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人工知能(AI)(その12)(「部門予算」でDXをやる会社が、3年後に後悔すること【ゲスト:夏野剛さん】[『ダブルハーベスト』トーク]夏野剛+平野未来+堀田創(前編)、DXがわからない経営者・AIを使えないベンチャーは去ったほうがいい【ゲスト:夏野剛さん】[『ダブルハーベスト』トーク]夏野剛+平野未来+堀田創(後編)、藤井聡太はなぜこんなに強いのか?将棋のレジェンド・谷川浩司の「天才論」 谷川浩司九段に聞く・前編) [イノベーション]

人工知能(AI)については、4月5日に取上げた。今日は、(その12)(「部門予算」でDXをやる会社が、3年後に後悔すること【ゲスト:夏野剛さん】[『ダブルハーベスト』トーク]夏野剛+平野未来+堀田創(前編)、DXがわからない経営者・AIを使えないベンチャーは去ったほうがいい【ゲスト:夏野剛さん】[『ダブルハーベスト』トーク]夏野剛+平野未来+堀田創(後編)、藤井聡太はなぜこんなに強いのか?将棋のレジェンド・谷川浩司の「天才論」 谷川浩司九段に聞く・前編)である。

先ずは、4月29日付けダイヤモンド・オンライン「「部門予算」でDXをやる会社が、3年後に後悔すること【ゲスト:夏野剛さん】[『ダブルハーベスト』トーク]夏野剛+平野未来+堀田創(前編)」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/269476
・『シナモンAI共同創業者として、多くの企業にAIソリューションを提供して、日本のDXを推進する堀田創さんと、『アフターデジタル』『ネットビジネス進化論』をはじめ、数々のベストセラーでIT業界を牽引する尾原和啓さんがタッグを組んだ『ダブルハーベスト──勝ち続ける仕組みをつくるAI時代の戦略デザイン』(ダイヤモンド社)が刊行された。「このままでは日本はデジタル後進国になってしまう」「日本をAI先進国にしたい」という強い思いでまとめられた同書は、発売直後にAmazonビジネス書第1位を獲得し、さまざまな業界のトップランナーたちからも大絶賛を集めているという。 データを育てて収穫する「ハーベストループ」とは何か。それを二重(ダブル)で回すとはどういうことか。IT業界の最長老を自認するドワンゴ代表の夏野剛さんをゲストにお招きして、AIを使ってDXを全社的に進めるときの心得や、乗り越えるべきハードル、間違いやすいポイントについて、シナモンAI代表の平野未来さんとともに聞いた(構成:田中幸宏)』、興味深そうだ。
・『「業務の生態系」ごとデザインしないと、AIが役に立つようにはならない(堀田創(以下、堀田):『ダブルハーベスト』刊行を記念し、夏野剛さんをお招きさせていただきました。シナモンAI代表の平野さんと一緒に、いろいろお話をうかがいたいと思います。本日はよろしくお願いします。 夏野剛(以下、夏野):夏野です。もう25年くらいIT業界にいて、最長老に近いと思いますが、ここ数年で大きく変わったのは、コンピューティングパワーとネットワークの能力が上がって、本格的なクラウド時代が到来したことですね。それがAI(人工知能)にとっても、ものすごく追い風になっています。 (夏野剛(なつの・たけし) 株式会社ドワンゴ 代表取締役社長/慶應義塾大学 政策・メディア研究科 特別招聘教授 早稲田大学政治経済学部卒、東京ガス入社。ペンシルバニア大学経営大学院(ウォートンスクール)卒。ベンチャー企業副社長を経て、NTTドコモへ。「iモード」「おサイフケータイ」などの多くのサービスを立ち上げ、ドコモ執行役員を務めた。現在は慶應大学の特別招聘教授のほか、株式会社ドワンゴ代表取締役社長、株式会社ムービーウォーカー代表取締役会長、そして、KADOKAWA、トランスコスモス、セガサミーホールディングス、グリー、USEN-NEXT HOLDINGS、日本オラクルの取締役を兼任。このほか経済産業省の未踏IT人材発掘・育成事業の統括プロジェクトマネージャー、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会参与、内閣官房規制改革推進会議委員も務める。) ただ、日本は通信ネットワークも充実しているし、アプリケーションもたくさんあるにもかかわらず、世界から見ると、1周、2周、もしかしたら3周くらい遅れている。その中で、AIをどれだけ本気で活用できるかに、日本の未来はかかっています。私も政府の委員会や企業経営などをやっていますが、いろんな場面でテクノロジーのさらなる活用を人生のミッションとしてがんばっています。 平野未来(以下、平野):シナモンAI代表の平野です。私自身は15年以上前からAIの研究をしていて、学生時代にAIで起業したんですけれども、当時はまだ誰もAIに興味がないという時代で、すぐに失敗してしまいました。そうした経験があるので、いまAIが注目され、世の中でDX(デジタルトランスフォーメーション)がブームになっているのは驚くばかりです。 その一方で、AIやDXが盛り上がっているとはいっても、ほとんどの議論が「コスト削減」どまりになっていて、その先を見通せていない現状を考えると、もっともっと変えていかなければいけない。なので、今回『ダブルハーベスト』が大きな反響を呼んでいることをとてもうれしく思っています。 堀田:今回、IT批評家の尾原和啓さんと『ダブルハーベスト』を書かせていただいたのは、私たちAI技術者の立場からすると、AIを使って働き方や会社のあり方そのものを変えていくという発想から遠いところで、AIをちょこっと使っただけで「AIってこの程度だよね」と見限ってしまったり、それ以前に「AIはまだ早い」「うちには関係ない」という方々もたくさんいて、さすがにこのままではマズいだろうという思いがあったからです。 そこで、AIをビジネスの中にどう組み込んでいくかを体系的にまとめた本を出版したわけですが、大きなメッセージとして、「すでにあるデータをどうやって活用するか」という発想ではなく、日常業務の中でAIが学習するためのデータを取り込み、それによってAIを進化させ、そのAIを使うことでさらに別のデータをためていくという循環構造、ハーベストループをつくることを提唱しています。 (平野未来(ひらの・みく) シナモンAI代表 シリアル・アントレプレナー。東京大学大学院修了。レコメンデーションエンジン、複雑ネットワーク、クラスタリング等の研究に従事。2005年、2006年にはIPA未踏ソフトウェア創造事業に2度採択された。在学中にネイキッドテクノロジーを創業。iOS/Android/ガラケーでアプリを開発できるミドルウェアを開発・運営。2011年に同社をミクシィに売却。ST.GALLEN SYMPOSIUM LEADERS OF TOMORROW、FORBES JAPAN「起業家ランキング2020」BEST10、ウーマン・オブ・ザ・イヤー2019イノベーティブ起業家賞、VEUVE CLICQUOT BUSINESS WOMAN AWARD 2019 NEW GENERATION AWARDなど、国内外での受賞多数。また、AWS SUMMIT 2019 基調講演、ミルケン・インスティテュートジャパン・シンポジウム、第45回日本・ASEAN経営者会議、ブルームバーグTHE YEAR AHEAD サミット2019などへ登壇。2020年より内閣官房IT戦略室本部員および内閣府税制調査会特別委員に就任。2021年より内閣府経済財政諮問会議専門委員に就任。プライベートでは2児の母。) 夏野:僕もAI関係のプロジェクトをいくつかやっていて、そこで感じるのは、AIは1つの「生態系」みたいなものだということです。AIはつくってすぐに効果が出るものではなく、グルグル回していく中でだんだん精度が上がっていく。そして新しい状況が発生したときにそれに適応していく。その意味で、AIのシステムをいかに日常業務の中に組み込んでいくかが大事だと思っています。 たまっているデータを分析して結果を導き出して終わり、ではなく、ふだんの業務フローの中で、あるいはユーザーが我々のサービスを使った結果、生み出されるデータから新しい分析が行われ、それによって打ち手が変わっていく。その流れの中にAIを組み込むというのは、まさにハーベストループの考え方そのもので、とてもしっくりきます。 いままではシステム開発をする人も発注する側も、どうしても何か成果物を受け取って終わり、みたいな考え方が根付いているので、走りながらだんだん精度を上げていくという開発の手法がなかなかなじまないのでしょうね。 堀田:いままでと開発のしかたが違ってくるので、経営者も社員も大きく考え方を変えていく必要がありますね。 夏野:いろいろなプロジェクトを見ていて思うのは、AIに短期的な効用を求める人が結構いるということです。やってみたらここがダメとか、全然使えないという判断をすぐに下してしまう人が多い。状況に応じてつねにチューニングをしながらループをつくっていくという発想が、いままでのシステム開発と全然違うので、人間の側が適応できていないわけです。 実はいま、経営に携わっているKADOKAWAやドワンゴでもループをつくろうとしています。そのときにも、部署ごと、ドメインごとの成果だけで判断するのではなく、トータルで均したときにどういう成果がどういう形で、グループ全体にどういう影響をもたらすのか、大局的な観点からどうなのかを見るようにしています。 堀田:すばらしい。事業レイヤーだけでなく、経営全体としてのループ化まで意識されていらっしゃるのはさすがです』、「いろいろなプロジェクトを見ていて思うのは、AIに短期的な効用を求める人が結構いるということです。やってみたらここがダメとか、全然使えないという判断をすぐに下してしまう人が多い。状況に応じてつねにチューニングをしながらループをつくっていくという発想が、いままでのシステム開発と全然違うので、人間の側が適応できていないわけです」、なるほど。
・『「うちにはデータがないから、AIは使えない……」と諦めなくていい 夏野:でも、APIでデータを出せるようにして、それがきちんと回り始めるまでには、やっぱり時間がかかるんです。正直、3年はかかるなという実感ですね。最近ようやく成果も出てきて、プロジェクトに参加している人たちの意識も変わってきました。あとは、基本設計もフレキシブルに変えていく。これがすごく大事だなというのが、いまのところの学びです。 (堀田創(ほった・はじめ) 株式会社シナモン 執行役員/フューチャリスト 1982年生まれ。学生時代より一貫して、ニューラルネットワークなどの人工知能研究に従事し、25歳で慶應義塾大学大学院理工学研究科後期博士課程修了(工学博士)。2005・2006年、「IPA未踏ソフトウェア創造事業」に採択。2005年よりシリウステクノロジーズに参画し、位置連動型広告配信システムAdLocalの開発を担当。在学中にネイキッドテクノロジーを創業したのち、同社をmixiに売却。さらに、AI-OCR・音声認識・自然言語処理(NLP)など、人工知能のビジネスソリューションを提供する最注目のAIスタートアップ「シナモンAI」を共同創業。現在は同社のフューチャリストとして活躍し、東南アジアの優秀なエンジニアたちをリードする立場にある。また、「イノベーターの味方であり続けること」を信条に、経営者・リーダー層向けのアドバイザリーやコーチングセッションも実施中。認知科学の知見を参照しながら、人・組織のエフィカシーを高める方法論を探究している。マレーシア在住。『ダブルハーベスト』が初の著書となる。) 堀田:ハーベストループの実装には、3年とか5年とかの長いスパンでビジョンをもってやっていくことが不可欠だと私も思います。 平野:『ダブルハーベスト』でいちばん気に入っているのが、「データはあとからでもいい」という考え方です。ありがちなのは、「いまあるデータをどうやって使おうか」という発想ですが、そうすると、「そのデータがないから何もできません」という話になりかねません。もう1つは、AIには取りかかるのが大変というイメージがあるけれども、「最初は小さく始められる」というところも好きですね。 身近な例でいうと、フェイスブックのMessengerで音声通話をすると、話が終わったあとに通話に問題がなかったかを尋ねるポップアップが出てきます。フェイスブックはその回答データをためていて、どういう環境だと通話のクオリティが悪くなるかがわかる。そういうループが回っているからこそ、ユーザーに対してよりよいUX(ユーザー体験)を提供できるわけです。 シナモンAIでも、お客様に対してハーベストループを描いてAIソリューションを提供させていただいています。たとえば、物流商社さんにとっては、お客様がほしいと思ったらすぐに商品が届くというのが実現したい世界観です。そこで、需要予測や倉庫内の配置、なるべく多くの商品を取り扱うにはどうするかといったところでAIを使っていただいています。これは、三重にループが回っているケースですね。 ほかにもたとえばメーカーさんで、お客様の声はあるんだけれども、それが商品設計まで生かされていなかった。そこにハーベストループを回してすぐに伝達される仕組みをつくってあげると、よりお客様のニーズに合った商品づくりができるようになるわけです。そういう事例も出てきました。 堀田:「循環構造をつくることが大事」という意識が広がっているのは私も実感していますね。他方で、いまDXに注目が集まっていますが、日本のDXの現状について、夏野さんはどのように見ていらっしゃいますか? 夏野:「とにかくDXをしろ」とか「DXが重要だ」という経営者は多いですけれども、DXは単なる手段であって目的ではありません。そこを見えていない方が多いですね。大事なのは、デジタライゼーションが起こった結果、人の仕事のフローがどう変わるか、人の組織設計がどう変わるか、ということであって、思考がそこに至らないままテクノロジーだけ導入しても、結局何も変わらない。 その意味では、いまのコロナ禍の状況は追い風というか、根本から考え直すいい転機になっています。そもそもリモートワーク自体が仕事のやり方を変換しているわけで、そのためにはデジタルツールを使わざるを得ない。DXの名の下に、いままでやったことのない働き方を試してみるということがふつうに起こっていて、その中でどれがうまくいったかという知見がたまっていっています。それはとてもいいことです』、「DXは単なる手段であって目的ではありません。そこを見えていない方が多いですね。大事なのは、デジタライゼーションが起こった結果、人の仕事のフローがどう変わるか、人の組織設計がどう変わるか、ということであって、思考がそこに至らないままテクノロジーだけ導入しても、結局何も変わらない」、その通りだろう。
・『DXを理解していない経営者ほど、「部門予算」で済ませようとする  夏野:ただ、そうした変化を定着させるには、トップの理解が欠かせません。たとえば、予算措置をとってみても、AIを使って根本的に業務改革をしようというときに、ループがちゃんと回るということが証明されるまでには、それなりに時間がかかるわけです。 ところが、その間の開発費を特定の部局の予算につけてしまうと、単純にコストが増えるので、現場は動きたくなくなる。だから、それは社長予算でやる必要があります。現場に「経営者予算だから支出は気にしなくていい。エンジニア人員をしっかり割いてくれ」といえるかどうかがすごく重要です。 経営者がDXの本質を理解していればできると思いますが、理解していない経営者には、そういった決断ができない。できないということは、まだまだ理解していない経営者が多いということではないかと思います。 堀田:DXは手段であって、最終的に何を目指すのか、いわゆるパーパス(Purpose)はまた別の問題ですよね。たとえば、「顧客体験を劇的に向上させる」というパーパスがしっかりあれば、そこから一貫したメッセージを届けることができます。 逆に、パーパスが見えていない・浸透していない企業にハーベストループをご提案しても、どこかで食い違うという体験を何度かしています。DXにしろAIを活用したループにしろ、やはりパーパスがカギになるんでしょうね。(後編に続く)) (P3は本の「ダブルハーベスト」の紹介なので省略)』、「AIを使って根本的に業務改革をしようというときに、ループがちゃんと回るということが証明されるまでには、それなりに時間がかかるわけです。 ところが、その間の開発費を特定の部局の予算につけてしまうと、単純にコストが増えるので、現場は動きたくなくなる。だから、それは社長予算でやる必要があります。現場に「経営者予算だから支出は気にしなくていい。エンジニア人員をしっかり割いてくれ」といえるかどうかがすごく重要です」、「部門予算」ではなく、「経営者予算」でやれとの主張は理解はできるが、予算統制上の問題も出てきそうだ。

次に、この続きを、5月6日付けダイヤモンド・オンライン「DXがわからない経営者・AIを使えないベンチャーは去ったほうがいい【ゲスト:夏野剛さん】[『ダブルハーベスト』トーク]夏野剛+平野未来+堀田創(後編)」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/269477
・『シナモンAI共同創業者として、多くの企業にAIソリューションを提供して、日本のDXを推進する堀田創さんと、『アフターデジタル』『ネットビジネス進化論』をはじめ、数々のベストセラーでIT業界を牽引する尾原和啓さんがタッグを組んだ『ダブルハーベスト──勝ち続ける仕組みをつくるAI時代の戦略デザイン』(ダイヤモンド社)が刊行された。「このままでは日本はデジタル後進国になってしまう」「日本をAI先進国にしたい」という強い思いでまとめられた同書は、発売直後にAmazonビジネス書第1位を獲得し、さまざまな業界のトップランナーたちからも大絶賛を集めているという。 データを育てて収穫する「ハーベストループ」とは何か。それを二重(ダブル)で回すとはどういうことか。IT業界の最長老を自認するドワンゴ代表の夏野剛さんをゲストにお招きして、AIを使ってDXを全社的に進めるときの心得や、乗り越えるべきハードル、間違いやすいポイントについて、シナモンAI代表の平野未来さんとともに聞いた(構成:田中幸宏)』、興味深そうだ。
・『いまだに消えない「AI担当=情報システム部署」という誤解  堀田創(以下、堀田) 日本の産業を見たときに、なかなかDX(デジタルトランスフォーメーション)の波にうまく乗り切れていないように思うのですが、このチャンスを活かすときにはどんな発想が大事になるとお考えですか?  (夏野 剛氏の略歴は省略) 夏野剛(以下、夏野) DXはすべての産業に当てはまると思っています。大前提として、日本はこれから人口が減っていくので、「AI(人工知能)にやってもらえること」と「人の業務」との分担をつねに見直していくことがすごく大事です。そのなかで、「人間がやらなくていいこと」をできる限り増やしていく。『ダブルハーベスト』の中でも、「我々の仕事のフローそのものがAIのループの中に組み込まれる」という考え方が紹介されていましたが、非常に共感しました。 平野未来(以下、平野) 「ヒューマン・イン・ザ・ループ」や「エキスパート・イン・ザ・ループ」の考え方ですね。おっしゃるとおり、AIと人間が同じループの中に自然な形で入っているというのがすごく重要です。人間が通常の仕事をするだけで、いつのまにかAI向けの学習データが生み出され、AIがどんどん改善されていく。そういうループをつくれるかどうかです。 メディアでは「AIが人間の仕事を奪う」という文脈ばかりが強調されますが、実際には「AIと人が一緒に働く世の中」がやってくるんでしょうね。 夏野 そうですね。AIには子どもみたいなところがあって、最初はたいして成果は出ないけれども、ちゃんと教育していくことによって、だんだん使い物になっていく。それもあって、いまからやっておかないと、すべての産業で人手が足りなくなります。すべての産業がもっと効率化しないと、いまある日本を維持することすらできないわけです。 ところが、企業の方にAIの話をすると、どうしてもデータシステムのことだと思い込んで、「情報システム部がやればいい」という話になりがちなんですよね。だけど、実際にはこれからすべての業務の中にAIが組み込まれていくわけです。そこにデータを流してあげると、AIが勝手に判断して、いままで人がやってきたことを、より効率的に、素早くやってくれるようになる。人間とAIが一体となって、堀田さんのいうパーパス(会社が実現したい未来)に向かうことが重要なので、すべての産業がいますぐにやるべきだと思っています。 平野未来氏の略歴も省略) 平野 日本のDXという観点でいうと、1つよかったのは、コロナによっていろいろなものがデジタル化されたということです。アナログなまますべてが完結していると、なかなかAIの導入は難しいので、デジタル化が進んだのはよかったと思います。 たしかに、いま起きていることのほとんどは、あくまでも「デジタル化」にすぎないので、「DXごっこをしているだけ」などと揶揄されてしまうこともあるんですが、いまの時点では「DXごっこ」でもいいのかなと思っています。 というのも、いまDXに成功している会社の数年前の姿を思い出すと、彼らもAIの戦略的側面なんて全然考えないまま、単なるコスト削減に取り組んでいたわけですから。ですけど、わからないなりにとにかくやってみて、失敗しながら知見を積み上げてきた。そういう時期があったからこそ、いま、DXがうまくいっているわけです。なので、DXごっこでもかまわないので、まずはやってみる。そこからハーベストループを描く形になっていければいいと考えています』、「日本はこれから人口が減っていくので、「AI(人工知能)にやってもらえること」と「人の業務」との分担をつねに見直していくことがすごく大事です。そのなかで、「人間がやらなくていいこと」をできる限り増やしていく」、「企業の方にAIの話をすると、どうしてもデータシステムのことだと思い込んで、「情報システム部がやればいい」という話になりがちなんですよね。だけど、実際にはこれからすべての業務の中にAIが組み込まれていくわけです。そこにデータを流してあげると、AIが勝手に判断して、いままで人がやってきたことを、より効率的に、素早くやってくれるようになる。人間とAIが一体となって、堀田さんのいうパーパス(会社が実現したい未来)に向かうことが重要なので、すべての産業がいますぐにやるべきだと思っています」、その通りだ。
・『「DXの本質を理解できていない経営者は去ったほうがいい」  堀田 DXを推進するにあたって、とくに大企業では、組織の動かし方とか、全体戦略と個別の施策をどうやってつなげていくかというところで悩んでいる方が多い印象があります。前回、夏野さんがおっしゃっていたように、DXをうまくいかせるには、トップダウンでの差配が重要なりますから、トップがしっかりしていないと、なかなかDXが実現しないんですよね。だから、事業の責任者が「DXを推進しよう!」と思っても、壁にぶつかってしまう。この壁を乗り越えるうまいやり方はありますか? 夏野 僕自身は、経営陣がハッパをかけてでもDXを進めないと次の時代に行けないと思っているので、予算を個別の部局につけることをせずに、こちらで責任をもって進めています。ですが、上層部がなかなかそういう判断をしてくれない、あるいは、もともとそういう判断をする文化がないという大企業は少なくないでしょうね。 そういう中で、DX、中でもAIのように時間がかかるものについて上層部の理解を得るには、現場にいる人たちが実際に「小さなループ」をつくって回すことが大事だと思います。ただ、これは常道ではありません。正直、ここにきてDXの本質を理解できない経営者は去ったほうがいいと思っています。でも、実際にそういう経営者がたくさんいる日本の現状を見たときに、現場の人たちがループを回して、それを実際に見てもらうことには意味があります。 (堀田創氏の略歴は省略) 「こういうデータをこう分析すると、こういう結果が出てくるので、それを応用してこうすれば、こういう効果が出ます」といくら説明しても、「そんなにうまくいくはずない」と言い出す人はいます。だから、実際にやってみて、まずは小さな成功体験を見てもらう。そのうえで、「もしこれを全社展開したら、もっとすごいことになりませんか?」と説得するわけです。概念が理解できていない、あるいは、理解できても確信がもてないという経営者に対して、確信をもって「いける!」と思わせるような証拠をつくって見せることが重要です。 堀田 ハーベストループはダブル、トリプルどころか、超並列処理的に100個のループを同時に回すこともできるはずで、いったん回り出すとどんどん加速していきます。でも、最初の1ループをちゃんと回すには時間がかかって、1カ月で成果を出すのは難しい。小さいループでも大きいループでも2年くらいかけないと、成果を出し切ることはできないという面があります。 いまから2年かけて小さいループを仕込んだあとに、もう1回、2年仕込んでそれを全社展開するとなると、そこまで待てるかどうかというのがハードルになりそうです。 夏野 ただ、小さなループであれば、部署の予算内で実現できるかもしれません。大きなループは大量のデータを要するので、どうしても予算規模が大きくなる。そうすると、会社に隠れてこっそりやるというわけにはいかないんですよね。まずは小さな規模でいいから、1ループつくってみるというのはすごく大事です。 堀田 どうしても動きが鈍い大企業の中だと、まず自分たちで先駆的に小さなループを回して、それがうまくいったというところまでいけば、社内でヒーローになれる可能性があるということですね。 平野 DXがうまくいくかどうかは、パーパス次第というところがあります。自分たちが目指したい未来像がはっきりしている企業さんは、ハーベストループも描きやすい。個別施策と全体感がズレることもありません。でも、自社サイトに経営理念やビジョンを出してすらいなくて、パーパスがはっきりしていないような企業では、アイデアが散発的になってしまいがちで、どこから手をつければいいかが見えてきません。なので、まずはパーパスを明確にし、それを全社に浸透させる必要があります。 組織的には、トップのコミットメントは絶対に必要です。最近では富士通の時田隆仁社長のように、社長兼CDXO(最高デジタル変革責任者)を名乗る方も出てきて、すばらしいと思います。トップのコミットメントと同時に、現場レベルでも、いろんな部門を渡り歩いてきて全体感が見えているような優秀な人がいると強い。トップと現場、上と下の両方がそろっていると、DXは進めやすいと思います』、「トップのコミットメントと同時に、現場レベルでも、いろんな部門を渡り歩いてきて全体感が見えているような優秀な人がいると強い。トップと現場、上と下の両方がそろっていると、DXは進めやすいと思います」、なるほど。
・『中小・ベンチャーのAI&DXは?──「お金がないからできない」は言い訳  堀田 大企業の場合は、パーパスの実現に向けて全社的なうねりをつくっていくのが肝になりそうです。一方、ベンチャーや中小企業の場合は、AIとどういうふうに向き合うべきなのか。率直なところをうかがいたいと思います。 私自身はAIベンチャーを創業した身でもありますし、当然AIは必要だという立場ですが、一方で、ハーベストループがきちんと成果を出すまでは持ち出しが続くわけで、資金力のないベンチャーがどこまで先行投資に耐えられるかという切実な問題があります。夏野さんはベンチャー投資もされているとお聞きしていますが、ベンチャーや中小企業にとってのAIについては、どうお考えですか? 夏野 ベンチャーも中小企業も、大企業と戦っていく、あるいは、大企業がもっている市場に切り込んでいくときの切り口は、テクノロジーしかないんです。テクノロジーという観点でいうと、いまいちばんホットな武器、最先端で切れ味のいい武器はAIです。大企業がまだ活用しきれていないからです。 これを武器にできないのであれば、ベンチャーをやめたほうがいいと思います。イニシャルの投資に耐えられるかという話はありますが、ベンチャーを起業した時点で、その覚悟はできているはずなんです。ベンチャーにとっての問題は、むしろ、人のアサインが間に合わないことです。成長するベンチャーほど、人材が絶対に不足する。そうなると、大企業と同じような生産性でやっている限り、絶対に勝てません。だから、テクノロジーをフル活用して、一人あたりの生産性を極限まで高めて切り込んでいかなければ勝負にならないんです。そのためには、最先端の武器が不可欠です。その武器がない状態で事業をやるなら、最初からやらないほうがいいと思います。 それに、いまほどベンチャーとか中小企業が資金調達しやすい環境なんて、ほとんどないはずです。お金が余っているからです。なので、いまは、ゲームプランを描き、リスクをとったうえで、一気に切り込んでいく大きなチャンスです。これを逃す手はない。 平野 私も同じ意見で、『ダブルハーベスト』の中でも紹介されているアメリカの損害保険会社「レモネード」はいい事例です。彼らは設立6年足らずで時価総額5000億円を超えています(2021年4月時点)。創業5年目でここまで大きくなったのはすごいことで、彼らは従来の保険会社とはまったく違うサービスをつくっています。 チャットボットと90秒ほど話をするだけで保険に加入できて、何か事故があったときには数分でお金が振り込まれる。そういうUX(ユーザー体験)をAIによって実現しています。既存の保険会社が同じことをやろうと思っても、従来のオペレーションと矛盾することが出てきてしまったりして、なかなかできません。しがらみのないスタートアップだからこそ実現できたサービスです。 レモネードは、チャットボットのやりとりで得られたデータを使って、よりよいUXを提供するというループを回しているだけではなく、不正請求を見破ったりするためのループなど、複数のループを同時に回しています。彼らにできたのですから、我々日本のスタートアップもそういう事例をどんどんつくっていかなければ、と思っています。 堀田 私も夏野さんに同意します。いまはAIをはじめ、いくつかの技術が同時多発的に出てきて、それを使えない状態で勝負するのがだんだん難しくなってきています。それに、いくら動きが鈍いとはいっても、大企業も5年くらいのスパンでは確実にキャッチアップしてくる。機動力の高いベンチャーや中小企業は、いまこそAIを活用して先行者利益を追求すべきタイミングだと思いますね。 夏野さんには『ダブルハーベスト』にすばらしい推薦コメントをいただきましたし、われわれとしては日本企業のAI実装を後押しするお手伝いを、これからもどんどん加速し(きたいと思っています。本日はお時間をいただき、ありがとうございました! (鼎談おわり)(P3は本の「ダブルハーベスト」の紹介なので省略)』、「ベンチャーも中小企業も、大企業と戦っていく、あるいは、大企業がもっている市場に切り込んでいくときの切り口は、テクノロジーしかないんです。テクノロジーという観点でいうと、いまいちばんホットな武器、最先端で切れ味のいい武器はAIです。大企業がまだ活用しきれていないからです」、「機動力の高いベンチャーや中小企業は、いまこそAIを活用して先行者利益を追求すべきタイミングだと思いますね」、「ベンチャー」や「中小企業」に頑張ってもらいたいとは思うが、果たしてそれが可能なのだろうか。

第三に、9月1日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの粟野仁雄氏による「藤井聡太はなぜこんなに強いのか?将棋のレジェンド・谷川浩司の「天才論」 谷川浩司九段に聞く・前編」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/280494
・『藤井聡太二冠(棋聖・王位)は7月3日に静岡県沼津市で行われた渡辺明三冠(名人・王将・棋王)との棋聖位の防衛戦で、最年少九段(18歳11カ月)と最年少タイトル防衛を達成した。8月25日には挑戦者の豊島将之二冠(竜王・叡王)を破り、4勝1敗で王位も防衛。その豊島二冠と2勝2敗になっている叡王戦五番勝負の最終局(9月13日)に「史上最年少三冠」がかかっているが、8月30日には竜王戦の挑戦者決定三番勝負で永瀬拓矢王座(28)を下して豊島竜王への挑戦権を獲得したため、年内に四冠達成の可能性も出てきている。中学生でプロ棋士(四段)デビュー、破竹の勢いで勝ち星を重ねる藤井二冠について、同じく中学生でプロデビューし、日本将棋連盟の前会長、十七世名人資格者・谷川浩司九段はどう見ているのか。(本文敬称略)』、「谷川浩司九段はどう見ているのか」とは興味深い切り口だ。
・『二人の天才  藤井聡太は2002年、愛知県瀬戸市出身。2016年、史上最年少の14歳でプロ入り(奨励会で四段昇段)。デビュー戦で元名人の加藤一二三九段(後に引退)を破ったのを皮切りに、29連勝という新記録を打ち立てる。 2018年には全棋士とアマの強豪、女流棋士が参加する朝日杯将棋オープンで初優勝、この時は準決勝で羽生善治(永世七冠資格)を破り、決勝で広瀬章人(後に竜王)を破った。翌年も連覇。今年は渡辺らを破って三度目の優勝をした。2020年7月には渡辺棋聖を3勝1敗で破り、史上最年少でタイトル獲得。8月には木村一基王位に4-0のストレート勝ちしてすぐに二冠を達成した。トップ級棋士も参加する「詰将棋解答選手権」では小学校6年から優勝し続けている(昨年と今年はコロナ禍で中止)。 今年は渡辺を退けて棋聖を初防衛し、史上最年少の九段を達成した。すでに王位の防衛戦が始まっており、三冠目を狙い叡王戦にも挑戦中だ。今春、卒業寸前で高校を中退し、棋士に専念している。 実は、中学生でプロデビューした棋士は藤井を含め歴代で5人しかいない。しかも全員将棋史に名を残す超一流の棋士ばかりだ。そのうちの一人が、『藤井聡太論 将棋の未来』(講談社+α新書)を上梓した谷川浩司九段である。) 谷川は1962年、神戸市出身。1976年にプロ入り。名人戦順位戦の最初の1期だけ2年在籍したが、その後は毎年度昇級し、1983年度に最高成績で挑戦権を得て、名人戦で6月に加藤一二三を破り、史上最年少の21歳2カ月で名人となった。この記録は今も破られていない。詰将棋力を生かした終盤の寄せの鋭さから「光速の寄せ」の異名を持つ。十七世名人資格者。名人5期、竜王4期などタイトル歴の通算は27期で歴代5位。日本将棋連盟の前会長で紫綬褒章を受章している』、「谷川」氏がこんなにもすごい経歴とは初めて知った。
・『相手と戦うのではなく、将棋盤と対峙している  子ども時代の藤井聡太は負けると将棋盤にしがみついて激しく泣いた。「引きはがすのに苦労した」という瀬戸市の「ふみもと子供将棋教室」の文本力雄は「将棋を始めると何も見えない。すさまじい盤面集中だった」と振り返る。将棋を考えながら歩いていて、溝に落ちた逸話も有名だ。 谷川は語る。「彼は相手によって作戦を変えることはなく、相手の得意戦法を外すこともしません。対戦相手と戦っているのではなく、将棋盤と対峙しているのです。子ども時代の将棋教室で培われた集中力と長時間考え続けられる力から来たのでしょう。普通は1時間も考えていたら、考えるのを休みたくなりますが、彼は公式戦でも相手の手番の時間帯も休まず考え続けます」。 藤井は対局中、ほとんど相手を見ない。相手が羽生であれ、誰であれ関係ない印象だ。ある意味、社会体験が少ないから萎縮しないで済むのでは?とも思うが、谷川の見方は異なる。 「社会体験の多寡より、彼は強い相手と将棋ができることが純粋にうれしいのでしょう。将棋の真理を追究することを実現するためには相手が強ければ強いほどいい。きっと初防衛戦で渡辺さんと豊島(将之。竜王・叡王)さんが挑戦者になったことさえも喜んでいると思います。普通は『大変なことになったな』と思うものですが」と驚くのだ』、「彼(藤井氏)は相手によって作戦を変えることはなく、相手の得意戦法を外すこともしません。対戦相手と戦っているのではなく、将棋盤と対峙しているのです。子ども時代の将棋教室で培われた集中力と長時間考え続けられる力から来たのでしょう」、なるほど。
・『驚異の逆転力は「意図せぬ難局面への誘導」と、詰将棋力  昨年7月、札幌での王位戦の第2局、絶体絶命から木村一基王位に大逆転した。藤井の数々の逆転は将棋界を驚かせてきた。逆転力について谷川は「最近は逆転勝ちも減り、序盤からのリードを守ることが増えました。とはいえ逆転力は藤井将棋の魅力の一つですね。劣勢でも相手にぴったりと肉薄して複雑な局面に持ち込んでゆき、相手がなかなか最善手にたどり着けないような局面に誘導していく。本人には罠をかけているつもりはなく、意図せず自然にできる能力がありますね」と分析する。 藤井と谷川、40歳違いの天才には“詰将棋の強さ”という共通点もある。二人とも詰将棋を好み、難解な詰将棋問題を創作するのだ。これが彼らの終盤の逆転力に生きている。詰将棋について谷川はこう語る。「私が子どもの頃は詰将棋を解くというのが勉強で大きかったのですが、今の棋士の研究ではAIの活用が第一で、研究の半分の時間を占めるともいわれています。他の研究方法の重要度が落ち、詰将棋を解くことは研究の順位として下がりました。とはいっても、トップ同士が互いに時間がなくなってからの戦いでは、詰将棋経験が豊富な棋士は『これは見た形だ』として考えずに指せる。(詰将棋を)やっていない人なら30秒かかるところを、やっている人なら1秒で分かることもあります」。なるほど、この差は大きいはずだ。 2年前の朝日杯の準決勝で藤井に敗れた行方尚史九段が「真綿で首を絞められるようで、いつの間にか息ができなかった」と話し、「一番強い勝ち方では」と感じた。 谷川は「藤井さんは四段(プロ)になって1年くらいは逆転勝ちが多かったのですが、3年目くらいから序盤の精度が高くなってきた。作戦負けもなくなり、作戦勝ちから有利優勢のまま差を広げていく勝ち方ができるようになりました。その頃からですね」と振り返る。 「AIの申し子」と言われる藤井二冠だが、実際にAIを取り入れたのはプロ入りの少し前からだ。藤井はAIについて「序盤で定跡とされてきた指し手以外にもいろいろあると分かってきて、自由度が高まっていると感じています」と語っている』、「トップ同士が互いに時間がなくなってからの戦いでは、詰将棋経験が豊富な棋士は『これは見た形だ』として考えずに指せる。(詰将棋を)やっていない人なら30秒かかるところを、やっている人なら1秒で分かることもあります」、「「AIの申し子」と言われる藤井二冠だが、実際にAIを取り入れたのはプロ入りの少し前からだ」、初めて知った。
・『AIの常識外の一手  そんな藤井の言葉を象徴するような「事件」があった。2017年5月、現役名人だった佐藤天彦九段と対戦したAI「ポナンザ」の初手は常識外れの「3八金」。棋士の公式戦では出現したことがない、つまり人間ならまず指さない手だ。 佐藤は体を真横に折り曲げて悩んだが、この勝負を制したAIだった。羽生は「我々がやってきた将棋は、将棋の一部でしかなかったのでは」とうなった。これについて谷川は「将棋の初手は30通りの選択肢があり、普通は角道を開く7六歩とか飛車の前の歩を進める2六歩、さらには真ん中の歩を進める5六歩の3通りが圧倒的です。それ以外を指されたらそこで考えるしかない。人間は何百手とかは読めても何万手とかまでは読めません。AIと違い、直感で多くの手は捨てて、残りだけで考えます。3八金なんていう手を指されることを考えませんが、序盤なのでそれで形勢を損ねるわけでもない。これからもAIの長所、人間の長所をうまく組み合わせて(将棋以外でも)すべての分野でAIとうまく付き合うしかないと思います」』、「AI「ポナンザ」の初手は常識外れの「3八金」。棋士の公式戦では出現したことがない、つまり人間ならまず指さない手だ・・・この勝負を制したAIだった。羽生は「我々がやってきた将棋は、将棋の一部でしかなかったのでは」とうなった」、さすがAIだ。
・『AIの登場により、将棋は新しい時代に入った  藤井はAIについて「数年前は棋士とソフトの対局が大きな話題になりました。今は対決の時代を超えて共存という時代に入ったのかなと思います」と語っている。言葉通り、「人間対AI」の時代は短期間で終わり、棋士たちは研究に使うようになった。 「AI研究を始めるのは比較的遅かった」という谷川は、藤井について「AIを非常にうまく取り入れることに成功した」とみる。「AIで事前の研究と対局後の研究がやりやすくなりました。戦略としての事前研究が大事になってきて、次の対局に向けて相手が知らないような指し方を自分だけが知っていれば、そこに引っ張り込んで戦えれば有利にもなります。以前はどこが敗着か分からないことが多かったのが、今はデータを打ち込めば分かる。負けた将棋を研究し次に生かせる。対局では直後に感想戦もしますが、その検討が正しいかどうかは何ともいえない。どの手が疑問手だったかとか、対局で感じていた優勢、劣勢が本当はどうだったのかなどもAIと人間の感覚が違うことはあります」(谷川) 名古屋には将棋会館がないため、藤井は東京か大阪に始終通わねばならないハンディがある。こうした中、多くの研究が自宅でできるAIがハンディをカバーしている面もあるのではないだろうか』、「「人間対AI」の時代は短期間で終わり、棋士たちは研究に使うようになった」、対決ではなく、協働の時代に入ったようだ。
・『AIと本質的な棋力は関係がない  藤井にとって「天敵」ともいえる存在が、豊島将之二冠だった。今年の6月時点での成績は1勝6敗と大きく負け越していたが、その後、王位戦では4勝1敗で豊島を退けるなど、今年に入ってからは7勝3敗。早くも天敵とは言えなくなっている。豊島は一時期、対人研究を封じてAI研究に没頭した。藤井に勝つには、人間相手よりもAIを使った研究のほうが良いのだろうか? しかし、谷川はAIが「藤井キラー」になっている要因ではないとみる。 「豊島さんは棋士になるのも早かったし、20歳でタイトル挑戦もしていた。本来、もっと前から今のような活躍ができた棋士です。だから藤井さんに勝つことは全く不思議ではないのですよ。ただ以前、電王戦(人間対AIの団体戦)の第3回で、トップ棋士の中で彼だけが勝利したことは、AIに没頭するきっかけになったかもしれません。20代半ばで何度かタイトル戦に挑戦して跳ね返され続けて試行錯誤する中で、ソフトの研究に時間を費やしたのでしょう」 藤井自身、AIについて「序中盤の形勢判断などで力になった部分は大きいとは思いますが、考える候補手、拾う手が若干増えたかなという印象はあります。ただ、はっきりと違いを感じるものではないです」と話している。谷川は著書で「藤井さんの強さは、最善手を求める探求心と集中力、詰将棋で培った終盤力とひらめき、局面の急所を捉える力、何事にも動じない平常心と勝負術など極めてアナログ的なもの。将棋ソフトを使い始めたのはプロデビューする直前であり、彼の本質的な強さはAIとは関係がないと言っていい」としている』、「藤井自身、AIについて「序中盤の形勢判断などで力になった部分は大きいとは思いますが、考える候補手、拾う手が若干増えたかなという印象はあります。ただ、はっきりと違いを感じるものではないです」と話している」、「将棋ソフトを使い始めたのはプロデビューする直前であり、彼の本質的な強さはAIとは関係がないと言っていい」、なるほど。
・『成るか、至難の最年少名人  藤井二冠はタイトル獲得の最年少記録や今年のタイトル防衛の最年少記録を達成した対局が誕生日の直前にあるなど、記録に花を添える「運」も持っている。 谷川は彼の運について「14歳のデビュー戦で藤井さんは加藤一二三九段と対局して勝ち、29連勝へのスタートとなりました。加藤さんはまもなく引退されたので、あの時でなければ『62歳差の公式戦対局』は実現しませんでした。タイトル戦もコロナ禍で、将棋連盟の手合課が苦労して対局予定を組み、藤井さんはそれに応えました。結果的には幸運に見えても、彼は自分の力で運を呼び寄せているのです」と語る。谷川自身は早くから目をかけてくれた芹沢博文九段(故人)に「お前は運がいい。運を大事にしろ」と言われ、いつも自分は運がいいと思うようにしているそうだ。 さて、藤井にとって最も難しい最短記録が、谷川の持つ「最年少名人」(21歳2カ月)だ。 名人になるには「鬼の棲家(すみか)」と言われるつわものぞろいの今期のB1を1期抜けして来期にAクラスに上がり、総当たり戦で最優秀成績を収めて挑戦者になり、現役名人を七番勝負で破らなくてはならない。 谷川は「大変ですが、彼のことですから乗り越えるかなという気持ちもありますね。楽しみですが、私にとって残る(最年少)記録は名人獲得だけなので、抜かれたらちょっと寂しい気持ちになるかもしれませんね」とほほえんだ。 >>後編「AIは将棋をどう変えたのか?谷川浩司九段が語る棋士の未来」に続く)』、「藤井にとって最も難しい最短記録が、谷川の持つ「最年少名人」」、どうなるのだろうか。なお、「後編」の紹介は省略。
タグ:人工知能 (AI) (その12)(「部門予算」でDXをやる会社が、3年後に後悔すること【ゲスト:夏野剛さん】[『ダブルハーベスト』トーク]夏野剛+平野未来+堀田創(前編)、DXがわからない経営者・AIを使えないベンチャーは去ったほうがいい【ゲスト:夏野剛さん】[『ダブルハーベスト』トーク]夏野剛+平野未来+堀田創(後編)、藤井聡太はなぜこんなに強いのか?将棋のレジェンド・谷川浩司の「天才論」 谷川浩司九段に聞く・前編) ダイヤモンド 「「部門予算」でDXをやる会社が、3年後に後悔すること【ゲスト:夏野剛さん】[『ダブルハーベスト』トーク]夏野剛+平野未来+堀田創(前編)」 「いろいろなプロジェクトを見ていて思うのは、AIに短期的な効用を求める人が結構いるということです。やってみたらここがダメとか、全然使えないという判断をすぐに下してしまう人が多い。状況に応じてつねにチューニングをしながらループをつくっていくという発想が、いままでのシステム開発と全然違うので、人間の側が適応できていないわけです」、なるほど。 「DXは単なる手段であって目的ではありません。そこを見えていない方が多いですね。大事なのは、デジタライゼーションが起こった結果、人の仕事のフローがどう変わるか、人の組織設計がどう変わるか、ということであって、思考がそこに至らないままテクノロジーだけ導入しても、結局何も変わらない」、その通りだろう。 「AIを使って根本的に業務改革をしようというときに、ループがちゃんと回るということが証明されるまでには、それなりに時間がかかるわけです。 ところが、その間の開発費を特定の部局の予算につけてしまうと、単純にコストが増えるので、現場は動きたくなくなる。だから、それは社長予算でやる必要があります。現場に「経営者予算だから支出は気にしなくていい。エンジニア人員をしっかり割いてくれ」といえるかどうかがすごく重要です」、「部門予算」ではなく、「経営者予算」でやれとの主張は理解はできるが、予算統制上の問題も出てきそうだ 「DXがわからない経営者・AIを使えないベンチャーは去ったほうがいい【ゲスト:夏野剛さん】[『ダブルハーベスト』トーク]夏野剛+平野未来+堀田創(後編)」 「日本はこれから人口が減っていくので、「AI(人工知能)にやってもらえること」と「人の業務」との分担をつねに見直していくことがすごく大事です。そのなかで、「人間がやらなくていいこと」をできる限り増やしていく」、「企業の方にAIの話をすると、どうしてもデータシステムのことだと思い込んで、「情報システム部がやればいい」という話になりがちなんですよね。だけど、実際にはこれからすべての業務の中にAIが組み込まれていくわけです。そこにデータを流してあげると、AIが勝手に判断して、いままで人がやってきたことを、より効 「トップのコミットメントと同時に、現場レベルでも、いろんな部門を渡り歩いてきて全体感が見えているような優秀な人がいると強い。トップと現場、上と下の両方がそろっていると、DXは進めやすいと思います」、なるほど。 「ベンチャーも中小企業も、大企業と戦っていく、あるいは、大企業がもっている市場に切り込んでいくときの切り口は、テクノロジーしかないんです。テクノロジーという観点でいうと、いまいちばんホットな武器、最先端で切れ味のいい武器はAIです。大企業がまだ活用しきれていないからです」、「機動力の高いベンチャーや中小企業は、いまこそAIを活用して先行者利益を追求すべきタイミングだと思いますね」、「ベンチャー」や「中小企業」に頑張ってもらいたいとは思うが、果たしてそれが可能なのだろうか。 ダイヤモンド・オンライン 粟野仁雄 「藤井聡太はなぜこんなに強いのか?将棋のレジェンド・谷川浩司の「天才論」 谷川浩司九段に聞く・前編」 「谷川浩司九段はどう見ているのか」とは興味深い切り口だ。 「谷川」氏がこんなにもすごい経歴とは初めて知った。 「彼(藤井氏)は相手によって作戦を変えることはなく、相手の得意戦法を外すこともしません。対戦相手と戦っているのではなく、将棋盤と対峙しているのです。子ども時代の将棋教室で培われた集中力と長時間考え続けられる力から来たのでしょう」、なるほど。 「トップ同士が互いに時間がなくなってからの戦いでは、詰将棋経験が豊富な棋士は『これは見た形だ』として考えずに指せる。(詰将棋を)やっていない人なら30秒かかるところを、やっている人なら1秒で分かることもあります」、「「AIの申し子」と言われる藤井二冠だが、実際にAIを取り入れたのはプロ入りの少し前からだ」、初めて知った。 「AI「ポナンザ」の初手は常識外れの「3八金」。棋士の公式戦では出現したことがない、つまり人間ならまず指さない手だ・・・この勝負を制したAIだった。羽生は「我々がやってきた将棋は、将棋の一部でしかなかったのでは」とうなった」、さすがAIだ。 「「人間対AI」の時代は短期間で終わり、棋士たちは研究に使うようになった」、対決ではなく、協働の時代に入ったようだ。 「藤井自身、AIについて「序中盤の形勢判断などで力になった部分は大きいとは思いますが、考える候補手、拾う手が若干増えたかなという印象はあります。ただ、はっきりと違いを感じるものではないです」と話している」、「将棋ソフトを使い始めたのはプロデビューする直前であり、彼の本質的な強さはAIとは関係がないと言っていい」、なるほど。 「藤井にとって最も難しい最短記録が、谷川の持つ「最年少名人」」、どうなるのだろうか。なお、「後編」の紹介は省略。
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