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米中経済戦争(その7)(トランプ 対中関税を25%に 経済界は「支払うのは米国の国民と企業」と批判、米国激怒! 習近平が突然「喧嘩腰」になったワケ 改めて宣戦布告した中国 エスカレート必至の貿易戦争の行方、米国が「報復関税&ファーウェイ」で中国を“総攻撃”) [世界情勢]

米中経済戦争については、昨年12月24日に取上げた。今日は、(その7)(トランプ 対中関税を25%に 経済界は「支払うのは米国の国民と企業」と批判、米国激怒! 習近平が突然「喧嘩腰」になったワケ 改めて宣戦布告した中国 エスカレート必至の貿易戦争の行方、米国が「報復関税&ファーウェイ」で中国を“総攻撃”)である。なお、タイトルから「対立」をカットした。

先ずは、5月10日付けNewsweek日本版「トランプ、対中関税を25%に 経済界は「支払うのは米国の国民と企業」と批判」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/05/25-18.php
・『米政府は10日、中国からの2000億ドル相当の輸入品に対する関税を10%から25%に引き上げた。 新たな関税は米東部時間10日午前0時1分(日本時間同午後1時1分)以降の輸出品に適用される。 対象となるのは5700品目以上。 米税関・国境取締局(CBP)によると、米東部時間10日午前0時01分までに中国を出発した貨物は10%の関税を適用する。 こうした猶予期間は、昨年の過去3回の関税引き上げには適用されていなかった。ただ、これまでの制裁関税は少なくとも3週間前に実施が通知されていた。今回は表明から約5日間での発動となった。 関税引き上げの対象分野で最も規模が大きいのは、インターネットモデム、ルーターなどのデータ伝送機器で約200億ドル。次にプリント基板(PCB)の約120億ドルが続く。 家具、照明、自動車部品、掃除機、建築資材なども対象になる』、小休止状態にあった米中経済戦争が再び再燃したようだ。
・『全米民生技術協会(CTA)のゲーリー・シャピロ最高経営責任者(CEO)は、関税を支払うのは、トランプ大統領が主張する中国ではなく米国の消費者と企業だと指摘。「われわれの業界は米国で1800万人以上の雇用を支えているが、関税引き上げは壊滅的だ」とし、「米国のテクノロジー部門では、昨年10月以降、すでに発動されている関税で毎月約10億ドルのコストが発生している。これは追加のコストを吸収できない小規模事業者、スタートアップ企業には死活問題になり得る」と述べた。 エコノミストや業界コンサルタントによると、米国の消費者が関税引き上げの影響を感じるには3─4カ月かかる可能性がある。小売り業者は輸入コストの増加を受けて、値上げを迫られるとみられている』、関税引上げは、中国の輸出企業のみならず、米国企業や消費者にとっても大きな痛手になる筈だが、その効果が現れるまでには「3─4カ月かかる可能性」とかなりのタイムラグがあるようだ。

次に、ジャーナリストの福島 香織氏が5月16日付けJBPressに寄稿した「米国激怒! 習近平が突然「喧嘩腰」になったワケ 改めて宣戦布告した中国、エスカレート必至の貿易戦争の行方」を紹介しよう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56398
・『米中貿易戦争はやはり激化せざるをえない、ということが今さらながらに分かった。双方とも合意を求めるつもりはないのかもしれない。 劉鶴副首相率いる中国側の交渉チームは5月にワシントンに赴いたが、物別れに終わり、米国は追加関税、そして中国も報復関税を発表。協議後の記者会見で劉鶴は異様に語気強く中国の立場を主張した。だが、交渉は継続するという。 4月ごろまでは、5月の11回目のハイレベル協議で米中間の貿易問題は一応の妥結に至り、6月の米中首脳会談で合意文書を発表、とりあえず米中貿易戦争はいったん収束というシナリオが流れていた。それが5月にはいって「ちゃぶ台返し」になったのは、サウスチャイナ・モーニング・ポストの報道が正しければ、習近平の決断らしい。習近平はこの決断のすべての「責任」を引き受ける覚悟という。 では習近平はなぜそこまで覚悟を決めて、態度を急に反転させたのだろうか』、習近平による「ちゃぶ台返し」の背景を知りたいとことだ。
・『改めて宣戦布告した習近平  第11回目の米中通商協議ハイレベル協議に劉鶴が出発する直前の5月5日、トランプはツイッターで「米国は2000億ドル分の中国製輸入品に対して今週金曜(10日)から、関税を現行の10%から25%に引き上げる」と宣言。さらに「現在無関税の3250億ドル分の輸入品についても間もなく、25%の関税をかける」と発信した。この発言に、一時、予定されていた劉鶴チームの訪米がキャンセルされるのではないか、という憶測も流れた。結局、劉鶴らは9~10日の日程で訪米したのだが、ほとんど話し合いもせず、トランプとも会わず、物別れのまま帰国の途についた。 サウスチャイナ・モーニング・ポストなどは、トランプがこうした態度に出たのは、中国側の譲歩が足りないことに忍耐が切れたからであり、譲歩を拒んだのは習近平自身にすべて責任があると報じた。匿名の消息筋の話として「交渉チーム(劉鶴ら)は、次のハイレベル協議で、(妥結のために)習近平により多くの譲歩をするよう承諾を求めたが、習近平はこうした提案を拒否した」「責任は全部私(習近平)が負う」とまで言ったという。この習近平の断固とした姿勢を受けて、中国側交渉チームは、ワシントンに提案するつもりだった「最後の妥結案」を直前になって強硬なものに変更した。これにトランプのみならず、穏健派のムニューシンまで激怒し、今回の関税引きにつながった、という話だ。ならば、習近平に貿易戦争を終結させる意志はないということだろうか。 ではなぜ、劉鶴をあえてワシントンに送ったのか。 ホワイトハウスの発表によれば、トランプは習近平から「美しい手紙」を受け取ったそうだ。その中には習近平の「対話継続」の要望がしたためられていたという。手紙には、依然、協議が妥結することを望むとあり、「我々はともに努力し、これらのことを完成させましょう」とあったそうである。 トランプはこれに対し、次のように発言している。 「中国側は、交渉を最初からやり直したい、といい、すでに妥結に至っていた“知財権窃盗”の問題など多くの内容について撤回を要求してきた。こんなことはあり得ない」「中国側が交渉のテーブルに戻りたいなら、何ができるのか見せてもらおう」「関税引き上げは我々の非常にいい代替案だ」 これに対する中国側の立場だが、劉鶴がワシントンを離れる前の記者会見でこんな発言をしている。新華社の報道をそのまま引用しよう。「重大な原則の問題において中国側は決して譲歩しない」「目下、双方は多くの面で重要な共通認識に至っているが、中国側の3つの核心的な関心事は必ず解決されなければならない。1つ目は、全ての追加関税の撤廃だ。関税は双方の貿易紛争の起点であり、協議が合意に達するためには、追加関税を全て撤廃しなければならない。 2つ目は、貿易調達のデータが実際の状況に合致しなければならないことで、双方はアルゼンチンで既に貿易調達の数字について共通認識を形成しており、恣意的に変更すべきではない。 3つ目は協議文書のバランスを改善させること。どの国にも自らの尊厳があり、協議文書のバランスを必ず図らなければならない。今なお議論すべき肝心な問題がいくつか存在する。昨年(2018年)以降、双方の交渉が何度か繰り返され、多少の曲折があったが、これはいずれも正常なものだった。双方の交渉が進行する過程で、恣意的に“後退した”と非難するのは無責任だ」「中国国内市場の需要は巨大で、供給側構造改革の推進が製品と企業の競争力の全面的な向上をもたらし、財政と金融政策の余地はまだ十分あり、中国経済の見通しは非常に楽観的だ。大国が発展する過程で曲折が生じるのは良いことで、われわれの能力を検証することができる」 このような自信に満ちた強気の発言は、劉鶴にしては珍しく、明らかに“習近平節”だ。 つまり、習近平は、米国との貿易戦争、受け立とうじゃないか、と改めて宣戦布告した、といえる。これは、3月の全人代までの空気感と全く違う。3月までは米中対立をこれ以上エスカレートさせるのは得策ではない、という共通認識があったと思われる。だが、習近平の全人代での不満そうな様子をみれば、習近平自身は納得していなかっただろう。貿易戦争における中国側の妥協方針は李克強主導だとみられている。 劉鶴をワシントンにとりあえず派遣したのは、中国としては米国との話し合いを継続させる姿勢はとりあえず見せて、協議が妥結にこぎつけなかったのは米国側の無体な要求のせい、ということを対外的にアピールするためだったのだろう』、習近平が「改めて宣戦布告した」背景には、何があるのだろう。
・『「台湾のため」に米国には屈しない  では貿易戦争妥結寸前、という段階で習近平が「俺が責任をもつ」といってちゃぶ台返しを行ったその背景に何があるのか。李克強派が習近平の強気に押し切られたとしたら、その要因は何か。 1つは台湾総統選との関係性だ。米中新冷戦構造という枠組みにおいて、米中の“戦争”は貿易戦争以外にいくつかある。華為(ファーウェイ)問題を中心とする“通信覇権戦争”、それと関連しての「一帯一路」「中国製造2025」戦略の阻止、そして最も中国が神経をとがらせているのが“台湾問題”だ。 台湾統一は足元が不安定な習近平政権にとって個人独裁政権を確立させるための最強カード。その実現が、郭台銘の国民党からの出馬表明によって視野に入ってきた。もちろん国民党内では抵抗感が強く、実際に郭台銘が総統候補となるかはまだわからないが、仮に総統候補になれば、勝つ可能性が強く、そうなれば、中台統一はもはや時間の問題だ。郭台銘は「中華民国」を代表して中国と和平協議を行う姿勢を打ち出している。だが、その「中華民国」とは、今の中国共産党が支配する地域を含むフィクションの国。双方が「中国は1つ」の原則に基づき、統一に向けた協議を行えば、フィクションの国が現実の国に飲み込まれるのは当然だろう。そもそも郭台銘に国家意識はない。大中華主義のビジネスマンであり、しかも共産党との関係も深い。彼は共産党と自分の利益のために台湾を売り渡す可能性がある。つまり今、台湾問題に関して、中国はかなり楽観的なシナリオを持ち始めている。 貿易戦争で中国側が全面的妥協を検討していたのは、そのバーターとして米国に台湾との関係を変えないでもらおうという狙いがあったからだ。だが中国に平和統一に向けたシナリオが具体的に見え出した今、米国にはそんなバーターに応じる余裕はない。台湾旅行法、国防授権法2019、アジア再保証イニシアチブ法に続き、台湾への武官赴任を認める「2019年台湾保障法」を議会で可決した。となると、中国にすれば、台湾のために貿易交渉で米国に屈辱的な妥協にこれ以上甘んじる必要性はない。妥協しても米国は台湾に関しては接近をやめないのだから』、台湾問題、しかも鴻海創業者の「郭台銘の国民党からの出馬表明」、までが絡んでいるとは初めて知り、驚かされた。シャープや鴻海にしてみれば、米中関係悪化で経営をしっかり舵取りしてもらわなければならない時期に、郭台銘が経営をおっぽり出して、政治に熱を上げるというのは最悪の事態だろう。願わくば、「総統候補」になれずに経営に復帰してほしいといったところだろう。
・『「バイデン大統領」を待ち望む中国  もう1つの可能性は、劉鶴の発言からも見て取れるように、貿易戦争が関税引き上げ合戦になった場合、「中国経済の見通しの方が楽観的」と考えて、突っ張れば米国の方が折れてくるとの自信を持っている可能性だ。 中国経済に関していえば、第1四半期の数字は予想していたよりも良かった。私は、これは李克強主導の市場開放サインや減税策に海外投資家が好感したせいだと思っているので、李克強の対米融和路線を反転させれば、また中国経済は失速すると思うのだが、どうだろう。 さらに、もう1つの背景として、大統領選挙の民主党候補にジョー・バイデンがなりそうだ、ということもあるかもしれない。バイデンは中国が長らく時間をかけて利権づけにしたパンダハガー(「パンダを抱く人」=親中派)政治家であり、実際彼は「中国は我々のランチを食べ尽くすことができるのか?」と語り、中国脅威論に与しない姿勢を示している。来年の秋にバイデンが大統領になるなら、習近平は妥協の必要がない。中国は今しばらく忍耐すればいいだけだ。むしろ、トランプを挑発して、その対中姿勢を不合理なほど過激なものにさせた方が、企業や一般家庭の受ける経済上のマイナス影響が大きくなり、トランプの支持率が落ちるかもしれない。次の大統領選で民主党政権への転換の可能性はより大きくなるかもしれない。 トランプがファーウェイ問題や一帯一路対策で、企業や周辺国に“踏み絵を踏ます”かのような圧力をかけるやり方は、一部では不満を引き起こしている。アンチ中国派のマレーシアのマハティール首相ですら、米中貿易戦争でどちらかを選べ、と迫られたら、「富裕な中国を選ぶ」(サウスチャイナ・モーニング・ポスト、3月8日付)と答えている。強硬な姿勢をとっているのはトランプの方だ、というふうに国際世論を誘導しようと中国側も懸命に動いている』、親中派をパンダハガーと呼ぶというのは、初めて知ったが、上手い表現だ。仮にバイデンが大統領になるのであれば、それを待つというのも手ではあるが、その可能性が低いとすればリスクが余りに大きいだろう。もっとも、「国際世論を誘導」する作戦は上手くいっているようだ。
・『2人の政治家の命運はいかに?  さて、私はこういった背景に加えて、若干の党内の権力闘争の要素も感じてしまうのだ。 というのも、サウスチャイナ・モーニング・ポストの報道ぶりが、いかにも今回の貿易戦争の決裂は全部習近平の一存で決まった、とわざわざその責任に言及しているからだ。サウスチャイナ・モーニング・ポストは香港で発行されている日刊英字新聞である。アリババに買収されて以来、中国寄りの報道になっているが、厳密に言えば、曽慶紅や江沢民に近い。米中通商協議が決裂し、そのツケがマイナス影響として国内の経済、社会の表層に表れた場合は、習近平退陣世論を引き起こそう、などという曽慶紅ら、長老らの狙いを含んだ報道じゃないか、という気がしてしまった。 いずれにしろ、習近平が「責任は全部、俺がかぶるから」と言って、交渉のちゃぶ台返しを行ったのだとしたら、今後の中国の経済の悪化次第では、習近平責任論は出てくるだろう。あるいは、その前にトランプに対する米国内の風当たりが強くなるのか。 つまり貿易戦争の勝敗は、トランプと習近平のそれぞれの政治家としての命運もかかっている。その勝敗の行方を決める次のステージが大阪で行われるG20の場だとしたら、ホストの日本もなかなか責任重大だ』、習近平もかなりのリスクを取っているようだ。G20が見物だ。

第三に、元・経済産業省米州課長で中部大学特任教授の細川昌彦氏が5月17日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「米国が「報復関税&ファーウェイ」で中国を“総攻撃”」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00133/00007/?P=1
・『米中摩擦の“主旋律”と“通奏低音”が一挙に音量を増してクライマックスの展開になってきた。米国の対中戦略については、トランプ米大統領による報復関税合戦の“主旋律”と米国議会、政権幹部、情報機関など“オール・アメリカ”による冷戦モードの“通奏低音”に分けて見るべきだが、いよいよ両者が合体・共鳴してきた。 トランプ大統領による派手な報復関税合戦は表面的には非常に目立ち、耳目を集めている。これが私の言う“主旋律”だ。直前まで合意寸前と見られていた米中貿易交渉が一転、暗礁に乗り上げた。米国は2000億ドル分の中国製品に課す第3弾の制裁関税を10%から25%に引き上げ、さらに第4弾として制裁関税の対象を中国からの全輸入品に広げることを表明した。合意に向けて楽観論が市場を含めてまん延していただけに、衝撃を与えている。 今後、仮に急転直下合意があったとしても、それは“小休止”にすぎず、2020年の大統領選挙までは一山も二山も“主旋律”の見せ場を作って支持者にアピールするだろう。 他方、5月15日、米国は中国の通信大手、華為技術(ファーウェイ)に対する事実上の禁輸措置を発表した。米国の対中戦略の“通奏低音”とは、トランプ政権以前から高まる対中警戒感を背景とした根深い問題を指すが、今回の措置はその象徴的な動きで、「切り札」だ。 これは拙稿「米国は中国ファーウェイのサプライチェーン途絶に動く」(2019年2月5日)で予想した通りの展開だ。ファーウェイに対して、これまでの政府機関だけでなく、民間企業にも「買わない」「使わない」という規制を広げた。さらに、「買わない」「使わない」から「売らない」「作らせない」の段階にいよいよ突入したのだ。まさにトップギアに入った。 本丸ファーウェイに対してサプライチェーン(供給網)を封じる強力な手段で迫るものだ。グローバルなサプライチェーンを分断する影響も出てくるだろう。詳しくは前述の拙稿を参照されたい。 私がこの展開を予想した今年2月の段階で、既に米国政権はこの「切り札」の準備を進めていた。あとはカードを切るベストのタイミングを見計らっていたのだ。それが対中貿易交渉が暗礁に乗り上げた今だ。 1年前、中国の通信機器大手、中興通訊(ZTE)に対して同様の措置を発動した際には、ZTEは経営危機に陥り、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席がトランプ大統領に制裁解除を頼み込んだ経緯がある。その効果を確信したトランプ大統領が習近平主席との交渉の「切り札」を切ったのだ。同時に、関税交渉と違って、米国議会が大きく関わり、トランプ大統領も安易な妥協はできないことには注意を要する。 さらに”通奏低音”はファーウェイ問題にとどまらない。この後には、中国への技術流出を阻止すべく、新型の対中COCOM(ココム=対共産圏輸出統制委員会)とも言うべき新技術の輸出管理を今年中にも導入すべく準備が進められている。着々と通奏低音は演奏する楽器の厚みを増しているのだ。 表面的な関税合戦ばかりに目を奪われず、こうした本質的な動きも進行していることを忘れてはならない』、「派手な報復関税合戦」が「“主旋律”」で、ファーウェイ問題などが「“通奏低音”」とは上手い表現だ。それらが「一挙に音量を増してクライマックスの展開になってきた」、「着々と通奏低音は演奏する楽器の厚みを増している」、などというのはその通りだろう。「新技術の輸出管理を今年中にも導入すべく準備が進められている」、というのもやっかいな問題だ。
・『日本企業も他人事ではない  ファーウェイ問題の日本企業との関わりは極めて重要なので、ここで再度警鐘を鳴らしたい。 現状でも日本の部材メーカーのファーウェイへの売り上げは年間7000億円程度にも上る。さらに、今後成長すると見込んでファーウェイへの売り込みを強化しようとしている日本企業も多い。 米国にとって意味ある規制にするためには、部材の供給能力のある日本による対中国の輸出管理の運用に関心が向いて当然だ。米国が「懸念顧客リスト」に載せて原則輸出不許可の運用をすると、日本政府による輸出管理の運用は独自の判断ではあるが、それを“参考にする”のが通例である。 しかしどのように“参考にする”のかは明確ではない。あくまで“機微度”に応じたケース・バイ・ケースの判断だが、日本企業も白黒がはっきりしない難しい判断を迫られることになる。要するに日本企業の経営者にとって、不慣れな「リスク・マネジメント」が重要になるのだ。 他方、ファーウェイも早くから米国政府の動きを察知して、危機感を持って米国以外からの部材の調達先の確保に奔走していた。日本の部材メーカーにとっても重要顧客であるだけに難しい対応を迫られることになる。少なくとも「『漁夫の利』を得ようとした」と米国から見られることのないよう、慎重さが必要になっている。 また日本で生産された製品の中に、米国から調達した部品が25%以上含まれていると、米国の規制対象になる(再輸出規制)ことも日本企業にとっては要注意だ。不注意で米国の規制違反になることがあってはならない』、「日本の部材メーカーのファーウェイへの売り上げは年間7000億円程度にも上る」というのでは一大事だ。
・『米中ともに「合意はしたいが、妥協はできない」関税合戦  次に“主旋律”である米中の関税合戦を見てみよう。 トランプ大統領も中国の習近平主席も「合意はしたいが、妥協はできない」のだ。その背景については、既にさまざま論じられているが、米中の駆け引きを見る上での基本的視点は、大きく2点ある。 米中双方における国内の「政治力学」と「経済状況」だ。 まず、米国の政治力学と経済状況はどうか。 トランプ大統領の頭の中は2020年の大統領再選が支配しており、判断のモノサシは分かりやすい。米国における通商問題のカギを握るのは米国議会だ。その議会は今や共和党、民主党問わず、対中強硬一色である(例外は、民主党の大統領候補の有力な一人であるバイデン元副大統領で、対中融和で知られ、対中強硬論に与しない姿勢を示している)。ここで安易に妥協すれば、批判の的になり、大統領選挙キャンペーンに大きなマイナスだ。 それをうまく活用しているのが、対中交渉の責任者であるライトハイザー米通商代表部(USTR)代表だ。一時2月ごろは、中国の知的財産権など構造問題にこだわる交渉姿勢を、早く合意したいトランプ大統領から批判されて、不仲説までささやかれた。しかし米国議会での公聴会などであえて議会の強硬圧力を受けることで、トランプ大統領の風圧をしのいできた。まさに長年ワシントンで生き延びてきた「ワシントン・サバイバー」の真骨頂だ。 これはかつて米朝協議において、ポンペオ国務長官、ボルトン大統領補佐官が諜報機関の情報を駆使して、安易な妥協は国内で批判を受けることをトランプ大統領に悟らせ、踏みとどまらせたことと軌を一にする。 トランプ大統領の前では無力な政権幹部は、米国議会や諜報機関といったワシントンの政策コミュニティーと連携することによって、何とかトランプ大統領の暴走を最小限にしているのだ。 米国政権内のパワーバランスも大きく変化した。中国が一旦合意したことを撤回して、約束を反故(ほご)にしたことが今回、トランプ大統領が強硬姿勢に転じたきっかけである。だが、このことが「中国は信頼できない」と主張してきた対中強硬派の論客、ナバロ大統領補佐官の信任を高めることになった。今や、穏健派のムニューシン財務長官の影は薄く、ナバロ補佐官、ライトハイザーUSTR代表といった対中強硬派が政権内を支配している』、「トランプ大統領の前では無力な政権幹部は、米国議会や諜報機関といったワシントンの政策コミュニティーと連携することによって、何とかトランプ大統領の暴走を最小限にしているのだ」という指摘は説得力がある。トランプはどうも相対交渉では、相手に引きずられ、甘くなりかちなのを、彼らが軌道修正しているようだ。
・『強気の背景は米国経済の好調さ  米国の好調な経済もトランプ大統領を強気にさせている要因だ。トランプ大統領の関心事は選挙戦に大きく影響する株価の動向である。 昨年11月、12月の株価の乱高下は米中の関税合戦による株価急落の懸念をもたらした。その後、米中協議が順調な進展を見て、マーケットは合意を織り込んでいた。大統領選に向けて重視する株価に激震を走らせる追加関税の引き上げはないだろうと、中国側も高をくくっていた節がある。 今回、5月5日のトランプ大統領のツイッターで追加関税を課すことが突然明らかにされ、激震が走ったが、一時下がった株価も半分戻すなど、マーケットのパニックはなさそうだ。トランプ大統領もこの株価の動きに大いに自信を持ったようだ。 実体経済も失業率は3.6%という1969年以来の低失業率で、インフレ率も低い。多少、関税引き上げで物価が上がっても許容範囲と見たようだ。 むしろ関税合戦が経済の足を引っ張るようだと、米連邦準備理事会(FRB)に利下げをさせる、いい口実になると考えた。これは来年の大統領再選に向けて、経済の好環境を作ることにもなる。早速5月14日、トランプ大統領はツイッターで、中国が経済を下支えするために利下げすると予想して、FRBに同じ措置をとるよう要求した。 FRBも協力させられれば、米国経済の体力は中国を圧倒して、余裕を持った戦いができるとの見立てだ』、こんな法外な要求にFRBが従うようであれば、市場は将来のインフレ懸念から長期金利はむしろ上昇する可能性もある。
・『中国党内権力は常在戦場  他方、中国はどうか。 中国の国内政治は常在戦場だ。常に政権の基盤を揺るがす隙を狙っている。 焦点は米国が重視している、国有企業への巨額補助金や知的財産権問題という中国の構造問題だ。共産党保守派の長老たちから見れば、国内の構造問題に米国が一方的に手を突っ込んでくるのは内政干渉と受け止める。アヘン戦争終結時の南京条約も思い起こさせる屈辱として、批判噴出したのだ。しかも国有企業による補助金は根深い利権、既得権を揺さぶりかねない。 今回、中国の交渉者である劉鶴副首相が一旦合意した150ページあった合意文書案は北京に持ち帰った際に、激しく批判され、習主席も認めなかったという。その結果、中国の本質的な構造問題に関する部分が大きく削除されて、105ページになって返されたとの報道もある。 今回の「ちゃぶ台返し」の方針は習主席の決断で、すべての「責任」を引き受ける覚悟だと、一部の報道で流れている。事の真偽は定かではないが、こうした報道が流されること自体、共産党内の揺さぶりの要素も垣間見ることができる。 下手をすれば、劉鶴副首相という、エリートの経済学者の顧問を抜てきして対米交渉の責任者に据えた習主席の責任にも及びかねない。 今年10月1日に建国70周年の一大イベントを控え、習主席にとって内政、外交を安定させることは最重要課題だ。弱腰外交の批判が共産党内だけでなく、世論にまで及び、ナショナリズムがコントロール困難になることのないよう細心の報道統制をしている。 こうした政治状況では習主席も首脳会談で譲歩しづらい。 ここで注目すべきは王岐山副主席の動向だ。 昨年3月の全人代(全国人民代表大会)人事で王岐山が副主席になった時には、今後の対米外交のカギを握ると見られて、注目されていた。しかし、その後の存在感は全くない。彼の人事を巡る権力闘争もあって、さまざまな臆測が飛び交っている。この難局に至っても王副主席が動かないかは注目点だ。 中国の経済状況も微妙だ。 今年初めの頃は景気の減速が深刻な時期であったが、そのため習主席は劉副首相に対米交渉を早期にまとめるよう指示をし、妥協カードを繰り出した。ところが4月にはこの夏にも景気が底を打つとの見方も広がり、やや余裕ができたため、対米交渉も強気に転じたのだ。 ところが5月15日発表の経済統計では、小売りも生産も投資も振るわず、景気の先行き懸念は再び広がっている。特に追加関税が中国の雇用に打撃を与える恐れもあって、今後、大幅な景気対策を打ち出して、必死にしのごうとするだろう。 「妥協はできないが、合意はしたい」。習主席が大阪での20カ国・地域(G20)首脳会議の場で、どういうカードを切ってくるか。ボールは中国側にある。 こうした米中双方の「政治力学」と「経済状況」は、現時点での“スクリーン・ショット”にすぎない。これまでの半年でも変化したように、今後も時間の経過とともに大きく変化するものだ。それに応じて、米中のドラマがどう展開していくかに注目すべきだろう。 そしてこれはあくまでも米中関係の表面的な部分で、これだけに振り回されてはいけない。米中が奏でる“通奏低音”の部分も含めて、米中関係の全体像の中で相対化して見ることも必要だ』、さすが元経済産業省米州課長として対米交渉の最前線に立った筆者だけあって、読みは広範で深く、大いに参考になった。やはり大阪でのG20が当面の注目点のようだ。
タグ:日経ビジネスオンライン JBPRESS Newsweek日本版 福島 香織 細川昌彦 米中経済戦争 (その7)(トランプ 対中関税を25%に 経済界は「支払うのは米国の国民と企業」と批判、米国激怒! 習近平が突然「喧嘩腰」になったワケ 改めて宣戦布告した中国 エスカレート必至の貿易戦争の行方、米国が「報復関税&ファーウェイ」で中国を“総攻撃”) 「トランプ、対中関税を25%に 経済界は「支払うのは米国の国民と企業」と批判」 中国からの2000億ドル相当の輸入品に対する関税を10%から25%に引き上げた 関税を支払うのは、トランプ大統領が主張する中国ではなく米国の消費者と企業だと指摘 米国のテクノロジー部門では、昨年10月以降、すでに発動されている関税で毎月約10億ドルのコストが発生 追加のコストを吸収できない小規模事業者、スタートアップ企業には死活問題になり得る 米国の消費者が関税引き上げの影響を感じるには3─4カ月かかる可能性 「米国激怒! 習近平が突然「喧嘩腰」になったワケ 改めて宣戦布告した中国、エスカレート必至の貿易戦争の行方」 4月ごろまでは とりあえず米中貿易戦争はいったん収束というシナリオが流れていた 5月にはいって「ちゃぶ台返し」になったのは 習近平の決断 改めて宣戦布告した習近平 習近平の断固とした姿勢を受けて、中国側交渉チームは、ワシントンに提案するつもりだった「最後の妥結案」を直前になって強硬なものに変更した 中国側の3つの核心的な関心事は必ず解決されなければならない 1つ目は、全ての追加関税の撤廃だ 2つ目は、貿易調達のデータが実際の状況に合致しなければならないこと 3つ目は協議文書のバランスを改善させること 習近平は、米国との貿易戦争、受け立とうじゃないか、と改めて宣戦布告した 「台湾のため」に米国には屈しない 台湾総統選との関係性 台湾統一 郭台銘の国民党からの出馬表明によって視野に入ってきた 郭台銘に国家意識はない。大中華主義のビジネスマンであり、しかも共産党との関係も深い 台湾旅行法、国防授権法2019、アジア再保証イニシアチブ法に続き、台湾への武官赴任を認める「2019年台湾保障法」を議会で可決 台湾のために貿易交渉で米国に屈辱的な妥協にこれ以上甘んじる必要性はない 「バイデン大統領」を待ち望む中国 バイデンは中国が長らく時間をかけて利権づけにしたパンダハガー 来年の秋にバイデンが大統領になるなら、習近平は妥協の必要がない 強硬な姿勢をとっているのはトランプの方だ、というふうに国際世論を誘導しようと中国側も懸命に動いている 2人の政治家の命運はいかに? 今後の中国の経済の悪化次第では、習近平責任論は出てくるだろう。あるいは、その前にトランプに対する米国内の風当たりが強くなるのか 貿易戦争の勝敗は、トランプと習近平のそれぞれの政治家としての命運もかかっている 次のステージが大阪で行われるG20の場 「米国が「報復関税&ファーウェイ」で中国を“総攻撃”」 米中摩擦の“主旋律”と“通奏低音”が一挙に音量を増してクライマックスの展開になってきた 派手な報復関税合戦 “主旋律” 今後、仮に急転直下合意があったとしても、それは“小休止”にすぎず、2020年の大統領選挙までは一山も二山も“主旋律”の見せ場を作って支持者にアピールするだろう ファーウェイ)に対する事実上の禁輸措置 “通奏低音” トランプ政権以前から高まる対中警戒感を背景とした根深い問題 「買わない」「使わない」から「売らない」「作らせない」の段階にいよいよ突入した 今年2月の段階で、既に米国政権はこの「切り札」の準備を進めていた あとはカードを切るベストのタイミングを見計らっていたのだ。それが対中貿易交渉が暗礁に乗り上げた今だ ZTE)に対して同様の措置を発動した際には、ZTEは経営危機 習近平(シー・ジンピン)国家主席がトランプ大統領に制裁解除を頼み込んだ経緯 米国議会が大きく関わり、トランプ大統領も安易な妥協はできないことには注意を要する 新型の対中COCOM(ココム=対共産圏輸出統制委員会)とも言うべき新技術の輸出管理を今年中にも導入すべく準備 日本企業も他人事ではない 日本の部材メーカーのファーウェイへの売り上げは年間7000億円程度にも上る 日本で生産された製品の中に、米国から調達した部品が25%以上含まれていると、米国の規制対象になる(再輸出規制)ことも日本企業にとっては要注意 米中ともに「合意はしたいが、妥協はできない」関税合戦 米国の政治力学と経済状況 議会は今や共和党、民主党問わず、対中強硬一色 それをうまく活用しているのが、対中交渉の責任者であるライトハイザー米通商代表部(USTR)代表 かつて米朝協議において、ポンペオ国務長官、ボルトン大統領補佐官が諜報機関の情報を駆使して、安易な妥協は国内で批判を受けることをトランプ大統領に悟らせ、踏みとどまらせたことと軌を一にする トランプ大統領の前では無力な政権幹部は、米国議会や諜報機関といったワシントンの政策コミュニティーと連携することによって、何とかトランプ大統領の暴走を最小限にしているのだ 米国政権内のパワーバランスも大きく変化 ナバロ補佐官、ライトハイザーUSTR代表といった対中強硬派が政権内を支配 強気の背景は米国経済の好調さ 一時下がった株価も半分戻す 関税合戦が経済の足を引っ張るようだと、米連邦準備理事会(FRB)に利下げをさせる、いい口実になると考えた トランプ大統領はツイッターで、中国が経済を下支えするために利下げすると予想して、FRBに同じ措置をとるよう要求 中国党内権力は常在戦場 国有企業への巨額補助金や知的財産権問題という中国の構造問題だ。共産党保守派の長老たちから見れば、国内の構造問題に米国が一方的に手を突っ込んでくるのは内政干渉と受け止める アヘン戦争終結時の南京条約も思い起こさせる屈辱として、批判噴出 回の「ちゃぶ台返し」の方針は習主席の決断で、すべての「責任」を引き受ける覚悟 今年10月1日に建国70周年の一大イベントを控え、習主席にとって内政、外交を安定させることは最重要課題だ 弱腰外交の批判が共産党内だけでなく、世論にまで及び、ナショナリズムがコントロール困難になることのないよう細心の報道統制 習主席も首脳会談で譲歩しづらい 注目すべきは王岐山副主席の動向 習主席が大阪での20カ国・地域(G20)首脳会議の場で、どういうカードを切ってくるか 米中が奏でる“通奏低音”の部分も含めて、米中関係の全体像の中で相対化して見ることも必要だ
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