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百貨店業界(その4)(店舗の大幅なダウンサイジングが現実味 アパレル大量退店が招く百貨店の「空洞化」、コロナ禍のデパート業界で三越伊勢丹の赤字額がいちばん大きい理由、凋落する百貨店業界を再生する鍵は、パルコ事業にありの意味とは?) [産業動向]

百貨店業界については、昨年1月21日に取上げた。今日は、(その4)(店舗の大幅なダウンサイジングが現実味 アパレル大量退店が招く百貨店の「空洞化」、コロナ禍のデパート業界で三越伊勢丹の赤字額がいちばん大きい理由、凋落する百貨店業界を再生する鍵は、パルコ事業にありの意味とは?)である。なお、タイトルから「小売業」は削除。

先ずは、3月16日付け東洋経済Plus「店舗の大幅なダウンサイジングが現実味 アパレル大量退店が招く百貨店の「空洞化」」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/26461#contd
・『百貨店業界の苦境はコロナ禍が追い打ちとなって加速した。事業モデルの変革なくして生き残りの道はもはやない。 新型コロナウイルスの感染拡大が、苦境続きの百貨店の経営を大きく揺さぶっている。外出自粛や在宅勤務の普及などの影響で主力の衣料品販売は極度の不振に陥り、これまで二人三脚で成長してきたアパレルメーカーは百貨店からの撤退を急加速。とくに地方都市にある百貨店で大量退店が深刻だ。 「衣料品は以前から苦しかったが、コロナでとどめを刺された」。百貨店大手のJ.フロント リテイリング傘下にある高知大丸(高知市)の営業担当者は、業況の急激な悪化を嘆く。高知県唯一の百貨店である同店では2020年7~8月、婦人服と紳士服の合計31ブランドが一気に退店した。撤退分の売り場面積は計1200平方メートルで、同店全体の1割弱にも及ぶ。 退店したのは、オンワードホールディングスやレナウン(2020年5月に経営破綻)などアパレル大手が展開するブランドだ。従来は退店があれば別のアパレルブランドで埋めてきたが、「新規出店できるほどの余力を持つブランドがもはやない」(同社担当者)。リビング雑貨の売り場を拡充するなどして補うが、いまだ空きスペースを解消しきれていない』、「同店全体の1割弱」であれば、「リビング雑貨の売り場を拡充」程度ではとうてい足りず、「空きスペース」解消にはさらなる努力が必要なのだろう。
・『アパレルの本音は「退店させてくれてありがとう」  フロアが丸ごと空いていた東館2階は2021年2月にようやく埋まった。誘致したのは、アパレルブランドの余剰在庫を買い取って70%割引などで販売するオフプライスストア。高級感が売りだった百貨店のイメージを傷つけかねないが、背に腹は代えられないというわけだ。しかも、その店舗も3カ月の期間限定で、その後の展開は未定という。 2020年における百貨店全体での衣料品販売は前年比で3割超減少した。百貨店向けのブランドを複数展開するオンワードや三陽商会などの総合アパレルメーカー大手4社は、2020年度に多額の赤字を計上する見込み。構造改革の一環として同年度内に合計1400店程度(ショッピングセンターなどの店舗含む)を閉鎖する。その多くは地方百貨店に入る店舗だ。 日本の百貨店では、売り上げたときに商品を仕入れ計上する「消化仕入れ(売り上げ仕入れ)」と呼ばれる独特の取引形態が主流だ。百貨店側は在庫リスクを負わず、多様な商品を店頭に並べられる。アパレルメーカーは在庫リスクを負いつつ店員の派遣など販売現場の主な業務を担うが、好立地の売り場を提供してもらえる。両者ではこのような「持ちつ持たれつ」の関係が続いてきた。 百貨店との付き合いで不採算の地方店にも出店していたアパレル大手にとって、コロナ禍は撤退の口実になった面もある。あるアパレルメーカー首脳は「『百貨店の中に店を残していただいてありがとう』というブランドなんてない。『退店させてくれてありがとう』という気持ちだ」と打ち明ける。 取引条件の変更を提案するなどして百貨店側は引き止めに躍起だが、そもそも消費者が服を買わない状況では焼け石に水だ』、「高知大丸」の空スペースに「オフプライスストア」を「3カ月の期間限定」とはいえ、入れたのは、「高級感が売りだった百貨店のイメージを傷つけかねない」、典型的な悪手だ、「アパレルの本音は「退店させてくれてありがとう」」、百貨店の地位も低下したものだ。
・『常設店を入れるのが難しい  閉鎖を免れたアパレル店舗も状況は悪化するばかりだ。アパレル大手は現在、収益改善のために品番数や生産数量を大幅に絞っている。商品の数が限られるため、地方百貨店の店舗には売れ筋を中心に商品が十分に回ってこない。それが店の魅力を低下させて、一層の客離れを引き起こす悪循環に陥っている。 北陸地方で2店舗を展開する百貨店の大和では、2020年度に主力の香林坊店(金沢市)でレナウンとオンワード、三陽商会が展開する約10ブランドが撤退した。レナウンのブランドが撤退した跡地には、地元の繊維メーカーによる紳士服ブランドの常設店を導入。アパレル大手に頼らない売り場作りへの転換を目指す。 だが、それですべての“空きスペース”を解消できるわけではない。期間限定の店舗を新たな取引先に出店してもらい、しのいでいるのが実情だ。別の地方百貨店でも事情は同じで、ある百貨店幹部は次のように打ち明ける。「期間限定店で埋めるのが精いっぱい。コロナもあって常設店舗を入れるのはなかなか難しい。期間が終了すれば次の期間限定店を入れてと、いたちごっこだ」』、新たな「店舗」を自転車操業的に次々に入れていくというのも、非効率極まりない。
・『アパレルに甘えてきたツケが回ってきた  婦人服売り場が2~3フロアを占めるような状況に対し、百貨店業界内では長らく、売り場面積の過剰感が指摘されてきた。にもかかわらず、衣料品がずっと稼ぎ頭だった成功体験から脱せずに、売り場の転換に時間がかかっている。 別の地方百貨店幹部は「過去20年間で衣料品の売り上げは半分近く減ったのに、売り場面積はあまり変わっていない。遅ればせながら、売り場のバランス変更を考えないといけない」と言う。 大都市にある百貨店も例外ではない。国内最大の売上高を誇る伊勢丹新宿本店(東京都)では2019年に婦人服売り場を集約、インバウンド消費が好調だった化粧品を1フロアから2フロアに拡大するなどのテコ入れを図った。 電鉄系の近鉄百貨店も、あべのハルカス本店(大阪市)の婦人服売り場再編に向けて動き出した。社内にプロジェクトチームを立ち上げ、現在3フロアにまたがる婦人服売り場を縮小し、複数の商品カテゴリーをミックスしたフロアに作り替えることを検討している。 ただ、こうした大幅改装ができるのは多額の投資に耐えられる大手百貨店や一部の地方百貨店に限られる。業界首位の三越伊勢丹ホールディングス(HD)でさえも、首都圏以外の店舗での売り場バランスの修正はほとんど手付かずだ。 「デパ地下」と呼ばれ集客力のある食料品に注力するのも悩ましい。食料品の粗利益率は各社ともに10~20%と、衣料品の20~30%より低いのが一般的。衣料品に代わって食料品を強化すればするほど、商品ミックスが悪化して全体の利益率を押し下げるというジレンマを抱えている。 百貨店大手3社の売り上げの商品別構成比を見ると、現在も衣料品の売り上げが大きなシェアを占める。コロナ前まで成長著しかった化粧品は、インバウンド需要が蒸発し、国内需要も外出自粛の長期化で先行きが見通せない。「衣料品に代わる収益源を見出せているのかというと、正直ない。アパレルに甘えてきたツケが回ってきている」(大手百貨店関係者)』、「食料品の粗利益率は各社ともに10~20%と、衣料品の20~30%より低いのが一般的。衣料品に代わって食料品を強化すればするほど、商品ミックスが悪化して全体の利益率を押し下げるというジレンマを抱えている」、「食料品」を買うついでに「衣料品」などもとの間接的な効果もありそうだ。
・『地方百貨店がすがる「テナント化」  そこで地方百貨店がすがるのが、大型専門店などのテナントだ。定期借家契約(定借)を結び、百貨店は固定賃料と売上歩合の賃料を受け取る。先行するのはJ.フロント リテイリング。大丸下関店(山口県)にはニトリや東急ハンズ系列の雑貨店が入居した。 J.フロントの好本達也社長は「百貨店部分を減らし、テナントを増やしていくしか、地方百貨店が生き残る道はない」と断言する。そごう・西武も家賃収入を主体とするビジネスモデルへの転換を急ぐ。 利益が売り上げに連動する消化仕入れは、市場の右肩上がりが前提のビジネスモデルだ。それに比べて、定借は百貨店側の実入りが減る可能性もあるが、テナントから固定賃料をもらうため、収益は安定する。従来になかった客層を店内に呼び込め、百貨店売り場への波及効果も期待できる。 ただ、そうしたテナント導入の動きを超えるスピードで進むのがアパレルの大量退店だ。西武百貨店出身で百貨店マーケティングに詳しい青山学院大学の宮副謙司教授は、「一部の地方店では、大型テナントを入れてもフロアが余る状況が顕著になっている」と指摘する。 そうなると、店舗規模を現状のまま維持できず、ダウンサイジングするしかない。宮副教授は、大手各社の旗艦店舗を除き、2030年の百貨店は現在の標準的な店舗面積と比べると半分以下になると予測する。 実際、三越伊勢丹HDでは一部の地方店のフロア数を絞り込み、中小型店として衣替えさせる戦略を練る。松山三越(松山市)では9フロアあった百貨店の売り場を3フロアに圧縮し、空いたフロアには高級ホテルやエステサロンなど新しいタイプのテナントを誘致する計画だ。 その戦略にはデベロッパー能力が求められるが、「地方にある地場資本の百貨店だと、大手と比べて抱えている人材の力が劣り、自前でできることは限られる」(宮副教授)。ダウンサイジングに動く百貨店の間でも体力格差がさらに顕在化する可能性が高い。 2020年1月に山形市の大沼、同8月に徳島市のそごう徳島店が閉店し、百貨店が1つもない「空白県」が生まれた。現在、百貨店が1店舗しかない県は17ある。百貨店があるのは東京や大阪など人口100万人以上の大都市だけという未来が訪れてもおかしくはない。人口減少が加速する中、いかに変革を進めて百貨店の新たな形を見出せるかが問われている』、「百貨店が1店舗しかない県は17ある」、徳島県に次いで「空白県」となる候補は多いようだ。

次に、6月8日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した公認会計士、税理士、LEC会計大学院教授、元明治大学会計大学院特任教授の林 總氏による「コロナ禍のデパート業界で三越伊勢丹の赤字額がいちばん大きい理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/273272
・『38万部超のベストセラー『餃子屋と高級フレンチ』シリーズでおなじみの著者・林總氏の最新刊『たった10日で決算書がプロ並みに読めるようになる! 会計の教室』がダイヤモンド社から発売。本連載では、同書の中から抜粋して決算書を読み解くために必要な基本の知識をお伝えしてきました。今回も特別編として書下ろしの記事を掲載します。登場人物は、これまでと同じく林教授と川村カノンの2人。注目企業の決算書はどうなっているのか? 注目企業の会計のカラクリなどについて解き明かしていきます。しばしお付き合いください。好評連載のバックナンバーはこちらからどうぞ!』、興味深そうだ。
・『コロナ禍で三越伊勢丹の苦境の原因は?  カノン 三越伊勢丹の業績が悪かった理由を考えたのですけど、もしかして店舗の場所が良すぎるからではないかな、と思いました。 林教授 場所が良すぎるね? で、その理由は。 カノン だって、もともと三越の本店は日本橋で伊勢丹は新宿ですよね。三越は銀座のど真ん中にも店舗があります。どちらも超一流の繁華街です。今回の緊急事態宣言で最も影響が大きかったのは、なんといっても東京です。だから、売上高が激減して赤字が多かったと考えました。 林教授 合格点を60点とすると、その答えは59点だね。 カノン あと1点か。 林教授 その1点が大切なんだよ。考えて欲しいのは、これらの企業グループは百貨店業だけを営んでいるわけではない、ということだ。他に、不動産業や金融業も行っている。もちろん一番規模が起きいのは百貨店業だけど。 カノン そうなんですね。 林教授 今回の緊急事態宣言で一番影響を受けたのは百貨店業だった。中でも三越伊勢丹は長年、百貨店業に力を入れてきたから、売上高に占める割合が大きい。そこにコロナ禍の直撃をくらったわけだ』、なるほど。
・『衣料品と食料品の比率の違いが、赤字額に反映  カノン 衣料品売り場は閉まってましたけど、食品売り場は開いていましたよね。 林教授 三越伊勢丹はね。緊急事態宣言の規制対象は「生活必需品」だった。 日経新聞は、三越伊勢丹の苦境の原因を次のように報道している。 「生活必需品ではない」として休業する衣料品売り場や、営業規制がかかる東京都心の店舗の売上比率が大きいからだ。今回の休業による売り上げの機会損失は290億円に達する。2021年5月13日電子版 機会損失は、もし店を閉めなければもたらされたであろう利益のことだ。 カノン ものすごい損失ですね。ちょっと気になるのですけど、三越伊勢丹は衣料品を「生活必需品ではない」と考えているんですね。 林教授 この判断が会社の業績に大きく影響したんだ。この点は後で話そう。ここで三越伊勢丹と高島屋とJ.フロントリテーリングの事業損益を比較してみよう。3社の業績について、君の感想を聞かせてもらいたいね。 カノン 百貨店業の割合と赤字の大きさですね。赤字の一番大きい三越伊勢丹の百貨店業の割合が92%で、高島屋は84%、J.フロントは61%です。つまり百貨店業の割合が大きい会社ほど業績が悪かったということですか。 林教授 そうだね。ついでに百貨店業の売上高に対する赤字の割合を計算してごらん。 カノン 三越伊勢丹が4%、高島屋が3.7%、Jフロントは1%です。なぜこんなに大きな差が出たのでしょうか。 林教授 理由として考えられるのは、百貨店業における食料品と衣料品の売上高の割合だ。三越伊勢丹は衣料品31%、食料品26%。高島屋は衣料品25%に対して食料品は34%だった。 カノン だから休業要請(4月25日~5月31日)によって、衣料品に力を入れてきた三越伊勢丹の売上げが大きく減ったんですね』、「休業要請・・・によって、衣料品に力を入れてきた三越伊勢丹の売上げが大きく減った」、なるほど。
・『三越伊勢丹の業績は、損益計算書の赤字額以上に傷が深い  林教授 いい答えだ。実はもう一つ理由があった。高島屋は早々と衣料品を売り始めんだ。 カノン ほんとですか? 林教授 日経新聞は、こう書いている。「(三越伊勢丹は)業績を左右する衣料品売り場の再開について「人流の抑制を踏まえると(衣料品の)シェアが高いからこそ再開しなかった」(竹内徹副社長)という。衣料品も生活必需品に含まれるとして営業を再開した高島屋とは異なる動きをみせている」 カノン つまり、衣料品が生活必需品かどうかの解釈ですね。 林教授 食料品の販売に力を入れ、衣料品を生活必需品とした高島屋と、衣料品を生活必需品から除外した三越伊勢丹。この両社の経営判断が業績に大きく影響したわけだ。 カノン 経営判断って難しいですね。 林教授 実は、三越伊勢丹の業績は損益計算書の赤字金額以上に傷が深いんだよ。キャッシュフロー計算書をみてごらん。 カノン 営業キャッシュフローが全然違いますね! 三越伊勢丹はたったの12億円ですものね。それから高島屋とJフロントは200億円以上の投資をしているのに、三越伊勢丹は47億円だけ。投資は将来の営業キャッシュフローに影響しますから、三越伊勢丹の来季以降の決算に不安がありますね。 林教授 いい答えだ。『会計の教室』をよく読んでいるね。ここでキャッシュフロー計算書の見方をおさらいしておこう。営業CFはその期間の儲けだ。つまり、1年間商売して増やした現金の大きさのことだ。投資CFの多寡は、次期以降の営業CFに大きく影響する。となると、君が指摘したように2021年度の業績も高島屋に軍配が上がりそうだね。 カノン でも私、新宿の伊勢丹が大好きだから頑張ってもらいたいな。 林教授 ボクは日本橋の三越と高島屋も高級感が好きだね。どちらの百貨店も知恵を絞って、コロナ禍なんか吹き飛ばしてもらいたいものだ。 カノン 質問していいでしょうか。Jフロントの赤字が少ないのとパルコ事業が気になっています。 林教授 いい点に気づいたね。ボクはJフロントのパルコ事業が百貨店業再生の鍵ではないか、と考えているんだ。次回は、この点について説明しよう。 カノン 面白くなってきました』、「(三越伊勢丹は)業績を左右する衣料品売り場の再開について「人流の抑制を踏まえると(衣料品の)シェアが高いからこそ再開しなかった」」、自社の業績よりも「人流の抑制」という国民的な視点を重視したことになるが、こんなキレイごとで経営しているとは、信じ難い。続きをみてみよう。

第三に、この続きを、6月8日付けダイヤモンド・オンライン「凋落する百貨店業界を再生する鍵は、パルコ事業にありの意味とは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/273891
・『38万部超のベストセラー『餃子屋と高級フレンチ』シリーズでおなじみの著者・林總氏の最新刊『たった10日で決算書がプロ並みに読めるようになる! 会計の教室』がダイヤモンド社から発売。本連載では、同書の中から抜粋して決算書を読み解くために必要な基本の知識をお伝えしてきました。今回も特別編として書下ろしの記事を掲載します。登場人物は、これまでと同じく林教授と川村カノンの2人。注目企業の決算書はどうなっているのか? 注目企業の会計のカラクリなどについて解き明かしていきます。しばしお付き合いください』、興味深そうだ
・『アクルーアルとは、税引前当期利益から営業CFを引いた金額  カノン 前回先生は三越伊勢丹は他の二社と比べて業績が芳しくなく、このままでは将来も苦戦するようなことをおっしゃったと思いますが、その理由は何でしょうか? 林教授 第一に営業キャッシュフローが少なく、特にアクルーアルが極端に少ないからだ。ここでアクルーアルとは当期利益から営業CFを引いた金額のことだ。言い換えれば、PLの当期利益と儲けの差の(注:「の」不要?)で、マイナスが大きいほど儲けが利益より大きいことを意味する。次の表は、キャッシュフロー計算書にアルーアルを加えたものだ。詳しくは『会計の教室』で勉強しておきなさい。 カノン この表ですけど、三越伊勢丹と高島屋の税引前当期利益は、ほとんど変わりませんね。 林教授 数字だけ見ればね。だが、三越伊勢丹の税引前当期利益には(株)三越伊勢丹不動産の株式売却益が含まれているんだ。どうやら2020年度は大規模なリストラをしたようだ。 2020年度は、三越恵比寿店、イセタンハウス、バンコク伊勢丹など収益力に課題のあった店舗の営業終了、株式会社三越伊勢丹研究所の事業終了、株式会社三越伊勢丹不動産の株式譲渡など、経営資源の再配分、事業ポートフォリオの組み替えを進めてまいりました。(決算短信より) カノン Jフロントリテーリングとのアクルーアルの差額は、もっと大きいですね。 林教授 それは、Jフロントリテーリングが積極的に投資を進めてきたからだ。投資が増えれば減価償却費も増える。 カノン だから減価償却費が三越伊勢丹より220億円も多いんだ』、「2020年度」の「三越伊勢丹」は益出しをして「税引前当期利益」を取り繕ったようだ。
・『同じ商品がどこの百貨店でも買えるようになり、個性がなくなった  カノン 本題に戻って、前回先生がパルコ事業が百貨店再生の鍵とおっしゃられた理由は何でしょうか? 林教授 言うまでもなく三越伊勢丹や高島屋がパルコと同じ商売を始めるというわけではない。おそらく、パルコの進化版を目指しているのではないかな。 カノン パルコって、いろんなテナントが入っているビルですよね。 林教授 そうだね。ところで君は自分の店を持ちたいと思ったことがあるかな? カノン スイスやオーストリアの小さな街で見かける可愛らしい雑貨店なんか憧れます。 林教授 確かにヨーロッパにはセンスのいい店がたくさんあるね。君がそんな素敵な店を持ちたい気持ちはわかる。だが、いざ出店しようとした場合、やはり躊躇するよね。何百万、何千万円もの借金をして開業しても、客が期待どうりに来てくれるかはわからない。仮に客が来てくれても、君が売りたい商品を買ってくれるかは別問題だ。 カノン そこが悩ましいところでしょうね。 林教授 パルコの出番はここにある。ホームページにはこう書かれている。 「パルコのビジネスモデルの特徴と優位性として、安定的な収益構造、商業施設のトータルプロデュース力、豊富なノウハウを活かした店舗開発力、建築・内装デザインのディレクション力と折衝力、テナントリーシング力とインキュベーション力、商業の付加価値としてのソフトコンテンツプロデュース力などがあります」 カノン なるほどね。出店する際にプロデュースしてくれるのですか。確かにテナントのリスクは減りますね。しかも、パルコは場所とアイデアで商売するのだから在庫もいらないし、店員もいらない。そして、場所貸しより高い収益を得ることができる。 林教授 これまでの百貨店はどうだったか。ボクが若い頃は、百貨店に行けば、なんでも手に入った。これは魅力だったね。ところが、客が欲しいものは、裏を返せば百貨店が売りたいものでもある。その結果、同じ商品がどこの百貨店でも買えるようになった。 カノン 個性がなくなったんですね。ちょっと残念です。 林教授 昔はフランスのルイヴィトの店でバッグを買い求める女性が大勢押し寄せたものだ。香港に行けばティファニーのアクセサリーが安く買えた。 カノン そうだったんですか。今は、三越伊勢丹でも、高島屋でも、大丸でも同じ価格で買えます。 林教授 どこの百貨店でも同じ商品が同じ価格で販売されるのだから、百貨店の個性はなくなって利益率は下がる。専門店が至る所に店を出す。ところが、百貨店は店自体を維持するのに膨大な固定費がかかる。これじゃあ売上は減るから商売は続かない。とりわけ、百貨店の販売金額の割合が大きい衣料品は、その物流と売れ残りのリスクが大きい。つまり、買取では儲からない商品なんだ。そこで、いろんな方法を考え出した。 カノン それが「消化仕入れ」ですね。売れた分だけ仕入たことにして、商品在庫の責任を追わなければ、物流のコストも在庫リスクもなくなります 林教授 それでも人件費はかかる』、「パルコのビジネスモデルの特徴と優位性として、安定的な収益構造、商業施設のトータルプロデュース力、豊富なノウハウを活かした店舗開発力、建築・内装デザインのディレクション力と折衝力、テナントリーシング力とインキュベーション力、商業の付加価値としてのソフトコンテンツプロデュース力などがあります」、確かに当たっているような気もする。
・『人が集まるのに大切なのは、ハードではなくソフト  カノン いっそのこと、場所を貸すだけにしたらいいですよね。 林教授 その通り。百貨店は次第に小売業から場所貸しの不動産業に変容してきたんだ。だか、これでは重要な問題の解決にならない。ただ場所を貸すだけでは、しかも百貨店側は高い賃料は取れないし、テナントにリスクが偏ってしまう。 カノン そうか。百貨店とそこで商売をするテナントがどちらも儲かるウィン・ウィンでなければならないんですね。 林教授 その空間に出向くことで、未知の体験ができ、生活に潤いを与えてくれる商品が手に入る。百貨店も、テナントも、顧客も満足する。これこそが百貨店のあるべき姿だと思うね。 カノン よくわかります。 林教授 三越伊勢丹は、この点を意識した大規模な計画を始めているんだ。 カノン 2020年に実施したリストラは今後の準備だったんですね。そうだとしても、営業キャッシュフローが少なすぎますよね。これで大丈夫ですか? 林教授 君は過去にこだわりすぎだね。決算数値や直近のキャッシュフローは、過去の意思決定の結果にすぎないんだ。ダメな経営者は、過去の間違い言い訳を考えようとする。失敗は将来のヒントだ。有能な経営者は違う。 カノン なんだか、私の成績のことを言われているみたいです。いつも言い訳ばかり考えていました。 林教授 成績の良し悪しは、過去の努力不足ではなく、方針が誤っていたからだ。経営者は常に将来の姿を思い浮かべなくてはならない。そして、良い結果を出すには何をすべきかを考え抜き、それを実行することが大切なんだ。 カノン すごくエネルギーを使いそう。でも、この点に全精力を使わないと競争に負けてしまいますね。経営って厳しいんだ。 林教授 三越伊勢丹は、こんな方針を打ち出した。 基幹店の伊勢丹新宿本店(東京・新宿)と三越日本橋本店(同・中央)の再開発に着手する意向を表明した。いずれも店舗周辺で保有する不動産を含めた一体開発を視野に入れる。東京を代表する2つの商業施設を核とする街づくりが動き出す……「単純に百貨店のリモデル(改装)で終わらせず、上手にエリアを街にしたい」と話した。百貨店を中心にオフィスビルやホテル、住居などを配置し、回遊性を持たせた再開発を目指す考えだ。(6月7日付日本経済新聞) カノン 街全体を作り替えるんですね。今までは、インバウンド任せの経営だったのに。 林教授 日本中からこの二つのエリアを目指して人が集まる。大切なのは、ハードではなくソフトなんだ。入れ物だけ立派にしてもソフトがなければ、いずれ廃れてしまう。客は新たな刺激と満足を求めている。人間が生み出すアイデアがこのプロジェクトの鍵となるだろうね。 カノン 頭のいい人は発想が違いますね。 林教授 今回のコロナ禍がなければこの決断はできなかったかもしれない。 カノン 会計を勉強することで、決算書と新聞記事からいろんなことが見えてくるんだわ。突然ですけど、先生は三越伊勢丹の株は買いだと思いますか。 林教授 君からそんな質問が来るとは思わなかったね。すでに三越伊勢丹の株価は上昇している。長期的に見た場合、このプロジェクトが進めば、株価は上がるだろうね。陳腐な言い方になるけど、株式投資は自己責任だ。君が決算書と記事を咀嚼して判断すべきことだ』、「三越伊勢丹」が「「単純に百貨店のリモデル(改装)で終わらせず、上手にエリアを街にしたい」と話した。百貨店を中心にオフィスビルやホテル、住居などを配置し、回遊性を持たせた再開発を目指す考えだ」、意欲的な計画だ。
・『人が集まるのに大切なのは、ハードではなくソフト  カノン いっそのこと、場所を貸すだけにしたらいいですよね。 林教授 その通り。百貨店は次第に小売業から場所貸しの不動産業に変容してきたんだ。だか、これでは重要な問題の解決にならない。ただ場所を貸すだけでは、しかも百貨店側は高い賃料は取れないし、テナントにリスクが偏ってしまう。 カノン そうか。百貨店とそこで商売をするテナントがどちらも儲かるウィン・ウィンでなければならないんですね。 林教授 その空間に出向くことで、未知の体験ができ、生活に潤いを与えてくれる商品が手に入る。百貨店も、テナントも、顧客も満足する。これこそが百貨店のあるべき姿だと思うね。 カノン よくわかります。 林教授 三越伊勢丹は、この点を意識した大規模な計画を始めているんだ。 カノン 2020年に実施したリストラは今後の準備だったんですね。そうだとしても、営業キャッシュフローが少なすぎますよね。これで大丈夫ですか? 林教授 君は過去にこだわりすぎだね。決算数値や直近のキャッシュフローは、過去の意思決定の結果にすぎないんだ。ダメな経営者は、過去の間違い言い訳を考えようとする。失敗は将来のヒントだ。有能な経営者は違う。 カノン なんだか、私の成績のことを言われているみたいです。いつも言い訳ばかり考えていました。 林教授 成績の良し悪しは、過去の努力不足ではなく、方針が誤っていたからだ。経営者は常に将来の姿を思い浮かべなくてはならない。そして、良い結果を出すには何をすべきかを考え抜き、それを実行することが大切なんだ。 カノン すごくエネルギーを使いそう。でも、この点に全精力を使わないと競争に負けてしまいますね。経営って厳しいんだ。 林教授 三越伊勢丹は、こんな方針を打ち出した。 基幹店の伊勢丹新宿本店(東京・新宿)と三越日本橋本店(同・中央)の再開発に着手する意向を表明した。いずれも店舗周辺で保有する不動産を含めた一体開発を視野に入れる。東京を代表する2つの商業施設を核とする街づくりが動き出す……「単純に百貨店のリモデル(改装)で終わらせず、上手にエリアを街にしたい」と話した。百貨店を中心にオフィスビルやホテル、住居などを配置し、回遊性を持たせた再開発を目指す考えだ。(6月7日付日本経済新聞) カノン 街全体を作り替えるんですね。今までは、インバウンド任せの経営だったのに。 林教授 日本中からこの二つのエリアを目指して人が集まる。大切なのは、ハードではなくソフトなんだ。入れ物だけ立派にしてもソフトがなければ、いずれ廃れてしまう。客は新たな刺激と満足を求めている。人間が生み出すアイデアがこのプロジェクトの鍵となるだろうね。 カノン 頭のいい人は発想が違いますね。 林教授 今回のコロナ禍がなければこの決断はできなかったかもしれない。 カノン 会計を勉強することで、決算書と新聞記事からいろんなことが見えてくるんだわ。突然ですけど、先生は三越伊勢丹の株は買いだと思いますか。 林教授 君からそんな質問が来るとは思わなかったね。すでに三越伊勢丹の株価は上昇している。長期的に見た場合、このプロジェクトが進めば、株価は上がるだろうね。陳腐な言い方になるけど、株式投資は自己責任だ。君が決算書と記事を咀嚼して判断すべきことだ。 カノン そうですよね。次回のレクチャーを楽しみにしています。カノン そうですよね。次回のレクチャーを楽しみにしています』、「日本中からこの二つのエリア(伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店)を目指して人が集まる。大切なのは、ハードではなくソフトなんだ。入れ物だけ立派にしてもソフトがなければ、いずれ廃れてしまう。客は新たな刺激と満足を求めている。人間が生み出すアイデアがこのプロジェクトの鍵となる」、「新たな刺激と満足」させてくれる再開発とは楽しみだ。
タグ:「高知大丸」の空スペースに「オフプライスストア」を「3カ月の期間限定」とはいえ、入れたのは、「高級感が売りだった百貨店のイメージを傷つけかねない」、典型的な悪手だ、「アパレルの本音は「退店させてくれてありがとう」」、百貨店の地位も低下したものだ。 東洋経済Plus 「店舗の大幅なダウンサイジングが現実味 アパレル大量退店が招く百貨店の「空洞化」」 百貨店業界 「食料品の粗利益率は各社ともに10~20%と、衣料品の20~30%より低いのが一般的。衣料品に代わって食料品を強化すればするほど、商品ミックスが悪化して全体の利益率を押し下げるというジレンマを抱えている」、「食料品」を買うついでに「衣料品」などもとの間接的な効果もありそうだ。 ダイヤモンド・オンライン 新たな「店舗」を自転車操業的に次々に入れていくというのも、非効率極まりない。 「同店全体の1割弱」であれば、「リビング雑貨の売り場を拡充」程度ではとうてい足りず、「空きスペース」解消にはさらなる努力が必要なのだろう。 (その4)(店舗の大幅なダウンサイジングが現実味 アパレル大量退店が招く百貨店の「空洞化」、コロナ禍のデパート業界で三越伊勢丹の赤字額がいちばん大きい理由、凋落する百貨店業界を再生する鍵は、パルコ事業にありの意味とは?) 「百貨店が1店舗しかない県は17ある」、徳島県に次いで「空白県」となる候補は多いようだ。 「凋落する百貨店業界を再生する鍵は、パルコ事業にありの意味とは?」 「2020年度」の「三越伊勢丹」は益出しをして「税引前当期利益」を取り繕ったようだ。 「休業要請・・・によって、衣料品に力を入れてきた三越伊勢丹の売上げが大きく減った」、なるほど。 「コロナ禍のデパート業界で三越伊勢丹の赤字額がいちばん大きい理由」 「三越伊勢丹」が「「単純に百貨店のリモデル(改装)で終わらせず、上手にエリアを街にしたい」と話した。百貨店を中心にオフィスビルやホテル、住居などを配置し、回遊性を持たせた再開発を目指す考えだ」、意欲的な計画だ。 林 總 「(三越伊勢丹は)業績を左右する衣料品売り場の再開について「人流の抑制を踏まえると(衣料品の)シェアが高いからこそ再開しなかった」」、自社の業績よりも「人流の抑制」という国民的な視点を重視したことになるが、こんなキレイごとで経営しているとは、信じ難い。続きをみてみよう。 「パルコのビジネスモデルの特徴と優位性として、安定的な収益構造、商業施設のトータルプロデュース力、豊富なノウハウを活かした店舗開発力、建築・内装デザインのディレクション力と折衝力、テナントリーシング力とインキュベーション力、商業の付加価値としてのソフトコンテンツプロデュース力などがあります」、確かに当たっているような気もする。 「日本中からこの二つのエリア(伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店)を目指して人が集まる。大切なのは、ハードではなくソフトなんだ。入れ物だけ立派にしてもソフトがなければ、いずれ廃れてしまう。客は新たな刺激と満足を求めている。人間が生み出すアイデアがこのプロジェクトの鍵となる」、「新たな刺激と満足」させてくれる再開発とは楽しみだ。
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