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中国経済(その11)(恒大危機3題:みずほ証券ストラテジスト大橋英敏氏に聞く 中国恒大集団にどれだけの「政府介入」があるのか、不動産ガリバーが陥った「理財商品」の闇 中国「恒大集団デフォルト危機」驚異の全内幕、会社側は依然として「危機を乗り切る」と主張 中国「恒大集団危機」取引先8000社に走る激震) [世界情勢]

中国経済については、9月1日に取上げたばかりだが、今日は、(その11)(恒大危機3題:みずほ証券ストラテジスト大橋英敏氏に聞く 中国恒大集団にどれだけの「政府介入」があるのか、不動産ガリバーが陥った「理財商品」の闇 中国「恒大集団デフォルト危機」驚異の全内幕、会社側は依然として「危機を乗り切る」と主張 中国「恒大集団危機」取引先8000社に走る激震)である。

先ずは、9月22日付け東洋経済Plus「みずほ証券ストラテジスト大橋英敏氏に聞く 中国恒大集団にどれだけの「政府介入」があるのか」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/28269
・『中国恒大集団の債務のデフォルト懸念が高まり、株価などに動揺が広がっている。 「中国恒大集団はリーマンショックの再来を招くか」で、みずほ証券チーフクレジットストラテジストの大橋英敏氏は、中国国内で問題が処理されるというのがメインシナリオであり、国際金融市場はリーマンショック級の危機に陥ることはないが、株価下落などの一時的な混乱はありうると指摘した。 今回は、大橋氏に具体的に中国恒大集団で想定される処理方法、中国政府の経済政策について聞いた(Qは聞き手の質問、Aは大橋氏の回答)』、株式市場には下記のように影響が僅かながらも出ている。
・『政府や中央銀行による対応が始まっている  Q:中国恒⼤集団をめぐる信⽤不安からニューヨーク市場で株価下落が続き、9月21日の東京市場も日経平均株価で前営業日比660円下げました。ただ、まだ下げは限定的とも見えます。 A:米ドル建て社債の利払いが9月23日なので注目されている。中国政府は一部金融機関に債務返済期限の延長を求めるなど関与を始めており、社債権者と中国恒大集団との交渉も始まっているとみられ、債務のデフォルトは秩序だった形ですでに始まっている。また、中国人民銀行(中国の中央銀行)は季節的な流動性低下の時期でもあり、緊急の短期資金供給を行っている。 先日も述べたとおり(中国恒大集団はリーマンショックの再来を招くか)、中国政府は中国恒大集団の無秩序なデフォルトや保有資産の投げ売りによる金融システム不安の誘発、それを増幅させうる不動産市場の急落はさまざまな手段を使って回避するとみている。 社債は長年B格クラスのハイイールド債で、銀行や保険会社などの金融システム上重要な投資家が大量に保有している可能性は極めて低い。保有者は再建後の値上がりを狙って買うディストレス・バイヤーやハイイールド社債インデックスなどをトラックする投資信託とみており、デフォルトによる換金売りも限定的とみている』、「債務のデフォルトは秩序だった形ですでに始まっている」、「中国政府は中国恒大集団の無秩序なデフォルトや保有資産の投げ売りによる金融システム不安の誘発、それを増幅させうる不動産市場の急落はさまざまな手段を使って回避するとみている」、そこまでコントロールできるのであれば、問題は少なそうだが・・・。
・『Q:中国恒大集団の基本的な財務内容は以下の通りですが、総負債はもっと大きいとの報道もあ「りますね。 【中国恒大集団の財務状況】有利子負債残高(2021年6月末) 5718億人民元(約9.8兆円) 純有利子負債(2021年6月末) 4101億人民元(約7.0兆円) 銀行借り入れが多く、社債発行残高は192億3600万米ドル、1.01億香港ドル、合計で約2.1兆円 格付け 長期間シングルB(ジャンク級)だったが、現状ではトリプルC(デフォルトを織り込み済み) 負債総額は30兆円を超すとの報道があるが、これはいわゆる総負債で有利子負債との差は円換算で24兆円あるが、そのうち16兆円強が買掛金、4兆円弱が契約上の負債となっている。 買掛金は建設中の物件(住宅など)の施工業者への支払いが含まれ、契約上の負債には顧客がすでに支払った物件などへの前払い金などが含まれるとみられる。なお、理財商品(注)はこれらには含まれないとみている』、「格付け」は既に「トリプルC(デフォルトを織り込み済み)となっているようだ。
(注)理財商品:小口で短期の投資信託のような集団投資スキームの商品(Wikipedia)。
・『秩序ある債務デフォルトの取り組み  Q:政府が目指す処理とは具体的にどのようなものでしょうか。 A:まず、中国恒大集団を政府管理下に置き、業務の停止や経営陣の交代などを行い、次に、完成していない住宅への前払いなどをした個人の救済を優先しつつ、中国恒大集団が保有する資産を相応の時間をかけて流動化することで、不動産市況への影響を最小限にする、という形をとるだろう。不動産などの資産処理については、中央政府・地方政府系の不動産開発会社が関与すると想定される。 Q:金融システムには波及させない、と。 (筆者の略歴はリンク先参照) 中国恒大集団は「Principal Bankers」(主取引銀行)として 20 行を開示しているが、その大半が中国政府もしくは地方政府が主要株主の金融機関だ。 民間銀行も実質的に政府による管理下に置かれているので、仮に多額の損失が発生して資本不足の懸念が生じれば、中央もしくは地方政府による公的資金注入が行われる。先般も述べたとおり、その他民間金融機関についても「大きすぎて潰せない」(too big to fail)に該当し、破綻による経済システム(不動産価格など)への影響が甚大なものと判断すれば、公的資金を投入するだろう。 したがって、リーマンショック級の危機にはなる可能性は低く、短期的な相場下落は押し目買いの好機になるとみている』、「リーマンショック級の危機にはなる可能性は低く」ようであれば、一安心だ。
・『中国の不動産市場全般への懸念  Q:リーマンショック級の危機はないとしても、グローバル金融市場の短期的な動揺は想定されうるとのこと。具体的なリスクチェックはどうなりますか。 A:3つの要因があると思う。 第1に中国恒⼤集団のみの問題で⽚付かないことへの懸念だ。 不動産はどの国でも価値・価格および関係者の数の双方から、最大の資産クラスだ。また、株などの有価証券とは異なり相対取引が主なので、実態が把握しづらい。しかも、重要なのは不動産取引と金融取引(貸借取引)が一体であることだ。 このため、金融機関の貸出金に占める不動産関連の与信はほかのセクターに比べてどうしても、多くなりがちだ。なので、不動産価格に対する懸念は、金融システム不安に直結する。 ただ、現状では8月までで住宅価格の上昇率は鈍化しているが、急落していない。一方で、不動産の場合、実態把握に時間、おそらく数年程度がかかることも理解しておきたい』、「不動産価格に対する懸念は、金融システム不安に直結する」、ので、現在は「急落していない」とはいえ、要注意だ。
・『数値基準の独り歩き  中国政府が昨年8月に導入した「3つのレッドライン」という「数値基準」がもたらす波及効果が懸念される。 3つのレッドライン ①資産負債比率(Liability to Asset)を70%以下とする、②ネットの資本負債比率(Net DER)は1倍以下、③現預金短期有利子負債比率(Cash Coverage of ST Debt)を1倍以上とする、という3つの指標。これらいずれも満たせていない企業の1つが中国恒大集団だった。 かつて銀行にバーゼルⅠという自己資本比率規制が導入されたころ、日本でも銀行の自己資本比率のランキングが流行し、その結果、数値が独り歩きして、金融機関の一部はレピュテーションリスクに悩まされた。 中国政府が「3つのレッドライン」を導入したのは、不動産開発業者に対する規制強化というよりは、住宅を含む不動産が一種の「社会インフラ」として重要であり、乱開発による不動産価格の上昇を防ぐことは重要な課題であること、不動産開発業者がすでに「大きすぎて潰せない」という領域に入りつつあったため、財務健全性指標を導入することで不動産開発業者の信用力を安定化させること、が目的だった。 しかし、バーゼルⅠの例と同様に、「数値基準」により市場は否応なく企業を選別する。今回の中国恒大集団の資金繰り急悪化もそうしたものだ。「3つのレッドライン」を満たしていない大手不動産開発業者はほかにも数社は存在すると報道されている。市場が「魔女狩り」を行えば、不良債権が発生し、さらに担保資産価値の下落を通じて潜在的な不良債権が増加するという懸念が高まり、金融システム全体への不安が生じる可能性は否定できない。 ただ、私はこのような状態も中国政府は想定しており、危機的な局面になれば、不動産取引の一時的な停止、過剰在庫の政府系不動産開発業者による買い取り、資本不足に陥った金融機関の資本増強策の実施、短期金融市場への潤沢な流動性供給、などを矢継ぎ早に導入すると見ている』、「中国政府は」「危機的な局面になれば、」様々な対策を「矢継ぎ早に導入する」、強権的な政府の強味だ。
・『2015年のように先進国の金融市場の否定的反応も  Q:市場がそれらをどう受け止めるかどうかも重要ですね。 2つめがその問題だ。中国政府の「拙速」な対応に市場がネガティブに反応するリスクもある。 例えば、2015 年 8 月に突然実施された中国元の対米ドルレートの切り下げをきっかけとした、中国株式市場の暴落だ。その際に中国政府が矢継ぎ早に投入した株価維持策(空売り禁止などの措置)を先進国の金融市場は好感しなかった。自由取引を阻害する行為であるとの反発があり、また、中国経済に対する悲観的な見方を高めてしまったためだ。ただし、当時も、中国政府による株価維持策はその後奏功して、2018 年前半まで株価は持続的に回復したことも指摘しておきたい。 第3には先般も述べたグローバル⾦融市場の「鈍感」と「過剰反応」だ。 中国国内の変化というのはわかりにくいので、グローバル金融市場およびグローバルクレジット市場は、大半の局面では鈍感だが、いったん心配し始めると過度に悲観的になる傾向がある。 2021 年以降は中国のクレジット・インパルス(総債務残高対 GDP 比の前年差)がマイナスに転じており、中国政府は与信引き締めによる景気減速を政策として実施している可能性が高く、これが明らかになってくると市場が過度に悲観的になるかもしれない』、「中国国内の変化というのはわかりにくいので、グローバル金融市場およびグローバルクレジット市場は、大半の局面では鈍感だが、いったん心配し始めると過度に悲観的になる傾向がある」、要注意の市場のクセだ。
・『習近平は社会主義への回帰を志向  Q:中国政府の中長期的な政策姿勢をどうみていますか。 A:「3つのレッドライン」導入の狙いは前述の通りだが、Ant Group の上場延期や実質的な企業解体、オンライン教育事業の NPO(非営利組織)化、IT・ネット関連企業への規制強化など、規制強化は矢継ぎ早だ。これらは必ずしもアメリカを意識しただけの動きではないようにみえる。 私は相次ぐ規制強化の背景には、第1に習近平主席による毛沢東思想への回帰、つまり社会主義社会への回帰、第2に経済成長率のいっそうの減速への備え、および、第3に2022年秋の中国共産党大会での 3 期目の続投に向けた国民や共産党員へのアピール、の3つがあるとみている。  これらは、「共同富裕」のスローガンの下で一元化されているのではないか。すなわち、資本主義国がみてきた過去数十年の中国経済と、今後の中国経済は体制・仕組みが大きく変化する可能性があることを頭の片隅に置いておきたい。 例えば、日米欧などの資本主義国の側は、10 億人以上の人口と広大な国土を有する現在の中国共産党が、今後も安定的に体制を維持するためには、何よりも経済成長が重要と「理解(期待)」している。だがこの見方は今後変更を迫られるのではないか。依然として確信ではなく不透明性も高いが、このような視点から中国という国を観察することも重要だと考えている』、「資本主義国がみてきた過去数十年の中国経済と、今後の中国経済は体制・仕組みが大きく変化する可能性があることを頭の片隅に置いておきたい」、その通りなのかも知れない。

次に、9月23日付け東洋経済Plusが転載した財新編集部「不動産ガリバーが陥った「理財商品」の闇 中国「恒大集団デフォルト危機」驚異の全内幕」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/28272
・『中国の大手不動産企業「恒大集団」の動向を世界中が注視している。背景にはいったい何があったのか。 中国の不動産大手、恒大集団(エバーグランデ)の巨額債務問題が世界の金融市場を揺るがせている。恒大集団の2020年のグループ売上高は5072億元(約8.6兆円)と民間の不動産企業の中で最大手級だ。 高いレバレッジをかけた大規模住宅開発で飛躍的に成長を遂げ、買収したプロサッカークラブの運営やEV(電気自動車)、ミネラルウォーター事業などに多角化。一方、その負債総額は33兆円に膨張し、資産運用商品の償還遅延事件をきっかけに経営危機が顕在化した。 目先は社債などの償還ラッシュを乗り切れるかが世界から注目されている恒大集団だが、問題の根源には同社の極めて特異な資金調達構造があった。中国の調査報道メディア「財新」の特集はその暗部に切り込んでいる。特集記事を前編、後編でお届けする。 深圳市南山区にある高さ202メートルの巨大ビル。この場所が現在、世界の金融市場を揺るがす暴風の中心となっている。 1~2カ月前から、この場所には「債権回収を求める」と書かれた横断幕を掲げる施工業者やサプライヤー、さらには給料を受け取っていないという農民工(出稼ぎ労働者)たちがひっきりなしに現れるようになった。 彼らが債権を回収しようとしている相手は、フォーチュンの「グローバル500ランキング」で122位にランクインした中国の大手不動産企業――恒大集団だ。恒大集団は1996年に広州で創立され、2016年に本社を深圳に移している。 本社ビル前の債権回収騒動は、2021年9月8日以降に急増した。この日、恒大集団傘下の恒大金融財富管理(以下、「恒大財富」)が、自社で販売していた理財商品(資産運用商品)の償還を延期すると発表し、数十万人の投資家たちが一瞬にして大混乱の渦に巻き込まれることとなったのだ』、「理財商品(資産運用商品)の償還を延期」、「投資家」が「大混乱の渦に巻き込まれる」のはやむを得ない。
・『投資家が恒大集団の本社に集結  9月10日、恒大集団の創業者である許家印前会長は「満期を過ぎたすべての理財商品について、できるだけ早く全額の支払いを行う」と公言した。それでも、投資家が権利保護を叫ぶ声を止めることはできなかった。中国全土から投資家たちが深圳に足を運び、恒大集団の本社オフィスに集結したのだ。 財新の調査によると、9月12日と13日の2日間だけで、深圳のほかに広州、西安、済南、成都、南昌など多くの都市で、投資家たちが恒大集団支社の幹部を追い回す事案が発生している。中でも南昌支社の幹部は、300人以上の投資家たちによってホテルに48時間も閉じ込められた』、「恒大集団」の「投資家」への説明が不十分だからだろう。
・『未償還の理財商品は少なくとも6800億円  複数の情報源から得た情報によると、恒大財富の未償還の理財商品は控えめに見積もっても400億元(約6800億円)にのぼる。恒大財富の杜亮社長は投資家に対して、「理財商品が一気に償還されれば、恒大集団の受けるプレッシャーは非常に大きくなる」と話した。 投資家の人数は不明だが、その多くが恒大集団の関係者である。恒大集団の20万人の社員は、日常業務の一環として恒大財富で一定額の理財商品を購入している。また社員たちは恒大集団の取引先と不動産オーナーたちにもこの理財商品を購入するように勧めていたほか、親戚や友人たちにも販売してきた。 次から次へと発生する債権回収騒動は、恒大集団の経営危機の一端にすぎない。恒大財富が理財商品の償還延期を発表する1カ月前、恒大集団の各地の子会社は一部の事業プロジェクトの権利を恒大財富に担保として差し入れ資金を調達。その金額は200億元(約3400億円)を超えていた。 その目的は「保交楼(住宅の引き渡しを保障すること)」だ。恒大集団はこれまで多額の工事費用の支払いを延滞していたため、多くの建設プロジェクトが停止を余儀なくされていた。8月の恒大集団の売上高は前年同月比で26%減少しており、800以上あるプロジェクトの内、500以上が停止状態にある。 現在、恒大集団の引き渡しが済んでいない住宅は、少なくとも数十万戸あり、引き渡しを完了するには最低でも数千億元(数兆円)の資金が必要となる。9月1日、グループの中核事業会社である中国恒大の8人の副総裁が住宅引き渡しの専門チームを率いて、「軍令状」(任務を果たせなかった場合は処罰を受け入れるという誓書)に署名をした。 それからわずか1週間後、恒大財富が償還の一時停止を発表したため、恒大集団はすぐさま住宅の引き渡し保障が先か、理財商品の償還保障が先か、という板挟みの窮地に立たされることとなったのだ』、「恒大集団の20万人の社員は、日常業務の一環として恒大財富で一定額の理財商品を購入している。また社員たちは恒大集団の取引先と不動産オーナーたちにもこの理財商品を購入するように勧めていたほか、親戚や友人たちにも販売してきた」、「社員」たちは自分の利害だけでなく、「取引先と不動産オーナーたち」や「親戚や友人たち」にも売った責任を感じているようだ。
・『「超收宝」の本当の使い道  「給料の大部分を恒大の理財商品に投じているんだ」 この危機の嵐の中、真っ先に自らの権利保護に動いたのは恒大集団の社員たちで、中でも幹部たちの動きが目立った。彼らの多くは恒大集団に10年以上勤めており、その個人資産は会社の理財商品と深いつながりを持っている。 不動産企業の経営が順風満帆であった時期においては、社員によるこうした投資はwin-winなものであり、不動産企業が様々なルートから資金調達をする1つのモデルにもなった。そして恒大集団はこのモデルを極限まで活用したのだ。 恒大集団の資金管理運営センターの元社員によれば、不動産企業が融資を希望するとき、金融機関は毎回多くの条件を提示するという。そして、(その条件の1つとして)恒大集団の幹部個人からも投資を募り、不動産プロジェクトと紐づけることで、リスク管理措置の1つとしていたのだ。 「こういったときは必ず、恒大集団は下部組織に資金調達任務を命じる。幹部が自ら出資するか、下部組織の社員たちが手分けして資金を出し合う。各部門に目標が存在するんだ」(資金管理運営センターの元社員) 中でも幹部向けの資金調達用の理財商品は「超收宝」と呼ばれている。2017年5月、恒大集団の社内では「超收宝」の第6期が発行され、その半年後に第7期が発行されていた。 しかしごく少数の従業員だけが「超收宝」の本当の使い道を知っていた。2017年5月と11月、恒大集団はプロジェクト資金として中信銀行深圳支店から融資を受けた。その際、銀行側が恒大集団の上層部に資金を投じることを要求したため、すぐさま「超收宝」の第6期を発行したのだ。その年利は25%と超高利回り、最低投資額は300万元(約5100万円)、さらに2年以内に元金と利息を返還することを約束していた。 財新は、中信銀行が起草した「第6期超收宝計画(草案)」を入手した。この計画書によれば、中信銀行は恒大集団との協議を経て、恒大集団と共同で400億元(約6800億円)規模のM&Aファンドを設立予定であり、その運営に財政的支援を提供するとしている。 これは銀行による恒大集団へのオフバランスシート(簿外取引)方式の融資と言える。2019年に(収賄容疑で)調査を受けた元頭取の孫德順、2018年末に調査を受けた元副行長兼深圳支店責任者の陳許英が率いていた時期の中信銀行は、恒大集団を支援して数千億元(数兆円)のエクスポージャーを持っていた。 一方、2020年の中間決算報告書によると、中信信託を含む中信銀行の恒大集団への貸付金は200億元(約3400億円)を超えていない。これはオフバランス(帳簿外)の貸付金が早くからオンバランス(帳簿内)の金額を超えていたことを示している』、「中信信託を含む中信銀行」が「恒大集団」に「オフバランスシート(簿外取引)方式の融資」したり、「資金調達用の理財商品」を発行させていたとは、銀行もグルのようだ。
・『惜しげもなく超收宝に投資する社員も  恒大集団の副部長クラスの関係者は、「(最低投資額の)300万元(約5100万円)というのは少ない額ではない。私が150万元(約2550万円)を出資し、部下たちに残りを出資させることでクラウドファンディングのように集める。そして最終的に私の名義で購入するのだ」と語る。 こうした委託保有契約は恒大集団内部では珍しいものではないという。社員によっては惜しげもなく銀行から金を借りてきては「超收宝」に投資した者もいた。それは25%という利回りが銀行ローンの金利をはるかに上回っているからだ。 しかし2019年5月と11月、2期分の「超收宝」が満期を迎えた際、恒大集団は購入した従業員に対し「超收宝」の償還日を1年間延期することに同意するよう要求し、2020年にはさらに1年間の再延期を実施した。 ある投資家は「過去3〜4年間、四半期ごとに配当が支払われたが、年利は約4~5%程度だった。約束されていた年利25%の高配当は、当初の説明では元金返済時に現金化するとのことだった」と語る。 資金難が深刻化した後、恒大集団は現職幹部の「超收宝」の元金返済を優先した。ある投資家が財新に提示した証拠によれば、2021年8月末~9月初旬までの間、恒大集団は様々な請負事業者の口座を通じて現職の社員に「超收宝」の元金17億元(約290億円)分を前倒しで償還している。 しかし、約300人の離職済みの社員の2億元(約34億円)分の元金は支払われていない。元社員たちはこれに憤慨し、自らの権利を守ろうとしている。 理財商品の販売対象には、不動産プロジェクトに関わる施工業者も含まれていた。恒大集団のエンジニアリング部門を10年以上管理している社員によれば、プロジェクトの費用を施工業者に支払うときは毎回、施工業者に対して理財商品を購入するよう求めるのだという。 「例えば100万~200万元(約1700万~3400万円)の費用を決済する場合は、10万~20万元(約170万~340万円)分の理財商品を購入するよう求める」。この要求は強制的なものではないが、施工業者は恒大集団と良好な関係を維持するために、ほとんどが従ったという。また、物件のオーナーたちも恒大財富の理財商品を購入していたとのことだ。 だが、恒大財富は9月9日に償還延期の具体的な方策を発表した。今回の危機において、最も対応が難しいのは個人の債権だ。銀行など金融機関の債権に関しては政府が指示を下せば延期することができる。しかし、個人債権となると膨大な数の投資家が関わってくる。恒大財富の償還延期計画は、投資家たちの強烈な不満を引き起こし、それが恒大集団の危機的状況が急速に悪化する引き金となってしまった。 本文:王婧、陳博、於寧、朱亮韜、王娟娟、周文敏 『財新周刊』9月20日号より抄訳』、「資金難が深刻化した後、恒大集団は現職幹部の「超收宝」の元金返済を優先した。ある投資家が財新に提示した証拠によれば、2021年8月末~9月初旬までの間、恒大集団は様々な請負事業者の口座を通じて現職の社員に「超收宝」の元金17億元(約290億円)分を前倒しで償還している」、債権者に平等に返済するのでなく、関係者に優先して返済するとは飛んでもない不法行為だ。

第三に、この続き、9月23日付け東洋経済Plusが転載した財新編集部「会社側は依然として「危機を乗り切る」と主張 中国「恒大集団危機」取引先8000社に走る激震」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/28273
・『中国の大手不動産企業「恒大集団」の動向を世界中が注視している。背景にはいったい何があったのか。 中国の不動産大手、恒大集団(エバーグランデ)の巨額債務問題が世界の金融市場を揺るがせている。恒大集団の2020年のグループ売上高は5072億元(約8.6兆円)と民間の不動産企業の中で最大手級だ。 高いレバレッジをかけた大規模住宅開発で飛躍的に成長を遂げ、買収したプロサッカークラブの運営やEV(電気自動車)、ミネラルウォーター事業などに多角化。一方、その負債総額は33兆円に膨張し、資産運用商品の償還遅延事件をきっかけに経営危機が顕在化した。 目先は社債などの償還ラッシュを乗り切れるかが世界から注目されている恒大集団だが、問題の根源には同社の極めて特異な資金調達構造があった。中国の調査報道メディア「財新」の特集はその暗部に切り込んでいる。特集記事の後編をお届けする。 中国の不動産ガリバー、恒大集団傘下の恒大金融財富管理(以下、「恒大財富」)は9月8日に、自社で販売していた理財商品(資産運用商品)の償還を延期すると発表し、数十万人の投資家たちが一瞬にして大混乱の渦に巻き込まれた。 恒大財富は8~9月に、100億元(約1700億円)を超える資金を各地の請負業者に輸血した。これは請負業者がすでに事業停止状態に陥っているためだ』、「100億元(約1700億円)を超える資金を各地の請負業者に輸血」、「輸血」とは資金を提供した意味のようだが、本来、払うべき債務を履行してないのに、どういうことなのだろうか。
・『請負業者はすでに事業停止状態に  例えば2021年8月6日、江蘇省太倉の建設現場に突如、事業停止を命じる公告が出された。この建設工事を取りまとめるゼネコンの江蘇南通三建集団はすでに大部分の作業を完了させ、5億元(約85億円)の資金を立て替えたが、恒大集団の支払い済み金額は2.9億元(約50億円)にも達していない。さらにそのうち、現金で支払われたのはわずか8%だという。 残りの金額はすべて商業引受為替手形(以下、「商業手形」)によって決済されており、満期になっても償還されていない商業手形の規模は1.2億元(約20億円)に達する。恒大集団が工事費用の支払いを滞らせたことで、事業停止を引き起こしたのだ。 恒大集団が2020年8月に広東省政府に支援を求めた際の文書によれば、同月時点で恒大集団が不動産開発プロジェクトで提携する企業は8441社にのぼる。大手不動産企業である恒大集団のキャッシュフローが途絶えれば、川上川下の取引先企業の経営に直接的なダメージを与え、一部の企業は破産リスクに直面することになる。 同文書によれば、2020年6月時点で、販売済みでありながら引き渡しができていない住宅の数は61.7万戸となっている。さらに、恒大集団が危機に陥れば、204万人の不動産オーナーたちが未竣工の物件を受け渡されたり、そもそも物件を受け取れないなどのリスクに直面すると記されている。そして1年後の現在、状況はさらに悪化している。 「住宅の引き渡しは数十万の家庭と地方政府の安定に関わる。しかし、巨大な不動産市場の信用が揺らげば、施工事業者も費用を立て替えるのは避けたがるだろう。広東省の住建部門が現在、事業再開に関する問題を解決しようと協議しているようだ」。恒大集団に関心を寄せているある銀行員はこう話す。 恒大集団の財務報告書によると、商業手形のほか、買掛金も同様に年々増加している。2021年6月30日時点で、一部の不動産開発関連の頭金が支払われておらず、その結果、一部のプロジェクトが停止されたと記されている。また、期間内の流動負債の内、貿易に関する買掛金およびその他の買掛金の額は9511.33億元(約16兆円)に達し、前年比で14.71%増となっている。 現在、恒大集団は支払いの延期や不動産売却による延滞金の相殺などによって不動産開発事業を再開しようと、サプライヤーや建設請負業者と交渉をしている。実際、2021年7月1日~8月27日の期間内で、恒大集団は不動産を売却して延滞金の一部を相殺しており、その総額は約251.7億元(約4300億円)となっている。 恒大集団の手元資産の大半が土地だ。2021年6月30日時点で、恒大集団は778件のプロジェクトを手がけており、計画されている総建設面積は2億1400万平方メートル、それらの土地の取得原価は4568億元(約7.7兆円)だ。そのほか、恒大集団は146件の都市再開発プロジェクトを手がけており、中でもグレーターベイエリア(広東省と香港・マカオ)のプロジェクト数が131件を占めている。 だが、9月10日、緊急に開かれたグループ会議の場で、恒大財富の杜亮社長はグループ創業者の許家印前会長のコメントを引用して、ほとんどの土地は売却することができないと発言した。「中国において土地は最も価値のあるもの。恒大財富の最大の武器であり、最後の財産だからだ」と、杜亮社長は語っている。 「例えばある土地を取得するのに10億元(約170億円)を支払い、その後その土地の価値が20億元(約340億円)に達したとしても、今の市場の取引相手が提示する額はわずか3億元(約51億円)ということもある。元手をすってまで売却してしまえば、恒大集団は再起するための資本も失ってしまう」(杜亮社長) 施工再開さえすれば、土地開発によって住宅の買い戻し資金を賄うことが可能で、そうすれば恒大集団はすべての債務を返済し、元の状態に戻ることができるのだという』、「ゼネコンの江蘇南通三建集団はすでに大部分の作業を完了させ、5億元(約85億円)の資金を立て替えたが、恒大集団の支払い済み金額は2.9億元(約50億円)にも達していない。さらにそのうち、現金で支払われたのはわずか8%だという。 残りの金額はすべて商業引受為替手形・・・によって決済されており、満期になっても償還されていない商業手形の規模は1.2億元(約20億円)」、「施工再開さえすれば、土地開発によって住宅の買い戻し資金を賄うことが可能で、そうすれば恒大集団はすべての債務を返済し、元の状態に戻ることができるのだという」、「施工再開」は支払いが円滑化する必要がある。
・『6月初旬から多数の不動産資産の売却計画も  一方、財新が入手した情報によれば、恒大集団は6月初旬から、多くの不動産資産を売却する計画に取り掛かっており、過去3カ月ほどで中国海外発展や万科などの大手不動産企業、そして中国金茂などの国有企業が恒大集団と接触している。 ただ今に至るまで、恒大集団傘下の大部分のプロジェクトの買い手は実質的には定まっていない。多くの不動産関係者によると、「恒大集団が手がけるプロジェクトの内容は一見悪くなさそうだが、債務構造が複雑で整理するのが非常に難しい」という。 恒大集団が一部資産の譲渡を正式に認めたのは8月10日夜のことだ。恒大集団傘下の自動車および不動産セクターの一部資産を売却するとのことだった。しかし9月14日の発表では、恒大集団は多くの投資家と積極的に接触したが、法的拘束力のある契約は締結できていないとしている。 最近立案された自力救済計画において、恒大集団は何度も「投資用不動産、ホテル、およびその他の不動産資産などを売却することで投資家を引き入れ、資本金を増やす」と説明している。 会社側は依然として、「さまざまな要因が重なり合って生じた流動性危機である」と主張しており、破産するのではないかという噂を否定している。また「年間7000億元(約11.9兆円)の販売と土地の在庫、商品価値があれば、恒大集団は今回の危機を乗り切ることができる」としている。 しかし、これらはすべて資産処理が進展するかどうか、また簿外資産も含めて債務の全容解明がなされた後の恒大集団の真実の姿次第とも言えるだろう。 本文:王婧、陳博、於寧、朱亮韜、王娟娟、周文敏 『財新周刊』9月20日号より抄訳』、実態はやはり不明で、「今回の危機を乗り切ることができる」か否かは不透明だ。なお、テレビ東京のワールド・ビジネス・サテライトによれば。中国の中央銀行は、不動産市場の健全な発展を守ると声明を出したようだ。
タグ:中国経済 (その11)(恒大危機3題:みずほ証券ストラテジスト大橋英敏氏に聞く 中国恒大集団にどれだけの「政府介入」があるのか、不動産ガリバーが陥った「理財商品」の闇 中国「恒大集団デフォルト危機」驚異の全内幕、会社側は依然として「危機を乗り切る」と主張 中国「恒大集団危機」取引先8000社に走る激震) 東洋経済Plus 大橋英敏 「みずほ証券ストラテジスト大橋英敏氏に聞く 中国恒大集団にどれだけの「政府介入」があるのか」 株式市場には下記のように影響が僅かながらも出ている。 「債務のデフォルトは秩序だった形ですでに始まっている」、「中国政府は中国恒大集団の無秩序なデフォルトや保有資産の投げ売りによる金融システム不安の誘発、それを増幅させうる不動産市場の急落はさまざまな手段を使って回避するとみている」、そこまでコントロールできるのであれば、問題は少なそうだが・・・。 「格付け」は既に「トリプルC(デフォルトを織り込み済み)となっているようだ。 (注)理財商品:小口で短期の投資信託のような集団投資スキームの商品(Wikipedia) 「リーマンショック級の危機にはなる可能性は低く」ようであれば、一安心だ。 「不動産価格に対する懸念は、金融システム不安に直結する」、ので、現在は「急落していない」とはいえ、要注意だ。 「中国政府は」「危機的な局面になれば、」様々な対策を「矢継ぎ早に導入する」、強権的な政府の強味だ。 「中国国内の変化というのはわかりにくいので、グローバル金融市場およびグローバルクレジット市場は、大半の局面では鈍感だが、いったん心配し始めると過度に悲観的になる傾向がある」、要注意の市場のクセだ。 「資本主義国がみてきた過去数十年の中国経済と、今後の中国経済は体制・仕組みが大きく変化する可能性があることを頭の片隅に置いておきたい」、その通りなのかも知れない。 財新編集部 「不動産ガリバーが陥った「理財商品」の闇 中国「恒大集団デフォルト危機」驚異の全内幕」 「理財商品(資産運用商品)の償還を延期」、「投資家」が「大混乱の渦に巻き込まれる」のはやむを得ない。 「恒大集団」の「投資家」への説明が不十分だからだろう。 「恒大集団の20万人の社員は、日常業務の一環として恒大財富で一定額の理財商品を購入している。また社員たちは恒大集団の取引先と不動産オーナーたちにもこの理財商品を購入するように勧めていたほか、親戚や友人たちにも販売してきた」、「社員」たちは自分の利害だけでなく、「取引先と不動産オーナーたち」や「親戚や友人たち」にも売った責任を感じているようだ。 「中信信託を含む中信銀行」が「恒大集団」に「オフバランスシート(簿外取引)方式の融資」したり、「資金調達用の理財商品」を発行させていたとは、銀行もグルのようだ。 「資金難が深刻化した後、恒大集団は現職幹部の「超收宝」の元金返済を優先した。ある投資家が財新に提示した証拠によれば、2021年8月末~9月初旬までの間、恒大集団は様々な請負事業者の口座を通じて現職の社員に「超收宝」の元金17億元(約290億円)分を前倒しで償還している」、債権者に平等に返済するのでなく、関係者に優先して返済するとは飛んでもない不法行為だ。 「会社側は依然として「危機を乗り切る」と主張 中国「恒大集団危機」取引先8000社に走る激震」 「100億元(約1700億円)を超える資金を各地の請負業者に輸血」、「輸血」とは資金を提供した意味のようだが、本来、払うべき債務を履行してないのに、どういうことなのだろうか。 「ゼネコンの江蘇南通三建集団はすでに大部分の作業を完了させ、5億元(約85億円)の資金を立て替えたが、恒大集団の支払い済み金額は2.9億元(約50億円)にも達していない。さらにそのうち、現金で支払われたのはわずか8%だという。 残りの金額はすべて商業引受為替手形・・・によって決済されており、満期になっても償還されていない商業手形の規模は1.2億元(約20億円)」、「施工再開さえすれば、土地開発によって住宅の買い戻し資金を賄うことが可能で、そうすれば恒大集団はすべての債務を返済し、元の状態に戻ることができる
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