカ経済の強さがインフレを引き起こした  今回の世界的なインフレを当初、主導したのはアメリカでコロナ禍からの回復期に、深刻な人手不足が起きたことによる要素が大きい。人手不足による賃金の上昇が先導する形で物価上昇につながったのだ。この間の推移を見ると、次の通りだ。 コロナショックに対応して、アメリカ連邦政府は、2021年3月、一人当たり最大1400ドルの現金給付を柱とする総額1.9兆ドルの大規模な財政拡大を行なった。 金融の面でも、FRBが政策金利をゼロに引き下げ、国債を無制限に買上げる大規模な量的緩和政策を実施した。 一方、20年末に医療従事者や高齢者へのコロナワクチンの接種が始まり、21年3月ごろから一般接種が始まった。5月以降に接種が加速した。その結果、経済活動が回復、給付金などの消費で需要が拡大した。 ところが、これに供給が追いつくことができなかった。工場だけでなく港湾や運送会社、倉庫などサプライチェーンがフル稼働できるだけの労働力を確保できなかったのだ。 貨物船が入港できず、沖で待機するという事態が多発した。入港できても、荷役労働者やトラックの運転手の不足のために、国内の流通網に入れなかった。このため、生産活動や出荷が停滞した。 労働市場での需要が高まり就職機会が多くなると、労働者は、離職することによって賃金が上昇することを期待するようになった。これは、「Great Resignation(大量退職時代)」と呼ばれた。つまり、意に添わずに失業するという大恐慌とは正反対の事態が起きたのだ。 結局、コロナ期に過剰な景気拡大政策を行ったことが、労働力不足を引き起こして賃金を上昇させ、その結果、物価が上昇したことになる。 この背後には、アメリカが新しい産業、特にIT産業がAIなどで目覚ましい成長を続けているという状況がある。 こうしたアメリカ国内の状況に加え、22年2月にロシアがウクライナ侵攻を開始し、対ロ制裁やそれへの報復などで資源・エネルギー価格などの急騰が新しい要因として加わりインフレが加速した』、「コロナ期に過剰な景気拡大政策を行ったことが、労働力不足を引き起こして賃金を上昇させ、その結果、物価が上昇したことになる。 この背後には、アメリカが新しい産業、特にIT産業がAIなどで目覚ましい成長を続けているという状況がある。 こうしたアメリカ国内の状況に加え、22年2月にロシアがウクライナ侵攻を開始し、対ロ制裁やそれへの報復などで資源・エネルギー価格などの急騰が新しい要因として加わりインフレが加速した」、なるほど。
・『インフレ抑制は引き締め策の成功 FRBは正攻法で政策運営  インフレに対処するため、2021年11月、FRBは金融引き締めに転換した。まず、それまでの量的緩和を縮小する「テーパリング」を開始した。そして、22年3月から利上げを開始した。これよって、図表3で見たように長期金利が上昇したのだ。 アメリカがインフレの抑制に成功したのは、このような金融政策の転換による。そしてこれは、政策金利を操作することによって行われた。FRBは金融政策の正統的なやり方をそのまま行ったのであり、日銀のように国債の指値オペなどで長期金利を直接に操作したのではない。 一般に、金融引き締めは政治的に人気がないので、遅れがちになる。FRBの金融引き締めのタイミングが適切であったかどうかについては、議論の余地がある。インフレの初期の段階で、それを一時的なものとみなして重視せず、引き締めが遅れたために、インフレが高進したという評価はあり得るだろう。しかし、その後の金利引き上げは、極めて急速であった』、「インフレの初期の段階で、それを一時的なものとみなして重視せず、引き締めが遅れたために、インフレが高進したという評価はあり得るだろう。しかし、その後の金利引き上げは、極めて急速であった、なるほど。
・『日本のインフレは輸入物価が主導 競争力や経済衰退で賃上げが追い付かず  一方、日本ではインフレは輸入物価の上昇が主導した。アメリカなどのインフレが輸入物価を通して波及し、原材料やエネルギーなどのコスト上昇が転嫁されて国内の消費者物価が上昇した。この過程で、日本の金融政策は奇妙としか考えられない対応をした。 アメリカの金利引き上げに対して世界の多くの国の中央銀行利上げで追随した。ところが、日銀は金融緩和を続けて、金利の引き上げを行わなかった。このため、大幅な円安を招いた。このために、国内物価への伝播を遮断できなかったのだ。 他方で、物価上昇にもかかわらず企業が賃金を十分に引き上げることができないので、実質賃金の対前年伸び率がマイナスになった。この状況はいまに至るまで続いている。 日本では、長期にわたる金融緩和のもとで企業が生産性向上や新ビジネス展開などの取り組みを怠ったことで産業競争力が低下、経済が衰退し、輸入インフレに賃金が追いつかないのだ』、「アメリカの金利引き上げに対して世界の多くの国の中央銀行利上げで追随した。ところが、日銀は金融緩和を続けて、金利の引き上げを行わなかった。このため、大幅な円安を招いた。このために、国内物価への伝播を遮断できなかったのだ。 他方で、物価上昇にもかかわらず企業が賃金を十分に引き上げることができないので、実質賃金の対前年伸び率がマイナスになった。この状況はいまに至るまで続いている。 日本では、長期にわたる金融緩和のもとで企業が生産性向上や新ビジネス展開などの取り組みを怠ったことで産業競争力が低下、経済が衰退し、輸入インフレに賃金が追いつかないのだ」、なるほど。
・『賃上げを実現させる第一の条件は緩和策をやめ企業に変革努力を促すこと  今後、アメリカが金利を引き下げれば、日米金利差が縮小し、為替レートは円高になる可能性がある。それに加えて日銀が金融正常化を行なって金利が上昇すれば、急激な円高が進行する可能性もある。 これは、これまで日本の企業の利益が円安によって増加してきた状況を大きく変えるだろう。日本で株価の急激な上昇が進んだのも、円安による面が強いと思われるので、その状況が変わることがあり得る。 しかし、これを恐れて金融正常化を行なわなければ、経済構造が改善されず、実質賃金上昇率がマイナスである状態から脱出できない状態が続く可能性が強い。 だが賃金について言われるのは、企業は賃金を「引き上げよ」という掛け声ばかりだ。その半面で、有効な政策は何も行われていない。 賃金を引き上げるには、新しい技術や新しいビジネスモデルによって、生産性を引き上げるしかない。それを実現する最初の条件は金融正常化だ。金利を上げることで、企業にそれを上回る収益をあげ、賃上げができるよう変革の努力を促すのだ。日本は経済政策の基本原則に戻る必要がある』、「賃金を引き上げるには、新しい技術や新しいビジネスモデルによって、生産性を引き上げるしかない。それを実現する最初の条件は金融正常化だ。金利を上げることで、企業にそれを上回る収益をあげ、賃上げができるよう変革の努力を促すのだ。日本は経済政策の基本原則に戻る必要がある」、「生産性を引き上げるしかない。それを実現する最初の条件は金融正常化だ」、かなり思い切った提言だ。

次に、3月25日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した評論家の中野剛志氏による「日本のGDP「4位転落」の“犯人”は、政府の間違った経済政策の継続」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/340991
・『23年はGDPでドイツにも抜かれる 人口減少などではない「根本原因」  日本経済は、日経平均株価の34年ぶりのバブル期の最高値更新や初の「4万1000円」台などに沸いているが、直近公表の2023年10~12月期の実質GDP(国内総生産)は2四半期連続で前年比マイナスは免れたものの、低迷は続く。23年のドル建ての名目GDPはドイツに抜かれ、世界4位に転落した。 10年にも世界2位の座を中国に明け渡したが、中国の場合は人口が日本よりはるかに多く、また高度成長期にあったため、人口減少局面にある成熟社会の日本が名目GDPで中国に凌駕(りょうが)されるのは仕方がないというような風潮が当時はあった。 しかし、ドイツは違う。人口は8,300万人と日本より少なく、人口が増加しているわけでもない成熟社会だ。しかも、近年はドイツ経済も停滞が続いており、特に23年はマイナス成長だった。 日本経済の長期停滞の原因や背景として、人口減少や高齢化、成熟社会などが言われているが、したがって、今回はそういった言い訳は通用しない。 より「根本的な原因」がある』、「より「根本的な原因」」とは何なのだろうか。
・『98年以降、日本だけが成長せずデフレを放置した経済政策が原因  そもそも、日本経済は1998年以降、ほとんど成長しない状態が続いているが、これほど長期にわたって成長しない国は、戦後のOECD(経済協力開発機構)加盟国でも、他に例がない。 しかも、91年にバブルが崩壊したとはいえ、日本経済は90年代半ばまでは成長していたのだ。それが98年以降、突如として成長しなくなった。 当時は、アジア通貨危機があったとはいえ、他の国々は、アジア通貨危機であれ、2008年の世界金融危機(リーマン・ショック)であれ、危機を克服した後は、再び成長している。金融危機が収束した後も、まったく成長しない状態が続いたのは、日本だけと言ってよい。その原因は、産業構造の変化や少子高齢化などではとうてい説明がつかない。 日本経済の停滞の原因については、これまで人口減少などのほかにも、デジタル化で後れを取ったからだとか、グローバル化に乗り遅れたからだとか、雇用制度が硬直的だからといった説明が好まれてきた。しかし、それでは、なぜ98年を境に突如として、20年以上もの長期にわたり、しかも日本だけが成長しなくなり、ドイツにすら抜かれた理由を説明できないのだ。 この異様な現象を説明できるのは、ただ一つ、経済政策という要因だ。90年代半ば以降、継続して、誤った経済政策が行われてきたからとしか考えられないのだ。 では、何をどう間違えたのか。 まず注目すべきは、98年から、日本はデフレーション(デフレ)に陥り、しかも、このデフレが20年以上も続いたということだ。 このことだけでも異様なことだ。戦後、デフレを経験したのは98年以降の日本だけだからだ。 30年代の世界恐慌という大デフレ不況を経験して以降、デフレだけは避けなければならないという認識が政策担当者たちの間での常識となっていたはずだった。しかも、30年代ですら数年でデフレから脱却している。そのデフレを日本は20年以上も放置したのだ』、「30年代の世界恐慌という大デフレ不況を経験して以降、デフレだけは避けなければならないという認識が政策担当者たちの間での常識となっていたはずだった。しかも、30年代ですら数年でデフレから脱却している。そのデフレを日本は20年以上も放置したのだ」、なるほど。
・『デフレ下では、企業は債務を減らし投資をしないのが経済合理的  なぜ、デフレを放置してはならないのか。 デフレとは、需要不足(供給過剰)の状態が継続することで、物価が下落し続ける現象だ。物価が下落し続けるということは、裏を返せば、貨幣の価値が上昇し続けるということだ。 貨幣の価値が上昇し続けるのであれば、企業は、設備投資などをせず、貯蓄をした方が経済合理的となる。特に、貨幣の価値が上昇する中では、借り入れによって債務を負うと、将来、返済する際に債務が実質的に膨らんでいるということになるので、融資を受けようとはしなくなる。むしろ、企業は債務の返済を急ぐだろう。 こうして、デフレ下では、企業は融資を受けず、出資もせず投資をしないということになる。そうなると、需要はさらに縮小するというデフレ・スパイラルが発生し、経済は成長しなくなる。だから、政策担当者たちは、インフレ以上にデフレを恐れてきたのだ』、「デフレ下では、企業は融資を受けず、出資もせず投資をしないということになる。そうなると、需要はさらに縮小するというデフレ・スパイラルが発生し、経済は成長しなくなる。だから、政策担当者たちは、インフレ以上にデフレを恐れてきたのだ」、なるほど。
・『需要不足なのに需要抑制と供給拡大 逆にデフレを起こす政策続ける  日本政府は、このデフレに対してどのような政策をとってきたのか。 1996年に成立した橋本政権以降、政府がしてきた政策は、おおむね、以下のようなものだった。財政健全化や「小さな政府」、消費増税、金融緩和、規制緩和、自由化、民営化、労働市場の流動化、グローバル化の促進。 このうち、財政健全化や「小さな政府」は、公共需要を抑制するものであり、消費増税は民間の消費需要を縮小するものだ。 そして、規制緩和や自由化、民営化、労働市場の流動化は、競争を促進し、生産性を向上させて供給力を拡大しようとするものだ。それをもっと大規模に実施するのが、グローバル化といっていいだろう。 デフレとは、需要が不足し、供給が過剰になる現象なのに、これまで日本政府がしてきたのは、金融緩和を除くと、需要を抑制し供給を拡大する政策ばかりだった。要するにデフレを引き起こす政策を実施してきたのだ。 デフレ対策として、とりわけ重要なのは、積極財政だ。 貨幣価値が上昇するデフレ下では、企業は投資を抑制する方が経済合理的なため、民間主導の経済成長はほぼ不可能なのだ。そこで、企業に代わって、政府が大規模な投資を行って需要を創出しなければならない。 1930年代の世界恐慌という大デフレ不況でも、大規模な公共投資が実施された。日本における高橋財政や米国におけるニューディール政策がその典型だった。 ところが日本の場合、90年代初頭のバブル崩壊の後、5年ほどは公共投資を増やしてデフレを防いだ。しかし、その結果として拡大した財政赤字に恐れをなした政府は、97年以降は、公共投資を抑制しただけでなく、消費増税を行ってしまい、デフレをひどくしたのだ。 しかも、財政支出の抑制は2000年代以降も続けられ、消費税にいたっては、10年代に2度も税率を引き上げた。 このように、デフレにある時にデフレを引き起こす政策を20年以上も実施すれば、デフレが20年以上も続き、経済が成長しなくなるのも当然だ。何も不思議なことはない。 この間、日本企業が、内部留保ばかり積み上げて積極的な投資を躊躇(ちゅうちょ)し、デジタル化の波に乗り遅れたり、魅力のある商品開発や技術革新を怠ったりしたことが指摘される。それは、確かにその通りだろう。しかし、繰り返しになるが、デフレという異常なマクロ環境の下では、内部留保を積み上げることの方が経済合理的なのだ』、「デフレとは、需要が不足し、供給が過剰になる現象なのに、これまで日本政府がしてきたのは、金融緩和を除くと、需要を抑制し供給を拡大する政策ばかりだった。要するにデフレを引き起こす政策を実施してきたのだ。 デフレ対策として、とりわけ重要なのは、積極財政だ。 貨幣価値が上昇するデフレ下では、企業は投資を抑制する方が経済合理的なため、民間主導の経済成長はほぼ不可能なのだ。そこで、企業に代わって、政府が大規模な投資を行って需要を創出しなければならない。 1930年代の世界恐慌という大デフレ不況でも、大規模な公共投資が実施された。日本における高橋財政や米国におけるニューディール政策がその典型だった・・・日本の場合、90年代初頭のバブル崩壊の後、5年ほどは公共投資を増やしてデフレを防いだ。しかし、その結果として拡大した財政赤字に恐れをなした政府は、97年以降は、公共投資を抑制しただけでなく、消費増税を行ってしまい、デフレをひどくしたのだ。 しかも、財政支出の抑制は2000年代以降も続けられ、消費税にいたっては、10年代に2度も税率を引き上げた。 このように、デフレにある時にデフレを引き起こす政策を20年以上も実施すれば、デフレが20年以上も続き、経済が成長しなくなるのも当然だ。何も不思議なことはない。 この間、日本企業が、内部留保ばかり積み上げて積極的な投資を躊躇(ちゅうちょ)し、デジタル化の波に乗り遅れたり、魅力のある商品開発や技術革新を怠ったりしたことが指摘される。それは、確かにその通りだろう。しかし、繰り返しになるが、デフレという異常なマクロ環境の下では、内部留保を積み上げることの方が経済合理的なのだ」、「デフレという異常なマクロ環境の下では、内部留保を積み上げることの方が経済合理的なのだ」、その通りだ。
・『投資を促すにはまずはデフレ脱却だった 「失われた30年」は政策不況  企業に積極的な設備投資や技術開発投資を行わせたければ、デフレから脱却するしかなく、そしてデフレ脱却は政府の経済政策によるしかない。ところが、実際に政府がやり続けたのはデフレを促進する政策だったのだ。 なお、政府が、財政支出を抑制しようとし、消費増税を繰り返した理由は、言うまでもなく、財政赤字を削減しようとしたからだ。しかし、デフレである限り、経済成長はほぼ不可能である。経済が成長しなければ、税率をいくら引き上げたところで、税収は増えず、したがって財政赤字は削減できない。 財政を健全化したければ、デフレを脱却するしかない。そして、デフレを脱却するには、積極財政は不可欠だ。逆説的ではあるが、財政赤字を削減するためには、(一時的に)財政赤字を拡大しなければならないということだ。ところが、日本の政策担当者たちには、この逆説を理解することができなかった。 誤った経済政策の継続、これこそが、日本の名目GDPがドイツに抜かれて世界第4位に転落した理由だ。いわば「失われた30年」とは、「政策不況」に他ならない。その全責任は日本政府にある』、「経済が成長しなければ、税率をいくら引き上げたところで、税収は増えず、したがって財政赤字は削減できない。 財政を健全化したければ、デフレを脱却するしかない。そして、デフレを脱却するには、積極財政は不可欠だ。逆説的ではあるが、財政赤字を削減するためには、(一時的に)財政赤字を拡大しなければならないということだ。ところが、日本の政策担当者たちには、この逆説を理解することができなかった。 誤った経済政策の継続、これこそが、日本の名目GDPがドイツに抜かれて世界第4位に転落した理由だ。いわば「失われた30年」とは、「政策不況」に他ならない。その全責任は日本政府にある」、同感である。
・『コストプッシュ・インフレには減税などで生産性上げる投資の支援を  なお、この1~2年は、デフレというよりインフレが顕著だが、他方で実質賃金は下落が続いており、家計消費などの需要は低迷している。2023年10~12月期の実質GDPマイナスもその反映だ。 需要が増えて経済が成長するデマンドプル・インフレではなく、需要が低迷したまま供給がより不足するコストプッシュ・インフレという、デフレよりさらに難しい局面にある。 こうしたコストプッシュ・インフレに対しては、供給不足を克服するため、生産性向上のための設備投資やインフラ投資を積極財政や減税によって促すことで、あわせて投資需要も創出するという経済政策が最も有効だ。 また、燃料費や食料費を抑制する支援策や、賃上げを促す政策も重要であり、いずれも財政支出の拡大が必要だ。 今のところ、岸田政権は、こうした方向性に則った政策をしており、一定の評価ができる。 しかしながら、コロナ禍の対策や物価高対策によって財政赤字が拡大したため、政策担当者たちは、またしても財政健全化を優先させようとしているようだ。もし、そうなったら、「政策不況」が継続し、日本の名目GDPはさらに順位を落とすことになるだろう』、「コストプッシュ・インフレに対しては、供給不足を克服するため、生産性向上のための設備投資やインフラ投資を積極財政や減税によって促すことで、あわせて投資需要も創出するという経済政策が最も有効だ。 また、燃料費や食料費を抑制する支援策や、賃上げを促す政策も重要であり、いずれも財政支出の拡大が必要だ。 今のところ、岸田政権は、こうした方向性に則った政策をしており、一定の評価ができる。 しかしながら、コロナ禍の対策や物価高対策によって財政赤字が拡大したため、政策担当者たちは、またしても財政健全化を優先させようとしているようだ。もし、そうなったら、「政策不況」が継続し、日本の名目GDPはさらに順位を落とすことになるだろう」、その通りだ。
タグ:日本の構造問題 (その31)(実質賃金下落続く日本と上昇する米国 歴史的インフレ下で「格差」の原因は何か、日本のGDP「4位転落」の“犯人”は  政府の間違った経済政策の継続) ダイヤモンド・オンライン 野口悠紀雄氏による「実質賃金下落続く日本と上昇する米国、歴史的インフレ下で「格差」の原因は何か」 「背後にある経済の状況も金融政策の対応も、日本の場合とは大きく異なる。 表向きは同じでも、いまの“活況”を生み出したものは全く違うことに注意する必要がある」、どう違うのだろうか。 「日米間の経済状況は大きく異なる」、その通りだ。 「コロナ期に過剰な景気拡大政策を行ったことが、労働力不足を引き起こして賃金を上昇させ、その結果、物価が上昇したことになる。 この背後には、アメリカが新しい産業、特にIT産業がAIなどで目覚ましい成長を続けているという状況がある。 こうしたアメリカ国内の状況に加え、22年2月にロシアがウクライナ侵攻を開始し、対ロ制裁やそれへの報復などで資源・エネルギー価格などの急騰が新しい要因として加わりインフレが加速した」、なるほど。 「インフレの初期の段階で、それを一時的なものとみなして重視せず、引き締めが遅れたために、インフレが高進したという評価はあり得るだろう。しかし、その後の金利引き上げは、極めて急速であった、なるほど。 「アメリカの金利引き上げに対して世界の多くの国の中央銀行利上げで追随した。ところが、日銀は金融緩和を続けて、金利の引き上げを行わなかった。このため、大幅な円安を招いた。このために、国内物価への伝播を遮断できなかったのだ。 他方で、物価上昇にもかかわらず企業が賃金を十分に引き上げることができないので、実質賃金の対前年伸び率がマイナスになった。この状況はいまに至るまで続いている。 日本では、長期にわたる金融緩和のもとで企業が生産性向上や新ビジネス展開などの取り組みを怠ったことで産業競争力が低下、経済が衰退し、 輸入インフレに賃金が追いつかないのだ」、なるほど。 「賃金を引き上げるには、新しい技術や新しいビジネスモデルによって、生産性を引き上げるしかない。それを実現する最初の条件は金融正常化だ。金利を上げることで、企業にそれを上回る収益をあげ、賃上げができるよう変革の努力を促すのだ。日本は経済政策の基本原則に戻る必要がある」、「生産性を引き上げるしかない。それを実現する最初の条件は金融正常化だ」、かなり思い切った提言だ。 中野剛志氏による「日本のGDP「4位転落」の“犯人”は、政府の間違った経済政策の継続」 「より「根本的な原因」」とは何なのだろうか。 「30年代の世界恐慌という大デフレ不況を経験して以降、デフレだけは避けなければならないという認識が政策担当者たちの間での常識となっていたはずだった。しかも、30年代ですら数年でデフレから脱却している。そのデフレを日本は20年以上も放置したのだ」、なるほど。 「デフレ下では、企業は融資を受けず、出資もせず投資をしないということになる。そうなると、需要はさらに縮小するというデフレ・スパイラルが発生し、経済は成長しなくなる。だから、政策担当者たちは、インフレ以上にデフレを恐れてきたのだ」、なるほど。 「デフレとは、需要が不足し、供給が過剰になる現象なのに、これまで日本政府がしてきたのは、金融緩和を除くと、需要を抑制し供給を拡大する政策ばかりだった。要するにデフレを引き起こす政策を実施してきたのだ。 デフレ対策として、とりわけ重要なのは、積極財政だ。 貨幣価値が上昇するデフレ下では、企業は投資を抑制する方が経済合理的なため、民間主導の経済成長はほぼ不可能なのだ。そこで、企業に代わって、政府が大規模な投資を行って需要を創出しなければならない。 1930年代の世界恐慌という大デフレ不況でも、大規模な公共投資が実施された。日本における高橋財政や米国におけるニューディール政策がその典型だった・・・日本の場合、90年代初頭のバブル崩壊の後、5年ほどは公共投資を増やしてデフレを防いだ。しかし、その結果として拡大した財政赤字に恐れをなした政府は、97年以降は、公共投資を抑制しただけでなく、消費増税を行ってしまい、デフレをひどくしたのだ。 しかも、財政支出の抑制は2000年代以降も続けられ、消費税にいたっては、10年代に2度も税率を引き上げた。 このように、デフレにある時にデフレを引き起こす政策を20年以上も実施すれば、デフレが20年以上も続き、経済が成長しなくなるのも当然だ。何も不思議なことはない。 この間、日本企業が、内部留保ばかり積み上げて積極的な投資を躊躇(ちゅうちょ)し、デジタル化の波に乗り遅れたり、魅力のある商品開発や技術革新を怠ったりしたことが指摘される。それは、確かにその通りだろう。しかし、繰り返しになるが、デフレという異常なマクロ環境の下では、内部留保を積み上げることの方が経済合理的なのだ」、「デフレという異常なマクロ環境の下で では、内部留保を積み上げることの方が経済合理的なのだ」、その通りだ。 「経済が成長しなければ、税率をいくら引き上げたところで、税収は増えず、したがって財政赤字は削減できない。 財政を健全化したければ、デフレを脱却するしかない。そして、デフレを脱却するには、積極財政は不可欠だ。逆説的ではあるが、財政赤字を削減するためには、(一時的に)財政赤字を拡大しなければならないということだ。ところが、日本の政策担当者たちには、この逆説を理解することができなかった。 誤った経済政策の継続、これこそが、日本の名目GDPがドイツに抜かれて世界第4位に転落した理由だ。いわば「失われた30年」とは 、「政策不況」に他ならない。その全責任は日本政府にある」、同感である。 「コストプッシュ・インフレに対しては、供給不足を克服するため、生産性向上のための設備投資やインフラ投資を積極財政や減税によって促すことで、あわせて投資需要も創出するという経済政策が最も有効だ。 また、燃料費や食料費を抑制する支援策や、賃上げを促す政策も重要であり、いずれも財政支出の拡大が必要だ。 今のところ、岸田政権は、こうした方向性に則った政策をしており、一定の評価ができる。 しかしながら、コロナ禍の対策や物価高対策によって財政赤字が拡大したため、政策担当者たちは、またしても財政健全化を優先させようとしているようだ。もし、そうなったら、「政策不況」が継続し、日本の名目GDPはさらに順位を落とすことになるだろう」、その通りだ。
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昨日予告の通り、今日は更新を休むので、明日にご期待を!

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大学(その15)(「林真理子理事長は田中英寿・元理事長派に脅されている」“親友”和田秀樹氏が語る「日大理事辞任」の真相、日大常務理事を電撃辞任した和田秀樹氏が激白 アメフト部“大麻汚染”問題のウラにひそむ「日大改革の“抵抗勢力”と権力の二重構造」、アメフト部問題で日大が前代未聞の志願者数3割減…「日東駒専」から脱落へ崖っぷち、千葉大学長選巡り 国際学術研究院執行部と理学研究院教授会も要望書 選考プロセスに反発) [社会]

大学については、本年1月27日に取上げた。今日は、(その15)(「林真理子理事長は田中英寿・元理事長派に脅されている」“親友”和田秀樹氏が語る「日大理事辞任」の真相、日大常務理事を電撃辞任した和田秀樹氏が激白 アメフト部“大麻汚染”問題のウラにひそむ「日大改革の“抵抗勢力”と権力の二重構造」、アメフト部問題で日大が前代未聞の志願者数3割減…「日東駒専」から脱落へ崖っぷち、千葉大学長選巡り 国際学術研究院執行部と理学研究院教授会も要望書 選考プロセスに反発)である。

先ずは、本年2月7日付けFLASH「「林真理子理事長は田中英寿・元理事長派に脅されている」“親友”和田秀樹氏が語る「日大理事辞任」の真相」を紹介しよう。
https://smart-flash.jp/sociopolitics/272646/1/1/
・『「林先生は立派な小説家なんですから、人をクビにすることの意味を想像してほしかったです」 そう語気を荒らげるのは、作家としても多くのベストセラーを著書に持つ、精神科医の和田秀樹氏だ。 故・田中英寿元理事長が脱税容疑で逮捕されたことを受け、2022年7月、日本大学の理事長に就任した作家の林真理子氏。林氏の推薦によって、同大学の常務理事となったのが和田氏だ。 「林先生とは20年来の友人でしたので、私が教育や大学に多く関わっている実績もご存じでしたし、大学経営に対してのビジョンもあると考えていただき、理事として選出されました」(以下、断わりのない「 」内は和田氏の発言) しかし、アメリカンフットボール部の薬物事件を契機に、日本大学は再び迷走する。 「2023年8月、アメフト部の寮を警視庁が家宅捜査し、大麻と覚醒剤を押収。同部の部員が逮捕され、チームは無期限活動停止処分となりました。さらに、警視庁が家宅捜索する前に、澤田康広副学長(当時)が薬物の存在を把握していたことが判明。林理事長が『私学助成金の交付に悪影響を及ぼす』と、理事会への出席停止を命じたことに対して、澤田氏はマスコミに林理事長との会話内容を持ち込んだのです」(日大関係者) その結果、2023年11月の臨時理事会で、澤田副学長と酒井健夫学長の辞任が諮られた。 「澤田副学長が薬物の存在を隠蔽し、酒井学長も黙認して監督責任を果たさず、理事会に報告しなかった。そのため理事会では、2人の辞任勧告は当然として可決されたのですが、酒井学長は『自分は学部長会議で選ばれたのだから、学部長たちの意見も聞きたい』と言いだしたんです」 その後、学部長会では、驚くことに参加者全員が2人を擁護したという。 「事前に根回しをしたのでしょうが、さすがに自分はあきれて『澤田氏は薬物を隠し持っていたうえに、林理事長との会話をマスコミに暴露し、その直後に補助金の打ち切りが決定したんだから責任を取るべきだ』と言ったんです」 だが、ここから思いもよらぬ展開が――。その場にいた工学部長が、和田氏が日本テレビの取材に対して「澤田副学長の解任は私が理事会で提案した」と明かしていたことを問題視して、追及を始めたのだ。 「『澤田氏はたんなる私的会話でしょう。あなたは理事会の内容をマスコミに漏らしたんだから、そのほうがタチが悪い』と反論されて唖然としました。私は理事会の内容は何も言っていない。私は『そんなことを言われるなら辞めてやるよ』と抗議しました」 誰も工学部長の発言を否定しないことにあきれた和田氏だったが、それから約1カ月後――。突如、思いもよらずはしごを外される。 「林先生から『和田先生には辞めていただくことになりました。“辞めてやるって言った人をなんで置いておくんだ”と言う人がいて、和田先生がいると困るのよ』と、辞任するよう告げられたんです」 20年来の親友から“三顧の礼”で迎えられるも、わずか1年半年足らずの解任劇。和田氏は、日本大学の旧態依然とした体質に失望したという。 「林先生の口ぶりから、学部長たちから私を辞めさせるよう恫喝されたのだと感じました。というのも、林先生が理事長になったとき、“理事長が指名できる理事は2人まで”“経営に専念すべきで教学には口を出さない”といった“足かせ”をはめられたんです。ところが、学部長メンバーは田中時代のまま。日本大学の旧態依然とした既得権益を守ろうとする体質は、田中元理事長がいたころと変わっていません。林先生は、そういった連中に脅されているのかもしれません」 2024年2月2日、新学長に大貫進一郎氏が選出された。 「林先生から学長選が終わるまでは、学部長たちを刺激しないでほしいと聞き沈黙していました。いい学長でよかったけど、今後は問題点の批判を続ける所存です」 和田氏の反撃開始だ』、「工学部長が、和田氏が日本テレビの取材に対して「澤田副学長の解任は私が理事会で提案した」と明かしていたことを問題視して、追及を始めたのだ。 「『澤田氏はたんなる私的会話でしょう。あなたは理事会の内容をマスコミに漏らしたんだから、そのほうがタチが悪い』と反論されて唖然としました」、「工学部長」の言い分は全く筋が通らない学者にあうまじき発言だ。「それから約1カ月後――。突如、思いもよらずはしごを外される。 「林先生から『和田先生には辞めていただくことになりました。“辞めてやるって言った人をなんで置いておくんだ”と言う人がいて、和田先生がいると困るのよ』と、辞任するよう告げられたんです」 20年来の親友から“三顧の礼”で迎えられるも、わずか1年半年足らずの解任劇。和田氏は、日本大学の旧態依然とした体質に失望したという。 「林先生の口ぶりから、学部長たちから私を辞めさせるよう恫喝されたのだと感じました。というのも、林先生が理事長になったとき、“理事長が指名できる理事は2人まで”“経営に専念すべきで教学には口を出さない”といった“足かせ”をはめられたんです。ところが、学部長メンバーは田中時代のまま。日本大学の旧態依然とした既得権益を守ろうとする体質は、田中元理事長がいたころと変わっていません。林先生は、そういった連中に脅されているのかもしれません」、いくら「脅された」としても、唯一の理解者たる「和田氏」に「辞任」を迫るとは、「林理事長」も情けない。呆れ果てた。

次に、2月9日付けデイリー新潮「日大常務理事を電撃辞任した和田秀樹氏が激白 アメフト部“大麻汚染”問題のウラにひそむ「日大改革の“抵抗勢力”と権力の二重構造」」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2024/02090550/?all=1
・『日本大学は次期学長に大貫信一郎・副学長(55)を選出したと2日に発表し、アメフト部問題で揺れた大学の「体制刷新」をアピールした。そんな「新生日大」に期待する声がある一方で、今年1月、突如、同大常務理事を辞した精神科医の和田秀樹氏(63)が辞任の裏にある、日大の「ガバナンス不全の核心部」について初めて口を開いた。 「私の辞任が発表されたのは今年1月12日のことでした。当時、その理由として、“昨秋、和田氏が理事会の内容をテレビ局に話したことが学内で問題視された”と報じられましたが、より正確にいえば、私のほうから『辞めてやる』と啖呵を切ったのが真相です。私を招聘した林真理子・理事長から『進退を考えてほしい』と言われたこともあって、私が職にとどまり続けると改革に支障をきたす恐れもあると判断して、みずから“辞める”と申し出ました」 こう淡々と話すのは、和田秀樹氏本人である。2022年7月、作家の林真理子氏が日大の新理事長に就いた際、和田氏も「理事長推薦候補」として常務理事に就任。悪質タックル問題(18年)や田中英寿・元理事長の背任・脱税事件(21年)を受けて失墜した日大ブランドの再建を託され、林理事長とともにこの間、「日大改革」に奔走してきたという。 「私がテレビ局の取材に答えたのは、私自身が理事会で発言した内容についてのみで、それ以上は話していません。しかし日大の学部長たちから『許されることではない』との声が上がり、林理事長に“進言”する学部長まで現れた。なぜ、そんなに問題視されるのかが分からず、澤田康広・副学長(当時)が昨年9月に林理事長と面会した際の会話を録音し、それが外部に漏洩した件を私が引き合いに出すと、“漏洩よりマスコミに直接話すほうが悪い”と決めつけられました。この漏洩問題で、澤田氏は何ら咎めを受けていなかったことも含め、私は彼らの主張に正当性を見出すことはできませんでした」(和田氏) 和田氏と対立した「学部長」とは、各学部の長として校務をつかさどる立場にある管理職だ。日本大学には16の学部があり、各部長による「学部長会議」が学内で一定の影響力を持っていることを、和田氏は理事就任後に知って驚いたという』、「澤田康広・副学長(当時)が昨年9月に林理事長と面会した際の会話を録音し、それが外部に漏洩した件を私が引き合いに出すと、“漏洩よりマスコミに直接話すほうが悪い”と決めつけられました」、実に論理の片鱗すらない言いがかりを「学部長」あ堂々と主張するとは、茶番だ。
・『「学部長会議」という聖域 日大アメフト部寮  「日大ほど巨大な組織になると、校舎が各地に散らばっていることもあり、各学部が“独立国”のような扱われ方をするケースもありました。田中理事長時代のように“強権”をもってすれば話は別ですが、もともとガバナンスが効きにくい面があったのは事実です。大学の最高意思決定機関は理事会ですが、林理事長の就任以降、その理事会に女性をはじめ新しい人材が登用されたことでメンバーの顔触れも変わりました。しかし学部長会議のメンバーは全員男性で“田中時代”に就任した面子が多く残っていました」(和田氏) 和田氏によると、アメフト部の存続を最後まで主張した澤田氏とその任命権者である酒井健夫・現学長の辞任について、「その必要はない」と声を上げたのが学部長会議だったという。ちなみに澤田氏は、アメフト部の学生寮で大麻と見られる植物片が見つかった際、「学生に自首をさせたい」との考えから警察に提出することなく12日間、学内で保管していた人物だ。 「実際に私も耳にしたことがあるのですが、3月末で退任予定の酒井学長は、林理事長に『経営が教学(現場)に口を出すと、田中(英寿)さんと同じになる』と忠告していました。私には、その言葉が改革に取り組もうとする林理事長の手足を縛る“呪文”のように聞こえた。いろいろな解釈はあると思いますが、“学部長会議が不可侵の存在”と誤認させかねない危うさを秘めていたと思います。事実、学部長会議の決定を理事会が追認するだけのケースも少なくなく、理事会以外にもう一つ、大学の方針に影響を与える組織があったとの印象です」(和田氏) 自身の辞任と昨年から続くアメフト部をめぐる混乱も、この「権力の二重構造」が影響しているという』、「“学部長会議が不可侵の存在”と誤認させかねない危うさを秘めていた」とはガバナンス不全の極みだ。
・『「学部再編」が試金石  「なにより、いざ問題が起きた際、責任を問われるのは学部長会議のメンバーでなく、理事会などの執行部という点に大きな違和感を覚えました。たとえばアメフト部の部長は日大の文理学部長が兼ねていましたが、一連の薬物問題を受け、この学部長は昨年12月に(アメフト部)部長職を解嘱された。しかし彼が林理事長などとともに記者会見に出て批判の矢面に立つことは一度もありませんでした。この歪な構造を変えないかぎり、真の改革は成し遂げられないと痛感しました」(和田氏) アメフト部の“大麻汚染”問題で吹き飛んでしまったが、林理事長が掲げる改革の方向性について、和田氏はこう語る。 「私は今後の日大改革には“学部再編が欠かせない”と考えていて、それは林理事長にも伝えていました。相次ぐ不祥事によって存在意義が問われている危機管理学部の存廃に加え、御茶ノ水と松戸(千葉)にある歯学部の統合の可否など、かねて再編の余地は大きいと指摘されてきた。また具体的に進んでいた改革案の一つが、看護学部の新設計画です。実現すれば、生徒に占める女性比率も上がり、初の女性学部長の誕生に繋がるかもしれない。しかし学部再編の問題は、各学部長の利害と衝突しかねず、一筋縄ではいかない面もありました」』、「いざ問題が起きた際、責任を問われるのは学部長会議のメンバーでなく、理事会などの執行部という点に大きな違和感を覚えました。たとえばアメフト部の部長は日大の文理学部長が兼ねていましたが、一連の薬物問題を受け、この学部長は昨年12月に(アメフト部)部長職を解嘱された。しかし彼が林理事長などとともに解嘱」記者会見に出て批判の矢面に立つことは一度もありませんでした」、「アメフト部の部長」の処分が単に「部長職を解嘱」というだけでは不十分だ。少なくとも「解嘱」を「記者会見」後とすべきだ。
・『「人脈」という武器 澤田康広  一方で4月1日から就任することになる、新学長の大貫氏には期待するところがあるという。 「大貫氏は日大理工学部出身で、大学のDX(デジタル変革)化など改革志向を持っていることは承知しています。昨年12月、林理事長が文科省に追加の改善計画を提出した際に同席していたのも彼でした。ただし大貫氏が学長になったからといって、構造改革にまで踏み込むのは容易でない。だからこそ、林理事長の最大の強みである“人脈”を今こそ発揮してほしいのです。外部の経営者などを集めた“日大経営改革会議”のような第三者機関をつくれば、学内からの干渉を避けられ、改革は前進するはず。私の辞任によって、身を挺してでも林理事長を守る“側近”はいなくなりましたが、いまも改革が成就することを願う気持ちに変わりはありません」 言葉の端々に「志半ば」で去らざるを得なかった無念さを滲ませつつ、それでも希望は捨てていないという』、「外部の経営者などを集めた“日大経営改革会議”のような第三者機関をつくれば、学内からの干渉を避けられ、改革は前進するはず」、との提案は大いに検討に値する。

第三に、3月10日付け日刊ゲンダイ「アメフト部問題で日大が前代未聞の志願者数3割減…「日東駒専」から脱落へ崖っぷち」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/337052
・『2024年度入試も終盤に突入し、各大学の志願者数が出ているが、相次ぐ不祥事で注目されていた日本大学が、予想を超える志願者数減を記録している。大学通信などの速報によれば、全学部の志願者数は6万6763人、昨年最終出願者数から3万1743人減で昨対比67.8%。全体の約3割での志願者数減だ。 一因となったのは、アメフト部を巡る問題と見られている。日大は昨年8月、アメフト部の寮から大麻の植物片と覚せい剤の成分を含む錠剤が見つかり、3年生の部員が逮捕。この学生は今年1月に懲役1年4月、執行猶予3年の有罪判決が確定したが、すでに一連の事件で逮捕や書類送検されたのはこの学生を含む計10人にのぼる。それにより、アメフト部は1月に廃部、2月15日付で関東学生アメリカンフットボール連盟から退会している。 2021年に元理事長の田中英寿氏が脱税事件で逮捕された時も、22年度入試は厳しくなると言われていたが、フタを開けると22年度は9万3770人(21年度は9万7948人)と大きくは減少していない。今年度入試はどれくらい異常なのか。) 大学ジャーナリストの石渡嶺司氏が言う。 「前回の不祥事は、理事長という学生からは遠い存在の問題でした。今回は学生であるアメフト部員の逮捕と事件を巡る日大の隠ぺいやパワハラ体質が明るみになったのが大きいでしょう。結果的にアメフト部の廃部と酒井健夫学長、澤田康広元副学長の辞任で幕引きをはかったが、部の関係者が処分されるわけではなく問題がうやむやにされた印象。近年ハラスメントという言葉に敏感になったのもあってマイナスに作用しています」 その後、澤田元副学長は薬物事件を巡る対応で、林真理子理事長にパワハラを受けたとして裁判を起こしている。 また、元理事長の脱税事件などを受け不交付になっていた国の補助金も3年連続不交付が決まっており、「学費が上がるのではないか」と疑念を持たれる事態も続いている。 「もうひとつ、日大は学生に魅力を持たれる取り組みが実行できていない点も志願者数に響いています。マンモス大学ですがキャンパスが学部ごとでバラバラで、ほとんどが1学部1キャンパス。東洋、駒沢、専修大は基本複数部を1つのキャンパスに集めていますが、傾向として都心に複数の学部を集める方が志願者が集まりやすい。こうした改革ができるかも今後に響いてきます。日大は10年前までは『日東駒専』のトップでしたが、その後、東洋大が逆転し、駒沢、専修に並んでいました。今年並みの激減が数年続けば、偏差値にも影響しますからグループから離脱する可能性があります」(前出の石渡嶺司氏) かつての勢いを取り戻すことはできるのか』、「元理事長の脱税事件などを受け不交付になっていた国の補助金も3年連続不交付が決まっており、「学費が上がるのではないか」と疑念を持たれる事態も続いている・・・日大は10年前までは『日東駒専』のトップでしたが、その後、東洋大が逆転し、駒沢、専修に並んでいました。今年並みの激減が数年続けば、偏差値にも影響しますからグループから離脱する可能性があります・・・今年並みの激減が数年続けば、偏差値にも影響しますからグループから離脱する可能性があります」、『日東駒専』の「グループから離脱する可能性」、とは本当に深刻だ。以上が日大関連だ。

第四に、2月20日付け産経新聞「千葉大学長選巡り、国際学術研究院執行部と理学研究院教授会も要望書 選考プロセスに反発」を紹介しよう。
https://www.sankei.com/article/20240220-HI5GK6I2PVKENBSAAMM2J5YCJY/
・『千葉大学の新学長選出を巡り、一部の教授会が選考過程が不透明だとして反発している問題で、15日付で同大大学院理学研究院教授会が、16日付で国際学術研究院の執行部が、選考にあたった「学長選考・監察会議」に対し、それぞれ要望書を提出したことが20日、分かった。 要望書では現副学長で医学部付属病院長の横手幸太郎氏(60)を新学長に決めた選考過程の詳細の議事録公開などを求めた。 大学・大学院の教員らによる学内投票で、横手氏は1位の文学系の候補者に次ぐ2位だったが、1月25日に行われた学内外の14人による選考会議で新学長に決まった。 これに反発した大学院人文科学研究院や教育学部の各教授会も既に、選考会議に質問書を出す異例の事態が生じている』、「現副学長で医学部付属病院長の横手幸太郎氏(60)を新学長に決めた選考過程の詳細の議事録公開などを求めた。 大学・大学院の教員らによる学内投票で、横手氏は1位の文学系の候補者に次ぐ2位だったが、1月25日に行われた学内外の14人による選考会議で新学長に決まった』、この記事は余りに短いので、詳細は不明で、「大学・大学院の教員らによる学内投票」と「学内外の14人による選考会議」の関係が不明だが、恐らく後者は前者の結果を尊重するが、独自の判断で決定するのだろう。「新学長」は「現副学長で医学部付属病院長」なのであれば、きっと「1位の文学系の候補者」よりも有力者なのだろう。

なお、明日は更新を休むので、明後日にご期待を!
タグ:大学 (その15)(「林真理子理事長は田中英寿・元理事長派に脅されている」“親友”和田秀樹氏が語る「日大理事辞任」の真相、日大常務理事を電撃辞任した和田秀樹氏が激白 アメフト部“大麻汚染”問題のウラにひそむ「日大改革の“抵抗勢力”と権力の二重構造」、アメフト部問題で日大が前代未聞の志願者数3割減…「日東駒専」から脱落へ崖っぷち、千葉大学長選巡り 国際学術研究院執行部と理学研究院教授会も要望書 選考プロセスに反発) FLASH「「林真理子理事長は田中英寿・元理事長派に脅されている」“親友”和田秀樹氏が語る「日大理事辞任」の真相」 「工学部長が、和田氏が日本テレビの取材に対して「澤田副学長の解任は私が理事会で提案した」と明かしていたことを問題視して、追及を始めたのだ。 「『澤田氏はたんなる私的会話でしょう。あなたは理事会の内容をマスコミに漏らしたんだから、そのほうがタチが悪い』と反論されて唖然としました」、 「工学部長」の言い分は全く筋が通らない学者にあうまじき発言だ。「それから約1カ月後――。突如、思いもよらずはしごを外される。 「林先生から『和田先生には辞めていただくことになりました。“辞めてやるって言った人をなんで置いておくんだ”と言う人がいて、和田先生がいると困るのよ』と、辞任するよう告げられたんです」 20年来の親友から“三顧の礼”で迎えられるも、わずか1年半年足らずの解任劇。和田氏は、日本大学の旧態依然とした体質に失望したという。 「林先生の口ぶりから、学部長たちから私を辞めさせるよう恫喝されたのだと感じました。というのも、林先生が理事長になったとき、“理事長が指名できる理事は2人まで”“経営に専念すべきで教学には口を出さない”といった“足かせ”をはめられたんです。ところが、学部長メンバーは田中時代のまま。日本大学の旧態依然とした既得権益を守ろうとする体質は、田中元理事長がいたころと変わっていません。林先生は、そういった連中に脅されているのかもしれません」、いくら「脅された」としても、唯一の理解者たる「和田氏」に「辞任」を迫るとは、 デイリー新潮「日大常務理事を電撃辞任した和田秀樹氏が激白 アメフト部“大麻汚染”問題のウラにひそむ「日大改革の“抵抗勢力”と権力の二重構造」」 「澤田康広・副学長(当時)が昨年9月に林理事長と面会した際の会話を録音し、それが外部に漏洩した件を私が引き合いに出すと、“漏洩よりマスコミに直接話すほうが悪い”と決めつけられました」、実に論理の片鱗すらない言いがかりを「学部長」あ堂々と主張するとは、茶番だ。 「“学部長会議が不可侵の存在”と誤認させかねない危うさを秘めていた」とはガバナンス不全の極みだ。 「いざ問題が起きた際、責任を問われるのは学部長会議のメンバーでなく、理事会などの執行部という点に大きな違和感を覚えました。たとえばアメフト部の部長は日大の文理学部長が兼ねていましたが、一連の薬物問題を受け、この学部長は昨年12月に(アメフト部)部長職を解嘱された。しかし彼が林理事長などとともに解嘱」記者会見に出て批判の矢面に立つことは一度もありませんでした」、 「アメフト部の部長」の処分が単に「部長職を解嘱」というだけでは不十分だ。少なくとも「解嘱」を「記者会見」後とすべきだ。 「外部の経営者などを集めた“日大経営改革会議”のような第三者機関をつくれば、学内からの干渉を避けられ、改革は前進するはず」、との提案は大いに検討に値する。 日刊ゲンダイ「アメフト部問題で日大が前代未聞の志願者数3割減…「日東駒専」から脱落へ崖っぷち」 「元理事長の脱税事件などを受け不交付になっていた国の補助金も3年連続不交付が決まっており、「学費が上がるのではないか」と疑念を持たれる事態も続いている・・・日大は10年前までは『日東駒専』のトップでしたが、その後、東洋大が逆転し、駒沢、専修に並んでいました。今年並みの激減が数年続けば、偏差値にも影響しますからグループから離脱する可能性があります・・・今年並みの激減が数年続けば、偏差値にも影響しますからグループから離脱する可能性があります」、『日東駒専』の「グループから離脱する可能性」、とは本当に深刻だ。以 上が日大関連だ。 産経新聞「千葉大学長選巡り、国際学術研究院執行部と理学研究院教授会も要望書 選考プロセスに反発」 この記事は余りに短いので、詳細は不明で、「大学・大学院の教員らによる学内投票」と「学内外の14人による選考会議」の関係が不明だが、恐らく後者は前者の結果を尊重するが、独自の判断で決定するのだろう。「新学長」は「現副学長で医学部付属病院長」なのであれば、きっと「1位の文学系の候補者」よりも有力者なのだろう。 なお、明日は更新を休むので、明後日にご期待を!
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株式・為替相場(その21)(ついに4万円突破!日経平均株価が大台に乗った意味と「続伸の条件」とは?、株価最高値の陰で「スタグフレーション」に落ち込んだ日本 春闘高賃上げは“悪循環”?、株高は「日本を見る目が変わった」論の正体 株価上昇は“中進国降格”を織り込み始めた?) [金融]

株式・為替相場については、本年3月2日に取上げた。今日は、(その21)(ついに4万円突破!日経平均株価が大台に乗った意味と「続伸の条件」とは?、株価最高値の陰で「スタグフレーション」に落ち込んだ日本 春闘高賃上げは“悪循環”?、株高は「日本を見る目が変わった」論の正体 株価上昇は“中進国降格”を織り込み始めた?)である。

先ずは、本年3月5日付けダイヤモンド・オンラインが掲載sた多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「ついに4万円突破!日経平均株価が大台に乗った意味と「続伸の条件」とは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/339838
・『3月4日、日経平均株価の終値が史上初めて4万円を超えた。主に海外投資家の積極的な日本株買いによって、株価だけは“失われた30年”の出口にたどり着きつつある。問題は、わが国の実体経済を前に進められるか否かだ。さらなる株価上昇に必要な取り組みとは?』、興味深そうだ。
・『34年ぶり高値更新!4万円台突入の意味  日経平均株価が連日、最高値を更新している。背景にはまず、世界的な金融市場の“カネ余り”がある。米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げへの期待も、株価が上昇する支えになっている。わが国だけでなく、景気がかなり厳しいドイツなど欧州諸国の株価も上昇している。一方、不動産バブル崩壊で景気低迷が深刻な中国の株価は下落し、中国から逃避した投資資金がわが国やインド株に流れている。 また、海外投資家の日本経済の見方が変化してもいる。高い賃金を提示し中途採用を増やす企業が増えるなど、日本の労働市場にも徐々に変化が見られ始めたからだ。東証が株価純資産倍率(PBR)1倍割れの企業に、成長戦略の提示と説明などを求めたことも、日本経済の変化への期待につながった。 政府の産業政策の修正も追い風だ。今のところ、米欧以上にわが国の半導体関連の助成金支給スピードは速い。台湾の半導体ファウンドリーTSMCが熊本県に大型工場を開所したことを呼び水に、同県内では半導体および製造装置、関連部材メーカーなどが積極的に設備投資を実施している。自動車けん引型の日本の産業構造が変わると期待する、欧米の機関投資家は増えている。 23年初旬から日本株を購入したある海外投資家は、「インフレ傾向の中、賃上げに対して企業が積極的な姿勢を強めていることや、産業政策の変化で日本経済と日本株は長期停滞から脱却する入り口に到達した」と指摘していた。 米国経済の想定以上の成長も重要だ。米国では労働市場の需給がタイトに推移し、賃金上昇の勢いは強い。それは個人消費の増勢を支えている。生成AIの需要が急増したことで米国の半導体関連株が上昇していることも、日本株上昇にプラスに作用している』、「海外投資家は、「インフレ傾向の中、賃上げに対して企業が積極的な姿勢を強めていることや、産業政策の変化で日本経済と日本株は長期停滞から脱却する入り口に到達した」と指摘」、なるほど。
・『デフレからインフレへ経済環境の変化  株高と併せて何といっても見逃せない変化の一つは、経済がインフレ傾向に変わっていることだ。わが国のインフレは、基本的に円安と資源や食料の価格上昇(コストプッシュ型)ではあるものの、デフレからインフレへと変化したことは事実。ここ数年、企業は収益を守るために値上げを実施していて、家計はそれを受け入れざるを得ず、消費者物価指数の上昇率は2%を上回った。 日経平均株価は、1989年末に当時の高値(3万8915円87銭)を付けたが、90年の年初から下落し、資産バブルは崩壊した。90年以降の経済環境を改めて振り返ると、バブル崩壊により企業は急激な資産価格下落と景気悪化に直面し、極端なリスク回避に傾いた。政府は不良債権処理を加速するよりも、97年度までは公共事業関係費を増やした。こうしてバブルの後始末は遅れ、97年には金融システム不安が起きた。 不良債権問題が深刻化すると、デフレ圧力が高まった。さらに2008年9月のリーマンショックも、景気低迷を長引かせた。賃金水準は低迷して需要が減少し、持続的に物価が下落するという負の循環にわが国は陥った。また、電機産業などで国際分業への対応が遅れたことで、デジタル化への対応も遅れ、企業業績への懸念から国内の株価は低迷した。 ちなみに米国は、1929年の大恐慌で株価が暴落した後、当時の高値更新に約25年かかった。一方、わが国の高値更新に要した34年の歳月は、米国に比較してはるかに長い。それだけ80年代後半のわが国では、大規模な資産バブルが発生し崩壊の負の影響も深刻だったということだ。 デフレから脱しつつあるのと時を同じくして、新卒一括採用・年功序列・終身雇用の雇用慣行が徐々に崩れ、実力に応じた賃金制度を採用する企業が増えている。労働市場の流動性は高まっており、賃上げできなければ淘汰(とうた)される企業も増えるだろう。 労働市場の流動性が高まり、生産性の高い分野に経営資源が再配分されるようになることは、経済の本来あるべき姿であり、そこにわが国も向かい始めた。「現状維持を優先するだけでは成長は難しい」と考える経営者は増えている。 収益性の向上に取り組み、株主への価値還元やさらなる賃上げ、研究開発体制の強化など成長戦略を強化する企業も増えている。こうした結果、やっとのことで“失われた30年”から抜け出す入り口に日本はたどり着いたといえるだろう』、「米国は、1929年の大恐慌で株価が暴落した後、当時の高値更新に約25年かかった。一方、わが国の高値更新に要した34年の歳月は、米国に比較してはるかに長い。それだけ80年代後半のわが国では、大規模な資産バブルが発生し崩壊の負の影響も深刻だったということだ・・・収益性の向上に取り組み、株主への価値還元やさらなる賃上げ、研究開発体制の強化など成長戦略を強化する企業も増えている。こうした結果、やっとのことで“失われた30年”から抜け出す入り口に日本はたどり着いたといえるだろう」、その通りだ。
・『実体経済の回復なき株価上昇、課題は?  株価が最高値を更新する一方、わが国では「景気回復を感じない」との声が多い。「実体経済の力強い回復なき株価上昇」の様相を呈していることは注目すべきだ。今後は、わが国が“失われた30年”から本当に抜け出せるかが重要なポイントとなる。少子高齢化、人口の減少、社会保障関係費の増大による財政悪化など、状況は厳しい。 ただ、希望はあるはずだ。企業で賃上げの重要性が高まっている。賃上げは、従業員の生活の安定のみならず、学び直しやリスキリングへの意欲も支える。これは、企業が成長性を高めることや、雇用の流動化、本来あるべき経済の循環の実現に必要だ。 政府や企業は、限りのある人材が実力を高め、さらに高い賃金を手にできる環境を整備することに注力すべきだ。それは、先端分野へ経営資源を再配分する促進となり、より高付加価値のモノやサービスの創出を支える。こうした変化が本格化すると、今のようなインフレではなく、安定的な物価上昇の可能性が高まり、真の意味でデフレマインドを根本から克服するチャンスとなる。 また、国を挙げて成長産業を育成することは欠かせない。米エヌビディアの好決算を見ても、世界中で生成AIの需要が急増していることは明らかだ。AIチップを製造するTSMCの熊本工場に続けと言わんばかりに、関連する精密機械、パワー半導体などの分野でも工場建設が相次ぐ。北海道ではラピダスが回路線幅1ナノ(ナノは10億分の1)メートルのチップ生産を計画する。わが国で半導体産業が復活を遂げる可能性に期待が高まっている。 23年7~9月期、10~12月期、国内のGDP成長率はマイナスだった。1~3月期もマイナス成長に陥る可能性は高い。中国経済が低迷する懸念が追加的に高まれば、設備投資の下ぶれリスクも上昇する。 今後、海外投資家がわが国経済に一段と期待を高めるか否かは、政府や企業のやり方次第だ。決して株高を楽観視せずに、政府は半導体分野などで民間企業のリスクテイクをサポートする。企業はより積極的に収益性の向上を実現する。世界経済の変化を迅速に捉えつつ、この両輪を回すことこそ、わが国経済が真の意味で生まれ変わり、さらなる株価上昇に必要な取り組みである。 【訂正】記事の初出時より以下の通り訂正します。 8段落目:日経平均株価は、1987年末に→日経平均株価は、1989年末に(2024年3月5日13:21 ダイヤモンド編集部)』、「今後、海外投資家がわが国経済に一段と期待を高めるか否かは、政府や企業のやり方次第だ。決して株高を楽観視せずに、政府は半導体分野などで民間企業のリスクテイクをサポートする。企業はより積極的に収益性の向上を実現する。世界経済の変化を迅速に捉えつつ、この両輪を回すことこそ、わが国経済が真の意味で生まれ変わり、さらなる株価上昇に必要な取り組みである」、同感である。

次に、3月14日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏による「株価最高値の陰で「スタグフレーション」に落ち込んだ日本、春闘高賃上げは“悪循環”?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/340415
・『1月も消費者物価2%上昇、実質GDPは低迷 定義どおりのスタグフレレーション  日本の消費者物価上昇率は、一時よりは低下したものの、依然として高い。 2024年1月の生鮮食品を除く総合指数の前年同月比は2.0%だった。日本銀行も現在の状況はインフレーションだと認めている。 他方で、23年10~12月の実質GDP(国内総生産)速報値(1次)は前期比0.1%減(年率0.4%減)となった。3月11日に公表された2次速報では、同0.1%増(同0.4%増)と修正され2四半期連続のマイナス成長は免れたものの、低迷していることは間違いない。 経済が成長せずに物価が上昇するのだから、これは定義どおりの明白なスタグフレーションだ。 日経平均株価が史上最高値を更新しつつあったことから、日本経済が新たな発展の局面に入ったという意見がある。これから新しい発展の時代が始まるという見方だ。 しかし実際に起きているのは、それとは全く逆であり、日本経済がスタグフレーションという「深刻な病」に落ち込んでいることなのだ。 春闘の主要製造業の集中回答日だった13日には、トヨタ自動車や新日本製鉄などで「満額回答」や「最高水準」の賃上げ回答が目立った。 春闘などでの賃上げが経済停滞を抜け出す糸口になることへの期待もあるが、今の状況では賃上げが“逆効果”になることもあり得る』、「経済が成長せずに物価が上昇するのだから、これは定義どおりの明白なスタグフレーションだ。 日経平均株価が史上最高値を更新しつつあったことから、日本経済が新たな発展の局面に入ったという意見がある。これから新しい発展の時代が始まるという見方だ。 しかし実際に起きているのは、それとは全く逆であり、日本経済がスタグフレーションという「深刻な病」に落ち込んでいることなのだ」、その通りだ。
・『さまざまな指標が経済活動停滞を裏付け 家計消費や鉱工業生産も減少  経済活動の停滞は、GDP以外にもさまざまな指標で確かめることができる。 家計調査によると、23年12月の家計消費支出(2人以上の世帯)の実質増減率は、前年同月比で2.5%の減少だった。24年1月は同6.3%減とさらに落ち込んだ。 輸出でも同様の傾向が見られる。22年の輸出額は、円建てでは前年比18.2%増となったものの、ドル建てでは同0.9%の減少となった。輸出数量で見ても、同0.6%減と落ち込んだ。23年も同様の結果で、円建ての輸出額は同2.8%増だったものの、ドル建てでは4.3%減と2年連続で減少。輸出数量も同3.9%減と落ち込んだ(ジェトロの統計による)。 輸出数量が増えないため、国内の生産活動も増加しない。生産活動の落ち込みは鉱工業生産指数で確かめることができる。21年に新型コロナウイルスの感染拡大による落ち込みから回復して以来、指数は104~105程度でほとんど変化がない(2020年=100、季節調整済み)。 最近の計数をみると、1月の鉱工業生産指数速報値は97.6となり前月比で7.5%低下した。低下幅はコロナの感染が広がった20年5月以来の大きさだ。これには、品質不正による自動車メーカーの工場停止が影響しているが、生産は全15業種のうち14業種で下がったので、自動車だけが問題であるわけではない。 なお、円安が輸出数量や鉱工業生産指数に影響を与えないのは、過去の円安局面でも起きていることだ』、「1月の鉱工業生産指数速報値は97.6となり前月比で7.5%低下した。低下幅はコロナの感染が広がった20年5月以来の大きさだ。これには、品質不正による自動車メーカーの工場停止が影響しているが、生産は全15業種のうち14業種で下がったので、自動車だけが問題であるわけではない」、確かに1月の落ち込みは深刻だ。
・『輸出企業の利益増は円安効果 円高になれば反転する現象  一方、企業の利益は円安によって増大している。 企業全体としてはあまり大きな増加でないのだが、一部の企業、とくに輸出関連の大企業で利益が顕著に増えている。 その典型がトヨタ自動車だ。22年3月期の営業利益は対前年比36.3%増の2兆9956億円と3兆円に迫った。23年3月期の営業利益は原材料高の影響でやや落ち込んだものの、24年3月期は過去最高の4.9兆円に達する見通しだ(トヨタ自動車、業績ハイライト・財務指標)。 円安が経済活動の実態を変化させずに企業利益だけを増加させるのは、従来の円安局面と同じ現象であり、新しいことではない。輸出数量が増えなくても円安によって円ベースの輸出額が増え、他方で、円安による原材料価格の上昇は製品価格に転嫁するからだ。 24年になってからの円安についても、同じことが起きるとの期待があり、これが株価が上昇している一因と考えられる。だがこれは、円高になれば反転する現象であり、永続的なものでない』、「円安が経済活動の実態を変化させずに企業利益だけを増加させるのは、従来の円安局面と同じ現象であり、新しいことではない。輸出数量が増えなくても円安によって円ベースの輸出額が増え、他方で、円安による原材料価格の上昇は製品価格に転嫁するからだ・・・24年になってからの円安についても、同じことが起きるとの期待があり、これが株価が上昇している一因と考えられる」、なるほど。
・『輸入物価下落しても消費者物価は上昇 価格転嫁のメカニズムが変化?  現在の局面が従来と大きく違うのは、輸入物価と消費者物価の関係だ。 従来の円安局面では、円ベースの輸入物価は上昇することが多かった。しかし、現在は世界的なインフレが収束しつつあるので、契約通貨ベースの輸入物価が下落している。このため、円安が進行しているにもかかわらず、円ベースの輸入物価の対前年同月比が2023年4月以降、下落を続けているのだ。 また輸入物価と消費者物価の関係も従来と違ってきている。 これまでの日本では、消費者物価の動向はほぼ円ベース輸入物価の動向によって決まっていた。具体的には、消費者物価の対前年上昇率は半年ほど前の円ベース輸入物価の対前年上昇率の10分の1程度の値になっていた。 これは、輸入物価の上昇が取引段階ごとに製品価格に転嫁されていくが、下流に行くにしたがってその影響が薄められることから、当然の現象だ。 もしこのメカニズムがいまも働いているとすれば、消費者物価はいま下落しているはずだ。なぜなら、前述のように円ベースの輸入物価指数は2023年4月から、対前年比でマイナスに転じているからだ。 しかし、実際には、消費者物価上昇率は対前年比2%という、かなり高い値だ。だから、従来の価格転嫁メカニズムに変化が生じたと考えざるを得ない。 なぜ変わったのか?その理由として第1に考えられるのは、この数年の輸入物価上昇率があまりに高かったため、転嫁に時間がかかっていることだ。 第2に考えられるのは、賃金上昇の影響だ。実際、調理食品(6.6%)や宿泊費(26.9%)などいくつかの品目で消費者物価の対前年上昇率が高い(2024年1月)。そして、この分野で賃金が上昇している。 毎月勤労統計調査によると、飲食サービス業の現金給与総額の対前年増加率は8.5%というかなり高い値になっている(一般労働者、2023年速報)。だから賃金上昇が価格に転嫁されている可能性がある。 ただし、これが永続的なものなのか一時的なものなのかはわからない』、「従来の価格転嫁メカニズムに変化が生じたと考えざるを得ない。 なぜ変わったのか?その理由として第1に考えられるのは、この数年の輸入物価上昇率があまりに高かったため、転嫁に時間がかかっていることだ。 第2に考えられるのは、賃金上昇の影響だ。実際、調理食品(6.6%)や宿泊費(26.9%)などいくつかの品目で消費者物価の対前年上昇率が高い(2024年1月)」、なるほど。
・『生産性上昇しないコストプッシュインフレで 賃金と物価の「悪循環」が生じるおそれ  日本銀行は、金融政策の正常化の条件として、2%を超える消費者物価上昇率を望んでいる。しかし、重要なのは物価上昇率が2%を超えるかどうかではなく、物価上昇がどのようなメカニズムで起きるかだ。 生産性の上昇に基づいて賃金が上昇し、そのために家計の消費需要が増え、そのために物価が上昇するというルートでなければならない。 しかし、生産性上昇を伴わずに賃金が上昇し、それが売上げ価格に転嫁されるというコストプッシュインフレであれば、賃金上昇も物価上昇も望ましくない現象だということになる。そうしたメカニズムが、少なくとも経済の一部で進行している可能性がある。 今春闘については政府や日銀は高い賃上げを期待しているが、こうした状況下で、春闘などを通じて賃金を無理矢理に引き上げれば、それが物価に転嫁され、コストプッシュインフレが経済全体に広がる危険がある。 つまり、賃金上昇と物価上昇の「悪循環」が始まるわけだ。 その一方で実体経済がマイナス成長を続ければ、日本経済はスタグフレーションの罠から抜け出せなくなるおそれがある』、「春闘などを通じて賃金を無理矢理に引き上げれば、それが物価に転嫁され、コストプッシュインフレが経済全体に広がる危険がある。 つまり、賃金上昇と物価上昇の「悪循環」が始まるわけだ。 その一方で実体経済がマイナス成長を続ければ、日本経済はスタグフレーションの罠から抜け出せなくなるおそれがある」、その通りだ。

第三に、3月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したみずほ銀行 チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏による「株高は「日本を見る目が変わった」論の正体、株価上昇は“中進国降格”を織り込み始めた?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/340555
・『年初からの株高で「日本を見る目が変わっている」論が幅を利かせている。日本経済、日本企業の変革が期待されているというわけである。しかし、株高の実態は、円安から波及してきたインフレと輸出企業の業績向上に過ぎない。実質成長率は低迷している。これは、日本が「先進国」ではなく「中進国」であると、見る目が変わってきている証左ではないだろうか』、「株高の実態は、円安から波及してきたインフレと輸出企業の業績向上に過ぎない。実質成長率は低迷している。これは、日本が「先進国」ではなく「中進国」であると、見る目が変わってきている証左ではないだろうか」、由々しい出来事だ。
・『年初からの株高はインフレのおかげ  普段、筆者は為替市場を中心とした経済・金融分析を中心としており、株式の専門家ではないが、今年に入ってから日本が直面している株高の真因を問われた場合は「インフレのたまもの」と回答するようにしている。 現在の日本は株や不動産の価格が上がり、自国通貨の値段が下がり、高級外車や高級時計のような輸入品の価格も押し上げられている。それら全てを説明できるフレーズはインフレである。植田日銀総裁を筆頭に日銀から物価目標達成をにおわせるような情報発信が相次ぎ、遂に政府・与党がデフレ脱却宣言に踏み切るという観測報道まで出ている。 これまで慢性的な円高や上がらない株価、低位安定する円金利や停滞する名目賃金などはデフレの象徴のように忌み嫌われてきた。裏を返せば、デフレ脱却の暁にはそれらの現象は逆転しても不思議ではない。 現に、円安は終わらず、株価は急伸、円金利も(政策的に抑えているので、わずかだが)浮揚が見られ、名目賃金も続伸している。もちろん、日本企業の業績改善を織り込んだ部分もあろうが、デフレ脱却というパラダイムシフトを前提として、日本経済に対する「見る目が変わっている」という評価はできる。 だが、「見る目が変わっている」が良い意味とは限らない。次ページ以降、その正体について検証していく』、「円安は終わらず、株価は急伸、円金利も(政策的に抑えているので、わずかだが)浮揚が見られ、名目賃金も続伸している。もちろん、日本企業の業績改善を織り込んだ部分もあろうが、デフレ脱却というパラダイムシフトを前提として、日本経済に対する「見る目が変わっている」という評価はできる。 だが、「見る目が変わっている」が良い意味とは限らない」、どういうことだろうか。
・『「中進国」容疑をかけられる日本 GDPの名実格差が意味するもの  下表は日経平均株価が初めて4万円台に乗せた2024年3月4日について、過去1年間の主要株価指数の上昇率トップ10と当該国通貨の対ドル変化率を並べたものだ。 (図表1:世界の主要株価指数(上昇率トップ10) はリンク先参照) 対ドル変化率に関し、上位10カ国平均が約マイナス26%、上位5カ国平均が約マイナス40%にもなる。また、見ての通り、上位10カ国において先進国は日本だけだ。また、対ドル変化率について、日本より下落幅が小さい国は4カ国、大きい国が5カ国である。濃淡はあるものの、いずれの国も対ドルで下落しているという事実は共通する。 インフレ体質の国では自国通貨が減価しやすく、それにより自国通貨建てで見た株価指数の水準も押し上げられやすくなる。それは理論的に言って正しい姿だ。そのような症状は途上国に多く見られるが、日本のような先進国ではあまり見られるものではない。 結局、日本経済に対する「見る目が変わっている」というのは先進国や途上国といった所属する国グループについて猜疑(さいぎ)心が向けられているという意味ではないか。 発展途上国から脱し、先進国に至る途上にある国を中進国と呼ぶことがあるが、その容疑がかかっている可能性もある。 株高にもかかわらずそれを喜ぶ議論があまり見られず、実体経済の弱さばかりに焦点がいくのはそもそも日本の家計部門において株式・出資金の保有比率が低いという以前に、インフレになった分が、十分家計部門に分配されていないという根本的問題があるだろう。 「株式・出資金保有比率が低い」という点については目下、「資産運用立国」論を旗印として対処中であり、良しあしは別として、今後は違った姿に変わっていくことが期待される。この点は時間の問題であり、待つしかない。 しかし、株高(や円安や不動産価格上昇など)がインフレ由来のものであったと考えた場合、当然、実体経済を分析する上ではGDP(国内総生産)の名実格差に触れないわけにはいかなくなる。 デフレ下の日本ではGDPの名実逆転(実質GDP>名目GDP)が象徴な事実として取り上げられてきた。しかし、インフレ社会となれば、通常想定される姿(実質GDP<名目GDP)が定着することになる。 既に政府見通しが出ているように、24年度の日本経済は第2次安倍政権が掲げていた「GDP600兆円」という目標達成が視野に入るといわれている(※安倍政権が「2020年度までに600兆円」と掲げたのが2015年だ)。この点、好意的な報道が多いと感じるが、そもそも600兆円は名目ベースの目標であり、実質ベースの目標には何も言及されてこなかったことには注意を要する。 周知の通り、インフレになれば名目GDPは当然膨らむ。本質的に重要になるのはインフレを除いた部分、端的には実質GDPでどの程度の伸びを実現しているかという点だ。実質GDPが成長を伴わず、名目GDPだけが600兆円を達成しても景気実感は生じにくい。 例えば22年から23年にかけて名目GDPは約560兆円から約591兆円へ、約31兆円増えた。しかし、同じ期間に実質GDPは約548兆円から約559兆円へ約11兆円しか増えていない。つまり、残る約20兆円がインフレによる上乗せであり、これは日本国民にとって成長とは言えない。このような状況もあって2023年の日本経済では名目GDP成長率5.7%に対し、実質GDP成長率は1.9%にとどまった。 (図表2:日本のGDP はリンク先参照)』、「インフレになれば名目GDPは当然膨らむ。本質的に重要になるのはインフレを除いた部分、端的には実質GDPでどの程度の伸びを実現しているかという点だ。実質GDPが成長を伴わず、名目GDPだけが600兆円を達成しても景気実感は生じにくい」、なるほど。
・『輸出企業はインフレを価格転嫁 中進国へのステップダウンが始まったか  身近な例で言えば、家計最終消費は名目ベースでは約11.4兆円伸びているが、このうちインフレによる上乗せは約9.4兆円で、実質ベースでは約2兆円しか増えていない。成長率で見れば、3.8%に対し0.7%なので、ほとんどの消費行動がインフレに食われていることが分かる(下図参照)。 (図表3:日本のGDP はリンク先参照) 当然、インフレになれば短期的には売り上げや利益は増えて、株価も押し上げられやすくなる。しかし、それは消費者が「無い袖を振って」消費している結果でもある。結果、「株高にもかかわらず内需の勢いに乏しい」という今の日本のような状況が生まれる。基本的に「無い袖は振れない」ので、長期的には名目GDPと実質GDPの乖離(かいり)は広がっていく。 ちなみに図表1を見ても分かるように、実質GDPの中でも、輸出だけは健闘しているように見える。名目ベースで約8.1兆円増加しているのに対し、実質ベースでは約3.3兆円、インフレによる上乗せ分は約4.8兆円とやはりインフレ部分が大きいものの、家計最終消費や設備投資と比較すれば相対的にましという印象を受ける。 これは輸出企業が海外においてインフレ部分を価格転嫁できている証拠でもある。関連統計からも確認可能だ。2023年7月以降、輸出物価指数は契約通貨建て(いわゆる現地通貨建て)で見ても上昇基調に入っており、内外のインフレ圧力と整合的に価格転嫁を実現している様子が透ける。 (図表4:輸出物価指数の前年比変化率 はリンク先参照) 理論上、円安が輸出企業に与える影響は「契約通貨建て価格の引き下げ→輸出数量増加」という経路だ。例えば、実勢相場が「1ドル100円」の時に1ドルでボールペンを輸出していたとする。ここから「1ドル=120円」に円安が進めば0.83ドル(0.83×120円≒100円)で輸出しても円建て売上高を維持できる。 しかし、統計を見る限り、今の日本の輸出企業がやっていることはボールペンを1.2ドルや1.5ドルなどに引き上げる動きである。当然、円建て売上高も大きく膨らむ(例:1.2ドル×120円≒144円)。もっと言えば、この例よりもはるかに円安は進んでいるので、輸出企業の円安による業績改善幅はさらに大きいものになる。 結果、輸出企業は実質ベースでの成長も相応に確保できているのだとすると、それを国内の家計部門(≒名目賃金)に還元できるかが焦点になる。 結局、「賃上げはあるのか」といういつも通りの話に戻ってきてしまうわけだが、それが十分ではないからこそ実質ベースで見た家計最終消費がほとんど伸びていないという実情は認めざるを得ないだろう。 日本銀行の言葉を借りれば、賃金・物価の好循環(≒第2の力)が発揮されているとは残念ながら言えない。株高の背景にあるものが「インフレに押し負ける実体経済情勢」であり、それが先進国から中進国へステップダウンを織り込む相場だとすれば、まだ、この円安・株高には先があるようにも読める。残念ながら、そのような仮説を覆すだけの十分な材料が無いのが実情ではないか』、「日本銀行の言葉を借りれば、賃金・物価の好循環(≒第2の力)が発揮されているとは残念ながら言えない。株高の背景にあるものが「インフレに押し負ける実体経済情勢」であり、それが先進国から中進国へステップダウンを織り込む相場だとすれば、まだ、この円安・株高には先があるようにも読める。残念ながら、そのような仮説を覆すだけの十分な材料が無いのが実情ではないか」、「この円安・株高には先があるようにも読める」、どんな先なのだろうか、直ちには思い浮かばないので、じっくり考えてみたい。 
タグ:(その21)(ついに4万円突破!日経平均株価が大台に乗った意味と「続伸の条件」とは?、株価最高値の陰で「スタグフレーション」に落ち込んだ日本 春闘高賃上げは“悪循環”?、株高は「日本を見る目が変わった」論の正体 株価上昇は“中進国降格”を織り込み始めた?) 株式・為替相場 「海外投資家は、「インフレ傾向の中、賃上げに対して企業が積極的な姿勢を強めていることや、産業政策の変化で日本経済と日本株は長期停滞から脱却する入り口に到達した」と指摘」、なるほど。 真壁昭夫氏による「ついに4万円突破!日経平均株価が大台に乗った意味と「続伸の条件」とは?」 ダイヤモンド・オンライン 「米国は、1929年の大恐慌で株価が暴落した後、当時の高値更新に約25年かかった。一方、わが国の高値更新に要した34年の歳月は、米国に比較してはるかに長い。それだけ80年代後半のわが国では、大規模な資産バブルが発生し崩壊の負の影響も深刻だったということだ・・・収益性の向上に取り組み、株主への価値還元やさらなる賃上げ、研究開発体制の強化など成長戦略を強化する企業も増えている。こうした結果、やっとのことで“失われた30年”から抜け出す入り口に日本はたどり着いたといえるだろう」、その通りだ。 「今後、海外投資家がわが国経済に一段と期待を高めるか否かは、政府や企業のやり方次第だ。決して株高を楽観視せずに、政府は半導体分野などで民間企業のリスクテイクをサポートする。企業はより積極的に収益性の向上を実現する。世界経済の変化を迅速に捉えつつ、この両輪を回すことこそ、わが国経済が真の意味で生まれ変わり、さらなる株価上昇に必要な取り組みである」、同感である。 野口悠紀雄氏による「株価最高値の陰で「スタグフレーション」に落ち込んだ日本、春闘高賃上げは“悪循環”?」 「経済が成長せずに物価が上昇するのだから、これは定義どおりの明白なスタグフレーションだ。 日経平均株価が史上最高値を更新しつつあったことから、日本経済が新たな発展の局面に入ったという意見がある。これから新しい発展の時代が始まるという見方だ。 しかし実際に起きているのは、それとは全く逆であり、日本経済がスタグフレーションという「深刻な病」に落ち込んでいることなのだ」、その通りだ。 「1月の鉱工業生産指数速報値は97.6となり前月比で7.5%低下した。低下幅はコロナの感染が広がった20年5月以来の大きさだ。これには、品質不正による自動車メーカーの工場停止が影響しているが、生産は全15業種のうち14業種で下がったので、自動車だけが問題であるわけではない」、確かに1月の落ち込みは深刻だ。 「円安が経済活動の実態を変化させずに企業利益だけを増加させるのは、従来の円安局面と同じ現象であり、新しいことではない。輸出数量が増えなくても円安によって円ベースの輸出額が増え、他方で、円安による原材料価格の上昇は製品価格に転嫁するからだ・・・24年になってからの円安についても、同じことが起きるとの期待があり、これが株価が上昇している一因と考えられる」、なるほど。 「従来の価格転嫁メカニズムに変化が生じたと考えざるを得ない。 なぜ変わったのか?その理由として第1に考えられるのは、この数年の輸入物価上昇率があまりに高かったため、転嫁に時間がかかっていることだ。 第2に考えられるのは、賃金上昇の影響だ。実際、調理食品(6.6%)や宿泊費(26.9%)などいくつかの品目で消費者物価の対前年上昇率が高い(2024年1月)」、なるほど。 「春闘などを通じて賃金を無理矢理に引き上げれば、それが物価に転嫁され、コストプッシュインフレが経済全体に広がる危険がある。 つまり、賃金上昇と物価上昇の「悪循環」が始まるわけだ。 その一方で実体経済がマイナス成長を続ければ、日本経済はスタグフレーションの罠から抜け出せなくなるおそれがある」、その通りだ。 唐鎌大輔氏による「株高は「日本を見る目が変わった」論の正体、株価上昇は“中進国降格”を織り込み始めた?」 「株高の実態は、円安から波及してきたインフレと輸出企業の業績向上に過ぎない。実質成長率は低迷している。これは、日本が「先進国」ではなく「中進国」であると、見る目が変わってきている証左ではないだろうか」、由々しい出来事だ。 「円安は終わらず、株価は急伸、円金利も(政策的に抑えているので、わずかだが)浮揚が見られ、名目賃金も続伸している。もちろん、日本企業の業績改善を織り込んだ部分もあろうが、デフレ脱却というパラダイムシフトを前提として、日本経済に対する「見る目が変わっている」という評価はできる。 だが、「見る目が変わっている」が良い意味とは限らない」、どういうことだろうか。 「インフレになれば名目GDPは当然膨らむ。本質的に重要になるのはインフレを除いた部分、端的には実質GDPでどの程度の伸びを実現しているかという点だ。実質GDPが成長を伴わず、名目GDPだけが600兆円を達成しても景気実感は生じにくい」、なるほど。 「日本銀行の言葉を借りれば、賃金・物価の好循環(≒第2の力)が発揮されているとは残念ながら言えない。株高の背景にあるものが「インフレに押し負ける実体経済情勢」であり、それが先進国から中進国へステップダウンを織り込む相場だとすれば、まだ、この円安・株高には先があるようにも読める。残念ながら、そのような仮説を覆すだけの十分な材料が無いのが実情ではないか」、「この円安・株高には先があるようにも読める」、どんな先なのだろうか、直ちには思い浮かばないので、じっくり考えてみたい。
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異次元緩和政策(その44)(日銀が政策転換で日本経済は「アベノミクス終焉」へ…これから始まる「長く険しい道」、前編:日銀のマイナス金利解除は「遅きに失した」元副総裁の山口廣秀氏が語る金融政策正常化の道、後編:日本経済「2%超え金利にも耐性ある」日銀元副総裁の山口氏が語るマイナス金利解除後の世界) [金融]

異次元緩和政策については、昨年4月23日に取上げた。異次元緩和政策の全面的見直しを踏まえた今日は、(その44)(日銀が政策転換で日本経済は「アベノミクス終焉」へ…これから始まる「長く険しい道」、前編:日銀のマイナス金利解除は「遅きに失した」元副総裁の山口廣秀氏が語る金融政策正常化の道、後編:日本経済「2%超え金利にも耐性ある」日銀元副総裁の山口氏が語るマイナス金利解除後の世界)である。なお、「異次元緩和政策」は今回で終わりとし、次回からは金融政策にタイトルを変更する予定である。

先ずは、本年3月2日付け0現代ビジネスが掲載した経済評論家の加谷 珪一氏による「日銀が政策転換で日本経済は「アベノミクス終焉」へ…これから始まる「長く険しい道」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/126001?imp=0
・『日本銀行が2024年3月18日、19日に開催された金融政策決定会合で、マイナス金利政策の解除など大規模な金融緩和策の変更に踏み切った。利上げは17年ぶりであり、長く続いたゼロ金利政策がいよいよ終わりを告げる。今回の決定は、大規模緩和策によって激しく歪んだ日本の金融システムを正常化するための、長く険しい道のスタートラインに過ぎない。金利の上昇によって、むしろ国民生活への逆風は強くなる可能性が高く、ここからがむしろ本番といえるかもしれない』、興味深そうだ。
・『「インフレ」「デフレ」は悪いことなのか  日銀は2013年4月から市場に資金を大量投入して国債を買い上げ、金利をほぼゼロに抑える大規模緩和策を実施してきた。短期金利の調整だけでは不十分と判断した日銀は、本来、政策の対象外である長期金利にもその範囲を広げ、「イールドカーブ・コントロール」と呼ばれる長短金利操作に染めた。 短期間に大量の資金が提供されれば、市場にはインフレ期待が生じる。インフレ期待が生じれば、多くの企業が設備投資などを活性化させ、これが実体経済にプラスの効果を与えると、当時の安倍政権は考えていた。安倍政権は「デフレ脱却」を政治的なスローガンとして掲げていたが、本来、デフレ脱却という言葉は政治的スローガンにはなりえない。 なぜなら、インフレ、デフレというのは、あくまでも貨幣価値と物価の関係を示した用語に過ぎず、物価が上がればインフレ、下がればデフレというだけの意味であり、インフレやデフレそのものに良い悪いのニュアンスはないからである。 だがアベノミクスにおける「デフレ脱却」という言葉には明らかに、良いニュアンスが含まれている。この部分こそが、アベノミクス(=大規模緩和策)というものが持っていたレトリックの集大成といえるだろう』、「インフレ、デフレというのは、あくまでも貨幣価値と物価の関係を示した用語に過ぎず、物価が上がればインフレ、下がればデフレというだけの意味であり、インフレやデフレそのものに良い悪いのニュアンスはないからである。 だがアベノミクスにおける「デフレ脱却」という言葉には明らかに、良いニュアンスが含まれている。この部分こそが、アベノミクス・・・というものが持っていたレトリックの集大成といえるだろう」、その通りだ。
・『デフレだから不景気になったわけではない  上記で説明したように、当初、日本政府はインフレ期待に働きかけることによって設備投資を起点とする持続的な成長を実現しようと試みた。経済学的な一般論として市場にインフレ期待が醸成されれば、現金保有は相対的に不利になるため設備投資が増加する可能性が出てくる。 だが、それは経済全体が健全であればの話であって、将来に対する不安材料が大き過ぎたり、経済が機能不全を起こしている状況では、企業は設備投資に資金を回さない。不動産や外貨など安全資産に資金を退避させるにとどまり、インフレだけが進んで、実体経済はまったくよくならないというシナリオが濃厚となる。 筆者を含め、一部の専門家は、経済全体の仕組みを変えていく政策とセットにしなければ、単に物価上昇だけが進み、景気は良くならず、国民生活が苦しくなる可能性について指摘してきた。 だが当時は「デフレ脱却を最優先せよ!」「これしかない!」といった、感情的で声高な議論ばかりが横行し、アベノミクスが持つリスクについて、多くのメディアや専門家が無視するという異様な雰囲気であった。 ちなみに、不景気の時にはモノが売れず、物価が下がりがちなので、デフレになりやすい。したがって景気が悪い時にデフレになるのは自然なことではあるが、あくまで、それは不景気の結果としてデフレになったに過ぎない。 デフレの結果として不景気になったわけではなく、ましてや物価を上げたからといって景気が良くなるわけでもない。その意味では「デフレ脱却」というのは、まったくもって無意味な言葉だったといってよいだろう』、「当時は「デフレ脱却を最優先せよ!」「これしかない!」といった、感情的で声高な議論ばかりが横行し、アベノミクスが持つリスクについて、多くのメディアや専門家が無視するという異様な雰囲気であった・・・景気が悪い時にデフレになるのは自然なことではあるが、あくまで、それは不景気の結果としてデフレになったに過ぎない。 デフレの結果として不景気になったわけではなく、ましてや物価を上げたからといって景気が良くなるわけでもない。その意味では「デフレ脱却」というのは、まったくもって無意味な言葉だったといってよいだろう」、その通りだ。
・『本当の「円安最大の原因」  だが多くの国民が、「物価が上がって景気が良くなる」という意味で、「デフレ脱却」という言葉を理解しただろうし、ひょっとすると安倍氏自身も、そう思っていたかもしれない。さらに言えば、今でも大半の人がデフレ脱却=好景気と理解しているのではないだろうか。 だが何度も説明しているように、インフレ、デフレと景気が良いことは何の関係もなく、私たちの生活水準向上とも関係がない。景気が良くならなければ、私たちの生活水準も上がらないが、現状では景気が良くなっていない以上、私たちの生活も向上していない。むしろインフレによって物価が上がり、逆に生活が苦しくなっているのではないだろうか。 アベノミクスによる大規模緩和策は、世界でも突出した水準であり、失敗した際に被るリスクも超ド級である。ある意味で日本人は世界の中で自ら先頭に立ち、失敗した場合のリスクが致命的に大きい政策を、危険を顧みず実施するという、大変な役割を買って出た。 想定されていた通り、十分な成果は得られず、600兆円という空前絶後の国債の山という時限爆弾のみが残ってしまった。過去2年、日本円は1ドル=100円台から150円台まで、一気に3分の2まで減価している。 メディアでは日米の金利差が原因と報じているが、厳密にいえば金利差で為替が動くことはありえない。最終的には日米のマネー供給量の違い(とそれにともなう物価見通し)が円安最大の原因であり、エベレストのように積みあがった600兆円の国債の処理ができていないことが、激しい円安を招いているのだ。 GDP(国内総生産)と同規模のマネーを短期間で市場に大量供給しているにもかかわらず、それを吸収する経済活動の拡大が見込めない以上、当然のことながら、その大量のマネーはいつか制御不能な購買力増大として市場に跳ね返ってくる。つまり激しい円安と物価上昇である。 この2つこそが、経済成長に失敗したアベノミクスのツケとして、この先、日本人が引き受けなければならないリスクであり、過度な円安が進み始めた今、日銀にとってもはや残された時間は消滅しつつあった』、「大量のマネーはいつか制御不能な購買力増大として市場に跳ね返ってくる。つまり激しい円安と物価上昇である。 この2つこそが、経済成長に失敗したアベノミクスのツケとして、この先、日本人が引き受けなければならないリスクであり、過度な円安が進み始めた今、日銀にとってもはや残された時間は消滅しつつあった」、その通りだ。
・『正常化のタイミングは今しかない  日銀の本音としては、すぐにでも大規模緩和策をやめ、金利を引き上げないと日本経済が最悪の事態を迎える可能性があり、このタイミングでの政策転換以外、選択肢など存在しなかっただろう。 だが、多くの日本人はこうした現状について理解しておらず、景気にとって逆風となる金利の引き上げを実施することには大きな政治的ハードルを伴う。 しかし「神風」といってしまうと不謹慎かもしれないが、今回、日銀には2つの「神風」が吹いた。ひとつは物価上昇があまりにも激しく、多くのサラリーマンの生活が困窮していることから、企業が重い腰を上げ5%の賃上げに踏み切ったこと。もうひとつは自民党の裏金問題である。 今回の春闘で5%を超える回答が出たことで、少なくとも昨年と比較すれば賃金環境は大きく改善した。賃金が大幅に上がっていれば、金利の引き上げも容認されやすくなる。 政治的にも状況が大きく変わった。いくら経済的環境が整っても、大規模緩和策=アベノミクスであり、常に「政治」としてのニュアンスが付きまとう。 つい最近まで、自民党の安倍派を中心に、日銀のマイナス金利解除について「アベノミクスを否定するのか!」といった意見が出され、日銀の行動を強くけん制していた。だが、裏金問題が政権を揺るがす事態にまで発展し、今の自民党内にアベノミクス云々を議論している余裕はない。 逆に言えば、今のタイミングしか日銀にとっては正常化に踏み切ることはできず、ここで失敗すれば半永久的にタイミングを失う可能性が高かった。その意味では、日銀にとっては千載一遇のチャンスだったといえるかもしれない。 いずれにせよ、長く続いたアベノミクスはいよいよ終焉の時を迎えた。制御できないインフレという最悪の事態こそ回避できたかもしれないが、今回の決定は、長く続く正常化のほんの始まりに過ぎない』、「今回、日銀には2つの「神風」が吹いた。ひとつは物価上昇があまりにも激しく、多くのサラリーマンの生活が困窮していることから、企業が重い腰を上げ5%の賃上げに踏み切ったこと。もうひとつは自民党の裏金問題である。 今回の春闘で5%を超える回答が出たことで、少なくとも昨年と比較すれば賃金環境は大きく改善した。賃金が大幅に上がっていれば、金利の引き上げも容認されやすくなる。 政治的にも状況が大きく変わった。いくら経済的環境が整っても、大規模緩和策=アベノミクスであり、常に「政治」としてのニュアンスが付きまとう・・・日銀にとっては千載一遇のチャンスだったといえるかもしれない。 いずれにせよ、長く続いたアベノミクスはいよいよ終焉の時を迎えた。制御できないインフレという最悪の事態こそ回避できたかもしれないが、今回の決定は、長く続く正常化のほんの始まりに過ぎない」、その通りだ。

次に、3月12日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した日本銀行元副総裁・日興リサーチセンター理事長の山口廣秀氏インタビュー:「前編:日銀のマイナス金利解除は「遅きに失した」元副総裁の山口廣秀氏が語る金融政策正常化の道」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/340302
・『日本銀行が3月18、19日に開く金融政策決定会合で、マイナス金利政策を解除する可能性が高まっている。今後の景気・物価動向、金利の見通し、異次元緩和からの出口戦略の進め方などについて日銀元副総裁である山口廣秀・日興リサーチセンター理事長へのインタビューを2回に分けてお届けする。前編では、もっと早くマイナス金利解除をすべきだった主張する山口氏に、2%物価目標達成の可否、金利引き上げの着地点などについて聞いた』、本音で語ることが多い「山口氏」への「インタビュー」とは興味深そうだ。
・『足元の景気に一服感 物価上昇が消費を抑制  Q:2024年の日本経済の動向をどうみますか。 A:足元、景気全体として一服感がでています。23年7~9月期はマイナス成長となり、10~12月期は小幅のプラス成長となるなど、一進一退です。物価上昇が影響して個人消費が停滞しています。世界経済が減速していくという見通しもあり、企業は設備投資に慎重になっています。 欧州の景気は停滞していますし、不動産バブルの崩壊で中国経済も振るいません。米国の景気も底堅いと言いながら減速しているのは間違いありません。日本の輸出を巡る環境も徐々に悪くなっています。 個人消費はいまひとつ、設備投資も伸び悩み、輸出は後退ということで景気に一服感が出るのも仕方がない状況です。 今後も物価の上昇は続くと思われますから、急減することはないにしても個人消費は下振れる可能性は高いでしょう。輸出環境が悪化すると設備投資はやはり伸び悩みます。海外経済の減速は続くでしょうから、日本の景気も下振れの公算が大きくなってくるとみています。 私が当初予測していたよりは、景気のスローダウンが早く来ています。物価上昇による個人消費の下振れ、先行き警戒感による企業の設備投資姿勢の慎重化が思っていたより強いためです。 Q:予想より物価上昇が個人消費を押し下げる力が強くなった原因はどこにあるのでしょうか。 A:物価動向に対し消費者がやはり敏感であることと、実質賃金のマイナスが続いていることです。ただ、目先、消費者物価の上昇率はやや低下してくると予想しています。春闘で昨年を上回る賃上げが実現すれば実質賃金も上向きますから、個人消費の下支えになると思います。 マイナス金利解除の鍵を握るのは24年春闘における賃上げと今後の物価が安定的に2%の上昇を維持できるかどうかだ。次ページ以降、山口廣秀氏に賃上げ動向、物価動向を検証してもらい、マイナス金利解除、YCC(イールドカーブ・コントロール)の行方について聞いた』、「バランスが取れた見方だ」。
・『物価は下げ止まり反転 再び3%台乗せも(Qは聞き手の質問、Aは山口氏の回答)  Q:賃上げ率はどうみていますか。 A:大企業の経営者の方と話をしていると、人手不足の折、人材を確保するために賃金を上げざるを得ないと考えている方が少なくありません。地方の中小企業の経営者の見方も同じです。最低でも昨年と同水準、うまくすると昨年を上回る賃上げになる可能性は高いと思います。 そうなれば実質賃金もプラスに転じる可能性が出てきます。個人消費が景気の足を引っ張るようなことにはならなくなるでしょう。ただ、日本の消費者は慎重なので消費が盛り上がるということはないとみています。 (山口氏の略歴はリンク先参照) Q:物価はスローダウンしていくのですね。 A:ただ、そのペースは速くない。今回の物価上昇は輸入インフレから始まりました。そこに賃上げが織り込まれ、物価上昇がサービス価格にまで広がってきて、それがまた財の価格上昇につながるホームメードインフレの状況になってきています。物価上昇はある程度の期間持続すると考えます。 原油価格の動きには不透明感はありますが、円相場の対前年比は物価を押し上げる方向に働いてくるはずです。従って、物価はしばらくすると下げ止まって反転上昇に向かうのではないでしょうか。場合によっては3%前後の水準にまで再び上昇することも十分あると思っています。 ただ、私自身は、賃金と物価の好循環という捉え方をしていません。 Q:それはどういう意味ですか。 A:賃金は中央銀行にとって政策目標ではありません。賃金が上がるかどうかは、景気の状況、労働需給、生産性の動向に関わってきます。ですから、賃金と物価の好循環という単純な二つの変数で回っていくものではありません。 景気が良くなれば物価が上がる、物価が上がっていくと企業の売り上げが伸びる、売り上げが伸びれば収益が上向き賃金が上がる。こういう循環が働きはするのですが、持続するかどうかは企業の生産性向上の持続力に左右されます。景気が拡大し、生産性が向上しなければ賃金は上昇しません。 Q:物価はすんなりと下がってはいかないということですね。 A:物価の動きは粘着的です。景気の動きに直ちに連動するということではありません。日本銀行にとっては苦しい状況になると思います。景気は先ほど触れたようにスローダウンしていきます。物価は再び上向きに転じます。スタグフレーションとまでは言いませんが、そういったニュアンスの経済状況になりかねません。景気と物価の両にらみとなると、政策運営で日銀にとって悩ましい局面になるでしょう。 Q:その場合、景気と物価のどちらを優先すべきなのでしょうか。 A:物価を優先すべきです。振り返って第1次石油ショック、第2次石油ショックからの教訓は、景気をにらんで引き締めを緩やかにしてしまうと物価上昇が長く続き、結果として景気後退も長期化してしまうから、物価を優先して早めに引き締めるということです。第2次石油ショックのときには、早めの引き締めが功を奏して物価上昇を抑え込むことができました。二兎を追ってはいけないのです』、「A:物価を優先すべきです。振り返って第1次石油ショック、第2次石油ショックからの教訓は、景気をにらんで引き締めを緩やかにしてしまうと物価上昇が長く続き、結果として景気後退も長期化してしまうから、物価を優先して早めに引き締めるということです。第2次石油ショックのときには、早めの引き締めが功を奏して物価上昇を抑え込むことができました。二兎を追ってはいけないのです」、さすがにしっかりした見方だ。
・『マイナス金利解除後0.1%刻みで2~3回の利上げ  Q:マイナス金利解除はどのタイミングですべきと考えていますか。 A:私は日銀が言う、安定的に2%を超える物価上昇は既に実現しているとみています。ですから、マイナス金利解除は遅きに失した感があると考えています。3月あるいは4月の実施が取り沙汰されていますが、なるべく早く行った方がいいでしょう。 Q:早く解除していれば物価の状況は現在より落ち着いていたでしょうか。 A:植田和男総裁の就任直後とは言いませんが、間を置かずに手を打っていれば様子は違っていたかもしれません。いずれにしても、やろうとしているのはマイナス0.1%の金利をゼロにする程度です。経済にそんなに抑制的な力は働きません。 現在は、金融機関が日銀に預ける当座預金のうち一部である政策金利残高に適用される金利をマイナス0.1%にしていて、それを政策金利としていますが、政策金利は(金融機関同士が資金を融通し合うコール市場の)無担保コール翌日物に変えたらいいと思っています。今の状態は分かりにくいです。 Q:マイナス金利からゼロ金利にしてさらに引き上げていく可能性はありますか。 A:あると思います。ただ、日銀幹部の発言からすると0.1%刻みで進めていくとして2回か3回でしょう。米国は今後、利下げに転じるにしてもこれまでの利上げの効果が表れて景気が減速することは避けられません。加えて、欧州や中国の景気の停滞を考えると追加の利上げを進めるに当たって日銀はかなり悩むことになるでしょう。 Q:YCCの枠組みについては、どうすべきだと考えていますか。 A:YCCは、できるだけ早期に撤廃することが必要だと考えています。YCCの形骸化がいわれていますが、形骸化と撤廃は違います。高い物価上昇が続くと、YCCによって長期金利の上昇が抑えられてしまう。要するに、YCCによって市場の声が封じられるということなので、この声が聞こえるようにしておくことが必要です。 Q:現在の米国景気はあまり減速していないにもかかわらず、インフレ率は低下してきています。金融政策の選択の幅が広がっているとみていいのでしょうか。 A:FRB(米連邦準備制度理事会)が思っているほどに物価は下がっていません。物価目標である2%に低下していく道筋が見えておらず、自信が持てないというのが今のパウエル議長の心境ではないでしょうか。 加えて、NYCB(ニューヨーク・コミュニティ・バンコープ)に代表される中小金融機関の経営悪化の問題が生じています。ちょうど1年前にはSVB(シリコンバレーバンク)の破綻がありました。こうした金利引き上げの影響も考慮しながら、パウエル議長はこの先の政策運営について迷っている状況だと思います。 金利を上げると資産価格が下がり、資産価格が下がると金融機関のバランスシートが傷みます。かといって金融緩和をすれば資産価格の低下は止まりますが、インフレが再燃しかねません。 このジレンマにパウエル議長は立たされているとみています。資産価格の動向にかなり気を使っていると思います。 Q:日本では、欧米の金融システムの話はあまり取り上げられていません。 A:米国だけでなくドイツでも小さな銀行の経営問題が生じ、その株価が急落しています。やはり原因は商業用不動産価格の下落です。金融当局者は銀行の経営が悪化していても、大変な問題になっているとは言いません。 Q:米国経済はうまくソフトランディングできるでしょうか。 A:ソフトランディングは簡単なものではないとみています。1970年代以降、50年間の米国経済を振り返ると、不況に陥らずに物価が落ち着いたことはありません。 ですが、実際に不況に突入するまでは、みんなソフトランディングできると思ってしまう。慎重論を唱えている人、危険だと感じている人が駆逐されてしまう。危険だと警鐘を鳴らすおおかみ少年は、見方を変えずにひたすらおおかみ少年であり続けるべきだと私は思っていますが、多くの場合、それができないのです』、「私は日銀が言う、安定的に2%を超える物価上昇は既に実現しているとみています。ですから、マイナス金利解除は遅きに失した感があると考えています。3月あるいは4月の実施が取り沙汰されていますが、なるべく早く行った方がいいでしょう。 Q:早く解除していれば物価の状況は現在より落ち着いていたでしょうか。 A:植田和男総裁の就任直後とは言いませんが、間を置かずに手を打っていれば様子は違っていたかもしれません・・・1970年代以降、50年間の米国経済を振り返ると、不況に陥らずに物価が落ち着いたことはありません。 ですが、実際に不況に突入するまでは、みんなソフトランディングできると思ってしまう。慎重論を唱えている人、危険だと感じている人が駆逐されてしまう。危険だと警鐘を鳴らすおおかみ少年は、見方を変えずにひたすらおおかみ少年であり続けるべきだと私は思っていますが、多くの場合、それができないのです」、「見方を変えずにひたすらおおかみ少年であり続けるべきだと私は思っていますが、多くの場合、それができないのです」、元中央銀行マンとしての味わい深い述懐だ。

第三に、3月13日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した日本銀行元副総裁・日興リサーチセンター理事長の山口廣秀氏へのインタビュー「後編:日本経済「2%超え金利にも耐性ある」日銀元副総裁の山口氏が語るマイナス金利解除後の世界」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/340360
・『マイナス金利が解除され、利上げが複数回行われたとして日本経済にその耐性はあるのか。10年にわたる異次元緩和の修正はどのように進めるべきなのか。日本銀行元副総裁である山口廣秀・日興リサーチセンター理事長へのインタビューの後編では、あるべき金利水準、金利引き上げの家計、金融機関などへの影響、異次元緩和からの出口戦略について語ってもらった。>>前編から読む』、興味深そうだ。
・『0.1%刻みで3回以上利上げしてもいい  Q:日本経済に金利上昇に対する耐性はありますか。 A:それなりに耐性があると考えています。そうでなければ現在のように物価が上がったり、ゼロ%前後で長く推移していた長期金利が上昇したりはしません。日本経済が少しずつですが活性化してきている証左ではないでしょうか。ある程度金利を上げても耐えていける経済だと思っています。 金利を上げることで経済の新陳代謝が進みます。金利負担増加に耐えられない生産性や収益力の低い企業がマーケットから退出していくことは必要です。そういうことを促していく力が日本経済の中に出てきているとみています。 企業は守らないが、人は守る。失業した人たちに対する手当てを厚くするなどの施策を徹底するべきです。 Q:金利上昇に対する耐性があるとすれば、0.1%刻みで2回ないし3回ではなくもっと引き上げてもいいのではないですか。 A:私自身はもっと引き上げてもいいと思っています。ただ、これまで日本銀行は金利引き上げに相当慎重なスタンスで臨んでいます。それ故大胆に金利を引き上げることはできないでしょう。大胆な利上げができると確信しているのであれば、もっと早く金利を引き上げる方向にかじを切っていたでしょう。 日本経済は金利引き上げにどこまで耐えられるのか。異次元緩和で膨らんだ国債やETF(上場投資信託)の残高はどのように減らしていくべきなのか。次ページ以降、山口廣秀氏に分析してもらった』、「Q:日本経済に金利上昇に対する耐性はありますか。 A:それなりに耐性があると考えています。そうでなければ現在のように物価が上がったり、ゼロ%前後で長く推移していた長期金利が上昇したりはしません。日本経済が少しずつですが活性化してきている証左ではないでしょうか。ある程度金利を上げても耐えていける経済だと思っています。 金利を上げることで経済の新陳代謝が進みます。金利負担増加に耐えられない生産性や収益力の低い企業がマーケットから退出していくことは必要です。そういうことを促していく力が日本経済の中に出てきているとみています・・・Q:金利上昇に対する耐性があるとすれば、0.1%刻みで2回ないし3回ではなくもっと引き上げてもいいのではないですか。 A:私自身はもっと引き上げてもいいと思っています。ただ、これまで日本銀行は金利引き上げに相当慎重なスタンスで臨んでいます。それ故大胆に金利を引き上げることはできないでしょう。大胆な利上げができると確信しているのであれば、もっと早く金利を引き上げる方向にかじを切っていたでしょう」、なるほど。
・『日本と欧米の物価上昇率格差が為替に与えるインパクトは大きくない  Q:2月8日の内田真一・日銀副総裁の奈良県の講演での発言でも、マイナス金利を解除しても緩和的な政策は続けると言っていますね。 A:超金融緩和を続けてきた以上、大枠としての緩和は続けるということであり、引き締めの領域に入ることはすぐにはできないでしょう。 Q:現状で本来あるべき金利水準はどうみていますか。 A:いわゆる(緩和でも引き締めでもない)中立金利の水準はもっと上にあると思っています。物価が2%で安定するとして、潜在成長率が0.5%ということになれば名目金利は2%を超えてもおかしくないわけです。実はそういう水準まで日本経済の金利への耐性はあるとみています。 Q:2%の物価目標は適切なのでしょうか。 (山口氏の略歴は前編で紹介いたので、ここでは省略) 目先、3%前後の上昇もあり得ると言いましたが、中長期的に見て日本経済が持つ物価を押し上げる力はそれほど強くなく、1%の上昇率を維持できる程度かもしれません。その意味で、リジッドな2%目標をやめて1~3%といった幅のある目標に切り替えていくことが望ましいと思います。 Q:物価目標の2%という水準は合理的根拠を積み上げたものではないですよね。 A:消費者物価指数には上方バイアスがあり、物価がマイナスになることは避けたい、金利政策を講じる中央銀行としては、金利をマイナスにしたくない以上、景気悪化に備えて引き下げできる余地を残すために一定ののりしろを持てるようにした方がよいということから、2%の上昇率を目標にするとよい(編集部注:通常であれば、政策金利もプラスを維持できるため)ということだったのです。 しかし、指数のバイアスがあるのかどうかは明確ではありませんし、マイナスの物価上昇率となったときに、量的緩和のような非伝統的金融政策を取る余地があるのならのりしろも大きく取る必要があるのかということになるかと思います。やはり、日本のような物価の上がりにくい経済の場合、2%が正しい目標なのか考え直す必要があると思います。 米国が2%、欧州も2%、日本がそれより低い目標とすると、格差の分だけ円高が進むので2%にすべきだといわれてきましたが、日本の物価上昇率が欧米より低い状況が長く続いても現実の為替相場は円高に振れませんでした。これは為替を意識して物価目標を考えていくことが必ずしも正しくない、物価上昇率の違いが為替相場にインパクトを与える程度は必ずしも大きくないということの証左です。 Q:金利を上げることは家計に対してどう影響するでしょうか。 A:ローンを組んでいる個人にとってはマイナスですが、高齢化が進んでいる経済では預金金利やその他の運用金利が上がることによるプラス効果は大きいでしょう。 Q:金融機関への影響はどうみていますか。 A:保有している債券については、金利を引き上げることで評価損が出ます。一方で、金利を引き上げられるだけ経済の活力が出てくるとなれば資金需要も出てきますから、利ざやが拡大して金融機関にとってはプラスになります。全体としてはプラスだとみていますが、評価損が大きく出る金融機関からは悲鳴が上がるかもしれません。 Q:そうしたマイナスの影響を考慮して金利を引き上げないでいると新陳代謝は進みません。 A:金融機関ごとに影響は違ってきます。金利が上昇することでバランスシートが悪化する金融機関はマーケットから退出を迫られることもあるでしょう。合従連衡も加速するかもしれません。ただ、現時点ではそれが起きるほどの金利上昇は想像できません。金融政策を大きく転換していく段階には達しておらず、長年続いた異次元緩和を変えていく方向にようやく一歩を踏み出した程度です。 Q:戦後の金融行政は長く、体力のない金融機関であってもつぶさないといういわゆる護送船団方式でしたが、金利の世界では実質的に護送船団方式が続いてきたようなものですね。 A:約30年間、超金融緩和を続けてきました。その意味で完全に護送船団方式です。過保護の世界を続けてきました』、「物価が2%で安定するとして、潜在成長率が0.5%ということになれば名目金利は2%を超えてもおかしくないわけです。実はそういう水準まで日本経済の金利への耐性はあるとみています」、なるほど。 「Q:2%の物価目標は適切なのでしょうか・・・目先、3%前後の上昇もあり得ると言いましたが、中長期的に見て日本経済が持つ物価を押し上げる力はそれほど強くなく、1%の上昇率を維持できる程度かもしれません。その意味で、リジッドな2%目標をやめて1~3%といった幅のある目標に切り替えていくことが望ましいと思います」、同感である。
・『国債・ETF購入の効果を検証し 残高縮小に向けた期間、方法を明示すべき  Q:異次元緩和の結果、大量に保有することになった国債やETFを日銀のバランスシートからどう切り離していけばいいのでしょうか。 A:(大量の国債や株式の保有で拡大した)バランスシートを縮小していくことはそれ自体金融を引き締める方向の措置になりますから、十分に影響を考えながら圧縮を進めていかなければなりません。米国は早いうちからバランスシートの縮小の見通しを示していましたし、欧州もバランスシートの縮小を進めています。 金融政策の透明性を確保する意味で、金融政策の方向感、短期金利、長期金利、バランスシートの大きさなどをどう調整していくかをある程度明確に対外的に示す義務が日銀にはあると思います。10年、20年かかるものだとしても、長い時間がかかることを示して進め方をできるだけ明らかにするべきだと考えます。 Q:国債など債券は償還がありますから、償還時に再投資しないということで保有残高を減らしていけますね。 A:国債購入については、日銀は緩和効果があると考えているはずですから、引き締め方向に政策を変えていくのであれば国債残高を減らしていくのは基本の流れです。政策としての効果を検証した上で、償還時に再投資しない形で進めていくのか、市場で売却していくのかなど方法を明らかにすべきです。 Q:ETFはどうすればいいでしょうか。 A:金融システムを維持する目的で、株価低迷時に金融機関のバランスシートの劣化を防ぐために銀行から買い取った株式を現在、すこしずつ売り始めています。目立たないように売っていますが、株価が上昇するような状況であれば売っていい。 このとき、気を付けなければいけないのは、今度は株価が下落したら、買うのかという話になることです。買い続けるにしても売るにしてもこれまでのETF購入の効果とその副作用をきちんと検証し、対外的に示す必要があります。そうでなければ議論ができません。 Q:ETFを買い続けることでやはり株式市場の機能を損ねたのでしょうか。 A:損ねたと思います。どこが底値なのかといったことについての市場参加者の判断が難しくなりました。価格形成は市場に任せるべきだという基本から逸脱しましたね。また、かなりの株を日銀が保有している結果、企業のガバナンスにも影響が出ているかもしれません。 Q:物価見通しや景気見通しを下振れさせるリスクは。 A:米国の資産バブルが大きく崩壊すること、ユーロ圏でも同じ問題が生じること、不動産不況にあえぐ中国の市況がさらに低迷すること。こうした海外のバブル崩壊が日本に波及してくるというリスクです。 今起きているのは、生成AI(人工知能)などを含めて技術革新のバブルではないでしょうか。EV(電気自動車)も含まれます。かつてのITバブルのようなものです。米国の消費者も身の丈を超えた消費をしています。これも一種のバブルです。 地政学リスクも気になります。ウクライナ戦争、イスラエルとハマスの紛争が激化することになれば世界規模での経済収縮が起きかねません。逆に終息に向かえば、経済が上向くでしょう。 Q:上振れリスクはありますか。 A:バブルは後にならなければその規模は分からないものですが、先に触れたバブルが予想より小さいものであって、崩壊してもインパクトが大きくないという可能性はないとはいえません。そして、さらなる技術革新の波が広がる可能性もあるかもしれません。 Q:日経平均株価が高値を更新しました。 A:年初からの急上昇に驚いています。それは、上昇を裏付けるだけの日本企業の収益力の上昇、将来への期待の高まりといった材料は乏しいからです。ファンダメンタルズに照らして行き過ぎの部分が大きい。ですので、長く続く上昇とは考えていません。 PER(株価収益率)で見て割高感がないといわれますが、上昇が続くとこの先どこかで将来に対する見方が変わり、将来のリターン見通しも変わってきます。企業の実態はすぐに変わるわけではないのに、予想収益力に対する見方が大きく変化してしまうのです。 ただ、現在は、PERは高くなく株価は妥当な水準だとみんなが思っています。そして、リターンが水膨れだったとみんなが気付いたときに、株価は調整されます。 バブルはこうして生まれはじけていくのです。これまでも同じことが繰り返されてきました。1980年代後半の日本やリーマンショック前の米国がいい例です』、「バランスシートの大きさなどをどう調整していくかをある程度明確に対外的に示す義務が日銀にはあると思います。10年、20年かかるものだとしても、長い時間がかかることを示して進め方をできるだけ明らかにするべきだと考えます。 Q:国債など債券は償還がありますから、償還時に再投資しないということで保有残高を減らしていけますね。 A:国債購入については、日銀は緩和効果があると考えているはずですから、引き締め方向に政策を変えていくのであれば国債残高を減らしていくのは基本の流れです。政策としての効果を検証した上で、償還時に再投資しない形で進めていくのか、市場で売却していくのかなど方法を明らかにすべきです」、なるほど。
「Q:ETFはどうすればいいでしょうか。 A:金融システムを維持する目的で、株価低迷時に金融機関のバランスシートの劣化を防ぐために銀行から買い取った株式を現在、すこしずつ売り始めています。目立たないように売っていますが、株価が上昇するような状況であれば売っていい。 このとき、気を付けなければいけないのは、今度は株価が下落したら、買うのかという話になることです。買い続けるにしても売るにしてもこれまでのETF購入の効果とその副作用をきちんと検証し、対外的に示す必要があります』、「これまでのETF購入の効果とその副作用をきちんと検証し、対外的に示す必要があります」、同感である。
タグ:異次元緩和政策 (その44)(日銀が政策転換で日本経済は「アベノミクス終焉」へ…これから始まる「長く険しい道」、前編:日銀のマイナス金利解除は「遅きに失した」元副総裁の山口廣秀氏が語る金融政策正常化の道、後編:日本経済「2%超え金利にも耐性ある」日銀元副総裁の山口氏が語るマイナス金利解除後の世界) 現代ビジネス 加谷 珪一氏による「日銀が政策転換で日本経済は「アベノミクス終焉」へ…これから始まる「長く険しい道」」 「インフレ、デフレというのは、あくまでも貨幣価値と物価の関係を示した用語に過ぎず、物価が上がればインフレ、下がればデフレというだけの意味であり、インフレやデフレそのものに良い悪いのニュアンスはないからである。 だがアベノミクスにおける「デフレ脱却」という言葉には明らかに、良いニュアンスが含まれている。この部分こそが、アベノミクス・・・というものが持っていたレトリックの集大成といえるだろう」、その通りだ。 「当時は「デフレ脱却を最優先せよ!」「これしかない!」といった、感情的で声高な議論ばかりが横行し、アベノミクスが持つリスクについて、多くのメディアや専門家が無視するという異様な雰囲気であった・・・景気が悪い時にデフレになるのは自然なことではあるが、あくまで、それは不景気の結果としてデフレになったに過ぎない。 デフレの結果として不景気になったわけではなく、ましてや物価を上げたからといって景気が良くなるわけでもない。その意味では「デフレ脱却」というのは、まったくもって無意味な言葉だったといってよいだろう」、そ の通りだ。 「大量のマネーはいつか制御不能な購買力増大として市場に跳ね返ってくる。つまり激しい円安と物価上昇である。 この2つこそが、経済成長に失敗したアベノミクスのツケとして、この先、日本人が引き受けなければならないリスクであり、過度な円安が進み始めた今、日銀にとってもはや残された時間は消滅しつつあった」、その通りだ。 「今回、日銀には2つの「神風」が吹いた。ひとつは物価上昇があまりにも激しく、多くのサラリーマンの生活が困窮していることから、企業が重い腰を上げ5%の賃上げに踏み切ったこと。もうひとつは自民党の裏金問題である。 今回の春闘で5%を超える回答が出たことで、少なくとも昨年と比較すれば賃金環境は大きく改善した。賃金が大幅に上がっていれば、金利の引き上げも容認されやすくなる。 政治的にも状況が大きく変わった。いくら経済的環境が整っても、大規模緩和策=アベノミクスであり、常に「政治」としてのニュアンスが付きまとう・・・日銀にとっては千載一遇のチャンスだったといえるかもしれない。 いずれにせよ、長く続いたアベノミクスはいよいよ終焉の時を迎えた。制御できないインフレという最悪の事態こそ回避できたかもしれないが、今回の決定は、長く続く正常化のほんの始まりに過ぎない」、その通りだ。 ダイヤモンド・オンライン 山口廣秀氏インタビュー:「前編:日銀のマイナス金利解除は「遅きに失した」元副総裁の山口廣秀氏が語る金融政策正常化の道」 本音で語ることが多い「山口氏」への「インタビュー」とは興味深そうだ。 「バランスが取れた見方だ」 「A:物価を優先すべきです。振り返って第1次石油ショック、第2次石油ショックからの教訓は、景気をにらんで引き締めを緩やかにしてしまうと物価上昇が長く続き、結果として景気後退も長期化してしまうから、物価を優先して早めに引き締めるということです。第2次石油ショックのときには、早めの引き締めが功を奏して物価上昇を抑え込むことができました。二兎を追ってはいけないのです」、さすがにしっかりした見方だ。 マイナス金利解除後0.1%刻みで2~3回の利上げ 「私は日銀が言う、安定的に2%を超える物価上昇は既に実現しているとみています。ですから、マイナス金利解除は遅きに失した感があると考えています。3月あるいは4月の実施が取り沙汰されていますが、なるべく早く行った方がいいでしょう。 Q:早く解除していれば物価の状況は現在より落ち着いていたでしょうか。 A:植田和男総裁の就任直後とは言いませんが、間を置かずに手を打っていれば様子は違っていたかもしれません・・・ 1970年代以降、50年間の米国経済を振り返ると、不況に陥らずに物価が落ち着いたことはありません。 ですが、実際に不況に突入するまでは、みんなソフトランディングできると思ってしまう。慎重論を唱えている人、危険だと感じている人が駆逐されてしまう。危険だと警鐘を鳴らすおおかみ少年は、見方を変えずにひたすらおおかみ少年であり続けるべきだと私は思っていますが、多くの場合、それができないのです」、「見方を変えずにひたすらおおかみ少年であり続けるべきだと私は思っていますが、多くの場合、それができないのです」、元中央銀 行マンとしての味わい深い述懐だ。 イヤモンド・オンライン 山口廣秀氏へのインタビュー「後編:日本経済「2%超え金利にも耐性ある」日銀元副総裁の山口氏が語るマイナス金利解除後の世界」 0.1%刻みで3回以上利上げしてもいい 「Q:日本経済に金利上昇に対する耐性はありますか。 A:それなりに耐性があると考えています。そうでなければ現在のように物価が上がったり、ゼロ%前後で長く推移していた長期金利が上昇したりはしません。日本経済が少しずつですが活性化してきている証左ではないでしょうか。ある程度金利を上げても耐えていける経済だと思っています。 金利を上げることで経済の新陳代謝が進みます。金利負担増加に耐えられない生産性や収益力の低い企業がマーケットから退出していくことは必要です。そういうことを促していく力が日本経済の中に出てきてい とみています・・・Q:金利上昇に対する耐性があるとすれば、0.1%刻みで2回ないし3回ではなくもっと引き上げてもいいのではないですか。 A:私自身はもっと引き上げてもいいと思っています。ただ、これまで日本銀行は金利引き上げに相当慎重なスタンスで臨んでいます。それ故大胆に金利を引き上げることはできないでしょう。大胆な利上げができると確信しているのであれば、もっと早く金利を引き上げる方向にかじを切っていたでしょう」、なるほど。 「物価が2%で安定するとして、潜在成長率が0.5%ということになれば名目金利は2%を超えてもおかしくないわけです。実はそういう水準まで日本経済の金利への耐性はあるとみています」、なるほど。 「Q:2%の物価目標は適切なのでしょうか・・・目先、3%前後の上昇もあり得ると言いましたが、中長期的に見て日本経済が持つ物価を押し上げる力はそれほど強くなく、1%の上昇率を維持できる程度かもしれません。 その意味で、リジッドな2%目標をやめて1~3%といった幅のある目標に切り替えていくことが望ましいと思います」、同感である。 「バランスシートの大きさなどをどう調整していくかをある程度明確に対外的に示す義務が日銀にはあると思います。10年、20年かかるものだとしても、長い時間がかかることを示して進め方をできるだけ明らかにするべきだと考えます。 Q:国債など債券は償還がありますから、償還時に再投資しないということで保有残高を減らしていけますね。 A:国債購入については、日銀は緩和効果があると考えているはずですから、引き締め方向に政策を変えていくのであれば国債残高を減らしていくのは基本の流れです。 政策としての効果を検証した上で、償還時に再投資しない形で進めていくのか、市場で売却していくのかなど方法を明らかにすべきです」、なるほど。 「これまでのETF購入の効果とその副作用をきちんと検証し、対外的に示す必要があります」、同感である。
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健康(その27)(最悪の場合「緑内障」になってしまう…「最近、視力が落ちている」という人が飲み過ぎてはいけない飲み物 これを取り過ぎると眼圧が上がる、11日間 眠らずに起き続けると人はどうなる?高校生による実験の「恐るべき結果」 『ニュートン超図解新書 最強に面白い 睡眠』、健康意識が高い人は注意「塩分 糖分は控えめ」の罠 悪者にされがちだが、不足するリスクも大きい) [生活]

健康については、本年2月28日に取上げた。今日は、(その27)(最悪の場合「緑内障」になってしまう…「最近、視力が落ちている」という人が飲み過ぎてはいけない飲み物 これを取り過ぎると眼圧が上がる、11日間 眠らずに起き続けると人はどうなる?高校生による実験の「恐るべき結果」 『ニュートン超図解新書 最強に面白い 睡眠』、健康意識が高い人は注意「塩分 糖分は控えめ」の罠 悪者にされがちだが、不足するリスクも大きい)である。

先ずは、2月21日付けPRESIDENT Onlineが掲載した医療法人 社団済安堂理事長 井上眼科病院院長の井上 賢治氏による「最悪の場合「緑内障」になってしまう…「最近、視力が落ちている」という人が飲み過ぎてはいけない飲み物 これを取り過ぎると眼圧が上がる」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/78711
・『視力を落とさないためにはどうすればいいのか。眼科医の井上賢治さんは「眼圧を上げるような生活習慣を避けることが重要だ。特に緑内障は生活習慣との関連が指摘されていて、視力低下の原因にもなる」という――。 ※本稿は、井上賢治『いちばん親切でくわしい緑内障の教科書』(世界文化社)の一部を再編集したものです』、「緑内障」は失明につながる恐ろし病気なので、興味深そうだ。
・『気を付けたい「緑内障になる生活習慣」  緑内障の原因はわからないことも多いですが、多くの生活習慣病と同じく、加齢や体に負担となる生活習慣が関わっているのは確かです。 実は、毎日特に意識することなく繰り返している生活習慣の中に、眼圧を上げてしまったり、目に負担をかける可能性があるNG行動があります。 それは、かたよった食事や、運動不足、喫煙やストレス、睡眠不足といった生活習慣などです。これらが糖尿病や動脈硬化、心臓病や脳卒中などの病気につながってしまうことは、皆さんもよくご存知でしょう。 年齢を重ねるのは止められませんが、生活習慣を改善することで、老化スピードを落としたり、病気を予防したりすることはできます。 健康的な生活習慣は、目のためにも大切なことなのです』、「毎日特に意識することなく繰り返している生活習慣の中に、眼圧を上げてしまったり、目に負担をかける可能性があるNG行動があります。 それは、かたよった食事や、運動不足、喫煙やストレス、睡眠不足といった生活習慣などです・・・年齢を重ねるのは止められませんが、生活習慣を改善することで、老化スピードを落としたり、病気を予防したりすることはできます。 健康的な生活習慣は、目のためにも大切なことなのです」、なるほど。
・『「うつ伏せ」で緑内障リスクが高まる  NG行動で特に重要なのは、直接的に眼圧を上げてしまう可能性がある行動です。 うつ伏せやうつむく姿勢、逆立ちなど、目の前面や頭を下にするような姿勢は、眼圧を上昇させるためできるだけ控えましょう。 仕事の合間に眠くなって、机につっぷして居眠りする。 腹ばいになって本を読んだりタブレットで動画を見たりする。 そんな何気なくしている行動が、眼圧を上げてしまうかもしれないのです』、「うつ伏せやうつむく姿勢、逆立ちなど、目の前面や頭を下にするような姿勢は、眼圧を上昇させるためできるだけ控えましょう。 仕事の合間に眠くなって、机につっぷして居眠りする。 腹ばいになって本を読んだりタブレットで動画を見たりする。 そんな何気なくしている行動が、眼圧を上げてしまうかもしれないのです」、大いに気を付けたい。
・『イライラすると眼圧が急上昇  また、現代人は誰もが多少のストレスを抱えています。ストレスはあらゆる病気と関係していますが、緑内障も例外ではありません。 ストレスが血圧を上げ、眼圧に影響することも考えられます。 網膜への血流も悪くなり、視神経にもダメージを与えることがあるかもしれません。 急に興奮したりイライラしたりすることで眼圧が急上昇し、緑内障発作を引き起こすこともないとは言えません。 完全にストレスのない生活を送るのは難しいものですが、ストレスのもとになることを避けたり、ストレスを解消する術を身につけておきたいですね。 避けたいNG行動をご紹介します。すべてをやめるのは難しいでしょうから、できる範囲、続けられる範囲で試してみてください。 緑内障と診断された人は点眼薬による治療をしっかり続けながら、生活習慣を改善し、悪化を防ぎましょう』、「ストレスのもとになることを避けたり、ストレスを解消する術を身につけておきたいですね」、なるほど。
・『暗いところでものを見てはいけない理由  暗いところでものを見るのはNG行動です。暗いとよく見えないだけでなく、眼圧にもよくありません。 暗いところでは、光をたくさん取り込もうとして瞳孔が開きます。瞳孔が開いているとき虹彩は縮み、厚くなっています。そして虹彩が厚くなることで隅角が狭くなり、房水の流れが妨げられて、眼圧が上がってしまうのです。 本を読んだり細かい作業をしたりするときは、手元や部屋を十分に明るくするようにしましょう。 【図表1】暗い場所では隅角が狭くなる出所=『いちばん親切でくわしい緑内障の教科書』』、「暗いところでは、光をたくさん取り込もうとして瞳孔が開きます。瞳孔が開いているとき虹彩は縮み、厚くなっています。そして虹彩が厚くなることで隅角が狭くなり、房水の流れが妨げられて、眼圧が上がってしまうのです。 本を読んだり細かい作業をしたりするときは、手元や部屋を十分に明るくするようにしましょう」、なるほど。
・『「うつむく姿勢」にならない  読書や動画の視聴に夢中になって、うつむいた姿勢をとり続けることはありませんか? 顔が下を向くと、水晶体が下=目の前方に落ちてきて、虹彩を前方に押し、隅角を狭くしてしまいます。 そのため長時間その姿勢でいると、眼圧が上がってしまいます。 手元の作業をするときは、うつむいた姿勢にならないように椅子や机を調節し、背筋を伸ばしたよい姿勢を保ちましょう。 また、ときどき目を閉じて上を向き、休憩するのもおすすめです。 【図表2】うつむくと隅角が狭くなる出所=『いちばん親切でくわしい緑内障の教科書』』、「顔が下を向くと、水晶体が下=目の前方に落ちてきて、虹彩を前方に押し、隅角を狭くしてしまいます。 そのため長時間その姿勢でいると、眼圧が上がってしまいます。 手元の作業をするときは、うつむいた姿勢にならないように椅子や机を調節し、背筋を伸ばしたよい姿勢を保ちましょう。 ま喫煙者は、非喫煙者に比べて緑内障や加齢黄斑変性などの病気の発症リスクが何倍も高いことがわかっています・・・さらに、喫煙によって上強膜静脈の血管が収縮して房水の排出が減ったり、視神経乳頭た、ときどき目を閉じて上を向き、休憩するのもおすすめです」、意識して気を付けるようにした方がよさそうだ。
・『喫煙者は緑内障発症リスクが高い  喫煙者は、非喫煙者に比べて緑内障や加齢黄斑変性などの病気の発症リスクが何倍も高いことがわかっています。 また、喫煙後に眼圧が5mmHg以上、上がる人は、「健康な人に比べて原発開放隅角緑内障患者が多かった」という報告もあります。 さらに、喫煙によって上強膜静脈の血管が収縮して房水の排出が減ったり、視神経乳頭への血流が悪くなるとも考えられており、目の健康を守るうえでは禁煙は絶対条件です。 【図表3】喫煙による目への影響出所=『いちばん親切でくわしい緑内障の教科書』』、「喫煙によって上強膜静脈の血管が収縮して房水の排出が減ったり、視神経乳頭への血流が悪くなるとも考えられており、目の健康を守るうえでは禁煙は絶対条件です」、私も最近、禁煙をしたが、それまで50年以上、喫煙を続けていただけに、「緑内障や加齢黄斑変性などの病気の発症リスクが何倍も高い」ことは覚悟しなければならないようだ。
・『「コンタクトレンズをつけて寝る」とどうなるか  強度近視は緑内障のリスクです。緑内障の患者さんでコンタクトレンズを使っている人は多いと思います。 コンタクトレンズは目の外に装着するので、緑内障の原因にはなりませんし、緑内障になってもコンタクトレンズは使えます。 ただし、緑内障の手術をした場合、その方法によっては、術後、コンタクトレンズを使えないケースもあります。 また、コンタクトレンズは使用方法を守り、清潔に扱うようにし、装用時間は長くても12時間程度にとどめます。 つけたまま寝ると、角膜が酸素不足になり、視神経がダメージを受ける可能性があります。 点眼薬は、コンタクトレンズがハードかソフトか、どんな点眼薬かによってレンズの上からさせるかどうかが違いますので、医師の指示に従うようにしてください。 メガネよりも角膜に傷がついたり、感染を起こしたりというリスクが高いので、正しく使うことが大切です。 カラーコンタクトレンズも含めて、眼科医に処方してもらって正規のルートで購入しましょう』、「コンタクトレンズは使用方法を守り、清潔に扱うようにし、装用時間は長くても12時間程度にとどめます。 つけたまま寝ると、角膜が酸素不足になり、視神経がダメージを受ける可能性があります・・・メガネよりも角膜に傷がついたり、感染を起こしたりというリスクが高いので、正しく使うことが大切です」、なるほど。
・『「いびきがひどい人」は緑内障が悪化しやすい  時間的には寝ているはずなのに、寝起きがスッキリしない人、昼間にひどい眠気におそわれる人、家族に「いびきがひどい」と言われる人は、睡眠時無呼吸症候群かもしれません。 睡眠時無呼吸症候群は緑内障を悪化させる可能性があります。 メカニズムは、はっきりわかっていませんが、無呼吸によって低酸素状態になることが、網膜や視神経にダメージを与えるのではないかと考えられています』、「睡眠時無呼吸症候群」で「無呼吸によって低酸素状態になることが、網膜や視神経にダメージを与えるのではないかと考えられています」、なるほど。
・『睡眠時無呼吸症候群のうち緑内障は7.2%  また、睡眠時無呼吸症候群の患者のうち、緑内障を有する割合は日本では7.2%で、欧米における緑内障を有する割合(2%)と比べて多かったという報告もあります。 睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に10秒以上呼吸が止まる無呼吸発作を、1時間に5回以上繰り返す状態を言います。 睡眠中に舌の根元が落ち込んで気道をふさぐのが原因で、肥満や小さい顎、飲酒などがリスクになります。 治療するためには病院にかかる必要がありますが、耳鼻科や一般内科などさまざまな診療科で相談できるほか、睡眠外来がある病院もあります』、「睡眠時無呼吸症候群の患者のうち、緑内障を有する割合は日本では7.2%で、欧米における緑内障を有する割合(2%)と比べて多かったという報告もあります」、なるほど。
・『紫外線は避けた方がいい  紫外線は体の細胞の老化を早めます。 目も例外ではなく、長時間紫外線を浴び続けると、光が通過する角膜や水晶体、光が届く網膜や視神経の細胞がダメージを受けてしまいます。 日本で紫外線が最も強いのは7?8月ですが、真冬でも曇りの日でも紫外線は降り注いでいます。 紫外線対策をしないで外出するのは、どの季節でも控えましょう。 また、紫外線は窓を通って部屋の中にも入ってきますから、日中はレースカーテンを使うのもおすすめです。 【図表4】紫外線は細胞の老化を加速出所=『いちばん親切でくわしい緑内障の教科書』』、「長時間紫外線を浴び続けると、光が通過する角膜や水晶体、光が届く網膜や視神経の細胞がダメージを受けてしまいます・・・紫外線対策をしないで外出するのは、どの季節でも控えましょう」、なるほど。
・『緑内障の人はトランペットを吹いてはいけない  トランペットを優しく吹くと眼圧が0.88mmHg/秒上がり、激しく吹くと12秒間で眼圧が24?46mmHg上昇したという報告があります。 風船や浮き輪をふくらませるときも同様ですが、息を吐くときに圧がかかるのが問題なのです。 管楽器を演奏することがある人は、やめるのが望ましいのですが、仕事などでやめられない場合もあるでしょう。そのようなときは、どのくらい使用してよいか、どのような使い方をすればよいかなど、医師と相談してください。 【図表5】強く吹くと眼圧が上がる出所=『いちばん親切でくわしい緑内障の教科書』 目にゴミが入ったときや、花粉症で目がかゆいとき、目が乾いてゴロゴロするときなどは、目を洗いたくなりますよね。 でも、目の健康を守る意味でも洗いすぎはNGです。それは、目を守る働きがある涙や緑内障点眼薬なども洗い流してしまうからです。 涙は常に分泌されていて、目の表面を潤しています。それ以外にも、涙には水だけでなく、ナトリウムなどのミネラル、たんぱく質、酵素、脂質やビタミンなどが含まれていて、目の表面が乾燥しないように保護するほか、栄養を運び、感染を防ぎ、傷を治す働きもあります。涙はたくさんの大切な役割を担っているのです。 花粉の季節やホコリが目に入ったときなど、水や市販の洗眼剤でときどき洗うのは問題ないでしょう。でも、1日に何度も洗うのは控えましょう。また、緑内障治療のために点眼薬を使用している人は、目を洗うことで点眼薬の効果が薄まってしまうことも考えられるので注意が必要です』、「涙には水だけでなく、ナトリウムなどのミネラル、たんぱく質、酵素、脂質やビタミンなどが含まれていて、目の表面が乾燥しないように保護するほか、栄養を運び、感染を防ぎ、傷を治す働きもあります。涙はたくさんの大切な役割を担っているのです。 花粉の季節やホコリが目に入ったときなど、水や市販の洗眼剤でときどき洗うのは問題ないでしょう。でも、1日に何度も洗うのは控えましょう」、なるほど。
・『本当は怖い「カフェインのとりすぎ」  コーヒーやエナジードリンクなどに含まれるカフェインには、心拍数の増加、興奮、覚醒といった作用があります。 1日の始まりや、午後に眠気がおそってきたときに飲む人も多いでしょう。 カフェインをとりすぎると眼圧が上がるか否かは明らかになっていませんが、カフェインを多くとる人のほうが眼圧が高い傾向があるというデータがあります。 身近な飲み物でカフェインを最も多く含むコーヒーの場合、1日に1?2杯程度なら問題ないと考えられています』、「カフェインを多くとる人のほうが眼圧が高い傾向があるというデータがあります。 身近な飲み物でカフェインを最も多く含むコーヒーの場合、1日に1-2杯程度なら問題ないと考えられています」、「1日に1-2杯程度なら問題ない」というので安心した。

次に、 3月4日付けダイヤモンド・オンライン「11日間、眠らずに起き続けると人はどうなる?高校生による実験の「恐るべき結果」 『ニュートン超図解新書 最強に面白い 睡眠』」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/339743
・『*本記事は本の要約サイト flier(フライヤー)からの転載です。おすすめポイント  本書は睡眠にまつわるあれこれを科学的に解説したものだ。ニュートンはニュートンプレスから発行されている科学雑誌で、40年以上の歴史を持っている。分野別に情報を絞って解説しているのがニュートン別冊。この超図解新書シリーズは別冊よりもわかりやすく書かれていて、さらに短時間で読むことができるのが魅力だ。本書は睡眠について、エビデンスがあって、なおかつわかりやすい情報がほしい、という人にはもってこいの書籍である。 睡眠は私たちの生活に直結するテーマだ。特別な事情がないかぎり人は毎日睡眠をとるし、それゆえに睡眠が与える健康への影響にも社会の関心は高い。けれども、脳や生理現象の知識がある人はほんの一握りだろう。睡眠は身近で関心の高いテーマであるにもかかわらず、詳しく知る機会が少ないという特殊な領域でもある。 本書は睡眠にかんして人々が抱くであろう疑問のほとんどに答えるような内容になっている。睡眠の基本的な原理や快適な睡眠をとる方法、睡眠にまつわる健康の問題、そして他の動物の睡眠などについても詳しく説明されている。冬眠によってシマリスは若返っている可能性がある、昆虫にも睡眠がある、などのトピックスは普段気にすることもないけれども、少なからず好奇心をくすぐられるものだ。ただ我々の疑問に答えるだけでなく、新しい興味を引き出す本書は、まさに科学雑誌を発行しているニュートンの魅力がぞんぶんに発揮されているといえるだろう』、テレビCMで大谷選手が、よい「睡眠」を宣伝しているのもあって、興味深そうだ。「冬眠によってシマリスは若返っている可能性がある、昆虫にも睡眠がある」、とは驚きだ」。
・『要約本文 ◆睡眠と健康 ◇睡眠負債とは 「睡眠負債」とはなんだろうか。これはただの睡眠不足を意味する言葉ではない。睡眠不足が何日も続き、数日から数週間の単位でそれが慢性化した状態が睡眠負債だ。睡眠負債はさまざまな健康リスクにつながる。しかも、2~3日たっぷり眠っただけでは解消されない。また、あらかじめ寝だめしておいても、その後の睡眠負債の予防になることもない。 そもそも、1日に必要な睡眠時間はいったいどれくらいなのだろうか。一般的には7時間程度眠れば睡眠時間を確保できるとされるが、あくまでもそれは目安であり、個人差がある。自分に必要な睡眠時間はいったいどれくらいなのか。それを知るために有効なのが「睡眠日誌」である。 まずは2週間分の睡眠を日誌に記録する。そして休日と平日の睡眠時間を比較する。休日に平日よりも2時間以上多く眠っているのであれば、それは睡眠負債が溜まっている状態といえる。逆に平日と休日の睡眠時間に差が見られなければ、それが自分にとって必要な睡眠時間だと考えられる。 前述のとおり、休日に睡眠時間を増やしても睡眠負債が解消できるわけではない。1日10時間、明るいところで生活をし、残りの14時間を暗い部屋で横になるという実験では、被験者は実験初日には平均12時間と長く眠り、3週間後には8時間15分に落ち着いた。この8時間15分が本来被験者に必要とされる睡眠時間だと考えられる。もとの平均睡眠時間は7時間36分だったことを考えると、40分の睡眠負債を返すのに3週間かかったことになる。週末に寝だめをしたくらいでは、睡眠負債は解消されないのだ』、「この8時間15分が本来被験者に必要とされる睡眠時間だと考えられる。もとの平均睡眠時間は7時間36分だったことを考えると、40分の睡眠負債を返すのに3週間かかったことになる。週末に寝だめをしたくらいでは、睡眠負債は解消されないのだ」、なるほど。
・『◇眠らないとどうなるか  人は眠らないといつかは死ぬ。ラットを使った実験では2~4週間睡眠を奪われるとすべての個体が死んだ。人間の場合は、サンディエゴの高校生ランディ・ガードナーが1964年に行った実験が有名だ。ランディの断眠は11日間と世界記録を達成したが、その間に幻覚や記憶の欠落、さらに指や眼球のふるえなどの著しい不調に陥った。幸いランディに後遺症が残ることはなかったが、長期の断眠が脳に障害を与えた例もあり、こうした行為は非常に危険である。眠らないことで脳には様々な不具合が発生する。睡眠の役割の一つは、脳の疲労回復だといえる。) 睡眠の役割はそれだけではない。「記憶の固定」にも影響を与えている。学習後に眠ると記憶に残りやすい、という実験結果が報告されているのだ。脳が覚醒しているときは絶え間なくなんらかの情報が入ってきている。その記憶を定着させたいのであれば、新しい情報を入れるのではなく、早く眠ることが効果的なのかもしれない。ただし、この睡眠中に記憶が定着する仕組みはまだ十分に解明されていないのが現状だ』、「眠らないことで脳には様々な不具合が発生する。睡眠の役割の一つは、脳の疲労回復だといえる。 睡眠の役割はそれだけではない。「記憶の固定」にも影響を与えている。学習後に眠ると記憶に残りやすい、という実験結果が報告されているのだ。脳が覚醒しているときは絶え間なくなんらかの情報が入ってきている。その記憶を定着させたいのであれば、新しい情報を入れるのではなく、早く眠ることが効果的なのかもしれない」、「学習後に眠ると記憶に残りやすい」とは初めて知ったが、残念ながら時既に遅しだ。
・『【必読ポイント!】 ◆睡眠の影響 ◇レム睡眠とノンレム睡眠  眠りに入ると、まず「ノンレム睡眠」という状態になる。このノンレム睡眠がおわると、次は「レム睡眠」へと移る。レム睡眠とノンレム睡眠は一回の睡眠で4~6回程繰り返され、これを「睡眠サイクル」と呼ぶ。一回の睡眠サイクルの長さは90分といわれ、レム睡眠の割合は徐々に大きくなっていく。 ノンレム睡眠は3段階に分かれていて、ステージ3が最も深い睡眠となる。ステージ3は睡眠サイクルを経ることで少しずつ割合が小さくなっていくので、ステージ3の割合が大きい最初のノンレム睡眠をしっかりとることが重要だ。 では具体的にノンレム睡眠とレム睡眠はどういった状態を指すのだろうか。レム睡眠のREMとは急速眼球運動「Rapid Eye Movement」の略で、睡眠中に眼球が小刻みに動くことに由来する。レム睡眠の間、大脳は覚醒しているときに近い状態である。しかも、覚醒時よりも活動している領域がいくつかあることもわかってきた。奇妙な夢や大きな感情をともなう夢の多くはレム睡眠中に見ることがわかっているが、これは視覚イメージに関わる「視覚連合野」や感情に関わる「扁桃体」が活発だからと考えられている』、「レム睡眠の間、大脳は覚醒しているときに近い状態である。しかも、覚醒時よりも活動している領域がいくつかあることもわかってきた。奇妙な夢や大きな感情をともなう夢の多くはレム睡眠中に見ることがわかっているが、これは視覚イメージに関わる「視覚連合野」や感情に関わる「扁桃体」が活発だからと考えられている」、なるほど。
・『◇質のよい睡眠をとるには  睡眠にまつわる問題。そのいくつかは、寝室の環境に原因があるかもしれない。睡眠の質を高めるための理想的な環境は「暗いこと」「静かであること」「快適な温度と湿度を保つこと」の3つがそろっていることだ。 光は覚醒をもたらす刺激で、入眠をさまたげる。よって就寝時の照明は必要最小限の明るさにとどめておくのがよいだろう。一方、起床前後に朝の光を浴びると体内時計がリセットされるので、睡眠のリズムを整えるのに役立つ。音も入眠をさまたげる刺激だが、特に人の話し声には大きな覚醒作用がある。暑すぎたり寒すぎたりする温度や高すぎる湿度も睡眠のさまたげとなる。夏や冬はエアコンを使用して快適な温度と湿度を維持するのがよいだろう。) これら3つの要素のほかに、体温も睡眠に大きく関係している。皮膚ではかる「皮膚体温」よりも、体の内部の「深部体温」は3~5℃ほど高く、一般的には夜の9時をピークにして徐々に下がり始め、睡眠中に最も低くなる。逆に、皮膚体温は入眠の前後で徐々に上昇していく。寝る直前に入浴すると深部体温が下がりにくくなって、眠りに入りづらいことがある。入浴は就寝2時間前までに済ませておくのがよいだろう。 脳の視交叉上核という部位に、「マスタークロック」というものがある。これは全身の体内時計の基準になっており、強い光を浴びることでリセットされる。眼球の網膜には「視細胞」という光を感じ取る組織があり、ここからの信号を脳へと中継するのが網膜の「神経節細胞」である。最近の研究で、この神経節細胞の一部は青い光の波長を感じ取り、それがマスタークロックを調整していることがわかってきた。そのため、スマートフォンなどを寝る前に見ると、体内時計が巻き戻されてしまう。体内時計のことを考えると、室内照明なども薄暗いくらいがちょうどよいといえる』、「人の話し声には大きな覚醒作用がある」、我が家の前の道路は大きな声でおしゃべりをする不届き者がたまにいるので、入眠の妨げになるのは腹立たしい。「寝る直前に入浴すると深部体温が下がりにくくなって、眠りに入りづらいことがある。入浴は就寝2時間前までに済ませておくのがよいだろう」、なるほど。
・『◇眠気は寝ることでしか解消しない  仮眠をとると、少ない睡眠時間なのにもかかわらず眠気が解消される場合がある。これはノンレム睡眠のステージ2で眠気の解消がある程度進むためだ。仮眠をとる時間は15分から20分程度がよいとされ、そのくらいの時間で起きればちょうどステージ2の間に目覚めることができる。それ以上寝てしまうと、ステージ3の深い眠りから目覚めることになり、不快感でかえって疲労感が増してしまうことにもなりかねない。仮眠が必要になるのは睡眠負債を抱えているためであることも考えられるので、夜の睡眠時間を確保するようにしたほうがよいかもしれない。 睡眠時間と集中力、判断力は反比例する。徹夜明けの脳機能は、酒酔いと同じ程度まで低下するともいわれる。徹夜をしている間、眠気はどんどん蓄積される。一方、体内時計の信号は普段通りサイクルを刻んでいくので、徹夜明けでも朝になると頭が冴えてくる。だが、眠気は眠ることでしか根本的に解消しない。1回の徹夜によって睡眠のリズムが崩れ、長期的に睡眠負債を抱えるきっかけにもなりかねない』、「仮眠をとる時間は15分から20分程度がよいとされ、そのくらいの時間で起きればちょうどステージ2の間に目覚めることができる。それ以上寝てしまうと、ステージ3の深い眠りから目覚めることになり、不快感でかえって疲労感が増してしまうことにもなりかねない」、「仮眠をとる時間は15分から20分程度がよいとされ」る背景が理解できた。「徹夜をしている間、眠気はどんどん蓄積される。一方、体内時計の信号は普段通りサイクルを刻んでいくので、徹夜明けでも朝になると頭が冴えてくる。だが、眠気は眠ることでしか根本的に解消しない。1回の徹夜によって睡眠のリズムが崩れ、長期的に睡眠負債を抱えるきっかけにもなりかねない」、なるほど。
・『◇眠ることで起こる嬉しい効果  睡眠が人間のパフォーマンスに影響を与えているのは疑いようがない。アメリカでバスケットボール選手の大学生を対象に、睡眠に関する実験が行われた。最初の2~4週間はふだん通りの生活をしてもらい、その後の5~7週間はなるべく長く寝てもらうのだ。その結果、睡眠時間は平均で111分ほど伸びた。実験の前後で身体能力測定やアンケートを行ったところ、走る速さやシュートの成功率が上昇し、自己が感じる達成感までもが上昇した。この調査を行った研究者は、アスリートが睡眠から受けられる恩恵はどのようなスポーツにも等しくあるだろうと述べている。) 睡眠はスポーツだけでなく、子どもの成長にも影響する。昔から「寝る子は育つ」といわれているが、これは科学的にも正しいことがわかっている。子どもの成長に一番大きな役割を果たしているのが、ノンレム睡眠のステージ3である。ステージ3では脳下垂体とよばれる部位から「成長ホルモン」が分泌される。成長ホルモンは子どもの成長に重要な役割を果たし、骨の伸長、筋肉の増大、けがの治癒を促進する。成長ホルモンは成人でも重要で、疲労回復や代謝の促進などの役割をする。子どもも大人も、しっかりと睡眠をとることが重要なのだ』、「子どもの成長に一番大きな役割を果たしているのが、ノンレム睡眠のステージ3である。ステージ3では脳下垂体とよばれる部位から「成長ホルモン」が分泌される。成長ホルモンは子どもの成長に重要な役割を果たし、骨の伸長、筋肉の増大、けがの治癒を促進する。成長ホルモンは成人でも重要で、疲労回復や代謝の促進などの役割をする。子どもも大人も、しっかりと睡眠をとることが重要なのだ」、なるほど。
・『◆睡眠のしくみ  ◇なぜコーヒーで覚醒するのか  どうしてコーヒーを飲むと、眠気を一時的におさえることができるのだろうか。脳には「睡眠中枢」と「覚醒中枢」という神経細胞の集団が存在する。これらが互いに綱を引き合うようにパワーバランスを変化させることで、睡眠と覚醒は切りかえられる。 私たちの体には睡眠と覚醒を切り替えるスイッチの役割を果たす物質が存在する。「アデノシン」はそのなかのひとつで、睡眠を優勢にするはたらきをもっている。一方、「オレキシン」という物質は、覚醒を優勢にする。コーヒーを飲むと眠気がおさえられるのは、コーヒーに含まれるカフェインが、アデノシンの働きを阻害するからだ。 睡眠のしくみは、「ツープロセスモデル」という仮説で説明されてきた。これは、2つの過程によって睡眠と覚醒が進むという仮説だ。1つめのプロセスは、「睡眠圧」だ。覚醒している間、睡眠の欲求を示す「睡眠圧」がだんだん蓄積し、それが十分溜まることで睡眠がはじまる。眠っていると次第に睡眠圧は解消に向かっていく。 2つめのプロセスは体内時計だ。体内時計は睡眠圧の蓄積とは別に、覚醒をうながす信号である覚醒シグナルの強さを約24時間周期で調整している。このシグナルは21時にピークをむかえ、次第に弱まっていく。これにより、睡眠がはじまりやすくなるというわけだ』、「2つの過程によって睡眠と覚醒が進むという仮説だ。1つめのプロセスは、「睡眠圧」だ。覚醒している間、睡眠の欲求を示す「睡眠圧」がだんだん蓄積し、それが十分溜まることで睡眠がはじまる。眠っていると次第に睡眠圧は解消に向かっていく。 2つめのプロセスは体内時計だ。体内時計は睡眠圧の蓄積とは別に、覚醒をうながす信号である覚醒シグナルの強さを約24時間周期で調整している。このシグナルは21時にピークをむかえ、次第に弱まっていく。これにより、睡眠がはじまりやすくなるというわけだ」、なるほど。
・『◇眠気の正体とは  そもそも眠気の正体とはいったい何なのだろうか。その有力な候補となる脳内現象が、2018年に発見された。脳内にある80種類のタンパク質、それが「リン酸化」という化学変化をおこしていたのである。この80種類のタンパク質は「スニップス」と呼ばれ、そのうち69種類は、「シナプス」に集中していた。シナプスは神経細胞どうしが信号を伝達する場所であり、神経細胞どうしの接点である。覚醒時にはスニップスのリン酸化が進み、眠るとリン酸化は解消される。リン酸化の解消に要する時間が、その人の睡眠に必要な時間なのかもしれない』、「眠気の正体とはいったい何なのだろうか。その有力な候補となる脳内現象が、2018年に発見された。脳内にある80種類のタンパク質、それが「リン酸化」という化学変化をおこしていたのである。この80種類のタンパク質は「スニップス」と呼ばれ、そのうち69種類は、「シナプス」に集中していた。シナプスは神経細胞どうしが信号を伝達する場所であり、神経細胞どうしの接点である。覚醒時にはスニップスのリン酸化が進み、眠るとリン酸化は解消される。リン酸化の解消に要する時間が、その人の睡眠に必要な時間なのかもしれない」、なるほど。
・『◇体内時計が生み出すリズム  生物学や医学における体内時計は、1日のリズムを生み出す仕組みのことであり、専門的には「概日リズム」という。 人間の体は太陽がのぼると目が覚めて、夜になると眠くなる。それに伴い血圧や体温なども変化する。こうした体の変化を調整しているのが体内時計である。 その周期は平均で24時間12分とされ、大体は地球の自転と連動している。私たちの睡眠のリズムは、地球の自転周期と大きなかかわりがあるのだ。 体内時計には遺伝子がかかわっていることがわかっている。体内時計にかかわる遺伝子の異常は睡眠に大きな影響を与える。遺伝子異常の種類によっては、眠気を感じて夜8時には眠り、明け方前に目覚めてしまう「睡眠相前進症候群」や、明け方にならないと眠れず朝になっても目覚めない「睡眠相後退症候群」がみられる場合がある。近年の研究では、朝型や夜型の人たちの生活リズムのちがいは、体内時計にかかわる遺伝子の個人差による場合が多いと考えられている』、「間の体は太陽がのぼると目が覚めて、夜になると眠くなる。それに伴い血圧や体温なども変化する。こうした体の変化を調整しているのが体内時計である。 その周期は平均で24時間12分とされ、大体は地球の自転と連動している。私たちの睡眠のリズムは、地球の自転周期と大きなかかわりがあるのだ・・・体内時計にかかわる遺伝子の異常は睡眠に大きな影響を与える。遺伝子異常の種類によっては、眠気を感じて夜8時には眠り、明け方前に目覚めてしまう「睡眠相前進症候群」や、明け方にならないと眠れず朝になっても目覚めない「睡眠相後退症候群」がみられる場合がある。近年の研究では、朝型や夜型の人たちの生活リズムのちがいは、体内時計にかかわる遺伝子の個人差による場合が多いと考えられている」、なるほど。
・『一読のすすめ  要約ではぐっすり眠る方法や、睡眠のしくみといった、多くの人の毎日の睡眠に関係する章を中心にまとめた。本書ではこのほかに、睡眠に関係のある病気や、動物の睡眠についても扱われている。 要約では扱わなかった4章は動物たちの睡眠がテーマだ。脳を片方ずつ眠らせる動物たち、謎の残る冬眠のしくみなど、知的好奇心をくすぐられる話題が並ぶ。人工的に冬眠をつくりだす試み、冬眠が若返りをもたらす可能性や医学への応用など、冬眠についてのさまざまな仮説も紹介されている。睡眠について多角的に理解したいと思ったら、通読をおすすめしたい。「評点」以降は紹介を省略)』、「脳を片方ずつ眠らせる動物たち」とは興味深そうだ。

第三に、3月12日付け東洋経済オンラインが掲載した精神科医の和田 秀樹氏による「健康意識が高い人は注意「塩分、糖分は控えめ」の罠 悪者にされがちだが、不足するリスクも大きい」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/737341
・『塩分や糖分の摂取は控えめに――。健康に気をつけている人ならば、最初に実践する食生活の「常識」のひとつでしょう。しかし、高齢者専門の精神科医として30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わってきた和田秀樹氏は「高齢者になれば、この『常識』がリスクになる」と言います。塩分や糖分の摂取制限だけでなく、健康長寿のために粗食に勤しむ高齢者も注意が必要なのだとか。果たしてその理由とは? ※本稿は和田氏の新著『「健康常識」という大嘘』より、一部抜粋・再構成のうえお届けします』、興味深そうだ。
・『塩分を控えめにした結果「低ナトリウム血症」に  血圧が高い人は、決まったように医者から「塩分控えめ」を忠告されて、真面目な人はそれを頑張って実行します。血圧を測定するたびに数値が下がって医者からほめられれば、それを励みにして、ますます塩分を摂取しなくなったりもします。 私の知人のお父さんも、医者のアドバイスを守って塩分の量には過敏なほど反応し、奥さんが時間をかけてつくった煮魚もタレを洗い落としてから食べていたといいます。 そのような暮らしを続けていた結果、血圧はずっと抑えられていたそうですが、ある時、気分が悪くなり、ひどい頭痛で入院してしまいました。検査をしたところ、頭痛の直接の原因かは定かでないものの「低ナトリウム血症」であることがわかりました。 低ナトリウム血症とは血液中のナトリウム、つまりは塩分の濃度が低くなった状態を言います。ナトリウムには体内の浸透圧を調節したり、神経や筋肉を正しく機能させたりする役割があって、体内のナトリウム濃度が下がると最初は軽い疲労感があり、重症化するとけいれんを起こしたり、昏睡状態に陥ることもあります。 近年増加の一途にある熱中症も、その多くは低ナトリウム血症によるもので、夏の暑い日に塩分を補給することなく水分ばかりを摂っているとひどいめまいに襲われたりするのはそのためです』、「低ナトリウム血症とは血液中のナトリウム、つまりは塩分の濃度が低くなった状態を言います。ナトリウムには体内の浸透圧を調節したり、神経や筋肉を正しく機能させたりする役割があって、体内のナトリウム濃度が下がると最初は軽い疲労感があり、重症化するとけいれんを起こしたり、昏睡状態に陥ることもあります。 近年増加の一途にある熱中症も、その多くは低ナトリウム血症によるもので、夏の暑い日に塩分を補給することなく水分ばかりを摂っているとひどいめまいに襲われたりするのはそのためです」、なるほど。
・『軽度の糖尿病でも長生きなアジア人  塩分と並んで悪者にされがちなのが糖質です。しかし、脳を働かせるためにブドウ糖は欠かせません。元気な子どもでも「朝ごはんを抜くと学校の成績が下がる」といわれるのですから、高齢者でブドウ糖が不足すればなおさら頭が働かなくなります。 糖質を摂取する場合に、パンとごはんのどちらがよいかはきちんとした研究やデータがないのでわかりませんが、どちらも糖質を摂るための大切な食べ物です。 「いつも和食だから自分は健康的だ」と言う人がよくいます。納豆や豆腐のような大豆製品、魚、海藻、キノコ、野菜類をたっぷり使ったお惣菜は健康的で、それらをおかずにして食べる炊きたての白米は本当においしいのですが、食べすぎると血糖が下がりにくくなる「インスリン抵抗性」を起こす原因になります。 どの程度が多食になるかは人それぞれですが、和食は肉類のおかずが少なく、タンパク質や脂質をあまり摂れないため、「健康にいい」と信じすぎるのもどうかとは思います。 さまざまな研究から、アジア人は欧米人と比べて糖尿病にかかりやすいことが指摘されていて、その理由が白米の摂取量にあることもわかっています。 2012年にハーバード公衆衛生大学院のチームが、日本、アメリカ、オーストラリア、中国の4カ国で行なった計35万2384名分の研究報告を分析した結果を発表していて、それによると一日当たりの白米摂取量が茶碗1杯増えるごとに糖尿病のリスクは11%上昇することが明らかになっています。 しかし、それなのにアジア人のほうが寿命の長いことは忘れてはなりません。年をとるほど「栄養が余ること」よりも「足りないこと」の害のほうが多くなるのです。 中高年になればタンパク質や脂質を積極的に摂ることが大切で、ご飯やパン、麺類などの炭水化物の摂取量は、タンパク質や脂質を増やすことで相対的に減らしていくことが健康のためにいいと思います。 作家の幸田露伴は食通としても有名で、味の好みにうるさく、舌に合わないものを供されると「俺は、掃き溜めではない」と激怒したそうです。その一方で「食べ物というのは、うまいと思って食べれば栄養になる。まずいと思って食べれば決して滋養にはならない」とも言っています。こうした心得は、とくに高齢者にとって参考にすべきものでしょう。 ▽免疫力をアップするために好きなものを食べよう(現在、日本国内における死因はがんがもっとも多く、厚生労働省による2022年の統計では38万5797人が、がんで亡くなっています。がんがなぜ発症するかについてはさまざまな説がありますが、いずれにしても毎日体内に発生する、がんになるかもしれないできそこないの細胞を撃退するうえで、免疫の力は欠かせません。 ストレスのある生活を続けていれば、免疫力は間違いなく低下して、健診の数値がすべて正常でも急にがんになってしまう可能性は決して少なくありません。免疫力アップに効果的なのは好きなものを食べることです。) 同じものばかりを過剰摂取するフードファディズム(食べ物の健康への影響を過信すること)は、慢性型アレルギーを発症して身体の酸化を招くリスクがあります。 私もかつて「海藻やソバがよい」と世間でいわれるのを聞いて、意識してたくさん食べていたら、逆に海藻やソバの慢性型アレルギーになってしまいました。 食物アレルギーが人によって異なるのと同じで、身体にいい食べ物も人によって異なるのです。だから自分の身体や脳が欲するサインに素直に応じて、食べたいものを食べるほうがいい。一般的には身体に悪いといわれるカレーや牛丼といった高カロリーの食事も、無理に避ける必要はありません』、「アジア人は欧米人と比べて糖尿病にかかりやすいことが指摘されていて、その理由が白米の摂取量にあることもわかっています・・・同じものばかりを過剰摂取するフードファディズム・・・は、慢性型アレルギーを発症して身体の酸化を招くリスクがあります・・・食物アレルギーが人によって異なるのと同じで、身体にいい食べ物も人によって異なるのです。だから自分の身体や脳が欲するサインに素直に応じて、食べたいものを食べるほうがいい」、なるほど。
・『新型コロナ3回陽性でも無症状だった理由  私は新型コロナ禍に3回の陽性判定を受けましたが、いずれも無症状でした。高血圧、糖尿病、心不全を抱えていて、年齢も60歳を超えています。コロナ発症リスクがもっとも高いとされる条件を満たしていたにもかかわらず、なぜ無症状だったのかと言えば、免疫力が強かったからでしょう。 医者の言うことを聞かないで、血圧が高くても好きなワインを飲み、おいしいものを食べていた。そんな生活こそ免疫力を高めるのだろうと、自らの体験から確信しています。 高血圧や心不全、糖尿病の人が、新型コロナの発症リスクが高いとされたのは、逆に普段からいろんな薬を飲み、節制をしていたことで、さまざまな免疫力が落ちてしまっていたからではないでしょうか。) 好きなことを我慢しているせいで、さらに免疫力が落ちていたところに新型コロナに感染すればひとたまりもない。これはがんに関しても同じようなことが言えるのだろうと思います。 食事については、脳に栄養をいきわたらせるため、とくに朝食をしっかり食べてください。一般的に朝食と昼食の間は4時間程度。昼食と夕食の間は7時間程度の間隔ですが、夕食から朝食までは約12時間もあります。そのため朝は、低血糖を一番起こしやすい時間帯なのです』、「私は新型コロナ禍に3回の陽性判定を受けましたが、いずれも無症状でした。高血圧、糖尿病、心不全を抱えていて、年齢も60歳を超えています。コロナ発症リスクがもっとも高いとされる条件を満たしていたにもかかわらず、なぜ無症状だったのかと言えば、免疫力が強かったからでしょう。 医者の言うことを聞かないで、血圧が高くても好きなワインを飲み、おいしいものを食べていた。そんな生活こそ免疫力を高めるのだろうと、自らの体験から確信しています。 高血圧や心不全、糖尿病の人が、新型コロナの発症リスクが高いとされたのは、逆に普段からいろんな薬を飲み、節制をしていたことで、さまざまな免疫力が落ちてしまっていたからではないでしょうか・・・食事については、脳に栄養をいきわたらせるため、とくに朝食をしっかり食べてください。一般的に朝食と昼食の間は4時間程度。昼食と夕食の間は7時間程度の間隔ですが、夕食から朝食までは約12時間もあります。そのため朝は、低血糖を一番起こしやすい時間帯なのです」、なるほど。
・『60代からはエネルギーを補完することが大切  ブドウ糖が不足した状態は脳の働きを鈍らせて、記憶力などの認知機能において大きなマイナス要因となります。 脳はものすごくたくさんのエネルギーを消費しますから、食事の間が空いてブドウ糖が不足している脳には、できるだけ早くエネルギーを補給する必要があります。 動脈硬化など生活習慣病の予防が大事なのは50代まで。60代からはむしろ老化を防ぐために食事でしっかりエネルギーを補完するべきで、なかでも意識したい栄養素がタンパク質、脂質、亜鉛です。 タンパク質は筋肉の衰えを防ぐとともに、タンパク質に含まれるアミノ酸の一種であるトリプトファンは幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの材料になり、幸福感を呼び込みます。 脂質に含まれるコレステロールは性ホルモンの材料となり、牡蠣やニンニクに含まれセックスミネラルとも呼ばれる亜鉛は元気の源となります。美容面でも、タンパク質や脂質は肌や髪の弾力とツヤに直結します』、「動脈硬化など生活習慣病の予防が大事なのは50代まで。60代からはむしろ老化を防ぐために食事でしっかりエネルギーを補完するべきで、なかでも意識したい栄養素がタンパク質、脂質、亜鉛です」、嬉しいアドバイスだ。 「タンパク質は筋肉の衰えを防ぐとともに、タンパク質に含まれるアミノ酸の一種であるトリプトファンは幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの材料になり、幸福感を呼び込みます。 脂質に含まれるコレステロールは性ホルモンの材料となり、牡蠣やニンニクに含まれセックスミネラルとも呼ばれる亜鉛は元気の源となります。美容面でも、タンパク質や脂質は肌や髪の弾力とツヤに直結します」、健康診断時の食事アドバイスで委縮していたが、和田先生のアドバイス7にはいつも元気づけられる。
タグ:(その27)(最悪の場合「緑内障」になってしまう…「最近、視力が落ちている」という人が飲み過ぎてはいけない飲み物 これを取り過ぎると眼圧が上がる、11日間 眠らずに起き続けると人はどうなる?高校生による実験の「恐るべき結果」 『ニュートン超図解新書 最強に面白い 睡眠』、健康意識が高い人は注意「塩分 糖分は控えめ」の罠 悪者にされがちだが、不足するリスクも大きい) 健康 PRESIDENT ONLINE 井上 賢治氏による「最悪の場合「緑内障」になってしまう…「最近、視力が落ちている」という人が飲み過ぎてはいけない飲み物 これを取り過ぎると眼圧が上がる」 井上賢治『いちばん親切でくわしい緑内障の教科書』(世界文化社) 「緑内障」は失明につながる恐ろし病気なので、興味深そうだ。 「毎日特に意識することなく繰り返している生活習慣の中に、眼圧を上げてしまったり、目に負担をかける可能性があるNG行動があります。 それは、かたよった食事や、運動不足、喫煙やストレス、睡眠不足といった生活習慣などです・・・年齢を重ねるのは止められませんが、生活習慣を改善することで、老化スピードを落としたり、病気を予防したりすることはできます。 健康的な生活習慣は、目のためにも大切なことなのです」、なるほど。 「うつ伏せやうつむく姿勢、逆立ちなど、目の前面や頭を下にするような姿勢は、眼圧を上昇させるためできるだけ控えましょう。 仕事の合間に眠くなって、机につっぷして居眠りする。 腹ばいになって本を読んだりタブレットで動画を見たりする。 そんな何気なくしている行動が、眼圧を上げてしまうかもしれないのです」、大いに気を付けたい。 「ストレスのもとになることを避けたり、ストレスを解消する術を身につけておきたいですね」、なるほど。 「暗いところでは、光をたくさん取り込もうとして瞳孔が開きます。瞳孔が開いているとき虹彩は縮み、厚くなっています。そして虹彩が厚くなることで隅角が狭くなり、房水の流れが妨げられて、眼圧が上がってしまうのです。 本を読んだり細かい作業をしたりするときは、手元や部屋を十分に明るくするようにしましょう」、なるほど。 「顔が下を向くと、水晶体が下=目の前方に落ちてきて、虹彩を前方に押し、隅角を狭くしてしまいます。 そのため長時間その姿勢でいると、眼圧が上がってしまいます。 手元の作業をするときは、うつむいた姿勢にならないように椅子や机を調節し、背筋を伸ばしたよい姿勢を保ちましょう。 また、ときどき目を閉じて上を向き、休憩するのもおすすめです」、意識して気を付けるようにした方がよさそうだ。 「喫煙によって上強膜静脈の血管が収縮して房水の排出が減ったり、視神経乳頭への血流が悪くなるとも考えられており、目の健康を守るうえでは禁煙は絶対条件です」、私も最近、禁煙をしたが、それまで50年以上、喫煙を続けていただけに、「緑内障や加齢黄斑変性などの病気の発症リスクが何倍も高い」ことは覚悟しなければならないようだ。 「コンタクトレンズは使用方法を守り、清潔に扱うようにし、装用時間は長くても12時間程度にとどめます。 つけたまま寝ると、角膜が酸素不足になり、視神経がダメージを受ける可能性があります・・・メガネよりも角膜に傷がついたり、感染を起こしたりというリスクが高いので、正しく使うことが大切です」、なるほど。 「睡眠時無呼吸症候群」で「無呼吸によって低酸素状態になることが、網膜や視神経にダメージを与えるのではないかと考えられています」、なるほど。 「睡眠時無呼吸症候群の患者のうち、緑内障を有する割合は日本では7.2%で、欧米における緑内障を有する割合(2%)と比べて多かったという報告もあります」、なるほど。 「長時間紫外線を浴び続けると、光が通過する角膜や水晶体、光が届く網膜や視神経の細胞がダメージを受けてしまいます・・・紫外線対策をしないで外出するのは、どの季節でも控えましょう」、なるほど。 「涙には水だけでなく、ナトリウムなどのミネラル、たんぱく質、酵素、脂質やビタミンなどが含まれていて、目の表面が乾燥しないように保護するほか、栄養を運び、感染を防ぎ、傷を治す働きもあります。涙はたくさんの大切な役割を担っているのです。 花粉の季節やホコリが目に入ったときなど、水や市販の洗眼剤でときどき洗うのは問題ないでしょう。でも、1日に何度も洗うのは控えましょう」、なるほど。 「カフェインを多くとる人のほうが眼圧が高い傾向があるというデータがあります。 身近な飲み物でカフェインを最も多く含むコーヒーの場合、1日に1?2杯程度なら問題ないと考えられています」、安心した。 「カフェインを多くとる人のほうが眼圧が高い傾向があるというデータがあります。 身近な飲み物でカフェインを最も多く含むコーヒーの場合、1日に1-2杯程度なら問題ないと考えられています」、「1日に1-2杯程度なら問題ない」というので安心した。 ダイヤモンド・オンライン「11日間、眠らずに起き続けると人はどうなる?高校生による実験の「恐るべき結果」 『ニュートン超図解新書 最強に面白い 睡眠』」 テレビCMで大谷選手が、よい「睡眠」を宣伝しているのもあって、興味深そうだ。「冬眠によってシマリスは若返っている可能性がある、昆虫にも睡眠がある」、とは驚きだ」。 「この8時間15分が本来被験者に必要とされる睡眠時間だと考えられる。もとの平均睡眠時間は7時間36分だったことを考えると、40分の睡眠負債を返すのに3週間かかったことになる。週末に寝だめをしたくらいでは、睡眠負債は解消されないのだ」、なるほど。 「眠らないことで脳には様々な不具合が発生する。睡眠の役割の一つは、脳の疲労回復だといえる。 睡眠の役割はそれだけではない。「記憶の固定」にも影響を与えている。学習後に眠ると記憶に残りやすい、という実験結果が報告されているのだ。脳が覚醒しているときは絶え間なくなんらかの情報が入ってきている。その記憶を定着させたいのであれば、新しい情報を入れるのではなく、早く眠ることが効果的なのかもしれない」、「学習後に眠ると記憶に残りやすい」とは初めて知ったが、残念ながら時既に遅しだ。 「レム睡眠の間、大脳は覚醒しているときに近い状態である。しかも、覚醒時よりも活動している領域がいくつかあることもわかってきた。奇妙な夢や大きな感情をともなう夢の多くはレム睡眠中に見ることがわかっているが、これは視覚イメージに関わる「視覚連合野」や感情に関わる「扁桃体」が活発だからと考えられている」、なるほど。 「人の話し声には大きな覚醒作用がある」、我が家の前の道路は大きな声でおしゃべりをする不届き者がたまにいるので、入眠の妨げになるのは腹立たしい。「寝る直前に入浴すると深部体温が下がりにくくなって、眠りに入りづらいことがある。入浴は就寝2時間前までに済ませておくのがよいだろう」、なるほど。 「仮眠をとる時間は15分から20分程度がよいとされ、そのくらいの時間で起きればちょうどステージ2の間に目覚めることができる。それ以上寝てしまうと、ステージ3の深い眠りから目覚めることになり、不快感でかえって疲労感が増してしまうことにもなりかねない」、「仮眠をとる時間は15分から20分程度がよいとされ」る背景が理解できた。「徹夜をしている間、眠気はどんどん蓄積される。一方、体内時計の信号は普段通りサイクルを刻んでいくので、徹夜明けでも朝になると頭が冴えてくる。だが、眠気は眠ることでしか根本的に解消しない。1 回の徹夜によって睡眠のリズムが崩れ、長期的に睡眠負債を抱えるきっかけにもなりかねない」、なるほど。 「子どもの成長に一番大きな役割を果たしているのが、ノンレム睡眠のステージ3である。ステージ3では脳下垂体とよばれる部位から「成長ホルモン」が分泌される。成長ホルモンは子どもの成長に重要な役割を果たし、骨の伸長、筋肉の増大、けがの治癒を促進する。成長ホルモンは成人でも重要で、疲労回復や代謝の促進などの役割をする。子どもも大人も、しっかりと睡眠をとることが重要なのだ」、なるほど。 「2つの過程によって睡眠と覚醒が進むという仮説だ。1つめのプロセスは、「睡眠圧」だ。覚醒している間、睡眠の欲求を示す「睡眠圧」がだんだん蓄積し、それが十分溜まることで睡眠がはじまる。眠っていると次第に睡眠圧は解消に向かっていく。 2つめのプロセスは体内時計だ。体内時計は睡眠圧の蓄積とは別に、覚醒をうながす信号である覚醒シグナルの強さを約24時間周期で調整している。このシグナルは21時にピークをむかえ、次第に弱まっていく。これにより、睡眠がはじまりやすくなるというわけだ」、なるほど。 「眠気の正体とはいったい何なのだろうか。その有力な候補となる脳内現象が、2018年に発見された。脳内にある80種類のタンパク質、それが「リン酸化」という化学変化をおこしていたのである。この80種類のタンパク質は「スニップス」と呼ばれ、そのうち69種類は、「シナプス」に集中していた。シナプスは神経細胞どうしが信号を伝達する場所であり、神経細胞どうしの接点である。覚醒時にはスニップスのリン酸化が進み、眠るとリン酸化は解消される。リン酸化の解消に要する時間が、その人の睡眠に必要な時間なのかもしれない」、なるほど 「間の体は太陽がのぼると目が覚めて、夜になると眠くなる。それに伴い血圧や体温なども変化する。こうした体の変化を調整しているのが体内時計である。 その周期は平均で24時間12分とされ、大体は地球の自転と連動している。私たちの睡眠のリズムは、地球の自転周期と大きなかかわりがあるのだ・・・体内時計にかかわる遺伝子の異常は睡眠に大きな影響を与える。遺伝子異常の種類によっては、眠気を感じて夜8時には眠り、明け方前に目覚めてしまう「睡眠相前進症候群」や、明け方にならないと眠れず朝になっても目覚めない「睡眠相後退症候群 」がみられる場合がある。近年の研究では、朝型や夜型の人たちの生活リズムのちがいは、体内時計にかかわる遺伝子の個人差による場合が多いと考えられている」、なるほど。 「脳を片方ずつ眠らせる動物たち」とは興味深そうだ。 東洋経済オンライン 和田 秀樹氏による「健康意識が高い人は注意「塩分、糖分は控えめ」の罠 悪者にされがちだが、不足するリスクも大きい」 和田氏の新著『「健康常識」という大嘘』 「低ナトリウム血症とは血液中のナトリウム、つまりは塩分の濃度が低くなった状態を言います。ナトリウムには体内の浸透圧を調節したり、神経や筋肉を正しく機能させたりする役割があって、体内のナトリウム濃度が下がると最初は軽い疲労感があり、重症化するとけいれんを起こしたり、昏睡状態に陥ることもあります。 近年増加の一途にある熱中症も、その多くは低ナトリウム血症によるもので、夏の暑い日に塩分を補給することなく水分ばかりを摂っているとひどいめまいに襲われたりするのはそのためです」、なるほど。 「アジア人は欧米人と比べて糖尿病にかかりやすいことが指摘されていて、その理由が白米の摂取量にあることもわかっています・・・同じものばかりを過剰摂取するフードファディズム・・・は、慢性型アレルギーを発症して身体の酸化を招くリスクがあります・・・食物アレルギーが人によって異なるのと同じで、身体にいい食べ物も人によって異なるのです。だから自分の身体や脳が欲するサインに素直に応じて、食べたいものを食べるほうがいい」、なるほど。 「私は新型コロナ禍に3回の陽性判定を受けましたが、いずれも無症状でした。高血圧、糖尿病、心不全を抱えていて、年齢も60歳を超えています。コロナ発症リスクがもっとも高いとされる条件を満たしていたにもかかわらず、なぜ無症状だったのかと言えば、免疫力が強かったからでしょう。 医者の言うことを聞かないで、血圧が高くても好きなワインを飲み、おいしいものを食べていた。そんな生活こそ免疫力を高めるのだろうと、自らの体験から確信しています。 高血圧や心不全、糖尿病の人が、新型コロナの発症リスクが高いとされたのは、逆に普段からいろんな薬を飲み、節制をしていたことで、さまざまな免疫力が落ちてしまっていたからではないでしょうか・・・食事については、脳に栄養をいきわたらせるため、とくに朝食をしっかり食べてください。一般的に朝食と昼食の間は4時間程度。昼食と夕食の間は7時間程度の間隔ですが、夕食から朝食までは約12時間もあります。そのため朝は、低血糖を一番起こしやすい時間帯なのです」、なるほど。 「動脈硬化など生活習慣病の予防が大事なのは50代まで。60代からはむしろ老化を防ぐために食事でしっかりエネルギーを補完するべきで、なかでも意識したい栄養素がタンパク質、脂質、亜鉛です」、嬉しいアドバイスだ。 「タンパク質は筋肉の衰えを防ぐとともに、タンパク質に含まれるアミノ酸の一種であるトリプトファンは幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの材料になり、幸福感を呼び込みます。 脂質に含まれるコレステロールは性ホルモンの材料となり、牡蠣やニンニクに含まれセックスミネラルとも呼ばれる亜鉛は元気の源となります 。美容面でも、タンパク質や脂質は肌や髪の弾力とツヤに直結します」、健康診断時の食事アドバイスで委縮していたが、和田先生のアドバイス7にはいつも元気づけられる。
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本日は更新を休むので、明日にご期待を!

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宗教(その13)(「カルト後遺症」の深刻 オウム元死刑囚が洗脳から脱した後も“麻原彰晃化”したワケ、ベストセラー著者が語る「旧統一教会問題」と「カルト教祖の共通点」 ロビン・ダンバー氏インタビュー) [社会]

宗教については、本年1月25日に取上げた。今日は、(その13)(「カルト後遺症」の深刻 オウム元死刑囚が洗脳から脱した後も“麻原彰晃化”したワケ、ベストセラー著者が語る「旧統一教会問題」と「カルト教祖の共通点」 ロビン・ダンバー氏インタビュー)である。

先ずは、本年1月19日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した中央大学教授の高橋徹氏による「「カルト後遺症」の深刻、オウム元死刑囚が洗脳から脱した後も“麻原彰晃化”したワケ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/336762
・『若者の不安や不満につけ込む、カルト宗教団体の勧誘は巧みである。親が気づいたときにはもう遅く、離脱は困難だ。しかも、たとえ運良く脱カルトしたとしても、マインドコントロール下で刻み込まれたカルト的思考や行動様式は、数十年たっても消えないという。※本稿は、『「オウム死刑囚 父の手記」と国家権力』(現代書館)の一部を抜粋・編集したものです』、興味深そうだ。
・『逮捕されて父母を泣かせてようやくわかったカルトの罪  金沢市の中心部から車で約一時間、真宗大谷派の浄専寺住職、平野喜之は2007(平成19)年に活動を始めた「『生きて罪を償う』井上嘉浩さんを死刑から守る会」の事務局長を務め、10年以上、嘉浩を支援してきた。平野が井上嘉浩から受け取った手紙は、188通にのぼる。 嘉浩の手紙にはこうある。 「突き詰めますと、麻原を信じたことそのものが罪のはじまりであり、全ての罪の責任は私にあります」 「人にとって救いとは一体何なのでしょうか?その答えがあるとうぬぼれたことが私がオウムに入り大罪を犯しました原因の一つであると今私は考えています」 「麻原は仏教やヨーガの心を変容させていく技術や薬物まで悪用して、徹底的に信者の社会規範や善悪の根本となる個としての人格を破壊していき、代わりに麻原の手足として動く人格を刷り込んでいきました。これが麻原が構築したマインドコントロールです」 「(※編集部注/最高裁で死刑が言い渡された2009年12月10日の)翌日、午前中に両親が面会に参りました。両親がぐったりとしつつ、それでも気丈に振る舞う姿を見て、涙をこらえるのが精一杯でした。父母が、自分たちが悪かったと、なんの責任もないのに、自分たちをせめる姿を見て本当に申し訳ないと、ただただ申し訳ないと、言葉がありませんでした」 「日々、まだ執行されないだろうと思いつつ、いや、わからんぞと、夜明けが恐ろしくもあり、そういうことにとらわれること自体、被害者の方々に申し訳ないと思いつつ、このままでは死にきれない心も消えません。このようなもだえも罪の報いの一つとして静かに見つめている自分もおります」 平野は静かに思いを語った。 「彼にしかできない真相解明とか、彼にしかできないオウム入信者に対して脱会を呼びかけるとか、そういう使命があったと思います。それを果たすことが償うということになったと思いますし、私たちの『守る会』のやっていたことは彼の罪の自覚を深めていくということに集中して支援してきました。罪の自覚を深めることによって本当の心からの被害者への謝罪ができると思います」  教団が救済の名のもとに多くの信徒を集め急拡大し、数々の凶悪事件を起こしていった軌跡は「平成」と重なる。「平成の事件は平成のうちに決着させたい」という政府の思惑だろうか、2018(平成30)年の7月、オウム死刑囚13人の死刑が執行された。) その中の一人が井上嘉浩だった。ホーリーネーム(教団内の宗教名)はアーナンダ。オウム真理教の諜報省トップで、教祖の「側近中の側近」、「修行の天才」、「神通並びなきもの」といわれた教団幹部である。 『生きて罪を償う』井上嘉浩さんを死刑から守る会」は嘉浩の死刑が執行されたことで解散した。機関誌「悲」は16号の追悼号(2018年12月発行)で役目を終えた』、「「平成の事件は平成のうちに決着させたい」という政府の思惑だろうか、2018(平成30)年の7月、オウム死刑囚13人の死刑が執行された」、「死刑囚」の執行が遅れるのが普通だが、「政府の思惑」で異例の執行となったようだ。
・『マインドコントロールが解けてもカルトの傷は残る  平野がもう一つ活動の重点に置いているのが「カルト後遺症」の問題だ。一連のオウム事件がきっかけで誕生した日本脱カルト協会(JSCPR)によると、カルト教団から脱会した人の多くが何らかの『後遺症』に苦しむという。 代表的な症状としては、「神から裁かれるのではないか」という不安感、「自分は裏切り者であり、天罰が下るのではないか」という恐怖感などがあげられる。無理もない話で、身も心も奉じてきた団体の価値観を失い、それまでの理想やアイデンティティをすべて失うことになるからだ。 音楽や映像、においなど些細なことが引き金になり脱会前の心理状態に戻ってしまう、いわゆる「フラッシュバック」もほとんどの人が体験する。 また、せっかく家に戻っても家族や友人、知人との人間関係に悩み、睡眠障害や摂食不良に陥るという例もある。そもそもカルトの多くは、教祖を『父』や『母』としているので、現実の家族に対しては否定的な思いを抱くよう誘導していることが多い。 「何か悪いことが起こると、霊の祟りではないかと、とっさに考えてしまう」と話すのは、日本脱カルト協会の理事で、日本基督教団白河教会牧師の竹迫之だ。 竹迫は1967(昭和42)年、秋田市生まれ。高校3年の時に当時の統一教会(現世界平和統一家庭連合)に勧誘され入会した。「霊感商法」が世間に知られるようになった1980年代半ばのころである。 「マインドコントロールが目指すものは、コントロールする人に対する依存なんです。私の場合は何をするにも指示をしてくれる人の指示を仰ぐというライフスタイルが身についていましたね。なんでも自分で好きに選んでいいよと言われると、かえって何を選んでいいのか分からず混乱する。この依存から離脱するということがマインドコントロールが解けるということなんです。しかし、マインドコントロールは解けても、後遺症は残るんです」) 脱会して十年以上たったころのある体験を竹迫は話してくれた。 「教会の階段を降りていたところ、3段ぐらい踏み外して落ちちゃった。その拍子に左足を3カ所も骨折してしまったんです。そのとき、とっさに霊の祟りではないかと発想が浮かんできた。典型的なカルト後遺症です」 悪いことが起こると、その説明を求めてしまう。竹迫は統一教会を脱会して37年になるが、いまだにそういう瞬間があるという。 「何か不運な目にあったときに、自分に悪いところがあったからではないかと、その原因を追求したくなるものですね。その祟りから逃れるために何かしなくてはいけないという強烈な衝動がわいてくる。私は、マインドコントロール自体は解けているのは間違いないとは思うのですが、けれども後遺症として残っている」』、「悪いことが起こると、その説明を求めてしまう。竹迫は統一教会を脱会して37年になるが、いまだにそういう瞬間があるという・・・カルト後遺症です」、なるほど。
・『被害者どころか支援者にすら独善と映ったオウム元死刑囚  さて、嘉浩にカルト後遺症はあったのだろうか。フォトジャーナリストで『宗教事件の内側 精神を呪縛される人びと』や『カルト宗教事件の深層 「スピリチュアル・アビュース」の論理』などの著書がある藤田庄市は「独善的な修行者意識」という言葉で、嘉浩の後遺症を言い表した。 藤田が注目したのは、目黒公証役場事件で父親を失った仮谷実と嘉浩とのやり取りだった。嘉浩は「亡くなった人たちのことを考えて、できるだけ苦しみを自分に課していきたい」と謝罪したのに対し、仮谷は「被告が苦しんでも、私たちは助からない」と返し、「自らに苦しみを課しても遺族の救済にならない」と突き放した。 「独善的な」とは、修行を続けることにより、人間性も宗教的にも世間より高いところにいるという意識である。 「井上君は麻原教祖とは対決して、『オウムを脱会する』と宣言はしているのだけれども、考え方であるとか、独善的な修行者意識というものは残っていたのではないか。脱会したからといって、カルト思考、カルト的考え方は簡単にはなくならない」と藤田は指摘している。 平野も嘉浩にカルト後遺症を感じていたという。) 「井上君のご両親には申し訳ないが……2018年だったと思うが、『生きて罪を償う会』の内部で、支援を見直そうという声が上がっていた。生来の性格なのか、カルトの後遺症なのか見極めは難しいかもしれないけれども、『麻原は井上君に、こういう指示の仕方をしていたのだ』と感じられるような指示の仕方が井上君から我々『生きて罪を償う会』に対してありました。カルトの怖さは脱会後にも後遺症となって残る。教義から抜けても人間関係の持ち方とか、指示命令系統とかそういうところに残るのではないか」 独善的とも映る嘉浩の振る舞いについて、竹迫はカルト後遺症が影響していた可能性があると話す』、「カルトの怖さは脱会後にも後遺症となって残る。教義から抜けても人間関係の持ち方とか、指示命令系統とかそういうところに残るのではないか」、なるほど。
・『「カルト後遺症」の深刻、オウム元死刑囚が洗脳から脱した後も“麻原彰晃化”したワケ  高橋徹「オウム死刑囚 父の手記」と国家権力(現代書館) 「誰もが権力を振るう立場に魅力を感じます。嘉浩君の場合は、教祖の、麻原の振る舞いを見ていたために、それが増幅されていったのではないでしょうか。自分もやってもいいんだというお墨付きをもらった状態です。高校生のうちから入信したため、『人と人との関係はフラットであるべきだ』という考えに触れたことがなかったのではないでしょうか」。 子供をカルトに取られた親の苦痛を平野はこう話した。神奈川県の教会で出会ったある母親の話である。 「私たちは二重に傷つくのです。一つ目は『子供をカルトにとられたこと』、二つ目は『子供がカルトにとられたのはあなたたちのせいでしょうと世間から偏見の目で見られること』です。私の家庭は上手くいっていました。子供がカルトにとられたのは、勧誘が巧みだっただけでしょうと言いたい」 平野は言う。 「世間には、カルトにとられたのは家族のせいだ、やっぱり家族が悪いと誤解する人がいます。片や親自身が『子供の責任を取らなければいけない』と思い詰める人も少なからずいます。日本では特に『子供の罪は親の罪』として、責任を感じる姿が美化されすぎるきらいがあるのではないでしょうか。そのために親が苦しめられることがあります」 井上家に、嘉浩がまだ幼いころの写真が残っている。自宅の前で、ブルーの短パン、アニメのキャラクターがプリントされた白いポロシャツを着て、上下に動かすことができる透明なシールドが付いた戦隊もののヘルメットをかぶって、無邪気に笑っていた。 「もし神が許してくれるなら、どんなことをしてでも、あのころに戻りたいと思います」 私が嘉浩の父に初めて会った日、父はそう話した』、「「私たちは二重に傷つくのです。一つ目は『子供をカルトにとられたこと』、二つ目は『子供がカルトにとられたのはあなたたちのせいでしょうと世間から偏見の目で見られること』です・・・日本では特に『子供の罪は親の罪』として、責任を感じる姿が美化されすぎるきらいがあるのではないでしょうか。そのために親が苦しめられることがあります」、やはり「カルト後遺症」は深刻なようだ。

次に、3月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した国際ジャーナリストの大野和基氏による「ベストセラー著者が語る「旧統一教会問題」と「カルト教祖の共通点」 ロビン・ダンバー氏インタビュー」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/340568
・『無宗教国ニッポンで、ロビン・ダンバー著『宗教の起原』(白揚社)がベストセラーとなっている。著者は、人間の安定的な集団サイズの上限が「150」であると導き出し、人類学のノーベル賞と称される「トマス・ハクスリー記念賞」を受賞した人物だ。本書では、「私たちはいかに信じる心を獲得したのか」「人類進化の過程で『神』はなぜ生まれたのか」「カルト宗教はなぜ次々と生まれ、人々を惹きつけるのか」といった、人類と宗教を巡る根源的な問いを追求している。著者に、日本の旧統一教会問題なども含めて話を聞いた』、興味深そうだ。
・『「カルト宗教」とは何か  Q:本書の執筆のために、幅広くリサーチをしたと思いますが、最大の発見は? A:結束したコミュニティーを作る際の宗教の役割と宗教の儀式が、脳の「エンドルフィン物質」を活性化することが分かりました。この物質は、人間のフレンドシップを構築するのに使われます。礼拝中の人の脳を調べると、儀式が脳内のエンドルフィンを活性化していたのです。 Q:あなたが無神論者であるからこそ、偏見なくこの本が書けたのでしょうか。 (ロビン・ダンバー氏の略歴はリンク先参照) A:そうですね、私は特定の宗教に何のコミットメントもありません。私は幼少時アフリカで育ったので、さまざまな種類のキリスト教、イスラム教、シーク教、後に仏教、ヒンズー教も経験しました』、「結束したコミュニティーを作る際の宗教の役割と宗教の儀式が、脳の「エンドルフィン物質」を活性化することが分かりました。この物質は、人間のフレンドシップを構築するのに使われます。礼拝中の人の脳を調べると、儀式が脳内のエンドルフィンを活性化していたのです」、「儀式が脳内のエンドルフィンを活性化していた」、とは初めて知った。 
・『Q:本書には「カルト」の章がありますが、これほど深くリサーチをすると、「カルトの作り方」を熟知しているのでは? カルトにおける「教祖」というのは、人生において大きな危機を経験していることが非常に多いです。全財産を失ったとか、大病をして死にかけたとかね。そして自分の殻に閉じこもって、ひどく落ち込んだ経験があります。その間に、宇宙の真実のようなことに目覚めて、それを信じるようになるのです。 宇宙を支配しているものについて斬新なアイデアを持ち、周囲を根気強く納得させます。でないとみんなに笑われて、排除されて終わりです。だから多くのカルトはいささかクレイジーな人が教祖になっているのです。 ほとんどのカルトは、社会的な真実を持つようになり、宗教に変わっていきます。他の人に優しくしたり、慈善を施したりします。一方で宗教にならないカルトは、非常にクレイジーな教義を持っているので、普通は長続きしません。続くケースは非常にまれですね。カルトは教祖のためだけにあり、それ以外の人は搾取されるものなのです。 Q:カルトというとネガティブな響きがあります。日本では政界と旧統一教会の密な関係が報道され続けています。どういう条件で、宗教がカルトになるのでしょうか。) その逆です。つまり世界の全ての宗教は、仏教であれ、神道であれ、キリスト教であれ、イスラム教であれ、シーク教であれ、カルトとして始まっています。宗教とは、「ある真実を発見した」と信じることや、「神のメッセンジャー」を名乗るカリスマ性のあるリーダーを中心に、ローカルで小さなカルトとして始まる、というのが私の見方です。 カルトは時に、ネガティブな含みがありますが、決して全てのカルトが悪いわけではありません。一方で、カルトは簡単に悪くなる可能性も秘めています。ただ、先述したように全ての宗教はカルトから始まり、信奉者が増えて非常に大きなコミュニティーになると、「もはやカルトではなく宗教である」と呼びたくなるのです。 ほとんど全ての宗教は、下部から絶えずカルトが発生している状態とも言えます。神道だって末端でさまざまな団体がありますよね? そして、神道だけでなく仏教を混合した信仰を抱く人もいます。 明らかなのは、末端に出てきたカルトは異端であることが多いことです。正しいセオリーを伝道しているわけではないので、有害になる可能性があります。時に、そうした小さなカルトが暴走してどんどん拡大し、世界的な宗教になることもあります。 キリスト教やイスラム教は、元はと言えばユダヤ教の産物でした。そして、他の多くの宗教がインドや地中海沿岸地方にも入ってきました。キリスト教やイスラム教はさかのぼると、ゾロアスター教に起源があります。 Q:カルトが宗教になる条件は何でしょうか。 A:サイズだけです。多くの異なる国で、かなり広い地域で多くの人が信仰するようになると宗教になります。と同時に大きな宗教にとって非常に重要なことは、正式な教義と儀式があることです。一方で小規模のカルトには盤石な教義はなく、ころころ変わる傾向があります。また、儀式もフォーマルでないことが多い。 Q:カルトについてbrainwashing(洗脳)という言葉を使いますが、宗教について〈洗脳〉という言葉を使いますか? A:yes and noです。カルトと宗教の間には、微妙な区別があります。カルトは往々にして厳格な罰をもって、行動や信じるべきことを強制します。一方で、宗教は強制ではなく「説得」によって行います。つまり、もう少しリラックスしているイメージです。他方で、例えばキリスト教の歴史をたどると、異教徒や正しい教義を信じない者に対して差別や迫害をしていた時代もありました。 いずれにせよbrainwashingは、宗教上の信条であれ、政治的信条であれ、一つのコミュニティーが結束し続けるためには、世界中ですべての信条に当てはまると思います』、「カルトにおける「教祖」というのは、人生において大きな危機を経験していることが非常に多いです。全財産を失ったとか、大病をして死にかけたとかね。そして自分の殻に閉じこもって、ひどく落ち込んだ経験があります。その間に、宇宙の真実のようなことに目覚めて、それを信じるようになるのです。 宇宙を支配しているものについて斬新なアイデアを持ち、周囲を根気強く納得させます。でないとみんなに笑われて、排除されて終わりです。だから多くのカルトはいささかクレイジーな人が教祖になっているのです。 ほとんどのカルトは、社会的な真実を持つようになり、宗教に変わっていきます。他の人に優しくしたり、慈善を施したりします。一方で宗教にならないカルトは、非常にクレイジーな教義を持っているので、普通は長続きしません。続くケースは非常にまれですね。カルトは教祖のためだけにあり、それ以外の人は搾取されるものなのです・・・全ての宗教はカルトから始まり、信奉者が増えて非常に大きなコミュニティーになると、「もはやカルトではなく宗教である」と呼びたくなるのです。 ほとんど全ての宗教は、下部から絶えずカルトが発生している状態とも言えます。神道だって末端でさまざまな団体がありますよね? そして、神道だけでなく仏教を混合した信仰を抱く人もいます。 明らかなのは、末端に出てきたカルトは異端であることが多いことです。正しいセオリーを伝道しているわけではないので、有害になる可能性があります。時に、そうした小さなカルトが暴走してどんどん拡大し、世界的な宗教になることもあります。 キリスト教やイスラム教は、元はと言えばユダヤ教の産物でした。そして、他の多くの宗教がインドや地中海沿岸地方にも入ってきました。キリスト教やイスラム教はさかのぼると、ゾロアスター教に起源があります・・・カルトが宗教になる条件は何でしょうか。 A:サイズだけです。多くの異なる国で、かなり広い地域で多くの人が信仰するようになると宗教になります。と同時に大きな宗教にとって非常に重要なことは、正式な教義と儀式があることです。一方で小規模のカルトには盤石な教義はなく、ころころ変わる傾向があります。また、儀式もフォーマルでないことが多い。 Q:カルトについてbrainwashing(洗脳)という言葉を使いますが、宗教について〈洗脳〉という言葉を使いますか? A:yes and noです。カルトと宗教の間には、微妙な区別があります。カルトは往々にして厳格な罰をもって、行動や信じるべきことを強制します。一方で、宗教は強制ではなく「説得」によって行います。つまり、もう少しリラックスしているイメージです。他方で、例えばキリスト教の歴史をたどると、異教徒や正しい教義を信じない者に対して差別や迫害をしていた時代もありました。 いずれにせよbrainwashingは、宗教上の信条であれ、政治的信条であれ、一つのコミュニティーが結束し続けるためには、世界中ですべての信条に当てはまると思います」、なるほど。
・『宗教は戦争を引き起こすが…  Q:宗教は時に戦争の原因になります。それでも、宗教には有益な面の方が多いのでしょうか。 A:確かに、宗教は宗教戦争を引き起こします。宗教というのは、絆の強いコミュニティーを作るためにあるので、真の信奉者とそうではない人と対比させることで、絆を強化することが往々にしてあるのです。 全体的には、やはり有益な面の方が多いでしょう。帰属感を作り出します。また、少なくとも信者同士では素行が良くなり、老人や病人や貧しい人に施しもします。 一人の内面に、複数の宗教が存在している場合もあります。日本人がその典型です。結婚式は神道で行い、葬儀は仏教でやるということが日本ではよくありますよね? これは、世界的にはまれなケースです。宗教にあまり意識がないからでしょう。 宗教の歴史を振り返ると、異なる宗教で互いの儀式や教義を借り合うことが往々にしてあります。キリスト教の中でも、ユダヤ教を経由してゾロアスター教から、非常に強い影響を受けています。また、儀式や教義の点では、明らかに古い仏教からの影響も見られます。 Q:あなたは、人間が安定的な関係性を維持できる人数の上限がおおむね「150」であると説きましたね(「ダンバー数」)。その150という数字は、宗教とも関係あるのでしょうか? A:寺や教会における集会は150人が最適規模だと分かっています。また、19世紀の米国では移住者が増え続け、人々はコミュニティーを作り、密接な関係を維持しながら暮らしていましたが、その中で宗教のベースがあるコミュニティーでは、150人が平均でした。 これは私の調査とは別のものですが、プロテスタントの集会では100人以下だと教会や神父をサポートするのに十分ではなく、1人当たりの負担金額が大きすぎるという研究結果も出ています。一方で、200人を超えると帰属意識がなくなってきます。つまり、100人と200人の間に全てがうまくいくsweet spot(最大の利益が見込めるところ)があるということです』、「宗教は宗教戦争を引き起こします。宗教というのは、絆の強いコミュニティーを作るためにあるので、真の信奉者とそうではない人と対比させることで、絆を強化することが往々にしてあるのです。 全体的には、やはり有益な面の方が多いでしょう。帰属感を作り出します。また、少なくとも信者同士では素行が良くなり、老人や病人や貧しい人に施しもします。 一人の内面に、複数の宗教が存在している場合もあります。日本人がその典型です。結婚式は神道で行い、葬儀は仏教でやるということが日本ではよくありますよね? これは、世界的にはまれなケースです・・・あなたは、人間が安定的な関係性を維持できる人数の上限がおおむね「150」であると説きましたね(「ダンバー数」)。その150という数字は、宗教とも関係あるのでしょうか? A:寺や教会における集会は150人が最適規模だと分かっています。また、19世紀の米国では移住者が増え続け、人々はコミュニティーを作り、密接な関係を維持しながら暮らしていましたが、その中で宗教のベースがあるコミュニティーでは、150人が平均でした。 これは私の調査とは別のものですが、プロテスタントの集会では100人以下だと教会や神父をサポートするのに十分ではなく、1人当たりの負担金額が大きすぎるという研究結果も出ています。一方で、200人を超えると帰属意識がなくなってきます。つまり、100人と200人の間に全てがうまくいくsweet spot(最大の利益が見込めるところ)があるということです」、「寺や教会における集会は150人が最適規模だと分かっています」、「寺や教会における集会に最適規模」があるとは初めて知ったが、なんとなく感覚的な印象と一致するようだ。 
タグ:宗教 (その13)(「カルト後遺症」の深刻 オウム元死刑囚が洗脳から脱した後も“麻原彰晃化”したワケ、ベストセラー著者が語る「旧統一教会問題」と「カルト教祖の共通点」 ロビン・ダンバー氏インタビュー) ダイヤモンド・オンライン 高橋徹氏による「「カルト後遺症」の深刻、オウム元死刑囚が洗脳から脱した後も“麻原彰晃化”したワケ」 「オウム死刑囚 父の手記」と国家権力』(現代書館) 「「平成の事件は平成のうちに決着させたい」という政府の思惑だろうか、2018(平成30)年の7月、オウム死刑囚13人の死刑が執行された」、「死刑囚」の執行が遅れるのが普通だが、「政府の思惑」で異例の執行となったようだ。 「悪いことが起こると、その説明を求めてしまう。竹迫は統一教会を脱会して37年になるが、いまだにそういう瞬間があるという・・・カルト後遺症です」、なるほど。 「カルトの怖さは脱会後にも後遺症となって残る。教義から抜けても人間関係の持ち方とか、指示命令系統とかそういうところに残るのではないか」、なるほど。 「「私たちは二重に傷つくのです。一つ目は『子供をカルトにとられたこと』、二つ目は『子供がカルトにとられたのはあなたたちのせいでしょうと世間から偏見の目で見られること』です・・・日本では特に『子供の罪は親の罪』として、責任を感じる姿が美化されすぎるきらいがあるのではないでしょうか。そのために親が苦しめられることがあります」、やはり「カルト後遺症」は深刻なようだ。 大野和基氏による「ベストセラー著者が語る「旧統一教会問題」と「カルト教祖の共通点」 ロビン・ダンバー氏インタビュー」 ロビン・ダンバー著『宗教の起原』(白揚社) 「結束したコミュニティーを作る際の宗教の役割と宗教の儀式が、脳の「エンドルフィン物質」を活性化することが分かりました。この物質は、人間のフレンドシップを構築するのに使われます。礼拝中の人の脳を調べると、儀式が脳内のエンドルフィンを活性化していたのです」、「儀式が脳内のエンドルフィンを活性化していた」、とは初めて知った。 「カルトにおける「教祖」というのは、人生において大きな危機を経験していることが非常に多いです。全財産を失ったとか、大病をして死にかけたとかね。そして自分の殻に閉じこもって、ひどく落ち込んだ経験があります。その間に、宇宙の真実のようなことに目覚めて、それを信じるようになるのです。 宇宙を支配しているものについて斬新なアイデアを持ち、周囲を根気強く納得させます。でないとみんなに笑われて、排除されて終わりです。だから多くのカルトはいささかクレイジーな人が教祖になっているのです。 ほとんどのカルトは、社会的な真実を持つようになり、宗教に変わっていきます。他の人に優しくしたり、慈善を施したりします。一方で宗教にならないカルトは、非常にクレイジーな教義を持っているので、普通は長続きしません。続くケースは非常にまれですね。カルトは教祖のためだけにあり、それ以外の人は搾取されるものなのです・・・全ての宗教はカルトから始まり、信奉者が増えて非常に大きなコミュニティーになると、「もはやカルトではなく宗教である」と呼びたくなるのです。 ほとんど全ての宗教は、下部から絶えずカルトが発生している状態とも言えます。神道だって末端でさまざまな団体がありますよね? そして、神道だけでなく仏教を混合した信仰を抱く人もいます。 明らかなのは、末端に出てきたカルトは異端であることが多いことです。正しいセオリーを伝道しているわけではないので、有害になる可能性があります。時に、そうした小さなカルトが暴走してどんどん拡大し、世界的な宗教になることもあります。 キリスト教やイスラム教は、元はと言えばユダヤ教の産物でした。そして、他の多くの宗教がインドや地中海沿 岸地方にも入ってきました。キリスト教やイスラム教はさかのぼると、ゾロアスター教に起源があります・・・カルトが宗教になる条件は何でしょうか。 A:サイズだけです。多くの異なる国で、かなり広い地域で多くの人が信仰するようになると宗教になります。と同時に大きな宗教にとって非常に重要なことは、正式な教義と儀式があることです。一方で小規模のカルトには盤石な教義はなく、ころころ変わる傾向があります。また、儀式もフォーマルでないことが多い。 Q:カルトについてbrainwashing(洗脳)という言葉を使いますが、宗教について〈洗脳〉という言葉を使いますか? A:yes and noです。カルトと宗教の間には、微妙な区別があります。カルトは往々にして厳格な罰をもって、行動や信じるべきことを強制します。一方で、宗教は強制ではなく「説得」によって行います。つまり、もう少しリラックスしているイメージです。他方で、例えばキリスト教の歴史をたどると、異教徒や正しい教義を信じない者に対して差別や迫害をしていた時代もありました。 いずれにせよbrainwashingは、宗教上の信条であれ、政治的信条であれ、一つのコミュニティーが結束し続けるためには、世界中ですべての信条に当てはまると思います」、なるほど。 「宗教は宗教戦争を引き起こします。宗教というのは、絆の強いコミュニティーを作るためにあるので、真の信奉者とそうではない人と対比させることで、絆を強化することが往々にしてあるのです。 全体的には、やはり有益な面の方が多いでしょう。帰属感を作り出します。また、少なくとも信者同士では素行が良くなり、老人や病人や貧しい人に施しもします。 一人の内面に、複数の宗教が存在している場合もあります。日本人がその典型です。結婚式は神道で行い、葬儀は仏教でやるということが日本ではよくありますよね? これは、世界的にはまれなケ ースです・・・あなたは、人間が安定的な関係性を維持できる人数の上限がおおむね「150」であると説きましたね(「ダンバー数」)。その150という数字は、宗教とも関係あるのでしょうか? A:寺や教会における集会は150人が最適規模だと分かっています。また、19世紀の米国では移住者が増え続け、人々はコミュニティーを作り、密接な関係を維持しながら暮らしていましたが、その中で宗教のベースがあるコミュニティーでは、150人が平均でした。 これは私の調査とは別のものですが、プロテスタントの集会では100人以下だと教会や神父をサポートするのに十分ではなく、1人当たりの負担金額が大きすぎるという研究結果も出ています。一方で、200人を超えると帰属意識がなくなってきます。つまり、100人と200人の間に全てがうまくいくsweet spot(最大の利益が見込めるところ)があるということです」、「寺や教会における集会は150人が最適規模だと分かっています」、「寺や教会における集会に最適規模」があるとは初めて知ったが、なんとなく感覚的な印象と一致するよ
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