コンビニ(その10)(ローソン 虎の子「成城石井」を上場検討の懐事情 成長資金確保で狙う「コンビニ3位」からの脱却、セブンイレブンで「客数10%減」の衝撃…! コンビニ「最強」から一転 いま起きている“意外すぎる現実”…!、セブンイレブンに「異変」あり…! “1億総コンビニ時代”の終焉で「コンビニから消えた人」の正体と 「コンビニ格差社会」の“意外すぎる現実”…!) [産業動向]
コンビニについては、昨年8月28日に取上げた。今日は、(その10)(ローソン 虎の子「成城石井」を上場検討の懐事情 成長資金確保で狙う「コンビニ3位」からの脱却、セブンイレブンで「客数10%減」の衝撃…! コンビニ「最強」から一転 いま起きている“意外すぎる現実”…!、セブンイレブンに「異変」あり…! “1億総コンビニ時代”の終焉で「コンビニから消えた人」の正体と 「コンビニ格差社会」の“意外すぎる現実”…!)である。
先ずは、本年5月17日付け東洋経済オンライン「ローソン、虎の子「成城石井」を上場検討の懐事情 成長資金確保で狙う「コンビニ3位」からの脱却」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/589235
・『ローソンの営業利益の4分の1を稼ぎ出す、優良子会社の成城石井。あえて今、持ち株を一部手放すのはなぜなのか。 「2000億円でも安いと個人的には考えている」。ローソンの唐沢裕之・経営戦略本部長はそう語った。 ローソンが、完全子会社の高級スーパー・成城石井の上場を検討している。一部報道によれば、上場時の時価総額は2000億円を上回る可能性がある。食品スーパー大手のライフコーポレーションでさえ、時価総額は1390億円(5月16日終値換算)。実現すれば、国内のスーパーとしては破格の規模となる。ローソンの持ち株比率をどの程度まで下げるかについても検討中という。 ローソンは2014年に総額約550億円を投じ、三菱商事系の投資ファンドである丸の内キャピタルから成城石井の全株式を取得した。その後も順調に成長を続け、関東を中心に展開する店舗数は現在、買収時の約1.7倍に当たる200店超に達する。 業績も拡大している。買収直後の2016年2月期に690億円だった営業総収入は、前2022年2月期に約1.6倍の1092億円、同じく58億円だった営業利益は約2倍の120億円に成長。直近まで4期連続の増益を達成している。 営業利益率約11%と食品スーパーでは異例の高収益体質を誇り、ローソンの直近の連結営業利益の4分の1を稼ぎ出す。今後も成長が見込める“虎の子”の持ち分を、このタイミングで一部売却する狙いは何なのか』、「2014年に総額約550億円を投じ、三菱商事系の投資ファンドである丸の内キャピタルから成城石井の全株式を取得」、「営業利益率約11%と食品スーパーでは異例の高収益体質を誇り、ローソンの直近の連結営業利益の4分の1を稼ぎ出す」、「このタイミングで一部売却する狙いは何なのか」、興味深そうだ。
・『競合も一目を置くSPAモデル 成城石井の強さの源泉は、自社のセントラルキッチンで総菜などを製造・開発するSPA(製造小売業)型のビジネスモデルだ。 飲食店で食べるような高品質の料理を自宅で楽しむことができるなど、他社では買えない独自の商品を強みにしている。外食が制限されたコロナ禍においても、調理済みの食品を家庭内で食べる中食需要をうまく取り込んだ。 成城石井は現在2カ所の総菜調理センターを関東に持つ。店舗数の拡大に伴って総菜調理のキャパシティーも限界に近づいており、今夏には3カ所目のセンターが稼働予定。最終的には総菜の生産能力を現状の2倍以上に増強するという。 【2022年5月17日12時01分追記】初出時の表記を上記のように修正いたします。 自社の製造拠点を軸に培った商品力や開発力を武器に、高級スーパーとしてのブランドを確立。競合スーパーの関係者も「成城石井のブランド認知度は非常に高い」と一目を置く) 上場を実現させたとしても、ローソンは成城石井株を相当数保有し続ける方針ではある。商品の共同開発など事業面での協業も継続するという。 上場の狙いについて、成城石井の取締役も兼任するローソンの唐沢経営戦略本部長は「成城石井が成長していくためには、西日本への出店強化や海外展開などに向けた他社との提携が必要になる。上場すれば信用の観点から海外展開が有利になったり、他社との提携がしやすくなったりする」と説明する。 また、「成城石井は成長志向が強い一方、ガバナンスなどの経営体制の整備は弱かった。ローソンの支援によって体制が整ったことで、上場を検討できる状態になった」(唐沢本部長)という』、「SPA(製造小売業)」はユニクロなど小売業のものと思っていたが、コンビニでも成立するとは初めて知った。「成城石井が成長していくためには、西日本への出店強化や海外展開などに向けた他社との提携が必要になる。上場すれば信用の観点から海外展開が有利になったり、他社との提携がしやすくなったりする」、確かに「上場」のメリットはありそうだ。
・『SPAのノウハウ吸収を狙ったが… 一方、あるコンビニ大手の幹部は「成城石井とローソンにシナジーはほとんどなかった」と指摘する。想定されたシナジーが生まれなかった結果、成城石井をローソングループ内にとどめる必要性が小さくなったことが、上場を検討している背景にあると見ているわけだ。 成城石井の買収時、ローソンが想定したシナジーの1つが、成城石井が持つSPAのノウハウを取り入れることだった。 買収を主導したローソンの玉塚元一社長(当時、現ロッテホールディングス社長)は、「(買収の狙いは)小商圏の製造小売業という本業の強化だ。成城石井は原材料調達から製造方法まで非常にこだわっている」と期待を語っていた(当時のインタビューはこちら)。 しかし、結果として思い描いたとおりのシナジーが発現したとは言い難い。両社による商品の共同開発は実現したとはいえ、ローソンがSPAのノウハウを吸収して自ら総菜製造に乗り出したわけでもない。 客層の違いなどから、高級路線の成城石井の商品をローソンで扱うハードルも高かった。地方にある一部のローソン店舗に成城石井コーナーを展開したことや、ローソンで成城石井のワインや冷凍食品などを扱っていることなど、商品展開における協業効果はかなり限定的だった。) 「ローソンは国内コンビニ事業を立て直すために、投資を集中する必要がある。そのために、成城石井に限らず非コンビニ事業の見直しを検討しているようだ」。あるコンビニ業界関係者はそう明かす。 ローソン側は「現金がどうしても必要というわけではない」(唐沢本部長)と、あくまで成城石井の資本戦略としての側面を強調するが、株式売却によって得られる巨額のキャッシュは、ローソンにとって大きな意味を持つ。 1店舗の1日当たり売上高である平均日販でローソンは現在、セブン-イレブンとファミリーマートに次ぐ業界3位の座に甘んじている。ローソンの平均日販は約50万円で、首位のセブンと15万円近い差がある。日販で長年上回っていたファミマにも、コロナまっただ中の2020年度に逆転された』、「「成城石井とローソンにシナジーはほとんどなかった」と指摘する。想定されたシナジーが生まれなかった結果、成城石井をローソングループ内にとどめる必要性が小さくなったことが、上場を検討している背景にあると見ているわけだ」、確かに「成城石井」と「ローソン」では、顧客層が違い「シナジー」はほとんどなかったようだ。
・『販促施策でセブン、ファミマに出遅れ ローソンが反転攻勢に向けて強化を迫られるのが、従来他社に劣後してきたマーケティング関連施策への投資だ。 2022年2月期、ローソン単体で広告費用や値引きキャンペーンなどに用いた広告宣伝費は109億円だった。同期に456億円を計上したセブン-イレブン・ジャパンの2割にすぎない。ローソン関係者も「以前から、資金があればもっと広告費を投下したいとは思ってきた。広告は集客効果も高い」と、販促施策の重要性を強調する。 ファミマは2020年、日本マクドナルド復活の立役者としても知られるマーケターの足立光氏をCMO(最高マーケティング責任者)として招聘。足立CMOの下でブランド戦略の強化を推し進めている。 ローソンの竹増貞信社長は「コストを削って加盟店利益を伸ばしてきたがそれももう限界。売り上げを伸ばしていかないといけない」と語る。国内でコンビニの店舗数が飽和状態にある現状では、日販を伸ばす以外に成長曲線を描くことは難しい。 再び業界2位に浮上し、セブンの背中を捉えることはできるか。虎の子の上場で得る資金をバネに、ローソンの大きな挑戦が始まるかもしれない』、「虎の子の上場で得る資金をバネに、ローソンの大きな挑戦が始まるかもしれない」、「ローソン」の今後を注目したい。
次に、10月28日付け現代ビジネスが掲載した経営戦略コンサルタントの鈴木 貴博氏による「セブンイレブンで「客数10%減」の衝撃…! コンビニ「最強」から一転、いま起きている“意外すぎる現実”…!」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/101403?imp=0
・『セブンイレブンの「顧客数が1割減」の衝撃…! セブンアンドアイHDの発表によれば今年上半期のセブンイレブンの既存店売上高がコロナ前を上回ったそうです。 「ようやくアフターコロナで経済が戻ってきたな」というのも正しい感想ですが、実は内情を見てみるとちょっと違うのです。 コロナ前の2019年上期と比較すれば確かに売上高は1.1%増と回復しているのですが、じつは顧客数はマイナス11.0%と1割以上減っています。 「コロナ禍に加えて円安不況でコンビニを使うことができる日本人の数は減少傾向にある」ということがこの数字から裏付けられます。 ではなぜ売上高が回復したかといえば客単価が13.5%も増えているからです。 「値上げラッシュのせいかな?」と思うかもしれませんが、消費者物価指数の伸びよりもずっと増えています。 つまりコンビニでちょっとお高めの商品が売れるようになったのです』、「売上高は1.1%増と回復」、「顧客数はマイナス11.0%」、「客単価が13.5%も増えている」、「ちょっとお高めの商品が売れるようになった」、何故だろう。
・『「コンビニ」に起きている変化 それを象徴するかのようについ先日、「節約しようとコンビニでカップヌードルを買ったら1個231円もした」という主旨のツイートが炎上しました。 中流層から見ればコンビニのカップヌードルがここまで高くなるというのは驚きだったのでしょう。 けれども、低所得層から見れば、「そんなことに今ごろ気づいたのか」というところでしょう。 後編記事『セブンイレブンに「異変」あり…! “1億総コンビニ時代”の終焉で「コンビニから消えた人」の正体と、「コンビニ格差社会」の“意外すぎる現実”…!』では、さらにそんなコンビニ業界をめぐっていま起きている“顧客の異変”についてレポートしましょう』、「後編記事」を見てみよう。
第三に、この続きを、10月28日付け現代ビジネスが掲載した経営戦略コンサルタントの鈴木 貴博氏による「セブンイレブンに「異変」あり…! “1億総コンビニ時代”の終焉で「コンビニから消えた人」の正体と、「コンビニ格差社会」の“意外すぎる現実”…!」を紹介しよう』、前編記事では、「ちょっとお高めの商品が売れるようになった」という事実だけの指摘に終わっていた。
・『コンビ二界の王者であるセブンイレブンに「異変」が起きています。 セブンアンドアイHDの発表によれば今年上半期のセブンイレブンの既存店売上高がコロナ前を上回ったそうですが、じつはそのウラで、顧客数はマイナス11.0%と1割以上減っていたのです。 いまコンビニをめぐって「お客」の姿が大きく変わってきていることを気が付いている人はどれくらいいるでしょうか。 いったいいま何が起きているのか。そして、その変化は何を意味しているのか――。その最前線をレポートします』、早く各論に進もう。
・『コンビニは「富裕層」のもの…? リーマンショックの後、デフレ経済で低所得層が増加していく中で、「いずれコンビニを使うことができるのは中流層か富裕層だけになる」という予測がありました。 今回の数字はそれを裏付けているようにもとれる数字ですが、実態はもう少し複雑です。 アフターコロナのコンビニの売上を支えているのは3種類の違ったひとたちです。 それぞれが違う理由でコンビニを利用し、それぞれが違う日本経済への不満を感じ、それぞれが異なる購買行動をとることで全体としてコンビニを支えています』、「アフターコロナのコンビニの売上を支えているのは3種類の違ったひとたち」、具体的にはどういうことだろう。
・『1億総中流の「コンビニ」の時代は終わった…! 20世紀のように1億総中流が「便利だからちょっと高くてもちょうどいい」といってコンビニエンスストアを使う時代は終わりつつあります。 令和のコンビニ事情から垣間見られる日本経済について考えてみましょう。 では令和の現在、コンビニを利用する日本人はどのような人たちなのでしょう。典型的には次の3種類の顧客層がコンビニをよく利用する層といえそうです。 1. 惰性で利用するひとたち 2. 手に届く贅沢を楽しむ中流のひとたち 3. 買い物難民としての高齢者たち ちなみに減ってしまった1割の顧客層は経済の変化に過敏な顧客層でしょう』、「典型的には次の3種類の顧客層がコンビニをよく利用する層といえそうです。 1. 惰性で利用するひとたち 2. 手に届く贅沢を楽しむ中流のひとたち 3. 買い物難民としての高齢者たち」、なるほど。
・『コンビニから「消えた」のはこんな人たち 簡単に言えば、「ガソリン代、電気代からインスタントラーメンまでこんなに値段が上がっているのだから生活スタイルを変えなくては。コンビニよりもドラッグストアやスーパーの方が同じ商品が安く買えるのだから買う場所を変えよう」と言うような行動をとるひとです。 この行動は所得が多いか少ないかとは関係なく幅広い層で起きます。 たとえば私は経済評論家なのでついつい経済合理的な行動をとってしまう傾向があります。コンビニは仕事柄毎日のように売り場を覗くのですが、手ぶらで出てくる日が多い。一か月でコンビニで使うお金は2000円ぐらいだと思います。私は間違いなくコンビニから消えた1割の顧客層のひとりです』、「こんなに値段が上がっているのだから生活スタイルを変えなくては。コンビニよりもドラッグストアやスーパーの方が同じ商品が安く買えるのだから買う場所を変えよう」と言うような行動をとるひと」、が「コンビニから消えた1割の顧客層」、確かに「経済合理的」だ。
・『とにかくコンビニに行くひとたち ではコンビニに残ったのはどのような層でしょう。ひとつずつ順に見ていきましょう。まず最初の「惰性で利用するひとたち」とは私の逆で、経済合理性では行動しない人たちです。 たとえば習慣としてお昼はコンビニで弁当を買う。缶コーヒーも自動販売機かコンビニで買って飲む。家に帰る前にコンビニでビールとポテトチップスを買って帰る。そんな生活を10年以上変えていないひとたちは、コロナ禍があっても、ウクライナ侵攻があってもコンビニを使う日々は変わりません。) ところでこの記事のすべての読者の皆さんに一度やってみたら面白いと思うことがあるのですが、ぜひ一か月のコンビニのレシートを取っておいて合計してみてください。 私は20代の頃にこれをやってみたところコンビニで使った金額が5万円を超えていて驚いたことがあります。当時、勤務先の近所にはコンビニがなかったのでお昼の弁当とか午後の缶コーヒー代とか抜きでこの金額でした。 このように惰性でコンビニを使う層はコンビニの収益を支えます。 さて、このような惰性でコンビニを使う層がいるから、コンビニはどんどん単価を上げても大丈夫だろうというのは素人考えです。 実はコンビニはこのような惰性層が価格の変化に敏感にならなくてもいいように商品を構成しています。 たとえば冒頭で話題にしたように日清のカップヌードルは大手コンビニの店頭で231円(税込、以下同じ)で売られていますが、同じカップ麺の棚で最安値近辺のものを探すと、セブンイレブンの場合はセブンプレミアムの醤油ヌードルを138円で買うことができます。 おにぎりの場合でも高くて美味しそうなプレミアム価格のおにぎりもたくさんありますが、相変わらず120円前後で買えるおにぎりも用意されています。 レトルトカレーも「金のビーフカレー」あたりだと473円もする商品もある中で、セブンプレミアムのボンカレーと同等品のカレーは105円とかなりお値ごろです。 スナック菓子も108円の自社開発商品が幅広い品ぞろえで置いてあるのでわざわざ高いお菓子を買う必要はありません。 結局のところ給料日前のお金が減ってきた時期でもコンビニで買うことができないという状態には絶対にならないように商品が構成されています。 一方でこの惰性層は、値段を厳密に比較したりはしない傾向があります。 250円とか400円の商品があった場合、それが相場と比較して高いのか安いのかでは判断せずに、買えるか買えないかで判断します。ですから給料日後はコンビニにとってよいお客さんになる。 こういった購買行動を想定して商品を揃えている。ここがコンビニの最初の強みです』、「給料日前のお金が減ってきた時期でもコンビニで買うことができないという状態には絶対にならないように商品が構成されています」、「こういった購買行動を想定して商品を揃えている。ここがコンビニの最初の強みです」、確かに強みではある。
・『「プレミアム」という魔法の言葉 次に、手に届く贅沢を楽しむ中流のひとたちというふたつめの客層を眺めてみましょう。 一億総中流が崩れて所得格差が広まったとはいえ、人口ベースで最大の層はあいかわらず中流層です。当然、この層はコンビニにとっても最大の利用者層なのですがこの中流の消費のキーワードが、客層のキーワードとして使った「手に届く贅沢」という言葉です。 私が最初にこの言葉を聞いたのは1990年代の初め、まだ日本にスタバが上陸する前のことでした。当時所属していたコンサルティングファームのグローバルトレーニングで、「スターバックスというコーヒーチェーンがアメリカのコーヒー業界を変え始めている」というレクチャーを受けた際に、講師が口にしたのがこの言葉でした。 要するに、それまでアメリカでは1杯50セントの薄くてまずいアメリカンコーヒーしか売られていなかったところにスタバが出現してブームになっていたのですが、その当時のアメリカのアナリストはアメリカ市場で高いコーヒーが売れるとは誰も考えてませんでした。 ところが日本よりも先に所得格差が広がったアメリカでは「手に届く贅沢」が新しい消費トレンドになり、その象徴としてスタバがケーススタディに取り上げられたというわけです。 日本でもスタバ上陸後、「100%アラビカ種のコーヒー豆を使った濃いコーヒー」を250円ぐらいの価格で買うというのが手に届く贅沢の象徴のような消費スタイルとして定着するのですが、そのトレンドをコンビニはカフェ商品としてそのまま取り込みます。 それだけではなくこのトレンドを多くの商品ラインに広げ、辛抱強く長年に亘って育て磨いてきたのが日本のコンビニといっていいと思います。 たとえばケーキのようなデザートは以前は特別な日にケーキ屋さんで買うものでしたが、現在ではコンビニで本格的なケーキ店とそん色ない品質のスイーツが売られています。 「今日は仕事、頑張っちゃったな」 そんな日に酒飲みの人がビールを買って帰るように、主に下戸のビジネスパーソンは、コンビニのプレミアムスイーツを自分のご褒美に買って帰るようになりました。 セブンイレブンのPB商品であるセブンプレミアムは、気づいていない方も多いかもしれませんがラベルの色が違う5種類のロゴの商品に分かれています。 その中でもこの層に人気なのが金色のラベルのセブンプレミアムゴールドです。私の周囲でも「金のビーフシチューは本当に大好き」とか「金の蟹トマトクリームは専門のイタリア料理店に負けない」といったファン層の声をよく聞きます』、「人口ベースで最大の層はあいかわらず中流層です。当然、この層はコンビニにとっても最大の利用者層なのですがこの中流の消費のキーワードが、客層のキーワードとして使った「手に届く贅沢」という言葉です」、「下戸のビジネスパーソンは、コンビニのプレミアムスイーツを自分のご褒美に買って帰るようになりました。 セブンイレブンのPB商品であるセブンプレミアムは、気づいていない方も多いかもしれませんがラベルの色が違う5種類のロゴの商品に分かれています」、「コンビニのプレミアムスイーツを自分のご褒美に買って帰るように」、そんな時代になったようだ。
・『「ぜいたく」の絶妙な演出 これは経済評論家としての私の観察からの経験則のようなものですが、セブンイレブンはこのような手に届く贅沢の商品について「通常の商品の1.67倍までの価格なら売れる」と判断しているように見えます。 たとえば冷凍パスタで普通のボロネーゼが279円で、金のプレミアムが430円だとか、レトルトカレーで通常のビーフカレーが289円で、金のビーフカレーが473円なのですが、それくらいの価格差は「今日は手に届く贅沢を楽しもう」と思う人にとってちょうどいい価格なのです。 重要なことはその1.67倍以内の価格でどれだけプレミアム感を出せるかなのですが、ここがコンビニの中でもセブンイレブンが非常にうまいところで、絶妙な贅沢感がある商品を開発して、それを金色のロゴに認定しています。 要するにコンビニには現在、3つの価格帯の商品が混在して売られています。 低所得層が気にせずに買うことができる安い商品(カップ麺ならPB品の127円)と、通常の価格帯の商品(例:日清カップヌードル231円)、そして手に届く贅沢品としてそれよりも高い商品(例:ラーメンの名店とコラボした特別なカップ麺、300円前後)という3種類の商品がコンビニの棚に並んでいるのです。 こうした細かい商品政策で経済性に敏感な一割の顧客層がコンビニを離れた後でも、コンビニエンスストアは客単価を上げることで売上を維持できているわけです』、「コンビニには現在、3つの価格帯の商品が混在して売られています。 低所得層が気にせずに買うことができる安い商品・・・と、通常の価格帯の商品・・・、そして手に届く贅沢品としてそれよりも高い商品という3種類の商品がコンビニの棚に並んでいるのです。 こうした細かい商品政策で経済性に敏感な一割の顧客層がコンビニを離れた後でも、コンビニエンスストアは客単価を上げることで売上を維持できているわけです」、実に巧みな「商品政策」だ。
・『買い物難民とコンビニ さて、それとは別にもうひとつ違う軸でコンビニを利用する3番目の顧客層がいます。それが買い物難民としての高齢者たちです。 人生百年と政府がいうように、周囲の大人たちの大半は後期高齢者になってしまいました。私のまわりではみんなそこそこ元気なのはよいことですが、話を聞いてみるとやはり生活の中でも買い物が大きな課題になっているといいます。 そして皆が口をそろえて言うのが、日常生活の買い物のかなりの部分をコンビニを往復することに負っているというのです。 肉や魚、野菜などはスーパーに買いに行くのですが、一日一回、スーパーに出かけるのも一苦労なうえに、昔のように必要なものをすべて買ったら一度に持ち帰ることができない。結果として、コンビニで買えないものだけを主にスーパーで買って、残りは別の時間帯にコンビニに買い足しに行くのだといいます。 地域的な買い物難民もいます。私の実家は愛知県でも車がないと生活できない場所にあります。電車は一時間に一本しか走っていない、そんな場所です。そこに住んでいると若い人でも同じような買い物スタイルになります。 大きなスーパーは車で40分、往復1時間以上かけないと行けないのでまとまった買い物は週に1~2回しか行きません。それ以外の日常の買い物はすべてコンビニで済まします。なぜならコンビニならそのような土地でも片道10分ぐらいのところに必ず一軒はあるからです。 幸いにして買い物弱者であるそのようなひとたちから見ても、今のコンビニは安いものから高級品まで自分が必要とする価格帯の商品が揃っている。だから便利に使うことができるというわけです』、「大きなスーパーは車で40分、往復1時間以上かけないと行けないのでまとまった買い物は週に1~2回しか行きません。それ以外の日常の買い物はすべてコンビニで済まします。なぜならコンビニならそのような土地でも片道10分ぐらいのところに必ず一軒はあるからです。 幸いにして買い物弱者であるそのようなひとたちから見ても、今のコンビニは安いものから高級品まで自分が必要とする価格帯の商品が揃っている。だから便利に使うことができるというわけです」、さすが「コンビニエンス」を売り物にするだけある。
・『それぞれの階層のためのコンビニ さて、話をまとめましょう。 アフターコロナ経済でコンビニエンスストアの業績もようやくコロナ禍前の水準に戻ってきました。ところがこの間、日本人の階層化はさらに進んだ様子です。 コンビニは商品構成を変化させることで、それらのうち3つの層をうまく取り込んで成功しています。そしてコンビニの品揃えの変化から、これら3つの異なる消費者層にとっての日本経済がとてもよくわかるという話なのでした。・・・』、「日本人の階層化はさらに進んだ様子です。 コンビニは商品構成を変化させることで、それらのうち3つの層をうまく取り込んで成功しています」、柔軟な適応能力が「成功」のカギのようだ。
先ずは、本年5月17日付け東洋経済オンライン「ローソン、虎の子「成城石井」を上場検討の懐事情 成長資金確保で狙う「コンビニ3位」からの脱却」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/589235
・『ローソンの営業利益の4分の1を稼ぎ出す、優良子会社の成城石井。あえて今、持ち株を一部手放すのはなぜなのか。 「2000億円でも安いと個人的には考えている」。ローソンの唐沢裕之・経営戦略本部長はそう語った。 ローソンが、完全子会社の高級スーパー・成城石井の上場を検討している。一部報道によれば、上場時の時価総額は2000億円を上回る可能性がある。食品スーパー大手のライフコーポレーションでさえ、時価総額は1390億円(5月16日終値換算)。実現すれば、国内のスーパーとしては破格の規模となる。ローソンの持ち株比率をどの程度まで下げるかについても検討中という。 ローソンは2014年に総額約550億円を投じ、三菱商事系の投資ファンドである丸の内キャピタルから成城石井の全株式を取得した。その後も順調に成長を続け、関東を中心に展開する店舗数は現在、買収時の約1.7倍に当たる200店超に達する。 業績も拡大している。買収直後の2016年2月期に690億円だった営業総収入は、前2022年2月期に約1.6倍の1092億円、同じく58億円だった営業利益は約2倍の120億円に成長。直近まで4期連続の増益を達成している。 営業利益率約11%と食品スーパーでは異例の高収益体質を誇り、ローソンの直近の連結営業利益の4分の1を稼ぎ出す。今後も成長が見込める“虎の子”の持ち分を、このタイミングで一部売却する狙いは何なのか』、「2014年に総額約550億円を投じ、三菱商事系の投資ファンドである丸の内キャピタルから成城石井の全株式を取得」、「営業利益率約11%と食品スーパーでは異例の高収益体質を誇り、ローソンの直近の連結営業利益の4分の1を稼ぎ出す」、「このタイミングで一部売却する狙いは何なのか」、興味深そうだ。
・『競合も一目を置くSPAモデル 成城石井の強さの源泉は、自社のセントラルキッチンで総菜などを製造・開発するSPA(製造小売業)型のビジネスモデルだ。 飲食店で食べるような高品質の料理を自宅で楽しむことができるなど、他社では買えない独自の商品を強みにしている。外食が制限されたコロナ禍においても、調理済みの食品を家庭内で食べる中食需要をうまく取り込んだ。 成城石井は現在2カ所の総菜調理センターを関東に持つ。店舗数の拡大に伴って総菜調理のキャパシティーも限界に近づいており、今夏には3カ所目のセンターが稼働予定。最終的には総菜の生産能力を現状の2倍以上に増強するという。 【2022年5月17日12時01分追記】初出時の表記を上記のように修正いたします。 自社の製造拠点を軸に培った商品力や開発力を武器に、高級スーパーとしてのブランドを確立。競合スーパーの関係者も「成城石井のブランド認知度は非常に高い」と一目を置く) 上場を実現させたとしても、ローソンは成城石井株を相当数保有し続ける方針ではある。商品の共同開発など事業面での協業も継続するという。 上場の狙いについて、成城石井の取締役も兼任するローソンの唐沢経営戦略本部長は「成城石井が成長していくためには、西日本への出店強化や海外展開などに向けた他社との提携が必要になる。上場すれば信用の観点から海外展開が有利になったり、他社との提携がしやすくなったりする」と説明する。 また、「成城石井は成長志向が強い一方、ガバナンスなどの経営体制の整備は弱かった。ローソンの支援によって体制が整ったことで、上場を検討できる状態になった」(唐沢本部長)という』、「SPA(製造小売業)」はユニクロなど小売業のものと思っていたが、コンビニでも成立するとは初めて知った。「成城石井が成長していくためには、西日本への出店強化や海外展開などに向けた他社との提携が必要になる。上場すれば信用の観点から海外展開が有利になったり、他社との提携がしやすくなったりする」、確かに「上場」のメリットはありそうだ。
・『SPAのノウハウ吸収を狙ったが… 一方、あるコンビニ大手の幹部は「成城石井とローソンにシナジーはほとんどなかった」と指摘する。想定されたシナジーが生まれなかった結果、成城石井をローソングループ内にとどめる必要性が小さくなったことが、上場を検討している背景にあると見ているわけだ。 成城石井の買収時、ローソンが想定したシナジーの1つが、成城石井が持つSPAのノウハウを取り入れることだった。 買収を主導したローソンの玉塚元一社長(当時、現ロッテホールディングス社長)は、「(買収の狙いは)小商圏の製造小売業という本業の強化だ。成城石井は原材料調達から製造方法まで非常にこだわっている」と期待を語っていた(当時のインタビューはこちら)。 しかし、結果として思い描いたとおりのシナジーが発現したとは言い難い。両社による商品の共同開発は実現したとはいえ、ローソンがSPAのノウハウを吸収して自ら総菜製造に乗り出したわけでもない。 客層の違いなどから、高級路線の成城石井の商品をローソンで扱うハードルも高かった。地方にある一部のローソン店舗に成城石井コーナーを展開したことや、ローソンで成城石井のワインや冷凍食品などを扱っていることなど、商品展開における協業効果はかなり限定的だった。) 「ローソンは国内コンビニ事業を立て直すために、投資を集中する必要がある。そのために、成城石井に限らず非コンビニ事業の見直しを検討しているようだ」。あるコンビニ業界関係者はそう明かす。 ローソン側は「現金がどうしても必要というわけではない」(唐沢本部長)と、あくまで成城石井の資本戦略としての側面を強調するが、株式売却によって得られる巨額のキャッシュは、ローソンにとって大きな意味を持つ。 1店舗の1日当たり売上高である平均日販でローソンは現在、セブン-イレブンとファミリーマートに次ぐ業界3位の座に甘んじている。ローソンの平均日販は約50万円で、首位のセブンと15万円近い差がある。日販で長年上回っていたファミマにも、コロナまっただ中の2020年度に逆転された』、「「成城石井とローソンにシナジーはほとんどなかった」と指摘する。想定されたシナジーが生まれなかった結果、成城石井をローソングループ内にとどめる必要性が小さくなったことが、上場を検討している背景にあると見ているわけだ」、確かに「成城石井」と「ローソン」では、顧客層が違い「シナジー」はほとんどなかったようだ。
・『販促施策でセブン、ファミマに出遅れ ローソンが反転攻勢に向けて強化を迫られるのが、従来他社に劣後してきたマーケティング関連施策への投資だ。 2022年2月期、ローソン単体で広告費用や値引きキャンペーンなどに用いた広告宣伝費は109億円だった。同期に456億円を計上したセブン-イレブン・ジャパンの2割にすぎない。ローソン関係者も「以前から、資金があればもっと広告費を投下したいとは思ってきた。広告は集客効果も高い」と、販促施策の重要性を強調する。 ファミマは2020年、日本マクドナルド復活の立役者としても知られるマーケターの足立光氏をCMO(最高マーケティング責任者)として招聘。足立CMOの下でブランド戦略の強化を推し進めている。 ローソンの竹増貞信社長は「コストを削って加盟店利益を伸ばしてきたがそれももう限界。売り上げを伸ばしていかないといけない」と語る。国内でコンビニの店舗数が飽和状態にある現状では、日販を伸ばす以外に成長曲線を描くことは難しい。 再び業界2位に浮上し、セブンの背中を捉えることはできるか。虎の子の上場で得る資金をバネに、ローソンの大きな挑戦が始まるかもしれない』、「虎の子の上場で得る資金をバネに、ローソンの大きな挑戦が始まるかもしれない」、「ローソン」の今後を注目したい。
次に、10月28日付け現代ビジネスが掲載した経営戦略コンサルタントの鈴木 貴博氏による「セブンイレブンで「客数10%減」の衝撃…! コンビニ「最強」から一転、いま起きている“意外すぎる現実”…!」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/101403?imp=0
・『セブンイレブンの「顧客数が1割減」の衝撃…! セブンアンドアイHDの発表によれば今年上半期のセブンイレブンの既存店売上高がコロナ前を上回ったそうです。 「ようやくアフターコロナで経済が戻ってきたな」というのも正しい感想ですが、実は内情を見てみるとちょっと違うのです。 コロナ前の2019年上期と比較すれば確かに売上高は1.1%増と回復しているのですが、じつは顧客数はマイナス11.0%と1割以上減っています。 「コロナ禍に加えて円安不況でコンビニを使うことができる日本人の数は減少傾向にある」ということがこの数字から裏付けられます。 ではなぜ売上高が回復したかといえば客単価が13.5%も増えているからです。 「値上げラッシュのせいかな?」と思うかもしれませんが、消費者物価指数の伸びよりもずっと増えています。 つまりコンビニでちょっとお高めの商品が売れるようになったのです』、「売上高は1.1%増と回復」、「顧客数はマイナス11.0%」、「客単価が13.5%も増えている」、「ちょっとお高めの商品が売れるようになった」、何故だろう。
・『「コンビニ」に起きている変化 それを象徴するかのようについ先日、「節約しようとコンビニでカップヌードルを買ったら1個231円もした」という主旨のツイートが炎上しました。 中流層から見ればコンビニのカップヌードルがここまで高くなるというのは驚きだったのでしょう。 けれども、低所得層から見れば、「そんなことに今ごろ気づいたのか」というところでしょう。 後編記事『セブンイレブンに「異変」あり…! “1億総コンビニ時代”の終焉で「コンビニから消えた人」の正体と、「コンビニ格差社会」の“意外すぎる現実”…!』では、さらにそんなコンビニ業界をめぐっていま起きている“顧客の異変”についてレポートしましょう』、「後編記事」を見てみよう。
第三に、この続きを、10月28日付け現代ビジネスが掲載した経営戦略コンサルタントの鈴木 貴博氏による「セブンイレブンに「異変」あり…! “1億総コンビニ時代”の終焉で「コンビニから消えた人」の正体と、「コンビニ格差社会」の“意外すぎる現実”…!」を紹介しよう』、前編記事では、「ちょっとお高めの商品が売れるようになった」という事実だけの指摘に終わっていた。
・『コンビ二界の王者であるセブンイレブンに「異変」が起きています。 セブンアンドアイHDの発表によれば今年上半期のセブンイレブンの既存店売上高がコロナ前を上回ったそうですが、じつはそのウラで、顧客数はマイナス11.0%と1割以上減っていたのです。 いまコンビニをめぐって「お客」の姿が大きく変わってきていることを気が付いている人はどれくらいいるでしょうか。 いったいいま何が起きているのか。そして、その変化は何を意味しているのか――。その最前線をレポートします』、早く各論に進もう。
・『コンビニは「富裕層」のもの…? リーマンショックの後、デフレ経済で低所得層が増加していく中で、「いずれコンビニを使うことができるのは中流層か富裕層だけになる」という予測がありました。 今回の数字はそれを裏付けているようにもとれる数字ですが、実態はもう少し複雑です。 アフターコロナのコンビニの売上を支えているのは3種類の違ったひとたちです。 それぞれが違う理由でコンビニを利用し、それぞれが違う日本経済への不満を感じ、それぞれが異なる購買行動をとることで全体としてコンビニを支えています』、「アフターコロナのコンビニの売上を支えているのは3種類の違ったひとたち」、具体的にはどういうことだろう。
・『1億総中流の「コンビニ」の時代は終わった…! 20世紀のように1億総中流が「便利だからちょっと高くてもちょうどいい」といってコンビニエンスストアを使う時代は終わりつつあります。 令和のコンビニ事情から垣間見られる日本経済について考えてみましょう。 では令和の現在、コンビニを利用する日本人はどのような人たちなのでしょう。典型的には次の3種類の顧客層がコンビニをよく利用する層といえそうです。 1. 惰性で利用するひとたち 2. 手に届く贅沢を楽しむ中流のひとたち 3. 買い物難民としての高齢者たち ちなみに減ってしまった1割の顧客層は経済の変化に過敏な顧客層でしょう』、「典型的には次の3種類の顧客層がコンビニをよく利用する層といえそうです。 1. 惰性で利用するひとたち 2. 手に届く贅沢を楽しむ中流のひとたち 3. 買い物難民としての高齢者たち」、なるほど。
・『コンビニから「消えた」のはこんな人たち 簡単に言えば、「ガソリン代、電気代からインスタントラーメンまでこんなに値段が上がっているのだから生活スタイルを変えなくては。コンビニよりもドラッグストアやスーパーの方が同じ商品が安く買えるのだから買う場所を変えよう」と言うような行動をとるひとです。 この行動は所得が多いか少ないかとは関係なく幅広い層で起きます。 たとえば私は経済評論家なのでついつい経済合理的な行動をとってしまう傾向があります。コンビニは仕事柄毎日のように売り場を覗くのですが、手ぶらで出てくる日が多い。一か月でコンビニで使うお金は2000円ぐらいだと思います。私は間違いなくコンビニから消えた1割の顧客層のひとりです』、「こんなに値段が上がっているのだから生活スタイルを変えなくては。コンビニよりもドラッグストアやスーパーの方が同じ商品が安く買えるのだから買う場所を変えよう」と言うような行動をとるひと」、が「コンビニから消えた1割の顧客層」、確かに「経済合理的」だ。
・『とにかくコンビニに行くひとたち ではコンビニに残ったのはどのような層でしょう。ひとつずつ順に見ていきましょう。まず最初の「惰性で利用するひとたち」とは私の逆で、経済合理性では行動しない人たちです。 たとえば習慣としてお昼はコンビニで弁当を買う。缶コーヒーも自動販売機かコンビニで買って飲む。家に帰る前にコンビニでビールとポテトチップスを買って帰る。そんな生活を10年以上変えていないひとたちは、コロナ禍があっても、ウクライナ侵攻があってもコンビニを使う日々は変わりません。) ところでこの記事のすべての読者の皆さんに一度やってみたら面白いと思うことがあるのですが、ぜひ一か月のコンビニのレシートを取っておいて合計してみてください。 私は20代の頃にこれをやってみたところコンビニで使った金額が5万円を超えていて驚いたことがあります。当時、勤務先の近所にはコンビニがなかったのでお昼の弁当とか午後の缶コーヒー代とか抜きでこの金額でした。 このように惰性でコンビニを使う層はコンビニの収益を支えます。 さて、このような惰性でコンビニを使う層がいるから、コンビニはどんどん単価を上げても大丈夫だろうというのは素人考えです。 実はコンビニはこのような惰性層が価格の変化に敏感にならなくてもいいように商品を構成しています。 たとえば冒頭で話題にしたように日清のカップヌードルは大手コンビニの店頭で231円(税込、以下同じ)で売られていますが、同じカップ麺の棚で最安値近辺のものを探すと、セブンイレブンの場合はセブンプレミアムの醤油ヌードルを138円で買うことができます。 おにぎりの場合でも高くて美味しそうなプレミアム価格のおにぎりもたくさんありますが、相変わらず120円前後で買えるおにぎりも用意されています。 レトルトカレーも「金のビーフカレー」あたりだと473円もする商品もある中で、セブンプレミアムのボンカレーと同等品のカレーは105円とかなりお値ごろです。 スナック菓子も108円の自社開発商品が幅広い品ぞろえで置いてあるのでわざわざ高いお菓子を買う必要はありません。 結局のところ給料日前のお金が減ってきた時期でもコンビニで買うことができないという状態には絶対にならないように商品が構成されています。 一方でこの惰性層は、値段を厳密に比較したりはしない傾向があります。 250円とか400円の商品があった場合、それが相場と比較して高いのか安いのかでは判断せずに、買えるか買えないかで判断します。ですから給料日後はコンビニにとってよいお客さんになる。 こういった購買行動を想定して商品を揃えている。ここがコンビニの最初の強みです』、「給料日前のお金が減ってきた時期でもコンビニで買うことができないという状態には絶対にならないように商品が構成されています」、「こういった購買行動を想定して商品を揃えている。ここがコンビニの最初の強みです」、確かに強みではある。
・『「プレミアム」という魔法の言葉 次に、手に届く贅沢を楽しむ中流のひとたちというふたつめの客層を眺めてみましょう。 一億総中流が崩れて所得格差が広まったとはいえ、人口ベースで最大の層はあいかわらず中流層です。当然、この層はコンビニにとっても最大の利用者層なのですがこの中流の消費のキーワードが、客層のキーワードとして使った「手に届く贅沢」という言葉です。 私が最初にこの言葉を聞いたのは1990年代の初め、まだ日本にスタバが上陸する前のことでした。当時所属していたコンサルティングファームのグローバルトレーニングで、「スターバックスというコーヒーチェーンがアメリカのコーヒー業界を変え始めている」というレクチャーを受けた際に、講師が口にしたのがこの言葉でした。 要するに、それまでアメリカでは1杯50セントの薄くてまずいアメリカンコーヒーしか売られていなかったところにスタバが出現してブームになっていたのですが、その当時のアメリカのアナリストはアメリカ市場で高いコーヒーが売れるとは誰も考えてませんでした。 ところが日本よりも先に所得格差が広がったアメリカでは「手に届く贅沢」が新しい消費トレンドになり、その象徴としてスタバがケーススタディに取り上げられたというわけです。 日本でもスタバ上陸後、「100%アラビカ種のコーヒー豆を使った濃いコーヒー」を250円ぐらいの価格で買うというのが手に届く贅沢の象徴のような消費スタイルとして定着するのですが、そのトレンドをコンビニはカフェ商品としてそのまま取り込みます。 それだけではなくこのトレンドを多くの商品ラインに広げ、辛抱強く長年に亘って育て磨いてきたのが日本のコンビニといっていいと思います。 たとえばケーキのようなデザートは以前は特別な日にケーキ屋さんで買うものでしたが、現在ではコンビニで本格的なケーキ店とそん色ない品質のスイーツが売られています。 「今日は仕事、頑張っちゃったな」 そんな日に酒飲みの人がビールを買って帰るように、主に下戸のビジネスパーソンは、コンビニのプレミアムスイーツを自分のご褒美に買って帰るようになりました。 セブンイレブンのPB商品であるセブンプレミアムは、気づいていない方も多いかもしれませんがラベルの色が違う5種類のロゴの商品に分かれています。 その中でもこの層に人気なのが金色のラベルのセブンプレミアムゴールドです。私の周囲でも「金のビーフシチューは本当に大好き」とか「金の蟹トマトクリームは専門のイタリア料理店に負けない」といったファン層の声をよく聞きます』、「人口ベースで最大の層はあいかわらず中流層です。当然、この層はコンビニにとっても最大の利用者層なのですがこの中流の消費のキーワードが、客層のキーワードとして使った「手に届く贅沢」という言葉です」、「下戸のビジネスパーソンは、コンビニのプレミアムスイーツを自分のご褒美に買って帰るようになりました。 セブンイレブンのPB商品であるセブンプレミアムは、気づいていない方も多いかもしれませんがラベルの色が違う5種類のロゴの商品に分かれています」、「コンビニのプレミアムスイーツを自分のご褒美に買って帰るように」、そんな時代になったようだ。
・『「ぜいたく」の絶妙な演出 これは経済評論家としての私の観察からの経験則のようなものですが、セブンイレブンはこのような手に届く贅沢の商品について「通常の商品の1.67倍までの価格なら売れる」と判断しているように見えます。 たとえば冷凍パスタで普通のボロネーゼが279円で、金のプレミアムが430円だとか、レトルトカレーで通常のビーフカレーが289円で、金のビーフカレーが473円なのですが、それくらいの価格差は「今日は手に届く贅沢を楽しもう」と思う人にとってちょうどいい価格なのです。 重要なことはその1.67倍以内の価格でどれだけプレミアム感を出せるかなのですが、ここがコンビニの中でもセブンイレブンが非常にうまいところで、絶妙な贅沢感がある商品を開発して、それを金色のロゴに認定しています。 要するにコンビニには現在、3つの価格帯の商品が混在して売られています。 低所得層が気にせずに買うことができる安い商品(カップ麺ならPB品の127円)と、通常の価格帯の商品(例:日清カップヌードル231円)、そして手に届く贅沢品としてそれよりも高い商品(例:ラーメンの名店とコラボした特別なカップ麺、300円前後)という3種類の商品がコンビニの棚に並んでいるのです。 こうした細かい商品政策で経済性に敏感な一割の顧客層がコンビニを離れた後でも、コンビニエンスストアは客単価を上げることで売上を維持できているわけです』、「コンビニには現在、3つの価格帯の商品が混在して売られています。 低所得層が気にせずに買うことができる安い商品・・・と、通常の価格帯の商品・・・、そして手に届く贅沢品としてそれよりも高い商品という3種類の商品がコンビニの棚に並んでいるのです。 こうした細かい商品政策で経済性に敏感な一割の顧客層がコンビニを離れた後でも、コンビニエンスストアは客単価を上げることで売上を維持できているわけです」、実に巧みな「商品政策」だ。
・『買い物難民とコンビニ さて、それとは別にもうひとつ違う軸でコンビニを利用する3番目の顧客層がいます。それが買い物難民としての高齢者たちです。 人生百年と政府がいうように、周囲の大人たちの大半は後期高齢者になってしまいました。私のまわりではみんなそこそこ元気なのはよいことですが、話を聞いてみるとやはり生活の中でも買い物が大きな課題になっているといいます。 そして皆が口をそろえて言うのが、日常生活の買い物のかなりの部分をコンビニを往復することに負っているというのです。 肉や魚、野菜などはスーパーに買いに行くのですが、一日一回、スーパーに出かけるのも一苦労なうえに、昔のように必要なものをすべて買ったら一度に持ち帰ることができない。結果として、コンビニで買えないものだけを主にスーパーで買って、残りは別の時間帯にコンビニに買い足しに行くのだといいます。 地域的な買い物難民もいます。私の実家は愛知県でも車がないと生活できない場所にあります。電車は一時間に一本しか走っていない、そんな場所です。そこに住んでいると若い人でも同じような買い物スタイルになります。 大きなスーパーは車で40分、往復1時間以上かけないと行けないのでまとまった買い物は週に1~2回しか行きません。それ以外の日常の買い物はすべてコンビニで済まします。なぜならコンビニならそのような土地でも片道10分ぐらいのところに必ず一軒はあるからです。 幸いにして買い物弱者であるそのようなひとたちから見ても、今のコンビニは安いものから高級品まで自分が必要とする価格帯の商品が揃っている。だから便利に使うことができるというわけです』、「大きなスーパーは車で40分、往復1時間以上かけないと行けないのでまとまった買い物は週に1~2回しか行きません。それ以外の日常の買い物はすべてコンビニで済まします。なぜならコンビニならそのような土地でも片道10分ぐらいのところに必ず一軒はあるからです。 幸いにして買い物弱者であるそのようなひとたちから見ても、今のコンビニは安いものから高級品まで自分が必要とする価格帯の商品が揃っている。だから便利に使うことができるというわけです」、さすが「コンビニエンス」を売り物にするだけある。
・『それぞれの階層のためのコンビニ さて、話をまとめましょう。 アフターコロナ経済でコンビニエンスストアの業績もようやくコロナ禍前の水準に戻ってきました。ところがこの間、日本人の階層化はさらに進んだ様子です。 コンビニは商品構成を変化させることで、それらのうち3つの層をうまく取り込んで成功しています。そしてコンビニの品揃えの変化から、これら3つの異なる消費者層にとっての日本経済がとてもよくわかるという話なのでした。・・・』、「日本人の階層化はさらに進んだ様子です。 コンビニは商品構成を変化させることで、それらのうち3つの層をうまく取り込んで成功しています」、柔軟な適応能力が「成功」のカギのようだ。
タグ:コンビニ (その10)(ローソン 虎の子「成城石井」を上場検討の懐事情 成長資金確保で狙う「コンビニ3位」からの脱却、セブンイレブンで「客数10%減」の衝撃…! コンビニ「最強」から一転 いま起きている“意外すぎる現実”…!、セブンイレブンに「異変」あり…! “1億総コンビニ時代”の終焉で「コンビニから消えた人」の正体と 「コンビニ格差社会」の“意外すぎる現実”…!) 東洋経済オンライン「ローソン、虎の子「成城石井」を上場検討の懐事情 成長資金確保で狙う「コンビニ3位」からの脱却」 「2014年に総額約550億円を投じ、三菱商事系の投資ファンドである丸の内キャピタルから成城石井の全株式を取得」、「営業利益率約11%と食品スーパーでは異例の高収益体質を誇り、ローソンの直近の連結営業利益の4分の1を稼ぎ出す」、「このタイミングで一部売却する狙いは何なのか」、興味深そうだ。 「SPA(製造小売業)」はユニクロなど小売業のものと思っていたが、コンビニでも成立するとは初めて知った。「成城石井が成長していくためには、西日本への出店強化や海外展開などに向けた他社との提携が必要になる。上場すれば信用の観点から海外展開が有利になったり、他社との提携がしやすくなったりする」、確かに「上場」のメリットはありそうだ。 「「成城石井とローソンにシナジーはほとんどなかった」と指摘する。想定されたシナジーが生まれなかった結果、成城石井をローソングループ内にとどめる必要性が小さくなったことが、上場を検討している背景にあると見ているわけだ」、確かに「成城石井」と「ローソン」では、顧客層が違い「シナジー」はほとんどなかったようだ。 「虎の子の上場で得る資金をバネに、ローソンの大きな挑戦が始まるかもしれない」、「ローソン」の今後を注目したい。 現代ビジネス 鈴木 貴博氏による「セブンイレブンで「客数10%減」の衝撃…! コンビニ「最強」から一転、いま起きている“意外すぎる現実”…!」 「売上高は1.1%増と回復」、「顧客数はマイナス11.0%」、「客単価が13.5%も増えている」、「ちょっとお高めの商品が売れるようになった」、何故だろう。 「後編記事」を見てみよう。 鈴木 貴博氏による「セブンイレブンに「異変」あり…! “1億総コンビニ時代”の終焉で「コンビニから消えた人」の正体と、「コンビニ格差社会」の“意外すぎる現実”…!」 前編記事では、「ちょっとお高めの商品が売れるようになった」という事実だけの指摘に終わっていた。 早く各論に進もう。 「アフターコロナのコンビニの売上を支えているのは3種類の違ったひとたち」、具体的にはどういうことだろう。 「典型的には次の3種類の顧客層がコンビニをよく利用する層といえそうです。 1. 惰性で利用するひとたち 2. 手に届く贅沢を楽しむ中流のひとたち 3. 買い物難民としての高齢者たち」、なるほど。 「こんなに値段が上がっているのだから生活スタイルを変えなくては。コンビニよりもドラッグストアやスーパーの方が同じ商品が安く買えるのだから買う場所を変えよう」と言うような行動をとるひと」、が「コンビニから消えた1割の顧客層」、確かに「経済合理的」だ。 「給料日前のお金が減ってきた時期でもコンビニで買うことができないという状態には絶対にならないように商品が構成されています」、「こういった購買行動を想定して商品を揃えている。ここがコンビニの最初の強みです」、確かに強みではある。 「人口ベースで最大の層はあいかわらず中流層です。当然、この層はコンビニにとっても最大の利用者層なのですがこの中流の消費のキーワードが、客層のキーワードとして使った「手に届く贅沢」という言葉です」、「下戸のビジネスパーソンは、コンビニのプレミアムスイーツを自分のご褒美に買って帰るようになりました。 セブンイレブンのPB商品であるセブンプレミアムは、気づいていない方も多いかもしれませんがラベルの色が違う5種類のロゴの商品に分かれています」、「コンビニのプレミアムスイーツを自分のご褒美に買って帰るように」、そんな時代になったようだ。 「コンビニには現在、3つの価格帯の商品が混在して売られています。 低所得層が気にせずに買うことができる安い商品・・・と、通常の価格帯の商品・・・、そして手に届く贅沢品としてそれよりも高い商品という3種類の商品がコンビニの棚に並んでいるのです。 こうした細かい商品政策で経済性に敏感な一割の顧客層がコンビニを離れた後でも、コンビニエンスストアは客単価を上げることで売上を維持できているわけです」、実に巧みな「商品政策」だ。 「大きなスーパーは車で40分、往復1時間以上かけないと行けないのでまとまった買い物は週に1~2回しか行きません。それ以外の日常の買い物はすべてコンビニで済まします。なぜならコンビニならそのような土地でも片道10分ぐらいのところに必ず一軒はあるからです。 幸いにして買い物弱者であるそのようなひとたちから見ても、今のコンビニは安いものから高級品まで自分が必要とする価格帯の商品が揃っている。だから便利に使うことができるというわけです」、さすが「コンビニエンス」を売り物にするだけある。 「日本人の階層化はさらに進んだ様子です。 コンビニは商品構成を変化させることで、それらのうち3つの層をうまく取り込んで成功しています」、柔軟な適応能力が「成功」のカギのようだ。