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半導体産業(その4)(台湾TSMCを巻き込む「日の丸半導体復活」構想が 日本の衰退を早める理由、「日の丸半導体」が凋落したこれだけの根本原因 富士通・元半導体部門トップが直言(前編)、「日の丸半導体」復活には5兆円投じる覚悟必要 富士通・元半導体部門トップが直言(後編)) [イノベーション]

半導体産業については、5月25日に取上げた。今日は、(その4)(台湾TSMCを巻き込む「日の丸半導体復活」構想が 日本の衰退を早める理由、「日の丸半導体」が凋落したこれだけの根本原因 富士通・元半導体部門トップが直言(前編)、「日の丸半導体」復活には5兆円投じる覚悟必要 富士通・元半導体部門トップが直言(後編))である。

先ずは、6月3日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「台湾TSMCを巻き込む「日の丸半導体復活」構想が、日本の衰退を早める理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/272934
・『気合入りまくり!政治主導で日本の半導体復活…!?   「日本はこんなもんじゃない。『ジャパン・アズ・ナンバー・ワン・アゲイン』を目指して先陣を切っていきたい」 先月21日、自民党の「半導体戦略推進議員連盟」設立総会で、甘利明会長は気を吐いた。 今や半導体は世界で奪い合う「戦略物資」となっており、「半導体を制するものが世界を制する」という言葉さえあるほどだが、「日の丸半導体」はひいき目で見ても、世界を制する兆しは見えない。 白物家電と同じく80年代には世界市場シェア50%を占めていたが、韓国や台湾に次々と追い抜かれ、今や2021年第1四半期の売上高ランキングにおいても、日本企業は15位にキオクシアが入るのみ。全体的に存在感が薄いのだ。 そこで、「経済安全保障」の重要性を強く主張している甘利氏がトップとなって、米中経済戦争の中で「1人負け」しないよう、政治主導で半導体産業を強くしておこうというわけだ。 その気合の入りっぷりは、「ポスト菅」のチョイスに影響力アリアリの安倍晋三元首相と麻生太郎副総理兼財務大臣が最高顧問として名を連ねていることからもうかがえよう。 アメリカでも韓国でも台湾でも、そして中国でも半導体ビジネスの支援は今や「国策」となっている。そのような意味では、ぜひとも頑張っていただきたいところなのだが、正直あまり期待はできないのではないかと思っている。 甘利氏のかけ声は勇ましいが、その一方で経済産業省(経産省)は「ジャパン・アズ・ナンバー・ワン・アゲイン」や「経済安全保障」という方向性とは、真逆の半導体産業支援政策を進めているからだ。 それは端的にいうと、「台湾の半導体大手・TSMCと連携して日の丸半導体復活」という構想、いや「官僚の妄想」とも言っていい青写真である』、「自民党の「半導体戦略推進議員連盟」」は『ジャパン・アズ・ナンバー・ワン・アゲイン』」と「かけ声は勇ましい」。他方で、「経産省」は「「官僚の妄想」とも言っていい青写真」、やれやれだ。
・『台湾・大手と連携強めるほど、日本の競争力は低下  自民党・半導体議連設立の10日後、経産省は、半導体受託製造で世界最大手の台湾企業TSMCが日本で実施する先端半導体の研究開発を支援し、5年間で190億円を拠出すると発表した。この研究は、国内半導体関連企業約20社が共同で行うそうで、「世界的に半導体の開発競争が激化する中、最先端の技術を持つTSMCとの連携で国際競争力を高めるのが狙い」(時事通信5月31日)だという。 「狙う」のは自由だが、残念ながらTSMCの日本研究拠点と連携を強めれば強めるほど、日本の半導体の競争力が低下していく可能性の方が高い。つまり、わずかに残った世界で戦える半導体装置企業などがTSMC傘下へ組み込まれたり、技術者の国外流出に繋がってしまたりという恐れがあるのだ。 「中国企業ならいざ知らず、友好国・台湾の企業と手を組んでそんなことになるはずがないのでは…」と思う人も多いだろう。 しかし、このような危険性を指摘する声は、経産省主導の半導体支援がことごとく失敗してきたことを間近に見てきた半導体業界から多く上がっている。その中でも、服部コンサルティングインターナショナルの服部毅氏の指摘が非常にわかりやすいので、引用させていただく。 「韓中両国の大手半導体メーカーのR&D拠点、さらには米国DRAMメーカーの製造拠点が日本に以前から置かれているが、これらにより日本の半導体産業全体の復興が実現しているだろうか。TSMCだけは他社とは違うとでもいうのだろうか。台湾出張もままならぬ弱小サプライヤーが自社製品を売り込むチャンスにはなるかもしれないし、日本の半導体メーカーに見切りをつけて(あるいは無理やりリストラされて)TSMCへ転職したい技術者にはチャンス到来かもしれない。しかし、日本の半導体産業全体の復興につながるような話ではないだろう」(日経クロステック) 服部氏も指摘しているように、海外の半導体メーカーの多くはずいぶん昔から日本に研究・製造拠点を置いている。中には、国内企業と共同研究をおこなったこともある。しかし、それが「日の丸半導体」側に還元されて国際競争力が高まったという話はほとんどない。 なぜか。答えは簡単だ』、「TSMCの日本研究拠点と連携を強めれば強めるほど、日本の半導体の競争力が低下していく可能性の方が高い。つまり、わずかに残った世界で戦える半導体装置企業などがTSMC傘下へ組み込まれたり、技術者の国外流出に繋がってしまたりという恐れがある」、「「日本で研究を行う建前になってはいるが、実際の目的は、日本国内の企業や大学研究室からの技術情報収集・・・、装置・材料の調達、日本企業に勤務する技術者のリクルートのいずれかあるいはすべてだろう」、「このような意図を持つであろう台湾企業を平身低頭で日本に呼び寄せて、税金までくれてやるというわけだ」、全く馬鹿げた話だ「海外の半導体メーカーの多くはずいぶん昔から日本に研究・製造拠点を置いている。中には、国内企業と共同研究をおこなったこともある。しかし、それが「日の丸半導体」側に還元されて国際競争力が高まったという話はほとんどない」、なるほど。
・『日本の競争力は奪われるばかり 海外勢はボランティアで連携するのではない!  海外の半導体企業が日本に研究拠点をつくるのは、何も「日本の国際競争力を高めてやろう」などというボランティア精神からではなく、シンプルに「自社の競争力向上のため」だ。だから、連携したからといって、日本企業に海外の技術力が簡単に奪われ吸収されるはずもない。 そのあたりも前出・服部氏がズバリ指摘しているので引用させていただく。 「日本で研究を行う建前になってはいるが、実際の目的は、日本国内の企業や大学研究室からの技術情報収集(あるいは少額の研究資金を提供した協業)、装置・材料の調達、日本企業に勤務する技術者のリクルートのいずれかあるいはすべてだろう」(日経クロステック) このような意図を持つであろう台湾企業を平身低頭で日本に呼び寄せて、税金までくれてやるというわけだ。 江戸末期、日本のエリートは「外国人を呼んで技術を教えてもらう」という発想で近代化を進めたが、官僚の頭の中はそこから時計の針が止まっているということなのかもしれない』、「「日本で研究を行う建前になってはいるが、実際の目的は、日本国内の企業や大学研究室からの技術情報収集・・・、装置・材料の調達、日本企業に勤務する技術者のリクルートのいずれかあるいはすべてだろう」、「このような意図を持つであろう台湾企業を平身低頭で日本に呼び寄せて、税金までくれてやるというわけだ」、全く馬鹿げた話だ。
・『TSMCの八方美人ぶり  こんなに嫌味を言うと、愛国心溢れる方たちの間から、「世界的企業なのだからそれくらいの打算があることは当然だが、互いに中国の脅威に立ち向かうために協力するしかないのだ」というようなご意見が出るかもしれない。 たしかに、米中経済戦争の中で、一部中国企業への製品供給停止を発表し、米国寄りの姿勢を見せたTSMCとしても、日本という「同志」と手を組む必要がある。だから、逆に日本も国益のためと割り切って、TSMCをしたたかに利用すればいい…という考え方はできる。 しかし、そういう壮大な計画に水を差すようで恐縮だが、TSMCは別にそこまで深刻に中国に背を向けているわけではないのだ。客観的に見れば、米中どちらにもいい顔をして非常にうまく立ち回っている。対中国を念頭に、日本とそこまで強固な同盟関係を結ぶ必要もないのだ。 今年4月、TSMCはバイデン政権への配慮から、一部中国企業への製品供給停止を発表している。 しかし、その発表からほどなくした4月26日、日本経済新聞が、TSMCが現在フル稼働中の中国・南京市のファウンドリー(TSMC Fab16)に新ラインを設置し、28億8700万ドル(約3100億円)を投じ、車向け半導体などを増産すると報じている。日本政府の「5年間で190億」が霞んで見える投資だ』、「TSMCは別にそこまで深刻に中国に背を向けているわけではないのだ。客観的に見れば、米中どちらにもいい顔をして非常にうまく立ち回っている」、当然だろう。
・『鴻海に学ぶ、米中の狭間で巧みに泳ぐ処世術  5月25日、日本の自動車産業を長く取材し続けて、近年は「経済安全保障」の重要性を唱えているジャーナリストの井上久男氏が「サイバースパイが日本を破壊する」(ビジネス社)を上梓した。 その中で、米中が激しく対立をする中で、グローバルでビジネスをしている企業が取るべきスタンスを端的に述べている。 『「米中経済戦争」の中で、どちらかの国に近い企業か、色付けされるのは得策ではない。』(第7章 企業が取るべき道と覚悟、P.195) そして、この「色付け」を絶妙なバランス感覚で避ける企業の事例として、TSMCと同様、台湾を代表するEMS(電子機器受託製造サービス)世界最大手の鴻海精密工業(鴻海)を挙げている。その理由をとして、井上氏は以下のような指摘をしている。 鴻海は台湾メーカーの中では「中国寄り」とされているが、EV事業では中国と米国の2箇所に工場を建設すると発表、さらに1200社に及ぶサプライヤーには、日本電産や村田製作所、NTTなどの日本企業だけではなく、アメリカのマイクロソフトやアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)や、ドイツのインフィニオンテクノロジーズなどグローバルサプライヤーとの連携を強化している。 このようなサプライチェーンのデカップリング(分離)によって「中国色」を薄めているのだ。こうした絶妙のバランス感覚について、井上氏は「この鴻海ほど米中の狭間で巧みに泳いできた企業はない」と述べている。 今回の一連のTSMCの動きを見る限り、鴻海と似たものを感じるのは筆者だけか。 つまり、「アメリカ寄り」という基本スタンスをとりながらも一方で、巨大市場である中国への取り組みを強化するという立ち回りである。そう考えると、大したメリットもない日本への研究拠点設置には、アメリカ側への「忠誠」をアピールするという狙いもあるかもしれない。 そこに加えて、税金ももらえるし、日本企業の技術に対して情報収集やリクルートもできる。うまくいけば、鴻海がシャープを傘下にしたように、技術力がありながらも経営に苦しむような日本企業を手中におさめることができるかもしれない。韓国としのぎを削るTSMCにとって何かしらのメリットがあると判断したということだ。いずれにせよ、彼らの頭には、「日本の半導体の国際競争力を高めてやろう」なんて発想が1ミリもないことは間違いない』、「今回の一連のTSMCの動きを見る限り、鴻海と似たものを感じる」、確かに巧みに泳ぎ回る様子はさすがだ。
・『米国の「属国」・日本は隙だらけ 根本的に日本の政治システムがまずい  日本はどうしても米国の「属国」感が強いので、鴻海やTSMCのような大国の間をしたたかに立ち回る企業カルチャーがなかなか育たない。巨大な中国市場でガッツリと稼いでおきながら、アメリカに何か言われると官僚に呼び出されてシュンとなる。そういう露骨な態度がまた中国につけ込まれる。 経済政策でリーダーシップを取るはずの政治家も「保守」と言いながらも、アメリカに弱い。世界では「保守系政治家」は国益や国内企業の保護がまず第一なので、アメリカなど大国からの介入を嫌うのが普通だが、日本では「親米保守」という、愛国なんだか売国なんだかよくわからない人々が政治を動かしている。 そうなると当然そのしわ寄せは経済、つまり民間企業に押しつけられる。 井上氏も米中経済戦争によって日本政府、日本企業に対して、「些細なことでも安全保障と絡むリスクと考えるようにしなければ、両国に押しつぶされてしまいかねない」と警鐘を鳴らしている。 まったく同感だ。われわれは「経済安全保障」と絡むリスクをもっと日本全体で真剣に議論していかなければいけない。 では、半導体の経済安全保障を進めるうえで何が必要かというと、やはり「投資」という意見が多い。アメリカは半導体の国内生産回帰の実現に向けて500億ドル(約5.5兆円)を出す。EUも半導体を含むデジタル投資に2~3年で1350億ユーロ(約18兆円)以上を投資するという。かたや日本は、国内メーカー20社を集めた新技術開発に「5年で190億」、ポスト5G基金も2000億。その差は歴然だ。 ただ、これも大事だが、本当に必要なことは別にあるのではないか、と個人的には思う。 これまで日本が半導体産業にやってきたことや、コロナのワクチン政策を見れば明白だが、「やることなすこと日本を衰退させていく政策」が量産されていくという今の政治システムを変える必要がある。 これだけ医療崩壊だなんだと大騒ぎをしているのに不思議と「国民皆保険を含めて現行の医療制度を危機に強くするように見直すべきではないか」「パンデミックに機能しない民間病院のあり方を考えるべきでは」と叫ぶ政治家は少ない。自民党はもちろん、野党議員の多くが全国津々浦々の選挙で医師会の世話になっているからだ。 日本の経済安全保障的にも大きなリスクをもたらしている「日本の医療偏在」が放置されている原因をたどっていくと、落選を恐れる政治家の皆さんの「自己保身」に突き当たる。 最近、政治家の皆さんは口を開ければ、「経済安全保障は大事だ」と勇ましく口にするが、まずは実は自分たちこそが最大の経済安全保障的なリスクだということを認めないことには、議論もへったくれもないのではないのか』、「日本では「親米保守」という、愛国なんだか売国なんだかよくわからない人々が政治を動かしている。 そうなると当然そのしわ寄せは経済、つまり民間企業に押しつけられる」、「日本の経済安全保障的にも大きなリスクをもたらしている「日本の医療偏在」が放置されている原因をたどっていくと、落選を恐れる政治家の皆さんの「自己保身」に突き当たる」、同感である。

次に、9月22日付け東洋経済オンライン「「日の丸半導体」が凋落したこれだけの根本原因 富士通・元半導体部門トップが直言(前編)」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/456631
・『半導体の重要性が再認識されている。アメリカや中国は経済安保の観点からも兆円単位の国家支援を打ち出し、日本でも、経済産業省が「半導体・デジタル産業戦略」を発表している。ただ、かつて世界に覇を唱えた日本の半導体産業はすっかり凋落してしまった。なぜ日本の半導体が成功し、なぜダメになったのか。そして、復活には何が必要か。富士通で半導体部門のトップを務め、現在は半導体の設計ベンチャーを経営する藤井滋氏に話を聞いた(Qは聞き手への質問、Aは藤井氏の回答)。今回はその前編。 Q:そもそも半導体産業の黎明期に日本はなぜ勝てたのですか。 A:1940年代後半に半導体を発明したのはアメリカだ。1980年代にそのアメリカに日本は半導体の製造で勝った。それは、1970年代に日本が新しい技術を作ったからだ。 たとえばクリーンルームという概念を生み出した。アメリカでは製造現場に靴で入っていたが、日本では清浄な環境で造らないと不良が出る、とクリーンルームを作った。半導体の基本特許はアメリカ発かもしれないが、LSI(大規模集積回路)にしたのも日本だ。私たちの先輩がゼロから切磋琢磨しながらやった』、「クリーンルーム」は日本発の「概念」とは、言われてみれば納得する。
・『市場がパソコン中心になって「安さ」優先に  もう1つ大事なことがある。マーケットがあったことだ。当時、日本の大手電機はみんなNTTファミリーで通信機器やコンピュータを造っていた。半導体は自社の通信機器やコンピュータの部門が大口顧客だった。自社のハードを強くするために強い半導体がいる。通信機器部門やコンピュータ部門にとって、自社で半導体部門を持つメリットがあった。 各社がよりよいコンピュータを作ろうと競い合った。自社の大口顧客に応えるために、半導体部門も開発に力を注いだ。半導体を利用する顧客が近くにいることでよいものができた。それを外に売れば十分に勝てた。1980年代から90年代の初頭まではね。 Q:そうした成功方程式はなぜ崩れたのでしょう。 A:マーケットが通信機器と大型コンピュータからパソコンに変わったからだ。当初は各社独自のパソコンだったが、IBMの標準機になった。半導体も同じものをいかに安く作るかの競争になった。 NTT仕様の自社の通信機器向け半導体は35年保証の世界。設計、プロセス、品質管理もその水準でやっていた。それをパソコン向けにも展開したが、必要とされたのは品質より安さだった。パソコンは数年もてばいい。 そこに出てきたのが韓国勢だ。当時、富士通の半導体の断面は神様が切ったようにきれいだったが、韓国メーカー製はガタガタ。でも動く。何より安かった。 Q:過剰品質の問題に気がつかなかったのですか。 A:当然認識していたから、同じ設備でもアウトプットを2倍にするような設計やプロセスを採用して(高品質製品と)ブランドを分ける議論を散々やった。だが、分けられなかった。同じラインで2つの違う製品を流してもコスト削減効果はあまりないからだ。むしろ、2重のコストがかかる。 Q:依然として高品質を求める顧客もいます。 A:たとえば自動車がそうだ。トヨタさんからは「クラウンが動いている限り半導体を供給しろ」と求められる。自動車用半導体に障害が起きたときの対応コストは膨大になるから、品質を上げてくれというのは当然の要求だ。それは通信も同じ。半導体の故障で海底ケーブルを引き上げたら何億円もかかる。 ただし、今の半導体の設備投資や技術を引っ張っているのは大型コンピュータでも海底ケーブルでも自動車でもない。パソコンですらなく、スマートフォンだ。スマホ用はパソコン以上に品質を求められない。そのスマホ向けが技術的には最先端で、台湾のTSMC(台湾積体電路製造)は技術開発でスマホにフォーカスしている』、「スマホ用はパソコン以上に品質を求められない。そのスマホ向けが技術的には最先端で、台湾のTSMC・・・は技術開発でスマホにフォーカスしている」、なるほど。
・『半導体を知らない本社主導の弊害  Q:半導体産業振興のために国によるプロジェクト(国プロ)が数多くありました。初期の国プロは成功しましたが、それ以降はうまくいったものはありません。 A:国プロでは1970年代の超LSI技術研究組合はうまくいった。しかし、その後のさまざまな国プロが成功したとは思えない。その理由はいくつもある。たとえば、国プロに参加した人材は研究者としてはトップクラスも多かったが、成果を持ち帰って事業を興そうと考えた人材はほとんどいなかった。一方、欧米の国プロでは関わった技術者がその後に会社を作った。 また、国プロに参加した企業、東芝や富士通、NECは総合電機で、半導体は1部門でしかない。(経営的な)決定権を持っていない人材が集まっていた。 半導体部門自体が決定権を持っていないということは、国プロが成功しないという問題だけにとどまらなかった。投資などを決めるのは本社様で、半導体のマーケットをわかっている人間が(投資の)賭けに打って出ることはほとんどできなかった。しかも、半導体が儲かったときは(利益を)全部吸い上げられるし、損をしたときは(事業を)止めろと言われる。 欧米では1990年代に半導体事業が総合電機からスピンアウトした。日本でそれが起こったのは2000年になってからだ。そうしてできたのがエルピーダ(メモリ)とルネサス(エレクトロニクス)の2社だが、意思決定が10年以上遅かった』、「半導体部門自体が決定権を持っていないということは、国プロが成功しないという問題だけにとどまらなかった。投資などを決めるのは本社様で、半導体のマーケットをわかっている人間が(投資の)賭けに打って出ることはほとんどできなかった。しかも、半導体が儲かったときは(利益を)全部吸い上げられるし、損をしたときは(事業を)止めろと言われる」、「半導体事業が総合電機からスピンアウト」の「意思決定が10年以上遅かった」、「総合電機」のコングロマリットの問題点が如実に表れたようだ。
・『技術も人材も海外へ流出  Q:10年の遅れはどういう意味を持ちますか。 A:その10年間で工場を1つ作る費用が500億円から5000億円という世界になった。全社の投資額が年間3000億円のところ、半導体に5000億円の投資はできない。富士通だけではなくNECも日立(製作所)も同じだ。対して、(韓国の)サムスン(電子)やTSMCはそれができた。 10年遅れて半導体事業を切り離す決断をしたが、日本の総合電機は半導体の業績や市況が悪いときに捨ててしまった。事業を売る判断も本社。総合電機のトップは半導体出身ではなく、半導体を調達先としてしか考えていなかった。彼らから見ると半導体は金食い虫で早く手を切りたかった。 エルピーダも同じだ。こちらは銀行が耐えられなかった。結果論だが、あと半年耐えられたら状況は変わっていた。市況がよくなって儲かるようになった。誰が儲けたか。倒産したエルピーダを買ったアメリカのマイクロンだ。 Q:海外企業に売却された案件をどのように評価していますか。 ほぼ全員アンハッピー。技術も残っていないし、人材も散ってしまった。事業の撤退や再編で会社から捨てられて国内ではどうしようもない。多くは中国でメシを食っているはずだ。 Q:韓国の半導体産業は日本の技術者が立ち上げたと言われています。 A:サムスンや現代(現SKハイニックス)の半導体事業は、当時の日本の技術者が週末に韓国へ行って指導して立ち上げた。ただ、中国に関しては早期退職でクビになった日本の技術者が現地に渡って立ち上げた。そうした構図は液晶もプラズマ(ディスプレイ)も同じ、エレクトロニクス全般に当てはまる。) Q:近年は技術流出が問題視されていますが。 A:技術者をどう処遇するか、という問題だ。彼らが持つノウハウを将来にわたって国がどうキープするかは労務政策であり、産業政策でもある。日本はそれを各社に任せてきた。そして各社は年寄りの技術者をいらないと捨ててきた。 TSMCの(創業者)モーリス・チャン氏は新技術を立ち上げるために、IBMや日立などからキーマンを大金で一本釣りした。日本以外の企業ではトップ人材をヘッドハントするのは当たり前だ。 日本はそうしたスカウトをやらなかった。半導体産業の初期にアメリカ企業から正式に技術導入したり、自社で技術開発をしたりしてきたので人材の裾野は広かった。だが、全員を食わせられなくなって捨てた。そうした人材が韓国や中国に渡った。中国も韓国も、優秀な技術者の待遇はすばらしい。中国では5年間免税などもあると聞いている』、「総合電機のトップは半導体出身ではなく、半導体を調達先としてしか考えていなかった。彼らから見ると半導体は金食い虫で早く手を切りたかった。 エルピーダも同じだ。こちらは銀行が耐えられなかった。結果論だが、あと半年耐えられたら状況は変わっていた。市況がよくなって儲かるようになった。誰が儲けたか。倒産したエルピーダを買ったアメリカのマイクロンだ」、「エルピーダ」はもったいないことをしたものだ。
・『賃金の平等主義が競争力を落とした  Q:日本メーカーは自前で技術を開発したというと聞こえはよいですが、外からトップ人材を採用して、相応の処遇をすることができなかっただけでは。 A:そうかもしれない。優秀な人材に何億円も出すという大リーガー方式を採るのか、みんなで同じ給料の社会人野球をやるか。社会人野球に大リーガーは来ないだろう。 日本は労働者の流動性がないので全体の賃金が抑えられるが、トップ人材も雇えない。結果、エレクトロニクス分野では日本は三等国になってしまった。復活を目指すなら労務政策を変えないといけないが、平等主義を変える覚悟が日本にあるか。ないだろう。 Q:2000年代などには日本企業の経営者は口を開けば従業員の賃金が高いと文句を言っていました。 A:今はもう高くない。とくにエリートに関しては全然高くない。一般従業員でも高くない。上海と比較しても変わらない。ただし、それは東京の話。日本でも、地方の工場従業員の賃金は高い。 富士通時代、会津や三重の工場の駐車場にはBMWが並んでいた。東京からの転勤者が乗っているのはマーチ(日産)だった。東京と地方では物価が違うのに給料水準は同じ。労働組合は全国で共通だったからだ。 地方の半導体工場は子会社ではなかったから、東京で本社のSEの給料を上げたら半導体工場の労務費も上がってしまった。地場の賃金水準の2倍以上になった。それでよく戦っていたと思う。 日本メーカーの東京在住の技術者の給料は、国際的に見て低いから優秀な人材が奪われてしまう。日本だけの争いなら同じ競争環境だから戦えるが、グローバルな戦いになった瞬間にその弱点がモロに出てしまった。それがエレクトロニクスの敗北の大きな理由だと思う。 Q:半導体産業は設計から生産まで一貫して手掛ける垂直統合型から、設計はファブレス、製造はファウンドリーが請け負う水平統合型に変わりました。日本ではファブレス、ファウンドリーとも有力企業が育ちませんでした。富士通時代にシステムLSIの製造受託ビジネスを経験され、独立後はファブレスを経営している経験から、その理由をどう見ていますか。 A:通信のモデムを例に説明しよう。1970年代から80年代には富士通やIBMが売っていたのは弁当箱くらいの大きさのモデムで、富士通では通信部隊が作っていた。半導体部隊はモデムに使われるデジタル信号処理用半導体などを作っていた。 1990年代になるとモデムは弁当箱からカードになり、1990年代後半にはモデムチップとしてパソコンに取り込まれた。さらにインテルのチップセットにモデム機能が吸収されたため、モデムチップが消えてしまった。 各社のモデムの設計者がどうなったか。アメリカではカードになったときにモデム設計者の多くがクビになった。クビになった設計者がモデムカードのスタートアップを作ったり、モデムチップの設計会社、ファブレスを興したりした。ところが、日本企業では商売がなくなった技術者は起業するのではなく、社内の別の業務に移った。培ってきた技術は全部消えてしまい、ファブレスも誕生しなかった。 また、アメリカには起業した人間に投資するエンジェルがいる。そして成功した人間がまたカネを出す。技術だけでなくカネも循環している。技術者が大成功できる。かつ、カネを出している連中がCEOやCFOを送り込んで儲けている』、「日本企業では商売がなくなった技術者は起業するのではなく、社内の別の業務に移った。培ってきた技術は全部消えてしまい、ファブレスも誕生しなかった」、日本的雇用調整のマイナス面が表れた形だ。
・『ファンドが差配するアメリカの強み  Q:日本でファブレスが出てこなかった理由はわかりました。ファウンドリーが成功しなかったのはなぜでしょう。富士通も含めてチャレンジはしていました。 A:僕がカスタムLSIを作るビジネスをしていたとき、そうしたスピンアウトをしたベンチャーが客だった。1990年後半頃から彼らがTSMCに製造を切り替える動きがあった。理由を調べてみたら、ベンチャーにカネを出しているファンドがTSMCにも多額の出資をしていた。 ファンドがファブレスにもファウンドリーのTSMCにも資金を出して、両方の取締役会に人を送り込んでいた。調達や購買の人間は「富士通の製造技術はすばらしい」と言っても、資本の論理が別にあった。 サンノゼの高級ホテルの最上階にファブレスやTSMCにカネを出しているファンドの連中が集まって、「もっと安くしろ」とか「この時期に(発注を)出せ」とやって決まっていた。富士通の営業がファブレスの購買と話をしても受注が決まらない。大型案件では経営者や資本家が介入してくる。負けたのはF(富士通)だけではない。NTH(NEC、東芝、日立)もみんなやられた』、「日本」が「ファンド」ビジネスで立ち遅れていたのは確かだ。

第三に、この続きを、9月23日付け東洋経済オンライン「「日の丸半導体」復活には5兆円投じる覚悟必要 富士通・元半導体部門トップが直言(後編)」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/456632
・『半導体の重要性が再認識されている。アメリカや中国は経済安保の観点からも兆円単位の国家支援を打ち出し、日本でも、経済産業省が「半導体・デジタル産業戦略」を発表した。ただ、かつて世界に覇を唱えた日本の半導体産業はすっかり凋落してしまった。復活には何が必要か。富士通で半導体部門のトップを務め、現在は半導体の設計ベンチャーを経営する藤井滋氏に聞く(Qは聞き手の質問、Aは藤井氏の回答)。前編「『日の丸半導体』が凋落したこれだけの根本原因」に続く、後編。 Q:経済安全保障の観点から最先端の半導体工場を日本でも持とうという動きがあります。国がTSMCの工場誘致を探る動きもありますが、日本勢でやることは可能ですか。 A:これまで自動車向けには枯れた技術の半導体が使われていた。が、電動化や自動化で先端半導体も使うようになる。日本の自動車メーカーの半導体調達における地政学リスクをヘッジするなら、TSMCと同じくらいの最先端工場を日本に造らないといけない。 国が支援するとしたら2000億円規模では話にならない。国が年間5000億円を10年間出すと言えば、どこかが名乗りを上げるかもしれない。ただ、経済産業省が資金を出すと言っても、実際は大企業に「裏書きしろ」と言ってくる。それでは無理だ。5000億円を10年間、5兆円をドブに捨てる覚悟で誰かに賭けるしかない。 Q:資金力はともかく先端半導体を製造する技術を持つ企業は日本に残っていますか。 A:残っていない。個別で人材を集めるしかない。日本人だけではなくグローバルにだ。アメリカはサムスンやTSMCに工場を造らせようとしている。アメリカには先端半導体のマーケットがあるが、日本にはない。同じものを大量に作るという顧客がいない。スマホもない。だから誰も工場を造らない』、「アメリカには先端半導体のマーケットがあるが、日本にはない」、寂しい限りだ。
・『ファブレスで勝てない日本の弱点  Q:ファウンドリーのような製造での最先端が難しければ、設計専門のファブレスで強い企業を育成することはできませんか。 A:ファブレスの場合は、人材に加えてEDAツールも問題になる。 EDAツールとは半導体などの回路設計を自動化し支援するソフトとハードウェアだ。昔は各社で内製ツールを使っていた。このEDAツールの問題を当初イージーに考えていた。当時の富士通は先端だったから設計ルールも作っていた。 カスタムLSIのビジネスでは、顧客にある程度は設計してもらわないといけない。とくに海外の顧客の場合、自社でサポートする余力がない。ちょうどアメリカ西海岸で出始めていたEDAツール会社をお願いした。それでシノプシスやケイデンスといったEDAツール企業を育ててしまった。 そのときに富士通の設計ルールをあっけらかんと社外のEDAツール会社に出してしまった。今から思うと犯罪的なノウハウの流出だ。そうこうしているうちに半導体が高度化し、第三者、専門メーカーのEDAツールを使わざるをえなくなった。それが1990年代から2000年代頭の話だ。 結果、現在何が起きているか。ファブレスとしてTSMCやサムスンに最先端のプロセスでの製造を依頼するには彼らが指定するEDAツールを使う必要がある。ファブレスはそのEDAツールのルールに従って回路を設計しないといけない』、「富士通の設計ルールをあっけらかんと社外のEDAツール会社に出してしまった。今から思うと犯罪的なノウハウの流出だ」、その価値を見抜けなかったので、「富士通」の完全なミスだ。
・『他社のルールに従わざるをえないことの問題  Q:ルールに従ってはダメなのですか。 A:たとえば、熱や帯電を逃がすために回路の線と線にこれくらいの距離を開けるといったルールがある。ファウンドリーは歩留まり悪化の責任を取りたくないのでルールを守るよう要求する。だが、ルール通りにやったらマージンばかりで競争力のない商品になる。昔は自分たちでルールを決めていたから、ここはサボればいいというのがわかった。今は見極めができなくなった。 10年くらい前まではTSMCに行って「このルールはなぜ必要なのか」と尋ねたら答えてくれた。「ここはマージンを取り過ぎている」と言えばルール破りも許容してくれた。日本へのリスペクトがあったから。今はダメだ。 もう日本勢は設計でも世界を追随できなくなった。先端工場のそばでしか先端のルールはできない。日本では何もできない。日本勢がTSMCの5ナノや3ナノのプロセスを使おうとしたら、それが使えるケイデンスかシノプシスのEDAツールを買ってきて、言われた通りに設計するしかない。それでは本当に高い競争力を持つ製品はできない。 Q:アメリカのファブレスも同じ悩みを持っているのですか。 A:アメリカは違う。最初の話に戻るが、アメリカでは大手電機が半導体をやめたり、半導体メーカーが潰れたりした場合、プロセス技術者が外に出る。多くがファブレスに移る。プロセス技術がわかる彼らが、客(ファウンドリー)の立場で工場に対して「なぜこのルールがあるのか」「なぜこの製造装置を使うのか」といじめに来る。最もいじめられたのがTSMCだ。 工場側の手の内がわかっている技術者を多く抱えているのがアメリカのファブレス。だから交渉力がある。歩留まりが悪かったら解析する能力を持つ人材が何人もいる。ファンドがそうした優秀な技術者をファブレスに紹介する。それがTSMCとの交渉力になるし、TSMCもそれに応えてレベルアップしてきた。人の流動性とエコシステムができている。 日本でもファブレスはあるが、生産プロセスがわかる技術者やパッケージがわかる技術者はいたとしても数人。そうするとファウンドリーの言いなりになるしかない。 しかも、アメリカのクアルコムやアップルはTSMCのファーストティアだ。TSMCが2ナノの製造装置を選別するときには彼らから承認をもらう。クアルコムは「この装置じゃダメだ。ASMLのこの装置を使え、設計基準はこうしろ」とTSMCに要求できる。 ファーストティアの顧客はTSMCに対して指導力を発揮して投資方針も変更できる。ルールも決められる。そうして開発した技術をTSMCはセカンドティアの顧客に展開する。そのときはTSMCが自分のルールでやる。日本企業はセカンドティアにも入れていない』、「アメリカでは大手電機が半導体をやめたり、半導体メーカーが潰れたりした場合、プロセス技術者が外に出る。多くがファブレスに移る。プロセス技術がわかる彼らが、客(ファウンドリー)の立場で工場に対して「なぜこのルールがあるのか」「なぜこの製造装置を使うのか」といじめに来る。最もいじめられたのがTSMCだ。 工場側の手の内がわかっている技術者を多く抱えているのがアメリカのファブレス。だから交渉力がある。歩留まりが悪かったら解析する能力を持つ人材が何人もいる。ファンドがそうした優秀な技術者をファブレスに紹介する。それがTSMCとの交渉力になるし、TSMCもそれに応えてレベルアップしてきた。人の流動性とエコシステムができている」、ここまで違うとシャッポを脱ぐしかなさそうだ。
・『金融庁が日本の半導体を殺した!?  Q:ほかに日本の半導体が負けた理由はありますか。 A:金融庁の指導で100%子会社も含めて経理システムを一本化した影響が大きかった。富士通の場合、それまでは半導体部門の減価償却は定率法だったが、本社で統一するときに定額法になった。変更した瞬間は利益が出るが、その後は償却負担が重くて死んでしまう。 韓国や台湾は半導体産業に対して、減価償却と税制で手厚い優遇措置が整っている。日本はもともと減価償却の自由度が少ないところに、総合電機のようにビジネスモデルが違う事業の経理システムを統一してしまった。そうすると同じ中身でも利益が出ていないように見えるので投資もできず、捨てられてしまう。利益が出たら出たで税金で取られてしまう。) インフラコストや税金も高い。国内で半導体工場を造ろうとして水代や電気代を見るとビックリする。法人税も固定資産税も高い。戦略的に産業を伸ばそうとしたら、そういうところも直さないといけない。 Q:日本の半導体産業の復権は不可能に思えてきます。とはいえ、産業競争力の観点からも、経済安保の観点からも半導体は重要です。国はこれまでにない支援の姿勢を示していますが。 A:半導体復権を国がやるなら、日本株式会社でやらないと無理だろう。アメリカもそうしている。中国なんて完全に中央政府の統制でやっていて利益の分配も自在だし、労働争議も起きない。 ただ、国が資金を投じたから勝てるかと言われたら、苦しい。でも、やらなければ勝てはしない』、やはり、「日本」には「半導体復権」は夢のまた夢のようだ。
タグ:半導体産業 (その4)(台湾TSMCを巻き込む「日の丸半導体復活」構想が 日本の衰退を早める理由、「日の丸半導体」が凋落したこれだけの根本原因 富士通・元半導体部門トップが直言(前編)、「日の丸半導体」復活には5兆円投じる覚悟必要 富士通・元半導体部門トップが直言(後編)) ダイヤモンド・オンライン 窪田順生 「台湾TSMCを巻き込む「日の丸半導体復活」構想が、日本の衰退を早める理由」 「自民党の「半導体戦略推進議員連盟」」は『ジャパン・アズ・ナンバー・ワン・アゲイン』」と「かけ声は勇ましい」。他方で、「経産省」は「「官僚の妄想」とも言っていい青写真」、やれやれだ。 「TSMCの日本研究拠点と連携を強めれば強めるほど、日本の半導体の競争力が低下していく可能性の方が高い。つまり、わずかに残った世界で戦える半導体装置企業などがTSMC傘下へ組み込まれたり、技術者の国外流出に繋がってしまたりという恐れがある」、「「日本で研究を行う建前になってはいるが、実際の目的は、日本国内の企業や大学研究室からの技術情報収集・・・、装置・材料の調達、日本企業に勤務する技術者のリクルートのいずれかあるいはすべてだろう」、「このような意図を持つであろう台湾企業を平身低頭で日本に呼び寄せて、税金 「「日本で研究を行う建前になってはいるが、実際の目的は、日本国内の企業や大学研究室からの技術情報収集・・・、装置・材料の調達、日本企業に勤務する技術者のリクルートのいずれかあるいはすべてだろう」、「このような意図を持つであろう台湾企業を平身低頭で日本に呼び寄せて、税金までくれてやるというわけだ」、全く馬鹿げた話だ。 「TSMCは別にそこまで深刻に中国に背を向けているわけではないのだ。客観的に見れば、米中どちらにもいい顔をして非常にうまく立ち回っている」、当然だろう。 「今回の一連のTSMCの動きを見る限り、鴻海と似たものを感じる」、確かに巧みに泳ぎ回る様子はさすがだ。 「日本では「親米保守」という、愛国なんだか売国なんだかよくわからない人々が政治を動かしている。 そうなると当然そのしわ寄せは経済、つまり民間企業に押しつけられる」、「日本の経済安全保障的にも大きなリスクをもたらしている「日本の医療偏在」が放置されている原因をたどっていくと、落選を恐れる政治家の皆さんの「自己保身」に突き当たる」、同感である。 東洋経済オンライン 「「日の丸半導体」が凋落したこれだけの根本原因 富士通・元半導体部門トップが直言(前編)」 富士通で半導体部門のトップを務め、現在は半導体の設計ベンチャーを経営する藤井滋氏に話を聞いた 「クリーンルーム」は日本発の「概念」とは、言われてみれば納得する。 「スマホ用はパソコン以上に品質を求められない。そのスマホ向けが技術的には最先端で、台湾のTSMC・・・は技術開発でスマホにフォーカスしている」、なるほど。 「半導体部門自体が決定権を持っていないということは、国プロが成功しないという問題だけにとどまらなかった。投資などを決めるのは本社様で、半導体のマーケットをわかっている人間が(投資の)賭けに打って出ることはほとんどできなかった。しかも、半導体が儲かったときは(利益を)全部吸い上げられるし、損をしたときは(事業を)止めろと言われる」、「半導体事業が総合電機からスピンアウト」の「意思決定が10年以上遅かった」、「総合電機」のコングロマリットの問題点が如実に表れたようだ。 「総合電機のトップは半導体出身ではなく、半導体を調達先としてしか考えていなかった。彼らから見ると半導体は金食い虫で早く手を切りたかった。 エルピーダも同じだ。こちらは銀行が耐えられなかった。結果論だが、あと半年耐えられたら状況は変わっていた。市況がよくなって儲かるようになった。誰が儲けたか。倒産したエルピーダを買ったアメリカのマイクロンだ」、「エルピーダ」はもったいないことをしたものだ。 「日本企業では商売がなくなった技術者は起業するのではなく、社内の別の業務に移った。培ってきた技術は全部消えてしまい、ファブレスも誕生しなかった」、日本的雇用調整のマイナス面が表れた形だ。 「日本」が「ファンド」ビジネスで立ち遅れていたのは確かだ。 「「日の丸半導体」復活には5兆円投じる覚悟必要 富士通・元半導体部門トップが直言(後編)」 「アメリカには先端半導体のマーケットがあるが、日本にはない」、寂しい限りだ。 「富士通の設計ルールをあっけらかんと社外のEDAツール会社に出してしまった。今から思うと犯罪的なノウハウの流出だ」、その価値を見抜けなかったので、「富士通」の完全なミスだ。 「アメリカでは大手電機が半導体をやめたり、半導体メーカーが潰れたりした場合、プロセス技術者が外に出る。多くがファブレスに移る。プロセス技術がわかる彼らが、客(ファウンドリー)の立場で工場に対して「なぜこのルールがあるのか」「なぜこの製造装置を使うのか」といじめに来る。最もいじめられたのがTSMCだ。 工場側の手の内がわかっている技術者を多く抱えているのがアメリカのファブレス。だから交渉力がある。歩留まりが悪かったら解析する能力を持つ人材が何人もいる。ファンドがそうした優秀な技術者をファブレスに紹介する。そ やはり、「日本」には「半導体復権」は夢のまた夢のようだ。
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